下部デッキ商業用客室

関連出願の参照:本願は、2014年5月30日に出願された『下部デッキ客室体験』と題する米国仮出願第62/005,271号及び2015年1月30日に出願された『下部デッキ商業用客室』と題する米国仮出願第62/109,898号の優先権を主張し、その各々の内容全体を参照により援用して本文の記載の一部とする。

本開示の実施形態は、概して、伝統的に旅客機の貨物領域であったものを下部デッキ客室として使用することを可能にするシステムと機構に関する。航空機への多様な改変のみならず、乗客の体験を更に良くするために付加される多様な機構についても記載される。

旅客輸送機器の設計者は、輸送機器の使用に更なる収益を付加することのできる改良を見出そうと常に模索する。これは、特に、増大する燃料費と人件費の視点から見ると当てはまる。例えば、輸送機器に追加の座席を加えると、航空会社又はその他の運送会社は、料金を払って乗る乗客からより多くの収益をあげることができる。しかし、スペースと乗客の快適さも検討すべき問題である。これは、特に、旅客機の場合に当てはまる。

従来の旅客輸送航空機は、一般に、上部デッキにメインデッキ客室があり、下部デッキに貨物領域がある。しかし、路線によっては、貨物輸送に対する需要よりも乗客輸送に対する需要の方が大きく、相当な貨物領域が未使用のままである。そのような航空便は、貨物領域を十分に使用していない。最近では貨物領域の平均約37%しか使用されていないことが調査で示されている。これは、多くの乗客が経費増大のために荷物を制限している及び/又は機内持ち込み手荷物のみを携えているからかもしれない。これは、特に、ヨーロッパにおいて、多くの航空機が夏旅行/短距離飛行用に再構成されている場合に当てはまる。加えて、隙間市場の航空会社の中には、地域便しか運行せず、荷物預かりを行わないところもある。

したがって、貨物領域のある程度のスペースを追加の乗客用座席に利用できるようにすることが望まれている。航空機設計者の中には、一般に胴体といわれる航空機本体を、メインデッキと独自の床を有する下部デッキとに分けることを試みた者もいる。この目的は、下部デッキが荷物の収納以上の機能を果たすこと、又は航空機を作動させるために必要な補助機器の設置用とすることであった。例えば、いくつかの例では、下部デッキは、ラウンジ、化粧室などの衛生施設、関連待合所、ベッド、及び(いくつかの例では、ギャレー(galley、厨房)領域内のエレベーターを介して)メインデッキ客室まで食物を運ぶことができるギャレーとなるように設計されていた。これらの下部デッキは、乗客用座席となるようには構成されていなかった。

乗客用座席となるように設計された他の下部デッキ構造では、メインデッキ客室と下部デッキ客室の両方の下床が様々な高さを有するように変えられていた。これは、概して、下部デッキが十分な起立高さを提供できないことによる。例えば、通路部を下げて歩く乗客の高さに適応させ得る。座席部は、一般的に、より高い高さで設置される。しかし、これは、全般的に望ましい構造とは思われない。別の解決策は、下部デッキ床全体の高さを下げることであった。

下部デッキを乗客輸送のために使用する際の更なる課題は、胴体着陸の場合に乗客を守るために、下部デッキの真下に十分な構造(例えば、多様な規定に従った圧縮可能構造スペース)を設置することである。また、水上避難に関して、安全を目的とした出口用扉の適切な位置決めという対処すべき課題もある。さらに、下部デッキに適切な機外の景観を提供するという課題がある。既存の航空機の外板に穴をあけて窓を付加すると、新たな荷重や付加的な応力を引き起こす。窓はまた、航空機の全重量を増大させる。したがって、下部デッキ客室構造の改善が望ましい。

したがって、本書に記載される本発明の実施形態は、伝統的に旅客機の貨物領域であったものを下部デッキ客室として使用することを可能にするシステムと方法を提供する。航空機への多様な改変のみならず、乗客の体験を更に良くするために付加される多様な機構についても記載される。例えば、下げられたテクニカルフロア、下部デッキ客室の両端に設けられた階段又はその他の通路、窓代替技術、客室荷物の代替収納方法、又はそれらの任意の組合せが提供され得る。

特に、本発明の例は、内部空間を画定する航空機胴体に関し、この航空機胴体は、メインデッキ客室、下部デッキ客室(下部デッキ客室は、水平翼面とも称され得る航空機翼面の略下に位置する)、及び単独又は組み合わせて検討される以下の機構の少なくとも1つを備える。 −内部空間を上部メインデッキ客室と下部デッキ客室とに分ける仕切り床。 −メインデッキ客室、及び下部デッキ客室の少なくとも一部が乗客輸送用に構成され、メインデッキ客室、及び下部デッキ客室の少なくとも一部のそれぞれが座席領域を有する。 −上部メインデッキ客室と下部デッキ客室との間の第1通路及び第2通路。 −下部デッキ客室座席領域の一方の端に位置付けられた第1通路。 −下部デッキ客室座席領域の反対側の端に位置付けられた第2通路。 −第1通路及び/又は第2通路は、階段を含む。 −階段は、1つ以上の真っすぐな経路部を含む。 −階段は、方向が変わるごとに1つ以上の踊り場を備える。 −下部デッキ客室は、下げられたテクニカルフロアを含む。 −下部デッキ客室は、増大した厚さを有する側壁を含む。 −下部デッキ客室は、1つ以上の表示スクリーンを備える。 −1つ以上の表示スクリーンは、航空機外部の1つ以上のカメラから収集した画像の表示用である。 −1つ以上の表示スクリーンは、機内娯楽ユニットを含む。 −1つ以上の表示スクリーンは、窓があるはずの場所に位置付けられたスクリーンを含む。 −1つ以上の表示スクリーンは、下部デッキ客室の細長い側壁を含む。 −1つ以上のカメラは、光ファイバカメラを含む。 −下部デッキ客室は、下部デッキ客室側壁に沿って位置付けられた1つ以上の側面荷物入れ(bin)を含む。 −下部デッキ客室は、荷物収納場所を含む。 −荷物収納場所は、複数の収納棚を含む。 −下部デッキ客室は、乗務員休憩場所を含む。 −下部デッキ客室は、下部デッキ構造の強化に役立つ1つ以上のモニュメント(monument)を含む。 −下部デッキ客室は、エネルギー吸収特性を有する座席を含む。

無論、本発明の異なる機構、代替手段及び/又は実施形態は、他と不適合でない、または相互に排他的でない範囲で、多様な配置で互いに組み合わせることができる。

例示目的の実施形態を含む以下の詳細な記載を、限定されない例として提示される図面を参照しながら読むことによって、本発明がより良く理解され、他の機構及び優位性が明らかになるであろう。これらの限定されない例は、本発明及び記載事項の理解を完全なものにするために使用でき、適当な場合は、その定義に寄与する。

本書に記載される実施形態に係る上部メインデッキ客室と下部デッキ客室を有する航空機の側面概略図である。

図1の航空機の一部に沿った断面図である。

下部デッキ客室の一部に沿った断面図であって、下げられたテクニカルフロアと増大された壁厚を例示する。

下部デッキ客室の一部に沿った断面図であって、1つ以上のパイプの移動可能性を例示する。

下部デッキ客室の1つの可能なレイアウトの上面図である。

上部メインデッキ客室の1つの可能なレイアウトの上面図である。

下部デッキ客室の別の可能なレイアウトの上面図であって、乗務員休憩場所を例示する。

下部デッキ客室の前部を示し、前側の階段を例示する。

下部デッキ客室の後部を示し、後側の階段を例示する。

下部デッキ客室の別の可能なレイアウトの上面図であって、内側に向いた座席を例示する。

上部メインデッキ客室と下部デッキ客室の座席レイアウトの断面図である。

上部メインデッキ客室と下部デッキ客室の別の座席レイアウトの断面図である。

上部メインデッキ客室と下部デッキ客室の別の座席レイアウトの断面図である。

上部メインデッキ客室と下部デッキ客室の別の座席レイアウトの断面図である。

下部デッキ客室の別の可能なレイアウトの上面図であって、荷物収納場所を例示する。

図15Aの荷物収納場所の拡大図である。

ギャレーと、1つ以上の手押しカート(trolley)を航空機に積み込むための貨物積み込みドアとを含む部分に沿った下部デッキ客室の断面図である。

カメラを使用して航空機外部の画像を下部デッキ客室内に位置付けられたスクリーンに映す一実施形態を例示する断面図である。

多様な窓代替選択肢が例示された下部デッキ客室の斜視図である。

図面上では、異なる実施形態に共通する構造要素及び/又は機能要素が同じ参照符号を有し得ることに注意すべきである。したがって、特段に記載されない限り、これらの要素は、同一の構造、寸法、および材料特性を有する。

既存の民間航空機は、一般的に、乗客用客室(メインデッキ客室又は上部デッキ客室)と、通常下部デッキの一部である少なくとも1つの貨物領域とを含む。貨物領域又は下部デッキの部分(一部)は、未使用になることが多い。したがって、本開示は、搭乗券を持った乗客が使用することのできる下部デッキを提供する。そのため、本発明の実施形態は、乗客用座席のみならず、1つ以上のギャレー又はケータリング(catering)選択肢、1つ以上の化粧室、及びメインデッキ客室乗客に提供されるその他設備も含む下部デッキ客室を提供する。下部デッキ客室は、また、空調、適切な安全機構、出口用扉、インターネット接続(有線又は無線)、及び乗客娯楽選択肢/スクリーンを備え得る。

全般的な目標は、下部デッキ客室での乗客の体験が、上部デッキ客室での乗客の体験と同様になることである。例えば、飲み物サービスとその他のケータリング機能を、下部デッキ客室ギャレーから届け得る。さらに、あるいはその代わりに、下部デッキ客室に1つ以上の自動販売機を設置してケータリング機能を提供することが可能である。また、1つ以上の専用下部デッキ客室化粧室も設置し得る。

本開示を曖昧にする又は過度に複雑にすることを避けるために、航空機に一般的に関連する公知の構造及びシステムの詳細は、以下の開示では概説されない。「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、必ずしも同じ実施形態を指しておらず、また、それらは、他の実施形態と相互排他的ではない。記載されるいくつかの機構は、ある実施形態によって示され得るが、他の実施形態では示されないかもしれない。記載される各種機構及び実施形態は、旅客機の嗜好性と多様な航空機ニーズに応じて、互いに組み合わせ得る。

図1に示されるように、航空機胴体10には、メインデッキ客室12(又は上部デッキ客室12)と、下部デッキ客室14とが設けられ得る。いくつかの実施形態では、メインデッキ客室12は、概して、航空機翼16の上方に位置付けられ、下部デッキ客室14は、概して、航空機翼16の下方に位置付けられる。航空機翼16は、「水平翼面」を有するといわれ、「水平翼面」は一般に、胴体10を(メインデッキ客室を収容する)上部と(下部デッキ客室を収容する)下部とに水平に分ける。下部デッキ客室14は、更に、前部18及び/又は後部20に分けられ得る。これは、一般に、航空機下部デッキの中央部分100は、翼中心部及び/又は着陸装置格納部用に設計されるためである。また、そこがメインデッキ客室12の下方に設けられる1つ以上の貨物領域部22となることも可能である。

図2に示されるように、メインデッキ客室12の床は、下部デッキ客室14の天井24としても機能する仕切り構造体24を形成する。この構造体は、仕切り床24とも称される。仕切り床24は、水平翼面にほぼ沿って位置付けられ得る。

メインデッキ客室12には、窓を有する伝統的な乗客壁26、及び頭上の乗客用荷物入れ(compartment)28が設けられている。また、下部デッキ客室14には、以下に記載するように改変され得る乗客壁26が設けられ得る。

下部デッキ客室14に窓を設けることに関する様々な課題のために、以下に記載するように、窓に代わる選択肢を提供することができる。頭上の乗客用荷物入れ28のスペースが下部デッキ客室14では制限され得るので、以下に更に記載するように、側面乗客用荷物入れ(bin)30を設けてもよい。

高さを下げたテクニカルフロア: 下部デッキ客室14には、また、下部デッキ客室床32(若しくはデッキ乗客床32)が設けられ得る。下部デッキ客室床32は、テクニカルフロア、即ち、乗客が上に立つ床である。下部デッキ客室の乗客と乗務員に向上したスペースを提供するために、乗客が上に立つ下部デッキ客室床32として機能する貨物領域テクニカルフロアを、図3に示すように低くして(下げて)よい。下部デッキ客室床32をこのように低くすると、下部デッキ客室14の客室配置は、ほとんどの乗客の身長に対応することができる。これによって、下部デッキ客室14の仕切り構造体24が許容できる高さとなることができるので、乗客は窮屈な思いをしない。これは、また、乗務員がケータリングや免税販売などのような機内サービスを快適な方法で行えるようにするのに役立つ。

特定の例では、下部デッキ客室14の下部デッキ客室床32と、実際はメインデッキ客室12のテクニカルフロアによって形成される下部デッキ客室14の仕切り床/天井24との間の距離は、約78インチであってよい。下部デッキ客室床32と胴体内部湾曲面34(航空機胴体10の実際の内部湾曲面34であって、「胴体腹部34」といわれることが多い)との間の距離は、下部デッキ客室において所望される客室スペースを可能にすることのできる如何なる適切な寸法でもよい。

図3に示されるように、下部デッキ客室14の下部デッキ客室床32の少なくとも一部は、対応する桁、支柱、又はその他の支持構造物と共に、距離「t」だけ押し下げ又は下げられ得る。下部デッキ客室14の既存の下部デッキ客室床32全体を下げると、望ましい下部デッキ客室天井高さをもたらす。一例では、距離「t」だけ既存の床全体を下げると、多様な乗客用座席構造に使用することのできる十分に平坦な床をもたらす。別の例では、客室床32は、通路部38に沿って下げられるのみであってよい。この例は、図2及び図11に例示されている。床全体か通路部のみかを問わず、このように下部デッキ客室床32を下げると、図4に例示されるように、1つ以上のパイプ90又はその他の構造物を再配置する必要があるであろう。再配置は単に選択自由のものである。図4は、特定の設計に基づいて実施する必要がある場合に、パイプ90を下部デッキ客室14の側壁空間36へ再配置することを示す。

特定の実施形態では、下部デッキ客室床32全体を胴体内部湾曲面34に一層近くなるように下げ得る。これは、支持要素及び/又は代替形状をした桁及び支柱を使用して行い得る。床の高さを下げることについての様々な実施形態は、少なくとも米国特許第5,752,673号に記載されている。

また、下部デッキ客室14に付加的な壁厚37を設けることも可能である。一例が図3及び図4に示されている。この付加的な壁厚37は、下部デッキ客室壁に沿って運ばれ、下部デッキ客室14の側壁空間36内に運ばれ、又は航空機の下部に沿って運ばれ得る、未承認であり、腐食性があり及び/又は危険である液体に、乗客が接触するのを防ぐために設けられ得る。これは、航空機の外板と下部デッキ客室14との間を封じ(シールし)、要求される安全レベルを確立するのに役立つことができる。壁厚37の空間は、一例では、約0.1インチ(約0.25cm)から約10インチ(約25.4cm)の範囲であり得る。他の例では、壁厚37は、約0.4インチ(約1.02cm)から約5インチ(約12.7cm)であり得る。更に特定の例では、約0.5インチ(約1.27cm)から約2インチ(約5.08cm)の範囲であり得、特定の例では、壁厚37は約1インチ(約2.54cm)であり得る。

付加的な壁厚37を設けることは、密閉された客室を提供するのに役立ち得、該密閉された客室はノイズ低減の支援になり得る。防音タイプの材料のようなノイズの吸収を助ける追加材料を加えることが可能である。また、ノイズとは反対の位相を生成することのできる入力/出力を有する電子システムのような能動型のノイズ低減を提供するシステムを設けることも可能である。例えば、ノイズを受けるマイク入力と、そのノイズを反対の位相に変換して客室内へ送り返す出力スピーカーがあり得る。

上部デッキ客室から下部デッキ客室への通路: さらに、本開示では、下部デッキ客室14の両端に階段を設け得る。これは、乗降の容易さや予期せぬ避難の場合の向上した流れを可能にする。図1に示されるように、下部デッキ客室14の少なくとも1つの別個の前部18と後部20とが設けられ得る。別々の前部18と後部20は中央部100を収容するために設ける必要があり、中央部100は、中央翼胴体と、空調ユニット及びその他航空機航行技術を収容し得る1つ以上の区画室とを含み得る。別々の前部18と後部20とは、また、胴体の他の下部領域において貨物収納を可能にするためにも設けられ得る。

一例では、前部18のみが設けられ得る。別の例では、後部20のみが設けられ得る。更なる例では、前部18と後部20の両方が設けられ得る。更に代替の例では、いくつかの前部18及び/又はいくつかの後部20があり得る。前部18と後部20のそれぞれは、本書に記載される機構を有する別個の下部デッキ客室14とみなされ得る。図5は、前部18の一例を示すが、同様の構造を後部20が備え得ると理解されるべきである。

下部デッキ客室を設けるこれまでの試みのいくつかでは、中央階段を設けた。しかし、この構造はスペース又は安全性の面で最適ではないことを本発明者は見出した。したがって、本書に記載される実施形態では、メインデッキ客室12と下部デッキ客室14との間の2つの通路50を各下部デッキ客室14に設ける。2つの通路は、乗客用座席領域110の両端に位置付け得る。

図5に示されるように、これらの通路50を階段52とすることができる。大抵の連邦規則によると、階段52は、完全に真っすぐな経路部分58、又は方向が変わるごとに踊り場60によって分けられた1つ以上の真っすぐな経路部分58のいずれかを含み得る。スペースを考慮すると、1つ以上の踊り場60によって分けられた1つ以上の真っすぐな経路部分58の方がスペースをより良く生かすことができ、かつ構造内の乗客用座席のロスがより少なくて済むことが期待される。しかし、真っすぐな経路部分58のみも、使用することができ、本開示の範囲内とみなされることが理解されるべきである。加えて、通路50は階段52として記載され示されているが、通路50をドロップダウン梯子のついた昇降口(hatch)、又はメインデッキ客室12と下部デッキ客室14との間の移動を可能にする他の任意の方法として設けることができることが理解されるべきである。

図6は、メインデッキ客室12の1つの可能なレイアウトを例示し、通路50を設けるために、乗客用座席の喪失(ロス)が発生し得る場所を示す。この例では、通路50は階段52として設けられている。特定の例として、階段52の1つはビジネスクラスに設置されてよく、階段52の1つはエコノミークラスに設置されてよく、その両方が前部18の役に立つ。図7は、対応する下部デッキ客室14の、1つの可能なレイアウトを例示し、通路50が設置され得る場所を示す。

1つ以上の階段52を存在させるには、通路50を設けるために、メインデッキ客室12の乗客用座席又は他の機構をなくすことが必要である。下部デッキ客室14の前端54の近くに、図8に階段52として例示される第1通路50aを設け、下部デッキ客室14の後ろ端56の近くに、図9に階段52として例示される第2通路50bを設けることによって、メインデッキ客室12と下部デッキ客室14との間、特にメインデッキ客室と下部デッキ客室14の前部18及び/又は後部20との間の移動を合理化できる。これは、乗降に、及びおそらく一層重要なことには水上避難の際に、特に有益となり得る。以下に記載されるように、水上避難の場合には、下部デッキ客室14の1つ以上の出口用扉が喫水線(waterline)より下になり使用できないことがあり得る。

出口用扉と緊急避難: 航空機に許可される乗客数は、設置された非常口の数、種類、及び場所に左右される。扉寸法が異なると、異なる数の乗客に対応することができる。例えば、Aタイプの扉は、110人の乗客に対応でき、Bタイプの扉は、75人の乗客に対応でき、Cタイプの扉は、55人の乗客に対応できる。

もし、例えば、下部デッキ客室14が110人の乗客を保持するように設計されているならば、下部デッキ客室14の乗客が利用可能なAタイプの扉1つ又はCタイプの扉2つなどを設ける必要があるであろう。一例では、下部デッキ客室14には、下部デッキ客室14に座ることができる乗客全数を下部デッキ客室14自体から避難させることが可能な十分な非常口が設けられている。

しかし、下部デッキ客室14は、おそらく航空機の喫水線62(図1において水平翼面と略同じレベルに示されている)より下にあるため、着水/水上避難では、下部デッキ客室14の乗客は、下部デッキ客室14からではなく、メインデッキ客室12の非常口から避難するよう命じるであろう。この例では、メインデッキ客室には、下部デッキ客室14において収容し得る乗客数を含め搭乗している全ての乗客に対応できる十分な非常口扉64を設置し得る。上述したように、下部デッキ客室14からメインデッキ客室12への通路50は、乗客が迅速に出入できるのに十分な大きさと寸法であり得る。

座席レイアウト: ファーストクラス部分、ビジネスクラス部分が提供され、及び/又はエコノミークラス座席部が提供され得る。これらの選択肢の如何なる組み合わせも可能である。さらに、下部デッキ客室14は、独立型の客室として設計することができるので、別のクラスを提供することができる。高度な快適さ、高密度、又は高い柔軟性のような異なる形態を設定し得る。これらの形態内では、異なる座席や異なる座席の向きを用いてもよい。例えば、座席は、図5から図9に示されるように前方に向いていてもよいし、後方に向いてもよいし、又は図10に示されるように航空機の内部に向いていてもよい。図5から図15は、随意な座席設計を示す。

例えば、図11に示されるように、座席レイアウトは、下部デッキ客室14における横5列構造を含み得る。下部デッキ客室14の通路の一方側に座席が3つあり、他方側に座席が2つあり得る。図12は、下部デッキ客室14の通路の一方側に座席が2つあり、他方側に座席が2つある横4列構造を例示する。図13は、単一の座席が中央に1列あり、内側を向いた座席が両側に1列ずつあるアウトボード(outboard)構造を例示する。これは、図10の概略図にも例示されている。図14は、3つの隣接した座席を有する横3列構造を例示する。これらの構造と他の構造との組み合わせは、可能であり、本開示の範囲内とみなされることが理解されるべきである。

下部デッキ客室14をモジュール方式で設けることは可能であり、その場合、航空機の座席容量を必要な場合に増大することができる。ただし、積荷すべき貨物領域を対応して低減することができる場合に限る。下部デッキ客室14を所望するように再構成し得るように、1つ以上の座席用レールを取り外し可能にすることができる。

乗務員休憩場所: 特定の実施形態として、図7は、下部デッキ客室14に、随意な乗務員休憩場所84も設け得ることを例示する。乗務員休憩場所84は、少なくとも1つの寝台(bunk)及び/又は少なくとも1つの座席を有し得る。この乗務員休憩場所84には、メインデッキ客室12への昇降口を設けてもよく、この昇降口は、下部デッキ客室14からの可能で付加的な非常口を提供することができる。さらに、乗務員休憩場所はまた、下部デッキ客室14と乗務員休憩場所84との間の直接アクセス手段となるドアを有し得る。例示される実施形態では、乗務員休憩場所84は、概して、乗客用座席部110の後方で、かつ通路50の後方に位置付けられている。しかし、乗務員休憩場所84は、他の場所に位置付けられてもよいことが理解されるべきである。

荷物収納: 下部デッキ客室14に関連するスペース課題の1つは、収納に関する。下部デッキ客室14において適切な客室高さと広々とした感じを提供したいという願いから、付加的な収納選択肢を提供するのが望ましいであろう。これらの付加的な収納選択肢は、メインデッキ客室12に設けられる典型的な荷物入れである頭上荷物入れ(compartment)28に加えて、あるいはその代わりとなり得る。したがって、多様な荷物収納選択肢が開示される。

一例では、下部収納荷物入れ(bin)30を設置することができる。例が図12及び図14に示されている。下部収納荷物入れ30は、図12に示されるように、特定横列の外側座席40に隣接して位置付けられ得る。下部収納荷物入れ30は、図14に示されるように、通路38に隣接して位置付けられてもよい。下部収納荷物入れ30は、開閉自在な蓋42を有する固定された下部収納荷物入れ30として設けてもよい。下部収納荷物入れ30は、胴体に固定されて構造上の支持をもたらし得る。例えば、収納荷物入れ30を胴体10の一部につなぐ1つ以上の据付用金具(bracket)を設けてもよい。他の実施形態では、1つ以上の下部収納荷物入れ30を固定するように構成することのできる1つ以上の座席用レールを設置し得る。他の実施形態では、下部収納荷物入れ30を天井(仕切り床24)と胴体10との間の1つ以上の硬質な個所を介して固定し得る。下部収納荷物入れ30に含まれるはずの荷重を支え、補強することのできる部分を床に設けるのが、概して有益である。下部収納荷物入れ30は、衝撃荷重に耐えることのできる構造を有し得る。

一例では、下部収納荷物入れ30は、更に側壁80に固定され得る。この側壁80は、多くの例で所望され得る付加的な壁厚37を加えるのに役立つために設置し得る。下部収納荷物入れ30と側壁80は、互いに固定されて、付加的な客室密封機能をもたらし得る。

下部収納荷物入れ30は、航空機胴体10の湾曲側面44を有効利用するのに役立ち得る。図示されるように、下部収納荷物入れ30は、湾曲側面44を下部収納荷物入れ30が有効利用することを可能にすることのできる角度のついた後部46を有し得る。下部収納荷物入れ30は、伝統的な頭上荷物入れに加えて、あるいはその代わりとして使用し得る。複数の仕切板と複数の蓋を有する1つの細長い荷物入れ基部が複数の座席として働くことができるように、ある距離に亘る下部収納荷物入れ30が設置され得る。あるいは、1つの荷物入れが横一列に役立つように、個別の下部収納荷物入れ30を複数個設置してもよい。

図12から図14に示されるように、シートベルトサインを表示するとともに、酸素マスクを保持する頭上要素48を設けることは可能である。これらの頭上要素48は、伝統的な頭上荷物入れほど乗客スペースに侵入せず、安全のためにも必要である。

乗客荷物に対する付加的又は代替の解決策は、荷物収納場所70、好ましくは別個の客室荷物収納場所70を設けることである。図15A及び図15Bに示されるように、この客室荷物収納場所70は、1つの壁に沿って位置付けられて、複数の収納棚72が設置され得る。各々の収納棚72は、乗客の機内持ち込み手荷物を保持する大きさと寸法であり得る。概して類似した寸法を有するように示されているが、より大きい収納棚72とより小さい収納棚72とを組み合わせて設けることも可能である。収納棚72は、開口しているが、各収納棚及び/又は各列の収納棚に開閉扉(見易さのために不図示)を設けることは一般に予定されている。図15Bはまた、乗客に向上した快適さと楽しみを提供するのに役立ち得る随意な自動販売機74を示す。

乗客の快適さ: 下部デッキ客室14には、専用の下部デッキギャレー92を設置し得る。他の実施形態では、ケータリングサービス用の手押しカート94は、メインデッキ客室12を下部デッキ客室14に接続することができる手押しカート昇降機を介して下部デッキギャリ—92に届けられ得る。例えば、手押しカート94は、飲み物と食事のサービスが下部デッキ客室14に届けられ得るように、メインデッキ客室12と下部デッキ客室14との間を昇降し得る。

一例が図9に示されており、手押しカート94が手押しカート収納場所98に示されている。これらの手押しカート94は、メインデッキ客室12まで昇降され得るか、それとも下部デッキギャリ—92に位置付けられ得る。例えば、下部デッキ客室14専用の手押しカート94を設けることは可能である。これらの手押しカート94は、専用の下部デッキギャリ—92に関連付けられていてもいなくてもよい。図16に示されるように、これらの手押しカート94は、既存の貨物ドア96又は既存の貨物ドア内の扉を介して積み込まれ得る。

それに加えて、あるいはその代わりに、下部デッキ客室14においてケータリング機能を提供するために、1つ以上の自動販売機74を設けることは可能である。乗客は、メインデッキ客室12まで移動する必要なく、下部デッキ客室14で消費するための各種飲み物及び/又はスナック若しくは食事品目を選ぶことができ得る。

窓代替: さらに、下部デッキ客室14には、航空機の外を直接見る物理的な窓はない。これに対応するために、航空機の外からの画像を表示するように構成された1つ以上のスクリーンを設けることは可能である。これは、乗客の快適さと娯楽のためのみならず、飛行機酔いの防止に役立ち、乗客の24時間周期のリズムのリセットに役立ち、かつ航空機の現在位置についての情報を提供するために行われ得る。

スクリーンは、乗客の旅行中、外界からのライブビューを提供し得る。提供されるライブビューは、航空機自体の移動に一致した動きを示唆する。提供されるライブビューは、乗客の視線方向に対応するのが望ましいであろう。例えば、ライブビューが側壁上に提供されるならば、航空機のその側面からの画像が提供され得る。例えば、ライブビューが前壁上に提供されるならば、航空機の前部からの画像が提供され得るなどである。

一例では、デジタル窓をスクリーン104上に映す1つ以上のカメラ102が設置され得る。スクリーン104は、メインデッキ客室12では窓「W」が位置付けられている場所に航空機壁に沿って設けられ得る。これは、航空機の外部を表す画像により、「窓」の感じをもたらし得る。窓表示を乗客に身近に感じさせることのできる、又は降ろすことのできる日除けすら設け得る。

そして、別の例では、図18に示されるように、スクリーン104は、機内娯楽(IFE)ユニットが設けられる場所に設置され得る。例えば、乗客は、映画を見る、音楽を聞く、飛行情報を見る、又はデジタル窓映写を前部スクリーンに映すことを含む選択肢から選択することができるであろう。

別の例では、航空機の内壁106が、機外視野全体を表示することのできる細長いスクリーンとなり得る。一例が例9及び例18に示されている。これらの図では、ライブビューは、航空機胴体10の内壁106上に映して提供される。また、所望されるライブビューを提供するために、下部デッキ客室14の壁、床、及び/又は天井を使用することも可能である。

別の例では、乗客のスマートフォン、タブレット、ラップトップ及び/又はウェアラブルデバイスなどの非一体型デバイスを使用して、所望されるライブビューを映し得る。例えば、ユーザーは、自分のデバイスにライブビューをストリーミング配信させるアプリケーションをデバイスにダウンロードすることが可能であり得る。

一例では、画像は、航空機の外に位置付けられた1つ以上のカメラ102が捉えて、そのカメラ102から映され得る。既存及び/又は新規搭載されたカメラがライブビューを捉えるために使用され得る。新規搭載カメラは、飛行中の引き摺り(drag)を最小限に抑えるように搭載し得る。例えば、カメラシステムは、航空機外板と同一面になるように設置してもよい。別の例では、回収された画像が、下部デッキ客室14の1つ以上のスクリーンに表示され得るように、航空機外板上の1つ以上の場所に沿って、又は航空機外板を貫通して延在するように設置された1つ以上のカメラが画像を提供してもよい。特定の例では、光ファイバカメラが使用され得る。発光ダイオード(LED)、アクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)、有機EL(OLED)、スマートテキスタイル(smart textile)などの技術、及び/又は下部デッキ客室14内にライブビュー画像を提供することのできるその他の任意の技術は、本開示の範囲内とみなされる。

窓代替システムを、航空機から独立した電源を用いるように自律式にすることは可能である。

安全性: 一例では、下部デッキ客室14には、連邦航空局(FAA)又はその他規制機関が求める下部デッキ客室14独自の携帯酸素ボンベ、消火器、救急箱、及びその他安全用品を備え得る。

一般的に、下部デッキ客室14内には窓がないため、非常灯は、自律し独立した電源システムによって供給され得る。

既存の貨物ドア96内に1つ以上の乗客用非常口扉を設置すると、さらなる安全性を乗客に提供し得る。

1つ以上の頭上昇降口を設置すると、さらなる出口ルートも提供することができる。

下部デッキ客室14を、特に、陸上走行、離陸、及び着陸(TTL)時に乗客用座席に使用することを可能にするために、航空機は1つ以上のエネルギー吸収構造を備え得る。そのようなエネルギー吸収構造は、衝突又は緊急着陸の際にエネルギー吸収をもたらし、下部デッキ客室14の乗客を守る。エネルギー吸収構造は、いくつかの異なる方法で実現し得る。例えば、エネルギー吸収座席を設け得る。この座席は、1つ以上の衝撃吸収機構を有するように設計され得る。別の例では、エネルギー吸収構造は、航空機胴体10に取り付けられる外部構造体として設け得る。このようなエネルギー吸収構造は、潰れる支柱の骨組みとして設け得る。それらは、エネルギー吸収発泡体コアとして設け得る。それらは、航空機の外板内に位置付けられたエネルギー吸収構造として設け得る。衝撃吸収帯として作用する多様な変形構造が利用でき、このような変形構造は、安全対策として下部デッキ客室の下方の胴体外板上に配置され得る。また、1つ以上のエネルギー吸収構造を、設置する通路/階段に組み込むことも可能である。また、1つ以上のエネルギー吸収構造を、化粧室やギャレーのような下部デッキ客室のモニュメント(monument)、又は他のモニュメントに組み込むことも可能である。また、1つ以上のモニュメントが下部デッキ構造の補強に役立つことも可能である。

また、衝突の際に階段及び/又はモニュメントが機能し続けて避難を可能にすることを確実にする役割を果たす通路/階段を補強することも可能である。例えば、階段及び/又はモニュメントを、航空機の胴体と、さもなければ航空機の構造上の一部として一体的に形成してもよい。全般的な目標は、乗客の避難の可能性を維持することを確実にすることである。

以上に記載し且つ図面に示した構造及び方法に対する変更及び改変、追加及び削除、上記に記載した異なる実施形態の組み合せは、本開示の範囲若しくは主旨、又は以下の特許請求の範囲から逸脱することなく行われ得る。