構造体の設計方法及び構造体

申请号 JP2016026262 申请日 2016-02-15 公开(公告)号 JP2017146673A 公开(公告)日 2017-08-24
申请人 三菱重工業株式会社; 株式会社クラレ; 发明人 加茂 宗太; ▲高▼木 清嘉; 阿部 俊夫; 清水 隆之; 梓澤 直人; 志谷 徹; 中村 卓志; 楠戸 一正; 小林 利章;
摘要 【課題】複合材からなる制振材を、垂直 尾翼 等の構造体に好適に設置できる構造体の設計方法等を提供する。 【解決手段】ポリアリレート系繊維と樹脂とを含む複合材を制振材として垂直尾翼等の構造体に設置するための構造体の設計方法であって、複数の分割設置領域に複合材を設置したときの設計性能を解析する工程S3と、解析結果に基づき分割設置領域を選定する工程S4と、構造体の厚み方向における複合材の積層 位置 を異ならせて設計性能を解析する工程S6と、解析結果に基づき積層位置を選定する工程S7と、複合材に含まれるポリアリレート系繊維の繊維方向を異ならせて設計性能を解析する工程S9と、解析結果に基づき繊維方向を選定する工程S10と、各選定工程で選定された設計パラメータから導出される構造体の設計性能が、構造体に要求される要求性能を満足するかを判定する工程S12とを備える。 【選択図】図3
权利要求

繊維と樹脂とを含む複合材を制振材として構造体本体に設置するために行われる構造体の設計方法であって、 前記構造体に要求される要求性能が予め設定されており、 前記複合材を設置可能な前記構造体の複合材設置領域を分割した複数の分割設置領域の少なくとも一つの領域に、前記複合材を設置したときの前記構造体の設計性能を解析する第1設計性能解析工程と、 前記第1設計性能解析工程の解析結果に基づいて、前記複合材を設置する前記分割設置領域を選定する分割設置領域選定工程と、 前記構造体の厚み方向における前記複合材の積層位置を異ならせて前記複合材を設置したときの前記構造体の設計性能を解析する第2設計性能解析工程と、 前記第2設計性能解析工程の解析結果に基づいて、前記複合材を設置する前記積層位置を選定する積層位置選定工程と、 前記複合材に含まれる前記繊維の繊維方向を異ならせて前記複合材を設置したときの前記構造体の設計性能を解析する第3設計性能解析工程と、 前記第3設計性能解析工程の解析結果に基づいて、前記繊維の繊維方向を選定する繊維方向選定工程と、 前記分割設置領域選定工程において選定された前記分割設置領域と、前記積層位置選定工程において選定された前記積層位置と、前記繊維方向選定工程により選定された繊維方向とを少なくとも含む設計パラメータから導出される前記構造体の設計性能が、前記要求性能を満足するか否かを判定する性能判定工程と、を備えることを特徴とする構造体の設計方法。前記制振材は、前記繊維として、ポリアリレート系繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造体の設計方法。前記第2設計性能解析工程では、前記分割設置領域選定工程により選定された前記分割設置領域において、前記複合材の前記積層位置を異ならせており、 前記第3設計性能解析工程では、前記分割設置領域選定工程により選定された前記分割設置領域であって、且つ、前記積層位置選定工程において選定された前記積層位置において、前記繊維の繊維方向を異ならせていることを特徴とする請求項1または2に記載の構造体の設計方法。前記積層位置は、 前記構造体を構成する構造部材の外表面上の位置である外表面積層位置と、 前記構造部材の内部の位置である内部積層位置と、を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体の設計方法。前記要求性能には、複数の要求性能パラメータが含まれており、 複数の前記要求性能パラメータは、前記構造体の強度、前記構造体の剛性、及び前記構造体の振動に対する減衰率の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の構造体の設計方法。第1の複合材を用いて構成される構造体本体と、 前記構造体本体に設置され、繊維と樹脂とを含む第2の複合材と、を備え、 前記第2の複合材は、制振材として、前記第1の複合材の内部に介在して設置されることを特徴とする構造体。前記第2の複合材は、前記第1の複合材の厚み方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、 複数の前記第2の複合材の前記繊維の繊維方向は、相互に交差するように設置されることを特徴とする請求項6に記載の構造体。第1の複合材を用いて構成される構造体本体と、 前記構造体本体に設置され、繊維と樹脂とを含む第2の複合材と、を備え、 前記第2の複合材は、制振材として、前記第1の複合材の外表面に設置されることを特徴とする構造体。前記制振材は、前記繊維として、ポリアリレート系繊維を含むことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の構造体。前記構造体は、翼体であり、 前記第2の複合材に含まれる前記繊維の繊維方向は、前記翼体の翼長方向におけるベクトルが長く、前記翼長方向に直交する翼幅方向におけるベクトルが短いことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の構造体。

说明书全文

本発明は、複合材が設置される構造体の設計方法及び構造体に関するものである。

従来、放熱特性と剛性とを兼ね備えるべく、繊維強化樹脂部材と金属部材とを接合した複合構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。

特開2008−230237号公報

ところで、構造体としては、例えば、航空機の機体があり、機体には、気流の乱れによって振動が発生する。機体に振動が発生すると、振動する部位に負荷が与えられることから、負荷が与えられる部位の剛性を高くすべく、剛性を高くする部位の厚みを厚くする必要がある。しかしながら、厚みを厚くすると、機体重量が増加してしまう。このため、機体に発生する振動を抑制するために、機体に制振材を設置することが考えられている。制振材としては、例えば、ポリアリレート系繊維と樹脂とを含む複合材がある。ここで、複合材からなる制振材を、機体等の構造体に設置する場合、構造体に要求される要求性能を満たす必要がある一方で、構造体に制振材を過剰に設置すると、機体重量が増加する可能性がある。

そこで、本発明は、複合材からなる制振材を、構造体に好適に設置することができる構造体の設計方法及び構造体を提供することを課題とする。

本発明の構造体の設計方法は、繊維と樹脂とを含む複合材を制振材として構造体本体に設置するために行われる構造体の設計方法であって、前記構造体に要求される要求性能が予め設定されており、前記複合材を設置可能な前記構造体の複合材設置領域を分割した複数の分割設置領域の少なくとも一つの領域に、前記複合材を設置したときの前記構造体の設計性能を解析する第1設計性能解析工程と、前記第1設計性能解析工程の解析結果に基づいて、前記複合材を設置する前記分割設置領域を選定する分割設置領域選定工程と、前記構造体の厚み方向における前記複合材の積層位置を異ならせて前記複合材を設置したときの前記構造体の設計性能を解析する第2設計性能解析工程と、前記第2設計性能解析工程の解析結果に基づいて、前記複合材を設置する前記積層位置を選定する積層位置選定工程と、前記複合材に含まれる前記繊維の繊維方向を異ならせて前記複合材を設置したときの前記構造体の設計性能を解析する第3設計性能解析工程と、前記第3設計性能解析工程の解析結果に基づいて、前記繊維の繊維方向を選定する繊維方向選定工程と、前記分割設置領域選定工程において選定された前記分割設置領域と、前記積層位置選定工程において選定された前記積層位置と、前記繊維方向選定工程により選定された繊維方向とを少なくとも含む設計パラメータから導出される前記構造体の設計性能が、前記要求性能を満足するか否かを判定する性能判定工程と、を備えることを特徴とする。

この構成によれば、要求性能を満足する、分割設置領域、積層位置及び繊維方向を選定することができるため、構造体に複合材(制振材)を好適に設置することができる。このため、構造体の振動を複合材によって好適に減衰させることができ、構造体の制振性能を高めることができるため、構造体の振動による疲労を低減することができ、構造体の耐用寿命を長くすることができる。また、複合材を、構造体に過剰に設置することを抑制できることから、構造体の重量増加を抑制することができる。なお、分割設置領域選定工程、積層位置選定工程、及び繊維方向選定工程は、その順序が入れ替え可能である。

また、前記制振材は、前記繊維として、ポリアリレート系繊維を含むことが、好ましい。

この構成によれば、ポリアリレート系繊維を用いることで、高強度・高弾性を有する制振材とすることができるため、振動に対する減衰特性の向上を図ることができる。

また、前記第2設計性能解析工程では、前記分割設置領域選定工程により選定された前記分割設置領域において、前記複合材の前記積層位置を異ならせており、前記第3設計性能解析工程では、前記分割設置領域選定工程により選定された前記分割設置領域であって、且つ、前記積層位置選定工程において選定された前記積層位置において、前記繊維の繊維方向を異ならせていることが、好ましい。

この構成によれば、分割設置領域選定工程、積層位置選定工程、繊維方向選定工程を順に行うことで、設計感度の高い方から、設計パラメータを選定することができる。

また、前記積層位置は、前記構造体を構成する構造部材の外表面上の位置である外表面積層位置と、前記構造部材の内部の位置である内部積層位置と、を含むことが、好ましい。

この構成によれば、複合材を構造部材の外表面に設けた場合の設計性能を評価したり、複合材を構造部材の内部に設けた場合の設計性能を評価したりすることができる。これにより、要求性能を満足する場合、例えば、既設の構造部材の外表面に複合材を貼り合わせたり、構造部材の内部に複合材を積層したりすることができる。

また、前記要求性能には、複数の要求性能パラメータが含まれており、複数の前記要求性能パラメータは、前記構造体の強度、前記構造体の剛性、及び前記構造体の振動に対する減衰率の少なくともいずれかを含むことが、好ましい。

この構成によれば、要求性能を満足する、構造体の強度、構造体の剛性、及び構造体の振動に対する減衰率とすることができる。なお、これらの要求性能パラメータは、分割設置領域選定工程、積層位置選定工程、繊維方向選定工程において選定される設計パラメータに対する感度が大きいパラメータとなっている。

本発明の構造体は、第1の複合材を用いて構成される構造体本体と、前記構造体本体に設置され、繊維と樹脂とを含む第2の複合材と、を備え、前記第2の複合材は、制振材として、前記第1の複合材の内部に介在して設置されることを特徴とする。

この構成によれば、制振材となる第2の複合材を、第1の複合材の内部に介在させることで、構造体本体と第2の複合材とが一体となる構造体を成形することができる。このため、制振性能を有する構造体とすることができる。

また、前記第2の複合材は、前記第1の複合材の厚み方向に所定の間隔を空けて複数設けられ、複数の前記第2の複合材の前記繊維の繊維方向は、相互に交差するように設置されることが、好ましい。

この構成によれば、複数の第2の複合材を厚み方向に分散して配置することができるため、第1の複合材と第2の複合材との間の剛性差が大きくなることを抑制することができる。また、複数の第2の複合材の繊維方向を適宜異ならせることで、等方性または異方性の特性を調整することができる。なお、例えば、第2の複合材が2層で構成される場合、複数の第2の複合材における繊維方向を、所定の度を基準として、±45°、±60°等となるように異ならせてもよい。

本発明の他の構造体は、第1の複合材を用いて構成される構造体本体と、前記構造体本体に設置され、繊維と樹脂とを含む第2の複合材と、を備え、前記第2の複合材は、制振材として、前記第1の複合材の外表面に設置されることを特徴とする。

この構成によれば、制振材となる第2の複合材を、第1の複合材の外表面に設置させることができる。このため、既設の構造体本体に、第2の複合材を貼り合わせるという簡易な構成で、制振性能を有する構造体とすることができる。

また、前記制振材は、前記繊維として、ポリアリレート系繊維を含むことが、好ましい。

この構成によれば、ポリアリレート系繊維を用いることで、高強度・高弾性を有する制振材とすることができるため、振動に対する減衰特性の向上を図ることができる。

また、前記構造体は、翼体であり、前記第2の複合材に含まれる前記繊維の繊維方向は、前記翼体の翼長方向におけるベクトルが長く、前記翼長方向に直交する翼幅方向におけるベクトルが短いことが、好ましい。

この構成によれば、第2の複合材に含まれる繊維の繊維方向を、翼体の翼長方向に沿った方向とすることができるため、第2の複合材の制振材としての機能を、翼体に対して好適に発揮させることができる。

図1は、本実施形態に係る構造体の設計方法が適用される分解された尾翼周りの航空機の機体を示す斜視図である。

図2は、本実施形態に係る複合材を示す断面図である。

図3は、本実施形態に係る構造体の設計方法に関するフローチャートである。

図4は、本実施形態に係る翼体の複数の分割設置領域を示す説明図である。

図5は、本実施形態に係る翼体の積層位置を示す説明図である。

図6は、本実施形態に係る構造体の設計方法によって得られる解析結果を示すグラフである。

以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。

[実施形態] 本実施形態に係る構造体の設計方法は、例えば、航空機の機体等の構造体を設計するための方法である。具体的に、構造体の設計方法は、ポリアリレート系繊維と樹脂とを含む複合材を制振材として用い、この制振材を構造体本体に設置して、構造体が要求性能を満足するか否かを評価している。先ず、構造体の設計方法の説明に先立ち、構造体本体、及び構造体本体に設置される制振材としての複合材について説明する。

図1は、本実施形態に係る構造体の設計方法が適用される分解された尾翼周りの航空機の機体を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る複合材を示す断面図である。

構造体本体は、図1に示すように、航空機において振動が発生し易い尾翼等の翼体である。具体的に、航空機の機体1は、円筒形状となる胴体11と、胴体11の機尾側の上部に取り付けられる垂直尾翼12とを備えている。ここで、機体1において、機首と機尾とを結ぶ方向を全長方向とし、全長方向に直交すると共に左側と右側とを結ぶ方向を幅方向とし、全長方向及び幅方向に直交する方向と高さ方向とする。また、垂直尾翼12において、上記の高さ方向が翼長方向となっており、上記の全長方向が翼幅方向となっており、上記の幅方向が翼厚方向となっている。

垂直尾翼12は、機首側の垂直安定板14と、機尾側の方向15とを有しており、垂直安定板14は、胴体11に固定され、方向舵15は、垂直安定板14に対して幅方向に可動する。

垂直安定板14は、スパー(桁)21と、リブ(子骨)22と、スキン(外板)23とを備えている。スパー21は、翼長方向に延びて設けられ、翼幅方向に所定の間隔を空けて複数並べて設けられている。リブ22は、スパー21と直交して設けられる骨材であり、翼長方向に直交する面で切った翼断面となる所定の形状に形成されている。そして、このリブ22は、翼幅方向に延びて設けられ、翼長方向に所定の間隔を空けて複数並べて設けられている。スキン23は、その外側の面が垂直尾翼12(垂直安定板14)の外表面を構成しており、その内側の面がスパー21及びリブ22に取り付けられている。なお、方向舵15は、垂直安定板14とほぼ同様の構成であることから、説明を省略する。

このように、垂直尾翼12を構成する構造部材としては、スパー21、リブ22及びスキン23があり、この構造部材は、複合材(第1の複合材)を用いて構成されている。構造部材に用いられる複合材としては、炭素繊維と樹脂とを含む炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)である。なお、本実施形態では、構造部品を複合材により構成したが、複合材に特に限定されず、例えば、構造部品をアルミ合金等の金属材により構成してもよい。

次に、図2を参照して、構造体本体としての垂直尾翼12に設置される、制振材としての複合材(第2の複合材)30について説明する。この複合材30は、炭素繊維と樹脂とを含む炭素繊維強化プラスチックの層であるCFRP層31と、ポリアリレート系繊維と樹脂とを含むポリアリレート系繊維強化プラスチックの層であるVFRP層32とが接合された積層板となっている。

VFRP層32は、ポリアリレート系繊維として、例えば、ベクトラン(登録商標)が用いられ、樹脂としては、エポキシ系樹脂が用いられている。ベクトランを用いて形成されるVFRP(Vectran Fiber Reinforced Plastic)層32は、高強度・高弾性を有する層となっており、制振機能を有している。VFRP層32は、1プライ(1層)で構成してもよいし、2プライ以上の複数層で構成してもよく、特に限定されない。

CFRP層31は、VFRP層32よりも硬質となっており、樹脂としては、VFRP層32と同様に、エポキシ系樹脂が用いられている。なお、CFRP層31も、VFRP層32と同様に、1プライ(1層)で構成してもよいし、2プライ以上の複数層で構成してもよく、特に限定されない。

このCFRP層31及びVFRP層32のそれぞれは、積層方向において複数設けられている。つまり、複合材30は、複数(本実施形態では、例えば、2層)のVFRP層32が、複数(本実施形態では、例えば、3層)のCFRP層31の間に漉き込まれた積層構造となっており、VFRP層32が積層方向に分散して配置されている。なお、2層のVFRP層32に含まれるポリアリレート系繊維の繊維方向は、下記する設計方法において設計された繊維方向となる。

このような複合材30は、CFRP層31とVFRP層32とが一体に成形されている。つまり、硬化前の樹脂を含浸させたポリアリレート系繊維と、硬化前の樹脂を含浸させた炭素繊維とを、交互に複数積層して一体とする。そして、一体となった複数のCFRP層31と複数のVFRP層32とに対して、熱処理を行って、樹脂を熱硬化させて、複合材30を成形する。

なお、本実施形態では、複合材30として、CFRP層31とVFRP層32とを積層した積層板を適用したが、VFRP単体の複合材であってもよく、VFRPを含む複合材であれば、特に限定されない。

続いて、図3から図5を参照して、構造体本体としての垂直尾翼12に、複合材30を設置するための構造体の設計方法について説明する。図3は、本実施形態に係る構造体の設計方法に関するフローチャートである。図4は、本実施形態に係る翼体の複数の分割設置領域を示す説明図である。図5は、本実施形態に係る翼体の積層位置を示す説明図である。なお、本実施形態では、垂直尾翼12に複合材30を設置する場合について説明するが、構造体本体としては、垂直尾翼12に限定されず、いずれの構造体であってもよい。

ここで、本実施形態の構造体の設計方法では、垂直尾翼12に設置される複合材30が、垂直尾翼12の構造部材に対して、所定の位置に貼り合わせて設置する設計パターンを含んでいる。この場合、複合材30は、スキン23の外表面上に貼り合わせて設置される。また、本実施形態の構造体の設計方法では、垂直尾翼12に設置される複合材30が、垂直尾翼12の構造部材として用いる設計パターンを含んでいる。この場合、スパー21、リブ22及びスキン23の少なくとも一部が、図2に示す複合材30の構成となる。

本実施形態の構造体の設計方法は、図3に示すように、先ず、垂直尾翼12に要求される要求性能を設定する(ステップS1)。ここで、要求性能には、複数の要求性能パラメータが含まれており、複数の要求性能パラメータとしては、垂直尾翼12の強度、垂直尾翼12の剛性、及び垂直尾翼12の振動に対する減衰率を少なくとも含んでいる。これらの要求性能パラメータは、後述する複数の設計パラメータに対する感度が大きいパラメータとなっている。

ステップS1の実行後、垂直尾翼12に複合材30を設置可能な複合材設置領域E(図4参照)において、複合材30を設置する分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3が設定される(ステップS2)。ここで、図4に示すように、複合材設置領域Eは、垂直尾翼12の翼厚方向から見たときの領域であり、複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3に分割されている。なお、図4に示す複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3は、一例であり、この分割に限定されない。

複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3は、翼長方向の先端側から順に、A−1〜3を含むエリア、B−1〜3を含むエリア、及びC−1〜3を含むエリアとなるように3分割されている。また、複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3は、翼幅方向の前方側から順に、A−1〜C−1を含むエリア、A−2〜C−2を含むエリア、A−3〜C−3を含むエリアとなるように3分割されている。このため、複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3は、9つに分割されている。

そして、この複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3の少なくとも一つの領域に、複合材30の設置を設定すると、垂直尾翼12の設計性能が解析される(ステップS3:第1設計性能解析工程)。ステップS3では、ステップS2において設定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3を設計パラメータとし、この設計パラメータを入パラメータとして、FEM解析を実行することで、設計性能を導出している。なお、図4に示すように、FEM解析では、翼長方向の先端側で、且つ、翼幅方向の中央を加振点Pとしている。なお、この加振点Pの位置は、一例であり、特に限定されない。例えば、空力中心位置あたり(先端側から1/3くらい)のところを加振点Pの位置としてもよく、また、実際の振動試験の加振状態に合わせて、加振点Pを任意の位置としてもよい。また、設計パラメータとしては、垂直尾翼12の翼厚方向における複合材30の積層位置と、複合材30のポリアリレート系繊維の繊維方向とがあり、ステップS3において、積層位置及び繊維方向は、デフォルトとなる初期値が入力される。なお、デフォルトとなる積層位置は、翼厚方向の一方側の積層位置(後述する積層位置α)である。また、デフォルトとなるポリアリレート系繊維の繊維方向は、翼厚方向から見た平面視において、翼幅方向に対する角度が±45°となる方向である。そして、上記設計パラメータに基づく垂直尾翼12の解析モデルを生成し、生成した解析モデルに対して、加振点Pで振動させた場合の設計性能、すなわち、垂直尾翼12の強度、垂直尾翼12の剛性、及び垂直尾翼12の振動に対する減衰率を含む複数の設計性能パラメータとして導出する。

ここで、ステップS2及びステップS3では、複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3の設定を変えながら、設計性能を導出している。具体的に、ステップS2では、先ず、A−1〜3を含むエリア、B−1〜3を含むエリア、及びC−1〜3を含むエリア、全て含むエリアを複数の分割設置領域としてそれぞれ設定する。そして、ステップS3において、各エリアの設計性能を導出し、最も高い設計性能となるエリアを選定する。例えば、選定したエリアが、C−1〜3を含むエリアであれば、ステップS2では、C−1〜3を複数の分割設置領域としてそれぞれ設定する。そして、再び、ステップS3において、C−1〜3の設計性能を導出する。

なお、ステップS2からステップS4における分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3の設定は、一例であり、分割設置領域の設定パターンは、特に限定されない。例えば、複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3を一つずつ設定して、FEM解析を行ってもよいし、複数の分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3の全ての組み合わせをそれぞれ設定して、FEM解析を行ってもよい。

続いて、ステップS3において複数の設置パターンにおける設計性能がそれぞれ導出されると、導出された設計性能に基づいて、複合材30を設置する分割設置領域を選定する(ステップS4:分割設置領域選定工程)。具体的に、ステップS4では、垂直尾翼12の設計性能が最も高くなる分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3を選定している。

次に、ステップS4で選定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3において、垂直尾翼12の厚み方向における複合材30の積層位置が設定される(ステップS5)。ここで、図5は、垂直尾翼12の翼幅方向から見たときの図であり、翼厚方向に沿って複数の積層位置が設定されている。図5に示すように、複数の積層位置としては、翼厚方向の一方側の積層位置である積層位置αと、翼厚方向の他方側の積層位置である積層位置γと、積層位置αと積層位置γとの間の積層位置βとがある。なお、積層位置としては、垂直尾翼12のスキン23の外表面上の位置である外表面積層位置と、垂直尾翼12の構造部材の内部の位置である内部積層位置と、を含んでいてもよい。また、積層位置は、垂直尾翼12の翼厚に対する位置であってもよいし、垂直尾翼12の構造部材の板厚に対する位置であってもよく、特に限定されない。

そして、この複数の積層位置の少なくとも一つの位置に、複合材30の設置を設定すると、垂直尾翼12の設計性能が解析される(ステップS6:第2設計性能解析工程)。ステップS6では、ステップS4において選定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3と、ステップS5において設定された積層位置と、デフォルトの繊維方向とを設計パラメータとし、この設計パラメータを入力パラメータとしてFEM解析を実行することで、設計性能を導出している。

ステップS5及びステップS6では、積層位置α〜γの設定を変えながら、設計性能を導出している。ステップS5における積層位置α〜γの設定パターンは、特に限定されず、例えば、複数の積層位置α〜γを一つずつ設定して、FEM解析を行ってもよいし、複数の積層位置α〜γの全ての組み合わせをそれぞれ設定して、FEM解析を行ってもよい。

続いて、ステップS6において複数の積層位置α〜γにおける設計性能がそれぞれ導出されると、導出された設計性能に基づいて、複合材30を設置する積層位置α〜γを選定する(ステップS7:積層位置選定工程)。具体的に、ステップS7では、垂直尾翼12の設計性能が最も高くなる積層位置α〜γを選定している。

次に、ステップS4で選定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3、及び、ステップS7で選定された積層位置α〜γにおいて、複合材30に含まれるポリアリレート系繊維の繊維方向が設定される(ステップS8)。なお、繊維方向は、翼厚方向から見た平面視において、翼幅方向を基準としたときの角度であり、VFRP層32を2層設ける場合、±30°、±45°、または±60°等とする。

そして、複合材30の繊維方向を設定すると、垂直尾翼12の設計性能が解析される(ステップS9:第3設計性能解析工程)。ステップS9では、ステップS4において選定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3と、ステップS7において選定された積層位置と、ステップS8において設定された繊維方向とを設計パラメータとし、この設計パラメータを入力パラメータとしてFEM解析を実行することで、設計性能を導出している。そして、ステップS8及びステップS9では、繊維方向の設定を変えながら、設計性能を導出している。

続いて、ステップS9において複数の繊維方向における設計性能がそれぞれ導出されると、導出された設計性能に基づいて、複合材30のポリアリレート系繊維の繊維方向を選定する(ステップS10:繊維方向選定工程)。具体的に、ステップS10では、垂直尾翼12の設計性能が最も高くなる繊維方向を選定している。

そして、ステップS10において繊維方向が選定されると、ステップS4で選定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3、ステップS7で選定された積層位置α〜γ、及び、ステップS10で選定された繊維方向を含む設計パラメータを入力パラメータとし、FEM解析を実行することで、設計性能を導出する(ステップS11)。

次に、ステップS11で導出した垂直尾翼12の設計性能が、ステップS1で設定した要求性能を満足するか否かを判定する(ステップS12:性能判定工程)。つまり、ステップS12では、要求性能に含まれる複数の要求性能パラメータと、FEM解析により導出された設計性能に含まれる複数の設計性能パラメータとをそれぞれ比較し、設計性能パラメータのパラメータ値が、要求性能パラメータのパラメータ値以上となる場合、要求性能を満足すると判定する(S12:Yes)。一方で、ステップS12では、設計性能パラメータのパラメータ値が、要求性能パラメータのパラメータ値よりも小さい場合、要求性能を満足しないと判定する(S12:Yes)。

垂直尾翼12の設計性能が要求性能を満足すると判定する(S12:Yes)と、ステップS4で選定された分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3、ステップS7で選定された積層位置α〜γ、及び、ステップS10で選定された繊維方向を設計パラメータとして採用し(ステップS13)、垂直尾翼12の設計が完了する。

垂直尾翼12の設計性能が要求性能を満足しないと判定する(S12:No)と、設計パラメータ及び要求性能を見直すこととし(ステップS14)、垂直尾翼12の設計が完了する。そして、ステップS14とした場合は、再び、ステップS1からステップS12を実行する。

次に、図6を参照して、複合材が設置されない構造体としての垂直尾翼12の性能と、複合材30が設置された構造体としての垂直尾翼12の性能とについて比較する。図6は、本実施形態に係る構造体の設計方法によって得られる解析結果を示すグラフである。図6は、その横軸が、周波数[Hz]となっており、その縦軸が、ミーゼス歪[μ]となっている。

図6において、ラインL0は、複合材30が設置されない垂直尾翼12の性能となっており、ラインL1は、複合材30が設置された垂直尾翼12の性能となっている。ラインL1は、ラインL0に比して、ミーゼス歪が小さくなっていることから、複合材30が垂直尾翼12に設置されることで、振動に対する制振性が向上していると認められる。また、ラインL1は、ラインL0に比して、ミーゼス歪がピークとなる周波数が高くなっていることから、複合材30が垂直尾翼12に設置されることで、剛性が向上していると認められる。

次に、上記の設計方法によって設計された複合材30が設置された構造体としての垂直尾翼12の一例について説明する。

上記の設計方法において選定された積層位置が、外表面積層位置である場合、垂直尾翼12のスキン23の外表面上には、複合材30が貼り合わせられる。また、上記の設計方法において選定された積層位置が、構造部材の内部積層位置である場合、垂直尾翼12のスキン23の内部に、VFRP層32を設けることで、スキン23を複合材30として機能させる。さらに、上記の設計方法において選定された繊維方向が、±60°である場合、翼幅方向を基準(0°)として、2層となるVFRP層32におけるポリアリレート系繊維の繊維方向を±60°となるように設置する。このため、ポリアリレート系繊維の繊維方向は、垂直尾翼12の翼長方向におけるベクトルが長く、垂直尾翼12の翼幅方向におけるベクトルが短い方向となる。

以上のように、本実施形態によれば、要求性能を満足する、分割設置領域A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3、積層位置α〜γ及び繊維方向を選定することができるため、垂直動翼12に複合材30を好適に設置することができる。このため、垂直動翼12の振動を複合材30によって好適に減衰させることができ、垂直動翼12の制振性能を高めることができるため、垂直動翼12の振動による疲労を低減することができ、垂直動翼12の耐用寿命を長くすることができる。また、複合材30を、垂直動翼12に過剰に設置することを抑制できることから、垂直動翼12の重量増加、ひいては、機体1の重量増加を抑制することができる。

また、本実施形態によれば、複合材30をスキン23の外表面に設けた場合の設計性能を評価したり、複合材30をスキン23等の構造部材の内部に設けた場合の設計性能を評価したりすることができる。これにより、要求性能を満足する場合、例えば、既設の構造部材の外表面に複合材30を貼り合わせたり、構造部材の内部に複合材30を積層したりすることができる。

また、本実施形態によれば、要求性能として、垂直尾翼12の強度、垂直尾翼12の剛性、及び垂直尾翼12の振動に対する減衰率を含むことで、これらの要求性能パラメータを満足する垂直尾翼12として設計することができる。

また、本実施形態によれば、制振材となるVFRP層32を、垂直尾翼12の構造部材の内部に介在させる設計とすることができるため、CFRP層31とVFRP層32とが一体となる垂直尾翼12を成形することができる。このため、制振性能を有する垂直尾翼12とすることができる。

また、本実施形態によれば、制振材となるVFRP層32を、構造部材の厚み方向に分散して配置する設計とすることができるため、VFRP層32を積層して厚くする場合に比べて、CFRP層31とVFRP層32との間の剛性差が大きくなることを抑制することができる。また、VFRP層32のポリアリレート系繊維の繊維方向を適宜異ならせることで、VFRP層32の等方性または異方性の特性を調整することができる。

また、本実施形態によれば、制振材となる複合材30を、垂直尾翼12の構造部材の外表面に貼り合わせる設計とすることができるため、簡易な構成で、制振性能を有する垂直尾翼12とすることができる。

また、本実施形態によれば、ポリアリレート系繊維の繊維方向を、垂直尾翼12の翼長方向におけるベクトルが長く、垂直尾翼12の翼幅方向におけるベクトルが短い方向となる設計とすることができる。このため、ポリアリレート系繊維の繊維方向を、垂直尾翼12の翼長方向に沿った方向とすることができるため、複合材30の制振材としての機能を、垂直尾翼12に対して好適に発揮させることができる。

なお、本実施形態では、航空機の構造体に適用したが、航空機に限定されず、他の装置の構造体に適用してもよい。

また、本実施形態では、分割設置領域選定工程S4、積層位置選定工程S7、繊維方向選定工程S10を順に行ったが、分割設置領域選定工程S4、積層位置選定工程S7、及び繊維方向選定工程S10の順序を、適宜入れ替えてもよく、特に限定されない。

1 機体 11 胴体 12 垂直尾翼 14 垂直安定板 15 方向舵 21 スパー 22 リブ 23 スキン 30 複合材 31 CFRP層 32 VFRP層 E 複合材設置領域 A−1〜3,B−1〜3,C−1〜3 分割設置領域 α〜γ 積層位置 P 加振点

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