固定式の静電付着装置

申请号 JP2013153771 申请日 2013-07-24 公开(公告)号 JP5940028B2 公开(公告)日 2016-06-29
申请人 エスアールアイ インターナショナル; SRI International; 发明人 ペルライン・ロナルド・イー.; プララッド・ハーシャ; コーンブルー・ロイ・ディ.; リンカーン・パトリック・ディー.; スタンフォード・スコット;
摘要
权利要求

2つの物体を付着させるよう構成された固定式の静電付着装置であって、 第1の表面および第2の表面を備える本体であって、絶縁材料により構成されている絶縁層を含む本体と、 前記第1の表面の第1の位置に第1の電圧を印加するよう構成され、第1の共通電極から延伸する第1の直線状電極配列を含む第1の電極セットと、 前記第1の表面の第2の位置に第2の電圧を印加するよう構成され、第2の共通電極から延伸する第2の直線状電極配列を含み、前記絶縁層において前記第1の電極セットと同一の面に配置されている第2の電極セットと、 前記静電付着装置の前記本体の横に配置されているサイドバーであって、人間が前記静電付着装置オン、オフすることを可能にするスイッチを含むサイドバーと、 を備え、 前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧差は、第1の物体の表面を前記第1の表面に付着させるのに適した第1の静電付着を前記静電付着装置と前記第1の物体との間で生み出す静電付着電圧を含み、 前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の前記電圧差は、第2の物体の表面を前記第2の表面に付着させるために適した第2の静電付着力を前記静電付着装置と前記第2の物体との間で生み出す静電付着電圧を含む、装置。請求項1に記載の装置であって、前記絶縁層は、前記第1の電極セットと前記第2の電極セットとの間の前記静電付着電圧差を実質的に維持するよう構成されている、装置。請求項1に記載の装置であって、前記絶縁層は、約2ミリメートル未満の厚さを有する、装置。請求項1に記載の装置であって、前記第1の電極セットおよび前記第2の電極セットは前記第1の表面上にある、装置。請求項1に記載の装置であって、前記第1の表面および前記第2の表面は変形可能であり、前記本体は変形可能な絶縁材料を備える、装置。請求項5に記載の装置であって、前記変形可能な絶縁材料は、約10MPa未満の弾性率を有するコンプライアントな材料を含む、装置。請求項5に記載の装置であって、前記変形可能な表面は、屈曲可能であるが実質的に弾性伸縮しない材料または構造の表面を含む、装置。請求項1に記載の装置であって、さらに、前記第1の電極セットと前記第2の電極セットとの間の前記静電付着電圧を提供するよう構成された回路であって、前記サイドバーに組み込まれている回路を備える、装置。請求項8に記載の装置であって、前記回路は、約40ボルト未満の電圧源から電圧を受けるよう構成されると共に前記電圧源からの前記電圧を約500ボルト以上の前記静電付着電圧に上昇させるよう構成されている電圧上昇回路を含む、装置。請求項1に記載の装置であって、前記第1の電圧は、約2キロボルトより高い、装置。請求項10に記載の装置であって、前記第2の電圧は、約0ボルトである、装置。

说明书全文

本発明は、一般に、電気的に制御可能な付着に関し、特に、2つの物体の間に付着を提供するために、電気エネルギおよび静電力を利用することに関する。

制御可能な付着については、未だ満たされていない技術的な要求がある。例えば、20年以上の間、ロボット工学分野では、移動(wall crawling)ロボットのために広範囲の対象物に対して信頼性の高い制御可能な付着を発明しようとしてきたが、成功には至っていない。制御可能な付着における成功とは、十分な範囲のありふれた壁および天然物質上、および、実際の環境条件下(湿った表面または埃っぽい表面、傾斜のきつい表面、もしくは、滑りやすい表面など)の壁および天然物質上、での作業に十分なほど、制御可能であり、信頼性が高く、ロバストである技術として定義可能である。

壁移動については、既存の技術(それらの多くは、未だ研究段階であり、市販の製品ではない)は、上記の能力を完全には実現できていない。化学的な付着が、常に「オン」状態になっている。それらは、その場に留まるためのエネルギを必要としないが、化学的な付着クランプ技術を利用するロボットは、オフに切り替えることができない付着に抗しつつ登ったり横移動したりするために多大なエネルギを必要とする(多くのバッテリが必要になり重量が増す)。また、化学的な付着技術は、それらの効果を急速に低下させる埃およびその他のごみを引き付けうる。吸着(能動的または受動的)は、滑らかな表面上でしか効果的に機能しない。また、従来の吸着カップは、漏れの問題があり、埃っぽい表面には対応できない。機械的な爪は、非常に粗い表面または爪の刺さりうる表面上でしか機能せず、しばしば、損傷の痕を残す。人工のヤモリ様の皮膚は、繰り返し利用すると(わずか5回程度)、簡単に損傷または汚れうるものであり、湿った表面では機能しない。

制御可能な付着は、ロボット工学以外でも有用である。付着を提供するロバストな装置および方法があれば有益である。

本発明は、2つの物体の間の制御可能な付着を可能にする静電付着技術を提供する。静電付着は、静電付着電圧によって生み出される静電引力を利用する。静電付着電圧は、静電付着装置の電極を用いて印加される。静電付着電圧は、電界および静電付着力を生成する。静電付着装置および電極が、垂直の壁などの物体の表面の近くに配置されると、静電付着力が、表面および物体に対する静電付着装置の位置を保持する。これは、静止摩擦を増大させるため、または、表面に対する静電付着装置の位置を維持するために利用されてよい。静電付着電圧の電気制御により、制御可能かつ容易に付着のオンオフを行うことが可能になる。本明細書に記載されている装置(移動装置およびロボットなど)は、この制御可能な静電付着を利用して、垂直の壁およびその他の平坦でない表面を移動する。

一態様では、本発明は、移動装置に関する。移動装置は、本体と、本体に機械的に結合された少なくとも1つの静電付着装置を備える。少なくとも1つの静電付着装置は、対象物に着脱可能に付着するよう構成されており、対象物の表面と接触するための変形可能な表面と、変形可能な表面の第1の位置に第1の電圧を印加するよう構成された第1の電極と、変形可能な表面の第2の位置に第2の電圧を印加するよう構成された第2の電極と、を備える。第1の電圧と第2の電圧との間の電圧差は、対象物に対する少なくとも1つの静電付着装置の現在の位置を維持するのに適した静電力を少なくとも1つの静電付着装置と対象物との間で生み出す静電付着電圧を含む。絶縁材料は、第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極と第2の電極との間の静電付着電圧差を実質的に維持するよう構成されている。

別の態様では、本発明は、2つの物体を付着させるよう構成された静電付着装置に関する。静電付着装置は、第1の表面および第2の表面を備えた本体を備える。静電付着装置は、さらに、第1の表面の第1の位置に第1の電圧を印加するよう構成された第1の電極と、第1の表面の第2の位置に第2の電圧を印加するよう構成された第2の電極と、を備える。第1の電圧と第2の電圧との間の電圧差は、第1の物体の表面を第1の表面に付着させるのに適した第1の静電付着力を静電付着装置と第1の物体との間で生み出す静電付着電圧を含む。第1の電圧と第2の電圧との間の電圧差は、第2の物体の表面を第2の表面に付着させるために適した第2の静電付着力を静電付着装置と第2の物体との間で生み出す静電付着電圧を含む。

さらに別の態様では、本発明は、壁を登る方法に関する。本方法は、壁の表面に近接するように静電付着装置を配置することを備える。本方法は、さらに、静電付着装置の第1の位置にある第1の電極と、静電付着装置の第2の位置にある第2の電極との間に、静電付着電圧差を印加することを備える。本方法は、さらに、静電付着電圧差によって引き起こされる静電引力を利用して、静電付着装置を壁の表面に付着させることを備える。本方法は、さらに、静電付着装置が壁に付着している間に壁を登ることを備える。

本発明のこれらおよびその他の特徴および利点は、以下で行う本発明の説明および関連の図面において説明されている。

本発明の一実施形態に従って、静電付着装置を簡略に示した図。

図1の静電付着装置が垂直の壁の表面に取り付けられた様子を示す図。

図1の静電付着装置の電極間における電圧差の結果として構造の対象物内に形成された電界を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、絶縁材料に埋め込まれた1組の電極を備えた静電付着装置を示す図。

図4Aの静電付着装置の電極への適切な静電付着電圧の供給と、その結果生じる電界とを示す図。

本発明の別の実施形態に従って、絶縁層の内面上に配置された1セットの電極を備えた静電付着装置を示す図。

図4Cの静電付着装置の電極への適切な静電付着電圧の供給と、その結果生じる電界とを示す図。

本発明の別の実施形態に従って、絶縁層の内面上に配置された第1の電極セットと絶縁層の反対面上に配置された第2の電極セットとを備えた静電付着装置を示す図。

図4Eの静電付着装置についての電界を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置を示す図。

静電付着装置について、結果として生じる電界を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置を示す図。

本発明の具体的な一実施形態に従って、図4Iの3電圧パターンのための位相シフト入力の適切な一例を示す図。

本発明の具体的な一実施形態に従って、粗い表面に形状を合わせる変形可能な静電付着装置を示す図。

本発明の具体的な一実施形態に従って、装置が構造の表面と接触した当初の変形可能な静電付着装置の表面を示す図。

初期の静電引力とコンプライアンスとによって静電付着装置が変形した後の図5Bの静電付着装置の表面形状と壁面とを示す図。

本発明の別の実施形態に従って、パターニングされた電極を備えた静電付着装置を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、パターニングされた電極を備えた静電付着装置を示す図。

本発明の別の具体的な実施形態に従って、導電性のまつげ構造を用いた図6Aの装置の変形例を示す図。

静電付着装置に対する引きはがしを示す概念図。

静電付着装置に対する引きはがしを示す概念図。

静電付着装置に対する引きはがしを示す概念図。

静電付着装置の部分的な離脱を示す図。

静電付着装置の部分的な離脱を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置の領域全体を分割する格子構造を備える静電付着装置を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置の領域全体を分割する格子構造を備える静電付着装置を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、引きはがし耐性がある静電付着装置を示す図。

本発明の別の実施形態に従って、引きはがし耐性がある静電付着装置を示す図。

本発明の一実施形態に従って、適切な静電付着電圧を静電付着装置の電極に供給するのに適した制御・調整回路を示す図。

本発明の一実施形態に従って、静電付着を用いて物体を付着させる方法を示す図。

本発明の具体的な一実施形態に従って、静電付着装置を備えるよう改造された軌道付き壁移動ロボットを示す図。

本発明の具体的な一実施形態に従って、静電付着装置を備えるよう改造された軌道付き壁移動ロボットを示す図。

図10Bの壁移動ロボットが、平の表面から、垂直の壁、さらに別の水平の表面へと移動する様子を示す図。

本発明の別の具体的な実施形態に従って、静電付着を用いた壁移動ロボットを示す図。

図11Aのロボットのタイヤを示す拡大斜視図。

本発明の別の具体的な実施形態に従って、ロボットを示す図。

本発明の別の実施形態に従って、ロボットを示す図。

具体的な用途の実施形態に従って、静電付着ハンドウェアおよび静電付着脚用パッドを示す図。

具体的な用途の実施形態に従って、静電付着よじ登り装置を示す図。

具体的な用途の実施形態に従って、静電付着よじ登り装置を示す図。

本発明の別の具体的な実施形態に従って、着脱可能な両面静電付着装置を示す図。

本発明の別の具体的な実施形態に従って、着脱可能な両面静電付着装置を示す図。

本発明の別の具体的な実施形態に従って、着脱可能な両面静電付着装置を示す図。

添付の図面に図示したいくつかの好ましい実施形態を参照しつつ、本発明について詳細に説明する。以下の説明では、本発明の完全な理解を促すために、多くの具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細事項の一部または全部がなくとも実施可能であることは、当業者にとって明らかである。また、本発明を不必要にわかりにくくしないように、周知の工程および/または構造については、詳細には説明していない。

電気的に制御可能な付着 本明細書で用いられているように、「静電付着」とは、静電力を用いた2つの物体の機械的結合を意味する。静電付着は、本明細書で説明するように、これらの静電力を電気的に制御することで、2つの物体間の一時的かつ着脱可能な付着を可能にする。この静電付着は、印加された電界によって生じる静電力によって、これらの物体の2つの表面を結び付ける、または、2つの物体間の静止摩擦または摩擦を増大させる。一実施形態では、1つの材料を別の材料に静電付着させるために、絶縁性の変形可能な材料を横切る電界を利用する。

従来、静電クランプは、2つの平坦かつ滑らかな導電性の表面を結び付けることに限定されていた。発明者は、付着される側である対象物の材料特性または表面粗さに制限されない静電付着装置および技術を開発した。

図1は、本発明の一実施形態に従って、静電付着装置10を簡略に示した図である。図2は、表面12に付着した静電付着装置10を示す図である。表面12は、材料(すなわち対象物)16を含む大きい構造14の一部であり、この例では、垂直の壁のようなものである。本発明は、主に装置および構造として説明されているが、本発明が、静電付着を用いて物体を付着させる方法にも関連することは、当業者にとって明らかである。

電極18と電気通信する外部の制御電子回路(図8参照)を用いて、静電付着電圧が電極18を介して印加される。図2に示すように、静電付着電圧は、互いに隣接する電極18に対して、交互に正および負の電荷を適用する。電極18の間の電圧差の結果、図3に示すように、構造14に含まれる対象物16内で、電界22が形成される。電界22は、誘電材料16を局所的に分極させるため、電極18(および装置10)と、対象物16上の誘導電荷との間で静電付着を引き起こす。誘導電荷は、誘電分極の結果であってもよいし、弱い導電材料および漏れ電流から生じてもよい。理論に縛られたくないが、誘導された静電力は、ジョンソン・ラーベック効果を用いて、より低い電力レベルにおいて、さらに大きい力を提供してもよい。

したがって、静電付着電圧は、静電付着装置10と表面12の下の材料16との間に、静電力を提供し、その静電力が、表面に対する装置10の現在の位置を維持する。適切な静電付着電圧については、以下で詳細に説明する。壁またはその他の比較的垂直な表面については、静電付着装置10と表面12との間の静電力は、装置10に掛かる重力に打ち勝って、装置10を高所に保持する。装置10は、他の構造に取り付けられて、これらのさらなる構造を高所に保持してもよいし、通常の摩擦力を増大させるために、傾斜した表面または滑りやすい表面上で利用されてもよい。

電極18から静電付着電圧を取り除くと、装置10と表面12との間の静電付着力がなくなる。したがって、電極18間に静電付着電圧がない時には、静電付着装置10は、表面12を自由に動くことができる。この条件によると、静電付着装置10は、静電付着電圧の印加の前後に移動することが可能である。この制御を壁移動に利用するロボットおよびその他の装置について、後に詳述する。さらに、以下で詳述するように、電気的な駆動および停止によって、少ない消費電力で、迅速な付着および離脱(例えば、約50ミリ秒未満の反応時間)が可能になる。

図1の静電付着装置10は、絶縁材料20の外面に電極18を含む(例えば、それらの電極は、絶縁材料20の外面上で露出されており、壁面12に接触することができる)。この実施形態は、絶縁性および弱い導電性の材料および対象物16への制御可能な付着に適している。静電付着装置10について、電極18と絶縁材料20との間の別の関係も考えられ、それらの関係は、導電材料を含む幅広い範囲の材料の利用に適する。

図4Aは、本発明の別の実施形態に従って、絶縁材料20に埋め込まれた1セットの電極18を備えた静電付着装置10bを示す図である。図4Bは、静電付着装置10bの電極18への適切な静電付着電圧の供給と、対象物16への付着時に生じる電極18上の電荷による電界22とを示す図である。

図4Cは、本発明の別の実施形態に従って、壁に接触して付着するよう意図された絶縁層20の表面25と反対側の面である絶縁層20の内面23上に配置された1セットの電極18を備えた静電付着装置10cを示す図である。図4Dは、静電付着装置10cの電極への適切な静電付着電圧の供給と、電極18上の電荷から結果として生じる電界22とを示す図である。

図4Eは、本発明の別の実施形態に従って、絶縁層20の内面23上に配置された第1のセット40の電極18と絶縁層20の反対面25上に配置された第2のセット42の電極とを備えた静電付着装置10dを示す図である。図4Fは、静電付着装置10dについて、電極18上の電荷から生じる電界22を示す図である。

静電付着引力について詳述すると、力発生のための正確な機構は、表面12の下の材料16の導電率および誘電率によって決まる。特に、本発明は、静電付着が主に電気的な原理に基づいているにもかかわらず、付着対象物の電気的特性によって制限されることがない。実際に、本明細書に記載した静電付着は、導電性および非導電性(すなわち絶縁性)の対象物16の両方に対して良好に機能する。

再び図2および3に戻ると、材料16が、電極18によって印加される交互の正および負の電荷の間の電圧差に対する絶縁体として機能する場合には、電極18上の電荷から生じた電界22は、誘電および絶縁性の対象物を分極させるため、静電付着装置10と、構造14の材料16における誘導分極電荷との間の静電付着を引き起こす。

しかしながら、材料16が導電性である場合には、自由電荷が対象物16内を流れ、荷電した電極18は、静電力によって導電材料に引き付けられる。同じ機構が、湿った絶縁性の対象物16にも適用され、この場合、表面に留まった湿気またはその他の導電性の粒子は、それらがなければ絶縁性である材料の上で導線性の表面として機能する。もちろん、対象物16の導電性が高すぎる場合には、制御電子回路は、十分な静電付着電圧を維持できない場合があり、図4Aに示したような絶縁された実施形態が利用される。

静電付着装置10は、導電性および絶縁性の対象物16の両方に対して良好に付着するが、装置10が付着できる材料の範囲を示す助けとなるように、それら2種類の対象物を区別することが有効である。導電材料は、約1012Ω・cmより小さい抵抗率を有する材料として定義されてよい。絶縁材料は、約1012Ω・cmより大きい抵抗率を有する材料として定義されてよい。この定義では、導電材料は、金属などの真の導電体、さらに、半導体材料、および、通常は絶縁性であると見なされるコンクリート、ほとんどの木材および岩石などの材料を含む。しかしながら、後に説明するように、絶縁および導電性の材料の間の実際の境界は、部分的には、静電付着装置の形状およびフィーチャのサイズによって決まる。

特に、上述の同じ静電付着装置については、絶縁性および導電性の両方の対象物に付着するために、同じ静電付着装置10の形状および動作(静電付着電圧を電極18に印加する動作)を用いることができる。これは、静電付着装置10の顕著な特徴の1つである。

一部の例では、静電付着装置は、対象物を絶縁材料として利用するよう設計される。図4Gは、本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置10gを示す図である。図4Hは、静電付着装置10gについて、結果として生じる電界22を示す図である。

静電付着装置10gは、対象物16と直接接触する2つの電極18を備える。電極18は、機械的に別個のパッド57に取り付けられている。例えば、各パッド57は、ロボットの別々の足に備えられてよい。

特に、静電付着装置10gについては、静電付着装置に備えられた電極18の間に、絶縁材料20が存在しない。この例では、対象物16が、電極間の絶縁材料として機能する。この設計も、静電付着力の発生を可能とするが、導電性の対象物16上では機能しない(図4Aないし図4Fに示したような、電極18の一方または両方の間に絶縁材料が利用されてよい)。

本明細書に記載された静電付着装置の他の顕著な特徴は、図5に示すように、静電付着装置10において変形可能な表面および材料を利用できる点である。一実施形態では、静電付着装置10の1または複数の部分が変形可能になっている。具体的な実施形態において、これは、装置10の表面30を含む。別の実施形態では、電極18の間の絶縁材料20が変形可能になっている。静電付着装置10は、変形を可能にするために、材料のコンプライアンスを利用してもよいし(例えば、絶縁材料20として柔軟な材料を用いるなど)、構造的な設計を利用してもよい(例えば、図6Cに示すまつげまたは髪の毛のような構造、または、図10Aの軌道352を参照)。具体的な実施形態では、絶縁材料20は、屈曲可能であるが、実質的に弾性伸縮しない材料(例えば、マイラーの薄層)を含む。別の実施形態では、絶縁材料20は、10MPa未満の弾性率、特に1MPa未満の弾性率を有する柔軟なポリマである。

電極18も、コンプライアントであってよい。絶縁材料20および電極18のコンプライアンスは、上述の静電付着装置10のいずれの構成で利用されてもよい。静電付着装置10のコンプライアンスは、装置10の付着面30が、付着対象になる物体の表面12に形状を合わせることを可能にする。図5Aは、本発明の具体的な実施形態に従って、粗い表面12に形状を合わせるコンプライアント静電付着装置10を示す図である。

付着面30は、付着されている対象物表面12に接触する静電付着装置の表面として定義される。付着面30は、電極を含んでもよいし含まなくてもよい。一実施形態では、付着面30は、薄いコンプライアント保護層を含んでおり、この保護層は、それがない場合には露出される電極を保護するために追加されている。別の実施形態では、付着面30は、(例えば、静電力が取り除かれた時に)、ごみが付着したまま残らないようにする材料を含む。あるいは、付着面30は、壁の表面への付着を助けるための粘着性または接着性の材料を含んでもよいし、与えられた垂直抗力について滑りを良好に防止するための高摩擦性の材料を含んでもよい。

静電付着装置10のコンプライアンスは、しばしば、付着力を向上させる。電極18および絶縁材料20の両方が変形可能である場合、付着面30は、最初の電荷が印加された後、最初に、動的に、粗い表面12の巨視的および微視的な外形に形状を合わせるができる。この動的なコンプライアンスについては、図5Bを参照しつつ詳述する。この表面静電付着装置10のコンプライアンスにより、電極18が、表面12にさらに近づくことが可能になり、装置10によって提供される全体のクランプ力が増大する。一部の例では、静電力は、(電極と壁面との間の)距離の2乗で低下しうる。しかしながら、静電付着装置10のコンプライアンスにより、装置10は、表面14との密着性を確立して動的に改善および維持することができるため、電極18によって印加される印加保持力が増大される。さらに、この追加されたコンプライアンスにより、表面12および30の間の微視的な規模での機械的なかみ合いが大きくなるため、有効な摩擦を増大させて滑りを防止することも可能である。

コンプライアンスにより、静電付着装置10は、電気エネルギが印加された後、最初に、かつ、動的に、壁面12に形状を合わせることができる。この静電付着を改善する動的な方法は、本発明の別の実施形態に従って、図5Bないし5Cに図示されている。

図5Bは、装置10が、材料16を有する構造の表面12に接触した当初の静電付着装置10の表面30を示す図である。表面12は、巨視的な(すなわち、可視的な)レベルでの粗さおよび不均一性(例えば、コンクリートの粗さは、容易に観察できる)と、顕微レベルでの粗さおよび不均一性(ほとんどの材料)とを含みうる。

両者が、図5Bに示すように接触している時に、静電付着電気エネルギが電極18に印加される。これにより、電極18と壁面12との間に引力が発生する。しかしながら、最初に、ほとんどの粗い表面についての実際問題として、図5Bに見られるように、数多くのギャップ82が、装置の表面30と壁面12との間に存在する。

ギャップ82の数およびサイズは、静電付着クランプ圧に影響する。例えば、巨視的な規模では、静電クランプは、対象物16と荷電した電極18との間のギャップの二乗に反比例する。また、電極部の数が多いと、装置の表面30は、より局所的な表面粗さに形状を合わせるようになるため、全体の付着が改善する。微視的な規模では、ギャップが小さくなった時のクランプ圧の増大は、さらに劇的である。この増大は、パッシェンの法則によるものであり、その法則は、小さいギャップでは空気の破壊強度が劇的に増大すると述べている。破壊強度が高くギャップが小さいことは、電界が非常に強く、すなわち、クランプ圧が非常に大きいことを意味する。発明者は、静電付着装置10のコンプライアント表面30、または、表面粗さに形状を合わせる静電付着機構を用いることにより、クランプ圧を増大させ、静電付着を改善することができることを解明した。

引力が、静電付着装置10のコンプライアンスに打ち勝った時、これらのコンプライアント部分が変形して、表面30の部分が表面12に近づく。この変形は、静電付着装置10と壁面12との間の接触面積を増大させて、静電付着クランプ圧を増大させ、装置10と壁14との間により強い静電付着を提供する。図5Cは、初期の静電引力とコンプライアンスとによって静電付着装置10が変形した後の静電付着装置10の表面形状と壁面12とを示す図である。ギャップ82の多くが小さくなっている。

この適応可能な成形は継続してよい。装置の表面30と壁面12が近づくほど、多くの位置でそれらの間の距離が小さくなって、静電付着力がさらに増大し、それにより、静電付着装置10の多くの部分がさらに変形するため、装置の表面30のさらに多くの部分が、さらに壁面12に近づく。また、これによって、接触面積が増大し、クランプ圧が増大して、装置10と壁14との間により強い静電付着が提供される。静電付着装置10は、装置のコンプライアンスがさらなる変形を許容せず、装置の表面30が変形を止めた時に、形状の適合に関する安定状態に到達する。

別の実施形態では、静電付着装置10は、電極18、絶縁材料20、および、裏打ち24の内の1または複数に多くの孔を含む。空気のポケットが、表面12と表面30との間に閉じ込められるため、これらの空気ポケットが適応可能な成形を低減しうる。絶縁体20、裏打ち24、および/または、電極18の小さい孔すなわち多孔質材料により、閉じ込められた空気は、動的な変形の際に逃げることができるようになる。

したがって、静電付着装置10は、粗い表面、すなわち、巨視的な湾曲または複雑な形状を有する表面での利用に適している。一実施形態において、表面12は、約100ミクロンより大きい粗さを含む。特定の実施形態において、表面12は、約3ミリメートルより大きい粗さを含む。

図1、2、または、5Aに示す、随意的な裏打ち構造24は、絶縁材料20に取り付けられ、剛性または伸縮しない材料を含み、構造的な支持をコンプライアント静電付着装置10bに提供する。裏打ち層24は、さらに、静電付着装置10bを機械的に外部に結合できるようにすることで、より大きい装置(以下で説明する壁移動ロボット、その他の装置および用途など)内で利用されることを可能にする。

一部の静電付着装置10では、より柔軟な材料が、機械的負荷によって過度に屈曲および変形して、不十分なクランプにつながる場合がある。これらの影響を軽減するために、静電付着装置10は、段階的な1セットの層または材料を備えてよく、この構成では、第1の材料が、壁面に結合するために低い剛性すなわち弾性を有し、第2の材料が、第1の受動層に取り付けられ、より厚い、および/または、剛性の高い材料を有する。裏打ち構造24は、より剛性の高い第2の材料に取り付けられてよい。特定の実施形態では、静電付着装置10は、より柔軟な層としての約50ミクロン厚のアクリル弾性体と、第2の支持層としての1000ミクロン厚のより厚いアクリル弾性体とを含む。他の厚さが利用されてもよい。

図5Bおよび5Cの変化に掛かる時間は、静電付着装置10の材料、静電付着装置10の設計、印加される制御信号、および、静電付着力の大きさ、によって変化しうる。動的な変化は、一部の静電付着装置では、視覚的に観察できる。一実施形態では、装置の表面30が変形を止めるのに掛かる時間は、約0.01秒ないし約10秒の間である。その他の例では、形状の適合が終了する時間は、約0.5秒ないし約2秒の間である。

一部の実施形態では、本明細書に記載された静電付着は、迅速なクランプおよびクランプ解除の時間を可能とし、ほとんど瞬時といってもよい。一実施形態では、クランプまたはクランプ解除は、約50ミリ秒未満で実現されうる。特定の実施形態では、クランプまたはクランプ解除は、約10ミリ秒未満で実現されうる。その速さは、いくつかの手段によって増大されてよい。電極が、より狭い線幅およびより狭い間隔で構成されている場合、静電付着力を確立するために電荷が流れるのに必要な時間が短くなる(基本的に、静電付着装置および対象物の両方を含む分布抵抗容量回路の「RC」時定数が小さくなる)ため、導電性または弱い導電性の対象物を用いると、速さが増大される。装置10において、より柔軟、より軽量、より適応性の高い材料を用いても、速さが増大する。より高い電圧を用いて、より迅速に所与のレベルの静電付着力を確立することも可能であり、電圧を一時的にオーバードライブして電荷分布および適応を迅速に確立することによって、速さを増大させることも可能である。クランプ解除の速さを増大させるために、一定の速度で電極18の極性を効果的に逆転させる駆動電圧が利用されてよい。かかる電圧は、電荷が、対象物の材料16内に蓄積することを防止するため、より速いクランプ解除を可能にする。あるいは、必要な駆動電力を追加して、放電時間を速くするために、電極18の間に、中程度の導電性の材料20を用いてもよい。

本明細書で用いられているように、静電付着電圧とは、静電付着装置10を壁または対象物に結合させるのに適切な静電力を発生させる電圧を意味する。静電付着装置10に必要な最小電圧は、以下のような多くの要素によって変化しうる。すなわち、要因とは、静電付着装置10のサイズ;電極18の材料の導電率および間隔;絶縁材料20;壁の材料16;埃、その他の粒子、または、湿気など、静電付着に対する障害物の存在;静電付着装置10に機械的に結合された任意の構造の重量;静電付着装置のコンプライアンス;対象物の誘電特性および抵抗特性;電極と対象物との間の関連のあるギャップ、などである。一実施形態では、静電付着電圧は、約500ボルトないし約10キロボルトの電極18間の差動電圧を含む。特定の実施形態では、差動電圧は、約2キロボルトないし約5キロボルトの間である。ある電極の電圧がゼロであってよい。また、交互の正および負の電荷が、隣接する電極18に印加されてもよい。静電付着装置10の電気回路および電気特性については、本願の次の章において、詳述している。

結果として生じるクランプ力は、特定の静電付着装置10の仕様、付着先の材料、任意の粒子状障害物、壁面の粗さなどによって変化する。一般に、本明細書に記載した静電付着は、幅広いクランプ力を提供する。クランプ力は、一般に、静電付着装置によって掛けられる引力を、静電付着装置が壁と接触する面積で割ったものとして定義される。説明のために、静電付着のためのクランプ力を、垂直クランプ圧(PN)、対象物とクランプとの間の摩擦係数(μ)、および、有効水平付着圧(PL)に関して簡略化することができる。有効水平付着圧PLは、滑りを起こさずに測定された最大横力を表面30の面積で割ったものである。これら3つの量は、以下の関係を有する。 PL=μPN (式1)

PLは、壁登りの用途に重要であり、その時、重力が、静電付着装置10に横力を与える。なお、PLは、垂直クランプ圧PNまたは摩擦係数を増大させることによって増大できる。PNは、天井での移動性に重要であり、その時、重力は、静電付着装置10に逆向きの垂直力を与える。

実際の静電付着力および圧力は、設計および多くの要素に応じて変化する。一実施形態では、静電付着装置10は、約0.7kPa(約0.1psi)ないし約70kPa(約10psi)の間の静電付着引圧を提供する。特定の実施形態では、静電付着装置10は、約2kPa(約0.3psi)ないし約20kPa(約3psi)の間の圧力を提供する。そのため、静電付着装置10の接触する活性表面を変更することによって、用途に必要な力の量を容易に実現することができる。一般に、電圧を増大させると、静電付着力が増大する。また、電極と表面との距離を小さくすると、静電付着力が増大する。さらに、活性接触表面30および静電付着装置のサイズを大きくすると、静電付着力が増大する。後に説明するロボット工学用途では、各ロボットに利用される静電付着装置のサイズは、利用するパッドの数、ロボットの重量、および、ロバスト係数(例えば、ロバストな動作のためには、1.5ないし10の乗数)など、数多くの要素に応じて決まる。例えば、0.125psi(0.862kPa)のクランプ圧では、ロバストな動作のための安全係数を除けば、一辺が2インチの正方形パッド2つで、1lb(453.6g)のロボットを支えることができる。

理想的ではない条件(例えば、埃、困難な材料、粗い表面、極度に湿った表面など)に打ち勝つための適切な解決法の1つは、単に、壁の障害物にかかわらず十分なクランプ力を実現できるまで、静電付着装置10の面積を大きくすることである。静電付着装置10は軽いため、それらの面積を大きくしても、例えば、ロボットの総重量が大幅に増大することがない。

ロボットについて、付着力または静電付着装置のサイズを大きくすると、理想的ではない表面および条件(例えば、粗い表面、など)、ならびに、ロボットに対する予測不能な障害に対処する余裕が得られる。また、(より低い電圧動作で同じクランプ圧の提供が可能になることにより)所要電力が小さくなり、より大きい最大積載量が可能になり、より速くよりロバストな移動が可能になる。さらに、大きいまたは追加の静電付着装置10をロボットの他の領域に取り付けるだけで、付着能力を強化することができる。

ここまで、静電付着装置10において単一の接触面30が壁に付着する構成を参照して、本発明の説明を行った。1つの静電付着装置10において、複数の表面30を利用することも可能である。通常、1つの壁に付着する場合には、複数の表面30は、1つの装置10のために協働で動作するため、個々の表面30については力およびサイズが低減される。例えば、ロボットは、表面30を壁面上に配置するよう構成されたロボットアクチュエータに結合された2以上の静電付着面30を備えてよい。

電極18は、さらに、様々な手段によって改良されてよく、例えば、静電付着性能を改善するように付着装置の表面上にパターン化されてよい。図6Aは、本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置10eを示す図である。静電付着装置10eは、絶縁層44の両面に、交互に配置された上側電極セット40および下側電極セット42を備える。一部の例では、電極および絶縁層44が、コンプライアントであって、コンプライアンスを増大させるために弾性体から成っていてよい。好ましい一実施形態では、弾性体の弾性率は、約10MPaより低く、別の好ましい実施形態では、約1MPa未満であることがより好ましい。

電極セット42は、絶縁層44の上面23上に配置されており、直線パターンの電極18の配列を備える。共通電極71が、電極セット42の電極18に対して電気的に接続しており、共通電極71への1つの入力リード線を用いて、電極セット42の電極18すべてに対する電気通信を可能にしている。

電極セット40は、絶縁層44の下面25上に配置されており、上面の電極18から横方向にずらして配置された直線パターンの電極18の第2の配列を備える。電極セット40も、共通電極(図示せず)を備えてよい。

電極セット40および44の個々の電極18間のピッチまたは平面上での間隔は、様々であってよい。図の断面における間隔は、電極の幅45およびピッチ47によって特徴付けられてよい。ピッチ47は、異なる極性の電極が、絶縁層44の同じ面または異なる面のいずれに存在する場合でも、それらの間の間隔を表す。具体的な実施形態では、静電付着装置10eは、約1ミリメートルの電極幅45と約1ミリメートルの電極間のピッチ47とを有するコンプライアントな炭素電極を備える。他の線幅およびピッチも利用に適している。別の実施形態では、ピッチ47は、約1センチメートルである。一般的に、ピッチ47および線幅45が狭いと、より絶縁性の高いすなわち抵抗の高い対象物へのクランプが速くなるが、ピッチ47および幅45が広いと、より大きい距離から静電付着装置10を対象物に引き付ける。一実施形態では、様々な形状の電界を設定できるように、電極間のピッチは、クランプ10の長さに沿って非一様になっていてもよい。別の実施形態では、電極は、異なる二次元形状(例えば、同心円配列)で配列されてもよい。

電極は、電極間の空隙における絶縁破壊によって制限されることなく、より高い電圧差に耐えるよう静電付着装置10eおよび10fの能力を向上させるために、絶縁層44の両面にパターニングされてよい。通例、電極18が、絶縁層44の両面にパターニングされた場合、各電極セット40および42における電極18の間隔は、弾性層44の厚さよりもはるかに大きい(説明のために、図面では、間隔が誇張されており、また、電極の厚さも誇張して図示されているが、数ミクロンの厚さしかなくてよい)。「アスペクト比」が、電極の配列すなわち電極18の間隔と、電極18を隔てる絶縁材料20の厚さtとの比(47:t)として定義される。アスペクト比は、クランプ圧に影響する。アスペクト比が大きいと、ほぼ平面分布の電界源が可能になる。電極の間隔が小さいと、静電付着装置10eの片側に付着される対象物に対して、より良好な接触が実現される。

絶縁層44は、比較的平面であり、互いに反対側の面23および25を有し、絶縁材料20を含む。一実施形態では、絶縁層44は、コンプライアントであり、それに掛けられた力に従った形状になる。具体的な実施形態では、絶縁層44は、約2ミリメートル未満の厚さを有する。別の具体的な実施形態では、絶縁層44は、約0.1ミリメートル未満の厚さを有する。層44は、さらに、屈曲可能であるが実質的に伸縮しない材料(マイラーなど)を含んでもよい。

アクリル弾性体が、絶縁層44としての利用に適している。アクリル弾性体は、その絶縁耐力を増大させるために、予ひずみを与えられてもよい。ポリマの予ひずみは、1または複数の方向において、予ひずみ前の一方向での寸法に対する予ひずみ後のその方向での寸法の変化として説明できる。予ひずみは、ポリマの弾性変形を含みうるものであり、例えば、張力によってポリマを伸長させて、伸長されている状態で縁部の内の1または複数を固定することによって形成されてよい。一実施形態では、予ひずみは弾性的である。弾性的に予ひずみを与えられたポリマは、原理的には、固定されておらず、元の状態に戻りうる。予ひずみは、剛性のフレームを用いて境界において与えられてもよいし、ポリマの一部に対して局所的に与えられてもよい。一実施形態では、予ひずみは、ポリマの一部にわたって一様に与えられ、両方向において、例えば300%×300%だけ予ひずみを付与された等方性の予ひずみポリマを形成する。本発明での利用に適した予ひずみについては、米国特許No.7,034,432に詳述されており、その特許は、参照によって本願に組み込まれる。

クランプ力を向上させる一実施形態では、静電付着装置10eは、装置10eが壁面12の表面粗さに対してより良好に適合する助けとなるように、絶縁層44の厚さ、および/または、電極18間のピッチ47を低減する。これにより、逆の極性を有する複数の電極が、対象物の材料16に、より近づくようになるため、電界効果が増大する。具体的な実施形態では、装置10eは、16ミクロン厚の誘電材料を備えており、電極の間隔47は約1ミリメートルである。

電極18は、絶縁層44の同じ表面上にパターニングされてもよい。図6Bは、本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置10fを示す図である。静電付着装置10fは、コンプライアント絶縁層44の同じ表面23上に、交互に配置された電極セット60および62を備える。

この実施形態では、電極セット60の正電極18と電極セット6の負電極18との間の距離が小さく、静電付着装置10eの同じ表面上に両セットの電極を配置することが可能になっている。機能的には、これによって、電極セット60および62の間の間隔の内、絶縁層44に由来する部分がなくなる。また、上面23が壁に付着した時に、一方のセットの電極(先の実施形態において下面25に配置されていた電極)と、壁面12との間のギャップがなくなる。これらの変更はいずれも、静電付着装置10eと、付着対象物16との間の静電付着力を増大させるものである。

ミクロン規模での電極18のパターニングにより、クランプ圧の増大が可能である。マイクロマシニングについての別の実施形態は、絶縁された「まつげ」状の構造または規模に、電極をパターニングすることを含む。図6Cは、本発明の別の具体的な実施形態に従って、導電性のまつげ構造55を用いた静電付着装置10i(装置10eの変形例)を示す図である。まつげ構造55は、小さい変形可能な繊維状の構造を含み、粗い表面12との密着性を増大させる(図5参照)。

一実施形態では、各静電付着まつげ構造55は、シリコーンなどの誘電絶縁体に埋め込まれた2つの電極を有する。静電付着まつげ構造が、壁面12上の局所的な表面粗さに形状を合わせると共に、静電付着まつげ構造が取り付けられている柔軟な裏打ち(絶縁層44など)が、壁面12の全体的な凹凸に形状を合わせる。別の具体的な実施形態では、絶縁被覆を有する導電性のワイヤが、別の導電層で被覆されている。この場合、静電付着電圧は、絶縁被覆を介して、内部の中心にある電極と外部のリングとの間に印加される。図6Cの実施形態では、各まつげ構造55は、1つの電極だけを有しており、それらのまつげ構造は、図6Aまたは6Bのものと同様な平面的な電極に結合された容易に変形可能なコンプライアント毛状構造である。この実施形態のまつげ構造は、付着対象物の予想導電率によっては、絶縁体(図示せず)で被覆されてもよい。このような形状は、マイクロマシニングを用いて、規模によっては伝統的な成形または手作業を用いて実施可能であり、壁面12と静電付着まつげ構造の電極との間の有効ギャップが、上述のように、最初に、かつ、動的に、減少することを可能とすることで、大きいクランプ圧および静電付着力を実現する。まつげ構造を用いれば、全引きはがしラインが長い(各まつげ構造が、より大きい構造に比べて、断面積に対して長い周囲長を有する)ことから、引きはがし力への耐性も向上する。

パターニングされた電極18によって実現されるクランプ圧の増大は、設計によって変化および増大しうる。一実施形態では、サイズ45、および、静電付着装置における電極18間のピッチ47を小さくすることで、単位面積当たりの電界強度を増大させる。一般に、静電付着力は、電界強度の2乗の平均に比例する。また、サイズ、および、電極18間の間隔を大きくすると、電界分布における弱い領域または無電界領域が低減される。別の実施形態では、層44の絶縁材料20は、静電付着装置を通しての内部電荷漏れを最小限に抑えるように選択または変更される。また、これにより、クランプのための所要電力が低減される。また、材料が、装置の付着面として追加され、摩擦係数を増大させるように選択されてよく、そうすれば、同じ垂直クランプ圧であっても有効水平クランプ圧が増大する。

ここまで、2つの利用電圧の場合について、静電付着装置を説明した。さらに複雑な電力供給を想定する。図4Iは、本発明の別の実施形態に従って、静電付着装置10iを示す図である。

静電付着装置10iは、電極18に印加される複数の電圧の組み合わせを有する。この例では、3つの電圧V1、V2、および、V3が、交互に電極18に印加される。例えば、V1は約5キロボルトであってよく、V2は約0ボルトであってよく、V3は約−5キロボルトであってよい。この構成によれば、図4Iに示すように、電極上の電荷により、対象物16内で強度が異なるフラクタルな電界22が生成される。フラクタルな電界とは、電極およびそこに印加された電圧によって生成される異なった強度を有する電界を意味する。電極に関する他の間隔構成と共に、4つ以上の電圧レベルを用いてもよい。

対象物16内で異なる電界強度を有するフラクタルな電界22を生成するための別の実施形態では、位相シフトされた入力を電極18に印加する。この例では、制御回路は、時間的に変化する電圧を電極18に印加する。図4Iの3電圧パターンのための位相シフト入力の適切な一例を、図4Jに示す。他の電圧変化パターンを用いてもよい。電極間のピッチを変更しても、図に示したような異なる強度を有するフラクタルな電界22を実現することができる。

付着力を増大させるための複合的な一方法では、静電付着を、既存の壁移動方法と組み合わせる。例えば、度の付いた小さいスパイク(表面に食い込む)を、静電付着クランプ装置10に追加して、重力に逆らって前進運動を可能にする横力を増大させてもよい。

第2の複合型付着の実施形態は、静電付着を吸着カップと併用することを含む。例えば、吸着カップは、カップ用のリングの周囲に静電付着装置を備えてよく、それにより、その周囲が、壁面との密着を維持する能力が高まり、漏れが低減されて吸着力が改善される。吸着カップは、空気圧手段、ポンプ、または、電気活性ポリマ作動など、任意の適切な吸着カップ技術によって作動されてよい。

静電付着装置10は、引きはがしへの耐性を増大させるように改良されてもよい。図7Aないし7Cは、静電付着装置10に対する引きはがしを示す概念図である。図7Aおよび7Cは、引きはがしが起きうる場合に、垂直壁および天井について、結果として生じる引きはがしモーメント80および引きはがし力82を、それぞれ示す図である。

上述のように、静電付着装置10は、壁14に垂直および平行な力には強いが、図7Bに示す時計回りの引きはがしモーメント80など、装置10の一部が壁14から離れて回転および離脱する原因になる引きはがし力およびモーメントには弱い場合がある。静電付着装置10を対象物から引きはがすのに必要な力は、静電付着力(クランプ力によって測定されるもの)と、引きはがしラインの長さ(すなわち、付着している領域と離脱した領域とを分ける引きはがし領域におけるラインの長さ)とによって決まる。静電付着装置10を対象物から引きはがすのに必要な最小限の力は、ここで定義したように、その対象物に対する装置の最小引きはがし力である。

装置10についての最小引きはがし力が大きいことに加えて、総引きはがしエネルギが大きいとしばしば有利である。ここで定義される総引きはがしエネルギは、静電付着装置10を対象物から離脱させるのに必要な力学的エネルギである。材料の強度と同様に、総引きはがしエネルギは、引きはがし靱性の尺度と考えてよく、最小引きはがし力は、引きはがし強さの尺度である。総引きはがしエネルギは、しばしば、最小引きはがし力と、引きはがしによって取り外すために装置10を引く距離とを掛けたもので近似されてよい。本発明のコンプライアントおよび弾性の特性は、総引きはがしエネルギを増大させるために特に有用である。例えば、コンプライアンスが、柔軟な弾性体の層、フラップ、または、まつげ構造によるものであり、引きはがし力が、これらの弾性形状を目に見えるほど伸ばすのに十分である場合には、総引きはがしエネルギは、弾性引張エネルギによって増大される。高い総引きはがしエネルギは、一時的な衝撃、揺れ、および、振動などのかく乱に対する装置10の耐性を高めるため、これらの場合に有用である。

引きはがしモーメント80は、静電付着装置10が、まず部分的に、そして潜在的には上から下まで完全に、離脱することを引き起こしうる。部分的な離脱が、図7D(平面図)および7E(側面図)に示されており、図中、112は、まだ壁14に付着している静電付着装置10の表面の部分を示し、114は、すでに引きはがしの起きた壁12の一部を示している。引きはがしライン110の長さは、引きはがしが起きずに静電付着によって耐えることのできる力またはトルクの尺度になる。

一実施形態では、静電付着装置10は、引きはがし耐性を増大させるよう適合される。具体的な実施形態において、静電付着装置10は、引きはがしライン110の積算の長さを増大させることにより、壁から離脱させるための引きはがし力を増大させる。図7Fおよび7Gに示す静電付着装置10gでは、この解決法は、静電付着装置の領域30の全体(付着領域112および離脱領域114の両方から成る領域、図7Fを参照)を分割する格子構造116を用いて実現される。格子構造116は、ラインを分けることにより、静電付着装置10の引きはがしライン110の積算の長さを増大させる。格子構造116が、より引きはがし耐性の高い静電付着装置を提供すると、結果として装置10の曲げ剛性が増大することで、静電付着装置10が壁面12との密着を維持する能力を低下させ、クランプ力を低下させうる。クランプ力を補償して増大させる技術については、上述した。

図7Hおよび7Iは、本発明の別の実施形態に従って、引きはがし耐性のある静電付着装置10hを示す図である。静電付着装置10hは、付着面の反対側に、絶縁層44の表面によって少なくとも部分的に密閉された空間132内で相対的な減圧を形成する密閉されたプレナム構造130を備える。空間132の減圧は、コンプライアントな絶縁層44の変形を制限する。図7Hおよび7Iでは、密閉された空気室を示しているが、空洞内で、空気の代わりに、柔軟な弾性体、ゲル、または、液体を利用して、同様の引きはがし耐性を実現してもよい。

機能的には、静電付着装置10hが、壁14に付着すると、静電付着装置10hの引きはがしが、密閉された空間132の容積を増大させることになる。これは、空間132内の圧力を低下させ、それにより、減圧空間132は、さらなる引きはがしに抵抗する。この受動的な構造の変形例によると、壁および天井の静電付着力について、それぞれ、2.6倍および1.8倍の引きはがし力の増大が見られた。

以上、いくつかの単純な静電付着装置について説明してきたが、以下では、電極18および絶縁材料20について詳述する。

電極18は、電気エネルギを伝導する導電材料を含む。一般に、本発明での利用に適した電極は、付着のための電界を近くの壁または構造内に誘導する静電付着電圧を供給および伝達できれば、任意の導電体、形状、および、材料を含んでよい。電極は、静電付着装置の表面上に導電被覆として蒸着されてもよいし、内部に埋め込まれてもよい。導電被覆18または導電層は、炭素含浸ポリマ、金属溶射またはスパッタ被覆、もしくは、当業者が利用可能なその他の任意の適切な導電体など、任意の適切な電気の担体を含んでよい。電極18は、絶縁された電線または絶縁されていない電線から形成されてもよい。静電力は、通例、高電圧かつ低電流で作用するため、導電材料18は、高い導電性を有する必要はない。実際、炭素繊維またはその他の炭素粒子の通常の導電率は、非導電性のポリママトリクス内に混合されることによって低下したとしても、多くの場合、十分な大きさである。絶縁材料20内、または、別の材料の下に、電極18を埋め込めば、電極が保護される。

本発明は、様々な電極18の材料を利用してよい。一実施形態では、電極18は剛性である。剛性電極18に適切な材料は、銅、アルミニウム、金、真鍮などの金属、および、導電ポリマを含んでよい。

一部の例では、「剛性」電極の材料は、十分に薄い場合には、変形可能であるとみなされてもよい。例えば、アルミめっきされたマイラーまたは金めっきされたポリイミドは両方とも、薄い形状では容易に曲がりうるため、通例、かなり柔軟およびコンプライアントであるが、非伸縮性(非伸長性)である。電界を再び保持できるまで電極材料を局所的に蒸発させることにより、局所的な電気的破壊が自己回復しうることから、非常に薄い金属およびその他の導電体も有用である。この自己回復プロセスは、静電付着装置10をよりロバストにする。その関連の自己回復方法は、例えば、コンデンサの従来技術において、装置をよりロバストにする方法として周知である。「剛性」すなわち伸縮性のない材料からコンプライアントな電極を形成する別の方法では、電極を伸長することなく拡大できる面内または面外のコルゲーション(ジグザグ形状など)を備えるよう電極を形成する方法である。別の実施形態では、電極18は、コンプライアントであり、装置10に伴って形状を変化させる、または、伸長する。適切なコンプライアントかつ伸長可能な電極材料としては、炭素グリースまたは銀グリースなどの導電性のグリース、コロイド懸濁液、カーボンフィブリルおよびカーボンナノチューブなどの高アスペクト比の導電材料、並びに、イオン伝導性材料の混合物が挙げられる。他の適切な材料としては、グラファイト粉末、カーボンブラック、コロイド懸濁液、銀充填および炭素充填ゲルおよびポリマ、イオン伝導性または電子伝導性の伸長可能なポリマが挙げられる。具体的な実施形態では、本発明での利用に適した電極は、金めっきされたポリイミドまたはカプトンを含む。よりコストの低い代替物として、アルミめっきされたマイラーを用いてもよいが、特に接続領域において、ひびが入って「開」回路になる傾向が高い。別の具体的な実施形態では、カリフォルニア州カーペンテリアのNusil Technology社が製造するLSR 5810シリコーン弾性体と、ジョージア州アルファレッタのCabot社が製造する導電性カーボンブラック(Vultan(R)XC72R)とを、5:1の比率で混合することによって、伸長可能な電極を形成してよい。ナフサまたはヘキサンなどの溶媒を用いれば、混合または蒸着中の電極の粘度を下げることができる。本発明での利用に適した様々な種類の電極が、コンプライアントな導電体の従来技術において周知であり、その例は、共同所有の米国特許No.7,034,432に記載されている。この特許は、参照によって全体が本願に組み込まれる。

炭素系の電極が、例えば、噴霧蒸着およびスクリーン印刷によってパターニングされてもよい。具体的な実施形態では、コンプライアントな電極18は、絶縁材料20の表面に対して選択領域またはパターンで施された薄い被覆を含む(図6Aおよび6B)。例えば、コンプライアントな電極は、ステンシルでパターニングされた炭素含浸弾性体を含んでよい。コンプライアントな電極18は、変形可能な静電付着装置10に対して、ほとんど剛性を追加しない。さらに、炭素含浸ポリマは、静電付着装置10に対して、ほとんど厚さを追加しない。具体的な一実施形態では、炭素系の電極は、静電付着装置10上で、図6Cで説明したまつげ形状の構造を形成するように蒸着されてよい。別の実施形態では、電極は、材料を除去することによってパターニングされてよい。例えば、アルミめっきされたマイラーシート上のアルミニウム被覆の特定領域をエッチング除去または剥離除去すれば、マイラー基板上に、パターニングされた電極を残すことができる。

絶縁材料20は、隣接する電極18から電荷を分離して、第1の電極と第2の電極との間の静電付着電圧を実質的に維持しうる、または、その他の方法で、静電付着電圧を供給する電源が、静電付着電圧を維持することを可能にする任意の材料を含む。一実施形態では、電極18間の間隔が、絶縁材料20の導電率の限界を決定する。つまり、電極18が近すぎる場合、良好な絶縁体であっても、装置10で利用されうる高電圧では弱い導電性を有しうる。一部の例では、エアポケットが、電極18間の効果的な絶縁体として機能しうる(例えば、図4Gまたは5B参照)。

一実施形態では、絶縁材料20は、コンプライアントな材料を含む。具体的な一実施形態では、絶縁材料20は、約10MPa未満の弾性率を有する。別の実施形態では、絶縁材料20は、約1MPa未満の弾性率を有する。

絶縁材料20は、より剛性の材料を含んでもよい。マイラーなど、一部の剛性材料は、薄く成形されることが可能であり、それによって、その薄い材料は、屈曲可能で形状を合わせることが可能になるが、実質的に弾性伸縮しない。より大きい荷重を支えるために、より剛性で強い絶縁材料20を用いてもよい。

絶縁材料20の具体的な例としては、コンプライアントなゴムまたは弾性体、アクリル弾性体、マイラー、ポリイミド、シリコーン、シリコーンゴム、パイラリン、PMDS弾性体、シリコーンゴムフィルム、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ニトリル、ラテックス、グラスファイバ、グラスファイバ布、ガラス、および、セラミックが挙げられる。1つの適切な絶縁材料20は、コネチカット州ウィルトンのGE Silicones社が提供するシリコーンRTV118である。PVCフィルム(食品包装用のラップとして広く利用されている)も、利用に適しており、良好なバランスの弾性、弾性率、および、絶縁破壊強度を有する。これらの材料は、強化された静電気を有するよう形成されるため、低い漏れ率および高い絶縁破壊強度を有する。PVCフィルムに対する絶縁破壊試験により、250ないし550V/ミクロンの絶縁破壊強度を有することがわかったが、これは、静電付着に必要な最小値よりも十分に高い。別の適切な材料は、マイラーであり、絶縁破壊強度が優れていると共に固有の漏れが低い(そして、電力消費が小さい)。

静電付着装置10は、任意のフォームファクタ、形状、および、サイズでパッケージングされてよい。パッド付きの平坦な静電付着装置10については、すでに説明した。静電付着軌道(地面での移動に適している)が、図10Aないし10Cに図示されている。静電付着装置タイヤが、図11Aおよび11Bに図示されている。また、支持構造24を硬くまたは柔軟にすることができれば、様々な表面性状を有する特注の形状が可能になる。静電付着装置10は、実質的にスケールの影響を受けないことに注意することが重要である:静電付着装置のサイズは、表面積で1平方センチメートルから数平方メートルの範囲であってよい。それよりも大きいまたは小さい表面積も可能であり、サイズは、用途に応じて決められてよい。

静電付着装置10は、様々な材料16、構造14、および、表面12に付着できる。表面12の例としては、以下のものが挙げられる:屋内および屋外の壁;自然環境で見られる岩、木、およびその他の障害物;橋梁および貯蔵タンクの側面などの傾斜構造;天井;ドアおよび窓。屋内および屋外の壁は、垂直の壁、傾斜した壁、天井などを含んでよい。構造14の例としては、以下のものが挙げられる:建造物およびその部分;木;車;飛行機;ボート;装置または装置10を利用するロボットよりも大きいその他の乗り物;橋梁;貯蔵タンク;配管。

また、本明細書に記載されている静電付着は、様々な壁の材料に対するロバストな付着を提供する。壁の材料としては、コンクリート、木材、ガラス、プラスチック、セラミック、御影石、岩石、アスファルト、および、金属、が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、本発明は、日常的に建造物内で一般的に見られるほとんどの壁材料(コンクリート、木材、鋼鉄、ガラス、乾式壁など)に対して機能する。湿った表面、埃っぽい表面、平坦でないおよび/または粗い表面など、完全ではない条件および表面も、付着に適する。粗い表面は利用に適しており、すでに、図5Aないし5Cを参照して上述した。

電気制御および回路 静電付着装置は、通例、電気制御および入力に依存する。例えば、少なくとも、静電付着電圧を静電付着装置10に供給するために、最小限の回路が必要である。図8は、本発明の一実施形態に従って、適切な静電付着電圧を静電付着装置10の電極18に供給するのに適した制御・調整回路150を示す図である。

制御回路152は、適切な静電付着電圧が電極18に印加される時を決定するよう構成されている。回路152は、静電付着電圧が印加される時とそれらの大きさとを決定するオン/オフ信号を供給するプロセッサまたはコントローラを備えてよい。回路152は、静電付着装置10の充放電サイクルに関する時間を決定してもよい。

調整回路154は、以下の動作の1または複数を実行するよう構成された任意の回路を備えてよい。それらの動作とは、電圧の上昇(電極18に電圧を印加する際に利用される)、ACおよびDC電力間の変換、電圧の平滑化、および、蓄積された静電エネルギの回収、である。調整回路154は、低電圧バッテリ156から電力を受けるよう設計されてよい。例えば、ロボット工学用途では、調整回路154は、従来のバッテリ(40ボルト未満のものなど)から電圧を受けて、その電圧を、約1キロボルトの静電付着電圧に上昇させてよい。バッテリなどの低電圧電源の代わりに、多くの手持ち式の計算機で利用されているものと同様の小型太陽電池パネルなど、別の電源を用いてもよい。一実施形態では、調整回路154は、本明細書に記載した静電付着電圧への電圧上昇を実現するよう構成された変圧器を備える。具体的な一実施形態では、調整回路154は、カリフォルニア州サッタークリーク、フォレストプロダクツロード70のEMCO High Voltage社が提供するモデルNo.Q50−5を備える。リード線158が、調整回路154から共通電極71に伸びており、共通電極71は、静電付着装置10の複数の電極18と同時に通信する。

静電付着装置10の構成によっては、より複雑な充電制御回路が開発されてもよく、図8の設計には限定されない。また、回路機能の一部が統合されてもよい。例えば、1つの集積回路が、電圧上昇回路154および充電制御回路152の両方の機能を実行してもよい。

静電付着装置10に供給される電圧は、様々であってよい。一実施形態では、AC駆動が電極に対して用いられる。一部の例では、誘電性の対象物における静電力は、安定したDC駆動下で時定数にわたって緩和することが示されている。この現象は、電荷をトラップした場合の絶縁体20でも起こりうる。しかしながら、コンプライアントな電極18の各々における電荷の極性を高頻度で交代させることにより、静電力を維持または強化することができる。具体的な一実施形態では、AC信号は、1Hz以上の周波数を有する。それよりも高いまたは低い他の周波数が用いられてもよい。別の実施形態では、複数セットの電極18が、時間オフセットまたは位相シフトされた複数のAC電圧を印加されて利用される。これは、あるセットのAC電圧が一時的に0電圧差を通過する時に、別のセットの電極18が静電付着力を維持することを可能にする。別の実施形態では、DC駆動が、電極に提供されてよい。DC駆動の例の一部では、電圧がオフに切り替えられた時に迅速な解除を実現するために、適度に低い絶縁体の抵抗が、漏れ経路を提供してよい。別の例では、所望の時に解除を行うために、DC駆動と逆極性の一定量の電荷が、電極18にパルス供給されてよい。この場合、一定量の電荷は、静電クランプ20と等しい静電容量を有する外部のコンデンサまたは調整回路154の一部であるコンデンサから供給されてよい。

静電付着装置10の切り替え時間および応答時間は、電極18に対して用いられる電気装置および信号によって異なる。5Hzの信号は、時間周期の10分の1の電圧上昇時間を有し、20ミリ秒の充放電サイクルを提供する。

一般に、静電付着は、対象物に付着するための少量の電力を必要とする。静電付着は、主に、容量性の装置と考えてよいため、所要電力は小さい。これは、漏れ電流を最小限に抑える(ほとんどの例では、マイクロアンペアまたはナノアンペアのオーダー)ために絶縁材料20の適切な選択をすれば、無効電力が小さいままになることを示している。絶縁体20の抵抗率は、漏れ電流が許容可能である限りは、トラップされた電荷が問題になる場合に、低減されてよい。

ロボット工学およびその他の用途における所要電力を評価する助けとなるように、静電付着の迅速な電力モデリングを提供する。これは、移動を行わないパーチ(perch)位置すなわち停留位置にあるロボットの持久力を理解するのに、特に有効である。その時も、ロボットは、長時間、壁または天井への付着を維持する必要がある。

説明のための例として、15平方インチの静電付着面積は、0.1psi(0.6896kPa)の静電圧力(湿った表面および粗い表面ならびに粒子が存在する可能性に対応できる控えめなクランプ圧)で、1.5lb(680.4g)のロボットの重量を支えることができる。この面積は、多くの設計について、3平方インチまで低減されてよい。電極の面積は、装置10の接触面80の総面積の50%と概算することができる(例えば、1ミリメートルの間隔で配置された1ミリメートル幅の電極)。静電付着の静電容量は、装置10が付着されている対象物16によって決まるが、対象物20が鋼鉄などの導電材料である場合には、絶縁材料20の厚さを介して静電容量を近似することによって、簡単な推定値を得ることができる。非導電性の対象物についての有効電荷経路がより大きく、その結果、静電容量が小さいことから、この推定値は控えめなものになっている。平行板コンデンサの静電容量は、以下の式で表される。 C=εoεrA/d (式2)

ここで、εrは、対象となる材料の誘電率であり、εoは、自由空間の誘電率であり、Aは、装置10の電極の面積であり、dは、電極18間の絶縁された電気路の長さである(すなわち、導電性の対象物およびその他の導電体を通る長さを除く)。4.7の誘電率と約25ミクロンの厚さとを有するアクリルを絶縁材料20として用いる場合、式1によると、3平方インチ(19.35平方センチメートル)の面積に対しては、0.8nFの静電容量となる。この抵抗器を充放電するために必要な電力は、以下の式によって与えられる。 P=1/2・CV2Fη (式3)

ここで、Vは、静電容量が充電される電圧(例えば、3ないし4kV)であり、ηは、低電圧から高電圧への変換の効率であり、Fは、充放電の周波数である。以下で説明するような車輪付きのロボットについては、車輪が回転すると充電および放電が起きる。例えば、以下で説明するような整流器が利用される。しかしながら、ロボットが静止している場合には、一部の対象物ではクランプ力を徐々に低下させうる対象物内での電荷の蓄積を防止するために、コンプライアント電極は、双極AC電圧で充電されてよい。説明のために、20HzのAC充電/放電周波数と、50%の効率とを仮定して、装置10は、0.26Wの電力を利用することとする。

一部の例では、絶縁材料20の漏れ抵抗に打ち勝つために、さらなる電力が必要になりうる。2つの連続する電極18の間の抵抗は、かなり大きい(例えば、ギガオームのオーダー)ため、それに関連する漏れ電流は、マイクロアンペアまたはナノアンペアのオーダーである。そのため、I2Rの抵抗損失は、コンプライアント電極の間の実効静電容量を充電および放電するために必要な電力のごく一部である。

次の章で説明するような完全に機能するロボットでは、移動のための電力のほとんどは、地上車両と同様に、駆動モータおよび通信装置のためのものである。上述の解析は、各サイクルからの電荷が、抵抗器またはその他の手段を通して散逸されることを仮定していることに注意されたい。電荷を回収し、コンデンサを横切って往復させるさらなる回路を用いれば、電子効率は、80%を超えることが可能であり、それにより、クランプによって停留するために必要な電力が小さくなり、パーチモードのロボットの持久力が増大する。多くの場合そうであるが、ACの充放電が必要なければ、必要な電力ははるかに小さくなることにも注意されたい。例えば、多くの表面および静電付着装置10の構成では、DC電圧が良好に作用し、電力をオフにする必要なしに、簡単に装置10を引きはがして取り外すことができる。引きはがしは、手動で、または、ロボット側で行われてよく、静電付着装置の一部が、他の部分が付着された状態で引きはがされてもよい(例えば、静電付着車輪またはトレッドを用いる。以下のロボットの説明を参照)。DC電力を利用できる場合には、電力消費を劇的に低減することが可能であり、一実施形態では、1lb(0.45kg)のロボットを壁上で保持するために必要な電力は、100マイクロワットだけでよいと推定された。

図9は、本発明の一実施形態に従って、静電付着を用いて物体を付着させる方法200を示す図である。

方法200は、通例、対象物の表面に近接するように静電付着装置を配置する工程(202)で始まる。ロボットに関連して以下で述べるように、これは、車輪または軌道などの機械的な手段を用いて自動化されてよい。図16Aの両面静電付着装置600の場合には、ユーザが手動で配置してもよい。

次いで、静電付着装置の電極と電気通信する制御回路が、差動静電付着電圧を電極に印加する(204)。一部の例では、工程202および204は逆転されてもよく、すなわち、最初に、電圧が電極に印加された後に、静電付着パッドを対象物の近くに配置するようにしてもよい。電圧差は、実質的に同時に印加されてもよいし、異なる時に印加されてもよい。静電付着装置と対象物との間に付着のための電界および静電力を生成するための適切な静電付着電圧については、すでに説明している。

絶縁材料20が、電極の隔離を維持すると共に、静電付着のための電圧差を維持する(206)。これは、静電付着装置と対象物との間で、付着のための電界および静電力を維持する。

次いで、装置は、対象物に付着する(208)。別の実施形態では、静電力は、表面に対する静電付着装置の静止摩擦を増大させるために利用される。増大された静止摩擦は、傾斜または低くて滑りやすい表面(例えば、氷など)での(ロボットまたはその他の装置)の移動に有用である。

一実施形態では、静電付着装置が、電極の間に、および、対象物の表面に、変形可能な材料を含む場合に、コンプライアンスによって、電極がより表面に近づくことを可能にし、静電付着力および付着の強さを動的に増大させる(210)。これについては、図5Aないし5Cを参照して上述した。

例えば、静電付着装置を壁に対して移動させるために、静電付着を停止したい場合には、制御回路が、静電付着差動電圧を取り除く(212)。静電付着装置が別の位置に移動される場合には、方法200は、必要に応じて繰り返されてよい。他の例では、静電付着電圧は、常にオン状態であってよく、ロボットは、電圧をオフにすることなく静電付着装置を機械的に引きはがすことによって移動される。

装置および用途 電気的に制御された付着は、様々な装置および用途での幅広い利用が可能である。例えば、壁移動のために設計および適合された多くの装置が、本明細書に記載された静電付着装置および方法の利用に適している。以下で詳述するいくつかの例は、壁移動ロボット、壁移動のために人間が身につける静電付着装備、および、梯子の上側または全長が壁に付着して人間が梯子を登ることを可能にする静電付着梯子を含む。多くの他の装置が、本明細書に記載された静電付着装置および方法を用いてよい。

この章の多くの装置(ロボットなど)は、ロバスト性能を可能にする。それらの装置は、1秒未満の静電付着の応答速度で付着および離脱すること、粗い表面に形状を合わせて付着すること、埃っぽいまたは湿った環境で動作すること、互いに直角の壁の表面の間で移動すること、などが可能である。さらに、静電付着装置による重量の追加はほとんどなく、多くの独立型のパッドは、1オンス(28.35g)未満の重さであってよい。

以下では、多くのロボットの設計例について説明する。一実施形態では、壁移動ロボットを実現するために、静電付着を利用する。これは、車輪または軌道を用いるもの(図10ないし12)など、回転式の移動手段を有するロボットに静電付着装置を追加することを含んでよい。

図10Aは、本発明の具体的な一実施形態に従って、壁移動ロボット350aを示す図である。ロボット350aは、シャーシ354の左右に2つの軌道352を備える。一部の例では、シャーシ354の左右それぞれの側に取り付けられる1つの連続的な静電付着装置が用いられてよい(コンベヤベルトと同様)。

シャーシ354は、ホイール354の間の構造的な支持を提供し、ホイールは、1または複数の軌道352と連動する。シャーシは、さらに、バッテリまたはその他の電源、ホイール354を回転させるための1または複数のモータ、無線通信装置およびインターフェースなど、ロボット350の移動に必要な小型の構成要素すべてと、カメラなどの積載物と、を備える。

軌道352は、外面上に1または複数のコンプライアント静電付着装置を備える。一実施形態では、静電付着装置は、途切れることなく、軌道の長さに沿って、連続的に連なっている。軌道352の機械構造、および、その上に配置されたコンプライアント静電付着装置の両方が、粗いまたは平坦でない表面に形状を合わせることができる。軌道352は、それほどの質量を必要とせずに、大きい静電付着表面積を提供する。さらに、軌道は、非構造的および予測不能な地形(平地および垂直の両方)上で移動するために、信頼性の高い、ロバストな、実証された方法を提供する。

旋回するために、片方または両方の軌道352が、表面に対して滑る。旋回中には、片方または両方の軌道352と表面との間の静電付着は、低減されてよい。さらに、個々の軌道352上の静電付着圧の制御を利用して、追加の機構なしに車両の操縦を行うことが可能であり、それによって、単純および軽量の操縦機構を実現できる。別の例では、軌道352の速さを、ロボットの一方の側において、他方の側に対して変化させてもよい。

図10Bは、本発明の別の具体的な実施形態に従って、壁移動ロボット350bを示す図である。ロボット350bは、複数の部分372および374と、部分372および374の間の旋回を実現するヒンジ376とを備える。以下で説明するように、これにより、水平の表面(床または天井)と垂直の表面(壁)との間の移行が容易になる。図10Cは、壁移動ロボット350bが、水平の表面380から、垂直の壁382、さらに別の水平の表面384へと移動する様子を示す図である。

図10Bによると、部分372および374は、それぞれ、ヒンジ376を中心に互いに対して旋回することが可能であると共に、それぞれ、壁面への付着を独立的に維持することができる。これにより、壁移動ロボット350は、例えば、建造物の内側および外側の角を首尾よく通過することができる。図には示していないが、ロボット350は、3、4、10、または、それ以上など、3以上の部分を備えてもよい。

ヒンジ376は、部分372および374に結合して、部分372および374の間の回転運動を可能にする。ヒンジ376は、受動的なものであってもよいし、関節付きのものでもよい。関節付きヒンジ376は、アクチュエータを用いて、ヒンジを制御可能に回転させ、一方の部分を他方の部分に対して動かす。例えば、アクチュエータは、トルクを供給するために、送りネジ・モータ装置、または、ギヤボックスを備えたモータを備えてよい。関節は、互いに直角な表面を通過するために、90度またはそれ以上回転するよう動作してよい。受動的なヒンジ376は、部分372および374から掛けられる力に反応する。

図10Cに示すように、内側の角381(例えば、床380から垂直の壁382)に対しては、前の(上側の)部分374は、登ることで上に向かって折り曲がり、後ろの(下側の)部分372は、上側の部分374が垂直の表面12にクランプするまで、静止摩擦および静電付着を提供する。図には示していないが、壁移動ロボット350は、(例えば、ホイールの方向を逆転させることにより)前向きおよび後ろ向きの両方に移動することが可能であってよい。この例では、部分372が、前の部分になり、部分374が、後ろの部分になる。

外側の角385(垂直の壁382が上面すなわち屋根384につながる部分)に対しては、前の部分374が、最初に、屋根384(垂直の壁382に対してほぼ直角)に接触し、次いで、それによってロボット350の残り部分を引っ張る。ロボット350の半分の移行が達成されると、後ろの部分372の付着をオフに切り替えることが可能であり、その場合、後ろの軌道が屋根384の表面に付着するまでは、ロボット350は前輪駆動車として動作する。これにより、互いに直角な表面間を容易に移行できるようになると共に、電力消費が低減される。

具体的な一実施形態では、ホイール354の一部が、受動的なホイールであり、回転動力を提供しない。別の具体的な実施形態では、ホイール354の一部は、バネが設けられており、ロボットが上を向く時に壁との接触の量を維持および増大させるために少し移動することができる。

図7Aないし7Iを参照して上述したように、静電付着装置は、引きはがしに耐えるよう適合されてよい。また、ロボットの重心は壁面から離れているため、引きはがしは、ロボットが静電付着装置にトルクを掛ける時に、ロボットにとって問題となる。

ロボットに対する引きはがしトルクを低減するための一技術は、ロボットをできるだけ薄く平坦にすることである。ロボット350は、また、ロボットが壁からはがれないように、壁14に垂直なクランプ力を作用させる。簡単な例では、5N(約0.5kgまたは1lbの質量)の重さの薄型のロボットは、壁面12から0.075m(約3インチ)に位置する質量中心を有する。この例では、作用する引きはがしトルクは、5N×0.075m、すなわち、約0.375N・m(約3in−lbs)である。底部で旋回し、長さに沿って大体一様に分布した静電付着クランプ力を有する0.25m(10インチ)長のロボットについては、平均のモーメントアームは、底部から約0.125m(5インチ)となり、必要な垂直のクランプ力は、約0.375N・m/0.125m=3Nである。1.5kPa(約0.2psi)の適度なクランプ力を想定すると、必要な3Nのクランプ力は、様々な壁面上のほとんどの静電付着材料について、3N/(1500Pa)=0.002m2すなわち3.1平方インチのサイズを有する静電付着装置で実現可能である。一般に、より粗い表面は、ロボットをさらにロバストにするために、より大きいクランプ力すなわちより大きい静電付着装置を必要とする。

引きはがしを低減するための別の技術は、図10Bに示すように、2連結の軌道付きロボット350bを利用する。ロボット350bは、2つの軌道部分、すなわち、前方部分374と後方部分372とを備える。一実施形態では、前方部分374は、受動的な後方部分372よりも小さく、後方部分によって前方に押される。この例では、後方部分372は、ロボット350bを移動させるためのモータおよびギア装置を備える。

垂直の壁を登るロボット(図10C参照)については、通例、重心のずれによる引きはがしモーメントが、最下点を中心にロボットを回転させようとする。前方部分374は、後方部分372に掛かるこの引きはがしモーメントを打ち消す力およびモーメントを提供する。静電付着装置を軌道354に沿って効果的に分割して完全に引きはがされることを妨げるために、各部分の軌道354上に、リブすなわち剛性の横材を追加してもよい。静電付着を利用する多くのロボットに、機械的な延長部分すなわち「テール」を追加することができる。テールは、回転点を低くするため、モーメントアームを長くすることにより、引きはがしトルクに耐える静電付着の有効性を増大させる。

図11は、本発明の別の具体的な実施形態に従って、つぶれタイヤ(フラットタイヤ)構成の静電付着を利用する壁移動ロボット400を示す図である。簡単のために、装置350に含まれないロボット400の特徴だけを説明する。したがって、シャーシ372およびバッテリなどの構成要素については詳述しない。

ロボット400は、4つの低圧のタイヤ402の外面上の外周のまわりに配置されたコンプライアントおよび弾性の静電付着装置10を備える。各タイヤ402は、その上に配置された静電付着装置10と、付着されるべき表面との間の接触面積を増大させるために、低圧のタイヤに似せている。

各タイヤ402は、2セットのコンプライアント電極404、すなわち、内側の電極セット406のコンプライアント電極404と、外側の電極セット408のコンプライアント電極404とを備える。電極セット406および408は、それぞれ、実質的にタイヤ402の幅にわたって伸びると共に互いに円周方向にずれて配置された指状の電極404を備える。

一実施形態では、絶縁性およびコンプライアントな層(コンプライアントな材料を含む層であり、図11Aには図示されていない)が、電極セット406および408を分離している。具体的な一実施形態では、絶縁層は、絶縁性の弾性体層を含む。電極セット406および408は、電極406および408の間のギャップにわたって電気的破壊を防止するために、絶縁層を挟んで互いに反対側に配置される。別の実施形態では、電極406および408は、コンプライアントな基板の同じ側に配置されてもよい。これは、薄い絶縁層の内側であってもよいし、基材に直接接触するその層の外側であってもよい。

電極セット406および408は両方とも、外側層の下でタイヤ402内に埋め込まれる。ただし、外側層は、図11Aでは電極が見えるように透明になっているため図示されていないが、実際には、透明である必要はない。電極間絶縁層および外側層は、電極406および408がタイヤ表面の近くに留まるように、通常は薄くなっている。

動作の際に、つぶれタイヤ402は、電極と表面12との間の接触表面積を増大させる。図5Aないし5Cの方法に関して上述したように、タイヤおよびその上に配置された静電付着装置10のコンプライアンスにより、接触表面積を動的に増大させて、より大きい表面積での付着、および、より大きい付着力を提供することが可能になる。一部の例では、膨張したタイヤからの静電付着力が壁登りの際の支えに十分である場合には、タイヤをつぶす必要はない。かかる例では、ロボットを前方へ駆動するのに必要な電力は、つぶれタイヤを用いる場合よりも低くなりうる。

電気的に、対象物表面の近くのコンプライアント電極404の駆動は、ロバストなクランプおよび迅速な離脱(車両の移動を妨害しないように)の両方を実現するために、双極AC電圧を利用してよい。AC電圧は、ロボットが静止している時に、対象物または絶縁体にトラップされた電荷によって時間と共にクランプ力が低下することを防止するのにも有効である。電極の駆動停止により、通常の動作中に車輪402(または、軌道)に付着して付着の効率を低下させうる埃、湿気、またはその他の物質の除去が可能になる。したがって、付着面の静電付着をオフに切り替えることにより、埃の粒子が、車輪402(または、ロボット350の軌道)に積極的に付着しないようになるため、以下で詳述するように、単純で受動的なクリーニング装置(ブラシ432など)によって、車輪または軌道上の任意のさらなるごみを除去すること可能になる。一部の例では、上述したように、DC電圧を用いれば、十分な静電付着力を維持するのに十分である。ブラシは、対象物に付着する静電付着面をきれいに掃除することにより、DC動作でも役立ちうる。DCモードでは、埃およびごみは、臨界面(critical surface)から落ちうるまでは、ブラシの位置に蓄積しうる。

ACモードでは、タイヤ402の回転における選択された時間に、コンプライアント電極に対して電荷を行き来させるために、電気整流器が利用されてよい。整流器は、タイヤが表面12と接触している時(または直前)に、回転する車輪402の最下部の角度において電極404に電荷を印加して、対象物と接触しない最上部または側方での回転角度で、クリーニングのために、この電荷を除去するように構成されている。したがって、整流器は、電気エネルギが電極セット406および408に供給される時間を制御することによって、静電付着装置の回転中の静電付着および駆動を選択的に実行できるようにする。整流器は、比較的簡単なものであり、車輪の回転の適切な部分への双極AC信号の印加と、多くの信号を必要とせずに、車輪の回転の他の部分からの電荷の除去とを可能にする。本発明での利用に適した多くの整流器が、様々な製造供給元によって市販されている。整流器は、適切な高電圧能力を有する場合には、静電付着装置に対して高電圧をやり取りしてもよい。あるいは、整流器は、タイヤ内部の小型電圧変換器に、または、1つの高電圧源を複数の適切な電極につなぐタイヤ上の高電圧スイッチ(半導体高電圧スイッチ)に、低電圧電力を送ってもよい。整流器の代わりに、選択的な回転電気駆動のためのスリップリングまたはその他の機構を、場合によっては、高電圧に対応するために絶縁性の強化または有効チャネルの数の低減と組み合わせて、利用してよい。利用に適したスリップリングの一例としては、バージニア州ブラックスバーグのMoog社が提供するモデルAC246が挙げられる。制御された回転電気供給のための整流器またはその他の機構は、小さい改造を行うだけで、本明細書に記載した他のロボット(すなわち、軌道またはフラップ付きタイヤを備えたもの)で利用可能であることに注意されたい。

電力を電極に供給するための別の技術も利用に適している。また、ブラシを備えずに、電圧バスが、所望の回転位置でスポーク418に接触することで所望の角度において静電付着装置を駆動するように、ロボット400の本体372に対して固定されてもよい。別の具体的な実施形態では、ロボットは、回転する静電付着面に信号を供給するために、4ないし8のチャネルを有する高電圧スリップリングを用いてもよい。車輪または軌道の各領域は、対象物の表面に近づいた時に、スリップリングの1つのチャネルに接続して駆動される。この例では、壁または地面に対する各領域の位置を判定するトリガーセンサを用いて、入力電圧を指示してよい。

ロボット400は、簡単な操縦を実現する。実際に、変形された車輪を備えた既製のロボット(例えば、つぶれタイヤ402および整流器の追加などをするために)を、ロボット400に利用することができる。さらに、独立した車軸436を各車輪に備えれば、旋回を実現するのに必要な滑りが最小限になり、必要であれば、常に、完全な静電付着クランプ力を適用することが可能になる。ロボット400に対する変形例が可能である。他の適切な構成は、ロボットの剛性車輪に組み込まれた同様の静電付着装置10を含む。

ロボット400は、さらに、静電付着装置10とタイヤ402の表面とをクリーニングするよう構成されたクリーニングシステムを、随意的に備える。クリーニングシステムは、パッドと壁面との間に存在しうる湿気、埃、および、その他の異物粒子を除去してよい。クリーニングシステムは、本明細書に記載した他のロボットに追加されてもよい。例えば、クリーニングシステムは、軌道352から粒子および湿気を除去するために、ロボット350に追加されてもよい。

クリーニングシステムの構成要素は、付着パッドから除去される物体によって変更されてよい。例えば、クリーニングシステムは、通常は壁に接触しない位置にタイヤが回転した時にタイヤ402上の静電付着装置に接触するブラシ432(図11Bまたは10A参照)を備えてよい。ブラシ432は、非常に良好に粒子を除去する。あるいは、クリーニングシステムは、タイヤ402または軌道352の非付着位置において、それらの静電付着装置から、埃粒子および湿気の両方を除去する発泡材料を備えてもよい。除去されうる他の物質としては、オイル、土、ガラス、および、その他のごみが挙げられる。

一実施形態では、クリーニングシステムは、パッド10がロボットのために壁にクランプする場所に干渉しないような静電付着装置10の移動経路上に配置される。ロボット400は、タイヤ402の回転経路に沿った側方位置(最下位置および最上位置ではない)を利用して、静電付着装置10がブラシ432に接触することを可能にすることで、各タイヤ402の表面を連続的にクリーニングする単純な受動的クリーニングシステムを実現する。通例、車輪または軌道がクリーニングパッドに接触する時には、付着を(例えば、整流器を用いて)オフにすることで、ごみおよび液体の除去を可能にする。付着状態ではない装置をクリーニングするために掛ける必要のある圧力は小さいため、クリーニングシステムは、パッドのクリーニングを持続するために、追加の電力をほとんど必要としない。

図12は、本発明の別の具体的な実施形態に従って、壁移動ロボット450を示す図である。ロボット450は、車輪454から外に向かって放射状に伸びる柔軟な静電付着装置452を備える。

各静電付着装置452は、比較的平坦であり、車輪454に結合する第1の端と、第2の自由端とを有する。構造的には、各装置452は、フラップに似ている。各車輪454が回転すると、各車輪における静電付着装置452は、車軸を中心に回転し、そのうちに、a)対象物16の表面に接触し、b)車輪454の下で平らになる。両方の位置で、静電付着装置452は、付着力を対象物16に提供する。累積的に、対象物16の表面に接触する複数の静電付着装置452は、垂直の壁、傾斜した壁、天井などで、ロボット450を高所に保持するために十分な力を提供する。一実施形態では、静電付着装置452は各々、ゴムなどの柔軟な材料を絶縁材料20として備えており、それによって、装置は、容易に変形できるようになっている。

フラップ型静電付着装置452は、上述のロボット350の軌道352に追加されてもよい。この例では、屈曲可能であるが実質的に伸縮しないフラップ452の一端が、トラック352に結合し、他端が、結合端に対して自由に変形できるようになっている。各軌道352が回転すると、各軌道の上のフラップ型静電付着装置452は、そのうちに、a)対象物16の表面に接触して、b)フラップが壁に付着した軌道の下側にある状態で、軌道352の下で平らになる。この設計は、フラップ型静電付着装置452が壁に接触する期間を長くして、ロボットと壁との間の静電付着接触面積を増大させる。さらに、ロボットを支えて駆動するための荷重が、各フラップの底面に掛けられ、実質的にフラップの面内の方向にあることから、フラップ452は、引きはがしへの耐性を増大させる。また、フラップ452は、軌道の下側において、長くなった接触時間を利用して、図5Bおよび5Cに示したように、動的に接触を増大させてもよい。かかるロボットが、構成され、多くの材料の垂直壁を登ることが可能であり、毎秒約1フィートの速度に達する。

図に示すように、ロボット450は、さらに、ヒンジ376と、それに結合された2つの部分とを備える。ロボット450の別の実施形態は、図10Aまたは11Aのシャーシと同様の1つ部分を備える。旋回時に、ロボット450は、図11Aのつぶれタイヤ設計と同様に、低減されたパッド452の滑りを利用する。別の例では、表面に対する滑りを必要とせずに旋回するために、間に関節付きのヒンジを備えた2つの並列配置の装置を用いることができる。図には示していないが、ヒンジ376と、複数の部分372および374とは、図11Aおよび12の車輪付き設計で利用されてもよい。

上述のロボットは、粗い、埃っぽい、および、時に湿った環境など、様々な外部の表面をロバストに登ること、内部の表面上で移動すること、少なくとも1つの表面への付着を維持しつつ、互いに直角および他の角度の付いた表面の間で移行すること、垂直の壁または天井上にかなりの期間動かずに留まること(「パーチング」とも呼ぶ)、が可能である。上述の静電付着を利用するロボット以前には、これらの機能すべてを実行できるロボットは、長年研究されていたものの存在しなかった。これは、制御可能な静電付着によって壁移動が飛躍的に進歩することを示唆する。

本明細書に記載されたロボットは、様々な作業に適しており、これらの作業に従って積載物を運んでよい。例えば、ロボットは、危険な領域または離れた領域での調査のためにカメラを運んでよい。他の積載物を運んでもよい。カメラで撮った画像を中継するための通信装置および/または遠隔制御を可能にするための通信装置などの通信装置も有用であり、ロボットに積載されてよい。かかる調査ロボットは、複雑で非構造的な地形(ランダムな建造物など)での移動に有用であり、特に、様々な偵察およびその他の軍隊または警察での任務のために都会の環境で有用である。

警察署、消防署、軍隊、および、産業界で、アクセス不能および/または敵地の環境に送り込むことができる小型のロボットの必要性がある。本明細書に記載されたロボットは、それが可能であり、一般的に遭遇する対象建築物における地面、壁、および、天井で三次元的に移動することが可能であり、必要であれば、容易にそれらの表面をまたいで移動できる。壁または天井の長期間(60時間以上)パーチする能力、または、バッテリの充電を必要とせずに三次元的に3時間連続移動できる能力も、これらの用途の多くで有用である。ユーザインターフェースによるロボットの制御を可能にする通信リンクを運ぶ能力も、敵地環境での利用を広げる。

中東およびその他の地域での最近の軍事行動は、市街戦での有効なツールが必要であることを示している。かかるツールの1つは、三次元的に移動できるロボットである。都市環境で垂直方向へのアクセスを可能にすることにより、かかるロボットは、はるかに高い位置に通信アンテナを設置して、地上において制限されていた通信範囲を強化することができる。あるいは、ロボットは、兵士がやみくもに侵入する前に、調査カメラを運んで、建築物のドア、窓、または、穴から侵入し、部屋の内壁または天井を移動してもよい。これらのより小さい壁登りロボットは、兵士が、地面に降ろして操縦することによって、建造物内の市街戦領域に配備してもよい。それから、これらのロボットは、こっそりと壁を移動し、内部の視界のよい位置から視覚的な手がかりを兵士に提供してよい。

上述のロボットで実現可能な別の共通な特徴は、3つの軸(前後、左右、および、上下)に沿った対称性である。対称性は、ロボットが、任意の位置から、すなわち、向きに関係なく、働くことを可能にする。上下の対称性は、例えば、必要に応じて迅速な移動を行うために、ロボットが、天井から離脱して床に着地することを可能にする。かかる状況では、良好な衝撃耐性に加えて、ロボットは、どの向きで着地しても、向きを変えようとする際の電力または時間の浪費なしに動作できる。さらに、前後両方にカメラを有することにより、遠隔操作のオペレータが、登っていくロボットの下方で起きていることを見ること、または、最大のクランプ能力および視野のためにパーチ位置を最適化することが可能になる。

また、ロボットは、驚異的に高速である。上述の壁移動ロボットの実施形態の多くは、壁を登る際に、毎秒約0.2(6.096cm)ないし約1フィート(30.48cm)の速度で動作できる。これよりも速いまたは遅い速度も可能である。ロボットが、地面または他の水平面で水平に移動している時には、静電付着をオフに切り替えることができるため、静電付着装置は、(移動のために静電付着を必要としない)通常動作時のロボットにさらなる摩擦を追加せず、地上での速度にほとんど影響を与えない。

一実施形態では、ここでの利用に適した上述のロボットの多くは、市販のロボットに少しの改造を施すこと、または、市販のロボットキットの部品を利用することによって実現される。例えば、軌道付きロボット400は、ニューヨーク州トナウォンダのEdmunds Scientific社が提供するTamiya Tracked Vehicle Chassis Kit Skill Level I、モデルNo.3081246を改造した軌道付き車両を備えてよい。市販のロボット部品(そのほとんどは、すでに軽量ロボット用に設計されており、利用に適している)としては、モータ、速度コントローラ、バッテリパック、ソーラーパネル、マイクロレシーバまたはその他のトランスミッタ、および/または、トランスミッタを備えたカメラユニット、が挙げられる。1つの適切なモータとしては、フロリダ州ブラデントンのThe Robot Marketplaceが提供するCopal 60:1ギアモータ、モデルNo.0−copal60が挙げられる。このモータは、すでに、60:1のギア比を備えている。1つの適切な速度コントローラとしては、The Robot Marketplaceが提供するAnt 150 Dual 5A高速コントローラ(部品No.LB−ANT150−2)が挙げられる。1つの適切なバッテリとしては、コネチカット州ウィンステッドのRC Hobbies and Moreが提供するApogee 2480mAhリチウムポリマ充電バッテリが挙げられる。

静電付着によって垂直またはその他の壁を登るためのクランプ面積および電力消費が、ロボットの重量によって増大することから、壁移動ロボットの重量は重要である。幸運にも、上述の部品の多くは、小型ロボットを意図したものであり、すでに適度に軽量である。また、静電付着の部品も、ほとんど重量の追加にならない。

また、静電付着によって小型ロボットに追加される所要電力は最小限である。なお、小型ロボットは、通常、バッテリまたはその他の形態の小型エネルギに依存する必要がある。例えば、Copalモータは、6Vおよび400ミリアンペアの定格電流で動作する。上述のロボットの車輪を独立的に駆動するために4つのかかるモータを組み込むと、最大消費電力は、9.6Wになる。関節付きヒンジ376を備える場合には、それを駆動するための電力も間欠的に利用されうる。前の章で静電付着のための所要電力について説明したように、壁登りのための電力利用(一部の例では、約0.3W)は、車両の全電力を少し増大させるに過ぎない。

追加の電力が最小限である結果、全体の持久力の減少も小さくなる。ロボットの持久力は、要因の中でも特に、電力消費、重量、および、電源によって決まる。多くの市販の軽量ロボットは、1キログラム未満の重量であり、約10インチ(25.4cm)×10インチの典型的なサイズと、約4〜5インチ(10.16〜12.7cm)の車輪直径または約8インチ(20.32cm)×2インチ(5.08cm)の軌道寸法と、を有する。それらの持久力は、キットに含まれるバッテリパックのエネルギ容量によって決まり、多くの例では、2時間以上の持久力の提供が可能であり、バッテリの容量を追加することで増大させることも可能である。ニューヨーク州トナウォンダのEdmunds Scientific社が提供するTamiya Tracked Vehicle Chassis Kit Skill Level I、モデルNo.3081246に、静電付着軌道を備えるよう改造することで、ロボットを製作できる。大型で軽量の静電付着車輪または軌道を備えるように、これらのロボットを改造すれば、ほとんどコストを掛けることなく移動ロボットを実現できる。

他の例では、ロボットは、静電付着の利点を完全に利用するために、特注で製造される。具体的な一実施形態では、ロボット本体は、高い強度重量比を提供する軽量のカーボンファイバを含む。

他のロボット設計も想定され、実施可能である。図13は、本発明の別の実施形態に従って、ロボット500を示す図である。ロボット500は、平坦な静電付着装置502(それらのパッドは、図7Fの格子状の静電付着装置設計と同様のものである)を利用し、それらは、4棒連結部504を用いてモータ付きの車輪または軌道に各々結合されている。図13に示す一実施形態では、車輪が回転した時に、パッド502は、ロボットから離れるよう動くが、壁に対して平行なほぼ一定の向きを維持する。別の実施形態では、車輪の回転は、面外の動き(パッドを壁から離す動き)と、面内の動き(パッドを壁から離しつつ前進させる動き)との組み合わせた動きを生み出すことができる。壁から離れるようにパッドを機械的に移動させることを含むこれらの例の一部では、ロボットの移動中に静電付着をオフに切り替えることが必要であってもよい。これらの実施形態のいずれかを用いれば、静電付着装置502のための電源は、装置自体に配置されることが可能であり、回転するフレームと、固定されたフレームとの間の電荷の移動を必要としない。静電付着の切り替えは、車輪の回転と同期されてよく、そうすれば、電子機器の要件を簡略化できる。複数の自由度を有する関節付きアームを備えたより複雑なロボットは、末端部に取り付けられた静電付着装置502をさらに備えてよい。

具体的な一実施形態では、静電付着装置を備えたロボットが「歩行する」。これらのロボットは、装置が壁面に接触した時に、オン/オフを制御されるクランプおよび静止摩擦を提供する静電付着装置を備える。別の具体的な実施形態では、パッド502は、「常にオン」である。この構成では、静電付着装置502は、常に、ロボットと壁との間の垂直力を提供する。ロボット500は、ロボットが移動する際に、パッド502の付着による摩擦に打ち勝って、パッドを壁(例えば、垂直の壁)に沿って引っ張るか、もしくは、壁から引きはがすためのモータを備える。この方法は、単純であり、クランプが連続的に動作することを許容する。

移動を補助するために静電付着を用いる歩行ロボットは、小さい改造を加えた市販の歩行ロボットを用いてよい。これは、ほふく(crawring)ロボットの脚に静電付着装置を追加すること、および、脚の動きと連携して静電付着の駆動を順序づける手段を準備すること、を含んでよい。かかる市販のロボットの例としては、ニューヨーク州トナウォンダのEdmunds Scientific社が提供するロボットのClimb@tronシリーズなど、吸着カップを用いて壁を登るよう構成されたロボットが挙げられる。多くのかかる例では、吸着カップを静電付着パッドに直接置き換えることで、より広い種類の対象物にわたって、よりロバストな壁登りを実現できる。既製のほふく車両は、一般に遅いが、静電付着装置を簡単に追加できることが魅力的である。静電付着装置のための電源および制御電子回路が、ロボットに追加されてもよいが、上述のように、静電付着装置は、ロボットの移動よりも消費電力がかなり小さく、制御電子回路も、無視できるほど小型および軽量である。

他のロボットおよびロボット設計は、本明細書に記載した静電付着装置を1または複数用いてよい。車輪または軌道による移動の代替物の1つとして、シャクトリムシ型ロボットがある。このロボットは、別個のアクチュエータを用いて、壁に沿って複数の静電付着装置を互いに対して移動させる。静電付着装置は、順番にクランプして、シャクトリムシ型ロボットの他の端部が移動できるようにする。かかるアクチュエータを備える壁登りロボットで、静電付着装置を備えないものは、当業者に周知である。

静電付着は、また、他の装置の実施を可能にする。図14は、具体的な用途の実施形態に従って、静電付着ハンドウェア550および静電付着脚用パッド552を示す図である。ハンドウェア550は、静電付着装置554と、静電付着装置554に取り付けられ人間の手または手首に着脱可能に結合するインターフェース556とを備える。同様に、脚用パッド552は、図に示すように、静電付着装置558と、静電付着装置554に取り付けられ人間の膝の周りに着脱可能に結合するインターフェース556とを備える。

静電付着ハンドウェア550および脚用パッド552は、人間が、壁560を登ることを可能にする。

静電付着装置554のサイズは、静電付着装置554によって提供される付着圧によって様々である。控えめな許容可能面積は、4つのパッド(2つはハンドウェアパッド550で、2つは脚用パッド552)を用いる静電付着装置554について100平方インチ(645.16平方センチ)であってよい。3psi(20.685kPa)のクランプ(滑り抵抗)圧を仮定すると、各25平方インチ(161.29平方センチ)のパッド(例えば、5インチ(12.7cm)×5インチ)は、75lbs(34.02kg)の滑り抵抗を提供するため、それらのパッドで300lbs(136.08kg)までを支えることができる。それよりも大きいまたは小さい静電付着面積を、ハンドウェア550および脚用パッド552に対して用いてもよい。

インターフェース556は、ハンドウェア550および脚用パッド552の両方にストラップを備えるが、他のパッド/人間インターフェースが、静電付着装置を人間の一部に着脱可能に取り付けるよう構成されてもよい。例えば、ハンドウェア550は、グローブ、ミトンなどを備えてよく、脚用パッド552は、靴、ブーツ、または、人間の脚に着脱可能に結合するよう構成された他の脚もしくは足用の着用物を備えてよい。一部の例では、静電付着電極は、人間の布すなわち衣類上に直接パターニングされてもよいし、衣類の上に被覆物として着用されてもよい。

静電付着は、人間が壁を登るための他の装置および方法を可能にする。それらの方法は、1)人間よりも上方の壁上に静電付着装置を配置すること、2)静電付着装置を壁に付着させること、および、3)静電付着装置と壁との間の結合を利用して壁を登ること、として説明されてよい。この方法について、2つの例を図15Aおよび15Bに示す。

図15Aは、具体的な用途の実施形態に従って、静電付着よじ登り装置570を示す図である。装置570は、綱572と、静電付着装置575とを備える。空気銃またはその他の射出装置が、静電付着装置575を壁576の上の方に発射し、人間よりも上方の壁上に装置575を配置する。静電付着装置575は、それ自身の電源、接触センサ、および、装置575が壁に当たった時に静電付着を開始するスイッチ、を備えてよい。あるいは、電子機器が、人間側に配置されて、綱572が、静電付着装置575への適切な電気接続を備えてもよい。静電付着装置575は、さらに、上述のように、付着を動的に改善するためのコンプライアントな表面を備えてもよい。一部の例では、装置575は、さらに、壁に対するさらなる付着を提供するために、機械的な鉤、フックなどを備えてもよい。装置575が壁に付着した後、人間577は、静電付着装置575と壁との間の結合を利用して、壁をよじ登ってよい。綱572は、ロープ、より糸、または、任意の他の適切な軽量のケーブルを含んでよい。

図15Bは、別の具体的な用途の実施形態に従って、静電付着よじ登り装置580を示す図である。この例では、装置590は、ロボット350と、ロボット350の後縁部に取り付けられた梯子592(または、その他の綱572)とを備える。人間577は、ロボット350の動きを制御することによって、ロボット350の静電付着装置を壁576上に配置する。所望の位置で、ロボットは停止してその現在位置に付着し、人間577は梯子592を登る。一部の例では、梯子が大きく動くことを防ぐために、梯子592をその長さに沿って壁576に付着させることが好ましい。かかる例では、梯子592にも、静電付着を備えてよい。壁または建造物に沿って人間がそこに留まるための手段を用いることで、大きいまたは高い構造物を登りたい場合に、このプロセスを繰り返してもよい。

本明細書に記載された静電付着装置によって実現可能な別の装置は、ロボットグリッパを含む。グリッパは、物体をつかんで持ち上げるのに適した1または複数の静電付着装置を備える。これらのグリッパは、壊れやすい物品を大きい力を使わずに取り扱う必要がある製造および工業用のグリッパなど、ロボット工学において利用できる。また、グリッパにおけるコンプライアンスまたは駆動により、静電付着が適用される前に、1または複数の静電付着装置は、物体に対して全体的に形状を合わせることが可能になっているグリッパは、埃(静電付着による集塵装置)および葉(静電付着による葉除去装置)の捕捉、非致死的な昆虫トラップ(例えば、実験用)など、にも適している。

別の実施形態では、壁またはその他の大きい構造物に対して1または複数の物体を制御可能に付着させるよう構成された装置で、静電付着装置が利用される。図16Aないし16Cは、本発明の別の具体的な実施形態に従って、着脱可能な両面静電付着装置600を示す図である。

装置600は、図16Bに示すように、絶縁材料606の両側に配置された電極602および604を備える。より詳細には、絶縁体606は、比較的平坦な形状と、互いに反対側の2つの表面603および601とを有する。絶縁材料606は、剛性でも柔軟性でもよく、後者の場合、装置600は、装置の付着先である、より硬い物体の剛性を想定する。電極の上に、1または複数の保護層615が配置されてよい。層615は、薄い層であり、マイラーなど、上述したような絶縁材料を含んでよい。

静電付着装置600は、同時に複数の物体に対して制御可能に付着するよう構成されている。これは、各表面601および603上の1または複数の物体を含んでもよい。同時に、反対側の各表面601および603に物体を付着させることにより、2つの別個の物体が、静電付着装置600を用いて一時的に連結されることが可能になる。図16Aは、壁610と額縁612とに付着する装置600を示す分解図である。換言すれば、装置は、額縁612を壁610に対して機械的に結合しており、額縁612を壁610に掛けるために利用されてよい。

装置600は、機械的に結合される物体に対して、釘によって残る穴のような機械的結合の名残を残さない非恒久的な付着の形態であると考えられてよい。ポストイットおよび両面テープは、非恒久的な付着の例であるが、明らかに化学的な付着に依存しているため、特に繰り返して利用した後には、埃の影響を受けやすい。また、それらは、かなりの加重を支える必要性と、壁への損傷なしにそれらを除去することができる必要性との間の望ましくないトレードオフを必要としうる(例えば、両面テープを壁から引きはがすと、塗装もはがれる場合など)。一方、静電付着は、より大きい構造および物体に対応できる。実際に、静電付着装置600は、表面積で数平方センチメートルないし数平方メートルのサイズを有してよい。

付着が可能な物体の例としては、額縁、カレンダー、ホッチキス、携帯電話、鍵、ポスター、コード、装飾、国旗、車のダッシュボード、平面スクリーンテレビおよびモニタ、ラジオ、軽量の棚、壁紙、ライトなどが挙げられる。また、壁610は、キャビネット、机の側面、家庭電化製品、車、掲示板などを含んでよい。静電付着装置600は、非恒久的かつ非破壊的に、事務所または家屋において通常は利用していない表面および空間を利用することを可能にする。

図16Aは、装置600が各側において1つの物体に付着する様子を示しているが、装置600は、各側で2以上の対象物に付着してもよい。例えば、装置600を拡大して、装置600(それ自体が壁に付着する)への静電付着を利用して複数の対象物が付着されるコルク板のような構成にしてもよい。

サイドバー611上のスイッチ608は、人間が静電付着装置をオン/オフすることを可能にするよう構成される。従来の機械的なスイッチの他に、接触センサも利用に適している。制御バー611には、バッテリまたはその他の電源(ソーラーパネルなど)と、静電付着装置600に電力供給するための上述のような制御回路(電圧上昇回路など)とが組み込まれる。多くの例では、小型の太陽電池パネルなど、再生可能なエネルギ源を用いることで、バッテリを備えなくてもよい。太陽電電池付きの計算機と同様に、屋内で動作するソーラーパネルから、必要な小さい電力量を生成することができる。

別の実施形態では、装置600は、片面の装置であり、付着面の反対側の表面においては恒久的な形態の取り付けを行う。この構成は、コルクボードと同様に、装置600に複数の対象物を静電付着させるために利用されてよい。

いくつかの好ましい実施形態を参照しつつ本発明について説明したが、本発明の範囲内で、代替物、置換物、および、等価物が可能であり、簡単のため、それらについては説明を省いている。例えば、本発明は、いくつかのポリマ材料および形状に関連して説明されているが、これらの材料および形状に限定されることはない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるものである。 用例1:移動装置であって、本体と、前記本体に対して機械的に結合され、対象物に対して着脱可能に付着するよう構成された少なくとも1つの静電付着装置と、を備え、 前記少なくとも1つの静電付着装置は、前記対象物の表面と接触するための変形可能な表面と、前記変形可能な表面の第1の位置に第1の電圧を印加するよう構成された第1の電極と、前記変形可能な表面の第2の位置に第2の電圧を印加するよう構成された第2の電極と、を備え、 前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧差は、前記対象物に対する前記少なくとも1つの静電付着装置の現在の位置を維持するために適した静電力を前記少なくとも1つの静電付着装置と前記対象物との間で生み出す静電付着電圧を含み、 前記少なくとも1つの静電付着装置は、さらに、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記静電付着電圧差を実質的に維持するよう構成された絶縁材料を備える、移動装置。 適用例2:適用例1に記載のロボットであって、前記対象物は、垂直壁または天井に含まれる、ロボット。 適用例3:適用例1に記載のロボットであって、移動機構を備え、前記少なくとも1つの静電付着装置は、前記移動機構の一部に対して機械的に結合されている、ロボット。 適用例4:適用例3に記載のロボットであって、前記移動機構は、前記少なくとも1つの静電付着装置を前記対象物の表面上に配置するよう構成されている、ロボット。 適用例5:適用例3に記載のロボットであって、前記移動機構は、軌道を含む、ロボット。 適用例6:適用例3に記載のロボットであって、前記移動機構は、車輪を含む、ロボット。 適用例7:適用例1に記載のロボットであって、前記電極は、前記静電付着電圧が印加された時に、前記表面に合わせて変形するよう構成された1または複数のまつげ状の構造を含む、ロボット。 適用例8:適用例1に記載のロボットであって、前記絶縁材料は、前記変形可能な表面を含む、ロボット。 適用例9:適用例8に記載のロボットであって、前記絶縁材料は、さらに、前記第1の電極と前記対象物の表面との間、および、前記第2の電極と前記表面との間に配置されている、ロボット。 適用例10:適用例9に記載のロボットであって、前記絶縁材料は、前記第1の電極と前記対象物の表面との間、および、前記第2の電極と前記対象物の前記表面との間において、約2ミリメートル未満の厚さを有する、ロボット。 適用例11:適用例1に記載のロボットであって、前記変形可能な表面は、屈曲可能であるが実質的に弾性伸縮しない材料または構造の表面を含む、ロボット。 適用例12:適用例1に記載のロボットであって、前記対象物の前記表面は、約1ミリメートルより大きい粗さを有する、ロボット。 適用例13:適用例1に記載のロボットであって、前記対象物の前記表面は、湿った表面、油っぽい表面、または、埃っぽい表面のいずれかである、ロボット。 適用例14:適用例1に記載のロボットであって、前記変形可能な表面と前記対象物の前記表面との間に粒子が存在する場合でも、前記装置と前記対象物との間の前記静電力は、前記対象物に対する前記装置の現在の位置の維持に適している、ロボット。 適用例15:適用例1に記載のロボットであって、さらに、前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記静電付着電圧を提供するよう構成された回路を備える、ロボット。 適用例16:適用例15に記載のロボットであって、前記回路は、約40ボルト未満の電圧源から電圧を受けるよう構成されると共に前記電圧源からの前記電圧を約500ボルト以上の前記静電付着電圧に上昇させるよう構成されている電圧上昇回路を含む、ロボット。 適用例17:適用例1に記載のロボットであって、前記第1の電極および前記第2の電極は、前記静電付着電圧が印加される時に、前記対象物の前記表面から約1ミリメートル未満に位置する、ロボット。 適用例18:2つの物体を付着させるよう構成された静電付着装置であって、第1の表面および第2の表面を備えた本体と、前記第1の表面の第1の位置に第1の電圧を印加するよう構成された第1の電極と、前記第1の表面の第2の位置に第2の電圧を印加するよう構成された第2の電極と、を備え、 前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の電圧差は、第1の物体の表面を前記第1の表面に付着させるのに適した第1の静電付着力を前記静電付着装置と前記第1の物体との間で生み出す静電付着電圧を含み、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の前記電圧差は、第2の物体の表面を前記第2の表面に付着させるために適した第2の静電付着力を前記静電付着装置と前記第2の物体との間で生み出す静電付着電圧を含む、装置。 適用例19:適用例18に記載の装置であって、前記本体は、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記静電付着電圧差を実質的に維持するよう構成された絶縁材料を備える、装置。 適用例20:適用例18に記載の装置であって、前記本体は、約2ミリメートル未満の厚さを有する絶縁材料を備える、装置。 適用例21:適用例18に記載の装置であって、前記第1の電極は前記第1の表面上にあり、前記第2の電極は前記第2の表面上にある、装置。 適用例22:適用例18に記載の装置であって、前記第1の表面および前記第2の表面は変形可能であり、前記本体は変形可能な絶縁材料を備える、装置。 適用例23:適用例22に記載の装置であって、前記変形可能な絶縁材料は、約10MPa未満の弾性率を有するコンプライアントな材料を含む、装置。 適用例24:適用例22に記載の装置であって、前記変形可能な表面は、屈曲可能であるが実質的に弾性伸縮しない材料または構造の表面を含む、装置。 適用例25:適用例18に記載の装置であって、さらに、前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記静電付着電圧を提供するよう構成された回路を備える、装置。 適用例26:適用例25に記載の装置であって、前記回路は、約40ボルト未満の電圧源から電圧を受けるよう構成されると共に前記電圧源からの前記電圧を約500ボルト以上の前記静電付着電圧に上昇させるよう構成されている電圧上昇回路を含む、装置。 適用例27:適用例18に記載の装置であって、前記第1の電圧は、約2キロボルトより高い、装置。 適用例28:適用例27に記載の装置であって、前記第2の電圧は、約0ボルトである、装置。 適用例29:壁を登る方法であって、前記壁の表面に近接するように静電付着装置を配置し、前記静電付着装置の第1の位置にある第1の電極と、前記静電付着装置の第2の位置にある第2の電極との間に、静電付着電圧差を印加し、前記静電付着電圧差によって引き起こされる静電引力を利用して、前記静電付着装置を前記壁の表面に付着させ、前記静電付着装置が前記壁に付着している間に前記壁を登る、方法。 適用例30:適用例29に記載の方法であって、前記静電付着装置は、第2の静電付着装置を備えたロボットに備えられており、前記第2の静電付着装置は、前記第1の静電付着装置が前記壁に付着している時に移動する、方法。 適用例31:適用例29に記載の方法であって、前記静電付着装置は、ロープに取り付けられている、方法。 適用例32:適用例29に記載の方法はさらに、前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記静電付着電圧差を取り除くことを備える、方法。 適用例33:適用例32に記載の方法はさらに、前記壁の表面に近接する新たな位置に前記静電付着装置を再配置することを備える、方法。 適用例34:適用例33に記載の方法はさらに、前記静電付着装置の前記第1の位置にある前記第1の電極と、前記静電付着装置の前記第2の位置にある前記第2の電極との間に、静電付着電圧差を印加し、前記新たな位置において前記静電付着装置を前記壁の表面に付着させること、を備える、方法。 適用例35:適用例29に記載の方法であって、前記壁の表面は、約1ミリメートルより大きい粗さを有する、方法。 適用例36:適用例29に記載の方法であって、前記壁の表面は、湿った表面、油っぽい表面、または、埃っぽい表面のいずれかである、方法。

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