ブレーキディスク付き鉄道車輪

申请号 JP2015562723 申请日 2015-02-03 公开(公告)号 JPWO2015122148A1 公开(公告)日 2017-03-30
申请人 新日鐵住金株式会社; 发明人 裕 野上; 裕 野上; 隆裕 藤本; 隆裕 藤本; 由衣子 阪山; 由衣子 阪山; 坂口 篤司; 篤司 坂口; 阿佐部 和孝; 和孝 阿佐部;
摘要 鉄道車輪は、板部(13)を備えた車輪(10)と、表面(2a)側を摺動面とする円板部(2)、及び円板部(2)の裏面(2b)に突設された複数のフィン部(3)を備えたブレーキディスク(1)と、を備え、2枚のブレーキディスク(1)が個々の摺動面を外向きにした状態で車輪(10)の板部(13)を挟み込み、前記摺動面の領域内で締結されて成る。ブレーキディスク(1)と車輪(10)との間に形成された空間を円周方向に沿って横断する断面の面積について、この断面積の最小となる最小断面部が、円板部(2)の外周面(2c)とリム部(12)の内周面(12b)とで形成される領域に存在し、円板部(2)の外周面(2c)は、最小断面部を起点にした外側の領域で、リム部(12)の内周面(12b)に沿う。この鉄道車輪は、簡素な形状で生産性に優れたブレーキディスクを備え、高速走行中の空 力 音を有効に低減することが可能である。
权利要求

ボス部、リム部、及びこれらを結合する板部を備えた鉄道車両用の車輪と、 表面側を摺動面とするドーナツ形の円板部、及び前記円板部の裏面に放射状に突設された複数のフィン部を備えたブレーキディスクと、を備え、 2枚の前記ブレーキディスクが個々の前記摺動面を外向きにした状態で前記車輪の前記板部を挟み込み、前記摺動面内の領域で締結されたブレーキディスク付き鉄道車輪であって、 前記ブレーキディスクと前記車輪との間に形成された空間を円周方向に沿って横断する断面の面積について、この断面積の最小となる最小断面部が、前記円板部の外周面と前記リム部の内周面とで形成される領域に存在し、 前記円板部の前記外周面が、前記最小断面部を起点にした外側の領域で、前記リム部の前記内周面に沿った形状である、ブレーキディスク付き鉄道車輪。請求項1に記載のブレーキディスク付き鉄道車輪において、 前記リム部の前記内周面は、前記リム部の側面につながるコーナー面、及び前記コーナー面と前記板部の側面とにつながるフィレット面を含み、 前記最小断面部は、前記リム部の前記内周面のうちで前記コーナー面と前記フィレット面との境界に存在する、ブレーキディスク付き鉄道車輪。請求項1に記載のブレーキディスク付き鉄道車輪であって、 前記リム部の前記内周面は、前記リム部の側面につながるコーナー面、及び前記コーナー面と前記板部の側面とにつながるフィレット面を含み、 前記最小断面部は、前記リム部の前記内周面のうちで前記フィレット面の領域に存在する、ブレーキディスク付き鉄道車輪。請求項3に記載のブレーキディスク付き鉄道車輪であって、 前記最小断面部は、前記円板部の前記外周面のうちで最も裏面側に存在する、ブレーキディスク付き鉄道車輪。請求項2〜4のいずれかに記載のブレーキディスク付き鉄道車輪において、 前記リム部の前記内周面における前記コーナー面は、軸方向に沿った断面での輪郭形状が円弧状である、ブレーキディスク付き鉄道車輪。

说明书全文

本発明は、鉄道車両用の車輪にブレーキディスクが締結されて成るブレーキディスク付き鉄道車輪(以下、「BD付き鉄道車輪」ともいう)に関する。

鉄道車両の制動装置としては、車両の高速化や大型化に伴い、制動性に優れたディスクブレーキが多用される。ディスクブレーキは、車輪に取り付けられたブレーキディスクの摺動面にブレーキライニングを押し付けるように構成されている。これにより、回転する車輪に制動が発生し、車両の速度が制御される。

ディスクブレーキには、摺動面内の領域でブレーキディスクを車輪に締結する中央締結型(摺動面締結型)ブレーキディスクと、摺動面より内周側の領域でブレークディスクを車輪に締結する内周締結型ブレーキディスクとがある。内周締結型ブレーキディスクは、摺動面を有する部分とは別に締結に用いる部分を要する。一方、中央締結型ブレーキディスクは、このような締結に用いる部分を設ける必要がないので、軽量化に有利である。

図1A及び図1Bは、鉄道車両のディスクブレーキを構成するブレーキディスク付き鉄道車輪の全体構造を示す図であって、図1Aは1/4円部分の平面図を、図1Bは半円部分の径方向に沿った断面図をそれぞれ示す。図2A〜図2Cは、従来のBD付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、図2Aはブレーキディスクの裏面を内周面側から見た斜視図を、図2Bはブレーキディスクを裏面側から見た平面図を、図2Cは径方向に沿った断面図をそれぞれ示す。図1A、図1B及び図2A〜図2Cに示されたブレーキディスクは、いずれも、中央締結型である。

図1A、図1B及び図2A〜図2Cに示すように、ブレーキディスク1は、表面2a側を摺動面とするドーナツ形の円板部2を備える。この円板部2の裏面2bには、放射状に複数のフィン部3が突設されている。複数のフィン部3のうちの幾つかには、半径方向のほぼ中央の位置に、円板部2まで貫通するボルト孔4が形成されている。

車輪10は、車軸が圧入されるボス部11、レールと接触する踏面を含むリム部12、及びこれらを結合する板部13を備えている。ブレーキディスク1は、2枚を一組として個々の表面2aを外向きにした状態で車輪10の板部13を挟み込むように配置される。各ボルト孔4にボルト5が挿通され、各ボルト5にナット6が螺合し締め付けられる。これにより、ブレーキディスク1は、フィン部3の先端面が半径方向の全域にわたって車輪10の板部13の側面13aに圧接した状態で、車輪10に締結される。

ブレーキディスク1は、摺動面内の領域で板部13に締結される。中央締結型ブレーキディスクでは、ブレーキディスク1の径方向に関して、ブレーキディスク1の内周と外周との中央部近傍、たとえば、内周と外周とを1:3で内分する位置と3:1で内分する位置との間で、ブレーキディスク1が車輪10に締結されていることが好ましい。

ブレーキディスク1の表面の実質的に全面が摺動面となっており、図1Bに示すように、ボス部11と円板部2との間には、全周に渡って大きな間隙(たとえば、70〜120mmの間隙)が形成されている。すなわち、ブレーキディスク1は、ボス部11近傍までは延びておらず、これにより、ブレーキディスク1の軽量化が図られている。このような構成の従来のBD付き鉄道車輪は、例えば特許文献1に開示されている。

鉄道車両の走行時、ブレーキディスク1は車輪10と一体で高速回転する。これに伴い、ブレーキディスク1の周辺の空気が、ブレーキディスク1と車輪10との間に形成された空間内に、具体的には、ブレーキディスク1の円板部2及びフィン部3、並びに車輪10の板部13で囲まれた空間内に、内周側(ボス部11と円板部2との間隙)から流入し、外周側から流出する(図2A〜図2C中の実線矢印参照)。要するに、鉄道車両の走行中、ブレーキディスク1と車輪10の間の空間には空気のガス流れが生じる。このガス流れは、新幹線(R)等の高速鉄道車両のように時速300kmを超える高速で走行する際に著しくなり、空力音と称される騒音を誘発する。このため、環境への配慮から空力音の低減が必要とされる。

内周締結型ブレーキディスクでは、中央締結型ブレーキディスクに比してボス部11と円板部2との間隙は著しく小さい。このため、車両の走行時に、この間隙から、ブレーキディスク1の円板部2及びフィン部3、並びに車輪10の板部13で囲まれた空間内に流入する空気の量は、わずかであり、通常、問題となるレベルの空力音は生じない。したがって、空力音の発生は、中央締結型ブレーキディスク特有の問題ということができる。

中央締結型ブレーキディスクについて空力音を低減するという要求に対応する従来技術は下記のものがある。

例えば特許文献2には、ブレーキディスクについて、隣り合うフィン部同士の間に円周方向に沿ってリブを追加し、このリブによってガス流れを抑制したBD付き鉄道車輪が開示されている。同文献に開示されたBD付き鉄道車輪によれば、空力音を所望のレベルまで低減することができる。

しかし、前記特許文献2に開示された技術では、リブによるガス流れの抑制に伴い、制動時にブレーキディスクへの冷却性能が低下する。このため、リブの追加によってブレーキディスク自体の剛性が増すことと相まって、ブレーキディスクの熱膨張に伴う変形、及びそれによる締結用ボルトへの応力負荷が増大し、ブレーキディスク及びボルトの耐久性が低下するおそれがある。

この問題の解決を図る従来技術が特許文献3に開示されている。 図3A及び図3Bは、特許文献3に開示された従来のBD付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、図3Aはブレーキディスクの裏面を内周面側から見た斜視図を、図3Bは径方向に沿った断面図をそれぞれ示す。これらの図に示すように、特許文献3に開示されたBD付き鉄道車輪では、ブレーキディスク1について、隣り合うフィン部3同士の間に円周方向に沿ってリブ7を追加し、更に、このリブ7の円周方向の中央部に径方向に沿ってスリット7aが形成されている。

このBD付き鉄道車輪によれば、スリット7aによってガス流れが確保される。このため、制動時にブレーキディスク1への冷却性能が維持されるとともに、リブの追加による剛性の増加が緩和されることから、ブレーキディスク1の熱膨張に伴う変形及び締結用ボルトへの応力負荷が軽減され、ブレーキディスク1及びボルトの耐久性の低下が抑えられる。

特開2006−9862号公報

特開2007−205428号公報

国際公開WO2010/071169号パンフレット

上述のとおり、空力音の低減を図る従来のBD付き鉄道車輪は、ブレーキディスクの円板部及びフィン部、並びに車輪の板部で囲まれた空間内のガス流れを抑制することを主眼にして、ディスクブレーキの円板部にリブを追加したり、更にそのリブにスリットを形成したものである。このため、ブレーキディスクの形状が複雑になることから、ブレーキディスクの生産性が低下せざるを得ない。

具体的には、フィン部のみならず、リブの高さを調整する追加工(機械加工等)が必要となり、更には、リブにスリットを形成する追加工が必要となるため、ブレーキディスクの製造工程が煩雑化する。とりわけ、ブレーキディスクを鍛造によって製造する場合には、金型への負荷が増大し、金型寿命が短くなることは否めない。

本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、下記の特性を有するブレーキディスク付き鉄道車輪を提供することである: ・ブレーキディスクが簡素な形状で生産性に優れたものであること; ・高速走行中の空力音を有効に低減すること。

本発明の一実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪は、 ボス部、リム部、及びこれらを結合する板部を備えた鉄道車両用の車輪と、 表面側を摺動面とするドーナツ形の円板部、及び前記円板部の裏面に放射状に突設された複数のフィン部を備えたブレーキディスクと、を備え、 2枚の前記ブレーキディスクが個々の前記摺動面を外向きにした状態で前記車輪の前記板部を挟み込み、前記摺動面内の領域で締結されたブレーキディスク付き鉄道車輪であって、 前記ブレーキディスクと前記車輪との間に形成された空間を円周方向に沿って横断する断面の面積について、この断面積の最小となる最小断面部が、前記円板部の外周面と前記リム部の内周面とで形成される領域に存在し、 前記円板部の前記外周面が、前記最小断面部を起点にした外側の領域で、前記リム部の前記内周面に沿った形状である。

上記のBD付き鉄道車輪において、前記リム部の前記内周面は、前記リム部の側面につながるコーナー面、及び前記コーナー面と前記板部の側面とにつながるフィレット面を含み、前記最小断面部は、前記リム部の前記内周面のうちで前記コーナー面と前記フィレット面との境界に存在する構成とすることができる。

上記のBD付き鉄道車輪において、前記リム部の前記内周面は、前記リム部の側面につながるコーナー面、及び前記コーナー面と前記板部の側面とにつながるフィレット面を含み、前記最小断面部は、前記リム部の前記内周面のうちで前記フィレット面の領域に存在する構成とすることもできる。この構成の場合、前記最小断面部は、前記円板部の前記外周面のうちで最も裏面側に存在することが好ましい。

また、上記のBD付き鉄道車輪において、前記リム部の前記内周面における前記コーナー面は、軸方向に沿った断面での輪郭形状が円弧状である構成を採用することができる。

本発明のブレーキディスク付き鉄道車輪は、下記の顕著な効果を有する: ・ブレーキディスクが簡素な形状で生産性に優れたものであること; ・高速走行中の空力音を有効に低減できること。

図1Aは、ブレーキディスク付き鉄道車輪の全体構造を示す図であって、1/4円部分の平面図を示す。

図1Bは、ブレーキディスク付き鉄道車輪の全体構造を示す図であって、半円部分の径方向に沿った断面図を示す。

図2Aは、従来のブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、ブレーキディスクの裏面を内周面側から見た斜視図を示す。

図2Bは、従来のブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、ブレーキディスクを裏面側から見た平面図を示す。

図2Cは、従来のブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、径方向に沿った断面図を示す。

図3Aは、特許文献3に開示された従来のブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、ブレーキディスクの裏面を内周面側から見た斜視図を示す。

図3Bは、特許文献3に開示された従来のブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を局所的に示す図であって、径方向に沿った断面図を示す。

図4は、ブレーキディスク付き鉄道車輪における開口面積の総和と空力音レベル及び通気量との相関を示す図である。

図5Aは、非定常ガス流れ解析で得られた固体表面(ブレーキディスク及び車輪の表面)におけるガス圧力変動の分布を示す図である。

図5Bは、非定常ガス流れ解析で得られた固体表面(ブレーキディスクを透過して表示)におけるガス圧力変動の分布を示す図である。

図6Aは、本発明の第1実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。

図6Bは、図6Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図6Aの矩形領域を示している。

図7Aは、本発明の第2実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。

図7Bは、図7Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図7Aの矩形領域を示している。

図8Aは、本発明の第3実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。

図8Bは、図8Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図8Aの矩形領域を示している。

図9Aは、実施例の解析で比較例として用いたブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。

図9Bは、図9Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図9Aの矩形領域を示している。

図10は、実施例の解析結果である放熱量と空力音レベルの関係を示す図である。

図11は、実施例の解析結果である通気量の経時変化を示す図である。

前記特許文献3に記載されているとおり、ブレーキディスクと車輪との間に形成された空間、その中でもブレーキディスクの円板部及びフィン部、並びに車輪の板部で囲まれた空間を流れる空気の通気量と、空力音のレベルとの間には、強い相関がある。

図4は、ブレーキディスク付き鉄道車輪における開口面積の総和と空力音レベル及び通気量との相関を示す図である。ここでいう開口面積の総和とは、ブレーキディスクの円板部及びフィン部、並びに車輪の板部で囲まれた空間について、ブレーキディスクの内周側から見たときの開口面積の円周方向全域にわたる総和のことである。言い換えると、開口面積の総和は、ブレーキディスクと車輪との間に形成された空間を円周方向に沿って横断する断面(以下、「空間横断面」)について、この空間横断面の面積が最小となる最小断面部の面積のことである。例えば、前記図3A及び図3Bに示すBD付き鉄道車輪のように、ブレーキディスクのフィン部同士の間にリブが追加され、このリブにスリットが形成されている場合、最小断面部はリブの位置になるので、このリブの位置での空間横断面の面積が図4に示す開口面積の総和となる。なお、通気量は熱流体解析(ブレーキディスク1枚あたり)によって得られ、空力音のレベルは実験により得られたものである。

図4に示すように、空力音レベルは最小断面部の面積(開口面積の総和)の増加に伴って大きくなり、通気量も同様の傾向となるのがわかる。

しかし、実際には、空力音は、ガス圧力の非定常変化(粗密波の伝播現象)よって引き起こされる。このため、空力音の発生を数値解析で予測する際には、本質的に非定常的なガス流れの変化及びそれに伴う音圧の変化を直接的に評価することが好ましい。

そこで、前記図3A及び図3Bに示す従来のBD付き鉄道車輪、すなわちフィン部同士の間にスリット付きのリブを追加したBD付き鉄道車輪を対象とし、非定常ガス流れ解析に基づく空力音レベルの直接予測を実施した。この解析では、走行速度は360km/hと一定にした。

非定常ガス流れ解析に用いたBD付き鉄道車輪のモデルの代表的な条件は、次のとおりである。 <ブレーキディスク> ・新幹線(R)用の鍛鋼ディスク ・円板部の内径:417mm、円板部の外径:715mm ・円板部の摺動面からフィン部の先端面(車輪板部との接触面)までの長さ:45mm ・直径が560mmの同一円上に中心が位置する12個のボルト孔を等間隔に形成し、各ボルト孔にボルトを挿通してブレーキディスクと車輪を締結。 <車輪> ・新幹線(R)用の圧延車輪 ・内径:196mm、外径:860mm

まず、前記特許文献2に記載された方法によって空力音レベルの測定を行い、非定常ガス流れ解析の計算手法の妥当性を検証した。具体的には、実験により、精密騒音計で音圧データを計測後、周波数分析を行い、A特性補正を加えた後、1/3オクターブバンド処理を実施し、周波数特性データとオーバーオール値を算出した。そして、オーバーオール値について、実験値(114.5[dB(A)])と計算値(114.8[dB(A)])を対比し、両者の整合性を確認した。

図5A及び図5Bは、非定常ガス流れ解析で得られた固体表面(ブレーキディスク及び車輪の表面)におけるガス圧力変動の分布を示す図である。図5Aは、ブレーキディスク及び車輪の表面のいずれも表示したものであり、図5Bは、そのうちのブレーキディスクを透過して表示したものである。

図5A及び図5Bに示す固体表面におけるガス圧力変動は、圧力の時間微分値の二乗平均量を示し、これは固体表面(ブレーキディスク及び車輪の表面)における音源分布に相当する。図5A及び図5B中の濃淡表示の濃い部分の分布から明らかなように、走行中の主要音源は、ブレーキディスクと車輪との間に形成された空間の中でも、ガス流出領域及びこの近傍、すなわちブレーキディスクの円板部の外周領域及びこの近傍に現れる。

このことから、本発明では、空力音の低減を図るため、ブレーキディスクと車輪との間に形成された空間のうち、従来技術で着目していたブレーキディスクの円板部及びフィン部、並びに車輪の板部で囲まれた空間ではなく、ガス流出領域となるブレーキディスクの円板部の外周領域、すなわちブレーキディスクの円板部の外周面と車輪のリム部の内周面とで形成される領域に限定して着目した。

そして、上記の非定常ガス流れ解析による数値計算を用い、ブレーキディスクの円板部の外周領域の形態が空力音レベル及び冷却性能に及ぼす影響について調査した。その結果、ブレーキディスクの外周面の形状を適切に規定すれば、冷却性能を従来技術相当又はそれ以上に維持しながらも、空力音レベルを一層抑制できるとの知見を得て、本発明を完成させた。

一般に、ガス流れは、方向変化が急激であればある程、粘性応力による運動エネルギーの散逸が大きくなり、その分、音を生成するエネルギーへと転換しやすくなる。この点、本発明は、ガス流出領域のガス流れに着目し、ブレーキディスクと車輪との間からのガス流れ方向が、車輪のリム部の表面(側面)に沿うように調整し、ブレーキディスクの回転に伴って発生する摺動面に沿った半径方向外向きのガス流れと小さい度で合流するようにする。これにより、音源となりやすい合流点近傍でのガス流れの方向変化が極小化し、空力音の低減が実現される。

以下に、本発明のブレーキディスク付き鉄道車輪の実施形態について詳述する。

<第1実施形態> 図6Aは、本発明の第1実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。図6Bは、図6Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図6Aの矩形領域を示している。以下では、前記図1A、図1B及び図2A〜図2Cに示す従来のBD付き鉄道車輪と共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。

図6A及び図6Bに示すように、第1実施形態におけるブレーキディスク1は、円板部2と、フィン部3を備える。このブレーキディスク1は、前記図3A及び図3Bに示すようなリブ7を有しない。要するに、円板部2の裏面2bには、放射状に複数のフィン部3が突設されているのみである。

ブレーキディスク1の材質としては、鋳鉄、鋳鋼、鍛鋼、アルミニウム、カーボン等を採用することができる。

なお、厳密には、ブレーキディスク1の表面2aのうちの摺動面となる領域は、一段高くなっている。ブレーキディスク1は、繰り返しの制動に伴って摺動面が摩耗し、摺動面の摩耗が円板部2の表面2aの高さまで進行すると、交換される。

車輪10は、ボス部11と、リム部12と、板部13を備える。リム部12の内周面12b(図6B中の点b1から点b3の範囲)は、リム部12の側面12aにつながるコーナー面12ba(図6B中の点b1から点b2の範囲)、及びコーナー面12baと板部13の側面13aとにつながるフィレット面12bb(図6B中の点b2から点b3の範囲)を含む。

コーナー面12ba及びフィレット面12bbの形状は、車両の仕様に応じて設計される。例えば、コーナー面12baは、車輪10の軸方向に沿った断面での輪郭形状が円弧状であって、曲率半径が一定の単一のR面である。フィレット面12bbは、車輪10の軸方向に沿った断面での輪郭形状が直線と円弧を組み合わせた形状であって、円錐台状のテーパー面と曲率半径が一定のR面を組み合わせた複合面である。もっとも、フィレット面12bbは、単一のR面であってもよいし、曲率半径が変化する自由曲面であってもよい。

ここで、第1実施形態のBD付き鉄道車輪では、ブレーキディスク1と車輪10との間に形成された空間を円周方向に沿って横断する空間横断面について、この空間横断面の面積の最小となる最小断面部が、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cと車輪10のリム部12の内周面12bとで形成される領域に存在する。具体的には、リム部12の内周面12bのうちでコーナー面12baとフィレット面12bbとの境界b2に存在する。

これに対応し、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2c(図6B中の点a1から点a3の範囲)は、リム部12のコーナー面12baとフィレット面12bbとの境界b2に対向する位置a2を起点にし、ここから厚み方向に沿って外側(表面2a側)の領域(図6B中の点a1から点a2の範囲)の形状が、リム部12の内周面12bのうちのコーナー面12baに沿った形状となっている。すなわち、その領域の範囲内において、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cと車輪10のリム部12の内周面12bとが近接して対向している。ここでいう近接するとは、1〜5mm程度の隙間があいていることをいう。一方、その領域を外れる内側(ブレーキディスク1の裏面2b側)の領域(図6B中の点a2から点a3の範囲)において、円板部2の外周面2cはリム部12の内周面12bに沿わずに離れている。

このような構成のBD付き鉄道車輪において、ブレーキディスク1は、リブ7を有さず、円板部2の裏面にフィン部3を備えるのみであり、簡素な形状である。このため、ブレーキディスク1の製造工程が煩雑化することはなく、ブレーキディスク1の生産性は優れる。ブレーキディスク1を鍛造によって製造する場合であっても、金型への負荷が増大することはなく、金型寿命が短くなることもない。もっとも、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cは、車輪10のリム部12の内周面12bの形状に応じた形状に機械加工を施す必要はあるが、この機械加工は、従来のリブやスリットの追加工とは異なり、ブレーキディスク1の一連の機械加工の中で簡単に行える。

また、第1実施形態のBD付き鉄道車輪によれば、高速走行中、ブレーキディスク1と車輪10との間を流れる空気は、最終的にリム部12の内周面12b(コーナー面12ba)に沿いつつリム部12の側面12aに沿うように流出する(図6B中の実線矢印参照)。このため、ブレーキディスク1と車輪10との間から流出した空気は、ブレーキディスク1の回転に伴って発生する摺動面に沿った半径方向外向きのガス流れ(図6B中の点線矢印参照)と小さい角度で合流するようになる。これにより、音源となりやすい合流点近傍でのガス流れの方向変化が極小化するので、空力音が有効に低減する。

<第2実施形態> 図7Aは、本発明の第2実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。図7Bは、図7Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図7Aの矩形領域を示している。第2実施形態のBD付き鉄道車輪は、前記第1実施形態の構成を基本とし、前記第1実施形態に対し以下の点を変更したものである。

第2実施形態のBD付き鉄道車輪では、ブレーキディスク1と車輪10との間の空間横断面の最小断面部が、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cと車輪10のリム部12の内周面12bとで形成される領域のうち、リム部12のフィレット面12bbの領域に存在する(図7B中の点b4参照)。

これに対応し、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2c(図7B中の点a1から点a3の範囲)は、リム部12のフィレット面12bbにおける最小断面部(図7B中の点b4)に対向する位置a4を起点にし、ここから厚み方向に沿って外側(表面2a側)の領域(図7B中の点a1から点a4の範囲)の形状が、リム部12の内周面12bのうちのコーナー面12ba及びフィレット面12bbの一部に沿った形状となっている。すなわち、その領域の範囲内において、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cと車輪10のリム部12の内周面12bとが近接して対向している。一方、その領域を外れる内側(ブレーキディスク1の裏面2b側)の領域(図7B中の点a4から点a3の範囲)において、円板部2の外周面2cはリム部12の内周面12bに沿わずに離れている。

このような構成の第2実施形態のBD付き鉄道車輪でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。

<第3実施形態> 図8Aは、本発明の第3実施形態であるブレーキディスク付き鉄道車輪の構造を示す、径方向に沿った断面図である。図8Bは、図8Aのブレーキディスク付き鉄道車輪を局所的に示す断面図であり、図8Aの矩形領域を示している。第3実施形態のBD付き鉄道車輪は、前記第2実施形態の態様を変形したものである。

すなわち、第3実施形態のBD付き鉄道車輪では、ブレーキディスク1と車輪10との間の空間横断面の最小断面部が、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cと車輪10のリム部12の内周面12bとで形成される領域のうち、円板部2の外周面2cのうちで最も裏面2b側に存在する(図8B中の点a3参照)。

ブレーキディスク1の円板部2の外周面2c(図8B中の点a1から点a3の範囲)は、最も裏面2b側の位置a3を起点にし、ここから厚み方向に沿って外側(表面2a側)の領域の形状が、リム部12の内周面12bのうちのコーナー面12baのほぼ全面及びフィレット面12bbの一部に沿った形状となっている。すなわち、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cは、厚み方向の全域にわたり車輪10のリム部12の内周面12bに近接して対向している。

この場合、ブレーキディスク1と車輪10との間の空間横断面の最小断面部は、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cのうちで最も裏面2b側の位置a3に対応して、車輪10のリム部12のフィレット面12bbの領域に存在する(図8B中の点b5参照)。

このような構成の第3実施形態のBD付き鉄道車輪でも、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。

本発明のBD付き鉄道車輪による効果を確認するため、非定常ガス流れ解析及び熱流体解析を実施し、空力音レベル、冷却性能及び通気量を評価した。解析の対象は、本発明例1として、前記図6A及び図6Bに示す第1実施形態のBD付き鉄道車輪を採用し、本発明例2として、前記図8A及び図8Bに示す第3実施形態のBD付き鉄道車輪を採用した。

また、比較例として、図9A及び図9Bに示すように、フィン部3同士の間にスリット7a付きのリブ7を追加したBD付き鉄道車輪を採用した。図9A及び図9Bに示すBD付き鉄道車輪は、前記図3A及び図3Bに示す従来のBD付き鉄道車輪と同じである。比較例のBD付き鉄道車輪では、ブレーキディスク1の円板部2の外周面2cは、リム部12の内周面12bに沿わずに離れている。

本発明例1及び2並びに比較例のBD付き鉄道車輪は、いずれも、ブレーキディスクを中央締結したものである。

解析に用いたBD付き鉄道車輪のモデルの代表的な条件は、上述した非定常ガス流れ解析のときと同じである。また、非定常ガス流れ解析の手法も同様である。非定常ガス流れ解析及び熱流体解析のいずれも、走行速度が360km/hと一定にした。

冷却性能の評価指標としては、ブレーキディスク1枚あたりの表面の平均熱伝達率と表面積の積算値で定義した放熱量を導入した。この放熱量が大きいほど、冷却性能が優れることを意味する。

通気量の評価は、ブレーキディスクと車輪との間の空間横断面の最小断面部での通気量の時間平均、及びその変動幅で行った。 下記の表1、図10及び図11に結果を示す。

図10は、実施例の解析結果である放熱量と空力音レベルの関係を示す図である。図11は、実施例の解析結果である通気量の経時変化を示す図である。表1及び図10に示すように、本発明例1、2は、比較例と同等以上の冷却性能としながら、空力音レベルをより低減できることを確認できる。また、本発明例1、2は、比較例よりも最小断面部の面積が大きいため、平均通気量が増加し、冷却性能が高い。しかも、表1及び図11に示すように、本発明例1、2は、比較例よりも通気量の変動幅が小さく、静音性が向上する。このことから、設計因子である最小断面部の面積を適宜変更することにより、BD付き鉄道車輪の静音性、及び制動時におけるブレーキディスクの冷却性能を適切に制御することが可能といえる。

本発明のブレーキディスク付き鉄道車輪は、ディスクブレーキを有するあらゆる鉄道車両に有効に利用することができ、中でも、高速鉄道車両に有用である。

1:ブレーキディスク、 2:円板部、 2a:表面、 2b:裏面、 2c:外周面、 3:フィン部、 4:ボルト孔、 5:ボルト、 6:ナット、 7:リブ、 7a:スリット、 10:車輪、 11:ボス部、 12:リム部、 12a:側面、 12b:内周面、 12ba:コーナー面、 12bb:フィレット面、 13:板部、 13a:側面

QQ群二维码
意见反馈