【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、鉄道車両の高速化に対応できる車両用ブレーキ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年新幹線等の鉄道車両は高速化が推進されており、最高速度の向上が図られている。 従来、例えば新幹線に使用されていたブレーキ装置としては特開平2−262459号公報に示されたものがある。 そのブレーキ装置の概略の構成は、図2に示すように、ハンドル1aの操作量に応じたブレーキ指令信号をブレーキ指令線2を介して出力するブレーキ設定器1と、このブレーキ指令信号を車両荷重や車速に応じた空気圧信号B caに変換するブレーキ制御器3と、この空気圧信号B caが示す空気圧を油圧に変換して油圧信号Bcoとしてブレーキ力発生部4に送出する増圧シリンダ5とを備えた構成である。 増圧シリンダ5は1台の台車に尽き2 個ずつ備えられており、ブレーキ力発生部4は1個の増圧シリンダにつき2個ずつ備えられている。 【0003】増圧シリンダ5は、図3に示すように、前記ブレーキ制御部3から出力された空気圧信号Bca を、切換弁10を介して空気圧シリンダ11の空気シリンダ室13に供給し、ピストン14を戻しばね15の付勢力に抗して前進させ、ピストン14と一体のピストンロッド16により油シリンダ室17内の作動油を送出して油圧信号Bcoとし、この油圧信号Bcoを滑走防止弁18を介してブレーキ力発生部4に送ってブレーキ力を発生させるようになっている。 図中19は油タンクである。 なお、ブレーキ力発生部4はディスクブレーキ装置が用いられるのが普通である。 【0004】ところで、そのディスクブレーキ装置に用いられるブレーキディスクは一般的に鉄系のものであるが、上記車両の高速化のためにこのようなブレーキディスクでは熱容量が不足し高速度における摩擦係数が著しく減少するため、ブレーキ力が不足するという問題がある。 【0005】この問題を解決するためには、上記ディスクブレーキ装置の数を増やすことが考えられるが、この場合ブレーキ制御部が出力する圧力流体及び増圧シリンダが出力する圧力流体が必然的に多く必要となり、機器が大型化して好ましくない。 また、別の手段としてブレーキディスクやブレーキパッドの素材をたとえば炭素系のような高熱でも摩擦係数が保持されるものを採用することが考えられるが、一般的にこのような高熱に強い素材は、低速度になってブレーキディスクの温度が低下すると摩擦係数が不安定になり、ブレーキ力が安定しないという問題が生じる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ブレーキ制御部が出力する圧力流体及び増圧シリンダが出力する圧力流体の量を増やすことなく、鉄道車両の高速化に対応できる車両用ブレーキ装置を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明の車両用ブレーキ装置は、ブレーキ指令に応じた制御圧を発生するブレーキ制御部と接続され流体圧力を発生するブレーキ圧発生部と、このブレーキ圧発生部に接続されブレーキ力を出力する複数個のディスクブレーキ装置とを備えた車両用ブレーキ装置において、前記ディスクブレーキ装置を、 特定のディスクブレーキ装置とそれ以外のディスクブレーキ装置とに分けて設け、前記ブレーキ圧発生部とディスクブレーキ装置との間に、ブレーキ圧発生部からの圧力流体を前記特定のディスクブレーキ装置または残りのディスクブレーキ装置のいずれかに接続する切換弁を設けたことを特徴とする。 【0008】 【作用】上記特定のディスクブレーキ装置と残りのディスクブレーキ装置とを、切換弁の操作により使い分けることができるので、ブレーキ制御部が出力する圧力流体及び増圧シリンダが出力する圧力流体の量を格別に増やすことなく、通常速度と高速度とに対応できるようになる。 例えば、特定のディスクブレーキ装置を高速からの減速に適した高速度でも摩擦係数の低下しないディスクブレーキ装置とし、残りのディスクブレーキ装置を現状のものとすれば、切換弁により走行速度に応じて、高速走行時に特定のディスクブレーキ装置に接続し、通常走行時に残りのディスクブレーキ装置へ接続して必要なブレーキ力を確保できる。 【0009】 【実施例】この発明の1実施例を図1を用いて説明する。 この車両用ブレーキ装置は、ブレーキ圧発生部3 0、高速に適したディスクブレーキ装置(複数の中の特定のディスクブレーキ装置)31、中低速に適したディスクブレーキ装置(残りのディスクブレーキ装置)3 2、電磁切換弁33等からなる。 【0010】ブレーキ圧発生部30は、図3を用いて説明した従来の増圧装置と同様な装置を使用してあり、同等部分を同一図面符号で示して説明を省略する。 【0011】高速に適したディスクブレーキ装置31 は、例えば350Km/h〜130Km/hの走行速度の減速に適したブレーキディスク及びブレーキパッドを用いたものである。 中低速に適したディスクブレーキ装置32は、例えば130Km/h〜0Km/hの走行速度の減速に適した従来のディスクブレーキ装置と同様なものである。 ディスクブレーキ装置31は、所定のディスクに対して設けられるキャリパー装置を有し、その本体31aに圧力流体の供給ポート31b、これに内部通路31cを介して接続したピストン31dを有する。 中低速に適したディスクブレーキ装置32は、上記とは別に設けられたディスクに対して設けられるキャリパー装置を有し、その本体32aに圧力流体の供給ポート32 b、これに内部通路32cを介して接続したピストン3 2dを有する。 【0012】電磁切換弁33は、上記ブレーキ圧発生部30と、高速に適したディスクブレーキ装置31及び中低速に適したディスクブレーキ装置32との間を接続している配管途中に設けてある。 すなわち、ブレーキ圧発生部30のシリンダ室17の出口から管路40、滑走防止弁18、管路41、電磁切換弁33、管路42、逆止弁43、管路44を介して、中低速に適したディスクブレーキ装置32に接続されており、また電磁切換弁33 の他のポートに接続した管路45、逆止弁46、管路4 7をを介して、高速に適したディスクブレーキ装置31 に接続されている。 上記逆止弁43、46はそれぞれ残圧用逆止弁部43a、46aを有している。 なお、滑走防止弁18も残圧用逆止弁部18bを有している。 【0013】電磁切換弁33は、車両が350Km/h 〜130Km/hの高速走行状態になるとソレノイド3 3aに切り換え信号が入力され、図示の管路41と42 を接続している状態からスプールが右に移動し、管路4 1と45が接続される状態に切り換えられる。 【0014】この車両用ブレーキ装置は、図2を用いて説明したブレーキ制御器3からの空気圧信号Bcaをブレーキ圧発生部30で油圧信号Bcoに変換してその時の走行速度に応じてディスクブレーキ装置31または3 2に供給してブレーキ作用させる。 車両が上記中低速走行状態である場合は、切換弁33が図示の状態にあり、 中低速に適したディスクブレーキ装置32のポート32 bを介して圧油がピストン32dに供給されてブレーキ力を発生する。 車両が上記高速走行状態である場合は、 切換弁33のソレノイド33aに高速走行状態であるという励磁信号が与えられて、切換弁33が管路41と4 5を接続した状態に切り換えられており、高速に適したディスクブレーキ装置31のポート31aを介して油圧がピストン31dに供給されてブレーキ力を発生する。 ブレーキ作用によって車両が上記中低速走行状態になると、ソレノイド33aは消磁されて切換弁33が元の状態に戻り、中低速に適したディスクブレーキ装置32に油圧が供給されるようになり、ディスクブレーキ装置3 1側の残圧は残圧用逆止弁部46aを介して油タンク1 9へ排出される。 【0015】この車両用ブレーキ装置は、ブレーキ圧発生部30による油圧信号を、車両のその時の走行速度に適したディスクブレーキ装置31または32に切り換え供給するようにしたから、車両の高速化に対し必要な安定したブレーキ力の発生を確保でき、一つのブレーキ圧発生部30で2種類のディスクブレーキ装置31、32 を作動させるようにしたから、ブレーキ装置が殆ど大型化しない。 【0016】 【発明の効果】本発明によれば、車両の高速度化が図られても必要なブレーキ力を確保でき、装置もあまり大型化しない。 また、特定のディスクブレーキ装置または残りのディスクブレーキ装置は、切換弁によりどちらか一方を非作動状態とされるので、特性の合わないディスクブレーキ装置が使用されて早期に磨耗や破損が発生することを防止できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例の概略構成図である。 【図2】従来の車両用ブレーキ装置を示す概略構成図である。 【図3】従来のブレーキ圧発生部を示す概略構成図である。 【符号の説明】 3 ブレーキ制御部 30 ブレーキ圧発生部 31 特定のディスクブレーキ装置(高速に適したディスクブレーキ装置) 32 残りのディスクブレーキ装置(中低速に適したディスクブレーキ装置) 33 電磁切換弁 |