鉄道車両用ブレーキディスク

申请号 JP2014534404 申请日 2013-09-05 公开(公告)号 JP5924413B2 公开(公告)日 2016-05-25
申请人 新日鐵住金株式会社; 发明人 野上 裕; 安達 豪; 阿佐部 和孝; 坂口 篤司; 田村 憲司; 加藤 孝憲;
摘要
权利要求

表面側を摺動面とするドーナツ形の円板部と、前記円板部の裏面に放射状に突設された複数のフィン部と、前記円板部および前記フィン部を貫通するボルト孔とを備える鉄道車両用ブレーキディスクであって、 前記フィン部には、前記円板部の径方向に見て前記ボルト孔よりも内周側の領域および外周側の領域の両方に、円周方向に沿って溝が形成され、 前記フィン部における前記内周側の領域および前記外周側の領域にそれぞれ形成された前記溝の外周側の面であって、前記フィン部の先端面に隣接する面が、前記円板部の径方向に見て内周側を向いていることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。前記溝の外周側の面が平面または凹面であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。前記溝の深さhと前記フィン部の高さHとの比h/Hが0.2〜0.8の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。前記フィン部の外周側の領域の円周方向の幅が内周側の領域の円周方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求の範囲第1項から第3項までのいずれかに記載の鉄道車両用ブレーキディスク。

说明书全文

本発明は、鉄道車両における制動装置の基幹部品であるブレーキディスクに関し、特に、摺動面となる円板部がボルトによって車輪に締結される鉄道車両用ブレーキディスクに関する。

鉄道車両の制動装置としては、車両の高速化や大型化に伴い、制動性に優れたディスクブレーキが多用されている。ディスクブレーキは、ブレーキディスクがボルトによる締結よって車輪に取り付けられており、その摺動面にブレーキライニングが押し付けられることで摩擦抵抗による制動が発生し、これにより車輪の回転を制動して車両の速度を制御する。

図1は、一般的な鉄道車両用ブレーキディスクの車輪への取付け構造を模式的に示す図であって、同図(a)は1/4円部分の表面視での平面図を、同図(b)は半円部分の径方向に沿った断面図をそれぞれ示す。図2は、従来の鉄道車両用ブレーキディスクの構成を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。

図1および図2に示すように、ブレーキディスク1は、表面2a側を摺動面とするドーナツ形の円板部2を備える。この円板部2の裏面2bには、放射状に複数のフィン部3が突設されている。複数のフィン部3のうちの幾つかには、半径方向のほぼ中央の位置に、円板部2まで貫通するボルト孔4が形成されている。

車輪10は、車軸が圧入されるボス部11、レールと接触する踏面を含むリム部12、およびこれらを連結する板部13から成る。ブレーキディスク1は、2枚を一組として個々の表面2aを外向きにした状態で車輪10の板部13を挟み込むように配置され、各ボルト孔4にボルト15が挿通されて、各ボルト15にナット16が締め付けられる。これにより、ブレーキディスク1は、フィン部3の先端面3aが半径方向の全域にわたって車輪10の板部13に圧接した状態で、車輪10に取り付けられる。

ここで、時速300kmを超える速度で走行する新幹線などのような高速鉄道車両の場合、走行時に、ブレーキディスク1が車輪10と一体で高速回転する。これに伴い、ブレーキディスク1の周辺の空気が、ブレーキディスク1と車輪10の間に、すなわちブレーキディスク1の円板部2およびフィン部3、並びに車輪10の板部13で囲まれた空間に、内周側から吸い込まれ、外周側から放出される(図2中の実線矢印参照)。要するに、鉄道車両の走行中、ブレーキディスク1と車輪10の間には空気のガス流れが生じる。このガス流れは、時速300kmを超える高速走行状態で著しくなり、空力音と称される騒音を誘発する。このため、環境への配慮から空力音の低減が必要とされる。

この要求への対応策として、例えば特許文献1には、隣り合うフィン部同士の間に、円周方向に沿ってリブを追加し、このリブによってガス流れを抑制したブレーキディスクが開示されている。同文献に開示されるブレーキディスクによれば、空力音を所望のレベルまで低減することができる。ただし、リブによるガス流れの抑制に伴い、制動時にブレーキディスクの冷却性能が低下するという問題が顕在化する。

また、高速走行状態から非常ブレーキをかける場合においては、例えば特許文献2、3に記載されている通り、ブレーキディスクの熱膨張に伴う変形、およびそれによる締結用ボルトへの応力負荷が増大し、ブレーキディスクおよびボルトの耐久性を確保することが難しくなる。

特開2007−205428号公報

特開2006−9862号公報

国際公開WO2010/071169号パンフレット

本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、高速走行中に空力音を低減するとともに、制動時における冷却性能を向上させ、しかも締結用ボルトを含めて耐久性を向上させることが可能な鉄道車両用ブレーキディスクを提供することを目的とする。

本発明者らは、上記目的を達成するため、ブレーキディスクとして、前記図2に示すブレーキディスク、すなわち、表面側を摺動面とする円板部と、この円板部の裏面に突設された複数のフィン部と、円板部およびフィン部を貫通するボルト孔とを備え、ボルト孔に挿通されたボルトによる締結により、フィン部が車輪の板部に圧接した状態で円板部が車輪に取り付けられるブレーキディスクを前提とし、種々の実験および解析を実施して鋭意検討を重ねた結果、下記の(a)〜(d)の知見を得た。

(a)前記特許文献3に記載されている通り、ブレーキディスクの円板部およびフィン部、並びに車輪の板部で囲まれた空間を流れる空気の通気量と、空力音のレベルとの間には、強い相関がある。ここでいう通気量は熱流体解析によって得られ、空力音のレベルは実験により得られたものである。通気量と空力音レベルの間には強い相関があるため、空力音レベルの評価は通気量を指標として行うことができ、空力音を低減するには通気量を低減すればよい。そして、通気量を低減するには、ガス流れにおける圧力損失を増加させるのが有効であり、このためには、ガス流れが起こる空間に、圧力損失を生じやすい部、またはガス流れ方向と対向する面を設置する必要がある。

(b)冷却性能を向上させるには、上記(a)に示したガス流れ空間の圧力損失部において、十分な面積を確保することが必要となる。その圧力損失部ではガスとの熱伝達が高くなるからである。

(c)図3は、従来のブレーキディスクにおける制動中の熱膨張による変形挙動を誇張して模式的に示す断面図である。制動時、ブレーキディスク1は、ブレーキライニングとの摺動による摩擦によって発熱することから、円板部2およびフィン部3が径方向に熱膨張する様相になる。しかし、フィン部3が径方向の全域にわたって車輪10の板部13と圧接しているため、フィン部3の径方向への熱膨張が拘束される。このため、従来のブレーキディスク1の場合、図3に示すように、ブレーキディスク1はフィン部3の先端面3aの内周側の端と外周側の端を支点にしてアーチ状に変形する。

そうすると、締結用ボルト15には、引張り応力が負荷され、さらには曲げ応力も負荷される。また、繰り返しの制動に伴って、ブレーキディスク1が制動時の熱膨張と制動後の冷却による収縮を繰り返すことから、反り返った状態に塑性変形する。

このようなブレーキディスクの熱膨張に伴う変形を低減するには、制動中にフィン部の熱膨張に対する拘束を緩和し、フィン部の径方向への熱伸縮を少なからず許容できるようにすることが必要となる。

(d)上記(a)〜(c)の知見を踏まえると、前記特許文献1に開示されるブレーキディスクのようなリブを新たに設置することなく、フィン部において、円板部の径方向に見てボルト孔よりも内周側の領域および外周側の領域の少なくともいずれか一方に、円周方向に沿って溝を形成するのがよい。さらには、内周側の領域と外周側の領域に、円周方向に沿って溝を形成するのがよい。フィン部に溝を形成することによって、上記(a)、(b)に提示したような圧力損失部がおのずと設置され、上記(c)に提示したようなフィン部の径方向への熱伸縮が少なからず許容されるからである。

本発明は、上記(a)〜(d)に示す知見に基づいて完成させたものであり、その要旨は、下記の鉄道車両用ブレーキディスクにある。

すなわち、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、表面側を摺動面とするドーナツ形の円板部と、上記円板部の裏面に放射状に突設された複数のフィン部と、上記円板部および上記フィン部を貫通するボルト孔とを備え、上記ボルト孔に挿通されたボルトによる締結により、上記フィン部が車輪の板部に圧接した状態で上記円板部が上記車輪に取り付けられる鉄道車両用ブレーキディスクであって、上記フィン部には、上記円板部の径方向に見て上記ボルト孔よりも内周側の領域および外周側の領域の少なくともいずれか一方に、円周方向に沿って溝が形成されていることを特徴とする。

上記発明においては、上記溝の外周側の面が平面または凹面であることが好ましい。

また本発明においては、上記フィン部には、上記内周側の領域および上記外周側の領域に、円周方向に沿って上記溝が形成されていることが好ましい。

上記のブレーキディスクでは、上記溝の深さhと上記フィン部の高さHとの比h/Hが0.2〜0.8の範囲内であることが好ましい。

また、上記のブレーキディスクでは、上記フィン部の外周側の領域の円周方向の幅が内周側の領域の円周方向の幅よりも大きいことが好ましい。

また本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、表面側を摺動面とするドーナツ形の円板部と、この円板部の裏面に放射状に突設された複数のフィン部と、上記円板部および上記フィン部を貫通するボルト孔とを備え、上記ボルト孔に挿通されたボルトによる締結により、上記フィン部が車輪の板部に圧接した状態で上記円板部が上記車輪に取り付けられる鉄道車両用ブレーキディスクであって、上記フィン部には、上記ボルト孔を間に挟む径方向の内周側の領域と外周側の領域に、円周方向に沿って溝が形成されていることを特徴とする。

本発明の鉄道車両用ブレーキディスクによれば、ボルト孔が形成されているフィン部に円周方向に沿って溝が形成されているため、高速走行中に空力音を低減することができる上、制動時のブレーキディスクの冷却性能を向上させることができ、しかも、締結用ボルトを含めブレーキディスクの耐久性を向上させることが可能となる。

一般的な鉄道車両用ブレーキディスクの車輪への取付け構造を模式的に示す図であって、同図(a)は1/4円部分の表面視での平面図を、同図(b)は半円部分の径方向に沿った断面図をそれぞれ示す。

従来の鉄道車両用ブレーキディスクの構成を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。

従来のブレーキディスクにおける制動中の熱膨張による変形挙動を誇張して模式的に示す断面図である。

本発明の第2実施形態である鉄道車両用ブレーキディスクの構成の一例を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。

フィン部における溝の深さが通気量と冷却性能に与える影響を示す図である。

フィン部における溝の径方向の幅が通気量と冷却性能に与える影響を示す図である。

本発明の第3実施形態である鉄道車両用ブレーキディスクの構成の一例を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。

フィン部の円周方向の幅が通気量と冷却性能に与える影響を示す図である。

本発明の第1実施形態である鉄道車両用ブレーキディスクの構成の一例を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。

本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、表面側を摺動面とするドーナツ形の円板部と、上記円板部の裏面に放射状に突設された複数のフィン部と、上記円板部および上記フィン部を貫通するボルト孔とを備え、上記ボルト孔に挿通されたボルトによる締結により、上記フィン部が車輪の板部に圧接した状態で上記円板部が上記車輪に取り付けられる鉄道車両用ブレーキディスクであって、上記フィン部には、上記円板部の径方向に見て上記ボルト孔よりも内周側の領域および外周側の領域の少なくともいずれか一方に、円周方向に沿って溝が形成されていることを特徴とするものである。

以下に、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの実施形態について詳述する。 本発明においては、フィン部の内周側の領域のみに円周方向に沿って溝が形成されていてもよく、フィン部の外周側の領域のみに円周方向に沿って溝が形成されていてもよく、フィン部の内周側の領域および外周側の領域の両方に円周方向に沿って溝が形成されていてもよい。 以下、フィン部の内周側の領域または外周側の領域のいずれかに円周方向に沿って溝が形成されている態様を第1実施形態、フィン部の内周側の領域および外周側の領域の両方に円周方向に沿って溝が形成されている態様を第2実施形態、またフィン部の外周側の領域の円周方向の幅が内周側の領域の円周方向の幅よりも大きい態様を第3実施形態として、それぞれについて説明する。 なお、本願明細書において、鉄道車両用ディスクブレーキを単にディスクブレーキと称する場合がある。

<第1実施形態> 図9は、本発明の第1実施形態である鉄道車両用ブレーキディスクの構成の一例を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。なお、図9(a)、(b)では、ブレーキディスクの1/12円部分を代表的に示している。

図9に示すように、第1実施形態のブレーキディスク1は、表面2a側を摺動面とするドーナツ形の円板部2を備える。この円板部2の裏面2bには、放射状に複数のフィン部3が突設されている。複数のフィン部3のうちの幾つかには、半径方向のほぼ中央の位置に、円板部2まで貫通するボルト孔4が形成されている。

ボルト孔4が形成されているフィン部3には、円板部2の径方向に見てボルト孔4よりも外周側の領域に、円周方向に沿って溝5bが形成されている。さらに、ボルト孔4が形成されていないフィン部3にも、溝5bと同一円周上に、同様の溝5dが形成されている。

このような構成のブレーキディスク1は、上記図1に示すように、2枚を一組として個々の表面2aを外向きにした状態で車輪10の板部13を挟み込むように配置され、各ボルト孔4にボルト15が挿通されて、各ボルト15にナット16が締め付けられる。これにより、ブレーキディスク1は、フィン部3の先端面3aが、溝5b、5dの形成された領域を除いて車輪10の板部13に圧接した状態で、車輪10に取り付けられる。

第1実施形態のブレーキディスク1では、ボルト孔4が形成されているフィン部3に円周方向に沿って溝5bが形成されているため、この溝5bの角部、および溝5bの外周側の面20がガス流れの圧力損失部となる。このため、ガス流れが起こる空間を流れる空気の通気量が低減し、その結果として、高速走行中に空力音を低減することができる。その上、円周方向に沿った溝5bによって圧力損失部が広範に形成されるので、ガスとの熱伝達が高くなる圧力損失部の面積を十分に確保することが可能となり、その結果として、制動時のブレーキディスク1の冷却性能を向上させることができる。これらの効果は、ボルト孔4が形成されていないフィン部3にも溝5dを形成することにより、一層高まる。

しかも、ボルト孔4が形成されているフィン部3に円周方向に沿って溝5bが形成されているため、この溝5bによってフィン部3の径方向への熱伸縮を許容できるようになる。このため、制動中にフィン部3の熱膨張に対する拘束が緩和され、ブレーキディスク1の熱膨張に伴う変形が低減されることから、締結用ボルトおよびブレーキディスク1への応力負荷が軽減され、その結果として、締結用ボルトを含めブレーキディスク1の耐久性を向上させることが可能となる。

さらに、第1実施形態のブレーキディスク1では、上記特許文献1に開示されるブレーキディスクのようなリブを新たに設置することなく、フィン部3に溝5bを形成すればよいので、構成が簡易であり製作性に優れるという利点もある。また、フィン部3に溝5bを形成することにより、ブレーキディスク1の軽量化を図ることが可能になる。

なお、図9において、フィン部には、円板部の径方向に見てボルト孔よりも外周側の領域に円周方向に沿って溝が形成されているが、これに限定されるものではなく、フィン部には、円板部の径方向に見てボルト孔よりも内周側の領域に円周方向に沿って溝が形成されていてもよい。フィン部の内周側の領域に円周方向に沿って溝が形成されている場合においても、上記と同様の効果を奏する。

フィン部の内周側の領域または外周側の領域のいずれかに円周方向に沿って溝が形成されている場合、溝が形成される領域はフィン部の内周側の領域および外周側の領域のいずれであってもよい。なお、空力音を低減するには内周側の領域に溝を形成するのが効率的である。通常は内周側の流路の方が狭いため、大きな圧力損失を与えることができるからである。また、冷却能の確保を優先する際には外周側の領域に溝を形成するのが効果的である。圧力損失を与えると同時に表面積を容易に拡大することができるからである。

また、ブレーキディスクがボルト孔が形成されているフィン部とボルト孔が形成されていないフィン部とを備える場合、少なくともボルト孔が形成されているフィン部に円周方向に沿って溝が形成されていればよい。中でも、ボルト孔が形成されているフィン部およびボルト孔が形成されていないフィン部の両方に円周方向に沿って溝が形成されていることが好ましい。上述のように、ボルト孔が形成されていないフィン部にも溝が形成されていることにより、高速走行中の空力音をより一層低減することができ、制動時のブレーキディスクの冷却性能をより一層向上させることができる。

フィン部に形成した溝の形状は特に限定されるものではない。 中でも、溝の外周側の面はガス流れ方向と対向する面になり圧力損失部になることから、溝の外周側の面は平面または凹面であることが好ましい。溝の外周側の面が凸面である場合、ガス流れ方向と対向する面が形成されにくく、また溝の外周側の面において溝の角部が丸みを帯びるまたは無くなってしまい、圧力損失部の面積を十分に確保することが困難になるおそれがある。一方、溝の外周側の面が平面または凹面である場合、ガス流れ方向と対向する面が形成されやすく、また溝の外周側の面において溝の角部が形成されやすく、圧力損失部の面積を十分に確保することができる。また、溝の外周側の面が凹面である場合には、ガス流れ方向と対向する面を大きくすることができ、圧力損失部を増大させることもできる。そのため、高速走行中の空力音をより一層低減することができ、制動時のブレーキディスクの冷却性能をより一層向上させることができる。 ここで、溝の外周側の面において、凹面とは円板部の外周側に向けて凹形状を有する面をいい、凸面とは円板部の内周側に向けて凸形状を有する面をいう。

一方、溝の内周側の面は平面、凹面、凸面のいずれであってもよい。溝の内周側の面が平面または凹面である場合には、上記の場合と同様に、圧力損失を生じやすい溝の角部が形成されやすくなる。 ここで、溝の内周側の面において、凹面とは円板部の内周側に向けて凹形状を有する面をいい、凸面とは円板部の外周側に向けて凸形状を有する面をいう。

また、図9(b)に示すようにフィン部3の外周側の領域に円周方向に沿って溝5bが形成されている場合、フィン部3の外周側の領域の円周方向の幅t2はボルト孔4の径よりも大きいことが好ましい。フィン部3の外周側の領域に形成された溝5bの円周方向長さが長くなるため、圧力損失部が拡大する。このため、高速走行中の空力音を低減することができ、制動時のブレーキディスク1の冷却性能を向上させることができる。 また、図示しないがフィン部の内周側の領域に円周方向に沿って溝が形成されている場合には、図9(b)に示すようなフィン部3の内周側の領域の円周方向の幅t1がボルト孔4の径よりも大きいことが好ましい。この場合も、上記と同様の効果が得られる。

図9(c)に示すような、フィン部3の先端面3aから円板部2の裏面2bに向けた方向での溝5b、5dの深さhは同一であっても異なっていてもよい。

また、図9(c)に示すように、フィン部3の先端面3aから円板部2の裏面2bに向けた方向での溝5b、5dの深さをhとし、円板部2の裏面2bからフィン部3の先端面3aまでのフィン部3の高さをHとしたとき、その溝5b、5dの深さhとフィン部3の高さHの比h/Hが、0.2〜0.8の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.4〜0.8の範囲内である。比h/Hが上記範囲内であれば、通気量が小さく、かつ放熱量が大きくなり、空力音レベルが低くて、冷却性能が優れるからである。なお、この理由については、後述の第2実施形態に記載するので、ここでの説明は省略する。 また、図9(c)において、フィン部には、円板部の径方向に見てボルト孔よりも外周側の領域に円周方向に沿って溝が形成されているが、フィン部の内周側の領域に円周方向に沿って溝が形成されている場合においても、同様に、溝の深さhとフィン部の高さHの比h/Hが上記範囲内であることが好ましい。

図9(c)に示すような、フィン部3に形成された溝5b、5dの径方向の幅w2は同一であっても異なっていてもよい。

また、図9(c)に示すように、フィン部3に形成された溝5b、5dの径方向の幅をw2とし、フィン部3の先端面3aの径方向の全長をWとしたとき、それらの溝5b、5dの径方向の幅w2とフィン部3の先端面3aの径方向の全長Wの比w2/Wが0.05以上であることが好ましい。比w2/Wが上記範囲であれば、通気量が小さく、かつ放熱量が大きくなり、空力音レベルが低くて、冷却性能が優れるからである。また、比w2/Wの上限は、フィン部によるブレーキディスクの補強効果を確保するために、0.3以下とするのが好ましい。

ブレーキディスクの材質としては、鋳鉄、鋳鋼、鍛鋼、アルミニウム、カーボンなどを採用することができる。

<第2実施形態> 図4は、本発明の第2実施形態である鉄道車両用ブレーキディスクの構成の一例を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。なお、図4(a)、(b)では、ブレーキディスクの1/12円部分を代表的に示している。

図4に示すように、第2実施形態のブレーキディスク1は、表面2a側を摺動面とするドーナツ形の円板部2を備える。この円板部2の裏面2bには、放射状に複数のフィン部3が突設されている。複数のフィン部3のうちの幾つかには、半径方向のほぼ中央の位置に、円板部2まで貫通するボルト孔4が形成されている。

ボルト孔4が形成されているフィン部3には、ボルト孔4を間に挟む径方向の内周側の領域と外周側の領域に、すなわち円板部2の径方向に見てボルト孔4よりも内周側の領域および外周側の領域に、円周方向に沿って溝5a、5bが形成されている。このフィン部3は、内周側の領域の円周方向の幅t1と外周側の領域の円周方向の幅t2が等しくされている。さらに、ボルト孔4が形成されていないフィン部3にも、それらの溝5a、5bと同一円周上に、それらと同様の溝5c、5dが形成されている。

このような構成のブレーキディスク1は、前記図1に示すように、2枚を一組として個々の表面2aを外向きにした状態で車輪10の板部13を挟み込むように配置され、各ボルト孔4にボルト15が挿通されて、各ボルト15にナット16が締め付けられる。これにより、ブレーキディスク1は、フィン部3の先端面3aが、溝5a〜5dの形成された領域を除いて車輪10の板部13に圧接した状態で、車輪10に取り付けられる。

第2実施形態のブレーキディスクは、上記第1実施形態のブレーキディスクと同様の効果を奏する。特に、フィン部の内周側の領域および外周側の領域の両方に円周方向に沿って溝が形成されているため、上述の効果を一層高めることができる。

すなわち、第2実施形態のブレーキディスク1では、ボルト孔4が形成されているフィン部3に円周方向に沿って溝5a、5bが形成されているため、これらの溝5a、5bの角部、および溝5a、5bの外周側の面がガス流れの圧力損失部となる。このため、ガス流れが起こる空間を流れる空気の通気量が低減し、その結果として、高速走行中に空力音を低減することができる。その上、円周方向に沿った溝5a、5bによって圧力損失部が広範に形成されるので、ガスとの熱伝達が高くなる圧力損失部の面積を十分に確保することが可能となり、その結果として、制動時のブレーキディスク1の冷却性能を向上させることができる。これらの効果は、ボルト孔4が形成されていないフィン部3にも溝5c、5dを形成することにより、一層高まる。

しかも、ボルト孔4が形成されているフィン部3に、ボルト孔4を間に挟んで円周方向に沿って溝5a、5bが形成されているため、これらの溝5a、5bによってフィン部3の径方向への熱伸縮を許容できるようになる。このため、制動中にフィン部3の熱膨張に対する拘束が緩和され、ブレーキディスク1の熱膨張に伴う変形が低減されることから、締結用ボルトおよびブレーキディスク1への応力負荷が軽減され、その結果として、締結用ボルトを含めブレーキディスク1の耐久性を向上させることが可能となる。

さらに、第2実施形態のブレーキディスク1では、前記特許文献1に開示されるブレーキディスクのようなリブを新たに設置することなく、フィン部3に溝5a、5bを形成すればよいので、構成が簡易であり製作性に優れるという利点もある。また、フィン部3に溝5a、5bを形成することにより、ブレーキディスク1の軽量化を図ることが可能になる。

第2実施形態における好ましい態様は、上記第1実施形態における好ましい態様と同様である。 すなわち、ブレーキディスクがボルト孔が形成されているフィン部とボルト孔が形成されていないフィン部とを備える場合、少なくともボルト孔が形成されているフィン部に円周方向に沿って溝が形成されていればよいが、中でもボルト孔が形成されていないフィン部にも円周方向に沿って溝が形成されていることが好ましい。

第2実施形態のブレーキディスク1において、フィン部3に形成した溝5a〜5dの形状は、特に限定はない。 中でも、上記第1実施形態と同様に、溝の外周側の面は平面または凹面であることが好ましい。一方、溝の内周側の面は平面、凹面、凸面のいずれであってもよい。

また、図4(b)に示すように、フィン部3の内周側の領域の円周方向の幅t1および外周側の領域の円周方向の幅t2はボルト孔4の径よりも大きいことが好ましい。フィン部3に形成された溝5a、5bの円周方向長さが長くなるため、圧力損失部が拡大する。このため、高速走行中の空力音を低減することができ、制動時のブレーキディスク1の冷却性能を向上させることができる。

図4(c)に示すような、フィン部3の先端面3aから円板部2の裏面2bに向けた方向での溝5a〜5dの深さhはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。

また、図4(c)に示すように、フィン部3の先端面3aから円板部2の裏面2bに向けた方向での溝5a〜5dの深さをhとし、円板部2の裏面2bからフィン部3の先端面3aまでのフィン部3の高さをHとしたとき、その溝5a〜5dの深さhとフィン部3の高さHの比h/Hが、0.2〜0.8の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.4〜0.8の範囲内である。これは、以下の理由による。

図5は、フィン部における溝の深さが通気量と冷却性能に与える影響を示す図である。同図中、横軸に表示される通気量は、熱流体解析によって得られたものであり、空力音レベルと強い相関があることから、空力音レベルの評価指標として扱える。この通気量が小さいほど、空力音レベルは低いことを意味する。また、縦軸に表示される放熱量は、時速360kmで定常走行している場合を想定して熱流体解析を行い、その結果として得られるブレーキディスク1枚あたりの表面の平均熱伝達率と表面積の積算値であり、ブレーキディスクの冷却性能の評価指標として扱える。この放熱量が大きいほど、冷却性能が優れることを意味する。

解析に用いたブレーキディスクのモデルの代表的な条件は、次の通りである。 ・材質:鍛鋼 ・円板部の内径:417mm、円板部の外径:715mm ・円板部の摺動面からフィン部の先端面までの全高さ:45mm ・ボルトによる締結:直径が560mmの同一円上に中心が位置する12個のボルト孔を等角度間隔に形成し、各ボルト孔にボルトを挿通してブレーキディスクと車輪を締結。

ここでは、比h/Hを0(溝無し)、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8および1.0に変更した。また、前記図4(c)に示すように、フィン部3に形成された内周側の溝5a、5cの径方向の幅をw1とし、外周側の溝5b、5dの径方向の幅をw2とし、フィン部3の先端面3aの径方向の全長をWとしたとき、それらの溝5a〜5dの合計幅「w1+w2」とフィン部3の先端面3aの全長Wの比「(w1+w2)/W」を0.3と一定にした。

図5に示すように、比h/Hが0.2〜0.8の範囲内であれば、通気量が小さく、且つ放熱量が大きくなり、空力音レベルが低くて、冷却性能が優れることが明らかである。ただし、比h/Hが0.2の場合は、通気量が同程度となる比h/Hが0.4の場合と比較して、放熱量が小さいことから、比h/Hの下限を0.4以上とするのがより好ましい。また、比h/Hが1.0の場合、すなわち溝深さhとフィン部高さHが等しい場合は、溝の所でフィン部が完全に無いため、フィン部によるブレーキディスクの補強効果が減退する点で不適切となる。

図4(c)に示すような、フィン部3に形成された溝5a〜5dの径方向の幅w1、w2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。

また、フィン部3に形成された内周側の溝5a、5cと外周側の溝5b、5dの合計幅「w1+w2」とフィン部3の先端面3aの全長Wの比「(w1+w2)/W」は、0.1以上であることが好ましい。より好ましくは0.15以上である。これは、以下の理由による。

図6は、フィン部における溝の幅が通気量と冷却性能に与える影響を示す図である。同図中、横軸、縦軸にそれぞれ表示される通気量、放熱量は、前記図5に示すものと同じである。解析に用いたブレーキディスクのモデルの代表的な条件も同様であるが、ここでは、比「(w1+w2)/W」を0(溝無し)、0.1、0.15、0.3および0.45に変更した。また、比h/Hを0.6と一定にした。

図6に示すように、比「(w1+w2)/W」が0.1以上であれば、通気量が小さく、且つ放熱量が大きくなり、空力音レベルが低くて、冷却性能が優れることが明らかである。ただし、比「(w1+w2)/W」が0.1の場合は、通気量が同程度となる比「(w1+w2)/W」が0.15の場合と比較して、放熱量が小さいことから、比「(w1+w2)/W」を0.15以上とするのがより好ましい。また、比「(w1+w2)/W」の上限は、フィン部によるブレーキディスクの補強効果を確保するために、0.6以下とするのが好ましい。

ブレーキディスク1の材質については、上記第1実施形態と同様である。上述の解析に用いたブレーキディスクのモデルの代表的な条件として材質は鍛鋼としたが、材質によらず同様の効果が得られる。

<第3実施形態> 図7は、本発明の第3実施形態である鉄道車両用ブレーキディスクの構成の一例を示す模式図であって、同図(a)は裏面側から見た部分斜視図を、同図(b)は裏面視での部分平面図を、同図(c)は径方向に沿った部分断面図をそれぞれ示す。なお、図7(a)、(b)では、図4(a)、(b)と同様に、ブレーキディスクの1/12円部分を代表的に示している。

図7に示す第3実施形態のブレーキディスクは、前記図4に示す第2実施形態のブレーキディスクと基本構成は同じであるが、以下の点で前記第2実施形態とは相違する。すなわち、図7に示すように、第3実施形態のフィン部3は、外周側の領域の円周方向の幅t2が内周側の領域の円周方向の幅t1よりも大きくされている。

第3実施形態のブレーキディスク1では、前記第2実施形態のブレーキディスク1と比較し、フィン部3に形成された外周側の溝5b、5dの円周方向長さが長くなるため、圧力損失部が拡大する。このため、より一層、高速走行中の空力音を低減することができ、制動時のブレーキディスク1の冷却性能を向上させることができる。

また、図9に示すブレーキディスクは、上記図7に示すブレーキディスクと同様に、フィン部3は、外周側の領域の円周方向の幅t2が内周側の領域の円周方向の幅t1よりも大きくされている。 この場合も、上記と同様に、フィン部3の外周側の領域に形成された溝5bの円周方向長さが長くなるため、圧力損失部が拡大する。このため、高速走行中の空力音を低減することができ、制動時のブレーキディスク1の冷却性能を向上させることができる。

図8は、フィン部の円周方向の幅が通気量と冷却性能に与える影響を示す図である。同図中、横軸、縦軸にそれぞれ表示される通気量、放熱量は、前記図5に示すものと同じである。解析に用いたブレーキディスクのモデルの代表的な条件も同様であるが、ここでは、本発明例1としてフィン部の円周方向の幅を27mmと一定にしたもの(第2実施形態に相当)、本発明例2としてフィン部の円周方向の幅を内周側で27mm、外周側で54mmと外周側を大きくしたもの(第3実施形態に相当)をそれぞれ用い、いずれも、比h/Hを0.6、比「(w1+w2)/W」を0.3と一定にした。また、比較のために、フィン部に溝を形成することなく、フィン部の円周方向の幅を27mmと一定にしたものを用いた。

図8中の白抜き四角印で示す本発明例2のように、フィン部の円周方向の幅を内周側よりも外周側で大きくすれば、空力音レベルの低減と冷却性能の向上がともに顕著になることが明らかである。

また、第3実施形態でも、締結用ボルトおよびブレーキディスクへの応力負荷が軽減され、締結用ボルトを含めブレーキディスクの耐久性を向上させることが可能となる。これを実証する解析結果を下記の表1に示す。

ここでは、前記図8に示す本発明例2および比較例と同じ条件のモデルを用いてFEMによる変形解析を行い、締結用ボルトの曲げ応力変動および引張り応力変動を算出し、さらにブレーキディスクの変形量を算出した。それらのうち、締結用ボルトの応力変動は、時速360kmで走行している際に非常ブレーキを1回かけた場合を想定し、そのときにボルトに発生する応力変動(最大応力−最小応力)を求めたものである。また、ブレーキディスクの変形量は、時速360kmで走行している際に非常ブレーキを3回かけ、その後にブレーキディスクを冷却した場合を想定し、冷却後におけるブレーキディスクの反り(初期状態に対する軸方向変位の最大値)を求めたものである。

表1に示す結果から、第3実施形態に相当する本発明例2では、フィン部に溝の無い比較例と比べて、締結用ボルトの応力変動およびブレーキディスクの変形量がいずれも小さくなり、締結用ボルトを含めブレーキディスクの耐久性を向上できることがわかる。

本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、あらゆる鉄道車両のディスクブレーキに有効に利用することができ、中でも、高速鉄道車両に有用である。

1:ブレーキディスク、 2:円板部、 2a:表面、 2b:裏面、 3:フィン部、 3a:先端面、 4:ボルト孔、 5a、5b、5c、5d:溝、 10:車輪、 11:ボス部、 12:リム部、 13:板部、 15:ボルト、 16:ナット 20:溝の外周側の面

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