鉄道車両用ブレーキライニングおよびそれを備えたディスクブレーキ

申请号 JP2012029158 申请日 2012-02-14 公开(公告)号 JP5682580B2 公开(公告)日 2015-03-11
申请人 新日鐵住金株式会社; 发明人 由衣子 阪山; 由衣子 阪山; 加藤 孝憲; 孝憲 加藤; 坂口 篤司; 篤司 坂口;
摘要
权利要求
  • 鉄道車両の車輪または車軸に固定されたブレーキディスクを跨ぐキャリパアームと、キャリパアームにそれぞれ保持されたブレーキライニングと、ブレーキライニングを保持するキャリパアームの片方のみに配設された押付け駆動源と、から成るフローティング式ブレーキキャリパを用いた鉄道車両用ディスクブレーキにおいて、
    押付け駆動源が配設されていない側のキャリパアームに保持されるブレーキライニングは、
    ブレーキディスクの摺動面と対向する摩擦部材と、摩擦部材を正面に保持する基板と、基板の背面の中央に固設され、キャリパアームの凹部に収容される案内板と、から構成され、
    基板の正面が摩擦部材の摺動面と平行であり、基板の厚みがブレーキディスクの外周側に対応する側よりもブレーキディスクの内周側に対応する側で厚くなっており、案内板の厚みがキャリパアームの凹部の深さよりも薄くなっており、
    摩擦部材の摺動面がブレーキディスクの摺動面と平行に対向した状態で、案内板がキャリパアームの凹部に遊嵌することを特徴とする鉄道車両用ブレーキライニング。
  • 基板の背面が正面に対して傾斜した傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキライニング。
  • 基板の厚みが、ブレーキディスクの外周側に対応する側よりもブレーキディスクの内周側に対応する側で0.25〜2.0mm厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用ブレーキライニング。
  • 案内板がキャリパアームの凹部に遊嵌した状態では、案内板の背面とホルダの凹部との間に隙間が存在するとともに、基板の背面とキャリパアームとの間に隙間が存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道車両用ブレーキライニング。
  • 請求項1〜4のいずれかに記載のブレーキライニングを備えたことを特徴とする鉄道車両用ディスクブレーキ。
  • 说明书全文

    本発明は、鉄道車両の制動装置としてフローティング式ブレーキキャリパを用いたディスクブレーキに関し、特に、車輪または車軸に固定されたブレーキディスクの摺動面に押し付けられる鉄道車両用ブレーキライニング、およびそれを備えた鉄道車両用ディスクブレーキに関する。

    鉄道車両や自動車や自動二輪車などの陸上輸送車両においては、車両の高速化や大型化に伴い、その制動装置としてディスクブレーキが多用されている。 ディスクブレーキは、ブレーキディスク(以下、単に「ディスク」ともいう)とブレーキライニング(以下、単に「ライニング」ともいう)との摺動による摩擦により制動を得る装置である。 鉄道車両用のディスクブレーキの場合、ディスクを車輪または車軸に取り付けて固定し、このディスクの摺動面に、ブレーキキャリパ(以下、単に「キャリパ」ともいう)によってライニングを押し付けることで制動力を発生させる。 これにより、車輪または車軸の回転を制動し、車両の速度を制御する。

    通常、ライニングの摩擦部材は、制動を繰り返すことにより次第に摩耗する。 ただし、摩擦部材が偏摩耗するとブレーキ性能が不安定になることから、偏摩耗を防ぐために、制動中は摩擦部材の全域にわたって均一に押付け荷重がかかるのがよい。

    また、制動中、ライニングとディスクの摺動面は、摩擦熱により温度が上昇する。 この温度上昇は、ブレーキ負荷が大きくなる条件、具体的には、車両の走行速度が高速である条件や車両重量が大きい条件のときに著しくなる傾向にある。 実走行では、ライニングおよびディスクの熱的な損傷を防止し、耐久性を向上させることが望まれ、このためには、制動中のライニングとディスクの接触をできるだけ均一化し、発生する摩擦熱を低減する必要がある。

    ここで、キャリパは、ディスクを跨ぐように延び出すキャリパアームを有し、キャリパアームにそれぞれライニングが保持されている。 キャリパは、主に、ライニングをディスクに押し付けるための駆動源である、例えばピストンやダイアフラム等の配置形態から、フローティング方式とオポーズド方式に大別される。 フローティング方式では、ライニングを保持するキャリパアームの片方だけにピストンやダイアフラム等の押付け駆動源が配設され、オポーズド方式では、キャリパアームの両方にピストンやダイアフラム等の押付け駆動源が配設される。

    鉄道車両の場合、フローティング式キャリパを用いたディスクブレーキがよく用いられる。 以下では、フローティング方式のものに限定して説明する。

    図1は、従来の鉄道車両用ディスクブレーキにおける押付け駆動源が配設されていない側の構成の一例を示す図であり、同図(a)はライニングを正面側から見たときの平面図を、同図(b)はライニングを背面側から見たときの平面図を、同図(c)は同図(a)のA−A断面の拡大図を、同図(d)は同図(c)のライニングをキャリパアームから取り外した状態の断面図それぞれ示す。

    図1に示す従来のライニング(以下、「従来型ライニング」という)12は、ディスク1の摺動面1aと対向する摩擦部材3と、厚みが一定で摩擦部材3を正面14aに保持する基板14と、基板14の背面14bの中央に固設された案内板15とから構成される。 図1では、複数の小塊の摩擦部材3を、ディスク1の径方向に2個、ディスク1の周方向に7個の合計14個を配列したものを示している。 摩擦部材3は、それぞれリベット6によって基板14に取り付けられている。 なお、摩擦部材3と基板14の間にばね部材を配設する場合もある。

    従来型ライニング12は、キャリパアームに組み込まれたライニングホルダ(以下、単に「ホルダ」ともいう)に取り付けられ、各摩擦部材3の摺動面3aがディスク1の摺動面1aと平行に対向した状態とされる。 ここで、図1(c)、(d)に示すように、ピストン等の押付け駆動源が配設されていない側(以下、「反押付け駆動源側」ともいう)においては、ホルダ8がキャリパアーム7と一体的に組み込まれており、このホルダ8にはライニング12の案内板15を収容する凹部8bが形成されている。 ライニング12の案内板15は、その背面(ライニングを基準として背面側となる面)15aがホルダ8の凹部8bの底面(ライニングを基準として正面側となる面)8cに密接しつつ、その上下の各縁部15b、15cがホルダ8の凹部8bの上下の各縁部8d、8eと係合した状態にされる。 このような案内板15とホルダ8の凹部8bとの強固な結合により、反押付け駆動源側のライニング12は、キャリパアーム7に直接組み込まれたホルダ8に強固に保持される。

    一方、押付け駆動源が配設されている側(以下、「押付け駆動源側」ともいう)においては、押付け駆動源にホルダが取り付けられ、このホルダに、反押付け駆動源側と同様の凹部が形成されている。 押付け駆動源側のライニング12は、反押付け駆動源側と同様にして、案内板とホルダの凹部との強固な係合により、キャリパアームに押付け駆動源を介して組み込まれたホルダに強固に保持される。

    このような構成の従来のディスクブレーキにおいて、制動時、押付け駆動源側では、押付け駆動源の作動により、押付け駆動源からの押付け力がライニング12に負荷され、ライニング12がディスクに押し付けられる。 一方、反押付け駆動源側では、図1(c)に示すように、キャリパアーム7が押付け駆動源側での押付け力の反力を受けディスク1に向けてスライド移動し(図1(c)中の白抜き矢印参照)、ライニング12がディスク1に押し付けられる。 このとき、押付け駆動源側、反押付け駆動源側のいずれでも、ライニング12に負荷される押付け力は、直接的には、キャリパアーム7のホルダ8を介してライニング12の案内板15に作用する。 すなわち、ライニング12に負荷される押付け力は、キャリパアーム7へのライニング12の取付け部の構造上、ライニング12の基板14に直接作用するわけではなく、ライニング12の案内板15に集中して作用する。

    ところで、フローティング方式のキャリパを用いたディスクブレーキの場合、反押付け駆動源側では、制動時にライニング12がディスク1に押し付けられることに伴って、キャリパアーム7が開くように撓む現象が生じる。 これにより、反押付け駆動源側の摩擦部材3には、ディスク1の内周側に対応する領域(以下、「内周側領域」ともいう)よりも、外周側に対応する領域(以下、「外周側領域」ともいう)に高い荷重が作用する傾向にある。 このため、特に摩擦部材3の外周側領域で摩耗が促進し、摩擦部材3の偏摩耗、さらにはディスク1の偏摩耗が助長される可能性がある。

    このような問題に対し、近年、制動時のライニングとディスクの接触面圧を均一化することを目的として、構造を改良したディスクブレーキが種々提案されている。

    例えば、特許文献1、2には、押付け駆動源であるピストンが配設されていない側で制動時にキャリパアームが開くように撓むことを見込み、予め、摩擦部材の摺動面をディスクの摺動面に対して所定の度で傾斜させた状態で、摩擦部材をキャリパアームのホルダに取り付けたディスクブレーキが開示されている。 特許文献1の場合、ライニングの構造はそのままでホルダの形状を変更して摩擦部材の摺動面をディスクの摺動面に対して傾斜させている。 特許文献2の場合、ホルダの構造はそのままでライニングの摩擦部材の厚みを変更して摩擦部材の摺動面をディスクの摺動面に対して傾斜させている。 このようなディスクブレーキによれば、制動時に摩擦部材が内周側領域からディスクに接触し、さらに荷重の負荷に伴ってキャリパアームが撓むことにより、摩擦部材の摺動面とディスクの摺動面が実質的に平行な状態で接触し、その結果として、摩擦部材の全域にわたって等面圧となるとされている。

    しかし、前記特許文献1、2に記載されるディスクブレーキでは、制動の初期に、摩擦部材の内周側領域がディスクに接触し、その外周側領域がディスクに接触しない。 このため、摩擦部材の偏摩耗は依然として起こり得る。

    特開2008−281156号公報

    特開2008−267527号公報

    本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、フローティング式ブレーキキャリパを用いたディスクブレーキの反押付け駆動源側において、制動の初期から摩擦部材をブレーキディスクと全域にわたって接触させるとともに、制動時に摩擦部材の全域にわたって均一に押付け荷重を付与することが可能であり、その結果として耐久性を向上させることができる鉄道車両用ブレーキライニング、およびこれを備えた鉄道車両用ディスクブレーキを提供することを目的とする。

    上記の目的を達成するため、本発明の要旨は、下記(I)に示す鉄道車両用ブレーキライニング、および下記(II)に示す鉄道車両用ディスクブレーキにある。

    (I)鉄道車両の車輪または車軸に固定されたブレーキディスクを跨ぐキャリパアームと、キャリパアームにそれぞれ保持されたブレーキライニングと、ブレーキライニングを保持するキャリパアームの片方のみに配設された押付け駆動源と、から成るフローティング式ブレーキキャリパを用いた鉄道車両用ディスクブレーキにおいて、
    押付け駆動源が配設されていない側のキャリパアームに保持されるブレーキライニングは、
    ブレーキディスクの摺動面と対向する摩擦部材と、摩擦部材を正面に保持する基板と、基板の背面の中央に固設され、キャリパアームの凹部に収容される案内板と、から構成され、
    基板の正面が摩擦部材の摺動面と平行であり、基板の厚みが、ブレーキディスクの外周側に対応する側よりもブレーキディスクの内周側に対応する側で厚くなっており、案内板の厚みがキャリパアームの凹部の深さよりも薄くなっており、
    摩擦部材の摺動面がブレーキディスクの摺動面と平行に対向した状態で、案内板がキャリパアームの凹部に遊嵌することを特徴とする鉄道車両用ブレーキライニングである。

    上記(I)のブレーキライニングは、基板の背面が正面に対して傾斜した傾斜面であることが好ましい。

    これらのブレーキライニングは、基板の厚みが、ブレーキディスクの外周側に対応する側よりもブレーキディスクの内周側に対応する側で0.25〜2.0mm厚いことが好ましい。

    これらのブレーキライニングにおいて、案内板がキャリパアームの凹部に遊嵌した状態では、案内板の背面とホルダの凹部との間に隙間が存在するとともに、基板の背面とキャリパアームとの間に隙間が存在する。

    (II)請求項1〜4のいずれかに記載のブレーキライニングを備えたことを特徴とする鉄道車両用ディスクブレーキである。

    本発明の鉄道車両用ブレーキライニングおよびディスクブレーキによれば、反押付け駆動源側において、摩擦部材の摺動面がディスクの摺動面と平行に対向配置されているので、制動の初期から摩擦部材を全域にわたってディスクに接触させることができる。 しかも、案内板とキャリパアームの凹部との遊嵌によりライニングがキャリパアームに対して可動自在となり、また、案内板の厚みがキャリパアームの凹部の深さよりも薄くなっているので、制動時に、反押付け駆動源側では、キャリパアームが撓むのに伴って基板とキャリパアームが広範に接触する。 これにより、ライニングに負荷される押付け力は、案内板に作用することなく、基板に直接作用し、摩擦部材の全域にわたって均一に押付け荷重を付与することができる。 したがって、摩擦部材の偏摩耗を防止でき、耐久性を向上させることが可能になる。

    従来の鉄道車両用ディスクブレーキにおける押付け駆動源が配設されていない側の構成の一例を示す図である。

    本発明の鉄道車両用ディスクブレーキにおける押付け駆動源が配設されていない側の構成の一例を示す図である。

    本発明の鉄道車両用ディスクブレーキにおける押付け駆動源が配設されていない側の構成の変形例を示す図である。

    以下に、本発明の鉄道車両用ブレーキライニングおよびディスクブレーキについて、その実施形態を詳述する。

    図2は、本発明の鉄道車両用ディスクブレーキにおける押付け駆動源が配設されていない側の構成の一例を示す図であり、同図(a)は断面図を、同図(b)は同図(a)のライニングをキャリパアームから取り外した状態の断面図をそれぞれ示す。 なお、図2(a)、(b)は、それぞれ前記図1(c)、(d)に対応する図である。 本発明のディスクブレーキにおける反押付け駆動源側について、ライニングを正面側から見たときの構成は、前記図1(a)に示すものと同様であり、背面側から見たときの構成は、前記図1(b)に示すものと同様である。

    本発明のディスクブレーキは、ブレーキディスク1と、ブレーキライニングと、このライニングが取り付けられたブレーキキャリパと、を備える。 ディスク1はドーナツ形円盤状であり、図示しない車輪または車軸にボルトなどによって取り付けられ、強固に固定されている。

    キャリパは、ディスク1を跨ぐように延び出すキャリパアームを有し、キャリパアームにそれぞれライニングが保持されている。 本発明で用いるキャリパは、フローティング方式であるので、ライニングを保持するキャリパアームのうち、図2に示していない片方のみにピストン等の押付け駆動源が配設されている。 押付け駆動源は、油圧や空気圧によって作動する。

    押付け駆動源側においては、キャリパアームに組み込まれた押付け駆動源にライニングホルダが取り付けられ、このホルダに、前記図1に示す従来型ライニング12と同じものが、従来と同様にして強固に保持されている。 一方、図2(a)に示すように、反押付け駆動源側においては、前記図1に示すものと同様に、ライニングホルダ8がキャリパアーム7と一体的に組み込まれている。 このホルダ8には、後述する本発明のブレーキライニング2の案内板5を収容する凹部8bが形成されている。

    図2に示すように、反押付け駆動源側のキャリパアーム7に保持される本発明のライニング2は、ディスク1の摺動面1aと対向する摩擦部材3と、摩擦部材3を正面4aに保持する基板4と、基板4の背面4bの中央に固設された案内板5とから構成される。 図2では、図1に示すものと同様に、複数の小塊の摩擦部材3を配列したものを示している。

    摩擦部材3は、銅焼結材や樹脂系材料などからなり、平面形状が円形で、その中心部に挿入されたリベット6によって基板4に取り付けられている。 摩擦部材3の平面形状は、円形に限らず、四角形や六角形などの多角形でも構わない。 摩擦部材3と基板4の間には、摩擦部材3を弾性的に支持するために、ばね部材を配設してもよい。 ばね部材としては、皿ばねを適用することができ、板ばねやコイルばねを適用することもできる。

    基板4は、その正面4aが摩擦部材3の摺動面3aと平行になっている。 さらに、基板4は、その厚みが、ディスク1の外周側に対応する側(図2では上方側に相当し、以下、単に「外周側」ともいう)よりもディスク1の内周側に対応する側(図2では下方側に相当し、以下、単に「内周側」ともいう)で厚くなっている。

    この基板4の背面4bは、実用性の観点から、その正面4aに対して傾斜した傾斜面であることが好ましい。 また、基板4は、外周側の厚み4toと内周側の厚み4tiの差が0.25〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。 より好ましくは、0.5〜1.0mmである。 基板4の外周側と内周側の厚み差が0.25mm未満では、後述するように、制動時に、摩擦部材3がディスク1に接触しつつ、キャリパアーム7が撓むことに伴って基板4の背面4bとホルダ8の正面8aとが接触した場合、摩擦部材3の外周側領域に高い荷重が作用し易くなるからである。 一方、その厚み差が2.0mmを超えると、逆に摩擦部材3の内周側領域に高い荷重が作用し易くなるからである。 このような基板4の厚み差の範囲は、基板4の正面4aに対する背面4bの傾斜角度で言うと、0.1〜1.0°程度に相当する。

    案内板5は、その厚み5tが、ホルダ8(キャリパアーム7)の凹部8bの深さよりも薄くなっている。 すなわち、案内板5の厚み5tは、前記図1に示す従来型ライニング12の案内板15の厚みよりも薄くなっている。 なお、図2では、案内板5の厚み5tが一定であって、案内板5の背面5aが基板4の背面4bと平行である態様を示している。 ただし、案内板5の厚み5tがホルダ8の凹部8bの深さよりも薄くなっている限り、例えば、図3に示すように、案内板5の背面5aと基板4の正面4aが平行となるように、案内板5の厚み5tが外周側よりも内周側で薄くなっていても構わない。

    このような構成のライニング2は、反押付け駆動源側において、各摩擦部材3の摺動面3aがディスク1の摺動面1aと平行に対向した状態で、案内板5の上下の各縁部5b、5cのみが、キャリパアーム7のホルダ8に形成された凹部8bの上下の各縁部8d、8eと係合している。 すなわち、反押付け駆動源側のライニング2は、案内板5がホルダ8の凹部8bに遊嵌し、これにより、キャリパアーム7に可動自在に取り付けられる。 この遊嵌状態では、案内板5の背面5aとホルダ8の凹部8bの底面8cとの間に隙間c1が存在するとともに、基板4の背面4bとホルダ8(キャリパアーム7)の正面8aとの間に隙間c2が存在している。 ホルダ8の正面8aは、ディスク1の摺動面1aと平行になっている。

    このように、本発明のディスクブレーキは、反押付け駆動源側のキャリパアーム7に本発明のライニング2を備えるとともに、押付け駆動源側のキャリパアームに従来型ライニング12を備える。 制動時、押付け駆動源側では、押付け駆動源の作動により、押付け駆動源からの押付け力がライニング12に負荷され、ライニング12がディスクに押し付けられる。

    一方、反押付け駆動源側では、図2(a)に示すように、キャリパアーム7が押付け駆動源側での押付け力の反力を受けディスク1に向けてスライド移動し(図2(a)中の白抜き矢印参照)、ライニング2がディスク1に押し付けられる。 その際、摩擦部材3の摺動面3aがディスク1の摺動面1aと平行に対向配置されているので、摩擦部材3は、制動の初期より、内周側領域から外周側領域までの全域にわたってディスク1に接触する。 さらに、摩擦部材3がディスク1に押し付けられることに伴って、キャリパアーム7がその反力を受けて開くように撓む。

    これに伴い、基板4の背面4bとホルダ8の正面8aとの間の隙間c2が閉ざされると同時に、案内板5の背面5aとホルダ8の凹部8bの底面8cとの間の隙間c1が狭まる。 これは、案内板5とホルダ8の凹部8bとの遊嵌によりライニング2がキャリパアーム7に対して可動自在であり、また、案内板5の厚み5tがホルダ8の凹部8bの深さよりも薄くなっているからである。

    このようにして、制動時に、反押付け駆動源側では、案内板5の背面5aとホルダ8の凹部8bの底面8cとが非接触の状態のままで、基板4の背面4bとホルダ8の正面8aとが広範に接触することから、ライニング2に負荷される押付け力は、ライニング2の案内板5に作用することなく、ライニング2の基板4に直接作用する。 これにより、制動時に摩擦部材3の全域にわたって均一に押付け荷重を付与すること、すなわち等圧性を確保することが可能となる。 その結果、上記のとおりに、摩擦部材3が制動の初期から全域にわたってディスク1に接触することもあいまって、摩擦部材3の偏摩耗を防止でき、耐久性を向上させることができる。

    本発明の効果を確認するため、下記のFEM解析(有限要素法解析)を実施した。

    [解析の概要]
    制動時に、反押付け駆動源側における摩擦部材の等圧性を評価するため、FEM解析を行った。 解析では、キャリパアーム、ライニングおよびディスクを弾性体でモデル化し、キャリパアームに押付け力相当の荷重を与えた。 このときに摩擦部材に作用する荷重を評価した。 解析は、新幹線に使用されているディスクブレーキを対象とした。

    [実施条件]
    FEM解析の主要な実施条件を下記の表1にまとめて示す。

    FEM解析では、前記図2に示すディスクブレーキを採用し、本発明例1〜3の3つの態様について解析を実施した。 いずれでも、基板の厚みを外周側よりも内周側で厚くし、その厚みの差は、本発明例1で1.0mm、本発明例2で0.75mm、および本発明例3で0.5mmと変更した。 また、いずれでも、ホルダの凹部の深さは7.8mm、案内板の厚みはホルダの凹部の深さよりも薄い7mmとし、制動時に押付け荷重が基板に直接作用するようにした。

    また、本発明例1〜3に共通して、基板の長手方向長さ(ディスクの周方向に相当する長さ)は400mm、幅方向長さ(ディスクの径方向に相当する長さ)は141mmとした。 ライニングを構成する各部材の材料について、摩擦部材は銅焼結材とし、それ以外はすべて鉄鋼材料とした。 摩擦部材は14個とし、その平面形状は直径45mmの円形とした。 摩擦部材と基板の間には、ばね部材として皿ばねを配設した。 摩擦部材と基板、および基板と案内板は、それぞれリベットにより締結した。 ディスクは、内径476mm、外径724mmの略円盤状とした。

    そして、FEM解析は、8kN、10kN、および12kNの3条件の押付け力を与えて行った。

    さらに、比較のために、比較例1〜3の3つの態様について解析を実施した。 比較例1では、本発明例1〜3と同様に、制動時に押付け荷重が基板に直接作用するようにしたが、本発明例1〜3とは異なり、基板の厚みを一定とした。 比較例2では、従来のディスクブレーキを想定し、基板の厚みを一定とするとともに、制動時に押付け荷重が案内板に作用するようにした。 比較例3では、本発明例1〜3と同様に、基板の厚みを外周側よりも内周側で厚くしたが、本発明例1〜3とは異なり、制動時に押付け荷重が案内板に作用するようにした。

    [評価方法]
    本発明の目的は、反押付け駆動源側における摩擦部材の等圧性を確保することにある。 このため、それに対応する指標として、FEM解析により、個々の摩擦部材に作用する荷重を抽出し、抽出した各荷重値からその標準偏差を算出した。 そして、標準偏差が小さいほど、摩擦部材の等圧性が高いと評価した。

    [結果]
    FEM解析の結果を下記の表2に示す。

    同表に示す結果から、本発明例1〜3は、比較例1〜3と比べて、摩擦部材に作用する荷重の標準偏差が小さくなっており、基板の厚み形状、および案内板の厚み形状のいずれも変更することにより、等圧性が高くなることがわかる。

    本発明の鉄道車両用ブレーキライニングおよびディスクブレーキは、あらゆる鉄道車両に有効に利用することができ、中でも、走行速度が低速から高速まで広範となる高速鉄道車両に有用である。

    1:ブレーキディスク、 1a:摺動面、
    2:ブレーキライニング、
    3:摩擦部材、 3a:摺動面、
    4:基板、 4a:正面、 4b:背面、
    4to:外周側の厚み、 4ti:内周側の厚み、
    5:案内板、 5t:厚み、 5a:背面、
    5b:上縁部、 5c:下縁部、
    6:リベット、 7:キャリパアーム、
    8:ライニングホルダ、 8a:正面、 8b:凹部、 8c:底面、
    8d:上縁部、 8e:上縁部、
    c1:隙間、 c2:隙間、
    12:従来型ブレーキライニング、
    14:基板、 14a:正面、 14b:背面、
    15:案内板、 15a:背面、 15b:上縁部、 15c:上縁部

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