ディスクブレーキ及び鉄道車両用ディスクブレーキ

申请号 JP2016068673 申请日 2016-03-30 公开(公告)号 JP2017180661A 公开(公告)日 2017-10-05
申请人 曙ブレーキ工業株式会社; 发明人 蓑島 雄太; 前原 利史; 山▲崎▼ 昭彦;
摘要 【課題】キャリパ戻し 力 の設定を容易に行え、パッドの引き摺りを確実に防止できるディスクブレーキを提供する。 【解決手段】フローティングキャリパ型のディスクブレーキ11は、サポート23に支持された上段ガイドピン31に摺動自在に支承された基部25と、一対のピストン側押圧腕39及び反ピストン側押圧腕41とを有するフローティングキャリパ13と、ディスクロータに対向する一対のブレーキパッド17と、ピストン側押圧腕39に設けられた駆動ピストン15と、上段ガイドピン31の端部に配置されて基部25を駆動ピストン側と反対側へ弾性付勢するためのキャリパ戻し機構22と、上段ガイドピン31を径方向に弾性支持するゴムリング21の軸方向両側に配置されて該ゴムリング21の内周部が上段ガイドピン31の軸方向に沿って撓み変形するのを規制する内周側ワッシャ44と、を備える。 【選択図】図2
权利要求

サポートの筒状支持部に対し、ガイドピンを介して摺動自在に支承された基部と、該基部からディスクロータを軸方向両側から挟む位置にまで延出された一対の押圧腕とを有するフローティングキャリパと、 前記ディスクロータの側面に対向するように前記一対の押圧腕の先端部にそれぞれ設けられた一対のブレーキパッドと、 前記ブレーキパッドの一方を前記ディスクロータの側面に向けて駆動するために前記一対の押圧腕の一方に設けられた駆動ピストンと、 前記ガイドピンの両端部における少なくとも前記駆動ピストン側と反対側の端部に配置され、前記ガイドピンに対して摺動自在に支持された前記基部を前記駆動ピストン側と反対側へ弾性付勢するためのキャリパ戻し機構と、 前記筒状支持部の内方に嵌装されて前記ガイドピンを径方向に弾性支持するゴムリングと、 前記ゴムリングの軸方向両側における少なくとも前記駆動ピストン側に配置されて前記ガイドピンに嵌挿されることにより、前記ゴムリングの内周部が前記ガイドピンの軸方向に沿って撓み変形するのを規制する内周側ワッシャと、 を備えることを特徴とするディスクブレーキ。前記筒状支持部の内周面に固定された外周側ワッシャが、 前記内周側ワッシャにおける前記ゴムリングに接触する面と反対側の面に当接することにより、前記ガイドピンの軸方向に沿う前記内周側ワッシャの移動が規制される ことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。前記内周側ワッシャの内周端が、 前記ゴムリングの内周面に沿って延びる円筒状の延出部を有する ことを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクブレーキ。前記ゴムリングの内周面には、 前記ガイドピンとの間に介装される嵌合部材が配置されている ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のディスクブレーキ。前記嵌合部材が、 すり割りを有する円筒状部材から成り、縮径方向に弾性変形された状態で前記ゴムリングの内周面に沿って嵌挿されている ことを特徴とする請求項4に記載のディスクブレーキ。前記内周側ワッシャが、 前記ゴムリングの軸方向両側に配置されている ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のディスクブレーキ。請求項1〜6の何れか1項に記載のディスクブレーキを備えたことを特徴とする鉄道車両用ディスクブレーキ。

说明书全文

本発明は、ディスクブレーキ及び鉄道車両用ディスクブレーキに関する。

ブレーキパッドの引摺り現象が防止されたフローティングキャリパ型のディスクブレーキが、従来から知られている(特許文献1参照)。 このフローティングキャリパの型ディスクブレーキは、一方のパッド(ブレーキパッド)が、両端部を二股に開いたキャリパ(フローティングキャリパ)の一端の腕に固定され、他方のパッドがこれと反対側の腕に設けたピストン(駆動ピストン)によりロータに向けて押し出されるように構成されている。キャリパの他端の腕には、2本のガイドピンが固定され、これらのガイドピンは、台車枠等に結合されたサポートの筒状部に軸方向へ摺動自在に支承されている。

すなわち、図12(a)に示すように、キャリパの二股になった一対の腕501の間には、上下一対のガイドピン503(上側のみを図示する)が掛渡され、それぞれフランジ505とナット(図示略)とにより腕501に固定されている。上側のガイドピン503を囲むサポート(図示略)の筒状部507の内面には、一対の保持リング509が段部511とスナップリング(図示略)とにより挟持されて取り付けられている。この保持リング509の内側には、断面がH形状のリトラクションゴムリング(フリクションゴムリング)513が嵌着されている。

上記の構成において、非制動時は、断面H形のリトラクションゴムリング513の内周の突条515における先端部が、図12(a)のように、ガイドピン503の外周面に真直に当接している。 制動すると、パッドがロータに押付けられた反でガイドピン503がキャリパと共に図12(b)の矢印Aの方向に移動する。これと共にガイドピン503の外周面と突条515の先端部との摩擦のため、リトラクションゴムリング513の突条515が矢印Aの方向に曲がる(撓む)。

制動を解除すると、リトラクションゴムリング513はその弾性力のため元の姿勢に戻ろうとし、内周の突条515の先端部とガイドピン503の外周面との摩擦によりガイドピン503が、図12(c)の矢印Bの方向へ動かされる。これによりガイドピン503に結合されたキャリパが矢印Bの方向へ僅かに移動し、キャリパに固定されたパッドをロータから僅かながら離す。これにより車両の始動を軽くすることができる。車両が走行を始めると、振動等のためパッドとロータとの間隙は十分大きくなる。

このようなフローティングキャリパ型のディスクブレーキによれば、リトラクションゴムリング513によって、制動解除時に直ちにキャリパに固定されたパッドをロータから引離して、引摺りを防止し、始動トルクの増大を防ぎ、ライニングの摩耗を防止することができる。

実開平6−32773号公報

しかしながら、上述した従来のフローティングキャリパ型のディスクブレーキは、リトラクションゴムリング513のみでキャリパのリトラクション効果(戻し力)と戻し量を管理しているため、リトラクションゴムリング513の製造バラつきや寸法公差などによって所望するキャリパ戻し動作を安定的に発揮させることが難しいという問題があった。すなわち、戻し力をリトラクションゴムリング513のみによって得るのでは限界がある。また、異なる仕様のキャリパに対しては、戻し量の微調整が必要となるため、既存のキャリパ(鋳物)に対して追加工を行ったりせずに戻し量の微調整が可能となる構造が望まれている。

本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、キャリパ戻し力の設定が容易に行なわれ、しかも、所望するキャリパ戻し動作が安定的に発揮されて、パッドの引き摺りを確実に防止できるディスクブレーキ及び鉄道車両用ディスクブレーキを提供することにある。

本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。 (1) サポートの筒状支持部に対しガイドピンを介して摺動自在に支承された基部と、該基部からディスクロータを軸方向両側から挟む位置にまで延出された一対の押圧腕とを有するフローティングキャリパと、前記ディスクロータの側面に対向するように前記一対の押圧腕の先端部にそれぞれ設けられた一対のブレーキパッドと、前記ブレーキパッドの一方を前記ディスクロータの側面に向けて駆動するために前記一対の押圧腕の一方に設けられた駆動ピストンと、前記ガイドピンの両端部における少なくとも前記駆動ピストン側と反対側の端部に配置され、前記ガイドピンに対して摺動自在に支持された前記基部を前記駆動ピストン側と反対側へ弾性付勢するためのキャリパ戻し機構と、前記筒状支持部の内方に嵌装されて前記ガイドピンを径方向に弾性支持するゴムリングと、前記ゴムリングの軸方向両側における少なくとも前記駆動ピストン側に配置されて前記ガイドピンに嵌挿されることにより、前記ゴムリングの内周部が前記ガイドピンの軸方向に沿って撓み変形するのを規制する内周側ワッシャと、を備えることを特徴とするディスクブレーキ。

上記(1)の構成のディスクブレーキによれば、サポートの筒状支持部に対してフローティングキャリパの基部を摺動自在に支承するガイドピンにおける駆動ピストン側と反対側の端部には、キャリパ戻し機構が設けられる。キャリパ戻し機構は、ガイドピンとフローティングキャリパとの間に、キャリパ戻し力を発生させる。そこで、キャリパ戻し機構は、制動解除時にこのキャリパ戻し力によって一対のパッドを制動前と同じクリアランスでディスクロータから離間させる。キャリパ戻し機構が設けられたガイドピンは、現行のフローティングキャリパおけるガイドピンと交換されるだけでよく、既存のフローティングキャリパに対して一切の追加工なしに、ディスクブレーキに対するパッド引き摺り対策を実現するための改良が可能となる。 更に、筒状支持部の内方に嵌装されてガイドピンを径方向に弾性支持するゴムリングは、ゴムリングの軸方向両側における少なくとも駆動ピストン側に配置されてガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャによって、内周部がガイドピンの軸方向に沿って撓み変形するのが規制される。そこで、ゴムリングは、従来のトラクションゴムリングのように、制動時のガイドピンの移動により内周部がガイドピンの軸方向に沿って撓み変形することがなく、その弾性復元力によってガイドピンを軸方向に移動させることがない。 従って、キャリパ戻し機構は、ガイドピンを径方向に弾性支持するゴムリングの摩擦抵抗のバラツキによる影響を受けることなく、キャリパ戻し力を安定的に発生することができる。

(2) 前記筒状支持部の内周面に固定された外周側ワッシャが、前記内周側ワッシャにおける前記ゴムリングに接触する面と反対側の面に当接することにより、前記ガイドピンの軸方向に沿う前記内周側ワッシャの移動が規制されることを特徴とする上記(1)に記載のディスクブレーキ。

上記(2)の構成のディスクブレーキによれば、ガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャは、筒状支持部の内周面に固定された外周側ワッシャによりガイドピンの軸方向に対して位置決めされる。そして、ガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャは筒状支持部の内周面に対してクリアランスを有し、筒状支持部の内周面に固定された外周側ワッシャはガイドピンの外周面に対してクリアランスを有する。そこで、外周側ワッシャにより軸方向に位置決めされた内周側ワッシャは、外周側ワッシャとの面接触部で滑りが生じることにより、ガイドピンの径方向の動きに追従することができる。

(3) 前記内周側ワッシャの内周端が、前記ゴムリングの内周面に沿って延びる円筒状の延出部を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のディスクブレーキ。

上記(3)の構成のディスクブレーキによれば、内周側ワッシャは、延出部によってゴムリングの内周面に嵌合されて予め位置が決まっている。そこで、ガイドピンをサポートの筒状支持部に組付ける際に位置決めを行う必要がなく、組付け性がよい。 また、円筒状の延出部は、例えばバーリング加工等によって円環状の内周側ワッシャの内周端を断面L字状に曲げ加工することで形成される。そこで、内周側ワッシャをガイドピンに挿入する時、内周側ワッシャの入り口がエッジではなく曲げ加工されたR部を有しているため、ガイドピンが内周側ワッシャに引っかかることなくスムーズに挿入できる。

(4) 前記ゴムリングの内周面には、前記ガイドピンとの間に介装される嵌合部材が配置されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1つに記載のディスクブレーキ。

上記(4)の構成のディスクブレーキによれば、ゴムリングの内周面とガイドピンとの間に嵌合部材が介装されることで、ゴムリングに対するガイドピンの摺動抵抗が安定し、ガイドピンが摺動する際に軸力変動の幅が小さくなり、キャリパ戻し機構のキャリパ戻し力が安定する。 また、ゴムリングがガイドピンと接触しないため、ゴムリングとガイドピンの固着や、固着によるゴムリングの千切れが起こらなくなる。

(5) 前記嵌合部材が、すり割りを有する円筒状部材から成り、縮径方向に弾性変形された状態で前記ゴムリングの内周面に沿って嵌挿されていることを特徴とする上記(4)に記載のディスクブレーキ。

上記(5)の構成のディスクブレーキによれば、ゴムリングの内周面に嵌挿された嵌合部材は、ガイドピンと締め代をもって嵌合することができる。そこで、ガイドピンは、ゴムリングに対する摺動抵抗がより安定する。

(6) 前記内周側ワッシャが、前記ゴムリングの軸方向両側に配置されていることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか1つに記載のディスクブレーキ。

上記(6)の構成のディスクブレーキによれば、内周側ワッシャがゴムリングの軸方向両側に配置されることで、制動時のガイドピンの移動によるゴムリングの撓み変形だけでなく、例えばディスクロータの揺動によりフローティングキャリパが移動された際のガイドピンの反対方向の移動によるゴムリングの撓み変形も規制することができる。

(7) 上記(1)〜(6)の何れか1つに記載のディスクブレーキを備えたことを特徴とする鉄道車両用ディスクブレーキ。

上記(7)の構成の鉄道車両用ディスクブレーキによれば、上記のディスクブレーキの構成を備えることで、鉄道車両用の車輪の両側面に取り付けたディスクロータにブレーキパッドを押圧して制動する際に、ブレーキパッドとディスクロータのパッドクリアランスを一定に維持できる。これにより、ブレーキパッドの偏摩耗及び引きずりを防止するとともに、車両の始動トルクの増大を抑制可能とすることができる。

本発明に係るディスクブレーキ及び鉄道車両用ディスクブレーキによれば、キャリパ戻し力の設定が容易に行なわれ、しかも、所望するキャリパ戻し動作が安定的に発揮されて、パッドの引き摺りを確実に防止できる。

以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。

本発明の第1実施形態に係るディスクブレーキの分解斜視図である。

図1に示したディスクブレーキの垂直断面図である。

図1に示したディスクブレーキの要部平断面図である。

図3に示したガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャ及びゴムリングの分解斜視図である。

図1に示したディスクブレーキの動作説明図であり、(a)はイニシャル時の動作説明図、(b)はブレーキ制動時の動作説明図、(c)はブレーキ緩開時の動作説明図である。

本発明の第2実施形態に係るディスクブレーキの要部水平断面図である。

図6に示したガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャ及びゴムリングの分解斜視図である。

本発明の第3実施形態に係るディスクブレーキの要部水平断面図である。

図8に示したガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャ及びゴムリングの分解斜視図である。

本発明の第4実施形態に係るディスクブレーキの要部水平断面図である。

図10に示したガイドピンに嵌挿された内周側ワッシャ及びゴムリングの分解斜視図である。

(a)は従来構成における非制動時のリトラクションゴムリングのガイドピンに対する姿勢を示す模式図、(b)は(a)の制動時におけるリトラクションゴムリングの突条の変形を示す模式図、(c)はリトラクションゴムリングの復位時の作用を示す模式図である。

以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。 図1〜図4に示すように、本発明の第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11は、鉄道車両用ディスクブレーキに用いられる場合を例に説明する。この他、ディスクブレーキ11は、例えばエレベータ等、回転部材に対して制動力を発生させる種々の産業用駆動装置のブレーキ装置にも好適に用いることができるものである。

本第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11は、図示しない台車枠に結合されたサポート23に摺動自在に支承された基部25から車輪35(図5参照)の両側面に取り付けられたディスクロータ37,37を軸方向両側から挟む位置にまで延出された一対の押圧腕であるピストン側押圧腕39及び反ピストン側押圧腕41を有するフローティングキャリパ13と、ディスクロータ37,37の外側面に対向するようにピストン側押圧腕39及び反ピストン側押圧腕41にそれぞれ設けられた一対のブレーキパッド17,17と、ピストン側押圧腕39に設けられた駆動ピストン15(図5(a)の部分破断部参照)と、上段ガイドピン(ガイドピン)31の両端部に配置されたキャリパ戻し機構20,22と、を主要な構成として有している。上段ガイドピン31は、中空のパイプとして形成される。

フローティングキャリパ13における基部25の上部及び下部には、サポート23の上下一対の筒状支持部である上段筒状支持部27及び下段筒状支持部29に対し、ガイドピンである上段ガイドピン31及び下段ガイドピン33がそれぞれ掛け渡されている。フローティングキャリパ13の基部25は、上段ガイドピン31及び下段ガイドピン33を介して上段筒状支持部27及び下段筒状支持部29に摺動自在に支承される。上段ガイドピン31は、両端がキャリパ戻し機構20,22により基部25から抜け止めされている。下段ガイドピン33は、フランジ34とナット36とにより基部25に固定されている。フローティングキャリパ13の基部25には、車輪35(図5参照)の両側面に取り付けられたディスクロータ37を軸方向両側から挟む位置にまで、一対の押圧腕であるピストン側押圧腕39及び反ピストン側押圧腕41が延設される。なお、本第1実施形態におけるピストン側押圧腕39及び反ピストン側押圧腕41は、それぞれ平行な二股の腕部により構成されている。

ブレーキパッド17は、車輪35の両側面に取り付けられたディスクロータ37の外側面に対向するようにピストン側押圧腕39及び反ピストン側押圧腕41の先端部にそれぞれ設けられる。なお、本第1実施形態では、ブレーキパッド17のライニング面が、ディスクロータ37を押圧してブレーキ動作を行う構造を例に説明する。勿論、ディスクブレーキ11は、車輪35の両側面を直接挟圧して制動する構成であってもよい。

駆動ピストン15は、本第1実施形態において、ブレーキパッド17の一方をディスクロータ37の側面に向けて駆動するために一対の押圧腕の一方であるピストン側押圧腕39に設けられている。

キャリパ戻し機構20,22は、本第1実施形態において、上段ガイドピン31の両端部に配置されている。キャリパ戻し機構20は、上段ガイドピン31に対して摺動自在に支持された基部25を駆動ピストン側へ弾性付勢し、キャリパ戻し機構22は、基部25を駆動ピストン側と反対側へ弾性付勢する。なお、本発明に係るキャリパ戻し機構は、キャリパ戻し機構22のように上段ガイドピン31の両端部における少なくとも駆動ピストン側と反対側の端部(図3中、左端部)に設けられていればよい。なお、本第1実施形態では、キャリパ戻し機構20,22が上段ガイドピン31にのみ設けられる例を説明するが、キャリパ戻し機構20,22は、上段ガイドピン31及び下段ガイドピン33の双方に設けられてもよい。

本第1実施形態に係るキャリパ戻し機構20は、中空の上段ガイドピン31のピストン側端開口部(端部)38に設けられたばね収容部69に装着されるばね収容部材59と、上段ガイドピン31に対して基部25を摺動自在に支持するための滑り軸受61と、ばね収容部69となる上段ガイドピン31の開口を覆うばね受け部材66と、ばね受け部材66とばね収容部材59の底部58との間に介装される圧縮ばね部材65と、を有する。 ばね収容部材59は、有底筒状に形成され、開口端側に開口端フランジ57を有する。

一方、キャリパ戻し機構22は、中空の上段ガイドピン31の反ピストン側端開口部(端部)32に設けられたばね収容部69に装着されるばね収容部材59と、上段ガイドピン31に対して基部25を摺動自在に支持するための滑り軸受61と、ばね収容部69となる上段ガイドピン31の開口を覆うばね受け部材63と、ばね受け部材63とばね収容部材59の底部58との間に介装される圧縮ばね部材65と、を有する。

ばね収容部材59は、上段ガイドピン31のピストン側端開口部38及び反ピストン側端開口部(端部)32に凹設されたばね収容部69にそれぞれ装着される。ばね収容部69に装着されたばね収容部材59は、開口端フランジ57がばね収容部69の開口縁に係止され、それ以上のばね収容部69への挿入が規制される。なお、本第1実施形態では、圧縮ばね部材65として圧縮コイルばねを用いる例を説明するが、この他、圧縮ばね部材65は、ゴム等の弾性部材であってもよい。

滑り軸受61は、円筒状に形成され、ばね受け部材63,66のガイドピン支持部71に内嵌されて、上段ガイドピン31とばね受け部材63,66との間に配設される。滑り軸受61は、上段ガイドピン31に対する基部25の摺動抵抗を軽減させる。そこで、上段ガイドピン31の両端の外周側には、ばね受け部材63,66が摺動自在に外挿される。

ばね受け部材66は、筒状のガイドピン支持部71と、円環状のばね支持部68とを有する。また、ばね受け部材63は、筒状のガイドピン支持部71と、円環状のばね支持部72とを有する。 ガイドピン支持部71は、円筒状に形成され、滑り軸受61を介して上段ガイドピン31を摺動自在に支持するため基部25に固定される。更に、ガイドピン支持部71と基部25との間には、鍔部75の切欠き部76が基部25の係止リブ78に係合することで互いの相対回転を規制する回り止め機構が設けられている。

ばね支持部68及びばね支持部72は、それぞれ圧縮ばね部材65の一端に当接された状態でガイドピン支持部71の外側開口端を覆うように、ばね収容部材59底部58における開口56と中空の上段ガイドピン31とを中心軸方向に貫通したボルト軸62と、ボルト軸62の先端に螺着されたナット70とによって、ガイドピン支持部71と伴に基部25に固定される。これにより、ばね受け部材63,66は、基部25と一体に固定される。基部25と一体に固定されたばね受け部材63,66は、滑り軸受61を介して上段ガイドピン31に摺動自在となる。つまり、基部25は、ばね受け部材63,66を介して上段ガイドピン31に対して摺動自在に支持される。 なお、フローティングキャリパ13の基部25に固定されたばね受け部材63,66のガイドピン支持部71が上段ガイドピン31の外周に摺動自在に支持された状態のまま、ばね支持部72,68を取り外して圧縮ばね部材65を着脱することができる。これにより、仕様(所定間隔S1や、ばね定数など)の異なるばね支持部72,68や圧縮ばね部材65と交換することで、極めて容易にフローティングキャリパ13の戻し力と戻し量の調整が可能となる。

キャリパ戻し機構20では、ナット70で締め付けられたワッシャ84とばね支持部68との間にOリング80が装着され、ばね支持部68とガイドピン支持部71の鍔部75との間にOリング81が装着される。キャリパ戻し機構22では、ボルト軸62のボルト頭64とばね支持部72との間にOリング82が装着され、ばね支持部72とガイドピン支持部71の鍔部75との間にOリング81が装着される。Oリング80,82は、ボルト軸62が貫通するばね支持部68,72の貫通穴をそれぞれ水密にシールし、Oリング81は、ガイドピン支持部71とばね支持部68,72との間の合わせ部分を水密にシールし、ばね収容部69やばね収容部材59への水や埃の侵入を防止する。

更に、ガイドピン支持部71とばね支持部72との間には、ばね支持部72の切欠き部74が鍔部75の係止突起77に係合することで互いの相対回転を規制する回り止め機構が設けられている。また、ばね支持部72とボルト軸62との間には、二面幅を有するボルト頭64がばね支持部72の嵌合凹部73に嵌合することで互いの相対回転を規制する回り止め機構が設けられている。そこで、ボルト軸62の先端にナット70を螺着する際、ボルト軸62は空転することがなく、組立作業性が向上する。

圧縮ばね部材65は、図2及び図3に示すように、それぞればね収容部材59の内方に収容される。各ばね収容部材59に収容された圧縮ばね部材65は、一端がばね収容部材59の底部58に当接し、他端がばね受け部材63のばね支持部72(又は、ばね受け部材66のばね支持部68)に当接する。そして、各圧縮ばね部材65は、ばね収容部材59の開口端フランジ57に対して所定間隔S1を有した状態のばね受け部材66(又は、ばね受け部材63)とばね収容部材59の底部58との間に介装される。

また、キャリパ戻し機構20,22は、ストッパー部85(図3参照)を有する。ストッパー部85は、ガイドピン支持部71の内周に、段部状に形成される。ストッパー部85は、ばね収容部材59の開口端フランジ57に当接することで、ガイドピン支持部71を介して基部25に対する軸方向のばね収容部材59の移動を所定間隔S1に規制する。すなわち、キャリパ戻し機構20,22におけるばね収容部材59の移動は、ばね受け部材66(又は、ばね受け部材63)におけるガイドピン支持部71のストッパー部85によって所定間隔S1に規制されている。そこで、制動時には、フローティングキャリパ13の駆動ピストン側への移動によって、駆動ピストン側のキャリパ戻し機構20におけるばね収容部材59の開口端フランジ57と上段ガイドピン31のピストン側端開口部38との間には、図5(b)に示す間隙(干渉回避間隙)S2が形成されるように構成されている。

サポート23の上段筒状支持部27の内方には、上段ガイドピン31を径方向に弾性支持する一対のゴムリング21が嵌装されている。図3及び図4に示すように、ゴムリング21の軸方向両側には、上段ガイドピン31に嵌挿された内周側ワッシャ44が配置される。内周側ワッシャ44は、上段筒状支持部27の内周面に固定された外周側ワッシャ43が内周側ワッシャ44におけるゴムリング21に接触する面と反対側の面に当接することにより、上段ガイドピン31の軸方向に沿う移動が規制される。即ち、外周側ワッシャ43は、内周側ワッシャ44を介してゴムリング21の上段ガイドピン31に沿う方向の移動を規制している。

上段ガイドピン31を囲む上段筒状支持部27の内周面中央には、段部45とスナップリング47とにより調心軸受49が固定されている。調心軸受49は、上段ガイドピン31を揺動可能に支持する。調心軸受49は、台車枠に弾力的に支持される車輪35が台車枠に対して相対的に変位(揺動)して上段ガイドピン31とサポート23の上段筒状支持部27とが不平行になっても、ブレーキパッド17とディスクロータ37との摺動面を制動時に密接させることができる。

なお、下段ガイドピン33と下段筒状支持部29との間には、図2に示すように、ゴムブッシュ52とスリーブ51が介装される。下段ガイドピン33は、調心軸受49の代わりに、これらゴムブッシュ52及びスリーブ51を介して、下段筒状支持部29に対して軸線方向に摺動自在に支持されている。

一対のゴムリング21は、上段筒状支持部27の内周面において、調心軸受49の軸方向両側に配置される。一対のゴムリング21は、上段筒状支持部27に摺動自在に嵌装されて上段ガイドピン31を径方向に弾性支持する。

内周側ワッシャ44は、ゴムリング21の軸方向両側に配置されて、ゴムリング21の内周部が上段ガイドピン31の軸方向に沿って撓み変形するのを規制する。本第1実施形態において、各ゴムリング21は、図3に示すように、内周側ワッシャ44及び外周側ワッシャ43を介して上段筒状支持部27の内周面に形成された段部53によって軸方向一方への移動が規制され、スナップリング55によって軸方向他方への移動が規制される。これにより、一対のゴムリング21は、上段筒状支持部27の内周面に軸方向の移動が規制された状態で固定される。

ゴムリング21は、高い弾性域(変形量)を有する形状及び材質のものが選定される。本第1実施形態において、ゴムリング21の軸線を含む面による断面形状は、矩形状に形成されている。ゴムリング21は、図3に示すように、内周面側が上段ガイドピン31の外周面に摺接する。 なお、本発明に係るゴムリングの断面形状は、本第1実施形態におけるゴムリング21の断面矩形状に限定されるものではなく、内周面にグリスが保持できる環状溝を有する断面U字形状や断面H形等の種々の形状を採りうる。ゴムリングの内周面に環状溝を設けた場合、ゴムリングの内周面と上段ガイドピン31の外周面との間には、両者間の摺動抵抗値を適性値である5〜50kgfにするために、二硫化モリブデン等の固化潤滑材を混入した高性能グリスを保持させることができる。高性能グリスは、その種類、グリス塗布の有無を調整の中で最適な組み合わせが選択される。

ゴムリング21は、その内周部が上段ガイドピン31の外周面に摺接するが、ゴムリング21の軸方向両側に配置されて上段ガイドピン31に嵌挿された内周側ワッシャに44よって、内周部が上段ガイドピン31の軸方向に沿って撓み変形するのが規制されている。そこで、ゴムリング21は、従来のリトラクションゴムリング513(図12(b)、参照)のように制動時の上段ガイドピン31の移動により内周部が上段ガイドピン31の軸方向に沿って撓み変形することがなく、その弾性復元力によって上段ガイドピン31を軸方向に移動させることがない。ゴムリング21は、上段ガイドピン31を径方向にのみ弾性支持する。これにより、例えばブレーキ制動時に上段ガイドピン31が上段筒状支持部27に対して駆動ピストン側へ移動した際、ブレーキ緩開時においては、駆動ピストン側と反対側(以下、反駆動ピストン側とう)へ上段ガイドピン31を戻す力をゴムリング21が作ることはなく、キャリパ戻し機構20のキャリパ戻り力のみが作用する。

ここで、上記構成を有するディスクブレーキ11において、キャリパ戻し力に必要な力関係は以下のとおりである。すなわち、F1: 上段ガイドピン31とサポート23(調心軸受49、ゴムリング21)の摺動抵抗、F2: 圧縮ばね部材65のばね力、F3: 下段ガイドピン33とサポート23(スリーブ51)の摺動抵抗、F4: 上段ガイドピン31の両端部における滑り軸受61の摺動抵抗としたとき、 F1>F2>(F3+F4) の力関係となるように設定される。

次に、上記した構成のディスクブレーキ11の作用を説明する。 本第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11は、ピストン側押圧腕39の先端部に設けられている駆動ピストン15が駆動されると、一方(図5中、左方)のブレーキパッド17がディスクロータ37に押圧される。これによって、一方のブレーキパッド17は、ディスクロータ37から反力を受ける。 一方のブレーキパッド17が受けた反力は、ピストン側押圧腕39をディスクロータ37から離反する方向(図5中、左方)に移動させる。

この移動により、図5(b)に示すように、フローティングキャリパ13は、反ピストン側押圧腕41側の基部25が、反駆動ピストン側(図5中、右側)のばね受け部材63をディスクロータ37に接近させる方向(図5中、左方向)に移動させ、ピストン側押圧腕39側の基部25が、駆動ピストン側(図5中、左側)のばね受け部材66をディスクロータ37から離間させる方向(図5中、左方向)に移動させる。 このフローティングキャリパ13の移動により、反駆動ピストン側におけるばね受け部材63のばね収容部材59に収容されている圧縮ばね部材65は圧縮変形する。これにより、反駆動ピストン側に配置されたキャリパ戻し機構22にキャリパ戻し力が蓄積される。圧縮ばね部材65の圧縮時、ばね受け部材63は、滑り軸受61によって上段ガイドピン31の外周を軸線に沿う方向で摺動抵抗が軽減されて移動する。ばね受け部材63の移動によって、反駆動ピストン側のばね支持部72は、図5(b)に示すように、上段ガイドピン31の反ピストン側端開口部32(図3参照)に係止されている開口端フランジ57に当接する。

上記のフローティングキャリパ13の移動によって、ピストン側押圧腕39は、駆動ピストン側のばね受け部材66をディスクロータ37から離反する方向に移動させる。すると、駆動ピストン側のばね収容部材59は、ばね受け部材66のストッパー部85に開口端フランジ57が押圧されて、上段ガイドピン31のばね収容部69から引き出される方向に移動される。これにより、開口端フランジ57と上段ガイドピン31のピストン側端開口部38(図3参照)との間には、間隙(干渉回避間隙)S2が形成される。また、開口端フランジ57は、圧縮ばね部材65の付勢力によって、ストッパー部85に当接したままとなり、ばね支持部68と離間された状態に配置されるので、駆動ピストン側の圧縮ばね部材65のばね力が反駆動ピストン側の圧縮ばね部材65の圧縮変形に影響を及ぼすことはない。以上が、ブレーキ制動時の状態である。

一方、制動緩開後は、駆動ピストン15が後退する。すると、ピストン側押圧腕39には、ディスクロータ37から離反させる方向の反力が作用しなくなる。そこで、反ピストン側押圧腕41側において圧縮変形されていた圧縮ばね部材65が、弾性復元する。弾性復元した圧縮ばね部材65は、ばね支持部72を開口端フランジ57から離反する方向に押圧する。この弾性復元力によって、反駆動ピストン側のばね受け部材63が滑り軸受61によってディスクロータ37から離反する方向(図5の右方向)に移動する。反駆動ピストン側のばね受け部材63の移動は、反ピストン側押圧腕41をディスクロータ37から離反する方向に移動させる。その結果、フローティングキャリパ13が制動前(イニシャル時)の状態に戻り、一対のブレーキパッド17は、制動前と同じクリアランスでそれぞれディスクロータ37から離間されることになる。

なお、この制動緩開時、ピストン側押圧腕39は、駆動ピストン側のばね受け部材66をディスクロータ37へ接近させる方向に移動させる。開口端フランジ57と上段ガイドピン31のピストン側端開口部38との間には、上記の干渉回避間隙S2が形成されている。このため、駆動ピストン側の圧縮ばね部材65の弾性力は、キャリパ戻し力に対する反力(負荷)となって作用することがない。

ここで、図5(a)に示すように、制動前(イニシャル時)において、各ブレーキパッド17とディスクロータ37とのクリアランスdを3mmとする。図5(b)に示すブレーキ制動時は、駆動ピストン15が6mm突出する(ピストンストロークs=6mm)ことで、基部25は反力によって3mmだけ駆動ピストン15の突出方向と逆に移動する。この時、上段ガイドピン31は移動せずキャリパ戻し機構22が移動するため、反駆動ピストン側の圧縮ばね部材65が圧縮変形する。この圧縮ばね部材65の変形による復元力がフローティングキャリパ13を戻す力(リトラクション効果)を作る。従って、図5(c)に示すブレーキ緩開後においては、駆動ピストン15が6mm引き戻すのと同時に、フローティングキャリパ13が3mmだけ反ピストン側へ移動し、両パッドクリアランスが3mmとなる。なお、ライニング摩耗が生じている場合には、ブレーキ緩開後において、その分がサポート23と上段ガイドピン31とのズレ量となって現れる。

次に、上記構成を有するディスクブレーキ11の車輪揺動時における作用を説明する。 鉄道車両において、車輪35は、カーブ走行時のブレーキングにおいて、台車枠に固定されたフローティングキャリパ13に対して揺動する。 上記の構成を有するディスクブレーキ11は、車輪揺動時についても、車輪揺動量がパッドクリアランスの2倍までならば車輪揺動後も両方のブレーキパッド17のクリアランスは同値で維持される。

本第1実施形態のフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11は、車輪揺動量±6mmまでは、両パッドクリアランス3mmの確保が可能である。車輪揺動量が9mmを超えた場合は、駆動ピストン側の圧縮ばね部材65の圧縮変形により、ディスクロータ37に対するブレーキパッド17の押圧力が発生する。 即ち、イニシャル時にディスクブレーキ11は、車輪35がイニシャル時から駆動ピストン方向に6mm揺動すると、サポート23と基部25とのズレ量が3mmとなり、車輪35と基部25とのズレ量が3mmとなる。この場合、駆動ピストン側のキャリパ戻し機構20には、3mmの戻し力が発生する。ディスクブレーキ11は、揺動が解消後されれば、両パッドクリアランス3mmの確保が可能となる。

また、イニシャル時にディスクブレーキ11は、車輪35がイニシャル時から駆動ピストン方向に10mm揺動すると、サポート23と基部25とのズレ量が7mmとなり、車輪35と基部25とのズレ量が3mmとなる。 そこで、車輪戻り量が6mmの場合、サポート23と基部25とのズレ量は、4mmとなり、車輪35と基部25とのズレ量は、0mmとなる。そして、ディスクロータ37とブレーキパッド17のパッドクリアランスは、3mmとなる。 また、車輪戻り量が9mmの場合、サポート23と基部25とのズレ量は、4mmとなり、車輪35と基部25とのズレ量は、0mmとなる。そして、車輪35は、残り移動量が1mmとなってブレーキパッド17にディスクロータ37が当接する。この残り移動量の1mm分、車輪35が移動することで、駆動ピストン側の圧縮ばね部材65がたわみ、ディスクロータ37に対するブレーキパッド17の押付力が発生する。

図5(a)に示すように、本第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11では、サポート23の上段筒状支持部27に対してフローティングキャリパ13の基部25を摺動自在に支承する上段ガイドピン31の両端部には、キャリパ戻し機構20,22が設けられる。反駆動ピストン側のキャリパ戻し機構22は、上段ガイドピン31とフローティングキャリパ13との間に、キャリパ戻し力を発生させる。そこで、反駆動ピストン側のキャリパ戻し機構22は、制動解除時にこのキャリパ戻し力によって一対のブレーキパッド17を制動前と同じクリアランスでディスクロータ37から離間させる。キャリパ戻し機構20,22が設けられた上段ガイドピン31は、現行のフローティングキャリパにおける上段ガイドピンと交換されるだけでよく、既存のフローティングキャリパに対して一切の追加工なしに、フローティングキャリパ型のディスクブレーキに対するパッド引き摺り対策を実現するための改良が可能となる。

更に、上段筒状支持部27の内方に嵌装されて上段ガイドピン31を径方向に弾性支持するゴムリング21は、ゴムリング21の軸方向両側に配置されて上段ガイドピン31に嵌挿された内周側ワッシャ44によって、内周部が上段ガイドピン31の軸方向に沿って撓み変形するのが規制される。そこで、ゴムリング21は、従来のリトラクションゴムリング513(図12(b)、参照)のように、制動時の上段ガイドピン31の移動により内周部が上段ガイドピン31の軸方向に沿って撓み変形することがなく、その弾性復元力によって上段ガイドピン31を軸方向に移動させることがない。 従って、キャリパ戻し機構20,22は、上段ガイドピン31を径方向に弾性支持するゴムリング21の摩擦抵抗のバラツキによる影響を受けることなく、キャリパ戻し力を安定的に発生することができる。

そして、本実施形態のフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11では、上段ガイドピン31に嵌挿された内周側ワッシャ44が、上段筒状支持部27の内周面に固定された外周側ワッシャ43により上段ガイドピン31の軸方向に対して位置決めされる。そして、上段ガイドピン31に嵌挿された内周側ワッシャ44は上段筒状支持部27の内周面に対してクリアランスを有し、上段筒状支持部27の内周面に固定された外周側ワッシャ43は上段ガイドピン31の外周面に対してクリアランスを有する。そこで、外周側ワッシャ43により軸方向に位置決めされた内周側ワッシャ44は、外周側ワッシャ43との面接触部で滑りが生じることにより、上段ガイドピン31の径方向の動きに追従することができる。

更に、本第1実施形態のフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11では、上段ガイドピン31の両端部にキャリパ戻し機構20,22が配置されるので、例えば車輪35の揺動時において必要となる反駆動ピストン側へフローティングキャリパ13の基部25を戻す力を作ることが可能となる。本第1実施形態の内周側ワッシャ44は、ゴムリング21の軸方向両側に配置されているので、制動時の上段ガイドピン31の移動によるゴムリング21の撓み変形だけでなく、上述の車輪35の揺動によりフローティングキャリパ13が移動された際の上段ガイドピン31の反対方向の移動によるゴムリング21の撓み変形も規制することができる。 そこで、車輪35の揺動によりフローティングキャリパ13が反駆動ピストン側へ移動された際も、駆動ピストン側へ上段ガイドピン31を戻す力をゴムリング21が作ることはなく、キャリパ戻し機構22のキャリパ戻り力のみが作用する。

なお、制動時には、駆動ピストン15が駆動されてフローティングキャリパ13が上段ガイドピン31に対して駆動ピストン側に移動されると、上段ガイドピン31の反駆動ピストン側の端部に設けられたキャリパ戻し機構22における圧縮ばね部材65は圧縮されてキャリパ戻し力を発生する。この際、上段ガイドピン31の駆動ピストン側の端部に配置されたキャリパ戻し機構20におけるばね収容部材59の移動は、ばね受け部材66のストッパー部85によって所定間隔S1に規制されているので、フローティングキャリパ13の駆動ピストン側への移動によって、駆動ピストン側のキャリパ戻し機構20におけるばね収容部材59の開口端フランジ57と上段ガイドピン31のピストン側端開口部38との間には、間隙(干渉回避間隙)S2が形成される。そこで、駆動ピストン側のキャリパ戻し機構20における圧縮ばね部材65の弾性力は、反駆動ピストン側のキャリパ戻し機構22における圧縮ばね部材65のキャリパ戻し力に干渉せず、キャリパ戻し力に対する反力(負荷)となって作用することがない。

本第1実施形態に係る鉄道車両用ディスクブレーキでは、上記のディスクブレーキ11の構成を備えることで、鉄道車両用の車輪35の両側面に取り付けたディスクロータ37にブレーキパッド17を押圧して制動する際に、ブレーキパッド17とディスクロータ37のパッドクリアランスを一定に維持できる。これにより、ブレーキパッド17の偏摩耗及び引きずりを防止するとともに、車両の始動トルクの増大を抑制可能とすることができる。

次に、本発明の第2実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ111を説明する。 なお、本第2実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ111において上記第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11と同等の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。 図6及び図7に示すように、本第2実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ111は、上段筒状支持部27の内方に嵌装されたゴムリング21Aの内周面21aに、上段ガイドピン31との間に介装される嵌合部材50が配置されている。

嵌合部材50は、金属製又は樹脂製の円筒状部材であり、すり割り54を有している。そして、嵌合部材50は、縮径方向に弾性変形された状態でゴムリング21Aの内周面21aに沿って嵌挿される。そこで、ゴムリング21Aの内周面21aに嵌挿された嵌合部材50は、上段ガイドピン31と締め代をもって嵌合することができる。

従って、本第2実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ111によれば、ゴムリング21Aの内周面21aと上段ガイドピン31との間に嵌合部材50が介装されることで、ゴムリング21Aに対する上段ガイドピン31の摺動抵抗が安定し、上段ガイドピン31が摺動する際に軸力変動の幅が小さくなり、キャリパ戻し機構20,22のキャリパ戻し力が安定する。更に、ゴムリング21Aの内周面21aに嵌挿された嵌合部材50は、上段ガイドピン31と締め代をもって嵌合することができるので、上段ガイドピン31は、ゴムリング21Aに対する摺動抵抗がより安定する。

次に、本発明の第3実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ211を説明する。 なお、本第3実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ211において上記第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11と同等の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。 図8及び図9に示すように、本第3実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ211は、上段筒状支持部27の内方に嵌装されたゴムリング21Aの内周面21aに、上段ガイドピン31との間に介装される嵌合部材50Bが配置されている。また、内周側ワッシャ46の内周端が、ゴムリング21Aの内周面21aに沿って延びる円筒状の延出部48を有する。

嵌合部材50Bは、金属製又は樹脂製の円筒状部材であり、すり割り54を有している。そして、嵌合部材50Bは、縮径方向に弾性変形された状態でゴムリング21Aの内周面21aに沿って嵌挿される。そこで、ゴムリング21Aの内周面21aに嵌挿された嵌合部材50Bは、上段ガイドピン31と締め代をもって嵌合することができる。 また、内周側ワッシャ46は、例えばバーリング加工等によって円環状の内周側ワッシャの内周端を断面L字状に曲げ加工することで、円筒状の延出部48が形成されている。

そこで、一対の内周側ワッシャ46は、ゴムリング21Aに嵌挿された嵌合部材50Bを両開口端側から延出部48が挟むようにしてゴムリング21Aの内周面21aに嵌合される。即ち、内周側ワッシャ46及び嵌合部材50Bは、延出部48によってゴムリング21Aの内周面21aに嵌合されて予め位置が決まっている。そこで、上段ガイドピン31をサポート23の上段筒状支持部27に組付ける際に位置決めを行う必要がなく、組付け性がよい。 また、内周側ワッシャ46の開口縁は、円筒状の延出部48により入り口がエッジではなく曲げ加工されたR部を有しているため、内周側ワッシャ46を上段ガイドピン31に挿入する時、上段ガイドピン31が内周側ワッシャ46に引っかかることなくスムーズに挿入できる。

次に、本発明の第4実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ311を説明する。 なお、本第4実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ311において上記第1実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11と同等の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。 図10及び図11に示すように、本第4実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ311は、上段筒状支持部27の内方に嵌装されたゴムリング21Bと、ゴムリング21Bの軸方向両側に配置される内周側ワッシャ46とを備える。

ゴムリング21Bは、内周面21aにおける軸方向中央部に突設された環状突起21bを有する。内周側ワッシャ46は、内周端がゴムリング21Bの内周面21aに沿って延びる円筒状の延出部48を有する。 そこで、一対の内周側ワッシャ46は、ゴムリング21Bの環状突起21bを両開口端側から延出部48が挟むようにしてゴムリング21Bの内周面21aに嵌合される。即ち、内周側ワッシャ46は、延出部48によってゴムリング21Bの内周面21aに嵌合されて予め位置が決まっている。そこで、上段ガイドピン31をサポート23の上段筒状支持部27に組付ける際に位置決めを行う必要がなく、組付け性がよい。 また、内周側ワッシャ46の開口縁は、円筒状の延出部48により入り口がエッジではなく曲げ加工されたR部を有しているため、内周側ワッシャ46を上段ガイドピン31に挿入する時、上段ガイドピン31が内周側ワッシャ46に引っかかることなくスムーズに挿入できる。

従って、上記第1〜第4実施形態に係るフローティングキャリパ型のディスクブレーキ11,111,211,311及び鉄道車両用ディスクブレーキによれば、キャリパ戻し力の設定を容易に行え、しかも、所望するキャリパ戻し動作を安定的に発揮させて、ブレーキパッド17の引き摺りを確実に防止できる。

なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。

11…ディスクブレーキ 13…フローティングキャリパ 15…駆動ピストン 17…ブレーキパッド 20,22…キャリパ戻し機構 23…サポート 25…基部 27…上段筒状支持部(筒状支持部) 29…下段筒状支持部(筒状支持部) 31…上段ガイドピン(ガイドピン) 32…反ピストン側端開口部(端部) 37…ディスクロータ 38…ピストン側端開口部(端部) 39…ピストン側押圧腕(押圧腕) 41…反ピストン側押圧腕(押圧腕) 57…開口端フランジ 58…底部 59…ばね収容部材 61…滑り軸受 63,66…ばね受け部材 65…圧縮ばね部材 68,72…ばね支持部 69…ばね収容部 71…ガイドピン支持部 80,81,82…Oリング 85…ストッパー部

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