ブレーキ装置

申请号 JP2015187707 申请日 2015-09-25 公开(公告)号 JP2017061995A 公开(公告)日 2017-03-30
申请人 KYB株式会社; 发明人 鈴木 努;
摘要 【課題】ブレーキ装置におけるアジャスタの意図しない動作を防止する。 【解決手段】ブレーキ装置100であって、伸縮可能に設けられ一対のリンクアーム30の一端部31どうしを連結する連結部材60と、連結部材60を伸長させてブレーキディスク1aに対するブレーキライニング2の相対 位置 を一定に調整するアジャスタ70と、を備え、アジャスタ70は、雄ねじ72aが形成される伸長シャフト72と雄ねじ72aに螺合する雌ねじ73aが形成される伸長ナット73とを有して連結部材60を伸長させる伸長機構71と、伸長ナット73を収容する本体凹部62aに設けられ伸長ナット73の一端部に当接する当接面62dに向けて、伸長ナット73を軸方向に押圧する押圧ばね92と、を有する。 【選択図】図3
权利要求

車輪とともに回転するブレーキディスクを挟持して前記車輪を制動するブレーキ装置であって、 車体又は台車に支持されるブレーキ本体と、 一端部と他端部との間の支持部が前記ブレーキ本体に回動可能に支持される一対のリンクアームと、 作動流体の給排によって作動し前記一対のリンクアームを回動させることにより、前記ブレーキディスクの両面に臨むように前記一対のリンクアームの前記他端部に支持され前記ブレーキディスクに摺接して摩擦を付与可能なブレーキライニングを前記ブレーキディスクに押圧するアクチュエータと、 伸縮可能に設けられ前記一対のリンクアームの前記一端部どうしを連結する連結部材と、 前記連結部材を伸長させて前記ブレーキディスクに対する前記ブレーキライニングの相対位置を一定に調整するアジャスタと、を備え、 前記アジャスタは、 回転不能に設けられ第一ねじ部が形成される第一部材及び回転可能に設けられ前記第一ねじ部に螺合する第二ねじ部が形成される第二部材を有して前記第一部材及び前記第二部材の相対回転により前記連結部材を伸長させる伸長機構と、 前記第二部材の外周に設けられ前記連結部材が伸長する方向にのみ前記第二部材へ回転トルクを伝達可能なトルク伝達部と、 前記連結部材に形成され前記第二部材を収容する収容部に設けられて、前記第二部材の一端部に当接する当接部と、 前記当接部に向けて前記第二部材を軸方向に押圧する押圧部材と、を有することを特徴とするブレーキ装置。前記当接部は、前記第二部材の中心軸に対して傾斜するテーパ状の当接面であり、 前記第二部材は、 前記第二ねじ部が形成される本体部と、 前記当接面に対応した形状に形成されて前記当接面に当接する押圧面が設けられる押圧端部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。前記押圧端部の最大外径は、前記本体部の最大外径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。前記第一部材は、外周に前記第一ねじ部である雄ねじが形成されるボルト部材であり、 前記第二部材は、前記第一部材が挿通するボルト挿通孔の内周に前記第二ねじ部である雌ねじが形成されるナット部材であり、 前記第二部材における前記押圧端部の内側には、前記押圧端部を補強する補強部が設けられることを特徴とする請求項2または3に記載のブレーキ装置。前記補強部は、中実に形成されると共に前記押圧端部の内周に圧入される支持部材であることを特徴とする請求項4に記載のブレーキ装置。前記連結部材は、 一方の前記リンクアームに連結されると共に前記収容部が形成される連結本体部と、 他方の前記リンクアームに連結される連結ロッド部と、 前記連結本体部に連結され前記連結本体部と共に前記連結ロッド部に対し軸方向に相対移動するガイドスリーブと、を有し、 前記押圧部材は、前記ガイドスリーブに設けられる座部と前記第二部材との間に介装される押圧ばねであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のブレーキ装置。

说明书全文

本発明は、ブレーキ装置に関するものである。

特許文献1には、2つのキャリパレバーにそれぞれ取り付けられるブレーキパッドによってディスクを狭圧するディスクブレーキ装置が開示されている。特許文献1に開示のディスクブレーキ装置は、ブレーキパッドの摩耗に伴う隙間の調整を行う隙間調整機構を有し、隙間調整機構にはねじ機構が利用されている。

特開2010−281458号公報

一般に、車両や鉄道は走行中に振動が生じるため、ブレーキ装置には走行中の振動による衝撃が作用する。このためねじ機構を利用したアジャスタ(隙間調整機構)を備えるブレーキ装置では、振動に起因する衝撃よってねじ機構が回転し、一対のリンクアームの端部間の距離が意図せず変化するおそれがある。

このような振動によるねじ機構の回転を防止するために、ブレーキ装置に回り止め機構を設けることが考えられる。しかしながら、ブレーキ装置における一対のリンクアーム周辺のスペースは狭いため、回り止め機構が複雑な構成を有している場合には、その設置や回り止めの調整が困難である。

本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でブレーキ装置におけるアジャスタの意図しない作動を防止することを目的とする。

第1の発明は、ブレーキ装置であって、一端部と他端部との間の支持部がブレーキ本体に回動可能に支持される一対のリンクアームと、一対のリンクアームを回動させることにより、ブレーキディスクに摺接して摩擦力を付与可能なブレーキライニングをブレーキディスクに押圧するアクチュエータと、伸縮可能に設けられ一対のリンクアームの一端部どうしを連結する連結部材と、連結部材を伸長させてブレーキディスクに対するブレーキライニングの相対位置を一定に調整するアジャスタと、を備え、アジャスタは、回転不能に設けられ第一ねじ部が形成される第一部材及び回転可能に設けられ第一ねじ部に螺合する第二ねじ部が形成される第二部材の相対回転により連結部材を伸長させる伸長機構と、第二部材の外周に設けられ連結部材が伸長する方向にのみ第二部材へ回転トルクを伝達可能なトルク伝達部と、第二部材を収容する収容部に設けられ第二部材の一端部に当接する当接部と、当接部に向けて第二部材を軸方向に押圧する押圧部材と、を有することを特徴とする。

第1の発明では、押圧部材によって第二部材が当接部に押圧されることにより第二部材と当接部との間の摩擦力が増加する。このため、摩擦力によって車両の振動等による第二部材の回転が防止される。このように、押圧部材と当接部との簡易な構成によって、アジャスタの回り止めが行われる。

第2の発明は、当接部が、第二部材の中心軸に対して傾斜するテーパ状の当接面であり、第二部材が、第二ねじ部が形成される本体部と、当接面に対応した形状に形成されて当接面に当接する押圧面が設けられる押圧端部と、を有することを特徴とする。

第3の発明は、押圧端部の最大外径が、本体部の最大外径よりも大きいことを特徴とする。

第2及び第3の発明では、押圧面と当接面とがテーパ面で接触するため、両者の接触面積の増加により摩擦力が増加する。

第4の発明は、第一部材が、外周に第一ねじ部である雄ねじが形成されるボルト部材であり、第二部材が、第一部材が挿通するボルト挿通孔の内周に第二ねじ部である雌ねじが形成されるナット部材であり、第二部材における押圧端部の内側には、押圧端部を補強する補強部が設けられることを特徴とする。

第5の発明は、補強部が、中実に形成されると共に押圧端部の内周に圧入される支持部材であることを特徴とする。

第4及び第5の発明では、テーパ状の押圧面が形成されても、補強部によって押圧端部の強度が確保されるため、第二部材の耐久性を向上させることができる。

第6の発明は、連結部材が、一方のリンクアームに連結されると共に収容部が形成される連結本体部と、他方のリンクアームに連結される連結ロッド部と、連結本体部に連結され連結本体部と共に連結ロッド部に対し軸方向に相対移動するガイドスリーブと、を有し、押圧部材は、ガイドスリーブに設けられる座部と第二部材との間に介装される押圧ばねであることを特徴とする。

第6の発明では、押圧ばねがガイドスリーブに設けられる座部に着座するため、連結部材が伸長しても押圧ばねの長さは変化せず、付勢力を一定に保つことができる。

本発明によれば、簡易な構成でブレーキ装置におけるアジャスタの意図しない作動を防止することができる。

本発明の実施形態に係るブレーキ装置の平面図である。

本発明の実施形態に係るブレーキ装置の正面図である。

図1におけるA−A線に沿った断面図である。

図3におけるB−B線に沿った断面図である。

本発明の実施形態に係るブレーキ装置の変形例を示す断面図であり、押圧端部を拡大して示す。

本発明の実施形態に係るブレーキ装置の伸長ナット及び補強部の第1変形例を示す断面図である。

本発明の実施形態に係るブレーキ装置の伸長ナット及び補強部の第2変形例を示す断面図である。

以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。

まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係るブレーキ装置100の構成について説明する。

ブレーキ装置100は、主に鉄道車両に適用されるものである。ブレーキ装置100は、車輪1とともに回転するブレーキディスク1aを挟持して車輪1を制動するものである。具体的には、ブレーキ装置100は、ブレーキディスク1aをその両面から一対のブレーキライニング2で挟持し、ブレーキディスク1aとブレーキライニング2との間の摩擦力によって車輪1の回転を制動する。

ブレーキディスク1aは、車輪1の表裏両面に形成されて車輪1と一体に回転する。ブレーキディスク1aを車輪1と一体に形成する構成に代えて、車輪1とともに回転する別体のブレーキディスク1aを設けてもよい。

ブレーキライニング2は、非制動時には、ブレーキディスク1aと予め設定された所定の間隔をあけて対向する(図1に示す状態)。ブレーキライニング2は、制動時には、ブレーキディスク1aに向かって移動し、ブレーキディスク1aに平行に当接して押圧される。

ブレーキライニング2は、ブレーキ装置100のライニング保持部3(図2参照)に支持される裏板部2aと、制動時にブレーキディスク1aに当接する摩擦部材2bと、を有する。摩擦部材2bは、複数のセグメントからなり、裏板部2aの表面に固定される。ブレーキライニング2は、摩擦部材2bとブレーキディスク1aとの当接によって発生する摩擦力によって、車輪1の回転を制動する。

ライニング保持部3は、ブレーキライニング2の裏板部2aが挿入されるアリ溝(図示省略)を有する。ライニング保持部3の上下の端部には、図2に示すように、一対のアンカボルト5によってライニング保持部3に固定されるアンカブロック4が各々設けられる。アンカブロック4は、ブレーキライニング2の裏板部2aの長手方向(図2では上下方向)の端部を固定する。これにより、アリ溝に挿入されたブレーキライニング2は、ライニング保持部3に保持される。

ブレーキ装置100は、図1に示すように、ブレーキ本体10と、一端部31と他端部33との間の支持部32がブレーキ本体10に回動可能に支持される一対のリンクアーム30と、作動流体としての圧縮空気の給排によって出力部材としてのロッド21を進退させ一対のリンクアーム30を回動させてブレーキライニング2をブレーキディスク1aに押圧するアクチュエータ20と、アクチュエータ20のロッド21に回動可能に連結されロッド21の進退によって回動するリンクレバー40と、一対のリンクアーム30の一端部31のうち少なくとも一方に設けられ、リンクレバー40の回動によって伝達される力を倍力して支持部32を支点にリンクアーム30を回動させる倍力ユニット50と、伸縮可能に設けられ一対のリンクアーム30の一端部31どうしを連結する連結部材60と、連結部材60を伸長させてブレーキディスク1aに対するブレーキライニング2の相対位置を一定に調整するアジャスタ70(図3参照)と、を備える。

ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両に適用される場合には、台車(図示省略)に支持される。ブレーキ本体10は、ブレーキ装置100が鉄道車両以外の車両に適用される場合には、車体(図示省略)に支持される。

アクチュエータ20は、運転者の制動操作に基づいて作動し、連結部材60に取り付けられるアクチュエータ本体20aに対してロッド21を進退させる。アクチュエータ20は、圧縮空気に代えて、作動油等の液体など他の流体を作動流体とした流体圧アクチュエータでもよい。

アクチュエータ20は、リンクアーム30の一端部31を挟んで支持部32とは反対側に位置するように設けられる。つまり、アクチュエータ20は、連結部材60を挟んでブレーキ本体10と対向するように設けられる。これにより、アクチュエータ20が連結部材60と一対のリンクアーム30とによって囲まれる領域の外側に設けられるため、リンクアーム30の設計自由度が向上する。よって、リンクアーム30を短くすることができるため、ブレーキ装置100の小型軽量化が可能である。

図2に示すように、ロッド21は、一対のリンクレバー40に各々連結される連結部21aと、一対の連結部21aの間に形成される凹部21bと、を有するU字状に形成される。凹部21bは、ロッド21がアクチュエータ本体20aから退出したときに、ロッド21と連結部材60との干渉を防止するものである。よって、ロッド21がアクチュエータ本体20aから退出する際には、連結部材60が凹部21bに入り込み、一対の連結部21aが連結部材60を避けて伸長することとなる。

ロッド21は、各々の連結部21aにリンクレバー40を回動可能に各々連結する一対のロッドシャフト22を有する(図1参照)。一対のロッドシャフト22は、同軸に設けられる。ロッドシャフト22は、その中心軸がブレーキライニング2と平行となるように配設される。ロッド21が往復動する中心軸の延長線上には、ブレーキディスク1aの中心が位置する。ロッド21は、アクチュエータ本体20aに対して進退するとともに、ブレーキライニング2が移動可能な方向(図1では上下方向)に揺動可能である。

図1に示すように、リンクアーム30は、ブレーキディスク1aの両面に臨んで各々設けられる。一対のリンクアーム30の一端部31どうしは、連結部材60によって連結される。リンクアーム30の他端部33は、ブレーキディスク1aに摺接して摩擦力を付与するブレーキライニング2を揺動可能に支持する。図2に示すように、リンクアーム30は、上下に設けられる一対のアーム部30aを有する略U字状に形成される。

図1に示すように、一方のリンクアーム30の一端部31には、連結部材60とリンクアーム30とを貫通して連結する連結シャフト31aが設けられる。他方のリンクアーム30の一端部31には、連結部材60とリンクアーム30と一対のリンクレバー40とを貫通して連結して、アクチュエータ20のロッド21の進退による力を倍力してリンクアーム30を回動させる倍力ユニット50が設けられる。

この構成に代えて、一方のリンクアーム30の一端部31と他方のリンクアーム30の一端部31とに、ともに倍力ユニット50を設けてもよい。その場合、各々の倍力ユニット50が一方のリンクアーム30と他方のリンクアーム30とをそれぞれ回動させることができる。また、基部を一方のリンクアーム30に連結される第1連結部材と他方のリンクアーム30に連結される第2連結部材とに分割して、それらの間に倍力ユニット50を設けてもよい。倍力ユニット50については、後で詳細に説明する。

リンクアーム30の支持部32には、リンクアーム30とブレーキ本体10とを貫通して連結するアームシャフト32aが設けられる。リンクアーム30は、アームシャフト32aによってブレーキ本体10に回動可能に支持される。ブレーキ装置100の制動時にブレーキディスク1aからブレーキライニング2に作用する周方向の接線力は、支持部32からアームシャフト32aを介してブレーキ本体10に作用する。

リンクアーム30の他端部33には、リンクアーム30とライニング保持部3とを貫通して連結するライニングシャフト33aが設けられる。ライニング保持部3は、ライニングシャフト33aによってリンクアーム30に回動可能に支持される。これにより、ブレーキライニング2は、リンクアーム30に対して揺動可能となり、制動時にブレーキディスク1aに常に平行に当接することができる。

リンクレバー40は、アクチュエータ20のロッド21の進退による力を倍力ユニット50に伝達する。リンクレバー40の一端部41は、ロッド21のロッドシャフト22に回動可能に連結される。リンクレバー40の他端部42は、倍力ユニット50の後述する偏心部53に回動不能に連結される。

リンクレバー40は、ロッド21がアクチュエータ本体20aに対して進退すると、ロッドシャフト22と偏心部53との間で回動する。リンクレバー40は、ロッド21がアクチュエータ本体20aから最も退出した状態では、連結部材60と平行な位置まで回動する。

また、リンクレバー40には、制動時のリンクレバーの回動に伴い後述するアジャスタ70の回転レバー85を押圧可能な押圧ピン40aが設けられる。押圧ピン40aは、先端が半球状の軸部材として設けられる。なお、押圧ピン40aは、リンクレバー40と一体として形成されてもよい。また、押圧ピン40aは、軸部を有さず、単に半球状の突起として形成されてもよい。

図2に示すように、倍力ユニット50は、リンクレバー40の回動によって回転軸A1を中心に回転する偏心カム51を有する。偏心カム51の回転軸A1は、リンクアーム30に対する位置が、連結シャフト31aの中心軸と同じ位置となるように設けられる。

偏心カム51は、連結部材60に回動可能に連結される回転部52と、偏心カム51の回転軸A1からオフセットされた位置に中心軸A2を有しリンクレバー40の回動によって回転軸A1を中心として円弧状に回動する偏心部53と、偏心部53と同軸に形成されリンクアーム30に回転可能に支持される一対のアーム連結部54と、を有する。

回転部52は、連結シャフト31aと同じ外径に形成される。回転部52の中心軸が、偏心カム51の回転軸A1である。

偏心部53は、回転部52と比較して小径に形成される。偏心部53は、回転部52の軸方向両側に各々設けられる。偏心部53には、リンクレバー40が相対回動不能に連結される。よって、ロッド21がアクチュエータ本体20aに対して進退してリンクレバー40が回動すると、偏心部53が回転軸A1を中心とする円弧状に回動して、一対のリンクアーム30の間の距離を拡縮する。

アーム連結部54は、偏心部53と同径に形成される。アーム連結部54は、偏心部53を挟んで回転部52の反対側に設けられる。これに代えて、アーム連結部54を、偏心部53と比較して小径に形成してもよい。また、アーム連結部54を、偏心部53と回転部52との間に各々設けてもよい。

このように、偏心カム51は、中央に回転部52を有し、その両端に回転部52よりも小径な偏心部53を有し、更にその両端に偏心部53と同径又は偏心部53よりも小径なアーム連結部54を有する。よって、偏心カム51は、中央から両端部に向かって段階的に小径になるため、加工が容易である。また、偏心カム51に連結部材60とリンクレバー40とリンクアーム30とを順番に組み立てることができるため、組み立て性が良好である。

次に、図3及び図4を参照して、連結部材60及びアジャスタ70の構成について具体的に説明する。

図3に示すように、連結部材60は、一端が偏心カム51を介して一方のリンクアーム30に連結される連結本体部61と、一端が他方のリンクアーム30に連結される連結ロッド部65と、を有する。連結本体部61と連結ロッド部65とが軸方向に相対移動することにより、連結部材60は軸方向に伸縮する。

連結部材60には、連結本体部61と連結ロッド部65との互いの他端を覆ってダストの浸入を防ぐダストカバー(図示省略)が設けられる。また、アクチュエータ20のアクチュエータ本体20aは、連結本体部61に取り付けられる(図1参照)。

連結本体部61は、偏心カム51が挿入される連結基部62と、連結基部62に連結され連結ロッド部65に挿入されるガイドスリーブ63と、連結基部62に連結されガイドスリーブ63の外周側に設けられるカバースリーブ64と、を有する。

連結基部62は、一端面に開口する収容部としての本体凹部62aと、偏心カム51の回転部52が回転自在に挿入されるカム孔62bと、一端部から径方向外側に延びて形成されガイドスリーブ63及びカバースリーブ64が連結される第一フランジ部62cと、を有する。

本体凹部62aは、底部から中心軸に対して傾斜するテーパ状に形成される当接部としての当接面62dと、底部とは反対側の当接面62dの端部から径方向外側に延びて形成される垂直面62eと、を有する。

ガイドスリーブ63は、本体凹部62aの開口部に設けられる筒状部材である。ガイドスリーブ63は、軸方向に沿って形成される貫通孔63aと、連結ロッド部65の内側に挿入される先端部63bと、本体凹部62a内に挿入される基端部63cと、貫通孔63aの内周面から径方向内側に突出する環状の段差部63dと、貫通孔63aの内周面から径方向内側に突出すると共に段差部63dよりも先端側(連結ロッド部65側)に設けられ後述する押圧部材としての押圧ばね92が着座する環状の座部63eと、連結基部62の第一フランジ部62cに連結される第二フランジ部63fと、を有する。

カバースリーブ64は、ガイドスリーブ63と径方向に隙間を持って設けられる筒状部材である。カバースリーブ64は、連結基部62の第一フランジ部62cに連結される第三フランジ部64aを有する。カバースリーブ64が設けられることにより、飛来物等による衝撃やダスト等の浸入からアジャスタ70をより確実に保護することができる。

第一、第二、第三フランジ部62c,63f,64aは、これらを挿通する締結ボルト(図示省略)によって互いに連結される。これにより、連結基部62、ガイドスリーブ63、及びカバースリーブ64が一体化して、連結ロッド部65に対して相対移動する連結本体部61を構成する。

連結ロッド部65は、他方のリンクアーム30における一端部31が連結されるロッド基部66と、連結本体部61におけるガイドスリーブ63の先端部63bが内側に摺動自在に挿入されるスライドスリーブ67と、を有する。

ロッド基部66には、後述する伸長機構71の伸長シャフト72が挿通する挿通孔66aと、スライドスリーブ67の一端が挿入されるスリーブ凹部66bと、が形成される。挿通孔66aは、連結本体部61側へ図3中下方向に向かうほど内径が大きいテーパ状に形成される。

スライドスリーブ67は、スリーブ凹部66bを介してロッド基部66に連結される。スライドスリーブ67の他端部は、連結本体部61のガイドスリーブ63とカバースリーブ64との径方向の間に収容される。

アジャスタ70は、ブレーキ装置100が制動状態になってブレーキライニング2が摩耗すると、ブレーキライニング2の摩耗量に応じて連結部材60を伸長させる。アジャスタ70は、図3に示すように、連結部材60をハウジングとして連結部材60の内部に設けられる。

アジャスタ70は、相対回転するねじ機構によって連結部材60を伸長させる伸長機構71と、連結部材60が伸長する方向にのみ伸長機構71へ回転トルクを伝達可能なトルク伝達部としてのワンウェイクラッチ80と、伸長機構71におけるねじ機構の回転に抵抗を付与する抵抗付与部90と、を有する。

伸長機構71は、第一ねじ部としての雄ねじ72aが形成される第一部材としての伸長シャフト72と、伸長シャフト72の雄ねじ72aと螺合する第二ねじ部としての雌ねじ74aが形成される第二部材としての伸長ナット73と、を有する。伸長シャフト72と伸長ナット73とによって、ねじ機構が構成される。

伸長シャフト72は、連結部材60のガイドスリーブ63及び連結ロッド部65のスライドスリーブ67の内側であって、連結本体部61及び連結ロッド部65にわたって設けられるボルト部材である。伸長シャフト72は、連結本体部61のガイドスリーブ63の内周に隙間を持って設けられる。

伸長シャフト72は、連結ロッド部65におけるロッド基部66の挿通孔66aを挿通し、ナット70aによってロッド基部66に固定される。つまり、伸長シャフト72は、ハウジングである連結部材60の連結ロッド部65に固定され回転不能に設けられる。伸長シャフト72の他端は、雄ねじ72aが形成されて、連結本体部61の内側に収容される。

伸長シャフト72は、挿通孔66aの内周面に対応したテーパ状の外周面72bが挿通孔66aの内周面に接触した状態で、挿通孔66aを挿通する。これにより、伸長シャフト72と挿通孔66aとの接触面積が増加して摩擦力が増加するため、ナット70aを伸長シャフト72に締結する際の相対回転が防止される。

伸長ナット73は、伸長シャフト72に螺合するナット部材である。伸長ナット73は、伸長シャフト72の雄ねじ72aに螺合する雌ねじ74aが形成される本体部74と、一端部に形成され連結基部62の本体凹部62a内に設けられる押圧端部75と、を有する。伸長ナット73は、押圧端部75が本体凹部62a内に設けられると共に本体部74がガイドスリーブ63と伸長シャフト72との間に設けられて、伸長シャフト72に対して相対回転可能に構成される。

本体部74は、伸長シャフト72が挿通するボルト挿通孔74bを有する。ボルト挿通孔74bの一部が、雌ねじ74aとして形成される。

押圧端部75には、本体凹部62aの当接面62dに対応したテーパ状に形成されて当接面62dに当接する押圧面75aが形成される。押圧端部75の最大外径は、本体部74の最大外径よりも大きく形成される。これにより、押圧端部75の押圧面75aと本体凹部62aの当接面62dとの接触面積を大きくすることができる。

また、伸長ナット73における押圧端部75の内側には、押圧端部75を補強する補強部76が設けられる。補強部76は、中実に形成されると共に、一端部から伸長ナット73に圧入されて伸長ナット73の内周を支持する支持部材である。ブレーキ装置100の制動時では、伸長ナット73及び伸長シャフト72には、連結部材60を介して大きな制動力が軸方向に作用する。伸長ナット73の押圧端部75に補強部76が設けられることにより、テーパ状の押圧面75aが形成されて肉厚が薄い押圧端部75の強度が確保される。よって、制動時に大きな力が作用しても伸長ナット73の損傷が防止され、伸長ナット73の耐久性を向上させることができる。

ワンウェイクラッチ80は、連結本体部61の本体凹部62a内に設けられ、本体凹部62aの垂直面62eとガイドスリーブ63の基端部63cとによって軸方向に位置決めされる。ワンウェイクラッチ80は、図4に示すように、伸長ナット73の外周に圧入される内輪81と、径方向外側に突出して連結部材60の外部に露出する回転レバー85が設けられる外輪82と、内輪81と外輪82との間に設けられるスプラグ83と、を有する。

ワンウェイクラッチ80は、内輪81と外輪82とが一方向に相対回転する場合にはスプラグ83によって内輪81と外輪82とが係合する一方、他方向に相対回転する場合には互いに空転する。回転レバー85は、連結基部62の内外周面を貫通し周方向の一部に形成される周方向溝62fを通じて、連結部材60の連結基部62の外部に露出する。

また、連結本体部61には、回転レバー85を付勢するレバー付勢部材としてのレバースプリング86を支持する支持壁部87が設けられる(図1及び図4参照)。レバースプリング86は、支持壁部87と回転レバー85との間に圧縮状態で介装され、ワンウェイクラッチ80の内輪81と外輪82とが係合する方向に回転レバー85を付勢する。レバースプリング86は、支持壁部87側から回転レバー85側に向かうにつれ巻径が小さくなるテーパスプリングである。ブレーキ装置100の非制動時では、回転レバー85はレバースプリング86によって周方向溝62fの一端に押し付けられて、周方向溝62fの壁部に当接する。なお、レバースプリング86は、テーパスプリングに限らず、巻径が等しく形成されるコイルスプリングでもよい。

回転レバー85を介して一方向(図4中実線矢印方向)に回転する回転トルクがワンウェイクラッチ80の外輪82に作用すると、ワンウェイクラッチ80の内輪81と外輪82が係合し、ワンウェイクラッチ80は伸長ナット73と共に一方向に回転する。また、他方向(図4中破線矢印方向)に回転する回転トルクがワンウェイクラッチ80の外輪82に作用すると、ワンウェイクラッチ80の内輪81と外輪82とは空転し、ワンウェイクラッチ80の外輪82のみが回転する。以下、内輪81と係合する外輪82の回転方向(図4中実線矢印方向)、つまりワンウェイクラッチ80と伸長ナット73とが共に回転する方向を「係合方向」を称する。反対に、内輪81に対して空転する外輪82の回転方向(図4中破線矢印方向)を「空転方向」と称する。

ワンウェイクラッチ80が伸長ナット73と共に係合方向に回転することにより、伸長ナット73は伸長シャフト72に対して相対回転し、伸長ナット73と伸長シャフト72が互いに離間する方向に移動して、伸長機構71が伸長する。これにより、伸長ナット73に連結される連結本体部61と伸長シャフト72に連結される連結ロッド部65とが互いに離間するように移動して、連結部材60が伸長される。このように、ワンウェイクラッチ80は、伸長ナット73と伸長シャフト72とが離間する伸長機構71の伸長方向にのみ伸長ナット73に回転トルクを伝達する。

ワンウェイクラッチ80は、制動時におけるリンクレバー40の回動に伴い、押圧ピン40aが回転レバー85を押圧することにより、空転方向に回転する。つまり、回転レバー85は、制動時におけるリンクレバー40の回動するに伴い、押圧ピン40aを介してリンクレバー40に押圧される。図1では、実線矢印方向が係合方向を示し、破線矢印方向が空転方向を示す。

抵抗付与部90は、図3に示すように、ガイドスリーブ63の内側に設けられ伸長ナット73の他端部に軸方向からに当接するリテーナ91と、連結部材60における連結基部62に形成され伸長ナット73を収容する本体凹部62aに設けられて、伸長ナット73の押圧端部75に当接する当接面62dと、ガイドスリーブ63の座部63eとリテーナ91との間に圧縮状態で介装されリテーナ91を介して伸長ナット73を当接面62dに向けて軸方向に押圧する押圧部材としての押圧ばね92と、によって構成される。

リテーナ91は、伸長ナット73の他端部に軸方向から当接する一方、ガイドスリーブ63の段差部63dとは軸方向に離間して当接しない。これにより、押圧ばね92の付勢力は、段差部63dによって阻害されることなくリテーナ91を介して伸長ナット73に伝達される。

押圧ばね92は、リテーナ91を介して伸長ナット73を当接面62dに向けて押圧するコイルスプリングである。これにより、伸長ナット73の押圧面75aが当接面62dに押し付けられて、押圧面75aと当接面62dとの間の摩擦力が増大する。このため、伸長ナット73が回転する際には、押圧面75aと当接面62dとが摺接し伸長ナット73の回転に摩擦力が抵抗として付与される。このように、押圧ばね92によって伸長ナット73の回転に摩擦力が付与されるため、車両の振動などによる伸長ナット73と伸長シャフト72との意図しない相対回転が防止される。

また、押圧面75a及び当接面62dは、対応するテーパ状に形成されて互いに接触するため、中心軸に垂直な平面として形成される場合と比較して、両者の間の接触面積が増加すると共に、くさび効果によって摩擦力がさらに大きくなる。よって、押圧面75a及び当接面62dがテーパ状に形成されることにより、より効果的に伸長ナット73と伸長シャフト72との意図しない相対回転を防止することができる。

また、押圧ばね92はガイドスリーブ63に設けられる座部63eに着座するため、連結部材60が伸長しても押圧ばね92の長さは変化せず、付勢力を一定に保つことができる。なお、連結部材60の伸長による付勢力の変化が許容される場合には、押圧ばね92は連結ロッド部65に着座するものでもよい。また、押圧ばね92は、リテーナ91を介して伸長ナット73を当接面62dに押し付けるものに限らず、直接伸長ナット73を付勢して当接面62dに押し付けてもよい。

次に、図1及び図2を参照して、ブレーキ装置100の作用について説明する。

ブレーキ装置100は、運転者の制動操作に基づいてアクチュエータ20が作動すると、非制動状態(図1及び図2に示す状態)から制動状態になる。

アクチュエータ20が作動して、ロッド21がアクチュエータ本体20aから退出すると、リンクレバー40はロッドシャフト22によって押されて回動する。アクチュエータ20がロッド21を退出させる力は、リンクレバー40を介して偏心カム51の偏心部53に伝達される。

偏心カム51は、リンクレバー40を介して伝達された力によって、偏心部53が回転軸A1を中心とする円弧状に回動することによって一方向(図1では時計回り)に回転する。これにより、偏心部53と一体にアーム連結部54がロッド21から離間する方向に回動するため、一対のリンクアーム30の一端部31は、互いに離間する方向に移動する。

リンクアーム30は、支持部32によってブレーキ本体10に回動可能に支持されるため、一端部31が互いに離間する方向に移動すると、他端部33は互いに近接する方向に移動する。よって、ブレーキライニング2が、ブレーキディスク1aに向かって移動して、ブレーキディスク1aに平行に当接して押圧され、車輪1の回転が制動される。

このとき、偏心カム51は、ロッドシャフト22の中心軸A3と回転軸A1との間の距離L1と、回転軸A1と偏心部53の中心軸A2との間の距離L2とのレバー比によって、ロッド21からリンクレバー40を介して伝達される力をL1/L2倍に倍力してリンクアーム30に伝達する。よって、大型のアクチュエータを設けることなく、大きな制動力を得ることができる。したがって、ブレーキ装置100の小型軽量化が可能である。

偏心カム51からリンクアーム30の一端部31に伝達される力は、一端部31と支持部32との間の距離L3と、支持部32と他端部33との間の距離L4とのレバー比によって、L3/L4倍に倍力される。ブレーキ装置100では、距離L3と比較して距離L4の方が大きいため、ブレーキライニング2をブレーキディスク1aに押圧する力は、偏心カム51からリンクアーム30の一端部31に伝達される力よりも小さな力となる。

しかしながら、ブレーキ装置100では、偏心カム51によってアクチュエータ20のロッド21からリンクレバー40を介して伝達される力が大きな倍率で倍力されている。そのため、ブレーキ装置100の小型軽量化のためにリンクアーム30を短くして距離L3を小さくしても、充分に大きな制動力を得ることができる。

ブレーキ装置100は、運転者の制動解除操作に基づいてアクチュエータ20が制動時とは逆の方向に作動すると、制動状態から非制動状態(図1及び図2に示す状態)になる。

アクチュエータ20が作動して、ロッド21がアクチュエータ本体20aに進入すると、リンクレバー40はロッドシャフト22に引っ張られて回動する。アクチュエータ20がロッド21を進入させる力は、リンクレバー40を解して偏心カム51の偏心部53に伝達される。

偏心カム51は、リンクレバー40を介して伝達された力によって、偏心部53が回転軸A1を中心とする円弧状に回動することによって他方向(図1では反時計回り)に回転する。これにより、一対のリンクアーム30の一端部31は、互いに近接する方向に移動する。よって、一対のリンクアーム30の他端部33は、互いに離間する方向に移動する。これにより、ブレーキライニング2がブレーキディスク1aから離間して、車輪1の制動が解除される。

次に、図4を参照して、アジャスタ70の作用について説明する。

ブレーキライニング2の摩耗量が小さい場合には、ブレーキディスク1aに向かうブレーキライニング2の移動量が小さい。このため、アクチュエータ20が作動しブレーキ装置100が制動状態となっても、図4に実線で示すように、リンクレバー40に設けられる押圧ピン40aは、アジャスタ70の回転レバー85に接触せず回転レバー85を押圧しない。

ブレーキライニング2の摩耗が進行し、ブレーキディスク1aに向かうブレーキライニング2の移動量が大きくなった場合には、ブレーキ装置100が制動状態になると、図4に破線で示すように、リンクレバー40の回動に伴いレバースプリング86の付勢力に抗して回転レバー85が押圧ピン40aを介してリンクレバー40に押圧される。回転レバー85が押圧ピン40aによって押圧されると、ワンウェイクラッチ80は空転方向に回転する。

この状態で制動状態が解除されると、リンクレバー40が回動し押圧ピン40aが戻される。これに伴い、レバースプリング86の付勢力によって回転レバー85が係合方向へ移動し、ワンウェイクラッチ80の外輪82には係合方向の回転トルクが作用する。係合方向の回転トルクは、ワンウェイクラッチ80により伸長ナット73に伝達される。よって、伸長ナット73の回転に伴い伸長ナット73と伸長シャフト72とが互いに離間する方向に移動し、伸長機構71が伸長する。

伸長機構71が伸長すると連結部材60が伸長され、一対のリンクアーム30の一端部31が互いに離間する方向に移動する。言い換えれば、連結部材60が伸長されることにより、連結本体部61の連結基部62に連結される偏心カム51と連結ロッド部65に連結される連結シャフト31aとの間の距離が拡げられる。

一対のリンクアーム30の一端部31が互いに離間するように移動すると、支持部32を支点として一対のリンクアーム30が回動し、他端部33が互いに近接する方向に移動する。このように、連結部材60を伸長させて一対のリンクアーム30の一端部31間の距離が拡げられることにより、非制動時において摩耗した厚さの分だけブレーキライニング2の位置をブレーキディスク1aに近づけることができる。したがって、ブレーキライニング2が摩耗した場合であっても、非制動時におけるブレーキライニング2とブレーキディスク1aとの間隔を常に一定に保つことができる。

また、アクチュエータ本体20aと倍力ユニット50は、連結部材60の連結本体部61に取り付けられる。連結部材60は、連結本体部61と連結ロッド部65とが相対移動して伸長する。このため、ブレーキライニング2が摩耗して連結部材60が伸長しても、アクチュエータ20と倍力ユニット50との位置関係は変化しない。よって、ブレーキライニング2が摩耗しても、アクチュエータ20の作動特性を変化させないことが可能である。

ここで、非制動時における車両の振動等により、伸長ナット73には、伸長シャフト72に対して相対回転するような意図しない力が作用することがある。このような場合であっても、伸長ナット73の押圧面75aが押圧ばね92の付勢力によって本体凹部62aの当接面62dに押し付けられるため、押圧面75aと当接面62dとの間の摩擦力(以下、「回り止め力」と称する。)によって意図しない回転が防止される。つまり、押圧ばね92とアジャスタ70のハウジングとなる連結部材60に設けられる当接面62dとによって伸長ナット73が軸方向に挟持されることにより、伸長シャフト72と伸長ナット73との意図しない回転が防止される。

回り止め力は、押圧ばね92の付勢力及び押圧面75aと当接面62dとの接触面積によって定められる。よって、押圧ばね92の付勢力の調整に加え、押圧面75aと当接面62dとの接触面積、具体的にはテーパの度を調整することにより、回り止め力を調整することができる。

回り止め力は、連結部材60を伸長させて隙間を調整するための伸長ナット73と伸長シャフト72との相対回転を規制しないような大きさに設定される。これにより、アジャスタ70によって連結部材60を伸長させてブレーキディスク1aに対するブレーキライニング2の相対位置を一定に調整しつつ、車両の振動などによる伸長ナット73と伸長シャフト72との意図しない相対回転を防止することができる。

次に、図5〜7を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。

上記実施形態では、伸長ナット73における押圧端部75の押圧面75aと連結基部62における本体凹部62aの当接面62dとは、本体凹部62aの底部に向かうにつれ径が小さくなるようなテーパ状に形成される。これに対し、図5に示すように、押圧面75aと当接面62dとは、本体凹部62aの底部に向かうにつれ径が大きくなるテーパ状に形成されてもよい。この場合には、本体凹部62aの底部の一部が伸長ナット73の押圧端部75の内側に挿入されるため、補強部76を設けなくても押圧端部75の強度を確保することができる。

また、押圧面75aと当接面62dとは、テーパ状に形成されなくてもよい。例えば、押圧面75aと当接面62dとは、曲面によって形成されてもよいし、伸長ナット73(本体凹部62a)の中心軸に垂直な平面として形成されてもよい。つまり、押圧面75aと当接面62dとは、所望の回り止め力が得られるように任意の形状とすることができる。

また、上記実施形態では、補強部76は、中実に形成されると共に押圧端部75に圧入される支持部材である。これに対し、補強部76は、押圧端部75を補強するものであれば、任意の構成とすることができる。例えば、補強部76は、中空(円筒状)に形成されると共に押圧端部75に圧入されるものでもよい。

また、補強部76は、押圧端部75と別体に形成されて押圧端部75の内側に設けられるものに限らず、押圧端部75と一体に形成されてもよい。例えば、補強部76は、図6に示すように押圧端部75の内周から径方向内側に延びて形成される厚肉部でもよい。また、補強部76は、図7に示すように、有底筒状に形成される伸長ナット73の底部であってもよい。つまり、補強部76は、伸長シャフト72が挿通するボルト挿通孔74bにおける押圧端部75側の開口の少なくとも一部を塞ぐものであればよい。

また、上記実施形態では、伸長シャフト72が回転不能に設けられる一方、伸長ナット73が回転可能に設けられ、伸長ナット73に回転トルクを伝達することにより伸長機構が伸長する。これに代えて、伸長シャフト72を回転可能に設け、伸長ナット73を回転不能に設けてもよい。

以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。

ブレーキ装置100では、押圧ばね92によって伸長ナット73の押圧面75aが連結基部62における本体凹部62aの当接面62dに押圧されることにより、伸長ナット73の押圧面75aと本体凹部62aの当接面62dとの間の摩擦力が増加する。このため、摩擦力によって車両の振動等による伸長ナット73の意図しない回転が防止される。このように、ブレーキ装置100では、簡易な構成でアジャスタ70の意図しない作動を防止することができる。

また、押圧面75a及び当接面62dは、対応するテーパ状に形成されて互いに接触するため、中心軸に垂直な平面として形成される場合と比較して、両者の間の接触面積が増加すると共に、くさび効果によって摩擦力がさらに大きくなる。よって、より効果的に伸長ナット73と伸長シャフト72との意図しない相対回転を防止することができる。

また、伸長ナット73における押圧端部75の最大外径が、本体部の最大外径よりも大きく形成されることにより、押圧面75aと当接面62dとの接触面積が増加して、両者の間の摩擦力をさらに大きくすることができる。

また、押圧端部75の内周には、補強部76が設けられるため、押圧端部75の強度を確保することができる。

また、押圧ばね92は、ガイドスリーブ63の座部63eに着座するため、連結部材60が伸長しても、長さが変化しない。よって、押圧ばね92の付勢力を一定に保つことができる。

以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。

車輪1とともに回転するブレーキディスク1aを挟持して車輪1を制動するブレーキ装置100は、車体に支持されるブレーキ本体10と、一端部31と他端部33との間の支持部32がブレーキ本体10に回動可能に支持される一対のリンクアーム30と、圧縮空気の給排によって作動し一対のリンクアーム30を回動させることにより、ブレーキディスク1aの両面に臨むように一対のリンクアーム30の他端部33に支持されブレーキディスク1aに摺接して摩擦力を付与可能なブレーキライニング2をブレーキディスク1aに押圧するアクチュエータ20と、伸縮可能に設けられ一対のリンクアーム30の一端部31どうしを連結する連結部材60と、連結部材60を伸長させてブレーキディスク1aに対するブレーキライニング2の相対位置を一定に調整するアジャスタ70と、を備え、アジャスタ70は、回転不能に設けられ第一ねじ部(雄ねじ72a)が形成される第一部材(伸長シャフト72)及び回転可能に設けられ第一ねじ部(雄ねじ72a)に螺合する第二ねじ部(雌ねじ74a)が形成される第二部材(伸長ナット73)を有して第一部材(伸長シャフト72)及び第二部材(伸長ナット73)の相対回転により連結部材60を伸長させる伸長機構71と、第二部材(伸長ナット73)の外周に設けられ連結部材60が伸長する方向にのみ第二部材(伸長ナット73)へ回転トルクを伝達可能なワンウェイクラッチ80と、連結部材60に形成され第二部材(伸長ナット73)を収容する本体凹部62aに設けられて、第二部材(伸長ナット73)の一端部に当接する当接部(当接面62d)と、当接部(当接面62d)に向けて第二部材(伸長ナット73)を軸方向に押圧する押圧部(押圧ばね92)と、を有する。

この構成では、押圧部(押圧ばね92)によって第二部材(伸長ナット73)が当接部(当接面62d)に押圧されることにより第二部材(伸長ナット73)と当接部(当接面62d)との間の摩擦力が増加する。このため、摩擦力によって車両の振動等による第二部材(伸長ナット73)の回転が防止される。このように、押圧部(押圧ばね92)と当接部(当接面62d)との簡易な構成によって、アジャスタ70の回り止めが行われる。したがって、簡易な構成でブレーキ装置100におけるアジャスタ70の意図しない作動を防止することができる。

また、ブレーキ装置100では、当接部が、第二部材(伸長ナット73)の中心軸に対して傾斜するテーパ状の当接面62dであり、第二部材(伸長ナット73)が、第二ねじ部(雌ねじ74a)が形成される本体部74と、当接面62dに対応した形状に形成されて当接面62dに当接する押圧面75aが設けられる押圧端部75と、を有する。

また、ブレーキ装置100では、押圧端部75の最大外径は、本体部の最大外径よりも大きい。

これらの構成では、押圧面75aと当接面62dとがテーパ面で接触するため、両者の接触面積の増加により摩擦力が増加する。したがって、より確実にアジャスタ70の意図しない作動を防止することができる。

また、ブレーキ装置100では、第一部材(伸長シャフト72)が、外周に第一ねじ部である雄ねじ72aが形成されるボルト部材であり、第二部材(伸長ナット73)が、第一部材(伸長シャフト72)が挿通するボルト挿通孔74bの内周に第二ねじ部である雌ねじ74aが形成されるナット部材であり、第二部材(伸長ナット73)における押圧端部75の内側には、押圧端部75を補強する補強部76が設けられる。

また、ブレーキ装置では、補強部76が、中実に形成されると共に押圧端部75の内周に圧入される支持部材である。

これらの構成では、テーパ状の押圧面75aが形成されていても、補強部76によって押圧端部75の強度が確保されるため、第二部材(伸長ナット73)の耐久性を向上させることができる。

また、ブレーキ装置100では、連結部材60が、一方のリンクアーム30に連結されると共に本体凹部62aが形成される連結本体部61と、他方のリンクアーム30に連結される連結ロッド部65と、連結本体部61に連結され連結本体部61と共に連結ロッド部65に対し軸方向に相対移動するガイドスリーブ63と、を有し、押圧部材が、ガイドスリーブ63に設けられる座部63eと第二部材(伸長ナット73)との間に介装される押圧ばね92である。

この構成では、押圧ばね92がガイドスリーブ63に設けられる座部63eに着座するため、連結部材60が伸長しても押圧ばね92の長さは変化せず、付勢力を一定に保つことができる。

以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。

100…ブレーキ装置、1…車輪、1a…ブレーキディスク、2…ブレーキライニング、10…ブレーキ本体、20…アクチュエータ、20a…アクチュエータ本体、21…ロッド(出力部材)、30…リンクアーム、31…一端部、32…支持部、33…他端部、40…リンクレバー、60…連結部材、61…連結本体部、62a…本体凹部(収容部)、62d…当接面(当接部)、63…ガイドスリーブ、63e…座部、65…連結ロッド部、70…アジャスタ、71…伸長機構、72…伸長シャフト(第一部材)、72a…雄ねじ(第一ねじ部)、73…伸長ナット(第二部材)、73a…雌ねじ(第二ねじ部)、74b…ボルト挿通孔、75…押圧端部、75a…押圧面、76…補強部、80…ワンウェイクラッチ(トルク伝達部)、92…押圧ばね(押圧部材)

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