鉄道車両用台車、及びその台車を備えた鉄道車両

申请号 JP2016537738 申请日 2015-07-16 公开(公告)号 JPWO2016017103A1 公开(公告)日 2017-04-27
申请人 新日鐵住金株式会社; 发明人 智 亀甲; 智 亀甲; 嘉之 下川; 嘉之 下川; 拓自 中居; 拓自 中居; 将明 水野; 将明 水野;
摘要 鉄道車両用台車は、右側の側ばり(11)を含む第1枠体(10)と、左側の側ばり(21)を含む第2枠体(20)と、各軸箱(33A〜33D)から延び出すリンク(34A〜34D)を有する軸箱支持装置と、を備える。両枠体(10、20)は弾性要素(30)を介して結合される。右前側の軸箱(33A)を第1枠体(10)の前端部(11a)で支持し、リンク(34A)が第2枠体(20)からの延出部(23)に結合される。左前側の軸箱(33B)を第2枠体(20)の前端部(21a)で支持し、リンク(34B)が第1枠体(10)からの延出部(13)に結合される。右後側の軸箱(33C)を第1枠体(10)の後端部(11b)で支持し、リンク(34C)が第1枠体(10)の側ばり(11)に結合される。左後側の軸箱(33D)を第2枠体(20)の後端部(21b)で支持し、リンク(34D)が第2枠体(20)の側ばり(21)に結合される。
权利要求
  • 前後に輪軸を備え、前記輪軸の自己操舵が可能な鉄道車両用台車であって、
    前記台車は、
    右側の側ばり及びこの右側の側ばりと一体の第1横ばりを含む第1枠体と、
    左側の側ばり及びこの左側の側ばりと一体の第2横ばりを含む第2枠体と、
    前記各輪軸の左右の各軸箱をそれぞれ弾性的に支持する軸箱支持装置であって、前記軸箱から前後方向に沿って延び出すリンクを有する軸箱支持装置と、
    前記各輪軸の左右の各車輪にそれぞれ対応する踏面ブレーキ装置と、
    前記各輪軸をそれぞれ駆動させる主電動機及び歯車装置と、を備え、
    前記第1枠体と前記第2枠体は、弾性要素を介して結合され、
    前記第1横ばりは、前記第2枠体の前記側ばりの前端部に向けて延び出す第1延出部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1枠体の前記側ばりの前端部に向けて延び出す第2延出部を有し、
    右前側の前記軸箱支持装置は、右前側の前記軸箱を前記第1枠体の前記側ばりの前端部によって支持するとともに、その右前側の前記軸箱の前記リンクが前記第2枠体の前記第2延出部に結合され、
    左前側の前記軸箱支持装置は、左前側の前記軸箱を前記第2枠体の前記側ばりの前端部によって支持するとともに、その左前側の前記軸箱の前記リンクが前記第1枠体の前記第1延出部に結合され、
    右後側の前記軸箱支持装置は、右後側の前記軸箱を前記第1枠体の前記側ばりの後端部によって支持するとともに、その右後側の前記軸箱の前記リンクが前記第1枠体の前記側ばりに結合され、
    左後側の前記軸箱支持装置は、左後側の前記軸箱を前記第2枠体の前記側ばりの後端部によって支持するとともに、その左後側の前記軸箱の前記リンクが前記第2枠体の前記側ばりに結合され、
    前記第1横ばりは、左前側及び右後側の前記各踏面ブレーキ装置を保持するとともに、前後の前記各主電動機及び前記各歯車装置を保持し、
    前記第2横ばりは、右前側及び左後側の前記各踏面ブレーキ装置を保持する、鉄道車両用台車。
  • 請求項1に記載の台車であって、
    前記第1枠体と前記第2枠体を結合する前記弾性要素がゴムである、鉄道車両用台車。
  • 請求項1に記載の台車であって、
    前記第1枠体と前記第2枠体を結合する前記弾性要素が積層ゴムである、鉄道車両用台車。
  • 請求項1〜3のいずれか1項に記載の台車であって、
    前記第1横ばりは、前記鉄道車両用台車の中央部まで延び出す第1突片部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1突片部に重なるように延び出す第2突片部を有し、
    前記第1枠体と前記第2枠体の前記弾性要素を介した結合箇所は、前記第1枠体の前記第1突片部と前記第2枠体の前記第2突片部との間の1点である、鉄道車両用台車。
  • 請求項1〜3のいずれか1項に記載の台車であって、
    前記第1横ばりは、前記第2枠体の前記側ばりの上面に重なるように延び出す第1突片部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1枠体の前記側ばりの上面に重なるように延び出す第2突片部を有し、
    前記第1枠体と前記第2枠体の前記弾性要素を介した結合箇所は、前記第1枠体の前記第1突片部と前記第2枠体の前記側ばりとの間、及び前記第2枠体の前記第2突片部と前記第1枠体の前記側ばりとの間の2点である、鉄道車両用台車。
  • 請求項5に記載の台車であって、
    前記第1突片部と前記第2突片部の前後方向の形成位置が左右で異なる、鉄道車両用台車。
  • 請求項5に記載の台車であって、
    前記第1突片部と前記第2突片部の前後方向の形成位置が左右で一致する、鉄道車両用台車。
  • 請求項7に記載の台車であって、
    前記第1突片部の形成位置が前記第1延出部の形成位置に近接し、前記第2突片部の形成位置が前記第2延出部の形成位置に近接する、鉄道車両用台車。
  • 請求項1〜3のいずれか1項に記載の台車であって、
    前記第1横ばりは、前記第2横ばりの上面に重なるように延び出す第1突片部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1横ばりの上面に重なるように延び出す第2突片部を有し、
    前記第1枠体と前記第2枠体の前記弾性要素を介した結合箇所は、前記第1枠体の前記第1突片部と前記第2枠体の前記第2横ばりとの間、及び前記第2枠体の前記第2突片部と前記第1枠体の前記第1横ばりとの間の2点である、鉄道車両用台車。
  • 請求項1〜9のいずれか1項に記載の台車と車体とを備えた鉄道車両であって、
    前記台車は、ボルスタレス台車であり、前記第1枠体の前記側ばり及び前記第2枠体の前記側ばりのそれぞれに配置された左右に一対の空気ばねを備え、
    前記車体は、前記各空気ばねに結合されるとともに、前記第1枠体及び前記第2枠体のそれぞれに対し、前後方向に沿いつつ両端にゴムブッシュを有する左右に一対のリンクを介して結合される、鉄道車両。
  • 請求項1〜9のいずれか1項に記載の台車と車体とを備えた鉄道車両であって、
    前記台車は、ボルスタレス台車であり、前記第1枠体の前記側ばり及び前記第2枠体の前記側ばりのそれぞれに配置された左右に一対の空気ばねを備え、
    前記車体が前記各空気ばねに結合され、
    前記車体の下面から突出する左右に一対の軸部材が、前記第1枠体及び前記第2枠体のそれぞれの上面に設置された円筒部材に挿入され、前記各軸部材と前記円筒部材が係合する、鉄道車両。
  • 請求項1〜9のいずれか1項に記載の台車と車体とを備えた鉄道車両であって、
    前記台車は、ボルスタ付き台車であり、前記第1枠体の前記側ばり及び前記第2枠体の前記側ばりのそれぞれに配置された側受けと、前記各側受けによってスライド可能に支持されたボルスタと、前記ボルスタに配置された左右に一対の空気ばねと、を備え、
    前記車体は、前記各空気ばねに結合され、前記ボルスタは、前記第1枠体及び前記第2枠体のそれぞれに対し、前後方向に沿いつつ両端にゴムブッシュを有する左右に一対のリンクを介して結合される、鉄道車両。
  • 請求項1〜9のいずれか1項に記載の台車と車体とを備えた鉄道車両であって、
    前記台車は、ボルスタ付き台車であり、前記第1枠体の前記側ばり及び前記第2枠体の前記側ばりのそれぞれに配置された側受けと、前記各側受けによってスライド可能に支持されたボルスタと、前記ボルスタに配置された左右に一対の空気ばねと、を備え、
    前記車体は、前記各空気ばねに結合され、
    前記ボルスタは、前記第1枠体及び前記第2枠体のそれぞれに対し、前記各枠体の上面に設置された左右に一対の下心皿と、前記ボルスタの下面から突出して前記下心皿に接する上心皿とによって支持される、鉄道車両。
  • 说明书全文

    本発明は、鉄道車両用台車に関し、特に、前後の輪軸の自己操が可能な台車、及びその台車と車体とを備えた鉄道車両に関する。

    鉄道車両は、車体と台車から構成され、レール上を走行する。 鉄道車両が曲線路を通過する際、車輪がレールを左右方向に押す、いわゆる横圧が発生する。 横圧が大きくなると脱線の危険性が高まるため、横圧を低く抑えることが望ましい。 また、車輪がレールを鉛直方向に押す力、いわゆる輪重について、軌道がねじれた区間、特に曲線路の出口緩和曲線の区間では、外軌側の車輪の輪重が小さくなる。 輪重が極端に小さくなると脱線の危険性が高まるため、軌道のねじれに追従して左右の輪重のバランスを保つことが望ましい。

    曲線路で横圧を低減する技術として、例えば、実開昭61−105268号公報(特許文献1)に開示されるように、曲線路のレールの曲率に応じて前後の輪軸を自己操舵することができる台車(以下、「操舵台車」ともいう)がある。 従来の操舵台車は、前後の輪軸それぞれの左右に備わる軸箱をクロスアンカーリンクでたすき掛けに結合した構成である。

    従来の操舵台車では、輪軸の操舵に伴い、輪軸が台車枠に対して傾くため、台車枠と車輪との間で相対的な前後方向の変位が生じる。 このため、各車輪に対して踏面ブレーキ装置を備える操舵台車の場合、各車輪と各踏面ブレーキ装置との前後方向の距離が常時変わらないようにする工夫が不可欠である。 その工夫として、踏面ブレーキ装置そのものの構成を変更する場合、その構成が複雑になり、製造コストが上昇する。 このため、汎用の踏面ブレーキ装置を利用することが望ましい。 同様に、輪軸を駆動させるための主電動機及び歯車装置(継手を含む)も汎用のものを利用することが望ましい。

    汎用の踏面ブレーキ装置を利用する場合の工夫として、例えば、前記特許文献1及び特開平8−11717号公報(特許文献2)は、輪軸の操舵に追従する踏面ブレーキ装置専用のリンク機構を付加した台車を開示する。 しかし、この操舵台車は、操舵機能をもたらす上記クロスアンカーリンクとは別に、格別なリンク機構が必要となる。

    一方、輪重の変動を抑制する技術として、例えば、特開昭56−135567号公報(特許文献3)及び特許第5524634号公報(特許文献4)は、台車枠を左右に分割した台車であって、左右の各側ばりが相対的に上下方向のみに移動又は回転を許容するように結合した台車を開示する。 この台車は操舵機能を持たない。 このため、特許文献3及び4に開示される台車は、曲線路での横圧を低減できない。

    実開昭61−105268号公報

    特開平8−11717号公報

    特開昭56−135567号公報

    特許第5524634号公報

    本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、下記の特性を有する自己操舵が可能な鉄道車両用台車及び鉄道車両を提供することである:
    ・汎用の踏面ブレーキ装置を利用でき、しかも、主電動機及び歯車装置(継手を含む)も汎用のものを利用できること;
    ・曲線路での横圧を低減できると同時に、輪重の変動を抑制できること。

    (I)本発明の実施形態による鉄道車両用台車は、前後に輪軸を備え、前記輪軸の自己操舵が可能な鉄道車両用台車である。
    前記台車は、
    右側の側ばり及びこの右側の側ばりと一体の第1横ばりを含む第1枠体と、
    左側の側ばり及びこの左側の側ばりと一体の第2横ばりを含む第2枠体と、
    前記各輪軸の左右の各軸箱をそれぞれ弾性的に支持する軸箱支持装置であって、前記軸箱から前後方向に沿って延び出すリンクを有する軸箱支持装置と、
    前記各輪軸の左右の各車輪にそれぞれ対応する踏面ブレーキ装置と、
    前記各輪軸をそれぞれ駆動させる主電動機及び歯車装置と、を備える。
    前記第1枠体と前記第2枠体は、弾性要素を介して結合される。
    前記第1横ばりは、前記第2枠体の前記側ばりの前端部に向けて延び出す第1延出部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1枠体の前記側ばりの前端部に向けて延び出す第2延出部を有する。
    右前側の前記軸箱支持装置は、右前側の前記軸箱を前記第1枠体の前記側ばりの前端部によって支持するとともに、その右前側の前記軸箱の前記リンクが前記第2枠体の前記第2延出部に結合される。
    左前側の前記軸箱支持装置は、左前側の前記軸箱を前記第2枠体の前記側ばりの前端部によって支持するとともに、その左前側の前記軸箱の前記リンクが前記第1枠体の前記第1延出部に結合される。
    右後側の前記軸箱支持装置は、右後側の前記軸箱を前記第1枠体の前記側ばりの後端部によって支持するとともに、その右後側の前記軸箱の前記リンクが前記第1枠体の前記側ばりに結合される。
    左後側の前記軸箱支持装置は、左後側の前記軸箱を前記第2枠体の前記側ばりの後端部によって支持するとともに、その左後側の前記軸箱の前記リンクが前記第2枠体の前記側ばりに結合される。
    前記第1横ばりは、左前側及び右後側の前記各踏面ブレーキ装置を保持するとともに、前後の前記各主電動機及び前記各歯車装置を保持し、
    前記第2横ばりは、右前側及び左後側の前記各踏面ブレーキ装置を保持する。

    上記の台車において、
    前記第1枠体と前記第2枠体を結合する前記弾性要素がゴム、特に積層ゴムであることが好ましい。

    また、上記の台車において、
    前記第1横ばりは、前記鉄道車両用台車の中央部まで延び出す第1突片部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1突片部に重なるように延び出す第2突片部を有し、
    前記第1枠体と前記第2枠体の前記弾性要素を介した結合箇所は、前記第1枠体の前記第1突片部と前記第2枠体の前記第2突片部との間の1点である構成とすることができる。

    また、上記の台車において、
    前記第1横ばりは、前記第2枠体の前記側ばりの上面に重なるように延び出す第1突片部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1枠体の前記側ばりの上面に重なるように延び出す第2突片部を有し、
    前記第1枠体と前記第2枠体の前記弾性要素を介した結合箇所は、前記第1枠体の前記第1突片部と前記第2枠体の前記側ばりとの間、及び前記第2枠体の前記第2突片部と前記第1枠体の前記側ばりとの間の2点である構成としてもよい。

    この台車の場合、
    前記第1突片部と前記第2突片部の前後方向の形成位置が左右で異なる構成であってもよいし、
    前記第1突片部と前記第2突片部の前後方向の形成位置が左右で一致する構成であってもよい。

    後者の台車では、前記第1突片部の形成位置が前記第1延出部の形成位置に近接し、前記第2突片部の形成位置が前記第2延出部の形成位置に近接する構成であることが好ましい。

    また、上記の台車において、
    前記第1横ばりは、前記第2横ばりの上面に重なるように延び出す第1突片部を有し、
    前記第2横ばりは、前記第1横ばりの上面に重なるように延び出す第2突片部を有し、
    前記第1枠体と前記第2枠体の前記弾性要素を介した結合箇所は、前記第1枠体の前記第1突片部と前記第2枠体の前記第2横ばりとの間、及び前記第2枠体の前記第2突片部と前記第1枠体の前記第1横ばりとの間の2点である構成とすることができる。

    (II)本発明の実施形態による鉄道車両は、上記の台車と車体とを備えた鉄道車両である。 前記台車は、ボルスタレス台車であっても、ボルスタ付き台車であってもよい。

    本発明の鉄道車両用台車及び鉄道車両は、自己操舵が可能であり、下記の顕著な効果を有する:
    ・汎用の踏面ブレーキ装置を利用でき、しかも、主電動機及び歯車装置(継手を含む)も汎用のものを利用できること;
    ・曲線路での横圧を低減できると同時に、輪重の変動を抑制できること。

    図1は、本発明の第1実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。

    図2は、図1に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。

    図3Aは、図1に示す鉄道車両用台車の右側面図である。

    図3Bは、図1に示す鉄道車両用台車の左側面図である。

    図4は、図2に示す鉄道車両用台車のA−A断面図である。

    図5は、図1に示す鉄道車両用台車を備えた鉄道車両の一例を模式的に示す上面図である。

    図6は、図5に示す鉄道車両の正面図である。

    図7Aは、図5に示す鉄道車両が左旋回の曲線路を走行する際の状況を模式的に示す上面図である。

    図7Bは、図5に示す鉄道車両が右旋回の曲線路を走行する際の状況を模式的に示す上面図である。

    図8は、本発明の第2実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。

    図9は、図8に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。

    図10Aは、図8に示す鉄道車両用台車の右側面図である。

    図10Bは、図8に示す鉄道車両用台車の左側面図である。

    図11は、本発明の第3実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。

    図12は、図11に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。

    図13は、本発明の第4実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。

    図14は、図13に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。

    図15Aは、図14に示す鉄道車両用台車のB−B断面図である。

    図15Bは、図14に示す鉄道車両用台車のC−C断面図である。

    図16は、本発明の第5実施形態による鉄道車両の一例を模式的に示す正面図である。

    図17は、本発明の第6実施形態による鉄道車両の一例を模式的に示す正面図である。

    図18は、本発明の第7実施形態による鉄道車両の一例を模式的に示す正面図である。

    図19は、実施例での解析結果を示す図である。

    以下に、本発明の鉄道車両用台車及び鉄道車両について、その実施形態を詳述する。

    [第1実施形態]
    図1は、本発明の第1実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。 図2は、図1に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。 図3Aは、図1に示す鉄道車両用台車の右側面図であり、図3Bは、その台車の左側面図である。 図4は、図2に示す鉄道車両用台車のA−A断面図である。

    図1及び図2に示すように、第1実施形態の台車は、台車枠として、互いに別個独立した第1枠体10と第2枠体20とを備える。 台車枠は、第1枠体10と第2枠体20を組み合わせてなる。 図1では、第1枠体10と第2枠体20の構成の理解を容易にするため、第1枠体10の構成要素は太い実線で示し、第2枠体20の構成要素は太い点線で示す。

    第1枠体10は、右側の側ばり11と第1横ばり12とを含む。 右側の側ばり11と第1横ばり12は、溶接によって強固に接合され一体化されている。 一方、第2枠体20は、左側の側ばり21と第2横ばり22とを含む。 左側の側ばり21と第2横ばり22は、溶接によって強固に接合され一体化されている。

    第1枠体10の第1横ばり12は、第2枠体20の側ばり21の前端部21aに向けて延び出す第1延出部13を備える(図1、図2及び図3B参照)。 第1延出部13は、第2枠体20の側ばり21の下に回り込み、その側ばり21の前端部21aの後方に配置される。 すなわち、右側の側ばり11と一体の第1横ばり12から延び出す第1延出部13は、その反対側の左側の側ばり21の位置まで達する。 一方、第2枠体20の第2横ばり22は、第1枠体10の側ばり11の前端部11aに向けて延び出す第2延出部23を備える(図1、図2及び図3A参照)。 第2延出部23は、第1枠体10の側ばり11の下に回り込み、その側ばり11の前端部11aの後方に配置される。 すなわち、左側の側ばり21と一体の第2横ばり22から延び出す第2延出部23は、その反対側の右側の側ばり11の位置まで達する。

    第1枠体10と第2枠体20は、弾性要素30を介して結合される。 具体的には、図1、図2及び図4に示すように、第1横ばり12は、鉄道車両用台車の中央部まで延び出す第1突片部14を有する。 一方、第2横ばり22は、その第1突片部14に重なるように延び出す第2突片部24を有する。 第1突片部14と第2突片部24の重なり部分の各々は平である。 この重なり部分では、第1突片部14と第2突片部24のどちらが上でも構わない。 図4は、第1突片部14が第2突片部24の上に重なる場合を示す。

    第1突片部14と第2突片部24の重なり部分は、両者の間に弾性要素30が配置され、この弾性要素30を介して結合される。 これにより、第1枠体10と第2枠体20は、第1枠体10の第1突片部14と第2枠体20の第2突片部24との間の1点で、弾性要素30を介して結合された状態になる。 弾性要素30は前後左右上下のあらゆる方向への弾性変形を許容する。 厳密には、弾性要素30の弾性は、上下方向には硬く、前後方向には操舵機能を得るために軟らかく、ローリング方向及びピッチング方向の回転に対しては、軌道の変化に追従できるようにある程度軟らかい。 弾性要素30としては、天然ゴムや合成ゴム等のようなゴムを単体で適用したり、薄いゴムシートと鋼板を交互に積層した積層ゴムを適用したりすることができる。 実用的には、積層ゴムが好ましい。

    このような第1枠体10及び第2枠体20を組み合わせて成る台車枠は、前後にそれぞれ輪軸31A、31Bを備える。 各輪軸31A、31Bは、それぞれ左右に車輪32A、32B、32C、32Dを備える。 また、各輪軸31A、31Bの左右の両端部には、それぞれ軸箱33A、33B、33C、33Dが取り付けられる。 各軸箱33A、33B、33C、33Dは、台車枠(第1枠体10及び第2枠体20)に対し、軸箱支持装置によって弾性的に支持される。

    各軸箱支持装置は、汎用品であり、図1、図3A及び図3Bに示すように、各軸箱33A、33B、33C、33Dから前後方向に沿って延び出すリンク34A、34B、34C、34Dを有する。 図3A及び図3Bに示す軸箱支持装置は、いわゆるモノリンク式の軸箱支持装置である。 モノリンク式とは、両端部にゴムブッシュを挿入した1本のリンクによって軸箱と台車枠を結合する形式である。

    右前側の軸箱支持装置は、特に図3Aに示すように、右前側の軸箱33Aを第1枠体10の側ばり11の前端部11aによって支持する。 その軸箱33Aとその側ばり11の前端部11aとの間には、コイルスプリング35が配置される。 コイルスプリング35に加え、又はコイルスプリング35に代えて、積層ゴムが配置されてもよい。 その軸箱支持装置のリンク34Aは、前後の両端部にゴムブッシュ36a、36bを有する。 リンク34Aの前端部がゴムブッシュ36aを介して軸箱33Aに連結され、リンク34Aの後端部がゴムブッシュ36bを介して第2枠体20の第2延出部23に連結される。

    一方、左前側の軸箱支持装置は、特に図3Bに示すように、左前側の軸箱33Bを第2枠体20の側ばり21の前端部21aによって支持する。 その側ばり21の前端部21aによる軸箱33Bの支持構造は、上記した右前側の軸箱支持装置の場合と同様である。 左前側の軸箱支持装置のリンク34Bは、前後の両端部にゴムブッシュ36a、36bを有する。 リンク34Bの前端部がゴムブッシュ36aを介して軸箱33Bに連結され、リンク34Bの後端部がゴムブッシュ36bを介して第1枠体10の第1延出部13に連結される。

    また、右後側の軸箱支持装置は、特に図3Aに示すように、右後側の軸箱33Cを第1枠体10の側ばり11の後端部11bによって支持する。 その側ばり11の後端部11bによる軸箱33Cの支持構造は、上記した右前側の軸箱支持装置の場合と同様である。 ここで、第1枠体10の側ばり11の下面には、第1突起部15が設けられている。 この第1突起部15は、その側ばり11の後端部11bの前方の位置から突出する。 右後側の軸箱支持装置のリンク34Cは、前後の両端部にゴムブッシュ36a、36bを有する。 リンク34Cの後端部がゴムブッシュ36aを介して軸箱33Cに連結され、リンク34Cの前端部がゴムブッシュ36bを介して第1枠体10の第1突起部15に連結される。

    一方、左後側の軸箱支持装置は、特に図3Bに示すように、左後側の軸箱33Dを第2枠体20の側ばり21の後端部21bによって支持する。 その側ばり21の後端部21bによる軸箱33Dの支持構造は、上記した右前側の軸箱支持装置の場合と同様である。 ここで、第2枠体20の側ばり21の下面には、第2突起部25が設けられている。 この第2突起部25は、その側ばり21の後端部21bの前方の位置から突出する。 左後側の軸箱支持装置のリンク34Dは、前後の両端部にゴムブッシュ36a、36bを有する。 リンク34Dの後端部がゴムブッシュ36aを介して軸箱33Dに連結され、リンク34Dの前端部がゴムブッシュ36bを介して第2枠体20の第2突起部25に連結される。

    図1に示すように、上記の台車枠(第1枠体10及び第2枠体20)は、各輪軸31A、31Bの左右の各車輪32A、32B、32C、32Dにそれぞれ対応する踏面ブレーキ装置40A、40B、40C、40Dを備える。 各踏面ブレーキ装置40A、40B、40C、40Dは、各車輪32A、32B、32C、32Dの踏面に対向するブレーキシューを有する。

    右前側の踏面ブレーキ装置40Aは、右前側の車輪32Aの直ぐ後方で、第2枠体20の第2横ばり22によって保持される。 左前側の踏面ブレーキ装置40Bは、左前側の車輪32Bの直ぐ後方で、第1枠体10の第1横ばり12によって保持される。 右後側の踏面ブレーキ装置40Cは、右後側の車輪32Cの直ぐ前方で、第1枠体10の第1横ばり12によって保持される。 左後側の踏面ブレーキ装置40Dは、左後側の車輪32Dの直ぐ前方で、第2枠体20の第2横ばり22によって保持される。

    実際には、図2に示すように、右前側及び左後側の各踏面ブレーキ装置40A、40Dは、それぞれ第2枠体20の第2横ばり22に形成されたブレーキ装置用座28a、28bに固定される。 左前側及び右後側の踏面ブレーキ装置40B、40Cは、それぞれ第1枠体10の第1横ばり12に形成されたブレーキ装置用座18a、18bに固定される。

    図1に示すように、上記の台車枠(第1枠体10及び第2枠体20)は、各輪軸31A、31Bをそれぞれ駆動させるために、主電動機41A、41B、歯車装置42A、42B及び継手43A、43Bを備える。 これらの主電動機41A、41B、歯車装置42A、42B及び継手43A、43Bは、いずれも汎用品である。 歯車装置42A、42Bは、輪軸31A、31Bの車軸に嵌め込まれた大歯車と、この大歯車に噛み合う小歯車を有する。 継手43A、43Bは、歯車形継手又はたわみ板形継手であり、主電動機41A、41Bの主軸と歯車装置42A、42Bの小歯車軸とを接続し、主電動機41A、41Bの主軸の回転トルクを歯車装置42A、42Bの小歯車軸に伝達する。 更に、継手43A、43Bは、主電動機41A、41Bの主軸と歯車装置42A、42Bの小歯車軸との間の相対変位を吸収する。

    前側の輪軸31Aには、左前側の車輪32Bに隣接して前側の歯車装置42Aが配置される。 第1枠体10の第1横ばり12には、左前側の踏面ブレーキ装置40Bに隣接して吊り具44Aが設けられる。 前側の歯車装置42Aは、その吊り具44Aによって吊り下げられ、揺動可能に保持される。 後側の輪軸31Bには、右後側の車輪32Cに隣接して後側の歯車装置42Bが配置される。 第1枠体10の第1横ばり12には、右後側の踏面ブレーキ装置40Cに隣接して吊り具44Bが設けられる。 後側の歯車装置42Bは、その吊り具44Bによって吊り下げられ、揺動可能に保持される。

    実際には、図2に示すように、前側の歯車装置42Aは、第1枠体10の第1横ばり12から前方に延び出す吊り具用座17aに吊り具44Aを介して取り付けられる。 後側の歯車装置42Bは、第1枠体10の第1横ばり12から後方に延び出す吊り具用座17bに吊り具44Bを介して取り付けられる。

    第1枠体10の第1横ばり12には、前側の吊り具44Aに隣接して主電動機41Aが保持され、後側の吊り具44Bに隣接して主電動機41Bが保持される。 実際には、図2に示すように、前側の主電動機41Aは、第1枠体10の第1横ばり12から前方に延び出す主電動機用座16aに取り付けられる。 後側の主電動機41Bは、第1枠体10の第1横ばり12から後方に延び出す主電動機用座16bに取り付けられる。

    図5は、図1に示す鉄道車両用台車を備えた鉄道車両の一例を模式的に示す上面図である。 図6は、図5に示す鉄道車両の正面図である。 図7A及び図7Bは、図5に示す鉄道車両が曲線路を走行する際の状況を模式的に示す上面図である。 これらの図のうち、図7Aは、左旋回の曲線路の場合を示し、図7Bは、右旋回の曲線路の場合を示す。

    図5〜図7Bに示す鉄道車両は、車両と台車との間にボルスタを有しないボルスタレス台車を用いた鉄道車両である。 この鉄道車両は、車体50の前後に上記の台車を1台ずつ備える。 図5〜図7Bでは、便宜上、後側の台車を省略するとともに、前記図1と同様に、第1枠体10の構成要素は太い実線で示し、第2枠体20の構成要素は太い点線で示す。 図6では、便宜上、輪軸も省略する。

    図5及び図6に示すように、台車枠を構成する第1枠体10の側ばり11及び第2枠体20の側ばり21の各上面に空気ばね51、51が設置される。 車体50は、それらの左右に一対の空気ばね51、51によって台車枠(第1枠体10の側ばり11及び第2枠体20の側ばり21)に結合される。

    ここで、図5及び図6に示すように、車体50と台車との間には、左右に一対のリンク52A、52Bが配置される。 各リンク52A、52Bは、前後方向に沿って延び、前後の両端部にゴムブッシュ53a、53b有する。 右側のリンク52Aは、その前端部がゴムブッシュ53aを介して第1枠体10の第1横ばり12に連結され、後端部がゴムブッシュ53bを介して車体50に連結される。 左側のリンク52Bは、その後端部がゴムブッシュ53aを介して第2枠体20の第2横ばり22に連結され、前端部がゴムブッシュ53bを介して車体50に連結される。

    各空気ばね51、51は、車体50の重量を負担する。 車体50と台車を結合する左右の各リンク52A、52Bのゴムブッシュ53a、53bは、上下左右の方向の変位を許容する。

    このような構成の鉄道車両が曲線路を走行する際の各構成要素の挙動は、下記のとおりである。 曲線路では、車体50と台車との間に相対的なヨーイング変位が発生する。 例えば、左旋回の曲線路では、図7Aに示すように、車体50は、台車に対し、すなわち車両の進行方向に対し、右向きにヨーイングする様相になる。 それとは逆に右旋回の曲線路では、図7Bに示すように、車体50は、台車に対し、左向きにヨーイングする様相になる。

    先ず、図7Aを参照し、左旋回の曲線路の場合について説明する。 上記のとおり、車体50は、右側のリンク52Aを介して第1枠体10(第1横ばり12)に結合され、左側のリンク52Bを介して第2枠体20(第2横ばり22)に結合されている。 このため、車体50が右向きにヨーイングすることにより、第1枠体10には右側のリンク52Aを通じて後方に向く力が作用し、第2枠体20には左側のリンク52Bを通じて前方に向く力が作用する。 すなわち、第1枠体10と第2枠体20には、前後方向で互いに逆向きの力が作用する。

    その際、上記のとおり、第1枠体10と第2枠体20は、弾性要素30を介して結合されている。 このため、第1枠体10と第2枠体20に個々に上記の力が作用することにより、弾性要素30が弾性変形し、その結果として、第1枠体10は後方に移動し、第2枠体20は前方に移動する。 要するに、第1枠体10と第2枠体20の相対的な前後運動が生じる。

    これにより、第1枠体10の側ばり11の前後端部11a、11bにそれぞれ弾性的に支持された軸箱33A、33Cは、以下の挙動を取る。 右前側の軸箱33Aは、第1枠体10に支持されるとともに、第1枠体10とは異なる第2枠体20の第2延出部23にリンク34Aを介して結合されている。 このため、右前側の軸箱33Aは、そのリンク34Aを通じ、第1枠体10の移動方向とは逆方向の前方に向く力を受け、前方に移動する。 一方、右後側の軸箱33Cは、第1枠体10に支持されるとともに、同じ第1枠体10の第1突起部15にリンク34Cを介して結合されている。 このため、右後側の軸箱33Cは、第1枠体10と一緒に後方に移動する。

    これに対し、第2枠体20の側ばり21の前後端部21a、21bにそれぞれ弾性的に支持された軸箱33B、33Dは、以下の挙動を取る。 左前側の軸箱33Bは、第2枠体20に支持されるとともに、第2枠体20とは異なる第1枠体10の第1延出部13にリンク34Bを介して結合されている。 このため、左前側の軸箱33Bは、そのリンク34Bを通じ、第2枠体20の移動方向とは逆方向の後方に向く力を受け、後方に移動する。 一方、左後側の軸箱33Dは、第2枠体20に支持されるとともに、同じ第2枠体20の第2突起部25にリンク34Dを介して結合されている。 このため、左後側の軸箱33Dは、第2枠体20と一緒に前方に移動する。

    そうすると、右前側の軸箱33Aの前方への移動、及び左前側の軸箱33Bの後方への移動により、前側の輪軸31Aは、右側が前方に左側が後方に変位し、その軸が左旋回の曲線路の曲率中心に向くように自己操舵される。 一方、右後側の軸箱33Cの後方への移動、及び左後側の軸箱33Dの前方への移動により、後側の輪軸31Bは、右側が後方に左側が前方に変位し、その軸が左旋回の曲線路の曲率中心に向くように自己操舵される。 このように、左旋回の曲線路に従って車体50と台車との間に相対的なヨーイング変位が発生することにより、第1枠体10と第2枠体20の相対的な前後運動が生じ、これに連動して前後の輪軸31A、31Bが自己操舵される。

    このとき、前側の踏面ブレーキ装置40A、40Bのうち、右前側の踏面ブレーキ装置40Aは、第2枠体20の第2横ばり22に保持されているので、第2枠体20と一緒に前方に移動する。 左前側の踏面ブレーキ装置40Bは、第1枠体10の第1横ばり12に保持されているので、第1枠体10と一緒に後方に移動する。 これに対し、上記のとおりに前側の輪軸31Aが変位することに伴い、右前側の車輪32Aは前方に移動し、左前側の車輪32Bは後方に移動する。 ここで、右前側の踏面ブレーキ装置40Aと車輪32Aの前方への移動量はほぼ同じである。 左前側の踏面ブレーキ装置40Bと車輪32Bの後方への移動量はほぼ同じである。 これらのことから、前側の各車輪32A、32Bと各踏面ブレーキ装置40A、40Bとの前後方向の距離は、操舵にかかわらず一定になる。

    一方、後側の踏面ブレーキ装置40C、40Dのうち、右後側の踏面ブレーキ装置40Cは、第1枠体10の第1横ばり12に保持されているので、第1枠体10と一緒に後方に移動する。 左後側の踏面ブレーキ装置40Dは、第2枠体20の第2横ばり22に保持されているので、第2枠体20と一緒に前方に移動する。 これに対し、上記のとおりに後側の輪軸31Bが変位することに伴い、右後側の車輪32Cは後方に移動し、左後側の車輪32Dは前方に移動する。 ここで、右後側の踏面ブレーキ装置40Cと車輪32Cの後方への移動量はほぼ同じである。 左後側の踏面ブレーキ装置40Dと車輪32Dの前方への移動量はほぼ同じである。 これらのことから、後側の各車輪32C、32Dと各踏面ブレーキ装置40C、40Dとの前後方向の距離は、操舵にかかわらず一定になる。

    したがって、踏面ブレーキ装置40A、40B、40C、40Dとして、汎用品を用いても、各車輪32A、32B、32C、32Dと各踏面ブレーキ装置40A、40B、40C、40Dとの前後方向の距離は、操舵にかかわらず一定になることから、十分にブレーキ性能を常時維持することができる。

    また、前後の主電動機41A、41Bは、第1枠体10の第1横ばり12に保持されているので、第1枠体10と一緒に後方に移動する。 これに対し、前側の歯車装置42Aは、左前側の車輪32Bに隣接した位置で前側の輪軸31Aに取り付けられている。 後側の歯車装置42Bは、右後側の車輪32Cに隣接した位置で後側の輪軸31Bに取り付けられている。 このため、上記のとおりに前後の各輪軸31A、31Bが変位することに伴い、前後の各歯車装置42A、42Bは後方に移動する。 ここで、前後の各主電動機41A、41Bと前後の各歯車装置42A、42Bの後方への移動量は多少異なるが、それらを接続する前後の各継手(歯車形継手又はたわみ板形継手)43A、43Bがその移動量の差を許容する。 したがって、主電動機41A、41B、歯車装置42A、42B及び継手43A、43Bとして、汎用品を用いても、各歯車装置42A、42Bと各継手43A、43Bとの前後方向の距離は、操舵にかかわらず一定になることから、各輪軸31A、31Bの円滑な駆動を常時維持することができる。

    次に、図7Bを参照し、右旋回の曲線路の場合について説明する。 右旋回の曲線路では、車体50は、台車に対し、上記した左旋回の曲線路の場合とは逆に、左向きにヨーイングする様相になる。 車体50が左向きにヨーイングすることにより、上記した左旋回の曲線路の場合とは逆に、第1枠体10には右側のリンク52Aにより前方に向く力が作用し、第2枠体20には左側のリンク52Bにより後方に向く力が作用する。 このため、第1枠体10と第2枠体20に生じる相対的な前後運動は、上記した左旋回の曲線路の場合とは逆になる。 これにより、各構成要素の挙動は、上記した左旋回の曲線路の場合とは左右で逆になるだけである。

    以上のとおり、本実施形態によれば、鉄道車両が曲線路を走行する際、曲線路に従って車体50と台車との間に相対的なヨーイング変位が発生することにより、第1枠体10と第2枠体20の相対的な前後運動が生じ、これに連動して前後の輪軸31A、31Bの自己操舵が可能になる。 このため、線路での横圧を低減できる。

    また、第1枠体10及び第2枠体20に対し、各軸箱33A、33B、33C、33Dが軸箱支持装置によって弾性的に支持され、これと併せて第1枠体10と第2枠体20が弾性要素30を介して結合されているので、軌道のねじれに伴って発生する前側の輪軸31Aと後側の輪軸31Bの相対的なローリング変位を許容することが可能になる。 このため、輪重の変動を抑制できる。

    また、汎用の踏面ブレーキ装置を利用でき、しかも、主電動機及び歯車装置(継手を含む)も汎用のものを利用できる。

    [第2実施形態]
    図8は、本発明の第2実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。 図9は、図8に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。 図10Aは、図8に示す鉄道車両用台車の右側面図であり、図10Bは、その台車の左側面図である。 第2実施形態は、上記の第1実施形態の構成を基本としたものであり、第1実施形態と重複する説明は適宜省略する。 後述する第3〜第7実施形態でも同様とする。 図8では、前記図1と同様に、第1枠体10の構成要素は太い実線で示し、第2枠体20の構成要素は太い点線で示す。

    第2実施形態では、図8、図9及び図10Bに示すように、第1横ばり12から延び出す第1突片部14は、第2枠体20の側ばり21の上面に重なる。 その重なり部分の位置は、第2枠体20の側ばり21の上面であれば、特に限定しない。 ただし、設計の容易性から、第1突片部14は、同じ第1横ばり12から延び出す第1延出部13の形成位置に近接するのが好ましい。

    一方、図8、図9及び図10Aに示すように、第2横ばり22から延び出す第2突片部24は、第1枠体10の側ばり11の上面に重なる。 その重なり部分の位置は、第1枠体10の側ばり11の上面であれば、特に限定しない。 ただし、設計の容易性から、第2突片部24は、同じ第2横ばり22から延び出す第2延出部23の形成位置に近接するのが好ましい。

    第2実施形態は、第1突片部14と第2突片部24の前後方向の形成位置が左右で異なる態様である(図8及び図9参照)。

    第1枠体10の第1突片部14と第2枠体20の側ばり21の重なり部分は、両者の間に弾性要素30が配置され、この弾性要素30を介して結合される(特に図10B参照)。 同様に、第2枠体20の第2突片部24と第1枠体10の側ばり11の重なり部分は、両者の間に弾性要素30が配置され、この弾性要素30を介して結合される(特に図10A参照)。 これにより、第1枠体10と第2枠体20は、第1枠体10の第1突片部14と第2枠体20の側ばり21との間、及び第2枠体20の第2突片部24と第1枠体10の側ばり11との間の2点で、弾性要素30を介して結合された状態になる。 弾性要素30は、上記の第1実施形態と同様に、前後左右上下のあらゆる方向への弾性変形を許容する。

    第2実施形態でも、上記の第1実施形態と同様に、第1枠体10と第2枠体20が弾性要素30を介して結合されていることに変わりはなく、それ以外の構成は上記の第1実施形態と同じである。 したがって、第2実施形態でも、上記の第1実施形態と同様の効果を奏する。

    [第3実施形態]
    図11は、本発明の第3実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。 図12は、図11に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。 第3実施形態は、上記の第2実施形態の構成を変形したものである。 図11では、前記図1と同様に、第1枠体10の構成要素は太い実線で示し、第2枠体20の構成要素は太い点線で示す。

    第3実施形態は、第1突片部14と第2突片部24の前後方向の形成位置が左右で一致する態様である。 第1突片部14と第2突片部24の前後方向の形成位置は、左右で一致する限り、特に限定しない。 ただし、設計の容易性から、第2突片部24は、同じ第2横ばり22から延び出す第2延出部23の形成位置に近接するのが好ましい。 第1突片部14は、同じ第1横ばり12から延び出す第1延出部13の形成位置に近接するのが好ましい。

    第3実施形態でも、上記の第1、第2実施形態と同様に、第1枠体10と第2枠体20が弾性要素30を介して結合されていることに変わりはなく、それ以外の構成は上記の第1及び第2実施形態と同じである。 したがって、第3実施形態でも、上記の第1実施形態と同様の効果を奏する。

    [第4実施形態]
    図13は、本発明の第4実施形態による鉄道車両用台車の一例を模式的に示す上面図である。 図14は、図13に示す鉄道車両用台車に用いられる台車枠の具体例を示す上面図である。 図15Aは、図14に示す鉄道車両用台車のB−B断面図であり、図15Bは、その台車のC−C断面図である。 図13では、前記図1と同様に、第1枠体10の構成要素は太い実線で示し、第2枠体20の構成要素は太い点線で示す。

    第4実施形態では、図13、図14及び図15Bに示すように、第1横ばり12から延び出す第1突片部14は、第2横ばり22の上面に重なる。 その重なり部分の位置は、第2横ばり22の上面であれば、特に限定しない。 一方、図13、図14及び図15Aに示すように、第2横ばり22から延び出す第2突片部24は、第1横ばり12の上面に重なる。 その重なり部分の位置は、第1横ばり12の上面であれば、特に限定しない。

    第1枠体10の第1突片部14と第2枠体20の第2横ばり22の重なり部分は、両者の間に弾性要素30が配置され、この弾性要素30を介して結合される(特に図15B参照)。 同様に第2枠体20の第2突片部24と第1枠体10の第1横ばり12の重なり部分は、両者の間に弾性要素30が配置され、この弾性要素30を介して結合される(特に図15A参照)。 これにより、第1枠体10と第2枠体20は、第1枠体10の第1突片部14と第2枠体20の第2横ばり22との間、及び第2枠体20の第2突片部24と第1枠体10の第1横ばり12との間の2点で、弾性要素30を介して結合された状態になる。 弾性要素30は、上記の第1実施形態と同様に、前後左右上下のあらゆる方向への弾性変形を許容する。

    第4実施形態でも、上記の第1〜第3実施形態と同様に、第1枠体10と第2枠体20が弾性要素30を介して結合されていることに変わりはなく、それ以外の構成は上記の第1〜第3実施形態と同じである。 したがって、第4実施形態でも、上記の第1実施形態と同様の効果を奏する。

    [第5実施形態]
    図16は、本発明の第5実施形態による鉄道車両の一例を模式的に示す正面図である。 第5実施形態は、上記の第1〜第4実施形態における車体50と台車とを支持する構成のうち、左右のリンク52A、52Bに代わる構成を付加したものである。

    図16に示すように、車体50の下面からは、左右に一対の軸部材54A、54Bが突出する。 第1枠体10の第1横ばり12の上面には、右側の軸部材54Aの位置に対応して円筒部材55Aが設置されている。 一方、第2枠体20の第2横ばり22の上面には、左側の軸部材54Bの位置に対応して円筒部材55Bが設置されている。 左右の各軸部材54A、54Bは、それぞれ各円筒部材55A、55Bに挿入される。 これにより、各軸部材54A、54Bと各円筒部材55A、55Bは、それぞれ係合し、軸回転を許容する。 それ以外の構成は上記の第1〜第4実施形態と同じである。

    第5実施形態の場合、鉄道車両が曲線路を走行する際、車体50と台車との間に発生した相対的なヨーイング変位は、互いに係合する車体50の各軸部材54A、54Bと各枠体10、20の円筒部材55A、55Bにより、第1枠体10と第2枠体20に伝達される。 その結果、上記の第1〜第4実施形態と同様に、第1枠体10と第2枠体20の相対的な前後運動を生じることができる。

    したがって、第5実施形態でも、上記の第1実施形態と同様の効果を奏する。

    [第6実施形態]
    図17は、本発明の第6実施形態による鉄道車両の一例を模式的に示す正面図である。 第6実施形態は、上記の第1〜第4実施形態における台車として、ボルスタを有するボルスタ付き台車を適用したものである。

    図17に示すように、鉄道車両は、車体50と台車との間に、左右に一対の側受け57、57と、ボルスタ56を備える。 側受け57、57は、第1枠体10の側ばり11及び第2枠体20の側ばり21のそれぞれに配置される。 ボルスタ56は、各側受け57、57によってスライド可能に支持される。 このボルスタ56の上面に左右に一対の空気ばね51、51が配置される。 車体50は、それらの空気ばね51、51によってボルスタ56に結合される。

    第6実施形態では、ボルスタ56と台車との間に、上記の第1〜第4実施形態における左右に一対のリンク52A、52Bが配置される。 前後方向に沿う右側のリンク52Aは、その前端部がゴムブッシュ53aを介して第1枠体10(右側の側ばり又は第1横ばり)に連結され、後端部がゴムブッシュ53bを介してボルスタ56に連結される。 前後方向に沿う左側のリンク52Bは、その後端部がゴムブッシュ53aを介して第2枠体20(左側の側ばり又は第2横ばり)に連結され、前端部がゴムブッシュ53bを介してボルスタ56に連結される。

    第6実施形態の場合、車体50とボルスタ56が一体であるから、鉄道車両が曲線路を走行する際、車体50に一体化されたボルスタ56と、台車と、の間に相対的なヨーイング変位が発生する。 このヨーイング変位は、ボルスタ56と台車を結合する左右の各リンク52A、52Bにより、第1枠体10と第2枠体20に伝達される。 その結果、上記の第1〜第4実施形態と同様に、第1枠体10と第2枠体20の相対的な前後運動を生じることができる。

    したがって、第6実施形態でも、上記の第1実施形態と同様の効果を奏する。

    [第7実施形態]
    図18は、本発明の第7実施形態による鉄道車両の一例を模式的に示す正面図である。 第5実施形態は、上記の第6実施形態におけるボルスタ56と台車とを支持する構成のうち、左右のリンク52A、52Bに代わる構成を付加したものである。

    図18に示すように、ボルスタ56の下面からは、左右に一対の上心皿58A、58Bが突出する。 第1枠体10(右側の側ばり又は第1横ばり)の上面には、右側の上心皿58Aの位置に対応して下心皿59Aが設置されている。 一方、第2枠体20(左側の側ばり又は第2横ばり)の上面には、左側の上心皿58Bの位置に対応して下心皿59Bが設置されている。 左右の各上心皿58A、58Bは、それぞれ各下心皿59A、59Bに接し、各上心皿58A、58Bと各下心皿59A、59Bは、それぞれ係合して軸回転を許容する。 ボルスタ56は、第1枠体10及び第2枠体20のそれぞれに対し、各側受け57、57による支持に加え、各上心皿58A、58Bと各下心皿59A、59Bによって支持される。 それ以外の構成は上記の第6実施形態と同じである。

    第6実施形態の場合、鉄道車両が曲線路を走行する際、ボルスタ56(車体50)と台車との間に発生した相対的なヨーイング変位は、互いに係合するボルスタ56の各上心皿58A、58Bと各枠体10、20の下心皿59A、59Bにより、第1枠体10と第2枠体20に伝達される。 その結果、上記の第6実施形態と同様に、第1枠体10と第2枠体20の相対的な前後運動を生じることができる。

    したがって、第7実施形態でも、上記の第1実施形態と同様の効果を奏する。

    その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。 例えば、上記の実施形態では、軸箱支持装置としてモノリンク式の軸箱支持装置を採用しているが、いわゆる軸はり式の軸箱支持装置、又は支持板(片板ばね)式の軸箱支持装置を採用することもできる。 軸はり式とは、軸箱と一体となって前後方向に延びる腕の先端部にゴムブッシュを挿入し、この腕を台車枠に結合する形式である。 軸はり式を採用する場合、軸箱から延びる腕が上記の実施形態でいう軸箱支持装置のリンクに相当する。 片板ばね式とは、前後方向に延びる平行な2枚の板ばねによって軸箱と台車枠を結合する形式である。 片板ばね式を採用する場合、軸箱から延びる板ばねが上記の実施形態でいう軸箱支持装置のリンクに相当する。

    本発明による効果を確認するため、数値シミュレーション解析を実施した。 具体的には、前記図1に示す台車のモデルを作製し、このモデルを用いて直線路及び曲線路を走行する状況を幾何学的な数値解析により模擬した。 モデルの主要な諸寸法は下記のとおりである。
    ・前後の輪軸間の距離:2100[mm]
    ・左右の軸ばね(軸箱)中心間の間隔:1600[mm]
    ・左右の踏面ブレーキ装置の間隔:1145[mm]
    ・台車中心から歯車装置吊り具までの枕木方向の距離:386[mm]

    数値解析では、曲線路の曲率半径を∞(直線路)及びR800〜R80[m](曲率:0〜0.0125[1/m])の範囲で変化させた。 操舵量の条件は、曲線路内で前後の輪軸の進む方向が軌道の進む方向と一致する条件、すなわちアタックが0°の条件で一律とした。

    変化させた曲線路の曲率半径ごとに、前後左右の各踏面ブレーキ装置と各車輪との間の長さ、前後の各歯車装置と各継手との間の長さ、及び第1枠体と第2枠体との間の長さを抽出した。 いずれの長さも前後方向とし、初期長さ(直線路走行を想定した曲率0のときの長さ)に対する相対変位で評価した。

    図19は、実施例での解析結果を示す図である。 図19中、曲率の「−(マイナス)」は曲線路が左旋回であることを示し、曲率の「+(プラス)」は曲線路が右旋回であることを示す。

    図19に示すように、いずれの曲率でも、各踏面ブレーキ装置と各車輪との間の相対変位、及び各歯車装置と各継手との間の相対変位は常にゼロであった。 この結果から、主電動機、歯車装置及び継手として汎用品を使用しても全く問題が生じないといえる。

    また、曲率が最大の0.125[1/m](曲線半径:R80[m])のとき、第1枠体と第2枠体との間の相対変位が最大の21[mm]となった。 この相対変位は、第1枠体と第2枠体を結合する弾性要素の弾性変形で許容できる。

    本発明は、あらゆる鉄道車両に利用することができ、特に、曲率半径の小さい曲線路を走行する地下鉄等の鉄道車両に有効に利用できる。

    10:第1枠体、 11:右側の側ばり、
    11a:前端部、 11b:後端部、
    12:第1横ばり、 13:第1延出部、
    14:第1突片部、 15:第1突起部、
    16a、16b:主電動機用座、 17a、17b:吊り具用座、
    18a、18b:ブレーキ装置用座、
    20:第2枠体、 21:左側の側ばり、
    21a:前端部、 21b:後端部、
    22:第2横ばり、 23:第2延出部、
    24:第2突片部、 25:第2突起部、
    28a、28b:ブレーキ装置用座、
    30:弾性要素、 31A、31B:輪軸、
    32A、32B、32C、32D:車輪、
    33A、33B、33C、33D:軸箱、
    34A、34B、34C、34D:軸箱のリンク、
    35:コイルスプリング、
    36a、36b:軸箱支持装置のゴムブッシュ、
    40A、40B、40C、40D:踏面ブレーキ装置、
    41A、41B:主電動機、 42A、42B:歯車装置、
    43A、43B:継手、 44A、44B:吊り具、
    50:車体、 51:空気ばね、
    52A、52B:リンク、 53a、53b:ゴムブッシュ、
    54A、54B:軸部材、 55A、55B:円筒部材、
    56:ボルスタ、 57:側受け、
    58A、58B:上心皿、 59A、59B:下心皿

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