【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は人員輸送装置に関する。 【0002】 【従来の技術】距離にして、5〜10km、長くて20kmの中短距離用の人員輸送装置としては、新交通システムや都市モノレールが知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】市民の住居地と幹線交通網とのつなぎ、幹線交通網間のつなぎ、団地内交通網、地方空港と地方都心のつなぎ等の人員輸送装置としての需要が大であるにかかわらず、上記新交通システムやモノレールの普及が以外に遅れている。 その理由の第1は、従来の新交通システムにしろ、モノレールにしろ、建設費が極めて高いこと、第2は、その構造・性能が余りに複雑で高性能に過ぎるためであると考えられる。 【0004】本発明の目的は、中短距離用として、軽便、かつ、構造が簡易で、建設費も安く、性能も適切な人員輸送装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明に係る人員輸送装置は、車両加速ゾーンと車両自走ゾーンとを、 軌道が有し、上記車両加速ゾーンは、定置式の動力源を有する引揚装置にて引揚げた車両を急傾斜下り勾配にて加速するように構成し、かつ、車両自走ゾーンでは主として無駆動にて自走するように略水平状に軌道が配設されている。 【0006】また、車両に小型駆動モータを搭載し、軌道に沿って設けた被接触面部に、上記小型駆動モータにて回転駆動される駆動輪を、所定走行速度以下で押圧して、上記車両自走ゾーンの一部を例外的に駆動走行するように構成されている。 【0007】また、定置式の動力源を有する引揚装置にて引揚げられる引揚ゾーンと、急傾斜下り勾配を有する急傾斜ゾーンと、から成る車両加速ゾーンの水平距離L 1と、駅と駅との間隔L 0との比率を、2%〜10%に設定し、上記車両加速ゾーンにおける軌道を本格支持脚にて支持し、それ以外の軌道は簡易支持脚にて支持乃至支持脚無しで地面に敷設した。 【0008】また、軌道の一部にのみ給電加速ゾーンを設け、残部を給電設備のない車両自走ゾーンとして、車両を給電加速ゾーンにて加速して、車両自走ゾーンにて無駆動で自走させるように構成した。 【0009】また、車両加速ゾーンにおいて軌道を山型状に形成して、別の軌道又は自動車用道路を該山型状加速ゾーンの下方を、交叉状に通るように敷設した。 また、車両加速ゾーンにおいて軌道を山型状に形成して、 一の山型状加速ゾーンの頂部と、その隣りの山型状加速ゾーンの頂部との間の一区域内に、最大限、一車両乃至一連結車両のみが存在するように制御して、衝突を防止するように構成した。 また、軌道が平行な2本の円管状軌条を備え、かつ、車両に於て、該軌条を、上方・側方・下方から接触して転動する上輪・横輪・下輪を、設けた。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。 【0011】第5図に於て、1は軌道であり、2…は駅(プラットホーム)を示す。 この軌道1は、車両加速ゾーンAと、車両自走ゾーンSとを、有している。 車両加速ゾーンAにおいては、図5から分かるように、軌道1 を山型状に形成し、この車両加速ゾーンAは、定置式の動力源(例えば減速機付きモータ)を有する引揚装置にて引揚げられる引揚ゾーンA 1と、急傾斜下り勾配を有する急傾斜ゾーンA 2と、から成る。 【0012】この車両加速ゾーンAの水平距離L 1と、 駅2と駅2との間隔L 0との比率(百分率)を、2%〜 10%に設定する。 車両加速ゾーンAにおける軌道1は、 十分に背の高い本格支持脚3…にて支持するが、車両加速ゾーンA以外の軌道1は、地面Gに十分に接近乃至当接して、簡易支持脚にて支持乃至(支持脚無しで)地面Sに敷設する。 引揚ゾーンA 1に設けられる前記引揚装置(図示省略)としては、チェーンと減速機付きモータ、あるいは、ロープと巻取装置と減速機付きモータと昇降台等、又は、リニアモータ等から構成される。 【0013】図5中に2点鎖線4は比較例を示し、仮にこのように、緩い勾配で長い距離にわたって軌道を配設した場合、高さの大なる本格支持脚3…を多数必要となり、建設費が莫大な額となり、かつ、構造が複雑となり、建設工事も難しくなる。 【0014】これに対し、図5の実線の如く形成した本発明の軌道1では、2%〜10%の割合の軌道1にのみ、 本格支持脚3…を必要とするので、建設工事の著しい容易化と、建設費の低減を図り得ることが分かる。 【0015】なお、2%≦(L 1 /L 0 )× 100≦10% とした理由は、下限値未満とすると、車両加速ゾーンA の山型が急峻となり過ぎて、危険性が増し、乗客に不安を与え、又は、加速を十分に得られないという問題があり、逆に、上限値を越すと、不必要に本格支持脚3…を多く要し、建設工事が困難化して、建設費も増加する。 【0016】駅2の位置から直ちに引揚ゾーンA 1に車両は引揚げられ、急傾斜ゾーン(急傾斜下り勾配)A 2 にて車両は加速されつつ、図5の右方向へ走行し、長い自走ーゾーンSでは、主として無駆動にて自走するように略水平状の軌道1を走行して、次の(隣りの)駅2に到着する。 【0017】次に、図6は、図5の全体を簡略化して図示し、かつ、山型状の軌道から成る車両加速ゾーンAに於て、別の軌道5…、又は、自動車用道路6…を、この山型状加速ゾーンAの下方を、(平面視)交叉状に通るように、敷設している場合を示す。 即ち、巧妙に、山型状の加速ゾーンAの下方空間を活用できることを、示す。 【0018】そして、図5又は図6に於て、一の山型状加速ゾーンAの頂部8と、その隣りの山型状加速ゾーンAの頂部8との間の一区域内に、最大限、一車両乃至一連結車両のみが存在するように(図示省略の制御手段にて)制御することで、衝突を防止する。 【0019】図1〜図4に於て、車両10の一例を示す。 11はボディ(車体)であり、通常は複数台の車両10…を連結した連結車両として軌道1に沿って走行する。 軌道1は、主桁12と、その上方の左右に配設された丸パイプ状の2本の軌条13, 13と、主桁12とこの2本の軌条13, 13を連結するように所定ピッチに配設された連結部材14 …とを、有している。 【0020】車両10は、各軌条13を、上方・側方・下方から接触して転動する上輪15・横輪16・下輪17を、有している。 上輪15は車両重量を支持する主車輪であり、横輪16は側方ガイド車輪であり、下輪17は浮き上がり防止車輪であるといえる。 【0021】図3に示すように、車両10は鉛直状にブレーキ板18を有し、他方、軌道1側には、このブレーキ板 18を左右から挾圧可能としてブレーキパットを有する地上設置ブレーキ装置19が設けられている。 【0022】そして、図3と図7と図8に示すように、 軌道1に於て、帯板を水平として長手方向に設けて(駆動輪接触用の)被接触面部20を形成し、車両10には小型駆動モータ21を搭載し、駆動輪22をこの小型駆動モータ 21にて回転駆動可能とすると共に、この駆動輪22は被接触面部20に対して接触分離自在である。 【0023】図例では、ボディ11の下部に枢支軸23廻りに揺動可能にアーム24を枢着し、このアーム24に、小型駆動モータ21及び駆動輪22を、付設し、上記アーム24 を、エアシリンダや油圧シリンダ等のアクチュエータ25 にて、揺動させて、下方の被接触面部20へ押圧状に接触させて、車両10を駆動走行させることができる。 【0024】26は速度検出装置であって、パルス信号検出器やエンコーダ等にて、車両10の走行速度を検出し、 その走行速度が所定値以下となるとバルブ27を切換えて、上昇(分離)位置にあった駆動輪22を降下させて、 被接触面部20に押圧させて、駆動モータ21の回転トルクにて、車両10を走行させる。 逆に、上記所定値を越えれば、バルブ27を逆に切換えて、駆動輪22を上昇させて、 被接触面部20から分離させる。 【0025】このようにして、図5で述べた車両自走ゾーンSに於て、車両10の走行速度が所定値以下になれば、自動的にアクチュエータ25が伸長して、揺動アーム 24が下方へ揺動して、駆動輪22が、軌道1側(固定側) の被接触面部20に押圧されて、例外的に駆動走行する─ ──例えば、図5に於て符号Bの範囲の例外ゾーンを駆動走行する。 【0026】車両10が、車両加速ゾーンAにて加速されて、自走する距離と速度は、気候条件・乗客数等により一定せず、あるいは、ゆるやかな登り坂の存在する場合もあり、そのような際に、図7,図8に示したような車両10側の小型駆動手段28は、有効である。 【0027】なお、この小型駆動手段28は、駅2からの出発時や、勾配登板時に、補助動力として使用するも、 好ましい。 また、(図示省略したが、)駆動モータ21をブレーキ付きとすることにより、又は、別途、駆動輪22 にブレーキを付設して、駅2での乗降場等の制動手段とするも、可能である。 【0028】ところで、図3に於て、29は給電設備を示し、軌道1に沿って配設され、車両10側の集電子が接触して、電気が供給される。 【0029】図9は別の実施の形態を示す。 この図9に於て、Dは、軌道1の一部にのみ───例えば駅2の近傍にのみ───給電加速ゾーンを設けて、地上側の上記給電設備29はこの給電加速ゾーンDにのみ配設する。 そして、軌道1の残部は、給電設備29の無い車両自走ゾーンSとする。 このようにすれば、地上(軌道1)側の給電設備29を、短距離だけ敷設するだけで済み、建設の容易化と建設費の低減を図り得る利点がある。 【0030】なお、図9を流用してさらに別の実施例について言及する。 Dのゾーンにのみリニアモータを敷設して、リニアモータ加速ゾーンDとし、残部を、車両自走ゾーンSとする。 このようにして、建設費の低減と工事の容易化を図ることも、望ましい。 【0031】また、(図示省略するが、)人員輸送装置に於て、軌道1に沿って所定位置で次々と区画して、一の区画に車両10が存在することを検出器にて検知すると、隣りの区画内、及び、必要ならばさらにその隣りから何番目までの区画内の電気供給をカットして、他の車両10の走行を停止させて、衝突を確実に防止するようにする電源カット方式の安全制御手段を、設けるも、好ましいことである。 なお、この場合は、軌道1全体に沿って、給電設備を設け、区画毎に、独立してのON−OF F制御を行う。 【0032】図1と図2にもどって追加説明すると、本発明に係る人員輸送装置は、既設道路への配設も容易であることを示している。 即ち、図1のように、既設の車道30と車道30の中央分離帯31や路側帯の上に、円管状軌道1を支持脚32にて、支持させた構造であり、このようにすれば、既設道路の有効活用を図り、その道路の交通混雑を緩和し、用地も特に少なくて済み、建設費も低減できる。 【0033】本発明に係る人員輸送装置は、上述のような構成であって、安全かつ快適に人を運び、環境にもやさしく、省エネにも役立ち、建設費も低く、中短距離用の輸送に、好適であるといえる。 また、図1〜図3のように、円管状軌条13を上輪15,横輪16,下輪17にて抱込むようにしたことにより、脱線の虞もなく、安全性に優れている。 また、これ等の上輪15,横輪16, 下輪17を、 ゴム等の弾性材質の車輪とすれば、長い距離の車両自走ゾーンSと共に、走行騒音もほとんど無く、公害防止にも役立つ。 なお、引揚ゾーンA 1にリニアモータを用いたりすることも可能である。 【0034】 【発明の効果】本発明は上述の構成により、次のような著大な効果を奏する。 【0035】(請求項1によれば、)中短距離用として、軽便で、構造が簡易で、建設費も安く、性能も高性能に過ぎることを防止して適切な性能を確保できた。 特に車両を軽量化可能で、省エネ、省資源に寄与すると共に、走行騒音もほとんど発生しない等の多くの利点を有する。 【0036】(請求項2によれば、)軽便構造の車両10 は、天候や乗客数等の条件で、速度が小さくなり過ぎることも考えられるが、そのような際に、例外的に、小型駆動モータにて、加速して、スムースな輸送を実現できる。 【0037】(請求項3によれば、)軌道1は、図5に2点鎖線4にて示したような長い距離を、本格支持脚3 …にて支持する必要はなく、2%〜10%の範囲のみを、 本格支持脚3…にて支持するため、建設工事が容易となり、建設費も低減できて合理的である。 また、乗客は、 適度のスリルも味わいえることもある。 【0038】(請求項4によれば、)軽便な簡易の輸送手段として合理的であり、長距離にわたる給電設備が不要となり、最小の範囲のみで済み、建設の容易性、建設費の低減の面で、優れている。 【0039】(請求項5によれば、)山型状の車両加速ゾーンAは、車両10に位置エネルギーを十分与えることで合理的であり、かつ、この山型状加速ゾーンAを、別の軌道5や道路6を通すことにより、用地を有効に活用できる。 【0040】(請求項6によれば、)車両追突事故を確実に防止できて、安全性が一層向上できる。 (請求項7によれば、)脱線事故を有効に防止できて、 安全性が高くなる。 既設の道路上等にも、簡単に敷設できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。 【図2】他の場所を示した同正面図である。 【図3】一部断面で示した正面図である。 【図4】側面図である。 【図5】要部簡略側面図である。 【図6】他の実施の形態を示す簡略側面図である。 【図7】要部説明図である。 【図8】要部正面図である。 【図9】別の実施の形態を示す平面図である。 【符号の説明】 1 軌道 2 プラットホーム(駅) 3 本格支持脚 10 車両 13 軌条 15 上輪 16 横輪 17 下輪 21 小型駆動モータ 22 駆動輪 29 給電設備 A 車両加速ゾーン A 1引揚ゾーン D 給電加速ゾーン S 車両自走ゾーン L 1水平距離 G 地面 |