メータの表示制御装置

申请号 JP2016105676 申请日 2016-05-26 公开(公告)号 JP6350595B2 公开(公告)日 2018-07-04
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 寺谷 佳之; 金井 理; 村上 祐樹;
摘要
权利要求

トルクコンバータと自動変速機とを含む車両に設けられ、エンジンの回転数を表示するメータの表示制御装置であって、 前記自動変速機の変速開始条件が成立した場合に、前記トルクコンバータの状態に応じた補正量と、変速後のギヤ段に対応する前記トルクコンバータのタービン回転数とを加算することによって、前記エンジンの推定回転数を算出するとともに、その推定回転数をメータ目標回転数に設定して、メータへの表示回転数をそのメータ目標回転数に近づけるように構成された制御部を備え、 前記制御部は、ダウンシフトをするための前記変速開始条件が成立したことと、前記エンジンが前記トルクコンバータ側から駆動されることとを含む固定条件が成立した場合には、前記補正量を変速開始判断時の値に固定する一方、ダウンシフトをするための変速開始条件が成立したことと、前記エンジンが前記トルクコンバータ側から駆動されることと、変速前後における前記エンジン回転数と前記トルクコンバータのタービン回転数との差分の変化が大きいと判断されることとを含む実回転数表示条件が成立した場合には、前記推定回転数に代えて現在のエンジン回転数を前記メータ目標回転数に設定し、または前記推定回転数の算出を含む一連の制御を終了する、メータの表示制御装置。前記制御部は、(a)変速開始条件が成立した際のエンジン回転数とタービン回転数との差分が所定の基準差分値より大きい、(b)エンジントルクが所定の基準トルク値より大きい、(c)実エンジン回転数が変速後の推定エンジン回転数より大きい、の少なくとも何れか一つを満たす場合に、変速前後における前記エンジン回転数と前記トルクコンバータのタービン回転数との差分の変化が大きいと判断するものである請求項1のメータの表示制御装置。前記補正量は、エンジン回転数とタービン回転数との差である、請求項1また請求項2に記載のメータの表示制御装置。前記制御部は、固定された前記補正量よりも現在のエンジン回転数と現在のタービン回転数との差が大きくなった場合には、前記補正量の固定を解除し、現在のエンジン回転数と現在のタービン回転数との差を前記補正量として使用する、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のメータの表示制御装置。前記実回転数表示条件は、前記自動変速機の変速中のフェーズがイナーシャ相であることをさらに含む、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のメータの表示制御装置。前記実回転数表示条件は、変速時にスロットル開度を増加させることによってエンジントルクを増加させるブリッピング制御が実行されていないことをさらに含む、請求項1から請求項5の何れか1項に記載のメータの表示制御装置。

说明书全文

本発明は、メータの表示制御装置に関し、特に、トルクコンバータと自動変速機とを備えた車両において、エンジン回転数を表示するメータの表示制御装置に関する。

従来から、自動車等には、エンジン回転数を表示するメータ(いわゆるタコメータ)が設けられている。このようなタコメータにおいて、変速時の応答性を良くすることを目的として、エンジン回転数を推定してタコメータに表示することが行われている(例えば特許文献1を参照。)。

特開2009−220678号公報

上記特許文献1に記載の技術では、例えば、自動変速機の状態に応じて、エンジンの実回転数およびタービン回転数から演算されたエンジンの推定回転数の何れかを用いてメータ用回転数(すなわちメータ目標回転数)を演算する。そのメータ目標回転数の演算方法は、変速時のフェーズに応じて変更する。例えば、変速中のイナーシャ相においては、イナーシャ相開始時の実エンジン回転数と実タービン回転数との差分を、変速後のギヤ段から求めたタービン回転数に加算してメータ目標回転数を演算する。変速時のそれ以外のフェーズや非変速時では、ロックアップ解放時は、実エンジン回転数と、エンジントルクやトルク比などから演算した推定回転数とのうち何れかをメータ目標回転数とし、ロックアップ締結時(スリップ締結を含む)は、実エンジン回転数と、実エンジン回転数、タービン回転数、および車速から演算された推定回転数とのうち何れかをメータ目標回転数とする。

上記のメータの表示制御は、非ロックアップ状態ではエンジン回転数とタービン回転数との間にトルクコンバータの滑りによる回転数差が発生することを考慮したものである。しかしながら、このような推定処理を適用すると、エンジントルクが大きい状態でダウンシフトが行われた場合に、実エンジン回転数とメータ目標回転数との乖離が大きくなって、制御終了時に実エンジン回転数に向かってメータ目標回転数が急激に変化し、メータ表示回転数の予期せぬ低下が生じ得る問題がある。

例えば、アクセル高開度状態からアクセルを離した直後などの場合、アクセルがオフ状態であっても、トルク急変による車両挙動の乱れを防止するため、一定時間のなましを掛けて緩やかにエンジントルクを0にすることが行われており、アクセルをオフにしてから所定時間はエンジントルクが大きい状態が続く。この状態でマニュアルシフト操作でダウンシフト変速が指示された場合、イナーシャ相におけるメータ目標回転数は前述したように演算されるが、エンジントルクが未だ大きい状況であることから、エンジン回転数とタービン回転数との差分が大きいため、メータ目標回転数は大きな値に設定される。そして、変速完了後にエンジントルクが小さくなって実エンジン回転数が小さくなると、実エンジン回転数とメータ目標回転数との乖離が大きくなるため、通常の制御終了ルーチンでは制御を抜けられず、タイマーなどで制御を強制終了することになる。そのため、一定時間経過後に実エンジン回転数に向かってメータ目標回転数が急激に変化し、予期せぬところでメータの表示回転数が低下するため、車両挙動との違和感が生じる問題がある。

また、上記特許文献1に記載された制御に代えて、例えば、イナーシャ相においては、変速後のギヤ段に対応するタービン回転数に、逐次演算される実エンジン回転数と実タービン回転数との差分を加算して、メータ表示用回転数とすることも考えられる。しかしながら、このような制御では、実際のエンジン回転数が上昇しているのにも拘わらず、表示されるエンジン回転数が一時的に低下してしまうという現象が生じる場合がある。

例えば、アクセルオフ状態でダウンシフト変速が発生した場合、変速初期ではタービン回転数よりもエンジン回転数の方が早いが、変速が進行した時期では自動変速機側からタービン回転数が引き上げられるため、エンジン被駆動状態となって、エンジン回転数よりもタービン回転数の方が速くなる。そのため、変速初期では補正量が正であるが、変速が進行すると補正量が負になるので、表示用のエンジン回転数が一時的に大きく減少し、増大し続けているエンジン回転数とは逆の動きをすることから、ドライバーの感覚に合わない問題があった。

本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、メータに表示するエンジン回転数の応答性を維持しつつ不自然な表示を低減させたメータの表示制御装置を提供するものである。

本発明の要旨とするところは、トルクコンバータと自動変速機とを含む車両に設けられ、エンジンの回転数を表示するメータの表示制御装置であって、(a)前記自動変速機の変速開始条件が成立した場合に、前記トルクコンバータの状態に応じた補正量と、変速後のギヤ段に対応する前記トルクコンバータのタービン回転数とを加算することによって、前記エンジンの推定回転数を算出するとともに、その推定回転数をメータ目標回転数に設定して、メータへの表示回転数をそのメータ目標回転数に近づけるように構成された制御部を備え、(b)前記制御部は、ダウンシフトをするための前記変速開始条件が成立したことと、前記エンジンが前記トルクコンバータ側から駆動されることとを含む固定条件が成立した場合には、前記補正量を変速開始判断時の値に固定する一方、ダウンシフトをするための変速開始条件が成立したことと、前記エンジンが前記トルクコンバータ側から駆動されることと、変速前後における前記エンジン回転数と前記トルクコンバータのタービン回転数との差分の変化が大きいと判断されることとを含む実回転数表示条件が成立した場合には、前記推定回転数に代えて現在のエンジン回転数を前記メータ目標回転数に設定し、または前記推定回転数の算出を含む一連の制御を終了することにある。

このようにすれば、エンジンがトルクコンバータ側から駆動される被駆動時において、補正量の符号が逆転するなどの変化が起こらず、また、エンジントルクが大きい状態でダウンシフトが行われる場合などにも実エンジン回転数とメータ目標回転数との乖離が大きくならないので、メータに表示するエンジン回転数の応答性を維持しつつメータの表示回転数の不自然な変化を低減させることができる。

本発明によれば、変速開始条件が成立すると、制御部は、トルクコンバータの状態に応じた補正量をタービン回転数に加算してエンジンの推定回転数を算出し、実回転数表示条件が成立しない間はその推定回転数をメータ目標回転数とすることから、メータに表示するエンジン回転数の高い応答性が得られる。上記補正量は、ダウンシフト変速の際に被駆動状態になると、固定条件が成立して変速開始判断時の値に固定されるので、正の値に保たれる。すなわち、エンジン回転数よりもタービン回転数が高くなることに起因して補正量の符号が逆転することがない。また、アクセル操作直後にダウンシフト変速を行って、被駆動状態になった場合などのように、変速前後におけるエンジン回転数とタービン回転数との差分の変化が大きくなる場合には、実回転数表示条件が成立するので、実エンジン回転数をメータ目標回転数とし、または、推定回転数の算出を含む一連の制御を終了してメータ表示回転数に実エンジン回転数が設定されることから、実エンジン回転数とメータ表示回転数との乖離が大きくならない。すなわち、補正量が大きくなることに起因してメータ目標回転数が大きくなり過ぎることがないので、制御終了時に実エンジン回転数に向かってメータの表示回転数の急激な低下が生じることがない。

ここで、好適には、前記制御部は、(a)変速開始条件が成立した際のエンジン回転数とタービン回転数との差分が所定の基準差分値より大きい、(b)エンジントルクが所定の基準トルク値より大きい、(c)実エンジン回転数が変速後の推定エンジン回転数より大きい、の少なくとも何れか一つを満たす場合に、変速前後における前記エンジン回転数と前記トルクコンバータのタービン回転数との差分の変化が大きいと判断するものである。変速前後における前記エンジン回転数と前記トルクコンバータのタービン回転数との差分の変化が大きくなることは、例えば、これらの何れかが満たされることで判断できる。上記基準差分値および基準トルク値は、エンジントルクの残存状態を判定するための定数であり、自動変速機やトルクコンバータ等の特性に応じて設定される。

また、好適には、前記補正量は、エンジン回転数とタービン回転数との差である。補正量はクラッチのトルク容量から算出する等種々の方法で算出できるが、上記のようにすれば、簡単に補正量を求めることができる。

また、好適には、前記制御部は、固定された前記補正量よりも現在のエンジン回転数と現在のタービン回転数との差が大きくなった場合には、前記補正量の固定を解除し、現在のエンジン回転数と現在のタービン回転数との差を前記補正量として使用するものである。このようにすれば、補正量をエンジン回転数とタービン回転数との差に設定して、補正量を固定した場合に、エンジンが被駆動状態から駆動状態に戻ったことに合わせて、補正量の固定を解除し、メータ表示回転数を元の状態に戻す。これにより、エンジン回転数の検出遅れなどによるメータ表示回転数の変化の遅さを改善したメータ表示に復帰させることができる。

また、好適には、前記実回転数表示条件は、前記自動変速機の変速中のフェーズがイナーシャ相であることをさらに含むものである。このようにすれば、エンジン側から自動変速機のタービンを回転させるトルク相では、メータ表示回転数の応答性が改善された状態にしておくことができる。

また、好適には、前記実回転数表示条件は、変速時にスロットル開度を増加させることによってエンジントルクを増加させるブリッピング制御が実行されていないことをさらに含むものである。このようにすれば、エンジン回転速度の増加が予想されるブリッピング制御時は、メータ表示回転数の応答性が改善された状態に維持しておくことができる。

また、好適には、前記制御部は、アクセル開度と車速とに基づいて、変速開始条件が成立したか否かを判定するとともに、変速後ギヤ段を出するように構成された変速判定部と、車速と変速後ギヤ段とに基づいて、変速後タービン回転数を算出し、変速後タービン回転数に補正量を加算して推定回転数を算出するように構成された回転数演算部と、変速の進行状況に基づいて、推定回転数と回転センサで検出されたエンジンの回転数とのいずれかにメータ目標回転数を切り替え、目標値に追従するように表示回転数を出力するように構成された表示出力切替部とを含む。このようにすれば、メータ表示回転数の応答性が改善され、ダウンシフト時にも自然な変化をするメータ表示回転数を出力するメータ制御部を実現できる。

また、好適には、前記表示出力切替部は、変速の進行状況に基づいて、目標値に表示回転数を近づける速度を変更する。このようにすれば、メータ表示回転数の変化を変速の進行状況を示すフェーズに合わせた度合いで緩やかにすることができる。

本発明が好適に適用される車両のパワートレーンおよびメータ表示制御装置を概念的に示す図である。

図1の電子制御装置に備えられる制御機能の要部を説明するための機能ブロック図である。

表示されるエンジン回転数が一時的に低下してしまう現象の一例を説明するための動作波形図である。

本実施の形態で改善されたメータ表示を説明するための動作波形図である。

変速終了時に表示されるエンジン回転数が急激に低下してしまう現象の一例を説明するための動作波形図である。

図5に示される問題点に対し本実施の形態で改善されたメータ表示を説明するための動作波形図である。

メータ表示処理のメインルーチンの一例である。

変速判定出力について説明するための変速線図の一例を示した図である。

図7のステップS2で実行されるフェーズ判定処理を説明するためのフローチャートである。

変速処理のイナーシャ相フェーズで実行されるメータ表示回転数の算出処理P1を説明するためのフローチャートである。

被駆動時であるか否かの判定を行う際に用いるマップの一例を示した図である。

フィルタ係数を決める際に使用されるマップの一例を示した図である。

変速処理の終了フェーズで実行されるメータ表示回転数の算出処理P2を説明するためのフローチャートである。

イナーシャ相フェーズで実行される算出処理P1の他の例のフローチャートの要部を示す図である。

以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。また、同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。

図1は、本実施の形態に係るメータ表示制御装置が搭載される車両のパワートレーンの構成を示す図である。図1に示すように、この車両のパワートレーンは、駆動力源であるエンジン10と、トルクコンバータ12と、有段式の自動変速機14と、ECU(Electronic Control Unit)16と、タコメータ18とを含む。

エンジン10の出力軸は、トルクコンバータ12の入力軸に接続される。トルクコンバータ12は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ20と、入力軸側のポンプ翼車22と、出力軸側のタービン翼車24と、ワンウェイクラッチ26を有し、トルク増幅機能を発現するステータ翼車28とを含む。トルクコンバータ12の出力軸は、自動変速機14の入力軸に接続される。

トルクコンバータ12は、入力軸側のポンプ翼車22の回転数(すなわちエンジン10の回転数)と出力軸側のタービン翼車24の回転数(すなわち自動変速機14の入力軸回転数)との差であるスリップ量に応じた大きさのトルクを、エンジン10側から自動変速機14に伝達する。

自動変速機14は、複数のプラネタリギヤユニットおよび油圧式の複数の摩擦係合要素と、複数の摩擦係合要素に供給される油圧を調整するための油圧回路30とを含む。油圧回路30は、オイルポンプと、ECU16からの制御信号に基づいて制御される各種ソレノイドと、油路(いずれも図示せず)とから構成される。ECU16は、油圧回路30の各種ソレノイドを制御することにより、複数の摩擦係合要素の係合力を制御して、自動変速機14の変速比を制御する。

これらのパワートレーンを制御するECU16には、エンジン回転数センサ32、タービン回転数センサ34、出力軸回転数センサ36、ポジションスイッチ38、アクセル開度センサ40、車速センサ42などが、ワイヤハーネスなどを介して接続される。

エンジン回転数センサ32は、エンジン10の回転数(エンジン回転数)NE(rpm)を検出する。タービン回転数センサ34は、トルクコンバータ12のタービン翼車24の回転数(タービン回転数)NT(rpm)を検出する。出力軸回転数センサ36は、自動変速機14の出力軸の回転数(出力軸回転数)Nout(rpm)を検出する。ポジションスイッチ38は、運転者によって操作されるシフトレバーの位置(シフトポジション)SPを検出する。アクセル開度センサ40は、運転者によるアクセルペダルの実際の操作量(実アクセル開度)APを検出する。車速センサ42は、車輪の回転数に基づいて車速を検出する。図示しないが、エンジン10に設けられるスロットル開度センサは、スロットル開度Thを検出する。これらの各センサは、検出結果を表す信号をECU16に送信する。

ECU16は、上記の各センサの信号に基づいて、メータ表示回転数NEMETを算出し、算出したメータ表示回転数NEMETをタコメータ18に表示させる。

図2は、メータ表示に関するECU16の構成を示したブロック図である。図2を参照して、ECU16は、変速判定部44と、メータ目標回転数演算部46と、フェーズ判定部48と、フィルタ係数切替部50と、表示出力切替部52とを含む。

変速判定部44は、アクセル開度APと車速Vとに基づいて、あらかじめ定められた変速線図を参照して、自動変速機14の変速判定を行うとともに、変速後のギヤ段GEを出力する。また、車両がマニュアルシフトモードに設定されている場合には、変速判定部44は、ドライバーのシフト操作に基づいて変速後のギヤ段GEを出力する。

メータ目標回転数演算部46は、車速Vと、スロットル開度Thと、タービン回転数NTと、エンジン回転数NEと、変速後のギヤ段GEとに基づいて、メータ目標回転数NESHTを算出する。具体的には、現在のギヤ段をGとし、ダウンシフト変速後のギヤ段をG−1とすると、メータ目標回転数演算部46は、車速Vと変速後ギヤ段GE(=G−1)とに基づいて、変速後タービン回転数NT(G−1)を算出し、変速後タービン回転数NT(G−1)に補正量ΔNを加算して推定回転数を算出し、これをメータ目標回転数NESHTとして設定する。或いは、所定の実回転数表示条件が成立する場合には、実エンジン回転数NEをメータ目標回転数NESHTとして設定する。なお、補正量ΔNについては後に図3、図4で説明する。また、実回転数表示条件についても後述する。

フェーズ判定部48は、車速Vと、ギヤ段GEと、タービン回転数NTとに基づいて、変速の進行度合いを示すフェーズ信号Fを出力する。変速判定が発生してからタービン回転数NTが変化し始めるまでの初期段階を準備フェーズ(F=0)、タービン回転数NTが変速によって変化中である段階をイナーシャ相フェーズ(F=1)、タービン回転数NTの変速による変化がほぼ終了してから変速完了とするまでの段階を終了フェーズ(F=2)という。イナーシャ相フェーズは変化フェーズともいう。フェーズ信号Fは、現在の変速の進行度合いがいずれのフェーズであるかを示す(後に図3、図4でも説明する)。

フィルタ係数切替部50は、フェーズ信号Fに基づいて、フィルタ係数Kを決定する。フィルタ係数Kは、表示出力切替部52がフィルタ処理を行う際に使用する。

表示出力切替部52は、表示する目標値が急峻に変化した場合でもメータ表示回転数NEMETが緩やかに変化するようにフィルタ処理を行う。表示出力切替部52は、エンジン回転数NEおよびメータ目標回転数NESHTのいずれかから、変速の進行状況、すなわちフェーズ信号Fに基づいてメータ表示回転数NEMETの目標値を選択し、フィルタ係数Kに対応する速度でこの目標値に追従するようにメータ表示回転数NEMETを出力する。このような処理をフィルタ処理と呼ぶこととするが、なまし処理などとも呼ばれる。

より具体的には、表示出力切替部52は、現在のメータ表示回転数NEMETがフィルタ係数Kに対応する時間後に目標値に到達するように処理サイクル1回あたりの変化分を決定し、次回サイクルのメータ表示回転数NEMETを算出する。

このような構成を有するECU16において、エンジン回転数の推定処理を常に同じように実行すると、以下に図3に説明するように実際のエンジン回転数NEが上昇しているのに、表示されるエンジン回転数NEMETが一時的に低下してしまうといった現象が生じてしまう。

図3は、表示されるエンジン回転数が一時的に低下してしまう現象の一例を説明するための動作波形図である。図2、図3を参照して、変速判定の結果を示すギヤ段GEは、時刻t1においてG(例えば3速)からG−1(例えば2速)に変化している。

回転数NT(G)は、車速Vとギヤ段Gでの自動変速機の変速比とによって算出されるタービン回転数を示す。回転数NT(G−1)は、車速Vとギヤ段G−1での自動変速機の変速比とによって算出されるタービン回転数を示す。図3においては、車速が減速中であるので、NT(G)、NT(G−1)とも時間の経過とともに小さくなっている。変速の進行に伴い、タービン回転数NTはNT(G)からNT(G−1)に向かって変化する。

変速の進行度合いを示すフェーズは、図2のフェーズ信号Fに相当するものであり、準備フェーズ、イナーシャ相フェーズ、終了フェーズの順に変化する。図3では、フェーズは、時刻t2までは準備フェーズ(F=0)であり、時刻t2〜t5ではイナーシャ相フェーズ(F=1)であり、時刻t5〜t6では終了フェーズ(F=2)であり、時刻t6では再び準備フェーズとなる。

変速時のように、エンジン回転数が急に変化する場合には、タコメータ18の表示に遅れが発生しやすい。この応答遅れは、エンジン回転センサからの入力信号に基づくエンジン回転数の演算処理の時間や、演算したエンジン回転数に対するタコメータ18の応答時間に起因する。

この遅れを無くすために、エンジン回転数の変化を予測してタコメータ18に表示することが考えられる。ギヤ段がGからG−1に変化する変速時には、変速後のギヤ段G−1が分かれば、タービン回転数NTは、NT(G)からNT(G−1)に変化することが予測できる。トルクコンバータ12がロックアップ状態であれば、NT(G−1)を変速後の目標値として設定し、これに適切な変化速度を示すフィルタ係数Kでフィルタ処理を行えば、検出したエンジン回転数NEの変化に先立ってメータ表示回転数NEMETを変化させることができる。

しかし、非ロックアップ状態の場合には、エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの間には、トルクコンバータ12の滑りによる回転数の差(NE−NT)が発生する。したがって、トルクコンバータ12が非ロックアップ状態の場合は、エンジン回転数を変速後のギヤ段G−1から求めたタービン回転数NT(G−1)に補正量ΔNを加算して目標値であるメータ目標回転数NESHT0を求める。補正量ΔNとしては、例えば、トルクコンバータ12の入出力回転数の差であるNE−NTが用いられる。

この場合、時刻t2〜t5におけるメータ目標回転数NESHT0は、次式で表される。 NESHT0=NT(G−1)+ΔN ただし、ΔNは補正量であり、ΔN=(NE−NT)である。

ここで、トルクコンバータ12の入出力回転数の差NE−NTは常に正の値であるとは限らない。エンジンの駆動時とエンジンの被駆動時では、差NE−NTの符号は反転する。

エンジンの駆動時とは、エンジン10の動力によってトルクコンバータ12が回されている状態を示し、エンジン10の回転NEに対してトルクコンバータ12の滑りによりタービン回転NTは遅れる(NE>NT)。またエンジンの被駆動時とは、エンジン10が車両の慣性力によってトルクコンバータ12側から駆動される場合を示し、タービン回転数NTの方がエンジン回転数NEよりも大きくなる(NT>NE)。

たとえば、アクセルオン状態でエンジン10によって車両が加速されている場合には、エンジン駆動時であり、NE>NTであるのでΔN>0であるが、アクセルオフ状態でエンジンブレーキが働くような場合には、エンジン被駆動時でありNE

特に、図3に示したアクセルオフ状態でダウンシフトが発生するような場合では、変速初期(時刻t2〜t3)ではNE>NTであっても、変速が進行した時期(時刻t3〜t5)では自動変速機14側からNTが引き上げられ、これに伴ってトルクコンバータ12側からNEも引き上げられるので、NE

すなわち、変速当初のエンジン駆動時の時刻t2〜t3では補正量ΔN=ΔN1>0であるのに対し、変速が進むとエンジン被駆動時となり、時刻t3〜t5では、補正量ΔN=ΔN2<0となり補正量ΔNの符号が正から負に反転する。このため、メータ目標回転数NESHT0が一時的に大きく減少し、これを目標値として追従して変化するメータ表示回転数NEMET0も時刻t3〜t4においてエンジン回転数NEとは逆の動きをする。このような動きは、ドライバーの感覚とは合わない動きである。

そこで、本実施の形態では、トルクコンバータ12がロックアップされていない状態においてダウンシフト変速が発生した場合にエンジン被駆動となったときに、この補正量ΔNの反転が発生しないように、変速が開始した時点すなわちイナーシャ相開始時点の補正量ΔNを記憶し、変速が終了するまで補正量ΔNをこの値に固定する。

図4は、本実施の形態で改善されたメータ表示を説明するための動作波形図である。図4の波形は、変速判定やフェーズについては、図3で説明した場合と同じであるので説明を繰り返さない。図2、図4を参照して、時刻t2の変速開始時点(タービン回転数NTがNT(G)からNT(G−1)に向かって離れ始める時点)において、補正量ΔN(=NE−NT)を固定する。

時刻t2〜t6では、表示するエンジン回転数NEMETの目標値(メータ目標回転数NESHT)は、NESHT=NT(G−1)+ΔNとなっている。

メータ目標回転数NESHTを目標値とし、フィルタ処理を行って目標値に追従させた結果、メータ表示回転数NEMETは、時刻t2からt4において緩やかに増加し、時刻t4以降は、NT(G−1)と同程度の傾きで減少していく。

メータ目標回転数NESHTは、図3に示したNESHT0と異なり、補正量ΔNが変動しないので、NT(G−1)が車両の減速に伴って減少する程度に抑えられている。

したがって、メータ表示回転数NEMETは、図3に示したNEMET0と異なり、エンジン回転数NEと変化の方向が逆になるようなことはなく、ドライバーの感覚に合致する。

図5は、上記図4に示される制御において、新たに生ずる問題点を説明するための動作波形図である。時刻t1において、アクセルが高開度状態から急にオフにされると、トルク急変による車両挙動の乱れを防止するため、スロットル開度Thは一定時間を掛けて0に向かわせられ、エンジントルクも一定時間を掛けて減少するように制御される。そのため、時刻t1〜t2の間はトルク残りによってエンジン回転数NEが増大する。時刻t2以降はエンジン回転数NEが減少するが、時刻t3ではエンジン回転数NEが未だ大きい状態でダウンシフト変速が指示され、ギヤ段がGからG−1に変化する。

時刻t4において、タービン回転数NTが変速後のギヤ段G−1に対応する回転数NT(G−1)に向かって変化を開始し、イナーシャ相フェーズが開始すると、メータ目標回転数NESHTは変速後のギヤ段(G−1)に対応するタービン回転数NT(G−1)に補正量ΔNを加算した値に設定される。この場合において、補正量ΔNは、変速開始時すなわちイナーシャ相開始時の(NE−NT)に固定されるが、トルク残りによってエンジン回転数NEが大きくなっていることから、補正量ΔNが大きな値になるので、メータ目標回転数NESHTが実際のエンジン回転数NEよりも著しく大きな値に設定される。

時刻t4以降、メータ表示回転数NEMETは、メータ目標回転数NESHTに向かって緩やかに増加するが、メータ目標回転数NESHTが高い値に設定されているため、変速完了時にはメータ表示回転数NEMETはエンジン回転数NEから著しく乖離する。この結果、通常の制御終了ルーチンでは制御を抜けられなくなり、時刻t6において制御が強制終了させられると、メータ目標回転数NESHTは、現在のエンジン回転数NEに設定され、メータ表示回転数NEMETは新たに設定されたメータ目標回転数NESHTに向かって低下する。このとき、実際のエンジン回転数NEは、図5に示されるように時刻t2から低下し、時刻t4以降は緩やかに上昇するので、メータ表示回転数NEMETの動きはエンジン回転数NEの動きとは異なり、運転者に違和感を与える。

そこで、本実施の形態では、エンジントルクが大きいことにより、エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの差が大きい状態でダウンシフト変速が行われた場合には、このような変速完了時のメータ表示回転数NEMETの低下が生じないように、図6に示されるように、イナーシャ相フェーズにおいても、メータ目標回転数NESHTを現在のエンジン回転数NEに設定する。これにより、メータ表示回転数NEMETは、実際のエンジン回転数NEの値に概ね保たれることから、イナーシャ相において著しく大きくなることが抑制され、延いては変速完了時に急激に低下することがないので、運転者に違和感を与えない。

次に、図4、図6に示した実施例のメータ表示を実現するためにECU16が実行する処理について説明する。

図7は、ECU16が実行するメータ表示処理のメインルーチンである。図7を参照して、ECU16は、ステップS1において変速線図に基づいて変速判定を行い、変速判定出力があるか否かを判断する。

図8は、変速判定出力について説明するための変速線図の一例を示した図である。減速時のアクセルオフ状態でのダウンシフトの場合、図8に示すように、アクセル開度APがゼロで、車速Vが減速すると、車両の動作点が、ダウンシフト線Dを高車速側から低車速側に向かって横切るので、ギヤ段Gからギヤ段G−1にダウンシフトの変速判定が発生する。

なお、自動変速機を搭載する車両でも、ダウンシフト、アップシフトをユーザのシフトレバーの指示に応じて実行するマニュアル変速モードを備える車両があるが、車両がマニュアル変速モードに設定されている場合には、ユーザのシフトレバー操作に応じてアップシフト、ダウンシフトの変速判定が発生する。

図7を参照して、ECU16は、ステップS1において、変速判定出力が無いと判断した場合には(ステップS1でNO)、ステップS3に処理を進め、メータ表示回転数NEMETを現在のエンジン回転数NEに設定し、タコメータ18にメータ表示回転数NEMETを送信する。

一方、ECU16は、ステップS1において、変速判定出力があると判断した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に処理を進める。ステップS2では、変速の進行度合いを示すフェーズ判定が実行される。フェーズ判定処理については、後に図9を用いて詳細に説明する。

ステップS2において現在のフェーズがイナーシャ相フェーズであると判断された場合には、ステップS4に処理が進められ、メータ表示回転数NEMETを算出するための算出処理P1が実行される。算出処理P1については、後に図10を用いて詳細に説明する。

ステップS2において現在のフェーズが終了フェーズであると判断された場合には、ステップS5に処理が進められ、メータ表示回転数NEMETを算出するための算出処理P2が実行される。算出処理P2については、後に図13を用いて詳細に説明する。

ステップS2において現在のフェーズが準備フェーズであると判断された場合には、ステップS3に処理が進められ、ECU16は、メータ表示回転数NEMETを現在のエンジン回転数NEに設定し、タコメータ18にメータ表示回転数NEMETを送信する。

ステップS3〜S5のいずれかにおいてメータ表示回転数NEMETが算出されると、ステップS6において、制御はメインルーチンに戻される。

図9は、図7のステップS2で実行されるフェーズ判定処理を説明するためのフローチャートである。図9を参照して、ECU16は、まずステップS11において現在のフェーズが準備フェーズであるか否かを判断する。ECU16は、変数Fとして現在のフェーズを記憶している。F=0の場合は、現在のフェーズは準備フェーズである。F=1の場合は、現在のフェーズはイナーシャ相フェーズである。F=2の場合は、現在のフェーズは終了フェーズである。

ステップS11において、現在のフェーズが準備フェーズであった場合(ステップS11でYES)には、ステップS12に処理が進められる。ステップS12では、ECU16は、現在のタービン回転数NTが変速前のギヤ段Gに相当するタービン回転数NT(G)から離れたか否かを判断する。具体的には、ECU16は、NT−NT(G)がしきい値よりも大きくなったか否かを判断する。

ステップS12において、NT−NT(G)>しきい値が成立しなければ(ステップS12でNO)、ステップS17に処理が進められ、引き続き準備フェーズであると判断される。ステップS12において、NT−NT(G)>しきい値が成立した場合(ステップS12でYES)、ステップS18に処理が進められ、準備フェーズからイナーシャ相フェーズに移行すると判断される。例えば、図4の時刻t2付近では、NTがNT(G)から離れてNT(G−1)に向かって上昇を開始しており、ステップS12でYESと判断された結果、フェーズは準備フェーズからイナーシャ相フェーズに移行している。

ステップS11において、現在のフェーズが準備フェーズでないと判断された場合(ステップS11でNO)には、ステップS13に処理が進められる。ステップS13では、現在のフェーズがイナーシャ相フェーズであるか否かが判断される。

ステップS13において、現在のフェーズがイナーシャ相フェーズであると判断された場合(ステップS13でYES)には、ステップS14に処理が進められる。ステップS14では、イナーシャ相フェーズから終了フェーズに移行する条件が成立するか否かが判断される。この条件は、タービン回転数NTが変速後のギヤ段G−1に相当するタービン回転数NT(G−1)に十分近い状態が継続した場合に成立し、具体的には、|NT−NT(G−1)|<しきい値である場合に成立する。

ステップS14においてイナーシャ相フェーズから終了フェーズに移行する条件が成立しない場合(ステップS14でNO)には、ステップS18に処理が進められ、フェーズはイナーシャ相フェーズのまま維持される。一方、ステップS14においてイナーシャ相フェーズから終了フェーズに移行する条件が成立した場合(ステップS14でYES)には、ステップS19に処理が進められ、フェーズはイナーシャ相フェーズから終了フェーズに移行すると判断される。

例えば、図4の時刻t5付近では、タービン回転数NTが目標タービン回転数NT(G−1)に近くなった状態がしきい値を越えており、ステップS14でYESと判断された結果、フェーズはイナーシャ相フェーズから終了フェーズに移行している。

ステップS13においてNOと判断された場合には、現在のフェーズが終了フェーズである。この場合、ステップS15において、メータ表示回転数NEMETとエンジン回転数NEとの差の大きさがしきい値B以下となったかが判断される。ステップS15において、|NE−NEMET|≦Bが成立した場合に(ステップS15でYES)には、終了フェーズから準備フェーズに移行する。

例えば、図4の時刻t6付近では、|NE−NEMET|≦Bが成立しており、ステップS15でYESと判断された結果、フェーズはイナーシャ相フェーズから終了フェーズに移行している。

一方、ステップS15において、|NE−NEMET|≦Bが成立しない場合(ステップS15でNO)には、ステップS16に処理が進められ、タイムアウトに該当するか否かが判断される。終了フェーズが所定時間継続するとタイムアウトに該当する。

ステップS16において、タイムアウトに該当した場合(ステップS16でYES)には、ステップS17に処理が進められ、フェーズが終了フェーズから準備フェーズに移行する。一方、ステップS16において、タイムアウトに該当しない場合(ステップS16でNO)には、フェーズは終了フェーズのまま維持される。

ステップS17〜S19のいずれかにおいて、フェーズが決定された場合には、ステップS20に処理が進められ、制御は図7のフローチャートに戻される。

以上、フェーズの判定について説明したが、続いて、イナーシャ相フェーズ、終了フェーズで実行されるメータ表示回転数NEMETの算出処理について順に説明する。

図10は、変速処理のイナーシャ相フェーズで実行されるメータ表示回転数NEMETの算出処理P1を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、図7に示したフローチャートの処理において、ステップS2でイナーシャ相フェーズと判定され、ステップS4に処理が進められた場合に実行される。

図10を参照して、算出処理P1が開始されると、まずステップS41において、ECU16は、変速判定がダウンシフトであるか否かを判定する。先に説明したように、図8のダウンシフト線Dを高車速側から低車速側に車両の動作点が横切った場合にダウンシフトの判定が出力される。

ステップS41において、変速判定がダウンシフトであると判断された場合には(S41でYES)、ステップS42に処理が進められる。ステップS42では、ECU16は、自動変速機がイナーシャ相フェーズ中であるか否かを判断する。例えば、図4、図6において、タービン回転数NTが、変速の進行に伴って、変速前のギヤ段Gに対応する回転数から離れて変速後のギヤ段G−1に対応する回転数に向かう回転数の変化の期間がイナーシャ相であると判断される。具体的には、前記図9に示されるフェーズ判定ルーチンにおいて、NT−NT(G)がしきい値より大きいと、イナーシャ相と判断される。

ステップS42において、自動変速機がイナーシャ相フェーズ中であると判断された場合には(S42でYES)、ステップS43に処理が進められる。ステップS43では、ECU16は、エンジンが被駆動時であるか否かを判断する。

図11は、被駆動時であるか否かの判定を行う際に用いるマップの一例を示した図である。図11では、縦軸にスロットル開度Th、横軸に車速Vが示される。ラインLを境界として、図11に示すように駆動を示す領域A1、被駆動を示す領域A2に座標平面が分かれている。スロットル開度がラインLよりも大きいとエンジントルクが多く発生し、エンジンによってトルクコンバータを介して車両が駆動される(エンジン駆動時)。一方、スロットル開度がラインLよりも小さいとエンジントルクが不足し、車両の慣性力によってトルクコンバータを介してエンジンが駆動される(エンジン被駆動時)。ラインLは、エンジンの駆動力と車両の走行抵抗力とが釣り合う点をつないだものであり、車速が高速であるほどスロットル開度が大きくなる。ECU16は、車速Vとスロットル開度Thに基づいて、図11に示すマップを参照して、現在の車両の状態がエンジン駆動時かエンジン被駆動時かを判断する。

ステップS43において、エンジンが被駆動時であると判断された場合には(S43でYES)、ステップS44に処理が進められる。ステップS44では、ECU16は、ブリッピング制御中であるか否かを判断する。ブリッピング制御とは、シフトダウンを行う際にスロットル開度を増加させエンジンのトルクを上げて変速ショックを緩和するような処理をいう。

ステップS44において、現在ブリッピング制御中でないと判断された場合には(S44でNO)、ステップS45に処理が進められる。ステップS45では、ECU16は、実回転数表示条件が成立するか否かを判断する。実回転数表示条件は、(a)実エンジン回転数NEと実タービン回転数NTとの差がしきい値Xよりも大きい、(b)エンジントルクTEがしきい値Yよりも大きい、(c)実エンジン回転数NEが変速後推定回転数NEiよりも大きい の何れかが満たされる場合に成立すると判断される。

ステップS45において、実回転数表示条件が成立しないと判断された場合には(S45でNO)、ステップS46に処理が進められる。ステップS46では、ECU16は、変速開始時のエンジン回転数NEとタービン回転数との差が、現在のエンジン回転数とタービン回転数との差よりも大きいか否かを判断する。

ステップS46において、変速開始時のエンジン回転数NEとタービン回転数との差の方が大きいと判断された場合には(S46でYES)、ステップS47に処理が進められる。ステップS47では、補正量ΔNを変速開始時の値に固定する。そして、ステップS49に処理が進められる。たとえば、図4の時刻t2では、タービン回転数NTが変速前ギヤ段Gに対応するタービン回転数NT(G)から離れて変速後ギヤ段G−1に対応するタービン回転数NT(G−1)に向けて変化を開始している。したがって、時刻t2における回転数の差(NE−NT)を補正量ΔNとして固定し、時刻t2以降のメータ目標回転数NESHTの算出に使用している。

一方、変速開始時のエンジン回転数NEとタービン回転数との差の方が小さいと判断された場合には(S47でNO)、補正量ΔNを固定した時点よりもトルクコンバータの入力回転数(NE)と出力回転数(NT)の差が拡大し始めたことを示すので、補正量ΔNの固定は解除する。

ステップS41でダウンシフトでない(S41でNO)、または、ステップS42でイナーシャ相でない(S42でNO)、ステップS43で被駆動時でない(S43でNO)、または、ステップS44でブリッピング制御中である(S44でYES)、またはステップS46で「変速開始時NE−変速開始時NT>現在NE−現在NT」が成立しない(S46でNO)場合には、ステップS48に処理が進められ、補正量ΔNは固定されずに、ΔN=NE−NTによって計算され更新される。そして、ステップS49に処理が進められる。

ステップS49では、メータ目標回転数NESHTを次式によって算出する。 NESHT=NT(G−1)+ΔN ここで、NT(G−1)は、現在の車速Vでダウンシフト後のギヤ段G−1で走行したと仮定した場合の自動変速機の入力回転軸の回転数(=タービン回転数)を示す。またΔNは、ステップS47で固定された補正量または、ステップS48で更新された補正量を示す。

上記のメータ目標回転数NESHTは、メータ表示回転数NEMETを算出する際に用いる、フィルタ処理における目標エンジン回転数に相当する。つまり、フィルタ処理を行う前の値がメータ目標回転数NESHTであり、フィルタ処理を行った後の値がメータ表示回転数NEMETである。

ステップS45において、実回転数表示条件が成立すると判断された場合には(S45でYES)、ステップS50に処理が進められる。ステップS50では、現在のエンジン回転数NEがメータ目標回転数NESHTに設定される。

上記の実回転数表示条件は、例えば、エンジン被駆動状態でダウンシフトが行われた場合に、トルク残りによって実エンジン回転数NEと実タービン回転数NTとの差が変速前後で大きく異なると予測される場合に成立するように定められている。ダウンシフト変速開始判定時に、前記の何れかの条件が満たされるときは、トルク残りによって実エンジン回転数NEが著しく高い状況であり、変速完了後に実エンジン回転数が低くなるため、変速が開始した時点の補正量ΔNに固定して、メータ目標回転数NESHT=NT(G−1)+ΔN と設定すると、変速完了時の実エンジン回転数NEとNESHTとの乖離が大きくなることから、制御終了時にNESHTが急激に低下して違和感を生じさせる。上記のように現在のエンジン回転数NEをメータ目標回転数NESHTに設定すれば、このような乖離やNESHTの急激な低下がなくなる。

例えば、アクセル高開度状態からアクセルを離した直後などの場合は、アクセルがオフ状態であっても、トルク急変による車両挙動の乱れを防止する目的で一定時間のなましを掛けて緩やかにエンジントルクTEをゼロにすることが行われており、このような状態でマニュアルシフト操作でダウンシフト変速が行われると、トルク残りによって、上述したようにエンジン回転数NEが著しく高い状況が生じ得る。

なお、前記基準差分値X、基準トルク値Yは、エンジントルクの残存状態を判定するための定数であり、自動変速機やトルクコンバータ等の特性に応じて設定されるものであるが、例えば、運転者が違和感を感じるようなメータ表示回転数の低下が生じない値に実験的に定めることができる。

また、前記実回転数表示条件において、エンジントルクTEは、例えば、スロットル開度Thに基づいてECU16で算出される。また、変速後推定回転数NEiは、例えば、タービン回転数NT及びエンジントルクTEをパラメータとし、タービントルクTTについて示す以下の式に基づいて演算される理論上のエンジン回転数である。 TT=Tr×TE=C×NEi2 上式において、Trはトルク比、Cはトルクコンバータ12の容量係数であり、何れも速度比E(=NEi/NT)をパラメータとして、予め設定されたマップ等から求められる。以上の関係から、回帰計算により変速後推定回転数NEiが演算される。

ステップS49,S50においてメータ目標回転数NESHTが算出された後には、ステップS51において、回転数差ΔNA(=NEMET−NESHT)に基づいて、イナーシャ相フェーズのフィルタ係数K1が算出される。フィルタ係数については以下に説明する。

図12は、フィルタ係数を決める際に使用されるマップの一例を示した図である。図12において、縦軸にフィルタ係数K、横軸に回転数差が示される。イナーシャ相フェーズでは、フィルタ係数K1が図12に示すように決定される。

ECU16は、現在のメータ表示回転数NEMETがフィルタ係数Kに対応する時間後に目標値(フィルタ処理前の値)に到達するように処理サイクル1回あたりの変化分を決定し、次回サイクルのメータ表示回転数NEMETを算出する。したがって、フィルタ係数Kが大きいほど目標値に追従する速度は遅くなり、変化が緩やかに出力に反映される。

図12では、現在のメータ表示回転数NEMETと目標値であるメータ目標回転数NESHTの回転数差が大きいほどフィルタ係数K1は小さくなっている。すなわち、現在値と目標値との差が大きいほどフィルタ処理は出力の変化が早くなり、現在値と目標値との差が小さいほどフィルタ処理は出力の変化が緩やかになる。したがって、目標値が大きく値が変化するような場合には、追従性が高められ、目標値があまり変化しない場合には小刻みに変動するような変化は抑制される。なお、フィルタ係数K2については、図13のフローチャートと共に後に説明する。

再び図10に戻って、ステップS51においてフィルタ係数K1が決定されると、ステップS52に処理が進められる。ステップS52では、ECU16は、現在のメータ表示回転数NEMETに対して変化の目標値をメータ目標回転数NESHTとして、フィルタ係数K1でフィルタ処理を実行し、次のメータ表示回転数NEMETを算出する。このメータ表示回転数NEMETに基づいて、タコメータ18に回転数が表示される。ステップS52でメータ表示回転数NEMETが算出されると、ステップS53において、制御は、図7のフローチャートに戻され、メータ表示回転数NEMETがタコメータ18に出力される。

次に、終了フェーズで実行されるメータ表示回転数NEMETの算出処理について説明する。図13は、変速処理の終了フェーズで実行されるメータ表示回転数NEMETの算出処理P2を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、図7に示したフローチャートの処理において、ステップS2で終了フェーズと判定され、ステップS5に処理が進められた場合に実行される。算出処理P2は、フィルタ処理を行って現在表示中のメータ表示回転数NEMETを緩やかに実際のエンジン回転数NEに移行する処理である。

図13を参照して、算出処理P2が開始されると、まずステップS61において、ECU16は、回転数差ΔNB(=NEMET−NE)に基づいて、終了フェーズのフィルタ係数K2を算出する。たとえば、図12に示すように、終了フェーズのフィルタ係数K2は、イナーシャ相フェーズのフィルタ係数K1より大きな値に設定することができる。フィルタ係数Kが大きいほど、変化の速度はゆっくりとしたものとなる。終了フェーズでは、イナーシャ相フェーズよりもエンジン回転数の変動幅は小さいので、K2>K1に設定されている。K1と同様に、回転数差が大きいほどフィルタ係数K2は小さくなっている。

ステップS61でフィルタ係数K2が決定されると、ステップS62に処理が進められる。ステップS62では、ECU16は、メータ表示回転数の目標値であるエンジン回転数NEをフィルタ係数K2に対応する速度で近づけるようにフィルタ処理を実行し、メータ表示回転数NEMETを算出する。このメータ表示回転数NEMETに基づいて、タコメータ18は回転数を表示する。ステップS62でメータ表示回転数NEMETが算出されると、ステップS63において、制御は図7のフローチャートに戻される。

図14は、前記イナーシャ相フェーズにおける算出処理P1の他の例を説明するためのフローチャートの要部を示す図であって、前記図10の一部に対応するもので、フローの図示しない部分は図10と同一である。このフローでは、ステップS45において実回転数表示条件が成立すると(S45でYES)、ステップS53に進み、制御が図7のフローチャートに戻される。すなわち、メータ目標回転数NESHTを算出することなく算出処理P1を含む制御が終了させられてメインルーチンへ戻ってしまうので、メータ表示回転数NEMETには現在のエンジン回転数NEが設定されることになる。

最後に再び図1、図2を参照して、本実施の形態について総括する。ECU16は、トルクコンバータ12を備えた自動変速機14を含む車両に設けられ、エンジン回転数を表示するメータの表示制御装置として動作する。ECU16は、自動変速機14の変速開始条件が成立した場合に、トルクコンバータ12の状態に応じた補正量ΔNと、変速後のギヤ段に対応するトルクコンバータ12のタービン回転数NT(G−1)とを加算することによって、エンジン10のメータ目標回転数NESHTを算出するとともに、メータへの表示回転数NEMETをメータ目標回転数NESHTに近づけるように構成される。ECU16は、ダウンシフトをするための変速開始条件が成立したことと、エンジン10がトルクコンバータ12側から駆動されることとを含む固定条件が成立した場合には、補正量ΔNを変速開始判断時の値に固定すると共に、トルク残りによって実エンジン回転数NEと実タービン回転数NTとの差が変速前後で大きく異なると予測できる実回転数表示条件が成立した場合には、メータ目標回転数NESHTを現在のエンジン回転数NEに設定し、または、メータ目標回転数NESHTを算出する制御を終了し、メータ表示回転数NEMETをエンジン回転数NEに設定する。

好ましくは、補正量ΔNは、エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの差を用いることができる。回転数の差(NE−NT)によって簡単に補正量を求めることができる。なお、補正量の算出方法は、例えばクラッチのトルク容量から算出する等の方法を用いても良い。

上記の構成とすると、エンジン10がトルクコンバータ12によって駆動される被駆動時において、補正量ΔNの符号が逆転するなどの変化が起こらないので、メータの表示回転数NEMETの不自然な変化を低減させることができる。

また、エンジントルクが大きい状態でダウンシフトが行われる場合などにも実エンジン回転数NEとメータ目標回転数NESHTとの乖離が大きくならないので、メータに表示するエンジン回転数の応答性を維持しつつメータの表示回転数NEMETの不自然な変化を低減させることができる。

今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内ですべての変更が含まれることが意図される。

10 エンジン、12 トルクコンバータ、14 自動変速機、16 ECU、18 タコメータ、20 ロックアップクラッチ、22 ポンプ翼車、24 タービン翼車、26 ワンウェイクラッチ、28 ステータ翼車、30 油圧回路、32 エンジン回転数センサ、34 タービン回転数センサ、36 出力軸回転数センサ、38 ポジションスイッチ、40 アクセル開度センサ、42 車速センサ、44 変速判定部、46 メータ目標回転数演算部、48 フェーズ判定部、50 フィルタ係数切替部、52 表示出力切替部

QQ群二维码
意见反馈