ハイブリッド式ホイールローダ

申请号 JP2014001198 申请日 2014-01-07 公开(公告)号 JP2015129395A 公开(公告)日 2015-07-16
申请人 日立建機株式会社; 发明人 金子 悟; 伊君 高志; 伊藤 徳孝; 関野 聡;
摘要 【課題】エンジン回転数が低く掘削作業時のパワー不足が懸念される場合にも、掘削に必要なパワーをエンジンから引き出せるハイブリッド式ホイールローダを提供する。 【解決手段】掘削作業のために掘削対象に向かって走行していると検出器62,63の出 力 値に基づいて推定した場合に、エンジン1および蓄電装置11の出力パワーを推定し、出力パワーが掘削作業に必要とされる目標パワーを下回っているとき、蓄電装置から走行電動機9に供給する電力を増加しつつ、エンジン1を目標回転数まで 加速 する制御装置200を備える。 【選択図】図7
权利要求

エンジンで電動発電機を駆動して発電した電と、蓄電装置に蓄えられた電力の少なくとも一方を利用して走行電動機を駆動して走行し、車両前方に油圧作業装置を備えるハイブリッド式ホイールローダにおいて、 前記ホイールローダの動作を検出するための動作検出器と、 前記ホイールローダが掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行していると前記動作検出器の出力値に基づいて推定した場合に、前記エンジンおよび前記蓄電装置が出力中の出力パワーを推定し、当該出力パワーが掘削作業に必要とされる目標パワーを下回っているとき、前記蓄電装置から前記走行電動機に供給する電力を前記推定がされなかった場合よりも増加しつつ、前記エンジンおよび前記蓄電装置により前記目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数まで前記エンジンを加速する制御装置とを備えることを特徴とするハイブリッド式ホイールローダ。請求項1に記載のハイブリッド式ホイールローダにおいて、 前記動作検出器は、前記油圧作業装置に含まれるバケットとリフトアームの位置を検出する位置検出器と、前記ホイールローダの速度を検出する速度検出器とであり、 前記制御装置は、前記バケットおよび前記リフトアームの位置と前記速度に基づいて、掘削作業を開始するために前記ホイールローダが掘削対象に向かって走行しているか否かを推定することを特徴とするハイブリッド式ホイールローダ。請求項1に記載のハイブリッド式ホイールローダにおいて、 前記動作検出器は、前記ホイールローダから掘削対象物までの距離を検出する距離検出器と、前記ホイールローダの速度を検出する速度検出器とであり、 前記制御装置は、前記バケットおよび前記リフトアームの位置と前記速度に基づいて、掘削作業を開始するために前記ホイールローダが掘削対象に向かって走行しているか否かを推定することを特徴とするハイブリッド式ホイールローダ。エンジンで電動発電機を駆動して発電した電力と、蓄電装置に蓄えられた電力の少なくとも一方を利用して走行電動機を駆動して走行し、車両前方に油圧作業装置を備えるハイブリッド式ホイールローダにおいて、 第1切替位置および第2切替位置に選択的に切り替えられる切替器と、 前記切換器が前記第1切替位置にある場合、前記エンジンおよび前記蓄電装置が出力中の出力パワーを推定し、当該出力パワーが掘削作業に必要とされる目標パワーを下回っているとき、前記蓄電装置から前記走行電動機に供給する電力を前記切換器が前記第2切替位置にある場合よりも増加しつつ、前記エンジンおよび前記蓄電装置により前記目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数まで前記エンジンを加速する制御装置とを備えることを特徴とするハイブリッド式ホイールローダ。請求項1また4に記載のハイブリッド式ホイールローダにおいて、 前記制御装置は、前記蓄電装置から前記走行電動機に電力を供給しても当該蓄電装置に余剰電力があるときには、さらに、当該余剰電力で前記電動発電機を力行動作させ前記エンジンを加速することを特徴とするハイブリッド式ホイールローダ。

说明书全文

本発明は発電機と蓄電装置による電を併用して走行するハイブリッド式ホイールローダに関する。

近年、環境問題、原油価格高騰などの点から、各工業製品に対して省エネ志向が強まっている。これまでディーゼルエンジンによる油圧駆動システムが中心であった作業車両(例えば、建設車両、産業車両等)の分野においても、その傾向にあり、電動化による高効率化、省エネルギー化の事例が増加してきている。

例えば、作業車両の駆動部分を電動化した場合(すなわち駆動源を電気モータにした場合)、排気ガスの低減のほか、エンジンの高効率駆動(エンジン搭載のハイブリッド機種の場合)、動力伝達効率の向上、回生電力の回収など多くの省エネルギー効果が期待できる。このような作業車両の分野では、フォークリフトの電動化が顕著であり、バッテリーの電力を用いてモータを駆動する、いわゆる「バッテリーフォークリフト」が実用化されている。また、最近では、エンジン式の油圧ショベルやフォークリフトなどにおいて、駆動源としてディーゼルエンジンと電気モータを組み合わせた「ハイブリッド車両」が製品化され始めている。さらに、ハイブリッド化した場合に燃費低減効果が見込まれる作業車両としては、ホイールローダがある。従来のホイールローダは、例えば、トルクコンバータ(トルコン)およびトランスミッション(T/M)を介してエンジンの動力を車輪に伝えて走行を行いながら、車両前方に取り付けられた油圧作業装置のバケット部分で土砂等を掘削・運搬する作業車両である。

ところで、ホイールローダの典型的な作業形態にV字掘削作業がある。V字掘削作業では、ホイールローダは、まず砂利山などの掘削対象物に対して前進し、その掘削対象物に突っ込んだ後にバケットをクラウド(チルト)させて砂利等の運搬物をバケットに積み込む。その後、後進して元の位置に戻り、バケットを上昇させながらダンプ等の運搬車両に向かって前進する。そして、バケットをダンプさせて運搬物を運搬車両に積み込んだ(放土した)後は再び後進し、元の位置に戻る。車両は以上の説明のようにV字軌跡を描きながらこの作業を繰り返し行う。

このようなV字掘削作業において、ホイールローダは、走行部分と油圧作業装置の油圧部分にエンジンの動力を分配し作業を行う。V字掘削作業は基本的にほぼ平地面で行われる作業であり、油圧作業装置で掘削対象物に突っ込んで、大きな牽引力を発生させながら当該油圧作業装置で大量の掘削物をすくい上げる動作を行うため、大きな動力が必要となる。

その一方で、このような掘削作業における走行動作を、時間あたりの作業効率(仕事率)の向上を図る観点から比較的速い車両速度で行った場合には、掘削対象に突っ込んだ際に車両速度が大きく低下し、エンジン回転数の変動が車両速度の変化に追いつかず、掘削作業でパワーが必要なときにエンジン回転数が十分に上昇していない可能性がある。このようにエンジン回転数が十分に上昇していない状態では、掘削に必要な動力をエンジンから引き出すことができないため、バケットで掘削対象物を十分に掘り込めない可能性や、バケットでスムーズに土砂をすくい上げることができない可能性が生じる。このような事態が生じた場合には、エンジン回転数が所要の回転数まで上昇した後にあらためて掘削作業をやり直すことになるため、結果的に作業効率が低下してしまう。

この種のパワー不足の解決方法としては、例えば特開2008−008183号公報に記載されたものがある。この技術では、自動運転式のホイールローダにおいて、掘削対象物に接近した状態を事前に検知した場合にエンジン回転数を上昇させ、これによりエンジン回転数が高い状態で掘削作業を開始することでエンジンからの動力が不足する事態を回避し、掘削作業にスムーズに移行することを図っている。

特開2008−008183号公報

上記の特開2008−008183号公報の技術では、走行モータの駆動、油圧作業装置に係る油圧ポンプの駆動およびエンジン加速等の全ての動力をエンジンで負担している。そのため、掘削動作を検知し、エンジン回転数の増加を図るためにエンジン動力を増加させても、走行モータおよび油圧ポンプに当該エンジン動力を取られるため、エンジン動力をエンジンの加速のみに割り当てる場合と比較してエンジン回転数の上昇速度は制限的となってしまう。そのため、掘削動作検知時のエンジン回転数や掘削対象物までの距離によっては、当該掘削対象物との接触時までにエンジン回転数を目標値まで上昇できないおそれもある。また、掘削作業に間に合うように最大のパワーでエンジンを加速させる対応も考えられるが、この場合には余計な燃料噴射が発生するため、結果的に燃費が悪くなる可能性もある。

そこで、本発明の目的は、燃費低減を目的に導入されたハイブリッド式ホイールローダにおいて、エンジンの回転数が低下して、その後の掘削作業でのパワー不足が生じる可能性がある場合においても、燃費を損なうことなく、掘削時にエンジンから所要のパワーを引き出すことができるハイブリッド式ホイールローダを提供することにある。

上記目的を達成するために、本発明は、エンジンで電動発電機を駆動して発電した電力と、蓄電装置に蓄えられた電力の少なくとも一方を利用して走行電動機を駆動して走行し、車両前方に油圧作業装置を備えるハイブリッド式ホイールローダにおいて、前記ホイールローダの動作を検出するための動作検出器と、前記ホイールローダが掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行していると前記動作検出器の出力値に基づいて推定した場合に、前記エンジンおよび前記蓄電装置が出力中の出力パワーを推定し、当該出力パワーが掘削作業に必要とされる目標パワーを下回っているとき、前記蓄電装置から前記走行電動機に供給する電力を前記推定がされなかった場合よりも増加しつつ、前記エンジンおよび前記蓄電装置により前記目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数まで前記エンジンを加速する制御装置とを備える。

本発明によれば、エンジンの回転数が低下し、その後の掘削作業でパワー不足が生じる可能性がある場合においても、燃費を損なうことなく、掘削時にエンジンから所要のパワーを引き出すことができる。

本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダの側面図。

図1に示したホイールローダ100のシステム構成図。

従来のホイールローダの代表的な構成例を示す図。

ホイールローダの作業パターンの一例であるV字掘削動作を示す図。

掘削作業の前進動作におけるリフトアームとバケットの位置状態(油圧作業装置の姿勢)を示す図。

本発明の第1の実施の形態における制御装置200の機能ブロック図。

本発明の第1の実施の形態に係る掘削時のパワー不足回避制御の処理内容を示すフローチャート。

本発明に係る一連の制御処理を適用した場合と、適用しなかった場合のそれぞれについて、各部に出力したパワーの割合の一例を模式的に示した図。

本発明と比較例での蓄電装置の出力タイミングの違いを示す図。

本発明の第2の実施の形態における制御装置200の機能ブロック図。

本発明の第2の実施の形態に係る掘削時のパワー不足回避制御の処理内容を示すフローチャート。

後に詳述するように、本発明の各実施の形態では、エンジンで電動発電機を駆動して発電した電力と、蓄電装置(二次電池やキャパシタ)に蓄えられた電力の少なくとも一方を利用して走行電動機を駆動して走行し、バケットおよびリフトアームを含む油圧作業装置を車両前方に備えるハイブリッド式ホイールローダにおいて、前記ホイールローダの動作を検出するための動作検出器と、前記ホイールローダが掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行している(後述の「(1)前進動作」)と前記動作検出器の出力値に基づいて推定した場合に、前記エンジンおよび前記蓄電装置が出力中の出力パワーを推定し、当該出力パワーが掘削作業に必要とされる目標パワーを下回っているとき、前記蓄電装置から前記走行電動機に供給する電力を前記推定がされなかった場合よりも増加しつつ、前記エンジンおよび前記蓄電装置により前記目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数まで前記エンジンを加速する制御装置とを備えている。

このように構成したハイブリッド式ホイールローダにおいて、前記制御装置は、前記動作検出器の出力値に基づいて、掘削作業を行う際の一連の掘削動作のうちホイールローダが掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行しているか否かを判定する。そして、前記制御装置は、ホイールローダによって当該走行動作が行われていると推定した場合には、前記エンジンおよび前記蓄電装置が出力中のパワー(出力パワー)と、円滑な掘削作業の実現のために前記エンジンおよび前記蓄電装置によって出力すべきパワーの値として予め定めた又は予め算出したパワー(目標パワー)とを比較する。その結果、出力パワーが目標パワーを下回っていることが判明したら、前記蓄電装置から前記走行電動機に供給する電力を前記走行動作が行われていないと推定する場合よりも増加しつつ、前記エンジンおよび前記蓄電装置により前記目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数まで前記エンジンを加速する。このように前記走行電動機の駆動と前記エンジンの加速を行うと、前記走行電動機の駆動に前記蓄電装置の電力を利用した分だけ、前記エンジンの加速に利用できるエンジン出力を増加できるため、前記走行電動機の駆動に前記蓄電装置の電力を利用しない場合よりもエンジン回転数を短時間で目標値まで上昇できる。また、バケットが掘削対象物に接触する前にエンジン回転数が上昇している状態を容易につくりだすことができるので、掘削作業でのパワー不足が生じる可能性が少なくなる。

したがって、本発明によれば、エンジン回転数が比較的低い状態で掘削作業を開始しようとする場合(例えば、比較的高速で移動することでV字掘削作業を短時間サイクルで行う場合)においても、エンジンの燃費を損なうことなく、バケットが掘削対象物に接触する時点からエンジンから所要のパワーを引き出すことができる。また、V字掘削作業を短時間サイクルで行うことが容易になるので、時間あたりの作業効率(仕事率)も向上できる。

また、前記動作検出器として、前記油圧作業装置に含まれるバケットとリフトアームの位置を検出する位置検出器と、前記ホイールローダの速度を検出する速度検出器とをさらに備え、前記制御装置が、前記バケットおよび前記リフトアームの位置と前記速度に基づいて、前記ホイールローダが掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行しているか否かを推定するように構成することが好ましい。

前記位置検出器としては、例えば、前記バケットと前記リフトアームの回転度センサが利用可能である。そして、リフトアームが下がった状態でバケットの開口部が正面を向いた状態に係る当該2つの角度の組み合わせが当該2つの回転角度センサで検出できれば、掘削作業の準備動作である掘削対象物への前進走行動作に係る姿勢で前記油圧作業装置が保持されている推定できる。当該推定に加えて、前記速度検出器による車速が前進走行中であることを示す設定値を超えていると判定できたら、ホイールローダが掘削作業の準備動作である掘削対象物への前進走行動作を行っていると推定し、その動作中のみに前記走行電動機の駆動と前記エンジンの加速に係る前記の一連の処理を実行することができる。

また、前記動作検出器として、前記ホイールローダから掘削対象物までの距離を検出する距離検出器と、前記ホイールローダの速度を検出する速度検出器とをさらに備え、前記制御装置が、前記掘削対象物までの距離と車両速度に基づいて、掘削作業のために前記ホイールローダが掘削対象に向かって走行しているか否かを判定するように構成しても良い。この場合にも、ホイールローダの掘削対象物への接近と、ホイールローダの速度とにより、ホイールローダが掘削作業の準備動作である掘削対象物への前進走行動作を行っていると推定できるので、その動作中のみに前記走行電動機の駆動と前記エンジンの加速に係る前記の一連の処理を実行することができる。

また、前記動作検出器に代えて、第1切替位置および第2切替位置に選択的に切り替えられる切替器を備え、さらに、前記切換器が前記第1切替位置にある場合、前記エンジンおよび前記蓄電装置が出力中の出力パワーを推定し、当該出力パワーが掘削作業に必要とされる目標パワーを下回っているとき、前記蓄電装置から前記走行電動機に供給する電力を前記切換器が前記第2切替位置にある場合よりも増加しつつ、前記エンジンおよび前記蓄電装置により前記目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数まで前記エンジンを加速する制御装置を備えても良い。なお、前記切替器としては、例えば、オペレータの手動操作によって前記第1切替位置および前記第2切替位置に選択的に切り替えられるスイッチやレバーが利用可能である。

このように構成すると、前記切替器を第1切替位置に切り替えている間は、前記走行電動機の駆動と前記エンジンの加速に係る前記の一連の処理が実行され得る状態が保持されるので、オペレータの意思や作業計画等に沿ったホイールローダ運用が容易に行える。例えば、掘削作業の継続実施が前提となる状況では前記切替器を第1切替位置に切り替えて作業することができるし、ホイールローダの移動が主目的等で掘削作業を実施しない状況が継続することが予め分かっている場合には前記切替器を第2切替位置に切り替えて作業することができる。

また、上記のように前記蓄電装置から前記走行電動機に電力を供給しても当該蓄電装置に余剰電力があるときには、当該余剰電力で前記電動発電機を力行動作させ前記エンジンを加速することが好ましい。これにより、前記電動発電機により前記エンジンの駆動がアシストされるので、前記エンジンを目標回転数まで加速するために必要な時間をさらに短縮できる。またその際のエンジンの燃料消費量も削減することができる。

以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダの側面図である。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付しており、当該同じ部分の説明は省略することがある。

図1のホイールローダ100は、車体110と、この車体110の前方に取り付けた油圧作業装置50とを備えている。車体110は、アーティキュレート操式(車体屈折式)を採用しており、それぞれ左右に車輪61(前輪61a、後輪61b)を装着した前部車体(フロントフレーム)111と後部車体(リアフレーム)112を、略鉛直方向の軸心を有するピン115で連結している。図1には示されていないが、ピン115の左右両側には前部車体111と後部車体112を連結するようにステアリングシリンダ53(図2参照)が配置されている。運転室(キャブ)116内に設置されたステアリングホイール(図示せず)を操作すると、ステアリングシリンダ53の伸縮駆動に伴って後部車体112と前部車体111はピン115を中心にして屈折(旋回)する。

後部車体112上には、前方に運転室116、後方にエンジン室117が搭載されている。エンジン室117には、図2に示したディーゼルエンジン1、油圧ポンプ4、コントロールバルブ55、電動発電機6、蓄電装置11及び走行電動機(走行用モータ)9等が収納されている。

油圧作業装置50は、リフトアーム121及びバケット122と、リフトアーム121及びバケット122を駆動するために伸縮駆動されるリフトシリンダ52及びバケットシリンダ51を備えている。なお、リフトアーム121とリフトシリンダ52は前部車体111の左右に1つずつ装備されているが、図1で隠れている右側のリフトアーム121とリフトシリンダ52は省略して説明する。

リフトアーム121は、リフトシリンダ52の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(俯仰動)する。バケット122は、バケットシリンダ51の伸縮駆動に伴って上下方向に回動(ダンプ動作又はクラウド動作)する。なお、図示したホイールローダ100は、バケット122を作動させるためのリンク機構として、Zリンク式(ベルクランク式)のものを採用している。当該リンク機構にはバケットシリンダ51が含まれている。

図2は図1に示したホイールローダ100のシステム構成図である。この図に示すホイールローダは、ディーゼルエンジン1と、エンジン1に機械的に連結されエンジン1によって駆動される電動発電機(モータ/ジェネレータ(M/G))6と、電動発電機6を制御するインバータ装置7と、電動発電機6に機械的に連結され、電動発電機6及びエンジン1の少なくとも一方に駆動される油圧ポンプ4と、コントロールバルブ55を介して油圧ポンプ4から供給される圧油によって駆動される油圧アクチュエータ(バケットシリンダ51、リフトシリンダ52及びステアリングシリンダ53)と、ディファレンシャルギア(Dif)及びギア(G)を介してプロペラシャフト8に取り付けられ4つの車輪61を駆動する走行電動機9と、走行電動機9を制御するインバータ装置10と、DCDCコンバータ12を介してインバータ7,10(電動発電機6,走行電動機9)と電気的に接続されインバータ7,10との間で直流電力の受け渡しを行う蓄電装置11と、油圧アクチュエータ51,52,53を駆動するための操作信号を操作量に応じて出力する操作装置(操作レバー56及びステアリングホイール(図示せず))と、ホイールローダ100に必要な性能を発揮するための各種制御処理を実行してハイブリッドシステムを統括的に制御する制御装置200とを備えている。

さらにホイールローダ100は、ホイールローダ100の速度(車両速度)を算出するために利用される各車輪61の回転量・回転角度・回転位置を検出するロータリエンコーダ62と、掘削作業に適した走行電動機9およびエンジン1の制御(後述する図7のS102〜S105の処理)の継続実施を選択的に指示するための作業設定スイッチ65と、前部車体111に対するリフトアーム121の回転角を検出するためのロータリポテンショメータ(角度検出器)63aと、リフトアーム121に対するバケット122の回転角を検出するためのロータリポテンショメータ(角度検出器)63bとを備えている。

制御装置200には、操作レバー(フロント部レバー)56から出力された操作信号(操作量を含む)と、運転室116内に設置されたアクセルペダル及びブレーキペダルの踏み込み量と、ホイールローダの前進/後進を選択的に指示するためのF/Rスイッチ(図示せず)のスイッチ信号(前後進信号)と、各エンコーダ62によって検出された各車輪61の回転速度と、インバータ10から出力される走行用電動機9の回転数と、エンジン1の回転数(エンジン回転数)と、蓄電制御装置25で算出される蓄電装置11の現在のSOCと、作業設定スイッチ65の切替位置と、ポテンショメータ63a,63bによって検出されたリフトアーム121およびバケット122の回転角度が入力されている。

ホイールローダは一般に主な駆動部として、4つの車輪61に係る走行駆動部(ホイール部分)と、フロント部の油圧作業装置50に係る油圧駆動部(リフト/バケット部分)を有しており、エンジン1の出力を主動力源にして、4輪の車輪61により走行を行いながら、油圧ポンプ4によって駆動される油圧作業装置50で土砂等を掘削・運搬する作業用車両である。走行電動機9は、エンジン1で電動発電機6を駆動して発電した電力と、蓄電装置11に蓄えられた電力との少なくとも一方を利用して駆動され、これにより4つの車輪61が駆動されてホイールローダの走行が実現される。

蓄電装置11としては、リチウム電池などの2次電池や、電気2重層キャパシタなど比較的大きな電気容量を搭載することが可能であり、DCDCコンバータ12によって蓄電装置11の電圧に関する昇降圧制御を行い、インバータ7,10との間で直流電力の受け渡しを行っている。

図3は従来のホイールローダの代表的な構成例を示す図である。この図に示した従来のホイールローダは、主な駆動部として走行体60と油圧作業装置50(リフト/バケット部分)を備えており、トルクコンバータ(トルコン)2およびトランスミッション(T/M)3を介してエンジン1の動力を車輪61に伝えて走行を行い、さらに油圧ポンプ4によって駆動される油圧作業装置50で土砂等を掘削・運搬する。トルコンの動力伝達効率は電気による動力伝達効率より劣る。一方、図2に示したホイールローダでは、走行駆動部分を電動化(パラレル式ハイブリッド構成も含む)し、主にエンジン1の動力により電動発電機6で発電した電力を利用して走行電動機9を駆動することで走行動作を行っている。その際、蓄電装置11では車両制動時の回生電力の吸収やエンジン1に対する出力アシストを行い、車両の消費エネルギーの低減を図っている。

ところで、既述の通り、本発明が対象とするホイールローダの典型的な作業としてV字掘削作業がある。V字掘削作業の概要を図4に示す。ここではV字掘削作業を行うために連続して行われるホイールローダの一連の動作を、(1)前進動作、(2)掘削動作、(3)後退動作、(4)前進動作、(5)放土動作、(6)後退動作の6つに分類する。そして、前半の3つの動作(1)〜(3)に係る作業を「掘削作業」とし、後半の3つの動作(4)〜(6)に係る作業を「運搬作業」とし、ここでは掘削作業にかかる3つの動作(1)〜(3)について説明する。

掘削作業に係る(1)前進動作は、これに続く(2)掘削動作の準備動作として重要であり、(1)前進動作では、ホイールローダは、リフトアームを下ろしバケットの開口部が掘削対象物(砂利山等)に向くように油圧作業装置の姿勢を保持して掘削対象物に対して前進し、油圧作業装置から掘削対象物に突っ込む。図5に(1)前進動作におけるリフトアーム121とバケット122の位置状態(油圧作業装置の姿勢)を示す。なお、前進動作では、バケット122の底面を地面と平行に保持することが好ましい。

次の(2)掘削動作では、ホイールローダは、油圧作業装置が掘削対象物に接触した状態から前進してバケットを掘削対象物に押し込みつつ、リフトアーム上げとバケットクラウドの2つの動作を行って、砂利などの運搬物をバケット内に積み込みながら当該運搬物をすくい上げる。なお、掘削動作に係るリフトアーム上げとバケットクラウドの両動作は、単独操作により個別に行っても良いし、複合操作により同時に行っても良い。

そして、(3)後退動作では、ホイールローダは、(2)掘削動作で運搬物を入れて持ち上げたバケットを、リフトアーム下げと後退(バック)の2つの動作を行うことで、バケットの開口部を上に向けた状態で(1)前進動作を行う前の位置に戻る。なお、リフトアーム下げと後退の両動作は、単独操作により個別に行っても良いし、複合操作により同時に行っても良い。

上記のように、掘削作業時のホイールローダは、(1)前進動作と(2)掘削動作において、大きな牽引力で掘削対象物に突っ込み、さらにその後、大量の運搬物をすくい上げるため、大きな動力を必要とする。V字掘削作業を比較的低い車両速度で繰り返す場合、掘削作業の動力源となるエンジンの回転数はほぼ目標回転数付近に保持されるため、パワーが不足することなく掘削作業を実施することが可能である。

しかしながら、作業効率を上げるために、V字掘削作業が、運搬作業と掘削作業の双方において比較的速い車両速度で実施されることがある。掘削作業時に比較的速い速度で車両が掘削対象物に突っ込むと大きな減速度が発生する。そして、速い車両速度で掘削作業を繰り返し実施するような場合には、エンジン回転数の変動が車両の速度変化に追いつかず、エンジン回転数が上昇しないことがある。エンジン回転数が低い場合には、掘削対象物への突っ込み時やバケットによる運搬物のすくい上げ時において、十分なパワーが得られない。そのため、掘削対象物への突っ込みが浅くなって十分な量をバケットに積み込めなくなったり、バケットのすくい上げに時間がかかったりして、著しく作業効率が低下するおそれがある。

この種のパワー不足の解決を図3に示した一般的なホイールローダで試みた技術として、例えば特開2008−008183号公報に記載されたものがある。当該技術は、エンジンの動力をトルクコンバータ(T/C)およびトランスミッション(T/M)によりタイヤに伝えて走行を行いながら、フロント部の油圧作業部のバケット部分で土砂等を掘削・運搬するホイールローダにおいて、事前に掘削作業の実施を検知し、あらかじめエンジンの回転数を上昇させている。しかし、このようにエンジン回転数の上昇を図っても、図3に示したホイールローダでは次のような課題が存在する。

図3には一般的なホイールローダにおけるエンジンのパワー配分が示されている。図3に示したホイールローダのエンジン1は、その動力を、走行用動力25、フロントの油圧作業部用動力26、エンジン加速用動力27のすべてに配分する必要がある。よって、エンジン動力は大きなものとなり、その分、損失も大きくなる。さらに、エンジン加速用動力が小さくなるため、所要のエンジン回転までの加速時間が余計にかかる可能性も出てくる。その結果、掘削時にパワーが必要となるタイミングに追いつかない可能性も出てくる。

そこで、上記のような課題を鑑み、本実施の形態では、走行部を走行電動機9により電動化したハイブリッド式のホイールローダにおいて、当該ホイールローダの動作に基づいて掘削作業に係る(1)前進動作の実施を(2)掘削動作の開始前に検知し、その検知結果に基づいて、蓄電装置11から走行電動機9に供給する電力を増加しつつ、掘削動作の開始前にエンジン1の回転数をあらかじめ上昇させておくことで、スムーズな掘削動作に必要なエンジン回転数の補償を行うこととした。これにより、より低損失で短時間にエンジン回転を上昇させることができる。

以下、本発明の主な特徴となるハイブリッド式ホイールローダの掘削作業時のパワー不足回避制御について述べる。この制御は制御装置200内でソフトウェアの処理により実行される。図6は、本発明の第1の実施の形態における制御装置200の機能ブロック図である。この図に示すように、制御装置200は、エンコーダ62およびポテンショメータ63a,63bの出力値から検出される動作に基づいて、ホイールローダによって行われている作業を推定する作業推定部35と、エンジン1と蓄電装置11の状態に基づいてエンジン1および蓄電装置11が出力中のパワー(「出力パワー」と称することがある)を推定する出力パワー推定部36と、円滑な掘削作業(掘削動作)の実現のためにエンジン1および蓄電装置11により出力すべきパワー(「目標パワー」)を算出する目標パワー演算部37と、エンジン1と走行電動機9を利用して目標パワーを出力するために必要な制御を行うパワー制御部38、として機能する。なお、ここにおける出力パワーおよび目標パワーに係る「パワー」とは、エンジン1および/または蓄電装置11の出力(単位は、例えば、[kW]、[ph])のことであり、仕事率とも言う。

ここで、本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダにおける掘削時のパワー不足回避制御の処理内容について、図7に示したフローチャートを用いて説明する。図7に示した処理が開始されたら、作業推定部35は、S101で次の動作が(2)掘削動作であるか否かを判断する。具体的には、ホイールローダ100が掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行する(1)前進動作中であるか否かを判定し、その結果、(1)前進動作中であると判定された場合に、次の動作が(2)掘削動作であると推定する。

本実施の形態においては、S101で作業推定部35が、ホイールローダの動作に基づいて、掘削作業に係る前進動作の実施を掘削動作の開始前に検知する方法として、前部車体111に対するリフトアーム121の回転角を検出する角度検出器(ポテンショメータ63a)と、リフトアーム121に対するバケット122の回転角を検出する角度検出器(ポテンショメータ63b)と、ホイールローダ100の速度を検出する速度検出器(エンコーダ62)とを利用するものを採用している。

この方法では、まず2つの角度検出器63a,63bにより油圧作業装置50の姿勢を検出する。図5の車両姿勢図に示したように、リフトアーム121が最も下がった状態と、バケット122の開口部が正面を向いた状態との組合せが(1)前進動作時の油圧作業装置50の姿勢である。そして、速度検出器62により取得した車両速度に基づいて掘削対象物への走行を検出する。これにより、図5に示した姿勢で、かつ、速度検出器62による車両速度が所定の閾値以上であった場合には、ホイールローダ100が掘削作業を開始するために掘削対象に向かって走行しており(すなわち、(1)前進動作が実施されており)、その後に、油圧作業装置50が掘削対象物と接触して、掘削動作が実施されることが推定できる。

なお、本実施の形態では、作業推定部35において、ポテンショメータ63aによる検出角度が、リフトアーム121が最も下がった状態における角度を含む所定の範囲であり、かつ、ポテンショメータ63bによる検出角度が、リフトアーム121が最も下がった状態でバケット122の底面が地面と平行になった状態における角度を含む所定の範囲である場合に、油圧作業装置50の姿勢が(1)前進動作時の姿勢であると判定している。

また、掘削作業における(1)前進動作と、運搬作業における(4)前進動作との相違点としては、バケット122の姿勢が挙げられる。運搬作業に係る(4)前進動作では、バケット122は運搬物を落とさないように、その開口部が上向きに保持されている場合が多い。したがって、ポテンショメータ63bの出力値に基づいて、掘削時の前進動作と運搬時の前進動作を判別することができる。

ところで、S101で掘削作業に係る前進動作の実施を掘削動作の開始前に検知する他の検知方法としては、ホイールローダ100から掘削対象物までの距離を検出する距離検出器と、ホイールローダ100の速度を検出する速度検出器とを利用する方法がある。距離検出器としては、車両前方の撮影が可能なように運転室116の上方に搭載したカメラ(画像認識装置)64(図1参照)が利用可能である。カメラ64の他にも、レーザーセンサやミリ波センサ等が利用可能であり、これらセンサにより掘削対象物からの反射光や反射波を検出することで当該掘削対象物までの距離を検出しても良い。また、速度検出器としては、先の場合と同様にエンコーダ62が利用可能である。

この場合、作業推定部35は、距離検出器(カメラ64)の出力値に基づいて制御装置200で算出される掘削対象物までの距離が閾値未満である場合に当該掘削対象物までの接近を検出し、さらに、速度検出器(エンコーダ62)による車両速度が閾値を超えている場合に、当該掘削対象物への接近が単なる接近ではなく“当該掘削対象物への突っ込み”であると確認した場合に、掘削作業にかかる前進動作が実施されていると推定する。なお、上記の処理に代えて、距離検出器による検出距離の時間変化を算出し、当該時間変化に基づいて掘削対象物への突っ込みを検出しても良い。

S101で次に掘削動作が行われると判断された場合には、パワー制御部38は、車両において掘削作業時に必要とされる目標パワーと、現在のエンジン1と蓄電装置11の出力の合計である出力パワーとを比較し、掘削動作でパワーが不足するか否かを判定する(S102)。このときの出力パワーの演算は出力パワー演算部36で行われ、目標パワーの演算は目標パワー演算部37で行われる。

S102において、出力パワー演算部36は、エンジン1と蓄電装置11の状態(例えば、エンジン1の回転数と蓄電装置11の電圧等の情報)に基づいて出力パワーを演算し、当該出力パワーをパワー制御部38に出力する。なお、蓄電装置11の出力制御として、エンジン1の出力が不足した場合のみに蓄電装置11の出力を発生する制御を採用している場合には、(1)前進動作中にエンジン1の出力が不足する場面は殆ど無く、これにより蓄電装置11が出力する場面も殆ど無いので、出力パワー算出時の蓄電装置11の出力は無視しても良い。すなわち、この種の制御を採用している場合(または、当該制御を行っているものとみなす場合)には、エンジン1の回転数のみから出力パワーを算出しても良い。

ところで、目標パワーは、その時点の車両速度により概算推定が可能な値である。そのため、S102において、目標パワー演算部37は、速度検出器62の出力から演算された車両速度に基づいて目標パワーを算出し、当該目標パワーをパワー制御部38に出力する。

なお、目標パワーとして、目標パワー演算部37から設定値を出力しても良い。すなわち、円滑な掘削動作の実現が容易なパワー値(設定値)を予め定めておき、当該設定値を目標パワーとして利用しても良い。

また、蓄電装置11の出力制御として、エンジン1の出力が不足した場合のみに蓄電装置11の出力を発生する制御を採用している場合(または、当該制御を行っているものとみなす場合)には、出力パワーのときと同様に、目標パワーはエンジン1の目標回転数として定義できる。そのため、S102において、出力パワー演算部36からエンジン1の実回転数を出力し、目標パワー演算部37からエンジン1の目標回転数を出力し、パワー制御部38で当該実回転数と当該目標回転数を比較する処理を実行しても良い。

S102において、出力パワーが目標パワーを下回っている場合(換言すれば、目標パワーが出力パワーより大きかった場合)、すなわち、その後の掘削作業でパワー不足が発生すると判断された場合には、S103においてパワー制御部38は蓄電装置優先出力処理を行う。蓄電装置優先出力処理とは、走行電動機9への電力供給に関して、電動発電機6(すなわちエンジン1)からの電力が占める量/割合を減らす一方で、蓄電装置11からの電力が占める量/割合をS101およびS102でNoと判定された場合(S103を経由しなかった場合)よりも増加する処理である。つまり、S103を経由しなかった場合と比較して、エンジン1で電動発電機6を駆動して発生した電力を走行電動機9に供給する量を低減またはゼロにし、蓄電装置11の電力を走行電動機9に供給する電力を増加する処理のことである。

S103の処理を実行したら、パワー制御部38は、エンジン1と蓄電装置11の現在の出力パワーに基づいて、エンジン1と蓄電装置11によりS102の目標パワーを出力するために必要なエンジン回転数(目標回転数)を演算し(S104)、さらに、当該目標回転数までエンジン1の回転数を加速する指令をエンジン1に出力し、実際にエンジン軸を加速する(S105)。

なお、蓄電装置11の出力制御として、エンジン1の出力が不足した場合のみに蓄電装置11の出力を発生する制御を採用している場合(または、当該制御を行っているものとみなす場合)であって、S102でエンジン1の実回転数と目標回転数を比較する前述の処理を行っている場合には、S104でエンジン1の実回転数に基づいて目標回転数を演算し、当該目標回転数に基づいてS105のエンジン加速処理を行えば良い。

S105が終了したら、S101に戻り、上記の処理を繰り返す。また、S101において次に掘削動作が行われないと判断された場合と、S102において出力パワーが目標パワーを上回っている場合についても同様とする。

図7に示した一連の制御処理による効果について図8を利用して説明する。図8は、図7に示した一連の制御処理を適用した場合(下段)と、適用しなかった場合(上段)のそれぞれについて、各部に出力したパワーの割合の一例を模式的に示した図である。図8においてハッチングを付した部分はエンジン1のパワーを表しており、ハッチングの無い部分は蓄電装置11のパワーを表している。図7に示した制御処理を適用すると、S103の蓄電装置優先出力処理により、図8の下段に示すように走行電動機9に必要なパワーが蓄電装置11から供給されるようになる。そのため、図8の上段の場合と比較して、エンジン1は自身の加速(すなわち、回転数の増加)のために上段の場合よりも大きなパワーを分配することができる。

その結果、目標エンジン回転数までエンジン1を加速するために必要な時間が短縮されるので、油圧作業装置50が掘削対象物に接触する前(すなわち、(2)掘削動作が開始する前)に、(2)掘削動作に必要なエンジン回転数まで加速することが容易になる。さらに、走行電動機9の動力(走行用動力)に蓄電装置11からのパワーを配分するため、エンジンパワーを自己の加速に配分する場合と比較して効率面で劣る走行用動力への配分量を減らすことができ、エンジン1の損失自体も低減させることが可能となる。これはハイブリッド車の省エネルギーに対する効果からして有効な動作であるといえる。

なお、図8に示した各部へ供給されるパワー割合は模式的なものに過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、図8の上段の例として、蓄電装置11のパワーがゼロの場合を例示したが、蓄電装置11のパワーで走行電動機9または電動発電機6を駆動しても良い。また、図8の下段の例として、走行電動機9の駆動に必要なパワーを全て蓄電装置11のパワーで賄う場合を例示したが、蓄電装置11のSOCや走行電動機9の要求パワーによってはその一部しか賄えない場合もある。しかし、この場合についても蓄電装置11が走行電動機9の駆動に充当したパワーに相当する分だけは、エンジン加速に利用可能なエンジン出力を増加できるので、程度は劣るものの同質の効果を得ることができる。

ところで、本発明のポイントは、事前に掘削動作の開始を推定し、掘削操作の開始よりも早いタイミングで蓄電装置11から電力を走行電動機9に対して供給する点にある。これに対して、本発明を用いない場合(以下、「比較例」と称することがある)の制御では、油圧作業装置50が掘削対象物に接触して掘削動作が開始した以後にパワー不足が判明した時点ではじめて蓄電装置11からの電力供給が開始される。よって、本発明と比較例の違いは、蓄電装置11の出力パワーの立ち上がりタイミングの違いとして現れる。本発明と比較例における蓄電装置11のパワーの立ち上がりタイミングを図9に示す。

図9に示すように、比較例では、掘削動作が開始された時点ではじめてパワー不足が判定され、その時点ではエンジン回転が十分に立ち上がっていない可能性があり、掘削動作に必要な程度までエンジン回転数を増加するまでに比較的大きな電力の出力が必要になる。また、このとき、車両の掘削動作の挙動はパワー不足によりスムーズな動作とならない可能性がある。

これに対して本発明では図9に示すように、前進動作中に掘削動作の開始を推定し、掘削動作の開始前に蓄電装置11のパワーを走行電動機9に供給するため、実際の掘削開始時にはエンジン1が掘削動作に必要なパワーを十分に出力可能な状態となっている可能性が高い。そして、蓄電装置11の出力自体は大きな変化が無いので、スムーズに掘削動作を継続することが可能となる。

以上のように本実施の形態では、制御装置200において、事前に掘削動作を推定し、蓄電装置11の電力を走行電動機9の駆動に優先的に使用することによりエンジン1の回転数上昇をスムーズに行い、これにより、掘削動作の開始時にパワー不足を発生することなく作業を継続することが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、エンジンの回転数が低下し、その後の掘削作業でパワー不足が生じる可能性がある場合においても、燃費を損なうことなく、掘削時にエンジンから所要のパワーを引き出すことができる。

なお、図7のS103において蓄電装置11から走行電動機9に電力を供給しても蓄電装置11にまだ余剰電力があるときには、さらに、当該余剰電力で電動発電機6を力行動作させることで、エンジン1の加速をアシストすることも可能である。このように電動発電機6によりエンジンの加速をアシストすれば、目標エンジン回転数までエンジン1を加速するために必要な時間をさらに短縮できる。またその際のエンジンの燃料消費量も削減することができる。

ところで、上記の第1の実施の形態では、作業推定部35の判定結果に基づいて図7に示したS102からS105までの一連の処理を実行するか否かを決定したが、これに代えてオペレータによって手動操作される作業設定スイッチ65の切替位置に応じてS102からS105までの一連の処理を実行するか否かを決定するように制御装置200を構成しても良い。この場合の構成例を本発明の第2の実施の形態として次に説明する。

図10は本発明の第2の実施の形態における制御装置200の機能ブロック図である。この図に示す制御装置200は、作業推定部35の代わりにスイッチ部41を備えている。スイッチ部41は、作業設定スイッチ65の切替位置に連動して動作するもので、作業設定スイッチ65が、S102からS105までの一連の処理の継続実施を指示する第1切替位置(ON位置)にあるときには接点が接触して回路を繋げ、第2切替位置(OFF位置)にあるときには接点が離れて回路を切断する。

図11は、本発明の第2の実施の形態に係るハイブリッド式ホイールローダにおける掘削時のパワー不足回避制御の処理内容を示すフローチャートである。図11に示した処理には、S101に代えて、作業設定スイッチ65の切替位置判断ロジック(S200)が含まれている。S200では、制御装置200は、作業設定スイッチ65の切替位置がON位置にあるか否かを判定する。S200で作業設定スイッチ65の切替位置がON位置(第1切替位置)にあると判定されたら、図7と同様にS102以降の一連の処理を実行する。これにより、S103において、蓄電装置11から走行電動機9に供給される電力が、作業設定スイッチ65がOFF位置にある場合よりも増加される。

一方、S200で作業設定スイッチ65の切替位置がOFF位置にあると判定されたら、S200に戻り処理を繰り返す(すなわち、作業設定スイッチ65がON位置に切り替えられるまで待機する)。

第1の実施の形態では、ホイールローダの動作に基づいて掘削動作の開始を事前に推定していたため、当該推定と実際の作業の間にズレが生じる可能性があることを否定できず、掘削作業を継続実施することが予め判明している場合には当初からS102からS105までの一連の処理が実行されるように設定した方が好ましいこともある。そこで、本実施の形態では、作業設定スイッチ65をON位置に切り替えている間は、走行電動機9の駆動とエンジン1の加速に係るS102からS105までの一連の処理が実行され得る状態が保持されることとした。したがって、本実施の形態によれば、オペレータの意思で作業計画等に沿ったホイールローダ運用が容易に行うことができる。例えば、掘削作業の継続実施が前提となる状況では作業設定スイッチ65をON位置に切り替えて作業することができるし、ホイールローダの移動が主目的等で掘削作業を実施しない状況が継続することが予め分かっている場合には作業設定スイッチ65をOFF位置に切り替えて作業することができる。

なお、図2に示したハイブリッドシステムはいわゆるシリーズ型(直列型)といわれる構成であるが、本発明は、図2に示した構成に限定されることなく、ハイブリッドシステムに少なくともシリーズ型の構成が含まれていれば適用可能であり、さらにパラレル型(並列型)のハイブリッドシステムについても適用可能である。

また、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。

また、上記の制御装置200に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記の制御装置200に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該制御装置200の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。

また、上記の各実施の形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。

1…エンジン、4…油圧ポンプ、6…電動発電機、9…走行電動機、11…蓄電装置、35…作業推定部、36…出力パワー演算部、37…目標パワー演算部、38…パワー制御部、41…スイッチ部、50…油圧作業装置、61…車輪、62…エンコーダ(速度検出器)、63…ポテンショメータ(角度検出器)、65…作業設定スイッチ、111…前部車体、116…運転室、121…リフトアーム、122…バケット、200…制御装置

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