【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ホイールのディスク部の外側面を覆う防錆カバーを当該ディスク部に取り付けるための防錆カバー取付構造に関する。 【0002】 【従来の技術】自動車は、組み立て完了後から納車までの間、保管等のために長期間露天下に晒されることがある。 ここで、スチール製のホイールを使用した場合、雨水等によってホイールが錆びたり、内部に配置されたディスクブレーキ装置のディスクロータ等が錆びたりするおそれがある。 このため、従来ではホイールに別部品である防錆カバーを取り付けることによってホイール等の防錆性を確保していた。 この種の防錆カバーの構成の一例が実開平2−138237号公報に開示されており、 以下に簡単に説明する。 【0003】図9及び図10に示されるように、タイヤ100の軸心部には、ホイール102が配置されている。 ホイール102のインボード側にはディスクブレーキ装置のディスクロータ104が配置されており、又アウトボード側にはホイールキャップ106が配置されている。 これらのディスクロータ104、ホイール10 2、及びホイールキャップ106は、ディスクロータ1 04のインボード側に配置されたアクスルハブ108から突出されたハブボルト110及びハブナット112によって共締めされている。 【0004】上述したホイールキャップ106のアウトボード側には、円板形状の防錆カバー114が取り付けられるようになっている。 この防錆カバー114は、硬質塩化ビニル樹脂等の薄肉硬質合成樹脂によって製作されている。 防錆カバー114の中央部には環状のリブ1 16及び十字状のリブ118が形成されており、これらのリブ116、118によって区画された扇状の各凹部120には円形の貫通孔122がそれぞれ形成されている。 【0005】上記構成の防錆カバー114は、以下の要領でホイールキャップ106に取り付けられる。 まず、 防錆カバー114の貫通孔122とハブナット112とを同軸上に位置させて、ホイールキャップ106に対する防錆カバー114の位置決めを行う。 次に、防錆カバー114の貫通孔122内へ円筒状の係止具124を挿入させる。 図11に示されるように、この係止具124 の頭部側の外周面には溝126が形成されており、係止具124を貫通孔122内へ挿入させると防錆カバー1 14の凹部120における貫通孔122の周縁部が溝1 26内へ嵌合して抜止めとして作用する。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構成による場合、別部品である複数の係止具124を用いて防錆カバー114をホイールキャップ106に取り付ける構成であるため、部品点数が増加してコストアップを招くという問題がある。 【0007】また、防錆カバー114の取付時には複数の係止具124を対応する貫通孔122内へそれぞれ挿入させなければならず、防錆カバー114の取外し時には複数の係止具124を対応する貫通孔122からそれぞれ抜き取る必要があること、更にはこの係止具124 の形状では頭部をつまみにくいことから、防錆カバー1 14の着脱に手間及び時間がかかるという問題もある。 【0008】本発明は上記事実を考慮し、部品点数を増加させることなく、着脱性に優れた防錆カバー取付構造を得ることが目的である。 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、ホイールのディスク部の外側面を覆う防錆カバーを当該ディスク部に取り付けるための防錆カバー取付構造であって、ホイールのディスク部に突出状態で配置されかつホイールをアクスルハブに締結する締結具と対応する防錆カバーの所定位置に、当該締結具に離脱可能に係止される係止手段を一体に設けた、ことを特徴としている。 【0010】請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、さらに、前記ホイールに離脱可能に係合される係合手段を一体に設けた、ことを特徴としている。 【0011】請求項1記載の本発明によれば、防錆カバーをホイールのディスク部の外側面に装着させる際には、防錆カバーに一体に設けられた係止手段を締結具に対して同軸上に位置させた後、係止手段を締結具に係止させるだけでよい。 なお、防錆カバーをホイールのディスク部の外側面から離脱させる際には、係止手段と締結具との係止状態を解除するだけでよい。 従って、防錆カバーのホイールへの着脱に際して、従来技術のように別部品である係止具を挿入又は離脱させる作業は不要となり、着脱の手間及び時間が省ける。 【0012】また、上述した係止手段は防錆カバーに一体に設けられているので、部品点数も増加しない。 【0013】請求項2記載の本発明によれば、ホイールに離脱可能に係合される係合手段を防錆カバーに一体に設けたので、係止手段を締結具に係止させた後に、係合手段をホイールに係合させることにより、風等によって防錆カバーがばたつくことがなくなる。 このため、防錆カバーの取付状態が安定化する。 【0014】 【発明の実施の形態】 〔第1の実施の形態〕以下、図1〜図5を用いて、本発明の第1の実施の形態について説明する。 【0015】図1に示されるように、アクスルハブ10 のフランジ部10Aのアウトボード側には、ディスクブレーキ装置の一要素を構成するディスクロータ12が同軸的に配置されている。 ディスクロータ12は略円盤形状を成しており、図示しないキャリパ内に配設された一対のブレーキパッドが圧接されるフランジ部12A及びこのフランジ部12Aの軸心部に配置された有底円筒状のボス部12Bを備えている。 【0016】ディスクロータ12のアウトボード側には、スチール製のホイール14が配置されている。 ホイール14は略円筒形状を成しており、図示しないタイヤが装着されてこれを支持するリム部14A及びこのリム部14Aの軸心部に配置されたディスク部14Bを備えている。 【0017】上述したアクスルハブ10のフランジ部1 0Aにディスクロータ12のボス部12B及びホイール14のディスク部14Bが当接状態で位置決めして配置され、この状態でアクスルハブ10のフランジ部10A から突出されたハブボルト16にハブナット18が螺合されることにより、ホイール14がディスクロータ12 と共にアクスルハブ10に共締めされている。 なお、本実施形態では、ハブボルト16及びハブナット18がホイール14のみならずディスクロータ12をもアクスルハブ10に固定しているが、必ずしも上記構成に限らず、アクスルハブ10にディスクロータ12が一体に形成されている場合やディスクロータ12がアクスルハブ10に圧入されている場合もある。 【0018】上述したホイール14のディスク部14B のアウトボード側には、ファイバーモールド材によって構成された防錆カバー20が取付けられている。 なお、 ファイバーモールド材は、古紙を利用したものである。 図2にも示されるように、防錆カバー20は正面視で略円板形状を成しており、軸心部に配置された凹部20A と、この凹部20Aの外周部から径方向外側へ湾曲した形に延出された湾曲部20Bと、から成る。 凹部20A の軸心部はアウトボード側へ膨出されており、更にその軸心部には貫通孔22が形成されている。 【0019】また、凹部20Aの外周部には、複数の係止部24が所定の間隔で一体に形成されている。 なお、 各係止部24は、ハブナット18の設定位置に対して同軸上となる位置に設定されている。 図3及び図4に示されるように、係止部24は、凹部20Aの所定部位(ハブナット18と同軸上となる部位)にハブナット18の外径よりも小径とされた貫通孔26を形成すると共に、 この貫通孔26の周縁部を90度間隔で四分割する4本のスリット28を貫通孔26と連続して形成することにより構成されている。 これにより、貫通孔26の周縁部に形成された4つの係止片24Aは各々弾性変形可能とされている。 なお、図4に示される如く、各係止片24 Aの内端は、ハブナット18のテーパ面に合致する傾斜角度で面取りしておくのが好ましい。 【0020】さらに、図1及び図2に示されるように、 防錆カバー20における係止部24(係止手段)の設定位置よりも径方向外側、即ち防錆カバー20の湾曲部2 0Bの外周部には、ホイール14のディスク部14Bに形成された開口30に係合される4つの係合部32が所定の間隔で一体に形成されている。 なお、このディスク部14Bに形成された開口30は、のぞき穴であり既設のものである。 図5に拡大して示されるように、係合部32は、自然状態(二点鎖線図示状態)で湾曲部20B からホイール14のディスク部14B側へ突出する突起状に形成されており、その断面形状は略台形状とされている。 自然状態での係合部32のテーパ面32Aの先端側の曲率半径R 1は、ホイール14の開口30の内周縁の曲率半径R 2よりも小さく設定されている。 従って、 防錆カバー20の係止部24をハブナット18に係止させると、係合部32のテーパ面32Aがホイール14の開口30の内周縁に干渉するようになっている。 【0021】次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。 防錆カバー20をホイール14のディスク部14 Bの外側面に装着させるには、まず防錆カバー20のホイール14に対する周方向の位置決めを行う。 つまり、 防錆カバー20の係止部24とホイール14のディスク部14Bから突出しているハブナット18とを同軸上に位置させる。 次に、その状態を維持しながら、防錆カバー20をホイール14のディスク部14Bに押し付ける。 これにより、防錆カバー20の係止部24の貫通孔26内へハブナット18が相対的に嵌入される。 このとき、係止部24を構成する各係止片24Aが弾性変形することでハブナット18の貫通孔26内への嵌入が許容され、完全に貫通孔26内へハブナット18が嵌入されると係止片24Aの先端部がハブナット18のテーパ面に当接して係止状態となる。 【0022】次に、防錆カバー20に設けられた各係合部32をホイール14のディスク部14Bに形成されている開口30へ係合させる。 具体的には、係止部24がハブナット18に係止された時点では、係合部32のテーパ面32Aの先端側の曲率半径R 1がホイール14の開口30の内周縁の曲率半径R 2よりも小さく設定されていることから、自然状態における係合部32のテーパ面32Aは開口30の内周縁に干渉した状態にある。 すなわち、係合部32は開口30に未だ係合されていない状態にある。 この状態から、係合部32を開口30内へ押し込むことにより、係合部32のテーパ面32A上を開口30の内周縁が相対的に摺動して係合部32を径方向外側へ弾性変形させる。 これにより、係合部32は、 その弾性復元力によって開口30の内周縁に完全に係合される。 【0023】なお、防錆カバー20をホイール14のディスク部14Bから離脱させる際には、防錆カバー20 の軸心部に形成された貫通孔22内へ指を引っ掛けて、 防錆カバー20をホイール14のディスク部14Bから離間する方向へ引き抜けばよい。 これにより、係合部3 2は径方向外側へ弾性変形しながら開口30から離脱され、又係止部24は貫通孔26の中心側へ弾性変形しながらハブナット18から離脱される。 【0024】以上の着脱操作から判るように、本実施形態では、防錆カバー20のハブナット18と対応する位置に弾性変形することによりハブナット18に離脱可能に係止される係止部24を一体に設けたので、従来技術のように別部品である係止具を挿入又は離脱させる作業は不要となり、着脱の手間及び時間が省ける。 このため、防錆カバー20のホイール14への着脱性を向上させることができる。 【0025】しかも、本実施形態では、係止部24を防錆カバー20に一体に形成したので、部品点数が増加することもなく、低コスト化を図ることができる。 【0026】さらに、本実施形態では、係止部24に加えて、この係止部24の設定位置よりも径方向外側に係合部32を設け、防錆カバー20とホイール14のディスク部14Bとを離脱可能に係合させる構成としたので、風等によって防錆カバー20がばたつくのを防止することができる。 このため、防錆カバー20の取付状態の安定化を図ることができ、防錆カバー20のホイール14からの離脱を有効に防止することができる。 【0027】また、本実施形態における防錆カバー20 はファイバーモールド材によって構成されているため、 防錆カバー20が劣化したとき等にはこれを古紙として再利用することができる。 【0028】〔第2の実施の形態〕以下、図6〜図8を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。 なお、第1の実施の形態と同一構成部分については同一番号を付してその説明を省略する。 【0029】これらの図に示されるように、本実施形態に係る防錆カバー40では、軸心部に配置された凹部4 0Aに前述した係止部24を備えている点で第1の実施の形態を踏襲するものである。 しかし、この防錆カバー40では係合部42の構成が前述した係合部32の構成とは相違しており、以下この点について説明する。 【0030】図7に示されるように、防錆カバー40の湾曲部40Bの外周縁には、複数の突起状の係合部42 が所定の間隔で一体に形成されている。 係合部42の形状は正面視で略矩形状とされており、自然状態(図8の二点鎖線図示状態)での係合部42の外周縁の径方向寸法はホイール14のリム部14Aの周方向壁部44の内径寸法よりも若干大きく設定されている。 【0031】上記構成によれば、防錆カバー40の係止部24をホイール14のディスク部14Bに突出しているハブナット18に係止させた後、係合部42を図8の二点鎖線図示状態から実線図示状態となるように弾性変形させてホイール14のリム部14Aの周方向壁部44 の内周面に係合させる。 これにより、防錆カバー40 は、係合部42の弾性復元力によってホイール14に安定的に取り付けられる。 従って、本実施形態によっても、風等によって防錆カバー40がばたつくことはなく、防錆カバー40のホイール14からの離脱を有効に防止することができる。 【0032】なお、上述した実施形態では、係合部3 2、42が防錆カバー20、40の湾曲部20B、40 Bの外周縁近傍又は外周縁に設定されているが、基本的には係止部24の設定位置よりも径方向外側に係合部3 2、42が設定されていればよい。 【0033】また、係止部24及び係合部32、42の構成は上記構成に限られず、係止手段にあっては防錆カバーに一体に設けられ締結具に離脱可能に係止されるものであればすべて適用することができ、又係合手段にあっては防錆カバーに一体に設けられホイールに離脱可能に係合されるものであればすべて適用することができる。 【0034】さらに、上述した実施形態では、防錆カバー20、40の係止部24をハブナット18に係止させたが(この場合の締結方式は、ハブナット締結方式と呼ばれている)、これに限らず、ホイール14の外方側からハブボルトを挿入してアクスルハブ10に螺合させることによりホイール14及びディスクロータ12をアクスルハブ10に締結する方式(この場合の締結方式は、 ハブボルト締結方式と呼ばれている)に本発明を適用してもよい。 なお、この場合は、係止部24はハブボルトの頭部に係止されることになる。 【0035】 【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の本発明に係る防錆カバー取付構造は、ホイールのディスク部に突出状態で配置されかつホイールをアクスルハブに締結する締結具と対応する防錆カバーの所定位置に、当該締結具に離脱可能に係止される係止手段を一体に設けたので、部品点数を増加させることなく、着脱性を向上させることができるという優れた効果を有する。 【0036】また、請求項2記載の本発明に係る防錆カバー取付構造は、請求項1記載の本発明において、さらに、ホイールに離脱可能に係合される係合手段を一体に設けたので、防錆カバーのホイールからの離脱を有効に防止することができるという優れた効果を有する。 【図面の簡単な説明】 【図1】第1の実施の形態に係る防錆カバーをホイールへの取付状態で示す図2の1−1線に沿った断面図である。 【図2】図1に示される防錆カバーの取付状態の正面図である。 【図3】図1に示される防錆カバーに設けられた係止部の拡大正面図である。 【図4】図3に示される係止部の縦断面図である。 【図5】図1に示される防錆カバーに設けられた係合部の拡大断面図である。 【図6】第2の実施の形態に係る防錆カバーをホイールへの取付状態で示す図7の6−6線断面図である。 【図7】図6に示される防錆カバーの取付状態の正面図である。 【図8】図6に示される防錆カバーに設けられた係合部の拡大断面図である。 【図9】従来例に係る防錆カバーのホイールへの取付状態を示す縦断面図である。 【図10】図9に示される防錆カバー等をホイールから分離した状態で示す分解斜視図である。 【図11】図9に示される防錆カバーの取付に際して使用される係止具を示す要部断面図である。 【符号の説明】 10 アクスルハブ 14 ホイール 14B ディスク部 16 ハブボルト(締結具) 18 ハブナット(締結具) 20 防錆カバー 24 係止部(係止手段) 32 係合部(係合手段) 40 防錆カバー 42 係合部(係合手段) |