耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール及びその製造方法

申请号 JP2014077714 申请日 2014-04-04 公开(公告)号 JP2017105221A 公开(公告)日 2017-06-15
申请人 BBSジャパン株式会社; ミリオン化学株式会社; 大日本塗料株式会社; 发明人 曽根崎 陽; 松村 健樹; 難波 信次; 栢本 厚志; 八尾 允康;
摘要 【課題】超軽量であり、しかも回転曲げ疲労強度に優れており、更に耐温 水 性、防錆性等の耐食性を向上させたマグネシウム 合金 鍛造ホイール及びその製造方法を提供する。 【解決手段】マグネシウム合金鍛造素材上に形成されたカルシウムとマンガンとリンとを含む 化成 皮膜層と、前記化成皮膜層上に形成されたプライマー層とを備えた耐食性マグネシウム合金鍛造ホイールであって、前記マグネシウム合金鍛造素材は、その表面に平均結晶粒子径が80μm以下であるマグネシウム粒子を含有し、前記化成皮膜層に含まれるカルシウム/マンガンの付着量重量比は0.40〜0.60であり、前記プライマー層が重量平均分子量30,000以下のエポキシ樹脂を含み、且つ防錆顔料を2.0重量%以下含むエポキシ樹脂系プライマー塗料から形成されたことを特徴とする。 【選択図】図3
权利要求

マグネシウム合金鍛造素材上に形成されたカルシウムとマンガンとリンとを含む化成皮膜層と、前記化成皮膜層上に形成されたプライマー層とを備えた耐食性マグネシウム合金鍛造ホイールであって、 前記マグネシウム合金鍛造素材は、その表面に平均結晶粒子径が80μm以下であるマグネシウム粒子を含有し、前記化成皮膜層に含まれるカルシウム/マンガンの付着量重量比は0.40〜0.60であり、前記プライマー層が重量平均分子量30,000以下のエポキシ樹脂を含み、且つ防錆顔料2.0重量%以下を含むエポキシ樹脂系プライマー塗料から形成されたことを特徴とする耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。前記化成皮膜層はカルシウムを1〜150mg/m2、マンガンを2〜380mg/m2、リンを1〜600mg/m2含むことを特徴とする請求項1に記載の耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。前記エポキシ樹脂系プライマー層に含まれるエポキシ樹脂が重量平均分子量9,000〜20,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。前記プライマー層上に保護層を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。表面の平均結晶粒子径が80μm以下のマグネシウム合金鍛造ホイール素材の該表面をカルシウムイオンとマンガンイオンとリン酸イオンとを含む化成処理液と接触させて該マグネシウム合金鍛造ホイール素材上にカルシウムとマンガンとリンとを含み、且つカルシウム/マンガンの付着量重量比が0.40〜0.60の化成皮膜を形成する工程と、前記化成皮膜上に重量平均分子量が30,000以下のエポキシ樹脂を含み、且つ防錆顔料2.0重量%以下を含むエポキシ樹脂系プライマー塗料を塗装してプライマー層を形成する工程と、を含むことを特徴とする耐食性マグネシウム合金鍛造ホイールの製造方法。

说明书全文

本発明は耐食性マグネシウム合金鍛造ホイールに関する。特に超軽量、かつ耐食性及び回転曲げ疲労強度が優れたマグネシウム合金鍛造ホイール及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、自動車用のマグネシウム合金鍛造ホイール及びその製造方法に関する。

従来、タイヤやチューブ等の取付部材である車両、特に自動車のホイールとして、スチール製やアルミニウム製のものが使用されてきた。しかし近年、自動車業界においては、地球温暖化を背景に、軽量化のためにマグネシウムを含む合金製のホイール(以下「Mgホイール」ともう。)の供給が期待されている。

Mgホイール自体は、国際自動車連盟(FIA)が主催する自動車レースの最高峰であるF1世界選手権等のレース用自動車に既に採用されている。しかしながら、Mgホイールは、高価でかつ耐食性が劣るなどの理由により、一般乗用車に必要とされる汎用性を有していないため、一般市場に普及されるに至っていない。

Mgホイールは、マグネシウムを含有する。マグネシウムは、その表面にアルミニウムと異なり酸化被膜を形成しやすく、塩分や腐食にきわめて弱い。このため、Mgホイール表面にあらかじめ塗装処理、防錆処理等の処理をしなければならない。Mgホイール表面の表面層が剥がれたら速やかに補修をしなければならない。この理由は、Mgホイール表面のマグネシウムが大気に露出すると、マグネシウムが分や酸素等と反応して腐食、錆が発生して、Mgホイールの機械的強度等が急速に低下しまうからである。また、Mgホイールを装着した自動車を海岸沿い等、塩分を多く含む環境下で乗用する場合には、頻繁に洗浄をしなければならない。

一方、省資源、省エネルギー等の観点から、自動車の軽量化が強く要望されると共に、マグネシウム合金の耐食性が向上したこともあって、Mgホイールを一般乗用車に採用したいというニーズが大きくなっている。マグネシウムの比重はアルミニウムの比重よりも少なくとも35%小さい。このため、自動車用ホイールの素材として、アルミニウムに代えてマグネシウムを採用した場合には、自動車用ホイール自体の重量を15〜25%軽量化することができる。さらに、技術的に重要なことは、自動車用ホイールの重量を軽量化することは、いわゆる自動車の脚回りである「バネ下重量の軽量化」に他ならないことである。

すなわち、「バネ下重量の軽量化」は、自動車の脚回りから上の「バネ上重量の軽量化」の10倍以上に匹敵する。自動車の脚回りである「バネ下重量の軽量化」を実現することにより、自動車発進時のスムーズな加速のみならず、走行時における路面の凹凸に対する自動車車体のレスポンスの向上にダイレクトに繋がる。その結果、自動車走行時のハンドルのブレが減少するなど運転性能の向上にも大きく繋がる。このようなニーズを受けて、マグネシウム合金を素材として採用し、一般的な皮膜処理を行って、製造されたマグネシウムホイールが提案されている(例えば、非特許文献1)。

しかしながら、この改善されたマグネシウムホイールと従来のスチールやアルミニウム等によるホイールとを比べてみると、Mgホイールは軽量であることにおいて優れているが、耐食性(例えば、塩水噴霧試験)は実用的にみて十分でなく、アルミニウムホイールに比べて極端に劣っている。

そこで、Mg合金ホイールの耐食性を向上させるために、Mg合金表面に種々の耐食性塗膜を形成する方法が提案されており、その中にはカルシウムイオン、マンガンイオン及びリン酸イオンを含む処理液によりMg合金ホイール素材上に化成皮膜を形成して、耐食性、防錆性、塗装密着性を向上させる方法がある(例えば、特許文献1〜4)。しかしながら、このように塗装したMgホイールにおいて、走行中に跳ね上げられた飛び石等の衝突によって塗膜表面がキズつきやすく、そのキズが素材にまで達してその部分から腐食して孔食を起こしやすいという欠陥を有しており、その改良が強く望まれている。なお、本件特許出願人は、上記文献公知発明が記載された刊行物として、以下の刊行物を提示する。

特開平11−131255号公報

特開2000−96255号公報

特開2003−286582号公報

特開2005−281717号公報

特開2003− 82277号公報

BBS JAPAN FORGED WHEEL CATALOG(「BBSジャパン株式会社」2013年12月1日発行)

本発明は、かかる技術的事情に鑑みなされたものであって、従来のマグネシウム合金ホイールにおける問題を解決し、超軽量であり、しかも回転曲げ疲労強度に優れており、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性を向上させたマグネシウム合金鍛造ホイール及びその製造方法を提供することを課題とする。

本件発明者は、鋭意技術的検討を行った結果、マグネシウム合金鍛造ホイールの部材として、マグネシウム合金鍛造素材上に形成されたカルシウムとマンガンとリンとを含む化成皮膜層とその化成皮膜層上に形成されたプライマー層とを備えることにより、超軽量であり、しかも回転曲げ疲労強度に優れており、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下の技術的事項から構成される。

(1) マグネシウム合金鍛造素材上に形成されたカルシウムとマンガンとリンとを含む化成皮膜層と、前記化成皮膜層上に形成されたプライマー層とを備えた耐食性マグネシウム合金鍛造ホイールであって、前記マグネシウム合金鍛造素材は、その表面に平均結晶粒子径が80μm以下であるマグネシウム粒子を含有し、 前記化成皮膜層に含まれるカルシウム/マンガンの付着量重量比は0.40〜0.60であり、 前記プライマー層が重量平均分子量30,000以下のエポキシ樹脂を含み、且つ防錆顔料2.0重量%以下を含むエポキシ樹脂系プライマー塗料から形成されたことを特徴とする耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。

(2) 前記化成皮膜層はカルシウムを1〜150mg/m2、マンガンを2〜380mg/m2、リンを1〜600mg/m2含むことを特徴とする(1)に記載の耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。

(3) 前記エポキシ樹脂系プライマー層に含まれるエポキシ樹脂が重量平均分子量9,000〜20,000であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。

(4) 前記プライマー層上に保護層と備えたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1に記載の耐食性マグネシウム合金鍛造ホイール。

(5) 表面の平均結晶粒子径が80μm以下のマグネシウム合金鍛造ホイール素材の該表面をカルシウムイオンとマンガンイオンとリン酸イオンとを含む化成処理液と接触させて該マグネシウム合金鍛造ホイール素材上にカルシウムとマンガンとリンとを含み、且つカルシウム/マンガンの付着量重量比が0.40〜0.60の化成皮膜を形成する工程と、前記化成皮膜上に重量平均分子量が30,000以下のエポキシ樹脂を含み、且つ防錆顔料2.0重量%以下を含むエポキシ樹脂系プライマー塗料を塗装してプライマー層を形成する工程と、を含むことを特徴とする耐食性マグネシウム合金鍛造ホイールの製造方法。

本発明によれば、超軽量であり、回転曲げ疲労強度に優れ、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性に優れたマグネシウム合金鍛造ホイールが提供される。

マグネシウム合金鍛造ホイールを装着した自動車の脚回りを示したモデル図である。

マグネシウム合金鍛造ホイールの断面構造を示した概略図である。

マグネシウム合金鍛造ホイールの断面構造の拡大モデル図である。

マグネシウム合金鍛造ホイールのスポーク部におけるマグネシウムの平均結晶粒径を示したIPFマップである。

リン酸マンガンカルシウム処理後のマグネシウム合金鍛造ホイール素材の回転曲げ疲労強度を測定した結果を示すS−Nグラフである。

保護層を備えたマグネシウム合金鍛造ホイールの断面構造の拡大モデル図である。

以下、本発明の実施形態を適宜図面に基づいて説明する。まず、図1は、マグネシウム合金鍛造ホイールを装着した自動車の脚回りを示したモデル図である。マグネシウム合金鍛造ホイール1のX軸方向の周囲には、タイヤ2が装着されている。マグネシウム合金鍛造ホイール1とタイヤ2は、これらを一組として、自動車Vが備えている前後左右の4箇所に装着される。

図2は、上記マグネシウム合金鍛造ホイールの断面構造を示した概略図である。マグネシウム合金鍛造ホイール1は、マグネシウム合金鍛造素材10上に化成皮膜層20が積層され、さらに化成皮膜層20上にプライマー層30が積層されている。マグネシウム合金鍛造素材10、化成皮膜層20及びプライマー層30は、相互に密着された状態で一体となって、マグネシウム合金鍛造ホイール1を形成している。以下、マグネシウム合金鍛造ホイール1について詳細に説明する。

<マグネシウム合金鍛造ホイール> 本発明のマグネシウム合金鍛造ホイールは、乗用車、オートバイ、バス、トラック、ワゴン車等の自動車、及び自転車等の車両に装着されるものである。特に自動車用鍛造ホイールとして採用される場合に必要となるニーズをすべて満たす、超軽量であり、しかも回転曲げ疲労強度に優れており、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性に優れたマグネシウム合金鍛造ホイールである。

図3は、マグネシウム合金鍛造ホイール1の断面構造の拡大モデル図である。図3に示すように、本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1は、マグネシウム合金鍛造素材10上に形成されたカルシウムとマンガンとリンとを含む化成皮膜層20とこの化成皮膜層20上に形成されたプライマー層30とを備えている。以下、マグネシウム合金鍛造ホイール1が備えている各層について説明する。

(マグネシウム合金鍛造ホイール素材10) マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)として、使用されるマグネシウム合金は、マグネシウムを主成分とする合金である。具体的にマグネシウム合金は、マグネシウムを90重量%以上とし、その他の成分として、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)等を少量、好ましくは10重量%以下の量で含有することもある合金が含まれる。

2成分系のMg−Zn合金、3成分系のMg−Al−Zn合金、4成分系のMg−Al-Zn-Mn合金等のマグネシウム合金であってもよい。さらに、上記マグネシウム合金は、不純物量(例えば0.01重量%以下)のその他の元素、例えばNi、Fe、Cu、Si等を含んでもよい。

マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)は、特に1方向若しくは2方向鍛造方式で成形される。マグネシウム合金鍛造ホイール1を成形する際の鍛錬比は、1〜15であり、好ましくは、3〜10、更に好ましくは、4〜7である。なお、マグネシウム合金鍛造ホイール素材は、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)を300〜400℃に加熱しながら、3,500〜5,000kg/cm2の圧をかけて、ホイール1次構造〜3次構造を形成する工程、及びスピニング工程を経て製造される。

マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)は、その平均結晶粒子径が300μm程度であるマグネシウム粒子を含んでいる。これを鍛造することで1方向鍛造では、平均結晶粒子径が30〜80μmに、2方向鍛造では、平均結晶粒子径が10〜30μmに微粒子化できる。平均結晶粒子径が10μm未満であると、マグネシウム粒子からなる結晶がきわめて密となり、空気孔が形成されないためマグネシウム合金鍛造ホイールの強度は向上するが、上層の化成皮膜層、プライマー層との密着性が得られ難くなるため好ましくない。また、平均結晶粒子径が80μmを超えると、マグネシウム粒子の平均結晶粒子を制御することが容易となるが、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の強度が低下するため好ましくない。

本発明において、回転曲げ疲労強度とは、以下の回転曲げ疲労試験により測定される測定結果をいう。ここで、回転曲げ疲労試験とは、JIS Z 2274「金属材料の回転曲げ疲れ試験」規格に適応した試験方法である。具体的には、回転曲げ疲労試験は、マグネシウム合金鍛造ホイール素材からなる特殊形状サンプルを作製し、小野式回転曲げ疲労試験機(東京工機株式会社製)を採用して、疲労限界を設定し、評価することにより行う。なお、2方向鍛造方式を採用して鍛造して得られたマグネシウム合金鍛造ホイールについて、回転曲げ疲労強度を測定する際には、上記疲労限界を120MPaに基準設定した回転曲げ疲労試験評価を行う。

図4は、2方向鍛造方式で作製されたマグネシウム合金鍛造ホイール1のスポーク部におけるマグネシウムの平均結晶粒径を示したIPFマップである。図4によれば、マグネシウム合金鍛造ホイール1のスポーク部におけるマグネシウムの平均結晶粒径は、12μmであることが理解できる。

図5は、マグネシウム合金鍛造ホイール素材を後述するリン酸マンガンカルシウム処理した後の当該マグネシウム合金鍛造ホイール素材について、その回転曲げ疲労強度を測定した結果を示したS−N曲線である。図5からも明らかなようにリン酸マンガンカルシウム処理した後のマグネシウム合金鍛造ホイール素材の回転曲げ疲労強度は、大きく向上し、基礎となるマグネシウム合金鍛造ホイール素材の約1.5倍の強度を示した。

すなわち、マグネシウム合金鍛造ホイール1は、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)を構成するマグネシウム粒子として、特定の平均結晶粒子半径を有するものを採択することにより、均質でかつ安定的な金属組織を形成させて、超軽量であり、しかも、回転曲げ疲労強度に優れたマグネシウム合金鍛造ホイールの提供を実現している。そして、後述するカルシウム、マンガン及びリンを含み且つカルシウム/マンガン重量比が0.6以下の化成皮膜層を採用することにより、上記の強度がきわめて優れたマグネシウム合金鍛造ホイールを製造することができる。

(化成皮膜層20) 本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1は、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10上に化成皮膜層20を備えている。化成皮膜層20はカルシウムとマンガンとリンとを含んでいる。化成皮膜層20に含まれるカルシウムとマンガンとリンは、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の表面に存在するマグネシウム粒子と相互作用の結果、安定した結晶構造を形成する。この結果、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10と化成皮膜層20とは固定化される。

化成皮膜層20に含まれるカルシウム、マンガン及びリンの含有量は、それぞれカルシウムが1〜150mg/m2、好ましくは10〜110mg/m2であり、マンガンが2〜380mg/m2、好ましくは20〜280mg/m2であり、リンが1.0〜600mg/m2、好ましくは10〜400mg/m2であることが好ましい。化成皮膜層20に含まれるカルシウム、マンガン及びリンの含有量が上記範囲内であると、化成皮膜層20内において、カルシウム、マンガン及びリンの3成分が安定化し、これらの3成分とマグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)を構成するマグネシウム粒子とにより安定な結晶構造を形成することができるため好ましい。

なお、化成皮膜層20に含まれるカルシウムとマンガンとリンの含有量は、蛍光X線(XRF)分析法により測定した。具体的には、蛍光X線(XRF)分析法による検量線法を用い、含有量が既知の標準試料の蛍光X線(XRF)強度を測定し、この標準試料の含有量と蛍光X線(XRF)の測定強度により検量線を作成した。化成皮膜層20の未知元素資料の蛍光X線強度を測定し、検量線を利用して付着量を求め、これを化成皮膜層20に含まれるカルシウム、マンガン及びリンの含有量とした。

化成皮膜層20に含まれるカルシウムとマンガンの中でマグネシウム合金鍛造ホイール素材10の表面に付着している量は、重量比(カルシウム/マンガン)で0.40〜0.60であることが好ましく、さらに好ましくは、0.45〜0.55であることが好ましい。重量比(カルシウム/マンガン)が0.40以上であるとマグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)を構成するマグネシウム粒子と安定な結晶構造を形成することができるため好ましく、0.60以下であるとマグネシウム合金鍛造ホイール1の防錆性が向上するため好ましい。

化成皮膜層20に含まれるカルシウムとマンガン及びリンは、マグネシウム合金鍛造ホイール1を構成するプライマー層30に含まれているエポキシ樹脂成分と化学的に結合することできる。化成皮膜層20の膜厚は、特に制限されるものではないが、1.0〜3.0μmであることが好ましい。

(プライマー層30) 本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1は、上記化成皮膜層20上にプライマー層30を備えている。プライマー層30は、エポキシ樹脂系プライマー塗料を上記化成皮膜層20上に塗布して形成された層である。プライマー層30に含まれるエポキシ樹脂としては、重量平均分子量が30,000以下、好ましくは9,000〜10,000のエポキシ樹脂及びこれらの誘導体が含まれる。プライマー層30に含まれるエポキシ樹脂としては、特に重量平均分子量が10,000程度のエポキシ樹脂が好ましい。

プライマー層30を構成するエポキシ樹脂の分子量を緻密に制御することにより、あらゆる自動車車種、用途に応じて造形される複雑な形状を有するマグネシウム合金鍛造ホイール素材10の細部にも、均一なプライマー層30を形成することができる。

プライマー層30に含まれるエポキシ樹脂としては、例えば下記一般式で表されるグリシジル基を含むエポキシ樹脂を挙げることができる。

(上記一般式中、Zは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)

プライマー層30に含まれるエポキシ樹脂は、上記一般式により示される置換又は非置換のグリシジル基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。エポキシ樹脂は、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、グリシジルイミン型を採ることができる。

具体的には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、フェノールノボラックのエポキシ樹脂、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル等を挙げることができる。具体例として、特殊変性エポキシ樹脂系ワニスを主剤とし、重量平均分子量10,000〜20,000程度に高分子化し、メラミン樹脂系ワニスを添加して架橋密度を上げたエポキシ樹脂系プライマー塗料を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂系プライマー塗料(商品名:BSプライマー、大日本塗料株式会社製)を用いることができる。

プライマー層30は、防錆顔料を含んでいないか、又は防錆顔料を2.0重量%以下含むことを特徴とする。マグネシウム合金鍛造ホイール1は、超軽量であり、しかも回転曲げ疲労強度に優れていることに加え、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性に優れたものであるが、マグネシウム合金鍛造ホイール素材10の材料(ビレット)を構成するマグネシウム合金粒子及び化成皮膜層を備えていることにより、特に防錆顔料を含有していなくても、十分な耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性を実現することができる。

プライマー層30は、ポリアミド硬化剤を含んでいてもよい。ポリアミド硬化剤として、第1級アミノ基又は第2級アミノ基を1分子あたり、平均1.7個以上を有するポリアミドを採用することができる。具体的には、リノレイン酸、オレイン酸、リノール酸、エライジン酸、リシノレイン酸等の分子中に不飽和結合を有する高級脂肪酸を重合して得られるダイマー酸、トリマー酸等の重合脂肪酸とポリアミン、特に脂肪酸ポリアミンとの縮合生成物を例示することができる。以下に、リノレイン酸のダイマー酸を使用した場合のポリアミドを示す。

(上記化学式中、R1及びR2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、ポリアミンの残基である。)

さらに、プライマー層30は、硬化助剤及び/又は硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化助剤としては、例えば、BF3−アミン錯体、無水ヘキサハイドロフタル酸、ジシアンジアミド、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等を例示することができる。硬化促進剤としては、トリエチルテトラミン、変性脂肪酸ポリアミン、変性芳香族ポリアミン等を例示することができる。

また、プライマー層30は、エポキシ樹脂の架橋度を調整するために、連鎖延長剤及び/又は架橋剤を含んでいてもよい。連鎖延長剤は、エポキシ樹脂の架橋度を調整することができるものであれば、特に制限されるものではないが、アゼライン酸、フマル酸等の二塩基酸、1,6−ヘキサンジジオール、1,8—オクタンジオール等のジメルカプタン類、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサハイドロフタル酸等の酸無水物、ジイソシアネート類、脂肪族アミン類、脂肪族ポリアミン類、脂環式ジアミン、脂環式ポリアミン類、複素環式ジアミン、複素環式ポリアミン類、炭素数1〜12の脂肪族ジハロゲン化合物、炭素数6〜18のジヒドロキシ芳香族化合物等を例示することができる。

プライマー層30は、必要に応じて、無機顔料を含んでいてもよい。無機顔料としては、プライマー層30に必要とされる性能を低下させるものでなければ特に制限されるものではないが、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄、黄鉛等の着色顔料、石英粉、酸化アルミナ、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料、ステンレス粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、雲母等の金属粉、フタロシアニンブルー、ベンジンジンイエロー等の防錆顔料を例示することができる。

プライマー層30は、プライマー層の原料となるプライマー塗料を化成皮膜層20上に塗装後、乾燥して得られるものである。上記プライマー塗料に含まれる溶剤としては、 適切な粘度を有するプライマー塗料を得ることができるものであれば、特に制限されるものではないが、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、イソホロン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤等を挙げることができる。

プライマー層30の膜厚は、特に制限されるものではないが10〜30μmであることが好ましい。プライマー層30の膜厚が10μm未満であると耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性を向上することができないため好ましくなく、30μmを超えるとマグネシウム合金鍛造ホイール1の超軽量化及び塗膜の密着性を向上することができないため好ましくない。

(保護層40) 本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1は、マグネシウム合金鍛造素材10上に形成されたカルシウムとマンガンとリンとを含む化成皮膜層20と、化成皮膜層20上に形成されたプライマー層30を基本層Aとし、さらにプライマー層30上に保護層40を備えていてもよい。図5に、保護層40を備えたマグネシウム合金鍛造ホイール1の断面構造の拡大モデル図を示した。図5に示されたマグネシウム合金鍛造ホイール1は保護層40として、中塗り層40a及び上塗り塗料層40bを備えている。

中塗り層40aは、マグネシウム合金鍛造ホイール1の塗装色目を調整し、さらに塗装硬度を向上させる役割を有する。さらに、上塗り塗料層40bは、マグネシウム合金鍛造ホイール1の塗装外観とホイールの表面硬度を向上させる役割を有する。本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1は、上記保護層40を備えることによって、自動車用ホイールに要求される、超軽量化、回転曲げ疲労強度、耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性に加えて、さらに、マグネシウム合金鍛造ホイール1が奏する意匠性の観点から、機能美、装飾美を備えた製品となる。

中塗り層40aは、プライマー層30を下塗り層とし、所望により、プライマー層30上にアクリル樹脂系粉体塗料を塗装して、中塗り層40aとして形成されていてもよい。上記アクリル樹脂系粉体塗料としては公知のものが使用でき、(例えば、商品名:エバクラッドEV5600DK、関西ペイント株式会社製)等が使用できる。中塗り層の平均塗装膜厚は、特に制限されるものではなく、マグネシウム合金鍛造ホイール1の用途に応じて、適宜変更することができるものであるが、通常60〜100μmである。

さらに、中塗り層40a上に上塗り塗料層40bを形成してもよい。上塗り塗料層40bは、主として美粧効果を付与するためのもので、優れた塗装外観と表面強度を向上させるそれ自体既知の塗料が使用できる。その形態は、有機溶剤及び/又は水を溶媒もしくは分散媒とする液状塗料が好ましく用いられる。該上塗り塗料はアクリル樹脂を主成分とする組成物であり、さらに必要に応じて着色顔料やメタリック顔料等を配合してなる。該樹脂組成物は基体樹脂と硬化剤とからなっている。

基体樹脂としては、例えばアクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂及びSi含有樹脂等があげられ、硬化剤としてはアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック化合物も含む)等が好ましい。例として、アクリル樹脂系着色溶剤塗料、(例えば、商品名:マジクロンAL−2200、関西ペイント株式会社製)を塗装して上塗り層40bを形成し、更にアクリル樹脂系クリアコート溶剤塗料を塗装することができる。

プライマー層30上に積層される保護層40は、上記中塗り層40a及び上塗り層40bのバリエーションに限定されるものではない。プライマー層30上に積層される保護層40は、あらゆる自動車車種に応じて考案される複雑な形状を有するマグネシウム合金鍛造ホイールの用途に応じて、種々の形態を採ることができる。具体的には、保護層40を中塗り層40a及び上塗り層40bに加え、さらに新たな機能を有する保護層を保護層40の最も上層に積層してもよいし、保護層40を中塗り層40aと上塗り層40bの間に積層してもよい。

<マグネシウム合金鍛造ホイールの製造方法> 本発明のマグネシウム合金鍛造ホイールの製造方法は、マグネシウム合金鍛造素材を表面処理する工程(i)、表面処理工程後のマグネシウム合金鍛造素材を前処理する工程(ii)(化成皮膜層形成)、下塗り工程(iii)(プライマー層形成)、及び所望により保護層形成工程(iv)(中塗り層形成及び/又は上塗り層形成)を備えている。以下、各工程につき詳細に説明する。

(マグネシウム合金鍛造素材を表面処理する工程(i)) マグネシウム合金鍛造素材10を表面処理する工程は、マグネシウム合金鍛造素材10の表面に付着した不純物を物理的に取り除くこと、及び後に形成される化成皮膜層、プライマー層等との密着性を向上させることを目的とする。さらに、マグネシウム合金鍛造素材10の表面の凹凸を均一化し、塗装後の塗装表面の外観を良くするために行われる。

マグネシウム合金鍛造素材10を表面処理する工程において、採用される表面処理としては、ブラスト処理が一般的である。ブラスト処理は、素材表面の不純物の除去及び粗面とすることでアンカー効果があり、砂状のステンレス、ジルコンやアランダム粒子を素材表面に高圧で吹き付ける方法である。マグネシウム合金鍛造素材10は、ジルコン又は酸化アルミナ粒子を使用するのが好ましい。

(マグネシウム合金鍛造素材10を前処理する工程(ii)) マグネシウム合金鍛造素材10を前処理する工程により、表面処理されたマグネシウム合金鍛造素材10上に化成皮膜層20が形成される。前処理する工程は、以下の工程(ii)-1〜工程(ii)-3を備えている。具体的は、脱脂処理後、水洗及び表面調整を1回又は数回繰り返し、水洗後、化成皮膜処理を行うことにより行われる。化成皮膜処理後は、温水洗、エアーブロー及び乾燥後、次の塗装工程に付される。

工程(ii)-1:脱脂処理は通常、pH10〜13程度のアルカリ浴液、例えば水酸化ナトリウム水溶液等であって、室温以上で50℃以下の温度、例えば40〜45℃の温度のアルカリ浴液を用いて行われる。また、脱脂処理のための浴液pHを13以上で行なう方法も含まれる。この方法によれば、マグネシウム合金鍛造素材10をその不働態域にて脱脂処理を行なうことによって、次工程の化成皮膜処理においてより安定した化成皮膜層20を得ることができる。この脱脂浴液についてpHを13以上に高めるには、苛性アルカリ等の配合量を増量することによることができる。

工程(ii)-2:上記表面調整は、無機酸及び/又は有機酸を用いることができ、無機酸としては、例えば、硫酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酢酸等が挙げられる。この工程(ii)-2により素材表面から数μmの表層を除去することで、離型剤や不純物の除去が可能となり、後に続く、工程の化成皮膜処理における、化成皮膜の形成を良好なものとすることができる。

工程(ii)-3:上記化成皮膜処理は、カルシウムイオン(Ca2+)、マンガンイオン(Mn2+)及びリン酸イオン(PO43−)を含み、Ca/Mnの重量比が0.5以下、好ましくは0.40〜0.50の水性化成処理液にて、Mg合金素材を処理することからなる。上記水性化成処理液は、カルシウムイオンを0.3〜0.6g/l、マンガンイオンをカルシウムイオンの2倍程度、即ち0.6〜1.2g/l、及びリン酸イオンを10g/l以上の割合で含有されてなる水溶液が好ましい。

カルシウムイオンが不足あるいは全く含有されない場合には、マグネシウム合金鍛造ホイール1の耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性が低下し、プライマー層30及び保護層40との塗装密着性が低下する。またマンガンイオン又はリンイオンが不足あるいは全く含有されない場合には、特に、プライマー層30及び保護層40との塗装密着性が低下することに加えて、塩素イオンを含む水との接触により白錆発生等の外観不良の原因となったりする。

カルシウムイオン源として、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、チオ硫酸カルシウム及びリン酸ニカルシウムの1種又は2種以上が使用し得るが、硝酸カルシウムが好ましい。マンガンイオン源として、硝酸マンガン、リン酸水素マンガン、重リン酸マンガン及びホウフッ化マンガンの1種又は2種以上が使用し得るが、硝酸マンガンが好ましい。リン酸イオン源として、オルソリン酸、縮合リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸の1種又は2種以上が使用し得るが、オルソリン酸が好ましい。

上記化成処理液は1.0乃至3.0のpHに調整されるのが好ましい。該処理液が1.0乃至3.0のpHに調整されると、マグネシウム合金鍛造素材10表面上に化成皮膜層を効果的に且つ支障なく形成することが可能となる。また、この化成処理液の温度条件は、被処理材表面となるマグネシウム合金鍛造素材10表面との接触時間と相関関係にある。

すなわち、上記化成処理液温度が比較的に室温程度である場合には、この接触時間は長い方が好ましく、また浴液温度が80℃程度である場合には、この接触時間は短い方が好ましい関係となっている。

具体的には、室温以上、好ましくは30℃以上80℃以下の温度で1〜10分間、特に45〜55℃で1〜5分間接触するのが好ましい。上記化成処理液の温度が30℃未満であると、前記した化成皮膜の形成にとって長時間が必要となり、得られる化成皮膜層に要求される性能が不十分となる。また80℃を超える温度となると、過剰反応により却って得られる化成皮膜について性能の低下を招くことがある。

上記化成皮膜処理により、カルシウムが1〜150mg/m2、好ましくは10〜110mg/m2、マンガンが2〜380mg/m2、好ましくは20〜280mg/m2、リンが1〜600mg/m2、好ましくは10〜400mg/m2を含む化成皮膜層20が得られる。

(プライマー層30形成工程(iii)) プライマー層30形成工程(iii)は、上記前処理工程(ii)により化成皮膜層20を形成したマグネシウム合金鍛造素材10を温水洗い及びエアーブロー乾燥後、エポキシ樹脂系プライマー塗料を塗布してプライマー層30を形成する工程である。該エポキシ樹脂としては、上記述べたエポキシ樹脂を使用することができる。

上記プライマー層30は、上記プライマー塗料の塗装後、on wet(常温乾燥のライン工程上で、通常4〜5分間)又は乾燥条件100℃,20〜30分間することにより形成される。該プライマー層30の平均塗装膜厚は、目的とする製品によるが、ホイールの場合、10〜20μmである。該プライマー層30の形成により、上記化成皮膜層20と下記の保護層40である塗装層(中塗り層)との密着性が付与され、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性が向上する。

(保護層40形成工程(iv):中塗り層形成及び/又は上塗り層形成) 図6は、保護層を備えたマグネシウム合金鍛造ホイール1の断面構造の拡大モデル図である。図6に示されるように、本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1は、所望により、プライマー層30を形成した素材にアクリル樹脂系粉体塗料を塗装して保護層40となる中塗り層40aを形成することができる。該アクリル樹脂系粉体塗料としては公知のものが使用できるが、例えば、商品名:エバクラッドEV5600DK、関西ペイント株式会社製等が使用できる。保護層40となる該中塗り層の平均塗装膜厚は通常60〜100μmである。

さらに、中塗り層40aを形成した素材に、上塗り塗料層40bを形成することができる。この上塗り塗料は、主として美粧効果を付与するためのもので、優れた塗装外観と表面強度を向上させ、それ自体既知の塗料が使用できる。塗料の形態は、有機溶剤及び/又は水を溶媒もしくは分散媒とする液状塗料が好ましく用いられる。該上塗り塗料の成分等は既に説明した通りである。

以下、実施例を比較例と共に挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。

<実施例1> 上記マグネシウム合金鍛造ホイールの製造方法により、マグネシウム合金鍛造ホイール1を製造した。マグネシウム合金鍛造素材10は、ASTM規格品AZ80に準じるマグネシウム合金を用いた。このマグネシウム合金を1方向鍛造方式にて、鍛錬比6程度にて成型した。マグネシウム合金に含まれるマグネシウム粒子の平均結晶粒子径60μmとし、微粒子化した。マグネシウム合金鍛造素材10の成分は、鉄(Fe)0.005重量%以下であり、銅(Cu)0.055重量%以下、ニッケル(Ni)0.005重量%以下のものである。

化成皮膜層20を形成するために使用する処理液は、リン酸マンガンカルシウム処理液(商品名:グランダーMC−1000W、ミリオン化学株式会社製)を使用した。マグネシウム合金鍛造素材10を脱脂処理後、上記処理液と接触させた後、水洗及び下記表面調整を1又は2回繰り返し、水洗後、マグネシウム合金鍛造素材10上に、乾燥前の化成皮膜層20を形成させた。上記化成皮膜層20を更に温水洗浄後、エアーブロー及び乾燥し、マグネシウム合金鍛造素材10上に化成皮膜層20を形成させた。具体的には、以下の手順の通りにて行った。

具体的には、以下の手順の通りにて行った。(1)脱脂:アルカリ性脱脂液;水道水を使用し、70℃で5分間撹拌浸漬。(2)水洗:水道水で30秒間水洗。(3)表面調整1:処理;イオン交換水を使用し、60℃で1分間撹拌浸漬。(4)水洗:水道水で30秒間水洗。(5)表面調整2:スマット処理イオン交換水を使用し、60℃で7分間撹拌浸漬。(6)湯洗:水道水60℃で30秒間水洗。(7)リン酸マンガンカルシウム系処理:イオン交換水を使用し、50℃で3分間撹拌浸漬。(8)純水洗:イオン交換水を使用し、30秒間シャワー水洗。(9)純水洗:イオン交換水を使用し、50℃で1分間浸漬水洗。(10)エアーブロー:表面に付着した水滴や水溜り部の水をエアーで15秒間程度吹き飛ばす。(11)乾燥:80℃熱風で、15〜30分間乾燥。

次に、マグネシウム合金鍛造素材10上に形成された化成皮膜層20上にプライマー層30を形成させた。プライマー層30の形成は、下記表2に示す塗料種を使用し、以下の方法よって、化成皮膜層20にエポキシ系樹脂プライマーを塗布することにより行った。なお、エポキシ樹脂系プライマー塗料には、(商品名:BSプライマー、大日本塗料株式会社製)、特殊変性エポキシ樹脂系ワニスを主剤とし、重量平均分子量9,000〜10,000程度に高分子化し、メラニン樹脂系ワニスを添加した塗料を用いた。

具体的には、43.4重量%の特殊変性エポキシ樹脂系ワニスAに2.1重量%エポキシ樹脂ワニス及び1.6重量%メラミン樹脂ワニスを添加し、更に33.4重量%の顔料を添加し、0.5重量%の添加剤と19.0重量%の溶剤を添加したエポキシ樹脂系プライマー塗料をマグネシウム合金鍛造素材10上にスプレー塗装にて塗布した。そして、乾燥前のプライマー層30を膜厚10〜20μmとし、その後、室温にて5〜10分間放置して乾燥させた。乾燥後、マグネシウム合金鍛造素材10に化成皮膜層20とプライマー層30とを備えた本発明のマグネシウム合金鍛造ホイール1とした。

(保護層40の形成:中塗り層及び上塗り層) さらに、上記マグネシウム合金鍛造ホイール1に対し、以下の工程に順じた塗装を施し、プライマー層30上に中塗り層及び上塗り層を形成させた。具体的な塗装工程は、中塗り塗装1→焼付け→中塗り塗装2→焼付け→上塗り1塗装→ wet→上塗り塗装2→焼付けの手順にて行った。

中塗り塗装は、アクリル樹脂系粉体塗料(商品名:エバクラッドEV5600DK、関西ペイント株式会社製)を使用し、乾燥条件160℃で40分間焼付けた。その上にアクリル樹脂系プライマー溶剤塗料(商品名:マジクロンALC-2、関西ペイント株式会社製)を使用し、乾燥条件155℃で40分間焼付けた。上塗り塗装は、アクリル樹脂系着色溶剤塗料(商品名:マジクロンAL-2200、関西ペイント株式会社製)を使用し、室温でon wet乾燥した上にアクリル樹脂系クリアコート溶剤塗料(商品名:クリア塗料マジクロンALC-100、関西ペイント株式会社製)を使用し、乾燥条件155℃で40分間焼付けた。

<実施例2、3> 実施例1のマグネシウム合金鍛造ホイールにおいて、化成皮膜層20に含まれるカルシウム、マンガン及びリンの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様にして、マグネシウム合金鍛造ホイールを製造した。

<実施例4> 表1に示すように、プライマー層20に使用するエポキシ樹脂系プライマー塗料が防錆剤を含まないこと以外は、実施例1と同様にしてマグネシウム合金鍛造ホイールを製造した。

具体的には、使用したエポキシ樹脂系プライマーは、45.2重量%の特殊変性エポキシワニスAに2.2重量%のエポキシ樹脂ワニス及び1.7重量%のメラミン樹脂ワニスと30.1重量%の体質顔料・着色顔料及び20.8重量%の溶剤と添加剤を添加したものを使用した。

<比較例1、2> 表1に示すように、プライマー層20に使用するエポキシ樹脂系プライマー塗料の組成は実施例1と同様として、化成皮膜層20に含まれるカルシウム、マンガンの含有量を変化させて、実施例1と同様にしてマグネシウム合金鍛造ホイールを製造した。

<参考例1> 実施例1のマグネシウム合金鍛造ホイールにおいて、マグネシウム合金鍛造素材10に替えて、汎用品として使用されているアルミニウム合金鍛造素材を使用した以外は、実施例1と同様にしてアルミニウム合金鍛造ホイールを製造した。なお、参考例1は、上記アルミニウム合金鍛造素材を使用した場合の性能比較であり、化成皮膜を形成させるために使用する前処理は、シランカップリング法であり、エポキシ樹脂系プライマーは実施例及び比較例で採用したエポキシ樹脂系プライマーと異なるものである。

<マグネシウム合金鍛造ホイールの評価> 実施例1、比較例1、2において製造したマグネシウム合金鍛造ホイールについて(1)初期密着性評価 (JIS K-5400)、(2)耐温水性評価(JIS K 6848)、耐食性評価 CASS試験評価(Copper-accelerated Acetic acid Salt Spray test)及び(4)耐食性評価SST試験評価(塩水噴霧試験JIS-Z2371)を評価した。評価結果を表2に示す。

(1)初期密着性評価初期密着性評価 (JIS K-5400) マグネシウム合金鍛造ホイールを製造後、1日間室温放置した後、室温下で塗装表面に指定治具を使用し、指定のカッターを用いて碁盤目100枡目を作製し、指定された剥離用テープ(ニチバン製CT)を使用して縦横2方向から各1回剥離試験評価する。剥れない枡目と100枡目を50/100のように表示し、合格基準は100/100とした。上記合格基準を満たすマグネシウム合金鍛造ホイールの評価を良好(合格)とした。

(2)耐温水性評価(JIS K 6848) イオン交換水を使用し水温40℃で180〜240時間被検体を浸漬し、被検体は温水に浸漬後室温に2〜4時間放置し室温状態に戻す。60時間毎に被検体の密着性を検査し良否の判定を行う。密着性評価は、上記の初期密着性評価基準に準じた。上記合格基準を満たすマグネシウム合金鍛造ホイールの評価を良好(合格)とした。併せて、マグネシウム合金鍛造ホイールが密着状態を保持することができる時間を測定した。

(3)耐食性評価 CASS試験評価(Copper-accelerated Acetic acid Salt Spray test) 予め指定されたXカット法により、マグネシウム合金鍛造ホイールのマグネシウム合金鍛造素材10まで達する線引きを行い、指定されたCASS試験装置に被検体をセットし、240時間まで60時間ごとに取り出して被検体が室温状態に戻るまで、約2〜4時間室温で放置後、目視観測にて「膜膨れ」状態、「錆」状態を特定した後、定規をあてて、最大の膨れ部分の測定を行う。3mm以下を合格基準とした。

(4)耐食性評価 SST試験評価 (塩水噴霧試験JIS-Z2371) 試験片の半分にカッターナイフを用いて素材に達するクロスカットを入れ、残り半分にチッビングを施す。5%塩化ナトリウム水溶液を用いて温度35±1℃の塩水噴霧試験機に放置する。120時間毎に取り出して水洗しクロスカット、エッジ及びチッビング傷からの錆、膨れの発生を測定する。3.0mm以下を合格基準とした。なお、上記の評価は鍛造ホイールと同等の成分を有した鍛造板で試験評価した。

表2からも明らかなように、本発明のマグネシム合金鍛造ホイールは、(1)初期密着性評価(JIS K-5400)、(2)耐温水性評価(JIS K 6848)、(3)耐食性評価 CASS試験評価(Copper-accelerated Acetic acid Salt Spray test)及び(4)耐食性評価SST試験評価(塩水噴霧試験JIS-Z2371)のいずれの評価においても、良好な結果を示している。実施例1〜7において製造されたマグネシウム合金鍛造ホイールは、参考例1において製造されたアルミニウム合金鍛造ホイールとほぼ同一の初期密着性、耐温水性及び耐食性を備えていることが理解できる。

本発明のマグネシム合金鍛造ホイールは、アルミニウムを合金素材として採用したアルミニウム合金鍛造ホイールとほぼ同程度の耐食性を備えていることが判明した。しかも、マグネシム合金鍛造ホイールは、上記アルミニウム合金鍛造ホイールよりも15〜25%軽いため、レース用自動車のみならず、一般用自動車に装着された場合の技術的意義は大きい。

本発明のマグネシウム合金鍛造ホイールは、超軽量であり、しかも回転曲げ疲労強度に優れており、更に耐温水性、防錆性等の長時間にわたる耐食性をきわめて向上させたものである。本発明のマグネシウム合金鍛造ホイールは、F1世界選手権等のレース用自動車のみならず、一般用自動車にも適用可能であり、きわめて汎用性が高い。このため、自動車産業全体への貢献は極めて大きい。また、一般用自動車のいわゆる脚周りの軽量化は、消費エネルギーの軽減にも繋がり、エネルギー産業、ひいては環境技術産業への貢献も期待できる。

V マグネシウム合金鍛造ホイールを装着した自動車 1 マグネシウム合金鍛造ホイール 2 タイヤ 10 マグネシウム合金鍛造素材 20 化成皮膜層 30 プライマー層(下塗り層) 40a 保護層(中塗り層) 40b 保護層(上塗り層)

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