【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、車両走行中の静粛性を高めうるロードノイズ低減装置に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 近年、乗用車等の車両において高級志向化が進んでおり、走行中における車室内での静粛化が強く望まれている。 車室内で聴取される騒音の一つにロードノイズが挙げられる。 ロードノイズは、比較的荒れた路面を車両が走行するときに、車室内で発生する「ゴー」という不快な音であり、路面の凹凸がタイヤ(とりわけスチールベルト)を振動させ、さらにこの振動がリム、車軸、サスペンション、車体などに順次伝播し、車室内で聴取されるものである。 【0003】 従来より、この種のロードノイズを低減する手法が種々提案されており、例えばトレッドゴムに柔軟なゴム材料を用いるなど等によりタイヤの振動を抑制するもの、ホイールのディスク剛性を高めるもの(下記特許文献1)、サスペンションのブッシュ類を改善し振動を抑制するもの、車室内に吸音材を配するもの等が挙げられる。 しかしながら、従来の手法は車両の設計、製造段階での対策となるため、いずれも大がかりであり、しかも既存の車両、タイヤについては対応し得ない。 【0004】 【特許文献1】 特開2002−274102号公報【0005】 本発明は、このような実状に鑑み案出なされたもので、前記ホイールの車両外側にハブボルトを用いて取り付けられる本体部と、前記本体部の取付により該本体部とホイールのディスク部との間で狭持される制振材料からなる制振部とを有することを基本として、いわゆる後付けで車両のホイールに容易に装着できしかも静粛化を効果的に実現しうるロードノイズ低減装置を提供することを目的としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明のうち請求項1記載の発明は、車両のホイールに取り付けられてロードノイズを低減する車両のロードノイズ低減装置であって、車軸から突出するハブボルトを用いてホイールの外側に取り付けされる本体部と、この本体部の外周部に固着されかつ本体部の前記取付により前記ホイールのディスク部に押圧される制振材料からなる制振部とを有することを特徴としている。 【0007】 また請求項2記載の発明は、前記本体部は、直径が200mm以上かつホイール径よりも50mm以上小さい円形をなし、かつその外周縁部に前記制振部を固着したことを特徴とする請求項1記載のロードノイズ低減装置である。 【0008】 また請求項3記載の発明は、前記制振部は、周方向に環状で連続して配されるとともに、半径方向の巾を10〜50mmかつ軸方向の厚さを1〜20mmとしたことを特徴とするロードノイズ低減装置である。 【0009】 また請求項4記載の発明は、前記制振材料は、ゴム、発泡樹脂、フェルト又はアスファルトシートであることを特徴とする請求項1記載のロードノイズ低減装置である。 【0010】 【発明の実施の形態】 以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。 図1は本実施形態のロードノイズ低減装置1の斜視図(一部破断図)、図2はタイヤTを装着した車両のホイールWを示す正面図、図3はホイールWにロードノイズ低減装置1を取り付けた状態を示す正面図、図4はその車軸中心線を含む断面図をそれぞれ示している。 本実施形態のロードノイズ低減装置1は、ホイールWに取り付けられて車両のロードノイズを低減するためのものであって、図1に示すように、本体部2と制振部3とから構成されている。 【0011】 本実施形態の本体部2は、外周縁が円形をなす小厚さの板状をなすとともに、本例ではその中央部を一方の面A側に向かって小高さで隆起させたハット状のものを例示している。 この本体部2は、例えば金属材料又は繊維強化樹脂など適宜の剛性を有する材料が用いられ、本例では厚さ約5mmの金属材料が用いられたものを示す。 この本体部2は必要な強度が得られればその厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜10mm、より好ましくは3〜7mmとすることが望ましい。 また本体部2には、その中央部に取付孔2aが複数個(本例では4個)形成されている。 取付孔2aは、ピッチ円直径(P.C.D)Ra上に等間隔で形成されており、このピッチ円直径Raは、ホイールWのボルト孔Waのピッチ円直径Rb(図2に示す)と同一で形成されている。 【0012】 前記制振部3は、制振材料Mからなり、前記本体部2の一方の面Aの外周縁部2eに例えば接着剤等の固着手段を用いて固着されている。 制振材料Mとしては、例えばゴム、発泡樹脂、フェルト、アスファルトシートなどが望ましいが、振動を吸収、緩和しうるものであれば特に上記材料に限定されるものではない。 前記ゴムとしては、ソリドゴム又は発泡ゴムのいずれでも良いし、また発泡樹脂としては発泡ウレタン、発泡ポリスチレンなどが好ましい。 また本実施形態の制振部3は、前記本体部2の外周縁部2eに沿って周方向に環状で連続するものが示されている。 これにより、ホイールに取り付けられたときの重量バランスを均一化するのに役立つ。 【0013】 ホイールWは、図2、図4に示す如く、タイヤTを保持するリム部5と、このリム部5を車軸DAに接続するためのディスク部4とからなる。 ディスク部4は、ボルト穴Waとハブ穴Wbを有するディスク中央部4aと、このディスク中央部4aから間欠的に半径方向外側にのびてリム部5に連なるスポーク部4bとから構成されたものを示す。 ボルト穴Waには、車軸DAからのびるハブボルト7が挿入され、又はパブ穴Wbには車軸DAのハブ軸が挿入される。 【0014】 ロードノイズ低減装置1は、ホイールWを固着する車軸DAのハブボルト7を用いて取り付けされる。 ハブボルト7は、本例では車軸DAのハブ部10から4本が突出形成されており、そのP. C. D. は、前記取付孔2a、ボルト穴Waのピッチ円直径Ra、Rbと同一に形成されている。 そして本実施形態では、図4に示すように、ハブボルト7はホイールWのボルト穴Waを通りその一端部がホイールWから突出するとともに、このハブボルト7の突出部分にロードノイズ低減装置1の取付孔2aをその一方の面Aから挿入する。 【0015】 本例ではロードノイズ低減装置1の本体部2の中央部分は、ホイールWのディスク中央部4aに当接するとともにハブボルト7にナット9を締め付けすることにより、ハブ部10にホイールW、ロードノイズ低減装置1を共締めできる。 このような取付により、ロードノイズ低減装置1の前記制振部3はディスク部4のスポーク部4bに押圧される。 前記ナット9は、例えばホイールWを固定するホイールナットを用いるのが好ましいが、専用の取付ナットを用いることもできる。 【0016】 このようにして取り付けられたロードノイズ低減装置1は、車両の走行に伴うホイールWの振動が前記制振部3によって吸収、緩和される。 従って、ホイールWから車両のサスペンション、ひいては車室内に伝播される振動を減じ、車室内で聴取されるロードノイズを低減しうる。 またロードノイズ低減装置1は、既存の車両、ホイール及びタイヤに対して、いわゆる後付けにより容易に装着しうる結果、汎用性を高めかつ安価に装置を構成できる。 【0017】 また、車種毎にロードノイズ低減装置1を準備したときには、より適切にロードノイズの低減を図ることが可能になる。 例えば、ロードノイズのピーク周波数が約125Hz、250Hzの車両に対しては、この周波数の振動を重点的に吸収しうるロードノイズ低減装置1を取り付けする。 具体的には、本体部2の直径や厚さ、制振部3の材料、形状などを適宜変形させることで調整しうる。 【0018】 なお前記制振部3の形状等は特に限定はされないが、好ましくは、図1に示したように、その半径方向の巾Laを10〜50mm、より好ましくは20〜50mmとし、かつ軸方向(車軸方向)に沿う厚さLbを1〜20mm、より好ましくは5〜15mmとするのが好ましい。 前記制振部3の巾Laが10mm未満の場合又は厚さが1mm未満の場合、制振部3によるホイールの振動吸収効果が相対的に低下する傾向があり、逆に制振部3の巾Laが50mmよりも大又は厚さLbが10mmよりも大の場合、制振部3の重量が重くなるため、車両の燃費性能などを悪化させる傾向がある。 なおロードノイズ低減装置1の重量をさらに軽減するために、制振部3をホイールWのスポーク部4bに当接する部分にのみ設けることもできる。 【0019】 また本実施形態のように本体部2を円形で形成する場合、その直径dは特に限定されないが、乗用車に適用する場合には、好ましくは該直径dを200mm以上かつホイール径(リム径)Dよりも50mm以上小とすることが好ましい。 これによって、制振部3を、ホイールWの回転中心線から半径方向に離れた部分、即ち比較的振動の大きいスポーク部4bに当接させることができ、より高い制振効果を発揮できる。 なお前記本体部2の直径dが200mm未満であるとロードノイズ低減効果が低下する傾向があり、逆に本体部2の直径dとホイール径Dとの差が50mm未満になると、ロードノイズ低減装置1がリム部5のフランジに干渉しやすくなるため好ましくない。 【0020】 図5には、本発明の他の実施形態を示す。 この例では、本体部2を平坦な円板状で形成したものを示す。 そして、ホイールWへの取付に際しては、該ホイールWとの間にスペーサSを介在させている。 これにより、ホイールW、ロードノイズ低減装置1をともに車軸DAに固着しうるとともに、本体部2の周縁部zeに設けられた制振部3をホイールWのスポーク部4bに押圧しうる。 【0021】 図6にはさらに本発明の他の形態を示している。 この例では、ホイールWとロードノイズ低減装置1の本体部2との間に継ぎナット11を用いたものを例示している。 継ぎナット11は、ハブボルト7に螺着しうるナット部11aと、このナット部11aに一体に固着された小長さのネジ軸部11bとからなる。 先ずハブボルト7に継ぎナット11を用いてホイールWを固着するとともに、この継ぎナット11のネジ軸部11bにロードノイズ低減装置1の本体部2の取付孔2aを通して例えば袋ナット12により固着する。 このような形態では、ハブボルト7の長さが小の場合に好適となる。 このように、ハブボルト7を用いてロードノイズ低減装置1を固着する態様には種々の形態が包含される。 【0022】 【実施例】 排気量2000cm 3の国産FF乗用車(タイヤ195/65R15 91H、ホイール15×6JJ、内圧200kPa)のホイールに本発明のロードノイズ低減装置を取り付け、ロードノイズ低減装置の効果をテストした。 テストは、前記車両を速度60km/Hで乾燥舗装路を走行させるとともに、そのときの前席でのロードノイズを測定した(実施例)。 また比較のためにロードノイズ低減装置を取り外して同様のテストを行った(従来例)。 そして、従来例のロードノイズ(周波数250Hzでのピーク音圧)を基準とし、その値からの変動値(dB)を示した。 マイナス表示が従来例から減少していることを示し良好である。 テストの結果を表1に示す。 【0023】 【表1】
【0024】 テストの結果、実施例のものはいずれもロードノイズ低減効果を発揮していることが確認できた。 なおテストドライバーのフィーリングでは、ロードノイズ低減装置の取り付けても、操縦安定性に変化がないことが確認された。
【0025】
【発明の効果】
上述したように、請求項1記載の発明では、車軸から突出するハブボルトを用いてホイールの外側に取り付けされる板状の本体部と、この本体部の外周部に固着されかつ本体部の前記取付により前記ホイールのディスク部に押圧される制振材料からなる制振部とを有することにより、既存の車両が有するハブボルトを用いて容易に後付けできるため、装置の汎用性を高めうる。 また制振部は、ホイールに押圧されて走行中のホイールの振動を吸収等することにより、車室内へ伝達されるロードノイズを効果的に低減し静粛化を図りうる。
【0026】
また請求項2記載の発明では、本体部の直径を規制しかつ制振部をその外周縁部に設けることにより、車軸から半径方向に隔たる位置で制振部をホイールに押圧しうる結果、より効果的にホイールの振動を吸収でき、さらにロードノイズを低減できる。
【0027】
また請求項3記載の発明のように、前記制振部は、周方向に環状で連続して配されるとともに、半径方向の巾及び軸方向の厚さを限定したことにより、ロードノイズ低減装置の重量増加を防止し、しかも制振部を環状に形成することで重量バランスを均一化するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のロードノイズ低減装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】タイヤ、ホイール組立体の正面図である。
【図3】タイヤ、ホイール組立体にロードノイズ低減装置を取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】その断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 ロードノイズ低減装置2 本体部2e 外周縁部3 制振部4 ホイールのディスク部6 ハブボルトDA 車軸M 制振材料W ホイール部
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