Inverted pendulum type vehicle

申请号 JP2012111046 申请日 2012-05-14 公开(公告)号 JP2013237323A 公开(公告)日 2013-11-28
申请人 Honda Motor Co Ltd; 本田技研工業株式会社; 发明人 TAKENAKA TORU; JOKURA SHINYA;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To smoothly turn when turning an inverted pendulum type vehicle by appropriately preventing an excessive slip of a second moving operation unit while preventing the excessive limiting of moving speed of a right and left direction of the second moving operation unit.SOLUTION: A control device 21 of an inverted pendulum type vehicle 1 that includes a first travel operation unit 3 and a second travel operation unit 4, controls an actuator device 17 based on a restricted desired value Vw2_cmd1_v, obtained by restricting a basic desired value Vw2_cmd1_v of a lateral travel velocity of the second travel operation unit 4 by a limiting processing unit 42 in order to bring the actual turn angular velocity of the vehicle close to the desired value. The limit width of the limiting processing unit 42 is variably set according to the actual travel velocity of the second travel operation unit 4.
权利要求
  • 床面上を移動可能な第1の移動動作部と、該第1の移動動作部を駆動する第1のアクチュエータ装置と、前記第1の移動動作部及び第1のアクチュエータ装置が組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部とを少なくとも備え、前記第1の移動動作部が、前記第1のアクチュエータ装置の駆動力によって前記乗員搭乗部に搭乗した乗員の前後方向及び左右方向を含む全方向に移動可能に構成された倒立振子型車両であって、
    前記第1の移動動作部と前記前後方向に間隔を存して該第1の移動動作部又は前記基体に連結され、床面上を前記全方向に移動可能に構成された第2の移動動作部と、
    少なくとも該第2の移動動作部の前記左右方向への移動を行なわせる駆動力を発生する第2のアクチュエータ装置と、
    少なくとも前記乗員搭乗部の傾動に応じて前記第1の移動動作部及び第2の移動動作部の移動動作を行なわせると共に、当該倒立振子型車両を旋回させることの要求が有る場合に、前記左右方向における前記第1の移動動作部及び第2の移動動作部のそれぞれの移動速度が互いに異なる速度になるように、前記第1のアクチュエータ装置及び第2のアクチュエータ装置を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、少なくとも当該倒立振子型車両の旋回時において、少なくとも前記要求に応じて決定した当該倒立振子型車両のヨー軸周り方向の角速度の目標値に応じて前記左右方向における第2の移動動作部の移動速度の基本目標値を決定する基本目標値決定手段と、該基本目標値と前記左右方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値との差である制限前偏差の大きさを所定のリミット幅以下の大きさに制限するリミット処理により、該基本目標値の制限後の値としての制限後目標値を決定するリミット処理手段と、該制限後目標値に応じて前記第2のアクチュエータ装置を制御するアクチュエータ制御手段と、少なくとも前記第2の移動動作部の実際の移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を可変的に設定するリミット幅設定手段とを備えていることを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項1記載の倒立振子型車両において、
    前記基本目標値決定手段は、前記角速度の目標値と、該角速度の実際の値の観測値との偏差である角速度偏差をゼロに近づけるフィードバック制御処理を用いて前記基本目標値を決定するように構成されていることを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項1又は2記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、少なくとも前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項3記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、該左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記リミット幅が大きくなるように、該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項2記載の倒立振子型車両において、
    前記基本目標値決定手段は、少なくとも前記角速度の目標値に応じて決定した前記基本目標値のフィードフォワード成分と、前記角速度偏差をゼロに近づけるフィードバック制御処理により決定した前記基本目標値のフィードバック成分とを加え合わせることにより前記基本目標値を決定する手段であり、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記フィードフォワード成分とのうちの少なくともいずれか一方に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項5記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記フィードフォワード成分とのうち、絶対値が大きい方の値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項5又は6記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値と前記フィードフォワード成分の絶対値とのうちの大きい方の絶対値が大きいほど、前記リミット幅が大きくなるように、該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項1又は2記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記前後方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値とに応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項8記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅の第1候補値を決定する第1候補値決定手段と、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅の第2候補値を決定する第2候補値決定手段とを有しており、前記第1候補値及び第2候補値のうちの大きい方の候補値以上の大きさとなるように前記リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項9記載の倒立振子型車両において、
    前記第1候補値決定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記第1候補値が大きくなるように該第1候補値を決定し、
    前記第2候補値決定手段は、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記第2候補値が大きくなるように、該第2候補値を決定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項5記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と前記フィードフォワード成分とのうちの少なくともいずれか一方と、前記前後方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値とに応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項11記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と前記フィードフォワード成分とのうちの少なくともいずれか一方に応じて前記リミット幅の第1候補値を決定する第1候補値決定手段と、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅の第2候補値を決定する第2候補値決定手段とを有しており、前記第1候補値及び第2候補値のうちの大きい方の候補値以上の大きさとなるように前記リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項12記載の倒立振子型車両において、
    前記第1候補値決定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値と前記フィードフォワード成分の絶対値とのうちの大きい方の絶対値が大きいほど、前記第1候補値が大きくなるように、該第1候補値を決定し、
    前記第2候補値決定手段は、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記第2候補値が大きくなるように、該第2候補値を決定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項1又は2記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、少なくとも前記前後方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項14記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記リミット幅が大きくなるように、該リミット幅を設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 請求項1〜15のいずれか1項に記載の倒立振子型車両において、
    前記リミット幅設定手段は、前記リミット幅を、ゼロよりも大きい値であらかじめ定めた最小リミット幅以上の大きさに制限するように設定することを特徴とする倒立振子型車両。
  • 说明书全文

    本発明は、床面上を移動可能な倒立振子型車両に関する。

    床面上を移動する移動動作部と、この移動動作部を駆動するアクチュエータ装置とが組み付けられた基体に、鉛直方向に対して傾動自在な乗員搭乗部が組み付けられた倒立振子型車両が従来より知られている。 この倒立振子型車両は、乗員が搭乗した乗員搭乗部が傾倒しないようにするために、倒立振子の支点を動かすような形態で、移動動作部の移動動作を制御するようにした車両である。

    例えば特許文献1等には、乗員搭乗部の傾動等に応じて、移動動作部を駆動することで、床面上を、乗員の前後方向及び左右方向を含む全方向に移動可能とした倒立振子型車両が本願出願人により提案されている。

    特開2011−068165号公報

    ところで、特許文献1に見られる如き従来の倒立振子型車両では、車両の移動方向を徐々に変化させるように乗員が上体を動かすことで、車両の旋回を行なうことは可能であるものの、その旋回をスムーズに行なうためには一般には、乗員の熟練した操縦技術を必要としていた。

    特に、車両の前進走行を低速で行なっている状況や、車両がほぼ停車しているような状況で、車両の旋回(方向転換)を行なうことは、熟練した乗員であっても難しいものとなっていた。

    そこで、本願発明者は、倒立振子型車両に、上記移動動作部(以降、第1の移動動作部ということがある)とは別に、該第1の移動動作部と前後方向に間隔を存して補助的な第2の移動動作部をさらに備え、車両の旋回の要求が有る場合に、左右方向における第1の移動動作部の移動速度と第2の移動動作部の移動速度とを異ならせるようにそれらの速度を制御することで、車両の旋回(方向転換を含む)を行なわせる技術の開発を試みている。

    しかしながら、本願発明者の種々様々の実験及び検討によって、次のような不都合があることが判明した。

    すなわち、上記のように補助的な第2の移動動作部を備えた倒立振子型車両では、第2の移動動作部に作用する接地荷重は、第1の移動動作部に作用する接地荷重に比して小さなものとなりやすい。 ひいては、第2の移動動作部のスリップが生じやすい。

    一方、第1の移動動作部及び第2の移動動作部の左右方向の移動速度を制御することで、車両の旋回を行なう場合、車両の実際のヨー方向(ヨー軸周り方向)の速度を目標とする角速度にできるだけ近づけるように制御を行うことが好ましいと考えられる。

    この場合、旋回時の車両の目標とする角速度と、車両の実際のヨー方向の角速度の計測値との偏差の大きさが大きいと、第2の移動動作部の左右方向の移動速度の加速又は減速が過大なものとなりやすい。 ひいては、第2の移動動作部の過剰なスリップが生じやすいという不都合がある。

    また、このような不都合を解消するために、車両の角速度の変化を、車両の運動状態によらずに一律に制限するようにすると、左右方向における第2の移動動作部の移動速度が過剰に制限されて、車両の旋回挙動の応答性が損なわれたり、あるいは、旋回挙動を円滑に行い得る車両の走行速度(前後方向の速度)が狭い範囲に限定てしまうという不都合がある。

    本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、倒立振子型車両の旋回時に、第2の移動動作部の左右の方向の移動速度を過剰に制限することを防止しつつ、該第2の移動動作部の過剰なスリップを適切に防止し、旋回を円滑に行うことができる倒立振子型車両を提供することを目的とする。

    本発明の倒立振子型車両は、上記の目的を達成するために、床面上を移動可能な第1の移動動作部と、該第1の移動動作部を駆動する第1のアクチュエータ装置と、前記第1の移動動作部及び第1のアクチュエータ装置が組み付けられた基体と、鉛直方向に対して傾動自在に前記基体に組み付けられた乗員搭乗部とを少なくとも備え、前記第1の移動動作部が、前記第1のアクチュエータ装置の駆動によって前記乗員搭乗部に搭乗した乗員の前後方向及び左右方向を含む全方向に移動可能に構成された倒立振子型車両であって、
    前記第1の移動動作部と前記前後方向に間隔を存して該第1の移動動作部又は前記基体に連結され、床面上を前記全方向に移動可能に構成された第2の移動動作部と、
    少なくとも該第2の移動動作部の前記左右方向への移動を行なわせる駆動力を発生する第2のアクチュエータ装置と、
    少なくとも前記乗員搭乗部の傾動に応じて前記第1の移動動作部及び第2の移動動作部の移動動作を行なわせると共に、当該倒立振子型車両を旋回させることの要求が有る場合に、前記左右方向における前記第1の移動動作部及び第2の移動動作部のそれぞれの移動速度が互いに異なる速度になるように、前記第1のアクチュエータ装置及び第2のアクチュエータ装置を制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、少なくとも当該倒立振子型車両の旋回時において、少なくとも前記要求に応じて決定した当該倒立振子型車両のヨー軸周り方向の角速度の目標値に応じて前記左右方向における第2の移動動作部の移動速度の基本目標値を決定する基本目標値決定手段と、該基本目標値と前記左右方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値との差である制限前偏差の大きさを所定のリミット幅以下の大きさに制限するリミット処理により、該基本目標値の制限後の値としての制限後目標値を決定するリミット処理手段と、該制限後目標値に応じて前記第2のアクチュエータ装置を制御するアクチュエータ制御手段と、少なくとも前記第2の移動動作部の実際の移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を可変的に設定するリミット幅設定手段とを備えていることを特徴とする(第1発明)。

    なお、本発明において、移動速度等の任意の状態量に関する「観測値」は、適宜のセンサによる該状態量の検出値、あるいは、該状態量と一定の相関性を有する他の一つ以上の状態量の検出値から、該相関性に基づいて推定した推定値を意味する。

    さらに、該「観測値」の「代用推定値」は、当該「観測値」そのものではないが、原理的に当該「観測値」とほぼ同一の値となると推定することができる任意のパラメータの値を意味する。 例えば、上記状態量が、高い追従性で、ある目標値に制御される場合、その目標値(決定済の目標値)を「代用推定値」として採用することができる。

    上記第1発明によれば、倒立振子型車両(以下、単に車両ということがある)を旋回させることの要求が有る場合に、前記制御手段は、前記左右方向における前記第1の移動動作部及び第2の移動動作部のそれぞれの移動速度が互いに異なる速度になるように前記第1のアクチュエータ装置及び第2のアクチュエータ装置を制御する。 これにより車両の旋回(方向転換を含む)を行なうことができる。

    この旋回時において、制御手段は、前記基本目標値決定手段によって、前記左右方向における第2の移動動作部の移動速度の基本目標値を決定する。 該基本目標値は、少なくとも前記要求に応じて決定した当該倒立振子型車両のヨー軸周り方向の角速度の目標値に応じて決定される。

    さらに、制御手段は、前記リミット処理手段によるリミット処理によって、前記基本目標値の制限後の値としての制限後目標値を決定する。 該リミット処理では、基本目標値と前記第2の移動動作部の前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値との差である制限前偏差の大きさが所定のリミット幅以下の大きさに制限される。

    すなわち、前記制限前偏差の大きさが上記リミット幅以下である場合には、該基本目標値がそのまま制限後目標値として決定される。 また、前記制限前偏差の大きさが上記リミット幅よりも大きい場合には、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値との差の大きさがリミット幅以下となる値が制限後目標値として決定される。

    そして、制御手段は、この制限後目標値に応じて前記第2のアクチュエータ装置を制御することで、前記第2の移動動作部の左右方向の実際の移動速度を制限後目標値に追従させるように制御する。

    なお、左右方向における前記第1の移動動作部の移動速度は、前記角速度の目標値等に応じて決定した適宜の目標速度に前記第1のアクチェータ装置を介して制御するようにすればよい。

    この場合、制御手段は、前記リミット幅設定手段によって、少なくとも前記第2の移動動作部の実際の移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を可変的に設定する。

    このため、前記第2の移動動作部の実際の移動速度(例えば左右方向又は前後方向の移動速度)に適した前記リミット幅を設定できる。

    従って、制限後目標値が、過剰な大きさにならないようにしつつ、車両の実際の角速度を目標値に追従させるための前記基本目標値に対して過剰に制限されるのを防止するように制限後目標値を決定できる。

    よって、第1発明によれば、倒立振子型車両の旋回時に、第2の移動動作部の左右の方向の移動速度を過剰に制限することを防止しつつ、該第2の移動動作部の過剰なスリップを適切に防止し、旋回を円滑に行うことを実現できる。

    上記第1発明では、前記基本目標値決定手段は、前記角速度の目標値と、該角速度の実際の値の観測値との偏差である角速度偏差をゼロに近づけるフィードバック制御処理を用いて前記基本目標値を決定するように構成されていることが好ましい(第2発明)。

    この第2発明によれば、前記角速度の目標値に対する実際の角速度の追従性を高めることができる。

    上記第1発明又は第2発明では、前記リミット幅設定手段は、少なくとも前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することが好ましい(第3発明)。

    この第3発明によれば、前記左右方向における前記第2の移動動作部のスリップ率の許容限界を、該第2の移動動作部の左右方向実移動速度に応じて設定できる。

    この第3発明では、より具体的には、前記リミット幅設定手段は、該左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記リミット幅が大きくなるように、該リミット幅を設定することが好ましい(第4発明)。

    この第4発明によれば、前記左右方向における前記第2の移動動作部のスリップ率を、適切な許容範囲に収めるようにして、前記左右方向における第2の移動動作部の過剰なスリップが生じるのを確実に防止するようにすることができる。

    また、前記第2発明では、前記基本目標値決定手段が、少なくとも前記角速度の目標値に応じて決定した前記基本目標値のフィードフォワード成分と、前記角速度偏差をゼロに近づけるフィードバック制御処理により決定した前記基本目標値のフィードバック成分とを加え合わせることにより前記基本目標値を決定する手段である場合には、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記フィードフォワード成分とのうちの少なくともいずれか一方に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することが好ましい(第5発明)。

    この第5発明によれば、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に加えて、前記左右方向実移動速度の到達目標としてのフィードフォワード成分を反映させて、前記リミット幅を設定できる。

    例えば、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記フィードフォワード成分とのうち、絶対値が大きい方の値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定する(第6発明)。

    これにより、前記車両の旋回開始時等のように、前記フィードフォワード成分と、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値とが大きく相違しているような過渡的な状況でも、前記フィードフォワード成分を効果的に反映させて、リミット幅を設定できる。

    上記第5発明又は第6発明では、より具体的には、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値と前記フィードフォワード成分の絶対値とのうちの大きい方の絶対値が大きいほど、前記リミット幅が大きくなるように、該リミット幅を設定することが好ましい(第7発明)。

    この第7発明によれば、前記第4発明と同様の効果を奏することができる。 さらに、前記車両の旋回開始時等のように、前記フィードフォワード成分と、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値とが大きく相違しているような過渡的な状況で、前記リミット幅が過小なものとなり、前記制限後目標値が前記基本目標値に対して過剰に制限されてしまうのを防止できる。 ひいては、車両の旋回を円滑に開始することができる。

    また、前記第1発明又は第2発明では、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記前後方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値とに応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することが好ましい(第8発明)。

    この第8発明によれば、第2の移動動作部の前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に加えて、第2の移動動作部の前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値を反映させて、前記リミット幅を設定できる。

    このため、左右方向における前記第2の移動動作部のスリップ率の許容限界に加えて、第2の移動動作部の横滑り角の許容限界を設定するようにすることができる。

    この第8発明では、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅の第1候補値を決定する第1候補値決定手段と、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅の第2候補値を決定する第2候補値決定手段とを有しており、前記第1候補値及び第2候補値のうちの大きい方の候補値以上の大きさとなるように前記リミット幅を設定することが好ましい(第9発明)。

    この第9発明によれば、第2の移動動作部のスリップ率と横滑り角とが互いに過剰に制限されるのを防止できる。

    上記第9発明では、より具体的には、前記第1候補値決定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記第1候補値が大きくなるように該第1候補値を決定し、前記第2候補値決定手段は、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記第2候補値が大きくなるように、該第2候補値を決定することが好ましい(第10発明)。

    この第10発明によれば、車両の前後方向の移動速度が比較的小さい状態での旋回時に、左右方向における第2の移動動作部のスリップ率を適切な許容範囲に収めるようにして、該第2の動動作部の過剰なスリップが生じるのを防止できる。

    また、車両の前後方向の移動速度が比較的小さい状態での旋回時には、該旋回に必要な第2の移動動作部の横滑りが過剰に制限されるのを防止しつつ、該第2の移動動作部の横滑り角が過大になるのを防止できる。

    また、前記第5発明では、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と前記フィードフォワード成分とのうちの少なくともいずれか一方と、前記前後方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値とに応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することが好ましい(第11発明)。

    この第11発明によれば、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と、前記左右方向実移動速度の到達目標としてのフィードフォワード成分とに加えて、第2の移動動作部の前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値を反映させて、前記リミット幅を設定できる。

    このため、左右方向における前記第2の移動動作部のスリップ率の許容限界に加えて、第2の移動動作部の横滑り角の許容限界を設定するようにすることができる。

    この第11発明では、前記リミット幅設定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値と前記フィードフォワード成分とのうちの少なくともいずれか一方に応じて前記リミット幅の第1候補値を決定する第1候補値決定手段と、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅の第2候補値を決定する第2候補値決定手段とを有しており、前記第1候補値及び第2候補値のうちの大きい方の候補値以上の大きさとなるように前記リミット幅を設定することが好ましい(第12発明)。

    この第12発明によれば、第2の移動動作部のスリップ率と横滑り角とが互いに過剰に制限されるのを防止できる。

    上記第12発明では、より具体的には、前記第1候補値決定手段は、前記左右方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値と前記フィードフォワード成分の絶対値とのうちの大きい方の絶対値が大きいほど、前記第1候補値が大きくなるように、該第1候補値を決定し、前記第2候補値決定手段は、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記第2候補値が大きくなるように、該第2候補値を決定することが好ましい(第13発明)。

    この第13発明によれば、前記第9発明と同様に、車両の前後方向の移動速度が比較的小さい状態での旋回時に、左右方向における第2の移動動作部のスリップ率を適切な許容範囲に収めるようにして、該第2の動動作部の過剰なスリップが生じるのを防止できる。

    また、車両の前後方向の移動速度が比較的小さい状態での旋回時には、該旋回に必要な第2の移動動作部の横滑りが過剰に制限されるのを防止しつつ、該第2の移動動作部の横滑り角が過大になるのを防止できる。

    また、前記第1発明又は第2発明では、前記リミット幅設定手段は、少なくとも前記前後方向における前記第2の移動動作部の実際の移動速度である前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値に応じて前記リミット幅を変化させるように該リミット幅を設定することが好ましい(第14発明)。

    この第14発明によれば、前記車両が前後方向に移動しながら旋回を行なう場合に、前記第2の移動動作部の横滑り角の許容限界を、該第2の移動動作部の前後方向実移動速度に応じて設定できる。

    この第14発明では、より具体的には、前記リミット幅設定手段は、前記前後方向実移動速度の観測値又は該観測値の代用推定値の絶対値が大きいほど、前記リミット幅が大きくなるように、該リミット幅を設定することが好ましい(第15発明)。

    この第15発明によれば、前記車両が前後方向に移動しながら旋回を行なう場合に、前記第2の移動動作部の横滑り角を、適切な許容範囲に収めるようにして、前記第2の移動動作部の過剰な横滑りが生じるのを確実に防止するようにすることができる。

    また、前記第1〜第15発明のいずれの発明においても、前記リミット幅設定手段は、前記リミット幅を、ゼロよりも大きい値であらかじめ定めた最小リミット幅以上の大きさに制限するように設定することが好ましい(第16発明)。

    この第16発明によれば、前記制限後目標値が、前記基本目標値に対して過剰に制限されるのを確実に防止して、前記車両の円滑な旋回をより確実に実現できる。

    本発明の第1実施形態の倒立振子型車両の外観斜視図。

    第1実施形態の倒立振子型車両の側面図。

    第1実施形態の倒立振子型車両の制御のための構成を示すブロック図。

    図3に示す第1制御処理部の処理を示すブロック線図。

    図3に示す第1制御処理部の処理に用いる倒立振子モデルを説明するための図。

    図5の倒立振子モデルに関する挙動を示すブロック線図。

    図4に示す操作指令変換部の処理を示すブロック線図。

    図4に示す重心ずれ推定部の処理を示すブロック線図。

    図3に示す第2制御処理部の処理を示すブロック線図。

    本発明の一実施形態を図1〜図9を参照して説明する。 図1及び図2に示すように本実施形態の倒立振子型車両1(以降、単に車両1ということがある)は、基体2と、床面上を移動可能な第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4と、乗員が搭乗する乗員搭乗部5とを備える。

    第1の移動動作部3は、図2に示す円環状の芯体6(以下、環状芯体6という)と、この環状芯体6の円周方向(軸心周り方向)に等角度間隔で並ぶようにして該環状芯体6に装着された複数の円環状のローラ7とを備える。 各ローラ7は、その回転軸心を環状芯体6の円周方向に向けて環状芯体6に外挿されている。 そして、各ローラ7は、環状芯体6の軸心周りに該環状芯体6と一体に回転可能とされていると共に、該環状芯体6の横断面の中心軸(環状芯体6の軸心を中心とする円周軸)周りに回転可能とされている。

    これらの環状芯体6及び複数のローラ7を有する第1の移動動作部3は、環状芯体6の軸心を床面と平行に向けた状態で、ローラ7(環状芯体6の下部に位置するローラ7)を介して床面上に接地される。 この接地状態で、環状芯体6をその軸心周りに回転駆動することで、環状芯体6及び各ローラ7の全体が輪転し、それにより第1の移動動作部3が環状芯体6の軸心と直交する方向に床面上を移動するようになっている。 また、上記接地状態で、各ローラ7をその回転軸心周りに回転駆動することで、第1の移動動作部3が、環状芯体6の軸心方向に移動するようになっている。

    さらに、環状芯体6の回転駆動と各ローラ7の回転駆動とを行なうことで、環状芯体6の軸心と直交する方向と、環状芯体6の軸心方向とに対して傾斜した方向に第1の移動動作部3が移動するようになっている。

    これにより、第1の移動動作部3は、床面上を全方向に移動することが可能となっている。 以降の説明では、図1及び図2に示す如く、第1の移動動作部3の移動方向のうち、環状芯体6の軸心と直交する方向をX軸方向、該環状芯体6の軸心方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とする。 なお、前方向をX軸の正方向、左方向をY軸の正方向、上方向をZ軸の正方向とする。

    基体2には、上記第1の移動動作部3が組み付けられている。 より詳しくは、基体2は、床面に接地させた第1の移動動作部3の下部を除く部分の周囲を覆うように設けられている。 そして、この基体2に第1の移動動作部3の環状芯体6が、その軸心周りに回転自在に支持されている。

    この場合、基体2は、第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心を支点として、その軸心周りに(Y軸周りに)傾動自在とされていると共に、第1の移動動作部3と共に床面に対して傾くことで、第1の移動動作部3の接地部を支点として、環状芯体6の軸心と直交するX軸周りに傾動自在とされている。 従って、基体2は、鉛直方向に対して2軸周りに傾動自在とされている。

    また、基体2の内部には、図2に示す如く、第1の移動動作部3を移動させる駆動力を発生する第1のアクチュエータ装置8が搭載されている。 この第1のアクチュエータ装置8は、環状芯体6を回転駆動するアクチュエータとしての電動モータ8aと、各ローラ7を回転駆動するアクチュエータとしての電動モータ8bとから構成される。 そして、電動モータ8a,8bは、それぞれ図示を省略する動力伝達機構を介して環状芯体6、各ローラ7に回転駆動力を付与するようにしている。 なお、該動力伝達機構は公知の構造のものでよい。

    なお、第1の移動動作部3は、上記の構造と異なる構造のものであってもよい。 例えば、第1の移動動作部3及びその駆動系の構造として、PCT国際公開公報WO/2008/132778、あるいは、PCT国際公開公報WO/2008/132779にて本願出願人が提案した構造のものを採用してもよい。

    また、基体2には、乗員搭乗部5が組み付けられている。 この乗員搭乗部5は、乗員が着座するシートにより構成されており、その基体2の上端部に固定されている。 そして、乗員は、その前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向に向けて、乗員搭乗部5に着座することが可能となっている。 また、乗員搭乗部5(シート)は、基体2に固定されているので、該基体2と一体に鉛直方向に対して傾動自在とされている。

    基体2には、さらに乗員搭乗部5に着座した乗員がその足を載せる一対の足載せ部9,9と、該乗員が把持する一対の把持部10,10とが組み付けられている。

    足載せ部9,9は、基体2の両側部の下部に突設されている。 なお、図1及び図2では、一方側(右側)の足載せ部9の図示は省略されている。

    また、把持部10,10は、乗員搭乗部5の両側にX軸方向(前後方向)に延在して配置されたバー状のものであり、それぞれ、基体2から延設されたロッド11を介して基体2に固定されている。 そして、把持部10,10のうちの一方の把持部10(図では右側の把持部10)には、操作器としてのジョイスティック12が取り付けられている。

    このジョイスティック12は、前後方向(X軸方向)及び左右方向(Y軸方向)に揺動操作可能とされている。 そして、該ジョイスティック12は、その前後方向(X軸方向)の揺動量を示す操作信号を、車両1を前方又は後方に移動させる指令として出力し、左右方向(Y軸方向)の揺動量を示す操作信号を、車両1を右周り(時計周り)又は左周り(反時計周り)に旋回させるための指令(旋回指令)として出力する。 なお、本実施形態では、ジョイスティック12の前後方向の揺動量(すなわち、Y軸周りの回転量)は、前向きの揺動量が正、後向きの揺動量が負である。 また、ジョイスティック12の左右方向の揺動量(すなわち、X軸周りの回転量)は、左向きの揺動量が正、右向きの揺動量が負である。

    第2の移動動作部4は、本実施形態では、所謂、オムニホイールにより構成されている。 第2の移動動作部4としてのオムニホイールは、同軸心の一対の環状芯体(図示省略)と、各環状芯体に、回転軸心を該環状芯体の円周方向に向けて回転自在に外挿された複数の樽状のローラ13とを備える公知の構造のものである。

    この場合、第2の移動動作部4は、その一対の環状芯体の軸心をX軸方向(前後方向)に向けて第1の移動動作部3の後方に配置され、ローラ13を介して床面に接地されている。

    なお、上記一対の環状芯体の一方側のローラ13と、他方側のローラ13とは、該環状芯体の周方向に位相をずらして配置されており、該一対の環状芯体の回転時に、該一対の環状芯体の一方側のローラ13と、他方側のローラ13とのうちのいずれか一方が床面に接地するようになっている。

    上記オムニホイールにより構成された第2の移動動作部4は、基体2に連結されている。 より詳しくは、第2の移動動作部4は、オムニホイール(一対の環状芯体及び複数のローラ13の全体)の上部側の部分を覆う筐体14を備えており、この筐体14にオムニホイールの一対の環状芯体がその軸心周りに回転自在に軸支されている。 さらに、筐体14から基体2側に延設されたアーム15が、前記第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心周りに揺動し得るように基体2に軸支されている。 これにより、第2の移動動作部4が、アーム15を介して基体2に連結されている。

    そして、第2の移動動作部4は、アーム15の揺動によって前記第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心周りに基体2に対して揺動自在とされ、これにより、第1の移動動作部3と第2の移動動作部4との両方を接地させたまま、乗員搭乗部5を基体2と共にY軸周りに傾動させることが可能となっている。

    なお、アーム15を第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心部に軸支して、第1の移動動作部3に第2の移動動作部4をアーム15を介して連結するようにしてもよい。

    また、基体2には、アーム15の揺動範囲を制限する一対のストッパ16,16が設けられており、該アーム15は、ストッパ16,16の間の範囲内で揺動することが可能となっている。 これにより、第1の移動動作部3の環状芯体6の軸心周りでの第2の移動動作部4の揺動範囲、ひいては、基体2及び乗員搭乗部5のX軸周りの傾動範囲が制限され、該基体2及び乗員搭乗部5が乗員の後ろ側に過大に傾くのが防止されるようになっている。

    なお、第2の移動動作部4は、床面に押し付けられるようにバネにより付勢されていてもよい。

    上記の如く第2の移動動作部4は、その一対の環状芯体の回転と、ローラ13の回転とのうちの一方又は両方を行なうことで、第1の移動動作部3と同様に、床面上をX軸方向及びY軸方向を含む全方向に移動することが可能となっている。 詳しくは、環状芯体の回転によって、第2の移動動作部4がY軸方向(左右方向)に移動可能とされ、ローラ13の回転によって、X軸方向(前後方向)に移動可能とされている。

    また、第2の移動動作部4の筐体14には、第2の移動動作部4を駆動する第2のアクチュエータ装置としての電動モータ17を取り付けられている。 この電動モータ17は、第2の移動動作部4の一対の環状芯体を回転駆動するように該一対の環状芯体に連結されている。

    従って、本実施形態では、第2の移動動作部4のX軸方向での移動は、第1の移動動作部3のX軸方向での移動に追従して従動的に行なわれ、第2の移動動作部4のY軸方向での移動は、電動モータ17により第2の移動動作部4の一対の環状芯体を回転駆動することで行なわれるようになっている。

    補足すると、第2の移動動作部4は、第1の移動動作部3と同様の構造のものであってもよい。

    以上が本実施形態における車両1の機構的な構成である。

    図1及び図2での図示は省略したが、本実施形態の車両1の基体2には、該車両1の動作制御(第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の動作制御)のための構成として、図3に示す如く、CPU、RAM、ROM等を含む電子回路ユニットにより構成された制御装置21と、鉛直方向に対する乗員搭乗部5の傾斜角度(基体2の傾斜角度)を計測するための傾斜センサ22と、車両1のヨー軸周りの角速度を計測するためのヨーレートセンサ23とが搭載されている。

    そして、制御装置21には、前記ジョイスティック12の出力と、傾斜センサ22及びヨーレートセンサ23の検出信号とが入力されるようになっている。

    なお、制御装置21は、相互に通信可能な複数の電子回路ユニットに構成されていてもよい。

    上記傾斜センサ22は、例えば加速度センサとジャイロセンサ等の角速度センサとにより構成される。 そして、制御装置21は、これらの加速度センサ及び角速度センサの検出信号から、乗員搭乗部5の傾斜角度(換言すれば基体2の傾斜角度)の計測値を公知の手法を用いて取得する。 その手法としては、例えば特許4181113号にて本願出願人が提案した手法を採用することができる。

    なお、本実施形態における乗員搭乗部5の傾斜角度(又は基体2の傾斜角度)というのは、より詳しくは、車両1と、その乗員搭乗部5に既定の姿勢(標準姿勢)で搭乗した乗員とを併せた全体の重心が、第1の移動動作部3の接地部の直上(鉛直方向上方)に位置する状態での乗員搭乗部5(又は基体2)の姿勢を基準(ゼロ)とする傾斜角度(X軸周り方向の傾斜角度とY軸周り方向の傾斜角度との組)である。

    また、ヨーレートセンサ23は、ジャイロセンサ等の角速度センサにより構成される。 そして、制御装置21は、その検出信号に基づいて、車両1のヨー軸周りの角速度の計測値を取得する。

    また、制御装置21は、本発明の制御手段に相当するものである。 この制御装置21は、実装されるプログラム等により実現される機能(ソフトウェアにより実現される機能)又はハードウェアにより構成される機能として、上記の如く計測値を取得する機能の他、第1のアクチュエータ装置8を構成する電動モータ8a,8bを制御することで第1の移動動作部3の移動動作を制御する第1制御処理部24と、第2のアクチュエータ装置としての電動モータ17を制御することで第2の移動動作部4の移動動作を制御する第2制御処理部25と備える。

    第1制御処理部24は、後述する演算処理を実行することで、第1の移動動作部3の移動速度(詳しくは、X軸方向の並進速度とY軸方向の並進速度との組)の目標値である第1目標速度を逐次算出し、第1の移動動作部3の実際の移動速度を、第1目標速度に一致させるように電動モータ8a,8bの回転速度を制御する。

    この場合、電動モータ8a,8bのそれぞれの回転速度と、第1の移動動作部3の実際の移動速度との間の関係はあらかじめ定められており、第1の移動動作部3の第1目標速度に応じて、各電動モータ8a,8bの回転速度の目標値が規定されるようになっている。 そして、電動モータ8a,8bの回転速度を第1目標速度に応じて規定される目標値にフィードバック制御することで、第1の移動動作部3の実際の移動速度が、第1目標速度に制御される。

    また、第2制御処理部25は、後述する演算処理を実行することで、第2の移動動作部4の移動速度(詳しくは、Y軸方向の並進速度)の目標値である第2目標速度を逐次算出し、Y軸方向での第2の移動動作部4の実際の移動速度を、第2目標速度に一致させるように電動モータ17の回転速度を制御する。

    この場合、第1の移動動作部3の場合と同様に、電動モータ17の回転速度と、Y軸方向での第2の移動動作部4の実際の移動速度との間の関係はあらかじめ定められており、第2の移動動作部4の第2目標速度に応じて、電動モータ17の回転速度の目標値が規定されるようになっている。 そして、電動モータ17の回転速度を第2目標速度に応じて規定される目標値にフィードバック制御することで、Y軸方向での第2の移動動作部4の実際の移動速度が、第2目標速度に制御される。

    補足すると、本実施形態では、第2の移動動作部4のX軸方向での移動は、第1の移動動作部3のX軸方向の移動に追従して従動的に行なわれる。 このため、X軸方向での第2の移動動作部4の移動速度の目標値を設定する必要はない。

    なお、本明細書の実施形態の説明では、第1の移動動作部3の速度は、特にことわらない限り、第1の移動動作部3の接地点の移動速度を意味する。 同様に、第2の移動動作部4の速度は、特にことわらない限り、第2の移動動作部4の接地点の移動速度を意味する。

    次に、上記第1制御処理部24及び第2制御処理部25の処理をさらに詳細に説明する。 まず、図4〜図7を参照して第1制御処理部24の処理を説明する。

    第1制御処理部24は、図4に示すように、その主要な機能部として、ジョイスティック12から入力される操作信号により示される該ジョイスティック12の前後方向の揺動量(Y軸周りの回転量)Js_x及び左右方向の揺動量(X軸周りの回転量)Js_yから車両1の移動のための速度指令に変換する操作指令変換部31と、車両1とその乗員搭乗部5に搭乗した乗員とを併せた全体の重心(以降、車両系全体重心という)の目標速度を決定する重心目標速度決定部32と、車両系全体重心の速度を推定する重心速度推定部33と、推定した車両系全体重心の速度を目標速度に追従させつつ、乗員搭乗部5の姿勢(基体2の姿勢)を安定化するように第1の移動動作部3の移動速度の目標値を決定する姿勢制御演算部34とを備える。 そして、第1制御処理部24は、これらの各機能部の処理を、制御装置21の所定の演算処理周期で実行する。

    なお、本実施形態では、車両系全体重心というのは、車両1の代表点の一例としての意味を持つものである。 従って、車両系全体重心の速度というのは、その代表点の並進移動速度を意味するものである。

    ここで、第1制御処理部24の各機能部の処理を具体的に説明する前に、その処理の基礎となる事項を説明しておく。 車両系全体重心の動力学的な挙動(詳しくは、Y軸方向から見た挙動と、X軸方向から見た挙動)は、近似的に、図5に示すような倒立振子モデルの挙動により表現される。 第1制御処理部24の処理のアルゴリズムは、この挙動を基礎として構築されている。

    なお、図5の参照符号を含めて、以降の説明では、添え字“_x”はY軸方向から見た場合の変数等の参照符号を意味し、添え字“_y”はX軸方向から見た場合の変数等の参照符号を意味する。 また、図5では、Y軸方向から見た場合の倒立振子モデルと、X軸方向から見た場合の倒立振子モデルとを併せて図示するために、Y軸方向から見た場合の変数の参照符号に括弧を付さないものとし、X軸方向から見た場合の変数の参照符号に括弧を付している。

    Y軸方向から見た車両系全体重心の挙動を表す倒立振子モデルは、Y軸方向と平行な回転軸心を有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪61_x(以降、仮想車輪61_xという)と、該仮想車輪61_xの回転中心から延設されて、該仮想車輪61_xの回転軸周りに(Y軸周り方向に)揺動自在なロッド62_xと、このロッド62_xの先端部(上端部)である基準部Ps_xに連結された質点Ga_xとを備える。

    この倒立振子モデルでは、質点Ga_xの運動が、Y軸方向から見た車両系全体重心の運動に相当し、鉛直方向に対するロッド62_xの傾斜角度θb_x(Y軸周り方向の傾斜角度)が、乗員搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向の傾斜角度に一致するものとされる。 また、第1の移動動作部3のX軸方向の並進運動が、仮想車輪61_xの輪転によるX軸方向の並進運動に相当するものとされる。

    そして、仮想車輪61_xの半径r_xと、基準部Ps_x及び質点Ga_xの床面からの高さh_xとは、あらかじめ設定された既定値(一定値)とされる。

    同様に、X軸方向から見た車両系全体重心の挙動を表す倒立振子モデルは、X軸方向と平行な回転軸心を有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪61_y(以降、仮想車輪61_yという)と、該仮想車輪61_yの回転中心から延設されて、該仮想車輪61_yの回転軸周りに(X軸周り方向に)揺動自在なロッド62_yと、このロッド62_yの先端部(上端部)である基準部Ps_yに連結された質点Ga_yとを備える。

    この倒立振子モデルでは、質点Ga_yの運動が、X軸方向から見た車両系全体重心の運動に相当し、鉛直方向に対するロッド62_yの傾斜角度θb_y(X軸周り方向の傾斜角度)が、乗員搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向の傾斜角度に一致するものとされる。 また、第1の移動動作部3のY軸方向の並進運動が、仮想車輪61_yの輪転によるY軸方向の並進運動に相当するものとされる。

    そして、仮想車輪61_yの半径r_yと、基準部Ps_y及び質点Ga_yの床面からの高さh_yとは、あらかじめ設定された既定値(一定値)とされる。 なお、X軸方向で見た基準部Ps_y及び質点Ga_yの床面からの高さh_yは、Y軸方向で見た基準部Ps_x及び質点Ga_xの床面からの高さh_xと同じである。 そこで、以降、h_x=h_y=hとおく。

    ここで、Y軸方向から見た場合の上記基準部Ps_xと質点Ga_xとの位置関係ついて補足すると、基準部Ps_xの位置は、乗員搭乗部5に搭乗(着座)した乗員が、該乗員搭乗部5に対してあらかじめ定められた中立姿勢のまま不動であると仮定した場合における車両系全体重心の位置に相当している。 従って、この場合には、質点Ga_xの位置は、基準部Ps_xの位置に一致する。 このことは、X軸方向から見た場合の上記基準部Ps_yと質点Ga_yとの位置関係ついても同様である。

    ただし、実際には、乗員搭乗部5に搭乗した乗員が、その上体等を乗員搭乗部5(又は基体2)に対して動かすことで、実際の車両系全体重心のX軸方向の位置及びY軸方向の位置は、一般には、それぞれ基準部Ps_x,Ps_yの位置から平方向にずれることとなる。 このため、図5では、質点Ga_x,Ga_yの位置をそれぞれ、基準部Ps_x,Ps_yの位置からずらした状態で図示している。

    上記のような倒立振子モデルで表現される車両系全体重心の挙動は、次式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)により表現される。 この場合、式(1a),(1b)は、Y軸方向で見た挙動、式(2a),(2b)は、X軸方向で見た挙動を表している。


    Vb_x=Vw1_x+h・ωb_x ……(1a)
    dVb_x/dt=(g/h)・(θb_x・(h−r_x)+Ofst_x)+ωz・Vb_y ……(1b)
    Vb_y=Vw1_y+h・ωb_y ……(2a)
    dVb_y/dt=(g/h)・(θb_y・(h−r_y)+Ofst_y)−ωz・Vb_x ……(2b)

    ここで、Vb_xは、車両系全体重心のX軸方向の速度(並進速度)、Vw1_xは、仮想車輪61_xのX軸方向の移動速度(並進速度)、θb_xは乗員搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向の傾斜角度、ωb_xはθb_xの時間的変化率(=dθb_x/dt)、Ofst_xは車両系全体重心のX軸方向の位置(質点Ga_xのX軸方向の位置)の、前記基準部Ps_xの位置からのX軸方向のずれ量、Vb_yは、車両系全体重心のY軸方向の速度(並進速度)、Vw1_yは、仮想車輪61_yのY軸方向の移動速度(並進速度)、θb_yは乗員搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向の傾斜角度、ωb_yはθb_yの時間的変化率(=dθb_y/dt)、Ofst_yは車両系全体重心のY軸方向の位置(質点Ga_yのY軸方向の位置)の、前記基準部Ps_yの位置からのY軸方向のずれ量である。 また、ωzは車両1の旋回時のヨーレート(ヨー軸周り方向の角速度)、gは重力加速度定数である。 なお、θb_x、ωb_xの正方向は、車両系全体重心がX軸の正方向(前向き)に傾く方向、θb_y、ωb_yの正方向は、車両系全体重心がY軸の正方向(左向き)に傾く方向である。 また、ωzの正方向は、車両1を上方から見た場合に、反時計周り方向である。

    式(1a)の右辺第2項(=h・ωb_x)は、乗員搭乗部5のY軸周り方向の傾動によって生じる基準部Ps_xのX軸方向の並進速度成分、式(2a)右辺第2項(=h・ωb_y)は、乗員搭乗部5のX軸周り方向の傾動によって生じる基準部Ps_yのY軸方向の並進速度成分である。

    補足すると、式(1a)におけるVw1_xは、詳しくは、ロッド62_xに対する(換言すれば乗員搭乗部5又は基体2に対する)相対的な仮想車輪61_xの周速度である。 このため、Vw1_xには、床面に対する仮想車輪61_xの接地点のX軸方向の移動速度(床面に対する第1の移動動作部3の接地点のX軸方向の移動速度)の加えて、ロッド62_xの傾動に伴う速度成分(=r_x・ωb_x)が含まれている。 このことは、式(1b)におけるVw1_yについても同様である。

    また、式(1b)の右辺の第1項は、車両系全体重心のX軸方向の位置(質点Ga_xのX軸方向の位置)の、仮想車輪61_xの接地部(Y軸方向から見た第1の移動動作部3の接地部)の鉛直上方位置からのずれ量(=θb_x・(h−r_x)+Ofst_x)に応じて仮想車輪61_xの接地部に作用する床反力(図5のF)のX軸方向成分(図5のF_x)によって車両系全体重心に発生するX軸方向の加速度成分、式(1b)の右辺の第2項は、ωzのヨーレートでの旋回時に車両1に作用する遠心力によって発生するX軸方向の加速度成分である。

    同様に、式(2b)の右辺の第1項は、車両系全体重心のY軸方向の位置(質点Ga_yのY軸方向の位置)の、仮想車輪61_yの接地部(X軸方向から見た第1の移動動作部3の接地部)の鉛直上方位置からのずれ量(=θb_y・(h−r_y)+Ofst_y)に応じて仮想車輪61_yの接地部に作用する床反力(図5のF)のY軸方向成分(図5のF_y)によって車両系全体重心に発生するY軸方向の加速度成分、式(2b)の右辺の第2項は、ωzのヨーレートでの旋回時に車両1に作用する遠心力によって発生するY軸方向の加速度成分である。

    上記の如く、式(1a)、(1b)により表現される挙動(X軸方向で見た挙動)は、ブロック線図で表現すると、図6に示すように表される。 図中の1/sは積分演算を表している。

    そして、図6における参照符号Aを付した演算部の処理が、式(1a)の関係式に該当しており、参照符号Bを付した演算部の処理が、式(1b)の関係式に該当している。

    なお、図6中のh・θb_xは、近似的には、図5に示したDiff_xに一致する。

    一方、式(2a)、(2b)により表現される挙動(Y軸方向で見た挙動)を表現するブロック線図は、図6中の添え字“_x”を“_y”に置き換え、参照符号Cを付した加算器への入力の一つである図中下側の加速度成分(遠心力によって発生する加速度成分)の符号“+”を“−”に置き換えることによって得られる。

    本実施形態では、第1制御処理部24の処理のアルゴリズムは、上記の如く車両系全体重心の基準部Ps_x,Ps_yからのずれ量と、遠心力とを考慮した車両系全体重心の挙動モデル(倒立振子モデル)に基づいて構築されている。

    以上を前提として、第1制御処理部24の処理をより具体的に説明する。 なお、以降の説明では、Y軸方向から見た挙動に関する変数の値と、X軸方向から見た挙動に関する変数の値との組を添え字“_xy”を付加して表記する場合がある。

    図4を参照して、第1制御処理部24は、制御装置21の各演算処理周期において、まず、操作指令変換部31の処理と、前記重心速度推定部33の処理とを実行する。

    図7に示すように、操作指令変換部31は、ジョイスティック12のY軸方向への揺動量(すなわち、X軸周りの回転量)Js_yと、ジョイスティック12のX軸方向への揺動量(すなわちY軸周りの回転量)Js_xとに応じて、第1の移動動作部3の移動速度(並進速度)の基本指令値である基本速度指令Vjs_xyと、車両1の旋回時のヨー軸周り方向の角速度の基本指令値である基本旋回角速度指令ω_jsとを決定する。

    上記基本速度指令Vjs_xyのうち、X軸方向の基本速度指令Vjs_xは、処理部31aにて、ジョイスティック12のX軸方向への揺動量Js_xに応じて決定される。 具体的には、揺動量Js_xが正方向の揺動量(前向きの揺動量)である場合には、X軸方向の基本速度指令Vjs_xは、車両1の前進方向への速度指令(正の速度指令)とされ、揺動量Js_xが負方向の揺動量(後向きの揺動量)である場合には、X軸方向の基本速度指令Vjs_xは、車両1の後進方向への速度指令(負の速度指令)とされる。 また、この場合、X軸方向の基本速度指令Vjs_xの大きさは、ジョイスティック12のX軸方向(前向き又は後向き)への揺動量Js_xの大きさが大きいほど、既定の上限値以下で、大きくなるように決定される。

    なお、ジョイスティック12の正方向又は負方向への揺動量Js_xの大きさが十分に微小なものとなる所定の範囲を不感帯域として、その不感帯域内の揺動量では、X軸方向の基本速度指令Vjs_xをゼロに設定するようにしてもよい。 図7の処理部31a中に示すグラフは、上記不感帯域を有する場合の入力(Js_x)と、出力(Vjs_x)との間の関係を示している。

    また、基本速度指令Vjs_xyのうち、Y軸方向の基本速度指令Vjs_yは、車両1の旋回用の第1の移動動作部3のY軸方向の速度指令として、ジョイスティック12のY軸方向への揺動量Js_yに応じて決定される。 具体的には、揺動量Js_yが負方向の揺動量(右向きの揺動量)である場合には、Y軸方向の基本速度指令Vjs_yは、車両1の左向きへの速度指令(正の速度指令)とされ、揺動量Js_yが正方向の揺動量(左向きの揺動量)である場合には、Y軸方向の基本速度指令Vjs_yは、車両1の右向きへの速度指令(負の速度指令)とされる。 この場合、Y軸方向の基本速度指令Vjs_yの大きさは、ジョイスティック12のY軸方向への(右向き又は左向きへの)揺動量の大きさが大きいほど、既定の上限値以下で、大きくなるように決定される。

    より具体的には、例えば、図7に示す如く、処理部31bの処理によって、ジョイスティック12のY軸方向への揺動量Js_yに応じて、車両1の旋回時のヨー軸周りの方向の角速度の目標値である目標旋回角速度ωz_cmdが決定される。 この場合、ジョイスティック12の揺動量Js_yが負方向の揺動量(右向きの揺動量)である場合には、目標旋回角速度ωz_cmdは、右周り(時計周り)の旋回の角速度指令(負の角速度指令)とされ、ジョイスティック12の揺動量Js_yが正方向の揺動量(左向きの揺動量)である場合には、目標旋回角速度ωz_cmdは、左周り(反時計周り)の旋回の角速度指令(正の角速度指令)とされる。 この場合、目標旋回角速度ωz_cmdの大きさは、ジョイスティック12のY軸方向への揺動量の大きさが大きいほど、既定の上限値以下で、大きくなるように決定される。

    そして、処理部31cにおいて、この目標旋回角速度ωz_cmdに、車両1の瞬間旋回中心と第1の移動動作部3の接地点とのX軸方向の距離としてあらかじめ定められた所定値(>0)の(−1)倍の負の値Kを乗じることによって、第1の移動動作部3のY軸方向の基本速度指令Vjs_yが決定される。 上記瞬間旋回中心は、車両1の旋回時の各時刻(制御装置21の各演算処理周期の時刻)での車両1のヨー軸周り方向の回転中心(車両1と一体に移動する座標系で見た回転中心)を意味する。

    従って、第1の移動動作部3のY軸方向の基本速度指令Vjs_yは、ジョイスティック12のY軸方向への揺動量Js_yに応じて決定される目標旋回角速度ωz_cmdに比例するように決定される。

    ただし、基本速度指令Vjs_y又は目標旋回角速度ωz_cmdの大きさは、ジョイスティック12のY軸方向への揺動量の大きさが十分に微小なものとなる所定の範囲を不感帯域として、その不感帯域内の揺動量では、Y軸方向の基本速度指令Vjs_y又は目標旋回角速度ωz_cmdをゼロに設定するようにしてもよい。 図7の処理部31b中に示すグラフは、上記不感帯域を有する場合の入力(Js_y)と、出力(ωz_cmd)との間の関係を示している。

    また、ジョイスティック12がX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)の両方に操作されている場合には、Y軸方向の基本速度指令Vjs_yの大きさを、ジョイスティック12のX軸方向への揺動量又はX軸方向の基本速度指令Vjs_xに応じて変化させるようにしてもよい。

    なお、本実施形態では、ジョイスティック12のY軸方向(左右方向)への揺動操作に応じて決定される目標旋回角速度ωz_cmd(又はY軸方向の基本速度指令Vjs_y)がゼロでない状態が、車両1の旋回の要求が有る状態に相当し、ωz_cmd(又はVjs_y)がゼロとなる状態が、車両1の旋回の要求が無い状態に相当する。

    前記重心速度推定部33は、前記倒立振子モデルにおける前記式(1a),(2a)に表される幾何学的な(運動学的な)関係式に基づいて、車両系全体重心の速度の推定値Vb_estm1_xyを算出する。

    具体的には、図4のブロック図で示す如く、第1の移動動作部3の実際の並進速度Vw1_act_xyの値と、乗員搭乗部5の傾斜角度θb_xyの実際の時間的変化率(傾斜角速度)ωb_act_xyに、車両系全体重心の高さhを乗じてなる値とを加え合せることにより、車両系全体重心の速度の推定値Vb_estm1_xyを算出する。

    すなわち、車両系全体重心のX軸方向の速度の推定値Vb_estm1_xとY軸方向の速度の推定値Vb_estm1_yとがそれぞれ、次式(3a),(3b)により算出される。


    Vb_estm1_x=Vw1_act_x+h・ωb_act_x ……(3a)
    Vb_estm1_y=Vw1_act_y+h・ωb_act_y ……(3b)

    ただし、車両系全体重心の位置の基準部Ps_xyの位置からの前記ずれ量Ofst_xy(以降、重心ずれ量Ofst_xyという)の時間的変化率は、Vb_estm1_xyに比べ十分に小さく無視できるものとした。

    この場合、上記演算におけるVw1_act_x,Vw1_act_yの値としては、本実施形態では、前回の演算処理周期で姿勢制御演算部34により決定された第1の移動動作部3の移動速度の目標値Vw1_cmd_x,Vw1_cmd_y(前回値)が用いられる。

    ただし、例えば、電動モータ8a,8bのそれぞれの回転速度をロータリエンコーダ等の回転速度センサにより検出し、それらの検出値から推定したVw1_act_x,Vw1_act_yの最新値(換言すれば、Vw1_act_x,Vw1_act_yの計測値の最新値)を式(3a),(3b)の演算に用いるようにしてもよい。

    また、ωb_act_x,ωb_act_yの値としては、本実施形態では、前記傾斜センサ22の検出信号に基づく乗員搭乗部5の傾斜角度θbの計測値の時間的変化率の最新値(換言すれば、ωb_act_x,ωb_act_yの計測値の最新値)が用いられる。

    第1制御処理部24は上記の如く操作指令変換部31及び重心速度推定部33の処理を実行した後、次に、図4に示す重心ずれ推定部35aの処理を実行することで、前記重心ずれ量Ofst_xyの推定値である重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyを決定する。

    この重心ずれ推定部35aの処理は、図8のブロック線図により示される処理である。 なお、図8は、重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyのうちのX軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_xの決定処理を代表的に表している。

    図8の処理を具体的に説明すると、重心ずれ推定部35aは、傾斜センサ22の検出信号から得られた乗員搭乗部5のY軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_xの計測値(最新値)と、ヨーレートセンサ23の検出信号から得られた車両1の実際のヨーレートωz_actの計測値(最新値)と、重心速度推定部33により算出された車両系全体重心のY軸方向の速度の第1推定値Vb_estm1_y(最新値)と、前回の演算処理周期で決定したX軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_x(前回値)とを用いて、前記式(1b)の右辺の演算処理を演算部35a1で実行することにより、車両系全体重心のX軸方向の並進加速度の推定値DVb_estm_xを算出する。

    さらに重心ずれ推定部35aは、車両系全体重心のX軸方向の並進加速度の推定値DVb_estm_xを積分する処理を演算部35a2で実行することにより、車両系全体重心のX軸方向の速度の第2推定値Vb_estm2_xを算出する。

    次いで、重心ずれ推定部35aは、車両系全体重心のX軸方向の速度の第2推定値Vb_estm2_x(最新値)と、第1推定値Vb_estm1_x(最新値)との偏差を算出する処理を演算部35a3で実行する。

    さらに、重心ずれ推定部35aは、この_偏差に所定値のゲイン(−Kp)を乗じる処理を演算部35a4で実行することにより、X軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_xの最新値を決定する。

    Y軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_yの決定処理も上記と同様に実行される。 具体的には、この決定処理を示すブロック線図は、図8中の添え字“_x”と“_y”とを入れ替え、加算器35a5への入力の一つである図中右側の加速度成分(遠心力によって発生する加速度成分)の符号“+”を“−”に置き換えることによって得られる。

    このような重心ずれ推定部35aの処理によって、重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyを逐次更新しつつ決定することによって、Ofst_estm_xyを実際の値に収束させるように決定することができる。

    第1制御処理部24は、次に、図4に示す重心ずれ影響量算出部35bの処理を実行することによって、重心ずれ影響量Vofs_xyを算出する。

    重心ずれ影響量Vofs_xyは、後述する姿勢制御演算部34において、車両系全体重心の位置が倒立振子モデルにおける前記基準部Ps_xyの位置からずれることを考慮せずにフィードバック制御を行った場合の車両系全体重心の目標速度に対する実際の重心速度のずれを表す。

    具体的には、この重心ずれ影響量算出部35bは、新たに決定された重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyの各成分に、(Kth_xy/(h-r_xy))/Kvb_xyという値を乗じることにより、前記重心ずれ影響量Vofs_xyを算出する。

    なお、Kth_xyは、後述する姿勢制御演算部34の処理において、乗員搭乗部5の傾斜角度をゼロ(目標傾斜角度)に近づけるように機能する操作量成分を決定するためのゲイン値である。 また、Kvb_xyは、後述する姿勢制御演算部34の処理において、車両系全体重心の目標速度Vb_cmd_xyと該車両系全体重心の速度の第1推定値おけるVb_estm1_xyとの偏差をゼロに近づけるように機能する操作量成分を決定するためのゲイン値である。

    第1制御処理部24は、次に、図4に示す重心目標速度決定部32の処理を実行することによって、前記操作指令変換部31により決定された基本速度指令Vjs_xyと、前記重心ずれ影響量算出部35bにより決定された重心ずれ影響量Vofs_xyとに基づいて、制限後重心目標速度Vb_cmd_xyを算出する。

    重心目標速度決定部32は、まず、図4に示す処理部32cの処理を実行する。 この処理部32cは、重心ずれ影響量Vofs_xyの値に関する不感帯処理とリミット処理とを実行することで、車両系全体重心の目標値のうちの重心ずれに応じた成分としての目標重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xyを決定する。

    具体的には、本実施形態では、重心目標速度決定部32は、X軸方向の重心ずれ影響量Vofs_xの大きさがゼロ近辺の所定の範囲である不感帯域内の値(比較的ゼロに近い値)である場合には、X軸方向の目標重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xをゼロにする。

    また、重心目標速度決定部32は、X軸方向の重心ずれ影響量Vofs_xの大きさが不感帯域内から逸脱した値である場合には、X軸方向の目標重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xを、Vofs_xと同極性で、その大きさが、Vofs_xの大きさの増加に伴い大きくなるように決定する。 ただし、目標重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xの値は、所定の上限値(>0)と下限値(≦0)との間の範囲内に制限される。

    Y軸方向の目標重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_yの決定処理も上記と同様である。

    次いで、重心目標速度決定部32は、前記操作指令変換部31により決定された基本速度指令Vjs_xyの各成分に目標重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xyの各成分を加え合わせてなる目標速度V1_xyを決定する処理を図4に示す処理部32dで実行する。 すなわち、V1_x=Vjs_x+Vb_cmd_by_ofs_x、V1_y=Vjs_y+Vb_cmd_by_ofs_yという処理によって、V1_xy(V1_xとV1_yとの組)を決定する。

    さらに、重心目標速度決定部32は、処理部32eの処理を実行する。 この処理部32eでは、第1の移動動作部3のアクチュエータ装置8としての電動モータ8a,8bのそれぞれの回転速度を、所定の許容範囲から逸脱させることのないようにするために、目標速度V1_xとV1_yとの組み合わせを制限してなる車両系全体重心の目標速度としての制限後重心目標速度Vb_cmd_xy(Vb_cmd_x,Vb_cmd_yの組)を決定するリミット処理が実行される。

    この場合、処理部32dで求められた目標速度V1_x,V1_yの組が、目標速度V1_xの値を縦軸、目標速度V1_yの値を横軸とする座標系上で所定の領域(例えば8角形状の領域)内に在る場合には、その目標速度V1_xyがそのまま制限後重心目標速度Vb_cmd_xyとして決定される。

    また、処理部32dで求められた目標速度V1_x,V1_yの組が、上記座標系上の所定の領域から逸脱している場合には、該所定の領域の境界上の組に制限したものが、制限後重心目標速度Vb_cmd_xyとして決定される。

    以上のごとく、前記基本速度指令Vjs_xyと、前記重心ずれ影響量Vofs_xy(または、重心ずれ)とに基づいて、重心目標速度Vb_cmd_xyが決定されるので、乗員は、操作器の操作(ジョイスティック12の操作)と、乗員の身体の姿勢の変化(体重移動)によって、車両1を操縦することができる。

    以上の如く重心目標速度決定部32の処理を実行した後、第1制御処理部24は、次に、姿勢制御演算部34の処理を実行する。 この姿勢制御演算部34は、図4のブロック線図で示す処理によって、第1の移動動作部3の移動速度(並進速度)の目標値である第1目標速度Vw1_cmd_xyを決定する。

    より詳しくは、姿勢制御演算部34は、まず、前記制限後重心目標速度Vb_cmd_xyの各成分から、重心ずれ影響量Vofs_xyの各成分を減じる処理を演算部34bで実行することにより重心ずれ補償後目標速度Vb_cmpn_cmd_xy(最新値)を決定する。

    次いで、姿勢制御演算部34は、上記演算部34bと、積分演算を行う積分演算部34aとを除く演算部の処理によって、第1の移動動作部3の接地点の並進加速度の目標値である目標並進加速度DVw1_cmd_xyのうちのX軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_xと、Y軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_yとをそれぞれ次式(4a),(4b)の演算により算出する。


    DVw1_cmd_x=Kvb_x・(Vb_cmpn_cmd_x−Vb_estm1_x)
    −Kth_x・θb_act_x−Kw_x・ωb_act_x ……(4a)
    DVw1_cmd_y=Kvb_y・(Vb_cmpn_cmd_y−Vb_estm1_y)
    −Kth_y・θb_act_y−Kw_x・ωb_act_y ……(4b)

    式(4a),(4b)におけるKvb_xy、Kth_xy、Kw_xyはあらかじめ設定された所定のゲイン値である。

    また、式(4a)の右辺の第1項は、車両系全体重心のX軸方向の重心ずれ補償後目標速度Vb_cmpn_cmd_xy(最新値)と第1推定値Vb_estm1_x(最新値)との偏差に応じたフィードバック操作量成分、第2項は、乗員搭乗部5のY軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_xの計測値(最新値)に応じたフィードバック操作量成分、第3項は、乗員搭乗部5のY軸周り方向の実際の傾斜角速度ωb_act_xの計測値(最新値)応じたフィードバック操作量成分である。 そして、X軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_xは、これらのフィードバック操作量成分の合成操作量として算出される。

    同様に、式(4b)の右辺の第1項は、車両系全体重心のY軸方向の重心ずれ補償後目標速度Vb_cmpn_cmd_y(最新値)と第1推定値Vb_estm1_y(最新値)との偏差に応じたフィードバック操作量成分、第2項は、乗員搭乗部5のX軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_yの計測値(最新値)に応じたフィードバック操作量成分、第3項は、乗員搭乗部5のX軸周り方向の実際の傾斜角速度ωb_act_yの計測値(最新値)に応じたフィードバック操作量成分である。 そして、Y軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_yは、これらのフィードバック操作量成分の合成操作量として算出される。

    次いで、姿勢制御演算部34は、積分演算部34aによって、目標並進加速度DVw1_cmd_xyの各成分を積分することによって、第1の移動動作部3の第1目標速度Vw1_cmd_xy(最新値)を決定する。

    そして、第1制御処理部24は、上記の如く決定した第1目標速度Vw1_cmd_xyにしたがって第1の移動動作部3のアクチュエータ装置8としての電動モータ8a,8bを制御する。 より詳しくは、第1制御処理部24は、第1目標速度Vw1_cmd_xyにより規定される各電動モータ8a,8bの回転速度の目標値に、実際の回転速度(計測値)を追従させるように、フィードバック制御処理により各電動モータ8a,8bの電流指令値を決定し、この電流指令値に従って、各電動モータ8a,8bの通電を行なう。

    以上の処理により、前記制限後重心目標速度Vb_cmd_xyが一定値であって、車両1の運動が整定し、車両1が一定速度で直進している状態においては、車両系全体重心は、第1の移動動作部3の接地点の真上に存在する。 この状態では、乗員搭乗部5の実際の傾斜角度θb_act_xyは、式(1b)、(2b)に基づいて、−Ofst_xy/(h−r_xy)となる。 また、乗員搭乗部5の実際の傾斜角速度ωb_act_xyはゼロ、目標並進加速度DVw1_cmd_xyはゼロとなる。 このことと、図4のブロック線図から、Vb_estm1_xyとVb_cmd_xyとが一致することが導き出される。

    すなわち、第1の移動動作部3の第1目標速度Vw1_cmd_xyは、基本的には、車両系全体重心の制限後重心目標速度Vb_cmd_xyと第1推定値Vb_estm1_xyとの偏差をゼロに収束させるように決定される。

    また、車両系全体重心の位置が、倒立振子モデルにおける前記基準部Ps_xyの位置からずれることの影響を補償しつつ、前記処理部32eの処理によって、第1の移動動作部3のアクチュエータ装置8としての電動モータ8a,8bのそれぞれの回転速度が、所定の許容範囲から逸脱することのないように制御される。

    以上が、本実施形態における第1制御処理部24の処理の詳細である。

    次に、前記第2制御処理部25の処理を図9を参照して説明する。 第2制御処理部25は、その機能を大別すると、図9に示すように車両1の旋回時のヨー軸周り方向の実際の角速度である実旋回角速度ωz_actを前記目標旋回角速度ωz_cmdに追従させるための第2の移動動作部4のY軸方向の移動速度(並進速度)の基本目標値Vw2_cmd1_yを決定する基本目標値決定部41と、基本目標値Vw2_cmd1_yにリミット処理を施すことで、第2の移動動作部4のY軸方向の移動速度の制限後目標値Vw2_cmd_yを決定するリミット処理部42と、この制限後目標値Vw2_cmd_yに応じて第2の移動動作部4のアクチュエータ装置である電動モータ17の通電電流を制御するモータ制御部43と、リミット処理部42で用いるリミット幅を可変的に設定するリミット幅設定部44とを備える。

    上記基本目標値決定部41、リミット処理部42、モータ制御部43、リミット幅設定部44は、それぞれ本発明における基本目標値決定手段、リミット処理手段、アクチュエータ制御手段、リミット幅設定手段に相当するものである。

    第2制御処理部25は、まず、基本目標値決定部41の処理を実行する。 この基本目標値決定部41は、図9に示す如く、第1の移動動作部3のY軸方向の実際の移動速度Vw1_act_yの観測値(又は代用推定値)と、実旋回角速度ωz_actの観測値と、姿勢制御演算部34で決定した第1の移動動作部3のY軸方向の第1目標速度Vw1_cmd_yと、操作指令変換部31で前記した如く決定した目標旋回角速度ωz_cmdとを用いて、次式(5a)〜(5d)の演算処理(フィードバック制御の演算処理)を実行することで、第2の移動動作部4のY軸方向の移動速度の基本目標値Vw2_cmd1_yを算出する。


    Vw2_act_y=Vw1_act_y−L・ωz_act ……(5a)
    Vw2_cmd_ff_y=Vw1_cmd_y−L・ωz_cmd ……(5b)
    Vw2_cmd_fb_y=Kw2・(Vw2_cmd_ff_y−Vw2_act_y) ……(5c)
    Vw2_cmd1_y=Vw2_cmd_ff_y+Vw2_cmd_fb_y ……(5d)

    式(5a)の左辺のVw2_act_yは、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度である。 そして、式(5a)は、Vw2_act_yの観測値(又は代用推定値)を算出する演算である。 なお、Lは、前記した如く、第1の移動動作部3の接地点と第2の移動動作部4の接地点との間のX軸方向の距離である。

    この場合、式(5a)の右辺のVw1_act_yの値としては、例えば第1の移動動作部3のY軸方向の移動速度の目標値(第1目標値)Vw1_cmd_yの前回値がVw1_act_yの観測値の代用推定値として用いられる。 あるいは、例えば、電動モータ8bの回転速度をロータリエンコーダ等の回転速度センサにより検出し、それらの検出値から推定したVw1_act_yの値(観測値)を、式(5a)の演算に用いてもよい。

    また、ωz_actの値としては、本実施形態では、前記ヨーレートセンサ23の検出信号に基づくヨー軸周り方向の角速度の計測値(観測値)が用いられる。

    また、式(5b)の左辺のVw2_cmd_ff_yは、第2の移動動作部4のY軸方向の移動速度の基本目標値Vw2_cmd1_yのフィードフォワード成分である。

    なお、式(5a)により算出されるVw2_act_yの値は、Vw1_act_yの値としてVw1_cmd_yの前回値を使用した場合には、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度の観測値の代用推定値に相当し、Vw1_act_yの値として観測値を用いた場合には、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度の観測値に相当する。

    また、式(5c)の左辺のVw2_cmd_fb_yは、上記フィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yと、Vw2_act_yの観測値(又は代用推定値)との偏差をゼロに近づけるためのフィードバック成分である。 この場合、このフィードバック成分Vw2_cmd_fb_yは、フィードバック制御則、例えば比例則により、Vw2_cmd_ff_yと、Vw2_act_yの観測値(又は代用推定値)との偏差に応じて決定される。 すなわち、Vw2_cmd_fb_yは、該偏差にあらかじめ定められた所定値の比例ゲインKw2を乗じることにより算出される。

    そして、第2の移動動作部4のY軸方向の移動速度の基本目標値Vw2_cmd1_yは、式(5d)に示す如く、上記フィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yと、フィードバック成分Vw2_cmd_fb_yとを加え合わせることにより決定される。

    これにより、基本目標値Vw2_cmd1_yは、フィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yと、Vw2_act_yの観測値(又は代用推定値)との偏差をゼロに近づけるようにフィードバック制御の演算処理により決定される。

    この場合、第1の移動動作部3のY軸方向の実際の移動速度Vw1_act_yは、第1目標速度Vw1_cmd_yに対して追従性が高いので、基本目標値Vw2_cmd1_yは、結果的に、実旋回角速度ωz_actを目標旋回角速度ωz_cmdに近づけるように決定されることとなる。

    なお、フィードバック成分Vw2_cmd_fb_yを、目標旋回角速度ωz_cmdと、実旋回角速度ωz_actの観測値との偏差に応じて、比例則あるいは比例・微分則等のフィードバック制御処理により算出するようにしてもよい。

    次いで、第2制御処理部25は、リミット幅設定部44の処理を実行する。 このリミット幅設定部44が設定するリミット幅は、基本目標値Vw2_cmd1_yと第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの観測値(又は代用推定値)との差の大きさの許容最大値を意味するものである。

    そして、リミット幅設定部44は、上記リミット幅の第1候補値及び第2候補値を、それぞれ、処理部44a、44bの処理により算出する。

    処理部44aは、本発明における第1候補値決定手段に相当する。 この処理部44aは、本実施形態では、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの観測値(又は代用推定値)の絶対値と、前記フィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yの絶対値とのうちの大きい方の値(=max(|Vw2_act_y|,|Vw2_cmd_ff_y|))に、第2の移動動作部4のY軸方向の移動時の許容スリップ率(許容される最大のスリップ率)としてあらかじめ定められた正の所定値Sp_r(<1)を乗じることによって、リミット幅の第1候補値Δlim1を算出する。 この第1候補値Δlim1は、第2の移動動作部4のY軸方向の移動時のスリップ率を、所定値Sp_r以下に制限するようにするためのリミット幅である。

    また、処理部44bは、第2の移動動作部4のX軸方向の実際の移動速度Vw2_act_xの観測値又は代用推定値の絶対値に、第2の移動動作部4の許容横滑り角(許容される最大の横滑り角の絶対値)としてあらかじめ定められた所定の正の角度値β(<90°)の正接(=tan(β))を乗じることによって、リミット幅の第2候補値Δlim2を算出する。

    この場合、本実施形態の車両1は、第2の移動動作部4のX軸方向の移動は、第1の移動動作部3のX軸方向の移動に追従して従動的に行なわれるので、第2の移動動作部4のX軸方向の実際の移動速度Vw2_act_xは、第1の移動動作部4のX軸方向の実際の移動速度Vw1_act_xにほぼ一致する。

    このため、本実施形態では、第2候補値Δlim2を算出するために用いるVw2_act_xの値としては、第1の移動動作部4のX軸方向の実際の移動速度Vw1_act_xの観測値又は代用推定値が用いられる(このVw2_act_xの値は、代用推定値に相当する)。

    この場合、第1の移動動作部4のX軸方向の実際の移動速度Vw1_act_xの観測値としては、例えば、ロータリエンコーダ等の回転速度センサによる電動モータ8aの回転速度の計測値から推定した値を用いることができる。 また、Vw1_act_xの観測値の代用推定値としては、第1の移動動作部4のX軸方向の移動速度の目標値Vw1_cmd_xの前回値を用いることができる。

    なお、第2の移動動作部4のX軸周り方向の回転速度をロータリエンコーダ等により検出し、その検出した値から推定した第2の移動動作部4のX軸方向の移動速度の値(観測値)をVw2_act_xの値として用いて、第2候補値Δlim2を算出するようにしてもよい。

    上記の如く処理部44bにより算出される第2候補値Δlim2は、車両1がX軸方向に移動しながら旋回する場合の第2の移動動作部4の横滑り角を、所定値β以下に制限するようにするためのリミット幅である。

    なお、処理部44bの処理では、所定の角度値βが十分に小さい値である場合には、Vw2_act_xの観測値又は代用推定値に、β([rad]の角度単位での値)を乗じることで、第2候補値Δlim2を算出するようにしてもよい。

    また、角度値β(許容横滑り角)を、第2の移動動作部4のX軸方向の実際の移動速度Vw2_act_xの観測値又は代用推定値に応じて変化させるようにしてもよい。 その場合には、Vw2_act_xの絶対値が大きいほど、角度値βを小さくするようにすることが好ましい。

    次に、リミット幅設定部44は、上記の如く決定した第1候補値Δlim1と、第2候補値Δlim2と、リミット幅のあらかじめ定められた最小値Δlim_minとから、処理部44cによりリミット幅Δlimを決定する。

    この場合、処理部44cは、Δlim1、Δlim2、Δlim_minのうちの最も大きい値(=max(Δlim1,Δlim2,Δlim_min))をリミット幅Δlimとして決定する。

    従って、基本的には、第1候補値Δlim1と第2候補値Δlim2とのうちの大きい方がリミット幅Δlimとして設定される。 ただし、この場合、リミット幅Δlimは、最小値Δlim_min以上の値に制限され、Δlim1、Δlim2のうちの大きい方が、Δlim_minよりも小さい場合には、リミット幅Δlimとして、Δlim_minが設定される。

    次いで、リミット幅設定部44は、処理部44d、44eによりそれぞれ、リミット処理部42で使用する上限値及び下限値を決定する。 具体的には、処理部44dは、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの観測値又は代用推定値に、リミット幅Δlimを加算することにより、上限値を算出する。

    また、処理部44eは、Vw2_act_yの観測値又は代用推定値から、リミット幅Δlimを減算することにより、下限値を算出する。

    以上が、リミット幅設定部44の処理の詳細である。 なお、処理部44d、44eの処理は、リミット処理部42で行うようにしてもよい。

    また、上記上限値及び下限値は、必ずしも、その両方を制御処理周期毎に決定する必要はない。 すなわち、基本目標値Vw2_cmd1_yが、実際の移動速度Vw2_act_yの観測値又は代用推定値よりも大きい場合には、上限値だけを決定し、基本目標値Vw2_cmd1_yが、実際の移動速度Vw2_act_yの観測値又は代用推定値よりも小さい場合には、下限値だけを決定するようにしてもよい。

    また、上記上限値及び下限値にそれぞれ対応するリミット幅Δlimを異なる値に決定してもよい。

    第2制御処理部25は、以上の如く基本目標値決定部41及びリミット幅設定部44の処理を実行した後、次に、リミット処理部42の処理を実行する。 このリミット処理部42は、基本目標値決定部41で決定された基本目標値Vw2_cmd1_yを、前記上限値(=Vw2_act_y+Δlim)及び下限値(=Vw2_act_y−Δlim)と比較する。

    そして、リミット処理部42は、基本目標値Vw2_cmd1_yが上限値と下限値との間の許容範囲内に収まっている場合には、この基本目標値Vw2_cmd1_yをそのまま制限後目標値Vw2_cmd_yとして決定する。

    また、リミット処理部42は、基本目標値Vw2_cmd1_yが上限値よりも大きい場合、あるいは、下限値よりも小さい場合には、それぞれ、該上限値、下限値が制限後目標値Vw2_cmd_yとして決定される。

    これにより、制限後目標値Vw2_cmd_yは、Vw2_act_yの観測値又は代用推定値との差の大きさが、リミット幅Δlim以下となるように制限されて決定される。 すなわち、基本目標値Vw2_cmd1_yとVw2_act_yの観測値又は代用推定値との差の大きさがリミット幅Δlim以下である場合には、制限後目標値Vw2_cmd_yは、基本目標値Vw2_cmd1_yに一致するように決定される。 また、基本目標値Vw2_cmd1_yとVw2_act_yの観測値又は代用推定値との差の大きさがリミット幅Δlimを超えると、制限後目標値Vw2_cmd_yは、Vw2_act_yの観測値又は代用推定値との差の大きさが、リミット幅Δlimに一致するように制限されて決定される。

    次に、第2制御処理部25は、モータ制御部43の処理を実行する。 このモータ制御部43は、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yを制限後目標値Vw2_cmd_yに追従させるように第2のアクチュエータ装置としての電動モータ17の通電電流(ひいては、第2の移動動作部4のY軸方向の駆動力)を制御する。

    具体的には、モータ制御部43は、制限後目標値Vw2_cmd_yと第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの観測値又は代用推定値との偏差から、フィードバック制御則、例えば比例則により電動モータ17の電流指令値Iw2_cmdを決定する。 すなわち、モータ制御部43は、次式(6)の如く、偏差(Vw2_cmd_y−Vw2_act_y)にあらかじめ設定された所定のゲイン値K2(比例ゲイン)を乗じることによって、電流指令値Iw2_cmdを決定する。


    Iw2_cmd=K2・(Vw2_cmd_y−Vw2_act_y) ……(6)

    この場合、Vw2_act_yの値(観測値又は代用推定値)としては、基本目標値決定部41で前記式(5a)により算出された値(最新値)が用いられる。 なお、電流指令値Iw2_cmdを比例則の代わりに、例えば比例・微分則(PD則)により決定するようにしてもよい。

    そして、モータ制御部43は、上記電流指令値Iw2_cmdに従って電動モータ17の実際の通電電流をモータドライバ(モータ駆動回路)を介して制御する。

    これにより、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yが、制限後目標値Vw2_cmd_yに追従するように制御される。

    以上の第2制御処理部25の制御処理によって、ジョイスティック12から旋回指令が出力されていない状況(目標旋回角速度ωz_cmdがゼロである状況)では、基本的には、第2の移動動作部4のY軸方向の移動速度の目標値としての前記制限後目標値Vw2_cmd_yは、第1の移動動作部3のY軸方向の第1目標速度Vw1_cmd_y(最新値)に一致するように決定されることとなる。

    また、ジョイスティック12から旋回指令が出力されている状況(目標旋回角速度ωz_cmdがゼロでない状況)では、基本的には、前記制限後目標値Vw2_cmd_yは、第1の移動動作部3のY軸方向の移動速度の目標値(第1目標速度)Vw1_cmd_yに、目標旋回角速度ωz_cmdに応じて旋回用の速度成分(=−L・ωz_cmd)を付加したフィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yに収束するように(ひいては、目標旋回角速度ωz_cmdに実旋回角速度ωz_actが収束するように)決定される。 これにより、車両1の旋回が行なわれることとなる。

    また、制限後目標値Vw2_cmd_yは、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yとの差の大きさが、リミット幅設定部44により上記の如く設定されるリミット幅Δlim以下に収まるように適宜制限される。

    以上が、第2制御処理部25の処理の詳細である。

    以上説明した本実施形態の車両1では、乗員搭乗部5に搭乗した乗員の身体の動きに伴う該乗員搭乗部5(又は基体2)の前後方向(X軸方向)傾動に応じて、あるいは、ジョイスティック12の前後方向の揺動操作に応じてX軸方向での車両1の並進移動を行なうことができる。

    また、乗員搭乗部5(又は基体2)の左右方向(Y軸方向)傾動に応じてY軸方向での車両1の並進移動を行なうことができる。

    また、これらの並進移動を複合して、X軸方向及びY軸方向に対して傾斜した任意の方向にも車両1の並進移動を行なうこともできる。

    また、ジョイスティック12の左右方向の揺動操作に応じて出力される旋回指令に応じて、車両1の旋回(方向転換)を行なうこともできる。

    従って、ジョイスティック12等の操作器の複雑な操作や、乗員の身体の複雑な動きを必要とすることなく、車両1の並進移動や旋回を容易に行なうことができる。

    また、車両1の旋回時においては、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの追従目標たる制限後目標値Vw2_cmd_yは、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yとの差の大きさが、リミット幅設定部44により上記の如く設定されるリミット幅Δlim以下に収まるように適宜制限される。 このため、第2の移動動作部4の滑りに起因して、実旋回角速度ωz_actを目標旋回角速度ωz_cmdに近づけるための基本目標値Vw2_cmd1_yと、実際の移動速度Vw2_act_yとの差の大きさが過大になりそうな場合、第2の移動動作部4の制限後目標値Vw2_cmd_yが制限されることで、該第2の移動動作部4の過剰なスリップが生じるのを防止することができる。

    この場合、車両1のX軸方向の実際の移動速度(=第1の移動動作部3のX軸方向の実際の移動速度Vw1_act_x)がゼロもしくは低速である状況では、基本的には、上記リミット幅Δlimは、前記最小のリミット幅Δlim_minと、前記第1候補値Δlim1とのうちの大きい方に一致するように決定される。

    従って、基本的には、第2の移動動作部4のY軸方向の移動時のスリップ率が、許容スリップ率Sp_r以下に収まように、第2の移動動作部4の制限後目標値Vw2_cmd_yが決定される。 これにより、第2の移動動作部4のスリップ率を適正な範囲内に収めるようにして、第2の移動動作部4の過剰なスリップが生じるのを確実に防止できる。

    また、車両1の旋回開始時のように、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの大きさが小さい場合には、リミット幅Δlimが、最小のリミット幅Δlim_min以上で、主にフィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yに応じて決定されることとなるので、制限後目標値Vw2_cmd_yが基本目標値Vw2_cmd1_yに対して過剰に制限されるのを防止することができる。 ひいては、車両1の旋回を円滑に開始することができる。

    また、例えば車両1を、ある程度以上の速度でX軸方向に前進させながら旋回させるような場合には、基本的には、上記リミット幅Δlimは、前記最小のリミット幅Δlim_minと前記第2候補値Δlim2とのうちの大きい方に一致するように決定される。

    このため、基本的には、第2の移動動作部4の横滑り角を適正な範囲内に収めるようにして、第2の移動動作部4の過剰なスリップが生じるのを確実に防止できる。 また、第2の移動動作部4の横滑り角が、スリップ率を制限する第1候補値Δlim1によって過剰に制限されてしまうのを防止することができ、車両1の旋回に必要な横力を適切に確保することができる。 従って、車両1の前進を行いながらの旋回を円滑に行うことができる。

    次に、以上説明した実施形態の変形態様をいくつか説明する。

    前記各実施形態では旋回指令等を出力するための操作器として、ジョイスティック12を用いたが、ジョイスティックの代わりに、トラックボールや、タッチパッドを使用してもよく、あるいは、乗員による接触箇所を検知する荷重センサや、乗員が把持する姿勢センサ等を使用してもよい。 あるいは、例えばスマートフォン等の携帯型端末機を操作器として使用するようにすることもできる。

    また、乗員の左右方向における重心の動き(ひいては乗員搭乗部5のX軸周り方向の傾動)に応じて、適宜、車両1の旋回を行なわせるように車両1の第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の左右方向の移動速度を制御するようにようにしてもよい。 例えば、Y軸方向における重心ずれ量推定値Ofst_estm_yもしくは重心ずれ影響量Vofs_yの大きさ、あるいは、第1の移動動作部3のY軸方向の移動速度の目標値Vw1_cmd_yの大きさ等が所定値以上となった場合に、乗員が車両1の旋回を行なうことを要求しているものとみなして、車両1の旋回を行なわせるように車両1の第1の移動動作部3及び第2の移動動作部4の左右方向の移動速度を制御するようにようにしてもよい。

    また、前記実施形態では、第2制御処理部25のリミット幅設定部44において、第1候補値Δlim1、第2候補値Δlim2、及び最小のリミット幅Δlim_minのうちの最大値をリミット幅Δlimとして決定するようにしたが、第1候補値Δlim1と最小のリミット幅Δlim_minとのうちの大きい方、あるいは、第2候補値Δlim2最小のリミット幅Δlim_minとのうちの大きい方をリミット幅Δlimとして決定するようにしてもよい。

    また、第1候補値Δlim1は、第2の移動動作部4のY軸方向の実際の移動速度Vw2_act_yの観測値又は代用推定値だけに応じて決定するようにしてもよい。 すなわち、Vw2_act_yの観測値又は代用推定値に許容スリップ率Sp_rを乗じた値を第1候補値として決定するようにしてもよい。

    また、前記実施形態では、車両1の旋回角速度ωz_actを目標旋回角速度ωz_cmdにフィードバック制御するようにしたが、そのフィードバック制御の処理を省略するようにしてもよい。 例えば、前記式(5c)の比例ゲインKw2をゼロとして、フィードフォワード成分Vw2_cmd_ff_yを基本目標値Vw2_cmd1_yとして決定するようにしてもよい。

    また、第2の移動動作部4は、前述のような1対の環状芯体及びそれに外挿される複数のローラ13で構成されるオムニホイール以外に、一つの環状芯体及びそれに外挿される複数のローラで構成されるものであっても良い。 また、第2の移動動作部4は、オムニホイール以外の構造、例えば、第1の移動動作部3と同様の構造のものであってもよい。

    また、前記第1実施形態においては、旋回時における第1の移動動作部3のY軸方向の第1目標速度Vw1_cmd_yは、X軸方向の第1目標速度Vw1_cmd_xの大きさが比較的大きい場合に、小さめの速度に制限するようにしてもよい。 このようにすることで、旋回時の車両1の操縦性を高めることができる。

    1…倒立振子型車両、2…基体、3…第1の移動動作部、4…第2の移動動作部、5…乗員搭乗部、8a,8b…電動モータ(第1のアクチュエータ装置)、17…電動モータ(第2のアクチュエータ装置)、21…制御装置(制御手段)、41…基本目標値決定部(基本目標値決定手段)、42…リミット処理部(リミット処理手段)、43…モータ制御部(アクチュエータ制御手段)、44…リミット幅設定部(リミット幅設定手段)。

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