Means and methods for preventing and / or treating dental caries

申请号 JP2007530658 申请日 2005-09-09 公开(公告)号 JP5143559B2 公开(公告)日 2013-02-13
申请人 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se; 发明人 カエスラー,ブルーノ; クノル,ロルフ; ボエトナー,メヴェス; ブッデ,エクハルド; ラング,クリスティーネ; リゼル,マルティン; ヴェーン,マルクス;
摘要 The present invention relates to a microorganism belonging to the group of lactic acid bacteria characterized in that it is capable of specifically binding to Streptococcus mutans, wherein the specific binding is (i) resistant to heat treatment; and/or (ii) resistant to protease treatment; and/or (iii) calcium-dependent; and/or (iv) formed within a pH range between 4.5 and 8.5; and/or (v) formed in the presence of saliva. Preferably, the specific binding can be assayed as follows: (a) growing said microorganism to stationary phase; (b) mixing said microorganism with Streptococcus mutans which has been grown to stationary phase; (c) incubating the mixture obtained in step (b) under conditions allowing the formation of aggregates of said microorganism and Streptococcus mutans and (d) detecting aggregates by the occurrence of a pellet. Another aspect of the present invention is an analog or fragment of said microorganism which is thermally inactivated or lyophilized, wherein said analog or fragment retains the capability of specifically binding to Streptococcus mutans. In addition, the present invention encompasses compositions and additives for food, feed or drinks comprising the microorganism belonging to the group of lactic acid bacteria which specifically bind to Streptococcus mutans or an analog or fragment thereof. Moreover, uses of said microorganism or said analog or fragment thereof for the preparation of an anticariogenic or pharmaceutical composition or anticariogenic food or feedstuff as well as methods for producing said compositions or food or feedstuff are provided by the present invention.
权利要求
  • ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)と特異的に結合できることを特徴とする 、DSMZ受託番号DSM 16667、DSMZ受託番号DSM 16668、DSMZ受託番号DSM 16669、DSMZ受託番号DSM 16670、DSMZ受託番号DSM 16671、DSMZ受託番号DSM 16672、およびDSMZ受託番号DSM 16673を有するラクトバチルス・パラカゼイもしくはラクトバチルス・ラムノサスからなる群より選択されるラクトバチルス属の微生物であって、前記特異的結合が、
    (i) 少なくとも20分間にわたる95℃より高温での加熱処理に抵抗する、および
    (iii) カルシウム依存性である、および
    (iv) 4.5〜8.5のpH範囲で形成される、および
    (v) 唾液の存在下で形成される、
    ことを特徴とする、上記微生物。
  • 前記特異的結合が、さらに
    (ii) プロテアーゼ処理に抵抗する、
    ものである、請求項1記載の微生物。
  • 前記プロテアーゼ処理が プロナーゼE、プロテイナーゼK、トリプシンおよびキモトリプシンからなる群より選択されるプロテアーゼによる処理である、請求項2に記載の微生物。
  • 前記特異的結合が、
    (a) 前記微生物を静止期になるまで増殖させ、
    (b) 前記微生物を、静止期へと増殖させたストレプトコッカス・ミュータンスと混合し、
    (c) ステップ(b)で得られた混合物を、前記微生物とストレプトコッカス・ミュータンスとの凝集物の形成を可能にする条件下でインキュベートし、
    (d) ペレットの出現により凝集物を検出する、
    ことによりアッセイされる、請求項1に記載の微生物。
  • 前記微生物が、熱不活性化、凍結乾燥、または噴霧乾燥した形態であり、該熱不活性化が 前記細胞を、2バールの圧力で飽和蒸気の存在下、121℃の温度で少なくとも20分間オートクレーブすること、または −20℃で少なくとも1時間前記細胞を凍結させること、
    により達成される、請求項 1〜4のいずれか1項記載の微生物。
  • 前記微生物がストレプトコッカス・ミュータンス血清型c(DSMZ 20523)および/または血清型e(NCTC 10923)および/または血清型f(NCTC 11060)と結合することができる、請求項 1〜5のいずれか1項に記載の微生物。
  • ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合できることを特徴とする請求項 1〜6のいずれか1項記載の ラクトバチルス属の微生物を含んでなる組成物。
  • 請求項7記載の組成物において、該組成物が請求項 1〜6のいずれか1項記載の微生物を
    a) 以下の量、
    a1) 固形の組成物として10 2 〜10 12個の細胞/mg、もしくは
    a2) 10 2 〜10 13個の細胞/ml
    にて含む、および/または
    b) 前記組成物が
    b1) 1%(w/w)以下のラクトースを含む、または前記組成物が
    b2) 6%(w/w)を超えるラクトースを含む、
    前記組成物。
  • 請求項7記載の組成物において、該組成物が請求項 1〜6のいずれか1項記載の微生物を
    a) 以下の量、
    a1) 固形の組成物として10 3 〜10 8個の細胞/mg、
    にて含む、および/または
    b) 前記組成物が
    b1) 1%(w/w)以下のラクトースを含む、または前記組成物が
    b2) 6%(w/w)を超えるラクトースを含む、
    前記組成物。
  • a) 化粧上または経口的に許容される担体または賦形剤をさらに含有する化粧品組成物、または
    b) 製薬上許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物、または
    c) 経口的に許容される担体または賦形剤をさらに含有するヒトまたは動物のための食品または飼料、
    である請求項 7〜9のいずれか1項記載の組成物。
  • 前記組成物が歯磨剤、練り歯磨き、歯磨き粉、局所口腔ジェル、マウスリンス、義歯用製品、マウススプレー、ロゼンジ、口腔錠剤、チューインガム、マウスウォッシュ、デンタルフロスまたは食品、飼料もしくは飲料の添加物である、あるいは 前記組成物が、粉剤、錠剤、フィルム製剤、溶液剤、エーロゾル剤、顆粒剤、丸剤、懸濁液剤、乳濁液剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、または流動エキス剤の剤形である、あるいは 前記組成物が、ガム、スプレー製品、飲物、キャンディー、乳児用調整粉乳、アイスクリーム、フローズンデザート、スィートサラダドレッシング、乳調製品、チーズ、クォーク、酸性乳、コーヒークリーム、ホイップクリーム、バター、チーズ、加工乳、脱脂粉乳、ハム、ソーセージ、ハンバーガーのような肉製品、魚肉およびフィッシュケーキ製品、味付けした巻き卵、エッグカードのような卵製品、クッキー、ジェリー、スナック、チューインガムのような菓子、パン、麺類、漬物、スモーク製品、魚の乾物、調味料、粉末状食品、シート様食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット食品、および液状食品からなる群より選択される食品または飲料である、
    請求項 7〜10のいずれか1項記載の組成物。
  • 抗う蝕原性組成物の調製のため、または ヒトもしくは動物の外科手術または治療法による処置用の組成物の調製のため、または う蝕の予防、治療もしくは改善用の組成物の調製のため、または 単一の歯または複数の歯の表面へのストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)細胞の付着防止用の組成物の調製のため、または 口腔からのストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)の凝集および洗い流し用の組成物の調製のため、あるいは う蝕に対する予防のための、
    請求項 1〜6のいずれか1項記載の微生物の使用。
  • 請求項 1〜6のいずれか1項記載の微生物を化粧上、製薬上または経口的に許容される担体もしくは賦形剤と配合する工程を含む、抗う蝕性組成物の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)と特異的に結合できることを特徴とする乳酸菌のグループに属する生物に関する。 ただし、前記特異的結合は、(i) 加熱処理に抵抗し、かつ/または(ii) プロテアーゼ処理に抵抗し、かつ/または(iii) カルシウム依存性であり、かつ/または(iv) 4.5〜8.5のpH範囲で形成され、かつ/または(v) 唾液の存在下で形成されるものである。 好ましくは、特異的結合は次のようにアッセイすることができる:
    (a) 前記微生物を静止期になるまで増殖させ、
    (b) 前記微生物を、静止期へと増殖させたストレプトコッカス・ミュータンスと混合し、
    (c) ステップ(b)で得られた混合物を、前記微生物とストレプトコッカス・ミュータンスとの凝集物の形成を可能にする条件下でインキュベートし、
    (d) ペレットの出現により凝集物を検出する。

    本発明のもう一つの形態は、熱的に不活性化されているかまたは凍結乾燥されている前記微生物の類似体または断片であり、前記類似体または断片はストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能を保持している。 加えて、本発明は、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する乳酸菌のグループに属する微生物またはその類似体もしくは断片を含んでなる、食品、飼料または飲料用の組成物および添加物を包含する。 さらに、抗う蝕原性組成物もしくは医薬組成物、または抗う蝕原性食品もしくは飼料を製造するための前記微生物またはその類似体もしくは断片の使用、ならびに前記組成物または食品もしくは飼料を製造するための方法が本発明により提供される。

    ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans:ミュータンス連鎖球菌)はう蝕(カリエス)の発生に中心的な役割を果たしている。 S.ミュータンスはショ糖を有機酸に代謝分解することによって酸性の微小環境を作り出す。 一方では、これは、それほど好酸性ではない非う蝕原性の口腔内プラーク細菌に利益をもたらす。 他方では、有機酸が歯のエナメル質を脱ミネラル化して、う蝕性病変へと至らしめる。 さらに、S.ミュータンスはに不溶性のグルカンマトリックスを合成し、このグルカンマトリックスはプラークを強化し、かつS.ミュータンスの歯表面への付着を増加させる。

    う蝕の発生に関係している、乳酸菌や放線菌といった他の細菌種の役割は明確になっていない。 これらの細菌はう蝕性病変部に見出されることが多いが、S.ミュータンスとの関連においてのみである。 目下知りえるかぎりでは、S.ミュータンスの存在がう蝕発生の絶対必要条件である。

    歯の表面へのS.ミュータンスの初期結合は2つの機構を経て起こる。 第1の機構は、連鎖球菌抗原I/II(SA I/II)(別名B、IF、P1、SR、MSL-1またはPAcとしても知られる表面タンパク質)を介してのS.ミュータンスと薄膜(歯表面上の唾液タンパク質の層)との結合である。 このタンパク質に対する抗体はin vitroでS.ミュータンスの付着を防止することがわかっている。

    したがって、連鎖球菌抗原I/II(SA I/II)はワクチン接種のための標的となる。 さまざまな組換え体の組合せ(完全な抗原、唾液結合領域、コレラ毒素に結合されたまたは無毒性サルモネラ菌株の表面に発現された該タンパク質)において、動物がうまく免疫されたことが示されている。 これは高いIgA抗体価とS.ミュータンス定着の減少をもたらした (Huangら, Infect. Immun. 69 (2001), 2154-2161)。 同様の成果がSA I/IIをコードするDNAワクチンでも得られている (Fanら, J. Dent. Res. 81 (2002), 784-787)。

    受動免疫は、乳酸菌の表面上での抗SA I/II抗体の組換え発現により達成されている。 これらの乳酸桿菌はS.ミュータンスを凝集させ、また、該細菌をラットに投与したところう蝕の発生が減少した (Kruegerら, Nature Biotechnology 20 (2002), 702-706)。

    連鎖球菌抗原の最も重要な結合パートナーは唾液のアグルチニン(凝集素)であり、これはスカベンジャー受容体システインリッチスーパーファミリーからの糖タンパク質gp-340に類似したタンパク質である (Prakobpholら, J. Biol. Chem. 275 (2000) 39860-39866)。

    う蝕発生におけるアグルチニンの役割はこれまで完全には理解されていない。 アグルチニンは、表面に結合した状態で存在するときにはS.ミュータンスの付着へと導く可能性があり、また、可溶性の状態で存在するときにはS.ミュータンスの凝集へと導く可能性がある。 後者の場合は、凝集したS.ミュータンスが唾液の流れによって口内から除去されると考えられる。 唾液中の高いアグルチニン濃度はin vitroでS.ミュータンス付着の増加をもたらすが、in vivoでは唾液中のアグルチニン濃度とう蝕の危険性との間にはっきりとした相関関係は認められない (Stenuddら, J. Dent. Res. 80 (2001), 2005-2010)。 アグルチニンに対するモノクローナル抗体は、唾液で覆われたハイドロキシアパタイトへのS.ミュータンスの結合をin vitroで完全にブロックし、アグルチニン依存性凝集を防止する (CarlenおよびOlsson. J. Dent. Res. 74 (1995), 1040-1047; Carlenら, J. Dent. Res. 77 (1998), 81-90)。 Bradyら, Infect. Immun. 60 (1992), 1008-1017は、表面付着と凝集が異なる抗体によって独立して阻害され得ることを明らかにした。 このことは、アグルチニンの異なるエピトープがこれら2つの作用に関与していることを示している。

    う蝕の発生にしばしば関係している他の唾液タンパク質はプロリンリッチタンパク質(PRP)である。 しかし、う蝕性細菌の付着に際してこれらのタンパク質が果たす役割は論議を呼んでいる。 これらのタンパク質は2つの遺伝子座(PRH-1およびPRH-2)によりコードされており、2,3個のアミノ酸のみが異なる別個の変異体として生じる (PRP-1、PRP-2、PIF、Db-二重バンド)。 これらの変異体はタンパク質加水分解により切断されて、いわゆる小さなPRP(PRP-3、PRP-4、PIF-fおよびDb-f)を生成しうる。

    PRPはアクチノミセス・ナエスランディ(Actinomyces naeslundii)または非ミュータンス連鎖球菌のような共生菌の強力な結合を媒介している。 興味深いことに、この結合は、該タンパク質が歯の表面に付着して、結合部位を接近可能にするコンフォメーション変化を起こしたときだけ生じる。 S.ミュータンスは弱く結合されるにすぎない。 PRP変異体DbはS.ミュータンスの効果的な結合に関連がある。 高濃度のDbは、高いS.ミュータンス付着および強いう蝕発生と相関している。 高濃度の全PRPのうちPRP-Dbの部分を減らすと、う蝕発生の低下につながる (Stenuddら, J. Dent. Res. 80 (2001), 2005-2010)。 S.ミュータンスがPRPと直接結合するのかは不明である。

    S.ミュータンスが歯の表面に付着するための第2の方法はショ糖依存性付着によるものである。 S.ミュータンスは多糖グルカンを合成することができる3種類のグリコシルトランスフェラーゼ(GTF)を発現する。 グルカンは水溶性形態(1-6グリコシド結合)と、ムタンと呼ばれる不溶性形態(1-3グリコシド結合)で存在している。 ムタンは口内細菌によっても唾液中の酵素によっても分解されない。 ムタンは歯垢(プラーク)内に粘着性マトリックスを形成し、これがS.ミュータンスのショ糖依存性付着の土台となる。 グリコシルトランスフェラーゼGTFBおよびGTFCは、ムタン形成に関与する一般的な酵素であって、S.ミュータンスの細胞表面に存在する。 これに対して、グリコシルトランスフェラーゼGTFDは可溶性グルカンを合成する酵素で、S.ミュータンスにより分泌される。 S.ミュータンスのGTF欠損変異体を用いた実験は、3種すべての酵素の相互作用がショ糖依存性付着に必要であることを示している (Ooshimaら, J. Dent. Res. 80 (2001), 1672-1677)。

    グリコシルトランスフェラーゼはN末端ショ糖結合部位とC末端グルカン結合部位を有する。 該酵素に対する抗体またはグルカン結合部位に対する抗体は、S.ミュータンスのショ糖依存性付着の阻止をもたらす。 N末端のショ糖結合部位を抗体によりブロックすることは可能となっていない (Yuら, Infect. Immun. 65 (1997), 2292-2298)。

    グリコシルトランスフェラーゼの阻害と、それに続くS.ミュータンス付着の減少は、一部のフラボノイド類もしくはテルペノイド類(US 2004/0057908)またはプロポリス抽出液(Duarteお, Biol. Pharmacol. Bull. 26 (2003), 527-531)によっても達成することができる。

    S11と名づけられた乳酸菌が見出されており、この菌はムタン形成を減少させ、それゆえにS.ミュータンスの付着をin vitroで低下させる。 上述したように、ムタン形成はS.ミュータンスが歯の表面に付着するのに不可欠である。 こうして、Chungら(Oral Microbiol. Immunol. 19 (2004), 214-216)は、S.ミュータンスを、ムタン形成を減少させるとされたS11株の乳酸菌と共にインキュベートしたとき、剥がれ落ちたS.ミュータンス細胞を見つけた。 S.ミュータンスのムタンへの結合は細菌性結合タンパク質(グルカン結合タンパク質)を介して起こる。 この結合の正確なメカニズムを決定する必要がある (Satoら, Infect. Immun. 65 (1997), 668-675)。

    真菌トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)およびペニシリウム・パルロゼナム(Penicillium purpurogenum)は同種のα-1,3-グルカナーゼを産生する (Fuglsangら, J. Biol. Chem. 275 (2000), 2009-2018)。 グルカン生産およびプラーク形成に対抗する効果があるEnterococcus属、Lactobacillus属、およびLactococcus属の菌種の利用が記載されている (US 6,036,952)。 その作用メカニズムが解明されねばならない。

    う蝕を予防するための別のアプローチはプラークの低pHを中和することである。 尿素とアルギニンは唾液の成分であるが、尿素は3〜10 mmol/Lの濃度で存在し、う蝕のない人とう蝕のある人の間で大きな濃度差はない。 一方、遊離アルギニンの濃度は4〜40μmol/Lの間で相違する。 う蝕のない人はう蝕のある人よりも唾液中の遊離アルギニンの平均濃度が高くなっている (van Wuyckhuyseら, J. Dent. Res. 74 (1995), 686-690)。 ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)やアクチノミセス・ナエスランディ(Actinomyces naeslundii)のような一部のプラーク細菌は尿素またはアルギニンを切断することができ、その結果としてアンモニアを生成する。 アルカリ性のアンモニアはプラークのpHを上昇させ、それゆえにう蝕を減少させる (Curranら, Appl. Environm. Microbiol. 61 (1995), 4494-4496; Morou-BermudezおよびBurne. Infect. Immun. 68 (2000), 6670-6676)。 こうして、これらの細菌はう蝕の治療への使用が提案されている。 う蝕の治療のために提案されたもう一つのアプローチは、PRP-1およびPRP-3のタンパク質加水分解により、アルギニンリッチペプチドを生成させるというものである。 アルギニンリッチペプチドは、S. sanguis、S. oralis、S. mitisといった口内細菌によりさらに加水分解された後で、プラークをより高いpHにすることができる。 これらのペプチドの組換え変異体を適用することにより、ショ糖依存性のpH低下が抑制される (Liら, Infect. Immun. 68 (2000), 5425-5429)。 さらに、ショ糖の摂取後に尿素含有チューインガムを噛むことにより、pHの低下が抑制され、そのために、例えばS.ミュータンスはう蝕にそれほど関与しない、と記載されている。

    しかしながら、上記から明らかなように、先行技術はう蝕治療用の組換え微生物および/または生存微生物を提供するものであるが、これらの微生物は有害であったり、食品用の微生物ではなかったりする。 あるいはまた、先行技術は、潜在的な抗う蝕効果を発揮するために十分には、口腔内で長期間にわたり安定でない作用物質を提供するものである。 加えて、う蝕の治療に有用であることがこれまでに提案された先行技術の作用物質(例えば、酵素製剤、化合物など)は低温安定性、pH安定性、および/または熱安定性がなく、このことはこれらの物質をむしろ無効にしてしまう。 その上、これらの物質の一部は有害な副作用のリスクを抱えている。 例えば、う蝕に対するワクチン接種に使用することが提案されている連鎖球菌抗原はワクチン接種に関連した重大問題を引き起こしかねない。 要するに、先行技術は、う蝕の予防および/または治療を必要とする被験者に有害でなく、う蝕の治療に効果的かつ容易に使用可能であり、しかも安価に大量生産することができる作用物質を提供していない。 したがって、上記の望ましい基準を満たし、かつう蝕の予防および/または治療に有用である作用物質が必要とされている。

    かくして、本発明の根底にある技術的課題は、当然、上記の必要性を満たすことにある。 この技術的課題の解決は、特許請求の範囲に記載した実施形態を提供することで達成される。

    したがって、第1の形態において、本発明は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)と特異的に結合できることを特徴とする乳酸菌のグループに属する微生物に関する。 ここで、前記特異的結合は、
    (i) 加熱処理に抵抗し、かつ/または
    (ii) プロテアーゼ処理に抵抗し、かつ/または
    (iii) カルシウム依存性であり、かつ/または
    (iv) 4.5〜8.5のpH範囲で形成され、かつ/または
    (v) 唾液の存在下で形成されるものである。

    好ましくは、特異的結合は次のようにアッセイすることができる:
    (a) 前記微生物を静止期になるまで増殖させ、
    (b) 前記微生物を、静止期へと増殖させたストレプトコッカス・ミュータンスと混合し、
    (c) ステップ(b)で得られた混合物を、前記微生物とストレプトコッカス・ミュータンスとの凝集物の形成を可能にする条件下でインキュベートし、
    (d) ペレットの出現により凝集物を検出する。

    特異的結合は、好ましくは、本明細書中の実施例3に後述するようにアッセイされる。 乳酸菌のグループに属する微生物は3:1から60:1(S.ミュータンス:乳酸桿菌)の容量比でS.ミュータンスと混合することが好ましい。 乳酸菌とS.ミュータンスはどちらも、実施例1に記載するように静止期になるまで増殖させる。 好ましくは、光学密度を600 nmの波長で光度的に測定する。 上記の比は1:50から1:2.5までのコロニー形成単位の比に相当する。 好ましくは、1 mlでのOD 600 =1は3 x 10 8コロニー形成単位のS.ミュータンスに相関する。 好ましくは、1 mlでのOD 600 =1は7 x 10 9コロニー形成単位の本発明の乳酸桿菌に相関する。 好ましくは、凝集反応をアッセイする際には、細菌を15 ml Falconチューブ中に2 mlの容量で入れる。 必要に応じて、培養懸濁液をPBSバッファーで希釈して上記の容量比とするが、最終容量は2 mlに保持する。 好ましくは、混合物を約15秒間ボルテックス混合し、次いで少なくとも5、10、15分間、より好ましくは少なくとも20分間室温(すなわち、16℃〜25℃の温度)で静置する。 凝集反応は懸濁液がすぐに混濁することで目視できる。 少なくとも20分後には、目に見えるペレット(例えば図1、左のFalconチューブに示す)として沈降する凝集物によって凝集反応が目視可能となる一方で、非S.ミュータンス凝集混合物は懸濁状態のままである(例えば図1、右のFalconチューブに示す)。 対照としての、乳酸菌およびS.ミュータンスそれぞれの自己凝集は、S.ミュータンスまたは乳酸菌のいずれかを取り除くことでアッセイすることができる。 さらに、この特異的結合にはマグネシウムが必要でない。 この特性は以下の実施例に記載するとおりに試験することができる。

    上記のすべての特性は、乳酸菌のグループに属する本発明の微生物を、S.ミュータンスが原因で発生するう蝕の予防および/または治療に適した微生物とする。 こうして、本発明の微生物は抗う蝕効果を発揮し、そのためにう蝕の予防および/または治療に有用な物質となる。 「う蝕」または「虫歯」または「空洞」は、歯の軟質腐食域と関連した慢性の感染性疾患(徐々に進行して歯を死滅させる)を意味する互換性の用語である。 通常、それは子供や若年成人に発生するが、いかなる人にも発生しうる。 若い人達にとってう蝕は歯喪失の最大の原因となる。 う蝕は当技術分野で公知の方法により診断を下すことができる (例えば、Angmar-Manssonおよびten Bosch, Adv. Dent. Res. 7 (1993), 70-79を参照のこと)。

    「う蝕の予防」とはう蝕の予防処置を含む。 こうして、う蝕の原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンスに接触したことが一度もないが、接触するリスクがある(すなわち、ストレプトコッカス・ミュータンスに感染するリスクがある)被験者は、例えば、本発明の微生物または変異体もしくは誘導体、あるいは本明細書に記載のその類似体もしくは断片を含む本発明の組成物から、その被験者にう蝕がない限りにおいて、利益を得ることとなる。 したがって、本発明の組成物は、例えば、う蝕の予防処置のために幼児や子供に投与するのに有用である。 というのは、小児の口内にはストレプトコッカス・ミュータンスが通常存在しないからである。 しかし、本発明の組成物は幼児や子供への投与に限定されない。

    「う蝕の治療」とは、ストレプトコッカス・ミュータンスの細胞量を減少させるために、かつ/または口内から(特に、歯を含めて口腔から)ストレプトコッカス・ミュータンスを完全に消失させるために、う蝕を有する被験者に本発明の組成物を投与することを含む。 もちろん、ストレプトコッカス・ミュータンスを治療により取り除いた後では、その被験者は、ストレプトコッカス・ミュータンスに対して発揮される予防的抗う蝕効果に関して、本発明の組成物から利益を得ると考えられる。

    場合により、本発明の微生物はプロバイオティク微生物であって、その抗う蝕作用のほかにも、それが投与される宿主生物に有益な作用をもたらす。 「プロバイオティク」とは、一般的に容認されている定義によれば、「宿主動物の腸内微生物のバランスを改善することによって、該動物に有益な作用をもたらす生菌の飼料添加物(サプリメント)」である。 本発明の微生物は、それがプロバイオティック特性を有する場合には、本明細書で後述する機能性食品または健康食品中に含めることができる。

    ストレプトコッカス・ミュータンスは口内の普通の菌叢の一部として存在する。 この菌は虫歯の原因に関係している。 歯肉に隣接した歯の隙間やくぼみに歯垢(プラーク)がたまる。 初期の歯垢は歯のエナメル質に沈着した糖タンパク質からなる。 その後、口内細菌がその糖タンパク質と結合するようになる。 食事から摂取したショ糖は虫歯の重要な原因物質である。 特に、ショ糖がべたべたする甘味食品の形をしていて、その一部が口の中にしばらく残っている場合にはそうである。 こうして、ショ糖はストレプトコッカス・ミュータンスによってさらに完全に代謝分解されて酸を形成する。 ショ糖の入った飲料を飲み込む場合には、ショ糖が口内にとどまる時間は少なくなる。 規則的な歯磨きを行うことにより、また楊枝やデンタルフロスを使用することにより歯垢を防ぐことが不可欠となる。 飲料水に1 ppmのフッ化物を添加することは、う蝕を減らす上で非常に有効であることが証明されている。 ストレプトコッカス・ミュータンスに対するワクチンの使用可能性は断たれている。 しかしながら、乳酸菌のグループ(好ましくは、ラクトバチルス属(Lactobacillus))に属する天然の微生物がストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合できるという本発明の驚くべき知見により、う蝕を効果的に予防および/または治療することが可能である。 なんとなれば、本発明の微生物は、ストレプトコッカス・ミュータンスを凝集させて、口内(歯の表面および口腔を含む)から、例えば唾液の流れによって、この菌を流し去るからである。 こうして、本発明は、抗う蝕特性に加えて、プロバイオティクスとしても有用な食品用生物である、容易に投与可能な細菌を提供する。

    微生物を同定するためのプライベートコレクションをストレプトコッカス・ミュータンスとの結合能についてスクリーニングしていたとき、驚いたことに、乳酸菌のグループ(好ましくは、ラクトバチルス属)に属する天然の微生物が、う蝕の原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合できる、ということを見出した。 ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合することによって、乳酸菌のグループ(好ましくは、とりわけ本明細書中で開示するラクトバチルス属)に属する微生物はストレプトコッカス・ミュータンスを凝集させ、その結果として自然な唾液の流れによってストレプトコッカス・ミュータンスを流し去り、それによりう蝕を予防および/または治療する。 その上さらに、本発明の微生物は好ましくは、本明細書(特に実施例4)に記載する口腔内に存在する他の微生物とは結合しない。 かくして、う蝕の原因菌であるS.ミュータンスのみが排除されるので、口腔の微小環境が乱されることはない。 知るかぎりでは、S.ミュータンスは口腔に対してどのような有益な作用ももたらさず、したがって、その消失がそれぞれの宿主に有害な作用を及ぼすことは一切ない。

    注目すべきことに、ストレプトコッカス・ミュータンスに対する微生物(特に本明細書に開示するラクトバチルス属の菌種)の特異的結合は、加熱処理に抵抗し、かつ/またはプロテアーゼ処理に抵抗する。 その上、前記特異的結合はカルシウムに依存し、かつ/またはマグネシウムに依存せず、4.5の酸性点で安定であり、しかもその結合は唾液の存在下で起こる。 こうしたことは、経口用途に、または食品、飼料もしくは飲料(乳のような高濃度のカルシウムを含むもの)用の添加物として、特に適している。 驚いたことに、本明細書に開示する前記微生物の熱不活性化したまたは凍結乾燥した類似体または断片は依然としてストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力がある。 この予想外の効果は、前記微生物の類似体もしくは断片ならびにその変異体もしくは誘導体を、う蝕を予防および/または治療するための哺乳動物(好ましくは、ヒトまたは動物)用の組成物中で使用するのに有利である。 特に、前記類似体または断片はあらゆる組成物(例えば、化粧品、医薬品、食品、飼料、飲料など)に容易に添加することができる。 加えて、このような類似体または断片の製造は安価で簡単であり、また、それらはストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力を失うことなく長期間保存することができる。 本発明の微生物のさらなる利点は、それを凍結乾燥、噴霧乾燥または乾燥させても、S.ミュータンスと特異的に結合する能力を保持している、という点である。 このため、それは本明細書に開示する組成物の好ましい成分となる。

    本発明の他の実施形態および利点は、一部は本明細書中に記載されており、また一部は本明細書の記載から明白であるか、本発明の実施から知ることができる。

    本発明を詳細に説明する前に、本発明は本明細書に記載する特定の方法、プロトコル、細菌、ベクター、試薬など(これらは様々でありうる)に限定されないことを理解すべきである。 また、本明細書で用いる用語は特定の実施形態のみを説明するためのもので、本発明の範囲を制限するものでないことも理解すべきである。 本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。 別に定義しないかぎり、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、当業者が普通に理解している意味と同じである。

    好ましくは、本明細書中の用語は、「バイオテクノロジー用語のマルチリンガル辞典:IUPAC勧告(A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations))」, Leuenberger, HGW Nagel, B.およびKoelbl, H.編集. (1995), Helvetica Chimica Acta(CH-4010 Basel, スイス)に記載されるとおりに定義される。

    本明細書および特許請求の範囲を通して、その文脈がほかに必要としないかぎり、用語「含む」ならびにその変形は、明記した1つの整数もしくはステップまたはそのグループを含めることを意味するが、それ以外の整数もしくはステップまたはそのグループを除外することを意味するものではないことが理解されよう。

    いくつかの文献が本明細書全体を通して引用されている。 ここに引用した文献(特許、特許出願、科学文献、メーカーの仕様書、使用説明書など全てを含む)はそれぞれ、前掲であろうが後掲であろうが、その全体を参照することにより本明細書で援用するものとする。 本明細書においては、本発明が先行発明に基づいてそのような開示よりも前の日付にする権利がないことを容認するものと決して解釈されるべきでない。

    本明細書および特許請求の範囲で用いるとき、その文脈が別途指示しないかぎり、単数形には複数形の対象が含まれることに注意しなければならない。 こうして、例えば、単数形の「試薬」への言及には1種以上のそのような異なる試薬への言及が含まれ、また、単数形の「方法」への言及には、当業者に公知の同様のステップおよび方法(これらの方法は改変されてもよいし、本明細書に記載の方法に代えて使用してもよい)への言及が含まれる。

    本発明との関連で用いるとき、「乳酸菌のグループに属する微生物」または「本発明の微生物」なる用語は、細菌に属する、特にグラム陽性発酵真正細菌に属する、さらに特定すると乳酸菌を含む乳酸菌科(lactobacteriaceae)に属する微生物を包含する。 さらに、この用語は、S.ミュータンスと特異的に結合する能力を保持する前記微生物の誘導体、変異体、類似体または断片(例えば、本明細書に記載する膜画分)をも包含する。 「誘導体」、「変異体」、「類似体」および「断片」という語については本明細書の他の箇所で説明する。 乳酸菌は、分類上の観点から、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)およびラクトバチルス属(Lactobacillus)に細分される。 本発明の微生物は好ましくはラクトバチルス属の菌種である。 乳酸菌のグループの仲間は通常ポルフィリンとシトクロムを欠き、電子伝達リン酸化を行わないため、基質レベルでのリン酸化によってのみエネルギーを得ている。 すなわち、乳酸菌では炭水化物の発酵によってATPが合成される。 全ての乳酸菌は嫌気的に増殖するが、多くの嫌気性菌と違って、大部分の乳酸菌は酸素に敏感でなく、そのため酸素の不在下だけでなく酸素の存在下でも増殖することができる。 こうして、本発明の細菌は好ましくは酸素耐性の嫌気性乳酸菌であって、好ましくはラクトバチルス属に属するものである。 本発明の乳酸菌は、好ましくは桿状または球状で、細長いものから短く曲がったものまで様々であり、さらに好ましくは不動性および/または無胞子性であり、発酵代謝の主要なまたは唯一の産物として乳酸を産生するものである。 本発明の微生物が属するラクトバチルス属は、好ましい実施形態では、下記の特徴によって3つの主要サブグループに分割され、本発明のラクトバチルス属菌種は3つの主要サブグループのそれぞれに属することができる:
    (a) ホモ発酵乳酸菌
    (i) グルコースからEmbden-Meyerhof経路を経て少なくとも85%の量で乳酸(好ましくは、乳酸のL-、D-またはDL-異性体)を産生する;
    (ii) 45℃で生育するが、15℃では生育しない;
    (iii) 長い桿状である;および
    (iv) その細胞壁中にグリセロールテイコ酸を有する;
    (b) ホモ発酵乳酸菌
    (i) Embden-Meyerhof経路を経て乳酸(好ましくは、乳酸のL-またはDL-異性体)を産生する;
    (ii) 15℃で生育し、45℃では変わり易い生育を示す;
    (iii) 短い桿状またはコリネ型である;および
    (iv) その細胞壁中にリビトールおよび/またはグリセロールテイコ酸を有する;
    (c) ヘテロ発酵乳酸菌
    (i) グルコースからペントース-リン酸経路を経て少なくとも50%の量で乳酸(好ましくは、乳酸のDL-異性体)を産生する;
    (ii) 二酸化炭素とエタノールを産生する;
    (iii) 15℃または45℃で変わり易い生育を示す;
    (iv) 長いまたは短い桿状である;および
    (v) その細胞壁中にグリセロールテイコ酸を有する。

    上記の特徴に基づいて、本発明の微生物は乳酸菌のグループ(特にラクトバチルス属)に属すると分類することができる。 古典的な分類学を使用すると、例えば「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology」(Williams & Wilkins Co., 1984)中の関連のある説明を参照すると、本発明の微生物はラクトバチルス属に属すると決定することができる。 あるいはまた、本発明の微生物は当技術分野で公知の方法によって(例えば、その代謝的フィンガープリント、すなわち本発明の微生物の糖代謝能の比較検討により、あるいは、例えばSchleiferら, System. Appl. Microb., 18(1995), 461-467またはLudwigら, System. Appl. Microb., 15(1992), 487-501に記載されるような他の方法によって)ラクトバチルス属に属すると分類することができる。 本発明の微生物は、ラクトバチルス属の微生物に特有な、当技術分野で公知の糖源を代謝する能力がある。 しかし、好ましい実施形態では、本発明の微生物は下記の(i)〜(iv)からなる群より選択される代謝的フィンガープリントを有する:
    (i) それはD-ラクトースを代謝するが、L-ソルボースおよび/またはD-サッカロースおよび/またはD-イヌリンを代謝しない;
    (ii) それはイヌリンを代謝する;
    (iii) それはL-ソルボースを代謝するが、D-ラクトースおよび/またはD-サッカロースおよび/またはイヌリンを代謝しない;および
    (iv) それはL-ソルボース、D-ラクトースおよびイヌリンを代謝する。

    好ましくは、本発明の微生物は下記の(i)〜(iv)からなる群より選択される代謝的フィンガープリントを有する:
    (i) それはD-ラクトースを代謝するが、L-ソルボース、D-サッカロースおよびイヌリンを代謝しない;
    (ii) それはL-ソルボース、D-ラクトースおよびイヌリンを代謝するが、D-サッカロースを代謝しない;
    (iii) それはL-ソルボースを代謝するが、D-ラクトース、D-サッカロースおよびイヌリンを代謝しない;および
    (iv) それはL-ソルボース、D-ラクトースおよびD-サッカロースを代謝するが、イヌリンを代謝しない。

    当然のことながら、本発明の微生物は上記の代謝的フィンガープリントパターンで挙げた糖の代謝に限定されず、ラクトバチルス属菌種によって普通に代謝される他の糖類を代謝する能力を備えていてもよい。

    本発明の微生物がラクトバチルス属に属することは、当技術分野で公知の他の方法を使用することによっても特徴づけることができる。 例えば、確認しようとする菌種の総タンパク質のSDS-PAGEゲル電気泳動を行い、それをラクトバチルス属のすでに特性決定された公知の菌株と比較する方法である。 上記のような総タンパク質のプロファイルを調製する技術、ならびにそのようなプロファイルの数値解析は、当業者によく知られている。 しかし、これらの結果は、この方法の各段階が十分に標準化されている限りにおいて、信頼できるにすぎない。 ラクトバチルス属への微生物の帰属を決定するときに正確さの要件に直面するので、標準化された方法が、定期的に、その著者らによって一般に公開されるようになっている。 例えば、1994年9月12〜16日にベルギーのthe University of Ghentで欧州連合によって開催された「ワークショップ」(細菌の分類と同定のためのフィンガープリント法、全細胞タンパク質のSDS-PAGE)において紹介されたPotらの方法のようにである。 SDS-PAGE電気泳動ゲルを解析する方法で用いるソフトウェアは極めて重要である。 なぜなら、菌種間の相関度がこのソフトウェアで用いるパラメーターとアルゴリズムに左右されるからである。 理論的な詳細については触れないが、デンシトメーターで測定してコンピューターにより正規化したバンドの量的比較は、好ましくはPearsonの相関係数を用いて行われる。 このようにして得られた類似性マトリックスはUPGMA(unweighted pair group method using average linkage)アルゴリズムによって組織化することができ、このアルゴリズムは最も類似するプロファイルを一緒のグループにまとめることを可能にするだけでなく、系統樹を構築することをも可能にする(Kerstersによる「コンピューター支援細菌分類学における、電気泳動による細菌の分類および同定の数値解析法」(Numerical methods in the classification and identification of bacteria by electrophoresis, in Computer-assisted Bacterial Systematics) 337-368, M. Goodfellow, AG O'Donnell編集, John Wiley and Sons Ltd, 1985を参照のこと)。

    あるいはまた、本発明の微生物がラクトバチルス属に属することの決定は、いわゆるRiboprinter RTMでリボソームRNAに関して特徴づけることによっても行うことができる。 さらに好ましくは、新たに確認された本発明の菌種をラクトバチルス属に加えることは、本発明の細菌の16SリボソームRNAまたは該16SリボソームRNAをコードするゲノムDNAのヌクレオチド配列を、これまでに知られている乳酸菌の他の属および種のそれと比較することによって証明される。 新たに確認された本発明の菌種のラクトバチルス属への帰属を決定するための好ましい別法は、16S-23S rRNAスペーサー領域をターゲティングする種特異的PCRプライマーを使用する方法である。 もう一つの好ましい別法はRAPD-PCRであり (Nigatuら, in Antonie van Leenwenhoek (79), 1-6, 2001)、この方法によって菌株特異的DNAパターンを作成する。 かかるDNAパターンから、本発明に従って確認された微生物がラクトバチルス属に属することを決定することができる。 本発明の微生物のラクトバチルス属への帰属を決定するのに有用なさらなる方法は、制限断片長多型(RFLP) (Giraffaら, Int. J. Food Microbiol. 82 (2003), 163-172)、反復エレメントのフィンガープリンティング (Geversら, FEMS Microbiol. Lett. 205 (2001) 31-36)、または細菌細胞の脂肪酸メチルエステル(FAME)パターンの解析 (Heyrmanら, FEMS Microbiol. Lett. 181 (1991), 55-62)である。 あるいはまた、乳酸桿菌はレクチンタイピング(Annukら, J. Med. Microbiol. 50 (2001), 1069-1074)により、またはその細胞壁タンパク質の解析(Gattiら, Lett. Appl. Microbiol. 25 (1997), 345-348)により決定することができる。

    本発明によれば、微生物は好ましくはラクトバチルス属に属する乳酸菌であり、さらに好ましくは本明細書に記載するラクトバチルス属の菌種である。 より一層好ましくは、本発明のラクトバチルス属の菌種はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)またはラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)である。 しかし、ラクトバチルス属の菌種はこれらに限定されない。 特に好ましい実施形態において、本発明の微生物は「分離された」または「精製された」ものである。 「分離された」とは、その物質がもとの環境(例えば、それが自然界に存在するのであれば、自然環境)から分離されていることを意味する。 例えば、自然界で共存する物質の一部または全部から分離された、自然界に存在する微生物(好ましくは、ラクトバチルス属の菌種)は分離されている。 そのような微生物は組成物の一部であってもよく、該組成物がその自然環境の一部でないという点でまだ分離されると考えられる。 「精製された」とは完全に純粋である必要はなく、むしろ相対的な定義を意図している。 ライブラリーから得られる個々の微生物は通常、微生物学的に均一になるまで精製されており、すなわち、それらは当技術分野で公知の方法により寒天プレート上にストリークしたとき単一のコロニーとして増殖する。 好ましくは、この目的で使用する寒天プレートはラクトバチルス属の菌種に対して選択的である。 そのような選択的寒天プレートは当技術分野で公知である。

    本発明の特に好ましい実施形態において、本発明の微生物は、以下のDSMZ受託番号を有するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)もしくはラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、またはその変異体もしくは誘導体(ただし、前記変異体もしくは誘導体はストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力を保持する)からなる群より選択される: DSMZ受託番号DSM 16667 (L. paracasei ssp. paracasei Lb-Ob-K1)、DSMZ受託番号DSM 16668 (L. paracasei ssp. paracasei Lb-Ob-K2)、DSMZ受託番号DSM 16669 (L. paracasei ssp. paracasei Lb-Ob-K3)、DSMZ受託番号DSM 16670 (L. paracasei ssp. paracasei Lb-Ob-K4)、DSMZ受託番号DSM 16671 (L. paracasei ssp. paracasei Lb-Ob-K5)、DSMZ受託番号DSM 16672 (L. rhamnosus Lb-Ob-K6)、およびDSMZ受託番号DSM 16673 (L. rhamnosus Lb-Ob-K7)。 「DSMZ受託番号を有するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)もしくはラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)」という用語は、the Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ)に2004年8月26日に寄託されて、次の寄託番号DSM 16667、16668、16669、16670、16671、16672または16673を有するラクトバチルス・パラカゼイ菌またはラクトバチルス・ラムノサス菌に属する微生物の細胞に関する。 DSMZはMascheroder Weg 1b, D-38124 Braunschweig, Germanyに所在する。 上記のDSMZ寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に準じて行われたものである。

    本発明の微生物(好ましくは、寄託されたラクトバチルス・パラカゼイまたはラクトバチルス・ラムノサス細胞)の「変異体または誘導体」は、それぞれの寄託菌株と同じ特性をもつことが好ましい。 すなわち、それはストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力を、好ましくは上記のような結合特性と共に、保持している。 例えば、前記誘導体は遺伝子工学的に作製することができる。 本発明との関連において、「遺伝子工学的に作製する」という用語は、最も広い意味では、目的の核酸を組換えDNA法によりin vitroおよびin vivoで改変する(その結果、遺伝的改変が生じ、遺伝子が改変される)ために当業者に公知の方法に対して使用される。 したがって、前記方法は組換え核酸のクローニング、配列決定、および形質転換を含むことが好ましい。 そのために適したベクターは、ラクトバチルス属菌種用の発現ベクターを含み、例えばEP-B1 506 789、EP-B1 316 677、EP-B1 251 064、EP-B1 218 230、EP-B1 133 046、またはWO 89/01970に記載されている。

    中間構築物や同様のものをクローニングするためにプライマー、酵素、さらなる宿主細胞が使用されるが、これらは当業者に公知である。 好ましくは、遺伝子工学的に作製される変異体には、その細菌染色体もしくは1以上のプラスミドに含まれる組換え核酸、またはその細菌染色体および/または1以上のプラスミドに含まれる組換え核酸を保有する本発明の微生物(好ましくは、寄託されたラクトバチルス属菌種)の細胞が含まれる。 かかる組換え核酸は本発明の微生物にとって外来の核酸とすることが好ましい。 「外来」とは、ポリヌクレオチドまたは核酸分子がその宿主細胞に対して異種である(つまり、異なるゲノムバックグラウンドの細胞または生物に由来する)こと、あるいは、その宿主細胞に対して同種であるが、該核酸分子の天然の対応物とは異なるゲノム環境に存在すること、を意味する。 このことは、核酸分子がその宿主細胞に対して同種であるとすると、その核酸分子は該宿主細胞のゲノム中の天然の位置には存在しないこと、特に、それが異なる遺伝子によって取り囲まれていること、を意味する。 この場合、ポリヌクレオチドはそれ自体のプロモーターの制御下にあっても、異種のプロモーターの制御下にあってもよい。 宿主細胞中に存在する本発明によるベクターまたは核酸分子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれているか、染色体外に何らかの形で維持されているか、のいずれかである。 これに関して、本発明の核酸分子を用いると、相同組換えにより変異型遺伝子を復元させたり、生成させたりすることができることも理解しておくべきである。

    プラスミドは低い、中位の、または高いコピー数のプラスミドでありうる。 前記の遺伝子工学的に作製された変異体は、ショ糖サブユニットのムタン特異的1,3-グリコシド結合を分解できるグルカナーゼまたはムタナーゼをコードする核酸を保有する細胞を含むことができる。 菌類のグルカナーゼは、例えば、Fuglsangら, J. Biol. Chem. 275 (2000), 2009-2018に記載されている。 また、遺伝子工学的に作製された変異体は、抗体(好ましくは、分泌されるか、細菌の細胞壁に固着される)をコードする組換え核酸を保有することも考えられる。 「抗体」なる語は完全な抗体だけでなく、分離された軽鎖と重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab'、F(ab') 2のようなその抗体フラグメントも包含する。 「抗体」なる語はまた、ヒト化抗体、二重特異性抗体、および抗体構築物、例えば一本鎖Fv(scFv)または抗体融合タンパク質も含む。 さらに、本発明との関連において、「抗体」なる語は、寄託された本発明の微生物の誘導体の細胞内で発現される抗体構築物、例えば、当技術分野で公知の方法によって、特にベクターを介して、形質転換されうる抗体構築物をも含むと考えられる。 特に、そのような抗体構築物は、例えば連鎖球菌抗原I/IIを、特異的に認識すると予想される。 こうしたアプローチは例えばKruegerら, Nat. Biotechnol. 20 (2002), 702-706、またはShiroza. Biochim Biophys Acta 1626 (2003), 57-64に記載されている。

    発現された抗体の分泌は、好ましくは、抗体をコードする核酸を分泌シグナル配列と機能的に連結させることで達成される。 細菌の細胞壁への固着は酵素ソルターゼの作用機構を利用することで達成されると考えられる。 すなわち、グラム陽性細菌の表面タンパク質は、保存されたLeu-Pro-X-Thr-Gly (LPXTG)モチーフの切断を含む作用機構(ペプチドグリカン細胞壁の組み立ての間に起こる)によって細菌の細胞壁に連結される。 したがって、細菌の細胞壁にタンパク質を固着させるためにソルターゼによって利用される上記の保存モチーフをコードする配列に、抗体をコードする核酸分子を融合させることができる。

    また、本発明の微生物(好ましくは、寄託されたラクトバチルス属菌種)は、とりわけストレプトコッカス・ミュータンスに対して有効な、抗菌物質であるロイテリン(reuterin)をコードする核酸分子を保有するように遺伝的に改変しうると考えられる。 ロイテリンは例えばTalaricoら, Chemother. 33 (1989), 674-679に記載されている。

    本発明の微生物の変異体(好ましくは、寄託されたラクトバチルス属菌株の変異体)は人工的に変異させたものであることが好ましい。 本発明によれば、「変異させた」とは、例えば自然界で引き起こされた、または物理的手段もしくは化合物/化学物質/化学薬剤(EMS、ENUなど)により引き起こされた、遺伝物質(すなわち核酸)の永久的な改変を意味する。 こうした改変には、トランジションまたはトランスバージョンのような点変異、核酸/遺伝子/染色体内の1つ以上の塩基の欠失/挿入/付加(これにより核酸/遺伝子/染色体を改変させる)が含まれ、かかる改変は、とりわけ、異常な遺伝子発現/転写/翻訳を引き起こしたり、不活性な遺伝子産物の原因となり、構成的に活性/不活性な遺伝子産物は例えばドミナントネガティブ効果をもたらす。 好ましい変異は、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力を増大させるものである。 こうして、所望の遺伝子中に変異を有する寄託微生物の変異型細胞も好適である(その際、所望の遺伝子中の変異は当業者に公知の方法により誘発される)。 当技術分野では、変異させたまたは遺伝子工学的に作製された細菌細胞を適当な方法/表現型によって選択できることも知られている。 本発明との関連において、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力が増大している変異体は、実施例に記載の方法に従って試験することができる。 しかし、「変異体」という用語には、自然界で生じる自然突然変異をそのゲノム(つまり、細菌の染色体)中に有する本発明の微生物の細胞(好ましくは、寄託微生物の細胞)も含まれる。 「自然突然変異」とは、自然界で、すなわち人間によるまたは突然変異原への曝露による直接的な遺伝子操作なしに、起こる突然変異である。 自然突然変異体の選択は、その菌株を培養して、例えば改善された変異型細菌の能力により、所望の変異体を選択することによって達成される。 自然突然変異体の選択方法は当技術分野で周知である (例えば、Sambrook, Russell "Molecular Cloning, A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, NY (2001); Ausubel. "Current Protocols in Molecular Biology", Green Publishing Associates and Wiley Interscience, NY (1989)を参照のこと)。 例えば、そのような突然変異は培養中に起こる可能性があり、例えば、DNA複製と結びついた通常の細胞分裂過程において、または本発明の微生物の変異体を継代および/または保存している間に起こりうる。

    口腔は多くの異なる種類の連鎖球菌の棲み処であり、それらが多くの共通した特徴を有することは、それらが同じ生育場所を共有していることを考えると、意外なことではない。 それゆえに、本発明の微生物がストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合することは好ましいことである。 こうして、本発明との関連において「特異的に結合する」とは、本発明の微生物(好ましくは、ラクトバチルス属に属する微生物)がストレプトコッカス・ミュータンスと結合するが、それ以外とは結合しない(好ましくは、ストレプトコッカス属に属する他の菌種とは一切結合しない)ことを意味する。 ストレプトコッカス属に属する他の菌種は実施例4に記載されるものである。 すなわち、本発明の微生物は好ましくは次の菌種に属する細菌とは結合しない:ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)の菌種(好ましくは、亜種thermophilusに属するもの)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)の菌種、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)の菌種、および/またはストレプトコッカス・サンギニス(Streptococcus sanguinis)の菌種。 さらに好ましくは、本発明の微生物はStreptococcus salivarius ssp. thermophilus (API 50 CHにより識別される (Biomerieux, フランス)、Streptococcus oralis (DSMZ 20066)、Streptococcus oralis (DSMZ 20395)、Streptococcus oralis (DSMZ 20627)、Streptococcus mitis (DSMZ 12643) および/または Streptococcus sanguinis (DSMZ 20567)と結合しない。加えて、前記微生物は好ましくは、ストレプトコッカス属以外に属する細菌、例えばスタフィロコッカス(Staphylococcus)属に属する細菌とも結合しない。さらに好ましくは、それはスタフィロコッカス・エピダーミディス(Staphylococcus epidermidis)の菌種に属する細菌と結合しない。最も好ましくは、それはStaphylococcus epidermidis (DSMZ 1798) および/または Staphylococcus epidermidis (DSMZ 20044)と結合しない。

    特異的結合を試験する場合は、上記の口腔内細菌のそれぞれを本発明のラクトバチルス培養物と3:1の体積比で混合して、凝集反応を本明細書(例えば実施例3)に記載するようにアッセイすることが好ましい。

    本発明のラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(好ましくは、L. paracasei ssp. paracasei)はストレプトコッカス属の上記口腔内細菌のいずれをも凝集させず、また、上述したスタフィロコッカス属の細菌とも結合しないことがわかった。 本発明のラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)株は、Streptococcus salivarius ssp. thermophilusは別として、上記のストレプトコッカス属およびスタフィロコッカス属の全ての菌種を凝集させないことがわかった。 好ましくは、「特異的に結合する」とは、本発明の微生物が、う蝕原性病原菌の可能性がある、そのようなストレプトコッカス・ミュータンス株と結合することをも意味する。

    特異的結合反応は、口の中で本明細書に記載のストレプトコッカス・ミュータンス細胞を本発明の微生物と結合させる(好ましくは、凝集させる)ことを含んでなる。 その結果、この特異的結合は、ストレプトコッカス・ミュータンス細胞を、例えば唾液の流れによって、または本明細書に記載するような口すすぎもしくは口洗浄などによって、洗い流すこととなる。 口は、口腔粘膜(歯肉、唇、頬、口蓋、および口の底)、舌、および歯(人工の構造物を含む)で構成される哺乳動物(好ましくはヒト、またはペットなどの動物)の口腔と定義する。 好ましくは、本発明の微生物とストレプトコッカス・ミュータンスとの特異的結合反応は、ストレプトコッカス・ミュータンス細胞が歯の表面に付着するのを妨げる(あるいは、理論によって縛られないが、歯の表面からのストレプトコッカス・ミュータンス細胞の剥離へ導くと考えられる)。 結果的に、特異的結合反応はストレプトコッカス・ミュータンス細胞を口から洗い流すこととなり、それによってう蝕の原因菌を減少させて、う蝕を予防および/または治療する。

    本発明の微生物は連鎖球菌抗原I/II(抗原B、IF、P1、SR、MSL-1またはPAcとしても知られている)と特異的に結合すると考えられる。 しかし、本発明の微生物はS.ミュータンスの他のどのタンパク質または表面構造と結合してもよく、それによって、本明細書に記載するようにS.ミュータンスを凝集させて、それを口腔から洗い流してもよい。 ストレプトコッカス・ミュータンスは連鎖球菌抗原I/IIを介してペリクルに結合することが知られている。 こうして、本発明の微生物が例えば連鎖球菌抗原I/IIと結合すると、ストレプトコッカス・ミュータンスは歯の表面に結合するのを妨げられ、ゆえに、う蝕を予防および/または治療するのに役立つ。

    ペリクルは唾液中に存在するタンパク質と脂質(脂肪)を含有する明確な薄膜である。 これは歯の表面をきれいにした後数秒以内に形成されてしまう。 ペリクルの形成が歯垢形成の第一歩である。 歯垢は歯の上に蓄積する柔らかい沈着物である。 歯垢は1ミリグラムあたり10 10個以上の細菌を含む複雑な微生物群落と定義することができる。 歯垢には400もの異なる種類の細菌が存在すると推定されている。 細菌細胞に加えて、歯垢は少数の上皮細胞、白血球、マクロファージを含有する。 これらの細胞は、細菌の産物と唾液から形成される細胞外マトリックスの内部に含まれる。 細胞外マトリックスはタンパク質、多糖、脂質を含有する。 唾液中に存在するタンパク質のひとつにアグルチニンがあり、これは、一方ではストレプトコッカス・ミュータンスを口から一部除去すると考えられているが、他方では歯の表面へのストレプトコッカス・ミュータンスの付着を促進し、それによりストレプトコッカス・ミュータンスの歯への初期結合、ひいてはう蝕の発生を促すことが疑われている。 本発明の微生物が本明細書中で先に定義したストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合するか否かは簡単に試験することができ、とりわけ、本発明の微生物とS.ミュータンスとの反応を、やはりラクトバチルス属に属するがストレプトコッカス・ミュータンスとは特異的に結合しない微生物との反応と、好ましくは本明細書中に後述する実施例に記載の方法を用いて、比較することで試験することができる。 好ましくは、本発明の微生物はストレプトコッカス・ミュータンス血清型c(DSMZ 20523)および/または血清型e(NCTC 10923)および/または血清型f(NCTC 11060)と特異的に結合する能力がある。 このことは、本発明の微生物がストレプトコッカス・ミュータンス血清型c、血清型eまたは血清型fと結合することを意味する。 好ましくは、これは、本発明の微生物がストレプトコッカス・ミュータンス血清型cおよび血清型eまたは血清型fと結合することを意味する。 これはまた、本発明の微生物がストレプトコッカス・ミュータンス血清型cおよび血清型fまたは血清型eと結合すること、あるいは本発明の微生物がストレプトコッカス・ミュータンス血清型eおよび血清型fまたはcと結合することをも意味する。 さらに好ましくは、これは、本発明の微生物がストレプトコッカス・ミュータンス血清型c、血清型eおよび血清型fと結合することを意味する。 本発明によれば、「血清型」とは、細菌細胞の抗原特性、好ましくは当技術分野で公知の血清学的方法により同定されるストレプトコッカス・ミュータンス細胞の抗原特性のことである。

    上述したように、本発明の微生物とストレプトコッカス・ミュータンスとの特異的結合は加熱処理に抵抗する。 したがって、本発明の微生物は、例えば15℃または37℃以上の温度で、加熱処理される。 さらに好ましくは、55℃以上、より一層好ましくは65℃以上、特に好ましくは95℃以上の温度、最も好ましくは121℃で細胞をインキュベートする。 冷えてから、本発明の微生物のS.ミュータンスとの特異的結合能力を本明細書に記載するとおりに測定する。

    対応する温度はラクトバチルス属の特定の菌種によって変化しうるが、かかる温度はルーチンな実験で当業者が容易に決定することができる。 例えば、対応する細胞をさまざまな温度でインキュベートして、本明細書の実施例に示すような方法を用いて、ストレプトコッカス・ミュータンスとまだ特異的に結合できるラクトバチルス属細胞の量を測定することにより行う。 一般には、加熱処理を1分間以上続けるべきである。 好ましくは、加熱処理をn分間以上続ける(ここで、nは2〜60の整数であり、n=20が特に好ましい)。 しかし、原則としてインキュベーション時間の上限はないものの、4、3、2または1時間よりも長くないことが好ましい。 最適な加熱処理は大気圧2バールの飽和蒸気中121℃で少なくとも20分である。 こうした最適な加熱処理はあらゆるタンパク質機能と細胞の生命力を完全に破壊すると考えられ、したがって、かかる処理は、本発明の微生物がS.ミュータンスとまだ特異的に結合できるという点で本発明の微生物を他の微生物から区別する。 かくして、微生物が生きていてはいけないことが望ましい場合に、加熱処理は本発明の食品、飼料、飲料または組成物にとって非常に有用である。

    本発明の微生物の特異的結合はさらに、プロテアーゼ処理に対するその抵抗性によっても特徴づけられる。 プロテアーゼ処理とは、プロナーゼE、プロテイナーゼK、トリプシンおよびキモトリプシンからなる群より選択されるプロテアーゼによる処理のことである。 これらのプロテイナーゼは特異性を一切示さないプロテアーゼであり、したがって微生物の細胞表面にあるどのようなタンパク質も分解すると考えられる。 他のプロテアーゼは、特定のアミノ酸残基のパターンを優先的に分解することが知られているもので、エラスターゼ、トロンビン、アミノペプチダーゼI、カルボキシペプチダーゼ、ドストリパイン(dostripain)、エンドプロテイナーゼ、パパイン、ペプシン、またはプロテアーゼ類がある。 後者のプロテアーゼを使用して、本発明の微生物とS.ミュータンスとの特異的結合がより特異的な後者のプロテアーゼに抵抗性であるかを試験することもできる。 こうして、実施例に記載するプロテアーゼ処理の後に、本発明の微生物はストレプトコッカス・ミュータンスとまだ特異的に結合する能力がある。

    その上、本発明の微生物の特異的結合はカルシウムに対するその依存性によってもさらに特徴づけられる。 好ましくは、特異的結合は0.05 mM〜500 mM(好ましくは1 mM〜100 mM)のカルシウムイオン濃度の存在下で起こる。 カルシウム濃度を2 mM〜30 mMとすることが特に好ましい。 特異的結合のカルシウム依存性は実施例に記載のとおりに試験することができる。 さらに、本発明の微生物との特異的結合は4.0〜9.0(好ましくは4.0〜7.0)のpH範囲で維持される。 特に、特異的結合が依然として起こっているpH値は好ましくは4.5である。 上記pH範囲での特異的結合の維持に関するアッセイは実施例に示す。

    さらに、特異的結合はマグネシウムとは無関係である。 したがって、マグネシウムイオンやマグネシウム塩が存在する必要はなく、これについては実施例で検証する。

    特異的結合のさらに別の特徴は、それが唾液の存在下で起こることである。 唾液は唾液腺で合成される外因性の分泌物である。 唾液は、約99%が水であることを別にすれば、多様な有機化合物と無機化合物を含有する複雑な液体である。 唾液の生理学的成分は、中でも、酵素(例えば、アミラーゼ、カルボアンヒドラーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ)、またはタンパク質(例えば、ムチン、ラクトフェリン、プロリンリッチタンパク質、シスタチン、ヒスタチン、スタテリン)、または可溶性IgAである。 このように、唾液中には種々の干渉性物質が存在するのに、本発明の微生物の特異的結合は妨害されなかった。 唾液の存在下での特異的結合を試験する場合、好ましくは実施例4に記載するストレプトコッカス属の菌種および/または実施例4のスタフィロコッカス属の菌種を含有する唾液を使用することが好適である。 しかし、本発明のラクトバチルス・ラムノサス菌を、唾液の存在下でS.ミュータンスとの特異的結合について試験する場合は、Streptococcus salivarius ssp. thermophilusを除外することが好ましい。 特異的結合は本明細書に記載のとおりにアッセイされる。

    乳酸菌のグループに属する本発明の微生物の上記特徴のため、該微生物はう蝕の強力かつ有効な予防剤および/または治療剤となる。 なぜなら、かかる剤は主としてさまざまな形態で口(口腔と歯を含む)に投与され、その口の中には、特定のプロテアーゼを含みかつ炭水化物含有食品の摂取後には低いpH値となる唾液が存在するからである。 さらに、熱に対する抵抗性は、食品製造中に本発明の微生物を添加物として食品に添加する際に有益な効果を及ぼす。 すなわち、食品は、微生物の生存には害となる加熱殺菌、予備調理、低温殺菌などを施されることが多い。

    別の形態において、本発明は、熱的に不活化されたまたは凍結乾燥された、本発明の微生物の類似体または断片に関し、かかる類似体または断片はストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力を保持するものである。

    本発明によれば、「本発明の微生物の類似体」なる用語は、本発明の微生物、好ましくは本明細書に開示するラクトバチルス属の菌種の、死滅したまたは不活化した細胞を含み、この細胞はラクトバチルス属の微生物に特異的なプレート上でもはや単一のコロニーを形成することができないものである。 死滅したまたは不活化した細胞は、無傷の細胞膜をもっていても、破壊された細胞膜をもっていてもよい。 本発明の微生物の細胞を死滅または不活化する方法は当技術分野で公知である。 El-Nezamiら, J. Food Prot. 61 (1998), 466-468は、ラクトバチルス属の菌種をUV照射により不活化する方法を記載している。 好ましくは、本発明の微生物の細胞は実施例に記載のとおりに熱的に不活化されるか、または凍結乾燥される。 本発明の細胞の凍結乾燥は、S.ミュータンスと特異的に結合する能力を保持したまま、容易に貯蔵し、取り扱うことができるという利点を有する。 さらに、凍結乾燥された細胞は、当技術分野で公知の条件下で適当な液体培地または固形培地に加えると、再び生育することが可能である。 凍結乾燥は当技術分野で公知の方法により行うが、好ましくは、室温で、すなわち16℃〜25℃の温度で、少なくとも2時間実施する。 その上、本発明の微生物の凍結乾燥細胞は、以下の実施例7に示すように、依然としてS.ミュータンスと特異的に結合するほどに、4℃で少なくとも4週間安定している。 熱不活化は本発明の微生物の細胞を170℃で少なくとも2時間インキュベートすることにより達成できる。 しかし、前記細胞を、121℃で少なくとも20分間、2バールの大気圧の飽和蒸気の存在下に加圧殺菌することで熱不活化することが好ましい。 別の方法では、本発明の微生物の細胞の熱不活化は、該細胞を-20℃で少なくとも4週間、3週間、2週間、1週間、12時間、6時間、2時間、または1時間凍結させることで達成される。 本発明の微生物の類似体の細胞のうち少なくとも70%、75%または80%、さらに好ましくは85%、90%または95%、特に好ましくは少なくとも97%、98%、99%、さらに特に好ましくは99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%、最も好ましくは100%が死滅しているか、または不活化されているが、それらは依然としてS.ミュータンスと特異的に結合する能力をもつことが好適である。 本発明の微生物の類似体または断片が実際に死滅しているか、または不活化されているかは、当技術分野で公知の方法(例えば、生存能力に関する試験)により調べることができる。

    「本発明の微生物の類似体」なる用語はまた、本発明の微生物、好ましくは本明細書に開示するラクトバチルス属の菌種の、溶解液または画分をも包含する。 本発明によれば、「溶解液」とは、破壊された本発明の微生物の細胞を水性媒体中に含む溶液または懸濁液を意味する。 しかし、この用語はいかなる場合にも限定的に解釈されるべきでない。 細胞溶解液は、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質などの巨大分子、および/または、アミノ酸、糖、脂肪酸などの微小分子、またはその一部分を含む。 さらに、かかる溶解液は平らなまたは粒状の構造でありうる細胞破片を含む。 微生物の細胞溶解液を調製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、フレンチプレスの利用、ガラスまたは鉄ビーズを用いた細胞粉砕、酵素による細胞溶解などにより行う。 加えて、細胞を溶解することは、細胞を開口/破壊するための当技術分野で公知のさまざまな方法に関係する。 細胞の溶解方法は重要でなく、本発明の微生物の細胞を溶解することができる方法であれば、どれを使用してもよい。 適切な方法は当業者によって選択され、例えば、細胞の開口/破壊は酵素的、化学的または物理的に行うことができる。 酵素および酵素カクテルの例は、限定するものではないが、プロテイナーゼKのようなプロテアーゼ、リパーゼ、またはグリコシダーゼである。 化学薬品の例は、限定するものではないが、イオノフォア、ドデシル硫酸ナトリウムのような界面活性剤、酸または塩基である。 物理的手段の例は、限定するものではないが、フレンチプレスのような高圧、浸透圧、高温や低温のような温度である。 さらに、タンパク質加水分解酵素以外の酵素、酸、塩基などの適切な組合せを用いる方法を利用することもできる。 例えば、本発明の微生物の細胞は凍結と融解により溶解され、好ましくは-70℃以下の温度で凍結させて、30℃以上の温度で融解させる。 特に-75℃以下での凍結と35℃以上での融解が好ましく、-80℃以下の凍結温度と37℃以上の融解温度が最も好ましい。 また、このような凍結/融解を1回以上繰り返すことが好ましく、さらに好ましくは2回以上、さらに一層好ましくは3回以上、特に好ましくは4回以上、最も好ましくは5回以上繰り返す。

    こうして、当業者であれば、上記の一般的な説明を参酌し、必要ならこれらの方法を適宜に改変または変更することにより、所望の溶解液を調製することができる。 好ましくは、上記のような溶解液の調製に用いる水性媒体は水、生理食塩水、または緩衝液である。 細菌の細胞溶解液の利点は、それほど専門的な設備を必要としないので、溶解液を簡単に調製して、費用効率よく保存できる点である。

    本発明によれば、溶解液はまた、上記の溶解液からの分子の画分の調製物でもある。 これらの画分は当業者に公知の方法により得ることができ、こうした方法としては例えば以下のものが挙げられる:クロマトグラフィー、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、カラム法もしくはバッチ法での他のクロマトグラフ材料を用いたクロマトグラフィー;他の分画法、例えば濾過法、例として限外濾過、透析、透析と遠心分離でのサイズ排除による濃縮、密度勾配もしくは段階的マトリックスでの遠心分離、沈降、例えばアフィニティー沈降、塩溶もしくは塩析(硫酸アンモニウム沈降)、アルコール沈降、または溶解液の上記成分を分離するための他のタンパク質化学的、分子生物学的、生化学的、免疫学的、化学的もしくは物理的方法。 好ましい実施形態では、他の画分よりも免疫原性のある画分のほうが好適である。 当業者は、上記の一般的な説明および本明細書中の実施例に示した具体的な説明を参考にし、必要に応じてこれらの方法を適宜に改変または変更することにより、適当な方法を選択して、その潜在的な免疫原性について測定することができる。

    「本発明の微生物の断片」とは、本発明の微生物の細胞のあらゆる部分を包含する。 好ましくは、かかる断片は膜調製物から得られる膜画分である。 ラクトバチルス属の微生物の膜調製物は当技術分野で公知の方法により得られ、例えば、Rollanら, Int. J. Food Microbiol. 70 (2001), 303-307、Matsuguchiら, Clin. Diagn. Lab. Immunol. 10 (2003), 259-266、またはStentzら, Appl. Environ. Microbiol. 66 (2000), 4272-4278、またはVarmanenら, J. Bacteriology 182 (2000), 146-154に記載される方法を用いる。 これとは別に、全細胞調製物も考えられる。 好ましくは、本明細書に記載する本発明の微生物の誘導体または断片はストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する能力を保持しており、これについては本明細書で詳しく説明する。

    本発明のもう一つの形態は、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合することができる乳酸菌のグループに属する微生物、または前記微生物の変異体、誘導体、類似体もしくは断片を含有する組成物である。 好ましくは、この微生物は本発明の微生物またはその変異体もしくは誘導体、あるいは前記微生物の類似体もしくは断片である。 好ましい実施形態において、前記組成物は、固体の組成物では上記の微生物を10 2 〜10 12個/mg、好ましくは10 3 〜10 8個/mgの量で含有する。 この微生物は本発明の微生物であることが好ましい。 液体の組成物の場合には、10 2 〜10 13個/mlの微生物量とする。 しかし、特定の組成物の場合、微生物量は本明細書に記載するとおり様々でありうる。 本発明の好適な組成物はラクトースを1%(w/w)〜6%(w/w)の範囲で含有することはない。 組成物は多くて1%(w/w)のラクトースを含むことが好ましく、例えば、それは1%未満、好ましくは0.9%(w/w)、0.8%(w/w)未満等々のラクトースを含み、また、組成物は6%、7%、8%(w/w)以上等々のラクトースを含むことが好ましい。 あるいはまた、組成物がラクトースを含まないことも好ましい。

    さらに別の形態において、本発明は抗う蝕原性組成物の製造方法を提供し、この方法は、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合することができる乳酸菌のグループに属する微生物、または前記微生物の変異体、誘導体、類似体もしくは断片を、化粧上、経口的に、または製薬上許容される担体または賦形剤により製剤化することを含んでなる。 好ましくは、前記微生物は本発明の微生物であり、前記変異体、誘導体、類似体もしくは断片は本発明のもののうちの1つである。 本発明の好ましい抗う蝕原性組成物はラクトースを1%(w/w)〜6%(w/w)の範囲で含有することはない。 この組成物は多くて1%(w/w)のラクトースを含むことが好ましく、例えば、それは1%未満、好ましくは0.9%(w/w)、0.8%(w/w)未満等々のラクトースを含み、また、抗う蝕原性組成物は6%、7%、8%(w/w)以上等々のラクトースを含むことが好ましい。 あるいはまた、抗う蝕原性組成物がラクトースを含まないことも好ましい。

    本発明で用いる「組成物」なる用語は、上記の微生物または変異体もしくは誘導体(好ましくは、本発明の微生物またはその類似体もしくは断片)を少なくとも1種含有する組成物に関係する。 本明細書中に後述される本発明の組成物は上記の成分を任意の組合せで含有すると考えられる。 場合によっては、う蝕の予防および/または治療に適する別の成分を少なくとも1種含んでいてもよい。 こうして、場合によっては、本組成物は後述される別の成分の任意の組合せを含むことができる。 「う蝕の予防および/または治療に適する成分」という用語は、ストレプトコッカス・ミュータンスが歯の表面に、ペリクルに結合するのを阻害し、かつ/またはストレプトコッカス・ミュータンスを不活化する、化合物または組成物および/またはその組合せを包含する。 さらに好ましくは、この用語は、ストレプトコッカス・ミュータンスが歯の表面に付着するのを阻止し、ストレプトコッカス・ミュータンスのグリコシルトランスフェラーゼの活性を阻害し、ストレプトコッカス・ミュータンスを阻害または不活化し、ストレプトコッカス・ミュータンスのアグルチニン依存性結合を阻害し、かつ/またはストレプトコッカス・ミュータンスのショ糖依存性結合を阻害する、化合物または組成物および/またはその組合せを包含する(これらについては以下で説明する)。

    特に、前記組成物は任意に、ストレプトコッカス・ミュータンスが歯の表面に付着するのを阻止する化合物をさらに含むことが想定される。 こうして、そのような化合物はストレプトコッカス・ミュータンスのコンピテンス・シグナルペプチド(CSP)の阻害剤であると考えられる。 かかる阻害剤として、CA 2,302,861にはCSPの誘導体または断片が記載されている。 このようなCSPの誘導体または断片は、CSPがその天然の受容体、ヒスチジンキナーゼ受容体と結合するのを競合的に阻害するか、またはCSPに対する抗体である。 この種の阻害剤は歯垢のバイオフィルム環境が歯の表面に発生するのを食い止め、それゆえに、ストレプトコッカス・ミュータンスの結合を妨害する。 あるいはまた、本発明の組成物は任意に、う蝕の治療および/または予防に有用なストレプトコッカス・ミュータンスI/II抗原のポリペプチド断片をさらに含んでいてもよい。 このようなポリペプチド断片はUS 6,500,433に記載されている。 すなわち、この種のポリペプチド断片は、天然のストレプトコッカス・ミュータンス抗原I/IIと競合して、アグルチニンと結合することによって哺乳動物の歯の表面に付着する能力を有し、こうして、S.ミュータンスが歯に付着するのを防止または減少させることができる。 US 6,500,433に記載されるいくつかのペプチドは、歯表面モデル(ヒトの唾液そのものをポリスチレン製マイクロタイタープレートのウェルまたはハイドロキシアパタイトビーズに吸着させたもの)へのS.ミュータンスの付着を阻害することが明らかにされている。 したがって、US 6,500,433は1以上の付着部位を含むペプチドを記載しており、これらのペプチドは天然のSA I/IIと競合して哺乳動物の歯に付着すると考えられる。 本発明の組成物の別の任意成分は、WO 00/66616に記載されるような、ストレプトコッカス・ミュータンス由来の線毛関連接着タンパク質SmaAまたはその断片である。 本発明に関係するSmaAタンパク質は、S.ミュータンスの唾液ペリクルへの付着を媒介する該細菌の線毛由来の接着タンパク質であり、52 kdの唾液タンパク質であるアミラーゼとの結合を介すると考えられる。 成熟SmaAタンパク質は、還元ポリアクリルアミドゲルで測定して約65キロダルトン(kd)の分子量を有し、かつアミラーゼ結合能を示す、S.ミュータンスの主要な免疫優性の線毛タンパク質である。 したがって、SmaAは歯の表面の付着部位についてストレプトコッカス・ミュータンスと競合すると考えられる。

    上述したように、ストレプトコッカス・ミュータンスのグリコシルトランスフェラーゼ活性を阻害する化合物を、本発明の組成物中に場合により含めることが想定される。 例えば、US 2004/0057908は、前記グリコシルトランスフェラーゼの活性を阻害するテルペノイドとフラボノイドの混合物を記載している。 Duarteら, Biol. Pharm. Bull. 26 (2003), 527-531は、グリコシルトランスフェラーゼに関して、また、ストレプトコッカス・ミュータンスの成長と付着に関して、新規な種類のプロポリスおよびその化学的画分を記載している。 したがって、この新規な種類のプロポリスとその化学的画分は本発明の組成物のさらなる任意成分になると考えられる。 Kooら, J. Antimicrob. Chemother. 52 (2003), 782-789は、アピゲニンとtt-ファルネソールがストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム蓄積および多糖生産を阻害することを記載している。 こうして、アピゲニンとtt-ファルネソールを本発明の組成物中に場合により含めることが想定される。 炭水化物の脂肪酸エステルはグリコシルトランスフェラーゼ活性に影響することがDevulapalleら, Carbohydr. Res. 339 (2004), 1029-1034に記載されているので、かかる炭水化物の脂肪酸エステルを本発明の組成物中に場合により含めることが想定される。

    ストレプトコッカス・ミュータンスの直接阻害は、例えばWO 2004/000222に記載されている。 すなわち、ストレプトコッカス・ミュータンスに特異的な遺伝子改変バクテリオファージがストレプトコッカス・ミュータンスに起因する細菌性う蝕の治療に用いられる。 WO 2004/017988は、細菌性う蝕の治療に用いられる、生物活性プロテアーゼと少なくとも1種の生物活性グリコシダーゼの組成物を開示している。 Imazatoら, Biomaterials 24 (2003), 3605-3609は、ストレプトコッカス・ミュータンスの成長を阻害するのに、メタクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド(MDPB)が有用であると記述している。 こうして、上で挙げた化合物類は本発明の組成物中に場合により含めることができると考えられる。

    Mitomaら, J. Biol. Chem. 276 (2001), 18060-18065に記載される牛乳のラクトフェリン、またはNostroら, Lett. Appl. Microbiol. 38 (2004), 423-427に記載されるヘリクリサム・イタリクム(Helichrysum italicum)の抽出物は、ストレプトコッカス・ミュータンスのアグルチニン依存性またはショ糖依存性結合を阻害し、本発明の組成物中に場合により含めることが想定される。

    さらに、本発明の組成物はムタナーゼ(1,3-グルカナーゼ)(例えば、DE 2152620またはFuglsang (2000), 前掲、に記載されるもの)またはストレプトコッカス・ミュータンスに対する抗生物質(例えば、US 6,342,385、US 5,932,469、US 5,872,001またはUS 5,833,958に記載されるもの)を場合により含んでいてもよい。 加えて、本発明の組成物はう蝕の予防および/または治療に適する上記の任意成分の1種以上を含んでいてもよいことに注意すべきである。 かくして、本発明の組成物は少なくとも2、3、4、5種など、つまり「n」種の任意成分を含むことができ、ここで「n」は2以上の整数(限定されない)である。 上記の任意成分はどのような可能な組合せで用いてもよい。

    前記組成物は固体、液体、または気体であってよく、とりわけ、粉剤、錠剤、フィルム製剤、溶液剤、エーロゾル剤、顆粒剤、丸剤、懸濁液剤、乳濁液剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流動エキス剤の剤形、あるいは経口投与に特に適する剤形をしている。

    経口投与に適する液体製剤(例えば、シロップ剤)は以下の物質を用いて調製することができる:水、慣用の糖類(例えば、スクロース、ソルビトール、フルクトース)、グリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、油(例えば、ゴマ油、オリーブ油、ダイズ油)、防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル)、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルや安息香酸ナトリウムなどのp-ヒドロキシ安息香酸誘導体)、およびその他の物質(例えば、ストロベリーフレーバーやペパーミントなどの香料)。

    さらに、錠剤、粉剤、顆粒剤といった経口投与に適する製剤は、以下の慣用成分を用いて製造することができる:糖類(例:スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール)、デンプン(例:ジャガイモ、コムギ、トウモロコシ)、無機物質(例:炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム)、植物粉末(例:結晶質セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末)、賦形剤(例:パインデックス(pinedex))、崩壊剤(例:デンプン、寒天、ゼラチン粉末、結晶質セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム)、滑沢剤(例:ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油)、結合剤(例:ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、デンプン糊)、界面活性剤(例:脂肪酸エステル)、および可塑剤(例:グリセリン)。 フィルム製剤は当技術分野で公知の方法により製造することができる。 フィルム製剤の例を本明細書中の実施例19に示す。

    通常の経口投与の場合、本発明の微生物または類似体もしくは断片の用量は、(乾燥重量で)細胞数に関してまたは質量に関して上述したとおりであり、例えば、1μg〜50 g、1μg〜10 g、1μg〜5 mg、1μg〜1 mg、または他の任意の量を被験者あたり1日1回、または複数回に小分けして投与する。 さらに、ヒト以外の動物に投与する場合には、動物の年齢と種別、およびその症状の性質や重症度に応じて用量を変える。 特に限定するものではないが、動物に対する用量は体重1 kgあたり0.1 mg〜10 g、好ましくは1 mg〜1 gを1日1回または複数回とする。 しかし、これらの用量と投与回数は個々の状態によりさまざまである。

    好ましくは、本発明の組成物は化粧上許容される担体または賦形剤をさらに含有する化粧用組成物である。 さらに好ましくは、この化粧用組成物は抗う蝕活性を有する歯磨剤、チューインガム、ロゼンジ、マウスウォッシュ、マウスリンス、またはデンタルフロスである。 本発明の好ましい化粧用組成物はラクトースを1%(w/w)〜6%(w/w)の範囲で含有することはない。 化粧用組成物は多くて1%(w/w)のラクトースを含むことが好ましく、例えば、それは1%未満、好ましくは0.9%(w/w)、0.8%(w/w)未満等々のラクトースを含み、また、化粧用組成物は6%、7%、8%(w/w)以上等々のラクトースを含むことが好ましい。 あるいはまた、化粧用組成物がラクトースを含まないことも好ましい。

    本発明の化粧用組成物は、本発明の組成物と関連して上述した微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片を含んでなり、さらに化粧上または経口的に許容される担体を含有する。 好ましくは、本発明の組成物と関連して述べたように、前記微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片は本発明の微生物、変異体、誘導体、類似体または断片である。 好ましくは、本発明の化粧用組成物は口腔に適用するためのものである。 こうして、それは練り歯磨き、歯磨き粉、局所口腔ジェル、マウスリンス、義歯用製品、マウススプレー、ロゼンジ、口腔錠剤、またはチューインガムの形でありうる。

    本明細書中で用いる「経口的にまたは化粧上許容される担体」とは、安全かつ有効な方法で本組成物を口腔に適用するために使用しうる好適なビヒクルを意味する。 そのようなビヒクルには、次の物質、例えば、フッ素イオン源、追加の抗結石剤、緩衝剤、他の研磨剤、過酸化物源、アルカリ金属重炭酸塩、増粘剤、湿潤剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香料、甘味剤、キシリトール、着色剤、およびこれらの混合物が含まれる。 本明細書中で用いる「安全かつ有効な量」とは、口腔の組織および構造を傷めることなく、歯をきれいにし、かつしみ/歯垢/歯肉炎/結石を減少させるのに十分な量をさす。 本明細書に記載の組成物のpHは約3.0〜9.0であり、好ましいpHは約5.5〜9.0、最適なpHは約7.0〜8.5または9.0である。

    化粧用組成物は、通常の使用過程では、特定の治療剤の全身投与を目的として意図的に飲み込むことはないが、経口作用を目的として歯表面および/または口腔組織の実質的に全てに接触するのに十分な時間にわたり口腔内にむしろ保持される製品のことである。 口腔組成物は単一相の口腔組成物であってもよいし、2つ以上の口腔組成物の組合せであってもよい。

    本明細書中で用いる「歯磨き」とは、特に断らないかぎり、ペースト、ジェル、または液体の配合物を意味する。 歯磨き組成物は所望のどのような形態であってもよく、例えば、ディープストライプ型、表面ストライプ型、多層型、ペーストの周りにジェルを配置した型、またはこれらの任意の組合せでありうる。 歯磨き組成物をディスペンサーの個別の区画に入れて、並べて分配することができる。 歯磨き組成物は例えばEP-B1 0 617 608に記載されている。 好ましい歯磨き組成物は実施例13〜16に記載される。 上記の成分に加えて、本発明の実施形態は様々な任意の歯磨き成分を含むことができ、それらの一部を以下に記載する。 任意成分としては、例えば、接着剤、発泡剤、香味料、甘味料、追加の抗歯垢剤、追加の研磨剤、および着色剤が挙げられるが、これらに限定されない。 上記および他の任意成分は、例えばUS 5,004,597、US 4,885,155、US 3,959,458、およびUS 3,937,807に記載されている。

    例えば、練り歯磨きは界面活性剤、キレート剤、フッ素イオン源、歯を白くする物質および歯の色を変える物質、増粘剤、湿潤剤、香味料および甘味料、アルカリ金属重炭酸塩、その他の種々の担体および/または活性剤を含むことができる。

    本発明の好ましい任意の作用剤の一つに界面活性剤があり、好ましくは、サルコシン酸系界面活性剤、イセチオン酸系界面活性剤、およびタウリン酸系界面活性剤からなる群より選択されるものである。 本明細書中で使用するのに好適なものは、これらの界面活性剤のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。 最も好適なものは、以下の界面活性剤のナトリウム塩およびカリウム塩である:ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸、およびオレオイルサルコシン酸。 もう一つの好ましい任意の作用剤はキレート剤であり、例えば、酒石酸とその製薬上許容される塩、クエン酸とクエン酸のアルカリ金属塩、およびこれらの混合物がある。 キレート剤は細菌の細胞壁に存在するカルシウムと錯体を形成することが可能である。 また、キレート剤はカルシウム架橋(これは歯垢のバイオマスをそのままの状態に保持する働きをしている)からカルシウムを取り除くことによって歯垢を破壊することもできる。

    歯磨きおよび他の口腔組成物中に追加の水溶性フッ素化合物を、25℃および/またはそれを使用する時の該組成物に約0.0025〜5.0重量%、好ましくは約0.005〜2.0重量%のフッ素イオン濃度をもたらすのに十分な量で存在させて、付加的な抗う蝕効果を与えることは普通に行われている。 本組成物中の可溶性フッ化物源として多種多様なフッ素イオン生成物質を使用することができる。 適当なフッ素イオン生成物質の例はUS 3,535,421およびUS 3,678,154に見出せる。 代表的なフッ素イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなどが挙げられる。 フッ化第一スズとフッ化ナトリウムが特に好ましく、これらの混合物も同様に好ましい。

    本発明の口腔ケア組成物中で使用可能な、歯を白くする活性物質には、漂白剤または酸化剤が含まれ、例えば、過酸化物、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、過硫酸塩、亜塩素酸の金属塩、およびこれらの組合せがある。 適当な過酸化物化合物としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、およびこれらの混合物が挙げられる。 好適な過炭酸塩としては過炭酸ナトリウムがある。 その他の好適な白色化剤には、過硫酸および過ホウ酸のカリウム、アンモニウム、ナトリウムおよびリチウム塩の一水和物および四水和物、ならびにピロリン酸ナトリウム・ペルオキシハイドレートが含まれる。 適当な亜塩素酸の金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、および亜塩素酸カリウムがある。 好ましい亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。 追加の白色化剤には次亜塩素酸塩と二酸化塩素がある。

    歯を白くする物質としての漂白剤に加えて、歯の色を変更する物質が口腔ケア活性物質の中でも本発明において有用であると考えられる。 こうした物質はユーザーの希望するように歯の色を変えるのに適している。 かかる物質は、歯の表面に適用されたとき、光の吸収と反射の点から該表面を改変する粒子を含有する。 この種の粒子を含有するフィルムが歯の表面を覆うと、外観上の利点が得られる。

    練り歯磨きまたはジェルを製造する際には、何らかの増粘剤を添加する必要があるが、それは、組成物に望ましい粘稠度を付与する、使用時に望ましい活性放出特性を付与する、貯蔵安定性を与える、組成物の安定性を与える、などのためである。 好ましい増粘剤はカルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト(laponite)、およびセルロースエーテルの水溶性塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチル・ヒドロキシエチル・セルロースナトリウム)である。 カラヤガム、キサンタンガム、アラビアガム、トラガカントガムといった天然のガムも使用することができる。 コロイド状のケイ酸マグネシウムアルミニウムや微細なシリカは、きめをさらに改善するために増粘剤の一部として使用することができる。

    本発明の組成物の局所口腔担体の別の任意成分は湿潤剤である。 湿潤剤は、練り歯磨き組成物が空気に触れた際に硬くなるのを防止したり、口への湿った感じを組成物に付与したり、特別の湿潤剤の場合には、練り歯磨き組成物に望ましい甘い風味を付与したりするのに役立つ。 湿潤剤は、純粋な湿潤剤に基づいて、一般には本組成物の重量の約0〜70%、好ましくは約5〜25%を構成する。 本発明の組成物で使用するのに適した湿潤剤には、食用の多価アルコールが含まれ、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールがあるが、特にソルビトールとグリセリンである。

    香味料および甘味料も本組成物に添加することができる。 適当な香味料としては、冬緑油、ペパーミント油、スペアミント油、クローブバッド油、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カシア(cassia)、酢酸1-メンチル、セージ、オイゲノール、パセリ油、キサノン、α-イリソン、マージョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、シンナムアルデヒドグリセロールアセタール(CGAとして知られる)、およびこれらの混合物が挙げられる。 香味料は一般に組成物の重量の約0.001〜5%のレベルで使用される。

    使用可能な甘味料としては、スクロース、グルコース、サッカリン、デキストロース、レブロース、本明細書に記載したとおりのラクトース、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、シクラメート塩(特に、シクラミン酸ナトリウムおよびサッカリンナトリウム)、およびこれらの混合物が挙げられる。 組成物は一般に組成物の重量の約0.1〜10%、好ましくは約0.1〜1%の甘味料を含有する。

    本発明はさらにアルカリ金属重炭酸塩を含んでいてもよい。 アルカリ金属重炭酸塩は水に溶解して、安定化されないかぎり、水性系中で二酸化炭素を放出する傾向がある。 重炭酸ナトリウムは、ベーキングパウダーとしても知られているものであるが、好適なアルカリ金属重炭酸塩である。 本組成物は約0.5〜30%、好ましくは約0.5〜15%、最も好ましくは約0.5〜5%のアルカリ金属重炭酸塩を含有しうる。 商業上好適な口腔組成物の製造に用いる水は、好ましくは低イオン含量のもので、有機不純物を含まない水とすべきである。 水は一般に水性練り歯磨き組成物の重量の約10〜50%、好ましくは約20〜40%を構成する。 これらの水の量は、添加される遊離水と、他の物質(例えば、ソルビトール)と一緒に導入される水とを合わせたものである。 二酸化チタンも本組成物に添加することができる。 二酸化チタンは白色の粉末で、組成物に不透明性を付与する。 二酸化チタンは歯磨き組成物の重量の約0.25〜5%を構成する。

    本組成物のpHは好ましくは緩衝剤を用いて調整される。 本明細書中で用いる「緩衝剤」とは、本組成物のpHを約4.5〜9.5の範囲に調整するのに使用することができる緩衝剤を意味する。 緩衝剤としては、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、クエン酸、およびクエン酸ナトリウムが挙げられる。 緩衝剤は本組成物の重量の約0.5〜10%のレベルで配合される。 歯磨き組成物のpHは歯磨きの3:1水性スラリー(例えば、練り歯磨き1部に対して水3部)から測定される。

    本組成物中で使用できる他の任意の作用物質としてはジメチコーンコポリオールがあり、これはアルキル-およびアルコキシ-ジメチコーンコポリオール、例えばC12〜C20アルキルジメチコーンコポリオールおよびこれらの混合物から選択される。 特に好ましいのは、商標名Abil EM90として市販されているセチルジメチコーンコポリオールである。 ジメチコーンコポリオールは一般に約0.01〜25%、好ましくは約0.1〜5%、さらに好ましくは約0.5〜1.5%(重量基準)のレベルで存在する。 ジメチコーンコポリオールはポジティブな歯の感触効果をもたらすのに役立つ。 他の有用な担体には、US 5,213,790、US 5,145,666、US 5,281,410、US 4,849,213、およびUS 4,528,180に開示されるような、2相の歯磨き配合物が含まれる。

    本発明の化粧用組成物はまた、抗菌剤のような他の活性物質を含んでいてもよい。 そのような抗菌剤の中に含まれるものは、水不溶性の非カチオン性抗菌剤、例えばハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール系化合物、例えばフェノールとその同族体、モノおよびポリ-アルキル芳香族ハロフェノール、レゾルシノールとその誘導体、ビスフェノール系化合物およびハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸エステル、ならびにハロゲン化カルバニリドである。 水溶性の抗菌剤には、中でも、第四級アンモニウム塩およびビス-ビクアニド塩が含まれる。 トリクロサンモノホスフェートはさらなる水溶性抗菌剤である。 第四級アンモニウム物質には、第四級窒素上の1または2個の置換基が炭素原子数約8〜20(一般的には約10〜18)の炭素鎖長(典型的にはアルキル基)を有するが、残りの置換基(典型的にはアルキル基またはベンジル基)は、炭素原子数約1〜7(一般的にはメチルまたはエチル基)といった、より少ない炭素原子数を有するものが含まれる。 臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、臭化ドミフェン、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム、臭化ドデシルジメチル(2-フェノキシエチル)アンモニウム、塩化ベンジルジメチルステアリルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、第四級化5-アミノ-1,3-ビス(2-エチル-ヘキシル)-5-メチルヘキサヒドロピリミジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、および塩化メチルベンゼトニウムが典型的な第四級アンモニウム抗菌剤の例である。 その他の化合物として、US 4,206,215に開示されるビス[4-(R-アミノ)-1-ピリジニウム]アルカンがある。 ビスグリシン酸銅、グリシン酸銅、クエン酸亜鉛、および乳酸亜鉛のような他の抗菌剤も含めることができる。 酵素は本発明の組成物に使用しうる別のタイプの活性物質である。 有用な酵素には、プロテアーゼ、溶解酵素、歯垢マトリックス阻害剤、およびオキシダーゼのカテゴリーに属するものが含まれる。 プロテアーゼとしては、パパイン、ペプシン、トリプシン、フィシン、ブロメリンが挙げられる;細胞壁溶解酵素としては、リゾチームが挙げられる;歯垢マトリックス阻害剤としては、デキストラナーゼ、ムタナーゼが挙げられる;オキシダーゼとしては、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、クロロペルオキシダーゼを含む)が挙げられる。 オキシダーゼには、抗菌作用のほかに、歯を白くする/きれいにする働きもある。 かかる作用物質はUS 2,946,725およびUS 4,051,234に開示されている。 その他の抗菌剤には、クロロヘキシジン、トリクロサン、トリクロサンモノホスフェート、およびチモールのような香油が含まれる。 トリクロサンとこのタイプの他の物質はUS 5,015,466およびUS 4,894,220に開示されている。 こうした物質は、抗歯垢効果をもたらし、歯磨き組成物の重量基準で約0.01〜5.0%のレベルで存在しうる。

    本明細書中で定義する「チューインガム」とは、組成物の重量基準で、2%以上のエラストマーを含有する、噛むのに適した菓子用組成物を意味する。 適当なロゼンジおよびチューインガム用の成分は例えばUS 4,083,955、US 6,770,264、またはUS 6,270,781に開示されている。 好適なロゼンジは実施例11および12に記載するものである。 好適なチューインガム組成物は実施例17に記載する。

    本発明の組成物は好ましくはエラストマーまたは数種の異なるエラストマーの混合物を含んでなる。 エラストマー材料は一般に当技術分野で公知であるが、例を挙げると、スチレン-ブタジエンゴム(SBR); 合成ガム; ポリイソブチレンおよびイソブチレン-イソプレンコポリマー; 天然ガム; チクル; 天然ゴム; ジェルトン; バラタ; グッタペルカ; レチ・カスピ(lechi caspi); ソーバ樹液; およびこれらの混合物がある。 本発明の組成物は好ましくは重量基準で約2〜30%、より好ましくは約5〜25%のエラストマーを含有する。 こうしたレベルはチューインガムの所望の最終質感(テクスチャー)によって決まるが、それは、全体的なエラストマーレベルが約2%より少ないと、基材組成物の弾力性、噛みごたえ、粘着性がなくなり、一方約30%より高いレベルでは、該組成物が硬く、ゴムっぽくなって、噛みにくいからである。 本発明の組成物中には好ましくはエラストマー溶剤も存在し、それらはエラストマー成分を柔らかくするのに役立つ。 本発明で用いるのに好適なエラストマー溶剤の例としては、部分水素化ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、部分二量体化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、トール油のグリセロールエステル、ウッドまたはガムロジン、部分水素化ロジンのグリセロールエステル、部分水素化ロジンのメチルエステル、およびこれらの混合物がある。 本発明の組成物は、重量基準で、好ましくは約2〜50%、より好ましくは約10〜35%のエラストマー溶剤を含有する。

    本発明で用いるロゼンジは、例えば、圧縮錠剤を形成するための当技術分野で認められた技法により製造することができ、かかる技法では、圧縮可能な固形担体に二糖類を分散させ、場合により適当な錠剤用助剤(例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤)と組み合わせて、それを錠剤に圧縮する。 そのような錠剤用組成物の固形担体成分は唾液に溶解する固体、例えば冷水に溶解するデンプンまたは単糖類であってよく、こうしてロゼンジを口の中に含ませておくと、ロゼンジが口の中で溶けて、口腔/咽頭粘膜との接触および該粘膜からの吸収のために、含まれていた二糖酸を唾液中に放出するようになる。 上記組成物のpHは約4〜8.5の範囲でありうる。 本発明で用いるロゼンジは当技術分野で認められた他の固体単位投与剤形技術を用いて製造することもできる。

    本発明のマウスウォッシュまたはマウスリンスは好ましくは次のとおりである:
    A ハッカ油 1.2部
    Tinctura Arnicae 3.0部
    Tinctura Myrrhae 3.0部
    Tween 5.0部
    B Spiritus 90% 50.0部
    C 安息香酸ナトリウム 0.2部 甘味料(例: アスパルタン) 0.02部 蒸留水を十分量加えて100とする。

    Aを十分に混合し、Bを撹拌しながら添加し、続いてCを添加する。 得られた透明な液体を調製後48時間以内に濾過する。 別の好適なマウスウォッシュを実施例18に記載する。

    液体か固体かの投与形態に関係なく、本発明の好ましい実施形態では、その投与形態を患者の口の中にある時間にわたり保持させて、本発明の微生物またはその類似体もしくは断片と患者の口腔との接触をうながす。

    本発明の別の好適な組成物は、本発明の組成物と関連して上述した微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片を含有する医薬組成物であり、該医薬組成物はさらに製薬上許容される担体または賦形剤を含有する。 好ましくは、微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片は本発明の微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片である。

    さらに、本発明は、組成物(好ましくは、う蝕予防用の医薬または化粧用組成物)を製造するための、本発明の組成物と関連して上述した微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片の使用に関する。 好ましくは、微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片は本発明の微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片である。

    医薬組成物は、治療に有効な量の、本発明の組成物と関連して記載した本発明の微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片を含んでなり、様々な形態、例えば固体、液体、粉末、水性、凍結乾燥形態に製剤化される。 医薬組成物は本明細書に記載するように製薬上許容される担体と共に患者に投与される。

    特定の実施形態において、「製薬上許容される」とは、動物、特にヒトに使用することについて監督機関または他の一般的に認められた薬局方により承認されていることを意味する。 好ましい本発明の医薬組成物はラクトースを1%(w/w)〜6%(w/w)の範囲では含まない。 医薬組成物は多くて1%(w/w)のラクトースを含むことが好ましく、例えば、それは1%未満、好ましくは0.9%(w/w)、0.8%(w/w)未満等々のラクトースを含み、また、医薬組成物は6%、7%、8%(w/w)以上等々のラクトースを含むことが好ましい。 あるいはまた、医薬組成物がラクトースを含まないことも好ましい。

    「担体」なる用語は、治療剤と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルをさす。 そのような担体は製薬上許容されるもの、すなわち、用いる投与量および濃度でレシピエントに対して無毒のものである。 好ましくは、それは等張性、低張性、またはやや高張性であって、スクロース溶液により提供されるように、イオン強度が比較的低いものである。 かかる製薬上の担体は水や油といった無菌の液体であり、油としては、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる。 食塩水およびデキストロースやグリセロールの水溶液も液状担体として、特に注射液用に、使用することができる。 好適な製薬上の賦形剤には次のものが含まれる:デンプン、グルコース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、ナトリウムイオン、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなど。 賦形剤は本明細書で上述したようにラクトースを含んでもよいが、最も好ましくはラクトースフリー(無乳糖)である。 本組成物は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含んでいてもよい。 こうした組成物は溶液剤、懸濁液剤、乳濁液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、持続放出製剤などの形をとることができる。 経口製剤は標準的な担体、例えば医薬品級のマンニトール、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含みうる。 適当な製薬上の担体の例は、EW Martin による"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。 脱脂乳、脱脂粉乳、ノンミルクまたはノンラクトース製品を使用してもよい。 通常は、脱脂粉乳をリン酸緩衝溶液(PBS)中に懸濁し、加圧滅菌または濾過を行ってタンパク質性および生きている混入物を除き、その後フリーズドライ、加熱乾燥、真空乾燥、または凍結乾燥を行う。 製薬上の担体として使用しうる物質の他の例を以下にいくつか挙げる:糖、例えばグルコース、スクロース; デンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン; セルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース; 粉末状トラガカント; 麦芽; ゼラチン; タルク; ステアリン酸; ステアリン酸マグネシウム; 硫酸カルシウム; 炭酸カルシウム; 植物油、例えばピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、テオブロマの油; ポリオール、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール; 寒天; アルギン酸; 発熱物質フリーの水; 等張食塩水; クランベリーエキスおよびリン酸緩衝溶液; 脱脂粉乳; ならびに医薬製剤に用いられる他の無毒性の適合性物質、例えばビタミンC、エストロゲン、エキナセア。 湿潤剤、滑沢剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤、香味剤、潤滑剤、賦形剤、錠剤化剤、安定剤、酸化防止剤、および防腐剤が存在してもよい。

    好ましくは、経口製剤は本明細書に記載したとおりにラクトースを含みうるが、最も好ましくはラクトースフリーである。 経口投与に適する、当技術分野で周知の各種担体および/または賦形剤を本発明のために使用することができる。 非う蝕原性組成物は、所望により、公知の各種添加剤をさらに含んでもよく、例えば、保存剤、硬化剤、滑沢剤、乳化剤、安定剤、精油などを含みうる。 かかる組成物は、患者への投与に適した形態とするために、治療に有効な量の上記化合物(好ましくは、精製形態のもの)を適量の担体と共に含有する。 製剤は投与方式に適合させるべきである。

    一般に、諸成分は個別に供給されるか、または一緒に混合して単位投与形態として供給されるが、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたは小袋のような気密容器に入れた凍結乾燥粉末または水フリーの濃縮液として供給される。 組成物を輸液により投与しようとする場合は、それを、医薬級の滅菌水または生理食塩水を入れた輸液ボトルと一緒に分配しうる。

    本発明の医薬組成物は中性または塩形態として製剤化することができる。 医薬用に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるような、陰イオンにより形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるような、陽イオンにより形成される塩がある。

    最適な用量範囲を定めるのに役立つin vitroアッセイを場合により用いることができる。 製剤中で用いる正確な用量は、投与経路、疾患または障害の重症度によっても変化し、医師の判断および各患者の状況に応じて決定すべきである。 有効用量はin vitroまたは動物モデル試験系から得られる用量-応答曲線から推定することができる。 好ましくは、医薬組成物は直接投与されるか、または補助物質との組み合わせで投与される。 補助物質はクロロキン、プロトン性極性化合物(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、EtOH、1-メチル-L-2-ピロリドン、またはそれらの誘導体)、および非プロトン性極性化合物(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、ジ-n-プロピルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、アセトニトリル、またはそれらの誘導体)からなる群より選択することができる。 これらの化合物はpH限定を妨げない条件で添加される。 本発明の組成物は脊椎動物に投与することができる。 本明細書中で用いる「脊椎動物」とは、当業者が普通に理解しているのと同じ意味を有するものである。 特に、「脊椎動物」は哺乳動物、さらに特定するとヒトを包含する。

    「投与する」とは、治療に有効な用量の上記組成物の投与を意味する。 「治療に有効な量」とは、効果(そのために上記組成物が投与される)を生み出す用量を意味し、その効果は抗う蝕原性であることが好ましい。 正確な用量は治療の目的に応じて変化するものであり、当業者が公知の技法を用いて確認することができる。 当技術分野で公知であり、また上で説明したように、全身対局所デリバリー、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作用、および症状の重症度に関する調整が必要であり、当業者であれば、ルーチンな実験により確かめることができる。

    本方法はヒトの治療と動物の用途の両方に適用可能である。 本明細書に記載の望ましい治療活性をもつ化合物は、本明細書に記載したように、生理的に許容される担体と共に投与することができる。 投与方式に応じて、以下で述べるような様々な方法で化合物を製剤化することが可能である。 製剤中の治療に有効な化合物の濃度は約0.1〜100重量%の範囲で変化しうる。 作用剤は単独で投与してもよいし、他の治療薬と併用してもよい。 医薬組成物の投与は、上述したようにいろいろな方法で行うことができ、例えば、経口的、皮下、静脈内、動脈内、結節内、骨髄内、くも膜下、心室内、鼻腔内、気管支内、経皮的、直腸内、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、または眼内が挙げられるが、これらに限らない。 好ましくは、投与は経口的または頬側(バッカル)である。 投与レジメンは医師と臨床上の諸要因により決定されよう。 医療分野でよく知られているように、ある患者の投与量は、患者の体重、体表面積、年齢、投与される個々の化合物、性別、投与時間および投与経路、一般的な健康状態、同時に投与される他の薬物を含めて、多くの要因に左右される。 典型的な用量は例えば0.001〜1000μgの範囲でありうるが、この代表的範囲に入らない用量も、特に上記の要因を考慮して、考えられる。

    投与量は週一回投与することが好ましいが、治療が進行している間はさらに長い間隔で投与してもよいし、また必要なら、もっと短い間隔で、例えば毎日、投与してもよい。 好ましい場合では、本明細書に記載の方法や他の当業者に公知の方法を用いて免疫反応を監視し、また、投与量を例えば回数、量および/または組成の点で最適化する。 進行は定期的な評価を行って監視しうる。 本発明の医薬組成物は局所的に投与しても、全身的に投与してもよい。 また、本発明の医薬組成物をコセラピー(co-therapy)法、すなわち、他の医薬または薬物(例えば、本明細書に記載する、う蝕を予防、治療または改善するための他の薬物)との同時投与において使用することも考えられる。

    本発明の別の好ましい組成物は、本発明の組成物と関連して記載した微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片を含んでなり、さらに経口的に許容される担体または賦形剤を含有する食品または飼料組成物である。 好ましくは、上記の微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片は本発明の微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片である。

    「食品」または「飼料」は、哺乳動物、例えばヒトまたは動物(例えば、本明細書に記載するペット)のための食べられる、口に合うおよび/または飲める素材であれば、どれを含んでいてもよい。 食品と飼料については本明細書の他の箇所で説明する。 「経口的に許容される担体」は本明細書で上述したとおりであり、無毒性で、食品級および/または飼料級のものが好ましい。 しかし、この用語は本発明の医薬組成物と関連して挙げた担体をも包含する。 本発明の好ましい食品または飼料組成物はラクトースを1%(w/w)〜6%(w/w)の範囲では含まない。 食品または飼料組成物は多くて1%(w/w)のラクトースを含むことが好ましく、例えば、それは1%未満、好ましくは0.9%(w/w)、0.8%(w/w)未満等々のラクトースを含み、また、食品または飼料組成物は6%、7%、8%(w/w)以上等々のラクトースを含むことが好ましい。 あるいはまた、食品または飼料組成物がラクトースを含まないことも好ましい。

    本発明はさらに、抗う蝕原性組成物(好ましくは、本明細書中で上述したような歯磨き、チューインガム、ロゼンジ、マウスウォッシュ、マウスリンス、またはデンタルフロス)の製造における、本発明の組成物と関連して記載した微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片の使用を提供する。 好ましくは、微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片は本発明の微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片である。

    本発明の別の形態は抗う蝕原性組成物の製造方法であり、この方法は、本発明の組成物と関連して記載した微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片を、化粧上、製薬上、または経口的に許容される担体または賦形剤を用いて製剤化する工程を含んでなる。 好ましくは、微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片は本発明の微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片である。

    抗う蝕原性食品または飼料の製造方法も本出願により提供され、この方法は、本発明の組成物と関連して記載した微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片を添加する工程を含んでなる。 好ましくは、微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片は本発明の微生物、その変異体、誘導体、類似体または断片である。

    本発明によれば、「食料」なる用語はあらゆる食品または飲料を包含する。 したがって、微生物またはその類似体もしくは断片を食品や飲料中に含めることができる。 これらには、例えば、ガム、スプレー製品、飲物、キャンディー、乳児用調整粉乳、アイスクリーム、フローズンデザート、スィートサラダドレッシング、乳調製品、チーズ、クォーク、無乳糖ヨーグルト、酸性乳、コーヒークリーム、ホイップクリームなどがある。

    乳製品は本発明の範囲内に入ると考えられる。 しかし、ミルクはウシ、ヤギ、ヒツジ、バッファロー、シマウマ、ウマ、ロバ、ラクダといった動物に由来するものを意味すると理解される。 ミルクは天然の状態のもの、還元乳、スキムミルク、または細菌の成長もしくはその後の発酵乳の加工に必要とされる配合物(例えば、脂肪、酵母エキスのタンパク質、ペプトンおよび/または界面活性剤)を補充したミルクでありうる。 ミルクという用語はまた、通常は野菜ミルクと呼ばれているもの、すなわち、処理されたまたはそうでない植物材料の抽出液にも適用される。 例えば、マメ科植物(ダイズ、ヒヨコマメ、レンズマメなど)、または脂肪種子(ナタネ、ダイズ、ゴマ、ワタなど)の抽出液があり、かかる抽出液はタンパク質を溶解状態またはコロイド懸濁状態で含んでいるが、この種のタンパク質は化学的作用、酸発酵および/または加熱によって凝固しうる。 最後に、ミルクという語は動物ミルクと野菜ミルクの混合物をも意味する。

    本発明の微生物またはその類似体もしくは断片をヨーグルトや同様のものに添加する場合、本発明の微生物を約10 5 〜10 7細胞/mlの濃度で添加することで十分である。 そのような場合には、飲物自体の品質に大きな影響を及ぼすことなく、う蝕原性S.ミュータンス株が原因の虫歯を完全に予防または阻止することが可能である。 そのような食品、飲料または飼料は、食品、飲料または飼料の原料もしくは調理済み材料に活性成分を添加することを含めて、一般的な食品、飲料または飼料の製造方法で製造することができる。 本発明による食品、飲料または飼料は、食品、飲料または飼料に一般的に用いられる方法と同様にして成形および造粒することができる。 成形および造粒方法には以下の方法が含まれる:流動層造粒、撹拌造粒、押出し造粒、回転造粒、気流造粒、圧縮成形造粒、クラッキング造粒、噴霧造粒、および射出造粒のような造粒法;パンコーティング、流動層コーティング、およびドライコーティングのようなコーティング法;パフドライ、過剰スチーム法、フォームマット法、マイクロ波インキュベーション法のような膨張法、ならびに押出し造粒機と押出し機を用いる押出し法。

    本発明に従う食品、飲料または飼料は活性成分を含む食品、飲料または飼料を包含する。 本発明で用いる食品、飲料または飼料にはあらゆる食品、飲料または飼料が含まれる。 食品、飲料または飼料中の活性成分は、得られる食品、飲料または飼料がストレプトコッカス・ミュータンスとの特異的合というその活性を発揮できさえすれば、どのような濃度にも特に限定されない。 活性成分の濃度は、そのような活性成分を含む食品、飲料または飼料の重量基準で、または本明細書に記載するような細胞数に関して、好ましくは0.001〜100%、さらに好ましくは0.01〜100%、最も好ましくは0.1〜100%である。

    活性成分を添加しうる特定の食品または飲料としては、例えば、以下のものが挙げられる:ジュース、清涼飲料、スープ、茶、サワーミルク飲料、酪農製品(例えば、発酵乳、アイス、バター、チーズ、加工乳、脱脂粉乳)、肉製品(例えば、ハム、ソーセージ、ハンバーガー)、魚肉およびフィッシュケーキ製品、卵製品(例えば、味付けした巻き卵、エッグカード)、菓子(例えば、クッキー、ジェリー、スナック、チューインガム)、パン、麺類、漬物、スモーク製品、魚の乾物、および調味料。 食品または飲料の形態としては、例えば、粉末状食品、シート様食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット食品、および液状食品がある。

    乳幼児によって摂取される、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合する活性を有する食品または飲料は、好ましくは乳幼児用の栄養組成物である。 そのような乳幼児用の栄養組成物には、乳幼児用の調製乳、タンパク質分解乳、特定栄養調製乳、またはベビーフードおよび幼児用に調製された食品が含まれる。 乳幼児用の栄養組成物の形態には、特に限定するものではないが、乾燥して微粉砕した粉ミルク、およびベビーフードが含まれ、また、アイスクリーム、発酵乳、および乳幼児摂取用のジェリーといった一般食品も含まれる。

    本発明による乳幼児用の栄養組成物は主にタンパク質、脂質、糖、ビタミンおよび/またはミネラルから構成される。 栄養組成物においては、これらの成分に活性成分をブレンドする。 タンパク質には、乳タンパク質、例えば脱脂乳、カゼイン、チーズホエー、ホエータンパク質濃縮物およびホエータンパク質単離物、ならびにそれらの画分、例えばαs-カゼイン、β-カゼイン、α-ラクトアルブミン、およびβ-ラクトグロブリンが含まれる。 さらに、卵タンパク質、例えば卵黄タンパク質、卵白タンパク質、もしくは卵アルブミン、またはダイズタンパク質、例えば脱脂ダイズタンパク質、分離ダイズタンパク質、および濃縮ダイズタンパク質を使用することができる。 これら以外に、コムギグルテン、魚肉タンパク質、牛肉タンパク質、コラーゲンといったタンパク質も上手に使用することができる。 さらに、これらのタンパク質の画分、酸もしくは酵素処理から得られるペプチド、または遊離のアミノ酸も十分に使用しうる。 遊離のアミノ酸は窒素源として役立ち、さらに特定の生理作用をもたらすために使用することができる。 そのような遊離アミノ酸として、例えば、タウリン、アルギニン、システイン、シスチン、およびグルタミンが挙げられる。 脂質には、動物性油脂(例えば、乳脂肪、ラード、牛脂、魚油)、植物油(例えば、ダイズ油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ベニバナ油、荏油、亜麻仁油、マツヨイグサ油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、綿実油)、細菌により生成された油脂、ならびにその分留油、その水素添加油、およびそのエステル交換油が含まれる。 ブレンドすべき脂質の量は用途により変化する。

    糖には、例えば、1種以上のデンプン、可溶性の多糖類、デキストリン、単糖類(例えば、スクロース、本明細書に記載したとおりのラクトース、マルトース、グルコース、フルクトース)、および他のオリゴ糖が含まれる。 このような糖の全量は、栄養組成物中の全固形分に対して、好ましくは40〜80重量%である。 さらに、アスパルテームのような人工甘味料を使用してもよい。 人工甘味料の量は、栄養組成物中の全固形分に対して、好ましくは0.05〜1.0重量%である。

    ビタミンには、限定するものではないが、必須成分としてのリコペンが含まれ、さらに、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、D、およびE、ビタミンK群、葉酸、パントテン酸、ニコチンアミド、カルニチン、コリン、イノシトール、およびビオチンのようなビタミンが含まれるが、ただし、この種のビタミンを乳幼児に投与できることが前提である。 こうしたビタミン類の量は、乳幼児用の栄養組成物中の全固形分につき重量基準で、好ましくは10 mg〜5 gである。

    さらに、ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、リン、塩素、マンガン、セレン、およびヨウ素が挙げられる。 このようなミネラルは、乳幼児用の栄養組成物中の全固形分につき重量基準で、好ましくは1 mg〜5 gである。

    上記の成分のほかに、本発明の乳幼児用の栄養組成物は、栄養組成物中にブレンドすることが望ましい任意の成分、例えば、食物繊維、ヌクレオチド、核酸、香料、着色剤などをブレンドしてもよい。

    本発明の食品または飲料は、健康食品または飲料として、あるいは、う蝕を予防および/または治療するための機能性食品または飲料として使用することができる。

    本発明による食品または飲料を摂取する場合、その摂取量は特に限定されない。 一般には、摂取量は活性成分の全量に基づいて1日につき0.1〜50 g、好ましくは0.5 g〜20 gである。 この量で1日から最長5年間、好ましくは2週間から1年間、食品または飲料を継続して摂取する。 その際、食品または飲料を摂取する個体の症状の重症度、年齢、体重などに応じて、摂取量を適切な範囲に調整することができる。

    本発明の飼料は活性成分を含むどのような飼料であってもよい。 飼料としては、例えば、イヌ、ネコ、ラット用のペットフード、ウシ、ブタ用の家畜飼料、ニワトリ、シチメンチョウ用のトリ飼料、タイ、イナダ用の魚養殖飼料が挙げられる。

    飼料は、本発明の活性成分を飼料原料(例えば、穀類、ふすま、脂肪種子荒挽き粉、動物性飼料原料、その他の飼料原料、および精製産物)中でよくブレンドすることにより製造することができる。

    穀類には、例えば、マイル、コムギ、オオムギ、オートムギ、ライムギ、玄米、ソバ、アワ、キビ、ヒエ、トウモロコシ、ダイズが含まれる。 ふすまには、例えば、米ぬか、脱脂米ぬか、最下位等級のコムギ粉、コムギ胚芽、大麦ぬか、篩いかす、コーンブラン、トウモロコシ胚芽が含まれる。 脂肪種子荒挽き粉には、例えば、ダイズミール、ダイズ粉、アマニ粕、綿実粕、ひき割りピーナッツ、紅花粕、ココナッツミール、パーム核ミール、セサミミール、ヒマワリミール、ナタネミール、カポック種子粕、および粒マスタードが含まれる。 動物性の飼料原料には、例えば、魚粉、インポートミール、ホールミール、およびコーストミール、フィッシュソリュブル、肉粉、肉・骨粉、血液粉、分解毛(decomposed hair)、骨粉、屠殺場からの副産物、羽毛粉、蚕の蛹、脱脂乳、カゼイン、ドライホエー、およびオキアミが含まれる。

    その他の飼料原料としては、例えば、アルファルファのような植物の茎と葉、ヘイキューブ、アルファルファのリーフミール、およびローカストリーフパウダー、トウモロコシ加工産業からの副産物(例えばトウモロコシグルテンミール、トウモロコシグルテン飼料、トウモロコシスティープリカー)、デンプン、砂糖、酵母、発酵産業からの副産物(例えば、ビール残渣、モルトルート、リカー残渣、醤油残渣)、および農業上の副産物(例えば、かんきつ類加工残渣、ダイズカード残渣、コーヒー残渣、ココア残渣)、キャッサバ、ソラマメ、グアーミール、海草、スピルリナ、およびクロレラが含まれる。

    精製した産物には、例えば、カゼインやアルブミンのようなタンパク質、アミノ酸、デンプン、セルロース、スクロースやグルコースのような糖類、ミネラル、ビタミンが含まれる。

    本発明による飼料を動物に与える場合、飼料の摂取量は特に決まっていないが、好ましくは、活性成分の量に基づいて、例えば0.1 mg〜50 g/kg(体重)/日、好ましくは0.5 mg〜20 g/kg(体重)/日である。 この量で1日から最長5年間、好ましくは2週間から1年間、飼料を継続して摂取させる。 この場合も、飼料を摂取する動物の種、年齢、体重などに応じて、摂取量を適切な範囲に調整することができる。

    さらに、本発明は食品、飲料および飼料用の添加物に関し、かかる添加物は、本発明の組成物に関連して記載したような微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片の存在のため、とりわけ、ストレプトコッカス・ミュータンスと特異的に結合して、う蝕を予防および/または治療することができるものである。 好ましくは、微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片は本発明の微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片である。 食品または飲料用の添加物には、乳幼児用栄養組成物の添加物が含まれる。

    食品用の添加物は、食品、飲料または飼料用の添加物を製造するための一般的方法で製造することができる。 必要ならば、食品、飲料または飼料中で常用される添加物、例えば「食品添加物ハンドブック」(日本食品添加物協会; 1997年1月6日発行)に記載される添加物を添加してもよく、かかる添加物には以下のものが含まれる: 甘味料、着色料、保存料、増粘剤および安定剤、酸化防止剤、色止め剤、漂白剤、防腐剤、ガムベース、ビター(苦味成分)、酵素、光沢剤、酸性化剤、調味料、乳化剤、促進剤(エンハンサー)、製造用物質、香料、およびスパイス抽出物。 さらに、医薬用錠剤について先に挙げた、慣用の糖類、デンプン、無機物質、植物粉末、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、および可塑剤を添加してもよい。

    添加物には以下の添加物が含まれる:
    甘味料には、アスパルテーム、カンゾウ、ステビア、キシロース、ラカンカ(Momordica grosvenoriの果実)が含まれる。 着色料には、カロテノイドおよびウコン色素、フラボノイド、カラメル色素、スピルリナ色素、クロロフィル、ムラサキサツマイモ色素、ムラサキイモ(purple yam)色素、シソ色素、およびブルーベリー色素が含まれる。

    保存料には、例えば、亜硫酸ナトリウム、安息香酸エステル、安息香エキス、ソルビン酸塩、およびプロピオン酸塩が含まれる。 増粘剤および安定剤には、例えば、アラビアガムやキサンタンガムのようなガム、アルギン酸塩、キチン、キトサン、アロエエキス、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、カゼインナトリウム、トウモロコシデンプン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、寒天、デキストリン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、マイクロファイバーセルロース、微結晶質セルロース、海草セルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、カラギーナン、または酵母細胞壁が含まれる。

    酸化防止剤には、例えば、ビタミンC群、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エリソルビン酸、オリザノール、カテキン、クエルセチン、チョウジエキス、酵素処理ルチン、リンゴ抽出物、ゴマ種子抽出物、ジブチルヒドロキシトルエン、ウイキョウエキス、セイヨウワサビ抽出物、セリ抽出物、茶抽出物、トコフェロール、ナタネ抽出物、コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、フェルリオ酸(ferulio acid)、ブチルヒドロキシアニソール、ブルーベリーリーフエキス、プロポリスエキス、ペッパーエキス、ホウセンカ(garden balsam)エキス、没食子酸、ユーカリエキス、およびローズマリーエキスが含まれる。

    色止め剤としては、例えば亜硝酸ナトリウムがある。 漂白剤としては、例えば亜硫酸ナトリウムがある。

    防腐剤としては、例えばo-フェニルフェノールがある。 ガムベースには、例えば、アセチルリシノール酸メチル、ウルシロウ、エステルガム、エレミ樹脂、オウリキュウリロウ、カウリガム(kaurigum)、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、鯨ロウ、コパイババルサム(copaibabalsam)、コパル樹脂、ゴム、コメヌカロウ、サトウキビロウ、シェラック、ジェルトン、スクロース脂肪酸エステル、脱重合天然ゴム、パラフィンワックス、バルサムノキ、プロピレングリコール脂肪酸エステル、粉末パルプ、粉末モミガラ、ホホバ油、ポリイソブチレン、ポリブテン、微結晶質ワックス、マスティックガム、蜜蝋、およびリン酸カルシウムが含まれる。

    ビター(苦味成分)には、例えば、イソ-α-ビター酸、カフェイン、カワラタケ(Coriolus versieolor)抽出物、キナ抽出物、オウバク抽出物、ゲンチアナ抽出物、スパイス抽出物、酵素処理ナリンジン、ジャマイカカッシア抽出物、テオブロミン、ナリンジン、カッシア抽出物、アブサン抽出物、ヒキオコシエキス、オリーブティー、ビターオレンジ(Citrus aurantium)抽出物、ホップ抽出物、およびニガヨモギ抽出物が含まれる。

    酵素としては、例えば、アミラーゼ、トリプシン、レンネットが挙げられる。

    光沢剤としては、例えば、ウルシロウおよび和蝋がある。

    酸性化剤には、例えば、アジピン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸ナトリウム、酒石酸、二酸化炭素、乳酸、フィチン酸、フマル酸、リンゴ酸、およびリン酸が含まれる。

    調味料には、例えば、アミノ酸(例:アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アラニン、イソロイシン、グリシン、セリン、シスチン、チロシン、ロイシン、プロリン)、核酸(例:イノシン酸ナトリウム、ウリジン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、シチジル酸ナトリウム、リボヌクレオチドカルシウムおよびリボヌクレオチドナトリウム)、有機酸(例:クエン酸、コハク酸)、塩化カリウム、塩水湖水低塩化ナトリウム液、粗製塩化カリウム、ホエーソルト、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、およびクロレラ抽出物が含まれる。

    促進剤には、例えば、亜鉛塩、ビタミンC群、各種アミノ酸、5-アデニル酸、塩化鉄、ヘスペリジン、各種焼成カルシウム、各種非焼成カルシウム、ジベンゾイルチアミン、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、チアミン塩酸塩、デュナレラ(Dunallella)、オアロテン(Oarotene)、トコフェロール、ニコチン酸、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、パントテン酸カルシウム、ビタミンA、ヒドロキシプロリン、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、フェリチン、ヘム鉄、メナキノン、葉酸、およびリボフラビンが含まれる。

    製造用物質には、例えば、アセトンやイオン交換樹脂のような加工補助剤が含まれる。

    香料としては例えばバニラエッセンスがあり、スパイス抽出物としては例えばトウガラシエキスがある。

    これらの各種添加物は、投与様式を考慮して、本発明に従って活性成分に添加することができる。 本発明の抗う食原性組成物は、本発明の組成物に関連して記載した微生物またはその誘導体、変異体、類似体もしくは断片をある量で含有する。 好ましくは、微生物、その変異体、誘導体、類似体もしくは断片は本発明の微生物、変異体、誘導体、類似体もしくは断片である。 本発明の組成物、特に抗う蝕原性組成物は、本発明の組成物に関連して記載した本発明の微生物をプロバイオティック微生物の形で含むことが想定される。 すなわち、プロバイオティック効果に加えて、本発明のプロバイオティック微生物はう蝕の治療および/または予防に有用である。 かかるプロバイオティック微生物の量は、健全な医学的判定の範囲内で、治療しようとする症状(好ましくは、う蝕)を大いに改善するのに十分高いが、重大な副作用を避けるには十分低い量(妥当な利益/リスク比)とする。 プロバイオティック微生物の有効量は、達成すべき特定の目標、治療対象患者の年齢および体調、根底にある疾患の重症度、治療の持続期間、同時に行う治療法の性質、ならびに使用する特定の微生物により変化する。 こうして、プロバイオティック微生物の有効量は望まれるストレプトコッカス・ミュータンスとの特異的結合をもたらす最少量となるだろう。 例えば、1×10 9個の細菌を、生きているかまたは死んでいる全細胞として、0.05 mlのリン酸緩衝溶液中または0.05 mlの寒天懸濁液中に含むもの、あるいは細胞壁断片の乾燥重量等価物は、約0.05〜20 mlの量で投与する場合に有効である。

    実施上の決定的な利点は、プロバイオティック微生物を経口投与のような都合のよい方法で投与できる点である。 投与経路に応じて、プロバイオティック微生物からなる活性成分は、酵素や酸の作用から、また該生物を不活性化する他の自然条件から該生物を保護する材料でコーティングする必要があるかもしれない。 プロバイオティック生物を非経口投与以外の方法で投与するためには、不活性化を防止する物質でそれらをコーティングするか、またはかかる物質と一緒に投与すべきである。 例えば、プロバイオティック生物を酵素阻害剤と一緒に、またはリポソーム内に保持させて、投与することができる。 酵素阻害剤としては、膵臓のトリプシン阻害剤であるジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)およびトラシロール(trasylol)が挙げられる。 リポソームには、W/O/W(water-in-oil-in-water)型P40エマルジョン、および乳酸桿菌やその副産物を尿生殖器表面に輸送する従来の特別設計リポソームが含まれる。

    分散液を調製することも可能であり、例えばグリセロール、液状ポリエチレングリコール、もしくはこれらの混合物中に、または油中に調製することができる。 一般的に、分散液を調製するには、各種の滅菌済みプロバイオティック生物を、基剤の分散媒と他の必要な成分(上で挙げたものから選択される)とを含む無菌ビヒクル中に加えて混合する。 無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、前もって滅菌濾過した溶液から活性成分と所望の追加成分の粉末をもたらす真空乾燥法および凍結乾燥(freeze-drying)法である。 その他の好ましい調製方法として凍結乾燥(lyophilization)および加熱乾燥があるが、これらに限定されない。

    抗う蝕原性組成物はまた、本明細書に記載の許容される製薬上の担体を含み、かかる担体に、本発明の組成物に関連して記載した本発明の微生物の細胞が例えば新鮮な形態、濃縮形態、または乾燥形態で添加されている、経口投与を意図した製品またはバッカル剤を包含する。 もちろん、前記微生物の誘導体もしくは断片、または本明細書に記載した前記微生物、その誘導体および/または断片の任意の組合せを添加してもよい。 これらの製品は摂取可能な懸濁液剤、ゲル剤、散剤、カプセル剤、ハードゼラチンカプセル剤、シロップ剤、または当業者に公知のいずれか他のガレニク剤の形で提供することが可能である。

    プロバイオティック生物が上記のように適切に保護される場合は、その活性成分を、例えば不活性希釈剤もしくは同化可能な食用担体と共に、経口投与したり、あるいは活性成分をハードまたはソフトシェルゼラチンカプセル内に封入したり、胃を通過するように設計された錠剤に圧縮したり(すなわち、腸溶コーティングを施したり)、食物に直接混ぜ込んだりすることができる。 治療上経口投与する場合は、プロバイオティック生物を賦形剤と均質に混合し、摂取可能な錠剤、バッカル剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、カシェ剤などの剤形で使用する。 本発明の組成物または製剤は、経口単位剤形が例えば約1×10 9個/mlの生存または非生存菌(例えば、乳酸桿菌)を含むように製造される。 便利で効果的な投与のために、プロバイオティック生物を上記のような単位剤形中に適当な医薬用または食用担体と共に有効量で配合する。 単位剤形は例えば主活性成分を10 9個/mlの生存または非生存菌(例えば、乳酸桿菌)に近似する量で含有しうる。 プレバイオティクスのような補助成分を含む組成物の場合は、かかる成分の常用量と投与方法を参考にして投与量を決定する。

    本発明とその多くの利点は以下の実施例からより一層理解されるであろう。 実施例は単なる例示のために提供され、いかなる場合も本発明の範囲を制限するものではない。

    実施例1:保存および増殖
    菌株の保存および増殖は通常の手順に従って行うことができる。 例えば、菌株を-80℃で凍結ストックとして保存する。 1 mlの培養物をMRS培地中で静止期(OD600/mL 4〜8)になるまで増殖させ、500μlの無菌50%グリセリン溶液と混合して凍結させる。 S.ミュータンスの培養物はTSY培地中で静止期(OD600/mL 1〜2)になるまで増殖させ、上記のように処理する。 S.ミュータンス(DSMZ 20523、血清型c; NCTC 10923、血清型e; NCTC 11060、血清型f;ならびに非血清型別分離株)および乳酸桿菌の培養は、密閉したファルコンチューブ内5 mlの容量で、振とうすることなく37℃で一晩行うことができる。

    具体的には、本出願で用いる菌株は-80℃で凍結ストックとして保存した。 MRS培地で静止期(OD600/mL 4〜8)へと増殖させた1 mlの培養物を500μlの無菌50%グリセロール溶液と混合して、凍結させた。

    具体的には、S.ミュータンスの培養物はTSY培地で静止期(OD600/mL 1〜2)へと増殖させ、上記のように処理した。

    S.ミュータンス(DSMZ 20523、血清型c; NCTC 10923、血清型e; NCTC 11060、血清型fおよび他の非血清型別分離株-OrganoBalanceにより分離)および乳酸桿菌の培養は、密閉ファルコンチューブ内5 mlの容量で、振とうせずに37℃にて一晩行った。

    実施例2:菌株の分類
    菌株の分類はそれらの炭水化物発酵パターンに基づいて行った。 API 50 CH (bioMerieux, フランス) システムを用いてそれを測定し、APILAB PLUSソフトウェア・バージョン3.3.3 (bioMerieux, フランス)を用いて解析した。

    実施例3:ストレプトコッカス・ミュータンスの凝集に関する試験
    乳酸桿菌とS.ミュータンスの混合は容量比3:1から60:1(S.ミュータンス:乳酸桿菌)で行ったが、これはコロニー形成単位の比1:50から1:2.5に相当する。 1 ml中の波長600 nmで測定される光学密度は、好ましくはS.ミュータンスについて3×10 8コロニー形成単位、乳酸桿菌については好ましくは7×10 9コロニー形成単位を意味する。 混合は15 mLファルコンチューブ内で2 mLの容量にて行った。 培養懸濁物をPBSバッファーで希釈して上記の容量比としたが、最終容量は2 mLに保持した。 この混合物を15秒間ボルテックス混合した。 凝集は懸濁液の急速な濁りとして肉眼で見ることができる。 チューブを静かに20分間放置すると、その後凝集物は目に見えるペレットとして沈降するのに対して、非凝集性の混合物は懸濁状態のままである。

    対照として、それぞれのラクトバチルス株およびS.ミュータンス株の自己凝集を必ず検討したが、その試験はラクトバチルス株またはS.ミュータンス株のみをチューブに加えることにより行った。 ラクトバチルスによるS.ミュータンスの凝集を図1(左のチューブ)および図2に示す。

    本発明のラクトバチルス株(特にDSMZに寄託したもの)は、自己凝集の挙動を示すことなく、あらゆる血清型のS.ミュータンスの凝集を呈示した。

    培地
    MRS培地:
    MRS混合物 (Difco, USA) 55 g/L
    pH: 6.5
    TSY培地:
    TSY混合物 (Difco, USA) 30 g/L
    酵母エキス (Deutsche Hefewerke, ドイツ) 3 g/L

    バッファー
    PBSバッファー:
    Na 2 HPO 4 *2H 2 0 1.5 g/L
    KH 2 PO 4 0.2 g/L
    NaCI 8.8 g/L
    pHをHClで調整。

    実施例4:口内細菌叢の典型的メンバーに対する凝集の特異性
    ラクトバチルス培養物を実施例1に記載のように増殖させた。
    口内細菌、すなわちStreptococcus salivarius subsp. thermophilus (OrganoBalanceにより分離し、API 50 CH (Biomerieux, フランス)をメーカーの使用説明書に従って用いて同定した); Streptococcus oralis (DSMZ 20066); Streptococcus oralis (DSMZ 20395); Streptococcus oralis (DSMZ 20627); Staphylococcus epidermidis (DSMZ 1798); Staphylococcus epidermidis (DSMZ 20044);Streptococcus mitis (DSMZ 12643); Streptococcus sanguinis (DSMZ 20567)を、密閉した15 mLファルコンチューブ内の5 mLのBHI培地中で37℃にて一晩増殖させた。 好ましくは、口内細菌のそれぞれをラクトバチルス培養物と容量比3:1で混合して、実施例3に記載のようにして凝集をアッセイした。 凝集/非凝集の各試験につき、試験の結果をすぐに確認するために上記細菌の1種のみを使用することが好ましい。

    対照として、それぞれの口内細菌ならびに試験したラクトバチルス株の自己凝集を必ず検討したが、その試験はラクトバチルス株または口内細菌叢の菌株のみをチューブに加えることにより行った。

    上記のL. paracasei subsp. paracasei株は上に挙げた口内細菌を凝集させなかった。 L. rhamnosus株はStreptococcus salivarius subsp thermophilusを凝集させた。

    BHI培地:
    BHI混合物 (Difco, USA) 37 g/L
    pH: 7.2

    実施例5:乳酸桿菌の凝集能の温度抵抗性
    細菌を実施例1のように増殖させた。
    増殖させた乳酸桿菌培養物を飽和水蒸気中121℃、2バールで20分間インキュベートした(オートクレーブ処理した)。 オートクレーブ処理済みの培養物を室温まで冷ましてから、乳酸桿菌を、増殖させたS.ミュータンス培養物と容量比1:3で混合し、対照実験も含めて実施例3のように凝集をアッセイした。

    凝集はまた、実施例4に記載した口内細菌を用いてもアッセイした。 試験したS.ミュータンス血清型に対する、または口内細菌に対する乳酸桿菌の凝集挙動はオートクレーブ処理によって変わることはなかった。

    実施例6:pH値に対する凝集の依存性
    細菌を実施例1のように増殖させた。
    0.5 mlの乳酸桿菌と1.5 mlのS.ミュータンスを3200 g、10分の遠心分離により回収し、上清を捨てた。 細胞を、異なるpH値に調整した種々のPBSバッファー中にその最初の容量(それぞれ0.5 mlと1.5 ml)で再懸濁させた。 バッファーのpH値は0.5 pH単位きざみで7.0から3.0までのpH値に調整した。 凝集挙動アッセイに使用することになっている、それぞれのpH値のバッファーに培養物を再懸濁させた。

    その後、乳酸桿菌を好ましくは容量比1:3でS.ミュータンス培養物と混合し、対照実験も含めて実施例3のように凝集をアッセイした。 乳酸桿菌によるS.ミュータンスの目に見える凝集は、4.5より低いpH値ではまったく起こらなかった。

    実施例7:凍結乾燥に対する凝集挙動の感受性
    細菌を実施例1のように増殖させた。
    乳酸桿菌培養物の1 mlのアリコートを3200 g、10分の遠心分離により回収した。 上清を捨て、ペレットを室温で真空下に2時間凍結乾燥させた。 得られた各試験ラクトバチルス株の乾燥ペレットを室温および4℃で、それぞれ1日、1週間、2週間、3週間および4週間保存した。 保存期間後、凍結乾燥ペレットを1 mlのPBSバッファー、pH 7.0中に再懸濁させた。 再懸濁した乳酸桿菌を新たに増殖させたS.ミュータンス培養物と容量比1:3で混合し、対照実験も含めて実施例3のように凝集をアッセイした。

    S.ミュータンスに対する上記乳酸桿菌の凝集挙動は、凍結乾燥または保存法によって変わることはなかった。

    実施例8:プロテアーゼ耐性に関する試験
    細菌を実施例1のように増殖させた。
    用いたプロテアーゼはプロナーゼE、プロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシンであった(すべてドイツのSigma社から入手した)。 乳酸桿菌の1 mlのアリコートを3200 g、10分の遠心分離にかけて細胞を回収し、ペレットを1 mlのPBSバッファー(pH 7.0)中に再懸濁させることにより、細胞をPBSバッファーで洗浄した。 その後、細胞を上記のように再度回収し、それぞれのプロテアーゼを2.5 mg/mLの最終濃度で含有するPBSバッファー(pH 7.0)中に再懸濁させた。 この懸濁液を37℃で1時間インキュベートした。 その後細胞を上記のように洗浄してPBSバッファー(pH 7.0)中に再懸濁させた。

    対照実験も含めて、実施例3のように凝集をアッセイした。 S.ミュータンスに対する上記乳酸桿菌の凝集挙動は、上記プロテアーゼのいずれで処理しても変化しなかった。

    実施例9:凝集挙動のイオン依存性
    細菌を実施例1のように増殖させた。
    乳酸桿菌の1 mlのアリコートを上記のように1 mlの200 mM EDTA溶液で2回洗浄した。 その後細胞を回収し、1 mlのPBSバッファー(pH 7.0)中に再懸濁させた。

    凝集を実施例3のようにアッセイしたところ、凝集能の完全な喪失が観察された。 200 mM EDTA溶液で2回洗浄した後に乳酸桿菌を1 mlの2 mM カルシウム溶液中に再懸濁させたら、S.ミュータンスに対する凝集能が回復した。 EDTA洗浄細胞を100 mMまでのマグネシウム溶液中に再懸濁しても、S.ミュータンスに対する凝集能は元に戻らなかった。

    実施例10:唾液の存在下での凝集試験
    細菌を実施例1のように増殖させた。
    S.ミュータンス培養物の2 mlアリコートを上記のように回収し、2 mlの唾液中に再懸濁させた。 唾液は2人のボランティアにより提供されたものであり、採取後すぐに使用した。

    凝集を実施例3のようにアッセイした。 S.ミュータンスに対する上記乳酸桿菌の凝集挙動は、唾液の存在下で変わることはなかった。

    実施例11:ロゼンジ組成物(I)
    ロゼンジ組成物は好ましくはDE-C2 36 45 147、8頁の実施例4に記載されるとおりに製造するが、ここでは、実施例4に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物をロゼンジ1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例12:ロゼンジ組成物(II)
    ロゼンジ組成物は好ましくはDE-C2 36 45 147、8頁の実施例5に記載されるとおりに製造するが、ここでは、実施例4に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物をロゼンジ1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例13:歯磨剤組成物
    歯磨剤組成物は好ましくはDE-C2 36 45 147、8頁の実施例3に記載されるとおりに製造するが、ここでは、実施例4に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物を歯磨剤1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例14:チョークを基剤とする歯磨剤組成物
    チョークを基剤とする歯磨剤組成物は好ましくは参考書"Kosmetik", W. Umbach (編集), 第2版, Thieme Verlag, 1995の205頁、7.1.4.4章 "Rezepturbeispiel" に記載されるとおりに製造するが、ここでは、205頁の7.1.4.4章に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物をチョークを基剤とする歯磨剤1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例15:ケイ酸/フッ化ナトリウムに基づくゲル歯磨剤
    ケイ酸/フッ化ナトリウムに基づくゲル歯磨剤は好ましくは参考書"Kosmetik", W. Umbach (編集), 第2版, Thieme Verlag, 1995の205頁、7.1.4.4章 "Rezepturbeispiel" に記載されるとおりに製造するが、ここでは、205頁の7.1.4.4章に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物をケイ酸/フッ化ナトリウムに基づくゲル歯磨剤1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例16:歯石予防の歯磨剤組成物
    歯石予防の歯磨剤組成物は好ましくは参考書"Kosmetik", W. Umbach (編集), 第2版, Thieme Verlag, 1995の206頁、7.1.4.4章 "Rezepturbeispiel" に記載されるとおりに製造するが、ここでは、206頁の7.1.4.4章に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物を歯石予防の歯磨剤1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例17:チューインガム組成物
    チューインガム組成物は好ましくはDE-C2 36 45 147、9頁の実施例6に記載されるとおりに製造するが、ここでは、実施例4に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物をチューインガム1 mgあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する。

    実施例18:濃縮マウスウォッシュ組成物
    濃縮マウスウォッシュ組成物は好ましくは参考書"Kosmetik", W. Umbach (編集), 第2版, Thieme Verlag, 1995の206頁、7.1.4.4章 "Rezepturbeispiel" に記載されるとおりに製造するが、ここでは、206頁の7.1.4.4章に挙げられた成分に加えて、本発明の微生物を濃縮マウスウォッシュ組成物1 mlあたり10 2 〜10 13細胞の量で添加する。

    実施例19:フィルム製剤
    フィルムの製造
    1. 水相
    - 水を60℃に温める;
    - アスパルテーム(甘味料)を撹拌しながら添加する;
    - アスパルテームを完全に溶解させる;
    - 水溶性の高分子フィルム形成剤、例えばKollicoat IR(ポリビニルアルコール上のポリエチレングリコール)またはPVP(ポリビニルピロリドン)または天然ポリマー(例:アルギネート)を、それが溶解するまで撹拌しながら添加する;
    - 10分後、残っている泡を取り除く;
    - この混合物が冷めてから、本発明の微生物を最終アロマフィルムあたり10 2 〜10 12 、好ましくは10 3 〜10 8細胞の量で添加する;あるいはまた、本発明の微生物の変異体もしくは誘導体、または本発明の微生物の類似体もしくは断片を添加することもできる;
    2. 油相
    - メントールをペパーミント油中に溶解させる;
    - ポリソルベート80をペパーミント油-メントール混合物に撹拌しながら添加する;
    - この混合物をその後プロピレングリコールに撹拌しながら添加する;
    - 任意成分として着色剤(顔料、レーキなど)を添加してもよい;
    3.
    - 撹拌しながら油相を水相に徐々に添加する;
    4.
    - カッター装置を使って薄いフィルムを機械的に形成させる。

    サンプル配合例:

    本発明の他の実施形態および用途は、ここに開示した本発明の仕様および実施を考慮することにより、当業者には明らかであろう。 全ての刊行物、全ての米国および外国特許、全ての米国および外国特許出願を含めて、何らかの理由のためにここに引用した文献はどれも、あらゆる目的のために参考として具体的かつ全体的に援用されるものである。 本発明の仕様および実施例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示されるものとする。

    ラクトバチルス属菌種によるストレプトコッカス・ミュータンスの凝集。 凝集性ラクトバチルスとS.ミュータンスとの混合物(左のチューブ)を、非凝集性ラクトバチルスとS.ミュータンスとの混合物(右のチューブ)に対比して示す。 この実験は実施例3に記載したように行い、チューブを20分間静置して凝集物を沈降させた。

    凝集性ラクトバチルス属菌種とストレプトコッカス・ミュータンスとの顕微鏡写真。 図1(左のチューブ)に示したラクトバチルスとS.ミュータンスとの凝集物の顕微鏡写真を示す。 この写真は位相差顕微鏡を使って倍率1000倍で撮った。

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