発酵乳成分を有するプロセスチーズ及びその製造方法

申请号 JP2015528651 申请日 2013-08-22 公开(公告)号 JP6374866B2 公开(公告)日 2018-08-15
申请人 クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー; 发明人 ズゥオシーン ジュヨン; アマール エヌ チンワラ; クリスティーン ディー マーカス−ジョンソン; ディヴィヤ シュリ レディ;
摘要
权利要求

天然の抗菌物質を含むプロセスチーズであって、 10〜90%のナチュラルチーズ又はナチュラルチーズ混合物と、 1種以上の乳化剤と、 8〜25%の総タンパク質と、 10〜30%の総脂肪と、 マウスでの毒性バイオアッセイにより決定された、上記のタンパク質準及び脂肪水準のプロセスチーズにおいて華氏86度(摂氏30度)で少なくとも9日間にわたり、ボツリヌス菌からの毒素形成を防止するのに有効な量のナイシンと、 ナイシン及びエキソポリサッカライドを含まないプロセスチーズに比べて、プロセスチーズの溶解性を増加させ、かつ、プロセスチーズの硬さを増加させるのに有効な量のエキソポリサッカライド を含み、 前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドを培養乳成分の形態でプロセスチーズに含み、 前記培養乳成分中の前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドは、液状乳製品培地中での単一細菌株の発酵から得られ、 前記細菌株は、ATCC寄託番号PTA−120552のラクトコッカス・ラクティス株である、 ことを特徴とするプロセスチーズ。天然の抗菌物質を含むプロセスチーズであって、 10〜90%のナチュラルチーズ又はナチュラルチーズ混合物と、 1種以上の乳化剤と、 8〜25%の総タンパク質と、 10〜30%の総脂肪と、 マウスでの毒性バイオアッセイにより決定された、上記のタンパク質水準及び脂肪水準のプロセスチーズにおいて華氏86度(摂氏30度)で少なくとも9日間にわたり、ボツリヌス菌からの毒素形成を防止するのに有効な量のナイシンと、 ナイシン及びエキソポリサッカライドを含まないプロセスチーズに比べて、プロセスチーズの溶解性を増加させ、かつ、プロセスチーズの硬さを増加させるのに有効な量のエキソポリサッカライド を含み、 前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドを培養乳成分の形態でプロセスチーズに含み、 前記培養乳成分中の前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドは、液状乳製品培地中でのATCC寄託番号PTA−120552のラクトコッカス・ラクティス株の発酵から得られる、 ことを特徴とするプロセスチーズ。1〜100ppmのナイシン及び100〜2,000ppmのエキソポリサッカライドを含む、請求項1または2に記載のプロセスチーズ。1〜20%の前記培養乳成分を含む、請求項1または2に記載のプロセスチーズ。前記細菌株は、同じ発酵条件で前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドを同時に産生することができる、単離されたラクトコッカス・ラクティス株である、請求項1に記載のプロセスチーズ。ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される人工保存料を含まない、請求項1または2に記載のプロセスチーズ。前記ナイシンはナイシンAである、請求項1または2に記載のプロセスチーズ。天然の抗菌物質を有するプロセスチーズを製造する方法であって、 ラクトコッカス・ラクティスで液状乳製品培地を発酵させ、ナイシン及びエキソポリサッカライドを含む培養乳成分を有効に製造することと、 前記培養乳成分を、ナチュラルチーズ又はナチュラルチーズと1種以上の乳化剤の混合物に添加し、8〜25%のタンパク質と、10〜20%の脂肪を有するプロセスチーズを製造すること を含み、 前記プロセスチーズは、マウスでの毒性バイオアッセイにより決定された、上記のタンパク質水準及び脂肪水準のプロセスチーズにおいて華氏86度(摂氏30度)で少なくとも9日間にわたり、ボツリヌス菌からの毒素形成を防止するのに有効な量のナイシンを含み、 前記プロセスチーズは、ナイシン及びエキソポリサッカライドを含まないプロセスチーズに比べて、プロセスチーズの溶解を増加させ、かつ、プロセスチーズの硬さを増加させるのに有効な量のエキソポリサッカライドを含み、 前記培養乳成分中の前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドは、液状乳製品培地中での同じラクトコッカス・ラクティス株の発酵から得られ、 前記ラクトコッカス・ラクティス株は、ATCC寄託番号PTA−120552のラクトコッカス・ラクティス株である、 ことを特徴とする方法。前記培養乳成分は、1〜100ppmのナイシン及び100〜2000ppmのエキソポリサッカライを含む、請求項8に記載の方法。前記プロセスチーズは、1〜20%の前記培養乳成分を含む、請求項8に記載の方法。前記ラクトコッカス・ラクティス株は、同じ発酵条件で前記ナイシン及び前記エキソポリサッカライドを同時に産生することができる単離されたラクトコッカス・ラクティス株である、請求項8に記載の方法。2倍〜5倍に濃縮した液状乳製品培地を25℃〜35℃の温度及び5〜6のpHとし、15〜48時間で実施する、前記ATCC寄託番号PTA−120552のラクトコッカス・ラクティスの発酵を含む、請求項8に記載の方法。前記濃縮した液状乳製品培地は、全固形分が5〜36%、タンパク質が1〜14%、脂肪が0〜16%の濃縮乳である、請求項12に記載の方法。前記プロセスチーズは、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硝酸塩、及びそれらの混合物からなる群より選択される人工保存料を含まない、請求項8に記載の方法。前記ナイシンはナイシンAである、請求項8に記載の方法。

说明书全文

関連出願の相互参照 この出願は、2012年8月22日に出願された米国仮出願番号第61/692129号の利益を主張するものであり、参照によりその全体を本明細書に援用する。

配列表の提出 この出願に関連付けられた配列表は、EFS−Web経由で電子形式で提出されたものであり、参照によりその全体を本明細書に援用する。配列表を含むテキストファイルの名前は「SequenceListing1410.131457」である。テキストファイルのサイズは46キロバイトであり、テキストファイルは2013年8月21日に作成された。

この出願は、一般にプロセスチーズ組成物及びその製造方法に関し、特に、発酵させた乳成分を含有するプロセスチーズ組成物に関する。

スライスした形状か塊状で広く市販されているプロセスチーズは、販売高の多いチーズ製品の1つである。プロセスチーズ製品は、特に子どもに人気がある。プロセスチーズは従来、例えば、チェダーチーズ、コルビーチーズ、スイスチーズ、ブリックチーズ、ミュンスターチーズ、パスタフィラータチーズ、洗浄したカード、及び粒状カードチーズが提案されるが、この他にも幾つかの種類のある、乳脂肪含有ナチュラルチーズの1種類以上を加熱し、粉砕し、及び/又は、混合することにより調製される。次いで、得られたチーズを、チーズの殺菌に十分な高い温度で、無脂肪乾燥乳及び乳清固形分等の他の乳製品並びにリン酸二ナトリウム等の乳化塩と混合し、均質で、ポンプ輸送可能であり、シート状、スライス状、又は他の所望の形状に成形することのできる流体チーズ材料を製造する。

プロセスチーズ等の食品の貯蔵寿命を延長し、及び/又は、そのような食品の生物学的安定性を増大させることが、しばしば望まれる。食品が安定している時間を増大させることによって、製造者は、腐敗した食品による在庫損失を軽減することができる。包装、保存料、及び/又は特定の貯蔵パラメータ(例えば、冷蔵)の使用等の従来の方法が、腐敗を食い止めるために使用されてきた。

特に、リステリア菌及びボツリヌス菌は、場合によっては、生乳、チーズ(特に柔らかく熟成させた品種)、アイスクリーム、生野菜、発酵生肉ソーセージ、生及び調理済みの鶏肉、生肉(全ての種類)、並びに生及び燻製した魚等の食品で懸念される。場合によってはわずか3℃の温度でも成長するこれら病原菌の能により、冷蔵した食品中での増殖が可能となる。

さらに、プロセスチーズ等の食品の貯蔵寿命を向上させることが望ましいのだが、天然成分の含有量を増やした食品を提供することへの要望も増加している。これに関して、天然成分のみを含む食品を提供するか、又はそうでなければ人工的な材料を除去することが望ましい場合がある。例えば、プロセスチーズでは、食品の安全性及び貯蔵寿命を改善するために、ソルビン酸等の保存料を利用することが多い。プロセスチーズの特性を維持及び/又は改善しつつも、天然の保存料及び/又は抗菌物質を組み込むことが望ましい場合がある。

一手法において、天然の抗菌物質を含むプロセスチーズが提供される。この手法の一態様では、プロセスチーズは、約10〜約90%のナチュラルチーズ又はナチュラルチーズ混合物と、1種以上の任意選択の乳化剤と、約8〜約25%のタンパク質と、約10〜約30%の脂肪を含む。また、プロセスチーズは、マウスでの毒性バイオアッセイにより決定された、上記のタンパク質準及び脂肪水準のプロセスチーズにおいて華氏86度(摂氏30度)で約9日間にわたり、ボツリヌス菌からの毒素形成を防止するのに有効な量のナイシンを含む。同時に、プロセスチーズは、ナイシン及びエキソポリサッカライドを含まないプロセスチーズに比べて、プロセスチーズの溶解性を増加させ、かつ、プロセスチーズの硬さを増加させるのに有効な量のエキソポリサッカライドも含む。いくつかの手法では、ナイシンは、ナイシンAを含む。

また、プロセスチーズのナイシン及びエキソポリサッカライドを、プロセスチーズ中に約1〜約20%で提供される培養乳成分の形態でプロセスチーズに含むことができる。また、培養乳成分中のナイシン及びエキソポリサッカライドを、液状乳製品培地中での単一細菌株の発酵から得ることができ、この細菌株は、ATCC寄託番号 のラクトコッカス・ラクティス株の識別特徴の全てを有する単離されたラクトコッカス・ラクティス株である。

プロセスチーズは、約1〜約100ppmのナイシン及び約100〜約2,000ppmのエキソポリサッカライドを含むことができる。ナイシン及びエキソポリサッカライドは、単一細菌株から得ることができ、この細菌株は、ATCC寄託番号 のラクトコッカス・ラクティス株の識別特徴の全てを有する単離されたラクトコッカス・ラクティス株である。

細菌株ATCC寄託番号 の発酵は、2倍〜5倍に濃縮した液状乳製品培地を約25℃〜約35℃の温度及び約5〜約6のpHとし、約15〜約48時間で実施することができる。濃縮した液状乳製品培地は、全固形分が約5〜約36%、タンパク質が約1〜約14%、及び、脂肪が約0〜約16%の濃縮乳とすることができる。

いくつかの手法では、プロセスチーズは、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される人工保存料を含まない。

いくつかの手法では、プロセスチーズは、ナイシンAと、配列番号9〜19からなる群より選択される配列に有意な相同性を有するナイシン産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子、及び、配列番号21〜33からなる群より選択される配列に有意な相同性を有するエキソポリサッカライド産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子を有する細菌株とを含む。いくつかの手法では、ナイシン産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子及びエキソポリサッカライド産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子は、同一の細菌株からのものであり、この細菌株は、ATCC寄託番号 のラクトコッカス・ラクティス株の識別特徴の全てを有する単離されたラクトコッカス・ラクティス株であってもよい。プロセスチーズ製品に組み込まれた細菌株は、発酵乳成分を調製する段階、又は、プロセスチーズ製品を調製する段階のいずれかにおける熱処理工程のために、生存可能でないかもしれない。

他の態様では、天然の抗菌物質を有するプロセスチーズを製造する方法が提供される。いくつかの手法では、この方法は、ラクトコッカス・ラクティスで液状乳製品培地を発酵させ、ナイシン及びエキソポリサッカライドを含む培養乳成分を製造することを含む。次いで、培養乳成分を、ナチュラルチーズ又はナチュラルチーズと1種以上の乳化剤の混合物と混合し、約8〜約25%のタンパク質と、約10〜約20%の脂肪を有するプロセスチーズを製造する。この方法は、マウスでの毒性バイオアッセイにより決定された、上記のタンパク質水準及び脂肪水準のプロセスチーズにおいて華氏86度(摂氏30度)で約9日間にわたり、ボツリヌス菌からの毒素形成を防止するのに有効な量のナイシンを含むプロセスチーズを製造するのに有効である。この方法はまた、ナイシン及びエキソポリサッカライドを含まないプロセスチーズに比べて、プロセスチーズの溶解を増加させ、かつ、プロセスチーズの硬さを増加させるのに有効な量のエキソポリサッカライドを含むプロセスチーズを製造するのに有効である。いくつかの手法では、ナイシンは、ナイシンAを含む。

他の手法では、この方法の培養乳成分中のナイシン及びエキソポリサッカライドは、液状乳製品培地中の同一のラクトコッカス・ラクティス株の発酵から得られる。ラクトコッカス・ラクティス株はATCC寄託番号 のラクトコッカス・ラクティス株の識別特徴のすべてを有する単離されたラクトコッカス・ラクティス株であってもよい。また、この方法で用いられる培養乳成分は、約1〜約100ppmのナイシン及び約100〜約2000ppmのエキソポリサッカライを含むことができる。プロセスチーズは、約1〜約20%の培養乳成分を含むことができる。

この方法は、2倍〜5倍に濃縮した液状乳製品培地を約25℃〜約35℃の温度及び約5〜約6のpHとし、約15〜約48時間で実施する、ATCC寄託番号 のラクトコッカス・ラクティスの発酵を含むことができる。いくつかの手法では、濃縮した液状乳製品培地は、全固形分が約5〜約36%、タンパク質が約1〜約14%、脂肪が約0〜約16%の濃縮乳である。

他の手法では、プロセスチーズが、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硝酸塩、及びそれらの混合物からなる群より選択される人工保存料を含まないようにするのに有効である。

いくつかの手法では、この方法の培養乳成分は、ナイシンAと、配列番号9〜19からなる群より選択される配列に有意な相同性を有するナイシン産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子、及び、配列番号21〜33からなる群より選択される配列に有意な相同性を有するエキソポリサッカライド産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子を有する細菌株とを含む。

他の手法では、この方法におけるナイシン産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子及びエキソポリサッカライド産生遺伝子クラスターからの少なくとも1つの遺伝子は、同一のラクトコッカス・ラクティス株からのものである。

濃縮された乳製品から製造された例示的な培養乳成分の製造を示す工程系統図である。

代替的な工程系統図である。

粉末状乳成分から製造された例示的な発酵乳製品成分の生産の第2の形態を示す工程系統図である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの味覚プロファイルを示す。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含むプロセスチーズ及びこれを含まないプロセスチーズの溶解性の比較を示す写真である。

培養乳成分を含まない対照品と比較した、8%の培養乳成分を有するプロセスチーズの硬さの測定値を示すグラフである。

培養乳成分を含まない対照品と比較した、8%の培養乳成分を有するプロセスチーズの粘稠度の測定値を示すグラフである。

培養乳成分を含まない対照品と比較した、8%の培養乳成分を有するプロセスチーズの硬さの測定値を示すグラフである。

培養乳成分を含まない対照品と比較した、8%の培養乳成分を有するプロセスチーズの粘稠度の測定値を示すグラフである。

ナイシン産生株の比較多座配列タイピング(MLST)分析の結果を示す図である。

ナイシン産生株のファージ型分析の結果を示す図である。

種々のラクトコッカス・ラクティス株のリボプリンター分析の結果を含む。

種々の乳酸菌のEPS関連遺伝子を比較する図である。

ナイシンAのアミノ酸配列を示す。

ラクトコッカス・ラクティス329株の接種及び発酵の前にはEPSが不在であることを示す走査型共焦点顕微鏡画像である。

ラクトコッカス・ラクティス329株の接種及び発酵の後にはEPSが存在することを示す走査型共焦点顕微鏡画像である。

本出願は、全体として、特に天然の抗菌物質及び天然のテクスチャ改良剤を含むプロセスチーズに関する。一形態では、天然の抗菌物質は、天然の抗菌物質及び/又は適切な発酵条件下で天然の抗菌物質を産生することができる培養物を含む発酵乳成分又は濃縮した培養乳成分を介してプロセスチーズに取り込まれる。本明細書で使用する用語「培養乳成分」又は「濃縮した培養乳成分」とは、培養された抗菌物質を含まないと特に断らない限り、いくつかの手法においては、抗菌物質を産生するのに有効な条件下で、選択された抗菌物質を産生する培養物を用いた濃縮及び発酵を行った、発酵乳基質及びその誘導体を一般に意味する。本明細書で用いる「天然の抗菌物質」とは、発酵プロセス中の細菌培養物等の生物によって産生される抗菌活性を有する成分を意味する。

一形態では、培養乳成分は、抗菌物質産生培養物で発酵させた乳製品基質を含む。いくつかの手法では、乳製品基質は、乳等の液状乳製品、又は、2〜5倍に濃縮された乳基質等の濃縮された液状乳製品若しくは乳基質である。一態様では、抗菌物質を産生する培養物はナイシン産生培養物である。1つの特定の形態では、培養物により産生するナイシンは、ナイシンAである。1つの手法では、ここでのプロセスチーズは、約1〜約100ppmのナイシンを、他の手法では約1〜約20ppmのナイシンを、他の手法では約5〜約15ppmのナイシンを、さらに他の手法では約10〜約15ppmのナイシンを含む。

また、いくつかの手法では、培養乳成分は、エキソポリサッカライド(EPS)も含む。一態様において、EPSは、ナイシンを生成するのに用いられるのと同じ条件下で、同じ培地を用いた乳基質の発酵中に産生される。別の態様では、EPSは、抗菌物質を産生する培養物により、及び、いくつかの手法においては、ナイシンを産生するのに用いられるのと同じ細菌株から産生される。この点に関し、培養乳成分が本発明のプロセスチーズに用いられる場合には、プロセスチーズは、同じ発酵から、及び、いくつかの手法では同じ細菌株から得られるナイシン(ナイシンA等)及びEPSの両方を含む。上記のナイシンとともに、培養乳成分は約0.1〜約2%のエキソポリサッカライドを含み、製品プロセスチーズは、ナイシンに加えて、約100〜約1000ppmのエキソポリサッカライドを含むと予想される。

同じ発酵及び/又は同じ細菌株からの天然の抗菌物質(ナイシン等)とエキソポリサッカライドの両方を含む培養乳成分を含むプロセスチーズは、人工保存料及び/又は従来の他の種類の天然抗菌物質を含むことを除いて同じ配合のプロセスチーズに比べて、抗菌性が向上し、溶解性が向上し、テクスチャがより硬いということが予想外にも分かっている。同時に、独特の培養乳成分を含む本発明のプロセスチーズは、ナチュラルチーズの硬さに似た硬さを示す。これは、両方の増加した溶解特性及び増加堅さはプロセスチーズで同時に得られることが予想外であった。1つの手法では、本発明のプロセスチーズは、約1500〜約2500Paの硬さ(ヤング率)を示し、同時に、約50,000〜約70,000Pa/秒の粘稠度を示す。また、他の手法では、培養乳成分を含むプロセスチーズは、同じプロセスチーズであるが、培養乳成分を含まないか、培養乳成分の代わりにアスコルビン酸又は他の人工保存料を含むものに対して、約20〜約75%の溶解性の増加がみられる。本明細書で使用するナチュラルチーズとは、レンネット(又はレンネット代用物)と酸性化の組み合わせを使用して、乳又は他の液状乳製品を凝固させることにより作られる未殺菌のチーズを意味する。 ここで説明するプロセスチーズに用いられるナチュラルチーズは、作りたてであっても、又は熟成させてもよい。

以下でさらに説明するように、従来の抗菌物質は、タンパク質及び脂肪の含量の高いプロセスチーズ中では効果が低い傾向にあったが、これは、プロセスチーズ中のタンパク質及び脂肪の含量が高いと、場合によっては低水分含量と相まって、市販形態のナイシン及び他の天然抗菌物質による阻害から種々の病原菌を保護し、及び/又は、遮蔽する傾向があると考えられていた。本発明の培養乳成分の天然の抗菌物質は、従来の天然抗菌物質にはみられない水準で、ボツリヌス菌及び他の病原菌を効果的に阻害することが予想外にも発見された。

従来は、プロセスチーズの溶解性を向上させると、硬さの減少を招くと予測されていた。すなわち、溶解性と硬さとの間には逆相関があると従来は予想されていた。上述したように、本発明のプロセスチーズは、培養乳成分を用いた場合には、逆に、溶解性とテクスチャ/硬さの両方の改善を同時に達成する。この、溶解性及び硬さを同時に二重に改善するということは、従来のプロセスチーズ用途における傾向とは反対である。

ここで説明されるように、活性単位(AU)なる用語を用いて、抗菌物質が取り込まれた培養乳成分及びプロセスチーズ中の天然抗菌物質の生物学的活性を表すことができる。生物学的活性は国際単位(IU)でも表すことができ、AUとIUを互換可能に使用するできることを理解すべきである。いくつかの手法では、本開示の培養乳成分及びそれを用いて調製したプロセスチーズは、約40〜約400IU/g、他の用途では約50〜約200IU/gのナイシン活性を有することができる。

1つ又は複数の異なる天然の抗菌物質をプロセスチーズに含むことができる。一形態では、プロセスチーズは十分な量の天然抗菌物質を含み、プロセスチーズがソルビン酸及びソルビン酸カリウム等の人工保存料を含まないように含まないようにすることができる。本明細書において、用語「含まない」、「のない」、又は「実質的に含まない」は、約0.5%未満、他の手法では約0.1%未満、場合によっては約0.05%未満、他の場合にはないことを意味する。いくつかの手法では、プロセスチーズは、プロセスチーズを華氏約86度(摂氏約30度)で保存した場合に、少なくとも約9日間にわたり毒素の形成を防止するのに有効な量で天然抗菌物質を含む。また、プロセスチーズは、約1〜約10℃での貯蔵の間に、リステリア菌の成長の対数が1超となるのを少なくとも約4週間、別の態様では少なくとも約8週間、別の態様では少なくとも約12週間、別の態様では少なくとも約16週間、別の態様では少なくとも約20週間、別の態様では少なくとも約24週間、さらに別の態様では少なくとも約28週間にわたり防止するのに有効な量の培養乳成分を含む。

天然の抗菌物質は、乳酸菌の抗菌物質産生株を用いた発酵により製造することができる。本明細書において、用語「乳酸菌」は、一般に、炭水化物発酵の主要代謝産物として乳酸を生成するグラム陽性細菌を意味する。乳酸菌は、例えば、ラクトコッカス・ラクティスの抗菌物質産生株としてもよく、代替的な手法においては、ブレビバクテリウム・リネンとすることができる。

いくつかの態様では、天然の抗菌物質は、ナイシンを含み、いくつかの手法においては、ナイシンAを含む。ナイシンは34アミノ酸残基を有する阻害性多環式ペプチドである。これは、一般的でないアミノ酸であるランチオニン、メチルランチオニン、デヒドロアラニン、及びデヒドロアミノ酪酸を含む。これらのアミノ酸は、翻訳後修飾によって合成される。これらの反応では、リボソーム合成された57−merを最終的なペプチドに変換する。不飽和アミノ酸はセリン及びトレオニン由来である。

ナイシンは、乳を含む天然基質上でナイシン産生細菌を培養することによって得ることができる。ナイシンは、グラム陽性の腐敗菌及び病原菌を抑制することにより、安全で使用可能な寿命を延長するために、食品に含まれている。高度に選択的な活性ゆえに、ナイシンは、グラム陰性の細菌、酵母及びカビの単離のための微生物学的培地における選択剤として使用することができる。ナイシンを含む2つの市販の抗菌剤は、Nisaplin(登録商標)及びNovasin(商標)であり、両者ともにデンマークのDaniso A/Sから発売されている。典型的には、Nisaplinは約3.0重量%未満のナイシンを含み、残部はNaCl、タンパク質、炭水化物及び水からなる。本明細書においてナイシン成分に言及した場合、この成分は、ナイシンのみならず、担体、塩、タンパク質、炭水化物、及び発酵プロセスから得られる代謝産物等の他の材料を含んでもよい。実施例に示され、以下に詳しく説明するように、市販のナイシン供給源は、本開示の培養乳成分として、プロセスチーズ中の腐敗菌及び病原菌を抑制する水準を提供するものではない。

一態様では、本明細書に記載の方法によって作られる培養乳成分はナイシンAを含み、及び/又は、ナイシン産生培養物はナイシンA産生培養物を含む。ナイシンAは、約3,351.5Daの分子量及び配列番号1のアミノ酸配列を有する。しかし、他の天然抗菌物質を用いてもよいことを理解すべきである。例えば、ナイシンZ、ナイシンQ、ナイシンF、及びナイシンFを含む他の形態のナイシンを含んでもよい。また、クラスIバクテリオシン、クラスIIバクテリオシン、クラスIIIバクテリオシン、及びクラスIVバクテリオシン等の他のバクテリオシンを含むことができる。他の天然抗菌物質には、例えばナタマイシン(ストレプトミセス・ナタレンシスにより産生される)及びポリリジン(特定のストレプトミセスにより産生される)等の、天然に産生された抗真菌剤が含まれる。

さらに、天然の抗菌物質を産生する細菌株を提供することができる。かかる細菌株には、例えばラクトコッカス・ラクティス又はブレビバクテリウム・リネンのナイシン産生株等の乳酸菌の抗菌物質産生株が含まれる。

一形態では、培養乳成分は、ナイシン成分を含み、及び/又は、発酵培地の重量の約30〜約90ppmの範囲でナイシン成分を生成することができる培養物を含む。

天然の抗菌物質は、乳製品基質中で適切な発酵条件下で抗菌産生細菌を培養することにより提供することができる。乳製品基質は、例えば、乳、クリーム、乳清又は他の乳製品含有粉末又は液体を含むことができる。また、乳製品基質は、細菌の成長のための他の栄養素を補充したデキストロース、コーンシロップ、又は他の炭水化物を、炭酸カルシウム等の酸中和剤とともに、又は酸中和剤なしに、含むことができる。

幾つかの形態において、乳は、生乳の形態であってもよく、又は、少なくとも約2倍に濃縮された乳製品、他の態様では最大約5倍に濃縮した乳製品等の濃縮乳製品の形態であってもよい。典型的には、乳基質は、約3%超のラクトース及び窒素源を含むであろう。基質は、水和粉末から製造され、又は、脱脂乳、2%乳、全乳等の新鮮な液状乳製品由来とすることができる。1つの手法では、出発乳製品基質は、全固形分が約5〜約36で、タンパク質含量が約1〜約14%で、脂肪含量が約0〜約16%で、水分含量が約64〜約95%である濃縮乳を含む。

培養乳成分をプロセスチーズの製造に用いる場合、プロセスチーズ製品への投入前に培養乳成分から水分を除去することに関連するコストの増大を低減するために、乳製品基質中の水分を低水準に維持することが望ましいことが分かっている。さらに、培養乳成分の特定の成分が不安定であってもよく、水分除去工程の間に分解し、又は損傷を受けてもよい。例えば、培養乳成分のEPS成分は、比較的不安定であると考えられており、噴霧乾燥、蒸発等の水分除去技術によって損なわれる場合がある。しかし、特定の用途のために望ましい場合は、培養された抗菌物質を含む培養乳成分は、液体及び/又は粉末等の様々な形態をとることができる。

少なくともいくつかの手法では、ナイシンA及びエキソポリサッカライドを産生する培養物は、ラクトコッカス・ラクティスss.ラクティス329株である。2013年8月21日に、329株は、バージニア州20110、マナッサス、ユニバーシティ・ブルバード10801番地のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託され、寄託番号PTA−120552を与えられた。寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の規定に従って行われた。

ラクトコッカス・ラクティス329株は、乳酸菌の他のナイシン産生株と比較して、独特の遺伝子及びファージプロファイルを有することが分かっている。有利なことに、329株は、約2〜約5倍の乳を含む濃縮乳製品基質中で生育することができることが分かった。このように高度に濃縮された乳基質中で生育可能な培養物は少ないことが分かっている。例えば、この培養物は、約10時間で少なくとも約109CFU/グラムまで成長するのに有効であり、約2倍〜約5倍に濃縮された発酵培地中であっても、約18時間で約2000IU/グラムを超えるナイシンAを産生する。329株は、以下でより詳細に説明するように、多重座配列タイピング(MLST)、ファージタイピング及びリボタイピングを用いて特徴付けられた。

多重座配列タイピング(MLST)

ナイシン産生株でもある、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスIL1403(taxid:272623)の公的に入手可能なゲノムをテンプレートとして用いて、329株に対するIL1403の比較における遺伝マーカーとして用いる7種のハウスキーピング遺伝子の選択を行った。選択された遺伝子は、以下の表1に詳述されるように、染色体上の遺伝子座のある範囲に広がる。7種の遺伝子のそれぞれを増幅し、配列決定した。次いで、この配列を基準として、IL1403を用いて整列及び比較を行った。各配列の多様性が評価され、これは個々の対立遺伝子を表す。

ファージ型

スポットプレートを用いて、高力価のファージストックのファージプロファイリングを行った。ファージを同定した。ファージ型の結果を図11に示す。

リボタイピング

本明細書で用いる「リボタイピング」とは、16S及び23S rRNAをコードする遺伝子の全部又は一部を含む、ゲノムDNAの制限フラグメントのフィンガープリントを指す。制限酵素としてEcoRIを利用する従来のリボタイピング技術を実施した。結果を図12に示す。リボタイピングは、ラクトコッカス・ラクティス329株は、公的に利用可能なラクトコッカス・ラクティス株ATCC寄託番号11454(ナイシン産生株でもある)と実質的に異なることを確認した。

DNA配列解析

図13に示すように、ラクトコッカス・ラクティス329株は、エキソポリサッカライド及びナイシンクラスター遺伝子の特有の組み合わせを有することがわかった。ラクトコッカス・ラクティス329株は、下記の表2のナイシンクラスター遺伝子配列を含み、図14のアミノ酸配列(配列ID番号1)を有するナイシンを産生する。

少なくとも、図1の方法を参照しつつ本明細書で説明した発酵条件下で、ラクトコッカス・ラクティス329株は、57アミノ酸長のrナイシンA前駆体ペプチド(ナイシンA前駆体は、配列ID番号20のアミノ酸配列を有する)に比べて高い水準の34アミノ酸長のナイシンAを産生する。ナイシンAは、ナイシン前駆体の翻訳後修飾によって生成される。少なくとも幾つかの態様では、ラクトコッカス・ラクティス329株は、ナイシンAを、ナイシンA前駆体に対する比として、少なくとも約9:1で、他の態様では少なくとも約9.5:0.5で、生成する。対照的に、DaniscoのNisaplin(登録商標)は、約83%のナイシンAと、17%のナイシンA前駆体を含む。

上述したナイシンを生成するのに効果的な発酵条件と同じ発酵条件下で、ラクトコッカス・ラクティス329株はまた、例えば、図1の方法を参照して本明細書で説明した発酵条件下等で、エキソポリサッカライドを産生する。ラクトコッカス・ラクティス329株は、以下の表3のEPSクラスター遺伝子を含む。

少なくともいくつかの手法において、本明細書に記載される方法に有用な抗菌物質産生細菌株は、図1を参照して説明した発酵条件下で約2000IU/グラム以上のナイシンAとエキソポリサッカライドの両方を産生することができる。

本明細書に提供される配列情報は、誤って識別されたヌクレオチドの包含が必須であるかのように、狭義に解釈されるべきではない。当業者は、本明細書中に開示される配列を用いて、細菌株から完全な遺伝子を単離し、さらに遺伝子を配列解析に供し、配列決定エラーを識別することができる。

本明細書で使用する用語「相同性」及び「同一性」は、互換可能に使用される。二つの配列のパーセント同一性又は相同性を求めるために、配列を最適な比較目的のために整列させてもよい。次いで、ヌクレオチド又はアミノ酸を、2つの配列の、対応するヌクレオチド又はアミノ酸の位置で比較する。例えば、第一の配列中のヌクレオチド又はアミノ酸は、同一ヌクレオチド又はアミノ酸が第二の配列の対応する位置に配置される場合には、第二の配列のヌクレオチド又はアミノ酸と同一であると考えられる。パーセント同一性は、同一の位置の数を、位置(すなわち、重複位置)の総数で除し、100を乗じて求めることにより、計算される。

機能性核酸等価物もまた本発明に考慮される。例えば、機能性核酸等価物は、コードされたポリペプチドの生物学的機能を変化させないサイレント突然変異又は他の突然変異を含む。

一形態において、本明細書に記載される方法に有用な抗菌物質産生細菌株は、配列ID番号9〜19及び21〜33に対して有意な相同性の1つ以上の遺伝子を有し、同じ発酵条件下でナイシンAとEPSを生成することができる。本明細書に記載される用語「有意な相同性」とは、少なくとも70%の同一性、他の態様では少なくとも75%の同一性、他の態様では少なくとも80%の同一性、他の態様では少なくとも85%の同一性、他の態様では少なくとも90%の同一性、他の態様では少なくとも95%の同一性、さらに他の態様では少なくとも99%の同一性、さらに他の態様では完全に同一であることを意味する。

いくつかの手法では、本明細書に記載される方法に有用な抗菌物質産生細菌株は、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも2つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも3つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも4つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも5つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも6つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも7つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも8つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも9つの遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも10個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも11個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも12個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも13個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも14個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも15個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも16個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも17個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも18個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも19個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも20個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも21個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも22個の遺伝子、他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも23個の遺伝子、さらに他の態様では、配列ID番号9〜19及び21〜33からなる群から選択される配列に有意な相同性の少なくとも24個の遺伝子を有する。

効果的な培養乳製品濃縮物及びプロセスチーズの製造方法に関するより詳細な説明に移る。まず、図1を参照し、同一の培養物から、同じ条件下で、プロセスチーズに用いると効果的である抗菌物質(例えば、ナイシンA)及びEPSの両方を生成するのに有効な培養乳製品材料又は培養乳製品濃縮物12を製造する一方法を示している工程系統図10が提供されている。この例示的なプロセス10において、全乳のような液状乳製品等の液状乳製品出発材料14を用いてもよい。他の手法では、出発液状乳製品は、乳タンパク濃縮物及び/又は乳清材料であってもよい。出発材料14は、全固形が約5〜約35%で、脂肪が約0〜約16%で、タンパク質が約1〜約14%で、水分が約64〜約95%であってもよい。他の形態では、出発材料14は、全固形が約26〜約30%で、脂肪が約10〜約15%で、タンパク質が約8〜約12%で、水分が約70〜約70%である、3.5倍に濃縮した全乳であってもよい。

別の手法では、出発材料14は、液状乳の限外濾過から得られた濃縮液状乳製品である。濃縮された出発材料は、全固形分で規定して、約2倍〜約5倍の濃度、他の手法では約2倍〜約4倍、さらに他の手法では約3倍〜約3.5倍の液状乳製品に濃縮することができる。すなわち、3倍濃度は、出発液状乳製品に対して全固形分の水準が3倍であり、5倍濃度は、出発液状乳製品に対して全固形分の水準が約5倍である。一手法において、限外濾過膜を用いて、適切に濃縮された出発材料を達成することができる。1つの適切な膜は、約5〜約20KDの分子量カットオフを有する。特定の用途への必要に応じて、精密濾過、ナノ濾過、及び逆浸透を含む他の濃縮法も用いることができる。

以下でさらに説明するように、本開示の2倍〜5倍の乳等の濃縮乳中での発酵は、典型的には、従来の抗菌性発酵物及び発酵では問題が生ずる。本開示の製品及び方法で使用される329株は、特異的に、濃縮液状乳製品中での発酵を可能とすると同時に、同じ株から、同じ発酵条件下で、ナイシン及びEPSの両方の形成を可能とする。濃縮乳を、本開示のプロセスチーズ成分の発酵及び最終的な製造に利用することにより、得られるプロセスチーズ中の水分含量がより良好に制御される。本開示の濃縮乳成分は、複数の機能と成分(すなわち、ナイシン及びEPS等)を同じ原材料中に組み合わせる。いくつかの手法では、これによって、プロセスチーズの製造工程における全体的な水分負荷が軽減し、場合によっては、プロセスチーズ成分のラインが単純となる。

液状乳製品又は濃縮液状乳成分のいずれかである出発材料14は、次いで殺菌16された後、1つ以上の発酵槽18に入る。殺菌は華氏約150〜約190度(摂氏約65.6〜約87.8度)で約20〜約40秒とすることができ、その結果、殺菌済み出発材料の出口温度が華氏約80〜約90度(摂氏約26.7〜約32.2度)となる。ラクトコッカス・ラクティス329株等の抗菌物質産生培養物20を、例えば、水酸化ナトリウム(例えば、5.5N希釈水酸化ナトリウム)等の塩基溶液22と共に、発酵槽18に添加する。一形態では、約2×106〜約2×108 CFU/mlの抗菌物質産生培養部20を発酵槽に添加する。一実施形態では、培養物20は、/0}培養物を解凍した形態である。1つの手法では、発酵温度を約25〜約35℃(いくつかの手法では約28〜約32℃、及び他の手法では約30℃)に維持し、発酵槽内のpHを約5〜約6(他の手法では約5.4〜約5.8、及びさらに他の手法では約5.4〜約5.6)に維持する。また、培養物が、選択された条件下で所望の水準のナイシン及びEPSを産生することができる場合には、他の温度及びpHを使用してもよい。例えば、1つの手法において、pHは約5〜約7の範囲であり、温度は約20〜約40℃の範囲である。組成物を種々の期間にわたって発酵させて、組成物に異なる風味特性を付与することができる。例えば、ある手法において、組成物を約18〜約22時間にわたり発酵させる。他の形態では、発酵を、約15〜約48時間の範囲にわたって行うことができる。図5に示すように、発酵時間を変化させることにより、培養乳成分の風味、及び結果としてプロセスチーズの風味を変更することができる。

次に、組成物は、任意選択のせん断装置24に送られ、形成されている可能性のある小さな/柔らかいカードをせん断する。ある手法では、せん断装置は、ロータ/ステータ・ミキサー(Dispax等)又は他のロータせん断装置であってもよい。この工程は、他の処理条件及びこの処理で利用される材料の特性に応じて、任意選択とすることができる。組成物は、最終的に任意選択の熱処理工程26に供される。一形態では、組成物は、華氏約150〜約160度(摂氏約65.6〜約71.1度)で概ね約60〜約100秒間にわたり熱処理26される。他の形態では、組成物を熱処理して、CFU/mlを約1000 CFU/ml未満に低減する。得られた組成物12は、ナイシン及び/又はナイシン産生材料とともに、EPS及び/又はEPS産生材料を含む、培養乳成分又は発酵乳製品濃縮物である。少なくともいくつかの手法において、これらの2つの成分を、329株等の同じ出発細菌株から、同じ発酵条件下で生成することが有利である。この組成物は、全固形分が約6〜約40%の液体の形態であってもよい。一形態では、この液体は、全固形分が約20〜約30%であり、いくつかの手法では全固形分が28.5%である。

図1Aに示す代替の方法200において、まず、水和した粉末及び/又は液状乳202を、高温短時間殺菌(HTST)又は超高温殺菌(UHT)工程で加熱204することができる。次に、加熱された液体を、前述の方法に関連して説明したのと同様の材料、培養物、及び条件で発酵206させる。発酵後、材料は、任意選択でせん断208され、その後に濃縮210される。この手法では、濃縮を、膜濾過、蒸発、又は遠心分離とすることができる。濃縮後、得られた濃縮物を、例えば、HTST又はUHTを用いて、任意選択で再加熱212してもよい。

培養乳成分を調製するための他のプロセス100を図2に示す。図2のプロセス100は、粉末乳タンパク濃縮物及び粉末乳清等の粉末状の出発材料112を利用する。この手法では、約3〜約10%の粉末乳タンパク濃縮物、約2〜約6%の粉末乳清、及び約75〜約95%の水をタンク又は発酵槽中で混合し、発酵培地を形成する。粉末を混合114し、発酵槽118に添加する前に加水してもよい。次いで、これらの出発材料を、発酵槽118中で、約2×106CFU/ml〜約2×108CFU/mlの量で、ラクトコッカス・ラクティス329株等の、抗菌物質を産生する培養物120と混合し、図1に示したと同様にして発酵させる。また、図1の方法と同様に、処理水と、希釈水酸化ナトリウム等の塩基も、タンク123から発酵槽118に添加してもよい。発酵の後、組成物を、任意選択で、必要に応じて加熱又は冷却し、次いで、最終的な培養乳成分112に調製することができる。いくつかの手法では、工程には、特定の用途の必要に応じで、様々な中間加熱及び冷却112を含むことができる。この点では、組成物112を、濃縮液の形態で使用するための1つ又は複数の保持タンク130又は他の貯蔵場所に置くことができる。保持タンクの温度は、華氏約30〜約50度(摂氏約−1.1〜約5度)とすることができる。(液体形態等の)一実施形態では、培養乳成分は、全固形が約6〜約11%であり、他の形態では、全固形が約20%である。さらに、培養乳成分を、噴霧器140等において、噴霧乾燥してもよい。1つの手法では、噴霧器は、乾燥温度が華氏約160〜約180度(摂氏約71.1〜約82.2度)であり、かつ、圧力降下が約15〜約25psi(約0.10MPa〜約0.17MPa)である。

培養乳成分は、種々の形態をとり得る。例えば、図1及び2に示すように、培養乳成分は、液状であってもよい。また、培養乳成分は、図2に示すような噴霧乾燥等による、粉末の形態をとることができる。さらに、培養乳成分は、蒸発、濾過等によって得られた成分等の濃縮形態であってもよい。図1又は2の方法で得られた生成物は、特定の用途に応じて液体又は粉末乾燥のいずれかとすることができる。図2は粉末乾燥の例示的な工程を示しており、これらの工程を図1の方法と共に使用することができることが理解されるであろう。培養乳成分をさらに濃縮、噴霧乾燥等により処理する場合、このさらなる処理は、実質的にナイシン及び/又はEPSに影響を与えないようにして完了されることが理解されよう。

次いで、図1及び2の方法によって生成された、同じ細菌株から生成された抗菌物質及びEPSの両方を有する培養乳成分を、プロセスチーズ中に用い、及び/又はプロセスチーズの製造に用いることができる。1つの手法では、ナチュラルチーズ又はナチュラルチーズ混合物、水分、任意選択の付加的乳タンパク源(乳タンパク濃縮物、乳清、乳清タンパク濃縮物、限外ろ過乳等)及び培養乳成分を一緒に混合することによって、プロセスチーズを製造することができる。 塩化ナトリウムを呈味のために添加してもよい。 他の任意成分をテクスチャ、味、栄養、及び/又はコスト属性を改善するために添加することができる。 これらには、乳清由来の成分(例えば、乳清タンパク濃縮物)、脱脂粉乳、乳タンパク濃縮物、無水乳脂肪、ゴム、デンプン、ゼラチン等が含まれるが、これらに限定されない。原料を一緒に混合し、次いで殺菌温度まで加熱する。任意に、せん断を、加熱中又は後に適用することができる。

乳清タンパク質は、乳を凝固させ、濾過した後に残留する液体である乳清から単離することができる球状タンパク質の集合を指す。乳清タンパク質は、典型的には、β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、及び血清アルブミンタンパク質の混合物である。 一実施形態では、乳清タンパク濃縮物(WPC)を、乳清タンパク源として使用してもよい。 WPCは、従来の濃縮技術によって、乳清から生じるものである。乳清タンパク質源は、ラクトース、ビタミン、ミネラル、脂肪を含んでもよい。

クッカー(例えば横型クッカー)に蒸気を注入し、調理からの凝縮蒸気を混合し、及び/又は直接水を加えるが、これらに限定されない任意の方法により、混合物に水分を添加してもよい。無論、水分は、様々な成分(例えばナチュラルチーズからの水分)を介して系に入ることもある。 最終チーズ製品の全体的な水分は、最終製品にどのようにして水分が導入されたに関わらず、全ての水分が含まれる。有利には、本開示の培養乳成分は、いくつかの形態において、ナイシン及びEPSの両方を同時に含む濃縮された乳成分であるので、プロセスチーズの水管理が改善される。この目的のため、ナイシン及び他のテクスチャ改良成分を別々に添加する必要がないので、培養乳成分の原料を介してプロセスチーズに添加される水がより少なくなる傾向がある。

当業者に知られているように、チーズ製品の所望の結果に応じて、様々な量で原料をプロセスチーズ中に使用することができる。例えば、減塩チーズ製品に対しては、チーズメーカーはチーズ混合物に塩を少量含め、又は全く含めないことができる。また、プロセスチーズはまた、培養乳成分及びプロセスチーズの所望の形態の形態及び組成に応じて、ある範囲の量の培養乳成分を含むことができる。

例えば、一形態において、プロセスチーズは、約10〜約90%のナチュラルチーズを含むことができる。他の形態によれば、プロセスチーズは、約30〜約60%のナチュラルチーズを含むことができる。さらに他の形態では、本開示のプロセスチーズは、約35〜約55%のナチュラルチーズを含むことができる。本明細書において、ナチュラルチーズとは、一般に、凝乳と、レンネット、レンネット代用品、酸性化、及びそれらの組み合わせのうちの1つとから得られた未殺菌のチーズからもたらされたチーズを意味する。

プロセスチーズは、特定の出願の必要に応じて、さまざまな供給源からの多数の他の乳原料を含むことができる。例えば、一形態において、プロセスチーズは、約0〜約50%(他の手法では、約10〜約25%)の乳タンパク濃縮物と、約0〜約25%(他の手法では、約1〜約10%)の乳清タンパク濃縮物、約0〜約30%(他の手法では、約1〜約10%)の乳清、約0〜約30%(他の手法では、約1〜約15%)の乳脂肪/クリーム等を含むことができる。また、プロセスチーズは、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の乳化剤を、約0〜約5%(他の手法では、約1%〜約3%)の量で含むことができる。また、プロセスチーズは、所望の色、風味等を得るために、塩、香料、強化剤、着色剤等を含むこともできる。また、プロセスチーズは、所望の最終製品の水分を得るために、添加水及び/又は原料からの水分を含むこともできる。例えば、プロセスチーズを強化するために、必要に応じて、ビタミン及び他のミネラルを添加してもよく、一手法では、約0〜約3%のビタミンA、ビタミンD及び/又はカルシウム粉末(リン酸三カルシウム等)を添加してもよい。他の用途において、必要に応じて塩を添加してもよい。いくつかの手法では、約0〜約5%の塩を添加することができる。

また、従来の保存料に代えて、プロセスチーズは、本開示の培養乳成分を含むことができ、ここで説明した方法を介して行うことができる。一形態では、プロセスチーズは、約1〜約20%の培養乳成分を含むことができる。他の形態では、プロセスチーズは、約4〜約10%の培養乳成分を含む。いくつかの手法では、本発明の培養乳成分は、ナイシン含量に対するナイシン当量(ナイシン活性比)に比べて非常に高い総抗菌活性を提供する。例えば、いくつかの手法において、本明細書に記載の培養乳成分の量を用いた培養乳成分及びプロセスチーズは、約0.3以下のナイシン活性比を示す。

培養乳成分は、人工保存料の代替品として使用することができ、及び/又は、全体的なプロセスチーズ組成物中の他の成分を部分的に補完又は置換するためにも使用できることに留意すべきである。例えば、培養乳成分の形態に応じて、培養乳成分の量は、乳脂肪、カゼイン、乳清等の、組成物中の他の乳製品材料の一部を補完又は置換するために使用することができる。換言すれば、他の乳製品原料の比率は、培養乳成分の使用の結果として変更されてもよい。プロセスチーズが本明細書の培養乳成分を含む場合には、チーズは、ソルビン酸、亜硝酸塩等の従来の保存料を実質的に含まなくてもよい。1つの手法によれば、実質的に含まないとは、一般的に、約0.5%未満を、他の手法では約0.1%未満を、さらに他の手法では全く存在しないことを意味する。

一形態では、プロセスチーズは、約40%のナチュラルチーズ、35%の他の乳製品原料、約8%の培養乳成分、約12%の水、及び、残部としての塩、香料、着色剤、ビタミン、ミネラル等を含む。プロセスチーズは、調理中に、及び代替的にチーズ混合工程の間に、培養乳成分を添加すると一般に理解されるようにして製造することができる。一形態において、本明細書に記載のチーズ製品は、チーズディップ、チーズスプレッド、チーズブロック、スライスチーズ、細切りチーズ等のいずれであってもよい。いくつかの手法では、本開示のプロセスチーズの様々な形態は、約10〜約90%のナチュラルチーズ、約0〜約50%の乳タンパク濃縮物、約0〜約30%の乳脂肪又はクリーム、約40〜約60の水、約1〜約20%の培養乳成分、約0〜約30%の乳清、及び約0〜約25%の乳清タンパク濃縮物を、上述した種々の任意選択の香料、塩、及び乳化剤と組み合わせて含むことができる。

他の形態では、プロセスチーズは、約10〜約30%の総脂肪(他の手法では約20〜約30%の脂肪)、約8〜約25%の総タンパク質(他の手法では約15〜約25%の総タンパク質)、及び約40〜約60%の総水分(他の手法では約40〜約50%の水分)を含む。

本開示の培養乳成分で製造したプロセスチーズは、溶解特性を改善すると同時に硬さを増加させるが故に、テクスチャの点で予想外の利点を示すだけでなく、本開示の培養乳成分で製造したプロセスチーズは、約10〜約30%の脂肪と、約8〜約25%のタンパク質を有するプロセスチーズ等の高タンパク質高脂肪製品中において抗菌特性の改善も示す。従来の市販形態のナイシンは、液状培地又は培養液中のボツリヌス菌を阻害すると一般的に考えられていたが、かかる従来の形態のナイシンが、プロセスチーズ等の高タンパク質高脂肪食品系に用いられた場合には、ナイシンは、ボツリヌス菌及び他の病原菌の阻害効果が低かった。理論に拘泥するものではないが、高タンパク、高脂肪で、いくつかの場合においては、低水分含量である本明細書に記載のプロセスチーズは、ボツリヌス菌及び他の病原菌を保護し、及び/又は封入する傾向があるため、従来のナイシン及び従来の天然抗菌物質があまり効果的でなかった。本明細書の抗菌培養物から得られたナイシン、特に、329株は、高脂肪高タンパク質プロセスチーズ中において、全体として下記の実施例1に示すような他の形態のナイシンに比べて、ボツリヌス菌、及び、リステリア菌等の他の食品媒介病原菌を阻害するのにはるかに有効であることが意外にも発見された。いくつかの手法では、プロセスチーズ中の培養乳成分は、本明細書に記載の高タンパク質水準及び高脂肪水準のプロセスチーズにおいて、華氏約86度(摂氏約30度)で少なくとも約9〜約10日にわたり、マウスを用いた従来の毒素バイオアッセイによって判定された、少なくともボツリヌス菌からの毒素の形成を防止するのに有効な量のナイシンを提供する。1つの手法では、http://www.fda.gov/Food/FoodScienceResearch/LaboratoryMethods/ucm070879.htmより入手可能な2001年1月のHaim M. Solomon et al., Bacteriological Analytical Manual, Chapter 17, Clostridium botulinumに従い、生物毒素アッセイを行ってもよい。上記の文献の全体を参照により本明細書に援用する。

本開示の培養乳成分は、高タンパク質高脂肪プロセスチーズ中でのボツリヌス菌及び他の病原菌の阻害を発現するのみならず、従来分かっている可能量よりも低い活性レベル及び/又は低い用量レベルで、かかる阻害効果を達成する。

他の手法では、本明細書に記載の液状の培養乳成分、又は本明細書に記載の方法で製造した液状の培養乳成分は、プロセスチーズに使用された場合に、従来の形状のナイシンを用いては達成することのできなかった、最終プロセスチーズにおけるナイシン活性を高い水準に維持する。1つの手法によれば、ここで説明し、ここで説明する方法によって作られた培養乳成分は、プロセスチーズに組み入れる前の成分の活性に比べて、約50〜約90%、他の手法では、約60〜約75%の活性を保持するのに有効である。

いくつかの手法では、培養乳成分は、発酵の前又は後に限外濾過した液状乳を用いて作られる。これらの手法では、培養乳成分は、ラクトース及び他の乳製品ミネラルの水準が低下している。例えば、いくつかの手法において、培養乳成分及び培養乳成分を利用するプロセスチーズは、約0.1%未満のラクトースと、酸として約15%未満の乳酸を有することができる。また、他の手法では、培養乳成分及び培養乳成分を利用するプロセスチーズは、約600mg/100g未満のカルシウムを有することができる。

組成物、方法、及びここで説明する方法によって製造された組成物の利点及び実施形態を、以下の実施例によって更に説明する。しかし、特定の条件、処理順、材料、及びこれらの実施例に記載の量、並びに他の条件及び詳細は、過度にこの方法を限定するものと解釈されるべきではない。特に断らない限り、本開示内のすべての百分率及び比率は重量基準である。

以下の実施例は、上述した培養乳成分を用いて調製したプロセスチーズスライスと、培養乳成分を用いず、その代わりに、保存料としてソルビン酸を使用した対照試料の性能を説明する。試料は、一般に、様々な量の保存料及び/又は培養乳成分(示されている場合)、香料、着色料、ビタミン、ミネラル等を含み、水分が約46%、脂肪が約23%、塩が約1.2%、タンパク質が約18%であるプロセスチーズスライスとして調製した。

実施例1

プロセスチーズスライスを、329株から得た、固形分が28%の、本明細書に記載の培養乳成分を用いて調製し、噴霧乾燥された培養乳清を用いて調製したプロセスチーズスライスと比較した。噴霧乾燥された培養乳清は、固形分が約96%であり、本質的に脂肪を含まず、微量のタンパク質を含み、粉末状であった。商業噴霧乾燥培養乳清、及び、図1の方法に従い、329株を用いて製造された液状培養乳成分の両方をプロセスチーズに使用した。下記の表4は、市販の抗菌材料と比較した場合に、329株から得た培養乳成分を用いて調製したプロセスチーズが、顕著な抗菌活性を保持していたことを示している。この活性保持効果は、培養乳成分を6%加えたプロセスチーズ及び培養乳成分を8%加えたプロセスチーズの両方に見られた。これに関し、培養乳成分は、市販の微生物よりもはるかに優れた抗菌活性を保持するので、抗菌効果が長く持続し、又は、同じ効果に対してより低い用量を必要とし得る。

粉末から調製し、図2の方法に従って、液体の水と組み合わせ、全固形分を約20とした液状培養乳成分を調製し、他の比較を行った。この比較では、市販のナイシン源(Nisaplin、ダニスコ)及び噴霧乾燥した培養乳清粉末を、各プロセスチーズに含まれる本発明の培養乳成分で作られた類似のプロセスチーズと比較した。下記の表5に示すように、本開示による329株から作られた発酵乳成分の8%は、プロセスチーズスライスを使用した場合に、10日後に毒素(ボツリヌス菌)を検出しなかったが、市販の抗菌物質(Nisaplin又は噴霧乾燥した培養乳清のいずれか)を用いて調製した類似のプロセスチーズでは約7日及び10日に毒素が存在した。毒素チャレンジ研究は、Silliker研究所で行われた。所望であれば、毒素チャレンジ試験に対して他の従来の方法を使用することもできる。

実施例2

図3に示すように、風味比較をプロセスチーズスライスのサンプルについて行った。ソルビン酸を保存料として2%加え(「対照品」として識別)、又はソルビン酸を加えずに、本開示に従い329株を利用して調製した培養乳成分を約8%加え(「変形例8」として識別)、プロセスチーズ試料を調製し、訓練された官能パネルにより試食及び評価をした。図8(訓練されたパネルの口中での味覚を要約している)に示すように、本開示の培養乳成分を用いて調製されたプロセスチーズは、一般に、保存料としてソルビン酸を用いて調製したプロセスチーズと同様の味覚プロファイルを有していた。したがって、風味の観点からは、培養乳成分で保存料としてのソルビン酸を置換することが許容可能であると期待される。

実施例3

多数のプロセスチーズ試料を調製し、本願の329株から得られた培養乳成分を加え、又は加えずに調製したプロセスチーズスライスの融解プロファイルと比較した。サンプルは、約2%〜約8%の培養乳成分を含み、培養乳成分を含まない対照試料と比較した。脂肪、水分、タンパク質、及びチーズのpHは、全ての試験試料の間で比較的一定に(水分が約43〜約44%、pHが約5.7)に保持した。培養乳成分を含まない対照試料は、保存料として約0.18%のソルビン酸を含有し、又は、いくつかの例では、溶解物がソルビン酸の欠如によるものであることを除外するためにソルビン酸を含まなかった。この例では、培養乳成分を用いて作られた試料は、溶解直径が増加した。他の例ではこれは生じなかった。このことを、以下の表6、7及び8に日付により示す。

各試験試料は、互いに積み重ねられた3枚の円形のプロセスチーズスライスを含んでいた。試料を二重鍋の上に配置し、中火の沸騰水で4分間加熱した。図4A〜D、図5A〜Cに示すように、培養乳成分を用いて調製された試料は、培養乳成分を含まない対照試料と比較して、溶解した際の表面積が増大した。図5Cに示すように、対照チーズの溶解直径は約1.125インチ(約2.86cm)であったが、約6%の培養乳成分を有する本発明の試料は約1.6〜約1.45インチ(約4〜約3.68cm)であった。これらの図では、対照試料は「C」と標識付けされており、本発明の試料は、I2、I4、I6、I8と標識付けされており、これらの標識は、329株を用いて作られた培養乳成分が、約2%、4%、6%又は8%のいずれかであることを表している。

表面積の測定は、試料の融解プロファイルを測定するために完了した。以下の表6,7、及び8は、図4A〜D及び5A〜Cに示したものに対応する試料の一部に対して、Image Jソフトウェア(パブリックドメインで、Javaベースの画像処理プログラム、国立衛生研究所)を用いて算出した表面積を示している。表に示すように、プロセスチーズ中の含量が4%、6%及び8%の本願の培養乳成分を用いて調製したプロセスチーズ試料はすべて、培養乳成分を含まない対照品と比較して、溶解時の表面積が増加した。一般に、消費者は、培養乳成分を含む試料に示されるような、溶解性が増加したプロセスチーズを好む。

上記のデータに基づいて、本発明の培養乳成分を含む試料は、培養乳成分を含まない対照試料よりも円形溶解が広くなった。

実施例4

図6〜9は、329株を用いて、本願の方法によって作られた培養乳成分を用いて作ったプロセスチーズスライスと、培養乳成分を含まないプロセスチーズスライス(対照品)との間の、硬さ及び粘稠度の比較を示す。この例では、固形、タンパク質、脂肪、及び水分は、試験したすべての試料にわたって比較的一定に保たれた。培養乳成分を含まない試料は、保存料として0.18%のソルビン酸を含んでおり、いくつかの例では、硬さがソルビン酸の欠如によるものである可能性を排除するために、ソルビン酸又はいかなる保存料も含んでいなかった。この例では、培養乳成分を含む試料のみで、硬さと粘稠度が増加した。

図6及び8に示すように、培養乳成分を有するプロセスチーズは、培養乳成分を用いずに作った対照試料と比較して、硬さ(すなわち、ヤング率)が増加した。一般に、この硬さの増加は、消費者に対して、よりナチュラルチーズ組成物を示唆している。また、引張弾性率としても知られているヤング率は、材料の剛性の尺度でもある。プロセスチーズにおいては、ヤング率は、チーズスライスの初期接触の指標である。この例のおいては、初期接触とは、指又は手で触れたときに、チーズが与える抵抗を意味する。これは、硬さの知覚の他の指標である。ヤング率は、既知の重みが適用される際の、積み重ねたチーズスライスを貫通するのに必要な力の量を測定する、テクスチャ分析器(テクスチャ・テクノロジーズ社)を用いたテクスチャ・プロファイル分析(MTPa)を用いて測定した。この試験では、10枚の約21gのチーズスライスを互いに積み重ねる。一般に、ヤング率は、引張応力を、材料中の引張歪で除することにより算出されるものであり、初期フック領域内での歪(変形)に対する応力(負荷)の割合を表している。これは、典型的には、外部負荷に対して試料がどの程度剛性がある又は硬いか表す。さらに、より高い粘稠度を有する製品は、より歯ごたえのある知覚を提供する。

また、図7及び9は、MPTAテスト中に力を適用して、チーズが流れている間の硬さを介した、プロセスチーズサンプルの粘稠度を示す。一般に、流れの中のこの硬さの増加も、消費者に、よりナチュラルチーズ組成物を示唆する。本明細書で使用される、粘稠度は、一般に、流れ又は流れに対する抵抗の間の硬度に関係している。プロセスチーズにおいては、粘稠度値が高いほど、チーズは、消費者にとって望ましい特性と一般に考えられている、口内での崩壊速度がより遅くなる。

以上のように、本開示の培養乳成分を用いて調製し、329株から作られたプロセスチーズ組成物は、改善はしないとしても、少なくとも同等の抗菌性及び保存機能を提供することが可能である。また、予想外に、これらの培養乳成分を用いて調製したプロセスチーズは、溶解性が改善すると同時に、硬さが増すことが見出された。一般に、チーズの溶解性が増加すると、硬さは低下すると従来は考えられていた。329株により培養乳成分中に生成される物質が、予想外に、チーズの両方の特性を改善するのに役立っていると考えられる。

実施例5

3倍乳(pH5.46)を、培養乳成分の発酵のための液体培地として使用した。3倍乳の試料を、ラクトコッカス・ラクティス329株の接種前に採取した。培養乳成分を、図1の方法に従い、約21時間の発酵で調製した。さらなる試料を、発酵後(pH5.46)に採取した。次いで、α−マンノピラノシル残基及びα−グルコピラノシル残基に選択的に結合するコンカナバリンAの複合体Alexa Fluor(登録商標)488を用いて染色し、発酵中にエキソポリサッカライドが産生されたかどうかを判定した。コンカナバリンA Alexa Fluor488をpH6.8で0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、乳清液でpH6に希釈した。染色溶液の液滴を、チャンバーを有するスライドガラス上の試料に適用し、25℃で30分間放置した。次いで、スライドガラスをカバーガラスで覆い、495nm(励起)及び519nm(発光)波長で、20倍対物レンズのライカSP5共焦点走査型レーザー顕微鏡(CSLM)で観察した。図15A及び15Bに示すように(スケールバーは25μm)、エキソポリサッカライド(EPS)は、発酵した試料中に観察されたが、329株摂取前の3倍乳出発材料では観察されなかった。EPSは、大きな凝集塊として観察された。

前述の説明及び添付の図面に記載の事項は、単なる例示であり、限定ではない。特定の実施形態を示し、説明してきたが、変更及び修正が、出願人の寄与する広い態様から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。求められる保護の実際の範囲は、従来技術に基づいて適切な観点で見た場合に、以下の特許請求の範囲で定義されることが意図される。

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