Production and use of bacterial histamine

申请号 JP2014520684 申请日 2012-07-20 公开(公告)号 JP2014520559A 公开(公告)日 2014-08-25
申请人 バイオガイア・エイビーBiogaia AB; 发明人 ヴァーサロヴィック、ジェイムズ; ミシェル トーマス、カリッサ; コノリー、エイモン;
摘要 ヒスタミンを産生する特定のプロバイオティック乳酸菌を選択する方法、及び哺乳動物にとって有益な効果のためのこのような株の使用が提供される。 特に、本発明は、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための乳酸菌株を選択する方法であって、細菌を活性ヒスチジンオペロンの存在についてスクリーニングするステップと、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能な株を選択するステップとを含む方法に関する。 前記株を、250pg/mlを超えるレベルでヒスタミンを産生するその能 力 について選択することが好ましい。 本発明は、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための、特に 炎症 状態の処置又は予防での使用のための、本発明の選択法により得ることが可能な株を含む生成物をさらに提供する。
权利要求
  • 哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための乳酸菌株を選択する方法であって、細菌を活性ヒスチジンオペロンの存在についてスクリーニングするステップと、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能な株を選択するステップとを含む上記方法。
  • 前記株を、250pg/mlを超えるレベルでヒスタミンを産生するその能力について選択する、請求項1に記載の方法。
  • 前記株が、ラクトバチルス・ロイテリ(lactobacillus reuteri)である、請求項1又は2に記載の方法。
  • 哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための、請求項1から3までのいずれか一項に記載の選択法により得ることが可能な乳酸菌株の細胞を含む生成物であって、前記乳酸菌株が、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能である上記生成物。
  • 前記哺乳動物がヒトである、請求項4に記載の使用のための生成物。
  • ヒスタミンの局所的産生が、前記哺乳動物のGI管、GU管、口腔、肺、気道、又は皮膚においてなされる、請求項4又は請求項5に記載の使用のための生成物。
  • 前記使用が、炎症状態の処置及び/又は予防においてなされる、請求項4から6までのいずれか一項に記載の使用のための生成物。
  • 炎症状態が、大腸炎、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、憩室症、歯肉炎、及び膣炎からなる群から選択される、請求項7に記載の使用のための生成物。
  • 前記株が、ラクトバチルス・ロイテリ(lactobacillus reuteri)である、請求項4から8までのいずれか一項に記載の使用のための生成物。
  • 前記株が、ラクトバチルス・ロイテリ(lactobacillus reuteri)6475である、請求項9に記載の使用のための生成物。
  • 前記使用が、少なくとも1つのさらなる治療剤又は栄養剤の投与をさらに含む、請求項4から10までのいずれか一項に記載の使用のための生成物。
  • 前記さらなる薬剤が、ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体、前記株によるヒスタミンの産生を支援する適切な炭素供給源、又はこれらの組合せを含む、請求項11に記載の使用のための生成物。
  • (i)活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の選択法により得ることが可能な乳酸菌株と、
    (ii)前記株によるヒスタミンの産生を支援する適切な炭素供給源、ヒスチジン又はヒスチジン類似体の供給源、及びこれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つの付加的な成分とを含む組成物。
  • 前記ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体が、ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体を含有する食品又は栄養補助食品の形態にあるか、又は前記炭素供給源が、グルコースを含む、請求項12に記載の使用のための生成物、又は請求項13に記載の組成物。
  • 说明书全文

    本発明は、ヒスタミンを産生する特定のプロバイオティック乳酸菌を選択する方法、及び宿主にとって有益な効果を送達するためのこのような株の使用に関する。

    国連の食糧農業機関は、プロバイオティクスを、「適量で投与されると宿主に健康利益を付与する生きた生物」と定義している。 今日、いくつかの異なる細菌、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属菌株及びビフィズス菌株などの乳酸産生菌が、プロバイオティクスとして用いられている。

    乳酸産生菌は、ヒト又は動物の健康に対するそれらの有益な効果のために用いられるだけでなく、発酵工程のために、食品業界においてもまた広く用いられている。 プロバイオティクスの有効性は、株特異的であり、各株は、異なる機構を介して宿主の健康に寄与しうる。 プロバイオティクスは、病原菌の増殖を防止又は阻害することも可能であり、病原菌による病原性因子の産生を抑制することも可能であり、炎症促進性の様式又は抗炎症性の様式で免疫反応を調節することも可能である。 プロバイオティック乳酸産生菌であるラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)の異なる株の使用は、乳児疝痛の改善、湿疹の緩和、労働疾病のエピソードの軽減、及びピロリ菌(Helicobacter pylori)感染の抑制に有望な療法である。 L. ロイテリ(L.reuteri)は、ヒト消化管の常在生物と考えられており、例えば、胃体、胃前庭部、十二指腸、及び回腸の粘膜に存在する。 例えば、米国特許第5,439,678号、同第5,458,875号、同第5,534,253号、同第5,837,238号、及び同第5,849,289号を参照されたい。

    L. ロイテリ細胞は、グリセロールの存在下、嫌気条件下で増殖させると、ロイテリン(β−ヒドロキシプロピオンアルデヒド)として知られる抗微生物物質を産生する。

    宿主とその微生物との間の関係は複雑であり、一部の細菌については、この宿主:微生物関係が、多年にわたる共進化を通じて発生してきた。 これはとりわけ、ラクトバチルス・ロイテリについて成り立つと考えられる。 消化管微生物とヒト宿主との間の相互関係についてのわれわれの知識はその幼年期にあるが、消化管の微生物叢が、消化管及び免疫系の発生、栄養摂取において不可欠の役割を果たしており、消化管の微生物叢と脳との間では、新たな連関が確立されつつあることが既に鋭く意識されている。 正常な消化管の微生物叢の攪乱である腸内毒素症は、炎症性腸疾患(IBD)及び過敏性腸症候群(IBS)など、局所的な消化管環境に影響を及ぼす疾患過程、並びにメタボリック症候群など、消化管に対して遠位の部位における疾患過程を含め、広範にわたる疾患過程に関与している。 消化管の微生物叢内には、大きな治療的可能性が存在し、異なる疾患過程を防止及び/又は処置するために、微生物コミュニティーを変化させる将来の目標に向かって探求が重ねられている。

    したがって、最も適切なプロバイオティック株を選択し、これらを用いて、このような発症に対抗しうるように、宿主の健康に影響を及ぼす特定の疾患又は他の状況と関連する、微生物とヒトとの間のこのような特定の相互作用を理解することが必要とされている。

    本明細書における本発明は、哺乳動物、とりわけ、ヒトにおいてヒスタミンを局所的に産生させる特定の方法を提供し、ヒスタミンの局所的産生には、ある特定の乳酸菌株を選択することによる、哺乳動物の体内のGI管、尿生殖器(GU)管、口腔及び気道、皮膚などにおける産生が含まれるがこれらに限定されない。 細菌は、ある特定のアミノ酸及び/又は糖と併せて送達する場合もあり、別個に投与する場合もあり、活性部位に既に存在する場合もある。

    本発明の主要目的は、哺乳動物の体内のGI管、GU管、口腔、肺及び気道、皮膚などを含めた多様な部位においてヒスタミンを局所的に産生しうる株を選択することである。

    前記株を含有する生成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。

    細菌の投与を、ヒスチジン、又はヒスチジンを含有する食物若しくは組成物の投与と組み合わせて、ヒスタミンの局所的生成を確保することが、本発明のさらなる目的である。

    したがって、本発明は、プロバイオティクスとして有用な乳酸菌細胞及び治療において有用な乳酸菌細胞を選択するための新たな方法に関する。 この新たな方法は、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能な乳酸菌株についてのスクリーニング及び選択を伴う。 驚くべきことに、本方法により選択された乳酸菌株は、プロバイオティクスとして有用であり、治療においても有用であり、特に、ヒスタミンの局所的産生を介して抗炎症効果をもたらすのに有用である。 本明細書の別の箇所で論じる通り、かつては、健康に対する認知された危険性、例えば、潜在的な毒性作用のために、食品におけるヒスタミン産生菌の存在は能動的に回避されていたので、細菌のこれらの効果は驚くべきものである。 したがって、ヒスタミンの局所的産生が可能な乳酸菌の哺乳動物への投与、又は、活性ヒスチジンオペロン及びヒスタミンを産生する能の存在に基づく、ヒスタミンのこのような局所的産生能についての乳酸菌のスクリーニング及び選択は、この教示に対して実際直観に反する。 実際、プロバイオティクスがヒスタミンを産生すると報告されたことはかつてなかった。

    したがって、その最も広範な範囲において、本発明は、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための乳酸菌株を選択する方法であって、細菌を活性ヒスチジンオペロンの存在についてスクリーニングするステップと、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能な株を選択するステップとを含む方法を提供する。

    ヒスチジンオペロンは、3つの遺伝子(ヒスチジン/ヒスタミン対向輸送体遺伝子、ヒスチジンピルボイルデカルボキシラーゼA型(HdcA)遺伝子、及びヒスチジンピルボイルデカルボキシラーゼB型(HdcB)遺伝子)を含む。 これらの遺伝子の各々の活性が、本発明にとって重要であると考えられる。 したがって、本発明のスクリーニング法では、候補細菌を3つの遺伝子全ての存在について評価し、3つの遺伝子全てについて陽性の株を選択する。 任意の適切な方法は、3つの遺伝子全ての存在を検出するために用いることができ、例えば、PCRなどの遺伝学的方法を用いることができる。 良好なレベルのヒスタミンの産生はまた、3つの遺伝子全ての存在及び活性ヒスチジンオペロンの存在の指標でもありうる。 したがって、本発明の選択法はまた、ヒスタミン産生が可能な株を選択するステップも伴う。 ヒスタミンの産生レベルが高い株が好ましい。 したがって、好ましい実施形態では、株を、200pg/mlを超えるレベルで、好ましくは250pg/mlを超えるレベルで、又はより好ましくは300pg/ml超えるレベルで、例えば、350、400、450、又は500pg/mlを超えるレベルでヒスタミンを産生するその能力について選択する。 このような値は一般に、培養物中の株の上清中で測定されるヒスタミンの値を指す。

    当業者には、ヒスタミン産生のレベルを測定する適切な方法がよく知られているであろう。 本明細書では、質量分析法、より具体的には、3連の四重極質量分析が例示され、好ましい。 しかし、同様に、ELISA又はイムノアッセイも、ヒスタミンの産生を評価し、定量化するのに用いることができる。 したがって、本発明の一部の実施形態では、選択法が、候補株により産生されるヒスタミンの量又はレベルを検出するステップを伴うであろう。 本発明の方法により選択される株の、下流における使用のために、ヒスタミン産生株を選択又は分離した後、他の実施形態は、このような株を培養するか若しくは増殖させるか、又はおそらく、このような株を将来の使用のために保存するさらなるステップを伴うであろう。

    このようなさらなるステップ(そして、実際、本発明の方法の選択ステップ)は一般に、ヒスタミンの産生を支援する適切な培養培地中で実行することが必要である。 好ましい培養培地は、前記株によるヒスタミンの産生を支援する適切な炭素供給源を含有する。 特に好ましい実施形態では、培地が、グルコースを炭素供給源として含み、好ましくはスクロースを含有しないか、又はスクロースを、少なくとも株によるヒスタミンの産生をそれほどは損なわないレベルに限り含むであろう。 また、ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体も、場合によって、他のアミノ酸の供給源と併せて供給することができる。

    好ましい実施形態では、前記株は、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)の株である。

    本発明の方法を用いて適切な株が選択されたら、次いで、この株を、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生のために用いることができる。 したがって、前記株はまた、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生も可能でなければならない。

    したがって、本発明のさらなる態様は、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための、本発明の選択法により得ることが可能な乳酸菌株の細胞を含む生成物であって、前記乳酸菌株が、活性のヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能である生成物を提供する。 本明細書の別の箇所で概括される通り、好ましい使用は、炎症状態の処置及び/若しくは予防、又は局所的なヒスタミンの産生から利益を得る状態若しくは疾患の処置及び/若しくは予防においてなされる。 例えば、このようなヒスタミンの局所的産生は、抗炎症効果を結果としてもたらしうる。

    本発明の代替的な実施形態は、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のためのヒスタミンの産生が可能な乳酸菌株であって、活性ヒスチジンオペロンを有する乳酸菌株を提供する。 この株の好ましい特色及びその使用については、本明細書の別の箇所で記載される。

    また、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生のための処置方法であって、本発明の選択法により得ることが可能な乳酸菌株の細胞を含む生成物の、前記哺乳動物への、前記哺乳動物においてヒスタミンの局所的産生を可能とするのに有効な量での投与、又は活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能な乳酸菌株の、前記哺乳動物への、前記哺乳動物においてヒスタミンの局所的産生を可能とするのに有効な量での投与を含む方法も提供される。 この株の好ましい特色及びその治療的使用については、本明細書の別の箇所で記載される。

    本発明ではまた、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための組成物又は医薬の製造における、本発明の選択法により得ることが可能な乳酸菌株の細胞を含む生成物の使用であって、前記乳酸菌株が、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能である使用も提供される。 代替的な実施形態は、哺乳動物におけるヒスタミンの局所的産生での使用のための組成物又は医薬の製造における、活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能な乳酸菌株の使用を提供する。 この株の好ましい特色及びその治療的使用については、本明細書の別の箇所で記載される。

    HILIC−HPLC画分内のヒスタミンの定量化を示す図である。 3連の四重極質量分析を用いて、HILIC−HPLC画分の選り抜きの範囲内に存在するヒスタミンを定量化した。 TNF阻害性画分は、全ての被験画分中で最高量のヒスタミンを有した。

    精製ヒスタミン及びL. ロイテリ6475に由来するヒスタミンが、ヒスタミンH

    受容体を介してTNFの産生を阻害することを示す図である。 A. 精製ヒスタミンは、TNFの産生を著明に阻害したが、この効果は特異的H

    受容体アンタゴニストにより用量依存的に遮断される。 6475株から分泌された因子(ヒスタミンを含めた)を含有する条件付け培地(又は上清)は、TNFの産生を著明に阻害したが、この効果は特異的H

    受容体アンタゴニストにより部分的に遮断される。 N=3、

    培地対照と比較したp値<0.05、

    **ヒスタミンと比較したp値<0.05、

    *** ATCC 6475条件付け培地(CM)と比較したp値<0.05。

    精製ヒスタミン及びL. ロイテリ6475に由来するヒスタミンが、ヒスタミンH

    受容体を介してTNFの産生を阻害することを示す図である。 B. ヒスタミンを含有する、6475株に由来する細胞ペレット洗浄液が、TNFの産生を抑制し、この効果は特異的H

    受容体アンタゴニストにより部分的に遮断された。 比較的純粋なヒスタミンを含有する画分B3も、TNFの産生を阻害したが、この効果は特異的H

    受容体アンタゴニストにより完全に遮断された。 N=3、

    培地対照と比較したp値<0.05、

    ** ATCC 6475株細胞ペレット洗浄液(CP)と比較したp値<0.05、

    ***画分B3と比較したp値<0.05。

    ヒスチジンオペロンが、L. ロイテリ6475のTNF阻害性の表現型にとって重要であることを示す図である。 図3Aは、ヒスチジンオペロンが、ヒスチジン/ヒスタミン対向輸送体遺伝子、hdcA遺伝子、及びhdcB遺伝子という3つの遺伝子からなることを示す図である。 図3Bは、ヒスチジンオペロン内のいずれか1つの遺伝子における突然変異が、L. ロイテリ6475によるTNF抑制の部分的な喪失を結果としてもたらすことを示す図である。 N=9、

    培地対照と比較したp値<0.05、

    ** ATCC PTA 6475株と比較したp値<0.05。

    L. ロイテリ6475が、TNBS感作により誘導される体重減少を著明に軽減したことを示す図である。 図は、2つの独立する実験に由来するデータを表す(

    p<0.05、

    ** p<0.01、

    *** p<0.001)。

    L. ロイテリ6475が、TNBS感作により誘導される肉眼的結腸損傷を著明に減殺したことを示す図である。 図は、2つの独立する実験に由来するデータを表す(

    p<0.05、

    *** p<0.001)。

    L. ロイテリ6475が、TNBS感作により誘導されるSAA濃度を著明に低減したことを示す図である。 図は、2つの独立する実験に由来するデータを表す(

    p<0.05、

    *** p<0.001)。

    hdcA突然変異体が、大腸炎を緩和する能力を減殺したことを示す図である。 図は、2つの独立する実験に由来するデータを表す(

    p<0.05、

    ** p<0.01)。

    hdcA突然変異体が、大腸炎を緩和する能力を減殺したことを示す図である。 図は、2つの独立する実験に由来するデータを表す(

    p<0.01、

    ** p<0.001)。

    本発明者らは、本明細書において、ラクトバチルス・ロイテリのある特定の株を含め、選択された乳酸菌群が、特定の増殖条件下でヒスタミンを局所的に産生し、このような産生されたヒスタミンが、例えば、炎症の軽減、ある特定のがんの軽減などにより宿主に利益をもたらすことを見出した。

    ヒスタミン ヒスタミンとは、局所的免疫反応のほか、消化管における生理学的機能の調節、及び神経伝達物質としての作用を含め、哺乳動物の健康に関連する複数の過程に関与する有機窒素化合物である。 外来の病原菌に対する免疫反応の一部として、ヒスタミンは、好塩基球及びマスト細胞により産生される。 ヒスタミンは、酵素であるL−ヒスチジンデカルボキシラーゼにより触媒される反応である、アミノ酸ヒスチジンの脱カルボキシル化に由来しうる。

    細菌は、真核生物において見出されるヒスチジンデカルボキシラーゼ酵素とは非類縁のヒスチジンデカルボキシラーゼ酵素を用いて、ヒスタミン産生が可能である。 今日まで、このようなある特定の細菌株によるヒスタミンの産生は、ヒトにとって可能な利益ではなく、健康に対する危険性として見られてきた。 例えば、非感染性の食物媒介性疾患の形態であるサバ中毒は、腐敗した食物中、特に、魚類中の細菌によるヒスタミンの産生に起因する。 発酵食物及び発酵飲料は、発酵性細菌又は酵母によりなされた同様の転換に起因する少量のヒスタミンを天然で含有する。 上述の研究から予測されうる通り、選択された細菌からのある特定の制御された量のヒスタミンの送達は、驚くべきことに、有害な作用ではなく有益な効果をもたらす。

    ヒスタミン受容体は、それらの内因性リガンドとしてのヒスタミンを伴うGタンパク質共役受容体のクラスである。 H 受容体(H1R)、H 受容体(H2R)、H 受容体(H3R)、及びH 受容体(H4R)という、4つのヒスタミン受容体が知られている。

    Vannierら(「ヒスタミンは、ヒスタミンH 受容体を介して、腫瘍壊死因子αの遺伝子発現及び合成を抑制する(Histamine Supresses Gene Expression and Synthesis of Tumor Necrosis Factor α via Histamine H Receptors;J Exp Med.、1991年7月1日;174(1):281〜4)は、末梢血単核細胞におけるLPS誘導性のTNF−αの合成が、ヒスタミンにより抑制されることを示したが、マスト細胞からのヒスタミンの放出が、H 受容体保有細胞における局所的なサイトカインの合成を抑制することにより、炎症反応及び免疫反応の程度を制限しうることもさらに示唆している。

    ヒスタミンの抗炎症性活性は、ヒスタミンが、一過性の表面TNFR1の喪失、TNFR1シェディングの増大、及びTNFR1分子の、培養されたヒト内皮細胞内のゴルジ装置からの移動を引き起こすことを示す、Wangら(「ヒスタミンは、細胞表面及びゴルジ装置貯蔵プールからのTNF受容体のシェディングを刺激することにより、腫瘍壊死因子(TNF)のシグナル伝達をアンタゴナイズする(Histamine Antagonizes Tumor Necrosis Factor(TNF)Signaling by Stimulating TNF Receptor Shedding from the Cell Surface and Golgi Storage Pool)」;J.Biol.Chem.278(24):21751〜21760)により既に開示されている。 免疫障害マウスへと移植されたヒト皮膚へのヒスタミンの注射は、TNFR1のシェディングを引き起こし、TNFを媒介する内皮接着分子の誘導を減殺した。

    Vannierら及びWangらは、ヒスタミン産生菌株をプロバイオティクスとして用いることについても、抗炎症効果など、宿主にとってのある特定の健康利益を確保するために、どのようにして、これらの菌株を、それらのヒスタミン産生能に基づき選択するかについても言及しなかった。

    ヒスタミンジヒドロクロリドの医薬グレード形態であるCepleneは、急性骨髄性白血病(AML)と診断された患者における再発を防止するために用いられている。 Cepleneは、AMLの寛解後段階、すなわち、患者が初期の化学療法完了した時期に、低用量の免疫活性化サイトカインであるインターロイキン2(IL−2)と共に投与される。 研究は、Ceplene/IL−2が、白血病性細胞の、免疫を媒介する殺滅を誘導しうることを示した。 皮下注射である処置は、在宅の患者により、3週間のサイクルで、18カ月間にわたり施される。 Cepleneの副作用には、一過性の紅潮及び頭痛が含まれる。 患者が、必要な場合に、皮下注射の代わりに、局所的に産生されるヒスタミンを施されれば有利であろうが、この送達戦略は、細菌由来のヒスタミンを、本発明に従い選択される株を用いて、患者へと投与することにより達成することができる。

    グラム陰性菌が、例えば、不適切な温度の後の生の魚類及び食肉においてヒスタミンを形成し、グラム陽性菌が、チーズ、ソーセージ、味噌、醤油、ビール、及びワインなど、発酵食物のヒスタミンによる腐敗を引き起こすことは、既に知られている。 食物中のヒスタミン産生菌の同定は、困難であった。

    ラクトバチルス・ロイテリもまた、以前からヒスタミンの産生と関連づけられており、Casasら(「プロバイオティクス概念の検証:ラクトバチルス・ロイテリは、ヒト及び動物における疾患に対する広域スペクトルの防御を付与する(Validation of the Probiotic Concept:Lactobacillus reuteri Confers Broad−spectrum Protection against Disease in Humans and Animals)」;2000、ISSN 0891−060X)は、Straubら(Z Lebensm Unters Forsch(1995)201:79〜82)によるL. ロイテリの2つの株が、L−ヒスチジンからカルボキシル基を除去して、ヒスタミンを形成することが示されたことを報告し、食物を発酵させるためにこのような株を用いること、及びプロバイオティクスとしてこのような株を用いることに対して警告している。

    Tripら(「ピルボイル依存性ヒスチジンデカルボキシラーゼの成熟を触媒する新規の酵素であるHdcB(HdcB,a novel enzyme catalyzing maturation of pyruvoyl−dependent histidine decarboxylase)」;Molecular Microbiology(2011)79(4)、861〜871)は、ヒスタミン産生グラム陽性菌における、ヒスチジン脱カルボキシル化遺伝子座の3種類の遺伝子構成に言及している。 最大の群は、L. ヒルガルディー(L.hilgardii)0006、L. ブーフナー乳酸桿菌(L.buchneri)B301、L. ロイテリF275、及びT. ハロフィルス(T.halophilus)を含めた乳酸菌において見出される。 ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)0006は、Lucasら(「ラクトバチルス・ヒルガルディー 0006内の不安定性プラスミドにおいてコードされるヒスタミン産生経路(Histamine−Producing Pathway Encoded on an Unstable Plasmid in Lactobacillus hilgardii 0006)」;APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY、2005年3月、71巻、3号、1417〜1424ページ)により実施された研究において、ヒスタミンを産生することが示されており、さらに、ヒスタミンが、望ましくない細菌の増殖中に、複数の生成物内で出現する夾雑物であることも言われている。 Lucasらは、ワイン用乳酸菌のコレクションのスクリーニングを実施して、ワインのグラム陽性菌ヒスタミン産生経路に関与する遺伝子を同定した。

    ブーフナー乳酸桿菌(Lactobacillus buchneri)のヒスタミン産生株は、ヒスタミン中毒の発生に関与したスイス製チーズから分離されている(Summerら、「ヒスタミン産生ブーフナー乳酸桿菌の、食物中毒発生に関与したスイスチーズからの分離(Isolation of histamine−producing Lactobacillus buchneri from Swiss cheese implicated in a food poisoning outbreak)」;Applied and Environmental Microbiology(1985年)、50巻、4号、1094〜1096ページ)。

    Calles−Enriquezら(「ストレプトコッカス・サーモフィルスのヒスタミン生合成遺伝子のクラスターについての配列決定及び転写解析:hdcAの示差的発現に影響する因子(Sequencing and Transcriptional Analysis of the Streptococcus thermophiles Histamine Biosynthesis Gene Cluster:Factors That Affect Differential hdcA Expression)」;APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY、2010年9月、76巻、18号、6231〜6238ページ)は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)のヒスタミン産生株である、ヨーグルト及びある特定のチーズ品種を作製するために用いられる好熱性スターター菌について記載している。 Calles−Enriquezらは、ヒスチジンからカルボキシル基を除去する能力を伴う株が存在すれば、消費前の製造中又は保管中に産生されたヒスタミンを含有する生成物が結果としてもたらされうること、及び、このことが、発酵乳製品の製造においてヒスタミン陰性株だけを用いることの重要性の基礎であることもさらに示している。

    一部のラクトバチルス属が、ヒスタミンを産生しうることは既に知られているにせよ、ヒスタミンを産生する能力が、その宿主にとってのある特定の健康利益、例えば、ある特定のラクトバチルス属株の抗炎症特性を確保するための鍵となる因子であることは必ずしも知られてない。

    先行技術からは、これを、ある特定のラクトバチルス属のプロバイオティック株をスクリーニング及び選択するために用いうることも知られていないか又は明白でない。

    マスト細胞 マスト細胞(mast cell)(また、マスト細胞(mastocyte)及び肥満細胞としても知られている)とは、複数種類の組織の常在細胞であり、ヒスタミン及びヘパリンに富む多くの顆粒を含有する。 アレルギー及びアナフィラキシーにおけるそれらの役割で最もよく知られているが、マスト細胞はまた、例えば創傷の治癒及び病原菌に対する防護にも緊密に関与して、重要な防御的役割も果たしている。

    マスト細胞は、大半の組織、特徴的には、周囲血管及び周囲神経に存在し、とりわけ、皮膚、肺及び消化管の粘膜のほか、口腔、結膜、及び鼻腔など、外界と内部環境との間の境界付近において顕在する。

    アレルギー反応において、マスト細胞は、アレルゲンが、既にマスト細胞と会合しているIgEに結合するまで不活性を維持する。 他の膜活性化イベントは、その後の脱顆粒化のためにマスト細胞をプライミングする場合もあり、FceRIによるシグナル伝達と相乗的に作用する場合もある。 このような顆粒化に由来するヒスタミンは、後毛細管細静脈を拡張させ、その内皮を活性化させ、血管の透過性を増大させる。 ヒスタミンの放出は、局所的浮腫(腫脹)、温熱、赤み、及び他の炎症性細胞の放出部位への誘引をもたらす。 ヒスタミンの放出はまた、神経末端も刺激する(掻痒又は疼痛をもたらす)。 ヒスタミン放出の皮膚的徴候は、「発赤及び膨疹」反応である。 蚊に刺された直後の突起及び赤みは、この反応の好例であり、これは、アレルゲンによるマスト細胞の感作の数秒間後に生じる。 マスト細胞の他の生理学的活性は、それほどよく理解されてはいない。 いくつかの証拠が、マスト細胞は、生得免疫において極めて根本的な役割を果たしうる−マスト細胞は、広範にわたる重要なサイトカイン及びTNFαなど、他の炎症性メディエーターを産出することが可能であり、マスト細胞は、広範なクラスの病原菌を認識することに関与すると考えられる複数の「パターン認識受容体」を発現させ、マスト細胞を伴わないマウスは、多様な感染症に対する感受性がはるかに大きいと考えられることを示唆している。

    食物中の細菌性ヒスタミンの毒性、及び発酵生成物中のヒスタミン産生株を回避することが推奨されているという事実を考慮すると(Calles−Enriquezら、「ストレプトコッカス・サーモフィルスのヒスタミン生合成遺伝子のクラスターについての配列決定及び転写解析:hdcAの示差的発現に影響する因子(Sequencing and Transcriptional Analysis of the Streptococcus thermophiles Histamine Biosynthesis Gene Cluster:Factors That Affect Differential hdcA Expression)」;APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOOGY、2010年9月、76巻、18号、6231〜6238ページにおけるさらなる例を参照されたい)、ある特定の選択されたラクトバチルス属株を、多様な疾患の処置及び/又は予防におけるヒスタミンの局所的産生のために用いることが明白であると考えることはできない。

    マスト細胞など、ある特定の哺乳動物の固有の細胞型についてもそうであるように、宿主とその微生物との間の関係は複雑である。 この宿主−微生物関係は、多年にわたる共進化を通じて発生してきており、これには、微生物による多様な代謝物であって、宿主に栄養的利益、免疫的利益などをもたらし、特定の受容体又は他の過程の完全又は部分アンタゴニスト、アゴニスト、脱感作剤などとして作用しうる代謝物の産生が含まれる。 したがってまた、最も適切なプロバイオティック株を選択し、これらを用いて、このような発症に対抗しうるように、宿主の健康に影響を及ぼす特定の疾患又は他の状況と関連する、微生物とヒトとの間のこのような特定の相互作用を理解することも必要とされている。

    本明細書において、本発明者らは、ラクトバチルス・ロイテリのある特定の株を含め、選択された乳酸菌群が、特定の増殖条件下でヒスタミンを局所的に産生することを見出した。 そして、このような局所的に産生されるヒスタミンが、かつての考えとは異なり、炎症の軽減、ある特定のがんの軽減などを含め、複数の様式で宿主に利益をもたらすことも見出した。

    本発明の別の目的は、シンバイオティクスの生成物を得るために、前記株を含有する生成物を、特定の炭素供給源と併せて提供することである。

    他の目的及び利点は、以下の開示及び付属の特許請求の範囲からより完全に明らかとなるであろう。

    本方法に従い選択された乳酸菌株を、哺乳動物へと投与する結果として、複数の理由で有益でありうるヒスタミンが局所的に産生されるであろう。

    本発明の主要目的は、良好な抗炎症効果を確保する乳酸菌株を選択する方法を提供することである。 ヒスチジンオペロン及びヒスタミンの産生は、ある特定の乳酸菌の抗炎症能にとって不可欠であるので、これらの株が、炎症状態を処置及び/又は予防するために用いられれば好ましいであろう。 これらの株は、大腸炎、IBD、IBS、憩室症、歯肉炎、膣炎などが含まれるがこれらに限定されない、哺乳動物体内のGI管、GU管、口腔、肺及び気道、皮膚などにおける炎症性過程を処置及び/又は予防するために用いうることが好ましい。 H2受容体を介するヒスタミンは、TNF−アルファの遺伝子発現を低減しうることが既に知られている。 さらに、マスト細胞も、広範にわたる重要なサイトカイン及びTNF−アルファなど、他の炎症性メディエーターを産出することが可能である。 しかしこれまでのところ、ヒスチジンオペロン、及びこのような選択された株による局所的ヒスタミンの産生が宿主にとって有益でありえ、例えば、選択されたL. ロイテリ株の抗炎症能において鍵となる因子であることは知られていない。 これまでは、ヒスタミンを要請する処置において、本方法に従い選択されたL. ロイテリを用いることも知られていなかった。

    炎症状態を処置及び/又は予防するのに好ましい生成物及び株は、ラクトバチルス・ロイテリ、特に、ラクトバチルス・ロイテリ6475(ATCC PTA 6475)である。 本発明の他の実施形態では、用いられる株が、ラクトバチルス・ロイテリ6475(ATCC PTA 6475)ではなない。

    本明細書で規定される、本発明の株、生成物、及び組成物の治療的使用は一般に、関連する疾患又は疾患の症状の軽減又は緩和を結果としてもたらし、例えば、哺乳動物における炎症レベルの著明な軽減を結果としてもたらしうる。 例えば、局所的に産生されるヒスタミンは、腸の内皮細胞のほか、免疫細胞におけるH 受容体を活性化して、例えば、炎症促進性サイトカインの阻害を介して、宿主の粘膜免疫を抑制している可能性がある。 したがって、本発明は、活性部位における食物成分(ヒスチジン)のヒスタミンへの転換、及び宿主免疫反応(例えば、消化管における)の局所的調節を可能とする。 本発明により提供されるこのようなヒスタミンの局所的産生は、とりわけ、認知された毒性作用及び健康に対する危険性のために、このような経口摂取が推奨されていない事実を踏まえるなら、例えば、ヒスタミンの経口摂取又は他の投与形態を上回る現実的な利点をもたらしうることを見て取ることができる。

    特に、腸の炎症性疾患に関する場合、本発明の株、生成物、及び組成物の治療的使用は、例えば、ウォレススコアなどの標準的な方法により測定される潰瘍化及び腸の損傷(例えば、結腸損傷)の著明な軽減、体重減少の著明な低減、又は腸、例えば、結腸の炎症の著明な軽減を結果としてもたらし得る。

    このような疾患又はその症状の軽減又は緩和は、任意の適切なアッセイにより測定することができる。 疾患又は症状の軽減又は緩和は、好ましくは<0.05の確率値で、統計学的に有意であることが好ましい。 このような疾患又は症状の軽減又は緩和は一般に、適切な対照の個体又は集団、例えば、健常な哺乳動物若しくは未処置の哺乳動物又はプラセボで処置された哺乳動物と比較して決定される。

    株の適切な投与方式及び処方などは、ヒスタミンの局所的産生が所望される部位に応じて選択される。 好ましい投与方式は、経口投与方式であるが、一部の処置には、皮膚、直腸、膣、若しくは歯茎への局所投与の外用形態若しくは他の一部の形態が同様に適切であるか、又は静脈内注射若しくは筋内注射が適切であろう。

    本明細書の例は、大腸炎を処置するための本発明の株の使用及びそれらの適切な用量を明示するが、これは、本発明に従い処置しうる炎症状態の一例に過ぎず、本明細書で規定される、本発明の適切な用量の株、生成物、及び組成物は、処置される疾患、対象の投与方式及び処方に応じて選択しうることが察知されるであろう。

    ヒスチジンを含む食物混合物を用いて、ヒスチジンの存在を確保し、これにより、細菌の有効性を増大させることができる。 ヒスチジンは、単独で投与することもでき、細菌と併せて投与することもできる。

    細菌によるヒスチジンの供給を確保する1つの可能性は、ヒスチジンに富む食物であって、ダイズタンパク質、チーズ、鶏卵、鶏肉、及び豚肉が含まれるがこれらに限定されない食物を摂取することである。

    細菌中のヒスチジンオペロンは、pHが低いか又はエネルギー供給源を制限した条件下で増殖能を改善することが示されている(Calles−Enriquezら)が、ヒスチジンオペロンは、ある特定のL. ロイテリ株の抗炎症性の特色とは関連していない。

    本方法に従い選択される株を、がん治療において用いることが、本発明の別の目的である。 IL−2と組み合わせたヒスタミンは、AMLを処置するために用いられている。 本発明の株を用いることにより、IL−2と組み合わせてAMLを処置するために用いうるヒスタミンの局所的な産生が結果としてもたらされるであろう。

    本発明の別の目的は、選択された株を用いて、食物アレルギー、他のアレルギー反応、又は他の自己免疫疾患を軽減することである。 全身におけるヒスタミンの増大は、既に知られている通り、マスト細胞の顆粒化によるアレルギーの帰結である。 本発明に従い選択された株をレシピエントへと投与する場合、局所的に産生されるヒスタミンは、アレルギー又は他の自己免疫疾患を軽減する脱感作効果をもたらすであろう。

    また、ヒスタミン産生乳酸菌株を用いて、旅行者下痢の危険性を軽減することも本発明の目的である。 ヒスタミン遮断剤で処置された患者は、旅行者下痢を患う危険性を増大させるが、この危険性の増大は、本方法に従い選択される乳酸菌を投与することにより中和されうるであろう。

    本発明のさらに別の目的は、MSの処置において選択された株を用いることである。 ヒスタミンは、MSのための新たな処置を開発するのに重要な分子であることが提起されており、本発明に従い選択される株は、患者にヒスタミンをもたらすであろう。

    本発明のさらに別の目的は、ヒスタミン産生菌を、皮膚において利用可能なヒスチジン及びヒスチジン類似体を用いる、皮膚に対する抗炎症処置として用いることである。 ヒスチジンは、皮膚がUV照射を介して産生するウロカニン酸の基質であるので、ウロカニン酸は、皮膚に対する抗炎症特性を有する。

    このような選択された株を用いて、ERK1/2の活性化を阻害することが別の目的である。

    本発明の別の目的は、TNFアルファを阻害することである。

    本発明の別の目的は、炎症を、局所的に又は全身において軽減することである。

    本発明の別の目的は、ERK1/2を阻害することにより、シナプス小胞の開口放出を増強することである。

    本発明の別の目的は、ERK1/2を阻害することにより、ヒト胚性幹細胞の自己再生を促進することである。

    本発明の別の目的は、ERK1/2を阻害することにより、マクロファージABCA1の発現及びコレステロールの流出を誘導することである。

    本発明の別の目的は、ERK1/2を阻害することにより、心肥大及び心不全を軽減することである。

    本発明の別の目的は、白血病(例えば、AML)又は悪性黒色腫を含めたある特定のがんの増殖を軽減することである。 したがって、このようながんは、本発明の株、生成物、及び組成物を用いれば処置されうる好ましい疾患である。

    本発明の別の目的は、選択された株を用いて、ある特定の条件下において、例えば、GU管のCNSとの相互作用における神経伝達物質を産生させることであり、また、局所的疼痛時の神経シグナル伝達における神経伝達物質としてのヒスタミンを産生させることでもある。 この神経伝達物質としての役割は、腸の運動性に対する効果(便秘又は下痢を処置するための)、及び消化管における疼痛シグナル伝達へと拡張することができる。

    選択されたLABは、ヒスタミンを産生し、内臓の痛覚及び腸内神経系におけるシグナル伝達に影響するので、本発明の別の目的は、選択された株を、消化管−脳軸に影響を及ぼすために用いることである。 したがって、本発明を、局所的なヒスタミンの産生から利益を得る任意の疾患の処置及び/若しくは予防、又はヒスタミンの局所投与により処置しうる任意の疾患の処置及び/若しくは予防のために用いうることを見て取ることができる。

    前記株を含有する生成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。

    ヒスタミン産生株の特異的な刺激を介して効果を増強するシンバイオティクスの生成物を有するために、特定の炭素供給源と併せて、前記株を含有する生成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。

    ヒスチジン類似体又はヒスチジンを含有する生成物若しくは組成物を含め、ヒスチジンと併せて、前記株を含む生成物を提供することが、本発明のさらなる目的である。 このような混合物は、内容物を下部GI管において放出するための保護カプセルにより経口投与して、作用部位におけるヒスチジン及び細菌の両方の存続を確保することが好ましい。

    前記株の投与を、ヒスチジンに富む食餌と組み合わせることが、本発明のさらなる目的である。

    本発明のなおさらなる態様は、本明細書の別の箇所で規定される治療的使用であって、少なくとも1つのさらなる治療剤又は栄養剤の投与をさらに含む使用のための生成物を提供する。 このような実施形態では、さらなる治療剤が、対象の疾患の処置において有用な任意のさらなる薬剤であることが可能であり、例えば、さらなる抗炎症剤、又は、例えば、ケモカイン若しくはサイトカイン(例えば、IL−2)などの免疫療法剤である。

    好ましい実施形態では、前記さらなる薬剤が、ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体、細菌株によるヒスタミンの産生を支援する適切な炭素供給源、又はこれらの組合せを含む。

    前記さらなる薬剤は、本発明の株と併せて投与することもでき、個別に投与することもできる。 加えて、前記さらなる薬剤は、本発明の株と同時に投与することもでき、異なる時点において投与することもできる。 適切な投与レジーム及び投与回数は、さらなる対象の薬剤に応じて、当業者が容易に決定することができる。

    本発明はまた、
    (i)活性ヒスチジンオペロンを有し、ヒスタミン産生が可能である、本発明の選択法により得ることが可能な乳酸菌株(又は、本明細書で別段に規定される通り、ヒスタミンを産生することが可能な乳酸菌株)と、
    (ii)前記株によるヒスタミンの産生を支援する適切な炭素供給源、ヒスチジン又はヒスチジン類似体の供給源、及びこれらの組合せからなる群から選択される、少なくとも1つの付加的な成分とを含む組成物も提供する。

    本明細書で記載される本発明の生成物、組成物、及び使用では、前記ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体が、ヒスチジン若しくはヒスチジン類似体を含有する食品若しくは栄養補助食品の形態にあるか、又は前記炭素供給源が、グルコースを含むことが好ましい。 前記炭素供給源は、スクロースを含まないか、又はスクロースを、少なくとも株によるヒスタミンの産生をそれほどは損なわないレベルに限り含むことが好ましい。 場合によってまた、他のアミノ酸の供給源も提供されうる。

    代替的な実施形態では、(i)部で規定された株を、対象の疾患の処置において有用なさらなる成分、すなわち、さらなる治療剤、例えば、さらなる抗炎症剤、又は、例えば、ケモカイン若しくはサイトカイン(例えば、IL−2)などの免疫療法剤と組み合わせることができる。

    ラクトバチルス・ロイテリとは、天然ではヒト及び動物の消化管に棲息するヘテロ発酵性乳酸菌種である。 特定のプロバイオティックL. ロイテリ株が、ヒトTNFαの産生を強力に抑制するのに対し、他のプロバイオティックL. ロイテリ株は、ヒトTNFαの産生を増強する。

    本明細書の本発明は、活性化ヒト骨髄細胞に対するそれらの効果を顕示した、プロバイオティックL. ロイテリ6475株及び他の株の機構研究により可能となっている。 L. ロイテリの代謝物は、HILIC−HPLCを用いて分離し、ヒスタミンは、NMR分光分析及び質量分析により同定した。 3連の四重極MSによるヒスタミンの定量化は、グルコースベースの最小培地中で増殖させると、L. ロイテリ6475株が、比較的高濃度のヒスタミンを産生することを明らかにした。 以前のトランスクリプトミクス研究は、L. ロイテリヒスチジンオペロン内の2つの遺伝子が、6475株によるTNFの阻害において役割を果たしうることを示唆した。 これらの遺伝子を標的とする突然変異誘発は、ヒスチジン/ヒスタミン対向輸送体遺伝子、HdcA遺伝子、及びHdcB遺伝子という、各ヒスチジンオペロン内の遺伝子が、6475株のTNF阻害性の表現型にとって重要であることを明らかにした。 機構研究は、ヒスタミンが、H 受容体を介するがH 受容体は介さないシグナル伝達を介して、TNFを阻害していることを裏付けた。 H 受容体を介するシグナル伝達は、PKAを活性化させる細胞内cAMPを増大させる。 PKA活性は、ヒスタミンによるTNF抑制のために必要である。 ヒスタミンは、MEK−ERK MAPKシグナル伝達経路の活性化を遮断する。

    ヒスタミンは、アレルギー及びアナフィラキシーにおけるその炎症促進効果でよく知られているが、複数の研究は、ヒスタミンの抗炎症機能を裏付けている。 in vitro研究は、ヒスタミンが、LPSで刺激されたヒト単球及びヒトマクロファージからの、炎症促進性サイトカインであるIL−1、IL−12、及びTNFの産生を阻害することが可能であり、この効果は、H 受容体アンタゴニストにより拮抗されることを示した。 加えて、ヒスタミンは、H 受容体を介して、抗炎症性サイトカインであるIL−10の産生も刺激しうる。 H 受容体を介するシグナル伝達は、ヒト単球の表面におけるLPSの認識に関与する受容体である、CD14受容体の発現の減少を結果としてもたらす。 また、TNF受容体も、ヒスタミンにより影響される。 H 受容体を介するシグナル伝達は、TNFR1及びTNFR2の両方のシェディングを誘導する。 また、in vivo研究も、ヒスタミンについて抗炎症性の役割を明らかにしている。 特異的H 受容体アゴニストであるジマプリットによる処置は、内毒素ショック(LPS感作)及び肝炎(LPSにガラクトサミンを加えた感作)のマウスモデルにおける血漿TNFレベルを低減した。 ヒスタミンは、LPS誘導性の肝臓損傷マウスモデルにおいて防御的であり、これらの効果は、H 受容体ノックアウトマウスにおいて弱められた。 消化管では、ヒスタミンが、細菌感染に対して防御する一助となりうる。 パイエル板内のH 受容体を介するシグナル伝達は、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)による感染を防止する一助となる。

    ヒスタミンの効果は、標的細胞上におけるヒスタミン受容体の発現により決定することができる。 T細胞では、ヒスタミンの効果が、どのヒスタミン受容体が活性化されるのかに依存する。

    受容体を介するシグナル伝達により、ヒスタミンは、T 1型の応答を増強するが、H 受容体を介するT 1応答及びT 2応答はいずれも抑制する。 ヒト消化管におけるヒスタミン受容体の発現を観察する研究を実施した。 被験細胞型の多くは、複数のヒスタミン受容体を発現させた。 例えば、マクロファージを含めた免疫細胞は、H 受容体及びH 受容体を高度に発現させ、H 受容体の低度の発現を顕示した。 マスト細胞及びヒスタミンの増大は、IBSと関連する内臓の過敏性に関与した。 結腸粘膜の神経支配に近いマスト細胞の数及び活性の増大は、腹部痛覚の亢進を結果としてもたらしうる。 マスト細胞安定化剤であるケトチフェンによる研究は、IBSを伴う患者における疼痛閾値の上昇、IBS症状の減少を裏付けたが、直腸生検組織内のマスト細胞の数又は活性(ヒスタミン及びトリプターゼの放出により決定される)の変化は裏付けなかった。 IBSの改善におけるケトチフェンの効果は、マスト細胞を安定化させた結果ではなく、H 受容体アンタゴニストとしてのその他の役割に帰せられうるであろう。 H 受容体の活性化が、炎症促進性応答と関連するならば、ケトチフェンによるその活性の遮断は、マスト細胞又はL. ロイテリなどの消化管の微生物叢のいずれかにより産生されたヒスタミンが、H 受容体だけを介してシグナル伝達することを可能にする。 本発明者らが裏付けた通り、H 受容体を介するシグナル伝達は、TNFの産生を抑制することが可能であり、抗炎症効果を引き起こしうる。 このケトチフェン機構は、H1受容体アンタゴニストをL. ロイテリ株の一般的なプロバイオティクスの効果と組み合わせる新たな療法のために用いることができる。

    さらに、増殖培地の炭素の供給源を、グルコースからスクロースへと変化させることも、選択された株、例えば、L. ロイテリ6475株のTNF阻害性の表現型を抑制するのに十分である。 加えて、スクロースによる増殖条件に伴い、ヒスチジンオペロン内の3つの遺伝子全ての著明な下方調節も観察された。

    ヒスタミンの、選択されたプロバイオティックラクトバチルス属株により産生される抗炎症性化合物としての同定は、このような株についての治療的適用を決定する一助となるであろう。 機構研究は、THP−1細胞上におけるH 受容体のヒスタミンによる活性化と、ERK活性化の抑制とを連関させた。 ERKの活性化は、TNFの産生に加えて、多くの細胞機能に関与している。 ERKの活性化は、増殖、腫瘍形成、分化、及び細胞の生存に関与している。 結果は、L. ロイテリ6475などの選択された株について、ERK活性化の阻害を介して炎症、細胞増殖、及びアポトーシスを抑制することによる、がんに対する防御における役割を示唆する。 加えて、ヒスタミンは、既知の神経伝達物質でもある。 選択された株によるヒスタミンの産生は、腸内の神経系におけるシグナル伝達に影響を及ぼす可能性があることから、疼痛の知覚及び消化管の運動性に影響しうる。 作用部位におけるヒスタミンの産生を確保するためには、ヒスチジンを伴う細菌を供給することが有利でありうる。 ヒスチジンは、細菌と併せて投与することもでき、単独で投与することもでき、ヒスチジンに富む食餌も同様に、ヒスタミンの産生を増大させうる。

    本発明は、ある特定の乳酸菌株、このような株を選択する方法、及びこのような株を含む生成物を提供する。 細菌は、ヒスチジンオペロンについてのスクリーニングを用いて選択するが、驚くべきことに、活性ヒスチジンオペロンの存在は、乳酸菌株の免疫調節特性など、多様な有益な効果にとって不可欠であることが示されている。

    読者には、本発明の他の目的及び利点が明白となろうし、これらの目的及び利点は、本発明の範囲内にあることが意図される。

    以下の非限定的な例を参照しながら、本発明をさらに記載することにする。

    (例1)
    選択された乳酸菌によるヒスタミンの産生細菌株及び培養条件 本研究において用いられる全ての細菌株を、表1に記載する。 ラクトバチルス・ロイテリATCC PTA 6475とは、フィンランド人の母乳に由来する分離株(ATCC、Manassas、VA、USAから入手可能)である。 本開示の全体において、L. ロイテリ株であるATCC PTA 6475、ATCC 6475 JP577、ATCC 6475 1229、ATCC 6475 1230、及びATCC 6475 1231を、それぞれ、6475株、JP577株、1229株、1230株、及び1231株と称することにする。 L. ロイテリ株は、deMan培地、Rogosa培地、Sharpe培地(Difco、Franklin Lakes、NJ)中、嫌気条件下で16〜18時間にわたり培養し、2Lの半合成培地であるLDMIII(OD 600が0.1へと調整された)へと接種したが、これについては、既に記載されている。 炭素供給源は、グルコース、LDMIIIG又はスクロース、LDMIIISであった。 培養物は、10%のCO 、10%のH 、及び80%のN の混合物を供給された嫌気性のワークステーション(MACS MG−500;Microbiology International、Frederick、MD)内、37℃で24時間にわたり増殖させた。 異なる時点において試料を採取して、OD 600を測定することにより、増殖を追跡した。 定常期(24時間後)において、細胞を、2Lの培養物からペレット化させた(4000×gで10分間)。 細胞ペレット及び細菌細胞を含まない上清を、−20℃で保存してから、HPLCによる分離及びTNF阻害バイオアッセイにおける試験のためにさらに処理した。

    細胞系及び試薬 37℃、5%のCO 、RPMI(ATCC)及び熱不活化ウシ胎仔血清(Invitrogen、Carlsbad、CA)中で維持されたTHP−1細胞(ヒト単球様細胞系;ATCC、Manassas、VA)により、in vitro実験を実施した。 MEK1/2抗体、ホスホ−MEK1/2抗体、ERK1/2抗体、及びホスホ−ERK1/2抗体、並びにMEK阻害剤であるU0126は、Cell Signaling Technology(Danvers、MA)から入手し、β−アクチン抗体は、Abcam(Cambridge、MA)から入手した。 他の全ての試薬は、別段に言明されない限り、Sigma(St.Louis、MO)から入手した。

    HILIC−HPLCによる細胞壁会合因子の分離 LDMIIIG又はLDMIIIS中で増殖させた6475株に由来する細胞ペレット(7g)を、氷冷した50%のアセトニトリル/0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)30mLで洗浄した。 細胞懸濁液を、4℃、4000×gで10分間にわたり遠心分離した。 上清は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜によるフィルター(0.45μmの小孔サイズ;Millipore、Bedford、MA)を介して濾過し、凍結乾燥させ、0.1%のギ酸10mL中に再懸濁させた。 再懸濁させた試料は、ultracel−3膜(Millipore、Bedford、MA)を用いる、Amicon Ultra−15遠心分離フィルターユニットで、サイズにより画分化した。 濾過物(9mL)を、高速真空化装置により乾燥させて1mLまで減量し、0.75mLを、HILIC−HPLCのために用いた。 試料を、100%のアセトニトリルで溶解させてから、100〜0%のアセトニトリルによる勾配、0.1%のギ酸と共にPolyLC Hydroxyethylカラム上を流過させた。 試料を、チューブ1本当たり10mL/分で25分間にわたり流過させ、25の画分(A1〜C1)を回収した。 各画分に由来する3ミリリットルずつを凍結乾燥させ、3mLの0.1%の酢酸中に再懸濁させ、TNF阻害バイオアッセイにおける試験のために再度凍結乾燥させた。

    TNF阻害バイオアッセイ及びTNF ELISA
    24時間にわたるLDMIIIによる培養物からの細菌の上清(10mL)を、上記の通りに、PVDF膜によるフィルター(0.22μmの小孔サイズ、Millipore)を用いてフィルター滅菌し、サイズにより画分化した。 <3kDaの濾過物1ミリリットルを、高速真空化装置により乾燥させて、RPMI培地中に再懸濁させた。 これらの加工された上清試料を、条件付け培地と称する。 全ての上清は、容量により、OD 600 =1.0へと標準化した。 HILIC−HPLCによる分離に由来する凍結乾燥画分は、10mg/mLの重炭酸アンモニウム400μL中に再懸濁させ、高速真空化装置により乾燥させて、400μLのRPMI培地中に再懸濁させた。 条件付け培地及び細胞ペレット洗浄液画分を、単球様細胞においてTNFの産生を調節するそれらの能力について調べた。 略述すると、既に記載されている通りに、100ng/mLのPam Cys−SKKKK×3HCl(EMC Microcollections、Tuebingen、Germany)を添加することにより、THP−1細胞(約5×10 個の細胞)を刺激してTNFを産生させた。 阻害剤(H 受容体アンタゴニストであるラニチジン及びシメチジン(10 −4 〜10 −6 M)、H 受容体アンタゴニストであるインドメタシン(10 −5 〜10 −6 M)、MEK阻害剤であるU0126(10μM)、及びPKA阻害剤であるH89(N−[2−(p−ブロモシナミルアミノ)エチル]−5−イソキノリンスルホンアミドジヒドロクロリド)(10 −5 M))を、THP−1細胞へと添加した後、L. ロイテリ条件付け培地若しくは細胞ペレット洗浄液画分(5%v/v)、ヒスタミン(10 −5 M)、又はジブチリルcAMP(10 −3 〜10 −7 M)を添加した。 プレートは、37℃及び5%のCO で3.5時間にわたりインキュベートした。 THP−1細胞をペレット化させ(3000×g、5分間、4℃)、製造元(R&D Systems、Minneapolis、MN)の指示書に従い定量的ELISAを用いて、THP−1細胞上清中のTNF量を決定した。

    性相互作用液体クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィー(HILIC−HPLC)を用いて、L. ロイテリ6475 TNF阻害性化合物(単数又は複数)を分離した 細菌の細胞ペレットを洗浄して、細胞表面と弱く会合する化合物を除去した。 細胞ペレット洗浄液の成分を、HILIC−HPLCを用いて、疎水性に基づき分離し、結果として得られる25の画分を、TNF阻害性化合物の保持について調べた。 唯一の炭素供給源としてのグルコースを伴う最小培地中で増殖させたL. ロイテリ6475は、3つの別個のHILIC−HPLC画分(B3、B5、及びB6;データは示さない)中に保持されたTNF阻害因子を産生する。 スクロースを唯一の炭素供給源として増殖させたL. ロイテリ6475は、TNF阻害性の表現型を喪失し、陰性対照として用いられた。 6475株スクロース細胞ペレット洗浄液に由来するHILIC−HPLC画分のうちのいずれも、著明なTNFの阻害を顕示しなかった(データは示さない)。

    ヒスタミンは、TNF阻害性のHILIC−HPLC画分内で、NMR分光分析及び質量分析により同定した TNF阻害性のHILIC−HPLC画分B3を H NMRにより解析し、近傍の非TNF阻害性の画分B4と比較した。 画分B3中では、7.0〜7.5ppmの間で化学シフトを伴う固有の一連のピークであって、芳香族化合物に特徴的なピークが観察されたが、画分B4中では観察されなかった(データは示さない)。 この芳香族化合物クラスターを、その成分を同定するために、異核種単一量子コヒーレンス(HSQC)二次元(2D)NMRでさらに解析した。 これらの芳香族化合物は、トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスタミン、及び同定不可能であった1つの化合物からなった。 トリプトファン及びフェニルアラニンが細菌増殖培地の成分であるのに対し、ヒスタミンは、細菌増殖培地の成分ではない。 これらの結果は、付加的な2D NMR法である全相関分光法(TOCSY)を用いて確認した。 ヒスタミンとは、乳酸菌を含めた一部の発酵性細菌により、ヒスチジンデカルボキシラーゼを介してヒスチジンから産生される生体アミンである。 ヒスタミンはまた、エレクトロスプレー飛行時間質量分析(ESI TOF MS)を用いて、画分B3内でも同定した。 ヒスタミンは、MS/MS解析におけるそのフラグメンテーションパターンに基づき、共有結合的には修飾されない。 スクロース培地中で増殖させたL. ロイテリ6475の対応するB3画分についてのESI TOF MSによる解析は、ヒスタミンを明示しなかった。 グルコース培地中で増殖させたL. ロイテリ6475は、TNF阻害性のHILIC−HPLC画分中に存在するヒスタミンを産生する。

    ヒスタミンは、選り抜きのHILIC−HPLC画分中で、3連の四重極質量分析を用いて定量化した 3連の四重極質量分析とは、低分子化合物を定量化する、確立された高感度の方法である。 ヒスタミンは、L. ロイテリ6475グルコース(B2−B7)及びL. ロイテリ6475スクロース(B2−B9)のほか、細菌の培養物上清に由来する、HILIC−HPLC画分の選り抜きの範囲内で定量化した。 高レベルのヒスタミン(>300ng/mL)は、HILIC−HPLC画分がTNFを阻害する能力と相関した(図1)。 低レベルのヒスタミンは、6475スクロースに由来する画分を含め、大半の被験画分内で測定された(図1)。 TNFの産生を阻害するヒスタミンの能力は、濃度依存性であると考えられる。

    合成ヒスタミン及びL. ロイテリ6475により産生されるヒスタミンは、TNFの産生を、H 受容体を介して阻害する ヒスタミンは、TLR2で活性化されたヒト単球様細胞(THP−1)からのTNFの産生を著明に阻害しうる(図4A)。 ヒスタミンは、4つの異なるヒスタミン受容体を介してシグナル伝達しうるが、単球様細胞は、高レベルのH 及びH 受容体だけを発現させる。 先行研究では、ヒスタミンのTNFの産生に対する、H 受容体を介する効果が示されている。 H 受容体特異的アンタゴニスト及びH 受容体特異的アンタゴニストを用いて、どの受容体が、ヒスタミンのTHP−1細胞に対する効果を媒介しているのかを決定した。 H 受容体特異的アンタゴニストであるラニチジン及びシメチジンは、ヒスタミンによるTNF阻害を、濃度依存的に遮断することが可能であった(図2A)。 H 受容体特異的抗体によるフローサイトメトリー解析は、THP−1細胞が、H 受容体を高度に発現させることを明らかにした(データは示さない)。 H 受容体特異的アンタゴニストであるインドメタシンは、ヒスタミンによるTNF阻害に対して効果を及ぼさなかった(図2A)。 ヒスタミンは、TLR2で活性化されたTHP−1細胞からのTNFの産生を、H 受容体を介するシグナル伝達を介して遮断する。 ヒスタミンを含有するL. ロイテリ6475条件付け培地は、TNFを、培地対照と比較して著明に阻害し、この効果は、H 受容体アンタゴニストにより部分的に遮断されるが、H 受容体アンタゴニストによっては遮断されない(図2A)。 TNF抑制の部分的な遮断は、6475条件付け培地中に存在するヒスタミンが、H 受容体を介してシグナル伝達していることを示すが、また、代替的な機構を介して作用する他のTNF阻害因子が条件付け培地中に存在しうることも示す。 また、6475株のヒスタミンを含有する細胞ペレット洗浄液も、TNFの産生を抑制する(図2B)。 6475条件付け培地について見た通り、H 受容体アンタゴニストが、6475細胞ペレット洗浄液の効果を部分的に遮断する(図2B)ことから、複数のイムノモジュリンが、画分化されていない細胞ペレット洗浄液中に存在することが示唆される。 高量の精製ヒスタミンを含有するTNF阻害性画分B3の効果は、H 受容体アンタゴニストを添加することにより完全に遮断された。 (図2B)。

    (例2)
    ヒスタミンを産生する株の選択ヒスタミン産生菌の同定/選択 被験株及びおそらく選択される株は、嫌気条件下のdeMan培地、Rogosa培地、Sharpe培地(Difco、Franklin Lakes、NJ)中で16〜18時間にわたり培養し、2Lの半合成培地であるLDMIII(OD 600が0.1へと調整された)へと接種した。 炭素供給源は、LDMIIIGがグルコースであった。 各培養物は、10%のCO 、10%のH 、及び80%のN の混合物を供給された嫌気性のワークステーション(MACS MG−500;Microbiology International、Frederick、MD)内、37℃で24時間にわたり増殖させた。 異なる時点において試料を採取して、OD 600を測定することにより、増殖を追跡した。 定常期(24時間後)において、細胞を、リアルタイムPCRを用いて、ヒスチジン/ヒスタミン対向輸送体遺伝子、HdcA遺伝子、及びHdcB遺伝子という3つの遺伝子の存在について調べる解析のためにサンプリングした。

    3つの遺伝子が陽性の株については、産生されたヒスタミンのレベルを、3連の四重極質量分析により決定する。 ヒスタミンの産生が最高度である(>250pg/ml)株を選択する。 ヒスタミンの産生はまた、ELISA又はイムノアッセイによって評価及び定量化することもできる。

    (例3)
    免疫調節の実証ヒスチジンオペロンはL. ロイテリ6475のTNF阻害性の表現型に寄与する オペロンの一部であると考えられる3つの遺伝子が、L. ロイテリ6475によるヒスタミンの産生に関与している。 これらの遺伝子は、ヒスチジン/ヒスタミン対向輸送体遺伝子、ヒスチジンピルボイルデカルボキシラーゼA型(HdcA)遺伝子、及びHdcB遺伝子(図3A)である。 先行するトランスクリプトミクス研究は、ヒスチジン/ヒスタミン対向輸送体遺伝子及びHdcA遺伝子が、6475株のTNF阻害性の表現型にとって潜在的に重要であることを示唆した。 スクロース培地中で増殖させた6475株では、3つの遺伝子全てが、グルコース培地中で増殖させた6475株と比較して強く下方調節される(TNFの阻害を喪失する)(表2)。 加えて、TNF阻害を喪失する2つの突然変異体では、オペロン内の少なくとも1つの遺伝子が、下方調節される(表2)。 これらの突然変異体は、既に精査されており、それらの遺伝子産物はTNF阻害特性を有さなかったが、これらの遺伝子は6475株の抗炎症性表現型にとって重要であると考えられた。 これに対し、TNFの阻害を喪失しない2つの突然変異体は、ヒスチジンオペロン内の遺伝子のうちのいずれの下方調節も顕示しなかった(表2)。 これらの3つの遺伝子の各々では、未成熟の終止コドンを、遺伝子配列へと挿入することにより突然変異を施した(1229株、1230株、及び1231株)。 陰性対照として用いられるように、非類縁遺伝子であるリファンピシン耐性遺伝子にもまた、突然変異を施した(JP577株)。 ヒスチジンオペロン内の遺伝子のうちのただ1つにおける突然変異も、野生型株と比較したTNF阻害の部分的な喪失を引き起こすのに十分であった(図3B)ことから、これらの遺伝子のうちの1つずつが、L. ロイテリ6475のTNF阻害性の表現型にとって重要であることが示唆される。 活性の部分的な喪失は、他の活性イムノモジュリンが、L. ロイテリ6475によりやはり産生されつつあることを示唆する。

    ERK1/2の活性化はTLR2で刺激された単球様細胞によるTNFの産生にとって不可欠である ERK1/2は、上流のMAPKK、MEK1/2に由来するリン酸化により活性化され、TNFの産生にとって重要であることが既に示されている。 THP−1細胞を、変化させた時間にわたり、特異的MEK1/2阻害剤であるU0126で処置して、ERK1/2の活性化を抑制してから、TLR2アゴニストによる刺激を行った。 U0126による30分間にわたる処置は、TNFの産生を防止するのに十分であった(データは示さない)。 ERK1/2は、TLR2の刺激後に活性化され、本発明者らのモデル系においてTNFの産生を刺激するのに重要である。

    受容体を刺激すると、細胞内のcAMPが結果として増大する H 受容体とは、アデニル酸シクラーゼを活性化させ、細胞内cAMPを増大させうる、Gタンパク質連結受容体である。 TNFを、cAMP及びcAMP類似体により、転写レベルで阻害することができる。 THP−1細胞は、H 受容体アンタゴニストを伴うか又は伴わない培地対照、6475株上清、又はヒスタミンの存在下、TLR2アゴニストで刺激し、cAMPの細胞内レベルを測定した。 L. ロイテリ6475株上清は、少量ではあるが著明なcAMPの増大を引き起こした(データは示さない)。 H アンタゴニストによる処理は、この効果を遮断した。 cAMPの増大はまた、ヒスタミン処置によっても見られ、その効果も、H アンタゴニストにより遮断された(データは示さない)。 cAMPの合成類似体であるジブチリルcAMP(dcAMP)を、TLR2で刺激されたTHP−1細胞へと添加し、TNFの産生に対する効果をモニタリングした。 dcAMP(10 −5 〜10 −3 M)の添加は、TNFの産生を阻害するのに十分であった(データは示さない)。 ヒスタミンH 受容体を刺激すると、cAMPが結果として増大し、これにより、下流における活性化単球様細胞内のTNFの産生が遮断されうる。

    タンパク質キナーゼA(PKA)活性は、L. ロイテリ6475株、ヒスタミン及びdcAMPによるTNF阻害にとって重要である cAMPの濃度の増大は、PKAを活性化させる可能性があり、その後、下流におけるERK MAPKシグナル伝達経路を阻害しうる。 PKA活性が、6475株により産生されるヒスタミンによるTNF抑制にとって重要であったのかどうかを決定するために、活性化THP−1細胞を、6475株上清、画分B3、ヒスタミン、又は濃度を変化させるdcAMPの存在下、特異的なPKA阻害剤であるH89で処理した。 H89の添加は、これらの通常はTNF阻害性である化合物の全てによるTNFの阻害を部分的に遮断した(データは示さない)。 PKA活性は、ヒスタミン及びdcAMPによるTNFの抑制にとって重要である。

    受容体を介するシグナル伝達は、MEK1/2及びERK1/2の活性化を遮断する 先行研究は、PKAがRas/RafによるMEKの活性化を阻害することが可能であり、その後、ERK MAPKシグナル伝達を阻害しうることを裏付けた。 活性化THP−1細胞の、6475株上清、ヒスタミン、又はU0126による処置は、MEK1/2及び下流におけるERK1/2の両方のリン酸化を、培地対照と比較して遮断する(データは示さない)。 H 受容体アンタゴニストによる処理は、MEK1/2及びERK1/2の両方の活性化を回復させる(データは示さない)。 処置選択肢のうちのいずれによっても、MEK1/2及びERK1/2のタンパク質レベルには差違が認められなかった。 6475株に由来するヒスタミンは、MEK及び下流におけるERKの活性化を阻害して、TLR2で刺激された骨髄細胞からのTNFの産生を結果として減少させる。

    したがって、これらの実験は、H 受容体の刺激が、cAMPの増大、タンパク質キナーゼA(PKA)の活性化、及びMEK−ERK MAPKシグナル伝達経路の阻害を結果としてもたらすことを示す。 上記の通り、機構研究を実施して、ヒスタミンのマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路に対する効果を決定した。 MEK−ERKシグナル伝達経路のMEK特異的阻害剤による阻害は、TNFの産生を遮断するのに十分である。 活性化THP−1細胞の、6475株上清又はヒスタミンによる処置は、細胞内cAMPを増大させた。 cAMPの増大は、特異的H 受容体アンタゴニストであるラニチジンにより遮断された。 TLR2で刺激されたTHP−1細胞の、cAMPの合成類似体であるdcAMPによる処置は、TNFの産生を阻害するのに十分である。 PKA活性の阻害は、TNF阻害性化合物である、6475条件付け培地、画分B3、ヒスタミン、及びdcAMPによるあらかじめのTNF抑制を部分的に遮断する。 活性化THP−1細胞の、6475条件付け培地、ヒスタミン、又はU0126による処置は、MEK1/2の活性化を抑制したが、これはラニチジンの存在下で遮断された効果である。 活性化THP−1細胞の、6475条件付け培地、ヒスタミン、又はU0126による処置は、ERK1/2の活性化を抑制したが、これもラニチジンの存在下で遮断された効果である。

    (例4)
    ウェスタンブロットによるMEK1/2及びERK1/2の検出 THP−1細胞を、50mMのトリス、pH7.4、250mMのNaCl、5mMのEDTA、50mMのNaF、1mMのNa VO 、1%v/vのNonidet P40、0.2%v/vのNaN 、並びにプロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤からなる氷冷溶解緩衝液中で溶解させた。 溶解物を、氷上で30分間にわたりインキュベートし、10分間ごとにボルテックスし、13,000×g、4℃で10分間にわたる遠心分離により清明化させた。 タンパク質濃度は、製造元の指示書に従い、Quant−iT(商標)タンパク質アッセイキット(Invitrogen)及びQubit蛍光光度計を用いて測定した。 等量のタンパク質を、電気泳動ゲルへと投入した。

    ERK1/2の活性化についての解析は、特異的ホスホ−ERK1/2抗体を用いて実施した。 細胞抽出物を10%のSDS−ポリアクリルアミドゲルへと投入し、ポリフッ化ビニリデン膜(Bio−Rad、Hercules、CA)へと転写した。 膜は、ブロッキング緩衝液(Li−Cor Biosciences、Lincoln、NE)中、4℃で一晩にわたりブロッキングした。 複数回にわたる洗浄の後、膜を、ブロッキング緩衝液(Li−Cor)中で希釈されたERK1/2特異的抗体、ホスホ−ERK1/2特異的抗体、又はβ−アクチン特異的抗体で、室温で1時間にわたりプローブした。 洗浄後、膜を、適切な西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体と共に、室温で1時間にわたりインキュベートし、次いで、ブロットを、化学発光検出を用いて現像した。 MEK1/2の活性化についての解析は、一次抗体とのインキュベーションが4℃で一晩にわたることを除き、上記の通りに実施した。

    (例5)
    hdcA突然変異体は、大腸炎を緩和する能力を減殺する細菌株及び培養 突然変異体は、RecTを媒介するオリゴヌクレオチド組換え操作を用いて発生させた。 RecTを発現するL. ロイテリ(RPRB0000株)を用いて、rpoB(遺伝子座タグ:HMPREF0536_0828(ZP_03961568))内に突然変異を構築し、ヒスチジンデカルボキシラーゼ遺伝子クラスターである、HMPREF0536_1229(ZP_03961969)、HMPREF0536_1230(ZP_03961970)、及びHMPREF0536_1231(ZP_03961971)内に位置する標的遺伝子を用いて、それぞれ、RPRB3002株、RPRB3004株、RPRB3005株、及びRPRB3006株をもたらした。 突然変異はPCRにより検証し、完全性は配列解析により確認した。

    L. ロイテリATCC PTA 6475及びヒスチジンデカルボキシラーゼ遺伝子(hdcA)の突然変異体は、10%のCO 、10%のH 、及び80%のN の混合物を供給された嫌気性のワークステーション(MACS MG−500;Microbiology International、Frederick、MD)内、37℃のdeMan培地、Rogosa培地、Sharpe培地(Difco、Franklin Lakes、NJ)中で培養した。

    L. ロイテリ細胞の調製及びマウスへの投与 L. ロイテリ株の各々による単一のコロニーを、10mlのMRS培地に接種し、嫌気条件下、37℃で18〜20時間にわたり増殖させた。 OD600=0.03へと調整された細菌を、40mlのMRSへと接種して、発酵を開始させ、嫌気条件下、37℃で5.5時間にわたり増殖させた(OD600≒2.5、細菌は、この時点で指数関数期にあった)。 細胞を静かにペレット化させ(2500×g、RT、4分間)、25×10 CFU/mlの濃度でMRS中に再懸濁させた。 培地対照としては、滅菌MRS培地を用いた。 8週齢の雌BALB/cマウスの各々に、10日間にわたる馴致の後、調製したての野生型のL. ロイテリ6475若しくはhdcA突然変異体又はMRS(各回0.2mlずつ)を、経口胃管栄養法により毎日1回7日間にわたり施した。 全てのマウス実験は、承認されたプロトコール(AN−4199;Baylor College of Medicineの動物施設)に従い実施した。 マウス(45日齢)は、Harlan Laboratories(Houston、TX)から入手し、フィルタートップケージ(ケージ1つ当たり5匹ずつのマウス)内、特定の無病原菌状態下で維持し、蒸留水及びHarlan rodent chow 2918を自由に摂取させた。 マウスは、異なる群に無作為に分けた。

    トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)による直腸浣腸を用いた急性大腸炎の誘導。 大腸炎は、6回目の胃管栄養の6時間前に誘導した。 定常的なイソフルランの吸入によりマウスに麻酔をかけた。 水中に5%のTNBS溶液(Sigma−Aldrich、USA)を、等容量の絶対エタノールで希釈し、体重1kg当たり100mgの用量で直腸内投与した。 浣腸後2分間にわたり、マウスを垂直位置で頭を下にした状態に保ち、浣腸の結腸内における完全な保持を確保した。 手順対照マウスには、PBS中50%のエタノールを施した。 マウスは、TNBS投与の前、及びTNBS投与の2日後に体重を測った。 次いで、マウスを屠殺した。 結腸の炎症及び損傷は、体重減少、肉眼によるスコア、及び血清SAA濃度により決定した。

    肉眼による大腸炎の評価 結腸を回収し、長手方向に切り開き、デジタルカメラにより画像を記録した。 結腸の炎症及び損傷は、ウォレス基準(Morrisら、1989)に従い決定した。 各結腸は、盲検でスコア付けした。 統計解析は、GraphPad Prism version 5.01(GraphPad Software、La Jolla、CA)を用いて実施した。 クルスカル−ワリス検定を用いて、解析に組み入れられた全ての群間における有意差を検出した。 結果は、中央値及び四分位数による範囲としてまとめた。

    全身性炎症マーカーとしての血清アミロイドタンパク質A(SAA)の測定 心穿刺により血液試料を回収し、抗凝固処理し、13,000rpmで10分間にわたり遠心分離して、血漿を単離した。 血漿試料中の血清アミロイドA(SAA)濃度は、製造元の指示書に従い、ALPCO(Salem、NH)製のELISAキットを用いて測定した。 SAAとは、大腸炎の重症度と相関する、マウスにおける全身性炎症を示す急性期タンパク質である。

    結果L. ロイテリ6475は、マウスを、TNBS誘導性の急性大腸炎に対して防御する L. ロイテリ6475の抗炎症効果を、TNBS誘導性急性大腸炎のマウスモデルにおいて調べた。 経口胃管栄養法により毎日L. ロイテリ6475を施されたマウスを、培地対照を施されたマウスと比較した。 また、TNBSの代わりにPBSで感作されたマウスも、大腸炎の陰性対照として研究された。

    図4〜6は、2つの独立する実験に由来するデータを表す。 TNBSの代わりにPBSを直腸内に施された大腸炎の陰性対照は、体重減少が極めて低度であり(又は体重が増加さえし)、結腸の損傷がまれであり、血清SAA濃度が低かった。 MRS培地及びTNBS/ETOHを施された大腸炎陽性マウスは、大幅な体重減少、結腸内の炎症を伴う潰瘍化、及び1cmを超えて広がる主要な損傷部位、並びに血清中SAA濃度の著明な上昇を特徴とする重度の大腸炎を発症した。 L. ロイテリ6475の経口胃管栄養法は、体重減少、結腸内の肉眼的炎症、及び血清SAA濃度を著明に軽減したことから、L. ロイテリ6475は、大腸炎を著明に緩和したことが示される。

    hdcA突然変異体は、大腸炎を緩和する能力を減殺する 本発明者らは、同じマウスモデルを用いて、ヒスチジンデカルボキシラーゼをコードするhdcA遺伝子が、L. ロイテリ6475の抗炎症効果に要請されるのかどうかを調べた。 8週齢の雌BALB/cマウスを、無作為に3つの群へと分け、これらの群のそれぞれに、野生型のL. ロイテリ6475若しくはhdcA突然変異体又はMRS培地を施した。 図7及び8は、2つの独立する実験に由来するデータを表す。 ここでもまた、L. ロイテリ6475の経口胃管栄養法は、体重減少及び結腸の損傷を、培地対照群と比較して著明に軽減した。 hdcA突然変異体を施されたマウスは、体重減少及び結腸内の肉眼的炎症を、野生型の細菌を施されたマウスと比較して著明に増大させたことから、hdcA突然変異体は、大腸炎を緩和する能力を減殺させることが示される。


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