Strain, as well as beverages containing the bacteria having an anti-allergic effect, food and anti-allergic agents

申请号 JP2008530894 申请日 2007-08-20 公开(公告)号 JP5066091B2 公开(公告)日 2012-11-07
申请人 サッポロビール株式会社; 发明人 保一 中北; 久子 保井; 修一 瀬川; 善浩 高田;
摘要
权利要求
  • ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビス(Lactobacillus brevis subspecies brevis)に属する SBC8803(FERM BP−10632)菌株。
  • 請求項 記載の菌株の菌体を含有する飲料。
  • 請求項 記載の菌株の菌体を含有する食品。
  • 請求項 記載の菌株の菌体を有効成分として含有する抗アレルギー剤。
  • 说明书全文

    抗アレルギー作用を有する菌株並びにその菌体を含有する飲料、食品及び抗アレルギー剤に関する。

    アレルギー性疾患の治療は、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤及びステロイド剤等を用いた薬物療法が一般的である。 しかし最近では、薬物療法の限界と予防医学の観点から、腸管免疫に作用する乳酸菌が、アレルギー疾患の予防及び治療に効果があるとして注目されている(特許文献1〜3)。 腸管免疫とは、経口的に取り込まれた病原生物等を排除する免疫機構であり、過剰反応する腸管免疫を抑制できれば、アレルギー性疾患の予防及び治療に貢献できると考えられている。

    例えば、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のインファンティス(infantis)種、ブレーベ(breve)種、ロンガム(longum)種及びビフィダム(bifidum)種の菌株には、食物アレルギーの治療に効果を有するものがあり(特許文献1)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)及びラクトバチルス・ロイテリー(Lactobacillus reuteri)の菌株(特許文献2)並びにラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)及びストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)(特許文献3)の菌株には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎及びアトピー性皮膚炎等に効果を有するものがあると報告されている。

    さらに、アレルギー性疾患は、身体的ストレス及び精神的ストレスと相関があり、ストレスが多い人ほど症状が悪いことが知られている(非特許文献1)。 このため、アレルギー性疾患の予防及び治療には、体内の免疫反応を抑制する作用に加えて、日常受けるストレスの解消を図ることが必要であると言われている。

    特開平10−309178号公報

    特開2000−95697号公報

    特開2005−139160号公報

    荻野 敏、「ストレスとアレルギー疾患−予備校生を対象に」、鼻展望、2002年、45巻、p.204〜210

    しかしながら、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤及びステロイド剤等の薬物療法は、血中で免疫反応に関与する分子に直接作用し、生体の恒常性維持に必要な免疫反応まで抑制するため、副作用が大きいという問題点がある。 また、アレルギー疾患のような慢性疾患を予防するには、これまでに報告されている乳酸菌の活性では、実用上、効果が不十分であった。 さらに、抗アレルギー作用を有し、かつ、抗ストレス作用を有するγ−アミノ酪酸(GABA)を産生する乳酸菌の菌株については、これまで報告がなかった。

    そこで本発明の目的は、これまでに知られる乳酸菌株よりも強い抗アレルギー作用を有し、かつ、γ−アミノ酪酸(GABA)を産生する、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビス(Lactobacillus brevis subspecies brevis)に属する菌株を提供することにある。 また本発明の目的は、このラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株の菌体を含有する飲料及び食品並びにこれらを有効成分として含有する抗アレルギー剤を提供することにある。

    上記目的を達成するために、本発明は、ラクトバチラス・ブレビスの亜種ブレビス(Lactobacillus brevis subspecies brevis)に属する菌株であって、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であり、γ−アミノ酪酸(GABA)を産生し、抗アレルギー作用を有する菌株を提供する。

    本発明者らは、ラクトバチラス・ブレビス種の乳酸菌のうち亜種ブレビスに属する菌株が、特に効果的に、マウス脾臓細胞からのTh1型サイトカインの産生を誘導し、また、IgEの産生を抑制することを見出した。 これらの作用は、ヒトのアレルギー性疾患の予防及び治療に効果的な作用であり、その活性は、これまでに報告のある乳酸菌の菌株と比較して顕著に強いものであった。 乳酸菌は、古くから発酵食品に利用されている細菌であり、化学合成された抗アレルギー剤と比較して、人体に対する安全性がはるかに優れている。 また、通常の乳酸菌は、発泡性アルコール飲料中で増殖不可能であるが、本発明の菌株は、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であるため、この性質を利用して本発明の菌株から抗アレルギー活性を有しない他の乳酸菌株を除くことができる。 さらに、本発明の菌株は、γ−アミノ酪酸(GABA)を産生するため、上記の抗アレルギー作用に加えて抗ストレス作用も有しており、身体的ストレス及び精神的ストレスと相関のあるアレルギー性疾患の予防及び治療に対して多面的で強い効果が期待できる。 このような菌株としては、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスのSBC8803(FERM BP−10632)が特に好ましい。

    上記の抗アレルギー作用は、インターフェロンγ及び/又はインターロイキン12の産生促進作用であることが好ましい。

    インターフェロンγは、Th1細胞が分泌するサイトカインであって、B細胞がIgEを産生するのを阻害するほか、ウイルス、糸状菌及び結核菌等を攻撃するキラーT細胞やマクロファージ等の細胞性免疫能を増大させる作用を有する。 また、インターロイキン12は、マクロファージ等の抗原提示細胞が分泌するサイトカインであって、NK細胞を刺激してTh1細胞を誘導する作用を有し、Th1細胞によるインターフェロンγの産生をも誘導する。 本発明の菌株は、インターフェロンγ及び/又はインターロイキン12の産生促進し、IgEの産生を抑制できるため、I型アレルギー反応を抑制することが可能である。

    上記の抗アレルギー作用は、IgEの産生抑制作用であることが好ましい。

    IgEは、アレルギー性疾患を引き起こす原因物質である。 すなわち、アレルゲンが侵入すると、これに反応してIgEが産生され、IgEがマスト細胞や好塩基球に結合して感作が成立する。 その後、同じアレルゲンが侵入すると、IgEはアレルゲンを認識し、マスト細胞や好塩基球からヒスタミン等の炎症性物質が遊離されることになる。 このアレルギー反応は、気管支の収縮や蕁麻疹等のさまざまな症状を呈し、発症部位により、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息等のアレルギー性疾患を引き起こすことになる。 本発明の菌株は、IgEの産生を抑制できるため、アレルギー反応を抑制することが可能であり、これらのアレルギー性疾患の予防及び治療に利用できる。

    また、本発明は、上記菌株の菌体を含有する飲料及び食品を提供する。

    上記菌株の菌体は、抗アレルギー作用を有し、人体に対して安全であることから、健康食品素材として飲料及び食品に含有させて利用できる。 さらに、上記菌株はγ−アミノ酪酸(GABA)を産生するため、抗ストレス作用、血圧降下作用及び精神安定作用を併せ持ち、健康食品素材として利用価値が高い。

    また、本発明は、上記菌株の菌体を有効成分として含有する抗アレルギー剤を提供する。

    上記菌株の菌体は、インターロイキン12及びインターフェロンγの産生促進作用、並びにIgEの産生抑制作用を有するため、この菌体を有効成分として含有する抗アレルギー剤を製造すれば、化学合成された医薬品よりも安全性に優れた抗アレルギー剤として利用できる。

    本発明によれば、これまでに知られる乳酸菌株よりも強い抗アレルギー作用を有するラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株を提供できる。 また、本発明の菌株は、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であるため、この性質を利用して本発明の菌株から抗アレルギー活性を有しない他の乳酸菌株を除くことができる。 さらに、本発明の菌株は、γ−アミノ酪酸(GABA)を産生するため、上記の抗アレルギー作用に加えて抗ストレス作用も有しており、身体的ストレス及び精神的ストレスと相関のあるアレルギー性疾患の予防及び治療に対して強い効果が期待できる。 また本発明によれば、上記菌株の菌体を含有し、安全性に優れ、かつ、抗アレルギー作用を有する飲料、食品及び抗アレルギー剤を提供できる。

    ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株の菌体縣濁液の添加によりマウス脾臓細胞が産生したインターフェロンγの量を示したものである。

    OVAと各菌株の菌体縣濁液の添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞が産生したインターフェロンγの量を示したものである。

    OVAと各菌株の菌体縣濁液の添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞が産生したインターロイキン12の量を示したものである。

    OVAと各菌株の菌体縣濁液の添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞が産生したインターロイキン4の量を示したものである。

    OVA免疫マウスの脾臓細胞のTh1/Th2バランスの指標として、インターフェロンγ/インターロイキン4を算出し、グラフ化したものである。

    OVAの添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞に誘導される総IgEの産生に及ぼす各菌株の菌体縣濁液の効果を示したものである。

    OVAの添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞に誘導されるOVA特異的IgEの産生に及ぼす各菌株の菌体縣濁液の効果を示したものである。

    各菌株を腹腔内投与したOVA免疫マウスの末梢血中に分泌される総IgEの産生量を示したものである。

    各菌株を腹腔内投与したOVA免疫マウスの末梢血中に分泌されるOVA特異的IgEの産生量を示したものである。

    SBC8803を含有している混餌飼料を摂取させたNC/Ngaマウスの皮膚炎スコアの経時変化を示したものである。

    SBC8803を含有している混餌飼料を摂取させたNC/Ngaマウスの耳介厚の経時変化を示したものである。

    SBC8803を含有している混餌飼料を摂取させたNC/Ngaマウスの血清中IgE抗体量の経時変化を示したものである。

    以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。

    本発明の菌株は、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビス(Lactobacillus brevis subspecies brevis)に属する菌株であって、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であり、γ−アミノ酪酸(GABA)を産生し、抗アレルギー作用を有することを特徴としている。

    ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)には、4つの亜種(subspecies)が存在し、それぞれ、ブレビス(brevis)、グレブセンシス(gravesensis)、オタキエンシス(otakiensis)、コアギュランス(coagulans)であるが、上記菌株は、亜種ブレビスに属する。 亜種ブレビスに属する菌株は、16SリボゾームDNAの塩基配列及び糖からの酸生成の違い等を指標に分離でき、亜種グレブセンシス、亜種オタキエンシス及び亜種コアギュランスに属さない菌株として分類できる。

    「抗アレルギー作用」とは、アレルギー反応を抑制する作用のことをいう。 ここで、アレルギーとは、ある種の物質の摂取又は接触により生体内に抗体が作られ、同じ物質の再摂取又は再接触により過剰な抗原抗体反応が起きて病的症状が現れる状態をいう。 また、アレルギー反応とは、生体の防御機構である免疫反応が、本来排除すべきでない自分自身の細胞や摂取した食品等を攻撃してしまう現象をいう。 免疫反応には、抗原提示細胞、T細胞及びB細胞が関与し、液性免疫として主にIgG及びIgAが作られるが、アレルギー反応には、T細胞のうちのTh2細胞が主に関与し、IgEが通常の免疫反応の100〜10000倍高い濃度で作られる。 この大量のIgEは、マスト細胞と結合し、マスト細胞にヒスタミン、ロイコトリエン等の炎症性物質の遊離を促すことになる。

    抗アレルギー作用としては、例えば、抗原提示細胞、T細胞又はマスト細胞に作用して、IgEの産生や上記の炎症性物質の遊離を抑制する作用や、Th1/Th2バランスをTh1側にシフトさせる作用が挙げられ、より具体的には、IgEの産生抑制作用、インターフェロンγ及びインターロイキン12の産生促進作用等が挙げられる。

    上記の菌株の抗アレルギー作用としては、IgEの産生抑制作用、インターフェロンγの産生促進作用及び/又はインターロイキン12の産生促進作用が好ましく、これらの作用を2つ以上併せ持つことがより好ましい。

    「発泡性アルコール飲料」には、例えば、ビール、雑酒、発泡酒が含まれる。 「発泡性アルコール飲料中で増殖可能」とは、発泡性アルコール飲料中で乳酸菌が死滅せず、かつ、細胞分裂して細胞数が増えることをいい、発泡性アルコール飲料のアルコール濃度が5%以上であることが好ましい。

    ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株は、自然界から容易に分離でき、16SリボゾームDNAの塩基配列を調べることにより同定できる。 また、ATCC等の細胞バンクから購入できる。

    ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株のうち、発泡性アルコール飲料中で増殖可能である菌株は、特開2003−250557号公報に記載された方法に従って選抜できる。 具体的には、ラクトバチルス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株のゲノムDNAを鋳型として所定のプライマーセット(特開2003−250557号公報の配列表の配列番号1及び配列番号2に記載の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット)でPCRを行い、増幅されたDNAジャイレースサブユニットB遺伝子断片を制限酵素で切断し、アクリルアミドゲル電気泳動後の制限酵素切断パターンを解析し、グループIIbに属する菌株を選抜すればよい。 制限酵素切断パターンは、大きく4つのグループに分類されるが、発泡性アルコール飲料中で増殖可能な菌株はグループIIbに属することが判明している。

    上記の方法以外でも、ラクトバチルス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株を、発泡性アルコール飲料中に移植して培養し、増殖の可否を調べることによっても選抜できる。 培養温度は、30℃がより適しているが、15℃〜45℃、好ましくは20℃〜37℃、特に30℃前後であれば培養が可能である。

    ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株のうち、γ−アミノ酪酸(以下、GABA)を産生する菌株は、培養上清をアミノ酸分析装置等で分析し、GABAの含有量を調べることによって選抜できる。

    ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株のうち、抗アレルギー作用を有する菌株は、例えば、i)マウス脾臓細胞に対するインターフェロンγ及びインターロイキン12の産生促進作用、ii)卵白アルブミン(以下、OVA)免疫マウスの脾臓細胞で誘導されるIgEの産生抑制作用、iii)OVA免疫マウスの末梢血中に分泌されるIgEの産生抑制作用、等を試験することによって選抜できる。

    i)では、マウスの脾臓から脾臓細胞を分離して培養し、そこに被検菌株の菌体を滅菌して調製した菌体縣濁液を加えて一定時間培養し、脾臓細胞から分泌されるインターフェロンγ及びインターロイキン12の産生量をELISA等で測定し、インターフェロンγ及びインターロイキン12の産生促進作用の有無を調べればよい。

    ii)では、追加免疫から2週間後のOVA免疫マウスの脾臓細胞を分離して培養し、そこに被検菌株の菌体を滅菌して調製した菌体縣濁液とOVAを加えて一定時間培養し、脾臓細胞から分泌されるIgEの産生量をELISA等で測定し、IgE産生抑制作用を調べればよい。

    iii)では、OVAマウスの腹腔内に被検菌株の菌体を滅菌して調製した菌体縣濁液を投与して一定時間飼育し、末梢血中に分泌されるIgEの量をELISA等で測定し、菌体懸濁液を腹腔内投与していないOVAマウスの末梢血に分泌されるIgEの産生量と比較すればよい。

    尚、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であり、GABAを産生し、抗アレルギー作用を有する、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属するSBC8803(受託の日:2006年6月28日;受託番号:FERM BP−10632)は、国際寄託当局である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に寄託されており、入手可能である。

    本発明の飲料、食品及び抗アレルギー剤は、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株であって、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であり、GABAを産生し、抗アレルギー作用を有する、上記の菌株を含有することを特徴としている。

    上記菌株の菌体は、アレルギー性疾患の予防及び治療を目的として飲料及び食品に添加できる。 上記飲料及び食品は、上記の菌株の菌体のみからなっていてもよく、当該分野で通常使用される添加物を含んでいてもよい。 この添加物としては、例えば、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂、グルコース等の単糖類、スクロース、フルクトース及びマンニトール等の二糖類、デキストロース及びデンプン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール及びソルビトール等の糖アルコール類、ビタミンC等のビタミン類が挙げられ、これらの添加物は単独種又は複数種であってもよい。

    さらに、アレルギー性疾患の予防や症状の緩和の目的で、食品添加物として、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品や病者用食品等の飲食物に配合することもできる。

    本発明の抗アレルギー剤は、上記の菌株の菌体を有効成分として含み、担体、賦形剤及び/又はその他の添加物を加えて製剤化すれば、安全性に優れた抗アレルギー剤として利用できる。 薬学的に許容される添加物としては、例えば、グルコース等の単糖類、スクロース、フルクトース及びマンニトール等の二糖類、デキストロース及びデンプン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール及びソルビトール等の糖アルコール類、ビタミンC等のビタミン類、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、、鉱油が挙げられ、これらの添加物は単独種又は複数種であってもよい。

    以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

    1)実験に用いた各菌株について ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビス(Lactobacillus brevis subspecies brevis)に属する13菌株(SBC8803及び菌株a〜l)は、発明者が分離し、実験に用いるまで凍結乾燥菌体として4℃で保管した。 また、ラクトバチラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)に属する菌株Xは市販のヨーグルトから分離し、実験に用いるまで凍結乾燥菌体として4℃で保管した。

    2)ビール中での増殖能の判定 上記のラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する13菌株及びラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xについて、ビール中での増殖能を選抜した。 選抜方法は、特開2003−250557号公報に記載された方法に従って行なった。 すなわち、各乳酸菌株のゲノムDNAを鋳型として所定のプライマーセット(特開2003−250557号公報の配列表の配列番号1及び配列番号2に記載の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセット)でPCRを行い、増幅されたDNAジャイレースサブユニットB遺伝子断片を制限酵素で切断し、アクリルアミドゲル電気泳動後の制限酵素切断パターンを解析することにより判定した。 この方法では、制限酵素切断パターンは、大きく4つのグループに分類でき、ビール中で増殖可能である菌株は、グループIIbに属することが判明している。

    その結果、調べたラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する13菌株は全てビール中で増殖する菌株であると判定されたが、ラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xは、ビール中で増殖する菌株であるとは判定されなかった。 尚、上記菌株を実際にビール中に植菌し増殖の可否を確認したが、上記方法の判定結果と同じであった。

    3)抗アレルギー作用の評価
    i)菌体懸濁液の調製 上記の各菌株の抗アレルギー作用を評価するために、各菌株の菌体懸濁液を調製した。 まず、各菌株を嫌気的条件下(N :CO :H =90:5:5のガス組成)、MRS液体培地(ディフコ社製、組成:1%プロテオースペプトン、1%肉エキス、0.5%酵母エキス、2%ブドウ糖、0.1%Tween 80、0.5%クエン酸アンモニウム、0.01%硫酸マグネシウム、0.005%硫酸マンガン、0.2%リン酸二カリウム)で3日間静置培養し、その培養液を1,500回転で10分間遠心分離して、各菌株の菌体を回収した。 得られた菌体は、PBSで洗浄した後に凍結乾燥し、1mg/mLとなるようにPBSに懸濁した。 こうして得られた菌体懸濁液は、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)して以下の実験に使用した。

    ii)マウス脾臓細胞に対するラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株のインターフェロンγ産生促進作用(in vitro)
    マウス脾臓細胞にラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する13菌株の菌体縣濁液を加えて一定時間培養し、脾臓細胞から分泌されるインターフェロンγの量を調べることにより、各菌株のインターフェロンγ産生促進作用を評価した。

    (マウス脾臓細胞の調製)
    まず、6週齢のBALB/cマウス(雌)から脾臓を無菌的に摘出し、10%FBS含有RPMI1640培地に浸漬した。 その後、脾臓をシャーレに移して乳棒ですり潰し、マウス脾臓細胞の縣濁液を、目開き70μm、線径39μmのナイロンフィルターネット(日本理化学機器株式会社)に通した。 このナイロンフィルターネットを通過したマウス脾臓細胞の縣濁液は、1,500回転で10分間遠心分離し、上清を捨てた後に赤血球溶血試薬(0.16M塩化アンモニウム、トリス・HCl、pH7.2)を沈殿したマウス脾臓細胞に加え、5分間、室温で静置した。 その後、新しい10%FBS含有RPMI1640培地を加えてマウス脾臓細胞を洗浄し、1,500回転で10分間遠心分離し、上清を捨てた後に細胞数が5×10 個/mLになるように10%FBS含有RPMI1640培地を加えた。 こうして得られたマウス脾臓細胞を、以下の実験に用いた。

    (インターフェロンγのELISAによる測定)
    細胞密度が2.5×10 個/mLになるように96ウェルプレートにマウス脾臓細胞を播種し、37℃、5%CO の条件下、10%FBS含有RPMI1640培地で培養した。 マウス脾臓細胞を培養している各ウェルに、各菌株の菌体縣濁液(最終濃度:10μg/mL)を添加し、72時間経過後に培養上清中に分泌されたインターフェロンγの量をELISAで定量した。 ポジティブコントロールには、マウスの脾臓細胞に対してインターフェロンγ産生促進作用を有するリポポリサッカライド(以下、LPS)(SIGMA社、最終濃度:10μg/mL)を、ネガティブコントロールには、PBSを使用した。

    インターフェロンγを定量するためのELISAは、以下のようにして行なった。 まず、1.25μg/mLに調製した一次抗体(Rabbit anti−mouse/rat interferon−γ;BIO SOURCE社)を96ウェルプレート(Maxisorp immunoplate;NUNC社)の各ウェルに50μLずつ添加し、4℃で一晩静置することにより固相した。 その後、この96ウェルプレートをWash Bufferで3回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA;シグマ社)でブロッキングした。 引き続き、各培養上清又は予め濃度が明らかであるインターフェロンγの標品を、それぞれ50μLずつ各ウェルに添加して一次抗体である抗インターフェロンγ抗体と90分間反応させ、Wash Bufferで3回洗浄した後に、0.5μg/mLに調製した二次抗体(Anti−mouse/rat interferon−γ biotin conjugate;BIO SOURCE社)を各ウェルに50μLずつ添加し、室温で90分間反応させた。 その後、各ウェルをWash Bufferで5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRP(BIO SOURCE社)を添加して反応させ、Wash Bufferで5回洗浄した後にTMB(tetramethylbenzidine)基質溶液(3,3',5,5'−Tetramethylbenzidine (TMB) Liquid Substrate System;SIGMA社)を加えて反応させた。 発色が十分進行した後に2N硫酸を各ウェルに50μLずつ加えて反応を停止し、450nmの吸光度を測定した。 インターフェロンγの標品の吸光度から標準曲線を作成し、この標準曲線からマウス脾臓細胞が産生したインターフェロンγの量を定量した。

    図1は、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する13菌株の菌体縣濁液の添加によりマウス脾臓細胞が産生したインターフェロンγの量を示したものである。 その結果、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスのSBC8803は、マウス脾臓細胞に対してインターフェロンγの産生を誘導し、その産生量はLPS及び他のラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株(菌株a〜l)によって誘導される量と比較して顕著に高いものであった。 インターフェロンγ産生誘導作用を有したSBC8803(受託番号:FERM BP−10632;受託の日:2006年6月28日)は、国際寄託当局である独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に寄託した。

    iii)OVA免疫マウスの脾臓細胞に対するSBC8803のTh1サイトカイン産生促進作用、Th2サイトカイン産生抑制作用及びIgE産生抑制作用(in vitro)
    マウス脾臓細胞に対してインターフェロンγ産生促進作用を示したSBC8803について、OVA免疫マウスの脾臓細胞に対するTh1サイトカイン(インターフェロンγ及びインターロイキン12)産生促進作用、Th2サイトカイン(インターロイキン4)産生抑制作用及びIgE産生抑制作用を評価した。 その際、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属する菌株b及び菌株c並びにラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xの作用についても同時に調べ、SBC8803の作用と比較した。

    (OVA免疫マウスの作成)
    OVA免疫マウスは、6週齢のBALB/cマウス(雌)にOVAを腹腔内投与し、人為的にアレルギーを惹起して作成した。 具体的には、まず、100μgのOVA(Ovalbumin、Eggwhite、Purified;Worthington Biochemical Corporation)及び10mgの水酸化アルミニウムを1mLのPBSに溶解してOVA抗原溶液を調製し、その200μLをマウスの腹腔内に投与して初回免疫を行なった。 その1週間後、上記と同じようにOVA抗原溶液を調製し、再度、その200μLをマウスの腹腔内に投与して追加免疫を行なった。 追加免疫がされたマウスは、約1週間後にアレルギーが惹起され、このマウスをOVA免疫マウスとして以下の実験に用いた。

    (OVA免疫マウスの脾臓細胞の調製)
    追加免疫から2週間後のOVA免疫マウスから脾臓を無菌的に摘出し、そこから上記と同じ手順で脾臓細胞を調製した。

    (インターフェロンγ、インターロイキン12及びインターロイキン4のELISAによる測定)
    インターフェロンγ、インターロイキン12及びインターロイキン4を測定するために、2.5×10 個のOVA免疫マウスの脾臓細胞を96ウェルプレートに播種し(細胞密度は、2.5×10 cells/mL)、37℃、5%CO の条件下、10%FBS含有RPMI1640培地で培養した。 OVA免疫マウスの脾臓細胞を培養している各ウェルにOVA(最終濃度:100μg/mL)と各菌株の菌体縣濁液(最終濃度:1μg/mL)をそれぞれ添加し、72時間経過後に培養上清中に分泌された各サイトカインの量をELISAで定量した。 その際、菌体縣濁液の代わりにPBSを添加したコントロールを設けた。

    インターフェロンγのELISAによる定量は、上記と同様の手順で行なった。 インターロイキン12の定量については、一次抗体に1μg/mLのPurified anti−mouse IL−12(p40/p70)(BD Pharmingen社)を用い、二次抗体に1μg/mLのBiotin anti−mouse IL−12(p40/p70)(BD Pharmingen社)を用いて、インターフェロンγの定量と同様の手順でELISAを行なった。 インターロイキン4の定量については、一次抗体に1μg/mLのMonoclonal Anti−mouse IL−4 Antibody(R&D Systems Inc.)を用い、二次抗体に1μg/mLのBiotinylated Anti−mouse IL−4 Antibody(R&D Systems Inc.)を用いて、インターフェロンγの定量と同様の手順でELISAを行なった。

    図2は、OVAと各菌株の菌体縣濁液の添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞が産生したインターフェロンγの量を、図3はインターロイキン12の量を、図4はインターロイキン4の量を示したものである。 図5は、Th1/Th2バランスの指標として、インターフェロンγ/インターロイキン4を算出し、グラフ化したものである。 その結果、OVAとPBSを添加したコントロールでは、Th1型サイトカインであるインターフェロンγ及びインターロイキン12の産生はほとんど認められず、Th2型サイトカインであるインターロイキン4の産生が顕著に誘導された。 このことより、OVA免疫マウスの脾臓細胞は、Th1/Th2バランスがTh2側にシフトし、アレルギー反応が亢進していることが示唆された。

    一方、OVAとSBC8803の菌体縣濁液を添加した処理区及びOVAと菌株b又は菌株cの菌体縣濁液を添加した処理区では、Th1型サイトカインであるインターフェロンγ及びインターロイキン12の産生が、コントロール及びラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xに比べて促進され、Th2型サイトカインであるインターロイキン4の産生が顕著に抑制されていた。 また、SBC8803の作用は、菌株b又は菌株cの作用よりも顕著なものであり、OVA免疫マウスの脾臓細胞のTh1/Th2バランスを大きくTh1側にシフトさせるものであった。 この結果より、SBC8803は強い抗アレルギー作用を有することが示唆された。

    (総IgE及びOVA特異的IgEのELISAによる測定)
    総IgEを測定するために、96ウェルプレートに2.5×10 個のOVA免疫マウスの脾臓細胞を播種し(細胞密度は、2.5×10 cells/mL)、37℃、5%CO の条件下、10%FBS含有RPMI1640培地で培養した。 OVA免疫マウスの脾臓細胞を培養している各ウェルにOVA(最終濃度:100μg/mL)及び各菌株の菌体縣濁液(最終濃度:1μg/mL)をそれぞれ添加し、14日経過後に培養上清中に分泌された総IgEの量をELISAで定量した。 コントロールには、菌体縣濁液の代わりにPBSを添加し、同様にELISAで定量した。

    一方、OVA特異的IgEを測定するために、48ウェルプレートに2.5×10 個の脾臓細胞を播種し(細胞密度は、2.5×10 cells/mL)、37℃、5%CO の条件下、10%FBS含有RPMI1640培地で培養した。 脾臓細胞にOVA(最終濃度:100μg/mL)及び各菌株の菌体縣濁液(最終濃度:1μg/mL)を添加して3日間培養し、新しい培地で脾臓細胞を3回洗浄してOVAを除去し、洗浄後の脾臓細胞に、再度、各菌株の菌体縣濁液を1μg/mLとなるように加えて11日間培養し、培養上清中に分泌されたIgEをOVA特異的IgEとしてELISAで定量した。 コントロールには、菌体縣濁液の代わりにPBSを添加し、同様にELISAで定量した。

    総IgE及びOVA特異的IgEを定量するためのELISAは、以下のようにして行なった。 まず、10μg/mLに調製した抗マウスIgE抗体(Mouse IgE ELISA Quantitation KIT;BETHYL Laboratories Inc.)を96ウェルプレート(Maxisorp immunoplate;NUNC社)の各ウェルに50μLずつ添加し、4℃で一晩静置することにより固相した。 その後、この96ウェルプレートをWash Bufferで3回洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA;シグマ社)でブロッキングした。 引き続き、各培養上清又は予め濃度が明らかであるIgEの標品を各ウェルに添加して抗マウスIgE抗体と90分間反応させ、Wash Bufferで3回洗浄した後に、Biotinylation Kit(Cygnus Technologies, Inc.)で作製したビオチン化OVAを各ウェルに50μLずつ添加し、室温で90分間反応させた。 その後、各ウェルをWash Bufferで5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRP(BIO SOURCE社)を添加して反応させ、Wash Bufferで5回洗浄した後にTMB(tetramethylbenzidine)基質溶液(3,3',5,5'−Tetramethylbenzidine (TMB) Liquid Substrate System;SIGMA社)を加えて反応させた。 発色が十分進行した後に2N硫酸を各ウェルに50μLずつ加えて反応を停止し、450nmの吸光度を測定した。 IgEの標品の吸光度から標準曲線を作成し、この標準曲線からOVAマウスの脾臓細胞が産生したIgEの量を定量した。 尚、OVA特異的IgE量については、OVA特異的IgEの標品がないためコントロール(陰性対照)の吸光度に対する相対値で表した。

    図6は、OVAの添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞に誘導される総IgEの産生に及ぼす各菌株の菌体縣濁液の効果を示したものである。 図7は、OVAの添加によりOVA免疫マウスの脾臓細胞に誘導されるOVA特異的IgEの産生に及ぼす各菌株の菌体縣濁液の効果を示したものである。

    その結果、SBC8803の菌体縣濁液の添加により、OVAで誘導される総IgE量及びOVA特異的IgE量は、それぞれ約75%及び約95%抑制された。

    一方、菌株b及び菌株c並びにラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xは、OVAで誘導される総IgE量及びOVA特異的IgEの産生を抑制するものの、SBC8803と比較して弱い作用であった。

    以上の結果より、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属するSBC8803は、インターフェロンγ及インターロイキン12の産生促進作用並びにIgE産生抑制作用を有し、これまでに知られる乳酸菌の菌株と比較して強い抗アレルギー作用を発揮することが判明した。

    iv)OVA免疫マウスに対するSBC8803のIgE産生抑制作用(in vivo)
    in vitroの実験で強い抗アレルギー作用を有することが判明したSBC8803について、OVA免疫マウスに対するIgE産生抑制作用をin vivoで評価した。 その際、ラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xの作用についても同時に調べ、SBC8803の作用と比較した。

    OVA免疫マウスは、上記のようにOVA(Ovalbumin、Eggwhite、Purified;Worthington Biochemical Corporation)で初期免疫及び追加免疫をすることによって作成し、体重を指標に1群10匹となるように3群に分け、SBC8803若しくは菌株Xの菌体縣濁液、又はPBS(コントロール)を、初回免疫の1週間前から追加免疫の1週間後まで2日に1回、200μLずつ腹腔内投与した。 尚、各菌体縣濁液は、上記のように凍結乾燥した菌体を1mg/mLとなるようにPBSで懸濁し、オートクレーブ滅菌(121℃、15分)することにより調製した。

    追加免疫の1週間後、マウスの尾静脈から血液を採取し、そこから分離した血清中の総IgE及びOVA特異的IgEの量をELISAで測定した。 血清中の総IgE及びOVA特異的IgEのLISAによる測定は、上記と同じ方法で行なった。

    図8は、各菌株を腹腔内投与したOVA免疫マウスの末梢血中に分泌される総IgEの産生量を示したものである。 図9は、同様に各菌株を腹腔内投与したOVA免疫マウスの末梢血中に分泌されるOVA特異的IgEの産生量を示したものである。 グラフ中の**は、コントロールに対してp<0.01で統計的有意であることを示している。

    その結果、SBC8803の菌体縣濁液の添加により、OVAマウスの末梢血に分泌される総IgE量は約85%抑制され、OVA特異的IgEは約60%抑制された。 この作用は、PBSを投与したコントロールと比べて統計的に有意なものであった。

    一方、ラクトバチラス・ラムノサスに属する菌株Xは、OVAマウスの末梢血に分泌される総IgE及びOVA特異的IgEの産生を抑制するものの、SBC8803と比較して弱い作用であり、コントロールと比べて統計的に有意なものではなかった。

    以上の結果より、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属するSBC8803は、in vivoにおいてもIgE産生抑制作用を有しており、これまでに知られる乳酸菌の菌株と比較して強い抗アレルギー作用を発揮することが判明した。

    v)アトピー様皮膚炎に対するSBC8803の作用(in vivo)
    NC/Ngaマウスは、2,4,6−トリニトロクロロベンゼン(塩化ピクリル)の塗布によってアトピー様皮膚炎を発症する病態モデルマウスであり、NC/Ngaマウスにおける血清中IgE抗体値の上昇は、アトピー様皮膚炎の発症と関連することが報告されている。 そこで、SBC8803を0.05%又は0.5%含有している混餌飼料をNC/Ngaマウスに摂取させながら塩化ピクリルの塗布を行い、NC/Ngaマウスのアトピー様皮膚炎の発症に及ぼすSBC8803の経口投与の効果を調べた。

    (NC/Ngaマウスへのアトピー様皮膚炎の惹起)
    体重を指標に1群10匹となるように、8週齢のNC/Ngaマウス(雄)を3群に分け、各マウスの剃毛した腹部及びフットパットに、150μLの5%塩化ピクリル溶液(エタノール:アセトン=4:1の溶液に溶解)を塗布して一次感作を行った。 その4日後からは1週間に1回ずつ(合計9回)、オリーブオイルに溶解した15μLの1%塩化ピクリル溶液を両耳介に塗布することによって二次感作を行い、NC/Ngaマウスにアトピー様皮膚炎を発症させた。

    (SBC8803の経口投与)
    各群のNC/Ngaマウスには、それぞれSBC8803を含有していないコントロール飼料、SBC8803を0.05%含有している混餌飼料、又はSBC8803を0.5%含有している混餌飼料を、一次感作の2週間前から試験終了日まで自由に摂取させた。

    一次感作後は、各群のNC/Ngaマウスの皮膚炎スコア、マウス耳介厚、及び血清中IgE抗体量を経時的に測定し、平均値を求めて各群間で比較した。 皮膚炎スコアは、Matsudaらの方法(Matsudaら、Int. Immunol.、1997年、9巻、p.461〜466) に従って測定した。 具体的には、発赤及び出血、浮腫、脱毛及び皮膚欠損、並びに発疹の各項目についてその程度を調べ、無症状の場合は0点、軽度の場合は1点、中程度の場合は2点、高度の場合は3点としてスコアリングを行った。 耳介厚は、ダイアルシックネスゲージ(株式会社ミツトヨ)を用いて測定した。 血清中IgE抗体量は、上述したサンドイッチELISA法で測定した。

    図10は、SBC8803を含有している混餌飼料を摂取させたNC/Ngaマウスの皮膚炎スコアの経時変化を示したものである。 グラフ中の*は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対してp<0.05で統計的有意であることを示し、**は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対してp<0.01で統計的有意であることを示している。

    その結果、SBC8803を0.05%含有している混餌飼料又はSBC8803を0.5%含有している混餌飼料を摂取したNC/Ngaマウスにおいては、皮膚炎スコアの上昇が顕著に抑制され、この作用は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対して統計的に有意なものであった。

    図11は、SBC8803を含有している混餌飼料を摂取させたNC/Ngaマウスの耳介厚の経時変化を示したものである。 グラフ中の**は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対してp<0.01で統計的有意であることを示している。

    その結果、SBC8803を0.5%含有している混餌飼料を摂取したNC/Ngaマウスの耳介厚の増加は顕著に抑制され、この作用は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対して統計的に有意なものであった。

    図12は、SBC8803を含有している混餌飼料を摂取させたNC/Ngaマウスの血清中IgE抗体量の経時変化を示したものである。 グラフ中の*は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対してp<0.05で統計的有意であることを示し、**は、コントロール飼料を摂取させたNC/Ngaマウスに対してp<0.01で統計的有意であることを示している。

    その結果、SBC8803を0.05%又は0.5%含有している混餌飼料を摂取したNC/Ngaマウスの血清中IgE抗体量の上昇は顕著に抑制され、この作用は、コントロール飼料を摂取させたマウスに対して統計的に有意なものであった。

    以上の結果より、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属するSBC8803は、アトピー様皮膚炎の発症を抑制する作用を有し、強い抗アレルギー作用を発揮することが判明した。

    4)γ−アミノ酪酸(GABA)の産生能の測定 ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属するSBC8803のγ−アミノ酪酸(以下、GABA)の産生能について試験した。 まず、SBC8803を、100mLの液体培地(3%麦芽エキス(DIFCO社)、2%酵母エキス(DIFCO社)、0.2%グルタミン酸ナトリウム、pH6.0)に植菌し、4日間静置培養した。 その後、SBC8803の培養液を1,500回転で10分間遠心分離して培養上清を回収し、その培養上清に含まれるGABAの量をHPLCで定量した。 使用したHPLCの条件は以下の通りである。
    ・HPLC装置:Agilent HPLC 1100
    ・使用カラム:ZORBAX eclipse AAA(4.6×150mm、3.5μm)(島津ジーエルシー社)
    ・カラムオーブン:40℃
    ・流量:1.0mL/min
    ・蛍光検出器:Ex. 340nm、Em. 450nm
    ・HPLC試薬:10mg/mL Agilent OPA試薬(0.4M ホウ酸バッファー、pH10.2)(島津ジーエルシー社)
    ・溶離液:A液:40mM NaH2PO4(pH7.8)
    B液:45体積%アセトニトリル、45体積%MeOH、10%H
    ・ タイムテーブル(グラジェント):表1を参照

    その結果、SBC8803は、培養上清中にGABAを102.5 μmol/L産生した。

    以上の結果より、ラクトバチラス・ブレビス亜種ブレビスに属するSBC8803は、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であり、強い抗アレルギー作用を有し、さらに抗ストレス作用を有するGABAを産生する菌株であることが判明した。

    5)SBC8803を用いて製造した果汁乳酸発酵液の官能検査 抗アレルギー作用を有するSBC8803を用いて果汁乳酸発酵液を製造し、得られた果汁乳酸発酵液の香りと風味について官能検査を行なった。

    表2は、乳酸発酵に使用した果汁について、果実の種類、糖度及びpHを示したものである。

    各果汁は、それぞれグレープフルーツ濃縮果汁、りんご濃縮果汁、白ぶどう濃縮果汁及びレモン濃縮果汁を滅菌水で希釈して所定の糖度になるように調製し、pHはNaOHを添加して調整した。 乳酸発酵は、各果汁100mLに対し1×10 細胞のSBC8803を植菌し、1日1回の撹拌を行い、30℃で72時間、攪拌時以外は静置条件下で行なった。 発酵終了後、各乳酸発酵液の濁度を分光光度計(タイテック社)で測定し、乳酸量をF−kit D−/L−乳酸(J.K.インターナショナル社)で測定した。 各乳酸発酵液の濁度は、SBC8803の増殖の指標とし、乳酸量は乳酸発酵の程度の指標とした。

    表3は、各乳酸発酵液の濁度、乳酸量及び官能検査の結果を示したものである。

    その結果、試験に用いた全ての果汁でSBC8803の乳酸発酵は進み、ヨーグルト風味はなく、ベース果汁の風味を保持した果汁乳酸発酵液を製造するに至った。 特に、りんご果汁を用いた発酵では、穏やかな香りと爽やかな酸味が加味され、乳酸発酵飲料として好ましい性質を備えるものであった。

    本発明の菌株は、発泡性アルコール飲料中で増殖可能であるため、この性質を利用して本発明の菌株から抗アレルギー活性を有しない他の乳酸菌株を除くことができる。 さらに、本発明の菌株は、γ−アミノ酪酸(GABA)を産生するため、上記の抗アレルギー作用に加えて抗ストレス作用も有しており、身体的ストレス及び精神的ストレスと相関のあるアレルギー性疾患の予防及び治療に対して強い効果が期待できる。 また本発明によれば、上記菌株の菌体を含有し、安全性に優れ、かつ、抗アレルギー作用を有する飲料、食品及び抗アレルギー剤を提供できる。

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