マイクロツールの位置決め方法及びマイクロマニピュレータ装置

申请号 JP2016522838 申请日 2014-10-01 公开(公告)号 JP6163260B2 公开(公告)日 2017-07-12
申请人 株式会社ナリシゲライフメッド; 发明人 野村 徹;
摘要
权利要求

マイクロツールの位置決め方法であって、 位置決めゲージを保持部に固定した状態で、針先位置に前記位置決めゲージのゲージ面を置いて、前記位置決めゲージに形成された目印を対物レンズの光軸に合わせる位置決めゲージの位置合わせ工程と、 前記位置決めゲージを前記保持部から外して、前記保持部に前記マイクロツールを固定するマイクロツールの取付工程と、 を含むことを特徴とするマイクロツールの位置決め方法。前記位置決めゲージの位置合わせ工程で前記位置決めゲージを位置合わせした状態で、前記目印にフォーカスを合わせる位置決めゲージのフォーカス調整工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロツールの位置決め方法。前記位置決めゲージは、先端部に形成された前記目印から基端側へ予め設定した所定距離だけ離間した位置に設けられたゲージ被取付部を有し、 前記マイクロツールは、前記所定距離と同一の距離だけ、当該マイクロツールの先端から基端側に離間した位置に設けられたツール被取付部を有していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロツールの位置決め方法。前記位置決めゲージは、顕微鏡のテーブルの所定位置に載置されたディッシュの内底面に対して上方向に斜めの状態で前記保持部に保持され、 前記ゲージ面は、前記位置決めゲージの先端部に平らに形成されて、位置合わせの際に、前記ディッシュの前記内底面に載置され、 前記目印は、前記ゲージ面に直交して形成されると共に、位置合わせの際に、前記光軸上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロツールの位置決め方法。前記保持部は、当該保持部に着脱可能に取り付けられた前記位置決めゲージを移動させる移動機構に設けられ、 前記移動機構は、前記位置決めゲージの先端部に形成された前記目印を中心として前記位置決めゲージを保持した前記保持部を回動させる回動機構部と、 前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部と、を備えて、前記位置決めゲージを位置合わせし、 前記位置合わせした位置決めゲージを保持した前記保持部は、前記位置決めゲージを位置合わせした状態で前記位置決めゲージの軸方向に後退させた後、前記位置決めゲージを離脱させてから前記マイクロツールを取り付けて、前記位置決めゲージの軸方向に前進させて元の位置合わせした位置に復帰させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロツールの位置決め方法。前記進退機構部は、前記位置決めゲージの位置合わせ工程で位置合わせした前記位置決めゲージを保持した前記保持部を退避させた後、前記保持部を前進させて前記位置決めゲージを位置合わせした位置に復帰させることを特徴とする請求項5に記載のマイクロツールの位置決め方法。予め設定した所定距離だけ先端から基端側に離間した位置に設けられたツール被取付部を有するマイクロツールと、 顕微鏡の視野内で、被検体に対して前記マイクロツールを用いて微細操作を行うマイクロマニピュレータと、を備えたマイクロマニピュレータ装置において、 先端部に形成された目印から基端側へ予め前記所定距離だけ離間した位置に設けられたゲージ被取付部を有する位置決めゲージ、及び、前記マイクロツールを着脱可能に保持する保持部と、 位置合わせした状態の前記位置決めゲージを保持した前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる移動機構と、 を備えていることを特徴とするマイクロマニピュレータ装置。前記移動機構は、前記位置決めゲージの先端部に形成された前記目印を中心として前記位置決めゲージを保持した前記保持部を回動させる回動機構部と、 前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載のマイクロマニピュレータ装置。

说明书全文

本発明は、例えば、精子を直接卵子に注入する顕微授精(icsi)、体外受精(ivf)、細胞、菌類、小さな動物、塵、粉体等の小さな物質等のあらゆる微小物体の実作業等に使用されるキャピラリー、ピペット、マイクロサンプリングツール、微小針、電極、ピンセット、刃物、鉗子等(以下、「マイクロツール」という)の先端部位を位置合わせや、顕微鏡のピント合わせ等に使用されるマイクロツールの位置決め方法及びマイクロマニピュレータ装置に関する。

従来、顕微授精や体外受精等を行う際には、顕微鏡と、この顕微鏡の視野内でマイクロツールの三次元移動と注入及び吸引等の微小操作をするマイクロマニピュレータと、を備えたマイクロマニピュレータ装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。

特許文献1に記載のマイクロマニピュレータ装置は、生物の器官、生体組織、細胞等の被検体(試料)を保持または移動させ、吸引、液の注入、切断等を微動操作して処理を行う際に、顕微鏡下でマイクロピペット等のマイクロツールを油圧等の液圧で微動的に遠隔操作可能にした装置である。 特に、顕微授精や、体外受精等の実作業においては、被検体に対してマイクロツールを用いて微細な操作を行う際、迅速で正確に行うことが求められている。

特許第3295836号公報

しかし、その実作業では、被検体の大きさ及びマイクロツールの針先の径が数ミクロン程度と極小であり、作業時に被検体を入れるディッシュの内底面から被検体までの距離(X,Y,Z方向の操作範囲)が極めて短いため、高さ方向の位置を調整する調整作業が行い難いという問題点があった。

特に、マイクロツールの度や、XYZ方向の位置を初期設定(針出し調節)する際や、顕微鏡のフォーカスを合わせる際には、ディッシュの内底面から設定する位置までの距離が数ミクロンで短いので、針先がディッシュ面に当接することがあり、針先が折れ曲がったり、破損したりすることがあった。このため、マイクロツールは、頻繁に交換しなければならないので、交換作業に時間がかかるという問題点があった。 また、マイクロツールの初期設定(位置決め)を行う作業は、マイクロツールの針先が極めて繊細であるため、その針先をディッシュの内底面に接触すること無く慎重に設置する必要があり、熟練と時間を要するものであった。

また、従来、複数種のマイクロツールを使用する場合は、マイクロツール毎に形状、長さ、針先位置、針の角度が変わるので、顕微鏡のフォーカスを合わせる際に、位置決め作業が難しく、時間がかかるという問題点があった。 これらの作業は、高倍率の顕微鏡で行いたいが、しかし、高倍率では当然視野が狭くなり、針先の位置合わせが益々難しくなるため、作業効率及び作業性が悪いという問題点があった。

そこで、本発明は、前記実情に鑑み創案されたものであり、マイクロツールを早く正確に簡単に位置合わせして取り付けることができるマイクロツールの位置決め方法及びマイクロマニピュレータ装置を提供することを課題とする。

前記課題を解決するために、本発明に係るマイクロツールの位置決め方法は、マイクロツールの位置決め方法であって、位置決めゲージを保持部に固定した状態で、針先位置に前記位置決めゲージのゲージ面を置いて、前記位置決めゲージに形成された目印を対物レンズの光軸に合わせる位置決めゲージの位置合わせ工程と、前記位置決めゲージを前記保持部から外して、前記保持部に前記マイクロツールを固定するマイクロツールの取付工程と、を含むことを特徴とする。 ここで、「マイクロツール」とは、医療分野、医薬分野、品種改良といったバイオ系産業分野や家畜産業や発生工学分野及び化学工業分野において、卵子、細胞、菌等の微粒子に対して、分離、分類、加工、選択、処理等の一連の操作を行う部材であって、例えば、キャピラリー、ピペット、マイクロピペット、マイクロサンプリングツール、硝子製等の電極、微小針、微細管等である。

このような構成によれば、マイクロツールの位置決め方法は、位置決めゲージを保持部に固定した状態で、針先位置にゲージ面を置いて、目印を光軸に合わせる位置合わせ工程を行った後、位置決めゲージを保持部から外して、保持部にマイクロツールを固定するマイクロツールの取付工程を行って位置決め作業をする。このため、マイクロツールは、位置決めゲージをマイクロツールの先端部近傍位置で位置合わせした後、その位置決めゲージに換えてマイクロツールを取り付けるだけで、位置決め作業が完了するので、マイクロツールをワンタッチで短時間に正確な位置及び角度に取り付けることができる。また、煩雑な位置決め作業が容易になり、位置決め作業の作業効率及び作業性を向上させることができるため、熟練の無い者であっても正確な位置合わせを迅速に繰り返し行うことが可能になる。また、マイクロツールは、位置決め作業の際に、マイクロツールを使用して直接位置決め作業を行わなくて済むため、マイクロツールが損傷するのを解消することができる。また、本発明のマイクロツールは、マイクロツールの損傷を防止するために従来から行っていた仮想位置でマイクロツールを位置合わせしてから限りなく実際に使用される極近傍位置に移動させる必要も無いので、スピーディに作業を行うことができる。

また、前記位置決めゲージの位置合わせ工程で前記位置決めゲージを位置合わせした状態で、前記目印にフォーカスを合わせる位置決めゲージのフォーカス調整工程を含むことが好ましい。

このような構成によれば、マイクロツールの位置決め方法は、目印にフォーカスを合わせる位置決めゲージのフォーカス調整工程の際に、位置決めゲージを位置合わせした状態で行われるため、フォーカス位置を容易に位置合わせすることができる。

また、前記位置決めゲージは、先端部に形成された前記目印から基端側へ予め設定した所定距離だけ離間した位置に設けられたゲージ被取付部を有し、前記マイクロツールは、前記所定距離と同一の距離だけ、当該マイクロツールの先端から基端側に離間した位置に設けられたツール被取付部を有していることが好ましい。

このような構成によれば、マイクロツールと位置決めゲージは、先端部からゲージ被取付部までの距離と、先端部からツール被取付部までの距離が同一の所定距離になっていることによって、位置決めゲージを位置合わせてしてマイクロツールに付け換えれば、マイクロツールをワンタッチで位置合わせすることが可能となる。このため、マイクロツールを位置合わせする位置決め作業は、簡素化されて容易になり、正確にかつ迅速に行うことができる。

また、前記位置決めゲージは、顕微鏡のテーブルの所定位置に載置されたディッシュの内底面に対して上方向に斜めの状態で前記保持部に保持され、前記ゲージ面は、前記位置決めゲージの先端部に平らに形成されて、位置合わせの際に、前記ディッシュの前記内底面に載置され、前記目印は、前記ゲージ面に直交して形成されると共に、位置合わせの際に、前記光軸上に配置されることが好ましい。

このような構成によれば、位置決めゲージは、位置合わせの際に、ゲージ面をディッシュの内底面に載置して、目印が光軸上に配置されることによって位置決めされる。ゲージ面は、目印に直交して形成されているので、位置決めゲージを斜めに配置しても、位置合わせの際に、目印をテーブルのディッシュの内底面上の所定位置に対して平行にセットすることができるため、位置決めゲージの位置決めを正確に行うことができる。

また、前記保持部は、当該保持部に着脱可能に取り付けられた前記位置決めゲージを移動させる移動機構に設けられ、前記移動機構は、前記位置決めゲージの先端部に形成された前記目印を中心として前記位置決めゲージを保持した前記保持部を回動させる回動機構部と、前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部と、を備えて、前記位置決めゲージを位置合わせし、前記位置合わせした位置決めゲージを保持した前記保持部は、前記位置決めゲージを位置合わせした状態で前記位置決めゲージの軸方向に後退させた後、前記位置決めゲージを離脱させてから前記マイクロツール取り付けて、前記位置決めゲージの軸方向に前進させて元の位置合わせした位置に復帰させることが好ましい。

このような構成によれば、保持部に設けられた移動機構は、目印を中心として回動可能に設けられた回動機構部を備えているので、移動機構で位置決めゲージ及びマイクロツールを回動させて傾斜させても、位置決めゲージ及びマイクロツールの先端部の位置が目印の中心位置からずれることがない。さらに、移動機構は、保持部を位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部を備えていることによって、保持部を位置決めした状態で後退させた後、保持部を前進させて元の位置決めした位置に戻すことが可能となる。このため、マイクロツールの位置決め作業を簡素化して、作業効率及び作業性を向上させることができる。移動機構で位置決めゲージ及びマイクロツールを回動させても、位置決めゲージ及びマイクロツールの先端部の位置がずれることがない。また、位置合わせした位置決めゲージを保持した保持部は、位置決めゲージを位置合わせした状態で位置決めゲージの軸方向に後退させた後、位置決めゲージを離脱させてからマイクロツールを取り付けて、位置決めゲージの軸方向に前進させて元の位置合わせした位置に復帰させることができるため、容易に位置合わせすることができる。このように、移動機構は、保持部を位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部を備えていることによって、保持部を位置決めした状態で後退させた後、保持部を前進させて元の位置決めした位置に戻すことが可能となる。このため、マイクロツールの位置決め作業を簡素化して、作業効率及び作業性を向上させることができる。

また、前記進退機構部は、前記位置決めゲージの位置合わせ工程で位置合わせした前記位置決めゲージを保持した前記保持部を退避させた後、前記保持部を前進させて前記位置決めゲージを位置合わせした位置に復帰させることが好ましい。

このような構成によれば、進退機構部は、位置合わせした位置決めゲージを保持した保持部を退避させた後、保持部を前進させて元の位置合わせした位置に復帰させることができる。このため、保持部は、位置決めゲージを位置決めした状態で後退させた後、位置決めゲージをマイクロツールに交換して取り付けることにより、X,Y,Z軸方向にずれることがないため、マイクロツール自体を直接位置合わせせずに、マイクロツールを位置決め位置に配置させることができる。これにより、マイクロツールの位置決めを簡単に、かつ、容易に行うことができる。

本発明に係るマイクロマニピュレータ装置は、予め設定した所定距離だけ先端から基端側に離間した位置に設けられたツール被取付部を有するマイクロツールと、顕微鏡の視野内で、被検体に対して前記マイクロツールを用いて微細操作を行うマイクロマニピュレータと、を備えたマイクロマニピュレータ装置において、先端部に形成された目印から基端側へ予め前記所定距離だけ離間した位置に設けられたゲージ被取付部を有する位置決めゲージ、及び、前記マイクロツールを着脱可能に保持する保持部と、位置合わせした状態の前記位置決めゲージを保持した前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる移動機構と、を備えていることを特徴とする。

このような構成によれば、本発明に係るマイクロマニピュレータ装置は、マイクロツール及び位置決めゲージを着脱可能に保持する保持部と、位置合わせした状態の前記位置決めゲージを保持した前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる移動機構と、を備えていることによって、位置合わせした位置決めゲージに対して、マイクロツールを交換して取り付けることで位置合わせができる。このため、マイクロツールをマイクロマニピュレータ装置に取り付ける際、その都度位置調整する必要がないので、マイクロツールを短時間に正確に取り付けて、迅速に位置決め作業を行うことができる。

また、前記移動機構は、前記位置決めゲージの先端部に形成された前記目印を中心として前記位置決めゲージを保持した前記保持部を回動させる回動機構部と、前記保持部を前記位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部と、を備えていることが好ましい。

このような構成によれば、移動機構は、目印を中心として保持部を回動可能に設けた回動機構部を備えていることによって、回動機構部で位置決めゲージ及びマイクロツールを回動させても、位置決めゲージ及びマイクロツールの先端部の位置がずれることがない。また、移動機構は、保持部を位置決めゲージの軸方向に進退させる進退機構部を備えていることによって、保持部を位置決めした状態で後退させた後、保持部を前進させて元の位置決めした位置に戻すことが可能となる。このため、マイクロツールの位置決め作業を簡素化して、作業効率及び作業性を向上させることができる。

本発明に係るマイクロツールの位置決め方法及びマイクロマニピュレータ装置は、マイクロツールを短時間に正確に取り付けることができる。

本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置を示す概略側面図であり、マイクロツールを取り付けたときの状態を示す。

(a)マイクロツールを示す概略平面図、(b)はマイクロツールの先端部の側面図である。

位置決めゲージを取り付けたときの状態を示す概略側面図である。

位置決めゲージを示す図であり、(a)は中央縦断面図、(b)

先端部及び後端部を示す要部拡大底面図、(c)は(a)の先端部の要部拡大図、(d)はディッシュの上の光軸上に配置した位置決めゲージの先端部の状態を示す要部拡大底面図である。

移動機構を示す一部断面を有する概略拡大

面図である。

移動機構を示す概略拡大

面図である。

図5の矢視I−I方向から見た概略

面図である。

マイクロツールの位置決め方法を示す工程図である。

(a)〜(c)は、それぞれ本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置のマイクロツールの変形例を示す概略側面図である。

本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の位置決めゲージの第1変形例を示す図であり、位置合わせした位置決めゲージに換えてマイクロツールを取り付けたときの状態を示す概略側面図である。

本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の位置決めゲージの第2変形例を示す要部拡大概略断面図である。

本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の第3変形例を示す概略斜視図である。

本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の第4変形例を示すマイクロツールの概略斜視図である。

本発明の第4変形例の長さ調整ゲージを示す拡大概略斜視図であり、(a)はマイクロツールにセット時の長さ調整ゲージの状態を示す、(b)はマイクロツールに収納時の長さ調整ゲージの状態を示す。

本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の第5変形例を示す長さ調整治具の拡大概略斜視図であり、(a)はセット時の長さ調整ゲージの状態を示す、(b)は収納時の長さ調整ゲージの状態を示す。

次に、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置を図1〜図8を参照して説明する。 なお、マイクロマニピュレータ装置1は、前記した種々のマイクロツール4を位置合わせするのに使用可能であるが、以下、顕微授精や体外受精等の実作業を行うときに使用されるキャピラリー(「ピペット」ともいう)をマイクロツール4とした場合を例に挙げて説明する。 まず、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置1を説明する前に、マイクロマニピュレータ装置1によって操作される被検体Sについて説明する。

≪被検体≫ 図2(a)に示す被検体Sは、例えば、顕微授精や体外受精等の実作業に使用される卵子であり、ディッシュ7に内底面7aに載置されてオイルや溶液(薬液)等で覆われて、マイクロツール4によって精子が被検体S(卵子)に注入される。被検体Sは、ディッシュ7の内底面7aの光軸62a上に載置される。

≪マイクロマニピュレータ装置≫ 図1に示すように、マイクロマニピュレータ装置1は、顕微授精や体外受精等を行う際に、被検体S(卵子)に精子を注入するときに使用される装置である。マイクロマニピュレータ装置1は、顕微鏡6と、顕微鏡6の視野内でマイクロツール4の三次元移動、卵子への精子の注入及び吸引等の微小操作をするマイクロマニピュレータ2と、ゲージ被取付部5cを有する位置決めゲージ5、及び、マイクロツール4を着脱可能に保持する保持部30と、位置決めゲージ5をY(Y軸)方向に位置合わせする移動機構3と、を備えている。

<顕微鏡> 顕微鏡6は、マイクロツール4の針先の位置及びマイクロツール4の角度を所定の状態に設定する位置決め作業や、マイクロマニピュレータ装置1を使用して小さな被検体Sに精子を注入する繊細な作業を行う場合に、使用される倒立式の顕微鏡装置である。顕微鏡6は、不図示の本体基台と、本体基台に設けられた支柱(図示省略)と、支柱に設けられたテーブル61と、テーブル61の下方に配置された対物レンズ62と、テーブル61の上方に配置された光源63と、光源63とテーブル61との間に配置された集光器64と、集光器64と光源63との間に介在された絞りと、を備えている。顕微鏡6の視野寸法は、例えば、低倍の40倍の場合、前後方向に図4(d)に示すように、前後左右に数ミリ程度である。なお、顕微鏡6は、正立式のものであってもよい。また、顕微鏡6は、高倍率のものであっても適用可能であるが、以下、40倍の場合を例に挙げて説明する。

テーブル61は、不図示の本体基台の支柱部に平に設けられた板状部材であり、開口部61aを有している。 対物レンズ62は、例えば、開口部61aの略中心線上のテーブル61の下方に、上向きに配置されている(なお、開口部61aの中心線上でなくても可)。対物レンズ62の光軸62aの線上には、それぞれに中心を合わせるようにしてディッシュ7、集光器64、及び光源63が配置されている。対物レンズ62は、例えば、初期ゲージ合わせの場合、4倍(視野範囲がφ5程度)のレンズが使用される。

光源63は、集光器64及びディッシュ7を介在して対物レンズ62に光を照射するランプである。 集光器64は、光源63から照射された光を、集光してディッシュ7を介在して対物レンズ62に送る装置である。

<ディッシュ> 図2(a)に示すように、ディッシュ7は、被検体Sを載せるための皿であり、例えば、円形の縁を有するペトリ皿(シャーレ)形状をしている。このディッシュ7は、硝子等の透明な部材から成る皿状部材であり、水平な内底面7aを有している。図1に示すように、ディッシュ7は、顕微鏡6のテーブル61の略中心に形成された開口部61aを閉塞するようにしてテーブル61に載置される。

<マイクロマニピュレータ> マイクロマニピュレータ2は、顕微鏡6の視野内で、被検体Sに対してマイクロツール4を用いて微細な操作を行う装置であり、顕微鏡6上に載設されている。マイクロマニピュレータ2は、マイクロマニピュレータ2の基台(図示省略)と、不図示の基台に立設された支柱(図示省略)と、基端部が支柱に回動可能に取り付けられたアーム21と、アーム21の先端部側をX軸微動機構23に取り付けるための取付部22と、マイクロツール4(位置決めゲージ5)と、位置決めゲージ5を傾斜させたり、進退(前進及び後退)させたりする移動機構3と、移動機構3をX方向に移動させるX軸微動機構23と、移動機構3をY方向に移動させるY軸微動機構24と、移動機構3をZ方向に移動させるZ軸微動機構25と、を備えている。

アーム21は、マイクロマニピュレータ2を支持する部材であり、基台(図示省略)に垂直に設けられた柱部材、あるいは、その柱部材に設けられたフレームに取り付けられている。 取付部22は、アーム21上にマイクロマニピュレータ2を載設するための部位である。

<マイクロツール> マイクロツール4は、医療分野、医薬分野、品種改良といったバイオ系産業分野や家畜産業や発生工学分野及び化学工業分野において、卵子、細胞、菌等の微粒子に対して、分離、分類、加工、選択、処理等の一連の操作を行う部材である。マイクロツール4は、例えば、キャピラリー、ピペット、マイクロピペット、マイクロサンプリングツール、硝子製等の電極、微小針、微細管等である。以下、マイクロツール4の一例として、毛細管ピペット(「マイクロピペット」ともいう。)の場合を例に挙げて説明する。

図2(a)に示すように、マイクロツール4は、毛細管ピペットを形成するツール本体41と、ツール本体41の基端側に連結されたツールホルダ本体42と、から主に構成されている。以下、マイクロツール4の一例として、ツール本体41とツールホルダ本体42とを別体にしたものを例に挙げて説明するが、マイクロツール4は、ツール本体41とツールホルダ本体42とを一体にしたものであっても構わない。

マイクロツール4は、マイクロツール4の先端から基端側に所定距離L1だけ離間した位置にツール被取付部42bを有している。ツール本体41の先端からツールホルダ本体42のツール被取付部42bまでの所定距離L1は、図4(a)〜(d)に示す位置決めゲージ5のゲージ孔5b(目印)からゲージ被取付部5cまでの予め設定した所定距離L2と同一の距離に設定されている。

図2(a)、(b)に示すように、ツール本体41は、例えば、外径が約1mm程度の細い円筒管を形成する基部41aと、基部41aの基端から先端側に向かって先細りのテーパ形状に形成された先端部41bと、を有しているガラス管から成る。 先端部41bの形状は、被検体Sに適合したものが使用されるため、被検体Sによって種々のものがあるが、顕微授精や体外受精等のときに使用されるものを例に挙げて説明する。その先端部41bは、基端側に形成されたテーパ部41cと、テーパ部41cの先端側からツール本体41の突端まで形成された繊細部41dと、テーパ部41cと繊細部41dとの間に形成された折曲部41eと、から形成されている。

繊細部41dは、例えば、基端から突端までの長さが0.5〜2mm程度(6mm程度のものもある)で、外径が10ミクロン程度の極めて繊細な管状部材から形成されている。この繊細部41dは、折曲部41eが30度に曲げて形成されていることによって、ディッシュ7の内底面7aに対して水平に沿った状態に配置される。 折曲部41eは、例えば、30度に傾いた状態で配置される基部41a及びテーパ部41cに対して、繊細部41dをディッシュ7の内底面7aに沿って水平にするために形成された折曲部位である。

このように形成されたマイクロツール4のツール本体41は、図1に示すように、先端が対物レンズ62の光軸62a上の予め設定された基準位置O1上に配置されて位置合わせされる。その基準位置O1は、後で詳述するが、ディッシュ7の内底面7aから光軸62a上に僅かに離間した高さH(図4(c)参照)の位置に設定されて、ツール本体41の先端が、ディッシュ7の内底面7aに当接しない位置となっている。

ツールホルダ本体42は、ツール本体41の基部41aの基端側を保持する固定具であり、インジェクションホルダともいわれている。ツールホルダ本体42は、円筒管42aと、円筒管42aの先端に設けられたクランプねじ42cと、円筒管42aの基端部側寄りの位置に固定されたツール被取付部42bと、を備えて構成されている。ツールホルダ本体42は、全体がステンレス鋼で形成されている。

円筒管42aは、直線形状のステンレス鋼管から成る。円筒管42aは、基端側に不図示のチューブの一端が取り付けられている。そのチューブの他端側には、加圧手段等が取り付けられる。

ツール被取付部42bは、円筒管42aに外嵌された厚板状の円板材から成り、軸芯回転方向の円周方向に360度回転可能に移動機構3の保持部30に着脱自在に保持される部位である。ツール被取付部42bは、後記する移動機構3に取り付けた位置決めゲージ5で所定位置に位置合わせした状態に移動機構3の保持部30に、ツール被取付部42bを装着した場合は、ワンタッチでマイクロツール4が所定の状態に位置合わせされるようになっている。

図2(a)に示すように、クランプねじ42cは、このクランプねじ42c内に挿入されたマイクロツール4を着脱自在に保持する部位であり、例えば、液密式コレットチャックで構成されている。例えば、液密式コレットチャックは、クランプねじ42cと、円筒管42aの先端部に内設されてツール本体41が挿入されるシール部材と、円筒管42aの先端側の外周面に形成されたテーパ雄ねじ部と、テーパ雄ねじ部に螺合されて回転させることによってテーパ雄ねじ部を介してシール部材を窄めて、円筒状のシール部材に挿入されたツール本体41を締め付けて保持するナット状部材と、を備えて構成されている。シール部材は、マイクロツール4に当接するように内設された弾性変形のし易いシリコン樹脂等の可撓性のゴムパッキンから成る。

<位置決めゲージ> 図3に示すように、位置決めゲージ5は、マイクロマニピュレータ装置1(図1参照)の移動機構3に、マイクロツール4を位置合わせした状態に取り付ける際に使用される初期設定用の治具である。この位置決めゲージ5を使用する場合は、位置決めゲージ5を移動機構3の保持部30に位置合わせした状態で保持させた後、位置決めゲージ5を離脱させて、マイクロツール4を保持部30に取り付けることによって、マイクロツール4を間接的に位置合わせできるようになっている。つまり、マイクロマニピュレータ装置1は、マイクロツール4を位置合わせする際に、マイクロツール4を直接使用せずに、位置決めゲージ5によってマイクロツール4の位置を所定位置に合わせている。

換言すると、位置決めゲージ5は、移動機構3の保持部30に、所定の位置及び角度に位置合わせした状態に取り付けた後、この位置決めゲージ5を取り外してマイクロツール4を固定したツールホルダ本体42を保持部30に付け換えることによって、マイクロツール4を直接的に位置決め作業することなく、ワンタッチで位置合わせできるようにしている。位置決めゲージ5は、マイクロツール4を位置合わせする位置決め作業を間接的に行うことによって、位置決め作業でマイクロツール4がディッシュ7の内底面7a等に当接して損傷するのを解消することができるようにした治具である。

位置決めゲージ5は、円筒管形状のゲージ本体5aと、先端部に形成されたゲージ孔5bと、マイクロツール4の先端からツール被取付部42bまでの所定距離L1と同一の距離L2だけ、ゲージ孔5bから基端側に離間した位置に設けられたゲージ被取付部5cと、ゲージ孔5bの下面に形成されたゲージ面5dと、を有している。位置決めゲージ5は、顕微鏡6のテーブル61の所定位置に形成された開口部61aを閉塞するように載置されたディッシュ7の内底面7aに対して上方向に斜めの状態で移動機構3に保持されている。

ゲージ本体5aは、外径が4mmで、長さが180mmのステンレス製の真直棒から成り、ディッシュ7の内底面7aに対して角度θ1(例えば、30度)の上方向に斜めの状態で移動機構3の保持部30に保持されている。

図4(c)に示すように、ゲージ孔5b(目印)は、位置合わせの際に、ゲージ孔5bの中心が光軸62a上に配置されて、位置決めポイントとなる孔である。ゲージ孔5bは、ゲージ本体5aの先端から基端側へ2mmの位置に形成されている。ゲージ孔5bは、ゲージ面5dの中央部の光軸62a上に、例えば、ゲージ面5dに直交して形成されたゲージ面5dからの高さHが0.5mm(例えば、0.1〜0.5mm程度)、内径が1mmの小孔5eと、小孔5eの上側に連続して形成されたテーパ形状の上側拡開孔5fと、小孔5eの下側に連続して形成されたテーパ形状の下側拡開孔5gと、を有して構成されている。小孔5eの内周縁は、フォーカス位置を位置合わせするための部位、及び、マイクロツール4の繊細部41dの先端を位置合わせするための部位であり、ゲージ面5dからの高さHの僅かに高い位置に配置されていることによって、繊細部41dがゲージ面5dに当接して損傷するのを防止している。また、小孔5eの内周縁は、縦断面視して楔形状に形成されていることによって、焦点のピントが合わせ易いため、フォーカス位置の位置合わせが行い易い形状になっている。

基準位置O1は、位置決めゲージ5を位置合わせした状態で、顕微鏡6のフォーカスを合わせる位置であって、ゲージ孔5bの小孔5eの内縁(上側拡開孔5fと下側拡開孔5gとの間の小径部位の内縁)内の中心線上にある。このため、基準位置O1は、ゲージ面5dから小孔5eの高さH分だけ、ディッシュ7の内底面7aから離れた位置に設定されている。

図3に示すように、ゲージ被取付部5cは、保持部30に着脱可能に取り付けられる部位であり、保持部30に挿入することができる板厚を有する略四角形の厚板材によって形成されている。ゲージ被取付部5cは、位置決めゲージ5の先端部のゲージ孔5bから基端側へ予め設定した所定距離L2だけ離間した位置に固定されている(図4(a)参照)。

図4(c)に示すように、ゲージ面5dは、位置決めゲージ5の先端部に、予め設定された所定角度θ1に対して平らになるように形成されて、位置合わせの際に、水平なディッシュ7の内底面7a上に載置される載置面である。ゲージ面5dは、位置合わせの際に、テーブル61(図1参照)の開口部61aを閉塞するように載置されたディッシュ7の内底面7aの光軸62a上に、ゲージ面5dの中央のゲージ孔5bを載置した状態に配置される。なお、所定角度θ1は、予め設定された複数の角度のうちの1つである。

このように形成された位置決めゲージ5は、ゲージ面5dをディッシュ7の内底面7a上に密着するように載置して、ゲージ孔5bを光軸62a上に合った状態にセットすれば、針先位置をX,Y,Z,T方向の位置を位置合わせることができると共に、角度θ1も自動的に合うように形成さている。

<移動機構> 図1または図3に示すように、移動機構3は、マイクロツール4及び位置決めゲージ5を傾斜させたり、進退(退避、復帰)させたりすることが可能な装置であって、位置決めゲージ5をY軸に直交する方向に位置合わせするための機能を有している。移動機構3は、マイクロツール4のツール被取付部42b、及び位置決めゲージ5のゲージ被取付部5cを着脱可能に保持する保持部30と、保持部30(マイクロツール4及び位置決めゲージ5)を基準位置O1を中心として上下方向(矢印a,b方向)に回動させるための回動機構部8と、保持部30(マイクロツール4及び位置決めゲージ5)を基準位置O1のT方向(矢印c,d方向)に進退させるための進退機構部9と、を備えている。

<保持部> 図3に示すように、保持部30は、この保持部30に着脱可能に取り付けられた位置決めゲージ5のゲージ孔5b内の基準位置O1を中心として回動可能に設けられた移動機構3の進退機構部9の上部に設けられている。図5に示すように、保持部30は、後記する進退機構部9の進退スライダ92上に載設されて保持部30を保持する支持ケース体31と、支持ケース体31上に摺動自在に載置されたロックスライダ32と、ロックスライダ32を付勢するばね部材33と、ロックスライダ32を摺動自在に支持するためのカバー部材34と、カバー部材34を支持ケース体31上に固定するための締結部材35と、ロックスライダ32の移動を規制するストッパ36と、を備えて構成されている。

図3に示すように、支持ケース体31は、進退機構部9の進退機構本体91上に基準位置O1方向に摺動自在に設けられた進退スライダ92上に載設されて、進退スライダ92と共に基準位置O1の方向に進退する部材である。支持ケース体31は、保持部30と、シリンダチューブ95と、を保持する機能も果たす。

ロックスライダ32は、支持ケース体31上に位置決めゲージ5が延在する方向に対して直交する方向(矢印e,f方向)に摺動自在に載置された摺動部材である。ロックスライダ32には、ゲージ被取付部5c及びツール被取付部42b(図1参照)を保持するロック溝32aと、ばね部材33が挿入されるばね挿入孔32bと、ロック溝32aによるゲージ被取付部5c及びツール被取付部42bを保持した状態を解除して着脱可能にするための操作を行う解除操作部32cと、ロックスライダ32の左右側面に形成されたガイド溝32dと、が形成されている。

ロック溝32aは、ゲージ被取付部5c及びその前後近傍のゲージ本体5aと、ツール被取付部42b(図1参照)及びその前後近傍にあるツールホルダ本体42と、が挿入されて保持される溝である。ロック溝32aは、ゲージ被取付部5c及びその前後近傍にあるゲージ本体5aの形状と、ツール被取付部42b(図1参照)及びその前後近傍にあるツールホルダ本体42の形状と、に合わせて平面視して十字形状に形成されている。ロック溝32a内に装着されたゲージ被取付部5c及びその前後近傍のゲージ本体5aは、ロックスライダ32がばね部材33によって解除操作部32c方向(矢印f方向)へ付勢されている。このため、ゲージ本体5aは、ロック溝32aの片側の側壁と、この側壁に対向する切欠溝34aの側壁とで挟持されて保持される。

図3に示すように、ばね挿入孔32bは、ロックスライダ32の上側の側面から解除操作部32c方向に向けて二箇所形成された有底の円筒孔から成る。 解除操作部32cは、ロックスライダ32において、ばね挿入孔32bとは反対側の側面部位に形成されている。解除操作部32cをばね部材33のばねに抗して押圧すると、ロックスライダ32が矢印e方向に移動して、ロック溝32aの片側の側壁と、切欠溝34aの側壁とで挟持していたゲージ被取付部5c及びその前後近傍のゲージ本体5aからロック溝32aの片側の側壁が離間されて開放状態になる。このように、解除操作部32cを押圧操作した場合は、保持していた位置決めゲージ5のゲージ被取付部5cが開放されるので、マイクロツール4に交換してツール被取付部42bを保持可能になる。

ガイド溝32dは、マイクロツール4及び位置決めゲージ5の延在する方向に対して直交する方向(矢印e,f方向)に移動可能なロックスライダ32の移動をガイドして、ストッパ36とでその移動範囲を規制するための溝である。ガイド溝32dは、ロックスライダ32の左右側面に矢印e,f方向に予め設定した所定の長さだけ形成されている。

ばね部材33は、ロックスライダ32をゲージ被取付部5c及びツール被取付部42bを保持する方向(矢印f方向)に付勢させて保持部30を保持状態にさせるために付勢する付勢部材である。ばね部材33は、左右一対のばね挿入孔32bにそれぞれ挿入される二つの圧縮コイルばねから成る。

図3に示すように、カバー部材34は、ロックスライダ32を置決めゲージ5が延在する方向に対して直交する方向(矢印e,f方向)に摺動自在に覆うように支持する部材である。カバー部材34には、切欠溝34aと、ロックスライダ32を進退可能な状態に支持するケース部34bと、ケース部34bの前後端部にそれぞれ形成されたフランジ部34cと、ケース部34bの上側側面に形成されたばね受け部34dとケース部34bの前後側面にそれぞれ形成されたストッパ設置孔34eと、が形成されている。

切欠溝34aは、カバー部材34によって覆うように配置されたロックスライダ32のロック溝32aを露出した状態にするための溝である。図3に示すように、切欠溝34aは、この切欠溝34aのT字状に形成された下側縁部と、十字状に形成されたロック溝32aの上側の側壁とによって、ゲージ被取付部5c及びその前後近傍と、ツール被取付部42b(図1参照)及びその前後近傍と、を保持する機能も備えている。

図5に示すように、ケース部34bは、支持ケース体31とで中空の角筒体を形成する金属製板部材である。 図3に示すように、フランジ部34cは、カバー部材34の左右に形成された矩形の平板状部位であり、ケース部34bの前後端部がL字状に折曲形成されている。 ばね受け部34dは、ばね部材33の上端部を受け止める部位であり、カバー部材34の上面側がL字状に折曲して形成されている。 図5に示すように、ストッパ設置孔34eは、ストッパ36が取り付けられる貫通孔であり、ケース部34bの前後側面からガイド溝32dに向けて穿設されたねじ孔から成る。

図3に示すように、締結部材35は、カバー部材34の前後に形成されたフランジ部34cの上下の4箇所を固定するように配置されている。 図5に示すように、ストッパ36は、摺動するロックスライダ32の移動範囲を規制する部材であり、雄ねじによって形成されている。ストッパ36の雄ねじ部位は、ストッパ設置孔34eの左右側面に螺着されている。ストッパ36の雄ねじ部位の先端部は、ガイド溝32d内まで進入した状態に配置されて、ロックスライダ32が所定位置まで移動すると、ストッパ36の先端部がガイド溝32dの内壁に当接してロックスライダ32の移動を抑制するように配置されている。

<進退機構部> 図5に示すように、進退機構部9は、保持部30を備えた支持ケース体31をT方向(T軸方向)に進退させて、マイクロツール4及び位置決めゲージ5の位置をT方向に退避させたり、元の位置決めした位置等に前進させて戻したりする装置である。進退機構部9は、支持ケース体31を小さくT方向に進退させることが可能な第1進退機構9Aと、第1進退機構9Aよりも支持ケース体31を大きくT方向に進退させることが可能な第2進退機構9Bと、進退機構部9の移動を抑止するストッパ機構90(図6参照)と、を備えて構成されている。

第1進退機構9Aは、例えば、不図示の油圧シリンダから進退機構操作装置の制御バルブを介してチューブ96から供給される油圧によって、保持部30を移動させる装置である。第1進退機構9Aは、保持部30に連結されたピストン(図示省略)と、ピストンを進退自在に収納したシリンダチューブ95と、シリンダチューブ95内に油圧を供給するチューブ96と、シリンダチューブ95を保持する前記支持ケース体31と、保持部30の移動を抑止する前記ストッパ機構90(図6参照)と、を備えて構成されている。

ピストン(図示省略)は、不図示の連結部材を介在して保持部30に連結されて、油圧がシリンダチューブ95に供給されることで、保持部30と一体にT方向に、例えば、10mm程度移動可能に配置されている。 シリンダチューブ95は、油圧が供給されることによって、ピストンを移動させて保持部30を進退させる進退機構駆動部である。 チューブ96は、不図示の油圧シリンダから進退機構操作装置の制御バルブを介して供給された油圧をシリンダチューブ95供給する油圧供給管である。

図6に示すように、支持ケース体31は、シリンダチューブ95を内設し、外周部にストッパ機構90のロックレバー90d及びストッパ摺動支持体90cが設けられて、第2進退機構9Bの進退スライダ92に載設されている。このため、第1進退機構9Aは、進退スライダ92に対してT方向に移動可能に設けられて、第2進退機構9Bの進退スライダ92がT方向に移動すれば共に移動する。

図5に示すように、第2進退機構9Bは、進退機構本体91と、進退機構本体91に対してT方向(基準位置O1方向)に摺動自在に設けられた進退スライダ92と、手動によって後退させた進退スライダ92を元の位置の方向に復帰させるための復帰ばね部材93と、を備えて構成されている。第2進退機構9Bは、例えば、進退スライダ92をT方向に手で引っ張って移動させることによって、マイクロツール4及び位置決めゲージ5の先端の基準位置O1からT軸の後方向へ、例えば、50mm後退可能にしている。第2進退機構9Bは、ロックレバー90dを開放した状態で手を離せば、マイクロツール4や保持部30を復帰ばね部材93のばね力で元の位置に自動復帰させる。

進退機構本体91は、進退スライダ92を支持するハウジング部材であり、上側に開口したボックス形状に形成されている。進退機構本体91は、進退スライダ92がT方向に摺動自在に挿入される開口部91aと、開口部91a内の左右内壁に形成された進退機構ガイド溝91bと、開口部91aの内壁に復帰ばね部材93を配置するためのばね部材設置溝91cと、を有している。進退機構本体91は、基準位置O1方向に向けて延設された平面視して矩形のケース体から成る。

進退スライダ92は、下側部位が、進退機構本体91の開口部91a内にT方向に摺動自在に内嵌合され、上端部が、支持ケース体31の下面に連結されている。進退スライダ92の下側部位の左右側面の前後には、進退機構ガイド溝91bに摺動自在に係合される摺動凸部92aが形成されている。 復帰ばね部材93は、進退スライダ92を引っ張って元に位置に戻す引張コイルばねから成り、一端が進退スライダ92の後側側面に固定され、他端が進退機構本体91の開口部91aの後側内壁に固定されている。

図6に示すように、ストッパ機構90は、保持部30、第1進退機構9A及び第2進退機構9BのT方向の移動を規制させる装置である。ストッパ機構90は、進退機構本体91の外壁に形成されたガイド溝90bと、ガイド溝90bの基端側にL字状に連続形成された係止溝90aと、ガイド溝90b及び係止溝90a内を摺動するストッパガイド爪90fと、ストッパガイド爪90fが設けられたストッパ摺動支持体90cと、ストッパ摺動支持体90cの上部に上下動自在に軸支されたロックレバー90dと、ロックレバー90dを上端に連結し、下端にストッパガイド爪90fを連結した連結部材90gと、を備えている。

係止溝90aは、進退機構本体91の外壁の予め設定した所定位置に形成されたロック溝であり、ガイド溝90bの基端から下方向に向けて、側面視してL字状に形成されている。 ガイド溝90bは、進退機構本体91に沿って真っすぐに延設された断面視して凹形状の溝から成る。

ストッパガイド爪90fは、ガイド溝90b及び係止溝90a内に摺動自在に配置されて、ストッパ摺動支持体90cの移動をガイドしてストッパ摺動支持体90cと一体にT方向に移動すると共に、ストッパ摺動支持体90cと一体に下降してストッパガイド爪90fが係止溝90a内に入り込むことによって、第1進退機構9A及び第2進退機構9BのT軸方向の移動を抑止する。 ロックレバー90dは、位置決めゲージ5及びマイクロツール4を軸方向であるT方向に移動可能にしたり、移動できないようにロックしたりするための回動操作レバーである。ロックレバー90dは、上側に向けて立てた状態で下側に押し込むことによって、連結部材90gを介してストッパガイド爪90fを下降させて止溝90a内に移動させて、位置決めゲージ5及びマイクロツール4の軸方向であるT軸方向の移動を抑止してロック状態にする。また、ロックレバーを押し下げてT軸方向(基端側方向及び先端側方向)に向けることによって、連結部材90gを介してストッパガイド爪90fの先端を係止溝90aから離脱させてガイド溝90bに移動させ、第1進退機構9A及び第2進退機構9Bの進退を可能にすると共に、位置決めゲージ5及びマイクロツール4をT軸方向に移動可能にする。

ストッパ摺動支持体90cは、下端部にストッパガイド爪90fをガイド溝90bに向けて突設し、上端部にロックレバー90dを軸支して、進退スライダ92に連結されて一体化されている。 連結部材90gは、ストッパ摺動支持体90cの背面(進退機構本体91の対向面)に上下動自在に配置されて、ロックレバー90dの操作に連動して上下方向に移動する。

<回動機構部> 図5に示すように、回動機構部8は、回動機構本体81と、回動機構本体81の円弧状溝部81aに回転自在に配置された複数のローラ82と、回動機構本体81の上下後端部に形成された支持突起81c(図3参照)に支持された角度調整ねじ部材83と、角度調整ねじ部材83の一端に取り付けられたノブ84と、角度調整ねじ部材83の雄ねじ部に螺合されたナット部材85と、ナット部材85の上面のベアリング収納溝85bに係合されたベアリング86と、を備えて構成されている。

図1及び図3に示すように、回動機構部8は、ノブ84を回転操作することによって、位置決めゲージ5及びマイクロツール4を、例えば、基準位置O1を中心として15〜40度傾斜できるようになっている。このように、移動機構3は、回動機構部8を回動した場合、位置決めゲージ5及びマイクロツール4の針先の先端も、同じ基準位置O1を中心として回動するように設定されている。このため、移動機構3によって位置決めゲージ5及びマイクロツール4が回動されても、基準位置O1が変動しないので、フォーカスのずれが発生しないようになっている。たとえ、フォーカス位置がずれたとしても、顕微鏡の視野内で僅かにずれる程度である。

図3に示すように、回動機構本体81には、側面視して円弧状に形成された円弧状溝部81aと、円弧状溝部81aの前側内壁及び後側内壁に形成されたローラ係合溝81bと、回動機構本体81の上下端部から後方向に向かって突出形成された支持突起81cと、回動機構本体81の下面中央部に突出形成された取付軸81dと、回動機構本体81の後端面に上下方向に延設されたナット支持溝81eと、回動機構本体81の後端部側面に形成されたナットガイド部81fと、が形成されている。

図1に示すように、円弧状溝部81aは、進退機構本体91の下面に軸支された3つのローラ82が回転自在に挿入した状態に配置される収納溝である。図3に示すように、円弧状溝部81aは、側面視して基準位置O1を中心として半径R1の円弧状に形成されている。このため、ローラ82が軸支されている進退機構本体91の進退機構部9と、進退機構部9の進退スライダ92上に設置された移動機構3の保持部30と、保持部30に固定される位置決めゲージ5、及びマイクロツール4(図1参照)とは、基準位置O1を中心として円弧状溝部81aに沿って回動して、基準位置O1の位置をずらさずに傾斜角度θ1が調整できるように構成されている。

図1に示すように、円弧状溝部81aの前側内壁に形成されたローラ係合溝81bは、前側に配置された2つのローラ82が転動自在に当接した状態に配置されて、ローラ82を、基準位置O1を中心として移動するようにガイドしている。円弧状溝部81aの後側内壁に形成されたローラ係合溝81bは、後側に配置された1つのローラ82が転動自在に当接した状態に配置されて、ローラ82を基準位置O1を中心として移動するようにガイドしている。図5に示すように、ローラ係合溝81bは、円弧状溝部81aの前側内壁の中央部と、円弧状溝部81aの後側内壁の中央部との両面に形成されたV字状溝から成る。

図3に示すように、支持突起81cは、ねじ棒形状の角度調整ねじ部材83の両端部をそれぞれ回転自在に軸支する軸孔を有する軸受部位である。 図5に示すように、取付軸81dは、回動機構本体81をマイクロマニピュレータ2に連結するための軸棒である。

ナット支持溝81eは、ナット部材85に形成された摺動突起85aが摺動自在に挿入されるガイド溝であり、回動機構本体81の後端面に上下方向に向かって直線状に延びて形成されている。ナット部材85は、ナット支持溝81eに摺動突起85aが挿入されていることによって、角度調整ねじ部材83が回転操作されても、回転せずにナット支持溝81eにガイドされて上下方向に直線移動するようになっている。

ナットガイド部81fは、ナット支持溝81eの上側縁に形成された回動機構本体81の後端面であり、進退機構本体91が基準位置O1を中心として移動した際に、ナット部材85のベアリング収納溝85bの前端面が摺接するように配置されている。

ローラ82は、側面視して略駒形状の回転体であり、V字形状に形成されたローラ係合溝81bの内壁に当接した状態に配置されている。ローラ82は、進退機構本体91の下面に片持ち梁状に固定された支軸82aに、回転自在に軸支されている。図1に示すように、例えば、3つで構成されたローラ82は、前側に配置された2つのローラ82を前側のローラ係合溝81bに係合させて、後側に配置された1つのローラ82を後側のローラ係合溝81bに係合させて配置していることによって、進退機構本体91を回動機構本体81にガタツキなく連結させることができる。

図7に示すように、角度調整ねじ部材83は、ノブ84を回転操作することによって、進退機構本体91にベアリング86を介して連結されたナット部材85を上下方向(矢印g,h方向)に移動させることで、進退機構部9の進退スライダ92を介在させて、マイクロツール4及び位置決めゲージ5を固定する保持部30を、基準位置O1を中心として上下方向に移動させるねじ棒である。角度調整ねじ部材83は、両端部が支持突起81cに回転自在に架設され、中央部に、進退機構本体91に軸支されたベアリング86を係合したナット部材85が螺合されて、下端部に、ノブ84が取り付けられている。

ナット部材85は、中央部に形成された雌ねじ部と、ナット支持溝81eに上下方向に摺動自在に係合された摺動突起85aと、ベアリング86が係合された凹部形状のベアリング収納溝85bと、を有している。 ベアリング86は、進退機構本体91の下面にベアリング取付ねじ86cによって固定された内輪86aと、前記ベアリング収納溝85bの係合された外輪86bと、外輪86bと内輪86aとの間に介在された鋼球と、を備えて構成されている。

図1に示すX軸微動機構23は、移動機構3をX方向(前後方向)に移動させる進退駆動装置であり、例えば、不図示の油圧シリンダからX方向微動操作装置の制御バルブを介してチューブ23aから供給される油圧によって、移動機構3をX方向に進退させる。 Y軸微動機構24は、移動機構3をY方向(左右方向)に移動させる進退駆動装置であり、例えば、不図示の油圧シリンダからY方向微動操作装置の制御バルブを介してチューブ24aから供給される油圧によって、移動機構3をY方向に進退させる。 Z軸微動機構25は、移動機構3をZ方向(上下方向)に移動させる進退駆動装置であり、例えば、不図示の油圧シリンダからZ方向微動操作装置の制御バルブを介してチューブ25aから供給される油圧によって、移動機構3をZ方向に進退させる。

≪作用≫ 次に、図8を主に、図1〜図7を参照しながら本発明の実施形態に係るマイクロツールの位置決め方法及びマイクロマニピュレータ装置の作用を作業工程順に説明する。

<位置決めゲージの位置合わせ工程> 図3に示すように、マイクロツール4を所定の状態にマイクロマニピュレータ装置1に取り付ける場合は、まず、始めに位置決めゲージ5を移動機構3の保持部30に取り付けて位置合わせする位置合わせ工程S1を行う。

位置合わせ工程S1では、まず、位置決めゲージ5のゲージ被取付部5cを保持部30に押し込んで固定する。位置決めゲージ5は、図1に示すY軸微動機構24のY軸微動操作装置(図示省略)を操作してY方向の位置決めゲージ5の針先位置を、ディッシュ7の内底面7a上の中央部に配置して、顕微鏡6に合った専用アダプター(図示省略)でY方向の移動を規制させて固定する。これにより、位置決めゲージ5は、所定のY方向の針先位置に位置合わせされて、Y方向の位置合わせが不要となる。

次に、Z軸微動機構25のZ軸微動操作装置(図示省略)と、X軸微動機構23のX軸微動操作装置(図示省略)とを操作して、図3に示すように、位置決めゲージ5をX,Z方向に移動させて、ディッシュ7の内底面7aの針先位置に、位置決めゲージ5のゲージ面5dを置いて、位置決めゲージ5のゲージ孔5bを対物レンズ62の光軸62aに合わせる位置合わせを行う。これにより、位置決めゲージ5は、所定のX,Z軸方向の針先位置に位置合わせされる。

続いて、移動機構3の回動機構部8と進退機構部9とで、位置決めゲージ5の傾斜角度θ1とT方向(T軸方向)の位置をわせる。位置決めゲージ5の傾斜角度θ1を合わせる場合は、ノブ84を回転操作することによって、進退機構本体91、保持部30及び位置決めゲージ5が基準位置O1を中心として上下方向(矢印a,b方向)に回動するので、傾斜角度θ1の調整を行うことができる。

位置決めゲージ5のゲージ孔5bの位置がT方向(矢印c,d方向)にずれている場合は、まず、位置決めゲージ5のゲージ孔5bに光源63からの光を当てる。位置決めゲージ5に位置を調整してゲージ孔5bの位置が光軸62a上になると、ゲージ孔5b内が光源63からの光で光るので、位置が光軸62a上に一致していることが視認できる。そして、進退機構部9の第1進退機構9Aを操作して、位置決めゲージ5をT方向に微動させて、ゲージ孔5bの中心線を光軸62a上の基準位置O1に合わせる。 これにより、位置決めゲージ5は、X,Y,Z,T方向の位置を所定の針先位置に合わすことができると共に、傾斜角度θ1も所定の角度に合わせることができる。

<位置決めゲージのフォーカス調整工程> 次に、ゲージ孔5bの小孔5eに顕微鏡6のフォーカスを合わせる位置決めゲージ5のフォーカス調整工程S2を行う。

<マイクロツールの取付工程> 続いて、ロックレバー90dを立てた状態にして押し下げて進退機構部9のロック状態を解放させる。そして、図5に示す復帰ばね部材93のばね力に抗して第2進退機構9Bの進退スライダ92、保持部30、及び位置決めゲージ5をT方向に移動させて退避させる。このため、位置決めゲージ5は、X,Y,Z方向に位置が変動せず、T方向にのみ変動する。この状態で、ロックレバー90dを操作して、進退機構部9を退避状態にロックさせる。

次に、図3に示すロックスライダ32の解除操作部32cを上方向(矢印e方向)に押圧する。すると、位置決めゲージ5を押圧して保持していたロックスライダ32のロック溝32aが位置決めゲージ5から離間されるので、位置決めゲージ5のゲージ被取付部5cを保持部30から外すことが可能になる。このようにして置決めゲージ5を保持部30から外した後、図1に示すように、保持部30にマイクロツール4のツール被取付部42bを押し込んで、マイクロツール4を保持部30に固定する。

この状態で、ロックレバー90dを操作して進退機構部9のロック状態を解放させと、図5に示す復帰ばね部材93のばね力によって、第2進退機構9Bの進退スライダ92が引き戻されることにより、保持部30及びマイクロツール4がT方向に移動されて、位置決めゲージ5を位置合わせした位置に自動復帰させる。

この場合、マイクロツール4は、位置合わせ工程S1で位置合わせしてある位置決めゲージ5のゲージ被取付部5cと同じ位置(基準位置O1からの距離L1,L2の位置)に、同様に保持部30に着脱できるツール被取付部42bが設けられている。このため、マイクロツール4は、位置合わせした位置決めゲージ5をT方向に移動させて交換して取り付けた後、元の位置合わせした位置に自動復帰させるだけで、ワンタッチで、針先位置を所定のX,Y,Z,T方向の位置と、所定の傾斜角度θ1とに合わせた状態に正確に取り付けることができる。

以上で各工程が終了する。このように、本発明のマイクロツールの位置決め方法は、マイクロツール4を間接的に位置合わせすることによって、マイクロツール4を直接的に位置合わせする位置決め作業を行わないで済む。このため、熟練を要する煩雑な作業であった位置決め作業を簡素化して正確に、かつ、短時間に位置決め作業を行うことができる。また、マイクロツール4は、位置合わせした位置決めゲージ5を移動機構3によって交換作業を行い易い位置に退避させた後、保持部30に押し込むだけ取り付けて、元の位置決めゲージ5を位置合わせした位置に自動復帰させることで、位置合わせした状態に取り付けられる。このため、位置決め作業中に針先がディッシュ7等に当接して破損するという従来の問題点を解決させて、マイクロツール4の破損によるコストを解消することが可能である。 このため、本発明は、マイクロツール4をX,Y,Z方向に移動させて位置合わせする必要がないので、熟練の無い者であっても、マイクロツール4を正確に位置合わせする位置決め作業を、容易にかつ迅速に繰り返し行えるようにすることができると共に、位置決め作業の作業効率及び作業性を向上させることができる。

[第1変形例] なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。 図9(a)〜(c)は、それぞれ本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置のマイクロツールの第1変形例を示す概略側面図である。

前記実施形態では、マイクロツール4の一例として繊細部41dの基端の折曲部41eの角度θ2を30度に曲げた形状のマイクロピペットを例に挙げて説明したが(図2(b)参照)、図9(a)〜(c)に示すように、マイクロツール4A,4B,4Cは、先端部4Ab,4Bb,4Cbの繊細部4Ad,4Bd,4Cdを被検体Sの状況に応じて適宜な角度θ21,θ22,θ23に曲げて形成したものであっても構わない。

特に、繊細部4Ad,4Bd,4Cdと、テーパ部4Ac,4Bc,4Ccとを含む先端部4Ab,4Bb,4Cbは、操作の際に、ディッシュ7の中で水平に保っておくことが必要な場合に、角度θ21〜θ23が鈍角に曲がっていると、先端部位を水平に保ち易くなる。つまり、マイクロツール4A,4B,4Cは、繊細部4Ad,4Bd,4Cdを120〜160度程度(θ21〜θ23)に曲げることによって、基部4Aa,4Ba,4Caを斜めにしても、繊細部4Ad,4Bd,4Cdの先端側が水平な状態になるので、ディッシュ7の内底面7aに沿って配置することができるため、先端部4Ab,4Bb,4Cbの位置決め作業や、注入作業が行い易くなる。 また、図9(a)に示すように、基部4Aaの長さL3、基部4Aaから真っすぐに延びる繊細部4Adの傾斜部分の長さL4、及び、繊細部4Adの水平部分の長さL5は、適宜変更しても構わない。

図10は、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の位置決めゲージの第1変形例を示す図であり、位置合わせした位置決めゲージに換えてマイクロツールを取り付けたときの状態を示す概略側面図である。 図10に示すように、位置決めゲージ5Aは、マイクロツール4Aのツール被取付部42Abに合ったゲージ被取付部5Acと、マイクロツール4Aの曲がった繊細部4Adに合ったゲージ面5Adと、マイクロツール4Aの先端部4Abに合った位置にあるゲージ孔5Abと、を備えて、マイクロツール4Aの曲がった針先の形状に合わせて先端部を曲げたものを使用してもよい。 このように、位置決めゲージ5Aは、マイクロツール4Aの形状に合った針先形状と、ゲージ被取付部5Acとを有したものを使用すれば、位置合わせした位置決めゲージ5Aに換えてマイクロツール4Aを保持部30に装着することにより、マイクロツール4AのX,Y,Z,T方向の位置及び傾斜角度θ1を正確に合わせることが可能である。

[第2変形例] 図11は、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の位置決めゲージの第2変形例を示す要部拡大概略断面図である。 図11に示すように、位置決めゲージ5Dは、先端部5Dhを、ねじ手段5Di等によってケージ本体5Daに着脱自在にしてもよい。また、位置決めゲージ5Dの先端部5Dhの下面には、ゲージ孔5Dbに合致する第2ゲージ孔51bと、ゲージ面51dと、を有する交換式のプレート51を、ねじ部材52等によって着脱自在に設けてもよい。 このように構成すれば、位置決めゲージ5D及びプレート51は、長さや形状が相違するものに適宜交換して、所望の長さや形状ものにすることが可能となる。 また、位置決めゲージ5Dは、先端部5Dhやゲージ面51dが損傷した場合に、位置決めゲージ5Dの先端部5Dhやプレート51のみを交換すればよい。 また、図9(a)に示す繊細部4Adの水平部分の長さL5が0.5〜2mm程度のものは、図10示す位置決めゲージ5Aでもカバーすることができるが、長さK5がそれ以上長いものは、図10でも対応できない。このような場合、図11に示す位置決めゲージ5Dや、プレート51等に交換することにより、繊細部4Adの水平部分の長さL5を調整することができる。また、交換式のプレート51は、十字線や、他形状の目印等を入れてもよい。

[第3変形例] 図12は、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の第3変形例を示す概略斜視図である。 図12に示すように、ツールホルダ本体42の先端にツール本体41を取り付けたマイクロツール4は、ツール本体41の先端からツール被取付部42bまでの距離L1を所定の長さに揃える場合、定規状の目盛43aを有する長さ調整ゲージ43を使用してもよい。 長さ調整ゲージ43は、マイクロツール4を支持する支持溝43b,43c,43dと、例えば、mm単位で付記された目盛43aと、を有するケース体から成る。目盛43aは、ツール本体41が支持される拡開した支持溝43bの縁の長さ調整ゲージ43の上面に設けられる。支持溝43cは、ツールホルダ本体42が支持される部位である。支持溝43dは、ツール被取付部42bが支持される部位である。

マイクロツール4は、ツール被取付部42bを支持溝43dに係合させて長さ調整ゲージ43に載置し、ツール本体41の先端を目盛43aの「0」に合わせることにより、ツール本体41の先端からツール被取付部42bまでの距離L1を所定の長さに揃えることができるようになっている。

[第4変形例] 図13は、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の第4変形例を示すマイクロツールの概略斜視図である。図14は、本発明の第4変形例の長さ調整ゲージを示す拡大概略斜視図であり、(a)はマイクロツールにセット時の長さ調整ゲージの状態を示す、(b)はマイクロツールに収納時の長さ調整ゲージの状態を示す。

図13、図14(a)、(b)に示すように、長さ調整ゲージ44は、マイクロツール4に取り付けたものであってもよい。 この場合、長さ調整ゲージ44は、円筒管42aの先端位置に外嵌される筒状部材45と、筒状部材45の左右の支持溝45aの中央部位に形成された軸支穴45bに基端部が前後方向に回動自在に軸支された長さ合わせ部材46と、を備えて構成されている。 筒状部材45は、円筒管42aの先端のクランプねじ42cに当接する位置に外嵌される。長さ合わせ部材46は、全体が平面視して略U字状(略凹部形状)に折曲形成された針金部材によって形成されている。長さ合わせ部材46には、基端部に形成された左右一対の軸部46aと、軸部46aから前側に向けてT軸に沿って平行に形成された規定寸法部46bと、規定寸法部46bの先端部から下方向に向けて折曲された折曲部46cと、折曲部46cから下方向に向けて凹形状に形成された凹状部46dと、が形成されている。

規定寸法部46bは、軸部46aから折曲部46cまでの長さL6が所定の寸法に形成されている。この規定寸法部46bを図13及び図14(a)に示すように、前側方向(矢印i方向に倒した状態)に向けて配置した場合、マイクロツール4は、繊細部41dの先端を左右の折曲部46c間上に一致させることによって、ツール本体41の先端からツール被取付部42bまでの長さが距離L1になるようになっている。規定寸法部46bは、使用しない場合、図14(b)に示すように、基端側(矢印j方向)に回動させた収納位置の状態に回動させておく。

[第5変形例] 図15は、本発明の実施形態に係るマイクロマニピュレータ装置の第5変形例を示す長さ調整治具の拡大概略斜視図であり、(a)はセット時の長さ調整ゲージの状態を示す、(b)は収納時の長さ調整ゲージの状態を示す。

前記第4変形例の長さ調整ゲージ44は、図15(a)、(b)に示す長さ調整ゲージ47のように、長さ合わせ部材49を筒状部材48に対してT方向(矢印k,m方向)に摺動自在に配置してもよい。 この場合、長さ合わせ部材49は、第4変形例の長さ合わせ部材46と略同一形状に形成されている。つまり、長さ合わせ部材49は、筒状部材48にT方向に向けて形成された貫通孔48aの開口縁に長さ合わせ部材49の後端に設けた係止部49a、及び前端の凹状部49d(折曲部49c)が当接するにより、進退できる長さが規制されるようになっている。長さ調整ゲージ47は、図15(a)に示すように、長さ合わせ部材49を先端側へ引き出せば、マイクロツール4の先端からツール被取付部42bまでの長さが距離L1になるようになっている。そして、マイクロツール4を使用しない場合は、図15(b)に示すように、長さ合わせ部材49を基端側方向(矢印m方向)に押し込んで収納状態にする。

≪その他変形例≫ また、前記実施形態では、位置決めゲージ5にゲージ孔5bを形成してその中心を光軸62aに合わせて配置する場合を説明したが、ゲージ孔5bは、位置合わせするときの目印になるものであればよく、例えば、ポイントや、目盛等の目印であっても構わない。 また、ゲージ孔5bは、位置合わせの際に、位置決めポイントとなる孔であればよく、ゲージ孔5b内の形状は適宜変更しても構わない。ゲージ孔5bは、例えば、ストレート形状の孔や、上側にテーパ形状の上側拡開孔5fを有し、その下側がストレート形状の孔や、ゲージ孔5b内が段差形状になっている孔であってもよい。

また、前記実施形態では、キャピラリーから成るマイクロツール4を位置合わせする場合を例に挙げて説明したが、あらゆる分野の棒状部材や管状部材の位置合わせであっても適宜適用することが可能である。

1 マイクロマニピュレータ装置 2 マイクロマニピュレータ 3 移動機構 3a 保持部 4,4A,4B,4C マイクロツール 5,5A,5B,5C,5D 位置決めゲージ 5b,5Ab,5Bb,5Db ゲージ孔(目印) 5c,5Ac ゲージ被取付部 5d,5Ad,51d ゲージ面 6 顕微鏡 7 ディッシュ 7a 内底面 8 回動機構部 9 進退機構部 9A 第1進退機構(進退機構部) 9B 第2進退機構(進退機構部) 30 保持部 42b ツール被取付部 61 テーブル 61a 開口部 62 対物レンズ 62a 光軸 L1,L2 所定距離 S 被検体 S1 位置決めゲージの位置合わせ工程 S2 位置決めゲージのフォーカス調整工程 S3 マイクロツールの取付工程

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