Fluorine resin composite material, cookware, cooker, oa equipment for roller, for oa equipment belt and methods for their production

申请号 JP2009520441 申请日 2008-06-11 公开(公告)号 JP5401723B2 公开(公告)日 2014-01-29
申请人 住友電工ファインポリマー株式会社; 发明人 一秋 池田; 信賢 松下; 良昌 鈴木;
摘要
权利要求
  • 金属製の基材上にフッ素樹脂層が形成されたフッ素樹脂複合材であって、
    略平板状の 金属製の基材上にフッ素樹脂層を形成し電子線照射して、
    前記フッ素樹脂層のフッ素樹脂を架橋するとともに、
    前記フッ素樹脂層を通して前記 金属製の基材まで電子線照射の電子線を達せさせて 金属製の基材とフッ素樹脂層の接着力を向上させ、
    その架橋された状態で、前記 金属製の基材が所望の形状に機械加工されていることを特徴とするフッ素樹脂複合材。
  • 前記フッ素樹脂が、PFA、PTFE、FEP、もしくは前記PFA、PTFEおよびFEPの中から選ばれる2種または3種の混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂複合材。
  • 前記フッ素樹脂層の肉厚が、70μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂複合材。
  • 前記電子線照射の照射量が、1kGy〜500kGyであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材。
  • 前記機械加工が、プレス加工又はへらしぼりであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材。
  • 前記 金属製の基材が、アルミニウム、アルミニウム合金もしくはステンレスのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材。
  • 前記フッ素樹脂層は、表面処理が施されていない前記 金属製の基材上に形成されており、かつ碁盤目試験(JIS−K−5400、1998年度版)において、100回の粘着テープ引き剥がし後においても、剥がれないことを特徴とする請求項6に記載のフッ素樹脂複合材。
  • 請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材からなることを特徴とする調理器具。
  • 請求項8に記載の調理器具を備えたことを特徴とする調理器。
  • 未架橋のフッ素樹脂を略平板状の 金属製の基材上にコーティングした後、前記フッ素樹脂を、その融点以上の温度に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して架橋させるとともに、
    前記フッ素樹脂層を通して前記 金属製の基材まで電子線照射の電子線を達せさせて 金属製の基材とフッ素樹脂層の接着力を向上させた後、前記 金属製の基材を所望の形状に機械加工したことを特徴とするフッ素樹脂複合材の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、フッ素樹脂複合材、およびこのフッ素樹脂複合材を用いた調理器具、調理器、並びに複写機の定着ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、帯電ローラ、現像ローラなどとして用いられるOA機器用ローラ、および定着ベルト、定着部用ベルトや転写ベルト、転写定着ベルトなどとして用いられるOA機器用ベルトに関し、さらにそれらの製造方法に関するものである。

    PTFE等のフッ素樹脂は、その優れた非粘着性、耐熱性や耐薬品性から、炊飯器やホットプレート、フライパン等の調理器具、調理器のコーティング、複写機などのOA機器の定着ローラのトップコート被覆層の材料として多用されている。 PTFE等のフッ素樹脂が優れた耐熱性と耐薬品性を持つ理由は、下記構造式においてC−F間の結合は有機物質の中で最も強く(116kcal/mol)、フッ素原子(F)が炭素鎖を緊密に被ってC−C結合を保護しているためである。 また、非粘着性が優れるのは、分子内の原子配列が対称であるため電荷の分極が極めて小さく、かつ、分子間凝集力が小さく、表面エネルギーが著しく低いためである。

    しかしながら、フッ素樹脂はこれら極めて優れた物性を持ちながらも、耐摩耗性が良くないという欠点がある。 それは、表面エネルギーが低くフッ素原子間(F−F)間の凝集力が弱いため、容易く分子が剥がれてしまうためである。

    この問題を改善するため、現在市販されているフッ素樹脂は、重合度が1万〜数十万、分子量としては100万〜数千万程度と、非常に長い分子鎖として、フッ素樹脂間の結びつきを高めることでこの弱点を補っているが、成形性等の問題(流動性の低下)等で分子量をこれ以上大きくすることは難しく、結果として十分な特性が得られていない。 また、非粘着性が優れるため、その基材との密着性が加工上の問題となる。 この対策として、基材がアルミニウム等の金属の場合、エッチング処理等を行って基材に凹凸を付けたり、プライマー等の接着層を設ける等の追加の工程が必要になる。

    しかし、近年、融点以上、脱酸素雰囲気で電子線照射することで、今まで電子線崩壊型ポリマーの代表とされてきたフッ素樹脂を架橋させる技術が見出された(特許文献1、2)。 フッ素樹脂が架橋されると、上述のフッ素原子間(F−F)間の凝集力が弱いため容易く分子が剥がれてしまうという問題に対し、下記構造式に示すように、架橋によりフッ素原子が三次元網目構造となって、高分子鎖が互いに強く結び付き、耐摩耗特性が飛躍的に向上することが解っている。

    特許第3587071号公報

    特許第3587072号公報

    しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術は、フッ素樹脂の粉体を浮遊させながら電子線照射して架橋させるため、フッ素樹脂のディスパージョン(サブミクロンオーダの粒径のフッ素樹脂をに分散させたもの)に適した小さな粒径のフッ素樹脂が得られない。 また粉砕しても、サブミクロンオーダの粒径のフッ素樹脂にすることは一般的に困難である。 このため、フッ素樹脂の薄膜コーティングで一般に用いられているディスパージョンの原料としては不適切なものであった。 従って、この技術で得られたフッ素樹脂を利用した、フッ素樹脂ディスパージョンを用いて調理器具に適した薄膜のフッ素樹脂層(コーティング被膜)を形成することは困難であった。 また、定着ローラのトップコート被膜を形成したり、転写ベルトや転写定着ベルトの表層を形成することも困難であった。

    例えば定着ローラは、記録紙へ転写されたトナーを定着するためのものであり、転写ベルトは記録紙にトナーの転写を行うためのものであるため、定着ローラのトップコート被膜や転写ベルトの表層の材料には、優れた離トナー性を有することからフッ素樹脂が好ましく用いられる。

    一方、フッ素樹脂層は、上記説明したように、耐摩耗性に弱いという問題がある。 このため、定着ローラ、転写ベルトがそれぞれ数十万枚の記録紙へのトナー定着処理、トナー転写処理を行った場合、記録紙と定着ローラ、転写ベルトとの間に生じる摩擦により、フッ素樹脂層が摩耗し、表面粗度が低下(トナー等が詰まり離トナー性が低下)するなどの不具合が発生する。 あるいは、記録紙の両側エッジが当たる部分のフッ素樹脂層が削れるという不具合も発生する。 このため、フッ素樹脂層の肉厚を充分確保しておく必要があり、定着ローラのトップコート被膜や転写ベルトの表層の肉厚を薄くすることが困難であった。

    更に、記録紙へ転写されたトナーを定着する機能を有する定着ローラや転写定着ベルトの場合は、それぞれ内部に配置されているヒータにて加熱された状態で使用される。 印刷速度が速い複写機の場合、定着ローラや転写定着ベルトの熱が多数の記録紙に奪われ、定着ローラや転写定着ベルトの温度が低下し易くなる。 従って、定着ローラや転写定着ベルトの温度が低下しないように、ヒータの熱が効率よく伝わるように定着ローラや転写定着ベルトの肉厚を薄くしたり、あるいは、ヒータの加熱温度を上げたりする必要がある。

    前記定着ローラ、転写ベルトおよび転写定着ベルトの課題に対する対策として、微細なガラス粉などのフィラーをフッ素樹脂に混合して耐摩耗性を向上させ、フッ素樹脂層の肉厚を薄くする方法が考えられる。 しかし、フッ素樹脂層の非粘着性と表面粗度が大幅に低下するという新たな問題が生じる。

    一方、ヒータの加熱温度を上げると、弾性層のゴムが劣化したり、フッ素樹脂層が熱劣化して耐摩耗性が一層悪くなるという問題もあった。 また、ベルトに弾性を持たせるために、シリコン等の柔らかい中間層を設けているが、表層のフッ素樹脂の肉厚が厚くなると、ベルト全体の柔軟性を妨げてしまう。

    そこで、本発明は、フッ素樹脂の特長である非粘着性を維持したまま、耐摩耗性を向上させたフッ素樹脂層を有するフッ素樹脂複合材、調理器具、調理器およびそれらの製造方法を提供することを第1の課題とする。

    また、フッ素樹脂の特長である非粘着性を維持したまま、耐摩耗性および耐熱性を向上させたフッ素樹脂層を有するOA機器用ローラまたはOA機器用ベルト、並びにそれらの製造方法を提供することを第2の課題とする。

    本発明者は、鋭意検討の結果、フッ素樹脂層の形成方法を工夫することにより、上記課題が容易に解決されることを見出し、本発明を完成した。

    更に、本発明者は鋭意検討の結果、耐摩耗性の向上と同時に、フッ素樹脂をコーティング後、基材または中間層(以下両方をまとめて基材等ともいう)まで電子線を届かせることで、基材等との密着性も大幅に向上させることを見出した。
    なお、以下に記載する請求項1〜請求項7の発明は、本発明の第1の態様および第2の態様に共通の態様である。 また、請求項8〜請求項10の発明は、本発明の第1の態様であり、請求項11〜請求項21の発明は本発明の第2の態様であり、第1の態様、第2の態様はそれぞれ前記第1の課題、前記第2の課題を解決する態様である。
    以下、各請求項の発明について説明する。

    請求項1に記載の発明は、
    基材上にフッ素樹脂層が形成されたフッ素樹脂複合材であって、前記フッ素樹脂層のフッ素樹脂が電子線照射により架橋された状態で、前記基材が所望の形状に機械加工されていることを特徴とするフッ素樹脂複合材である。

    本請求項の発明では、フッ素樹脂が架橋されているため、フッ素樹脂層の非粘着性を維持したまま、フッ素樹脂層の耐摩耗性を向上させることができる。

    従来のフッ素樹脂の電子線照射による架橋技術では、粒径の大きいフッ素樹脂しか得られないため、調理器具に適した薄膜のフッ素樹脂層の形成が困難である。 即ち、薄膜のフッ素樹脂層は、ディスパージョンと呼ばれる、水に0.1μm〜数μmの小さなフッ素粒子を分散させた液を用い、それをスピンコート法、ディップ法、スプレー法などで被処理面にコーティング後乾燥させ、焼成(粒子を溶融させフッ素の膜とする)することで形成することが好ましい。 しかしながら、フッ素樹脂の粒径が大きいと、ディスパージョン中で粒子が沈降したり、ノズルが詰まったりするなど、コーティングが難しくなる。 また、コーティングできたとしても、表面状態がそのフッ素粒子の大きさに影響されるため平滑な面とすることが難しくなる。

    これに対して、本請求項の発明においては、通常の粒径の小さい未架橋のフッ素粒子の入ったディスパージョンを用いて、例えば略平板状の基材上にフッ素樹脂層を形成する。 従って、調理器具に適した薄膜のフッ素樹脂層を容易に形成することができる。

    さらに、調理器具の製造において従来一般的に適用されているフッ素樹脂層の形成方法では、フッ素樹脂層の全面に亘り電子線を照射することが困難である。
    即ち、調理器具のコーティング被膜の形成方法としては、基材をプレス成形して所定の形状にした後、スプレー等でフッ素樹脂をコーティング・焼成する方法(以下、機械加工の後にフッ素樹脂をコーティングする方法を「アフターコート法」と称する)が一般的に採用されている。 このアフターコート法で製造された調理器具に、電子線を照射してフッ素樹脂を架橋し、耐摩耗性を向上させようとした場合、例えば、炊飯器やフライパン等水平な底内壁と略垂直な側内壁をコーティングしているフッ素樹脂層を同時に電子線照射することは困難である。

    即ち、電子線の照射方向に対して垂直に位置するコート面のフッ素樹脂層は、その肉厚方向が電子線透過方向と一致するため、フッ素樹脂全体を電子線照射できる。 ところが、機械加工を施して得られた略垂直な面、即ち電子線の照射方向に対して平行に位置するコート面のフッ素樹脂層は、その肉厚方向が電子線透過方向と一致しないため、フッ素樹脂の一部分(電子線照射装置に面する側の部分)しか電子線照射できないからである。

    これに対して、本請求項の発明においては予め基材上にフッ素樹脂層を形成した後、基材に機械加工を施す前に電子線照射が行われる。 (このように、機械加工の前にフッ素樹脂をコーティングする方法を「プレコート法」という。)
    前記のように、基材が略平板状の為、フッ素樹脂層の全面を電子線の照射方向に対して垂直に位置するようにできる。 つまり、フッ素樹脂層全体の肉厚方向が電子線透過方向と一致するため、フッ素樹脂層を全面に亘り電子線照射することが可能となり、フッ素樹脂層の耐磨耗性に優れた調理器具とすることができる。
    しかも、電子線照射という単純な方法で高速に架橋することができるので、効率良く調理器具を製造することができる。 なお、基材としては主として金属製の基材が適用される。

    請求項2に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂が、PFA、PTFE、FEP、もしくは前記PFA、PTFEおよびFEPの中から選ばれる2種または3種の混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂複合材である。

    本請求項の発明では、フッ素樹脂として、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)やFEP(フルオリネーティッドエチレンプロピレン樹脂)もしくはこれらの中から選ばれる2種または3種の混合物を用いることにより、耐熱性および耐ストレスクラック性に優れたフッ素樹脂薄膜が得られる。

    請求項3に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂層を通して前記基材まで、電子線照射の電子線が達していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂複合材である。

    本請求項の発明のように、基材上の予め架橋していないフッ素樹脂を、フッ素樹脂層を通して基材まで達する電子線照射により架橋すると、電子線が基材まで達していない場合と比較して、基材とフッ素樹脂層との接合力が大幅に向上する。 基材との密着性が向上する理由として、電子線照射により、主鎖もしくは側鎖の切断が起こり、特にフッ素樹脂の温度を融点以上の高温とした場合は活発なラジカルが発生、酸素等容易に結びつき易い物質がないため、このラジカルが基材と結びつくと考えている。 なお、例えば形成するフッ素樹脂層の厚さに応じて電子線照射における加速電圧を調節することにより電子線を基材まで到達させることができる。

    請求項4に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂層の肉厚が、70μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材である。

    例えば、炊飯器、フライパン、鍋等において、フッ素樹脂層は、一般的に70〜120μm程度の肉厚が必要とされている。 しかし、フッ素樹脂層の肉厚を厚くすると、フッ素樹脂層を焼成する際にクラックが生じる心配がある。 そこで、フッ素樹脂を複数回に分けてコーティングして多層コーティングとすることが多かったが、加工費や材料費の上昇を招いていた。

    本請求項の発明は、電子線照射による架橋で、フッ素樹脂層の耐摩耗性を向上できるため、耐摩耗性を維持しながらフッ素樹脂層の肉厚を、70μm以下まで薄膜化することができる。 この結果、単層コーティングができるようになったり、多層コーティングの層数が少なくて済むようになったりして、加工費や材料費を低減することができる。 また、熱伝導性や生産性等の点から、フッ素樹脂層の肉厚は30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましいが、このような薄膜でも耐摩耗性が達成される。

    さらに、電子線がフッ素樹脂を透過する距離は、電子線の加速電圧とフッ素樹脂の比重で決定される。 比重はフッ素樹脂固有のものであるため、架橋処理をするフッ素樹脂層の肉厚が決まれば、必要な加速電圧が決まる。 そして、電子線がフッ素樹脂を透過する距離は、加速電圧が高くなるにしたがって長くなる。 つまり、フッ素樹脂層の肉厚が厚くなればなるほど、フッ素樹脂層全体を架橋するために必要な加速電圧は大きくなり、大規模で高価な電子線照射装置が必要となる。

    本請求項の発明は、電子線照射による架橋で、フッ素樹脂層の耐摩耗性を向上できるため、耐摩耗性を維持しながらフッ素樹脂層の肉厚を、70μm以下、好ましくは30μm以下、さらには10μm以下まで薄膜化することができるため、加速電圧が60kVの超小型汎用の安価な電子線照射装置で架橋が可能となる。

    請求項5に記載の発明は、
    前記電子線照射の照射量が、1kGy〜500kGyであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材である。

    本請求項の発明では、電子線照射の照射量を1kGy〜500kGyとすることにより、確実にフッ素樹脂を架橋することができ、また、過剰な照射によるフッ素樹脂の高分子鎖の切断を抑制することができる。

    なお、電子線照射の照射量を50kGy以上とすると、架橋密度が高くなり耐摩耗性を向上させることができる。 一方300kGy以下とすると膜の伸びを保つことができ、プレス等の加工でクラック等の発生を抑制することができる。 また、300kGyを超えるとポリマーの分解が進み耐摩耗性が低下する。 このため、電子線の照射線量は50kGy以上、300kGy以下とすることが好ましい。

    請求項6に記載の発明は、
    前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金もしくはステンレスのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材である。

    本請求項の発明は、基材をアルミニウム、アルミニウム合金もしくはステンレスとすることにより、プレスやへら絞りなどの機械加工がし易く、かつ軽量の調理器具の材料となる。

    請求項7に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂層は、表面処理が施されていない前記基材上に形成されており、かつ碁盤目試験(JIS−K−5400、1998年度版)において、100回の粘着テープ引き剥がし後においても、剥がれないことを特徴とする請求項6に記載のフッ素樹脂複合材である。

    本請求項の発明においては、基材を表面処理しなくても、基材との接合が強いフッ素樹脂層が得られるため、製造が容易なフッ素樹脂複合材を提供することができる。
    なお、前記記載の「剥れない」とは、前記JIS−K−5400、1998年度版に規定する評価点数が10点であることを意味する。

    請求項8に記載の発明は、
    請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂複合材からなることを特徴とする調理器具である。

    フッ素樹脂は非粘着性に優れており、食材が炊飯器やフライパン等に付着しにくいという特長がある反面、基材との接着強度が弱いという欠点があり、その対策として、従来より基材の表面をエッチングする技術(特許第1239856号)や、プライマー層(接着層)を用いることが提案されているが、十分とは言えず、コストアップの要因となっていた。
    これに対して、本請求項の発明に係る調理器具は、前記フッ素樹脂複合材からなるため、従来欠点とされていた基材とフッ素樹脂層との接合力、コスト共に優れた調理器具となる。

    請求項9に記載の発明は、
    請求項8に記載の調理器具を備えたことを特徴とする調理器である。

    本請求項の発明は、請求項8に記載の特長を備えた優れた調理器である。

    請求項10に記載の発明は、
    未架橋のフッ素樹脂を基材上にコーティングした後、前記フッ素樹脂を、その融点以上の温度に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して架橋させた後、前記基材を所望の形状に機械加工したことを特徴とするフッ素樹脂複合材の製造方法である。

    本請求項の発明では、未架橋のフッ素樹脂を基材上にコーティングした後、フッ素樹脂をその融点以上の温度に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して架橋させるため、従来困難であった架橋しているフッ素樹脂薄膜の基材上への形成が容易となる。 予め架橋していないフッ素樹脂は、粒径が小さい粉末とすることができるため、フッ素樹脂ディスパージョンの原料として使用することができ、予め架橋している粒径の大きいフッ素樹脂を使用しないため、薄膜形成ができる。

    例えば、板状の基材表面上に、フッ素樹脂ディスパージョン(未架橋のフッ素樹脂を水に分散させたもの)をスピンコーティングして薄膜状のフッ素樹脂を形成する。 スピンコーティングとは、基材を回転させて、フッ素樹脂ディスパージョンを基材中央部に滴下して遠心力で拡げ、基材表面上に均一の肉厚のフッ素樹脂薄膜を形成することをいう。 次に、フッ素樹脂を加熱して焼成し、そのフッ素樹脂をその融点以上の温度に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して架橋させる。 次に、基材およびフッ素樹脂を冷却した後、基材を所望の形状に機械加工する。 機械加工は、プレスやへら絞りで炊飯器の内釜やフライパンを成形することである。 こうして、フッ素樹脂の特長である非粘着性を維持したまま、耐摩耗性および接着強度を向上させることができる調理器具を容易に製造することができる。 なお、架橋密度を高めるためには低酸素雰囲気の酸素濃度を、1000ppm以下にすることが好ましく、500ppm以下にすることがより好ましい。 また、一方で酸素濃度を低くし過ぎても好ましくない。 具体的には窒素ガス雰囲気などを好ましく用いることができる。

    請求項11に記載の発明は、
    環状の基材上にフッ素樹脂層を形成してなるOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトであって、前記フッ素樹脂層は電子線照射により架橋されていることを特徴とするOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明では、フッ素樹脂を電子線照射により架橋させ、フッ素樹脂の非粘着性を維持したまま、フッ素樹脂層の耐摩耗性を向上させている。 そのため、フッ素樹脂層の肉厚を薄くでき、定着ローラや転写定着ベルトにおいて、内部に設置されているヒータの熱が効率よく伝わる。 例えば、フッ素樹脂層の肉厚が10μmであれば、定着ローラ内や転写定着ベルト内に設置されているヒータの熱は40%が損失される。 しかし、肉厚が5μmであれば、20%の損失で済む。 従って、ヒータの加熱温度を上げなくても印刷速度を向上させることができる。

    また、前記ヒータの温度を上げると、熱劣化が生じ耐摩耗性が低下する。 しかし、本請求項の発明では、フッ素樹脂を電子線照射により架橋させることにより、フッ素樹脂層の耐熱性を向上させることができる。 フッ素樹脂が架橋すると、融点がなくなり、溶けなくなるからである。 さらに、本発明では、電子線照射により基材とフッ素樹脂を接着させるため、接着層(プライマー)が不要となり、大幅にOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトの熱伝導率を上げることができる。

    上記技術は、他のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトにも適用することが可能である。 OA機器用ローラとは、定着ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、帯電ローラ、現像ローラなどをいう。 また、OA機器用ベルトとは、転写ベルトおよび転写定着ベルトおよび定着ベルトのように定着部に用いられる定着部用ベルトなどをいう。

    請求項12に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂層が、PFA、PTFE、FEP、もしくは前記PFA、PTFEおよびFEPの中から選ばれる2種または3種の混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項11に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明では、フッ素樹脂として、PFAやPTFEやFEPもしくはこれらの中から選ばれる2種または3種の混合物を用いることにより、耐熱性および耐ストレスクラック性に優れたフッ素樹脂薄膜が得られる。

    請求項13の発明は、
    前記フッ素樹脂層を通して前記環状の基材まで、電子線照射の電子線が達していることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    前記したように、基材上の予め架橋していないフッ素樹脂を、フッ素樹脂層を通して基材まで達する電子線照射により架橋すると、電子線が基材まで達していない場合と比較して、基材とフッ素樹脂層との接合力が大幅に向上する。 このため、本請求項の発明においては、基材とフッ素樹脂層とが強固に接合されたOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトを提供することができる。

    請求項14に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂層の肉厚が、20μm以下であることを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明は、電子線照射による架橋で、フッ素樹脂層の耐摩耗性を向上できるため、フッ素樹脂層の肉厚を耐摩耗性を維持しながら、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくはローラにおいては3μm以下、一方ベルトにおいては7μm以下まで薄膜化することができる。 従って、ローラや転写定着ベルトの熱伝導性を高めることができ、前記ヒータの温度を上げずに済むため、フッ素樹脂層の熱劣化を抑制することができる。 また、加工費および材料費の削減が可能となる。 さらに、20μm以下の肉厚であれば、加速電圧が60kVの超小型汎用の安価な電子線照射装置で架橋が可能となる。

    請求項15に記載の発明は、
    前記電子線照射の照射量が、1kGy〜500kGyであることを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれか1項に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明では、電子線照射の照射量を1kGy〜500kGyとすることにより、確実にフッ素樹脂を架橋することができる。

    請求項16に記載の発明は、
    前記環状の基材が、耐熱性樹脂もしくは金属のいずれかであることを特徴とする請求項11ないし請求項15のいずれか1項に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明では、基材として、耐熱性樹脂や金属を用いることにより、耐熱性および機械的強度に優れたOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトとすることができる。 耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂などが使用される。 金属としては、ステンレスやアルミニウムなどが使用される。

    請求項17に記載の発明は、
    前記フッ素樹脂層は、接着処理が施されていない前記基材上に形成されており、かつ前記フッ素樹脂層が、ピーリング試験にて0.5Kg/1.5cm以上の接着力を有していることを特徴とする請求項11ないし請求項16のいずれか1項に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明は、電子線照射による架橋で、フッ素樹脂層の接着力を、0.5Kg/1.5cm以上、好ましくは0.8Kg/1.5cm以上にすることができる。 この結果、基材表面にプライマーの使用などの接着処理を施さなくても、基材との接合が強いフッ素樹脂層が得られる。

    請求項18に記載の発明は、
    前記環状の基材と前記フッ素樹脂層との間に中間層が形成されていることを特徴とする請求項11ないし請求項17のいずれか1項に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトである。

    本請求項の発明は、基材とフッ素樹脂層との間に中間層を形成することにより、上記効果に加え、さらに種々のユーザの要求仕様に対応できるOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトとすることができる。 中間層としては、シリコンゴムなどの弾性体材料などが使用される。

    請求項19に記載の発明は、
    未架橋のフッ素樹脂を環状の基材上にコーティングした後、前記フッ素樹脂を、その融点以上の温度に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して前記フッ素樹脂を架橋させることを特徴とするOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトの製造方法である。

    本請求項の発明では、未架橋のフッ素樹脂を基材上にコーティングした後、フッ素樹脂の温度をその融点以上の温度にした状態で、低酸素雰囲気中で電子線照射してフッ素樹脂を架橋させるため、従来困難であった架橋しているフッ素樹脂薄膜の基材上への形成が容易となる。

    予め架橋していないフッ素樹脂は、粒径が小さい粉末とすることができるため、ディスパージョン法などの方法を採用することができ、予め架橋している粒径の大きいフッ素樹脂を使用しないため、薄膜形成ができる。 この結果、フッ素樹脂の特長である非粘着性を維持したまま、熱伝導性を良くすることができ、さらに耐摩耗性および耐熱性を向上させることができるOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトを容易に製造することができる。 なお、低酸素雰囲気としては、窒素ガス雰囲気などが好ましい。

    さらに、予め架橋していないフッ素樹脂を基材上に形成した後、電子線照射により架橋させるため、フッ素樹脂と基材との接合力が、極めて強くなり、接着層(プライマー)を用いる必要はなくなる。 基材との密着性が向上する理由として、電子線照射により、主鎖もしくは側鎖の切断が起こり、更に高温であることから活発なラジカルが発生、酸素等容易に結びつき易い物質がないため、このラジカルが基材と結びつくと考えている。

    請求項20に記載の発明は、
    押出成形機のダイ(出口)の周囲を低酸素雰囲気とし、前記押出成形機のダイから未架橋のフッ素樹脂を前記環状の基材上に押し出し、前記フッ素樹脂がその融点以下となる前に、低酸素雰囲気中で前記フッ素樹脂に電子線照射して架橋させることを特徴とするOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトの製造方法である。

    本請求項の発明では、量産に適した押出成形法によって、環状の基材上にフッ素樹脂薄膜を形成することができ、かつ、一旦溶融させたフッ素樹脂の温度がその融点以下となる前に電子線照射するので生産効率が高い安価なOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトを製造することができる。

    請求項21に記載の発明は、
    前記未架橋のフッ素樹脂を、その融点以上に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して架橋させた後、前記フッ素樹脂の下の層の温度が分解点に達する前に急速冷却することを特徴とする請求項19または請求項20に記載のOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトの製造方法である。

    上記のように、フッ素樹脂の温度をその融点以上に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射するため、フッ素樹脂を容易にかつ確実に架橋することができる。 そして、フッ素樹脂層からの熱によって、前記フッ素樹脂の下の層の温度が上昇するが、その温度が下の層の分解点に達する前に急速冷却するため、下の層が特性劣化を生ずる心配がない。 さらに、急冷すれば、フッ素樹脂の結晶が生じ難くなり、フッ素樹脂層の耐屈曲性を向上させることができる。

    即ち、環状の金型(筒)の内周面に、未架橋のフッ素樹脂をディスパージョン法などの薄膜形成方法でコーティングした後、環状のフッ素樹脂層の内周面上にシリコンゴムなどをコーティングして中間層を形成する。 次いで、中間層の内周面上に基材であるポリイミド樹脂などをコーティングして環状の基材を形成する。 次に、金型から環状の基材と中間層とフッ素樹脂層を抜き取り、表面の未架橋のフッ素樹脂層をその融点以上に加熱して、低酸素雰囲気中で電子線照射して架橋させた後、前記フッ素樹脂層の下の中間層の温度が分解点に達する前に急速冷却することにより、OA機器用ベルトが完成する。

    尚、前記電子線照射を行うに際しては、スパイラル状に照射することが好ましい。 小型の電子線照射装置は、照射スポットの中心部の電子線照射量が多く、周辺部の電子線照射量が少ないという特徴がある。 従って、単に電子線を照射させただけでは、フッ素樹脂層の表面を均一に照射することが難しい。 そこで、被照射対象物であるフッ素樹脂層を外周面に形成した環状の基材を回転させながら、外側に配置された電子線照射装置を、環状の基材の軸方向に平行移動させて電子線照射することにより(つまり、スパイラル状に照射することにより)、フッ素樹脂層の表面を均一に照射することができる。

    本発明の第1の態様によれば、基材上に形成されたフッ素樹脂層が電子線照射により架橋された状態で、所望の形状に機械加工されているため、フッ素樹脂の特長である非粘着性を維持したまま、耐摩耗性に優れたフッ素樹脂薄膜を有するフッ素樹脂複合材、調理器具もしくは調理器を得ることができる。

    本発明の第2の態様によれば、基材上に予め架橋していないフッ素樹脂を形成し、フッ素樹脂を電子線照射により架橋させているため、フッ素樹脂の特長である非粘着性を維持したまま、耐摩耗性および耐熱性に優れたフッ素樹脂薄膜を有するOA機器用ローラまたはOA機器用ベルトを得ることができる。

    本発明に使用されるフッ素樹脂層の摩耗特性の評価結果を示すグラフである。

    本発明に使用されるフッ素樹脂層の摩耗特性の評価結果を示すグラフである。

    本発明の一実施の形態における調理器具を示す断面概念図である。

    本発明の一実施の形態における調理器具の製造方法を示すフローチャート図である。

    本発明の実施例の一工程を示す断面概念図である。

    フッ素樹脂を電子線照射する方法を説明するための概念図である。

    本発明の実施例におけるフッ素樹脂層の電子線照射方法を概念的に示す図である。

    本発明の実施例における調理器具の磨耗特性の評価結果を示すグラフである。

    本発明の実施例における調理器具のフッ素樹脂層に付けた貫通傷の形状を示す平面図である。

    本発明のOA機器用ローラの一実施の形態を示す一部切欠概念図である。

    本発明のOA機器用ローラの一実施の形態の製造方法を示すフローチャート図である。

    本発明のOA機器用ローラの一実施の形態の別の製造方法を示すフローチャート図である。

    本発明のOA機器用ローラの一実施の形態の製造方法を説明するための一部断面概念図である。

    本発明のOA機器用ローラの一実施の形態の別の製造方法を説明するための一部断面概念図である。

    本発明のOA機器用ベルトの一実施の形態を示す一部切欠概念図である。

    本発明のOA機器用ベルトの一実施の形態の製造方法を示すフローチャート図である。

    本発明のOA機器用ベルトの一実施の形態の別の製造方法を示すフローチャート図である。

    本発明のOA機器用ベルトの一実施の形態の製造における電子線照射する方法を説明するための(A)フッ素樹脂層を正面概念図、(B)側面概念図である。

    符号の説明

    1 基材2 フッ素樹脂層3 ステンレス20、38、53 電子線照射装置21 電子ビーム管31 フッ素樹脂複合材32 アルミ基材33 チャンバー34 隔壁35 ホットプレート36 開口37 チタン箔38 貫通傷41、71 環状基材51、61 押出成形器のダイ(出口)
    52、62 開口部63 穴72 中間層

    以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。 なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。 本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。

    1. 評価例 (フッ素樹脂およびそれを用いたフッ素樹脂複合材の製造と評価)
    イ. 摩耗基本物性 フッ素樹脂を架橋したときの効果を確認するため、平板上の薄いフッ素樹脂膜を電子線照射で架橋させ、摩耗特性の変化と接着力の評価を行った。

    サンプルの作製は、5mmのアルミ板の上にフッ素樹脂ディスパージョン(三井デュポンフロロケミカル社製、PFAディスパージョン950HP)をディップ法にてコーティングし、380℃で焼成し5μmの膜とした。 チャンバーとホットプレート付きウシオ電機社製、照射ユニット(min−EB、出力30kV)を準備し、窒素雰囲気下、かつ、ホットプレート温度400℃の上にフッ素樹脂をコーティングしたアルミ板を置き、電子線照射を行った。 照射量は、30kGy、100kGy、300kGy、900kGy、400℃の加熱のみ(照射なし)の5種類とした。

    摩耗特性の評価は、回転摩耗試験と呼ばれる方法で行った。 回転摩耗試験とは、照射したサンプル上にスコッチブライト(登録商標)(#3000)と2kgの重りを置いて、それを500rpmで回転させ、回転ごとのスコッチブライト(登録商標)の摩擦によるPFA膜の膜厚減少量を測定する試験をいう。

    摩耗特性の評価結果を図1に示す。 図1において、グラフの横軸がスコッチブライト(登録商標)の積算回転数を示し、縦軸がそのときのサンプルの減少量を示す。 結果として、照射していないものと比べ、30kGy、100kGyと照射量が増えるに従い、摩耗量が少なくなり、耐摩耗性が大幅に向上していることが解る。 一方、300kGyでは減少量が多くなり、900kGyでは即座に削れた。 300kGy、900kGyではフッ素樹脂の崩壊が始まり、逆に耐摩耗特性が低下していることが解る。 従って、今回用いたフッ素樹脂、温度では、100kGy程度の照射量が適していることが解る。

    次に、架橋したPFAと他材料との比較を行った。 他材料としては、硬く摩耗性に優れたスーパーエンプラ、具体的には、PAI(ポリアミドイミド、東洋紡社製、バイロマックスHR−16NN)、PI(ポリイミド、宇部興産社製、U−ワニス−S)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン、オキツモ社製、PEEK−COATING)の3種類を用いた。 評価結果を図2に示す。 結果として、架橋したPFAは、PAI、PI、PEEK等スーパーエンプラを凌ぐ摩耗特性を示すことが解った。

    ロ. 接着特性の試験 次に、フッ素樹脂の電子線照射で、基材との密着性を向上させる実験を行った。

    サンプルは、5mmのアルミ板の上と、PI(ポリイミド、宇部興産社製、U−ワニス−S)の上とに、それぞれフッ素樹脂ディスパージョン(三井デュポンフロロケミカル社製、PFAディスパージョン950HP)をディップ法にてコーティングし、380℃で焼成し5μmの膜とした。 それを、チャンバーとホットプレート付きウシオ電機社製、照射ユニット(min−EB、出力30kV)で、窒素雰囲気下、かつ、ホットプレート温度400℃、電子線照射の照射量100kGyの照射を行った。

    評価はJIS−K−5400(1998年度版)に準拠した碁盤目試験と呼ばれる剥離試験を実施した。 碁盤目試験とは、1mmの大きさの碁盤目状の貫通傷100個をサンプル表面に付け、そこにテープを貼り付け、またテープを剥がすという作業を繰り返し、何回の剥離でサンプルが剥がれるかを調べる試験である。 試験の結果、照射していないアルミ板上のPFAは数回の剥離で全て剥がれてしまうが、照射したアルミ板とPI上のPFAは、100回の剥離を繰り返しても、全くはがれなかった。 即ち、前記規格においては、剥離状態を0〜10点で評価しているが、このサンプルは、その中の最高点である10点(切り傷1本毎が細くて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の一目、一目に剥れがない。)であった。 これより、フッ素樹脂に高温、脱酸素雰囲気下で電子線照射を施すと基材との密着性が飛躍的に高くなることが解った。

    次にピーリング試験で評価した。 ピーリング試験とは、基材上のフッ素膜にFEP製のシートを貼り付け、それを剥離させる時の力を測定するものである。 試験結果を表1に示す。 全て後で貼り付けたFEP製のシート面とサンプルとの界面で剥がれてしまい評価ができなかったが、全て、1.7kg/1.5cm以上の強力な接着力を持つことがわかる。

    なお、プライマー(接着剤の使用)やエッチング処理(基材の表面処理)を行わない場合のピーリング接着力は測定不能レベル(ほぼゼロに近い)である。

    2. 第1の実施の形態 本実施の形態は、第1の態様に係る実施の形態であり、調理器具に関するものである。
    (調理器具の製造)
    図3は本発明の調理器具の一例である炊飯器の内釜を示す概念図である。 図3において、1は基材、2は基材1上に形成されている薄膜状のフッ素樹脂である。

    基材1は、底部と側部とで構成されている。 基材1の材料としては、金属のステンレス、アルミニウム、およびアルミニウム合金などが用いられる。

    フッ素樹脂層2は、水平な底部内壁と略垂直な側部内壁に形成され、その肉厚が15μmであり、電子線照射によって架橋している。 フッ素樹脂層2としては、PFA(三井デュポンフロロケミカル社製、PFAディスパージョン950HP)を使用することが好ましい。 このPFAは、固形分が33%、粒径がコンマ数μm程度、かつ、溶融タイプのフッ素樹脂であるため、フッ素樹脂ディスパージョンなどによる薄膜形成に適しているからである。

    以上の構成からなる内釜は、図4に示すフローチャートの製造方法によって製作される。

    まず、平板状の基材を準備する。 即ち、図5に示すように、平板のアルミニウム合金(Al−Mn系、JIS3003,3004,3005)で、その厚さが0.6〜3.0mm程度の基材1を準備する。 なお、IH調理器具の場合には、図5に二点鎖線で表示するように、前記基材1の裏面にステンレス3を設けることがある。

    次に、工程S2で、基材1の上面に、未架橋のフッ素樹脂(PFA)の微粉末を水に分散させたディスパージョンをスピンコーティングして薄膜状のフッ素樹脂2を形成する。

    次に、工程S3で、基材1を恒温槽内にセットして380〜420℃で10〜20分間焼成し、さらに、工程S4で、フッ素樹脂層2の温度をその融点以上の温度にして溶融させた状態で、窒素ガス雰囲気中で電子線照射して架橋させる。 即ち、図6に示すように、フッ素樹脂層2形成面を下側にした基材1は、電子線照射装置20の上方を矢印方向に搬送されることにより、フッ素樹脂層2全体が均等に電子線照射される。 フッ素樹脂層2を充分に架橋させるために、電子線照射量は100kGy程度が好ましい。 電子線照射装置20には、10個の電子ビーム管21を千鳥状に配列したウシオ電機社製、照射ユニット(min−EB)を使用する。 汎用で安価、かつコンパクトだからである。
    本発明によれば、フッ素樹脂層の肉厚を小さくしているため、単層コーティングが可能である。 また、上記汎用の電子線照射装置を用いて電子線を基材にまで到達させ、基材とフッ素樹脂層の接着力が強い製品を得ることができる。

    次に、工程S5で、基材1を所望の形状にプレス加工もしくはへら絞り加工する。

    こうして、量産に適した製造方法によって、基材1上に薄膜状の架橋したフッ素樹脂層2を有する内釜が完成する。 製作された内釜のフッ素樹脂層2の耐摩耗性は、前記回転摩耗試験により評価し、また、基材とフッ素樹脂層の接着強度は、いわゆる碁盤目試験(JIS−K−5400、1998年度版)により評価して、それぞれ所定の基準を満足していることを確認する。

    以下に実施例に基づき更に詳細に説明する。
    (実施例)
    本実施例は、アルミ基材を用いたフッ素樹脂複合材に炊飯器の内釜を製作する実際のプレス装置を用いてプレス加工を行い、前記フッ素樹脂複合材がプレス加工に耐えるか、調理等で問題が生じないか等の確認を行った例である。

    (1)フッ素樹脂複合材の作製 イ. 基材上へのフッ素樹脂のコート 直径360mm、肉厚1.2mmの円盤状アルミ基材(3004材)に、PTFEディスパージョン(ダイキン社製D1−F)とPFAディスパージョン(三井デュポンフロロケミカル社製945HP)の2種類のフッ素樹脂をスピンコートにてコーティング・乾燥後、400℃で焼成し、アルミ基材上にフッ素樹脂層として厚さ10μmのPTFE膜とPFA膜を形成した2種類のフッ素樹脂複合材を作製した。

    ロ. 電子線照射 図7は電子線照射方法を概念的に示す図である。 図7において前記フッ素樹脂複合材31を、フッ素樹脂層(PTFE膜、PFA膜)2を上側に向け、アルミ基材32を下側に向けて電子線照射用チャンバー33内に設けられたホットプレート35上にセットした。 なお、チャンバー33の隔壁34の上部には電子線を透過させるための開口36が設けられ、またチャンバー33を密封するため前記開口36は厚さ30μmのチタン箔37で覆われている。 ホットプレート35の温度を、PTFE膜を形成したフッ素樹脂複合材の場合は340℃、PFA膜を形成したフッ素樹脂複合材の場合は310℃にしておき、チャンバー33内のガスを窒素で置換(置換後のチャンバー内の酸素濃度は5ppm)した後、NHVコーポレーション社製コンベア式電子線照射装置(加速電圧1.16MeV)38で電子線を60kGy照射し、フッ素樹脂層2のPTFEおよびPFAを架橋した。

    ハ. プレス加工 電子線照射後のサンプルに冷間にて炊飯器内釜用の金型を用いて凹状に打ち抜き、深さ120mm、直径190mmの内釜を作製した。 凹状に打ち抜くことによりアルミ基材32、フッ素樹脂層2が圧力、摩擦、引っ張り等の応力を受けるが、作製した内釜のPTFE膜、PFA膜は共に剥がれ、キズ等の問題はなく、本実施例のPTFE膜、PFA膜はエッチング等の基材の表面処理を行わなくてもプレス加工に耐えることが確認された。

    (2)性能評価 イ. 耐摩耗性の評価 作製した内釜のPTFE膜、PFA膜の耐摩耗性を前記回転磨耗試験により評価した。 評価結果を未照射のPTFE膜、PFA膜を設けた場合の結果と共に図8に示す。 図8から放射線を照射することによりPTFE膜、PFA膜共に耐磨耗性が大幅に向上しいていることが分かる。 また、驚くべきことに電子線照射したPTFE膜においては20000回転後も磨耗量が0であった。

    ロ. 接着力の評価 作製した内釜のPTFE膜、PFA膜の接着力を前記碁盤目試験と呼ばれる剥離試験により評価した。 なお、傷やピンホールがあるままプレス加工された場合の評価も行うためPTFE膜、PFA膜に碁盤目状の100の貫通傷を付けたサンプルの中心部分に、さらに厚さ5mmおよび10mmの2種類のエリクセンと呼ばれる突起を設けたサンプルについても評価した。 また、引き剥がしは100回繰り返し行った。 試験結果を表2に示す。

    ※表2において分子は剥がれなかった碁盤目状の貫通傷枚数、分母は引き剥がし回数を示す。

    表2に示した結果から、本実施例において形成されたPTFE膜およびPFA膜は接着力評価試験において剥がれが認められず、優れた接着力を有していることが分かる。

    ハ. 調理器具としての性能評価 実際の調理を模擬した評価試験を行った。 具体的にはPTFE膜およびPFA膜に図9に示すように縦100mm、横50mmのX字状の貫通傷39を付けた後、エスビー食品社製の「おでんの素」(登録商標)を炊飯器内に満了入れ、1000時間煮込んだ後、PTFE膜、PFA膜の基材からの剥離の有無を調査した。 もし基材とPTFE膜、PFA膜との密着が不十分であれば、煮込み中に調理液(おでん液)が両者の間の界面に浸透し、PTFE膜、PFA膜の剥離が生じるはずであるが、本実施例においては全く剥離が生じておらず、調理器具として問題ないことが分かった。

    3. 第2の実施の形態 本実施の形態は、第2の態様に係る実施の形態であり、OA機器用ローラに関するものである。

    (OA機器用ローラの製造)
    図10は本発明のOA機器の定着ローラを示す一部切欠概念図である。 図10において、41は環状基材、2は環状基材41上に形成されている薄膜状のフッ素樹脂層である。

    環状基材41は円筒形状をしており、図示していないが、円筒内部にはヒータなどが収容されている。 環状基材41の材料としては、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂といった耐熱性樹脂、もしくは金属のステンレスやアルミニウムなどが用いられる。 フッ素樹脂層2は、肉厚が15μmであり、電子線照射によって架橋している。

    以上の構成からなる定着ローラは、図11に示すフローチャートの製造方法によって製作される。

    まず、工程S1で、環状基材41を準備する。 例えば、ポリイミド製の環状基材41は、以下に記載の方法により製造する。 即ち、所定の外径および長さを有するドラム状の金型を回転させながら、その外側にポリイミドワニスをコーティングし、その後金型を加熱してイミド化反応を行い、金型の周囲に厚さ80μm程度のポリイミド製の環状基材41を形成する。

    次に、工程S2で、未架橋のフッ素樹脂(PFA)2を、環状基材41上にディスパージョン法などにより薄膜状にコーティングする。 フッ素樹脂2の材料としては、PFA(三井デュポンフロロケミカル社製、950HP)を使用することが好ましい。 このPFAは、固形分が33%、粒径がコンマ数μm程度、かつ、溶融タイプのフッ素樹脂であるため、ディスパージョン法などによる薄膜形成に適しているからである。

    本発明においては、前記環状基材41の外表面に弾性体からなる中間層を形成し、さらにその外表面にフッ素樹脂2をコーティングすることもできる。 例えば、ディスペンサーにより、環状基材41の表面にシリコンゴム等の合成ゴムからなり、厚さが200μm程度の中間層を形成した後、その外側にフッ素樹脂2をコーティングする。

    次に、工程S3で、フッ素樹脂2を380℃で加熱してディスパージョン粒子を溶融し、フッ素樹脂2を膜状にすると同時に、フッ素樹脂2が融点以下となる前に、窒素ガス雰囲気中で電子線照射して架橋させる。 なお、加熱温度は基材の材質に応じて適宜調整する。 フッ素樹脂2を充分に架橋させるために、電子線照射量は100kGy程度とする。 電子線照射装置には、照射ユニット(ウシオ電機社製、min−EB)を使用する。 汎用で安価、かつコンパクトだからである。 電子線照射を施さない場合は、環状基材41とフッ素樹脂層2との接着のために、プライマー層が必要となるが、本発明に係る工法ではプライマー層が無くても、電子線照射により強固に接着できる。

    次に、工程S4で、フッ素樹脂2が冷却されて定着ローラとされる。 こうして得られた定着ローラのフッ素樹脂層2の耐摩耗性は、前記回転摩耗試験により評価し、また、環状基材41とフッ素樹脂層2の接着強度は、前記ピーリング試験により評価して、それぞれ所定の基準を満足していることを確認する。 耐摩耗性の別の評価方法としては、直線往復摩耗試験(試験温度:250℃)がある。

    4. 第3の実施の形態 本実施の形態は、第2の態様に係る実施の形態であり、OA機器用ローラに関するものである。

    (OA機器用ローラの製造)
    図12は、定着ローラを製造する別の方法を説明するためのフローチャート図である。
    まず、工程S1で、図13に示す縦型押出成形機を用いて、未架橋のフッ素樹脂(PFA)チューブを製造する。 図13において、2はフッ素樹脂(PFA)チューブ、51は押出成形機のダイ(出口)、53は電子線照射装置である。 ダイ51の周囲は窒素ガス雰囲気とされている。

    縦型押出成形機のダイ51の内部には、ペレット状のフッ素樹脂(PFA、950HP)を融点以上に加熱した溶融状態の未架橋のフッ素樹脂(PFA)が供給されている。 ダイ51の下端には円環状の開口部52が設けられている。 この開口部52から、溶融状態の未架橋のフッ素樹脂が下方向に押し出され、未架橋のフッ素樹脂チューブ2を形成する。

    次に、工程S2で、下方向に押し出されたフッ素樹脂チューブ2は、融点以下となる前に、押出成形機の下方側に環状に配置されている電子線照射装置53によって、窒素ガス雰囲気中で電子線照射され、架橋する。 この電子線照射装置53には、前記照射ユニット(ウシオ電機社製、min−EB)を使用する。 フッ素樹脂チューブ2を充分に架橋させるために、電子線照射量は100kGy程度が好ましい。 架橋されたフッ素樹脂チューブ2は、所定の長さごとにカットされる。

    次に、工程S3で、環状基材41を製造する。 例えば、所定の外径および長さを有するドラム状の金型を回転させながら、その外側にポリイミドワニスをコーティングし、その後金型を加熱してイミド化反応を行い、金型の周囲に厚さ80μm程度のポリイミド製の環状基材41を形成する。

    次に、工程S4で、フッ素樹脂チューブ2は、環状基材41の外周面上に被覆され、フッ素樹脂層2とされる。 被覆する方法としては、例えば、環状基材41の外周面上に粘性のある接着剤をコーティングしておき、フッ素樹脂チューブ2を強制的に押し込む方法がある。 あるいは、フッ素樹脂チューブ2を熱収縮チューブ化して、このフッ素樹脂チューブ2に環状基材41を挿入した後、フッ素樹脂チューブ2を加熱して熱収縮させることにより、環状基材41の外周面とフッ素樹脂チューブ2の内周面とを接合する方法がある。

    こうして、量産に適した押出成形法によって、環状基材41上に薄膜状のフッ素樹脂層2を形成することができ、定着ローラが完成する。

    5. 第4の実施の形態 本実施の形態は、第2の態様に係る実施の形態であり、OA機器用ローラに関するものである。

    (OA機器用ローラの製造)
    図14は、別の押出成形法により定着ローラを製造する方法を説明するための一部断面概念図である。 図14において、41は定着ローラの環状基材、61は押出成形機のダイ(出口)、53は電子線照射装置である。 押出成形機のダイ61は、環状基材41の径より若干大きな寸法の径を有する穴63を有している。 後述するように、この穴63を環状基材41が通る。 穴63の内周壁にはダイ61の開口部62が環状に設けられている。 ダイ61の内部には、融点以上に加熱された溶融状態の未架橋のフッ素樹脂(PFA)2が供給されている。 さらに、ダイ61の周囲は窒素ガス雰囲気とされている。

    押出成形機の後方側には、電子線照射装置53が環状に配置されている。 この電子線照射装置53には、前記照射ユニット(ウシオ電機社製、min−EB)を使用する。

    矢印方向から搬送されてきた環状基材41が、押出成形機の穴63を通ると、ダイ61の開口部62から、融点以上に加熱された溶融状態の未架橋のフッ素樹脂(PFA)2が押し出され、環状基材41の外周表面に均一にコーティングされる。

    外周表面にフッ素樹脂2がコーティングされた環状基材41は、さらに搬送され、電子線照射装置53が配置されている位置において、フッ素樹脂2が融点以下となる前に、窒素ガス雰囲気中で電子線照射装置53によって電子線照射される。 これにより、フッ素樹脂2を架橋させる。 フッ素樹脂2を充分に架橋させるために、電子線照射量は100kGy程度が好ましい。

    この後、フッ素樹脂2が冷却され、定着ローラとされる。 こうして、量産に適した押出成形法によって、環状基材41上に薄膜状のフッ素樹脂層2を形成することができる。

    6. 第5の実施の形態 本実施の形態は第2の態様に係る実施の形態であり、OA機器用ベルトに関するものである。

    (OA機器用ベルトの製造)
    図15は本発明のOA機器の転写ベルト(もしくは転写定着ベルト)を示す一部切欠概念図である。 図15において、71は環状基材、2は環状基材71上に形成されている薄膜状のフッ素樹脂層である。

    環状基材71は帯状をしており、ベルトとして使用される時には内部にはヒータなどが収容される。 環状基材71の材料としては、耐熱性樹脂のポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂、もしくは金属のステンレスやアルミニウムなどが用いられる。

    フッ素樹脂層2は、肉厚が10μmであり、電子線照射によって架橋している。 フッ素樹脂2層の材料としては、PFA(三井デュポンフロロケミカル社製、950HP)を使用することが好ましい。 このPFAは、固形分が33%、粒径が0.2μm程度、かつ、溶融タイプのフッ素樹脂であるため、ディスパージョン法などによる薄膜形成に適しているからである。

    7.第6の実施の形態 本実施の形態は第2の態様に係る実施の形態であり、OA機器用ベルトに関するものである。

    (OA機器用ベルトの製造)
    図15に示した転写ベルト(もしくは転写定着ベルト)は、例えば、図16に示すフローチャートの製造方法によって製造される。 まず、工程S1で、環状基材71を製造する。 例えば、ポリイミド製の環状基材71は、以下に記載の方法により製造する。 即ち、ポリイミドワニスをコーティングし、その後金型を加熱してイミド化反応を行い、金型の周囲に厚さ80μm程度のポリイミド製の環状基材71を形成する。 本発明においては、前記環状基材71の外表面に弾性体からなる中間層を形成し、その外表面にフッ素樹脂2をコーティングすることもできる。 例えば、ディスペンサー法により、環状基材71の表面にシリコンゴム等の合成ゴムからなり、厚さが200μm程度の中間層を形成する。

    次に、工程S2で、未架橋のフッ素樹脂(PFA)のディスパージョンをコーティングする。 こうして、環状基材71上にフッ素樹脂を薄膜状にコーティングする。

    次に、工程S3で、加熱(加熱温度:380℃)により、粉体状のフッ素樹脂を溶融させ、均一な薄膜とすると同時に、フッ素樹脂が融点以下となる前に、窒素ガス雰囲気中で電子線照射して架橋させる。 フッ素樹脂を充分に架橋させるために、電子線照射量を100kGy程度とする。 電子線照射装置には、照射ユニット(ウシオ電機社製、min−EB)を使用する。 汎用で安価、かつコンパクトだからである。

    次に、工程S4で、フッ素樹脂が冷却される。 このとき、急冷すれば、フッ素樹脂の結晶が生じ難くなり、フッ素樹脂層2の耐屈曲性を向上させることができる。 また、側鎖型のフッ素樹脂を適用すると、結晶の生成を抑制することができ、好ましい。 さらに、分子量の大きいフッ素樹脂を用いると、耐屈曲性が良くなるため好ましい。 なお、環状基材、シリコンゴム、フッ素樹脂は、カーボン導電もしくはイオン導電により、体積固有抵抗率で10 11 Ω・cm程度に調整している。 こうして、転写定着ベルトが完成する。 この転写ベルトのフッ素樹脂層2の耐摩耗性は、前記回転摩耗試験により評価し、また、基材71とフッ素樹脂層2の接着強度は、前記碁盤目試験(JIS−K−5400、1998年度版)により評価して、それぞれ所定の基準を満足していることを確認する。 耐摩耗性の別の評価方法としては、前記直線往復摩耗試験(試験温度:250℃)が適用できる。

    8.第7の実施の形態 本実施の形態は第2の態様に係る実施の形態であり、OA機器用ベルトに関するものである。

    図15に示した転写ベルトは、図17に示すフローチャートの製造方法によっても製造される。 まず、工程S1で、内周面を鏡面加工したステンレス製の環状の金型(外筒)に、未架橋のフッ素樹脂(PFA)の微粉末を水に分散させたディスパージョンをディップによりコーティングし、380℃で焼成する。 こうして、環状の金型の内周面に、未架橋のフッ素樹脂を薄膜状(厚さ10μm程度)にコーティングする。

    次に、工程S2で、中間層を形成する。 例えば、内周面にフッ素樹脂層を形成した環状の金型をプラズマ処理室内にセットする。 環状の金型の内側には、環状の金型に対向するように対向電極を配置する。 プラズマ処理室内は、He雰囲気とされる。 そして、プラズマ発生用電極として兼用される環状の金型と対向電極との間に、所定の出力、電圧、および周波数を有する高周波電力を所定時間印加する。 これにより、環状の金型と対向電極との間の空間にプラズマを発生させ、フッ素樹脂層の内周面をプラズマ処理する。

    フッ素樹脂層の内周面をプラズマ等の処理を行った後、信越化学社製、プライマー101Aと101Bを1:1の比率で混ぜ合わせてフッ素樹脂の内周面にコーティング、乾燥し、厚みが約5μmの接着膜を形成する。 この後、信越化学社製、シリコンゴムKE−1370AとKE−1370Bを1:1の比率で混ぜ合わせ、溶剤を用いて粘度を調整後、前記接着膜上にコーティングして150℃で硬化させる。 こうして、厚みが約200μmの中間層を形成する。

    次に、工程S3で、環状基材を形成する。 例えば前記フッ素樹脂層のプラズマ処理と同様にして中間層の内周面をプラズマ処理した後、熱可塑性ポリイミド(新日本理化社製、リコカートPN−20)をコーティングし、220℃で乾燥させ、厚さ80μm程度の環状基材71を形成する。 この後、金型から環状の基材と中間層とフッ素樹脂層を抜き取る。 こうして、図18(A),(B)に示すような環状基材71と中間層72とフッ素樹脂層(表層)2とからなる環状ベルトを得る。 なお、表層(フッ素樹脂層)、接着層(プライマー層)、弾性層(シリコンゴム層)、基材(ポリイミド層)は、全てカーボン導電もしくはイオン導電により、体積固有抵抗率で10 11 Ω・cm程度に調整している。

    次に、工程S4で、環状ベルトの中空部に中子を入れた後、図18に示すように、環状ベルトを回転させる。 そして、400℃に加熱された窒素ガスを環状ベルトの表層に吹き付け、フッ素樹脂層2をその融点以上の温度にした後、電子線照射して架橋させ、架橋したフッ素樹脂層2を形成する。 即ち、被照射対象物であるフッ素樹脂層2を外周面に設けた環状ベルトを回転させながら、環状ベルトの外側に配置された電子線照射装置53を矢印X方向に平行移動させて電子線照射することにより(つまり、スパイラル状に照射することにより)、フッ素樹脂層2全体を均等に電子線照射する。 フッ素樹脂層2を充分に架橋させるために、電子線照射量は100kGy程度が好ましい。 電子線照射装置53には前記照射ユニット(ウシオ電機社製、min−EB)を使用する。 この後、中間層72が劣化しないように、加熱位置とは180度反対側に冷却位置を設定し、フッ素樹脂層2の下の中間層72の温度が分解点に達する前に素早く急速冷却する。 また、急冷することにより、フッ素樹脂層2の耐屈曲性も向上させることができる。

    こうして、量産に適した製造方法によって、環状基材71、中間層72、フッ素樹脂層2からなる転写ベルトが完成する。

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