【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はむくのボールノーズ工具に関し、その好ましい工具例にはボールノーズエンドミルがある。 【0002】 【従来の技術】ボールノーズエンドミルは変化する工作条件を同時に取り扱はなければならない進歩的な工具である。 ボールノーズエンドミルの最も顕著な特長は、周辺での高温度に抵抗する能力と摩耗抵抗が要求され、同時に切削工具としてチップ(切粉)を生成し、且つ切削速度がゼロに近ずく中心においても切削工具として機能するように要求される切削特性に関し、この特性に優れていることにある。 工具周辺と中心の間では、切刃領域に亘って切削速度が連続的に変化している。 【0003】ボールノーズエンドミルは表面仕上の要求度が高い、困難な工作で頻繁に使用される。 この種の工作には、例えば航空産業での翼桁のフライス加工がある。 この場合には、後に破損の原因になり得る非平坦性とノッチは許容されない。 もう1つ別の大きな適用分野は、金型工具の仕上の分野である。 そこでは高度の表面仕上、高度の形状精度、並びに高生産性と長い予知可能な工具寿命等が求められる。 更に、工作部品の精度を低下させる事態になり得る工作中の工具取替えは許し難い。 【0004】高速度鋼等の靱性材料と、セメンテッドカーバイド等の脆性の耐摩耗切刃材料のいづれで製造されているにしても、今日の従来工具が通常有する切刃外形は、多くの場合、ボールノーズエンドミルの中心並びにその近辺に負のレーキ角と小さいチップ(切粉)ルーム(空域)を有するようにしたものである。 この外形の工具の欠点は、主として切削力が高くなり、及び平均−摩耗と切刃損傷の危険をもたらす中心(センタ)におけるチップ収容空間の不充分なことにある。 【0005】スウェーデン特許SE392482号から、金属性バインダ相に30−70体積%のサブミクロン硬質構成物質を含有している材料が公知である。 この材料は、進歩した高速度鋼に較べて優れた摩耗抵抗を有しているので、セメンテッドカーバイドと高速度鋼の中間の物性を有するものと考えられている。 【0006】更に、スウェーデン特許SE440753 号は高切削速度に係わる領域に上記材料を配し、センタに高速度鋼を配して成る優れた複合体工具であって、ゼロ速度問題が存在するドリル分野に適用して有利な斯ゝる工具を開示している。 この複合体工具の目的は、一方で強靱なコアにより工具に良好なマクロ靱性を具備せしめ、他方において硬質構成物質に富んだ材料では経験的に例えば高速度鋼より研磨加工が著しく困難である認知されていることに鑑みて研磨経済性を高めることにある。 これに加えて、ゼロ速度問題と校正刃先形成領域が経験的に、30−70体積%の硬質成分を有するサブミクロン硬質構成物質にとって問題であると認識されていた。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上述のサブミクロン硬質材料のタフネス挙動を改良して良好なマクロタフネスと高剛性を有する長細のむく、即ちソリッドのボールノーズ工具を実現し、この材料と特定の切刃外形とによって校正刃先生成(built-up edge formation)を伴わずに長期間に亘って高精度の仕上工作を可能にすることにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】Fe,Co及び/或いはNiに基づく金属性母材に、Ti,Zr,Hf,V,N b,Ta,Cr,Mo及び/或いはWの炭化物、窒化物及び/或いは炭窒化物から成る30−70体積%のサブミクロン硬質構成物質を含有させた硬質材料の、長細むく工具、好ましくはボールノーズエンドミルが提供される。 この材料は、好ましくは、高速度鋼タイプの母材に主として、TiNの30−70体積%の硬質構成物質から成り、この硬質構成物質が<1μm、好ましくは<0 5μmのグレンサイズを有している。 【0009】このボールノーズエンドミルは、切刃に対し直角な平面上で測定して、その尖端部のエツジラジウス(edge radius)の全長に亘って+8±2 °の一定な正のレーキ角(すくい角)を有し、且つセンタへ向けて連続的に低減し、センタにおいて10±2° に至るクリアランス角(逃げ角)を有している。 【0010】 【作用】上記の材料と工具刃体外形の組合せにより優れた性能を発揮するボールノーズエンドミルが得られる。 この構成によれば、一方でサブミクロンの硬質材料のタフネス挙動を向上させ、他方で研磨技術を経済的に合理的なレベルに発展させて、工具、この場合ボールノーズエンドミルのセンタにおいてさえ進歩したエツジを研磨加工することが出来ることが判明した。 従って、進歩した外形との組合せにより、非常に広範囲の切削速度域に亘って校正刃先(ビルトアップエツジ)を生成させずにチップ(切粉)の生成能力を著しく高めた進歩した工具が製作されることが判明した。 これは、工作物の鋭い非常に良好な面を高精度に工作することが出来る低摩耗性のシャープ度が維持される切刃をもたらす。 この材料はその微細グレンサイズ並びに硬質構成物質とバインダ相との良好な分散により、PVD法により施こした純粋な硬質構成物質層に対し、良好な接着能力を発揮する。 このPVD法は、元来CVD法において生起する金属結合に較べ接着性が一般に劣るものである。 その理由は、C VD法が相対的に高温度で実行されることによる。 本発明に係わるPVD層はチタン基のものであり、これがT i(C,N)であれば、特に優れた特性を発揮し、これが(Ti,Al)Nであっても有益である。 2−4μm 厚のTi(C,N)のPVD層は特に秀れた特性を有している。 【0011】本発明の工具は、通常のスチールや、工具スチール、ステンレススチール、アルミ合金、チタン合金等の250−450HBの硬度を有する硬質工作物の切削において非常に良く機能する。 【0012】 【実施例】本発明に係わる材料のユニークなタフネス特性と耐摩耗特性は、エツジラジウス全体が切削力の低減された耐久性のあるボールノーズエンドミルの実現を可能にした。 これは、このエンドミル工具をエツジラジウス(4)の全長に亘る+8°±2°の正の一定レーキ角(3)と、センタの方へ連続的に減少してセンタにおいて10°±2°に至るクリアランス角(1,5)とを有するように成形することにより得られる。 工具直径が4 −20mmの範囲にある場合に、クリアランス角は工具周辺で4mm径工具のときの17°±2°と20mm径工具のときの12°±2°との角範囲内で変動する。 この両種の角度は切刃に直角な平面において測定される。 この工具は工具センタにおいて、1対の研磨加工されて成るボールノーズ切刃(4)の間に、4−20mmの工具直径の場合に0.10±0.05mmから0.25±0.05mm の小さい幅(2)のチップ排出用の空隙(チアネル)を含んでいる。 このチップ用空隙はセンタ(6)の両側に研磨加工されて成る0.35−0.75mmの余分の凹所を含んでいる。 【0013】工具の切刃はER処理され、そのエツジ丸みの曲率半径が工具周辺における10−30μmからセンタにおける10μm未満、好ましくは周辺において1 0−20μmからセンタにおける5μm未満に至るまでセンタに向けて連続的に低減するように、切刃エツジ丸み加工を施される。 これは、エツジ丸め曲率半径の具合に帰因してチップが極端に肉薄になるという事実にも抱わらず、中心においてまで切削することを可能にする。 【0014】上述のソリッド(むく)工具は、他の材料のシヤフトに半田付けして成るものにも適用され得る。 必須要件は全ての切刃が同一物質の硬質材料から成ることにある。 工具直径は、上記の4−20mmから、例えば3−25mmに範囲を拡張することも出来る。 【0015】 例以下の例は、進歩した材料(material)と進歩した外形(geometry)がどのように結び合って進歩した工具を生み出すか、その詳細を示している、カプセルを含む、9.6mmのソリッドロッド、を前述のS E440753の開示例3の方法で押出した。 このロッドから8mmの外形の異なるボールノーズエンドミルを熱処理後に研磨加工により製作した。 得られたミル工具は公知のPVD法により2−4μm厚のTiCN層で被覆された。 SS2541の工作物の仕上工作テストを行い、その後従来の高速度鋼とセメンテッドカーバイドの工具並びに自家製工具を用いて同様にテストを行った。 工具A:周辺からセンタに進むに従ってクリアランス角が15°から10°に低減し、且つ20μmから5μm に面取りエツジの丸み曲率半径が低減している切刃を有する、本発明のボールノーズエンドミル。 工具B:工具Aと材料が同じであるが、クリアランス角が一定の15°であり、且つ面取りエツジの丸み曲率半径が20μmから5μmに低減している切刃を有するボールノーズエンドミル。 工具C:微細グレンのセメンテッドカーバイドで製造され、クリアランス角が一定の10°であって、鋭いエツジ(ER処理せずに)の切刃を有し、2−4μm厚のT iCN層をPVD法で被覆して成る、ボールノーズエンドミル。 工具D:均質材料(むく)の高度に合金化した高速度鋼で製造され、2−4μm厚のTiCN層をPVD法で被覆して成り、クリアランス角が一定値の11°であり、 且つ鋭いエツジの切刃を有している、ボールノーズエンドミル。 上記工具で軸方向切込み(切削深さ)1mmと半径方向切込み1mmの仕上工作を金型工作物に施こすテストを行った。 切削条件データと結果は以下の表に示される。 【0016】 切削速度 送り 工具寿命 (m/分) (mm/分) (m) A 80 425 129.5 B 80 425 92.5 C 80 425 91.8 D 40 165 24.0 なお、切削条件データは金型製造メーカの経験による最適なものとした。 【0017】テスト結果は、発明品の工具Aが長工具寿命と均衡のとれた摩耗状態と優れた工作物表面仕上の関点から最良の成果を発揮したことを示していた。 工具B は発明品の工具Aより、結果が悪く、小チツピングにより不均衡な摩耗を蒙っていた。 【0018】 【発明の効果】切刃を再生加工することなく、非常に広範囲の切削速度に亘り高精度切削で顕著なチップ生成能力を長寿命で以って発揮することが出来るむくのボールノーズ工具が、精密仕上工作に特に有益な工具として実現される。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係わる工具の側面図である。 【図2】図1の線B−Bにおける工具の切断面図である。 【図3】図1の工具の正面図(端面図)である。 【図4】図1の線A−Aにおける工具の切断面図である。 【図5】図1の工具の前端を示す拡大部分側面図である。 【符号の説明】 1,5…クリアランス角 2…空隙幅 3…レーキ角 4…切刃 6…センタ ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ロルフ オスカルッソン スウェーデン国,エス−144 40 ローン ニンゲ,スバムプスティゲン 82 |