硬質被膜、および硬質被膜被覆工具

申请号 JP2010520699 申请日 2008-07-14 公开(公告)号 JPWO2010007660A1 公开(公告)日 2012-01-05
申请人 オーエスジー株式会社; 发明人 博昭 杉田; 博昭 杉田; 孝臣 戸井原; 孝臣 戸井原; 崇雅 鈴木; 崇雅 鈴木;
摘要 図1に示すように、ボールエンドミル10の刃部14に設けられた硬質被膜20は、(Cr1-a-bBaMb)(CcOdN1-c-d)にて構成されている第I層22と、AlCrNまたはAlCrDNにて構成されている第II層24と、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種類以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている第 III層26とから成るため、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようになり、ステンレス鋼に対する切削加工や溶着し易い被削材に対する切削加工などでも、剥離やチッピング摩耗が抑制され、良好な加工面が得られるとともに所定の加工性能が安定して得られる。
权利要求
  • 所定の部材の表面上に設けられる耐摩耗性および耐溶着性に優れた硬質被膜であって、
    前記部材の表面に接して設けられる第 III層と、該第 III層の上に設けられる第II層と、該第II層の上に設けられて表面を構成する第I層とから成る3層構造で、
    前記第I層は、(Cr 1-abab )(C cd1-cd )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成され、
    前記第II層は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成され、
    前記第 III層は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種類以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている ことを特徴とする硬質被膜。
  • 前記第I層と前記第II層との境界部分には両者の混合層が設けられ、
    該第II層と前記第 III層との境界部分には両者の混合層が設けられている ことを特徴とする請求項1に記載の硬質被膜。
  • 前記第I層、前記第II層、および前記第 III層の総膜厚Ttotal は0.05〜15μmの範囲内で、
    前記第I層の膜厚T1は、総膜厚Ttotal の1〜50%の範囲内で、
    前記第 III層の膜厚T3は、総膜厚Ttotal の1〜25%の範囲内で、
    前記第II層の膜厚T2は、(Ttotal −T1−T3)である ことを特徴とする請求項1または2に記載の硬質被膜。
  • 請求項1〜3の何れか1項に記載の硬質被膜で工具母材の表面が被覆されていることを特徴とする硬質被膜被覆工具。
  • 说明书全文

    本発明は硬質被膜に係り、特に、耐摩耗性および耐溶着性に優れた硬質被膜の改良に関するものである。

    高速度工具鋼や超硬合金等の工具母材などの所定の部材の表面に硬質被膜を設けることが広く行われている。 例えば特許文献1には、耐摩耗性に優れたA層の上に耐溶着性に優れたB層を設けることが提案されており、A層はTi、Cr、Al、Si等の窒化物、炭窒化物などで、B層はTi、Cr、Al、Si等の酸化物、化物などである。

    特開2007−15106号公報

    しかしながら、このような従来の硬質被膜においては、工具母材等に対して必ずしも十分な付着強度が得られず、例えばステンレス鋼に対する切削加工や50HRC以下で溶着し易い被削材に対する切削加工などでは、早期に剥離やチッピング摩耗が発生して加工面が悪化したり切削性能がばらついたりする問題があった。

    本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、耐摩耗性および耐溶着性に優れた硬質被膜が高い付着強度で工具母材等に設けられ、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようにすることにある。

    かかる目的を達成するために、第1発明は、所定の部材の表面上に設けられる耐摩耗性および耐溶着性に優れた硬質被膜であって、(a) 前記部材の表面に接して設けられる第 III層と、その第 III層の上に設けられる第II層と、その第II層の上に設けられて表面を構成する第I層とから成る3層構造で、(b) 前記第I層は、(Cr 1-abab )(C cd1-cd )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成され、(c) 前記第II層は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中 の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成され、(d) 前記第 III層は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種類以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されていることを特徴とする。

    第2発明は、第1発明の硬質被膜において、(a) 前記第I層と前記第II層との境界部分には両者の混合層が設けられ、(b) その第II層と前記第 III層との境界部分には両者の混合層が設けられていることを特徴とする。

    第3発明は、第1発明または第2発明の硬質被膜において、(a) 前記第I層、前記第II層、および前記第 III層の総膜厚Ttotal は0.05〜15μmの範囲内で、(b) 前記第I層の膜厚T1は、総膜厚Ttotal の1〜50%の範囲内で、(c) 前記第 III層の膜厚T3は、総膜厚Ttotal の1〜25%の範囲内で、(d) 前記第II層の膜厚T2は、(Ttotal −T1−T3)であることを特徴とする。

    第4発明は硬質被膜被覆工具に関するもので、第1発明〜第3発明の何れかの硬質被膜で工具母材の表面が被覆されていることを特徴とする。

    第1発明の硬質被膜は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成されている第II層により優れた耐摩耗性が得られるとともに、(Cr 1-abab )(C cd1-cd )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成されている最上層の第I層により優れた耐溶着性が得られる一方、工具母材等の硬質被膜を形成すべき所定の部材と上記第II層との間には、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種� ��以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている第 III層が介在させられているため、高い付着強度が得られる。 これにより、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようになり、例えば第4発明のような硬質被膜被覆工具の場合、ステンレス鋼に対する切削加工や50HRC以下で溶着し易い被削材に対する切削加工などでも、剥離やチッピング摩耗が抑制され、良好な加工面が得られるとともに、所定の加工性能が安定して得られるようになって工具寿命が向上する。

    第2発明では、第I層と第II層との境界部分に両者の混合層が設けられるとともに、第II層と第 III層との境界部分にも両者の混合層が設けられているため、それ等の第I層、第II層、および第 III層の相互の付着強度も高くなり、剥離やチッピング摩耗が一層効果的に抑制される。 また、それ等の第I層〜第 III層をアークイオンプレーティング法やスパッタリング法等のPVD法で形成する場合、上記混合層が形成されるようにターゲットや反応ガスの切換タイミングを適当に設定することにより、その混合層を含めて第 III層〜第I層を連続的に効率良く形成することができる。

    第3発明では、第I層〜第 III層の総膜厚Ttotal が0.05〜15μmの範囲内で、第I層の膜厚T1が総膜厚Ttotal の1〜50%の範囲内で、第 III層の膜厚T3が総膜厚Ttotal の1〜25%の範囲内で、第II層の膜厚T2が(Ttotal −T1−T3)であるため、第I層による耐溶着性向上、第II層による耐摩耗性向上、および第 III層による付着強度向上の各効果が適切に得られる。

    本発明が適用されたエンドミルを示す図で、(a) は軸心と直方向から見た正面図、(b) は先端側から見た拡大底面図、(c) は硬質被膜が設けられた刃部の表面近傍の拡大断面図である。

    図1のエンドミルに設けられる本発明の硬質被膜の具体例と、それ等のエンドミルを用いて所定の加工条件で切削加工を行なって逃げ面摩耗幅(耐摩耗性)を調べた結果を示す図である。

    本発明とは第I層の原子比や膜厚等が異なる比較例について、図2の場合と同じ加工条件で切削加工を行なって逃げ面摩耗幅(耐摩耗性)を調べた結果を示す図である。

    所定の硬質被膜が設けられたテストピースを用いて摩擦摩耗試験を行う際のピンオンディスク式摩擦試験装置を説明する概念図である。

    図4の装置を用いてS45Cに対して摩擦摩耗試験を行った後の本発明の硬質被膜および従来の硬質被膜の摩耗痕の写真を示す図である。

    図4の装置を用いてSUS304に対して摩擦摩耗試験を行った後の本発明の硬質被膜および従来の硬質被膜の摩耗痕の写真を示す図である。

    符号の説明

    10:エンドミル(硬質被膜被覆工具) 12:工具母材(所定の部材) 20:硬質被膜 22:第I層 24:第II層 26:第 III層

    本発明は、エンドミルやタップ、ドリルなどの回転切削工具の他、バイト等の非回転式の切削工具、或いは転造工具など、種々の加工工具の表面に設けられる硬質被膜に好適に適用されるが、半導体装置等の表面保護膜など加工工具以外の部材の表面に設けられる硬質被膜にも適用できる。 硬質被膜の形成手段としては、アークイオンプレーティング法やスパッタリング法等のPVD法(物理蒸着法)が好適に用いられる。

    (Cr 1-abab )(C cd1-cd )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の1種類以上の元素〕から成る第I層のMは、1種類の元素であっても良いが2種類以上の元素であっても良く、2種類以上の元素から成る場合は、それ等の原子比の合計が前記bの範囲内、すなわち0.5以下であれば良い。

    AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕から成る第II層のDは、前記第I層のMとは別個に適宜定められるが、第I層のMと同じであっても良い。

    第2発明では、第I層と第II層との境界部分に両者の混合層が設けられ、第II層と第 III層との境界部分に両者の混合層が設けられているが、それ等の混合層は必ずしも必要なく、第I層の上に直接第II層を形成するとともに、その第II層の上に直接第 III層を形成しても良い。 第I層と第II層との境界部分、および第II層と第 III層との境界部分の何れか一方のみに混合層が設けられても良い。

    第3発明では、総膜厚Ttotal が0.05〜15μmの範囲内であるが、0.05μm未満の場合は硬質被膜としての性能が十分に得られず、15μmを超えると切削工具の刃先が丸くなるなどして工具性能が損なわれる可能性がある。 第I層の膜厚T1は総膜厚Ttotal の1〜50%の範囲内であるが、1%未満では第I層による耐溶着性の向上効果が十分に得られず、50%を超えると、第II層による耐摩耗性の向上効果が損なわれる可能性がある。 また、第 III層の膜厚T3は総膜厚Ttotal の1〜25%の範囲内であるが、1%未満では第 III層による付着強度の向上効果が十分に得られず、25%を超えると、第II層による耐摩耗性の向上効果が損なわれる可能性がある。

    硬質被膜被覆工具の工具母材としては、超硬合金や高速度工具鋼、サーメット、セラミックス、多結晶ダイヤモンド(PCD)、単結晶ダイヤモンド、多結晶CBN、単結晶CBNが好適に用いられるが、他の工具材料を採用することもできる。

    以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
    図1は、本発明が適用された硬質被膜被覆工具の一例であるボールエンドミル10を説明する図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は先端側((a) の図の右方向)から見た拡大底面図であり、超硬合金にて構成されている工具母材12にはシャンクおよび刃部14が一体に設けられている。 刃部14には、切れ刃として一対の外周刃16およびボール刃18が軸心に対して対称的に設けられており、軸心まわりに回転駆動されることによりそれ等の外周刃16およびボール刃18によって切削加工が行われるとともに、その刃部14の表面には硬質被膜20がコーティングされている。 図1(a) の斜線部は硬質被膜20を表しており、図1の(c) は、硬質被膜20がコーティングされた刃部14の表面近傍の断面図である。 ボールエンドミル10は回転切削工具で、工具母材12は硬質被膜20が設けられる所定の部材に相当する。

    図1(c) から明らかなように、硬質被膜20は第I層22、第II層24、および第 III層26から成る3層構造で、本実施例ではアークイオンプレーティング装置を用いて、ターゲットや反応ガスを切り換えることにより連続的に形成されている。 工具母材12の表面に接して設けられる第 III層26は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種類以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている。 具体的には、例えば図2の「被膜構造」の「第 III層」の欄に例示されているように、TiN、CrN、TiAlN、TiCrN、ZrN、TiAlNbN、TiTaN、TiAlZrN、ZrAlN、TiCrNbN、TiAlSiCN、TiAlCrN、TiVSiN、TiAlHfN、TiAlCNなどである。 なお、図2の被膜構造の欄の各元素の後に記載されている小数は原子比である。 図3も同様である。

    上記第 III層26の上に設けられる第II層24は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成されている。 具体的には、例えば図2の「被膜構造」の「第II層」の欄に例示されているように、AlCrN、AlCrHfN、AlCrYN、AlCrWN、AlCrNbN、AlCrVN、AlCrSiN、AlCrTiN、AlCrMoN、AlCrZrN、AlCrSiCNなどである。 この第II層24と第 III層26との境界部分には、両者の組成が混ざった混合層が僅かな厚さ(例えば第II層24の膜厚T2の10%以下)で設けられているが、図では省略されている。 この混合層は、第 III層26を形成するためのターゲットおよび反応ガスから第II層24を形成するためのターゲットおよび反応ガスに切り換えるタイミングをずらし、第 III層26を形成するためのターゲットおよび反応ガスと、第II層24を形成するためのターゲットおよび反応ガスとを、所定時間だけ重複して用いることにより、第 III層26に連続して形成することができる。 また、その状態で第 III層26を形成するためのターゲットへの通電(アーク放電)および反応ガスの供給を停止すれば、混合層から連続して第II層24に切り換えることができる。 なお、反応ガスが共通であれば、ターゲットへの通電のみを切り換えれば良い。

    上記第II層24の上に設けられて硬質被膜20の表面を構成する最上層の第I層22は、(Cr 1-abab )(C cd1-cd )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、Si、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成されている。 具体的には、例えば図2の「被膜構造」の「第I層」の欄に例示されているように、CrBTiN、CrBVN、CrBYN、CrBSiHfN、CrBWN、CrBNbN、CrBTaN、CrBVCN、CrBTiONなどである。 この第I層22と第II層24との境界部分にも、両者の組成が混ざった混合層が僅かな厚さ(例えば第I層22の膜厚T1の10%以下)で設けられているが、図では省略されている。 この混合層も、前記第II層24と第 III層26との境界部分の混合層と同様に連続して形成することができる。

    また、上記第I層22、第II層24、および第 III層26を合わせた硬質被膜20全体の総膜厚Ttotal は0.05〜15μmの範囲内で、第I層22の膜厚T1は総膜厚Ttotal の1〜50%の範囲内、第 III層26の膜厚T3は総膜厚Ttotal の1〜25%の範囲内、第II層24の膜厚T2は(Ttotal −T1−T3)である。 図2および図3の膜厚の欄に括弧書きで示されている%は、それぞれ総膜厚Ttotal に対する比率である。

    このように、本実施例のボールエンドミル10の硬質被膜20は、AlCrNまたはAlCrDNにて構成されている第II層24により優れた耐摩耗性が得られるとともに、(Cr 1-abab )(C cd1-cd )にて構成されている最上層の第I層22により優れた耐溶着性が得られる一方、工具母材12と上記第II層24との間には、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種類以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている第 III層26が介在させられているため、高い付着強度が得られる。 これにより、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようになり、ステンレス鋼に対する切削加工や50HRC以下で溶着し易い被削材に対する切削加工などでも、剥離やチッピング摩耗が抑制され、良好な加工面が得られるとともに、所定の加工性能が安定して得られるようになって工具寿命が向上する。

    また、本実施例では、第I層22と第II層24との境界部分に両者の混合層が設けられるとともに、第II層24と第 III層26との境界部分にも両者の混合層が設けられているため、それ等の第I層22、第II層24、および第 III層26の相互の付着強度も高くなり、剥離やチッピング摩耗が一層効果的に抑制される。 本実施例では、それ等の第I層22〜第 III層26がアークイオンプレーティング法によって形成されるため、上記混合層が形成されるようにターゲットや反応ガスの切換タイミングを適当に設定することにより、その混合層を含めて第 III層26〜第I層22を連続的に効率良く形成することができる。

    また、本実施例では、第I層22〜第 III層26の総膜厚Ttotal が0.05〜15μmの範囲内で、第I層22の膜厚T1が総膜厚Ttotal の1〜50%の範囲内で、第 III層26の膜厚T3が総膜厚Ttotal の1〜25%の範囲内で、第II層24の膜厚T2が(Ttotal −T1−T3)であるため、第I層22による耐溶着性向上、第II層24による耐摩耗性向上、および第 III層26による付着強度向上の各効果が適切に得られる。

    次に、工具母材12が超硬合金製で直径が6mm(先端R=3)、2枚刃の本実施例のボールエンドミル10(請求項1〜3の要件を満たす本発明品)と、硬質被膜20を構成している第I層22、第II層24、第 III層26の有無や被膜組成、原子比、膜厚が請求項1または3の要件を満たしていない比較品とを用意し、以下の加工条件で切削加工を行って210m切削加工した後のボール刃18の逃げ面摩耗幅(mm)を調べた結果を説明する。 図2は総て本発明品で、図3は総て比較品であり、図3の網掛けを付した欄は請求項1または3の要件から外れている項目である。 また、逃げ面摩耗幅(mm)は2枚のボール刃18の平均値で、許容範囲を0.1mm以下として合否判定を行った。 なお、被膜硬さ(HV0.025)については必ずしも測定が容易でないため、一部の試験品についてのみ調べ、記載の無いものは測定を省略した。
    (加工条件)
    ・被削材種:SUS304(JISの規定によるステンレス鋼)
    ・切削方法:ピック加工 ・切削速度:217m/min
    ・送り速度:0.12mm/t
    ・切り込み:aa=0.3mm、Pf=0.6mm
    ・切削油剤:エアブロー

    図2の本発明品は、何れも逃げ面摩耗幅が許容範囲内(0.1mm以下)である。 これに対し、図3の比較品は、何れも逃げ面摩耗幅が許容範囲(0.1mm)を超えているか、加工途中で欠けが発生して加工不可となり、十分な耐久性(工具寿命)が得られなかった。 被膜硬さHVは、図2の本発明品では2760〜2940であるのに対し、図3の比較品では2640〜2900であるが、測定誤差や個体差を考慮すると殆ど差がないものと考えられ、耐溶着性や付着強度が耐久性(逃げ面摩耗幅)に大きく影響しているものと考えられる。

    また、直径が6mmの円柱形状で、先端ラップ面がR5の球面とされたテストピースにおいて、そのラップ面に本発明の硬質被膜20をコーティングしたものと、従来のAlCrNのみから成る1層の硬質被膜をコーティングしたものとをそれぞれ2本ずつ用意し、図4に示すピンオンディスク式試験装置を用いて以下の試験条件で摩擦摩耗試験を行ったところ、図5および図6に示す結果(摩耗痕の写真)が得られた。 この場合の本発明の硬質被膜20は、図2の試料No26に示すものと同じで、第I層22がCr 0.670.040.29 N、第II層24がAl 0.65 Cr 0.35 N、第 III層26がTi 0.6 Al 0.4 Nで、総膜厚Ttotal が4.1μm、第I層22の膜厚T1=1.3μm(32%)、第II層24の膜厚T2=1.8μm(44%)、第 III層26の膜厚T3=1μm(24%)である。
    (試験条件)
    ・相手材:S45C(JISの規定による炭素鋼)およびSUS304(JISの規定によるステンレス鋼)
    ・荷重:0.5N
    ・線速度:25mm/s
    ・時間:300秒 ・室温:22℃
    ・湿度:39%

    図5は相手材がS45Cの場合で、図6は相手材がSUS304の場合であり、何れも白の点線で囲った領域が摩耗痕で、本発明品の方が従来品よりも小さく、優れた耐摩耗性が得られることが分かる。 特に、相手材がS45Cの図5においては、(b) の従来品では相手材の溶着や被膜の剥離が観察されたのに対し、(a) の本発明品では、そのような溶着や剥離が殆ど見られず、優れた耐溶着性、付着強度が得られる。

    以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。

    本発明の硬質被膜は、AlCrNまたはAlCrDNにて構成されている第II層により優れた耐摩耗性が得られるとともに、(Cr 1-abab )(C cd1-cd )にて構成されている最上層の第I層により優れた耐溶着性が得られる一方、工具母材と上記第II層との間には、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Wの中の1種類以上の元素から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている第 III層が介在させられているため、高い付着強度が得られる。 これにより、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようになり、ステンレス鋼に対する切削加工や溶着し易い被削材に対する切削加工などでも、剥離やチッピング摩耗が抑制され、良好な加工面が得られるとともに所定の加工性能が安定して得られるなど、切削加工用の加工工具等の硬質被膜として好適に採用される。

    【0002】
    ≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成され、(c)前記第II層は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成され、(d)前記第III層は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、W、SiCの中の1種類以上の元素または化合物から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されていることを特徴とする。
    [0006]
    第2発明は、第1発明の硬質被膜において、(a)前記第I層と前記第II層との境界部分には、両者の成膜処理の切換タイミングがずらされてそれ等の成膜処理が所定時間だけ重複して行われたことにより両者の組成が混ざった混合層が設けられ、(b)その第II層と前記第III層との境界部分には、両者の成膜処理の切換タイミングがずらされてそれ等の成膜処理が所定時間だけ重複して行われたことにより両者の組成が混ざった混合層が設けられていることを特徴とする。
    [0007]
    第3発明は、第1発明または第2発明の硬質被膜において、(a)前記第I層、前記第II層、および前記第III層の総膜厚Ttotalは0.05〜15μmの範囲内で、(b)前記第I層の膜厚T1は、総膜厚Ttotalの1〜50%の範囲内で、(c)前記第III層の膜厚T3は、総膜厚Ttotalの1〜25%の範囲内で、(d)前記第II層の膜厚T2は、(Ttotal−T1−T3)であることを特徴とする。
    [0008]
    第4発明は硬質被膜被覆工具に関するもので、第1発明〜第3発明の何れかの硬質被膜で工具母材の表面が被覆されていることを特徴とする。
    発明の効果[0009]
    第1発明の硬質被膜は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成されている第II層により優れた耐摩耗性が得られるとともに、(Cr 1−a−b )(C 1−c−d )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成されている最上層の第1層により優れた耐溶着性が得られる一方、工具母材等の硬質被膜を形成すべき所定の部材と上記第II層との間には、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、� ��a、Cr、W、SiCの中の1種類以上の元素または化合物から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている第III層が介在させられているため、高い付着強度が得られる。 これにより、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようになり、例えば第4発明のような

    【0004】
    [図5]図4の装置を用いてS45Cに対して摩擦摩耗試験を行った後の本発明の硬質被膜および従来の硬質被膜の摩耗痕の写真を示す図である。
    [図6]図4の装置を用いてSUS304に対して摩擦摩耗試験を行った後の本発明の硬質被膜および従来の硬質被膜の摩耗痕の写真を示す図である。
    符号の説明[0013]
    10:エンドミル(硬質被膜被覆工具) 12:工具母材(所定の部材) 20:硬質被膜 22:第I層 24:第II層 26:第III層発明を実施するための最良の形態[0014]
    本発明は、エンドミルやタップ、ドリルなどの回転切削工具の他、バイト等の非回転式の切削工具、或いは転造工具など、種々の加工工具の表面に設けられる硬質被膜に好適に適用されるが、半導体装置等の表面保護膜など加工工具以外の部材の表面に設けられる硬質被膜にも適用できる。 硬質被膜の形成手段としては、アークイオンプレーティング法やスパッタリング法等のPVD法(物理蒸着法)が好適に用いられる。
    [0015]
    (Cr 1−a−b )(C 1−c−d )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の1種類以上の元素〕から成る第I層のMは、1種類の元素であっても良いが2種類以上の元素であっても良く、2種類以上の元素から成る場合は、それ等の原子比の合計が前記bの範囲内、すなわち0.5以下であれば良い。
    [0016]
    AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕から成る第II層のDは、前記第I層のMとは別個に適宜定められるが、第I層のMと同じであっても良い。
    [0017]
    第2発明では、第I層と第II層との境界部分に両者の混合層が設けられ、第II層と第III層との境界部分に両者の混合層が設けられているが、それ等の混合層は必ずしも必要なく、第I層の上に直接第II層を形成するとともに、その第II層の上に直接第III層を形成しても良い。 第I層と第II層との境界部分、および第II層と第III層との境界部分の何れか一方のみに混合層が設けられても良い。

    【0005】
    [0018]
    第3発明では、総膜厚Ttotalが0.05〜15μmの範囲内であるが、0.05μm未満の場合は硬質被膜としての性能が十分に得られず、15μmを超えると切削工具の刃先が丸くなるなどして工具性能が損なわれる可能性がある。 第I層の膜厚T1は総膜厚Ttotalの1〜50%の範囲内であるが、1%未満では第I層による耐溶着性の向上効果が十分に得られず、50%を超えると、第II層による耐摩耗性の向上効果が損なわれる可能性がある。 また、第III層の膜厚T3は総膜厚Ttotalの1〜25%の範囲内であるが、1%未満では第III層による付着強度の向上効果が十分に得られず、25%を超えると、第II層による耐摩耗性の向上効果が損なわれる可能性がある。
    [0019]
    硬質被膜被覆工具の工具母材としては、超硬合金や高速度工具鋼、サーメット、セラミックス、多結晶ダイヤモンド(PCD)、単結晶ダイヤモンド、多結晶CBN、単結晶CBNが好適に用いられるが、他の工具材料を採用することもできる。
    実施例[0020]
    以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
    図1は、本発明が適用された硬質被膜被覆工具の一例であるボールエンドミル10を説明する図で、(a)は軸心と直角方向から見た正面図、(b)は先端側((a)の図の右方向)から見た拡大底面図であり、超硬合金にて構成されている工具母材12にはシャンクおよび刃部14が一体に設けられている。 刃部14には、切れ刃として一対の外周刃16およびボール刃18が軸心に対して対称的に設けられており、軸心まわりに回転駆動されることによりそれ等の外周刃16およびボール刃18によって切削加工が行われるとともに、その刃部14の表面には硬質被膜20がコーティングされている。 図1(a)の斜線部は硬質被膜20を表しており、図1の(c)は、硬質被膜20がコーティングされた刃部14の表面近傍の断面図である。 ボールエンドミル10は回転切削工具で、工具母材12は硬質被膜20が設けられる所定の部材に相当する。
    [0021]
    図1(c)から明らかなように、硬質被膜20は第I層22、第II層24、および第III層26から成る3層構造で、本実施例ではアークイオンプレーティング装置を用いて、ターゲットや反応ガスを切り換えることにより連続的に形成されている。 工具母材12の表面に接して設けられる第III層26は、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、W、SiCの中の1種類以上の元素または化合物から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている

    【0006】
    。 具体的には、例えば図2の「被膜構造」の「第III層」の欄に例示されているように、TiN、CrN、TiAlN、TiCrN、ZrN、TiAlNbN、TiTaN、TiAlZrN、ZrAlN、TiCrNbN、TiAlSiCN、TiAlCrN、TiAlHfN、TiAlCNなどである。 なお、図2の被膜構造の欄の各元素の後に記載されている小数は原子比である。 図3も同様である。
    [0022]
    上記第III層26の上に設けられる第II層24は、AlCrNまたはAlCrDN〔但し、Dは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の何れか1種類の元素、またはSiC〕にて構成されている。 具体的には、例えば図2の「被膜構造」の「第II層」の欄に例示されているように、AlCrN、AlCrHfN、AlCrYN、AlCrWN、AlCrNbN、AlCrVN、AlCrTiN、AlCrMoN、AlCrZrN、AlCrSiCNなどである。 この第II層24と第III層26との境界部分には、両者の組成が混ざった混合層が僅かな厚さ(例えば第II層24の膜厚T2の10%以下)で設けられているが、図では省略されている。 この混合層は、第III層26を形成するためのターゲットおよび反応ガスから第II層24を形成するためのターゲットおよび反応ガスに切り換えるタイミングをずらし、第III層26を形成するためのターゲットおよび反応ガスと、第II層24を形成するためのターゲットおよび反応ガスとを、所定時間だけ重複して用いることにより、第III層26に連続して形成することができる。 また、その状態で第III層26を形成するためのターゲットへの通電(アーク放電)および反応ガスの供給を停止すれば、混合層から連続して第II層24に切り換えることができる。 なお、反応ガスが共通であれば、ターゲットへの通電のみを切り換えれば良い。
    [0023]
    上記第II層24の上に設けられて硬質被膜20の表面を構成する最上層の第I層22は、(Cr 1−a−b )(C 1−c−d )〔但し、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0<a≦0.2、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0≦d≦0.3の範囲内、Mは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、およびYの中の1種類以上の元素〕にて構成されている。 具体的には、例えば図2の「被膜構造」の「第I層」の欄に例示されているように、CrBTiN、CrBVN、CrBYN、CrBWN、CrBNbN、CrBTaN、CrBVCN、CrBTiONなどである。 この第I層22と第II層24との境界部分にも、両者の組成が混ざった混合層が僅かな厚さ(例えば第I層22の膜厚T1の10%以下)で設けら

    【0007】
    れているが、図では省略されている。 この混合層も、前記第II層24と第III層26との境界部分の混合層と同様に連続して形成することができる。
    [0024]
    また、上記第I層22、第II層24、および第III層26を合わせた硬質被膜20全体の総膜厚Ttotalは0.05〜15μmの範囲内で、第I層22の膜厚T1は総膜厚Ttotalの1〜50%の範囲内、第III層26の膜厚T3は総膜厚Ttotalの1〜25%の範囲内、第II層24の膜厚T2は(Ttotal−T1−T3)である。 図2および図3の膜厚の欄に括弧書きで示されている%は、それぞれ総膜厚Ttotalに対する比率である。
    [0025]
    このように、本実施例のボールエンドミル10の硬質被膜20は、AlCrNまたはAlCrDNにて構成されている第II層24により優れた耐摩耗性が得られるとともに、(Cr 1−a−b )(C 1−c−d )にて構成されている最上層の第I層22により優れた耐溶着性が得られる一方、工具母材12と上記第II層24との間には、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、W、SiCの中の1種類以上の元素または化合物から成る金属の窒化物、炭窒化物、または炭化物にて構成されている第III層26が介在させられているため、高い付着強度が得られる。 これにより、優れた耐摩耗性、耐溶着性が長期間に亘って安定して得られるようになり、ステンレス鋼に対する切削加工や50HRC以下で溶着し易い被削材に対する切削加工などでも、剥離やチッピング摩耗が抑制され、良好な加工面が得られるとともに、所定の加工性能が安定して得られるようになって工具寿命が向上する。
    [0026]
    また、本実施例では、第I層22と第II層24との境界部分に両者の混合層が設けられるとともに、第II層24と第III層26との境界部分にも両者の混合層が設けられているため、それ等の第I層22、第II層24、および第III層26の相互の付着強度も高くなり、剥離やチッピング摩耗が一層効果的に抑制される。 本実施例では、それ等の第I層22〜第III層26がアークイオンプレーティング法によって形成されるため、上記混合層が形成されるようにターゲットや反応ガスの切換タイミングを適当に設定することにより、その混合層を含めて第III層26〜第I層22を連続的に効率良く形成することができる。
    [0027]
    また、本実施例では、第I層22〜第III層26の総膜厚Ttotalが0.05〜15μmの範囲内で、第I層22の膜厚T1が総膜厚Ttotalの1〜50%の範囲内で、第III層26の膜厚T3が総膜厚Ttotalの1〜25%の範囲内で、第II層24の膜厚T2が(Ttotal

    【0009】
    Nのみから成る1層の硬質被膜をコーティングしたものとをそれぞれ2本ずつ用意し、図4に示すピンオンディスク式試験装置を用いて以下の試験条件で摩擦摩耗試験を行ったところ、図5および図6に示す結果(摩耗痕の写真)が得られた。 この場合の本発明の硬質被膜20は、図2の試料No25に示すものと同じで、第I層22がCr 0.670.040.29 N、第II層24がAl 0.65 Cr 0.35 N、第III層26がTi 0.6 Al 0.4 Nで、総膜厚Ttotalが4.1μm、第I層22の膜厚T1=1.3μm(32%)、第II層24の膜厚T2=1.8μm(44%)、第III層26の膜厚T3=1μm(24%)である。
    (試験条件)
    ・相手材:S45C(JISの規定による炭素鋼)およびSUS304(JISの規定によるステンレス鋼)
    ・荷重:0.5N
    ・線速度:25mm/s
    ・時間:300秒 ・室温:22℃
    ・湿度:39%
    [0031]
    図5は相手材がS45Cの場合で、図6は相手材がSUS304の場合であり、何れも白の点線で囲った領域が摩耗痕で、本発明品の方が従来品よりも小さく、優れた耐摩耗性が得られることが分かる。 特に、相手材がS45Cの図5においては、(b)の従来品では相手材の溶着や被膜の剥離が観察されたのに対し、(a)の本発明品では、そのような溶着や剥離が殆ど見られず、優れた耐溶着性、付着強度が得られる。
    [0032]
    以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
    産業上の利用可能性[0033]
    本発明の硬質被膜は、AlCrNまたはAlCrDNにて構成されている第II層により優れた耐摩耗性が得られるとともに、(Cr 1−a−b )(C 1−c−d )にて構成されている最上層の第I層により優れた耐溶着性が得られる一方、工具母材と上記第II層との間には、Al、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、W、SiCの中の1種類以上の元素または化合物から成る金属の

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