鋳型及びその形成方法、並びにその鋳型を用いた多結晶シリコン基板の製造方法

申请号 JP2005517569 申请日 2005-01-27 公开(公告)号 JPWO2005073129A1 公开(公告)日 2007-09-13
申请人 京セラ株式会社; 发明人 洋平 坂井; 洋平 坂井; 幸薫 天野; 幸薫 天野;
摘要 本発明は、一つの底面部材2と四つの側面部材3とを組み合わせた鋳型であって、各側面部材3の側部には側面部材3同士を結合するための凸部5と凹部6を備え、隣接する側面部材の凸部5と凹部6を嵌め合わせる構造を有する。一つの 底板 2と四つの側板3を組み立てる場合に、これらを固定のためのネジ、ボルトを使用せずに鋳型の組み立て解体作業を行うことができ、鋳型の組み立て解体の作業が飛躍的に簡素化し、作業効率が大幅に向上する。
权利要求
  • 底面部材と、前記底面部材に当接する四つの側面部材とを組み合わせてなる鋳型であって、
    前記各側面部材の側辺部に、隣接する側面部材同士を嵌め合わせるための凹部と凸部とを含む嵌合構造が設けられた鋳型。
  • 前記嵌合構造は、一の側面部材の凸部と隣接する他の側面部材の凹部とが嵌め合う構造であり、
    前記嵌合構造は、前記底面部材の底面に対して略水平である一つ以上の嵌合面を含み、前記嵌合面のうち前記側面部材の上辺部に最も近いものと、前記上辺部との距離が1cm以上8cm以下の範囲にある請求項1記載の鋳型。
  • 前記側面部材の両側の側辺部に設けられた嵌合構造の形状は、前記側面部材の中心線を基準として非対称の関係にある請求項1又は請求項2記載の鋳型。
  • 前記側面部材の両側の側辺部に設けられた嵌合構造の形状は、点対称の関係にある請求項3記載の鋳型。
  • 前記底面部材は、その上面に、四角形状の底面中央部と底面外周部とに分割するための閉じた溝を有するものであり、
    前記四つの側面部材の底辺部は、前記四つの側面部材を組み合わせてなる状態で、前記底面中央部を囲繞するように、前記底面部材の溝に嵌装されるものであり、
    前記底面部材の溝に嵌装された前記四つの側面部材の外周面と、前記底面外周部との間隙に、楔部材が配置されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋳型。
  • 前記底面部材は、四角形状であり、
    前記四つの側面部材は、前記底面部材の側面に当接するものであり、
    前記組み合わせてなる底面部材と四つの側面部材とを設置するための鋳型ホルダーと、
    前記鋳型ホルダーの上面に配置した複数の楔受け部と、
    前記底面部材を囲繞して立設した前記四つの側面部材の外周面と、前記複数の楔受け部との間隙に配置した楔部材と、を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋳型。
  • 前記楔受け部は、前記鋳型ホルダーの上面に対して着脱自在である請求項6記載の鋳型。
  • 前記複数の楔受け部から選択されたある楔受け部と、前記鋳型ホルダーの上面において、前記組み合わせてなる底面部材と四つの側面部材を挟んで対向する位置に配置された別の楔受け部との間隔が調節可能である請求項6又は請求項7記載の鋳型。
  • 隣接した前記側面部材同士を嵌め合わせて一体とした前記四つの側面部材の外周を囲繞するように配置され、これらの側面部材の変位を拘束するための枠状部材を備えた請求項1から請求項8のいずれかに記載の鋳型。
  • 隣接した前記側面部材同士を嵌め合わせて一体とした前記四つの側面部材の外周を囲繞するように、かつ、前記四つの側面部材との間に遊びをもたせて配置された枠状部材を備え、
    前記枠状部材と、前記隣接した前記側面部材同士によって形成される四つの外側角部との間隙に配置され、前記四つの側面部材の変位を拘束するための押さえ治具を備えた請求項1から請求項8のいずれかに記載の鋳型。
  • 前記押さえ治具は、前記鋳型の前記外側角部を構成する二つの前記側面部材の外周面に、それぞれ当接する二つの治具面を有する請求項10記載の鋳型。
  • 前記押さえ治具は、前記鋳型の前記外側角部が直接当たらないように、この外側角部に対応する箇所に逃げ溝を設けた請求項11記載の鋳型。
  • 前記枠状部材は、その内周部に、対向する前記側面部材に当接して、その変位を拘束するための、突出部を設けた請求項10から請求項12のいずれかに記載の鋳型。
  • 前記嵌合構造は、一の側面部材の凸部と隣接する他の側面部材の凹部とが嵌め合って当接するとともに前記底面部材の底面に対して略水平である一つ以上の嵌合面を含み、前記枠状部材は、これらの嵌合面の位置に配置された請求項9から請求項13のいずれかに記載の鋳型。
  • 前記底面部材と前記側面部材とから構成される鋳型内面部と、前記底面部材と側面部材の係止部である四つの角隅部、前記側面部材同士の係止部である八つの稜線部に適用された離型材をさらに備えた請求項1から請求項14のいずれかに記載の鋳型。
  • 請求項1から請求項15のいずれかに記載の鋳型を形成するための方法であって、
    一つの底面部材および四つの側面部材の表面に離型材を塗布・乾燥させる第一工程と、
    前記底面部材を底面として前記四つの側面部材を立設し、前記離型材を塗布した面が内側となるように箱型に組み立てる第二工程と、
    前記底面部材と前記側面部材とから構成される四つの角隅部と八つの稜線部とからなる係止部に離型材を追加して塗布する第三工程と、を有する鋳型の形成方法。
  • 請求項1から請求項15のいずれかに記載の鋳型を用いてシリコンインゴットを製造し、このシリコンインゴットから多結晶シリコン基板を得る多結晶シリコン基板の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、太陽電池用シリコン基板などに用いられる多結晶シリコンインゴットを鋳造するのに適した鋳型に関し、特に一つの底板と四つの側板からなる組み立て解体可能な鋳型及びその形成方法並びにその鋳型を用いた多結晶シリコン基板の製造方法に関するものである。

    太陽電池はクリーンな石油代替エネルギー源として、小規模な家庭用から大規模な発電システムまでの広い分野でその実用化が期待されている。 太陽電池は使用原料の種類によって結晶系、アモルファス系、化合物系などに分類され、なかでも現在市場に流通しているものの多くは結晶系シリコン太陽電池である。 この結晶系シリコン太陽電池はさらに単結晶型と多結晶型に分類されている。 単結晶シリコン太陽電池は基板の品質が良いために変換効率の高効率化が容易であるという長所を有する反面、基板の製造コストが高いという短所を有する。
    これに対して多結晶シリコン太陽電池は従来から市場に流通してきたが、近年、その需要は増加しており、より低コストで高い変換効率が求められている。 こうした要求に対処するためには多結晶シリコン基板の低コスト化、高品質化が必要であり、特に、高純度のシリコンインゴットを歩留良く製造することが求められている。
    多結晶シリコンインゴットは、シリコンを加熱溶解した融液を鋳型内に注いで鋳型底面部より一方向凝固させて形成したり、シリコン原料を鋳型内に入れて一旦溶解した後、鋳型底面部より一方向凝固させて形成したりする手法が一般的である。
    こうして得られたインゴットは、欠陥や不純物の多いインゴット側面部や底面部、及び凝固偏析現象によって不純物が濃化しているインゴット頭部の組織を通常厚み数mm以上切断除去し、さらにマルチワイヤーソーなどで薄くスライスして太陽電池用多結晶シリコン基板に加工される。
    このような鋳型として、シリコンを溶解、凝固させる1450℃程度の高温でも形状安定性に優れている石英や溶融シリカなどの二酸化珪素(SiO )や黒鉛などからなる鋳型が用いられ、その内面には窒化珪素(Si )や二酸化珪素(SiO )などを主成分とする離型材皮膜を形成したものが用いられてきた(例えば、文献[1]参照)。
    図16は従来の石英や溶融シリカなどの二酸化珪素(SiO )や黒鉛などから形成され、底面部と側面部とが一体型となっている鋳型121の断面図である。 鋳型121の内面には離型材122が塗布されている。
    このような一体型の鋳型121はシリコンインゴットを取り出すために鋳型を破壊せねばならないため鋳型の再利用が出来ず、シリコンインゴットの製造コストが非常に高いという問題があった。
    また、こうした一体型の鋳型121を成形するためには、鋳込み成形やプレス成形などによって原料を鋳型形状に成形するため金型から成形体を脱型するための抜き勾配(テーパ)が鋳型内面に必要となる。 そのため、この鋳型121によって鋳造されたシリコンインゴットの側面にもインゴット底部から頭部に向けて広くなる逆テーパ123が付き、製品とならない端材部分が増加するため高価なシリコン原料を余分に除去せねばならず、シリコンインゴットの製造コストが増加するという問題があった。
    このような一体型鋳型から鋳型を破壊せずにシリコンインゴットを取り出すために、鋳型内面に更に大きなテーパを付与する方法が提案されているが(例えば文献[2]参照)、特に溶融シリカからなる鋳型は、高温の状態からブロックを冷却する工程において鋳型内の温度勾配や焼結状態の差により鋳型が割れてしまい再利用が難しく、また石英製の鋳型は離型材を塗布した鋳型内面表層がクリストバライト化し、表層剥離して鋳型が消耗するため再利用は非常に困難で、製造したシリコンインゴットの原料歩留が悪く、このような理由からシリコンインゴットの製造コストが大幅に増加する問題があった。
    こうした問題点を回避するために、高純度黒鉛を用いて板状の底面部材と側面部材を作製し、それらを組み立て、ネジ止めして鋳型を作製する方法も試みられている(例えば文献[3]参照)。
    図17は従来の黒鉛などからなる組み立て式の鋳型131の斜視図である。 これらは一つの底面部材132と四つの側面部材133とが組み立て用のネジ134を打ち込むことによって接合されている。 このようにすることで、シリコンインゴットを取り出す際に、一体型鋳型とは異なり鋳型131を破壊せずにシリコンインゴットを取り出すことができる。
    この高純度黒鉛製鋳型は高価であるために、多結晶シリコンインゴットの低コスト化を実現するには黒鉛製鋳型を繰り返し使用する必要があった。 しかし、シリコンの密度は固体より液体が大きく凝固膨張する物質であるため、鋳型内でシリコン融液を冷却固化する際には鋳型の底面部材132および側面部材133は外側へ広がる方向に応を受ける。 こうした組み立て用のネジ134を用いた組み立て式鋳型は、シリコン融液の冷却固化時の凝固膨張による応力によって、鋳型131のネジ止め部分にはせん断応力や引っ張り応力がかかり、ネジ134が破断したり、ネジ134のねじ山がつぶれるなどする結果、底面部材132と側面部材133との接合が甘くなり、シリコン融液が鋳型から漏れたり、ネジ134および鋳型部材の再利用が不可能となったりする問題があった。
    この問題を回避するため鋳型内の離型材被膜中にシリカ粉末層を設け、シリコンの凝固膨張の応力をシリカ粉末層の軟化変形によって吸収する方法や、鋳型側面部材の肉厚を変え、肉厚の薄い面が変形し易いことを利用してシリコンの凝固膨張時に発生する応力の方向をネジの引っ張り応力の方向にすることでネジの破断を防ぐなどの方法が試みられた(例えば文献[4]、[5]参照)。
    しかしこうした鋳型組み立て用のネジ、及び鋳型側に加工した雌ネジなどのネジ山は繰り返し使用することによって消耗し、ネジ止め部分や各側面部材133と底面部材132とが接する部分に緩みが生じて、シリコンの溶解やシリコン融液の冷却固化過程でシリコン融液が漏れるという問題が根本的に残った。 また、鋳型の側面部材133や底面部材132にネジを取り付けるためのネジ山を設ける構造では、ネジ山部がつぶれると鋳型部材そのものが使用できなくなるため、高価にもかかわらず黒鉛鋳型部材の寿命が短いため、シリコンインゴットの製造コストが増加する問題が残った。
    また、こうしたネジを用いた組み立て式の鋳型は、その組み立ておよび解体の際にネジ134を一本一本取り付けたりはずしたりする必要があり、その作業に時間がかかるという問題もあった。 さらに、底面部材132と側面部材133にはネジ止め部分を設ける必要があるため、鋳型部材の厚みを薄くすることができず、鋳型部材のコストを削減することができず、シリコンインゴットの製造コストが増加する問題もあった。
    [1]15th Photovoltaic Specialist Conf. (1981),P576−P580,”A NEW DIRECTIONAL SOLIDIFICATION TECHNIQUE FOR POLYCRYSTALINE SOLAR GRADE SILICON”
    [2]特開平10−190025号公報[3]特開昭62−108515号公報[4]特開平6−144824号公報[5]特開平10−182285号公報 本発明は、高品質シリコンインゴットを低コストで製造するための多結晶シリコンインゴットの鋳造用鋳型およびその形成方法、並びにその鋳型を用いた多結晶シリコン基板の製造方法を提供することを目的とする。

    本発明の鋳型は、底面部材と、前記底面部材に当接する四つの側面部材とを組み合わせてなり、前記各側面部材の側辺部に、隣接する側面部材同士を嵌め合わせるための凹部と凸部とを含む嵌合構造が設けられたものである。
    この構造の鋳型は、鋳型の側面部材にネジを取り付けるためのネジ孔を設ける必要がないので、ネジ孔のネジ山部がつぶれ、鋳型部材そのものが使用できなくなり、高価である黒鉛鋳型部材の寿命を短くするといった問題が解決される。 したがって、シリコンインゴットの製造コストの増加を抑制することができる。 また、固定のためにたくさんのネジまたはボルトを鋳型に取り付ける必要があった従来の鋳型と比較して、鋳型の組み立て解体の作業が飛躍的に簡素化し、作業効率が大幅に向上する。
    前記嵌合構造は、一の側面部材の凸部と隣接する他の側面部材の凹部とが嵌め合う構造であり、前記底面部材の底面に対して略平である嵌合面のうち前記側面部材の上辺部に最も近いものと、前記上辺部との距離が1cm以上8cm以下の範囲にあることが望ましい。 この範囲に設定することにより、側面部材の上部の反りを効果的に抑制し、側面部材を底面部材に対して略垂直に保持することができる。
    前記側面部材の両側の側辺部に設けられた嵌合構造の形状は、前記側面部材の中心線を基準として非対称の関係にすれば、側面部材同士の嵌合強度が増大し、反りやたわみの影響が緩和される。
    前記側面部材の両側の側辺部に設けられた嵌合構造の形状を、点対称の関係とすれば、側面部材の上部と下部を反転させることができ、その結果、鋳型部材の寿命を延ばすことができる。 また、四つの側面部材の形状が全て同じになるので、一種類の形状の側面部材のみで鋳型が組み立てられ、シリコンインゴットの製造コストを抑えることができる。
    前記底面部材は、その上面を、四形状の底面中央部と底面外周部とに分割するための閉じた溝を有するものであり、前記四つの側面部材の底辺部は、前記四つの側面部材が組み合わせてなる状態で、前記底面中央部を囲繞するように、前記底面部材の溝に嵌装されるものであり、前記底面部材の溝に嵌装された前記四つの側面部材の外周面と、前記底面外周部との間隙に、楔部材が配置されている構造とすることができる。 楔部材によって鋳型の側面部材を押さえることにより、シリコン融液の重量による応力が大きくかかる鋳型底部において底面部材と各側面部材との接合部分がしっかりと固定されるため、鋳型からシリコン融液の漏洩を防止でき、鋳型の大型化が可能となる。
    前記底面部材は四角形状であり、前記四つの側面部材は、前記底面部材の側面に当接するものであり、前記組み合わせてなる底面部材と四つの側面部材とを設置するための鋳型ホルダーと、前記鋳型ホルダーの上面に配置した複数の楔受け部と、前記底面部材を囲繞して立設した前記四つの側面部材の外周面と、前記複数の楔受け部との間隙に配置した楔部材とを備えた構造としてもよい。 楔部材によって鋳型の側面部材を押さえることにより、シリコン融液の重量による応力が大きくかかる鋳型底部において底面部材と各側面部材との接合部分がしっかりと固定されるため、鋳型からシリコン融液の漏洩を防止でき、鋳型の大型化が可能となる。
    前記楔受け部を前記鋳型ホルダーの上面に対して着脱自在とすれば、繰り返し使用に伴い楔受け部が消耗した場合にも、楔受け部のみを独立に交換することができ、鋳型ホルダーを交換する必要がなく、引き続き再利用可能なため、鋳型コストを削減することが可能となる。
    前記複数の楔受け部から選択したある楔受け部と、前記鋳型ホルダーの上面において、対向する位置に配置された別の楔受け部との間隔が調節できれば、例えば底面部材と各側面部材の接合部分や、楔と楔受け部とが接する面が消耗した場合においても、向かい合う二つの楔受け部の間隔を調整することにより、底面部材と各側面部材との接合部分をしっかりと固定することができる。
    さらに、隣接した前記側面部材同士を嵌め合わせて一体とした前記四つの側面部材の外周を囲繞して側面部材の変位を拘束する枠状部材を設けることが好ましい。 この枠状部材を用いることにより、側面部材同士の嵌合構造の固定強度が大きくなり、鋳型の大型化、薄型化を行うことができる。 さらに、側面部材にかかる応力が大きくても、側面部材の反りを防ぐことができる。
    また、四つの側面部材との間に遊びをもたせて配置された枠状部材を設け、前記枠状部材と、前記隣接した前記側面部材同士によって形成される四つの外側角部との間隙に押さえ治具を打ち込んでもよい。 この押さえ治具により、側面部材にかかる応力が大きくても、側面部材をしっかり押さえることができ、側面部材のたわみを防ぐことができる。 そして、鋳型の組み立て解体の作業が飛躍的に簡素化し作業効率が大幅に向上する。
    前記押さえ治具は、前記鋳型の前記外側角部を構成する二つの前記側面部材の外周面に、それぞれ当接する二つの治具面を有するものでもよい。 この押さえ治具は鋳型の外側角部の四ヶ所に配置するだけですむため、部材数を減らすことができ作業の簡略化、部材コストの低減につながる。 また、押さえ治具の二つの治具面によって、均等な力で外側角部を構成する二つの側面部材の外周面を固定することができる。
    前記押さえ治具は、前記鋳型の前記外側角部が直接当たらないように、この外側角部に対応する箇所に逃げ溝を設けることが好ましい。 この外側角部に対応する箇所に逃げ溝を設けることにより、押さえ治具を枠状部材から取付、取り外しする際に、鋳型の外側角部が押さえ治具と接することを防ぐので、繰り返し取付、取り外し作業を行っても外側角部の変形や破損を防ぐことができ、鋳型のコストの低減につながる。
    前記枠状部材は、その内周部に、対向する前記側面部材に当接して、その変位を拘束するための、突出部を設けてもよい。 突出部を設けることにより、シリコン融液の冷却固化に伴う膨張により、鋳型の側面部材が外側へたわもうとしたときに、これらの突出部によって変位を抑制することができる。
    前記嵌合構造は、一の側面部材の凸部と隣接する他の側面部材の凹部とが嵌め合って当接するとともに前記底面部材の底面に対して略水平である嵌合面を含むとき、前記枠状部材は、これらの嵌合面の位置に配置することが好ましい。 このようにすることで、枠状部材の固定に伴って側面部材に応力が大きくかかっても、側面部材のたわみを防ぐことができる。
    前記鋳型は、底面部材と前記側面部材とから構成される鋳型内面部と、前記底面部材と側面部材、前記側面部材同士の係止部である四つの角隅部と八つの稜線部とに適用された離型材をさらに備えていれば、シリコン融液が凝固した後に、鋳型の内壁とシリコンインゴットとが融着することが少なくなり、前記底面部材と前記側面部材を何回も繰り返して使用することができる。 また、前記係止部である四つの角隅部と八つの稜線部が、離型材によって確実に封止されるため、シリコンの融液の漏洩が少なくなる。
    また、本発明にかかる鋳型の形成方法は、一つの底面部材および四つの側面部材の表面に離型材を塗布・乾燥させる第一工程と、前記底面部材を底面として前記四つの側面部材を立設し、前記離型材を塗布した面が内側となるように箱型に組み立てる第二工程と、前記底面部材と前記側面部材とから構成される四つの角隅部と八つの稜線部とからなる係止部に離型材を追加して塗布する第三工程と、からなる。 鋳型を組み立てる前に、各鋳型部材に離型材を塗布し、鋳型1の形状に組み立てた後、各鋳型部材の接合部分のみに対して、離型材を追加して塗布するのみでよいので、作業が飛躍的に簡素化し作業効率が大幅に向上する。
    また、本発明の多結晶シリコン基板の製造方法は、今まで説明した本発明の鋳型を用いて、シリコンインゴットを製造し、そのシリコンインゴットから多結晶シリコン基板を得る方法である。 この方法によって製造された多結晶シリコン基板は、繰り返し使用に耐え、かつ組み立て解体の作業が非常に簡単な鋳型を用いて製造されたシリコンインゴットから得られるものであり、低コスト化を期待することができる。

    図1(a)は、本発明にかかる底面部材2と四つの側面部材3とを組み合わせてなる鋳型の一実施形態を示す斜視図である。
    図1(b)は展開図である。
    図2は、側面部材の反りの状態を示す図である。
    図3(a)は、本発明にかかる底面部材2と四つの側面部材3とを組み合わせてなる鋳型の他の実施形態を示す斜視図である。
    図3(b)は展開図である。
    図4(a)は、四角形状の底面中央部と底面外周部とに分割するための閉じた溝を有する底面部材を含む鋳型の断面図である。
    図4(b)は、(a)のA−A方向の断面図である。
    図5(a)は、鋳型ホルダーと楔受け部を含む、本発明の鋳型の実施形態を示す断面図である。
    図5(b)は(a)のB−B方向の断面図である。
    図6は、本発明にかかる鋳型の他の実施形態を示す断面図である。
    図7は、本発明の鋳型にかかる楔受け部の部分拡大断面図である。
    図8(a)は、枠状部材を備えた本発明の鋳型の斜視図である。
    図8(b)は、枠状部材の形状を示す断面図である。
    図8(c)は、枠状部材の他の形状を示す断面図である。
    図9(a)は、枠状部材と、前記隣接した前記側面部材同士によって形成される四つの外側角部との間隙に押さえ治具を配置した状態を示す斜視図である。
    図9(b)は、同断面図である。
    図10(a)〜図10(c)は、本発明の鋳型の押さえ治具の形状を示す図である。
    図11(a)は、枠状部材と押さえ治具とを備えた本発明の鋳型の斜視図である。
    図11(b)は同断面図である。
    図12(a)は、突出部を有する枠状部材を備えた本発明の鋳型の斜視図である。
    図12(b)は同平面図である。
    図13(a)は、嵌合面4aの位置に枠状部材を配置した本発明の鋳型の斜視図である。
    図13(b)は、嵌合面4aの位置に押さえ治具を配置した本発明の鋳型の斜視図である。
    図14は、シリコン鋳造装置を示す図解図である。
    図15は、ワイヤーソーによるインゴットのスライス方法を説明するための斜視図である。
    図16は、従来における鋳型を示す断面構造図である。
    図17は、従来における鋳型を示す斜視図である。

    以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
    図1(a)は本発明にかかる鋳型を示す斜視図、図1(b)はその展開図である。
    図1(a)、図1(b)において、1は鋳型、2は底面部材、3(3a、3b)は側面部材、4は嵌合部、5は凸部、6は凹部を示す。
    この鋳型1は、分割、組み立て可能な分割鋳型である。
    この鋳型1は、例えば黒鉛から成り、鋳型の底部を構成する一つの底面部材2に、鋳型1の側部を構成する四つの側面部材3(3a、3b)を組み合わせたものである。
    図1(a)、図1(b)に示すように、底部に設けた底面部材2の外周を囲繞するように四つの側面部材3を設けている。 各側面部材3は、側面部材3同士を結合するために、側面部材3の側辺部に凸部5と凹部6とを嵌め合わせる嵌合部4を備えている。 一の側面部材3aの凸部5を他の側面部材3bの凹部6に嵌め合わせ、また一の側面部材3aの凹部6を他の側面部材3bの凸部5に嵌め合わせることにより、側面部材3同士を組み合わせて立設し、鋳型1が形成される。
    上述の本発明の鋳型1は、従来のような鋳型の組み立てや固定のためにネジやボルトなどを使用しない構造である。
    例えば、シリコンの密度は固体より液体のほうが大きく、シリコンは凝固時に膨張する物質であるため、この鋳型1内でシリコン融液を冷却固化する際に鋳型の底面部材2および側面部材3が外側へ広がる方向に応力をうける。
    本発明の鋳型1によれば、ネジやボルトなどを使用した構造と比べて、ネジやボルトなどの破断やネジ山の消耗により鋳型1の底面部材2と側面部材3、または側面部材3同士の接合部分の固定が甘くなるといった問題がないので、鋳型1内部で冷却固化中のシリコン融液が漏れることを防止できる。
    また、ネジ山がつぶれ、鋳型部材そのものが使用できなくなり、高価である黒鉛鋳型部材の寿命を短くするといった問題が解決される。
    また、固定のためにたくさんのネジまたはボルトを鋳型に取り付ける必要があった従来の鋳型と比較して、鋳型の組み立て解体の作業が飛躍的に簡素化し作業効率が大幅に向上する。
    なお、本発明の鋳型1において、図1に示すように、側面部材3の凸部と隣接する他の側面部材3の凹部とが嵌め合って当接する面である嵌合面4a(嵌合部4を構成する面のうち、底面部材2の底面に対して略水平な面を指す)のうち、最も側面部材の上辺部に近いものと、この上辺部との距離dが1cm以上8cm以下の範囲にあるように構成している。 なお、距離dは、好ましくは1cm以上4cm以下の範囲である。
    このようにすれば、側面部材3を底面部材2に対してより略垂直に保つすることができる。
    その理由は、図2に示すように、側面部材3の最上部に位置する凸部5と凹部6との接合部分において、凹部6を有する側面部材3aは、その上部が他の側面部材3bによって規制されていないため、内側/外側の双方に対して、矢印P方向に動きやすくなっている。 また、側面部材3bは、その上部が内側に曲がろうとした場合、隣接する側面部材3aによって動きが規制されるが、外側に曲がろうとした場合、規制するものがない。
    そのため、鋳型部材の厚みが薄いと、シリコン融液の冷却固化に伴う応力によって側面部材3が外側へ反る可能性がある。 このような側面部材3の反りにより、側面部材3自体が開き、この鋳型により鋳造したシリコンインゴットの側面にも傾斜がかかり、製品とならない端材部分が増加するため高価なシリコン原料を余分に除去せねばならず、シリコンインゴットの製造コストが上昇することとなる。
    そこで、この側面部材3の上辺部から嵌合面4aまでの幅dを1cm以上8cm以下、好ましくは1cm以上4cm以下と狭くすると、シリコン融液の冷却凝固に伴う応力によって生ずる側面部材3上部の反りを少なくすることができるのである。
    これにより、側面部材3が底面部材2に対して略垂直に保たれ、インゴットの端材部分の除去を最小限に抑えることができ、シリコンインゴットの製造コストの上昇を抑えることができる。
    なお、この範囲dを1cmより小さくすると、繰り返し使用することによる消耗が特に凸部5に及び、そのため凸部5を破損しやすくなり、鋳型部材の寿命が短くなる問題がある。 また、8cmより大きくすると、側面部材3の上部に反りが生じ、側面部材3が底面部材2に対して略垂直に保たれず、製品とならない端材部分が増加し、シリコンインゴットの製造コストが増加する問題がある。
    次に、本発明にかかる鋳型の、他の嵌合構造について説明する。
    図3(a)は、本発明にかかる鋳型を示す斜視図であり、図3(b)はその展開図である。
    この鋳型1において、側面部材3cは、両側の側辺に設けられた嵌合部4の凸部5と凹部6の位置が、側面部材3cの中心線Fに関して互いに非対称の関係にあるようにしている。
    さらに側面部材3cの一つの側辺部に設けた凸部5の数と、凹部6の数とをそれぞれ偶数個(図では二個ずつ)としている。
    この実施形態にかかる鋳型1では、側面部材3cは、内側に曲がろうとしたときに、隣接した側面部材3cによってその動きが規制される。
    このように、側面部材3cの両端に、非対称の関係になるように凸部5と凹部6を設けることによって、組み立てられた鋳型1は、側面部材3cの反りやたわみの影響が緩和されしっかり固定される。
    本実施形態にかかる鋳型1の側面部材3cは、その両側の側辺に設けられた凸部5と凹部6とを、側面部材3cの中心点Gに関して、点対称の関係を満たすように設けることが望ましい。 これにより、どの凹部、凸部の組み合わせを選択しても嵌合可能となる。
    そして、このように凸部5と凹部6を点対称構造にすることによって、180度回転しても同じ形状であるため、側面部材3cに上下の概念がなくなる。
    鋳型1は、上部に抵抗加熱式のヒーターや誘導加熱式のコイルなどからなる鋳型加熱手段を設け、鋳型1の側壁部をグラファイト質成形体などからなる鋳型断熱材で覆い、下部に冷却手段を設けている。 鋳型1内に注湯されたシリコン融液を下部から冷却することによって、鋳型の上方からシリコン融液を加熱するだけで、シリコン融液を下部から上部へ向けて一方向に凝固させることができる。 そのため、鋳型の上部は鋳型加熱手段により加熱されるため、鋳型部材の消耗が激しく、寿命が短くなる。 しかしながら、本実施形態にかかる側面部材の構造では、180度回転しても同じ形状であるため、側面部材の上部と下部を反転させることができ、その結果、鋳型部材の寿命を延ばすことができる。
    また、四つの側面部材3cの形状が全て同じになるので、一つの形状の側面部材のみで鋳型が組み立てられ、シリコンインゴットの製造コストを抑えることができる。
    なお、この実施形態においても、側面部材3の上辺部から嵌合面4aまでの距離dを1cm以上8cm以下、好ましくは1cm以上4cm以下と狭くすると、シリコン融液の冷却凝固に伴う応力によって生ずる側面部材3c上部の反りを少なくすることができる。
    次に、本発明にかかる鋳型の他の実施形態について説明する。
    図4(a)は、本発明にかかる鋳型を示す側断面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A線の断面図である。
    この鋳型1の側面部材3は、図1から図3で説明した嵌合構造を有するものである。 鋳型1の底面部材2は、その表面部に、組み立てられた側面部材3の底辺部を受け入れるための溝7を有している。 溝7は、平面視して、四角形状であり、底面部材2を、底面中央部2aと底面外周部2bとに分割する。
    底面中央部2aは、その各辺が側面部材3の底辺部と対応し、鋳型1の内底面となる。
    各側面部材3の底辺部を、前記底面中央部を囲繞するように、溝7に嵌装して立設した場合に、四つの側面部材3の外周面と底面外周部2bとの間隙に楔8が配置されている。 言い換えれば、底面部材2に溝7を設け、その溝7に側面部材3を設置し、楔8を打ち込むことによって鋳型1が組み立てられている。
    このような、楔8としては、たとえば炭素繊維強化炭素材料(C/C材)を用いることができる。
    鋳型1にシリコン融液を保持した際、鋳型1の底部にシリコン融液の重量による応力が大きくかかる。 特に鋳型を大型化すると、鋳型底部にかかる応力がさらに大きくなる。 そのため、底面部材2と各側面部材3との接合部分に隙間ができ、シリコン融液が漏れ出す可能性がある。 しかしながら、本発明の構造では、底面部材2と各側面部材3とを楔8により固定することで、底面部材2と各側面部材3との接合部分が緩むことなく、しっかりと固定されるため、シリコン融液の漏れを抑制し、鋳型1の大型化を行うことができる。
    ここで楔8の形状や使用数は、特に限定されない。 側面部材3の側面全体にわたる長い楔8を各側面部材3ごとに1個打ち込んでも良く、また小さな楔8を複数個取り付けても良い。
    また、鋳型1の内底面となる底面中央部2aと、楔受けの機能を有する底面外周部2bとは同じ高さとする必要はなく、例えば、図4(a)に示すように、底面外周部2bの方を底面中央部2aよりも高くすれば、それぞれの機能を適切に果たしうるので好ましい。
    次に、本発明にかかる鋳型の他の実施形態について説明する。
    図5(a)は、本発明にかかる鋳型の他の実施形態を示す側断面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−B方向の断面図である。
    この鋳型1の側面部材3は、図1から図3で説明した嵌合構造を有するものである。 この実施形態にかかる鋳型によれば、底面部材2は、その各辺が四つの側面部材3の底辺部と対応した略四角形となっている。
    鋳型1は、底面部材2を設置するための鋳型ホルダー9と、鋳型ホルダー9の上面において底面部材2を囲繞するように立設した四つの側面部材3と、側面部材3の外周面を取り囲む複数の楔受け部10と、側面部材3の外周面と複数の楔受け部10との間隙に配置した楔8と、をさらに備えている。 言い換えれば、楔受け部10を設けた鋳型ホルダー9上に底面部材2を設置し、底面部材2の外周を囲繞するように四つの側面部材3を配置し、側面部材3の外面と楔受け部10との間に楔8を打ち込むことによって鋳型1が組み立てられている。
    楔受け部10と各側面部材3との間に楔8を打ち込んで固定することで、底面部材2と各側面部材3との接合部分が緩むことなく、しっかりと固定されるため、シリコン融液の漏れを抑制し、鋳型1の大型化を行うことができる。 また、高価な黒鉛鋳型部材からなる底面部材2にシリコン融液の漏れを防ぐための特別な加工を施す必要がないため、鋳型コストの上昇を抑制することができる。
    また、本発明にかかる鋳型においては、図6に示すように鋳型ホルダー9上に設けた複数の楔受け部10(10a、10b)を、鋳型ホルダー9の上面に対して着脱自在な構造にしてもよい。 楔受け部10を鋳型ホルダー9の上面に対して着脱自在にすることによって、繰り返し使用に伴い楔受け部10が消耗した場合にも、楔受け部10のみを独立に交換することができ、鋳型ホルダー9を交換する必要がなく、引き続き再利用可能なため、鋳型コストを削減することが可能となる。
    このとき楔受け部10の固定方法は、例えば、図6に示すように鋳型ホルダー9と楔受け部10に穴加工を施し、そこにちょうどはまる径の楔受け部固定部材11をはめて固定する。
    あるいは、図7の楔部周辺の拡大断面図に示すように、鋳型1の各側面部材3に平行に配置した四つ乃至さらに多くの楔受け部10を、一つ乃至複数の箇所で楔受け部固定用ボルト12と上下のナット13a、13bを用いて挟むように固定する。 図7に示すような構造にすることで、より確実に楔受け部10が鋳型ホルダー9に固定され、その結果、底面部材2と各側面部材3との接合部分をよりしっかりと固定することができる。
    また、上述のように、複数の楔受け部10を鋳型ホルダー9の上面に対して着脱自在な構造にしたとき、複数の楔受け部10から任意に選択した楔受け部10aは、鋳型ホルダー9の上面において、底面部材2を挟んで対向する位置に配置された別の楔受け部10bとの間隔が、調節可能であることが望ましい。
    具体的には、図7に示すように、楔受け部固定用ボルト12を取り付けるために鋳型ホルダー9に設けた楔受け部固定用穴部14の内寸Dを楔受け部固定用ボルト12の外寸Eより大きくすればよい。 このようにすることにより、楔受け部10の位置をこれらの内寸Dと外寸Eから定まる範囲で調整することが可能となり、向かい合う二つの楔受け部同士の間隔が調整可能な構造とすることができる。
    このように楔受け部10a、10bの間隔が調整可能であるため、例えば底面部材2と各側面部材3の接合部分や、楔8と楔受け部10とが接する面が消耗した場合においても、向かい合う二つの楔受け部10a、10bの間隔を調整することにより、鋳型部材の固定が甘くなることなく固定することが可能となる。 この楔受け部固定用穴部14の内寸Dは、楔受け部固定用ボルト12の外寸Eより5mm以内の範囲で大きくすることが望ましい。 楔受け部固定用穴部14の内寸Dが楔受け部固定用ボルト12の外寸Eより5mmを超えて大きくなると、部材の消耗により発生する遊びを無くすために必要な調整量以上に、向かい合う二つの楔受け部10a、10bの間隔の調整幅が大きくなり、楔受け部10a、10bの位置決めが難しくなるため好ましくない。
    次に、本発明にかかる他の鋳型の構造について説明する。
    図8(a)は、本発明にかかる鋳型を示す斜視図であり、図8(b)、図8(c)は、さらに別々の実施形態を示す平面図である。
    この鋳型1は、隣接した側面部材3同士を嵌め合わせて一体とした鋳型側面部の外周を囲繞するように配置され、これらの変位を拘束する枠状部材15を備えている。
    この枠状部材15で鋳型側面部の外周を固定することで、側面部材3同士の嵌合強度が大きくなり、また底面部材2と各側面部材3との接合部分が固定されるため、鋳型の大型化、薄型化を行うことができる。 また、枠状部材15を使えば、鋳型1への取付、取り外しが容昜であり、鋳型1の組み立て解体の作業をスムーズに行うことができる。
    枠状部材15は図8(b)のように側面部材3の全周囲を固定する形状でもよいし、図8(c)のように鋳型の角部のみを固定する形状でもよい。
    枠状部材15の材質は、前述したのと同様、軽くて強度が高い炭素繊維強化炭素材料(C/C材)などによって構成することが望ましい。 その厚さhを3〜10mmとすれば取り扱いが容易で十分な強度が得られる。
    また、シリコン融液の冷却固化に伴う膨張により、鋳型1の側面部材3の上端部のほうが広がりやすい。 特に、鋳型1が大型化、薄型化になるとその影響も大きいため、枠状部材15を鋳型1の上端部から4cm以内の範囲に設けることが好ましい。
    さらに、上述した図4から図7において示した鋳型底部に打ち込んだ楔8による底面部材2と各側面部材3との固定と、この枠状部材15による側面部材3同士の締結を同時に行うこととすれば、それぞれの接合部がしっかり固定されるため、鋳型1をさらに大型化、薄型化を行うことができるので好ましい。
    上述の鋳型では、枠状部材15によって、直接、側面部材3を押さえるようにしているが、以下説明する鋳型は、鋳型1と枠状部材15との間に遊びをもたせ、この間隙に押さえ治具16を配置して、側面部材3の変位を拘束する構造である。
    図9、図11、図12はこの構造にかかる鋳型を示す図であり、図9(a)は鋳型の構成を示す斜視図、図9(b)はその平面図である。 図11(a)は別の構造による鋳型の構成を示す斜視図、図11(b)はその平面図である。 図12(a)はさらに別の構造の鋳型を示す斜視図、図12(b)はその平面図である。
    また、図10(a)〜(c)は、図11(a)、(b)に示した本発明にかかる鋳型の押さえ治具の例を示す斜視図である。
    図9に示す鋳型1は、隣接した側面部材3同士を嵌め合わせて一体とした四つの側面部材3の外周を囲繞するように、鋳型1との間に遊びをもたせて配置された枠状部材15を備えている。 そして、鋳型1の隣接した側面部材3同士によって形成される外側角部と枠状部材15との間隙に押さえ治具16が配置され、これにより側面部材3の変位を拘束している。
    図9に示した例では、押さえ治具16は一つの枠状部材15につき、四箇所の外側角部において、それぞれ二つずつ設けられている。 これら二つの押さえ治具16によって、鋳型1の角部を形成する二つの側面部材3をそれぞれ押さえている。
    このように、枠状部材15は、鋳型1の側面部材3との間に遊びを持たせて配置されているので、鋳型1への取付が容易であり、さらに押さえ治具16により鋳型1と枠状部材15とが確実に固定されるため、側面部材3を薄型化した場合でも、シリコン融液の冷却固化に伴う膨張による鋳型1の外側への広がりを防ぐことができる。
    また、押さえ治具16を取り外すことで、容易に枠状部材15を鋳型1から取り外すことが可能となり、固定のためにたくさんのネジまたはボルトを鋳型に取り付ける必要があった従来の鋳型と比較して、鋳型1の組み立て解体の作業をよりスムーズに行うことができる。
    また、固定のため側面部材3の中央部に応力がかかると、側面部材3が内側にたわむことになる。 このため、シリコンインゴットを形成したときに製品とならない端材部分が増加するため高価なシリコン原料を余分に除去せねばならず、シリコンインゴットの製造コストが上昇することとなり、好ましくない。 しかしながら、図9に示すように、押さえ治具16を鋳型1の一つの角部に2個ずつ、計8個配置し固定することによって、枠状部材15の固定に伴う応力は、側面部材3の端部、特に嵌合部4にかかる。 このため、確実にそれぞれの側面部材3を固定しつつ、側面部材3の中央部にかかる応力を軽減し、側面部材3の内側へのたわみを抑制することができる。
    押さえ治具16としては、楔形状とすることが望ましい。 細くなった方を鋳型1と枠状部材15との間隙に挿入して、打ち込んで固定することによって、より確実に鋳型1のそれぞれの側面部材3を保持することができる。 さらに、押さえ治具16の打ち込む強さを調節することによって、枠状部材15の固定の強さを調節することも可能となる。
    さらに押さえ治具の形状は、図10(a)から図10(c)に示すように、1つの部材から、もしくは複数の部材を一体に組み立ててなるものであって、鋳型1の外側角部を構成する二つの側面部材3の外周面に、それぞれ当接する二つの治具面を有するようにするものであってもよい。 図10(a)の押さえ治具17は、二つの治具面17a、17bをそれぞれ備えた一体型の治具である。 この押さえ治具17は、図11に示すように、鋳型1の側面の四箇所の外側角部に配置され、角部を構成する二つの側面部材3の外周面に対して、これらの治具面17a、17bがそれぞれ当接するように構成されている。 したがって、鋳型1の側面の角部は、一つの押さえ治具17で保持されることとなり、より均等な力で角部を形成する側面部材3の二面を押さえることができる、図9の場合に比べて、片方のみが深く嵌まり、鋳型1に無理な力がかかることもなく、その結果、鋳型1の変形や破損を防ぎ、鋳型部材の寿命が短くなるのを防ぐことができる。 さらに、押さえ治具17の必要数は四つとなるため、図9の場合と比べて、部材数を減らすことができ、固定・解体の作業の簡略化、部材コストの低減を行うことができる。
    また、図10(b)に示すように、鋳型1の外側角部が直接押さえ治具18に当たらないように、押さえ治具18において、この外側角部に対応する箇所に逃げ溝18aを設けた構造にすることが望ましい。 このようにすれば、押さえ治具18を枠状部材15から取り付け、取り外す際に、鋳型1の側面角部が押さえ治具18と直接接することを防ぐことができるので、繰り返して、取り付け、取り外し作業を行っても、破損しやすい鋳型1の側面角部の変形や破損を防ぐことができ、鋳型1のコストの低減につながる。
    また、図10(c)に示すように、一体型の押さえ治具19の上部において幅広となった幅広部19aを設けても構わない。 このような幅広部19aを設けることによって、押さえ治具19を鋳型1と枠状部材7との間隙に挿入する場合は幅広部19aを直接押すことができる。 強く押し込む場合は幅広部19aを叩いて押し込めばよい。 さらに取り外しの際には幅広部19aを保持して引き抜くことができるなどの効果を有するので、より作業性が向上する。
    また、図12(a)、図12(b)に示すように、枠状部材15の内周部に、対向する鋳型1の四つの側面部材3に向かって、突出部15aを設けるようにしてもよい。 シリコン融液の冷却固化に伴う膨張により、鋳型1の側面部材3が外側にたわむが、鋳型1の部材が薄型化するとその影響は大きなものとなる。 ここで、枠状部材15に突出部15aを設ければ、突出部15aに側面部材3の外周面が当接して、その動きが規制されるため、側面部材3の外側へのたわみを抑えることができる。
    突出部15aの突き出す量としては、図12(b)の平面図にも示すように、鋳型1と枠状部材15の間隙の幅とほぼ同じとすればよい。 また、突出部15aは、側面部材3の外周面の略中央部を押さえるようにすることが望ましい。 シリコン融液の冷却固化に伴う膨張によって、特に側面部材3の中央部Hでの変位が顕著となるためである。
    なお、上述の実施形態において、枠状部材15に設けた突出部15aとして、それぞれの一枚の側面部材3あたり一箇所と接するようにした例によって説明したが、これに限るものではなく、二つないし三つ以上の複数の枠状部材15にそれぞれ突出部15aを設け、一枚の側面部材3と複数箇所で接するようにしてもよい。 枠状部材15が二つの場合は、上下の枠状部材15に設けた突出部15aをそれぞれ結んでできる直線が中央部Hを通るようにし、枠状部材15が三つ以上の場合は、三つの枠状部材15に設けた突出部15aの各々を結んでできる図形の内部に、中央部Hが含まれるようにすれば、中央部Hの変位をそれぞれの突出部15aによって効果的に押さえることができるので望ましい。
    さらに、一枚の側面部材3に対して、一つの枠状部材15の突出部15aが二箇所以上で接するようにしてもよい。
    なお、押さえ治具16〜l9の材質は、軽くて強度が高い炭素繊維強化炭素材料(C/C材)などによって構成することが望ましい。 また、押さえ治具16〜19は、鋳型1の側面部材3の外周面と接する面は平面であり、枠状部材15と接する面は一定の傾斜を有する楔形状とすることが望ましい。
    また、シリコン融液の冷却固化に伴う膨張により、本発明の構成上、鋳型1の側面部材3の上端部のほうが広がりやすい。 特に、鋳型1が大型化、薄型化になるとその影響も大きいため、枠状部材15を鋳型1の上端部から4cm以内の範囲に設けることが好ましい。
    さらに、上述した図4から図7において示した鋳型底部に打ち込んだ楔8による底面部材2と各側面部材3との固定と、前記枠状部材15による側面部材3同士の締結を同時に行うことで、それぞれの接合部がしっかり固定されるため、鋳型1をさらに大型化、薄型化を行うことができるので好ましい。
    また、枠状部材15を用いる場合、図13(a)、図13(b)に示すように、嵌め合った側面部材3の凸部と隣接する他の側面部材3の凹部とが当接する面である嵌合面4aの位置で枠状部材15を配置することが望ましい。 なお、この嵌合面4aとは、嵌合部4を構成する面のうち、底面部材2の底面に対して略水平な面を指す。 このようにすることで、枠状部材15の固定に伴って側面部材3に応力が大きくかかっても、側面部材3のたわみを防ぐことができる。
    以上説明した本発明の実施形態にかかる鋳型1の使用方法を説明する。
    鋳型1を使用するに当たっては、底面部材2と側面部材3とから構成される鋳型内表面部と四つの角隅部と八つの稜線部とからなる係止部とに離型材を設けておくことが望ましい。
    この離型材は、例えば、窒化珪素(Si )の粉体をPVA(ポリビニルアルコール)水溶液で混ぜ合わせて鋳型1の内面に塗布することによって形成することができる。 PVA水溶液などで混合することによって、粉体である窒化珪素がスラリー状となり、鋳型1に塗布しやすくなる。 窒化珪素の粉体としては、0.4〜0.6μm程度の平均粒径を有するものが用いられる。 このような窒化珪素を濃度が5〜15重量%程度のポリビニルアルコール水溶液に混合してスラリー状とし、へら、刷毛、ディスペンサーなどで塗布する。 なお、窒化珪素と二酸化珪素の粉体を混合したものを、塗布してもよい。
    このような離型材を設けることによって、シリコン融液が凝固した後に鋳型1の内壁とシリコンインゴットとが融着することが少なくなり、鋳型を何回も繰り返して使用することができる。 また、底面部材2や側面部材3との係止部が、下記第三工程において追加して塗布された離型材によって、さらに確実に封止されるため、シリコンの融液の漏洩が少なくなる。
    具体的な離型材の形成方法は、次に示すような三つの工程を経て行うことが望ましい。 第一工程として、底面部材2および四つの側面部材3の表面に、上述のようにしてスラリー状とした離型材スラリーを塗布・乾燥させる。 次に、第二工程として、底面部材2を底面として四つの側面部材3を立設し、離型材を塗布した面が内側となるように箱型に組み立てる。 そして第三工程として、底面部材2と側面部材3とから構成される四つの角隅部と八つの稜線部とからなる係止部に離型材を例えばディスペンサーなどで追加して塗布する。
    このような三つの工程によって行えば、鋳型1を組み立てる前に、各鋳型部材に離型材を塗布し、鋳型1の形状に組み立てた後、各鋳型部材の接合部分のみに対して、離型材を追加して塗布するのみでよいので、作業が飛躍的に簡素化し作業効率が大幅に向上する。
    このようにして本発明にかかる鋳型を実現することができる。
    従来においては鋳型部材にネジやボルトなどを取り付けるための追加工を行うことのできる素材に限られ、黒鉛材料が用いられてきた。 しかしながら、本発明においては、上記のような複雑な加工を行う必要がなく、鋳型部材の構造が大幅に簡素化できるために、黒鉛材料に限らず、溶融シリカ、窒化珪素、炭化珪素など各種の耐火物を用いることが可能となる。
    なお、本発明の実施形態は上述の例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
    例えば、上述の説明では、シリコン融液を保持して多結晶シリコンを凝固させる例によって説明したが、これに限るものではなく、他の材料であっても同様の効果を奏することができる。 例えば、鋳型の底部に単結晶シリコンを所定の向きに保持したものを種として、シリコン融液から単結晶のシリコンインゴットを成長させるようにしても良い。 また、キャスティング法を用いる鋳造法であれば、半導体非金属材料に限定されるものでもなく、金属材料であってもかまわない。
    また、鋳型1の外周に、グラファイトフェルトなどの主成分をカーボンとする材質や、特にその表面をカーボンの粉体でコーティング処理を行った鋳型断熱材(不図示)などを配置してもよい。 これらの部材を楔8と楔受け部10との間や、楔8と側面部材3との間に介在させても構わない。 あるいは、枠状部材15と側面部材3との間に介在させても構わない。 このような鋳型断熱材は、後述するように多結晶のシリコンインゴットを得るためのキャスティング法において、鋳型1の側面を断熱して、一方向凝固させるのに用いられる。
    次に、キャスティング法によるインゴットの鋳造方法及びこのシリコンインゴットから多結晶シリコン基板を得る多結晶シリコン基板の製造方法を説明する。
    多結晶シリコン基板は一般的にキャスティング法と呼ばれる方法で製造される。 このキャスティング法とは、離型材を塗布した鋳型内のシリコン融液を冷却固化することによって多結晶のシリコンインゴットを形成する方法である。 このシリコンインゴットの端部を除去し、所望の大きさに切断して切り出し、切り出したインゴットを所望の厚みにスライスして太陽電池を形成するための多結晶シリコン基板を得る。
    キャスティング法を実施するには、例えば図14のシリコン鋳造装置を用いる。 図14において21aは溶解坩堝、21bは保持坩堝、22は注湯口、1は本発明の鋳型、24は加熱手段、25はシリコン融液を示す。
    シリコン原料を溶融するための溶解坩堝21aが保持坩堝21bに保持されて配置され、溶解坩堝21aの上縁部には溶解坩堝21aを傾けてシリコン融液を注湯するための注湯口22が設けられる。 また、溶解坩堝21a、保持坩堝21bの周囲には加熱手段24が配置され、溶解坩堝21a、保持坩堝21bの下部にはシリコン融液が注ぎ込まれる鋳型1が配置される。 溶解坩堝21aは耐熱性能とシリコン融液中に不純物が拡散しないことなどを考慮して、例えば高純度の石英などが用いられる。 保持坩堝21bは、石英などでできた溶解坩堝21aがシリコン融点近傍の高温で軟化してその形状を保てなくなるため、これを保持するためのものであり、その材質はグラファイトなどが用いられる。 加熱手段24は、例えば抵抗加熱式のヒーターや誘導加熱式のコイルなどが用いられる。
    溶解坩堝21a、保持坩堝21bの下部に配置された鋳型1は、その内側に前述した離型材(不図示)を塗布して用いられる。 また、この鋳型1の周りには抜熱を抑制するため鋳型断熱材(不図示)が設置される。 鋳型断熱材は耐熱性、断熱性などを考慮してカーボン系の材質が一般的に用いられる。 また、鋳型1の下方には注湯されたシリコン融液を冷却・固化するための冷却板(不図示)が設置される場合もある。 なお、これらはすべて密閉チャンバ(不図示)内に配置される。
    図14で示されるシリコン鋳造装置を使用してシリコンインゴットを作製する方法は次の通りである。 まず、溶解坩堝21a内にシリコン原料を投入し、加熱手段24により溶解坩堝21a内のシリコン原料を溶解させ、完全に融液25となった後に坩堝を傾けて溶解坩堝21aの上縁部にある注湯口22から下部に設置してある鋳型にシリコン融液が注湯される。 注湯後は、鋳型内のシリコンを底部から冷却して一方向凝固させた後、炉外に取り出せる温度まで温度制御しながら徐冷し、最終的に炉外に取り出して鋳造が完了する。
    前記方法は、鋳型1の中に完全に融液となったシリコン原料を溶解させ、注湯し、注湯後は、鋳型内のシリコンを底部から冷却して一方向に凝固させる注湯法と呼ばれる方法である。 これとは別に鋳型1の中にシリコン原料を投入し、鋳型1の中で溶解させて、溶解したシリコンを底部から冷却して凝固させる鋳型内溶解法を採用してもよい。 この鋳型内溶解法では、鋳型1内で均一に材料を溶解して材料の溶融体を形成した後、鋳型の台座中に冷却媒体(水や冷媒ガス等)を通すことにより、鋳型1の底部から抜熱を行い、この溶融体を鋳型1の底部から一方向凝固を実現することができる。
    図15は、ワイヤーソーによるインゴットのスライス方法を説明するための斜視図である。
    上述したキャスティング法によって製造された多結晶シリコンのインゴットの端材を切り落として、所定の寸法に切断して半導体インゴット31を形成する。 そして、この半導体インゴット31をエポキシ系などの接着剤にてガラスやカーボン材もしくは樹脂製のスライスベース33に接着した後、半導体インゴット31をワイヤーソー装置で複数枚に切断して形成する。
    半導体インゴット31は、スライスベース33に接着され、上方の数箇所から砥粒スラリーと呼ばれるオイルまたは水にSiCなどの砥粒が混合された切削液を供給しながら、直径約100〜300μmのピアノ線などからなる1本のワイヤー35で切断する。
    メインローラー38上には一定間隔となるように螺旋状の溝が設けられている。 そして、ワイヤー35は、ワイヤー供給リールから引き出されて、メインローラー38上の溝にはまるように巻き付けられて所定の間隔で略平行に配置されている。
    このようにワイヤー35を配置した2本のメインローラー38を回転させることによって、これらのメインローラー38の間に張られた複数本のワイヤー35は高速で移動走行する。 そして、複数の半導体インゴット31をワイヤー35に向けて徐々に下降させて押しつけることによって、半導体インゴット31は切断され、ワイヤー35の間隔に対応した厚みを有する半導体基板が作製される。
    このワイヤーソー装置による切断では、多数の半導体インゴット31を同時に切断することができ、また外周刃や内周刃などを使用する他の切断方法と比べて切断精度が高く、かつ使用しているワイヤーが細いためにカーフロス(切断ロス)を少なくできるという利点がある。
    この方法によって製造された多結晶シリコン基板は、繰り返し使用に耐え、かつ組み立て解体の作業が簡単な鋳型1を用いて製造されたシリコンインゴットから得られるものであり、低コスト化を期待することができる。

    図17に示す従来例の鋳型と、図7に示す本発明の構造における鋳型とを比較した。
    従来例においては、窒化珪素からなる離型材を厚さ2mm塗布した黒鉛からなる一つの底面部材(厚さ20mm)と四つの側面部材(厚さ20mm)を箱型に組み立て、32本の組み立て用ネジ(φ5mm×長さ40mm)で固定し、鋳型(内寸220mm×220mm×高さ250mm)を得た。
    得られた鋳型内部に22kgのシリコン融液を注湯し、100Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中で鋳型上部を1460℃に加熱し、鋳型底面部から徐々に降温させてシリコン融液を一方向に凝固させ、高さ約200mmのシリコンインゴットを得た。
    本発明の実施例では、窒化珪素からなる離型材を厚さ2mm塗布した黒鉛からなる一つの底板(厚さ20mm)と四つの側面部材(厚さ20mm)を鋳型固定用ホルダー上にて箱型に組み立て、図7に示すように楔8で固定し、鋳型(内寸220mm×220mm×高さ250mm)を得た。
    得られた鋳型内部に22kgのシリコン融液を注湯し、100Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中で鋳型上部を1460℃に加熱し、鋳型底面部から徐々に降温させてシリコン融液を一方向凝固させ、高さ約200mmのシリコンインゴットを得た。
    前記二つの方法により鋳造をそれぞれ10回繰り返し、鋳型の組み立て作業時間、シリコン融液の漏れの有無、部材の消耗の状況を比較した。
    従来例では、平均的な鋳型の組み立て時間は15分。 シリコン融液漏れ1回、鋳型固定用ネジの破断およびネジ山の消耗による交換22本、底板および側板に加工したネジ山の消耗による交換7枚、底板および側板に加工したネジ取り付け用の穴部に破断したネジが埋まったためによる交換4枚であった。
    一方本発明においては、平均的な鋳型の組み立て時間4分。 シリコン漏れは一度も発生せず、10回の鋳造後もすべての部材が使用可能な状態であった。

    図17に示す従来の鋳型と、図13に示す本発明の構造における鋳型とを比較した。
    従来例においては、窒化珪素からなる離型材を厚さ2mm塗布した黒鉛からなる一つの底面部材(厚さ20mm)と四つの側面部材(厚さ20mm)を箱型に組み立て、40本の組み立て用ネジ(φ5mm×長さ40mm)で固定し、鋳型(内寸350mm×350mm×高さ350mm)を得た。
    得られた鋳型内部に85kgのシリコン融液を注湯し、100Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中で鋳型上部を1460℃に加熱し、鋳型底面部から徐々に降温させてシリコン融液を一方向に凝固させ、高さ約300mmのシリコンインゴットを得た。
    本発明の実施例では、窒化珪素からなる離型材を厚さ2mm塗布した黒鉛からなる一つの底板(厚さ10mm)と四つの側面部材(厚さ2mm)を鋳型固定用ホルダー上にて箱型に組み立て、図7に示すように楔8で固定し、鋳型(内寸350mm×350mm×高さ350mm)を得た。
    そして、側面部材の凸部と凹部の嵌合面4a上に枠状部材15を設置し、側面部材3の最上部に位置する凸部または凹部の高さ、すなわち図1に示した距離dを0.5〜10cmの範囲で変更した。
    得られた鋳型内部に85kgのシリコン融液を注湯し、100Torrに減圧したアルゴン(Ar)雰囲気中で鋳型上部を1460℃に加熱し、鋳型底面部から徐々に降温させてシリコン融液を一方向凝固させ、高さ約300mmのシリコンインゴットを得た。
    前記二つの方法により鋳造をそれぞれ10回繰り返し、シリコン融液の漏れの有無、部材の消耗の状況を比較した。 その結果を表1に示す。

    従来例では、シリコン融液漏れ3回、鋳型固定用ネジの破断およびネジ山の消耗による交換、底板および側板に加工したネジ山の消耗による交換、底板および側板に加工したネジ取り付け用の穴部に破断したネジが埋まったためによる交換により、10回中8回の交換を必要とした。


    一方、本発明においては、最適の条件である側面部材3の最上部に位置する凸部または凹部の高さ、すなわち図1に示した距離dが1〜4cmの場合、シリコン融液の漏れはなく、部材の交換も必要としなかった。 また、最上部の凸部、凹部の高さが8cmの場合、鋳型部材の反り変形により交換が1回必要であったが、シリコン融液の漏れは発生しなかった。 また、最適の条件以外の0.5cm、10cmの場合は、交換が必要であったものの、従来構造に比べて部材の交換の回数が減少し、発明の効果が確認された。


    以上の結果から、本発明の構造において、鋳型の大型化、薄型化が可能であることが確認できた。

    【0005】
    る。
    【発明の開示】
    本発明の鋳型は、底面部材と、前記底面部材に当接する複数の側面部材とを組み合わせてなり、前記各側面部材の側辺部に、隣接する側面部材同士を固定するための嵌合構造が設けられたものである。
    この構造の鋳型は、鋳型の側面部材にネジを取り付けるためのネジ孔を設ける必要がないので、ネジ孔のネジ山部がつぶれ、鋳型部材そのものが使用できなくなり、高価である黒鉛鋳型部材の寿命を短くするといった問題が解決される。 したがって、シリコンインゴットの製造コストの増加を抑制することができる。 また、固定のためにたくさんのネジまたはボルトを鋳型に取り付ける必要があった従来の鋳型と比較して、鋳型の組み立て解体の作業が飛躍的に簡素化し、作業効率が大幅に向上する。
    前記嵌合構造は、一の側面部材の凸部と隣接する他の側面部材の凹部とが嵌め合う構造であり、前記底面部材の底面に対して略水平である嵌合面のうち前記側面部材の上辺部に最も近いものと、前記上辺部との距離が1cm以上8cm以下の範囲にあることが望ましい。 この範囲に設定することにより、側面部材の上部の反りを効果的に抑制し、側面部材を底面部材に対して略垂直に保持することができる。
    前記側面部材の両側の側辺部に設けられた嵌合構造の形状は、前記側面部材の中心線を基準として非対称の関係にすれば、側面部材同士の嵌合強度が増大し、反りやたわみの影響が緩和される。
    前記側面部材の両側の側辺部に設けられた嵌合構造の形状を、点対称の関係とすれば、側面部材の上部と下部を反転させることができ、その結果、鋳型部材の寿命を延ばすことができる。 また、四つの側面部材の形状が全て同じになるので、一種類の形状の側面部材のみで鋳型が組み立てられ、シリコンインゴットの製造コストを抑えることができる。

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