【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、樹脂鋳型(入子を含む)およびそれを用いた鋳造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】量産鋳造技術では、通常、金型(入子の場合は金属製入子)、砂型が用いられる。 金型の場合は、摩耗や破損の無い限り一つの金型でいくつもの生産が可能である。 また、砂型の場合は製品一つづつに対応するだけ型を作り、鋳造後これを崩壊させて生産を行う。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術には次の問題がある。 金型の場合は、溶湯金属から受ける熱衝撃や熱振幅によって生じる摩耗や亀裂により型寿命が限定されたり、突発的に破壊してしまうことがある。 そのため、生産量の少ない製品に対しても予備型を必要としたり、寿命を見込んで次の金型の用意が必要となる。 これによる型費は、製品コストにも少なからぬ影響を及ぼす。 砂型の場合は、製品の寸法精度、鋳肌、品質の安定性に難点がある。 また、環境面でも、粉塵、廃棄物の問題が昨今大きくなる一方である。 本発明の目的は、金型に比べて型費が安くなり、砂型に比べて製品の鋳肌、 品質を向上できる鋳型とそれを用いた鋳造方法を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明は次の通りである。 (1)熱可塑性樹脂から構成され、金属溶湯凝固後加熱、溶融または軟化されて鋳造製品から分離されることを特徴とする樹脂鋳型。 (2)熱可塑性樹脂より構成された樹脂鋳型に金属溶湯を注湯し、前記金属溶湯が凝固した後前記樹脂鋳型を加熱、溶融または軟化して鋳造製品と分離する、工程からなる樹脂鋳型を用いた鋳造方法。 (3)熱可塑性樹脂から構成され、1ショット鋳造ごとに鋳造製品とともに金属製主型からとり出され加熱、溶融または軟化されて鋳造製品から分離されることを特徴とする樹脂入子。 【0005】 【作用】上記(1)の樹脂鋳型では、樹脂鋳型自体を樹脂鋳型成形用金型を用いて量産できるので、樹脂をリサイクルさえできれば樹脂鋳型の型費は金型に比べてはるかに安くできる。 また、樹脂製のため樹脂鋳型の金属溶湯と接する面はなめらかな面に形成でき、砂型に比べて、鋳造製品の鋳肌面、品質を向上できる。 上記(2) の鋳造方法では、樹脂鋳型の樹脂を加熱溶融するので、 溶融した樹脂をリサイクルして再び樹脂鋳型にでき、金型に比べて、鋳型コストを低減できる。 また、鋳型が樹脂からなるので、それを用いて鋳造した製品は、砂型を用いて鋳造した製品に比べて、鋳肌、品質が向上する。 上記(3)の樹脂入子では、上記(1)と同様な作用がある他、入子と主型とを別体にしたので、異種鋳造品の1ショット毎の入子の形状変更が極めて容易になる。 【0006】 【実施例】図1は本発明の全ての実施例に適用される熱可塑性樹脂の温度特性を示しており、図2は本発明の樹脂鋳型の実施例を示しており、図3〜図5はその鋳造方法の実施例を示しており、図6は本発明の樹脂入子の実施例を示している。 全実施例にわたって共通な部分には、全実施例にわたって同一符号を付してある。 はじめに、樹脂の温度特性を図1を参照して説明する。 樹脂鋳型1または樹脂入子1′内のキャビティ2に、金属溶湯3(たとえば、アルミ合金溶湯)を高圧(たとえば、8 0MPa以上)または低圧で注湯し、凝固させることにより、鋳造製品4が鋳造される。 鋳造後、樹脂鋳型1または樹脂入子1′は加熱溶融または加熱軟化され、鋳造製品4と分離され、回収されてリサイクルされる。 【0007】図1において、金属溶湯がアルミ合金の場合、キャビティへの注湯時t 1 〜t 2には約700℃であったものが、製品の大きさにもよるが、注湯後約30 秒〜3分で、約550℃までに温度低下し、凝固を完了する。 一方、樹脂鋳型1または樹脂入子1′の温度は、 金属溶湯注湯開始後溶湯からの熱を受けて上がっていくが、溶湯凝固完了時点t 3までには、樹脂軟化開始点(約200℃)に上がっていない。 したがって、溶湯は、樹脂鋳型1または樹脂入子1′が硬質の状態にある間に凝固を完了する。 したがって、樹脂鋳型1または樹脂入子1′は溶湯から高圧を受けても変形せず、寸法精度の高い鋳造製品4が得られる。 ついで、樹脂鋳型1または樹脂入子1′は製品残熱を受けて、温度上昇し、樹脂軟化点(約200℃)で軟化を開始し、徐々に温度が上がっていく。 ここで、軟化点とは樹脂の弾性率が10 °〜10 -5 GPaになる温度である。 樹脂が製品残熱を受けて約250℃に温度上昇すると、結晶性樹脂(たとえば、ポリプロピレン)の場合は融点をもつので溶融状態になり、非結晶性樹脂(たとえば、ポリカーボネート)の場合は融点をもたずガラス転移点をもち軟らかさが増した状態になっていく。 溶融状態または軟らかさが増した状態に達するまでの時間を早めるためには、金属溶湯凝固完了後、樹脂鋳型1または樹脂入子1′を、鋳造製品4ごと、加熱炉中に入れる等して、約250℃以上に加熱してもよい。 樹脂鋳型1または樹脂入子1′の鋳造製品4からの分離、除去は、樹脂鋳型1または樹脂入子1′を溶融するか、または軟化して機械的に取り出すことにより行う。 溶融して落下した樹脂または軟化させて機械的に取り出された樹脂は捕集されて樹脂鋳型1 または樹脂入子1′の材料としてリサイクルされる。 上記のような温度による相変化を示す熱可塑性樹脂として、たとえばポリカーボネート、ポリプロピレンや、プロピレンとエチレンのコポリマーなどがある。 【0008】つぎに、本発明の樹脂鋳型を、図2を参照して説明する。 樹脂鋳型1は、上記の如き熱可塑性樹脂からなり、金属溶湯凝固後、加熱溶融されて、または軟化されて機械的に取り出されて、鋳造製品から分離される。 樹脂鋳型1は、内側に鋳造製品成形用キャビティ2 を有する。 キャビティ2を郭定する面は金属溶湯3と接し金属溶湯が凝固したときに製品4の外郭形状を決定する。 樹脂鋳型1は注湯口5を有し、注湯口5を通して金属溶湯3がキャビティ2に入れられる。 樹脂鋳型1は樹脂鋳型成形用金型を用いて複数成形される。 【0009】つぎに、樹脂鋳型1を用いた鋳造方法を図3〜図5を参照して説明する。 図3の鋳造装置は、熱可塑性樹脂からなる樹脂鋳型1と、樹脂鋳型1を複数連続的に搬送する鋳型搬送装置6と、樹脂鋳型1内のキャビティ2に金属溶湯3(たとえば、アルミ合金溶湯)を供給する溶湯供給装置7と、鋳型搬送装置6による樹脂鋳型搬送経路上で溶湯供給装置7より下流側に配設された、樹脂鋳型1を加熱、溶融または軟化するための加熱炉8と、から成る。 上記鋳造装置を用いて実施される、 樹脂鋳型を用いた鋳造方法は、熱可塑性樹脂からなる樹脂鋳型を複数連続的に搬送し、途中で樹脂鋳型1に金属溶湯3を供給する工程と、金属溶湯3が凝固完了後、樹脂鋳型1を加熱炉8内に搬送して樹脂鋳型1を加熱、溶融または軟化させて、鋳造製品4から樹脂を分離する工程からなる。 分離された樹脂は回収されて、再び樹脂鋳型1の材料として再利用される。 【0010】図3では、溶湯供給装置7が、鍋7Aからなり、金属溶湯を自重で注入する例が示されているが、 溶湯供給装置7はこれに限るものではない。 たとえば溶湯供給装置7は、図4に示すように、シリンダ7Bからなり、シリンダ7Bで金属溶湯をキャビティ2内に射出するようにしてもよいし、あるいは図5に示すように、 減圧ポンプ7Cからなり、キャビティ2を減圧ポンプ7 Cで減圧して溶湯保持炉9からの金属溶湯をストーク1 0を通してキャビティ2に吸引するようにしてもよい。 【0011】つぎに、樹脂入子1′(樹脂入子1′は鋳型の一部を構成している)を図6を参照して説明する。 図6において、鋳型は一対の金属製の主型11と一対の樹脂入子1′とからなり、樹脂入子1′は主型11に着脱可能に装着されている。 12は樹脂入子1′の主型1 1からのとり外しを容易にするための押し出しばねである。 キャビティ2は樹脂入子1′によって形成され、主型11はキャビティ2を形成しない。 これによって、鋳造製品4の種類が変わるときは、樹脂入子1′をとりかえることによって対応でき、主型11はとりかえる必要がない。 鋳造は、金属溶湯3をキャビティ2に注入し、 金属溶湯3の凝固完了後、主型11を開くと、ばね12 によって、鋳造製品を内蔵した樹脂入子1′が主型11 からとり出される。 ついで、鋳造製品を内蔵した樹脂入子1′は加熱、溶湯または軟化され、鋳造製品からとり出される。 溶融されたまたは軟化されて鋳造製品から機械的に分離された樹脂は回収され、樹脂入子材料としてリサイクルされる。 次サイクルでは、次の樹脂入子1′ が主型11にセットされ、上記鋳造を繰り返す。 以上のようにして、異種鋳造製品を1ショット毎に変更できる。 従来は、主型に金属製入子が固定されていたので、 異種鋳造製品の生産の際には、金型の交換が必要であったが、本発明の場合は、この作業が不要となる。 【0012】 【発明の効果】請求項1の樹脂鋳型によれば、熱可塑性樹脂から鋳型を構成したので、金型に比べてコスト低減がはかれ、砂型に比べて鋳肌、品質の向上がはかれる。 請求項2の樹脂鋳型を用いた鋳造方法によれば、金型に比べてコスト低減され砂型に比べて鋳肌、品質が向上された鋳造製品を生産できる。 請求項3の樹脂入子によれば、主型と樹脂入子を別体とし、1ショット毎に樹脂入子を主型から離脱できるので、異種鋳造品の1ショット毎の変更が極めて容易となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の樹脂鋳型の温度特性図である。 【図2】本発明の樹脂鋳型の一例の断面図である。 【図3】本発明の樹脂鋳型を用いた鋳造方法を実施する装置の一例の断面図である。 【図4】図3の装置の溶湯供給装置として用いることのできる装置の断面図である。 【図5】図3の装置の溶湯供給装置として用いることのできるもう一つの装置の断面図である。 【図6】本発明の樹脂入子の一例を装着した鋳型装置の断面図である。 【符号の説明】 1 樹脂鋳型 1′ 樹脂入子 2 キャビティ 3 金属溶湯 4 鋳造製品 6 鋳型搬送装置 7 溶湯供給装置 8 加熱炉 11 主型 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 冨高 周一 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 |