【0001】 本発明は、粒子状材料からなる粗パーツ(Rohbauteil)を包含する多層複合材を形成して層堆積法によりパーツを作製する方法に関する。 このようにして形成されるパーツは、好ましくは鋳型や中子である。 この方法は、金属紛や粒状または顆粒状の合成樹脂材料などの粒状金属素材から形成される金属パーツの形成にも適している。 【0002】 従来の金属鋳造用鋳型や中子の作製方法においては、砂と硬化可能な結合剤からなる混合物をケースに充填する。 次いでこの砂・結合剤混合物の中に、混合物が硬化する前に、目的鋳物製品の形状を持つポジ型が仕込まれ、再度取り出される。 この時、砂・結合剤混合物にできた跡が鋳物のネガ型となる。 その後、この砂・結合剤混合物を硬化させ、鋳造に耐えうるネガ型の鋳型とする。 【0003】 別の異なる鋳型作製においては、上記砂・結合剤混合物の代わりにクローニング・サンドと呼ばれる、合成樹脂で被覆されたケイ砂やジルコン砂などの鋳物砂からなる粒子状材料を使用することもできる。 【0004】 粒子状材料の結合は、粒子状材料中の乾燥した結合剤を加熱により溶融することによってなされる。 この方法による鋳型や中子の作製にあっては、かなりのエネルギーが必要となる。 またこの方法を実施するにあたり、比較的複雑な機器が必要となる。 【0005】 エネルギー消費の観点から見て長所をもつ方法として、コールド・ボックスと言われる常温硬化方法を挙げることができる。 この方法においては、結合剤が化学的に硬化される。 硬化の方法としては、硬化の前は一定の間まだ加工可能な常温で硬化する二成分系結合剤を鋳型砂に混合する方法と、結合剤と反応し結合剤を硬化させるガスを型取られた砂・結合剤混合物に充填する方法がある。 後者は、ガス硬化法と呼ばれる。 【0006】 上記の従来のポジ型を必要とする鋳型作製方法において、ポジ型は数値制御工作機械(フライスや旋盤など)で作製されなければならず、目的とする金属性部品が複雑になればなるほど時間と費用が要される。 【0007】 形成用の材料が層状に供されていく、ラピッド・プロトタイング法とも呼ばれる堆積法によって、鋳型やモデルやその他のパーツをより迅速かつより安価に作製することができる。 【0008】 パーツを層状に作製していく方法としては、US 5,182,170 (Marcus et al.)記載の方法が知られている。 この方法においては、結合剤を含有する粉末材からなる層を土台の上に堆積していく。 この層を反応性のあるガス雰囲気にさらすことにより、結合剤が活性化される。 この活性化雰囲気下で、層の所定部分を熱処理する。 この熱と活性化ガスが共に結合剤に作用し、結合剤が部分的に化学反応を起こし、層の所定部分が硬化される。 熱源としては、たとえばレーザーを使用する。 これに粉末材を重ね、活性化、熱処理する作業を層ごとに繰り返すことにより、パーツを作製する。 【0009】 更なる堆積法の例としては、US 5,204,055とEP−0 431 924 B1 (Sachs et al.)記載の方法が知られている。 この方法においては、粉末状の原料(セラミックや金属など)を層状に堆積する。 自己硬化性のある結合剤を選択的に各層ごとの所定部分に添加することにより、この所定部分の原料層が、次の層が重ねられる前に固まって下位の層と結合する。 この作業を層ごとに繰り返し、多層複合材を形成する。 この方法においては、作製されるパーツの中に、結合剤が行き渡っていない粉末状形成材、すなわち結合されていない粉末状形成材が含まれる。 結合剤は、印刷技術の分野で知られているドロップ・オン・デマンド・配量ヘッド(たとえば、インクジェットの印字ヘッドなど)を利用し、一滴一滴、定められたプログラム制御に従って塗布(プロット)される。 各層の所定部分は、熱放射などにより熱的に、または結合剤の化学反応により、次の層が重ねられる前に少なくとも部分的に結合、硬化される。 パーツを形成する所定の部分は、多層複合材が形成された後で後処理され、熱エネルギーにより完全に硬化される。 【0010】 EP−0 431 924 B1 (Sachs et al.)による方法の問題点は、結合剤が自己硬化性を持つことである。 このことにより、各層間の結合が十分に起こりえない可能性がある。 また、ドロップ・オン・デマンド・印字ヘッドを利用した場合、結合剤はヘッド部で硬化する傾向があり、ヘッドを詰まらせる原因となるため、ヘッドの清掃が頻繁に必要となる。 【0011】 DE 198 53 834.0 (Hoechsmann et al.)記載のラピッド・プロトタイピング法においては、粒状の原料からなる層が形成され、結合剤が層の全面に塗布される。 次いで、次の層が重ねられる前に、結合剤で処理された層の所定部分に硬化剤がプロットされ、硬化される。 この硬化剤は、たとえばドロップ・オン・デマンド・印字ヘッドでプロットされる。 硬化剤は、結合剤がない時には硬化しないので、印字ヘッドのノズルが硬化した材料で詰まることはない。 以降、この作業を繰り返し、層ごとに多層複合材を形成していく。 【0012】 DE 197 23 892.0 (Hoechsmann et al.)には、更なるラピッド・プロトタイピング法が記載されている。 この方法ではまず、硬化可能な結合剤で被覆された粒子からなる流し込み可能な粒状の形成材で層を形成する。 この形成材としては、クローニング・サンドなどを使用することができる。 各層の所定部分には、結合剤被覆層の結合剤の硬化反応性を変化させる処理剤がプロットされる。 次いで、次の層が重ねられる前に、この層を所定の種類の所定量のエネルギーで処理する。 このエネルギーの量は、処理剤により変えられた結合剤の硬化反応性に応じて、処理剤で処理された部分のみにおいて結合剤が硬化するように設定される。 以降、この作業を層ごとに繰り返し、多層複合材を形成していく。 各層は、次の層が重ねられる前に硬化される。 【0013】 この発明によれば、上記課題が解決され、ラピッド・プロトタイピング法によるパーツ作製、特に鋳型や中子の作製を低価格かつ迅速かつ正確に行うことが可能である。 【0014】 一定の粒径の粒子を含む粒子状材料からなりパーツを内包する多層複合材を形成する、いわゆる堆積法に基づいたパーツ作製方法に係る本発明の方法において、この粒子状材料は、層ごとに各層が多孔性の層となるように積み重ねられ、続いて少なくとも、各層ごとに異なっても良い各層の所定部分に、次の層が重ねられる前に、流動可能な状態で所定量の処理剤がプロットされる。 この処理剤により、結合工程の下準備が行われる。 結合工程で、粒子状材料に含まれるか粒子状材料上に塗布される結合剤は、スタート剤の存在下、所定部分における粒子を互いに固く結合させる。 【0015】 本発明の方法において多層複合材の形成は、しかし、スタート剤を使用せずに行われる。 本発明の方法においてスタート剤は、多層複合材の形成後にはじめて添加され、多層複合材の形成後に結合工程が行われるようにする。 【0016】 上記従来の方法においては常に、少なくとも各層の所定部分の一部を、各層を堆積してすぐ次の層が重ねられる前に、結合剤の硬化により硬化している。 驚くべきことに本発明によれば、次の層を重ねる前に各層ごとに所定部分を部分的に硬化しなくても、所定の条件で処理を行えば、流動可能な処理剤が、所定部分の周囲の処理されてはならない粒子状材料には全くまたは実質的に広がらないことが判明した。 これは特に、所定部分の面積および層の厚さから割り出される所定部分の体積、粒子の大きさ、粒子状材料の多孔性、流動性に依存する処理剤の濡れ特性を考慮して、処理剤の量を制御することにより可能である。 【0017】 本発明によれば、粒子状材料の粒子の所定部分における結合は、結合剤を用いて行われる。 本発明の一つの実施形態においては、結合剤を処理剤として用い、結合剤を流動可能な粉末または液体として所定部分に所定量塗って、それにより処理剤となるようにする。 【0018】 本発明の他の実施形態においては、処理剤で処理する前または後に、堆積された層全体に結合剤を塗布し、あるいは堆積前に粒状形成剤に結合剤を混合し、あるいは少なくとも主として結合剤で処理された粒子を予め粒子状材料に混入する。 この実施形態においては、結合剤の硬化にとって決定的となる結合剤の特性が、処理剤を塗布する前に有するその固有の初期値または初期値範囲から明らかに異なる値または範囲に変化しうるように、処理剤を選択する。 結合剤の硬化を決定づける結合剤の特性を、以下、結合剤の反応性と呼ぶ。 この第二の本発明の実施形態においては、スタート媒体は、結合剤の反応性に応じてその反応特性が設定され、処理剤で処理された所定部分以外であってその特性が変化していない結合剤または所定部分内において処理剤で処理されその特性が変化した結合剤と選択的に反応し、それにより硬化する。 したがって、処理剤としては、たとえば、塩酸などの液体または同様の物質であり、これらは乾燥した結合剤を柔軟に変質させたり、結合剤の組成を変化させたりし、それにより処理されていない結合剤よりも、エネルギーの供給または化学反応による硬化を生じやすくする。 たとえば、ふさわしく選択された処理剤が融点や溶融範囲をわずかに低下させ、その結果、最後に塗布されるスタート媒体の温度を、変性されていない結合剤の融点と変性された結合剤の融点の中間点に設定することで、変性された結合剤を選択的に溶融することができるようになる。 別の本発明の実施形態においては、処理剤が化学的な触媒または化学的な阻害剤であり、それにより、化学的なガスや液体による化学的な凝固反応または硬化反応に対する変性された結合剤の化学反応性が、その濃度または時によっては温度に応じて、わずかに高められまたは低められる。 【0019】 上記第二の実施形態においては、結合剤により予め被覆されている粒子状材料が好ましく用いられ、たとえば、クローニング・サンドが挙げられる。 この場合、結合剤が既に最小限の量で各粒子を覆っているので、処理剤の量は、粒子同士の接触部分で被覆層が充分に濡れるように設定する必要があるのみである。 【0020】 スタート媒体は、物質である必要は無く、熱や光といったエネルギーでもよい。 またスタート媒体は、物質であってもよく、液状、好ましくはガス状の熱伝達剤や反応剤が使用できる。 好ましくは、結合剤は化学的に硬化され、したがってスタート媒体として熱媒体または化学的硬化剤が使用され、これらが結合剤の結合形成に関与する。 スタート媒体はまた、同時にエネルギー媒体であり且つ流動可能な物質として存在するものであってもよい。 【0021】 粒子の大きさに応じた多孔性の層として堆積する粒子状材料の上に塗布される処理剤は、多層複合材を満たす液状またはガス状のスタート剤がその細孔を利用できるよう、所定の部分に所定の最低限の多孔性が残るように塗られることが好ましい。 必要に応じて、多層複合材を充填するに先立ち、多層複合材を密閉容器内で減圧することで、充填の準備をして充填を容易にすることもできる。 【0022】 本発明に係る方法の長所を以下に挙げる。 【0023】 結合剤を固化(結合)したり、特に硬化したりする時に、多層複合材が減縮(収縮)することがある。 熱による固化や硬化を各層ごとに行っていくと、多層複合材に張力がかかり、パーツにひずみが出たり破損したりすることがある。 本発明の方法によれば、固化は各層ごとにではなく最終段階で一括して行われるため、減縮は体積的に起こる。 すなわち、多層複合材全体が収縮して外寸が小さくなるため、張力が発生しない。 この減縮分を、パーツ作製前に所定量の処理剤が塗布される各領域ごとの大きさの計算に入れておけば、減縮を相殺することができる。 【0024】 結合および場合によっては硬化が、各層を重ねるたびにではなく多層複合材全体が形成された後に行われるため、各層における固化工程を省略でき、各層形成にかかる作業時間を短縮できる。 多層複合材の結合には、最終段階で一回だけ固化工程が必要となる。 このため、作製速度を上げることができる。 【0025】 各層の結合や特に硬化が完了するまでにかかる待ち時間を必要としないため、更なる時間短縮が可能である。 【0026】 さらには、多層複合材の最終的な固化を、多層複合材の形成とは別の場所で行うことができるため、二つ目の多層複合材の形成を一つ目の多層複合材の硬化を待つことなく開始することができる。 この場合、多層複合材の形成を、多層複合材の形成時および形成後に多層複合材を破損することなく保持でき、その中で多層複合材を結合場所まで移動することのできる容器の内部で行うことが好ましい。 多層複合材の結合処理も、その形成処理と同じ容器で行うことができる。 【0027】 本発明に係る方法の更なる長所は、結合剤と処理剤の塗布に用いられる塗布装置が、硬化する材料により目詰まりしないことである。 【0028】 本発明に係る方法の更なる長所は、所定部分以外における形成材が処理を受けずに残るので、硬化された粗パーツから形成材を分離して容易に再利用することができることである。 また形成材をコートせずに用いる場合、用いられた塗布装置の洗浄がより簡易である。 本発明に係る方法では、最終的にパーツとなる部分以外に結合剤を使用しないため、コストを下げることもできる。 【0029】 形成材としては、鋳型または中子の作製方法および堆積方法に通常用いられる砂、たとえば石英砂、ケイ酸塩砂、亜クロム酸塩砂、かんらん石砂またはジルコン砂を好ましく用いることができる。 堆積性のあるその他の適切な粒子状材料を用いることもできる。 異なる砂を混合して用いてもよい。 【0030】 本発明の上記第二の実施形態においては、前処理された砂が好ましく用いられる。 たとえば、結合剤で被覆されたクローニング・サンドを挙げることができる。 【0031】 処理されていない形成材の長所は、結合剤で処理済の形成材よりも安価であることである。 【0032】 所定の粒子の大きさとは、砂の場合は、砂粒子の大きさのことである。 好ましい砂粒子の大きさは、90〜200μm、さらに好ましくは110〜160μmである。 この範囲よりも小さな、あるいは大きな砂を使用することも可能である。 ただし、砂粒子が小さすぎると、空気の動きなどの影響を受けやすくなり、均一な堆積が困難となる。 また、砂粒子が小さいと多孔性が減じられ、鋳込みの際のガスの吹き込みに影響を与えてしまう。 逆に、砂粒子が大きすぎると、完成品パーツの表面に望ましくない凹凸が発生してしまう。 典型的には、砂粒子の平均直径、すなわち平均的大きさは、約140μmである。 砂粒子の大きさは、通常均一ではなく、ある程度の粒度分布を示す。 好ましく用いられる平均粒径140のケイ砂においては、たとえば、砂粒子の約5%が180μmから200μm、59%が125μmから180μm、30%が90μmから125μm、1%が63μm以下の粒度分布を示す。 このような形成材としてのケイ砂は、通常、1.32t/m 3の堆積密度で堆積される。 【0033】 各粒子状材料層の層の厚さは制限されない。 各層の層の厚さを薄くすることにより、製造するパーツの設計の詳細を高い解像度で行うことができる。 過度に層の厚さを薄くしても、工程誤差の影響を受けるために、それにより解像度を上げることには限界がある。 また、層を過度に薄くすると、重ねなければならない層の数が増え、作業速度が遅くなる。 層を厚くすると作業速度は上がるが、層の厚さには限界がある。 また、層の厚さを厚くしすぎると層を均一に堆積することが困難となり、各層を堆積するのにかかる時間が増し、作業時間の短縮効果が失われるばかりか、ある一定の層の厚さを超えると逆に作業時間が長くなる。 さらに、層の厚さが厚いと解像度が低くなり、設計の詳細をパーツに反映できなくなる。 比較的高い作業速度、各層同士の充分な結合および設計の詳細を反映できる充分な解像度などを考慮すると、好ましい層の厚さは、0.15〜0.3mmの範囲である。 【0034】 層の厚さは、パーツ形成の過程で変更することが可能である。 たとえば、設計上、高い解像度が必要ではない部分では、層を厚くして作業速度を高めることができる。 設計上、高い解像度が必要な部分では、層を薄くして解像度と作製精度を高めることができる。 【0035】 処理剤は、堆積された形成材の層上にその一定量が塗布される。 処理剤の量は、それにより形成材が単に軽く濡らされる(形成材が覆われる)量であればよく、作製されるパーツの品質を損ねる原因ともなりうるので、処理剤が部分的に集まって処理剤の分布が不均一にならないように設定される。 【0036】 結合剤ないし処理剤の塗布量は、続いて行われる硬化において、硬化剤が層内の細孔を伝ってパーツに分散することができるよう、粒子層の多孔性が残る程度に設定される。 【0037】 結合剤の所定量は、形成材に対する重量比が、好ましくは6重量%以下、特に好ましくは2〜3重量%の範囲内になるように選ばれる。 形成材量に対する相対量として塗布される結合剤の量は、各層ごとに異なっていてもよい。 【0038】 処理剤の量も、上記結合剤の形成材に対する重量比と同程度であることが好ましい。 【0039】 形成するパーツが鋳型や中子である場合は、硬化後パーツ内に残存する多孔性が、後の鋳造工程の際に発生するガスを逃がすのに役立つ。 この場合、結合剤または処理剤の量は、さらに好ましくは、融成物からなる鋳物の製造に用いられる鋳型または中子の使用に際し、鋳型または中子がこの融成物がまだ固まらない間その圧に耐えることができ、他方では融成物が部分的に固まって鋳物が実質的に形状をなしてきたときには、結合剤または結合剤と処理剤の少なくとも大部分がほとんど蒸発しているように選ばれる。 それにより、大きな経費をかけずに、鋳物が凝固したのち鋳型を単に割って鋳物を取り出すことができる(ロストフォーム法)。 【0040】 結合剤または処理剤は、液状で塗布することができる。 【0041】 液状の結合剤または処理剤は、たとえば噴射の形態で粒子層上に塗布することができる。 好ましくは、液状の結合剤または処理剤は、所定の大きさの液滴として塗布される。 結合剤滴または処理剤滴の所定の滴径(直径)は、好ましくは50〜100μmである。 滴径が約5μmよりも小さい場合、重力に対する空気抵抗を無視できなくなるため、形成材層上に液滴を正確に塗布することが困難となる。 滴径が大きすぎると、形成材層中での液体の分布が不均一となる。 【0042】 結合剤または処理剤は、この場合、その所定量を形成材層上に塗布でき、粒子間の細孔に働く毛管現象(毛管力)を利用して粒子層内を分散し粒子を覆うことができるよう、十分に希薄液状である(流動性が高い)ことが好ましい。 液状の結合剤または処理剤は、これらを塗布する際、その粘度が1〜25mPasの粘度範囲内にあるものであることが好ましい。 また、着色モデルを作製することができるよう、結合剤は色素物質、特に顔料を含んでいてもよく、あるいは粒子層の目的とする着色を引き起こすものであってもよい。 異なった色の結合剤を複数使用して、それぞれの所定量を別々に塗布すれば、インクジェット技術と同様の色混合によりフルカラーのモデルを、異なる色の着色モデルと共に作製することができるので、このことは、できるだけ実際の製品どおりに模型を作製すべく製品見本の製造に用いる際には有利である。 【0043】 この方法を実施する温度は、形成材、結合剤または処理剤として使用される材料の粘度や融点等の材料特性に応じて設定される。 好ましくは、10〜40℃の温度範囲内で実施される。 不必要に設備投資を高めることがないよう、室温で本方法を実施できるような特性の結合剤または処理剤を使用することがさらに好ましい。 したがって、結合剤または処理剤の粘度は、20℃において上記の1〜25mPasの範囲内にあることが好ましい。 【0044】 結合剤または処理剤が塗布される際、これらの温度は、周囲の温度と同じであるか、または周囲の温度よりも多少高くてもよく、それによりその粘度が下がり層内での結合剤または処理剤が容易に分散されるようになる。 周囲の温度とは、パーツが作製されている場所の周辺の温度であり、たとえば近傍の空気の温度を示す。 【0045】 層内における結合剤または処理剤の分散を高めるため、これらが塗布される前に各層を加温することも可能である。 【0046】 結合剤または処理剤を液体として塗布する代わりに、結合剤または処理剤を所定の大きさを持つ微粉末として各層に塗布する(プロットする)こともできる。 結合剤微粉末または処理剤微粉末が分散して形成材粒子を濡らすまたは被覆することができるよう、結合剤微粉末または処理剤微粉末の粒径は、形成材粒子の粒径よりも小さくなくてはならない。 微細な粒状材料をプロットする方法としては、たとえば、コピー機で実績のある粉末のトナーを紙に転写する方法や、昇華プリンターで使用されている粉末色素を紙に転写する方法が応用できる。 コピー機では、熱によりトナーが紙の上に固定されるが、転写されただけでまだ固定されていないトナーも紙に付着している。 【0047】 液状または微粉末状の結合剤または処理剤は、たとえば結合剤または処理剤だけが高圧でノズルから押し出されるエアレス・テクニックと呼ばれる方法でプロットすることができる。 あるいは、この結合剤または処理剤は、これらをピン(Dorn)内に充填しピン内を高速で通過する気体で運ばれて噴霧されるエアブラシ・テクニック、またはローテーション・テクニックなどでプロットすることもできる。 処理剤をプロットする別法として、超音波噴霧器も使用できる。 この方法では、処理剤がピエゾ励起膜により水滴を形成し、空気流により形成域、すなわち層の所定部分に正確に噴射される。 上記各方法を用いれば、結合剤または処理剤の量を正確に設定することができる。 液状または微粉末状の結合剤または処理剤は、シルクスクリーン印刷で塗布してもよいし、マスクを用いマスクを通して噴射させる方法を採用することもできる。 さらに、粉末状の結合剤または処理剤は、散布により塗布されてもよい。 【0048】 液状または微粉末状の結合剤または処理剤をプロットする方法としては、たとえばバブル・ジェット法やピエゾ法を用いた、たとえばインク・ジェット・プリンターなどで使用されている印字ヘッドのようなドロップ・オン・デマンド・印字ヘッドを用いる方法が好ましい。 【0049】 液状の結合剤または処理剤をプロットする場合は、解像度(ライン密度)が300から600dpiの範囲で結合剤または処理剤を噴射することのできるドロップ・オン・デマンド・印字ヘッドを使用することが好ましい。 【0050】 結合剤または処理剤は、ケイ酸ナトリウム、フェノール樹脂、ポリイソシアナート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン重合体、過酸化物、ポリフェノール樹脂およびレゾールエステルからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。 【0051】 硬化剤としては、ガス、液体または液体の蒸気が使用できる。 【0052】 液状の硬化剤は、作製するパーツの全ての層が堆積され結合剤または処理剤で処理(混合)された後に、パーツ全体に満たされるようにする。 硬化剤は、結合剤および処理剤で処理した後もパーツに残存している細孔を通じてパーツに浸透していく。 これにより、結合剤、または処理剤で処理された結合剤が硬化剤により硬化する。 【0053】 液状の硬化剤および/またはパーツ全体を加熱することにより、硬化の進行を早めることができる。 蒸気を硬化に使用する場合は、蒸気の熱が硬化を助け、および/または加速する。 【0054】 硬化剤として、二酸化炭素、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、二酸化硫黄、ギ酸メチル、ホルムアルデヒドジメチルアセテートおよびイソシアナートからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスを用いることが好ましい。 【0055】 結合剤と硬化剤の組み合わせは、選択された結合剤が選択された硬化剤で硬化できる組み合わせになるように選択する。 【0056】 下の表に、本発明に係る方法に用いることのできる、既知の硬化方法と結合剤および硬化剤の組み合わせを示す。 【0057】 【表1】
コールド・ボックス・プラス法は、通常、多少加熱して65〜75℃で実施される。 【0058】
上記以外の結合剤と硬化剤の組み合わせも可能である。 たとえば結合剤としてイソシアナートを用いた場合、硬化剤として水蒸気を用いることができる。
【0059】
本発明に係る方法は、たとえばデザインモデルや設計モデルなどの様々なパーツの形成に適している。 本発明に係る方法は、鋳型や中子の形成に好ましく用いることができ、鋳型の作製に特に好ましく用いることができる。
【0060】
以下に、図面に基づいて本発明に係る方法の好ましい実施例を説明する。
【0061】
図1aは、本発明に係る好ましい実施例で作製される、鋳型やモデルなどのパーツの、結合剤で処理される段階での断面を示す略図で、本発明に係る方法の原理を示している。 本方法に従ったパーツの形成のために、層s1から層snまでのn層が一層ごとに形成される。 最初に、形成材層s1を全面に堆積する。 第二工程で、層s1の所定部分t1(斜線部分)上に結合剤または処理剤を塗布する。 この両工程を繰り返して、同じ手順で次の層s2からsnまでを順次形成する。 各層siおよびsjの所定部分tiおよびtjは、通常は、各層ごとに異なってはいるが少なくともこれらの一部が重なり合い結合できるように構成されている。
【0062】
最終層に結合剤または処理剤を塗布した後、パーツ全体に硬化剤を浸透させて硬化させる。 予めパーツから空気を抜いておくと、硬化剤の浸透が助長されて好ましい。 硬化後、硬化されなかった部分、すなわちt1からtn以外の部分の形成材を取り除き、図1bに示すように完成品を得る。
【0063】
本発明に係る方法で鋳型を作製する場合も、上記のように形成材を堆積していく。 ただし、結合剤または処理剤は、所定部分ti(i = 1〜n)以外の部分に塗布する。 したがって、所定部分ti以外の部分が硬化される。 所定部分ti(i = 1〜n)の形成材料を取り除くと、図1bに示された形状の空洞を持つパーツが形成される。
【0064】
図2に、本発明に係る好ましい実施形態でパーツを作製するための装置を示す。 このような装置は、以下の構成要素を備えている。
【0065】
垂直に移動可能な土台1
制御装置制御装置によって制御され、堆積可能な形成材を各層ごとに所定の厚さの層となるよう土台1または下位層の上に堆積するための水平方向に移動可能な堆積装置2、および制御装置によって制御され、液状または粉末状の結合剤または処理剤を層の所定部分にプロットするための水平方向に移動可能な配量装置3
形成材の堆積装置2は、長方形の箱21を備えている。 この箱21の上部および下部は開いており、上部から形成材を導入し、下部から堆積すべき形成材を土台1または下位層の上に層状に形成できるような構造になっている。 箱21の土台1側の開放部端部付近には、排出口を開閉でき層をならすための刃を備えた排出装置22が設置されている。 堆積装置2は、箱21の長辺に対して直角方向に、所定の速度で土台1の一端から他端まで移動(往復)できる構造になっている。
【0066】
結合剤を塗布するための配量装置3を備えたガイド42は、形成材の堆積装置2と同様に移動できる。 配量装置3は、ガイド42の移動方向に対して直角方向に移動できる。 すなわち、配量装置3は、土台1上のあらゆる部分に移動可能である。
【0067】
以下に、本発明の好ましい実施形態に係る装置を使用して行われる方法の手順について説明する。
【0068】
形成材の堆積:
まず、図2に例示されたような形成材が充填された箱21を土台1の一端に配置する。 排出装置22は閉じられている。 箱21の排出装置22を形成材の層が土台の上に堆積するように開けると同時に、堆積装置2を土台の一端から他端に向け一定の速度で移動し、土台1全体が形成材の層で均一に覆われるようにする。 箱21が土台1上を移動し、堆積された層の表面が箱21の下縁(刃)により平らにならされる。 土台と箱21の垂直方向の間隔は、箱21の下縁にある刃により層がならされた後に層が希望の厚さになるように設定される。 工程速度および/または排出装置22の開放度合いは、制御装置により、層が希望の厚さになるために必要な量の形成材が土台1上に堆積するように設定されることが好ましい。 堆積装置2が土台の他端に達すると同時に、形成材の供給が中断される。
【0069】
結合剤または処理剤の塗布:
好ましくは、インクジェット等の印字ヘッドとして使用されているドロップ・オン・デマンド・配量ヘッド等の配量装置3を、ガイド42を土台1に沿って、また配量装置3をガイド42に沿って移動させることにより、図案(マスター)に従って、結合剤または処理剤を配量装置3により土台上1に噴射させてプロットを行う。 それにより形成材層における結合剤または処理剤からなる図案(プロットされる部分)は、パーツの各層レベルの断面に相当する。
【0070】
第一の層が完了後、第二の層を作製する。 まず、土台1を堆積装置2から所定距離だけ離れた位置まで下げる。 第二の層となる形成材を堆積し、結合剤または処理剤を図案(設計)に基づいてプロットする。
【0071】
この工程を層ごとに繰り返し、多層複合材を形成する。
【0072】
最終段階で、多層複合材を硬化する。 硬化処理法としては、公知のガス硬化法や同様の方法が好ましく応用される。
【0073】
最後の層を堆積し、最後の層に結合剤をプロットした後、多層複合材を堆積装置から取り外す。 このとき土台は、多層複合材と共に形成装置から取り外すことも可能で、これが多層複合材の支持体として機能する。 多層複合材および場合によっては多層複合材と土台をチャンバーに入れる。 チャンバー内に、多層複合材硬化用のガスを充填する。
【0074】
あるいは、パーツ形成装置をチャンバーと一体にすると、多層複合材をその装置内でそのまま硬化させることができる。
【0075】
多層複合材の各層は、硬化する前でも互いに充分に一体化しているので、多層複合材を安全に堆積装置から取り出すことができる。
【0076】
堆積装置に形成用ケースを装備すれば、多層複合材の層形成をケース内で行うことができ、ケースは最終的には層で充填されるようになる。 この形成用ケースが多層複合材を保護するため、たとえば硬化前に多層複合材を硬化のためにチャンバーに移動させるときに、損傷を受ける危険性をより減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1aは、本発明に係る好ましい実施形態により作製されるパーツの、結合剤または処理剤を塗布するときの断面を示す略図である。
図1bは、図1aで示したパーツの完成図である。
【図2】
図2は、本発明に係る方法を実施する装置であり、印字ヘッドの働きを示している。
|