未発酵カカオ豆からのカカオ製品およびその製造方法 |
|||||||
申请号 | JP2018520019 | 申请日 | 2016-07-08 | 公开(公告)号 | JP2018520701A | 公开(公告)日 | 2018-08-02 |
申请人 | オーデーツェー リツェンツ アーゲー; | 发明人 | ヒューン,ティロ; | ||||
摘要 | 開示されている未発酵カカオ豆処理方法は、未発酵カカオ豆に 水 を加えて懸濁液を調製する工程(a)と、懸濁液を湿式粉砕に付す工程(b)と、懸濁液を70℃以下の 温度 で熱処理する工程(c)と、水相分(重質相)、ココアバターを主成分とし且つ固形分および/または水分を非主成分とする脂肪相分(軽質相)、並びにココア粉末と水分を含有する固相分へと、懸濁液を分離させる工程(d)と、前記三相を個別に処理する工程(e)とを含み、当該工程は、脂肪相分からのココアバターの分離、固相分からのココア粉末の分離、および、ココア香料とポリフェノール粉末の少なくとも水相分からの分離のそれぞれを、必要に応じて含む。ポリフェノール、抗 酸化 物質、ビタミン、および/または糖類など、カカオ果実の栄養上有益で有用な成分を大量に含むカカオ製品構成キット、および、チョコレートまたはチョコレート様の製品の、上記技術を利用した製造方法も開示される。 【選択図】図1 | ||||||
权利要求 | 未発酵カカオ豆の処理方法であって、 カカオにおける果肉と粘液を伴うか或いは伴わない未発酵カカオ豆に水を加えて懸濁液を調製する工程(a)と、 前記懸濁液を湿式粉砕処理に付す工程(b)と、 前記懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に付す工程(c)と、 水相分(重質相)、ココアバターを主成分として含有し且つ固形分および/または水分を非主成分として含有する脂肪相分(軽質相)、並びに、ココア粉末および水分を含有する固相分へと、前記懸濁液を分離させる工程(d)と、 前記の三相を個別に処理する工程(e)とを含み、当該工程は、前記脂肪相分からココアバターを分離すること、前記固相分からココア粉末を分離すること、並びに、ココア香料およびポリフェノール粉末を少なくとも前記水相分から分離することのそれぞれを必要に応じて含む、方法。前記未発酵カカオ豆は予備乾燥されていないものである、請求項1に記載の方法。前記未発酵カカオ豆は、工程(a)より前にインキュベーション工程に付されたものである、請求項1または2に記載の方法。前記インキュベーション工程は、未発酵カカオ豆について、当該未発酵カカオ豆を覆う充分量のエタノール溶液に、10℃〜70℃の温度で2時間〜10日間、浸漬することを含む、請求項3に記載の方法。前記エタノール溶液のエタノール濃度は少なくとも1体積%で且つ7体積%未満である、請求項4に記載の方法。前記未発酵カカオ豆はパルプ除去されていないものである、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。前記未発酵カカオ豆をパルプ除去する工程を、工程(a)より前に更に含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。前記パルプ除去工程で得られるカカオの果肉および粘液を、前記未発酵カカオ豆とは別に処理し、それから工程(a)、工程(b)、工程(c)または工程(d)の前または最中の前記懸濁液に加える、請求項7に記載の方法。カカオの果肉および粘液の前記処理は、酸性成分の中和および/または除去を含む、請求項8に記載の方法。前記水相分および前記固相分からはココア香料およびポリフェノール粉末を抽出する、請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。カカオ処理のための前記各工程は約70℃以下の温度で行われる、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。請求項1に記載の方法によって得られたココアバター抽出物、ココア粉末抽出物、ポリフェノール粉末抽出物、およびココア香料抽出物を含む、チョコレート製品またはチョコレート様製品の構成キット。チョコレート製品またはチョコレート様製品の製造方法であって、 未発酵カカオ豆に水を加えて懸濁液を調製する工程(a)と、 前記懸濁液を湿式粉砕処理に付す工程(b)と、 前記懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に付す工程(c)と、 水相分(重質相)、ココアバターを主成分として含有し且つ固形分および/または水分を非主成分として含有する脂肪相分(軽質相)、並びに、ココア粉末および水分を含有する固相分の三相へと、前記懸濁液を分離させる工程(d)と、 前記脂肪相分からココアバターを分離すること、前記固相分からココア粉末を分離すること、並びに、ココア香料およびポリフェノール粉末を少なくとも前記水相分から分離することを含む、前記三相を個別に処理する工程(e)と、 前記ココア香料抽出物および前記ココアバター抽出物を再び合わせる工程(f)と、 再び合わせられた前記抽出物と、前記ココア粉末抽出物、前記ポリフェノール粉末抽出物、および粉乳の少なくとも一つとを、混合する工程(g)と、 得られた混合物をコンチングする工程(h)と、を含む方法。前記未発酵カカオ豆をパルプ除去する工程を工程(a)より前に更に含み、必要に応じて、当該パルプ除去工程で得られるカカオの果肉および粘液が前記未発酵カカオ豆とは別に処理されて、当該果肉が、工程(a)、工程(b)、工程(c)または工程(d)の前または最中の前記懸濁液に加えられ、或いは工程(f)、工程(g)または工程(h)の前または最中に加えられる、請求項13に記載の方法。請求項13または14に記載の方法によって得られる、チョコレートまたはチョコレート様の製品。 |
||||||
说明书全文 | 本発明は、未発酵カカオ豆からのチョコレートまたはチョコレート様の製品の製造のための方法および/または技術に関し、その製造物は、苦味や渋味が抑えられ、それと同時に、カカオ果実の栄養上有益で有用な成分、例えばポリフェノール、抗酸化物質、ビタミン、および/または糖類の、含有量が高い。 特定の実施形態において、本発明は、カカオ果実の栄養上有益で有用な成分(例えばポリフェノール、抗酸化物質、ビタミン、および/または糖類)の含有量の高いチョコレートまたはチョコレート様の製品に加えて、カカオ製品構成キットを製造するための、カカオの果肉や粘液の処理を任意選択的に伴う未発酵カカオ豆処理に関する。 カカオ(Theobroma cacao L.)は、健康に良い成分の重要な供給源として知られている。例えば、ミネラル、ビタミン、ポリフェノール(特にカテキン、アントシアニジン、およびプロアントシアニジン)、および、フラボノイドなど抗酸化物質の、供給源としてである。フラボノイドは、酸化ストレスの緩和、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化抑制作用、および血小板凝集抑制作用において、生理学的活性が特にあり、且つ、血管における血管拡張物質として働く。 しかしながら、カカオベースの食品類の製造における従来式のカカオ豆処理は、高温での発酵および乾燥・焙煎を伴うものであり、その最中に、カカオ生豆中の含有量との比較において相当量のポリフェノール、抗酸化物質、および/またはビタミンが失われる。その種の従来方法は、米国特許出願公開第2006/257547号明細書および英国特許第622628号明細書に開示されている。 典型的なカカオ豆の処理手順は、カカオポッドの収穫と、それに続いて注意深くカカオ豆を取り出すことから始まる。その後、カカオ豆を発酵させ、そして乾燥させる。ほとんどの有機物質と同様に、カカオは、空気に曝されると発酵がすぐに始まる。天然に存在する酵母からの胞子が糖分のある豆表面に定着して、糖分が二酸化炭素と芳香成分とアルコールに分解され始めるのである。そのアルコールは、細菌のもたらす微生物活性によって更に酢酸に変換される。このプロセス(以下では「天然発酵プロセス」とする)の最終段階では、カカオ豆内の胚は、アルコールや酢酸の存在、および、前記の微生物活性によって生じる熱により、不活性化される。その結果、豆内の渋味を減弱させることのできる酵素が放出されることとなる。これは、チョコレートの香味(flavor)の発達にとって重要であると考えられている。微生物活性によって自然発生的に誘発されるこの天然カカオ発酵プロセスは、典型的には、その微生物活性によって生じる酢酸および/または熱が過剰となることによって当該微生物活性が阻害されるまで、約2日以上、続く。酢酸の多くは発酵完了後の豆の中に残るので、酢酸の存在に因る最終カカオ製品中の酸味や苦味を避けるためには、酢酸を豆から除去しなければならない。従来、酢酸の濃度は例えば70℃〜180℃での焙煎工程の間に減少するが、これによると、健康に良い望ましいカカオ成分が必然的に減少してしまう。 天然ないし自然発生的なカカオ発酵によるカカオ豆の発芽阻害の代わりに、カカオポッドからカカオ豆を取り出した直後の新鮮なカカオ豆に対して物理的および/または化学的な前処理を施すことによって、発芽阻害をもたらすこともできる。これによると、微生物発酵を回避することができる。天然発酵プロセスにおいてその制御が出来ないことに起因する、最終カカオ製品中の香味や食味のプロファイルの変動を、低減するためにである。そのような前処理には、例えば、米国特許第8,501,256号明細書に開示されているような例えば25℃〜70℃の加熱温度での24時間以内のインキュベーションがある。また、国際公開第2014/130539号パンフレットには、未発酵カカオ豆をエタノール溶液中において55℃未満の温度で24〜96時間インキュベーションするインキュベーションプロセスが開示されている。 しかしながら、未発酵で未焙煎の豆製品の食味特性は、典型的には、苦く、不味く、且つ高度に渋味を伴うものとされる。渋味は、カテキン類(エピカテキン、カテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1を含む)やアミノ酸の存在に主に起因するとされている(T. Starkら、J. Agric. Food Chem. 2005, 53, 5407-5418)。そうであるから、許容される香味を有するカカオ製品を製造するためには、カカオ製品製造者は、未発酵および/またはインキュベーション済みの豆を大規模な熱処理(通常は100℃〜150℃程度で行われる乾燥および/または焙煎の工程など)に付して苦味や渋味の成分の含有量を減少させること(これは、カカオ果実における栄養上有益で有用な成分の損失を必然的に伴う)、または、未発酵および/またはインキュベーション済みの豆と発酵済みの豆とをブレンドして味質と健康増進効果との間の妥協を図ることを、行う必要がある。 国際公開第2010/073117号パンフレットにはカカオ豆処理方法が開示されている。その方法は、機械的な加工処理によるカカオ脂の液化とチョコレートリカーの形成とを避けるため、カカオ豆またはカカオニブと水とを含有する懸濁液の形成、懸濁した豆またはニブの湿式磨砕、当該懸濁液の加熱、および、その後のデカンテーションによる、水相分と脂肪相分と固相分への分離からなる。 しかしながら、未発酵カカオ果実の栄養上有益で価値ある成分、例えばポリフェノール、抗酸化物質、ビタミン、および/または糖類を、好ましいことに多量に含むと同時に良好な食味を特徴とするカカオ製品を製造可能なカカオ豆処理方法を提供するうえでの問題点に対しては、従来、充分には取り組まれていない。 本発明は、当該技術において以上のように列挙される欠点および/または改善要求の観点から、なされたものである。 本発明は、本書において定義される請求項に記載の主題により、この課題について解決を行うものである。本発明の利点については以下の段落で更に詳細に説明される。したがって、更なる利点は、本発明の開示を考慮に入れる当業者にとって明らかなものとなろう。 本発明の一の側面によると、総じて、未発酵カカオ豆の処理方法が提供される。この方法は、未発酵カカオ豆に水を加えて懸濁液を調製する工程と、懸濁液を湿式粉砕処理に付す工程と、その懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に付す工程と、当該懸濁液を、水相分(重質相)、ココアバターを主成分として含有し且つ固形分および/または水分を非主成分として含有する脂肪相分(軽質相)、並びに、ココア粉末および水分を含有する固相分へと分離させる工程と、これら三相を個別に処理する工程とを含み、当該工程は、脂肪相分からココアバターを分離すること、固相分からココア粉末を分離すること、並びに、ココア香料(cocoa aroma)およびポリフェノール粉末を少なくとも水相分から分離することのそれぞれを必要に応じて含む。 本発明の他の側面によると、チョコレート製品またはチョコレート様製品の構成キットが提供される。その構成キットは、上述の処理方法によって得られるココアバター抽出物、ココア粉末抽出物、ポリフェノール粉末抽出物、およびココア香料抽出物を含む。 本発明の更に他の側面によると、チョコレート製品またはチョコレート様製品の製造方法が提供される。この製造方法は、未発酵カカオ豆に水を加えて懸濁液を調製する工程と、懸濁液を湿式粉砕処理に付す工程と、その懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に付す工程と、当該懸濁液を、水相分(重質相)、ココアバターを主成分として含有し且つ固形分および/または水分を非主成分として含有する脂肪相分(軽質相)、並びに、ココア粉末および水分を含有する固相分の三相へと分離させる工程と、脂肪相分からココアバターを分離すること、固相分からココア粉末を分離すること、並びに、ココア香料およびポリフェノール粉末を少なくとも水相分から分離することを含む、前記の三相を個別に処理する工程と、ココア香料抽出物およびココアバター抽出物を再び合わせる工程と、再び合わせられた抽出物をココア粉末抽出物、ポリフェノール粉末抽出物、および粉乳の少なくとも一つとを混合する工程と、得られた混合物をコンチングする工程とを含む。 本発明の更に他の側面は、上述の方法または上述の構成キットを用いることによって得られるチョコレート製品またはチョコレート様製品である。 図1は、本発明による未発酵カカオ豆処理方法についてカカオ製品構成キットの提供までを概略的に表し、また、本発明の以下のチョコレート製造方法も表すものである。
図2は、相分離したうえでの水相分の処理の一例を概略的に表す。
図3は、チョコレートまたはチョコレート様の製品の製造方法を概略的に表す。
図4Aは、脂肪相分、固相分、および水相分の分離とその後の処理を経て得られる取得物を用いたダークチョコレートやミルクチョコレートの作製方法の一例を概略的に表す。
図4Bは、脂肪相分、固相分、および水相分の分離とその後の処理を経て得られる取得物を用いたホワイトチョコレートの作製方法の一例を概略的に表す。
図4Cは、脂肪相分、固相分、および水相分の分離とその後の処理を経て得られる取得物、並びに、天然甘味料としてのカカオの果肉や粘液を用いた、100%カカオのチョコレートまたはチョコレート様の製品の作製方法を概略的に表す。
本発明のより完全な理解のためには、本発明の実施の形態についての以下の説明を参照されたい。 未発酵カカオ豆の処理方法 本発明の第1の実施形態による未発酵カカオ豆の処理方法は、総じて、未発酵カカオ豆に水を加えて懸濁液を調製する工程(a)と、懸濁液を湿式粉砕処理に付す工程(b)と、その懸濁液を70℃以下の温度での熱処理に付す工程と、当該懸濁液を、水相分(重質相)、ココアバターを主成分として含有し且つ固形分および/または水分を非主成分として含有する脂肪相分(軽質相)、並びに、ココア粉末および水分を含有する固相分へと分離させる工程(c)と、これら三相を個別に処理する工程と(d)を含む。工程(d)は、脂肪相分からココアバターを分離すること、固相分からココア粉末を分離すること、並びに、ココア香料およびポリフェノール粉末を少なくとも水相分から分離することのそれぞれを必要に応じて含む。 「脂肪相分からココアバターを分離する」および「固相分からココア粉末を分離する」という表現は、それぞれの主成分としてのココアバター(脂肪相分中)およびココア粉末(固相分中)を濃縮する操作を意味するものとする。「ココア香料およびポリフェノール粉末を少なくとも水相分から分離する」という表現は、ココア香料およびポリフェノール粉末を濃縮した形態で当該相から取り出す操作を意味するものとする。これらの操作としては、例えば、ろ過、乾燥処理(例えば、任意選択的に真空条件下で行われる、残留水のエバポレーション)および/または遠心分離が挙げられるものの、これらに限定されない。 「発酵」という表現は、総じて、微生物による有機物質の酵素的または代謝的な分解(消化)を含む活動またはプロセスを意味し、嫌気プロセスと好気プロセスの両方を包含し、また、それぞれ一つ以上の嫌気段階および/または好気段階の組み合わせないし連続を含むプロセスをも包含する。本書で使用する「未発酵」という用語は、カカオ豆の発酵の程度に関する表現である。当業者に知られているように、発酵の程度は、発酵指数で表される(参照;Shamsuddin and Dimick,Qualitative and Quantitative Measurements of Cacao Bean Fermentation, in“Proceedings of the Cacao Biotechnology Symposium”,Ed. P. S. Dimick,p.55-74,The Pennsylvania State University,1986)。未発酵カカオ豆の発酵指数は一般的には0.5未満である。 未発酵カカオ豆は、水が加えられる最初の工程(a)に供されるより前に、いくつかの処理工程を経てもよい。そのいくつかは次のとおりである。 カカオ(Theobroma cacao)の果実ポッドでは、例えば、約30〜50個の果実種子(即ちカカオ豆)がポッド内部の果肉と粘液に包まれている。ポッドを収穫して、それを機械的に又は手作業で割って明けた後(これは好ましくは衛生設備内で実施される)、カカオ豆をカカオ果実の殻から分離する。 未発酵カカオ豆は、所望される食味特性に応じて、パルプが除かれた状態か、またはポッド中の果肉・粘液の一部または全部とともに、本方法の工程(a)に用いることができる。 カカオ豆からのパルプ除去は、手作業で又は機械的に行うことができる。好ましい実施の形態では、果肉および粘液とカカオ豆との分離は、機械的分離装置を使用して行う。 更に好ましい実施の形態では、カカオ豆は、パドルセパレータによって果肉および粘液から分離される。パドルセパレータは、パドルブレードが固定された回転中心軸を備える円筒形スクリーンを有する。ブレードが円筒形スクリーンに沿った周方向の掃引を行い、カカオ豆にダメージを与えることなく果肉および粘液が円筒状の篩を通過して篩い分けられる。この目的のために使用することができる機械的セパレータの一例は、米国特許出願公開第2013/0316056号明細書において知られている。このような機械的分離の利点は、短い処理時間で高い分離収率を達成可能なことにある。この利点によると、本方法の以降の工程において中間生成物および/または抽出物に対して果肉および粘液が再び加えられる場合のその量の最大化を、図ることが可能となる。これについては後に更に詳しく説明する。 好ましい実施の形態では、パルプ除去工程で得られたカカオの果肉および粘液は、未発酵カカオ豆とは別に処理され、それから工程(a)、工程(b)、工程(c)または工程(d)の前または最中の懸濁液に加えられる。他の好ましい実施の形態では、パルプは更に後の段階で天然甘味料として再び加えられてもよく、その場合、比較的高い糖含量が実現されるという利点が得られる。このアプローチの利点は、中間生成物や、抽出物、最終カカオ製品に加えられる果肉および粘液の栄養上有益な成分の量の最大化を図ることができることにあり、また、抽出物や最終カカオ製品中の香味について様々な微調整を可能にすることにある。再び加えられる果肉および粘液は、カカオ豆と同じ品種に由来するものでもよい。これは、抽出物および/または最終カカオ製品が純粋原産品であることを意図される場合に例えば、好適である。或いは、パルプは、カカオ豆とは異なる品種に由来してもよいし、異なる複数品種のブレンドであってもよい。 好ましい実施の形態において、パルプ除去工程で得られるカカオの果肉および粘液の上記別処理としての前処理には、望ましくない成分の機械的および/または化学的な分離および除去が含まれてもよい。そのような望ましくない成分は、例えば、残留殻分、並びに、過度の苦味、酸味、および/または不味に寄与する化合物を含む。更に好ましい実施の形態では、パルプ除去工程で得られるカカオの果肉および粘液の上記別処理には、クエン酸および/または酢酸など酸性成分の中和および/または除去が含まれる。当該実施形態の利点は、製造される抽出物およびカカオ製品において、食味特性が果肉の酸っぱい香味によって過度に支配されないこと、および、果肉や粘液に由来する栄養上有益な成分を多量に含有することを、共に可能にすることにある。更なる実施の形態では、単独で或いは上記実施形態と組み合わされて、果肉や粘液の前処理は、例えば抽出法やそれに類する手法による、果肉からの糖分の分離または果肉中の糖分の濃縮のための工程を含んでもよい。この実施形態は、カカオ果肉がカカオ製品中の天然甘味料として使用されることが意図される場合に特に好ましい。 好ましい実施の形態では、未発酵カカオ豆は、工程(a)より前に、カカオの果肉および粘液を伴うか或いは伴わない状態でのインキュベーション工程で、前処理してもよい。そのようなインキュベーション工程は、カカオポッドからカカオ豆(果肉および粘液を伴うか或いは伴わない)を除去した直後の所定の物理的前処理および/または化学的前処理によって当該カカオ豆の発芽を阻害することを特徴とするものである。 特に、取得した新鮮なカカオ豆を、インキュベーション用媒体中において例えば10℃〜70℃、好ましくは10℃〜55℃の加熱温度で、2時間から10日間、好ましくは3〜168時間、インキュベーションすることにより、カカオ豆の発芽を阻害することが可能である。当業者に知られているように、できるだけ効果的に自然発酵を抑制するためには、カカオポッドを開けた直後に、好ましくは滅菌条件下で、カカオ豆を(必要に応じて果肉および粘液と共に)インキュベーション用媒体に移すことが、特に好ましい。 インキュベーション用媒体は、特に限定されず、例えば米国特許第8501256号明細書に開示のカカオ豆処理方法に用いられるような酸性水性媒体であってもよいし、例えばエタノール水溶液であってもよい。 従来のカカオ豆処理方法において、インキュベーション媒体として酸性水性媒体を使用すると、使用される酸(通常は、好ましくは両親媒性酸である無機酸または有機酸である。カカオ豆への滲入と生体膜への浸透とを効率よくなしうる酢酸が特に好ましい)が多量にカカオ豆中に残るという点が問題となる場合がある。そのため、熱処理またはアルカリ処理によって当該酸は除去されなければならない。そうでなければ、最終製品中に酸味および/または苦味を生じる。更には、非滅菌条件下では自然に生ずる微生物活性は、酢酸の形成に更に寄与する場合がある。本発明の方法は、中和、蒸留、抽出、エマルジョン型液体の膜分離、塩析、またはこれらの組み合わせにより、工程(c)で得られる水相分を介して酸を除去できることから、ココア固形物に対する熱負荷の増大や、ココア固形物のアルカリ処理を経る必要がなく、当該酸残留物を効果的に処理することができる、という利点を有する。この利点により、栄養上有益な成分が好ましいことに多量に保たれることとなり、また、美味な食味、苦味のない食味、または酸味のない食味が、実現されうる。 好ましい実施の形態では、インキュベーション用媒体は、カカオ豆を覆うのに充分な量のエタノール水溶液であり、未発酵カカオ豆のインキュベーションは、10℃〜70℃の温度、好ましくは10℃〜55℃の温度で、2時間〜10日間、好ましくは3時間〜96時間、行われる。このようなインキュベーション工程は、微生物(即ち酵母・細菌)による発酵の代替手法としてシンプルであり、再現性があり、且つ制御可能であるという点、および、良好なカカオの香味や食味のプロファイルを実現可能であるという点で、有利である。インキュベーション用媒体中のエタノール濃度は、それが内在性微生物による自然発酵を防止するのに充分に高い限り、特に限定されないが、例えば1〜90体積%であり、好ましくは1〜12体積%である。発芽阻害効率および処理コストの観点からの特に好ましい実施の形態では、インキュベーション用媒体中のエタノール濃度は、少なくとも2体積%であり且つ7体積%未満である。 インキュベーション用媒体は、例えば、親水性オリゴペプチドや疎水性遊離アミノ酸など香料前駆体の形成を促進するために、制御された酵素触媒反応の分野で知られた酵素を更に含んでもよい。 適用可能な限り、インキュベーションは単一工程で実施されてもよいし、異なるインキュベーション条件および/またはインキュベーション媒体が採用される複数インキュベーション工程が実施されてもよい。当業者に知られているように、pHや温度のようなインキュベーション条件は、単一のインキュベーション工程中に変えてもよい。 インキュベーション工程は、インキュベーションそのものの前または最中における、当該技術分野で一般的に知られている一つ以上の機械的処理および/または物理的処理の工程を包含するものであってもよい。そのような機械的処理には、例えば、撹拌、混合、振とう撹拌、およびこれらの組み合わせが含まれ、物理的処理には、例えば、赤外線処理および/または真空処理が含まれるものの、これらに限定されない。 上述の工程のいずれかに従って未発酵カカオ豆をインキュベーションした場合、そのカカオ豆については、インキュベーション用媒体から取り出した後に工程(a)に供してもよいし、或いは、インキュベーション用媒体とともに工程(a)に供してもよい。 好ましい実施の形態では、インキュベーションされた未発酵カカオ豆は、中間乾燥工程を経ずに工程(a)に供される。更に好ましい実施の形態では、工程(a)に用いられる未発酵カカオ豆は、予備乾燥されていない。これら実施形態は、エネルギー消費が少ないことによる処理コストの点で特に好適である。 工程(a)における出発材料としては、ホールの未発酵カカオ豆(これはインキュベーションされていてもよい)を使用してもよいし、或いは、各豆が より小さな非完全の豆粒子(例えばカカオニブ)に砕かれる「砕き」工程を経た後の未発酵カカオ豆を使用してもよい。 本発明のカカオ処理技術は、いずれも、工程(a)において、カカオ豆またはカカオニブの粉砕前または粉砕中に水を加えることによって未発酵カカオ豆の懸濁液を調製することから始まる。 カカオ豆にはその懸濁液の調製にあたって水が加えられる。特に限定されないが、調製される懸濁液における水とカカオ豆またはカカオニブとの重量比は、好ましくは1:1〜6:1、より好ましくは2:1〜4:1、特に好ましくは約3:1であり、このような範囲は、以降の工程での処理のしやすさの点で有利に作用する(例えば、ポンプ輸送、粉砕、および容易な相分離を促進するなど)。 追加の香味を導入するという観点から望まれる場合には、水分を含有する代わりの液体を水分供給材料として用いてもよい。その材料として好ましいのは、例えば、フルーツジュースや、フルーツジュース濃縮物、ミルクなど含水量60〜約95重量%の液体と、コーヒーと、お茶から選択される一つ以上の液体である。好ましい実施の形態では、カカオの果肉および粘液は、単独で或いは上記含水液体と組み合わせられて、水分供給材料として追加的に使用されてもよい。当該果肉と粘液は、未発酵カカオの豆やニブに伴って前の工程を経たものであってもよいし、カカオ豆から分離された後に上述の方法に従って処理されて工程(a)より前のカカオ豆に再び加えられたものであってもよいし、これら以外のものでもよい。以上のように含水液体を使用する場合、調製される懸濁液の含水量が上記割合に収まることが一般的に好ましい。本方法では以降の工程での熱負荷が比較的に低いことから、上記液体に由来する 温度に敏感な香味は、保持され、カカオ豆の主要な香味や副次的な香味と良好に影響しあう。 コーヒー風味のカカオ製品を得るためには、水懸濁液を調製する際に、未発酵のカカオ豆またはカカオニブに対してコーヒー豆(未粉砕または粉砕済みの,未焙煎または焙煎済みの)を混ぜる。コーヒー豆の含有量が湿式粉砕や相分離の各工程を妨げたり或いはそれらに良くない影響を及ぼさないように、未発酵のカカオ豆またはカカオニブが豆混合物の主要部分をなす限りにおいてである。この豆混合物におけるコーヒー豆の含有量は、好ましくは20重量%未満であり、より好ましくは10重量%未満である。 工程(b)において、未発酵のカカオ豆またはカカオニブは、一回または複数回の湿式粉砕工程に付される。これにより、豆粒子サイズは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更により好ましくは20μm以下とされる。このようなサイズ範囲にまで豆粒子を小さくすると、豆粒子材料の露出表面積が相当程度に大きくなり、従って豆粒子材料がより効率よく濡れて(例えば、化学溶媒よりも水で)、抽出結果が改善される(例えば、脂肪分ないし脂質、芳香物質、および/またはポリフェノールの抽出の改善である)。豆粒子サイズを小さくすることは、例えば、ディスクミル(例えば有孔ディスクミル)、コロイドミル(例えば歯付きコロイドミル)、またはコランダム石ミルを使用して行うことが可能である。少なくとも1回の粉砕工程において、カカオ豆細胞がふやかされて、ふやかされたカカオ豆の実効表面積の増加に因って溶媒(水)が当該カカオ豆材料をより良く湿らせるようになるのが、好ましい。湿式粉砕に使用される方法および装置は、著しい摩擦熱の発生や高い機械的応力に起因する望ましくない乳化が回避される限り、特に限定されない。例えば、複数回の粉砕工程を行う場合には、有孔ディスクミルを使用して湿式の粗粉砕工程(例えば、必要に応じて水が追加される)を実施したうえで、粗粉砕懸濁液を細かい粉砕工程のための歯付きコロイドミルにポンプ輸送してもよい。 湿式粉砕工程(b)の後、工程(c)において、全体的な熱負荷を低減して乳化を防止するためにほぼ70℃以下の温度で、懸濁液を熱処理する。好ましい実施の形態では、予め分離されたカカオの果肉と粘液(未処理のもの、又は、未発酵カカオ豆とは別に処理されたもの)を、工程(c)の前に懸濁液に加える。これは、高温で生ずるメイラード反応中における副次的な香味の発生に資する。芳香成分、抗酸化物質、および/またはビタミンのような所望の香味成分の保持とココアバターの収率との良好なバランスの観点からは、加熱温度は43℃〜65℃が好ましい。ココアバターの液化および/または機械的な相分離の改善の観点からは、45℃〜50℃の加熱温度範囲が特に好ましい。湿式粉砕における懸濁液の加熱は、かき取り表面熱交換器やチューブ熱交換器によって行うことができるものの、これに限定されるものでもない。 その後、工程(d)において、水相分(重質相)、脂肪相分(軽質相)および固相分の三相が得られるように相分離が行われる。脂肪相分は、ココアバターを主成分として含み、且つ、固形分および/または水分を非主成分として含む。固相分はココア粉末および水分を含む。粒子の機械的な分離を行うためには、デカンタ型遠心分離機やノズル型遠心分離器など、遠心力を利用する装置を使用するのが好ましい。例えば、懸濁液についてデカンテーションを行って、液体から粗い固体、大きな固体、または質量の大きな固体を分離した後に、より小さな固体粒子および/または微細な固体粒子を液体から分離してもよいし、これと共に或いはこれに代えて、油脂生成物を非油脂生成物から分離してもよい。 水相分(重質相)、脂肪相分(軽質相)および固相分の間の分離を改善するために、多段階での相分離工程および再び合わせる工程を行ってもよい。例えば、最初のデカンテーション工程によって得られる脂肪相分については、更にろ過または遠心分離を行って残存微細粒子または残存水分を当該脂肪相分から分離し、得られる微細粒子および水分を、最初のデカンテーション工程で生じた水相分および固相分や、後の処理段階にある水相分および固相分に、再び合わせてもよい。また、水相分については、微細粒子を除去して液体の曇りを減少させるために、例えば真空回転フィルターを用いた濾過による、さらなる精製工程を行ってもよい。 三相(即ち、水相分(重質相)、脂肪相分(軽質相)および固相分)の分離の結果、図1に示すように、これらを個別に処理してココアバター(脂肪相分から)、ココア粉末(固相分から)、ココア香料(少なくとも水相分から,任意選択的に固相分からも)およびポリフェノール濃縮物(水相分から)を、分離すること可能となる。 上述のように、脂肪相分(軽質相)を、ろ過するか(例えば振動スクリーンを用いることによる)、これと共に或いはこれに代えて三相分離機(例えば遠心分離機)に供することにより、微細粒子(乾燥/焙煎工程の前または最中に、固相分に任意選択的に加えることができる)および残留水分(香料回収前の水相分に任意選択的に加えることができる)を除去してもよい。ココアバターは、精製された脂肪相分を濾過することによって得られる。 三相の分離後に得られる固相分(湿っている)については、粒子サイズを小さくし且つ予備乾燥を開始するために、加熱可能なロールグラインダーによって任意選択的に処理することができる。また、分離されたカカオ固形物に対してその乾燥前に砂糖、糖溶液、および/またはフルーツジュースを任意選択的に加えて、乾燥/焙煎工程中の香味の発現を改良することもできる。 三相の分離後に得られる固相分については、焙煎される香料や他の芳香成分を回収することを可能にするためには、55℃〜100℃の温度で穏やかに乾燥させながら同時に焙煎してもよい。これは、熱負荷の低減および健康誘導成分の保持の観点からは、55℃〜70℃の範囲で選択される温度において減圧下で行うのが好ましい。望まれる場合には、得られる香料および他の芳香成分は、本カカオ豆処理方法が更に展開されるなかで、ココアバターに添加されてもよいし、水相分からの香料回収工程で添加されてもよい。 乾燥/焙煎を実施する方法については、特に限定されず、例えばドラム式乾燥機で行うことができる。 好ましい実施の形態においては、乾燥/焙煎工程は、欧州特許出願公開第0711505号明細書に開示されているような、チョコレートコンチングのための混合装置内で実施される。この混合装置は、円筒形状であって水平軸をもち、両端が端板で閉塞され、且つ加熱冷却用の同軸ジャケットを有する、管状体を備える。同軸ジャケットには透熱性のオイルその他の流体が通流されて、管状体の内壁が所定温度に維持される。管状体には、固相分通過用の入口開口部と出口開口部が設けられている。出口開口部は、乾燥生成物から香料相を分離するための装置に対してダクトを介して連結されている。この装置は、管状体内で回転可能に支持されたブレード付きロータを更に備える。ロータ上において当該ブレードは、らせん状に配置され、且つ、処理中の固相分を遠心しつつ出口開口部に向けて移送するように配向されている。この混合装置を使用すると、乾燥/焙煎工程と焙煎された香味および他の芳香成分の分離とを連続的に行うことができ、また、ココア粉末(乾燥ココア)までに至る未発酵カカオ豆・ニブの処理を相当な程度に早く行うことができて処理時間は20分未満となり、典型的には15分未満となる。 上述のカカオ豆・ニブの処理方法においては、例えば酢酸およびクエン酸のような酸性成分が水相分中に見いだされ、従って、相分離後の水相分を適切に処理することによって当該酸性成分を好都合にも中和および/または除去することができる。酢酸は、カカオ豆のインキュベーションの前または最中に形成または添加されるものである。クエン酸は、ココアの果肉や粘液に由来するものである。 水相分を介して遊離酸を除去する手法は、特に限定されず、当該技術分野で知られている任意の適切な方法を実施すればよい。例えば、水相分からの酢酸の除去手法としては、例えば蒸留(例えば抽出蒸留または反応蒸留)、抽出(例えば液液抽出)、エマルジョン型液体の膜分離、塩析、またはこれらの組み合わせが挙げられる。或いは、ココア香料およびポリフェノール粉末が水相分から選択的に抽出されれば、水相分に酸が残っていてもよい。図2に示すように、遊離酸や他の望ましくない水溶性成分、例えば、渋味誘発性および/または苦味を有する低分子ポリフェノール、についての除去は、香料分離工程の前またはその間、および/または、濃縮工程の前またはその間に行われてもよい。 水相分を介する遊離酸の当該中和および/または除去は、先行技術に開示されている方法と比較して重要な利点を有するものであり、そのいくつかを以下に説明する。 固相分を乾燥/焙煎工程に付すより前に、酸は、水相分を介してカカオ豆またはカカオニブから抽出される。したがって、酸を蒸発させるために発酵カカオ豆に対しては施される長時間の乾燥/焙煎および高い熱負荷が、必要とされない。これにより、芳香のある香味、抗酸化物質、およびビタミンについて高い含有量を維持することができ、また、コンチング処理の処理時間を大幅に短くすることができる。 更に、加熱温度の低下と乾燥/焙煎およびコンチングの両工程の短時間化とによるエネルギーの節約が、水の使用とその除去に伴う比較的高いコストを遥かに上回る本発明の方法は、チョコレートまたはチョコレート様の製品の製造のための従来方法との比較において、経済的な利点も伴うものである。 加えて、従来のカカオ製品の製造とは対照的に、酸含有量の比較的高いカカオ豆および/または様々な発酵段階にあるカカオ豆を使用して、チョコレートなどの高品質カカオ製品を製造することができる。 本発明の顕著な利点は、望ましくない親水性成分(苦味および/または渋味のある低分子ポリフェノール(例えばカテキン))も同様に水相分を介して除去できることにある。これにより、未発酵カカオ豆から製造されるカカオ製品一般には伴う、望ましくないレベルの渋味や苦味を、未発酵カカオ豆の焙煎が完全に省略される場合であっても容易に回避することができるのである。 デカンテーション工程で得られる水相分にも所望の香味成分が含まれていることも、見いだされた。その香味成分は、芳香成分を得るための第1濃縮工程に水相分を付すことによって回収することができる。ココア香味の増強は、還流を伴う蒸留(即ち、香味化合物と水を分離するための)を利用して実現することができる。 任意選択的な第2濃縮工程において、ポリフェノール粉末を得るために、余剰の水の蒸発が行われてもよい。 望ましくない水の除去は、望ましくは香味化合物の水懸濁液をもたらしうるエバポレーション技術の採用によって実現することができる。更には、濃縮されたポリフェノールを得てもよい。更に別の実施の形態では、回収されたココア香味については、還流を伴う蒸留(例えば香味物質を水から分離するための)によって増強されてもよい。その蒸留は、熱負荷を最小化するために、好ましくは低圧(300mbar未満)下において室温で実施される。 一般に、カカオ抽出材料(即ち、ココアバター、ココア粉末、ココア香料、およびポリフェノール濃縮物)おいて微生物的な腐敗がある場合、そのような材料については真空脱気装置を使用してて脱臭化が行われる場合がある。微生物汚染が生じた場合、パスカリゼーションなどの高圧処理が可能である(例えば、これによると芳香物質を保持することができるので望ましい)。また、微生物の腐敗と汚染の両方がある場合には、熱処理と脱臭化とが行われることがある。しかしながら、本発明による方法は、有利なことに、カカオ豆またはカカオニブを迅速に処理することが可能であって微生物の増殖を最小限に抑えることができる。 本書に記載の技術を用いることにより、未発酵カカオ豆を効率よく処理することができ、商業的価値ある収率での望ましい抽出乾燥ココア粉末、疎水性カカオ香味含有のココアバター、親水性ココア香味、およびポリフェノール濃縮物を、製造することができる。更に、得られるカカオ製品における特定のものは、望ましいレベルの抗酸化物質および/またはビタミンを保持または含有し、これと共に或いはこれに代えて、食品として使用される場合に砂糖の添加を必要としない(或いは、多量の砂糖の添加は少なくとも必要としない)より望ましい(例えば苦味の少ない)香味を有する。 チョコレートまたはチョコレート様の製品の構成キット 第2の実施形態においては、上述の第1の実施形態に関して記載された複数の工程に従って得られた複数のカカオ豆抽出生成物を含む、チョコレートまたはチョコレート様の製品用の構成キットが、提供される。すなわち、本発明に係るカカオ製品構成キットは、好ましくは、上記のカカオ豆処理方法によって得られたポリフェノール粉末抽出物、ココア粉末抽出物、ココアバター抽出物、およびココア香料抽出物の少なくとも二つを含む。好ましい実施の形態では、本発明に係るカカオ製品構成キットは、上記抽出物の全種を含む。 本書で使用される「チョコレート様の製品」という用語は、すべての国のではなく少なくとも一つの国の「チョコレート」の法定義に該当するものを意味するものとする。チョコレートを法的に定義する成分の種類および/または含有量範囲には、ばらつきがあるからである。例えば、チョコレートを製造するうえでカカオの果肉や粘液を使用することは、ある国の法規制の下では「チョコレート」の定義からの逸脱につながる可能性がある。 本発明に係るチョコレートまたはチョコレート様の製品のための構成キットの利点は、多種多様な高品質カカオベース製品の出発材料を提供することにある。その構成キットにおいては、水溶性の望ましくない親水性成分(苦味および/または渋味のある低分子ポリフェノール(例えばカテキン類)のようなもの)が除去されているとともに、カカオ豆またはカカオニブに多く含まれる水溶性の芳香成分、ポリフェノール成分、およびビタミンが保持されて、上記の低熱負荷に因ってそれらの高濃度が維持されている。 したがって、カカオ豆の原産や、品種、ビンテージに特有な特徴、特にその主要な香味を、不快な酸味や渋味、苦味なしで知覚可能な、栄養価のある美味しいチョコレート製品やチョコレート様製品を多種多様に製造することが可能なのである。 第1の実施形態に係る方法で得られる構成キットまたは抽出物からチョコレートおよびチョコレート様の製品を製造する方法の一例を、以下に説明する。 チョコレートまたはチョコレート様製品の製造方法 第1の実施形態に記載の方法の工程に従って得られた複数のカカオ豆抽出生成物は、下記の第3の実施形態に関して説明するように、多種多様なチョコレート製品の作製に使用することができる。 図4Aは、ダークチョコレートおよびミルクチョコレートの製造方法の一例を表す。この方法では、まず、水相分からの香料分離によって得られたココア香料抽出物、および/または、乾燥/焙煎工程(図2に示す)にて任意選択的に得られた焙煎ココア香料が、ココアバターに加えられる。コンチング工程に供される前に、乾燥焙煎固形物であるココア粉末は、芳香の添加されたココアバターと混合され、そして細かく粉砕される。その混合物には、所望される場合にポリフェノール粉末が添加されてもよい。これによると、最終製造物中の香味が増強され且つ抗酸化物質が増量される。香味についての付加的な調整ないし発現は、砂糖、甘味料、ココアパルプ、および/またはフルーツジュースを添加することによって行うことができる。好ましい実施の形態では、詳しくは上述したような、予め処理された又は未処理の果肉や粘液が、天然甘味料として添加される。ミルクチョコレートを製造するには、好ましくは上記混合工程の前に、更に粉乳の添加が行われる。コンチングの前には必要に応じて乳化剤(例えばレシチン)を添加して、粘性を低下させ、砂糖の結晶化およびチョコレートの流動特性を制御し、成分の均質混合化を図ってもよい。また、コンチング工程の前には、追加の成分および香味料、例えばバニラやラムなどを、添加してもよい。 コンチング処理は、香味を作り出す乾燥ココアからの物質を脂肪相分に再分配するものである一方で、望まれない酢酸、プロピオン酸、および酪酸をチョコレートから除去し、水分を減らし、また、製造物の香味を熟させる。コンチェの温度は、チョコレートの種類に応じて制御されるものであって異なる(ミルクチョコレート用の49℃程度からダークチョコレート用の82℃まで)。従来のチョコレート製造プロセスにおけるコンチングの実施時間は、ある程度は温度によって異なるものの、良好な結果を得るためには16時間から72時間の範囲が一般的である。本発明による方法では、コンチング時間は、好ましくは16時間未満、より好ましくは12時間未満、典型的には10時間以内である。したがって、コンチング時間が長い場合にはみられる 望ましい芳香特性の損失は、生じない。 図4Bに示す本発明のチョコレートの製造方法によって製造可能な他のチョコレート製品として、ホワイトチョコレートについて説明する。ホワイトチョコレートは、通常、ココアバターと、砂糖と、乳固形分と、乳化剤(例えばレシチン)と、場合によっては生産者のレシピに応じた香味のためのバニラとのブレンド物である。好ましい実施の形態では、詳しくは上述したような、予め処理された又は未処理の果肉や粘液が、当該砂糖の代わりに天然甘味料として配合される。 ホワイトチョコレートを製造するための従来の方法では、香料分離のなされたココアバターが使用される。具体的には、ココアバターは、カカオリカーのアルカリ処理を含む方法によって従来式に調製される。その処理は、ココアバター中に多く含まれる除去されるべき苦味系香味成分に対してなされる。有機溶媒による抽出またはスチームインジェクションによって当該除去が行われて、低臭で、苦味がなく、香味のないホワイトチョコレート用のココアバターベースが得られる。しかしながら、このような方法では、ココアバター中のビタミンや抗酸化物質の含有量が低下してしまうことが知られている。 本書に記載の技術を用いると、苦味系香味の低減されたココアバターを有利なことに得ることができる。そのため、当該技術によると、ココアバターをホワイトチョコレートの製造に使用可能なものとするための処理がたとえ必要であっても、それは穏やかな処理で済む。ココアバターに対するそのような穏やかな処理は、ビタミンや抗酸化物質のような望まれる成分をより多量に保持することに資する。 また、第1の実施形態の方法によって得られるココア香料および/もしくは焙煎ココア香料、並びに/またはポリフェノール粉末と、ココアバターとを、所望の食味に応じて再び合わせることによって、特徴的で明確なカカオ香味を有するホワイトチョコレートを製造することもできる。 図4Cには、カカオ含量100%のチョコレートまたはチョコレート様の製品の製造方法が概略的に表されている。このスキームは、すべての成分が専らカカオ果実に由来することを除き、基本的には図4Aのスキームに対応するものである。当該方法により、100%カカオ製品を製造することが可能である。その製品では、既知の類似製品とは異なり、未発酵カカオ豆から製造されるカカオ製品一般に伴う望ましくない渋味と苦味が回避され、それと同時に、栄養上有益で有用な成分、例えばポリフェノール、抗酸化物質、およびビタミンの、含有量が高い。最後ではあるが重要なことに、当該最終製品は、カカオパルプを利用するものであり、ポリフェノール、抗酸化物質、ビタミン、および/または糖類など、カカオパルプ由来の栄養上貴重な健康誘導成分を含むのである。また、パルプに由来する酸味が過度の香味成分は、パルプの前処理や、水相分を介した酸性成分の除去を経ることにより、望みどおりに減少させることができる。 概して、本発明の方法によって得られるチョコレートまたはチョコレート様の製品は、適当な形態をとることができ、例えば、ブロックまたはバーとして包装されて販売されてもよいし、詰められてコーティング材として使用されてもよいし、製菓や製パンでの他の用途に使用されてもよい(例えば、ケーキのコーティングやフィリング、ビスケットのコーティングやフィリング、スポンジのコーティングやフィリング、またはアイスクリームのコーティング層として)。また、得られるチョコレートまたはチョコレート様の製品には、それが最終的に提供されるより前に更なる添加物が必要に応じて添加されてもよい。 以上の開示が与えられることにより、当業者には、他の多くの特徴や、変更、改良が明らかなものとなる。 |