【発明の詳細な説明】 【0001】(発明の分野)本発明は、混交した(co-mi ngled)材料の混合物において一つの配合材料を超臨界流体中で選択的に発泡させて、それらの配合材料間に大きな密度差を与え、これによりそれらを周囲条件下で選択的な密度浮選により分離しうる状態となす方法に関するものである。 【0002】(発明の背景)廃棄物の投棄は今日の社会において差し迫った問題となっている。 たとえば廃棄物の投棄に関する環境上の関心により、材料のリサイクルが埋め立ておよび焼却に代わる普通の方法になった。 ポリマーは廃棄物の大きな割合を占め、リサイクル計画を拘束する多数の材料の1つである。 混交した高分子廃棄物は紙ラベル、ガラス、木材などと混合している場合が多い。 これらの夾雑物はそれらの材料を処理する前に排除されなければならない。 しかし夾雑物の除去には、望ましくないポリマー混合物、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリ塩化ビニル(PVC) の分離も含まれる。 材料を完全に分離することができなければ、加工上の難点をもたらすほか、リサイクルされた最終製品の品質低下および不純性を生じる。 必要な分離を達成するためには、手作業による分別および光学− 機械的スキャナーは有効な手段でない場合が多い。 【0003】ポリマー廃棄物からPETを効果的に回収して利用するためには、PETが他のポリマー、たとえばポリオレフィンおよびPVCを含有しない状態で回収されることが要求される。 この分離を達成するために幾つかの方法が採用されている。 【0004】米国特許第5,198,471号明細書の場合のように、個々のポリマーを選択的に溶解するために溶剤が用いられる。 この方法は有機溶剤を使用し、ポリマー溶液を取り扱う必要があるため、魅力的でない。 溶液中の溶剤からポリマーを抽出するための一般的な方法を採用しなければならない。 これらの方法は付加的な廃棄物処理および溶剤取り扱いの問題を提起する。 【0005】好ましい分離法は、ポリマー間の密度差を利用したポリマー廃棄物の水浮選(aqueous flotation) によるものである。 この方法はPETからポリオレフィンを分離するのには密度差が大きいので有効である(たとえばPETに関して1.3−1.4に対しポリオレフィンに関して0.9)。 しかしPVCはPETに極めて近い密度をもち、何らかの付加的な方法を用いなければPETから分離することができない。 欧州特許出願公開第469,903A2および512,464A1号は、 浮遊/沈降現象を補助するために界面活性剤の使用を伴う。 【0006】わずかな密度差しかない不相溶性プラスチックを流体中においてその臨界点付近でのそれらの材料の選択的な密度浮選により分離する方法は、米国特許第5,126,058号明細書に記載されている。 超臨界流体とは、その物質を超臨界流体状態にするために臨界温度を越える温度および臨界圧力を越える圧力に維持された物質であると定義しうる。 超臨界状態においては、 超臨界流体はそれを気体および液体の両方として作用させる特性をもつ。 米国特許第5,126,058号においては、プラスチック成分を選択的に分離する際に、容器内の超臨界流体の温度を調整することにより密度を連続的に高めるために超臨界流体が利用されている。 分離を含めて、そのプロセス全体が超臨界流体状態で実施される。 この方法に伴う欠点には、超臨界流体に暴露する期間が長いため装置経費が高く、かつ分離プロセスを高圧条件下で操作しなければならない点が含まれる。 【0007】従って同様な密度を有する混交したポリマー(たとえばPETおよびPVC)を分離するための、 より効果的かつ経済的な方法が依然として求められている。 【0008】(発明の概要)本発明は、概して、以下の工程: (a)混交した材料の混合物を容器に導入し; (b)流体を該容器に導入し、該流体が超臨界条件下で導入されなかった場合には、該流体を超臨界流体に変換するように容器内の温度および圧力を該流体の臨界点より高く調整し; (c)前記の超臨界流体を前記の混交した材料の1つに選択的に溶解させるように容器内容物の温度および圧力を調整し; (d)目的材料中における該流体の溶解度を低下させるように急速に圧力を低下させて、目的材料を発泡させ; (e)混交した材料を容器から周囲条件下へ取り出し、 発泡した成分はこの時点では約1未満の嵩密度を有し; (f)発泡した配合材料を周囲条件下で浮選により分離する; 工程からなることを特徴とする、同様な密度を有する混交した材料の混合物から、一つの材料を選択的に発泡させてその見掛け密度を低下させ、これによりそれを混合物から周囲圧力における水浮選によって分離しうる状態にすることにより一つの配合材料を選択的に分離する方法を提供する。 【0009】(発明の詳細な記述)本発明は、混交した高分子材料、特にポリエチレンテレフタレート(PE T)およびポリ塩化ビニル(PVC)を分離する方法に関するものである。 本方法は、超臨界流体をそれらの材料の1つに、適宜な温度および圧力で選択的に溶解させることによる。 これにより、選ばれた材料は嵩密度の変化に応じて発泡する。 周囲条件下で、水分離および浮選によりそれらの高分子材料を分離することができる。 【0010】本方法に好ましい超臨界流体は二酸化炭素である。 材料を超臨界二酸化炭素で処理することは、既にたとえば食品工業においてコーヒー豆からカフェインを抽出するために商業的に実用化されている。 【0011】米国特許第5,126,058号の方法は、プラスチックの分離を超臨界媒質中での浮選により行うものである。 超臨界流体の密度は温度および圧力を変化させることにより変更され、これにより種々の密度のプラスチックを表面に浮遊させることができる。 分離を含めて、米国特許第5,126,058号のプロセス全体が超臨界流体状態で実施される。 これに対し本発明方法は、PVCを発泡させるために超臨界二酸化炭素に短期間暴露することによる。 実際の分離は、その後周囲の圧力および温度下で水浮選法により実施される。 完全な湿潤を保証し、かつ分離を補助するために、水中へ空気が吹き込まれる。 混交した材料を完全に湿潤させ、かつ浮選するために必要な撹拌を付与する他の手段、たとえば発泡剤を添加することは、本発明の範囲に含まれる。 【0012】ポリマーフィルムの混合物を一連の温度(30−150℃)、圧力(1−600気圧)および暴露時間(10−120分)で二酸化炭素(超臨界付近およびその範囲内)に暴露した。 目的は、PVCを発泡させるが、PETを発泡させない条件を定めることであった。 ポリマーにおける微細気泡の形成については米国特許第4,473,665および5,158,986号明細書に述べられている。 本発明の著しい特色は、ポリマー混合物中の1ポリマー(すなわちPVC)を優先的に発泡させるように条件が定められることであり、これに対し先行技術は機械的特性、たとえば衝撃強度を改良するために超微細気泡性の発泡プラスチック材料を製造および利用することを目標にしている。 【0013】本発明の実施例においては、分離効果を表すために1−10の相対等級尺度が定められた。 10は完全な分離であり、これに対し1は分離なしであった。 水の表面に両方のポリマーが浮遊した場合、またはいずれのポリマーも浮遊しなかった場合、分離は達成されなかった。 表1にそのデータをまとめる。 【0014】最適分離は(1)72.9気圧(二酸化炭素の臨界圧力)と300気圧の間の圧力、および(2) 31.2℃(二酸化炭素の臨界温度)から、PVCが分解し始める140℃までの温度において得られる。 この範囲外では両方のポリマーが水上に浮遊するか、またはいずれのポリマーも浮遊しない。 分離に十分なPVC発泡を得るのには、10分の暴露時間で十分であった。 これより短い時間でもよいが、10分が好ましい。 10分の暴露時間は発泡を保証し、かつこれより短い時間に伴って生じる潜在的なプロセス制御問題が避けられる。 【0015】PETは炭酸飲料ボトルから得られた。 最初のPVC試料は写真ホルダーからのフィルムであった。 その後のPVCは洗剤ボトルから得られた。 ポリマーは2.54cm×2.54cm(1インチ×1インチ)に細断され、0.254mm×0.762mm (0.01インチ×0.03インチ)の厚さであった。 【0016】実験作業はまず、小さな角形のチップに切断された透明なPVCフィルム(厚さ0.254mm× 0.330mm(0.010インチ×0.013インチ))および緑色のPETフィルム(炭酸飲料ボトル) につき実施された。 透明および緑色は水浮選法による分離効果を容易に観察するために選ばれた。 【0017】実験はすべてダイオネックス(Dione x)超臨界流体抽出ユニット(SFEモデル703)を用いて実施された。 使用した二酸化炭素は、液体二酸化炭素を移送するための浸漬チューブを備えたSFE−S FC(超臨界流体抽出−超臨界流体クロマトグラフィー)用のものであった。 流体はユニットに導入される時点では気体状、液体状、または超臨界領域のいずれであってもよい。 流体が超臨界条件下で導入されなかった場合、容器の温度および圧力を流体の超臨界点より高く調整して、これにより流体を超臨界流体に変換した。 【0018】次いで超臨界流体を前記の混交した材料の1つに選択的に溶解させるように容器内容物の温度および圧力を調整した。 目的材料中における流体の溶解度を低下させるように急速に圧力を低下させて、目的材料(PVC)を発泡させた。 混交した材料を容器から周囲条件へ取り出し、発泡した成分はこの時点では約1未満の嵩密度を有していた。 【0019】超臨界二酸化炭素に暴露したのち、PVC を水浮選法により分離した。 水上に浮遊したPVCは外観が変化していた。 超臨界二酸化炭素で処理する前はそれは透明であったが、暴露後には白色かつ不透明になった。 この外観の相異は超臨界二酸化炭素に暴露することにより生じた微細気泡の形成によるものであろう。 当初のフィルムはボイドの徴候を示さなかったが、処理済みフィルムは大部分が1ミクロンの領域の、独立気泡構造の外観を呈する多数のボイドを含んでいた。 当初のフィルムの嵩密度は1.23g/ccであり、これに対し超臨界二酸化炭素による処理後には密度は0.65g/c cに低下した。 処理後に得られた密度は約1.3−1. 4g/ccのPETの密度とは全く異なる。 従って容易に分離することができる。 【0020】異なる厚さのPVC試料につき実験を反復した。 より大きな厚さ(すなわち0.559mm×0. 762mm(0.022インチ×0.030インチ)) のPVCプラスチックボトルから切断したチップを用いてこの試験を行った。 試料を前記に定めた最適範囲(6 0℃、160気圧、10分)で試験した。 PVCは急速に発泡し、水浮選法によってPETから容易に分離された。 【0021】 【実施例】それぞれ約1.5gのPETおよびPVC試料を10mlのステンレス鋼製耐圧ねじ蓋付きセルに装入した。 セルを堅く閉じ、ユニットオーブンに装入し、 フィンガータイトフェルールを用いて適所に固定した。 抽出物がある場合にそれを採集するために、ガラス製採集バイアルを対応するバイアルホルダーに装入した。 バイアルホルダーおよびオーブン扉を閉じ、ジュン−エア(Jun−Air)圧縮機モデル#6により作動するシステム空気ポンプにより密閉した。 次いでこのシステムを目的温度(31−150℃)に加熱した。 温度が安定した時点でセルを目標水準(150−600気圧)にまで加圧した。 ユニットを選定した期間(10−120 分)、一定の流れモードに維持した。 【0022】次いでシステムを放圧し、ポリマーをセル内に保持した状態で周囲条件に放冷した。 ポリマーをセルから取り出し、水道水を入れたビーカーに装入し、ビーカーに空気を吹き込むことにより撹拌して、ポリマーを完全に湿潤させた。 表1に示すように分離効果を観察し、記録した。 【0023】 【表1】 注釈:PVCは熱分解の徴候を示す。 【0024】多数の温度および圧力の組み合わせを実験により試みたが、最適分離は1)72.9気圧(二酸化炭素の臨界圧力)と300気圧の間の圧力、および2) 31.2℃(二酸化炭素の臨界温度)から、PVCが分解し始める140℃までの温度において得られると判定された。 【0025】このように本発明によれば、同等の密度を有する混交した材料の混合物から選ばれた配合材料を、 前記の目的、意図および利点を完全に満たす超臨界流体で処理したのち選択的な密度浮選によって選択的に分離する方法が提供されることは明らかである。 本発明をその特定の態様に関して記載したが、以上の記載からみて当業者には多数の代替、修正および変更が自明であろう。 従ってこれらの代替、修正および変更はすべて本発明の領域および範囲に含まれるものとする。 |