窪み部を有する食品

申请号 JP2013101448 申请日 2013-05-13 公开(公告)号 JP5744963B2 公开(公告)日 2015-07-08
申请人 株式会社明治; 发明人 豊田 活; 大坪 和光;
摘要
权利要求

に溶解させる食品(1)であって, 前記食品(1)は,平坦な領域(2)を有する上面(4)と, 前記上面の平坦な領域(2)と平行である平坦な領域(6)を有する下面(8)と, 前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)の両方を有し, 前記上面の窪み部(10)の最大深さdu(14)と前記下面の窪み部(12)の最大深さdd(16)の和が,前記食品の厚さw(18)の30%以上であり, 前記上面(4)に設けられた窪み部(10)は,前記上面(4)に形成された溝である中線(20)を介して対称な位置に設けられた2つの窪み部(10a,10b)を含み, 前記下面(8)に設けられた窪み部(12)は,前記下面(8)に形成された溝である中線(22)を介して対称な位置に設けられた2つの窪み部(12a,12b)を含み, 前記上面の中線(20)と前記下面の中線(22)は,平行であり,かつ,上下に対称な位置に設けられており, 前記食品(1)は,固形乳であり, 前記固形乳の容積は,2cm2〜30cm2である 窪み部を有する食品。窪み部の容積の和が,前記固形乳の容積の4%以上である 請求項1に記載の窪み部を有する食品。前記食品(1)は,粉乳のみを原料とし,前記粉乳を圧縮成型することにより得られた粉乳圧縮物を湿らせた後に乾燥することによって得られた固形乳である 請求項2に記載の窪み部を有する食品。

说明书全文

本発明は,窪み部を有する食品などに関する。より詳しく説明すると,本発明は,窪み形状を有することで,又は温水に溶解しやすいという性質(以下「溶解性」ともいう。)を有する固形乳などの食品に関する。

食品の粉粒体などを成型して得られる固形物の製品設計の研究では,生産や流通時に固形物が受ける衝撃に耐えうる機械的な強度の付与と,水などや口腔内での崩壊性や溶解性の付与を検討することが重要となる。つまり,必要となる強度を保ちつつ,様々な食品の使用方法や利便性の向上に対応するために,速やかな崩壊性や溶解性を確保することが理想とされる。

固形状の食品の溶解性を高めるためには,固形物の大きさを小型化して表面積を大きくする方法,食品に添加物を添加する方法,及び空隙率を高める方法が考えられる。しかし,固形物を小型化すると,多くの数を製造しなければならなくなるので,製造コストが増し,扱いも容易ではない。また,食品に添加物を添加すると,風味を損なうことがある。さらに,調製粉乳では,添加物を配合できない。空隙率の調整についても,様々な食品において強度と溶解性を両立することは必ずしも容易ではない。

特開平9−104619号公報(下記特許文献1)には,凹部形状を有する錠剤が開示されている。しかしながら,この錠剤の凹部は,錠剤を割れやすくするための割線であり,特に溶解性を高めることは意図されていない。

特開平8−333236号公報(下記特許文献2)には,内壁が凸曲面状の略逆円錐台様形状の凹部を有する浴用剤が開示されている。しかしながら,この浴用剤は,食品ではない。さらに,この浴用剤では,凹部が浴用剤の表面中央部に一つのみ設けられる。

粉乳は,乳などから生物の成育に必要な水分をほとんど取り除くことによって,保存性を高めた食品である。水分を除去すると,容積及び重量が減るので,粉乳を容易に輸送できる。このように粉乳は,保存性,輸送の面で利点が多い。粉乳は,温水に容易に溶ける。しかし,粉乳は,温水などに溶かす際に,その都度に適量を計量しなければならない。また,粉乳を計量する際や,粉乳を取り出す際などに,粉乳が飛散してしまうことがある。そこで,粉乳を固形状態にした固形乳が提案されている(実開昭49−130189号公報(下記特許文献3)及び実開昭61−118280号公報(下記特許文献4)参照)。しかし,粉乳を実際に固形状態にし,強度と溶解性とを両立させることは,容易ではなかった。つまり,粉乳を固形状態にしても,容易に壊れ,扱いにくかった。さらに,固形乳は,粉乳に比べて表面積が少ないので,温水に溶けにくかった。したがって,溶解性が高く所定の硬度を有する固形乳が望まれる。

一方,特公昭49−4948号(下記特許文献5)には,「団粒化粉乳」が開示されている。そして,「団粒化粉乳は,その内部組織が多孔質になっているため,浸水し易く,したがって,温湯中に投入すると容易に崩壊し,分散して溶解する」点が開示されている。しかしながら,同公報における「団粒化粉乳」は,シュガー又はグルコースとの混合物であり,「コーヒー紅茶等に添加して使用するのにも適している」というものである。すなわち,粉乳のみを原料とするものではないし,乳幼児に母乳の代わりに与えるものでもない。

特開平9−1046149号公報

特開平8−333236号公報

実開昭49−130189号公報

実開昭61−118280号公報

特公昭49−4948号公報

本発明は,強度を保ちつつ,溶解性に優れた固形乳などの食品を提供することを目的とする。

固形乳は,成型する際に,固形乳の一部にのみが加わると割れるといった問題が生ずる。そこで,通常固形乳の表面は,平坦であった。また,固形乳は,強度を高くしなければならないため,厚みを均一にさせることが望ましい。そのため,固形乳の上面と下面とは平行かつ平坦であった。本発明は,基本的には,そのような固形乳において,表面に所定の窪み部を設けることで,たとえば,1個で1g以上のように大型な固形乳であっても,強度を維持しつつ,溶解性を高めることができるという知見に基づくものである。

すなわち,本発明の食品は,水に溶解させる食品(1)であって,前記食品(1)は,平坦な領域(2)を有する上面(4)と,前記上面の平坦な領域(2)と平行である平坦な領域(6)を有する下面(8)と,前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)のいずれか又は両方を有し,前記食品が前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)の両方を有する場合は,上面の窪み部(10)の最大深さdu(14)と下面の窪み(12)の最大深さdd(16)の和が,前記食品の厚さw(18)の30%以上であり,前記食品が前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)のいずれかのみを有する場合は,上面の窪み部(10)の最大深さdu(14)又は下面の窪み部(12)の最大深さdd(16)が前記食品の厚さw(18)の30%以上である窪み部を有する食品などに関する。

上記のような窪み部を有するので,本発明の固形乳などの食品は,その強度を維持しつつ,溶解性を高めることができる。

本発明は,さらに,固形乳などの食品においては,上面と下面の対向する窪み部における最深部をずらすことで,飛躍的に溶解性を高めることができるという実施例による知見に基づくものである。

すなわち,本発明の好ましい態様は,前記食品が前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)の両方を有し,前記上面(4)の窪み部(10)と前記下面(8)の窪み部(12)とは対向するように設けられ,前記上面の窪み部(10)の最も深い位置(24)と,前記上面の窪み部(10)と対向する前記下面(8)の窪み部(12)の最も深い位置(26)とは,対向せずに,ずれて設けられる上記に記載の食品に関する。

後述する実施例によって示されたとおり,対向する窪み部の最も深い位置をずらすことで,飛躍的に溶解性を高めることができる。

通常,成型上の問題等から固形乳などは平坦である。しかし,本発明の別の態様は,平坦な面を有しない場合であっても所定の窪み部を有することで,溶解性を上げつつ硬度を維持できるという知見に基づく。すなわち,本発明の好ましい態様は,水に溶解させる食品(1)であって,前記食品(1)は,窪み部(10)を一面にのみ有するか,又は前記食品の重心に関して対称な位置に対となる窪み部(10,12)を有し,前記食品が窪み部(10)を一面にのみ有する場合は,前記窪み部(10)の最大深さdu(14)が前記食品の厚さw(18)の30%以上であり,前記食品が前記食品の重心に関して対称な位置に対となる窪み部(10,12)を有する場合は,一方の窪み部(10)の最大深さdu(14)と残りの窪み部(12)の最大深さdd(16)の和が,前記食品の厚さw(18)の30%以上である,窪み部を有する食品に関する。

本発明によれば,強度を保ちつつ,溶解性に優れた固形乳などの食品を提供できる。

図1は,本発明の固形乳の基本構造を示す図である。図1(a)は上面図,図1(b)は側面図,図1(c)は下面図を示す。

図2は,上面にのみ窪み部が設けられる本発明の固形乳の基本構造を示す図である。図2(a)は上面図,図2(b)は側面図,図2(c)は下面図を示す。

図3は,上面及び下面に,それぞれ2つの窪み部を有する固形乳を示す図である。図3(a)は上面図,図3(b)は下面図を示す。

図4は,中線を有する参考例としての平型とよぶ固形乳を示す。図4(a)は概略図,図4(b)は設計図,図4(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示す。

図5は,窪み部が半割り球状である球型とよぶ固形乳を示す。図5(a)は概略図,図5(b)は設計図,図5(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示す。

図6は,窪み部が浅い台形状である台形浅型とよぶ固形乳を示す。図6(a)は概略図,図6(b)は設計図,図6(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示す。

図7は,窪み部が深い台形状である台形深型とよぶ固形乳を示す。図7(a)は概略図,図7(b)は設計図,図7(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示す。

図8は,対向する窪み部の最も深い部位がずれているプロペラ型とよぶ固形乳を示す。図8(a)は概略図,図8(b)は設計図,図8(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示す。図8(d)は図8(a)のA−A'断面図を示し,図8(e)は図8(a)のB−B'断面図を示す。

図9は,浅穴型とよぶ固形乳を示す。図9(a)は概略図,図9(b)は設計図,図9(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示し,図9(d)は,図9(b)のA断面図を示す。

図10は,深穴型とよぶ固形乳を示す。図10(a)は概略図,図10(b)は設計図,図10(c)は,上杵の先端部と下杵の先端部を示し,図10(d)は,図10(b)のA断面図を示す。図10(e)は,図10(a)のB−B'断面図を示し,図10(f)は,図10(a)のC−C'断面図を示す。

図11は,固形乳の形状及び窪みの容積と固形乳の溶解残渣の平均を示すグラフである。図11(a)は,空隙率48%の“固形乳A”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図11(b)は,空隙率48%の“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。ただし,球型については,いずれも空隙率が48.5%である。

図12は,固形乳の形状及び窪みの最大深さと固形乳の溶解残渣の平均を示すグラフである。図12(a)は,空隙率48%の“固形乳A”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図12(b)は,空隙率48%の“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。ただし,球型については,いずれも空隙率が48.5%である。

図13は,固形の形状と固形乳の溶解残渣を示すグラフである。図13(a)は,空隙率46%及び48%の“固形乳A”を用い,液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図13(b)は,空隙率48%の“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。

図14は,固形乳の形状と固形乳の溶解残渣を示すグラフである。図14(a)は,空隙率48%の“固形乳A”を用い,液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図14(b)は,空隙率48%の“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。

図15は,固形乳の形状と固形乳と顆粒品の溶解残渣を示すグラフである。図15(a)は,空隙率48又は50%の“固形乳A”と顆粒品に用い,試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図15(b)は,空隙率48又は50%の“固形乳B”と顆粒品に用い,試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図15において,黒塗り印は空隙率48%のものを示し,白抜き印は空隙率50%のものを示す。

図16は,各形状の固形乳の溶解性を示すグラフである。図16(a)は,空隙率48.5又は50.5%の“固形乳A”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図16(b)は,空隙率48.5又は50.5%の“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図16において,黒丸は空隙率48.5%の平型品,白丸は空隙率48.5%の球型品,黒三は空隙率50.5%の平型品,白三角は空隙率50.5%の球型品を示す。

1 食品(固形乳)2 平坦な領域4 上面6 平坦な領域8 下面10 上面の窪み部12 下面の窪み部14 上面の窪み部の最大深さ16 下面の窪み部の最大深さ18 食品の厚さ

1.固形乳などの食品 以下,図を用いて本発明の固形乳などを説明する。図1は,本発明の固形乳の基本構造を示す図である。図1(a)は上面図,図1(b)は側面図,図1(c)は下面図を示す。図1に示されるように,本発明の食品は,基本的には,水に溶解させる食品(1)であって,前記食品(1)は,平坦な領域(2)を有する上面(4)と,前記上面の平坦な領域(2)と平行である平坦な領域(6)を有する下面(8)と,前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)のいずれか又は両方を有し,前記食品が前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)の両方を有する場合は,上面の窪み部(10)の最大深さdu(14)と下面の窪み部(12)の最大深さdd(16)の和が,前記食品の厚さw(18)の30%以上であり,前記食品が前記上面(4)に設けられた窪み部(10)及び前記下面(8)に設けられた窪み部(12)のいずれかのみを有する場合は,上面の窪み部(10)の最大深さdu(14)又は下面の窪み(12)の最大深さdd(16)が前記食品の厚さw(18)の30%以上(好ましくは40%以上)である窪み部を有する食品に関する。

“溶解”は,食品の固形物を水などで溶かすことを意味する。つまり,水などの浸透により固形物の形が崩壊することや,水などの状態に応じて,たとえば,溶質が単分子分散状態の溶液,懸濁液,乳化液,スラリー状液,ペースト状液,ゲル状液などとなることをいう。

"水に溶解させる食品"は,水に溶解させて飲用する食品を意味する。このような食品は,固形食品であることが好ましく,その容積が1cm3以上のものが好ましい。すなわち,粉末状のものは,本発明の"水に溶解させる食品"からは除かれる。"水に溶解させる食品"として,固形乳,固形スープ,固形調味料,固形ジュース,固形流動食,固形栄養食品又は固形ゼリー(水に再水和してゼリー状となるもの)があげられるが,その様な食品の好ましい例は,いわゆる"固形乳"である。固形乳は,粉乳などを固形化したものである。以下,固形乳を中心として"水に溶解させる食品"を説明する。固形乳以外の食品も,固形乳において説明したと同様にして適宜公知の製造方法を組み合せて製造できる。

"平坦な領域"は,厳密な意味での平坦でなくても,およそ平面を構成する部位があれば構わない。"平行"は,厳密な意味での平行でなくても,およそ平行に近い状態で対向していれば構わない。

"窪み部"は,固形乳などの食品の溶解性を高めるために設けられる窪みを意味し,その深さは通常1mm以上である。後述する実施例により示されたとおり,窪み部(10,12)の容積の和として,食品の容積の4%以上であるものが好ましく,6%以上であれば,さらに好ましい。なお,窪み部は,上面及び下面のそれぞれに1つ又は2つ設けられるものが好ましい。そして,窪み部は,割線のような形態であってもよい。

図2は,上面にのみ窪み部が設けられる本発明の固形乳などの食品の基本構造を示す図である。図2(a)は上面図,図2(b)は側面図,図2(c)は下面図を示す。このように,本発明においては,一面にのみ窪み部が設けられてもよい。また,一面にのみ窪み部が設けられる場合,その窪み部の数として1個又は2個があげられるが,3個以上であってもよい。その場合,窪み部の合計容積が,食品の容積の4%以上であるものが好ましく,6%以上であれば,さらに好ましい。窪み部の形状は,半球状,円錐台状,四角錐状,六角錐状,半球の間に半割り円柱を設けた形状などの様々な形状を採用できる。これらの形状は,溶解性や強度の観点から最適なものを選択すればよい。

図3は,上面及び下面にそれぞれ2つの窪み部を有する固形乳などの食品を示す図である。図3(a)は上面図,図3(b)は下面図を示す。図3に示されるように,この態様の食品(1)は,前記上面(4)には,前記上面(4)の中線(20)を介して対称な位置に2つ窪み部(10a,10b)が設けられ,前記下面(8)には,前記上面(8)の中線(22)を介して対称な位置に2つ窪み部(12a,12b)が設けられ,前記上面の中線(20)と前記下面の中線(22)とは平行である。図3に示されるように,前記上面(4)の窪み部(10)と前記下面(8)の窪み部(12)とは対向するように設けられ,前記上面の窪み部(10)の最も深い位置(24)と,前記上面の窪み部(10)と対向する前記下面(8)の窪み部(12)の最も深い位置(26)とは,対向せずに,ずれて設けられるものが好ましい。固形乳としては,前記上面(4)には,前記上面(4)の中線(20)を介して対称な位置に2つ窪み部(10a,10b)が設けられ,前記下面(8)には,前記上面(8)の中線(22)を介して対称な位置に2つ窪み部(12a,12b)が設けられ,前記上面の中線(20)と前記下面の中線(22)とは平行であり,前記上面(4)の窪み部(10a)と前記下面(8)の窪み部(12a)とは対向するように設けられ,前記上面の窪み部(10a)の最も深い位置(24a)と,前記上面の窪み部(10a)と対向する前記下面(8)の窪み部(12a)の最も深い位置(26a)とは,対向せずに,ずれて設けられ,前記上面(4)の残りの窪み部(10b)と前記下面(8)の残りの窪み部(12b)とは対向するように設けられ,前記上面の残りの窪み部(10b)の最も深い位置(24b)と,前記上面の残りの窪み部(10b)と対向する前記下面(8)の残りの窪み部(12b)の最も深い位置(26b)とは,対向せずに,ずれて設けられるものが好ましい。以下,簡単のために,前記上面の窪み部(10a)の最も深い位置(24a)と,前記上面の窪み部(10a)と対向する前記下面(8)の窪み部(12a)の最も深い位置(26a)のずれ,又は上面の残りの窪み部(10b)の最も深い位置(24b)と,前記上面の残りの窪み部(10b)と対向する前記下面(8)の残りの窪み部(12b)の最も深い位置(26b)とのずれを“最深部のずれ”とよぶ。本発明では,固形乳の強度を保ちつつ,溶解性を高めることが望まれるので,この“最深部のずれ”として,窪みの長さの20%以上80%以下があげられ,好ましくは30%以上70%以下である。また,“最深部のずれ”は,食品のうち,ずれが生ずる方向の長さ(図3でいうと中線22の長さ)をLとしたときに,0.2L以上0.7L以下があげられ,0.3L以上0.5L以下でもよく,0.3L以上0.4L以下でもよい。

特に図示しないが,食品は平面を有しないものや,曲面を有するものであってもよい。具体的には,水に溶解させる食品(1)であって,前記食品(1)は,窪み部(10)を一面にのみ有するか,又は前記食品の重心に関して対称な位置に対となる窪み部(10,12)を有し,前記食品が窪み部(10)を一面にのみ有する場合は,前記窪み部(10)の最大深さdu(14)が前記食品の厚さw(18)の30%以上であり,前記食品が前記食品の重心に関して対称な位置に対となる窪み部(10,12)を有する場合は,一方の窪み部(10)の最大深さdu(14)と残りの窪み部(12)の最大深さdd(16)の和が,前記食品の厚さw(18)の30%以上である,窪み部を有する食品があげられる。

このような形状の食品であっても,窪み部を有するために所定の強度と溶解性を得ることができる。なお,窪み部の最大深さは,窪み部が設けられるふもとの地点から,最も深い位置までで測定すればよい。また,食品の厚さは,球状の食品であればその直径であり,一般に食品を平面においたときに最も安定性の高い状態において,その平面から食品の最も高い位置までの距離をもって厚さとすればよい。

この態様の食品の好ましいものは,前記食品が球状,ラグビーボール状,楕円体状又は卵形状であり,前記窪み部(10)を有する一面は,前記食品の上半球部分又は下半球部分であるものである。

本発明の固形乳などの食品の形状は,ある程度の大きさを持つものであれば,特に限定されない。固形乳の形状として,円柱状,楕円柱状,立方体状,直方体状,板状,球状,多角柱状,多角錐状,多角錐台状,及び多面体状のものがあげられ,持ち運びの便利さなどの観点から円柱状又は四角柱状が好ましい。なお,固形乳などの食品が壊れる事態を防止するため,好ましくは角部分に面取りが施されている。ただし,球状,ラグビーボール状,楕円体状又は卵形状のような形状のものであってもよい。円盤状(円柱状)のものでは,かわいさに欠ける点がありうる。しかしながら,固形乳などの食品として曲面を有する形状のものを採用することで,愛着やかわいらしさを与えることができる。なお,固形乳などの食品は,圧縮成型法,湿製法,凍結乾燥法で成形することができ,杵や型の先端形状などを適宜調整することで任意の形状の固形乳を得ることができる。

本発明の固形乳は,好ましくは,空隙率が30%〜60%(30%以上60%以下)の固形乳である。空隙率が大きいほど,溶解性が高くなるが,強度が弱くなる。また,空隙率が小さいほど,溶解性が低くなる。この空隙率は,おもに圧縮工程の圧縮力によって制御される。なお,本発明において,空隙率は35%〜50%でもよいが,空隙率をその用途などに応じて調整し,30%〜35%,30%〜45%,40%〜45%,又は40%〜50%としてもよい。また,空隙率,原料中の脂肪の含有率,水分含有率,圧縮力,圧縮速度,圧縮停滞時間(最高圧縮変位を維持する時間),遊離脂肪の量,加湿条件,及び乾燥条件などを適宜調整することで,高い空隙率を有する固形乳であっても,優れた溶解性と硬度を有するものを得ることができる。よって,本発明における好ましい固形乳の空隙率として,50%より大きく,65%以下のものがあげられ,50%より大きく,60%以下でもよく,50%より大きく,60%未満でもよく,50%より大きく,58%以下でもよく,50%より大きく,55%以下でもよい。また,空隙率が55%〜65%でもよく,55%〜60%でもよく,55%〜58%でもよい。これらのような空隙率の範囲となるように調整すれば,後述したとおり,オイルオフなどの問題を解決した良好な固形乳を得ることができる。なお、“空隙率”は,粉体の嵩体積中空隙が占める体積の割合を意味し(たとえば,宮嶋孝一郎編集「医薬品の開発」(第15巻)廣川書店平成元年(1989年)発行,第240頁参照),より具体的には,後述の試験例における固形乳の空隙率測定による測定値を意味する。

それぞれの空隙は,固形乳に複数存在することが好ましい。各空隙(孔)は,好ましくは均一に分散している。空隙が固形乳でほぼ一様に分布するので,より高い溶解性を得ることができる。空隙が大きいほど,水の侵入が容易であり,速溶解性を得ることができる。一方,空隙の大きさが大きすぎると,強度が弱くなるか,又は固形乳の表面が粗くなる。そこで,空隙の大きさは,10μm〜500μmがあげられ,好ましくは50μm〜300μmである。この空隙の大きさは,公知の手段,たとえば,固形乳の表面及び断面を,走査型電子顕微鏡を用いて観察することにより測定できる。

固形乳の成分は,水分量を除く他,基本的には原料となる粉乳の成分と同様である。固形乳の成分として,脂肪,糖質,たん白質,ミネラル及び水分があげられる。

固形乳の脂肪の含有率は,たとえば,5重量%〜70重量%があげられ,好ましくは5重量%〜50重量%であり,より好ましくは10重量%〜45重量%である。

本発明の固形乳は,脂肪として,乳化した脂肪と遊離脂肪とを含んでいてもよい。すなわち,従来の粉乳や固形乳においては,遊離脂肪が風味を損ねる・温水に溶解した際に水に浮く(オイルオフ)などの問題があり,積極的に排除されてきた。本発明の固形乳は,好ましくは,この遊離脂肪を積極的に含有する。そして,この遊離脂肪を,保形剤などの代わりに有効活用する。これにより,本発明は,添加剤を用いなくても,溶解性と硬度に優れた良好な固形乳を製造できる。ただし,遊離脂肪が多すぎると,オイルオフの問題が生ずる。そこで,本発明の固形乳において遊離脂肪の含有率は,0.5重量%〜4重量%があげられ,好ましくは0.7重量%〜3重量%であり,より好ましくは1重量%〜2.5重量%である。これらの範囲であれば,好適な硬度,溶解性及び過度なオイルオフを抑制できるからである。なお,オイルオフが問題となる遊離脂肪の量は,原料として用いる粉乳中の脂肪組成及び脂肪球径などの物性により異なるので,固形乳に含まれる遊離脂肪の量は,上記の範囲内で適宜修正すればよい。なお,固形乳を製造する際に,同じ原料を用いても,たとえば,圧縮工程における圧縮速度(圧縮成型機の杵の移動速度,圧縮変位を圧縮時間で除したもの)を遅くすると,高い空隙率を有しつつ,ある程度の硬度を有した固形乳を得ることができる。そして,そのようにして固形乳を製造した場合は,原料と比べて遊離脂肪が多くなる傾向がある。したがって,本発明では,遊離脂肪が通常の固形乳より多く含まれるものであってもよい。

固形乳に含まれる水分が多いと,保存性が悪くなり,水分が少ないと,もろくなる。したがって,固形乳の水分含有率として,1重量%〜5重量%があげられ,好ましくは2重量%〜3.5重量%である。

また,本発明においては,固形乳の表面に1又は複数の窪み部が設けられる。

本発明の固形乳は,1個〜数個の固形乳(好ましくは1個の固形乳)を温水に溶解すれば,飲用する際の1回分の乳となるものが好ましい。したがって,固形乳の容積は,1cm3〜50cm3があげられ,好ましくは2cm3〜30cm3であり,より好ましくは3cm3〜20cm3である。

本発明の固形乳は,ある程度の溶解性をもっている必要がある。溶解性の評価方法は,評価の対象とする固形乳の種類や用途ごとに適切な撹拌条件や試験液の温度などを設定すればよい。たとえば,本発明の固形乳は,後述する溶解性の測定条件で,溶解残渣が窪みのないものと比べて,80%以下のものが好ましい。なお,固形乳の溶解性として,窪みのないものと比べて,85%以下でもよいし,90%以下でもよい。

本発明の固形乳は,生産や流通時に固形物が受ける衝撃により壊れる事態を極力避けるため,又は固形物の破壊を防ぐための過剰な包装を避けるため,ある程度の強度をもつことが好ましい。具体的には,本発明の固形乳は,後述する硬度(錠剤硬度)の測定条件で,20N以上の強度を有するものが好ましい。一方,溶解性の観点から,300N以下の硬度のものが好ましい。なお,固形乳の硬度として,30N以上200N以下でもよいし,50N以上100N以下でもよい。

2.製造工程 本発明の固形乳の製造方法は,粉乳を圧縮し固形状の粉乳圧縮物を得るための圧縮工程と,圧縮工程で得られた粉乳圧縮物を湿らせるための加湿工程と,加湿工程で加湿された粉乳圧縮物を乾燥させるための乾燥工程とを含む。

2.1.圧縮工程 圧縮工程は,粉乳を圧縮し,固形状の粉乳圧縮物を得るための工程である。圧縮工程では,粉乳を次工程へ移行できる程度の比較的低い圧力で粉乳を圧縮することにより,水が侵入するための空隙を確保した粉乳圧縮物を得る。圧縮工程では,適切な空隙を設けた保形性のある粉乳圧縮物を製造するという要件を満たすように粉乳を圧縮する。すなわち,この圧縮工程での空隙率が固形乳の空隙率と密接に関連する。また,粉乳圧縮物の潤滑性が乏しければ,成型機などの装置に粉乳圧縮物の一部が付着するなどの問題を生ずる。さらに,粉乳圧縮物の保形性が悪ければ,固形乳を製造する過程において,形状を保てないものができるという問題を生ずる。

圧縮工程における原料として,好ましくは粉乳のみを用い,添加剤を実質的に添加しない。粉乳は,市販のものを購入してもよいし,公知の製造方法(たとえば,特開平10−262553号公報,特開平11−178506号公報,特開2000−41576号公報,特開2001−128615号公報,特開2003−180244号公報,及び特開2003−245039号公報に記載の製造方法など)により製造したものを用いてもよい。粉乳の組成は,上記の固形乳と同様のものがあげられる。なお,圧縮工程の原料に,脂肪を添加してもよい。ただし,脂肪を添加すると,この脂肪はオイルオフのもととなる。そして,添加された脂肪は,粉乳の表面に付着するので,臼への充填精度が下がることとなる。したがって,圧縮工程において,好ましくは目標となる遊離脂肪量を含むように製造した粉乳を用いる。

粉乳の脂肪の含有率が大きい場合は,圧縮力が小さくてすむ。一方,粉乳の脂肪の含有率が小さい場合は,圧縮力を大きくしなければならない。よって,脂肪の含有率が大きい粉乳を用いるほど,適切な空隙を設ける,保形性のある粉乳圧縮物を製造するという要件を満たすことができる。このような観点から,粉乳の脂肪の含有率は,たとえば,5重量%〜70重量%があげられ,好ましくは5重量%〜50重量%であり,より好ましくは10重量%〜45重量%である。

粉乳は,上記のとおり遊離脂肪を含んでいるものが好ましい。本発明では,この遊離脂肪を保形剤などの代わりに有効活用することが好ましい。これにより,本発明の好ましい態様では,添加剤を添加しなくても良好な固形乳を製造できる。本発明の固形乳において,遊離脂肪の含有率は,0.5重量%〜3重量%があげられ,好ましくは0.7重量%〜2.4重量%であり,より好ましくは1重量%〜2重量%である。

粉乳に含まれる水分が多いと,保存性が悪くなり,水分が少ないと,もろくなる(保形性が悪くなる)。したがって,粉乳の水分含有率として,1重量%〜5重量%があげられ,好ましくは2重量%〜3.5重量%である。

圧縮工程では,粉乳を圧縮し固形状の粉乳圧縮物を得るための圧縮手段により粉乳圧縮物を製造する。圧縮手段は,粉乳を圧縮し,固形状の粉乳圧縮物を得ることができるものであれば,特に限定されない。圧縮手段として,公知の打錠機,圧縮試験装置などの圧縮成型機があげられ,好ましくは打錠機である。なお,打錠機として,たとえば,特公昭33−9237号公報,特開昭53−59066号公報,特開平6−218028号公報,特開2000−95674号公報,及び特許第2650493号公報に記載のものがあげられる。

また,本発明では,固形乳の表面に所定の窪みを有するので,成型機の杵の先端部や型に窪みに対応した突起部を設けたものを用いることが好ましい。

なお,圧縮成型機を用いて粉状物を圧縮する場合は,たとえば,粉状物を臼に入れ,杵を打ち付けることにより,粉状物に圧縮力を付加し,固形状とする。なお,この際に,粉状物が潤滑性に乏しければ,杵の表面に粉状物が付着する事態が生ずる。これは,製品の品質を悪くするだけではなく,杵の表面を清掃しなければならなくなり,稼働率が低下する。そこで,滑沢剤を添加することが,特に医薬を製造する際に行われている。しかし,滑沢剤は,水に溶けにくいため,固形乳のように,温水に溶かした状態で飲用するものについては,滑沢剤を添加することは望ましくない。これは,固形乳を製造困難にさせていた理由の一つである。本発明は,上記のとおり,これまで出来るだけ発生させないことが望ましいとされていた遊離脂肪を保形剤として適量用い,これにより,粉乳が杵に付着する事態を抑制したものである。さらに,上記のとおり,適切な空隙率を持つ粉乳圧縮物を得ることで,溶解しやすく,保形性に優れた固形乳を得ることができたものである。また,崩壊剤を添加すると,沈殿物が生ずるなどの事態が起きるが,本発明の固形乳の製造方法では,崩壊剤が不要であるので,このような事態を有効に回避できる。

圧縮工程における環境温度は,特に限定されず,たとえば,室温にて行うことができる。より具体的には,圧縮工程における環境温度として,10℃〜30℃があげられる。圧縮工程における湿度は,たとえば,30%RH〜50%RHがあげられる。圧縮工程において好ましくは,粉乳の圧縮作業を連続的に行う。

圧縮工程における圧縮速度(圧縮成型機の杵の移動速度)を遅くすると,粉乳を固形化するために時間がかかることとなるが,高い空隙率を有しつつ,ある程度の硬度を有した固形乳を得ることができる。一方,圧縮速度を速くすると,粉乳を固形化するための製造能力は高くなるが,硬さを維持した固形乳を得ることが困難となる。このような観点から,打錠剤の圧縮速度として,0.1mm/s〜100mm/sがあげられ,好ましくは0.5mm/s〜40mm/sであり,より好ましくは2mm/s〜20mm/sであり,さらに好ましくは3mm/s〜10mm/sである。空隙率が大きい(たとえば,空隙率が50%より大きい)場合は,圧縮速度を0.1mm/s〜40mm/sとして,所定の硬度を維持しつつ,溶解性を向上させることができた。一方,空隙率が小さい(たとえば,空隙率50%以下である)場合は,圧縮速度を100mm/s程度としても,所定の硬度を維持しつつ,所定の溶解性を達成できた。圧縮速度が遅いと,固形乳を製造する際に多くの時間がかかることとなるが,先に説明したとおり,高い空隙率を有しつつ,硬度を維持した固形乳を得ることができるので好ましい。圧縮成型機の圧縮力として,50kPa〜30MPaがあげられ,好ましくは0.1MPa〜10MPaであり,より好ましくは0.1MPa〜8MPaであり,さらに好ましくは0.1MPa〜5MPaであり,さらに好ましくは0.1MPa〜3MPaであり,特に好ましくは0.1MPa〜1MPaである。なお,製造時間を短くする観点から,圧縮力を1MPa以上としてもよく,2MPa以上としてもよい。なお,圧縮力とは,最高圧縮変位において粉体層に加わる単位面積当たりの圧力を意味し,市販のロードセルなどにより測定することができる。特に限定されないが,圧縮変位として2mm〜4mmがあげられ,圧縮時間として0.3秒〜1秒があげられる。

なお,上記の圧縮速度を達成するために,圧縮成型機として単発式打錠機のような単軸往復式の打錠機を用いた場合は,往復する杵の移動速度を調整すればよい。また,圧縮成型機としてロータリー式の打錠機を用いた場合は,回転数を調整することにより,杵の移動速度を調整してもよい。

なお,圧縮工程において,圧縮停滞時間(最高の圧縮変位を維持する時間)を設けるものは,本発明の好ましい実施態様である。この圧縮停滞時間がないものに比べ,わずかであっても,あえて所定時間の圧縮停滞時間を設けることで,得られる固形乳の空隙率が低下し,硬度が高まることがわかった。よって,高い硬度を有する固形乳を得るために,たとえば,0.1秒〜1分間,好ましくは0.1秒〜30秒,より好ましくは0.1秒〜5秒,さらに好ましくは0.1秒〜2秒の圧縮停滞時間を設けることがあげられる。圧縮停滞時間が長いと,固形乳を製造する際に多くの時間がかかることとなるが,先に説明したとおり,適度な空隙率を有しつつ,硬度を維持した固形乳を得ることができるので好ましい。

2.2.加湿工程 加湿工程は,圧縮工程で得られた粉乳圧縮物を湿らせるための工程である。粉乳圧縮物を湿らせることにより,粉乳圧縮物の表面近傍の粒子が一部溶解し,架橋する。これにより,粉乳圧縮物の表面近傍の強度が増大することとなる。

加湿工程では,粉乳圧縮物を湿らせるための加湿手段により,粉乳圧縮物を湿らせることができる。加湿手段として,高湿度室,スプレー及びスチームなどの公知の加湿手段があげられる。また,加湿方法として,高湿度環境下に置く方法,スプレーにより水を噴霧する方法,蒸気を吹き付ける方法などの公知の加湿方法を採用できる。なお,高湿度環境における湿度として,たとえば,60%RH〜100%RHがあげられ,好ましくは80%RH〜100%RHであり,より好ましくは90%RH〜100%RHである。また,高湿度環境下に置く時間として,たとえば,5秒〜1時間があげられ,好ましくは10秒〜20分であり,より好ましくは15秒〜15分である。ただし,加湿時間は,湿度,温度及び要求される固形乳の物性などに応じて適宜調整すればよく,加湿時間は,たとえば,1分〜15分でもよく,1分〜5分でも,5分〜15分でも,5分〜10分でもよい。高湿度環境下に置く方法における温度として,たとえば,30℃〜100℃があげられ,好ましくは40℃〜80℃である。加湿工程では,高温高湿の条件であるほど,短時間の処理でよい。なお,加湿時間を一定範囲とすることで,得られる固形乳の硬度を向上させることができる。

加湿工程で粉乳圧縮物に加えられる水分の量(以下,「加湿量」ともいう。)は,適宜調整すればよい。しかし,本発明では,基本的には,原料として粉乳のみを用いるので,加湿量として,以下の範囲が好ましい。すなわち,加湿量を0.5%とすると,硬度が増大し,加湿量を1%とすると,硬度が約2倍となる。このように,加湿量が増えるにつれて,硬度も大きくなる傾向にある。一方,加湿量が2.5%以上で,硬度の増加は止まった。また,加湿量が3%を越えると,粉乳圧縮物が溶解し,変形するものや,移送中に装置に付着するものがでた。そこで,粉乳圧縮物に加えられる水分の量として,粉乳圧縮物の質量の0.5%〜3%が好ましく,1%〜2.5%がより好ましい。

2.3.乾燥工程 乾燥工程は,加湿工程で加湿された粉乳圧縮物を乾燥させるための工程である。乾燥工程により,加湿工程で加湿された粉乳圧縮物が乾燥するので,表面タック(べとつき)がなくなり,固形乳を製品として扱うことができるようになる。乾燥工程における乾燥方法として,加湿工程で加湿された粉乳圧縮物を乾燥させることができる公知の方法を採用でき,たとえば,低湿度・高温度条件下に置く方法,乾燥空気・高温乾燥空気を接触させる方法などがあげられる。

低湿度・高温度条件下に置く方法における「湿度」として,0%RH〜30%RHがあげられ,好ましくは0%RH〜25%RHであり,より好ましくは0%RH〜20%RHである。このように,湿度は出来るだけ低く設定することが好ましい。低湿度・高温度条件下に置く方法における「温度」として,20℃〜150℃があげられ,好ましくは30℃〜100℃であり,より好ましくは40℃〜80℃である。低湿度・高温度条件下に置く方法おける「乾燥時間」として,0.2分〜2時間があげられ,好ましくは0.5分〜1時間であり,より好ましくは1分〜30分である。

先に説明したとおり,固形乳に含まれる水分が多いと,保存性が悪くなり,水分が少ないと,もろくなる。したがって,乾燥工程においては,乾燥温度や乾燥時間などの条件を制御することによって,固形乳の水分含有率を原料として用いる粉乳の水分含有率の前後1%以内(好ましくは前後0.5%以内)に制御することが好ましい。

3.粉乳及び固形乳の製造方法 本発明の粉乳及び固形乳の製造方法は,粉乳を製造する工程と,その粉乳を原料として固形乳を製造する工程とを含む。なお,粉乳を製造する工程で製造された粉乳の一部を,そのまま粉乳として容器に充填し,製品としてもよい。このようにすることにより,粉乳及び固形乳を得ることができる。

3.1.粉乳の製造方法 粉乳の製造工程は,全粉乳,脱脂粉乳,育児用粉乳に代表される調製粉乳などの製品の種類によって詳細は異なる。しかし,基本的には,「原料(調整),清澄化,殺菌,濃縮,(均質化),噴霧乾燥,篩過,充填」の工程により,粉乳を製造できる。なお,噴霧乾燥後の粉乳の大きさは,5μm〜150μm程度であり,粉乳の造粒物の大きさは,100μm〜500μm程度である。また,粉乳とその造粒物とが混ざり合った状態では,その間隙は5μm〜150μm程度である。

粉乳の原料として,乳があげられる。乳として,生乳があげられ,より具体的には,牛(ホルスタイン,ジャージー種その他),山羊,羊,水牛などの乳があげられる。これらを遠心分離法等の方法で脂肪分の一部を取り除くことにより,脂肪の含有量を調節することができる。また,下記の栄養成分などを添加することもできる。一方,調製粉乳を製造する場合は,水に下記の栄養成分を加え,混合して用いる。 上記の原料液を公知の製造方法である「清澄化」,「殺菌」,「均質化」,「濃縮」,「噴霧乾燥」,「篩過」及び「充填」の工程で処理することにより,粉乳を製造することができる。

粉乳の原料となるたん白質として,カゼイン,乳清たん白質(α−ラクトアルブミン,β−ラクトグロブリンなど),乳清たん白質濃縮物(WPC),乳清たん白質分離物(WPI)などの乳たん白質及び乳たん白質分画物;卵たん白質などの動物性たん白質;大豆たん白質,小麦たん白質などの植物性たん白質;これらのたん白質を酵素などにより,種々の鎖長に分解したペプチド;及びさらに,タウリン,シスチン,システイン,アルギニン及びグルタミンなどのアミノ酸;を単独又は混合して用いることができる。

粉乳の原料となる油脂として,乳脂肪,ラード,牛脂及び魚油などの動物性油脂や大豆油,ナタネ油,コーン油,ヤシ油,パーム油,パーム核油,サフラワー油,綿実油,アマニ油,MCTなどの植物性油脂,又は,これらの分別油,水素添加油及びエステル交換油を単独又は混合してできる。

粉乳の原料となる糖質として,乳糖,ショ糖,ブドウ糖,麦芽糖やガラクトオリゴ糖,フルクトオリゴ糖,ラクチュロースなどのオリゴ糖,デンプン,可溶性多糖類,デキストリンなどの多糖類,又は,人工甘味料などを単独又は混合して使用できる。

その他,水溶性,脂溶性のビタミン類,ミネラル類や香料,矯味料などを粉乳の原料として添加することができる。

3.1.1.清澄化工程 清澄化工程は,遠心分離機又はフィルターなどの公知の手段によって,牛乳などに含まれる微細な異物を除去するための工程である。

3.1.2.殺菌工程 殺菌工程は,牛乳などに含まれる細菌などの微生物を死滅させるための工程である。殺菌工程での殺菌温度と保持時間は,粉乳の種類によって様々であり,公知の殺菌処理に関する条件を採用できる。

3.1.3.濃縮工程 濃縮工程は,後述する噴霧乾燥工程の前に,牛乳などを予備的に濃縮するための任意の工程であり,真空蒸発缶などの公知の手段と条件を採用できる。

3.1.4.均質化工程 均質化工程は,牛乳などに分散している脂肪球などの固形成分を一定以下の大きさに均質化するための任意の工程であり,処理液に高圧を加えて狭い間隙を通過させるなどの公知の手段と条件を採用できる。

3.1.5.噴霧乾燥工程 噴霧乾燥工程は,濃縮乳中の水分を蒸発させて粉体を得るための工程であり,噴霧乾燥機などの公知の手段や,公知の条件を採用できる。

3.1.6.篩過工程 篩過工程は,噴霧乾燥工程で得られた粉体を篩に通すことで,固まり粉などの粒径が大きなものを除去し,整粒するための工程である。

3.1.7.充填工程 充填工程は,粉乳を袋や缶などに充填するための工程である。

本発明の粉乳及び固形乳の製造方法では,上記のとおり粉乳を製造した後,上記の固形乳製造方法を採用できる。すなわち,上記の篩過工程を経た粉乳を原料として,上記の圧縮工程を行えばよい。

4.固形乳の利用方法 本発明の固形乳は,一般的には温水に溶かして飲用する。より具体的には,蓋のできる容器に,温水を入れた後,本発明の固形乳を必要個数投入する。そして,好ましくは容器を軽く振ることにより,固形乳を速く溶かし,適温の状態で飲用する。

[試験例1(溶解性測定)] 固形乳の溶解性は,以下のようにして測定した。各種形状の固形乳2個を,ほ乳瓶に入れ,試験液として湯水を加え容量80mLとした。この状態で10秒間静置した後に,手で円を描くよう4回転/秒で5秒間,穏やかに振騰した。振騰した直後に,全量を質量既知のふるい(32メッシュ)に通し,ふるい上の残渣に触れぬよう余分な水分を拭き取った後に,ふるいの通過後の質量(g)を測定した。ふるいの通過後の質量とふるいの本来の質量との差を残渣質量(g)とし,この残渣質量が小さい程,溶解性がよいと評価した。

[試験例2(硬度測定)] 固形乳の硬度(錠剤硬度)は,ハードネステスター(岡田精工製)により測定した。試料の破断面の面積が最小となる方向に荷重をかけ,破断したときの荷重を測定した。

[試験例3(固形乳の空隙率測定)] 固形乳の空隙率は,次式により求めた。 空隙率(%)=(1−W/PV)×100 W:固形乳の重量(g) P:ベックマン空気式密度計を用いて測定した固形分の密度(g/cm3) V:マイクロメーターで測定した厚みと杵形状から算出した固形乳の体積(cm3)

(製造例1) 水に脂肪,糖質,たん白質,乳及びミネラル類を加えて混合した液を,均質化,濃縮,噴霧乾燥の工程の順で処理することにより,“粉乳A”(成分100gあたり、たん白質12g、脂質26g、糖質57g)及び“粉乳B”(成分100gあたり、たん白質15g、脂質18g、糖質60g)を製造した。単発打錠機(岡田精工製)や圧縮成型機にて圧縮時間を約1秒として,粉乳を圧縮成型した。その後,恒温恒湿器(TABAI ESPEC製)に65℃・100%RHの条件で60秒間放置した。その後,エアーオーブン(ヤマト科学製)により,85℃で5〜7分間乾燥した。このようにして,図4から図10に示す形状を有する重量が約5.4g〜5.6gの固形乳を製造した。

図4は,中線を有する参考例としての平型(通常型)とよぶ固形乳を示す。この中線は,固形乳の容量を調整するため,分割用に設けられている。図5は,窪み部が半割り球状である球型とよぶ固形乳を示す。図5では,半球型の窪み部が上面に2つ及び下面に2つ,それぞれ設けられるものを示している。しかしながら,本発明は,これに限定されず,上面又は下面のみに半球状の窪み部が設けられてもよい。さらに,半球状の窪み部が,片面の2つずつではなく,1つずつ設けられてもよいし,3つ以上設けられてもよい。半球は必ずしも半球ではなくてもよく,緯度が20°以上90°以下の半球でもよく,45°以上70°以下の半球でもよい。

図6は,窪み部が浅い台形状である台形浅型とよぶ固形乳を示す。図6では,台形型の窪み部が上面に2つ及び下面に2つ,それぞれ設けられるものを示している。しかしながら,本発明は,これに限定されず,上面又は下面のみに台形状の窪み部が設けられてもよい。さらに,台形状の窪み部が,片面の2つずつではなく,1つずつ設けられてもよいし,3つ以上設けられてもよい。なお,台形状の窪み部の代わりに,四角錐状や三角柱状の窪み部であってもよい。そして,窪み部の傾斜角度、窪み部の容積、窪み部の角のR処理などの具体的値は,適宜調整することができ,図に示されるものに限定されない。

図7は,窪み部が深い台形状である台形深型とよぶ固形乳を示す。図7では,台形型の窪み部が上面に2つ及び下面に2つ,それぞれ設けられるものを示している。しかしながら,本発明は,これに限定されず,上面又は下面のみに台形状の窪み部が設けられてもよい。さらに,台形状の窪み部が,片面の2つずつではなく,1つずつ設けられてもよいし,3つ以上設けられてもよい。なお,台形状の窪み部の代わりに,四角錐状や三角柱状の窪み部であってもよい。そして,窪み部の傾斜角度、窪み部の容積、窪み部の角のR処理などの具体的値は,適宜調整することができ,図に示されるものに限定されない。

図8は,対向する窪み部の最も深い部位がずれているプロペラ型とよぶ固形乳を示す。図8では,矩形型の窪み部が上面に2つ及び下面に2つ,それぞれ設けられるものを示している。しかしながら,本発明は,これに限定されず,上面又は下面のみに矩形状の窪み部が設けられてもよい。窪み部の形状は,特に限定されず,例えば,半球状,台形状,角錐状,角柱状などであってもよい。さらに,矩形状の窪み部が,片面の2つずつではなく,1つずつ設けられてもよいし,3つ以上設けられてもよい。そして,窪み部の傾斜角度、窪み部の容積、窪み部の角のR処理などの具体的値は,適宜調整することができ,図に示されるものに限定されない。

図9は,浅穴型とよぶ固形乳を示す。図10は,深穴型とよぶ固形乳を示す。図9と図10では,半球とその半球の間に設けられた半割り円柱状の窪み部が上面に2つ及び下面に2つ,それぞれ設けられるものを示している。しかしながら,本発明は,これに限定されず,上面又は下面のみに窪み部が設けられてもよい。さらに,窪み部が,片面の2つずつではなく,1つずつ設けられてもよいし,3つ以上設けられてもよい。そして,窪み部の円柱部の長さ,窪み部の容積、窪み部の角のR処理などの具体的値は,適宜調整することができ,図に示されるものに限定されない。

なお,以下の実施例では,“粉乳A”を用いて得られた固形乳を“固形乳A”とよび,“粉乳B”を用いて得られた固形乳を“固形乳B”とよぶ。

固形乳の溶解性改善に関する検討 各種固形乳を製造し,その固形乳の溶解性改善に関する検討を行なった。得られた結果を図11に示す。図11は,固形乳(“固形乳A”の重量は5.4g、“固形乳B”の重量は5.6gである)の形状及び窪みの容積(cm3)と固形乳の溶解残渣を示すグラフである。図11(a)及び(b)は,空隙率48%の“固形乳A”及び“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。ただし,球型については,いずれも空隙率が48.5%のものを用いた。各種形状の固形乳2個を,ほ乳瓶に入れ、試験液として50℃の湯水を加え,容量80mLとした。この状態で10秒間静置した後に,手で円を描くよう4回転/秒で5秒間,穏やかに振騰した。振騰した直後に,全量を質量既知のふるい(32メッシュ)に通し,ふるい上の残渣に触れぬよう余分な水分を拭き取った後に,ふるいの通過後の質量(g)を測定した。ふるいの通過後の質量とふるいの本来の質量との差を残渣質量(g)とし,この残渣質量が小さい程,溶解性がよいと評価した。なお,図中,平型は通常型を意味する。

図11から,窪みを設けることで,固形乳の溶解性が著しく向上することがわかる。球型,台形深型,プロペラ型,深穴型の固形乳で,特に溶解性が優れている。固形乳Bの場合は,球型のものがよく溶解している。これは,圧縮方法が他の形状のものと異なることや,球型の空隙率が48.5%と高いことに起因する可能性もある。ここで,固形乳全体の空隙率を約40%〜50%とすると,容積は,7cm3以上9cm3以下であった。たとえば,空隙率が約40%では,容積は,約7cm3〜7.5cm3,空隙率が約45%では,約7.7cm3〜8.2cm3,空隙率が約50%では,約8.5cm3〜9cm3であった。窪み部全体の容積は,球型,台形深型,台形浅型,プロペラ型,浅穴型,深穴型で,それぞれ0.339cm3,0.637cm3,0.534cm3,1.042cm3,0.429cm3,0.638cm3であった。この結果から,湯水で固形乳を溶解させる場合は,空隙率が45%以上50%以下程度の固形乳に,球状の窪みを設けたものが好ましく,その際の窪み部の容積として食品の容積の4%以上が好ましいことがわかる。一方,球状の窪み部を設けたもの以外の台形状などの場合は,窪み部の容積が食品の容積の6%以上が好ましい。また,プロペラ型のように最深部をずらしたものも,好ましい溶解性を示すことがわかる。

固形乳の溶解性改善に関する検討 “粉乳A”の5.4gを,空隙率が48%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で5分間乾燥させて各種形状の“固形乳A”を得た。“粉乳B”の5.6gを空隙率が48%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で7分間乾燥させて各種形状の“固形乳B”を得た。

得られた結果を図12に示す。図12は,固形乳(“固形乳A”の重量は5.4g、“固形乳B”の重量は5.6gである)の形状及び窪みの最大深さ(mm)と固形乳の溶解残渣(g)を示すグラフである。図12(a)及び図12(b)は,空隙率48%の“固形乳A”及び“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。

図12から,窪みを設けることで,固形乳の溶解性が著しく向上することがわかる。球型,台形深型,プロペラ型,深穴型の固形乳で,特に溶解性が優れている。固形乳Bの場合は,球型のものがよく溶解している。これは,圧縮方法が他の形状のものと異なることや,球型の空隙率が48.5%と高いことに起因する可能性もある。ここで,固形乳全体の空隙率を約40%〜50%とすると,厚さは,10mm以上15mm以下であった。たとえば,空隙率が約40%では,容積は,約10mm〜12.5mm,空隙率が約45%では,約11.2mm〜13mm,空隙率が約50%では,約12.4mm〜15mmであった。窪み部の最大深さは,球型,台形深型,台形浅型,プロペラ型,浅穴型,深穴型で,それぞれ3mm,4mm,2mm,5mm,2.67mm,4mmであった。

形状と溶解性に関する検討 “粉乳A”の5.4gを,空隙率が46%又は48%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で5分間乾燥させて“固形乳A”を得た。"粉乳B"の5.6gを空隙率が48%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で7分間乾燥させて“固形乳B”を得た。“固形乳A”と“固形乳B”の平型(通常型),及び深穴型の固形乳を用意した。ここで,固形乳全体の空隙率を約40%〜50%とすると,容積は,7cm3以上9cm3以下であり,厚さは,10mm以上15mm以下であった。たとえば,空隙率が46%又は48%の“固形乳A”で,それぞれの容積は,8.197cm3,8.512cm3であり,空隙率が48%の“固形乳B”で,容積は,8.615cm3であった。空隙率が46%又は48%の平型の“固形乳A”で,それぞれの厚さは,11.61mm,12.05mmであり,空隙率が48%の平型の“固形乳B”で,厚さは,12.19mmであった。空隙率が46%又は48%の深穴型の“固形乳A”で,それぞれの厚さは,12.49mm,12.93mmであり,空隙率が48%の深穴型の“固形乳B”で,厚さは,13.07mmであった。深穴型の窪み部全体の容積は,0.638cm3であり,窪みの最大深さは,4mmであった。

得られた結果を図13に示す。図13は,固形乳の形状と固形乳の溶解残渣を示すグラフである。図13(a)及び(b)は,空隙率が46%又は48%の“固形乳A”、及び空隙率が48%の“固形乳B”を用い,試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図13から,窪みを設けることで,溶解性の向上することがわかる。

“粉乳A”の5.4gを,空隙率が48%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で5分間乾燥させて“固形乳A”を得た。"粉乳B"の5.6gを空隙率が48%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で7分間乾燥させて“固形乳B”を得た。“固形乳A”と“固形乳B”の平型(通常型),及び浅穴型の固形乳を用意した。ここで,固形乳全体の空隙率を約40%〜50%とすると,容積は,7cm3以上9cm3以下であり,厚さは,10mm以上15mm以下であった。たとえば,空隙率が48%の固形乳Aで,容積は,8.512cm3であり,空隙率が48%の固形乳Bで,容積は,8.615cm3であった。空隙率が48%の浅穴型の固形乳Aで,厚さは,12.64mmであり,空隙率が48%の浅穴型の固形乳Bで,厚さは,12.78mmであった。空隙率が48%の平型の固形乳Aで,厚さは,12.05mmであり,空隙率が48%の平型の固形乳Bで,厚さは,12.19mmであった。浅穴型の窪み部全体の容積は,0.429cm3であり,窪みの最大深さは,2.67mmであった。

得られた結果を図14に示す。図14は,固形乳の形状と固形乳の溶解残渣を示すグラフである。図14(a)及び(b)は,空隙率48%の“固形乳A”及び“固形乳B”を用い,試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図14から,窪みを設けることで,溶解性の向上することがわかる。

“粉乳A”の5.4gを,空隙率が48%又は50%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で5分間乾燥させて“固形乳A”を得た。"粉乳B"の5.6gを空隙率が48%又は50%となるように圧縮成型機で圧縮成型した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で7分間乾燥させて“固形乳B”を得た。“固形乳A”と“固形乳B”の形状として,平型品(通常型),台形浅型品,台形深型品,プロペラ型品,顆粒品(固形乳ではない)を用いた。ここで,固形乳全体の空隙率を約40%〜50%とすると,容積は,7cm3以上9cm3以下であり,厚さは,10mm以上15mm以下であった。たとえば,空隙率が48%又は50%の固形乳Aで,それぞれの容積は,8.512cm3,8.852cm3であり,空隙率が48%又は50%の固形乳Bで,それぞれの容積は,8.615cm3,8.960cm3であった。空隙率が48%又は50%の平型の固形乳Aで,それぞれの厚さは,12.05mm,12.52mmであり,空隙率が48%又は50%の平型の固形乳Bで,それぞれの厚さは,12.19mm,12.67mmであった。空隙率が48%又は50%の台形浅型の固形乳Aで,それぞれの厚さは,12.79mm,13.26mmであり,空隙率が48%又は50%の台形浅型の固形乳Bで,それぞれの厚さは,12.93mm,13.41mmであった。空隙率が48%又は50%の台形深型の固形乳Aで,それぞれの厚さは,12.93mm,13.40mmであり,空隙率が48%及び50%の台形深型の固形乳Bで,それぞれの厚さは,13.07mm,13.55mmであった。空隙率が48%又は50%のプロペラ型の固形乳Aで,それぞれの厚さは,13.49mm,13.96mmであり,空隙率が48%又は50%のプロペラ型の固形乳Bで,それぞれの厚さは,13.63mm,14.11mmであった。窪み部全体の容積は,台形浅型品,台形深型品,及びプロペラ型品で,それぞれ0.534cm3,0.637cm3,及び1.042cm3であった。また,窪み部の最大深さは,それぞれ2mm,4mm,及び5mmであった。

得られた結果を図15に示す。図15は,各形状の固形乳と顆粒品の溶解性を示すグラフである。図15(a)及び(b)は,空隙率48又は50%の“固形乳A”及び“固形乳B”を用い,固形乳と顆粒品に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図15(a)及び図15(b)において,黒塗り印は空隙率48%のものを示し,白抜き印は空隙率50%のものを示す。図15(a)及び図15(b)から,窪みを設けることで,溶解性の向上することがわかる。特にプロペラ型は,顆粒に近い溶解性を有することがわかる。

“粉乳A”の5.4gを,空隙率が48.5又は50.5%となるように打錠機で圧縮成型(それぞれ0.72kN及び1.05kN)した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で5分間乾燥させて“固形乳A”を得た。"粉乳B"の5.6gを空隙率が48.5又は50.5%となるように圧縮成型機で圧縮成型(それぞれ0.93kN及び1.32kN)した後,スチームオーブンにて65℃・100%RHで60秒間加湿し,空気恒温槽により85℃で7分間乾燥させて“固形乳B”を得た。“固形乳A”と“固形乳B”の平型(通常型),及び球型の固形乳を用意した。ここで,固形乳全体の空隙率を約40%〜50%とすると,容積は,7cm3以上9cm3以下であり,厚さは,10mm以上15mm以下であった。たとえば,空隙率が48.5%又は50.5%の固形乳Aで,それぞれの容積は,8.595cm3,8.942cm3であり,空隙率が48.5%又は50.5%の固形乳Bで,それぞれの容積は,8.699cm3,9.051cm3であった。空隙率が48.5%又は50.5%の球型の固形乳Aで,それぞれの厚さは,12.56mm,13.04mmであり,空隙率が48.5%又は50.5%の球型の固形乳Bで,それぞれの厚さは,12.70mm,13.19mmであった。空隙率が48.5%又は50.5%の平型の固形乳Aで,それぞれの厚さは,12.16mm,12.64mmであり,空隙率が48.5%又は50.5%の平型の固形乳Bで,それぞれの厚さは,12.39mm,12.79mmであった。球型の窪み部全体の容積は,0.339cm3であり,窪みの最大深さは,3mmであった。

得られた結果を図16に示す。図16は,各形状の固形乳の溶解性を示すグラフである。図16(a)は,空隙率48.5%又は50.5%の“固形乳A”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図16(b)は,空隙率48.5又は50.5%の“固形乳B”を用い,固形乳に用いた試験液の液温50℃にて溶解性測定を行ったものを示す。図16において,黒丸は空隙率48.5%の平型品,白丸は空隙率48.5%の球型品,黒三角は空隙率50.5%の平型品,白三角は空隙率50.5%の球型品を示す。図16から,窪みを設けることで,溶解性の向上することがわかる。

本発明の食品又は固形乳は,溶解性の良好な食品又は固形乳などとして,食品産業において利用されうる。

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