乳類の製造方法

申请号 JP2017015531 申请日 2017-04-18 公开(公告)号 JPWO2017183623A1 公开(公告)日 2018-08-09
申请人 DIC株式会社; 发明人 山口 大輔; 大井 和美; 菅沼 洋平;
摘要 本発明は、中空糸膜モジュールを用いて、樹脂臭を抑えつつ、且つ乳中の溶存気体を脱気することを特徴とする、 牛 乳類の製造方法を提供する。さらに詳しくは、本発明は、中空糸膜モジュールを用いて乳から溶存気体を脱気する工程を有する牛乳類の製造方法であって、前記中空糸膜モジュールに用いられる中空糸膜がスキン層と多孔質層とを有しており、かつ、当該スキン層が乳と接液することを特徴とする、牛乳類の製造方法を提供する。
权利要求

中空糸膜モジュールを用いて乳から溶存気体を脱気する工程を有する乳類の製造方法であって、前記中空糸膜モジュールに用いられる中空糸膜がスキン層と多孔質層とを有し、かつ、スキン層が乳と接液することを特徴とする牛乳類の製造方法。膜面積が0.018m2〜400m2の範囲である請求項1記載の牛乳類の製造方法。酸素透過量と窒素透過量の比(QO2/QN2)が、1〜5の範囲である請求項1記載の牛乳類の製造方法。中空糸膜が4−メチル−ペンテン−1からなる請求項1記載の牛乳類の製造方法。脱気後の溶存酸素量は0.01〜10ppmの範囲である請求項1記載の牛乳類の製造方法。脱気前に、脱気する乳で中空糸膜モジュール内を共洗いする工程を有する請求項1記載の牛乳類の製造方法。

说明书全文

本発明は、中空糸膜モジュールを用いて乳を脱気する脱気工程を有する乳類の製造方法に関する。

近年、加工乳、乳飲料、発酵乳、乳酸菌飲料などの乳飲料が、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店におけるチルド食品の代表的商品として急成長を遂げている。乳飲料を含むチルド食品の市場拡大の背景には、できたての美味しさを味わいたいというニーズと、冷蔵輸送手段、流通網の発達、殺菌処理方法やパッケージ技術の改善とが相まって、鮮度が高く、風味豊かなチルド食品を提供できるようになったことに要因がある。

そのため、近年より高品質化が進んでいるものの、賞味期限が短いため、廃棄ロスリスクが高いこと、本来の風味が高いため、劣化した際の風味差が激しいことなど、チルド食品特有の課題があった。

特に、見た目の差別化を意識した透明容器の採用や、廃棄ロスリスクが高いことに起因してコストカットの側面から容器が薄肉化され、光や外気温が内容物に影響を与えやすくなる中で、牛乳類の酸化を要因とする風味劣化への対策は重要な課題であった。

牛乳類の酸化を要因とする風味劣化への対策として、例えば、殺菌前に減圧脱気により乳の溶存酸素濃度を低減させた後に加熱殺菌する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、減圧ないし真空脱気処理は、真空または減圧に伴い乳の沸点温度が低下することから、主成分のタンパク質が変性しやすく、加熱条件の制約や、品質管理の面から監視員の配置する必要があるなど人工を要することから、生産性に改善の余地があった。

特開2000−93130号公報

一方、一般的に液中の溶存酸素濃度低減には膜処理による脱気方法が知られているものの、通常の多孔質膜を有する中空糸膜を用いた脱気モジュールで脱気すると、乳と樹脂製の多孔質層とが接液することで、樹脂臭が移り香として乳や当該乳を原料として製造した乳製品にまで残るという問題があった。

そこで本発明が解決しようとする課題は、中空糸膜モジュールを用い、樹脂臭を抑えつつ、且つ乳中の溶存気体を脱気する、牛乳類の製造方法を提供することにある。

本願発明者らは種々の検討を行った結果、スキン層が乳と接液する中空糸膜モジュールを用いることで、樹脂臭を抑えつつ、且つ乳中の溶存気体を脱気した乳が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、中空糸膜モジュールを用いて乳から溶存気体を脱気する工程を有する牛乳類の製造方法であって、前記中空糸膜モジュールに用いられる中空糸膜がスキン層と多孔質層とを有し、かつ、スキン層が乳と接液することを特徴とする牛乳類の製造方法に関する。

本発明によれば、中空糸膜モジュールを用い、樹脂臭を抑えつつ、且つ乳中の溶存気体を脱気する、牛乳類の製造方法を提供することができる。

本発明に係る製造装置の概略構成図である。

以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態例のみに限定されるものではない。また、本発明の飲料の製造方法において、飲料を製造するまでの工程は周知なため、概略のみ説明し、詳細は省略する。なお、本発明における「牛乳類」の用語は、「乳」または「乳製品」を意味するものとし、例えば、日本国における昭和二十六年十二月二十七日厚生省令第五十二号「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」第2条に掲げる「乳」または「乳製品」を意味するものとし、本発明における「乳」の用語は同省令第2条第一項から第十一項に掲げるものを、「乳製品」の用語は第十二項から第四十項に掲げるものを言う。 すなわち、当該省令(以下、「この省令」という)は以下の通り。 第一項 この省令において「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳をいう。 第二項 この省令において「生乳」とは、搾取したままの牛の乳をいう。 第三項 この省令において「牛乳」とは、直接飲用に供する目的又はこれを原料とした食品の製造若しくは加工の用に供する目的で販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の授与を含む。以下同じ。)する牛の乳をいう。 第四項 この省令において「特別牛乳」とは、牛乳であって特別牛乳として販売するものをいう。 第五項 この省令において「生山羊乳」とは、搾取したままの山羊乳をいう。 第六項 この省令において「殺菌山羊乳」とは、直接飲用に供する目的で販売する山羊乳をいう。 第七項 この省令において「生めん羊乳」とは、搾取したままのめん羊乳をいう。 第八項 この省令において「成分調整牛乳」とは、生乳から乳脂肪分その他の成分の一部を除去したものをいう。 第九項 この省令において「低脂肪牛乳」とは、成分調整牛乳であって、乳脂肪分を除去したもののうち、無脂肪牛乳以外のものをいう。 第十項 この省令において「無脂肪牛乳」とは、成分調整牛乳であって、ほとんどすべての乳脂肪分を除去したものをいう。 第十一項 この省令において「加工乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工したもの(成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、発酵乳及び乳酸菌飲料を除く。)をいう。 第十二項 この省令において「乳製品」とは、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%以上を含むものに限る。)及び乳飲料をいう。 第十三項 この省令において「クリーム」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したものをいう。 第十四項 この省令において「バター」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したものをいう。 第十五項 この省令において「バターオイル」とは、バター又はクリームからほとんどすべての乳脂肪以外の成分を除去したものをいう。 第十六項 この省令において「チーズ」とは、ナチユラルチーズ及びプロセスチーズをいう。 第十七項 この省令において「ナチユラルチーズ」とは、次のものをいう。 第一号 乳、バターミルク(バターを製造する際に生じた脂肪粒以外の部分をいう。 以下同じ。)、クリーム又はこれらを混合したもののほとんどすべて又は一部のたんぱく質を酵素その他の凝固剤により凝固させた凝乳から乳清の一部を除去したもの又はこれらを熟成したもの 第二号 前号に掲げるもののほか、乳等を原料として、たんぱく質の凝固作用を含む製造技術を用いて製造したものであって、同号に掲げるものと同様の化学的、物理的及び官能的特性を有するもの 第十八項 この省令において「プロセスチーズ」とは、ナチユラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したものをいう。 第十九項 この省令において「濃縮ホエイ」とは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清を濃縮し、固形状にしたものをいう。 第二十項 この省令において「アイスクリーム類」とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)をいう。 第二十一項 この省令において「アイスクリーム」とは、アイスクリーム類であってアイスクリームとして販売するものをいう。 第二十二項 この省令において「アイスミルク」とは、アイスクリーム類であってアイスミルクとして販売するものをいう。 第二十三項 この省令において「ラクトアイス」とは、アイスクリーム類であってラクトアイスとして販売するものをいう。 第二十四項 この省令において「濃縮乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳を濃縮したものをいう。 第二十五項 この省令において「脱脂濃縮乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分を除去したものを濃縮したものをいう。 第二十六項 この省令において「無糖練乳」とは、濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売するものをいう。 第二十七項 この省令において「無糖脱脂練乳」とは、脱脂濃縮乳であって直接飲用に供する目的で販売するものをいう。 第二十八項 この省令において「加糖練乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳にしよ糖を加えて濃縮したものをいう。 第二十九項 この省令において「加糖脱脂練乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分を除去したものにしよ糖を加えて濃縮したものをいう。 第三十項 この省令において「全粉乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳からほとんどすべての分を除去し、粉末状にしたものをいう。 第三十一項 この省令において「脱脂粉乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。 第三十二項 この省令において「クリームパウダー」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳の乳脂肪分以外の成分を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。 第三十三項 この省令において「ホエイパウダー」とは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清からほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。 第三十四項 この省令において「たんぱく質濃縮ホエイパウダー」とは、乳を乳酸菌で発酵させ、又は乳に酵素若しくは酸を加えてできた乳清の乳糖を除去したものからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。 第三十五項 この省令において「バターミルクパウダー」とは、バターミルクからほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたものをいう。 第三十六項 この省令において「加糖粉乳」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳にしよ糖を加えてほとんどすべての水分を除去し、粉末状にしたもの又は全粉乳にしよ糖を加えたものをいう。 第三十七項 この省令において「調製粉乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え粉末状にしたものをいう。 第三十八項 この省令において「発酵乳」とは、乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したものをいう。 第三十九項 この省令において「乳酸菌飲料」とは、乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料(発酵乳を除く。)をいう。 第四十項 この省令において「乳飲料」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を主要原料とした飲料であって、第二項から第十項まで及び第十二項から前項までに掲げるもの以外のものをいう。

図1は、本発明の実施の形態にかかる牛乳類を製造するための乳の製造設備の概略説明図である。

前工程よりホッパー1に入れられた乳が、流路2を通って送液ポンプ3、ディアレータータンク4、下部コンデンサー5、抜き取りポンプ6、冷却器7、加熱殺菌装置8及び充填機9の順に送液されている。このような流路2における送液は、送液ポンプ3及び抜き取りポンプ6の稼動によって行われる。送液用ポンプ3には、モーノポンプ、ロータリーポンプ、セントフリューガルポンプ等が使用できる。 ホッパー1に入れられた乳は、送液ポンプ3の稼動により先ずディアレータータンク4に送液されて脱気され、液中の溶存酸素濃度を低減させる。

脱気により乳中の溶存酸素濃度を低減させるため、本発明に用いる中空糸膜モジュールが使用される。

この実施の形態では、真空ポンプ10によって配管11を介して、中空糸膜モジュール4の気相側(乳との接液部に対して反対側)4aを減圧しておき、さらに、中空糸膜モジュール内のスキン層4b側に乳を供給し、乳中の気体濃度を低減させて、乳中の溶存酸素濃度を低減すればよい。乳中の溶存酸素濃度は、通常、別途行われる食品衛生に関する試験において、少なくとも最終製品の賞味期限までの間、良好な風味が維持できる範囲に調整されれば特に限定されるものではないが、10ppm以下が好ましく、0.01〜3ppmの範囲がより好ましい。

本発明に用いることのできる中空糸膜モジュールとしては、内部環流型中空糸膜モジュールや外部環流型中空糸膜モジュールが挙げられ、当該モジュールを用いて、中空糸膜モジュール内を流れる乳から溶存気体を脱気する。この内、外部環流型中空糸膜モジュールは、内部環流型中空糸膜モジュールよりも脱気効率に優れ、且つ乳の流動圧損失を極めて低水準に抑えることが可能であり、特に多量の乳を脱気処理する場合に最も好ましいだけでなく、より樹脂臭を低減できるため好ましい。

本発明に用いる中空糸膜モジュールに使用する中空糸膜は、膜構造が、少なくとも、スキン層(緻密層)と、細孔を有する層(多孔質層)とが積層しているものであれば、通常、脱気モジュールとして用いられるものを制限なく使用できるが、さらに以下のものが好適に用いられる。

本発明に用いる中空糸膜の素材は、疎水性の高い素材よりなる膜が好ましく、例えばポリ(4−メチルペンテン−1)樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。また膜構造は、少なくともスキン層(緻密層)と、細孔を有する層(多孔質層)とが積層していれば特に限定されるものではないが、好ましくはスキン層(緻密層)と細孔を有する支持層(多孔質層)とが積層した不均質膜であることが好ましく、さらに、外側にスキン層(緻密層)、内側に細孔を有する支持層(多孔質層)とが積層した不均質膜であることがより好ましい。当該細孔の孔径は特に限定されないが、0〜100nmの範囲が好ましく、0.1〜50nmの範囲がより好ましい。

本発明に用いる中空糸膜モジュールに使用する中空糸膜は、膜の酸素透過速度が0.1×10−5〜5000×10−5[cm3(STP)/cm2・sec・cmHg]の範囲のものが好ましく、さらに0.5×10−5〜500×10−5[cm3(STP)/cm2・sec・cmHg]の範囲のものがより好ましく、さらに0.9×10−5〜100×10−5[cm3(STP)/cm2・sec・cmHg]の範囲のものが最も好ましい。

また、本発明に用いる中空糸膜モジュールに使用する中空糸膜は、酸素と窒素の分離係数α=(QO2:酸素透過量/QN2:窒素透過量= 1〜5の範囲のものが好ましく、さらに1〜4.5の範囲のものがより好ましく、さらに3.0〜4.2の範囲のものが特に好ましい。当該範囲内であれば、実質的に液体として乳を透過させず、かつ、溶存酸素濃度を数ppb以下まで脱気することが容易になり好ましい。

なお、モジュールの脱気性能は中空糸膜の隔膜の酸素透過速度が高くなるにつれ一般に向上するが、これに伴い液体の透過速度も大きなものとなるため、両特性のバランスに優れた隔膜を選択することが望ましい。

また、酸素透過速度の測定及び気体分離係数αはASTM−D1434に準拠して容易に行われる。

特にポリ(4−メチルペンテン−1)樹脂を素材とする中空糸不均質膜は酸素、窒素、炭酸ガス等のガス透過性に優れ且つ水蒸気バリヤー性が高く好ましい。本不均質膜については、例えば特公平2−38250号公報、特公平2−54377号公報、特公平4−15014号公報、特公平4−50053号公報及び特開平5−6656号公報等に詳しく述べてある。

本発明で用いる中空糸膜モジュールが内部環流型の場合、内部還流型中空糸膜モジュールの中空糸膜外(気相側)の圧力を減圧下に保ちつつ、中空糸膜内(液相側)から通液して脱気する。

一方、本発明で用いる中空糸膜モジュールが外部環流型の場合、外部還流型中空糸膜モジュールの中空糸膜内(気相側)の圧力を減圧下に保ちつつ、中空糸膜外(液相側)から通液して脱気する。いずれの場合も、液相側がスキン層(緻密層)、気相側が細孔を有する層(多孔質層)となるようにする。

中空糸膜モジュールの中空糸膜内の気相側圧力は、使用流量と目的とする処理後の溶存酸素量に合わせて調整することが重要であるが、脱気する乳(水分)のその温度での飽和蒸気圧以上の圧力に設定することが好ましい。

その際、減圧手段は単に真空ポンプ等で排気しても良いが、適当なスイープガスを流しながら真空ポンプで排気しても良い。特定の溶存気体を除去する場合には、スイープガスを併用する方法は有効である。例えば、溶存酸素や炭酸ガスのみを除去する事が重要な場合には、スイープガスとして窒素ガス、アルゴンガス等が有効に用いられる。真空ポンプを用いる場合には公知のものを用いることができ、例えば、油回転式ポンプ、ダイヤフラム式ポンプ、水流アスピレータ、水封式真空ポンプ、ブースター付水封式真空ポンプ、ルーツ型及びスクロール型等のドライ型真空ポンプ等が挙げられる。また、油回転式ポンプに油水分離装置を付属して使用してもよく、また水封式ポンプの封水をチラー等で冷却したり、蒸気圧の低い封液を使用してもよく、また水封式真空ポンプに空気エゼクターを付属して使用する等適宜実施できる。

モジュールの構造及び中空糸膜の充填方法は脱気される乳に遍流が発生しないように構成されておれば良く、例えば特許公開平2−102714号公報等に好適ないくつかのモジュール構造が開示されている。

本発明に用いる中空糸膜モジュールに適用する中空糸膜の寸法は、中空糸膜の外径が小さい方が、その簾巻き体の径が小さくとも大きな膜面積を得ることができ、従って、外径は70μm〜370μmであることが好ましく、さらに150μm〜280μmであることがより好ましい。一方、中空糸膜の内径は30μm〜310μmの範囲が好ましく、さらに80μm〜220μmの範囲がより好ましい。膜面積は0.018m2〜400m2の範囲であることが好ましく、0.18m2〜120m2の範囲であることがより好ましく、1.8〜40m2の範囲がさらに好ましく、7〜20m2の範囲が特に好ましい。

本発明に用いる中空糸膜モジュールは、脱気する乳の遍流を容易に抑制でき、且つ耐圧性に優れ、構造が単純であり、また製造が容易である特徴を有する。中空糸簾状シートの形態に制限はなく不織布体、編み物、織物等特に制限はないが、好ましくは、中空糸膜を緯糸または経糸とし、他の糸たとえばポリエステル等からなるモノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸を経糸または緯糸として組織された編み物または織物である。

中空糸膜モジュール4において脱気する際の乳の処理温度は、特に限定はないが、65℃以下として処理することが好ましい。

真空ポンプ10による減圧に伴って中空糸膜モジュール4で透過した乳(水分)が配管11内に流れ込んでしまうことがあるため、真空ポンプ10から配管11内に入る位置に、冷却用コイルを内蔵する上部コンデンサー13を設けてもよい。

図1に示したように、前工程よりホッパー1に入れられた乳を加温装置などを介さずに低温の状態のまま中空糸膜モジュール4に送液して脱気処理することにより、高温に伴う生物増殖リスクや、中空糸膜モジュール4に送液する前の加熱工程や脱気後の冷却工程にかかる設備コストおよび運転コスト、高温に伴うホエータンパク質の熱変性、沸騰による香気成分のロス等といった危惧を回避することができる。

こうして中空糸膜モジュール4において脱気され、乳中の溶存酸素濃度を好ましくは10ppm以下にまで低減された乳は、抜き取りポンプ6の稼動により、次に下部コンデンサー5に送液される。この下部コンデンサー5は2重缶に構成されており、外側に冷却水を通しながら、中空糸膜モジュール4から供給された乳をその内側に通して冷却することにより、突沸しない状態で液状に集めることができる。

さらに、下部コンデンサー5にて突沸しない状態で液状に集められた乳は、抜き取りポンプ6の稼動により、次に冷却器7に送液されて例えば約5℃に一旦冷却された後、次に加熱殺菌装置8に送液される。

なお、乳を加温装置などを介さずに低温の状態のまま中空糸膜モジュール4に送液して、脱気した場合は、下部コンデンサー5において冷却する工程を省略し、下部コンデンサー5で集めた乳を、抜き取りポンプ6の稼動により、そのまま加熱殺菌装置8に送液することができる。

さらに、加熱殺菌装置8では、乳の加熱殺菌が行われる。ここでの殺菌条件は、食品衛生法による牛乳類等の乳飲料の殺菌に関する規定を満たす条件であればよいが、超高温短時間殺菌法(UHT法)による加熱殺菌を行えば、保存性に優れた牛乳類が得られるので好ましい。また、低温殺菌法(LTLT法)、高温長時間殺菌法(HTLT法)、高温短時間殺菌法(HTST法)による加熱条件でも本発明を適用した牛乳類等の乳飲料が得られる。加熱殺菌方法は、間接加熱殺菌法でも直接加熱殺菌法でも良い。間接加熱殺菌法としては、プレート式熱交換方式、チューブラ式熱交換方式、かきとり式熱交換方式等が使用できる。直接加熱殺菌法としては、スチームインジェクション方式やスチームインフュージョン方式等が使用できる。UHT法の加熱殺菌条件の好ましい範囲は、120〜150℃で2〜4秒間である。例えば、チルド品であれば130℃で2〜4秒間の間接加熱殺菌処理を行うことが好ましく、LL品であれば142℃で2〜4秒間の間接加熱殺菌処理を行うことが好ましい。また、LTLT法では63〜65℃で30分加熱殺菌処理を行い、HTLT法では75℃以上で15分以上の高温加熱殺菌処理を行い、HTST法では72℃以上で15秒以上加熱殺菌処理することが好ましい。なお、加熱殺菌温度が120℃よりも低いか、加熱殺菌時間が2秒間よりも短い殺菌方法では、保存性に優れた乳が得られなくなり、賞味期限の短い牛乳類になってしまう。その場合、2週間程度の賞味期限を持つ牛乳類に対応できず、また、常温保存可能なLL牛乳にも対応できなくなってしまう。一方、加熱殺菌温度が150℃よりも高いか、加熱殺菌時間が4秒間よりも長いと、加熱臭やコゲ臭が強くなり、風味が劣ってしまう。

さらに、加熱殺菌装置8で加熱殺菌された乳は、次に充填機9に送液される。こうして充填機9では、乳を所定の容器に充填する工程が行われる。なお、本発明によって得られた乳を充填する容器には、各種の流通形態に対応できるように、長期保存が可能な無菌充填包装容器、要冷蔵保存可能状態に充填包装する容器(非アセプティック包装容器、チルド流通商品包装容器)などが含まれる。また、充填容器は、太陽光や蛍光灯の光を透過する容器であって構わない。即ち、ガラスまたは合成樹脂などの透明な容器、それらを半透明にした容器、ポリエチレン加工紙等からなる容器、紙容器などを含む。また容器の形態や形状は、瓶、箱形状等、限定はない。また、容器の一部に透明または半透明の光を透過する窓を設けたものなども含む。

本発明において乳を製造する際は、製造段階での酸化を防ぎ、かかる飲料中の溶存酸素濃度を低下させるために不活性ガス雰囲気、好ましくは窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、脱気前に、脱気する乳で中空糸膜モジュール内を共洗いする工程を有することも好ましい。

以上の工程を経ることにより、本発明の乳を容器に充填した製品を得ることが可能となる。また、以上の工程を経ることにより得られた乳は、公知の方法で乳製品へ加工することができる。たとえば、甘味料、食塩、フルーツエキス、果肉、香料、着色剤、ビタミン、ミネラル、酸化防止剤、保存剤、増粘多糖類、乳化剤、安定剤などの成分を必要に応じ混合することができる。また、コーヒーと混合してコーヒー入り乳飲料としたり、乳酸菌、酵母を培養して発酵により発酵乳、乳酸菌飲料や殺菌乳酸菌飲料としてもよい。

以上の通り、本発明の製造方法により得られた牛乳類は、主原料の乳が、中空糸膜モジュールを用いて乳から溶存気体を脱気する工程を有し、前記中空糸膜モジュールに用いられる中空糸膜がスキン層と多孔質層とを有し、かつ、スキン層が乳と接液することにより得られることから、中空糸膜モジュールにより溶存酸素量が抑えられていることに起因して、脱気していない場合と比べて酸化による風味(香り、味)の劣化を起こし難く、さらにスキン層で乳と接液して脱気されていることに起因してり、多孔質層で接液して脱気する場合と比べて樹脂臭も低減されたものとなっている。

中空糸膜モジュールによる脱気は、真空脱気または減圧脱気を行う場合と異なり、真空または減圧に伴う乳の沸点温度の低下を考慮する必要がないため好ましい。

以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。

(官能評価の方法および評価基準) 本実施例においての評価方法は、特に断りのない限り、以下の通りに行った。

官能評価について、樹脂臭と風味(味覚)を評価した。

なお、樹脂臭とは、「プラスチックを連想する香り、紙パック臭」(宇都宮仁、他3名、”清酒の官能評価分析における香味に関する品質評価用語及び標準見本”、〔online〕、2006年、独立行政法人酒類総合研究所、第3頁第1表「樹脂臭」、検索日平成27年9月25日、http://www.nrib.go.jp/data/pdf/seikoumihou.pdf)を感じる評価を参考に以下の方法で実施した。

樹脂臭の官能評価の結果は標準見本(50mlポリプロピレン製遠心管に40ml牛乳を入れ、65℃30分間つけたもの)を用いて訓練されたパネラー5名の評価結果を集計して示した。

樹脂臭を感知したときの強度を1(感じない)、2(ほとんど感じない)、3(やや感じる)、4(感じる)、5(強い)、6(とても強く感じる)の6段階で評価した。集計した平均値が1以上〜2未満の場合を◎、2以上〜3未満の場合を○、3以上〜4未満の場合を△、4以上の場合を×とした。

試験直前に製造した牛乳と、冷蔵庫(10℃)内で3日間保存後の牛乳に対する風味の変化を官能評価し、両者の差を、1(とても感じる)、2(感じる)、3(やや感じる)、4(感じない)の4段階で評価した。集計した平均値が1以上〜2未満の場合を◎、2以上〜3未満の場合を○、3以上〜4未満の場合を△、4の場合を×とした。 (実施例1) 外部還流型中空糸膜モジュールは、DIC株式会社製「EF−020G−A30」(スキン層(外層)と中空糸孔径5〜20nmの多孔質層(内側)とが積層した非対称膜を有するポリ−4−メチルペンテン−1樹脂製中空糸膜)を用い、試験前に超純水で72時間洗浄後、モジュール内部を無菌エアーで乾燥した。さらに、上水(23℃)で3分間洗浄した後、さらに脱気処理する牛乳を用いて共洗いを行った。

図1に指名した乳の製造設備において、牛乳(脱気処理前DO値7.0ppm)を前記モジュールに通液し脱気処理(絶対圧2.4kPa)した後、得られた処理牛乳(脱気処理後DO値0.3ppm)を、窒素雰囲気中の貯留容器内に保存した。

その後、紙容器に牛乳を充填して密閉した。なお、すべての工程を窒素雰囲気下でおこなった。官能評価結果を表1に示した。

(比較例1) 外部還流型中空糸膜モジュールDIC株式会社製「EF−020G−A30」の替りに、内部還流型中空糸膜モジュール三菱レイヨン社製「20M3400A」(非多孔質の超薄膜を多孔質層でサンドイッチ状に挟み込んだ三層複合構造を有するポリエチレン製対称膜)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。なお、得られた処理牛乳の脱気処理後DO値は0.75ppmであった。官能評価結果を表1に示した。

以上の官能評価分析より、実施例1ではスキン層(緻密層)で牛乳と接する中空糸膜モジュールを簡単な水洗浄を行うのみで、プラスチック臭などの異臭の添加がない牛乳が得られることが分かった。また、溶存気体の大幅な減少によって、長期保存後の味覚の変化も抑えられることも明らかになった。これに対して、多孔質層で牛乳と接する中空糸膜モジュールを用いた比較品は、樹脂臭の除去ができず、かつ、長期保存後の味覚の変化も抑えられなかった。

1 ホッパー 2 配管(液体側) 3 送液ポンプ 4 中空糸膜モジュール 5 下部コンデンサー 6 抜き取りポンプ 7 冷却器 8 加熱殺菌装置 9 充填機 10 真空ポンプ 11 配管(気相側) 12 調整弁 13 上部コンデンサー

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