おいしい乳脂肪分の少ない発酵乳及びその製造方法

申请号 JP2008556940 申请日 2007-02-06 公开(公告)号 JPWO2008096419A1 公开(公告)日 2010-05-20
申请人 明治乳業株式会社; 发明人 堀内 啓史; 啓史 堀内; 暢子 井上; 暢子 井上;
摘要 本発明は、発酵開始時の発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させることと発酵 温度 を30℃〜39℃で発酵を行うこと又は発酵乳ミックスに添加するスターターの添加量を通常添加量の25%〜50%とし、かつ、発酵温度を38℃〜46℃で発酵を行うことを含む、発酵乳の製造方法に関する。
权利要求
  • 乳脂肪分が0.1重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵温度30℃〜39℃で発酵を行うことによって乳脂肪感を向上させること、
    を含む発酵乳の製造方法。
  • 乳脂肪分が0.1重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵乳原料ミックスに添加するスターターの添加量を通常添加量の25%〜50%とし、発酵温度38℃〜46℃で発酵を行うことによって乳脂肪感を向上させること、
    を含む発酵乳の製造方法。
  • 乳脂肪分が1.0重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵温度30℃〜39℃で発酵を行うことによって、乳脂肪感に影響を与える添加剤を用いずに通常濃度の乳脂肪分を有する発酵乳と同等もしくはそれ以上の乳脂肪感を有する発酵乳を得ること、
    を含む発酵乳の製造方法。
  • 乳脂肪分が1.0重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵乳原料ミックスに添加するスターターの添加量を通常添加量の25%〜50%とし、発酵温度38℃〜46℃で発酵を行うことによって、乳脂肪感に影響を与える添加剤を用いずに通常濃度の乳脂肪分を有する発酵乳と同等もしくはそれ以上の乳脂肪感を有する発酵乳を得ること、
    を含む発酵乳の製造方法。
  • 発酵時間が、1日で全発酵工程が終了する時間内に収まることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の発酵乳の製造方法。
  • 発酵時間が3〜7時間であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の発酵乳の製造方法。
  • 請求項1から請求項6のいずれかに記載の製造方法で得られる発酵乳。
  • 说明书全文

    本発明は、乳脂肪分を通常より低減させた発酵乳において、乳脂肪分を低減させたことに由来する風味・食感の劣化を乳脂肪代替物等の添加剤を用いることなく防ぐことができ、さらには通常濃度の乳脂肪分を有する製品より風味・食感を向上させることも可能な乳脂肪分を低減させた発酵乳の製造方法とその製造方法で得られた発酵乳に関する。

    発酵乳は健康食品の代表として広く食されている食品である。 しかしながら、健康食品の観点で見た場合、通常の発酵乳は3重量%(以下「重量」を省略)程度の乳脂肪分を含む為、ダイエット志向の高まりから、より脂肪分が少なく低カロリーである発酵乳を求める声が多くなってきた。 そのため、近年低脂肪を謳った発酵乳が市場に数多く提供されている。 しかしながら、乳脂肪分は発酵乳の持つ良好な乳風味や食感に大きな影響を与えているため、乳脂肪分の少ない発酵乳を提供するに当たっては乳脂肪分を低減させることによって必然的に低下してしまう良好な乳風味や食感を何らかの方法で補うかあるいは改善する必要が生じていた。

    それらの方法のほとんどは、乳脂肪を代替する低カロリーの添加物を加える方法であり、代替物として寒天、ゼラチン等が主に用いられている。 これらは「なめらかな食感」を付与する為に用いられており、擬似的に乳脂肪によって与えられている酸味の低減も含めた「まろやかな食感」を代替したものである。 従って、低脂肪化に伴う乳風味の劣化、特に「味の濃厚さ(コク味)」の不足を補うものでは無い。 この「味の濃厚さ(コク味)」の不足は特に乳風味の劣化に与える影響が大きいため、先の寒天やゼラチン等に加えて乳風味を増強するための乳風味付与剤が数多く報告されている(例えば特許文献1)。

    しかしながら、いずれの方法も、乳脂肪分を何らかの代替物で補うという発想から提案されているものである。 従って、より自然なおいしさを訴求するという観点から、可能であれば先の乳脂肪代替物や乳風味付与剤等の添加剤を用いることなく、あるいはやむを得ず添加剤を用いたとしても、できるだけその使用量が少ない状態で風味や食感の劣化を抑えるあるいは改善する方法が求められていた。

    一方、発酵乳にきめ細やかな食感を与え、さらに発酵乳組織の堅さを向上させる方法として、本発明者らは、発酵乳ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させた状態で30℃〜37℃(特許文献2)、38℃〜40℃(特許文献3)という通常より低い発酵温度で発酵を行うと、きめ細やかでまろやかな風味を有し、さらに組織の堅さも輸送等に耐えられる堅さとなる新規な発酵乳が得られることを報告した。 それらは通常濃度の乳脂肪分を有する発酵乳を対象として成されたものであり、意図的に乳脂肪分を減じた結果、風味・食感に問題を生じた発酵乳を対象としたものでは無かった。

    特開2003-250482号公報

    特許第3644505号公報

    特許第3666871号公報

    本発明は、発酵乳の乳脂肪分を意図的に減じることで失われていく、乳脂肪に由来するまろやかな食感や乳風味(以下、まろやかな食感と乳風味を合わせて「乳脂肪感」と言う)を、乳脂肪代替物や乳風味付与剤等を用いることなく、製造工程上の工夫でその劣化を効果的に防止することのできる発酵乳の製造方法と、その結果得られる乳脂肪感が向上した乳脂肪分を減じた発酵乳を提供することを課題として成し遂げられたものである。 そして、意図的に乳脂肪分を減じた発酵乳の内でも、1%以上の乳脂肪分を有する発酵乳においては、少なくとも通常の発酵乳と同等あるいは同等以上の乳脂肪感を有する発酵乳を提供することを課題として成し遂げられたものである。

    本発明者らは、前記2つの課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、乳脂肪分を通常濃度の3%程度から0.1%〜2.0%に減じた発酵乳ミックスを、ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させ、かつ、発酵温度を通常より下げて、および/又はミックスに添加するスターターの添加量を通常の添加量から大幅に減じて発酵を行うことで、通常の方法で製造した脂肪分の少ない発酵乳と比べて乳脂肪感が明確に向上した発酵乳が得られることを見出した。 そして、特に乳脂肪分を1.0%以上有する場合には、なんら乳脂肪代替物や乳風味付与剤を用いない場合でも乳脂肪感が通常の方法で製造した乳脂肪分3%程度の発酵乳と同等あるいは同等以上である発酵乳となっていることを見出した。
    すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)に関する。
    (1)
    乳脂肪分が0.1重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵温度30℃〜39℃で発酵を行うことによって乳脂肪感を向上させること、
    を含む発酵乳の製造方法。
    (2)
    乳脂肪分が0.1重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵乳原料ミックスに添加するスターターの添加量を通常添加量の25%〜50%とし、発酵温度38℃〜46℃で発酵を行うことによって乳脂肪感を向上させること、
    を含む発酵乳の製造方法。
    (3)
    乳脂肪分が1.0重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵温度30℃〜39℃で発酵を行うことによって、乳脂肪感に影響を与える添加剤を用いずに通常濃度の乳脂肪分を有する発酵乳と同等もしくはそれ以上の乳脂肪感を有する発酵乳を得ること、
    を含む発酵乳の製造方法。
    (4)
    乳脂肪分が1.0重量%から2.0重量%である発酵乳において、
    発酵開始時における発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下に低減させること、及び、
    発酵乳原料ミックスに添加するスターターの添加量を通常添加量の25%〜50%とし、発酵温度38℃〜46℃で発酵を行うことによって、乳脂肪感に影響を与える添加剤を用いずに通常濃度の乳脂肪分を有する発酵乳と同等もしくはそれ以上の乳脂肪感を有する発酵乳を得ること、
    を含む発酵乳の製造方法。
    (5)
    発酵時間が、1日で全発酵工程が終了する時間内に収まることを特徴とする前記(1)から前記(4)のいずれかに記載の発酵乳の製造方法。
    (6)
    発酵時間が3〜7時間であることを特徴とする前記(1)から前記(4)のいずれかに記載の発酵乳の製造方法。
    (7)
    前記(1)から前記(6)のいずれかに記載の製造方法で得られる発酵乳。

    ここで、栄養成分表示基準上は「低脂肪」を謳えるのは食品100g当たりの脂肪含量が3g(乳脂肪分3%)以下のものである。 しかしながら、発酵乳の場合は通常品自体の脂肪含量が3%程度であるため、「低脂肪」の強調表示は脂肪含量1.5%以下の製品に付されている。 また、「無脂肪」の強調表示は脂肪含量0.5%以下の製品に付されている。 本発明の効果は、この「低脂肪」領域から「無脂肪」領域で顕著であるが、後述するように2%程度に乳脂肪濃度を減じた製品から発明の効果を明確に確認することができる。 従って、本発明の対象物を「低脂肪」や「無脂肪」表示のできる発酵乳に限定せず、通常より乳脂肪含量の少ない発酵乳として乳脂肪含量2.0%以下の製品を発明対象物とした。 つまり、官能評価の結果から、通常品の乳脂肪分が3%程度の時、従来の製造方法では乳脂肪分が2.0%まで低下すると明確に乳脂肪感の低下を感じ取ることができたため(表5)、本発明を適用する乳脂肪感の改善を必要とする発酵乳を乳脂肪分2%以下の発酵乳とした。

    先において発酵温度を下げることあるいはスターター添加量を下げることをそれぞれ単独で発酵乳ミックスの溶存酸素濃度を5ppm以下に下げることと組み合わせて実施した場合、発酵温度を通常より下げることについては、30℃〜39℃で発酵を行うことで乳脂肪感の向上した発酵乳が得られ、スターター添加量を通常より下げることについては、発酵温度38℃〜46℃において添加量を通常添加量の25%〜50%として発酵を行うことで乳脂肪感の向上した発酵乳が得られることを確認した。 また、それぞれの条件において、発酵時間は発酵工程が1日内に終了する3時間から7時間内であることも確認した。

    本発明の場合、発酵温度を下げることと、スターター添加量を下げることはその両者を組み合わせて各種の条件(例えば発酵温度34℃、スターター添加量を通常の60%とする等)を用いることも可能であるが、組合せが複雑になること、個々の条件のメリットが希釈されてしまう等の問題があるため推奨されるものではない。 例えば、スターター添加量を大幅に下げる方法では、通常添加量の25%から50%で発酵温度を38℃から46℃で発酵を実施することができるが、これをメリットとして、低温発酵ではなく例えば40℃以上の通常温度での発酵を行う場合に、スターター添加量を下げる方法を用いるとした方が合理的である。

    ただし、特にそれぞれの条件の臨界域においては、発酵温度とスターター添加量という2つのファクターを組み合わせることで、得られる製品の歩留まりを単独の場合より良好にすることができるため、両者を組み合わせる必然性が生じる。 例えば、発酵温度39℃は、温度条件単独では乳脂肪感が向上した発酵乳を得る上限温度であるため目的とする性状の製品が得られない場合もあり、製品の歩留まりは低下する傾向にある。 そこで、スターター添加量を減じる条件を組み合わせることで製品の歩留まりを向上させることが可能となる。 以上のメリットがあるため、スターター添加量を減じる方法の場合、適用温度範囲を発酵温度のみによる条件と一部重なる38℃からとした。

    本発明法においても、発酵乳ミックスの乳脂肪分を1.0%未満〜0.1%程度となるまで大きく低減させた場合には、乳脂肪代替物等の添加剤を全く用いない条件では、乳脂肪分3%程度の通常の発酵乳に対し、全ての官能評価項目で同程度の乳脂肪感を得ることは難しい。 しかしながら、そのような低い乳脂肪濃度においても、本発明の方法で製造した発酵乳は乳脂肪感が通常品より明確に向上しており、例えば、本発明法による乳脂肪分0.5%の発酵乳は通常の発酵法で得られた乳脂肪分1.5%の発酵乳と比較した場合「味の濃厚さ(コク)」のスコアが明確に高いことが確認された(表3a)。 また、乳脂肪分が0.1%という極めて低い状態でも、本発明による発酵乳は「味の濃厚さ(コク)」のスコアが通常の発酵法で得られた乳脂肪1.5%の発酵乳と同等となることが確認された(表3b)。

    以上述べたように、本発明は、乳脂肪分0.1%から2.0%という乳脂肪分の少ない状態で、乳脂肪代替物や乳風味付与剤を用いることなく製造工程上の工夫のみで乳脂肪の低減に伴う乳脂肪感の劣化を抑制することができるという効果を有している。 特に、乳脂肪分が1.0%から1.5%の間で添加剤を用いずに通常品と同等か同等以上の乳脂肪感を得ることができることから、「低脂肪」の強調表示と「添加物不使用」の強調表示を合わせて付すことが可能という効果を有している。 つまり、乳脂肪分が1.0%から1.5%の間では、「低脂肪」であるにも拘わらず「添加物不使用」でしかも「おいしい」低脂肪発酵乳を提供することが可能という従来無い顕著な効果を有している。

    以下、本発明を詳細に説明する。
    本発明において使用される乳は、哺乳動物の乳であれば特に限定されるものではない。 例えばその種類としては、これらに限定されるものではないが、乳、山羊乳、めん羊乳、牛乳、豚乳、人乳等が挙げられる。 この中でも入手のしやすさ、価格などからホルスタイン種、ジャージー種等の牛の乳を用いることが好ましい。
    本発明でミックスに接種する乳酸菌スターターは、ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(L.lactis)の他、発酵乳の製造に一般的に用いられる乳酸菌や酵母の中から1種又は2種以上を選んだものを用いることが可能である。 本発明においては、コーデックス規格でヨーグルトスターターとして規格化されているラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus)の混合スターターをベースとするスターターを好適に用いることができる。 このヨーグルトスターターをベースとして、目的とする発酵乳の発酵温度や発酵条件を勘案した上で、さらにラクトバチルス・ガッセリ(L.gasseri)やビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)等の他の乳酸菌を加えても良い。

    本発明において、発酵乳ミックス中の溶存酸素を低減する方法と組み合わせる、発酵温度を下げることとスターター添加量を減じることは、それぞれを単独で溶存酸素低減法と組み合わせても、両者の条件を組み合わせ、その上で溶存酸素低減法と組み合わせても実施することが可能である。 しかしながら、それぞれの条件におけるメリットを享受するためにはそれぞれを単独で溶存酸素低減法と組み合わせた方が工程管理上より望ましい。

    まず、発酵温度を下げる方法を溶存酸素低減法と単独で組み合わせる場合、その温度条件は30℃〜39℃の範囲を用いることができる。 この条件は特許第3666871号公報に示される条件より最高温度がやや低い温度範囲となっている。 その理由は不明であるが、適用する発酵乳ミックスの乳脂肪含量の低いことが影響しているものと考えられる。 この場合、30℃付近の温度では発酵時間が延長され、39℃付近では乳脂肪感の向上が弱めとなる傾向があるため、好ましい条件は32℃〜38℃、より好ましい条件は34℃〜37℃である。

    次に、スターター添加量を減じることを溶存酸素低減法と単独で組み合わせる場合、スターターの添加量は通常条件の25%〜50%の量が用いられる。 また、この条件下で発酵温度は38℃〜46℃の範囲を用いることができる。 温度が高い条件では、よりスターター添加量を減らすことで乳脂肪感を確保することができる。 しかしながら、46℃は乳脂肪感の向上を果たせる閾値となっているため、製造工程の管理が他の温度より難しい温度となっている。 従って、好ましい温度条件は38℃〜45℃、より好ましくは39℃〜43℃となる。 この方法を採用した場合のメリットは、通常用いられる発酵温度で発酵を行うことができることで、通常の発酵温度を用いた場合、温度管理が通常品と同様で楽であることに加えて、雑菌の発生等の危険性を大幅に減じることができるというメリットも有している。

    以上に説明した本発明のスターター添加量の基準となる通常のスターター添加量とは、溶存酸素低減処理を行っていない発酵乳ミックスを用い、発酵温度43℃、発酵時間3時間後に乳酸酸度0.7%を与える発酵を行う場合に用いられるスターターの添加量を通常のスターター添加量とし、その量を100%としたものである。 具体的には、通常条件では、発酵乳ミックス全量に対して2.0重量%程度のスターターが添加される。 これに対して、本発明におけるスターターの添加量は、発酵乳ミックス全量に対して0.5重量%〜1.0重量%であり、通常添加量の25%〜50%程度である。

    本発明で用いられる原料ミックスは、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳、その他乳原料、砂糖、糖類、香料、水等、発酵乳の製造に常用される原料を加温・溶解し、乳脂肪代替品等を使用する場合には、予め加温・溶解したゼラチン液、寒天液、ペクチン等を加え混合することで得られる。 ただし、本発明の場合、例えば、乳脂肪1.0%〜2.0%程度の場合には、乳脂肪代替品等を添加していない状態で通常濃度の乳脂肪を有する製品と同等かさらに乳脂肪感に富んだ製品を提供することが可能であるため、先の濃度範囲においてはゼラチン等を添加しない態様が本発明のより望ましい実施態様と言える。 従って、本発明法の場合、実際上乳脂肪代替物等の添加は乳脂肪分が0.5%以下となる「無脂肪」領域の製品を提供する場合に考慮すればよい。

    尚、本発明発酵乳を製造する際に乳脂肪分を0.1%から2%間にコントロールすることは、ミックスにおける生乳と脱脂粉乳の配合比を変えることで行うことができる。 ここで、通常流通している脱脂粉乳を用いて生乳を用いずに脱脂粉乳のみを用いた場合、脱脂粉乳中の残存脂肪によりSNF(無脂乳固形分)を通常発酵乳と同様の値となるよう調節すると乳脂肪分は0.1%程度となる。

    以上のようにして得られた乳脂肪濃度を調節した原料ミックスは、均質化し、殺菌後、所定温度(発酵温度)程度まで冷却する。 この状態で後に述べる溶存酸素濃度を低減させる処置を行っても良いが、窒素置換等により溶存酸素濃度を低減させる場合にはこの時に溶存酸素低下処置を行わなくても良い。 次いで、通常添加量もしくは通常添加量から減じた乳酸菌スターターを接種し、前発酵の場合はタンク内に充填して発酵を開始し、後発酵の場合は流通用個食容器に充填して発酵を開始する。 また、発酵終了後これらミックスに糖液等を加えても良い。

    ミックス中の溶存酸素濃度を低下させる方法としては、不活性ガスによるガス置換処理による方法、脱酸素膜を用いた膜分離方法等、特に方法を選ばずに行うことができる。 ここで、ミックス中の溶存酸素濃度を低下させて5ppm以下、好ましくは3ppm以下とすることが好ましい。 以上の内、不活性ガス置換による方法は先に述べたようにスターター添加後も行うことが可能であり、工程上の制約が膜分離等の方法と比べると少ない。

    以下、不活性ガス置換による方法について述べるが、置換処理は原料ミックスを調合する段階からスターターを接種後、発酵を開始するまでの間に行えばよく、その製造工程における置換時期は任意である。 しかしながら、発酵開始時に溶存酸素濃度が低減された状態で維持されていることが重要であることから、ミックスの不活性ガス置換処理はスターターを接種する直前から直後の間に行うことが望ましい。

    発酵開始時のミックスの溶存酸素濃度は、その濃度が低いほど良好であり、その傾向は、本発明法の場合でも特許第3644505号公報に示される結果と同様である。 例えばミックスの温度が40℃程度の際に5ppm以下、好ましくは3ppm以下である。 そしてその効果は発酵温度を下げる場合、スターター添加量を減じる場合に共通で、工程的には発酵時間が短縮されるように働くため、どの方法を用いた場合でも発酵時間を3〜7時間内に行うことができる。

    先の溶存酸素濃度を低下させる方法として不活性ガス置換を行う場合には、不活性ガスとして、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガス等を用いることができるが、中でも窒素ガスは食品に通常用いられている不活性ガスとして、より好適に用いることができる。 溶存酸素と不活性ガスとの置換方法としては、これら不活性ガスをミックス中に直接バブリングする方法や、スタティックミキサーを用いる方法、ミックスと共にミキサーにガスを入れて撹拌するなどの公知の方法を用いることができる。

    溶存酸素濃度を低下させる方法として膜分離法を行う場合には、脱酸素膜として中空糸膜(三菱レイヨン社MHF304KM等)を用いることができる。 その用い方は従来の膜の使用方法を参考にして用いればよく、スターター添加前のミックスに適用してその溶存酸素濃度を低減させる場合に、膜分離法の実施が可能となる。

    本発明法の場合、発酵温度やスターター添加量は1日で発酵工程全体を終了できる時間内に発酵を終了させるという観点から設定されたものである。 従って、長時間発酵を考慮すると、異なった温度範囲、スターター添加量を用いる場合もあるものと考えられる。 しかしながら、その基本的な考え方として乳脂肪分が0.1%〜2.0%に減じられた発酵乳の製造において、発酵乳ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下とし、発酵温度を通常の発酵条件から下げて発酵を行うこと及び/または発酵乳ミックスに添加するスターターの添加量を通常添加量から大幅に減じることで乳脂肪感が向上した発酵乳が得られるという効果が示されるのであれば、その技術は本発明の範疇にある技術であることは明白なことである。

    以下に、本発明法を実施例、試験例を元にさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
    [実施例1]
    本発明法による低脂肪発酵乳の製造(発酵温度38℃)
    牛乳35.7kg、脱脂粉乳6.8kg、水53.5kgを混合したミックスを調製した。 ミックス組成は、日本食品標準成分五訂を参照し、牛乳の組成:SNF8.8%、乳脂肪3.8%、脱脂粉乳の組成:SNF95.2%、乳脂肪1.0%として計算した。 次に、調合したミックスを95℃、5分間加熱殺菌した後、38℃まで冷却し、乳酸菌スターター{ラクトバチルス・ブルガリカス(L.bulgaricus JCM 1002T)とストレプトコッカス・サーモフィルス(S.thermophilus ATCC 19258)の混合培養物}2.0%の接種を行った。 このミックスにパイプを通して窒素ガスを混合分散させ、溶存酸素濃度を5ppm以下となるように調整した。 これを容器に充填し、38℃で発酵させ、乳酸酸度が0.7%に到達した後(発酵時間3時間)、10℃以下に冷却して発酵を停止させ最終製品とした。 この場合の最終製品の組成はSNF10.0%、乳脂肪分1.5%である。
    同時に通常濃度(3.0%)の乳脂肪を有する発酵乳ミックスを43℃3時間で通常の発酵を行って得た発酵乳をコントロール品として先の本発明品と乳脂肪感を比較したところ、本発明品はコントロール品よりも明確に強い乳脂肪感を示した。 (試験例1 表1a参照)

    尚、各実施例、試験例での各乳脂肪含量調整品のSNFは10.0%で固定している。 そのため、全固形分は乳脂肪分が少ない配合ほど低くなる。 例えば、乳脂肪分が1.5%の発酵乳の場合、全固形分は11.5%となるのに対して、乳脂肪分が0.5%の発酵乳の全固形分は10.5%である。 しかし、減じた乳脂肪分と同等の固形分をSNFで補うことはしていない。 これは、SNFを増加させるとそのことによるコク味を補う効果が発生するためである。 従って、今回得られた本発明法の効果は明確に本発明法によってもたらされたものであると評価することができる。

    また乳酸酸度は、0.1規定NaOHを用い、フェノールフタレインを指示薬として滴定し、算出した。

    [試験例1]
    本発明低脂肪発酵乳と通常品との乳脂肪感比較 実施例1の製造方法を各種乳脂肪濃度の発酵乳ミックスに適用し、乳脂肪分1.5%、1.3%、1.0%、0.9%となるように本発明発酵乳を調製し、同時に調製した乳脂肪分3.0%の通常発酵法(control法)発酵乳に対する8名または9名の専門パネル者を用いた2点強度試験法による官能評価試験を行った。 評価項目は「舌触りのなめらかさ」「味のまろやかさ」「味の濃厚さ(コク)」の3つに、参考として「酸味の程度」を加えた4種類について行った。 また特に「味の濃厚さ(コク)」の結果を乳脂肪感を表す官能評価としてより優位に評価した。 得られた結果を表1のa)からd)に示す。 その結果、乳脂肪分1.0%の本発明発酵乳は「味の濃厚さ(コク)」と「舌触りのなめらかさ」において通常品とほぼ同等の評価が与えられた。 乳脂肪分1.3%、及び1.5%の本発明品は「舌触りのなめらかさ」が同等で「味のまろやかさ」「味の濃厚さ(コク)」の2点において通常品より明確に「強い」との評価が与えられた。 以上から本発明品は乳脂肪分が1.0%以上の状態であれば通常品(乳脂肪分3%)と同等もしくは同等以上の乳脂肪感を有する「おいしい低脂肪発酵乳」となっていることが確認できた。

    [実施例2]
    本発明法による低脂肪発酵乳の製造(スターター低減法)
    乳酸菌スターターの添加量を0.8%(通常添加量の40%)とし、発酵温度を43℃とすること以外は実施例1と同様の製造を行った。 得られた製品の風味・食感を乳脂肪3.0%の通常品と比較したところ、表2に示すように乳脂肪濃度3.0%通常品とほぼ同様の乳脂肪感を示すことが確認された。

    [試験例2]
    低脂肪通常発酵品(乳脂肪1.5%)と無脂肪本発明品(乳脂肪0.5%、0.1%)の官能評価試験 乳脂肪分1%以下では、通常濃度(3%)の乳脂肪分を有する発酵乳との官能評価試験は一方的な評価結果となる懸念があったため、1.5%に乳脂肪を減じて通常の発酵を行った発酵乳(コントロール品)と乳脂肪濃度0.5%、0.1%の本願発明発酵乳を試験例1同様の官能評価試験に供した。 得られた結果を表3a、表3bに示す。 乳脂肪0.5%の本発明発酵乳は「味の濃厚さ(コク)」において通常の製法で調製された乳脂肪分1.5%の発酵乳より「強い」との結果が得られた。 また0.1%の本発明発酵乳は「味の濃厚さ(コク)」においてコントロール品と「同等」との結果が得られた。 一方「舌触りのなめらかさ」はどちらもコントロール品に劣っており全ての評価軸を考慮した全体的な乳脂肪感については乳脂肪代替物等の添加を検討する必要のあることが判明した。 しかしながら、「無脂肪」表示が可能な領域においても本発明発酵乳は乳脂肪感が明確に向上していることを確認することができた。

    [試験例3]
    発酵温度と乳脂肪感等との関係検討 乳脂肪分1.5%における、発酵温度が乳脂肪感、組織の堅さに与える影響の検討を行った。 発酵温度、発酵時間が変動する以外は実施例1の製造方法に従って製造を行い乳脂肪感等の比較対象は乳脂肪3%の通常の発酵を行った発酵乳を用いた。 その際、発酵温度の検討範囲は発酵が7時間以内に終了することを目安として設定した。 また本発明の適用製品の例として、得られた発酵乳の組織の堅さを目安として前発酵(主にデザートタイプ)、後発酵(主にハードタイプ)の各発酵乳に適用した場合の適合性についても評価した。 結果を表4に示す。

    [試験例4]
    風味の劣化を感じる乳脂肪濃度の検討 本発明の適用範囲を評価するために乳脂肪濃度の異なる通常発酵乳同士での官能評価試験を行った。 表5に通常の乳脂肪濃度(3.0%)と2.0%に乳脂肪分を減じた各通常発酵乳間の官能検査結果を示す。 その結果、2.0%まで乳脂肪濃度が低下すると「味の濃厚さ(コク)」の評価は若干ぶれているものの「舌触りのなめらかさ」「味のまろやかさ」「味の濃厚さ(コク)」の3つの評価軸共に乳脂肪2.0%発酵乳の評価は低下していることが確認された。 従って、総合的に見て2.0%まで乳脂肪濃度が低下すると明確に乳脂肪感の低下を感じ取れることから、本発明の適用対象製品を2.0%以下の乳脂肪分を有する発酵乳製品と設定した。

    本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
    なお、本出願は、2005年10月14日付けで出願された日本特許出願(特願2005−300646)に基づいており、その全体が引用により援用される。
    また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。

    本発明は、乳脂肪分0.1%から2.0%という乳脂肪分の少ない状態で、乳脂肪代替物や乳風味付与剤を用いることなく製造工程上の工夫のみで乳脂肪の低減に伴う乳脂肪感の劣化を抑制することができるという効果を有している。 特に、乳脂肪分が1.0%から1.5%の間で添加剤を用いずに通常品と同等か同等以上の乳脂肪感を得ることができることから、「低脂肪」の強調表示と「添加物不使用」の強調表示を合わせて付すことが可能という効果を有している。 つまり、乳脂肪分が1.0%から1.5%の間では、「低脂肪」であるにも拘わらず「添加物不使用」でしかも「おいしい」低脂肪発酵乳を提供することが可能という従来無い顕著な効果を有している。

    QQ群二维码
    意见反馈