消化器の病的状態の改善に使用するためのラクトコッカスラクティス株

申请号 JP2013543895 申请日 2010-12-17 公开(公告)号 JP5989661B2 公开(公告)日 2016-09-07
申请人 コンパニ・ジェルベ・ダノン; COMPAGNIE GERVAIS DANONE; 发明人 レシック,ビリアナ; シャンボー,イザベル;
摘要
权利要求

CNCMに番号I-2807で寄託された株であることを特徴とする、ラクトコッカス ラクティス株。腸上皮バリアの完全性を改善するための、請求項1に記載のL. ラクティス株を含む組成物。医薬として使用するための、請求項1に記載のL. ラクティス株又は請求項2に記載の組成物。

说明书全文

本発明は、消化器の病的状態の改善に使用するための乳酸菌を含む組成物に関する。特に、このような組成物は、消化器疾患の治療及び/又は予防に適したラクトコッカス ラクティス株を含む。

胃腸感染症は、世界中できわめて一般的である。非常に多くの冒された人々において、完全回復は急速に起こる。しかしながら、相当な割合の胃腸炎に罹患した患者が、過敏性腸症候群(IBS)のような長く続く胃腸の症候群を発症する。実際、3.7〜36%の個体が細菌性又はウイルス性胃腸炎の後にIBSを発症すると推定されている(Spiller及びGarsed, 2009)。

また、胃腸感染症は、最も頻繁な下痢の原因の1つである。重篤な症例においては、下痢を引き起こす感染症は、胃の炎症を更に引き起こし得る。 また、胃腸感染症は、まとめて炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれるクローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)を含む。

過敏性腸症候群(IBS) IBSは、下痢又は便秘、腹痛、腹部膨満及び排泄物中への粘液の排出を特徴とする、結腸の慢性機能疾患である。 炎症及び感染症は、IBSの発生に加担すると考えられている(Ohman及びSimren, 2010)。腸内細菌科細菌は、健常被験者と比較して、IBS被験者においてより多く観察された(Siら, 2004)。しかし、この観察結果は、他者の研究(Malinenら, 2005)においては再現されず、腸内細菌科の細菌がIBSの発生病理に加担する場合には、それが唯一の因子ではないことを示唆する。加えて、IBS被験者は、健常被験者よりも多くの腸管凝集性のエシェリシア コリ(Escherichia coli) (すなわち、病原性のエシェリシア コリ株)を保有していることが示されている(Sobieszczanskaら, 2006)。

腸内細菌の量とIBSサブグループとの間にのみ関連性が存在する一方、腸内細菌科のメンバーが感染後IBS (PI-IBS)の症例においてIBSを引き起こし得ることについての証拠が増大しつつある(Jiら, 2005; Marshallら, 2010及びThabaneら, 2010)。これらの研究において、腸内細菌科の細菌(エシェリシア コリ、カンピロバクター(Campylobacter)、シゲラ(Shigella))により引き起こされる胃腸炎に罹患する被験者が、より多くのIBS罹患リスクを示したことが示されている。

近年、免疫活性化がIBSの推定上の病理学的原因であることが示唆されたことから、研究者らは、IBS治療のための抗炎症剤の使用を評価し始めている(Camilleri, 2010)。例えば、抗炎症剤であるメサラミンは、IBS被験者において非常に有望な結果を示した(Corinaldesiら, 2009)。この研究において、メサラミンは、IBSの症状を緩和し、全体的な健康感(well-being)を改善することが示された。

更に、プロバイオティクス、特に乳酸菌株は、IBSの治療及び/又は予防において有益であることが報告されている。このような株の例は、国際出願WO 2007/036230、WO 03/010297及びWO 2009/080800に開示されている。

感染後過敏性腸症候群(PI-IBS) PI-IBSは、胃腸感染症の後に発症する過敏性腸症候群のサブグループである。 PI-IBSは、欧州で、特にUKで主に報告されている。にも拘わらず、2つの近年の研究(1つは中国、1つは韓国から)は、PI-IBSが、西洋において見られるものと同程度の有病率をもって、東洋諸国においても起こっていることを報告している。

病原性細菌は、最も多くの研究において、PI-IBSの発症に係る病因的因子として同定されている。サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属及びカンピロバクター属のような腸内細菌が、最も頻繁に単離された細菌であった。可能性としては、リステリア属(Listeria)又は病原性E.コリのような胃腸炎を引き起こすその他の細菌が含まれ得る。近年の研究は、ウイルス(例えばロタウイルス、アデノウイルス、カリシウイルス(calcivirus))及び寄生虫(ジアルジア ランブリア(Giardia lamblia)、ブラストシスティス ホミニス(Blastocystis hominis))を含むその他の感染性因子もまた含まれ得ることを示す。腸管感染症一般の発生率の低減が、PI-IBSの発生率及び可能性としてPI-IBSの症状の重篤度を低減し得るという仮説が存在する。

PI-IBSの根本的なメカニズムは、はっきりとは特定されていない。進行中の穏やかな炎症の役割に特別な注意が払われている。Spiller及びGarsed (2009)は、PI-IBS発症患者において減少しがちな上皮内リンパ球、固有層Tリンパ球、マスト細胞及びカルプロテクチン陽性マクロファージの数の増大を見出した。抗炎症特性を有することが示されているプロバイオティクス株はほとんどない。

上皮細胞及び密着結合を含む腸の上皮内膜は、半透性であり、小さな粒子の通過を許容し、粘膜バリア機能の維持に関わる。インビトロ及びインビボ研究は、PI-IBSにおける腸の免疫系の活性化が、腸上皮層の透過性の増大に関連づけられる局所的抗原曝露の亢進の結果であることを示唆している。PI-IBSを有する患者は、健常被験者と比較して、透過性の増大を有する。腸透過性の低減は、PI-IBSの症状に直接的に有益であり得る。いくつかの研究が、ラクトバシラス種のいくつかの株が上皮バリアの完全性を増大することができることを示している一方、L.ラクティス株が類似の特性を有するという直接的な証拠はない。対照的に、遺伝的に改変されたL.ラクティス株が、上皮に有害であり得るという証拠はある(Shao及びKaushal, 2004)。

炎症性腸疾患(IBD) IBDは、2つの腸の炎症性疾患:クローン病又は潰瘍性大腸炎のどちらでもある。 クローン病及び潰瘍性大腸炎は、遺伝的及び環境的影響(因子)、特に生物的影響に伴う、慢性の、特発的な免疫媒介性の疾患である。クローン病は、しばしば、局所的な膿瘍及び瘢痕に伴う下痢、痙攣、及び食欲及び体重の低下に関連づけられている。また、潰瘍性大腸炎は、粘液排出及び下血、痙攣性の腹痛並びに粘膜の炎症及び潰瘍斑点を有する浮腫を伴う下痢に関連づけられている。クローン病及び潰瘍性大腸炎は、選択的には、遠位回腸及び結腸内の最も高濃度で圧倒的に嫌気性の細菌を有する領域において起こる。微生物抗原に対する血清反応は、80%のクローン病患者において存在し、抗細菌血清学的に高い価が重篤な疾患に関連づけられている(Mowら, 2004)。

クローン病について続く論争は、病原体が炎症反応の慢性的に再発する性質に加担しているか否かである。近年のかなりの証拠が、クローン病の発病における機能的に異常な(腸内細菌科に属する)E.コリ株に関係する (Sartor, 2008)。粘着性/侵襲性E.コリ(AIEC)は、上皮細胞に付着して侵入し、腸上皮細胞及びマクロファージのなかで生残する(Darfeuille-Michaudら, 1998)。上皮付着、侵入及び生残を促進する毒性の因子及び分子メカニズムがインビトロ研究により解明されている(Darfeuille-Michaudら, 1998及びBaumgartら, 2007)。

IBD研究の活発な領域は、慢性腸炎の原因としての、微生物の異常な組成又は機能である細菌症の可能性の評価である。細菌症は、いくつかのメカニズムによって腸炎を誘導し得る(Sartor, 2009)。ブチレート及びその他の短鎖脂肪酸産生の欠陥は、腸の上皮機能及び粘膜バリア特性に大いに影響を与え得る。有益及び有害細菌の相対的なバランスは、炎症の誘導 対 粘膜のホメオスタシスに決定的であり得る。腸内細菌叢の毒性代謝物産生能力は、潰瘍性大腸炎の発病に関連し得る。また、腸内細菌は、特に酸素代謝物分解の欠陥を伴う宿主において組織の損傷を引き起こし得る活性酸素種を産生することができる。

いくつかの研究は、IBD患者の胃腸の細菌叢における顕著な変化について出典している(Petersonら, 2008)。分子レベルの技術により、IBDにおいて、ある細菌の集団、特にクロストリジウム属のサブセットの縮小及び腸内細菌科細菌を含むその他の拡大が示されている(Sartor, 2009)。Swidsinskiら(2009)は、CD及びUC患者の細菌叢において、腸内細菌がより多いことに気付いた。

しかしながら、IBDに関連するか又はIBDを開始する微生物の特徴を定義することは、宿主の遺伝学的特徴、炎症の状態及び食餌により複雑である(Petersonら, 2008)。ヒトIBDにおいて、炎症を引き起こす微生物の群集を特定するための有望な研究を計画することは、遺伝的に感受性の集団においてでさえも実現可能ではなかった。

結果として、過去数年間にわたって、IBDに酷似する慢性腸炎の様々なマウスモデルが開発され、IBD及び細菌叢の下方制御(deregulation)に関する情報が提供されている。免疫系又は粘液のグリカンに遺伝子操作による欠陥を有する動物を含む多様なIBDマウスモデル(これは、細菌叢を有して従来どおりに生育させた後に抗生物質で治療されたか、又は病原菌なしで生育させた後に健常なドナーからの胃腸の細菌叢でコロニー形成された)が、細菌叢の存在が病変誘発に寄与することを立証している(Garrettら, 2007; Kangら, 2008及びSartor, 2008)。げっ歯類の大腸炎モデルは一般的に胃腸の微生物叢の存在に依存的であるが、全ての微生物叢が疾患を誘発するわけではない(Kimら, 2007)ことを強調しておくことが重要である。動物モデル研究は、いくつかの細菌株が有害である一方、その他が保護効果を有し、多くが侵攻性でも有益でもないことを立証している(Sartor, 2009)。

L. Glimcherのグループは、病理学的特徴及び抗TNF治療に対する反応がヒトの疾患に酷似する潰瘍性大腸炎のロバストなマウスモデルを開発している。彼らは、(T-bet及びRAG2遺伝子のダブルノックアウトにより得られる;TRUC for T-bet RAG2潰瘍性大腸炎と呼ばれる)先天性免疫系における特定の調節性遺伝子の欠陥が、侵攻性で、自然発生した、及び伝染性のUC並びに免疫的にインタクトな宿主における大腸炎に対する感受性の増大をもたらすことを見出した(Garrettら, 2007)。

これらのインビボの結果は、クレブシエラ属(Klebsiella)及びプロテウス属(Proteus)の種が健常被験者よりもUC患者の排泄物においてより頻繁に観察されるという臨床的な観察結果に沿っている(Dorofeyevら, 2009)。また、IBD患者の腸内細菌に対する抗体力価の上昇に関する数多くの報告もある(Cooperら, 1988; Ibbotsonら, 1987及びTiwanaら, 1998)。

結論として、有益及び有害細菌種のバランスがホメオスタシス 対 炎症を決定する。これらのメカニズムにおける腸内細菌の関係が立証されている。このバランスは、特にプロバイオティクスを用いて操作し、IBD再発を治療及び予防することができる。

また、IBDの活発な期間中に、胃腸管の炎症が上皮の透過性の増大を引き起こし、上皮バリア機能の悪化をもたらすことも示されている(Madsenら, 2001)。 炎症性腸疾患を治療するための抗炎症性化学物質(生物製剤とも呼ばれる)の使用は持続的に増大し、今現在では、胃腸科専門医及び医師によってIBDケアに用いられている(Bosaniら, 2009を参照)。あるいは、プロバイオティクスがIBDを軽減するために用いられ、抗炎症メカニズムが作用機序であることが示唆された(Vanderpoolら, 2008)。

更に、増大しつつある証拠は、いくつかのプロバイオティクス及び片利共生細菌が、(透過性を低減する)腸バリアの損傷をインビトロ(Resta-Lenert及びBarrett, 2006及びMiyauchiら, 2008)及びインビボで改善し、IBS及びIBDの症状を和らげる助けとなっていることを示唆している。

上記の事項から、病原体が(IBS、PI-IBS及びIBDを含む)胃腸感染症を引き起こし得ること及び抗病原体活性を有する化合物又はプロバイオティクスがこれらの疾患を予防及び/又は治療することができることが明らかである。更に、抗病原体活性に関連づけられている上皮バリアの完全性は、炎症を更に回避することができる。 ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)細菌は、チーズ又は(ヨーグルトを含む)発酵乳製品のような乳製品において共通して見られる乳酸菌である。いくつかのラクトコッカス ラクティス細菌は、サルモネラ エンテリティディス(Salmonella enteritidis)及びエシェリシア コリのような病原性腸内細菌に対する活性を有すると記載されている(Olasupoら, 2003; Ganzleら, 1999)。

本発明者らは、2つのラクトコッカス ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)株、すなわちDN 030 066及びDN 030 087株が、抗炎症特性が既知の細菌株と比較して、上皮バリアの完全性を改善すること、更にDN 030 066株が、抗微生物活性が既知の株と比較して、秀逸な抗微生物活性を有することをインビトロで示した。

DN 030 066株は、ブダペスト条約に従って、CNCM (Collection Nationale de Cultures de Microorganisms, 25 Rue du Docteur Roux, Paris)に1995年10月24日に番号I-1631で寄託された。この株は、国際出願WO 97/16529に開示されている。

CNCM I-1631株は、下記の特徴を有する: - 形態:グラム陽性の微生物、主に小さなサイズの双球菌 - 下記の糖の発酵(30℃48hでAPI 50 CH strip - API MRS培地で得られた結果):リボース、ガラクトース、グルコース、マンノース、マンニトール、Nアセチルグルコサミン、アミダグリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、セロビオース、マルトース、ラクトース、トレハロース、アミドン、βゲンチオビオース。

DN 030 087株は、ブダペスト条約に従って、CNCM (Collection Nationale de Cultures de Microorganisms, 25 Rue du Docteur Roux, Paris)に2002年2月19日に番号I-2807で寄託された。

CNCM I-2807株は、下記の特徴を有する: - 形態:グラム陽性の微生物、主に小さなサイズの双球菌 - 下記の糖の発酵(37℃72hでAPI 50 CH strip - API MRS培地で得られた結果):リボース、ガラクトース、グルコース、マンノース、マンニトール、Nアセチルグルコサミン、アミダグリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、セロビオース、マルトース、ラクトース、メリビオース、トレハロース、アミドン、βゲンチオビオース。

したがって、本発明は、消化器疾患の治療又は予防に使用するための、DN 030 066 (CNCM I-1631)及びDN 030 087 (CNCM I-2807)株からなる群より選択されるラクトコッカス ラクティス株を提供する。

1つの実施態様において、前記使用は、病原性微生物、好ましくは病原性腸内細菌の成長を阻害するため及び/又は腸上皮バリアの完全性を改善するためである。 前記病原性微生物は、好ましくは、エシェリシア属、サルモネラ属、リステリア属、カンピロバクター属、シゲラ属、プロテウス属(例えばP. ミラビリス(P. mirabilis))及びクレブシエラ属からなる群より選択され、好ましくはE. コリ、L. モノサイトゲネス(L. monocytogenes)及びS. エンテリティディス種からなる群より選択される。 前記消化器疾患は、特に胃又は腸の不快感;胃又は腸の感染症;下痢;便秘;IBS;PI-IBS又はIBD (すなわちクローン病及び/又は潰瘍性大腸炎)であり得る。

また、本発明は、上記に規定された消化器疾患の治療又は予防において、病原性微生物、好ましくは病原性腸内細菌の成長を阻害するため及び/又は腸上皮バリアの完全性を改善するための、突然変異誘発又は遺伝子形質転換によりDN 030 066株又はDN 030 087株から得られたラクトコッカス ラクティス変異株を提供する。

前記ラクトコッカス ラクティス変異株は、例えばいくつかの特性を改変するために(例えば糖発酵能力、酸耐性、胃腸管に輸送されたときの生存能力又は後酸性化)、DN 030 066株又はDN 030 087株の1又はそれより多い内因性遺伝子を変異させることにより得ることができる。また、例えば前記株に更なる生理学的特徴を与えるために、DN 030 066株又はDN 030 087株の1又はそれより多い興味ある遺伝子の遺伝子形質転換から得られる変異株であり得る。 前記株は、細菌の全ての形態において用いることができ、死んでいてもよいし生きていてもよく、好ましくは生きている。

また、本発明は、上記に規定された消化器疾患の治療又は予防において、病原性微生物、好ましくは病原性腸内細菌の成長を阻害するため及び/又は腸上皮バリアの完全性を改善するために、DN 030 066株又はDN 030 087株から得られた細胞フラクション又は代謝物を提供する。 前記細胞フラクションは、例えば細胞壁フラクション、細胞質フラクション又は培地上清若しくはそのフラクションであり得る。 前記代謝物は、例えば、DN 030 066株又はDN 030 087株の発酵中に産生された短鎖脂肪酸、ペプチド(例えばバクテリオシン)及び/又は化合物であり得る。

また、本発明は、上記に規定された消化器疾患の治療又は予防において、病原性微生物、好ましくは病原性腸内細菌の成長を阻害するため及び/又は腸上皮バリアの完全性を改善するための、 - 上記に規定されたDN 030 066 (CNCM I-1631)及びDN 030 087 (CNCM I-2807)株からなる群より選択されるラクトコッカス ラクティス株、又は - 上記に規定されたラクトコッカス ラクティス変異株、又は - 上記に規定されたDN 030 066株又はDN 030 087株から得られた細胞フラクション又は代謝物 を含む組成物を提供する。

前記組成物は、上記に規定された株とは異なる少なくとも1つのその他のラクトコッカス ラクティス株及び/又はラクトバシラス属(Lactobacillus)又はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の乳酸菌のようなラクトコッカス ラクティスとは異なる種の少なくとも1つの乳酸菌を含んでいてもよい。

前記組成物は、投与、特に経口投与に適した任意の形態にあり得る。これは、例えば固体、半固体、液体及び粉体を含む。液体組成物は、一般的に、例えば飲料として、より容易な投与に好ましい。 前記組成物は、g乾燥重量組成物当たり、105〜1013コロニー形成単位(cfu)、好ましくは少なくとも106 cfu、より好ましくは少なくとも107 cfu、更により好ましくは少なくとも108 cfu及び最も好ましくは少なくとも109 cfuの少なくとも1つの上記に規定されたL. ラクティス株又はL. ラクティス変異株を含んでいてもよい。液体組成物の場合、これは、一般的に、104〜1012コロニー形成単位(cfu)、好ましくは少なくとも105 cfu、より好ましくは少なくとも106 cfu、更により好ましくは少なくとも107 cfu及び最も好ましくは少なくとも109 cfu/mlに相当する。

前記組成物は、食料製品又は医薬製品であり得る。 また、前記組成物は、乳製品又は発酵製品、好ましくは発酵ミルク製品又は発酵ホエイ製品のような発酵乳製品であり得る。 発酵製品は、液体の形態で存在するか又は発酵した液体を乾燥させることにより得られた乾燥粉体の形態で存在し得る。

発酵乳製品の形態での投与は、上記に規定された消化器疾患の改善に更に有益な低ラクトースレベルという更なる利点を有する。 前記発酵製品は、生鮮食品であり得る。過酷な熱処理工程を経ていない生鮮食品は、細菌株が生きた形態で存在するという利点を有する。

前記発酵ミルク製品は、ヨーグルト、又は固形、かくはん型若しくは飲用の形態にある発酵ミルク、又はチーズであり得る。 また、前記発酵製品は、固形、かくはん型又は飲用の形態にある、発酵した大豆、穀類及び/又は果実のような発酵植物性製品であり得る。

別の実施態様において、前記組成物は、離乳食、乳児用調製乳又は乳児用フォローオンフォーミュラである。 別の実施態様において、前記組成物は、栄養補助又は栄養サプリメントである。 また、本発明の栄養組成物は、食物サプリメント及び機能性食品を含む。

本明細書で用いるように、「食物サプリメント」は、食物に通常用いられる化合物からなる製品であるが、錠剤、散剤、カプセル剤、剤の形態又は栄養物に通常関連づけられていないその他の形態になく、かつ、健康に有益な効果を有するものをいう。

本明細書で用いるように、「機能性食品」は、健康に有益な効果も有する栄養物である。特に、食物サプリメント及び機能性食品は、疾患に対して、例えば慢性疾患に対して、生理学的 - 保護的又は治癒的 - 効果を有し得る。

好ましくは、前記組成物は、特に乳児、老齢の被験者及び代謝制御不全(metabolic deregulation)に罹患する被験者、例えば肥満の被験者を含むヒトに使用することを意図する。

また、本発明は、DN 030 066 (CNCM I-1631)及びDN 030 087 (CNCM I-2807)株からなる群より選択されるラクトコッカス ラクティス株の突然変異誘発又は遺伝子形質転換工程を含む、病原性微生物、好ましくは病原性腸内細菌の成長を阻害するか及び/又は腸上皮バリアの完全性を改善することができるラクトコッカス ラクティス変異株の取得方法を提供する。

ラクトコッカス ラクティス株の突然変異誘発又は遺伝子形質転換方法は、当業者に周知である。 また、本発明は、CNCMに番号I-2807で寄託された株であることを特徴とするラクトコッカス ラクティス株を提供する。 前記株は、病原性微生物、好ましくは上記に規定された病原性腸内細菌の成長を阻害するか及び/又は腸上皮バリアの完全性を改善することができる。

また、本発明は、ラクトコッカス ラクティスCNCM I-2807株を含む組成物を提供する。 また、本発明は、ラクトコッカス ラクティスCNCM I-2807株又は医薬として使用するための前記株を含む組成物を提供する。 また、本発明は、必要のある被験者において、前記被験者に対して上記に規定されたL. ラクティス株又は組成物を投与することを含む、上記に規定された消化器疾患を治療又は予防する方法を提供する。

前記の特徴に加えて、本発明は、DN 030 066及びDN 030 087株の抗病原体活性及び経上皮電気抵抗(TEER)を説明する実施例に言及する下記の記載から明らかとなるその他の特徴を含む。

実施例1:L. ラクティスDN 030 066株の抗病原体活性の評価 サルモネラ エンテリティディスB1241、リステリア属及び病原性E.コリに対する抗微生物活性をオーバーレイアッセイで測定した。3つのラクトコッカス ラクティス株をこの試験で評価した:本発明のDN 030 066株、バクテリオシン産生株 (それぞれナイシン及びラクチシン)として以前に記載された、ラクトコッカス ラクティス亜種ラクティス DSMZ 20729及びラクトコッカス ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris) DSMZ 4645(Bartoloniら, 2004及びParkら, 2003)。

L. ラクティス株は、スタンプを用いて凍結ストックから新鮮な寒天プレートに移した。視認可能なコロニーが見られるまで、プレートを一晩成長させた。次いで、ブレインハートインフュージョン培地を含むトップアガー及び選択された病原体の希釈液を寒天プレート上に注いだ。プレートを37℃でインキュベートした。翌日、病原体阻害域の直径を測定した。

1点は1〜3mmの直径に、2点は4〜6mmの直径に、3点は6mmよりも大きい直径に相当する。実験は、3つの異なる培地で行った:MRS (De Man Rogosa and Sharpe)、Elliker及びTGV (トリプトン-グルコース-ミートエキス)。各実験は、3連で(in triplicate)独立して行った。各培地につき得られたスコアを合計し、各株及び各病原体について特異的なスコアを得た。次いで、各病原体につき得られたスコアを合計し、各株についての全体的な抗微生物活性スコアを得た。結果を下記の表1に示す。

上記の結果は、本発明のDN 030 066株が、抗病原体活性を有することが既知の2つのラクトコッカス ラクティス株よりも優れた抗微生物活性を有することを示す。

実施例2:L. ラクティスDN 030 066及びDN 030 087株のTEER評価 腸バリアの完全性は、T84細胞単分子層の頂端側及び底側間で観測される電位差を測定することにより評価することができる。この実験モデルは、経上皮電気抵抗(TEER)と呼ばれている(Hirotaniら, 2008)。 種々の細菌株の培養上清をPBSで洗浄した。次いで、細菌(100 cfu/細胞)をT84細胞単分子層の頂端側に加えた。ビフィドバクテリウム属64株、ラクトバシラス属32株を含む96株及びラクトコッカス ラクティス2株(DN 030 0664及びDN 030 087)をこのアッセイにおいて試験した。種々の細菌のインキュベーションの4h及び6h後、TEER値を測定し、上皮バリア機能を評価した。全ての実験は、3回独立して3連で行った。t=0におけるT84細胞の値を100%に設定した。より高いTEER値を有する7株についての結果を下記の表2に示す。

上記の結果は、本発明のDN 030 0664及びDN 030 087株が、(抗炎症活性を有する株を含む) 既知の株と比較して、上皮バリアの完全性を改善することを示す。

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