香味増強剤

申请号 JP2014515509 申请日 2013-01-18 公开(公告)号 JP6168663B2 公开(公告)日 2017-07-26
申请人 国立大学法人九州大学; 发明人 下田 満哉; 藤 麻衣子;
摘要
权利要求

酢酸、HEMF(4-ヒドロキシ-2-エチル-5-メチル-3(2H)-フラノンと4-ヒドロキシ-5-エチル-2-メチル-3(2H)-フラノンとの任意の割合での混合物)、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含む、食品に添加するための組成物であって、 メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、およびイソアミルアルコールを50〜200重量部含む、組成物。食品として許容される酸化防止剤を含む、請求項1に記載の組成物。食品として許容される酸化防止剤が、アスコルビン酸、または食品として許容されるその塩である、請求項2に記載の組成物。酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む、塩味の香気、塩味、およびうま味からなる群より選択されるいずれかの増強のための、食品用組成物。食品として許容される酸化防止剤を含む、請求項4に記載の香料組成物。酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む、食品に添加して、塩味の香気、塩味、およびうま味からなる群より選択されるいずれかを増強するための、調味料組成物。食塩、グルタミン酸ナトリウム、およびイノシン酸ナトリウムをさらに含む、請求項6に記載の調味料組成物。食塩濃度が15%以下である醤油である、請求項6または7に記載の調味料組成物。請求項1〜3、4、および6のいずれか1項に記載の組成物を添加した、食品(food product)。食塩を含み、喫食時の食塩濃度が0.7%未満であり、 酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールを含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、およびイソアミルア ルコールを50〜200重量部含む、食品。HEMFの含量が、400ppb〜2,000ppbである、請求項10に記載の食品。魚すり身製品、畜肉製品、チーズ、バター、スナック菓子、レトルトパウチ惣菜、チルド惣菜、冷凍惣菜、即席めんである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の食品。食塩を含む食品において、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールの含量が、下記の重量比となるように調整する工程を含む、塩味の増強された食品を製造する方法: ・メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部となるように調整する。食品が、グルタミン酸ナトリウム、およびイノシン酸ナトリウムをさらに含む、請求項13に記載の製造方法。魚すり身製品、畜肉製品、チーズ、バター、スナック菓子、レトルトパウチ惣菜、チルド惣菜、冷凍惣菜、即席めんである、請求項13または14に記載の製造方法。食品における、風味の増強方法であって、 食品が、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むように調整する工程を含む、方法。メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むように調整された食品を、対象に摂取させる工程を含む、対象に増強された食品風味を感得させる方法であって、増強された食品風味が、塩味の香気、塩味、およびうま味からなる群より選択されるいずれかである、方法(ただし、医療行為を除く。)。

说明书全文

本出願は、2012年5月17日に米国特許庁に出願した、米国仮出願61/648,160に基づく優先権を主張する。この米国仮出願に記載された内容はすべて、本出願に援用される。

本発明は、飲食品等における塩味またはうま味を増強するための、香気成分からなる組成物に関する。本発明は、食品および食品に用いる添加物の製造、食品の風味の探求、ヘルスケア、および医療等の分野で有用である。

食塩摂取量は高血圧、脳卒中、がんなど様々な疾病のリスクと強く関連しており、これらの予防の観点からWHOは食塩摂取量として一日5g未満を推奨している。日本においては、醤油、味噌等の食塩系調味料の使用が多い食文化であるため、厚生労働省は目標摂取量を男性9.0 g、女性7.5 g未満として減塩を推奨している。健康志向の高まりとともに食塩摂取量は年々減少傾向にあるものの、未だ平均10.6 g(男性:11.4 g、女性:9.8 g)と約70%の人は目標量以上の食塩を摂取しているのが現状であり(2010年)、さらなる減塩が必要である。

スピラントール、ソルビトール、蛋白質の酵素分解混合物、昆布エキス、サンショウ抽出物、グルタミン酸デカルボキシラーゼ促進成分ならびにメチオナールが塩味増強剤として開発されてきた(特許文献1〜10)。

人は食経験に基づいて、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚から得られる様々な情報を脳内で総合的に処理することにより、その食品の受容性、すなわち、おいしさを判断していると考えられる。とりわけ、飲食物を咀嚼しているとき舌および口腔内の味蕾細胞から発せられる味覚情報と鼻腔内の嗅細胞から発せられる嗅覚情報は脳内で統合され広義の味として認知される。このように味覚と嗅覚を惹起するのが、いずれも化学物質であることから、これら両感覚は化学感覚と呼ばれ、食品のおいしさに重大な影響を及ぼす。近年、嗅覚情報が味覚に及ぼす影響(非特許文献1〜4)、逆に味覚情報が嗅覚に及ぼす影響(非特許文献5)に関する研究が活発に行われている。

揮発性成分による塩味の増強が種々試みられてきた。酸度 0.01〜0.5%程度の食酢希釈液(非特許文献6、7)、3 ppb以上3000 ppb未満のメチオナール(前掲特許文献10)、あるいはHEMF(4-Hydroxy-2(or5)-ethyl-5(or2)-methyl-3(2H)-furanone)とフルフラールからなる香気組成物(特許文献11)、HEMFとメチオナールからなる香気組成物(非特許文献8)が塩味増強効果を有することが報告されている。

HEMFに関しては、(a)ソトロン(3-Hydroxy-4,5-dimethyl-2(5H)-furanone)および/またはHEMF、並びに、(b)DMS(Dimethyl sulfide)、メタンチオール、硫化素、二硫化ジメチル、三硫化ジメチルからなる群から選択される1種または2種以上、を含有することを特徴とする、風味原料素材(特許文献12)、HEMFEを400ppm以上含有することを特徴とする香味剤(特許文献13)、特定の醸造醤油の製造方法により得られる醸造醤油であって、全窒素1.0%(W/V)当りHEMFを15.0ppm以下且つメチオノールを2.0ppm以上含有する前記醤油(特許文献14)についても検討されてきている。また、他の成分を利用したものとして、植物タンパク質を含む原料にタンパク質を分解する能を有する生物を作用させて得られる調味料であって、アミノ酸化率が65%以上、イソブチルアルコール濃度が0.1mg/g・窒素以下、ノルマルブチルアルコール濃度が0.25mg/g・窒素以下、イソアミルアルコール濃度が0.5mg/g・窒素以下、かつ、酢酸濃度が100mg/g・窒素以下であることを特徴とする調味料(特許文献15)が提案されている。

発明者らは、本醸造醤油から抽出された香気濃縮物を食塩水(200mM)に添加したとき塩味強度が約50%増強すること、また、この香気濃縮物をグリシン水溶液に添加したとき、グリシン水溶液のうま味が強化されることを見出した(非特許文献9)。

特開2006-296356

特開2008-99624

WO2008/120726

WO2009/113563

WO2009/119503

特開2010-75070

特開2011-229524

特開2011-254772

特開2011-72307

特開2011-83262

特開平3-272662(特公平7-85703)

特開2003-79336

特開2004-65063

特開2004-201678

WO2007/116474(特許第4781428)

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J. Djordjevic . R. J. Zatorre . M. Jones (2004), GotmanOdor-induced changes in taste perception. Exp Brain Res159: 405.408

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20) 坂本真里子、岡田千穂、井上あゆみ、小笠原靖、赤野裕文、畑江敬子(2009), 食酢希釈液と食塩水溶液の閾値および食酢と食塩の共存が閾値に及ぼす影響. 日本調理科学会誌 Vol. 42, No. 3, 167-173

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日本食品科学工学会 第58回大会講演集 88頁

下田満哉(2007), 醤油の香りは塩味を増強するか?, 日本味と匂学会誌 14巻 1号 3-8頁

上述したように、発明者らは、本醸造醤油から抽出された香気濃縮物について検討してきた。醤油中には約300種類の揮発性成分が含まれているが、塩味やうま味の増強に寄与する成分(あるいは組成物)を明らかにすることができれば、おいしい減塩食を提供することができると考えた。本目的を達成するために醤油の香りに関する分析化学的研究を鋭意展開することにより、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、メチオナール(いずれも、揮発性化合物)が特定の濃度比率で存在するときに醤油の特徴香を良好に再現し得ることを明らかにした。さらに、これら四つの化合物からなる組成物を適量の食塩とうま味物質が存在する媒質に適量添加することにより、塩味およびうま味が増強することを見出し、本発明を完成させた。

本発明は以下の各発明を包含する。 [1] 酢酸、HEMF(4-ヒドロキシ-2(あるいは5)-エチル-5(あるいは2)-メチル-3(2H)-フラノン)を含む香味増強剤。 [2] さらに、イソアミルアルコール、および、メチオナールを含む香味増強剤。 [3] メチオナール1重量部に対して、酢酸を500から10000重量部、HEMFを100から2000重量部、および、イソアミルアルコールを20から500重量部含む[2]記載の香味増強剤。 [4] メチオナール1重量部に対して、酢酸を25000重量部、HEMFを500重量部、および、イソアミルアルコールを100重量部含む[3]記載の香味増強剤。 [5] うま味が増強される[1]から[4]のいずれかの香味増強剤。 [6] 塩味が増強される[1]から[4]のいずれかの香味増強剤。 [7] [1]から[6]のいずれかの香味増強剤を含む、食品香料、調味料、飲食品素材、あるいは飲食品。 [8] [1]から[6]のいずれかの香味増強剤を適用することを含む、飲食品の香味増強方法。

本発明はまた、以下の各発明を包含する。 [1] 酢酸、HEMF(4-ヒドロキシ-2-エチル-5-メチル-3(2H)-フラノンと4-ヒドロキシ-5-エチル-2-メチル-3(2H)-フラノンの任意の割合での混合物)、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含む、食品に添加するための組成物であって、 メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む、組成物。 [2] メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む、[1]に記載の組成物。 [3] 食品として許容される酸化防止剤を含む、[1]または[2]に記載の組成物。 [4] 食品として許容される酸化防止剤が、アスコルビン酸、または食品として許容されるその塩である、[3]に記載の組成物。 [5] 酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む、食品用香料組成物。 [6] メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む、[5]に記載の香料組成物。 [7] 食品として許容される酸化防止剤を含む、[5]または[6]に記載の香料組成物。 [8] 酢酸、HEMF(4-ヒドロキシ-2-エチル-5-メチル-3(2H)-フラノンと4-ヒドロキシ-5-エチル-2-メチル-3(2H)-フラノンの任意の割合での混合物)、イソアミルアルコール、およびメチオナール、ならびに食品として許容される添加物を含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む、食品に添加するための、調味料組成物。 [9] メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む、[8]に記載の香料組成物。 [10] 食塩、グルタミン酸ナトリウム、およびイノシン酸ナトリウムをさらに含む、[8]または[9]に記載の調味料組成物。 [11] 食塩濃度が15%以下である減塩醤油である、[8]〜[10]のいずれか一に記載の調味料組成物。 [12] [1]〜[11]のいずれか一に記載の組成物を添加した、食品(food product)。 [13] 食塩を含み、喫食時の食塩濃度が0.7%未満であり、 酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールを含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む、食品。 [14] HEMFの含量が、400ppb〜2,000ppbである、[13]に記載の食品。 [15] 食塩を含む食品において、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールの含量が、[1]または[2]に定義した重量比となるように調整する工程を含む、塩味の増強された食品を製造する方法。 [16] 食品が、グルタミン酸ナトリウム、およびイノシン酸ナトリウムをさらに含む、[15]に記載の製造方法。 [17] 魚すり身製品、畜肉製品、チーズ、バター、スナック菓子、レトルトパウチ惣菜、チルド惣菜、冷凍惣菜、即席めんである、[12]〜[14]のいずれか一に記載の食品、または[15]または[16]に記載の製造方法。 [18] 食品における、風味の増強方法であって、 食品が、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含むように調整する工程を含む、方法。 [19] メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むように調整する、[18]に記載の方法。 [20] メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含むように調整された食品を、対象に摂取させる工程を含む、対象に増強された食品風味を感得させる方法。

本発明はさらに、以下の各発明を包含する。 [21] 食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい疾患または状態の処置において使用するための、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールを含む組成物であって、 メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む、組成物。 [22] メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む、[21]に記載の組成物。 [23] 医薬または食品として許容される酸化防止剤を含む、[21]または[22]に記載の組成物。 [24] 医薬または食品として許容される酸化防止剤が、アスコルビン酸、または食品として許容されるその塩である、[23]に記載の組成物。 [25] 食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい疾患または状態が、心臓血管疾患、脳血管疾患、高血圧症、糖尿病、高脂血症または妊娠中毒症ある、[21]〜[25]のいずれか一に記載の組成物。 [26] 食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい対象における非治療的処置方法であって、 メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含むように調整されており、それによりうま味および/または塩味が増強された食品を対象に摂取させることを含む、方法。 [27] メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むように調整されている、[26]に記載の方法。 [28] 食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい対象が、血圧が高めの人、塩分感受性が高い人、動脈硬化の危険因子を持つ者、高齢者、乳児、幼児、高齢者、妊婦、血圧が高めの者、または喫煙者である、[26]または[27]に記載の方法。

本発明によれば、余分な味や香りを伴わない塩味増強組成物、うま味増強組成物、食品香料を調製することができるばかりでなく、件の組成物を添加してうま味や塩味を増強した食品を提供することができる。

発明を実施するための態様

[定義等] 本発明において数値範囲を「X〜Y」で表すときは、特に記載した場合を除き、その範囲は両端の数値XおよびYを含む。本発明で、組成物等おける成分の濃度に関し「%」で表すときは、特に記載した場合を除き、重量に基づく値である。

本発明で「食品」というときは、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えばスープおよび飲料を含む。また、本発明で「食品」というときは、特に記載した場合を除き、ヒトを対象としたもののみならず、動物を対象としたもの、例えば飼料およびペットフードを含む。さらに、本発明で「食品」というときは、特に記載した場合を除き、一般食品(健康食品を含む。)のみならず、保健機能食品(栄養機能食品および特定保健用食品を含む。)を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、介護食を含む。本発明で「医薬」というときは、特に記載した場合を除き、医薬品のみならず、医薬部外品(指定医薬部外品を含む。)を含む。

本発明で「食塩」というとき、および「塩分」というときの「塩」は、特に記載した場合を除き、NaCl(塩化ナトリウム、分子量 58.44277 g/mol)を指す。食品中の食塩の量は、ナトリウム量として表されることも多い。また食品中のナトリウム量は、一般には、式:ナトリウム(mg)×2.54÷1,000=食塩相当量(g)により、食塩量に換算できる。 本発明のある態様が、食塩の量または濃度で規定されるとき、その食塩の量または濃度はナトリウム量または濃度に換算することができる。そして、対象製品等のナトリウム量または濃度がその換算された値に該当するときは、その対象製品等は、少なくとも食塩の量または濃度に関しては、本発明のその態様と一致していると判断される。例えば、本発明で、食品において食塩濃度が0.7%未満というときは、食品100g中のナトリウム濃度が275mg未満、というのと同一である。

[食品に添加するための組成物] 本発明は、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールを含有することを特徴とする食品に添加するための組成物を提供する。

本発明の組成物は、酢酸(化学式:CH3COOH)を含有する。酢酸を多く含む食品としては、食酢があるが、これには通常4〜8 %の濃度の酢酸が含まれている。酢酸は、よく知られた刺激のあるにおいを有する。

本発明の組成物は、HEMFを含む。本発明で「HEMF」というときは、特に記載した場合を除き、下記の2つの化合物の任意の割合での混合物を指す。

本発明においてHEMFに関して、量または濃度を示すときは、特に記載した場合を除き、上記の2つの化合物の総量に基づいた値である。 本発明の組成物は、イソアミルアルコールを含む。イソアミルアルコール(3-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコールと称されることもある。)は、下式であらわされる化合物である。

イソアミルアルコールは、単独では、一般的には不快に感じられるにおいを有する。

本発明の組成物は、メチオナールを含む。メチオナール(3-メチルチオプロパナール、3-(メチルチオ)プロパナール、3-(メチルチオ) メチオナールプロピオンアルデヒドと称されることもある。)は、化式で表される。

本発明者らは、LDPEパウチ法(実施例の項参照)による醤油香気の、においについての官能検査を含む分析により、上記4成分が塩辛いイメージのにおい(Salty Flavor)に寄与していることを見出した。また、(1)イソアミルアルコール:HEMFおよび(2)酢酸:HEMFについて検討した結果、(1)では1:10、1:5、1:1の混合比、(2)では10:1、5:1、1:1の混合比において、官能検査により、より醤油らしい印象が感じられた。これらの結果をもとにイソアミルアルコール:酢酸:HEMFについて検討した結果、1:25:5および1:50:1の混合比において、官能検査により醤油の甘辛い印象が強く感じられた。最後に、メチオナールを含めた4種について検討した結果、イソアミルアルコール:酢酸:メチオナール:HEMFが100:2500:1:500となるとき、香立ちが非常に強く、追及していたSalty Flavorを最もよく再現することができることが分かった。また、この割合からなる組成物のにおいは、日本人の研究者にとどまらず、タイ人の研究者からも「しょっぱい醤油」と表現され、単なる醤油ではなく、“しょっぱい”という形容詞のついた回答が得られた。このことから、この割合の組成物は、普遍的に塩辛さを連想させるものであることが期待された。

したがって、本発明の組成物は、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量含むことが好ましい。また、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むことがより好ましい。さらにメチオナール1重量部に対して、酢酸を1500〜3000重量部、HEMFを300〜750重量部、および、イソアミルアルコールを75〜150重量部含むことがさらに好ましい。

本発明においては、上記4成分それぞれについて代替物を用いることができる。本発明者らは、まず、メチオナールを、同じ濃度(重量基準)のメチオノール(CH3SCH2CH2CH2OH)で置き換えることを検討した。結果、やや強度は減弱するもののSalty Flavorが感じられた。メチオノールがメチオナールと比べて閾値が高い(下表参照)ことを考慮し、続いて、メチオナールをその10倍の濃度のメチオノールと置き換え、評価した。その結果、ジャガイモ様のにおい、メタリックな印象が強くなってしまいSalty Flavorは認められなかった。

また、HEMFを同濃度の、3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン(ソトロン)または4-ヒドロキシ2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン(HDMF)で置き換えた結果、ソトロンではカレーを彷彿させるスパイシーさを伴う甘味が強く感じられ、Salty Flavorは認められず、HDMFではSalty Flavorは感じられるものの、におい強度が非常に弱かった。

そこで、閾値の違いを考慮し200分の1の濃度のソトロンまたは10分の1の濃度のHDMFと置き換えたところ、200分の1の濃度のソトロン添加時に、HEMF添加時と同様の明瞭なSalty Flavorが感じられた。一方、10分の1の濃度のHDMF添加時には、イソアミルアルコールや酢酸に由来するにおいが強く感じられ、全体として汗くさい香気となり、同濃度添加時には確認できたSalty Flavorが認められなかった。

このような結果となったのは、文献で報告される閾値は、使用サンプル、分析環境、分析条件によって幅があり(下表参照)、今回用いた閾値が実験系にそぐわなかった可能性が考えられた。

一方で、本発明の、酢酸、HEMF、イソアミルアルコールおよびメチオナールを含有する組成物は、各成分を、それと類似したにおいを呈する化合物であって、閾値その他を考慮した適切な濃度に調節されたものとの置換ができると期待できる。

本発明の組成物には、上記の4成分が目的の効果を発揮しうる限り、4成分以外の他の成分を配合することができる。4成分以外の他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、または医薬として許容される種々の添加剤であり得る。この例には、酸化防止剤抗(酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、賦形剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。

上記の4成分は、水に溶解するので、水溶液である組成物として調製可能である。しかしながら、本発明者らの検討によると、水溶液として調整して、その香気特性を経時的に追跡すると、調製直後の塩味とうま味を連想させる香りは数日中に減少し、イソアミルアルコールと酢酸混合液のにおいに近づくことが判明した。また、GC-MS法による解析では、保存中に、特にメチオナールとHEMFとが大幅に減少することが分かった。したがって、本発明の組成物には、両成分の保存の際の安定性を向上させることが重要である。そして、メチオナールおよびHEMFが保存中に失われる主たる原因は、酸化によるものと考えられる。したがって、本発明の特に好ましい態様の一つにおいては、適切な酸化防止剤(抗酸化剤)を上記の4成分と組み合わせる。

本発明の組成物に使用される酸化防止剤は、食品または医薬として許容される限り、また4成分の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、L-アスコルビン酸(ビタミンC)またはその塩もしくはエステル、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)またはその塩もしくはエステル、カテキン類、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール(ビタミンE)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)がある。配合量は、適宜設計できるが、例えば酸化防止剤としてアスコルビン酸を用いる場合、組成物中の濃度を0.2%以上とすることができ、0.4%とすることが好ましく、0.8%以上とすることがより好ましい。酸化防止剤としてアスコルビン塩またはエステルを用いる場合は、アスコルビン酸に換算した濃度として、0.2%以上とすることができ、0.4%とすることが好ましく、0.8%以上とすることがより好ましい。なお、本発明で単に「アスコルビン酸」というときは、特に記載した場合を除き、L-アスコルビン酸(分子量 176.1241g/mol)を指す。

本発明の食品に添加するための組成物は、いわゆる食品添加物として使用することができる。食品添加物としての典型的な用途の例は、香料、および調味料である。

本発明の組成物が香料として使用されるもの(香料組成物)である場合、他の成分の例は、アルデヒド類、アルコール類、エステル類等の香料成分であり、またエチルアルコール、イオン交換水等の、食品として許容可能な溶剤または希釈剤として用いることができる成分である。他の成分の配合量は、当業者であれば適宜設計できる。

香料組成物である場合、その組成物中における当該4成分の総量は、当業者であれば、製造し安さ、用いやすさ等の点から適宜設計でき、例えば、0.1〜20%とすることができ、また0.5〜10%とすることができ、また1%〜6%とすることができる。

本発明の組成物が調味料として使用されるもの(調味料組成物)である場合、他の成分の例は、食塩(塩化ナトリウム)、グルタミン酸(L-グルタミン酸)、イノシン酸(イノシン5'-リン酸、イノシン5'-モノリン酸、イノシン一リン酸とも称される。5'-IMPまたは単にIMPと略記されることもある。)、グアニル酸(グアノシン一リン酸と称されることもある。GMPと略記されることもある。)、キサントシン5'-リン酸、およびこれらの食品として許容される塩からなる群より選択される、一以上である。L-グルタミン酸のナトリウム塩は、MSGと略記されることがある。

当該4成分の組み合わせにより、Salty Flavorが奏されるのであるから、本発明の組成物を調味料組成物とする場合、好ましい態様の一つは、食塩を含むものである。

一方、MSGと5'-IMPとの組合せにより、うま味の相乗効果を生じることが知られている。そしてその配合比率がMSG:5'-IMP = 99:1〜96:4である場合に、相乗効果が顕著であることが分かっている。そこで、本発明の組成物を調味料組成物とする場合、好ましい態様の一つは、MSG:5'-IMPを、99:1〜96:4の比で含むものである。

調味料組成物である場合、その組成物に添加する当該4成分の総量は、当業者であれば、製造し安さ、用いやすさ等の点から適宜設計でき、例えば、1〜500ppmとすることができ、また5〜200ppm%とすることができ、また10〜100ppmとすることができる。あるいはその組成物中における当該4成分の総量として、例えば、100〜5000ppmとすることができ、また250〜2000ppmとすることができ、また500〜1500ppmとすることができる。

調味料組成物としての本発明の好ましい態様の一つは、醤油である。本発明で醤油というときは、特に記載した場合を除き、「しょうゆ品質表示基準(最終改正平成21年8月31日農林水産省告示第1219号)」に定められた「しょうゆ」を含む。具体的には、下記1〜3のいずれかに該当するもの(これらに砂糖類(砂糖、糖みつおよび糖類をいう。)、アルコール等を補助的に加えたものを含む。)をいう。 1 大豆(脱脂加工大豆を含む。以下において同じ。)若しくは大豆および麦、米等の穀類(これに小麦グルテンを加えたものを含む。)を蒸煮その他の方法で処理して、こうじ菌を培養したもの(以下「しょうゆこうじ」という。)またはしょうゆこうじに米を蒸し、若しくは膨化したもの若しくはこれをこうじ菌により糖化したものを加えたものに食塩水または生揚げを加えたもの(以下「もろみ」という。)を発酵させ、および熟成させて得られた清澄な液体調味料(製造工程においてセルラーゼ等の酵素(たん白質分解酵素にあっては、しろしょうゆのたん白質を主成分とする物質による混濁を防止する目的で生揚げの加熱処理時に使用されるものに限る。)を補助的に使用したものを含む。(本醸造方式によるもの) 2 もろみにアミノ酸液(大豆等の植物性たん白質を酸により処理したものをいう。以下同じ。)、酵素分解調味液(大豆等の植物性たん白質をたん白質分解酵素により処理したものをいう。以下同じ。)または発酵分解調味液(小麦グルテンを発酵させ、分解したものをいう。以下同じ。)を加えて発酵させ、および熟成させて得られた清澄な液体調味料(混合醸造方式によるもの) 3 1、2若しくは生揚げまたはこのうち2つ以上を混合したものにアミノ酸液、酵素分解調味液若しくは発酵分解調味液またはこのうち2つ以上を混合したものを加えたもの(混合方式によるもの)

一般に、醤油の食塩の濃度は、濃口醤油であれば16〜17%、淡口醤油であれば18〜19%、再仕込み醤油であれば12〜14%、溜醤油であれば16〜17% 白醤油であれば17〜18%である。一方、現在、通常の醤油の1/2程度にまで食塩濃度を低下させた「減塩醤油」が市販されているが、典型的な製法は、通常の醤油から脱塩装置により、食塩を除去することによる。その際に、醤油のうま味成分等の他の成分も除去されてしまい、醤油としては物足りないものとなりがちである。しかしながら、本発明に拠れば、塩分濃度を15%以下、例えば12%以下、より特定すると10%以下、さらに特定すると8%以下であっても、十分なSalty Flavorの感得される減塩醤油を構成することができる。

本発明の食品に添加するための組成物は、目的の食品において好ましい風味を付与し得る濃度で添加され、添加量は、目的の食品の種類等に応じ、適宜設計できる。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、酢酸濃度が、喫食時の食品において、1,000〜30,000ppbとなるように添加することが好ましく、1,500〜20,000ppbとなるように添加することがより好ましく、2,000ppb〜10,000ppbとなるように添加することがさらに好ましい。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、HEMF濃度が、喫食時の食品において、200〜7,000ppbとなるように添加することが好ましく、300〜4,000ppbとなるように添加することがより好ましく、400ppb〜2,000ppbとなるように添加することがさらに好ましい。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、イソアミルアルコール濃度が、喫食時の食品において、40〜1,000ppbとなるように添加することが好ましく、60〜800ppbとなるように添加することがより好ましく、80ppb〜400ppbとなるように添加することがさらに好ましい。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、メチオナール濃度が、喫食時の食品において、0.4〜15ppbとなるように添加することが好ましく、000.6〜8.0ppbとなるように添加することがより好ましく、0.8ppb〜4.0ppbとなるように添加することがさらに好ましい。

本発明の組成物は、Salty Flavorを増強しうる。したがって、Salty Flavorの増強が好ましい食品に添加するのに適している。このような食品の例は、後述する。

本発明者らの検討によると、本発明の塩味とうま味の両方を含まない試料(水)においては、本発明の組成物の添加によっては、塩味増強効果およびうま味増強効果が認められなかった。また、適度の食塩を含有する一方、うま味物質を含有しない試料(食塩水)においては、うま味増強効果は認められなかったが、塩味増強効果は僅かに認められた。したがって、食塩およびうま味成分を含まない態様の本発明の組成物を添加するのに適した食品は、あらかじめ食塩とうま味成分とを含有する食品であり、また食塩および/またはうま味成分を含む態様の本発明の組成物は、あらかじめ食塩および/またはうま味成分を有しない食品に対しても、有効に用いることができる。

このような本発明の「食品に添加するための組成物」は、種々の公知の技術を用いて製造することができる。各成分は、合成により調製したものでもよく、また天然物から抽出したものでもよい。

[食品] 本発明は、上述のような食品に添加するための組成物を添加した、食品(food product)を提供する。

本発明はまた、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールを含み、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む食品、好ましくはメチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む食品を提供する。このような食品は、上述の食品に添加するための組成物を、目的の食品に添加することにより製造することができ、食品原料に4成分が元来含まれている場合はその量を考慮し、不足の成分を添加する(「強化する」ということもできる。)ことで、製造することができる。

各成分の食品における含量は、その食品の種類等に応じ、適宜設計できる。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、酢酸については、喫食時の食品における濃度は、1,000〜30,000ppbであることが好ましく、1,500〜20,000ppbであることがより好ましく、2,000ppb〜10,000ppbであることがさらに好ましい。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、HEMFについては、喫食時の食品における濃度は、200〜7,000ppbであることが好ましく、300〜4,000ppbであることがより好ましく、400ppb〜2,000ppbであることがさらに好ましい。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、イソアミルアルコールについては、喫食時の食品における濃度は、40〜1,000ppbであることが好ましく、60〜800ppbであることがより好ましく、80ppb〜400ppbであることがさらに好ましい。他の成分の濃度がいずれの場合であっても、メチオナールについては、喫食時の食品における濃度は、0.4〜15ppbであることが好ましく、0.6〜8.0ppbであることがより好ましく、0.8ppb〜4.0ppbであることがさらに好ましい。いずれの場合であっても、下限値は、効果の有無により決定することができ、また上限値は、添加量過多による、風味の異常・違和感等に基づいて決定することができる。

本発明者らのさらなる検討によると、食塩濃度0.45%〜0.60%の試料への4成分の添加により、おいしさが上昇した。特に、食塩濃度0.45%〜0.55%の試料においては、4成分無添加の場合に対して、統計学的に有意な効果が認められた。また、本発明の組成物に拠れば、約35%の塩味増強効果が得られることが分かった。このような観点からすると、本発明により提供される食品(上述した「食品に添加するための組成物」を添加することにより得られる食品も含む。)の好ましい態様の一つは、喫食時の食塩濃度が、0.7%未満であるもの、好ましくは0.3%以下であるものである。なお、日本国においては、減塩表示をする場合、120mgナトリウム/100g食品の基準を満たすことが必要であるが、本発明により、そのような食品であって、かつ風味の優れたものを設計することができる。

本発明により提供される食品、および上述した「食品に添加するための組成物」を添加することが好ましい食品は、Salty Flavorの増強が好ましい食品であり、具体的には、魚すり身製品(例えば、ちくわ、笹かまぼこ、伊達巻、かまぼこ、魚肉ソーセージ、はんぺん、つみれ、鳴門巻き、さつまあげ、えび天、じゃこ天)、畜肉製品(例えば、ハム類:ボンレスハム、ロースハム、生ハム、骨付きハム、プレスハム、等;ソーセージ類:ウィンナー、ドライ、フランクフルト、ボロニア、リオナ、等;ベーコン類、コンビーフ、焼き豚)、チーズ、バター、スナック菓子(例えば、ポテトチップス、ポップコーン、コーンスナック、クラッカー、ビスケット、クッキー、プレッツェル)、レトルトパウチ惣菜、チルド惣菜、冷凍惣菜、即席めん、スープまたはスープの素(例えば、コーンスープ、オニオンスープ、トマトスープ、ブイヤベース、コンソメスープ、味噌汁、吸い物)、保存食(例えば、酢漬け、塩漬け)、調味料組成物(例えば、チキンコンソメ、ビーフコンソメ、化学調味料組成物、調味塩組成物、マヨネーズ、トマトケチャツプ、ウスターソース、とんかつソース、たれ、ドレッシング、ハーブ塩、味噌、醤油、めんつゆ、だし)、ソース類(例えば、ホワイトソース、デミグラスソース、トマトソース、ミートソース、カレールウ、パスタソース)、フライ類(例えば、フライドポテト、フライドチキン、フライドフィッシュ)が含まれる。また、パン類、ナン、皮類(例えば、ピザクラスト、パイクラスト、餃子の皮、シュウマイの皮)、トーティーヤ、タコ・シェル、コーンフレーク、および麺類(例えば、パスタ、うどん、ビーフン。それぞれ、生、乾麺、フライ麺を含む。)、並びにそれらのためのプレミクスが含まれる。

このような食品は、種々の公知の技術を用いて製造することができる。所定の比および/または濃度になるように調整する工程は、食品の製造工程の種々の段階で適用できる。当業者であれば、各成分の溶解性、安定性、揮発性等を考慮して、喫食時において所定の比および/または濃度となる食品の製造工程を、適宜設計しうる。

[その他] 以上述べてきたことからも明らかであるように、本発明は、食品における、風味の増強方法を提供する。また、対象者に、増強された食品風味を感得させる方法を提供する。感得させる方法としては、食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい対象者に、本発明に係る食塩不使用食品(無塩食品と称されることもある。)または低塩食品を適用し、当該食品において塩味等を感得させる方法が想定される。一般に、食塩不使用食品または低塩食品は風味に劣るものが多いとされているが、本発明により、そのような食品の風味を改善し、患者のQOLを向上させ、あるいは疾病の予防に貢献することができる。これらの方法においては、食品は、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含むように調整され、好ましくは、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むように調整される。本発明により増強される風味は、塩味の香気(Salty Flavor)であり、また塩味および/またはうま味である。

Salty Flavor が増強されたか否かは、当業者であれば、適宜評価できる。典型的には、1または複数名のパネルにより、効果が認められない場合を最低とし、最も好ましい効果が奏された場合を最高として、数段階の基準を設定して評価することができる。評価は、標準的な試料を提供し、それに対する相対評価として行うこともでき、または標準試料を提供せず、絶対評価として行うこともできる。複数の試料を評価する際は、一の試料を評価した後、その評価のイメージが完全に失われる程の時間をおいて、次の対象についての評価を行うとよい。また、官能評価では、塩味の強度ではなく、おいしさの強さを回答させてもよい。それにより、食事における自然な感覚応答に基づいた評価結果を得ることができる。

本発明の方法により、食品における減塩が達成できるので、本発明はさらに、食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい疾患または状態の処置において使用するための、酢酸、HEMF、イソアミルアルコール、およびメチオナールを含む組成物であって、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含む、組成物、好ましくはメチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含む組成物を提供する。また本発明は、食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい対象における非治療的処置方法であって、メチオナール1重量部に対して、酢酸を500〜10000重量部、HEMFを100〜2000重量部、およびイソアミルアルコールを20〜500重量部含むように調整されており、好ましくは、メチオナール1重量部に対して、酢酸を1000〜5000重量部、HEMFを250〜1000重量部、および、イソアミルアルコールを50〜200重量部含むように調整されてされており、それによりうま味および/または塩味が増強された食品を対象に摂取させることを含む方法を提供する。

食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい疾患または状態の例は、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、高血圧、妊娠中毒症等が挙げられる。高血圧には、正常高値血圧(収縮期血圧130から139mmHgまたは拡張期血圧85〜89mmHg)、軽症高血圧(収縮期血圧140〜159mmHgまたは拡張期血圧90〜99mmHg)、中等症高血圧(収縮期血圧160〜179mmHgまたは拡張期血圧100〜109mmHg)、重症高血圧(180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上)、収縮期高血圧(収縮期血圧140以上かつ拡張期血圧90mmHg未満)が含まれる。食塩および/またはナトリウムの摂取量を低減することが望ましい対象の例は、血圧が高めの人、塩分感受性が高い人、動脈硬化の危険因子を持つ者、高齢者、乳児、幼児、妊婦、または喫煙者である。

本発明で疾患または状態について「処置」というときは、発症リスクの低減、発症の遅延、発症予防、治療、進行の停止、遅延を含む。処置には、医療行為と、医師以外の例えば栄養士等による非医療行為とが含まれる。

非治療的処置方法は、医師以外の者による、疾患または状態についての処置を要する人、食事制限が必要な人、または健康な食生活を志向する人のための、食事指導、栄養指導を含み、またそのような人のための、医薬品以外の食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食または非常食を含む。

本発明により提供される食品には、上述の疾患の発症リスクが低減される旨を表示することができ、また上述の対象に対して摂取を薦める旨の表示を、直接的にまたは間接的にすることができる。直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、広告・宣伝等を含む。

[1] LDPEパウチ抽出法による醤油中の成分の検索 市販の本醸造醤油を低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(タマポリ(株))の小袋(パウチ)に封入したところ、数分後に塩味とうま味を強く連想させる香りがパウチ表面で強く認められた。

そこで醤油を封入したLDPEパウチを溶媒に浸漬してLDPEフィルムを透過した香気成分を抽出するLDPEパウチ抽出法を以下のように設定した。 特選丸大豆醤油(キッコーマン(株))25 mLをLDPEパウチ(9 x 5 cm、フィルム厚40μm)に封入した試料を4個作製し、これらをジエチルエーテル40 mLが入った200 mL容の密閉容器に入れ、30℃で香気成分の抽出を行った。60分間経過後、ジエチルエーテルを採取し、常法により香気濃縮物を得た。これを香気濃縮物Aと称する。

香気濃縮物Aは醤油のうま味と塩味を強く連想させるものであったので、これをGC-MS-におい嗅ぎ分析に供した。GC-MS-におい嗅ぎ分析とは、香気濃縮物を溶媒で順次希釈しながら、その一定量をGC-MS分析に供し、検出器の直前でキャリヤーガスを分割し、一方を検出器に、他方を外部に取り出し溶出してくるピークのにおいを醤油のにおい評価に熟練した者が嗅ぐ方法である。本実施例においては、特に記載した場合を除き、3名で評価した。GC-MS-におい嗅ぎ分析の条件は、次の通りであった。

装置;島津製作所製GCMS-QP2010 Plus、におい嗅ぎ装置;島津製作所製Sniffer-9000、キャピラリーカラム;DB-WAX (30 m × 0.25 mm i.d. , 膜厚0.50 μm)、カラム温度;40℃ (3min)→4℃/min→230℃ (10min)、キャリヤーガス;ヘリウム、イオン化法;電子衝撃型イオン化。

香気濃縮物AのGC-MS-におい嗅ぎ分析の結果、下表の26成分で明瞭なにおいが認められたが、単独で塩味あるいはうま味を連想させるにおいを呈する化合物は認められなかった。

[2] 画分の分離 塩味あるいはうま味を連想させるにおい成分を検出することができなかったので、件の香気濃縮物Aをシリカゲルカラムクロマトグラフィに供し、目的のにおいを呈する画分の分離を試みた。すなわち、シリカゲル(ナカライテスク株式会社製、シリカゲル60、70-230 メッシュ)を充填したカラム(内径7 mm、長さ50 mm)に香気濃縮物Aを負荷し、ジエチルエーテル:ペンタン(0:1、1:3、1:1、3:2、3:1、および1:0)混合液で移動相の極性を順次高めながら溶出させた。

その結果、ジエチルエーテル:ペンタンの混合比率が3:2のとき、およびその後半の部分で、塩味およびうま味を連想させるにおいが強く認められた。 この部分を濃縮したものを香気濃縮物Bと称する。

次に、香気濃縮物BをGC-MS-におい嗅ぎ分析に供した。その結果、下表の9種類のにおい化合物を検出することができた。しかしながら、香気濃縮物Bにおいても塩味あるいはうま味を連想させる成分は見出すことができなかった。そこで下表中の9種類の化合物の組合せにより、目的のにおいが再現できるのではないかとの考えに至った。

表中のにおい寄与率は、次のようにして求めた。におい濃縮物Bの一定量(1μl)をGCに注入し、成分毎に分画した後、それぞれの画分を2分割して、一方を検出器に、他方を鼻腔に導き、実際ににおいの有無を判定した。におい濃縮物Bを順次希釈しながらこの操作を行い、においを感じなくなる直前の希釈率を、その成分のにおい寄与率とした(参考文献: Journal of Agriculture and Food Chemistry, Characterization of the Key Aroma Compounds in Soy Sauce Using Approaches of Molecular Sensory Science, Vol.55, 6262-6269(2007))。

[3] 組成物の検討 先ず、におい寄与率の大きいイソアミルアルコール、酢酸、メチオナールおよびHEMFからなる組成物のにおいの質を調査した。

イソアミルアルコールおよび酢酸はナカライテスク株式会社製、メチオナールは和光純薬工業株式会社製、HEMFは東京化成工業株式会社製を使用した。醤油中の各成分の濃度比を参考にして、香気成分組成物の調製を行った。

先ず、イソアミルアルコールとHEMFの2成分系では、1:10、1:5、および1:1の混合比において、酢酸とHEMFの2成分系にでは、10:1、5:1、および1:1の混合比において、目的のにおいを若干想起さる組成物が得られた。イソアミルアルコールと酢酸とHEMFの3成分系では、1:25:5および1:50:1の混合比において醤油の甘辛いにおいをある程度再現することができた。次に、メチオナールを含めた4成分系で、好ましい混合比を種々検討した結果、下表に示すとおり、酢酸:HEMF:イソアミルアルコール:メチオナールが重量比で2500:500:100:1のとき、件の塩味、あるいは、うま味を強く連想させるにおいを再現することができた。

好ましい混合比率で存在する4成分系で、追求している塩味およびうま味を強く連想させる香気組成物を調整することができたので、次に、これら4成分の必要・十分性を確認するために、上記の組成物から1成分欠落した4組の3成分系試料、2成分欠落した6組の2成分系試料について、においの質を評価し、その結果を下表に示した。その結果、試料番号2、6、9で醤油様のにおいが幾分認められたが、4成分から成る試料番号1に比較して満足のいくものではなかった。

件の組成物を構成する4つの成分は、単独では塩味あるいはうま味を連想させるものではなかった。しかしながら、これら4つの成分がある範囲内の配合比率で存在するとき、個々の化合物のにおいとまったく異なるにおいを呈したことは驚くべき事実であった。そこで、これら4成分とにおいの質が近い化合物を用いて塩味あるいはうま味を連想させる香気組成物の調製を試みた。酢酸は揮発性有機酸の中で最も刺激的な酸臭を呈する化合物である。そこで酢酸に次いで揮発性の高いプロピオン酸を酢酸代替成分として香気組成物を調製した。HEMFはこげ臭を伴った甘いにおいを有することから、甘いにおいを呈する3-ヒドロキ-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン(ソトロン)、あるいは4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン(HDMF)でHEMFを代替した香気組成物を調製した。メチオナールは強烈な硫黄臭を呈することから、比較的におい質が近いメチオノールで代替した香気組成物を調製した。

代替化合物で香気組成物を調製するときは、それらのにおいの質と閾値を参考にして配合比率を決定することによって、ある程度、塩味とうま味を連想させる香気組成物を調製することができた。イソアミルアルコール様のにおいを呈する化合物は複数存在するので、それら使用したにおい組成物を調製することも可能と考えられる。以上要するに、酸臭、甘いにおい、熟れすぎたバナナ臭および硫黄臭を呈する化合物を適切に配合することにより、塩味あるいはうま味をある程度連想させうるにおい組成物を調製することができた。

先ず、食塩0.65%、グルタミン酸ナトリウム0.3%、イノシン酸ナトリウム0.0075%に調整した試料(実施例1)、ビーフ味のインスタントコンソメスープ(実施例2)、チキン味のインスタントコンソメスープ(実施例3)および「かつおだし」(実施例4)を調製した。比較例として、水(比較例1)と食塩水(比較例2)を調製して、以下の実験に供した。酢酸:HEMF:イソアミルアルコール:メチオナール(2500:500:100:1)からなる香気組成物を濃度1から濃度4の範囲で、各調製試料に添加したときの塩味の増強効果、ならびにうま味の増強効果を飲食することにより官能的に評価した。

MSGと5'-IMPとの組合せにより、うま味の相乗効果を生じることが知られている。そしてその配合比率がMSG:5'-IMP=99:1〜96:4である場合に、相乗効果が顕著であることが分かっている。そこで、97.5:2.5の配合比率で官能検査を行った。また、食塩濃度を0.65%としたのは、一般的な出汁の食塩濃度0.7〜0.9%より、低い食塩濃度において、塩味増強効果とうま味の増強効果を評価するためである。

結果は、下表の通りである。すなわち、うま味物質を含有する食塩水(実施例1)、ビーフ味のコンソメスープ(実施例2)、チキン味のコンソメスープ(実施例3)、ならびに、かつおだし(実施例4)においては、香料濃度2および3において明瞭な塩味増強とうま味増強効果が認められた。このことは、香気組成物により、減塩食が美味しく食べられることを裏付けている。

なお、使用したコンソメスープ等の詳細を示す。 (ビーフ味のコンソメスープ) 「クノール ビーフコンソメ」固形タイプ、販売者:クノール食品株式会社 原材料:食塩、乳糖、調味料(アミノ酸等)、食用植物油脂、デキストリン、ビーフエキス、酵母エキス、ゼラチン、たまねぎ、カラメル色素、 しょうゆ、香辛料(小麦を原材料の一部に含む) (チキン味のコンソメスープ) 「クノール チキンコンソメ」固形タイプ、販売者:クノール食品株式会社 原材料:乳糖、食塩、調味料(アミノ酸等)、鶏肉、食用植物油脂、チキンエキス、酵母エキス、デキストリン、チキンファット、たまねぎ、 しょうゆ、香辛料、カラメル色素(小麦を原材料の一部に含む) (かつおだし) 「ほんだし」粉末タイプ、販売者:味の素株式会社 原材料:調味料(アミノ酸等)、食塩、砂糖類(砂糖、乳糖)、風味原料、(かつおぶし粉末、かつおエキス)、酵母エキス、小麦たん白、発酵調味料

一方、比較例1が示すとおり、塩味とうま味の両方を含まない試料(水)においては、塩味増強効果およびうま味増強効果いずれもまったく認められなかった。適度の食塩を含有する一方、うま味物質を含有しない比較例2(食塩水)においては、うま味増強効果は認められなかったが、塩味増強効果は僅かに認められた。

香料濃度2と3において、塩味とうま味を強く感じることが認められた。香料濃度2と3の間に有意な差は認められなかった。香料4では、添加過多により、不自然な風味が感じられた。

[4] 官能評価 (供試味液の調製) MSG(0.3%)と5'-IMP(0.0075%)を含む水溶液に、食塩を0.45%〜0.7%添加して、味液とした。

(評価方法) 上記の味液に、所定の成分を下表の濃度になるように添加したものを香料添加試料とした。

20名のパネルにより、下表のように、おいしくない(0)から非常においしい(8)まで、9段階で評価した。このとき評価の基準となる試料は提示しなかったことから、評価スケールはパネルの絶対的な感性による。(絶対評価)。

(比較試験) 香料添加の効果を明らかにするために、味液に所定の成分を添加せずに、同様の官能評価を行った。ただし、添加の実験を行った後、3日間をおいて添加試料の記憶が完全に失われてから比較実験を行った。

(結果) この官能評価では、塩味強度ではなくおいしさの強さを回答させた。なぜならば、塩味強度を質問するとレトロネーザルにおい(口腔香気)と味覚をパネルは意識的に識別しようとするために、食事における自然な感覚応答を知ることができなくなるからである。

下図の香料無添加の評価結果から、味液のおいしさは本実験の濃度範囲では、少なくとも食塩濃度に比例することがわかる。したがって、香料添加試料で塩味強度を質問するのではなく、おいしさの強さを質問した。

4成分添加により、食塩濃度0.45%〜0.60%の範囲で、おいしさが上昇した。特に、食塩濃度0.45%〜0.55%の試料において、無添加のものに対して、統計学的に有意な増強効果が認められた。この結果は、これらの成分を使用することにより、おいしい減塩食品が製造できることを明示している。

図から、成分添加区の食塩濃度0.45%の試料と成分無添加区の食塩濃度0.60%の試料のおいしさが、ほぼ等しいことが分かった。このことから、4成分の所定の比からなる組成物は、約35%((0.60-0.45)/0.45 x 100)の塩味増強効果に匹敵する。

[5] 組成物の安定性向上のための検討 上記の4成分を含む組成物は水溶液として調製可能なことから、水溶液を使用して、その香気特性を経時的に追跡した。その結果、調製直後の塩味とうま味を連想させる香りは数日中に減少し、イソアミルアルコールと酢酸混合液のにおいに近づくことが判明した。

そこで、常温で10日間保管した香気組成物中の各香気成分濃度をGC-MS法により定量したところ、下表のアスコルビン酸(AsA)無添加の結果が示すように、メチオナールの残存率は6.8%、HEMFの残存率は18%であった。本香気組成物を食品香料として実用に供するためには両成分の貯蔵安定性を向上させることが重要である。メチオナールおよびHEMFの減少の原因を種々検討した結果、溶存酸素分子による酸化反応の可能性が考えられた。そこで本香気組成物水溶液中の酸化反応を抑制することによる両成分の安定化を試みた。

酢酸:HEMF:イソアミルアルコール:メチオナールの2500:500:100:1の比からなる香気組成物の水溶液に、アスコルビン酸を香気組成物に対して0.2、0.4、0.8%添加した組成物を調製し、常温下、10日間保管後の各香気成分の残存率を求めた。下表に示す通り、アスコルビン酸を0.4%以上添加することにより、メチオナールをほぼ100%、HEMFを85%以上安定に保持することができた。

下表はアスコルビン酸を0.8%添加したものを60日間保管したときの各成分の残存率を示している。その結果、メチオナールは60日間経過後も95%以上、HEMFは85%以上残存した。

以上のように、水性香気組成物にアスコルビン酸を0.4%以上添加することにより、メチオナールおよびHEMFを安定に保持させることができることが判明した。アスコルビン酸の添加量は香気組成物に対しては0.2%以上で効果が認められたが、この香気組成物は食品に対して1/100から1/3000添加されることを考慮すると、香気組成物に対するアスコルビン酸添加濃度は0.4%から50%程度が適切であると考えられる。

アスコルビン酸添加による香気成分の安定化効果は、上記化合物に対してのみならず、メチオノールに対しても同等の安定化効果を示すことを明らかにした。

[6] 参考実験 市販の醤油中の4成分の濃度(ppm)を、GC-MSにより確認した。

上表より、既存の醤油における、4成分の存在比率は、酢酸:HEMF:イソアミルアルコール:メチオナール=2334.2〜6947.1:76.3〜211.8:22.6〜54.2:1であることが分かった。

[7] 配合例 [香料組成物] 下表の配合で、常法により、香料組成物が製造できる。

[醤油(低塩タイプ)] 常法により製造された低塩醤油に、下表の配合で香料組成物を添加することにより、風味の優れた醤油(低塩タイプ)を製造することができる。なお、この低塩醤油においては、添加した酢酸濃度は、50ppmと計算される。

[即席麺用粉末スープ] 下表の配合で、常法により、即席麺用粉末スープを製造できる。なお、この粉末スープは、5gを湯150mlに溶解して喫食するのに適する。喫食時の香料組成物由来の酢酸の濃度は、約5ppmと計算される。

[減塩コンソメスープ] 下表の配合で、常法にしたがい、減塩コンソメスープ(粉末)が製造できる。この粉末は、5g/100mlで湯に溶解して喫食することができる。喫食時のナトリウム濃度から換算した食塩濃度は0.3%程度と計算される。喫食時の香料組成物由来の酢酸の濃度は、5ppmと計算される。

[スナック菓子用の調味料] 下表の配合で、常法にしたがい、スナック菓子用調味料(粉末)が製造できる。この調味料を用いることにより、食塩量を控えたスナック菓子が製造できる。

[畜肉製品および水産加工品用の調味料] 下表の配合は、畜肉製品および水産加工品に適する。

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