発明の背景 技術分野 本発明は、心血管、肝臓および腎臓疾患の予防および治療のための、フェノール系化合物およびそれら誘導体の使用、並びにそれらの化粧品への応用、これらの化合物を含んでなる組成物、および一部の新規フェノール系化合物および誘導体に関する。 背景技術 心血管疾患は、開発途上国における死の筆頭原因である。 心血管疾患の進行に関与する非遺伝的リスクファクターの1つは食事である。 これら疾患の発生頻度は、高いコレステロールおよび飽和脂肪分の食事で生じうる、高血中コレステロールレベルの存在と直接関連していることが示されている。 他方、多くの研究が、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化または修飾が全体のアテローム性動脈硬化プロセスを誘引し、その際に、内皮活性化および活性化酸素種が重要な役割を果たすことを示している。 疫学研究では、地中海式の食事が心血管疾患の低発生頻度と関連していることを示している。 この食事における最も一般的な食材は果実および野菜、さらに主な脂肪源としてオリーブ油であり、すべての食材が酸化防止剤に富んでいる。 インビボおよびインビトロ研究の結果では、食品中に存在する酸化防止剤がラジカルの有害作用を打ち消し、LDL酸化、ひいてはアテローム性動脈硬化プロセスも防げることを示している。 酸化ストレスおよびフリーラジカルの生成もまた、肝臓および腎臓疾患において、これら器官における酸素の多量存在のために、並びに多くの状況下における炎症プロセスの誘引で、重要な役割を果たす。 この理由から、食事中の酸化防止剤はこのタイプの疾患を防ぐ上で重要となりうる。 疫学研究は、UV線が皮膚癌の主リスクファクターであることを証明している。 皮膚は、主にスーパーオキシドジスムターぜおよびグルタチオンペルオキシダーゼの酵素活性を介して、UV線への暴露後に生じる反応性酸素種から保護する防御系を有している。 この防御系、さらに詳しくは細胞内グルタチオンレベルの低下は、色素沈着の増加、皮膚の老化、アポトーシスの誘導を招き、最終的には皮膚癌に至ることがある。 したがって、酸化防止剤(例えば、ビタミンE)の補給は、ヒト線維芽細胞においてUV線により誘発される酸化ストレスの状況を逆転させることが示されている。 オリーブ油は、オレイン酸および酸化防止剤に富む健康食品である。 チロソールおよびヒドロキシチロソールはオリーブから得られるフェノール系化合物であり、インビボおよびインビトロの双方で開示された強い酸化防止能を有している。 心血管疾患におけるチロソールおよびヒドロキシチロソールの好ましい可能な役割は一部の著者により開示され、彼らは、これらの化合物がインビトロおよびインビボ酸化に対するLDLリポタンパク質の感受性を減らせることを示している(Masella et al.,2001,Lipids,36,1195-1202)。 また、ヒドロキシチロソールは動物研究において肝臓ミクロソームで脂質過酸化を減少させること、さらにオリーブ油に存在するフェノール系酸化防止化合物(チロソールおよびヒドロキシチロソール)もまた強い抗炎症効果を有することが示唆されている。 チロソールおよびヒドロキシチロソールは易酸化性であり、したがってオリーブエキスの形でそれを用いても、チロソールおよびヒドロキシチロソールの相当割合が食品基材中で酸化されてしまうため、食品の酸化は防げるものの、生物体内へ入る前にこれら双方の化合物が分解してしまう。 したがって、生物体内へそのまま到達し、そこで強い酸化防止活性を発揮することが、チロソールおよびヒドロキシチロソールにとって非常に有益である。 同時に、チロソールまたはヒドロキシチロソールを含むオリーブエキスは、水相に高度可溶性の極性画分である。 油相における酸化防止剤の溶解度を高める手法は、食品産業において相当に関心がもたれている。 チロソールおよびヒドロキシチロソールの溶解度は、あらゆる極性分子の場合のように、脂肪酸鎖を付加することにより高められる。 この場合には、この発明で治療されるタイプの疾患でも有益な効果を有する脂肪酸を用いることができる。 一不飽和脂肪(MUFA)に富み、飽和脂肪が乏しく、心血管リスクプロファイルにて好ましい効果を有する、地中海式の食事のような食事が開示されている(Feldman et al.,1999,Am.J.Clin.Nutr.,70,953-4)。 MUFA摂取は、正常の脂質レベルの健常ボランティアにおける血漿中のトリグリセリド濃度を減少させることが示された(Kris-Etherton et al.,1999,Am.J.Clin.Nutr.,70,1009-15)。 n‐3シリーズの多不飽和脂肪酸(n‐3 PUFA)、主にエイコサペンタン酸(EPA)およびドコサヘキサン酸(DHA)が、心血管系および炎症プロセスにおいて有益な効果を有することも報告されている。 n‐3 PUFAについて開示された活性としては、抗不整脈活性、血小板凝集の阻害、並びに血漿脂質およびコレステロールレベルの減少がある(Connor et al.,2000,Am.J.Clin.Nutr.,71,171S-5S)。 発明の概要 したがって、本発明の目的は、前記のように、心血管、肝臓、腎臓および炎症疾患を予防および治療する上で有用であり、分解から保護しながら、栄養食品中へ容易に配合することができる、一連の化合物を提供することである。 本発明は、エステルタイプ結合により少くとも1つの脂肪酸で修飾された、チロソールおよびヒドロキシチロソール分子を提供する。 これらの分子は、チロソールおよびヒドロキシチロソールの酸化防止作用を用いることで、心血管、肝臓および腎臓疾患、糖尿病および炎症疾患を予防および治療する上で、および化粧用途に役立つが、それはこれらすべての疾患が急性の酸化ストレスを呈するからである。 チロソールおよびヒドロキシチロソールの脂肪酸エステルはインビボにて加水分解され、それぞれチロソールおよびヒドロキシチロソールと、対応する脂肪酸とを産生する。 そのため、得られた成分は、生物において酸化防止、抗炎症および栄養効果を有することができる。 さらに、分子中における脂肪酸基の存在により説明されるように、本発明のエステルは、一方において、酸化分解に対してある程度の自己防御を行って、チロソールおよびヒドロキシチロソールが双方とも生物体内にそのまま到達することを可能にし、他方において、水相および脂肪相中で様々な程度の溶解度を示すものであり、この溶解度は、チロソールまたはヒドロキシチロソールのエステル化の割合、および何らかの種類の栄養食品中へのその配合を促進する選択されたエステル化脂肪酸との割合の関係で調整することができる。 最後に、チロソールまたはヒドロキシチロソールのエステル化によって、健康に対して既知の有益な効果を有する、一および多不飽和脂肪酸の追加補給を行うことができる。 発明の具体的説明 本発明で開示されたチロソールおよびヒドロキシチロソール誘導体は下記式(I)で表わされる一般構造を有し、少くとも1つのヒドロキシル基が脂肪酸鎖で修飾されていなければならない。 R基は式内で様々であり、異なる一連のチロソールおよびヒドロキシチロソール誘導体を生じる。 R 1およびR 2基はヒドロキシル基でも、またはエステルタイプ結合を介して脂肪酸鎖で保護されたヒドロキシル基でもよい。 R 3基は、水素(チロソールまたはチロソールエステルの場合)、ヒドロキシル基(ヒドロキシチロソールまたはヒドロキシチロソールエステルの場合)またはエステルタイプ結合を介して脂肪酸鎖で保護されたヒドロキシル基(ヒドロキシチロソールエステルの場合)である。 化合物は、長さが2〜22炭素原子の範囲の1、2または3つの脂肪酸鎖を有することができる。
注:ヒドロキシチロソール、即ち2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノールは式(II)を有し、R 1 、R 2およびR 3はヒドロキシル基である。 チロソール、即ち2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エタノールは式(XV)を有し、R 1およびR 2はヒドロキシル基、R 3は水素である。 本発明に含まれるヒドロキシチロソール誘導体の一部である別な例は以下である: (1)2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテート(III):R 2およびR 3はヒドロキシル基であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介して酢酸で保護されたヒドロキシル基である。 (2)2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルステアレート(IV):R 2およびR 3はヒドロキシル基であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してステアリン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (3)2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルオレエート(V):R 2およびR 3はヒドロキシル基であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してオレイン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (4)2‐(3‐ステアリルオキシ‐4‐ヒドロキシフェニル)エタノール(VI):R 1およびR 3はヒドロキシル基であり、かつR 2はエステルタイプ結合を介してステアリン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (5)2‐(4‐ステアリルオキシ‐3‐ヒドロキシフェニル)エタノール(VII):R 1およびR 2はヒドロキシル基であり、かつR 3はエステルタイプ結合を介してステアリン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (6)2‐(3,4‐ジアセトキシフェニル)エチルアセテート(VIII):R 1 、R 2およびR 3はエステルタイプ結合を介して酢酸で保護されたヒドロキシル基である。 (7)2‐(3,4‐ジステアリルオキシフェニル)エチルステアレート(IX):R 1 、R 2およびR 3はエステルタイプ結合を介してステアリン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (8)2‐(3,4‐ジオレイルオキシフェニル)エチルオレエート(X):R 1 、R 2およびR 3はエステルタイプ結合を介してオレイン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (9)2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルエイコサペンタノエート(XI):R 2およびR 3はヒドロキシル基であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してエイコサペンタン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (10)2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルドコサヘキサノエート(XII):R 2およびR 3はヒドロキシル基であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してドコサヘキサン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (11)2‐(3,4‐ジエイコサペンタノイルオキシフェニル)エチルエイコサペンタノエート(XIII):R 1 、R 2およびR 3はエステルタイプ結合を介してエイコサペンタン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (12)2‐(3,4‐ジドコサヘキサノイルオキシフェニル)エチルドコサヘキサノエート(XIV):R 1 、R 2およびR 3はエステルタイプ結合を介してドコサヘキサン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (13)2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチルアセテート(XVI):R 2はヒドロキシル基であり、R 3は水素であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介して酢酸で保護されたヒドロキシル基である。 (14)2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチルステアレート(XVII):R 2はヒドロキシル基であり、R 3は水素であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してステアリン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (15)2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチルオレエート(XVIII):R 2はヒドロキシル基であり、R 3は水素であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してオレイン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (16)2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチルエイコサペンタノエート(XIX):R 2はヒドロキシル基であり、R 3は水素であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してエイコサペンタン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (17)2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチルドコサヘキサノエート(XX):R 2はヒドロキシル基であり、R 3は水素であり、かつR 1はエステルタイプ結合を介してドコサヘキサン酸で保護されたヒドロキシル基である。 (18)2‐(4‐アセトキシフェニル)エチルアセテート(XXI):R 1およびR 2はエステルタイプ結合を介して酢酸で保護されたヒドロキシル基であり、かつR 3は水素である。 (19)2‐(4‐ステアリルオキシフェニル)エチルステアレート(XXII):R 1およびR 2はエステルタイプ結合を介してステアリン酸で保護されたヒドロキシル基であり、かつR 3は水素である。 (20)2‐(4‐オレイルオキシフェニル)エチルオレエート(XXIII):R 1およびR 2はエステルタイプ結合を介してオレイン酸で保護されたヒドロキシル基であり、かつR 3は水素である。 (21)2‐(4‐エイコサペンタノイルオキシフェニル)エチルエイコサペンタノエート(XXIV):R 1およびR 2はエステルタイプ結合を介してエイコサペンタン酸で保護されたヒドロキシル基、かつR 3は水素である。 (22)2‐(4‐ドコサヘキサノイルオキシフェニル)エチルドコサヘキサノエート(XXV):R 1およびR 2はエステルタイプ結合を介してドコサヘキサン酸で保護されたヒドロキシル基であり、かつR 3は水素である。
チロソールおよびヒドロキシチロソールは、薬物または食品成分として、急性および慢性の心血管、肝臓、腎臓および炎症疾患の予防および治療において使用するのに好ましい候補であり、その理由は、それらが酸化ストレス、ひいては前炎症物質の産生およびこれらプロセスに関与する細胞の補給に対して有効に反抗することができるからである。 しかし、これらの疾患を防ぐ上で酸化防止剤としてそれらを使用するに際しては、2つの問題が生じる: 1)それらは食品基材または医薬処方物中で酸化されうる。 2)高脂肪組成の食品中におけるチロソールおよびヒドロキシチロソールの溶解度 本発明は、これら双方の問題を回避したチロソールおよびヒドロキシチロソール誘導体を提供する。 新規誘導体のチロソールおよびヒドロキシチロソール群は、酸化から部分的または完全に保護される。 チロソールまたはヒドロキシチロソールエステルがチロソールまたはヒドロキシチロソールと比較される場合、そのエステルは酸化に対してより一層安定である。 しかも、これらエステル化誘導体の溶解度は、チロソールまたはヒドロキシチロソール分子がエステル化する鎖の脂肪酸鎖長および鎖数に依って調整することができる。 水相に完全に可溶性の化合物(例えば、酢酸を用いて1つのヒドロキシル基のみを保護するヒドロキシチロソールエステルを形成させたもの)から、脂肪相に完全に可溶性の化合物(例えば、オレイン酸を用いてヒドロキシチロソールエステルを形成させたもの)まで、相当な範囲の溶解度が得られる。 さらに、リポソーム中へ新規チロソールおよびヒドロキシチロソール誘導体を封入できることが提案される。 これは、酸化、および化合物の分解を生じさせて酸化防止剤として無用化させうる金属の存在から、これらの化合物を保護する。 これらのリポソームは、大部分が水相または油相の両食品中へ配合しうる。 新規チロソールおよびヒドロキシチロソール誘導体は、マウスの腸管内で二成分、即ちチロソールまたはヒドロキシチロソールと、対応する脂肪酸とに加水分解される。 その後、該二分子は生物に速やかに吸収され、血漿中にて検出される。 吸収後、両化合物は酸化防止剤として作用して、酸化ストレスと関連する疾患および炎症疾患を防止しうる。 図面の説明 図1は、化合物2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテート(III)、2‐(3,4‐ジアセトキシフェニル)エチルアセテート(VIII)およびヒドロキシチロソール(II)が油性食品基材中へ配合されたときにおける、それらの酸化に対する異なる安定性を示したグラフである。 図2は、ヒドロキシチロソールおよびバニリン酸の経口摂取後における吸収の比較試験であり、特に、ヒドロキシチロソール水溶液の投与(2.5mg/kg体重)後に検出されるヒドロキシチロソールおよびバニリン酸の平均血漿濃度を示したグラフに相当する。 下記例により本発明を説明する。 例1 2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテート(III)の製造 乾燥THF(5ml)中2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノール(100mg、0.65mmoL)の溶液に、無水K 2 CO 3 (90mg、0.65mmoL)、塩化アセチル(0.46mL、0.66mmoL)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(TBAH)(22mg、0.06mmoL)を加えた。 混合液をアルゴン下室温にて15時間振盪し、次いで濾過し、蒸発乾固させた。 残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し、水(2×50ml)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。 残渣を溶離液としてヘキサン‐エチルエーテル混合液(1:1)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、透明シロップとして化合物III 72mg(57%)を得た。 RMN‐ 1 H(300mHz,CDCl 3 ):6.78(d,J=8.1Hz,1H,芳香族),6.73(d,J=1.5Hz,1H,芳香族),6.63(dd,J=8.0、1.5Hz,1H,芳香族),4.23(t,J=7.1Hz,2H,‐CH 2 OOC‐),2.81(t,J=7.1Hz,2H,ar‐CH 2 ‐),2.03(s,3H,‐CH 3 )。 2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルステアレート(IV)の製造 乾燥THF(5mL)中2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノール(100mg、0.65mmoL)の溶液に、無水K 2 CO 3 (90mg、0.65mmoL)、塩化ステアリル(197mg、0.66mmoL)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(TBAH)22mgを加えた。 混合液をアルゴン下室温にて24時間振盪し、次いで濾過し、蒸発乾固させた。 残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し、水(2×50mL)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。 残渣をヘキサン‐エチルエーテル混合液(2:1)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体物として化合物IV 132mg(48%)を得た。 RMN‐ 1 H(300mHz,CDCl 3 ):6.79(d,J=8.1Hz,1H,芳香族),6.72(d,J=2Hz,1H,芳香族),6.63(dd,J=8.0、2.0Hz,1H,芳香族),4.23(t,J=7.1Hz,2H,‐CH 2 OOC‐),2.80(t,J=7.1Hz,2H,ar‐CH 2 ‐),2.28(t,J=7.4Hz,2H,‐OOC‐CH 2 ‐),1.58(m,2H,‐OOC‐CH 2 ‐C H 2 ‐),1.24(m,28H,‐CH 2 ‐),0.87(t,J=6.9,3H,‐CH 3 ). 2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルオレエート(V)の製造 乾燥THF(5mL)中2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノール(100mg、0.65mmoL)の溶液に、無水K 2 CO 3 (90mg、0.65mmoL)、塩化オレイル(0.27mL、0.75mmoL)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(TBAH)を加えた。 混合液をアルゴン下室温にて24時間振盪し、次いで濾過し、蒸発乾固させた。 残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し、水(2×50mL)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。 残渣を溶離液としてヘキサン‐エチルエーテル混合液(4:1)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、帯黄色のシロップとして化合物V 128mg(47%)を得た。 RMN‐ 1 H(300mHz,CDCl 3 ):6.78(d,J=8.1Hz,1H,芳香族),6.72(d,J=2,1H,芳香族),6.63(dd,J=8.0、2.0Hz,1H,芳香族),5.34(m,2H,HC=CH),4.23(t,J=7.1Hz,2H,‐CH 2 OOC‐),2.80(t,J=7.1Hz,2H,ar‐CH 2 ‐),2.28(t,J=7.6Hz,2H,‐OOC‐CH 2 ‐),1.99(m,4H,‐C H 2 ‐HC=CH‐C H 2 ‐),1.58(m,2H,‐OOC‐CH 2 ‐C H 2 ‐),1.26(m,26H,‐CH 2 ‐),0.87(t,J=6.9,3H,‐CH 3 ). 2‐(3,4‐モノステアロイルオキシフェニル)エタノール(VIおよびVII)の製造 乾燥THF(5mL)中2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノール(80mg、0.52mmoL)の溶液に、ピリジン(0.06mL)および無水ステアリン酸(290mg、0.53mmoL)を加えた。 混合液を不活性雰囲気下室温にて24時間振盪した。 次いで、ピリジン残渣をトルエン(3×25mL)と共蒸発させることにより除去し、残渣を蒸発乾固させた。 残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し、水(2×50mL)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機相を濃縮乾固させた。 残渣を移動相としてクロロホルム‐メタノール混合液20:1を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体物44mg(20%)を得たが、これは化合物VIおよびVIIの(1:1)混合物であった。 化合物VIおよびVIIの1:1混合物のRMN‐ 1 H(300mHz,CDCl 3 ):7.00(d,J=8.1Hz,1H,芳香族),6.96(dd,J=5.3,2.1Hz,2H,芳香族),6.95(s,1H,芳香族),6.87(d,J=2.1Hz,1H,芳香族),6.77(dd,J=8.2,J=2.1Hz,1H,芳香族),3.83(t,J=6.4Hz,2H,‐CH 2 OH),3.82(t,J=6.4Hz,2H,‐CH 2 OH),2.80(t,J=6.4Hz,2H,‐ar‐CH 2 ‐),2.78(t,J=6.4Hz,2H,‐ar‐CH 2 ‐),2.59(t,J=7.4Hz,4H,‐ar‐OOC‐CH 2 ‐),1.75(m,4H,‐ar‐OOC‐CH 2 ‐C H 2 ‐),1.25(m,56H,‐CH 2 ‐),0.87(t,J=6.9Hz,6H,‐CH 3 ). 2‐(3,4‐ジアセトキシフェニル)エチルアセテート(VIII)の製造 乾燥THF(10mL)中2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノール(200mg、1.3mmoL)の溶液に、ピリジン(0.5mL)、無水酢酸(0.6mL)および4‐ジメチルアミノピリジン(30mg)を加えた。 反応混合液をアルゴン下室温にて7時間振盪した。 次いで、メタノール(25mL)を加え、混合液をトルエン(3×10mL)と共蒸発乾固させた。 得られた生成物を溶離液としてヘキサン‐エチルエーテル混合液(1:1)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、シロップとして化合物VIII 136mg(75%)を得た。 RMN‐ 1 H(300mHz,CDCl 3 ):7.10(dd,J=10.2,1.9Hz,2H,芳香族),7.04(s,1H,芳香族),4.26(t,J=6.9Hz,2H,‐CH 2 OOC‐),2.89(t,J=6.9Hz,2H,ar‐CH 2 ‐),2.27(s,3H,‐ar‐OCOCH 3 ),2.26(s,3H,‐ar‐OCOCH 3 ),2.02(s,3H,‐CH 2 ‐OCO CH 3 )。 2‐(3,4‐ジステアリルオキシフェニル)エチルステアレート(IX)の製造 0℃にて振盪している乾燥THF(10mL)中2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エタノール(100mg、0.65mmoL)の溶液に、ステアリン酸(563mg、1.98mmoL)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(410mg、1.98mmoL)および4‐ジメチルアミノピリジン(25mg、0.19mmol)を加えた。 反応混合液をアルゴン下室温にて24時間振盪した。 次いで、沈殿尿素を濾過し、濾液を蒸発乾固させた。 残渣をジクロロメタン(25mL)に溶解し、0.5N HCl(2×50mL)にて2回洗浄し、さらにNaHCO 3の飽和溶液および塩化ナトリウムの飽和溶液(1×50ml)で洗浄した。 合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。 得られた生成物を溶離液としてヘキサン‐エチルエーテル混合液(6:1)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体物として化合物IX 200mg(32%)を得た。 RMN‐ 1 H(300mHz,CDCl 3 ):7.08(m,系AB,2H,芳香族),7.02(s,1H,芳香族),4.26(t,J=7.0Hz,‐CH 2 OOC‐),2.91(t,J=7.0Hz,2H,ar‐CH 2 ‐),2.50(t,J=7.5Hz,4H,ar‐OOC‐CH 2 ‐),2.26(t,J=7.5Hz,2H,‐OOC‐CH 2 ‐),1.71(m,4H,‐ar‐OOC‐CH 2 ‐C H 2 ‐),1.62(m,2H,‐OOC‐CH 2 ‐C H 2 ‐),1.24(m,84H,‐CH 2 ‐),0.87(t,J=6.9Hz,9H,‐CH 3 )。 例2 2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテート(III)、2‐(3,4‐ジアセトキシフェニル)エチルアセテート(VIII)およびヒドロキシチロソール(II)が油性食品基材中へ配合されたときにおける、それらの酸化に対する安定性 精製油に溶解されたII、IIIおよびVIIIの酸化に対する安定性を試験した。 これは、これらが120℃にて強制酸化に付されたときに、各化合物の残量を測定することにより行った。 酸化は、Metrohm-Herisau AG Rancimat機器を用いて、120℃に加熱したリアクター中に置かれたサンプルの一部(4mL)へ乾燥空気流(〜20L/h)を通すことにより行った。 全化合物の溶液を精製油にて調製した。 全量5mgのIIを精製油5gに溶解し、最後にこの溶液0.5gを精製油5gに溶解した。 同様に、溶液IIIおよびVIIIを精製油にて調製した。 各溶液について0.3mLずつ異なる時間に集め、−20℃にて貯蔵した。 精製油から化合物IIおよびIIIの単離は、固相抽出(ジオール相のカートリッジ)を用い、メタノール6mLおよびヘキサン6mLの既定条件プロセスにて行った。 サンプルを導入した後、ヘキサン6mL、ヘキサン/酢酸エチル(9:1)6mLおよびメタノール10mLをそれに通し、次いでメタノール画分を1mL容量まで濃縮した。 化合物VIIIもLC‐Diolカートリッジの固相抽出を用いて同様の既定条件プロセスにて単離し、ヘキサン12mLおよびメタノール10mLを混合物へ通した。 再度、メタノール相を分析用に1mL容量まで濃縮した。 II、IIIおよびVIIIの分析および定量を逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP‐HPLC)により行い、254および280nMにてUV検出した。 図1は、120℃における強制酸化に際して、異なる時間における化合物II、IIIおよびVIIIの残量を示している。 モノアセチル化化合物(III)はヒドロキシチロソール(II)よりも分解に長時間かかり、したがってこのアセチル化形のヒドロキシチロソールは、そのエステル基が修飾されていない場合よりも食品基材中で良く保存されることが、図1において明らかに観察される。 この効果はトリアセチル化化合物(VIII)の場合に一層明白であり、化合物の50%は10時間後でも残存するが、化合物IIおよびIIIは完全に分解した。 例3 ヒトボランティアに経口投与されたヒドロキシチロソール(II)の吸収 実験内容および方法 食品の消費に適合した標準抽出操作を用いて、純粋なヒドロキシチロソールをオリーブ油から得た。 試験前に少くとも2日間にわたり食事においてオリーブ油を摂取しなかった22〜30歳の絶食中の健常ボランティア5人に、体重kg当たり2.5mg用量のヒドロキシチロソールを投与した。 水に溶解されたヒドロキシチロソールを経口投与し、次いで血液サンプルを0、10、20、30、60、120分後に得た。 内部標準としてアントラセンおよびナフトールを用いて、ヒドロキシチロソールおよび誘導代謝産物の血漿レベルをガスクロマトグラフィー‐質量スペクトル測定により調べた。 結果 試験の結果は図2で示されるとおりである。 血漿中における下記化合物を同定した:ヒドロキシチロソール(3,4‐ジヒドロキシフェニルエタノール)およびその代謝産物誘導体、バニリン酸(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニル酢酸):これはおそらくヒドロキシチロソールに対する酵素カテコールオルトメチルトランスフェラーゼの活性に起因している。 ホモバニリルアルコールまたはアルデヒドは血漿サンプル中にみられなかった。 最大血漿レベルは投与から10分後に検出され、30分後に初期レベルと同様の値に戻ったため、ヒドロキシチロソール吸収は急速に行われていた。 他方、ホモバニリン酸はヒドロキシチロソール投与の10分後に有意レベルで血漿中に検出され始め、溶液投与の30分後に吸収ピークを示した。 ホモバニリン酸はヒドロキシチロソールよりゆっくり血漿から消失することも、注目に値する。 結論として、吸収試験によると、ヒドロキシチロソールは1)腸で速やかに吸収され、2)その投与から少くとも30分後に生物学的に利用可能となり、かつ3)ホモバニリン酸へ速やかに代謝される。 例4 マウスに経口投与されたヒドロキシチロソール(II)並びにヒドロキシチロソール誘導体IIIおよびIXの吸収 ヒドロキシチロソール(II)、(II)、ヒドロキシチロソールアセテートとも称される2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテート(III)、およびヒドロキシチロソールトリステアレートとも称される2‐(3,4‐ジステアリルオキシフェニル)エチルステアレート(IX)のラットにおける吸収を試験した。 この目的のため、相当量の各化合物(10mgのII、13mgのIIIおよび70mgのIX)の油性溶液を調製してマウスへ経口投与し、そのマウスから血液サンプルを15および60分後に集めた。 各血液サンプルから酢酸エチル抽出により血漿を単離し、ガスクロマトグラフィー‐質量スペクトル測定により分析した。 化合物IIおよびIIIの経口投与後に血漿中にて検出されたヒドロキシチロソールの量は非常に類似していた(下記表参照)。
2‐(3,4‐ジステアリルオキシフェニル)エチルステアレート(IX)をマウスに投与した場合、投与から1時間後にヒドロキシチロソール(II)は血漿中で検出され、15分後ではヒドロキシチロソールは血漿中にて検出されなかった(上記表参照)。 これらの結果は、異なる速度ではあるが、2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテート(III)および2‐(3,4‐ジステアリルオキシフェニル)エチルステアレート(IX)の双方がマウスの胃または腸においてヒドロキシチロソールを放出し、その後、これが吸収されて血流へ入ることを示している。 例5 栄養価を高めたジュースの製造 下記成分に富むジュースを製造した。
操作 水および水溶性成分を濃縮ジュースへ加えることにより最終製品を調製した。 次いで、2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルアセテートを加え、混合液を適宜ブレンドし、得られた製品を低温殺菌およびホモゲナイズした。 最後に、製品を冷却してから、パッケージに入れた。 例6 UHTミルクベース製品の製造
操作 固形成分を液体ミルクおよび水と混合した。 次いで、ヒドロキシチロソールアセテートを加え、混合液を酸素不在下でホモゲナイズした。 得られたミルク製品をUHT処理(150℃にて4〜6秒間)に付し、最後に酸素不在下でパッケージに入れた。 例7 栄養バランスの良い処方のドリンクの製造 栄養バランスの良い処方のドリンクを下記成分で製造した。
操作 すべての固形成分を適切な加熱および攪拌器装備のタンク中にて液体ミルクおよび水と混合した。 次いで、2‐(3,4‐ジアセトキシフェニル)エチルアセテートを加えた。 混合液を60〜70℃に加熱し、酸素の不在下6〜7MPaにて一段ホモゲナイザーにより乳化させた。 エマルジョンを調製した後、その混合液を4〜6秒間140〜150℃へ加熱し、その後直ちに二段ホモゲナイザー(27〜29MPaおよび3〜4MPa)へ通した。 最後に、混合液を酸素不在下にてパッケージに入れた。 例8 酸化防止化合物含有バター製品の製造 栄養バランスのとれた処方のバターを下記成分にて製造した。
操作 最初に、水相を水溶性成分にて調製した。 乳化剤および2‐(3,4‐ジヒドロキシフェニル)エチルオレエートをオイルの混合物に溶解した。 次いで、水相を高温にて攪拌しながら連続添加により脂肪相へ配合した。 表面熱交換器を用いてこの混合液を低温殺菌した。 外部冷却システム装備の高速ローターを用いることにより、最終固形製品を得た。
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