Food preservation methods and food containers to be used for this was using the metal-modified apatite

申请号 JP2003577667 申请日 2002-03-27 公开(公告)号 JP3742414B2 公开(公告)日 2006-02-01
申请人 富士通株式会社; 发明人 正人 若村;
摘要
权利要求
  • アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が 光触媒性のTiであり且つ生成された後に焼結された金属修飾アパタイトを内表面に付着させた食品容器に、または、前記金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された食品容器に、食品を収容し、少なくとも一時期において当該食品容器を暗所に存在させる、食品保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項1に記載の食品保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、生成された後に580〜660℃の温度で焼結されたものである、請求項1に記載の食品保存方法。
  • アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が 光触媒性のTiであり且つ生成された後に焼結された金属修飾アパタイトを表面に付着させた食品包装用ラップフィルムにより、または、前記金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された食品包装用ラップフィルムにより、食品、または、食品を収容している容器を包装し、少なくとも一時期において当該食品または容器を暗所に存在させる、食品保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項4に記載の食品保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、生成された後に580〜660℃の温度で焼結されたものである、請求項4に記載の食品保存方法。
  • アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が 光触媒性のTiであり且つ生成された後に焼結された金属修飾アパタイトを、食品の表面に付着させまたは食品に添加し、少なくとも一時期において当該食品を暗所に存在させる、食品保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項7に記載の食品保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、生成された後に580〜660℃の温度で焼結されたものである、請求項7に記載の食品保存方法。
  • アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が 光触媒性のTiであり且つ生成された後に焼結された金属修飾アパタイトが表面に付着された食器を、または、前記金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された食器を、少なくとも一時期において暗所に存在させる、食器保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項10に記載の食器保存方法。
  • 前記金属修飾アパタイトは、生成された後に580〜660℃の温度で焼結されたものである、請求項10に記載の食器保存方法。
  • アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が 光触媒性のTiであり且つ生成された後に焼結された金属修飾アパタイトが内表面に付着されている、食品容器。
  • アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が 光触媒性のTiであり且つ生成された後に焼結された金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された、食品容器。
  • 说明书全文

    【0001】
    【技術分野】
    本発明は、触媒機能を有する金属修飾アパタイトによる抗菌効果を利用した食品保存方法、および、これに用いられる食品容器に関する。
    【0002】
    【背景技術】
    食料品関連市場において、加工食品や生鮮食品は、何らかの容器に収容され若しくは包装されたうえで取引される場合が多い。 例えば、スーパーマーケットの食料品売り場に陳列される鮮魚や生肉などの一部は、発砲スチロール製トレーとラップフィルムでパッキングされており、コンビニエンスストアで販売される弁当や惣菜などは、ポリスチレンやポリプロピレンなどから成形加工された容器に収容されている。
    【0003】
    従来より、細菌などによる食品の汚染を防止することによって食品腐敗の早期進行や食中毒を回避するために、食料品店で販売される食品を収容するための容器に対しては、食品を収容する以前の段階で洗浄および滅菌が施されている。 しかし、出荷後や販売後などの環境、すなわち食品を容器に収容した後の環境において想定され得る汚染については、有効な対策が講じられていない場合が多かった。 その結果、例えば、雑菌による影響を受け易い生鮮食品にあっては、夏場を中心に食中毒事件が頻発する要因となってしまっていた。 したがって、近年においては、食品について更なる安全性を確保するために、食品収容後の汚染にも対応するための技術の導入が望まれている。
    【0004】
    そのような技術としては、例えば、容器に対して従来の消毒用合成薬液を塗布することによって容器自体に抗菌性を付与することが考えられ得る。 しかし、収容対象が食品であるので、当該消毒液に含まれている薬剤が人体に対して少しでも毒性を有する場合には、そのような消毒液の使用は現実的でない。 また、ヒノキやワサビなどから抽出した天然抗菌物質を容器に塗布する技術が知られているが、この物質の抗菌作用は、殺菌ではなく菌の増殖を抑制するものであるため、食品腐敗の進行を抑制したり食中毒を防止するという効果を得るのには、充分ではないと考えられる。
    【0005】
    一方、近年、酸化チタン(TiO 2 )などの一部の半導体物質の光触媒機能が注目を集めており、この機能に基づいて抗菌作用が発揮され得ることが知られている。 光触媒機能を有する酸化チタンなどの半導体物質では、一般に、価電子帯と伝導帯のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収することによって、価電子帯の電子が伝導帯に遷移し、この電子遷移によって、価電子帯には正孔が生ずる。 伝導帯の電子は、当該半導体物質の表面に吸着している物質に移動する性質を有し、これにより当該吸着物質は還元され得る。 価電子帯の正孔は、当該半導体物質の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質を有し、これにより当該吸着物質は酸化され得る。
    【0006】
    酸化チタン(TiO 2 )においては、価電子帯に生ずる正孔の酸化は非常に強い。 そのため、酸化チタンに例えば有機物質が吸着すると、当該有機物質は、最終的にはと二酸化炭素に分解される場合がある。 光触媒機能を有する半導体物質のなかでも特に酸化チタンは、有機物質におけるこのような酸化分解反応の良好な触媒として機能するため、抗菌剤、脱臭剤、環境浄化剤などにおいて、広く利用されている。
    【0007】
    しかしながら、酸化チタン自体は、光を吸収することによって触媒としての機能を発揮し得る物質である。 そのため、例えば、食品を収容するための容器に対して抗菌剤として酸化チタンが塗布されておっても、当該食品ないし容器が保管されている場所が暗所である場合には、酸化チタンが充分に光を吸収することができないので光触媒機能に基づく抗菌作用は期待できない。 特に、流通過程において長期間にわたって暗所に保管されることのある食品ないし容器においては、酸化チタン自体の光触媒機能に基づく抗菌作用は実用的でない。
    【0008】
    また、酸化チタン自体は、その表面に何らかの物質を吸着する能力に乏しい、すなわち吸着力が低い。 したがって、酸化チタンの触媒機能を充分に発揮させるためには、酸化分解されることとなる目的物質すなわち被酸化分解物質と酸化チタンとの接触効率を向上し、酸化チタンの見かけの吸着力を向上させることが考えられる。
    【0009】
    【発明の開示】
    本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、上述の従来の問題点を解消ないし軽減することを課題とし、光照射条件下においても暗所においても良好な抗菌効果を奏することのできる食品保存方法、および、これに用いられる食品容器を提供することを目的とする。
    【0010】
    本発明の第1の側面によると食品保存方法が提供される。 この食品保存方法では、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属である金属修飾アパタイトを内表面に付着させた食品容器に、または、金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された食品容器に、食品を収容し、少なくとも一時期において当該食品容器を暗所に存在させる。
    【0011】
    本発明で用いられる金属修飾アパタイトにおいて、その主要骨格を構成するアパタイトは、次のような一般式によって表すことができる。
    【0012】
    【数1】

    【0013】


    式(1)におけるAは、Ca,Co,Ni,Cu,Al,La,Cr,Fe,Mgなどの各種の金属原子を表す。 Bは、P,Sなどの原子を表す。 Xは、水酸基(−OH)やハロゲン原子(例えば、F,Cl)などである。 より具体的には、アパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。 本発明において好適に用いることのできるアパタイトは、上式におけるXが水酸基(−OH)であるハイドロキシアパタイトである。 より好ましくは、上式におけるAがカルシウム(Ca)であって、Bがリン(P)であって、Xが水酸基(−OH)であるカルシウムハイドロキシアパタイト(以下“CaHAP”と記載する

    場合がある )、即ちCa

    10 (PO

    4 )

    6 (OH)

    2である。


    【0014】


    カルシウムハイドロキシアパタイト(Ca

    10 (PO

    4 )

    6 (OH)

    2 )は、歯や骨などの生体硬組織の主成分であり、人工骨、人工歯根、人工臓器などの医用材料として広く利用されている。 また、CaHAPは、カチオンともアニオンともイオン交換し易いため吸着性に富んでおり、特にタンパク質などの有機物質を吸着する能力に優れていることが知られている。 そのため、CaHAPについては、クロマトグラフィ用吸着剤、化学センサ、イオン交換体など、幅広い分野への応用技術の研究が盛んに行われてきている。 更に、CaHAPは、細菌やウイルスなどをも強力に吸着して失活させる作用を有するため、抗菌剤としても利用されてきた。 ただし、CaHAPの抗菌作用は、その吸着力に基づくものであって、細菌やウイルスなどを分解するものではない。


    【0015】


    本発明における光触媒性金属とは、酸化物の状態で光触媒中心として機能し得る金属原子をいい、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、タングステン(W)などが挙げられる。 このような光触媒性金属が、上掲の一般式で表されるアパタイトの結晶構造を構成する金属原子の一部としてアパタイト結晶構造中に取り込まれると、アパタイト結晶構造中において、結晶全体の物性として触媒機能を発揮し得る触媒性部分構造が形成されると考えられる。 ここでいう触媒性部分構造とは、より具体的には、上式におけるAの一部に代わって取り込まれる光触媒性金属と、上式における酸素原子とからなり、アパタイト結晶の物性として光触媒機能を発現させるために必要な金属酸化物構造である。


    【0016】


    上述のような本発明の第1の側面によると、食品の保存に際し、通常の光照射条件下においても暗所においても良好な抗菌効果が奏される。 上述のように、本発明で用いられる金属修飾アパタイトは、アパタイト結晶構造中に触媒機能を発現させ得る触媒性部分構造を有しており、光照射条件下で光触媒として機能することができ、従って、食品容器に付着した例えば細菌類を死滅させ或はその毒素などを分解する。 光照射条件下においてこのような抗菌効果を享受することによって、当該食品容器に収容されている食品を良好に保存することができる。


    【0017】


    加えて、本発明で用いられる金属修飾アパタイトは、暗所においても抗菌効果を奏することができる。 従来より、光触媒物質として認識されている酸化チタン(TiO

    2 )などの物質は、光照射条件下にて触媒機能を発揮するのであって、暗所においては触媒機能を発揮しないことが知られている。 これに対し、本発明者らは、酸化チタン(TiO

    2 )をアパタイトと複合化すると、当該複合化物質は、光照射条件下のみならず、暗所においても、酸化チタンと同様の酸化分解触媒機能を発揮し得ることを見出した。 より具体的には、酸化チタンの有する光触媒機能と、アパタイトの有する有機物吸着性および暗所抗菌性とを併せ持つ新材料である金属修飾アパタイトは、暗所においても、酸化チタン光触媒と同様の抗菌効果を発揮し得ることを見出したのである。 本発明はこのような知見に基づくものである。


    【0018】


    また、本発明における金属修飾アパタイトでは、アパタイトの物性において触媒機能を発現し得る金属酸化物構造が、吸着力に優れたアパタイト結晶と複合化されている。 したがって、そのような金属修飾アパタイトは、優れた吸着性を保持した触媒として機能することができる。 例えばCaの一部をTiに代えたTi−CaHAPの場合、触媒機能を発現し得るチタン酸化物と吸着性に優れたCaHAPとが複合化されており、すなわち、CaHAP結晶構造中にチタン酸化物の部分構造が形成されており、その結果、そのようなTi−CaHAPは、被酸化分解物質との接触効率が向上して触媒機能を効率良く発揮することが可能となっている。 このような複合化の技術は、例えば特

    開2 000−327315号公報にも開示されている。


    【0019】


    このように、本発明の第1の側面に係る金属修飾アパタイトは、細菌やウイルスなどの有機体に対する吸着性に優れたものであって、光照射条件下のみならず暗所においても酸化分解などの触媒として良好に作用し、細菌やウイルスの失活などの抗菌作用が発揮される。 したがって、本発明の第1の側面によると、食品の保存に際し、通常の光照射条件下においても暗所においても良好な抗菌効果が奏されるのである。


    【0020】


    本発明の第2の側面によると別の食品保存方法が提供される。 この方法では、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属である金属修飾アパタイトを表面に付着させた食品包装用ラップフィルムにより、または、金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された食品包装用ラップフィルムにより、食品、または、食品を収容している容器を包装し、少なくとも一時期において当該食品または容器を暗所に存在させる。


    【0021】


    本発明の第3の側面によると別の食品保存方法が提供される。 この方法では、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属である金属修飾アパタイトを、食品の表面に付着させまたは食品に添加し、少なくとも一時期において当該食品を暗所に存在させる。


    【0022】


    本発明の第4の側面によると食器保存方法が提供される。 この方法では、パタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属である金属修飾アパタイトが表面に付着された食器を、または、金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された食器を、少なくとも一時期において暗所に存在させる。


    【0023】


    本発明の第2から第4の側面においても、第1の側面に関して上述した金属修飾アパタイトが用いられる。 したがって、食品または食器の保存に際し、通常の光照射条件下においても暗所においても良好な抗菌効果が奏される。


    【0024】


    本発明の第5の側面によると、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属である金属修飾アパタイトが内表面に付着されている、食品容器が提供される。


    【0025】


    本発明の第6の側面によると、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属である金属修飾アパタイトが添加された材料により作製された、食品容器が提供される。


    【0026】


    好ましくは、金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する。 このようにTiで修飾されたカルシウムハイドロキシアパタイト(Ti−CaHAP)は、CaHAP構造中において、有機物質における酸化分解反応を触媒する作用を発現させ得る部分構造を有する。 そのため、Ti−CaHAPがその触媒機能を発揮すると、細菌類やその毒素は分解作用を受ける。 すなわち、本発明において金属修飾アパタイトとしてTi−CaHAPを用いると、光照射条件下においても暗所においても抗菌効果として殺菌効果を享受することができるのである。


    【0027】


    好ましくは、本発明で用いられる金属修飾アパタイトは、生成された後に580〜660℃の温度で焼結されたものである。 生成された金属修飾アパタイトを580〜660℃の温度で焼結することによって、金属修飾アパタイトの触媒機能を向上させ得ることが、発明者によって確認されている。 したがって、食品などの保存においてこのような金属修飾アパタイトを用いると、更に良好な抗菌効果ないし殺菌効果が奏される。


    【0028】


    【発明を実施するための最良の形態】


    本発明で用いられる金属修飾アパタイトは、光触媒機能を示す金属酸化物を構成する金属すなわち触媒性金属と、いわゆるアパタイトとを原子レベルで複合化したものである。 そのような金属修飾アパタイトを形成するための金属としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、タングステン(W)などが挙げられる。 また、そのようなアパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイトなどの金属塩が挙げられる。 図1は、金属としてTiを選択し、アパタイトとしてカルシウムハイドロキシアパタイトを選択してなるTi−CaHAPの表面化学構造のモデルを表す。


    【0029】


    図1に示すように、Ti−CaHAPにおいては、Tiが取り込まれることによって、アパタイト結晶構造中にTiを中心とした触媒性部分構造が形成されている。 当該部分構造以外の領域は、通常のCaHAPと同様の吸着力を有する。 このような金属修飾アパタイトでは、触媒を発現させるサイトすなわち触媒性部分構造と、有機物などの特定の被吸着物質(図示せず)の吸着サイトとが、同一結晶面上において、原子レベルのスケールで散在している。 したがって、このような金属修飾アパタイトは、触媒機能と高い吸着力とを併有し、目的物質の吸着と分解とを同時的かつ均一に効率よく行うことができ、その結果、触媒機能を効率良く発揮することが可能なのである。


    【0030】


    本発明で用いられる金属修飾アパタイトのアパタイト結晶構造に含まれる全金属原子に対する触媒性金属の存在率は、金属修飾アパタイトの吸着性および触媒機能の両方を効果的に向上するという観点より、3〜11mol%の範囲が好ましい。 すなわち、例えばTi−CaHAPでは、Ti/(Ti+Ca)の値が0.03〜0.11(モル比)であるのが好ましい。 当該存在率が11mol%を上回ると、結晶構造が乱れてしまう場合があり、顕著な効果を期待することはできない。 当該存在率が3mol%を下回ると、過剰な吸着サイトに吸着した物質が、少ない触媒発現サイトでは充分に処理されない状態となり、触媒効果が充分に発揮されず、触媒効率上、好ましくない。


    【0031】


    図2は、本発明の食品保存方法および食品容器に用いられる金属修飾アパタイトの製造におけるフローチャートである。 金属修飾アパタイトの製造においては、まず、原料混合工程S1において、金属修飾アパタイトを構成するための原料を混合する。 例えば、単一の水溶液系に対して、上掲のアパタイト一般式におけるA,BO

    y ,X、および触媒性金属イオンに相当する化学種を、各々、所定の量を添加し、混合する。 金属修飾アパタイトとしてTi−CaHAPを形成する場合には、Ca供給剤としては、硝酸カルシウムなどを用いることができる。 PO

    4供給剤としては、リン酸などを用いることができる。 水酸基は、後述のpH調節時に使用されるアンモニア水、水酸化カルシウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液から供給される。 触媒性金属としてのTiの供給剤としては、塩化チタンや硫酸チタンを用いることができる。


    【0032】


    アパタイト結晶構造に含まれる全金属原子に対する触媒性金属原子の存在率は、上述のように、3〜11mol%の範囲が好ましい。 したがって、原料混合工程S1では、形成される金属修飾アパタイトにおける触媒性金属原子の存在率が3〜11mol%となるように、各原料について供給量を決定し、供給すべき相対的な物質量を調整するのが好ましい。


    【0033】


    次に、pH調節工程S2において、上述のようにして用意された原料溶液について、目的とする金属修飾アパタイトの生成反応が開始するpHに調節する。 このpHの調節には、アンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液および水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。 原料溶液のpHは、8〜10の範囲に調節するのが好ましい。 金属修飾アパタイト膜として例えばTi−CaHAP膜を形成する場合にも、原料溶液のpHは8〜10の範囲に調節するのが好ましい。


    【0034】


    次に、生成工程S3において、金属修飾アパタイトの生成を促進することによって、目的とする金属修飾アパタイトの結晶性を高める。 具体的には、例えば、アパタイト成分および触媒性金属の一部を共沈させた原料液を、100℃で6時間にわたってエージングすることによって、結晶性の高い金属修飾アパタイトが得られる。 例えばTi−CaHAPを製造する場合には、本工程では、共沈に際してアパタイト結晶構造におけるCa位置にTiイオンが取り込まれ、Ti−CaHAPが成長する。


    【0035】


    次に、乾燥工程S4において、前の工程で生成した金属修飾アパタイトを乾燥する。 具体的には、生成工程S3にて析出した金属修飾アパタイト粉末をろ過した後、ろ別した沈殿を純水で洗浄し、更に、乾燥する。 乾燥温度は、100〜200℃が好ましい。 本工程によって、原料溶液における液体成分が、金属修飾アパタイトから除去される。


    【0036】


    このようにして製造された粉末状の金属修飾アパタイトは、必要に応じて焼結工程S5に付される。 焼結工程S5では、乾燥工程S4とは別に、金属修飾アパタイトを再び加熱することによって、金属修飾アパタイトを焼結する。 焼結温度は、580〜660℃の範囲が好ましい。 例えばTi−CaHAPにあっては、本工程を経ることによって、触媒機能ないし触媒活性は向上する。


    【0037】


    本発明の実施に際しては、上述のようにして製造された金属修飾アパタイトを、まず、食品収容用途の容器の表面に対して付着または固定させる。 金属修飾アパタイトの付着または固定には、容器の材質に応じた適切な手段を採用する。 そして、そのような容器に生成食品や加工食品を収容し、少なくとも一時期において暗所に保存する。 或は、容器表面に対する金属修飾アパタイトの付着または固定に代えて、上述の金属修飾アパタイトを添加した例えばプラスチック材料により食品収容用の容器を製造し、これに食品を収容して保存してもよい。


    【0038】


    本発明の実施に際しては、上述のような実施に代えて、金属修飾アパタイトを食器の表面に対して付着または固定させてもよい。 金属修飾アパタイトの付着または固定には、食器の材質に応じた適切な手段を採用する。 そして、そのような食器を、少なくとも一時期において暗所に保管する。 或は、食器表面に対する金属修飾アパタイトの付着または固定に代えて、上述の金属修飾アパタイトを添加した例えばプラスチック材料により食器を製造し、これを保管してもよい。


    【0039】


    食品収容用容器や食器の表面に対して金属修飾アパタイトを付着・固定するためには、例えば、シリカアルコキシドなどを含んだゾルゲル液に金属修飾アパタイト粉末を分散させ、当該分散液を容器や食器の表面に対してコーティングして、金属修飾アパタイトを含んだ被膜を部材表面に形成する。 コーティングに際しては、ゾルゲル液に代えて、他の無機系または有機系のコーティング材料を使用してもよい。


    【0040】


    本発明の実施に際しては、上述のような実施に代えて、金属修飾アパタイトを加工食品や生成食品の表面に対して付着または固定させてもよい。 金属修飾アパタイトの付着または固定には、食品に応じた適切な手段を採用する。 そして、そのような食品を、少なくとも一時期において暗所に保存する。 或は、食品表面に対する金属修飾アパタイトの付着または固定に代えて、上述の金属修飾アパタイトを添加した食材を用いて加工食品を製造し、これを保存してもよい。


    【0041】


    本発明によると、食品保存や食器の保管において、光照射条件下のみならず暗所においても良好な抗菌効果が得られる。 具体的には、本発明に係る金属修飾アパタイトの触媒作用により、光照射条件下においても暗所においても、食品容器や食器に付着した有害な細菌類を死滅させ、その死骸や毒素をも酸化分解などする。 これにより、当該食器容器や食器に収容される食品の鮮度や清潔さが維持され、その結果、食中毒などの発生が防止される。 このような抗菌効果は、一旦焼結工程を経た金属修飾アパタイトを用いることにより向上させ得る。


    【0042】


    【実施例】


    次に、本発明の実施例について、比較例とともに説明する。


    【0043】


    〔実施例1〕


    <金属修飾アパタイトの製造>


    本実施例では、金属修飾アパタイトとしてTi−CaHAPを製造した。 具体的には、脱炭酸ガス処理を施した純水を1L用意し、この純水に対して、窒素雰囲気下にて、硝酸カルシウム、硫酸チタン、リン酸を添加して混合した。 硝酸カルシウムの濃度は0.09mol/Lとし、硫酸チタンの濃度は0.01mol/Lとし、リン酸の濃度は0.06mol/Lとした。 次に、15mol/Lのアンモニア水を添加することによって、当該原料溶液のpHを9.0に調節した。 次に、この原料溶液に対して、100℃で6時間、エージングを行った。 このような操作を経ることによって、原料溶液にて金属修飾アパタイトの生成および析出が進行し、原料溶液が懸濁した。 この懸濁液をろ過した後、分別した沈殿を5Lの純水で洗浄した。 次に、70℃のドライオーブン中で12時間にわたって乾燥した。 このようにして、本実施例の金属修飾アパタイトである微粒子状のTi−CaHAPが得られた。 このTi−CaHAPにおけるTiとCaの存在比率は、Ti:Ca=1:9であった。 すなわち、金属修飾アパタイト結晶構造に含まれる全金属原子に対する触媒性金属原子であるTiの存在率は、10mol%であった。 TiとCaの存在比率は、ICP−AES(プラズマ発光分析)による定量分析に基づいて同定した。


    【0044】


    <抗菌試験>


    上述のようにして製造された金属修飾アパタイトの抗菌効果を調べた。 具体的には、まず、微粒子状の金属修飾アパタイトを、溶媒としてのシリカアルコキシドに均一分散させて、コーティング液を調製した。 コーティング液における金属修飾アパタイトの濃度は1wt%とした。 次に、このコーティング液を、50×50mmのガラス板上に均一にスピンコートし、これを乾燥することによって、ガラス板上において厚さ1〜2μm程度の金属修飾アパタイト含有被膜を形成した。 次に、このようにして形成した金属修飾アパタイト含有被膜上に大腸菌の培養液を1滴滴下した後、滴下箇所に対して紫外線(<300nm)を照射しつつ、25℃にて放置した。 紫外線照射の開始から所定時間が経過した複数の時点において、金属修飾アパタイト含有被膜上の大腸菌の生存個体数を測定し、当初の生存個体数に対する生存率を算出した。 経過時間を横軸にとり、大腸菌の生存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図3に示すグラフA1が得られた。


    【0045】


    〔実施例2〕


    実施例1と同一の金属修飾アパタイト微粒子を用いて、実施例1と同様にして50×50mmのガラス板上に金属修飾アパタイト含有被膜を形成した。 この金属修飾アパタイト含有被膜について、大腸菌に対して紫外線照射せずに暗所にて放置した以外は、実施例1と同様にして抗菌効果を調べた。 経過時間を横軸にとり、大腸菌の生存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図3に示すグラフA2が得られた。


    【0046】


    〔実施例3〕


    実施例1と同一の金属修飾アパタイト微粒子を、更に、650℃の温度で30分間焼結し、この金属修飾アパタイト微粒子を用いて、実施例1と同様にして50×50mmのガラス板上に金属修飾アパタイト含有被膜を形成した。 この金属修飾アパタイト含有被膜について、実施例1と同様にして抗菌効果を調べた。 経過時間を横軸にとり、大腸菌の生存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図3に示すグラフA3が得られた。


    【0047】


    〔実施例4〕


    実施例3と同一の金属修飾アパタイト微粒子を用いて、実施例1と同様にして50×50mmのガラス板上に金属修飾アパタイト含有被膜を形成した。 この金属修飾アパタイト含有被膜について、大腸菌に対して紫外線照射せずに暗所にて放置した以外は、実施例1と同様にして抗菌効果を調べた。 経過時間を横軸にとり、大腸菌の生存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図3に示すグラフA4が得られた。


    【0048】


    〔比較例1〕


    微粒子状の光触媒酸化チタン(商品名:ST21、石原産業製)を、溶媒としてのシリカアルコキシドに均一分散させて、コーティング液を調製した。 コーティング液における酸化チタン微粒子の濃度は1wt%とした。 次に、このコーティング液を、50×50mmのガラス板上に均一にスピンコートし、これを乾燥することによって、ガラス板上において厚さ1〜2μm程度の酸化チタン含有被膜を形成した。 次に、このようにして形成した被膜上に大腸菌の培養液を1滴滴下した後、滴下箇所に対して紫外線(<300nm)を照射しつつ、25℃にて放置した。 紫外線照射の開始から所定時間が経過した複数の時点において、酸化チタン含有被膜上の大腸菌の生存個体数を測定し、当初の生存個体数に対する生存率を算出した。 経過時間を横軸にとり、大腸菌の生存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図4に示すグラフB1が得られた。


    【0049】


    〔比較例2〕


    比較例1と同一の酸化チタン微粒子を用いて、比較例1と同様にして50×50mmのガラス板上に酸化チタン含有被膜を形成した。 この酸化チタン含有被膜について、大腸菌に対して紫外線照射せずに暗所にて放置した以外は、比較例1と同様にして抗菌効果を調べた。 経過時間を横軸にとり、大腸菌の生存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図4に示すグラフB2が得られた。


    【0050】


    〔抗菌性の評価〕


    図3および図4のグラフに表れているように、放置開始から4時間経過した時点における大腸菌の生存率は、実施例1では35%、実施例2では60%、実施例3では5%、実施例4では50%、比較例1では0%、比較例2では90%であった。


    【0051】


    この結果から、本発明に係る金属修飾アパタイトを用いた実施例1〜4においては、光照射条件下にお

    ても暗所においても、良好な殺菌効果が得られることが理解できよう。 これは、本発明で用いられる金属修飾アパタイトが、光照射条件下においても暗所においても有意な程度に触媒機能を発揮しているためである。 また、焼結工程を経た金属修飾アパタイトを用いた実施例3および4においては、焼結工程を経ていない金属修飾アパタイトを用いた実施例1および2よりも、更に良好な殺菌効果が得られることが理解できよう。 これは、焼結によって、金属修飾アパタイトの結晶性が高くなり、それに伴って触媒機能が向上するためである


    【0052】


    一方、比較例1および2からは、金属修飾アパタイトに代えて酸化チタンを用いると、光(紫外線)が照射されていない条件下においては殆ど殺菌効果が得られないことが理解できよう。 これは、酸化チタンが、通常の光エネルギーを駆動力とする光触媒としてのみ機能し、暗所においては機能できないためであると考えられる。


    【図面の簡単な説明】


    【図1】図1は、本発明で用いる金属修飾アパタイトの表面化学構造のモデルを表す。


    【図2】図2は、本発明で用いる金属修飾アパタイトの製造方法のフローチャートである。


    【図3】図3は、実施例1〜実施例4における抗菌効果を表すグラフである。


    【図4】図4は、比較例1および比較例2における抗菌効果を表すグラフである。

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