Method and apparatus for chemical and biochemical reactions using light generating reagents

申请号 JP2000531248 申请日 1999-02-10 公开(公告)号 JP2002502698A 公开(公告)日 2002-01-29
申请人 ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ ミシガン; ユニバーシティー オブ ヒューストン; 发明人 ガオ、シャオリャン; グラリ、エルドガン; ツォウ、シャオチュアン;
摘要 (57)【要約】 in situ生成光産物を試薬または補助試薬として用いて溶解状態で化学反応および生化学反応を行う方法および装置。 具体的には、該方法および装置は固体表面上での分子配列アレイの並行合成における用途を有する。 光制御反応を行うための方法が提供される。 この装置の用途の1つとして、ウェル(反応器)のような独立した複数の反応部位を含む固体表面上での反応の制御がある。 反応を行う光パターンをコンピューターおよびデジタル光学プロジェクター(光学モジュール)を用いて発生させる。 パターン化された光を、光制御反応が起こる反応器の特定の部位に投影する。 存在する多くの可能性ある部位中のある選択部位において、後の化学/生化学反応に使用される化学および生化学試薬のin situ生成をもたらす使用が好ましい。 請求される本発明の1つの態様は、制御様式での酸または塩基の光生成により溶液pHを変化させることである。 もう1つの好ましい用途は、その方法および装置が選択的な脱保護または結合反応に用いられる場合に、オリヌクレオチドおよびペプチドなどの生体高分子物質を並行合成することである。
权利要求 【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 1つの多量体または複数の多量体を合成する装置であって、 1以上の独立した反応部位を含んでなる化学反応器と、 化学反応器に機能しうる形で連結された、1以上の反応部位を選択的に照射す る光学系とを含んでなる装置。
  • 【請求項2】 さらに化学反応器に機能しうる形で連結された試薬マニホールドを含んでなる、請求項1記載の装置。
  • 【請求項3】 さらに光学系を制御する制御装置を含んでなる、請求項1記 載の装置。
  • 【請求項4】 上記制御装置がコンピューターである、請求項3記載の装置 。
  • 【請求項5】 1つの多量体または複数の多量体を合成する装置であって、 1以上の独立した反応部位を含んでなる化学反応器と、 化学反応器に機能しうる形で連結された試薬マニホールドと、 化学反応器に機能しうる形で連結された、1以上の反応部位を選択的に照射す る光学系と。 光学系に機能しうる形で連結された、反応部位の選択的照射を制御するための制御装置とを含んでなる装置。
  • 【請求項6】 上記光学系が光源と、フィルター系と、レンズと、立体光学モジュレーターと、リフレクターとを含んでなる、請求項5記載の装置。
  • 【請求項7】 上記光源が水銀灯、キセノン灯、ハロゲン灯、レーザーおよび発光ダイオードからなる群より選択される、請求項5記載の装置。
  • 【請求項8】 上記立体光学モジュレーターがデジタルマイクロミラー装置、反射液晶ディスプレー装置および透過液晶ディスプレー装置からなる群より選択される、請求項6記載の装置。
  • 【請求項9】 1以上の開始部分を含んでなる支持体上で1以上の選択される多量体を合成する方法であって、 (a)1以上の光生成酸前駆体を支持体に加え、 (b)その支持体を照射して、前駆体から光生成酸を生成し、この酸が開始部分 を脱遮蔽し、 (c)1以上の単量体を脱遮蔽された開始部分に結合させ、 (d)選択される多量体が合成されるまで、工程(a)-(c)を繰り返すことを含んでなる方法。
  • 【請求項10】 選択される多量体がDNAである、請求項9記載の方法。
  • 【請求項11】 選択される多量体がRNAである、請求項9記載の方法。
  • 【請求項12】 選択される多量体がDNA/RNAハイブリッドである、請求項9
    記載の方法。
  • 【請求項13】 選択される多量体がペプチドである、請求項9記載の方法 。
  • 【請求項14】 選択される多量体が炭水化物である、請求項9記載の方法 。
  • 【請求項15】 光生成酸が表1aの光生成酸からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
  • 【請求項16】 開始部分を含む独立した反応部位を含んでなる支持体上で選択されるオリゴヌクレオチドアレイを合成する方法であって、 (a)1以上の光生成酸前駆体を支持体に加え、 (b)独立した反応部位を特異的に照射して、前駆体から光生成酸を生成し、こ の酸が照射された独立した反応部位の開始部分を脱遮蔽し、 (c)1以上の単量体を脱遮蔽された開始部分に結合させ、 (d)選択されるオリゴヌクレオチドアレイが合成されるまで、工程(a)-(c)を繰り返すことを含んでなる方法。
  • 【請求項17】 開始部分を含む独立した表面部位を含んでなる支持体上で選択される多量体アレイを合成する方法であって、 (a)1以上の光生成試薬の前駆体を支持体に加え、 (b)独立した反応部位を特異的に照射して、前駆体から光生成試薬を生成し、 この試薬が照射された独立した反応部位の開始部分を活性化し、 (c)1以上の単量体を活性化された開始部分に結合させ、 (d)選択される多量体アレイが合成されるまで、工程(a)-(c)を繰り返すことを含んでなる方法。
  • 【請求項18】 支持体上の独立した反応部位のアレイにおいて化学的条件を同時に変調する方法であって、 (a)1以上の光生成試薬の前駆体を支持体に加え、 (b)独立した反応部位を特異的に照射して、前駆体から所定量の光生成試薬を 特異的に生成し、それにより照射された独立した反応部位の化学的条件に影響を与えることを含んでなる方法。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】 発明の背景本出願は、1998年2月11日に出願された米国仮特許出願第60/074,368号の利益 を請求するものである。

    【0002】 発明の分野本発明は、化学的反応および生化学的反応の分野に関する。 より詳細には、本発明は、予め設定された空間分布パターンに従った支持体表面上での多数の有機分子および生物有機分子の並行合成およびアッセイに関する。 本発明の方法および装置は、DNAおよびRNAオリゴヌクレオチド、ペプチド、オリゴ糖、リン脂質ならびに他の生物ポリマーおよび生物学的サンプルの非常に大規模なアレイを、支持体表面上で製造およびアッセイするのに有用である。

    【0003】 従来技術現代の医薬、農薬および材料の開発には、化学的および生物学的分析におけるサンプルのスクリーニングを加速するための技術的および方法的な進歩が大きく迫られている。 微小規模における同様の方法の開発は、そのような進歩にとって決定的に重要である。 この領域においては、並行合成、ロボットによるスポッティング、インクジェット印刷およびマイクロフルイディクスを用いて多くの進歩が為されてきた(Marshallら、Nature Biotech. 16, 27-31(1988))。 より信頼で き、柔軟な、迅速な、そして安価な技術のためには、たゆまぬ努が要求される。

    【0004】 高スループットのスクリーニングへの応用のための有望な手法は、分子マイクロアレイ(MMA)チップ、特に固体表面上に固定化された生物ポリマーの高密度ア レイを含有するバイオチップの使用である。 これらのバイオチップは、分子遺伝学的情報および配列情報を探査するための有力な道具になりつつある(Marshall ら、Nature Biotech. 16, 27-31(1998)およびRamsay、Nature Biotech. 16, 40-
    44(1998))。 ヌクレオチド配列の決定、核酸の複数の相互作用の探査、遺伝子突 然変異の同定、遺伝子発現のモニター、および病原体の検出のためには、標的分子をバイオチップ上のDNAオリゴヌクレオチドおよびcDNAプローブにハイブリダ イズさせてきた。 Schenaら、Science 270, 460-467(1995); Lockhartら、Nature
    Biotech. 14, 1675-1680; Weiler、Nucleic Acids Res. 25, 2792-2799(1997);
    de Saizieuら、Nature Biotech. 16, 45-48; Drmancら、Nature Biotech. 16,
    54-58を参照されたい。 バイオチップ技術の継続的な開発は、生物学、医学、お よび臨床診断学の分野に重大な影響を与えるであろう。

    【0005】 従来のバイオチップ製造は、インクジェットを用いた直接オンチップ合成(同時に複数の配列を作製する)、フォトリソグラフィーを用いた直接オンチップ並行合成(全アレイの配列を同時に作製する)、およびロボットによるスポッティングを用いた予め合成された分子のライブラリーの固定化 (Ramsay、Nature Bio
    tech. 16, 40-44(1998)) を含む。 1個のチップ上に最大100万もの配列という非 常に大規模のオリゴヌクレオチドアレイの製造には、光制御オンチップ並行合成が用いられてきた。

    【0006】 2つの主要な方法が開示されてきた。 すなわち、光により不安定化される基に保護されるモノマーを用いた合成(Pirrungら、米国特許第5,143,854号(1992);
    Fodorら、米国特許第5,424,186号(1995))および化学的伸長化学反応を用いた合成(Beecherら、国際特許出願公開第WO98/20967号(1997))である。 双方の方法 とも、脱保護、モノマーの結合、酸化、およびキャッピング(capping)の繰り返 し工程を含む。 固体支持体表面の所定の領域における選択的な露光を達成するには、フォトマスクを用いる。 そこではオリゴヌクレオチドアレイが合成される。

    【0007】 光不安定保護基を含む合成法のためには、光をあてた表面領域において伸長するオリゴヌクレオチド分子から光不安定保護基を開裂させるが、光をあてていない表面領域においては、オリゴヌクレオチド分子上の該保護基は影響を受けない。 続いて、該支持体表面を、保護されていない第1の活性中心および光不安定保護基により保護された第2の活性中心を有するモノマーを含有する溶液に接触させる。 光をあてた表面領域においては、モノマーは、脱保護されたオリゴヌクレオチド分子に保護されていない第1の活性中心を介して結合する。 しかし、光をあてていない表面領域においては、オリゴヌクレオチドは光不安定保護基で保護されたままであり、従って、結合反応は全く起こらない。 結合後に得られるオリゴヌクレオチド分子は、モノマーの第2の活性中心上の光不安定保護基により保護されている。 従って、所望のオリゴヌクレオチド全てが合成されるまで、上記の光活性化連鎖伸長反応を続けることができる。

    【0008】 化学的伸長化学反応を含む合成法のためには、プレーナー支持体表面をオリゴヌクレオチド分子と結合させ(適当なリンカーを介して)、そしてオリゴヌクレオチド分子の最上部の上に薄い(2、3μm)ポリマーまたはフォトレジスト層を 用いて該支持体表面を被覆する。 各オリゴヌクレオチド分子の遊離末端を酸不安定基で保護する。 該ポリマー/フォトレジスト層は、光−酸前駆体およびエステル(エンハンサー)を含有する。 これはH +の存在下で解離し、酸を形成する。 合成工程中、酸が、光をあてた表面領域においてポリマー/フォトレジスト層内で生成し、オリゴヌクレオチド分子の末端にある酸不安定保護基が開裂する。 次いで、下部のオリゴヌクレオチド分子を露光するために、溶媒または除去溶液を用いてポリマー/フォトレジスト層を除去する。 次いで、該支持体表面を、酸不安定保護基により保護された活性中心を有するモノマーを含有する溶液に接触させる。 モノマーは、保護されていない第1の活性中心を介して、光をあてた領域の脱保護されたオリゴヌクレオチド分子のみに結合する。 光照射されていない領域においては、オリゴヌクレオチド分子は依然としてその保護基を有しており、従って、結合反応に関与しない。 次いで、ポリマー/フォトレジストを含有する光−酸前駆体で支持体を再び被覆する。 光をあてること、脱保護、結合、およびポリマー/フォトレジスト被覆工程を、所望のオリゴヌクレオチドが得られるまで繰り返す。

    【0009】 光不安定保護基を含む方法には重大な欠点がある。 すなわち、(a)用いる化学 反応は通常のものではなく、工程全体が極端に複雑であるという点、(b)化学反 応の複雑さにより、配列の厳密さが低いという欠点をこの技術が有するという点である。

    【0010】 化学的伸長化学反応を用いる方法にも、同様に制限がある。 すなわち、(a)そ の方法にはポリマー/フォトレジスト層を用いる必要があり、それは化学的および生化学的な反応において日常的に用いられる溶液中で行われる反応には適していない。 何故なら、固体表面上での反応部位を分離するための手段が全くないからである。 (b)特定の状況においては、加熱前および加熱後ならびにポリマー/ フォトレジスト層の除去に要求される過酷な化学的条件により固体表面上でのオリゴヌクレオチドの分解が引き起こされる。 (c)工程全体は労働集約的であり、 自動化することが困難である。 これは、フォトレジスト被覆、加熱、整列、露光および除去という多くのサイクル(20-merを合成する場合、最大で80サイクル!
    )が要求されることによるものである。 (d)この方法は、光により生成する試薬 を適用すべき生物学的サンプルまたは広範囲の生化学反応には適用不可能である。 何故なら、ポリマー/フォトレジスト層中に生物学的サンプルを包埋することは不可能であるからである。

    【0011】 上記の2つの方法において、フォトマスクを使用することに関するさらなる制限がある。 すなわち、(a)新しいチップを作製するための装備は、非常に高価で ある。 これは、作製すべきフォトマスクの数が非常に多いことによるものである。 (b)フォトリソグラフィー装置は高価であり、従って、多くの関心のあるユー ザーには利用できる機会がない。 (c)フォトリソグラフィー工程は、高価なクリ ーンルーム施設の中で行う必要があり、熟練した技術者を要する。 (d)工程全体 が複雑であり、自動化するのが難しい。 これらの制限により、オリゴヌクレオチドチップの応用および種々のMMAチップの開発が弱められる。

    【0012】 従って、単純で、用途が多く、費用効率が高く、操作しやすく、そして分子アレイの純度を改善できる、化学的方法および合成装置の開発がまさに必要である。

    【0013】 発明の概要本発明は、in situで生成した光生成物を試薬または共試薬として用いて溶液 中の化学反応および生化学反応を実施するための方法および装置を提供する。 これらの反応は、UVまたは可視光線などの照射により制御される。 特に指摘しない限り、本明細書に記載された全反応は、少なくとも1つの共通の溶媒の溶液中で、または2つ以上の溶媒の混合物の溶液中で起こるものとする。 溶媒は化学反応において伝統的に用いられる任意の従来の溶媒であり得る。 そのような溶媒としては、限定するものではないが、CH 2 Cl 2 、CH 3 CN、トルエン、ヘキサン、CH 3 OH、
    H 2 O、および/または添加溶質(例えばNaCl、MgCl 2 、リン酸塩など)を少なくとも1つ含有する溶液が挙げられる。 溶液は反応部位のアレイを含む固体表面上の規定の領域内に含まれる。 少なくとも1つの光生成試薬(PGR)前駆体(照射に 際して少なくとも1つの中間体または生成物を形成する化合物)を含む溶液を、
    該固体表面上に加え、続いてデジタルディスプレイプロジェクターを通して光パターンを固体表面上に投射すると、PGRが光をあてた部位で形成する。 暗い(す なわち、光をあてていない)部位では、反応は起こらない。 PGRは反応条件を改 変し、限定的な領域においては、さらなる所望の反応を経過し得る。 従って、少なくとも1つの光生成試薬(PGR)の存在下では、固体表面上の特定部位における 多段階反応のうちの少なくとも1つの段階は、光、照射などの放射により制御され得る。 このように、本発明は並行反応の応用に大きな可能性を秘めている。 この反応においては、反応の各段階で、マトリックス中またはアレイの選択された部位のみを反応可能とすることができる。

    【0014】 本発明はまた、上記の光制御反応を実施するための装置を提供する。 該装置の1つの応用は、ウェル(反応容器)などの多数の分離された反応部位を含有する固体表面上の反応を制御することである。 コンピューターおよびデジタル光学プロジェクター(光学モジュール)を用いて、該反応をもたらすための光パターンを作製する。 パターン化された光は、反応容器の特定部位上に投射され、そこで光制御反応が起こる。

    【0015】 本発明の1つの応用は、化学的/生化学的試薬のin situにおける生成を提供 する。 該試薬は、多くの反応性部位が存在するうちで特定の選択部位における、
    続いて起こる化学的および生化学的反応に用いられる。 本発明の1態様は、制御された方法で酸または塩基の光生成により溶液のpHを変化させることである。 選択されたサンプルのpH条件は、存在する光生成された酸または塩基の量により制御され得る。 pH条件の変化は、酵素を活性化させること、ならびにリガンド分子と対応するその受容体との間の共有または非共有結合形成を介して結合および架橋を誘導することなどにより、化学反応または生化学反応に影響を及ぼす。

    【0016】 本発明の別の態様においては、光生成試薬自身が溶液中で他の分子と相互作用し得る結合分子として作用する。 結合分子の濃度は、光照射の用量により決定される。 従って、2つ以上の系におけるリガンド結合の親和性および特異性を、並行して試験することができる。 従って、本発明の方法および装置により、複数の工程を同時に精査および/またはモニターすること、ならびに化学的、生化学的および生物学的サンプルの高スループットスクリーニングが可能となる。

    【0017】 本発明の別の重要な態様は、オリゴヌクレオチドおよびペプチドなどの生物ポリマーの並行合成である。 並行合成においては、選択的脱保護または結合反応のために本発明の方法および装置を用いる。 これらの反応により、固体表面上での様々な生物ポリマーの制御された製造が可能となる。 これらの分子マイクロアレイチップ(MMAチップ)は、機能遺伝学、診断、治療および遺伝子農学などの幅広 い分野において用いられ、また、遺伝子配列および遺伝子配列の他の分子(抗生物質、抗腫瘍剤、オリゴ糖、およびタンパク質など)との相互作用を検出および分析するために用いられる。 これらの態様および他の態様は、本発明の特徴および利点を説明している。 さらなる詳細は、本明細書の他の部分および添付された図面を参照することにより明確になる。

    【0018】 本発明の方法は、DNAオリゴヌクレオチドアレイの並行合成に関する従来の方 法(Pirrungら、米国特許第5,143,854号(1992); Fodorら、米国特許第5,424,186 号(1995); Beecherら、国際特許出願公開第WO 98/20967号(1997))と比較して根 本的な改良を示す。 本発明は、1つの反応において少なくとも1つの試薬を光試薬前駆体に置換えて、現存の化学反応を有利に用いるものである。 従って、光不安定保護基またはポリマー被覆層を反応媒体として含有するモノマーを要する従来の方法とは異なり、本発明の方法は、従来の化学反応のモノマーを用い、かつ従来の合成化学反応およびプロトコルを最小限に変化させるだけでよい。

    【0019】 本発明により可能となった改良は、重要な意義を有する。 すなわち、(a)本発 明の方法を用いた配列アレイの合成は、自動化DNA/RNA合成機に容易に組み込む ことができ、本発明の工程はより単純化され、費用もより低くなる。 (b)本発明 により採用された従来の化学反応は、ステップ当り98%を超える収率のオリゴヌ クレオチド合成をルーチンで達成する。 それは、光不安定保護基を用いる従来の方法により得られる85〜95%という収率よりも遥かに優れている。 Pirrungら、J.
    Org. Chem. 60, 6270-6276(1995); McGallら、J. Am. Chem. Soc. 119, 5081-5
    090(1997); McGallら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 13555-13560(1996)を 参照されたい。 改良された段階収率は、診断用途および臨床用途のための高品質なオリゴヌクレオチドアレイを合成するのに決定的に重要である。 (c)光生成物(
    PGR)の収率は、光不安定保護基の不完全な脱保護が重大な懸念であった従来の方法とは対照的に、本発明の方法においては主要な懸念事項ではない。 (d)品質制 御について、本発明の合成工程を従来の化学を用いてモニターすることができる。 従来の方法を用いた場合、これは不可能である。 (e)本発明の方法は、修飾残 基を含有するオリゴヌクレオチド、3'−オリゴヌクレオチド(通常の合成にお いて得られる5'−オリゴヌクレオチドとは反対に)、ペプチド、オリゴ糖、組 み合わせの有機分子などの他の型の分子マイクロアレイの合成にまで容易に拡張することができる。 これらは、光不安定保護基を含有するモノマーを要する従来技術を用いては克服できない仕事であろう。 従来の方法では、モノマーの型それぞれについて新しい合成法が必要である。 本発明においては、市販の修飾残基および種々のモノマーを用いることができる。 (f)本発明は、あらゆる型の反応に 適用することができ、化学的伸長反応を用いる従来の方法のようにポリマー反応媒体に限らない。 (g)さらに、従来のオリゴヌクレオチド化学反応を用いる合成 の各ステップの反応時間(1ステップあたり5分)は、光不安定な保護されたモノマーを用いる方法(1ステップあたり>15分)よりも非常に短い。

    【0020】 従来のバイオチップ製造においては、光学的パターン化には標準的なフォトマスクに基づくリソグラフィーの道具を用いる。 Karlら、米国特許第5,593,839号(
    1997)を参照されたい。 一般に、マスクの数およびパターンの複雑さは、オリゴ マーの長さおよび多様性が増すにつれて増大する。 例えば、12ヌクレオチドのサブセットを合成するには4×12=48マスクが必要である。 この数は、カスタムチップの選択に依存してより大きくなり得る。 新しいセットの配列を作製するためには、新しいセットのマスクを調製する必要がある。 より重要なことは、連続的なフォトマスクの高度に厳密なアラインメント(<10μmのオーダーの解像度)である。 この仕事は、特殊な設備および技術的な専門知識がなければ達成不可能である。 該技術は半自動的なものに過ぎず、該方法は明らかに柔軟性に欠け、高価である。 さらに、フォトマスク製造工程には、高価なクリーンルーム施設が必要であり、マイクロエレクトロニクスの分野における特殊な技術的専門知識が要求される。 従って、完全なチップ製造工程は、ほとんどの研究団体にとって利用できる機会がない。

    【0021】 本発明は、フォトマスクをコンピューター制御された空間光学的モジュレーターに置換え、コンピューターの画面上に黒白の画像を表示するのと同じ方法で、
    フォトリソグラフィーのための光パターンをコンピューターにより作製することを可能にする。 この改変は、任意の所望の配列アレイを合成するための最大限の柔軟性をもたらし、時間がかかりアラインメント誤差が生じがちな従来のフォトリソグラフィーのようにマスクのアラインメントを行う必要が無くなることにより製造工程を単純化する。 さらに、本発明の光学系および反応容器系の双方は、
    コンパクトであり、1つのデスクトップ内に統合することができる。 そのような装置はパーソナルコンピューターにより完全に制御することができ、全ての実験化学者が、合成機を用いた生物オリゴマーの合成と同様な方法で、自分自身の配列設計のバイオチップを作製することができるようになる。 さらに、該装置は、
    クリーンルームの必要がなくあらゆる標準的な化学実験室で操作することができる。 また、本発明を採用して、自動化した生産ラインによる特殊なバイオチップの固定数生産または標準的なバイオチップの大量生産を容易に合理化することができる。 明らかに、本発明の方法および装置によりバイオチップの製造費用が有意に削減され、従って、研究団体および生物医学団体にとってのバイオチップ技術の利用可能性を有意に増大させ得る。

    【0022】 最も重要なことは、光生成試薬をコンピューター制御された空間光学モジュレーターと組み合わせて用いる本発明の方法により、MMAチップ製造が日常的な製 法となり、従来技術の方法の制限を克服できるということである。

    【0023】 発明の説明 光生成試薬(PGR)を用いた化学/生化学反応法本発明は、照射によりin situで生成される試薬に関与する、溶液に基づいた 光化学反応法を提供する。 通常の化学/生化学反応は、以下に描写するように少なくとも1つの反応物(一般的に「A」と表示する)と、少なくとも1つの試薬(一 般的に「R」と表示する)との間に起こり、少なくとも1つの生成物を生じる: A+R → A'+R' 本発明は、光を用いた照射により制御される反応条件を提供するものである。 主に、上記反応中のRは、光により生成される。 光により生成される試薬(光生成 試薬:PGR)は、通常用いられている試薬と同様に機能し、それゆえ上記反応は 他の通常の様式で進む。 光で制御される反応の全体を以下に描写する。

    【0024】 hv (PRG前駆体) → R A+R → A'+R' 本発明のいくつかの実施形態において、PGR前駆体(表1)は、以下に挙げる 形でH +を生じる光により生成される酸前駆体(光生成酸前駆体)である:R 1 CO 2 H
    、R 1 PO 3 H、R 1 SO 3 H、H + X (R 1 =H、アルキル(C 1 −C 12 )、アリール(フェニルを含む芳香族構造)、またはこれらの置換誘導体(置換基=ハロゲン原子、NO 2 、CN 、OH、CF 3 、C(O)H、C(O)CH 3 、C(O)R 2 、SO 2 CH 3 、SO 2 R 2 、OCH 3 、OR 2 、NH 2 、NHR 2
    NR 2 R 3 (R 2およびR 3 =アルキル若しくはアリール(C 1 −C 12 ));X=ハロゲン原子 、無機塩イオン)など。 光生成酸はまた、照射で形成されるM m X n (ルイスの酸、
    mおよびnは原子数である)などの複合体でもある。 本発明の他の実施形態において、PGR前駆体(表1)は、照射において、アミン、酸化物などの塩基を生じる 光により生成される塩基前駆体(光生成塩基前駆体)である。

    【0025】

    【表1】

    a置換誘導体は、ハロゲン、NO

    2 、CN、OH、SH、CF

    3 、C(O)H、C(O)CH

    3 、C

    1 −C

    3ア シル、SO

    2 CH

    3 、C

    1 −C

    3 −SO

    2 R

    2 、OCH

    3 、SCH

    3 、C

    1 −C

    3 −OR

    2 、C

    1 −C

    3 −SR

    2 、NH

    2


    C

    1 −C

    3 −NHR

    2 、C

    1 −C

    3 −N(R

    2 )

    2 (R

    2 =アルキル、該式中に生じる場合毎に同一または異なりうる)が含まれるがこれらに限定されない、少なくとも1つの置換基 を含む。

    【0026】 本発明のいくつかの実施形態では、PGR前駆体を放射線増感剤のような補助試 薬と併用する。 1つの特定の例は光増感剤を使用するものであり、それは用いるP
    GRよりも励起エネルギーが低い化合物である。 照射によって光増感剤が励起し、
    それによってPGR前駆体の変換が順次開始され、PGRが得られる。 光増感剤の効果は光化学反応に用いる励起波長をシフトさせ、光生成試薬の生成効率を高めることである。 従って、1つの実施形態において、本発明は、限定されるものではな いが、PGR反応において補助試薬として光増感剤を使用する。 多くの放射線増感 剤が当業者に公知であり、前述のものが含まれる。 当業者ならば本開示に基づいてさらなる放射線増感剤を容易に確認できることが分かる。

    【0027】 本発明の好ましい実施形態では、支持体表面は固体であり、かつ実質的に平坦である。 限定されるものではないが、例として、支持体はガラス、パイレックスまたは石英のようなある種のケイ酸塩、ポリプロピレンまたはポリエチレンのようなある種の重合物質などであってもよい。 この支持体表面は本発明に適用するように製作し、誘導体化する。

    【0028】 光生成酸(PGA)の脱保護およびオリゴヌクレオチド合成本発明の1つの実施形態(図1および2)によれば、オリゴヌクレオチド配列アレイが合成される支持体表面にリンカー分子を結合させる(リンカーは「開始部分」であり、この用語は他の単量体をそれに付加することができる単量体またはオリゴマーを広く含む)。 オリゴヌクレオチドの合成方法はMcBrideら, Tetrahedr
    on Letter 24, 245-248 (1983)で知られている。 それぞれのリンカー分子は酸に不安定な保護基によって保護された5'-OHのような反応性官能基を含んでいる(1
    00)。 次に、光-酸前駆体、または光-酸前駆体およびその光増感剤(表1)を支持体に塗布する。 次いで所定の光パターンを支持体表面に投射する(110)。 照射さ れた部位で酸が生成し、その結果として5'-OHから(DMTのような)酸に不安定な 保護基の開裂が起こり、末端のOH基が入ってくる単量体と反応することができる(図2、以後用いられる「単量体」は、化学物質として広く定義され、これは化 学構造によって定義される単量体もしくはオリゴマーまたはそれらの誘導体であってもよい)。 暗所(すなわち非照射部位)では酸は生成せず、それゆえリンカー分子の酸に不安定な保護基はそのまま残っている(隣接部位間のH +の拡散を防ぐ方法は後に説明する)。 次いで支持体表面を洗浄し、続いて第1単量体(例え ば、ヌクレオホスホロアミダイト、ヌクレオホスホネートまたは鎖伸長が可能な類似化合物)と接触させると、それは通常のカップリング反応条件下で、脱保護されたリンカー分子のみに付加する(120)。 従ってリンカー分子のOH基と単量体 の保護されていない反応部位(例えばリン)との間に、化学結合、例えば亜リン酸結合が形成される。 適当な洗浄、酸化およびキャッピング工程の後、第1の残 基の付加が完了する。

    【0029】 結合したヌクレオチド単量体もまた、酸に不安定な基によって保護された末端反応性官能基を含んでいる。 次いで伸長中の配列のアレイを含む支持体に第2の バッチの光-酸前駆体を供給し、所定の第2の光パターンに曝す(130)。 選択された配列を脱保護して支持体を洗浄し、続いて第2の単量体を供給する。 ここでも 第2の単量体は露光した表面部位でのみ伸長中のオリゴマーを増加させる。 伸長 配列に付加された第2の残基もまた酸に不安定な基によって保護された末端反応 性官能基を含んでいる(140)。 この鎖伸長工程は所望の長さおよび所望の化学配 列の重合体が選択された表面部位全体において形成されるまで繰り返される(150
    )。 任意の指定された配列パターンのオリゴヌクレオチドアレイを含むチップに ついて、その反応工程の最大数は4 xnである(ここでnは鎖長であって、4は天 然のヌクレオチドに対する定数である)。 修飾配列を含むアレイでは4 xnより 多い工程を必要とし得る。

    【0030】 PGA活性化カップリング反応およびオリゴヌクレオチド合成本発明のもう1つの実施形態(図3)によれば、光不安定基と結合したテトラ ゾールを含む化合物のような光活性剤の前駆体を用いる。 リンカー分子をオリゴヌクレオチド配列アレイが合成されることになる支持体表面上に結合させる(300
    )。 リンカー上の酸に不安定な保護基を脱保護する(310)。 次に光活性剤の前駆体、または光活性剤の前駆体およびその光増感剤(表1)を支持体に塗布する。 次 いで所定の光パターンを支持体表面に投射する(320)。 照射された部位で活性剤 分子が生成し、単量体をリンカーに結合させる。 非照射部位では活性剤分子は生成せず、それゆえ反応は起こらない(隣接部位間の活性剤の拡散を防ぐ方法は後に記載する)。 適当な洗浄、酸化およびキャッピング工程の後、第1の残基の付 加が完了する。

    【0031】 結合したヌクレオチド単量体もまた保護された末端官能基を含んでいる。 次いで伸長中の配列のアレイを含む支持体に第2のバッチの酸と接触させる(330)。 配列を脱保護して支持体を洗浄し、続いて第2の単量体と接触させる。 ここでも第2
    の単量体は露光した表面部位でのみ伸長する(340)。 この鎖伸長工程を所望の長 さおよび所望の化学配列をもつ重合体が選択された表面部位全体において形成されるまで繰り返す(350)。

    【0032】 光生成試薬を用いるオリゴヌクレオチド合成の別の実施形態本発明のある実施形態では、カップリング工程120、140、150、320、340およ び350に用いられる適切な単量体はヌクレオチド類似体である。 これらの単量体 の反応は図1および3に記載されたように進行し、修飾残基を含むオリゴヌクレオチドが得られる。

    【0033】 本発明のある実施形態では、カップリング工程120、140、150、320、340およ び350に用いられる適切な単量体は、3'-OH位においてDMTのような酸に不安定な保護基を含むものである。 これらの単量体の反応は図1および3に記載されたように進行するが、配列は5'-OH保護化単量体を用いたものとは反対方向に伸長した。 かかる合成によって末端3'-OHを含むオリゴヌクレオチドが生成され、これは
    in situポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用のプライマーとして特に使用される。

    【0034】 光生成試薬および光増感剤本発明においてPGRを使用することによって通常の条件下での化学/生化学反 応が可能になる。 しかしながら照射下での少なくとも1つの試薬のin situ生成によって反応の生起が制御される。 ある実施形態では、照射は紫外線および可視光を放射する光源に由来する。 熱、赤外線およびX線照射もまた照射源である。 PGR
    前駆体または光増感剤(これはそのエネルギーを順々にPGR前駆体に転移する) の照射によってPGRが生成される。 化学変化が起こって少なくとも1つの生成物(P
    GR)を生ずるが、それは中間体または安定な化合物である。 PGRはPGR前駆体の親 構造または転位構造から解離したPGR前駆体分子の一部に由来する。 PGRは酸、塩基、求核試薬、求電子試薬またはその他の特定の反応性をもつ試薬であってもよい(表1)。

    【0035】 本発明のある実施形態では、他の反応物と混合する前に予備照射して少なくとも1つのPGRを活性化することによって、反応収率の向上および/または副反応の抑制が達成される。 予備照射による活性化によって、照射中に発生したフリーラジカル種のような活性反応中間体が減少してH +のような生成物が安定した濃度に達する時間が与えられる。 また少なくとも1つの適当な安定剤を用いるならば、 反応収率の向上および/または副反応の抑制が達成される。 1つの例は照射中に 発生したフリーラジカル種のような活性反応中間体の寿命を短縮する少なくとも
    1種の試薬を提供し、低エネルギー源の水素を提供するものである。 スルホニウ ム塩(Ar 3 S + X - )からH +を発生させる以下の反応によってこれを例示する。

    上記式中のRH化合物は安定しており、優れたH供与体である。 かかる化合物の 例としては、プロピレンカーボネート(UVI 6974およびUVI 6990の主成分の1つ )、t-ブタン、シクロヘキセンなどが挙げられる(表1C)。

    【0036】 本発明の範囲内にある光-酸前駆体には、照射下でPGAを生成する化合物のいずれもが含まれる。 かかる化合物の例としては、ジアゾケトン、トリアリールスルホニウム、ヨードニウム塩、o-ニトロベンジルオキシカーボネート化合物、トリアジン誘導体などが挙げられる。 これらの化合物の代表的な例を表1Aに示す。 この表は以下の参考文献中で見られるデータに基づいて編集されている: Susら,
    Liebigs Ann. Chem. 556, 65-84 (1944); Hisashi Sugiyamaら, 米国特許第5,15
    8,885号 (1997); Cameronら, J. Am. Chem. Soc. 113, 4303-4313 (1991); Frec
    het, Pure & Appl. Chem. 64, 1239-1248 (1992); Patchormikら, J. Am. Chem.
    Soc. 92, 6333-6335 (1970)。

    【0037】 光-酸前駆体の例としては、ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホ ニウム誘導体がある(Dektarら, J. Org. Chem. 53, 1835-1837 (1988); Welshら
    , J. Org. Chem. 57, 4179-4184 (1992); DeVoeら, Advances in Photochemistr
    y 17, 313-355 (1992))。 この化合物は、直接または感光性の光分解を受けてフ リーラジカル種を形成し、最終的にはジアリールスルフィドおよびH +を生成するオニウム塩の一群に属する(上記を参照)。

    【0038】 光-酸前駆体のもう1つの例としては、ジアゾナフトキノンスルホン酸トリエ ステルエステルがあり、これはλ>350nmの紫外線照射下でインデンカルボン酸を生成する。 酸の生成は、ケトン中間体を生成するカルベン種を経たウォルフ転位、それに続くケテンの水和によるものである(Susら, Liebigs Ann. Chem. 556,
    65-84 (1944); Hisashi Sugiyamaら, 米国特許第5,158,885号 (1997))。

    【0039】

    【化1】

    これらの光分解中間体および生成物は、高解像度微細画像フォトリソグラフィー用の陽イオン性およびラジカル触媒重合に広く用いられてきた。

    【0040】 光-酸前駆体化合物はフォトレジスト製剤の成分として印刷業およびマイクロ エレクトロニクス工業において長年にわたり広く用いられてきた(Willson, in “Introduction to microlithography”, Thompsonら編, Am. Chem., Soc.: Was
    hington DC, (1994))。 これらの反応は一般的に速く(およそ数秒または数分 で完了する)、穏やかな条件下で(室温、中性溶液)進行し、また光反応に用いる溶媒(ハロアルカン、ケトン、エステル、エーテル、トルエン、およびその他のプロトン性または非プロトン性極性溶媒)またはその他の有機溶液化学に用いる溶媒は、オリゴヌクレオチドと適合性がある(McBrideら, Tetrahedron Letter
    24, 245-248 (1983)) 6 。 表1に挙げた光生成酸の中で、副反応を最少にするために化学適合性について選択を行う。 光生成酸の酸性度のような化学特性を環部分または鎖部分上の異なる置換基によって調整することができる。 例えば、生成したインデンカルボン酸中の電気的陰性のスルホン酸基は、同じ環部分に結合したカルボン酸基の負電荷を安定化させるのを助けて、通常のトリクロロ酢酸(TCA) を用いるのと同じように5'-O-DMT基(図2)を効果的に脱保護する酸を与える。
    一般に、O 2 SOR、NO 2 、ハロゲン、C(=O)R(R=アリール、アルキル、およびそれら の置換誘導体、またはXR 1 (X=S、O、N; R 1 =アリール、アルキル、およびそれらの置換誘導体)のような電子求引性基は対応する酸の強度を高める。OR(R=アリール、アルキル、およびそれらの置換誘導体)のような電子供与性基は対応する酸の 強度を低下させる。異なる強度の酸が利用できることで、ある範囲の酸触媒性脱保護反応に対する試薬のレパートリーが提供される。

    【0041】 本発明の範囲内にある光-塩基前駆体には照射下でPGBを生成する化合物のいずれもが含まれる。 かかる化合物の例としては、表1に挙げたo-ベンゾカルバミン 酸塩、ベンゾイニルカルバミン酸塩、ニトロベンジルオキシアミン誘導体などが挙げられる。 一般に、光不安定基によって保護されたアミノ基を含む化合物は、
    定量的な収量でアミンを放出することができる。 これらの反応の光生成物、すなわちin situで生成されたアミン化合物は、本発明においてそれ以後の反応に有 用な塩基性試薬である。

    【0042】 本発明の範囲内にある光試薬前駆体には、照射下での化学/生化学反応によって必要な試薬を生成する化合物のいずれもが含まれる。 かかる化合物の例としては、1-(ジメトキシルベンゾイニル)テトラゾール(複素環式化合物テトラゾールはPGRである)、ジメトキシルベンゾイニルOR 1 (R 1 OHはPGR、R 1 =アルキル、アリ ール、およびそれらの置換誘導体)、スルホニウム塩(チオールエーテルAr 2 SはP
    GR)などが挙げられる。

    【0043】 本発明の範囲内にある光増感剤には、照射感受性があり、その励起波長のシフトおよび照射効率の向上によってPGRの励起プロフィールを改良し得る化合物の いずれもが含まれる。 かかる化合物の例としては、ベンゾフェノン、アントラセン、チオキサントン、それらの誘導体(表1B)、などが挙げられる。

    【0044】 PGRの別の応用本発明の1つの実施形態では、光生成試薬(表1)を、t-Boc(酸不安定性)ま たはFmoc(塩基不安定性)基によって保護された反応性官能基を含むアミノ酸単量体を用いてペプチドアレイのチップ上での並行合成に使用する(図4)。 ペプチド 合成法はSterwartおよびYoung, “Solid phase peptide synthesis”, Pierce C
    hemical Co.; Rockford, IL. (1984); Merrifield, Science 232, 341-347 (198
    6); Pirrungら, 米国特許第5,143,854号 (1992)で知られている。 本発明の1つの実施形態によれば、ペプチド配列アレイが合成されることになる支持体表面にリンカー分子を結合させる。 それぞれのリンカー分子は酸に不安定なt-Boc基によ って保護された-NH 2基のような反応性官能基を含んでいる(500)。 次に、光-酸前駆体、または光-酸前駆体およびその光増感剤を支持体に塗布する。 次いで所定 の光パターンを支持体表面に投射する(505)。 照射された部位では酸が生成し、t
    -Bocのような酸に不安定な保護基がN末端NH 2から開裂し、それによって入ってくる単量体と反応することが可能になる(図4)。 暗部位では酸は生成せず、それゆ えリンカー分子の酸に不安定な保護基はそのまま残っている。 次いで支持体表面を洗浄し、続いて第1の単量体(保護されたアミノ酸、その類似体、またはオリ ゴマー)を供給すると、該単量体は通常のカップリング反応条件下で脱保護されたリンカー分子にのみ付加する(510)。 従って化学結合がリンカー分子のNH 2基と単量体のカルボニル炭素との間に形成されてアミド結合を与える。 適当な洗浄工程の後に第1の残基の付加が完全なものになる。 結合したアミノ酸単量体もまた 酸に不安定なt-Boc基によって保護された反応性官能基を含んでいる。 次いで伸 長中の配列のアレイを含む支持体に第2のバッチの光-酸前駆体を供給し、所定の第2の光パターンに曝す(515)。 選択した配列を脱保護して支持体を洗浄し、続 いて第2の単量体を供給する。 ここでも第2の単量体は露光した表面部位でのみ伸長する。 伸長中の鎖に付加した第2の残基もまた酸に不安定な基によって保護さ れた反応性官能基を含んでいる(520)。 この鎖伸長工程を所望の長さおよび化学 配列をもつ重合体が選択された表面部位全体に形成されるまで繰り返す(525)。 任意の指定された配列パターンをもつペプチドアレイを含むチップについては、
    反応工程の最大数は20 xnである(ここでnは鎖長であり、20は定数であって天 然に存在するアミノ酸数である)。 修飾アミノ酸を含むアレイは20 xnより多い工程を必要とし得る。

    【0045】 本発明のもう1つの好ましい実施形態では(図6)、光不安定基によって保護さ れたアミンのような光-塩基前駆体を、リンカーを載せた固体表面に塗布する(60
    0)。 それぞれのリンカー分子は塩基に不安定な基によって保護されたNH 2のよう な反応性官能基を含んでいる。 次に(((2-ニトロベンジル)オキシ)カルボニル)- ピペリジン(CameronおよびFrechet, J. Am. Chem. Soc. 113, 4303-4313 (1991)
    ) 8のような光-塩基前駆体を支持体に塗布する。 次いで所定の光パターンを支持 体表面に投射する(605)。 照射された部位では塩基が生成し、その結果リンカー 分子から塩基に不安定な保護基の開裂が生じ、末端NH 2基が入ってくる単量体と 反応することができる。 暗部位では塩基は生成せず、それゆえリンカー分子の塩基に不安定な保護基はそのまま残っている。 次いで支持体表面を洗浄し、続いてカルボン酸基を含む第1の単量体を供給すると、それは通常のカップリング反応 条件下で脱保護されたリンカー分子にのみ付加してアミド結合を与える(610)。 適当な洗浄の後に第1の残基の付加は完全なものになる。 結合したアミノ酸単量 体もまた塩基に不安定な基によって保護された末端反応性官能基を含んでいる。
    次いで伸長中の配列のアレイを含む支持体に第2のバッチの光-塩基前駆体を供給し、所定の第2の光パターンに曝す(615)。 選択した配列を脱保護して支持体を 洗浄し、続いて第2の単量体を供給する。 ここでも第2の単量体は露光した表面部位でのみ伸長する。 伸長中の配列に付加した第2の残基もまた塩基に不安定な基 によって保護された末端反応性官能基を含んでいる(620)。 この鎖伸長工程を、 所望の長さおよび所望の化学配列をもつ重合体が選択された表面部位全体に形成されるまで繰り返す(625)。

    【0046】 本発明はオリゴヌクレオチドおよびペプチドのアレイの並行合成に限定されるものではない。 この方法は、鎖伸長合成のそれぞれの工程で複雑な合成様式が必要とされる、分子アレイの固相合成において一般的に使用されるものである。 1 つの特定の例は多様な炭化水素ユニットおよび分枝鎖の配列を含むオリゴ糖類アレイの合成である(図7)。 本発明によれば、光-酸前駆体を保護された炭化水素を含む固体表面に塗布する。 それぞれの炭化水素分子はいくつかの反応性OH基を含み、そのそれぞれは保護基によって保護されている。 これらの保護基のそれぞれは異なる脱保護条件を必要とする。 次いで所定の光パターンを支持体表面に投射する。 照射された部位では酸が生成し、一連の特定の条件下で不安定な保護基が開裂する。 脱保護されたOH基は入ってくる分子と反応することができる。 暗部位では酸は生成せず、それゆえ炭化水素分子の酸に不安定な保護基はそのまま残っている。 次いで支持体表面を洗浄し、続いて単量体(炭化水素またはオリゴ糖類)
    を供給すると、単量体は通常の反応条件下で、脱保護されたOHにのみ付加してグリコシド結合を与える。 Wongら, J. Am. Chem. Soc. 120, 7137-7138 (1998)。 これらの工程を繰り返すと最初に脱保護されたOH位に種々のグリコシド結合を含むオリゴ糖類が得られる。 次に光-塩基前駆体を支持体に塗布する。 次いで所定 の第2の光パターンを支持体表面に2回目の投射をする。 照射された部位では塩基が生成し、この条件下で不安定な保護基が開裂する。 第2のバッチの脱保護され たOH基は入ってくる分子と反応することができる。 暗部位では塩基は生成せず、
    それゆえ炭化水素分子の塩基に不安定な保護基はそのまま残っている。 次いで支持体表面を洗浄し、続いて第2の単量体を供給すると、それは通常の反応条件下 で2回目の第2の脱保護されたOHにのみ付加してグリコシド結合を与える。 これらの工程を繰り返すと第2の脱保護されたOH位に種々のグリコシド結合を含むオリ ゴ糖類が得られる。 分枝したオリゴ糖類が形成される。 さらに継続した合成において種々のPGRを用いて所望のオリゴ糖類アレイが合成されるまでOH保護基の選 択的脱保護を達成する。

    【0047】 本発明は、単に脱保護反応だけでなくより多くの場合において、光生成試薬を使用することにより十分に発達した従来化学の方法を変えることなく、所定の様式に従い選択的反応を達成することができる。 さらに本発明は脱保護反応に限定されるのものではなく、アルコール(ROH、R=アルキル、アリールおよびそれらの置換誘導体)のような光生成反応性化合物を、エステル化、求核置換および脱離 反応のような種々の化学変換用の試薬として用いることができる。 これらの反応はカスタムメイドのMMAチップを製作するための重要な工程である。

    【0048】 合成装置図8A〜8Cは本発明のプログラム可能な光制御合成装置の3つの実施形態を示し ている。 図8Aに示すように、装置は4つの部分:試薬マニホールド812、光学系、
    反応器アセンブリ、およびコンピュータ814からなる。

    【0049】 試薬マニホールド図8Aの試薬マニホールド812は標準試薬の計量、供給、循環、および廃棄を行 う。 それは試薬容器、電磁弁または空気弁、計量弁、チューブ材料、および工程制御装置からなる(図8Aでは示していない)。 また試薬マニホールド812には溶 媒/溶液の輸送およびラインパージ用の不活性ガス処理系も含まれている。 かかるマニホールドの設計および構築は流体および/または気体処理の当業者には周知である。 多くの場合において、市販のDNA/RNA、ペプチド、およびその他のタ イプの合成装置を、本発明の試薬マニホールド812として使用することができる 。

    【0050】 光学系図8Aに示されている光学系の機能は、支持体表面810a上の所定の位置で光化学反応を開始させるためのパターン化光線または光パターン807cを発生させることである。 図8Aに示されている光学系は光源802、1以上のフィルター803、1以上のコンデンサーレンズ804、レフレクター805、デジタルマイクロミラー装置(DMD)8
    01、および映写レンズ806からなる。 操作の際に光線807aは光源802によって発生し、フィルター803を透過して所望の波長をもつ光線807bになる。 コンデンサー レンズ804およびレフレクター805を用いて光線807bをDMD801上に向ける。 映写レンズ806によって、DMDは光パターン807cを反応器810の支持体表面810a上に投射 する。 DMD801についての詳細は後に記載する。

    【0051】 光源802は、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザーおよび 発光ダイオード、または他のいずれかの適当な発光体のような広範囲の発光装置から選択できる。 光源802の波長は当該光化学反応の励起波長の範囲にわたるか またはその中に含まれるべきである。 当該光化学反応のほとんどに好ましい波長は280nm〜500nmである。 光源802の動力は妥当な時間内に反応器810の中で当該光化学反応を完了させるに十分な強さの光パターン807cを発生させるために十分でなければならない。 ほとんどの使用では支持体表面810aの位置での好ましい光度は0.1〜100mW/cm 2である。 多くの使用のためにはその広い波長および種々の動力の利用可能性により水銀ランプが好ましい。

    【0052】 フィルター803の選択基準は、当該光化学反応の励起波長およびその他の考慮 すべき事項に基づく。 例えば、反応器810中での望まない光分解反応および加熱 を避けるために光線807aから望ましくない短いおよび長い波長を取り除くことが多くの場合望ましい。 例えば、オリゴヌクレオチドおよびその他の生物関連分子の合成においては340nmより短い波長を取り除くことが好ましい。 加熱を避ける ために、赤外線遮断フィルターを用いて700nmを超える波長を取り除くことが好 ましい。 したがって2以上のフィルターを必要とし得る。

    【0053】 図8Aに示されている光学系中の基本構成要素はデジタルマイクロミラー装置80
    1であり、これは光パターン807bを発生させるために使用される。 DMDは電子制御されたディスプレー装置であり、コンピュータモニターと同様の方法でグラフィック像およびテキスト像を表示することができる。 この装置は映写ディスプレー装置として、Texas Instruments Inc., Dallas, Texas USAから市販されている(
    Hornbeck, LJ, “Digital light processing and MEMS, reflecting the dig
    ital display needs of the networked society,” SPIE Europe Proceedings,
    2783, 135-145 (1996))。 各DMD 801は複数の小型で、かつ個々に制御可能な揺動鏡801aを含んでおり、それは光線を操作して像または光パターン807cを発生させる。

    【0054】 DMD 801はいくつかの理由により本発明において光パターンを発生させるのに 好ましい手段である。 第1に、それは当該光化学反応を開始させるために必要で ある比較的短い波長の取り扱いが可能である。 第2に、この装置は高い光学効率 を有している。 第3に、それは高いコントラスト比をもつ光パターンを発生させ ることが可能である。 さらに高解像度型(1920x1080まで)の装置が実証されてき た。 これらの特長によって、本発明に記載されている光化学を用いることにより実用上所望される任意の分子配列アレイを合成するための光学パターンを都合よく発生させることが可能となる。 この態様において、本発明の装置はフォトマスクを用いて配列アレイを作製する先行技術の方法と比べ、非常に柔軟性がある。

    【0055】 光パターンの発生のために、その他の型の電子制御されたディスプレー装置を用いてもよい。 図8Bは反射液晶アレイディスプレー(LCD)装置821を用いる本発明の典型的な実施形態を示している。 反射LCD装置はDisplaytech, Inc., Longmont
    , Colorado USAのような多くの会社から市販されている。 各反射LCD装置821は、
    画像または光パターンを発生させるために、各レフレクターの前に液晶シャッター821aが置かれた複数の小型レフレクター(示されていない)を含んでいる。 最高
    1280X1024の高解像度装置はすでにDisplaytechから入手可能である。 図8Bに示されている光学系は、ディスプレー装置へ光を向ける光学装置を除いて図8Aの装置と同様である。 光線スプリッター825は、平坦な反射鏡上で効率的に光を一緒に してそこから出すために、図8Bに示されている光学系において用いられる。

    【0056】 本発明のもう1つの実施形態では、透過LCDディスプレー841を用いて、図8Cに示されているように光パターンを発生させる。 透過LCDディスプレー841には、図
    8Cで短い横棒として示されている複数の液晶光弁841aが含まれている。 液晶光弁
    841aをオンにすると光が通過し、液晶光弁をオフにすると光は遮断される。 それゆえ、通常のフォトマスクを標準フォトリソグラフィー方法で用いるのと同じように透過LCDディスプレーを用いることが可能である(LF Thompsonら, “Intr
    oduction to Microlithography”, American Chemical Society, Washington, D
    C (1994))。 図8Cではレフレクター845を用いて光線847bを透過LCDディスプレー8
    41に向けている。

    【0057】 DMD、反射LCD、および透過LCDを含む多くの市販のディスプレー装置は可視光(
    400nm〜700nm)を取り扱うように設計されている。 それゆえこれらの市販のディ スプレー装置を用いると、光試薬前駆体の励起波長が400nm〜700nmである場合には本発明のプログラム可能な光制御合成装置の最良の操作様式が達成される。 しかしながら、本発明の機器および方法の使用は前記波長の範囲を超えて拡張される。

    【0058】 図8A〜8Cは一度に1つのアレイチップを作製するための装置設計を示している 。 本発明はまた複数のチップを作製する装置も包含する。 図12は本発明の合成装置の処理量および効率を上げるための機械的/光学的ステッピング機構を模式的に示している。 このステッピング機構において、光線1204aはディスプレー装置 から投射され(図では示されていない)、映写レンズ1202を通過し、それをレフレクター1203によって反応器1201aの方に向けて像または光パターン1204bを形成させる。 レフレクター1203は光パターン1204bをいくつかある周囲の反応器1201a
    〜1201fのいずれか1つに向けることができる回転機構を有している。 例えばオリゴヌクレオチドの通常の合成方法では、光化学脱保護反応工程の間だけ光パターン1204bを特定の反応器、例えば1201aの方に向ける。 次いで反応器1201aがフラ ッシング、カップリング、キャッピングなどのような残りの合成工程を行っている間に光パターン1204bを他の反応器に向ける。

    【0059】 他のステッピング機構も本発明で用いてもよい。 例えば、半導体のフォトリソグラフィーに常用されているステップ-リピート露光スキームを使用してもよい 。 ステップ-リピートフォトリソグラフィーの一般的な記載はLF Thompson らのIntroduction to Microlithography, American Chemical Society, Washingto
    n, DC (1994)に見られる。 このスキームでは、複数の反応ウェルアレイを含む大型の支持体を使用する。 この支持体をxy平行移動台に取り付ける。 各工程にお いて1回の光学暴露が1つまたはいくつかのアレイに及ぶ。 次いで支持体を次の位置に移動させて別の光学暴露を行う。 この工程を全ての反応ウェルアレイが露光するまで繰り返す。

    【0060】 本発明は、電子制御ディスプレー装置をフォトリソグラフィーパターンを発生させる手段として使用することに限定されるものではない。 型押しクロムまたは他の適当なフィルムで被覆したガラスプレートから作製された通常のフォトマスクを同様に使用してもよい。 この場合には、図8Cに示されている透過LCDディス プレー841を通常のフォトマスクと置き換えているが、残りの装置はそのままで ある。 通常のフォトマスクの使用は同一生成物の大量生産には好ましい。 通常のフォトマスクは多数のアレイパターンを含んでいるため、多数の分子アレイを並行合成することが可能である。 しかしながら、種々の異なるアレイ生成物を小バッチで作製するには電子制御ディスプレー装置を使用することがその柔軟性によりずっと好ましい。

    【0061】 反応器配置前節に記載されるように、本発明に関連する光生成試薬(Photogenerated reag
    ent)は溶液相にある。 試薬を用いてアレイのような空間的に規定される型を生成する場合、適正に計測をするには個々のエレメントを空間的に分離させればよい。 図9Aないし9Cでは本発明の分離機構の3つの好ましい実施形態を模式的に示し ている。 9Aに示された実施形態では、透明支持体901およびキャップ902で反応槽または反応器を形成し、これに1以上の光試薬(photo-reagent)前駆体を含む溶液を充填する。 遮断壁903で結ばれる反応ウェルをキャップ902上に型押しする。 キャップ902は反応に関連するあらゆる化学薬品に対して不活性なプラスチックま たはエラストマー材料で作製することが好ましい。 光分解反応が起こる前に、キャップ902で支持体901を押して、遮断壁903と支持体を接触させ、個々の反応ウ ェルを分離させる。 次いで図9Aの工程3に示されるように、選択された多くの反 応ウェル904aおよび904cへ光線を映写する。 光分解および他の光試薬誘導反応が露光反応ウェル904aおよび904cで起こるが、未露光反応ウェル904bでは光活性化反応は起こらない。 正確に構築され、作動する場合、記載される分離機構により個々の反応ウェル間の試薬の拡散が妨げられる。 さらに隣接した反応ウェル904a
    および904c間の空間を緩衝領域904dに提供することで、さらに反応ウェル間のいずれの内部混合をも妨げられる。

    【0062】 図9Aに示されるように、緩衝領域904dは個々の反応ウェル間の干渉を防ぐ付加的な機構のための空間を提供する。 図10では三次元透視図において本発明の反応ウェルについての詳細な構造を示している。 この図では緩衝領域(図10では1006
    と表示)が全体を相互連結していることを示している。 この相互連結構造により、全ての反応ウェルを閉じている間に、適当な溶液で緩衝領域を洗い流すことが可能となる。 好ましい実施形態では、光分解および光試薬誘導反応完了後およびキャップ902を上げる前に、露光反応ウェル904aおよび904c内で光試薬誘導化学 反応をクエンチするか、または光生成試薬を中和するいずれかの溶液で緩衝領域
    904dを洗い流す。 従って、キャップ902を上げた後、他の領域で露光反応ウェル9
    04aおよび904cからの過剰な光生成試薬による望ましくない化学反応は起こらな いであろう。 光生成酸を中和するには、CH 2 Cl 2中のピリジンなどの弱塩基性溶液を用いればよい。 ヌクレオチド結合反応をクエンチするには、アセトニトリルまたは他の適当な溶媒を用いてよい。

    【0063】 図9Bでは本発明の分離機構についてのもう1つの実施形態を示している。 この 実施形態では、反応ウェル構造または反応ウェル遮断壁913が透明支持体911上に構築され、キャップ912が平坦な内面を有している。 支持体911はガラス製であることが好ましい。 キャップ912は反応に関連するあらゆる化学薬品に対して不活 性なプラスチックまたはエラストマー材料で作製することが好ましい。 密封機構および好ましい作動モードは、9Aに示される実施形態に関して先に記載されたものと同様である。

    【0064】 図9Cでは本発明の分離機構についての第3の実施形態を示している。 この実施 形態では、1パターンの透明支持体931の表面上を非湿潤フイルム933で覆う。 作動中、反応器をまず溶液934で充填する。 次いで溶液が非湿潤フイルム933ではなく、支持体931表面上を湿らせるため、溶液934を反応器から排出し、支持体931 表面上に液体粒子を形成させる。 液体粒子を互いに分離させる。 次いで所定の液体粒子934aおよび934cへ光線935を発射して、光分解および他の光試薬誘導反応 を開始する。 この実施形態では密封機構の必要性を排除し、大型の支持体を用いる大規模バイオチップの生産に好適である。 液体を閉じ込める非湿潤フイルムの使用は当技術分野では十分に公知であり、インクジェット式印刷法を用いるDNA オリゴマーの合成についての米国特許第5,474,596号のThomas M. Brennanにより記載されている。

    【0065】 本発明の反応器は、図10に示されるカートリッジ型に集成することが好ましい。 図に示される設計では図9Bに示される分離機構を使用する。 図9Aおよび図9Cに示されるもののような他の分離機構を容易に同様のカートリッジ型とすることができる。 図10に示されるように各カートリッジには透明支持体1001が含まれており、これはガラスまたは好適な化学的および光学的特性をもつ重合物質からなってよい。 支持体上部には独立した反応ウェル1004のアレイを形成する複数の開口部を有する遮断層1003がある。 原則的には、反応ウェルはいずれの適当な形態およびサイズであってよい。 円形および方形ウェルが好ましい。 ウェルが直径10ないし1,000μmおよび深さ5ないし100μmをもつ円形であることが最も好ましい。 例えば、特殊な設計では、円形反応ウェルは直径140μmおよび深さ20μmであり 、中心間距離200μmを均等に有する直交配列として配置される。 この設計に関しては、2,500反応ウェルが1平方センチメートルの面積に納まっている。 固定された隣接分子間の平均距離が20Å(オングストローム)であると仮定すれば、各反応ウェルでは約6.4fmol分子が合成されると考えられる。 十分な容量が反応に必要 であるという場合には、反応ウェルの容量は約300ピコリットルである。 遮蔽層1
    003は個々の反応ウェルを互いに光学的に分離させために、金属または黒くした 重合体のような不透明材料で作製する。 3番目の層は反応器キャップ1002である 。 キャップ1002は3つの機能:反応器封入、試薬連絡/分配および反応ウェル分 離、を有している。 キャップ1002は軟質、かつ関連する合成工程に必要な化学薬品/溶媒に耐性ある重合物質で作製することが好ましい。 この物質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体を含む重合体、
    フッ素化重合体、および様々な他の適当なものの群から選択してよい。 試薬入口
    1012および出口1013は反応器の2つの相対する末端に配置されている。 枝分かれ チャンネル1011により、試薬を反応器中で均等に分配を行わせる。 キャップの中心部分はパッド1015であり、これを押し下げることで下部で反応ウェル1004を密閉できる。 反応器の直前に機械作動器(図10では示されていないが、図8Aないし
    8Cでは811、831およ び851で示されている)があり、これは例えばソレノイド、または空気圧のいず れかで作動し得る。 作動器は反応器キャップのパッドを押して全ての反応ウェルを密閉するか、または収縮して全ての反応ウェルを開くかのいずれかが可能である。 この操作は図9Aおよび9Bで示される密封機構を調整しようとするものである。 図10の挿入図は密封を容易にする押出リム1005を含む反応ウェル構造の拡大図を示している。 図10では示されていないが、反応器支持体には本発明の光学的リソグラフィー系において反応器の整合を可能にする整合マークが含まれている。

    【0066】 図10で示される反応器カートリッジは通常の化学および生化学実験室環境での使用には最適である。 カートリッジの閉鎖構造により環境からの化学薬品および粒子汚染を防ぐ。 最良で一貫した結果をもたらすために、カートリッジは制御された環境において製造し、カートリッジ内部の化学的保全性を確実にすることが好ましい。 次いでカートリッジをArなどの不活性ガスで満たし、反応器の入口および出口をふさぐことで密閉する。 さらにカートリッジを保管し、および/または使用者実験室へ輸送することが可能である。

    【0067】 反応器の作製本発明の反応器(図9Aないし9Cおよび10)を、フォトリソグラフィー、薄膜付着、電気メッキ、および成形のような種々の十分に公知なマイクロ製作工程を用いて製作することが可能である(M. Madou, Fundamentals of Microfabrication,
    CRC Press, New York, (1997))。 これらの手法は多くのマイクロ流体工学装置 、電気機械装置、化学センサー、および光学的マイクロ装置の作製に広く用いられている。 例えば、図10で示される反応ウェル構造を、ガラス支持体を好適な金属フィルムで電気メッキすることで製作してもよい。 この記載の最後に実施例を与え、関連する製作工程を例示している。 またガラス支持体上の反応ウェル構造は、多くのマイクロ流体工学装置の作製に広く用いられてきた化学エッチングを用いて製作してもよい(Peter C. Simpson et al. Proc. Natl. Acad. Sci., 95:
    2256-2261(1998))。

    【0068】 図10で示される反応器キャップ1002は精密成形工程を用いて製作してよい。 かかる工程はプラスチック製作産業において広く利用可能である。 用いる重合物質は露光中の光の反射および散乱を最小にする黒色であることが好ましい。 溶接および接着法を用いて、プラスチックキャップ1002および支持体1001を組み込まれたカートリッジに集成してもよい。

    【0069】 ガラスおよび他の支持体上の非湿潤フィルム型の作製は多くの分野で十分に公知な技術である(Uthara Srinivasanら, Proc. IEEE Solid-State Sensors and A
    ctuators, June 1991, 1399-1402)。 このフィルムは通常、自己集合分子の単層(
    SAM)またはテフロンなどの低表面エネルギー物質の重合薄膜により作製される。
    最も頻用されるガラス支持体上のSAMには様々な炭化水素アルキルシランおよび オクタデシルトリクロロシランおよび1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシルトリクロロシランのようなフルオロアルキルシランが挙げられる。 型押工程にはフォトレジストおよびフォトリソグラフィーの使用が含まれる。 この記載の最後にある実施例VIIにより詳細な型押手法が提供される。 スクリーン印刷法を用いて、テフ ロンなどの重合薄膜をガラスおよびプラスチック表面に型押ししてもよい。 スクリーン印刷法は印刷産業および電子工業分野で十分に公知な技術である。 マイクロ製作を使用するためのスクリーン印刷の一般的手法はFundamentals of Microf
    abrication, CRC Press, New York, (1997)のM. Madou,により記載されている。
    さらに疎水性プリントスライドはEric Scientific Company, Portsmouth, New H
    ampshire USAなどの販売元から市販されている。 非湿潤フイルムを型押しした支持体を用いる場合、図8Aないし8Cおよび図10に示される反応ウェル密封機構がもはや必要でないため、反応器配置を簡易にしてもよい。

    【0070】 装置の制御図8Aに例示される本発明の合成装置は、DMD801、反応器810の密封作動器811および試薬マニホールド812の機能を調整するコンピューター814により制御される。 オリゴヌクレオチドを合成する場合、ほとんどの合成工程中、合成装置は通常の合成装置として作動し、コンピューター814が試薬マニホールド812を制御して、様々な試薬を反応器810へ供給する。 光制御脱保護工程では試薬マニホールド8
    12により光酸前駆体を反応器810へ送達する。 コンピューター814により密封作動器811を作動させて反応ウェルを分離し、次いでデータをDMD801に送信して光パ ターン807cを反応器810へ投影する。 光反応の完了時に、光パターン807c を切り、クエンチ溶液を反応器810へ送達し、密封作動器811を上げて、合成制御系により通常の合成工程を再開する。

    【0071】 変形および変更 本発明についての多くの変形および応用が可能である。 図11Aでは反応ウェル 構造の変形を例示している。 マスク層1103を反応ウェルの底に加える。 全体で反応ウェル表面積の10分の1ないし2分の1を占める1以上の開口部を、通過する光11
    04用のマスク上に作製する。 マスク層1103はCrのような薄く、かつ耐薬品性の金属フイルムで作製されることが好ましい。 金属フイルムの上部にSiO 2フイルム(
    示さず)を付着させて、リンカー分子の固定化を容易にする。 反応ウェル設計より光化学反応と光生成試薬誘導化学反応との空間的分離が可能になる。 図11Aで は光酸誘導化学反応を例示している。 露光状態において、開放面で光酸前駆体からプロトンH +を生成する。 次いでプロトンをウェルの周囲部分に拡散させ、固定化オリゴマー分子1106上の酸に不安定な保護基P aを開裂する。 この配置は、光生成ラジカル中間体とオリゴマーとの接触を最小限にし、従ってラジカル中間体が存在するために起こるであろう、望ましくない副反応を抑制する助けとなる。

    【0072】 図11Bでは反応ウェル構造および露光戦略のもう1つの変形を例示している。 またこの実施形態では、ラジカル中間体による望ましくない副反応の可能性を小さくするよう設計されている。 反応ウェル表面の1部分だけを光1114に暴露させる 。 その結果として、他の部分での望ましくない副反応の機会が減少する。

    【0073】 本発明の化学的方法および装置(図8Aないし8C)の使用は、分子アレイの製作の範囲を超えて拡張される。 例えば、図8Aに示されるDMD801を用いる装置を、化学および生化学反応を研究するための汎用アッセイ装置として用いてもよい。 デジタルマイクロミラー装置801は、正確かつ同時に反応器810の個々の反応ウェル全ての光線量を制御する。 この態様により、全ての反応ウェルにおける光生成試薬の生成を精密に制御でき、それゆえに大規模、並行アッセイを行うことが可能になる。

    【0074】 前記教示の観点から、本発明についての多くの改良および変形が可能なことが明らかである。 従って特に断りのない限り、本発明は添付の請求項の範囲内で実施され得ることことが理解される。

    【0075】 以下、本発明を下記の実施例により説明するが、これは例示のためのものであって、本発明を限定するものではない。 当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、以下の実施例の変形がなされることが理解されよう。

    【0076】 実施例I光酸生成(Photo-acid generation) 本試験では光照射時間の関数としてのH 2 Oシグナルの化学シフト値の増加によ ってモニターするPGAの光照射下でのH +の効率よい生成を例示する。

    【0077】 0.5mL CD 2 Cl 2中のスルホニウム塩(プロピレンカーボネート中、50%ヘキサフ ルオロリン酸トリアリールスルホニウムの0.4%, Secant Chemicals, Boston, MA
    )を含む6サンプルを核磁気共鳴(NMR)管に入れた。 これらのサンプルの参照1次元(1D)スペクトルを、当業者に十分に公知な方法を用いて記録した(600MHz NMR
    分光計, Bruker, Karlsruhe, Germany)。 次いでサンプルの1つを平行光源(22mW,
    Oriel, Stanford, CA)を用い、規定時間、365nmで照射し(図13)、照射後、直ちに1D NMRスペクトルを記録した。 次いで2番目のサンプルを2番目の規定時間、
    365nmで照射し(図13)、照射後、直ちに1D NMRスペクトルを記録した。 準備し たサンプル各々について、これらの試験を繰り返した。 各NMRスペクトルに対し 、H 2 Oの化学シフトを測定した。 無光下では、H 2 Oシグナルは1.53ppmで見られた 。 照射下では、H +の生成によってこのシグナルが高ppm値(下位フィールドがシ フト)へ移動した。

    【0078】 図13ではH 2 Oシグナルの化学シフトの変化と照射時間の相関をプロットする。 使用した条件下でのH +の形成は一次動力学関係に従い、誘導されたH +の形成についての見掛けの速度定数は1.3x10 -2 ±0.06s -1である。

    【0079】 実施例II PGAを用いるヌクレオシド単量体の脱保護 これらの試験ではPGAを用いるヌクレオシドの5'-OH上でのDMT基の効率よい脱保護を例示する。

    【0080】 特殊多孔質ガラス(CPG)0.2μmolに結合させたDMT-Gを0.5mL CH 2 Cl 2中のスルホニウム塩(プロピレンカーボネート中、50%ヘキサフルオロリン酸トリアリール スルホニウムの0.4%, Secant Chemicals, Boston, MA)に加えた2サンプルを準 備した。 一方のサンプルをUVランプ(UVGL-25、0.72mW)を用いて365nmで2分間照 射し、他方のサンプルを対照として照射しなかった。 照射完了時にCPGをCH 2 Cl 2およびCH 3 CNで洗浄し、次いで濃NH 4 OH水溶液(1mL)により55℃で2時間処理した。
    溶液は便宜に真空蒸発させた。 バッファー溶液(0.1M酢酸トリエチルアンモニウ ム(TEAA)、CH 3 CN中15%)をCPGサンプルに加え、得られた溶液をC18逆相(10μm、 μ−bondapak、Waters)HPLCカラムに注入した。 CH 3 CN中の1M TEAAの勾配を用い てサンプルを溶出させた。 DMT-dGおよびdGの標準サンプルを参照として用い、PG
    Aにより脱保護されたdGおよび標準dGの同時注入によりPGA反応の結果を確認する。 図14Aの1400および1410ではDMT-GおよびPGAにより脱保護されたdGのHPLCプロ フィールを示している。

    【0081】 同様の手法をDMT-dC、DMT-dG、DMT-dAおよびDMT-rUについても行った。 図14B の1420および1430ではDMT-rUおよびPGAにより脱保護されたrUのHPLCプロフィー ルを示している。

    【0082】 また2,1,4-ジアゾナフトキノンスルホン酸トリエステル、ヘキサフルオロリン酸トリアリールスルホニウムならびにヘキサフルオロリン酸(Secant Chemicals,
    Boston, MA)、およびペルハロゲン化トリアジン(Midori Kagaku)のような他の光酸前駆体もこれらの脱保護反応に用いた。 DMT基の完全な脱保護はこれらの光 酸前駆体を用いて達成された。

    【0083】 実施例III予め活性化したPGAを用いるヌクレオシド単量体の脱保護 本試験ではPGA前駆体の予備活性化がPGAを用いる脱保護における副反応の有効な低減方法であることを示すものである。 酸性条件下におけるヌクレオチドのグリコシド結合の切断による脱プリン化は公知の問題である。 反応の開始時にH +量を高めるのに時間を要するため、脱保護についてのPGAの使用にはこの問題が悪 化する。 次の試験は、予め活性化したPGAを用いることでこの問題が多少とも解 消し得ることを示すものである。

    【0084】 本試験に使用したサンプルおよび試験条件は、CPG結合DMT-ヌクレオシドを加 える前に、まずPGA溶液(プロピレンカーボネート中、50%ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウムの0.4%)を365nmで2分間照射することを除き、
    実施例IIに記載したとおりであった。

    【0085】 365nmで2分間の予備照射(UVGL-25、0.72mW)はPGA溶液(プロピレンカーボネート中、50%ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウムの0.4%)を用 いて行った。 次いで照射した溶液を粉末DMT-dA(約1μmol)に加えた。 この溶液をさらに2分間インキュベートした。 1D NMRスペクトルを、当業者に十分に公知 な方法を用いて記録した。 DMT-dA(1μmol)の別のサンプルをPGA溶液(プロピ レンカーボネート中、50%ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウ ムの0.4%)と混合し、混合物を365nmで2分間照射(UVGL-25、0.72mW)した。 1D NM
    Rスペクトルを記録した。 脱プリン化によってdAシグナルが徐々に消失すること となる。 これらの試験で記録された2つのNMRスペクトルの比較により、予め活性化したPGAを用いる反応では副反応が少ないことが示される。

    【0086】 実施例IV PGAを用いるオリゴヌクレオチド合成 これらの試験ではPGAを用いるCPG支持体上でのオリゴヌクレオチドの効率よい合成を例示する。 様々な配列(A,C,GおよびT)および鎖長(n=2-8) をもつオリゴヌクレオチドを、光酸前駆体を用いてPerspective合成装置(Perspective Biosyste
    ms, Framingham, MA)で合成した。

    【0087】 DMT-TTTT(図15の1510)の合成は、表2のプロトコールに従い、0.2μmlスケールで行った。 これは工程2に若干の改変があるが、通常のホスホルアミダイト合成 を直接採用するものである。 この工程ではPGA(プロピレンカーボネート中、50%
    ヘキサフルオロリン酸トリアリールスルホニウムの0.4%)を加え、反応カラムを
    365nm光で2分間照射した。 光脱保護反応後、カラムを溶媒で広く洗浄した。 合成の完了時に配列をCPGから切断し、濃NH 4 OHを用いて脱保護した。 サンプルを、CH 3 CN中のTEAA勾配を用いるC18逆相HPLCを使用して試験した。 PGAを用いて合成し たDMT-TTTT粗生成物のHPLCプロフィールを示している(図15Aの1510)。 図15の150
    0では通常のTCA脱保護化学を用いるDMT-TTTTを示している。 図15Bの1520および1
    530ではPGAアプローチを用いて合成した粗オクタヌクレオチドのHPLCプロフィールを示している。

    【0088】

    【表2】

    【0089】 実施例V PGAを用いるアミノ酸脱保護およびペプチド合成 これらの試験ではペプチド合成における、PGAを用いるアミノ保護基の効率よ い脱保護を例示する。

    【0090】 t-Boc-Tyrを含むHMBA樹脂(Nova Biochem, La Jolla, CA)のサンプル10mgを使 用した。 脱保護はPGA溶液(プロピレンカーボネート中、50%ヘキサフルオロアンチモン酸トリアリールスルホニウムの10%)を含むCH 2 Cl 2溶液中、同溶液を365nm
    で15分間照射して行った。 この反応物をさらに15分間インキュベートし、樹脂を
    CH 2 Cl 2溶液で洗浄した。 ニンヒドリン試験変色試験を用いて、可能性ある残留アミノ基の存在を検出した結果、検出されなかった。 次いで樹脂を洗浄し、アミノ酸をNaOH(CH 3 OH中0.1M)を用いて樹脂から切断した。 図16の1610ではPGAにより脱保護されたTyrのHPLCプロフィールを示している。 図16の1600では通常のトリフ ルオロ酢酸(TCA)脱保護を用いて得られるTyrのHPLCプロフィールを示している。

    【0091】 ペンタペプチド、Leu-Phe-Gly-Gly-Tyrの合成をMerrifield樹脂100mgを用いて行った。 t-Boc基のPGA脱保護を行い、樹脂を、ニンヒドリンを用いて変色が無くなるまで試験した。 当業者に十分に公知な条件を用い、カップリング反応を行った。 五量体の合成が完了するまで、PGA脱保護およびカップリング反応を繰り返 した。 この配列を樹脂から切断し、そのHPLCを通常のペプチド化学を用いて合成した同配列のものと十分に比較した。

    【0092】 実施例VIマイクロウェルの製作 本実施例では本発明の製法を用いるマイクロウェルの成形を示す。 図17Aでは 使用した製作工程を模式的に示している。 第1の製作工程ではCr/Cu 200/1000A( オングストローム)厚の薄いバイメタルフィルム1702をガラス支持体1701上でス パッターエバポレーターにより蒸発させた。 バイメタルフィルム1702 Crはガラ ス表面に対し優れた付着性を与え、Cuは後の電気メッキにおける優れた支持体を提供する。 次いで表面を18μm厚のポジフォトレジスト1703でスピンコートした 。 さらにフォトレジストフィルム1703をフォトリソグラフィーを用いて型取った(フォトマスク調整装置を用いる紫外線への暴露および現像)。 Niのメッキ液を使用する電気メッキを用いて、露光Cu表面上に18μm厚のNiメッキフィルムを付 着させ、マイクロウェル遮断壁1704を得た。 溶液処方およびメッキ条件は次の通りである。 NiSO 4・6H 2 O: 300g/l、NiCl 2・6H 2 O: 30-40g/l、酸: 40g/l、サッカ リンナトリウム: 2-5g/l、ブチンジオール(2-ブチン-1,4-ジオール): 100mg/l
    、ラウリル硫酸ナトリウム: 50ppm、pH: 3.0-4.2、電流密度: 10A/dm 2温度: 5
    0℃。 次いでフォトレジストフィルム1703を取り外した。 CuフィルムをHNO 3 :H 3 PO 4 :CH 3 COOH=0.5:50.0:49.5(容量)溶液を用いてエッチングし、Crフィルムをア ルミニウム棒により活性化したHCl:H 3 PO 4 :CH 3 COOH=5:45:50(容量)溶液を用い てエッチングした。 次いでガラス上のスピンフィルムをサンプル表面上で被覆し、SiO 2フィルム1705を形成させた。 図17Bでは得られたマイクロウェルサンプル の写真を示している。

    【0093】 実施例VII型押非湿潤フイルムを用いる溶液の分離 本実施例では、本発明で教示された方法を用い、非湿潤フイルムで型押ししたガラス表面上に有機溶媒液体粒子のアレイを形成することを示している。 図18A ではガラス支持体1801上で型押非湿潤フイルムを被覆するための製作工程を模式的に示している。 ガラス支持体1801を温めたH 2 SO 4 :H 2 O=1:1(容量)溶液で十分 に清浄した。 次いで支持体1801を約2.7μm厚のポジフォトレジストでスピン被覆した。 フォトレジストフィルム1802をフォトマスク調整装置を用いて紫外線へ暴露させ、現像した。 本実施例では、円形ドットのマトリックスを含むフォトマスクを使用するため、フォトレジストフィルム1802に同じパターンを形成した。 型押ガラス支持体をドライボックス中、1mM FDTS(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデシ ルトリクロロシリアン)無水イソオクタン溶液に浸し、少なくとも10分間浸透さ せた。 次いで支持体をイソオクタンで2-3回すすぎ、続いて入念に水ですすいだ 。 フォトレジストを取り外し、FDTSフイルムを非湿潤フイルムとしてガラス表面に残した。

    【0094】 湿潤効果の試験は、揮発性溶媒の蒸発を避けるために密閉槽で行った。 試験中、槽に試験溶媒および溶液を充填し、次いで排出した。 CH 2 Cl 2 、CH 3 CN、CH 3 OH、
    CH 3 CH 2 OHのような様々な有機/無機溶媒ならびに溶液、TCA/ CH 2 Cl 2溶液、I 2 / テトラヒドロフラン−水−ピリジン溶液、およびオリゴヌクレオチド合成に関連する他の溶液について試験した。 各試験溶媒/溶液について、液体粒子アレイの形成を観察した。 図18Bでは非湿潤フイルム型押ガラスプレート上に形成したメ タノール液体粒子アレイの写真を示している。

    【0095】 実施例VIII PGAを用いる型押ガラス支持体上でのアレイ合成 これらの試験では、マイクロアレイチップの作製における本発明の方法および器具の使用を例示している。

    【0096】 実施例VIに記載される特定部分に独立した反応ウェルを有する製作ガラス支持体を使用した。 ガラスプレートを遊離OH基(free OH groupes)を含むリンカー分 子(エタノール中、10% N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシルブ チルアミド)により誘導体化した。 ガラス支持体上での合成は本明細書に記載される反応器ならびにデジタル光プロジェクター、およびDNA合成装置(Perspectiv
    e)を用いて行われた。 オリゴヌクレオチド合成は表2に示されるプロトコールに 従って達成された。 ガラス表面をまず、DMT-T ホスホルアミダイトと接触させ、
    第1の残基を結合させた。 この配列を後の工程において、キャッピングおよび酸 化試薬によって処理し、反応の各工程の前後にCH 3 CNで洗浄した。 次いでガラス プレートを合成装置により送達されるPGA(CH 2 Cl 2中、50%ヘキサフルオロリン酸トリアリールスルホニウムの0.4%)で処理し、365nmおよび光源強度3mwで平行光源からのコンピューター発生パターン光照射(30s)に暴露させた (Stanford, CA)
    。 さらに表面をCH 3 CNで広く洗浄した。 露光部分では遊離ヒドロキシル基が生成 した。 酸化および洗浄工程後、第2のカップリング工程で表面に蛍光標識ホスホ ルアミダイト単量体を接触させた。 合成された分子アレイをNaOH水溶液(0.1M)で処理した。 蛍光標識二量体を含むこのアレイを蛍光顕微鏡で視覚化した(Bio-Rad
    , Richmond, CA)。 その結果を図19で示している。

    【図面の簡単な説明】

    【図1】 図1は、光生成酸を用いるオリゴヌクレオチド合成の図である。 L−リンカー 基;P a −酸不安定保護基;H + −光生成酸;T、A、CおよびG−ヌクレオチドホスホルアミダイトモノマー;hv−露光。

    【図2】 図2は、オリゴヌクレオチド合成において光生成酸を用いる脱保護過程の図である。

    【図3】 図3は、光生成試薬を用いるオリゴヌクレオチド合成の図である。 この過程は、ジメトキシベンゾイニルテトラゾールなどの光生成活性化剤を用いる他は図1
    に示される過程と同じであるが、該脱保護工程は、通常の酸を用いて行う。

    【図4】 図4は、光生成酸または光生成塩基を用いるアミノ酸脱保護の図である。 Boc =ブチルオキシルカルボニル;Fmoc=フルオロエニルメチルオキシカルボニル。

    【図5】 図5は、光生成酸を用いるペプチド合成の図である。 L−リンカー基;P a −酸 不安定保護基;F、Q、D、Y、SおよびA−Boc保護された代表的なアミノ酸;hv− 露光。

    【図6】 図6は、光生成塩基を用いるペプチド合成の図である。 L−リンカー基;P b − 塩基不安定保護基;F、Q、D、Y、SおよびA−Fmoc保護された代表的なアミノ酸;
    hv−露光。

    【図7】 図7は、様々な反応ステップで光生成酸および光生成塩基の両方を用いる炭水化物合成の図である。

    【図8】 図8Aは、マイクロミラーアレイモジュレーターを用いる合成装置の概略図で ある。 図8Bは、反射LCDアレイモジュレーターを用いる合成装置の概略図である。 図8Cは、伝達LCDアレイモジュレーターを用いる合成装置の概略図である。

    【図9】 図9Aは、背面カバー上でマイクロウエル構造を用いる単離機構を図示する。 図9Bは、支持体上でマイクロウエル構造を用いる単離機構を図示する。 図9Cは、支持体上でパターン化非湿潤フィルムを用いる単離機構を図示する 。

    【図10】 図10は、反応装置のカートリッジの分解図、および反応ウエルの拡大図である。

    【図11】 図11Aは、部分的に遮蔽した反応ウエル中の脱保護反応の概略図である。 図11Bは、部分的に反応ウエルを照射した脱保護反応の概略図である。

    【図12】 図12は、複数のアレイの並行合成について段階的機構を図示している。

    【図13】 図13は、光酸前駆体を含むサンプルを測定して得た、H 3 O +化学シフト(ppm )対 光照射時間(分)のプロットである。

    【図14】 図14は、光生成酸を用いて脱保護されたDNA(図14A)およびRNA(図14B
    )ヌクレオシドのHPLCプロフィルを示す。

    【図15】 図15は、光生成酸を用いて合成されたDNAオリゴマーのHPLCプロフィルを示 す。

    【図16】 図16は、光生成酸を用いて脱保護されたアミノ酸のHPLCプロフィルを示す。

    【図17】 図17Aは、平面支持体上でマイクロウエルを作製する製造法を図示する。 図17Bは、ガラス支持体上のマイクロウエルの拡大写真である。

    【図18】 図18Aは、平面支持体上で非湿潤フィルムのパターンを作製する製造法を図 示する。 図18Bは、非湿潤フィルムパターンを含むガラス表面上で形成されたメタノ ール液滴の拡大写真である。

    【図19】 図19は、非湿潤フィルムのパターン化ガラスプレート上で伸長されたフルオレセイン標識化チミンの蛍光画像である。

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/68 G01N 33/15 Z 4H006 G01N 33/15 33/50 Z 33/50 37/00 103 37/00 103 C12N 15/00 F (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE, KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,L T,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE, SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,U A,UG,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ガオ、シャオリャン アメリカ合衆国 77030 テキサス州、ヒ ューストン、ブレアスウッド 2211、アパ ートメント 21ディー (72)発明者 ツォウ、シャオチュアン アメリカ合衆国 48105−1953 ミシガン 州、アン アーバー、ニールセン コート ナンバー4 1129 (72)発明者 グラリ、エルドガン アメリカ合衆国 48105 ミシガン州、ア ン アーバー、ペンベルトン ドライブ 3886 Fターム(参考) 2G045 BB14 DA13 FA12 FA16 FA23 FB06 GC30 4B024 AA11 AA20 CA04 HA19 4B029 AA23 4B063 QA01 QQ42 QQ52 QR32 QR35 QR55 QR62 QS34 4G075 AA15 AA23 AA62 AA65 BA02 BA04 BA05 BA06 BB05 BB10 BC10 CA33 CA36 CA38 CA57 CA63 DA02 DA04 EB32 EB33 EB34 ED17 EE12 EE21 EE31 FA05 FB06 FB12 FB13 FC02 FC09 4H006 AA02 AA04 AC90 BA95 BD81

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