タンパク質多量体の効率的な提示法

申请号 JP2013092370 申请日 2013-04-25 公开(公告)号 JP6240847B2 公开(公告)日 2017-12-06
申请人 ジーンフロンティア株式会社; 发明人 古城 周久; 金森 崇; 加藤 静恵; 對比地 久美子;
摘要
权利要求

以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を製造する方法: i)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ること、 ii)i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、in vitro翻訳系により、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得ること。i)のin vitro翻訳系が非対象構成因子をコードする核酸を含まない、請求項1に記載の方法。タンパク質多量体−核酸複合体及び対象構成因子−核酸複合体がリボソームを含む、請求項1又は2に記載の方法。ii)において、i)で得られた翻訳反応産物にリボソームを添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。タンパク質多量体−核酸複合体1分子につき、タンパク質多量体1分子、及び対象構成因子をコードする核酸1分子が含まれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。in vitro翻訳系が、独立に精製された因子からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。独立に精製された因子の少なくとも1つが原核生物から抽出された因子である、請求項6に記載の方法。タンパク質多量体が二量体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。タンパク質多量体が多量体として機能するものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。タンパク質多量体が抗体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。抗体がFab断片である、請求項10に記載の方法。対象構成因子がL鎖及びH鎖からなる群から選択されるいずれか一方であり、非対象構成因子が他方である、請求項10又は11に記載の方法。対象構成因子をコードする核酸が、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを製造する方法: i)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーから対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体のライブラリーを含有する翻訳反応産物を得ること、 ii)i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、in vitro翻訳系により、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを得ること。以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を製造する方法: i’)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ること、 ii’)in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得ること、 iii’)i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得ること。i’)のin vitro翻訳系が非対象構成因子をコードする核酸を含まない、請求項15に記載の方法。ii’)のin vitro翻訳系が対象構成因子をコードする核酸を含まない、請求項15又は16に記載の方法。タンパク質多量体−核酸複合体及び対象構成因子−核酸複合体がリボソームを含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。タンパク質多量体−核酸複合体1分子につき、タンパク質多量体1分子、及び対象構成因子をコードする核酸1分子が含まれる、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。in vitro翻訳系が、独立に精製された因子からなる、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。独立に精製された因子の少なくとも1つが原核生物から抽出された因子である、請求項20に記載の方法。タンパク質多量体が二量体である、請求項15〜21のいずれか1項に記載の方法。タンパク質多量体が多量体として機能するものである、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。タンパク質多量体が抗体である、請求項15〜23のいずれか1項に記載の方法。抗体がFab断片である、請求項24に記載の方法。対象構成因子がL鎖及びH鎖からなる群から選択されるいずれか一方であり、非対象構成因子が他方である、請求項24又は25に記載の方法。対象構成因子をコードする核酸が、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーである、請求項15〜26のいずれか1項に記載の方法。以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを製造する方法: i’)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーから対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体のライブラリーを含有する翻訳反応産物を得ること、 ii’)in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得ること、 iii’)i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを得ること。

说明书全文

本発明は、遺伝子ライブラリーから目的の機能を有するタンパク質多量体に含まれる構成因子をコードする核酸を選択するため、in vitro翻訳系において、タンパク質多量体と核酸を含む複合体を効率的に作製する方法に関する。

近年、抗体医薬品として大きく発展しているモノクローナル抗体は、H鎖とL鎖からなるタンパク質多量体である。これまでその薬効等を高める目的で多くの改良技術が提案されてきた。例えば、抗体の親和性向上には、抗体のH鎖とL鎖のシャッフリングが有効であることが示されている。すなわち、ファージディスプレイ(非特許文献1、非特許文献2)や酵母表層ディスプレイ(非特許文献3)等のin vivo選択系において、ライブラリー化したH鎖又はL鎖いずれか一方と、それに対応する相手鎖の遺伝子から翻訳される抗体タンパク質(例えば、Fab型抗体)を提示させ、目的抗原に対する親和性に基づいた選択を実施することで、より親和性の高いクローンの選択が可能となる。しかしながら、ファージディスプレイや酵母表層ディスプレイにおいては、遺伝子の発現ベクターへの導入効率や宿主細胞の形質転換効率に制限(一般的には107〜1010分子)があるため、1010分子を超える多様性を有するライブラリーを調製するのは容易ではなく、多大な労と時間を要する。

一方、リボソームディスプレイ(特許文献1)に代表されるin vitro 翻訳系を利用するin vitro選択系は、in vitro翻訳系内において、遺伝子(mRNAもしくはcDNA)とそれがコードするタンパク質との複合体を形成させ、特定の機能を有するタンパク質を効率的に選択する技術である。ここで不可欠な要素は、遺伝型と表現型が1対1に対応付けされていることである。具体的には、遺伝型であるcDNAもしくはmRNAと、それらから翻訳されたタンパク質とが1対1で物理的に結合している必要がある。表現型であるタンパク質の性質に基づいて目的の機能をもつ複合体が選択されるため、複合体の数がライブラリーの多様性を示すことになる。in vitro選択系における複合体の調製は、酵母表層ディスプレイなどのin vivo選択系で必要な生細胞の形質転換という工程を要さず、遺伝子ライブラリーをin vitro翻訳系に添加することで実施することが可能である。それゆえに、in vitro選択系では、1013分子を超える複合体のライブラリーが容易に調製でき、それを用いた目的とする機能分子の選択が可能となる。

上記のようにin vitro選択系は、遺伝子ライブラリーをin vitro翻訳系に添加することで遺伝子(mRNAもしくはDNA)とそれがコードするタンパク質との1対1複合体を作り出すことから構成される。そのため選択対象のタンパク質が複数の遺伝子産物からなるタンパク質多量体の場合、遺伝子−タンパク質複合体の作製は困難となる。

特開2008-271903号公報

J. Mol. Biol.,1996, 255, 28-43

Biochem. Biophys. Res. Commun., 2002, 295, 31-36

Protein Eng. Des. Sel., 2010, 23, 311-319

タンパク質多量体の代表例である抗体の親和性向上をin vitro選択系で行う場合、例えば、ライブラリー化したL鎖をリボソーム上に提示させ、同一系内にH鎖を遊離タンパク質として存在させることで、L鎖とH鎖のヘテロダイマーである抗体を形成させて最終的に抗体がリボソーム上に提示された、抗体、リボソーム、mRNAを含む複合体(いわゆる、リボソームディスプレイ複合体)を形成させる必要がある。リボソームディスプレイでは、in vitro翻訳しているリボソームがmRNA上に安定に留めておかれる必要があるため、L鎖mRNAから終止コドンを取り除く、L鎖mRNAの3’側に翻訳伸長反応停止配列(アレスト配列)をコードする配列を配置する、解離因子やリボソーム再生因子をin vitro翻訳系から除く等の処置を行うのが一般的である(特許文献1:特開2008-271903)。一方、H鎖は遊離タンパク質として翻訳される必要があるため、リボソームをmRNA上に留めて置く処置はむしろ翻訳効率を下げることになる。従って、異なる翻訳制御が必要なH鎖とL鎖のmRNAを同時に同一系内でin vitro翻訳すると、L鎖のリボソーム提示効率、H鎖の翻訳効率ともに減少し、結果としてリボソームディスプレイ複合体の形成効率は著しく下がる。

そのため、多様なライブラリーを作製できるin vitro選択系、例えば、リボソームディスプレイにおいて、抗体のようなタンパク質多量体を効率よく提示する方法の開発が望まれている。

本発明の目的は、in vitro選択系において、タンパク質多量体をより効率的に提示し、抗体等のタンパク質多量体の親和性等の機能の向上や改良を効率的に行い、目的の機能を有するタンパク質多量体に含まれる構成因子をコードする核酸を選択するための手段を提供することである。

本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討し、ライブラリー遺伝子(ここでは抗体のL鎖)を含むリボソームディスプレイ複合体をまず形成させた後で、同一チューブ内でペアタンパク質遺伝子(ここでは抗体のH鎖)を発現させるか、或いは、ライブラリー遺伝子(ここでは抗体のL鎖)を含むリボソームディスプレイ複合体の形成と、ペアタンパク質遺伝子(ここでは抗体のH鎖)の合成を異なるチューブで行った後で、それらのチューブ内の反応産物を混合することで、L鎖とH鎖とを同時に同一チューブ内で翻訳した場合よりも選択後のmRNA回収量が大幅に改善されることを見出した。

より詳細には、第一の態様において、第一段階として、抗体のL鎖遺伝子の3’側にリボソームディスプレイのスペーサー遺伝子(geneIII, tolAなど)をつなぎ合せた。さらに、スペーサー配列から終止コドンを除き、あるいはスペーサー遺伝子の3’末端に大腸菌のアレスト配列を付加し、得られたmRNAをin vitro翻訳系に付すことによって、L鎖-リボソーム-L鎖mRNAの三者複合体(リボソームディスプレイ複合体)を形成させた。次に、第二段階として、予め準備しておいた抗体のH鎖mRNAとリボソームを、リボソームディスプレイ複合体を含む反応液に追加することで、遊離H鎖が合成され、リボソームディスプレイ複合体上に提示されているL鎖と会合し、最終的にH鎖とL鎖からなる抗体が提示されたリボソームディスプレイ複合体が高い効率で形成された。

第二の態様においては、上記第1の態様における第一段階の反応と同一の反応を一方のチューブ内で行い、これとは別のチューブ内で、抗体のH鎖mRNAをin vitro翻訳系に付すことによって抗体のH鎖を合成した。2つのチューブ内の反応産物を混合すると、H鎖がリボソームディスプレイ複合体上に提示されているL鎖と会合し、最終的にH鎖とL鎖からなる抗体が提示されたリボソームディスプレイ複合体が高い効率で形成された。

これらの知見に基づき、さらに検討をした結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下に関する。

[1]以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を製造する方法: i)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ること、 ii)i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得ること。 [2]i)のin vitro翻訳系が非対象構成因子をコードする核酸を含まない、[1]に記載の方法。 [3]タンパク質多量体−核酸複合体及び対象構成因子−核酸複合体がリボソームを含む、[1]又は[2]に記載の方法。 [4]ii)において、i)で得られた翻訳反応産物にリボソームを添加する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。 [5]タンパク質多量体−核酸複合体1分子につき、タンパク質多量体1分子、及び対象構成因子をコードする核酸1分子が含まれる、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。 [6]in vitro翻訳系が、独立に精製された因子からなる、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。 [7]独立に精製された因子の少なくとも1つが原核生物から抽出された因子である、[6]に記載の方法。 [8]タンパク質多量体が二量体である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。 [9]タンパク質多量体が多量体として機能するものである、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。 [10]タンパク質多量体が抗体である、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。 [11]抗体がFab断片である、[10]に記載の方法。 [12]対象構成因子がL鎖及びH鎖からなる群から選択されるいずれか一方であり、非対象構成因子が他方である、[10]又は[11]に記載の方法。 [13]対象構成因子をコードする核酸が、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーである、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法。 [14]以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを製造する方法: i)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーから対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体のライブラリーを含有する翻訳反応産物を得ること、 ii)i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを得ること。 [15]以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を製造する方法: i’)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ること、 ii’)in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得ること、 iii’)i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得ること。 [16]i’)のin vitro翻訳系が非対象構成因子をコードする核酸を含まない、[15]に記載の方法。 [17]ii’)のin vitro翻訳系が対象構成因子をコードする核酸を含まない、[15]又は[16]に記載の方法。 [18]タンパク質多量体−核酸複合体及び対象構成因子−核酸複合体が更にリボソームを含む、[15]〜[17]のいずれかに記載の方法。 [19]タンパク質多量体−核酸複合体1分子につき、タンパク質多量体1分子、及び対象構成因子をコードする核酸1分子が含まれる、[15]〜[18]のいずれかに記載の方法。 [20]in vitro翻訳系が、独立に精製された因子からなる、[15]〜[19]のいずれかに記載の方法。 [21]独立に精製された因子の少なくとも1つが原核生物から抽出された因子である、[20]に記載の方法。 [22]タンパク質多量体が二量体である、[15]〜[21]のいずれかに記載の方法。 [23]タンパク質多量体が多量体として機能するものである、[15]〜[22]のいずれかに記載の方法。 [24]タンパク質多量体が抗体である、[15]〜[23]のいずれかに記載の方法。 [25]抗体がFab断片である、[24]に記載の方法。 [26]対象構成因子がL鎖及びH鎖からなる群から選択されるいずれか一方であり、非対象構成因子が他方である、[24]又は[25]に記載の方法。 [27]対象構成因子をコードする核酸が、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーである、[15]〜[26]のいずれかに記載の方法。 [28]以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを製造する方法: i’)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーから対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体のライブラリーを含有する翻訳反応産物を得ること、 ii’)in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得ること、 iii’)i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを得ること。

本発明によれば、ディスプレイ複合体上にタンパク質多量体を効率的に提示することができるので、ライブラリーから目的の機能を有するタンパク質多量体に含まれる構成因子をコードする核酸を高い効率で選択することができる。本発明を用いて、リボソームディスプレイやmRNAディスプレイ等のin vitro選択を行うと、抗体等の複雑なタンパク質多量体の親和性等の機能の向上や改良を効率的に行うことができる。

異なる2条件(条件1と2)で形成したリボソームディスプレイ複合体からのmRNA回収量の比較を%で示す。

異なる2条件(条件1と3)で形成したリボソームディスプレイ複合体からのmRNA回収量の比較を%で示す。

第一の態様において、本発明は、以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を製造する方法を提供するものである: i)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ること、 ii)i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得ること。

第二の態様において、本発明は、以下の工程を含む、タンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を製造する方法を提供するものである: i’)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ること、 ii’)in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得ること、 iii’)i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得ること。

本発明の方法は、in vitro翻訳系を利用したディスプレイ技術において、タンパク質多量体と、当該タンパク質多量体に含まれる1つの構成因子をコードする核酸とを1対1で物理的に結合させることにより、構成因子単体の活性ではなく、タンパク質多量体全体の活性(特定の物質への親和性等)に基づき、当該多量体に含まれる構成因子をコードする核酸を選択することを可能にする。

in vitro翻訳系を利用したディスプレイ技術としては、リボソームディスプレイ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9022-9026, 1994; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 4937-4942, 1997; 特開2008-271903)、mRNAディスプレイ(FEBS Lett.,414.405-408,1997)、CISディスプレイ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101, 2806-2810, 2004)、Covalent antibodyディスプレイ(Nucleic Acids Res., 33(1), e10, 2005)等が挙げられるが、in vitro翻訳系により、注目するタンパク質をコードする核酸から当該タンパク質への翻訳反応を行うことにより、当該タンパク質及び当該タンパク質をコードする核酸を含む複合体を調製し、当該タンパク質と当該タンパク質をコードする核酸とを1対1に対応づける工程を含むものであれば、いずれのディスプレイ技術においても本発明の方法を利用することができる。

その他in vitro翻訳反応を利用した方法としては、STABLE法(FEBS Lett., 457, 227-230, 1999)、マイクロビーズディスプレイ法(FEBS Lett., 532, 455-458, 2002)などがあるが、これらは共通に逆相エマルジョン内で遺伝子を転写、翻訳させて、対象構成因子の遺伝子と対象構成因子を対応付けさせることができる。これらの方法は、上述した非密閉型の方法(リボソームディスプレイ、mRNA ディスプレイ、CIS ディスプレイ及びCovalent antibody法)と異なり、逆相エマルジョンの密閉された空間内で転写、翻訳され、アレスト配列の付加や終止コドンの除去等の特別な遺伝子の改変なく、完成された対象構成因子を対応付けすることができる。従って、対象構成因子がタンパク質多量体を構成する場合においても、必ずしも本発明を適用しなくてもよい。従って、本発明の方法は、好ましくは、in vitro翻訳系が非密閉型の場合に使用される。

本明細書において、「タンパク質多量体」とは、同一か又は異なる2以上のタンパク質が、直接的に、或いはリンカーを介して結合している多量体である。タンパク質間の結合は、共有結合であってもよいし、非共有結合であってもよい。リンカーの例としては、タンパク質のシステイン同士の反応によって形成されるジスルフィド結合等が挙げられる。これに対して、リンカーを介さない場合には、単にタンパク質同士の親和性(素結合、疎水結合等)で多量体を形成してもよい。

本発明において、タンパク質多量体は、ヘテロ又はホモ多量体であり、好ましくはヘテロ多量体である。また、タンパク質多量体に含まれる構成因子の数は特に限定されず、二量体、三量体、四量体、六量体などであり得るが、好ましくは二量体である。

タンパク質多量体としては、抗体、リガンド、接着因子、ポンプ、チャンネル、あるいは受容体などの細胞外に分泌されるタンパク質や細胞膜上のタンパク質、シグナル伝達因子、核内受容体、転写因子などの細胞内のタンパク質等を挙げることができるが、in vitro翻訳系において多量体を形成することが出来、且つ多量体として特定の機能(例えば特定物質への親和性)を有するものである限り特に限定されない。タンパク質多量体は、好ましくは抗体である。

本明細書において、「抗体」は、全長抗体及びタンパク質多量体であるその抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)を含むものとして使用する。「抗体」は、少なくとも1個のH鎖と1個のL鎖を含むタンパク質多量体又はタンパク質多量体であるその抗原結合部分を称する。

本明細書において、抗体の「抗原結合部分」とは、特異的に抗原に結合する能力を保持する抗体の1個以上の断片を称するものとして使用する。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によって行われることが明らかとなっている。抗体の「抗原結合部分」としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される1価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域内のジスルフィド架橋で結合した2個のFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)ヒンジ領域の部分を持つ本来的FabであるFab’断片(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY, Paul ed., 3 .sup.rd ed. 1993参照)等を挙げることができる。抗原結合部分は、通常、少なくとも1個のH鎖及び少なくとも1個のL鎖を含む。Fab断片は、1個のH鎖及び1個のL鎖から構成されるタンパク質二量体である。F(ab’)2断片は、2個のH鎖及び2個のL鎖から構成されるタンパク質四量体である。Fab’断片は、1個のH鎖及び1個のL鎖から構成されるタンパク質二量体である。

本発明において、抗体は、好ましくはFab断片である。

本発明の方法は、in vitro翻訳系により、タンパク質多量体を構成する構成因子群のうち着目するいずれか1つ(対象構成因子)をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得る工程を含む(工程i)又は工程i’))。例えば、本発明の方法により、抗体、及び当該抗体を構成するH鎖及びL鎖からなる群から選択されるいずれか一方の鎖(対象鎖)(例えばL鎖)をコードする核酸を含む抗体−核酸複合体を製造する場合、当該対象鎖をコードする核酸から対象鎖への翻訳反応を行うことにより、対象鎖、及び対象鎖をコードする核酸を含む対象鎖−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得る。

本明細書において、「in vitro翻訳系」とは、生細胞を必要とせず、細胞抽出液等のタンパク質合成に必要な因子を含む反応液を用いたタンパク質合成系のことで、無細胞タンパク質合成系ともいう。すなわち、in vitro翻訳系は、mRNAからタンパク質への翻訳に生細胞を必要としないことを特徴とする。本発明におけるin vitro翻訳系には、翻訳を行う系、並びに転写及び翻訳を行う系が含まれる。すなわち、本発明におけるin vitro翻訳系は、以下のいずれの態様をも含む: (1)mRNAからタンパク質に翻訳すること。 (2)DNAからmRNAに転写し、更にmRNAからタンパク質に翻訳すること。

in vitro翻訳系には、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、培養細胞などの細胞抽出液自体を使用したin vitro翻訳系、及び独立に精製された因子から構成された再構成型のin vitro翻訳系が包含される。本発明において用いられるin vitro翻訳系は、独立に精製された因子から構成された再構成型のin vitro翻訳系が好ましい。好適な再構成型のin vitro翻訳系としては、例えば、PUREシステム(特許4061043号公報、特開2009-112286号公報、Y. Shimizu et al., (2001) Nat. Biotechnol., vol.19, p.751-755、特開2008-271903号公報、E. Osada et al., (2009) J. Biochem., vol.145, p.693-700)を挙げることができる。この再構成型in vitro翻訳系は、細胞抽出液を使用するin vitro翻訳系よりもヌクレアーゼやプロテアーゼの混入を容易に防ぐことができるため、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子へ翻訳する効率を向上させることができる。また、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体が安定的に形成され維持される。従って、最終的に、目的とするタンパク質多量体−核酸複合体を効率よく得ることができる。

本明細書において「因子」とは、独立して精製することができるin vitro翻訳系の構成単位を指す。因子は、単独のタンパク質や基質類を含む。更に、粗分画から単離できる各種の複合体や混合物も含む。例えば、複合体として精製される因子には、多量体のタンパク質、リボソームなどが含まれる。また、混合物としては、tRNA混合物等が含まれる。「独立に精製された因子」とは、他の因子から、それぞれ独立して精製された因子をいう。因子ごとに独立に精製されたタンパク質合成に必要な因子類を、必要に応じて混合して再構成することによってin vitro翻訳系を構築することができる。細胞抽出液から単離されずに複数種類の因子が混合した画分中に存在する各因子は、独立に精製された因子とはいわない。一方、複数の成分からなる複合体であっても、単独の因子として精製された場合は、本明細書における「独立に精製された因子」である。たとえば精製したリボソームは、いくつかの要素からなる複合体であるが、単独の因子として精製されるので「独立に精製された因子」である。

独立に精製された因子は、種々の細胞の抽出液から精製することによって得ることができる。因子を精製するための細胞は、例えば原核細胞、又は真核細胞を挙げることができる。原核細胞としては、大腸菌細胞、高度好熱菌細胞、又は枯草菌細胞を挙げることができる。真核細胞としては、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞を挙げることができる。特に、独立に精製された因子がタンパク質のみからなる場合には、各因子を以下のような方法によって得ることができる。 (1)各因子(タンパク質)をコードする遺伝子を単離し、発現ベクターに導入後、適当な宿主細胞に形質転換して発現させ、回収する。 (2)各因子をコードする遺伝子を単離し、in vitro翻訳系で合成し、回収する。 (1)では、はじめに発現制御領域を含む発現ベクターに、該領域の制御により目的とする因子が発現されるように各因子の遺伝子を組み込んだ発現プラスミドを作成する。ベクターを構成する発現制御領域とは、例えば、エンハンサー、プロモーター、及びターミネーターなどを指す。発現ベクターは、薬剤耐性マーカーなどを含むこともできる。次に、この発現プラスミドで宿主細胞を形質転換し、各因子を発現させる。

本発明の方法に好適に用いられるin vitro翻訳系は精製された因子からなる。本発明において、in vitro翻訳系は、例えば、以下のような因子を独立に精製された状態で含むことができる: 開始因子 (Initiation Factor; IF)、 伸長因子 (Elongation Factor; EF)、 解離因子(Release Factor; RF)、 アミノアシルtRNA合成酵素(Aminoacyl-tRNA synthetase; AARS)、 リボソーム、 アミノ酸、 ヌクレオシド三リン酸、及び tRNA。 これらの因子は、大腸菌等の原核細胞由来のものに限らず、真核細胞由来のものも使用できる。

上記のin vitro翻訳系を構成する各因子を、転写や翻訳に好適なpHを維持する緩衝水溶液に加えることによって、in vitro翻訳活性を有する組成物を得ることができる。好適なpHとしては、例えばpH6〜pH9、好ましくは、pH7〜8である。本発明に用いられる緩衝液としては、リン酸カリウム緩衝水溶液(pH 7.3)、Hepes-KOH(pH 7.6)などをあげることができる。

in vitro翻訳活性を有する組成物には、因子の保護や活性の維持を目的として塩類を加えることもできる。具体的には、グルタミン酸カリウム、酢酸カリウム、塩化アンモニウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどがあげられる。

in vitro翻訳活性を有する組成物には、酵素の基質として、及び/もしくは、各因子の活性の向上、維持を目的として、その他の低分子化合物を添加できる。具体的には、プトレシン(putrescine)、スペルミジン(spermidine)などのポリアミン類、ジチオトレイトール(DTT)などの還元剤などを当該組成物に加えることができる。

大腸菌等の原核細胞由来の因子を用いたin vitro翻訳系である場合は、in vitro翻訳活性を有する組成物は、更にリボソーム再生因子(RRF)、メチオニルtRNAトランスフォルミラーゼ(MTF)及び、10-フォルミル5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸(FD)を含むことが好ましい。

DNAからmRNAに転写し、更に該mRNAからポリペプチドに翻訳する場合には、in vitro翻訳活性を有する組成物はmRNAに転写するためのRNAポリメラーゼを含むことができる。具体的には、次のようなRNAポリメラーゼを本発明に利用することができる。これらのRNAポリメラーゼは市販されている。 T7 RNAポリメラーゼ T3 RNAポリメラーゼ SP6 RNAポリメラーゼ

in vitro翻訳活性を有する組成物は、転写や翻訳のための因子に加え、更に付加的な因子を含むことができる。付加的な因子として、例えば、次のような因子を示すことができる。 反応系においてエネルギーを再生するための酵素: クレアチンキナーゼ; ミヨキナーゼ;及び ヌクレオシドジホスフェートキナーゼなど 反応系においてエネルギーを再生するための酵素の基質: クレアチンリン酸など 転写・翻訳で生じる無機ピロリン酸の分解のための酵素: 無機ピロホスファターゼなど

in vitro翻訳活性を有する組成物においては、好ましくは、独立に精製された因子の少なくとも1つが原核生物から抽出されたものである。一態様において、in vitro翻訳活性を有する組成物に含まれる、開始因子、伸長因子、解離因子、アミノアシルtRNA合成酵素、リボソーム及びtRNAからなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは全てが原核生物(例えば、グラム陰性菌、好ましくは大腸菌)から抽出されたものである。一態様において、in vitro翻訳活性を有する組成物は、独立に精製された因子からなり、当該因子の全てが原核生物(例えばグラム陰性菌、好ましくは大腸菌)から抽出されたものである。

in vitro翻訳活性を有する組成物の組成は、上記基本組成に加え、合成するタンパク質の種類に合わせて、適宜調節可能である。例えば、高次構造を形成しにくいタンパク質の場合、分子シャペロンと呼ばれる一群のタンパク質を添加したin vitro翻訳系を使用することもできる。具体的には、Hsp100、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp40、Hsp10、低分子量Hsp及び、それらのホモログ、さらに大腸菌のトリガーファクターなどを添加したin vitro翻訳系があげられる。分子シャペロンは、細胞内でタンパク質の高次構造形成を助け、タンパク質の凝集を防ぐことが知られているタンパク質である(Bukau and Horwich, Cell (1998) vol.92, p.351-366、Young et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol (2004) vol.5, p.781)。

また、抗体のように、タンパク質多量体の構成因子間や、構成因子の分子内でジスルフィド結合を形成する場合は、反応液の酸化還元電位が重要である。そのため、反応液から、還元剤であるDTTを除去したり、さらには酸化型グルタチオンなどの酸化還元電位を調節する試薬を添加した組成物を使用したりすることもできる。さらには、ジスルフィド結合を促進したり、正しい結合に組み替える酵素を添加した組成物を使用したりすることができる。具体的には、このような酵素としては、真核細胞の小胞体に存在するプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)や、大腸菌由来のDsbA、DsbC等が挙げられる。

再構成型のin vitro翻訳活性を有する組成物に含まれる各因子の精製方法、in vitro翻訳活性を有する組成物のより詳細な構成は、特開2008-271903、特開2003-10249等に記載されており、当業者に公知である。また、当該in vitro翻訳活性を有する組成物は複数の会社から市販されており、容易に入手可能である。

上記のin vitro翻訳活性を有する組成物に、対象構成因子をコードする核酸を添加し、in vitro翻訳反応を進行させる温度にてインキュベートすることにより、該核酸から対象構成因子への翻訳反応を行い、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体を含有する翻訳反応産物を得ることができる。インキュベートの時間は、該核酸から対象構成因子への翻訳反応が完了するのに十分である限り特に限定されないが、通常5〜240分程度である。

重要なことには、工程i)及びi’)のin vitro翻訳反応は、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸の不在下で行われる。このように、対象構成因子についての翻訳反応を先行して行い、その後当該翻訳産物の存在下で、非対象構成因子の翻訳反応を行うことにより、或いは対象構成因子についての翻訳反応と非対象構成因子についての翻訳反応とを異なる反応系で行った後で、全ての翻訳反応産物を混合することにより、高い効率でタンパク質多量体−核酸複合体を製造することができる。

本明細書において、「核酸」は、主としてデオキシリボヌクレオチド、及びリボヌクレオチドの重合体をいう。すなわち、デオキシリボ核酸(DNA)、又は、リボ核酸(RNA)である。更に、本発明における核酸は、人工塩基を有するヌクレオチド誘導体を含むこともできる。また、ペプチド核酸(PNA)を含むこともできる。in vitro翻訳系により、コードされた対象構成因子への翻訳反応を行い得る限り、核酸の構成単位は、これらの核酸のいずれか、あるいはこれらの混成とすることもできる。従って、DNA-RNAのハイブリッドヌクレオチドは本発明における核酸に含まれる。あるいはDNAとRNAのような異なる核酸が1本鎖に連結されたキメラ核酸も本発明における核酸に含まれる。本発明における核酸の構造も、in vitro翻訳系により、コードされた対象構成因子への翻訳反応を行い得る限り限定されない。具体的には、一本鎖、二本鎖、あるいは三本鎖などの構造をとりうる。本発明の方法において用いられる核酸は、好ましくは、対象構成因子をコードするmRNA又はcDNAである。

in vitro翻訳系において大腸菌などの原核生物由来のリボソームを利用する場合、対象構成因子をコードする核酸は、開始コドンの上流にリボソーム結合配列であるShine-Dalgarno(SD)配列を含むことが好ましい。SD配列が含まれることにより、翻訳反応の効率が上昇する。

対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む安定した対象構成因子−核酸複合体を形成するため、対象構成因子をコードする核酸に改変を加えることが好ましい。安定したタンパク質−核酸複合体を形成するための技術としては、リボソームディスプレイ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9022-9026, 1994; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 4937-4942, 1997; 特開2008-271903)、mRNAディスプレイ(FEBS Lett.,414.405-408,1997)、CISディスプレイ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101, 2806-2810, 2004)、Covalent antibodyディスプレイ(Nucleic Acids Res., 33(1), e10, 2005)等が挙げられる。対象構成因子をコードする核酸に加える改変の態様に応じて、形成される対象構成因子−核酸複合体の構成が変化する。

リボソームディスプレイ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 9022-9026, 1994; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 4937-4942, 1997; 特開2008-271903)においては、選択効率を向上させるため、対象構成因子をコードする核酸(好ましくはmRNA)は、以下の少なくとも1つ(好ましくは2つ、より好ましくは全て)の特徴を有することが好ましい。 (1)目的遺伝子下流のスペーサーをコードする配列を含む。 (2)スペーサーの下流にSecMの部分配列等のアレスト配列を含む。 (3)終止コドンが除去されている。

リボソームディスプレイにおいては、対象構成因子の遺伝子の下流にスペーサーをコードする配列を含むことが好ましい。スペーサーは、翻訳されたポリペプチドが、リボソームの外側で正確に折り畳まれるための十分な空間を提供することによって、新生ポリペプチドとリボソームとの間の立体障害を防止する。ここで、十分な長さのスペーサーがないと、目的のポリペプチド(対象構成因子)がリボソームの外に完全に出ることができず、リボソームディスプレイによる選択を効率よく行うことができない。スペーサーは、少なくとも20アミノ酸からなり、好ましくは、30アミノ酸以上、さらに好ましくは40アミノ酸以上の長さからなる。具体的には、ファージのgeneIIIの部分配列や大腸菌tolAの部分配列などを用いることができる。

さらに、大腸菌SecMの翻訳伸長停止配列(アレスト配列;アミノ酸残基148〜170)をコードする配列をスペーサー配列の下流に配置した核酸(好ましくは、mRNA)を使用することが好ましい。この翻訳伸長停止配列は、リボソームのペプチドトンネルと堅固に相互作用することが示されており(Nakatogawa et al., Cell (2002) vol.108, p.629-636)、再構成型in vitro翻訳系を用いた場合、効率よく翻訳の伸長を停止させることが証明されている(Muto et al., Mol. Cell (2006) vol.22, p.545-552)。リボソームとSecMの翻訳伸長停止配列とが堅固に相互作用することにより、安定な対象構成因子-リボソーム-mRNA三者複合体が形成される。

このような構造を備えた核酸(好ましくは、mRNA)は、例えば、プロモーター配列及びSD配列を含む5'UTR配列や、3'側のスペーサー配列を備えた発現ベクターに対象構成因子の遺伝子を挿入し、RNAポリメラーゼにより転写することにより得ることができる。一般に、RNAポリメラーゼは、プロモーターと呼ばれる特定の配列を含む領域を認識し、その下流に配置されたDNAの塩基配列に基づいてmRNAを合成する。発現ベクターを使用せずに、PCRを利用して目的の構造を有する転写鋳型を構築することもできる(Split-Primer PCR法、Sawasaki et al., PNAS (2002) vol.99, p.14652-14657)。この方法は、目的のDNAにPCRによって5'UTR配列及びスペーサー配列を付加した鋳型DNAを構築する。DNAライブラリーからmRNAのライブラリーを調製するにあたり、上記のようなベクターにクローニングする必要がない。このため、時間と労力を節約することができる。

PCRによって、鋳型DNAを構築する方法を具体的に例示する。 (1)適当なライブラリーなどから、対象構成因子をコードするDNA領域を、5'UTR配列(プロモーター及びSD配列を含む)を含むプライマーと、スペーサー配列の一部を含み、終止コドンが除去されたプライマーを使用したPCRで増幅する。 (2)増幅したDNAを、5'UTR部分のプライマーと、スペーサー部分とSecM配列を含むプライマーで再度増幅する。 このように構築したDNAを必要に応じてさらに増幅し、それを鋳型としてRNAポリメラーゼで転写することにより、翻訳反応の鋳型となるmRNAを得ることができる。

RNAポリメラーゼによって転写されたmRNAを必要に応じて回収し、in vitro翻訳活性を有する組成物に添加する。転写されたmRNAは、フェノール処理後、エタノール沈殿により回収することができる。また、mRNAの回収には、RNeasy(Qiagen製)などの市販のRNA抽出用キットを利用することもできる。

また、対象構成因子の遺伝子に転写及び翻訳に必要な塩基配列を組み込んだ上記DNA自体を鋳型として用いることもできる。この場合、RNAポリメラーゼを含むin vitro翻訳活性を有する組成物を用いてDNAからmRNAに転写し、更に該mRNAからポリペプチドへの翻訳を行って三者複合体を形成させる。

mRNAディスプレイ(FEBS Lett.,414.405-408,1997)においては、対象構成因子をコードする核酸(好ましくはmRNA)の3'末端にピューロマイシンが付加される。核酸(好ましくはmRNA)へのピューロマイシンの付加は、UVクロスリンクを利用する方法(Nucleic Acids Res., 28, e83, 2000)やプライマーのハイブリダイゼーションを利用する方法(FEBS Lett., 508, 309-312, 2001)を用いて実施することができる。3'末端にピューロマイシンが付加された対象構成因子をコードする核酸(好ましくはmRNA)を、in vitro翻訳反応に付すことにより、翻訳された対象構成因子と当該核酸(好ましくは、mRNA)とがピューロマイシンを介して共有結合された複合体が形成される。

CISディスプレイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 101, 2806-2810, 2004)に使用する対象構成因子をコードする核酸(好ましくはmRNA)においては、対象構成因子のコード領域の3’末端にRepA遺伝子がインフレームで連結され、その下流にCISエレメントがさらに連結される。この核酸を鋳型としてin vitro翻訳反応を行うと、対象構成因子とRepAとの融合タンパク質が生じ、この融合タンパク質に含まれるRepAがCISエレメントに結合するために、対象構成因子と対象構成因子をコードする核酸とがRepAを介して結合された複合体が形成される。

Covalent antibody法(Nucleic Acids Res, 33(1), e10, 2005)に使用する対象構成因子をコードする核酸(好ましくはDNA)においては、対象構成因子のコード領域の3’末端にスペーサーを介してエンドヌクレアーゼP2A遺伝子がインフレームで連結される。この核酸を鋳型にして翻訳反応を行うと、対象構成因子とP2Aとの融合タンパク質が生じ、この融合タンパク質に含まれるP2Aがこの融合タンパク質をコードしているDNAに共有結合するために、対象構成因子と対象構成因子をコードする核酸とがP2Aを介して結合された複合体が形成される。

第一の態様においては、工程i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共にタンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得る(工程ii)。例えば、本発明の方法により、抗体、及び当該抗体を構成するH鎖及びL鎖からなる構成因子群から選択されるいずれか一方の鎖(対象鎖)(例えばL鎖)をコードする核酸を含む抗体−核酸複合体を製造する場合、対象鎖と共に抗体を構成する非対象鎖(例えばH鎖)をコードする核酸を添加し、非対象鎖をコードする核酸から非対象鎖への翻訳反応を行うことにより、非対象鎖を産生せしめ、当該非対象鎖を対象鎖−核酸複合体に含まれる対象鎖と会合させ、抗体を形成させることにより、抗体、及び対象鎖をコードする核酸を含む抗体−核酸複合体を得る。

工程i)で得られた翻訳反応産物は、工程i)における翻訳反応の完了後においても、尚in vitro 翻訳活性が残存することが期待される。従って、工程i)で得られた翻訳反応産物に、非対象構成因子をコードする核酸を添加すると、残存するin vitro 翻訳活性により該核酸から非対象構成因子への翻訳反応が生じる。

第二の態様においては、工程i’)とは別に、in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得て(工程ii’)、更に、i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得る(工程iii’)。例えば、本発明の方法により、抗体、及び当該抗体を構成するH鎖及びL鎖からなる構成因子群から選択されるいずれか一方の鎖(対象鎖)(例えばL鎖)をコードする核酸を含む抗体−核酸複合体を製造する場合、対象鎖の翻訳反応とは別に、in vitro翻訳系により、対象鎖と共に抗体を構成する非対象鎖(例えばH鎖)をコードする核酸から非対象鎖への翻訳反応を行うことにより、非対象鎖(例えばH鎖)を含有する翻訳反応産物を得て、対象鎖(例えばL鎖)−核酸複合体を含有する翻訳反応産物と、非対象鎖(例えばH鎖)を含有する翻訳反応産物を混合し、当該非対象鎖を対象鎖−核酸複合体に含まれる対象鎖と会合させ、抗体を形成させることにより、抗体、及び対象鎖をコードする核酸を含む抗体−核酸複合体を得る。

非対象構成因子をコードする核酸は、mRNA又はcDNAであり得る。第一の態様において、工程i)において用いられるin vitro翻訳系が、DNAからmRNAへ転写するためのRNAポリメラーゼを含まない場合には、非対象構成因子をコードする核酸としては、mRNAが好ましい。RNAポリメラーゼを新たに添加することなく、非対象構成因子への翻訳反応を行うことができるからである。一方、工程i)において用いられるin vitro翻訳系が、DNAからmRNAへ転写するためのRNAポリメラーゼを含む場合には、非対象構成因子をコードする核酸は、mRNA、cDNAのいずれであってもよい。

非対象構成因子の翻訳効率を向上させるため、in vitro翻訳系において大腸菌等の原核生物由来のリボソームを使用する場合、非対象構成因子をコードする核酸(好ましくはmRNA)は、開始コドンの上流にSD配列を含むことが好ましい。

尚、非対象構成因子をコードする核酸については、当該核酸と非対象構成因子との対応付けは不要のため、この対応付けのための核酸への改変(目的遺伝子下流のスペーサー、スペーサーの下流のSecMの部分配列の付加等)は不要である。

第一の態様において、工程i)で用いられるin vitro翻訳活性を有する組成物に含まれる因子のうち、工程i)における翻訳反応において消費される因子については、非対象構成因子をコードする核酸と共に工程i)で得られた翻訳反応産物へ添加してもよい。そのような因子としては、リボソームが挙げられる。特に、工程i)において、対象構成因子−リボソーム−核酸(好ましくはmRNA)三者複合体を形成させる場合には、リボソームがリサイクルされることなく当該三者複合体に導入され、in vitro翻訳系からリボソームが枯渇する可能性があるので、工程ii)において、工程i)で得られた翻訳反応産物へリボソームを添加することが好ましい。リボソームは、上記三者複合体に取り込まれたリボソームを除いた濃度として、例えば、0.01μM-50μM、好ましくは0.05μM-10μMの濃度となるように、工程i)で得られた翻訳反応産物へ添加される。

工程ii)において、工程i)で得られた翻訳反応産物に、非対象構成因子をコードする核酸を添加し、in vitro翻訳反応を進行させる温度にてインキュベートすることにより、該核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行い、非対象構成因子が産生される。インキュベートの時間は、該核酸から非対象構成因子への翻訳反応が完了するのに十分である限り特に限定されないが、通常5〜240分程度である。産生された非対象構成因子が反応液中の対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合し、タンパク質多量体を形成することにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体が得られる。

第二の態様において、工程ii’)において用いられるin vitro翻訳活性を有する組成物の態様は、工程i’)において用いられるin vitro翻訳活性を有する組成物の態様として上述した通りである。

工程ii’)において、上記のin vitro翻訳活性を有する組成物に、非対象構成因子をコードする核酸を添加し、in vitro翻訳反応を進行させる温度にてインキュベートすることにより、該核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行い、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得ることができる。インキュベートの時間は、該核酸から非対象構成因子への翻訳反応が完了するのに十分である限り特に限定されないが、通常5〜240分程度である。

重要なことには、工程ii’)のin vitro翻訳反応は、対象構成因子をコードする核酸の不在下で行われる。このように、対象構成因子についての翻訳反応と非対象構成因子についての翻訳反応とを異なる反応系で別々に行った後で、全ての翻訳反応産物を混合することにより、高い効率でタンパク質多量体−核酸複合体を製造することができる。

更に、工程i’)の翻訳反応産物を工程ii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体を得る(工程iii’))。

工程i)又はi’)において、リボソームディスプレイにより対象構成因子-リボソーム-mRNA三者複合体を含有する翻訳反応産物を得た場合には、工程ii)又はiii’)において、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードするmRNA、及びリボソームを含むタンパク質多量体-リボソーム-mRNA三者複合体が得られる。

工程i)又はi’)において、mRNAディスプレイにより対象構成因子と対象構成因子をコードする核酸(好ましくは、mRNA)とがピューロマイシンを介して共有結合した複合体を含有する翻訳反応産物を得た場合には、工程ii)又はiii’)において、タンパク質多量体と対象構成因子をコードする核酸(好ましくは、mRNA)とがピューロマイシンを介して共有結合した複合体が得られる。

工程i)又はi’)において、CISディスプレイにより対象構成因子と対象構成因子をコードする核酸とがRepAを介して結合された複合体を含有する翻訳反応産物を得た場合には、工程ii)又はiii’)において、タンパク質多量体と対象構成因子をコードする核酸とがRepAを介して結合された複合体が得られる。

工程i)又はi’)において、Covalent antibody法により対象構成因子と対象構成因子をコードする核酸とがP2Aを介して結合された複合体を含有する翻訳反応産物を得た場合には、工程ii)又はiii’)において、タンパク質多量体と対象構成因子をコードする核酸とがP2Aを介して結合された複合体が得られる。

本発明の方法により製造されるタンパク質多量体−核酸複合体においては、当該複合体1分子につき、タンパク質多量体1分子、及び対象構成因子をコードする核酸1分子が含まれる。即ち、当該複合体においては、タンパク質多量体と、当該タンパク質多量体の構成因子をコードする核酸とが1対1に対応付けられているので、特定の標的物質への特異的結合性などの所望の活性を有するタンパク質多量体を含む三者複合体を選択し、この三者複合体に含まれる核酸を増幅することにより、目的とするタンパク質多量体に含まれる構成因子をコードする核酸を取得することができる。

理論には拘束されないが、リボソームディスプレイにより、対象構成因子をコードする核酸から対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、対象構成因子をコードする核酸、及びリボソームを含む対象構成因子−核酸−リボソーム三者複合体が形成される場合、リボソームが安定的に三者複合体へ取り込まれるので、リボソームのターンオーバーが抑制される。一方、非対象構成因子の翻訳反応においては、リボソームの複合体への取り込みは生じないため、リボソームが積極的にターンオーバーしている。従って、リボソームのターンオーバー条件が相反する、対象構成因子の翻訳反応と、非対象構成因子の翻訳反応を同時に、同一チューブ内で行うと、リボソームの制御に矛盾が生じ、最終的なタンパク質多量体−リボソーム−核酸三者複合体の形成量が減少してしまう可能性がある。これに対して、本発明の方法においては、まずリボソームのターンオーバーを抑制した環境で対象構成因子の翻訳反応を行うことにより、対象構成因子−核酸−リボソーム三者複合体を形成させ、その後、対象構成因子−核酸−リボソーム三者複合体が存在している中で(第一の態様)、或いは対象構成因子の翻訳反応とは異なるチューブ内で(第二の態様)、リボソームの高ターンオーバー環境で、非対象構成因子の翻訳反応を行う。その結果、リボソームの制御の矛盾が生じず、またスムースで正確な対象構成因子と非対象構成因子との会合が生じるため、結果として高い効率で、タンパク質多量体−リボソーム−核酸三者複合体が形成される可能性が高い。

一局面において、対象構成因子をコードする核酸として、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーを用いることができる。この場合、第一の態様においては、 i)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーから対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体のライブラリーを含有する翻訳反応産物を得て、 ii)i)で得られた翻訳反応産物に、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸を添加し、非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を産生せしめ、当該非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを得ることができる。

第二の態様においては、 i’)in vitro翻訳系により、対象構成因子をコードする核酸のライブラリーから対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、対象構成因子、及び対象構成因子をコードする核酸を含む対象構成因子−核酸複合体のライブラリーを含有する翻訳反応産物を得て、 ii’)in vitro翻訳系により、対象構成因子と共に当該タンパク質多量体を構成する非対象構成因子をコードする核酸から非対象構成因子への翻訳反応を行うことにより、非対象構成因子を含有する翻訳反応産物を得て、 iii’)i’)の翻訳反応産物をii’)の翻訳反応産物と混合し、非対象構成因子を対象構成因子−核酸複合体に含まれる対象構成因子と会合させ、タンパク質多量体を形成させることにより、タンパク質多量体、及び対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーを得ることができる。

本発明は、このようなタンパク質多量体、及び当該タンパク質多量体のいずれか1つの対象構成因子をコードする核酸を含むタンパク質多量体−核酸複合体のライブラリーの製造方法をも提供する。

本発明において、「ライブラリー」とは、複数のクローン化された核酸からなる多様性をもった集団をいう。リボソームディスプレイ等のin vitro選択系によって、ライブラリーから、所望の性質を有するタンパク質多量体に含まれる対象構成因子をコードする核酸を得ることができる。本発明において用いることのできる核酸のライブラリーとしては、cDNAライブラリー、mRNAライブラリー、又はゲノムDNAライブラリーを挙げることができる。原核細胞や酵母細胞においては、通常、ほとんどの遺伝子にイントロンが存在しない。従って、原核細胞や酵母細胞の場合、当該細胞由来のタンパク質から所望の性質を有するタンパク質をコードする核酸を直接スクリーニングするために、ゲノムDNAライブラリーを利用することができる。哺乳類等の高等真核生物では、逆にほとんどの遺伝子にイントロンが存在するため、通常はmRNAライブラリー又はcDNAライブラリーを利用する。

ライブラリーを構成する核酸の塩基配列は、天然由来の配列のみならず、人為的に導入された配列を含むこともできる。例えば、変異を導入されたライブラリーは、本発明におけるライブラリーに含まれる。あるいは、天然由来の配列に人為的な配列を連結した配列を含むライブラリーも、本発明におけるライブラリーに含まれる。さらに、完全に人為的に設計した配列を含むライブラリーも本発明におけるライブラリーに含まれる。

更に、工程ii)又は工程iii’)により得られた複合体を、標的物質と接触させ、その複合体に含まれるタンパク質多量体の標的物質への親和性を評価することにより、所望の標的物質への親和性を有するタンパク質多量体を選択し、当該タンパク質多量体に含まれる対象構成因子の核酸配列を特定することができる。本発明において「標的物質」とは、目的とするタンパク質多量体が結合することができる物質をいう。本発明においては、タンパク質多量体が結合する可能性のあるあらゆる物質を標的物質として利用することができる。本発明の標的物質には、例えば核酸、ポリペプチド、有機化合物、無機化合物、低分子化合物、糖鎖、脂肪、脂質を挙げることができる。更に具体的には、抗原やハプテンとして機能する物質を標的物質として利用することができる。この場合は、抗体ライブラリーから目的とする抗体をスクリーニングし、当該抗体に含まれるL鎖又はH鎖のいずれか一方をコードする核酸の配列を決定することができる。

タンパク質多量体−核酸複合体と標的物質を接触させ、結合を可能にする条件は、公知であり(WO95/11922、WO93/03172、WO91/05058)、当業者にとって過度の負担なしに確立することができる。標的物質に結合した複合体を回収するには、標的物質と結合した複合体を、標的物質と結合していない複合体の中からスクリーニングする必要がある。これはパニングとよばれる既知の方法に従って行う(Coomber, Method Mol. Biol. (2002) vol.178, p.133-145)。パニングの基本的な手順は以下のとおりである。 (1)固相担体に固定化した標的物質に複合体を接触させる。もしくは、固相担体に捕捉される結合パートナーで標識されている標的物質に複合体を接触させ、その後に複合体と結合した標的物質を固相担体に固定化する。 (2)標的物質に結合しなかった複合体を除去する。例えば、洗浄により除去することができる。 (3)除去されなかった複合体を回収する。 (4)必要に応じ(1)から(3)の操作を複数回繰り返す。

一連の工程を繰り返す場合には、(1)の工程の前に、回収された複合体を構成するmRNAを増幅することもできる。mRNAは、例えばRT-PCRによって増幅することができる。RT-PCRによって、mRNAを鋳型としてDNAが合成される。DNAを再びmRNAに転写し、複合体の形成のために利用することができる。mRNAの転写のためには、DNAをベクターに挿入することができる。あるいは、転写に必要な構造をDNAに連結することによって、mRNAに転写することもできる。

本明細書において、「スクリーニング」とは、化学合成、酵素反応、もしくは、これらの組み合せにより合成された物質、種々の細胞の抽出液から調製された物質、又は天然に存在する物質より所望の性質を有するものを選び出すことをいう。また、「クローニング」とは特定の遺伝子を単離することをいう。

目的のタンパク質多量体を提示する複合体を選択した後、該複合体に含まれる対象構成因子をコードする核酸の配列を同定することができる。複合体を選択した段階では、対象構成因子をコードする核酸はmRNAである。このmRNAを鋳型として逆転写酵素によりcDNAを合成し、シーケンサーで塩基配列を読み取ることによって、その塩基配列を決定することができる。これらの手法は公知である。

本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。

実施例1 <方法> リボソームディスプレイ用抗TNF-α抗体遺伝子の構築 抗TNF-α抗体のH鎖及びL鎖の遺伝子は、特許第3861118号を参考に化学合成し(GenScript)、その際に、H鎖の3’末端にはFLAG tag配列+停止コドン、L鎖の3’末端にはc-Myc tag 配列を付加した。

H chain: ATGGAGGTGCAATTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCCGGCAGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCGGCCTCTGGATTCACCTTTGATGATTATGCCATGCACTGGGTCCGGCAAGCTCCAGGGAAGGGCCTGGAATGGGTCTCAGCTATCACTTGGAATAGTGGTCACATAGACTATGCGGACTCTGTGGAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCCCTGTATCTGCAAATGAACAGTCTGAGAGCTGAGGATACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAGTCTCGTACCTTAGCACCGCGTCCTCCCTTGACTATTGGGGCCAAGGGACCCTGGTCACCGTCTCGAGTGCTAGCTTCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTGAATTCGACTATAAAGATGACGATGACAAATAATGA(配列番号1) L chain: ATGGATATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGGGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCAAGTCAGGGCATCAGAAATTACTTAGCCTGGTATCAGCAAAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCACTTTGCAATCAGGGGTCCCATCTCGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTACAGCCTGAAGATGTTGCAACTTATTACTGTCAAAGGTATAACCGTGCACCGTATACTTTTGGCCAGGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGAACTGTGGCGGCGCCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCTCGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGATTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGGAGCAGAAGCTGATCTCTGAGGAGGATCTGCAT(配列番号2)

また、大腸菌由来のin vitro翻訳系での発現に必要なT7プロモーター及びSD配列を含む5’ UTR配列も化学合成した(Sigma)。

H chain 5’ UTR: gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctagaaataattttgtttaactttaagaaggagatataccaATGGAGGTGCAATTGGTGGAGTCTGGGGGAG(配列番号3) L chain 5’ UTR: gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctagaaataattttgtttaactttaagaaggagatataccaATGGATATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTG(配列番号4)

M13ファージのgeneIII(g3p)の部分配列(アミノ酸残基220-326位)はM13KO7由来ファージゲノムを鋳型として以下のプライマーセットを用いてKOD Plus DNA Polymerase(TOYOBO)によってPCR増幅(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒、サイクル:25回)後、QIAquick PCR purification kit (QIAGEN)によって反応産物を精製した。

プライマーmyc-g3p: GAGCAGAAGCTGATCTCTGAGGAGGATCTGCATGAATATCAAGGCCAATCGTCTGAC(配列番号5) プライマーg3p-SecMstop: CTCGAGTTATTCATTAGGTGAGGCGTTGAGGGCCAGCACGGATGCCTTGCGCCTGGCTTATCCAGACGGGCGTGCTGAATTTTGCGCCGGAAACGTCACCAATGAAAC(配列番号6)

化学合成したそれぞれの遺伝子断片(H chain 5’UTRとH chain)をそれぞれ1 pmol、5’プライマー:gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctag(配列番号7) 10 pmol、FLAG stop R: TCATTATTTGTCATCGTCATCTTTATAGTCG(配列番号8) 10 pmol、KOD Plus DNA Polymerase (TOYOBO) を含むPCR反応液(トータル500μL)を調製し、25サイクルのPCR反応(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒)を実行した。1%アガロースを用いた電気泳動によって、2つ遺伝子がつながったバンドを確認後、そのバンドを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit (QIAGEN)で精製して最終的なH鎖遺伝子とした。また、同様の方法によって、化学合成したそれぞれの遺伝子断片(L chain 5’UTRとL chain)とg3pの遺伝子をそれぞれ1 pmol、5’プライマー:gaaattaatacgactcactatagggagaccacaacggtttccctctag(配列番号7) 10 pmol、プライマーSecMstop:ggattagttattcattaggtgaggcgttgagg(配列番号9) 10 pmol、KOD Plus DNA Polymerase (TOYOBO) を含むPCR反応液(トータル500μL)を調製し、25サイクルのPCR反応(変性:94℃,10秒、アニーリング:58℃, 30秒、伸長:68℃,60秒)を実行した。1%アガロースを用いた電気泳動によって、すべての遺伝子がつながったバンドを確認後、そのバンドを切り出し、MinElute Gel Extraction Kit (QIAGEN)で精製して最終的なL鎖遺伝子を得た。

In vitro transcription 精製したH,L鎖遺伝子DNA 1μgを20μLのIn vitro transcription Kit (RibomaxTMLarge Scale RNA Production System-T7, Promega社)によってmRNAへと変換し、カラム(RNeasy mini カラム、QIAGEN)により精製した。

リボソームディスプレイ複合体の形成 タンパク質合成反応試薬であるin vitro翻訳系(PUREシステム)は既報(Shimizu et al. (2005) Methods, vol,36, p299-304)に従い調製した。

(条件1) 調製した反応液(10μL)に終濃度3mMの酸化型グルタチオン(GSSG:シグマ)、終濃度1μMの予め調製しておいた大腸菌DsbCタンパク質、1 pmolのL鎖-g3p mRNA、1 pmolのH鎖mRNAを加え、30℃で60分インキュベートした。

(条件2) 調製した反応液(5μL)に終濃度3mMの酸化型グルタチオン(GSSG:シグマ)、終濃度1μMの予め調製しておいた大腸菌DsbCタンパク質、1 pmolのL鎖-g3p mRNAを加え、30℃でインキュベートした。また同時に、調製した反応液(5μL)に終濃度3mMの酸化型グルタチオン(GSSG:シグマ)、終濃度1μMの予め調製しておいた大腸菌DsbCタンパク質、1 pmolのH鎖mRNAを加え、30℃でインキュベートした。それぞれ30分間インキュベートしたのち、それぞれの反応液を混合したのち、さらに30℃で30分間インキュベートした。

(条件3) 調製した反応液(10μL)に終濃度3mMの酸化型グルタチオン(GSSG:シグマ)、終濃度1μMの予め調製しておいた大腸菌DsbCタンパク質、1 pmolのL鎖-g3p mRNAを加え、30℃でインキュベートした。30分後、1 pmolのH鎖mRNA、5 pmolのリボソームを加え、さらに30℃で30分間インキュベートした。

それぞれの条件において、翻訳反応液に氷冷したWash緩衝液(50 mM Tris-OAc, pH7.5、150 mM NaCl、25 mM Mg(OAc)2、0.5 % Tween 20、1μg/mL Saccharomyces cerevisiae total RNA (Sigma))を500μL加え、翻訳反応を止めた。

抗原タンパク質のビオチン化 購入したTNF-αタンパク質(TOYOBO)は、EZ-Link NHS-PEO4-Biotin(PIERCE)の標準プロトコールに従ってビオチン化した。ビオチン化したそれぞれの抗原タンパク質はSDS-PAGEによるバンドの移動度のシフトよりビオチン化が確認され、BCA Protein Assay Kit(PIERCE)を用いて濃度を決定した。

In vitro Selection 予め5 % SuperBlock(Thermo scientific)で4℃で一晩BlockingしておいたDynabeads MyOne streptavidin T1磁性体ビーズ(10μLスラリー、Invitrogen)を500 μL Wash緩衝液でMagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)を用いて2回洗浄後、1 nmol ビオチン化TNF-αタンパク質を加え、4℃で磁性体ビーズに固定化した。30分後、500 μL Wash緩衝液でMagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)を用いて3回洗浄後、回収した磁性体ビーズに翻訳反応液を加え、4℃で1時間ローテーションによって攪拌した。MagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)によって上清を廃棄し、回収した磁性体ビーズに1 mL のWash緩衝液を加え、4℃で5分ローテーションによって攪拌した。この操作を30回繰り返した後、50 μL Elution緩衝液(50 mM Tris-OAc, pH7.5、150 mM NaCl、50 mM EDTA)を回収した磁性体ビーズに加え、4℃で10分静置する事によって、複合体を磁性体ビーズから遊離させた。MagneSphere Magnetic Separation Stand(Promega)によって上清を回収し、RNeasy Micro(QIAGEN)によってmRNAを回収、精製した。

Real time PCR In vitro selection後、回収したmRNA 1μL、プライマーRealtime-F:GAGCAAAGCAGATTACGAGAAACAC(配列番号10)、プライマーMyc-R:CAGATCCTCCTCAGAGATCAGC(配列番号11)及びRNA-direct SYBR Green Realtime PCR Master Mix (TOYOBO)を含む反応液を調製し、LightCycler (Roche)を用いる標準プロトコールに従い、最終的なmRNA量を定量した。

<結果> 図1に、条件1,2のそれぞれの条件で翻訳後、In vitro 選択して回収したmRNA量の比較を条件2の場合を100%として示した。その結果、mRNA回収量に、条件1と条件2では約5倍差が認められた。また、図2に、図1と同様に条件1,3のそれぞれの条件から得られたmRNA量の比較を、条件3の場合を100%として示した。その結果、条件1と条件3では約28倍の差が認められた。 この結果から、 ・ライブラリー遺伝子(ここでは抗体のL鎖)のリボソームディスプレイ複合体をin vitro翻訳系でまず形成させた後で、同一チューブ内でペアタンパク質遺伝子(ここでは抗体のH鎖)を発現させることにより、或いは ・in vitro翻訳系による、ライブラリー遺伝子(ここでは抗体のL鎖)のリボソームディスプレイ複合体の形成と、ペアタンパク質遺伝子(ここでは抗体のH鎖)の翻訳を異なるチューブで行った後で、全ての翻訳産物を混合することにより、 高い効率でタンパク質多量体を含むリボソームディスプレイ複合体を形成させることができ、選択後のmRNA回収量が大幅に改善されることが示された。

本発明によれば、ライブラリーから目的の機能を有するタンパク質多量体に含まれる構成因子をコードする核酸を選択するため、ディスプレイ複合体上にタンパク質多量体を効率的に提示する方法が提供される。本発明を用いて、リボソームディスプレイやmRNAディスプレイ等のin vitro選択を行うと、抗体等の複雑な多量体タンパク質の親和性等の機能の向上や改良を効率的に行うことができる。

本出願は米国仮出願US61/638,774(出願日:2012年4月26日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

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