修飾ペプチドディスプレイ

申请号 JP2013525213 申请日 2011-07-29 公开(公告)号 JP6092104B2 公开(公告)日 2017-03-08
申请人 ミティ・バイオシステムズ・ゲーエムベーハー; 发明人 グントラム・クリスチャンセン;
摘要
权利要求

アミノ酸側鎖の2つの原子間に少なくとも1つの分子内環状結合を有するペプチドをディスプレイする、複製可能遺伝子パッケージであって、該環状結合が、C−N、C−O、C−S、N−N、N−O、N−S、O−O又はO−Sの間であり、ただし複製可能遺伝子パッケージがグラム陽性菌のものではない、前記複製可能遺伝子パッケージ。ファージ粒子、細菌、酵母真菌生物胞子およびリボソームからなる群より選択される、請求項1に記載の複製可能遺伝子パッケージ。M13、T4、T7、fdおよびラムダファージからなる群より選択される、請求項1または2に記載の複製可能遺伝子パッケージ。前記ペプチドがリーダーおよびコアペプチドを含む前駆体ペプチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複製可能遺伝子パッケージ。前記コアペプチドが天然リボソームペプチド由来である、請求項4に記載の複製可能遺伝子パッケージ。前記ペプチドが多環構造を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複製可能遺伝子パッケージ。前記ペプチドがランダム化配列を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複製可能遺伝子パッケージ。請求項1〜7のいずれか1項に記載の複製可能遺伝子パッケージを調製する方法であって a)ペプチドをコードする核酸を提供し、 b)複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に前記核酸を連結し、 c)前記複製可能遺伝子パッケージの表面上に、対応する一次ペプチドをディスプレイして、一次パッケージを得て、そして d)翻訳後修飾(PTM)酵素を用いて前記一次パッケージを酵素的にプロセシングして、前記ペプチドの多環構造をディスプレイする成熟パッケージを産生する 工程を含む、前記方法。ペプチド切断を遮断するようにペプチドを操作する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。前記PTM酵素が、カルボキシレート−アミン・リガーゼ、シクラーゼ、デヒドロゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、エピメラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ、デヒドラターゼ、トランスフェラーゼ、エステラーゼ、オキシゲナーゼおよびイソメラーゼからなる群より選択される、請求項8または9に記載の方法。前記プロセシングが、リーダーの存在下で行われる、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。請求項1〜7のいずれか1項に記載の複製可能遺伝子パッケージのライブラリーを産生する方法であって、 a)ペプチド変異体をコードする核酸のレパートリーを提供し、 b)前記レパートリーを複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に連結し、 c)前記パッケージの表面上に、対応する一次ペプチドをディスプレイして、一次ライブラリーを得て、そして d)PTM酵素を用いて前記一次ライブラリーを酵素的にプロセシングして、前記ペプチド変異体の環状構造をディスプレイする成熟ライブラリーを産生する 工程を含む、前記方法。多様なペプチドをディスプレイする、請求項1〜7に記載の複製可能遺伝子パッケージのライブラリー。

说明书全文

本発明は、翻訳後修飾されたペプチドを提示するディスプレイ系に言及する。

多くの場合、新規化合物に関する検索は、所望の活性または特性を有する化合物をスクリーンし、そして同定するため、化合物の巨大ライブラリーを利用する。コンビナトリアルペプチドライブラリー技術は、薬剤発見および開発の価値ある供給源である。ファージまたは他のウイルス粒子上にディスプレイされる組換えペプチドライブラリーは、こうしたスクリーンにおいて特に有用であることが立証されてきている。多くのヒト疾患および疾病のための新規治療の検索において、ペプチドライブラリーから得られる生物学的活性ペプチドの開発に向けて、多くのグループが取り組んでいる。

ファージディスプレイペプチドライブラリー技術は、多くのヒト疾患および疾病のための新規治療の検索において広く用いられている。繊維状ファージ上にディスプレイされたペプチドライブラリーは、任意の所定のターゲットに結合し、それによって薬理学的効果を示すペプチドを同定するためのスクリーニング供給源として用いられてきている。こうして同定されたペプチドは、続いて、慣用的合成化学法を用いて、大量に合成可能である。

バクテリオファージM13は、一本鎖(ss)DNAゲノムを持つイノウイルス科の無エンベロープ繊維状大腸菌(Escherichia coli)ファージである。ヌクレオカプシドは、異なるコピー数の4つのバクテリオファージタンパク質からなり:pVIIIはおよそ2700コピーであり、一方、pIII、pVIおよびpIXは5コピーで存在する。T4、T7、fdおよびラムダのような他のバクテリオファージの中でも、M13は、バイオテクノロジースクリーニング法で使用するためのファージディスプレイに成功裡に用いられてきている。こうしたスクリーニングアプローチにおいて、ペプチドのランダムライブラリーは、結合パートナー(タンパク質−タンパク質、タンパク質−DNA等)と異なるファージの相互作用を研究するため、ファージM13のヌクレオカプシド表面上に提示されている。通常、合成オリゴヌクレオチドは、ヌクレオカプシドを構成するタンパク質をコードする遺伝子内にクローニングされ、そしてそれによって、関心対象のペプチド(または異なるペプチドのライブラリー)は、続く結合研究のため、ファージM13ヌクレオカプシド表面上に提示される。

ファージディスプレイ法は、典型的には、ランダムオリゴヌクレオチドが、ファージコートタンパク質(例えば繊維状ファージpIII、pVIまたはpVIII)に融合したペプチドライブラリーを細菌宿主に発現させるように、ファージゲノム内へのランダムオリゴヌクレオチドの挿入を含む。この技術の利点は、ファージの大きさが小さいため、最大1015の異なる個体を含むライブラリーを扱うことが可能になり、そしてペプチドをコードする遺伝情報とディスプレイされたペプチドの物理的関連があることである。

基本的なファージディスプレイ技術は、真核ウイルス、細菌および酵母細胞など、ファージ以外の複製可能遺伝子パッケージからディスプレイされるペプチドライブラリーを含むように拡大されてきている。原理および戦略は、ファージに関して使用されるものと非常に類似であり、すなわち、スクリーニングしようとするペプチドおよび細胞またはウイルス表面上に曝露される内因性タンパク質の間に融合タンパク質を生成するように、ディスプレイしようとするペプチドをコードする核酸が、パッケージのゲノム内に挿入される。融合タンパク質の発現および細胞表面への輸送は、細胞またはウイルス表面で、ペプチドのディスプレイを生じる。

二次ペプチド構造を通じてライブラリー多様性を増加させる試みの中で、いくつかのグループは、化学的反応を通じて、コンホメーション的に拘束されたペプチドを産生してきた。

EP1187914B1は、システイン残基間のジスルフィド架橋を通じて安定化された、複数の環状ペプチドを含む、構造的に拘束されたペプチドのライブラリーを開示する。

WO2009/098450A2は、コネクター化合物を通じて連結されたジスルフィド安定化二環ペプチドをディスプレイするファージ粒子を開示する。 US2009/0137424A1は、アジド−アルキン[3+2]シクロ付加反応およびシュタウディンガー修飾のためのターゲットを提供するため、非天然アミノ酸を含有する、ファージディスプレイポリペプチドの翻訳後修飾を開示する。

デプシペプチド天然化合物の生合成が、EP2048155A1に記載される。5〜50アミノ酸の間の前駆体ペプチド配列は、ATP把握(grasp)様酵素によって修飾される。核酸分子は、例えば大腸菌内に導入されて、デプシペプチド天然化合物、例えばミクロビリジン(microviridin)を産生する。

いくつかのリボソームペプチドの天然産物合成は、Omanら(Nature Chemical Biology 6:9−18(2010))によって概説される。前駆体ペプチドは、リーダーペプチドによって仲介され、翻訳後プロセシングされる。これらのリーダーペプチドは、前駆体ペプチドをフォールディングし、前駆体を分解に対して安定化し、そして宿主内部での生合成中、分泌およびタンパク質分解に適切な時が来るまで、前駆体を不活性に維持するのを補助する。

EP1187914B1

WO2009/098450A2

US2009/0137424A1

EP2048155A1

Omanら(Nature Chemical Biology 6:9−18(2010))

ペプチドライブラリー技術を通じて開発される新規ターゲティングペプチドに関する差し迫った必要性がある。したがって、スクリーニング目的のため、構造的に拘束されたペプチドの改善されたライブラリーを提供することが本発明の目的である。

この技術的問題に対する解決策は、請求項に特徴付けられる態様を提供することによって達成される。したがって、本発明は、翻訳後修飾(PTM)酵素によって酵素的にプロセシングすることを通じて、多環ペプチドの巨大ライブラリーを容易に生成することを可能にする。

本発明にしたがって、アミノ酸側鎖の2つのヘテロ原子間に、分子内イソペプチド結合、エステル結合またはランチオニン結合を含む、少なくとも1つの分子内環状結合を有するペプチドをディスプレイする、複製可能遺伝子パッケージを提供する。

本発明記載の複製可能遺伝子パッケージは、好ましくは、ファージ粒子、細菌、酵母、真菌微生物胞子およびリボソームからなる群より選択される。 特に、複製可能遺伝子パッケージは、M13、T4、T7、fdおよびラムダファージからなる群より選択される。

特定の側面にしたがって、前記ペプチドはリーダーおよびコアペプチドを含む前駆体ペプチドである。 前記リーダーペプチドが天然リボソームペプチドのリーダーを含むことが好ましい。

前記コアペプチドが天然リボソームペプチド由来であることもまた好ましい。 特に、環状結合は、C、N、OおよびSからなる群より選択される2つの原子を連結する。

好ましい態様において、環状結合は、C、N、OおよびSからなる群より選択される2つの異なる原子を連結する。 好ましい態様にしたがって、ペプチドは多環構造を含む。

ペプチドがランダム化配列を含むことが好ましい。 本発明の別の側面にしたがって、アミノ酸側鎖内に少なくとも1つの分子内環状結合を有するペプチドをディスプレイする複製可能遺伝子パッケージ、例えば本発明記載の複製可能遺伝子パッケージを調製する方法であって a)ペプチドをコードする核酸配列を提供し、 b)複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に前記核酸配列を連結し、 c)前記複製可能遺伝子パッケージの表面上に、対応する一次ペプチド配列をディスプレイして、一次パッケージを得て、そして d)翻訳後修飾(PTM)酵素を用いて前記一次パッケージを酵素的にプロセシングして、前記ペプチドの環状構造をディスプレイする成熟パッケージを産生する 工程を含む、前記方法を提供する。

特定の態様において、該方法は、アミノ酸側鎖の2つのヘテロ原子間の分子内環状結合を提供する。 本発明にしたがった好ましい方法は、ペプチド切断を遮断するようにペプチドを操作する工程をさらに含む。

好ましいPTM酵素は、カルボキシレート−アミン・リガーゼ、シクラーゼ、デヒドロゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、エピメラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ、デヒドラターゼ、トランスフェラーゼ、エステラーゼ、オキシゲナーゼおよびイソメラーゼ、特にランチオニン結合形成酵素、細胞溶解素形成酵素、シアノバクチン形成酵素、チオペプチド形成酵素、コノペプチド形成酵素、ミクロビリジン形成酵素、シクロチド形成酵素、バクテリオシン形成酵素およびサブチロシン形成酵素からなる群より選択される。

特定の態様にしたがって、プロセシングは、リーダー、好ましくはリーダーペプチドの存在下で行われる。 本発明にしたがって、本発明記載の方法によって得られうるまたは得られた複製可能遺伝子パッケージを提供する。

本発明のさらなる側面にしたがって、アミノ酸側鎖内に少なくとも1つの分子内環状結合を有するペプチドをディスプレイする複製可能遺伝子パッケージ、例えば本発明記載の複製可能遺伝子パッケージのライブラリーを産生する方法であって、 a)ペプチド変異体をコードする核酸配列のレパートリーを提供し、 b)前記レパートリーを複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に連結し、 c)前記パッケージの表面上に、対応する一次ペプチド配列をディスプレイして、一次ライブラリーを得て、そして d)PTM酵素を用いて前記一次ライブラリーを酵素的にプロセシングして、前記ペプチド変異体の環状構造をディスプレイする成熟ライブラリーを産生する 工程を含む、前記方法を提供する。

本発明のさらなる側面にしたがって、複製可能遺伝子パッケージを調製する方法および複製可能遺伝子パッケージのライブラリーを産生する方法を含む、本発明の方法にしたがって産生された、複製可能遺伝子パッケージのライブラリーを提供する。

本発明のさらなる側面にしたがって、パッケージが多様なペプチド配列をディスプレイする、本発明記載のものなどの、複製可能遺伝子パッケージのライブラリーを提供する。 さらに、本発明の別の側面にしたがって、PTM酵素でペプチドライブラリーを翻訳後修飾して、多環ペプチド構造をディスプレイする成熟ライブラリーを産生する方法を提供する。

特に、C、N、OおよびSからなる群より選択される、同じまたは異なる原子の2つの原子間の共有結合を提供可能な酵素を用いる。 したがって、本発明にしたがって、ペプチド変異体に多環構造を取り込むペプチドライブラリーをプロセシングするためのPTM酵素の使用をさらに提供する。

配列。mvdEに融合したpIII遺伝子の配列(図1a、配列番号2);翻訳されたアミノ酸配列(図1b、配列番号3):ファージタンパク質pIII、太字はMvdE前駆体ペプチドを指し、下線文字はコアペプチドを指す。

キモトリプシン処理した参照ペプチド、ミクロビリジンKの高解像度質量スペクトル(FTMS)。885.8532Daで示される質量は、ミクロビリジンKの理論的質量(885.85019Da)にマッチする。

SDS−PAGEによって分離されたキモトリプシン消化した試料バンドの高解像度質量スペクトル(FTMS)。試料は、PTM酵素処理したM13KECmMvdEファージを指す。検出された二重荷電質量m/z 885.8540Daは、ペプチド、ミクロビリジンKの理論的質量および参照ペプチド、ミクロビリジンKの測定された質量(図1)によく適合する。質量精度は5ppmであった。

したがって、本発明は、特定の分子内環状構造を有するペプチドをディスプレイする複製可能遺伝子パッケージに基づくペプチドディスプレイ系に関する。ペプチドの代謝的操作は、例えばジスルフィド架橋を操作する化学架橋より好都合であり、これは、複素環の橋脚としてヘテロ原子を使用するためである。それによって、代謝的プロセシングを通じて、非常に望ましい結合モチーフを所持する適切なペプチドを特異的に選択するためのプールとして、多様なペプチド一次および二次構造が提供される。

用語「複製可能遺伝子パッケージ」は、本明細書において、原核または真核遺伝子パッケージを意味するものとし、そして細胞、胞子、酵母、細菌、ウイルス、バクテリオファージ、リボソームおよびポリソームを含む。好ましい複製可能遺伝子パッケージはファージである。ペプチドは、複製可能遺伝子パッケージ上にディスプレイされ、すなわち、これらは、複製可能遺伝子パッケージの外表面に位置する基または分子に付着している。複製可能遺伝子パッケージは、ペプチドをコードする核酸分子に連結されたスクリーニングされるペプチドを含む、スクリーン可能単位である。核酸分子は、通常、in vivoで、例えばベクターとして、またはin vitroで、例えばPCR、転写および翻訳によってのいずれかで、複製可能である。in vivo複製は、細胞の場合のように自律的であってもよいし、ウイルスの場合のように宿主因子の補助を伴ってもよいし、またはファージミドの場合のように宿主およびヘルパーウイルス両方の補助を伴ってもよい。多様なペプチドをディスプレイする複製可能遺伝子パッケージは、ディスプレイしようとする、異種ペプチドをコードする核酸分子を、複製可能遺伝子パッケージのゲノム内に導入して、通常、複製可能遺伝子パッケージの外表面に発現される自己タンパク質を含む融合タンパク質を形成することによって、形成される。融合タンパク質の発現、外表面への輸送およびアセンブリは、複製可能遺伝子パッケージの外表面からのペプチドのディスプレイを生じる。本発明にしたがって用いられるようなディスプレイ系は、通常、所望の特性、例えば物理的、化学的または機能的特性に基づく選択のためにアクセス可能なペプチドコレクションを指し、その際、選択されたペプチドをコードする核酸を容易に単離または回収可能である。ディスプレイ系は、好ましくは、生物学的系において、ペプチドの適切なレパートリーを提供し、ときに生物学的ディスプレイ系と呼ばれ、特に、複製可能遺伝子パッケージを指す。in vitroディスプレイ系とは対照的に、生物学的系は、典型的には、ウイルスまたは細胞発現系を使用し、例えば形質転換、感染、トランスフェクションまたは形質導入された細胞において核酸ライブラリーを発現し、そして複製可能遺伝子パッケージ表面上に、コードされるペプチドをディスプレイする。

用語「ペプチド」は、本明細書において、5またはそれより多いアミノ酸、典型的には少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも40、より好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60、70、80、90または100アミノ酸を含有するペプチドまたはポリペプチドを意味するものとする。該用語はまた、より高分子量のポリペプチド、例えばタンパク質も指す。

用語「分子内環状結合」は、本明細書において、ペプチド配列内のアミノ酸側鎖間で共有結合を使用する、例えば分子外(外因性)構造を取り込まない、分子内イソペプチド結合を通じて形成される二次構造を意味するものとする。該用語は、特に、翻訳後酵素プロセシングを通じて得られている環および多環を指し、これは好ましくは、化学的プロセシング、例えば還元反応を通じた、例えばジスルフィド架橋形成、付加環化またはシュタウディンガー反応を排除するであろう。特に、環は、本明細書において、「ヘテロ原子」と称される少なくとも2つの原子を含む複素環であり、「ヘテロ原子」は、N、OまたはSなどのヘテロ原子、あるいはC、N、OおよびSからなる群より選択される2つの異なる原子間の共有結合を形成する原子である。これは特に、適切な化学的意味において、二重結合を含めて、C−N、C−O、C−S、N−N、N−O、N−S、O−O、O−SおよびS−S結合を含む。こうした結合の橋脚はいずれも「ヘテロ原子」と称され、そして「複素環」、特に翻訳後修飾または代謝的プロセシングによって産生されるヘテロ環の橋脚と見なされる。

用語「多環」または「多環構造」は、本明細書において、少なくとも二環構造、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、さらにより好ましくは少なくとも5の環状結合を有する構造を指すものとする。本発明にしたがって用いられるようなペプチドの長さに応じて、より複雑な二次ペプチド構造が達成可能である。

用語「前駆体ペプチド」は、本明細書において、ペプチドの翻訳後酵素的プロセシング(成熟)を支持する要素、例えば操作的にコアペプチドに連結されるシグナルおよび/またはリーダー配列を含むペプチドを指すものとする。前駆体ペプチドのカルボキシル末端は、通常、酵素修飾された配列、「コア配列」をコードする。リーダーは、通常、修飾後に成熟カルボキシル末端から切断されて短いペプチド産物を生じるが、本発明にしたがってディスプレイされる好ましい前駆体ペプチドは、コアペプチドの成熟後であってさえ、なお前駆体要素、例えばシグナルまたはリーダー配列を含むであろう。したがって、好ましいディスプレイ系または構築物は、成熟プロセス前および/または後のいずれかの、コアペプチドの切断を遮断するよう操作される。これは、切断を防止する突然変異によって、または切断部位を横断する適切な架橋の確立を通じて、達成可能である。

用語「リーダー」または「リーダー配列」は、本明細書において、翻訳後修飾(PTM)酵素のための認識モチーフを指すものとする。好ましい側面にしたがって、ペプチドは、複製可能遺伝子パッケージ上に組み込まれたリーダー配列とともに、例えば前駆体ペプチドの形でディスプレイされるか、あるいはリーダーは別個の実体として、例えば添加物として、またはPTM酵素作用を支持するよう作用するリーダー配列もしくは多様なリーダー配列突然変異体をディスプレイする生物学的もしくはin vitroディスプレイ系に基づくヘルパーディスプレイ系によって、本発明にしたがった複製可能遺伝子パッケージとは独立の別個のペプチドとして、ディスプレイされる。

本発明にしたがって用いられるような用語「天然リボソームペプチド」はまた、「リボソームペプチド天然産物」とも称され、生物学的に活性である、構造的に多様なリボソーム合成ペプチドを意味するものとし、最も一般的には長さ約100アミノ酸であり、非常に多数の異なる化学的モチーフの形成を触媒する多様な酵素によって翻訳後修飾される。このクラス内では、高頻度可変性配列を含む多数の(前駆体)ペプチドがある。一次ペプチドは、プロセシング経路の基質として作用可能であり、そしてしたがって、各経路は、多くの異なる成熟ペプチドを導く。このクラスのメンバーは、微生物学、環境、医学および技術において重要でありうる、高い潜在能を有する。一般的に、天然リボソームペプチドの前駆体ペプチドは、修飾酵素による、そして/または排出機構による認識に、少なくとも部分的に関与する、比較的保存されたリーダー配列を含有する。これらの生合成機構は、細菌リボソームペプチド天然産物に関してほぼ普遍的であり、そしてまた古細菌、真菌、植物および動物などの他の生物由来の類似のペプチドの生合成においても一般的に見られる。

本発明にしたがって用いられる好ましいリボソームペプチドには、ミクロビリジン、ラクチシン、チオペプチド、コノペプチド、ミクロシン、細胞溶解素、ランチビオティクス、シアノバクチン、アマトキシン/ファロトキシン、シクロチドおよび(環状)バクテリオシン、またはその機能的に同等な変異体が含まれる。

用語「ランダム化」または「ランダム化配列」は、あらかじめ決定された領域における特異的ヌクレオチドまたはアミノ酸配列修飾を指すものとし、例えば代謝的プロセシングに際して複素環の新規橋脚を形成するか、またはこうした橋脚間で、複素環の三次元構造を変化させる。修飾は、典型的には、アミノ酸のランダム挿入、交換または欠失を生じる。アミノ酸を置換するかまたは挿入するため、選択されたアミノ酸あるいは全範囲の天然または合成アミノ酸を、当該技術分野に知られる方法によって、そして本特許出願に開示するように、ランダムにまたは半ランダムに用いてもよい。ランダム化は、多様なペプチド配列をコードする核酸のレパートリーを生じるであろう。ランダム化目的には、天然アミノ酸の使用が好ましい。特定の態様において、非天然アミノ酸の使用を回避する。

用語「レパートリー」は、本明細書において、配列多様性によって特徴付けられる核酸またはアミノ酸配列のコレクションを指す。レパートリーの個々のメンバーは、共通の特徴、例えば足場内の共通のコア構造、および/または共通の機能、例えば特定の結合または生物学的活性を有する可能性もある。レパートリー内には、通常、核酸またはアミノ酸配列の「変異体」、例えば親配列から突然変異誘発法を通じて、例えばランダム化技術を通じて得られる、多様なペプチド配列がある。用語「ライブラリー」は、本明細書において、不均一ペプチドまたは核酸配列の混合物を指す。ライブラリーは、各々、単一のペプチドまたは核酸配列を有するメンバーで構成される。この範囲で、「ライブラリー」は、「レパートリー」と同義である。ライブラリーメンバー間の配列相違は、ライブラリーに存在する多様性に関与する。

用語、親分子の「機能的に同等な変異体」または「機能的に活性である変異体」は、本明細書において、配列内の、あるいは配列遠位端のいずれかまたは両方での1またはそれより多いアミノ酸またはヌクレオチドの挿入、欠失または置換による、この配列の修飾を生じ、そしてこの修飾がこの配列の活性に影響を及ぼさない(特に損なわない)、配列を意味する。選択されたリガンドに対する特異性を有するリガンド結合ペプチドの場合、本発明にしたがって用いられるような、機能的に活性であるペプチド変異体は、あらかじめ決定された結合特異性を有するものとするが、これは、例えば、特定のエピトープに対する細かい特異性、アフィニティ、アビディティ、KonまたはKoff速度等を変化させるように変化させることも可能である。好ましい態様において、機能的に活性である変異体は、a)ペプチドの生物学的に活性である断片、ペプチドの配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%を含む機能的に活性である断片であり;b)少なくとも1つのアミノ酸置換、付加および/または欠失によって、ペプチドから得られており、ペプチドに対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%の配列同一性を有する。機能的に活性である変異体は、ペプチドまたはヌクレオチド配列中の配列改変によって得られる可能性もあり、ここで、本発明と組み合わせて用いた際、配列改変は、改変されていないペプチドまたはヌクレオチド配列の機能を保持する。こうした配列改変には、限定されるわけではないが、(保存的)置換、付加、欠失、突然変異および挿入が含まれてもよい。

ポリペプチドまたはヌクレオチド配列の変異体は、本発明の背景において、変異体を含む(が元来のものを含まない)ペプチド調製の活性が、配列改変を含まないペプチドまたはヌクレオチド配列(すなわち元来のポリペプチドまたはヌクレオチド配列)を含む本発明にしたがって用いられるようなペプチドの生物学的活性の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%に達する場合、機能的に活性である。

保存的置換は、側鎖および化学的特性において関連しているアミノ酸ファミリー内で行われるものである。こうしたファミリーの例は、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、非荷電極性側鎖、小さい側鎖、巨大側鎖などを持つアミノ酸である。

本発明の別の態様において、上に定義するようなペプチドまたはヌクレオチド配列を多様な化学的技術で修飾して、ペプチドと本質的に同じ活性(断片および変異体に関して上に定義するようなもの)を有し、そして場合によって他の所望の特性を有する、誘導体を産生してもよい。

本明細書において、「相同体」または「機能的相同体」は、親核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の変異体が、一次、二次または三次構造において、対応する位で同じかまたは保存された残基を有することを意味するものとする。該用語はまた、相同ペプチドをコードする2またはそれより多いヌクレオチド配列にも拡大適用される。特に、相同化合物は、通常、全長天然配列またはその任意の断片に関して,少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有する。好ましくは、相同化合物は、天然化合物、または全長化合物の任意の他の特に定義される断片に対して、少なくとも約55%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有するであろう。生物学的に活性であるペプチドとしての機能がこうした相同体で証明された場合、相同体は「機能的相同体」と称される。

用語「相同ヌクレオチド配列」は、本明細書において、意図されるヌクレオチド配列とヌクレオチド配列が同一ではないが関連し、そして本質的に同じ機能を実行する、ヌクレオチド配列を指す。これらはまた、遺伝暗号の縮重による変動を含む、ヌクレオチド組成の変動を含み、それによって該ヌクレオチド配列は、本質的に同じ機能を実行する。

本明細書に同定するペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、そして必要であればギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成した後、そしていかなる保存的置換も配列同一性の一部と見なさずに、特定のポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義される。当業者は、比較中の配列の全長に渡って、最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めて、整列を測定するための適切なパラメータを決定可能である。

用語「翻訳後修飾酵素」または「PTM酵素」は、本明細書において、翻訳されたペプチドの構造変化を伴う、例えばプロセシング機構の一部として、生物学的に活性であるペプチドの生合成において、天然リボソームペプチドを特異的に修飾する酵素を指すものとする。このクラスには、カルボキシレート−アミン・リガーゼ、シクラーゼ、デヒドロゲナーゼ、シクロデヒドラターゼ、デカルボキシラーゼ、エピメラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ、デヒドラターゼ、トランスフェラーゼ、エステラーゼ、オキシゲナーゼおよびイソメラーゼ、特にランチオニン結合形成酵素、細胞溶解素形成酵素、シアノバクチン形成酵素、チオペプチド形成酵素、コノペプチド形成酵素、ミクロビリジン形成酵素、シクロチド形成酵素、バクテリオシン形成酵素およびサブチロシン形成酵素を含む、多数のタイプの酵素が含まれる。

酵素のさらなる説明を以下に提供する。 特に、ランチオニン結合形成酵素を使用する。ランチビオティクス(Willeyおよびvan der Donk Ann. Rev. Microbiol. 2007. 61:477−501)は、ランチオニン含有抗生物質と定義される。分子内架橋は、ランチオニンまたはメチルランチオニン結合と称され、これは、異なるアミノ酸側鎖の翻訳後修飾から生じる。セリンおよびスレオニン・ヒドロキシル基を脱して、それぞれ、2,3−ジデヒドロアラニン(Dha)または(Z)−2,3−ジデヒドロブチリン(Dhb)を得る。これに続いて、DhaまたはDhb上にシステイン残基を立体特異的分子内付加して、ランチオニンまたはメチルランチオニン結合を形成する。現在、いくつかの翻訳後修飾酵素およびその遺伝子が知られる:LanB型デヒドラターゼは、セリンおよびスレオニンの脱水工程を触媒すると提唱される酵素のC末端を構成することが示されている。LanC型シクラーゼは、システイン・チオールの付加を触媒する。シクラーゼの構成要素であるLanCは、亜鉛金属タンパク質であり、その結合金属は、求核付加のため、チオール基質を活性化させると提唱されてきている。LanM型融合デヒドラターゼおよびシクラーゼ:これは、ランチビオティクス合成中の前駆体−ペプチドの脱水および環状化の両方に関与する。LanD酸化性デカルボキシラーゼ型酵素:この酵素は、エピデルミンのC末端メソランチオニンのシステイン残基からの2つの還元性同等物の除去を触媒して、−−C=C−−二重結合を形成する。LanP型ペプチダーゼは、ランチビオティクスからリーダーペプチドを切断する。ABCトランスポーターに融合したLanT型ペプチダーゼ;前駆体ペプチドの切断は、分泌プロセスの一部として、トランスポーターによって仲介される。デヒドラターゼおよびデヒドロゲナーゼのLtnMおよびLtnJ型は、D−アラニンの形成に関与する。CinXは、シンナマイシン生合成中、アスパラギンをヒドロキシル化する。

ミクロシン:(Duquesneら[Nat Prod Rep. 2007 Aug;24(4):708−34])は大部分、腸内細菌によって産生され、そして3つの群:クラスI、IIaおよびIIbに分類される。関与するPTM酵素およびその遺伝子は:McbB様セリンおよびシステイン・デヒドラターゼ(シクロデヒドラターゼ)、McbC様フラビン依存性デヒドロゲナーゼ(オキシドレダクターゼ)、抗生物質ミクロシンB17のタンパク質分解的プロセシングに関与するTldEプロテアーゼ、PmbA(TldD)ミクロシン・プロセシングペプチダーゼ2型、ミクロシンMccC7/C51生合成に関与するMccB型修飾酵素、n−アミノプロパノール基のMccD型トランスファー(MccC7/C51)、ミクロシンJ25プロセシングおよび成熟に関与するMcjBおよびMcjC、ミクロシンE492修飾に関与するMceC型グリコシルトランスフェラーゼ、MceDエンテロバクチン・エステラーゼ、MceIアセチルトランスフェラーゼである。

好ましくは、細胞溶解素形成酵素のさらなる群を使用する。ストレプトリジン(Mitchellら, J. Biol Chem.2009 May 8;284(19):13004−12)は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)から翻訳後修飾されるペプチドである。特異的PTM酵素は:SagBデヒドロゲナーゼおよびSagCセリンおよびシステインデヒドラターゼ(シクロデヒドラターゼ)である。どちらの酵素も、チアゾール形成および(メチル)−オキサゾール形成に関与する。

シアノバクチン(Schmidtら Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 May 17;102(20):7315−20)は、異なるシアノバクテリア属から単離される、複素環含有環状ペプチドである。好ましい態様にしたがって、シアノバクチン形成酵素、例えば前駆体ペプチドを切断するPatAスブチリシン(subtuilisin)様セリンプロテアーゼペプチダーゼ、PatDセリンおよびシステインデヒドラターゼ(シクロデヒドラターゼ)およびPatGデヒドロゲナーゼ(オキシドレダクターゼ)を用いてもよい。

チオペプチド(Morrisら J Am Chem Soc. 2009 Apr 29;131(16):5946−552009)は、大環状分子の接合部で特徴的な三および四置換ピリジン環を有する複素環含有翻訳後修飾ペプチドクラスである。関与するPTM酵素は、ピリジン環形成に関与するTpdBデヒドラターゼ、ピリジン環形成に関与するTpdCデヒドラターゼ、チアゾリン形成に関与するTpdGシステインデヒドラターゼ(シクロデヒドラターゼ)、チアゾリンからのチアゾール形成に関与するTpdEデヒドロゲナーゼ(オキシドレダクターゼ)、TpdHペプチダーゼ、TpdIラジカルSAMタンパク質、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ、TpdJ1 P450モノオキシゲナーゼ、TpdJ2 P450モノオキシゲナーゼ、C−メチル化に関与するTpdLラジカルSAMタンパク質、TpdM O−メチルトランスフェラーゼ、TpdNデアミンレダクターゼ、TpdOシクロデヒドラターゼ、TpdPデヒドラターゼ、TpdQ P450モノオキシゲナーゼ、TpdT N−メチルトランスフェラーゼおよびTpdUラジカルSAMタンパク質である。

コノペプチド形成酵素もまた好ましい。コノペプチド(Buczekら Cell. Mol. Life Sci. 62(2005)3067−3079)は、イモガイ(cone snail)によって産生される翻訳後修飾ペプチドのクラスである。コノペプチドのクラスは、100,000の異なるペプチドの群を構成すると概算される。特異的PTM酵素は、Tex31基質特異的エンドプロテアーゼ、MrPDI特異的タンパク質ジスルフィド・イソメラーゼ、ビタミンK依存性カルボキシラーゼ(寄託番号AF382823)である。生化学実験から、以下の酵素反応がコノトキシン形成に関与することを示すことが可能であった:プロリン、バリン、リジンヒドロキシル化、特異的モノオキシゲナーゼによるタンパク質アミド化反応、特異的ブロモペルオキシダーゼによる6−ブロモトリプトファンへのトリプトファンブロモ化、およびエピメラーゼによるTrp、Leu、Phe、Valのエピマー化。さらに、コノトキシン生合成に関与する、グルタミニル・シクラーゼ、チロシルスルホトランスフェラーゼ、およびO−グリコシルトランスフェラーゼがある。

アマトキシン/ファロトキシン(Waltonら Biopolymers. 2010 May 26.[印刷に先駆けた電子出版], Hallenら Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Nov 27;104(48):19097−101)は、テングダケ属(Amanita)担子菌類から単離された翻訳後修飾されたペプチドである。特に知られるPTM酵素は、Pop1セリンプロテアーゼである。生化学実験から、シクラーゼ、ヒドロキシラーゼ、およびトリプトファン−システイン・トリプタチオン(tryptathione)架橋に関与する酵素が、アマトキシン形成/ファロトキシン産生に関与すると推定される。

ミクロビリジン形成酵素が特に好ましい。ミクロビリジン(Philmusら, 2008 上記参照, Ziemertら, Angew Chem Int Ed Engl. 2008;47(40):7756−9):ミクロビリジンは、三環ペプチドのクラスであり、異なるシアノバクテリア属から単離されてきている。ミクロビリジンの成熟に関与するPTM酵素は、生化学的に性質決定されてきている。特異的PTM酵素は、MvdBアセチルトランスフェラーゼ、RimK ATP結合タンパク質に類似でアミド結合形成に関与するMvdC環状化タンパク質、ATP把握リガーゼ、RimK ATP結合タンパク質に類似で2つのエステル結合形成に関与するMvdD環状化タンパク質およびATP把握リガーゼである。

シクロチド(Saskaら J Biol Chem. 2007 Oct 5;282(40):29721−8)は、スミレ科(Violaceae)、アカネ科(Rubiaceae)およびウリ科(Curcurbitaceae)の植物から単離される翻訳後修飾ペプチド群である。性質決定されたPTM酵素の中で、シクロチド形成に関与する2つのペプチダーゼがある:NbVpe1aおよびNbVpe1b。

環状バクテリオシン(Maquedaら FEMS Microbiol Rev. 2008 Jan;32(1):2−22)は、グラム陽性細菌から単離される翻訳後修飾ペプチド群に属する。環状(サイクリック)バクテリオシン形成に関与する酵素をコードする遺伝子オペロンが単離され、そして記載されてきているが、候補酵素によって触媒される生化学工程の同定は完了していない。生化学実験から、頭部から尾部への環状化を触媒するペプチダーゼが、環状バクテリオシン形成に関与していると推定されてきている。D−アラニンへのL−アラニンのエピマー化は、特異的エピメラーゼによって触媒される。やはり好ましいのは、AlbA、Fe−Sオキシドレダクターゼ、AlbF、Zn依存性ペプチダーゼおよびAlbE、第二のZn依存性ペプチダーゼのような、サブチロシン形成酵素である。

やはり好ましいのは、AlbA AP011541.1、Fe−Sオキシドレダクターゼ、AlbF AP011541.1、Zn依存性ペプチダーゼおよびAlbE AP011541.1、Zn依存性ペプチダーゼのようなサブチロシン形成酵素である。

好ましいPTM酵素の中には、リーダーペプチドからペプチド産物を切断するプロテアーゼがある。通常、PTM酵素は、修飾酵素による、および/または搬出機構による認識に少なくとも部分的に関与するリーダー配列を含有する、前駆体ペプチドを修飾する。しかし、リーダーはまた、別個の実体、例えば添加物として、またはリーダー配列を含有する同時発現ベクターを使用した同時発現によって、提供されてもよい。ペプチドおよびリーダーは、次いで、同じ組換え宿主において同時発現されてもよく、そしてペプチドは翻訳後修飾される。あるいは、リーダーおよび酵素は、組換え宿主細胞培養に対する添加物として提供されてもよく、この宿主が次いで、成熟ペプチドを発現することが可能である。PTM酵素は、典型的には、翻訳後プロセシングによって、システイン、セリンおよびスレオニン残基を修飾するが、アスパラギンまたはグルタミンのカルボキシル基も修飾して、例えば複素環部分、例えばチアゾールおよびオキサゾール部分を形成する。したがって、PTM酵素は、単一タンパク質または単一サブユニット酵素として、ならびに少なくとも2、3または4つの異なる酵素を含むタンパク質酵素複合体として作用して、複素環化を支持することも可能である。特に、機能的に活性である変異体または相同体を含めて、複素環リボソームペプチドの生合成に関与する遺伝子または遺伝子クラスターが、本発明にしたがって使用可能である。好ましくは、天然酵素、例えば生物の溶解物由来の天然起源の酵素を用いてもよい。特に、好ましくは、細菌起源の酵素、例えば細菌溶解物由来のものが用いられる。あるいは、組換え酵素を用いてもよい。別の好ましい態様にしたがって、改変された基質特異性または酵素的活性を持つように操作された、改善された酵素または酵素変異体、好ましくは天然由来酵素の触媒断片を含むものが用いられる。

本発明にしたがって、生物学的またはin vitroディスプレイを含むディスプレイ系によってディスプレイされるペプチド、例えば天然リボソームペプチドあるいは機能的に活性である変異体または相同体の代謝的プロセシングを提供することが初めて可能となる。

代謝的、酵素的プロセシングの修飾プロセスを、ペプチドをディスプレイする複製可能遺伝子パッケージに、そしてペプチドライブラリー一般に適用可能であることがわかった。これは、ペプチドの(多)環構築を導く分子内架橋を生じる。直鎖ペプチドの多くの二次代謝産物は、最初のより大きな前駆体ペプチド由来の誘導体である。真核系の前駆体ペプチドはさらに、機能的に異なるセグメントに細分可能である:N末端には、シグナルペプチドおよびリーダーペプチドがあり、その後、成熟二次代謝産物にプロセシングされるコアペプチド、および前駆体ペプチドのC末端を特徴付ける場合による認識配列が続く。異なるセグメントの提唱される役割は以下の通りである:シグナルペプチドは、特定の細胞内区画への輸送を指示し、シグナルペプチドは翻訳後修飾(PTM)酵素の認識モチーフである。コアペプチドは、プロセシングされて成熟二次代謝産物になるセグメントであり、そして認識配列は、コアペプチドセグメントに続くC末端の何らかの伸長部分である。一般的に、この群の二次代謝産物の産生に関与する5つの工程がある。まず、前駆体ペプチドをコードするメッセンジャーmRNAは、リボソームおよび輸送tRNAを用いて翻訳される。上述のセグメントからなってもよい前駆体ペプチドは、次いで、コアセグメントを翻訳後修飾して分子架橋を生じ、(多)環構築を導く専用PTM酵素によって認識される。プロテアーゼはリーダーペプチドを切断し、そしてしたがってコアペプチドセグメントからリーダーペプチドを分離する。最後に、輸送タンパク質は、成熟した二次代謝産物を膜上で移動させる。リーダーの切断を遮断する特異的突然変異は、本発明にしたがって前駆体ペプチドをディスプレイするのに好適でありうる。

本発明は、特に、アミノ酸側鎖内に、特にアミノ酸側鎖の2つのヘテロ原子間に、少なくとも1つの分子内環状結合を有するペプチドをディスプレイする複製可能遺伝子パッケージ、およびこうしたパッケージを産生する方法であって、例えば a)ペプチドをコードする核酸配列を提供し、 b)複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に前記核酸配列を連結し、 c)前記複製可能遺伝子パッケージの表面上に、対応する一次ペプチド配列をディスプレイして、一次パッケージを得て、そして d)翻訳後修飾(PTM)酵素を用いて前記一次パッケージを酵素的にプロセシングして、前記ペプチドの環状構造をディスプレイする成熟パッケージを産生する 工程を含む、前記方法に関する。

本発明にしたがった複製可能遺伝子パッケージは、好ましくは、ライブラリーのメンバーとして提供され、こうしたライブラリーメンバーは、多様なペプチドをディスプレイし、ペプチドライブラリーとも称される。したがって、本発明はまた、多様なペプチド構造をディスプレイする複製可能遺伝子パッケージのレパートリーを含むそれぞれのペプチドライブラリーを調製するプロセスも提供する。

こうしたライブラリーを産生する好ましい方法は a)ペプチド変異体をコードする核酸配列のレパートリーを提供し、 b)前記レパートリーを複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に連結し、 c)前記パッケージの表面上に、対応する一次ペプチド配列をディスプレイして、一次ライブラリーを得て、そして d)PTM酵素を用いて前記一次ライブラリーを酵素的にプロセシングして、前記ペプチド変異体の環状構造をディスプレイする成熟ライブラリーを産生する 工程を含む。

したがって、多様なペプチドをコードする核酸配列のレパートリーを複製可能遺伝子パッケージの遺伝子内に連結してもよい。 繊維状バクテリオファージ表面にペプチドを係留するため、大部分は、ファージコートタンパク質への遺伝子融合を使用する。好ましいのは、遺伝子III、遺伝子VIII、遺伝子VI、遺伝子VIIおよび遺伝子IX、ならびにその断片への融合である。さらに、ファージディスプレイはまた、ファージラムダ上でも達成されてきている。その場合、遺伝子Vタンパク質、遺伝子Jタンパク質および遺伝子Dタンパク質が、本発明の目的によく適合する。遺伝子融合を用いることに加えて、非共有ディスプレイを達成するため、外来の(foreign)ペプチドまたはタンパク質が、ファージ上にディスプレイされるタグおよびディスプレイしようとするペプチドに融合したリガンドに結合するタグを含む会合ドメインを通じてファージ表面に付着されてきているが、また共有ディスプレイ用のコネクター化合物を含むディスプレイ系もある。

好ましくは、特定の部位で異なる修飾を含む変異体のレパートリーを調製するための足場として、天然リボソームペプチドが用いられる。親構造、例えばリボソームペプチド足場の変異体は、好ましくはあらかじめ決定された機能を持つライブラリーのメンバーを選択するために使用可能なペプチドライブラリーを形成するようグループ分けされる。これと一致して、足場配列は、好ましくは、例えば突然変異誘発法を通じてランダム化される。好ましい戦略にしたがって、ペプチド配列内の特定の位を突然変異させて、複素環のヘテロ原子架橋の新規橋脚を提供する。あるいは、突然変異位は、存在する橋脚とは別であり、したがって、(多)環ペプチド構造を維持しつつ、多様性を生じる。

好ましい態様にしたがって、潜在的にリガンド結合部位に寄与する、結合剤のループ領域または末端領域、例えば1またはそれより多いループ内あるいは末端部位の位を含む親ペプチド配列は、好ましくはライブラリーを生じるよう突然変異するかまたは修飾される。突然変異誘発法は、好ましくは、ランダム、半ランダム、または特に部位特異的ランダム突然変異誘発を使用し、したがって、ランダム化配列を生じて、特に欠失させるか、交換するかまたはランダムに生成された挿入物を導入する。あるいは、好ましくは、コンビナトリアルアプローチを使用する。既知の任意の突然変異誘発法を使用してもよく、その中にカセット突然変異誘発がある。いくつかの場合、位およびアミノ酸を、例えば任意の可能なアミノ酸または好ましいアミノ酸のセレクションをランダムに選択して、配列をランダム化するか、あるいは単純化した規則を用いて、アミノ酸変化を作製する。例えば、すべての残基を好ましくは特定のアミノ酸、例えばアラニンに突然変異させてもよく、これはアミノ酸またはアラニンスキャニングと称される。こうした方法を、より高次のレベルの配列多様性をスクリーニングする選択法を使用する、より洗練された操作アプローチと組み合わせてもよい。

任意の種類のペプチドライブラリーを、PTM酵素を使用した代謝性プロセシングおよび成熟に供してもよい。それによって、ライブラリーは、ペプチドの三次元の拘束された構造を通じて改善される。これは、高アフィニティおよび/または高特異性結合剤の可能性を増加させる。

一次ライブラリーは、特に、足場として用いられる天然リボソームペプチドに由来してもよい。しかし、別の好ましい態様にしたがって、PTM酵素によって、任意の慣用的なペプチドライブラリーをプロセシングしてもよい。特に、in vivoまたはin vitroディスプレイ技術を用いて、任意のランダムペプチドライブラリーの二次代謝産物を調製してもよい。

本発明にしたがった、PTM酵素を通じたペプチドライブラリーの成熟は、特に、核酸のコード機能、ならびにペプチドの物理的、化学的および/または機能的特性を連結させる、多くのディスプレイ系、例えばウイルス、例えばバクテリオファージ、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスディスプレイ、酵母ディスプレイ、真菌ディスプレイ、胞子ディスプレイ、細菌ディスプレイまたはリボソームディスプレイを含む生物学的ディスプレイ系に適用可能であるが、また固定ペプチドディスプレイ、エマルジョン区画化およびディスプレイ、プラスミドディスプレイ、共有ディスプレイ、固相ディスプレイ、マイクロアレイディスプレイ等を含むin vitroディスプレイ系にも適用可能である。

通常、本発明記載のペプチドライブラリーは、少なくとも106ライブラリーメンバー、より好ましくは少なくとも107、より好ましくは少なくとも108、より好ましくは少なくとも109、より好ましくは少なくとも1010、より好ましくは少なくとも1011、最大1012、さらにより多数のものも可能である。

8量体ランダムペプチド配列を含有するライブラリーは、理論的には2.6x1010メンバーの多様性を有する。このライブラリーを構築するため、遺伝子多様性において、1.1x1012のメンバーを含む形質転換体が必要である。完全ライブラリーの構築において、実験的限界を回避するため、ランダム化のために制限されたアミノ酸セットを用いるか、または構造的足場内のランダム化を使用するか、いずれでもよい。ループ構造は、典型的には、タンパク質−タンパク質またはタンパク質−ペプチド相互作用の分子認識において重要な役割を果たし、したがって、本発明にしたがって調製されるペプチドライブラリーの好ましい足場候補である可能性もあり、好ましくは複素環のループ構造が用いられる。好ましいライブラリー設計は、酵素環状化の1またはそれより多いあらかじめ決定された橋脚からはずれて、ランダム化を提供する。例えば、好ましく用いられるミクロビリジンK内で、ランダム化のための好ましい位置は、T4、K6、S9、D10、E12およびE13である1またはそれより多い橋脚位とは別である。他のアミノ酸が本質的と見なされる可能性もあり、そしてしたがって、適切なように、突然変異しないように選択される。

特定の態様にしたがって、二次ペプチド構造、例えばジスルフィド架橋を取り込むように化学的にプロセシングされた、拘束されたペプチドライブラリーを、本発明にしたがってPTM酵素によってプロセシングされる一次ペプチドライブラリーとして用いる。したがって、PTM酵素によるペプチドライブラリーの酵素的成熟をトポグラフィック特性およびペプチドライブラリーの多様性に加えることも可能である。

ペプチドのライブラリーまたはレパートリーは、典型的には、酵素活性に適した条件下で、1またはそれより多いPTM酵素と組み合わされる。PTM酵素の酵素活性に適した条件は、当該技術分野に周知であるか、または一般の当業者によって容易に決定可能である。望ましい場合、例えばある範囲のpH条件、酵素濃度、温度の下での酵素活性を評価することによって、そして/またはライブラリーまたはレパートリーおよび酵素が反応を許される時間の長さを変化させることによって、適切な条件を同定するかまたは最適化することも可能である。例えば、いくつかの態様において、ペプチドに対する、例えば突然変異体プランクトスリックス・アガーディー(Planktothrix agardhii)NIVA CYA 126/8(Philmusら Chembiochem(2008)3066−3072)の溶解物から得られる酵素の比(モル/モルに基づく)は、少なくとも1:100,000、好ましくは少なくとも1:10,000、より好ましくは少なくとも1:1,000、または少なくとも1:100、または少なくとも1:10、最大1:1(酵素:ペプチド、mol/mol)である。好ましい範囲は、約0.01%〜約5%(酵素対ペプチド、w/w)である。1つの態様において、酵素は、少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1または少なくとも0.5ng/mlの濃度で用いられる。混合物を酵素活性に適した温度、例えば20℃〜約40℃の範囲、または室温で、好ましくは30分間から24時間の期間、特に好ましくは1時間、インキュベーションしてもよい。

例えば、単一の酵素、異なる酵素の任意の所望の組み合わせ、あるいは酵素活性を含有する任意の生物学的調製物、生物学的抽出物、または生物学的ホモジネートを用いてもよい。用いる酵素の同一性が知られている必要はない。単独でまたは任意の望ましい組み合わせで使用可能な適切な酵素の例には、カルボキシレート−アミン・リガーゼ、シクラーゼ、デヒドロゲナーゼ、シクロデヒドラターゼ、ランチオニン結合形成酵素、デカルボキシラーゼ、エピメラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ、デヒドラターゼ、トランスフェラーゼ、エステラーゼ、オキシゲナーゼおよびイソメラーゼが含まれる。好ましいPTM酵素は、生物から、または精製された酵素調製物として入手可能である。好ましい態様において、細胞溶解物または細胞溶解物由来の酵素、例えばmvdE遺伝子の欠失により、ミクロビリジンを産生不能である突然変異体プランクトスリックス・アガーディーNIVA CYA 126/8 mvdE株(DSMZに2010年7月28日に寄託された株、プランクトスリックス・アガーディーCYA 126/8、DSM23872など)の溶解物を用い、またはPTM酵素を提供する任意の他の適切な株が使用可能である。

本発明にしたがって用いられるような好ましい例は、MvdB(寄託番号ACC54548.1)、MvdC(寄託番号ACC54549.1)およびMvdD(寄託番号ACC54550.1)またはMdnB(寄託番号CAQ16122.1)およびMdnC(寄託番号CAQ16123.1)のようなその相同体である。

酵素活性を含有する適切な生物学的抽出物、ホモジネートおよび調製物には、水性有機溶媒を含む抽出物、溶解物等が含まれる。 本発明の特定の例にしたがって、シアノバクテリア・エラスターゼ阻害剤ミクロビリジンの前駆体ペプチドをコードするmvdE遺伝子を、バクテリオファージM13遺伝子pIII内にクローニングした。次いで、この突然変異体ファージを宿主大腸菌において増殖させ、そしてM13突然変異体ゲノムを配列決定し、そして遺伝子pIIIに融合したmvdEの存在を検査した。続く免疫化学分析によって、突然変異体タンパク質pIIIは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動において異なる移動速度を示し、野生型pIIIに比較して物理的伸長があることが示された。どちらの実験も、ミクロビリジンの前駆体ペプチドMvdEがファージM13表面上にディスプレイされていることを検査した。ミクロビリジンは生物活性二次代謝産物であり、プランクトスリックス属種のような異なるシアノバクテリアによって産生される。これはN末端でアセチル化された三環ペプチド(14量体)であり、そしてアミノ酸配列アセテート−YGNTMKYPSDWEEY(配列番号1)(前駆体ペプチドMvdE寄託番号EU438895.1)を示す。

その生合成は、PTM酵素による翻訳後修飾を含めてリボソームに由来する。ミクロビリジン生合成に関連する遺伝子クラスターは、Philmusら(2008、上記参考文献)によって同定された。Philmusら(上記参考文献)によって提供される突然変異体プランクトスリックス・アガーディーCYA 126/8デルタmvdE株は、mvdE遺伝子の欠失によって、ミクロビリジンを産生不能である。細胞溶解物をミクロビリジン欠損株から産生し、そしてM13突然変異体ファージ粒子とインキュベーションした。溶解物処理突然変異体ファージ粒子の続く免疫化学分析によって、溶解物処理pIIIタンパク質に関して、異なる移動速度が示され、ディスプレイされたMvdE前駆体ペプチドが一部切除されていることが示された。これは、リーダーセグメントがコアペプチドから遊離する際の、リボソーム由来二次代謝産物の成熟工程と一致する。したがって、ファージのヌクレオカプシド上にディスプレイされるMvdE前駆体ペプチドの成功した成熟の証拠が得られた。ファージ表面上にディスプレイされたMvdE前駆体ペプチドからプロセシングされた、アセチル化三環ミクロビリジンの存在に関する物理的証拠は、質量分析の方法を適用することによって得られた。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて、溶解物で処理されそして一部切除されたpIII−MvdEタンパク質を分離し、そして同定した。対応するバンドをゲルから単離した後、タンパク質を抽出し、そしてキモトリプシンで消化して、質量分析によって分析可能なペプチド断片を得た。単離されたタンパク質から得られた質量の分析の後、質量を検出し、これは、アセチル化三環ミクロビリジンの質量と同一であった。これらの実験は、リボソーム的に得られた翻訳後修飾二次代謝産物をファージ表面上でプロセシングする可能性に関する特定の証拠を提供する。

代謝プロセシングに際して、適切なペプチド構造を持つライブラリーメンバーを分析してもよい。選択のさらなるラウンドのため、またはさらなるレパートリーを調製するため、例えばさらなる特異的ランダム化に向けたさらなる酵素的プロセシングのため、例えば特異性またはアフィニティ成熟目的を改善するため、核酸またはペプチドの十分な量を得るために、選択されるペプチドをコードする核酸コピー数を増幅するかまたは増加させることが好ましい可能性もある。例えば、ファージ増幅、細胞増殖またはPCR技術を使用してもよい。好ましい態様において、ディスプレイ系は、バクテリオファージディスプレイであり、そして増幅は、大腸菌における発現を通じる。

本発明にしたがって、所望の活性を有するペプチドが所望の活性を持たないペプチドとは区別され、そしてこれらよりも選択されることを可能にする、所望の結合または生物学的活性選択法を用いて、リガンド結合ペプチドをペプチドライブラリーから選択してもよい。一般的に、非常に過剰な非結合パッケージから関心対象の複製可能遺伝子パッケージを分離するには、1またはそれより多い選択ラウンドが必要である。ペプチド活性に関する適切なアッセイを用いて、さらなる性質決定のため、ライブラリーメンバーを選択してもよい。例えば、適切な結合アッセイ、例えばELISA、パニングを用いて、一般的なリガンド結合機能を評価してもよい。例えば、パニングによって、ターゲットリガンドに結合するペプチドを選択し、そして回収してもよい。当該技術分野に周知の技術によって、パニングを達成してもよい。

好ましくは、ファージディスプレイペプチドライブラリーのスクリーニングは、バイオパニングと称されるアフィニティ選択プロセスを通じて達成される。バイオパニングは、典型的には、ターゲットとペプチドライブラリーをインキュベーションし、未結合ファージを洗い流し、残った結合ファージを溶出し、そして続くスクリーニングラウンドのため、溶出したファージを増幅する工程を含む。バイオパニングの多数のラウンドの後、ターゲット結合ファージを濃縮することが可能であり、そして個々のファージを単離し、そして配列決定して、濃縮された結合モチーフをいずれも明らかにする。

ファージディスプレイ系を用いる場合、好ましくは、ファージELISAにおいて結合を試験する。任意の適切な方法にしたがって、ファージELISAを行ってもよい。1つの例において、選択の各ラウンドで産生されるファージ集団を、選択されたリガンドに対するELISAによって、結合に関してスクリーニングして、リガンド結合ペプチドをディスプレイするファージを同定してもよい。一般的に用いられる方法にしたがって、例えばCまたはN末端タグに対する試薬を用いたELISAによって、リガンドへの結合に関して、可溶性ペプチドを試験してもよい。また、PCR産物のゲル電気泳動によって、またはベクターDNAの配列決定によって、選択されたファージの多様性を評価してもよい。

また、ターゲット適用に応じて、触媒または酵素阻害活性に基づいて特異的ペプチドを選択してもよく、こうした活性は酵素活性アッセイを用いて測定可能である。適切なペプチドをスクリーニングするためのさらなる生物学的試験は、適切な細胞に基づくアッセイを使用した、所望の抗生物質、抗真菌、または他の生物活性、例えば阻害剤または補因子活性、例えば酵素阻害剤または増進剤活性に基づく。

適切なリガンドターゲットは、好ましくは、微生物、例えば細菌、真菌、寄生虫またはウイルスだけでなく、また、ヒトまたは動物細胞の構造またはエピトープより選択され、これにはタンパク質、特に酵素、酵素の補因子、受容体、増殖因子、DNA結合タンパク質、核酸、脂質および炭水化物が含まれる。

結合ペプチドまたは該ペプチドをコードするDNAを複製可能遺伝子パッケージより単離して、そして性質決定してもよい。適用型に応じて、次いで、リードペプチドを合成するかまたは標準的分子生物学的技術と組み合わせて、ペプチド融合物をコードする構築物を作製してもよい。ペプチドまたはペプチド融合構築物を調製する適切な方法は、例えば、組換え発現技術、例えば組換え細菌または酵母細胞による発現を使用する。

本発明にしたがって同定され、そして提供されるペプチドを、療法または診断試薬に発展させるためのリードとして利用してもよいし、あるいは特異的でそして差別的な薬剤送達のために、ユニークな分子実体をターゲットとするように操作してもよい。特に好ましい適用は、生物学的ターゲットのミモトープの分野にあり、例えば阻害剤、例えば抗細菌、抗真菌、抗寄生虫、抗ウイルス、酵素阻害剤および抗生物質として使用するため、またはワクチンを開発するためのものである。さらなる適用は、リガンド結合部分を使用する、産業、分析または環境適用のために実行可能である。

本発明にしたがって得られるペプチドを含む薬学的組成物は、典型的には、当業者に周知の少なくとも1つの薬学的に許容されうる賦形剤をさらに含む。薬学的組成物は、少なくとも1つの他の生物学的活性剤をさらに含んでもよい。適切な剤はまた、当業者に周知である。本発明にしたがって得られるような好ましいペプチド組成物は、安定化分子、例えばアルブミンまたはポリエチレングリコール、あるいは塩を含んでもよい。好ましくは、用いられる添加物は、ペプチドの所望の生物学的活性を保持し、そしていかなる望ましくない毒性学的影響も与えないものである。

本明細書記載の実施例は、本発明を例示し、そして限定となることは意図されない。本発明の異なる態様が、本発明にしたがって記載されてきている。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載し、そして例示する技術に対して、多くの修飾および変動を行ってもよい。したがって、実施例は例示のみであり、そして本発明の範囲を限定しないことを理解すべきである。

実施例1:ミクロビリジンのファージディスプレイ ファージM13のゲノム内へのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子のクローニング ファージM13のゲノムDNAをNew England Biolabs, GmbHより購入した。1μgのDNAを制限エンドヌクレアーゼHindIII(Fermentas GmbH)と37℃で1時間インキュベーションした。製造者の推奨にしたがって、消化したDNAをKlenow断片(Fermentas GmbH)と37℃で20分間インキュベーションした。インキュベーション後、Qiagen GmbHのPCR精製キットを用いることによって、試料を精製した。NanoDrop Technologies, Inc.のND−1000分光光度計を用いて、精製したDNAを定量化した。

製造者の推奨にしたがって、MWG Eurofins GmbHより購入した特異的オリゴヌクレオチドCAT+およびCAT−、ならびにDNAポリメラーゼ(Finnzymes Oy)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、CAT遺伝子の増幅用のテンプレートDNAとして、プラスミドDNA pACYC184(New England Biolabs GmbH)を用いた。PCR終結後、エチジウムブロミド(Sigma−Aldrich GmbH)で染色したアガロースゲル(0.8%)上に試料を装填し、そして分離した。終結後、アンプリコン・バンドをUV光で視覚化し、ゲル抽出キット(Qiagen GmbH)で、ゲルから単離し、そして精製した。NanoDrop Technologies, Inc.のND−1000分光光度計を用いて、精製DNAを定量化した。

T4 DNAリガーゼ(Fermentas GmbH)を用いて、等モル量の増幅CAT DNAおよびファージM13 DNAを連結した。デバイス上にあらかじめインストールされた大腸菌用の標準的エレクトロポレーション・プログラムでGenePulser(Biorad GmbH)を用いた大腸菌K12株2738(New England Biolabs)のエレクトロポレーションのために、試料アリコットを用いた。12.5μg/mlのクロラムフェニコール(Sigma−Aldrich GmbH)を補充したLB寒天プレート上に全試料をプレーティングし、そして37℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、1つの単一コロニーを用いて、12.5μg/mlのクロラムフェニコールを補充した50mlの液体LBに接種し、そして勢いよく振盪しながら、37℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、Sorvall RC5B遠心分離装置、Dupont, Inc.中で懸濁物を遠心分離した。GeneJetプラスミド・ミニプレップキット(Fermentas GmbH)を用いて、ペレットからDNAを単離した。特異的オリゴヌクレオチドM13Cm+およびMWG Eurofins GmbHによって適用されるビッグ・ダイ・ターミネーター技術を用いたDNA配列決定によって、ファージM13ゲノム内へのCAT遺伝子の組込み成功を確認した。

以降、ファージをM13KECmと称した。制限エンドヌクレアーゼEco52IおよびAcc65I(どちらもFermentas GmbH)によって、DNAを二重消化した。終結後、PCR精製キット(Qiagen GmbH)を用いて試料を精製し、そして分光光度測定によってDNAを定量化した。

製造者の推奨にしたがったPCRによって、DNAポリメラーゼ(Finnzymes Oy)およびシアノバクテリウム、プランクトスリックス・アガーディーCYA 126/8(プランクトスリックス・アガーディーNIVA CYA 126/8、DSMZ寄託日2010年7月28日、DSM23872)由来のテンプレートDNAとともに、mvdE遺伝子の増幅のため、オリゴヌクレオチドmvdE+およびmvdE−を用いた。オリゴヌクレオチドmvdE+は、Acc65Iのインフレーム制限認識配列を生じる6bp伸長を5’端に所持し、そしてオリゴヌクレオチドmvdE−は、Eco52Iのインフレーム制限認識配列を生じる6bp伸長を5’端に所持した。したがって、オリゴヌクレオチドmvdE+およびmvdE−を伴うPCRから生じたアンプリコンは、Eco52IおよびAcc65Iの両方の導入制限認識配列を所持した。PCR終結後、エチジウムブロミドで染色したアガロースゲル(3%)上に試料を装填し、そして分離した。終結後、アンプリコン・バンドをUV光で視覚化し、ゲル抽出キット(Qiagen GmbH)で、ゲルから単離し、そして精製した。NanoDrop Technologies, Inc.のND−1000分光光度計を用いて、精製DNAを定量化した。1μgのPCR産物を、制限エンドヌクレアーゼAcc65IおよびEco52I(Fermentas GmbH)での二重消化に用いた。インキュベーション後、PCR精製キット(Qiagen GmbH)を用いて、試料を精製した。ND−1000分光光度計(NanoDrop Technologies, Inc.)を用いて、精製したDNAを定量化した。

T4 DNAリガーゼ(Fermentas GmbH)を用いて、等モル量の二重消化mvdE DNAおよびファージM13KECm DNAを連結した。デバイス上にあらかじめインストールされた大腸菌用の標準的エレクトロポレーション・プログラムでBiorad GmbHのGenePulserを用いた大腸菌K12株2738(New England Biolabs GmbH)のエレクトロポレーションのために、試料アリコットを用いた。12.5μg/mlのクロラムフェニコール(Sigma−Aldrich GmbH)を補充したLB寒天プレート上に全試料をプレーティングし、そして37℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、1つの単一コロニーを用いて、12.5μg/mlのクロラムフェニコールを補充した50mlの液体LBに接種し、そして勢いよく振盪しながら、37℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、Sorvall RC5B遠心分離装置、Dupont, Inc.中、10,000rpm、4℃で10分間、懸濁物を遠心分離した。GeneJetプラスミド・ミニプレップキット、Fermentas GmbHを用いて、ペレットからDNAを単離した。

特異的オリゴヌクレオチドM13KE+およびMWG Eurofins GmbHによって適用されるビッグ・ダイ・ターミネーター技術を用いたDNA配列決定によって、ファージM13KECmのpIII遺伝子内へのmvdE遺伝子のインフレーム組込み成功を確認した。

配列を図1に提供する:mvdEに融合したpIII遺伝子の配列(図1a);ファージタンパク質pIIIの翻訳されたアミノ酸配列(図1b):太字はMvdE前駆体ペプチドを指し、下線文字はコアペプチドを指す。

ファージM13KECmMvdE大量増幅 以降、ファージをM13KECmMvdEと称した。デバイス上にあらかじめインストールされた大腸菌用の標準的エレクトロポレーション・プログラムでGenePulser(Biorad GmbH)を用いた大腸菌K12株2738(New England Biolabs GmbH)のエレクトロポレーションのために、100ng DNAを用いた。12.5μg/mlのクロラムフェニコールを補充したLB寒天プレート上に全試料をプレーティングし、そして37℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、1つの単一コロニーを用いて、12.5μg/mlのクロラムフェニコールを補充した3mlの液体LBに接種し、そして勢いよく振盪しながら、37℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、300μlの懸濁物を用いて、12.5μg/mlのクロラムフェニコールを補充した300mlの液体LBに接種し、そして勢いよく振盪しながら、37℃で4.5時間インキュベーションした。インキュベーション後、Sorvall RC5B遠心分離装置、Dupont, Inc.中、4℃で10分間、懸濁物を遠心分離し、そして上清を新鮮なバケットに移し、そして同じ条件下で再遠心分離した。次いで、上清(280ml)を新鮮なバケットに移し、そして45mlのPEG−NaCl緩衝液(20%(w/v)ポリエチレングリコール−8000、2.5M NaCl(Sigma−Aldrich GmbH))を添加し、勢いよく混合して、そして4℃で一晩インキュベーションした。Sorvall RC5B遠心分離装置(Dupont, Inc.)中、10,000rpm、4℃で15分間、試料を遠心分離した。遠心分離後、上清を完全に取り除き、そして白色ペレットを2mlのTBS緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、Sigma−Aldrich GmbH)中に再懸濁し、そして4℃で保存した。

同様に、ファージM13KECmを大量に産生し、そして4℃で保存した。 ファージ粒子のポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE) MiniProtean Cell(Biorad GmbH)を用いて、6%のゲル強度で、すべてのPAGE分析を行った。全部で10μlのファージ試料M13KECm(陰性対照)およびM13KECmMvdEをゲル上に装填し、そして製造者のガイドラインにしたがって分離した。終結後、製造者によって推奨される半乾燥ブロッティング法によって、ゲルをPVDF膜(Biorad GmbH)上にブロッティングした。New England Biolabs GmbHから得たファージM13のpIIIタンパク質に対する一次抗体を用いた免疫化学分析に、膜を用いた。膜の現像後、ファージM13KECmのpIIIバンドおよびファージM13KECmMvdEのpIIIの間の明らかなサイズ相違が見られ、M13KECmMvdEファージにおけるpIIIのサイズ伸長が示された。

ファージM13KECmMvdEの溶解物処理 シアノバクテリウム、プランクトスリックス・アガーディーCYA 126/8 DelMvdE(Philmusら(2008) Chembiochem. 9(18):3066−73)の突然変異体株150mlを遠心分離し、そしてTE緩衝液(10mM EDTA pH8 1mM Tris−HCl pH8 Sigma−Aldrich GmbH)で3回洗浄した。最後の遠心分離後、細胞ペレットを1mlの20mM Tris−HCl pH8.3に再懸濁し、そして最終濃度10mMまで、ベータ−メルカプトエタノールを新鮮に添加する。これらはどちらもSigma−Aldrich GmbHから得られた。すべての続く工程を氷上で行った。懸濁物を細胞破壊容器(Parr Instrument GmbH)に移し、そして110バールの圧を適用した後、懸濁物をバルブに通過させた。これらのサイクルを3回実行し、そして完了後、Sorvall RC5B遠心分離装置、Dupont, Inc.中、10,000rpm、4℃で10分間、懸濁物を遠心分離した。上清を新鮮な試験管に移し、そしてさらなる使用まで氷上に維持した。

100μlのファージ懸濁物M13KECmMvdEを500μlの上記溶解物と混合し、そして22℃で1時間インキュベーションした。終結後、懸濁物を1/6体積のPEG/NaCl緩衝液で処理し、そして4℃で一晩インキュベーションした。Sorvall RC5B遠心分離装置、Dupont, Inc.中、10,000rpm、4℃で15分間、試料を遠心分離した。遠心分離後、上清を完全に取り除き、そして緑がかったペレットを、1mlのTBS緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl)中に再懸濁し、そして4℃で保存した。上記方法にしたがって、第二の洗浄工程を適用した。最後に、ペレットを40μl TBS中に再懸濁した。総量30μlの溶解物処理を伴わないファージ試料M13KECmMvdE(陰性対照)および溶解物処理後のM13KECmMvdEをゲル上に装填し、そして製造者のガイドラインにしたがって分離した。終結後、製造者によって推奨される半乾燥ブロッティング技術によって、ゲルをPVDF膜(Biorad GmbH)にブロッティングした。New England Biolabs GmbHから得たファージM13のpIIIタンパク質に対する一次抗体を用いた免疫化学分析に、膜を用いた。膜の現像後、溶解物処理を伴わないファージM13KECmMvdEのpIIIバンドおよび溶解物処理を伴うファージM13KECmMvdEのpIIIの間の明らかなサイズ相違が見られ、M13KECmMvdEファージにおけるpIIIのサイズ一部切除が示された。このサイズ相違は、ファージヌクレオカプシド上にディスプレイされた前駆体ペプチドの翻訳後修飾が成功した後、該ペプチドは35アミノ酸短くなるはずであると解釈された。

上述のようなSDS PAGEを反復し、そしてゲルをクーマシー染色(Biorad GmbH)に用いた。溶解物で処理したファージM13KECmMvdEのpIIIのタンパク質バンドを単離して、そして質量分析に用いた。Proteom Factory GmbHによって質量分析を行った。100mM Tris−HCl(Sigma−Aldrich)を20分間、その後、100mM Tris−HCl、10mM CaCl2(Sigma Aldrich)、80%アセトニトリル(VWR International)(v/v)、pH8.0を20分間、添加し、そして除去することによって、タンパク質バンドを洗浄した。洗浄工程を2回反復した後、上清を取り除き、そして消化するため、200ngキモトリプシンを20μlの100mM Tris−HCl、10mM CaCl2、5%ACN(v/v)、pH8.0中でタンパク質バンドに25℃で一晩添加した。溶液を1Volの2%ギ酸で酸性化し、そして30分間インキュベーションした。Kosolら(2009 Eur. J. Phycol. 44:49−62)に記載される勾配を用いたHPLC(Hewlett&Packard Inc.)によって、株、プランクトスリックス・アガーディーCYA 126/8から、ミクロビリジンK純粋物質(Philmusら 2008、上記参考文献)を単離した。

20μlの100mM Tris−HCl、10mM CaCl2、5%アセトニトリル(v/v)、pH8.0中、およそ10ngの純粋ペプチドを200ngのキモトリプシンと25℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、溶液を1Volの2%ギ酸で酸性化し、そして30分間インキュベーションした。20μlの両試料を、溶媒A(0.1%ギ酸/5%アセトニトリル/94.9%ddH2O)および溶媒B(0.1%ギ酸/99.9%アセトニトリル)で、5%Bから始まり40%Bまで、50分間のnanoLC勾配(Agilent 1100 nanoLC系)を用いて、高解像度nanoLC−ESI−MS(Thermo FT−ICR MS)分析に適用した。質量精度は、MSに関しては5ppmでよりよく、MSMSに関しては0.5Daでよりよかった。分析されるタンパク質のアミノ酸配列を含むカスタム・データベースを用いて、Mascotサーバーによって、MSデータを分析した。

理論的質量計算:ミクロビリジンKの単一同位体質量は、1771.70038Da(Philmusら 2008)であり、これは、二重荷電質量m/zに関しては、885.85019Daを生じる。

結果を図2(参照)および3(M13KECmMvdE)に提供する。 解釈: アセチル化三環ペプチド、ミクロビリジンKを、HPLCによって単離し、そしてFTMSでの測定の前に、およそ10ngの純粋ペプチドをキモトリプシンで処理した。885.8532Daの質量が検出可能であり、これは、ミクロビリジンKの885.85019Daの理論的に計算された質量によく適合する。したがって、純粋ミクロビリジンのキモトリプシン処理は、ペプチドの切断を生じず、これはミクロビリジンKの環状の性質に一致する。

第二のFTMS測定で用いる試料は、ファージM13KECmMvdEの単離pIIIタンパク質に相当する。ファージM13KECmMvdEは、MvdEの前駆体タンパク質にN末端融合しているpIIIタンパク質をディスプレイし、そしてこのファージをプランクトスリックス・アガーディーNIVA CYA 126/8 DelMvdEの細胞溶解物で処理した。こうして処理されたファージM13KECmMvdEをSDS PAGE分離に用い、そして修飾pIII−MvdEタンパク質に相当するタンパク質バンドを単離し、そしてゲルから抽出した。溶解物由来のPTM酵素で、ディスプレイされたpIII−MvdEのプロセシングに成功した後、生成された三環ミクロビリジンKは、pIIIタンパク質にN末端で付着していると推定される。ミクロビリジンKのC末端アミノ酸はチロシンである。キモトリプシンは、アミド結合のカルボキシル側がチロシンであるアミド結合を優先的に切断するタンパク質分解酵素であるため、これを用いて、ミクロビリジンKの後を正確に切断し、そしてファージタンパク質pIIIから遊離させる。実際、図3に示す質量スペクトルは、図2に示すような参照質量に対して5ppmの質量精度内で同一の質量を示す。これは、プランクトスリックス・アガーディーNIVA CYA 126/8 DelMvdEの溶解物中に含有されるPTM酵素を用いると、ディスプレイされた前駆体ペプチドMvdEが、ファージM13KECmMvdE上に付着し、そしてディスプレイされたままでPTM酵素によって完全に翻訳後修飾されることの証拠である。

本明細書記載のデータは、ウイルスのヌクレオカプシドタンパク質に物理的に連結されたままで、翻訳後修飾ペプチド(ミクロビリジン)のメンバーを生成可能であることを明らかにする。

実施例2:ペプチドライブラリーの生成 ミクロビリジンKは、アミノ酸配列Y1G2N3T4M5K6Y7P8S9D10W11E12E13Y14(配列番号1を参照されたい)を含む三環ペプチドであり、ここで、分子内架橋に関与するアミノ酸残基は、T4、K6、S9、D10、E12およびE13である。したがって、1、2、3、5、7、8、11、14位は、可変と見なされ、そして好ましくは架橋の数および架橋パターンに干渉しないランダム化のために用いられる。1、2、3、5、7、8、11、14位のアミノ酸残基のランダム化は、固相合成(MWG Eurofins GmbH)から得られるオリゴヌクレオチド混合物の同化作用によって行われる。

オリゴヌクレオチド配列は、以下の通りである: (NNK)n.ACT.NNK.AAG.NNK.NNK.TCC.GAT.NNK.GAA.GAA.(NNK)n(配列番号4)。典型的には、縮重した(reduced)遺伝暗号の使用を通じて、ライブラリーオリゴヌクレオチドDNAをランダム化することによって、ファージディスプレイペプチドライブラリー内に多様性を導入する。例えば、縮重コドンNNK(ここで、Nは、アデニン、チミン、グアニン、およびシトシンヌクレオチドの各25%の混合物を示し;そしてKはチミンおよびグアニンヌクレオチドの各50%の混合物を示す)を、ライブラリーDNA構築に用いる。T4をコードするトリプレットもまた、ACC、ACG、ACAであってもよい。トリプレットAAAのさらなる可能性を伴って、同じ戦略をK6に、そして他の9、10、12および13位に使用してもよい。また、5’端および3’端の異なるトリプレット数の伸長は、(NNK)nトリプレット(N=GATCおよびK=GT、nは0〜100の整数である)の付加によって産生される。pIIIをコードする遺伝子内へのオリゴヌクレオチドの組込みは、確立されたプロトコル(例えば、SambrockおよびRussel 2001, Molecular cloning, 第3版 CSHL Press)にしたがって行われる。ファージ上にディスプレイされた前駆体MvdEペプチドの翻訳後修飾はまた、精製酵素、とりわけ、MvdB(寄託番号ACC54548.1)、MvdC(寄託番号ACC54549.1)およびMvdD(寄託番号ACC54550.1)、またはMdnB(寄託番号CAQ16122.1)およびMdnC(寄託番号CAQ16123.1)のようなその相同体を用いて行われる。

Omanおよびvan der Donk(2010)(Nat Chem Biol. 2010 Jan;6(1):9−18)にも記載される翻訳後修飾ペプチドは、2つの原理的に異なるクラスに細分されうる:1つのクラスは、とりわけミクロビリジン、ラクチシン、チオストレプトン、コノペプチドのようなメンバーによって構成され、これらは、前駆体ペプチドのC末端アミノ酸がまた、完全にプロセシングされたコアペプチドのC末端アミノ酸であるという共通の特徴を有する。とりわけパテルアミド(patellamide)、アマニチンのような第二のクラスのメンバーは、前駆体ペプチドからタンパク質分解的に切除される共通の特徴を示す。最初に言及したクラスに関して、その前駆体ペプチドを、ウイルスのヌクレオカプシドタンパク質と連結して、そしてこれらが産生生物由来の溶解物とともに、または専用の精製PTM酵素とともにディスプレイされ、そしてその生合成が、前駆体ペプチドのC末端アミノ酸からコアペプチドが分離される工程を伴わないため、ウイルスに連結されたまま維持されてディスプレイされるようにプロセシングすることが可能である。したがって、遺伝情報およびウイルス表面上にディスプレイされる構造の間の物理的連結は、その生合成のすべての工程の間、クラス1 PTMペプチドのすべての代表に関して維持される。

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