核酸の研究方法

申请号 JP2018506840 申请日 2016-08-11 公开(公告)号 JP2018532373A 公开(公告)日 2018-11-08
申请人 ツェーエーエムエム・フォルシュングスツェントルム・フュア・モレクラーレ・メディツィン・ゲーエムベーハー; 发明人 クリストフ、ボック; クリスティアン、シュミードル;
摘要 本発明は、シーケンスライブラリーを調製し、核酸を含む分子間の相互作用を研究するための新規方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;および、シーケンスライブラリーの入手を含む、シーケンスライブラリーの調製方法に関する。さらには、本発明は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;核酸の増幅;増幅された核酸の配列決定;および、分子間相互作用の特定を含む、核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法に関する。
权利要求

シーケンスライブラリーの調製方法であって、 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加; (b) 前記剤が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の単離クロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離;および (e) シーケンスライブラリーの入手、 を含む方法。シーケンスライブラリーの調製方法であって、 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合抗体の添加; (b) 前記抗体が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の結合および単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離;並びに (e) シーケンスライブラリーの入手、 を含む方法。核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法であって、 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加; (b) 前記剤が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の単離クロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離; (e) 核酸の増幅; (f) 増幅された核酸の配列決定;および (g) 分子間相互作用の特定、 を含む方法。核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法であって、 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合抗体の添加; (b) 前記抗体が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の結合および単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離; (e) 核酸の増幅; (f) 増幅された核酸の配列決定;並びに (g) 分子間相互作用の特定、 を含む方法。核酸を含む試料が、 (i) 細胞の培養および回収; (ii) 細胞の固定; (iii) 細胞の溶解およびそれによる核酸を含む第一試料の入手;並びに (iv) 第一試料の超音波処理およびそれによる、第1項または第2項に記載の方法で使用されるべき、核酸を含む第二試料の入手、 によって調製された、請求項1〜4に記載の方法。細胞固定中に導入された架橋結合を外す工程をさらに含む、請求項1〜5に記載の方法。核酸が、DNAである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。細胞が、核酸−タンパク質複合体を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。細胞が、ヒト細胞、動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、古細菌細胞、植物細胞またはウイルスである、請求項8に記載の方法。ヒト細胞または動物細胞が、疾患細胞もしくは非疾患細胞、または疾患組織由来細胞もしくは非疾患組織由来細胞である、請求項9に記載の方法。ヒト細胞または動物細胞が、がん細胞、免疫細胞、血液細胞または幹細胞である、請求項9または10に記載の方法。がんが、固形がんまたは血液がんである、請求項11に記載の方法。血液がんが、白血病である、請求項12に記載の方法。固形がんが、腫瘍である、請求項12に記載の方法。動物が、希少種に属する、絶滅危惧種に属する、および/またはモデル生物である、請求項9、10または11に記載の方法。細胞が、胚細胞である、請求項9、10または11に記載の方法。工程(ii)が、化学物質の添加および/または物理的手段を含む、請求項5に記載の方法。化学物質が、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドである、請求項17に記載の方法。物理的手段が、紫外光またはレーザーを含む、請求項17に記載の方法。工程(iv)が、核酸断片の大部分が20〜5000塩基対長、好ましくは200〜300塩基対長になるまでの超音波処理を含む、請求項5に記載の方法。クロマチン結合剤が、抗体または化学物質である、請求項1または2に記載の方法。抗体が、ヒストン、転写因子、またはヒストンおよび/もしくは転写因子に結合しているタンパク質に特異的に結合する、請求項21に記載の方法。ヒストンおよび/または転写因子に結合しているタンパク質が、核酸リモデリングタンパク質またはクロマチン修飾酵素である、請求項22に記載の方法。ヒストンが、H3.3、H2A.Z、CENP−A、H3.2、H3.3A、H3.3B、H4またはH3.1である、請求項22または23に記載の方法。ヒストンが、修飾ヒストンであり、修飾がメチル化、アセチル化、プロピオニル化、ブチリル化、クロトニル化、2−ヒドロキシイソブチリル化、マロニル化、サクシニル化および/またはリボシル化である、請求項22、23または24に記載の方法。修飾ヒストンが、H3K4me1/2/3、H2BK5me1、H3K27me1/2/3、H3K9me1/2/3、H4K20me1、H3K79me1、H3K36me3、H2AK5ac、H2AK9ac、H2BK5ac、H2BK12ac、H2BK20ac、H2BK120ac、H3K4ac、H3K9ac、H3K14ac、H3K18ac、H3K23ac、H3K27ac、H3K36ac、H4K5ac、H4K8ac、H4K12ac、H4K16ac、H4K91ac、H2AubまたはH2Bubである、請求項25に記載の方法。化学物質が、薬剤またはツール化合物(tool compound)である、請求項21に記載の方法。化学物質が、ビオチン化されている、請求項21または27に記載の方法。トランスポザーゼが、ランダムDNA配列タグまたは所定DNA配列タグを含む、請求項1〜4に記載の方法。トランスポザーゼが、Tn5トランスポザーゼである、請求項29に記載の方法。

说明书全文

本発明は、シーケンスライブラリーを調製し、核酸を含む分子間の相互作用を研究するための新規方法を提供する。さらに詳細には、本発明は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;および、シーケンスライブラリーの入手を含む、シーケンスライブラリーの調製方法に関する。さらに、本発明は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;核酸の増幅;増幅された核酸の配列決定;および、分子間相互作用の特定を含む、核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法に関する。

核酸と他の化学物質および/または生体分子との間の相互作用に関する知識は、研究および医療において関心が高い。タンパク質−核酸相互作用のよく知られた研究法はクロマチン免疫沈降(ChIP)であり、所望により超並列配列決定(massive parallel sequencing)(ChIP−seq)を後に伴う。核酸および/またはタンパク質による、例えばクロマチン内の、小分子相互作用を研究するための方法はChem−Seqであり、以下でより詳細に説明される。

ChIP法は、ゲノム全体でのDNA−タンパク質相互作用の研究を可能にする。ChIP法は、クロマチンの構成、ヒストン修飾、並びに、転写因子の結合パターン(X−ChIPを使用)およびそれら結合パターンの健康および疾患における遺伝子制御に与える影響の理解に大いに貢献した(例えば、Nature (2012) 489, pp. 57-74 or Ernst et al. (2011) Nature 473, pp. 43-49を参照)。しかしながら、ChIPは他と比較して依然面倒なプロトコルであり、低インプット試料に適用される場合、特に手間がかかる(例えば、Greenleaf, W.J. (2014) Methodsを参照)。次世代シーケンス用にChIPから核酸を調製するために(すなわち、ライブラリーを調製するために)、従来のアプローチはいくつかの骨の折れる段階、(i)精製したDNA配列の末端修復による、リン酸化した3’末端を有する平滑末端二本鎖DNA断片の生成;(ii)A−オーバーハングの付加;(iii)相補的なT−オーバーハングを有するアダプターの、A−オーバーハングを有する二本鎖の末端修復されたChIP−DNA断片へのライゲーション、を含んでいる。アダプターはDNA断片の増幅を可能にし、その増幅により、品質管理および後の配列決定に充分な量の断片が確保され、また、その増幅により、クラスター形成のためのフローセル上末端(flow-cell end)および多サンプル配列決定実験のためのバーコード配列が導入されることによって、配列決定手順のための断片も調製される。従来の方法にはいくつかの制限がある。(i)ライブラリーを調製するのに5〜10ngのインプット物質が通常必要となり、これは少量の細胞に対するChIPからは回収できない。このため、ChIP−seq実験に推奨される細胞量は106細胞の範囲内である。(ii)ライブラリーの手順がいくつかの酵素反応およびDNA精製に依存しており、これが、ライブラリー調製を比較的骨の折れる手順にしている。また、不完全な酵素反応およびDNA精製は回収されるライブラリー断片の量を少なくし、これが、要求されるインプット量の多さの原因となっている。(iii)アダプターはセルフライゲーションを起こす可能性があり、増幅および配列決定から排除する必要がある。そのため、過剰なアダプターおよびアダプター二量体に対する選別を行うために、サイズ選別が必要となる。アダプターライゲーションの代わりとして、ChIP−seqライブラリーをDNA断片の逆転写により作製する他のプロトコルが開発された(参照:ChIP Seq Kit、クロンテック社、マウンテンヴュー、カリフォルニア州)。さらに、少量の出発物質用のChIP−seqプロトコルとして、iChIP(Lara-Astiaso et al. (2014) Science 345, pp. 943-9)、linDA(Shankaranarayanan et al. (2011) Nature Methods 8, pp. 565-7)およびキャリアー補助ChIP(carrier-assisted ChIP)(Zwart et al. (2013) BMC Genomics 14, 232 or Jakobsen et al. (2015) BMC Genomics 16, 46)等が開発されたが、これらのプロトコルは追加の試薬、実操作時間(hands-on-time)、または多くの試料プールを必要とし、これが、これらのプロトコルを高価な、非常に時間のかかる、および/または融通の利かないものにしている(従来技術の方法および既知の欠点の概要については図1を参照)。

クロマチン内の小分子とそれらのタンパク質/核酸標的との間の相互作用を研究する別の方法としてChem−seqがある。この方法は、超並列DNA配列決定法と併せて化学親和による捕捉を利用することで、小分子がそれらの標的タンパク質またはDNAと相互作用するゲノム部位を特定する。この方法は、Anders et al., Nature Biotechnology (2013), 32(1), pp. 92-6に最初に報告された。

最近、さらなる核酸ライブラリー調製方法が報告された。その方法は、DNAの断片化およびアダプタータグ付け(「タグメンテーション」)を同時に起こすための、高活性Tn5トランスポザーゼの開発を利用している(Adey et al. (2010) Genome Biol 11, R119を参照)。この方法では、配列決定法に適合するアダプターを予め積載されたトランスポザーゼが使用される。トランスポザーゼは、DNAを断片化しつつ、積載されたアダプターをDNAに組み込む。ゲノムDNAのライブラリーの調製(Adey et al. (2010) Genome Biol 11, R119)、DNAメチル化解析のための亜硫酸素塩で変換されたDNAの調製(Wang, Q. et al. (2013) Nature Protocols 8, 2022-2032)、RNA−seq cDNAまたは他の核酸から配列決定準備済みライブラリーへの調製(Picelli S. et al. (2014) Genome Res vol. 24 (12) pp. 2033-2040))に必要とされるトランスポザーゼはごく少量である。上記のPirelliの発表では、ライブラリーは単離されたcDNA試料から調製されている。しかし、数あるパラメーターの中でも特に、タグメンテーション反応におけるトランスポザーゼの量が核酸断片の最終的なサイズ分布を決定していることから、精製された核酸のタグメンテーション反応はトランスポザーゼ:核酸比の変動に極めて敏感である。すなわち、得られる方法は、トランスポザーゼおよび核酸の適切な比を求めて、次世代シーケンスまたは他の下流の適用に望ましい核酸サイズ分布を達成するために、労力とコストのかかる実験法を必要とする。核酸断片の分布および存在量の決定が可能ですらない場合もあり、その場合、とりわけ、Furey et al. (2012) Nature Reviews Genetics 13 (12), pp. 840-852で総説されている従来技術の適用に従って、シーケンスライブラリーを調製するために、トランスポザーゼ:核酸の正しい比を見つけることができなくなる。さらに、細胞核へのトランスポザーゼの添加によって、オープンクロマチンの領域が回収され、ゲノムの調節領域におけるヌクレオソームポジショニングおよび転写因子フットプリントの情報が送達される(Buenrostro JD. et al. (2013) Nat Meth, vol. 10 (12) pp. 1213-1218)。

しかし、トランスポザーゼには、ChIPまたはChem−Seq後の核酸からのシーケンスライブラリーの調製における使用に適しているとする、体系的な記述が無い。むしろ、このアプローチの潜在的な不利点が議論されている。これらの不利点は、国際公開第2013/078470号または同第2014/205296号に記載されているように、ChIP後に精製DNAに対しタグメンテーションを行うことに起因している。すなわち、ChIPおよびタグメンテーションの組合せの主な欠点は以下である。(1)小断片(200〜700bp)に超音波処理済みのChIP後DNAが、そっくりそのまま、さらに断片化されること。それ故、タグメンテーションによって、最小サイズが約40bpに至る非常に小さなライブラリー断片が生じる可能性があり(Adey et al. (2010) Genome Biol 11, R119)、イルミナ社の配列決定法には150bp〜200bpの断片が最短の長さとして推奨されているため、その非常に小さなライブラリー断片は配列決定することが困難である可能性がある;(2)タグメンテーションによるさらなる断片化は元の沈降断片1つ当たりに多重のシーケンスリードを生成する可能性があり、これにより下流の解析が妨害されることが起こり得ること。一例として、600bpの免疫沈降DNA断片は、300bp断片と比較して2倍量のライブラリー断片をもたらし、これにより、600bp領域内のリードの相対量が人為的に増加され得る。これは、ChIP−seqデータを解析する際の正確なピーク抽出(peak calling)にとって問題となり得る;(3)タグメンテーションによるシーケンスライブラリーの作製に精製されたChIP DNAを使用するアプローチが、タグメンテーション反応の組み立てに正確なサイズ決定およびDNA定量化を必要とすることから、不便であること。超音波処理は、試料およびDNA量によって異なり、通常はIPに使用される抗体に応じて桁が異なり得るため、タグメンテーションに先立ち、全てのChIP試料についてこれらのパラメーターを求める必要があるだろう;(4)ChIP DNAの量が、ロバストなタグメンテーション反応の組み立てにおいて共に重大な意味を持つパラメーターである、ロバストな定量化およびサイズ決定には少な過ぎる可能性があるという理由からも、タグメンテーションによるシーケンスライブラリーの作製に精製されたChIP DNAを使用するアプローチが可能でない場合が多いこと;並びに/または、(5)精製されたChIP DNAのタグメンテーションは、免疫沈降された標的領域における局所的クロマチン構造の潜在的情報を保存しないこと。国際公開第2013/078470号に記載される、TAM−ChIPと称される別の方法は、ChIP用の抗体に結合したTn5トランスポザーゼを利用する。すなわち、TAM−ChIPの限定要因は、国際公開第2014/190214号にも記載されているように、適用に先立ち生成する必要がある抗体−オリゴヌクレオチド複合体の使用の制限である。これにより、クロマチン免疫沈降によるタンパク質−DNA相互作用の研究に主に使用されている、市販抗体の臨時的な使用が妨げられている。上記の制限を克服するために、二次抗体−オリゴヌクレオチド複合体をTAM−ChIPで使用する場合も、2セットの抗体を使用する必要があり、これは、二次抗体の使用がChIP等の適用において通常は利用されないという理由から、アッセイの複雑さを増大し、コストも同時に増加させる。すなわち、TAM−ChIPは、国際公開第2013/078470号に記載されるように、抗体−オリゴヌクレオチド−トランスポザーゼ複合体:インプットクロマチン比の広範な最適化を必要とする。抗体−オリゴヌクレオチド−トランスポザーゼ複合体がその認識部位にリクルートされる量は最終的なライブラリーのサイズを決定するため、並びに、認識部位の数は標的抗原に依存して数百から十万まで異なる可能性があるという理由から、それぞれの特異的抗体−トランスポザーゼ複合体ごとに、抗体−オリゴヌクレオチド−トランスポザーゼ複合体:インプットクロマチンの比を評価する必要がある。すなわち、トランスポザーゼ:インプットクロマチンの比に対して感受性が低い、よりロバストな方法が必要とされる。TAM−ChIPのさらなる不利点は、各標的抗原に1つのトランスポソームしかリクルートされ得ないという事実による、0.5%〜5%の範囲内という、タグメンテーション反応の効率である。すなわち、核酸からシーケンスライブラリー断片への変換の少なさ、および、インプット要求の増加の可能性、が認められている。それ故、大部分の核酸断片の隣にシーケンスアダプターを導入することを目的として、過剰なトランスポザーゼを使用して、標的部位のすぐ傍のいくつかの部位上の核酸をタグ付けすることができる方法が望ましい。最後に、TAM−ChIPは大量のインプットクロマチンを必要とする。具体的には、標準的ChIP−seqと同等のシークエンス結果をもたらす、好結果のシーケンスライブラリー調製は、10μgのインプットクロマチンを用いて初めて示され、これは約150万個の細胞に相当する。すなわち、存在量が少なく且つ希少な細胞型、例えば、初代患者腫瘍細胞または初代患者白血病細胞、生検から得られる初代患者細胞、造血細胞型の小集団、発生モデルまたは発生学研究から得られた存在量の少ない細胞集団は、研究することができない。それ故、低インプット量、すなわちインプットとしてより少ない細胞数、の使用により、分子間相互作用の研究をロバストに可能にする方法が望ましい。

上記を踏まえると、インプット量に依存せず、より高速、容易、且つ/または安価な、改善された、シーケンスライブラリー調製方法および/または核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法が求められている。

すなわち、本発明は以下の項目に関する。

1. シーケンスライブラリーの調製方法であって、 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加; (b) 前記剤が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の単離クロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離;および (e) シーケンスライブラリーの入手、 を含む方法。

2. シーケンスライブラリーの調製方法であって、 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合抗体の添加; (b) 前記抗体が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の結合および単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離;並びに (e) シーケンスライブラリーの入手、 を含む方法。

3. 核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法であって、 を含む方法。 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加; (b) 前記剤が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の単離クロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離; (e) 核酸の増幅; (f) 増幅された核酸の配列決定;および (g) 分子間相互作用の特定、

4. 核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法であって、 を含む方法。 (a) 核酸を含む試料へのクロマチン結合抗体の添加; (b) 前記抗体が結合したクロマチンの単離; (c) 工程(b)の結合および単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加; (d) クロマチンからの核酸の単離; (e) 核酸の増幅; (f) 増幅された核酸の配列決定;並びに (g) 分子間相互作用の特定、

5. 核酸を含む試料が、 (i) 細胞の培養および回収; (ii) 細胞の固定; (iii) 細胞の溶解およびそれによる核酸を含む第一試料の入手;並びに (iv) 第一試料の超音波処理およびそれによる、第1項または第2項に記載の方法で使用されるべき、核酸を含む第二試料の入手、 によって調製された、第1項〜第4項に記載の方法。

6. 細胞固定中に導入された架橋結合を外す工程をさらに含む、第1項〜第5項に記載の方法。

7. 核酸がDNAである、第1項〜第6項のいずれか一項に記載の方法。

8. 細胞が核酸−タンパク質複合体を含む、第5項〜第7項のいずれか一項に記載の方法。

9. 細胞がヒト細胞、動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、古細菌細胞、植物細胞またはウイルスである、第8項に記載の方法。

10. ヒト細胞または動物細胞が、疾患細胞もしくは非疾患細胞、または疾患組織由来細胞もしくは非疾患組織由来細胞である、第9項に記載の方法。

11. ヒト細胞または動物細胞ががん細胞、免疫細胞、血液細胞または幹細胞である、第9項または第10項に記載の方法。

12. がんが固形がんまたは血液がんである、第11項に記載の方法。

13. 血液がんが白血病である、第12項に記載の方法。

14. 固形がんが腫瘍である、第12項に記載の方法。

15. 動物が希少種に属する、絶滅危惧種に属する、および/またはモデル生物である、第9項、第10項または第11項に記載の方法。

16. 細胞が胚細胞である、第9項、第10項または第11項に記載の方法。

17. 工程(ii)が化学物質の添加および/または物理的手段を含む、第5項に記載の方法。

18. 化学物質がホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドである、第17項に記載の方法。

19. 物理的手段が紫外光またはレーザーを含む、第17項に記載の方法。

20. 工程(iv)が、核酸断片の大部分が20〜5000塩基対長、好ましくは200〜300塩基対長になるまでの超音波処理を含む、第5項に記載の方法。

21. クロマチン結合剤が抗体または化学物質である、第1項または第2項に記載の方法。

22. 抗体がヒストン、転写因子、またはヒストンおよび/もしくは転写因子に結合しているタンパク質に特異的に結合する、第21項に記載の方法。

23. ヒストンおよび/または転写因子に結合しているタンパク質が核酸リモデリングタンパク質またはクロマチン修飾酵素である、第22項に記載の方法。

24. ヒストンがH3.3、H2A.Z、CENP−A、H3.2、H3.3A、H3.3B、H4またはH3.1である、第22項または第23項に記載の方法。

25. ヒストンが修飾ヒストンであり、修飾がメチル化、アセチル化、プロピオニル化、ブチリル化、クロトニル化、2−ヒドロキシイソブチリル化、マロニル化、サクシニル化および/またはリボシル化である、第22項、第23項または第24項に記載の方法。

26. 修飾ヒストンがH3K4me1/2/3、H2BK5me1、H3K27me1/2/3、H3K9me1/2/3、H4K20me1、H3K79me1、H3K36me3、H2AK5ac、H2AK9ac、H2BK5ac、H2BK12ac、H2BK20ac、H2BK120ac、H3K4ac、H3K9ac、H3K14ac、H3K18ac、H3K23ac、H3K27ac、H3K36ac、H4K5ac、H4K8ac、H4K12ac、H4K16ac、H4K91ac、H2AubまたはH2Bubである、第25項に記載の方法。

27. 化学物質が薬剤またはツール化合物(tool compound)である、第21項に記載の方法。

28. 化学物質がビオチン化されている、第21項または第27項に記載の方法。

29. トランスポザーゼがランダムDNA配列タグまたは所定DNA配列タグを含む、第1項〜第4項に記載の方法。

30. トランスポザーゼがTn5トランスポザーゼである、第29項に記載の方法。

すなわち、本発明は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;および、シーケンスライブラリーの入手を含む、シーケンスライブラリーの調製方法を提供する。

さらなる実施形態が本明細書に記載されており、科学パート(scientific part)で例証されている。添付の図面は本発明の例示を与えている。一方で、実施例における、および添付の図面に例示される実験データは限定するものと見なされない。その中に含まれる技術情報は本発明の一部を形成する。

すなわち、本発明は、シーケンスライブラリーの調製方法および核酸、特にDNA、が関与する分子間相互作用のマッピング方法を提供する。付随の実施例から明らかなように、本明細書において提供される方法は、具体的には、試料にクロマチン結合剤を添加する工程、結合したクロマチンを単離する工程、および、単離されたクロマチンにトランスポザーゼを添加する工程を特定の順序で組み合わせることによる、シーケンスライブラリーの調製、または核酸、特にDNA、が関与する分子間相互作用のマッピングを含む。すなわち、本発明は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;および、シーケンスライブラリーの入手を含む、シーケンスライブラリーの調製方法を提供する。トランスポザーゼの添加は結合されたクロマチンの単離の後に行われるべきである。核酸はDNAであることが好ましい。本発明の、核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加;クロマチンからの核酸の単離;核酸の増幅;増幅された核酸の配列決定;および分子間相互作用の特定、を含む。核酸を含む試料は、初代細胞試料または培養法により得られた試料であってよい。試料が培養法から得られたものである場合、前記方法は、細胞の培養および回収;細胞の固定;細胞の溶解による核酸を含む第一試料の入手;並びに第一試料の超音波処理による核酸を含む第二試料の入手、をさらに含むことが好ましい。前記第二試料が本発明の方法で使用されることが好ましい。前記核酸はDNA、特に二本鎖DNA、であることがさらに好ましい。核酸を含む試料が初代細胞試料である場合、本発明の方法は、細胞の固定;細胞の溶解による核酸を含む第一試料の入手;および第一試料の超音波処理による核酸を含む第二試料の入手、をさらに含むことが好ましい。

すなわち、驚くべきことに、そして予想外にも、ロバストな一段階反応における、クロマチンに特異的な剤に結合され、未結合のクロマチンから単離されたクロマチンに対する直接的なタグメンテーションが、従来技術に含まれる方法と比較して、より高速、より安価、より簡単、よりロバストで、且つ低インプット量の試料により良く適合する、非常にロバストな汎用性プロトコルをもたらすことが判明した。従って、トランスポザーゼの添加は、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質、が結合したクロマチンを単離した後に行われることが好ましい。従って、本発明は、好ましくは、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;クロマチン結合剤が結合したクロマチンの単離後の、単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加;クロマチンからの核酸の単離;およびシーケンスライブラリーの入手、を含む方法に関する。核酸はDNAであることが好ましい。本発明の、核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;クロマチン結合剤が結合したクロマチンの単離後の、単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加;クロマチンからの核酸の単離;核酸の増幅;増幅された核酸の配列決定;および分子間相互作用の特定、を含むことが好ましい。

図2に示すように、標準的ChIP−seqのプロトコルは、細胞を固定する工程、細胞を溶解する工程、クロマチンを超音波処理する工程、およびビーズに結合した特異的抗体で免疫沈降する工程を含む。脱架橋の後、ChIP DNAの精製が行われ、次いで、末端修復、精製、ポリアデニル化(A-tailing)、アダプターライゲーション、およびサイズ選別を含む多工程手順においてライブラリー調製にかけられる。標準的ChIP−seqプロトコルの最初の改善において、ChIP−tagmentationと呼ばれる方法が見つかった。ChIP−tagmentationでは、精製されたChIP DNAがタグメンテーションに基づくライブラリー調製に使用される(図11参照)。精製DNAのタグメンテーションがタグメンテーション酵素のDNAに対する比に敏感であることから、前記方法はDNA濃度の変化に敏感であり、DNA濃度は、極めて変動し易く、且つ少な低過ぎるために、ChIP−seqの多くの適用において定量化できないは可能性がある。

これに関連して、驚くべきことに、そして予想外に、シーケンスアダプターが、タグメンテーションを用いて、例えば、アダプターを載せたTn5トランスポザーゼを用いて、剤に結合したクロマチンの単離の後に一工程で導入される場合、得られる方法はDNA濃度の変動に敏感でなくなることが分かった。

すなわち、タンパク質が核酸を過剰なタグメンテーションから保護している、未結合クロマチンから単離された剤結合型クロマチンに対し、タグメンテーションを直接行うことにより、本発明の方法のロバスト性の向上が達成された。結果として得られた本発明の方法のプロトコルは(例えば、図2(右)および図4aに示されるように)、ライブラリーのサイズ分布(図3)、シーケンスリードのサイズ分布(図4b)、マッピング性能(図4c)、トラック品質(図4d)、および一致(図4e)に関して、タグメンテーション酵素濃度における25倍の差にわたって非常にロバストであることが分かった。また、本発明の方法は、シーケンスアダプター二量体を生じず、標準的なChIPプロトコル後の標準的な精製以外にいかなる核酸精製工程も必要としないという点でも、改善されている。

本明細書で提供される方法の上記の利点は、それらの方法を、従来技術において公知の方法よりも優れたものにする。具体的には、本明細書で提供される方法は、従来技術において公知の方法、特に国際公開第2014/190214号において提供されたTAM−ChIPに対して、よりフレキシブルで、より安価で、よりロバストであり、より少量の試料インプット量しか必要とせず、さらなる情報の入手を可能にする。具体的には、TAM−ChIPでは、特異的抗体−オリゴヌクレオチド−複合体または抗体−オリゴヌクレオチド−トランスポザーゼ−複合体が、トランスポザーゼを介したシーケンスライブラリー調製に必要である。本発明では、骨が折れコストがかかる複合体化反応無しで、市販のChIP−seq抗体を臨時的に使用可能である。さらに、国際公開第2014/190214号に記載されるTAM−ChIPプロトコルは、インプットされるクロマチンに対する抗体−オリゴヌクレオチド−トランスポザーゼ−複合体の比の大規模な最適化を必要とするが、一方、本発明の方法は、トランスポザーゼ:クロマチンの比の変動に対してロバストである。

本明細書中で提供される方法(例えば特異的抗体による)における、トランスポザーゼを添加してからの目的のクロマチンの単離には、当該技術分野において公知の方法に優るさらなる利点がある。具体的には、TAM−ChIPは、抗体−オリゴヌクレオチド複合体の、クロマチン内の該複合体の認識部位に該複合体を標的化するための、最適な比を決定する必要がある。それ故、認識部位のすぐ傍にある核酸だけがタグ付けされ、その結果、トランスポザーゼを使用した場合のタグ付け頻度(0.5〜5%)が比較的少なくなる可能性がある。対照的に、本発明の方法は、目的のクロマチンの単離に使用される剤に関係なく、タグメンテーションを可能にする。従って、トランスポザーゼ−クロマチン比に対する本発明の方法のロバスト性に関しては、過剰量のトランスポザーゼを本発明の方法で使用することで、シーケンスライブラリー調製の効率を最大にすることができる。この達成により、当該技術分野において公知の方法と比較して、本発明の方法におけるインプット要求は実質的に少なくなる。

さらに、トランスポザーゼを添加してからの目的のクロマチンの単離は、予想外にも、少量のトランスポザーゼ酵素を用いての効率的なシーケンスライブラリー調製を可能にする。これは、残りが廃棄されつつ目的クロマチンが単離されることにより、タグメンテーション反応において、非特異的な鋳型クロマチンの存在が減少することによるものである。必要なトランスポザーゼ量の減少は、当該技術分野において公知の方法、特に国際公開第2014/205296号および同第2014/190214号に記載の方法、に優る本発明の方法の重要なコスト的利点である。

精製DNAをシーケンスライブラリー調製の鋳型として用いる、当該技術分野において公知の別の方法、例えば、Picelli et al.に記載の方法(上記で引用)、に関して、本発明の方法のような、鋳型としてのクロマチンの使用は、局所的なクロマチンコンテキスト(chromatin context)の高解像度の構造情報を保存する(例えば図9を参照)。

すなわち、本発明の方法によって、初めて、特に本明細書中で提供される超高速法のような、核酸の事前の精製も抽出も行わない、分子間相互作用の研究のための、クロマチンからのシーケンスライブラリーの構築および増幅が可能となる。さらに、本発明の方法によって、初めて、ゲノム全域にわたるヒストンマークおよび転写因子のマッピングのための、合理化された低インプット量のワークフローが与えられることにより、疾患、特にがん、コホートおよび臨床研究において、クロマチンの接触性を大規模にマッピングすることが実現可能となる。本明細書中で提供されるクロマチンプロファイリング分析が、臨床の配列決定実験室での使用に十分に高速且つ簡単であるならば、クロマチンの調節解除は、例えば層別がん治療のための、バイオマーカーの供給源として扱いやすいものとなる(Rendeiro et al. (2016) Nature Comm. 7, Article number 11938も参照されたい)。

本発明の方法は、5つの例示的なヒストンマーク(H3K4me3、H3K27ac、H3K4me1、H3K36me3、およびH3K27me3)および4つの転写因子(PU.1、CTCF、GATA1、およびREST)について検証された。全ての場合において、本発明の方法は、標準的なChIP−Seqと比較した場合に、同様のデータ妥当性を示した(図5f)。しかしながら、本発明の方法は、インプットされる細胞の有意な減少を可能にした。具体的には、H3K4me3およびH3K27me3、並びにGATA1およびCTCFについて、それぞれ10,000個および100,000個の細胞から、事前の増幅無く、高品質のデータが得られた(図4f)。これに関して、標準的なChIP−Seqプロトコルにおいては、少なくとも500,000/10,000,000個の細胞がインプットとして推奨されており(それぞれ、ヒストン修飾/転写因子)、一方、本発明の方法を用いては、1,000個の細胞の使用が実行可能であるが、それぞれ10,000個または100,000個の細胞を用いてデータが得られた。これに関して、当該技術分野において公知の標準方法を用いて10,000個の細胞からDNAを精製した後にQubit(登録商標)蛍光光度計で測定した場合、10,000個の細胞からは約25ngのクロマチンが得られる。すなわち、本発明の新規の方法は、それぞれヒストン修飾または転写因子に関する従来のChIP−seqにおけるインプット要求の推奨と比較した場合、少なくとも50〜100分の1に、細胞インプット量を減少させることを可能にする。すなわち、精製した核酸またはcDNAをシーケンスライブラリー調製のための鋳型として使用する、標準的ChIP−seqおよび公知のトランスポザーゼ介在性シーケンスライブラリー調製とは対照的に、本明細書で提供される方法は、シーケンスライブラリーを調製するために、クロマチンを鋳型として使用することができる。

標準的なChIPプロトコルと本発明の方法との間には良好な相関およびピークの重なりが観察され、また、いずれかの方法で調製されたバイオロジカルレプリケート間および低インプット量試料間にも、良好な相関およびピークの重なりが観察された(図4g、図4h、図5、図6および図7)。全体で、本発明の方法を用いて52のライブラリーが配列決定され、標準的ChIP−seqでは24のライブラリーが(図2、左)、ChIP−tagmentationでは9のライブラリー(図2、中央)が配列決定され、ほとんどの実験において95%超のアラインメント率および約90%のユニークリード率が認められた(図8)。タグメンテーションがクロマチンに対して直接実行されることを前提として、タグメンテーション事象の分布が局所的クロマチン構造によって影響を受けるかどうかが調べられた。さらに、転写因子のフットプリント(図9a)およびヌクレオソーム結合(図9b、9c)を示すパターンが認められた。目的に合わせた正規化アルゴリズムおよび解析アルゴリズムを用いることで、転写因子のフットプリントの推測は可能であり、通例のChIP−seq読み取りに加えて、本発明の方法によって得られたデータから、ヌクレオソーム領域の安定性および/またはヌクレオソームポジショニングも推測されると予想される。

添付の実施例にも示されている、これらの結果によって、より高速で(ChIPおよび最後のライブラリー増幅工程を除いて10〜20分間、図2i)、より対費用効果が高く(図10)、低インプット量試料により良好に適合し(図6)、且つより簡単な、汎用性の改良された標準的ChIP−seqとして、本発明の方法は確立される。本発明の方法は、広範囲の細胞数および酵素濃度、種々のクロマチン結合剤、並びに異なるChIPプロトコルに亘って、極めてロバストであることが分かったが、このことは、プロトコルの適合および最適化の必要性を最小限にする。従って、本発明の方法は、多数の試料が関与する、すなわち、ハイスループット法として、希少な細胞集団に焦点を置き、且つ/または、高速で、対費用効果が高く、且つロバストな実験のワークフローの恩恵を受ける、シーケンスライブラリー調製の用途および/または核酸を含む分子間の相互作用のマッピングの用途によく適している。これに関して、本発明の方法は、ハイスループットに、自動的に、且つ/または並行して、使用されることも企図される。従って、本発明の方法を実施するために、ピペッティングを容易にし/再現性を向上させるために使用されるハイスループットな施設および/またはロボットが使用されることが企図される。当業者であれば、本発明の方法をハイスループットに、自動的に、且つ/または並行して、実施するのに適した手段を熟知している。例えば、複数の実験を並行して実行するために、マルチウェルプレートが本発明の方法で使用され得る。そのようなマルチウェルプレートは例えば96個、384個または1536個のウェルを有し得る。マルチウェルプレートはまた、ハイスループットな実験に適したロボット工学と組み合わせて使用され得る。公知のロボットシステムは複数の実験の同時実施を可能にし、これにより、時間、コストが低減され、且つ/または、実験データの信頼性が向上される。例えば、自動的な、ハイスループットの配列決定用試料の調製を可能にするために、Sciclone NGS Workstation(P/N SG3−31020−0300、パーキンエルマー社)が使用され得る。実験がハイスループットに実施される場合、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、下記でさらに記載されるように、磁気ビーズに結合されていることが好ましい。磁気ビーズは、ビーズに結合した粒子の、未結合物質からの単離に簡単に使用できることから、ハイスループット法において特に有用である。また、本発明の方法は、マイクロ流体デバイスと組み合わせて使用されることも想定される。例えば、単一のマイクロ流体チャンバを特徴とする、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)デバイスが本発明の方法と組み合わせて使用され得る。マイクロ流体チャンバは1つの入口と1つの出口を有することが好ましく、出口は、ポートに圧力をかけることで部分的に閉じることができるオンチップ空気圧マイクロ弁を有することが好ましい。クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質、で被覆された磁気ビーズは、マイクロ流体チャンバに流れ込み、充填層を形成し、一方、空気圧マイクロ弁は部分的に閉じられる。次いで、超音波処理されたクロマチン断片がチャンバに流され、ビーズ表面上に吸着する。ビーズ間の間隙は2μmよりも小さく、小さな拡散距離での、標的クロマチン断片の迅速で高効率の吸着を促す。次に、2つの異なる洗浄緩衝液中での振動洗浄によってビーズが洗浄され、非特異的に吸着したクロマチン断片が除去される。最後に、ビーズがチャンバから流し出され、オフチップ処理のために収集される。このアプローチは、Cao et al. (2015) Nature Methods(オンラインで入手可能)に記載されているように、本明細書中で提供される本発明の新規の方法との組み合わせにおいて、実験時間および実験コストのさらなる低減を可能にする。Macosko et al. (2015) Cell 161 (5) pp. 1202-14およびKlein et al. (2015) Cell 161(5) pp. 1187-2201に記載されているような、本明細書中で提供される方法とDrop−Seqとの組み合わせも企図される。

すなわち、本発明は特に、シーケンスライブラリー調製方法に関する。具体的には、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;トランスポザーゼの単離されたクロマチンへの添加;クロマチンからの核酸の単離;および、シーケンスライブラリーの入手を含む、シーケンスライブラリーの調製方法を提供する。

クロマチン結合剤が抗体以外の化学物質である方法に関して、ゲノムと結合した特異的タンパク質と結合することによって自身の効果を引き出す小分子リガンド(治療薬を含む)は相当な数であることが知られている。これらの化学成分とクロマチンとの全体的な相互作用をゲノム全域に亘ってマッピングすることは、小分子が細胞機能に影響を与える機構を理解する上での手がかりとなり得る。Chem−seqは、様々な生物学的状況の中で、治療法のゲノム全体への影響を調べ、核構造に対する薬剤の影響を理解するために、利用することができる。より広い意味では、これらの方法は、小分子がゲノムに結合したタンパク質の機能および活性を調節するために介する、治療的機構の理解を深めるのに有用である。薬剤の細胞標的の同定を通じて、薬剤開発の初期において、副作用および毒性の原因について、より深い理解を得ることが可能となり、これは、開発中止率を減少させる助けとなる。

Chem−seqは、下流の親和性捕捉を可能にするための、目的小分子のビオチン化型を作製できることが必要である。Chem−seqはインビトロ(in vitro)においてもインビボ(in vivo)においても実行することができる。

インビボChem−seqにおいて、培地中の培養細胞は、研究中の小分子のビオチン化型またはDMSO(対照として)のいずれか、並びにDNA、タンパク質および小分子の架橋結合のためのホルムアルデヒドで同時に処理される。次に、クロマチンが細胞から抽出され、超音波処理され、ビオチンに対する非常に高い親和性を有するストレプトアビジン磁気ビーズとインキュベートすることにより目的のビオチン化分子を含む領域が濃縮される。次に、濃縮されたクロマチン画分がビーズから溶離され、架橋が外され、DNAが精製され、ライブラリーが作製されて次世代シーケンスにかけられる。対照と比較してChem−seqライブラリーにおいて濃縮されたゲノム領域は、研究中の小分子と結合している。すなわち、本発明は、小分子と核酸、特にDNA、との間の相互作用をマッピングするインビボ方法にも関する。

インビトロChem−seqは、ホルムアルデヒドによる培地中の培養細胞の架橋結合から開始される。次に、細胞核が細胞から回収され、細胞核のクロマチンが抽出される。この抽出物は、目的化合物のビオチン化型に結合したストレプトアビジン磁気ビーズと共にインキュベートされる前に超音波処理される。これにより、目的小分子がその標的クロマチン領域と相互作用する機会が生まれる。次に、これらのクロマチン領域が磁石を用いて単離され、DNAが精製される。このDNAからライブラリーが調製され、次世代シーケンスにかけられ、その後、目的小分子について濃縮された領域を決定するための解析にかけられる。

すなわち、本発明は、上記のようにChem−Seqアプローチとタグメンテーションとを組み合わせた、シーケンスライブラリーの調製または核酸を含む分子間相互作用のマッピング方法にも関する。

本発明の意義の範囲内の用語「シーケンスライブラリー」は、各々の核酸が例えば個々の配列タグの使用によって同定可能である、核酸の提示を指す。従って、「シーケンスライブラリーの入手」には、解析対象の核酸断片の末端に特定のアダプター配列を確実に付加可能なプロセスが必要となる。この核酸調製物はしばしば「シーケンスライブラリー」と称される。次世代シーケンス応用の大部分が、5′末端および3′末端に特定のアダプターを有する核酸であるシーケンスライブラリーの調製を必要とする。例えば、イルミナ社の配列決定のワークフローは、PCR増幅の開始、およびブリッジPCR(bridge PCR)によるクラスター形成に必要な特定ヌクレオチド配列の導入、および合成時配列決定(sequencing-by-synthesis)反応の促進に使用される、部分的に相補的なアダプターオリゴヌクレオチドを利用する。すなわち、シーケンスライブラリーを調製する本発明の方法から得られるシーケンスライブラリーは、標準的な配列決定応用、例えば以下でさらに記述される次世代シーケンス、における使用に適している。

本発明の意味においての「核酸」は、約50ヌクレオチド超の長さを有することが好ましい、ヌクレオチドから構成されるあらゆる長さの重合体である。本発明の方法により、核酸を含むシーケンスライブラリーの調製および/または核酸を含む分子間の相互作用のマッピングが可能となる。本発明の方法の出発試料に含まれる核酸は、約50〜約5000ヌクレオチド長を有することが好ましく、好ましくは100〜約1000ヌクレオチド長、より好ましくは約200〜約700ヌクレオチド長、さらにより好ましくは200〜700ヌクレオチド長、最も好ましくは200〜300ヌクレオチド長を有する。出発試料は、細胞の培養および回収;細胞の固定;細胞の溶解;並びに超音波処理を含む、本発明の方法で使用される細胞内に含まれる核酸と混同されてはならない。これに関連して、超音波処理を用いることで、細胞に含まれそれから得られた核酸が断片化されて、第二試料とも称される出発試料が得られ、ここで、前記方法は細胞の培養および回収;細胞の固定;細胞の溶解;並びに超音波処理という追加の工程を含む。これに関連して、「ヌクレオチド」には、公知のプリン塩基およびピリミジン塩基を含有する部分だけでなく、修飾された他の複素環塩基を含有する部分も包含されることが意図される。このような修飾には、メチル化されたプリンまたはピリミジン、アシル化されたプリンまたはピリミジン、アルキル化されたリボースまたは他の複素環が包含される。さらに、用語「ヌクレオチド」には、ハプテンまたは蛍光標識を含有する部分であって、且つ、従来のリボース糖およびデオキシリボース糖を含有し得る部分だけでなく、他の糖を含有し得る部分も包含される。修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドは、糖部分にも修飾を含む(例えば、ヒドロキシル基のうちの一つまたは複数が、ハロゲン原子または脂肪族基と置換されている、エーテルまたはアミン等の官能性を持たせられている)。しかし、ほとんどの場合、本発明の方法で使用される核酸は、ワトソン・クリック塩基対形成相互作用に参加し得るデオキシリボヌクレオチド リボヌクレオチドとして、天然のピリミジン塩基およびプリン塩基を含む。天然ヌクレオチドとしては、グアニン、シトシン、アデニン、チミンおよびウラシル(それぞれ、G、C、A、TおよびU)が挙げられる。核酸はDNAであってもよく、RNAであってもよく、あるいは、あらゆる他種の公知の核酸であってよい。核酸はDNAであることが好ましく、二本鎖DNAであることが特に好ましい。

用語「クロマチン結合剤」には、片方の結合パートナーとして、クロマチンを含む結合複合体の構成員となる、あらゆる剤が包含される。例えば、クロマチン結合剤は、ポリペプチド(例えば、タンパク質またはその断片、特に抗体)であってもよく;核酸(例えば、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド等)であってもよく;または、小分子(例えば、化学物質)であってもよい。故に、一実施形態では、クロマチン結合剤は、クロマチンおよび/またはクロマチンに結合するさらなる分子、特に他のポリペプチド、に特異的な結合ドメインを有するポリペプチドである。例えば、クロマチン結合剤は、クロマチンを認識するメチル−CpG結合ドメイン(MBD)を有していてもよい。クロマチン結合剤はポリペプチドであることが好ましく、クロマチン、クロマチンと結合したタンパク質(例えば、転写因子またはヒストン)、および/またはDNAに特異的に結合するクロマチン結合抗体であることが特に好ましい。

これに関連して、クロマチンは、本明細書で使用される場合、細胞内に存在し、DNA、タンパク質および/またはRNAを含む、高分子の複合体である。クロマチンの主要な機能は以下である:1)DNAをより小さな体積にパッケージングして細胞内に収まるようにする機能、2)DNA高分子を補強して有糸分裂を可能にする機能、3)DNA損傷を防止する機能、並びに、4)遺伝子発現およびDNA複製を調節する機能。クロマチンの主要なタンパク質成分は、DNAをコンパクトにするヒストンである。クロマチンの構造はいくつかの要素に依存する。全体構造は細胞周期の時期に依存する。間期では、クロマチンは構造に緩みが生じ、DNAを転写するRNAポリメラーゼおよびDNAを複製するDNAポリメラーゼとの接触が可能となる。間期におけるクロマチンの局所構造は、DNA上に存在する遺伝子に依存する。活発に転写される(「発現スイッチがオンの」)遺伝子をコードするDNAは、より緩くパッケージングされており、RNAポリメラーゼおよび転写因子と結合して存在する(ユークロマチンと称される)。一方、不活性遺伝子(「発現スイッチがオフ」)をコードするDNAは、構造タンパク質と結合して存在し、より密集してパッケージングされている(ヘテロクロマチン)。また、クロマチンにおける構造タンパク質のエピジェネティックな化学修飾も、局所的なクロマチン構造を変化させる(特に、メチル化およびアセチル化によるヒストンタンパク質の化学修飾;後述)。

クロマチンの基本反復成分は、溶液中の純粋なDNAよりもはるかに短い構造である、リンカーDNAの区間によって相互接続されたヌクレオソームである。コアヒストンに加えて、ヌクレオソーム上のDNA鎖の出口/入口と接触するリンカーヒストン(H1)がある。ヒストンH1と一緒になったヌクレオソームコア粒子は、クロマトソームとして知られている。約20〜60塩基対のリンカーDNAを有するヌクレオソームは、非生理的条件下で、およそ10nmの「数珠玉構造」の繊維を形成し得る。ヌクレオソームは、通常のDNAパッケージングにおけるその機能に従って、非特異的にDNAと結合する。しかし、ヌクレオソームポジショニングを支配する、大型DNA配列への優先性が存在する。この優先性は主に、異なるDNA配列の物理的性質の差異によるものである。例えば、アデニンおよびチミンは、より有利に、内部副溝に圧縮される。これは、ヌクレオソームが、およそ10塩基対(DNAのヘリカルリピート(helical repeat))毎の1ヶ所において、優先的に結合し得ることを意味しており、ここで、DNAは内部副溝に存在するA塩基およびT塩基の数が最大となるように回転される。本発明におけるクロマチン結合剤は、クロマチン、ユークロマチンまたはヘテロクロマチンのあらゆる部分に結合し得る。例えば、クロマチン結合剤はクロマチンに含まれるDNA、RNAまたはタンパク質と相互作用し得る。具体的には、クロマチン結合剤は、クロマチンに含まれるヒストンもしくは転写因子、および/またはヒストン、転写因子もしくはクロマチンと結合した他のタンパク質と相互作用し得る。

これに関連して、ヒストンは、DNAをヌクレオソームと呼ばれる構造単位にパッケージングし整理する、真核細胞の核内に存在する高アルカリ性のタンパク質である(上記参照)。ヒストンは、DNAが巻き付く糸巻きとして機能する、クロマチンの主要なタンパク質成分であり、遺伝子制御に関与する。5つの主要なヒストンファミリーが存在する:H1/H5、H2A、H2B、H3およびH4。ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3およびヒストンH4はコアヒストンとして知られていおり、一方、ヒストンH1およびヒストンH5はリンカーヒストンとして知られている。各コアヒストンが2つずつ集合して、直径およそ63オングストロームの八量体ヌクレオソームコアを形成する(ソレノイド(DNA)様粒子)。147塩基対のDNAがこのコア粒子に左巻きの高次らせん回転で1.65回巻き付くことで、直径約100オングストロームの粒子が得られる。リンカーヒストンH1が、DNAの入口部および出口部においてヌクレオソームと結合することで、DNAが所定の位置に固定され、高次構造の形成が可能となる。そのような形成で最も基本的なものは、10nm繊維または数珠玉状の高次構造である。これは、ヌクレオソームの各対を分離するおよそ50塩基対のDNA(リンカーDNAとも称される)による、ヌクレオソーム周囲のDNAの巻き付きを含む。高次構造には30nm繊維(不規則なZ字形を形成)および100nm繊維が含まれ、これらは正常細胞で見られる構造である。有糸分裂および減数分裂では、凝集した染色体が、ヌクレオソームと他の調節タンパク質との間の相互作用を通じて集合する。クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、ヒストンと相互作用し得る。すなわち、クロマチン結合剤は、ヒストンに特異的に結合し得る、且つ/または、ヒストンと結合した別のポリペプチドおよび/もしくは化学物質に結合し得る。クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質はヒストンと直接相互作用することが好ましい。

これに関連して、公知のヒトヒストンには、5つのクラスが含まれる:H1/H5、H2A、H2B、H3およびH4。H1クラスには、H1F0、H1FNT、H1FOO、H1FX、HIST1H1A、HIST1H1B、HIST1H1C、HIST1H1D、HIST1H1EおよびHIST1H1Tが含まれる。H2Aクラスには、H2AFB1、H2AFB2、H2AFB3、H2AFJ、H2AFV、H2AFX、H2AFY、H2AFY2、H2AFZ、HIST1H2AA、HIST1H2AB、HIST1H2AC、HIST1H2AD、HIST1H2AE、HIST1H2AG、HIST1H2AI、HIST1H2AJ、HIST1H2AK、HIST1H2AL、HIST1H2AM、HIST2H2AA3およびHIST2H2ACが含まれる。H2Bクラスには、H2BFM、H2BFS、H2BFWT、HIST1H2BA、HIST1H2BB、HIST1H2BC、HIST1H2BD、HIST1H2BE、HIST1H2BF、HIST1H2BG、HIST1H2BH、HIST1H2BI、HIST1H2BJ、HIST1H2BK、HIST1H2BL、HIST1H2BM、HIST1H2BN、HIST1H2BOおよびHIST2H2BEが含まれる。H3クラスには、HISTH3A、HISTH3B、HISTH3C、HISTH3D、HISTH3E、HISTH3F、HISTH3G、HISTH3H、HISTH3I、HISTH3J、HIST2H3CおよびHIST3H3が含まれる。H4クラスには、HIST1H4A、HIST1H4B、HIST1H4C、HIST1H4D、HIST1H4E、HIST1H4F、HIST1H4G、HIST1H4H、HIST1H4I、HIST1H4J、HIST1H4K、HIST1H4LおよびHIST4H4が含まれる。クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、H3クラスのヒストン、特にH3.3、H3.2、H3.3A、H3.3BまたはH3.1、に結合することが好ましい。さらに、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、H4、H2A.ZまたはCENP−Aに結合することが好ましい(後者2つはヒストンH3関連ヒストン型折り畳みを含有する)。

さらに、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、公知のヒストンの修飾型に特異的であることが想定される。膨大な数のヒストン修飾が報告されている。ヒストン修飾は、ゲノムの翻訳、並びに別の結合タンパク質および/または他の化学物質にとってのDNAの接触性に、明確な意味および影響を有する。従って、本発明の方法は、例えばがん細胞等の患部組織/細胞における、遺伝子発現の変化を起こし得る、修飾ヒストンが結合した領域を特定するために使用されることが想定される。

公知のヒストン修飾としては、メチル化、アセチル化、プロピオニル化、ブチリル化、クロトニル化、2−ヒドロキシイソブチリル化、マロニル化、サクシニル化およびリボシル化が挙げられる。特に、リジンのメチル化(methlyation)、アルギニンのメチル化(methlyation)、リジンのアセチル化、セリン/スレオニン/チロシンのリン酸化が挙げられる。これに関して、リジンへの1、2または3つのメチル基の付加は、ヒストンの化学的性質にほとんど影響がなく;メチル化は、リジンの電荷をそのまま残し、最小数の原子しか追加しないため、立体状の相互作用がほとんど影響を受けない。しかし、特にTudorドメイン、クロモドメインまたはPHDドメインを含有するタンパク質は、いくつかのリジン(例えば:H4K20)において、モノメチル化、ジメチル化およびトリメチル化が異なる意味を有する限りにおいて、リジンのメチル化を鋭敏な感度で認識し、モノメチルリジン、ジメチルリジンおよびトリメチルリジンを区別することができる。このため、リジンのメチル化は非常に情報価値のある標識であり、既知のヒストン修飾機能の中心となっている。従って、クロマチン結合剤は、リジンがメチル化したヒストンおよび/またはタンパク質に特異的であり、そのような修飾ヒストン、例えばTudorドメイン、クロモドメインまたはPHDドメインを含有するタンパク質、を認識することが想定される。アルギニンがメチル化したヒストンに関しては、上記と同様の推論が適用され、すなわち、いくつかのタンパク質ドメイン(例えば、Tudorドメイン)が、メチルリジンに対してではなく、メチルアルギニンに対して特異的であり得る。アルギニンはモノメチル化またはジメチル化されることが知られており、メチル化は対称的である場合と非対称的である場合があり、それぞれ異なる意味がある可能性がる。リジンのアセチル化に関して、アセチル基の付加は、正電荷が中和されるため、リジンに対して大きな化学的影響を与える。これにより、ヒストンと負に帯電したDNA骨格との間の静電引力が減少し、クロマチン構造が緩まる。高度にアセチル化されたヒストンは、より接触性の良いクロマチンを形成し、活発な転写を伴う傾向がある。リジンのアセチル化は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼが2つ以上のリジンに作用する傾向があるために、メチル化よりも、意味において、正確性が低いと思われる。クロマチン構造に対し有意な効果を与えるのに複数のリジンを変化させる必要があるのは、おそらくこれによるものである。従って、クロマチン結合剤は、アセチル化リジンおよび/またはアセチル化リジンと相互作用しているタンパク質に対して特異的であることも想定される。上記の他に、ヒストンに含まれるセリン/スレオニンおよび/またはチロシンをリン酸化によって修飾することができる。負に帯電したリン酸基の付加は、タンパク質構造に大きな変化に繋がる可能性があり、これが、タンパク質の機能制御における特徴がはっきりした役割をリン酸化に与えている。ヒストンのリン酸化は翻訳後修飾として明確な機能を有しており、BRCT(BRCA1 C末端ドメイン)等の結合ドメインは特徴付けがなされている。従って、そのような修飾ヒストン、すなわちリン酸化により修飾されたヒストンが、クロマチン結合剤によって認識されることも想定される。

上記のヒストンの修飾および当該技術分野で報告されている別の修飾は、転写の制御に影響を与える。これに関連して、2つの公知のヒストン修飾が活発な転写と特に関連している:H3リジン4のトリメチル化(H3K4Me3)およびH3リジン36のトリメチル化(H3K36Me3)。H3K4Me3は、活性遺伝子のプロモーターにおいて起こり、COMPASS複合体によって実行される。この修飾は活性プロモーターの優れたマーク(mark)であり、ある遺伝子のプロモーターにおけるこのヒストン修飾のレベルは、その遺伝子の転写活性と広い相関性がある。このマークの形成は、かなり複雑な形で転写に関連している。すなわち、遺伝子の転写初期にRNAポリメラーゼIIが、RNAポリメラーゼIIのC末端ドメイン(CTD)のリン酸化状態における変化によって特徴付けられる、 開始」から「伸長」への切り換えを起こす。CTDをリン酸化する同一酵素はRad6複合体もリン酸化し、次いで、リン酸化されたRad6複合体がH2BK123(哺乳類ではK120)にユビキチンマークを付加する。H2BK123Ubは転写された領域全体に生じるが、このマークは、COMPASSがプロモーターにおけるH3K4をトリメチル化するために必要とされる。すなわち、本発明の好ましい態様では、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、H3K4Me3に特異的である。別の態様では、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、H3K36Me3に特異的である。このトリメチル化は活性遺伝子の内側で生じ、メチルトランスフェラーゼSet2によって堆積される。このタンパク質は伸長中のRNAポリメラーゼIIと結合し、H3K36Me3は活発に転写された遺伝子を示す。H3K36Me3はRpd3ヒストンデアセチラーゼ複合体によって認識され、Rpd3ヒストンデアセチラーゼ複合体はアセチル修飾を周囲のヒストンから除去し、クロマチンの凝縮を増進して偽の(spurious)転写を抑制する。クロマチン凝縮の増進は、転写因子がDNAにアクセスすることを妨げ、遺伝子内で新たな転写イベントが開始される可能性を減少させる。従って、このプロセスは転写が中断されないようする働きを持つ。加えて、ヒストンH3のリジン27のアセチル化(H3K27ac)が、プロモーターおよびエンハンサーとしての活性調節エレメントに存在する。遺伝学において、エンハンサーは、タンパク質(活性化因子)と結合することで、遺伝子の転写を活性化させることができる、短い(50〜1500bp)DNA領域である。これらのタンパク質は通常は転写因子と呼ばれる。エンハンサーは、一般に、遺伝子から最大1Mbp(1,000,000bp)離れて位置するシス作動性であり、開始部位の上流または下流に、順方向または逆方向のいずれかで、存在し得る。ヒトゲノムには数十万のエンハンサーが存在する。特に、H3K27acによって、活性がある調節エレメントと落ち着いた(poised)調節エレメントとが区別されると報告された。これらのエレメントにおけるH3K27acの濃縮は、関連遺伝因子の発現の良い指標である。すなわち、本発明の方法で使用される、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、H3K27acに特異的であり得る。

ヒストン修飾は遺伝子発現の抑制とも関連し得る。例えば、H3K27Me3、H3K9Me2/3およびH4K20Me3は、抑制された遺伝子と関連していることが知られている。H3K27Me3はポリコーム複合体PRC2によって堆積される。H3K27Me3は、遺伝子抑制の明らかなマーカーであり、おそらくは他のタンパク質が結合することで抑制機能を発現する。別のポリコーム複合体であるPRC1が、H3K27Me3と結合可能であり、クロマチンの凝縮を助けるヒストン修飾H2AK119Ubを付加する。H3リジン9のジメチル化およびトリメチル化(H3K9Me2/3)は、特徴がはっきりしたヘテロクロマチンマーカーであり、すなわち、遺伝子抑制と強く関連している。H4K20Me3も同様に、ヘテロクロマチンと密接に関連している。このマークは、ヘテロクロマチンタンパク質1(heterochromatin protein 1)によって少なくとも部分的にリクルートされる、Suv4−20hメチルトランスフェラーゼによって設置される。すなわち、本発明の方法で使用されるクロマチン結合剤は、遺伝子および/または遺伝子と結合したタンパク質の抑制と関連した、このような修飾ヒストンに特異的に結合することも企図されている。

ヒストンの修飾はDNA修復および染色体凝縮にも関連している。例えば、DNA損傷部位のマーキングはヒストン修飾の重要な機能である。ヒストン修飾はまた、太陽の紫外線照射によって破壊を受けることからDNAを保護する。例えば、リン酸化H2AX(別名γH2AX)はDNAに二重鎖切断のマーカーであり、DNA損傷に対する応答の一部を形成する。H2AXは、DNA二重鎖切断の検出後早期にリン酸化され、損傷の両側に数キロ塩基にも及ぶドメインを形成する。γH2AXはMDC1タンパク質に対する結合部位として働き、次にMDC1が重要なDNA修復タンパク質をリクルートする。このように、γH2AXはゲノム安定性を確保する機構の不可欠部分を形成している。また、H3K56Acxもゲノム安定性に必要とされる。H3K56は、p300/Rtt109複合体によってアセチル化されているが、DNA損傷部位周辺では急速に脱アセチル化される。H3K56のアセチル化はまた、停止した複製フォークを安定化し、危険な複製フォーク崩壊を防ぐことにも必要である。H3のセリン10におけるリン酸化(リン酸−H3S10)は凝縮と関連しているが、H3S10のリン酸化は、有糸分裂の外側の、ある特定の染色体部位、例えばG2期の細胞の中心周囲(pericentric)のヘテロクロマチン、にも存在する。H3S10リン酸化は、高度転写部位におけるRループ形成によって引き起こされるDNA損傷とも関連付けられてきた。H2Bのセリン10(酵母)またはセリン14(哺乳類)におけるリン酸化もクロマチン凝縮と関連付けられているが、アポトーシス中の染色体凝縮の媒介という非常に異なる目的のためのものである。この残基の変異を有する酵母は過酸化水素誘導性のアポトーシス細胞死に対して抵抗性であるため、このマークは単なる、アポトーシスにおける後期作動性の傍観者ではない。

すなわち、本発明の方法で使用されるクロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、ヒストン、修飾ヒストンおよび/または他の因子、特に酵素等のポリペプチド、に特異的に結合し、そのようなヒストンおよび/または修飾ヒストンと相互作用し得る。クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質が修飾ヒストンに結合する場合、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、H3K4me1/2/3、H2BK5me1、H3K27me1/2/3、H3K9me1/2/3、H4K20me1、H3K79me1、H3K36me3、H2AK5ac、H2AK9ac、H2BK5ac、H2BK12ac、H2BK20ac、H2BK120ac、H3K4ac、H3K9ac、H3K14ac、H3K18ac、H3K23ac、H3K27ac、H3K36ac、H4K5ac、H4K8ac、H4K12ac、H4K16ac、H4K91ac、H2AubまたはH2Bubに結合することが好ましい。

別の実施形態では、本発明の方法で使用されるクロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、転写因子に特異的に結合する。転写因子(配列特異的DNA結合因子と呼ばれる場合もある)は、特定のDNA配列に結合することで、DNAからメッセンジャーRNAへの遺伝情報の転写速度を制御するタンパク質である。例示的な転写因子としては、限定はされないが、AAF、ab1、ADA2、ADA−NF1、AF−1、AFP1、AhR、AIIN3、ALL−1、α−CBF、α−CP1、α−CP2a、α−CP2b、αHo、αH2−αH3、Alx−4、aMEF−2、AML1、AML1a、AML1b、AML1c、AML1ΔN、AML2、AML3、AML3a、AML3b、AMY−1L、A−Myb、ANF、AP−1、AP−2αA、AP−2αB、AP−2β、AP−2γ、AP−3(1)、AP−3(2)、AP−4、AP−5、APC、AR、AREB6、Arnt、Arnt(774M型)、ARP−1、ATBF1−A、ATBF1−B、ATF、ATF−1、ATF−2、ATF−3、ATF−3δZIP、ATF−a、ATF−aδ、ATPF1、Barhl1、Barhl2、Barx1、Barx2、Bcl−3、BCL−6、BD73、βカテニン、Bin1、B−Myb、BP1、BP2、brahma、BRCA1、Brn−3a、Brn−3b、Brn−4、BTEB、BTEB2、B−TFIID、C/EBPα、C/EBPβ、C/EBPδ、CACC結合因子、Cart−1、CBF(4)、CBF(5)、CBP、CCAAT結合因子、CCMT結合因子、CCF、CCG1、CCK−1a、CCK−1b、CD28RC、cdk2、cdk9、Cdx−1、CDX2、Cdx−4、CFF、Chx10、CLIM1、CLIM2、CNBP、CoS、COUP、CPI、CPIA、CPIC、CP2、CPBP、CPE結合タンパク質、CREB、CREB−2、CRE−BP1、CRE−BPa、CREMα、CRF、Crx、CSBP−1、CTCF、CTF、CTF−1、CTF−2、CTF−3、CTF−5、CTF−7、CUP、CUTL1、Cx、サイクリンA、サイクリンT1、サイクリンT2、サイクリンT2a、サイクリンT2b、DAP、DAX1、DB1、DBF4、DBP、DbpA、DbpAv、DbpB、DDB、DDB−1、DDB−2、DEF、δCREB、δMax、DF−1、DF−2、DF−3、Dlx−1、Dlx−2、Dlx−3、Dlx4(長鎖アイソフォーム)、Dlx−4(短鎖アイソフォーム 、Dlx−5、Dlx−6、DP−1、DP−2、DSIF、DSIF−p14、DSIF−p160、DTF、DUX1、DUX2、DUX3、DUX4、E、E12、E2F、E2F+E4、E2F+p107、E2F−1、E2F−2、E2F−3、E2F−4、E2F−5、E2F−6、E47、E4BP4、E4F、E4F1、E4TF2、EAR2、EBP−80、EC2、EF1、EF−C、EGR1、EGR2、EGR3、EIIaE−A、EIIaE−B、EIIaE−Cα、EIIaE−Cβ、EivF、EIf−1、EIk−1、Emx−1、Emx−2、Emx−2、En−1、En−2、ENH結合タンパク質、ENKTF−1、EPAS1、εF1、ER、Erg−1、Erg−2、ERR1、ERR2、ETF、Ets−1、Ets−1δVil、Ets−2、Evx−1、F2F、因子2、因子名(Factor name)、FBP、f−EBP、FKBP59、FKHL18、FKHRL1P2、Fli−1、Fos、FOXB1、FOXC1、FOXC2、FOXD1、FOXD2、FOXD3、FOXD4、FOXE1、FOXE3、FOXF1、FOXF2、FOXG1a、FOXG1b、FOXG1c、FOXH1、FOXI1、FOXJ1a、FOXJ1b、FOXJ2(長鎖アイソフォーム)、FOXJ2(短鎖アイソフォーム)、FOXJ3、FOXK1a、FOXK1b、FOXK1c、FOXL1、FOXM1a、FOXM1b、FOXM1c、FOXN1、FOXN2、FOXN3、FOXO1a、FOXO1b、FOXO2、FOXO3a、FOXO3b、FOXO4、FOXP1、FOXP3、Fra−1、Fra−2、FTF、FTS、G因子、G6因子、GABP、GABP−α、GABP−β1、GABP−β2、GADD153、GAF、γCMT、γCAC1、γCAC2、GATA−1、GATA−2、GATA−3、GATA−4、GATA−5、GATA−6、Gbx−1、Gbx−2、GCF、GCMa、GCNS、GF1、GLI、GLI3、GRα、GRβ、GRF−1、Gsc、Gsc1、GT−IC、GT−IIA、GT−IIBα、GT−IIBβ、H1TF1、H1TF2、H2RIIBP、H4TF−1、H4TF−2、HAND1、HAND2、HB9、HDAC1、HDAC2、HDAC3、hDaxx、熱誘導因子、HEB、HEB1−p67、HEB1−p94、HEF−1B、HEF−1T、HEF−4C、HEN1、HEN2、Hesx1、Hex、HIF−1、HIF−1α、HIF−1β、HiNF−A、HiNF−B、HINF−C、HINF−D、HiNF−D3、HiNF−E、HiNF−P、HIP1、HIV−EP2、Hlf、HLTF、HLTF(Metl23)、HLX、HMBP、HMGI、HMGI(Y)、HMGY、HMGI−C、HNF−IA、HNF−IB、HNF−IC、HNF−3、HNF−3α、HNF−3β、HNF−3γ、HNF4、HNF−4α、HNF4α1、HNF−4α2、HNF−4α3、HNF−4α4、HNF4γ、HNF−6α、hnRNPK、HOX11、HOXA1、HOXA10、HOXA10PL2、HOXA11、HOXA13、HOXA2、HOXA3、HOXA4、HOXA5、HOXA6、HOXA7、HOXA9A、HOXA9B、HOXB−1、HOXB13、HOXB2、HOXB3、HOXB4、HOXBS、HOXB6、HOXA5、HOXB7、HOXB8、HOXB9、HOXC10、HOXC11、HOXC12、HOXC13、HOXC4、HOXC5、HOXC6、HOXC8、HOXC9、HOXD10、HOXD11、HOXD12、HOXD13、HOXD3、HOXD4、HOXD8、HOXD9、Hp55、Hp65、HPX42B、HrpF、HSF、HSF1(長鎖)、HSF1(短鎖)、HSF2、hsp56、Hsp90、IBP−1、ICER−II、ICER−Iiγ、ICSBP、Id1、Id1 H’、Id2、Id3、Id3/Heir−1、IF1、IgPE−1、IgPE−2、IgPE−3、IκB、IκB−α、IκB−β、IκBR、IL−1 RF、IL−6 RE−BP、IL−6 RF、INSAF、IPF1、IRF−1、IRF−2、B、IRX2a、Irx−3、Irx−4、ISGF−1、ISGF−3、ISGF3α、ISGF−3γ、Ist−1、ITF、ITF−1、ITF−2、JRF、Jun、JunB、JunD、κy因子、KBP−1、KER1、KER−1、Kox1、KRF−1、Ku自己抗原、KUP、LBP−1、LBP−1a、LBX1、LCR−F1、LEF−1、LEF−IB、LF−A1、LHX1、LHX2、LHX3a、LHX3b、LHXS、LHX6.1a、LHX6.1b、LIT−1、Lmo1、Lmo2、LMX1A、LMX1B、L−My1(長鎖型)、L−My1(短鎖型)、L−My2、LSF、LXRα、LyF−1、Lyl−1、M因子、Mad1、MASH−1、Max1、Max2、MAZ、MAZ1、MB67、MBF1、MBF2、MBF3、MBP−1(1)、MBP−1(2)、MBP−2、MDBP、MEF−2、MEF−2B、MEF−2C(433AA型)、MEF−2C(465AA型)、MEF−2C(473M型)、MEF−2C/δ32(441AA型)、MEF−2D00、MEF−2D0B、MEF−2DA0、MEF−2DAO、MEF−2DAB、MEF−2DA’B、Meis−1、Meis−2a、Meis−2b、Meis−2c、Meis−2d、Meis−2e、Meis3、Meox1、Meox1a、Meox2、MHox(K−2)、Mi、MIF−1、Miz−1、MM−1、MOP3、MR、Msx−1、Msx−2、MTB−Zf、MTF−1、mtTF1、Mxil、Myb、Myc、Myc1、Myf−3、Myf−4、Myf−5、Myf−6、MyoD、MZF−1、NC1、NC2、NCX、NELF、NER1、Net、NF III−a、NF NF NF−1、NF−1A、NF−1B、NF−1X、NF−4FA、NF−4FB、NF−4FC、NF−A、NF−AB、NFAT−1、NF−AT3、NF−Atc、NF−Atp、NF−Atx、Nf ηA、NF−CLEOa、NF−CLEOb、NFδE3A、NFδE3B、NFδE3C、NFδE4A、NFδE4B、NFδE4C、Nfe、NF−E、NF−E2、NF−E2p45、NF−E3、NFE−6、NF−Gma、NF−GMb、NF−IL−2A、NF−IL−2B、NF−jun、NF−κB、NF−κB(−様)、NF−κB1、NF−κB1、前駆物質、NF−κB2、NF−κB2(p49)、NF−κB2前駆物質、NF−κE1、NF−κE2、NF−κE3、NF−MHCIIA、NF−MHCIIB、NF−μE1、NF−μE2、NF−μE3、NF−S、NF−X、NF−X1、NF−X2、NF−X3、NF−Xc、NF−YA、NF−Zc、NF−Zz、NHP−1、NHP−2、NHP3、NHP4、NKX2−5、NKX2B、NKX2C、NKX2G、NKX3A、NKX3A v1、NKX3A v2、NKX3A v3、NKX3A v4、NKX3B、NKX6A、Nmi、N−Myc、N−Oct−2α、N−Oct−2β、N−Oct−3、N−Oct−4、N−Oct−5a、N−Oct−5b、NP−TCII、NR2E3、NR4A2、Nrfl、Nrf−1、Nrf2、NRF−2β1、NRF−2γ1、NRL、NRSF 1型、NRSF 2型、NTF、02、OCA−B、Oct−1、Oct−2、Oct−2.1、Oct−2B、Oct−2C、Oct−4A、Oct4B、Oct−5、Oct−6、Octa因子、八量体結合因子、Oct−B2、Oct−B3、Otx1、Otx2、OZF、p107、p130、p28修飾因子、p300、p38erg、p45、p49erg、−p53、p55、p55erg、p65δ、p67、Pax−1、Pax−2、Pax−3、Pax−3A、Pax−3B、Pax−4、Pax−5、Pax−6、Pax−6/Pd−5a、Pax−7、Pax−8、Pax−8a、Pax−8b、Pax−8c、Pax−8d、Pax−8e、Pax−8f、Pax−9、Pbx−1a、Pbx−1b、Pbx−2、Pbx−3a、Pbx−3b、PC2、PC4、PC5、PEA3、PEBP2α、PEBP2β、Pit−1、PITX1、PITX2、PITX3、PKNOX1、PLZF、PO−B、Pontin52、PPARα、PPARβ、PPARγ1、PPARγ2、PPUR、PR、PR A、pRb、PRD1−BF1、PRDI−BFc、Prop−1、PSE1、P−TEFb、PTF、PTFα、PTFβ、PTFδ、PTFγ、Puボックス結合因子、Puボックス結合因子(B JA−B)、PU.1、PuF、Pur因子、R1、R2、RAR−α1、RAR−β、RAR−β2、RAR−γ、RAR−γ1、RBP60、RBP−Jκ、Re1、Re1A、Re1B、RFX、RFX1、RFX2、RFX3、RFXS、RF−Y、RORα1、RORα2、RORα3、RORβ、RORγ、Rox、RPF1、RPGα、RREB−1、RSRFC4、RSRFC9、RVF、RXR−α、RXR−β、SAP−1a、SAP1b、SF−1、SHOX2a、SHOX2b、SHOXa、SHOXb、SHP、SIII−p110、SIII−p15、SIII−p18、SIM’、Six−1、Six−2、Six−3、Six− 4、Six−5、Six−6、SMAD−1、SMAD−2、SMAD−3、SMAD−4、SMAD−5、SOX−11、SOX−12、Sox−4、Sox−5、SOX−9、Sp1、Sp2、Sp3、Sp4、Sph因子、Spi−B、SPIN、SRCAP、SREBP−1a、SREBP−1b、SREBP−1c、SREBP−2、SRE−ZBP、SRF、SRY、SRP1、Staf−50、STAT1α、STAT1β、STAT2、STAT3、STAT4、STAT6、T3R、T3R−α1、T3R−α2、T3R−β、TAF(I)110、TAF(I)48、TAF(I)63、TAF(II)100、TAF(II)125、TAF(II)135、TAF(II)170、TAF(II)18、TAF(II)20、TAF(II)250、TAF(II)250Delta、TAF(II)28、TAF(II)30、TAF(II)31、TAF(II)55、TAF(II)70−α、TAF(II)70−β、TAF(II)70−γ、TAF−I、TAF−II、TAF−L、Tal−1、Tal−1β、Tal−2、TAR因子、TBP、TBX1A、TBX1B、TBX2、TBX4、TBXS(長鎖アイソフォーム)、TBXS(短鎖アイソフォーム)、TCF、TCF−1、TCF−1A、TCF−1B、TCF−1C、TCF−1D、TCF−1E、TCF−1F、TCF−1G、TCF−2α、TCF−3、TCF−4、TCF−4(K)、TCF−4B、TCF−4E、TCFβ1、TEF−1、TEF−2、tel、TFE3、TFEB、TFIIA、TFIIA−α/β前駆物質、TFIIA−α/β前駆物質、TFIIA−γ、TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIE−α、TFIIE−β、TFIIF、TFIIF−α、TFIIF−β、TFIIH、TFIIH*、TFIIH−CAK、TFIIH−サイクリンH、TFIIH−ERCC2/CAK、TFIIH−MAT1、TFIIH−MO15、TFIIH−p34、TFIIH−p44、TFIIH−p62、TFIIH−p80、TFIIH−p90、TFII−I、Tf−LF1、Tf−LF2、TGIF、TGIF2、TGT3、THRA1、TIF2、TLE1、TLX3、TMF、TR2、TR2−11、TR2−9、TR3、TR4、TRAP、TREB−1、TREB−2、TREB−3、TREF1、TREF2、TRF(2)、TTF−1、TXRE BP、TxREF、UBF、UBP−1、UEF−1、UEF−2、UEF−3、UEF−4、USF1、USF2、USF2b、Vav、Vax−2、VDR、vHNF−1A、vHNF−1B、vHNF−1C、VITF、WSTF、WT1、WT1I、WT1 I−KTS、WT1 I−del2、WT1−KTS、WT1−del2、X2BP、XBP−1、XW−V、XX、YAF2、YB−1、YEBP、YY1、ZEB、ZF1、ZF2、ZFX、ZHX1、ZIC2、ZID、ZNF174等が挙げられる。

転写因子は、単独で、または他のタンパク質と共に複合体として、RNAポリメラーゼ(DNAからRNAへの遺伝情報の転写を行う酵素)の特定の遺伝子へのリクルートを促進(活性化因子として)または阻止(抑制因子として)することにより、この機能を実行する。従って、クロマチン結合剤は、転写因子、一つもしくは複数の転写因子を含む複合体、および/または転写因子と結合したタンパク質と、直接相互作用し得る。転写因子を決定付ける特徴として、一つまたは複数のDNA結合ドメイン(DBD)を含有することがあり、DBDは、転写因子が制御する遺伝子に隣接した特定のDNA配列に結合する。コアクチベーター、クロマチンリモデリング因子、ヒストンアセチラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、ヒストンキナーゼ、およびヒストンメチラーゼ等のさらなるタンパク質は、遺伝子制御で重要な役割を果たすが、DNA結合ドメインを欠いているために、転写因子には分類されない。しかし、本発明の方法で使用されるクロマチン結合剤はそのようなタンパク質とも相互作用し得る。転写因子は、制御対象の遺伝子に隣接する、エンハンサーまたはプロモーターというDNA領域に結合する。転写因子に応じて、隣接する遺伝子の転写は上方制御または下方制御される。転写因子は遺伝子発現の制御に種々の機構を利用する。これらの機構には、RNAポリメラーゼのDNAへの結合の安定化または阻止;ヒストンタンパク質のアセチル化または脱アセチル化の触媒が含まれる。転写因子が直接これを行う場合もあるし、あるいは、転写因子がこの触媒活性を有する他のタンパク質をリクルートする場合もある。多くの転写因子は2つの相反する機構、ヒストンタンパク質をアセチル化し、DNAとヒストンの結合を弱め、DNAを転写の際によりアクセスし易いようにして、転写を上方制御する、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性;および/または、ヒストンタンパク質を脱アセチル化し、DNAとヒストンの結合を強め、DNAを転写の際によりアクセスしにくいようにして、転写を下方制御する、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)活性、の一方または他方を利用して転写を制御する。遺伝子発現制御機構は、コアクチベータータンパク質またはコリプレッサータンパク質を転写因子DNA複合体にリクルートすることも含む。

多くの転写因子は、少なくとも2つの理由、(1)変異が特定の疾患と関連し得ること、および(2)転写因子が薬物治療の標的になり得ることから、臨床的意義を有する。従って、本発明の方法で使用されるクロマチン結合剤は、転写因子と関連した疾患の診断および/または治療に関連性を持ち得る。例えば、転写因子は発生、細胞間シグナル伝達、および細胞周期において重要な役割を有するため、いくつかのヒト疾患は転写因子における変異と関連付けられている。さらに、多くの転写因子は腫瘍抑制因子か癌遺伝子のいずれかであるため、転写因子の変異または異常制御はがんと関連している。少なくとも3つの転写因子群がヒトのがんにおいて重要であると知られている:(1)NF−κBファミリーおよびAP−1ファミリー、(2)STATファミリー、並びに(3)ステロイド受容体。ヒト疾患に関与する別の転写因子を下記の表に示す。

従って、本発明の方法で使用されるクロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、疾患、例えばがん、と関連することが知られている転写因子と相互作用し得る。これに関連して、本発明の方法は、異常細胞および/または患部組織に由来する細胞における、DNAと転写因子との間の相互作用の研究に使用され得る。また、本発明の方法は、薬剤とDNA/転写因子との間の相互作用の研究に使用することができる。これに関連して、現在処方されている薬剤のおよそ10%が、転写因子の核内受容体クラスを直接標的としている。例としては、それぞれ乳がん治療用および前立腺がん治療用のタモキシフェンおよびビカルタミド、並びに、種々の抗炎症ステロイドおよびタンパク質同化ステロイドが挙げられる。さらに、転写因子はしばしば、薬剤によるシグナル伝達カスケードを通じて、間接的に調節される。

上記の通り、本発明は、ポリペプチドと核酸、特にDNA、との相互作用に関する価値のある情報を与える、核酸、特にDNA、が関与する分子間相互作用のマッピング方法に関する。核酸はいかなる供給源由来であってもよく、例えば細胞由来、特に核酸−タンパク質複合体を含む細胞由来であってよい。細胞はヒト細胞、動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、古細菌細胞、植物細胞またはウイルスであることが好ましい。より好ましくは、細胞はヒト細胞である。しかし、細胞は非天然の供給源由来であってもよく、例えば、操作された細胞または人工的に改変された細胞、特に遺伝子改変細胞由来であってよい。さらに、ヒト細胞または動物細胞は、異常細胞であってもよく、非異常細胞であってもよく、患部組織に由来する細胞であってもよく、非患部組織に由来する細胞であってもよい。これに関連して、ヒト細胞または動物細胞は、がん細胞であってもよく、免疫細胞であってもよく、血液細胞であってもよく、または幹細胞であってもよい。細胞はがん細胞であることが好ましい。がんは固形がんであっても血液がんであってもよく、特に、白血病または腫瘍である。転写の変化、すなわち、DNAの接触性の変化、ヒストンの修飾、転写因子の修飾等、と関連した公知のがんは、Yeh et al. (2013) Curr. Opin. Oncol. 25(6)に要約されている。細胞は胚細胞であってもよい。

本発明の方法は少数の細胞の解析に特に有用であるため、解析予定の核酸の供給源として利用可能な細胞を限定された数しか含まない供給源が特に想定されることは明らかである。このような供給源には、ヒトまたは動物の初期胚形成期が含まれる。疾患、特にヒト疾患、の場合、疾患の性質、例えば、がんの転移、原発腫瘍の小ささまたは患部器官の小ささ、組織型の希少さおよび細胞型の希少さ、によって細胞数が限定される場合がある。ヒト臨床試料の細胞数は、試料を得るためのアプローチ、例えば針生検または採血、によってさらに限定される可能性がある。従って、そのような供給源に由来する試料も、本発明の方法での使用が企図される。さらに、細胞数は他の制限、例えば動物の保護、動物の希少性、または動物の絶滅危惧等、により限定される場合がある。さらに、本発明の方法は、単一動物研究(single-animal study)、特に線虫(C. elegans)またはゼブラフィッシュ等の小動物の単一動物研究において特に有用である。

本発明の方法では、シーケンスライブラリーの調製または核酸を含む分子間の相互作用のマッピングに先立ち、核酸を含む試料が、細胞の培養および回収;細胞の固定;細胞の溶解による核酸を含む第一試料の入手;並びに試料の超音波処理による核酸を含む第二試料の入手、によって調製されることが好ましい。前記第二試料は、シーケンスライブラリーの調製または核酸を含む分子間の相互作用のマッピングのために、本発明の方法において使用されることが好ましい。核酸を含む試料が初代細胞試料、例えばドナー由来の試料、である場合、培養および回収の工程は省略してよい。従って、核酸を含む試料が初代細胞試料である場合、本発明の方法は、細胞の固定;細胞の溶解による核酸を含む第一試料の入手;および第一試料の超音波処理による核酸を含む第二試料の入手、をさらに含むことが好ましい。

従って、核酸を含む試料は、細胞の培養および回収を含む方法によって調製されることが好ましい。これは、当該技術分野において周知の方法を用いて行われてよい。特に、培養法は解析に使用される細胞型に好適でなければならない。そのような方法は、例えば、Helgason et al. (2005) Basic Cell Culture Protocols, Methods in Molecular Biology or Freshney (2010) Culture of Animal Cells, Wiley-Blackwellに記載されている。細胞の回収も、当該技術分野で報告されている周知の方法によって行われる。例えば、細胞は遠心分離によって回収してもよく、これにより、得られた細胞ペレットには細胞が存在し、一方、上清には使用された培地が含有されることとなる。

培養した細胞を回収した後、細胞は固定される場合がある。固定は試料を腐敗から保護するために用いられる。すなわち、このプロセスにおいて、構造は天然状態(例えば生組織)に(化学的に、且つ構造的に)可能な限り近い状態に保存される。これには、組織のタンパク質および/または核酸を不溶性にすることで安定化することができる化学的固定液が必要となる。そのような状態の保存に加えて、固定液は、試料中に含まれる高分子、特にタンパク質および/または核酸、を架橋させるのに使用される。

すなわち、架橋固定液(crosslinking fixative)は、高分子、特にタンパク質および/または核酸、の間に化学的な共有結合を生成することによって作用する。これに関連して、周知の固定液はホルムアルデヒドである。ホルムアルデヒドは、リン酸緩衝食塩水中およそ3.7%〜4.0%のホルムアルデヒドである、10%中性緩衝ホルマリン(NBF)として使用されることが好ましい。ホルムアルデヒドは室温で気体であるため、ホルムアルデヒド固定液を作製する場合、水に溶解されたホルマリン−ホルムアルデヒド気体(約37%w/v)が使用される。パラホルムアルデヒドはホルムアルデヒドの重合形態であり、通常は白色の細粉として得られ、加熱されると脱重合してホルマリンに戻る。ホルムアルデヒドは、タンパク質、主に塩基性アミノ酸であるリジン残基、を架橋結合することにより組織を固定する。その効果は過剰な水により可逆性となり、これによりホルマリン色素の沈着が回避される。他の利点としては長期貯蔵および良好な組織透過性が挙げられる。もう1つの一般的な固定用アルデヒドはグルタルアルデヒドである。グルタルアルデヒドは、ホルムアルデヒドと同様に、タンパク質内のαヘリックス構造の変形を引き起こすことにより機能する。しかし、グルタルアルデヒドはホルムアルデヒドより大きな分子であるため、グルタルアルデヒドの膜を通じた拡散速度はホルムアルデヒドより遅い。結果的に、厚みのある試料に対するグルタルアルデヒドによる固定が妨げられる場合があるが、この問題は試料のサイズを縮小させることで克服することができる。グルタルアルデヒド固定の利点の1つは、より強固な、または固く結合した固定産物を与え得ることであり、グルタルアルデヒドの長さおよび2つのアルデヒド基は、グルタルアルデヒドが「架橋」してより遠くのタンパク質分子対を連結することを可能にする。グルタルアルデヒド固定は、急速且つ不可逆的な変化を引き起こし、迅速に固定し、電子顕微鏡観察によく適しており、4℃でよく固定し、最良の全体的な細胞質および細胞核の詳細を与える。しかし、グルタルアルデヒド固定は免疫組織化学染色には適していない。

固定プロトコルの中には、各々の強みで互いを補い合うように、ホルムアルデヒドとグルタルアルデヒドの組み合わせを要求するものもある。これらの架橋固定液(特にホルムアルデヒド)は、タンパク質の二次構造を保存する傾向があり、三次構造もかなりの量保護し得る。

しかし、別の手段を用いて固定を行ってもよく、例えば、Zhang et al. (2004) Biochem Biophys Res Commun 322(3), 705-11に記載されているような、物理的手段、特に紫外光、を用いた非化学的固定が挙げられる。あるいはまたは加えて、例えば、Benedetti et al. (2014) Methods Mol Biol 1204:24-34に記載されているような、レーザー、特に紫外線レーザー、を用いて固定を行ってもよい。すなわち、固定は化学物質および/または物理的手段を用いて行うことが好ましい。これに関連して、物理的手段は紫外光または紫外線レーザーを含むことが好ましい。固定は、化学物質、好ましくはホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド、を用いて行うことが好ましい。

導入された架橋結合は、ライブラリー調製の後、すなわち、トランスポザーゼの添加の後、クロマチンから核酸を単離するより前に、除去され得る。架橋結合の除去は当該技術分野において周知の方法を用いて行ってよい。

例えば、ホルムアルデヒド架橋は試料を加熱することにより除去され得る。試料は約65℃に、好ましくは数時間かけて、加熱されることが好ましい。具体的には、約65℃に、4時間以上、例えば一晩かけて、試料を加熱してよい。あるいは、約95℃に約10〜15分間かけて試料を加熱してもよい。しかし、核酸を含む試料の完全性を保持するには、低温、特に約65℃、への加熱が好ましい。加熱に加えて、界面活性剤および/または塩(例えば0.5〜1%SDSおよび/または約300mM NaCl)を添加して架橋を除去してもよい。さらに、架橋除去後に、リボヌクレアーゼおよび/またはプロテアーゼKを添加して、核酸、特にDNA、を含む試料からタンパク質および/またはRNAをそれぞれ除去してもよい。一例として、試料は、0.5μlの10mg/mlリボヌクレアーゼA(デオキシリボヌクレアーゼを含有しないリボヌクレアーゼ)で37℃で30分間、次いで、1μlの20mg/mlプロテアーゼKで55℃で1〜2時間、処理され得る。

本発明の方法の超高速な構成では、試料は脱架橋のために高温に加熱され得る。具体的には、試料は脱架橋のために約95℃に加熱され得る。このような高温は、脱架橋に必要な時間を有意に短縮し得る。具体的には、脱架橋に必要な時間は、約65℃で約4時間のような数時間から、約95℃では約10〜15分間に短縮され得る。本発明の方法で使用されるトランスポザーゼはアダプター配列を含むオリゴヌクレオチドを含むことが好ましく、また、本発明の方法において脱架橋はトランスポザーゼの添加の後に行われるため、このようなアダプター配列は脱架橋の前に組み込まれ得る。従って、このような高温は、標準的なChIPプロトコルを用いる際には使用することができない。これは、高温への加熱がChIP DNAを変性させるであろうということ、および、ChIP DNAの複雑さにより、正しく再アニーリングしない断片(特にATリッチ配列)があるということが理由である。二本鎖アダプターのライゲーションによってライブラリーを調製する際、正しく再アニーリングしなかったChIP DNA断片は、最終的なライブラリーから排除され、配列決定バイアスをもたらす可能性がある。しかし、本発明の方法では、脱架橋のために、約95℃のような高温を使用することができる。これにより、全体的なアッセイ時間が著しく短縮される(実施例14参照)。さらに、脱架橋のために約95℃のような高温を用いることで、ビーズから溶離させる工程が回避される。ビーズからの溶離を回避することにより、使用される方法の複雑さ(complexicity)がさらに低減され、本発明の方法の実施に必要な全体時間がさらに短縮される。これは、ビーズからの溶離が、例えばSDSおよび/または高濃度の塩を用いる、後のPCR工程と適合しない緩衝液の使用を含むからである。このような緩衝液は、事前のDNA精製無しでのライブラリーの増幅を困難または不可能にする。すなわち、本明細書に記載の超高速な構成はDNA精製を不要にする。本発明の方法が脱架橋のために高温、特に約95℃の温度、の使用を含む場合、本方法は、高温の適用に先立ちトランスポザーゼ反応中に導入されたオリゴヌクレオチドを末端修復する工程、すなわち、アダプター配列を埋める工程、特に、トランスポザーゼ反応中に導入されたオリゴヌクレオチドを含む鎖と対向する逆の鎖上のアダプター配列を埋める工程、も含むことが好ましい。従って、本発明の方法は、脱架橋のために約95℃のような高温が使用される場合、高温の適用前に末端修復のためのPCR成分を添加する工程を含むことが好ましい。この末端修復は、ビーズ上で、PCR MMを用いて、加熱前に、末端修復条件(例えば72℃で5分間)において、TaqポリメラーゼのようなDNAポリメラーゼを用いて、行われることが好ましい。しかし、末端修復は、末端修復用ミックス(end-repair mix)を用いてより低い温度で行われてもよい。

従って、本発明は超高速のシーケンスライブラリー調製方法を提供する。超高速シーケンスライブラリー調製方法は、架橋結合により固定された、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;前記剤が結合した単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加;トランスポザーゼ反応中に生成されたオリゴヌクレオチド末端の充填;高温、好ましくは約95℃、での脱架橋;およびシーケンスライブラリーの入手、を含む。さらに、本発明は、核酸を含む分子間の相互作用の超高速マッピング方法に関する。分子間相互作用の超高速マッピング方法は、核酸を含む試料へのクロマチン結合剤の添加;前記剤が結合したクロマチンの単離;前記剤が結合した単離されたクロマチンへのトランスポザーゼの添加;トランスポザーゼ反応中に生成されたオリゴヌクレオチド末端の充填;高温、好ましくは約95℃、での脱架橋;核酸の増幅;増幅された核酸の配列決定;および分子間相互作用の特定、を含む。これに関して、超高速とは、本発明の超高速法が公知の方法で予想される全体的な実験時間を有意に短縮することを意味する。具体的には、本発明の超高速法は、1仕事日未満、すなわち約10時間足らずでの、シーケンスライブラリーの調製または分子間相互作用のマッピングを、それぞれ可能にする。試料の入手、例えばドナーからの血液試料の入手、からシーケンスライブラリーの入手までの、シーケンスライブラリー調製に必要な全体時間は、約15時間の範囲内である。

本発明の方法は細胞を溶解する工程をさらに含んでもよい。溶解とは細胞膜の破壊を指す。これは、当該技術分野において周知の方法によって達成されてよい。具体的には、溶解は機械的手段または化学的手段で達成されてよい。例えば、反復的な凍結融解、超音波処理、圧力、または濾過によるような、細胞膜の機械的破砕が採用されてよい。しかし、溶解は、特に酵素または界面活性剤または他のカオトロピック剤を用いる化学的手段によって達成されることが好ましい。好ましい細胞溶解法は、Thermo Scientific Pierce Cell Lysis Technical Handbook or Lottspeich, Engels (2012) Bioanalytik, Springer Spektrumに記載されている。これに関連して、本発明の方法で使用される溶解は、細胞試料から核酸を単離して核酸を含む第一試料を入手するために行われる。前記第一試料は本発明の方法を用いるさらなる解析に使用される、すなわち、前記第一試料は、特に超音波処理を用いる、さらなる試料調製に使用されるか、または、シーケンスライブラリー調製もしくは核酸を含む分子間の相互作用のマッピングのために本発明の方法を用いてそのまま解析される。

従って、一実施形態において、細胞溶解の後に、本発明の方法は超音波処理の工程を含み得る。超音波処理は、化学的効果および物理的効果の両方を多数もたらす。生物学的応用において、超音波処理は生体物質を破壊または非活性化するために一般的に使用されている。例えば、超音波処理は、細胞膜を破壊し、細胞内容物を放出させるために、しばしば使用される。このプロセスはソノポレーション(sonoporation)と呼ばれている。超音波処理は核酸分子、特にDNA、を断片化するのにも使用され、短時間の超音波処理を受けた核酸、特にDNAが、より小さな断片に剪断される。超音波処理は、核酸およびタンパク質を含有する分子複合体、特に核酸(特にDNA)を含有するクロマチン、を断片化するのにも使用され、複合体は、複合体内の内容物である核酸、特にDNA、がより小さな断片に剪断される、短時間の超音波処理を受ける。これに関連して、特定の長さを有する、且つ/または、核酸、特にDNA、を含む試料に含有される断片の大部分が特定の長さを有する、核酸、特にDNA、の断片を作製するための、超音波処理の強度の調整方法は周知である。これに関して、核酸、特にDNA、を含む試料は、200〜700塩基対の長さを有する断片を含むことが好ましい。従って、超音波処理は、核酸断片の大部分が200〜700塩基対の長さとなるまで行われることが好ましい。そのような断片を作製するための、超音波処理の強度および期間の調整方法は周知である。さらに、超音波処理の構成を検証するための、そのような断片の長さを測定する方法も周知である。

これに関連して、超音波処理の構成は、核酸試料を得るための固定条件および細胞株/組織/細胞型/器官に依存し得る。さらに、超音波処理の構成は、使用される超音波処理装置にも依存し得る。

核酸試料、特にDNAを含む試料、を断片化するのに、別の手法を用いることも想定される。例えば、クロマチンに含まれる核酸の断片化には、酵素消化を用いることができる。例示となる酵素は、fragmentase(NEB社)またはMNase(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞外ヌクレアーゼ)である。クロマチンに含まれる核酸を断片化するのに、化学薬品、または超音波以外の他の物理的方法を用いることもできる。

超音波処理の結果を、当該技術分野において周知の方法で検証する場合がある。例えば、核酸、特にDNA、の断片の大部分が200〜700塩基対の長さであるかどうかを検証するために、アガロースゲル電気泳動を用いて断片長を検査する場合がる。

上記の通り、本発明の方法は、第一工程として、上記の準備工程の後に、核酸、特にDNA、を含む試料への、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質、の添加を含む。核酸、特にDNA、を含む試料は、上記の通り、細胞由来であることが好ましい。クロマチン結合剤の添加後、前記剤が結合したクロマチンは単離される。具体的には、前記剤が結合したクロマチンが未結合のクロマチンから単離される。それにより、クロマチンの総量が大きく減少して、タグメンテーション現象が減少する。クロマチンの単離は、当該技術分野において報告されている種々の手法によって達成され得る。例えば、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質は、親和性による相互作用を介して、表面上に固定化することができる。これらの表面は粒子(ビーズ)であることが好ましい。しかし、他の表面、例えばカラム、も想定される。クロマチン結合剤が抗体である場合、抗体のFc部分がプロテインA、プロテインGまたはプロテインL等を介してビーズ表面に結合し得る。これに関連して、プロテインAは、細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁に元々存在する、42kDaの表面タンパク質である。プロテインAはspa遺伝子によってコードされており、spa遺伝子の制御は、DNAトポロジー、細胞内モル浸透圧濃度、およびArlS−ArlRと呼ばれる二成分系によって調節されている。プロテインAは、免疫グロブリンへの結合能を有することから、生化学研究で一般的に使用されている。あるいは、抗体はプロテインGを介して表面に結合する場合があり、プロテインGは、プロテインAにかなり似て、C群およびG群の連鎖球菌属細菌において発現される免疫グロブリン結合タンパク質であるが、結合特異性が異なっている。プロテインGは、65kDa(G148プロテインG)および58kDa(C40プロテインG)の細胞表面タンパク質であり、Fab領域およびFc領域へのその結合性を介した抗体精製に一般的に使用されている。従って、抗体であるクロマチン結合剤が、プロテインA、プロテインGまたはプロテインL等を介してビーズに結合することにより、前記剤、特に抗体、が結合したクロマチンを未結合のクロマチンから単離することが可能である。

本発明の方法において、クロマチンは、他の手段、例えばクロマチン結合剤に結合させたアフィニティ−タグ、によって単離されてもよい。例えば、アフィニティ−タグには、それぞれストレプトアビジンまたはニッケルと結合することができる、ビオチンまたはHisが含まれ得る。多成分アフィニティ−タグ複合体の他の例としては、リガンドおよびその受容体、例えば、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチン、およびビオチンの誘導体、ストレプトアビジンの誘導体、またはアビジンの誘導体、例えば、限定はされないが、2−イミノビオチン、デスチオビオチン、NeutrAvidinおよびCaptAvidin等;結合タンパク質/結合ペプチド、例えば、マルトース−マルトース結合タンパク質(MBP)、カルシウム−カルシウム結合タンパク質/結合ペプチド(CBP);抗原−抗体、例えば、エピトープタグ、およびそれらの対応する抗エピトープ抗体;ハプテン、例えば、ジニトロフェニルおよびジゴキシゲニン、並びにそれらの対応する抗体;アプタマーおよびそれらの対応する標的;ポリHisタグ(例えば、ペンタHisおよびヘキサHis)およびそれらの結合パートナー、例えば、対応する固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)物質および抗ポリHis抗体;並びに、フルオロフォアおよび抗フルオロフォア抗体、等が挙げられる。

従って、化学物質であるクロマチン結合剤は、ビオチンで標識されていることが好ましい。

ビーズは、磁気ビーズ、ラテックスビーズまたはアガロースをベースとした物質等とすることができる。固定化された標的クロマチンは、次いで、ビーズの単離によって単離することができる。これは、フィルター上にクロマチン結合剤を有するビーズを保持するフィルターカラムを用いるスピン遠心分離で達成することができ、一方、未結合クロマチン画分はそのフィルター通過し、廃棄され得る。磁気ビーズの場合、磁力がビーズに加えられることで反応器内に保持され、一方、未結合クロマチン画分は例えばピペット操作により廃棄され得る。前記剤は、クロマチンへの添加の前に、表面/ビーズに予め結合させておくこともできる。前記剤は、予め結合させておく場合、表面に化学的に架橋することもでき、クロマチンを単離するのに親和性による相互作用だけに依存しない。一例として、タンパク質をビーズに結合させるのに、ピメルイミド酸ジメチル(DMP)を用いることができる。クロマチンの単離は、クロマチンと前記剤との非特異的な相互作用、またはクロマチンと単離用試薬の反応器もしくは表面との非特異的な相互作用を排除するための洗浄工程によって、しばしば補助される。前記剤により単離されたクロマチンまたは上記の手順により単離された化学物質の洗浄は、塩および界面活性剤を含む化学物質を含有する緩衝水溶液を添加し、後にそれを除去することにより、達成される。従って、本発明の方法は、クロマチン結合剤が結合したクロマチンの単離の後に、洗浄工程をさらに含んでいてもよい。

クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質、が結合したクロマチンの単離の後、単離されたクロマチンにトランスポザーゼが添加される。トランスポザーゼは、トランスポゾンの末端に結合し、切り貼り機構(cut and paste mechanism)または複製転位機構により、トランスポゾンの別のゲノム部分への移動を触媒する酵素である。トランスポザーゼはEC番号EC2.7.7に分類される。トランスポザーゼをコードする遺伝子はほとんどの生物のゲノムに広く存在しており、知られている中で最も豊富な遺伝子である。本発明との関連において好ましいトランスポザーゼは、トランスポザーゼ(Tnp)Tn5である。Tn5は、レトロウイルスのインテグラーゼを含むリボヌクレアーゼタンパク質スーパーファミリーのメンバーである。Tn5はシェワネラ属細菌および大腸菌属細菌で見られる。トランスポゾンは、カナマイシンおよび他のアミノグリコシド抗生物質に対する抗生物質耐性をコードする。Tn5および他のトランスポザーゼは著しく不活性である。DNA転位現象は本質的に変異原性であるため、トランスポザーゼの活性が低いことは、宿主において致命的な変異が生じて転位因子が排除されるリスクを減らすために、必要なことである。Tn5がそのように非反応性である理由の1つは、N末端およびC末端が互いに比較的ごく接近して存在しており、互いに阻害し合う傾向があるためである。これは、トランスポザーゼの高活性型をもたらした、いくつかの変異の特徴付けによって解明された。そのような変異の1つであるL372Pは、Tn5トランスポザーゼ内の372番アミノ酸の変異である。通常、このアミノ酸はαヘリックスの中央にあるロイシン残基である。このロイシンがプロリン残基で置換された場合、αヘリックスが破壊され、C末端ドメインに立体構造変化が生じ、タンパク質の高活性化を促進するに足りるほどC末端ドメインがN末端ドメインから分離される。従って、天然のTn5トランスポザーゼよりも高い活性を有する、そのような修飾されたトランスポザーゼを用いることが好ましい。さらに、本発明の方法で使用されるトランスポザーゼが、標的核酸、特に標的DNA、に挿入されるオリゴヌクレオチドを積載していることがさらに好ましい。

例えば、配列番号1もしくは配列番号2の核酸配列または配列番号1もしくは配列番号2のいずれかと80、85、90、95、96、97、98もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるトランスポザーゼが、本発明の方法で使用され得る。これに関して、トランスポザーゼは、配列番号3に示される核酸配列を有する発現ベクターを用いて、または、配列番号1または配列番号2のいずれかと80、85、90、95、96、97、98もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるトランスポザーゼに相当する、トランスポザーゼをコードする配列を含む発現ベクターを用いて、作製され得る。

従って、高活性Tn5トランスポザーゼおよびTn5型トランスポザーゼ認識部位(Goryshin and Reznikoff, J. Biol. Chem., 273:7367 (1998))、またはR1末端配列およびR2末端配列を含むMuAトランスポザーゼおよびMuトランスポザーゼ認識部位(Mizuuchi, K., Cell, 35: 785, 1983; Savilahti, H, et al, EMBO J., 14: 4893, 1995)を使用することが好ましい。本発明の方法で使用することができる転位系のさらなる例としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)Tn552(Colegio et al, J. Bacteriol, 183: 2384-8, 2001 ; Kirby C et al, Mol. Microbiol, 43: 173-86, 2002)、Ty1(Devine & Boeke, Nucleic Acids Res., 22: 3765-72, 1994および国際公開第95/23875号)、トランスポゾンTn7(Craig, N L, Science. 271 : 1512, 1996; Craig, N L, Review in: Curr Top Microbiol Immunol, 204:27-48, 1996)、Tn10およびIS10(Kleckner N, et al, Curr Top Microbiol Immunol, 204:49-82, 1996)、Marinerトランスポザーゼ(Lampe D J, et al, EMBO J., 15: 5470-9, 1996)、Tel(Plasterk R H, Curr. Topics Microbiol. Immunol, 204: 125-43, 1996)、P因子(Gloor, G B, Methods Mol. Biol, 260: 97- 1 14, 2004)、Tn3(Ichikawa & Ohtsubo, J Biol. Chem. 265: 18829-32, 1990)、細菌性挿入配列(bacterial insertion sequence)(Ohtsubo & Sekine, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 204: 1-26, 1996)、レトロウイルス(Brown, et al, Proc Natl Acad Sci USA, 86:2525-9, 1989)、並びに酵母のレトロトランスポゾン(Boeke & Corces, Annu Rev Microbiol. 43 :403-34, 1989)が挙げられる。さらなる例として、IS5、Tn10、Tn903、IS911、およびトランスポザーゼファミリー酵素の改変型(Zhang et al, (2009) PLoS Genet. 5:e1000689. Epub 2009 Oct 16; Wilson C. et al (2007) J. Microbiol. Methods 71 :332-5)、並びに米国特許第5,925,545号;同第5,965,443号;同第6,437,109号;同第6,159,736号;同第6,406,896号;同第7,083,980号;同第7,316,903号;同第7,608,434号;同第6,294,385号;同第7,067,644号、同第7,527,966号;および国際公開第2012103545号(全て、その全体が参照によって本明細書に明確に援用される)に記載されるものが挙げられる。

使用されるトランスポザーゼに好適であればいかなる緩衝液も本発明の方法で使用してよいが、使用されるトランスポザーゼの効率的な酵素反応に特に適した緩衝液を使用することが好ましい。これに関して、ジメチルホルムアミドを含む緩衝液は、本発明の方法、特にトランスポザーゼ反応中、における使用に特に好ましい。加えて、TAPS、トリス−酢酸または同様の系を包含する別の緩衝系を含む緩衝液も使用することができる。さらに、ポリエチレングリコール(PEG)のようなクラウディング試薬は、ごく少量のDNAのタグメンテーション効率を上げるのに特に有用である。タグメンテーション反応に特に有用な条件は、Picelli et al. (2014) Genome Res. 24:2033-2040に記載されている。

トランスポザーゼ酵素は、標的核酸(特に標的DNA)における核酸(特にDNA)の挿入を触媒する。挿入のための標的核酸、特に標的DNAは、クロマチン結合剤、特に抗体または化学物質、が結合した単離されたクロマチンに含まれる。本発明の方法で使用されるトランスポザーゼは、標的核酸、特に標的DNA、に挿入されるオリゴヌクレオチドを積載している。トランスポザーゼおよびオリゴヌクレオチドの複合体はトランスポソームとも称される。トランスポソームは、組込みのための2つの異なるオリゴヌクレオチドを含むヘテロ二量体であることが好ましい。これに関して、トランスポザーゼに積載されたオリゴヌクレオチドは、複数の配列を含む。具体的には、オリゴヌクレオチドは、少なくとも、第一の配列および第二の配列を含む。第一の配列はオリゴヌクレオチドのトランスポザーゼへの積載に必要である。オリゴヌクレオチドをトランスポザーゼに積載するための例示的な配列は、米国特許出願公開第2010/0120098号に記載されている。第二の配列は、増幅中、特にPCR増幅中、に結合するプライマーに必要とされるリンカー配列を含む。このようにして、第一の配列および第二の配列を含むオリゴヌクレオチドは、トランスポザーゼ酵素によって標的核酸、特に標的DNA、に挿入される。オリゴヌクレオチドはバーコード配列を含む配列をさらに含んでいてもよい。バーコード配列はランダム配列であってもよいし、または所定の配列であってもよい。これに関連して、本発明における用語「ランダム配列」は、各々の位置が、独立して且つ同等に、任意のヌクレオチドである可能性を有する、ヌクレオチドの配列と理解されたい。ランダムなヌクレオチドは、任意の順序の、任意のヌクレオチド、例えば、G、A、C、T、U、またはその化学的類似物、とすることができ、ここで、Gはグアニンヌクレオチドを、、Aはアデニンヌクレオチドを、Tはチミンヌクレオチドを、Cはシトシンヌクレオチドを、Uはウラシルヌクレオチドを表すと理解される。公知のオリゴヌクレオチド合成法が、本質的に、ヌクレオチドG、A、C、TまたはUの不均等な出現をもたらし得ることは、当業者に理解される。例えば合成は、ランダム化されたDNA配列にG等のヌクレオチドの過剰出現をもたらし得る。これは、均等なヌクレオチド提示に基づいて期待される、ユニークなランダム配列の数の減少をもたらし得る。標的核酸、特にDNA、に挿入するためのオリゴヌクレオチドは、シーケンスアダプター、例えばナノポアシーケンシングまたはロシュ社454シーケンシングに好適なアダプター、をさらに含んでいてもよい。さらに、オリゴヌクレオチドはビオチンタグ配列を含んでいてもよい。トランスポザーゼに積載されたオリゴヌクレオチドは、インデックス付け(indexing)のための、前記第一配列および第二配列並びにバーコード配列を含むことが好ましい。トランスポザーゼ反応におけるバーコード配列の組込みは、配列決定解析および/または分子間相互作用のマッピングにおける、各核酸断片、特にDNA断片、の固有の識別を可能にする。

使用されるトランスポザーゼが核酸(特にDNA)を標的核酸(特に標的DNA)に効率的に組み込むのに必要な時間が、緩衝液の成分および温度等の様々なパラメーターに依存して変動し得ることは、当業者によく知られている。従って、最適なインキュベーション時間が見つかるまでに、様々なインキュベーション時間が試験/適用され得ることを、当業者はよく理解している。これについて、最適とは、組込み効率および/または本発明の方法を実行するための所要時間を考慮した最適な時間を指す。種々のインキュベーション時間が、前記核酸(特に前記DNA)の前記標的核酸(特に標的DNA)への効率的な組込みと必ずしも相関しているわけではないが、10分未満、5分未満、好ましくは、2分未満のインキュベーション時間を使用することが好ましい。タグメンテーション反応には、1分間の反応時間を採用することが最も好ましい。さらに、温度および体積のようなパラメーターも最適化され得る。これに関して、Tn5トランスポザーゼの推奨インキュベーション温度は約37℃である。従って、本発明の方法は、トランスポザーゼを添加した後、タグメンテーションのために約37℃で好ましくは約1分間インキュベートする工程を含むことが好ましい。別の反応温度を採用してもよいが、試料の完全性およびトランスポザーゼの効率を維持するために、約16℃超且つ約55℃未満の温度の使用が好ましい。

トランスポザーゼが単離されたクロマチンに添加された後、核酸、特にDNA、がクロマチンを含む試料から単離され、すなわち、核酸、特にDNA、が残りのクロマチン成分から分離される。これは当該技術分野において公知の種々の手法によって達成され得る。例えば、核酸、特にDNAは、カラム精製、フェノール−クロロホルム抽出、その後のエタノール沈殿、固相可逆的固定化(Solid Phase Reversible Immobilisation)およびChelex(登録商標)100、並びに他の当該技術分野において公知の手法を用いて精製することができる。カラム精製は、核酸、特にDNA、の固相(シリカまたは他の固相)への結合(吸着)に基づいており、使用される緩衝液のpHおよび塩含有量に依存している。試料の遠心分離後、有機相には変性タンパク質が残り、一方、核酸、特にDNA、を含有する水相はクロロホルムと混合され、溶液からフェノール残渣が除去される。水相からDNAを単離するために、フェノール−クロロホルムに続いて、エタノール沈殿またはイソプロパノール沈殿が行われる。DNAは、これらのアルコール中で不溶性であるため、凝集し、遠心分離後にペレットを与える。DNAの沈殿は、イオン強度を上げることにより、通常、酢酸ナトリウムを添加することにより、向上する。Chelex(登録商標)100は、バイオラド社から流通されるキレート化物質であり、イオン交換を介した他の化合物の精製に使用されている。Chelex(登録商標)100はDNAの精製に使用することもできる。SPRI(固相可逆的固定化)ビーズは常磁性(磁場でのみ磁性を持つ)である。各ビーズは、ポリスチレンが、一層の磁鉄鉱層で囲まれ、カルボキシル分子で被覆されたものである。このビーズが、「クラウディング剤」ポリエチレングリコール(PEG)および塩(通常、20%PEG、2.5M NaCl)の存在下で、DNAと可逆的に結合する。PEGは負に帯電したDNAをビーズ表面上のカルボキシル基と結合させる。固定化は反応におけるPEGおよび塩の濃度に依存しているため、ビーズ対DNAの体積比は重大な意味を持つ。DNA精製は、溶液へのリボヌクレアーゼおよびプロテアーゼの添加によるRNAおよびタンパク質の除去によって、しばしば補助される。

核酸の単離後、シーケンスライブラリーが上記のように入手され得る。具体的には、配列決定に適合する核酸、特にDNA、のライブラリーは、配列決定に必要なアダプター配列を含む核酸、特にDNA、の断片を含む。すなわち、本発明のシーケンスライブラリー調製方法は、前記アダプター配列を組み込むための増幅工程をさらに含んでいてもよい。増幅は以下のように行われる。アダプター配列は、シーケンスライブラリーの調製後に使用される配列決定法によって異なる。例えば、イルミナ社の配列決定法が使用される場合、i5末端およびi7末端が核酸断片に結合され得る。これは、トランスポザーゼ酵素に積載されたオリゴヌクレオチドが配列決定に適合したアダプター配列を含む、トランスポザーゼ反応によって達成されてもよい。

本発明の方法が、核酸を含む分子間の相互作用のマッピング方法である場合、核酸は単離後に増幅される。増幅は、当該技術分野において公知の種々の手法によって達成され得る。核酸、特にDNA、を増幅するための最もよく知られた手法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、PCRでは、試料が、試料中の核酸鋳型へのプライマーのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、オリゴヌクレオチドプライマー対と接触する。プライマーは、適切な条件下で伸長し、鋳型から分離し、再びアニーリングし、伸長し、分離することで、核酸のコピーの数を増幅する。このサイクルは反復可能である。増幅産物は、電気泳動、制限酵素切断パターン、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションもしくはライゲーション、および/または核酸配列決定等の手法によって、特徴付けすることができる。

本発明の方法での使用に適したプライマーは、本発明の方法で使用されるトランスポソームに含まれるオリゴヌクレオチドに含まれる第二の配列にハイブリダイズ可能な配列を含む。加えて、プライマーは配列決定に必要な配列を含んでいてもよい。本発明の方法では、後に使用される配列決定法に適合する特異的プライマーが使用されることが好ましい。これに関して、イルミナ社の配列決定法は、本発明の方法で使用される1つの好ましい配列決定法として、クラスター増幅に必要なフローセルにハイブリダイズ可能な、フローセル上末端(flowcell end)を導入するプライマーと適合する。これに関して、プライマーは、イルミナ社の配列決定法のための、i5末端およびi7末端を導入してもよい。さらに、プライマーは、多サンプル化のためのバーコードを導入してもよい。具体的には、プライマー配列に含まれるバーコードは、PCR複製物を識別するためのユニークな分子識別子として、および/または、1つの配列決定ランに複数の実験を組み合わせるための所定のバーコードとして、使用され得る。

本発明の核酸、特にDNA、が関与する分子間相互作用のマッピング方法では、増幅されたDNAが配列決定される。当該技術分野において公知の様々な配列決定法がある。一般的に配列決定は、固相上のピロシーケンス(454 sequencing、ロシュ社)、可逆的な転写終結を用いる合成時配列決定法(sequencing-by-synthesis)(ILLUMINA(登録商標)Genome Analyzer)、またはナノポア社技術(例えば、オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ社製(Oxford Nanopore Technologies)のMinION(商標))を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、単離されたタグ付き断片が、例えばヌクレオチド配列決定により、解析される。いくつかの例では、ヌクレオチド配列は、増幅を用いる、または増幅を用いない、配列決定法またはハイブリダイゼーション法を利用して決定される。

核酸の配列決定により得られた配列情報を基に、当該技術分野において公知の手段を用いて、分子間相互作用を特定することができる。例えば、配列決定された核酸をゲノム配列に対してアラインメントする配列比較用ソフトウェアを用いて、データを解析してよい。ゲノム配列は、自由にアクセス可能なデータ供給源から、一般的に知られ、入手可能なものである。解析対象の試料中に存在する配列決定された核酸とゲノム配列との一致は、前記配列決定された核酸に、本発明の方法におけるクロマチン結合剤により認識される高分子、例えばヒストンまたは転写因子、が結合していることの指標として用いられ得る。

クロマチン結合剤が化学物質、例えば薬剤、である場合、解析対象の核酸断片に含まれるゲノム配列に対する一致は、化学物質、例えば薬剤の、クロマチンに含まれる特定の核酸領域に対する結合を示す。

ゲノム配列に対する配列決定された核酸の一致に基づき、統計的計算法を用いて、有意な結合領域を決定し、それらの領域を非特異的な「バックグラウンドシグナル」から区別することができる。特定された領域は、遺伝子発現データセット、ゲノムアノテーションデータセット、遺伝子オントロジーデータセットまたは他のシステム生物学データセットを含む他のデータセットとの関連付けにより、それら領域の生物学的役割のさらなる推測に用いることができる。

クロマチン結合剤、特に化学物質、例えば薬剤、が結合した前記核酸に由来する領域を蓄積させることにより、計算法を用いて、前記領域の特筆すべき配列特徴を決定することもできる。このようなアプローチは、特定の転写因子に結合されることが知られている特定のDNA結合モチーフの濃縮を見つけるために使用することができる。

本発明の方法は、トランスポザーゼ酵素がアクセスできない、標的核酸、特にDNA、に含まれる領域の特定に使用することもできる。具体的には、本発明の方法を用いてシーケンスライブラリーが作製される場合、シーケンスライブラリー断片が、標的クロマチンにおけるトランスポザーゼによる配列決定適合性オリゴヌクレオチドの導入によって作製され得る。核酸およびタンパク質を含むクロマチンにおいて、クロマチンに含まれるタンパク質は、シーケンスライブラリーの調製を妨げることなく、DNA−タンパク質相互作用部位において、標的核酸、特にDNA、へのアダプター組込みにある程度介入し得る。トランスポザーゼ挿入から保護された前記核酸領域が計算法により特定され得る。このような領域は、クロマチンに含まれるタンパク質の「フットプリント」であることから、高解像度の相互作用を示すものとなる。

本発明の方法は1本のチューブ内で行われてもよいが、反応中にチューブ換え(tube transfer)を含むことが好ましい。具体的には、反応チューブはトランスポザーゼの添加の前に交換され得る。追加で、または代わりに、トランスポザーゼの添加後、トランスポザーゼ反応が終了した後に、チューブが交換される場合もある。後者の場合、チューブ壁に付着している非特異的なクロマチン断片のタグメンテーションが減少する。従って、本発明の方法は、少なくとも1回、好ましくは2回、のチューブ換え、を含むことが好ましく、第一のチューブ換えは、トランスポザーゼ反応の後、クロマチンから核酸を単離する前に、または、超高速プロトコルが使用される場合は脱架橋の前に、実行され、第二のチューブ換えが採用される場合、第二のチューブ換えはトランスポザーゼの添加前に実行される。

また、本発明はキット、特に研究用キット、に関する。本発明のキットは、一つもしくは複数の化学物質または一つもしくは複数の抗体/抗体のような一つまたは複数のクロマチン結合剤、およびトランスポザーゼを含む。本発明のキットは、高活性の、好ましくはオリゴヌクレオチドが積載された、トランスポザーゼ(tranposase)を含み得る。特定の実施形態では、本発明のキットは、配列番号1もしくは配列番号2の核酸配列にコードされるトランスポザーゼ(tranposase)、または配列番号3の核酸配列を有する発現ベクターを含む。本発明のキットは、すぐ使用できる形態のトランスポザーゼ酵素を含んでいてもよい。本発明のキットは、疾患のような医学的状態の診断で使用され得る。前記疾患のような医学的状態は、DNAと、例えば、限定はされないが、転写因子/ヒストン等のさらなる成分との相互作用が関与するものであれば、いかなる状態/疾患であってもよい。例えば、DNAと転写因子/ヒストンとの相互作用に関連していることが知られている疾患としては、限定はされないが、例えばがんのような、増殖性疾患が挙げられる。すなわち、本発明のキットは、限定はされないが、T細胞性急性リンパ芽球白血病等、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、移行上皮癌、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、骨髄異形成症候群、正中線上癌(midline carcinoma)、乳頭様甲状腺がん、腎癌、髄芽細胞腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、食道がん(oesophagila cancer)、卵巣がん、前立腺がん、がん、ラブドイドがん(rhabdoid cancer)、肝細胞癌、家族性シュワン細胞腫症(familial schwannomatosis)、軟骨肉腫、類上皮肉腫(epethioloid sarcoma)、髄膜腫、脊索腫、未分化肉腫、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性筋強直性ジストロフィー、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)、1型糖尿病、免疫不全症、セントロメアの不安定性(Centromere instability)および顔面異常症候群、並びに特にATRX症候群、を含む疾患の診断に使用され得る。

さらに、前記キットは化学物質とDNAとの相互作用の評価/判定に使用され得る。これに関して、本発明のキットは、患者のような個体の、DNAと相互作用する化学物質を用いた治療への反応の可能性の評価/判定に使用され得る。治療は、有効であることが知られている化学物質を用いる種々の疾患/状態の治療、または、有効性を試験する場合、治療される医学的状態が、DNAの相互作用が関与する限りいかなる疾患/状態であってもよい、種々の疾患/状態の治療、を含み得る。すなわち、疾患のような前記医学的状態は、DNAと、例えば、限定はされないが、転写因子/ヒストン等のさらなる成分との相互作用が関与するものであれば、いかなる状態/疾患であってもよい。例えば、DNAと転写因子/ヒストンとの相互作用に関連していることが知られている疾患としては、限定はされないが、例えばがんのような、増殖性疾患が挙げられる。すなわち、本発明のキットは、限定はされないが、T細胞性急性リンパ芽球白血病等、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、移行上皮癌、結腸直腸がん、膵がん、乳がん、骨髄異形成症候群、正中線上癌(midline carcinoma)、乳頭様甲状腺がん、腎癌、髄芽細胞腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、食道がん(oesophagila cancer)、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、ラブドイドがん(rhabdoid cancer)、肝細胞癌、家族性シュワン細胞腫症(familial schwannomatosis)、軟骨肉腫、類上皮肉腫(epethioloid sarcoma)、髄膜腫、脊索腫、未分化肉腫、パーキンソン病、ハンチントン病、先天性筋強直性ジストロフィー、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)、1型糖尿病、免疫不全症、セントロメアの不安定性(Centromere instability)および顔面異常症候群、並びに特にATRX症候群、を含む疾患の診断に使用され得る。

本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の(関連において作製される)キットまたは本発明の方法および用途は、さらに取扱説明書を、含んでいてもよく、または備えていてもよい。例えば、前記取扱説明書は、本明細書において提供された、本発明による基づく、診断用途における本発明のキットの使用(使用法)を、当業者に指導し得る。特に、前記取扱説明書は、本明細書において提供された方法または用途を使用または適用するための指導を含み得る。

本発明の(関連において作製される)キットは、本発明の方法および用途を実行するのに好適/必要な、物質/化学物質および/または装置をさらに含んでいてもよい。例えば、そのような物質/化学物質および/または装置は、本発明のキットに含まれる化学薬品および/またはトランスポザーゼの安定化および/または貯蔵のような、本明細書において提供される用途に必要な化合物の安定化および/または貯蔵のための、溶媒、希釈剤および/または緩衝液である。

別途定義がない限り、本明細書で使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の、方法および材料を、本発明の実施または試験で使用することができるが、以下には好適な方法および材料が記載された。矛盾が生じる場合には、定義も含めて、本明細書に従うものとする。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。

本発明の方法および手法は、特に記載がない限り、本明細書の全体を通して引用および考察された、様々な、一般的な、より具体的な参考文献に記載される、当該技術分野において周知の従来法に従って、通常実施される。 例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)、およびHarlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)を参照されたい。

図面および上記において本発明が詳細に図示および説明されているが、そのような図示および説明は、例示または代表と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。当業者によって、下記の請求項の範囲および精神内で変更および修正が行われてよいことは理解される。特に、本発明は、上記および下記の異なる実施形態の特徴の任意の組み合わせを有するさらなる実施形態も包含する。

本発明はまた、個々に図面に示されたさらなる特徴を、それらが上記または下記で説明されていない場合でも、全て包含する。また、図面および明細書に記載される実施形態の1つの代替物、並びにその特徴の1つの代替物を、本発明の他の態様の発明の主題から、放棄することができる。

さらに、特許請求の範囲において、「を含む(comprising)」という言葉は、他の要素または工程を除外せず、不定冠詞「a」または「an」は複数形を除外しない。特許請求の範囲に記載されるいくつかの特徴の機能を、単一のユニットが果たしてもよい。特性または値と接続された用語「本質的に」、「約」、「およそ」等は、個々に、その特性そのものまたはその値そのものも、それぞれ規定している。特許請求の範囲におけるいかなる引用符号も、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。

また、本発明は以下の図面によっても説明される。

従来技術の方法およびそれらの主な欠点の概要

標準的ChIP−seq、ChIP−tagmentation、およびChIPmentationの模式的な概観標準的ChIP−seqおよび精製ChIP DNAのタグメンテーションによるライブラリー調製(ChIP−tagmentation)と比較した、ChIPmentationの模式的な概観。3つ全てのプロトコルが、ホルムアルデヒドによる細胞固定、細胞溶解、クロマチンの超音波処理、およびビーズに結合した特異的抗体による免疫沈降(「クロマチン免疫沈降」)から開始されている。標準的ChIP−seq(左)では、脱架橋の後、ChIP DNAの精製が行われ、次いで、末端修復、精製、ポリアデニル化、アダプターライゲーション、およびサイズ選別を含む多工程手順においてライブラリー調製にかけられる。ChIP−tagmentation(中央)は、タグメンテーションに基づくライブラリー調製に精製されたChIP DNAを使用しており、プロトコルがDNA濃度の変化に敏感であるという不都合がある。ChIPmentation(右)では、シーケンスアダプターが、アダプターを載せたTn5トランスポザーゼによるタグメンテーションを用いて、免疫沈降中に一工程で導入される。

補足的図3:ChIPmentationのライブラリーサイズ分布に対するTn5酵素濃度の影響様々な量のTn5トランスポザーゼ(イルミナ社製Nextera DNAライブラリー調製キットからの0.2μl〜5μlの酵素)で調製された、H3K4me3についての、ChIPmentationライブラリーのDNA断片のサイズ分布。脱架橋後でライブラリー濃縮前の断片サイズは赤色で示され、濃縮PCR後の断片サイズは緑色で示され、サイズ選別された最終ライブラリーは青色で示されている。

ChIPmentation:ヒストンマークおよび転写因子のための高速、安価、低インプット量のChIP−seq(a)ChIPmentationの模式的な概観(精製されたChIP DNAから開始される標準的ChIP−seq、ChIP−tagmentation、およびChIPmentationの比較については図2を参照されたい)。(b)様々なTn5酵素濃度で得られたH3K4me3 ChIPmentationライブラリーのペアエンド配列決定からの、マッピングされたインサートの長さのサイズ分布。(c)様々なTn5酵素濃度で得られた、H3K4me3 ChIPmentationライブラリーにおいての、マッピングされたリード(上段)およびユニークリード(下段)の割合。(d)様々なTn5酵素濃度で得られたH3K4me3 ChIPmentationライブラリーを比較している、Genome Browserのスクリーンショット。(e)様々なTn5酵素濃度で得られたH3K4me3 ChIPmentationにおいての、ゲノム全域に亘る相関ヒートマップ(1,000bpウインドウ)。(f)異なるインプット量から得られた、5つのヒストン修飾および4つの転写因子についての、ChIP−seq(「ChIP」)およびChIPmentation(「CM」)のデータを示す、Genome Browserのスクリーンショット。2つのバイオロジカルレプリケートから得られたデータを組み合わせた。(g)種々のヒストンマークおよび種々の細胞インプット量についての、標準的ChIP−seqおよびChIPmentationのデータの、ゲノム全域に亘る相関ヒートマップ(1,000bpウインドウ)。(h)種々の転写因子および種々の細胞インプット量(高:10,000,000細胞;低:100,000または500,000細胞)についての、標準的ChIP−seqデータおよびChIPmentationデータの、ゲノム全域に亘る相関(1,000bpウインドウ)。(i)標準的ChIP−seq(上)、市販の低インプット量ライブラリー調製キット(中央)、およびChIPmentation(下)の、実操作時間の比較。実操作時間は、プロトコルの開始から、最後のライブラリー増幅PCR反応まで(しかしそれを含まない)、計算された。

標準的ChIP−seqデータおよびChIPmentationデータの全体的な比較(a)ChIPmentation(左)および標準的ChIP−seq(右)について別々に示される、全遺伝子に沿った、ヒストンマーク分布の複合プロット。(b)配列決定されたライブラリー全てについての、ピーク内のリードの割合(FRiP)、並びにChIPmentationから抽出されたピークの数(上段パネル)およびChIP−seqから抽出されたピークの数(下段パネル)のデータ。なお、配列決定深度はレプリケート間で異なる(図8)。

低インプット量ChIPmentationデータについてのGenome Browserのトラック個々のバイオロジカルレプリケートおよび種々の細胞インプット量(すなわち、10,000,000細胞、500,000細胞、100,000細胞および10,000細胞)についての、ChIPmentation(「CM」)データを示す、Genome Browserのスクリーンショット。10,000,000細胞データから得られた標準的ChIP−seq(「ChIP」)がリファレンスとして含まれる。

標準的ChIP−seq実験とChIPmentation実験との間のピーク重なり ピーク重なりは、その他のレプリケート/方法/インプット量における重要なピークと重なる、1つのレプリケート/方法/インプット量における上位X%のピークの割合として算出された。

24種の標準的ChIP−seqライブラリー、52種のChIPmentationライブラリー、および9種のChIP−tagmentationライブラリーについての配列決定の概要

ChIPmentationデータにおける高解像度パターン(a)抽出されたピーク下の、それぞれの転写因子のモチーフ周囲の、CTCF、GATA1、PU.1、およびRESTのChIPmentationデータについての、シグナル強度(Tn5挿入頻度)。上段パネルはChIPmentation、ATAC−seq、およびデオキシリボヌクレアーゼ−seqの生シグナルを示しており、一方、下段パネルは、ゲノムDNAのタグメンテーションによって定められたバックグラウンド、並びにそれに対して正規化されたChIPmentationおよびATAC−seqのシグナル強度を示している。正規化は、各ピークについて、バックグラウンドシグナルのZスコアに対し、シグナルにeを超えさせることによって、行われた。視覚化を目的として、正規化されたシグナルは、全ピークで平均化され、20bpハニング・ウィンドウで平滑化され、比較用にZスコア変換された。(b)H3K4me3についての、ChIPmentationデータにおける挿入事象間のペアワイズ距離の頻度。10bp周期の振動数は、ヌクレオソーム周囲のDNAの旋回性と関連付けることができる

1。(c)NucleoATACソフトウェアおよびGM12878細胞についてのATAC−seqデータを用いて位置を定めたヌクレオソーム周囲のH3K4me1 ChIPmentationデータのシグナル強度(挿入度数)。ヌクレオソーム境界においてより高く且つ周期的な挿入を有する構造化パターンに注目されたい。

標準的ChIP−seqおよびChIPmentationの試薬コストの比較 標準的ChIP−seq(上)、市販の低インプット量ライブラリー調製キット(中央)、およびChIPmentation(下)の試薬コストの比較。コスト見積は、増幅およびインデックス付けを含むライブラリー調製について、ただしサイズ選別、反応精製、および配列決定前の最終品質管理段階のための試薬は除外して、算出された。

精製されたChIP DNAを開始点とするChIP−tagmentationによるライブラリー調製(a)異なる量の精製ChIP DNAを出発物質として用いた、末梢血単核球(PBMC)におけるH3K4me3についての、ChIP−tagmentationプロファイルの、代表的なUCSC Genome Browserのスクリーンショット。(b)異なる量の精製DNAを出発物質として用いた、末梢血単核球(PBMC)におけるH3K4me3についての、標準的ChIP−seq(10,000,000個の細胞から入手)およびChIP−tagmentationを比較している、ペアワイズ散布図。

本発明の方法を用いたPU.1結合部位における異なる実験のPU.1リード数。破線および点線はそれぞれ500,000個または10,000,000(10 mio)個の細胞を用いた実験から得られたデータを示す。M字形の破線は、500,000個の細胞および実施例13に記載の例示的な最適化構成を用いた実験から得られたPU.1シグナルを示す。最適化されたプロトコルは標準プロトコルによる10,000,000個の細胞を用いた実験よりも高い信号雑音比を与えている。

注釈付き転写開始における、本発明の超高速法を用いた異なる実験から得られたH3K27acリード数。点線および破線は実施例14に記載の超高速プロトコルに対応しており、一方、直線は標準的なプロトコルを用いた実験を示している。超高速プロトコル(実施例13の最適化プロトコルも使用)は、標準プロトコルによる10,000,000個の細胞を用いた実験と同等かそれよりも良好な信号雑音比を与えている。

1日間における配列決定準備済みライブラリーの作製。1日間において、ヒストンマークおよび転写因子についての、配列決定準備済みライブラリーの作製を可能にする、500,000個のK562細胞を用いた超高速プロトコル。上段トラックの右手は、K562細胞のグロビン遺伝子座におけるスーパーエンハンサーに対応する、H3K27acについての密なシグナルを示している。

Tn5トランスポザーゼおよび自家製トランスポザーゼを用いて得られたシーケンスライブラリー調製物の比較。白血病細胞株の細胞が、H3K4me3抗体、並びに市販のTn5トランスポザーゼ、または配列番号1および配列番号2に示される核酸配列にコードされる配列を有する自家製トランスポザーゼ(transpose)を用いた本発明の方法にかけられた。図から分かるように、結果は使用されたトランスポザーゼに依存していない。

本発明は、本発明およびその多くの利点のより深い理解を与える、以下の例示的な非限定例によってさらに説明される。以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を示すために含まれている。以下の実施例に開示される手法が、本発明の実施において良好に機能するように本発明で使用される手法を表し、従って、その実施のための好ましい様式を構成すると考えることができることは、当業者には理解されるべきである。しかし、本開示に照らし合わせて、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、多くの変更が、開示された特定の実施形態において実行でき、且つ、同様または類似の結果を得ることができることは、当業者には理解されるべきである。

特に記載がない限り、組換え遺伝子技術の確立された方法を、例えば、Sambrook, Russell “Molecular Cloning, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (2001)(その全体が参照によって本明細書に援用される)に記載される通りに、使用した。

本明細書では、特許出願、製造業者のマニュアルおよび科学出版物を含む多数の文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連していると見なされないが、その全体が参照によって本明細書に援用される。より具体的には、参照された文書は全て、あたかも個々の文書が参照により援用されると明確且つ個々に示されるのとの同程度に、参照によって援用される。

実施例1:ChIPmentationのプロトコル 細胞の回収および固定 細胞を回収し、PBSで1回洗浄し、1.5ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で10分間固定した。グリシンを0.125Mの最終含量になるように室温で5分間加え、反応を停止させた。細胞を500×g、10分間、4℃で集め、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄した。

溶解および超音波処理 ペレットをRIPA緩衝液(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、140mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で溶解させ、1ml milliTUBE内で、コバリス社製(Covaris)S220において、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで30分間、超音波処理した(設定:デューティサイクル(duty cycle)5%、ピーク放射電力(peak incident power)140ワット、バーストあたりのサイクル数(cycles per burst)200、K562細胞用)。ライセートを最高速度で4℃で5分間遠心した。次に、断片化されたクロマチンを含有する上清を0.5 PCRチューブに移し、氷上に置いた。

IP用ビーズの調製 超音波処理と並行して、50μl 磁性プロテインA/Gビーズ(低インプット量のChIPmentationでは10μl)を、PBS(0.5%BSA、0.5%Tween−20)中で2回それらを洗浄および再懸濁することにより、ブロッキングおよび抗体結合させた。抗体を加え、室温で1時間超(または4℃で2時間超)回転させてビーズに結合させた。

免疫沈降および洗浄 ChIPあたり、ブロッキングされ、抗体が結合した磁性プロテインAビーズ50μlを加え、4℃で3時間インキュベートした。その後、免疫沈降用ビーズを、冷150μl RIPA(2回)、RIPA−500(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、500mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC)(2回)、およびRIPA−LiCl(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、250mM LiCl、1%Triton X−100、0.5%DOC、0.5%NP40(2回)で洗浄した。

タグメンテーション〜ライブラリー調製 ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去した。次に、ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを1μl含有する、30μlのタグメンテーション反応混合物(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl)中に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で10分間インキュベートした。次に、ビーズを磁石の上に置いてタグメンテーション反応を除去し、その後RIPAで2回洗浄した。

完全な洗浄およびDNA溶出、次いで脱架橋 最後に、ビーズをTE(pH8.0)で2回洗浄した。複合体を溶出させるため、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移した。

DNA精製 最後に、DNAをAMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製した。

ライブラリーの増幅 1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー(プライマー配列については、Buenrostro et al. Nature Methods(最初のATAC−seqに関する刊行物))、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価した:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間インキュベートして、ホットスタート酵素(hot-start enzyme)を活性化させた。ライブラリーの最終濃縮を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行った。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。

ライブラリーの精製およびサイズ選別(任意) 濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収した。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いる、CeMMにおける、Biomedical Sequencing Facilityによって行った。

実施例2:ChIP−Seq、ChIP−tagmentationおよびChIPmentationの比較 細胞培養および試料収集 K562細胞を10%FCSおよび抗生物質を添加したRPMI培地中で培養した。細胞をCASYセルカウンターで分析して、細胞数を決定した。ウィーン医科大学の倫理委員会に承認されるように、末梢血を健常人から得た。凝固をEDTAまたはヘパリンで防止し、末梢血をPBSで1:1〜1:3希釈し、Lymphoprep密度勾配(Axis−Shield)を用いて製造業者の説明書に従って末梢血単核球(PBMC)を単離した。精製した細胞を10%FBSおよびペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI中に懸濁した。

クロマチン免疫沈降 実施例3〜5で詳述されるクロマチン免疫沈降を行うための3つの異なるプロトコルと組み合わせて、ChIPmentationを試験した。

標準的ChIP−seqライブラリー調製 精製したChIP DNAを、製造業者の取扱説明書に従ってNEBNext End Repair Module(NEB社)を用いて、末端修復した。精製は、製造業者の取扱説明書に従ってAmpure XPビーズ(Agencourt)を用いて行った。Klenow(3’→5’エキソ)ポリメラーゼ(エンジマティクス社(Enzymatics))を用いて断片をポリアデニル化し、T4 DNA Ligase(エンジマティクス社)を用いてTruSeq適合性アダプターを結合した。Ampure XPビーズを用いて最終的なライブラリーをサイズ選別し、アダプター二量体を除去した。

ChIPmentationのライブラリー調製 ChIPmentationは種々様々なChIPプロトコルに適合し、これは、異なるChIPプロトコルにおいて最もよく機能する抗体へのChIPmentationの適用を容易にしている。一般的に、免疫沈降したクロマチンを保持するビーズがLiCl含有洗浄緩衝液(実施例3ではChIP用WBIII、実施例4ではChIP用RIPA−LiCl、および実施例5ではChIP用TF−WBIII)で洗浄されるまで、最適なChIPプロトコルが実行される。次に、ビーズをトリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩およびEDTAを除去する。その後、ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA酵素を1μl含有する、20〜30μlのタグメンテーション反応緩衝液(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl)中に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で10〜20分間インキュベートする。タグメンテーションに続いて、ビーズを150μlのWBI(ChIP 実施例3)、RIPA(ChIP 実施例4)、またはWBI(ChIP 実施例5)で2回洗浄する。その後、対応するChIPプロトコルを継続し、最後のビーズ洗浄、ビーズからの溶出、脱架橋およびDNA精製を行う。

タグメンテーション反応の条件はクロマチン単離に使用される剤よって異なる。タグメンテーション条件は、温度(例えば、4℃、16℃、55℃等)、タグメンテーション時間(例えば、1、2、3、5、15、20、30、または60分間等)、Tagment DNA酵素濃度(0.001、0.01、0.1、0.2、0.5、1.5、2、3、4、5または10μl等)、および反応体積(0.001、0.01、0.1、1、5、10、15、20、50、100または200μl等)において異なる。さらに、タグメンテーション反応緩衝液も異なり、界面活性剤、塩、溶媒等の添加剤を含んでいてもよい(一例として、タグメンテーション反応緩衝液はジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、酢酸マンガン(II)等を含有することができる)。

ChIP−タグメンテーションのライブラリー調製 末梢血単核球(PBMC)における標準的なH3K4me3 ChIPから精製したChIP DNAを、Qubit蛍光光度計を用いて測定し、次いで、0.1%Tween−20を添加した10mM トリス塩酸(pH8.5)で希釈して、100pg、10pg、または2pgの総DNAにした。タグメンテーション反応を、希釈したDNA、5μlの2×タグメンテーション緩衝液(イルミナ社)および1μl(100pg DNA)または0.5μl(10pgおよび2pg)の1:10希釈Nextera Tag DNA Enzyme(予冷TE/50%グリセロールで希釈)を含有する10μlの反応において、55℃で5分間行った。タグメンテーションしたDNAを、製造業者の取扱説明書に従ってNextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)を用いて、以下のプログラムで増幅した:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を14サイクル;72℃で1分間の最終伸長。1.5:1のビーズ:試料比でSPRI AMPure XPビーズを用いて、ライブラリーを精製した。K562 ChIPからの精製したChIP DNAまたは除タンパクしたインプットDNAは、PBMCに関しての調製に少し変更を加えて、調製した:5ngのChIP DNAを、5μlの反応において0.5μlの1:10希釈Tn5酵素を用いる55℃で5分間のタグメンテーション反応に用いた。MinEluteキット(キアゲン社)を用いてDNAを精製し、KAPA HIFI 2×ready mixを用いて増幅した。

標準的ChIP−seqライブラリー、ChIP−tagmentationライブラリー、およびChIPmentationライブラリーの増幅および配列決定 1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価した:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間インキュベートして、ホットスタート酵素を活性化させた。ライブラリーの最終濃縮を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行った。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収した。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いる、CeMMにおける、Biomedical Sequencing Facilityによって行った(詳細については図8を参照)。

ATAC−seq オープンクロマチンのマッピングを、トランスポザーゼ接近可能クロマチン解析法(assay for transposase accessible chromatin)(ATAC−seq)を用いて、K562細胞用に小さな改変を加えた以前の報告の通りに、行った。各実験において、1×105個の細胞を50μlのPBSで1回洗浄し、50μlのATAC−seq溶解緩衝液(10mMトリス塩酸、pH7.4、10mM NaCl、3mM MgCl2および0.01%IGEPAL CA−630)中で再懸濁し、4℃で10分間遠心した。遠心分離後、ペレットを50μlのMgCl2緩衝液(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl2)で短時間洗浄し、その後、トランスポザーゼ反応混合物(12.5μLの2×TD緩衝液、2μLのトランスポザーゼ(イルミナ社)および10.5μLのヌクレアーゼ非含有水)中で37℃で30分間インキュベートした。MinEluteキット(キアゲン社)を用いたDNA精製の後、1μlの溶出DNAをqPCR反応に用いて、最適な増幅サイクル数を評価した。ライブラリー増幅の後、SPRIサイズ選別を行い、1200bpより長い断片を排除した。Qubit蛍光光度計(ライフテクノロジーズ社)でDNA濃度を測定した。

配列決定データの処理およびバイオインフォマティクス解析 リードをskewerを用いてトリミングした。トリミングしたリードを、Bowtie2を「−−very−sensitive」のパラメーターで用いて、ヒトゲノムのhg19/GRCh37アセンブリーにアラインメントした。ChIPmentationおよびATAC−seqのデータについては、転位事象の中心が示されるようにリード開始位置を調整した。前の記述2の通りに、プラス鎖にアラインメントさせたリードは+4bpだけずらし、マイナス鎖にアラインメントさせたリードは−5bpだけずらした。MACS2を用いて、ChIPmentation試料、ChIP−seq試料、およびATAC−seq試料に対してピーク抽出を行った。ChIPおよびChIPmentationのデータについて、MACS2を、200bpの帯域幅を用い、バイオロジカルレプリケート用にバックグラウンドとして独立して適合IgG対照を用いて、実行した。ブロードなヒストンマーク(H3K27me3、H3K36me3)については、「−−broad」、「−−nomodel」、「−−extsize 73」、および「−−pvalue 1e−3」のフラグおよび引数をとった。レプリケート間の一貫性を確認した後、併せたバイオロジカルレプリケートから抽出されたピークに対して、同様に下流解析を行った。ChIPmentationおよびChIP−seqの両試料の相関分析について、ゲノム全体で1,000bpのウインドウ内のリード数を算出し、非重複リードの総数に対して正規化した。ピアソン相関係数を計算し、底を2とするシグナルの対数を全てのウインドウについてプロットした。バイオロジカルレプリケート間、異なる手法間(ChIP−seq対ChIPmentation)、および異なる細胞数間で比較を行った(後者2つは併せたバイオロジカルレプリケートに基づく)。抽出したピーク間の比較を、他のレプリケートからのピークと重なっている上位5%または25%のピークの割合を算出することにより行った。同じ比較を、ChIP−seqとChIPmentationのデータ間、および、両レプリケートを組み合わせた試料を用いて、異なる数の細胞を用いて作製されたChIPmentation試料間で、行った。

実施例3:ChIPmentationと適合する例示的なChIPプロトコル 細胞をPBSで1回洗浄し、1ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で5分間固定した。グリシンを添加して反応を止めた。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、冷緩衝液および冷溶液を使用した)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄した。ペレットを、細胞溶解緩衝液(50mM HEPES/KOH pH7.4、140mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、10%グリセロール、0.5%NP−40、0.25%Triton X−100、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で10分間、氷上で溶解させた。溶解させた細胞を1,000×g、4℃で10分間遠心して核を単離し、上清を捨て、ペレットを超音波処理緩衝液(10mM トリス塩酸 pH7.6、1mM EDTA、0.1%SDS)中に再懸濁させ、コバリス社製S220上の130μlのmicroTUBE(3×106個以下の細胞用)内で、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで12分間、超音波処理した(設定:デューティサイクル 2%、ピーク放射電力 105ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートを最高速度で4℃で5分間遠心し、上清を新しいチューブに移した。ライセートを、20mM HEPES、0.1%SDS、1%Triton X−100、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTAの緩衝液組成でIP当たり200μlに調整し、H3K4me3に対する抗体(1μg/IP、ダイアジェノード社(Diagenode)pAb−003−050)またはH3K27me3に対する抗体(1μg/IP、ダイアジェノード社pAb−195−050)と共に、ローテータ上で4℃で一晩インキュベートした。20μlのプロテインA(または、使用する抗体に応じて、プロテインG)磁気ビーズを、PBS中の0.1%BSAで一晩ブロッキングし、翌日IPに加えてローテータ上に4℃で2時間置き、免疫沈降した断片を捕捉した。次に、免疫沈降したクロマチンを、WBI(20mM HEPES、150mM NaCl、0.1%SDS、0.1%DOC、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(2回)、WBII(20mM HEPES、500mM NaCl、0.1%SDS、0.1%DOC、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(1回)、WBIII(20mM HEPES、250mM LiCl、0.5%DOC、0.5%NP−40、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(1回)、およびWBIV(20mM HEPES、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(2回)で洗浄した。次に、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移した。別の30μlの溶出緩衝液をビーズに加えて1分間置き、溶出液を合わせ、別の1μlのプロテアーゼKと55℃で1時間インキュベートした。最後に、DNAをSPRI AMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製した。

実施例4:ChIPmentationと適合する例示的なChIPプロトコル 細胞をPBSで1回洗浄し、1.5ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で10分間固定した。グリシンを添加して反応を止めた。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、冷緩衝液および冷溶液を使用した)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄した。ペレットをRIPA緩衝液(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、140mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で溶解させ、1ml milliTUBE内で、コバリス社製S220において、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで30分間、超音波処理した(設定:デューティサイクル 5%、ピーク放射電力 140ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートを最高速度で4℃で5分間遠心し、超音波処理されたクロマチンを含有する上清を新しいチューブに移した。並行して、50μl(低インプット量のChIPmentationでは10μl)の磁性プロテインAビーズまたは磁性プロテインGビーズ(使用する抗体に依存)を、PBS(0.5%BSA、0.5%Tween−20)中で2回洗浄および再懸濁することにより、ブロッキングおよび抗体結合させた。抗体を加え、室温で1時間超回転させてビーズに結合させた。使用した抗体は、H3K4me1(1μg/IP、ダイアジェノード社pAb−194−050)、H3K36me3(1μg/IP、ダイアジェノード社pAb−192−050)、およびREST(10μg/IP、ミリポア社07−579)であった。次に、ブロッキングした抗体結合ビーズを磁石上に置き、上清を除去し、超音波処理したライセートをビーズに加え、その後、4℃で3時間ローテータ上でインキュベートした。その後、ビーズを、150μl RIPA(2回)、RIPA−500(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、500mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC)(2回)、RIPA−LiCl(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、250mM LiCl、1%Triton X−100、0.5%DOC、0.5%NP40)およびTE(pH8.0)(2回)で洗浄した。次に、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移した。最後に、DNAをSPRI AMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製した。

実施例5:ChIPmentationと適合する例示的なChIPプロトコル 細胞をPBSで1回洗浄し、1.5ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で5〜10分間固定した。グリシンを添加して反応を止めた。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、冷緩衝液および冷溶液を使用した)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄した。ペレットを、L3B緩衝液(10mM トリス塩酸、pH8.0、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.5%N−ラウロイルザルコシン、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で溶解させ、1ml milliTUBE内で、コバリス社製S220において、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで20分間、超音波処理した(設定:デューティサイクル 5%、ピーク放射電力 140ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートに1%Triton X−100を添加し、最高速度で4℃で5分間遠心し、超音波処理されたクロマチンを含有する上清を新しいチューブに移した。並行して、ビーズを、0.5%BSAを含むPBSで2回洗浄し、IP当たり50μl(低インプット量のChIPmentationでは10μlのビーズ)の磁性プロテインAビーズまたは磁性プロテインGビーズ(使用する抗体に依存)を0.5%BSAを含む200μlのPBS中に再懸濁することにより、ブロッキングおよび抗体結合させた。抗体を加え、室温で1時間超または4℃で2時間超、ローテータで回転させてビーズに結合させた。使用した抗体は、H3K27ac(2μg、ダイアジェノード社pAb−196−050)、PU.1(5μg/IP、サンタクルーズ社(Santa Cruz)sc−352)、CTCF(10μl/IP、ミリポア社07−729)、およびGATA1(4μg/IP、低インプット量では2μg、アブカム社ab11852)であった。ブロッキングした抗体結合磁気ビーズをクロマチンを含むチューブに加え、4℃で3時間インキュベートした。次にビーズを、150μlのTF−WBI(20mM トリス塩酸/pH7.4、150mM NaCl、0.1%SDS、1%Triton X−100、2mM EDTA)(2回)、TF−WBIII(250mM LiCl、1%Triton X−100、0.7%DOC、10mMトリス塩酸、1mM EDTA)(2回)、およびTET(0.2%Tween−20、10mMトリス塩酸/pH8.0、1mM EDTA)(2回)で洗浄した。次に、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移した。別の30μlの溶出緩衝液をビーズに加えて1分間置き、溶出液を合わせ、別の1μlのプロテアーゼKと55℃で1時間インキュベートした。最後に、DNAをSPRI AMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製した。

実施例6:例示的な超音波処理の構成 K562白血病細胞株については、1%ホルムアルデヒドによる固定を室温で10分間行った。超音波処理緩衝液(10mMトリス塩酸 pH7.6、1mM EDTA、0.1%SDS)中のクロマチンを、コバリス社製S220(または同様のバージョン)上の130μlのコバリス社製microTUBE(3×106個以下の細胞用)内で、10〜15分間、以下の設定で、超音波処理した:デューティサイクル 2%、ピーク放射電力 105ワット、バーストあたりのサイクル数 200、推奨水温度最大値 8℃、脱気用ポンプのスイッチオン。第二の例として、クロマチンは、RIPA緩衝液(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、140mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))に入れ、1mlのコバリス社製milliTUBE内で、コバリス社製S220(または同様のバージョンの装置)において、25〜30分間、以下の設定で、超音波処理することができる:デューティサイクル 5%、ピーク放射電力 140ワット、バーストあたりのサイクル数 200、推奨水温度最大値 8℃、脱気用ポンプのスイッチオン。

他の超音波処理装置を使用することができ、一例としてはBioruptor(ダイアジェノード社)が挙げられ、いくつかの細胞株に適した例示的な超音波処理設定として、クロマチンを、溶解緩衝液(10mMトリス塩酸、pH8.0、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.5%N−ラウロイルザルコシン、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社P8340))中、設定「High」で、エッペンドルフチューブ(Eppy)(50μl〜200μl)内で2×15分、超音波処理サイクルは30秒オン/30秒オフにして、または、15mlコニカルチューブ(500μl〜1.5ml)内で、共振器と共に、15分間、超音波処理サイクルは30秒オン/30秒オフにして、超音波処理することができる。

超音波処理に使用される別の装置は、プローブ型超音波処理器である。一例として、溶解緩衝液(10mMトリス塩酸、pH8.0、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.5%N−ラウロイルザルコシン、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社P8340))中のクロマチンを、マイクロチッププローブを備えたBranson Sonifier 450を用いて、氷上で、10秒間を6回、約12Wの出力で、クロマチンの過熱を防ぐために超音波処理サイクル間で推奨の30秒間休止させて、超音波処理することができる。

実施例7:原発腫瘍の解析 凍結した腫瘍片を、ミクロトームを用いて50μm切片にスライスし、氷上の反応チューブに移した(腫瘍のサイズによるが、複数のヒストンChIPmentation反応には20〜50枚の切片で十分である)。切片をPBSで1回洗浄し、1.5ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定する。グリシンを添加して反応を止める。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、緩衝液および溶液は冷却されている)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄する。ペレットを、L3B緩衝液(10mM トリス塩酸、pH8.0、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.5%N−ラウロイルザルコシン、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で溶解させ、1ml milliTUBE内で、コバリス社製S220において、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで35分間、超音波処理する(設定:デューティサイクル 5%、ピーク放射電力 140ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートに1%Triton X−100を添加し、最高速度で4℃で5分間遠心し、超音波処理されたクロマチンを含有する上清を新しいチューブに移す。並行して、ビーズを、0.5%BSAを含むPBSで2回洗浄し、IP当たり50μl(低インプット量のChIPmentationでは10μlのビーズ)の磁性プロテインAビーズまたは磁性プロテインGビーズ(使用する抗体に依存)を0.5%BSAを含む200μlのPBS中に再懸濁することにより、ブロッキングおよび抗体結合させる。抗体を加え、室温で1時間超回転させてビーズに結合させる。抗体の例として、H3K27ac(2μg、ダイアジェノード社pAb−196−050)、PU.1(5μg/IP、サンタクルーズ社(Santa Cruz)sc−352)、CTCF(10μl/IP、ミリポア社07−729)、およびGATA1(4μg/IP、および、低インプット量では2μg、アブカム社ab11852)がある。ブロッキングした抗体結合磁気ビーズをクロマチンを含むチューブに加え、4℃で3時間インキュベートする。次にビーズを、150μlのTF−WBI(20mM トリス塩酸/pH7.4、150mM NaCl、0.1%SDS、1%Triton X−100、2mM EDTA)(2回)、およびTF−WBIII(250mM LiCl、1%Triton X−100、0.7%DOC、10mMトリス塩酸、1mM EDTA)(2回)で洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを1μl含有する、30μlのタグメンテーション反応混合物(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl)中に慎重に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で10分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズをTF−WBIで2回洗浄する。ビーズをTET(0.2%Tween−20、10mMトリス塩酸/pH8.0、1mM EDTA)(2回)で洗浄する。次に、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移す。別の30μlの溶出緩衝液をビーズに加えて1分間置き、溶出液を合わせ、別の1μlのプロテアーゼKと55℃で1時間インキュベートする。最後に、DNAをSPRI AMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製し、11μlのH2Oに溶出させる。1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価する:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間プレインキュベートして、ホットスタート酵素を活性化させる。ライブラリーの最終濃縮(ChIPからの残りの10μlを使用)を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行う。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収する。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いて行う。

実施例8:臨床検体または他の供給源に由来する、ホルマリン固定およびパラフィン包埋された試料(FFPE試料)に対するChIPmentation 当該技術分野において公知の方法を用いて、試料をホルマリン固定しパラフィン包埋する。FFPE試料に対し本発明を使用するために、室温、1mLのヒストレモン(hystolemon)溶液(6〜8回)中での連続的なインキュベーション(各10分間)を通じて、組織試料切片の脱パラフィン(deparaffination)を行う。次に試料を、エタノールによって、エタノール濃度を100%(無水エタノール)から開始して95%、70%、50%、および20%へと減少させながら再水和していき、最終段階として水で再水和する(再水和反応の各段階は室温で5分間)。再水和させたFFPE切片を、0.5mLの透過処理緩衝液[1×トリス緩衝生理食塩水(TBS)、0.5%Tween20、1mM PMSF、および10μg/mLリボヌクレアーゼA]中、室温で30分間、回転台(rotating platform)において、インキュベートする。18,000×g、+4℃で5分間遠心分離した後、試料を200μLの消化緩衝液[50mMトリス塩酸(pH7.4)、0.32Mスクロース、4mM MgCl2、1mM CaCl2、および0.1mM PMSF]中に再懸濁する。FFPE由来試料を、Labsonic L超音波処理器(B.ブラウン・バイオテック・インターナショナル社(B. Braun, Biotech International))を用いて、穏やかな超音波処理を通じて部分的に断片化し、次いで、1U/10μgクロマチンの最終濃度の小球菌ヌクレアーゼ(N.70196Y;USB)により37℃で1分間消化する。18,000×g、+4℃で5分間遠心分離した後、試料を200μLの超音波処理緩衝液[1×TBS、0.1%SDS、および1mM Na2EDTA(pH8.0)]中に再懸濁し、さらに断片化する。8,000×g、室温で5分間遠心分離した後、第一の上清を集める(約170μLの体積)。ペレットを50μLの超音波処理緩衝液で1回洗浄し、5秒間ボルテックスし、再度遠心分離して、第二の上清を得る(約220μLの最終体積に達する)。クロマチンをQubit(インビトロジェン社)によって蛍光定量する。ChIP緩衝液[30mMトリス塩酸(pH7.4)、50mM NaCl、5mM Na2EDTA、および0.1mM PMSF]中、各アッセイに260〜600ngのクロマチンを用いて(各実験でFFPE試料から抽出されたクロマチンの量または行われるChIPアッセイの数に依存)、クロマチンの免疫選択を行い、回転台において、+4℃で16時間、所望の抗体と共にインキュベートする。20μLの50体積%のスラリー状rec−Protein G−Sepharose 4B Conjugate(ChIP緩衝液中1mg/mLのBSAと共に+4℃で16時間プレインキュベート;ザイメッド社(Zymed))を各ChIPアッセイに加え、+4℃で3時間インキュベートする。2,000×g、+4℃で5分間遠心分離した後、ペレットを、2mLの洗浄緩衝液A[50mMトリス塩酸(pH7.4)、1%TritonX−100、50mM NaCl、5mM Na2EDTA、および0.1mM PMSF]および2mLの洗浄緩衝液B[50mMトリス塩酸(pH7.4)、1%TritonX−100、100mM NaCl、5mM Na2EDTA、および0.1mM PMSF]で連続的に洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを1μl含有する、30μlのタグメンテーション反応混合物(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl)中に慎重に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で10分間インキュベートする。タグメンテーション反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を取り除き、ビーズを2回、洗浄緩衝液Aおよび10mLの洗浄緩衝液C[50mMトリス塩酸(pH7.4)、1%TritonX−100、150mM NaCl、5mM Na2EDTA、および0.1mM PMSF]で洗浄する。200μLの溶出緩衝液[1×トリス−EDTA(TE)/1%SDS]を加えることで溶出を行い、回転台において室温で30分間インキュベートする。1,200×g、室温で5分間遠心分離した後、上清を収集し、前記溶出を繰り返して400μLの最終体積(結合画分)を得る。DNA単離。溶出緩衝液(0.2M NaCl)中、65℃で一晩インキュベートし、次いで80μg/mLプロテアーゼK(+45℃で3時間)で消化することにより、脱架橋を行った。3分の1容のフェノール:クロロホルム(1:1)、1容のフェノール:クロロホルム(1:1)および1容のクロロホルムによる連続抽出で、DNAを単離した。DNAを−20℃で一晩沈殿させる。遠心分離後、DNAペレットを11μLのTE緩衝液中に再懸濁させる(−20℃で保存)。1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価する:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間プレインキュベートして、ホットスタート酵素を活性化させる。ライブラリーの最終濃縮(ChIPからの残りの10μlを使用)を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行う。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収する。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いて行う。

実施例9:ヒト白血病に対するChIPmentation B細胞性慢性リンパ性白血病(B−CLL)、別名慢性リンパ様白血病(CLL)は、成人において最も一般的な白血病の種類(白血球のがんの一種)である。骨髄から生じ、リンパ節で発達し、正常には抗体産生により感染と戦うB細胞リンパ球に、CLLは影響を及ぼす。

初代CLL患者試料の単離およびRobosepによるCD2+細胞のネガティブセレクション 酪酸ナトリウム(NaB)を新鮮末梢血に5mMの最終濃度となるように添加する。これを、室温で等体積のフィコール(GEヘルスケア社、アマシャム社、英国)上に層にして、13.8g、4℃で20分間、速度を落とさずに遠心分離する。PBMC層を抜き取り、5mM NaBを含有する20mlのPBSで2回洗浄する。得られた細胞を完全培地中で洗浄し、250μlのRobosep緩衝液中で再懸濁し、製造業者の説明書に従ってネガティブセレクション用にRobosep装置をセットアップする(EasySep Human CD2 Positive Selection Kit、カタログ番号18657;ステムセルテクノロジーズ社(StemCell technologies)、グルノーブル、フランス)。カラムと結合していない細胞(すなわちCD2−集団)を集め、培地中で再懸濁し、本発明に記載の免疫沈降手順にそのまま使用する。実際には、患者由来の白血病試料は、当該技術分野において公知の方法を用いて凍結することができる。

細胞の凍結 細胞は1×10e8細胞/mlの濃度で凍結されるべきである。白血病細胞に、等体積のRPMI/50%FCS+20%DMSOを、5分間かけて、繰り返し滴加および混合する(最高濃度1×10e8細胞/ml、最終濃度の凍結用培地RPMI/50%FCS+10%DMSO)。凍結用培地中の1mlの細胞を無菌の標識付きクライオチューブに移す。クライオチューブを室温の凍結保存用ボックスに入れ、凍結保存用ボックスを−80℃のフリーザーに入れる。24時間以内に、凍結したクライオチューブを窒素タンクに移す。

細胞の融解 37℃の水浴中で極めて迅速に、細胞を融解させる。バイアルを開く前に70%エタノールで拭く。直ちに1mlの細胞を、37℃に予め温めたRPMI/10%FCSを含む15mlチューブに移す。細胞を250×g、室温で5分間遠心する。細胞ペレットを、37℃に予め温めた2mlのRPMI/10%FCSに慎重に再懸濁させる。免疫沈降へ進む。

免疫沈降 細胞をPBSで1回洗浄し、1ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で5分間固定する。グリシンを添加して反応を止める。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、冷緩衝液および冷溶液を使用する)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄する。ペレットを、細胞溶解緩衝液(50mM HEPES/KOH pH7.4、140mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、10%グリセロール、0.5%NP−40、0.25%Triton X−100、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で10分間、氷上で溶解させる。溶解させた細胞を1,000×g、4℃で10分間遠心して核を単離し、上清を捨て、ペレットを超音波処理緩衝液(10mM トリス塩酸 pH7.6、1mM EDTA、0.1%SDS)中に再懸濁させ、コバリス社製S220上の130μlのmicroTUBE(3×106個以下の細胞用)内で、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで15分間、超音波処理する(設定:デューティサイクル 2%、ピーク放射電力 105ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートを最高速度で4℃で5分間遠心し、上清を新しいチューブに移す。ライセートを、20mM HEPES、0.1%SDS、1%Triton X−100、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTAの緩衝液組成でIP当たり200μlに調整し、最適な抗体と共に、ローテータ上で4℃で一晩インキュベートする。20μlのプロテインA(または、使用する抗体に応じて、プロテインG)磁気ビーズを、PBS中の0.1%BSAで一晩ブロッキングし、翌日IPに加えてローテータ上に4℃で2時間置き、免疫沈降した断片を捕捉する。次に、免疫沈降したクロマチンを、WBI(20mM HEPES、150mM NaCl、0.1%SDS、0.1%DOC、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(2回)、WBII(20mM HEPES、500mM NaCl、0.1%SDS、0.1%DOC、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(1回)、およびWBIII(20mM HEPES、250mM LiCl、0.5%DOC、0.5%NP−40、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(1回)で洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを1μl含有する、30μlのタグメンテーション反応混合物(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl)中に慎重に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で10分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズをWBIで2回洗浄する。ビーズをWBIV(20mM HEPES、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(2回)で洗浄する。次に、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移す。別の30μlの溶出緩衝液をビーズに加えて1分間置き、溶出液を合わせ、別の1μlのプロテアーゼKと55℃で1時間インキュベートする。最後に、DNAをSPRI AMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製する。DNAを11μlのEB緩衝液(10mMトリス塩酸 pH8.5)中に溶出させる。1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価する:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間プレインキュベートして、ホットスタート酵素を活性化させる。ライブラリーの最終濃縮(ChIPからの残りの10μlを使用)を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行う。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収する。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いて行う。

実施例10:細胞株に対するChIPmentation K562細胞は、最初に樹立されたヒト不死化骨髄性白血病株であった。K562細胞は赤白血病型の細胞であり、K562細胞株は、急性転化期の53歳の女性CML患者に由来する。K562細胞は非接着性で丸く、bcr:abl融合遺伝子について陽性であり、未分化の顆粒球および赤血球の両方といくつかのプロテオミクス的な類似点がある。

細胞をPBSで1回洗浄し、1ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で5分間固定する。グリシンを添加して反応を止める。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、冷緩衝液および冷溶液を使用する)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄する。ペレットを、細胞溶解緩衝液(50mM HEPES/KOH pH7.4、140mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、10%グリセロール、0.5%NP−40、0.25%Triton X−100、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で10分間、氷上で溶解させる。溶解させた細胞を1,000×g、4℃で10分間遠心して核を単離し、上清を捨て、ペレットを超音波処理緩衝液(10mM トリス塩酸 pH7.6、1mM EDTA、0.1%SDS)中に再懸濁させ、コバリス社製S220上の130μlのmicroTUBE(3×106個以下の細胞用)内で、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで15分間、超音波処理する(設定:デューティサイクル 2%、ピーク放射電力 105ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートを最高速度で4℃で5分間遠心し、上清を新しいチューブに移す。ライセートを、20mM HEPES、0.1%SDS、1%Triton X−100、150mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTAの緩衝液組成でIP当たり200μlに調整し、最適な抗体と共に、ローテータ上で4℃で一晩インキュベートする。20μlのプロテインA(または、使用する抗体に応じて、プロテインG)磁気ビーズを、PBS中の0.1%BSAで一晩ブロッキングし、翌日IPに加えてローテータ上に4℃で2時間置き、免疫沈降した断片を捕捉する。次に、免疫沈降したクロマチンを、WBI(20mM HEPES、150mM NaCl、0.1%SDS、0.1%DOC、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(2回)、WBII(20mM HEPES、500mM NaCl、0.1%SDS、0.1%DOC、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(1回)、およびWBIII(20mM HEPES、250mM LiCl、0.5%DOC、0.5%NP−40、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(1回)で洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを1μl含有する、30μlのタグメンテーション反応混合物(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl)中に慎重に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で10分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズをWBIで2回洗浄する。ビーズをWBIV(20mM HEPES、1mM EDTA、0.5mM EGTA)(2回)で洗浄する。次に、ビーズを、2μlのプロテアーゼK(NEB)を含有する70μlの溶出緩衝液(0.5%SDS、300mM NaCl、5mM EDTA、10mM トリス塩酸 pH8.0)と、55℃で1時間および65℃で8時間インキュベートして、ホルムアルデヒド架橋を外し、上清を新しいチューブに移す。別の30μlの溶出緩衝液をビーズに加えて1分間置き、溶出液を合わせ、別の1μlのプロテアーゼKと55℃で1時間インキュベートする。最後に、DNAをSPRI AMPure XPビーズ(試料:ビーズ比 1:2)またはキアゲン社製MinEluteカラムで精製する。DNAを11μlのEB緩衝液(10mMトリス塩酸 pH8.5)中に溶出させる。1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価する:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間プレインキュベートして、ホットスタート酵素を活性化させる。ライブラリーの最終濃縮(ChIPからの残りの10μlを使用)を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行う。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収する。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いて行う。

実施例11:細胞数が少ない場合があるモデル生物またはモデル生物の一部に対するChIPmentation 本発明の方法は、ゲノム全体のヒストン−DNA相互作用の解析に低インプット量しか必要としない。本発明により、少ない細胞数からなる個々の動物の初期発生段階の解析が可能となることが期待される。1つの例として、コイ目(Cypriniformes)ヒメハヤ科(コイ科(Cyprinidae))に属する熱帯淡水魚である、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)がある。ゼブラフィッシュは、ヒマラヤ地方を原産とし、観賞魚として人気が高く、しばしばゼブラダニオ(zebra danio)という商品名で販売されている。ゼブラフィッシュはまた、科学研究において重要な、脊椎動物のモデル生物である。受精後、卵子は分割し、4時間後には既に胚は数千個の細胞からなり、本発明を用いた単一胚におけるヒストン修飾の解析に充分となり得る。本発明が細胞に対して使用可能となるように、初期発生段階の胚の貯蔵を利用して細胞数を増加させることもできる。提案されたプロトコルは、所望の細胞型/組織/発生段階の単離が当該技術分野において周知の方法を用いて実行される場合、あらゆる種類の他の生物、例えばマウス、に適合可能である。ある特定の状況(すなわち、過剰発現実験またはノックダウン実験)では、この手法に必要な多数の胚を一度に入手することが困難である可能性がある。これらの場合、胚の処理および固定を数回に分けて行うことができ、これは、液体窒素中で凍結し、必要な胚の総数が集まるまで−80℃で保存することができる。全ての胚が同じ発生段階で収集されたことを確認するため、ゼブラフィッシュの雌と雄を15分間だけつがわせ、胚用培地(E3培地:5mM NaCl、0.17mM KCl、0.4mM CaCl2、0.16mM MgSO4)を含むペトリ皿に胚を集め、それらを所望の発生段階に達するまで28℃で育てる。0.50mlのE3中に胚を集め、5μlの30mg/mlプロナーゼ(ロシュ社、参照10165921001)を添加する。胚を28℃で穏やかに振盪およびインキュベートする。卵膜の軟化には約15分間かかる。立体顕微鏡下で、卵膜を持たない最初の胚が見つかるまで胚を調べる。直ちに、胚をE3培地で徹底的に洗浄して(3回)、プロナーゼを完全に取り除く。卵膜から胚を外すため、ピペットを用いてE3培地中で慎重にそれらをピペッティングする。胚をピペットで0.5mlチューブに移し、E3を全て除去する。0.46mlのE3および0.4mlの4%PFA(4%PFA(シグマ社P6148)、リン酸緩衝液200mM、pH7.4、NaOH 0.02N)を胚に加え、室温で15分間穏やかに振盪する。グリシン(メルク社、1.00590.1000)を0.125Mの最終濃度になるように加えてホルムアルデヒドを抑制し、室温で5分間穏やかに振盪する。上清を除去し、胚を氷冷1×PBS中で3回すすぐ。PBSを除去し、細胞溶解を行うか、またはペレットを液体窒素中で凍結して−80℃で保存する。以後は4℃の低温室で作業を行う。Dyna Protein G磁気ビーズをしっかりと混ぜる。10μl(抗体当たり)を取り、それらを1.5mlセーフロックチューブ内で1mlの新鮮ブロッキング溶液(1×PBS中0.5%BSA;4℃で1週間保存可)中で洗浄する。3000rpmで3分間遠心してビーズを集める。ビーズを1.5mlのブロッキング溶液でさらに2回洗浄する。それぞれの洗浄の後、ビーズを激しく再懸濁させる。磁気スタンド(DYNAMag−Spin、インビトロジェン社123.20D)を用いてビーズを集め、上清を捨てる。ビーズを10μlのブロッキング溶液に再懸濁し、抗体を加える。いくつかの抗体の含量は以下とすることができる:1μlの抗H3K4me1抗体(ダイアジェノード社、カタログ番号CS−037−100、濃度未定)、1μlの抗H3K4me3抗体(ダイアジェノード社、カタログ番号pAb−003−050、1.1μg/μl)、1μlの抗H3K27ac抗体(アブカム社、カタログ番号ab4729、0.80mg/ml)および1μlの抗H3K27me3(ミリポア社07−449、1mg/ml)。抗体を4℃で最低で4時間または一晩、回転台上でインキュベートする。磁気スタンドを用いてビーズを集め、上清を除去する。低温室内で、ビーズを0.2mlのブロッキング溶液で洗浄する。この工程をさらに2回繰り返す。ビーズを10μlのブロッキング溶液に再懸濁する。使用の直前に、プロテアーゼ阻害剤(Complete tablet、ロシュ社11697498001)を全ての溶解緩衝液に加える。(Completeの50×ストック(1錠剤/ml 1×PBS)は−20℃で2ヵ月間保存可能)。架橋結合後の胚を、0.13mlの細胞溶解緩衝液(50mMトリス塩酸 pH7.5、10mM EDTA、1%SDS)に再懸濁する。破壊のために胚を上下にピペッティングし、圧搾(squeeze)する。チューブを氷上に置き、10分間インキュベートする。試料を15分間氷上で放置し、氷水浴を新たに加える。コバリス社製S220上の130μlのmicroTUBE(コバリス社、3×106個以下の細胞用)内で、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで10〜60分間(使用される胚の多さに依存し、実験的に求める必要がある)、超音波処理する(設定:デューティサイクル 2%、ピーク放射電力 105ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。

2容のIP希釈緩衝液(16.7mMトリス塩酸 pH7.5、167mM NaCl、1.2mM EDTA、0.01%SDS)を加える。超音波処理されたクロマチンに1%Triton X−100を加える。14,000rpm、4℃で10分間遠心し、クロマチンを新しいチューブに移す。10μlの抗体/磁気ビーズ混合物を、超音波処理したクロマチンの各一定分量に加える。チューブを4℃で一晩、回転台上でインキュベートする。磁気スタンドを用いてチューブからビーズを集め、上清を除去する。0.2mlのRIPA洗浄緩衝液(50mM HEPES pH7.6、1mM EDTA、0.7%DOC、1%Igepal、0.5M LiCl)を各チューブに加える。チューブを穏やかに浸透してビーズを再懸濁する。磁気スタンドを用いてビーズを集め、上清を除去する。前記工程をさらに3回繰り返す。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを30μlのタグメンテーション反応混合物(ここでは:Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを2μl、Nextera DNA Sample Prep Kitの2×Tagment DNA緩衝液を15μl、およびヌクレアーゼ非含有水を13μl)中で慎重に再懸濁し、サーモサイクラー内で37℃で3分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズをRIPAで2回洗浄する。1mlの1×TBS(50mMトリス pH7.5、150mM NaCl)で1回洗浄し、磁気スタンドを用いてビーズを集め、上清を除去する。ビーズを200μlの1×TBSに再懸濁する。3000rpmで3分間遠心し、残留TBSを全て吸引する。60μlの溶出緩衝液(50mM NaHCO3、1%SDS)を加える。2分毎に短時間ボルテックスしながら、65℃で10〜15分間、DNA−タンパク質複合体をビーズから溶離させる。ビーズを14,000rpmで1分間遠心沈殿させる。650μlの上清を1.5mlセーフロックチューブに移す。300mM NaClを加える。65℃で6時間または一晩かけてホルムアルデヒド架橋を外す。リボヌクレアーゼAを0.33μg/μlの最終濃度となるように加え、37℃で2時間インキュベートする。1容のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1、AMRESCO 0883)を加え、混合し、5分間遠心する。上側の相を新しい1.5mlセーフロックチューブに移す。1μgのグリコーゲンを加える。1/10の3M NaAcおよび2容の100%EtOHを加える。DNAを沈降させるため、14,000rpmで10分間遠心する。ペレットを500μlの75%冷EtOHで洗浄し、14,000rpm、4℃で5分間遠心する。ペレットを室温で風乾し、70μlの10mMトリス塩酸(pH8)に再懸濁する。QIAquick PCR Purification Kit(キアゲン社28104)を用いて(キットに付随の説明書に従う)、DNAを(インプットおよびChIP反応の両方から)精製する。11μlのEB緩衝液(10mMトリス塩酸 pH8.5)中に溶出させる。1μlの各ChIPmentation反応を、0.15μMプライマー、1×SYBR greenおよび5μlのKAPA HIFI 2×ready mixを含有する10μlのqPCR反応中で、以下のプログラムを用いて増幅して、最適な濃縮サイクル数を評価する:72℃5分;98℃30秒;98℃10秒、63℃30秒、72℃30秒を24サイクル;72℃で1分間の最終伸長。第一のPCR工程におけるニックトランスレーションが上手くいくように、PCR反応の調製前にKAPA HIFI 2x ready mixを98℃で45秒間プレインキュベートして、ホットスタート酵素を活性化させる。ライブラリーの最終濃縮(ChIPからの残りの10μlを使用)を、0.75μMプライマーおよび25μlのKAPA HIF 2x ready mixを用いる50μlの反応中で行う。ライブラリーはNサイクル増幅され、ここでNはqPCR反応において決定された端数切り上げのCq値と等しい。濃縮したライブラリーを、0.7:1(ビーズ:試料)の比でSPRI AMPure XPビーズを用いるサイズ選別法で精製して、長い断片(600bp超)を除去し、2:1(ビーズ:試料)の比で反応中の残留DNAを回収する。配列決定を、イルミナ社製HiSeq2000/2500プラットフォームを用いて行う。

実施例12:化学物質をクロマチン結合剤として用いる本発明の方法 インビボでの、ゲノム全域にわたる、ビオチン化JQ1の占有解析(インビボChem−seq)。 対数増殖期のMM1.S細胞(試料当たり2×108個の細胞)を、5μMビオチン化JQ1(Bio−JQ1)またはDMSO(ビヒクル)および1%ホルムアルデヒドで同時に、細胞培養液中で20分間処理する。トリスが300mMの最終濃度となるようにトリス緩衝液(pH7.5)を加えて、化学的な架橋結合を終了させる。シリコン製スクレーパーを用いて細胞を回収し、遠心分離し、得られたペレットをPBSで3回洗浄する。細胞核を以下の通りに調製する。細胞を、50mM HEPES、pH7.5、140mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、0.5%NP−40、0.25%Triton X−100およびプロテアーゼ阻害剤混合物「complete」(ロシュ社)中で溶解し、細胞核を10mMトリス塩酸、pH8.0、200mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTAおよびプロテアーゼ阻害剤で1回洗浄する。核を、50mM HEPES−KOH、pH7.5、140mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%Triton X−100、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS(超音波処理緩衝液)およびプロテアーゼ阻害剤混合物中で、氷上、18Wで、10サイクル(各30秒)、サイクル間に30秒間の間隔を空けて、再懸濁および超音波処理する。超音波処理したライセートを遠心分離で清澄にし、磁性ストレプトアビジンDynabeads(MyOne Streptavidin T1、インビトロジェン社)と共に4℃で16〜20時間インキュベートする(ビーズはこのインキュベーション工程の前に0.5%BSA含有PBS中でブロッキングする)。超音波処理した核ライセートのインキュベーション後、ビーズを、超音波処理緩衝液で2回、500mM NaClを含有する超音波処理緩衝液で1回、LiCl緩衝液(20mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、250mM LiCl、0.5%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム)で1回洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを30μlのタグメンテーション反応混合物(ここでは:Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを2μl、Nextera DNA Sample Prep Kitの2×Tagment DNA緩衝液を15μl、およびヌクレアーゼ非含有水を13μl)中で慎重に再懸濁し、サーモサイクラー内で37℃で3分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズを超音波処理緩衝液で2回洗浄する。次に、ビーズを10mMトリス(pH7.5)、0.1mM EDTAで1回洗浄する。その後、結合したタンパク質−DNA複合体を50mMトリス塩酸、pH8.0、10mM EDTA、1%SDS中、65℃で15分間溶離させ、溶離液を65℃で一晩インキュベートして架橋結合を外す。混入したRNAおよびタンパク質を、それぞれリボヌクレアーゼおよびプロテアーゼKの添加により消化し、上述の通りにDNAを精製する34。最後に、精製したDNA断片を超並列配列決定にかける。

インビトロでの、ゲノム全域にわたる、ビオチン化JQ1の占有解析(インビトロChem−seq) 対数増殖期の未処理MM1.S細胞を、1%ホルムアルデヒドで20分間、細胞培養液中で固定する。化学的な架橋結合を終了させ、細胞核を調製し、超音波処理した核ライセートを上記のように得る。しかし、インビボのプロトコルと異なり、ストレプトアビジンDynabeadsを、0.5%BSAおよび200μMビオチン化薬剤またはビヒクル(DMSO)を含有するPBS中で6時間プレインキュベートする。その後、薬剤が結合したビーズをPBS/0.5%BSAで4回洗浄して未結合の薬剤を除去し、超音波処理した核ライセート中、4℃で16〜20時間インキュベートする。以降の工程は全て上記(インビボChem−seq法)と同じである。

インビトロでの、ゲノム全域にわたる、ビオチン化AT7519を用いた占有解析(インビトロChem−seq) 対数増殖期の未処理MM1.S細胞を、0.5%ホルムアルデヒドで5分間、細胞培養液中で固定する。トリスが300mMの最終濃度となるようにトリス緩衝液(pH7.5)を加えて、化学的な架橋結合を終了させる。細胞をPBSで3回洗浄し、細胞核を以下の通りに調製する。細胞核を、50mM HEPES、pH7.5、140mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、0.5%NP−40、0.25%Triton X−100およびプロテアーゼ阻害剤混合物「complete」(ロシュ社)中で溶解し、細胞核を10mMトリス塩酸、pH8.0、200mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTAおよびプロテアーゼ阻害剤で1回洗浄する。核を、50mM HEPES−KOH、pH7.5、140mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、0.5%NP−40、0.5%Triton−X(超音波処理緩衝液)中で再懸濁および超音波処理する。ペレットを、氷上、Misonix超音波処理器内で、9〜12Wで、4サイクル(各30秒間)、サイクル間に1分間の間隔を空けて、超音波処理する。薬剤結合ビーズを清澄化した超音波処理物に加え、12〜18時間沈降させる。その後、薬剤結合ビーズを超音波処理緩衝液で3回洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを30μlのタグメンテーション反応混合物(ここでは:Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを2μl、Nextera DNA Sample Prep Kitの2×Tagment DNA緩衝液を15μl、およびヌクレアーゼ非含有水を13μl)中で慎重に再懸濁し、サーモサイクラー内で37℃で3分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズを超音波処理緩衝液で2回洗浄する。タンパク質を1%SDS中で溶離させ、溶離液を1%SDS中、65℃で一晩インキュベートすることにより架橋結合を外す。混入したRNAおよびタンパク質を、リボヌクレアーゼAおよびプロテアーゼKと共に順次インキュベートすることにより消化し、上述の通りにDNAを精製する。精製したDNA断片を超並列配列決定にかける。

Chem−seqによるゲノム全域にわたるビオチン化ソラレンの占有解析 Nuclei EZ prepキット(シグマ社)を用いて、細胞核を対数増殖期のMM.S細胞から調製する。次に、核を氷冷PBSに再懸濁し、そのまま、5μMビオチン化ソラレンまたはビヒクル(DMSO)と共に4℃で30分間インキュベートする。核をPBSで1回洗浄し、その後すぐに、氷上で30分間、360nmで照射する(Stratalinker)。核を、50mM HEPES−KOH、pH7.5、140mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%Triton X−100、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS(超音波処理緩衝液)およびプロテアーゼ阻害剤混合物中で、氷上、18Wで、10サイクル(各30秒)、サイクル間に30秒間の間隔を空けて、再懸濁および超音波処理する。超音波処理したライセートを遠心分離で清澄にし、磁性ストレプトアビジンDynabeads(MyOne Streptavidin T1、インビトロジェン社)と共に4℃で16〜20時間インキュベートする(ビーズはこのインキュベーション工程の前に0.5%BSA含有PBS中でブロッキングする)。超音波処理した核ライセートのインキュベーション後、ビーズを、超音波処理緩衝液で2回、500mM NaClを含有する超音波処理緩衝液で1回、LiCl緩衝液(20mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、250mM LiCl、0.5%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム)で1回洗浄する。ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で2回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去する。ビーズを30μlのタグメンテーション反応混合物(ここでは:Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを2μl、Nextera DNA Sample Prep Kitの2×Tagment DNA緩衝液を15μl、およびヌクレアーゼ非含有水を13μl)中で慎重に再懸濁し、サーモサイクラー内で37℃で3分間インキュベートする。前記反応を磁石上に置き、上清を除去することで、タグメンテーション反応を除去し、ビーズを超音波処理緩衝液で2回洗浄し、次いで、10mMトリス、pH7.5、0.1mM EDTAで1回洗浄する。その後、結合したタンパク質−DNA複合体を50mMトリス塩酸、pH8.0、10mM EDTA、1%SDSおよび10mMビオチン中で溶離させ、溶離液を65℃で一晩インキュベートする。混入したRNAおよびタンパク質を、それぞれリボヌクレアーゼおよびプロテアーゼKの添加により消化し、上述の通りにDNAを精製する。最後に、精製したDNA試料を254nmで5分間照射して(Stratalinker)ソラレン−DNA架橋結合を外し、その後、ライブラリー調製、超並列DNA配列決定法を行う。

実施例13:信号雑音比改善のためのパラメーター最適化プロトコル 複数のパラメーターを最適化することで、本発明の方法を用いた実験における信号雑音比を改善することができる。本明細書中で提供される例示的なプロトコルは、チューブ換えおよび特定のタグメンテーション緩衝液を用いることで、タグメンテーション時間を約1分間に短縮する。前記プロトコルは、実施例3、4および5にそれぞれ記載されるプロトコルのような、様々なChIP用プロトコルに適合する。これにより、前記プロトコルは、ある特定のChIPプロトコルにおいて最もよく機能する抗体への適用が容易である。免疫沈降したクロマチンを有するビーズをLiCl含有洗浄緩衝液(実施例3ではWBIII、実施例4ではRIPA−LiCl、実施例5ではTF−WBIII)で洗浄するまで、実施例3、4または5のプロトコルに従うことにより、最良の信号雑音比が認められた。次に、ビーズを冷トリス塩酸(pH8.0)で1回洗浄して、界面活性剤、塩、およびEDTAを除去した。その後、ビーズを再度冷トリス塩酸(pH8.0)で洗浄したが、その後すぐに反応を磁石上に置いて上清を捨てることをしなかった。その代わり、ビーズを含む反応全体を新しいチューブに移し、その後に、磁石上に置いて上清を除去した。これにより、チューブ壁に付着している非特異的なクロマチン断片のタグメンテーションが減少した。次に、ビーズを、Nextera DNA Sample Prep Kit(イルミナ社)のTagment DNA Enzymeを1μl含有する、25μlのタグメンテーション反応混合物(10mM トリス pH8.0、5mM MgCl2、10体積%ジメチルホルムアミド)中に慎重に再懸濁させ、サーモサイクラー内で37℃で1分間インキュベートした。トランスポザーゼはオリゴヌクレオチドをDNAに組み込むための機構として水分子を求核攻撃(nucleophilic attac)に利用することから、極性非プロトン(aprotoc)溶媒としてのジメチルホルムアミドは求核反応を増強することができるため、転位反応において有効であり得る。あるいは、NexeraキットのTagment DNA緩衝液を用いてもよい。タグメンテーション反応を除去し、ビーズをWBI(実施例3)、RIPA(実施例4)、またはTF−WBI(実施例5)で2回洗浄した。その後は、ChIPプロトコルに従ったが、前工程で既述したようにWBIV(実施例3)、TE(実施例4)、またはTET(実施例5)で2回目の洗浄を行う際に反応を再度新しいチューブに移した。これにより、チューブ壁に付着しているタグ付けされた非特異的クロマチン断片の繰り越し汚染が減少した。実験は500,000個の細胞を用いて行い、それぞれ500,000個の細胞または10,000,000個(10Mio)の細胞を使用して、チューブ換え無しの、ジメチルホルムアミドを使用しない標準プロトコルと比較した。結果を図12を示す。最適化されたプロトコルは、本明細書に記載の方法の標準プロトコルによる10,000,000個の細胞を用いた実験以上の信号雑音比を与えている。

実施例14:アッセイ時間の最適化 さらにアッセイ時間を最適化するため、脱架橋のための加熱温度を上昇させてもよい。従って、例えば、最初の変性前に72℃5分間のPCR工程が推奨されるNexteraプロトコルのように、リバース鎖上のアダプター配列を充填するための追加の「末端修復」工程と共に、本発明の方法を実行した。そうするために、PCRマスターミックスを加え、試料を72℃に加熱し、95℃で脱架橋した。トランスポザーゼはDNAに「固着(stick)」し得るため、プロトコルは、末端修復を可能にするために、末端修復前のEDTAによるトランスポザーゼの「剥がし」、MgCl2によるEDTAのクエンチングを提案している(EDTAはあらゆるPCRを妨害する)。最終洗浄工程までのChIPmentationを含み、溶出緩衝液でビーズからクロマチンをすぐに溶離させる代わりに、末端修復のためのPCRマスターミックスの直接的な添加により(a以下);クロマチンからのトランスポザーゼの完全な剥離を確実にするためのEDTA、次いでMgCl2によるクエンチング、次いで末端修復のためのPCRマスターミックスの添加により(b以下);または、上記のように単により速い手順を用いて(c以下)、ビーズを再懸濁させる、プロトコルを含む、いくつかの超高速プロトコルを実行した。その後、反応を72℃で5分間インキュベートして末端を修復し(=第二鎖のアダプター末端を埋め)、95℃で10〜15分間架橋を外し、反応に新鮮なPCRマスターミックスを補給し(または、プロトコル2cの場合は補給しない)、プライマーを添加し、ライブラリーを増幅した。(a)の場合、クロマチンを保持するビーズを最後に洗浄するまで、ChIPmentation手順に従った。上清を捨て、ビーズを14μlの冷1×KAPA HiFi Hot Start ReadyMix(95℃に30秒間予熱)に再懸濁した。反応を72℃で5分間、次いで95℃で10分間インキュベートした。その後、反応を4℃に冷却した。後のPCRのため、各1.5μlのフォワードプライマーおよびリバースプライマー(それぞれ25μM)、15μlのH2Oおよび18μlの2×KAPA HiFi Hot Start ReadyMix(95℃に30秒間予熱)を加え、DNAを増幅した。(b)の場合、クロマチンを保持するビーズを最後に洗浄し、上清を捨てるまで、ChIPmentation手順に従った。ビーズを8μlの50mM EDTAに再懸濁し、50℃で30分間インキュベートした。次に、2μlの200mM MgCl2を加え、50℃で30分間インキュベートし、その後、10μlの2×KAPA HiFi Hot Start ReadyMixを加え(95℃に30秒間予熱)、72℃で5分間インキュベートした。その後、反応を95℃で10分間インキュベートし、次いで4℃に冷却した。最後に、各1.5μlの25μMフォワードプライマーおよびリバースプライマー、12μlのH2Oおよび15μlの2×KAPA HiFi Hot Start ReadyMixを加え(95℃に30秒間予熱)、ChIPmentationライブラリー増幅パラメーターに基づいて12〜18サイクルを用いて反応を増幅した。(c)の場合、クロマチンを保持するビーズを最後に洗浄し、上清を捨てるまで、ChIPmentation手順に従った。次に、11μlの20mM EDTAを加え、50℃で10分間インキュベートした。その後、11μlの20mM MgCl2および25μlの2×KAPA HiFi Hot Start ReadyMixを加え(95℃に30秒間予熱)、72℃で5分間インキュベートした。反応を95°Cで10分間インキュベートし、次いで4℃に冷却した。次に、各1.5μlの25μMフォワードプライマーおよびリバースプライマーを加え、ChIPmentationライブラリー増幅パラメーターに基づいて12〜18サイクルで反応を増幅した。結果を図15に示す。すなわち、本明細書に記載の超高速手順の使用は、実験時間を有意に短縮しつつ、同等のデータ妥当性をもたらした。特に、(c)の場合、細胞培養からライブラリー増幅までの全手順を一作業日で完了することができる。より具体的には、実験工程は、細胞の回収およびビーズの調製(実施例5に従う)(20分間)、ホルムアルデヒドでの細胞の固定およびペレットの洗浄(45分間)、細胞の溶解および超音波処理(sonify)(40分間)、抗体でのクロマチンの単離(=免疫沈降工程、実施例5に従う場合は3時間)、クロマチンの洗浄(30分間)、トランスポザーゼの添加(10分間)、後の洗浄(10分間)、末端修復および脱架橋(30分間)、ライブラリーの増幅(45分間)、並びにライブラリーの精製(45分間)、を含み、合計時間は8時間未満となる。ここで、長い作業日のスケジュールに、患者からの特定の細胞(例えば、CD4+T細胞)の単離を、まだ組み込むことができる(採血およびCD4+単離に+90分間)。第二の操作者が適切な配列決定装置(例えば、イルミナ社製MiSeq)を準備している場合、試料をオーバーナイトで配列決定することができ、これにより、患者採血から配列決定までが約24時間の完全なワークフローができあがり、臨床的なタイムスケールでのエピゲノムの個別化が可能となる。より具体的には、ChIPmentation試料をイルミナ社製MiSeqでMiSeq Reagent Kit v3を用いて配列決定する場合、50回の配列決定サイクルを、約25百万個のクラスターから、5〜6時間で完了することが可能であり、これにより、採血から配列決定ChIPmentation実験(sequenced ChIPmentation experiment)までの合計時間は約15時間となる。

実施例15:別のトランスポザーゼを用いた超高速アッセイ 別のトランスポザーゼをPicelli et al. (2014) Genome Research 24:2033-40に従って調製した。簡潔には、Picelli et al.に従って(上記の通りに)、配列番号3の配列を有する発現ベクターを用いて、C末端インテインタグおよびキチン結合ドメインを含有する自家製トランスポザーゼをコードする核酸に関連する配列番号1またはコアトランスポザーゼ酵素に関連する配列番号2の配列にコードされるアミノ酸配列を有するTn5酵素を作製および保存し、次に、一定分量のTn5をTn5希釈緩衝液で希釈し(Tn5の活性に応じて)、Tn5に積載させるためのオリゴヌクレオチドを作製し、その後、希釈されたTn5にオリゴヌクレオチドを積載する(全ての工程は上記の通り)。「自家製」Tn5は代わりとしてそのまま使用することができる。以下の緩衝液を使用した:Tn5希釈緩衝液(50mMトリス塩酸(pH7.5);100mM NaCl;0.1mM EDTA;50%グリセロール;0.1%Triton X−100および1mM DTT(通常は希釈前に新鮮なものを加える:1mlの緩衝液当たり1μlの1M DTT)。モザイク末端(Mosaic End)オリゴヌクレオチドのプレアニーリングのために、以下の手順に従った:(1)Tn5ME−Aオリゴヌクレオチド+Tn5MErevオリゴヌクレオチドの100μM等モル混合物およびTn5ME−Bオリゴヌクレオチド+Tn5MErevオリゴヌクレオチドの100μM等モル混合物の調製;Tn5MErev:5’−[リン酸化]CTGTCTCTTATACACATCT−3’(配列番号4);Tn5ME−A:5’−TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAG−3’(配列番号5)およびTn5ME−B:5’−GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAG−3’(配列番号6)を使用、ここで、Tn5Merevは5’末端がリン酸化されている;(2)両混合物を95℃で3分間インキュベートし、サーモブロックの電源を切って一晩インキュベートして冷却し、その後、両方を1:1で混合、(3)0.143容のプレアニーリングされたオリゴヌクレオチド1:1をTn5希釈物に添加し、室温で1時間インキュベートすることにより、トランスポソームの生成を行い、必要になるまで氷上でインキュベート。

各実験のため、300,000個のK562白血病細胞株の細胞をPBSで1回洗浄し、1.5ml以下のPBS中の1%パラホルムアルデヒドで室温で10分間固定した。グリシンを添加して反応を止めた。細胞を500×g、10分間、4℃で集め(特に記載がない限り、後の作業は氷上で行い、冷緩衝液および冷溶液を使用した)、1μM PMSFを添加した1ml以下の氷冷PBSで2回洗浄した。ペレットを超音波処理緩衝液(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、0.25%SDS、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))中で溶解させ、1ml milliTUBE内で、コバリス社製S220において、断片の大部分が200〜700塩基対の長さになるまで20分間、超音波処理した(設定:デューティサイクル 5%、ピーク放射電力 140ワット、バーストあたりのサイクル数 200)。ライセートをRIPA条件に合うように調製した(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、140mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC、1×プロテアーゼ阻害剤(シグマ社))。ライセートを最高速度で4℃で5分間遠心し、超音波処理されたクロマチンを含有する上清を新しいチューブに移した。並行して、10μlの磁性プロテインAビーズまたは磁性プロテインGビーズ(使用する抗体に依存)を、PBS(0.5%BSA、0.5%Tween−20)中で2回洗浄および再懸濁することにより、ブロッキングおよび抗体結合させた。抗体を加え、室温で1時間超回転させてビーズに結合させた。使用した抗体はH3K4me3(1μg/IP、ダイアジェノード社)であった。次に、ブロッキングした抗体結合ビーズを磁石上に置き、上清を除去し、超音波処理したライセートをビーズに加え、その後、4℃で3時間ローテータ上でインキュベートした。その後、ビーズを、150μl RIPA(2回)、RIPA−500(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、500mM NaCl、1%Triton x−100、0.1%SDS、0.1%DOC)(2回)、RIPA−LiCl(10mMトリス塩酸、pH8.0、1mM EDTA、pH8.0、250mM LiCl、1%Triton X−100、0.5%DOC、0.5%NP40(2回)およびトリス(pH8.0)(2回)で洗浄した。11μlの20mM EDTAをビーズに加え、50℃で10分間インキュベートした。その後、11μlの20mM MgCl2および25μlの2×KAPA HiFi Hot Start ReadyMixを加え(95℃に30秒間予熱)、72℃で5分間インキュベートした。反応を95℃で10分間インキュベートし、次いで4℃に冷却した。次に、各1.5μlの25μMフォワードプライマーおよびリバースプライマーを加え、ChIPmentationライブラリー増幅パラメーターに基づいて10〜14サイクルで反応を増幅した。結果は図15に示され、2つの異なる供給源からの、市販のイルミナ社製Tn5トランスポソームまたは「自家製」Tn5トランスポソームを用いた、H3K4me3のChIPmentationシーケンスライブラリーが示されている。この実験は、市販のイルミナ社製トランスポザーゼ(tn5)または自家製トランスポザーゼ酵素を用いての同一の結果を示している。

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