連続的定向進化

申请号 JP2017018535 申请日 2017-02-03 公开(公告)号 JP2017099398A 公开(公告)日 2017-06-08
申请人 プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ; 发明人 リウ,デービッド,アール.; エスベルト,ケヴィン,エム.; カールソン,ジェイコブ,チャールズ;
摘要 【課題】 本発明は、核酸の連続的進化のためのシステム、方法、試薬、装置、ベクターおよび宿主細胞を提供する。 【解決手段】 例えば、目的の遺伝子を含むウイルスベクターの集団が宿主細胞の流れの中で複製するラグーンが提供され、ここで、ウイルスベクターは、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードする遺伝子を欠失し、およびここで、その遺伝子は、宿主細胞において、その活性が進化させる目的の遺伝子の機能に依存するコンディショナルプロモーターの制御下で発現される。本発明の幾つかの側面は、本明細書において記載される連続的進化の手法から得られる進化した産物を提供する。連続的進化のための材料を含むキットもまた提供される。 【選択図】なし
权利要求

自動化された進化の方法であって、 (a)宿主細胞の集団を、進化させる目的の遺伝子を含み、1つの細胞から別の細胞へのベクターの伝達のために必要とされる遺伝子を欠損しているベクターの集団と接触させること、ここで、 (1)前記宿主細胞は、前記ベクターの伝達が可能であり; (2)前記ベクターは、前記宿主細胞における前記目的の遺伝子の発現を可能にし、前記宿主細胞により複製され、第2の宿主細胞中へ伝達されることができ; (3)前記宿主細胞は、前記ベクターの伝達のために必要とされるタンパク質を、目的の遺伝子によりコードされる活性に比例するレベルにおいて産生する; (b)前記宿主細胞の集団を、前記目的の遺伝子の変異および前記目的の遺伝子の細胞から細胞への伝達を可能にする条件下においてインキュベートすること、ここで、宿主細胞は、前記宿主細胞の集団から取り除かれ、前記宿主細胞の集団は、新たな未感染の宿主細胞で補充される; (c)前記宿主細胞の集団から、進化したタンパク質をコードする前記伝達ベクターの変異した複製産物を単離すること を含む、前記方法。連続的進化の方法であって、 (a)宿主細胞の集団を、進化させる目的の遺伝子を含み感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされるウイルス遺伝子を欠損しているウイルスベクターの集団と接触させること、ここで、 (1)前記宿主細胞は、前記ウイルスベクターによる感染が可能であり; (2)前記ウイルスベクターは、前記宿主細胞における前記目的の遺伝子の発現を可能にし、前記宿主細胞により複製され、ウイルス粒子へとパッケージングされることができ; (3)前記宿主細胞は、感染性ウイルス粒子の産生のために必要とされる前記ウイルス遺伝子を、その活性が前記目的の遺伝子の機能に依存するプロモーターから発現する; (b)前記宿主細胞の集団を、前記目的の遺伝子の変異および感染性ウイルス粒子の産生を可能にする条件下においてインキュベートすること、ここで、宿主細胞は、前記宿主細胞の集団から取り除かれ、前記宿主細胞の集団は、新たな未感染の宿主細胞で補充される; (c)前記宿主細胞の集団から、進化したタンパク質をコードする前記ウイルスベクターの変異した複製産物を単離すること を含む、前記方法。ファージにより補助される連続的進化の方法であって、 (a)細菌宿主細胞の集団を、進化させる目的の遺伝子を含み全長pIII遺伝子を欠損しているM13ファージの集団と接触させること、ここで (1)前記ファージは、前記宿主細胞における前記目的の遺伝子の発現を可能にし; (2)前記宿主細胞は、M13ファージの感染、複製およびパッケージングのために好適な宿主細胞であり;および (3)前記宿主細胞は、pIIIタンパク質をコードする発現コンストラクトを含み、ここで、pIII遺伝子の発現は、前記目的の遺伝子の遺伝子産物の機能に依存する; (b)前記宿主細胞の集団を、前記目的の遺伝子の変異、感染性M13ファージの産生、およびM13ファージによる宿主細胞の感染を可能にする条件下においてインキュベートすること、ここで、感染した細胞は、前記宿主細胞の集団から取り除かれ、ここで、前記宿主細胞の集団は、M13ファージにより感染していない新たな宿主細胞で補充される; (c)前記宿主細胞の集団から、進化したタンパク質をコードする変異したM13ファージの複製産物を単離すること を含む、前記方法。ウイルスベクターがファージである、請求項1または2に記載の方法。ファージが線状ファージである、請求項4に記載の方法。ファージがM13ファージである、請求項5に記載の方法。ファージが、全長pIII遺伝子を除くファージ粒子の生成のために必要とされるすべてのファージ遺伝子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。宿主細胞が、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるすべてのファージ遺伝子をヘルパーファージの形態で含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。ファージ粒子の生成のために必要とされるファージ遺伝子が、pI、pII、pIV、pV、pVI、pVII、pVIII、pIXおよび/またはpXである、請求項7または8に記載の方法。宿主細胞がアクセサリープラスミドを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。アクセサリープラスミドが、pIIIタンパク質をコードする発現コンストラクトを含む、請求項10に記載の方法。細胞がアクセサリープラスミドを含み、かつ同時に、ファージゲノムおよび前記アクセサリープラスミドが、感染性ファージの生成のために必要とされるすべての遺伝子を含む、請求項10または11に記載の方法。細胞がヘルパーファージおよびアクセサリープラスミドを含み、かつ同時に、前記ヘルパープラスミドおよびアクセサリープラスミドが、ファージゲノムの存在下において感染性ファージの生成のために必要とされるすべての遺伝子を含む、請求項10または11に記載の方法。pIII発現コンストラクトが、pIII遺伝子の発現を制御するコンディショナルプロモーターを含む、請求項3〜12のいずれか一項に記載の方法。コンディショナルプロモーターの活性が、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能に依存する、請求項13に記載の方法。目的の遺伝子の機能が、所望の機能である、請求項15に記載の方法。宿主細胞が、ドミナントネガティブpIIIタンパク質(pIII-neg)をコードする発現コンストラクトを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。pIII-negタンパク質の発現がプロモーターにより駆動され、該プロモーターの活性が目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能に依存する、請求項17に記載の方法。目的の遺伝子の機能が、所望されない機能である、請求項18に記載の方法。目的の遺伝子の機能が、結合活性または酵素活性である、請求項15または18に記載の方法。酵素活性が、ポリメラーゼ活性、リコンビナーゼ活性、ホスホトランスフェラーゼ活性、キナーゼ活性またはホスファターゼ活性である、請求項20に記載の方法。酵素活性がプロテアーゼ活性である、請求項20に記載の方法。pIIIタンパク質の発現が、cI結合部位を含むプロモーターにより駆動され、かつ、細胞が、所望の標的プロテアーゼ切断部位を含むcIタンパク質を発現する、請求項21に記載の方法。pIII-negタンパク質の発現が、cI-neg結合部位を含むプロモーターにより駆動され、かつ、細胞が、所望されない標的プロテアーゼ切断部位を含むcI-negタンパク質を発現する、請求項21に記載の方法。宿主細胞が変異誘発プラスミドをさらに含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。変異誘発プラスミドが、変異誘発を促進する遺伝子産物をコードする遺伝子発現カセットを含む、請求項24に記載の方法。発現カセットが、SOSストレス応答に関与する遺伝子をコードする核酸を含む、請求項25に記載の方法。SOSストレス応答に関与する遺伝子が、UmuC、UmuD'および/またはRecAである、請求項26に記載の方法。SOSストレス応答に関与する遺伝子が、UmuC(pol V)である、請求項27に記載の方法。発現カセットがコンディショナルプロモーターを含み、該コンディショナルプロモーターの活性がインデューサーの存在に依存する、請求項24〜28のいずれか一項に記載の方法。コンディショナルプロモーターがアラビノース誘導型プロモーターであり、インデューサーがアラビノースである、請求項29に記載の方法。宿主細胞を、該宿主細胞において変異誘発を促進する遺伝子の発現を誘導するインデューサーと接触させることをさらに含む、請求項25〜30のいずれか一項に記載の方法。ステップ(b)が、宿主細胞の集団を、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1250、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも7500、少なくとも10000、またはそれより多くの、継続的なウイルスベクターまたはファージの生活環のために十分な時間にわたりインキュベートすることを含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。宿主細胞がE. coli細胞である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。宿主細胞が懸濁培養でインキュベートされる、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法。宿主細胞の集団が、新たな未感染の宿主細胞で連続的に補充される、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。細胞集団において実質的に一定の細胞数をもたらす速度で、新たな細胞が補充され、細胞が細胞集団から取り除かれる、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。実質的に一定のウイルスまたはファージの負荷をもたらす速度で、新たな細胞が補充され、細胞が細胞集団から取り除かれる、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。新たな細胞の補充の速度および/または細胞の除去の速度が、細胞集団中の細胞を定量することに基づいて調整される、請求項36〜37のいずれか一項に記載の方法。新たな細胞の補充の速度および/または細胞の除去の速度が、細胞集団中の感染および/または未感染の細胞の頻度を定量することに基づいて調整される、請求項36〜38のいずれか一項に記載の方法。定量が、宿主細胞の培養物の濁度を測定すること、宿主細胞の密度を測定すること、培養物の容積あたりの宿主細胞の湿重量を測定すること、または宿主細胞の培養物の光減衰を測定することによる、請求項36〜39のいずれか一項に記載の方法。細胞が変異原に暴露される、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。変異原が、電離放射線、紫外線照射、塩基類似体、脱アミノ化剤(例えば、亜硝酸)、挿入剤(例えば、臭化エチジウム)、アルキル化剤(例えば、エチルニトロソウレア)、トランスポゾン、臭素、アジ化物塩、ソラレン、ベンゼン、3−クロロ−4−(ジクロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン(MX)(CAS番号77439-76-0)、O,O−ジメチル−S−(フタルイミドメチル)ホスホロジチオエート(phos-met)(CAS番号732-11-6)、ホルムアルデヒド(CAS番号50-00-0)、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(AF−2)(CAS番号3688-53-7)、グリオキサール(CAS番号107-22-2)、6−メルカプトプリン(CAS番号50-44-2)、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキサン−l,2−ジカルボキシイミド(カプタン)(CAS番号133-06-2)、2−アミノプリン(CAS番号452-06-2)、メタンスルホン酸メチル(MMS)(CAS番号66-27-3)、4−ニトロキノリン1−オキシド(4−NQO)(CAS番号56-57-5)、N4−アミノシチジン(CAS番号57294-74-3)、アジ化ナトリウム(CAS番号26628-22-8)、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)(CAS番号759-73-9)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)(CAS番号820-60-0)、5−アザシチジン(CAS番号320-67-2)、クメンヒドロぺルオキシド(CHP)(CAS番号80-15-9)、メタンスルホン酸エチル(EMS)(CAS番号62-50-0)、N−エチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(ENNG)(CAS番号4245-77-6)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)(CAS番号70-25-7)、5−ジアゾウラシル(CAS番号2435-76-9)、またはt−ブチルヒドロぺルオキシド(BHP)(CAS番号75-91-2)である、請求項41に記載の方法。変異誘発によりファージの集団を多様化させる相を含み、ここで、細胞は、目的の遺伝子の変異誘発のために好適な条件下、目的の遺伝子における機能獲得型変異を獲得しているファージについてのストリンジェントな選択の非存在下で、インキュベートされる、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。ストリンジェントな選択の非存在での変異誘発のために好適な条件が、アクセサリープラスミドを含む宿主細胞を提供することにより生成され、該アクセサリープラスミドが、 (i)高コピー数プラスミドであり;および/または (ii)pIII遺伝子を制御するコンディショナルプロモーターを含み、該コンディショナルプロモーターが、 a.進化させるタンパク質の機能獲得型変異の非存在下において、遺伝子の基線のレベルの発現を可能にし、および/または b.進化させるタンパク質の機能獲得型変異の存在下において、遺伝子の強な発現を可能にする、 請求項43に記載の方法。進化したタンパク質をコードするウイルスベクターの変異複製産物についてのストリンジェントな選択の相を含む、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。ウイルスベクターの変異複製産物についてのストリンジェントな選択が、宿主細胞を、アクセサリープラスミドを含む宿主細胞で補充することにより行われ、前記アクセサリープラスミドが、 (i)低コピー数または非常に低コピー数のプラスミドであり;および/または (ii)pIII遺伝子を制御するコンディショナルプロモーターを含み、該コンディショナルプロモーターが、 a.進化させるタンパク質の機能獲得型変異の非存在下において、遺伝子の基線のレベルの発現を可能にせず、および/または b.完全に活性化された場合に低い転写速度を示す、 請求項45に記載の方法。ウイルスベクターの変異複製産物についてのストリンジェントな選択が、宿主細胞をアクセサリープラスミドを含む宿主細胞で補充することにより行われ、該アクセサリープラスミドが、低コピー数または非常に低コピー数のプラスミドであり、および/または、進化させるタンパク質の機能獲得型変異の非存在下において遺伝子の基線のレベルの発現を可能にする、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされるウイルスの機能をコードする遺伝子を制御するコンディショナルプロモーターを含む、請求項45または46に記載の方法。アクセサリープラスミドが、AP-MCS(T7プロモーターを含まず、代わりに多重クローニング部位を含むAP-T7 A/P)である、請求項10〜48のいずれか一項に記載の方法。変異誘発プラスミドがMP-QURである、請求項24〜48のいずれか一項に記載の方法。目的の遺伝子の連続的進化のための装置であって、 (a)以下を含むラグーン: 進化させる目的の遺伝子を含むファージの集団およびファージの宿主細胞の集団を含む、細胞培養容器; タービドスタットに連結した流入路; 任意に、変異原を含む容器に連結した流入路; 任意に、インデューサーを含む容器に連結した流入路; 流出路; 流入および流出速度を制御するコントローラー、 (b)以下を含むタービドスタット: 新たな宿主細胞の集団を含む細胞培養容器; ラグーンの流入路に連結した流出路; 液体培地を含む容器に連結した流入路; タービドスタット中の新たな宿主細胞の培養物の濁度を測定する濁度計; 培養液の濁度に基づいて無菌の液体培地の流入および廃棄物容器中への流出を制御するコントローラー、 (c)任意に、変異原を含む容器、ならびに (d)任意に、インデューサーを含む容器 を含む、前記装置。ファージがM13ファージである、請求項50に記載の装置。M13ファージが全長pIII遺伝子を含まない、請求項50に記載の装置。宿主細胞が、ファージの感染、複製および産生が可能な原核細胞である、請求項50に記載の装置。宿主細胞がE. coli細胞である、請求項50に記載の装置。宿主細胞が、コンディショナルプロモーターの制御下でpIIIを発現し、該コンディショナルプロモーターの活性が目的の遺伝子によりコードされる産物の活性に依存する、請求項50に記載の装置。新たな宿主細胞がファージに感染していない、請求項50に記載の装置。宿主細胞の集団が、液体培地中の懸濁培養物中にある、請求項50に記載の装置。新たな宿主細胞の流入の速度と、流出の速度とが、実質的に同一である、請求項50に記載の装置。流入の速度および/または流出の速度が、約0.1ラグーン容積/時間〜約25ラグーン容積/時間である、請求項50に記載の装置。流入および流出の速度が、ラグーン中の宿主細胞の集団の定量的評価に基づいて制御される、請求項50に記載の装置。定量的評価が、細胞数、細胞密度、容積あたりのバイオマス湿重量、濁度または増殖速度の測定を含む、請求項50に記載の装置。流入および/または流出速度が、ラグーン中の宿主細胞密度を、約102細胞/ml〜約1012細胞/mlに維持するように制御される、請求項50に記載の装置。流入および/または流出速度が、ラグーン中の宿主細胞の密度を、約102細胞/ml、約103細胞/ml、約104細胞/ml、約105細胞/ml、約5×105細胞/ml、約106細胞/ml、約5×106細胞/ml、約107細胞/ml、約5×107細胞/ml、約108細胞/ml、約5×108細胞/ml、約109細胞/ml、約5×109細胞/ml、約1010細胞/ml、約5×1010細胞/ml、または1010細胞/ml超に維持するように制御される、請求項50に記載の装置。流入および流出速度が、ラグーン中の宿主細胞を実質的に一定の数に維持するように制御される、請求項50に記載の装置。流入および流出の速度が、ラグーン中の新たな宿主細胞を実質的に一定の頻度に維持するように制御される、請求項50に記載の装置。宿主細胞の集団が、ファージに感染していない新たな宿主細胞で連続的に補充される、請求項50に記載の装置。ラグーンが、変異原を含む容器に連結した流入路を含み、変異原の流入が、ラグーン中の変異原の濃度を、宿主細胞の変異を誘導するために十分なものに維持するように制御される、請求項50に記載の装置。変異原が、電離放射線、紫外線照射、塩基類似体、脱アミノ化剤(例えば、亜硝酸)、挿入剤(例えば、臭化エチジウム)、アルキル化剤(例えば、エチルニトロソウレア)、トランスポゾン、臭素、アジ化物塩、ソラレン、ベンゼン、3−クロロ−4−(ジクロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン(MX)(CAS番号77439-76-0)、O,O−ジメチル−S−(フタルイミドメチル)ホスホロジチオエート(phos-met)(CAS番号732-11-6)、ホルムアルデヒド(CAS番号50-00-0)、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(AF−2)(CAS番号3688-53-7)、グリオキサール(CAS番号107-22-2)、6−メルカプトプリン(CAS番号50-44-2)、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキサン−l,2−ジカルボキシイミド(カプタン)(CAS番号133-06-2)、2−アミノプリン(CAS番号452-06-2)、メタンスルホン酸メチル(MMS)(CAS番号66-27-3)、4−ニトロキノリン1−オキシド(4−NQO)(CAS番号56-57-5)、N4−アミノシチジン(CAS番号57294-74-3)、アジ化ナトリウム(CAS番号26628-22-8)、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)(CAS番号759-73-9)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)(CAS番号820-60-0)、5−アザシチジン(CAS番号320-67-2)、クメンヒドロぺルオキシド(CHP)(CAS番号80-15-9)、メタンスルホン酸エチル(EMS)(CAS番号62-50-0)、N−エチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(ENNG)(CAS番号4245-77-6)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)(CAS番号70-25-7)、5−ジアゾウラシル(CAS番号2435-76-9)またはt−ブチルヒドロぺルオキシド(BHP)(CAS番号75-91-2)である、請求項50に記載の装置。ラグーンが、インデューサーを含む容器に連結した流入路を含む、請求項50に記載の装置。インデューサーが、宿主細胞中への変異誘発を促進する遺伝子の発現を誘導する、請求項50に記載の装置。宿主細胞が、変異誘発を促進する遺伝子を誘導性プロモーターの制御下にコードする発現カセットを含む、請求項50に記載の装置。プロモーターがアラビノース誘導型インデューサーであり、インデューサーがアラビノースである、請求項50に記載の装置。ラグーン容積が約1ml〜約100lである、請求項50に記載の装置。ラグーンが、ラグーン内の温度を制御するヒーターおよびサーモスタットをさらに含む、請求項50に記載の装置。ラグーンの温度が、約37℃になるように制御される、請求項50に記載の装置。流入速度および/または流出速度が、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1250、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも7500、少なくとも10000、またはそれより多くの継続的なファージ生活環のために十分な時間にわたる宿主細胞の集団のインキュベーションおよび補充を可能にするように制御される、請求項50に記載の装置。1回のファージ生活環のために十分な時間が約10分間である、請求項50に記載の装置。ファージベースの連続的定向進化のためのベクターシステムであって、 (a)進化させる目的の遺伝子を含む選択ファージ、ここで、ファージゲノムは、感染性ファージを生成するために必要とされる遺伝子を欠損している; (b)感染性ファージ粒子を生成するために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含むアクセサリープラスミド、ここで、前記コンディショナルプロモーターは、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能により活性化される を含む、前記ベクターシステム。選択ファージがM13ファージである、請求項78に記載のベクターシステム。選択ファージが、ファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子を含む、請求項78に記載のベクターシステム。ファージゲノムが、pI、pII、pIV、pV、pVI、pVII、pVIII、pIXおよびpX遺伝子を含むが、全長pIII遺伝子を含まない、請求項78に記載のベクターシステム。ファージゲノムが、F1複製起点を含む、請求項78に記載のベクターシステム。ファージゲノムが、pIII遺伝子の3’−フラグメントを含む、請求項78に記載のベクターシステム。pIII遺伝子の3’−フラグメントが、プロモーターを含む、請求項78に記載のベクターシステム。選択ファージが、プロモーターに作動的に連結した多重クローニング部位を含む、請求項78に記載のベクターシステム。(c)ヘルパーファージをさらに含み、ここで、選択ファージは、ファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子を含まず、かつ、前記ヘルパーファージは、ヘルパーファージゲノムと選択ファージゲノムとが一緒になってファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子の少なくとも1つの機能的コピーを含むが、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる少なくとも1つの遺伝子を欠損するように、選択ファージのゲノムを補完する、請求項78に記載のベクターシステム。アクセサリープラスミドが、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含む発現カセットを含む、請求項78に記載のベクターシステム。アクセサリープラスミドが、pIIIをコンディショナルプロモーターの制御下でコードする発現カセットを含む、請求項78に記載のベクターシステム。コンディショナルプロモーターの活性が、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能に依存する、請求項78に記載のベクターシステム。pIII-negタンパク質をコードする発現コンストラクトをさらに含む、請求項78に記載のベクターシステム。pIII negタンパク質をコードする発現コンストラクトがプロモーターを含み、該プロモーターをの活性が目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能に依存する、請求項90に記載のベクターシステム。pIII-negタンパク質をコードする発現コンストラクトが、アクセサリープラスミド中に含まれる、請求項90または91に記載のベクターシステム。コンディショナルプロモーターが、cI結合部位を含む、請求項87または88に記載のベクターシステム。プロモーターが、cI結合部位を含む、請求項91に記載のベクターシステム。所望の標的プロテアーゼ切断部位を含むcIタンパク質をコードする発現コンストラクトをさらに含む、請求項93または94に記載のベクターシステム。変異誘発プラスミドをさらに含む、請求項78に記載のベクターシステム。変異誘発プラスミドが、変異誘発を促進する遺伝子産物をコードする遺伝子発現カセットを含む、請求項96に記載のベクターシステム。発現カセットがコンディショナルプロモーターを含み、該コンディショナルプロモーターの活性がインデューサーの存在に依存する、請求項97に記載のベクターシステム。コンディショナルプロモーターがアラビノース誘導型プロモーターであり、インデューサーがアラビノースである、請求項78に記載のベクターシステム。選択ファージが、HP-T7RNAPまたはSP-T7RNAPである、請求項78に記載のベクターシステム。選択プラスミドがSP-MCS(配列番号30)である、請求項78に記載のベクターシステム。アクセサリープラスミドが、AP-MCS-AまたはAP-MCS-Pである、請求項78のベクターシステム。変異誘発プラスミドがMP-QURである、請求項7871に記載のベクターシステム。感染性ファージの生成のために必要とされるファージタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含む発現コンストラクトを含む、細胞。細胞が細菌細胞である、請求項104に記載の細胞。細胞がE. coli細胞である、請求項104に記載の細胞。細胞が、感染性ファージ粒子に感染することができる、請求項104に記載の細胞。発現コンストラクトが、アクセサリープラスミド中に含まれる、請求項104に記載の細胞。選択ファージをさらに含み、ここで、前記選択ファージは、 感染性ファージの生成のために必要とされるファージタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含まず;かつ 細胞の感染性ファージの生成のために必要とされるファージタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を制御するコンディショナルプロモーターを活性化する遺伝子産物をコードする、目的の遺伝子を含む、 請求項104に記載の細胞。変異誘導性タンパク質をコードする遺伝子を含む発現コンストラクトをさらに含む、請求項104に記載の細胞。発現コンストラクトが、変異誘発プラスミドである、請求項104に記載の細胞。変異誘導性タンパク質が、細胞のSOSストレス応答に関与するタンパク質である、請求項104に記載の細胞。SOSストレス応答に関与する遺伝子が、UmuC、UmuD'、および/またはRecAである、請求項104に記載の細胞。SOSストレス応答に関与する遺伝子が、UmuC(pol V)である、請求項104に記載の細胞。変異誘導性タンパク質が、プルーフリーディング欠損DNAポリメラーゼである、請求項104に記載の細胞。プルーフリーディング欠損DNAポリメラーゼが、dnaQ926である、請求項104に記載の細胞。ファージにより補助される連続的進化のためのファージベクターであって、 (a)感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる少なくとも1つの遺伝子を欠損しているファージゲノム; (b)進化させる目的の遺伝子 を含む、前記ファージベクター。ファージゲノムがM13ファージゲノムである、請求項117に記載のファージベクター。ファージゲノムが、pI、pII、pIV、pV、pVI、pVII、pVIII、pIXおよびpX遺伝子を含むが、全長pIII遺伝子を含まない、請求項117に記載のファージベクター。ファージゲノムが、pIII遺伝子の3’−フラグメントを含む、請求項117に記載のファージベクター。pIII遺伝子の3’−フラグメントが、pIIIの3’−プロモーター配列を含む、請求項117に記載のファージベクター。ファージゲノム中に挿入された多重クローニング部位または目的の遺伝子を含む、請求項117に記載のファージベクター。多重クローニング部位または目的の遺伝子が、ファージプロモーターの下流であり、かつ、ターミネーターの上流に位置する、請求項117に記載のファージベクター。多重クローニング部位または目的の遺伝子が、VIII−3’プロモーターの下流であり、かつpIII−3’プロモーターの上流に位置する、請求項117に記載のファージベクター。野生型酵素と比較して変異を含む改変T7 RNAポリメラーゼであって、ここで改変T7RNApolが、改変された基質特異性および/または増大した転写活性を示す、前記改変T7 RNAポリメラーゼ。改変T7RNApolが、T3プロモーターから転写を開始させる、請求項125に記載の改変T7 RNAポリメラーゼ。改変T7RNApolが、そのネイティブなプロモーターから、野生型酵素よりも、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍または少なくとも50倍大きな転写速度を示す、請求項125に記載の改変T7 RNAポリメラーゼ。改変T7RNApolが、非ネイティブなプロモーターから、そのプロモーターにおいてまたはそのネイティブなプロモーターにおいて野生型酵素により示される速度と比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍または少なくとも50倍大きな転写速度を示す、請求項112に記載の改変T7 RNAポリメラーゼ。(a)選択ファージ (b)アクセサリープラスミド (c)任意に、ヘルパーファージまたはファージミド; (d)任意に、変異誘発プラスミド; (e)任意に、変異原; (f)任意に、インデューサー;および (g)任意に、感染性ファージを産生することができ、ファージ感染が可能である、細胞 を含む、キット。選択ファージがM13ファージである、請求項129に記載のキット。M13ファージが、pIII遺伝子を含まない、請求項129に記載のキット。選択ファージが、目的の遺伝子、およびファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子を含むが、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる少なくとも1つの遺伝子を欠く、請求項129に記載のキット。アクセサリープラスミドが、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる少なくとも1つの遺伝子を含む、請求項129に記載のキット。選択ファージが、pI、pII、pIV、pV、pVI、pVII、pVIII、pIXおよびpX遺伝子を含むが、全長pIII遺伝子を含まない、請求項129に記載のキット。アクセサリープラスミドが、pIIIをコンディショナルプロモーターの制御下でコードする発現カセットを含む、請求項129に記載のキット。コンディショナルプロモーターの活性が、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の所望の活性に依存する、請求項135に記載のキット。アクセサリープラスミドが、pIII-negをコンディショナルプロモーターの制御下でコードする発現カセットを含む、請求項129に記載のキット。コンディショナルプロモーターの活性が、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の所望されない活性に依存する、請求項137に記載のキット。コンディショナルプロモーターが、cI結合部位を含む、請求項136または137に記載のキット。変異誘発プラスミドが、変異誘発を促進する遺伝子産物をコードする遺伝子発現カセットを含む、請求項129に記載のキット。発現カセットが、細菌SOSストレス応答に関与する遺伝子をコードする核酸を含む、請求項140に記載のキット。発現カセットがコンディショナルプロモーターを含み、該コンディショナルプロモーターの活性がインデューサーの存在に依存する、請求項140に記載のキット。コンディショナルプロモーターがアラビノース誘導型プロモーターであり、インデューサーがアラビノースである、請求項142に記載のキット。SOSストレス応答に関与する遺伝子が、UmuC、UmuD'、および/またはRecAである、請求項141に記載のキット。SOSストレス応答に関与する遺伝子が、UmuC(pol V)である、請求項141に記載のキット。変異誘発プラスミドが、プルーフリーディング欠損DNAポリメラーゼをコードする遺伝子を含む、請求項129に記載のキット。プルーフリーディング欠損DNAポリメラーゼが、dnaQ926である、請求項146に記載のキット。選択プラスミドが、HP-T7RNAP-AまたはSP-T7RNAPである、請求項129に記載のキット。選択プラスミドがSP-MCSである、請求項129に記載のキット。アクセサリープラスミドがAP-MCS-AまたはAP-MCS-Pである、請求項129に記載のキット。変異誘発プラスミドがMP-QURである、請求項129に記載のキット。

ファージベースの連続的定向進化のためのベクターシステムであって、 (a)進化させる目的の遺伝子を含む選択ファージ、ここで、ファージゲノムは、感染性ファージを生成するために必要とされる遺伝子を欠損している; (b)感染性ファージ粒子を生成するために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含むアクセサリープラスミド、ここで、前記コンディショナルプロモーターは、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能により活性化される を含む、前記ベクターシステム。選択ファージがM13ファージである、請求項1に記載のベクターシステム。選択ファージが、ファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子を含む、請求項1または2に記載のベクターシステム。ファージゲノムが、pI、pII、pIV、pV、pVI、pVII、pVIII、pIXおよびpX遺伝子を含むが、全長pIII遺伝子を含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のベクターシステム。ファージゲノムが、F1複製起点を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベクターシステム。ファージゲノムが、pIII遺伝子の3’−フラグメントを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベクターシステム。pIII遺伝子の3’−フラグメントが、プロモーターを含む、請求項6に記載のベクターシステム。選択ファージが、プロモーターに作動的に連結した多重クローニング部位を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のベクターシステム。細胞が、ヘルパーファージおよびアクセサリープラスミドを含み、かつ同時に、前記ヘルパーファージおよびアクセサリープラスミドが、ファージゲノムの存在下において感染性ファージの生成のために必要とされるすべての遺伝子を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のベクターシステム。アクセサリープラスミドが、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含む発現カセットを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のベクターシステム。アクセサリープラスミドが、pIIIをコンディショナルプロモーターの制御下でコードする発現カセットを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のベクターシステム。コンディショナルプロモーターの活性が、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能に依存する、請求項11に記載のベクターシステム。pIII-negタンパク質をコードする発現コンストラクトをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のベクターシステム。pIII negタンパク質をコードする発現コンストラクトがプロモーターを含み、該プロモーターの活性が目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能に依存する、請求項13に記載のベクターシステム。pIII-negタンパク質をコードする発現カセットが、アクセサリープラスミド上に位置する、請求項13または14に記載のベクターシステム。コンディショナルプロモーターが、cI結合部位を含む、請求項11に記載のベクターシステム。プロモーターが、cI結合部位を含む、請求項14に記載のベクターシステム。所望の標的プロテアーゼ切断部位を含むcIタンパク質をコードする発現コンストラクトをさらに含む、請求項15または16に記載のベクターシステム。変異誘発プラスミドをさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のベクターシステム。変異誘発プラスミドが、変異誘発を促進する遺伝子産物をコードする遺伝子発現カセットを含む、請求項19に記載のベクターシステム。変異誘発を促進する遺伝子産物をコードする発現カセットが、コンディショナルプロモーターを含み、該コンディショナルプロモーターの活性が、インデューサーの存在に依存する、請求項20に記載のベクターシステム。コンディショナルプロモーターがアラビノース誘導型プロモーターであり、インデューサーがアラビノースである、請求項21に記載のベクターシステム。選択ファージが、HP-T7RNAPまたはSP-T7RNAPである、請求項1に記載のベクターシステム。選択プラスミドが、SP-MCS(配列番号30)である、請求項1に記載のベクターシステム。アクセサリープラスミドが、AP-MCS-AまたはAP-MCS-Pである、請求項1に記載のベクターシステム。変異誘発プラスミドがMP-QURである、請求項19に記載のベクターシステム。

说明书全文

関連出願 本願は、2010年12月22日に出願された「Continuous Directed Evolution」と題する米国仮特許出願U.S.S.N. 61/426,139に対する35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張し、その全内容は、本明細書に参照により組み込まれる。

政府の支援 本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金R01 GM065400に基づく米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。

発明の背景 通常の定向進化(directed evolution)は、変異誘発、形質転換、またはin vitroでの発現、スクリーニングもしくは選択、ならびに遺伝子の収集および操作の不連続な(discrete)サイクルを伴う[1,2]。対照的に、自然における進化は、連続的な、非同期的な形式で発生し、ここで、変異、選択および複製は、同時に起こる。進化の成功は、行われたラウンドの総数に強く依存するが[3]、不連続な定向進化のサイクルの労働および時間集約的な性質が、多くの研究室での進化の試みを、中程度のラウンドの回数に限定する。

対照的に、連続的定向進化は、単一の実験において、最小限の研究者の時間または努によって膨大な回数の進化のラウンドを行うことを可能にすることにより、定向進化の試みの有効性を劇的に増強する能力を有する。あるランドマーク実験において、Joyceおよび共同研究者らは、リボザイムの自己複製周期をin vitroで操作し、この周期を用いてリボザイムをRNAリガーゼ活性について連続的に進化させた。このシステムは、依然として連続的定向進化の唯一の報告であり、残念ながら、他の生体分子を進化させるためには容易に適応させることができない[4−7]。

連続的定向進化は、少なくとも、(i)目的の遺伝子の連続的な変異誘発、および(ii)所望の活性を有する分子をコードする遺伝子の連続的な選択的複製、を必要とする。幾つかのグループが、連続的な、または迅速な非連続的な変異誘発のサイクルを達成するための方法を開発してきた[8−13]。例えば、Churchおよび共同研究者らは、近年、形質転換および組換えの自動サイクルを通してE. coliにおいて標的化された多様性を操作することができるシステムである、多重自動ゲノム操作(MAGE)を開発した[14]。これらの進歩は、遺伝子ライブラリーを非常に効率的に作製することを可能にするが、迅速かつ一般的な連続的選択とは関連しておらず、したがって、連続的定向進化を可能にするものではなかった。

発明の要旨 研究室における進化は、所望の特性を有する多くの生体分子、例えば核酸およびタンパク質を生み出してきた。しかし、従来の研究室における進化の戦略は、不連続な変異−選択のラウンドに基づき、1回の定向進化のラウンドは、典型的には、研究者による頻繁な介入を伴う数日間またはそれより長い時間を必要とし、複雑な進化のプロセスを研究室において行うことを非現実的にしている。

本発明は、宿主細胞において、例えばE. coliにおいて、タンパク質産生に関連し得る遺伝子によりコードされる分子の連続的定向進化を可能にする、プラットフォームを提供する。本発明の幾つかの側面は、目的の遺伝子によりコードされる分子の活性を、目的の遺伝子の細胞から細胞への伝達に関連付けることにより、目的の遺伝子を進化させる方法を提供する。一部の態様において、プラットフォームは、目的の分子、例えばタンパク質またはRNAをコードする遺伝子を、細胞から細胞へと伝達する手段を含む。例えば、プラットフォームは、目的の遺伝子(また本明細書において進化させる遺伝子としても言及される)を含むファージゲノムを含んでもよく、これは、宿主細胞のフローにおいて複製および変異する。目的の遺伝子の所望の機能は、宿主細胞において、1つの細胞から別の細胞への遺伝子の伝達のために必須である遺伝子の発現を駆動し、したがって、目的の遺伝子が機能獲得型変異を得るベクターのために選択的な利点を提供する。例えば、一部の態様において、感染性ファージ粒子の産生のために必要とされるファージタンパク質をコードする遺伝子は、その活性が目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物に依存するコンディショナルプロモーターの制御下にある。目的の遺伝子を含む伝達ベクターの集団は、宿主細胞のフローにおいて、複数の伝達サイクル、例えば複数のウイルス生活環にわたり連続的に進化することができ、同時に、伝達サイクルのあるステップの基礎を所望の機能または産物に置くことにより、目的の遺伝子またはその産物の所望の機能について選択され得、これにより、ベクター集団中のかかる変異体に競争的利点が付与される。

細胞から細胞への目的の遺伝子の伝達のための方法およびベクターは、当該分野において周知であり、例えば、ウイルスベクターによる好適な宿主細胞の(例えば、バクテリオファージベクターによる細菌細胞の、レトロウイルスベクター、例えば疱性口内炎ウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターによる哺乳動物細胞の)感染、細菌接合によるプラスミドの伝達、または目的の遺伝子を含む細胞の意図的な溶菌および近傍の細胞による裸のDNAの取り込みが挙げられる。

一部の態様において、進化のプロセスは連続的であるが、一方、他においては、それは半連続的であるか、不連続のステップを含む。一部の態様において、進化のプロセスは自律的であるか、または、例えば、細胞のフローもしくは細胞間の遺伝子伝達の速度を制御するコントローラーのシステム、または進化のプロセスの複数の不連続のステップもしくはサイクルを行うロボットシステムを使用することにより、最小限のヒトの介入により行われる。

本発明は、定向型連続的進化システムのための、方法、装置、材料、細胞株、ベクター、ウイルス、および試薬を提供し、ここで、進化する遺伝子は、目的の活性に依存する様式において、改変されたウイルスの生活環を通して、宿主細胞から宿主細胞へと伝達される。ウイルスの複製、変異および選択の多数のサイクルを、1日の定向型連続的進化において、ヒトの介入なしで行うことができる。

例えば、一部の態様において、本発明は、ファージにより補助される連続的進化(PACE)のためのシステム、方法、装置、材料、細胞株、ベクター、ウイルスおよび試薬を提供し、これらにおいて、進化する遺伝子は、目的の活性に依存する様式において、改変されたウイルスの生活環を通して、宿主細胞から宿主細胞へ伝達される。一部のかかる態様において、進化させる目的の遺伝子を含み、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を欠損している、ファージベクターが提供される。一部の態様において、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子は、その活性が目的の遺伝子の産物(例えばタンパク質または核酸)の所望の活性に依存するコンディショナルプロモーターの制御下にある。一部の態様において、ファージベクターを、目的の遺伝子の変異を可能にする条件下において、宿主細胞の集団と接触させる。所望の活性の獲得を付与する目的の遺伝子における変異は、かかる変異を有さないかまたは機能喪失型変異を有するファージベクターに対する競合的利点を提供し、したがって、変異しているファージに対して連続的な選択圧を提供する。ファージの継続的な生活環は一般的に短いので(例えば、10〜20分間の範囲)、複数のファージの継続的な生活環が、ヒトの介入なしで、1日の定向型連続的進化において起こり得る。

PACEのプロセスの一例として、そのプロモーター認識配列に関して高度に特異的な要求を有するポリメラーゼであるT7 RNAポリメラーゼ(RNAP)を、区別し得るプロモーターを認識するように、および、G以外のヌクレオチドにより転写物を開始させるように、進化させる。以下の例のセクションを参照。3つの進化した活性の各々は、1週間未満の連続的進化において出現し、3つの場合の全てにおいて、PACEにより進化したポリメラーゼ活性は、野生型T7プロモーターにおける野生型T7 RNAPを凌いだか、またはそれに匹敵した。研究室における進化の著しい加速により、PACEは、困難な定向進化の問題に対する効率的な解決法を提供する。

本発明は、生体分子の、例えば、核酸の、タンパク質の、または生合成経路を介して合成される低分子の連続的進化のための方法を提供する。一部の態様において、以下のステップを含む方法が提供される:(a)宿主細胞の集団を、目的の遺伝子を含むウイルスベクターの集団と接触させること、ここで、宿主細胞は、ウイルスベクターによる感染が可能である;(b)任意に、宿主細胞の集団を変異原と接触させること;(c)宿主細胞の集団を、ウイルス粒子の産生を可能にする条件下においてインキュベートすること、ここで、細胞は、宿主細胞集団から取り除かれ、宿主細胞の集団は、新たな(fresh)未感染の宿主細胞で補充される;ならびに(d)宿主細胞の集団から、目的の進化した遺伝子をコードするウイルスベクターの変異した複製産物を単離すること。一部の態様において、ウイルスベクターの複製産物を含む感染性ウイルス粒子の産生のために必要とされる、少なくとも1つのウイルス遺伝子の発現は、目的の遺伝子によりコードされる産物、例えばタンパク質または核酸の機能に依存する。

本発明はまた、ファージにより補助されるタンパク質の連続的進化(PACE)の方法を提供する。一部の態様において、方法は、宿主細胞のフロー、例えば、ラグーンを通した細菌宿主細胞のフロー、ならびに、ファージゲノムの複製および変異を可能にする条件下において宿主細胞のフローにおいて複製する、目的の遺伝子をコードするファージベクターの集団を提供することを含む。一部の態様において、宿主細胞は、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子を、目的の遺伝子の所望の機能により活性化されるコンディショナルプロモーターの制御下に含み、これにより、目的の遺伝子における機能獲得型を獲得するファージゲノムに選択的利点を付与する。一部の態様において、方法は、細菌宿主細胞の集団を、ファージ、例えばM13ファージなどの線状ファージの集団と接触させることを含む。

一部の態様において、宿主細胞集団を選択ファージ集団と接触させるPACE法が提供され、ここで、宿主細胞は、感染性ファージの産生のために必要とされる遺伝子の発現が、目的の遺伝子の遺伝子産物の活性に依存するコンディショナルプロモーターにより駆動される、発現コンストラクトを含む。このことは、本明細書において他でより詳細に記載される。一部のかかる態様において、選択ファージは、ファージ粒子の生成のために必要とされる全ての残りのファージ遺伝子を含む。例えば、一部の態様において、pIIIをコードする核酸がコンディショナルプロモーターにより駆動される発現コンストラクトを含むE. coli宿主細胞の集団を、目的の遺伝子および複製起点を含みpI、pIIおよびpIV〜pXをコードするM13選択ファージの集団と接触させる。一部のかかる態様において、選択ファージは、ファージプロモーターからの目的の遺伝子の発現を駆動する。一部のかかる態様において、選択ファージは、3’−gIIIプロモーター(図16を参照)を含む野生型ファージの全てのファージプロモーターを含む。一部の態様において、選択ファージは、gIIIの最後の180bpを含むが、全長gIIIコード配列を含まない。一部の態様において、宿主細胞は、ヘルパーファージを含まない。ヘルパーファージの使用を避けることの一つの利点は、感染の前にファージ遺伝子を発現する細胞において感染効率が低下し得ることである。したがって、選択ファージおよびアクセサリープラスミドを含む2プラスミドのPACEベクターシステムの使用が、一部の態様において、従来のヘルパーファージを含む3プラスミドのPACEベクターシステムの使用に対して、好ましい。

本発明はまた、本明細書において提供される連続的進化の方法を行うための装置またはシステムを提供する。一部の態様において、装置は、進化させるタンパク質をコードする活発に複製するファージベクターの集団、ファージの宿主細胞の集団、新たな宿主細胞を保持するタービドスタットに連結した流入路、流出路、ならびに、流入および/または流出を制御するコントローラーを保持する、ラグーンを含む。一部の態様において、ラグーンを通しての流動速度は、宿主細胞がラグーン中に滞在する平均時間が、ファージの生活環より長いが、宿主細胞の細胞分裂の間の平均時間よりも短くなるように制御される。一部の態様において、装置は、ラグーンの流入路に連結した変異原を含む容器をさらに含む。一部の態様において、装置は、ラグーンの流入路に連結した遺伝子発現のインデューサーを保持する容器をさらに含む。一部の態様において、宿主細胞集団は、本明細書において他でより詳細に記載されるように、アクセサリープラスミドを保有するがヘルパーファージは保有しない細胞を含む。

本発明はさらに、ファージにより補助される生体分子の連続的進化のための試薬を提供する。一部の態様において、PACEベクター、例えば、選択ファージまたはファージミド、アクセサリープラスミド、変異誘発プラスミド、およびヘルパープラスミドが提供される。選択ファージまたはファージミドは、目的の遺伝子が挿入され、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子が、例えば遺伝子の部分的または完全な欠損により変異した、ファージゲノムを含む。ある態様において、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子は、少なくとも部分的に目的の遺伝子により置き換えられる。アクセサリープラスミドは、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子を、目的の遺伝子の遺伝子産物の機能により活性化されるコンディショナルプロモーターの制御下に含み、選択ファージまたはアクセサリープラスミドから発現されないファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子の発現のための発現カセットを含むヘルパーファージまたはヘルパープラスミドが提供される。一部の態様において、感染性ファージの生成のために必要とされるすべての遺伝子が、選択ファージおよびアクセサリープラスミドにより発現され、ヘルパーファージまたはプラスミドは必要とされない。

一部の態様において、選択ファージおよびアクセサリープラスミドを含むがヘルパーファージを含まない2プラスミドのPACEベクターシステムが提供される。一部のかかるシステムにおいて、アクセサリープラスミドは、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードする遺伝子を含み、選択ファージは、目的の遺伝子に加えて、ファージ粒子の生成のために必要とされる全ての他のファージ遺伝子を提供する。かかる2プラスミドPACEベクターシステムは、単独で用いても、本明細書において他で記載される変異誘発プラスミドと組み合わせて用いてもよい。

PACE法のための宿主細胞もまた提供される。一部の態様において、宿主細胞は、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子(例えばpIII)の発現が所望の進化した目的の遺伝子の機能により活性化されるコンディショナルプロモーターにより駆動される発現コンストラクトを有する、アクセサリープラスミドを含む。一部の態様において、細胞はさらに、変異を誘導または促進する遺伝子、例えば細菌SOS応答の、またはプルーフリーディング欠損DNAポリメラーゼの遺伝子の発現のための、変異誘発プラスミドを含む。

本発明はまた、それらのゲノム中に変異させる目的の遺伝子を含む選択ファージ、ウイルスまたはファージミドを提供する。一部の態様において、選択ファージは、そのゲノムにおいてpIII遺伝子が部分的に欠損し目的の遺伝子で置き換えられている、M13ファージである。一部の態様において、選択ファージは、複製起点、野生型ゲノムにおいて含まれる全てのファージプロモーターおよびターミネーター(参考のため、図16を参照)、ならびにファージゲノム中に挿入された目的の遺伝子を含むが、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードする遺伝子の全長コード領域を欠失する、野生型M13ゲノムを含む。一部の態様において、タンパク質はpIIIである。一部のかかる態様において、ファージゲノムは、全長pIIIをコードする領域を欠失するが、プロモーターを含むgIIIの3’−フラグメントを含む(図16を参照)。一部の態様において、gIIIの3’−フラグメントは、gIIIの最後の180塩基を含む。一部の態様において、目的の遺伝子は、ファージゲノムの野生型ファージプロモーターの下流中にクローニングされたコード配列である。一部の態様において、目的の遺伝子は、転写終結配列を含まないが、ファージゲノムのターミネーターを用いる。一部の態様において、目的の遺伝子は、ファージゲノムにおいて欠失している感染性ファージの生成のために必要とされるタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子のフラグメントを置き換えるように、ファージゲノム中にクローニングされる。一部の態様において、目的の遺伝子は、野生型M13においてpIIIをコードするヌクレオチド配列の替わりに、M13選択ファージ中に、M13プロモーターの下流であって、gVIIIターミネーターのすぐ下流であるが、gIIIの3’−プロモーターの上流にクローニングされた(参考のために図16を参照)、コードヌクレオチド配列である。

本発明はまた、本発明の方法の進化した産物を提供する。例えば、一部の態様において、進化したタンパク質に対して改変された基質特異性および/または増大した転写活性を付与する変異を含む、進化したT7 RNAポリメラーゼが提供される。さらに、本発明の幾つかの側面は、本明細書において提供される方法を行うための試薬、ベクター、細胞、および/または装置を含むキットを提供する。例えば、一部の態様において、以下を含む細菌システムにおける連続的定向進化のためのキットが提供される:選択ファージまたはファージミド;アクセサリープラスミド;任意に、変異誘発プラスミドおよび/または変異原;ならびに/または、感染性ファージを産生することができ、ファージ感染が可能である宿主細胞。一部の態様において、本明細書において他でより詳細に記載されるように、例えば、選択ファージ、アクセサリープラスミド、任意に変異誘発プラスミドを含むが、ヘルパーファージを含まない、2プラスミドのPACEベクターシステムを含むキットが提供される。

本発明の他の利点、特徴および使用は、特定の非限定的な態様の詳細な説明;図面(これは模式的なものであって縮尺に合わせて描写されることを意図するものではない);および請求の範囲から明らかであろう。

(a)従来の細胞における定向進化、および(b)ファージにより補助される連続的進化(PACE)における定向進化のサイクル。従来の進化のサイクルは、典型的には、少なくとも形質転換、変異/増幅、およびスクリーニング/選択のステップにおいて研究者の介入を必要とするが、PACEのサイクルは、典型的には、研究者の介入を必要としない。

PACEシステムの概略。(a)単一のラグーン中のPACE。新たに届けられた宿主細胞が、ライブラリーメンバーをコードする選択ファージ(SP)に感染する。機能的なライブラリーメンバーは、アクセサリープラスミド(AP)からのpIIIの産生を誘導し、新たな宿主細胞に感染することができる子孫を放出する。非機能的なライブラリーメンバーは、pIIIを産生せず、非感染性の子孫のみを放出する。変異誘発の増大は、変異誘発プラスミド(MP)の誘導により促進させることができる。宿主細胞は、それらが複製するよりも平均して速く、ラグーンから流出し、このことが、活発に複製しているSPに対する変異の蓄積を限定する。(b)PACE装置の模式図。一定の細胞密度に維持された宿主E. coli細胞を、化学的インデューサーと共に、蠕動式ポンプにより、約1〜4容積/時間の速度において、ラグーン中に連続的に供給する。

(a)3つの区別し得るAPを用いた、3つの酵素の活性の、pIII産生およびファージ感染性への関連付け。コンディショナルに発現する遺伝子III(左側に示す)をコードするアクセサリープラスミドを含むE. coli細胞は、T7 RNAポリメラーゼ(T7-RNAP)、LGF2-RNAPαまたはZif268-Hinリコンビナーゼ[43]を発現するkan

r選択ファージで形質転換し、8時間37℃で培養した。生じた培養物をスペクチノマイシン耐性レシピエント細胞と組み合わせ、培養物を37℃で90分間インキュベートすることにより、感染性ファージの産生をアッセイした。感染細胞は、カナマイシンおよびスペクチノマイシンを含むプレート上にコロニーとして現れる(右)。(a)RNAポリメラーゼ活性は、野生型ファージに匹敵する遺伝子IIIの転写および感染をもたらすが、一方、T7を欠失するSPは、感染性ではない。(b)Zif268 DNA結合ドメインにテザー(tether)されたGal11pドメインとRNAポリメラーゼと融合したLGF2aドメインとの間のタンパク質−タンパク質相互作用は、遺伝子IIIの転写および感染の増大をもたらす。(c)リコンビナーゼにより触媒される遺伝子の反転は、遺伝子IIIの転写および感染を誘導する。(b)連続的進化法におけるアクセサリープラスミドのために有用なコンディショナルプロモーターの例示的設計。

選択のストリンジェンシーは、遺伝子IIIのリボソーム結合部位(RBS)およびアクセサリープラスミドのコピー数を変化させることにより制御することができる。T7 RNAPをコードする選択ファージを、高コピーのcolE1または低コピーのSC101起点を有する、強い、弱い、またはより弱いリボソーム結合部位[26]を含むアクセサリープラスミドと対にした。ファージの感染力は、RBSの強さが低下するとともに、およびコピー数が減少するとともに弱まり、より低いファージ力価に反映した。

T3プロモーターを認識するT7 RNAPのバリアントの進化。(a)PACEのスケジュール。(b)48、108および192時間目においてラグーン1から単離されたT7 RNAPバリアントの、T7およびT3プロモーターにおけるin vivoでの活性。T7 RNAP遺伝子のタンパク質コード領域を、T7またはT3プロモーターがlacZ発現を駆動するレポーターコンストラクト中へクローニングし、生じたベクターをE. coli細胞中に導入し、ベータ−ガラクトシダーゼ活性を分光光度的に定量することにより、転写活性を測定した。(c)ラグーン2から単離されたT7 RNAPバリアントのin vivoでの活性。(d)ラグーン1および2から精製されたT7 RNAPバリアントのin vitro活性。標準的な放射性ヌクレオチド取り込みアッセイを用いて、転写活性をin vitroで測定した[36]。エラーバーは、少なくとも3回の独立したアッセイの標準偏差を表わす。

PACEにより進化したT3プロモーターを認識するT7 RNAPバリアントの変異分析。多様な時点においてラグーン1および2からT7 RNAPクローンにおいて同定された変異を示す。太字の変異は、全プールのシークエンシングに基づいて、対応するラグーンにおいて優性であった。192時間目のカラムにおいて強調される変異は、ラグーン1およびラグーン2において収束的に進化した変異を表わす。

CTPにより転写を開始させるT7 RNAPバリアントの進化。(a)PACEのスケジュール。(b)80時間目において単離されたT7バリアントのT7およびiC

6プロモーターにおけるin vivo活性。アッセイは、図5bにおいて記載されるように行った。(c)(b)においてアッセイされた一連の精製されたT7 RNAPバリアントのin vitro活性。転写活性は、図5dにおいて記載されるようにアッセイした。エラーバーは、少なくとも3回の独立したアッセイの標準偏差を表わす。

ATPにより転写を開始させるT7 RNAPバリアントの進化。(a)PACEのスケジュール。(b)36時間目に単離されたT7 RNAPバリアントのT7およびiA

6プロモーターにおいてのin vivo活性。アッセイは、図5bにおいて記載されるように行った。(c)(b)においてアッセイされた一連の精製されたT7 RNAPバリアントのin vitro活性。転写活性は、図5dにおいて記載されるようにアッセイした。エラーバーは、少なくとも3回の独立したアッセイの標準偏差を表わす。

PACE実験において用いられるプラスミドのベクターマップ。図3における個別の感染アッセイのために、ヘルパーファージHPT7RNAPを用いた。アクセサリープラスミドAP-T7 Pを有する宿主細胞における48時間にわたる連続的増殖は、その後のPACE実験のための開始点である選択ファージSP-T7RNAP P314Tを生じた。アクセサリープラスミドAP-T7 Aは、選択ストリンジェンシーを増大させるために用いられたAP-T7 Pのより低コピー数バージョンである。アラビノース誘導型変異誘発プラスミドMP-QURを、全ての変異誘発およびPACE実験のために用いた。発現プラスミドEP-T7RNAPを用いて、細胞における転写活性をアッセイした。さらなる情報については、表1を参照。

連続的なファージ増殖は、3.2容積/時間のラグーン流動速度において持続する。高コピーの野生型T7プロモーターと共にAPを含む宿主細胞において増殖している野生型T7 RNAポリメラーゼをコードするSPの、3.2容積/時間のラグーン流動速度における連続的な一晩の希釈の後で、プラークアッセイを行った。T7ファージを含むプラークの存在は、ファージ複製速度が、この希釈速度に耐えるために十分であることを示す。

変異誘発プラスミド(MP)の構造および機能。4回の独立した実験にわたって、アラビノースによる誘導は、ファージによりコードされるlacI遺伝子における不活化変異の頻度を、約100倍増大させる。全ての型の転移(transition)および塩基転換(transversion)が観察され、G/CからA/Tへの転移に対する傾向があった。

P314T変異を含む出発T7 RNAPの転写活性は、細胞においてT7、T3、iC

6およびiA

6プロモーターにおいてアッセイした場合に、野生型ポリメラーゼのものと類似する。各々のバーは、同じプロモーターにおける野生型T7 RNAP(100として定義される)に対して相対的なP314T変異体RNAPの活性を示す。バーの間で絶対的転写活性レベルが劇的に異なることに注意する。P314Tを野生型T7 RNAPと比較する相対的レベルのみを示す。エラーバーは、少なくとも3回の独立したアッセイの標準偏差を表わす。

C6-80.9の進化したポリメラーゼ酵素からの転写産物のRNA配列。DNA配列のクロマトグラムは、iC

6鋳型(上のトレース)または野生型鋳型(下のトレース)のいずれかを転写するC6-80.9の進化したポリメラーゼのRACE分析からのものである。転写開始は、鋳型でないヌクレオチドではなく、鋳型をコードする塩基により起こった。配列は、上から下へ、それぞれ配列番号33〜35に対応する。

iC

6およびiA

6プロモーターにおいて開始するように進化したT7 RNAP変異体のin vitro転写活性を、野生型、iC

6およびiA

6プロモーターにおいてアッセイした。標準的な放射性ヌクレオチド取り込みアッセイを用いて、in vitroでの転写活性を測定した。アッセイした4つ全てのバリアントが、野生型、iC

6およびiA

6プロモーターにおいて野生型様の効率で転写を開始する能力を示す。エラーバーは、少なくとも3回の独立したアッセイの標準偏差を表わす。

細胞密度に応答して新たな培地の流動を制御する電気的システムを説明する模式図として。タービドスタット培地流入を制御する弁は、TruCell2プローブから細胞密度情報をプロセッシングするプログラム可能なデジタルパネルメーターにより開閉される。

M13ファージゲノムを説明する模式図。Ori:複製起点。

PACEのための陰性選択戦略。

標的プロテアーゼ認識部位を含むcIリプレッサーを用いる、プロテアーゼの進化のためのPACE戦略。

二重プロテアーゼ選択のためのアクセサリープラスミド。

定義 連続的進化の概念 用語「連続的進化」は、本明細書において用いられる場合、核酸の集団が、所望の進化した産物、例えば所望の活性を有するタンパク質をコードする核酸を産生するために、(a)複製、(b)変異、および(c)選択の複数のラウンドに供される、進化の手法を指し、ここで、複数のラウンドは、研究者の相互作用なしで行うことができ、ここで(a)〜(c)におけるプロセスは、同時に行うことができる。典型的には、進化の手法は、in vitroで、例えば宿主細胞としての培養中の細胞を用いて行われる。一般に、本明細書において提供される連続的進化のプロセスは、目的の遺伝子が、宿主細胞中での複製および別の宿主細胞への伝達を含む生活環を経験する核酸ベクターにおいて提供されるシステムに依存し、ここで、生活環の重要な成分は、不活化され、当該成分の再活性化は、目的の遺伝子における所望の変異に依存する。

一部の態様において、目的の遺伝子は、目的の遺伝子の活性に依存する様式において、細胞から細胞へ伝達される。一部の態様において、伝達ベクターは、細胞に感染するウイルス、例えばバクテリオファージまたはレトロウイルスベクターである。一部の態様において、ウイルスベクターは、細菌宿主細胞に感染するファージベクターである。一部の態様において、伝達ベクターは、レトロウイルスベクター、例えば、ヒトまたはマウスの細胞に感染するレンチウイルスベクターまたは水疱性口内炎ウイルスベクターである。一部の態様において、伝達ベクターは、ドナー細菌細胞からレシピエント細菌細胞へ伝達される接合性プラスミドである。

一部の態様において、目的の遺伝子を含む核酸ベクターは、ファージ、ウイルスベクターまたは裸のDNA(例えば、可動プラスミド)である。一部の態様において、目的の遺伝子の細胞から細胞への伝達は、感染、トランスフェクション、形質導入、接合、または裸のDNAの取り込みを介するものであり、細胞から細胞への伝達の効率(例えば、伝達速度)は、目的の遺伝子によりコードされる産物の活性に依存する。例えば、一部の態様において、核酸ベクターは、目的の遺伝子を含むファージであり、ファージ伝達の効率(感染を介するもの)は、目的の遺伝子の活性に依存し、ここで、ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質(例えば、M13ファージについてはpIII)は、目的の遺伝子の所望の活性の存在下においてのみ、宿主細胞において発現される。別の例において、核酸ベクターは、レトロウイルスベクター、例えば、目的の遺伝子を含むレンチウイルスまたは水疱性口内炎ウイルスベクターであり、細胞から細胞へのウイルス伝達の効率は、目的の遺伝子の活性に依存し、ここで、ウイルス粒子の生成のために必要とされるタンパク質(例えばVSV-gなどのエンベロープタンパク質)は、目的の遺伝子の所望の活性の存在下においてのみ、宿主細胞において発現される。別の例において、核酸ベクターは、DNAベクター、例えば、目的の遺伝子を含み、接合を介して細菌宿主細胞間を伝達される可動プラスミドDNAの形態であって、接合に媒介される細胞から細胞への伝達の効率は、目的の遺伝子の活性に依存し、ここで、接合に媒介される伝達のために必要とされるタンパク質(例えばtraAまたはtraQ)は、目的の遺伝子の所望の活性の存在下においてのみ、宿主細胞において発現される。宿主細胞は、これらの遺伝子の1つまたは両方を欠失するFプラスミドを含む。

例えば、一部の態様は、進化させる目的の遺伝子を含むウイルスベクターの集団が、宿主細胞のフロー、例えばラグーンを通るフロー中で複製する、連続的進化システムを提供し、ここで、ウイルスベクターは、感染性ウイルス粒子の生成のために必須であるタンパク質をコードする遺伝子を欠損し、ここで、その遺伝子は、宿主細胞において、目的の遺伝子またはそのその変異バージョンによりコードされる遺伝子産物により活性化され得るコンディショナルプロモーターの制御下に含まれる。一部の態様において、コンディショナルプロモーターの活性は、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の所望の機能に依存する。目的の遺伝子が所望の機能を付与する変異を獲得していないウイルスベクターは、コンディショナルプロモーターを活性化しないか、最小限の活性化しか達成しないが、一方、目的の遺伝子における所望の変異を付与する任意の変異は、コンディショナルプロモーターの活性化をもたらす。コンディショナルプロモーターは、ウイルス生活環のために必須のタンパク質を制御するので、このプロモーターの活性化は、有利な変異を獲得したベクターについて、ウイルスの核酸および複製における利点に直接的に対応する。

用語「フロー(flow)」は、本明細書において宿主細胞の文脈において用いられる場合、宿主細胞の流れ(stream)を指し、ここで、新たな宿主細胞が宿主細胞集団に導入されており、例えば、ラグーン中の宿主細胞集団は、制限された時間にわたって集団内に留まり、次いで宿主細胞集団から取り除かれる。単純な形態において、宿主細胞のフローは、例えば制御された速度においてチューブまたはチャネルを通るフローであってもよい。他の態様において、宿主細胞のフローは、ある容積の細胞培養培地を保持し流入路および流出路を含むラグーンを通して向けられる。新たな宿主細胞の導入は、連続的であっても間欠的であってもよく、除去は、受動的(例えば溢流によるもの)であっても、能動的(例えば活性なサイフォンまたはポンプによるもの)であってもよい。除去は、さらに、ランダムであってもよく、例えば、宿主細胞の撹拌懸濁培養が提供される場合、取り除かれた液体培養培地は、暫時ラグーン内の宿主細胞集団のメンバーであった細胞のみならず、新たに導入された宿主細胞を含む。理論においては、細胞は、ラグーンからの除去を無期限に逃れ得るにもかかわらず、平均的な宿主細胞は、限定された期間の間の未ラグーン内に留まり、これは、ラグーンを通した培養培地(および懸濁された細胞)の流動速度により主に決定される。

ウイルスベクターは、新たな未感染の宿主細胞が提供される一方で感染細胞は取り除かれる宿主細胞のフロー中で複製するので、複数の継続的なウイルス生活環が、研究者による相互作用なしで起こり得、このことにより、1回の進化実験における複数の有利な変異の蓄積が可能になる。

用語「ファージにより補助される連続的進化(PACE)」は、本明細書において用いられる場合、ファージをウイルスベクターとして使用する連続的進化を指す。

ウイルスベクター 用語「ウイルスベクター」は、本明細書において用いられる場合、好適な宿主細胞中に導入された場合に、複製して別の宿主細胞中へウイルスゲノムを伝達することができるウイルス粒子へとパッケージングされることができるウイルスゲノムを含む、核酸を指す。用語ウイルスベクターは、短縮されたまたは部分的なウイルスゲノムを含むベクターにまで拡大される。例えば、一部の態様において、感染性ウイルス粒子の生成のために必須のタンパク質をコードする遺伝子を欠失するウイルスベクターが提供される。しかし、好適な宿主細胞、例えば欠失した遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含む宿主細胞においては、かかる短縮型ウイルスベクターは、複製して、短縮型ウイルスゲノムを別の宿主細胞中へ伝達することができるウイルス粒子を生成することができる。一部の態様において、ウイルスベクターは、ファージ、例えば線状ファージ(例えばM13ファージ)である。一部の態様において、進化させる目的の遺伝子を含むウイルスベクター、例えばファージベクターが提供される。

用語「核酸」は、本明細書において用いられる場合、ヌクレオチドのポリマーを指す、ポリマーとして、天然のヌクレオシド(すなわち、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジン)、ヌクレオシドアナログ(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、5−メチルシチジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−プロピニル−ウリジン、C5−プロピニル−シチジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、ジヒドロウリジン、メチルプソイドウリジン、1−メチルアデノシン、1−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシンおよび2−チオシチジン)、化学的に修飾された塩基、生物学的に修飾された塩基(例えばメチル化された塩基)、インターカレートされた塩基、修飾糖(例えば2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’−O−メチルシチジン、アラビノースおよびヘキソース)、または修飾リン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホラミダイト結合)を挙げることができる。

用語「タンパク質」は、本明細書において用いられる場合、ペプチド結合により一緒に結合したアミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、本明細書において用いられる場合、任意のサイズ、構造または機能のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドを指す。典型的には、タンパク質は、少なくとも3アミノ酸長である。タンパク質は、個々のタンパク質またはタンパク質の集合を指し得る。本発明のタンパク質は、好ましくは、天然のアミノ酸のみを含むが、非天然のアミノ酸(すなわち、天然に存在しないが、ポリペプチド鎖中に組み込むことができるもの;例えばhttp://www.cco.caltech.edu/~dadgrp/Unnatstruct.gif, which displays structures of non-natural amino acids that have been successfully incorporated into functional ion channelsを参照)、および/または当該分野において公知であるようなアミノ酸アナログを、代わりに用いてもよい。また、本発明のタンパク質中の1または2以上のアミノ酸を、例えば、炭水化物基、ヒドロキシル基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、抱合のためのリンカー、官能化などの化学物質の付加、または他の修飾などにより、修飾してもよい。タンパク質はまた、単一の分子であっても、複数の分子の複合体であってもよい。タンパク質は、天然に存在するタンパク質またはペプチドの単なるフラグメントであってもよい。タンパク質は、天然に存在するもの、組換え、または合成、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。

用語「目的の遺伝子」は、本明細書において用いられる場合、目的の遺伝子産物、例えば、本明細書において提供されるような連続的進化のプロセスにおいて進化させる遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸コンストラクトを指す。この用語は、本明細書において提供される方法による連続的進化のプロセスの結果である、目的の遺伝子の任意のバリアントを含む。例えば、一部の態様において、目的の遺伝子は、コード配列の発現がウイルスゲノム中の1または2以上のプロモーターの制御下にあるように、ウイルスベクター、例えばファージゲノム中にクローニングされた、進化させるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸コンストラクトである。他の態様において、目的の遺伝子は、進化させるタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびコード配列に作動的に連結したプロモーターを含む、核酸コンストラクトである。ウイルスベクター、例えばファージゲノム中にクローニングされた場合、かかる目的の遺伝子のコード配列の発現は、異種プロモーターの制御下にあり、一部の態様においてはまた、ウイルスゲノム中に含まれる1または2以上のプロモーターにより影響を受ける。

用語「目的の遺伝子の機能」は、用語「目的の遺伝子の活性」と交換可能に用いられ、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物、例えば核酸またはタンパク質の、機能または活性を指す。例えば、目的の遺伝子の機能は、酵素活性(例えば、反応生成物の生成をもたらす酵素活性、リン酸化活性、ホスファターゼ活性など)、転写を活性化する能力(例えば、特異的プロモーター配列に標的化された転写活性化活性)、結合形成活性(例えば、共有結合の形成をもたらす酵素活性)、または結合活性(例えば、タンパク質、DNAもしくはRNA結合活性)であってよい。

用語「プロモーター」は、当該分野において認識され、細胞の転写機構により認識される配列を有し、下流の遺伝子の転写を開始させることができる、核酸分子を指す。プロモーターは、構成的に活性であっても(これはプロモーターが所与の細胞の構成において常に活性であることを意味する)、コンディショナルに活性であっても(これはプロモーターが特定の条件の存在下においてのみ活性であることを意味する)よい。例えば、コンディショナルプロモーターは、プロモーター中の調節エレメントと関連するタンパク質を基本的な転写機構に関連付ける特定のタンパク質の存在下においてのみ、または、阻害分子の非存在下においてのみ、活性であり得る。コンディショナルに活性なプロモーターの1つのサブクラスは、誘導性プロモーターであり、これは、活性のために低分子「インデューサー」の存在を必要とする。誘導性プロモーターの例として、限定されないが、アラビノース誘導型プロモーター、Tet-onプロモーター、およびタモキシフェン−誘導型プロモーターが挙げられる。構成的、コンディショナルおよび誘導性プロモーターは、当業者に周知であり、当業者は、本発明を実施する上で有用な多様なかかるプロモーターを確認することができる。本発明は、この点において限定されることはない。

用語「ウイルス粒子」は、本明細書において用いられる場合、ウイルスゲノム、例えばDNAまたはRNAゲノムであって、ウイルスタンパク質またはタンパク質のコーティングに結合し、一部の場合においては脂質のエンベロープに結合したものを指す。例えば、ファージ粒子は、野生型ファージゲノムによりコードされるタンパク質中にパッケージングされるファージゲノムを含む。

用語「感染性ウイルス粒子」は、本明細書において用いられる場合、それが含むウイルスゲノムを好適な宿主細胞中へ伝達することができる、ウイルス粒子を指す。全てのウイルス粒子がウイルスゲノムを好適な宿主細胞へ伝達することができるわけではない。これを達成し得ない粒子は、非感染性ウイルス粒子として言及される。一部の態様において、ウイルス粒子は、複数の異なるコーティングタンパク質を含む。1つまたは幾つかのコーティングタンパク質を、ウイルス粒子の構造を損なうことなく取り除くことができる。一部の態様において、感染性を喪失することなく少なくとも1つのコーティングタンパク質を取り除くことができないウイルス粒子が提供される。ウイルス粒子が、感染性を付与するタンパク質を欠失する場合、ウイルス粒子は感染性ではない。例えば、ファージタンパク質(例えば、pVIII)のコーティング中にパッケージングされたファージゲノムを含むが、pIII(タンパク質III)を欠失するM13ファージ粒子は、非感染性M13ファージ粒子である。なぜならば、pIIIは、M13ファージ粒子の感染特性のために必須であるからである。

用語「ウイルス生活環」は、本明細書において用いられる場合、宿主細胞中へのウイルスゲノムの挿入、宿主細胞におけるウイルスゲノムの複製、および宿主細胞によるウイルスゲノムの複製産物のウイルス粒子中へのパッケージングを含む、ウイルス再生産のサイクルを指す。

一部の態様において、提供されるウイルスベクターは、ファージである。用語「ファージ」は、本明細書において用語「バクテリオファージ」と交換可能に用いられ、細菌細胞に感染するウイルスを指す。典型的には、ファージは、遺伝材料を封入する外側タンパク質キャプシドからなる。遺伝材料は、直鎖または環状の形態のいずれかのssRNA、dsRNA、ssDNAまたはdsDNAであり得る。ファージおよびファージベクターは、当業者に周知であり、本明細書において提供される方法を行うために有用であるファージの非限定的な例は、λ(溶原菌)、T2、T4、T7、T12、R17、M13、MS2、G4、P1、P2、P4、Phi X174、N4、Φ6およびΦ29である、ある態様において、本発明において利用されるファージは、M13である。さらなる好適なファージおよび宿主細胞は、当業者には明らかであり、本発明は、この側面において限定されない。さらなる好適なファージおよび宿主細胞の例示的な記載については、Elizabeth Kutter and Alexander Sulakvelidze:Bacteriophages:Biology and Applications. CRC Press;第1版(2004年12月)、ISBN:0849313368;Martha R. J. Clokie and Andrew M. Kropinski:Bacteriophages:Methods and Protocols、第1巻:Isolation, Characterization, and Interactopns (Methods in Molecular Biology) Humana Press;第1版(2008年12月)、ISBN:1588296822; Martha R. J. Clokie and Andrew M. Kropinski:Bacteriophages:Methods and Protocols、第2巻:Molecular and Applied Aspects (Methods in Molecular Biology) Humana Press;第1版(2008年12月)、ISBN:1603275649を参照:これらの全ては、好適なファージおよび宿主細胞、ならびにかかるファージの単離、培養および操作のための方法およびプロトコルの開示のために、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。

一部の態様において、ファージは線状ファージである。一部の態様において、ファージはM13ファージである。M13ファージは、当業者に周知であり、M13ファージの生物学は、広範に研究されている。野生型M13ゲノムの模式的説明は、図16において提供される。野生型M13ファージ粒子は、約6.4kbの環状の一本鎖ゲノムを含む。野生型ゲノムは10個の遺伝子gI〜gXを含み、これは次いで、それぞれ10個のM13タンパク質pI〜pXをコードする。gVIIIはgVIIIをコードし、ファージ粒子の主要な構造タンパク質としても言及されるが、一方、gIIIはgIIIをコードし、マイナーなコーティングタンパク質としても言及され、これは、M13ファージ粒子の感染力のために必要とされる。

M13の生活環は、pIIIタンパク質を介した好適な細菌宿主細胞の性線毛へのファージの結合、および宿主細胞中へのファージゲノムの挿入を含む。環状一本鎖のファージゲノムは、次いで、複製型(RF)と称される環状二本鎖DNAへと転換され、ここからファージ遺伝子の転写が開始される。野生型M13ゲノムは、9個のプロモーター、および2個の転写ターミネーター、ならびに複製起点を含む。この一連のプロモーターは、2個の転写ターミネーターの最も近傍の遺伝子(gVIIIおよびIV)が最高レベルで転写されるような転写の勾配をもたらす。野生型M13ファージにおいては、10個全ての遺伝子の転写が同じ方向において進行する。ファージがコードするタンパク質の1つであるpIIは、宿主細胞における直鎖状一本鎖のファージゲノムの生成を開始させ、これはその後環状化し、pVに結合してこれにより安定化される。環状一本鎖のM13ゲノムは、次いでpVIIIにより結合されるが、一方、pVは、ゲノムから取り除かれ、これがパッケージングのプロセスを開始させる。パッケージングのプロセスの終了時に、複数のコピーのpIIIが野生型M13粒子に結合しており、これにより、別の宿主細胞に感染して生活環を終了する用意ができた感染性ファージを生成する。

M13ファージゲノムは、例えば野生型遺伝子の1または2以上を消去すること、および/または、異種の核酸コンストラクトをゲノム中に挿入することにより、操作することができる。M13は、ストリンジェントなゲノムサイズ制限を有さず、および42kbまでの挿入が報告されている。このことにより、M13ファージベクターを、進化させる遺伝子の長さに対する限定を課することなく、連続的進化実験において目的の遺伝子を進化させるために用いることが可能になる。

M13ファージはよく特徴づけられており、M13のゲノム配列は報告されている。代表的なM13ゲノム配列は、公共のデータベースから検索することができ、例示的な配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)データベースのエントリーV00604において提供される(www.ncbi.nlm,nih.gov):

ファージM13ゲノム:

用語「選択ファージ」は、本明細書において、用語「選択プラスミド」と交換可能に用いられ、進化させる目的の遺伝子を含み、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードする全長遺伝子を欠失する、改変されたファージを指す。例えば、本明細書において提供される幾つかのM13選択ファージは、進化させるタンパク質をコードする核酸配列をM13プロモーターの制御下に含み、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードするファージ遺伝子、例えば、gI、gII、gIII、gIV、gV、gVI、gVII、gVIII、gIXまたはgXまたはそれらの任意の組み合わせの、全てまたは一部を欠失する。例えば、本明細書において提供される幾つかのM13選択ファージは、進化させるタンパク質をコードする核酸配列を、例えばM13プロモーターの制御下に含み、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードする遺伝子、例えばpIIIタンパク質をコードするgIII遺伝子の、全てまたは一部を欠失する。マルチクローニング部位を含む例示的な非限定的な選択プラスミド配列であるSP-MCSが、以下に提供される:

用語「ヘルパーファージ」は、本明細書において、用語「ヘルパーファージミド」および「ヘルパープラスミド」と交換可能に用いられ、ファージ生活環のために必要とされるファージ遺伝子、または複数のかかる遺伝子を含むが、ファージ粒子中へのゲノムのパッケージングのために必要とされる構造エレメントを欠失する、核酸コンストラクトを指す。例えば、ヘルパーファージは、ファージ複製起点を欠失する野生型ファージゲノムを提供することができる。一部の態様において、ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を含むが、感染性粒子の生成のために必要とされる遺伝子、例えば全長pIII遺伝子を欠失するヘルパーファージが提供される。一部の態様において、ヘルパーファージは、ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子の全てではなく一部のみを提供する。ヘルパーファージは、ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を欠失する改変ファージが宿主細胞においてファージ生活環を完成させることを可能にするために有用である。典型的には、ヘルパーファージは、ファージゲノム中で欠失しているファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を含み、これにより、ファージゲノムを補完する。連続的進化の分脈において、ヘルパーファージは、典型的には選択ファージを補完するが、いずれも、感染性ファージ粒子の産生のために必要とされるファージ遺伝子を欠失する。

用語「複製産物」は、本明細書において用いられる場合、宿主細胞によるウイルスゲノム複製の結果である核酸を指す。これは、宿主細胞中に挿入されたウイルスゲノムから宿主細胞により合成される任意のウイルスゲノムを含む。当該用語は、変異していない複製産物のみならず変異した複製産物を含む。

アクセサリープラスミドおよびヘルパーコンストラクト 用語「アクセサリープラスミド」は、本明細書において用いられる場合、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含む、プラスミドを指す。本明細書において記載される連続的進化の文脈において、アクセサリープラスミドのコンディショナルプロモーターは、典型的には、進化させる目的の遺伝子の機能により活性化される。したがって、アクセサリープラスミドは、所与のウイルスベクターの集団中の、コンディショナルプロモーターを活性化することができる目的の遺伝子を担持するウイルスベクターに、競合的利点を伝える機能を果たす。目的の「活性化性」遺伝子を担持するウイルスベクターのみが、宿主細胞において感染性ウイルス粒子を生成するために必要とされる遺伝子の発現を誘導することができ、したがって、宿主細胞のフロー中でのウイルスゲノムのパッケージングおよび増殖を可能にする。目的の遺伝子の非活性化性バージョンを担持するベクターは、一方、感染性ウイルスベクターを生成するために必要とされる遺伝子の発現を誘導せず、したがって、新たな宿主細胞に感染し得るウイルス粒子へとパッケージングされない。

一部の態様において、アクセサリープラスミドのコンディショナルプロモーターは、その転写活性が、活性化の機能、例えば目的の遺伝子によりコードされるタンパク質の機能により、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10桁を超える広範囲にわたり調節され得るプロモータである。一部の態様において、コンディショナルプロモーターの転写活性のレベルは、目的の遺伝子の所望の機能に直接的に依存する。このことは、最小限のコンディショナルプロモーターの活性化のみを示す目的の遺伝子のバージョンを含むウイルスベクター集団により連続的進化のプロセスを開始することを可能にする。連続的進化のプロセスにおいて、コンディショナルプロモーターの活性を増大させる目的の遺伝子中の任意の変異は、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子のより高い発現レベルへ、したがって、最小限に活性なまたは機能喪失型の目的の遺伝子のバージョンを担持する他のウイルスベクターに対する競合的利点へと、直接的に変換する。

本明細書において提供されるような連続的進化の手法において、アクセサリープラスミドにより課される選択圧のストリンジェンシーは、調節することができる。一部の態様において、低コピー数アクセサリープラスミドの使用は、アクセサリープラスミド上のコンディショナルプロモーターを活性化する目的の遺伝子のバージョンについての選択のストリンジェンシーの増大をもたらすが、一方、高コピー数アクセサリープラスミドの使用は、選択のストリンジェンシーの低下をもたらす。用語「高コピー数プラスミド」および「低コピー数プラスミド」は、当該分野において認識され、当業者は、所与のプラスミドが高コピー数または低コピー数プラスミドのいずれであるかを確認することができるであろう。一部の態様において、低コピー数アクセサリープラスミドは、宿主細胞集団中の宿主細胞あたり約5〜約100のプラスミドの平均コピー数を示すプラスミドである。一部の態様において、コピー数が非常に低いアクセサリープラスミドは、宿主細胞集団中の宿主細胞あたり約1〜約10のプラスミドの平均コピー数を示すプラスミドである。一部の態様において、コピー数が非常に低いアクセサリープラスミドは、細胞1個あたり1コピーのプラスミドである。一部の態様において、高コピー数アクセサリープラスミドは、宿主細胞集団中の宿主細胞あたり約100〜約5000のプラスミドの平均コピー数を示すプラスミドである。アクセサリープラスミドのコピー数は、大部分、用いられる複製起点に依存する。当業者は、所望のコピー数を達成するために、好適な複製起点を決定することができるであろう。以下の表は、コピー数が異なり、異なる複製起点を有するベクターの非限定的な例を列記する。

*pMB1複製起点は、ColE1のものと緊密に関連し、同じ不適合群に該当する。ここで列記される高コピープラスミドは、この起点の変異バージョンを含む。

アクセサリープラスミドの機能、すなわち、その活性が目的の遺伝子の機能に依存するコンディショナルプロモーターの制御下におけるウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子を提供することは、代替的な方法において宿主細胞に与えることができることが理解されるべきである。かかる代替として、限定されないが、コンディショナルプロモーターおよび対応する遺伝子を含む遺伝子コンストラクトの、宿主細胞のゲノム中への永久的な挿入、または、異なるベクター、例えばファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体を用いて、それを宿主細胞中へ導入することが挙げられる。宿主細胞にアクセサリープラスミド機能を付与するさらなる方法は、当業者には明らかであり、本発明はこの点において限定されない。

2つの例示的な非限定的なアクセサリープラスミド、AP-MCS-AおよびAP-MCS-Pの配列を、以下に提供する: AP-MCS-A:

AP-MCS-P:

変異原および変異誘発を促進する発現コンストラクト 用語「変異原」は、本明細書において用いられる場合、所与の生物システム、例えば宿主細胞において、変異を誘導する化合物または変異率を、そのシステムにおいて天然に存在する変異のレベルよりも高いレベルまで増大させる剤を指す。連続的進化の手法のために有用な幾つかの例示的な変異原は、本明細書において他所で提供され、他の有用な変異原は、当業者には明らかである。有用な変異原として、限定されないが、電離放射線、紫外線照射、塩基類似体、脱アミノ化剤(例えば、亜硝酸)、挿入剤(例えば、臭化エチジウム)、アルキル化剤(例えば、エチルニトロソウレア)、トランスポゾン、臭素、アジ化物塩、ソラレン、ベンゼン、3−クロロ−4−(ジクロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン(MX)(CAS番号77439-76-0)、O,O−ジメチル−S−(フタルイミドメチル)ホスホロジチオエート(phos-met)(CAS番号732-11-6)、ホルムアルデヒド(CAS番号50-00-0)、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミド(AF−2)(CAS番号3688-53-7)、グリオキサール(CAS番号107-22-2)、6−メルカプトプリン(CAS番号50-44-2)、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキサン−l、2−ジカルボキシイミド(カプタン)(CAS番号133-06-2)、2−アミノプリン(CAS番号452-06-2)、メタンスルホン酸メチル(MMS)(CAS番号66-27-3)、4−ニトロキノリン1−オキシド(4−NQO)(CAS番号56-57-5)、N4−アミノシチジン(CAS番号57294-74-3)、アジ化ナトリウム(CAS番号26628-22-8)、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)(CAS番号759-73-9)、N−メチル−N−ニトロソウレア(MNU)(CAS番号820-60-0)、5−アザシチジン(CAS番号320-67-2)、クメンヒドロぺルオキシド(CHP)(CAS番号80-15-9)、メタンスルホン酸エチル(EMS)(CAS番号62-50-0)、N−エチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(ENNG)(CAS番号4245-77-6)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)(CAS番号70-25-7)、5−ジアゾウラシル(CAS番号2435-76-9)およびt−ブチルヒドロぺルオキシド(BHP)(CAS番号75-91-2)が挙げられる。本明細書において提供されるような連続的進化の手法において、さらなる変異原を用いてもよく、本発明はこの点において限定されない。

理想的には、変異原は、所与の宿主細胞またはウイルスベクターの集団において所望の変異率を誘導する濃度または暴露のレベルにおいて用いられるが、宿主細胞が変異原に暴露される平均的な時間枠内、または宿主細胞が新たな宿主細胞により置き換えられる前に宿主細胞のフロー中に存在する時間内において用いられる場合、宿主細胞に対して著しく毒性ではない

用語「変異誘発プラスミド」は、本明細書において用いられる場合、変異原として作用する遺伝子産物をコードする遺伝子を含むプラスミドを指す。一部の態様において、遺伝子は、プルーフリーディングの能力を欠失するDNAポリメラーゼをコードする。一部の態様において、遺伝子は、細菌のSOSストレス応答に関与する遺伝子、例えば、UmuC、UmuD'またはRecA遺伝子である。

宿主細胞 用語「宿主細胞」は、本明細書において用いられる場合、本明細書において提供される連続的進化のプロセスのために有用なウイルスベクターの宿主となり得る細胞を指す。細胞は、ウイルスベクターの遺伝子の発現、ウイルスゲノムの複製、および/またはウイルス粒子の生成を支持する場合、ウイルスベクターの宿主となり得る。細胞が所与のウイルスベクターのための好適な宿主細胞であるか否かを決定するための1つの判断基準は、細胞が、ウイルスベクターが誘導される野生型ウイルスゲノムのウイルス生活環を支持し得るか否かを、決定することである。例えば、ウイルスベクターが、提供されるような改変されたM13ファージゲノムである場合、本明細書において記載される一部の態様においては、次いで、好適な宿主細胞は、野生型M13ファージ生活環を支持し得る任意の細胞であってよい。連続的進化のプロセスにおいて有用なウイルスベクターのための好適な宿主細胞は、当業者に周知であり、本発明はこの点において限定されない。

一部の態様において、本明細書において提供されるような連続的進化のプロセスにおいて、改変されたウイルスベクターが用いられる。一部の態様において、かかる改変ウイルスベクターは、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子を欠失する。一部のかかる態様において、好適な宿主細胞は、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子を、例えば、構成的またはコンディショナルなプロモーターの制御下に(例えば、本明細書において記載されるようなアクセサリープラスミドの形態で)含む細胞である。一部の態様において、用いられるウイルスベクターは、複数のウイルス遺伝子を欠失する。一部のかかる態様において、好適な宿主細胞は、ウイルス粒子の生成のために必要とされるウイルス遺伝子を提供するヘルパーコンストラクトを含む細胞である。細胞は、本明細書において提供される方法において用いられるウイルスベクターの生活環を実際に支持するためには必要でない。例えば、コンディショナルプロモーターの制御下に感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子を含む細胞は、プロモーターを活性化することができる目的の遺伝子を含まないウイルスベクターの生活環を支持しなくともよいが、それは、なおかかるウイルスベクターのための好適な宿主細胞である。一部の態様において、ウイルスベクターはファージであり、宿主細胞は細菌細胞である。一部の態様において、宿主細胞はE. coli細胞である。好適なE. coli宿主株は、当業者には明らかであり、限定されないが、New England Biolabs (NEB) Turbo、Top10F’、DH12S、ER2738、ER2267およびXL1-Blue MRFが挙げられる。これらの株の名称は、当該分野において認識され、これらの株の遺伝子型は、よく特徴づけられている。上記の株は、単に例示的なものであって、本発明はこの点において限定されないことが理解されるべきである。

用語「新たな」は、本明細書において、宿主細胞の文脈において、用語「感染していない」または「未感染の」と交換可能に用いられ、本明細書において提供される連続的進化のプロセスにおいて用いられるような、目的の遺伝子を含むウイルスベクターにより感染していない宿主細胞を指す。しかし、新たな宿主細胞は、進化させるベクターに無関係のウイルスベクターにより、または、同じもしくは類似の型のベクターであるが目的の遺伝子を担持しないベクターにより、感染していてもよい。

一部の態様において、宿主細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞である。一部の態様において、宿主細胞はE.coli細胞である。一部の態様において、宿主細胞は、真核細胞、例えば酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞である。宿主細胞の型は、無論、用いられるウイルスベクターに依存し、好適な宿主細胞/ウイルスベクターの組み合わせは、当業者には容易に明らかとなるであろう。

幾つかのPACEの態様において、例えばM13選択ファージを使用する態様において、宿主細胞は、稔性因子(また一般にF因子、性決定因子またはF−プラスミドと称される)を発現するE. coli細胞である。F因子は、細菌が接合のために必要な性線毛を産生することを可能にする細菌のDNA配列であり、特定のファージによる、例えばM13ファージによる、E. coli細胞の感染のために必須である。例えば、一部の態様において、M13-PACEのための宿主細胞は、以下の遺伝子型のものである:

ラグーン、セルスタット(cellstat)、タービドスタット 用語「ラグーン」は、本明細書において用いられる場合、宿主細胞のフローがそれを通るように向けられる容器を指す。連続的進化のプロセスのために用いられる場合、ラグーンは、典型的には、宿主細胞の集団、および宿主細胞集団内で複製するウイルスベクターの集団を保持し、ここで、ラグーンは、それを通してラグーンから宿主細胞が取り除かれる流出路、および、それを通してラグーン中に新たな宿主細胞が導入される流入路を含み、それにより宿主細胞集団を補充する。一部の態様において、ラグーンを通る細胞のフローは、ラグーン内に、本質的に一定の数の宿主細胞をもたらすように制御される。一部の態様において、ラグーンを通る細胞のフローは、ラグーン内に、本質的に一定の数の新たな宿主細胞をもたらすように制御される。

用語「セルスタット」は、本明細書において用いられる場合、そこにおいて細胞の数が長時間にわたり本質的に一定である、宿主細胞を含む培養容器を指す。

用語「タービドスタット」は、本明細書において用いられる場合、そこにおいて培養培地の濁度が長時間にわたり実質的に本質的に一定である、懸濁培養中の宿主細胞を含む培養容器を指す。一部の態様において、例えば細菌細胞の懸濁培養の濁度は、培養培地の細胞密度についての尺度である。一部の態様において、タービドスタットは、新たな培地の流入、および流出、ならびに、タービドスタット中の懸濁培養の濁度に基づいてタービドスタットの中および/または外への流動を調節するコントローラーを含む。

本発明のある態様の詳細な説明 本発明の幾つかの側面は、核酸の、例えば目的の遺伝子の、連続的進化のための方法を提供する。本発明の幾つかの側面は、本明細書において記載される連続的進化の方法のための、実験的配置、システム、装置、試薬および材料を提供する。本明細書において記載されるような連続的進化のためのベクター、ベクターシステム、およびキットもまた提供される。

連続的進化の方法 本明細書において提供される連続的進化の方法により、ウイルスベクター中の目的の遺伝子を、ウイルスの継続的な生活環の複数の世代にわたり、宿主細胞のフローにおいて、所望の機能または活性を獲得するように進化させることが可能となる。

本発明の幾つかの側面は、目的の遺伝子の連続的進化の方法を提供し、該方法は、(a)宿主細胞の集団を、目的の遺伝子を含むウイルスベクターの集団と接触させることを含み、ここで、(1)宿主細胞は、ウイルスベクターによる感染が可能であり;(2)宿主細胞は、ウイルス粒子の生成のために必要とされるウイルス遺伝子を発現し;(3)少なくとも1つの感染性ウイルス粒子の産生のために必要とされるウイルス遺伝子の発現は、目的の遺伝子の機能に依存し;ならびに(4)ウイルスベクターは、宿主細胞におけるタンパク質の発現を可能にし、宿主細胞により複製されてウイルス粒子へとパッケージングされることができる。一部の態様において、方法は、(b)宿主細胞を変異原と接触させることを含む。一部の態様において、方法はさらに、(c)ウイルスの複製およびウイルス粒子の産生を可能にする条件下において、宿主細胞の集団をインキュベートすることを含み、ここで、宿主細胞は、宿主細胞集団から取り除かれ、新たな未感染の宿主細胞が宿主細胞の集団中に導入され、それにより宿主細胞の集団を補充し、宿主細胞のフローを作りだす。細胞は、全ての態様において、目的の遺伝子が変異を獲得することができる条件下においてインキュベートされる。一部の態様において、方法はさらに、(d)進化した遺伝子産物(例えばタンパク質)をコードするウイルスベクターの変異バージョンを宿主細胞の集団から単離することを含む。

一部の態様において、ファージにより補助される連続的進化の方法が提供され、該方法は、(a)細菌宿主細胞の集団を、進化させる目的の遺伝子を含み感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子を欠損しているファージの集団と接触させることを含み、ここで、(1)ファージは、宿主細胞における目的の遺伝子の発現を可能にし;(2)宿主細胞は、ファージの感染、複製およびパッケージングのために好適な宿主細胞であり;ならびに(3)宿主細胞は、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子をコードする発現コンストラクトを含み、ここで遺伝子の発現は、目的の遺伝子の遺伝子産物の機能に依存する。一部の態様において、方法はさらに、(b)目的の遺伝子の変異、感染性ファージの産生、およびファージによる宿主細胞の感染を可能にする条件下において、宿主細胞の集団をインキュベートすることを含み、ここで、感染細胞は、宿主細胞の集団から取り除かれ、およびここで、宿主細胞の集団は、ファージにより感染していない新たな宿主細胞により補充される。一部の態様において、方法はさらに、(c)進化したタンパク質をコードする変異したファージ複製産物を宿主細胞の集団から単離することを含む。

一部の態様において、ウイルスベクターまたはファージは、線状ファージ、例えば、本明細書において他でより詳細に記載されるようなM13選択ファージなどのM13ファージである。一部のかかる態様において、感染性ウイルス粒子の産生のために必要とされる遺伝子は、M13遺伝子III(gIII)である。

一部の態様において、ウイルスベクターは、哺乳動物細胞に感染する。一部の態様において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。一部の態様において、ウイルスベクターは水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクターである。dsRNウイルスとして、VSVは、高い変異率を有し、目的の遺伝子を含む4.5kbまでの長さのカーゴを運搬することができる。感染性VSV粒子の生成は、ホスホチジルセリンの結合および細胞への侵入を媒介するウイルスの糖タンパク質である、エンベロープタンパク質VSV-Gを必要とする。VSVは、哺乳動物および昆虫細胞を含む、広範な宿主細胞に感染することができる。VSVは、したがって、ヒト、マウス、または昆虫の宿主細胞における連続的進化のために高度に好適なベクターである。同様に、VSV-Gエンベロープタンパク質についてシュードタイピングし得る他のレトロウイルスベクターが、本明細書において記載されるような連続的進化のプロセスのために、同等に好適である。

多くのレトロウイルスベクター、例えばマウス白血病ウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、ウイルスのネイティブなエンベロープタンパク質の置換物としてVSV-Gエンベロープタンパク質により効率的にパッケージングされ得ることは、当業者に公知である。一部の態様において、かかるVSV-Gによりパッケージング可能なベクターが、連続的進化システムにおける使用のために適応され、ここで、ネイティブなエンベロープ(env)タンパク質(例えば、VSVSベクターにおけるVSV-G、またはMLVベクターにおけるenv)は、ウイルスゲノムから消去され、目的の遺伝子が、所望の宿主細胞において活性なプロモーターの制御下に、ウイルスゲノム中に挿入される。宿主細胞は、次いで、目的の遺伝子の活性の増大をもたらす変異を有するウイルスベクターが、基線または機能喪失型変異を有するベクターよりも高い効率でパッケージングされるように、その活性が目的の遺伝子によりコードされる産物の活性に依存するプロモーターの制御下に、VSV-Gタンパク質、ベクターのシュードタイピングのために好適な別のenvタンパク質、またはウイルスベクターのネイティブなenvタンパク質を発現する。

一部の態様において、哺乳動物宿主細胞は、連続的に進化するウイルスベクター、例えば、目的の遺伝子を含みVSV-Gをコードする遺伝子を欠失するVSVベクターの集団による感染に供され、ここで、宿主細胞は、コンディショナルプロモーターの制御下にVSV-Gタンパク質をコードする遺伝子を含む。かかるレトロウイルスベースのシステムは、2ベクターのシステム(ウイルスベクター、およびエンベロープタンパク質をコードする遺伝子を含む発現コンストラクト)であってもよく、または代替的に、ヘルパーウイルス、例えばVSVヘルパーウイルスを用いてもよい。ヘルパーウイルスは、典型的には、ウイルス粒子中へゲノムをパッケージングするために必要な構造エレメントを欠損しているが、宿主細胞中でのウイルスゲノムのプロセッシングのため、およびウイルス粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードするウイルス遺伝子を含む、短縮されたウイルスゲノムを含む。かかる態様において、ウイルスベクターベースのシステムは、3ベクターのシステム(ウイルスベクター、コンディショナルプロモーターにより駆動されるエンベロープタンパク質を含む発現コンストラクト、およびウイルスゲノムの増殖のために必要とされるウイルス機能を含むがエンベロープタンパク質を含まないヘルパーウイルス)であってもよい。一部の態様において、宿主細胞におけるヘルパーウイルスまたは発現コンストラクトからのVSVゲノムの5つの遺伝子の発現により、目的の遺伝子を運搬する感染性ウイルス粒子の産生が可能になり、このことは、不均衡な遺伝子発現が、低下した速度におけるウイルス複製を可能にすることを示し、このことは、VSV-Gの発現の低下は、効率的なウイルス産生における限定的ステップとして実際に役立つことを示唆する。

ヘルパーウイルスを用いることの1つの利点は、ウイルスベクターは、ヘルパーウイルスにより提供されるタンパク質をコードする遺伝子または他の機能を欠損していてもよく、したがって、より長い目的の遺伝子を運搬し得ることである。一部の態様において、ヘルパーウイルスは、エンベロープタンパク質を発現しない。なぜならば、ウイルスエンベロープタンパク質の発現は、受容体干渉を介して一部のウイルスベクターによる宿主細胞の感染能力を低下させることが知られているからである。連続的進化のプロセスのために好適なウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、それらの対応するエンベロープタンパク質、およびかかるベクターのためのヘルパーウイルスは、当業者に周知である。本明細書において記載されるような連続的進化の手法のために好適な、幾つかの例示的なウイルスゲノム、ヘルパーウイルス、宿主細胞およびエンベロープタンパク質の概要については、本明細書にその全体が参照により組み込まれるCoffin et al., Retroviruses, CSHL Press 1997, ISBN0-87969-571-4を参照。

一部の態様において、宿主細胞のインキュベーションは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1250、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも7500、少なくとも10000、またはそれより多くの継続的なウイルス生活環のために十分な時間にわたる。ある態様において、ウイルスベクターは、M13ファージであり、1回のウイルス生活環の長さは、約10〜20分間である。

一部の態様において、細胞を、懸濁培養中で接触および/またはインキュベートする。例えば、一部の態様において、細菌細胞は、液体培養培地中での懸濁培養中でインキュベートする。細菌懸濁培養のための好適な培養培地は、当業者には明らかであり、本発明は、この点において限定されない。例えば以下を参照:Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989);Elizabeth KutterおよびAlexander Sulakvelidze: Bacteriophages: Biology and Applications. CRC Press;第1版(2004年12月)、ISBN: 0849313368;Martha R. J. ClokieおよびAndrew M. Kropinski: Bacteriophages: Methods and Protocols、第1巻:Isolation, Characterization, and Interactions (Methods in Molecular Biology) Humana Press;第1版(2008年12月)、ISBN: 1588296822;Martha R. J. ClokieおよびAndrew M. Kropinski: Bacteriophages: Methods and Protocols、第2巻:Molecular and Applied Aspects (Methods in Molecular Biology) Humana Press;第1版(2008年12月)、ISBN: 1603275649;これらの各々は、細菌宿主細胞の培養のための好適な培養培地についての開示のために、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。懸濁培養は、典型的には、連続的にまたは間欠的に撹拌するための培養培地を必要とする。このことは、一部の態様においては、宿主細胞集団を含む容器を撹拌(agitate)または撹拌(stir)することにより達成される。一部の態様において、宿主細胞の流出および新たな宿主細胞流入は、懸濁中の宿主細胞を維持するために十分である。これは、ラグーンの中および/または外への細胞の流動速度が高い場合に、特に該当する。

一部の態様において、ウイルスベクター/宿主細胞の組み合わせは、ウイルスベクターの生活環が、宿主細胞の細胞分裂間の平均時間よりも著しく短いものが選択される。平均の細胞分裂時間およびウイルスベクター生活環の時間は、多くの細胞型およびベクターについて当該分野において周知であり、このことにより、当業者は、かかる宿主細胞/ベクターの組み合わせを確認することができる。ある態様において、宿主細胞が取り除かれる前に宿主細胞集団中に留まる平均時間が、宿主細胞の細胞分裂間の平均時間よりも短くなるが、使用されるウイルスベクターの平均生活環よりも長くなる速度において、ウイルスベクターと接触させられた宿主細胞の集団から宿主細胞が取り除かれる。このことの結果として、宿主細胞は、平均して、宿主細胞集団中でのそれらの時間の間には増殖するための十分な時間を有さず、一方、ウイルスベクターは、宿主細胞が細胞集団に留まる時間の間に、宿主細胞に感染し、宿主細胞中で複製し、新しいウイルス粒子を生成するために十分な時間を有する。このことが、宿主細胞集団中で唯一の複製する核酸はウイルスベクターであること、および、宿主細胞ゲノム、アクセサリープラスミドまたは任意の他の核酸コンストラクトは、変異を獲得することができず、課された選択圧から逃れ得ることを保証する。

例えば、一部の態様において、宿主細胞が宿主細胞集団中に留まる平均時間は、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約70、約80、約90、約100、約120、約150または約180分間である。

一部の態様において、宿主細胞が宿主細胞集団中に留まる平均時間は、宿主細胞が分裂する速度、および感染(または接合)が必要とする時間に依存する。一般に、流動速度は、細胞分裂のために必要とされる平均時間より速いが、ウイルス(または接合性)の増殖を可能にするために十分に遅いべきである。前者は、例えば培地の型と共に、変化し得、細胞分裂阻害性抗生物質(E. coliにおけるFtsZ阻害剤など)により遅くすることができる。連続的進化における限定的ステップは、細胞から細胞への遺伝子伝達のために必要とされるタンパク質の産生であるので、ベクターが洗い流される流動速度は、目的の遺伝子の現在の活性に依存するであろう。一部の態様に、本明細書において記載されるように、感染性粒子の生成のために必要とされるタンパク質の滴定し得る産生は、この問題を緩和する。一部の態様において、ファージ感染のインディケーターにより、現在の活性レベルについて、リアルタイムにおける、コンピューター制御された流動速度の最適化が可能となる。

一部の態様において、宿主細胞集団は、新たな未感染の宿主細胞で連続的に補充される。一部の態様において、このことは、宿主細胞の集団中への新たな宿主細胞の定常的な流動により達成される。他の態様においては、しかし、ラグーン中への新たな宿主細胞の流入は、半連続的または間欠的である(例えばバッチ供給される)。一部の態様において、細胞集団中への新たな宿主細胞流入の速度は、宿主細胞集団からの細胞の除去の速度が補填されるようなものである。一部の態様において、この細胞フローの補填の結果として、細胞集団中の細胞数は、連続的進化の手法の時間にわたり実質的に一定となる。一部の態様において、細胞集団中の新たな未感染細胞の割合は、連続的進化の手法の時間にわたり実質的に一定である。例えば、一部の態様において、宿主細胞集団中の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%または約90%の細胞が、ウイルスにより感染していない。一般に、宿主細胞の流動速度が速いほど、宿主細胞集団中の感染した細胞の割合は小さくなる。しかし、より早い流動は、所与の期間において、より多くの伝達サイクル、例えばウイルス生活環を可能にし、したがって、より多くの世代の進化したベクターを可能にするが、一方、より遅い流動速度は、宿主細胞集団中の感染宿主細胞のより大きな割合をもたらし、したがって、より遅い進化を代償として、より大きなライブラリーサイズをもたらす。一部の態様において、有効な流動速度の範囲は、遅い方において、ベクターの流出は、高い方において、細胞分裂の時間により一定に制限される。一部の態様において、ウイルス負荷(例えば細胞培養培地の容積あたりの感染性ウイルス粒子として測定される)は、連続的進化の手法の時間にわたり実質的に一定である。

一部の態様において、新たな宿主細胞は、ウイルスベクターの選択のために必要とされるアクセサリープラスミド、例えば、進化させるファージからは欠失している感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を含むアクセサリープラスミドを含む。一部の態様において、宿主細胞は、未感染の宿主細胞を、関連するベクター、例えばアクセサリープラスミド、および任意に変異誘発プラスミドと接触させること、ならびに、一定量の宿主細胞を、連続的進化実験における宿主細胞集団の補充のために必要な時間にわたり生育させることにより、生成される。プラスミドおよび他の遺伝子コンストラクトの宿主細胞中への誘導のための方法は、当業者に周知であり、本発明はこの点において限定されない。細菌宿主細胞について、かかる方法として、限定されないが、コンピテント細胞のエレクトロポレーションおよび熱ショックが挙げられる。一部の態様において、アクセサリープラスミドは、選択マーカー、例えば抗生物質耐性マーカーを含み、新たな宿主細胞は、宿主細胞中のプラスミドの存在を確実にするために、対応する抗生物質の存在下において生育される。複数のプラスミドが存在する場合、典型的には異なるマーカーを用いる。かかる選択マーカーおよび細胞培養におけるそれらの使用は、当業者に公知であり、本発明はこの点において限定されない。

一部の態様において、連続的進化実験における宿主細胞集団は、平行して連続的培養中で生育される新たな宿主細胞により補充される。一部の態様において、ウイルスベクターと接触した宿主細胞集団中の宿主細胞の細胞密度、および新たな宿主細胞集団の密度は、実質的に同じである。

典型的には、ウイルスベクターと接触した細胞集団から取り除かれる細胞は、ウイルスベクターに感染した細胞および未感染細胞を含む。一部の態様において、細胞は、細胞集団から、連続的に、例えば集団からの細胞の連続的流出をもたらすことにより、取り除かれる。他の態様において、細胞は、集団から、半連続的または間欠的に取り除かれる。一部の態様において、新たな細胞の補充は、細胞集団からの細胞の除去の様式に一致し、例えば、細胞が連続的に取り除かれる場合、新たな細胞が連続的に導入される。しかし、一部の態様において、補充および除去の様式は、一致しなくともよく、例えば、細胞集団は、連続的に新たな細胞で補充されてもよく、細胞は、半連続的またはバッチにおいて取り除かれてもよい。

一部の態様において、新たな宿主細胞の補充の速度および/または宿主細胞除去の速度は、細胞集団中の宿主細胞を定量することに基づいて調整される。例えば、一部の態様において、宿主細胞集団を含む培養培地の濁度をモニタリングし、濁度が閾値レベルよりも低く低下した場合、宿主細胞流出に対する宿主細胞流入の割合を、細胞培養濁度の増大により表わされる集団中の宿主細胞の数の増大をもたらすように調整する。他の態様において、濁度が閾値レベルよりも高く上昇した場合、宿主細胞流出に対する宿主細胞流入の割合を、細胞培養濁度の低下により表わされる集団中の宿主細胞の数の減少をもたらすように調整する。宿主細胞集団中の宿主細胞の密度を、特定の濃度範囲内に維持することにより、十分な宿主細胞が、進化するウイルスベクター集団のための宿主として利用可能であることを確実にし、ウイルスのパッケージングの代償としての栄養の枯渇、および、培養の超過密からの細胞由来の毒素の蓄積を回避する。

一部の態様において、宿主細胞集団における細胞密度および/または流入における新たな宿主細胞の密度は、約102細胞/ml〜約1012細胞/mlである。一部の態様において、宿主細胞密度は、約102細胞/ml、約103細胞/ml、約104細胞/ml、約105細胞/ml、約5×105細胞/ml、約106細胞/ml、約5×106細胞/ml、約107細胞/ml、約5×107細胞/ml、約108細胞/ml、約5×108細胞/ml、約109細胞/ml、約5×109細胞/ml、約1010細胞/mlまたは約5×1010細胞/mlである。一部の態様において、宿主細胞密度は、約1010細胞/mlよりも高い。

一部の態様において、宿主細胞集団を、変異原と接触させる。一部の態様において、ウイルスベクター(例えばファージ)と接触した細胞集団は、目的の遺伝子の変異率の増大を可能にするが、宿主細胞にとって、宿主細胞集団中にある間のそれらの変異原への暴露の間に著しく毒性ではない濃度において、連続的に変異原に暴露される。他の態様において、宿主細胞集団を、間欠的に変異原と接触させ、変異誘発の増大の期間をつくり、それによりウイルスベクターの多様化の増大の期間をつくる。例えば、一部の態様において、宿主細胞を、目的の遺伝子において変異誘発率の増大を生じるために十分な濃度の変異原に、約10%、約20%、約50%または約75%の時間にわたり暴露する。

一部の態様において、宿主細胞は、変異誘発発現コンストラクト、例えば、細菌宿主細胞の場合、変異誘発プラスミドを含む。一部の態様において、変異誘発プラスミドは、変異誘発を促進する遺伝子産物、例えばプルーフリーディング欠損DNAポリメラーゼをコードする遺伝子発現カセットを含む。他の態様においては、変異誘発プラスミドは、SOSストレス応答に関与する遺伝子(例えば、UmuC、UmuD'および/またはRecA)を含む。一部の態様において、変異誘発を促進する遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下にある。好適な誘導性プロモーターは、当業者に周知であり、例えば、アラビノース誘導型プロモーター、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン誘導型プロモーター、およびタモキシフェン誘導型プロモーターを含む。一部の態様において、宿主細胞集団を、変異誘発率の増大をもたらすために十分な量において、誘導性プロモーターのインデューサーと接触させる。例えば、一部の態様において、宿主細胞が、dnaQ926、UmuC、UmuD'およびRecA発現カセットがアラビノース誘導型プロモーターにより制御される変異誘発プラスミドを含む、細菌宿主細胞集団が提供される。一部のかかる態様において、宿主細胞の集団を、変異率の増大を誘導するために十分な量において、インデューサー、例えばアラビノースと接触させる。

誘導性の変異誘発プラスミドの使用により、インデューサーの非存在下において新たな未感染の宿主細胞の集団を作りだすことができ、それにより、ウイルスベクターと接触した細胞中に導入される前の新たな宿主細胞における変異率の増大を回避することができる。しかし、この集団中に導入された後は、これらの細胞を、変異率の増大を支持するように誘導することができ、これは、連続的進化の一部の態様において特に有用である。例えば、一部の態様において、宿主細胞は、本明細書において記載されるような、pBADプロモーターからdnaQ926、UmuC、UmuD'およびRecA730の発現を駆動するアラビノース誘導型プロモーターを含む、変異誘発プラスミドを含む(例えばKhlebnikov A, Skaug T, Keasling JD. Modulation of gene expression from the arabinose-inducible araBAD promoter. J Ind Microbiol Biotechnol. 2002 Jul;29(1):34-7を参照;本明細書においてpBADプロモーターの開示のために参考として組み込まれる)。一部の態様において、新たな宿主細胞は、上で同定される遺伝子の発現を活性化するアラビノースに暴露されず、したがって、宿主細胞が、選択ファージの集団が複製するラグーンに到達するまでに、アラビノースに暴露された細胞における変異率を増大させる。したがって、一部の態様において、宿主細胞における変異率は、それらがラグーン中の宿主細胞集団の一部となるまで正常であり、ラグーンにおいて、それらは、インデューサー(例えばアラビノース)に暴露され、したがって、増大した変異誘発に暴露される。一部の態様において、ウイルスベクターの集団を変異誘発により多様化させる相を含む、連続的進化の方法が提供され、ここで、細胞を、ウイルスベクターの変異誘発のために好適な条件下において、進化したタンパク質をコードするウイルスベクターの変異した複製産物についてのストリンジェントな選択の非存在下において、インキュベートする。このことは、進化させる所望の機能が、既に存在する機能の単なる増大(例えば転写因子の転写活性化速度の増大)ではなく、進化の手法の開始時において目的の遺伝子において存在しない機能の獲得である態様において、特に有用である。ウイルスベクターの、例えばファージの集団内での目的の遺伝子の変異バージョンのプールを多様化するステップにより、所望の機能を伝える変異を見出す機会の増大が可能となる。

一部の態様において、ウイルスベクター集団を多様化することは、ウイルスベクターの集団の複製、変異誘発および増殖のための目的の遺伝子における機能獲得型変異について選択しない、宿主細胞のフローを提供することにより達成される。一部の態様において、宿主細胞は、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子を発現する宿主細胞、例えば完全なヘルパーファージを発現する細菌細胞であり、したがって、目的の遺伝子に対する選択圧を課さない。他の態様において、宿主細胞は、目的の遺伝子の重要な機能獲得型変異の非存在下においてすらウイルスベクターの増殖を支持するために十分な基線の活性を有するコンディショナルプロモーターを含む、アクセサリープラスミドを含む。このことは、「リーキー(leaky)」なコンディショナルプロモーターを用いることにより、高コピー数アクセサリープラスミドを用いることにより、したがって基線のリーキーさ(leakiness)を増幅することにより、および/または、それにおいて目的の遺伝子の初期のバージョンは低レベルの活性をもたらすが所望の機能獲得型変異が著しくより高い活性をもたらすコンディショナルプロモーターを用いることにより、達成することができる。

例えば、例のセクションにおいてより詳細に記載されるように、一部の態様において、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を有する高コピーのアクセサリープラスミドを含む宿主細胞の集団を、目的の遺伝子を含む選択ファージと接触させ、ここで、アクセサリープラスミドは、その活性が目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の活性に依存するコンディショナルプロモーターからの生成のために必要とされる遺伝子の発現を駆動するコンディショナルプロモーターを含む。一部のかかる態様において、低ストリンジェンシー選択相は、目的の遺伝子がそのプロモーターにおいて何らかの活性を示すコンディショナルプロモーターを設計することにより、達成することができる。例えば、T7RNAPなどの転写アクチベーターまたは転写因子を、非ネイティブな標的DNA配列(例えば、T7RNAPが活性を有さないT3RNAPプロモーター配列)を認識するように進化させる場合、低ストリンジェンシーのアクセサリープラスミドを、標的配列が、所望の特徴を含むが転写アクチベーターが標的配列を認識することを可能にするネイティブの認識配列の特徴を保持する(そのネイティブの標的配列よりは低い効率であっても)コンディショナルプロモーターを含むように、設計することができる。ハイブリッド標的配列(例えば、最終的に所望される標的配列のなんらかの特徴およびネイティブな標的配列の一部を有するT7/T3ハイブリッドプロモーター)を含む、かかる低ストリンジェンシーアクセサリープラスミドへの初期の暴露により、ファージベクターの集団が、アクセサリープラスミドの許容的な特徴に基づいてすぐには負に選択されない複数の変異を獲得することにより多様化することが可能となる。かかる多様化したファージベクターの集団は、次いで、ストリンジェントな選択アクセサリープラスミド、例えば、そのコンディショナルプロモーター中に最終的に所望される標的配列を含み、ネイティブな標的配列の特徴を保持しないプラスミドに接触させてもよく、これにより、所望の標的配列の認識を可能にする変異を獲得していないファージベクターに対して強力な陰性選択圧をもたらすことができる。

一部の態様において、進化するウイルスベクターの集団と接触した初期の宿主細胞集団を、初期集団中の宿主細胞とは異なる新たな宿主細胞で補充する。例えば、一部の態様において、初期の宿主細胞集団は、低ストリンジェンシーのアクセサリープラスミドを含むか、またはかかるプラスミドを全く含まない宿主細胞からなるか、または、ウイルスの感染および増殖を許容することができる。一部の態様において、低ストリンジェンシーまたは無選択の宿主細胞集団においてウイルスベクターの集団を多様化させた後で、宿主細胞集団中に、目的の遺伝子の所望の機能についてよりストリンジェントな選択圧を課する新たな宿主細胞を導入する。例えば、一部の態様において、第2の新たな宿主細胞は、もはや、ウイルスの感染および増殖を許容することができない。一部の態様において、ストリンジェントに選択的な宿主細胞は、コンディショナルプロモーターが全く活性を示さないか最小限の基線の活性のみを示す、および/または、宿主細胞において低いしくは非常に低いコピー数においてのみ存在する、アクセサリープラスミドを含む。

様々な選択的ストリンジェンシーの宿主細胞を伴うかかる方法により、本明細書において提供される連続的進化の方法の力を、目的の遺伝子の初期のバージョンにおいては完全に不在である機能の進化のために、例えば、初期の目的の遺伝子として用いられるネイティブな転写因子が全く認識しない外来の標的配列を認識する転写因子の進化のために、利用することができる。あるいは、別の例については、所望の標的配列に結合しない、または所望の標的配列に対して向けられた如何なる活性も示さない、DNA結合タンパク質、リコンビナーゼ、ヌクレアーゼ、ジンクフィンガータンパク質またはRNAポリメラーゼによる所望の標的配列の認識。

一部の態様において、陰性選択は、所望されない活性に不利益をもたらすことにより、本明細書において記載されるような連続的進化法の間に適用される。一部の態様において、これは、所望されない活性にpIII産生を妨害させることにより達成される。例えば、gIII RBSおよび/または開始コドンに対して相補的なアンチセンスRNAの発現は、陰性選択を適用する一方法であり、プロテアーゼ(例えばTEV)を発現させること、およびpIII中にプロテアーゼ認識部位を設計することは別の方法である。

一部の態様において、陰性選択は、進化した産物の所望されない活性に不利益を課すことにより、本明細書において記載されるような連続的進化法の間に適用される。これは、例えば、所望の進化した産物が高い特異性を有する酵素、例えば、特異性が変化しているが拡大されていない転写因子またはプロテアーゼである場合に、特に有用である。一部の態様において、所望されない活性の陰性選択は、所望されない活性にpIII産生を妨害させ、それにより、所望されない活性を有する遺伝子産物をコードするファージゲノムの増殖を阻害することにより、達成される。一部の態様において、pIIIのドミナントネガティブなバージョンの発現、またはgIII RBSおよび/もしくはgIII開始コドンに対して相補的なアンチセンスRNAの発現は、所望されない活性の存在に関連する。一部の態様において、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼ切断部位、それらの認識または切断の部位は、所望されず、それぞれ、pIII転写物の配列またはpIIIアミノ酸配列中に挿入される。一部の態様において、pIIIのドミナントネガティブバリアントの発現を抑制し、その認識または切断が所望されないプロテアーゼ切断部位を含む、転写または翻訳のリプレッサーが用いられる。

一部の態様において、非標的基質に対する活性に対するカウンター選択は、所望されない進化した産物の活性をファージの増殖の阻害に関連付けることにより、達成される。例えば、転写因子を、特異的標的配列を認識するが所望されないオフターゲット配列は認識しないように進化させる一部の態様において、pIIIのドミナントネガティブなバージョン(pIII-neg)をコードする核酸配列をオフターゲット配列を含むプロモーターの制御下に含む、陰性選択カセットが用いられる。進化した産物がオフターゲット配列を認識する場合、生じるファージ粒子は、pIII-negを組み込み、これは、ファージの感染能力およびファージの増殖の阻害をもたらし、所望されないオフターゲット活性を示す進化した産物をコードする任意のファージゲノムについて、かかる活性を示さない進化した産物と比較して、選択的な不利益を構成する。一部の態様において、連続的進化実験の間に、宿主細胞中に陽性選択および陰性選択の両方のコンストラクトが存在する、二重選択戦略が適用される。一部のかかる態様において、陽性および陰性選択コンストラクトは、二重選択アクセサリープラスミドとしてもまた言及される、同じプラスミド上に位置する。

例えば、一部の態様において、二重選択アクセサリープラスミドが用いられ、これは、pIIIコード配列を標的核酸配列を含むプロモーターの制御下に含む陽性選択カセット、および、pIII-negをコードするカセットをオフターゲット核酸配列を含むプロモーターの制御下に含む陰性選択カセットを含む。同時二重選択戦略を使用する一利点は、陽性選択コンストラクトと比較した陰性選択コンストラクトの活性または発現レベルに基づいて、選択ストリンジェンシーを正確に調整することができることである。二重選択戦略の別の利点は、選択は、所望されるまたは所望されない活性の存在または不在に依存せず、所望される活性と所望されない活性との比に依存し、したがって、結果として生じる対応するファージ粒子中に組み込まれるpIIIとpIII-negとの比に依存することである。

本発明の幾つかの側面は、pIIIのドミナントネガティブバリアント(pIII-neg)を提供または利用する。これらの側面は、pIIIの2つのN末端ドメイン、および短縮された終結不能(termination-incompetent)なC末端ドメインを含むpIIIバリアントが、不活性であるのみならず、pIIIのドミナントネガティブバリアントであるという、驚くべき発見に基づく。pIIIの2つのN末端ドメイン、および短縮された終結不能なC末端ドメインを含むpIIIバリアントは、Bennett, N. J.; Rakonjac, J., Unlocking of the filamentous bacteriophage virion during infection is mediated by the C domain of pIII. Journal of Molecular Biology 2006, 356 (2), 266-73において記載された;その全内容は、本明細書に参照により組み込まれる。しかし、かかるpIIIバリアントのドミナントネガティブ特性は、先には記載されていない。本発明の幾つかの側面は、本明細書において記載されるようなpIII-negバリアントは、効率的にファージ粒子中に組み込まれるが、感染の間に侵入のための粒子の解錠(unlocking)を触媒せず、同じファージ粒子中に野生型pIIIが存在する場合ですら、対応するファージを非感染性にするという、驚くべき発見に基づく。したがって、かかるpIII-negバリアントは、PACEの文脈において陰性選択戦略を考案するために、例えば、pIII-negバリアントをコードする核酸配列を、その認識が所望されない認識モチーフを含むプロモーターの制御下に含む発現コンストラクトを提供することにより、有用である。他の態様において、pIII-negは、例えば、pIII-negコード配列が、いずれかの認識が所望されるヌクレアーゼ標的部位またはリプレッサー認識部位を含むプロモーターにより制御される発現コンストラクトを提供することにより、陽性選択戦略において用いられる。

陽性および陰性選択戦略は、さらに、DNAに向けられない活性をファージ増殖効率に関連付けることにより、設計することができる。例えば、標的部位を認識するプロテアーゼにより不活化され得る遺伝子発現のリプレッサーを考案することにより、所望の標的プロテアーゼ切断部位に対するプロテアーゼ活性をpIIIの発現に関連付けることができる。一部の態様において、pIIIの発現は、かかるリプレッサーのための結合部位を含むプロモーターにより駆動される。好適な転写リプレッサーは、当業者に公知であり、1つの例示的なリプレッサーは、ラムダプロモーターpRを効率的に抑制し、所望のプロテアーゼ切断部位を含むように改変することができる、ラムダリプレッサータンパク質である(例えば、Sices, H. J.; Kristie, T. M., A genetic screen for the isolation and characterization of site-specific proteases. Proc Natl Acad Sci U S A 1998, 95 (6), 2828-33; and Sices, H. J.; Leusink, M. D.; Pacheco, A.; Kristie, T. M., Rapid genetic selection of inhibitor-resistant protease mutants: clinically relevant and novel mutants of the HIV protease. AIDS Res Hum Retroviruses 2001, 17 (13), 1249-55を参照:これらの各々の全内容は、本明細書に参照により組み込まれる)。ラムダリプレッサー(cI)は、N末端のDNA結合ドメインおよびC末端の2量体化ドメインを含む。これら2つのドメインは、可橈性のリンカーにより連結している。効率的な転写抑制は、cIの2量体化を必要とし、したがって、2量体化ドメインと結合ドメインとを連結するリンカーの切断は、cIのリプレッサー活性の無効化をもたらす。

一部の態様は、pIIIの発現を駆動するpRプロモーター(cI結合部位を含む)を含む、pIII発現コンストラクトを提供する。2量体化ドメインと結合ドメインとを連結するリンカー配列中に所望のプロテアーゼ切断部位を含む改変cIと一緒に発現される場合、cI分子は、所望のプロテアーゼ活性の非存在下においてpIIIの転写を抑制し、この抑制は、かかる活性の存在下においては無効化され、それにより、陽性のPACEプロテアーゼ選択のために有用な、プロテアーゼ切断活性とpIIIの発現の増大との間の関連をもたらす。一部の態様は、PACE進化の産物における所望されないプロテアーゼ活性に対する陰性選択戦略を提供する。一部の態様において、陰性選択は、pIII-negをコードする核酸をcIにより抑制されるプロモーターの制御下に含む発現カセットにより与えられる。所望されないプロテアーゼ切断部位を含むcIリプレッサータンパク質と共発現される場合、pIII-negの発現は、所望されない標的部位に対するプロテアーゼ活性を示すプロテアーゼを発現するファージを含む細胞において起こり、これにより、かかる所望されない進化した産物をコードするファージに対して陰性に選択する。プロテアーゼ標的特異性についての二重選択は、cIにより抑制され得るpIIIおよびpIII-negをコードする発現コンストラクトを、異なるDNA標的配列を認識する直交性のcIバリアントと共発現し、それにより、互いに干渉することなく同時発現を可能にすることにより、達成することができる。2量体化特異性およびDNA結合特異性の両方における直交性のcIバリアントは、当業者に公知である(例えば、Wharton, R. P.; Ptashne, M., Changing the binding specificity of a repressor by redesigning an alphahelix. Nature 1985, 316 (6029), 601-5;およびWharton, R. P.; Ptashne, M., A new-specificity mutant of 434 repressor that defines an amino acid-base pair contact. Nature 1987, 326 (6116), 888-91を参照:これらの各々の全内容は、本明細書に参照により組み込まれる)。

所望の活性を有する遺伝子産物についての他の選択スキームは、当業者に周知であるか、または本開示から明らかであろう。本明細書において提供されるような連続的進化のプロセスおよび方法において用いることができる選択戦略として、限定されないが、ツーハイブリッドスクリーニングにおいて有用な選択戦略が挙げられる。例えば、本明細書において他でより詳細に記載されるT7 RNAP選択戦略は、プロモーター認識選択戦略の一例である。ツーハイブリッドアクセサリープラスミドのセットアップは、さらに、タンパク質−タンパク質相互作用の進化を許容し、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされるタンパク質、例えばpIIIの産生のために部位特異的リコンビナーゼ活性を必要とするアクセサリープラスミドにより、リコンビナーゼを任意の所望の標的部位を認識するように進化させることが可能になる。ツーハイブリッドのセットアップまたは関連するワンハイブリッドのセットアップは、さらに、DNA結合タンパク質を進化させるために用いることができ、一方、スリーハイブリッドのセットアップは、RNA−タンパク質相互作用を進化させることができる。

低分子を産生する生合成経路もまた、所望の低分子の存在に対して応答性であるプロモーターまたはリボスイッチ(例えば、遺伝子IIIの発現/翻訳を制御するもの)により進化させることができる。例えば、ブタノールの存在下においてのみ転写されるプロモーターを、ブタノール合成のための酵素をコードする生合成経路を最適化するために、アクセサリープラスミド上に遺伝子IIIの上流において配置することができる。ブタノール合成をブーストする活性を獲得した目的の遺伝子を担持するファージベクターは、かかる機能獲得を得ていない進化中のファージ集団中の他のファージに対して選択的利点を有する。あるいは、例えば本明細書に参照により組み込まれるBaker and Cornish, PNAS, 2002において記載されるような化学的相補(chemical complementation)システムを、結合形成反応を行うことができる個々のタンパク質または酵素を進化させるために用いることができる()。他の態様において、それ自体を特定の標的配列にスプライシングするように設計されたトランススプライシングイントロンを、遺伝子IIIの後ろ半分のみをアクセサリープラスミドから標的配列の後に発現させ、他の半分(トランススプライシングイントロンに融合させたもの)を選択ファージ上に配置することにより、進化させることができる。スプライシングの成功により、全長pIIIをコードするmRNAが再構成される。pIIIを、所望のプロテアーゼ認識部位を含むリンカーにより分離した大きなタンパク質に融合したものとして、アクセサリープラスミドから発現させることにより、プロテアーゼ特異性および活性を進化させることができる。選択ファージによりコードされる活性なプロテアーゼによるリンカーの切断は、感染性pIIIをもたらすが、一方、切断されていないpIIIは、遮断しているタンパク質の為に結合することができない。さらに、例えばMalmborgおよびBorrebaeck(1997年)により記載されるように、標的抗原を、細菌のF線毛に融合させて、野生型pIIIを結合から遮断してもよい。抗原に対して特異的な抗体を提示するファージは、結合して感染することができ、ファージディスプレイにおいて>1000倍の濃縮をもたらす。一部の態様において、このシステムを連続的進化のために適応させることができ、ここで、アクセサリープラスミドを、tolA受容体と接触させて実際の感染を行わせるための野生型pIIIを産生するように設計し(抗体−pIII融合体は、良好に結合するが、低い効率で感染するので)、一方、選択ファージは、pIII−抗体融合タンパク質をコードする。両方の型のpIIIを含む子孫ファージは、抗体−抗原相互作用を通して、F線毛に固く吸着し、野生型pIIIは、tolAと接触して、高効率の感染を媒介する。初期の抗体−抗原相互作用場弱い場合に増殖を可能にするために、宿主細胞の混合物を、ラグーン中に流入させることができる:小部分は、野生型線毛を発現し、活性に関わらず任意の選択ファージを増殖させることができる感染細胞のリザーバとして役立ち、一方、大部分の細胞は、首尾よい相互作用を必要とし、その結合アフィニティーを改善する任意の変異体のための「報酬」として役立つ。この最後のシステムは、一部の態様において、標的病原体に対して有効な新しい抗体を、病原体自体が進化するよりも速く、進化させることができる。なぜならば、本明細書において記載されるPACEおよび他のシステムの進化率は、ヒトに特異的な病原体の進化率、例えばヒトウイルスの進化率よりも高いからである。

本明細書において記載される選択戦略を行うために好適なコンディショナルプロモーターを設計するための方法および戦略は、当業者に周知である。幾つかの例示的な設計の戦略は、図3Bにおいて要約される。細胞−細胞間の遺伝子伝達のために必要とされる遺伝子(例えばgIII)の発現を駆動するコンディショナルプロモーターを設計するための、例示的な好適な選択の戦略および方法の概要については、VidalおよびLegrain, Yeast n-hybrid review, Nucleic Acid Research 27, 919 (1999)を参照:本明細書にその全体が参照により組み込まれる。

連続的進化のための装置 本発明はまた、核酸の連続的進化のための装置を提供する。かかる装置の核となる要素は、ウイルスベクターの集団が複製および増殖する宿主細胞のフローの作製を可能にするラグーンである。一部の態様において、ラグーンは、目的の遺伝子を含む活発に複製するウイルスベクター(例えばファージベクター)の集団、および宿主細胞(例えば細菌宿主細胞)の集団を含む、細胞培養容器を含む。一部の態様において、ラグーンは、ラグーン中への新たな宿主細胞の導入のための流入路、およびラグーンからの宿主細胞の除去のための流出路を含む。一部の態様において、流入路は、新たな宿主細胞の培養物を含むタービドスタットに連結している。一部の態様において、流出路は、廃棄用容器またはシンクに連結している。一部の態様において、ラグーンはさらに、ラグーン中への変異原の導入のための流入路を含む。一部の態様において、その流入路は、変異原の溶液を保持する容器に連結している。一部の態様において、ラグーンは、本明細書において他でより詳細に記載されるような、遺伝子発現のインデューサー(例えば、変異誘発を促進する遺伝子の発現を駆動する宿主細胞内の誘導性プロモーターを活性化するインデューサー)の、ラグーン中への導入のための流入路を含む。一部の態様において、その流入路は、インデューサーの溶液、例えばアラビノースの溶液を含む容器に連結している。

一部の態様において、ラグーンは、ウイルスベクターの集団を含む。一部の態様において、ラグーンは、ウイルスベクターの集団を含む。一部の態様において、ウイルスベクターは、ファージ、例えば、本明細書において記載されるような、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子を欠損しているM13ファージである。一部のかかる態様において、宿主細胞は、ファージの感染、複製およびファージの増殖が可能である原核細胞、例えば、本明細書において記載されるような、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含むアクセサリープラスミドを含む、宿主細胞である。

一部の態様において、ラグーンは、宿主細胞の流入および流出速度、変異原の流入、および/またはインデューサーの流入の制御のためのコントローラーを含む。一部の態様において、ファージの存在の視覚的なインディケーター、例えば蛍光マーカーを追跡し、流動速度を支配するために用いて、合計の感染集団を一定に保つ。一部の態様において、視覚的マーカーは、ファージゲノムによりコードされる蛍光タンパク質、またはファージゲノムによりコードされる、宿主細胞において発現された後、宿主細胞において視覚的に検出可能な変化をもたらす酵素である。一部の態様において、ベクターの流出の危険性を伴うことなく可能な限り速くシステムの流動を保つように流動速度を調整するために、感染細胞の視覚的追跡が用いられる。

一部の態様において、感染性粒子の生成のために必要とされる遺伝子の発現は、滴定可能である。一部の態様において、このことは、ラグーンに添加されたアンヒドロテトラサイクリンの量に比例してpIIIを産生するアクセサリープラスミドにより達成される。他の一部の態様において、かかる滴定可能な発現コンストラクトは、本明細書において記載されるような別のアクセサリープラスミドと組み合わせてもよく、それにより、pIIIの活性についての選択と滴定可能な制御を同時に行うことができる。これが、他の方法ではラグーンにおいて生存できない程弱い活性の進化を可能にするのみならず、局所的な適応度のピークにおけるトラップを逃れる中立的浮動(neutral drift)を可能にする。一部の態様において、本明細書において記載されるような連続的進化法の間に、所望されない活性に不利益を課することにより、陰性選択が適用される。一部の態様において、このことは、所望されない活性にpIII産生を妨害させることにより、達成される。例えば、gIIIのRBSおよび/または開始コドンに対して相補的なアンチセンスRNAの発現は、陰性選択を適用する一方法であり、一方、プロテアーゼ(例えばTEV)を発現させ、pIII中にプロテアーゼ認識部位を設計することは、別の方法である。

一部の態様において、装置はタービドスタットを含む。一部の態様において、タービドスタットは、新たな宿主細胞の集団が、例えば液体懸濁培養において配置される、細胞培養容器を含む。一部の態様において、タービドスタットは、ラグーンの流入路と連結している流出路を含み、このことが、ラグーン中へのタービドスタットからの新たな細胞の導入を可能にする。一部の態様において、タービドスタットは、新たな細胞中への新たな培養培地の導入のための流入路を含む。一部の態様において、流入路は、無菌の培養培地を含む容器に連結している。一部の態様において、タービドスタットはさらに、タービドスタットからの宿主細胞の除去のための流出路を含む。一部の態様において、その流出路は、廃棄用容器またはドレーンに連結している。

一部の態様において、タービドスタットは、タービドスタット中の新たな宿主細胞の培養の濁度を測定するための濁度計を含む。一部の態様において、タービドスタットは、タービドスタット中の培養液の濁度に基づいて、無菌の液体培地の流入および廃棄用容器中への流出を制御する、コントローラーを含む。

一部の態様において、ラグーンおよび/またはタービドスタットは、定常的または間欠的な撹拌のための振盪機または撹拌機、例えば、シェイカー、ミキサー、スターラーまたはバブラーを含み、これは、宿主細胞の集団が、連続的または間欠的に撹拌され酸素化されることを可能にする。

一部の態様において、コントローラーは、ラグーン中への新たな宿主細胞の流入の速度を、ラグーンからの流出の速度と実質的に同じ(容積/容積)になるように調節する。一部の態様において、ラグーン中への新たな宿主細胞の流入の速度および/またはラグーンからの宿主細胞の流出の速度は、連続的進化実験の時間にわたり、実質的に一定になるように調節される。一部の態様において、流入の速度および/または流出の速度は、約0.1ラグーン容積/時間〜約25ラグーン容積/時間である。一部の態様において、流入の速度および/または流出の速度は、約0.1ラグーン容積/時間(lv/h)、約0.2lv/h、約0.25lv/h、約0.3lv/h、約0.4lv/h、約0.5lv/h、約0.6lv/h、約0.7lv/h、約0.75lv/h、約0.8lv/h、約0.9lv/h、約1lv/h、約2lv/h、約2.5lv/h、約3lv/h、約4lv/h、約5lv/h、約7.5lv/h、約10lv/h、または10lv/hより速い。

一部の態様において、流入および流出速度は、例えば細胞数、細胞密度、容積あたりのバイオマス湿重量、濁度、または細胞増殖の速度を測定することによる、ラグーン中の宿主細胞の集団の定量的評価に基づいて、制御される。一部の態様において、ラグーンの流入および/または流出速度は、ラグーン中の宿主細胞密度を約102細胞/ml〜約1012細胞/mlに維持するように、制御される。一部の態様において、流入および/または流出速度は、ラグーン中の宿主細胞密度を、約102細胞/ml、約103細胞/ml、約104細胞/ml、約105細胞/ml、約5×105細胞/ml、約106細胞/ml、約5×106細胞/ml、約107細胞/ml、約5×107細胞/ml、約108細胞/ml、約5×108細胞/ml、約109細胞/ml、約5×109細胞/ml、約1010細胞/ml、約5×1010細胞/ml、または5×1010細胞/mlより高くに維持するように、制御される。一部の態様において、タービドスタット中の新たな宿主細胞の密度と、ラグーン中の宿主細胞の密度は、実質的に同一である。

一部の態様において、ラグーンの流入および流出速度は、ラグーン中の宿主細胞を実質的に一定の数に維持するように制御される。一部の態様において、流入および流出速度は、ラグーン中の新たな宿主細胞の頻度を実質的に一定に維持するように制御される。一部の態様において、宿主細胞の集団は、ファージに感染していない新たな宿主細胞で、連続的に補充される。一部の態様において、補充は、半連続的であるか、または細胞集団中への新たな細胞のバッチ供給による。

一部の態様において、ラグーン容積は、約1ml〜約100Lであり、例えば、ラグーン容積は、約1mL、約10mL、約50mL、約100mL、約200mL、約250mL、約500ml、約750ml、約1L、約2ml、約2.5L、約3L、約4L、約5L、約10L、約1ml〜10mL、約10ml〜50mL、約50ml〜100、約100ml〜250mL、約250ml〜500mL、約500ml〜1L、約1L〜2L、約2L〜5L、約5L〜10L、約10〜50L、約50〜100L、または100Lより大きい。

一部の態様において、ラグーンおよび/またはタービドスタットは、さらに、温度を制御するヒーターおよびサーモスタットを含む。一部の態様において、ラグーンおよび/またはタービドスタット中の温度は、約4℃〜約55℃、好ましくは約25℃〜約39℃、例えば約37℃になるように、制御される。

一部の態様において、流入速度および/または流出速度は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1250、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも7500、少なくとも10000またはそれより多い継続的なウイルスベクターまたはファージの生活環のために十分な時間にわたる、宿主細胞の集団のインキュベーションおよび補充を可能にするように、制御される。一部の態様において、1回のファージ生活環のために十分な時間は、約10分間である。

したがって、一部の態様において、進化の手法全体の時間は、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約50時間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約10日間、約2週間、約3週間、約4週間または約5週間である。

例えば、一部の態様において、約100mLまたは約1Lの容積のラグーンを含むPACE装置が提供され、ここで、ラグーンは、約0.5L、1Lまたは3Lの容積のタービドスタットに、および、変異誘発プラスミドのためのインデューサー、例えばアラビノースを含む容器に連結され、ここで、ラグーンおよびタービドスタットは、E. coli細胞の懸濁培養を約5×108細胞/mlの濃度において含む。一部の態様において、ラグーンを通る細胞のフローは、約3ラグーン容積/時間まで調節される。一部の態様において、細胞は、連続的なポンプにより、例えば、ラグーン中の液体の所望の容積(例えば約100mL)に対応するラグーン容器の高さにセットされた廃棄用の針を用いて、ラグーンから取り除かれる。一部の態様において、宿主細胞は、F’プラスミドを含むE. coli細胞、例えば、以下の遺伝子型

の細胞である。一部の態様において、選択ファージは、pIIIコード領域またはその一部が、目的の遺伝子、例えば野生型ファージプロモーターにより駆動されるコード領域で置き換えられている、M13ゲノムを含む。一部の態様において、宿主細胞は、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコードする遺伝子、例えばM13 pIIIが、本明細書において他でより詳細に記載されるようなコンディショナルプロモーターから発現される、アクセサリープラスミドを含む。一部の態様において、宿主細胞はさらに、変異誘発プラスミド、例えば、変異誘発を促進するタンパク質をアラビノース誘導型プロモーターなどの誘導性プロモーターから発現する変異誘発プラスミドを含む。一部の態様において、装置は、約3〜7日間にわたる約2〜4ラグーン容積/時間の細胞のフローの発生のために、新たな培地をタービドスタットに提供するようにセットアップされる。

ベクターおよび試薬 本発明は、本発明の連続的進化のプロセスのためのウイルスベクターを提供する。一部の態様において、ファージにより補助される連続的進化のためのファージベクターが提供される。一部の態様において、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる少なくとも1つの遺伝子および進化させる目的の遺伝子を欠損しているファージゲノムを含む、選択ファージが提供される。

例えば、一部の態様において、選択ファージは、感染性M13ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子、例えば全長gIIIを欠損しているM13ファージゲノムを含む。一部の態様において、選択ファージは、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子を除いて、ファージ生活環のために必要とされる全ての他のファージ機能を提供する、ファージゲノムを含む。一部のかかる態様において、gI、gII、gIV、gV、gVI、gVII、gVIII、gIXおよびgX遺伝子を含むが、全長gIIIを含まない、M13選択ファージが提供される。一部の態様において、選択ファージは、gIIIの3’−フラグメントを含むが、全長gIIIを含まない。gIIIの3’−末端は、プロモーターを含み(図16を参照)、このプロモーター活性を保持することは、一部の態様において、gIIIの3’−プロモーターのすぐ下流にあるgVIの発現の増大、または、より均衡のとれた(野生型ファージ様の)宿主細胞におけるファージ遺伝子の発現レベルの比(これは、次いで、より効率的なファージ産生をもたらし得る)のために、有益である。一部の態様において、gIII遺伝子の3’−フラグメントは、3’−gIIIプロモーター配列を含む。一部の態様において、gIIIの3’−フラグメントは、gIIIの最後の180bp、最後の150bp、最後の125bp、最後の100bp、最後の50bpまたは最後の25bpを含む。一部の態様において、gIIIの3’−フラグメントは、gIIIの最後の180bpを含む。

ファージゲノム中に、例えば、VIIIの3’−ターミネーターの下流であってgIII−3’−プロモーターの上流に挿入されたものとして、目的の遺伝子を含む、M13選択ファージが提供される。一部の態様において、目的の遺伝子をファージゲノム中にクローニングするための多重クローニング部位、例えば、gVIIIの3’−ターミネーターの下流であってgIII−3’−プロモーターの上流に挿入された多重クローニング部位(MCS)を含む、M13選択ファージが提供される。

本発明の幾つかの側面は、ウイルスベクター、例えば選択ファージ、および適合するアクセサリープラスミドを含む、連続的進化の手法のためのベクターシステムを提供する。一部の態様において、ファージベースの連続的定向進化のためのベクターシステムが提供され、該システムは、以下を含む:(a)進化させる目的の遺伝子を含む選択ファージ、ここで、ファージゲノムは、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子を欠損している;および(b)感染性ファージの粒子生成のために必要とされる遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含む、アクセサリープラスミド、ここで、コンディショナルプロモーターは、目的の遺伝子によりコードされる遺伝子産物の機能により活性化される。

一部の態様において、選択ファージは、本明細書において記載されるようなM13ファージである。例えば、一部の態様において、選択ファージは、ファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子、例えば、gI、gII、gIV、gV、gVI、gVII、gVIII、gIXおよびgX遺伝子を含むが、全長gIII遺伝子を含まない、M13ゲノムを含む。一部の態様において、選択ファージゲノムは、F1またはM13複製起点を含む。一部の態様において、選択ファージゲノムは、gIII遺伝子の3’−フラグメントを含む。一部の態様において、選択ファージは、gIIIの3’−プロモーターの上流であってVIIIの3’−ターミネーターの下流の多重クローニング部位を含む。

一部の態様において、選択ファージは、全長gVIを含まない。GVIは、gIIIと同様に、感染のために必要とされ、したがって、本明細書においてgIIIについて記載されるような、選択のための同様な様式において用いることができる。しかし、連続的なpIIIの発現が、一部の宿主細胞をM13による感染に対して耐性にすることが発見された。したがって、pIIIは、感染後にのみ産生されることが望ましい。このことは、pIIIをコードする遺伝子を、誘導性プロモーター、例えば、本明細書において記載されるようなアラビノース誘導型プロモーターの制御下で提供すること、感染が行われるラグーンにおいてインデューサーを提供するが、タービドスタットにおいて、または感染が行われる前に他においては提供しないことにより、達成することができる。一部の態様において、感染性ファージの生成のために必要とされる複数の遺伝子、例えばgIIIおよびgVIは、選択ファージゲノムから取り除かれ、宿主細胞により、例えば本明細書において記載されるようなアクセサリープラスミドにおいて、提供される。

ベクターシステムはさらに、ヘルパーファージを含んでもよく、ここで、選択ファージは、ファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子を含まず、およびここで、ヘルパーファージは、ヘルパーファージゲノムと選択ファージゲノムとが一緒になって、ファージ粒子の生成のために必要とされるすべての遺伝子の少なくとも1つの機能的コピーを含むが、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる少なくとも1つの遺伝子を欠損するように、選択ファージのゲノムを補完する。

一部の態様において、ベクターシステムのアクセサリープラスミドは、感染性ファージの生成のために必要とされる遺伝子を、コンディショナルプロモーターの制御下に含む、発現カセットを含む。一部の態様において、ベクターシステムのアクセサリープラスミドは、pIIIをコードする遺伝子をコンディショナルプロモーターの制御下に含み、該コンディショナルプロモーターの活性は目的の遺伝子の産物の機能に依存する。

一部の態様において、ベクターシステムはさらに、変異誘発プラスミド、例えば本明細書において記載されるようなアラビノース誘導型変異誘発プラスミドを含む。

一部の態様において、ベクターシステムはさらに、選択ファージのファージゲノム中またはアクセサリープラスミド中に含まれていない任意のファージ遺伝子の発現コンストラクトを提供する、ヘルパープラスミドを含む。

進化した産物 本発明の幾つかの側面は、本明細書において記載される連続的進化のプロセスの進化した産物を提供する。例えば、一部の態様は、野生型T7RNAPと比較して改変された基質特異性および/または増大した転写活性を有する改変T7 RNAポリメラーゼ(T7RNAP)を提供する。一部の態様において、T3プロモーターからの転写を開始させる改変T7RNAPが提供される。一部の態様において、改変T7RNAPは、そのネイティブなT7プロモーターから、野生型酵素よりも、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍または少なくとも50倍速い転写速度を示す。一部の態様において、改変T7RNAPは、非イティブのT7RNAPプロモーターから、野生型酵素よりも、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍または少なくとも50倍速い転写速度を示す。一部の態様において、非ネイティブのT7RNAPプロモーターは、T3プロモーターである。

宿主細胞 本発明の幾つかの側面は、本明細書において記載されるような連続的進化のプロセスのための宿主細胞に関する。一部の態様において、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされるタンパク質をコンディショナルプロモーターの制御下でコードする少なくとも1つのウイルス遺伝子を含む、宿主細胞が提供される。例えば、一部の態様は、ファージにより補助される連続的進化のプロセスのための宿主細胞を提供し、ここで、宿主細胞は、本明細書において記載されるように、感染性ファージ粒子の生成のために必要とされる遺伝子、例えばM13 gIIIを、コンディショナルプロモーターの制御下に含む、アクセサリープラスミドを含む。一部の態様において、宿主細胞は、感染性ウイルス粒子の生成のために必要とされる遺伝子を、コンディショナルプロモーターの制御下に、それらのゲノム中に挿入されたものとして、またはコスミド、ファージミドもしくは人工染色体として含む。一部の態様において、宿主細胞は、細菌細胞、例えば、特定のE. coli細胞などの、M13感染が可能な細菌細胞である。M13 PACEのために、宿主E. coli細胞は、例えばF’プラスミドから、F因子を発現する必要がある。好適なF’E. coli細胞系統および株は、当業者に公知であり、例えば、本明細書において記載される

細胞が挙げられる。

一部の態様において、提供される宿主細胞は、さらに、変異誘導性タンパク質をコードする遺伝子を含む発現コンストラクト、例えば、本明細書において他で記載されるようなpBADプロモーターを含む変異誘発プラスミドを含む。

キット 本発明の幾つかの側面は、本明細書において記載されるような連続的進化のためのキットを提供する。一部の態様において、本明細書において提供されるキットは、本明細書において他でより詳細に記載されるような、選択ファージおよび好適なアクセサリープラスミドを含む。一部の態様において、キットはまた、ヘルパーファージまたはファージミド、変異誘発プラスミド、変異原、インデューサー、および/または好適な宿主細胞を含んでもよい。

これらの他の本発明の態様の機能および利点は、以下の例からより完全に理解されるであろう。以下の例は、本発明の利点を説明することおよび特定の態様を記載することを意図するものであるが、本発明の全範囲を例証することを意図するものではない。したがって、例は、本発明の範囲を限定することを意味しないことが、理解されるべきである。

例 一般的方法.全ての機器、試薬、供給者および対応するカタログ番号は、表2において詳細に記す。全てのPCR反応は、HotStart Phusion IIポリメラーゼを用いて行った。水は、MilliQ水精製システム(Millipore, Billerica MA)を用いて精製した。

DNAクローニング.全てのベクターは、等温アセンブリー(isothermal assembly)クローニングにより構築した[44]。5×等温アセンブリーバッファーは、3mLの1MのTris−HCl(pH7.5)、300μLの1MのMgCl2、600μLの10mMのdNTPs、300μLの1Mのジチオトレイトール、1.5gのPEG−8000、20mgのNAD、および6mLまでのH2Oを含んだ。個別の320μLのアリコートを、−20℃で冷凍した。320μLの5×バッファーを、1μLのT5エキソヌクレアーゼ、20μLのPhusionポリメラーゼ、160μLのTaq DNAリガーゼおよび700μLまでのH2Oと混合することにより、等温アセンブリーマスターミックスを調製した。PCRチューブ中の個別の15μLのアリコートを、−20℃で冷凍した。組み立てるべきDNAフラグメントを、各々の隣接するフラグメントとの30〜40塩基対の重複相同性を確実にするように設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCRで増幅した。PCR反応物にDpnIを直接添加して鋳型DNAを除去し、その後、MinEluteカラムを製造者のプロトコルに従って用いてPCRをクリーンアップした。合計で5μLにおける等モル量を15μLの等温アセンブリーマスターミックスと混合して、50℃で1時間インキュベートすることにより、フラグメントを組み立てた。アセンブリー混合物は、NEBTurboコンピテント細胞中に、熱ショックにより直接トランスフォームするか、または記載されるようにMinEluteカラムにより精製して、その後エレクトロポレーションを行った。

プラスミド.T7 RNAP依存性アクセサリープラスミド(AP)は、順番に、強力なrrnBターミネーター、目的のプロモーター、所望のリボソーム結合部位、遺伝子III、カルベニシリン耐性を付与するbl遺伝子、およびpUCまたはSC101複製起点のいずれかを含んだ。選択ストリンジェンシーアッセイについて、RBS A=5’−AAGGAGGTAACTCATAGTG−3’(配列番号12)、RBS B=5’−AAGGAAATAACTCATAGTG−3’(配列番号13)、およびRBS C=5’−AAGAAAATAACTCATAGTG−3’(配列番号14)、ここで、下線の塩基は、遺伝子IIIの開始コドンを表わす。レポータープラスミドは、全長lacZによる遺伝子IIIの置き換えを除いて、SC101アクセサリープラスミドと同一であった。T7 RNAP選択ファージ(SP)は、遺伝子IIIの最後の180bpを除く全てを、VCSM13ヘルパーファージにおいてT7 RNAPをコードする遺伝子で置き換えることにより、構築した。変異誘発プラスミド(MP)は、araCオペロンの制御下におけるdnaQ926、umuD’、umuCおよびrecA730からなった。定量アッセイのために用いた発現プラスミドは、cloD13複製起点、aadA、ならびに進化したT7 RNAPバリアントの発現を駆動する野生型遺伝子IIIプロモーターおよびRBSからなった。この研究において用いられた全てのプラスミドを、表1において記載する。代表的なプラスミドのベクターマップを、図9において示す。

菌株.全てのDNAクローニングは、Mach1細胞またはNEB Turbo細胞を用いて行った。初期の不連続(discrete)感染アッセイおよびPACE実験を、PirPlus DH10βF'DOT細胞を用いて行った。

T7 RNAPを用いるプラークアッセイおよびPACE実験は、先に記載されるようにproBA遺伝子座のpir116アレルでの置き換えによりDH10Bから誘導されたE. coli S109細胞を用いて行った[45]。本発明者らの知識の及ぶ限り、この改変は、T7 RNAPを用いるPACE実験のためには必要とされていなかった。同様に、変異誘発アッセイを可能にするために、Fプラスミドから、および染色体から、lacIカセットを消去した。S109細胞を、ER2738との接合によりF+にした。生じた株の完全な遺伝子型は、

である。

不連続(discrete)感染アッセイ.抗生物質耐性遺伝子を保有するファージを、適切なアクセサリープラスミドと共にコンピテント細胞中に共トランスフェクトして、ファージドナーを作製することにより、不連続(非連続的)感染力アッセイを行った。ツーハイブリッドおよびリコンビナーゼ実験については、ファージ産生細胞は、gIII欠損ヘルパーファージ、アクセサリープラスミドおよび選択ファージミドを含んだ。

コロニーをピックアップして、両方の抗生物質を含む2×YT培地中で一晩生育した。2μLのドナー細胞を、ドナーにおいては見出されない抗生物質耐性遺伝子を含む指数中期(mid-exponential phase)の198μLのF+レシピエント細胞と混合した混合物を、37℃で1.5時間インキュベートし、20μLを、ドナーおよびレシピエント抗生物質を含むプレート上に広げた。37℃での一晩でのインキュベーションの後で生じたコロニーの数により、感染を定量した。プラークアッセイについては、ファージDNAを、適切なアクセサリープラスミドを含むエレクトロコンピテント細胞中にトランスフォームし、1時間37℃で回復させた。連続希釈物を、300μLの指数期まで増殖させたF+レシピエント細胞と、14mLのFalcon培養チューブ中で混合し、37℃で15分間インキュベートした。50℃の3mLのトップアガー(LBブロスベースから7g/L)を各チューブに添加して、短時間ボルテックスし、最少アガープレート上に注ぎ、37℃で8時間または一晩インキュベートしてプラークを発生させた。

タービドスタットの組み立て.組み立ては、図2bにおける模式図に従った。タービドスタットは、磁気スターラープレート上のBioProbeフラスコから構築した。各フラスコに、圧着取り付け具を有するGL32プローブホルダー中に保持されたTruCell2細胞密度計を装備した。針で穿孔したGL45およびGL32隔壁が、Tygonチューブを有する8チャンネルの蠕動ポンプを介して、タービドスタットの内外へ培地を運搬した。所望のタービドスタット容積レベルにセットした針が、過剰の細胞を廃棄用容器へ汲み出した。

隔壁を穿孔する14ゲージの針に結合した0.2μmのフィルターが、タービドスタット容器を通気する。2方向弁が、弁が閉じた状態では培地がソースへと戻るように連結されたタービドスタットへの培地の流れを制御した。弁は、所望のセットポイントによりプログラムされたデジタルパネルメーターにより処理されるTruCell2の4〜20mAの出力に対する応答において開閉した。パネルメーターは、説明書に従って解錠し、以下のセッティングにプログラムした:

デジタルパネルメーター、アダプターおよび弁は、図15において示す図に従って、無はんだ回路板で連結した。ラグーンは、液体送達のための針を穿孔したGL45隔壁を有する100mLのPyrex(登録商標)のボトル、0.2μmのフィルター末端の通気管、および磁気スタラーバーからなった。過剰のラグーン容積を、所望のラグーン溶液にセットした廃棄用針を介して、連続的に汲み出して廃棄した。

培地調製.各20Lの培地のカーボイに、20LのH2O中の140gの2塩基性無水リン酸カリウム、40gの1塩基性リン酸カリウム、20gの硫酸アンモニウムおよび20mLのTween 80を添加した。

カーボイを、Polyvent充填/通気栓で固くキャップし、オートクレーブ可能な0.2μmのフィルターを通気ポートに固定した。培地を、沸騰が目視されるまで(典型的には、30psiにおいて121℃で120分間)オートクレーブし、一晩冷却させた。90gのブドウ糖、10gのクエン酸ナトリウム、0.25gの無水硫酸マグネシウム、10gのカザミノ酸、0.15gのテトラサイクリン−HCl、0.6gのカルベニシリン、0.6gのスペクチノマイシン、および0.5gの(L)−ロイシンを500mLのH2O中に溶解し、Nalgeneの500mLの濾過ユニットで濾過することから、培地添加物を調製した。500mLの培地添加物を、培地の汚染の危険性を最小限にする条件下において(報告される実験の場合、殺菌灯のUV照射の1時間後すぐに)、各カーボイに添加した。

滅菌および細胞培養。タービドスタット装置のオートクレーブ成分は、BioProbeフラスコ、TruCell2プローブ、針、通気フィルター、およびチューブを含んだ。全てのかかる成分を、チューブ以外は完全に組み立てた状態でオートクレーブし、チューブは、熱いうちに連結した。室温まで平衡化した後、培地の添加および廃棄物の除去を担う蠕動ポンプを、所望の容積に到達するまで開かれた弁により開始させた。TruCell2プローブを、そのトランスミッターに連結して、ゼロに設定した。タービドスタットに、100μLの宿主細胞の一晩培養物を播種した。タービドスタットおよびラグーンの培養物を、37℃で生育させた。

細胞密度カリブレーション.連続希釈プレーティングを用いて、カリブレーション曲線を作製し、所望の細胞密度に対応するTruCell2の出力およびパネルメーターのセッティングを決定した。これらの実験について、両方のパネルメーターのアラームを、6.80mAにおいて弁が開くようにプログラムした。細胞を、シリコン(プラチナ)の二端(two-stop)チューブを有する蠕動ポンプを介して、タービドスタットからラグーンに汲み出した。rpmにおけるポンプ速度を容積流動速度(volumetric flow rate)に関連づけるカリブレーション曲線を、各チューブサイズについて、タイマーおよびメスシリンダーを用いて実験的に決定した。

PACE実験.タービドスタットおよびラグーンを、上記のとおり組み立てた。タービドスタットが、5×108細胞/mLに対応する6.80mAの所望のセットポイントに到達した後、ラグーンをタービドスタットに連結し、廃棄用針を所望の容積にセットし、ラグーンのポンプを、所望の希釈率に対応する流動速度にセットした。各ラグーンに、選択ファージを産生する一晩培養物を播種した。変異誘発の増大を引き起こすため、フィルター濾過した10%の(L)−アラビノースを、別個の蠕動ポンプにより、変異誘発の増強を要求する各ラグーンに、1%の最終濃度まで送達した。蠕動ポンプのすぐ後のルアーロックにおいてラグーン廃棄ラインをサンプリングすることにより、ラグーンのアリコートを採取した。個々のクローンを、プラークアッセイにより単離するか、PCRにより増幅し、T7 RNAP活性アッセイプラスミドに組み上げ、lacZレポータープラスミドを含む細胞中にトランスフォームした。ブルー/ホワイトスクリーニングにより、活性なクローンをピックアップした。

選択ファージの最適化.T7 RNAPを、カナマイシン耐性をコードするVCSM13ヘルパーファージ中にサブクローニングし、HP-T7RNAP Aを作製し、図3aにおいて示す非連続感染アッセイにおいて用いた。

ファージゲノムに対する改善がT7 RNAPの進化を妨害していなかったことを確認するために、AP-T7 AおよびDP-QURを含むS109宿主細胞を供給しアラビノースを補充したラグーンにおいて、48時間、2.0容積/時間において、HP-T7RNAP Aを増殖させた。個々のプラークを単離し、それらのT7 RNAP遺伝子をシークエンシングした。1つのプラークは、T7 RNAPにおいて1ポイントの変異のみを含み、T7 RNAP進化のための予め最適化された選択ファージとして選択した。残りの選択ファージのシークエンシングにより、親VCSM13と比較して多数の変化が明らかとなった。特に、VCSM13を作製するために遺伝子間(IG)領域中に挿入されたp15a-KanRカセット全体が、完全に消去されて、野生型M13のIG領域を再構成していた。他の変化として、gIV中のN79S、F286SおよびI360T変異、gIIのK249R変異、対応するM13の塩基に戻る3個のサイレント変異、2個の他のサイレント変異、ならびに、T7 RNAPの発現を増大する可能性があるgIIIの前のターミネーター中のチミン残基の消去が挙げられる。これらのバリエーションの領域的パターンは、より広範な線状ファージ進化実験においてHusimiにより観察されたものと平行する[46]。SP-T7RNAP P314Tと命名されるこの進化したファージを、全てのこの後のPACE実験のための出発選択ファージとして用いた。

変異誘発アッセイ.lacI遺伝子を、VCSM13中に、p15a起点とkanrとの間にクローニングし、VCSM13-lacIを作製した。タービドスタットを、変異誘発プラスミド(MP)を含むS109細胞と共に、5×108細胞/mLと同等のセットポイントまで増殖させた。ラグーンに、10μLのVCSM13-lacIを播種し、2.5容積/時間において3時間流した。一方のラグーンには、10%のアラビノースを1%の最終濃度まで補充したが、他方には補充しなかった。3時間後にアリコートを取り除き、各々を、100倍大きな容積の、カルベニシリンおよびスペクチノマイシン耐性を付与するレポータープラスミドであって、スペクチノマイシン耐性を抑制することができるlacI結合部位(lacO)を有するものを含む、S109細胞のレシピエント細胞培養を感染させるために用いた。混合物を、1.5時間37℃でインキュベートし、スペクチノマイシン、カナマイシンおよびカルベニシリンを含む2×YTプレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。

誘導されたおよび誘導されていないラグーンについて、コロニーをカウントし、変異誘発の増大の倍率を概算した。

72個のコロニーをシークエンシングして、変異lacI遺伝子内の全ての転移および塩基転換の頻度を決定した。結果を図11において示す。全てのシークエンシングされたコロニーが、リプレッサー機能を不活化することができる少なくとも1つの変異を含んだ。

In vivo T7 RNAP 活性アッセイ.2×TY中で増殖させたレポータープラスミドおよび発現ベクターを含むS109細胞の一晩培養物を、新たな2×TY培地中で4倍に希釈した。20μLの希釈した培養物を、80μLのZバッファー(60mMのNa2HPO4、40mMのNaH2PO4、10mMのKCl、1mMのMgSO4、50MのBME、pH7.0)と、Falcon Microtestの96ウェルのOptiLuxアッセイプレートにおいて混合し、Spectra M5プレートリーダーを用いて595nmにおける吸光度を測定した。25μLの1mg/mLのメチルウンベリフェリル−ベータ−(D)−ガラクトピラノシドを各ウェルに添加し、時間を記録した。プレートを30℃でインキュベートし、Spectra M5プレートリーダーにおいて360/460nmにおいて蛍光を測定した。アッセイされるT7 RNAP酵素の活性レベルに依存して、分光光度計の飽和または基質の消費をさけるため、複数の時点においてプレートを測定した。先に記載されるように、MUG蛍光単位を計算した[47]。

T7 RNAPタンパク質精製.T7 RNAPのバリアントを、HisタグされたT7 RNAP発現ベクターであるpT7-911Q中にクローニングした[48]。30℃で増殖させた一晩培養物を、50μg/mLのカルベニシリンおよび2%のブドウ糖を含むLBブロス中で、1:500に希釈した。OD600=〜0.5に達した後、培養物を4000gで5分間遠心分離し、0.4mMのIPTGおよび50μg/mLのカルベニシリンを含むLBブロス中に再懸濁した。培養物を4時間30℃で増殖させ、8000gで6分間スピンし、ペレットを一晩冷凍した。結合バッファーは、pH8.0において、50mMのTris、300mMのNaCl、5%のグリセロール、5mMのベータ−メルカプトエタノール、および10mMのイミダゾールからなった。洗浄バッファーは、pH8.0において、50mMのTris、800mMのNaCl、5%のグリセロール、5mMのベータ−メルカプトエタノール、および20mMのイミダゾールからなった。溶出バッファーは、500mMのイミダゾールを含む洗浄バッファーと同等であった。25mLの培養物からのペレットを、1mLの洗浄バッファー中に再懸濁し、氷上に保ったまま、Misonix CL4ソニケーターを用いて、最大マイクロチップパワーにおいて、1秒間のバーストにおいて45秒間の超音波処理により細胞を溶解した。細胞デブリを、20,000gで15分間、4℃でスピンダウンした。Ni-NTAスピンカラムを500μLの結合バッファーで平衡化し、800gで2分間スピンした。ライセートの上清を各カラム上にロードし、300gで5分間スピンした。カラムを500μLの洗浄バッファーで2回洗浄し、各回ごとに800gでスピンし、次いで250μLの溶出バッファーで2回溶出させた。タンパク質を、20mMのTris、100mMのNaCl、5%のグリセロール、1mMのEDTA、1mMのDTT(pH8.0)中に透析し、Amicon Ultra-0.5 30K濃縮カラムを用いて濃縮した。

in vitro T7 RNAP活性アッセイ.精製されたT7 RNAPのバリアントの濃度を、ブラッドフォードアッセイにより、次いで、4〜12%のNuPageゲル上でのクーマシー染色により、決定した。in vivoアッセイのために用いたlacZ遺伝子のプロモーターおよび起点を含むレポータープラスミドの150bpのフラグメントのPCR増幅により、鋳型を調製した。MinEluteスピンカラムにより鋳型を精製した。

40mMのTris−HCl、6mMのMgCl2、10mMのジチオトレイトール、1mMのrNTPを含む2mMのスペルミン(pH7.9)、1ngの鋳型DNA、精製ポリメラーゼバリアント、および2mCiの[α−32P]ATPからなる1×RNAポリメラーゼバッファー中で、転写反応を行った。反応物を、37℃で20分間インキュベートし、等容積の、7Mの尿素、178mMのTris−Cl、178mMのH3BO3、4mMのEDTAおよび0.002%のブロモフェノールブルーからなるローディングダイと混合し、次いで、Criterionの5%または10%のTBE−尿素変性ゲル上で電気泳動した。iA6プロモーターにおける[α−32P]ATPからのシグナルの増大について制御するため、および転写物が完全にゲルに入ることを確実にするために、iA6および野生型T7のRNAを、配列5’−TAATACGACTCACTATAGGGAGAGCCACCACCACCACCACCACCA−3’(配列番号15)および5’−TAATACGACTCACTATAAAAAAAGCCACCACCACCACCACCACCA−3’(配列番号16)の二本鎖鋳型から転写させ、T1リボヌクレアーゼで消化して初めの7塩基を取り除き、Criterionの15%のTBE−尿素ゲル上で電気泳動した。蛍光スクリーンを、Typhoon Trio蛍光イメージャー上に暴露してイメージングした。転写産物に対応するバンドを、ImageJソフトウェアで定量した。

RACE分析.精製されたT7 RNAPバリアントによるin vitro転写反応を、いかなる放射性ヌクレオチドをも添加せず、ポリメラーゼバリアントC6- 80.9を用いて、上記のとおり行った。iC6の鋳型から形成された配列5’−TAATACGACTCACTATACCC−3’(配列番号17)および5’−CCCACCCAAAAAAAAAAAAAAAGGGGGGTATAGTGAGTCGTATTA−3’(配列番号18)のDNAオリゴヌクレオチド、ならびに、野生型鋳型から形成された5’−TAATACGACTCACTATAGGG−3’(配列番号19)および5’−CCCACCCAAAAAAAAAAAAAAATCTCCCTATAGTGAGTCGTATTA−3’(配列番号20)。各200μLの転写反応物を2μLの仔ウシ腸ホスファターゼ(CIP)と37℃で1時間反応させ、フェノール−クロロホルムで2回抽出して酵素を除去し、エタノールで沈殿させた。ペレットを、1×DNase Turboバッファー中で5μLのDNaseと共に合計容積100μLにおいて再懸濁し、2時間37℃でインキュベートし、フェノール−クロロホルムで2回抽出し、エタノールで沈殿させた。5μLの精製転写物を、1μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)と1×PNKバッファー中で混合し、37℃で1時間インキュベートした。1μLの処置されたRNAを、30ngの配列5’−GCUGAUGGCGAUGAAUGAACACUGCGUUUGCUGGCUUUGAUGAAA−3’(配列番号21)のRNAアダプターに、T4 RNAリガーゼにより、1×RNAリガーゼバッファー中で、37℃で1時間ライゲーションした。1μLのライゲーションされたRNAを、1mMのdNTPおよび最終濃度5μMの配列5’−CCCCCAAACCCCCAAAAAAAAAACCCACCCAAAAAAAAAAAA−3’(配列番号22)の相補的DNAプライマーと65℃で15分間混合し、その後、10U/μLのSuperScript III逆転写酵素と、1×RTバッファー、5mMのMgCl2,および10mMのジチオトレイトール中で50℃で1時間混合することにより、逆転写した。酵素を、85℃で5分間変性させ、その後、プライマー5’−CGATCCGAACGCAGCATTTACGCTGATGGCGATGAATGAACACTG−3’(配列番号23)および5’−CCCCCAAACCCCCAAAAAAAAAACCCACCCAAAAAAAAAAAA−3’(配列番号24)、その後に5’−AACGCCAGCAACGCGAATAAGAGAATACATCGATCCGAACGCAGC−3’(配列番号25)および5’−GCTAGTTATTGCTCAGCGGAAAAAAAAAAAAACCCCCAAACCCCC−3’(配列番号26)を用いるネステッドPCR反応により増幅した。PCR産物を、TOPO TAキットによりサブクローニングした。個々のクローンをピックアップして、M13リバースプライマーを用いてシークエンシングした。

PACEの間のファージの世代時間の計算.ファージの世代時間を、ファージのフィットネスが一定である安定状態複製モデルを用いて概算した。1つのファージ世代は、感染細胞がラグーンを出ること、その子孫ファージの1つが入って来る細胞に感染すること、およびその感染細胞がラグーンを出ることを包含する。子孫ファージの1つが入って来る細胞に感染するために必要とされる平均時間を決定するため、入って来る細胞に既に感染している子孫ファージはないこと、およびラグーンに入って来る細胞は、線状ファージの吸着定数(3×10−11mL−1min−1ファージ−1細胞−1)と比較して高い濃度のファージ(5×1010mL−1)および細胞(5×108mL−1)の為に即時感染すること[49]を仮定する。PACE実験の大部分の間、ラグーンは安定状態において作動するため、合計のファージおよび細胞濃度は、経時的に変化しない。したがって、ラグーンを出てゆく単一の細胞の子孫は、平均して、ラグーンに入って来る正確に1つの細胞に感染し、集団の置き換えを達成する。合計の細胞集団と等しい数の入って来る細胞が、子孫ファージの1つが感染を達成する前に入って来るであろう。したがって、即時的な細胞の流出から新たな細胞の子孫ファージによる感染までの平均時間は、1/(希釈率)である。

希釈の式に従って、溶質は、dC/dt=−(希釈率)*(濃度)の速度で洗い流される。このことから、C(t)=c1*exp[−(希釈率)*時間]の洗い流し(washout)式が得られる。この洗い流し式は、所与の細胞が、それがラグーンに入ってからの特定の時間において洗い流されている確率についての、確率密度関数(probability density function)prob[time]として用いることができる。全ての現在内在する細胞が所与の無限の時間において洗い流されている確率が1となることを確実にするために、希釈率を、c1=1/(希釈率)に設定する。単一の細胞についての確率

を計算するために、積分[t * prob[t],{t,0,無限大}]を計算した。積分[時間*(希釈率)* exp[−(希釈率)*時間],{t,0,無限大}]=1/(希釈率)。したがって、感染から洗い流しまでの平均時間もまた、1/(希釈率)と等しい。

ファージ複製サイクルの2つの2分の1を合計すると、本発明者らのもであるにおける平均のファージ世代時間は、2/(希釈率)に等しい。T3プロモーター認識に向かう進化におけるもののような2.0容積/時間の希釈率において、平均的なファージは、24時間あたり24世代を経験する。転写開始部位の進化実験におけるもののような2.5容積/時間において、平均的なファージは、24時間あたり30世代を経験する。3.2容積/時間の観察された最大希釈率について、平均的なファージは、24時間あたり38世代を経験する。全ての場合において、最速で複製するファージの1%は、24時間あたり著しくより多くの数の世代を経験した。

ファージにより補助される連続的進化(PACE) タンパク質または核酸の連続的定向進化を可能にするために(ファージディスプレイ[17]において一般的に用いられる)M13糸状バクテリオファージの連続的な培養および選択を利用するスキームを考案した[15、16]。ファージにより補助される連続的進化(PACE)において、E. coli宿主細胞は、目的の遺伝子をコードするファージDNAベクターの活発に複製する集団を含む、固定された容積の「ラグーン」を通って、連続的に流れる(図1)。

ラグーンにおける宿主細胞の平均内在時間は、E. coliの複製のために必要とされる時間よりも短い。その結果、変異は、進化するファージベクターの集団においてのみ蓄積する。なぜならば、それらは、ラグーンにおける唯一の複製するDNAであるからである。ラグーンにおける宿主細胞の変異は、したがって、多くのラウンドのファージ複製に対して、選択の結果に対して最小限の影響しか有さず、変異誘発条件は、E. coliの生存能を保存するものに限定されない。

PACEは、所望の活性を、進化する遺伝子を含む感染性の子孫ファージの産生に関連付けることにより、連続的選択を達成する。ファージ感染は、タンパク質III(pIII;遺伝子IIIによりコードされる)を必要とし、これは、F線毛の結合およびTolA依存性の宿主細胞への侵入を媒介する[18、19]。pIIIを欠失するファージは、野生型ファージよりも約108倍感染性が低い[20]。重要なことに、感染性ファージの産生は、pIIIのレベルの増大と共に、2桁にわたり増加する[21]。pIII産生、およびしたがってファージの感染力を、目的の活性にカップリングするために、ファージベクターから遺伝子IIIを消去して、E. coli宿主細胞において存在する「アクセサリープラスミド」(AP)中に挿入した(プラスミドマップについては図9を参照)。APからのpIIIの産生は、ファージベクター上の進化する遺伝子の活性に依存し、この活性の非存在下においては、感染性ファージの産生を支持するためには不十分である。APから十分なpIIIの産生を誘導することができるファージベクターは、したがって、増殖して、連続的に希釈されるラグーン中に存続するが、一方、pIIIを誘導することができないファージベクターは、経時的に洗い流される(図2)。pIIIの発現レベルが感染性ファージ産生の速度を決定するため、より高いレベルのpIII産生をもたらす変異体遺伝子をコードするファージの子孫は、より活性が低い遺伝子をコードするファージの子孫と比較して、より多くの割合の宿主細胞に感染する。より高い活性を有する変異体は、したがって、pIIIレベルが最大の感染性ファージの放出のために十分となるまで、選択的利点を経験するであろう。

ファージの生活環(ファージ産生の開始〜感染後10分間)の簡潔さに起因して[22]、PACEは、選択条件下において、1日において、多くの世代のファージの複製を媒介することができる。3.2容積/時間までのラグーンの流動速度を耐容する活性依存性のファージベクターが観察され(図10)、これは、約115回の集団の倍加、および平均して24時間あたり約38のファージ世代に対応する。各ラグーンは、単純に一定容積に維持された容器であるので、複数のラグーンが、遺伝子を並行して進化させることができ、約5×1010の宿主細胞を含む各100mLのラグーンは、活性なファージのバリアントを選択的に複製する。

重要なことに、PACEは、進化の間に、殆どまたはまったく干渉を必要とせず、各ラウンドの間に、DNAライブラリーを作製すること、細胞を形質転換すること、遺伝子を抽出すること、またはDNAクローニングのステップを行うことを必要としない。

pIIIへの機能の関連付け 産生.原則として、PACEは、転写、翻訳または翻訳後のレベルにおいてpIIIの機能に影響を及ぼす活性を含む、E. coliにおけるpIII産生に関連付けることができる任意の遺伝子を進化させることができる。DNA結合、RNA結合、タンパク質結合、結合形成の触媒、および多様な酵素活性を含む多様な機能が、n−ハイブリッド[23〜25]および他のコンディショナルな転写戦略を介して、レポータータンパク質の発現に関連付けられてきたため、PACEを、多くの異なる目的の活性の進化に適用させることができる。例として、タンパク質−タンパク質結合、リコンビナーゼ活性およびRNAポリメラーゼ活性を、不連続感染アッセイにおいて、これらの活性をpIII産生と関連付けるAPのバリアントを作製することにより、ファージ感染力に首尾よく関連付けた(図3)。PACEは、pIIIレベルが、全体的なファージの喪失を防止するために必要とされる最少の閾値よりも高いが、感染性ファージを最大限に産生するために必要とされる量よりも低い場合に、最適な進化圧を適用する。このウインドウは、コードされる遺伝子の現在の活性レベルに順応するために、少なくとも2つの方法においてシフトさせることができる。APのコピー数を変化させることにより、または、遺伝子IIIが転写または翻訳される効率を調節するために遺伝子IIIのリボソーム結合部位(RBS)を改変することにより[26]、選択ストリンジェンシーを調整することができることが観察された(図4)。

誘導性の増強された変異誘発 複製する線状ファージの基線の変異率は僅か5.3×10-7置換/bpであるが[27]、100mLのラグーン(約5×1010)中の細胞に感染する多数のファージベクターは、任意の場合において、生存可能なサイズの任意のファージベクターにおける、全ての可能な単一の点変異の存在を保証する。PACEにおける遺伝子の多様化率を制御可能な様式において増強するため、DNA複製の間のエラー率を増大させ化学変異原の使用を容易にする、誘導性の変異誘発プラスミド(MP)を構築した。ラグーンへのアラビノースの添加は、DNAポリメラーゼのドミナントネガティブなプルーフリーディングサブユニットdnaQ926の発現[28]、および特化した修復DNAポリメラーゼpol Vの産生[29]を誘導する。アラビノースを用いてまたは用いずに、ラグーンにおいて、lacリプレッサー(lacI)をコードするファージを連続的に増殖させ、3時間の連続的増殖の後で機能喪失型変異体を選択することにより、変異誘発の増大を測定した。

0.8%アラビノースによる完全な誘導は、lacI遺伝子の見かけ上の変異誘発率を約100倍増大させ、全ての可能な転移および塩基転換を誘導した(図11)。

この変異誘発率の増大は、PACE遺伝子ライブラリーの性質に対して多大な影響を有する。1kbの標的遺伝子について、約5×10−5置換/bpの増大した変異率は、5×1010のファージにおいて1世代後に2.5×109の変異を生じ、これは、全ての可能な単一変異体および二重変異体、ならびに多数の三重変異体を生じるのに十分である。アラビノースにより誘導された変異誘発率は、100mLのラグーンが、任意の開始ファージベクターの全ての可能な二重変異体を徹底的にサンプリングすることを可能にするので、PACEの間に単一変異の適応度の谷(fitness valleys)を越えることができる。

T7 RNAポリメラーゼの連続的進化:プロモーター認識 バクテリオファージT7(T7 RNAP)のDNA依存性RNAポリメラーゼは、RNAをin vitroで転写させるため、および細胞におけるタンパク質発現を駆動するために、広範に用いられる。T7 RNAPは、そのプロモーター配列(TAATACGACTCACTATA、配列番号27)について、高度に特異的であり、関連するバクテリオファージT3のコンセンサスなプロモーター(AATTAACCCTCACTAAA、配列番号28)に対して、検出可能な活性を実質的に示さない。位置11におけるヌクレオチド(T7プロモーターにおいてはG;T3プロモーターにおいてはC)は、T7 RNAPのプロモーター認識において特に重要な役割を果たすことが知られているが、T7 RNAPにおける位置11におけるC塩基の認識を付与する既知のN748D変異は、なおT3プロモーターに対して<5%の活性を示す[30]。T7 RNAPの特異性を、T3のものを含む他のプロモーターに対して向けるように操作する何十年間もの研究および幾つかの試みにも関わらず、T3プロモーターを認識することができる変異体T7 RNAPは、先には報告されていない[31〜34]。T7 RNAPの完全なT3プロモーターの認識を進化させるために、PACEを試みた。

第一のPACEは、T7 RNAPに対すると言うよりは寧ろファージベクターに対する、任意の進化による改善からの干渉の可能性を取り除くために、gIIIの場所において野生型T7 RNAPを含むファージベクターを最適化するために用いた。ベクターを、3日間にわたり、2.0容積/時間のラグーン流動速度において、gIIIの発現を駆動する野生型T7プロモーターを有するAPを含む宿主細胞において、連続的に増殖させた。ベクターが最適化されたT7 RNAP発現ファージを表わすと推定された1つのプラークは、単一の変異(P314T)を含み、T7 RNAPの進化のための出発点として用いた。P314T変異体の活性は、野生型T7 RNAPの活性と、測定可能な程度には異ならないことが確認された(図12)。この最適化されたT7ポリメラーゼ発現ファージが、T3プロモーターを含むAPにより、最も弱い可能な選択ストリンジェンシー下において増殖することができるか否かを試験した。T7 RNAPを含むファージベクターは、T7プロモーターAPを含む宿主細胞による連続希釈を生き残ったが、増殖することはできず、T3プロモーターAPを含む宿主細胞で代わりに希釈した場合、ラグーンから洗い流された。T3プロモーターを認識することができる報告されるT7 RNAPバリアントの不在と一致して、これらの結果は、すぐに入手することができる変異体は、完全なT3プロモーターにおいて連続的に増殖するために十分なT3プロモーター活性を有しないことを示唆する。

次いで、PACEを用いることにより、T3プロモーター認識活性を有するT7 RNAP変異体を進化させることができるか否かを試験した。初めに、T7 RNAP変異体を、重要な11位においてT7プロモーターの塩基を有するが全ての他の位置がそのT7プロモーターのカウンターパートに変更されているハイブリッドプロモーターを認識するように進化させ、次いで、単純に、完全なT3プロモーターAPを含む宿主細胞に変更する。T7 RNAPファージベクターを、2つの最初は同一のラグーンにおいて平行して、2.0容積/時間の一定の流動速度において、ハイブリッドT7/T3プロモーターAPにおいて60時間、次いでT3プロモーターAPにおいて48時間、そして最後に、高ストリンジェンシーの一コピーのT3プロモーターAPにおいて84時間、増殖させた(図5a)。

両方のラグーンにおいて、ファージは、合計7.5日間のPACEの後で存続し、正味10170倍の希釈を生き残り、これは、平均的なファージによる約550回のファージ集団の倍加および約200ラウンドの進化と同等である。各ラグーンから、48、108および192時間後に、ファージベクターを単離し、シークエンシングして特徴づけた。1つのT7 RNAP遺伝子において8個までの非サイレントな変異を48時間目において観察し、クローン1個あたり10個までの非サイレントな変異を108時間目において、そしてクローン1個あたり11個までの非サイレントな変異を192時間目において観察した。さらに、T7 RNAPの発現を駆動するプロモーターにおける幾つかの変異を、複数のクローンにおいて観察したが、これらのいずれも、進化の過程の間に優性にはならなかった。

進化した変異体T7 RNAP遺伝子のタンパク質コード領域(上流のプロモーター配列を含まない)を、転写活性を細胞におけるベータ−ガラクトシダーゼ発現に定量的に関連付けるアッセイプラスミド中にクローニングした[35]。100%の活性を、T7プロモーターにおける出発T7 RNAPの活性であると定義した。これらの細胞ベースのアッセイにおいて、出発T7 RNAPは、T3プロモーターにおいて検出不可能な(=3%)レベルの活性を示した。48時間目において、完全なT3プロモーターに変更する前に、PACEにより進化したT7 RNAPのバリアントは、T3プロモーターにおいて20%までの活性(=6倍の改善:図5bおよび5c)、および、T7プロモーターにおける出発酵素に対して少なくとも6倍の同様の増大を示した。108時間のPACEの後でプラークから単離された全てのクローンが、T3プロモーターにおいて、少なくとも200%の活性を示し、これは、出発時の活性に対する=65倍の増大に対応した(図5bおよび5c)。192時間のPACEの後で単離されたクローンは、T3プロモーターにおいて、少なくとも300%の活性を示し、これは、出発時の活性よりも=100倍高い(図5bおよび5c)。殆どの活性なクローンのT3プロモーター認識活性は、7.5日の実験の経過にわたって=300倍改善し、これは、細胞における検出不可能な活性から、野生型T7プロモーターに対する野生型T7 RNAPの活性の10倍近くまでのシフトに対応した。

野生型T7プロモーター認識に対する明確な陰性選択がないにも関わらず、108および192時間のPACEの後で単離された幾つかのクローンは、それらの祖先よりも低いT7プロモーター認識活性を示し、これはおそらくはT7プロモーターを認識する選択圧の非存在下における遺伝子浮動を通したものである(図5bおよび5c)。1つのクローンL2-108.2は、T3プロモーターにおいて270%の標的活性を示し、T7プロモーターにおいては100%の活性しか示さず、野生型T7 RNAPと比較して正味で少なくとも100倍の特異性の変化を表わした。これらの結果は集約的に、PACEが、研究者による最小限の干渉により、酵素の活性および特異性における大きな変化を非常に迅速に進化させる能力を確立する。

また、幾つかの進化したT7 RNAP変異体を、標準的な放射性ヌクレオチド取り込みアッセイを用いてin vitroでアッセイした[36]。精製されたT7 RNAP変異体は、細胞ベースのアッセイと一致して、開始時のT3プロモーター認識活性に対して90倍までの活性レベルを示した(図5d)。in vitro活性は、T7プロモーターにおける野生型T7 RNAPの活性を劇的には超えず、このことは、細胞におけるT7 RNAPの活性の進化した改善は、基質結合または触媒速度の改善に加えて、発現レベル、ポリメラーゼの折りたたみ、または安定性などの特徴における改善を含むことを示唆した。PACEにより進化したT7 RNAP遺伝子の変異分析により、変異体クローンの間の基本的な構造活性の関係が明らかとなった(図6)。T3の11位のおける塩基の認識を可能にすることが知られているN748D変異は、両方のラグーンにおいて、完全なT3プロモーターへのシフトの48時間後の単離物において現れた(図6)。PACEの間に観察された2つの他の既知の変異は、既知の特異性拡大因子であるE222K[33]、およびK98Rであって、これは、T3 RNAPにおける対応するアミノ酸に対する変更であり、T3プロモーターにおいて改変されている15位および16位の塩基に直接接触するものである。これら2つの変異は、同じクローンにおいては二度と観察されず、このことは、相互の排他性またはRNAPの特異性に対する類似の効果を示唆した。

興味深いことに、2つの初めは同一であったラグーンの進化の動態は、著しく異なった(図6)。24時間以内に、ラグーン1は、I4M、G175R、E222KおよびG542Vからなる一揃いの優性な変異を獲得し、その後は、完全なT3プロモーターへの暴露の後でN748Dを獲得するまでは殆ど変化しなかった。対照的に、ラグーン2は、よりゆっくりとこれらの変異を入手し、その後、96時間目において、K98Rを含む1セットの完全に異なる変異が優性となり、これらは、ラグーン1において観察された5つの同じ変異により置換された。実験を通してのラグーン2に特有の幾つかの変異の存在は、ラグーンの相互汚染が起こらなかったことを示唆する。最終的に1セットの共通の変異に収束するまでの、2つのラグーンの区別し得る進化の軌跡は、PACEが平行実験において標的活性への複数の実行可能な経路を迅速に発見する能力を強調する。

T7 RNAポリメラーゼの連続的進化:転写物開始 T7 RNAPは、GTPによる開始について高度に特異的であり[37〜39]、これは、in vitroでのRNAの他のヌクレオチドにより開始する転写についてのその有用性を、著しく限定している。開始は、機構的に能力が試される転写におけるステップとして記載されており[40]、他のヌクレオチドにより転写を開始させることができるT7 RNAPバリアントを進化させるためにPACEを使用することを試みた。T7 RNAPは、鋳型がコード鎖において早期のグアニンを持っていない場合、+1位の数塩基下流までGTPにより開始することが知られている[41]。したがって、遺伝子IIIの転写物の+1位〜+6位がCCCCCC(iC6)またはAAAAAA(iA6)であるアクセサリープラスミド、ならびに、これらの位置における無作為な塩基からなるライブラリー(iN6)を構築した。

G以外の塩基によるより乱交雑な開始を行うことができるバリアントのプールに対して選択圧を適用するため、ベクターを最適化したT7 RNAPファージを、iN6のAPライブラリーを担持する宿主細胞において増殖させた。無作為な塩基における開始についての選択の48時間後、それを、高コピーのiC6アクセサリープラスミドを含む宿主細胞に16時間にわたって、最後に低コピーのiC6アクセサリープラスミドを担持する宿主細胞に16時間にわたって、変更した(図7a)。2.5容積/時間の希釈率において、ファージは合計で10−89の希釈、または約100のファージ世代を生き残った。実験の最後からの10個のシークエンシングされたクローンは、合計16個までの変異(7個までの非サイレント)を含んだ。野生型T7 RNAPがiC6プロモーターにおいて驚くべき量の活性を保持すること[41](野生型プロモーターにおけるものの50%)が観察された。全てのPACEにより進化したクローンは、細胞ベースのアッセイにおいて、iC6プロモーターにおいて少なくとも80%の活性を示し、最も活性なクローンは、5.3倍の改善である280%の活性を示した(図7b)。精製された変異体T7 RNAPタンパク質のin vitro 転写アッセイにより、iC6プロモーターにおける野生型T7 RNAPの50%の活性を確認し、進化したバリアントは、2.3倍までの改善を示した(図7c)。T3プロモーターを認識するように進化したタンパク質の場合のように、iC6により進化したバリアントの幾らか高い細胞活性は、タンパク質の折りたたみおよび安定性における改善に起因すると推測することができる。

変異分析により、H524NおよびA827V変異が12個すべてのシークエンシングされたクローンの間で保存されていたことが明らかとなり、これらは、おそらくは、PACEの間に非常に初期に生じたものである。さらに、すべてのクローンは、K577M、またはC125RおよびS128Rのいずれかを含んだ。アッセイされた最も活性なクローンを含む幾つかのクローンは、5個すべての変異を含み、このことは、両方の観察された変異のセットが活性を増大し、互いに両立することを示唆した。5個の変異のうちで、A827Vは活性部位に近接するが、C125RおよびS128Rのみが、新たに転写開始されたRNAと接触して安定化することができると予測される。

上の実験における機能的なpIIIまたはLacZタンパク質の必要性は、進化したRNAポリメラーゼが全体的な配列忠実度を保持することを保証するが、原則として、鋳型によりプログラムされた塩基ではなく鋳型でないヌクレオチドにより転写を開始することが可能である。この可能性を試験するために、進化したポリメラーゼC6-80.9により、iC6の鋳型および野生型鋳型(これはGGGAGAにより転写を開始する)の両方に対して生成されたRNA転写物を、RACE法によりシークエンシングした。野生型およびiC6の両方の鋳型について、転写物は、非鋳型ヌクレオチドではなく、鋳型により指示された塩基により開始した(図13)。進化の最後の挑戦として、iA6プロモーターを用いて転写を開始することができるポリメラーゼを迅速に変化させるために、PACEを用いた。出発ファージは、高コピーのiA6APを有する宿主細胞において24時間にわたり増殖させ、その後、宿主細胞の30:70の高コピー:1コピーの混合物により12時間にわたり増殖させた(図8a)。2.5容積/時間の希釈率において、ファージは、選択的条件下において、合計10−40の希釈を生き残り、平均して約45ラウンドの複製を経験した。僅か36時間の進化の後に単離された6個のシークエンシングされたクローンのうちで、すべてが少なくとも4個の非サイレント変異を示し、1つのクローンは、7個の非サイレント変異を有した。

検出不可能な初期の活性(<3%)から開始して、6つすべての進化したクローンが、細胞ベースのアッセイにおいて、iA6プロモーターにおいて、少なくとも270%の活性を示し、これは、出発時の活性に対して少なくとも33倍の改善を表わす一方で、野生型プロモーターにおいて120%の活性を保持した(図8b)。最も活性な進化したクローンは、iA6プロモーターにおいて430%の活性を示し、これは、=51倍の活性の改善に対応する。精製されたバリアントによるin vitroでの転写は、iA6プロモーターにおいて、野生型プロモーターにおける野生型T7 RNAPの活性に匹敵する活性、少なくとも28倍の活性の改善を生じた(図8c)。

PACEから現れる6つすべての特徴づけられたiA6により誘導されるクローンは、K93T、S397RおよびS684Y変異を含んだが、一方、6つのうちの3つはまた、S228Aを含んだ。4個の変異した残基のうちの3個は、新生RNAおよび活性部位から遠いものと予測され、T7 RNAPのプロモーター結合領域に対する遠位の変化が、活性部位において、アデノシンによる転写開始により良好に適応する構造変化をもたらし得ることを示唆する。

対照的に、残基397は、新生RNA鎖に直接的に接触すると考えられ[42]、このことは、iA6転写物の効率的な開始を可能にする上でのS397Rの直接的な役割を示唆する。

連続的陰性選択 非標的基質に対する活性に対するカウンター選択を行わず、新たな標的基質に対する活性についてのみ選択することは、改変されたというよりもむしろ拡大した特異性を有する酵素をもたらす可能性がある。弱い特異性を含む所望されない活性に対して、進化による圧力を行使する陰性選択戦略は、所望されないオフターゲット活性を回避または最少化するために有用であり、所望されない活性をファージ増殖の阻害に関連付けることにより、高い特異性を有する酵素の進化を可能にする(図17)。

選択ストリンジェンシーを綿密に調整することができ、選択が、所望されない活性の絶対的レベルよりも、所望の活性と所望されない活性との比に依存する、陰性選択戦略を開発した。これらの基準の両方を満たすpIIIのドミナントネガティブバリアントを同定した。このバリアント(「pIII-neg」)は、Bennett, N. J.; Rakonjac, J., Unlocking of the filamentous bacteriophage virion during infection is mediated by the C domain of pIII. Journal of Molecular Biology 2006, 356 (2), 266-73(その全内容は、本明細書に参照により組み込まれる)において記載されるように、短縮された終結不能のC末端ドメインに融合した、pIIIの2つのN末端のドメインを含む。このC末端のドメインは、子孫ファージ中への組み込みを可能にするが、感染の間に侵入のために粒子の解錠を触媒することができず、子孫ファージを非感染性にする。さらに、このバリアントが、野生型pIIIを含むファージ中に存在する場合(合計で約5個のpIII分子が各ファージ中に組み込まれる)、pIII-negは、通常では野生型pIIIにより触媒される解錠のカスケードを遮断することにより、ドミナントネガティブ効果を示す(図17)。

この陰性選択因子はタンパク質、pIII-negであるので、pIII-negコード領域の上流のRBSの強度を変化させることにより、カウンター選択のストリンジェンシーを調整することができ、これにより、所与の程度の所望されない活性についてのペナルティーのレベルの規定の調節が可能となる。さらに、野生型pIIIおよびpIII-negは、子孫ファージ粒子中への組み込みについて競合し、これが、阻害の効力を、単に所望されない活性の絶対的レベルではなく、所望の活性と所望されない活性との比に対して感受性にする。

二重選択アクセサリープラスミドを構築した(図17)。二重選択プラスミドは、誘導性プロモーター(PTet)の制御下に置かれた野生型pIIIコード配列、および、異なる誘導性プロモーター(PLac)の制御下に置かれたpIII-negコード配列を含む。2つのpIIIの導入遺伝子を、ファージ粒子を産生する細胞において、異なるレベルで発現させ(それぞれ、低wt pIII/低pIII-neg;高wt pIII/ 低pIII-neg;高wt pIII/高pIII-neg;および低wt pIII/高pIII-neg)、生じたファージの感染力を評価した(図17)。生じた子孫ファージの感染力は、単にいずれかのpIIIバリアント単独の発現レベルを反映するものというよりは、寧ろ、pIII-negの発現に対する野生型pIIIの発現の比を反映するものである。

T3プロモーターを特異的に認識するが、T7プロモーターにおいて最小限の活性を有するかまたは活性を有さないT7 RNAポリメラーゼを得るために、T3プロモーター配列が野生型pIIIコード配列の発現を駆動し(陽性選択)、T7プロモーターがpIII-negの発現を駆動するアクセサリープラスミドを構築する。次いで、PACEの手法を、本明細書において記載されるように行い、野生型T7 RNAポリメラーゼ、または、T3プロモーターにおいて転写活性を示す進化したT7 RNAポリメラーゼにより出発する。この二重選択PACEの手法から得られる進化の産物は、T3プロモーターにおいて強力な転写活性を示し、T7プロモーターにおいて殆どまたは全く活性を示さないことが期待される。

プロテアーゼ活性についての連続的選択 個別化された(tailor-made)タンパク質切断特異性を有するプロテアーゼの連続的進化のために、標的タンパク質分解をファージ増殖に関連付ける選択戦略を考案した。この関連は、一部の態様において、先に報告されたラムダリプレッサーに基づく戦略を用いることにより達成され、これは、ラムダリプレッサータンパク質を部位特異的タンパク質分解に対して感受性にすることにより、プロテアーゼ活性を遺伝子発現に関連付ける(例えば、Sices, H. J.; Kristie, T. M., A genetic screen for the isolation and characterization of site-specific proteases. Proc Natl Acad Sci U S A 1998, 95 (6), 2828-33; and Sices, H. J.; Leusink, M. D.; Pacheco, A.; Kristie, T. M., Rapid genetic selection of inhibitor-resistant protease mutants: clinically relevant and novel mutants of the HIV protease. AIDS Res Hum Retroviruses 2001, 17 (13), 1249-55を参照:これらの各々の全内容は、本明細書に参照により組み込まれる)。ラムダリプレッサー(cI)は、長い可橈性リンカーにより連結されたN末端のDNA結合ドメインとC末端の2量体化ドメインとを含む。各cIの2量体は、ラムダpRプロモーター内のオペレーター部位に共作動的に(cooperatively)結合し、結合により転写を抑制する。この高アフィニティーDNA結合は、cIの2量体化を必要とする。なぜならば、遊離の単量体のN末端のドメインは、そのオペレーターの半分の部位に弱くしか結合しないからである。したがって、タンパク質分解によるcIのNおよびC末端のドメインの分離は、オペレーター部位への結合の低下、およびpRプロモーターの抑制解除をもたらし、これは次いで、pIII産生を駆動し得る(図18)。cI結合の高度に共作動的な性質は、プロモーターの活性化が、完全なcIの濃度の相対的に中程度の低下に対して、応答性が非常に高いことを保証する。

pRプロモーター(cI結合部位を含む)がpIIIおよびルシフェラーゼの発現を駆動するpIII発現コンストラクトを作製した(図18)。発現コンストラクトを、ドメイン間リンカー内にTEVプロテアーゼ切断部位(ENLYFQ(G/S)、配列番号29)を含むcIを発現する細胞において発現させた。誘導性IPTGプロモーターからcIを発現させた。cIの発現を、多様な濃度のIPTGの添加により調節した。高レベルのIPTGは、pRプロモーターの抑制の増大をもたらし、一方、アラビノース誘導型プロモーターからのTEVプロテアーゼの同時発現は、劇的な(>100倍)遺伝子発現の刺激をもたらした(図18)。この転写の活性化は、TEVの触媒活性(活性部位変異体TEV C151Aは発現を刺激しない)およびcIリンカー内の正しい認識部位(P1位のグルタミンのアラニンへの変異は、野生型TEVプロテアーゼによる活性化を無効化する)の両方に依存する。

これらの結果は、PACEプロテアーゼ選択の為に有用な、プロテアーゼ切断活性とpIIIの発現の増大との間の強力な関連を確立する。高濃度のcIが、TEVプロテアーゼ活性の存在下においてすら、pRを実質的に抑制した状態に保つという発見は(図18)、調節可能なプロテアーゼ選択ストリンジェンシーを可能にする。

同様の、しかしオフターゲット認識部位を標的とするプロテアーゼ活性についての陰性選択は、幾つかの態様において望ましい。さらに、陰性選択は、陽性選択が、cIリンカー内の意図された認識部位の切断についての圧力を適用し、cI内の他の場所ではないことを保証するために用いることができる。陰性選択は、AP中に、類似のcIを抑制する、pIII-negの発現をもたらす発現カセットをインストールすることにより、確立される(図19)。このカセットにおいて、所望されないプロテアーゼ認識部位は、2量体化特異性およびDNA結合特異性の両方において野生型cIに対して直交性であるcIバリアント(「cI-neg」)のリンカー中に組み込まれる。かかる直交性のcIバリアントは、関連するラムダファミリーのファージから知られている(例えば、Wharton, R. P.; Ptashne, M., Changing the binding specificity of a repressor by redesigning an alphahelix. Nature 1985, 316 (6029), 601-5;ならびにWharton, R. P.; Ptashne, M., A new-specificity mutant of 434 repressor that defines an amino acid-base pair contact. Nature 1987, 326 (6116), 888-91を参照:これらの各々の全内容は、本明細書に参照により組み込まれる)。これらのcI-negバリアントは、直交性を付与するために必要とされるDNA配列特異性の相違以外は、cIに高度に類似する。pIII-negの上流に局在する(cI-negのための同族結合部位を有するpRプロモーターのバリアントの使用を通して)場合、cI-negの切断は、pIII-negの発現およびファージ産生の阻害をもたらす(図19)。したがって、cIおよびcI-negの両方に共通するリプレッサー(殆どのリプレッサー)の所望されない認識部位においてまたは意図されない領域内で切断するプロテアーゼバリアントは、所望の認識部位に対するより特異的な活性を有するバリアントよりも少ない感染性の子孫ファージを産生するであろう。

結論 in vitroでアッセイした4つすべての進化したT7 RNAPバリアントは、iC6、iA6および野生型の鋳型を用いて、野生型T7 RNAPが野生型鋳型を用いて開始させる効率に匹敵する効率で、転写を開始させる能力を示し(図14)、したがって、慣用的なin vitroでの転写のための、改善された、より一般的なT7 RNAPバリアントを代表し得る。

3つのPACE実験の各々は、野生型T7プロモーターを転写する野生型T7 RNAポリメラーゼのものよりも著しくより高いin vivo 活性を有するT7 RNAPバリアントを生じた。PACEはまた、この効果をT7、T3、iC6およびiA6プロモーターにおいて達成する変異の様々な組み合わせを明らかにし、このことは、細胞における活性の増大を付与する複数の利用可能な進化的経路の存在を示す。これらの経路のいずれも野生型T7ファージによっては取られないことから、T7バクテリオファージの進化の間におけるより効率的な重合についての選択圧が存在しないこと、特異性の保持がより低い全体的活性を必要とすること、または両方の可能性の組み合わせが示唆される。

目的の分子活性に依存するバクテリオファージ感染を与えるために、in vitroでのライブラリー作製、遺伝子の収集または遺伝子操作の工程を必要とすることなく、タンパク質または原則として他の遺伝子によりコードされる分子の連続的定向進化を可能にするために、ファージ生活環の効率を利用した。PACEシステムは、市販の機器の中程度の集合(表2において列記する)から全体を組み立てることができ、いかなる特化した成分の製造をも必要としない。

PACEは、1日あたり数10回のラウンドの変異、選択、および遺伝子複製の速度において進行し、これは、殆どの現行のタンパク質進化方法に対するおよそ100倍の増大を表わす。これらの能力は、数百から数千回の世代、または複数の進化実験の並行した実行を必要とする、分子の進化における困難または問題に取り組むために特に好適である。より一般的に、PACEは、合成生物学の重要なゴールである、新たな活性を有する生体分子の迅速な生成を可能にする生体システムにおける、多くのタンパク質および核酸成分の統合および操作を表わす。 参考文献

上で列記される項目を含む、本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および配列データベースのエントリーは、各々の個々の刊行物または特許が、参考として組み込まれるように特におよび個別に示されたものであるように、その全体において本明細書により参考として組み込まれる。矛盾が生じる場合、本明細書における任意の定義を含む本出願が支配する。

均等物および範囲 当業者は、慣用的な実験のみを用いて、本明細書において記載される本発明の態様に対する多くの均等物を理解するか、または確認することができる。本発明の範囲は、上記に限定されることを意図されるものではなく、添付される請求の範囲において記載されるとおりである。

請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、反対であることが示されるかまたは文脈から他に明らかでない限り、1つまたは1つより多くを意味してもよい。1または2以上のメンバーの間に「または(or)」を含む請求項または記載は、反対であることが示されるかまたは文脈から他に明らかでない限り、所与の製品またはプロセスにおいて、グループのメンバーの1つ、1つより多く、またはすべてが、存在するか、使用されるか、または他に関係する場合に、充足すると考えられる。本発明は、所与の製品またはプロセスにおいて、グループの正確に1つのメンバーが、存在するか、使用されるか、または他に関係する態様を含む。本発明はまた、所与の製品またはプロセスにおいて、グループの1つより多くまたはすべてのメンバーが、存在するか、使用されるか、または他に関係する態様を含む。

さらに、本発明は、1または2以上の請求項から、または明細書の関連する部分からの、1または2以上の限定、要素、条項、記述用語などが、別の請求項中に導入される、すべてのバリエーション、組み合わせ、および並べ替えを包含することが、理解されるべきである。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎となる請求項に従属する任意の他の請求項において見出される1または2以上の限定を含むように、改変することができる。さらに、請求項が組成物を記述する場合、他に示されない限りにおいて、または、矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限りにおいて、本明細書において開示される目的のいずれかのために当該組成物を用いる方法が含まれること、および、本明細書において開示される製造の方法のいずれかまたは当該分野において公知の他の方法に従って当該組成物を製造する方法が含まれることが、理解されるべきである。

要素がリストとして、例えばマーカッシュグループのフォーマットにおいて提示される場合、エレメントの各サブクループもまた開示されること、および任意の要素をグループから取り除くことができることが理解されるべきである。また、用語「含む(comprising)」は、オープンであることを意図され、さらなる要素または工程を含めることを許容することに注意する。一般に、本発明または本発明の側面が、特定の要素、特徴、工程などを含むものとして言及される場合、本発明のある態様または本発明の側面は、かかる要素、特徴、工程などからなるか、またはこれらから本質的になることが理解されるべきである。簡潔さを目的として、これらの態様は、本明細書において言葉においては具体的に記載されない。したがって、1または2以上の要素、特徴、工程などを含む本発明の各態様について、本発明はまた、これらの要素、特徴、工程などからなるか、またはこれらから本質的になる態様を提供する。

範囲が示される場合、終点が含まれる。さらに、他に示されるか、文脈および/または当業者の理解から他に明らかでない限りにおいて、範囲として表わされる値は、本発明の異なる態様において記された範囲内の任意の特定の値を、文脈が明らかに他を支持しない限りにおいて当該範囲の下限の単位の10分の1まで、とり得ることが理解されるべきである。また、他に示されるか、文脈および/または当業者の理解から他に明らかでない限りにおいて、範囲として表わされる値は、所与の範囲内の任意の部分範囲をとり得ることも理解されるべきであり、ここで、部分範囲の終点は、当該範囲の下限の単位の10分の1と同じ程度の正確さまで表わされる。

さらに、本発明の任意の特定の態様は、1または2以上の請求項から明確に除かれてもよいことが理解されるべきである。範囲が示される場合、当該範囲内の任意の値は、1または2以上の請求項から明確に除かれてもよい。本発明の組成物および/または方法の、任意の態様、要素、特徴、用途、または側面は、1または2以上の請求項から除かれていてもよい。簡潔さを目的として、1または2以上の要素、特徴、目的または側面が除かれている態様のすべては、本明細書において明確に記載される。

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