虚血性疾患および他の疾患を治療するための薬剤および方法

申请号 JP2012543324 申请日 2010-12-10 公开(公告)号 JP5848712B2 公开(公告)日 2016-01-27
申请人 ノノ インコーポレイテッド; ; 发明人 ソン, シウチュン; ティミアンスキ, マイケル; ガーマン, ジョナサン デイビッド;
摘要
权利要求

虚血の治療または予防における使用のための、式VI: の化合物を含む医薬組成物であって、式中、 X'は、素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、またはC1-C6アルキルであり、 Yは、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、またはC1-C6アルキルであり、かつ QおよびQ'は、ハロゲンである、医薬組成物。前記化合物は、 である、請求項1に記載の医薬組成物。虚血の治療または予防における使用のための、式VIII の化合物を含む医薬組成物であって、式中、 Yは、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、またはC1-C6アルキルであり、かつ QおよびQ'は、ハロゲンである、医薬組成物。前記化合物は、 である、請求項3に記載の医薬組成物。前記虚血は、心虚血、腎虚血、網膜虚血、または中枢神経系虚血である、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物

说明书全文

(関連出願の相互参照) 本出願は、非仮であり、それらの各々が全体として、すべての目的のために引用により組み込まれる、2010年3月9日に出願の第61/312,154号および2009年12月11日に出願の第61/285,954号の利益を主張する。

(本発明の背景) 一過性受容体電位チャネルTRPM7は、体内での変動した過程における決定的な役割を担っている20超の陽イオンチャネルを含む陽イオンチャネルのTRPスーパーファミリーのメンバーである。TRPチャネルは、イオン伝導孔が、電位依存性型カリウムチャネルおよび環状ヌクレオチド依存性チャネルのものと類似の6回膜貫通らせん状セグメントによって形成された内在性膜タンパク質である。TRPチャネルは、それらの相同性に基づいて3つのファミリーに分けられる。該ファミリーは、短TRPチャネルファミリー、osm TRPファミリー、および長TRPファミリーである。長TRPチャネルは、それらがチャネルセグメントの外側の特に長い伸長を有することによって区別することができる。長TRPチャネルは、細胞増殖、分化、および細胞死を調節する重要な制御機構に関与する(Montell et al., 2002, Harteneck et al, 2000)。

TRPM7チャネルは、長TRPファミリーに属する。ヒトTRPM7タンパク質は、Runnels et al.(2001)によって最初に同定され、キナーゼ活性およびイオンチャネル活性を有する二機能タンパク質として同定された。Nadler et al.(2001)による別の研究において、TRPM7は、細胞の生育性に必要なMg-ATP調節型陽イオンチャネルとして同定された。Runnels et al.(2002)はそのことを報告した。TRPM7は、カルシウム透過性イオンチャネルである。TRPM7のキナーゼドメインが、ホスホリパーゼC(PLC)のC2ドメインと直接会合し、PLCの基質である4,5-二リン酸(PIP2)がTRPM7の鍵となる調節因子であることも報告していた。TRPM7チャネルは、哺乳類細胞において異種性に発現した場合、+50〜+100mVに及ぶ非生理学的電位で顕著な外向き電流を、−100〜−40mVの間の負の電位で小さな内向き電流を生じる(Jiang et al., 2005)。TRPM7の基礎活性は、ミリモル濃度レベルの細胞内mgATPおよびMg2+によって調節されることが最初に報告された。TRPM7チャネルがATPによって開閉されそうにないことは今や認識されている(枯渇した場合、チャネルを開かせるのは、MgATPにおけるMg2+であった)。TRPM7は、細胞内Mg2+の枯渇によって活性化され、約0.6mMのIC50を有する高濃度のMg2+によって阻害される(Nadler et al., 上述、Jiang et al., 上述)。TRPM7チャネルは、CHAKチャネル、CHAK1チャネル、LTRPC7チャネル、FLJ20117チャネル、またはTRP-PLIKチャネルとしても公知である。TRPM7チャネルは、細胞外の二価陽イオンレベル、特にMg2+およびVa2+の低下によっても活性化される。より近年、TRPM7チャネルは、虚血性中枢神経系損傷および無酸素性ニューロン細胞死に関与することが示された(Aarts et al., 2003; Aarts and Tymianski, 2005a, Aarts and Tymianski, 2005b)。

脳虚血における興奮毒性は、ニューロン死および神経学的障害を惹起し、なおもこれらは、ヒトにおける抗興奮毒性療法(AET)によって予防されない。Aarts et al.(2003)は、長期酸素グルコース欠乏(OGD)に供されたマウスニューロンにおいて、AETは、Ca2+透過性非選択的陽イオン伝導(IOGD)によって永続化する顕性の死滅機構を明らかにすることを示している。IOGDは、活性酸素/窒素種(ROS)によって活性化され、ニューロンCa2+の過負荷およびAETに関わらないさらなるROS産生によって活性化された。IOGD電流は、非選択的陽イオン伝導TRPM7を発現するHEK-293細胞において惹起するものに対応した。皮質ニューロンにおいて、IOGDを遮断しまたはTRPM7の発現を抑制することは、TRPM7電流、無酸素性45Ca2+取り込み、ROS産生、および無酸素性死滅を遮断する。TRPM7抑制は、AETが無酸素性ニューロンを救出する必要性を除去し、長時間無酸素から死滅するようすでに運命づけられたニューロンの生存を可能にした。したがって、興奮毒性は、TRPM7チャネルが鍵となる役割を担っている、より大きな全体的な無酸素性細胞死機構のサブセットであり得る。

低Ca(2+)および/またはMg(2+)への曝露は、心筋細胞、星状細胞、およびニューロンによって許容されるが、通常の二価の陽イオンレベルへの回復は、Ca(2+)の過負荷および細胞死を逆説的に発生させる。この現象は、虚血-再灌流の「Ca(2+)逆説」と呼ばれてきた。細胞外Ca(2+)およびMg(2+)の低下が「検出され」、その後の細胞死を惹起する機構はわかっていない。脳虚血の一過性の時期は、Ca(2+)逆説の初期条件を模倣する細胞外Ca(2+)およびMg(2+)の実質的な低下を特徴とする。Wei et al.(2007)は、CA1海馬ニューロンにおいて、細胞外二価イオンを減少させることが、非選択的陽イオン電流を刺激することを示した。彼らは、この電流が、いくつかの方法でTRPM7電流に類似していることを示した。両方とも(i)内向き電流および細胞興奮とともに細胞外二価イオンの一過性減少に応答し、(ii)細胞外二価イオンの存在に応じた外向き整流を示し、(iii)細胞内Mg(2+)の生理的濃度によって抑制され、(iv) 細胞内ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP(2))によって亢進し、かつ(v)PIP(2)のホスホリパーゼCβ1誘発性加分解と連関したGαq連関Gタンパク質共役受容体によって阻害されることができる。さらに、海馬ニューロンにおけるTRPM7発現の抑制は、細胞外二価イオンを減少させることによって誘起される内向き電流を強に抑圧した。最後に、彼らは、二価イオンを減少させることによるTRPM7チャネルの活性化が、細胞死を助長することを示す。総合すると、該結果は、海馬ニューロンが細胞外二価イオンの減少を「検出する」機構にTRPM7が貢献することを示唆し、TRPM7が一過性脳虚血の間にニューロン死を助長する手段を提供する。

本発明は、哺乳類細胞に及ぼすTRPM7の遺伝子およびタンパク質活性の損傷効果を調節する化合物、哺乳類細胞に及ぼすTRPM7活性の障害効果を調節するクラスおよび具体的な化合物をスクリーニングする方法、ならびに哺乳類細胞に及ぼすTRPM7活性の損傷効果および虚血損傷を治療する方法を提供する。

本発明は、式I〜XIXのいずれかに一致した化合物を含む医薬組成物、または本明細書に開示された任意の他の化合物もしくは化合物の属を含む医薬組成物、またはこのような化合物の医薬として許容し得る塩を含む医薬組成物を提供する。好ましい化合物は、M5、M6、M11、M14、およびM21と指定している。いくつかの化合物は、哺乳類細胞におけるTRPM7仲介性細胞死を、該化合物を欠失した対照アッセイと比較して少なくとも50、60、70、または80%阻害する。

いくつかの医薬組成物において、前記化合物またはその医薬として許容し得る塩は、その製造物由来の夾雑物が少なくとも95または99%(w/w)ない。いくつかの組成物はさらに、ヒト投与に許容し得る担体を含む。いくつかの組成物は、化合物またはその医薬として許容し得る塩の単位用量を含有する。いくつかの医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。いくつかのこのような医薬組成物は、丸剤またはカプセル剤として製剤化される。いくつかの医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される。いくつかのこのような医薬組成物は、薬剤の単位用量を含有するバイアルに包装される。これらの医薬組成物のうちのいずれもが、疾患の治療の予防において用いることができる。

本明細書に記載される医薬組成物または化合物もしくはその医薬として許容し得る塩は、虚血が心虚血、腎虚血、網膜虚血、または中枢神経系虚血である場合など、虚血性疾患の予防または治療において用いることができる。本明細書に記載される医薬組成物または化合物もしくはその医薬として許容し得る塩は、癌が、腎癌、小細胞癌、非小細胞肺癌、結腸癌、網膜芽細胞腫、乳癌、黒色腫、副腎癌、子宮頚癌(cervical cancer)、または骨肉腫である場合など、癌の治療または予防にも用いることができる。

本発明はさらに、虚血を有するかまたは虚血の恐れのある哺乳類対象に、先に指定されたまたは本明細書の医薬組成物、化合物、または医薬として許容し得る塩を有効な処方計画で投与することを含み、哺乳類対象における虚血の損傷効果の予防または治療の方法を提供する。任意に、該虚血は、心虚血、腎虚血、網膜虚血、または中枢神経系虚血である。

本発明はさらに、癌を有するかまたは癌の恐れのある哺乳類対象に、先に指定されたまたは本明細書の医薬組成物、化合物、または医薬として許容し得る塩を有効な処方計画で投与することを含み、哺乳類対象における癌の予防または治療の方法を提供し、任意にこの中で、該癌は、腎癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、結腸癌、網膜芽細胞腫、乳癌、黒色腫、副腎癌、子宮頚癌、または骨肉腫である。

本発明はさらに、虚血、疼痛、緑内障、または癌の治療または予防における使用のための式Vの化合物(化合物M21および関連化合物)またはその医薬として許容し得る塩を提供する。

本発明はさらに、癌の治療または予防における使用のための式IIIの化合物(化合物M6および関連化合物)またはその医薬として許容し得る塩を提供する。

本発明はさらに、虚血または癌の治療または予防における使用のための式IXの化合物(M11および関連化合物)を提供する。

本発明はさらに、虚血または癌の治療または予防における使用のための式XIの化合物(M14および関連化合物)を提供する。

本発明はさらに、TRMP7を発現する細胞においてTRPM7を活性化させること、該細胞を薬剤と接触させること、該薬剤が該細胞の死滅を阻害するかどうかを決定すること、および該化合物が該細胞の死滅を阻害する場合、該薬剤がTRPM7チャネルを通るイオン電流を阻害するかどうかを決定することを含み、該薬剤がTRPM7チャネルの阻害剤であることを示すイオン電流の阻害性と、TRPM7の阻害剤についてスクリーニングする方法を提供する。所望により、該方法は、該試薬が虚血傷害の細胞モデルまたは動物モデルにおいて虚血による損傷効果を阻害するかどうかを決定することを含む。

本発明はさらに、宿主細胞または宿主細胞の子孫の使用を提供する。ある態様において、宿主細胞は、真核生物である。ある態様において、宿主細胞は、マウスTRPM7ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、宿主細胞または宿主細胞の子孫における該ポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と作用可能に連結された該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。ある態様において、本発明は、マウスTRPM7ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、この中で、該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、宿主細胞または宿主細胞の子孫における該ポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と作用可能に連結されている。該ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、センスまたはアンチセンスの方向で調節配列に作用可能に連結することができる。

本発明はさらに、a)本明細書に説明されるように誘導可能なまたは構成的に発現したマウスTRPM7遺伝子を発現する細胞を提供すること、b)必要に応じて、TRPM7タンパク質の発現を誘導すること、c)チャネルを活性化すること、d)生物活性薬候補物を該細胞に添加すること、およびe)該イオン環境下でのTRPM7遺伝子の発現産物によって生じる細胞損傷に及ぼす該生物活性薬候補物の効果を決定することを含み、生物活性薬をスクリーニングする方法を提供する。いくつかの方法において、該決定することは、該生物活性薬候補物の不在下での細胞損傷のレベルを、該生物活性薬候補物の存在下での損傷のレベルと比較することを含む。いくつかの方法において、該決定することは、該生物活性薬候補物の存在下だが、TRPM7遺伝子の誘導の不在下での細胞損傷のレベルを、TRPM7遺伝子の誘導の存在下でもある該生物活性薬候補物の存在下での損傷のレベルと比較することを含む。

本発明はさらに、本明細書に説明しているように細胞損傷を調節するための生物活性薬を、高処理量スクリーニングを達成するよう意図されたロボットシステムにおいてだが、スクリーニングする方法を提供する。

本発明はさらに、TRPM7チャネルの活性を増加または減少させる生物活性薬についてスクリーニングするための方法を提供し、該方法は、a)本明細書に説明されるように誘導可能なまたは構成的に発現するマウスTRPM7遺伝子を発現する細胞を提供すること、b)(必要に応じて)TRPM7タンパク質の発現を誘導すること、c)該細胞に、TRPM7タンパク質含有イオンチャネルが透過性である蛍光イオン指示化合物を搭載すること、d)チャネルを活性化すること、e)生物活性薬候補物を細胞に添加すること、およびf)該イオン環境下で、細胞におけるイオン指示薬の蛍光に及ぼす生物活性薬候補物の効果を決定することを含む。いくつかの方法において、該決定することは、生物活性薬候補物の不在下における蛍光のレベルを、生物活性薬候補物の存在下における蛍光のレベルと比較することを含む。いくつかの方法において、該決定することは、生物活性薬候補物の存在下だがTRPM7遺伝子の誘導の不在下における該蛍光のレベルを、TRPM7遺伝子の誘導の存在下でもある生物活性薬候補物の存在下での蛍光のレベルと比較することを含む。

本発明はさらに、本明細書に説明しているようにイオン指示化合物の蛍光を調節するための生物活性薬を、高処理量スクリーニングを達成するよう意図されたロボットシステムにおいてだが、スクリーニングする方法を提供する。

本発明はさらに、a)TRPM7タンパク質をコードする組換え核酸とそれに作用可能に連結された誘導可能なまたは構成的なプロモーターとをコードする組換え核酸を含む組換え細胞を提供すること、b)(必要に応じて)TRPM7タンパク質を発現して、TRPM7タンパク質を含むチャネルを形成するよう組換え細胞を誘導すること、c)組換え細胞を候補生物活性薬と接触させること、d)チャネルを活性化すること、およびe)TRPM7仲介性細胞損傷の調節を検出することを含む、TRPM7タンパク質を含むチャネルの一価または二価の陽イオン透過性を調節する生物活性薬についてスクリーニングするための方法を提供する。一態様において、TRPM7仲介性細胞損傷は、細胞を生物活性薬と接触させることによって増大する。別の態様において、TRPM7仲介性細胞損傷は、細胞を生物活性薬と接触させることによって低下する。別の態様において、細胞を生物活性薬と接触させることは、細胞に付加されたイオン指示化合物の蛍光を変化させる。

本発明は、マウスTRPM7チャネルを流れるイオン流量を増加または減少させる生物活性薬についてスクリーニングするための方法を提供し、該方法は、a)候補生物活性薬をTRPM7タンパク質と接触させ、この中で、TRPM7タンパク質はTRPM7チャネルを形成すること、およびb)蛍光イオン指示薬によって決定されるようなTRPM7チャネル仲介性イオン流量に及ぼす生物活性薬の機能的効果を決定することを含む。一態様において、該決定する工程は、生物活性薬の不在下における指示薬の蛍光を、生物活性薬の存在下における指示薬の蛍光と比較することを含む。

本発明はさらに、マウスTRPM7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを提供し、この中で、該ポリヌクレオチドは、真核細胞において作用可能なプロモーターの制御下にある。いくつかの発現カセットにおいて、該プロモーターは、コード配列に対して異種性である。いくつかのこのような発現カセットにおいて、プロモーターは組織特異的プロモーターである。他のこのような発現カセットにおいて、プロモーターは誘導性プロモーターである。いくつかにおいて、このような発現カセットは、ウイルスベクターに含有される。いくつかのこのような発現カセットにおいて、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびヘルペスウイルスベクターからなる群から選択される。いくつかのこのような発現カセットはさらに、ポリアデニル化シグナルを含む。

本発明はさらに、マウスTRPM7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む細胞を提供し、この中で、該ポリヌクレオチドは、真核細胞において作用可能なプロモーターの制御下にあり、該プロモーターは、該ポリヌクレオチドに対して異種性である。

本発明はさらに、虚血損傷の調節因子についてスクリーニングする方法を提供し、該方法は、誘導可能なまたは一過性に発現するTRPM7遺伝子を発現する組換え細胞または細胞株を試験化合物と、TRPM7チャネル活性を活性化する条件下で接触させること、および細胞死の量における増加または減少を検出することを含む。

本発明はさらに、虚血損傷の調節因子についてスクリーニングする方法を提供し、該方法は、ラットまたはマウスにおいて脳卒中を生じること、該ネズミに有効量の該調節因子を投与すること、および脳卒中の大きさに与える影響を決定することを含む。一態様において、該決定する工程は、ネズミ脳の標準化された切片における虚血組織の面積を決定することを含む。別の態様において、該決定する工程は、ネズミ脳における虚血組織の体積を決定することを含む。別の態様において、該決定することは、生物活性薬候補物の不在下での脳卒中の大きさを、生物活性薬候補物の存在下での脳卒中の大きさと比較することを含む。類似のアッセイは、心筋梗塞もしくは緑内障に関するマウスもしくはラットのモデルにおいて、または本明細書に説明された動物モデルのうちのいずれかにおいて実施されることができる。

図1、2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、5B、6、7A、7B、8、9、および10A、10B:LopacライブラリーおよびPrestwickライブラリー由来の化合物。

M1〜M30の構造。

培養された海馬ニューロンは、細胞外二価イオンの減少に対する等級分けされた応答を示す。(A〜D)活動電位発生頻度の等級分けされた増加は、(A)1.3mM Ca2+および0.9mM Mg2+(標準溶液)、(B)0.2mM Ca2+および0.9mM Mg2+(低Ca2+)、(C)0mM Ca2+および0.9mM Mg2+(Ca2+非含有)、または(D)0.2mM Ca2+および0.2mM Mg2+(低二価イオン)を含有する溶液を連続して適用した場合に検出される。(E)これらの条件の各々について、活動電位発生頻度の変化は、一連の6個の細胞についてプロットされ、等級分けされた興奮性を示す。

*,P<0.05、

**,P<0.01。(FおよびG)(a)低Ca2+、(b)低二価イオン、(c)低Ca2+、無Mg2+への変化に応じた培養ニューロン(F)および単離されたニューロン(G)における60mVで生じた電流のホールセルパッチクランプ記録。(H)TRPM7を発現するHEK293細胞において(Tet誘導)、細胞死における等級分けされた増加は、細胞外二価イオンが漸減した場合に観察される。類似の増加は、TRPM7を発現しない(無Tet誘導)HEK293細胞において検出されない。増加した細胞死は、ヨウ化プロピジウムを取り込んだHEK293細胞全体の概算された画分を表す蛍光比F/Fmaxの増加によって示される。

24ウェルプレートフォーマットにおいて実施されたアッセイにおける示された時間でのTRPM7発現HEK293細胞におけるヨウ化プロピジウム(PI)蛍光によって測定された細胞死に及ぼすTet誘導および示された異なる緩衝液条件の効果。

96ウェルプレートフォーマットにおいて実施されたアッセイにおける示された時間におけるTRPM7発現HEK293細胞におけるヨウ化プロピジウム(PI)蛍光によって測定された細胞死に及ぼすTet誘導および示された異なる緩衝液条件の効果。

384ウェルプレートフォーマットにおいて実施されるアッセイにおける示された時間でのTRPM7発現HEK293細胞におけるヨウ化プロピジウム(PI)蛍光によって測定された細胞死に及ぼすTet誘導および示された異なる緩衝液条件の効果。

HEK293細胞におけるFLAG-TRPM7の発現に及ぼすTet誘導と同じ時間で候補試験化合物を添加する効果。

試験化合物が、安定して形質移入されたTet誘導性HEK293細胞におけるTRPM7仲介性細胞死を低下させる能力についてMaybridge化合物ライブラリーをスクリーニングすることによって得られたB-スコアの散布図。

ラット組織、マウス組織、およびH9c2心筋細胞におけるTRPM7発現。ラット組織、マウス組織、およびH9c2細胞由来のRNAを逆転写し、ラットおよびマウスTRPM7特異的プライマーを用いてPCRを実施した。TRPM7発現を1%アガロースゲルにおける530bpバンドとして可視化した。β-アクチンは、負荷対照として機能した。

H9c2細胞におけるTRPM7免疫蛍光の免疫細胞化学的分析。細胞を、示された一次抗体および二次抗体で染色し、示された倍率で共焦点顕微鏡を用いて観察した。

H9c2細胞における無酸素性細胞死。16時間の無酸素(5%CO2、10%H2、85%N2)および2時間の回復へのH9c2細胞の曝露は、PI取り込みによって測定される細胞死のおよそ4倍増を結果的に生じた。酸素正常状態培養を、加湿した5%CO2雰囲気下で37℃で維持した。結果を4つの実験からの平均±平均の標準誤差として呈する。データを死細胞の画分(A)としてまたは対象に対する死滅量(B)として分析する。

HBSS緩衝液における示された量のガドリニウムへの曝露後のH9c2細胞における無酸素性(6時間無酸素+2時間回復)細胞死の阻害。

Flag-TRPM7/pBluescript KS IIの模式図。(A)EcoRI、KpnI、およびSpeI消化の部位を示すFlag-TRPM7/pBluescriptコンストラクトの模式図。略語:TRPM7、TRPM7 cDNA;Flag、Flagタグ配列;rep、プラスミドの複製を促進;Amp、アンピシリン耐性遺伝子。(B)EcoRIを用いた制限酵素消化は、長さ3838bp、3200bp、1592bpの、pBluescriptベクターにおけるインサートの3'→5'方向に対応する3つの断片を生じた(レーン3)。レーン1:1kb DNAラダー、レーン2:対照の非消化プラスミド。

Flag-TRPM7/pTracer-CMV2の模式図。(A)BamHI、EcoRI、EcoRV、およびPmeI消化の期待される部位を示すFlag-TRPM7/pTracer eGFP(+)コンストラクトの模式図。NgoMIV制限部位によって包含される領域は、eGFP(-)コンストラクトから欠失している。略語:Pcmv、CMVプロモーター;TRPM7、TRPM7 cDNA;P-ef、EF-1αプロモーター;eGFP、高感度緑色蛍光タンパク質cDNA;pUC、複製起点;Amp、アンピシリン耐性遺伝子。(B)eGFP(+)コンストラクトの制限消化。レーン1:1kb DNAラダー;レーン2:対照の非消化プラスミド。Bpにおける断片長は、EcoRVについては11449、EcoRIについては6657、3200、1592、PmeIについては5769、5680、BamHIについては5857、4000、1592である。

完全長のTRPM7コンストラクトを用いたHEK-293T細胞の一過性形質移入。(A)形質移入48時間後のeGFPおよびHoechst蛍光の代表的な画像。緑色:eGFP発現;青色:Hoechst。(B)非形質移入細胞およびTRPM7/pTracer eGFPコンストラクトで形質移入48時間後に形質移入した細胞の代表的な位相差画像。

TRPM7発現は、化学的無酸素(1時間)によって誘導されるカルシウムの取り込みを増加させる。非形質移入細胞および完全長のTRPM7チャネルを発現する細胞をNaCN処理に曝露し、カルシウム取り込みをfluo-3によってモニターした。(A)棒は、4〜5の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す。

*は、Studentのt検定、p<0.05による、

**は、p<0.01による非形質移入対照との有意差を示す。(B)1時間におけるNaCN処理によって誘導されるカルシウム取り込みの適合した用量反応曲線。記号は、4〜5の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す。

TRPM7発現は、化学的無酸素(2時間)によって誘導されたカルシウム取り込みを増加させる。非形質移入細胞および完全長のTRPM7チャネルを発現する細胞をNaCN処理に曝露し、取り込みをfluo-3によってモニターする。(A)棒は、4〜5の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す。

*は、Studentのt検定、p<0.05による、

**は、p<0.01による非形質移入対照との有意差を示す。(B)2時間におけるNaCN処理によって誘導されるカルシウム取り込みの適合した用量反応曲線。記号は、4〜5の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す。

完全長のTRPM7の発現は、化学的無酸素によって誘導された細胞死を増加させる。細胞をNaCNで2時間処理し、細胞死をPI取り込みによって評価した。PI取り込み値は、0.05%トリトンX-100の添加によってFmaxに対して標準化される。棒は、4〜5の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す。

*は、分散分析後の事後Holm-Sidak対形成多重比較での非形質移入対照との有意差が、p<0.05であり、

**は、p<0.01を示す。#は、TRPM7を形質移入した細胞とのの有意差がp<0.05であり、##は、p<0.01を示す。

薬剤M21は、心筋梗塞のインビボマウスモデルにおける心臓への損傷を低下させる。

HEK293細胞におけるTRPm7様電流の特徴解析。

TRPm7電流、対照の%、およびHEK293細胞におけるTRPm7をtetで誘導した後の細胞の生育性に及ぼす化合物M5の効果。

TRPm7電流、対照の%、およびHEK293細胞におけるTRPm7をtetで誘導した後の細胞の生育性に及ぼす化合物M6の効果。

TRPm7電流、対照の%、およびHEK293細胞におけるTRPm7をtetで誘導した後の細胞の生育性に及ぼす化合物M7の効果。

TRPm7電流、対照の%、およびHEK293細胞におけるTRPm7をtetで誘導した後の細胞の生育性に及ぼす化合物M11の効果。

TRPm7電流、対照の%、およびHEK293細胞におけるTRPm7をtetで誘導した後の細胞の生育性に及ぼす化合物M14の効果。

TRPm7電流、対照の%、およびHEK293細胞におけるTRPm7をtetで誘導した後の細胞の生育性に及ぼす化合物M21の効果。

化合物M5、M11、およびM21は、酸素-グルコース欠乏(OGD)を受けやすいラット網膜外植片における網膜虚血を低下させることができる。

化合物M5、M11、およびM21は、解離され、酸素-グルコース欠乏(OGD)を受けやすいラット網膜外植片における網膜細胞死を低下させることができる。

異なる化合物の存在下または不在下でのOGDに供された解離した混合ラット網膜培養物における%細胞死。

化合物M5およびM21は、ラット心室筋芽細胞株H9c2におけるOGD後の細胞死の量を有意に減少させる。

HEK293細胞におけるtetオン/オフ発現系の下でのTRPm7発現についてのスクリーニング緩衝液条件の最適化。

HEK293細胞におけるTRPm7のtet誘導の継続時間の最適化。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

TRPm7誘発性細胞死を阻害する、化学スクリーンにおいて同定された化合物の力価。

OGD20時間後の初代培養マウス皮質細胞におけるPI取り込みに及ぼす化合物の効果。

OGD20時間後の初代培養マウス皮質細胞におけるPI取り込みに及ぼす化合物の効果。

OGD20時間後の初代培養マウス皮質細胞におけるPI取り込みに及ぼす化合物の効果。

OGD20時間後の初代培養マウス皮質細胞におけるPI取り込みに及ぼす化合物の効果。

OGD20時間後の初代培養マウス皮質細胞におけるPI取り込みに及ぼす化合物の効果。

マウス初代培養皮質細胞に24時間適用される化合物の毒性。

マウス初代培養皮質細胞に24時間適用される化合物の毒性。

マウス初代培養皮質細胞に4時間適用される化合物の毒性。

マウス初代培養皮質細胞に4時間適用される化合物の毒性。

高処理量スクリーニングのためのスキーム。

上部:Y79網膜芽細胞腫細胞株SRB(全タンパク質)およびMTT(細胞の生育性)に及ぼす化合物M6およびM21の効果。下部:M21(上の行、左から右へ:未処理、5マイクロモル濃度のM21、7.5マイクロモル濃度のM21、および10マイクロモル濃度のM21)およびM6(下の行、左から右へ:1マイクロモル濃度のM6、2.5マイクロモル濃度のM6、5マイクロモル濃度のM6、および7.5マイクロモル濃度のM6)で72時間処理したY79細胞の状態。

処理72時間後のB16F1(黒色腫)細胞増殖および生育に及ぼす化合物M6の効果。

処理72時間後のMCF-7(乳癌)細胞生育に及ぼす化合物M6、M7、およびM11の効果。

M21は、実験動物におけるホルマリン誘発性疼痛を低下させる。

TRPM7阻害剤は、初代マウス培養皮質細胞における酸素-グルコース欠乏(OGD)によって誘導される死滅から保護する。A)M21、B)M5、C)M6。

TRPM7阻害剤は、マウスAML12肝細胞における酸素-グルコース欠乏(OGD)によって誘導される死滅から保護する。A)M21、B)M5。

TRPM7阻害剤は、H9c2心筋細胞における酸素-グルコース欠乏(OGD)によって誘導される死滅から保護する。A)M21、B)M5、C)M6、D)M11。

TRPM阻害剤7は、酸素-グルコース欠乏(OGD)の前または間に与えらえる場合、H9c2心筋細胞におけるOGDによって誘導される死滅から保護する。A)OGD中にM5;B)OGD前にM5;C)OGD中にM21。

A)TRPM7阻害剤は、齧歯類心臓のLAD閉塞後の梗塞体積を減少させる。B)ビヒクルおよびM21で処理したマウス由来の心臓横断切片における代表的なTUNEL染色(赤色)。C)M21は、心臓のLAD制限後の死滅細胞を有意に減少させる。

細胞死に及ぼすTRPM7阻害剤の効果。A)培養した網膜神経節細胞における3時間のOGD損傷後の24時間の薬剤効果。B)TRPM7阻害剤は、網膜外植片における1時間のOGD後の細胞死を減少させる。

M21は、急性緑内障のラットモデルにおける網膜細胞死を減少させる。A)眼内圧(IOP)を増加させる塩類溶液注射の方法。B)1時間のIOP上昇に曝露された網膜におけるTUNEL染色された細胞の平均数。

M6は、MTTアッセイによって培養物における網膜芽細胞腫細胞の細胞増殖を低下させる。A)Y79網膜芽細胞腫細胞。B)Weriの網膜芽細胞腫細胞。

網膜外植片において培養されたY79網膜芽細胞腫細胞に及ぼすTRPM7阻害剤の効果。A)M6は、網膜外植片における生存可能なY79細胞の数を減少させる。B)M6は、Y79網膜芽細胞腫細胞が培養外植片における網膜から離れて遊走する能力を低下させる。

M6は、Weri網膜芽細胞腫細胞が培養外植片における網膜から離れて遊走する能力を低下させる。

TRPM7阻害剤は、癌細胞株の増殖を低下させる。A)M7は、HeLa子宮頚癌細胞の増殖を低下させる。B)M7は、SW13副腎癌細胞の増殖を低下させる。C)M6は、HeLa子宮頚癌細胞の増殖を低下させる。D)M6は、SW13副腎癌細胞の増殖を低下させる。

TRPM7阻害剤M5、M6、およびM11は、MCF-7乳癌細胞およびMDA-MB231乳癌細胞の増殖を阻害する。

TRPM7阻害剤M5、M6、およびM11は、B16F1黒色腫細胞およびB16F10黒色腫細胞の増殖を阻害する。

TRPM7阻害剤M5、M6、M7、およびM11は、癌細胞の増殖を低下させる濃度でNIH3T3線維芽細胞に及ぼす毒性を示さない。

TRPM7は、試験したすべての癌細胞株において発現する。

マウスB16F1黒色腫細胞株およびB16F10黒色腫細胞株におけるTRPM7のsiRNAノックダウンは、MTTアッセイおよびSRBアッセイによって増殖を低下させる。

M6は、癌のインビボマウスモデルにおける腫瘍形成を遅延させることができる。

(本発明の詳細な説明) 1.序論 本発明は、とりわけTRPM7タンパク質の調節因子(時には化合物または薬剤ともいう)および他の調節因子(例えば、活性化因子、阻害剤、刺激因子、増強剤、アゴニスト、およびアンタゴニスト)ついてのスクリーニング方法を提供する。このような調節因子は、脳卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、てんかん、脊髄小脳性運動失調、脊髄性および延髄性筋ジストロフィー、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脳損傷、脊髄損傷、プリオンを基にした疾患、ならびに他の外傷性、虚血性、または神経変性性神経系損傷などの神経学的疾患および容態を含む、虚血性疾患ならびに容態および細胞変性性疾患ならびに容態の予防的処置または治療的処置において用いることができる。このような調節因子は、中枢神経系、脳、心臓、肝臓、腎臓、筋肉、網膜、皮膚、小腸、膵臓、胆嚢、甲状腺、胸腺、脾臓、骨、軟骨、関節、肺、横隔膜、副腎、唾液腺および涙腺、血管、ならびに内胚葉、中胚葉、および外胚葉起源の細胞のものなど、他の組織の虚血性および変性性障害および容態を含む非神経学的疾患の予防的処置または治療的処置においても用いることができる。このような調節因子は、黄斑変性、糖尿病性網膜症、緑内障、虚血性網膜症を含む眼の障害の予防的処置または治療的処置においても用いることができる。このような調節因子はさらに、乳癌、網膜芽細胞腫、頭頚部癌、胃癌、副腎癌、子宮頚癌、骨肉腫、結腸癌、腎癌、小細胞肺癌または非小細胞肺癌を含む肺癌、黒色腫、白血病、およびリンパ腫を含む癌および他の増殖性障害の予防的処置または治療的処置において用いることができる。調節因子は、疼痛の予防または治療的処置のために用いることもできる。調節因子は、高血圧症、自己免疫障害、不整脈、鬱障害、ストレス障害、または免疫障害の予防または治療的処置において、記憶を保存または亢進するために用いることもできる。

細胞、細胞株、初代ニューロン培養、組織調製物全体、および動物全体の使用は、脳卒中を含む、TRPM7活性によって調節される疾患の動物モデルを含む疾患の動物モデルにおいて後に試験されることのできるTRPM7活性のための調節因子についてアッセイするための手段を提供する。

関連方法論は、各々が全体として引用によりすべての目的のために組み込まれる2004年12月22日に出願の米国出願第20080119412号およびSun et al, Nat Neurosci. 2009 Oct; 12(10): 1300-7において説明される。

本明細書および添付の特許請求において使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、内容が別段に明確に記載されない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「細胞」に対する引用には、2以上の細胞の組み合わせ、およびこれらに類するものが含まれる。

量、一時的な期間、およびこれらに類するものなど、測定可能な値に対して引用する場合の本明細書で使用される「約」は、指定された値からの±20%または±110%の、より好ましくは±5%の、さらにより好ましくは±1%の、なおもより好ましくは±0.1%の変動を包含するよう意図され、このような変動は、開示された方法を実施するのに適切であるようになっている。

別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する当該技術分野における当業者によって普遍的に理解されるものと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明において用いられる用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2d ed. 1994); THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker ed., 1988)、およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY (1991)。

別段の記載がない限り、TRPM7には、ヒトおよび/またはネズミTRPM&タンパク質に対する引用が含まれる。

「ネズミTRPM7タンパク質」は、ネズミTRPM7核酸、例えば、Swiss-Prot Q923J1のネズミTRPM7タンパク質によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または少なくとも99.9%の同一性を含む、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を指す。

「ネズミTRPM7タンパク質をコードする核酸」または「TRPM7遺伝子」または「TRPM7核酸」は、例えば、EMBL AY032951、その相補体、またはその保存的に修飾されたバリアントにおいて示されるようなネズミTRPM7核酸と少なくとも96%核酸配列同一性または90%、95%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、もしくは少なくとも99.9%を有する核酸配列を指す。

ネズミTRPM7ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、天然または非天然であり得る。該配列は、ネズミから単離されることができ、または合成的に構築されることができる。

「発現ベクター」は、宿主細胞における特定の核酸の転写を可能にする一連の指定された核酸要素を有する、組換えでまたは合成で生じた核酸コンストラクトである。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸断片の一部であり得る。典型的には、発現ベクターには、プロモーターに作用可能に連結された転写されるべき核酸が含まれる。

TRPM7遺伝子、TRPM7タンパク質、またはTRPM7仲介性細胞損傷に影響する化合物を試験するためのアッセイの文脈における「機能的効果」という句には、TRPM7遺伝子またはタンパク質の影響下に間接的にまたは直接的にある任意のパラメータの決定が含まれる。該機能的効果には、イオン流量および膜電位の変化、リガンド結合の変化、遺伝子発現の変化、イオン指示分子の蛍光の変化、細胞生存可能性マーカーの変化、細胞完全性マーカーの変化、細胞代謝マーカーの変化、および組織調製物におけるまたは動物全体における虚血性組織の量または機能の変化が含まれる。「機能的効果」は、試験化合物の投与後の細胞死の増加または減少などの生理学的および病理学的効果すべても意味する。

「機能的効果を決定すること」によって指すものは、TRPM7遺伝子またはタンパク質によって仲介される生理学的または病理学的過程に及ぼす化合物の機能的効果を決定することである。このような機能的効果は、任意の公知の手段、例えば、細胞死アッセイ、細胞生存可能性アッセイ、イオン感受性蛍光プローブ、電気生理学的技術、および疾患の動物モデル、並びにこれらに類するものによって測定されることができる。

「TRPM7活性」は、以下のうちの1以上を指す:TRPM7遺伝子機能、TRPM7タンパク質発現、イオンチャネル活性の電気生理学的測定によって測定されるようなTRPM7タンパク質活性、蛍光イオン指示薬によって測定されるようなTRPM7タンパク質活性、および細胞代謝または細胞死または細胞生存のアッセイを用いて測定されるTRPM7タンパク質活性。

本明細書で用いる場合の「調節」という用語は、本明細書で説明されるアッセイを用いて測定されるようなTRPM7活性を、例えば作動による上方制御(すなわち、活性化または刺激)、および該活性と例えば拮抗による下方制御(すなわち、阻害または抑制)の両方を指す。阻害剤またはアゴニストは、結合の部分的なまたは完全な調節を生じ得る。

時に、細胞におけるTRPM7活性、TRPM7遺伝子、およびその遺伝子産物の薬剤または化合物と呼ばれる「阻害剤」、「活性化因子」、および「調節因子」は、TRPM7活性についてのアッセイを用いて同定された阻害分子または活性化分子も指す。阻害剤は、活性化を低下、遮断、遅延させ、TRPM7活性を不活性化、脱感作、または下方制御する化合物である。活性化因子は、活性化を増大させ、開き、活性化し、促進し、TRPM7活性を感作し、または上方制御する化合物である。阻害剤および活性化因子についてのこのようなアッセイには、例えば、細胞または細胞膜においてTRPM7を発現させた後、TRPM7を発現する細胞をTRPM7活性の推定調節因子と接触させた後、蛍光イオン指示薬の使用を通じて、または細胞生存もしくは細胞死を測定することを通じて、イオンの流量を推量することが含まれる。阻害の程度を検討するために、TRPM7タンパク質を含む試料またはアッセイは、可能性のある活性化因子または阻害剤で処理され、活性化因子阻害剤を有さない対照試料と比較される。(阻害剤で処理されていない)対照試料は、100%の相対的TRPM7活性値を割り当てられる。TRPM7の阻害は、対照と比較したTRPM7活性値が、約90%以下、任意に約80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または25〜0%である場合に達成される。TRPM7の活性化は、対照と比較したTRPM7活性値が約110%、任意に120%、130%、140%、150%またはそれより多い、200〜500%以上、1000〜3000%以上である場合に達成される。

化合物または薬剤とも呼ばれる、「TRPM7競合阻害剤」と互換可能に用いられる「TRPM7阻害剤」は、対象化合物が、試験化合物を含まない対照と比較して、TRPM7活性を少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、最大約99%または100%低下させることを意味する。一般に、関心対象の薬剤は、約1mM以下の範囲で特定のアッセイにおいてIC50値を呈するものである。より低いIC50を呈する化合物は例えば、約250μM、100μM、50μM、25μM、10μM、5μM、2μM、1μM、500nM、250nM、100nM、50nM、25nM、10nM、5nM、1nMの、またはさらにより低い範囲の値を有し、これらの属性を有する化合物は現に好ましい。

「類似体」という用語は、本明細書で、基準分子の具体的な置換基を代替的な置換基と置き換えることによって、関心対象の分子に構造上類似しているが、標的にされかつ制御された様式で修飾された低分子を指すために用いられる。出発分子と比較して、類似体は、TRPM7活性を調節する上での同じ、類似の、または改良された有用性を呈し得る。(標的に対するより高い結合親和性、または結合のより高い選択性および非標的分子に対するより低い活性レベルなどの)改良された形質を有する公知の化合物のバリアントを同定するための類似体の合成およびスクリーニングは、医薬科学において周知のアプローチである。

本明細書で使用する「接触させること」は、その通常の意味を有し、例えば、2つ以上の薬剤(例えば、2つのタンパク質、1つのタンパク質と1つの低分子、など)を組み合わせることによって、2つ以上の薬剤を接触へともたらすことを指す。接触は、インビトロで、インサイツで、またはインビボで生じ得る。

「組換え」は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、もしくはベクターに対する引用とともに用いられる場合、該細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種性の核酸もしくはタンパク質の導入または未変性の核酸もしくはタンパク質の変化によって修飾され、あるいは、該細胞が、そのように修飾されるようある細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の未変性(非組換え)形態内で見いだされない遺伝子を発現するか、または発現したもしくは必ずしもすべて発現していない下で、さもなくば異常に発現した未変性遺伝子を発現する。

「プロモーター」は、核酸を転写に導く核酸制御配列のアレイとして定義される。本明細書で使用する場合、プロモーターには、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなど、転写開始部位近くに必要な核酸配列が含まれる。プロモーターには任意で、転写開始部位から数千塩基対ほど離れ得る、 遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含まれる。

「構成的」プロモーターとは、ほとんどの環境条件および発生条件下で活性のあるプロモーターである。「誘導性」」プロモーターとは、環境調節または発生調節下で活性のあるプロモーターである。

「作用可能に連結された」という用語は、(プロモーター、または転写因子結合部位のアレイなどの)核酸発現制御配列と第二の核酸配列の間の機能的連結を指し、この中で、発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を扱う。

「組換え宿主細胞」(または単純に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指す。このような用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫も指すよう意図されることは理解されるべきである。ある変異が、突然変異または環境的影響を原因として続いて発生することがあるので、このような子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、なおも本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。宿主細胞は、対象のポリペプチドコード核酸の発現に好適な任意の細胞である。通常、動物宿主細胞が用いられ、その例は以下のとおりである:サル腎細胞(COS細胞)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVI細胞(COS-7, ATCC CRL 165 1)、ヒト胚性腎細胞(HEK-293)、HEK-293T細胞、ベビーハムスター腎細胞(BHK, ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウスセルトリ細胞(TM4)、サル腎細胞(CVI ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76, ATCC CRL- 1587)、ヒト子宮頚部癌腫細胞(HELA, ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(hep G2, HB 8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562, ATCC CCL 51)、TRI細胞、NIH/3T3細胞(ATCC CRL- 1658)、およびマウスL細胞(ATCC CCL-1)。追加的な細胞株は、American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209から入手可能である。

「一価の陽イオン指示薬」は、細胞膜に対して容易に透過できるかまたはさもなくば、例えばリポソームなどを介して細胞内へと輸送することを受け入れられ、かつ細胞内に入る際に、一価の陽イオンとの接触の際に増強または抑制のいずれかをする蛍光シグナルまたは他の検出可能なシグナルを呈する分子を指す。本発明において有用な一価の陽イオン指示薬の例は、Haugland, R. P. Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals., 9th ed. Molecular Probes, Inc Eugene, Oreg., (2001)に示されている。

「二価の陽イオン指示薬」は、細胞膜に対して容易に透過できるかまたはさもなくば、例えばリポソームなどを介して細胞内へと輸送することを受け入れられ、かつ細胞内に入る際に、二価の陽イオンとの接触の際に増強または抑制のいずれかをする蛍光シグナルまたは他の検出可能なシグナルを呈する分子を指す。

「特異的に結合する」または「特異的に結合する」は、ペプチドに対して引用する場合、排他的にまたは優先的に標的分子に対して中間的なまたは高い結合親和性を有するペプチド分子を指す。「特異的に結合する」という句は、タンパク質および他の生物製剤の異種性集団の存在下で標的タンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定されたアッセイ条件下で、指定の結合部分は、特定の標的タンパク質に優先的に結合し、試験試料中に存在する他の成分に対して有意な量で結合しない。このような条件下での標的タンパク質に対する特異的な結合は、特定の標的抗原に対するその特異性について選択される結合部分を必要とすることができる。種々のアッセイフォーマットを用いて、特定のタンパク質と特異的に反応するリガンドを選択することができる。例えば、固相ELISA免疫学的検定、免疫沈降、ビアコア、およびウェスタンブロット法を用いて、抗原と特異的に反応するペプチドを同定する。一般的には、特異的なまたは選択的な反応は、背景シグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より一般的には背景の10倍超である。

「天然の」は、対象に適用される場合、対象が天然に見出されることができるという事実を指す。例えば、自然に存在する材料から単離でき、かつ実験室において故意に改変されていない(ウイルスを含む)生物体に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は、天然のものといえる。

「評価すること」という用語には、測定の任意の形態が含まれ、ある成分が存在するかどうかを決定することも含まれる。「決定すること」、「測定すること」、「評価すること(evaluating)」、「評価すること(assessing)」、および「アッセイすること」という語は、互換可能に用いられ、定量的および/または定性的決定を含み得る。アッセイすることは、相対的または絶対的であり得る。「結合を評価すること」には、例えば、結合の量、結合親和性についてのKDを決定すること、および/または結合が生じたかどうか(すなわち、結合があるのかないのか)を決定することが含まれる。

「治療」、「治療すること」、「治療する」という用語、およびこれらに類するものは、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを指す。該効果には、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に事前処置するという予防効果もあり、ならびに/または疾患および/または疾患による体への悪影響を部分的もしくは完全に治癒させるという観点から治療効果もある。本明細書で使用される場合、「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の任意の治療に及び、(a)該疾患が、易罹患性であると推定されるが、まだそれを罹患しているとして診断されていない対象において生じるのを予防すること、(b)該疾患を阻害すること、すなわち、その疾患の悪化または発症を停止または遅延させること、および(c)該疾患を緩和すること、すなわち、該疾患の退行を促し、1つ以上の疾患症状を緩和させることを含む。「治療」は、疾患または容態が顕在化していなくとも薬理学的効果を提供するための薬剤の服用をも意味する。

「対象」、「個体」、「宿主」、および「患者」は、本発明の方法に従った治療を受け入れられる動物、ヒト、または非ヒトを指すよう、本明細書で互換可能に用いられる。一般的に、対象は、哺乳類対象である。好ましい対象には、ヒト、家畜動物、および非家畜動物:例えば、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、およびウマが挙げられ、ヒトは特に関心対象である。

1以上の任意の置換基を含有するとして説明された任意の分子について、立体的に実用的なおよび/または人工的に実行可能な化合物のみが含まれるよう意図される。さらに、置換基および/または変数の組み合わせは、このような組み合わせが安定した化合物を結果的に生じる場合にのみ許容できる。

「任意に置換された」は、ある点におけるその後の修飾因子すべてを指し、例えば、「任意に置換されたフェニル(C1-6)アルキル」という用語において、任意の置換は、該分子のアルキル部分およびフェニル部分の両方に関して生じ得る。好ましくは、本明細書のアルキル基は、本明細書に説明され、それ自体さらに任意に置換されることのできる芳香環系およびヘテロ芳香環系で置換されたアルキル骨格における1つの水素を有することができる。別の例は、「任意に置換されたC5-7アリール-(C1-6)アルキル」であり、フルオロ,クロロ-ベンジル基であり得る。

別の好ましいアルキルは、「ハロアルキル」である。ハロアルキルは、1以上の塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素によって置換された本明細書に開示されたアルキル基のうちのいずれも指し、クロロメチル、ヨードメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、および2-クロロエチルなど、フッ素および塩素が好ましい。ハロアルキルは、ハロゲンに加えて他の置換を有することができる。

「置換された」アルキル、アリール、およびヘテロシクリルは、アルキル、アリール、およびヘテロシクリルをそれぞれ指し、この中で、1以上の(例えば、最大約5の、別の例においては最大約3の)水素原子が、独立して選択された置換基によって置換される。例として、フルオロメチル、ヒドロキシプロピル、ニトロメチル、アミノエチル、またはおよびこれらに類するもの、任意に置換されたアリール(例えば、4-ヒドロキシフェニル、2,3-ジフルオロフェニル、およびこれらに類するもの)、任意に置換されたアリールアルキル(例えば、1-フェニル-エチル、パラ-メトキシフェニルエチル、およびこれらに類するもの)、任意に置換されたヘテロシクリルアルキル(例えば、1-ピリジン-3-イル-エチル、N-エチルモルフォンリノ(N-ethylmorphonlino)およびこれに類するもの)、任意に置換されたヘテロシクリル(例えば、5-クロロ-ピリジン-3-イル、1-メチル-ピペリジン-4-イル、およびこれらに類するもの)、任意に置換されたアルコキシ(例えば、メトキシエトキシ、ヒドロキシプロピルオキシ、メチレンジオキシ、およびこれらに類するもの)、任意に置換されたアミノ(例えば、メチルアミノ、ジエチルアミノ、トリフルオロアセチルアミノ、およびこれらに類するもの)、任意に置換されたアミジノ、任意に置換されたアリールオキシ(例えば、フェノキシ、パラ-クロロフェノキシ、メタ-アミノフェノキシ、パラ-フェノキシフェノキシ、およびこれらに類するもの)、任意に置換されたアリールアルキルオキシ(例えば、ベンジルオキシ、3-クロロベンジルオキシ、メタ-フェノキシベンジルオキシ、およびこれらに類するもの)、カルボキシ(-CO2H)、任意に置換されたカルボアルコキシ(すなわち、アシルオキシまたは−OC(=O)R)、任意に置換されたカルボキシアルキル(すなわち、エステルまたは-CO2)、任意に置換されたカルボキサミド、任意に置換されたベンジルオキシカルボニルアミノ(CBZ-アミノ)、シアノ、任意に置換されたアシル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、任意に置換されたアルキルスルファニル、任意に置換されたアルキルスルフィニル、任意に置換されたアルキルスルホニル、チオール、オキソ、カルバミル、任意に置換されたアシルアミノ、任意に置換されたヒドラジノ、任意に置換されたヒドロキシアミノ、および任意に置換されたスルホンアミドが挙げられる。

「アルキル」基は、直鎖、分岐鎖、および環状アルキル基を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。アルキル基は、非環式サブユニットと環状サブユニットの任意の組み合わせを含むことができる。さらに、本明細書で明確に用いられる「アルキル」という用語には、飽和基および不飽和基が含まれる。不飽和基は、1以上の(例えば、1、2、または3の)二重結合および/または三重結合を含有する。「アルキル」という用語には、置換または非置換のアルキル基が含まれる。「低級アルキル」は、1〜7の炭素を有するものとして定義される。好ましくは、アルキル基は、1〜18の炭素を有し、直鎖または分岐鎖である。該用語には、指定された数の炭素原子の飽和直鎖または分岐鎖の一価炭化水素ラジカルが含まれ得、この中で、アルキルラジカルは独立して、本明細書に説明される1以上の置換基と任意に置換される。置換基は、本明細書で説明されるラジカル、基、または部分のうちのいずれかから選択されることができる。アルキル基の例として、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-l-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH )(CH2CH2CH ))およびこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、特定の数の炭素を有するアルキル残基が命名される場合、該炭素数を有する幾何異性体はすべて包含されるよう意図され、したがって、例えば、「ブチル」または「C4アルキル」のいずれかは、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、t-ブチル、イソブテニル、およびブタ-2-インラジカルを含むよう意図され、例えば、「プロピル」には、n-プロピル、プロペニル、およびイソプロピルが含まれる。「C1-C6」という用語は、1〜6の炭素のアルキル基を包含する。好ましくは、炭素数は、すべての実施態様において1〜3である。

「アルコキシ」という用語は、鎖の長さが限定されない限り、酸素原子に結合した、先に定義されたような直鎖または分岐鎖アルキルラジカルを意味し、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、およびこれらに類するものが含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、アルコキシ鎖は、長さ1〜6の炭素原子であり、より好ましくは長さ1〜4の炭素原子である。アルコキシ基における置換は、アルキル基における置換と類似している。ハロアルコキシ基は、任意に置換されたアルコキシ基が好ましく、それは、例えば、トリフルオルメトキシ(trifluormethoxy)である。

「アルキルアミン」という用語は、それ自体または別の基の一部として、先に定義された1つのアルキル基と置換されたアミノ基を指す。

「ジアルキルアミン」という用語は、それ自体または別の基の一部として、先に定義された2つのアルキル基と置換されたアミノ基を指す。

「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、それ自体または別の基の一部として、文脈および/または特許請求の範囲における具体的な使用において別段の定義がない限り、塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素を指す。

「カルボニル」という用語は、Oに二重結合したCを指し、この中で、Cはさらに共有結合している。

「複素環」または「複素環」という用語は、注釈がない限り本明細書で使用する場合、飽和または不飽和であり得かつ炭素原子と、N、O、およびSからなる群から選択される1〜3のヘテロ原子からなる安定した5〜7員の単環〜複素環系を表し、この中で、窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化され得る。特に有用なのは、1の酸素もしくは硫黄と組み合わされた1の窒素、または2の窒素ヘテロ原子を含有する環である。ヘテロシクリルラジカルの例として、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、カルバゾイル、シノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル、テトラヒドロイソキノリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、トリアゾリル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルフォリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソイノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、フリル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエリイル(benzothieliyl)、チアモルフォリニル、チアモルフォフリニルスルホキシド、チアモルフォリニルスルホン、ジオキソホスホラニル、およびオキサジアゾリルが挙げられ、最も好ましくはピペラジニルおよびモルフォニルが挙げられるが、それらに限定されない。

「アリール」、「芳香族」、および「ヘテロ芳香族」という用語は、芳香族6〜14員炭素環式環、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、フルオレン、およびこれらに類するものを指す。「アリール」基、「芳香族」基、および「ヘテロ芳香族」基は、低級アルキル、ヒドロキシル、ハロ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、および低級アルキルアミノ、並びにこれらに類するものを含む置換基で置換され得る。

「ヘテロ原子」という用語は、酸素原子(「O」)、硫黄原子(「S」)、または窒素原子(「N」)を意味するよう本明細書で用いられる。ヘテロ原子が窒素である場合、NRR部分を形成し得、この中で、各Rは互いから独立して水素または1つの置換である。

「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの部位の飽和、すなわち、炭素間sp2二重結合を有する2〜6の炭素原子の直鎖または分岐鎖炭化水素ラジカルを指し、この中で、アルケニルラジカルは、本明細書に説明される1以上の置換基で独立して任意に置換され得、「シス」および「トランス」の方向、またはそれに代わるものとして、「E」および「Z」の方向を有するラジカルを含む。例として、エチレニルまたはビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)、およびこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。

「アルケニル」基は、直鎖、分岐鎖、および環状の基を含む少なくとも1の炭素間二重結合を含有する不飽和炭化水素基を指す。好ましくは、アルケニル基は1〜18の炭素を有する。アルケニル基は、置換または非置換であり得る。該用語には、少なくとも1つの部位の不飽和、すなわち、炭素間sp三重結合を有する2〜12の炭素原子の直鎖または分岐鎖一価炭化水素ラジカルが含まれ、この中で、アルキニルラジカルは、本明細書に説明される1以上の置換基で独立して任意に置換され得る。例として、エチニル(-C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、-CH2C≡CH)、およびこれらに類するものが挙げられる。

「環状」、「二環式」、および「複素二環式」という用語は、単環として5〜12の炭素原子を、または二環として7〜12の炭素原子を有する飽和または部分的に不飽和の環を指す。7〜12の原子を有する二環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、または[6,6]系として配置されることができ、9または10の環原子を有する二環式炭素環式化合物は、ビシクロ[5,6]または[6,6]系として、あるいはビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、およびビシクロ[3.2.2]ノナン等の架橋された系として配置されることができる。単環式炭素環式化合物の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペンタ-1-エニル、1-シクロペンタ-2-エニル、1-シクロペンタ-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、シクロヘキサジエニル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、およびこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。本定義に含まれるのは、飽和、部分的に不飽和の環、または芳香族の炭素環式環または複素環式環と縮合した芳香環を含む二環式ラジカルである。典型的なアリール基には、ベンゼンに由来するラジカル(フェニル)、置換ベンゼン、ビフェニル、ベンゾアミダゾール、インドール、クマリン、ピラノピロール、ベンゾチオフェン、インダゾール、インデニル、インダニル、1,2-ジヒドロナプタレン(1,2-dihydronapthalene)、1,2,3,4-テトラヒドロナプチル(1,2,3,4-tetrahydronapthyl)、およびこれらに類するものが含まれるが、これらに限定されない。アリール基は、本明細書に説明される1以上の置換基と独立して任意に置換される。

「アシル」は、カルボニル官能性を通じて親構造に結合した直鎖、分岐鎖、環状立体配置、飽和、不飽和、および芳香族、ならびにこれらの組み合わせの1〜10の炭素原子の基を指す。アシル残基における1以上の炭素は、カルボニルにおいて親への結合点が残っている限り、窒素、酸素、または硫黄によって置き換えられ得る。例として、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、およびこれらに類するものが挙げられる。

「アルキニル」基は、直鎖、分岐鎖、および環状の基を含む少なくとも1つの炭素間三重結合を含有する不飽和炭化水素基を指す。好ましくは、アルキニル基は、1〜18の炭素を有する。アルキニル基は、置換または非置換であり得る。

本明細書で使用する場合の「中枢神経系に対する急性傷害」という用語には、グルタミン酸興奮毒性によって仲介されるニューロン損傷の実質的な脅威を呈する、または外傷、炎症TRPM7チャネル、TRPM2もしくは他のチャネルによって生じる短期の事象が含まれる。同様にまた、例えば、炎症虚血事象によって仲介される脳卒中誘発性虚血損傷のより長期の伝播は、脳卒中もしくは心停止などの不適切な血流、低酸素性事象(溺水、窒息、または一酸化炭素中毒など、不適切な酸素供給を包含する)、(機械的損傷もしくは類似の損傷の形態の)脳もしくは脊髄への外傷、ドウモイ酸などの興奮毒性毒を包含するある種の食中毒、およびある種の重度のてんかん性発作を含む発作仲介性ニューロン変性を包含し得る。また、(例えば、銃撃、刺創、もしくは自動車事故後に生じ得るように、)該外傷が、脳への血流を危うくするのに十分な血液の損失をもたらす場合、身体の別の部分に生じる外傷も含むことができる。

「心筋虚血」または心臓虚血もしくは心臓虚血と互換可能に用いられる「心臓脈管系虚血」は、低酸素症、例えば、心発作、窒息、一酸化炭素中毒、外傷、肺機能障害、およびこれらに類するもの、例えば、閉塞、粥状硬化、糖尿病性微小脈管機能不全、およびこれらに類するものに由来する血流量の低下、一酸化窒素の調節不全、内皮または脈管性平滑筋の機能不全、ならびにこれらに類するものから結果的に生じる細胞死を伴う循環器系の急性および慢性の損傷を意味するよう意図される。

7.ネズミTRPM7製造またはTRPM7活性の調節因子についてのアッセイ TRPM7は、細胞生存性に必要なMg2+およびCa2+により調節されかつカルシウム透過性のイオンチャネルとして同定された。イオンチャネルとして、TRPM7は、カルシウム、Mg2+、および一価の陽イオンを伝導し、細胞を脱分極させ、細胞内カルシウムを増加させる。TRPM7電流は、低い細胞内Mgレベルまたは低い細胞外レベルの二価陽イオンで活性化され、マグネシウム、亜鉛、スペルミン、2-アミノフェノキシボラート、Mn(III)テトラキス(4-安息香酸)ポルフィリンクロリド、およびランタンを含むいくつかの二価のおよび多価の陽イオンによって遮断される(Harteneck, Arch Pharamcol 2005 371”307-314)。Mg2+およびZn2+の両方ともTRPM7チャネルを透過し、該チャネルを流れる一価の陽イオンの流れを遮断する(Kozak et al, Biophys. 2003 84:2293-2305)。TRPM7チャネルは、哺乳類細胞において異種性に発現する場合、+50〜+100mVに及ぶ非生理学的電圧において顕著な外向き電流を、−100〜−40mVの負の電位で小さな内向き電流を生じる(Jiang et al, J. Gen. Physiol. 2005 126(2), 137-150)。TRPM7はまた、Srcファミリーキナーゼ(Jiang et al, J. Biol. Chem. 2003 278:42867-42876)、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(4,5-biphosphate)(PIP.sub.2)(Runnels et al, Nat Cell Biol 2002 4:329-336)、およびそれ自体のアルファキナーゼドメイン(Takezawa et al, PNAS USA 2004 101 :6009-6014)によって調節されることも示されている。異種性に発現したTRPM7チャネル、例えば、HEK293細胞において発現したTPRM7チャネルは、高いCa2+透過性を伴う電流、外向きに整流しているI-V曲線、低Ca2+濃度による亢進、および多価陽イオンガドリニウムによる電流の遮断を呈する。TRPM7チャネルの過剰発現は、HEK-293細胞に対して致死的であることが示された。致死性は、Mg2+ホメオスタシスを回復させるために細胞外Mg2+を増加させることによって防止させることができる(Aarts et al, Cell 2003 115:863-877)。

本発明は、とりわけ、調節因子、例えば、TRPM7産生またはTRPM7活性の阻害剤または活性化因子を同定するために用いることのできる細胞ベースの系を提供する。TRPM7チャネルの量または活性は、電流を測定すること、膜電位を測定すること、イオン流量を測定すること、リガンド結合を測定すること、第二のメッセンジャーおよび転写レベルを測定すること、または細胞生存などの生理学的効果を含む、種々のアッセイを用いて評価されることができる。

TRPM7チャネルの調節因子は、組換えまたは天然のいずれかの生物学的に活性のあるTRPM7を用いて試験することができる。ネズミTRPM7は、単離され、同時発現し、もしくは細胞において発現し、または細胞に由来する膜において発現することができる。可能性のあるTRPM7チャネル阻害剤または活性化因子を用いて処理された試料またはアッセイは、試験化合物を用いていない対照試料と比較され、調節の程度を検討することができる。(活性化因子または阻害剤を用いて処理されない)対照試料は、100%の相対的なTRPM7活性値を割り当てられる。TRPM7を含むチャネルの阻害は、対照に対するイオンチャネル活性値が、例えば約90%、好ましくは約50%、より好ましくは約25%である場合に達成される。TRPM7を含むチャネルの活性化は、対照に対するイオンチャネル活性値が、110%、より好ましくは150%、より好ましくは200%高い場合に達成される。

イオン流量の変化は、TRPM7チャネルを発現する細胞膜の分極(すなわち電位)の変化を決定することによって評価することができる。細胞分極の変化を決定するための好ましい手段は、電圧固定技術およびパッチクランプ技術、例えば、「細胞結合」様式、「内側を外にする」様式、および「全細胞」様式を用いて、電流の変化を測定すること(それにより分極の変化を測定すること)によるものである(例えば、Runnels et al. Science 2001 291 : 1043-1047、Jiang et al, J. Gen. Physiol. 2005 126(2), 137-150参照)。全細胞電流は、標準的な方法論を用いて簡便に決定される(例えば、Hamil et al, PFlugers. Archiv. 1981, 391 :85参照)。他の公知のアッセイには、放射性標識されたルビジウム流量アッセイおよび、イオン感受性色素、電圧感受性色素を用いる蛍光アッセイが含まれる(例えば、Vestergarrd-Bogind et al, J. Membrane Biol. 1988, 88:67-75、Daniel et al, J. Pharmacol. Meth. 1991, 25: 185-193、Holevinsky et al, J Membrane Biology 1994, 137:59-70参照)。一般的に、試験されるべき化合物は、約1pM〜約100mMの範囲に存在する。

本発明は、とりわけ、TRPM7を結合する分子を同定する方法、TRPM7イオンチャネル活性を調節する分子を同定する方法、および/または細胞内でTRPM7の発現を変化させる分子を同定する方法を提供する。これらの分子は、TRPM7活性によって調節される容態または疾患を治療するのに有用であり得る候補生物活性薬である。このような調節因子は、本明細書に説明される虚血性損傷、ならびに脳卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、てんかん、脊髄小脳性運動失調、脊髄性および延髄性筋ジストロフィー、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脳損傷、脊髄損傷、および他の外傷性神経系損傷など、神経学的疾患および容態を含む神経変性性容態を含み、本明細書に説明される疾患および障害のうちのいずれの治療的処置または予防的処置においても用いられることができる。このような調節因子は、心臓、肝臓、腎臓、筋肉、網膜、皮膚、小腸、膵臓、胆嚢、甲状腺、胸腺、脾臓、骨、軟骨、関節、肺、横隔膜、副腎、唾液腺および涙腺、血管、ならびに内胚葉、中胚葉、および外胚葉起源の細胞の虚血など、他の組織の虚血性障害および容態を含む非神経学的疾患の治療的処置においても用いられることができる。好ましい実施態様において、これらの方法は、ネズミTRPM7活性を阻害する薬剤候補を同定するために用いられることができる。

本発明は、TRPM7仲介性細胞損傷を低下させることのできる候補生物活性薬についてスクリーニングする方法を提供する。いくつかの実施態様において、候補生物活性薬は、C末端キナーゼドメインなど、TRPM7タンパク質の特定のドメインに結合する。他の実施態様において、候補生物活性薬は、TRPM7活性によって関連付けられおよび/または活性化され、かつ細胞におけるTRPM7活性の損傷性結果を仲介する下流のシグナル伝達経路に作用する。

結合アッセイについての一実施態様において、TRPM7または候補生物活性薬のいずれかが標識される。該標識は、本明細書に説明されるものなど、任意の検出可能な標識であってもよい。該標識は、TRPM7と候補薬との結合を検出する手段を提供する。いくつかの結合アッセイにおいて、TRPM7は、表面に固定または共有結合し、標識された候補生物活性薬と接触する。他のアッセイにおいて、候補生物活性薬のライブラリーは、表面に固定され、または表面、例えばバイオチップに共有結合し、そして標識されたTRPM7と接触する。

本発明は、ネズミTRPM7遺伝子発現を遮断または低下するための方法はもちろん、TRPM7遺伝子発現をひいてはTRPM7活性を遮断または低下させることのできる候補生物活性薬についてスクリーニングするための方法も提供する。

TRPM7の発現は、RNA干渉(RNAi)などの方法によって特異的に抑制されることができる(Science, 288: 1370-1372 (2000))。簡潔には、アンチセンスRNAまたはDNAを採用する遺伝子抑制の伝統的な方法は、関心対象の遺伝子の逆向きの配列に対する結合によって作動し、それにより結合は、その後の細胞過程に干渉し、それゆえ、対応するタンパク質の合成を遮断するようになっている。RNAiは、翻訳後レベルにおいても作動し、配列特異的であるが、はるかにより効率的に遺伝子発現を十分に抑制する。RNA干渉法において、転写後遺伝子サイレンシングは、配列関連遺伝子の転写産物の迅速な分解を結果的に生じる配列特異的RNA分解過程によって生じる。低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、ミクロRNA(mRNA)、および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子など、低分子核酸分子はすべて、TRPM7遺伝子の発現を調節するために用いることができる。RNA干渉を通じてTRPM7を抑制することのできる低分子核酸分子は、当該技術分野で公知の方法によって調製することができる。例えば、米国公報第2005/0124567号およびAarts et al, Cell 2003 115:863-877を参照されたい。

したがって、本発明は、ネズミTRPM7活性の調節、例えば遮断または低下させることのできる分子はもちろん、アンチセンスRNAおよびDNAなどのネズミTRPM7活性、リボザイム、ならびに本明細書で説明されるような他の小さな核酸分子を調節することのできる候補生物活性薬についてスクリーニングする方法をも提供する。これらの薬剤はすべて、あるTRPM7遺伝子の発現をインビボで遮断するための治療薬として用いることができる。いくつかの実施態様において、該薬剤は、mRNAへのTRPM7遺伝子転写を防止し、TRPM7 mRNAのタンパク質への翻訳を阻害し、およびTRPM7タンパク質の既存の活性を遮断するために用いることができる。ウェスタンブロット法、ELISA、およびこれらに類するものなど、標準的なイムノアッセイは、TRPM7遺伝子発現に及ぼす効果を候補生物活性薬が有することを確認するために実施することができる。あるいは、TRPM7発現は、RT-PCRによって決定することができる。RT-PCRを実施する方法は、当該技術分野で公知であり、したがって、本明細書で説明していない。TRPM7チャネル活性に及ぼすこれらの分子の効果は、電流を測定すること、膜電位を測定すること、イオン流量を測定すること、および細胞生存を測定することを含み、本明細書に説明される種々のアッセイを用いて評価することができる。

いくつかの実施態様において、本発明は、TRPM7チャネルの二価または一価の陽イオン透過性を調節する分子を同定するための方法を提供する。

TRPM7チャネルの一価陽イオン透過性の調節は、例えば、候補生物活性薬の存在下および不在下での全細胞パッチクランプアッセイまたは単一チャネル膜パッチアッセイにおいて内向き電流および外向き電流を測定することによって決定することができる。代替的な実施態様において、一価陽イオン活性の調節は、TRPM7チャネルを含む細胞の陽イオン電流および/または膜電位の関数としてモニターすることができる。例えば、膜電位の調節は、ビス-(1,3-ジブチルバルビツール酸)トリメチンオキソノール(DiBAC4(3))などの膜電位感受性プローブを用いて検出することができる(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。蛍光性の膜電位感受性プローブの使用によって、蛍光検出を利用する高処理量スクリーニング法の使用を含み、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、および蛍光分光法のような方法を用いて蛍光の変化をモニターすることによって、膜電位の変化の迅速な検出が可能となる(Alvarez-Barrientos, et al., "Applications of Flow Cytometry to Clinical Microbiology", Clinical Microbiology Reviews, 13(2): 167-195, (2000))。

候補薬剤によるTRPM7チャネルの一価の陽イオンの透過性の調節は、TRPM7を発現する細胞を、一価の陽イオンおよび、シグナルを生じるために一価の陽イオンと反応する一価の陽イオン指示薬と接触させることによって決定することができる。一価の陽イオンの細胞内レベルは、候補生物活性薬の存在下および不在下で、指示薬シグナルを検出することによって測定することができる。加えて、TRPM7を発現する細胞と、TRPM7を発現しない細胞とにおける細胞内一価陽イオンレベルは、候補生物活性薬の存在下および不在下で比較することができる。

一価の陽イオン指示薬は、例えば、ナトリウム指示薬またはカリウム指示薬が挙げられる。ナトリウム指示薬の例として、SBFI、CoroNa Green、CoroNa Red、およびSodium Greenが挙げられる(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。カリウム指示薬の例として、PBFIが挙げられる(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。

本発明は、TRPM7チャネルの二価陽イオン透過性を調節する分子を同定するための方法を提供する。TRPM7チャネルは、亜鉛、ニッケル、バリウム、コバルト、マグネシウム、マンガン、ストロンチウム、カドミウム、およびカルシウムといった二価陽イオンに対して透過性がある(Harteneck, Arch Pharmacol 2005 371 :307-314)。TRPM7チャネルの二価陽イオン透過性の調節は、例えば、候補生物活性薬の存在下および不在下で、全細胞パッチクランプアッセイまたは単一チャネル膜パッチアッセイにおいて、内向き電流および外向き電流を測定することによって決定することができる。代替的な実施態様において、二価陽イオン活性の調節は、TRPM7チャネルを含む細胞の陽イオン電流および/または膜電位の関数としてモニターすることができる。

候補薬剤によるTRPM7の二価陽イオン透過性の調節は、TRPM7を発現する細胞を、二価陽イオンおよび、シグナルを生じるために二価の陽イオンと反応する二価の陽イオン指示薬と接触させることによって決定することができる。二価の陽イオンの細胞内レベルは、候補生物活性薬の存在下および不在下で、指示薬シグナルを検出することによって測定することができる。加えて、TRPM7を発現する細胞と、TRPM7を発現しない細胞とにおける細胞内二価陽イオンレベルは、候補生物活性薬の存在下および不在下で比較することができる。

二価陽イオン指示薬は、例えば、蛍光性マグネシウム指示薬が挙げられる。マグネシウム指示薬の例には、フラプトラ(furaptra)またはMagfura(Molecular Probes(商標), Invitrogen Detection Technologiesから市販)が挙げられる。

神経変性疾患の多くの形態は、カルシウムイオンに起因する。細胞内貯蔵からの過剰なCa2+流入または放出は、Ca2+負荷量を、Ca2+調節因子機構の能力を超過するレベルまで上昇させることがある(Aarts et al., Cell 2003 115:863-877)。本発明の方法には、TRPM7チャネルを流れるCa2+流量を検出する方法が含まれる。細胞内Ca2+レベルの水準は、例えば、Ca2+に特異的な指示薬を用いて検出可能である。Ca2+に特異的である指示薬には、fura-2、indo-1、rhod-2、fura-4F、fura-5F、fura-6Fおよびfura-FF、fluo-3、fluo-4、Oregon Green 488 BAPTA、Calcium Green、X-rhod-1、ならびにfura-redが挙げられるが、これらに限定されない(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 9th ed. Molecular Probes)。Ca2+負荷は、細胞におけるCa2+の蓄積を測定することによって決定することができる。例えば、Sattler et al, J. Neurochem, 1998 71, 2349-2364 and Aarts et al, Cell 2003 115:863-877を参照されたい。

細胞への一価および二価の陽イオンのレベルは両方とも、個別にまたは同時にのいずれかで測定することができる。例えば、Ca2+特異的指示薬は、Ca2+のレベルを検出するために用いることができ、一価の陽イオン特異的指示薬は、一価の陽イオンのレベルを検出するために用いることができる。いくつかの実施態様において、Ca2+指示薬および一価の陽イオン特異的指示薬は、指示薬からのシグナルが同時に検出することができるよう選択する。例えば、いくつかの実施態様において、両指示薬は、蛍光シグナルを有するが、両指示薬の励起スペクトルおよび/または発光スペクトルは、各指示薬からのシグナルを同時に検出することができるよう、異なっている。

二価陽イオンまたは一価陽イオンの両レベルおよび膜電位の変化は、同時に測定することができる。本実施態様において、Ca2+特異的指示薬は、Ca2+のレベルを検出するために用いることができ、膜電位感受性プローブは、膜電位の変化を検出するために用いることができる。Ca2+指示薬および膜電位感受性プローブは、指示薬およびプローブからのシグナルを同時に検出することができるよう選択されている。例えば、いくつかの実施態様において、指示薬およびプローブの両方は、蛍光シグナルを有するが、両指示薬の励起スペクトルおよび/または発光スペクトルは、各指示薬からのシグナルを同時に検出することができるよう、異なっている。

TRPM7チャネル調節の測定前に、TRPM7を活性化させるのが好ましい。RPM7チャネルは、MgATPレベルのミリモル濃度レベルによって活性化する(Nadler et al, Nature 2001 411 :590-595)。TRPM7は、候補調節薬によってTRPM7活性の調節を測定する前に、細胞外二価陽イオン濃度を変化させることによって活性化することができる。好ましくは、細胞外Ca2+濃度、細胞外Mg2+濃度、またはその両方が変化する。より好ましくは、このような変化は、細胞外Mg2+濃度の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%の低下を含む。また、好ましくは、このような変化は、細胞外Ca2+濃度の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%の低下を含む。また、好ましくは、このような変化は、細胞外Ca2+およびMg2+濃度の、本明細書に説明される程度までの同時の低下を含む。

TRPM7の活性は、TRPM7をコードする核酸とそれに作用可能に連結された誘導性プロモーターとを含むベクターを用いて形質転換された無処置の細胞、例えば、HEK-293細胞において測定することができる。プロモーターの誘導後、TRPM7ポリペプチドが産生され、TRPM7チャネルを形成する。TRPM7の内在性レベルを、誘導前に測定したのち、誘導後にも測定したTRPM7活性のレベルと比較することができる。一実施態様において、蛍光分子は、細胞内一価および二価陽イオンレベルを検出するために用いることができる。

ある実施態様において、候補生物活性薬は、例えば、脊椎動物の神経系の細胞など、種々の細胞におけるTRPM7チャネルを開くことができる。好ましい実施態様において、候補生物活性薬は、該神経系の細胞など、種々の細胞におけるTRPM7チャネルを閉じる、例えば、阻害する。好ましい候補生物活性薬は、TRPM7チャネルを閉鎖または阻害する。TRPM7チャネルの閉鎖または阻害は、例えば、虚血性損傷後のニューロン細胞死を防止または有意に低下させることができる。

さらに他の実施態様において、候補生物活性薬は、例えば、脊椎動物の神経系の細胞など、種々の細胞におけるTRPM7チャネルの発現を増加させることができる。好ましい実施態様において、候補生物活性薬は、例えば、該神経系の細胞など、種々の細胞におけるTRPM7チャネルの発現を低下、例えば阻害する。好ましい候補生物活性薬は、TRPM7チャネルの発現を阻害する。TRPM7チャネルの発現の阻害は、例えば、虚血性損傷後のニューロン細胞死を防止または有意に低下させることができる。

さらに他のある実施態様において、候補生物活性薬は、例えば、脊椎動物の神経系の細胞など、種々の細胞におけるTRPM7チャネル活性に依存する下流のシグナル伝達経路の活性を増強することができる。好ましい実施態様において、候補生物活性薬は、該神経系の細胞など、種々の細胞におけるTRPM7チャネル活性に依存する下流のシグナル伝達経路の活性を阻害する。好ましい候補生物活性薬は、TRPM7チャネル活性に依存する下流のシグナル伝達経路の活性を阻害する。TRPM7チャネル活性に依存する下流のシグナル伝達経路の阻害は、例えば、虚血性損傷後のニューロン細胞死を防止または有意に低下させることができる。

本発明は、細胞内のTRPM7の発現レベルを調節する候補生物活性薬を同定するための方法を提供する。細胞内のTRPM7の発現を全体的にまたは部分的に抑制または亢進し、それにより細胞の表現型を変化させる候補薬が用いることができる。これらの候補薬の例には、天然もしくは合成の低分子、アンチセンスcDNAおよびDNA、調節性結合タンパク質および/もしくは核酸、ならびにTRPM7をコードする核酸の転写もしくは翻訳を調節する本明細書に説明された他の候補生物活性薬のすべてが含まれる。

本発明における使用のために特に有用なアッセイは、関心対象の化合物が、本明細書に説明されるようなTRPM7チャネルを活性化する条件に曝露された、TRPM7を発現する細胞に及ぼす効果を測定する。例えば、このような細胞は、低細胞外Mg2+、低細胞外Ca2+、またはその両方の条件に曝露され得る(Wei et al., 2007)。TRPM7チャネルの活性化後に細胞生存または細胞死を測定し、対照細胞試料における細胞生存の量を、試験化合物で処理した細胞試料における細胞生存の量と比較することによって、試験化合物が、TRPM7活性の、およびTRPM7仲介性細胞損傷の調節因子であるかどうかを決定することができる。細胞生存を測定するためのアッセイは、当該技術分野で公知であり、例えば、死細胞から放出される乳酸脱水素酵素を測定するためのアッセイ、および生細胞におけるATPを測定するためのアッセイを含む。好ましい候補生物活性薬は、TRPM7チャネル活性化を受けた細胞を救出する。所望の場合、さらなる試験を実施して、該化合物が、TRPM7遺伝子発現または該タンパク質の生物活性に及ぼす効果を有したことを確認することができる。ウェスタンブロット法、ELISA、およびこれらに類するものなど、標準的なイムノアッセイを用いることができる。mRNAの測定のために、例えば、PCR、LCR、またはハイブリッド形成アッセイ、例えばノザンハイブリッド形成、RNase保護、ドットブロット法を用いる増幅が好ましい。タンパク質またはmRNAのレベルは、例えば、直接的にまたは間接的に標識された検出薬、例えば、本明細書に説明されるような蛍光標識または放射性標識された核酸、放射性標識または酵素標識された抗体、およびこれらに類するものを用いて検出することができる。化合物が、ネズミTRPM7活性または/および遺伝子もしくはタンパク質発現または/および細胞生存に及ぼす効果を有すると決定された後、該化合物は、例えば脳卒中を含む虚血性損傷のための動物モデル、特にネズミモデルにおいて用いることができる。

本発明の使用のための別の有用なアッセイは、酸素およびグルコースが与えられなかったTRPM7を発現する細胞に関心対象の化合物が及ぼす効果を測定する。酸素およびグルコースの拒否後の細胞生存または細胞死を測定し、対照細胞試料における細胞生存の量を、試験化合物で処理した細胞試料における細胞生存の量と比較することによって、試験化合物が、TRPM7活性のおよび虚血性死滅の調節因子であるかどうかを決定することができる。細胞生存を測定するためのアッセイは、当該技術分野で公知であり、例えば、死細胞から放出される乳酸脱水素酵素を測定するためのアッセイ、および生細胞におけるATPを測定するためのアッセイを含む。好ましい候補生物活性薬は、酸素およびグルコースを与えられなかった細胞を救出する。所望の場合、さらなる試験を実施して、該化合物が、本明細書に説明されるようなTRPM7遺伝子発現および該タンパク質の生物活性に及ぼす効果を有したことを確認することができる。

本明細書に説明されたアッセイのある実施態様において、TRPM7発現が誘導可能な細胞において実施される。TRPM7を発現する細胞に及ぼす関心対象の化合物の効果は、関心対象の化合物がTRPM7発現の誘導の前に、好ましくは、TRPM7発現の誘導の0〜3日前に及ぶ時点で該細胞と接触する場合に測定される効果と、関心対象の同じ化合物がTRPM7の活性化以降に、好ましくはTRPM7の活性化の0〜36時間後に及ぶ時点で適用される場合に該関心対象の化合物がTRPM7を発現する細胞に及ぼす効果と比較される。

本発明のいくつかの好ましい実施態様において、これらのアッセイにおいて用いられるTRPM7は、Swiss-Prot Q923J1 [マウス]、Q925B3[ラット]、またはQ96QT4[ヒト]において示されるようなアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有する。

説明される種々のスクリーニング方法は、実施するのに必要とされる時間の長さおよび生じた情報において相違する。多数の薬剤(例えば、10,000超)をスクリーニングするために、方法は、無作為な化合物に関して実施される一次高処理量スクリーンおよび、第一のスクリーンにおいて陽性結果を示す薬剤に関して実施される二次スクリーンと組み合わすことができる。有用な一次スクリーンは、(天然にまたは組換えでのいずれかで)TRMP7を発現する細胞の細胞死/細胞生存に及ぼす薬剤の効果を測定することである。一般的には、TRMP7は、培地中の二価イオン(例えば、CaまたはMg)の濃度を低下させることによって、該アッセイを実施する前に活性化する。該濃度は、培地を交換することによって、または単純に希釈によって変化することができる。薬剤の不在下で、細胞の有意な部分が死滅する。しかしながら、いくつかの薬剤は、細胞死に対して保護機能を有する。この保護機能は、細胞死または細胞生存の任意の測定法から評価することができる。細胞死および細胞生存が相反事象であるので、1つの測定は、もう1つの基準として効果的に機能する。該アッセイによって同定されたいくつかの薬剤は、細胞死を阻害し、または言い換えれば、細胞生存を促進する。他の薬剤は、細胞死を促進しまたは細胞生存を阻害する逆効果を有する。他の薬剤は、このようなアッセイにおいて効果を有さない。このような効果は一般的には、試験されている薬剤が存在しない対照アッセイに相対的に示される。一次スクリーンによって同定された薬剤は、TRPM7仲介性細胞死の阻害剤または活性化因子である。しかしながら、該薬剤は、TRPM7の発現または機能的活性を阻害するよう直接的に作用する必要はない。例えば、いくつかの薬剤は、TRPM7仲介性細胞の死滅が生じる分子経路において逆流または順流であり得る。

二次アッセイは、一次アッセイにおけるTRPM7仲介性細胞死を阻害または促進することが見つかった薬剤に関して実施することができる。二次アッセイは、実施例において説明されるようなTRMP7イオンチャネルに流れるイオン電流に及ぼす効果を測定する。このようなイオン電流を阻害または促進する能力は、該薬剤が、チャネルに直接的であり得るが、上流の活性化を介して間接的でもあり得るTRPM7活性に及ぼす特異的な効果を有することを示す。

追加的な第三のアッセイは、本明細書に説明される疾患のいずれかを含む疾患の細胞モデルまたは動物モデルにおける疾患の治療または予防における薬理学的活性についてさらに試験することのできるTRPM7チャネルにおけるイオン電流を阻害または促進することが見つかった薬剤に関して実施することができる。このようなモデルには、脳卒中を含む虚血の細胞モデルおよび動物モデルが含まれる。疾患モデル、癌、疼痛、または緑内障において(例えば、梗塞の大きさを減少させまたは認知障害を低下させる)正の活性を有する薬剤は、臨床治験へと順方向で実施することができ、次に、本明細書に説明されるものなど、医薬として適応症において用いることができる。

追加的なアッセイは、先に説明した一次、二次、および三次アッセイとの組み合わせで実施することができる。例えば、一次アッセイの後に、一次アッセイから正の結果を示す薬剤に関する用量反応分析を実施することは有用であり得る。用量反応の存在は、偽陽性に対する安全策を提供し、同様に、異なる薬剤の効力のより正確な比較および二次アッセイにどの薬剤を順方向に進ませるかに関する選択を可能にする。

実施することのできる他のアッセイには、薬剤がTRPM7タンパク質に、TRPM7を阻害すること、またはTRPM7タンパク質の発現を阻害することが公知の化合物と任意に競合して結合するかどうかを決定することが含まれる。このようなアッセイは、先に説明する一次スクリーンの前または後に実施することができ、より大きなプールからTRPM7またはその発現に特異的に作用する薬剤を選択する上で有用である。

A.候補生物活性薬 本明細書で用いるような「調節因子」、「候補物質」、「候補生物活性薬」、「薬剤候補」、「薬剤」「化合物」という用語または文法的な等価物は、標的の遺伝子、タンパク質、または細胞の活性を直接的にまたは間接的に変化させることのできる生物活性薬について試験するべき任意の分子、例えば、タンパク質、オリゴぺプチド、低分子有機分子、多糖、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンス、siRNA)を説明する。したがって、本明細書で用いるような「候補生物活性薬」という用語は、TRPM7に結合し、TRPM7イオンチャネルの活性を調節し、細胞内でのTRPM7の発現を変化させ、またはTRPM7依存性下流経路を阻害することによって細胞に及ぼすTRPM7チャネル活性化の損傷効果を低下させる、任意の分子を説明する。候補薬剤は、イオンチャネルタンパク質に結合することが公知のもしくは結合すると思われる、またはイオンチャネルタンパク質の活性を調節することが公知の、あるいは、細胞内でイオンチャネルタンパク質の発現を変化させる生物活性薬であり得る。候補薬剤は、イオンチャネルタンパク質に結合することが公知のもしくは結合すると思われる、またはイオンチャネルタンパク質の活性を調節することが公知の、あるいは細胞内でイオンチャネルタンパク質の発現を変化させる生物活性薬の模倣薬でもあり得る。特に好ましい方法において、候補薬剤は、応答を誘導し、または示すような応答、例えば、虚血性損傷後のニューロン細胞死の低下を維持する。

候補薬剤は、数多くの化学薬品クラスを包含するが、一般的には有機分子である。候補薬剤は、合成または天然の化合物のライブラリーを含む、広範な種々の材料から得られる。例えば、数多くの手段は、無作為化されたオリゴヌクレオチドの発現を含む、広範な種々の有機化合物および生体分子の無作為なおよび定方向の合成に利用可能である。あるいは、細菌、真菌植物、および動物の抽出物の形態での天然化合物のライブラリーは、入手可能であるかまたは容易に製造される。加えて、天然のまたは合成で製造されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段を通じて容易に修飾される。公知の薬理学的薬剤は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの定方向のまたは無作為な化学的修飾に供され、構造的類似体を生じることができる。

B.組み合わせの化学物質ライブラリー 本発明は、ネズミTRPM7活性の調節因子(例えば、阻害剤、活性化因子)について同定/スクリーニングするための方法を提供する。本発明のスクリーニング方法を実施する上で、候補化合物が提供される。組み合わせの化学物質ライブラリーは、新たな化合物の発生を例えばネズミTRPM7活性を阻害する化合物についてもたらすのを助けるための1つの手段である。組み合わせの化学物質ライブラリーは、試薬などのいくつかの化学的「構築ブロック」を組み合わせることによって化学的合成または生物学的合成のいずれかによって生じた多様な化合物の集まりである。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの線形の組み合わせの化学物質ライブラリーは、所与の化合物長のためのあらゆる可能性のある方法でアミノ酸と呼ばれる化学的構築ブロックのセット(すなわち、ポリペプチド化合物におけるアミノ酸の数)を組み合わせることによって形成される。何百もの化合物が、化学的構築ブロックのこのような組み合わせ混合を通じて合成することができる。例えば、100の互換可能な化学的構築ブロックの系統だった組み合わせ混合は結果的に、1億の四量体化合物または100億の五量体化合物の理論的合成を生じる(例えば、Gallop et al, J. Med. Chem. 1994, 37: 1233-1250参照)。組み合わせの化学物質ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知である(例えば、米国特許第6,004,617号、第5,985,356号参照)。このような組み合わせの化学物質ライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号、Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 1991, 37: 487-493、Houghton et al, Nature 1991, 354: 84-88)が含まれるが、これらに限定されない。化学的多様性ライブラリーを生じるための他の化学論には、ペプチド(例えば、WO 91/19735参照)、コードされたペプチド(例えば、WO 93/20242参照)、ランダムな生体オリゴマー(例えば、WO 92/00091参照)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号参照)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどの多様体(diversomer)(例えば、Hobbs, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 1993, 90: 6909-6913参照)、ビニル性ポリペプチド(例えば、Hagihara, J. Amer. Chem. Soc. 1992, 114: 6568参照)、ベータ-D-グルコース足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣薬(例えば、Hirschmann, J. Amer. Chem. Soc. 1992, 114: 9217-9218参照)、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(例えば、Chen, J. Amer. Chem. Soc. 1994, 116: 2661参照)、オリゴカルバマート(例えば、Cho, Science 1993, 261 : 1303参照)、ならびに/またはぺプチジルホスホナート(例えば、Campbell, J. Org. Chem. 1994, 59: 658参照)が含まれるが、これらに限定されない。また、Gordon, J. Med. Chem. 1994, 37: 1385、核酸ライブラリーについてはペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリーについては例えば、Vaughn, Nature Biotechnology 1996, 14: 309-314を、炭化水素ライブラリーについては例えば、Liang et al, Science 1996, 274: 1520-1522、米国特許第5,593,853号を、低分子有機分子ライブラリーについては、例えば、イソプレノイドについては米国特許第5,569,588号を、チアゾリジノンおよびメタチアザノンについては米国特許第5,549,974号を、ピロリジンについては、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号を、モルフォリノ化合物については、米国特許第5,506,337号を、ベンゾジアゼピンについては米国特許第5,288,514号を参照されたい。

組み合わせのライブラリーの調製のための装置は、市販されている(例えば、米国特許第6,045,755号、第5,792,431号、357 MPS、390 MPS参照)(Advanced Chem Tech, Louisville Ky., Symphony, Rainin, Woburn, Mass., 433 A Applied Biosystems, Foster City, Calif, 9050 Plus, Millipore, Bedford, Mass.)。いくつかのロボットシステムも固相化学法のために開発されている。これらの系には、例えば、武田薬品工業株式会社(日本、大阪)によって開発された自動合成装置および化学者によって実施される手動合成操作を模倣するロボットアームを利用する多くのロボットシステム(Zymate II, Zymark Corporation, Hopkinton, Mass.、Orca, Hewlett-Packard, Palo Alto, Calif.)のような自動ワークステーションが含まれる。先の装置はいずれも、本発明とともに使用するのに好適である。加えて、数多くの組み合わせのライブラリーはそれ自体市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J.、Asinex, Moscow, Ru、Tripos, Inc., St. Louis, Mo.、ChemStar, Ltd, Moscow, RU、3D Pharmaceuticals, Exton, Pa.、Martek Biosciences, Columbia, Md.、およびこれらに類するものを参照)。

ネズミTRPM7遺伝子または遺伝子産物の調節因子として試験される化合物は、タンパク質、例えば、抗体もしくはペプチド、糖、核酸、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドもしくはRNAi、またはリボザイム、または脂質などの、任意の低分子有機分子または生物学的実体であり得る。あるいは、調節因子は、ネズミTRPM7タンパク質の遺伝子変化したバージョンであり得る。一般的には、試験化合物は、低分子有機分子(1000Da以下の、および通常は500Da以下の分子量)、ペプチド、脂質、および脂質類似物である。

本質的にいずれの化合物も、本発明のアッセイにおける可能性のある調節因子またはリガンドとして用いることができるが、最もよく使われる化合物は、用いられる水性または有機の(特にDMSOベースの)溶液において溶解することができる。該アッセイは、アッセイ工程を自動化し、(例えば、ロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイターフォーマットにおいて)並行して一般的に実行されるアッセイに、任意の簡便な材料から化合物を提供することによって、大きな化学物質ライブラリーをスクリーニングするよう設計されている。Sigma(St. Louis, Mo.)、Aldrich(St. Louis, Mo.)、Sigma-Aldrich(St. Louis, Mo.)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika(Buchs Switzerland)、およびこれらの類似企業を含む、化学的化合物の多くの供給元があることは認識されるであろう。

一実施態様において、高処理量スクリーニング方法は、多数の可能性のある治療化合物(可能性のある調節因子またはリガンド化合物)を含有する組み合わせの低分子有機分子またはペプチドライブラリーを提供することを包含する。このような「組み合わせの化学物質ライブラリー」または(先に説明したような)「リガンドライブラリー」を次に、本明細書に説明するような1以上のアッセイにおいてスクリーニングし、所望の特徴的活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学物質種またはサブクラス)を同定する。このように同定された化合物は、従来の「リード化合物」として機能することができるか、またはそれ自体可能性のあるまたは実際の治療薬として用いることができる。

C.固相状態のおよび可溶性の高処理量アッセイ ある実施態様において、本発明は、リガンド結合ドメイン、活性部位、およびこれらに類するものなどのドメイン、異種性タンパク質に共有結合して、キメラ分子を作製するドメイン、ネズミTRPM7、天然のまたは組換えのいずれかのネズミTRPM7を発現する細胞もしくは組織などの分子を用いる可溶性アッセイを提供する。別の実施態様において、本発明は、高処理量フォーマットにおける固相ベースのインビトロアッセイを提供し、該アッセイにおいて、ドメイン、キメラ分子、ネズミTRPM7、またはネズミTRPM7を発現する細胞もしくは組織は、固相基質に結合している。

本発明の例示的な高処理量アッセイにおいて、単一日に最大数千の異なる調節因子またはリガンドをスクリーニングすることは可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択された可能性のある調節因子に対して個別のアッセイを実施するために用いることができ、または、濃度もしくはインキュベーション時間の効果が観察されるべきである場合、5〜10ごとのウェルは、単一の調節因子を試験することができる。したがって、単一の標準的なマイクロタイタープレートは、約100(例えば、96)の調節因子をアッセイすることができる。1536のウェルプレートを用いる場合、単一のプレートは、約100〜1500の異なる化合物から容易にアッセイすることができる。1日当たりいくつかの異なるプレートをアッセイすることは可能であり、最大約6,000〜20,000の異なる化合物についてのアッセイスクリーンは、本発明の統合された系を用いて可能である。

関心対象の分子は、直接的にまたは間接的に、共有結合または非共有結合を介して、例えば、タグを介して、固相状態成分に結合することができる。タグは、種々の成分のうちのいずれかであり得る。一般的に、タグを結合する分子(タグ結合剤)は、固相支持体に固定され、関心対象のタグ付けされた分子は、タグとタグ結合剤との相互作用によって固相支持体に結合する。

いくつかのタグおよびタグ結合剤は、文献に十分に説明された公知の分子相互作用に基づいて用いることができる。例えば、タグが、天然結合剤、例えば、ビオチン、プロテインA、またはプロテインGを有する場合、適切なタグ結合剤(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、免疫グロブリンのFc領域、およびこれらに類するもの)とともに用いることができる。ビオチンなどの天然結合剤を有する分子に対する抗体も、広く入手可能であり、適切なタグ結合剤であり、SIGMA Immunochemicals 1998 catalogue SIGMA, St. Louis Mo.を参照されたい。

同様に、任意のハプテン化合物または抗原性化合物は、適切な抗体とともに用いられ、タグ/タグ結合対を形成することができる。何千もの特異的抗体が市販されており、多くの追加的な抗体は文献に説明されている。例えば、1つの共通の立体配置において、タグは第一の抗体であり、タグ結合剤は、第一の抗体を認識する第二の抗体である。抗体-抗原相互作用に加えて、受容体-リガンド相互作用もタグ、およびタグ結合剤対として適切である。例えば、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、トランスフェリン、c-キット、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体および抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー、およびこれらに類するもの、例えば、Pigott et al., The Adhesion Molecule Facts Book 1 , 1993を参照)である。同様に、毒素および毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、アヘン剤、ステロイド、およびこれらに類するもの)、細胞内受容体(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイド、およびビタミンDを含む、種々の低分子リガンドの効果を仲介するもの、ペプチド)、薬剤、レクチン、糖類、核酸(線形および環状重合体立体配置)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質、ならびに抗体はすべて、種々の細胞受容体と相互作用することができる。

ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド、およびポリアセタートなど、合成高分子も、適切なタグまたはタグ結合剤を形成することができる。本開示の再吟味の際に当業者に明らかであろうように、他の多くのタグ/タグ結合剤対も本明細書に説明されるアッセイ系において有用である。

ペプチド、ポリエーテル、およびこれらに類するものなど、普遍的なリンカーも、タグとして機能することができ、約5〜200のアミノ酸のポリgly配列などのポリペプチド配列を含む。このような柔軟なリンカーは、当業者に公知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Ala.から入手可能である。これらのリンカーは、任意に、アミド結合、スルフヒドリル結合、またはヘテロ官能性結合を有する。

タグ結合剤は、現に利用可能な種々の方法のいずれかを用いて、固体基質に固定することができる。固体基質は、該基質のすべてまたは部分を、タグ結合剤の一部と反応性のある表面に化学基を固定する化学試薬に曝露することによって普遍的に誘導体化されまたは官能性を持たせられる。例えば、より長い鎖部分への結合に好適な基には、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、およびカルボキシル基が含まれるであろう。アミノアルキルシランおよびヒドロキシアルキルシランは、ガラス表面など、種々の表面に官能性を持たせるために用いることができる。このような固相生体高分子アレイの構築は、文献において十分に説明されている(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 1963 85: 2149-2154(例えば、ペプチドの固相合成を説明)、Geysen et al, J. Immun. Meth. 1987 102: 259-274(ピン上での固相成分の合成を説明)、Frank et al, Tetrahedron 1988, 44: 6031-6040(セルロースディスク上での種々のペプチド配列の合成を説明)、Fodor et al, Science, 1991, 251 : 767-777、Sheldon et al, Clinical Chemistry 1993, 39: 718-719、およびKozal et al, Nature Medicine 1996, 7: 753-759(すべて、固体基質に固定された生体分子のアレイを説明)参照)。タグ結合剤を基質に固定するための非化学的アプローチには、熱、紫外線照射による架橋結合、およびこれらに類するものなど、他の普遍的な方法が含まれる。

D.計算機ベースのアッセイ ネズミTRPM7活性を調節する化合物は、計算機システムを用いて、アミノ酸配列によってコードされる構造情報に基づいたネズミTRPM7の三次元構造を生じる計算機援用薬剤設計によっても決定することができる。入力されたアミノ酸配列は、計算機プログラムにおけるあらかじめ確立されたアルゴリズムと直接的にかつ活発に相互作用し、該タンパク質の二次、三次、および四次構造モデルを生じる。タンパク質構造のモデルは次に、例えば、リガンドを結合する能力を有する構造の領域を同定するために検討される。これらの領域は次に、該タンパク質に結合するリガンドを同定するために用いられる。

前記タンパク質の三次元構造モデルは、少なくとも10のアミノ酸残基からなるネズミTRPM7アミノ酸配列を計算機システムに入力すること、またはネズミTRPM7ポリペプチドをコードする核酸配列を計算機システムに対応することによって生じる。該ポリペプチドのアミノ酸配列または該ポリペプチドをコードする核酸は、本明細書に提供される配列およびその保存的に修飾されたバージョンからなる群から選択される。該アミノ酸配列は、該タンパク質の構造情報をコードする、該タンパク質の一次配列またはサブシーケンスを表す。該アミノ酸配列の少なくとも10の残基(または10のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列)は、計算機キーボード、電子記憶媒体(例えば、磁気フロッピーディスク、テープ、カートリッジ、およびチップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)、インターネットサイトおよびRAMによって分配される情報を含むが、これらに限定されない計算機可読基体に入力される。該タンパク質の三次元構造モデルは次に、当業者に公知のソフトウェアを用いて、アミノ酸配列と計算機システムとの相互作用によって生じる。該タンパク質の三次元構造モデルは、計算機可読形態に保存することができ、さらなる分析(例えば、該タンパク質の可能性のあるリガンド結合領域を同定し、該遺伝子の突然変異、対立遺伝子、および該遺伝子の種間同族体のスクリーニングすること)のために用いることができる。

アミノ酸配列は、関心対象のタンパク質の二次、三次、および四次構造を形成するのに必要な情報をコードする一次構造を表す。ソフトウェアは、構造モデルを生じるために、一次配列によってコードされるあるパラメータを見る。これらのパラメータは、「エネルギー項」と呼ばれ、主として、静電位、疎水性電位、溶媒到達可能表面、および水素結合を含む。二次エネルギー項には、ファンデルワールス電位が含まれる。生物学的分子は、累積的な様式でエネルギー項を最小化する構造を形成する。計算機プログラムはそれゆえ、一次構造またはアミノ酸配列によってコードされるこれらの項を用いて、二次構造モデルを作成する。

二次構造によってコードされるタンパク質の三次構造は次に、二次構造のエネルギー項を基にして形成される。この点におけるユーザーは、タンパク質が膜結合型かまたは可溶性か、体内におけるその位置、およびその細胞位置、例えば、細胞質、表面、または核などの追加的な変数を入力することができる。これらの変数を二次構造のエネルギー項とともに用いて、三次構造のモデルを形成する。三次構造をモデル化する上で、計算機プログラムは、二次構造の疎水性面をそれに類するものと、二次構造の親水性面をそれに類するものと符合させる。

一旦、構造が生じると、可能性のあるリガンド結合領域は、計算機システムによって同定される。可能性のあるリガンドについての三次元構造は、先に説明したように、アミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列または化合物の化学式を入力することによって生成される。次に、可能性のあるリガンドの三次元構造は、ネズミTRPM7タンパク質の三次元構造と比較され、ネズミTRPM7に結合するリガンドを同定する。タンパク質とリガンドの間の結合親和性は、エネルギー項を用いて決定され、どのリガンドが、タンパク質に対する結合の確率上昇を有するかを決定する。ソフトウェアは次に、候補リガンドのタンパク質に対する親和性を修飾する(例えば、亢進または低下させる)ために、候補リガンドの構造を修飾するように用いることもできる。したがって、各候補リガンドは、計算機システムによって他の候補リガンドの発生についての「リード化合物」として用いられ得る。可能性のあるリガンドについての三次元構造およびリガンドの結合親和性などの結果は、計算機可読形態に保存することもでき、さらなる分析(例えば、リガンドに対する変化した結合親和性を有する突然変異したタンパク質の三次元モデルを発生させること、または化学分析のために追加的な候補リガンドのリストを発生させること)のために用いることができる。

9.本発明の好ましい化合物 本発明は、化合物のいくつかの属および例を提供する。該化合物は、医薬として許容し得る塩としてまたは医薬組成物として提供され得る。化合物の機能的特性には、TRPM7への特異的結合、TRMP7仲介性細胞死を阻害すること、TRPM7電流を阻害すること、(とりわけ)実施例のアッセイのいずれかにおいて示されるような、本明細書に開示される組織のいずれかにおける虚血の損傷効果(例えば、細胞死)を阻害すること、(とりわけ)実施例におけるアッセイのいずれかによって示されるような、本明細書に開示される種類のうちのいずれかの癌の増殖、毒性、もしくは転移を阻害すること、および/または緑内障の損傷効果(例えば、細胞死)を阻害することのうちのいずれかあるいはすべてが含まれる。好ましい化合物は、本明細書に説明されるTRPM7阻害剤または候補生物活性分子の特性のうちのいずれかまたはすべてを呈する。例えば、好ましい化合物は、表3における化合物によって示されるように、哺乳類細胞のTRMPM7仲介性細胞死を少なくとも30、40、50、60、70、または80%阻害する。このようなアッセイにおいて用いられるTRPM7は、ヒト(Swiss prot Q96QT4)、マウス、または他の哺乳類起源であり得る。同様に、機能的特性を示すために用いる細胞または動物の系は、ヒト、マウス、または他の哺乳類であり得る。化合物の主要な治療用途は、通常ヒトを治療することにあるので、結合効果および他の機能的効果が、ヒト起源の材料に関して生じることが好ましい。

いくつかの化合物は、式I:

のものであり、式中、

は、単結合または二重結合であり、 Z、Z'、J、J'、E、E'、L、M、およびM'は各々独立して、S、O、N、またはCであり、式中、NまたはCは各場合において、X、X'、Y、またはY'にさらに共有結合することができ、 XおよびX'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族もしくはヘテロ芳香族であり得、または結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、 YおよびY'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族もしくはヘテロ芳香族であり得、または結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、 Aは、NRa、SO2、(CR1R2)x、または−(CR1=CR2)-xであり、式中、xは、0〜4の整数であり、 Dは、カルボニル、スルホキシド、O、S、または(CR3R4)yであり、式中、yは、0〜4の整数であり、 Gは、NRb、SO2、(CR5R6)z、または-(CR5=CR6)-zであり、式中、zは0〜4の整数であり、 Uは、C-(R7)qまたはNであり、式中、C-R7は、pが0の場合カルボニルを形成するよう互いに取られ得、またはR7は下記に説明される通りであり、 pは1または0であり、 qは1または0であり、 tは1または0であり、 uは1または0であり、 Rは、水素、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、および任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 R'は、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、および任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 あるいは、RおよびR'は、任意に置換された5〜10員の環、二環、複素環、または複素二環式環を形成するようUとともに取られ、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、かつ R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、Ra、およびRbは各々独立して、水素、任意に置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。

このような化合物の例として、M4、M5、M6、M9、M17、M21、M29(図11〜16)ならびにC04、C06、CIO、C07、C08、C13、C15、D03、D11、D19、E07、E09、G17、G18、H06、H16、H21、I04、I14、I08、I10、I20、J08、K06、K16、C07、C11、C20、D09、D19、E18、F18、G11、G16、H19、およびH20が挙げられる(表3)。

いくつかのこのような化合物は、式II

のものであり、式中、 Zは、S、O、N-H、またはC-Hであり、 Xは、ハロゲンであり、 YおよびY'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、式中、該環は、芳香族もしくはヘテロ芳香族であり得、または結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、 Aは、NRaまたは(CR1R2)xであり、式中、xは0〜4の整数であり、 Dは、カルボニルまたは(CR3R4)yであり、式中、yは0〜4の整数であり、 Gは、NRbまたは(CR5R6)zであり、式中、zは、0〜4の整数であり、 Uは、C-(R7)qまたはNであり、式中、互いに取られるC-R7は、カルボニルであり、かつpは0であり、またはR7は下記に説明される通りであり、 pは1または0であり、 qは1または0であり、 Rは、水素、任意に置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、または任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、もしくは複素二環式環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 R'は、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 あるいは、RおよびR'は、任意に置換された5〜10員の環、二環、複素環、または複素二環式環を形成するようUとともに互いに取られ、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、かつ R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、Ra、およびRbは各々独立して、置換C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。

いくつかのこのような化合物は、R、R'、およびUが、

からなる群から選択される環を形成するよう互いに取られる構造を有し、 式中、V、V1、V2、V3、およびV4は、各場合において、N、C、およびOからなる群から独立して選択され、この中で、NまたはCは、Q"、Q1、Q2、Q3、Q4、またはQ5にさらに共有結合することができ、 gは、0、1、または2であり、かつ Q、Q'、Q"、Q1、Q2、Q3、Q4、およびQ5は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族、任意に置換されたC5-C7アリール-チアミドもしくはヘテロアリール-チアミド、任意に置換されたC5-C7アリール-カルボキシもしくはヘテロアリール-カルボキシ、任意に置換されたC5-C7アリール-(C1-C6)アルキルもしくはヘテロアリール-(C1-C6)、または結合するCとともにカルボニルを形成するOであり得る。

いくつかのこのような化合物において、前記環は、以下の構造

を有する。

いくつかのこのような化合物において、式IIにおけるZはSであり、ならびに/またはXは塩素であり、ならびに/またはYおよびY'は各々水素であり、ならびに/またはDはカルボニルであり、xは0であり、かつyは0である。いくつかのこのような化合物において、QおよびQ'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、およびハロゲンからなる群から選択される。例えば、Qは、水素、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチル、エチル、またはプロピルであり得、かつQ'は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチル、エチル、またはプロピルであり得る。

表3由来の化合物C10、C07、C08、およびD08は以下の構造

を有する。

M6およびいくつかの関連化合物は、式III

の化合物によって表されることができる。

いくつかのこのような化合物において、ZはSであり、Xは塩素であり、YおよびY'は各々水素であり、かつUはC-(R7)qである、いくつかの化合物において、RおよびR'は、任意に置換された5〜10員の環、二環、複素環、または複素二環式環を形成するようUとともに取られ、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。M6は、構造

を有する。

式IIのいくつかの化合物において、Dは、カルボニルであり、Xは0であり、Zは0であり、かつUはNである。いくつかのこのような化合物において、Rは、水素、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、および任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、かつR'は、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、および任意に置換された5〜10員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。いくつかのこのような化合物において、Rは、水素またはC1-C6アルキルであり、かつR'は置換C1-C6アルキルである。このような構造を有するいくつかの例示的な化合物は、表3由来のC15およびD03である。

式Iのいくつかの化合物は、式IV

の構造を有する。

いくつかのこのような化合物において、E、E'、M、およびM'のうちの1つはC-Yであり、かつその他はC-Hである。いくつかのこのような化合物において、Yは、水素、ヒドロキシル、ならびに任意に置換された飽和もしくは不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6アルコキシカルボニルからなる群から選択され、または結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、かつXならびにX'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、ならびに任意に置換される飽和もしくは不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6アルコキシカルボニルであり、または結合するCとともにカルボニルを形成するOである。M21および関連化合物は、この式の好ましい例であり、式V

によって表されることができる。

式Vのいくつかの好ましい化合物において、Yは、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、またはハロゲンであり、X’は、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、もしくはハロゲンであるかまたは、結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、Xは、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、もしくはハロゲンであるかまたは、結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、Jは、C-H、CH2、またはOである。いくつかのこのような化合物において、Aは、(CR1R2)xまたは-(CR1=CR2)-xであり、式中、xは、0〜1の整数であり、Dは、(CR3R4)yであり、式中、yは0であり、Gは、(CR5R6)zであり、式中zは0である。いくつかのこのような化合物において、RおよびR’は、任意に置換された5〜10員の環、複素環、または複素二環式環を形成するようUとともに互いに取られ、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。いくつかのこのような化合物は、式VI

のものであり、式中、 X'は、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、またはC1-C6アルキルであり、 Yは、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、またはC1-C6アルキルであり、かつ QおよびQ'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。

このような化合物の好ましい例は、構造

を有するM21である。

このような化合物の他の好ましい例は、式VIIまたは式VIII

を有し、式中、 Yは、水素、ヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、またはC1-C6アルキルであり、かつ QおよびQ'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、シアノ(C1-C6)アルキル、ニトロ、任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族、任意に置換されたC5-C7アリール-チアミドもしくはヘテロアリール-チアミド、任意に置換されたC5-C7アリール-カルボキシもしくはヘテロアリール-カルボキシ、任意に置換されたC5-C10アリール-S-、任意に置換されたフェニル-SO2-、任意に置換されたフェニル-NH(CO)-、および任意に置換されたC5-C7アリール-(C1-C6)アルキルもしくはヘテロアリール-(C1-C6)アルキルであり得、または結合するCとともにカルボニルを形成するOである。

いくつかのこのような化合物において、QおよびQ'は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、任意に置換されたフェニル(C1-C6)アルキル、C1-C6アルコキシ、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。

2つの例示的なこのような化合物は、表3に示されるようなI20およびE09である。

M11によって表される他の化合物および関連化合物は、式IX:

によって表され、式中、 Eは、C-R20、N、S、またはOであり、 R20、R21、R22、およびR23は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 Aは、NRc、SO2、もしくはカルボニルであり、 Gは、NRc、SO2、もしくカルボニルであり、 またはCR22R23およびAは互いに、6員もしくは7員の複素環を形成し、 Dは、CR24R25もしくは-CR24=CR25であり、式中、 R24およびR25は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和のC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロからなる群から選択され、 nは、0〜5の整数であり、 pは、0〜5の整数であり、かつ Uは、CR26R27R28であり、式中、 R26は、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、および任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環からなる群から選択され、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 R27は、-T'-R29であり、式中、T'はO、S、または-(C=C)-であり、かつR29は、任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、 R28は、水素、ヒドロキシル、またはC1-C6アルキルであり、 あるいは、Uは、任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、但し、AおよびGのうちの1つがカルボニルまたはSO2であり、かつその他がNRcであるという条件付きである。

いくつかのこのような化合物において、Uは、CR26R27R28である。いくつかのこのような化合物において、R26は、任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、T'は、Sまたは-(C=C)-であり、R29は、任意に置換された5〜7員の環、複素環、二環、または複素二環式環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、かつR28は水素である。いくつかのこのような化合物において、R26は、任意に置換された6員環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得、かつR29は、任意に置換された6員環であり、この中で、該環は、芳香族またはヘテロ芳香族であり得る。

いくつかのこのような化合物は、式X:

によって表され、式中、 R30、R31、R32、およびR33は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノ、およびニトロからなる群から選択される。いくつかのこのような化合物において、R21、R30、R31、R32、およびR33は各々独立して、水素およびハロゲンからなる群から選択され、nは0であり、pは0であり、かつEはC-R20であり、式中、R20は水素である。

M11は、構造

を有する。

図11〜図16のM14およびM15ならびにC21、D18、E06、F11、F14、F16、G10、I11、I17、M11、F11、F15、F20、F22、J03、J05、J14、J17、J21、L07、およびL14によって表される他の化合物(表3)は、式XI:

の構造を有し、式中、

は、単結合または二重結合であり、 A、B、D、E、およびGは互いに独立して、S、O、N、またはCであり、この中で、各場合におけるNまたはCは、L、L'、R40、またはR41にさらに共有結合することができ、但し、A、B、D、E、およびGのうちの少なくとも2つがC以外であるという条件付きであり、 Lは、

が二重結合である場合、-CR44R45-、-CR44R45-SO2-、-CR44R45-S-、C1-C6アルケニル、カルボニル、SO2、または-CR44-であり、 Qは、1または0であり、 R42は、任意に置換された5〜7員の芳香環またはヘテロ芳香環であり、 R40およびR41は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和もしくは不飽和のC1-C6アルキル、(C1-C6)アルキル-S-(C1-C6)アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノメチル、シアノ、およびニトロからなる群から選択され、または結合するCとともにカルボニルを形成するOであり、 L'は、カルボニル、(CO)O、SO2、-(CR46R47)m-、ピペリジニル、ピペラジニルであり、 mは、0〜4の整数であり、 L"は、O、S、(CO)NH、(COO)NH、または-(CR46=CR47)n-であり、 nは、1〜4の整数であり、 sは、1または0であり、 tは、1または0であり、かつ R43は、水素または任意に置換された5〜7員の芳香環またはヘテロ芳香環である。

いくつかのこのような化合物において、qは0であり、かつR42は、単置換、二置換、または三置換の5員または6員の芳香環またはヘテロ芳香環である。いくつかのこのような化合物において、R42は、単置換、二置換、または三置換フェニルである。いくつかのこのような化合物は、式XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびXIX

のうちのいずれかの構造を有する。

いくつかのこのような化合物は、式XII

の構造を有し、式中、 qは0であり、 R42は、単置換、二置換、または三置換フェニルであり、 R40およびR41は各々独立して、水素、ヒドロキシル、任意に置換された飽和または不飽和のC1-C6アルキル、(C1-C6)アルキル-S-(C1-C6)アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、アミノ、C1-C6アルキルアミノ、ジ-(C1-C6)アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、シアノメチル、およびシアノからなる群から選択され、 L'は、-(CR46CR47)m-であり、 式中、mは、1〜3の整数であり、 L"は、Sまたは-(CR46=CR47)n-であり、 sは、1であり、 tは、1であり、かつ R43は、任意に置換された5〜7員の芳香環またはヘテロ芳香環である。いくつかのこのような化合物において、R40およびR41は各々独立して、水素およびC1-C6アルキルからなる群から選択され、かつ R43は、単置換、二置換、または三置換フェニルである。

M14およびM15は、下記に示されるようにこのような構造の例である。

TRPM7仲介性細胞死を阻害する30の好ましい薬剤を図11〜16に示す。これらの薬剤はすべて、先に説明された一次スクリーンにおけるTRPM7仲介性細胞死を阻害した。これらの薬剤のほとんどは、異なる用量反応効果を示した。少なくとも薬剤番号5、6、7、11、14、および21を含むこれらの薬剤のいくつかは、TRPM7を流れるイオン電流を阻害した(すべての薬剤を試験したわけではなかった)。該薬剤は、表に示されるような種々の細胞および動物疾患モデルにおいても試験した。各場合において、アッセイが実施されたことを該図が示す場合、結果は陽性であった(すなわち、該薬剤は、背景レベルを上回って阻害した)。該図が、化合物について特定のアッセイを示さない場合、該アッセイは実施されなかった。

M5は、癌、特に網膜芽細胞腫、乳癌、黒色腫、副腎癌、および子宮頚癌の治療または予防におけるM5および関連化合物の証拠を提供する種々の癌細胞株の増殖を阻害する上で有効である。M5は、特に中枢神経系、脳、肝臓、心臓、および網膜の虚血の治療および予防におけるM5および関連化合物の有用性の証拠を提供するニューロン、肝細胞、心筋細胞、および網膜における無酸素後の生存を高める上でも有効である。

M6も、癌、特に網膜芽細胞腫、乳癌、黒色腫、副腎癌、子宮頚癌、骨肉腫、肺癌、非小細胞肺癌、結腸癌、および腎癌の治療または予防におけるM6および関連化合物の有用性の証拠を提供する種々の癌細胞株の増殖を阻害する上で有効である。M6は、特に心臓、中枢神経系、および脳についての虚血の治療または予防におけるM6および関連化合物の有用性の証拠を提供するニューロンおよび心筋細胞における無酸素後の生存を高める上でも有効である。

M7およびM14は、癌、特に網膜芽細胞腫の治療におけるM7、M14、および関連化合物の有用性の証拠を提供する網膜芽細胞腫細胞株の増殖を阻害する上で有効である。M7およびM14は、特に脳および中枢神経系の虚血の治療および予防におけるM7、M14、および関連化合物の有用性の証拠を提供するニューロンにおける無酸素後の生存を高める上でも有効である。

M11は、癌、特に網膜芽細胞腫、乳癌、黒色腫、副腎癌、子宮頚癌、骨肉腫、および肺癌の治療または予防におけるM11の有用性の証拠を提供する種々の癌細胞株の増殖を阻害する上で有効である。M11は、特に脳および中枢神経系の虚血の治療または予防におけるM11の有用性の証拠を提供するニューロンにおける無酸素後の生存を高める上でも有効である。

M21は、癌、特に網膜芽細胞腫の治療または予防におけるM21および関連化合物の有用性の証拠を提供する網膜芽細胞腫細胞株の増殖を阻害する上で有効である。M21は、特に中枢神経系、脳、肝臓、心臓、および網膜の虚血の治療または予防におけるM21および関連化合物の有用性の証拠を提供する種々の組織における無酸素後の生存を高める上で広範に有効である。M21および関連化合物は、疼痛または緑内障の治療または予防についても有効である。

10.医薬組成物および処方計画 本発明の薬剤および組成物は、種々の疾患の治療または予防において、下記および本明細書の他所に説明されるような目的、特に神経学的疾患、および特に虚血によって一部仲介される疾患のための薬剤の製造に有用である。該薬剤および組成物は、癌および疼痛の治療または予防についても有効である。該方法は、疾患の徴候(複数可)および/または症状(複数可)が既に存在する対象を治療する上で、あるいは、疾患の公知の症状(複数可)を有さないが、該疾患と関連した1以上の危険因子によって症状を悪化させる危険性の高まった対象の予防において有用である。危険因子は例えば、遺伝的、生化学的、または環境であり得る。危険因子はまた、対象が、疾患の悪化に対する公知の疾病素質を保有する事象をまさに経験しようとしているので生じる可能性がある(例えば、心臓または脳の手術は、虚血の発達にかかりやすい)。

治療予防を受け入れる疾患には、脳卒中、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、認知症、てんかん、脊髄小脳性運動失調、脊髄性および延髄性筋ジストロフィー、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脳損傷、脊髄損傷、および他の外傷性、虚血性、もしくは神経変性性の神経系損傷、または疼痛など、神経学的疾患および容態を含み、虚血性および細胞変性性疾患および容態が含まれる。他の非神経学的疾患には、心臓、肝臓、腎臓、筋肉、網膜、皮膚、小腸、膵臓、胆嚢、甲状腺、胸腺、脾臓、骨、軟骨、関節、肺、横隔膜、副腎、唾液腺および涙腺、血管、ならびに内胚葉、中胚葉、および外胚葉起源の細胞のものなど、他の組織の虚血性および変性性障害および容態が含まれる。他の疾患および容態は、緑内障、糖尿病性網膜症、および黄斑変性など、眼の障害である。治療を受け入れる他の疾患には、固形腫瘍および血液学的悪性を含む癌および他の増殖性障害が含まれる。開示された化合物によって治療可能な癌に関するいくつかの例には、乳癌、副腎癌、子宮頚癌、骨肉腫、肺癌(小細胞および非小細胞)、結腸癌、腎癌、網膜芽細胞腫、頭頚部癌、胃癌、黒色腫、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、膵臓癌、食道癌、肝細胞癌(肝癌)、中皮腫、肉腫、および脳腫瘍(例えば、膠芽腫などの膠腫)が含まれる。治療を受け入れる他の疾患には、自己免疫障害および所望ではない免疫応答下、不整脈、鬱性障害、ストレス障害、(TRPM7の活性化因子を用いた)骨形成が含まれる。種々の種類の癌におけるTRPM7の役割を支持する証拠は、Guilbert, Am. J. Cell. Phys. 257, C943-501 (2009)(乳癌)、Hanaro. J. Pharmacol. Sci. 95, 403-419 (2004)(網膜芽細胞腫)、Jian, Cancer Cell. Res. 67, 10929-10938 (2007)(頭頚部癌)、Kim, Cancer Sci.99, 2502-2509 (2008)(胃癌)、McNeil, J. Invest. Derm. 127, 2020-2030 200(黒色腫)、Sahni, Cell Metabolism 8, 84-93 (2008)(血液癌)によって提供される。TRPM7は、高血圧症(Trouyz, Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 294: H1103-H1118 (2008))、心筋線維症、および心不全においても関係している。

本明細書で使用する場合の「疾患」という用語には、疼痛が含まれる。したがって、本明細書で説明する薬剤、例えば、TRPM7調節因子は、疼痛の治療または予防において用いることができる。

その最も広範な使用において、「疼痛」は、疼痛を経験している個人にとって非常に主観的であり、かつ環境および文化的背景を含む個人の精神状態によって影響される経験的現象である。「身体的」疼痛は、通常、実際のまたは可能性のある組織損傷を引き起こす第三者に対して知覚可能な刺激に連結されることができる。この意味において、疼痛は、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain)(IASP)「実際のもしくは可能性のある組織損傷と関連した、またはこのような損傷の点で説明される感覚的および情動的経験」とみなされ得る。しかしながら、疼痛のいくつかの場合は、知覚可能な原因を有さない。例えば、心因性疼痛には、疼痛の知覚可能な原因に関する任意の証拠のない心理的障害を有するヒトにおける、時に持続的である知覚された疼痛の心因性の因子または症候群による既存の身体疼痛の増悪が含まれる。

疼痛には、侵害受容性疼痛、神経因性/神経原性疼痛、突発痛、異痛症、痛覚過敏(hyperalgesia)、知覚過敏、感覚異常、触覚性錯覚、痛覚過敏(hyperpathia)、幻肢痛、心因痛、麻痺性疼痛、神経痛、神経炎が含まれる。他の分類には、悪性疼痛、狭心痛、および/または特発性疼痛、I型複合性局所疼痛症候群、II型複合性局所疼痛症候群が含まれる。疼痛の種類および症状は、相互に排他的である必要はない。これらの用語は、IASPによって定義されるよう意図される。

侵害受容性疼痛は、活動電位への有害な刺激をコードする、有害な刺激に応じて末梢神経における特化した感覚性侵害受容器によって開始される。一般的にA-δ線維およびC線維における侵害受容器は、皮膚の直下、、関節において、および身体臓器において終止する自由神経終末である。後根神経節(DRG)ニューロンは、末梢と脊髄の間の連絡の部位を提供する。シグナルは、脊髄を通じて脳幹部および視床部へ、最終的には大脳皮質へと処理され、大脳皮質で該シグナルは通常(しかし常にではない)、疼痛の感覚を誘発する。侵害受容性疼痛は、身体組織を刺激または損傷する能力を有する広範な種々の化学的、熱的、生物学的(例えば、炎症性の)、または機械的事象から結果として生じることがあり、該事象は、侵害受容器における侵害受容活性を生じるのに必要な強度のある最小閾値を一般的に上回る。

神経因性疼痛は一般的に、それぞれ末梢神経因性疼痛または中枢神経因性疼痛を生じる末梢神経系または中枢神経系における異常な機能の結果である。神経因性疼痛は、神経系における主要な傷害または機能不全によって開始または引き起こされる疼痛として、国際疼痛学会によって定義されている。神経因性疼痛はしばしば、特に慢性症例における神経系に対する実際の損傷を包含する。炎症性侵害受容性疼痛は一般的に、組織損傷およびその結果として生じる炎症性過程の結果である。神経因性疼痛は、組織に対する任意の観察可能な損傷の見かけの治癒を超えた(例えば、数か月または数年)後に十分持続することもある。

神経因性疼痛の症例において、影響を受けた領域からの感覚的処理は、異常なかつ非侵害性の刺激(例えば、熱、触/圧力)となり得、該刺激は通常、疼痛を生じないであろうが、そのようにし得(すなわち、異痛症)、または有害な刺激は、通常有痛である刺激に応じて、疼痛の異常な程度に拡大された知覚を誘発しすることがある。加えて、電気刺痛もしくは電気ショックまたは「ピンおよび針」(すなわち、触覚性錯覚)ならびに/または不快な質を有する感覚(すなわち、感覚異常)と類似の感覚は、通常の刺激によって誘発されることがある。突発痛は、あらかじめ存在する慢性疼痛の悪化である。痛覚過敏は、刺激に対する異常に有痛の反応からの結果として生じる有痛の症候群である。該刺激は、症例のほとんどにおいて、患者が疼痛として認識することのできる疼痛の最小の経験としてみなすことができる疼痛閾値の上昇とともに反復性である。

神経因性疼痛の例として、触覚性異痛症(例えば、神経損傷後に誘発)、神経痛(例えば、帯状疱疹後(post herpetic)(もしくは帯状疱疹後(post-shingles)神経痛、三叉神経痛)、反射性交換神経性ジストロフィー/灼熱痛(神経外傷)、癌痛の成分(例えば、癌自体による疼痛もしくは炎症などの容態と関連した疼痛、または化学療法、手術、もしくは放射線療法などの治療による疼痛)、幻肢痛、絞扼性ニューロパチー(例えば、糖尿病、HIV、慢性アルコール使用、(多くの化学療法を含む)他の毒素への曝露、ビタミン欠乏症、および広範な種々の他の医学的容態による)が挙げられる。神経因性疼痛には、種々の原因、例えば、外科的操作、創傷、帯状疱疹、糖尿病性ニューロパチー、脚もしくは腕の切断、およびこれらに類するものによる神経損傷後の神経系の病理学的操作の発現によって誘発される疼痛が含まれる。神経因性疼痛と関連した医学的容態には、外傷性神経損傷、脳卒中、多発性硬化症、脊髄空洞症、脊髄損傷、および癌が含まれる。

疼痛を生じる刺激はしばしば、それ自体疼痛の経験の一因となり得る炎症反応を引き起こす。いくつかの容態において、疼痛は、侵害受容性因子および神経因性因子の複雑な混合によって生じるように見える。例えば、慢性疼痛はしばしば、炎症性侵害受容性疼痛もしくは神経因性疼痛、またはその両方の混合を含む。初期の神経系の機能不全または損傷は、炎症性仲介因子の神経放出およびその後の神経因性炎症を惹起することがある。例えば、片頭痛は、神経因性疼痛と侵害受容性疼痛の混合を表わすかもしれない。また、筋膜疼痛は、おそらく筋肉からの侵害受容性入力に対して二次的であるが、異常な筋肉活動は、神経因性容態の結果であることもある。

本明細書で論議される薬剤は、疼痛の少なくとも1つの症状を緩和または予防することができる。患者によって経験される疼痛の症状は、臨床医に識別可能な疼痛の徴候を伴うかもしれないし、またはそうでないかもしれない。逆に、疼痛は、患者が症状に気付くことなく、臨床的徴候によって顕在化されることもある。

疼痛の症状には、例えば、行動上の変化の形態における疼痛に対する応答が含まれ得る。疼痛に対する典型的な応答には、有痛刺激の意識下での回避、身体もしくは身体部分を有痛刺激から保護するよう意図された保護応答、疼痛を最小化しかつ治癒を促進するよう意図された応答、疼痛の連絡、および生理学的応答が挙げられる。連絡応答は、疼痛に関する発声、または顔面表現もしくは姿勢の変更が挙げられる。生理学的応答には、自律神経系または内分泌系によって仲介される応答、例えば、アドレナリンおよびノルアドレナリンの放出亢進、グルカゴンおよび/またはホルモンおよび/またはコルチコステロイドの出力増加が挙げられる。モニターされることのできる生理学的変化には、痙攣(twitching)、痙攣(convulsion)、麻痺、散瞳、悪寒戦慄、知覚過敏、および/または反射の変化など、運動上の影響が含まれる。疼痛に対する生理学的心臓脈管応答には、血圧の変化、脈拍数および脈拍の質の変化、末梢循環の低下、チアノーゼ、およびうっ血が挙げられる。筋張力(緊張)増大も、疼痛の徴候である。疼痛に応じた脳機能の変化は、脳波記録法(EEG)、前頭筋電図検査(FEMG)、または陽電子放射形コンピュータ断層撮影法(PET)など、種々の技術によってモニターすることができる。

疼痛の別の症状では、疼痛発生刺激の実際の部位に近い部位で、または実際の部位から離れて局在するものとしての疼痛を認知する投射痛を挙げてもよい。しばしば、投射痛は、神経がその起源でまたは該起源の近くで圧迫または損傷された場合に生じる。この状況において、疼痛の感覚は一般的に、損傷が他所で生じる場合でさえ、神経が機能する範囲において感じられる。普遍的な例は、脊髄から生じる神経根が、隣接する椎間板材料によって圧迫される椎間板ヘルニアにおいて生じる。疼痛が、損傷を受けた椎間板自体から生じ得るが、疼痛は、圧迫された神経によってその神経の機能を受ける領域(例えば、大腿、膝、または足)においても感じられる。

侵害受容性活性は、侵害受容性疼痛の症状である。侵害受容性活性は、意識的に知覚される疼痛の不在下でさえ、逃避反射ならびに、蒼白、発汗、徐脈、低血圧症、意識朦朧などの種々の自律神経性応答を惹起することがある。

治療を受け入れられた患者クラスとは、脳に血液を供給する血管を巻き込むか、もしくは巻き込まれたかもしれない手術を受けた患者か、あるいはそれとは別に脳もしくは中枢神経系を巻き込むか、巻き込まれたかもしれない外科的手術を受けている患者を意味する。いくつかの例としては、人工心肺、頸動脈ステント術、脳もしくは大動脈弓冠状動脈の診断用血管造影法、脈管または血管手術手順、および脳神経外科的手術を受けている患者である。脳動脈瘤を有する患者は、特に好適である。このような患者は、動脈瘤をクリップで固定して、血液を遮断すること、または血管手術を実施して、動脈瘤を小さなコイルで遮断するかもしくは動脈瘤が現れる血管へステントを挿入すること、またはマイクロカテーテルを挿入することを含む、種々の外科的手術によって治療されることができる。血管手術は、動脈瘤をクリップで固定するよりも侵襲性が低いが、結果にはなおも小さな梗塞の高い発生率が含まれる。

本発明の薬剤は、医薬組成物の形態で製剤化および投与されることができる。このような組成物に含まれる薬剤は一般的には、混入物(すなわち、合成および/または精製を含む薬剤の製造から結果的に生じる混入物)が実質的にない。例えば、薬剤は、このような混入物が少なくとも75、90、95、または99%(w/w)存在しないと断言しても差し支えない。それゆえ、混入物が実質的にないことは、下記にさらに説明されるような1つ以上の医薬として許容し得る担体、希釈剤とともに薬剤を製剤化することができる。

医薬組成物は、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与のための薬用量)において提供することができる。例えば、丸剤、カプセル剤、またはこれらに類するものは、単回経口用量を提供することができ、水薬は、非経口投与のための単回用量として提供できる。医薬組成物は、従来の混合、溶解、製粒、糖衣錠作製、糊状化(levigating)、乳化、被包、封入、または凍結乾燥加工によって製造することができる。

医薬組成物は、薬剤の加工、貯蔵、または投与を容易にする1つ以上の医薬として許容し得る担体(希釈剤、賦形剤、または他の補助剤を含む)を用いて、従来の様式で製剤化することができる。適切な製剤化は、選択された投与の経路に依存する。

投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所的、鼻内、または筋肉内であり得る。

非経口投与のための医薬組成物は好ましくは、滅菌済みかつ実質的に等張性である。注射のための薬剤は、水溶液において、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理学的塩類溶液もしくは酢酸緩衝液(注射部位における不快を低下させるため)など、生理学的に互換性のある緩衝液において製剤化することができる。該溶液は、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの調合剤を含有することができる。

あるいは、薬剤は、好適な賦形剤、例えば、滅菌済みの発熱物質非含有水を用いた使用前の構成のために粉末形態であり得る。

経粘膜投与のための、透過すべき障壁に適した浸透剤が、製剤化において用いられる。この投与経路は、該化合物を鼻腔に送達するために、または舌下投与のために用いることができる。

経口投与のための薬剤は、医薬として許容し得る担体とともに、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ジェル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤、およびこれらに類するものとして、治療を受ける患者による経口消化のために製剤することができる。例えば、散剤、カプセル剤、および錠剤などの経口固形製剤のために、好適な賦形剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールなどの糖類などの充填剤、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物、製粒剤、ならびに結合剤が含まれる。所望の場合、架橋結合したポリビニルピロリドン、アガー、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤が添加することができる。所望の場合、固体剤形は、標準的な技術を用いて糖被覆または腸溶性被覆することができる。例えば、懸濁剤、エリキシル剤、および液剤などの経口液体調製物について、好適な担体、賦形剤、または希釈剤には、水、グリコール、油、アルコールが含まれる。加えて、着香料、保存料、着色料、およびこれらに類するものを添加することができる。

すでに説明された製剤化に加えて、薬剤は、デポー調製物としても製剤化することができる。このような長く作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下的にもしくは筋肉内に)、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、薬剤は、好適な高分子材料もしくは疎水性材料(例えば、許容し得る油におけるエマルションとして)、またはイオン交換樹脂とともに、またはわずかに可溶性の誘導体として、例えば、わずかに可溶性の塩として製剤化することができる。

前述の方法とは別に、他の医薬送達系を採用することができる。リポソームおよびエマルションは、薬剤を送達するために用いることができる。ジメチルスルホキシドなどのある有機溶媒も採用することができるが、通常、より大きな毒性という代償を払うことになる。加えて、該化合物は、治療薬を含有する固相高分子の半透性的マトリックスなど、徐放性の系を用いて送達されることができる。

徐放性カプセル剤は、その化学的性質に応じて、キメラペプチドを数週間〜100日超の間放出することができる。治療試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加的な戦略を採用することができる。

薬剤は、遊離の酸もしくは塩基として、または医薬として許容し得る塩として製剤化されることができる(一般的には、Berget al, 66 J. PHARM. SCI. 1-19 (1977)、およびC.G. Wermuth and P.H.Stahl (eds.) "Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use" Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002 [ISBN 3-906390-26-8]参照)。医薬として許容し得る塩は、遊離塩基の生物活性を実質的に保有しかつ、無機酸との反応によって調製される塩である。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも水性溶媒および他のプロトン性溶媒において可溶性である傾向がある。医薬として許容し得る酸塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、l,l'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩))が含まれる。好適な塩基塩には、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、およびジエタノールアミン塩が含まれる。

薬剤は、意図される目的(例えば、虚血の損傷効果の低下)を達成するのに有効な処方計画(すなわち、用量、頻度、投与経路)において用いられる。治療的有効処方計画は、薬剤で治療されない患者(または動物モデル)の対照集団と比較して、薬剤で治療された患者(または動物モデル)の集団における疾患の少なくとも1つの症状または徴候のさらなる悪化を低下させまたは少なくとも阻害する処方計画を意味する。疾患の徴候および症状には、虚血性疾患および他の神経学的疾患における(虚血性疾患の症例における)梗塞、ニューロン死の遅延、および例えば記憶における認知障害、ならびに癌についての増殖、毒性、および/または転移の低下が含まれる。また、処方計画は、個々の治療された患者が、本発明によって治療されていない比較可能な患者の対照集団における平均結果よりも好ましい結果に達する場合に、治療的に有効と考えられる。脳卒中の脈絡において、処方計画はまた、個々の治療された患者が、ランキン指数における2以下およびバーセル指数における75以上の能力不全を示す場合、治療的に有効と考えられる。処方計画はまた、治療された患者の集団が、比較可能な治療されていない集団よりも能力不全指数におけるスコアの有意に改良された(すなわち、より低い能力不全)の分布を示す場合、治療的に有効と考えられる。Lees et at 1., N Engl J Med 2006;354:588-600を参照されたい。予防的に有効な処方計画とは、薬剤で治療していない患者(または動物モデル)の対照集団と比較して、薬剤で治療した患者(または動物モデル)の集団における疾患の少なくとも1つの徴候または症状の開始を遅延させ、開始の頻度を低下させ、および/または重症度を低下させる処方計画を意味する。有効な処方計画は、治療的に、予防的に、またはその両方で有効である処方計画を指す。

投与する薬剤の量は、治療している対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与様式、および処方する医師の判断に依存する。療法は、症状が検出可能である場合、または症状が検出可能でない場合でさえ、断続的に反復することができる。療法は、単独で、または他の薬剤との組み合わせで提供することができる。

本薬剤の治療的に有効な用量は、実質的な毒性を生じることなく治療的利点を提供することができる。キメラペプチドの毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対して致死の用量)またはLD100(集団の100%に対して致死の用量)を決定することによって決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数である。高い治療指数を呈するキメラペプチドまたはペプチド模倣薬が好ましい(例えば、Fingl et al, 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.l, p. l参照)。

(実施例1) TRPM7活性を調節する生物活性薬についてスクリーニングするためのアッセイ

序論 細胞においてTRPM7活性を誘起する、TRPM7活性を調節する生物薬についてスクリーニングするためのアッセイを作成した後、TRPM7活性を阻害する生物活性薬を、アッセイにおける細胞死を予防するかどうかを決定するために試験する。該細胞は、天然(野生型)TRPM7、または細胞に形質移入された組換えTRPM7を発現してい得る。本実施例において、ヒト胚性腎(HEK293 Trex)細胞に、テトラサイクリン誘導性のFlagをタグ付けされたTRPM7コンストラクトを安定して形質移入した。

TRPM7チャネルを活性化するためにTRPM7イオンチャネル活性は、細胞外二価陽イオン濃度、特にCa2+およびMg2+を低下させることによって高められるかもしれない(Wei et al., 2007)。このことは、TRPM7チャネルによって運ばれるイオン電流の顕著な増加を引き起こす(図17のA〜G)。二価イオンの減少に曝露されたTet誘発性TRPM7発現HEK293細胞は、24〜48時間にわたる自発的なTRPM7活性仲介性細胞死を経験する(図17H)。この細胞死は測定することができ、この細胞死に及ぼす候補TRPM7調節因子の影響は測定することができる。TRPM7活性によって誘導される細胞死を測定することに用いられることのできる典型的なアッセイには、死細胞から放出される乳酸脱水素酵素(LDH)を測定するためのアッセイ、およびPromega製CellTiter Gloキット(登録商標)など、生細胞におけるATPを測定するためのアッセイも含まれる。細胞死はまた、ヨウ化プロピジウムおよびジヒドロローダミンの蛍光測定によっても測定することができる。

TRPM7活性を調節する生物活性薬についての典型的なスクリーンは、以下のとおりである。

材料および方法 薬剤、溶液、および培地 Tet誘発性Flag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞を以下において培養する:10%ウシ胎仔血清、20 mM GlutaMAX-1、100単位/mLペニシリンGナトリウム、100単位/mL硫酸ストレプトマイシン、0.25μg/mLアンフォテリシンB、5μL/mLブラスチシジン、0.4mg/mLゼオシン(試薬はすべてIncitrogenから得た)を補充したMEM(invitrogen)。

スクリーニング実験を、以下を含有するハンクス平衡化塩溶液(HBSS)において実施する:121mM NaCl、5mM KCl、20mM D-グルコース、10mM HEPES酸、10mM HEPES-Na+、1.8mM CaCl2、1mMピルビン酸Na、1mM MgCl2(すべてSigma製)。

TRPM7を活性化するために用いるMg2+欠乏性HBSSは、以下を含有する:121mM NaCl、5mM KCl、20mM D-グルコース、10mM HEPES酸、10mM HEPES-Na、1.8mM CaCl2、1mMピルビン酸Na(すべてSigma製)。

安定して形質移入したFlagをタグ付けされたTRPM7 HEK293 Trex細胞 Flagをタグ付けしたTRPM7コンストラクトのテトラサイクリン制御性発現を有するHEK-293細胞株を、本実施例において用いる(Flag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO;(Aarts et al., 2003))。

細胞培養 安定して形質移入したFlag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞を、液体窒素において保存した凍結ストックから解凍し、100mm皿(Costa)における培地において5日間培養した。5日後、該細胞を0.05%トリプシン(invitrogen)で5分間トリプシン処理した後、2つの100mm皿へと分け、さらに4〜5日間培養した後、先のとおり再度トリプシン処理し、4〜5×104/ウェル/100μLにおいて複数の96ウェルプレートに、または1.3〜1.5×104個/ウェル/40μLにおいて384ウェルプレートに播種した。本実験において用いる細胞を、3回以上の経代まで維持した。細胞を、加湿したインキュベーターにおいて5%CO2を用いて37℃で維持する。培養プレートおよび複数ウェルプレート(Costa)をすべてポリ-D-リシンで被覆する。ポリ-D-リシンによる被覆を、0.1mg/mLポリ-D-リシン(P1045 Sigma)を37℃で12時間用いた後、MgCl2およびCaCl2を有さない滅菌済みD-PBS(invitrogen)による4回の洗浄を実施する。

テトラサイクリン誘導 384ウェルプレートを用いる場合、細胞を1.3〜1.5×104個/ウェルで播種する。96ウェルプレートを用いる場合、細胞を4〜5×104個/ウェルで播種する。24時間後、TRPM7発現を、テトラサイクリン(Tet;1μg/mL)(Invitrogen)を24時間添加することによって誘導した後、Mg欠乏性HBSSにより洗浄する。

試験化合物 本実験のための試験化合物を3つの材料から得た:

LOPAC 1280(商標)、1280の薬理学的に活性のある化合物のライブラリー(Sigma, Prod. No. LO1280)

Prestwick Chemical Library(登録商標(Prestwick Chemical)は、1120の低分子を含有し、90%未満が市販薬であり、かつ10%未満が生物活性アルカロイドまたは関連物質である。該活性化合物を、その高い化学的および薬理学的多様性について、ならびにその公知のヒトにおける生物学的利用率および安全性について選択した。

Maybridge Screening収集物は、Lipinskiの「5つの法則」(Lipinski et al., 2001)に一般的に従う薬剤様特性を有し、それにより、ADME(吸収、分布、代謝、および排出)特性を示す、53,000の有機化合物からなる。

試験化合物を96または384ウェルフォーマットにおいて播種し、最初に以下の濃度で用いた:4μMのLOPACライブラリー化合物、ならびに5μMのPrestwickおよびMaybridgeの各ライブラリー。用量反応実験を実施する目的のために、化合物を39nM〜20μMに及ぶ濃度で用いた(2倍連続希釈を実施することによって得られた、39nM、78nM、156nM、315nM、625nM、1.25μM、2.5μM、5μM、10μM、20μM)。

細胞死の算出 試験化合物の存在下もしくは不在下でのおよび/またはTRPM7活性化の条件下での細胞死を、PI(5〜50μg/mL)の蛍光測定によって決定した。

1つのアプローチにおいて、Brideauら(Brideau et al., 2003)の「Bスコア」法を用いて、高処理量スクリーニング(HTS)技術によって生じたデータから的中を選択した。簡潔には、Bスコアは、生の試料PI蛍光値に基づいた相対的効力スコアである。Bスコアは、分母における変動性の基準に対する分子における調製された生PI蛍光値の比である。詳細は、Brideau et al.(上述)によって提供される。

別のアプローチにおいて、HTS方法の結果を検証するために手動で用いる多重ウェルプレート蛍光スキャナ(Fluorskan Ascent; Thermo Scientific)を用いた。各培養物における死細胞の画分を以下の通り算出した:死細胞画分=(Ft−Fo)/Fmax(式中、Ft=時刻tにおける試料のPI蛍光、Fo=初期PI蛍光、およびFmax=100μMトリトン-Xへの曝露後の同じ培養物の背景を減算したPI蛍光)。この式に対する代替は、対照ベースの式であり、この中で、死細胞画分=[Ft−F(-)t]/[F(+)t−F(-)t]であり、式中、Ft=時刻tにおける試料のPI蛍光であり、F(-)tは、時刻tにおける陰性対照試料のPI蛍光であり、F(+)tは、時刻tにおける陽性対照試料のPI蛍光である。

スクリーニングアッセイ条件の導出 インキュベーション条件の導出: 先に説明されたHBSSにおける二価陽イオン濃度の修飾を用いて、TRPM7イオンチャネル活性に及ぼすおよびTRPM7仲介性細胞死に及ぼす変動する二価イオンの効果を試験した。

まず、Weiら(Wei et al., 2007)において説明される通り、培養した海馬ニューロンにおいて電気生理学的記録を実施した。ニューロンを、変動する濃度のCa2+およびMg2+を含有する溶液に曝露しながら、TRPM7様電流の直接的な測定を実施する(図17のA〜G)。このことは、低い二価イオン、特にマグネシウムを好む条件が、これらの電流を高めることを確認した。

次に、Ca2+およびMg2+の細胞該濃度を変動させる影響を、安定して形質移入したFlag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞の死滅に関して測定した。組換えTRPM7を発現するようTet誘導を経験した細胞を、Tet誘導されなかった細胞と比較する。図17のH、図18、図19、および図20の代表的な実験において示されるように、HBSSが含有するイオン条件は低下し、Mg2+がないことは一貫して、1mMのMg2+においてとどまる細胞と比較して、検討された種々の時点においてより多くの細胞死を呈した。

さらに、CO2の影響も試験する。Tet誘発性細胞の死滅を、0%CO2または5%CO2のいずれかに該細胞を配置した後に比較した。Tet誘発性Flag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞は、該細胞を5%CO2環境において維持する場合よりも0%CO2におけるより多くの細胞死を呈する(図18)。明白に、MgCL2の存在下で0%対5%のCO2において維持される細胞間で細胞死の差はなかった。

細胞死の決定についての最適な時点も96ウェルおよび384ウェルフォーマットにおいて検討する。MG2+欠乏性HBSSに48時間曝露したTet誘発性Flag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞は、有意な量の細胞死を呈したのに対し、他の対照は、生存したままである。72時間時に、Tet誘発性Flag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞も、多量の細胞死を呈したが、対照も細胞死を示し始める。したがって、本条件下での細胞死の決定は、24〜48時間内で最良に実施される(図19〜20)。

化合物ライブラリーのスクリーニング スクリーニングを、Tet誘発性Flag-ネズミTRPM7/pCDNA4-TO HEK293 Trex細胞において実施した。Tet誘導をある対照において省略した。いくつかの実験において、試験化合物を細胞にTet誘導と同時に添加した。他の実験において、該化合物をTet誘導の20〜24時間後に添加した。さらに24時間後、1μg/mLのテトラサイクリン誘導を伴うまたは伴わない細胞を、Mg2+欠乏性HBSSを有するEMBLA洗浄液(Molecular Devices)を用いて6回洗浄した。試験化合物を、Tet誘導と同時に、または先に説明されたTet誘導の24時間後にMultimek(商標)96/384チャネル自動ピペッター(Beckman)を用いて細胞を含有する96ウェルまたは384ウェルプレートへと添加した。その後、TRPM7チャネルを活性化するために、該細胞をMg2+含有またはMg2+欠乏性HBSSにおいてインキュベートした。HBSSは、蛍光細胞生存指示薬である10μg/mLのヨウ化プロピジウム(PI;Molecular Probes Inc)も含有する。該細胞は、実験を通じて0〜0.3%(大気)CO2雰囲気において37℃のままである。PI蛍光読み取りをt=20分、24時間、および48時間で実施した。PI蛍光(F)を、PHERAstar読み取り装置(BMG labtech)を用いて、λ励起=530nm、λ発光=620nmで測定した。細胞死に及ぼす候補化合物の効果が決定することができる以下の対照を通して用いた:陰性対照は、HBSS緩衝液におけるTetにより誘導するTRPM7-HEK細胞であった。陽性対照は、Mg欠乏性HBSS緩衝液におけるTetにより誘導するTRPM7-HEK細胞であった。

結果 LOPACおよびPrestwick化合物ライブラリーのスクリーニング LOPACおよびPrestwick化合物ライブラリーを、それぞれ4μMおよび5μMの初期濃度で試験化合物を用いてスクリーニングした。的中を、Bスコア法を用いて決定した(表2)後、手動で複製し、これには用量反応関連性を確立する目的のために、ある範囲の濃度で試験することが含まれた(表3)。TRPM7仲介性細胞損傷を阻害することが見いだされた化合物のうち、α1アドレナリン受容体アンタゴニスト(塩酸ベノキサチアン、二塩酸ナフトピジル)、CDK1/サイクリンB阻害剤(L-703,606シュウ酸塩、CGP-74514A塩酸塩)、Na/K ATPaseの調節因子(ジゴキシン、塩化サンギナリン)、アントラサイクリン抗悪性腫瘍剤/トポイソメラーゼII阻害剤(ミトキサントロン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン)および他の抗悪性腫瘍性DNA挿間剤(ケリダミン酸、二塩酸キナクリン)、タンパク質ホスファターゼ阻害剤(カンタリジン—タンパク質ホスファターゼ1および2Aを阻害)、タンパク質合成の阻害剤(二塩酸ピューロマイシン、アニソマイシン、セファレイン)、微小管重合阻害剤(コルヒチン)、カルシウムチャネル遮断剤(ニカルジピン)、ミトコンドリア機能を阻害する薬剤(シクロピロクスエタノールアミン、ベツリン酸)、陽イオンキレート剤(ラサロシド、シクロプロクス)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(塩酸エタベリン、塩酸トレキンシン)、ホスホリパーゼA2阻害剤(キナクリン)、および天然アルカロイド(ピペルロングミン)であった。

組換えHEK293細胞におけるFLAG-TRPM7の発現に及ぼす候補化合物のうちのあるものの影響を、ウェスタンブロット法によって評価した(図21)。該データは、試験された化合物を該細胞とともにTet誘導の時点からインキュベートすることが、組換えTRPM7を発現する細胞の能力に不利に影響しないことを示唆した。

Maybridgeライブラリーのスクリーニング 薬剤様特性を有する53,000の有機化合物からなるMaybridgeスクリーニング収集物。これらを、先に説明されるHTSアプローチを用いて384ウェルプレートにおいてスクリーニングする。

「Bスコア」法を用いて、5μM濃度の化合物を用いて実施する初期スクリーンにおける的中を定義した。53,000の試験化合物の結果を図22に写実的に示す。

細胞傷害性を呈する的中をさらなる分析から除外した。その後、平均Bスコアから2標準偏差超大きな「Bスコア」を有する的中をすべて収集した。このkとは、440の的中を提供し、これを次に三つ組で再試験した。この再試験は、試験化合物が、少なくとも2/3倍細胞死を低下させた場合陽性とみなした。このアプローチを用いて、339の候補化合物を、TRPM7仲介性細胞損傷の可能性のある阻害剤として同定した。次に、候補を、TRPM7仲介性細胞死の90%超、80%超、70%超、60%超、50%超、40%超、および30%超の阻害を示した化合物として分類した。これらを表2に列挙し、上位30を図11〜16に示す。

339の候補化合物の検討は、TRPM7仲介性細胞死を阻害する最良の能力(70%以上の阻害)を有するものの有意な割合が、数個の包括的な中心構造群に属することを明らかにした(例えば、式I〜XIX)。

(実施例2) H9c2心筋細胞におけるTRPM7および無酸素性細胞死 序論 心臓虚血および再灌流のモデルとして、ラット心室筋芽細胞株H9c2を用いる(Kimes and Brandt, 1976)。H9c2細胞は、肺性心筋細胞と形態学的に類似しており、成熟心臓細胞において見出される電気的シグナル経路およびホルモンシグナル経路のいくつかの特徴を有する(Hescheler et al., 1991)。この細胞株は、心臓研究において以前からも使われてきたし(Levrand et al, 2006、Zordoky and El-Kadi, 2007)、そしてより重要なことに、筋細胞虚血および再灌流の培養モデルにおいても既に用いられている(Sakamoto et al, 1998、Ekhterae et al, 1999、Bonavita et al, 2003、Fiorillo et al, 2006、Coaxum et al, 2007)。

材料および方法 細胞培養 ラット心筋芽細胞株H9c2を、米国培養細胞系統保存機関から得て(CRL-1446)、そして10%(v/v)の熱失活したウシ胎仔血清および1%抗生物質-抗真菌薬を補充したダルベッコ変法イーグル培地において培養した。細胞を、加湿したインキュベーターにおいて、95%O2/5%CO2の雰囲気下で増殖させた。

RNA調製物およびRT-PCR 全RNAをラット組織およびH9c2細胞から、製造元のプロトコールに従ってTRIzol試薬(Invitrogen, Burlington, ON, Canada)を用いて単離した。1μgの単離されたRNAを、High Capacity c DNA Archive Kit(Applied Biosystems, Streetsville, ON, Canada)を用いて逆転写し、PCRを、REDTaq DNAポリメラーゼ(Sigma, Oakville, ON, Canada)および以下のラットTRPM7特異的プライマーを用いて実施する:

順方向:5'-AGGAGAATGTCCCAGAAATCC -3'

逆方向:5'-TCCTCCAGTTAAAATCCAAGC -3'

PCR反応は、94℃で5分間、次いで94℃で1分間、57℃で30秒間、72℃で45秒間、および72℃で10分間の30周期で循環した。PCR産物を1%アガロースゲルで分離し、臭化エチジウムで染色し、紫外線光の下で可視化した。

酸素グルコース欠乏(OGD) H9c2細胞の培地を脱酸素化虚血緩衝液(1.13mM CaCl2、5mM KC1、0.3mM KH2P04、0.5mM MgCl2、0.4mM MgS04、128mM NaCl、10mM HEPES)と交換すること、および無酸素性チャンバー(5% C02、10% H2、85% N2)へと37℃で6時間または16時間転移させることによって、該細胞を無酸素状態にした。該細胞を酸素化グルコース含有対照緩衝液(1.13mM CaCl2、5mM KC1、0.3mM KH2P04、0.5mM MgCl2、0.4mM MgS04、128mM NaCl、10mM HEPES 10mMグルコース)で洗浄することによって、OGDを終止させた。培養を、加湿した5%CO2雰囲気下で37℃でさらに2時間維持した。酸素正常状態細胞を、実験の間、対照緩衝液において維持した。

ヨウ化プロピジウムの取り込み 細胞死を、多重ウェルプレート蛍光スキャナを用いるPI(5μg/mL)の蛍光測定によって決定した。各培養における死細胞の画分を以下の通り算出した:死細胞画分=(Ft−F0)/Fmax(式中、Ft=OGD2時間後のPI蛍光、F0=OGD処理直後の初期PI蛍光、およびFmax=1%トリトンX-100における20分間のインキュベーション後の同じ培養物のPI蛍光)。

結果 RT-PCR分析は、TRPM7mRNAが、マウスおよびラットの心臓を含む、マウスおよびラットにおいて検討されたほとんどの組織において検出可能であることを明らかにした。TRPM7mRNAは、H9c2細胞においても検出可能であった(図23)。その上、TRPM7タンパク質は、免疫化学によってH9c2細胞において検出可能であり(図24)、この心筋細胞株が、心筋細胞におけるTRPM7仲介性無酸素性損傷を研究するために適切であることを示した。

OGDへH9c2を曝露することは結果的に、細胞死の上昇を生じる(図25)。OGD仲介性細胞死は、TRPM7仲介性無酸素性細胞死を低下させる手順である(Aarts et al., 2003)細胞をガドリニウムに曝露することによって低下した(図26)。

結論 本知見は、TRPM7が、H9c2細胞に存在すること、これらの細胞が、OGDによって誘導される細胞死に対して易損性であること、このことが、TRPM7を阻害する手順によって低下する可能性を示す。本データは、心筋細胞の虚血性死滅における因子としてTRPM7を関係あるとみなした。。

(実施例3) NaCNを用いた化学的無酸素によって仲介されるTRPM7仲介性細胞イオン流量および細胞死を検出するためのアッセイ。

序論 TRPM7チャネルは、細胞への一価および二価の陽イオンについての経路を提供し、機能的C末端α-キナーゼを含有する点で独特である。TRPM7チャネルを活性化することが公知である手順のうち、TRPM7チャネルは、NaCNを用いた化学的無酸素によって活性化することが示している(Aarts et al., 2003)。組換えHEK293細胞などの宿主細胞における化学的無酸素の誘導は、TRPM7を活性化するために用いることができる。この活性化は、細胞のカルシウム蓄積の測定で検出可能である。このことは、蛍光カルシウム指示薬の使用で達成可能である。あるいは、この活性化は、Sattlerら(Sattler et al, 1998)およびAartsら(Aarts et al, 2003)によってすでに説明されているように、放射性標識したCa2+(45Ca2+)を用いても測定することができる。

方法 特異的TRPM7コンストラクトの設計 Flag-TRPM7/pBluescript II KSコンストラクト TRPM7コンストラクトは、Flag-TRPM7/pBluescript II KSコンストラクトであった(図27)。Flag-TRPM7cDNAは、そのN末端でFlagエピトープタグに縫合したネズミTRPM7配列(GenBank受入番号AY032591))を含み、Flag-TRPM7/pcDNA4 /TOコンストラクトからpBluescriptベクターへとサブクローニングされた(Aarts et al., 2003)。EcoRIを用いた制限酵素消化は、pBluescriptベクターにおけるインサートの方向を決定した。図27は、観察されたバンドパターンが、インサートの3'→5'方向に対応したことを示す:3838bp、3200bp、および1592bp。

pTracer-CMV2コンストラクト 哺乳類細胞株における発現のために、TRPM7配列を、修飾されたpTracer-CMV2ベクター(Promega, Madison WI)へとサブクローニングした(図28)。このベクターは、元のGFP cDNAが、高感度GFP(eGFP)cDNAによって置き換えられるよう修飾されている。Flag-TRPM7/pTracer-CMV2コンストラクトは、Flag-TRPM7/pBluescriptのSpeI/KpnI消化の5745bp断片を、pTracerのKpnI/XbaI消化の6140bp断片と連結することによって生じ、Flagタグを、サブクローニングを通じて保存していること、およびTRPM7配列を、発現のために正確な向き(5'→3')でpTracerベクターへと挿入することを確実にする。選択された形質転換体を、EcoRIを用いた、次いで、EcoRV、PmeI、およびBamHIを用いた制限酵素消化によってスクリーニングした。

追加的なpTracerコンストラクトを、カルシウム撮影実験において使用するために設計した(図28)。このコンストラクトは、その励起/発光スペクトル(λ励起=488nm、λ発光=509nm)が、使用するカルシウム色素のもの(fluo-3;λ励起=506nm、λ発光=526nm)と重複するので、eGFP cDNAを含有しない。eGFP(-)コンストラクトは、Flag-TRPM7/pTracerまたはFlag-ΔPDZ/pTracerコンストラクトをNgoMIVで消化して、eGFP遺伝子および先行するEF-1αプロモーターの一部を摘出し、より大きな10060bp断片を再連結することによって生じた。連結した産物を用いて、Subcloning Efficiency(商標)DH5α細胞(Invitrogen)を形質転換し、選択された形質転換体を、EcoRI、PmeI、およびBamHIを用いてスクリーニングした。

細胞培養 HEK-293 tSA(HEK-293T)細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS; Gibco)および1%抗生物質-抗真菌薬(Gibco)を補充したL-グルタミンおよびピルビン酸ナトリウムを有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM; Gibco, Burlington, ON)において、ポリスチレン細胞培養皿(Sarstedt, Montreal, QC)の上で培養した。細胞を、37℃および5%CO2に設定した加湿したインキュベーター(Steri-Cycle(登録商標)C02インキュベーター、モデル370; Thermo Electron Corp.)において維持した。培地を5mLおよび2mL の皿から60mmおよび35mmの皿にそれぞれ定型的に置き換えた。光学顕微鏡(NIKON Diaphot-TMD; Nikon Canada, Mississauga, ON)下で概算されるように細胞が75〜90%培養密度に到達すると、該細胞を、以下の方法によって新たな皿へと経代した:細胞が密集している皿から培地を吸引し、該皿をリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で1回洗浄し、トリプシン-EDTA(0.05%溶液;Gibco)と置き換え、細胞が穏やかな振蘯によって解離され得るまで、37℃でインキュベートした。あらかじめ加温したDMEM(Gibco)を該皿に添加した後、すべての残留細胞塊を解離するよう、Pipet Aid(登録商標)(Drummond, Broomall, PA)を用いてピペット(Sarstedt)で数回吸い上げては分配した。細胞を新たな皿へと1:10〜1:40希釈で分けた。細胞を融解時から最高15回の経代までで用いた。

細胞計数の決定 細胞をトリプシン-EDTA(Gibco)で解離し、DMEMにおいて再懸濁した。50μLのこの溶液を200μLのトリパンブルー(Gibco)および750μLのPBSと混合し、細胞の1:20の希釈液を作製した。細胞を血球計数器に添加し、光学顕微鏡(NIKON Diaphot-TMD; Nikon Canada)下で観察した。以下の式を用いて細胞計数を決定した:

細胞計数(/mL)=生細胞数×希釈×2500

細胞培養物の一過性形質移入 一過性形質移入を光学顕微鏡(NIKON Diaphot-TMD; Nikon Canada)下で概算するように、75%培養密度でリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて実施した。形質移入を、製造元の説明に従って実施した。35mmの細胞培養皿につき、3μgのDNAおよび7.5μLのリポフェクタミン(DNA:試薬が1:2.5比)を500μLのOptiMEM(登録商標)I血清使用量低減培地(Gibco)において希釈した。培地を形質移入16時間後すぐに交換した。

形質移入効率の決定 形質移入効率を、eGFP cDNAを含有するコンストラクトを形質移入した細胞培養物について定量した。細胞をHoechst(Molecular Probes Inc.)で対比染色して、形質移入していない細胞の同時可視化を可能にした。HoechstおよびeGFP蛍光を、NIKON Eclipse TE2000倒立顕微鏡およびTE-FM Epi-Fluorescence付属品(Nikon Canada)を用いて観察し、これより後の分析のために画像を撮影した。形質移入効率を、以下の式によって決定した:

形質移入効率(%)=eGFP発現細胞の数/Hoechst染色した細胞の数×100。

Hoechstおよびヨウ化プロピジウムを用いた染色 Hoechst33342を10mg/mL水溶液として購入した(Molecular Probes Inc., Eugene, OR)。ヨウ化プロピジウム(PI)を粉末として購入し、PBSに1mg/mLで溶解することによって調製した。PI溶液を4℃で使用時まで保存した。HoechstおよびPIを細胞培養物にそれぞれ5μg/mLおよび10μg/mLになるまで直接添加した。細胞を室温でまたは37℃で10分間インキュベートして、十分な取り込みを可能にし、NIKON Eclipse TE2000倒立顕微鏡およびTE-FM Epi-Fluorescence付属品(Nikon Canada)を用いて蛍光を観察した。

細胞の凍結保存 細胞を凍結するために、細胞をトリプシン-EDTA(Gibco)で解離し、DMEMにおいて再懸濁した。細胞を卓上遠心分離機(Sorvall(登録商標)GLC-1, Sorvall, Newtown, CT)において1500rpmで5分間の遠心分離によってペレット化し、上清を吸引し、細胞を凍結溶液(20%FBSおよび10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を補充したDMEM)において再懸濁した。細胞を2mL凍結バイアル(Sarstedt)へと106〜107個/mLで分配し、「Mr. Frosty」凍結容器(Nalgene)に−80℃で少なくとも2時間配置した(Forma -86C ULT冷凍庫, Thermo Electron Corp.)。容器の内容物は、イソプロパノールを充填した場合、1分間当たり1℃の冷却速度を経験する。長期間の保存のために、細胞を−140℃の液体窒素冷凍庫(Cryoplus 1, Forma Scientific)に転移させた。

細胞を融解するために、凍結バイアルの内容物を温浴(Precision(登録商標)モデル282, Thermo Electron Corp.)において37℃に迅速に加温し、あらかじめ加温しておいたDMEM(Gibco)に添加した。細胞を卓上遠心分離機(Sorvall(登録商標)GLC-1, Sorvall)において1500rpmで5分間の遠心分離によってペレット化し、上清を吸引し、細胞を、10%FBS(Gibco)および1%抗生物質-抗真菌薬(Gibco)を補充したDMEMにおいて再懸濁した。

ポリ-D-リシンで被覆したプレートの調製 ポリ-D-リシン(分子量300,000超;Sigma-Aldrich)をその凍結乾燥した粉末形態で購入し、使用時まで−20℃で保存した。24ウェルプレートにつき、ポリ-D-リシンを0.1mg/mLで水に希釈し、250μLを各ウェルに分配した。プレートを、加湿したインキュベーターにおいて37℃で少なくとも4時間インキュベートし、溶液を吸引し、ウェルを水で2回洗浄し、乾燥させておいた。被覆したプレートを4℃で最長3か月間保存した。

カルシウム取り込みおよび細胞死アッセイ fluo-3によるカルシウム撮影 fluo-3をMolecular Probes Inc.からそのアセトキシメチル(AM)エステル形態で購入した。5mMのfluo-3AMストックをDMSOにおいて調製し、−20℃で最長数日間保存した。Pluronic(登録商標)F-127を10%水溶液として購入した(Molecular Probes Inc.)。実験当日、5μM fluo-3 AMおよび0.02%プルロニックをHEPES緩衝塩類溶液(HBSS; 121mM NaCl、5mM KC1、20mM D-グルコース、10mM HEPES酸、10mM HEPES-Na塩、3mM NaHC03, 1mM ピルビン酸Na、および1.8mM CaCl2, NaOHでpHを7.4に調整)に含有する添加液を、簡潔なボルテックス後に少なくとも2分間の超音波処理(FS5; Fisher Scientific)によって調製した。細胞をHBSSで洗浄し、fluo-3 AMを添加して37℃で30分間インキュベーションし、再度洗浄して、過剰量の色素を除去した。fluo-3蛍光をNIKON Eclipse TE2000倒立顕微鏡およびTE-FM Epi-Fluorescence付属品(Nikon Canada)を用いて可視化し、またはFluoroskan Ascent FLマイクロプレート読み取り装置および付属の(λ励起=485nm、λ発光=527nm) Ascentソフトウェア(Thermo Electron Corp.)を用いて測定した。

カルシウム取り込みアッセイ 形質移入していない細胞またはTRPM7/pTracerもしくはΔPDZ/pTracerコンストラクトを形質移入した細胞を、形質移入24時間後に24ウェルプレートに播種した。形質移入していない細胞を0.75×106個/ウェルで、形質移入した細胞を1×106個/ウェルで播種した。プレートをポリ-D-リシンで被覆し、細胞接着を強化し、洗浄中の細胞喪失を最小化した。細胞に、HBSSにおける5μMのfluo-3 AMおよび0.02%プルロニックを添加して37℃で30分間インキュベーションした。添加後、細胞を、20mM N-メチル-D-グルカミン(NMDG)、121mM NaCl、5mM KC1、10mM HEPES酸、10mM HEPES-Na塩、3mM NaHCO3、1mM ピルビン酸Na、および1.8mM CaCl2(HClでpHを7.4に調整)を含有する無血糖(aglycaemic)HBSSで洗浄した。fluo-3蛍光によって評価されるようなカルシウム取り込みを、無血糖HBSSにおいて溶解した0、5、10、15、20、または25mM シアン化ナトリウム(NaCN;Mallinckrodt Baker Inc., Phillipsburg, NJ)に応じて測定した。250mM NaCNストックを水中で調製し、室温で最長2週間保存した。fluo-3蛍光の測定を室温(22〜25℃)で10分間間隔で2時間にわたって実施した。カルシウム取り込みアッセイを形質移入48時間後に実施した。

細胞死アッセイ PI取り込みによって評価されるように、細胞死を、2時間のカルシウム取り込みアッセイの終了時に検討した。細胞を10μg/mLのPIで染色し、PI蛍光を、Fluoroskanマイクロプレート読み取り装置(λ励起=590nm、λ発光=630nm)および付属のAscentソフトウェア(Thermo Electron Corp.)を用いて測定した。最大蛍光(Fmax)の読み取りを得るために、0.5%トリトンX-100を各ウェルに添加し、20分間インキュベートさせておいた。細胞死アッセイを形質移入48時間後に実施した。

データ分析 データを分析用にExcel(Microsoft, Seattle, WA)またはSigmaPlot(SPSS Inc., Chicago, IL)へ入力した。プールしたデータを少なくとも3の個別の実験の平均±平均の標準誤差として表す。カルシウム取り込みを基線取り込みの分数として表す:ΔFt=(Ft−Fo)/Fo(式中、Ftは、時刻tでの蛍光であり、Foは、基線での蛍光である)。細胞死を、全細胞死の百分率として表す:細胞死(%)=Ft/Fmax×100(式中、Ftは、時刻tでの蛍光であり、Fmaxは、トリトンX-100による易透化によって得られる最大蛍光である)。濃度-応答曲線を、以下の式によって表される4のパラメータの記号論理学的曲線を用いた非線形回帰によって適合させた:y=最小+{(最大−最小)/[1+(x/EC50)n]}(式中、yは、濃度xでの応答であり、最小は、最小応答であり、最大は、最大応答であり、EC50は、最大半分の応答に必要な濃度であり、nはHill傾斜である)。データの統計分析を、両側のStudentのt検定、または一元配置の分散分析(ANOVA)後に、Holm-Sidak法を適宜用いる対応のある事後多重比較検定を用いて実施した。

顕微鏡 蛍光顕微鏡および光学顕微鏡 細胞培養物をNIKON Eclipse TE2000倒立顕微鏡(Nikon Canada)を用いて観察し、Hamamatsu ORCA-ERデジタルカメラおよびSimplePCIcソフトウェア(Compix, Cranberry Township, PA)を用いて画像を撮影した。蛍光を、TE-FM Epi-Fluorescence付属品(Nikon Canada)を用いて観察した。

結果 TRPM7コンストラクトの生成 フレーム内N末端Flagエピトープタグに抱合したネズミTRPM7配列(GenBank受入番号AY032591)を含有するFlag-TRPM7/pBluescript II KSコンストラクト(図27)を、本プロジェクトにおけるすべての操作のための基礎として用いた。哺乳類系における発現のために、完全長のTRPM7およびΔPDZ配列をpTracer-CMV2真核生物発現ベクターへとサブクローニングし、該ベクターにおいて、導入遺伝子発現をサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって駆動する(図28)。該配列をその元のpBluescript II KSクローニングベクターから切り出し、pTracerと連結して、Flag-TRPM7/pTracer-CMV2およびFlag-ΔPDZ/pTracer-CMV2コンストラクトを生成した(以後、TRPM7/pTracerおよびΔPDZ/pTracerと略記)。pTracerベクターは、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のためのcDNAを含有し、形質移入体の視覚的同定を可能にする。eGFP発現は、個別のEF-1αプロモーターによって駆動される。追加的な非蛍光コンストラクトを、eGFP遺伝子および先行するEF-1αプロモーターの一部がpTracerベクターから切り出される完全長のTRPM7配列について生成して、TRPM7/pTracereGFPを生成した(図28)。このことは、その後のカルシウム撮影実験においてfluo-3 AMカルシウム指示薬の使用を可能にした(励起/発光のλmaxはそれぞれ506nm/526nmである)。

組換えの系における異種性発現 HEK-293 tSA(293T)細胞株を、一過性形質移入によるTRPM7コンストラクトの異種性発現のために選択した。細胞に、TRPM7/pTracer、またはTRPM7/pTracereGFP-コンストラクトのうちの1つを形質移入した。eGFPを含有するコンストラクトを形質移入した細胞を、形質移入効率性を評価する上で用いたのに対し、対応する非蛍光性コンストラクトを形質移入した細胞を、カルシウム取り込みおよび細胞死アッセイにおいて用いた。カルシウム取り込みおよび細胞死アッセイを形質移入48時間後に実施したので、形質移入効率もこの時点で評価した。図29は、293T細胞株においてTRPM7/pTracerを用いて達成された形質移入の効率性を示す。細胞をHoechst33342を用いて対比染色し、eGFP発現細胞および非形質移入細胞の同時可視化を可能にした。形質移入効率を、細胞計数によって定量化し、細胞総数の百分率として表した。形質移入は、eGFP発現を呈する細胞のおよそ60%であった。

組換え系における完全長のTRPM7チャネルの異種性過剰発現が結果的に、細胞の膨潤、培養表面からの脱離、その後18〜72時間での細胞死を生じることが報告されている(Nadler et al., 2001、Su et al., 2006)。したがって、本発明者らは、細胞の健康状態および一般的な細胞形態を評価するために、形質移入24および48時間後に光学顕微鏡によって、形質移入された細胞を検討した。図29は、形質移入されていない293T細胞の特徴的な平たい三形の形状を示す。TRPM7/pTracer、およびTRPM7/pTracereGFP-コンストラクトで形質移入した細胞の形態は、形質移入の最長48時間後、野生型の形態と一致したままであった(図29)。観察の差は、本発明者らの系におけるより低レベルのTRPM7発現に依存し得るかまたは、培地中のMg2+の存在に依存し得る。

化学的無酸素によって誘発されるカルシウム取り込み 本発明者らは、細胞透過性蛍光カルシウム指示薬であるfluo-3 AMを用いることによる酸化ストレスによって誘発されるカルシウム取り込みに及ぼすTRPM7コンストラクトの効果を試験した。形質移入されていない293T細胞またはTRPM7/pTracereGFP-コンストラクトで形質移入した細胞に、fluo-3 AMを添加し、グルコース非含有HEPES緩衝塩類溶液(HBSS;等モル量のN-メチル-D-グルカミン(NMDG)と置換されたグルコース)における0、5、10、15、20、または25mMシアン化ナトリウム(NaCN)で処理し、無酸素/無血糖を模倣した。カルシウム取り込みの評価を形質移入48時間後に実施した。

完全長のTRPM7コンストラクトの効果 本発明者らは、TRPM7コンストラクト(TRPM7/pTracereGFP-)を発現する細胞におけるカルシウム取り込みを、野生型の形質移入していない細胞におけるカルシウム取り込みと比較することによって開始した。図30および図31は、1および2時間のインキュベーションにおけるNaCN処理によって誘発されるカルシウム取り込みを示す。データを2つの個別の平均によって、Studentのt検定によっておよび4パラメータ記号論理学的曲線を用いた非線形回帰によって分析し、カルシウム取り込み応答のEC50を決定した。NaCN誘発性カルシウム取り込みは、時間および濃度依存的様式で生じる。形質移入していない細胞およびTRPM7/pTracereGFP-を形質移入した細胞は、検討した2時間にわたって、細胞内Ca2+レベルの定常的な上昇を呈し、それとともに、より高濃度NaCNは、より高レベルの[Ca2+]iを誘発した。

形質移入していない細胞とTRPM7を形質移入した細胞の間のカルシウム取り込みの差も明白であった。1時間のインキュベーションで、TRPM7/pTracereGFP-を形質移入した細胞は、10および15mM NaCN濃度において、形質移入していない細胞よりも有意に高レベルの[Ca2+]iを示した(図30)。例えば、15mM NaCNで、TRPM7を形質移入した細胞は、fluo-3蛍光の1.12±0.07倍の増加を呈したのに対し、形質移入していない細胞は、0.43±0.04倍の増加を呈した(p=1.08×10-5、データは、それぞれ5および4の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す)。1時間で、NaCN誘発性カルシウム取り込みについての適合した用量反応曲線は、TRPM7を形質移入した細胞における17.6±1.1mM NaCNおよび形質移入していない細胞における13.1±1.1mM NaCNのEC50値を生じ、TRPM7チャネルが、化学的無酸素刺激による活性化に対して、野生型293T細胞に存在するカルシウム流入の内在性経路よりも高感度であることを示した。同様に、2時間のインキュベーションで、TRPM7/pTracereGFP-を形質移入した細胞は、5、10、および15mM NaCNにおいて、形質移入していない細胞よりも有意に高レベルの[Ca2+]iを示した(図31)。2時間で、TRPM7を形質移入した細胞についての、および形質移入していない細胞についての適合した用量反応曲線はそれぞれ、12.5±1.1mM NaCNおよび15.7±1.0mM NaCNのEC50値を生じた(図31)。293T細胞におけるTRPM7チャネルの異種性発現は、NaCN処理に対するより大きな感度をおそらく与え、結果的に、形質移入していない細胞において観察されるものよりも大きな細胞内Ca2+レベルの上昇を生じる。

20および25mM NaCN濃度において、TRPM7/pTracereGFP-を形質移入した細胞は、形質移入していない細胞よりも低いまたは類似のレベルの[Ca2+]iを呈した。25mM NaCNにおいて、TRPM7を形質移入した細胞は、fluo-3蛍光の2.11±0.05倍の増加を呈したのに対し、形質移入していない細胞は、2.59±0.13倍の増加を呈した(p=0.006、データはそれぞれ、5および4の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す)。この結果は、これらのNaCN濃度における2時間でのTRPM7を形質移入した細胞における細胞死のレベルを検討することによって合理的に説明することができる(図32)。細胞死の基準として用いるPI取り込みは、細胞が、例えば、細胞死の壊死性形態にあるような易感染性の膜統合性を呈する場合に生じる。易感染性の膜統合性はまた、fluo-3 AMエステルの開裂した形態を細胞から漏れさせ、それにより、細胞内Ca2+レベルの不正確な測定を結果的に生じる。20および25mM NaCN濃度で測定されたfluo-3蛍光は、残存する生細胞のサブセットにおける[Ca2+]iを表し得るに過ぎず、それ自体、形質移入していない細胞について得られた蛍光測定結果と直接比較可能ではないかもしれない。

化学的無酸素によって誘発される細胞死 本発明者らは、ヨウ化プロピジウム(PI)の取り込みをモニターすることによるNaCN処理によって誘発される細胞死に及ぼすTRPM7コンストラクトの効果を試験した。PIは、膜統合性が損なわれた場合にのみ(すなわち、酸化ストレスに応じた細胞分解によって)、脂質二重層を横断することのできる細胞不透過性分子である。PIは、核酸との会合の際に蛍光強度の20〜30倍の増加を呈し、細胞死の指示薬として普遍的に採用される。形質移入していない細胞およびTRPM7/pTracereGFP-コンストラクトを形質移入した細胞を、NaCN処理の2時間後にPIで染色した。同じ細胞を、カルシウム取り込みおよび細胞死アッセイの両方において用い、それにより、PI取り込みを、2時間における最後のfluo-3測定直後に評価した。次に、細胞を0.5%トリトンX-100に曝露し、細胞膜をすべて透過処理し、PI取り込み値がすべてその後に標準化される完全な(100%の)細胞死の基準として、最大PI蛍光の定量を可能にした。

TRPM7コンストラクトの効果 図32は、形質移入していない細胞およびTRPM7で形質移入した細胞についてのNaCN処理の2時間目に観察した細胞死のレベルを示す。統計的な比較を、一元配置のANOVA後のHolm-Sidakを用いる事後検定を用いて、適宜、対応のある多重比較のために実施した(P<0.05)。NaCNの濃度すべてにおいて、TRPM7/pTracereGFP-を形質移入しれた細胞は、形質移入していない細胞と比較して、有意により高いレベルの細胞死を呈した。例えば、25mM NaCNで、NaCN処理は、TRPM7を形質移入した細胞において43.2±4.2%の細胞死を誘導したのに対し、形質移入していない細胞においては、20.6±4.6%に過ぎなかった(P=0.024、データはそれぞれ5および4の個別の実験の平均±平均の標準誤差を表す)。15mM NaCNで、形質移入していない細胞は、6.13±1.1%を、TRPM7を形質移入した細胞は、14.1±1.4%を呈した(データは4〜5の実験の平均±平均の標準誤差を表す)。

膜移行配列 膜移行配列/ドメイン(MTD)を、好ましくはしかし排他的ではないが、断片Eにおいて低分子の断片と共役させる。該低分子が断片D、C、またはBにおいて終止する場合、MTDは、断片D、C、またはBにそれぞれ共有結合し得る。MTDは、アミド結合、エステル結合、チオアミド結合、または他の形態の共有結合を介して、低分子に共役し得る。しかしながら、MTDは、P(0)カルボキシラートまたはフェニルに結合していないかもしれない、なぜなら、これらの官能基は、TRPM7活性を調節するのに重要だからである。

(実施例4:TRPM7阻害剤はイオンチャネル機能を遮断することができる) TRPM7依存性HEK死滅アッセイにおいて同定されたTRPM7阻害剤間の構造と機能の関連性をさらに理解するために、本明細書で説明したこれらの阻害剤のサブセットの活性を、細胞系におけるTRPM7電流を阻害する該阻害剤の能力について試験した。ホールセルパッチクランプ記録を、本質的には説明する通り用い、HEK293細胞、H9c2心筋細胞、および培養ニューロンにおいてTRPM7阻害剤を試験した。各試験化合物を、0.3、1、3、10、および30μM、または溶解度が許容するだけ高いもので試験した。図34〜40は、TRPM7を発現するHEK293細胞におけるTRPM7電流を示す。図34は、基線のTRPM7で成形された曲線を示すのに対し、図35〜40は、TRPM7阻害剤M5、M6、M7、M11、M14、およびM21の細胞外適用の効果を示す。結果は、他の細胞株と類似していた。これらの阻害剤の各々は、TRPM7チャネルを流れる電流を低下させ、それとともに、M11およびM21は、最高レベルの阻害を示した。しかしながら、TRPM7が、いくつかの他のタンパク質と相互作用しかつキナーゼドメインを含有する高分子膜タンパク質であることは注記されるべきである。したがって、チャネル活性の阻害は、TRPM7阻害剤について必要な活性ではなく、実際、HEK293 TRPM7依存性死滅アッセイにおいて同定する阻害剤のいくつかは、生存を延長するが、試験すた濃度においてTRPM7電流を遮断するようには見えない(データ非表示)。

これらのTRPM7阻害剤のサブセットの選択制を検討するために、実験を実施し、TRPM7アンタゴニストが、他のイオンチャネルおよび受容体と交差反応するかどうかを決定した。これらの結果は、結果の解釈が標的特異性に依存するので、TRPM7生理学の試験についての化合物の値を示す。治療的展望から、候補薬剤の交差反応性の知識は、他の虚血性機構に焦点を当て、可能性のある副作用に関する自覚を起こさせ得る。M21は、TRPM7発現HEK293細胞の培養皮質ニューロンにおいて電位感受性Na+電流、およびCa2+電流に及ぼす効果を有さないが、−10mVの膜電位においてK+電流を約20%阻害する。M21は、TRPM2、TRPM4、TRPM6、TRPV1、TRPC2、およびTRPA1についてのコンストラクトを形質移入したHEK293細胞におけるアゴニスト誘発性Ca2+変化に及ぼす効果を何ら有さなかった。M21は、培養ニューロンにおけるNMDAおよびAMPA受容体電流に及ぼす効果も何ら有さない。したがって、TRPM7チャネル活性を阻害するのに十分な濃度で、M21は、カリウムチャネルから離れて試験する他のイオンチャネルを遮断するようには見えない。類似の実験を、M5およびM11を含む他のTRPM7阻害剤を用いて実施した。両方とも、カリウム電流のわずかな阻害を示したが、ナトリウム電流にもカルシウム電流にも影響しなかった。したがって、これらの結果は、TRPM7自体の阻害が、TRPM7阻害剤について観察する虚血および抗増殖効果からの保護のための機構でありそうであることを示唆する。該結果は、これらの阻害剤が、TRPM7活性を阻害する濃度での他の電流/イオンチャネルの遮断による副作用を示しそうにないことも示唆する。

M化合物が、細胞内または細胞外位置からのTRPM7電流を阻害しているかどうかを評価するために、M21およびM6をDMSOに10mMでストックとして溶解した後、2mMの終濃度まで細胞内記録流体(ICF)へと希釈した。すぐに、全細胞を作製した後、膜電位のRAMP変化に対するTRPM7様電流の記録を開始する。記録は、10〜20分間続き、対照と試験群の間で電流を比較する。細胞内に適用したM21およびM6は、TRPM7電流に影響しない。本結果は、本発明者らが既に観察したM21およびM6の阻害効果が、M化合物を細胞外に適用した場合、主として、TRPM7イオンチャネル細胞外結合部位におけるM化合物の相互作用を介したことを示す。 代表的なホールセルパッチクランプ緩衝液組成: HEK293細胞におけるTRPM7電流記録 H9c2細胞におけるTRPM7電流記録

(実施例5:酸素およびグルコース欠乏に供された細胞におけるTRPM7の阻害は、細胞を死滅から保護する) TRPM7の阻害は、ニューロンに対する無酸素性損傷のモデルにおける他のグルタミン酸またはL型カルシウムチャネル阻害剤よりも広い時間枠の神経保護を提供する、無酸素性損傷からのニューロンの保護についての基本的機構として説明している(Aarts et al, 2003、Sun et al, 2008)。この適用は、TRPM7が、すべての細胞系統における無酸素性/虚血性損傷に対して基本的であり、かつすべての系統の組織におけるTRPM7の阻害が、無酸素後の細胞死からの保護、および該阻害のための化合物を提供することを開示する。

TRPM7は、RT-PCRまたはウェスタンブロット法によって今日まで試験された細胞株および組織すべてにおいて発現する(図23、24、およびP)。

(低分子M5、M6、M7、M11、M14、およびM21は、ネズミ初代ニューロン細胞培養物における無酸素性死滅を遮断する) TRPM7阻害剤を、1〜3時間のOGDに供したネズミ初代ニューロン細胞培養物における無酸素性死滅を低下させる能力について試験した。本アッセイを一般的に、Aarts et al(2003)によって説明される通り実施した。簡潔には、ニューロンの豊富な(85%)混合皮質培養物を調製し、インビトロで12〜14日後に実験のために用いた。培養物を5%CO2、10%H、および85%N2を含有する無酸素性チャンバーに転移した。培養物を500μLの脱酸素化グルコース非含有重炭酸溶液で3回洗浄し、37℃で適切な時間無酸素性を維持した。培養物を酸素化グルコース含有重炭酸溶液で洗浄することによってOGDを終止し、培養物を、加湿した5%CO2雰囲気下で1〜24時間さらに維持した。細胞死洗浄物を一般的に、多重ウェルプレート読み取り装置(CytoFluor II, Perseptive Biosystems)においてPI(50μg/mL)の蛍光測定によって測定した。

図69は、無酸素性条件に曝露した初代培養マウス皮質細胞培養物のTRPM7阻害剤による処理が、MCN(他のグルタミン酸チャネルを阻害するためのMK101、CNQX、およびニモジピンの混合物)の存在下または不在下でOGDと関連した死滅を低下することができることを示す。図69は、M5、M6、およびM21について、無酸素性死滅からの培養物の保護が、OGDの前または後のいずれかでTRPM7阻害剤の適用の際に観察されることを示す。類似の様式で、図55、56、および59は、M5、M6、およびM21が、OGD後のニューロン培養物に対して保護を提供することができることを示す。これらの実験のいくつかは、MCNカクテルによる期待された保護を示さず、グルタミン酸チャネルを遮断することによって細胞が死滅から救出することができないことを示したが、本発明者らは、TRPM7阻害剤によって利点を観察することができ、TRPM7阻害剤が、グルタミン酸阻害剤の不十分な場合でさえ、保護を提供することができることを示した。この保護は、このMシリーズ(M5、M6、M7、M11、M14、およびM21)における他のTRPM7阻害剤について示した。

(TRPM7阻害剤は、数多くの細胞および組織種類における無酸素性細胞死から細胞を救出することができる。) 非ニューロン細胞培養を含む、無酸素への曝露後の他の種類の細胞培養を保護するTRPM7阻害剤の能力も試験した。一般に、増殖細胞の培養物を1〜6時間の無酸素に曝露した後、無酸素条件からの除去の際にある範囲の濃度でTRPM7の添加を実施した。図41〜44は、混合網膜細胞培養物(図42、43)、H9c2心筋細胞(図44)、および培養エクスビボ網膜外植片(図41)のOGDへの曝露後の生存を促進するM5、M11、およびM21の能力を示す。図70は、M5およびM21が、2時間、4時間、または6時間の無酸素に曝露した肝細胞培養物(AML12細胞株)の生存を促進することができる。図71は、M5、M6、M11、およびM21が、すべて無酸素への曝露後のH9c2心筋細胞の生存を促進することができること、ならびに抗狭心症薬および抗高血圧症薬として用いるカルシウムチャネル遮断剤である1μMのニフェジピンの添加が、追加的な保護を提供しないことを示す。図72は、無酸素へ曝露したH9c2心筋細胞の生存を促進するM5およびM21の能力の追加的な例を示し、利点が、TRPM7阻害剤M5の24時間前の処理または後処理のいずれかで観察されることを示す。このことは、TRPM7阻害剤が、無酸素性損傷と関連した障害の症状を呈する患者に対する無酸素性損傷のための治療として、または予防的処置としての両方で有用であり得ることを暗示する。このような保存的処置は、心臓発作もしくは脳卒中からの損傷に対して保護するための治療など慢性的であり得、または脈管内侵入を包含しかつ動脈を流れる血流を遮断し得る材料を除去する可能性を有する手技が含まれ得るが、これらに限定されない外科的手技の前もしくは間に与えられるべき急性であり得る。他の種類の保存的処置には、心臓脈管系問題(心臓発作、心筋梗塞、急性虚血性発作、心房細動など)、脳障害(脳卒中、神経外傷、など)、糖尿病性障害(失明、聴覚消失、ニューロパチー)、網膜/眼障害(緑内障、黄斑変性、失明)、聴覚障害(聴覚消失、進行性聴覚消失、聴力損失)、筋肉傷害(脱力、筋肉変性疾患、ミトコンドリア枯渇と関連した障害)、および臓器障害(虚血または無酸素性損傷と関連した腎臓、肺、肝臓の障害)が含まれ得る。

TRPM7阻害剤は、組織における無酸素性損傷からの保護を提供することも本明細書で示す。図73および図75は、TRPM7阻害剤による処理が、その後の実施例において説明するように、心筋梗塞および緑内障と関連した細胞死を低下させることを示す。

(結論) TRPM7は、虚血が生じる基本的機構である。TRPM7を遮断することは、試験した細胞および組織の系すべてにおいて無酸素性損傷を低下させ、酸素およびグルコース欠乏の効果に対して細胞を保護するための基本的な方法であるように見える。本発明者らは、TRPM7阻害剤が、広範な範囲の分化細胞種(ニューロン、線維芽細胞、心筋細胞、肝細胞、網膜神経節細胞など)および組織(脳、心臓、網膜)を含むすべての組織系統(内胚葉系、中胚葉系、および外胚葉系)に由来する組織における無酸素性損傷に対して保護的であることを示した。本発明における各系譜についての例示的な細胞/組織には、ニューロン/脳(外胚葉)、心臓、心筋細胞、および腎臓(中胚葉)、および肝細胞/肝臓(内胚葉)が挙げられる。したがって、TRPM7の阻害は、すべての形態の無酸素性損傷に対する保護を提供すると予測され、無酸素性損傷を包含するかまたは虚血を結果として生じる臨床兆候にわたる広範な範囲の利点を提供する。

(実施例6:TRPM7の阻害は心筋虚血を低下させる) 本発明者らは、心臓および脳を含む異なるラット組織における種々のTRPMチャネルの発現を検討した(図23)。TRPM2、3、および6のレベルは組織間で異なったが、TRPM7発現は遍在的であり、先行報告と一致し、心臓において高いレベルを示した。細胞保護のインビトロ研究のために、本発明者らは、H9c2心室筋芽細胞株を選択した。H9c2細胞は、心筋細胞虚血/再灌流の研究において広範に用いられる。虚血機構のうち、今日まで解明しているのは、ROSおよび活性窒素種を介した酸化ストレスならびにTRPM7によってニューロンにおいて惹起される事象に対応する死滅促進性シグナル伝達の活性化である。H9c2細胞は、RT-PCRによるTRPM7の発現(図23)、ウェスタンブロット法および免疫化学による(図24)、ならびに外向きに整流するI-V曲線である低レベルの二価イオンによって亢進を呈するイオン電流、ならびにTRPM7と一致したTRPM7アンタゴニストによる阻害(図71および図72)を呈する。培養されたH9c2細胞のM5、M6、M11、またはM21による処理(0.05〜5.0μM)は、ニューロンにおける遺伝子レベルのTRPM7抑制と類似して、OGD(D)に対する回復力を亢進した。M6またはM11による前処理は、OGD誘発性死滅に対する保護も提供したが、M6の場合、無酸素の開始後の処理に対する比較可能な結果を与え、M11の場合、前処理は、OGD誘発性死滅のあまり頑強ではない救出を示した。したがって、TRPM7の阻害剤は、OGDまたは組織虚血に供した心臓組織に対する損傷を予防または低下させることができる。

その後のインビボの試験において、本発明者らは、マウスに静脈内適用される増加する用量の化合物M5およびM21の許容性を評価した。有害効果は、検討した用量すべてにおいて検出されず(最高150μM;TRPM7についてのIC50は、約1〜2μMである)、これらの化合物による全身性療法が実行可能であることを示唆した。その後、8〜12週齢のマウスを、Michael et al, Am. J.Physiol. 1995;269:H2147-°c-H2154によって説明し、Yuan et alm Journal of Medical Systems. 2009(インターネット公開)によって修正したような永続的な左前下行肢冠状動脈結紮のマウスモデルに供した。M21を左前下行肢閉塞の15分以内に単回静脈内用量として適用した。梗塞体積評価を定型的な方法を用いて24時間時に実施した。M21による処理は、トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)を用いて評価されるように、ある範囲の用量にわたって梗塞体積を有意に減少させた(図33)。TUNEL染色を用いた梗塞された組織のより詳細な評価は、M21処理が、DNA断片化を呈する細胞数も有意に減少させることを明らかにした。これらの草分け的なデータは、低分子阻害剤を用いてTRPM7を遮断することによって、インビボでの心筋細胞死を扱う実行可能性を確かにする。したがって、TRPM7の阻害剤を用いて、虚血性損傷を結果として生じる心臓のいずれの苦痛も治療することができる。これらには、心筋梗塞(MI)、心臓発作、急性虚血性発作、および急性冠状動脈傷害が含まれ得るが、それらに限定されない。

方法/図 H9c2細胞を上記のとおり培養し、OGDに供した。図71のパネルAおよびBは、6時間のOGDの24時間後のM21またはM5への曝露の結果を示す。図71のパネルCおよびDは、H9c2細胞の結果が、H9c2細胞の結果が無酸素性期および回復期における1mM Mg2+、5 μM M6、M11(急性治療)、または1μMニフェジピンのいずれかで治療されたことを示す。結果は、平均±平均の標準誤差(n=4)として呈される。ニフェジピンによる治療は、TRPM7阻害剤単独による治療を上回る相加効果を有するようには見えない。

(実施例7:TRPM7の阻害は網膜虚血性損傷を低下させる) 急性および慢性網膜虚血は、失明の主要原因である。「ゆっくりとした興奮毒性」とも呼ばれる緑内障由来の網膜損傷は、毎年数百名のヒトを苦しめ、世界的に失明の(白内障後の)第二の主要因である。糖尿病性網膜症も非常に普遍的であり、糖尿病患者の約40%を苦しめており、完全な失明をあまり普遍的に生じないが、視覚障害の主要因である。網膜は、中枢神経系の延長であり、興奮毒性が説明された最初の臓器であった。本発明は、無酸素性網膜損傷を阻害することのできるTRPM7アンタゴニストを開示する。このことを検討するために、本発明者らは、標準的な方法によって新生児ラット仔由来の初代培養網膜神経節細胞(RGC)および器官型全網膜を培養し、それらをOGDに曝露した(1〜3時間)。細胞死をPI蛍光(表示)によって、および類似の結果を示すLDH放出アッセイ(非表示)によって評価した。本発明者らのデータは、3時間と同程度のOGD侵襲後のRGCのTRPM7アンタゴニストによる処理が、劇的な細胞保護を提供し、TRPM7阻害剤の不在下で3時間OGD侵襲に曝露された細胞と比較した場合、細胞死の66%と同程度を救出したことを示す(図74のパネルA)。5μMのM5、M6、またはM21による処理は、ERK阻害剤U0126またはPSD-95阻害剤による処理よりも保護的であった(NA-1)。同様に、これらのTRPM7アンタゴニストのいずれかを用いて全網膜外植片を処理することは、OGDに対する該外植片の回復力を亢進した(図74のパネルB)。これらのデータは、TRPM7の複数の阻害剤を用いて、網膜におけるグルタミン酸受容体の主要な役割にもかかわらず、TRPM7チャネルが、遮断された場合に虚血性網膜細胞死を阻害するという無効化過程を支配することを初めて示す。このことは、TRPM7を阻害することが、虚血性損傷の低下のための遍在的機構であるという本発明者らのより早い時期の論議を強調する。

本発明者らは次に、M21の直接的な眼内注射が、ラットにおける眼内圧(IOP)を上昇させること(80mmHg 1時間、Morrison JC. Elevated intraocular pressure and optic nerve injury models in the rat. J Glaucoma. 2005;14:315-317)によって誘発される網膜損傷を低下させることができるかどうかを試験した。M21を硝子体液に直接微量注射して、任意の血液脳関門貫通問題について制御した。7〜14日時における網膜の組織学的評価は、M21処理した眼における網膜損傷の有意な低下を明らかにした(図75、パネルB)。これらの誘発性のデータは、TRPM7アンタゴニストが、網膜疾患、ならびに脳卒中、心臓障害、虚血、および癌において有用であることを示唆する。本発明の化合物は、網膜障害の治療に用いることができる。好ましくは、これらの化合物は、経口で、注射として(静脈内、眼内)送達され、または局所的に投与される。緑内障に関するこのモデルは、これらの化合物についての投与の異なる経路を評価するために用いることができる。

(実施例8:癌の治療のためのTRPM7阻害剤) 本発明者らは、Y79網膜芽細胞腫細胞を用いた場合、標準的な増殖条件下でTRPM7阻害剤により癌細胞の増殖を低下させることができることを最初に観察した。1〜7.5μMのM6によるこれらの細胞の治療は、MTTアッセイによって測定されるように、48〜72時間における癌細胞の死滅を結果的に生じた(図76のパネルA)。対照的に、M6は、該濃度範囲における通常の初代ニューロン(データ非表示)に対しても、NIH3T3線維芽細胞(図82)に対しても毒性がない。本結果は、第二の網膜芽細胞腫細胞株(Weri細胞)において確認され、M6に対する類似の用量反応も示した(図76のパネルB)。

この効果を次に、エクスビボ網膜外植片モデルにおいて示した。網膜外植片を標準的方法によって外科的に摘出および培養した。次に、10万個のY79網膜芽細胞腫細胞を培養における網膜へと播種し、5μM M6の存在下または不在下で、インサート上で2週間増殖させておいた。Y79細胞を蛍光標識し、強度を計数した(任意の蛍光単位)。M6は、培養された網膜上でY79細胞の量を減少させることができた(図77のパネルA)。さらに、M6は、網膜から遊走するY79細胞の能力も有意に低下させた(図77のパネルB)。このことは、M6および他のTRPM7阻害剤が、癌細胞の増殖および遊走の両方を低下させる上で有効であることを示唆する。TRPM7阻害剤は、癌細胞の増殖を低下させまたは癌細胞の殺滅のいずれかに加え、腫瘍の転移の低下において有用であり得る。図78は、網膜からの遊走の12日後のY79細胞の分布を観察する実験の反復である。各対のより濃い棒は、網膜から遊走した細胞の蛍光強度を示す。M6処理した培養物(1μM)は、網膜外植片からの有意により低いY79蛍光を有する。

癌における有効性の幅を決定するために、本発明者らは、癌細胞株における細胞増殖を阻害する能力についてのある範囲のTRPM7阻害剤の有効性を検討した。代表的な図を例として含む。図79は、(BrDU組み込みによって測定されるように)M6およびM7の両方がHeLa子宮頚癌細胞およびSW13副腎癌細胞の両方の増殖を有意に低下させることができることを示す。図80は、M6、M7、およびM11がすべて、MCF-7およびMDA-MB231乳癌細胞の増殖を低下させることができることを示す。図81は、M5、M6、およびM11がすべて、黒色腫細胞株B16F1およびB16F10の増殖を低下させることができることを示す。類似の結果を表4XXXにおいて表される細胞株について観察し、48〜96時間時の増殖の20%超の阻害を、MTT試験、SRB試験、発光(Cell-gro)、またはBrDU組み込みのいずれかによって決定されるように、単回の10μMの薬剤の適用以下で観察した。 表4 表5 ヒトおよびネズミ腫瘍細胞株におけるM6についての平均IC50

TRPM7阻害剤の抗増殖効果と細胞毒性とを識別するために、化合物を同じ濃度で種々の「非癌性」細胞株に添加し、PI取り込みの百分率を72時間後に測定した。有意な毒性は、NIH3T3線維芽細胞において観察されなかった(図82)。このことは、H9c2心筋細胞において試験された化合物についても真実であったが、わずかな毒性が、M7およびM11について10μMで観察された。毒性は5μMで観察されなかった。

また、全タンパク質を標準的な方法を用いて、試験された細胞株のすべてから単離し、抗TRPM7抗体を用いてウェスタンブロット法を実施した。細胞株はすべて、TRPM7発現を示し、TRPM7阻害剤がTRPM7を通じて作用していることを示唆した(図83)。さらなる確認として、siRNAを上記の通り用い、B16F1およびB16F10黒色腫細胞株におけるTRPM7の発現をノックダウンした。両細胞株は、混ざったsiRNA対照と比較した場合、TRPM7ノックダウン試料における増殖の用量依存的な低下を示す(図84)。したがって、TRPM7を遮断または除去することは、癌の治療に有用である。

TRPM7阻害剤のインビボでの有効性を評価するために、m6を腫瘍増殖に関するB16F10黒色腫のネズミ腫瘍モデルおよびRXF-393ヒト腎細胞癌異種移植モデルにおける腫瘍形成を低下させる能力に関する予備試験的評価のために選択した。まず、最大許容量試験を実施し、M6が、試験した最高濃度(20mg/kg)でマウスにおいて許容性があることを示した。各腫瘍モデルについて、適切な数の細胞を右側腹部に注射した(0.1mLの50%マトリゲル/50%培地における1個体あたり約300〜500万個)。腫瘍の大きさが100〜150mgに到達すると、動物を対照(ビヒクルのみ)、陽性対照、またはM6に無作為化した。M6に静脈内注射によって20mg/kgまで1日1回与えた。腫瘍を測定し、重量を標準的な手段によって算出した。図85は、黒色腫腫瘍増殖に及ぼす毎日のM6注射の結果を示す。M6は、活発な黒色腫を有する動物における腫瘍の増殖を低下させる。類似の傾向は、腎癌異種移植腫瘍形成モデルにおいて観察され、TRPM7阻害剤が癌の種類を横断して広範な抗増殖活性を有することをさらに支持した。

一般的な方法 (細胞増殖試験) 細胞(表1)を70%培養密度まで増殖させ、トリプシン処理し、計数し、5%FBSを含有する増殖培地において2.5×103〜5.0×103個/ウェルの終濃度で96ウェル平底プレートに播種した(0日後)。他の大きさのウェルおよび細胞密度を同様に成功裡に用いた。細胞を増殖培地において24時間インキュベートさせておき、最大接着を可能にした。試験薬による処理は1日後に開始し、再処理ありまたはなしのいずれかで72時間続行した。72時間の時点で、生細胞数を上記のとおりCellTiter-Glo(登録商標)細胞生存アッセイによって、または標準的なMTT、SRB、もしくはBrDUアッセイを用いることによって定量化する。実験を同じ濃度で少なくとも2回反復し、増殖阻害活性を決定した。これらの試験の用量反応からの結果を用いて、IC50値を各薬剤(細胞増殖を対照の50%ほど有効に阻害する濃度)について算出した。

(データ収集) 細胞増殖試験について、各実験からのデータを収集し、以下の式を用いて%細胞増殖として表した: %細胞増殖=(f試験/fビヒクル)×100 式中、f試験は、試験した試料の発光シグナルであり、fビヒクルは、薬剤が溶解するビヒクルの発光(または、他の生存/増殖測定についての適切な基準)である。用量反応グラフおよびIC50値を、以下の可変傾斜式を用いた標準ソフトウェアを用いて作成した: Y=(上限値−下限値) (1+10((logIC50-X)−傾き)) 式中、Xは、濃度の対数であり、Yは応答である。Yは、下限値から出発し、シグモイド状の形状で上限値に至る。

(結論) 低分子阻害剤によるTRPM7の阻害は、広範な範囲の癌の増殖を非毒性濃度で低下させ、したがって、多くの異なる機構から生じる癌について有効な抗癌薬である。虚血におけるTRPM7の役割と類似して、本データは、TRPM7が、癌細胞増殖における基本的な役割を担っていること、およびTRPM7の阻害が、本明細書に示されたものすべてを含む広範囲の癌に有効な治療を提供することを示唆する。

(実施例9:疼痛の治療のためのTRPM7阻害剤) 上記のアッセイに加えて、TRPM7阻害剤を、ホルマリン誘発性炎症性疼痛の齧歯類モデルにおいて試験した。M21処理は、静脈内投与後のラットにおける疼痛行動の統計的に有意な低下を提供した。図68は、TRPM7阻害剤M21が、静脈内投与でラットにおけるホルマリン誘発性疼痛行動を抑制することを示す。図68は、ホルマリン(2.5%、50μLを後肢足底に)によって誘発されるたじろぎに関するM21を用いたまたは陰性対照として塩類溶液を用いた時間経過を示す。M21は、ホルマリン誘発性第2相疼痛(9〜60分)を有意に低下させたが、第1相(0〜8分)のたじろぎを低下させる上で試験された濃度においては、ほとんど効果を示さなかった。

M21および他のTRPM7阻害剤は、疼痛を治療することができる。このモデルは、神経因性疼痛および炎症性疼痛の両方を示し、したがって、ヒトにおけるこれらの種類の疼痛の治療に好適であろう。これらの阻害剤は、他の種類の疼痛において同様に有効であるように見える。 表1 虚血後TRPM7の、および同齢の非虚血、非TRPM7欠乏性ニューロンの基線特性 表2:LOPACライブラリーおよびPrestwitckライブラリーのスクリーン 表3

本明細書に開示および主張された組成物および方法のすべては、本開示の点において過度の実験をせずに実施および実行されることができる。本発明の組成物および方法は、好ましい実施態様の点において説明されたが、変更は、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に説明される方法の工程においてまたは工程の連続において、該組成物および方法に適用され得る。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関連するある薬剤が、本明細書に説明された薬剤と置き換えられ、その間、同じかまたは類似の結果が達成されるであろうことは明らかである。当業者に明らかなこのような類似の置換および修飾はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神、範囲、および概念内にあるとみなされる。文献、特許文書、受入番号、およびこれらに類するものを含む引用はすべて、そのように個々に示されるのと同程度まで、すべての目的のために、それらのすべての内容が全体として引用により組み込まれる。2以上の配列が、異なる時点で受入番号と関連している場合、2009年12月11日の受入番号と関連した配列が意図される。文脈から明らかでない限り、本発明のいずれの工程、実施態様、または特徴も、その他との組み合わせで用いることができる。 参考文献リスト Aarts et al, (2003) Cell 115, 863-877. Aarts et al, (2002) Science 298, 846-850. Aarts & Tymianski (2005a). Neuroscientist. 11, 116-123. Aarts & Tymianski (2005b) Pflugers Arch. Alvarez et al. (2006) J. Neurosci. 26, 7820-7825. Bennett et al. (1996) Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 61, 373-384. Block (1999) Prog. Neurobiol. 58, 279-295. Bonavita et al. (2003) FEBS Lett. 536, 85-91. Brideau et al., (2003) J. Biomol. Screen. 8, 634-647. Bridge et al., (2003). Nat. Genet. 34, 263-264. Cheng et al., (2006). J. Neurosci. 26, 3713-3720. Coaxum et al. (2007) Am. J. Physiol Heart Circ. Physiol 292, H2220- H2226. Corish,P. and Tyler-Smith,C. (1999) Protein Eng 12, 1035-1040. Davis et al. (1997) Lancet 349, 32. Du et al. (1996) J. Cereb. Blood Flow Metab 16, 195-201. Ekht et al. (1999) Circ. Res. 85, e70-e77. Elbashir et al. (2001) Nature 41 1, 494-498. Fanselow,M.S. (1980) Pavlov. J. Biol. Sci. 15, 177-182. Fiorillo et al. (2006) Cell Mol. Life Sci. 63, 3061-3071. Gavrieli et al. (1992). J Cell Biol 119, 493-501. Hanano et al. (2004) J. Pharmacol. Sci 95, 403-419. Harteneck et al. (2000) Trends Neurosci. 23, 159-166. Hausenloy,D.J. and Scorrano,L. (2007) Clin. Pharmacol. Ther. 82, 370- 373. Hescheler et al. (1991) Circ. Res. 69, 1476-1486. Jiang et al. (2008) Brain Res. Bull. 76, 124-130. Jiang ., Li,M., and Yue,L. (2005) J. Gen. Physiol 126, 137-150. Kimes,B.W. and Brandt,B.L. (1976) Exp. Cell Res. 98, 367-381. KirinoJ (2000) Neuropathology. 20 Suppl, S95-S97. Kumar et al. (2001). J. Neurochem. 77, 1418-1421. Lawlor et al. (2007) Mol. Neurodegener. 2, 1 1. Lees et al. (2000) Lancet 355, 1949-1954. Levrand et al. (2006) Free Radic. Biol. Med. 41, 886-895. Lin et al. (2004) J. Am. Coll. Nutr. 23, 556S-560S. Lipinski et al. (2001) Adv. Drug Deliv. Rev. 46, 3-26. Lipton,P. (1999). Physiol Rev. 79, 1431-1568. Lisman et al. (2002) Nat. Rev. Neurosci. 3, 175-190. Loet al. (2003) Nat. Rev. Neurosci. 4, 399-415. Lo et al. (2005) Stroke 36, 189-192. Mastakov et al. (2001). Mol. Ther. 3, 225-232. Monteilh-Zoller et al. (2003). J Gen. Physiol 121, 49-60. Montell et al. (2002) Cell 108, 595-598. Morris et al. (1999) J. Neurosurg. 91 , 737-743. Morris et al. (1984) J. Neurosci. Methods 1 1 , 47-60. Mullen et al. (1992) Development 1 16, 201-21 1. Nadler et al. (2001) Nature 411, 590-595. Paxinos,G. and Watson,C. (1998). The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates. Academic Press). Petito et al. (1987) Neurology 37, 1281-1286. Pulsinelli,W.A. and BrierlyJ.B. (1979). Stroke 10, 267-272. Pulsinelli et al. (1982). Ann Neurol 1 1, 491-498. Rod,M.R. and Auer,R.N. (1992). Stroke 23, 725-732. Rothman,S.M. and Olney .W. (1986). Ann Neurol 19, 105-111. Runnels et al. (2001). Science 291, 1043-1047. Runnels et al. (2002). Nat. Cell Biol. 4, 329-336. Sakamoto et al. (1998) Biochem. Biophys. Res. Commun. 251, 576-579. Sattler,R. (1998) J Neurochem 71 , 2349-2364. Schmitz et al. (2005) J. Biol. Chem. 280, 37763-37771. Schmitz et al. (2003). Cell 114, 191-200. Schwarze et al. (1999) Science 285, 1569-1572. Silver,I.A. and Erecinska,M. (1990) J Gen Physiol 95, 837-866. Sledz et al. (2003) Nat. Cell Biol. 5, 834-839. Su et al. (2006) J. Biol. Chem. 281, 1 1260-1 1270. Sun et al. (2006) J. Neurophysiol. 95, 2590-2601. Tian et al. (2007) Neurosci. Lett. 419, 93-98. Volpe et al. (1985) Neurology 35, 1793-1797. Volpe et al. (1984) Stroke 15, 558-562. Wei et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 104, 16323-16328. Whitlock et al. (2006) Science 313, 1093-1097. Zordoky,B.N. and El-Kadi,A.O. (2007) J. Pharmacol. Toxicol. Methods 56, 317-322.

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