Protein backbone of antibody mimetics and other binding proteins

申请号 JP2001563629 申请日 2001-02-28 公开(公告)号 JP4829457B2 公开(公告)日 2011-12-07
申请人 ブリストル−マイヤーズ スクウィブ カンパニー; 发明人 ロバート ジー. クイメリス; ダーサ リポフシェク; リチャード ダブリュ. ワグナー;
摘要
权利要求
  • 固相支持体上に固定されたタンパク質のアレイであって、 タンパク質 の各々ィブロネクチン3型ドメインを含み、 該ドメインが、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸変異を有する、少なくとも1つのループ、少なくとも1つのβシート、またはそれらの組み合わせを含み、該ドメインが対応する天然に存在するフィブロネクチンが結合しない化合物に結合する能力 で特徴付けられる、前記アレイ。
  • フィブロネクチン3型ドメインが哺乳類のフィブロネクチン3型ドメインである、請求項1記載のアレイ。
  • フィブロネクチン3型ドメインがヒトのフィブロネクチン3型ドメインである、請求項2記載のアレイ。
  • 各タンパク質がフィブロネクチン3型ドメインの10番目のモジュール( 10 Fn3)を含む、請求項1記載のアレイ。
  • 各タンパク質が 、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1または複数のアミノ酸変異を有する、 1つ、2つ、または3つの ープを含み、該ループのうち少なくとも1つが該タンパク質の 前記化合物への結合に寄与する、請求項4記載のアレイ。
  • ープのうち少なくとも2つが、 天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1または複数のアミノ酸変異を有し、該ループがタンパク質の化合物への結合に寄与する、請求項5記載のアレイ。
  • ープのうち少なくとも3つが、 天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1または複数のアミノ酸変異を有し、該ループがタンパク質の化合物への結合に寄与する、請求項6記載のアレイ。
  • 10 Fn3がインテグリン結合モチーフを欠く、請求項4記載のアレイ。
  • 各タンパク質がジスルフィド結合を欠く、請求項1記載のアレイ。
  • 各タンパク質が単量体または二量体である、請求項1記載のアレイ。
  • 各タンパク質が核酸に共有結合している、請求項1記載のアレイ。
  • 核酸が 、前記共有結合したタンパク質をコードしている、請求項11記載のアレイ。
  • 核酸がRNAである、請求項12記載のアレイ。
  • 固相支持体がチップである、請求項1記載のアレイ。
  • 以下の段階を含む、化合物に結合するタンパク質を得る方法:
    (a) 相支持体上に固定された候補タンパク質のアレイを化合物に接触させる段階であって、 該各候補タンパク質がフィブロネクチン3型ドメインを含み、該ドメインが、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸変異を有する、少なくとも1つのループ、少なくとも1つのβシート、またはそれらの組み合わせを含み、該接触が化合物-タンパク質複合体を形成させる条件下で行われる 、前記段階;および
    (b) 該複合体から、該化合物に結合するタンパク質を得る段階。
  • 以下の段階を含む、 ンパク質に結合する化合物を得る方法 であって、該タンパク質がフィブロネクチン3型ドメインを含み、該ドメインが、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸変異を有する、少なくとも1つのループ、少なくとも1つのβシート、またはそれらの組み合わせを含む、前記方法
    (a) 相支持体上に固定されたタンパク質のアレイを、候補化合物に接触させる段階であって、 該タンパク質の各々がフィブロネクチン3型ドメインを含み、該ドメインが、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸変異を有する、少なくとも1つのループ、少なくとも1つのβシート、またはそれらの組み合わせを含み、該接触が化合物-タンパク質複合体の形成を可能にする条件下で行われる 、前記段階;および
    (b) 該複合体から、アレイのタンパク質に結合する化合物を得る段階。
  • さらに以下の段階を含む、請求項15記載の方法:
    (c) 段階(b)の化合物に結合するタンパク質 のアミノ酸配列をさらに 変化させる段階;
    (d) 段階(c)の ンパク質で固相支持体上にアレイを形成する段階;および
    (e) 段階(a)において、 段階(d)のアレイを使用して、段階(a)および(b)を繰り返す段階。
  • さらに以下の段階を含む、請求項16記載の方法:
    (c) 段階(b)のタンパク質に結合する化合物を改変する段階;および
    (d) 段階(a)において、候補化合物としてさらに改変された化合物を使用して、段階(a)および(b)を繰り返す段階。
  • 固相支持体がチップである、請求項15または16記載の方法。
  • 以下の段階を含む、試料中の化合物を検出する方法:
    (a) 化合物に結合 し、かつフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質と、試料を接触させる段階であって、 該ドメインが、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸変異を有する、少なくとも1つのループ、少なくとも1つのβシート、またはそれらの組み合わせを含み、方法が化合物-タンパク質複合体の形成を可能にする条件下で行われる 、前記段階;および
    (b) 該複合体を検出し、それによって該試料中の該化合物を検出する段階。
  • 試料が生物試料である、請求項20記載の方法。
  • タンパク質が固相支持体上に固定されている、請求項20記載の方法。
  • タンパク質がアレイの一部として固相支持体上に固定されている、請求項22記載の方法。
  • 固相支持体がビーズまたはチップである、請求項22記載の方法。
  • 化合物がタンパク質である、請求項15、16、または20記載の方法。
  • フィブロネクチン3型ドメインが哺乳類のフィブロネクチン3型ドメインである、請求項15、16、または20記載の方法。
  • フィブロネクチン3型ドメインがヒトのフィブロネクチン3型ドメインである、請求項26記載の方法。
  • 各タンパク質がフィブロネクチン3型ドメインの10番目のモジュール( 10 Fn3)を含む、請求項15、16、または20記載の方法。
  • 各タンパク質が、天然に存在するフィブロネクチン3型ドメインの配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸変異を有する、1つ、2つ、または 3つのループ を含み該ループの少なくとも1つが該タンパク質の 前記化合物への結合をもたらす、請求項28記載の方法。
  • 10 Fn3がインテグリン結合モチーフを欠く、請求項28記載の方法。
  • 各タンパク質が核酸に共有結合している、請求項15、16、または20記載の方法。
  • 核酸が 、前記共有結合したタンパク質をコードしている、請求項31記載の方法。
  • 核酸がRNAである、請求項32記載の方法。
  • 複合体または化合物が、X線撮影、蛍光検出、質量分光(mass spectroscopy)、または表面プラズモン共鳴によって検出される、請求項15、16、または20記載の方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    発明の背景
    本発明は、例えば新規の結合特性を持つ生成物の生産に有用なタンパク質骨格に関する。
    【0002】
    一般にタンパク質骨格と呼ばれる比較的限定された三次元構造を持つタンパク質は、操作された生成物を設計するための試薬として用いることができる。 これらの骨格は、特定の、もしくは無作為な配列の変異を受け入れる1つまたは複数の領域を典型的に含んでおり、このような配列の無作為化は、タンパク質ライブラリーを生産し、そのライブラリーから求める生成物を選択するためにしばしば行われる。 このような骨格が有用な1つの特定の分野は、抗体設計の分野である。
    【0003】
    試薬または薬剤を得るために哺乳類の免疫系を操作する多くの方法が以前より試みられてきた。 これらには、特定の抗原に反応するポリクローナル抗体の混合物を得るために関心対象の抗原を動物に注射する段階、ハイブリドーマ培養細胞にモノクローナル抗体を生産させる段階(KoehlerおよびMilstein、Nature、第256巻、第495頁、1975年)、新規の認識特性または最適化された認識特性を得るために現存のモノクローナル抗体を改変する段階、望ましい結合特性を持つ新規の抗体断片を作製する段階、ならびに単鎖抗体(抗体分子の重鎖および軽鎖の可変領域を可動性のペプチドリンカーと連結することにより作製される)を無作為化してファージディスプレイ法で抗原との結合により選択する段階(Clacksonら、Nature、第352巻、第624頁、1991年)が含まれる。
    【0004】
    さらに、新規の結合特性を持つタンパク質を得るために、免疫グロブリン以外のいくつかのタンパク質骨格が提案されている。 例えば「ミニボディ」骨格は、免疫グロブリンの折り畳みに関連しており、モノクローナル抗体の重鎖の可変ドメインから3つのβ鎖を除去することで設計されている(Tramontanoら、J. Mol. Recognit.、第7巻、第9頁、1994年)。 このタンパク質は61残基を含んでおり、これを使用して2つの超可変ループを生じうる。 これらの2つのループは無作為化され、抗原との結合により生成物が選択されるが、これまでのところ、溶解性の問題により、この枠組みには幾らかの限定された効用しかないようである。 ループを示すのに使用される別の枠組みは、テンダミスタット(tendamistat)であり、74残基で、サンドイッチ状の6本のβシート鎖が2つのジスルフィド結合によって結合している(McConnellおよびHoess、J. Mol. Biol.、第250巻、第460頁、1995年)。 この骨格には3つのループが含まれているが、これまでのところ、これらのループのうちの2つについてのみ、無作為化の可能性が試されている。
    【0005】
    他のタンパク質も枠組みとして試験されてきており、αヘリックスの表面に無作為化された残基(Nordら、Nat. Biotechnol.、第15巻、第772頁、1997年、Nordら、Protein Eng.、第8巻、第601頁、1995年)、αヘリックス束中のαヘリックス間にあるループ(KuおよびSchultz、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第92巻、第6552頁、1995年)、および小さいプロテアーゼ阻害剤のようにジスルフィド架橋で束ねられたループを提示するために使用されている(Marklandら、Biochemistry、第35巻、第8045頁、1996年;Marklandら、Biochemistry、第35巻、第8058頁、1996年;RottgenおよびCollins、Gene、第164巻、第243頁、1995年;Wangら、J. Biol. Chem.、第270巻、第12250頁、1995年)。
    【0006】
    発明の概要
    本発明は、関心対象のどのような化合物とも結合するように導出(evolve)しうる新規のタンパク質のファミリーを提供する。 フィブロネクチンもしくはフィブロネクチン様の骨格を使用したこれらのタンパク質は、特徴的な天然型抗体または操作された抗体(すなわち、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、もしくは単鎖の抗体)の様式で機能し、さらに構造的な利点を持つ。 特に、これらの抗体模倣物の構造は、標準的には抗体の構造および機能の喪失につながるような条件下でさえも、最適な折り畳み、安定性、および溶解性を持つように設計されている。
    【0007】
    これらの抗体模倣物は、実質的に関心対象の任意の化合物(例えば任意のタンパク質)とも結合しうるタンパク質を設計する目的で使用することができる。 特に、本明細書に述べられたフィブロネクチンに基づく分子を、抗体の可変領域の相補性決定領域(CDR)と類似した3つのフィブロネクチン・ループのうちの1つまたは複数を無作為化するように設計された定方向展開(directed evolution)に供する骨格として使用することができる。 このような定方向展開の方法により、関心対象の抗原に高い親和性を持つ抗体様分子が生産される。 さらに、本明細書に述べられた骨格を規定された露出ループ(例えば、前もって無作為化され、抗原との結合に基づいて選択されたループ)を示し、このように導入されたループと結合する分子の展開(evolution)の方向付けをするためにも使用することができる。 この型の選択は、個々の任意のCDR様ループ、または非線形エピトープに結合した2つもしくは3つ全部のCDR様ループを認識する認識分子を同定するために行ってもよい。
    【0008】
    したがって、本発明は少なくとも1つの無作為化されたループを持つフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質であって、対応する天然型のフィブロネクチンとは結合しない化合物と結合できることにより特徴付けられるタンパク質を特徴としている。
    【0009】
    好ましい態様において、フィブロネクチン3型ドメインは、哺乳類(例えばヒト)フィブロネクチン3型ドメインであり、かつタンパク質は、フィブロネクチン3型ドメインの10番目のモジュール( 10 Fn3)を含む。 このようなタンパク質においては、化合物との結合は、好ましくは1個、2個、または3個の10 Fn3ループによって媒介される。 他の好ましい様態において、 10 Fn3の2番目のループは、天然型のモジュールに比べて長さが伸びていてもよく、または10 Fn3はインテグリン結合モチーフを欠失していてもよい。 これらの分子では、塩基性アミノ酸-中性アミノ酸-酸性アミノ酸の配列(N末端からC末端の方向に)がインテグリン結合モチーフを置換するように、インテグリン結合モチーフがアミノ酸配列によって置換されていてもよく、一つの好ましい配列は、セリン-グリシン-グルタミン酸である。 別の好ましい態様において、本発明のフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質は、ジスルフィド結合を欠失している。
    【0010】
    本明細書に述べられたフィブロネクチン2型ドメインを含むタンパク質は、いずれも融合タンパク質(例えば、免疫グロブリンのF cドメイン、補体タンパク質、毒素タンパク質、またはアルブミンタンパク質をさらに含む融合タンパク質)の一部として製剤化されている。 さらに、フィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質はいずれも核酸(例えばRNA)と共有結合していてもよく、核酸はタンパク質をコードしていてもよい。 さらに、このタンパク質は多量体でもよく、または特にインテグリン結合モチーフを欠失する場合には、生理学的に許容される担体として製剤化されていてもよい。
    【0011】
    本発明はさらに、βシート配列に少なくとも1つの変異を持ち、それにより骨格構造が変化しているフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質の特徴を含んでいる。 また、これらのタンパク質は、対応する天然型のフィブロネクチンとは結合していない化合物と結合することができることにより特徴付けられる。
    【0012】
    さらに、本発明の任意のフィブロネクチン骨格は、固相支持体、(例えば、ビーズまたはチップ)上に固定することができ、これらの骨格は固相支持体上でアレイを含む任意の形に配置できる。
    【0013】
    関連する局面では、本発明はさらに本発明の任意のタンパク質をコードする核酸を特徴とする。 好ましい態様では、核酸はDNAまたはRNAである。
    【0014】
    別の関連する局面では、本発明はまた、フィブロネクチン3型ドメインのインテグリン結合ドメインの除去を伴う、フィブロネクチン3型ドメインを含み、哺乳類に対して薬学的に許容される、タンパク質の生成方法も特徴とする。 本方法は、上述の任意のフィブロネクチン3型ドメイン含有タンパク質に適用でき、ヒトの治療的応用のためのタンパク質の生成に特に有用である。 本発明は、インテグリン結合ドメインを持たない、そのようなフィブロネクチン3型ドメイン含有タンパク質も特徴とする。
    【0015】
    さらに別の関連する局面において、本発明は関心対象の化合物と結合しうる無作為化されたフィブロネクチン3型タンパク質を得る、もしくは導出するために、または無作為化されたフィブロネクチン3型モチーフを含む特定のタンパク質と結合しうる化合物(例えば、タンパク質)を得る、もしくは導出するために使用されうるスクリーニング法を特徴としている。 さらに、本発明は、関心対象の化合物またはタンパク質のいずれかを得るために、2つの方法を任意の順番で結合したスクリーニング法を特徴としている。
    【0016】
    特に、関心対象の無作為化されたタンパク質を単離または同定するのに有用な最初のスクリーニング法は、(a)少なくとも1つの無作為化されたループを持つフィブロネクチン3型ドメインを含む候補タンパク質を該化合物と接触させる段階であって、該接触段階が化合物-タンパク質複合体を形成させる条件下で実施される段階、および(b)該複合体から該化合物に結合する該タンパク質を得る段階を含んでいる。
    【0017】
    無作為化されたフィブロネクチン3型ドメインを持つタンパク質に結合する化合物を単離もしくは同定する第二のスクリーニング法は、(a)候補化合物を該タンパク質に接触させる段階であって、該接触段階が化合物-タンパク質複合体を形成させる条件下で実施される段階、および(b)該複合体からタンパク質に結合する該化合物を得る段階を含んでいる。
    【0018】
    好ましい態様において、本方法はさらに、段階(b)で得られたタンパク質のフィブロネクチン3型ドメインにおける少なくとも1つのループを無作為化し、さらに無作為化されたタンパク質を用いて段階(a)および段階(b)を繰り返すか、または段階(b)で得られた化合物を改変し、かつさらに改変した化合物を用いて段階(a)および段階(b)を繰り返すことのいずれかを含んでいる。 さらに、この化合物は好ましくはタンパク質であり、フィブロネクチン3型ドメインは好ましくは哺乳類(例えばヒト)のフィブロネクチン3型ドメインである。 別の好ましい態様において、このタンパク質はフィブロネクチン3型ドメインの10番目のモジュール( 10 Fn3)を含み、結合は1個、2個、または3個の10 Fn3ループによって媒介される。 さらに、 10 Fn3の2番目のループは天然型のモジュールに比べて長さが伸びていてもよく、または10 Fn3はインテグリン結合モチーフを欠失していてもよい。 また、上述したように、これらの分子では、塩基性アミノ酸-中性アミノ酸-酸性アミノ酸の配列(N末端からC末端の方向に)がインテグリン結合モチーフを置換するように、インテグリン結合モチーフがアミノ酸配列によって置換されていてもよく、一つの好ましい配列は、セリン-グリシン-グルタミン酸である。
    【0019】
    本明細書に述べられた選択法は、任意のフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質を用いて行ってもよい。 例えば、フィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質はジスルフィド結合を欠失していてもよく、または融合タンパク質(例えば、免疫グロブリンのF cドメイン、補体タンパク質、毒素タンパク質、もしくはアルブミンタンパク質をさらに含む融合タンパク質)の一部として製剤化されていてもよい。 さらに、選択を、核酸(例えば、RNAもしくはタンパク質をコードする任意の核酸)と共有結合したフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質を用いて行ってもよい。 さらに、選択はフィブロネクチンドメインタンパク質の多量体を用いて行ってもよい。
    【0020】
    好ましくは、選択は結合した標的の固相支持体上への結合した標的の固定化を含んでいる。 好ましい固相支持体には、カラム(例えば、アガロースカラムのような親和性ーカラム)またはマイクロチップが含まれる。
    【0021】
    また、本発明は、本発明のフィブロネクチン骨格タンパク質を用いる診断方法を特徴とする。 そのような診断方法は、試料(例えば、生物試料)に対して行ない、試料中で1つの分析物を検出したり、または多くの異なる分析物を同時に検出することができる。 本方法では、本明細書中に記述される任意の骨格分子を利用できる。 好ましくは、本方法は、(a)化合物分析物に結合し、かつ少なくとも1つの無作為化ループを持つフィブロネクチン3型ドメインを含むタンパク質に、試料を接触させる段階であって、化合物-タンパク質複合体の形成を可能にする条件下で接触が行われる段階;および (b) 複合体を検出し、それにより試料中の化合物を検出する段階、を含む。
    【0022】
    好ましい態様では、タンパク質は固相支持体(例えば、チップまたはビーズ)上に固定されており、アレイの一部として固定されうる。 タンパク質は核酸、好ましくはこのタンパク質をコードしているRNAのような核酸に、共有結合している可能性がある。 さらに、化合物はしばしばタンパク質であるが、試料中の他の任意の分析物でも良い。 検出は、X線撮影、蛍光検出、質量分光、または表面プラズモン共鳴を含むが、これらに限定されない、任意の標準的な手法で行われる。
    【0023】
    本明細書において用いられるように、「フィブロネクチン3型ドメイン」は互いに充填し合ってタンパク質のコアを形成する2個のβシート間に散在する7個もしくは8個のβ鎖を持つドメインであって、かつβ鎖を互いに連結して、溶媒に露出されたループをさらに含むドメインを意味する。 βシートサンドイッチの両端には、このようなループが少なくとも3個存在し、この端はβ鎖の方向と垂直なタンパク質の境界である。 好ましくは、フィブロネクチン3型ドメインは、プロテインデータベース(Protein Data Base)より入手可能であって、「1ttg」(ID=「1ttg」(1つのttg))として引用される10 Fn3ドメインの構造をコードする配列とアミノ酸レベルで少なくとも30%の同一性を呈し、および好ましくはアミノ酸レベルで少なくとも50%の同一性を呈する配列を含んでいる。 この定義において引用される配列の同一性は、モレキュラー・シミュレーション(Molecular Simulation)(San Diego、CA)より入手可能なホモロジー・プログラムによって決定される。 本発明はさらに、 10 Fn3関連分子の重合体であって、単量体構造の使用の延長に当たり、ポリタンパク質のサブユニットが配列において同一であるかもしくは異なっているものを含む。
    【0024】
    「天然型のフィブロネクチン」とは、生きている生物によってコードされる任意のフィブロネクチンタンパク質を意味する。
    【0025】
    「無作為化された」とは、鋳型配列に比べて1個または複数のアミノ酸変異を含むことを意味する。
    【0026】
    「タンパク質」とは、長さ、翻訳後修飾、もしくは機能にかかわらず、2個またはそれ以上のアミノ酸の任意の配列を意味する。 「タンパク質」および「ペプチド」は、本明細書において互換的に用いられる。
    【0027】
    「RNA」とは、二つまたはそれ以上の共有結合した、天然または改変されたリボヌクレオチドの配列を意味する。 この用語に含まれる改変されたRNAの一つの例は、ホスホロチオエートRNAである。
    【0028】
    「DNA」とは、二つまたはそれ以上の共有結合した、天然または改変されたデオキシリボヌクレオチドの配列を意味する。
    【0029】
    「核酸」とは、任意の2つまたはそれ以上の共有結合したヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体もしくは誘導体を意味する。 本明細書において用いられるように、この用語にはDNA、RNA、およびPNAが含まれるが、これらに限定されることはない。
    【0030】
    「薬学的に許容される」とは、重大な医学的に有害な結果なしに、動物(例えば哺乳類)に投与しうる化合物またはタンパク質を意味する。
    【0031】
    「生理学的に許容される担体」とは、処理された宿主に対して重大な有害な影響を持たず、投与される化合物の治療上の性質を維持する担体を意味する。 一つの例示的な生理学的に許容される担体は生理食塩である。 他の生理学的に許容される担体およびその式は当業者には自明であって、例えば「レミントンの薬剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、(第18版)、A. Gennaro編、1990年、Mack Publishing Company、Easton、PA、に述べられており、参照として本明細書に組み入れられている。
    【0032】
    「選択」とは、ある分子を集団の他の分子から実質的に分離することを意味する。 本明細書において用いられるように、「選択」段階は、選択段階後には集団中の望ましい分子が望ましくない分子に比べて少なくとも2倍、好ましくは30倍、より好ましくは100倍、最も好ましくは1000倍に濃縮されることを提供する。 選択段階は何回繰り返してもよく、所与の方法中で異なる型の選択段階が組み合わされていてもよい。
    【0033】
    本明細書において用いられる「結合パートナー」とは、所望の関心対象の化合物(例えば、タンパク質)のある部分に対する特異的、共有結合、または非共有結合親和性を有するいかなる分子も意味する。 結合パートナーの例には、抗原/抗体対、タンパク質/阻害剤対、受容体/リガンド対(例えば、ホルモン受容体/ペプチドホルモン対のような細胞表面受容体/リガンド対)、酵素/基質対(例えば、キナーゼ/基質対)、レクチン/炭化水素対、オリゴマーまたはヘテロオリゴマータンパク質凝集体、DNA結合タンパク質/DNA結合部位、RNA/タンパク質対、および核酸二本鎖、ヘテロ二本鎖、または連結鎖のメンバー、並びに、他の分子(例えば、化合物またはタンパク質)のいかなる部分とも1つもしくはそれ以上の共有結合または非共有結合を形成することができる任意の分子が含まれるが、これらに限定されることはない。
    【0034】
    「固相支持体」とは、それに対して直接または間接的に(例えば、他の抗体またはプロテインAのような他の結合パートナー中間体を通じて)フィブロネクチン骨格もしくは親和性複合体が結合してもよい、またはその中にフィブロネクチン骨格もしくは親和性複合体が埋め込まれてもよい(例えば、受容体またはチャンネルを通じて)、任意のカラム(もしくはカラム材料)、ビーズ、試験管、マイクロタイター皿、固体粒子(例えば、アガロースもしくはセファロース)、マイクロチップ(例えば、シリコン、シリコンガラス、もしくは金チップ)、またはメンブレン(例えば、リポソームもしくは小胞のメンブレン)を意味するがこれらに限定されることはない。
    【0035】
    本発明によって、多くの利点が提供される。 例えば、以下により詳細に述べられているように、本抗体模倣物は還元条件下での安定性および高濃度での溶解性など、改良された生物物理学的性質を呈する。 さらに、これらの分子は大腸菌(E. coli)などの原核生物系、酵母などの真核生物系、およびウサギ網状赤血球溶解物系などのインビトロ翻訳系において容易に発現し、折り畳まれる。 さらに、これらの分子は、RNA-タンパク質融合技術を用いたインビトロ選択(RobertsおよびSzostak、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第94巻、第12297頁、1997年;Szostakら、米国特許出願第09/007,005号および米国特許出願第09/247,190号;Szostakら、国際公開公報第98/31700号)、ファージ・ディスプレイ(例えば、SmithおよびPetrenko、Chem. Rev.、第97巻、第317頁、1997年を参照)、および酵母ディスプレイ系(例えば、BoderおよびWittrup、Nature Biotech.、第15巻、第553頁、1997年を参照)を含む選択を多回数繰り返すことを含む親和性成熟(affinity maturation)技術にきわめて適している。
    【0036】
    本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになると思われる。
    【0037】
    詳細な説明
    本明細書に記載される新規の抗体模倣物は、抗体に由来する断片、および例えば上述された枠組みのような非抗体の枠組みのどちらよりも優れているように設計されている。
    【0038】
    これらの抗体模倣物が抗体断片に勝っている主要な利点は構造である。 これらの骨格は、ヒト体液タンパク質で見出された安定性で、かつ可溶性の構造モジュール全体に由来している。 結果として、これらの作製は、抗体の天然の折り畳みの一部を除去することを含み、無傷の抗体における可変ドメインおよび定常ドメイン間の界面のような疎水性環境に埋まっているアミノ酸残基がしばしばさらされている抗体断片よりも、これらは優れた折り畳みおよび熱安定性の性質を呈する。 このような疎水性残基の溶媒への曝露は、凝集の可能性を増加させる。
    【0039】
    さらに、本明細書に記載の抗体模倣物は、特定の条件下で抗体断片の正しい折り畳みを妨害もしくは阻害すると報告されているジスルフィド結合を持たない。 本骨格の自然な折り畳み安定性はジスルフィド結合に依存していないため、ジスルフィド結合が崩壊すると分解してしまう抗体およびそれらの断片とは異なり、還元条件下でも安定である。
    【0040】
    さらに、これらのフィブロネクチンに基づいた骨格は、抗体分子の機能的な利点を提供する。 特に、 10 Fn3モジュールは免疫グロブリンではないという事実にかかわらず、その全体的な折り畳みはIgGの重鎖の可変領域に近く(図2)、CDRに類似した3つのフィブロネクチン・ループを天然抗体と同様な相対的配向性で示すことが可能にされている。 この構造のために、本抗体模倣物は、天然と類似した抗原結合の性質および抗体への親和性を持ち、インビボにおける抗体の親和性成熟化の過程に類似したインビトロでループを無作為化して混合する戦略をとることができる可能性を有する。
    【0041】
    フィブロネクチンに基づく例示的な骨格、ならびにその標的リガンドと同様に新規の結合タンパク質を同定し、選択し、および導出するための使用が以下に述べられている。 これらの実施例は本発明を例示する目的で提供されており、本発明を限定するためのものではない。
    【0042】
    10 Fn3 の構造モチーフ
    本発明の抗体模倣物は、哺乳類の血液および構造タンパク質で見出された共通ドメインであるフィブロネクチン3型モジュール(Fn 3 )の構造に基づいている。 このドメインはタンパク質配列データベースの中に400回よりも多く出現し、フィブロネクチン、テンシン、細胞内の細胞骨格タンパク質、および原核生物の酵素を含むこれまでにシークエンシングされたタンパク質の2%に出現すると見積もられている(BorkおよびDoolittle、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、第8990頁、1992年;Borkら、Nature Biotech.、第15巻、第553頁、1997年;Meinkeら、J. Bacteriol.、第175巻、第1910頁、1993年;Watanabeら、J. Biol. Chem.、第265巻、第15659頁、1990年)。 特に、これらの骨格は94個のアミノ酸残基を含むヒトFn3の10番目のモジュール( 10 Fn3)を鋳型として含んでいる。 このドメインの全体的な折り畳みは、最も小さな機能的抗体断片であり、ラクダおよびラマのIgG(図1、図2)において抗原認識単位の全体を含む重鎖の可変領域のものと密接に関連している。 ラクダおよびラマのドメインと10 Fn3ドメインの間の主要な差異は、(i) 10 Fn3のほうがβ鎖が少ないこと(7対9)、および(ii)ラクダおよびラマのドメインでは、互いに充填し合う2個のβシートがジスルフィド架橋により連結されているが、 10 Fn3ではそうでないことである。
    【0043】
    IgGの重鎖にある抗原結合ループに対応する10 Fn3の3個のループは、アミノ酸残基21〜31位、51〜56位、76〜88位の間を通っている(図3)。 1番目のループの長さは11残基であり、および3番目のループの長さはそれぞれ11残基および12残基であり、抗体の重鎖で見出される対応する抗原認識ループの範囲内、すなわちそれぞれ10〜12残基および3〜25残基に位置する。 したがって、無作為化され、抗原との高親和性によって選択される場合には、これらの2個のループは抗体中の対応するループと同等に抗原と接触する。
    【0044】
    対照的に、 10 Fn3の2番目のループは6残基の長さしかなく、一方で抗体の重鎖にある対応するループは16残基〜19残基の範囲である。 それゆえ、抗原との結合を最適化するためには、抗原結合において可能な最も高い可動性および親和性を得るために、 10 Fn3の2番目のループを、好ましくは10残基〜13残基(無作為化されたものと合わせて)伸長させる。 実際に、一般的には、インビトロもしくはインビボの親和性成熟化において、(以下により詳細に述べるように)抗体模倣物のCDR様ループの配列と同様に長さも無作為化してもよい。
    【0045】
    10番目のヒトフィブロネクチン3型ドメインである10 Fn3は、低温においてさえ急速に再び折り畳まれる。 その背骨のコンフォメーションは、5℃において1秒間以内に回復する。 10 Fn3の熱学的安定性は高く(ΔG U =24kJ/mol=5.7kcal/mol)、110℃の高い融解温度と相関する。
    【0046】
    10 Fn3の生理学的な役割の1つは、体液中に可溶型としておよび細胞外マトリックス中で不溶型として存在する糖タンパク質であるフィブロネクチンのサブユニットである(Dickinsonら、J. Mol. Biol.、第236巻、第1079頁、1994年)。 220〜250kDのフィブロネクチンの単量体は、12個の1型モジュール、2個の2型モジュール、および17個のフィブロネクチン3型モジュールを含んでいる(PottsおよびCampbell、Curr. Opin. Cell Biol.、第6巻、第648頁、1994年)。 インテグリン、ヘパリン、およびコンドロイチン硫酸塩とフィブロネクチンとの結合には異なる3型モジュールが含まれている。 10 Fn3は、その曝露されたループの1つにあるインテグリン結合Arg-Gly-Asp(RGD)モチーフを介して細胞接着を媒介することが見出されている。 フィブリノーゲン、フォン・ビルブラント因子、およびビトロネクチンのような他のタンパク質でも、類似のRGDモチーフがインテグリン結合に含まれることが示されている(Hynesら、Cell、第69巻、第11頁、1992年)。 10 Fn3については、他のマトリックスもしくは細胞結合的な役割は述べられていない。
    【0047】
    RGDを含む短いペプチドに比べて10 Fn3の接着活性がわずかに強いという知見は、 10 Fn3の細胞結合活性が10 Fn3の構造全体に分散しているというよりはRGDペプチドに局在しているという結果(Baronら、Biochemistry、第31巻、第2068頁、1992年)と一致する。 RGDモチーフを持たない10 Fn3は他の血漿タンパク質もしくは細胞外マトリックスと結合しそうもないという事実から、 10 Fn3は抗体に換わる有用な骨格である。 さらに、血流の天然フィブリノーゲン中に10 Fn3が存在することは、元々の生物において10 Fn3自体が免疫原生ではないとおもわれることを示唆している。
    【0048】
    さらに、本発明者らは、無作為化に耐性を持ち、抗体模倣物の多様なプールの生産を助ける曝露されたループ配列が10 Fn3の枠組みにあることを決定した。 この決定は、 10 Fn3の配列の可動性を試すことで行われた。 特に、関連タンパク質の配列はもちろん、他の源から得られたフィブロネクチンの配列とヒト10 Fn3の配列を整列化させ(図4)、この整列化の結果をヒト10 Fn3ドメインの三次元構造上に位置づけた(図5)。 この整列化により、保存された残基の大部分はβシートサンドイッチのコアに見出され、著しく変異しやすい残基は両βシートの溶媒に接触しうる表面上、および抗体模倣物の親和性成熟化において超可変ループとして働き、溶媒と接触しうる3つのループ上でN末端およびC末端を含むβシートの端に沿って局在することが判明した。 これらの結果を考慮すると、これら3つのループの無作為化には、 10 Fn3の枠組み自体の全体的な折り畳みもしくは安定性に反する効果はないように思われる。
    【0049】
    この解析は、ヒト10 Fn3の配列では最小限でもアミノ酸1〜9位、44〜50位、61〜54位、82〜94位(βシートの端);19位、21位、31〜46位(偶数)、79〜65位(奇数)(両βシートの溶媒に接触しうる表面);21〜31位、51〜56位、76〜88位(CDR様の溶媒に接触しうるループ);ならびに14〜16位および36〜45位(溶媒に接触しうる他のループおよびβターン)は、新規のもしくは改良された化合物結合タンパク質を導出するために無作為化されてもよいことを示している。 さらに、以上に討議されたように、溶媒に曝露された1つもしくは複数のループの長さにおける変化も、このような定方向展開法に含まれる。 または、βシート配列の変化を利用して新規のタンパク質を導出してもよい。 これらの変異は骨格を変化させ、それにより間接的に1つまたは複数のループ構造を変化させる。 この方法を用いた場合は、配列に変異を過剰に行うことなく、むしろほとんど変異を導入してはいけない。 この方法では、βシート配列に、好ましくは10アミノ酸以下の変異、より好ましくは3アミノ酸以下の変異が導入されるべきである。
    【0050】
    フィブロネクチン融合体
    本明細書に述べられた抗体模倣物は、他のタンパク質ドメインと融合していてもよい。 例えばこれらの模倣物は、IgG(F c )の定常領域と10 Fn3モジュール、好ましくは10 Fn3のC末端を融合させることで、ヒト免疫応答に組み込まれていてもよい。 このような10 Fn3-F c融合分子などにおけるF cは、免疫応答の補体構成要素を活性化し、抗体模倣物の治療上の価値を増加させる。 同様に、 10 Fn3とC1qのような補体タンパク質との融合は、細胞を標的化するために用いることができ、 10 Fn3と毒素の融合は、特定の抗原を運搬する細胞を特異的に破壊するために用いることができる。 さらに、いかなる型の10 Fn3であっても、アルブミンと融合させて血流中での半減期および組織への浸透を増加させることができる。 これらの任意の融合体を、例えば一般的に入手可能な遺伝子配列を用いて構築した組換え融合遺伝子から融合タンパク質を発現させるなどの常法により生産することができる。
    【0051】
    フィブロネクチン骨格の多量体
    フィブロネクチンの単量体に加えて、本明細書に述べられている任意のフィブロネクチン構築物を、結合価を増加させて、それにより抗原との結合活性を増加させるために、 10 Fn3に基づく抗体模倣物の二量体または多量体として生産してもよい。 このような多量体は、例えば天然の8 Fn3- 9 Fn3- 10 Fn3のCとN末端との結合を模倣したり、または定常領域を介して結合した抗体の二量体を模倣したりするなどの各10 Fn3モジュール間の共有結合により生産されてもよい。 10 Fn3-F c構築物を、 10 Fn3-F c ::F c - 10 Fn3という一般的な図式の二量体を設計するために利用してもよい。 F c ::F cの界面に操作された結合は共有結合であっても、非共有結合であってもよい。 さらに、このようなより高いオーダーの構造を作製するために、 10 Fn3ハイブリッドにおいてF c以外の相手との二量体化もしくは多量体化を利用することができる。
    【0052】
    特定の例としては、共有結合した多量体は、多量体をコードする融合遺伝子を構築する段階によって、または単量体の配列中にシステイン残基のコドンを操作し、発現した生成物間でジスルフィド結合の形成を生じさせる段階によって作製されてもよい。 非共有結合した多量体もまた、様々な技術により生産することができる。 これらには、正電荷および/または負電荷を帯びた残基に対応するコドンを単量体の配列に導入し、発現した生成物間(および、その結果として単量体間)において、これらの残基間で相互作用を生じさせておくことが含まれる。 本方法は、例えばフィブロネクチンの負電荷を帯びた残基のように、単量体サブユニット中に天然に存在する荷電残基の利点を用いることで単純化することができる。 非共有結合した抗体模倣物を生産する別の方法は、相互作用することが知られているタンパク質またはタンパク質ドメインのコード配列を単量体遺伝子(例えば、アミノ末端もしくはカルボキシル末端)に導入することである。 このようなタンパク質もしくはタンパク質ドメインは、コイルドコイルモチーフ、ロイシンジッパーモチーフ、および二量体もしくはより高いオーダーの多量体を直接形成することが知られている任意の多数のタンパク質サブユニット(またはその断片)を含んでいる。
    【0053】
    フィブロネクチン様分子
    10 Fn3は抗体模倣物の生産に好ましい骨格を表すにもかかわらず、本明細書に記載の分子においては、他の分子が10 Fn3を置換していてもよい。 これらに限定されることはないが、ヒト以外の動物および原核生物から得られる関連したFn3モジュール、ならびにヒトフィブロネクチンモジュール1 Fn3- 9 Fn3および11 Fn3- 17 Fn3を含む。 さらに、テネイシンおよびアンジュリンのような10 Fn3と配列に相同性を持つ他のタンパク質から得られたFn3モジュールを使用してもよい。 異なる適用には、異なる生物および親タンパク質に由来するモジュールが最も適切である可能性がある。 例えば、抗体模倣物を設計するには、治療上の分子または診断上の分子として意図され、生物にとって自然なフィブロネクチンもしくはフィブロネクチン様分子に由来するタンパク質を作製することが最も望ましいと考えられる。
    【0054】
    骨格に基づく結合タンパク質の定方向展開
    本明細書に記載の抗体模倣物は、新規または改良された結合タンパク質を導出するために、いかなる技術において使用してもよい。 一つの特定の例として、結合の標的をカラム樹脂またはマイクロタイタープレートのウェルのような固相支持体に固定化し、候補となる骨格に基づく結合タンパク質のライブラリーに標的を接触させる。 このようなライブラリーは、 10 Fn3のCDR様ループの配列および/または長さを無作為化することで野生型10 Fn3の骨格から構築された10 Fn3クローンから成っていてもよい。 望ましい場合には、このライブラリーは、例えばショスタック(Szostak)ら、米国特許出願第09/007,005号および同第09/247,190号;ショスタック(Szostak)ら、国際公開公報第98/31700号;ならびにロバーツ(Roberts)およびショスタック(Szostak)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、第94巻、第12297〜12302頁に記載の技術によって生産されたRNA-タンパク質融合体ライブラリーであってもよい。 またはDNA-タンパク質ライブラリーであってもよい(例えば、Lohse、「DNA-タンパク質融合体およびそれらの使用法(DNA-Protein Fusions and Uses Thereof)」、米国特許出願第60/110,549号、米国特許出願第09/459,190号、および米国特許第99/28472号)。 この融合体ライブラリーを固定された標的と共にインキュベートし、支持体を洗浄して非特異的な結合物を除去し、高ストリンジェントな条件下における最も強い結合物を溶出してPCRにかけて配列情報を回収するか、または配列にさらなる変異を加えたりもしくは加えなかったりして選択段階を繰り返すのに使用することができる結合物の新規のライブラリーを作製する。 抗原に対して十分な親和性を持つ結合物を得られるまでには、選択ラウンドが多数回行われる可能性がある。
    【0055】
    一つの特定の例においては、 10 Fn3の骨格を選択の標的として使用することができる。 例えば、10残基のループ中に存在する特異的なペプチド配列に結合するタンパク質が必要な場合は、このループの1つが10の長さで所望の配列に設定された単一の10 Fn3クローンを構築する。 新規のクローンをインビボで発現させて精製し、次に支持抗体に固定化する。 適切な骨格に基づいたRNA-タンパク質融合体ライブラリーを支持体と相互作用させ、その後洗浄して、所望の分子を溶出し、上述したように再度選択する。
    【0056】
    同様に、 10 Fn3の骨格は、 10 Fn3のループに提示されたペプチド配列と相互作用する天然タンパク質を見出すためにも使用することができる。 上述したように10 Fn3タンパク質を固定化し、提示されたループへの結合物に対してRNA-タンパク質融合体ライブラリーをスクリーニングする。 選択ラウンドを複数回行うことで結合物を濃縮し、DNAのシークエンシングにより同定される。
    【0057】
    さらに上述の方法において、RNAタンパク質ライブラリーを定方向展開のための例示的なライブラリーとして示したが、いかなる型の骨格に基づくライブラリーも本発明の選択方法において使用することができる。
    【0058】
    使用
    本明細書に記載の抗体模倣物は、関心対象の任意の抗原とも結合するように導出することができる。 これらのタンパク質は天然抗体に比べて熱力学的に優れた性質を持ち、インビトロで急速に導出することができる。 したがって、これらの抗体模倣物は、研究、治療、診断の分野を含む、抗体が使用されるすべての分野においても抗体の代わりに用いることができる。 さらに、これらの骨格は抗体に比べて可溶性でかつ安定性の性質を持つので、本明細書に述べられた抗体模倣物は抗体分子が破壊されたり、または不活性化されたりするような条件下でも使用することができる。 最後に、本発明の骨格は事実上いかなる化合物とも結合するように導出することができるので、これらの分子は完全に新規であり、研究、治療、および診断の分野における使用も見出されている結合タンパク質を提供する。
    【0059】
    実験結果
    上述された例示的な骨格分子は、例えば以下のような選択手順で生産され、かつ検査された。
    【0060】
    ライブラリーの構築
    複合体のライブラリーは、CDR様ループに対応する無作為化された部位を各々1個含む3つの断片から構築した。 断片は、それらの中に含まれるCDR-H様ループの名前に基づいて、BC、DE、およびFGと名付けた。 各々の断片には、 10 Fn3および無作為化された配列に加えてHis 6ドメインのN末端またはFLAGペプチドタグのC末端をコードする伸長部分が含まれた。 各DNA断片には、2つの断片間(すなわち、BCおよびDE断片間もしくはDEおよびFG断片間)の各接合部にEar IタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの認識配列が含まれた。 この制限酵素は、すべての外因性非10 Fn3配列を除去し、隣接する断片を一緒にスプライシングさせた。 さらに変異および選択ラウンドの間に、3つの10 Fn3断片を組換えのように混合させる。
    【0061】
    各断片は2つの重複するオリゴヌクレオチドから構成され、最初にアニーリングさせた後、断片の2本鎖DNAの形状を形成するように伸長させた。 3つの断片を構築および加工するのに使用されるオリゴヌクレオチドを以下の表に示す:「先端(top)」および「末尾(bottom)」の種は、 10 Fn3コード配列全体を含むオリゴヌクレオチドである。 これらのオリゴヌクレオチドの呼称において、「N」は、A、T、C、またはGを示し、「S」は、CおよびGを示す。

    T7T

    MV (インビトロ翻訳に必要なT7プロモーターおよびTMV非翻訳領域を誘導する):


    Unispl-s(Robertsら、1997、上記の、ピューロマイシン含有リンカーにmRNAを連結するために用いられる

    スプリントオリゴヌクレオチド):


    A18---2PEG(DNAピューロマイシンリンカー):


    【0062】


    オリゴヌクレオチド対(各500pmol)を100μlの10mM Tris 7.5、50mM NaCl中で85℃にて10分間アニーリングさせ、次にゆっくりと(0.5〜1時間)室温に冷却した。 1本鎖の突出部分にアニーリングした断片を、アニーリングしたオリゴ各100μlアリコートに対して100Uのクレノー(New England Biolabs、Beverly、MA)ならびに838.5μlのH

    2 O、9μlの1M Tris 7.5、5μlの1M MgCl

    2 、20μlの10mM dNTPs、および7.5μlの1M DTTで調製された緩衝液を用いて伸長させた。 伸長反応は、25℃にて1時間行った。


    【0063】


    次に、ショスタック(Szostak)ら、米国特許出願第09/007,005号および同第09/247,190号;ショスタック(Szostak)ら、国際公開公報第98/31700号;ならびにロバーツ(Roberts)およびショスタック(Szostak)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、第94巻、第12297〜12302頁によって開発された技術を用いて、各2本鎖

    DNA断片をRNA-タンパク質融合体に形質転換した。 簡単に言えば、アンビオンインビトロ転写キット(Ambion in vitro transcription kit)、MEGAshortscript(Ambion、Austin、TX)を用いて断片を転写し、得られたmRNA-DNA-ピューロマイシン-PROfusionタンパク質をオリゴdTセルロースを用いて精製し、逆転写酵素および上述したRTプライマー(Unisplint-SもしくはflagASA)を用いて、製造者の指示に従ってDNAの相補鎖を合成した。


    【0064】


    次に、各断片について得られた

    RNA-タンパク質融合体を、そのペプチド精製タグに適した樹脂、すなわちHis

    6タグにはNi-NTAアガロースおよびFLAGタグにはM2アガロースを用いて、製造者に推奨された方法に従って精製した。 タグと結合した

    RNA-タンパク質融合体

    cDNA構成要素を、ファルマシアレディートゥゴーPCRビーズ(Pharmacia Ready-to-Go PCR Beads)、10pmolの5'および3' PCRプライマーを用いて、以下のPCRプログラム(Pharmacia、Piscataway、NJ)に従ってPCRにより増幅した:1段階目は95℃で3分間、2段階目は95℃で30秒間、58/62℃で30秒間、72℃で1分間を必要に応じて20/25/30サイクル、3段階目は72℃で5分間、4段階目は最後まで4℃。


    【0065】


    得られた

    増幅DNAを、1μgのDNAにつき5UのEar I(ニュー・イングランド・バイオラボ(New England Biolabs))で切断した。 反応は、T4 DNAリガーゼ緩衝液(New England Biolabs)中で37℃にて1時間行い、続いてEar Iを失活させるために70℃にて15分間インキュベートした。 無作為化されたループを持つ

    10 Fn3遺伝子の全長を形成させるために、等量のBC断片、DE断片、およびFG

    DNA断片を混合して連結した。 連結には10Uの新鮮なEar I(New England Biolabs)および20UのT4 DNAリガーゼが必要であり、37℃にて1時間かかった。


    【0066】


    上述の方法で、3つの異なったライブラリーを作製した。 各々は、10個の無作為化された残基を持つFGループの形状を含んでいた。 最初のライブラリーのBCおよびDEループから野生型

    10 Fn3の配列が得られ;7個の無作為化された残基を持つBCループおよび野生型DEループから2番目のライブラリーを作製し;かつ7個の無作為化された残基を持つBCループおよび4個の無作為化された残基を持つDEループから3番目のライブラリーを作製した。 これら3つのライブラリーの各々におけるFGループの複雑性は10

    13であり、さらなる2つの無作為化されたループによって研究室で標本抽出するには複雑性が高すぎる可能性が提供された。


    【0067】


    構築された3つのライブラリーは、選択工程を単純化するために混合され、1つのマスターライブラリーとし、標的との結合それ自体によって、特定の誘発に最も適したライブラリーを選択することにした。 ショスタック(Szostak)ら、米国特許出願第09/007,005号および同第09/247,190号;ショスタック(Szostak)ら、国際公開公報第98/31700号;ならびにロバーツ(Roberts)およびショスタック(Szostak)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、第94巻、第12297〜12302頁に述べられた一般的な方法に従って、マスターライブラリーから

    RNA-タンパク質融合体を得た(図8)。


    【0068】


    融合体の選択


    RNA-タンパク質融合体の形態のマスターライブラリーが、TNF-αとの結合を選択するために供された。 2つの方法が行われ、1つでは標的をアガロースカラムに固定化し、1つでは標的をBIACOREチップに固定化した。 最初に、アガロースカラムへのバックグラウンドの結合物を最小限にするために条件の大幅な最適化を行い、50mM HEPES pH 7.4、0.02% Triton、100μg/ml変性されたサケ精子DNAという好ましい緩衝液の条件を得た。 この緩衝液中では、

    10 Fn3 RNA融合体のTNF-αセファロースへの非特異的結合は0.3%であった。

    10 Fn3 RNA-DNAのTNF-αセファロースへの非特異的結合バックグラウンドは0.1%であることが見出された。

    TNF-αセファロース上での各々の選択ラウンドにおいて、残存している非特異的な結合物のいかなるものも除去するために、最初にPROfusion(商標)ライブラリーを非誘導体化されたセファロースと共に1時間プレインキュベートし、この前除去により得られた流出液をTNF-αセファロースと共にさらに1時間インキュベートした。


    【0069】


    TNF-αセファロース上での各々の選択ラウンドにおいて、残存している非特異的な結合物のいかなるものも除去するために、最初に

    RNA-タンパク質融合体ライブラリーを非誘導体化されたセファロースと共に1時間プレインキュベートし、この前除去により得られた流出液をTNF-αセファロースと共にさらに1時間インキュベートした。 TNF-αセファロースを3〜30分間洗浄した。


    【0070】


    各選択後に、0.3M NaOHまたは0.1M KOHを用いて

    RNA-タンパク質融合体に由来するcDNAを固相支持体から溶出させ、PCRにより増幅させた。 所望の大きさのDNAのバンドは、選択ラウンドを複数回行っても残留していた(図9)。 2つの他の選択法でも同様な結果が観察されたが、アガロースカラム選択で得られたデータのみを図9に示す。


    【0071】


    最初の7ラウンドにおいては、

    RNA-タンパク質融合体ライブラリーの標的への結合は低いままであり;対照的に、選択の異なる段階においてDNAプールから遊離タンパク質が翻訳された場合には、カラムに結合した種の割合はラウンド間で有意に増加した(図10)。 他の任意の標的結合種(例えばIL-1およびIL-13)についても、同様の選択を行うことができる。


    【0072】


    動物実験


    野生型

    10 Fn3は、インテグリン結合性のトリペプチドモチーフであるアルギニン78-グリシン79-アスパラギン酸80(「RGDモチーフ」)をFGループの先端に含んでいる。 このトリペプチドに基づくインテグリンとの結合および潜在性の炎症応答をインビボで回避するために、密接に関連した野生型

    11 Fn3ドメインで見出される配列で、活性を持たない配列であるセリン78-グリシン79-グルタミン酸80(「SGE変異体」)を含む

    10 Fn3の変異体を生産した。 このSGE変異体は、N末端にHis

    6タグを付けて大腸菌中で遊離タンパク質として発現し、金属キレートカラムに続いてサイズ排除カラム上で均質性によって精製される。


    【0073】


    特に、His

    6 -

    10 Fn3(SGE)をコードするDNA配列をpET9a発現ベクターにクローニングし、BL21 DE3 pLysS細胞を形質転換した。 次に、50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地中で37℃にて振盪しながらA

    260 =1.0になるまで培養物を増殖させ、その後0.4mM IPTGにより誘導された。 誘導された培養物を同じ条件下でさらに一晩(14〜18時間)インキュベートし;標準の低速度遠心分離により細菌を回収した。 元の培養容量の1/50倍の溶解緩衝液(50mM Tris 8.0、0.5M NaCl、5% グリセロール、0.05% Triton X-100、および1mM PMSF)に細胞沈殿を再懸濁し、得られたペーストをMicrofluidics Corporation Microfluidizer M110-EHに3回通すことにより細胞を溶解させた。 溶解物を遠心分離して清澄化し、上清を0.45μmのフィルターに通して濾過し、続いて0.2μmのフィルターに通して濾過した。 清澄化された溶解物の100mlを5mlのタロンコバルトカラム(クロンテック(Clontech)、パロアルト(Palo Alto)、CA)に載せ、70mlの溶解緩衝液で洗浄し、0mM〜30mM イミダゾールの直線勾配を含む溶解緩衝液で溶出した。 すべての段階を通じて、カラムを通す流速は1ml/分であった。 溶出したタンパク質を15,000〜20,000のPEGに対して透析し(分子量カットオフ値、3,500)、10倍に濃縮した。 得られた試料を緩衝液1(グリセロールを含まない溶解緩衝液)中で透析し、緩衝液1で平衡化した16×60mmのセファクリル100のサイズ排除カラム上に1回に5mlずつ載せた。 カラムに0.8ml/分で緩衝液1を流し、所望の分子量のタンパク質を含む全画分をプールして、上述のように10倍に濃縮し、次にPBS中で透析した。 得られた試料でエンドトキシンスクリーニングおよび動物実験を行うためにToxikon(MA)を使用した。


    【0074】


    これらの動物実験において、これまでに検査された試料中のエンドトキシンの水準は、検査法の検出水準以下であった。 予備的な毒性学の研究において、このタンパク質を2匹のマウスに治療量の100倍と見積もられる2.6mg/マウスを注射した。 動物は研究の2週間のあいだ、はっきりとした悪い影響なしに生存した。 これらの結果は、

    10 Fn3が静脈内薬に安全に取り込まれる可能性を有することを示唆している。


    【0075】


    インビボでの使用するための他の構築物


    8kDの

    10 Fn3ドメインの半減期を延ばすために、天然抗体を模倣するより大きい分子も構築されている。 この

    10 Fn3-F

    c分子は、宿主のIgGの定常領域にある-CH

    1 -CH

    2 -CH

    3 (図11)もしくは-CH

    2 -CH

    3ドメインを含んでおり、これらの構築物中では、

    10 Fn3ドメインはIgGのV

    Hドメインの代わりにN末端に結合されている(図11および図12)。 このような抗体様構築物は、天然の免疫応答を利用できる可能性と同様に、タンパク質の薬物動態を改善させることが期待される。


    【0076】


    10 Fn3-CH

    1 -CH

    2 -CH

    3クローンのマウス型を構築するために、最初にマウス肝脾cDNAライブラリー(クロンテック(Clontech))から-CH

    1 -CH

    2 -CH

    3領域を増幅し、次にpET25ベクターに連結した。 クローニングに使用したプライマーは5' Fc Nestおよび3' 5 Fc Nestであり、回収したインサートの末端に適切な制限酵素部位を結合するのに使用したプライマーは、5' Fc HIIIおよび3' Fc Nheであった。


    【0077】


    このクローンからCH

    1領域を除去し、より短いFc部分を作製して

    10 Fn3-CH

    2 -CH

    3クローンとするために、さらなるPCRを用いる。 各クローンの5'末端に

    10 Fn3をコードする配列を連結した。 同一のマウス脾臓cDNAライブラリーからクローニングされた野生型

    10 Fn3でも、または分子の変異もしくは無作為化により得られた改変

    10 Fn3でも使用することができる。 マウス野生型

    10 Fn3のクローニングに使用したオリゴヌクレオチドは、以下であった:


    Mo5PCR-His-NdeI(His

    6精製タグを有する、代わりのN末端用):


    【0078】


    ヒトオリゴヌクレオチド配列において、同一の方法を用いることにより、ヒトの等価なクローンが構築される。


    【0079】


    タンパク質チップ適用における

    10

    Fn3

    骨格


    10 Fn3がタンパク質チップ適用に適しているのは、 (1) ベンチまたは自動化装置で迅速に選択できる多くの結合基を支持する能力があり、かつ (2) 生物物理学的特性が優れているためである。


    【0080】


    10 Fn3の用途の広い結合特性は、Fn3免疫グロブリン様、βサンドイッチ型折畳みによって示されるループに関連する。 上述のように、これらのループは抗体の可変ドメインの相補性決定領域に類似しており、抗体ループと同様な様式で共同して抗原に結合できる。 本発明者らの系では、多様なmRNA-

    10 Fn3融合体のライブラリーを作製するために、

    10 Fn3ループのBC(21残基〜30残基)、DE(51残基〜56残基)、およびFG(76残基〜78残基)は、配列、長さ、または配列と長さの両方が、無作為化されている。 そのようなライブラリーにおける結合物は、高親和性の結合物の小さな集団が得られるまで、固定化またはタグ付き標的に対する親和性に基づいて濃縮される。 また、誤りがちの(error-prone)PCRおよび組換えを用いて、選択された結合物の親和性の成熟を促進することができる。 迅速で効率の良い選択および親和性成熟プロトコールにより、多数の標的に対する結合物を短時間で選択することができる。


    【0081】


    タンパク質チップ上に固定される結合物の骨格として、

    10 Fn3ドメインは、抗体断片および単鎖抗体よりも小さく、扱いやすいという利点を持つ。 例えば、安定性および溶解度に大きな差があり、構造的に必須なジスルフィド結合を保つために酸化環境を必要とする単鎖骨格または単離された抗体可変ドメインとは異なり、

    10 Fn3は非常に安定で、その融解温度は110℃、溶解度は>16 mg/mLである。 また、

    10 Fn3骨格はジスルフィド結合も遊離のシステインも含まない;したがって、その環境の酸化還元電位には影響されない。

    10 Fn3のもう1つの利点は、抗原結合ループおよびN末端が、βサンドイッチの、C末端とは反対側の端にあるということである;そのため、

    10 Fn3骨格がC末端でチップに結合すると、抗原結合ループが、分析する溶液に最大限で接触可能になる。

    10 Fn3はわずか94のアミノ酸残基からなる単一ドメインであるため、約250残基の単鎖抗体よりも高密度でチップ表面に固定することが可能である。 また、

    10 Fn3骨格は、このドメインの溶解度が高いことからもわかるように、親和性であるため、チップ表面に対するバックグラウンド結合は平均以下である。


    【0082】


    10 Fn3骨格の安定性と、ライブラリー作製および結合物選択のための適合性は、テネイシン、Nカドヘリン、Eカドヘリン、ICAM、タイチン、GCSF-R、サイトカイン受容体、グリコシダーゼ阻害剤、および抗生物質色素タンパク質のドメインのような、免疫グロブリン様の折畳みを持つ、タンパク質ドメインの

    10 Fn3様の大きなクラスにも共通している可能性がある。 このようなドメインに共通の重要な特徴は、2つのβシートが提供する安定した枠組みであり、このβシートは互いに圧縮され、シートの1つの縁につき、少なくとも3つの溶媒が接触可能であるループによって結合する。 そのようなループを無作為化して、枠組みの構造を破壊することなく、潜在的な結合物のライブラリーを作製することができる(上記)。


    【0083】


    フィブロネクチン骨格結合物(

    Fn-

    結合物)の固定化


    チップ表面にFn結合物を固定するために、いくつかの典型的な手法が利用できる。 例えば、Fn結合物はRNA-タンパク質融合体として、融合体のRNA部分をワトソン・クリックハイブリダイゼーションによって、チップ表面に固定化したベースの相補的DNAに固定することができる(例えば、Adressable Protein Assays、米国特許出願第60/080,686号;米国特許出願第09/282,734号、および国際公開公報第99/51773号に記述)。 または、Fn結合物は、チップ表面に直接遊離のタンパク質として固定できる。 チップ表面にFn結合物を沈着させるためには、手作業およびロボット装置が使用できる。 アレイ形式で高密度にFn結合物を沈着させるためには、スポットロボットが使用できる(例えば、Luekingら、Anal Biochem. 1999 May 15; 270(1):103-11の方法による)。 Fn結合物をチップ表面に結合させるためには、別の方法も利用できる。 「酵素学の方法(Methods in Enzymology )」(M. MosbachおよびB. Danielsson編)、第135巻および136巻、Academic Press、Orlando、Florida、1987;ニルソン(Nilsson)ら、Protein Expr. Purif. 1997 Oct;11(1):1〜16、およびその参考文献に記述されるものを含め、いくつかの標準的な固定化手法が使用できる。 Fn結合物の方向性を持った固定化は、チップに結合したFn結合物の結合容量を増加させる際に役立つ。 方向性を持った結合のための典型的な手法は、リュー(Lu)ら、The Analyst (1996)、vol. 121、p29R-32R;およびターコバ(Turkova)、J Chromatogr B Biomed Sci App. 1999 Feb 5;722(1-2):11-31に記述されている。 さらに、Fn結合物をチップ表面に結合させるための本明細書に記述されるいかなる方法も、Fn結合物をビーズ、または他の支持体に固定するために使用できる。


    【0084】


    標的タンパク質の捕捉と検出


    Fn結合物の選択された集団を用いて、例えば、生物試料のような試料中で、分析物標的の検出および/または定量ができる。 この種の診断解析を行なうためには、関心対象の標的に対する選択されたFn結合体を適当な支持体上に固定して、多機能タンパク質チップを作製する。 次に、チップに試料を載せ、試料中の成分でFn結合物に結合するものを、固定化した結合物の標的特異性に基づいて同定する。 この手法を用いると、試料中の1つまたは複数の成分が、同時に同定または定量できる(例えば、試料のプロファイリングのための手段として)。


    【0085】


    標的の検出方法は、結合したタンパク質標的レベルの測定を可能にするものであり、X線撮影、蛍光スキャニング、質量分光(MS)、および表面プラズモン共鳴(SPR)を含むがこれらに限定されるものではない。 リン光画像化システム(Molecular Dynamics、Sunnyvale、CA)を用いたオートラジオグラフィも、例えば

    35 Sメチオニンで放射標識した標的タンパク質の検出と定量に使用できる。 レーザースキャナーを用いた蛍光スキャニング(以下を参照のこと)は、蛍光標識した標的の検出と定量に使用できる。 または、蛍光スキャニングを用いて、それ自身が標的タンパク質に結合する蛍光標識リガンドを検出することもできる(例えば、蛍光標識した標的特異的抗体、または標的-ビオチンに結合する、蛍光標識したストレプトアビジン、以下に記述)。


    【0086】


    質量分光は、結合した標的をその分子量によって検出および同定するために使用できる。 結合した標的タンパク質の脱離は、下記のようにして、チップ表面から直接レーザーを用いて行なうことができる。 質量の検出では、分子量に基づいて、リン酸化またはグリコシル化のような翻訳後修飾を含む標的の修飾も決定することができる。 表面プラズモン共鳴は、Fn結合物が適当な金表面(例えば、スウェーデンのBiacoreより入手可能)に固定されている場合に結合したタンパク質標的の定量に使用することができる。


    【0087】


    以下に、Fn結合物(この場合、タンパク質TNF-αに特異的なFn結合物)の選択方法、および選択された集団を用いたチップ上での検出を例示する。 本実施例は、本発明を説明するためのものであり、制限するためのものではない。


    【0088】


    10

    Fn3

    骨格に基づく

    TNF-

    α結合物の選択


    チップ上でフィブロネクチン骨格を選択するための1つの典型例では、無作為化ループBC、DE、およびFGを持つヒト

    10 Fn3変異体のライブラリーを用いて、TNF-αに対して

    10 Fn3に基づく選択が行われた。 ライブラリーは、1つの無作為化ループを含め、ヒト

    10 Fn3の約3分の1をコードするヌクレオチド配列をそれぞれ含む、3つのDNA断片から構築された。 上記のループ残基をコードするDNA配列は、関心対象の残基のコドンが (NNS)nで置換されたように、オリゴヌクレオチド合成によって再構築された。 式中、Nは4つのデオキシリボヌクレオチド(A, C, GまたはT)のいずれかであり、SはCまたはGを表す。 各断片のC末端は、FLAG精製タグの配列を含んでいた。


    【0089】


    ショスタック(Szostak)ら(RobertsおよびSzostak、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12297, 1997; Szostakら、米国特許出願第09/007,005号、および米国特許出願第09/247,190号;Szostakら、国際公開公報第98/31700号)に記述されるように、クレノー酵素で伸長後、各DNAを転写し、

    転写物をピューロマイシン含有DNAリンカーと連結し、インビトロで翻訳し、mRNA-ペプチド融合体を作製し、これをDNA-mRNA-ペプチド融合体に逆転写した。 FLAGタグの付いたペプチドをM2アガロースに結合することにより、フレームシフトまたは余分の終止コドンを含むものから、全長の融合分子が分離された;精製した全長の融合体に結合したDNAをPCRにより増幅した後、3つのDNA断片をEar I 制限エンドヌクレアーゼにより切断し、連結して全長の鋳型を形成させた。 鋳型を転写し、

    転写物をピューロマイシン含有DNAリンカーに連結し、翻訳して

    10 Fn3-

    RNA-タンパク融合体ライブラリーを作製した。 その後、これを逆転写してDNA-mRNA-ペプチド融合ライブラリーを作製し、後に選択に使用した。


    【0090】


    TNF-α結合物の選択は、50 mM HEPES、pH 7.4、0.02% Triton-X、0.1 mg/mLサケ精子DNA中で行われた。

    RNA-タンパク融合体ライブラリーは、セファロース固定TNF-αとインキュベートした;洗浄後、最も強い結合物に伴うDNAを0.1 M KOHで溶出し、PCR増幅、転写、

    転写物を連結、翻訳、逆転写し、次の選択ラウンドの開始材料とした。


    【0091】


    そのような選択を10ラウンド行なった(図13に示す);見かけの平均Kdが120 nMでTNF-αセファロースに結合する

    RNA-タンパク融合体プールが得られた。 解析されたプールの特定のクローン成分は、50 nM〜500 nMの範囲でTNF-α結合を示した。


    【0092】


    Fn

    結合物の固定化、標的タンパク質の捕捉、および

    MALDI-TOF

    検出


    Fn結合物をチップ表面に固定するための第1段階として、自動DNA合成装置(PE BioSystems Expedite 8909)で、固相支持体ホスホラミダイド法でオリゴヌクレオチド捕捉プローブを調製した。 全ての試薬はグレン・リサーチ(Glen Research)から入手した。 合成は、ジスルフィド結合を含む固相支持体から開始して、最終的に3'末端のチオール官能性が得られた。 添加される最初の4つの単量体は、ヘキサエチレンオキシドユニットで、20のT単量体が続いた。 5'末端のDMT基は除去されなかった。 捕捉プローブは固相支持体から開裂し、水酸化アンモニウムで脱保護し、真空遠心分離で乾燥するまで濃縮し、トリエチルアンモニウム酢酸緩衝液中のアセトニトリル勾配を用いて、逆相HPLCで精製した。 HPLCの適当な画分を回収し、真空遠心分離で乾燥するまで蒸発させ、30分間の80% AcOH処理によって5'末端のDMT基を除去した。 酸は気化により除去し、次にオリゴヌクレオチドは100 mM DTTで30分間処理してジスルフィド結合を開裂させた。 DTTはEtOAcで繰り返し抽出して除去した。 オリゴヌクレオチドは残りの水相からエタノール沈殿させ、逆相HPLCによって純度を確認した。


    【0093】


    3'チオールの捕捉プローブは脱気した1×PBS緩衝液中で250μMに調節して、少量の水を含む、アルゴンをフラッシュした(argon-flushed)チェンバー中で、単一の液滴(75μL)として9×9 mmの金をコートしたチップ(Biacore)に塗布した。 室温で18時間後、捕捉プローブ溶液を除去し、機能化したチップを穏やかに撹拌しながら50 mLの1×PBS緩衝液で洗浄し(各15分間、2回)、同様にして50 mLの水ですすいだ(各15分間、2回)。 残りの液体を注意深く除去して、機能化したチップは直ちに使用するか、またはアルゴン下で4℃で保存した。


    【0094】


    ラウンド10のTNF-α選択(上記)で得られた

    10 Fn3融合体プールの約1 pmolを数時間リボヌクレアーゼ処理し、70μL中で5×SSCに調節し、上述の機能化した金チップに単一の液滴として塗布した。 50μL容量のガスケット装置を使って、機能化チップで融合混合液を密封し、装置を4℃で連続的に回転させた。 18時間後に、装置を解体し、金チップを穏やかに撹拌しながら50 mLの5×SSCで10分間洗浄した。 チップ表面から過剰な液体を注意深く除去し、チップを4℃で10分間、ブロッキング溶液(1×TBS + 0.02% トゥイーン20 + 0.25% BSA)で不動態化した。 過剰な液体を注意深く除去し、同一組成のブロッキング溶液中に500μg/mL TNF-αを含む溶液を単一の液滴としてチップに塗布し、ピペットマンで液滴を時々混合しながら4℃で2時間インキュベートした。 結合溶液を除去した後、チップを穏やかに撹拌しながら4℃で5分間洗浄(50 mL 1×TBS + 0.02%トゥイーン20)し、室温で乾燥させた。 第2のチップは、ハイブリダイゼーション混合液に融合体が添加されなかったこと以外は、上記と同様に調製した。


    【0095】


    次に、MALDI-TOFマトリックス(1:1エタノール/10% 蟻酸水溶液中、15 mg/mL 3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸)を、高精度3軸ロボット(MicroGrid, BioRobotics)を用いて、金チップに均一に塗布した。 マトリックスを384ウェルのマイクロタイタープレートからチップに移すのに16ピンのツールが使用され、600ミクロンのピッチを有する直径200ミクロンの形質が作られた。 MALDI-TOF質量分析器(Voyager DE, PerSeptive Biosystems)の機器設定は以下の通りであった:加速電圧=25k、グリッド電圧=92%、ガイドワイヤ電圧=0.05%、遅延=200オン、レーザー出力=2400、低質量ゲート=1500、陰イオン=オフ。 金チップはチップのレベルをステージのレベルと同じに保つように、改変されたMALDI試料ステージ上に1つずつ置かれ、適切なフライト距離を可能にした。 装置のビデオモニターおよび運動制御システムを用いて、レーザービームが個々のマトリックス形質に向かうようにした。


    【0096】


    図14および15は、それぞれ

    10 Fn3融合体チップおよび非融合体チップの質量スペクトルを示す。 いずれも、スペクトルを集めるために少数の200ミクロンの形質が分析されたが、図15のほうが、かなり多くのデータ収集を要した。 17.5 kDaのシグナルはTNF-α単量体に相当する。


    【0097】


    Fn

    結合物の固定化、標的タンパク質の捕捉、および蛍光検出


    洗浄済の1×3インチの顕微鏡スライドグラス(Goldseal, #3010)を、ナノストップ(Nanostrip)(Cyantek)で15分間、10% NaOH水溶液、70℃で3分間、および1% HCl水溶液で1分間、各試薬の後に脱イオン水で十分にすすぎながら処理した。 その後、スライドは無水硫酸カルシウム上で真空乾燥器中で数時間乾燥させた。 95%アセトン/5%水中の1%アミノプロピルトリメトキシシランを調製し、20分間加水分解させた。 スライドグラスは、穏やかに撹拌しながら加水分解したシラン溶液に5分間浸した。 毎回新しい95%アセトン/5%水を用いて、スライドを5分間穏やかに撹拌しながら10回洗浄し、過剰なシランを除去した。 その後、スライドを110℃で20分間加熱することにより、保存処理した。 シラン処理したスライドは、新しく調製した90% DMF/10%ピリジン中の0.2%フェニレン1,4-ジイソチオシアネート溶液に、穏やかに撹拌しながら2時間浸した。 その後、90% DMF/10%ピリジン、メタノール、およびアセトンで順次洗浄した。 空気乾燥後、機能化したスライドは、真空乾燥器中で無水硫酸カルシウム上で0℃で保存した。 市販のアミン反応性スライド(3-D Link, Surmodics)を用いて、同様な結果が得られた。


    【0098】


    オリゴヌクレオチド捕捉プローブは、従来のホスホラミダイド化学を用いて、自動DNA合成装置(PE BioSystems Expedite 8909)で調製された。 全ての試薬はグレン・リサーチ(Glen Research)から入手した。 合成は、保護されているアミノ官能性を直交して持つ固相支持体から開始し、それにより3'末端のアミンが最後の脱保護段階まで曝露されないようにした。 添加される最初の4つの単量体は、ヘキサエチレンオキシドユニットで、標準的なA, G, CおよびT単量体が続いた。 すべての捕捉オリゴ配列は、固相支持体から開裂され、水酸化アンモニウムで脱保護し、乾燥するまで濃縮し、エタノール沈殿し、かつトリエチルアンモニウム酢酸緩衝液中のアセトニトリル勾配を用いて、逆相HPLCで精製した。 HPLCの適当な画分を回収し、真空遠心分離で乾燥するまで蒸発させ、水の一部とともに蒸発させた。


    【0099】


    精製したアミン標識捕捉オリゴは、10%グリセロールを含む50 mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.0)中で、250μMの濃度に調節した。 プローブを3軸ロボット(MicroGrid, BioRobotics)を用いて、アミン反応性ガラス表面上の5×5×6アレイパターン中の規定の位置にスポットした。 16ピンのツールを用いて、384ウェルのマイクロタイタープレートから液体を移し、600ミクロンのピッチを有する200ミクロンの形質を作製した。 24の形質の各サブグリッドは、単一の捕捉プローブ(すなわち、24の重複するスポット)に相当する。 アレイは湿度が飽和した環境中で、室温で12時間〜18時間インキュベートした。 接着反応は、チップを2%水酸化アンモニウム水溶液中に穏やかに撹拌しながら5分間浸すことで停止させ、蒸留水ですすいだ(各5分3回)。 最後にアレイを室温で30分間10×PBSに浸漬してから、蒸留水で5分すすいだ。


    【0100】


    10 Fn3 mRNAと共に特異的かつ熱力学的に等エネルギーの配列が、自己集合および

    10 Fn3タンパク質固定のための捕捉ポイントとして役立つことが明らかにされた。 ソフトウェアプログラムHybSimulator v4.0 (Advanced Gene Computing Technology, Inc.)は、潜在的な捕捉プローブの同定および解析を容易にした。 6つの固有の捕捉プローブが選択され、チップ上にプリントされ、そのうちの3つは

    10 Fn3融合体プールのmRNAの共通領域(CP3', CP5'およびCPflag)に相補的である。 残りの3つの配列(CPneg1, CPneg2およびCPneg3)は相補的ではなく、部分的に陰性対照として働く。 上述のように、捕捉プローブは各々3'アミノ末端および4つのヘキサエチレンオキシドスペーサーユニットを持っている。 以下は、使用した捕捉プローブの配列リストである(5'→3')。


    【0101】


    ラウンド10のTNF-α選択由来の約1 pmolの

    10 Fn3融合体プールを、総容量350μL中での0.02%トゥイーン20および2 mMバナジルリボヌクレオチド複合体を含む、5×SSCに調節した。 400μLガスケット装置下で全体量をマイクロアレイに添加し、この集合を室温で18時間、連続的に回転させた。 ハイブリダイゼーション後、スライドを500 mLの5×SSC、2.5×SSC、および1×SSCで順次5分ずつ洗浄した。 液体の痕跡は遠心分離で除去し、スライドを空気乾燥させた。


    【0102】


    組換えヒトTNF-α(500μg、凍結乾燥、PreproTech由来)を230μLの1×PBSに入れ、Microdialyzerユニット(3,500 MWCO, Pierce)中で、700 mLの撹拌した1×PBSに対して4℃で18時間透析した。 透析したTNF-αをEZ-Link NHS-LC-LCビオチン化試薬(20μg、Pierce)で0℃で2時間処理し、Microdialyzerユニット(3,500 MWCO, Pierce)中で、700 mLの撹拌した1×PBSに対して4℃で18時間再び透析した。 得られた結合体をMALDI-TOF質量分析器によって分析し、単一のビオチン部分でほぼ完全に機能化されることが見出された。


    【0103】


    以下の過程は、各々4℃で連続回転または混合しながら行なった。 タンパク質マイクロアレイ表面は、0.02%トゥイーン20および0.2% BSAを含む1×TBS(200μL)による60分間の処理によって、不動態化した。 ビオチン化TNF-α(不動態化緩衝液中100 nM濃度に作製)を、マイクロアレイに120分間接触させた。 マイクロアレイは0.02%トゥイーン20を含む1×TBSで洗浄した(50 mL3回、各5分間)。 蛍光標識したストレプトアビジン(Molecular Probes由来の2.5μg/mL アレクサ 546-ストレプトアビジン結合体、不動態化緩衝液中に作製)をマイクロアレイに60分間接触させた。 マイクロアレイを0.02%トゥイーン20を含む1×TBSで洗浄し(50 mL2回、各5分間)、続いて1×TBSで3分間すすいだ。 液体の痕跡は遠心分離で除去し、スライドを室温で空気乾燥させた。


    【0104】


    蛍光レーザースキャニングは、GSI Lumonics ScanArray 5000システムで、10μMピクセルの解像度ならびにアレクサ 546色素用の予め設定された励起波長および発光波長を用いて行なった。 リン光画像(phosphorimage)分析は、分子動態学ストーム(storm)システムを用いて行なった。 マイクロアレイとリン光体保存スクリーンを直接接触させて、曝露時間は48時間であった。 リン光画像スキャニングは50μMの解像度の設定で行われ、データはImageQuant v.4.3ソフトウェアで抽出した。


    【0105】


    図16および17は、同一アレイのリン光画像および蛍光スキャンである。 リン光画像は、

    35 Sメチオニンシグナルに基づいて、

    10 Fn3融合体がどこにハイブリダイズしたかを示す。 蛍光スキャンは、標識TNF-αがどこに結合したかを示す。


    【0106】


    他の態様


    他の態様は、特許請求の範囲内である。


    【0107】


    本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照として本明細書に組み入れられる。


    【図面の簡単な説明】


    【図1】 ラクダ(濃青)およびラマ(淡青)より得られた抗体の重鎖における可変領域の構造間の比較を2つの配向からそれぞれ示す写真である。


    【図2】 ラクダ抗体の重鎖の可変領域(濃青)、ラマ抗体の重鎖における可変領域(淡青)、および10番目のフィブロネクチン3型モジュール(

    10 Fn3)(黄色)の構造間の比較を示す写真である。


    【図3】 10番目のフィブロネクチン3型モジュール(

    10 Fn3)を示す写真であり、IgG重鎖における抗原結合ループに対応するループを赤色で強調した。


    【図4】 フィブロネクチン3型タンパク質ドメインおよび関連タンパク質ドメイン間の配列の整列化を図示するグラフである。


    【図5】

    10 Fn3ドメイン、ならびにフィブロネクチン、テネイシン、コラーゲン、およびアンジュリンを含む15個の関連タンパク質間の構造の類似性を示す写真である。 この写真では、領域は以下のように分類されている:定常領域は濃青、保存領域は淡青、中性領域は白、可変領域は赤、およびRG

    Dインテグリン結合領域(可変)は黄。


    【図6】 9番目および10番目のフィブロネクチン3型モジュールの空間充填モデルを2つの異なる配向からそれぞれ示す写真である。 2つのモジュールおよびインテグリン結合ループ(RG

    D )が分類されている。 この図では、青が正電荷を帯びた残基を示し、赤が負電荷を帯びた残基を示し、白が無電荷の残基を示している。


    【図7】 7〜10番目のフィブロネクチン3型モジュールの空間充填モデルを3つの異なる配向からそれぞれ示す写真である。 4つのモジュールが分類されている。 この図では、青が正電荷を帯びた残基を示し、赤が負電荷を帯びた残基を示し、白が無電荷の残基を示している。


    【図8】 フィブロネクチン3型ドメインを含むRNA-タンパク質融合体の異なる塩条件下における構造を図示する写真である。


    【図9】 PCRシグナル解析によって測定されたフィブロネクチン3型ドメインを含むRNA-タンパク質融合体の選択を図示する一連の写真である。


    【図10】 RNA-タンパク質融合体および遊離タンパク質の選択間における比較、ならびに本明細書に記載の選択間において、TNF-αとの結合%での増加を図示するグラフである。


    【図11】 IgG、

    10 Fn3、Fn-CH

    1 -CH

    2 -CH

    3 、およびFn-CH

    2 -CH

    3を示す一連の概略図である(左上から時計回りに)。


    【図12】 IgG(X線結晶学)および

    10 Fn3(NMRおよびX線結晶学)の既知の三次元構造に基づいたFn-CH

    1 -CH

    2 -CH

    3の分子モデルを示す写真である。


    【図13】 TNF-α結合物の

    10 Fn3に基づく核酸-タンパク質融合体の例示的な選択の時間経過を示すグラフである。 TNF-α-セファロースに結合した、核酸-タンパク質融合体のプール(白抜きのひし形)および遊離のタンパク質のプール(白抜きの丸)の割合、ならびに未誘導化セファロースに結合した遊離タンパク質のプール(黒丸)の割合が示されている。


    【図14および15】 TNF-αFn結合物によるTNF-α結合を示すグラフである。 特に、これらの図はそれぞれ

    10 Fn3融合体チップおよび非融合体チップから得られた質量スペクトルデータを示す。


    【図16および17】 それぞれ

    10 Fn3アレイのリン光画像および蛍光スキャンであり、TNF-α結合を示す。

    QQ群二维码
    意见反馈