発明の詳細な説明 関連出願 本出願は、2001年10月1日提出の米国仮特許出願第60/326,320号の利益を主張する。 上記出願の全教示は明細書に援用される。 発明の背景 非天然(異種)ポリペプチド若しくはタンパク質をバクテリオファージの表面に発現させて固着させる(表示する)、ファージディスプレイ技術の開発は、目的の生物活性を保有する分子、例えば、ある一定の標的分子へ高い特異性及び/又はアフィニティーで結合するペプチドリガンドを同定するための強力なツールとなる。 合成オリゴヌクレオチドのライブラリーは、ファージ表面タンパク質をコードする遺伝子、例えばファージM13のIII遺伝子又はVIII遺伝子のコード配列へインフレームでクローニングすることができる。 これらのクローンは、発現されるとき、使用されるオリゴヌクレオチドの配列における多様性により、複数のペプチド−キャプシド融合タンパク質としてファージ表面に「表示」される。 次いで、これらのペプチドディスプレイライブラリーについて、通常はアフィニティー選択又は「バイオパニング(biopanning)」により、標的分子への結合をスクリーニングする(Ladner, R. et al., 1993; Kay et al., 1996; Hoogenboom, H. et al., 1997)。 ファージディスプレイライブラリースクリーニングは、膨大な数の異なるポリペプチド(典型的には、1×10 9を超える)が単一のファージディスプレイライブラリーに含有され得るために、他のスクリーニング方法よりもきわめて有利である。 これは、単一のスクリーニング工程においてきわめて多様なライブラリーのスクリーニングを可能にする。 小さなペプチド又は単鎖タンパク質のファージ上でのディスプレイが有利であるのは、(ファージや原核宿主がなし得ない)細胞内プロセシング又は翻訳後修飾が必要でないか又は所望されない限りにおいてである。 例えば、異種ポリペプチドの有効なディスプレイには、様々な翻訳後修飾、細胞内構造、及びそのディスプレイポリペプチドを輸送し、グリコシル化し、整形し(conform)、組立て、そして宿主細胞の表面に適切に固着させるために必要である特殊酵素とシャペロンタンパク質の一揃い(complement)が必要とされ得るが、バクテリオファージや原核細胞のプロセスではこれらの方法はいずれも達成することができない。 より複雑な真核タンパク質、例えば免疫グロブリンとその機能的断片(例えばFab)、又はMHC分子若しくはT細胞受容体分子の細胞外ドメインを含む多重鎖ポリペプチドのディスプレイでは、克服すべき追加の問題が存在する:多重鎖産物を産生するのに十分な発現のレベルで成分鎖を同調的に発現すること、機能的多重鎖ポリペプチドへの会合を達成したまま各鎖を輸送及び分泌すること、及び、多重鎖ポリペプチドの少なくとも1本の鎖を宿主細胞表面に(即ち、ディスプレイのために)固定化する(固着させる)と同時に、多重鎖ポリペプチド産物の宿主細胞の外側で適切なアセンブリー及び機能性を保持することである。 単鎖ポリペプチドを発現して表示するための、酵母のような真核細胞を利用するディスプレイ系が報告されてきた(Boder, E. and Wittrup, K., 1998;Horwitz, A. et al., 1988;Kieke, M. et al., 1997;Kieke, M. et al., 1999;WO94/18330;WO99/36569)。 しかしながら、多重鎖ポリペプチド、特に免疫グロブリンとその断片の発現と機能的なディスプレイのための改善された真核系へのニーズが存在する。 さらに、ポリペプチドディスプレイの技術分野には、ファージディスプレイの能力と真核宿主細胞のプロセシング利点を利用する系においてニーズが存在する。 例えば、ファージディスプレイライブラリーとは対照的に、真核宿主細胞の表面に発現されて表示され得るライブラリーの現実のサイズ、又は「多様性」は、最大でも約10 6 〜10 7なのである。 上記や他の技術課題は、目的の生物活性を保有する新規分子を同定するのに有用な生物学的ツール及び技術の進歩を妨げてきた。 これらの技術課題のために、多重鎖真核ディスプレイベクターの成功した構築のための材料又は方法、多重鎖ポリペプチド(抗体又はFab断片のような)の真核宿主細胞(酵母のような)の表面での成功したディスプレイ、多重鎖ポリペプチドディスプレイライブラリーの真核宿主細胞における創出、あるいは、目的の特定の多重鎖ポリペプチドを検出して単離する(例えば標的分子への結合特異性若しくはアフィニティーに基づいて)ためのこうしたライブラリーの成功した使用について、今日まで1つも報告されていない。 発明の概要 当該技術分野における上記及び他の課題(deficiencies)は、改善されたディスプレイベクター、ディスプレイライブラリーを含有する細胞、並びにこうしたライブラリー及びベクターの使用方法を提供する、本明細書に記載の本発明により克服される。 特に、本発明は、多重鎖ポリペプチドの生物活性が宿主細胞の表面で現れるように、多重鎖ポリペプチドを宿主細胞の表面に表示することが可能な真核発現ベクターを提供する。 こうしたベクターは、従来のファージディスプレイ技術により入手可能なものより複雑な、生物学的に活性なポリペプチド、例えば生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドのディスプレイを可能にする。 本発明は、生物学的に活性なポリペプチドのディスプレイ及び単離に関する。 特に、本発明は、新規の多重鎖ディスプレイベクターの設計及び使用へ向けられる。 本発明は、多重鎖ポリペプチドの真核宿主細胞の表面での成功したディスプレイについて記載し、それを可能にする。 多重鎖ポリペプチド鎖を宿主細胞において別個に、そして独立して発現する(例えば、別個のベクター制御配列の下で、及び/又は別個の発現ベクターにより、適合ベクターセットを生じる)のに好ましいベクターについて記載する。 こうした適合ベクターセットの使用は、ディスプレイライブラリーの産生において、あるレベルの融通性及び汎用性、例えば多重鎖ポリペプチドの多様な個別の鎖を発現するベクターを組み合わせて組み換えることによって多重鎖ポリペプチドを産生して表示する能力を提供する。 こうしたベクターセットを使用して、新規な鎖の組合せの全体レパートリーを設計することができる。 さらに本発明は、ファージディスプレイ技術の能力(その操作容易性と多様性の大きさがある)を、多重鎖真核ディスプレイベクター(又はベクターセット)の潜在的な複雑性及び汎用性と組み合わせる能力を提供する。 本明細書に記載される特別な方法は、実施者が、ファージディスプレイ系と真核ディスプレイ系との間でペプチドライブラリー(又はライブラリーの選択されたメンバー)の配列情報を効率的に移行させることを可能にし、これは一方のディスプレイベクターから他方への配列情報の物理的な移行による(慣用の遺伝子工学技術を使用する)か、又は真核ディスプレイ系とファージディスプレイ系の両方において作動可能である新規な二元ディスプレイベクターの使用(必然的に原核性の発現を伴う)により達成される。 本発明は、真核宿主細胞において、多重鎖ポリペプチドの生物活性、例えば多重鎖ポリペプチドの結合活性が宿主細胞の表面で現れるように、多重鎖ポリペプチドを宿主細胞の表面に表示するのに有用な新規ベクターへ向けられる。 本発明のベクターの1つの好ましい態様は、単一の複製可能な遺伝子パッケージのそれであるが、多重鎖真核ディスプレイベクターは、単一ベクターとして、又はベクターセット中の多数の独立したベクターとして存在してよい。 本明細書に使用される「ベクター」は、単一のベクター分子、又はベクターセットのいずれかを意味する。 1つの態様において、ディスプレイベクターは、シャトルベクターであるか、又はより正確には二元ディスプレイベクターであり、ここでこのベクターは、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを、そのベクターで形質転換された真核宿主細胞の表面に、又は原核性の発現の結果として産生されるバクテリオファージの表面に表示することができる。 本発明の別の態様において、ベクターは、ベクターセットして存在してよく、ここで多重鎖ポリペプチドの各鎖はベクターの適合対の1つでコードされるので、このベクター対が単一の真核細胞中に存在する場合、多重鎖ポリペプチド鎖が会合し、多重鎖ポリペプチドの生物活性が真核細胞の表面で現れる。 本発明の真核多重鎖ディスプレイベクターは、多重鎖ポリペプチドのポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。 第一のポリヌクレオチドは、アンカータンパク質へ連結する多重鎖ポリペプチドの第一鎖をコードする。 このベクター(又はベクターセット)の他のポリヌクレオチドは、多重鎖ポリペプチドの他の鎖をコードする。 ディスプレイベクターのポリヌクレオチドはすべてディスプレイベクターにおいて作動可能に位置しているので、そのベクター(又はベクターセット)で形質転換された宿主真核細胞は、多重鎖ポリペプチドの生物活性がその細胞の表面で現れるように、多重鎖ポリペプチドを宿主細胞の表面に表示する。 好ましくは、本発明の多重鎖ディスプレイベクターによりコードされる多重鎖ポリペプチドは、二本、三本、四本、又は多重鎖のポリペプチドのいずれかとして存在する。 より好ましくは、多重鎖ポリペプチドは、2本の異なる鎖からなる二本鎖若しくは四本鎖ポリペプチドである。 より好ましくは、多重鎖ポリペプチドは、T細胞受容体、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、及び免疫グロブリンFab断片からなる多重鎖ポリペプチドの群より選択される。 より好ましくは、多重鎖ポリペプチドは、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、又はそれらの生物学的に活性な断片である。 最も好ましくは、多重鎖ポリペプチドはFab断片であり、ここで多重鎖ディスプレイベクターの第一のポリヌクレオチドは、Ig重鎖のV Hドメイン及びC H 1ドメインをコードするセグメントを含み、第二のポリヌクレオチドは、Ig軽鎖(V Lドメイン及びC Lドメイン)をコードするセグメントを含む。 本発明によれば、多重鎖ポリペプチドの第一鎖をコードする第一のポリヌクレオチドをアンカータンパク質へ連結する。 好ましくは、アンカータンパク質は、真核細胞の細胞表面タンパク質、又はその機能的断片である。 より好ましくは、アンカータンパク質は、α−アグルチニン、a−アグルチニン、Aga1p、Aga2p、又はFLO1である。 本明細書に開示されるように、第一鎖ポリペプチドのアンカータンパク質への連結は、多様な分子生物学技術によって達成することができる。 好ましくは、多重鎖ポリペプチドの第一鎖をコードする第一のポリヌクレオチドは、真核宿主細胞において、第一鎖−アンカー融合タンパク質として、最も好ましくは、第一鎖:Aga2p融合タンパク質として発現される。 1つの態様において、宿主細胞においてベクターにより発現される多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖は、レポーター遺伝子又はタグへ連結される。 好ましくは、タグは、6×Hisタグ、HAタグ、及びmycタグから成る群より選択されるエピトープタグである。 最も好ましくは、多重鎖ポリペプチドの各鎖は、異なるタグへ連結される。 好ましくは、本発明の多重鎖ディスプレイベクターは、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列の移行を促進するクローニング部位を提供する。 そうしたクローニング部位は、多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖をコードするポリヌクレオチドの切断及び挿入を促進するように位置する制限エンドヌクレアーゼ認識部位(即ち、制限部位)を含む。 例えば、制限部位は、好ましくは、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドの5'端及び3'端に位置する。 本発明のベクターは、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするすべてのセグメントを含むポリヌクレオチドセグメントの末端にわずか2つの制限部位を含有することができ、又は、好ましくは、制限部位は、多重鎖ポリペプチドの1本の鎖をコードするそれぞれのポリヌクレオチドセグメントの末端に存在する(図1及び2)。 それぞれの制限エンドヌクレアーゼ認識部位は、ベクターにおけるユニーク認識部位であることが好ましい。 本発明のベクター(又はベクターセット)は、様々な真核宿主細胞において作動可能であることができ、場合により、原核細胞(例えば細菌)において作動可能であることができる。 好ましくは、本発明の多重鎖ディスプレイベクターは、動物細胞ディスプレイベクター、植物細胞ディスプレイベクター、真菌細胞ディスプレイベクター、又は原生生物細胞ディスプレイベクターである。 より好ましくは、ディスプレイベクターは、酵母ディスプレイベクターである。 最も好ましくは、酵母ディスプレイベクターは、サッカロミセス・セレビシエにおいて作動可能である。 別の態様において、本発明は、多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に表示するために本明細書に記載し教示するベクター(又はベクターセット)を使用する方法へ向けられる。 ここで該ベクター(又はベクターセット)は真核細胞へ導入され、宿主細胞は、多重鎖ポリペプチドの生物活性が宿主細胞の表面で現れるように、多重鎖ポリペプチド鎖の発現、輸送、及び会合に適した条件下で培養される。 本明細書に記載されるように、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、1以上のベクターにより宿主細胞へ導入することができる。 ベクターを宿主細胞へ導入する方式には、当該技術分野で公知の、遺伝材料を細胞へ導入するあらゆる方法が含まれる。 好ましい方式には、当該技術分野で公知の形質転換技術が含まれ、限定されるものではないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス移行、弾丸挿入、等が含まれる。 真核多重鎖ディスプレイベクターを宿主細胞へ導入する別の好ましい方式には、それぞれが多重鎖ポリペプチド鎖のうちの少なくとも1つを発現する2つの一倍体真核細胞を融合し、両方の(すべての)鎖を発現する二倍体宿主細胞を産生することが含まれる。 多重鎖ポリペプチドの生物活性は、この得られる二倍体宿主細胞の表面で現れる。 例えば、2つの一倍体細胞のそれぞれがベクターセットのベクター(本明細書に記載のような)の1つ(又はそれ以上)を含有し得るので、多重鎖ポリペプチドの生物活性は、一倍体/一倍体融合より生じる二倍体宿主細胞の表面で現れる。 好ましくは、一倍体宿主細胞対は反対の接合型のものであり、それによりこの2つの真核一倍体細胞の融合(接合)が促進される。 本発明の別の目的は、多重鎖ポリペプチドの生物活性を細胞の表面に現す真核宿主細胞へ向けられる。 本明細書に記載されるように、真核宿主細胞は、好ましくは、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、又は原生生物細胞である。 より好ましくは、真核宿主細胞は、酵母細胞である。 好ましくは、酵母宿主細胞は、サッカロミセス属、ピキア属、ハンゼヌラ属、シゾサッカロミセス属、クライベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤローウィア(Yarrowia)属、及びカンジダ属より選択される。 最も好ましくは、真核宿主細胞は、S. セレビシエである。 本発明の真核宿主細胞は、どんな遺伝子構築体のものでもよいが、好ましくは、一倍体又は二倍体である。 本発明の1つの態様は、真核一倍体細胞対(好ましくは、反対の接合型の)へ向けられる。 ここで第一の一倍体細胞は、アンカータンパク質へ連結する生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドの第一鎖をコードする少なくとも第一のポリヌクレオチドを発現し、第二の一倍体細胞は、多重鎖ポリペプチドの第二鎖をコードする少なくとも第二のポリヌクレオチドを発現する。 上記に論じたように、この一倍体細胞対の融合が、多重鎖ポリペプチドの生物活性を該細胞の表面に現す二倍体細胞をもたらす。 さらに本発明は、本明細書に記載の様々な態様の集合へ向けられる。 これは、多重鎖ポリペプチド又はそれらをコードするポリヌクレオチドの新規ライブラリーを形成する。 本発明のライブラリーは、多重鎖ポリペプチドをコードする複数のベクターを含み、該ベクターは、真核宿主細胞において、多重鎖ポリペプチド鎖の発現及び分泌、多重鎖ポリペプチドの生物活性が構成されるような鎖の会合、及び多重鎖ポリペプチドの生物活性が真核宿主細胞の表面で現れるような多重鎖ポリペプチドの少なくとも1本の鎖の固着を指令するように作動可能である。 好ましくは、本発明のライブラリーは、多数の異なる多重鎖ポリペプチドをコードするライブラリーメンバーからなる。 最も好ましくは、ライブラリーは、多数の変異体多重鎖ポリペプチド(多重鎖ポリペプチド鋳型の変形化により設計されて産生される)をコードするライブラリーメンバーからなる。 本発明の新規な多重鎖ライブラリー集合には、本明細書に記載され教示される、ベクターライブラリー、ベクターセットライブラリー、宿主細胞ライブラリー、及び宿主細胞対ライブラリーが含まれる。 本発明の関連した態様は、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドをコードする核酸配列情報をファージディスプレイベクターと真核ディスプレイベクターとの間で移行させる方法へ向けられる。 1つの移行方法は、ファージディスプレイベクターより得られる多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列を、本明細書に記載され教示される真核多重鎖ディスプレイベクターへ挿入することを含む。 多重鎖ポリペプチド鎖をコードする核酸配列情報の移行は、単一の移行事象として起きても、また、多重鎖ポリペプチド鎖のそれぞれをコードする核酸配列情報の別個の独立した移行事象として起きてもよい。 同様に、多重鎖ポリペプチド鎖のそれぞれをコードする配列情報は、1つのディスプレイベクターからか、又は多数の異なるディスプレイベクターから移行させてよい。 生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドをコードする核酸配列情報をファージディスプレイベクターと真核ディスプレイベクターとの間で(及び、この記載とは逆に)移行させる別の方法は、本明細書に記載され教示される真核多重鎖ディスプレイベクターより得られる多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列をファージディスプレイベクターへ挿入することを含む。 本発明のファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行方法は二方向性である。 即ち、ファージディスプレイベクターから真核ディスプレイベクターへ、又は真核ディスプレイベクターからファージディスプレイベクターへ起こり得る。 本発明のファージディスプレイベクターと真核ベクターとの間の核酸配列情報の移行は、当該技術分野で公知の多様な遺伝子移行法(例えば組換えDNA技術のような遺伝子工学技術)により達成することができる。 好ましい移行の方式には、制限消化、PCR増幅、又は相同組換えの技術が含まれる(例えば、Liu, Q. et al., 2000; Walhout, A. et al., 2000 を参照のこと)。 本発明はまた、実施者にとって目的の生物活性を現す多重鎖ポリペプチドを検出し単離する方法へ向けられる。 本発明の方法は、多重鎖ポリペプチドと別の分子種との間の望ましい相互作用、好ましくはタンパク質−タンパク質相互作用、より好ましくは多重鎖ポリペプチドとそのリガンド/基質(即ち、標的分子)との相互作用の検出を可能にする。 好ましくは、この相互作用の性質は、分子種間の非共有結合的会合(即ち、結合)を含むが、この結合の性質は、一過性(例えば酵素−基質結合)であっても、高アフィニティー/アビディティー(例えば、分離法、診断薬、及び/又は治療薬に有用なアフィニティーリガンドに対するような)のものであってもよい。 1つの態様において、本発明の方法は、(真核宿主細胞の表面に表示される)多重鎖ポリペプチドのライブラリーを、実施者にとって目的の生物活性を現すライブラリーのメンバーを検出することによってスクリーニングするのに有用である。 特に好ましい態様において、目的の生物活性を現す多重鎖ポリペプチドを表示する宿主細胞を単離する。 次いで、単離された宿主細胞は、場合により、反復ラウンドのスクリーニングを受けるか、あるいは、表示される多重鎖ポリペプチドのポリペプチド配列を特性決定するか又は利用するために操作してよい。 さらに、本発明のスクリーニング法は、(予備的)ファージディスプレイスクリーニングや、本明細書に記載の真核ディスプレイスクリーニング用真核ディスプレイ系への選択されたファージディスプレイ単離物の移行と組み合わせることができる。 本発明のさらなる態様において、二倍体真核宿主細胞の表面に表示される多重鎖ポリペプチドのライブラリー(ここで、この二倍体細胞は、本明細書に記載され教示される多重鎖ベクターセットを含有する)は、実施者にとって目的の生物活性を現す多重鎖ポリペプチドを検出するために(そして、場合により、単離するために)スクリーニングすることができる。 好ましくは、二倍体真核宿主細胞は、本明細書に記載され教示される一倍体真核宿主細胞対の融合の産物である。 1つの特に好ましい態様において、目的の生物活性を現す多重鎖ポリペプチドを表示する、スクリーニングされた二倍体細胞は、単離されてから、場合により、減数分裂を受けてよく、それにより娘(一倍体)細胞は、選択された多重鎖ポリペプチドの別個の鎖を発現する。 次いで、娘細胞は、場合により、多重鎖ポリペプチド鎖を発現する他の一倍体細胞(例えば、単離二倍体細胞の同一亜集団由来の他の娘細胞)と融合させてよく、多重鎖ポリペプチドをその表面に表示する二倍体真核宿主細胞の組換え集団を産生する。 選択された多重鎖ポリペプチドの個別の鎖の追加ラウンドのスクリーニングと反復組換えを実施してよく、最終的に、表示された多重鎖ポリペプチドのポリペプチド配列は、上記に論じたように特性決定するか又は利用することができる。 選択された一倍体娘細胞の組換えはまた、他の偏性又は非偏性の真核ディスプレイベクターと(細胞融合により)組換えて、新規な多重鎖ディスプレイ宿主細胞ライブラリーを産生することができる。 真核ディスプレイベクターは、複数のそうした真核ディスプレイベクターを含む、酵母ディスプレイライブラリーのような真核ディスプレイライブラリーを創出するために使用することができる。 好ましくは、複数の真核ディスプレイベクターは、多重鎖ポリペプチドの異種集団をコードし、多重鎖ポリペプチドの表示されるレパートリー、例えば、少なくとも10 4 、好ましくは少なくとも10 5 、より好ましくは少なくとも10 6 、より好ましくは少なくとも10 7 、より好ましくは少なくとも10 8 、最も好ましくは少なくとも10 9の異なるポリペプチドを生じる。 本発明の特定の態様において、アンカーは、真核細胞の表面上にアンカーとして作動可能で、ファージの表面上にアンカーとして作動可能なポリペプチドである。 他の態様において、アンカーは、真核宿主細胞の細胞表面とファージの表面へ固着する表面タンパク質の一部である。 本発明の好ましい態様において、アンカーと多重鎖ポリペプチドの1本の鎖は、融合タンパク質として発現される。 他の態様において、アンカーと多重鎖ポリペプチドの1本の鎖は、発現時に、好ましくは、Jun/Fos連結のような間接的な連結により連結される。 別の態様において、本発明は、少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に表示する方法へ向けられる。 該方法は、細胞表面アンカーへ連結する生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドの第一のポリペプチド鎖をコードする第一のポリヌクレオチドを含む第一の真核ベクター(ここで前記ベクターは、真核宿主細胞において前記第一鎖の発現及び分泌を指令するように作動可能である);及び前記多重鎖ポリペプチドの第二のポリペプチド鎖をコードする第二のポリヌクレオチドを含む第二の真核ベクター(ここで前記ベクターは、真核宿主細胞において前記第二鎖の発現及び分泌を指令するように作動可能である)を真核宿主細胞へ導入する工程(ここで前記第一の真核ベクターと前記第二の真核ベクターで形質転換された真核宿主細胞は、前記第一のポリヌクレオチド及び第二のポリヌクレオチドの発現時に、真核宿主細胞の表面に前記多重鎖ポリペプチドの生物活性を現す);及び、前記宿主細胞を前記第一のポリヌクレオチド及び第二のポリヌクレオチドの発現に適した条件下で培養する工程を含む。 さらなる態様において、本発明は、少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に表示する方法へ向けられる。 該方法は、上記に記載のような真核ディスプレイベクター、真核ディスプレイベクターセット、又は二元ディスプレイベクターを真核宿主細胞へ導入する工程、及び前記宿主細胞を前記ポリヌクレオチドの発現に適した条件下で培養する工程を含む。 さらに本発明は、本明細書に記載のような真核ディスプレイベクター、真核ディスプレイベクターセット、又は二元ディスプレイベクターを含む真核宿主細胞を提供する。 好適な真核宿主細胞は、動物細胞、植物細胞、又は真菌細胞であり得る。 好ましくは、真核宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、及び酵母細胞であろう。 最も好ましくは、真核宿主細胞は酵母細胞であり、例えば、サッカロミセス属、ピキア属、ハンゼヌラ属、シゾサッカロミセス属、クライベロミセス属、ヤローウィア属、デバリオミセス属、又はカンジダ属より選択される酵母細胞であろう。 好ましい酵母宿主には、サッカロミセス・セレビシエ、ハンゼヌラ・ポリモルファ(polymorpha)、クライベロミセス・ラクチス、ピキア・パストリス、シゾサッカロミセス・ポンベ及びヤローウィア・リポリチカが含まれる。 最も好ましい酵母宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエである。 発明の詳細な説明 本発明の好ましい態様の記載が以下に続く。 本出願において開示される発明は、機能的な異種多重鎖ポリペプチド(例えばFab抗体断片)の真核宿主細胞(例えば酵母)の表面での成功した発現、輸送、組立て、及び固定化(又は「ディスプレイ」)をはじめて例証したことを記載する。 本発明は、ベクターライブラリー及び真核宿主細胞ライブラリーの構築を可能にし、ここで該細胞はきわめて可変な多重鎖ポリペプチドのレパートリーを表示し、この多重鎖ポリペプチドは、そのレパートリー内で高度の配列多様性と、標的(例えば抗体)特異性のような、必然的にきわめて可変な範囲の生物活性を現す。 当業者は、本発明の教示に従うことによって、おびただしい数の多重鎖分子を酵母のような真核宿主細胞の表面に安定的に発現させることができることを理解するであろう。 定義 本明細書において他に定義されなければ、本発明の記載に使用する術語及び用語は、当業者が一般に理解して受け容れているような術語及び用語の平明な意味に従って使用される。 潜在的な混同若しくは曖昧さを避けるために、本発明に関連する特別な原理(elements)又は特徴を以下に説明する。 本明細書に使用される「多重鎖ポリペプチド」は、ペプチド結合以外の分子会合により共有結合的又は非共有結合的に一緒に連結した、2つ以上の別個のポリペプチド要素(即ち、「鎖」)からなる機能的なポリペプチドを意味する。 多重鎖ポリペプチド鎖は、同一でも異なっていてもよい。 多重鎖ポリペプチドの著名な例は、典型的には4つの鎖、2つの重鎖と2つの軽鎖からなり、その鎖がいくつかのジスルフィド(共有)結合により連結している多重鎖ポリペプチドへ組み立てられる、免疫グロブリン(例えばIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM)である。 軽鎖(LC)ドメインと重鎖(HC)ドメインの組合せを含む、活性のある免疫グロブリンFab断片は、特に重要な種類の多重鎖ポリペプチドを生じる。 ジスルフィド結合を形成するだけでなく、FabのLC及びHCはまた、ジスルフィド架橋の非存在時に有効に(非共有結合的に)会合することが知られている。 多重鎖ポリペプチドの他の例には、限定されるものではないが、T細胞受容体(TCR)分子(α及びβ鎖、又はγ及びδ鎖を含む)の細胞外ドメイン、MHCクラスI分子(β2ミクログロブリンへ非共有結合的に会合するα1、α2、α3ドメインを含む)、及びMHCクラスII分子(α及びβ鎖を含む)が含まれる。 本明細書において特に考慮するのは、少なくとも1本の鎖が非天然に存在する(異種)アンカーと宿主細胞表面で固着している、真核宿主細胞におけるTCR及びMHC結合ドメインの発現である。 用語「生物学的に活性な」は、例えば、多重鎖ポリペプチドに関連する場合、該ポリペプチドが何らかの生物学的プロセス、経路、又は反応に関して有用である機能性若しくは特性を現すことを意味する。 生物学的な活性は、例えば、別のポリペプチド若しくは分子と相互作用するか又は会合する(例えば結合する)能力を意味する場合があるか、又はそれは、他のタンパク質又は分子の相互作用(例えば酵素反応)を触媒するか又は調節する能力を意味する場合がある。 生物活性は、天然に存在する免疫グロブリンγ(IgG)分子の四本鎖コンホメーション、T細胞受容体分子のα及びβ鎖、又は主要組織適合性複合体(例えばMHCペプチド溝)の抗原提示構造のコンホメーションといった、天然に存在する構造に特徴的な物理コンホメーションをもたらす能力を意味する場合もある。 本明細書に使用される「ベクター」は、遺伝子移行、遺伝子発現、又は異種ポリヌクレオチドの宿主細胞における複製若しくは組込みの運搬体として役立つことが可能な要素を意味する。 ベクターは、人工的な染色体若しくはプラスミドであってよく、宿主細胞ゲノムへ組み込まれても独立した遺伝要素(例えばエピソーム、プラスミド)として存在してもよい。 ベクターは、単一ポリヌクレオチドとして存在しても、2以上の別々のポリヌクレオチドとして存在してもよい。 本発明の「多重鎖ディスプレイベクター」は、適切な宿主において、多重鎖ポリペプチドの少なくとも1本の鎖の発現を指令して、それを前記宿主の表面でのディスプレイのために処理することが可能である。 本発明に記載のベクターは、単一コピーベクターでもマルチコピーベクターでもよい(典型的には、宿主細胞において維持されるベクターのコピー数を示す)。 本発明の好ましいベクターには、酵母発現ベクター、特に2μベクターと動原体ベクターが含まれる。 「シャトルベクター」(又は二機能性ベクター)は、当該技術分野において、1以上の種の生物において複製することができるベクターとして知られている。 例えば、Escherichia coli(E.coli)とサッカロミセス・セレビシエ(S.セレビシエ)の両方で複製することができるシャトルベクターは、E. coliプラスミドからの配列を酵母2μプラスミドからの配列と連結させることによって構築することができる。 本発明の特に好ましい態様は「二元ディスプレイベクター」であり、これは、2つの異なる種において複製することが可能であるだけでなく、2以上の宿主種において異種ポリヌクレオチドを発現して表示することが可能であるシャトルベクターである。 本明細書に使用される「分泌」は、分泌シグナルを有し、小胞体において処理されるペプチドに関連する。 分泌されるペプチドがアンカー配列を含有するか、又は細胞表面の外側と会合すれば、このペプチドは「表示」されると言われる。 本明細書に使用される「表示(ディスプレイ)」及び「表面ディスプレイ」(本明細書において交換可能的に使用される)は、異種ポリペプチドがファージ又は宿主細胞の外面へ付着又は「固着」し、それにより固着したポリペプチドが細胞外環境へ曝露される現象を意味する。 本発明は、多重鎖ポリペプチドの各鎖の宿主細胞における発現とその多重鎖ポリペプチドの少なくとも1本の鎖の宿主細胞の表面への固着による、多重鎖ポリペプチドの真核宿主細胞の表面でのディスプレイへ特に向けられる。 「ディスプレイベクター」は、ポリペプチドを宿主細胞又はファージにおいて発現することが可能であるベクターを意味し、発現されたポリペプチドは前記宿主細胞又はファージの表面に表示される。 本発明のディスプレイベクターは、表示されるポリペプチドの生物活性が宿主細胞又はファージの表面で現れるように、多重鎖ポリペプチドの宿主細胞又はファージにおける発現を指令する。 本発明の二元ディスプレイベクターは、ポリペプチドの生物活性がそれぞれの宿主の表面で現れるように、少なくとも2つの異なる宿主(好ましくは、例えば、原核宿主細胞と真核宿主細胞)における多重鎖ポリペプチドの発現を指令する。 用語「レパートリー」は、多様な分子、例えば、ヌクレオチド配列が異なる核酸分子、又はアミノ酸配列が異なるポリペプチドの集団を意味する。 本発明によれば、ポリペプチドのレパートリーは、好ましくは、標的分子へのその結合部位が異なる多様な分子の集団を保有するように設計される。 このレパートリーのポリペプチドは、共通の構造要素を有するように設計され、例えば、Fabのレパートリーでは、十分に認知された二本鎖構造(Ig軽鎖と、それに会合するIg重鎖のV Hドメイン及びC H 1ドメイン)を有するが、この成分鎖のそれぞれの可変領域における変異により、様々な結合特異性を現す。 用語「ライブラリー」は、異種のポリペプチド若しくはポリヌクレオチドの混合物を意味する。 ライブラリーは、類似のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列を有するメンバーからなる。 ライブラリーがポリヌクレオチドライブラリーである場合、それは、ポリペプチドのレパートリー(特に、例えば本発明に関しては、多重鎖ポリペプチドのレパートリー)をコードする。 ライブラリーメンバー間の配列の違いは、ライブラリーに存在する多様性の原因となる。 ライブラリーは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの単純な混合物の形態をとる場合があるか、又はポリヌクレオチドのライブラリーで形質転換された生物若しくは細胞、例えば、細菌、ウイルス、動物若しくは植物細胞、等の形態であってもよい。 ライブラリーを形成する細胞若しくは生物の表面に異種ポリペプチドが発現されて明示される場合、このライブラリーは「ディスプレイライブラリー」である。 有利には、ポリヌクレオチドを発現ベクターへ組み込み、このポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドの発現を可能にする。 故に、好ましい側面において、ライブラリーは、宿主生物の集団の形態をとる場合があり、各生物は、発現されて対応のポリペプチドメンバーを産生することができるポリヌクレオチドのライブラリーの単一メンバーを含有する発現ベクターの1以上のコピーを含有する。 このように、宿主生物の集団には、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の大きなレパートリーをコードする潜在能力がある。 本発明は、新規な多重鎖ディスプレイベクターへ向けられる。 本発明の1つの態様において、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、別個の(即ち、2以上の)発現ベクターに存在し、その編集(compilation)により機能的なディスプレイ「ベクターセット」が生じる(一般用語「ベクター」にはベクターセットが含まれる)。 例えば、多重鎖ポリペプチドが生物学的に活性なFabの軽鎖及び重鎖からなる二本鎖ポリペプチドであれば、LCをコードするポリヌクレオチドを1つの発現ベクターへ取り込み、HCをコードするポリヌクレオチドを第二の、別個の発現ベクターへ取り込むことができる(最も好ましくは、HC−アンカー融合タンパク質として発現される)。 各ベクターは、個別に、そのそれぞれのポリペプチド鎖を発現することが可能であり;この2つのベクターが適合ベクターセットを形成し、このセットは、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチド鎖をコードする。 同様に、ベクターセットの異なるベクターでそれぞれ形質転換された別個の宿主細胞は、集合的に適合宿主細胞セット(又は、特に2−ベクターセットの場合は、適合「細胞対」)を形成する。 ベクター及びベクターセットには、好ましくは、成功裡に形質転換された宿主の選択及び増殖を促進するための1以上の選択可能マーカー(例えばTRP、ampR等)も含まれる。 「宿主細胞」は、ベクターを含有するように形質転換されたあらゆる細胞(原核又は真核)を意味する。 本発明によれば、好ましい宿主細胞は、細菌細胞と真核細胞であり、限定されないが、原生生物細胞、真菌細胞、植物細胞、及び動物細胞が含まれる。 本発明の宿主細胞はどのような遺伝子構築体でもよいが、好ましくは、一倍体、二倍体細胞、又は多倍体(例えば培養中の不死化細胞系が典型的である)である。 好ましい宿主細胞には、昆虫細胞(例えばSf9)、哺乳動物細胞(例えばCHO細胞、COS細胞、SP2/0及びNS/0骨髄腫細胞、ヒト胚性腎(HEK)細胞、乳児ハムスター腎(BHK)細胞、ヒトB細胞、ヒト細胞系PER.C6TM(Crucell))、種子植物細胞、及び子嚢菌類細胞(例えばニューロスポラ属と酵母細胞;特に、サッカロミセス属、ピキア属、ハンゼヌラ属、シゾサッカロミセス属、クライベロミセス属、ヤローウィア属、及びカンジダ属の酵母)が含まれる。 好ましい例示の酵母種には、S. セレビシエ、ハンゼヌラ・ポリモルファ、クライベロミセス・ラクチス、ピキア・パストリス、シゾサッカロミセス・ポンベ、及びヤローウィア・リポリチカが含まれる。 特に好ましい酵母宿主細胞は、S. セレビシエである。 用語「ファージ」は、「バクテリオファージ」を意味し、これは、核酸コアとタンパク質性の保護殻を含有する細菌ウイルスである。 用語「バクテリオファージ」及び「ファージ」は、本明細書において交換可能的に使用される。 他に述べなければ、用語「バクテリオファージ」及び「ファージ」には、「ファージミド」(即ち、ヘルパーファージとの宿主の同時感染によりパーケージングされ得るプラスミドがそのゲノムに含まれる、バクテリオファージ)も含まれる。 本発明の好ましい態様において、ファージは、M13ファージである。 用語「アンカー」、「細胞表面アンカー」、及び「アンカーポリペプチド」は、宿主細胞中での発現時に、宿主細胞の外面、又はファージディスプレイ系の場合はファージ粒子の表面に(例えば、カプシドの一部として、又はフィラメントの一部として)付着するか又は他のやり方で会合するポリペプチド部分を意味する。 アンカーポリペプチドは、コートタンパク質部分、膜貫通ポリペプチド部分であってよく、又は、細胞表面へ他のやり方で(例えば、ホスファチジルイノシトール又はジスルフィド架橋によるような、翻訳後修飾により)連結するポリペプチド部分であってもよい。 この用語には、宿主細胞又はファージに対してネイティブなタンパク質、又は宿主細胞壁又はファージコートへ固着させる目的で導入した外来性タンパク質が含まれる。 アンカーには、人工的に修飾又は末端切断されても、宿主細胞又はファージ粒子の表面へ付着する能力を保持する、天然に存在するアンカーが含まれる。 好ましいアンカータンパク質部分は、例えば、真核細胞の細胞表面タンパク質に含まれる。 有効なアンカーには、本発明に記載の多重鎖ポリペプチド鎖のように、別のポリペプチドへ融合したときに表面アンカーを提供するのに十分な細胞表面タンパク質の部分が含まれる。 別個にコードされて発現されるが、共有(例えばジスルフィド)若しくは非共有結合により細胞の表面で会合するタンパク質対の使用も好適なアンカーとして考慮され、この点で特別な言及がなされるのは、酵母α−アグルチニン成分、Aga1p及びAga2pであり、これは酵母細胞の表面にグリカン固定化、ジスルフィド連結複合体を生じる。 アンカーとして利用することができる別のタンパク質対は、核タンパク質Jun及びFos(「jun/fos連結」を生じる)のような、「ロイシンジッパー」相互作用、等を生じるタンパク質である。 例えば、ディスプレイベクターは、本発明に従って、Junのロイシンジッパー部分へ融合する多重鎖ポリペプチドの第一鎖の宿主細胞における発現を指令するように設計することができ、第二ベクターは、宿主の表面タンパク質へ融合するFosのロイシンジッパー部分の独立した発現を指令するように設計することができる。 このベクター構造遺伝子の発現時に、Jun及びFosのロイシンジッパーが第一鎖ポリペプチドとジッパーのFos部分へ融合した宿主細胞表面タンパク質間の連結となるので、第一鎖のポリペプチドがjun/fos連結を介して宿主細胞表面と会合(即ち、固着)する。 この種の好適なタンパク質結合対をいずれも使用してよい。 ポリペプチドアンカーの好ましい例には、ファージディスプレイ系では、線状ファージのpolIIIコートタンパク質又はその断片(例えば、pIIIアンカードメイン若しくは「断端(stump)」、米国特許第5,658,727号を参照のこと)、そして酵母ディスプレイ系では、FLO1(S.セレビシエの綿状表現型に関連するタンパク質)、α−アグルチニン、及びa−アグルチニン(例えば、Aga1p及びAga2pサブユニット)とこれらの機能的断片が含まれる。 本明細書に使用される用語「融合タンパク質」は、1より多い供給源からのアミノ酸配列からなり、一緒に連結して非天然に存在する単体ポリペプチドを生じる、ハイブリッドポリペプチドを意味する。 融合タンパク質は、例えば、成分アミノ酸配列のコード配列を、発現時に、それらが単一のポリペプチドとして産生されるようにインフレームで作動可能に連結することによって調製する。 あるいは、融合タンパク質は、合成的に、例えば、2以上の別個ポリペプチド間にペプチド結合を創出することによって、組み立ててもよい。 本明細書に使用される「連結」は、2以上の要素間の機能的かつ構造上の結びつきを意味する。 本明細書に使用されるように、連結要素は、典型的には、2以上のポリヌクレオチド要素若しくはポリペプチド要素間の作動可能な結びつきに関連する。 例えば、上記に論じたように、ポリペプチドは、アンカータンパク質へ(ペプチド結合を介してか又はペプチドリンカーを介して)連結し、それにより融合タンパク質を生じ得る。 同様に、このポリペプチド及びアンカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを、融合タンパク質が単体のRNAメッセージとして転写及び翻訳されるように、連結してよい。 ポリペプチドはまた、中間的な会合を介してアンカーへ間接的に連結してよく、その1例は、Jun及びFosロイシンジッパーの高アフィニティー相互作用(即ち、「jun/fos連結」)を使用して、ファージ又は宿主細胞の表面へポリペプチドを有効に連結させることである(Crameri, R. and Blaser, K., 1996)。 どの好適なヘテロ二量体若しくはホモ二量体の分子対も使用してよい(Chang, H. et al., 1994; Moll, J. et al., 2001; Pu, W. and Struhl, K., 1993)。 当該技術分野の当業者により理解されるように、ファージディスプレイ若しくは宿主細胞ディスプレイ系において発現されて表示される多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖をコードするポリヌクレオチドは、プロモーターへ(転写を促進するために)作動可能に連結するか、又はシグナル配列若しくはリーダーペプチドへ(細胞プロセシングや表面への輸送を促進するために)作動可能に連結することができる。 こうした遺伝子制御要素とそれへの機能的な連結は数多くあり、当該技術分野でよく知られていて、本発明はその使用により限定されない。 しかしながら、好ましいプロモーターには、誘導プロモーターが含まれる。 特に好ましいプロモーター(真核系用)には、pGAL1、pGAL1−10、pGAl104、pGal10、pPGK、pCYC1、及びpADH1のような、酵母ベクターにおいて有用なものが含まれる。 他の好ましいプロモーターには、LacZプロモーター(非真核系用)が含まれる。 特に好ましいシグナル配列には、Aga2pシグナル配列(真核系用)とpIIIシグナル配列(非真核系用)が含まれる。 当該技術分野の実施者に知られている別の有用なツールは、分子標識又は「タグ」(例えば、エピトープタグ、レポーター遺伝子、放射性同位体、蛍光若しくは化学発光部分、等)であり、これらは、例えば、それへ連結するポリペプチドの存在を検出する実施者の能力を促進する。 エピトープタグ(例えば、特別な抗体又は結合部分により認識されることが知られているペプチドセグメント)は、それらが本発明に記載の単数若しくは複数のベクターにおいて多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖との融合パートナーとして同時発現されて、そのタグが同時発現される1以上の鎖の発現の検出を可能にするという点で、本明細書において特に有用である。 当該技術分野で知られて使用されるように、タグは、典型的には、目的の遺伝子と同じ遺伝子制御下に(好ましくは、発現される融合タンパク質の成分として)置かれる。 目的の遺伝子産物が容易には検出可能でない場合、タグは、容易に検出可能で、しばしば定量可能な、目的の遺伝子産物の存在を示すシグナルを提供する。 目的のポリペプチド遺伝子産物へタグを連結することによって、実施者は、例えば、遺伝子発現、ポリペプチド転送、細胞外ディスプレイ、及びタンパク質−タンパク質相互作用のようなプロセスをモニターすることができる(Fields, S. and Sternglanz, R., 1994; Phizicky, E. and Fields, S., 1995)。 従って、多重鎖ポリペプチド鎖は、場合により、個別に、又は一緒に1以上のタグへ連結することができる。 多様なタグが当該技術分野で知られて、市販されている(アマーシャム・ファルマシア・バイオテク、ピスカタウェイ、ニュージャージー州;アプライド・バイオシステムズ、フォスターシティ、カリフォルニア州;プロメガ、マジソン、ウィスコンシン州;ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、インディアナポリス、インディアナ州;ストラタジーン、ラホヤ、カリフォルニア州)。 好ましくは、この連結は、ペプチド結合を介して達成され(それにより融合タンパク質を創出する)、ここでは多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドがタグ(例えばエピトープタグ)へ連結する。 好ましいタグには、ポリHisタグ、HAタグ、及びmycタグが含まれる。 本明細書に使用される用語「組換え」は、非天然的に改変又は操作された核酸、外来の核酸でトランスフェクトされた宿主細胞、又は、単離DNAの操作と宿主細胞の形質転換により非天然的に発現されたポリペプチドを記載するために使用される。 「組換え」は、遺伝子工学技術を使用してin vitroで構築されたDNA分子を特に包含する用語であり、分子、構築体、ベクター、細胞、ポリペプチド、又はポリヌクレオチドを記載するための形容詞としての用語「組換え」の使用では、天然に存在する分子が特に除外される。 同様に、用語「形質転換」は、一般に、挿入の方法に限定せずに遺伝物質を細胞又はファージへ導入する人工的な(即ち、実施者が制御する)方法を意味する。 数多くの方法が当該技術分野で知られて、本明細書に引用されて組み込まれる参考文献に記載される。 特に本明細書に適用される用語「形質転換体」は、形質転換された宿主細胞を意味し、例えば、(反対の接合型の一倍体酵母胞子の制御接合の場合のように)適合した一倍体細胞対の制御融合の産物である、二倍体細胞が含まれる。 核酸配列情報を1つのベクターから別のベクターへ「移行させる」方法は、本発明において限定されず、当該技術分野で知られている多様な遺伝子工学又は組換えDNA技術がいずれも含まれる。 ここでも、膨大な数の方法が当該技術分野で知られて、本明細書に引用され援用される参考文献に記載される。 特に好ましい移行技術には、限定されるものではないが、制限消化及びライゲーション技術(ユニークなクローニング部位を利用する)、PCR増幅プロトコール(特定のプライマー配列を利用する)、及び相同組換え技術(相同性のあるポリヌクレオチド領域を利用する)が含まれる。 遺伝子工学技術を利用することは、必然的に、生物の必要条件や実施者により所望される特別な細胞状態により決定されるような多様な特殊条件下で組換え宿主細胞(形質転換体)を増殖させることを必要とする。 例えば、生物は、(その遺伝素因により決定されるように)特定の栄養必要物、又は物理的(例えば温度)及び/又は化学的(例えば抗生物質)条件に対する特別な耐性若しくは感受性を保有する場合がある。 さらに、所望の遺伝子の発現を誘導するか又は抑圧する(例えば誘導プロモーターの使用)、又は特別な細胞状態を始動させる(例えば酵母細胞の接合又は胞子形成)には、特定の培養条件が必要となる場合がある。 これらの変動条件とこうした条件を満たすための必要条件は、当該技術分野の実施者により理解され、評価される。 従って、本発明の様々な側面の実施には、特別な細胞状態を達成するか又は誘導するのに「適した条件」又は「十分な条件」の下で宿主細胞を培養することが必要になる。 こうした望ましい細胞状態には、限定されるものではないが、細胞の増殖及び生殖;多重鎖ポリペプチドの生物活性が宿主細胞(又はファージ粒子)の表面で現れるような、多重鎖ポリペプチドの発現、分泌又は輸送、及び会合;二倍体細胞を生じる一倍体細胞の融合(例えば受精、接合体形成、反対の接合型の細胞の接合);及び、一倍体娘細胞を生じる二倍体細胞の減数分裂(例えば配偶子形成、胞子形成)が含まれる。 本発明は、こうした「好適条件」の物理及び化学変数により限定されないが、こうした条件は、本発明を実施するために使用される生物及びベクターにより、そして実施者の選好性により決定される。 多重鎖ポリペプチド真核ディスプレイベクター 上記に概説したように、本発明は、真核細胞において、多重鎖ポリペプチドの生物活性が細胞の表面で現れるように細胞の表面に多重鎖ポリペプチドを表示するのに有用な新規の遺伝ベクターへ向けられる。 本発明によれば、多重鎖ポリペプチドは、単一ベクターにコードすることができるか、又は多重鎖ポリペプチドの個別の鎖をベクターセットにコードすることができる。 例えば、本発明の1つの側面において、ベクターは、ベクターセットとして存在してよく、ここで多重鎖ポリペプチドの各鎖は、ベクターの適合対の1つにコードされるので、ベクターセットが単一の真核細胞中に存在する場合、多重鎖ポリペプチド鎖は真核細胞の表面で会合する。 本発明の別の側面において、ディスプレイベクターは二元ディスプレイベクターであってよく、ここで該ベクターは、(i)生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを真核細胞において発現して真核細胞の表面に表示すること、及び(ii)生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを原核細胞において発現してバクテリオファージの表面に表示することが可能である。 多重鎖ポリペプチドは、多重鎖ポリペプチド鎖と呼ばれる、2つ以上の別々のポリペプチド要素からなるいかなるポリペプチドでもよく、この鎖は、共有結合的又は非共有結合的に(ペプチド結合以外で)連結して生物学的に活性なポリペプチドを生じる。 好ましくは、本発明の多重鎖ディスプレイベクターによりコードされる多重鎖ポリペプチドは、二、三、又は四本鎖ポリペプチドのいずれかとして存在する。 ポリペプチド鎖は、同じであっても(例えばホモ二量体、三量体又は四量体)、異なっても(例えばヘテロ二量体、三量体又は四量体)よい。 好ましくは、多重鎖ポリペプチドは、2つの異なる鎖からなる二本鎖若しくは四本鎖ポリペプチドである。 より好ましくは、多重鎖ポリペプチドは、T細胞受容体、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、免疫グロブリン、及び生物学的に活性な免疫グロブリン断片(例えばFab)からなる多重鎖ポリペプチドの群より選択される。 より好ましくは、多重鎖ポリペプチドは、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、又はそれらの生物学的に活性な断片である。 最も好ましくは、多重鎖ポリペプチドはIgのFab断片であり、ここで多重鎖ディスプレイベクターの第一のポリヌクレオチドは、Ig重鎖のV Hドメイン及びC H 1ドメインをコードするセグメントを含み、第二のポリヌクレオチドは、Ig軽鎖(即ち、V L及びC Lドメイン)をコードするセグメントを含む。 多重鎖ポリペプチド鎖(例えば第一鎖、第二鎖、第三鎖等)は、発現ベクターにおいてポリヌクレオチド(例えば、それぞれ第一のポリヌクレオチド、第二のポリヌクレオチド、第三のポリヌクレオチド、等)としてコードされる。 当該技術分野の当業者により評価されて理解されるように、この鎖をコードするポリヌクレオチド配列は、機能的な多重鎖ポリペプチドを産生するために、必ずしも同一のプラスミドへ挿入される必要はないし、同じ遺伝子発現制御下にある必要もない。 例えば、Ig Fabの軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチドは、別個のプラスミド上に位置して、機能的な多重鎖ポリペプチドへの同時発現及び同時プロセシングのために、そのまま同一の宿主細胞を形質転換してよい。 また、当該技術分野の当業者により評価されるように、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドの配列は、同一の、又は同じ供給源に由来する必要はない。 例えば、所望の特異性を有するモノクローナル抗体分子と同じ可変ドメイン(V H及びV L )と、所望の特性を有する異なるモノクローナル抗体由来の定常ドメイン(C H 1及びC L )を有するIg分子を産生することができる(例えば、ヒト適合性を提供するか、又は特別な補体結合部位を提供するために)。 さらに、多重鎖ポリペプチド(例えばIgドメイン)の鎖をコードする異種ポリヌクレオチドは、互いにアミノ酸配列はやや異なるが同じ全体構造を有するポリペプチド鎖をコードする、ポリヌクレオチド相同体のファミリーを産生するように変化させることができる。 このようにして、この相同体が異なる宿主細胞へ組み込まれて発現されると、多様な配列の多重鎖ポリペプチドのライブラリーが表示され、例えば、改変した生物活性を有する相同の多重鎖ポリペプチドを発見するためのスクリーニングに適したペプチドディスプレイライブラリーを提供する。 アミノ酸配列におけるこうした改変は、対応するポリヌクレオチドコード配列の適切な領域の好適な突然変異、又は一部の合成及び置換、又はその一部若しくは全部の置換により達成することができる。 代わりの定常ドメイン部分は、適合可能な組換えDNA配列より入手することができる。 発現ベクター成分と適合宿主細胞の適切な選択があれば、多重鎖ポリペプチド鎖が真核宿主細胞の表面に表示される。 当業者は、このことがいくつかの可変発現ベクター構築体のいずれかを使用して達成し得ること、そして本発明がそれにより限定されないことを評価されよう。 ディスプレイベクターそのものは、当該技術分野で公知であり市販されているいくつかの遺伝ベクター及び遺伝子制御配列(例えば、インビトロジェン(カールスバッド、カリフォルニア州);ストラタジーン(ラホヤ、カリフォルニア州);アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナッサス、バージニア州))のいずれかより構築又は修飾してよい。 本質的に、本発明のベクター構築体は、多重鎖ポリペプチドの生物活性が宿主細胞の表面で現れるように、そのベクターで形質転換された真核細胞の表面に完全に組み立てられた多重鎖ポリペプチドを有効に表示するためにポリペプチド鎖を発現する。 多重鎖ポリペプチドの有効な細胞発現を達成するために、多重鎖ポリペプチドのそれぞれの鎖をコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、ポリペプチド鎖の発現を調節する転写プロモーターへ連結される。 有効なプロモーターは、真核系において機能的で、場合により(特に、二元ディスプレイベクターの場合)原核プロモーターとしても有効でなければならない。 特別な二元ディスプレイベクターにおいて、多重鎖ポリペプチドの異種ポリペプチド鎖の発現を調節するために選択される真核プロモーター及び原核プロモーターは、意図される宿主生物においてそれが適切に機能的である限りは、同じでも異なるプロモーターでもよい。 あるいは、それらは、特別な宿主における各鎖の発現のために独立して選択してよい。 真核プロモーターは構成プロモーターでもよいが、好ましくは誘導プロモーターである。 均衡した発現を達成して発現の同時誘導を確実にするには、各鎖について同じプロモーターを利用するベクター構築体が好ましい。 本発明に有用ないくつかの真核プロモーターが当該技術分野で知られている。 特に好ましいプロモーター(真核系用)には、ガラクトース誘導プロモーター、pGAL1、pGAL1−10、pGal4、及びpGal10;ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、pPGK;シトクロムcプロモーター、pCYC1;及びアルコールデヒドロゲナーゼIプロモーター、pADH1のような、酵母発現ベクターにおいて有用なものが含まれる。 好ましくは、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするそれぞれのポリヌクレオチドは、シグナル配列(又はリーダーペプチド配列)へも連結する。 シグナル配列は、新生ポリヌクレオチドの細胞膜中への、又はそれを通過する輸送(分泌と呼ばれる場合もある)を指令するように作動する。 真核細胞において本発明のベクターから発現される多重鎖ポリペプチド鎖は、組立てのために小胞体(ER)へ輸送されて、細胞外ディスプレイのために細胞表面へ輸送される。 有効なシグナル配列は、真核系において機能的であるべきで、場合により(特に、二元ディスプレイベクターの場合)、シグナル配列は、原核系でも有効であるべきである。 多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、典型的には、シグナル配列へインフレームで(ポリヌクレオチドへすぐに隣接するか、場合により、リンカー若しくはスペーサー配列を介して連結する)直に連結され、それによりポリペプチド鎖−シグナル配列ペプチド融合タンパク質を産生する。 好ましくは、多重鎖ポリペプチドの各鎖は別個のシグナルペプチドへ融合する。 シグナルペプチドをコードするシグナル配列は、多重鎖ポリペプチドの各鎖について同じでも異なってもよい。 シグナル配列は、それが作動可能でその融合するポリペプチドの細胞外輸送をもたらす限りにおいて、宿主にとってネーティブでも異種でもよい。 本発明において作動可能ないくつかのシグナル配列が当業者に知られている(例えば、酵母において作動可能なMfα1 prepro、Mfα1 pre、酸ホスファターゼ Pho5、インベルターゼSUC2シグナル配列;E.coliにおいて作動可能なpIII、PelB、OmpA、PhoAシグナル配列;昆虫細胞において作動可能なgp64リーダー;IgKリーダー、哺乳動物細胞において作動可能な蜜蜂メリチン分泌シグナル配列)。 シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞のネーティブ分泌タンパク質に由来する。 特に好ましい真核シグナル配列には、酵母のα接合因子、酵母のα−アグルチニン、サッカロミセスのインベルターゼ、クライベロミセスのイヌリナーゼのそれと、最も好ましくは、a−アグルチニンのAga2pサブユニットのシグナルペプチド(特に、使用される固着ポリペプチドがAga2pポリペプチドである態様において)が含まれる。 多重鎖ポリペプチドがFabである、特に好ましい態様において、第一のポリヌクレオチドは、Ig重鎖のV H領域及びC H 1領域をコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナル配列を含み、第二のポリヌクレオチドは、Ig軽鎖をコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナル配列を含む。 本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターは、該ベクターによりコードされる多重鎖ポリペプチドが宿主細胞の表面に表示されるように、真核宿主細胞において作動する。 宿主細胞の表面での固着(「係留」又は「ディスプレイ」)は、多重鎖ポリペプチドの少なくとも1本の鎖を宿主細胞壁へ付着した分子部分へ連結することによって達成される。 多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖がアンカーへ連結してもよいが、完全に組み立てられた多重鎖ポリペプチドは、宿主細胞表面に対して付着点を1つしか必要としないので、細胞付着の点には、多重鎖ポリペプチド鎖が1つしか必要でない。 その細胞の表面でのディスプレイは、ポリペプチド鎖の少なくとも1つをそのアンカータンパク質又は機能的断片(部分)へ連結することによって達成することができる。 有効なアンカーは、真核系において機能的であるべきであり、場合により(特に、二元ディスプレイベクターの場合)、アンカーは、バクテリオファージの表面でのアンカーとしても有効であるべきである。 好ましくは、アンカーは、宿主細胞にとってネーティブな表面発現タンパク質であり、例えば、膜貫通タンパク質、又はグリカン架橋を介して細胞表面へ連結したタンパク質である。 本発明において作動可能ないくつかのアンカータンパク質が当業者に知られている(例えば、pIII、pVI、pVIII、LamB、PhoE、Lpp−OmpA、Flagellin(FliC)、又は原核生物/ファージにおいて作動可能な、少なくともその膜貫通部分;哺乳動物細胞において作動可能な、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)膜貫通ドメイン、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー;昆虫細胞中のgp64アンカー、等)。 好ましくは、酵母が宿主である場合、アンカータンパク質は、α−アグルチニン、a−アグルチニン(サブ成分のAga1p及びAga2pを有する)、又はFLO1であり、これらは本来的に酵母細胞表面への連結を形成する。 ポリペプチド鎖のアンカーへの連結は、多様な分子生物学技術により、直接的又は間接的に達成することができる。 本発明は、鎖−アンカー連結の方法により限定されず、そうした連結の結果として、連結ポリペプチド鎖が宿主細胞(又は、場合により、バクテリオファージ)の表面に固定化されるという機能上の必要性にのみ限定される。 鎖−アンカー連結の好ましい方法は、鎖−アンカー融合タンパク質の構築による。 鎖−シグナルペプチド融合タンパク質に類似して、そして好ましくはそれと協奏的に、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドは、アンカーへインフレームで(ポリヌクレオチドへすぐに隣接するか、又は場合により、リンカー若しくはスペーサー配列を介して連結する)直に連結され、それによりシグナルペプチド−ポリペプチド鎖−アンカー融合タンパク質を産生する。 代わりのペプチド−ペプチド連結の方式が当該技術分野で知られていて、本発明の有効な鎖―アンカー連結を達成するために利用可能である。 例えば、そしてすでに引用したように、多重鎖ポリペプチド鎖は、Jun及びFosロイシンジッパー(jun/fos連結)の高アフィニティー相互作用のような中間的な会合を介してアンカーへ間接的に連結させて、ファージ又は宿主細胞のアンカーへポリペプチド鎖を共有的に連結させることができる(Crameri, R. and Suter, M., 1993; Crameri, R. and Blaser, K., 1996)。 多重鎖ポリペプチドがIg Fab断片である、特に好ましい態様において、第一のポリヌクレオチドは、Aga2pアンカーをコードするセグメントとインフレームで、並びに、Ig重鎖のV Hドメイン及びC H 1ドメインをコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナル配列を含み;第二のポリヌクレオチドは、Ig軽鎖をコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナルペプチドを含む。 好ましくは、本発明の多重鎖ディスプレイベクターは、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチド配列の移行を促進するクローニング部位を提供する。 こうしたベクタークローニング部位は、ポリヌクレオチドセグメントのリーディングフレームでの切断及び挿入を促進するように位置した少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む。 当該技術分野で知られているどの制限部位も、本発明のベクター構築体において利用してよい。 ほとんどの市販ベクターは、すでに多重クローニング部位(MCS)又はポリリンカー領域を含有する。 さらに、新しいユニークな制限部位をベクターへ取り込むのに有用な遺伝子工学技術が知られていて、当業者により定常的に実践されている。 クローニング部位は、単一のポリヌクレオチド断片の挿入又は切断を可能にする、わずかに1つの制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む場合がある。 より典型的には、2以上の制限部位を利用して、例えば、挿入(例えば挿入の方向)のより強い制御や、より柔軟な操作(例えば、1以上のポリヌクレオチド断片の方向づけられた移行)を提供する。 多数の制限部位は同じであるか又は異なる認識部位であってよい。 本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターは、好ましくは、多重鎖ポリペプチド鎖のコード配列の末端に位置する制限部位を含有する。 制限部位は、最先端に、つまり多重鎖ポリペプチド鎖の(単一ベクター上の)コード配列のすべてを包含するポリヌクレオチドセグメントの5'端及び3'に位置してよい;又は、より好ましくは、制限部位は、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするそれぞれのポリヌクレオチドセグメントの5'端及び3'端に位置してよい。 より好ましくは、制限部位のそれぞれは、ベクターにおいてユニークであり、他の制限部位とは異なる。 この特に有用なベクター構築体は、多重鎖ポリペプチド鎖をコードする個別のポリヌクレオチド配列のモジュラー移行に柔軟性と制御を提供する。 多重鎖ポリペプチドがFabである、特に好ましいベクター構築体において、第一のポリヌクレオチドは、Aga2pアンカーをコードするセグメントとインフレームで、並びに、Ig重鎖のV Hドメイン及びC H 1ドメインをコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナル配列を含み、ここでIg重鎖領域はユニークな制限部位(例えばSfiI及びNotI)を境界とし;そして、第二のポリヌクレオチドは、Ig軽鎖をコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナルペプチドを含み、ここでIg軽鎖領域はユニークな制限部位(例えばApaLI及びAscI)を境界とする。 多重鎖真核ディスプレイベクターの好ましい態様において、該ベクターにより宿主細胞において発現される多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖は、分子タグ又はレポーター遺伝子へ連結する。 好ましくは、この連結は、多重鎖ポリペプチド鎖へポリペプチドタグを連結するペプチド結合である。 多重鎖ポリペプチドの1以上の鎖は、同一、類似、又は異なるタグを使用してタグ付けてよい。 好ましいタグには、エピトープタグが含まれる(Munro, S. and Pelham, H., 1987)。 好ましいエピトープタグには、ポリHisタグ、HAタグ、及びmycタグが含まれ、好ましくは、それぞれの鎖を異なるタグへ融合する。 多重鎖ポリペプチドが免疫グロブリンのFab断片である、本明細書に例示される特に好ましいベクター構築体に基づけば、第一のポリヌクレオチドは、Aga2pアンカーをコードするセグメントとインフレームで、Ig重鎖のV Hドメイン及びC H 1ドメインをコードするセグメントとインフレームで、並びにmycタグをコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナル配列を含み、ここでIg重鎖領域はユニークな制限部位(例えばSfiI及びNotI)を境界とし;そして、第二のポリヌクレオチドは、HAタグをコードするセグメントとインフレームで、並びにIg軽鎖をコードするセグメントとインフレームでAga2pシグナルペプチドを含み、ここでIg軽鎖領域は、ユニークな制限部位(例えばApaLI及びAscI)を境界とする。 多重鎖ポリペプチドの真核細胞ディスプレイ 本明細書に記載されて教示されるベクターを利用して、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に表示する方法を本明細書において初めて例証する。 多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に表示する方法は、ベクター(おそらくは、ベクターセットとして)を真核宿主細胞(即ち、宿主細胞)へ導入すること、及び多重鎖ポリペプチドの生物活性が宿主細胞の表面で現れるように、宿主細胞表面での多重鎖ポリペプチド鎖の発現、輸送、及び会合に適した条件下で宿主細胞を培養することを含む。 本発明のベクターの宿主細胞への導入の方式は、本発明には限定されず、当該技術分野で知られている、遺伝物質を細胞へ導入するあらゆる方法が含まれる。 こうした方法には、限定されないが、トランスフェクション、形質転換、エレクトロポレーション、リポソーム仲介性移行、生物(biolistic)移行、コンジュゲーション、細胞融合、及び核マイクロインジェクションとして当該技術分野で知られて呼ばれる方法が含まれる。 当該技術分野で知られている形質転換技術が遺伝子移行の好ましい方法である。 多重鎖ポリペプチドディスプレイ宿主細胞(及び宿主細胞対) 本発明のベクターは、真核宿主細胞において作動可能であり、真核宿主細胞の表面での発現をもたらして多重鎖ポリペプチドを表示する。 場合により、特に二元ディスプレイベクターの場合、本発明のベクターは、原核宿主細胞においても作動可能であり、細菌宿主細胞においても発現をもたらし、多重鎖ポリペプチドをバクテリオファージの表面に表示する。 真核宿主細胞は、実施者の特別な関心及び要求に応じて、どの遺伝子型の、分化又は未分化、単細胞又は多細胞の、どの真核細胞でもよい。 特に有用な真核細胞には、哺乳動物細胞、植物細胞、真菌細胞、及び原生生物細胞が含まれる。 好ましくは、宿主細胞は、未分化、単細胞、一倍体若しくは二倍体の細胞生物である。 好ましい宿主細胞は真菌であり、特に、その培養条件の容易さと多様性、利用可能な生化学及び細胞性突然変異体の多様性、その短い世代時間、及びその生活環(以下参照)のために、子嚢菌門(子嚢菌)の種である。 好ましい真菌宿主細胞には、サッカロミセス、ピキア、ハンゼヌラ、シゾサッカロミセス、クライベロミセス、ヤローウィア、デバリオミセス、及びカンジダのような、ニューロスポラ属と様々な酵母のものが含まれる。 最も好ましい種は、分子生物学の研究においておそらく最もよく知られていて、特徴付けられ、利用される真核宿主細胞系である、サッカロミセス・セレビシエ(パン酵母)である。 特別の態様において、真核宿主細胞は、細胞融合に適している(以下参照)。 例えば、反対の接合型の酵母細胞は、「接合」して融合二倍体細胞を産生することができる。 さらに、細胞融合に適した酵母プロトプラスト若しくはスフェロプラストも、本発明の目的に適した真核宿主細胞である。 あるいは、培養で増殖する細胞(例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞等)も、当該技術分野で知られている(例えばセンダイウイルスや電流を使用する)方法により融合してよい。 ファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系 複雑な多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に表示する本発明の技術進歩は、ファージディスプレイ技術の力能とカップルさせることができる。 例えば、本明細書に記載のファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系を利用することによって、実施者は、ファージディスプレイライブラリー及びファージディスプレイ技術により提供される膨大な多様性を、上記の多重鎖真核ディスプレイ技術により提供される細胞の発現、プロセシング、組立て、及びディスプレイと初めて組み合わせることができる。 ファージディスプレイベクターと本発明の真核ベクターの間での核酸配列情報の移行は、当該技術分野で知られている多様な遺伝子移行法(例えば組換えDNA技術のような遺伝子工学技術)により達成することができる。 好ましい移行の方式には、制限消化、PCR増幅、又は相同組換えの技術が含まれる。 1つの態様において、本明細書に記載されて教示される真核/原核多重鎖ディスプレイシャトルベクターを利用する。 本発明の二元ディスプレイベクターの遺伝子制御要素は、真核宿主細胞内で、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドの発現、プロセシング、組立て、及びディスプレイを二元ディスプレイベクターで形質転換された真核宿主細胞の表面に提供するだけでなく、原核宿主細胞内では、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドの発現、プロセシング、組立て、及びディスプレイを原核宿主細胞において感染したバクテリオファージの表面に提供する。 別の態様において、ファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系は、当該技術分野で知られている慣用のファージディスプレイベクター(即ち、ファージ粒子の表面に外来性ポリペプチドを表示するように工学処理されたバクテリオファージ)より切断した鎖コードポリヌクレオチドセグメントを、本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターへ挿入し、それにより鎖コードセグメントの発現と、真核ディスプレイベクターで形質転換された真核宿主細胞の表面での生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドの真核プロセシング、組立て、及びディスプレイを可能にする。 上記に記載のように、ファージディスプレイベクターから多重鎖真核ディスプレイベクターへのポリヌクレオチド配列の移行は、当該技術分野で知られているどの遺伝子工学技術でも達成してよい。 2つの特に好ましい方法には、単一切断/挿入移行法と多重(又はモジュラー)切断/挿入移行法が含まれる。 単一切断/挿入移行法では、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドセグメントを(例えば制限消化により)ファージディスプレイベクターから単一の単体核酸として切断し、引き続き、多重鎖ディスプレイベクターへ挿入する。 真核ディスプレイベクターへ挿入したならば、鎖コードポリヌクレオチドの間に位置する、望まれない原核性の遺伝子制御要素を、(もしあれば)真核性の遺伝子制御要素に置き換える。 ファージディスプレイベクターから本発明の特に好ましい多重鎖酵母ディスプレイベクターへ移行させたIg Fab多重鎖ポリペプチドについて、この方法を図1に図解する。 あるいは、多重鎖ポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドセグメントをファージディスプレイベクターから個別に切断し、そして引き続き、別個の独立したやり方で多重鎖ディスプレイベクターへ挿入する。 このアプローチは、多重鎖ポリペプチドの個別の鎖を別々に、又はひとまとめに移行することに優るより強い制御と柔軟性を提供する。 実際、実施者の関心とニーズに応じて、多重鎖ポリペプチドの選択された鎖だけを移行させるべきである。 Ig Fab多重鎖ポリペプチドについて、この方法を図2に図解する。 当該技術分野の実施者は、本明細書に記載されて教示されるファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系が、ファージディスプレイベクターから多重鎖真核ディスプレイベクターへ、又は多重鎖真核ディスプレイベクターからファージディスプレイベクターへ配列情報を移行しても同等に機能的である、即ち、本発明のこのファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系が有効にも二方向性であることを評価されよう。 本発明に記載のファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系における使用に特に好ましいファージディスプレイライブラリーは、大量ヒトFab断片ライブラリー(de Haard, H. et al., 1999)である。 多重鎖真核ディスプレイライブラリーとそのスクリーニングプロトコール 本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターと、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドが宿主細胞表面に表示されるように、これらのベクターで形質転換された宿主細胞は、ディスプレイライブラリーの産生に有用である。 また、こうしたディスプレイライブラリーは、実施者の関心がある多様な生物活性をスクリーニングする、例えば、多様な標的分子のいずれかに対してスクリーニングして、その標的に特異的な結合ポリペプチドを同定するために、有用である。 数多くの多様な分子を宿主細胞又はファージの表面に発現させるいくつかの方法が存在する。 ファージディスプレイライブラリーとそのスクリーニングは、強力な研究及び開発ツールの代表である。 ファージディスプレイライブラリーを産生してスクリーニングする方法は、当該技術分野でよく知られ、使用されている(Hoogenboom, H. et al., 1997; Kay et al., 1996; Ladner, R. et al)。 本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターを使用して、既知のファージディスプレイライブラリーに類似した、新規のペプチドライブラリーをde novo産生することができる。 しかしながら、本明細書に記載のベクターは、真核系においてのみ達成することができる、適切にフォールドされ、組み立てられ、グリコシル化され、そして表示される多重鎖ポリペプチドのより効率的な発現を可能にする。 次いで、これらの多重鎖真核ディスプレイライブラリーは、スクリーニングアッセイに使用することができる。 当業者は、当該技術分野で知られているディスプレイライブラリースクリーニングプロトコール(例えばファージディスプレイスクリーニングアッセイ)を評価して、本発明の多重鎖真核ディスプレイライブラリーへ容易に適用するだろう。 新規の多重鎖真核ディスプレイライブラリーをde novo産生することに加え、さらに本発明は、実施者が既存のファージディスプレイライブラリーを本明細書に開示されて教示される多重鎖真核ディスプレイ系へ移行させることを可能にする。 特に、ファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系は、ファージディスプレイライブラリーが多重鎖ポリペプチド(例えば軽鎖及び重鎖の成分を有するFab)のごく大量なレパートリーのディスプレイのために構築されることを可能にする。 ファージディスプレイライブラリーは、ライブラリー中に>1×10 8 (好ましくは、>1×10 9 、より好ましくは>1×10 10 )の異なる多重鎖ポリペプチドの多様性を有し得るが、初回スクリーニングを受けて、約1×10 7未満(好ましくは1×10 5 〜1×10 6の間)のファージディスプレイ単離物のサブ集団を生じる場合がある。 次いで、多重鎖ポリペプチド単離物の鎖をコードするポリヌクレオチドを、真核宿主への形質転換のために、本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターへ「バッチ移行」させてよい。 真核宿主細胞に表示される多重鎖ポリペプチドは、先に論じたような真核宿主系の培養条件及び発現特質(例えば、タンパク質フォールディング、多重鎖タンパク質における別個の鎖の適切な会合、グリコシル化、分泌、及び、細胞膜へのホスファチジルイノシトール連結のような翻訳後修飾)を利用して、さらにスクリーニングして操作することができる。 さらに、多重鎖真核ディスプレイベクターへ挿入したならば、多重鎖ポリペプチドライブラリー(又はそれより予め選択した単離物)は、追加ラウンドのスクリーニングのためにさらに多様化(例えば、ポリペプチド鎖の組換え、再シャッフリング、又は再混合)してよい。 特に好ましい態様において: ApaLI制限部位及びAscI制限部位により画定され、シグナル配列(例えばpIIIシグナル配列)に対して3'配向し、そしてLacZプロモーターの転写制御下にある、Ig軽鎖クローニング部位;及び SfiI制限部位及びNotI制限部位により画定され、シグナル配列(例えばpIIIシグナル配列)に対して3'配向し、LacZプロモーターの転写制御下にあり、そして成熟pIIIをコードする配列又はpIIIの固着部分(断端)に対して5'配向する、Ig重鎖断片クローニング部位を有するM13ファージ発現ベクターが提供される。 この好ましい態様における多重鎖真核ディスプレイベクターは: ApaLI制限部位及びAscI制限部位により画定され、Aga2p分泌シグナルに対して3'配向し、そしてGALプロモーター(好ましくはGAL1又はGAL1−10)の転写制御下にある、Ig軽鎖クローニング部位;及び SfiI制限部位及びNotI制限部位により画定され、Aga2p分泌シグナルに対して3'配向し、GALプロモーター(好ましくはGAL1又はGAL1−10)の転写制御下にあり、そして成熟Aga2pをコードする配列に対して3'配向する、Ig重鎖断片クローニング部位を有する酵母ベクターである。 この酵母発現ベクターを使用して、酵母細胞表面に表示される抗体又はFab断片の発現のために酵母宿主細胞を形質転換する。 軽鎖及び重鎖のコード配列は、ファージディスプレイベクターより個別に(それぞれ、ApaLI/AscI消化及びSfiI/NotI消化により)、又は一緒に(ApaLI/NotI消化により)切断し、バッチ移行により多重鎖酵母ディスプレイベクターへ挿入し、酵母における発現及びディスプレイのために多数のLC/HC鎖対合を得る。 Fabの酵母ディスプレイに特に好ましい酵母ディスプレイベクターは、pTQ3(以下に記載)である。 特に好ましいファージディスプレイは、大量ヒトFab断片ライブラリーである(de Haard, H. et al., 1999)。 当業者は、上記の方法が、様々な検出可能特性(例えば、触媒活性、ペプチド相互作用、熱安定性、望ましい発現レベル)又は、表示される多重鎖ポリペプチドの表面発現を介して選択可能である他の改善を保有する多重鎖ポリペプチドを同定して単離するのに有用であることを評価されよう。 さらに、本発明が、免疫精製、イムノアッセイ、細胞化学標識化、及びターゲッティング法に有用な抗体若しくは抗体断片の産生、そして診断若しくは療法の方法に使用可能であることを評価されよう。 例えば、この抗体若しくは断片は、インターフェロンや、例えば、VIII因子のような血液凝固因子のような治療上有効なタンパク質へ結合する場合があり、故に、タンパク質の免疫精製若しくはアッセイに使用のアフィニティークロマトグラフィー媒体を産生するのに使用することができる。 細胞融合の産物としての多重鎖ポリペプチドディスプレイ 真核細胞の基本的な生活環は、二倍体(生物の染色体若しくはゲノムが細胞に2コピーあること)と一倍体(生物の染色体若しくはゲノムが細胞に1コピーあること)状態との間の改変を伴う。 この2つの状態間の改変は、単一の二倍体細胞を生ずる2つの一倍体細胞の融合(典型的には、必ずしも必然的ではないが、反対の接合型の受精)と、多数の一倍体(娘)細胞を生じる二倍体細胞の減数分裂により達成される。 生物学者は、この基本的な生活環(即ち、一倍体世代と二倍体世代の改変)が遺伝情報の生物学的な組換え(即ち、有性生殖)の重要な天然の機序をもたらすと理解している。 ほとんどの動物では、二倍体状態が生活環の優勢な段階であり、これは反対の接合型の2つの一倍体細胞(通常、配偶子と呼ばれる);精子及び卵子の融合により産生される。 二倍体細胞の減数細胞分裂(配偶子形成)により、有性生殖のための一倍体細胞状態が産生される。 植物界の生活環様式は、より一般的な世代の改変を提供し、ここでは特別な植物種に応じて、一倍体及び二倍体の状態がより明瞭な世代として存在し得る。 「低級」(即ち、より原始的な)植物では一倍体細胞の世代(「配偶体」)が優勢である(例えば、蘚類、苔類、及びツノゴケ類)のに対し、「高等」(即ち、より進化した)植物では、二倍体細胞の世代(「胞子体」)が優勢である(例えば、シダ、針葉樹、及び顕花植物)が優勢である。 多くの真菌及び原生生物では、一倍体段階の生活環が優勢である。 受精によって二倍体段階になるが、これはしばしばほとんどすぐに(環境条件に依存して)減数分裂を行なって一倍体細胞を生じる。 重要にも、そしてどの属の生物について論じているか、又はどの段階がその生物の生活環に優勢であるかに関わらず、一倍体細胞を産生する二倍体細胞の減数分裂と、(新たな遺伝的混合物の)二倍体細胞を産生する個々の一倍体細胞の細胞融合より生じる遺伝物質の天然の組換え及び再混合は、生物学的研究に利用可能である強力な方法である。 本明細書において初めて記載されて教示される、この強力な機序を、ユニークな多重鎖ペプチドディスプレイライブラリーを産生するためのコンビナトリアルタンパク質研究に利用する。 本発明のさらなる側面において、真核多重鎖ディスプレイベクターを宿主細胞へ導入する方式には、2つの真核細胞、好ましくは一倍体の融合が含まれ、このそれぞれは、多重鎖ポリペプチドの生物活性が生じる宿主細胞、好ましくは二倍体の表面で現れるように、多重鎖ポリペプチド鎖の少なくとも1つを発現する。 例えば、2つの一倍体細胞のそれぞれは、ベクターセット(上記に記載)のベクターの1つを含有し得るので、ひとたび結合して(例えば宿主細胞の細胞融合を介して)、生じる二倍体宿主細胞において同時発現されると、多重鎖ポリペプチドの生物活性がその宿主細胞の表面で現れる。 こうした方法を使用して、上記のような新規の多重鎖ポリペプチドライブラリー(例えば、供給源のレパートリーより大きな多様性を有する多重鎖ポリペプチドを表示する二倍体細胞を含む、抗体若しくはFabディスプレイライブラリー)を調製することができる。 あるいは、1つの真核発現ベクター集団が多数(例えば、レパートリー又はライブラリー)の形態のIg Fab軽鎖(V L及びC Lドメインを含む)を発現し、第二の真核発現ベクター集団が、酵母アンカータンパク質(例えばAga2p)へ融合した、多数の形態のIg Fab重鎖(V Hドメイン及びC H 1ドメインを含む)を発現するように、適合ベクターセットの集団を構築してよい。 このベクター集団のそれぞれを使用して、あるベクター構築体が一方の接合型であり、第二のベクター構築体が反対の接合型である、反対の接合型の一倍体酵母細胞を形質転換する。 この2つの一倍体酵母集団を、2つの接合型の酵母接合(即ち、細胞融合)を誘導するのに十分な条件下で共存培養する。 生じる二倍体酵母宿主細胞の集団は、両方のベクター構築体を保有し、完全に形成されて組み立てられたIg Fabを発現して表示する。 しかしながら、上記に論じたように、本発明においては細胞融合の可能などの真核細胞も使用可能である。 細胞融合は、接合により有性的に、又は人工的に、例えば組織培養や他の人工条件において起こり得る。 有性細胞融合の場合、どの真核細胞も、それが一倍体状態と二倍体状態の両方で(どんなに短い間でも)存在することが可能である限りにおいて、好適である。 人工的な細胞融合では、細胞は、有性融合の場合のように、倍数性により限定されない。 例えば、組織培養において維持される二倍体哺乳動物細胞を、融合するように誘導してよく、それにより四倍体宿主細胞を生じる。 本発明では、融合される宿主細胞の実際の倍数性は、それが融合し得る限りにおいて、限定をもたらさない。 細胞の重要な特徴は、ある細胞パートナーが多重鎖ポリペプチドの特別な鎖と特定の選択可能マーカーを含むベクター若しくはベクターセットを含有し、そのパートナー宿主細胞が多重鎖ポリペプチドの第二鎖と選択可能マーカーを含むベクター若しくはベクターセットを含有することである。 故に、細胞が融合するとき、生じる融合細胞は、選択可能マーカーにより容易に同定される細胞において、多重鎖ポリペプチドの2以上の鎖をコードするベクターを含有する。 真菌、特に子嚢菌(子嚢菌類;例えば、ニューロスポラと酵母)は、特に好ましい真核宿主細胞である。 子嚢菌がそのように命名されるのは、それらが減数分裂の一倍体胞子産物を微視的な嚢中に産生し、それにより容易に採取、分離、解析、及び操作されるからである(ニューロスポラは、その子嚢の大きさ及び形状が減数分裂の一倍体細胞産物の状態(order)を維持するので、特に注目される)。 また、上記の真菌、特にS. セレビシエは、一倍体と二倍体の両方の状態で安定的に存在し、そのいずれも容易に誘導されて維持される(例えば、酵母の一倍体状態は、典型的に、ある形式の栄養ストレス、即ち、飢餓の下で誘導されて維持される)。 最後に、多くの真菌(やはり、特に好ましい酵母)において、一倍体細胞は2つの性(α及びaの接合型)として存在し、それから反対の接合型だけが融合(接合)して二倍体状態を生じる。 当業者により作動可能な実験室の条件下では、α細胞がa細胞へ融合して、それにより融合二倍体細胞を創出する。 上記に述べたように、細胞を融合する人工的な方法が当該技術分野で知られている。 故に、本発明は、例えば、培養において増殖される哺乳動物、昆虫、又は植物細胞のような真核細胞に適している。 さらに、酵母のプロトプラスト若しくはスフェロプラストを操作して、たとえそれらが同じ接合型であっても、細胞融合を起すことができる。 こうした人工的な細胞融合の方法は、当該技術分野で知られていて、本発明の目的に好適であろう。 最後に、当該技術分野の実施者は、本明細書に記載されて例証される産物及び方法がある特別な倍数性の真核宿主細胞に限定されないことを認識されよう。 実際、他の多倍数性生物(例えばより稀な三倍性及び四倍性の形態)を、より高次の多重鎖ポリペプチド(例えば、それぞれ、三本鎖及び四本鎖ポリペプチド)を発現する適合ベクターセットの宿主として特別に使用してよい。 真核細胞融合を使用する多重鎖ポリペプチドスクリーニング 真核宿主細胞上に表示される多重鎖ポリペプチドライブラリーは、当該技術分野で知られている手順及び技術、例えばファージディスプレイライブラリースクリーニングと同様にスクリーニングして操作することができるが、真核宿主系の培養条件及び発現特質を利用することも実施者に可能にする。 上記に論じたように、真核ディスプレイスクリーニングは、初回ラウンドのファージディスプレイスクリーニングで始めた後で、ディスプレイライブラリーをファージディスプレイベクターから多重鎖真核ディスプレイベクターへ移行させることができる。 多重鎖真核ディスプレイベクターへ挿入したならば、この多重鎖ポリペプチドライブラリー(又は予め選択した単離物)は、真核ディスプレイ系での1以上の追加ラウンドのスクリーニングへかけることができる。 本発明のスクリーニング方法のさらなる態様として、そして本発明の方法にユニークである、多重鎖真核ディスプレイライブラリーは、上記に論じたような真核系に特徴的な数世代の改変を利用するスクリーニングアッセイに引き続き、さらなる(偏性又は不偏性の)多様化を受ける場合がある。 多重鎖の異なる鎖が異なるベクターから発現される(例えば、上記のように、二倍体宿主細胞が一倍体接合又は細胞融合の産物である)、多重鎖真核ディスプレイベクターを含有する二倍体真核宿主細胞の集団は、減数分裂(例えば酵母における胞子形成)を起すように誘導することができる。 この一倍体酵母細胞(胞子)は、スクリーニング条件に依存して分離及び/又は選択することが可能であり、目的の好ましい特性をもった異なる真核発現ベクターを別個の一倍体娘細胞に単離することができる。 次いで、娘細胞は、場合により: in vitro(例えば単離DNA操作)又はin vivo(例えばUV光)で突然変異誘発(変形化)させ、予め選択された鎖の多数の相同体を提供する(これらの相同的な鎖が同時発現されて表示されると、同じ標的分子へのより大きなアフィニティーを有する相同の多重鎖ポリペプチドを選択することができる);又は 他の娘宿主細胞とともに戻し融合させる(それにより、多重鎖ポリペプチド単離物の個別の予め選択された鎖をそれらの間で組換える);又は 最初の多重鎖ライブラリー宿主細胞集団と融合させる(それにより、多重鎖ポリペプチド単離物の予め選択された鎖を多重鎖変異の元の供給源と組換える);又は 新しい多重鎖ライブラリー宿主細胞集団と融合させる(それにより、多重鎖ポリペプチド単離物の予め選択された鎖を多重鎖変動性の新たな供給源と組み合わせる);又は 上記工程のいずれかを適宜組み合わせることが可能である。 スクリーニングする多重鎖ポリペプチドの予め選択した鎖の、それらの間でか又は別の多重鎖多様性の供給源とのこの組換え、再シャッフリング、又は再混合が完了したならば、この新たな混合ライブラリー集団をさらなるラウンドの新規若しくは反復スクリーニングにかけることができる。 本発明は、分子生物学の分野でよく知られている技術をそのまま参照により組み込む。 これらの技術には、限定されないが、以下の公表文献に記載の技術が含まれる: Ausubel, F. et al. 監修、「分子生物学の簡略プロトコール(Short Protocols In Molecular Biology)」(第4版、1999年)、ジョンウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、ニューヨーク州(ISBN 0−471−32938−X)。 Fink and Guthrie 監修、「酵母遺伝学及び分子生物学の手引き(Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology)(1991年)、アカデミックプレス、ボストン、マサチューセッツ州(ISBN 0−12−182095−5)。 Kay et al.,「ペプチド及びタンパク質のファージディスプレイ:実験マニュアル(Phage Display of Peptides and Proteins: A Laboratory Manual)(1996年)、アカデミックプレス、サンディエゴ、カリフォルニア州。 Kabat, E. et al.,「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」(第5版、1991年)、米国保健社会福祉省、ベテスダ、メリーランド州。 Lu and Weiner 監修、「遺伝子機能解析用のクローニング及び発現ベクター(Cloning and Expression Vectors for Gene Function Analysis)」(2001年)、バイオテクニックプレス、ウェストバラ、マサチューセッツ州(ISBN 1−881299−21−X)。 Old, R. and Primrose, S.,「遺伝子操作の原理:遺伝子工学入門(Principles of Gene Manipulation: An Introduction to Genetic Engineering)」(第3版、1985年)ブラックウェル・サイエンティフィック・パブリケーションズ、ボストン、マサチューセッツ州。 「微生物学研究(Studies in Microbiology)」;第2巻:409(ISBN 0−632−01318−4)。 Sambrook, J. et al. 監修、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」(第2版、1989年)、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク、ニューヨーク州、1〜3巻(ISBN 0−87969−309−6)。 Winnacker, E.,「遺伝子からクローンまで:遺伝子技術入門(From Genes to Clones: Introduction to Gene Technology)(1987年)VCHパブリッシャーズ、ニューヨーク、ニューヨーク州(Horst Ibelgaufts による翻訳)(ISBN 0−89573−614−4)。 参考文献
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。 これらは決して本発明を限定するものと解釈してはならない。
多重鎖真核ディスプレイベクター:pTQ3の構築 上記に記載されて参照により組み込まれる材料及び技術を使用して、多重鎖真核ディスプレイベクター;特に、該ベクターで形質転換される宿主酵母細胞中で有効な酵母ディスプレイベクターを構築した。 該ベクターは、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチド(例えばIg Fab)を宿主酵母細胞の表面で発現、輸送、組立て、及び表示するのに有用である。 本実施例においては、市販のベクター、pYD1(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)、単鎖タンパク質のS. セレビシエ細胞の表面での発現、分泌、及びディスプレイのために設計された5.0kbの発現ベクターを出発の真核発現ベクター鋳型として使用した。 pYD1には:α−アグルチニン受容体のサブユニットの1つをコードするaga2遺伝子;Aga2/ポリペプチド融合物の調節発現用のGAL1プロモーター;表示タンパク質の検出用のHAエピトープタグ;金属キレート樹脂での精製用のポリヒスチジン(6×His)タグ;酵母における安定したエピソーム複製用のCEN6/ARS4;及びS. セレビシエ形質転換体選択用のTrpI遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子(ampR)及びE. coli中での選択及び複製用のpMB1起点が含まれる。 pYD1プラスミドを、2つのタンデムなガラクトース誘導プロモーターからのIg軽鎖及び重鎖断片の発現、インタクトなFab抗体断片のディスプレイのために修飾した。 一方のGAL1プロモーターが軽鎖の発現を指令し、他方のGAL1プロモーターは、Aga2p酵母アンカータンパク質のC末端へ融合する重鎖断片の発現を指令する。 多重鎖ポリペプチド鎖をディスプレイベクターへ有効に移行させるために、このベクター構築体の一部としてユニークな制限部位を産生した。 このベクター構築体のために選択した制限エンドヌクレアーゼ認識配列(即ち、制限部位)には、二本鎖ポリペプチド(この場合はIg Fab)の鎖にユニークなクローニング部位として、ApaLI、AscI、SfiI、及びNotIを含め、そして既存のファージディスプレイライブラリーとのファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行を促進するためのNheIを含めた。 いくつかのベクター配列修飾を作製して、ApaLIをユニーク制限部位として有効に使用することを確実にした。 1393、3047、及び4293位で始まる、pYD1プラスミド(インビトロジェンにより供給される)上に位置するApaLI部位を位置指定突然変異誘発法(QUICKCHANGE(ストラタジーン、ラホヤ、カリフォルニア州)を使用する)により以下に示すように除去した:
3047位から始まるApaLI部位は、ampR内に存在し、この遺伝子のアミノ酸コード配列を変化させないようにするのにサイレント突然変異を必要とした。 多重鎖酵母ディスプレイベクター構築体を当該技術分野で知られている他のすでに存在しているファージディスプレイライブラリー(Dyax社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)と適合させるために、当該技術分野で知られているPCR位置指定突然変異誘発技術を使用して、pYD1ベクターのaga2pシグナル配列へコード配列を改変せずにユニーク制限部位を導入した。 特に、コドンTCAをコドンAGCで置き換えることによって、aga2pシグナル配列の末端セリンコドンの向こう側へNheI部位を創出した。 このように修飾した、予め存在するGAL1プロモーター−aga2pシグナル配列−HAタグセグメントの3'近傍にユニークApaLI部位を有し、それにAscI部位が続き、aga2pシグナル配列にNheI部位が取り込まれたベクターを、pTQ2と命名した。 当該技術分野で知られている組立てPCR技術を使用して、Fabの軽鎖成分の構造遺伝子を多重鎖酵母ディスプレイベクターへ切断する/挿入するための、既存のファージディスプレイライブラリーと適合するポリリンカーを構築した。 設計されるポリリンカー部位を通ってapa2pシグナル配列を網羅する、生じる中間的な多重鎖真核ディスプレイベクターセグメントは、以下の通りである(*は、終止コドンを示す):
MATα転写ターミネーター配列をpYD1プラスミドからPCRにより増幅し、BamHI及びPst1制限部位を付けて上記のプラスミドpTQ2へのクローニングを促進した。 次いで、MATαターミネーターをBamHI及びPst1で消化して、プラスミドpTQ2のBamHI/Pst1部位へ挿入した。 GAL1プロモーター、aga2pシグナル配列、Aga2pタンパク質コード配列、及びグリシン/セリンリンカーを(5'−3'に)包含するDNA構築体をプラスミドpYD1から増幅した。 SfiI及びNotI制限部位を含有するDNAリンカーセグメントとmycタグをコードするセグメントを、増幅したpYD1セグメントの3'端で加えた。 mycタグを含めたのは、(多重鎖ポリペプチドの)固着鎖の酵母細胞表面での検出を可能にするためである。 このリンカー−mycセグメントの配列は以下の通りである:
このリンカー−mycセグメントを、EcoRI及びPacI消化したpTQ2へ挿入した。 生じたプラスミドは、多重鎖ポリペプチド鎖(特に、Fabの軽鎖及び重鎖断片)の挿入/切断用のユニークなクローニング部位があり、pTQ3と命名した(図3)。 プラスミドpTQ3は5810bpの多重鎖酵母ディスプレイプラスミドであり、関連部分において、以下のベクター配列を含む:
上記のベクターに対して、可溶性Fab抗体精製用の6×Hisタグを挿入し、終止コドン(TAA)をmycタグの末端、PstI部位の前に再配置することによって後の修飾を作製し、余分なアミノ酸を消失させた。 他の修飾には、Trp選択マーカー内の内因性XbaI制限部位の、位置指定突然変異誘発による除去が含まれた。 これを行なったのは、Cjライブラリーセット(Dyaxコーポレーション、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)由来のリード抗体のクローニング及び操作を促進するためである。
ファージディスプレイ−真核移行と、ストレプトアビジン、ムチン−1、及び細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4に特異的な多重鎖Fabポリペプチドの真核宿主細胞発現 異なるファージディスプレイFabをファージディスプレイベクターから多重鎖真核ディスプレイベクターへ移行させ、ファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系の有用性と、本発明の多重鎖真核ベクターの多重鎖ポリペプチドを発現する能力を例証した。 次いで、このベクターを真核宿主細胞へ挿入し、この形質転換した宿主細胞をFabの発現に適した条件下で増殖させた。 抗ストレプトアビジンFab抗体、F2、A12、及び4C8を、大量のネーティブなヒトFabライブラリー(de Haard, H. et al., 1999)から、対の軽鎖(V L C L )及び重鎖(V H C H 1)として実施例1において構築した多重鎖酵母ディスプレイベクターpTQ3へそれぞれクローニングした。 さらに、抗ムチンFab抗体、PH1を、同じFabライブラリーから、対の軽鎖(V L C L )及び重鎖(V H C H 1)として、実施例1において構築した多重鎖酵母ディスプレイベクターpTQ3へクローニングした。 さらに、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)に特異的な4つの抗体、E7、E8、A9、A11を、同じFabライブラリーから、対の軽鎖(V L C L )及び重鎖(V H C H 1)として、実施例1において構築した多重鎖酵母ディスプレイベクターpTQ3へクローニングした。 Fabの鎖を、先に記載して図1に例示した単一切断/挿入移行法を使用して多重鎖酵母ディスプレイベクターへクローニングした。 このFabライブラリー由来のLC−HCポリヌクレオチドを単一のApaLI/NotI断片として挿入した。 このLC及びHC断片のコード領域に介在して、Fabライブラリー由来のAscI/SfiI制限断片により画定される望まれない原核遺伝子制御要素を、pTQ3より導かれるAscI/SfiI断片で置き換えた。 生じたプラスミドをpTQ3−F2、pTQ3−A12、pTQ3−4C8、pTQ3−PH1、pTQ3−E7、pTQ3−E8、pTQ3−A9、及びpTQ3−A11と命名し、Gietz, D. et al., 1992 の方法に従って、S. セレビシエ菌株、EBY100(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)へ別々に形質転換した。 EBY100は、対照として、多重鎖インサートを含有しない形質転換体、pTQ3でもあった。 形質転換体の選択は、ベクターのトリプトファン栄養要求性マーカーを選択して実施した(トリプトファン(−)、2%(w/v)グルコース、2%アガー(SDCAA+GA)の合成規定培地)。 成功した形質転換体(対応して、「EBY100pTQ3−F2」、「EBY100pTQ3−A12」、「EBY100pTQ3−4C8」、「EBY100pTQ3−PH1」、「EBY100pTQ3−E7」、「EBY100pTQ3−E8」、「EBY100pTQ3−A9」、「EBY100pTQ3−A11」、及び対照の「EBY100pTQ3」と命名した)を、10mL SDCAA+Gにおいて振り混ぜながら30℃で一晩増殖させた。 OD 600が1.0に達したとき、2つの細胞の試料(例えば、OD 600が1.0である2mLの培養物)を誘導時間が0に等しい点(T 0 )のタンパク質溶解液調製物として直ちに取り去った。 翌日、培養物を遠心分離して、ペレットになった酵母細胞を10mL SDCAA,2%(w/v)ガラクトースに再懸濁してOD 600を1とした。 細胞を20℃で増殖させ、48時間の間、軽鎖及び重鎖のベクター発現を誘導した。 次いで、培養した細胞を遠心分離して、1mL滅菌水で2回洗浄し、遠心分離用エッペンドルフ管へ移した。 細胞ペレットを250mLのSDS−PAGE緩衝液+ジチオスレイトール(DTT)に再懸濁した。 425〜600ミクロンのガラスビーズ(シグマ、セントルイス、ミズーリ州)をメニスカスの真下に加え、この懸濁液を1分間、4回激しく撹拌した。 激しく撹拌している間、懸濁液は氷上に保った。 上清を新鮮な管へ移し、100℃まで5分間加熱した。 タンパク質試料をSDS−PAGEゲルで分離し、ウェスタンブロットのためにニトロセルロース膜へ移した。 抗HA抗体(1μg/mL)(Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)を使用して軽鎖ポリペプチドの検出を実施した。 重鎖−Aga2p融合ポリペプチドの検出は、抗c−Myc抗体(1μg/mL)を二次ウサギ抗マウスHRP抗体(Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)と一緒に使用して実施した。 免疫検出は、増強化学発光(アマーシャム−ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)により実施した。 表示されたFabの約30kDのLC産物と約45kDのHC−Aga2p融合産物(F2及びPH1;図4A及び4B)を検出した。 ガラクトースでの誘導前には、検出可能なLCやHC−Aga2p融合産物は検出されなかった(図4A及び4Bを参照のこと)。
多重鎖ポリペプチドの真核宿主細胞での機能的な表面ディスプレイ 本発明の多重鎖真核ベクターの、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを真核宿主細胞の表面に発現し、組み立て、そして適切に表示する能力の例証として、多重鎖真核ディスプレイベクターを真核宿主細胞へ挿入し、形質転換した宿主細胞を、Fabの宿主細胞の表面での発現及びディスプレイに適した条件下で増殖させた。 上記の実施例2に記載のように、酵母クローンのEBY100pTQ3−F2、EBY100pTQ3−PH1、EBY100pTQ3−E7、EBY100pTQ3−E8、EBY100pTQ3−A9、及びEBY100pTQ3−A11を調製し、培養し、抗体発現を誘導した。 ガラクトースでの誘導に先立って、OD 600が1.0である酵母細胞の3つの0.2mLアリコートをT 0点として取り去った。 ガラクトースで発現を誘導した(実施例2)後で、OD 600が1.0である細胞のさらに3つの0.2mLアリコートを取り去った。 酵母試料を遠心分離し、1mg/mL BSAを含有するPBSに細胞ペレットを再懸濁した。 2つの試料を再び遠心分離し、細胞ペレットを100mLの抗c−Myc抗体(試料につき2.5μg)又は100mLの抗HA抗体(試料につき2.0μgの抗体)のいずれかに再懸濁した。 次いで、この試料を室温で1時間インキュベートし、細胞をペレットにして、0.5mLのPBS/BSAで1回洗浄した。 次いで、この試料をFITC結合ウサギ抗マウス抗体(1:40希釈)とともに暗所で1時間インキュベートした。 細胞試料をPBS/1%(w/v)BSA中のストレプトアビジン−FITC(1:20希釈)で標識し、暗所において室温で一晩インキュベートした。 すべての試料を遠心分離し、細胞ペレットを0.5mL PBSで1回洗浄してから、500mLのPBSに再懸濁した。 細胞表面に結合したFab−抗原結合の存在をフローサイトメトリーにより検出した。 誘導前の細胞は、軽鎖、重鎖、機能的なストレプトアビジン結合Fab抗体のディスプレイをいずれも示さなかった。 Fab発現の誘導後、免疫蛍光法(図4C)、FACS(図5A〜C)、及び酵母全細胞ELISA(図6、実施例7を参照のこと)により、酵母細胞がLC、HC、さらに機能的なストレプトアビジン結合Fab抗体も表示していることを検出することができた。 抗CTLA−4 Fab抗体の機能的なディスプレイも例証された(データ示さず)。 EBY100pTQ3−F2及びEBY100pTQ3−PH1の場合、FACSにより検出されるような抗原結合は、非標識の可溶性抗原を用いて完了することができた。 競合結合により、酵母細胞表面に表示されるコンビナトリアルに組み立てられたFab抗体の完全な特異性が示された(図5C)。
Fab表示酵母細胞の選択濃縮:磁気ビーズ選択による検出 抗原特異的Fab抗体を表示する酵母細胞を過剰な非関連酵母細胞に対して濃縮することができることを例証するために、自動磁気ビーズ選択装置を使用してモデル選択実験を実施した。 Fab表示酵母細胞、EBY100pT−F2(トリプトファン栄養要求性選択マーカーがある)を非特異的な酵母細胞と様々な比率で混合した。 この非特異的酵母細胞はEBY100pUR3867(Unilever Research,V L aardingen,オランダ)からなり、ムチン−1(PH1)に特異的なscFv抗体をコードし、ロイシン栄養要求性選択マーカーを担っていた。 選択の前後でのLeu + /Trp +細胞の比率を使用して、1ラウンドの選択の後で濃縮率を算出した。 実施例2に記載のように、酵母クローンを増殖させ、抗体発現をガラクトースで誘導した。 この2種の酵母クローンを上記に示した比率で混合し、最終容量1mLの2%リン酸緩衝化生理食塩水(例えば、2% MARVEL−PBS又は「MPBS」,Premier Brands社、イギリス)において100μLのストレプトアビジン常磁性ビーズ(Dynal M280,Dynal Biotech,オスロ、ノルウェー)とともに1時間インキュベートした。 酵母−ビーズ混合物のインキュベーションの後で、この細胞−ビーズ複合体を、自動磁気ビーズ選択装置において1つのウェルから次のウェルへこの複合体を移すことによって、2% MPBS中で11サイクルの間洗浄した。 2% MPBS洗浄の後で、PBSを用いてさらに2回の洗浄工程を実施した。 自動磁気ビーズ選択装置の最終ウェル中で、この細胞−ビーズ複合体を1mL PBSにおいて再懸濁し、SDCAA+Gアガープレート上でプレート培養することによるか、又はロイシンドロップアウト含有2%(w/v)グルコースを含有する合成規定培地+2%アガー(SD−Leu+Gアガープレート)を用いて力価を決定した。 磁気活性化細胞分取法(MACS)による選択のために、酵母細胞を6mL PBS+2mM EDTA中の500μLストレプトアビジン・マイクロビーズ(Miltenyi Biotec,ケルン、ドイツ)とともに室温で1時間インキュベートした。 この細胞/ビーズ混合物を磁石の存在下に洗浄済みLCカラム(Miltenyi Biotec,ケルン、ドイツ)上にロードし、このカラムをPBS+2mM EDTAで2回洗浄した。 磁石を外した後で、結合した酵母細胞を6mL PBS緩衝液で溶出させた。 キャピラリー洗浄装置(CWD)を使用する酵母選択では、酵母細胞混合物と100μLのストレプトアビジンコート常磁性ビーズ(Dynal M280)を1mLの2% PBSにおいて1時間ブロックした。 常磁性ビーズを1mLの酵母細胞懸濁液に再懸濁し、エッペンドルフ管において室温で1時間穏やかに回転させた。 この酵母細胞のストレプトアビジンコート常磁性ビーズとのインキュベーションの後で、この混合物をCWDのキャピラリーへ導入した(5回の200μL工程で1つのキャピラリーにロードするのに1mLを使用した)。 自動洗浄と酵母−ビーズ混合物の再懸濁の後で、PBSで最終洗浄を実施し、磁石を調整することによって酵母/ビーズ複合体を採取した。 2つの選択可能マーカーの使用は、特異酵母(トリプトファン(−)選択アガープレートで増殖することができる)の非特異酵母(ロイシン(−)選択アガープレートで増殖することができる)からの識別を可能にした。 各力価のコロニー形成単位(CFU)数を記録した。 濃縮率は、選択の前後での特異酵母細胞の比率を選択の前後での非特異酵母の比率で割ったものとして算出した。
表1に示すように、ストレプトアビジンに対するFab抗体を表示する特異酵母細胞は、Kigfisher,キャピラリー洗浄装置、又は磁気活性化細胞分取法(MACS)のような自動磁気ビーズ選択装置における1ラウンドの選択により、非関連酵母細胞に対して2〜6次数の大きさで濃縮することができる。
Fab表示酵母細胞の選択濃縮:フローサイトメトリーによる検出 上記実施例4の磁気ビーズ検出法に代わるものとして、過剰の非関連酵母細胞に対する抗原特異的Fab抗体の濃縮を、蛍光標示式細胞分取(FACS)技術を使用して例証した。 Fab表示酵母細胞、EBY100pTQ3−F2(トリプトファン栄養要求性選択マーカーを有する)を、Leu栄養要求性マーカーを担う非特異酵母細胞、EBY100(pUR3867−PH1)と1:100、1:1000、及び1:10,000の比率で混合した。 この酵母細胞混合物を1μMストレプトアビジン−FITC(Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)とともにインキュベートし、室温で30分間平衡化した。 3000個の細胞をフリーサイトメトリーにより分取し、最高の蛍光シグナルを有する6.5%の細胞を採取した。 選択の前及び後の酵母細胞を、SDCAA+GアガープレートとSD−Leu+Gアガープレートでプレート培養し、CFUの数を決定した。 濃縮率は、EBY100pTQ3−F2及びEBY100pUR3867−PH1のアウトプット比率をそのインプット比率で割った比率として算出した。 1ラウンドのFACSの後で、EBY100pTQ3−F2は、EBY100pUR3867−PH1に対して10倍濃縮した(データ示さず)。
ファージディスプレイ抗体ライブラリーの多重鎖真核ディスプレイベクターへのバッチ移行 ファージディスプレイペプチドライブラリーを本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターへひとまとめに移行させるファージディスプレイ/真核ディスプレイ移行系の有用性の例証として、当該技術分野で知られている技術を使用して調製したファージディスプレイFabライブラリーを、上記の実施例1に記載のように産生した多重鎖酵母ディスプレイベクターpTQ3へ移行させた。 ファージディスプレイレパートリーを多重鎖酵母ディスプレイベクターへ移行させるために、先に記載して図1に例示した単一切断/挿入移行法を使用した(実施例1も参照のこと)。 50mLのTYAG培養物(TY,アンピシリン100μg/mL,グルコース2%)に、ファージへクローニングしたネーティブFabライブラリーの1ラウンドのストレプトアビジン選択に由来する、10μLのグリセロールストックを接種した(de Haard, H. et al., 1999)。 この培養物を37℃で一晩増殖させ、プラスミドDNAを調製した(QIAGEN プラスミド精製システム、Qiagen,バレンシア、カリフォルニア州)。 Fab抗体レパートリーをApaLI及びNotIで消化し、約1.5kbのFab抗体断片を回収し、1.0% TBE 臭化エチジウムアガロースゲル(QIAEXゲル抽出キット、Qiagen,バレンシア、カリフォルニア州)からの抽出により精製した。 同様に、多重鎖酵母ディスプレイベクター、pTQ3をApaLI及びNotIで消化し、約4.6kbの断片を、1.0% TBE 臭化エチジウムアガロースゲルからの抽出により精製した。 Fabライブラリーから回収したFab抗体インサートの、ApaLI及びNotIで消化したpTQ3プラスミドへのライゲーションを、1μg Fab断片と0.7μg pTQ3ベクターを使用して4:1(インサート−ベクター)の比率で、100μLの反応液において16℃で一晩実施した。 このライゲーション混合物をフェノール、クロロホルム、及びイソアミルアルコール(PCI)抽出により精製し、引き続き、100%エタノールで沈殿させた。 BioRad Pulser(BioRad,カリフォルニア州)を2.5kV,25mF及び200Wで使用するエレクトロポレーションにより、精製したライゲーション混合物でE. coli菌株、TG1(オランダ細菌培養コレクション、PC4028、ユトレヒト、オランダ)を形質転換した。 このライブラリーを、100μg/mLのアンピシリンと2% w/v グルコースを含有する、2×TYアガープレート(バクト−トリプトン 16g/L,酵母エキス 10g/L,NaCl 5g/L,バクト−アガー 15g/L)(TYAGプレート)上に置いた。 37℃で一晩の増殖の後で、プレートに多量の水を注ぐことによって、このレパートリーを2×TY培地+アンピシリン(100μg/mL)に回収し、15%(w/v)グリセロールにアリコートで凍結した。 このライブラリーは、5.6×10 6の独立クローンを含有した。 5.4×10 10細胞/mLのライブラリー懸濁液の15μLを使用して100mLのTYAGに接種し、この培養物を37℃で一晩増殖させた。 プラスミドDNAを上記に記載のように回収した。 次いで、中間のpTQ3−FabレパートリーをAscIとSfiIで消化した。 約6.1kbの断片を上記のように精製した。 供給源ベクターのpTQ3もAscIとSfiIで同様に消化し、約1150bpの断片を精製した。 上記の精製した1150bp断片を、AscI及びSfiで消化したpTQ3−Fabレパートリーと、1.6μgインサートと1μgベクターを使用して6:1(インサート−ベクター)の比率で連結した。 このライゲーション混合物を精製し、上記に記載のようにE. coli菌株、TG1を形質転換して、1×10 6の独立クローンからなる最終のpTQ3−Fabライブラリーを得た。 このライブラリーを上記に記載のようにプレートから回収し、10mLを50mL TYAGに接種し、37℃で一晩増殖させた。 Gietz, D. et al., (1992) の方法によりプラスミドDNAをpTQ3−Fabライブラリーより調製し、酵母菌株、EBY100を形質転換させ、2×10 6の独立した酵母クローンの酵母の最終ライブラリーサイズを得た。
バッチ移行された真核ディスプレイFabライブラリーの選択:磁気ビーズ選択による検出 Fab抗体の多様なレパートリーを表示する酵母細胞の集団からの選択を酵母ディスプレイFabライブラリーが行なうことができることを例証するために、自動磁気ビーズ選択装置を使用して、多重選択実験を実施した。 実施例6において調製した酵母レパートリーをSDCAA+Gにおいて30℃で増殖させ、ガラクトースで(実施例4のように)抗体発現を誘導した。 酵母細胞のプールを、1mL 2% MPBSの最終容量において100μLのストレプトアビジン常磁性ビーズ(Dynal M280,Dynal Biotech,オスロ、ノルウェー)とともに1時間インキュベートした。 酵母−ビーズ混合物のインキュベーションの後で、この細胞−ビーズ複合体を、自動磁気ビーズ選択装置において1つのウェルから次のウェルへこの複合体を移すことによって、2% MPBS中で11サイクルの間洗浄した。 2% MPBS洗浄の後で、PBSを用いてさらに2回の洗浄工程を実施した。 自動磁気ビーズ選択装置の最終ウェル中で、この細胞−ビーズ複合体を1mL PBSにおいて再懸濁し、SDCAA+Gアガープレート上でプレート培養することにより、選択の前後で酵母コロニー力価を決定した。 次いで、選択した酵母細胞を使用して10mL SDCAA+Gの新鮮培養物に接種し、第二ラウンドの選択を上記のように実施した。 第一ラウンドの選択の後と第二ラウンドの選択の後で、酵母全細胞ELISAにより陽性及び陰性クローンの比率を決定した。 96穴プレート(コーニング・コスター、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)において、100mL SDCAA+2%(w/v)ガラクトース中で細胞を増殖させて誘導した。 誘導後、細胞をPBSで1サイクル洗浄し、抗原結合及び重鎖ディスプレイの検出のために2つのプレートに等しく分割した。 第一のプレートにおいては、抗原結合を検出するために、抗ストレプトアビジン−HRP(0.87μg/mL)を含有する100μL PBSに細胞を再懸濁した。 第二のプレートの細胞は、重鎖ディスプレイを検出するために、抗c−Myc(1μg/mL)を含有する100μL 2% MPBSに再懸濁した。 1時間のインキュベーションの後で、細胞をPBSで2サイクル洗浄し、この細胞を100μL TMB溶液に再懸濁することにより、特異結合の定量を行なった。 呈色の後で、50μL 2N硫酸を加えることによって反応を止めた。 遠心分離により細胞をペレットにし、100μLの上清を柔軟な96穴プレート(ファルコン、BDバイオサイエンス、ベッドフォード、マサチューセッツ州)へ移し、450nmでの吸光度を記録した。 重鎖検出では、ウサギ抗マウスHRP(1:1000)を含有する100μL 2% MPBSを各ウェルへ加えた。 1時間のインキュベーションの後で、上記に記載のように、細胞を2サイクル洗浄して重鎖ディスプレイを検出した。 この結果を表3に提示する。
1ラウンドの選択の後で、抗原結合をスクリーニングした酵母クローンの20%が陽性であることを見出し、第二ラウンドの選択後、抗原反応性の酵母クローンの数は100%であった。
抗ストレプトアビジン表示酵母細胞のアフィニティー選択:フローサイトメトリーによる検出 別のアフィニティー識別実験において、クローンのEBY100pTQ3−F2及びEBY100pTQ3−A12/pESCは、Leu栄養要求性マーカーを担う空きベクター、pECS(ストラタジーン、ラホヤ、カリフォルニア州)を含有する。 抗ストレプトアビジン抗体のF2は、プラスモン共鳴(BIAcore)により定量されるように54nMのアフィニティーを有し、抗ストレプトアビジン抗体のA12は、約500nMのアフィニティーを有する。 これら2つのクローンを一晩増殖させ、SDCAA+2%(w/v)ガラクトースにおいて1.0のOD 600まで希釈し、20℃で48時間増殖させた。 高アフィニティー抗体含有クローン(EBY100pTQ3−F2)と低アフィニティー抗体含有クローン(EBY100pTQ3−A12/pESC)のクローンを約1:100の比率で混合した。 各クローン中に存在する異なる選択可能マーカーを使用することにより、EBY100pTQ3−A12/pESC(トリプトファン(−)、ロイシン(−)選択アガープレートで増殖することができる)をEBY100pTQ3−F2(トリプトファン(−)選択アガープレートでしか増殖し得ない)から識別することが可能になる。 この細胞混合物を、500nM、100nM、50nM、25nM、及び10nMのストレプトアビジン−FITCの系列希釈液を用いる以外は、前と同じように標識した。 LCディスプレイと抗原結合の両方に基づいて、EPIC ALTRA(ベックマン・コールター、フラートン、カリフォルニア州)においてフローサイトメトリーにより細胞を分取した。 分取速度を2000細胞/秒に設定し、FITC/PEの最高比率を有する細胞集団の1%を採取するように分取ゲートを設定した(典型的なFACSヒストグラムを図7に示す)。 異なる抗原濃度での選択後のインプット細胞とアウトプット細胞について選択プレートで力価検定し、コロニーの数を合計して濃縮率とより高いアフィニティークローンの回収率を算出した(表4)。 上記の結果は、より高いアフィニティーのクローンがフローサイトメトリー分取法により選好的に回収され得ることと、K d =54nMと約500nMのK dである2つの抗体の混合物では最適抗原濃度が100nMと25nMの間にあることを例証する。
誤りがちのPCRにより多様化される酵母表示ライブラリーの構築 新規の多重鎖ディスプレイベクターライブラリーを産生する能力を例証するために、ストレプトアビジンに特異的なFab抗体、F2を誤りがちの(error prone)PCRにかけた。 別々のLC、HCと全Fab抗体を酵母ディスプレイベクターへクローニングした。 誤りがちのPCRを、2.25mM MgCl 2と0.375mM MnCl 2の存在下に30サイクルの間実施した。 精製した産物を、実施例2のように、LC、HC、及び全Fab断片に対応するApaL1/AscI断片、Sfi1/Not1断片、又はApaL1/Not1断片としてpTQ3酵母ディスプレイベクターへクローニングした。 このライゲーション混合物でE. coliを形質転換して、アンピシリン 100μg/mLを含有する選択アガープレートで増殖させ、5×10 6のLCレパートリー(pTQ3F2−LC epと命名)、5.6×10 8のHCレパートリー(pTQ3F2−HC epと命名)、及びpTQ3F2−Fab epの全Fabレパートリーを得た。 これらのレパートリーを採取し、200mLの接種液(少なくとも10倍のライブラリー多様性を含むのに十分である)を作製した。 200mL培養物よりプラスミドDNAを単離し、実施例2に記載のように酵母菌株、EBY100へ形質転換した。 生じたレパートリーを、EBY100−pTQ3F2−LC ep (サイズ=5×10 6 );EBY100−pTQ3F2−HC ep (サイズ=1.7×10 6 );EBY100−pTQ3F2−Fab ep (サイズ=10 6 )と命名した。 ヌクレオチドレベルでの突然変異頻度は、LCで1.5%、HCで0.8%であった。 アミノ酸レベルでの突然変異頻度は、LCで3%、HCで1.3%であった。
抗ストレプトアビジン表示酵母細胞ライブラリーのアフィニティー選択:フローサイトメトリーによる検出 多重鎖酵母ディスプレイライブラリーのアフィニティー選択を例証するために、ライブラリーのEBY100−pTQ3F2−LC ep ;EBY100−pTQ3F2−HC ep 、及びEBY100−pTQ3F2−Fab epの一晩培養物を実施例2のように調製し、SDCAA+2%(w/v)ガラクトースを含有する選択培地で1.0のOD 600まで希釈し、20℃で48時間増殖させた。 このレパートリーを抗HA mAb(25μg/mL)を用いて室温で1時間標識した後で、ウサギ抗マウスIg−FITC(1:40希釈)と6nMストレプトアビジンPEを室温で1時間用いる第二のインキュベーション工程を続けた。 それぞれのインキュベーション工程に続いて細胞を0.5mL PBSで一回洗浄し、最終洗浄の後で細胞を氷上に保ち抗原解離を妨げた。 EPIC ALTRAフローサイトメーターにおいて2000細胞/秒の分取速度で試料を分取した。 濃縮形式において第一の分取ラウンドを行い、ゲートに入る細胞の集団を、LCディスプレイと抗原結合の両方に基づいて採取するように、分取ゲートを設定した。 採取される細胞の比率は選択ラウンドの継続とともに減少し、レパートリーの多様性の低下を説明した(図8A)。 次いで、実施例2のように、採取した細胞をSDCAA+(w/v)グルコースにおいて30℃で1.0のOD 600まで増殖させた後で、ガラクトースで誘導した。 分取ゲートが減少する純粋方式(purity mode)で行なうラウンド2及び3で選択を繰り返した(表5)。 異なる抗原濃度でもポリクローナルFACS分析を実施し、LCディスプレイと抗原結合活性の両方のFACSヒストグラムを図8Bに示す。
選択Fab抗体の分析 レパートリー、EBY100−pTQ3F2−LC ep ;EBY100−pTQ3F2−HC ep ;EBY100−pTQ3F2−Fab epのアフィニティー選択により編集した酵母クローンをアフィニティースクリーニングして、出発の野生型抗体に対するアフィニティーの改善を定量した。 選択抗体も配列決定して改善アフィニティーと相関する突然変異を決定した。 酵母コロニーを摘出し、25μLの溶解酵素(lyticase)溶液(2.5mg/mL;シグマ、セントルイス,ミズーリ州)に37℃で1時間再懸濁した後で、2μLを取り、PCR反応に使用した。 別々のLC及びHCを増幅し、ABI−PRISMシークエンサーを使用して配列決定した。 配列アライメントを使用して野生型からの突然変異を決定し、表6に示す。
選択Fabのオフ速度(off rate)を、FACSにおける解離速度を測定することによって蛍光シグナルの経時的な減少として決定すると、クローン、R2H10が最大のアフィニティー改善(10.7倍、3.2nM)を与えた。 この解離速度を指数関数型崩壊モデルへ適合し、k dを算出した。 酵母細胞を、LCを検出するために抗HAで標識し、さらに抗原検出のためにストレプトアビジンPEでも標識した。 実施例2の記載のように酵母培養物を増殖させて誘導し、約2×10 7個の細胞を採取し、PBSで洗浄した。 次いで、この細胞を100μL 抗HA Mab(20μg/mL)とともに1時間インキュベートしてから、0.5mLのPBSで洗浄した。 次いで、この細胞をウサギ抗マウスFITC(1:40)及びストレプトアビジンPE(1μg/mLストックの1:40希釈液)とともに氷上で1時間インキュベートした。 次いで、この細胞ペレットを過剰の非蛍光リガンドにおいて室温で再懸濁した。 非蛍光標識の濃度は、酵母細胞あたり約100,000コピーのFab抗体が存在すると仮定して、酵母に表示されるFab抗体のモル濃度の10〜100倍過剰になるようにした。 蛍光強度の減少をフローサイトメトリーにより1.5分〜30分間モニターした。 非標識酵母細胞を使用してバックグラウンド蛍光を設定した。 次いで、k dを算出する指数関数型崩壊のモデルへ解離速度を適合することによって、k dを算出した。 図10cは、野生型F2と突然変異体R2E10、R3B1、及びR3H3のクローンについてのFACSによるオフ速度決定を示す。 実施例2のように、選択Fab抗体をE. coli発現ベクター、pCES1へサブクローニングすることによって、可溶性Fabのアフィニティーを決定した。 可溶性Fabを精製し、BIAcore(de Haard, H. et al.)によりアフィニティーを試験した。 選択されたFabのアフィニティーを表7に示す。
Kingfisher及びFACS選択の組合せを使用する、酵母表示Fabレパートリーの迅速選択 酵母表示レパートリーのアフィニティー選択を速めるために、そしてまた10 8を超えるより大きなレパートリーの選択を可能にする方法論を開発するために、第一ラウンドの選択としてのKingfisher(実施例4のような)とその後の選択ラウンドのためのFACS(実施例5のような)の両方の組合せを使用した。 実施例9において構築したLCレパートリーを一晩増殖させ、実施例2のように抗体発現を誘導した。 この酵母細胞集団をストレプトアビジンコート磁気粒子とともにインキュベートし、実施例4のようにKingfisherで選択した。 並行して、同じレパートリーを実施例5のようにFACSにより選択した。 Kingfisher及びFACSを使用するラウンド1選択キャンペーンからの酵母細胞のプールを一晩増殖させ、実施例5のように抗体発現を誘導した。 実施例2のように酵母細胞を標識し、第二ラウンドとしてFACSにより選択した。 ポリクローナルFACSを使用して、Fabを表示する酵母の選択プールの分析を実施した(実施例10を参照のこと)。 抗原結合細胞の比率は、第一ラウンドの選択としてKingfisherを使用するとき、FACSに優先してより速く増加することが見られる(図8d)。
Ig重鎖真核ディスプレイベクター:pTQ5−HCの構築 本発明の多重鎖真核ディスプレイベクターの代わりの態様(特に、多重鎖の鎖が別々のベクターにコードされ、それによりベクターセットの別個の成分を生じる、多重鎖真核ディスプレイベクター)の例証として、Ig重鎖断片を発現、輸送、及び表示するベクターで形質転換された宿主酵母細胞において有効な酵母ディスプレイベクターを適合ベクターセットの1つのベクターとして構築した。 実施例1に従って産生したベクター、pTQ3をさらに改変することによって、HC断片ディスプレイベクターを構築した。 ディスプレイベクター、TQ3をBseRIで消化し、それにより2つのタンデムGAL1プロモーターのそれぞれの中に位置する、ベクターの設計制限部位を確定した(実施例1、配列番号5、指定塩基990〜995を参照のこと)。 この多重鎖ディスプレイベクターのクローニング部位の1つにまたがる924bp断片(図3)を除去し、残る4,868bpベクター骨格を当該技術分野で知られている技術を使用してゲル精製した(特に、GFR PCRとゲルバンド精製キット(Gel Band Purification Kit)、アマーシャム−ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州、により)。 このベクター骨格を再連結し、E. coliへ形質転換した。 生じたベクター(「pTQ5」と命名)を、制限解析を使用して検証した。 抗ストレプトアビジンFab抗体、F2のHCを、pTQ3−F2から709bpのSfiI/NotI断片として制限消化し、精製し、SfiI/NotI消化したベクター、pTQ5へクローニングした。 生じたHCディスプレイベクターを「pTQ5−HC」と命名した(図9)。 このベクターに対する後の修飾は、可溶性Fab抗体の精製用の6×Hisタグを挿入し、終止コドン(TAA)をmycタグの末端、Pac1部位の前に再配置することによって行い、余分なアミノ酸を消失させた。 他の修飾には、位置指定突然変異誘発による、Trp選択マーカー内の内因性XbaI制限部位の除去が含まれた。 これを行なったのは、CJライブラリーセット(Dyax コーポレーション、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)由来のリード抗体のクローニング及び操作を促進するためである。
Ig重鎖真核ディスプレイベクターの真核宿主細胞発現:一倍体酵母細胞におけるHC発現 多重鎖真核ディスプレイベクターセットの独立したベクターの有用性を例証するために、Ig重鎖断片をコードする(ベクターセットの)酵母ディスプレイベクターを真核宿主細胞へ挿入し、形質転換した宿主細胞をIg Fabの重鎖成分の発現に適した条件下で増殖させた。 先に記載の形質転換手順に従って、酵母菌株、EBY100(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)を(実施例13の)ベクターpTQ5−HCで、そして別に対照としてpTQ5で形質転換した。 成功した形質転換体を、EBY100pTQ5−HC及びEBY100pTQ5とそれぞれ命名し、10mL SDCAA+Gにおいて30℃で一晩増殖させた。 翌日、培養物を遠心分離して、ペレットになった酵母細胞を10mL SDCAA+2%(w/v)ガラクトースに再懸濁してOD 600を1とした。 次いで、細胞培養物を20℃で24時間増殖させ、Aga2p−重鎖融合産物の発現を誘導した。 細胞を遠心分離して、1mL滅菌水で2回洗浄し、エッペンドルフ管へ移した。 細胞ペレットを200mLのSDS−PAGE試料緩衝液+DTTに再懸濁し、ガラスビーズ(425〜600ミクロン)をメニスカスの真下に加えた。 この細胞及びビーズの懸濁液を1分間、4回激しく撹拌し、激しく撹拌している間、懸濁液は氷上に保った。 上清を新鮮な管へ移し、100℃まで5分間加熱した。 タンパク質試料をSDS−PAGEゲルで分離し、ウェスタンブロットのためにニトロセルロース膜へ移した。 HRP結合抗c−Mycモノクローナル抗体(1μg/mL,ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、インディアナポリス、イリノイ州)を使用してAga2p−HC融合ポリペプチドの検出を実施した。 免疫検出は、増強化学発光(アマーシャム−ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)により実施した。 約45kDのAga2p−HC融合ポリペプチドを検出した。 (空き)対照ベクタークローン、EBY100pTQ5には、検出可能なAga2p−HC融合産物を検出しなかった(図10)。
Ig重鎖真核ディスプレイベクターの真核宿主細胞ディスプレイ:一倍体酵母細胞の表面でのHCディスプレイ 多重鎖真核ディスプレイベクターセット由来のベクターの、多重鎖ポリペプチドの固着鎖を一倍体真核細胞の表面に表示する能力を例証するために、Ig重鎖断片をコードする(ベクターセットの)酵母ディスプレイベクターを真核宿主細胞へ挿入し、形質転換した宿主細胞をIg Fabの重鎖成分の発現及びディスプレイに適した条件下で増殖させた。 EBY100pTQ5−HC(実施例14より)を増殖させ、抗体発現を上記のように誘導した。 HC発現は、20℃で振り混ぜながら、48時間の増殖により誘導した。 酵母試料を遠心分離し、BSA 1mg/mLを含有するPBSにおいて細胞ペレットを再懸濁した。 2つの試料を再び遠心分離し、細胞ペレットをいずれも100μLの抗ヒトC H 1(25μg/mL;Zymed,サンフランシスコ、カリフォルニア州)において別々に再懸濁してから、室温で1時間のインキュベーションを続けた。 この細胞をペレットにし、0.5mLのPBS/1%(w/v)BSAで1回洗浄した。 次いで、細胞試料をウサギ抗マウスFITC(1:50希釈;Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)とともに暗所で1時間インキュベートした。 抗原結合を検出するために、PBS/1%(w/v)BSA中のストレプトアビジン−FITC(1:25希釈;Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)で細胞を標識し、暗所において室温で一晩インキュベートした。 すべての試料を遠心分離し、細胞ペレットを0.5mL PBSで1回洗浄してから、500mLのPBSに再懸濁した。 細胞表面に結合したFab−抗原結合の存在をフローサイトメトリーにより検出した。 誘導前の細胞は、重鎖や機能的なストレプトアビジン結合のディスプレイを示さなかった。 HC発現の誘導後は、酵母細胞が重鎖だけを表示していることを検出し得たが、機能的なストレプトアビジン結合は予測されるほど検出されなかった(図11)。
Ig軽鎖真核ディスプレイベクター:pTQ6−LCの構築 上記に記載の重鎖酵母ディスプレイベクターと一緒に使用されるときに、多重鎖真核ディスプレイベクターセットを提供する、軽鎖酵母ディスプレイベクターを構築した(上記、実施例13を参照のこと)。 HAエピトープタグ及びAga2pシグナル配列へ融合した抗ストレプトアビジンLCを含有する断片を増幅することによって、LC酵母発現ベクターを構築した。 GFX PCRとゲルバンド精製キット(アマーシャム−ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を使用して、増幅産物をゲル精製し、HindIIIとPmeIで消化した。 この783bpのLC断片を、HindIII/PmeI消化pYC6/CTベクター(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)の4,323bpベクター骨格と一緒に1.2% TAE−アガロースゲルで精製した。 このLC断片とpYC6/CTベクターを一緒に連結し、このライゲーション混合物をE. coli菌株、TG1へ形質転換した。 生じたLC発現ベクターを「pTQ6−LC」と命名した(図12)。
Ig軽鎖真核ディスプレイベクターの真核宿主細胞発現:一倍体酵母細胞における可溶性LC発現 多重鎖真核ディスプレイベクターセットの独立したベクターの有用性を例証するために、Ig軽鎖断片をコードする(ベクターセットの)酵母ディスプレイベクターを真核宿主細胞へ挿入し、形質転換した宿主細胞をIg Fabの可溶性軽鎖成分の発現に適した条件下で増殖させた。 先に記載の形質転換手順に従って、P. Slonimski より入手した酵母菌株、W303−1B(a/alpha ura3−1/ura3−1 leu2−3,112/leu2−3,112 trp1−1/trp1−1 his3−11,15/his3−11,15 ade2−1/ade2−1 can1−100/can1−100)を(実施例16の)pTQ−LCで、そして別に対照としてpYC6/CTで形質転換した。 成功した形質転換体を、W303pTQ6−LC及びW303pYC6/CTとそれぞれ命名し、10mL SD−G+300μg/mL ブラスチシジン(登録商標)(SD−G+Bls)において30℃で一晩培養した。 翌日、培養物を遠心分離して、ペレットになった酵母細胞を10mL SD+Bls+2%(w/v)ガラクトースに再懸濁してOD 600を0.4とした。 次いで、細胞培養物を20℃で24時間増殖させ、可溶性軽鎖ポリペプチドの発現を誘導した。 細胞を遠心分離し、遠心分離フィルターユニット(CENTRICON YM−10;ミリポア、ベッドフォード、マサチューセッツ州)を使用して10倍濃縮した。 細胞ペレットを洗浄し、破壊(breaking)緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、pH7.4,1mM EDTA,5%(w/v)グリセロール+プロテアーゼ阻害剤カクテル;ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、インディアナポリス、イリノイ州)に再懸濁してOD 600を50とし、ガラスビーズ(425〜600ミクロン)をメニスカスの真下に加えた。 この細胞及びビーズの懸濁液を1分間、4回激しく撹拌し、激しく撹拌している間、懸濁液は氷上に保った。 上清を新鮮な管へ移し、SDS−PAGE試料緩衝液+DTTにおいて、アリコートを100℃まで5分間加熱した。 タンパク質試料をSDS−PAGEゲルで分離し、ウェスタンブロットのためにニトロセルロース膜へ移した。 HRP(1/1000)結合ウサギ抗マウスと組み合わせて抗HAモノクローナル抗体(1μg/mL)を使用してLCポリペプチドの検出を実施した。 免疫検出は、増強化学発光(アマーシャム−ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)により実施した。 培養上清に30kDと60kDのポリペプチド産物を検出した。 空きベクター対照のW303pYC6/CTには、検出可能なLC産物を検出し得なかった(図13)。
多重鎖ポリペプチドの真核宿主細胞での表面ディスプレイ:一倍体宿主細胞対の細胞融合の産物 適合多重鎖真核ディスプレイベクターセットからの異なるベクターをそれぞれ保有する、2つの一倍体真核細胞の細胞融合を介して、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドを二倍体真核細胞の表面に表示する新規な方法の作動可能性を例証するために、可溶性Ig軽鎖断片を発現するベクターを含有する一倍体酵母細胞を、Ig重鎖−アンカー融合ポリペプチドを発現して表示するベクターを含有する一倍体酵母細胞へ接合して、機能的なFabポリペプチドを宿主細胞の表面に表示する二倍体酵母細胞を産生した。 酵母クローン、W303pTQ6−LC(実施例17より)及びEBY100pTQ5−HC(実施例14より)を、ブラストサイジン(登録商標)(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州;300μg/mL;SD+G+Blsアガープレート)又はトリプトファンドロップアウト培地(SD−Trp+Gアガープレート)のいずれかを補充したアガープレートで増殖させた。 次いで、これらのプレートを、トリプトファンドロップアウト+300μg/mL ブラスチシジン(登録商標)(SD−Trp+G+Bls)の合成規定培地を含有する二重選択プレート上で複製プレート培養した。 生じた細胞層の二倍体酵母細胞を画線培養して単一コロニーとした。 7つのTrp+/Bls Rコロニーを選択し、96穴プレートにおいて100mL SD+G−Trp+Bls中に30℃で振り混ぜながら一晩増殖させた。 翌日、培養物を遠心分離して、ペレットになった酵母細胞を10mL SD−Trp+Bls+2%(w/v)ガラクトースか又は10mL YP培地+Bls+2%(w/v)ガラクトースのいずれかにおいて20℃で24時間再懸濁した。 細胞をPBS中で洗浄し、3つの96穴プレートに等しく分けた。 第一プレートの細胞は100μL ストレプトアビジン−HRP(0.87μg/mL)に再懸濁し、第二プレートの細胞は100μL 抗c−Myc−HRP(1μg/mL)に再懸濁し、第三プレートの細胞は100μL 抗HA(1μg/mL)に再懸濁して、ウサギ抗マウスHRP(1/1000)でさらに標識した。 酵母全細胞ELISAを(実施例7のように)実施し、FACSを(実施例15のように)実施して抗原結合とHCディスプレイを検出した。 試験したすべての二倍体細胞がストレプトアビジンへ結合し、全細胞ELISA(図14)とFACS(図15A〜C)において軽鎖を表示した。 特に、コンビナトリアルに組み立てられたFab抗体(二倍体LC/HC)をその表面に表示する二倍体酵母細胞上でストレプトアビジン結合活性を検出したが、これに対し、LCのみ(W303pTQ6−LC)又はHCのみ(EBY100pTQ5−HC)のいずれかを発現する一倍体の親細胞は、結合活性を示さなかった。 Fab抗体を表示する標準の一倍体酵母細胞(EBY100pTQ3−F2)は、ストレプトアビジン結合活性を示した。 また、(予測されるように)LCのみを発現する一倍体親酵母細胞(W303pTQ6−LC)がHCディスプレイを示さなかったのに対し、Fab抗体を表示する標準の一倍体酵母細胞(EBY100pTQ3−F2)は、HCディスプレイを示した。 5つの酵母クローンを選択して10mL SD+G−Trp+Blsにおいて振り混ぜながら30℃で一晩培養した。 翌日、細胞培養物を遠心分離して、ペレットになった酵母細胞を10mL SD−Trp+Bls+2%(w/v)ガラクトースに0.4のOD 600まで24時間再懸濁してベクター発現を誘導した。 代わりのプロトコールは、10mL YP培地+ブラストサイジン(登録商標)+2%(w/v)ガラクトースにおける再懸濁を含む。 24時間の誘導インキュベーションの後で、5つの二倍体酵母培養物のそれぞれから1つのアリコートをペレットにし、洗浄し、破壊緩衝液に再懸濁してOD 600を50とした。 ガラスビーズ(425〜600ミクロン)をメニスカスの真下に加え、この細胞−ビーズ懸濁液を1分間、4回激しく撹拌し、激しく撹拌している間、懸濁液は氷上に保った。 上清を新鮮な管へ移し、SDS−PAGE試料緩衝液+DTTにおいて、アリコートを100℃まで5分間加熱した。 タンパク質試料をSDS−PAGEゲルで分離し、ウェスタンブロットのためにニトロセルロース膜へ移した。 抗HA抗体(1μg/mL)をHRP結合ウサギ抗マウスと組み合わせて1つの膜に対して使用して、軽鎖ポリペプチドの検出を実施した。 重鎖−Aga2p融合ポリペプチドの検出は、HRPへ直接結合した抗c−Myc抗体(1μg/mL,ロッシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、インディアナポリス、イリノイ州)を使用して実施した。 免疫検出は、増強化学発光(アマーシャム−ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)により実施した。 二倍体酵母溶解液において、約30kDのLC産物と約45kDのHC−Aga2p融合産物をいずれも検出した(図16及び17)を検出した。 2つの空きベクター、pTQ5及びpYC6/CTを収容する対照二倍体クローンには、検出可能なLCもHC−Aga2p融合産物も検出されなかった。 また、24時間の誘導インキュベーションの後で、5つの二倍体酵母培養物のそれぞれからの第二アリコートをフローサイトメトリーにより分析した。 検出剤につき5×10 6の細胞をPBSで1サイクル洗浄し、この細胞を、重鎖検出には抗c−Myc(25μg/mL)を含有する100μL PBSに、抗原結合の検出には抗ストレプトアビジン−FITC(1:40)を含有する100μL PBSに、そして軽鎖検出には抗HA(25μg/mL)を含有する100μL PBSに再懸濁した。 細胞を暗所で1時間インキュベートしてから、PBSで再び1サイクル洗浄した。 洗浄後、ウサギ抗マウス−FITC(1:40)を含有する100μL PBSに再懸濁し、再び暗所で1時間インキュベートした。 第二のインキュベーション工程の間に1工程標識化のために細胞を抗ストレプトアビジン−FITCで処理した。 インキュベーション後、細胞をさらに1サイクルの間洗浄し、500μL PBSに再懸濁し、フローサイトメトリーにより分析した。 5つの試料は、すべて抗原へ結合し、HC並びにLCを表示することを示した(図15A〜C)。 24時間の(誘導)インキュベーションの後で、5つの二倍体酵母培養物からの第三アリコートも免疫蛍光法のために標識した。 ストレプトアビジン−FITC(30μg/mL,Dako)又はウサギ抗ヒトλ鎖(1:40;Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)及びモノクローナル抗C H 1(25μg/mL,Zymed,サンフランシスコ、アメリカ)の混合物のいずれかの100μLに10 8個の細胞を再懸濁した。 第一の試料は、ウサギ抗FITC(1:40;Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)とともにさらにインキュベートし、最後はFITC結合ブタ抗ウサギ(1:20;Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)とともにインキュベートした。 第二の試料は、軽鎖についてはFITC結合ブタ抗ウサギ(1:20;Dako,カーピンテリア、カリフォルニア州)で、そして重鎖についてはイソチオシアン酸テトラメチルローダミン結合ウサギ抗マウス(TRITC,1:30,シグマ、セントルイス、ミズーリ州)で二重標識した(図18A〜C)。 この二倍体は、軽鎖及び重鎖を細胞表面に表示し、予測されるように、ストレプトアビジンへ結合することが示された。 HCのみを発現する一倍体の親は、重鎖のTRITC標識でのみ染色された。 一倍体の親のLCはどの場合も陰性であった。
一倍体宿主酵母細胞対の接合効率 適合多重鎖真核ディスプレイベクターセットからの異なるベクターをそれぞれ保有する、2つの一倍体酵母細胞の細胞融合の効率を例証するために、生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドをその表面に表示する二倍体酵母細胞を産生するための生きた(viable)プロセスとして、本発明に記載の宿主酵母細胞対について接合効率を決定した。 接合反応の効率の定量決定を以下のように評価した。 それぞれの一倍体親、EBY100pTQ5(実施例14より)及びW303pYC6/CT(実施例17より)を、それぞれの適切な選択培地、SD+G+Trp及びSD+G+Blsにおいて30℃で一晩増殖させた。 2つの新鮮な一倍体培養物からの3×10 7個の細胞を混合し、45mmのニトロセルロースフィルター(微小充填装置、ミリポア、ベッドフォード、マサチューセッツ州)で採取した。 このフィルターを非選択濃縮培地プレート(YPD)上において30℃で4時間インキュベートした。 次いで、細胞をYPD培地に再懸濁し、2つの親の選択培地と二重選択培地(二倍体の増殖のみを可能にする)SD+G−Trp+Blsで力価検定した。 それぞれの一倍体親を同じやり方で別々に処理して、二重選択培地上で希釈せずにそれらをプレート培養することによって自然復帰若しくは耐性を評価した。 一倍体親EBY100pTQ5の接合効率を以下のように算出した:(SD+G−Trp+Blsで増殖する二倍体の数−SD+G−Trp+Blsで増殖する自然耐性のEBY100pTQ5の数)を(SD+G−Trpでの増殖を示す、接合反応からの細胞の全数)で割る。 一倍体親W303(pYC6)の接合効率を以下のように算出した:(SD+G+Trp+Blsで増殖する二倍体の数−SD+G−Trp+Blsで増殖する一倍体細胞のW303pYC6/CTの数)を(SD+G+Blsで増殖する細胞の全数)で割る。 それぞれの接合型の3×10 7個の一倍体細胞は、pTQ5及びpYC6酵母発現ベクターの両方を含有する1.5×10 7個の二倍体細胞を産生した。 接合効率の結果は、pTQプラスミドを含有する一倍体親の51%が二倍体を生じること、そしてpYCプラスミドを含有する一倍体親の64%が二倍体を生じることを明らかにした。
コンビナトリアルに組み立てられたFab抗体を表示する二倍体酵母細胞の選択濃縮:フローサイトメトリーによる検出 過剰の非関連酵母細胞に対して抗原特異的Fab抗体を表示する酵母細胞を選択する能力を確かめるために、蛍光標示式細胞分取法(FACS)を使用した。 ストレプトアビジンに特異的なコンビナトリアルに組み立てられたFab抗体を表示する陽性の二倍体酵母細胞を使用した。 この二倍体酵母細胞は、Trp + /Leu − /Bls Rの表現型マーカーを担い、トリプトファン(−)のブラストサイジン(登録商標)含有選択アガープレートで増殖することができた。 この二倍体をBls R二倍体と命名した。 Trp + /Leu +の表現型マーカーを担う非関連酵母二倍体細胞を使用し、これはロイシン(−)のトリプトファン含有選択アガープレートで増殖することができた。 この二倍体をLeu +二倍体と命名した。 陽性(Bls R )と無関連(Leu + )二倍体酵母細胞の両方を、それぞれ−Trp/+Leu/+Bls培地と−Trp/−Leu培地の選択条件下でSD+2%(w/v)グルコースの培地において一晩増殖させた。 ガラクトースを2%(w/v)で含有するYP培地において酵母培養物を誘導した。 この酵母培養物のOD 600を決定し、1のOD 600が4×10 6細胞/mLに等しいとする変換率を使用した後で、陽性細胞の無関連酵母細胞に対する混合物を1:10000の近似率で調製した。 FACSによる選択のためにこの酵母細胞混合物を500nMストレプトアビジンPEで標識し、実施例8のように選択した。 Kingfisherでは、実施例4のように酵母細胞混合物をストレプトアビジンコートビーズとともにインキュベートして、選択した。 MACSによる選択では、誘導した二倍体を、6mL PBS+2mM EDTA中で500μLストレプトアビジン・マイクロビーズ(Miltenyi Biotec,ケルン、ドイツ)とともに室温で1時間インキュベートした。 この細胞/ビーズ混合物を磁石の存在下に洗浄済みLCカラム(Miltenyi Biotec,ケルン、ドイツ)上にロードし、このカラムをPBS+2mM EDTAで再び2回洗浄した。 磁石を外した後で、カラムに保持された細胞を6mL PBS緩衝液で溶出させた。 酵母細胞を回収し、Bls R表現型又はLeu +表現型のいずれか一方の選択アガープレートで力価検定をした。 選択の前後でのBls R /Leu +コロニーの比率を使用して、濃縮率と陽性酵母細胞の回収率を算出した。
ストレプトアビジンに特異的な抗体の上記例では、KingfisherのほうがMACSよりも高い濃縮率を与えるように見えた。 しかしながら、陽性酵母細胞の回収率は有意に低かった。 FACSを使用すると、抗ストレプトアビジンFab抗体についての1ラウンドの選択から、1次数の大きさの濃縮率を観察した。
一倍体宿主細胞対の細胞融合によるLC及びHC組換えとアフィニティー選択:フローサイトメトリーによる検出 適合多重鎖真核ディスプレイベクターセットからの異なるベクターをそれぞれ保有する、2つの一倍体真核細胞の融合の有用性を例証するために、複数の可溶性Ig軽鎖断片変異体を発現するベクターを含有する一倍体酵母細胞集団(即ち、LC変異体のライブラリー)を、複数のIg重鎖−アンカー融合ポリペプチド変異体を発現して表示するベクターを含有する、反対の接合型の一倍体酵母細胞集団(即ち、HC変異体のライブラリー)へ接合して、複数の機能的なFabポリペプチドを宿主細胞の表面に表示する新規な二倍体酵母細胞集団(即ち、新規Fabライブラリー)を産生する。 標的分子に対してFabレパートリーより予め選択したFabファージディスプレイ単離物を使用して、(実施例6に例証されるように)ファージディスプレイ単離物の遺伝情報を多重鎖酵母ディスプレイベクターセットへバッチ移行するための重鎖及び軽鎖成分の供給源を提供し、(実施例14及び17に記載のような)多重鎖酵母ディスプレイベクターセットを使用して、(実施例18に例証されるように)適合多重鎖真核ディスプレイベクターセットからの異なるベクターをそれぞれ保有する、2つの一倍体真核細胞の宿主細胞融合を介した軽鎖及び重鎖単離物の新規な組換えを提供する。 ファージディスプレイ抗体ライブラリー(de Haard, H. et al., 1999)を、当業者に馴染みのプロトコールを使用して、ストレプトアビジンコート磁気粒子上での1ラウンドの選択にかけた。 このレパートリーを酵母ディスプレイ系への移行の出発レパートリーとして使用した。 このライブラリーのインプットは5×10 12ファージ粒子であり、1ラウンドの選択後のアウトプットは3.75×10 5ファージ粒子であった。 ラウンド1選択ファージディスプレイライブラリーよりHC断片をSfiI/NotI断片として単離し、Ig重鎖酵母ディスプレイベクターのpTQ5中へクローニングし、これをSfiI及びNotIで消化した(実施例13)。 このライゲーション混合物をE. coliへ形質転換して1×10 8のライブラリーを得た。 次いで、このライブラリーを酵母菌株のEBY100へ形質転換して4×10 7のライブラリーを得て、これをEBY100−pTQ5−HC repと命名した。 ラウンド1選択ファージディスプレイライブラリーよりLC断片をApaL1/AscI断片として単離し、ApaL1及びAscIで消化した、Ig軽鎖酵母ディスプレイベクターのpTQ6(実施例16)へクローニングした。 このライゲーション混合物をE. coliへ形質転換して1×10 8のライブラリーを得た。 次いで、このライブラリーを酵母菌株のBJ5457へ形質転換して8×10 7のライブラリーを得て、BJ5457−pTQ6−LC repと命名した。 酵母中のHC及びLCレパートリーは、いずれもファージ中の3.75×10 5の出発レパートリーをカバーするのに十分な多様性を含有した。 個別クローンのDNAフィンガープリント解析は多様な制限様式を示し、別々のLC及びHCライブラリー中に異なる生殖系列セグメントが表れていることを示唆した。 第一の接合方式では、LCレパートリー(BJ5457−pTQ6−LC rep )の7.25×10 8個の細胞を、ストレプトアビジンに特異的な単一HCを含有してクローンF2より派生したEBY100−pTQ5−F2HCの3.4×10 8個の細胞と接合した。 この接合条件は、LC及びHC発現プラスミドの両方を維持する選択圧力(トリプトファン栄養要求性、及びブラストサイジン耐性)下にあった。 55%の接合効率で1.9×10 8個の二倍体ライブラリーを得た。 このライブラリー由来の個別クローンの酵母全細胞ELISAによる分析は、100%のクローンがHCを表示して、100%のクローンがLCを表示することを示した。 第二の接合方式では、HCレパートリー(EBY100−pTQ5−HC rep )の3.6×10 8個の細胞を、ストレプトアビジンに特異的な単一LCを含有してクローンF2より派生したBJ5457−pTQ6−F2LCの3×10 8個の細胞と接合した。 この接合条件は、LC及びHC発現プラスミドの両方を維持する選択圧力(トリプトファン栄養要求性、及びブラストサイジン耐性)下にあった。 27%の接合効率で8×10 7個の二倍体ライブラリーを得た。 このライブラリー由来の個別クローンの酵母全細胞ELISAによる分析は、89%のクローンがHCを表示して、これらクローンのすべてがLCを表示することを示した。 第三の接合方式では、HCレパートリー(EBY100−pTQ5−HC rep )の2.0×10 10個の細胞を、LCレパートリー(BJ5457−pTQ6−LC rep )の5.6×10 9個の細胞と接合した。 この接合条件は、LC及びHC発現プラスミドの両方を維持する選択圧力(トリプトファン栄養要求性、及びブラストサイジン(登録商標)耐性)下にあった。 68%の接合効率で4×10 9個の二倍体ライブラリーを得た。 このライブラリー由来の個別クローンの酵母全細胞ELISAによる分析は、94%のクローンがHCを表示して、53%のクローンがLCを表示することを示した。 この一連の接合実験は、LC及びHCの個別レパートリーの接合を使用して大きなライブラリーを作製することができることを示す。 これらのレパートリーは多様なV遺伝子生殖系列セグメントを含み、酵母細胞表面に発現されて表示され得る。 Kingfisherを使用して、これらのレパートリーを抗原ストレプトアビジンとともに選択した(実施例7を参照のこと)。 2ラウンドの選択の後で、編集したクローンの97%が酵母全細胞ELISAにおいて抗原結合活性を示した(実施例7を参照のこと)。
誤りがちのPCRにより多様化されるLC及びHCレパートリーの構築 一倍体酵母細胞の2つのレパートリーの融合を例証するために、適合多重鎖ベクターセット由来の異なるベクターを保有するそれぞれのレパートリーをアフィニティー成熟化に使用する場合があり、pTQ5(実施例13)における誤りがちのPCR(実施例9)により多様化したHCレパートリーと、pTQ6(実施例16)における誤りがちのPCR(実施例9)により多様化した別のLCレパートリーを、反対の接合型の酵母一倍体細胞において構築した。 HCレパートリーは、抗ストレプトアビジンF2抗体を誤りがちの条件(実施例9)の下で増幅することによって構築した。 この増幅した断片をSfiIとNotIで消化し、精製し、すでにSfiIとNotIで消化しておいたHCのみの発現ベクター、pTQ5(実施例13)へクローニングした。 生じたライゲーション混合物をE. coliへ形質転換して7×10 7のライブラリーを得た。 このライブラリーで酵母菌株のEBY100を形質転換して9×10 6のライブラリーを得て、EBY100pTQ5−HC *と命名した。 LCレパートリーは、抗ストレプトアビジンF2抗体のLCを誤りがちの条件(実施例9)の下で増幅することによって構築した。 この増幅した断片をApaL1とAscIで消化し、やはりすでにApaL1とAscIで消化しておいたLCのみの発現ベクター(実施例16)へクローニングした。 生じたライゲーション混合物をE. coliへ形質転換して4×10 7のライブラリーを得て、これを引き続き酵母菌株のBJ5457へ移行させて1.8×10 7のライブラリー(BJ5457pTQ6−LC *と命名した)を得た。 生じたヌクレオチドレベルでの突然変異頻度は、HCレパートリーで0.8%、LCレパートリーで1.5%であった。 これらの頻度は、アミノ酸レベルでそれぞれ1.3%及び3%の突然変異頻度に相当する。 この一倍体細胞レパートリー、EBY100pTQ5−HC *とBJ5457pTQ6−LC *を、それぞれの独立クローンの少なくとも10コピーが代表されるように、それぞれ10μLと30μLのグリセロールストックに接種し、選択培地(実施例18)において一晩増殖させた。 BJ5457pTQ6−LC *に対応する約1.6×10 6の一倍体細胞とEBY100pTQ5−HC *に対応する3×10 10の一倍体細胞を接合させ(実施例19)、選択培地で増殖させたときに、5×10 9の二倍体レパートリーを得た(EBY100pTQ5−HC * /BJ5457pTQ6−LC *と命名した)。 10個のクローンを摘出し、酵母コロニーPCR(実施例11)によりLC及びHC含有ベクターの存在を試験したところ、いずれも予測されるLC及びHC産物を生じた。 HC産物を表示して抗原ストレプトアビジンへの結合も示す、二倍体レパートリー、EBY100pTQ5−HC * /BJ5457pTQ6−LC *の分画を決定するために、酵母全細胞ELISAを実施した(実施例7)。 試験した二倍体の68%(15/22)がHCを表示し、試験した二倍体クローンの18%(4/22)がストレプトアビジンへの結合を示した。 この手順の汎用性を強調するために、野生型HC又は野生型LCのいずれか一方が定常に保たれ、対応する反対の鎖のみが変化する、類似の序列的な(hierarchical)接合実験を実施した。 抗ストレプトアビジンF2 Fabをモデル抗体として使用して、EBY100−pTQ5−F2HCとBJ5457pTQ6−LC *の接合から二倍体レパートリーを作製した。 この二倍体レパートリーは、定常HCと可変LCを有する。 この接合は、酵母全細胞ELISAにより、二倍体の100%がHCを表示し、30%が抗原結合を示すことをもたらした。 同様に、BJ5457pTQ6−F2LCをEBY100pTQ5−HC *と接合させることによって二倍体レパートリーを作製した。 この二倍体レパートリーは、定常LCと可変HCを有する。 この接合は、酵母全細胞ELISAにより、二倍体の70%がHCを表示し、45%が抗原結合活性を示すことをもたらした。
コンビナトリアルに組み立てられたFabレパートリーのアフィニティー選択 誤りがちのPCRにより多様化される複数のコンビナトリアトルに組み立てられたFab抗体を表示する酵母細胞のレパートリーをアフィニティー選択することができることを例証するために、Kingfisherによる選択とアフィニティーによるフローサイトメトリー分取法の組合せを使用して最適アフィニティークローンを回収した。 二倍体レパートリー、EBY100pTQ5−HC * /BJ5457pTQ6−LC * (実施例22)の一晩培養物を調製した(実施例18)。 この培養物を実施例18のように誘導し、全部で10 10個の細胞を1ラウンドのKingfisher選択にかけた(実施例7)。 抗原結合性の酵母二倍体細胞を編集し、FACSアフィニティーによる選択にかけた(実施例20を参照のこと)。 抗原結合クローンの比率は、酵母全細胞ELISA(実施例7)により決定されるように、選択の間に増加した。 抗原結合クローンの比率も増加し、FACSにより決定されるように、抗原平均蛍光強度も選択の間に増加した(表9)。
この選択キャンペーンの進捗はポリクローナルFACS分析を使用してモニターしたが、ここでは各ラウンドの選択からの選択レパートリーの一晩培養物を調製して、抗体発現を実施例18のように誘導した。 酵母細胞を実施例20のように標識し、LCディスプレイ(FITC標識)と抗原結合(PE標識)の両方についてFACSにより分析した。 選択したクローンを配列決定し、可変LCと可変HCにおける突然変異を表10に示す。 オフ速度スクリーニングアッセイ(実施例10)又は非線形最小二乗解析のいずれかによるFACSを使用して、選択したFabのアフィニティーを決定した(データ示さず)。
LC及びHCの選択プールの再シャッフリング 本手順の汎用性と反復サイクルの選択及び再シャッフリングを行うことが可能であることを例証するために、コンビナトリアルEBY100pTQ5−HC * /BJ5457pTQ6−LC *レパートリーの第三選択ラウンド(実施例23)のアウトプットからの選択LC及びHCのプールを再シャッフルした。 溶解酵素処理(実施例11)を使用してプラスミドDNAを調製し、選択されたLC及びHCを含有するpTQ5−HC *sel及びpTQ6−LC *sel発現プラスミドの両方を含有するDNA抽出物を新鮮なEBY100及びBJ5457細胞へそれぞれ直に形質転換した。 この形質転換混合物を、BJ5457−pTQ6−LC *selコロニーのみが増殖することができる選択プレート(ブラストサイジンを含有する選択アガープレート)又はEBY100pTQ5−HC *selのみが増殖することができる選択プレート(トリプトファン(−)の選択アガープレート)で増殖させた。 BJ5457pTQ6−LC *sel形質転換により250個のコロニーを得て、EBY100pTQ5−HC *sel形質転換により25個のコロニーを得た。 これら2つのミニレパートリーを採取し、実施例18のように一晩増殖させて接合させた。 この接合反応により、6250の異なるLC/HC組合せの理論上のコンビナトリアルな多様性をカバーする、EBY100pTQ5−HC *sel /BJ5457pTQ6−LC *selの二倍体レパートリーを得た。 この二倍体培養物においてFab抗体発現を誘導し、AutoMACSを使用して選択した。 これは第四ラウンドの選択を表した。 この第四の選択ラウンド由来の二倍体培養物を編集した。 抗体発現を誘導し、その後でストレプトアビジンPEを0.5nMで標識し、FACSを使用して選択した(実施例20)。
ネーティブHCレパートリー酵母ディスプレイベクターと一倍体宿主細胞の構築 多重鎖真核ベクターセットの1つの成分として有用な新規の重鎖真核ディスプレイベクターを産生するために、HCのネーティブレパートリーをベクターのpTQ5へクローニングする(実施例13)。 V遺伝子の末梢血リンパ球供給源より抗体HC断片を単離し、当該技術分野で知られている抗体PCR法により単離する。 当該技術分野で知られている技術に従ってファージディスプレイベクターにおいてHCライブラリーを捕捉してから、SfiI/NotI断片としてpTQ5へ移行し、E. coliへ形質転換し、約1×10 8のライブラリーを産生する。 次いで、このライブラリーで酵母菌株のEBY100へ形質転換し、約1×10 7のライブラリー、EBY100pTQ5−HC *repを産生する。
ネーティブLCレパートリー酵母ディスプレイベクターと一倍体宿主細胞の構築 多重鎖真核ベクターセットの1つの成分として有用な新規の軽鎖真核ディスプレイベクターを産生するために、LCのネーティブレパートリーをベクターのpTQ6へクローニングする(実施例16)。 V遺伝子の末梢血リンパ球供給源より抗体LC断片を単離し、当該技術分野で知られている抗体PCR法により単離する。 当該技術分野で知られている技術に従ってファージディスプレイベクターにおいてLCライブラリーを捕捉してから、ApaLI/AscI断片としてpTQ6へ移行し、E. coliへ形質転換し、約1×10 8のライブラリーを産生する。 次いで、このライブラリーで酵母菌株のW303へ形質転換し、約1×10 7のライブラリー、W303pTQ5−LC *repを産生する。
一倍体宿主細胞対の細胞融合と後続のアフィニティー選択を介したLC/HC組換えライブラリー:フローサイトメトリーによる検出 新規のFab(二倍体)酵母ディスプレイライブラリーを産生するために、2つの(一倍体)宿主細胞集団(軽鎖断片のレパートリーを含有する第一の集団と重鎖断片のレパートリーを含有する第二の集団)を、細胞融合を可能にするのに十分な条件下で共存培養し、生じた二倍体集団を組換えFab(LC/HC)ライブラリーの発現及びディスプレイを可能にするのに十分な条件下で増殖させた。 実施例18に概説した手順に従って、約10 10のEBY100pTQ5−HC *rep酵母細胞(実施例26より)を約10 10のW303pTQ6−LC *rep酵母細胞(実施例22より)と接合させる。 10%の接合効率により、約10 9の二倍体レパートリーが生じる(従って、一倍体の親に個別成分のLC及びHCレパートリーの出発多様性があれば、可能な最大10 14通りのコンビナトリアルLC/HC多様性のうち約10 9のLC/HC組合せを捕捉する)。 この二倍体レパートリーを培養し、LC及びHCの発現を誘導する(実施例15を参照のこと)。 この二倍体培養物をストレプトアビジン−FITCとともにインキュベートし、フローサイトメトリー分取法(実施例8を参照のこと)を使用してアフィニティー選択する。 フローサイトメトリー(実施例9を参照のこと)を使用するオフ速度決定と、さらに、可溶性Fab抗体を使用する当該技術分野で知られた表面プラスモン共鳴技術により、アフィニティー変異体をスクリーニングする。
二倍体胞子形成を介した、多重鎖ディスプレイ宿主細胞対ライブラリー:LC及びHC一倍体酵母細胞レパートリーの産生 1つの細胞集団がアンカータンパク質へ連結する生物学的に活性な多重鎖ポリペプチドの1本の鎖の複数の変異体を発現し;第二の細胞が多重鎖ポリペプチドの可溶性第二鎖の複数のポリペプチドを発現する、新規な宿主細胞対ライブラリーの1例として、実施例23に記載のようなストレプトアビジン選択スクリーニングより生じる二倍体Fab表示酵母単離物を、窒素飢餓の条件(Guthrie and Fink, 1991 に記載のような)下でこの単離物を培養することによって、胞子形成するように誘導する。 胞子形成した二倍体を採取し、ザイモレース(zymolase)で処理し、音波処理し、濃縮プレート上でプレート培養する。 一倍体コロニーを2つのサブ試料へ分離する;第一のサブ試料は、LC発現ベクターの損失を促進するが、HCディスプレイベクターを選択する条件下で増殖させ、第二のサブ試料は、HCディスプレイベクターの損失を促進するが、LC発現ベクターを選択する条件下で増殖させる(非選択条件下での2μ派生プラスミドでは、プラスミド損失は世代につき2〜6%である)。 数世代の後で、それぞれの酵母継代培養物から非選択鎖発現ベクターを有効に排除し、選択された(LC又はHC)発現ベクターのみを含有し、それにより2つの偏性(即ち、予選択)単鎖発現一倍体酵母細胞を産生し、「HAPLOIDpTQ6−LC *sel 」及び「HAPLOIDpTQ5−HC *sel 」と命名した。 予選択Fabの軽鎖又は予選択Fabの重鎖のいずれかをそれぞれ含有する、これら2つの一倍体酵母集団より、3つの接合方式を以下のように確立する: 第一の接合方式では、10 9の酵母HAPLOIDpTQ6−LC *selを10 9の酵母EBY100pTQ5−HC *rep (実施例21より)と戻し接合し、LC及びHC酵母発現プラスミドの両方を維持する選択条件下で増殖させる。 10パーセントの接合効率により約10 8の二倍体を生じる。 この二倍体レパートリーを培養し、LC及びHCの発現を誘導する(実施例18)。 生じる二倍体培養物は、予選択LCレパートリーに対して元のHCレパートリーのユニークな組合せを含有する偏性レパートリーを表し、これはさらに、例えば、フローサイトメトリー分取法(実施例8及び11)及び/又は、可溶性Fab抗体を使用する、当該技術分野で知られている表面プラスモン共鳴技術によりスクリーニングすることができる。 第二の接合方式では、10 9の酵母HAPLOIDpTQ6−HC *selを10 9の酵母W303pTQ6−LC *rep (実施例22)と戻し接合し、LC及びHC酵母発現プラスミドの両方を維持する選択条件下で増殖させる。 10パーセントの接合効率により約10 8の二倍体を生じる。 この二倍体レパートリーを培養し、LC及びHCの発現を誘導する(実施例18)。 生じる二倍体培養物は、予選択HCレパートリーに対して元のLCレパートリーのユニークな組合せを含有する偏性レパートリーを表し、これはさらに、例えば、フローサイトメトリー分取法(実施例8及び11)及び/又は、可溶性Fab抗体を使用する、当該技術分野で知られている表面プラスモン共鳴技術によりスクリーニングすることができる。 最後に、第三の接合方式では、10 9の酵母HAPLOIDpTQ6−LC *selを10 9の酵母HAPLOIDpTQ6−HC *selと接合し、LC及びHC酵母発現プラスミドの両方を維持する選択条件下で増殖させる。 10パーセントの接合効率により約10 8の二倍体を生じる。 この二倍体レパートリーを培養し、LC及びHCの発現を誘導する(実施例18を参照のこと)。 生じる二倍体培養物は、予選択HCレパートリーに対して予選択LCレパートリーのユニークな組合せを含有する偏性の組換えレパートリーを表し、これはさらに、例えば、フローサイトメトリー分取法(実施例8及び11)及び/又は、可溶性Fab抗体を使用する、当該技術分野で知られている表面プラスモン共鳴技術によりスクリーニングすることができる。
Fab抗体の制限ベース多様化によるアフィニティー成熟化 酵母ディスプレイ及び選択を使用する、アフィニティー成熟化のためのFab抗体の制限ベース多様化及びシャッフリングの有用性を例証するために、リード標的特異的なFabよりFab抗体ライブラリーを調製し、制限ベースクローニングを使用して、全LC又はHCの断片のいずれかを多様化する。 1つの好ましい方法において、抗体V遺伝子配列を一括するとともにV遺伝子配列に対して内部にある制限部位を伴って構築する抗体ライブラリーを使用して、クローニング用の複数の抗体遺伝子断片を調製し、それによりリード抗体の多様化をもたらす。 1つのそのような抗体ライブラリー(例えば、CJライブラリーセット、Dyax社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)より単離したリード抗体をこのアプローチによりアフィニティー成熟化させることができる。 例えば、CJファージミドライブラリーを含む抗体は、ユニークなApaL1及びAcsI制限部位により一括されるLCと、ユニークなSfiI及びNotI制限部位により一括されるHCを有する。 このHCはまた、CDR2配列とCDR3配列の間に、内部のユニークなXbaI制限部位を含有する。 単一抗原特異的なリード抗体又は抗原特異的リード抗体のプールのいずれかにおいてLCを多様化させるために、はじめにFab抗体遺伝子を実施例2のように酵母ディスプレイベクターのpTQ3へクローニングし、pTQ3−Fabを生じる。 CJファージミドライブラリーのDNA調製物より、ApaL1及びAscI制限酵素での制限消化によって、複数のLCを単離する。 pTQ3−FabもApaL1及びAscIで消化し、内因性LCを複数のLCに置き換えて、レパートリー、pTQ3−LC cj−repを生じる。 次いで、このレパートリーを酵母菌株のEBY100へ移行させ、EBY100pTQ3−LC cj−repを得る。 抗原特異的なリード抗体又は抗原特異的リード抗体のプールのいずれかにおいてV H CDR1−2を多様化させるために、はじめにFab抗体遺伝子を実施例2のように酵母ディスプレイベクターのpTQ3へクローニングし、pTQ3−Fabを得る。 CJファージミドライブラリーより、SfiI及びXbaIでの制限消化によって、複数のV H CDR1−2断片を単離する。 pTQ3−FabもSfiI及びXbaIで消化し、内因性V H CDR1−2断片を複数のV H CDR1−2断片に置き換えて、レパートリー、pTQ3−V H CDR1−2 cj−repを生じる。 次いで、このレパートリーを酵母菌株のEBY100へ移行させ、EBY100pTQ3−V H CDR1−2 cj−repを得る。 当業者には、このクローニング手順がいくつかの異なる方法において、例えば、はじめにV H CDR1−2のレパートリーを構築してから、抗原特異的V H CDR3又はV H CDR3のプールにおいてクローニングすることによって実施することができることが明らかであろう。 EBY100pTQ3−V H CDR1−2 cj−rep及びEBY100pTQ3−LC cj−repの培養物を実施例2のように調製する。 次いで、この酵母培養物を、実施例10のようにLCディスプレイと抗原結合のために標識して、フローサイトメトリー分取法によりアフィニティー選択する。 次いで、実施例10のように、選択したクローンについてそのDNA配列とアフィニティーにおけるその改善を解析する。
酵母接合を使用する遺伝子断片のコンビナトリアルシャッフリングによるアフィニティー成熟化 酵母接合が抗原特異的リード抗体又は抗原特異的リード抗体群のコンビナトリアル遺伝子多様化とアフィニティー成熟のために使用することができることを例証するために、選択したLC又はLCのプールを再多様化させるか、又は選択したHC又はHCのプールのV H CDR1−2断片を再多様化させる。 CJファージミドライブラリーを含む抗体は、そのようなアプローチへ適用可能である。 それらは、ユニークなApaL1及びAscI制限部位により一括されるLCとユニークなSfiI及びNotI制限部位により一括されるHCを有する。 このHCはまた、CDR2配列とCDR3配列の間に、内部のユニークなXbaI制限部位を含有する。 このLCとHCが反対の接合型の酵母細胞中に存在するので、酵母接合を使用して、抗原特異的LCを複数のV H CDR1−2断片と、又は抗原特異的HCを複数のLCと一緒にし、それによりLCをHCと対合させる制限ベースのクローニングが必要でなくなる。 抗原特異的リード抗体又は抗原特異的リード抗体のプールを多様化させる1つの好ましい方法において、成分のHC抗体遺伝子を実施例13のように酵母ディスプレイベクターのpTQ5へクローニングし、pTQ−HCAgを得る。 CJファージミドライブラリー由来のHC断片の、SfiI及びXbaI制限酵素での制限消化により、複数のV H CDR1−2断片を調製する。 次いで、この複数のV H CDR1−2断片を、SfiI及びXbaIですでに消化して内因性V H CDR1−2断片を除去し、複数のV H CDR1−2断片で置き換え、抗原特異的V H CDR3は保持されている、pTQ5−HCAgより調製したDNAへクローニングする。 これにより、pTQ5−V H CDR1−2(CDR3Ag)と命名されるライブラリーを得て、これを酵母菌株のEBY100へ導入し、レパートリー、EBY100pTQ5−V H CDR1−2(CDR3Ag)を得る。 CJファージミドライブラリーのDNA調製物より、ApaL1及びAscIでの制限消化によって、複数のLCを単離する。 この複数のLCをpTQ6へクローニングしてレパートリー、pTQ6−LC repを得て、他の標的に特異的な他の抗体のアフィニティー成熟化のための1つのマスターレパートリーとして役立てる。 次いで、このレパートリーを反対の接合型の酵母菌株、BJ5457へ移行して、BJ5457pTQ6−LC repを得る。 LCとV H CDR1−2遺伝子断片の両方の同時多様化を可能にする、1つの接合方式において、EBY100pTQ5−V H CDR1−2(CDR3Ag)及びBJ5457pTQ6−LC repの培養物を実施例22のように調製する。 この2つのレパートリーを互いに接合し(実施例19を参照のこと)、二倍体レパートリーのEBY100pTQ5−V H CDR1−2(CDR3Ag)/BJ5457pTQ6−LC repを得る。 Fab抗体発現を誘導し(実施例18を参照のこと)、実施例20のように二倍体レパートリーをアフィニティー選択する。 選択したクローンについて、実施例23のようにアフィニティー改善を解析する。 本発明をその好ましい態様を参照にして特別に示して記載してきたが、当業者は、付帯の特許請求項により含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更を本発明においてなし得ることを理解されよう。
本発明の前記及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面(ここでは、類似の参照記号が異なる図面を通して同じ部分を意味する)に例示されるように、以下の本発明の好ましい態様のより特定の記載より明らかとなろう。 この図面は、必ずしも正しい尺度ではなく、むしろ本発明の原理を例示することに力点が置かれる。
図1は、ファージディスプレイ−真核ディスプレイ移行系を例示する概略図である。 Fabポリペプチド鎖をコードする遺伝情報は、ファージディスプレイベクターから本発明の多重鎖真核ベクターへ単一の切断された核酸として移行する。 次いで、望まれない介在遺伝子要素を(もしあれば)置き換える。 図2は、ファージディスプレイ/真核ディスプレイ移行系を例示する概略図であり、ここでは、Fabポリペプチド鎖をコードする遺伝情報がファージディスプレイベクターから本発明の多重鎖真核ベクターへ独立して、そして別個に移行される。 図3は、本発明に記載の多重鎖酵母ディスプレイベクター、pTQ3の概略図であり、多重鎖ポリペプチドの少なくとも2本の鎖(例えば、Fabの軽鎖及び重鎖成分)の挿入のためのユニークなクローニング部位を、この2本の鎖がタンデムGAL1プロモーターの誘導により独立して発現されるように配置された追加要素とともに有する。 このベクターにおいて、第一鎖(例えば、Ig軽鎖)は、ApaLI/AscI断片として挿入され、Aga2pシグナル配列(Aga2p/ss)を使用して可溶性分泌タンパク質として発現され、HAエピトープタグと融合する。 第二鎖(例えばIg重鎖断片)は、SfiI/NofI断片として挿入され、Aga2p/ssと固着性タンパク質サブユニット(成熟Aga2p)を使用して、細胞表面結合性融合タンパク質として発現される。 同様に、第二鎖は、mycエピトープタグと融合する。 プラスミド複製に有用な他の要素(例えばpMB1−ori及びCen6/ARSH4)と選択マーカーとして有用な他の要素(即ち、ampR及びTRP)も示す。 融合タンパク質の独立した発現を例証するデータの代表例である。 図4Aは、酵母宿主細胞EBY100pTQ3−F2及びEBY100pTQ3−PH1における45kD Aga2p−V H −C H 1融合タンパク質の発現を示す。 いずれか一方が空き(empty)のベクター対照においては、融合産物を検出しなかった。 それぞれの宿主細胞について、酵母ディスプレイベクターにおいて作動可能なGAL1プロモーターのガラクトース誘導の前(−)と後(+)の両方で試料を調製した。 融合タンパク質の独立した発現を例証するデータの代表例である。 図4Bは、酵母宿主細胞EBY100pTQ3−F2及びEBY100pTQ3−PH1における30kD V L −C L鎖の発現を示す。 いずれか一方が空き(empty)のベクター対照においては、融合産物を検出しなかった。 それぞれの宿主細胞について、酵母ディスプレイベクターにおいて作動可能なGAL1プロモーターのガラクトース誘導の前(−)と後(+)の両方で試料を調製した。 融合タンパク質の独立した発現を例証するデータの代表例である。 図4Cは、酵母細胞表面で組み立てられたFab抗体の免疫蛍光検出の代表例である。 (a)位相差(b)HCの検出(c)LCの検出。 図5A〜5Cは、サイトメトリープロットの系列を表す。 図5Aは、pTQ3−F2(左パネル)及びpTQ3−PH1(右パネル)構築体で形質転換し、未処理のままである(点線)か、20℃で48時間誘導した(薄灰色の線)酵母細胞を図示する。 フローサイトメトリーを使用して、重鎖(a)、軽鎖ディスプレイ(b)、及び抗原結合(c)を解析した。 図6は、酵母宿主細胞EBY100pTQ3−F2、EBY100pTQ3−A12、及びEBY100pTQ3−4C8の表面に表示された3つの異なる抗ストレプトアビジンFabの全細胞ELISAを例示するヒストグラムプロットである。 それぞれ、抗原結合、LCディスプレイ、及びHCディスプレイを示す。 図7は、酵母細胞混合物のサイトメトリープロットである。 EBY100pTQ3−F2、EBY100pTQ3−A12、及びEBY100pTQ3−A12/pESCを、抗原結合とLCディスプレイの両方のために二重標識した。 抗原結合に対するLCディスプレイのプロットと正規化した抗原結合のゲート(gating)を示す。 酵母レパートリーと個別に選択された酵母クローンへの異なる抗原濃度での結合を示すデータの代表例である。 図8Aは、非選択ライブラリー(a)と選択ラウンド1、2、及び3(b,c,d)のポリクローナル産出物について、抗原結合及びFabディスプレイのヒストグラム系列を示す。 多様化した抗ストレプトアビジン酵母レパートリーを3ラウンドのFACSへかけた。 それぞれのライブラリー選択に使用した分取(sorting)ゲートを示す。 酵母レパートリーと個別に選択された酵母クローンへの異なる抗原濃度での結合を示すデータの代表例である。 図8Bは、抗ストレプトアビジンレパートリーのFACSアフィニティー選択キャンペーンの、様々な抗原濃度でのポリクローナルFACS解析を示す。 抗原結合とFabディスプレイの両方のために標識した二変系サイトメトリープロットの系列は、抗原結合のFabディスプレイに対する比率の増加を示し、酵母細胞の集団が増加することを示す。 酵母レパートリーと個別に選択された酵母クローンへの異なる抗原濃度での結合を示すデータの代表例である。 図8Cは、抗HA mAbとストレプトアビジン−PEで標識した、野生型F2(「○」で表す)と突然変異体R2E10(三角で表す)、R3B1(四角で表す)、及びR3H3(菱形で表す)を表示する酵母細胞より得られたデータを示す。 ストレプトアビジン結合の平均蛍光を経時的にモニターした。 直線の傾きより解離速度定数を算出する。 酵母レパートリーと個別に選択された酵母クローンへの異なる抗原濃度での結合を示すデータの代表例である。 図8Dは、FACSと組み合わせたKingfisher(左カラム)かFACS単独(右カラム)のいずれかを使用する2つの選択キャンペーンのサイトメトリープロット系列を示す。 このサイトメトリープロットは、非選択(a)、ラウンド1(b)、及びラウンド2(c)の選択を通して抗原結合細胞の比率が増加することを示す。 図9は、誘導GAL1プロモーターの制御下に重鎖断片挿入を有する、本発明に記載の重鎖酵母ディスプレイベクター、pTQ5−HCの概略図である。 Ig重鎖断片は、SfiI/NotI挿入断片として位置し、Aga2pシグナル配列(Aga2p/ss)と固着性タンパク質サブユニット(Aga2pタンパク質)を使用して、細胞表面結合性融合タンパク質として発現される。 重鎖断片(HC)は、mycエピトープタグへ融合する。 プラスミド複製に必要な他の要素(即ち、pMB1−ori及びCen6/ARSH4)や酵母接合に必要な他の要素(即ち、Matαターミネーター)、及び選択マーカーとして有用な他の要素(即ち、ampR及びTRP)も示す。 図10は、(対照)空きベクター酵母宿主細胞EBY100pTQ5(レーン1)と(標準)Fabディスプレイベクター酵母宿主細胞EBY100pTQF2(レーン3)に比較した、一倍体の親酵母細胞EBY100pTQ5−HC(レーン2)において抗c−Myc抗体で検出される、45kD Aga2p−HC融合産物の発現を例証するウェスタンブロットの代表例である。 図11は、0に等しい時間(即ち、バックグラウンド;黒の実線)と誘導後48時間(点線)での軽鎖の存在がない、酵母細胞の表面でのHCディスプレイを示すサイトメトリープロットの系列である。 酵母細胞EBY100pTQ5−HCと対照酵母細胞EBY100pTQ5を抗C H 1とウサギ抗マウスIgG FITCで標識してHCの存在を検出し、また、ストレプトアビジンFITC(strep−FITC)で標識して抗原結合活性を酵母表面で検出した。 酵母細胞表面にはHCだけが表示されるのが見られるが、対のLCの非存在時には、抗原結合活性を少しも有さない。 図12は、誘導GAL1プロモーターの制御下に軽鎖挿入を有する、本発明に記載の軽鎖酵母ディスプレイベクター、pTQ6−LCの概略図である。 Ig軽鎖は、ApaLI/AscI挿入断片として位置し、Aga2p/ssを使用して可溶性タンパク質として発現される。 軽鎖断片(LC)はまた、HAエピトープタグと融合する。 プラスミド複製に有用な他の要素(即ち、pUC1−ori及びCen6/ARSH4)や選択マーカーとして有用な他の要素(即ち、ampR及びブラストサイジン(登録商標))も示す。 図13は、(対照)空きベクター酵母宿主細胞W303pYC6(レーンS1)に比較した、一倍体の親酵母細胞W303pTQ6−LC(レーンS2)において抗HA抗体で培養上清中に検出される、60kD軽鎖ポリペプチドの発現を例証するウェスタンブロットの代表例である。 図14は、誘導した二倍体酵母細胞(DIPLOID LC/HC)と対照の空きベクター酵母宿主細胞W303pYC6、及び標準Fabディスプレイベクター酵母宿主細胞EBY100pTQ3−F2に比較した、親の一倍体酵母細胞(W303pTQ6−LC及びEBY100pTQ5−HC)の細胞表面でのストレプトアビジン結合活性の全細胞ELISA定量を例示するヒストグラムプロットである。 図15A〜15Cは、抗ストレプトアビジン一倍体HC親(A)、及び空きLC及びHC発現プラスミドを含有する二倍体対照(B)、及びストレプトアビジン特異的Fabをその表面上に発現する陽性二倍体(C)での抗原結合と軽鎖ディスプレイを示すFACSヒストグラムの系列である。 図16は、EBY100pTQ5をW303pYC6と接合させることによって生じる(対照)二倍体酵母細胞(レーン2)と、親のLCベクター酵母宿主細胞W303pTQ6−LC(レーン1)に比較した、EBY100pTQ5−HCをW303pYC6−LCと接合させることによって生じる二倍体酵母細胞(レーン3)において抗HA抗体で検出される、30kD LCポリペプチドの発現を例証するウェスタンブロットの代表例である。 図17は、EBY100pTQ5をW303pYC6と接合させることによって生じる(対照)二倍体酵母細胞(レーン4)、親のHCベクター酵母宿主細胞EBY100pTQ5−HC(レーン3)、標準Fabディスプレイベクター酵母宿主細胞EBY100pTQ3F2(レーン2)、及び(対照)空きベクター酵母宿主細胞EBY100pTQ5(レーン1)に比較した、EBY100pTQ5−HCをW303pYC6−LCと接合させることによって生じる二倍体酵母細胞(レーン5)において抗c−Myc抗体で検出される、45kD Aga2p−HC融合産物の発現を例証するウェスタンブロットの例示である。 図18A〜18Cは、酵母二倍体細胞の表面でコンビナトリアルに組み立てられたFab抗体の免疫蛍光検出の代表例である。 (A)LCディスプレイ(B)HCディスプレイ(C)抗原結合。 上列は免疫蛍光を示し、下列は位相差を示す。 |