Heterodimeric receptor library to use the phagemid

申请号 JP2007130665 申请日 2007-05-16 公开(公告)号 JP4118938B2 公开(公告)日 2008-07-16
申请人 ザ スクリップス リサーチ インスティテュート; 发明人 アングレイ カング; カーロス バーバス; リチャード エイ ラーナー;
摘要 A filamentous phage (FP) encapsulating a genome encoding a ligand-binding heterodimeric receptor (LBHR) is new. Also new are (1) LBHR consisting of a polypeptide (P1) flanked by an N-terminal prokaryotic secretion signal (SS) domain and a C-terminal FP-membrane-anchor (MA) domain, and a second polypeptode (P2) fused to an N-terminal SS domain; (2) vector for expressing a fusion polypeptide (FPP) comprising connected DNA sequences (one encoding SS and the other MA) operably linked to appropriate expression signals; (3) polypeptide (PP) having a ligand-binding receptor component linked at the N-terminus to an SS domain and at the C-terminus to an MA domain; (4) libraries of FP particles each contg. a vector of (2); (5) oligonucleotides (I) useful as primers for mutangenesis in a comentarity-determining region (CDR) of an Ig gene consisting of 3'- and 5'-terminal sequences able to hybridise with framework regions of the Ig gene and connected by the sequence (NNR)n N = any nucleotide, R = 5 (i.e. G or C) or K (i.e. G or T) or their analogues; n = 3-24; the terminal sequences are 6-50 nucleotides long; and (b) libraries of dicistronic DNA molecules each with 2 citrons expressing polypeptides of a heterodimeric receptor on the surface of FP.
权利要求
  • リガンド結合へテロ二量体抗体を製造する方法であって、以下の、
    (a)前記リガンド結合へテロ二量体抗体をコードするゲノムをカプセル化するFf繊維状ファージを調製する工程であって、但し、該リガンド結合へテロ二量体抗体をコードするゲノムは第1及び第2のシストロンから成り、
    該第1のシストロンは前記リガンド結合へテロ二量体抗体の第1のポリペプチドをコードし、且つ該第1のポリペプチドにはアミノ末端原核分泌シグナルドメイン及びカルボキシ末端繊維状ファージ膜cpIII又はcpVIIIアンカードメインが隣接しており、
    該第2のシストロンは前記リガンド結合へテロ二量体抗体の第2のポリペプチドをコードし、且つ該第2のポリペプチドはアミノ末端原核分泌シグナルドメインに融合していることを特徴とする工程、及び(b)前記第1及び第2のシストロンから前記第1及び第2のポリペプチドをそれぞれ別のポリペプチドとして独立して発現させ、次いで前記リガンド結合ヘテロ二量体抗体として前記繊維状ファージ表面で再構築する工程、
    を含む、リガンド結合へテロ二量体抗体を製造する方法。
  • 前記アンカードメインがcpIIIアンカードメインである、請求項1記載の方法。
  • 前記アンカードメインがcpVIIIアンカードメインである、請求項1記載の方法。
  • Ff繊維状ファージ粒子のライブラリーを製造する方法であって、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法に従ってファージ粒子を調製し、それにより該ライブラリー内のそれぞれのファージ粒子が該ファージ粒子の表面に発現された少なくとも1つのリガンド結合へテロ二量体抗体を含有することを特徴とする、Ff繊維状ファージ粒子のライブラリーを製造する方法。
  • Ff繊維状ファージ粒子のライブラリーを製造する方法であって、以下の、
    (a)Ff繊維状ファージの表面上で第1及び第2のポリペプチドをヘテロ二量体として発現させるためのファージミド・ベクターを調製する工程であって、但し、
    該ファージミド・ベクターは、前記第1のポリペプチドをカルボキシ末端繊維状ファージ膜cpIIIアンカードメインとの融合蛋白質として発現する第1カセットと、前記第2のポリペプチドを発現する第2カセットを有し、
    該第1カセットは、第1リボソーム結合部位、該第1リボソーム結合部位の下流に連結された第1原核分泌シグナルをコードするDNA配列、該第1原核分泌シグナルコード化DNA配列の下流に連結された前記第1のポリペプチドをコードするDNA配列、及び該第1のポリペプチドをコードするDNA配列の下流に連結されたカルボキシ末端繊維状ファージ膜cpIIIアンカードメインをコードする配列を含み、
    該第2カセットは、第2リボソーム結合部位、該第2リボソーム結合部位の下流に連結された第2原核分泌シグナルをコードするDNA配列、及び該第2原核分泌シグナルコード化DNA配列の下流に連結された前記第2のポリペプチドをコードするDNA配列を含むことを特徴とする、前記ファージミド・ベクターを調製する工程、及び(b)該ライブラリーのそれぞれのファージ粒子に該ファージミド・ベクターを組み込む工程、
    を含む、Ff繊維状ファージ粒子のライブラリーを製造する方法。
  • Ff繊維状ファージ粒子のライブラリーの多様性を変化させる方法であって、
    (a)請求項4又は5記載の方法に従ってFf繊維状ファージ粒子のライブラリーを調製し、
    (b)前記ライブラリーの構成員が予備選択したリガンドに結合してリガンド−ファージ粒子複合体を形成するのに十分な条件下で、前記ライブラリーと前記リガンドとを接触させ、及び(c)前記複合体中のファージ粒子を非結合ライブラリー構成員から単離し、前記予備選択したリガンドに対する結合特異性を有する単離されたファージ粒子を含むリガンド集積ライブラリーを形成する工程を含む方法。
  • Ff繊維状ファージ粒子のライブラリーの多様性を増加させる方法であって、
    (a)請求項4又は5記載の方法に従ってFf繊維状ファージ粒子のライブラリーを調製する工程であって、前記第1及び第2のポリペプチドをコードするDNA配列のそれぞれが、免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含み、及び(b)前記ライブラリー中のそれぞれのDNA発現ベクターに存在する前記免疫グロブリン可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を変異させ、それぞれ変異した免疫グロブリン可変ドメインヌクレオチド配列を含有するファージ粒子のライブラリーを形成する工程を含む方法。
  • サンプル中の予備選択したリガンドの存在を検出する方法であって、
    (a)請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法に従ってリガンド結合へテロ二量体抗体を調製し、
    (b)予備選択した抗原を含有すると考えられるサンプルと、前記(a)において得た該予備選択したリガンドに結合するリガンド結合ヘテロ二量体抗体とを、該リガンド結合ヘテロ二量体抗体が前記リガンドに結合してリガンド−抗体複合体を形成するのに十分な結合条件下で混合し、及び(c)前記リガンド抗体複合体または前記リガンド結合ヘテロ二量体抗体の存在を検出する工程を含む方法。
  • リガンド結合へテロ二量体受容体を製造する方法であって、以下の、
    (a)前記リガンド結合へテロ二量体受容体をコードするゲノムをカプセル化するFf繊維状ファージを調製する工程であって、但し、該リガンド結合へテロ二量体受容体をコードするゲノムは第1及び第2のシストロンから成り、
    該第1のシストロンは前記リガンド結合へテロ二量体受容体の第1のポリペプチドをコードし、且つ該第1のポリペプチドにはアミノ末端原核分泌シグナルドメイン及びカルボキシ末端繊維状ファージ膜cpIII又はcpVIIIアンカードメインが隣接しており、
    該第2のシストロンは前記リガンド結合へテロ二量体受容体の第2のポリペプチドをコードし、且つ該第2のポリペプチドはアミノ末端原核分泌シグナルドメインに融合していることを特徴とする工程、及び(b)前記第1及び第2のシストロンから前記第1及び第2のポリペプチドをそれぞれ別のポリペプチドとして独立して発現させ、次いで前記リガンド結合ヘテロ二量体受容体として前記繊維状ファージ表面で再構築する工程、
    を含む、リガンド結合へテロ二量体受容体を製造する方法。
  • アンカードメインがcpIIIアンカードメインである、請求項9記載の方法。
  • アンカードメインがcpVIIIアンカードメインである、請求項9記載の方法。
  • 说明书全文

    本発明はクローン化ベクター、および繊維状ファージ粒子の表面上で融合ポリペプチドを発現し得るDNA分子のライブラリーの製造方法に関する。

    繊維状バクテリオファージは細菌に感染する一群の関連するウイルスである。
    これらは、バクテリオファージゲノムを形成するデオキシリボ核酸(DNA)を包む伸張したカプセルから構成された長く薄い粒子であることから、繊維状という用語が用いられている。 Fピリ繊維状ファージ(Ffファージ)は、Fピリの先端に特異的に吸着することによりグラム陰性細菌のみに感染し、fd、flおよびM13を包含する。
    Ffファージの成熟カプセルはファージによりコードされる5つの遺伝子産物のコート:cpVIII(カプセルの塊質を形成する遺伝子VIIIの主コート蛋白質産物)および4つの副コート蛋白質(カプセルの一端のcpIIIおよびcpIV並びにカプセルの他端のcpVIIおよびcpIX)から構成される。
    カプセルの長さは、特徴的なフィラメント構造を形成する秩序あるヘリックス列の2500〜3000コピーのcpVIIIにより形成される。 カプセルの端に約5コピーのそれぞれの副コート蛋白質が存在する。 遺伝子IIIにコードされた蛋白質(cpIII)は典型的にはカプセルの一端に4〜6コピー存在し、感染の初期相においてその細菌宿主に対するファージの結合の受容体として働く。
    Ffファージ構造の詳細な総説については、ラシェトら、Microbiol. Rev. 50:401−427(1986)およびモデルら、「バクテリオファージ、第2巻」中、アール・カレンダー編、プレナム・プレス、pp. 375−456(1988)を参照することができる。

    Ffファージ粒子の集成は高度に複雑な機構を含む。 宿主細胞内でファージ粒子が集成されることはなく、これらは寧ろ宿主細胞の膜を介するウイルスゲノムの押出しの際に集成される。 押出しの前に、主コート蛋白質cpVIIIおよび副コート蛋白質cpIIIが合成され、宿主の細胞膜に移される。 cpVIIIおよびcpIIIの両者は、成熟粒子へのこれらの組込みの前に宿主細胞膜に定置される。 更に、ウイルスゲノムが生産され、cpV蛋白質によってコートされる。 押出し過程の際に、cpVコートゲノムDNAはcpVコートを剥され、同時に成熟コート蛋白質により再コートされる。 これらの蛋白質の膜から粒子への移動を調節する集成機構は現在では知られていない。

    cpIIIおよびcpVIII蛋白質の両者は、成熟ファージ粒子の集成のシグナルを与える2つのドメインを含む。 第1のドメインは、新たに合成された蛋白質を宿主細胞膜に向ける分泌シグナルである。 分泌シグナルはポリペプチドのアミノ末端に局在し、ポリペプチドを標的として少なくとも細胞膜に向かわせる。 第2のドメインは、宿主細胞膜との会合および集成の際のファージ粒子との会合のシグナルを与える膜アンカードメインである。 cpVIIIおよびcpIIIの両者についてのこの第2のシグナルは、少なくとも膜を渡る疎性領域からなる。
    cpvIIIは、外側に向いた酸性アミノ末端および膜の内側に向いた塩基性カルボキシ末端による非対称配向で細胞膜のような脂質二重層に一体化することができるため、モデル膜蛋白質として広範に研究されて来た。 成熟蛋白質は約50アミノ酸残基の長さであり、その内11残基がカルボキシ末端を与え、19残基が疎水性膜横断領域を与え、残りの残基はアミノ末端を含む。 cpVIIIの分泌シグナル領域については相当な研究が行われ、膜蛋白質合成および膜に対する標的の研究が進行した。 しかしながら、ファージ粒子の集成を可能とし得るcpVIII膜アンカー領域の構造において許容される変化については殆ど知られていない。

    cpIIIの配列の操作により、正常には膜アンカー機能の礎となる疎水性アミノ酸のC末端23アミノ酸残基の伸張は種々の方法で変えることができ、膜と会合する能は保持されることが示された。 しかしながら、このようなアンカー修飾cpIII蛋白質は遺伝子III変異体と遺伝的に相補するその能力を喪失し、機能的集成に対する膜アンカーの必要性が解明されていないことを示している。
    Ffファージに基く発現ベクターが記載されており、全cpIIIアミノ酸残基配列が短いポリペプチド「エピトープ」[パルメリら、Gene,73:305−318(1988)およびクイルラら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87:6378−6382(1990)]または一本鎖抗体ドメインを特定するアミノ酸残基配列の挿入によって修飾された。 マカファーティら、Science,348:552−554(1990)。 これらのハイブリッド蛋白質が合成され、粒子当り約5コピーの量(正常なcpIIIが通常認められる密度)でファージ粒子上で集成された。 しかしながら、これらの発現された融合蛋白質は全cpIIIアミノ酸残基配列を含み、cpIIIのカルボキシ末端膜アンカードメインのみを利用する融合蛋白質を示唆しない。
    更に、ファージ粒子のコートへの組込みが機能性で可能なヘテロ二量体分子の集成を可能とするようファージコート蛋白質が加工された発現系は記載されていない。

    組換え遺伝子を含む繊維状ファージの表面上でヘテロ二量体組換え遺伝子産物を発現させる新しい表面組込み技術を突き止めた。 この発明は、繊維状ファージ複製の集成段階に際して遺伝子産物および遺伝子を結合させる手段として繊維状ファージコート蛋白質膜アンカードメインを使用するものである。
    すなわち、繊維状ファージ複製に際し、コート蛋白質はファージゲノムをカプセル化するマトリックスに集成する。 (1)組換え繊維状ファージコート蛋白質が存在する場合ファージの集成は中断されず、(2)組換え繊維状ファージコート蛋白質を集成マトリックスに組込むことができ、(3)マトリックスへの組込みが表面接近可能な配向で生起するよう向けることができることをこの度突き止めた。
    本発明は、所定の特異性のヘテロ二量体受容体の製造に有利に適用することができる、すなわちこれを使用して予備選択したリガンドに結合する抗体、T細胞受容体等を製造することができる。

    よって、本発明は、ヘテロ二量体受容体および受容体をコードする遺伝子を単離する方法においてヘテロ二量体受容体認識および繊維状ファージ複製の機能の結合を提供するものである。 この方法により、組換えゲノムをカプセル化する遺伝子VIIIコード蛋白質のマトリックスから構成した繊維状ファージを製造する。 組換えゲノムは、ヘテロ二量体受容体ポリペプチドをコードする遺伝子を含む。 ヘテロ二量体受容体は、ヘテロ二量体受容体ポリペプチドの1つへの翻訳の際にペプチド結合により融合した繊維状ファージコート蛋白質の膜アンカードメインを介してカプセル化マトリックスに表面組込みされている。 ヘテロ二量体受容体ポリペプチドおよびポリペプチドをコードする遺伝子は、ファージ複製周期の集成段階に際して物理的に結合される。 固体支持体に対する受容体コートファージの特異的結合により、組換えゲノムの多様なライブラリーから所望のヘテロ二量体受容体をコードする組換えゲノムを単離する手段が有利に提供される。

    1つの態様では、本発明は重鎖および軽鎖ポリペプチドからなる抗体分子を企図し、前記重鎖ポリペプチドはアミノ末端原核分泌シグナルドメインおよびカルボキシ末端繊維状ファージ膜アンカードメインが隣接するV Hドメインからなり、前記軽鎖ポリペプチドはアミノ末端原核分泌シグナルドメインに融合したV Lドメインからなる。
    他の態様では、本発明は融合ポリペプチドを発現するベクターを企図し、前記ベクターは挿入物DNAの方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列を介して機能的に結合した上流および下流の翻訳可能なDNA配列からなり、前記上流の配列は原核分泌シグナルをコードし、前記下流の配列は繊維状ファージ膜アンカーをコードし、前記翻訳可能なDNA配列は前記融合ポリペプチドの部分としての前記翻訳可能なDNA配列の発現のための一組のDNA発現シグナルに機能的に結合している。

    A. 定義
    アミノ酸残基 :そのペプチド結合におけるポリペプチドの化学的分解(加水分解)に際して形成されるアミノ酸。 ここに記載するアミノ酸残基は好ましくは「L」異性体形態である。 ただし、ポリペプチドが所望の機能的性質を保持する限り、「D」異性体形態の残基を全ゆるLアミノ酸残基について置換することができる。 NH 2はポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離のアミノ基に言及するものである。 COOHはポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離のカルボキシ基に言及するものである。 標準的なポリペプチド命名法(J.Biol.Chem.243:3552−59(1969)に記載され、37C.F.R.1.822(b)(2)で採用された)に従い、アミノ酸残基の省略形を次の対応表に示す:

















    式にここに示した全てのアミノ酸残基配列は、アミノ末端からカルボキシ末端の慣用された方向で左から右の方向性を有することを銘記すべきである。 更に、「アミノ酸残基」という記載は、対応表に列記したアミノ酸並びに修飾および通常でないアミノ酸、たとえば37CFR1.822(b)(4)に列記されたもの(参考によりここに取入れる)を包含するものとして広く定義する。 更に、アミノ酸残基配列の始めまたは終りのダッシュは、1以上のアミノ酸残基の更なる配列へのペプチド結合またはNH 2のようなアミノ末端基またはアセチルまたはCOOHのようなカルボキシ末端基に対する共有結合を示すことを銘記すべきである。
    ヌクレオチド :糖部分(ペントース)、リン酸および含窒素複素環塩基よりなるDNAまたはRNAの単量体単位。 塩基はグリコシド炭素(ペントースの1′炭素)を介して糖部分に結合し、その塩基と糖との組合せがヌクレオシドである。 ヌクレオシドがペントースの3′または5′位置に結合したリン酸基を含む場合、これはヌクレオチドと言及される。 機能的に結合したヌクレオチドの配列は、ここでは典型的には「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」およびその文法的に等価なものとして言及し、またここでは式によって表し、その左から右の方向性は5′末端から3′末端への慣用された方向である。

    塩基対(bp) :二本鎖DNA分子におけるアデニン(A)とチミン(T)またはシトシン(C)とグアニン(G)の対合関係。 RNAではチミンをウラシル(U)で置換する。
    核酸 :ヌクレオチドの重合体(一本鎖または二本鎖)。
    ポリヌクレオチド :一本鎖または二本鎖ヌクレオチドの重合体。 ここで使用するように、「ポリヌクレオチド」およびその文法的に等価なものは全範囲の核酸を包含し得る。 ポリヌクレオチドは、2以上のデオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドの線状の鎖から構成された核酸分子を典型的に言及し得る。 正確な大きさは多くの因子に依存し得るが、これは翻って当業界で周知のように使用の最終条件に依存する。 本発明はポリヌクレオチドはプライマー、プローブ、RNA/DNA断片、オリゴヌクレオチドまたは「オリゴス」(比較的短いポリヌクレオチド)、遺伝子、ベクター、プラスミド等を包含する。

    遺伝子 :そのヌクレオチド配列がRNAまたはポリペプチドをコードする核酸。 遺伝子はRNAまたはDNAとすることができる。
    デュープレックスDNA :デュープレックスの塩基対に存在する相補的塩基のそれぞれの間の1以上の水素結合により互いに保持された2つの鎖の実質的に相補的なポリヌクレオチドからなる二本鎖核酸分子。 塩基対を形成するヌクレオチドはリボヌクレオチド塩基またはデオキシリボヌクレオチド塩基とすることができるため、「デュープレックスDNA」という記載は、2つのDNA鎖(dsDNA)からなるDNA−DNAデュープレックスまたは1つのDNAおよび1つのRNA鎖からなるRNA−DNAデュープレックスに言及するものである。

    相補的塩基 :DNAまたはRNAが二本鎖構造をとる場合に正常に対合するヌクレオチト。
    相補的ヌクレオチド配列 :結果的な水素結合により特異的にハイブリダイズする他の一本鎖上のものと十分に相補的なDNAまたはRNAの一本鎖分子におけるヌクレオチドの配列。
    保存された :ヌクレオチド配列は、予備選択した配列の正確な相補体に非無作為にハイブリダイズする場合、予備選択した(対照)配列に対して保存されたものである。
    ハイブリダイゼーション :相補的塩基対の間の水素結合の確立によりデュープレックスまたはヘテロデュープレックスを形成する実質的に相補的なヌクレオチド配列(核酸の鎖)の対合。 これは競合的に阻害することのできる2つの相補的なポリヌクレオチドの間の特異的な、すなわち非無作為の相互作用である。
    核酸アナログ :A、T、G、CまたはUとは構造的に異なるが、核酸分子中で正常なヌクレオチドを置換する程十分類似するプリンまたはピリミジンヌクレオチド。

    DNA相同体 :予備選択した保存されたヌクレオチド配列および予備選択したリガンドに結合し得る受容体をコードする配列を有する核酸。
    組換えDNA(rDNA)分子 :2つのDNA断片を機能的に結合することにより製造されるDNA分子。 よって、組換えDNA分子は、通常は天然には一緒に認められない少なくとも2つのヌクレオチド配列からなるハイブリッドDNA分子である。 共通の生物学的起源を有さない、すなわち進化的に異なるrDNAは「異種起源」と言われる。
    ベクター :細胞中で自己複製し得るrDNA分子であり、これにDNA断片、例えば遺伝子またはポリヌクレオチドが機能的に結合し、付着した断片の複製をもたらすことができる。 1以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を指向し得るベクターはここでは「発現ベクター」として言及する。 特に重要なベクターは、逆転写酵素を使用して製造したmRNAからcDNA(相補的DNA)のクローン化を可能とするものである。
    受容体 :受容体は、他の分子に特異的に(非無作為に)結合することのできる蛋白質、糖蛋白質等の分子である。

    抗体 :抗体という用語はその種々の文法的形態においてここでは免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗体結合部位またはパラトープを含む分子に言及するものである。 例示的な抗体分子は、無傷の免疫グロブリン分子、実質的に無傷の免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の部分(当業界でFab、Fab′、F(ab′) 2およびF(v)として知られる部分を含む)である。
    抗体結合部位 :抗体結合部位は、抗原と特異的に結合(免疫反応)する重鎖および軽鎖可変および超可変領域から構成された抗体分子のその構造部分である。
    免疫反応という用語は、その種々の形態において、抗原性決定基含有分子と全抗体分子またはその一部のような抗体結合部位を含む分子との特異的な結合を意味する。

    モノクローナル抗体 :モノクローナル抗体という記載は、その種々の文法的形態において、特定の抗原と免疫反応し得る抗体結合部位の1種のみを含む抗体分子の集団に言及するものである。 よってモノクローナル抗体は典型的には免疫反応する全ゆる抗原に対して単一の結合親和力を示す。 したがってモノクローナル抗体は複数の抗体結合部位を有する抗体分子を含み、それぞれ異なる抗原に対して免疫特異的であり、たとえば二特異的モノクローナル抗体がある。
    融合ポリペプチド :少なくとも2つのポリペプチドおよび2つのポリペプチドを1つの連続的なポリペプチドに機能的に結合する結合配列から構成されたポリペプチド。 融合ポリペプチド中で結合した2つのポリペプチドは典型的には2つの独立した起源から誘導され、したがって融合ポリペプチドは通常は天然には結合して認められない2つの結合したポリペプチドからなる。
    上流 :DNA転写の方向の反対の方向であり、したがって非コード鎖では5′から3′、mRNAでは3′から5′に向う。
    下流 :配列転写または読出しの方向でDNA配列にさらに沿うもの、すなわちDNAの非コード鎖に沿う3′から5′方向またはRNA転写体に沿う5′から3′方向に向うものである。

    シストロン :アミノ酸残基配列をコードするDNA分子のヌクレオチド配列であり、上流および下流のDNA発現調節要素を含む。
    停止コドン :アミノ酸をコードしない代りに蛋白質合成の終了を生起する全ゆるコドン。 これらはUAG、UAAおよびUGAであり、ノンセンスまたは終止コドンとしても言及される。
    リーダーポリペプチド :ポリペプチドのアミノ末端の短い長さのアミノ酸配列であり、内膜に対してポリペプチドを担持するか指向させ、ペリプラズム空間また恐らくその向こうへのその最終的な分泌を確実なものとする。 リーダー配列ペプチドは、ポリペプチドが活性となる前に通常は除去される。
    リーディングフレーム :翻訳に用いられる隣接するヌクレオチドトリプレット(コドン)の特定の配列。 リーディングフレームは翻訳開始コドンの位置に依存する。

    B. 繊維状ファージ
    本発明は、ヘテロ二量体受容体を形成し得る第1および第2のポリペプチドをコードするゲノムをカプセル化する蛋白質のマトリックスからなる繊維状ファージを企図する。 このファージは、第1および第2のポリペプチドの少なくとも1つに融合した繊維状ファージ膜アンカードメインを介してマトリックスに表面組込みされた第1および第2のポリペプチドから構成されるヘテロ二量体受容体を更に含む。 ヘテロ二量体受容体はリガンドを結合する能力を有し、したがってリガンド結合ヘテロ二量体受容体として言及される。
    好適な態様のヘテロ二量体受容体はエピトープ結合複合体である。 すなわち、エピトープを結合し得る第1および第2のポリペプチドの複合体である。 好ましくは、第1および第2のポリペプチドは、抗体重鎖および軽鎖ポリペプチドである。

    第1および第2のポリペプチドは機能性エピトープ結合複合体(ヘテロ二量体受容体)への自己集成が可能であり、これはその後リガンドに接近し得る様式で外側表面上で発現される、すなわちこれらはファージに表面で組込まれている。
    よって、エピトープ結合複合体は、典型的にはこの発明のファージの表面上に存在する。 典型的には、エピトープ結合複合体は、繊維状ファージ膜アンカードメイン、例えばセクションCに記載するポリペプチドを含む結合ポリペプチド、および非結合ポリペプチドから構成される。 ここにさらに説明するように、好適なのはヘテロ二量体複合体のポリペプチドに融合したcpIIIまたはcpVIII膜アンカードメインを有するファージである。

    表面接近可能な様式で受容体がファージに結合するため、ファージを固相アフィニティ吸収体として有利に使用することができる。 好適な態様では、アガロース、セルロース、合成樹脂、多糖類等のような固体(水不溶性)マトリックスにファージを結合、好ましくは着脱可能に結合させる。 例えば、ファージを収納する形質転換体をカラムに充填保持し、ファージの収納を支持する条件下に維持することができる。 ファージにより発現された受容体に結合するリガンドを含有する水性組成物に、その後所定の速度で受容体結合条件下にカラムを通過させて固相受容体−リガンド複合体を形成する。 その後カラムを洗浄して非結合物質を除去すると、固相ファージに結合したリガンドが残る。 その後受容体−リガンド複合体の解離を促進する緩衝液でカラムを洗浄することによりリガンドを除去して回収することができる。
    また、親和力により精製すべきリガンドを含有する水性溶液と精製したファージを混合することができる。 このようにして形成した受容体/リガンド結合反応混合物は、ファージ結合受容体−リガンド複合体が生成するのに十分な時間期間の間結合条件下に維持する。 その後例えば遠心分離、電気泳動、沈殿等によりファージ結合リガンド(リガンド担持ファージ)を非結合物質から分離して回収する。

    この発明のファージは、この発明の診断方法で使用する場合に標識することができる。 好適な標識には、ファージゲノムに組込まれた放射性標識核酸、またはファージ粒子の蛋白質成分に組込まれた放射性標識アミノ酸が包含される。 標識したファージの調製は、ここに記載するようにファージを生育させることにより慣例に従って調製することができるが、それぞれファージの核酸またはポリペプチドへの組込みのために放射性標識した核酸または放射性標識したアミノ酸を培養培地に含むものとする。 例示的な標識は3 Hチミジン、または35 Sメチオニンである。 他の同位元素標識および他のヌクレオチドまたはアミノ酸前駆体は当業者に容易に利用可能である。 標識したファージは、好ましくはこの発明のリガンド結合検定で検出し得るのに十分な標識を含む、すなわちファージは検出可能に標識される。

    C. DNA発現ベクター
    本発明のベクターは、繊維状ファージ膜アンカードメインおよび原核分泌シグナルドメインを含む融合ポリペプチドの形態で翻訳可能なDNA配列を受容して発現するよう適合した組換えDNA(rDNA)分子である。 このベクターは、挿入物DNAへの方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列を介して機能的に結合した上流および下流の翻訳可能なDNA配列を含むカセットからなる。 上流の翻訳可能な配列は、ここに特定するように分泌シグナルをコードする。
    下流の翻訳可能な配列は、ここに特定するように繊維状ファージの膜アンカーをコードする。 カセットは、好ましくは方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列を介して挿入物翻訳可能DNA配列(挿入物DNA)を方向性をもってカセットに挿入する場合に製造される融合ポリペプチドを発現させるDNA発現調節配列を含む。 繊維状ファージ膜アンカーは、好ましくは繊維状ファージ粒子のマトリックスに結合し、これにより融合ポリペプチドをファージ表面上に組込むことのできるcpIIIまたはcpVIIIコート蛋白質のドメインである。

    発現ベクターは、本発明の融合ポリペプチドのような構造遺伝子産物を和合性の宿主中で発現し得ることを特徴とする。
    ここで使用するように、「ベクター」という用語は、それが機能的に結合した他の核酸を異なる遺伝的環境の間で移動させることのできる核酸分子に言及するものである。 好適なベクターは、それが機能的に結合したDNA断片中に存在する構造遺伝子産物の自己複製および発現が可能なものである。
    ここでDNA配列または断片について使用するように、「機能的に結合」という記載は、一本鎖または二本鎖形態に拘らず、好ましくは慣用的なホスホジエステル結合によってDNAの鎖に共有結合により接続された配列または断片を意味する。
    この発明のカセットが機能的に結合したベクターの選択は、直接には当業界で周知のように所望の機能的性質、例えばベクター複製および蛋白質発現並びに形質転換する宿主細胞に依存するが、これらは組換えDNA分子を構成する技術に固有の制限である。

    好適な態様では、利用するベクターは、原核レプリコン、すなわちこれにより形質転換された細菌宿主細胞のような原核宿主細胞中で染色体外の組換えDNA分子の自己複製およひ維持を指向する能力を有するDNA配列を含む。 この種のレプリコンは当業界で周知である。 更に、原核レプリコンを含むこのような態様は、その発現によって、これにより形質転換された細菌宿主に薬剤耐性のような選択性の利点を与える遺伝子も含む。 典型的な細菌の薬剤耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する耐性を与えるものである。 ベクターは、典型的には翻訳可能なDNA配列の挿入を図る便利な制限部位も含む。 例示的なベクターには、バイオラド・ラボラトリイズ(リッチモンド、CA)から入手可能なプラスミドpUC8、pUC9、pBR322およびpBR329、並びにファルマシア(ピスカタウェイ、NJ)から入手可能なpPLおよびpKK223がある。

    方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列、すなわちポリリンカーは、(1)複製および移動のために上流および下流の翻訳可能なDNA配列に機能的に結合し、(2)DNA配列のベクターへの方向性をもった連結のための部位または手段を与えるDNA発現ベクターの領域である。 典型的には、方向性ポリリンカーは、2以上の制限エンドヌクレアーゼ認識配列または制限部位を特定するヌクレオチドの配列である。 制限開裂に際して、2つの部位は付着末端を生成し、これを介して翻訳可能なDNA配列をDNA発現ベクターに連結することができる。 好ましくは、2つの制限部位は、制限開裂に際して非相補的な付着末端を与え、これにより翻訳可能なDNA配列のカセットへの方向性をもった挿入を可能とする。 1つの態様では、方向性をもった連結手段は、上流の翻訳可能なDNA配列、下流の翻訳可能なDNA配列または両者に存在するヌクレオチドによって与えられる。 他の態様では、方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列は、多重方向性クローン化手段を特定するヌクレオチドの配列からなる。 方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列が多数の制限部位を特定する場合、これを多重クローン化部位として言及する。

    翻訳可能なDNA配列は、1つのリーディングフレームにポリペプチドをコードする少なくとも8コドンの非中断系列を与える線状系列のヌクレオチドである。
    上流の翻訳可能なDNA配列は原核分泌シグナルをコードする。 分泌シグナルは、グラム陰性細菌のペリプラズム膜を蛋白質の標的とする蛋白質のリーダーペプチドドメインである。
    好適な分泌シグナルはpelB分泌シグナルである。 エルウィニア・カロトバ(Erwinia carotova)に由来する2つのpelB遺伝子産物変種からの分泌シグナルドメインの予期されるアミノ酸残基配列を、レイら、Nature,331:543−546(1988)により記載されたように表1に示す。 特に好適なpelB分泌シグナルも表1に示す。

    pelB蛋白質のリーダー配列は、融合蛋白質の分泌シグナルとして先に使用されている。 ベターら、Science,240:1040−1043(1988)、サストリーら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:5728−5732(1989)、およびムリナックスら、Proc. Natl. Acad. Sci,USA,87:8095−8099(1990)。
    この発明で有用なイー・コリ由来の他の分泌ポリペプチドドメインのアミノ酸残基配列も表1に列記する。 オリバー、ネイドハード、F. C. (編)中、イー・コリおよびサルモネラ・チフィムリウム、アメリカン・ササイアティ・フォー・マイクロバイオロジー、ワシントン、D. C. 1:56−69(1987)。
    配列番号:5に示すアミノ酸残基配列を有するpelB分泌シグナルをコードする翻訳可能なDNA配列は、この発明のDNA発現ベクターに包含するのに好適なDNA配列である。

    下流の翻訳可能なDNA配列は繊維状ファージ膜アンカーをコードする。 好適な膜アンカーは、繊維状ファージM13、f1、fd等の等価な繊維状ファージから取得することができる。 好適な膜アンカードメインは、遺伝子IIIおよび遺伝子VIIIによりコードされるコート蛋白質に認められる。 よって、下流の翻訳可能なDNA配列は、繊維状ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIコートポリペプチドの膜アンカードメインに対応する、また好ましくは同一のアミノ酸残基配列をコードする。
    繊維状ファージコート蛋白質の膜アンカードメインはコート蛋白質のカルボキシ末端領域の一部であり、脂質二重膜を縦断する疎水性アミノ酸残基の領域、および通常は膜の細胞質面に認められ膜から延在する荷電したアミノ酸残基の領域を含む。

    ファージf1において、遺伝子VIIIコート蛋白質の膜縦断領域は残基Trp−26乃至Lys−40からなり、細胞質領域はカルボキシ末端11残基41〜52からなる。 オーカワら、J. Biol. Chem. 256:9951−9958(1981)。 例示的な膜アンカーはcpVIIIの残基26〜40よりなるものとし得る。
    よって、好適な膜アンカードメインのアミノ酸残基配列は、M13繊維状ファージ遺伝子IIIコート蛋白質(cpIIIとしても示される)から誘導される。 好適なcpIII誘導膜アンカーは、配列番号:16の残基1〜残基211に示す配列を有する。 遺伝子IIIコート蛋白質は、典型的には約4〜6コピーのコート蛋白質でファージ粒子の一端にて成熟繊維状ファージ上に存在する。
    他の好適な膜アンカードメインのアミノ酸残基配列は、M13繊維状ファージ遺伝子VIIIコート蛋白質(cpVIIIとしても示される)から誘導される。 好適なcpVIII誘導膜アンカーは、配列番号:17の残基1〜残基50に示す配列を有する。 遺伝子VIIIコート蛋白質は、典型的には約2500〜3000コピーのコート蛋白質でファージ粒子の大部分に渡って成熟繊維状ファージ上に存在する。

    繊維状ファージ粒子の構造、そのコート蛋白質および粒子集成の詳細な記載については、ラチェトら、Microbiol. Rev. 50:401−427(1986)による総説およびモデルら「バクテリオファージ:第2巻」中、アール・カレンダー編、プレナム・パブリシング社、pp. 375−456(1988)を参照することができる。
    この発明のDNA発現ベクターのカセットは、翻訳可能なDNA配列(挿入物DNA)の挿入に際して適切な宿主中でこの発明の融合ポリペプチドを発現し得るヌクレオチドの配列を形成するベクターの領域である。 ヌクレオチドの発現コンピテント配列はシストロンとして言及する。 よって、カセットは、上流および下流の翻訳可能なDNA配列に機能的に結合したDNA発現調節要素からなる。
    翻訳可能なDNA配列がその目的に適合したヌクレオチドの配列を介して上流および下流の配列の間に方向性をもって挿入(方向性をもって連結)された場合にシストロンが形成される。 得られる3つの翻訳可能なDNA配列、すなわち上流、挿入および下流の配列は、全て同じリーディングフレームで機能的に結合されている。

    DNA発現調節配列は、構造遺伝子産物を発現するための一組のDNA発現シグナルからなり、周知のようにシストロンが構造遺伝子産物を発現することができるようにシストロンに機能的に結合した5′および3′要素の両者を含む。 5′調節配列は、転写を開始するプロモーターおよび上流の翻訳可能なDNA配列の5′末端に機能的に結合したリボソーム結合部位を特定する。
    イー・コリにおける遺伝子発現の高いレベルを達成するためには、大量のmRNAを生成する強力なプロモーターのみならず、mRNAが効率的に翻訳されるのを確実にするリボソーム結合部位を使用することが必要である。 イー・コリにおいては、リボソーム結合部位は、開始コドン(AUG)および開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する3〜9ヌクレオチド長さの配列を含む[シヤインら、Nature,254:34(1975)]。 シャイン・ダルガーノ(SD)配列と呼ばれる配列AGGAGGUは、イー・コリ16SmRNAの3′末端に相補的である。 mRNAに対するリボソームの結合およびmRNAの3′末端の配列は幾つかの因子により影響され得る:

    (i)SD配列と16StRNAの3′末端との間の相補性の程度。
    (ii)SD配列とAUGとの間にある距離および恐らくDNA配列[ロバーツら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,76:760(1979a)、ロバーツら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,76:5596(1979b)、グアレンテら、Science,209:1428(1980)、およびグアレンテら、Cell,20:543(1980)]。 この距離を系統的に変化させた際のプラスミドにおける遺伝子の発現のレベルを測定することにより至適化が達成される。 異なるmRNAの比較により、位置−20〜+13の統計的に好適な配列があることが示されている(AUGのAを位置0とする)[ゴールドら、Annu. Rev. Microbiol. 35:365(1981)]。 リーダー配列は翻訳に劇的に影響を与えることが示された(ロバーツら、1979a,b、前記)。
    (iii)リボソーム結合に影響を与えるAUGに後続するヌクレオチド配列[タニグチら、J. Mol. Biol. 118:533(1978)]。
    有用なリボソーム結合部位を以下の表2に示す。

    3′調節配列は、下流の翻訳可能なDNA配列に機能的に結合しフレームの合った少なくとも1つの終止(停止)コドンを特定する。
    よって、この発明のDNA発現ベクターは、この発明の融合ポリペプチドを発現し得るシストロンを生成するベクターのカセット部分に翻訳可能なDNA配列をクローン化する系を提供するものである。
    好適な態様では、DNA発現ベクターにより、ベクターに存在する2つの別のカセットに2つの翻訳可能なDNA配列を独立にクローン化(挿入)し、ヘテロ二量体受容体の両者のポリペプチドまたはヘテロ二量体受容体からなるポリペプチドのリガンド結合部分を発現する2つの別のシストロンを形成する系が提供される。 2つのシストロンを発現させるDNA発現ベクターは、ジシストロン性発現ベクターとして言及する。

    よって、この発明の好適なDNA発現ベクターは、先に詳細に説明したカセットに加えて、第2の融合ポリペプチドを発現させる第2のカセットを含む。 第2のカセットは、先に特定したように典型的にはカセットのリーディングフレームの少なくとも一つの停止コドンを特定するベクターの下流のDNA配列に対する方向性をもった連結に適合したヌクレオチドの配列を介してその3′末端で機能的に結合した分泌シグナルをコードする第2の翻訳可能なDNA配列を含む。 第2の翻訳可能なDNA配列は、前記特定した5′要素を形成するDNA発現調節配列にその5′末端で機能的に結合させる。 第2のカセットは、翻訳可能なDNA配列(挿入物DNA)の挿入に際して、挿入物DNAによりコードされるポリペプチドとの分泌シグナルの融合体からなる第2の融合ポリペプチドを発現することができる。

    好適な態様では、DNA発現ベクターは、本発明の教示によりゲノムをカプセル化する繊維状ファージ粒子の形態で便利に操作するよう設計する。 この態様では、DNA発現ベクターは、適切な遺伝的相補の提示に際してベクターが一本鎖複製形態の繊維状ファージとして複製して繊維状ファージ粒子にパッケージされ得るように繊維状ファージ複製開始点を特定するヌクレオチド配列更に含む。 この特徴は、ファージ粒子の集団を構成する他の粒子から粒子およびこれに含まれるベクターが続いて分離されるためにファージ粒子へとパッケージされるDNA発現ベクターの能力を与えるものである。
    繊維状ファージ複製開始点は、周知のように複製の開始、複製の終止および複製により生成される複製形態のパッケージングの部位を特定するファージゲノムの領域である。 例えば、ラシェトら、Microbiol. Rev. 50:401−427(1986)およびホリウチ、J. Mol. Biol. 188:215−223(1986)を参照することができる。

    本発明で使用するのに好適な繊維状ファージ複製開始点は、M13、f1またはfdファージ複製開始点である。 特に好適なのは、配列番号:117に示され、ショートら、Nucl. Acids Res. 16:7583−7600(1988)に記載された配列を有する繊維状ファージ複製開始点である。 好適なDNA発現ベクターは、実施例1に記載するジシストロン性発現ベクターpCOMB8、pCKAB8、pCOMB2−8、pCOMB3、pCKAB3、pCOMB2−3およびpCOMB2−3′である。
    この発明のベクターを挿入物DNAを含むものとして操作し、これにより融合ポリペプチドを発現する能力を有するものとし得る限り、1つの態様は挿入物DNAを含む先に記載したベクターを企図するものである。 抗体遺伝子を含む特に好適なベクターは実施例に記載する。

    D. ポリペプチド
    他の態様では、本発明は、アミノ末端分泌シグナルドメインおよびカルボキシ末端繊維状ファージコート蛋白質膜アンカードメインが隣接する挿入物ドメインからなるポリペプチドを企図する。
    このポリペプチドは、原核分泌シグナルドメインと繊維状ファージ膜アンカードメインとの間に位置する受容体蛋白質のリガンド(エピトープ)結合ドメインを特定するアミノ酸残基配列から構成される受容体ドメインを有する融合ポリペプチドである。 すなわち、融合ポリペプチドの挿入物ドメインは受容体のリガンド結合ドメインであり、またリガンド結合受容体ポリペプチドとしても言及するものである。
    ポリペプチドが受容体ドメインを有する限り、これはここでは受容体としても言及する。 他の好適な態様では、分泌シグナルドメインはここに記載するようにpelB分泌シグナルである。 更に、ここに記載するように繊維状ファージcpIIIまたはcpVIII蛋白質から膜アンカードメインを誘導するのが好適である。

    好適な態様では、受容体蛋白質は、リガンド結合ヘテロ二量体受容体のポリペプチド鎖である。 さらに好ましくは、ヘテロ二量体受容体はエピトープ結合複合体である。
    好適なヘテロ二量体受容体には、免疫グロブリン、クラスIまたはIIの主要組織適合性抗原、リンパ球受容体、インテグリン等のヘテロ二量体受容体が包含される。 免疫グロブリン(抗体分子)はFabまたはFv断片の形態、または重鎖および軽鎖の可変ドメインの領域を含む抗体分子の他の部分とすることができる。
    1つの態様では、この発明のポリペプチドは、アミノからカルボキシ末端の方向で示す式によって表し得るアミノ酸残基配列を有する:
    (F1) NH 2 −O−(U) m −V−(X) n −Z−COOH
    式中、Oは分泌シグナルを特定するアミノ酸残基配列を示し、Uは第1のスペーサーポリペプチドを示し、Vは受容体ドメイン(リガンド結合受容体ポリペプチド)を特定するアミノ酸残基配列を示し、Xは第2のスペーサーポリペプチドを示し、Zは繊維状ファージコート蛋白質膜アンカーを特定するアミノ酸残基配列を示すが、ただし、mは0または1の整数であり(ここでmが0の場合はUは存在せず、mが1の場合はUは存在する)、nは0または1である(ここでnが0の場合はXは存在せず、nが1の場合はXは存在する)。

    式(F1)において、分泌シグナルおよび繊維状ファージコート蛋白質膜アンカーはここに前記した通りである。 よって、好適なポリペプチドは、そのアミノ末端で分泌シグナルに機能的に結合しそのカルボキシ末端で膜アンカーに機能的に結合した抗体可変鎖ドメイン誘導ポリペプチドからなる。
    この態様の好適なポリペプチドは、可変ドメインとして主として抗体重鎖ポリペプチドよりなる。 この点について、「主としてよりなる」とは、ポリペプチドが抗体軽鎖ポリペプチドまたはその部分を含有しないことを意味する。 特に好適なのは式(F1)によるポリペプチドであり、この場合前記したようにZはcpIIIまたはcpVIII膜アンカーを特定する。 他の好適な態様では、分泌シグナルはpelB分泌シグナルとする。
    ポリペプチドについてここで使用するように、「機能的に結合」という記載は、ポリペプチド断片またはポリペプチドにより表される蛋白質ドメインが、好ましくはポリペプチド中で結合される隣接するアミノ酸の間の慣用されたアミド結合によって単一のポリペプチド重合体へと共有結合により接続されたことを意味する。

    1つの態様では、Vはヘテロ二量体受容体分子の鎖のリガンド結合ドメインを特定するアミノ酸配列残基であり、好ましくは免疫グロブリン可変領域ポリペプチドである。 特に好適なポリペプチドVはV HまたはV Lポリペプチドである。
    最も好適なのは、Vが免疫グロブリンV Hポリペプチド(抗体重鎖ポリペプチド)であり、mおよびnの両者がゼロのポリペプチドである。
    他の態様では、UまたはXは、ポリペプチドの開裂の部位を特定するプロトロンビン、因子X等のような前駆体蛋白質に認められるアミノ酸の配列のような蛋白質加水分解開裂部位を特定することができる。 開裂部位を有する融合ポリペプチドは、それが付着しているファージ粒子からポリペプチドを精製する手段を与える。
    ポリペプチドスペーサーUおよびXは、それぞれ約1〜6アミノ酸残基の長さのアミノ酸残基の全ゆる配列を有することができる。 典型的には、スペーサー残基はポリペプチド中に存在し、この発明のDNA発現ベクターを使用するここに開示する方法によりポリペプチドを製造する場合に必要な連続的なリーディングフレームを収容する。

    本発明の受容体は、競合的に阻害されるその能力により証明されるように、抗原、ハプテン、酵素基質等のような予備選択したまたは所定のリガンドに特異的な結合部位を有する構造を想定するものである。 1つの態様では、この発明の受容体は、予備選択した抗原と特異的に結合して抗原と単離されるべき複合体の結合部位との間の十分に強力な結合を有する複合体を形成する抗原結合部位を形成するリガンド結合ポリペプチドである。 受容体が抗原結合ポリペプチドである場合、その親和力または結合力は一般に10 5-1より大きく、更に通常は10 6より大きく、好ましくは10 8-1より大きい。
    他の態様では、対象発明の受容体は基質に結合し、基質からの生成物の形成を触媒する。 触媒性受容体のリガンド結合部位のトポロジーは、基質に対するその親和力(結合定数またはpKa)よりその予備選択した活性について恐らくより重要であり、対象触媒性受容体は予備選択した基質について一般に10 3-1より大きく、更にに通常は10 5-1または10 6-1より大きく、好ましくは10 7-1より大きい結合定数を有する。

    好ましくは対象発明により製造される受容体はヘテロ二量体であり、したがって通常は2つの異なるポリペプチド鎖から構成され、これらは共にいずれかのポリペプチド単独、すなわち単量体としての親和力または結合定数と異なり恐らくより高い予備選択したリガンドに対する結合親和力または結合定数を有する構造を想定するものである。 ヘテロ二量体受容体は、リガンド結合ヘテロ二量体受容体としても言及し、リガンドに結合するその能力を内包するものとする。
    よって、好適な態様は、第1および第2のポリペプチドからなるリガンド結合ヘテロ二量体受容体を企図する。 第1のポリペプチドには、アミノ末端原核分泌シグナルドメインおよびカルボキシ末端繊維状ファージ膜アンカードメインが隣接する。 第2のポリペプチドはアミノ末端原核分泌シグナルドメインに融合する。 特に好適なリガンド結合ヘテロ二量体受容体は、ここに記載するように原核分泌シグナルを利用するものである。 更に、好適なリガンド結合ヘテロ二量体受容体は、ここに記載するようにcpIIIまたはcpVIIIから誘導された膜アンカーを含む。

    リガンド結合ヘテロ二量体受容体は、エピトープ結合複合体として言及し、複合体がリガンド中に存在するエピトープと結合する能力を有することを内包するものとし、ここに記載するように2つのポリペプチドの結合(複合化)によりヘテロ二量体受容体が形成されることを内包するものとする。
    異なるポリペプチド鎖の一方または双方は、好ましくは免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の可変領域から誘導する。 典型的には、軽鎖(V L )および重鎖(V H )可変領域からなるポリペプチドを、予備選択したリガンドを結合するために共に用いる。
    よって、1つの態様では、第1のポリペプチドが抗体重鎖ポリペプチドであり第2のポリペプチドが軽鎖ポリペプチドであるリガンド結合ヘテロ二量体受容体を企図する。 他の態様では、第1のポリペプチドが抗体軽鎖ポリペプチドであり第2のものが抗体重鎖ポリペプチドであるリガンド結合ヘテロ二量体受容体を企図する。

    対象発明により製造される受容体は、単量体並びに多量体形態で活性とすることができ、ホモ体またはヘテロ体とするが、好ましくはヘテロ体とする。 例えば、本発明により製造されるV HおよびV Lリガンド結合ポリペプチドは、ヘテロ二量体において有利に組合せていずれかの活性を変調させるかヘテロ二量体に独特の活性を生成することができる。
    個々のリガンドポリペプチドをV HおよびV Lとして言及する場合、ヘテロ二量体はFvとして言及することができる。 しかしながら、V HはV Hに加えて重鎖不変領域の実質的に全部または一部を含むことができることを理解すべきである。 同様に、V LはV Lに加えて軽鎖不変領域の実質的に全部または一部を含むことができる。 重鎖不変領域の一部を含むV Hおよび軽鎖不変領域の実質的に全部を含むV Lから構成されるヘテロ二量体はFab断片という用語とする。 Fabの製造は、Fvと比較してFabに含まれる付加的な不変領域配列がV HおよびV L相互作用を安定化し得るため、幾つかの状況において有利たり得る。 この種の安定化は、Fabが抗原に対してより高い親和力を有することを生起し得る。 更に、Fabは当業界でより普通に使用されており、よって検索手順においてFabを特異的に認識するのに利用可能なより多くの市販の抗体がある。

    個々のV HおよびV Lポリペプチドは、その天然に存在する長さと等しいか実質的に等しい長さで製造することができる。 しかしながら、好適な態様では、V HおよびV Lポリペプチドが有し得るのは125アミノ酸残基未満、更に通常には約120アミノ酸残基未満であり、一方正常に有するのは60アミノ酸残基を越え、通常は約95アミノ酸残基を越え、更に通常には約100アミノ酸残基を越える。 好ましくは、V Hは約110〜230アミノ酸残基の長さとすることができ、またV Lは約95〜約214アミノ酸残基の長さとすることができる。 Fabを形成するのに十分に長いV HおよびV L鎖が好適である。
    アミノ酸残基配列は、関連する特定のイディオタイプに依存して広範に変動し得る。 通常、約60〜75アミノ酸残基により離間しジスルフィド結合により接続された少なくとも2つのシステインがある。 対象発明により製造されるポリペプチドは、通常は免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の可変領域のイディオタイプの実質的なコピーであるが、幾つかの状況によってはポリペプチドは、所望の活性を有利に改良するためのアミノ酸残基配列における無作為の変異を含むことができる。

    幾つかの状況においては、V HおよびV Lポリペプチドの共有架橋結合を与えるのが望ましく、これはカルボキシ末端にシステイン残基を設けることにより達成することができる。 ポリペプチドは通常は免疫グロブリン不変領域を含まないものとして調製し得るが、DNA合成プライマーの有利な選択の結果として小部分のJ領域を含むものとし得る。 D領域は、通常はV Hの転写体に含むものとし得る。
    典型的にはV HおよびV LポリペプチドのC末端領域はN末端より多様な配列を有し得るが、本戦略に基き、更に修飾して通常に存在するV HおよびV L鎖の変動を可能とすることができる。 合成ポリヌクレオチドを用いて超可変領域における1以上のアミノ酸を変動させることができる。

    E. ライブラリーを製造する方法
    1. 一般的合理性
    1つの態様では、本発明は、単一のベクター系を使用して遺伝子レパートリーから予備選択したリガンド結合特異性を同時にクローン化し検索する系を提供するものである。 この系は、クローン化および検索の方法論の結合を与え、2つの要求性を有する。 第1に、イー・コリのような試験管内発現宿主におけるヘテロ二量体受容体のポリペプチド鎖のその発現は、機能性ヘテロ二量体受容体が集成してリガンドに結合する受容体を生成することができるように2つのポリペプチド鎖の同時発現を必要とする。 第2に、予備選択したリガンド結合能力についてのライブラリーの単離した構成員のその検索は、発現した受容体分子の結合能力をライブラリーから構成員をコードする遺伝子を単離する便利な手段と相関(結合)させる手段を必要とする。

    発現と検索との結合は、細菌細胞のペリプラズムを融合ポリペプチドの標的として機能性受容体の集成を可能とすることと、ファージ集成の際に繊維状ファージ粒子のコートを融合ポリペプチドの標的として意図するライブラリー構成員の便利な検索を可能とすることとの組合せにより達成される。 ペリプラズムを標的とすることは、この発明の融合ポリペプチド中の分泌シグナルドメインの存在により与えられる。 ファージ粒子を標的とすることは、この発明の融合ポリペプチド中の繊維状ファージコート蛋白質膜アンカードメイン(すなわちcpIIIまたはcpVIII誘導膜アンカードメイン)の存在により与えられる。
    本発明は、1つの態様で、DNA分子のライブラリーを製造する方法を記載するものであり、それぞれのDNA分子は、繊維状ファージ粒子の表面上で融合ポリペプチドを発現するシストロンからなる。 この方法は、(a)連結緩衝液中で(i)ポリペプチドコード遺伝子のレパートリーおよび(ii)融合ポリペプチド発現シストロンを形成するのに適合した線状形態の複数のDNA発現ベクターを組合せることにより連結混合物を形成し、(b)遺伝子のレパートリーが複数のベクターに機能的に結合(連結)してライブラリーを形成するのに十分な時間期間の間混合物を連結条件に供する工程からなる。

    この態様では、ポリペプチドコード遺伝子のレパートリーは二本鎖(ds)DNAの形態であり、レパートリーのそれぞれの構成員は方向性をもった連結に適合した付着末端を有する。 更に、複数のDNA発現ベクターは、それぞれ(a)共通のリーディングフレームでポリペプチド遺伝子を方向性をもって受容するよう適合し、(b)それぞれの上流および下流の翻訳可能なDNA配列に機能的に結合した上流および下流の付着末端を有する線状DNA分子である。 上流の翻訳可能なDNA配列は分泌シグナル、好ましくはpelB分泌シグナルをコードし、下流の翻訳可能なDNA配列は、この発明のポリペプチドのためここに記載するように繊維状ファージコート蛋白質膜アンカーをコードする。 また翻訳可能なDNA配列も、ここに記載するDNA発現ベクターについて特定するようにそれぞれ上流および下流のDNA発現調節配列に機能的に結合する。
    このようにして製造したライブラリーは、ここに記載する発現および検索方法によりライブラリーにおいて表されるシストロンの結果的なライブラリーによりコードされる融合ポリペプチドの発現および検索に利用することができる。

    2. 遺伝子レパートリーの製造
    遺伝子レパートリーは異なる遺伝子、好ましくはポリペプチドコード遺伝子(ポリペプチド遺伝子)の集合体であり、天然の供給源から単離することができ、または人工的に生成することができる。 好適な遺伝子レパートリーは保存された遺伝子から構成される。 特に好適な遺伝子レパートリーは、二量体受容体分子の構成員をコードするいずれかまたは両方の遺伝子から構成される。
    本発明を実施するのに有用な遺伝子レパートリーは、少なくとも10 3 、好ましくは少なくとも10 4 、更にに好ましくは少なくとも10 5 、最も好ましくは少なくとも10 7の異なる遺伝子を含む。 遺伝子のレパートリーの多様性を評価する方法は当業者に周知である。

    よって、1つの態様では、本発明は、予備選択した活性を有する二量体受容体をコードする一対の遺伝子を保存された遺伝子のレパートリーから単離する方法を企図する。 更に、クローン化した遺伝子の対の発現および得られる発現した二量体受容体蛋白質の単離も記載する。 好ましくは、受容体とし得るのはリガンドに結合し得るヘテロ二量体ポリペプチド、例えば抗体分子またはその免疫学的に活性な部分、細胞受容体、保存された遺伝子の系統群の構成員の1つによりコードされた細胞付着蛋白質、すなわち少なくとも約10ヌクレオチド長さの保存されたヌクレオチド配列を含む遺伝子である。

    二量体受容体の異なるポリペプチド鎖をコードする例示的な保存された遺伝子系統群は、免疫グロブリン、クラスIまたはIIの主要組織適合性複合体抗原、リンパ球受容体、インテグリン等をコードするものである。
    幾つかの方法を使用し、保存された遺伝子のレパートリーに属するものとして遺伝子を同定することができる。 例えば、サザン、J. Mol. Biol. 98:503(1975)に記載された方法を使用し、低いストリンジェント性条件下でハイブリダイゼーションプローブとして単離した遺伝子を使用し、ゲノムDNAに存在する保存された遺伝子のレパートリーの他の構成員を検出することができる。 ハイブリダイゼーションプローブとして使用した遺伝子がゲノムの多数の制限エンドヌクレアーゼ断片にハイブリダイズする場合、その遺伝子は保存された遺伝子のレパートリーの構成員である。

    免疫グロブリン
    免疫グロブリンまたは抗体分子は、IgD、IgG、IgA、IgMおよびIgEのような幾つかの種類の分子を包含する大きな系統群の分子である。 抗体分子は典型的には2つの重(H)および軽(L)鎖から構成され、図1に示すようにそれぞれの鎖に存在する可変(V)および不変(C)領域の両者を備える。 ヒトIgG重鎖およびヒトカッパ軽鎖の説明図をそれぞれ図2および3、4に示す。 免疫グロブリンの幾つかの異なる領域は、免疫グロブリンレパートリーを単離するのに有用な保存された配列を含む。 例示的な保存された配列を示す広範なアミノ酸および核酸配列データが、カバトら、「免疫学的に興味ある蛋白質の配列」、ナショナル・インスチチュート・オブ・ヘルス、ベセスダ、MD、1987により免疫グロブリン分子について編集されている。

    H鎖のC領域は特定の免疫グロブリンの種類を特定する。 したがって、H鎖のC領域からのここに特定するような保存された配列を選択すると、結果的に選択されたC領域の免疫グロブリンの種類の構成員を有する免疫グロブリン遺伝子のレパートリーの調製が与えられる。
    HまたはL鎖のV領域は、典型的には保存された配列の長さを含む相対的に低い程度の可変性をそれぞれ含む4つのフレーム構造(FR)領域からなる。 V H鎖のFR1およびFR4(J領域)フレーム構造領域由来の保存された配列の使用は好適な例示的な態様であり、ここでは実施例に記載する。 フレーム構造領域は典型的には幾つかまたは全ての免疫グロブリンの種類に渡って保存されており、よってこれに含まれる保存された配列は、幾つかの免疫グロブリンの種類を有するレパートリーを調製するのに特に適切である。

    主要組織適合性複合体
    主要組織適合性複合体(MHC)は、クラスI、クラスIIまたはクラスIIIのMHC分子として言及される幾つかのクラスの分子を含む広範な系統群の蛋白質をコードする大きな遺伝子座である。 パウルら、「基礎免疫学」中、ラベン・プレス、NY、pp. 303−378(1984)。
    クラスIのMHC分子は、保存された系統群を表す多形性群の移植抗原であり、この場合抗原は重鎖および非MHCコード軽鎖から構成される。 重鎖は、N、C1、C2膜および細胞質領域と命名された幾つかの領域を含む。 本発明で有用な保存された配列は主としてN、C1およびC2領域に認められ、カバトら、前記では「不変種残基」の連続配列として同定されている。
    クラスIIのMHC分子は、免疫応答に関与する多形性抗原の保存された系統群からなり、αおよびβ鎖から構成されている。 αおよびβ鎖をコードする遺伝子は、MHCクラスIIαまたはβ鎖レパートリーを製造するのに適切な保存された配列を含む幾つかの領域をそれぞれ含む。 例示的な保存されたヌクレオチド配列には、A1領域のアミノ酸残基26〜30、A2領域の残基161〜170および膜領域の残基195〜206(全てα鎖のもの)をコードするものが包含される。 保存された配列は、それぞれアミノ酸残基41〜45、150〜162および200〜209をコードするヌクレオチド配列にてβ鎖のB1、B2および膜領域にも存在する。

    リンパ球受容体および細胞表面抗原
    リンパ球は、T細胞受容体、Thy−1抗原および多数のT細胞表面抗原(モノクローナル抗体OKT4(leu3)、OKT5/8(leu2)、OKT3、OKT1(leu1)、OKT11(leu5)、OKT6およびOKT9により特定される抗原を含む)を含む幾つかの系統群の蛋白質をその細胞表面上に含む。 パウル、前記、pp. 458−479。
    T細胞受容体は、T細胞の表面上に認められる抗原結合分子の系統群について使用される用語である。 系統群としてのT細胞受容体は、その多様性において免疫グロブリンに類似する多形性結合特異性を示す。 成熟したT細胞受容体は、それぞれ可変(V)および不変(C)領域を有するαおよびβ鎖から構成される。
    遺伝的機構および機能において免疫グロブリンに対してT細胞受容体が有する類似性は、T細胞受容体が保存された配列の領域を含むことを示す。 ライら、Nature,331:543−546(1988)。
    例示的な保存された配列には、α鎖のアミノ酸残基84〜90、β鎖のアミノ酸残基107〜115、およびγ鎖のアミノ酸残基91〜95および111〜116をコードするものが包含される。 カバトら、前記、p. 279。

    インテグリンおよび付着
    細胞付着に関与する付着性蛋白質は、インテグリンと命名された関連する蛋白質の大きな系統群の構成員である。 インテグリンはβおよびαサブユニットから構成されるヘテロ二量体である。 インテグリン系統群の構成員には、細胞表面糖蛋白質血小板受容体GpIIb−IIIa、ビトロネクチン受容体(VnR)、フィブロネクチン受容体(FnR)および白血球付着受容体LFA−1、Mac−1、Mo−1および60.3が包含される。 ロウスラチら、Science,238:491−497(1987)。 核酸および蛋白質配列データは、特にGpIIb−IIIa、VnRおよびFnRのβ鎖の間、VnR、Mac−1、LFA−1、FnRおよびGpIIb−IIIaのαサブユニットの間でこれらの系統群の構成員に存在する保存された配列の領域を示す。 スズキら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83:8614−8618,1986、ギンスバーグら、J. Biol. Chem. 262:5437−5440,1987。

    種々の周知の方法を用いて有用な遺伝子レパートリーを製造することができる。 例えば、V HおよびV L遺伝子レパートリーは、抗体生産細胞、すなわちBリンパ球(B細胞)、好ましくは脊椎動物の循環系または脾臓に認められるもののような再構成されたB細胞の異種起源集団からV HおよびV LコードmRNAを単離することにより製造することができる。 再構成されたB細胞は、その上に隣接して位置する免疫グロブリン遺伝子V、DおよびJ領域転写体と共に細胞中のmRNAの存在により証明されるように、免疫グロブリン遺伝子位置転移、すなわち再配置が生起したものである。 典型的には、B細胞は1〜100mlの血液のサンプルとして集められ、これは通常は10 6 B細胞/mlを含む。

    幾つかの場合、予備選択した活性についてレパートリーを偏向させるのが望ましく、例えば種々の段階の年齢、健康状態および免疫応答のいずれか1つにおける脊椎動物からの核酸細胞(起源細胞)を供給源として使用することによる。 例えば、再構成したB細胞を集める前の健康な動物の繰返し免疫化により、結果的に高い親和力の受容体を製造する遺伝的材料について集積されたレパートリーを取得することができる。 ムリナックスら、Proc. Natl. Acad. Sci,USA,87:8095−8099(1990)。 逆に、再構成したB細胞をその免疫系が先に攻撃されていない健康な動物(すなわち素朴な免疫系)から集めると、結果的に高い親和力のV Hおよび/またはV Lポリペプチドの生産に対して偏向していないレパートリーを製造することとなる。
    核酸を取得する細胞の集団の遺伝的異種性が大きくなればなる程、本発明の方法により検索するのに利用可能とし得る免疫額的レパートリー(V HおよびV Lコード遺伝子からなる)の多様性が大きくなることを銘記すべきである。 よって、異なる個体、特に免疫学的に有意な年齢の相異を有するものからの細胞、および異なる株、属または種の個体からの細胞を有利に組合せてレパートリーの異種性(多様性)を増加させることができる。

    よって、1つの好適な態様では、活性が探索される抗原性リガンド(抗原)、すなわち予備選択した抗原により免疫化または部分的に免疫化した脊椎動物、好ましくは哺乳動物から起源細胞を取得する。 免疫化は従来同様に実施することができる。 動物における抗体力価をモニターして所望する免疫化の段階を決定することができ、この段階は所望するレパートリーの集積または偏向の量に対応する。 部分的に免疫化した動物は典型的には唯一の免疫化を受容し、応答が検出された直後にこれらの動物から細胞を集める。 十分に免疫化した動物はピーク力価を示し、これは通常は2〜3週の間隔で宿主動物に抗原を1回以上繰返し注射することにより達成される。 通常は最後の攻撃の3〜5日後に脾臓を除去し、脾臓細胞の遺伝的レパートリー(その約90%が再構成されたB細胞である)を標準的な手順を使用して単離する。 「分子生物学の現代の手順」、アウスベルら編、ジョン・ウイレイ・アンド・ソンズ、NYを参照することができる。 V HおよびV Lポリペプチドをコードする核酸は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMを生産する細胞から、最も好ましくはIgMおよびIgG生産細胞から誘導することができる。

    免疫グロブリン可変領域遺伝子を多様な集団としてクローン化することのできるゲノムDNAの断片を調製する方法は当業界で周知である。 例えば、ヘルマンら、Methods In Enzymol,152:180−183(1987)、フリシャウフ、Methods In Enzymol,152:183−190(1987)、フリシャウフ、Methods In Enzymol,152:190−199(1987)、およびジレラらMethods In Enzymol,152:199−212(1987)を参照することができる。 (ここに引用した文献の教示を参考によりここに取入れる。)
    所望の遺伝子レパートリーは、可変領域を発現する遺伝子を含むゲノム材料または可変領域の転写体を表すメッセンジャーRNA(mRNA)のいずれかから単離することができる。 非再構成Bリンパ球以外からのゲノムDNAを使用する際の困難性は、可変領域をコードする配列を並置することにあり、この場合配列はイントロンによって分離される。 適切なエクソンを含むDNA断片を単離しなければならず、イントロンを切出し、その後適切な順序および適切な方向性でエクソンを接合する。 大部分についてこれは困難であるため、再構成したB細胞を用いる他の教示が選択方法となり得るが、これはV、DおよびJ免疫グロブリン遺伝子領域が位置転移して隣接するようになるため、全可変領域について配列が連続的(イントロンを含まない)となるからである。

    mRNAを利用する場合、RNase阻害条件下に細胞を溶解することとなる。 1つの態様では、第1の工程は全細胞RNAを単離することである。 その後オリゴdTセルロースカラムへのハイブリダイゼーションによりポリA+mRNAを選択することができる。 重鎖および/または軽鎖ポリペプチドをコードするmRNAの存在は、その後適切な遺伝子のDNA一本鎖とのハイブリダイゼーションにより検定することができる。 便利には、V HおよびV Lの不変部分をコードする配列をポリヌクレオチトプローブとして使用することができ、この配列は利用可能な起源から取得することができる。 例えば、アーリーとフッド、「遺伝子操作」、セトロウとホラエンダー編、第3巻、プレナム・パブリシング社、NY(1981)、第157〜188頁、およびカバトら、「免疫学的に興味あるものの配列」、ナショナル・インスチチュート・オブ・ヘルス、ベセスダ、MD(1987)を参照することができる。

    好適な態様では、全細胞mRNAを含有する調製物を、V Hおよび/またはV LコードmRNAの存在について最初に集積する。 集積は、典型的には全mRNA調製物またはその部分的に精製したmRNA生成物を、ここに記載するようにポリヌクレオチド合成プライマーを用いるプライマー延長反応に供することにより行う。 ポリヌクレオチド合成プライマーを使用するV HおよびV L遺伝子レパートリーを製造する例示的な方法は、PCT出願番号PCT/US90/02836(国際公開番号WO90/14430)に記載されている。 遺伝子レパートリーを製造する特に好適な方法は、ここに記載するようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてプライマーとして予備選択したオリゴヌクレオチドを使用してPCR反応生成物を形成することによるものである。

    好適な態様では、予備選択した抗原に対して単離したB細胞を試験管内で免疫化する。 試験管内免疫化は、抗原刺激に応答するエピートープ特異的培養B細胞のクローン展開として特定される。 最終結果は免疫グロブリンレパートリーにおける抗原特異的B細胞の頻度を増加させるものであり、これにより所望の特異性の抗体を発現するクローンを同定するために検索する必要のある発現ライブラリーにおけるクローンの数が減少する。 試験管内免疫化の利点は、毒性または弱い免疫原を含む治療的に価値ある無制限の数の抗原に対してヒトモノクローナル抗体を生成することができる点である。 例えば、腫瘍関連抗原、リウマチ性因子および組織適合性抗原の多形性抗原決定基に特異的な抗体を製造することができ、これは免疫化した動物中ては顕在化させることはてきないものてある。 更に、生体内では通常は抑制されている免疫応答を生成することが可能たり得る。

    試験管内免疫化を使用して一次または二次免疫応答のいずれも生起することができる。 抗原に対するB細胞の最初の露呈に起因する一次免疫応答の結果、エピトープ特異的細胞のクローン展開および低乃至中の見かけの親和力定数(10 6 〜10 8-1 )を有するIgM抗体の分泌に至る。 ヒト培養脾臓および扁桃リンパ球の一次免疫を使用し、細胞、ペプチド、マクロ分子、ハプテンおよび腫瘍関連抗原を含む多様な抗原に対するモノクローナル抗体を製造することができる。 免疫化した供与体に由来する記憶B細胞を培養において刺激し、血清陽性個体から誘導した過敏リンパ球をクローン展開することによって特にウイルス抗原に対して高い親和力のIgGイディオタイプの抗体(>10 9-1 )のクローン展開および生産を特徴とする二次免疫応答を生起することもできる。
    1つの態様では、末梢血液リンパ球で、抗原特異的B細胞活性化を下方変調すると見られる種々の細胞溶解細胞を枯渇させる。 向リソゾーム性ロイシンのメチルエステルを用いる処理によりリソゾームに富む下位集団(ナチュラルキラー細胞、細胞毒性およびサプレッサーT細胞、単球)を最初に除去すると、残余の細胞(B細胞、Tヘルパー細胞、アクセサリー細胞を含む)は試験管内免疫化に際して抗原特異的に応答する。 培養における抗体生産を誘導するためのリンホカイン要求性は、活性化され照射されたT細胞からの培養上澄により満たされる。

    試験管内免疫化に加えて、細胞選別処理(panning)(免疫親和力吸着)を使用して抗原特異的B細胞の頻度を更に増加させることができる。 固相抗原結合によりB細胞下位集団を選択する技術は十分に確立されている。 選別処理条件を至適化し、細胞表面部分を含む多様な抗原に対して高い親和力で結合するB細胞を選択的に集積することができる。 選別処理は単独で、またはいずれかの技術単独で得られるレベル以上に抗原特異的細胞の頻度を増加させるために試験管内免疫化と組合せて使用することができる。 B細胞の集積した集団から構成した免疫グロブリン発現ライブラリーは、抗原特異的抗体クローンを好感して偏向しており、よってより小さく複雑でないライブラリーからの所望の特異性を有するクローンの同定を可能とする。

    1つの態様では、供与体末梢血液リンパ球(PBL)を重篤な複合型免疫欠損(SCID)マウスに移し、その後SCIDマウスのB細胞から重鎖および軽鎖コード核酸を回収する前にSCIDマウス内で生体内で追加免疫して免疫応答を増加させることができる。 例えば、ドチョサルら、Nature,355:258−262(1992)を参照することができる。 この報告では、抗破傷風毒素(TT)力価を有する供与体からのヒトPBLをSCIDマウス宿主内で追加免疫した。 この結果得られた370,000クローンのライブラリーは、TTに結合できる表面Fabを発現する2つのファージ粒子を与えた。
    3. ポリヌクレオチドプライマーの調製
    プライマー、プローブおよびプライマー延長により合成される核酸断片または破片に関してここで使用するように「ポリヌクレオチド」という用語は、2以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド(好ましくは3を越える)から構成される分子として定義する。 その正確な大きさは多くの因子に依存し得るが、これは翻って使用の最終条件に依存する。

    ここで使用するように「プライマー」という用語は、核酸制限消化物から精製されたか合成的に製造されたかに拘らず、核酸鎖に相補的なプライマー延長生成物の合成を誘導する条件下、すなわちヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼ、逆転写酵素等のような重合のための試薬の存在下に適切な温度およびpHに置かれた場合に核酸合成の開始の地点として作用し得るポリヌクレオチドに言及するものである。 プライマーは最大の効率のために好ましくは一本鎖とするが、その他二本鎖形態とすることができる。 二本鎖の場合、延長生成物を調製するのに使用する前にプライマーを最初に処理してこれをその相補的鎖から分離する。 好ましくはプライマーはポリデオキシリボヌクレオチドとする。 プライマーは、重合のための試薬の存在下に延長生成物の合成を起動するのに十分に長くなければならない。 プライマーの正確な長さは多くの因子に依存し得るが、温度およびプライマーの起源が含まれる。 例えば、標的配列の複雑性により、ポリヌクレオチドプライマーは典型的には15〜25以上のヌクレオチドを含むが、より少ないヌクレオチドを含むことができる。 短いプライマー分子は、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために一般により冷たい温度を要求する。

    ここで使用するプライマーは、合成または増幅するそれぞれの特異的な配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。 これは、プライマーがそのそれぞれの鋳型鎖と非無作為にハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならないことを意味する。 したがって、プライマー配列は鋳型の正確な配列を反映してもしなくてもよい。 例えば、プライマー配列の残余を鎖に実質的に相補的として、非相補的なヌクレオチド断片をプライマーの5′末端に付着させることができる。 この種の非相補的な断片は、典型的にはエンドヌクレアーゼ制限部位をコードする。 また、プライマー配列が合成または増幅される鎖の配列と十分な相補性を有してこれと非無作為にハイブリダイズし、これによりポリヌクレオチド合成条件下で延長生成物を形成する限り、非相補的塩基またはより長い配列をプライマー中に散在させることができる。

    本発明のプライマーは、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター配列またはその相補体も含むことができる。 例えば、クリーグら、Nucl. Acids Res. 12:7057−70(1984)、スツジエルら、J. Mol. Biol. 189:113−130(1986)、および「分子クローン化:実験室マニュアル、第2版)、マニアティスら編、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1989)を参照することができる。
    DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターを含むプライマーを使用する場合、このプライマーを増幅されるポリヌクレオチド鎖にハイブリダイズさせ、イー・コリDNAポリメラーゼIまたはイー・コリDNAポリメラーゼのクレノウ(Klenow)断片のような誘導試薬を使用し、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターの第2のポリヌクレオチド鎖を完成させる。 RNAポリヌクレオチドおよびDNAポリヌクレオチドの生産の間で交番することにより出発ポリヌクレオチドを増幅する。

    プライマーは、RNA指向性RNAポリメラーゼについての鋳型配列または複製開始部位も含有し得る。 典型的なRNA指向性RNAポリメラーゼは、リザルジら、Biotechnology,6:1197−1202(1988)により記載されたQBレプリカーゼを含む。 RNA指向性ポリメラーゼは、鋳型配列または複製開始部位を含む少数の鋳型RNA鎖から多数のRNA鎖を製造する。
    これらのポリメラーゼは、典型的にはクラマーら、J. Mol. Biol. 89:719−736(1974)に記載されたように、鋳型鎖の百万倍の増幅を与えるものである。
    ポリヌクレオチドプライマーは、例えばホスホトリエステルまたはホスホジエステル法のような全ゆる適切な方法を使用して調製することができ、ナラングら、Meth. Enzymol. 68:90(1979)、米国特許第4,356,270号、およびブラウンら、Meth. Enzymol. 68:109(1979)を参照することができる。

    プライマーのヌクレオチド配列の選択は、核酸上における所望の受容体をコードする領域からの距離、使用するいずれかの第2のプライマーに関する核酸上におけるそのハイブリダイゼーション部位、それがハイブリダイズすべきレパートリーにおける遺伝子の数等のような因子に依存する。
    a. 免疫グロブリン遺伝子レパートリーを製造するためのプライマー
    HおよびV L遺伝子レパートリーは、本発明でのその利用の前に別に調製することができる。 レパートリーの調製は、典型的にはプライマー延長によって、好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)形式でのプライマー延長によって行う。
    プライマー延長によりV HコードDNA相同体のレパートリーを製造するため、プライマーのヌクレオチド配列は、V Hコード領域に実質的に隣接する部位で複数の免疫グロブリン重鎖遺伝子とハイブリダイズし、これにより機能性(結合し得る)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を取得するように選択する。 複数の異なるV Hコード核酸鎖とハイブリダイズするため、プライマーは、異なる鎖間で保存されたヌクレオチド配列の実質的な相補体でなければならない。
    この種の部位は、不変領域、いずれかの可変領域フレーム構造領域、好ましくは第3のフレーム構造領域、リーダー領域、プロモーター領域、J領域等のヌクレオチト配列を含む。

    HコードおよびV LコードDNA相同体のレパートリーを(PCR)増幅によって製造すべき場合、増幅すべき核酸のそれぞれのコード鎖について2つのプライマー、すなわちPCRプライマー対を使用しなければならない。 第1のプライマーはノンセンス(マイナスまたは相補的)鎖の一部となり、レパートリー内でV H (プラスまたはコード)鎖間で保存されたヌクレオチド配列にハイブリダイズする。 したがってV HコードDNA相同体を製造するためには、免疫グロブリン遺伝子等のJ領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域またはCH3領域内の保存された領域にハイブリダイズする(すなわちこれらに相補的である)ように第1のプライマーを選択する。 V LコードDNA相同体を製造するためには、免疫グロブリン軽鎖遺伝子等のJ領域または不変領域内の保存された領域にハイブリダイズする(すなわちこれらに相補的である)ように第1のプライマーを選択する。 第2のプライマーはコード(プラス)鎖の一部となり、マイナス鎖の間で保存されたヌクレオチド配列にハイブリダイズする。 したがってV HコードDNA相同体を製造するためには、リーダーまたは第1のフレーム構造領域をコードするその領域におけるようなV Hコード免疫グロブリン遺伝子の5′末端で保存されたヌクレオチド配列とハイブリダイズするように第2のプライマーを選択する。 V HおよびV LコードDNA相同体の両者の増幅において、第2のプライマーの保存された5′ヌクレオチド配列は、ローら、Science,243:217−220(1989)により記載されたように、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを使用して外生的に付加した配列に相補的とすることができることを銘記すべきである。 第1および第2のプライマーの一方または両方は、エンドヌクレアーゼ認識部位を特定するヌクレオチド配列を含むことができる。 この部位は免疫グロブリン遺伝子に対して異種起源とすることができ、増幅されて典型的にはプライマーの5′末端または近傍に認められる。

    存在する場合、制限部位を特定する部分は、典型的にはプライマーの5′末端非起動部分に局在する。 第1のプライマーにより特定される制限部位は、典型的には第2のプライマーにより特定される制限部位を認識しない制限酵素によって認識されるものであるよう選択するが、その目的は互いに非相補的であるためにベクターへの方向性をもった挿入を可能とする付着末端を有するDNA分子の製造を可能とすることである。
    1つの態様では、本発明は、プライマーの3′末端に位置する起動領域を有するプライマーを形成する一組のポリヌクレオチドを利用する。 起動領域は、典型的には最も3′側(3′末端)の15〜30ヌクレオチド塩基である。 それぞれのプライマーの3′末端起動部分は、核酸合成を触媒する、すなわちその3′末端からプライマー延長反応を開始するプライマーとして作用することができる。
    一方または両方のプライマーは、5′末端(最も5′側)非起動部分、すなわちレパートリー鋳型に対するハイブリダイゼーションに関与しない領域を更に含むことができる。

    PCRにおいては、それぞれのプライマーは第2のプライマーと組合せて働き、標的核酸配列を増幅する。 PCRで使用するためのPCRプライマー対の選択は、ここに論ずるように遺伝子レパートリーを製造するための考慮に支配される。 すなわち、プライマーは、レパートリーにおいて保存された配列に相補的なヌクレオチド配列を有する。 有用なV HおよびV L起動配列を後記する表5〜6および7〜9に示す。
    4. 遺伝子レパートリーを製造するポリメラーゼ連鎖反応
    レパートリー内に含まれるV HおよびV L遺伝子をクローン化するのに使用する戦略は、当業界で周知のようにレパートリーを作成する核酸の種類、複雑性および純度に依存し得る。 他の因子には、遺伝子が1または複数のレパートリーに含まれているか否か、およびこれらが増幅されるものか、および/または変異誘発されるものか否かが含まれる。

    HおよびV Lコード遺伝子レパートリーは、mRNAおよび/またはゲノムDNAのセンス鎖のようなポリヌクレオチドコード鎖から構成される。 レパートリーが二本鎖ゲノムDNAの形態である場合、典型的には一本鎖への融解により通常は最初にこれを変性させる。 PCRプライマー対を用いてレパートリーを処理する(接触させる)(対のそれぞれの構成員は予備選択したヌクレオチド配列を有する)ことによりレパートリーをPCR反応に供する。 PCRプライマー対は、レパートリー内で保存された好ましくは少なくとも10ヌクレオチドの長さ、更に好ましくは少なくとも20ヌクレオチドの長さのヌクレオチド配列にハイブリダイズすることによりプライマー延長反応を開始することができる。 PCRプライマー対の第1のプライマーは、核酸のコードまたはセンス鎖にハイブリダイズするため、ここでは場合により「センスプライマー」として言及する。 更に、PCRプライマー対の第2のプライマーは、核酸の非コードまたはアンチセンス鎖、すなわちコード鎖に相補的な鎖にハイブリダイズするため、ここでは場合により「アンチセンスプライマー」として言及する。

    PCR反応は、PCRプライマー対、好ましくはその所定量とレパートリーの核酸、好ましくはその所定量とをPCR反応混合物を形成するPCR緩衝液中で混合することにより行う。 PCR反応生成物の形成に十分な時間期間の間ポリヌクレオチド合成条件下に混合物を維持し(これは典型的には所定のものである)、これにより複数の異なるV Hコードおよび/またはV LコードDNA相同体を製造する。
    複数の第1のプライマーおよび/または複数の第2のプライマーをそれぞれの増幅で使用することができ、例えば第1のプライマーの1つの分子種を多数の異なる第2のプライマーと対合させて幾つかの異なるプライマー対を形成することができる。 また、第1および第2のプライマーの個々の対を使用することができる。 いずれの場合も、第1および第2のプライマーの同一または異なる組合せを使用する増幅の増幅生成物を合せて遺伝子ライブラリーの多様性を増加させることができる。

    他の戦略では、ゲノムdsDNAのアンチセンス鎖またはmRNAを逆転写酵素反応に供することにより製造したポリヌクレオチドのようなレパートリーのポリヌクレオチド相補体を与えることによりレパートリーからV Hおよび/またはV Lコード遺伝子をクローン化することを目的とする。 この種の相補体を製造する方法は当業界で周知である。
    全ゆる適切な方法を使用してPCR反応を行う。 一般にこれは緩衝水溶液、すなわちPCR緩衝液中で生起し、好ましくは7〜9のpH、最も好ましくは約8とする。 好ましくは、モル過剰(ゲノム核酸について、通常は約10 6 :1のプライマー:鋳型)のプライマーを、鋳型鎖を含有する緩衝液に混合する。 プロセスの効率を改良するために大モル過剰が好適である。

    PCR緩衝液は、デオキシリボヌクレオチド三リン酸dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPおよびポリメラーゼ(典型的には熱安定性)も含み、プライマー延長(ポリヌクレオチド合成)反応のために全て適切な量とする。 得られる溶液は(PCR混合物)は、約1〜10分、好ましくは1〜4分間約90℃〜100℃に加熱する。 この加熱期間の後に溶液を54℃に冷却する(これはプライマーハイブリダイゼーションに好適である)。 合成反応は、室温からこれを越えるとポリメラーゼ(誘導試薬)が最早効率的に機能しなくなる温度までで生起し得る。 よって、例えばDNAポリメラーゼを誘導試薬として使用する場合、温度は一般に約40℃を越えないものとする。 例示的なPCR緩衝液は次のものからなる:100マイクロリットルの緩衝液当り50mMKC1、10mMトリス−HC1、pH8.3、1.5mMMgC1 2 、0.001%(wt/容量)ゼラチン、200μMdATP、200μMdTTP、200μMdCTP、200μMdGTP、および2.5単位サーマス・アクアティカス(Thermusaquaticus)DNAポリメラーゼI(米国特許第4,889,818号)。

    誘導試薬は、プライマー延長生成物の合成を達成するように機能し得る全ゆる化合物または系とすることができ、酵素を含む。 この目的に適切な酵素には、例えばイー・コリDNAポリメラーゼI、イー・コリDNAポリメラーゼIのクレナウ断片、T4DNAポリメラーゼ、他の利用可能なDNAポリメラーゼ、逆転写酵素および他の酵素(熱安定性酵素を含み、適切な様式でヌクレオチドの結合を促進してそれぞれの核酸鎖に相補的なプライマー延長生成物を形成する)が包含される。 一般に、合成はそれぞれのプライマーの3′末端で開始し、合成が終了するまで鋳型鎖に沿って5′方向に進行し、異なる長さの分子を生成する。 ただし誘導試薬があれば、これにより5′末端で合成が開始し、前記したのと同じプロセスを使用して前記方向に進行する。

    誘導試薬は、RNAプライマー延長生成物の合成を達成するように機能し得る化合物または系とすることもでき、酵素を含む。 好適な態様では、誘導試薬は、T7RANポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼまたはSP6RNAポリメラーゼのようなDNA依存性RNAポリメラーゼとすることができる。 これらのポリメラーゼは相補的なRNAポリヌクレオチドを生成する。 チャンベリンら、「酵素」、ピー・ボイヤー編、pp. 87−108、アカデミック・プレス、ニューヨーク(1982)により記載されたように、RNAポリメラーゼの高いターンオーバー速度により出発ポリヌクレオチドが増幅される。 T7RNAポリメラーゼの他の利点は、ジョイスら、Nuc. Acid Res. 17:711−722(1989)により先に記載されたように、1以上の変異誘発性オリゴデオキシヌクレオチド(ポリヌクレオチド)を用いてcDNAの一部を置換し、部分的に不整合の鋳型を直接転写することにより、ポリヌクレオチド合成に変異を導入できる点である。 転写に基く増幅系は、ギンゲラスら、「PCR手順、方法および応用の指針」中、pp245−252、アカデミック・プレス社、サンジエゴ、CA(1990)により記載されている。

    誘導試薬をDNA依存性RNAポリメラーゼとし、したがってリボヌクレオチド三リン酸を組込む場合、十分な量のATP、CTP、GTPおよびUTPをプライマー延長反応混合物と混合し、得られる溶液を前記したように処理する。
    新たに合成された鎖およびその相補的な核酸鎖は、プロセスの後続する工程で使用することのできる二本鎖分子を形成する。
    前記論じた第1および/または第2のPCR反応を有利に使用し、受容体を免疫学的に検出および/または単離するのに有用な予備選択したエピトープを受容体に組込むことができる。 これは、予備選択したアミノ酸残基配列を受容体のアミノ酸残基配列に組込む第1および/または第2のポリヌクレオチド合成プライマーまたは発現ベクターを利用することにより行う。

    複数の異なるV HおよびV Lコード遺伝子についてのV HおよびV LコードDNA相同体をレパートリー内で製造した後、DNA分子を典型的には更に増幅する。 自己複製ベクターへの組込みのような古典的な技術によりDNA分子を増幅することができるが、これらをベクターに挿入する前に、これらをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)な供することにより分子を最初に増幅するのが好適である。
    PCRは、典型的には熱循環、すなわち下限を約10℃〜約40℃とし上限を約90℃〜約100℃とする温度範囲内でPCR反応混合物の温度を上昇または下降させることにより実施する。 上昇および下降は連続的とし得るが、好ましくは比較的温度安定性の時間期間のある相によるものとし、それぞれの温度がポリヌクレオチド合成、変性およびハイブリダイゼーションを好感するものとする。

    PCR増幅法が詳細に記載されているのは、米国特許第4,683,195号、4,683,202号、4,800,159号および4,965,188号、および「PCR技術:DNA増幅の原理と応用」、エッチ・エルリヒ編、ストックトン・プレス、ニューヨーク(1989)、および「PCR手順:方法および応用の指針」、イニスら編、アカデミック・プレス、サンジェゴ、カリホルニア(1990)を含む少なくとも幾つかのテキストである。
    好適な態様では、増幅反応当り1対のみの第1および第2のプライマーを使用する。 複数の異なる増幅物から得られる増幅反応生成物(それぞれ複数の異なるプライマー対を使用する)をその後合せる。
    ただし本発明は、同時増幅(2対のプライマーを使用する)および多重増幅(約8、9または10までのプライマー対を使用する)によるDNA相同体製造も企図する。

    好適な態様では、PCRプロセスは、DNA分子のライブラリーを製造するためだけではなく、ライブラリー内の変異を誘導するか、単一の親クローンから多様性を生成し、これにより更に大きい異種性を有するライブラリーを提供するために使用する。 第1に、PCRプロセスは、当業界で周知の多様な因子によりそれ自体固有に変異誘発性であることを銘記すべきである。 第2に、前記参照した米国特許第4,683,195号に記載された多様性を誘導する変異に加えて、PCRの多様性を誘導する他の変異を用いることができる。 例えば、延長生成物に組込まれる異なる量の1以上のヌクレオチドを用いてPCR反応混合物を形成することができる。 この種の条件下では、PCR反応が進行して特定の塩基の欠乏の結果として延長生成物内でヌクレオチド置換体が生成する。 同様に、ほぼ等モル量のヌクレオチドを、X回の繰返しを効率的に行う量で初発PCR反応混合物に組込むことができ、その後Xを越える繰返し回数、例えば2Xにより繰返し混合物を処理する。 また、増幅されるレパートリーの核酸中には通常は認められないイノシンのようなヌクレオチド誘導体を反応混合物に組込むことによりPCR反応に際して変異を誘導することができる。 その後の生体内DNA合成および宿主細胞中での核酸の複製の際に、ヌクレオチド誘導体は置換ヌクレオチドにより置換され得て、これにより点変異が誘導される。

    5. 線状DNA発現ベクター
    DNA分子のライブラリーを製造するこの発明の方法で使用するDNA発現ベクターは、前記したようにポリペプチド遺伝子への方向性をもった連結に適合した2つの(上流および下流の)付着末端を有する線状化したDNA分子である。
    線状DNA発現ベクターは、典型的にはこの発明の環状DNA発現ベクターを制限エンドヌクレアーゼ消化し、方向性をもった連結に適合した必要な付着末端を有する線状DNA分子を生成する方向性をもった連結に適合したベクターのヌクレオチドの配列内の2つの予備選択した制限部位で切断することにより調製する。 方向性をもった連結は、ベクター上または選択したベクターに連結される挿入物DNA分子上の2つの(第1および第2の)付着末端の存在に言及するものであるため、単一の分子上の末端は相補的ではない。 ベクターの第1の末端は挿入物の第1の末端と相補的であり、ベクターの第2の末端は挿入物の第2の末端と相補的である。

    6. 遺伝子ライブラリーを生成する連結反応
    この発明のDNA分子のライブラリーを調製するに際し、前記したように連結混合物を調製し、ポリペプチド遺伝子の混合したライブラリーが複数のDNA発現ベクターに連結(機能的に結合)してライブラリーを形成するのに十分な時間期間の間混合物を連結条件に供する。
    連結条件は連結反応を好感するよう選択した条件であり、その際にDNAの隣接する3′ヒドロキシルと5′ホスホリル末端との間にホスホジエステル結合が形成される。 連結反応は、好ましくは酵素T4DNAリガーゼにより触媒される。 連結条件は、周知のように時間、温度、緩衝液の濃度、連結するDNA分子の量およびリガーゼの量により変動し得る。 好適な連結条件は、ミリリットル(ml)当り1〜10ユニットのT4DNAリガーゼおよび約1〜2マイクログラム(μg)のDNAの存在下に摂氏4度(4℃)〜12℃で1〜24時間連結混合物を維持することを含む。 連結混合物中の連結緩衝液は、典型的には0.5Mトリス−HCl(pH7.4)、0.01MMgCl 2 、0.01Mジチオスレイトール、1mMスペルミジン、1mMATPおよび0.1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)を含む。 他の連結緩衝液も使用することができる。
    例示的な連結反応は実施例2に記載する。

    7. ジシストロン性遺伝子ライブラリーの調製
    特に好適な態様では、本発明は、ジシストロン性DNA分子のライブラリーを調製する方法を企図する。 ジシストロン性DNA分子は、2つの別のシストロンから2つの別のポリペプチドを発現させる能力を有する単一のDNA分子である。 好適な態様では、2つのシストロンは、両者のシストロンが単一のプロモーターの転写調節下にあるようにDNA分子上の相対的位置で機能的に結合されている。 それぞれのジシストロン性分子は、繊維状ファージ粒子の表面上のヘテロ二量体受容体を適切な宿主中で形成することのできる、それぞれ第1および第2のシストロンからの第1および第2のポリペプチドを発現することができる。

    ジシトロン性DNA分子のライブラリーを製造する方法は、次の工程からなる:
    (a)連結緩衝液中で (i)dsDNAの形態の第1のポリペプチド遺伝子のレパートリー(それぞれ方向性をもった連結に適合した付着末端を有する)、および (ii)線状形態の複数のDNA発現ベクター(それぞれ(a)共通のリーディングフレームで第1のポリペプチド遺伝子を方向性をもって受容するよう適合し、(b)それぞれ上流および下流の翻訳可能なDNA配列に機能的に結合した上流および下流の第1の付着末端を有する)
    を組合せることにより第1の連結混合物を形成する。 上流の翻訳可能なDNA配列はpelB分泌シグナルをコードし、下流の翻訳可能なDNA配列は織維状ファージコート蛋白質膜アンカーをコードし、翻訳可能なDNA配列は、それぞれ上流および下流のDNA発現調節配列に機能的に結合する。

    (b)第1のポリペプチド遺伝子をベクターに機能的に結合してそれぞれ第1のポリペプチドを発現する第1のシストロンを有する複数の環状DNA分子を生成するのに十分な時間期間の間混合物を連結条件に供する。
    (c)複数の環状DNA分子をDNA開裂条件下で処理して線状形態の複数のDNA発現ベクターを生成する(それぞれ(i)共通のリーディングフレームで第2のポリペプチド遺伝子のレパートリーを方向性をもって受容するよう適合し、(ii)それぞれ上流および下流のDNA配列に機能的に結合した上流および下流の第2の付着末端を有する)。 上流のDNA配列は分泌シグナルをコードする翻訳可能な配列であり、下流のDNA配列はリーディングフレームに少なくとも1つの停止コドンを有し、翻訳可能なDNA配列はDNA発現調節配列に機能的に連結する。

    (d)連結緩衝液中で (i)工程(c)で形成した複数のDNA発現ベクター、および (ii)dsDANの形態の第2のポリペプチド遺伝子のレパートリー(それぞれ複数のDNA発現ベクターへの方向性をもった連結に適合した付着末端を有する)
    を組合せることにより第2の連結混合物を形成し、
    (e)第2のポリペプチド遺伝子を前記ベクターに機能的に連結し、それぞれ第2のポリペプチドを発現する第2のシストロンを有する複数の環状DNA分子を生成するのに十分な時間期間の間第2の混合物を連結条件に供し、これによりライブラリーを形成する。
    好適な態様では、分泌シグナルはpelB分泌シグナルとする。 同様に好適なのは、ここに記載するようにcpIIIまたはcpVIIIから誘導される繊維状ファージ膜アンカーを使用することである。
    前記方法を実施するのに有用なDNA発現ベクターは、後により詳細に記載するジシストロン性発現ベクターである。

    ジシストロン性DNA分子のライブラリーを製造する方法を実施するに際し、上流および下流の第1の付着末端が、上流および下流の第2の付着末端と同一のヌクレオチド配列を有さないものとするのが好適である。 この態様では、環状DNA分子を線状化する処理工程(c)は、典型的には前記第2の末端を生成するのに特異的であるが、第1の末端を形成した部位で環状DNA分子を開裂させない制限エンドヌクレアーゼの使用を含む。 例示的な好適な第1および第2の末端は、XhoIおよびSpeIにより上流および下流の第1の末端を形成するpCBAK8の開裂により特定され、またSacIおよびXbaIにより上流および下流の第2の末端を形成するpCBAK8の開裂により特定される末端である。
    この態様では、4つの末端がそれぞれ別個で非相補的な末端である限り、第1および第2の末端のそれぞれの対で他の対の付着末端を利用することができる。 例示としては、ここに記載するベクターpCOMB3、pCOMB2−3、pCOMB2−3′、pCOMB8およびpCOMB2−8上に認められる末端がある。

    複数の環状DNA分子をDNA開裂条件下に処理して線状DNA分子を形成する方法は一般に周知であり、開裂されるヌクレオチド配列および開裂の機構に依存する。 好適な処理は、制限エンドヌクレアーゼがDNA分子を開裂させるのに十分な量で所望の開裂位置にてエンドヌクレアーゼ認識部位に特異的な制限エンドヌクレアーゼとDNA分子とを混合することを含む。 制限エンドヌクレアーゼ開裂のための緩衝液、開裂条件および基質濃度は周知であり、利用する特定の酵素に依存する。 例示的な制限酵素開裂条件は実施例2に記載する。
    関連する態様では、この発明は、単一のシストロンを有するDNA分子のライブラリーを製造する方法を提供するが、先に記載した方法に従い、工程(b)の完了の後に停止するものである。 この種のライブラリーは、それぞれこの発明のポリペプチドを発現するシストロンからなるDNA分子を含む。

    8. ライブラリーの多様性を変化させる方法
    本発明は、この発明の繊維状ファージライブラリーのライブラリーの多様性を変化させる方法を提供する。 このような方法は一般にライブラリーの多様性を増加させるものであり、これにより所望の結合活性を検索するための可能なエピトープ結合複合体のプールが増加する。 また、この方法は、エピトープ結合複合体のクラスを集積することに向けることができる。 クラスは、典型的には特定のエピトープを結合する能力または予備選択した抗原または抗原の群に存在するエピトープの系統群により特定される。
    a. 変異によるライブラリー多様性の増加
    多様性を増加させる特に好適な方法は、この発明のファージのゲノムによりコードされたエピトープ結合複合体の1以上のポリペプチドのアミノ酸残基配列を変化させるものである。 核酸の変異により核酸レベルで変化を便利に導入することができる。 この方法は、この発明のポリペプチドをコードする核酸の単一の分子種上で実施することができ、またはこの発明のファージのライブラリーに存在する核酸のライブラリー上で実施することができる。

    核酸の変異は種々の手段により行うことができるが、最も便利には本発明のPCRプロセスの際のPCR反応において行うものとする。 PCR変異誘発は、一般に周知のように、特定のヌクレオチド配列に対して無作為または指向性とすることができる。 無作為の変異誘発を好感する条件下でPCRを行うことは先に記載しており、「エラープローン(誤りがちな)PCR」として言及する。 同様に、指向性変異誘発は、ヌクレオチド配列の特定の領域への特定の種類の変異を標的とするよう設計されたPCRプライマーの使用を含む。
    1つの態様では、この発明は、この発明のエピトープ結合複合体ポリペプチドに存在する抗体可変ドメインの相補性決定領域(CDR)のPCR指向性変異により1以上のエピトープ結合複合体の多様性を増加させることを企図する。 CDR変異誘発は、ネズミ抗体のCDR領域にヒト配列を導入することにより抗体を「ヒト化する」一般的な用語で先に記載されている。 ヨーロッパ出願番号EP239400を参照することができる。

    よって、この発明は、この発明のDNAベクターに存在するクローン化した免疫グロブリン遺伝子の免疫学的特異性を変化させる変異誘発方法を企図する。 この方法は、免疫グロブリン遺伝子の予備選択したCDR中で指向性変異誘発を与えるものであるが、これは標的CDRを有するクローン化した免疫グロブリン遺伝子を含む組換えDNA分子(rDNA)を、CDRの予備選択した領域を増幅するのに適切なPCR条件に供することからなる。 この方法では、予備選択したCDR領域から誘導されるがPCRプライマーのヌクレオチド配列を含む増幅したPCR生成物を生成する周知のようなPCRプライマー対における第1のプライマーを構成する後記するようなPCRプライマーオリゴヌクレオチドを含むPCR条件にrDAN分子を供する。 PCR増幅条件における第2のオリゴヌクレオチドは、ここに記載するように変異誘発する免疫グロブリン遺伝子から誘導される全ゆるPCRプライマーとすることができる。

    好適なのは、後記するようにこの発明のオリゴヌクレオチドを使用する方法である。
    したがって、関連する態様では、免疫グロブリン遺伝子の相補性決定領域(CDR)における変異誘発を誘導するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でプライマーとして有用なオリゴヌクレオチドを企図する。 このオリゴヌクレオチドは3′および5′末端を有し、(1)免疫グロブリン遺伝子の第1のフレーム構造領域にハイブリダイズし得るその3′末端のヌクレオチド配列、(2)免疫グロブリン遺伝子の第2のフレーム構造領域にハイブリダイズし得るその5′末端のヌクレオチド配列、および(3)免疫グロブリン遺伝子の第1および第2のフレーム構造領域の間のCDR領域にPCRの際に変異を導入するよう適合した3′および5′末端の間のヌクレオチド配列からなり、これによりCDR領域を変異誘発する。

    免疫グロブリン遺伝子が、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両者上に3つのCDR領域を有する限り(それぞれ特有のフレーム構造領域により分離される)、標的CDRに隣接するフレーム構造領域にハイブリダイズするものとして前記5′および3′ヌクレオチド配列を選択することにより特定のCDRに変異を導入するのに前記例を容易に適用し得ることを理解すべきである。 よって、前記第1および第2のフレーム構造配列は、重鎖または軽鎖いずれかの上でCDR1、CDR2またはCDR3に隣接する保存された配列とすることができる。 例示的で好適なものは、ヒト免疫グロブリン重鎖のCDR3である。
    対象変異誘発オリゴヌクレオチドの3′および5′末端ヌクレオチド配列の長さは、その長さがハイブリダイズするものとして標的フレーム構造配列に相補的なヌクレオチドの伸長を与える限り、周知のように長さにおいて変動し得る。 3′末端ヌクレオチド配列の場合、これは十分な長さとし、またハイブリダイズしてプライマー延長反応を開始する3′ヒドロキシル末端を与えるものとして変異誘発すべきCDR領域に対して3′に位置する標的フレーム構造領域に相補的でなければならない。 5′末端ヌクレオチド配列の場合、これは十分な長さとし、また前記したようにPCR重複延長反応においてハイブリダイズする手段を与えて完全な免疫グロブリン重鎖または軽鎖を集成するものとして変異誘発すべきCDR領域に対して5′に位置する標的フレーム構造領域に相補的でなければならない。

    CDRに隣接するフレーム構造領域は免疫学的技術において十分に特徴付けられており、ここに随所に記載するように公知のヌクレオチド配列またはコンセンサス配列を含むものである。 単一の予備選択した免疫グロブリン遺伝子を変異誘発すべき場合、特定のCDRに隣接するフレーム構造特定配列は公知であるか、ヌクレオチド配列決定手順により容易に決定することができる。 免疫グロブリン遺伝子のレパートリーを変異誘発すべき場合、フレーム構造誘導配列は、ここに随所に記載するように好ましくは保存されたものである。
    好ましくは、3′および5′末端ヌクレオチド配列の長さは、それぞれ少なくとも6ヌクレオチドの長さとし、50以上のヌクレオチドまでの長さとすることができるが、このような長さは正確で再現性のあるハイブリダイゼーションを確実にするのに必要ではない。 好適なのは12〜30ヌクレオチドの範囲の長さであり、典型的には約18ヌクレオチドである。

    3′末端ヌクレオチド配列として使用するのに特に好適なフレーム構造特定ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列5′−TGGGGCCAAGGGACCACG−3′(配列番号:122)を有する。
    5′末端ヌクレオチド配列として使用するのに特に好適なフレーム構造特定ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列5′−GTGTATTATTGTGCGAGA−3′(配列番号:123)を有する。
    CDRを変異誘発するのに適合し3′および5′末端の間に位置するヌクレオチド配列は、前記方法によって新規な配列を組込み得る限り、全ゆるヌクレオチド配列とすることができる。 ただし本アプローチは、変異誘発すべきCDR領域で無作為または無作為に近いヌクレオチドを特定する冗長な配列の集団を使用することにより単一のPCR反応で大集団の変異誘発したCDRを生成する手段を提供するものである。

    好適なオリゴヌクレオチドは前記した3′および5′末端の間のヌクレオチド配列からなり、これは式:[NNR] nにより表され、式中Nは独立に全ゆるヌクレオチドとすることができ、RはS、Kまたはそのアナログとすることができ、ここでSはGまたはCであり、KはGまたはTであり、またここでnは3〜約24である。 好適な態様では、オリゴヌクレオチドは式:
    5′−GTGTATTATTGTGCGAGA[NNR] n TGGGGCCAAGGGACCACG−3′(配列番号:124)
    を有する。 例示的な特に好適なものはRがSでありnが16であるオリゴヌクレオチドであり、この場合オリゴヌクレオチドは冗長なオリゴヌクレオチド配列の大きな集団を表す。

    よって、この発明は、a)本発明による繊維状ファージ粒子のライブラリーを調製し、b)ライブラリー中のそれぞれのDNA発現ベクターに存在する免疫グロブリン可変ドメインコードヌクレオチド配列を変異させてそれぞれ変異した免疫グロブリン可変ドメインヌクレオチド配列を含むファージ粒子のライブラリーを形成する工程からなる繊維状ファージ粒子のライブラリーの多様性を増加させる方法を企図する。
    PCR反応を変異誘発させるための調製物中の核酸を単離するため、調製はライブラリー中のファージ粒子のゲノムを操作することを含み得る。 PCR反応で使用するためにファージゲノムを単離するファージライブラリーの操作はここに随所に記載する。
    1つの態様では、変異は、免疫グロブリン可変ドメインコードヌクレオチド配列をエラープローンポリメラーゼ連鎖反応に供することからなる。 他の態様では、変異は、ここに記載するようにCDR指向性オリゴヌクレオチドを使用して免疫グロブリン可変ドメインコードヌクレオチド配列のCDRを変異させる方法に免疫グロブリン可変ドメインコードヌクレオチド配列を供することからなる。
    前記CDR指向性オリゴヌクレオチドを使用するかエラープローンPCRを使用して多様な複合体の大きなライブラリーを生成する特定のエピトープ結合複合体コード核酸のCDR領域を変異させる例示的な方法を実施例に記載する。

    b. ライブラリーの集積
    本発明は、予備選択したクラスのエピトープ結合複合体についてライブラリーを集積することによりライブラリーの多様性を変化させる方法を記載するものである。 このプロセスは、予備選択した抗原に結合し得るライブラリーにおけるこのようなファージ粒子の親和力選択を一般に含む。 親和力選択または選別処理のプロセスは実施例に詳細に記載する。
    よって、この発明は、a)本発明による繊維状ファージ粒子のライブラリーを調製し、b)ライブラリーの構成員がリガンドに結合してリガンド−ファージ粒子複合体を形成するのに十分な条件下で調製したライブラリーと予備選択したリガンドとを接触させ、c)非結合ライブラリー構成員から複合体のファージ粒子を単離して予備選択したリガンドに対する結合特異性を有するファージ粒子からなるリガンド集積ライブラリーを形成する工程からなる繊維状ファージ粒子のライブラリーの多様性を変化させる方法を企図する。

    好適な態様では、予備選択したリガンドを固体支持体に固定し、リガンド−ファージ粒子複合体を固相で形成する。 この態様は、i)接触工程の後に固体支持体を洗浄して固体支持体から非結合ライブラリー構成員を濯ぎ、ii)全ゆる固相結合ファージ粒子を固体支持体から溶出させる工程を更に含む。 溶出したファージ粒子を集め、これにより集積したライブラリーからなる単離したファージ粒子を形成する。
    溶出は、リガンド−エピトープ結合複合体相互作用を破壊する種々の条件下で行うことができる。 典型的な条件は高塩または低pH緩衝液を含む。 特に好適なのは約pH1〜5、好ましくは約pH2〜3の緩衝液である。 また、溶出緩衝液中の過剰量の予備選択したリガンドによる競合によって相互作用を破壊することができる。 両者の溶出手順は実施例に記載する。
    関連する態様は、変異によるライブラリーの多様性の増加および選別処理によるライブラリーの集積の両者の特徴を組合せて予備選択したリガンドに対するエピトープ結合複合体親和力を「成熟させる」ものである。 よって、ライブラリーの多様性を変化させる本方法を使用し、新たな結合特異性および更に可能な結合特暴性を展開することができる。

    当業者に明らかたり得るように、これらの方法の組合せにより種々の方策を構成することができる。 たとえば、ライブラリーを単離し、変異誘発(多様化)し、その後特定の結合活性について検索(集積)することができる。 また、ライブラリーから特定の活性について集積し、特定のエピトープ結合複合体を変異誘発し、製造したライブラリーを変異誘発により更に集積することができる。
    このテーマに関する他の変更様式では、結合価におけるその固有の差異によるcpIIIおよびcpVIII誘導膜アンカーに基くライブラリー間の差異を利用することができる。 cpIII誘導膜アンカーを有するファージのライブラリーは典型的にはそれぞれのファージ粒子の表面上にエピトープ結合複合体の1〜4コピーしか含み得ないため、ファージはそれを接近させる比較的「低い」結合価の結合複合体を与える。 これに対して、cpVIII誘導膜アンカーを有するファージのライブラリーは、典型的にはそれぞれのファージ粒子の表面上に20〜1000コピーのエピトープ結合複合体を含み得て、粒子は比較的「高い」結合価を与える。 よって、cpIIIに基くライブラリーは一価として言及し、cpVIIIに基くライブラリーは多価として言及する。

    抗体親和力および結合価の周知の原則を適用し、cpVIIIに基くライブラリーに認められる多価試薬を使用して単離し得る広い範囲の親和力(10 4 〜10 9-1の結合定数)と比較して一般により高い親和力結合相互作用(10 6 〜10 9-1の結合定数)についての検索に際してcpIIIに基くライブラリーを集積できることが理解される。 したがって、cpVIIIに基くライブラリーは低〜高のエピトープ結合複合体の広い範囲の親和力を単離するのに有用であるのに対し、cpIIIに基くライブラリーはより狭い範囲の高い親和力のエピートープ結合複合体を単離するのに有用である。
    よって、この発明は、cpVIIIに基くライブラリーの集積により第1の集積したライブラリーを製造することを企図する。 したがって、エピトープ結合複合体ポリペプチドをコードする遺伝子をcpIIIに基くベクターに移し、その後高い親和力結合相互作用について集積する。 1つの態様では、cpIIIに基くベクターに移す前に変異工程を利用することができる。

    他の態様では、新規な親和力を成熟させる能力をここに例として示すが、この場合リガンド末端毒素(TT)を結合するヘテロ二量体を発現し得るクローン化したV H /V Lヘテロ二量体コード遺伝子をCDR指向性PCR変異誘発を使用して変異誘発し、これに起因する変異誘発した核酸集団をcpIIIに基くライブラリーに挿入し、異なるリガンド、フルオレセインへの結合について検索する。 フルオレセインに結合する高い親和力のエピトープ結合複合体を同定した。
    関連する態様では、素朴な(免疫化していない)ライブラリーをpcVIIIに基くライブラリーにクローン化し、抗原プロゲステロンに対する結合について検索した。 低い親和力の結合体をcpIIIに基くライブラリーにクローン化し、プロゲステロンに結合する3つの高い親和力の結合クローンを同定した。 3つのクローンをプールし、プールをエラープローPCR変異誘発に供し、変異した核酸の得られるライブラリーをcpIIIに基くベクターにクローン化し、プロゲステロンに対して検索してプロゲステロンに結合する高い親和力のエピトープ結合複合体を生成した。 このようにして高い親和力の複合体を素朴なライブラリーから「成熟」させた。

    よって、本発明は、a)繊維状ファージのゲノムを調製し、b)調製したゲノムに存在する免疫グロブリン可変ドメインコードヌクレオチド配列を変異させて変異した免疫グロブリン可変ドメインヌクレオチド配列を含むファージ粒子のライブラリーを形成し、c)ライブラリーの構成員がリガンドに結合してリガンド−ファージ粒子複合体を形成するのに十分な条件下で工程(b)で形成したライブラリーと予備選択したリガンドとを接触させ、d)非結合ライブラリー構成員から前記複合体中のファージ粒子を単離して予備選択したリガンドに対する結合特異性を有するファージ粒子からなるリガンド集積ライブラリーを形成する工程からなるこの発明の繊維状ファージによりコードされるエピトープ結合複合体の親和力を成熟させる方法も企図する。

    F. ファージライブラリー
    本発明は、それぞれがこの発明の融合ポリペプチドをコードするDNA分子のライブラリーを企図し、ここでライブラリーは、それぞれこの発明の異なるrDNA分子を含む異なる繊維状ファージ粒子の集団の形態である。 異なるrDNA分子とは、ヌクレオチド塩基配列の点でライブラリーの他のrDNA分子と比較した場合に、この発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド塩基配列の点で異なるrDNA分子を意味する。
    よって、ファージライブラリーは繊維状ファージ、好ましくはf1、fdまたはM13繊維状ファージの集団であり、それぞれのファージはこの発明のrDNA発現ベクターが中にパッケージされた粒子を有し、rDNAはファージのマトリックス蛋白質によりファージ粒子内にカプセル化される。 別に言うと、ファージライブラリーは複数の繊維状ファージ粒子を含み、それぞれの異なるファージ粒子はここに記載するようにその表面上に少なくとも1つのエピトープ結合複合体を含む。 好適なライブラリーは、少なくとも10 6 、好ましくは10 7 、更に好ましくは10 8-9のこの発明の異なる融合ポリペプチドをコードするDNA分子を含むファージ粒子から構成される。 異なる融合ポリペプチドとは、アミノ酸残基配列が異なる融合ポリペプチドを意味する。 ここに記載するように無作為の組合せまたは変異誘発の方法を利用してライブラリーの多様性を増加させた場合、更に高いライブラリーの多様性も利用可能である。

    パッケージした発現ベクターが、例えばFabを形成するV HおよびV Lポリペプチドのような自己集成受容体の第1および第2のポリペプチドをコードする場合、受容体特異性の多重性を含むか発現するものとしてライブラリーを特徴付けることもできる。 よって、ライブラリーは少なくとも10 5 、好ましくは少なくとも10 6 、更に好ましくは少なくとも10 7の異なる受容体、例えば異なる抗体、T細胞受容体、インテグリン等を発現する。
    ライブラリーの大きさは、多数の因子、特にライブラリーを製造する方法に依存して変動し得る。 ここで使用するように、大きさはライブラリーの複雑性または多様性、すなわちライブラリー中の粒子の絶対数より寧ろライブラリーを構成する異なる分子種の数を内包する。
    よって、第1および第2のポリペプチドに対応する遺伝子の2つのレパートリーを最初に別にクローン化することによりライブラリーを製造する場合、ジシストロン性ベクターの形態で2つのレパートリーを無作為に組合せた後の得られるラィブラリーの大きさは大きく増加する。 例えば、軽鎖および重鎖可変抗体遺伝子レパートリーを考えると、それぞれ10 6の異なる構成員を有する。 2つのレパートリーを組合せることにより、理論的には10 12の可能な異なるジシストロン性ベクター分子種のライブラリーが生成する。

    より大きい多様性を生成するため、前記したような2つのレパートリーを「混ぜ合せる」能力を評価する実験系を設計した。 この系は、ハプテン、パラ−ニトロフェニルホスホンアミデート(NPN)により免疫化したマウスから誘導した結合したFabライブラリーを利用するものとした。 22の異なるクローンを単離し、重鎖および軽鎖コード核酸を単離し、配列決定して22対の内21が核酸配列のレベルで異なることを決定した。 22のNPNリガンド結合クローンを無作為に再度組合せ(混ぜ合せ)、NPNに対する結合について再検索した。
    元の対が再接合する場合は重鎖および軽鎖はリガンド結合ヘテロ二量体受容体分子を形成し得るのみであると想定すると、モデルにより全組合せの4.6パーセントがリガンド結合組合せを与え得ると予測される。 より高い全ゆる百分率は、元の対以外の対合もNPNに結合し得ることを示す。 結果は、単離したクローンの27パーセントがNPNに結合し、混ぜ合せに際してNPNに結合し得る受容体のライブラリーの大きさが5.8倍増加したことを示した。 これは、NPNを結合するクローンに増加が限定されることを示した。 無作為に混ぜ合せたライブラリーの他の構成員は、多様な非NPNのリガンドを結合する能力を有する。
    よって、混ぜ合せは多様性を増加させることが示された。

    ライブラリーの複雑性は、配列の予め存在するライブラリーのヌクレオチド配列を変異させるここにおける方法を使用して増加させることもできる。 発現した融合ポリペプチドについてのアミノ酸残基の差異に関して言えば、無作為の変異を標的とするそれぞれのアミノ酸残基位置につきライブラリーの大きさで潜在的に20倍の増加があり得る。
    例えば、実施例に記載するような抗体遺伝子の相補性決定領域(CDR)指向性変異誘発を使用し、16アミノ酸残基の線状領域を無作為変異について標的とした。 単一の分子種により出発し、20の異なるアミノ酸を選択する全ての可能な組合せにより16残基位置の全てを変異させると、理論的には20 16の異なる分子種、すなわち6×10 20の異なる分子種が生成し得る。
    ここに記載するように、本発明における繊維状ファージの特定の利点は、ファージ粒子中に存在しヘテロ二量体受容体の構成員の一方または両方をコードするDNA分子を、ファージ粒子の表面の特定の発現した融合ポリペプチドの存在に基いてライブラリーに存在する他のDNA分子から分離できることである。

    ヘテロ二量体受容体の一方または両方の構成員をコードするDNA分子の単離(分離)は、ライブラリーを含む他のファージ粒子の集団から意図する単数または複数の遺伝子を含む繊維状ファージ粒子を分離することにより行う。 ファージ粒子の分離は、個々のファージ粒子をライブラリー中の他の粒子から物理的に分離して増殖させることを含む。 繊維状ファージ粒子を物理的に分離して個々の粒子を生成し、個々の粒子を増殖させて個々の分離した粒子から誘導された子孫ファージの集団を形成する方法は繊維状ファージの技術において周知である。

    好適な分離方法は、ファージ粒子と予備選択したリガンドとの間のリガンド結合特異性によりファージ粒子の表面上で発現したヘテロ二量体を同定することを含む。 例示的な好適なものは「選別処理」方法の使用であり、これによりファージ粒子の懸濁物を固相リガンド(抗原)に接触させ、特異的に結合(またはヘテロ二量体が免疫グロブリン可変ドメインを含む場合は免疫反応)させる。 結合の後、非結合粒子を固相から洗浄するが、結合したファージ粒子はその表面上にリガンド特異的ヘテロ二量体受容体(ヘテロ二量体)を含むものである。 その後結合した粒子は、典型的にはリガンド−受容体相互作用を妨害する水性溶剤を使用することにより、固相からの結合した粒子の溶出によって回収することができる。 典型的な溶剤は、高いイオン強度、低いpH、または受容体−リガンド結合相互作用を破壊するのに十分な量の可溶性競合リガンドを有する緩衝液を含む。

    表面発現ヘテロ二量体のリガンド特異性に基いて粒子の集団からファージ粒子を分離する他の方法は、リガンドと架橋結合させることにより溶液相からファージ粒子を沈殿させるものである。 例示的な好適な架橋結合および沈殿方法は実施例4cに詳細に記載する。
    前記粒子分離方法の使用により、この発明のファージライブラリーに存在する繊維状ファージ粒子の集団を検索する手段が提供される。 ファージライブラリーに適用されるものとして、予備選択したリガンド結合特異性を有するヘテロ二量体を発現する1以上の粒子について検索を利用してライブラリーを集積することができる。 全てがリガンド結合活性の何らかの検出し得る尺度を有するが蛋白質構造、抗原性、リガンド結合親和力または結合力等において異なる多数の分子種のヘテロ二量体を含むようライブラリーを設計する場合、検索方法を利用して順にまず予備選択した結合特異性について集積したライブラリーを製造し、その後1以上の単離したファージ粒子からなる更なる検索により更に集積した第2のライブラリーを製造することができる。 リガンド結合活性、抗原性および同様のリガンドと受容体との間の相互作用を測定する方法は周知であり、本発明の必須の特徴ではないため更には論じない。

    よって、1つの態様では、ファージライブラリーは予備選択したリガンド結合特異性について集積した粒子の集団である。
    他の態様では、ファージライブラリーは粒子の集団からなり、この場合それぞれの粒子はファージ粒子の表面上にこの発明の少なくとも1つの融合ポリペプチドを含む。 ファージ粒子の表面上に存在する融合ポリペプチドの実際の量は、部分的に融合ポリペプチド中に存在するコート蛋白質膜アンカーの選択に依存する。
    アンカーをcpIIIから誘導する場合、典型的にはファージ粒子当り約1〜4の融合ポリペプチドがある。 より好適なcpVIIIからアンカーを誘導する場合、生育条件およびここに論ずるような他の因子に依存して粒子表面上には数百の融合ポリペプチドがある可能性がある。 ファージ粒子上に存在する融合ポリペプチドの実際の量は、宿主細胞内で合成されるものであるため、ファージ粒子によって「補足される」量を調節することにより調整することができる。
    典型的には、この発明のライブラリー中のファージ粒子は、それぞれの粒子の表面上に約10〜約500のcpVIII誘導融合ポリペプチドを含み、更に好ましくは粒子当り約20〜50の融合ポリペプチドである。 表面融合ポリペプチドの例示的な量は実施例4aに記載する電子顕微鏡写真により示され、粒子当り約20〜24のcpVIII誘導融合ポリペプチドを有する粒子を示す。

    他の態様では、本発明は、単一の粒子の子孫であり、したがって全てが粒子表面上で同じヘテロ二量体を発現するファージ粒子の集団を企図する。 この種のファージの集団は同種であり、クローン的に誘導され、したがって大量の特定の融合ポリペプチドを発現する供給源を与える。 例示的なクローン的に同種のファージ集団を実施例4に記載する。
    この発明のライブラリーの繊維状ファージ粒子は、標準的な繊維状ファージ粒子調製方法により製造され、この発明のDNA発現ベクター中でのここに記載するような繊維状ファージ複製開始点の存在に依存して(1)一本鎖繊維状ファージ複製形態の製造および(2)複製形態の繊維状ファージ粒子へのパッケージングに必要なシグナルを与える。 この種のDNA分子は、感染性ファージ粒子の製造に必要な繊維状ファージ蛋白質を与える遺伝的相補の導入に際して細菌宿主中に存在する場合にパッケージされ得る。 遺伝的相補のための典型的で好適な方法は、この発明のDNA発現ベクターを含む細菌宿主細胞にヘルパー繊維状ファージを感染させ、これによりファージ粒子集成に必要な要素を与えるものである。
    例示的なヘルパーレスキュー方法はここでは実施例2に記載するが、ショートら、Nuc. Acids Res. 16:7585−7600(1988)に記載されている。

    宿主細胞からのファージ粒子押出しの過程において繊維状ファージ粒子の表面上に補足されるヘテロ二量体受容体のレベルは、多様な手段により調節することができる。 1つの態様では、融合ポリペプチドのレベルは、ポリペプチドを発現する第1および第2のシストロン中で強力なプロモーターを使用することにより調節し、この場合融合ポリペプチドシストロンの転写が、ヘルパーファージ上のcpVIII遺伝子の転写の速度より大きい相対速度で生起するようにする。 他の態様では、ヘルパーファージはcpVIIIを発現する遺伝子にアンバー変異を有することができ、この場合融合ポリペプチドより野生型でないcpVIIIが宿主細胞中で転写され、これにより押出し過程に際しcpVIIIと比較して融合ポリペプチドの増加した速度を導くものとする。
    他の態様では、ファージ粒子表面上のヘテロ二量体受容体の量は、融合ポリペプチドの発現とヘルパーファージの重複感染との間のタイミングを調節することにより調節することができる。 発現ベクターを宿主細胞に導入した後、ヘルパーファージの添加前の遅れ時間が長いと、宿主細胞における融合ポリペプチドの増加した蓄積を可能とすることができ、これによりファージ粒子を押出すことにより補足される融合ポリペプチドの量が増加する。

    G. 診断方法
    本発明は、サンプル中の予備選択したリガンドまたは抗原の存在について検定する好ましくはキット形態の診断系も記載するものであり、この場合ここに記載する診断方法によりサンプル中のリガンドまたは抗原の存在、及び好ましくは量を検出するのが望ましい。
    サンプルは組織、組織抽出物、流体サンプルまたは体液サンプル、例えば血液、血漿または血清とすることができる。
    診断系は、別にパッケージした試薬として少なくとも1回の検定を行うのに十分な量の本発明による繊維状ファージまたはリガンド結合ヘテロ二量体受容体を含む。
    この発明の繊維状ファージ粒子を利用し固相の予備選択したリガンドを検出する例示的な診断系は実施例に記載する。
    パッケージした試薬の使用のための指示も典型的には含まれる。

    ここで使用するように、「パッケージ」という用語は、本発明のヘテロ二量体受容体、繊維状ファージまたはファージのライブラリーを固定限界内で保持し得るガラス、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリカーボネート)、紙、ホイル等のような固体マトリックスまたは材料に言及するものである。 よって、例えば、パッケージは企図する標識ファージ調製物のミリグラム量を含むのに使用するガラス瓶とすることができ、またはこれはマイクログラム量の企図する受容体又はファージを機能的に固定、すなわちリガンドを結合し得るよう結合したミクロ滴定プレート穴とすることができる。
    「使用のための指示」は、典型的には試薬濃度または少なくとも1つの検定方法パラメーター、例えば混合すべき試薬およびサンプルの相対的量、試薬/サンプル混合物の維持時間期間、温度、緩衝液条件等を記載した具体的な表示を含むものである。

    本発明の診断系は、好ましくは予備選択したリガンドと複合したリガンド結合ヘテロ二量体受容体またはファージを含む結合反応複合体の形成をシグナル化し得る標識または表示手段も含む。
    「複合体」という用語は、ここで使用するようにファージーリガンドまたは受容体−リガンド反応のような特異的結合反応の生成物に言及するものである。 例示的な複合体は免疫反応生成物である。
    ここで使用するように、「標識」および「表示手段」という用語は、その種々の文法的形態において、複合体の存在を示す検出可能なシグナルの生成に直接または間接に関与する単一原子および分子に言及するものである。 診断方法で使用する発現したポリペプチドまたはファージ粒子に全ゆる標識または表示手段を結合させるか組込むことができる。 この種の標識はそれ自体臨床診断化学において周知であり、これらが新規な蛋白質、方法および/または系と共に利用される場合に限り、この発明の一部を構成する。

    標識手段は、抗体または抗原にこれらを変性させることなく化学的に結合して免疫蛍光トレーサーとして有用な蛍光色素(色素)を形成する蛍光標識剤とすることができる。 適切な蛍光標識剤には蛍光色素、例えばフルオレセインイソシアネート(FIC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド(DANSC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リサミン、ローダミン8200スルホニルクロリド(RB200SC)等がある。 免疫蛍光分析技術の記載はデルカ、「免疫蛍光分析」、「道具としての抗体」中、マルカロニスら編、ジョン・ウイレイ・アンド・ソンズ社、pp. 180−231(1982)に認められ、これを参考によりここに取入れる。
    好適な態様では、表示群は西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)、グルコースオキシダーゼ等のような酵素とする。 主たる表示群がHRPまたはグルコースオキシダーゼのような酵素である場合、受容体−リガンド複合体(免疫反応体)が形成したことを視覚化するために付加的な試薬が必要である。 HRPのためのこの種の付加的な試薬には、過酸化水素およびジアミノベンジジンのような酸化色素前駆体が含まれる。 グルコースオキシダーゼと共に有用な付加的な試薬は、2,2′−アミノ−ジ−(3−エチル−ベンズチアゾリン−G−スルホン酸)(ABTS)である。

    放射性元素も有用な標識剤であり、ここでは例示的に使用する。 例示的な放射性標識剤はガンマ線放射を生成する放射性元素である。 それ自体ガンマ線を放射する元素、たとえば124 I、 125 I、 128 I、 132 Iおよび51 Crは、1つのクラスのガンマ線放射生成放射性元素表示群を代表する。 特に好適なのは125 Iである。 他の群の有用な標識手段は、それ自体陽電子を放射する11 C、 18 F、 15 Oおよび13 Nのような元素である。 このように放射された陽電子は、動物の体に存在する電子との遭遇に際してガンマ線を生成する。 同様に有用なのは3 Hの111インジウムのようなベータエミッターである。
    標識の結合、すなわちポリペプチドおよび蛋白質の標識は当業界で周知である。 例えば、蛋白質またはファージは、培養培地の成分として与えた放射性同位元素含有アミノ酸の代謝的取込みにより標識することができる。 例えば、ガルフレら、Meth. Enzymol. 73:3−46(1981)を参照することができる。 活性化した官能基を介する蛋白質接合または共役の技術を特に適用することができる。 例えば、アウラメアスら、Scand. J. Immunol. 第8巻補遺、7:7−23(1978)、ロドウェルら、Biotech. 3:889−894(1984)および米国特許第4,493,795号を参照することができる。

    診断系は、好ましくは別のパッケージとして、特異的結合剤も含むことができる。 「特異的結合剤」は、本発明の試薬分子種またはこの種の分子種を含む複合体に選択的に結合することができるが、それ自体は本発明のポリペプチドまたはファージではない分子実体である。 例示的な特異的結合剤は抗体分子、相補的蛋白質またはその断片、エス・オーレウス(S.aureus)蛋白質A等である。 好ましくは特異的結合剤は、その分子種が複合体の一部として存在する場合に試薬分子種に結合する。
    好適な態様では特異的結合剤を標識する。 ただし診断系が標識されていない特異的結合剤を含む場合、その薬剤は典型的には増幅手段または試薬として使用する。 これらの態様では、標識した特異的結合剤は、増幅手段が試薬分子種含有複合体に結合する場合に、増幅手段に特異的に結合することができる。

    本発明の診断キットを「ELISA」形式で使用して流体サンプル中の予備選択したリガンドの量を検出することができる。 「ELISA」は、固相に結合した抗体または抗原および酵素−抗原または酵素−抗体接合体を用いてサンプル中に存在する抗原の量を検出して定量する酵素結合免疫吸着検定に言及するものであり、本方法に容易に適用可能である。 ELISA技術の記載は、1982年にロス・アルトス、CAのランゲ・メディカル・パプリケーションにより出版されたディ・ピー・サイテスらによる「基礎および臨床免疫学」の第4版の第22章、および米国特許第3,654,090号、第3,850,752号および第4,016,043号に認められ、これらを全て参考によりここに取入れる。
    よって、幾つかの態様では、本発明のポリペプチドまたはファージを固体マトリックスに固定し、対象診断系のパッケージからなる固体支持体を形成することができる。

    水性媒体からの吸着により典型的には試薬を固体マトリックスに固定するが、蛋白質およびポリペプチドに適用し得る他の固定の様式を使用することができ、これは当業者に周知である。 例示的な吸着方法はここに記載する。
    有用な固定マトリックスも当業界で周知である。 この種の材料は水不溶性であり、ファルマシア・ファイン・ケミカルズ(ピスカタウェイ、NJ)から登録商標セファデックス(SEPHADEX)の下で入手可能な架橋結合デキストラン、アガロース、ノース・シカゴ、ILのアボット・ラボラトリイズから入手可能な直径約1ミクロン〜約5ミリメーターのポリスチレンビーズのビーズ、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、架橋結合ポリアクリルアミド、ニトロセルロースまたはナイロン基材ウェブ、例えばシート、ストリップまたはパドル、またはチューブ、プレートまたはポリスチレンまたはポリ塩化ビニル製のもののようなミクロ滴定プレートの穴が含まれる。
    ここに記載する全ゆる診断系の試薬分子種、標識した特異的結合剤または増幅試薬は溶液中で、液体懸濁物としてまたは実質的に乾燥した粉末として、例えば凍結乾燥形態で提供することができる。 表示手段が酵素である場合、酵素の基質も系の別のパッケージで提供することができる。 前記したミクロ滴定プレートのような固体支持体および1以上の緩衝液も、この診断検定系における別のパッケージした要素として含むことができる。
    診断系に関してここに論ずるパッケージ材料は、診断系において慣用的に利用されているものである。

    H. 検定方法
    本発明は、この発明のヘテロ二量体受容体またはファージをリガンド結合試薬として使用してその量が直接または間接にサンプル中の予備選択したリガンドの量に関連する結合反応生成物を形成する生物学的流体サンプルのような水性組成物中に典型的には存在する予備選択したリガンドの存在および好ましくは量を決定する種々の検定方法を企図する。
    当業者であれば、この発明の結合試薬を使用してその量がサンプル中のリガンドの量に関連する結合反応生成物を形成することのできる多数の周知の臨床診断化学手順があることを理解しよう。 よって、例示的な検定方法をここに記載するが、この発明はこのように限定されるものではない。

    競合または非競合いずれかの種々の異種的およ同種的な手順を、この発明の検定方法を実施するのに用いることができる。
    1つの態様では、この発明は、この発明のリガンド結合ヘテロ二量体受容体を結合試薬として使用して受容体が結合する予備選択したリガンドの存在を検出する直接結合検定を企図する。 この方法は、a)リガンド結合ヘテロ二量体受容体がリガンドに結合してリガンド−受容体複合体を形成するのに十分な結合条件下で予備選択したリガンドに結合するこの発明のリガンド結合ヘテロ二量体受容体と予備選択した抗原を含むと考えられるサンプルとを混合し、b)リガンド−受容体複合体または複合体中のリガンド結合ヘテロ二量体受容体の存在を検出する工程からなる。
    結合条件は、受容体のリガンド結合活性を維持するようなものとする。 このような条件には、摂氏約4〜50度の温度範囲、約5〜9のpH値、およびほぼ蒸留水のものからほぼ1モルの塩化ナトリウムのものまでの範囲のイオン強度が含まれる。

    免疫学的技術で周知のように、検出工程は複合または結合試薬(複合体の受容体成分)のいずれかに向けることができる。 よって、受容体に特異的な抗体のような二次結合試薬を利用することができる。
    また、標識した受容体分子を使用したことにより複合体を検出可能とすることができ、これにより複合体を標識されたものとする。 この場合の検出は、複合体中に存在する標識を検出することからなる。
    好適な態様では、リガンド結合ヘテロ二量体受容体は、繊維状ファージ粒子上の付着物として、すなわちファージの表面上で与えるものとする。 この発明の繊維状ファージを使用する例示的な検定は、実施例においてELISA形式で記載する。
    他の態様では、例えばここに記載するようにファージの蛋白質または核酸に組込まれた放射性同位元素により繊維状ファージ粒子を検出可能に標識する。 この態様では、検出は、複合体中の標識を検出し、これにより複合体中のリガンドの存在を検出することからなる。

    更なる診断方法は架橋結合リガンドに対する繊維状ファージ粒子の多価性を利用するものであり、これにより多価リガンドおよびファージ粒子の凝集物を形成し、沈殿し得る凝集物を生成する。 この態様は、免疫沈殿の周知の方法と比較し得るものである。 この態様は、サンプルとこの発明の複数のファージ粒子とを混合して結合条件下で結合混合物を形成する工程からなり、その後形成した結合複合体を単離する分離工程を行う。 典型的には、凝集物を混合物から除去する遠心分離またはろ過により単離を行う。 結合複合体の存在は、検出すべき予備選択したリガンドの存在を示す。

    以下の実施例はこの発明の範囲を示すことを意図するものであるが、限定するものではない。
    実施例1
    ファージ粒子上でヘテロ二量体受容体を製造するジシストロン性発現ベクターの構成
    直接検索することのできる多数のFab抗体断片を生成するベクター系を取得するため、バクテリオファージラムダにおける発現ライブラリーを、ヒューセら、Science,246:1275−1281(1989)に記載されたようにして先に構成した。 このような系は、繊維状ファージ粒子の表面を標的とする発現されたFabを与える設計特徴は含まない。
    ベクター系を選択するのに使用した主な評価基準は、直接検索し得る最多数のFab断片を生成する必要性とした。 このような理由のため、発現ベクターを開発する出発点としてバクテリオファージラムダを選択した。 第1に、ファージDNAの試験管内パッケージングは、宿主細胞にDNAを再導入する最も効率的な方法であった。 第2に、単一ファージプラークのレベルで蛋白質発現を検出するのが可能であった。 最後に、ファージライブラリーの検索が典型的に含む非特異的結合についての困難性が少なかった。 代替であるプラスミドクローン化ベクターは、それを同定した後のクローンの分析において有利なのみである。 pCombVIIIのようなジシストロン性発現ベクターを使用し、これにより切出すべき重鎖、軽鎖またはFab発現挿入物を含むプラスミドを可能とすることから、この利点は本系では失われなかった。

    実施例1a. ジシストロン性発現ベクターpCOMBの構成
    (i) ラムダZap TM IIの調製
    ラムダZap TM IIは、6つの独特のクローン化部位、融合蛋白質発現、およびファージミド(ブルースクリプトSK−)の形態で挿入物を迅速に切出す能力を含む元のラムダZapの全ての特徴を維持するが、SAM100変異を欠失し、XL1−ブルーを含む多くの非SupF株上での生育を可能とする元のラムダZap(ATCC#40,298)の誘導体である。 ラムダZap TM IIは、ショートら、Nuc. Acids Res. 16:7583−7600,1988に記載されたように、制限酵素NcoIを用いてラムダZapを消化することにより生成する4254塩基対(bp)DNA断片に含まれるラムダS遺伝子を置換することにより構成した。 制限酵素NcoIによりベクターを消化した後にラムダgt10(ATCC#40,179)から単離したラムダS遺伝子を含む4254bpDNA断片を用いてこの4254bpDNA断片を置換した。 T4DNAリガーゼおよび「分子生物学における現代の手順」、アウスベルら編、ジョン・ウィレン・アンド・ソンズ、NY、1987に記載されたもののような標準的な手順を使用し、ラムダgt10から単離した4254bpDNA断片を元のラムダZapベクターに連結し、ラムダZap TM IIIを形成した。

    (ii) ラムダHc2の調製
    イー・コリ宿主細胞中で複数のV HコードDNA相同体を発現するため、ラムダHc2と命名したベクターを構成した。 このベクターは次のものを与えた:適切なリーディングフレームでV HコードDNA相同体を配置する能力、シャインら、Nature,254:34,1975により記載されたリボソーム結合部位、pelB分泌シグナルと命名されたペリプラズム空間に発現した蛋白質を向けるリーダー配列、公知のエピトープ(エピトープtag)をコードするポリヌクレオチド配列、および同様にVHコードDNA相同体とエピトープtagをコードするポリペプチドとの間のスペーサー蛋白質をコードするポリペプチド。 ラムダHc2は、ヒューセら、Science,246:1275−1281(1989)により先に記載されいてる。

    ラムダHc2を調製するため、互いにハイブリダイズし得て図3に示す二本鎖合成DNA配列を形成する20〜40塩基の一本鎖ポリヌクレオチド断片を設計することにより、前記特徴の全てを含む合成DNA配列を構成した。 個々の一本ポリヌクレオチド断片を表3に示す。
    70mMトリス−HCl、pH7.6、10mMMgCl 2 、5mMジチオスレイトール(DTT)、10mMβ−メルカプトエタノール、ミリリットル当り500マイクログラム(μg/ml)のウシ血清アルブミン(BSA)を含む溶液に1μlにそれぞれのポリヌクレオチド0.1マイクログラム/マイクロリットル(μg/μl)および20単位のT 4ポリヌクレオチドキナーゼを添加することにより、ポリヌクレオチドN2、N3、N9−4、N11、N10−5、N6、N7およびN8(表3)をキナーゼ処理した。 溶液を摂氏37度(37℃)に30分間維持し、溶液を65℃で10分間維持することにより反応を停止させた。 20.0mMトリス−HCl、pH7.4、2.0mMMgCl 2および50.0mMNaClを含む1/10容量の溶液と共に前記キナーゼ処理反応溶液に対して2つの末端ポリヌクレオチド、20ngのポリヌクレオチドN1およびポリヌクレオチドN12を添加した。 この溶液を70℃に5分間加熱し、水の500mlビーカー中で1.5時間かけて室温、約25℃に冷却した。 この時間期間の間に、10の全てのポリヌクレオチドがアニールし、図3に示す二本鎖合成DNA挿入物を形成した。 50mMトリス−HCl、pH7.5、7mMMgCl 2 、1mMDTT、1mMアデノシン三リン酸(ATP)および10単位のT4DNAリガーゼを含む溶液に40μlの前記反応物を添加することにより、個々のポリヌクレオチドを互いに共有結合させて合成DNA挿入物を安定化した。
    この溶液を37℃に30分間維持し、その後溶液を65℃で10分間維持することによりT4DNAリガーゼを不活性化した。 52μlの前記反応物、10mMATPを含む4μlの溶液および5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを混合することにより末端ポリヌクレオチドをキナーゼ処理した。 この溶液を37℃に30分間維持し、その後溶液を65℃で10分間維持することによりT4ポリヌクレオチドキナーゼを不活性化した。

    制限酵素NotIおよびXhoIにより予め消化した実施例1a(i)に記載したラムダZap TM IIベクターに完成した合成DNA挿入物を直接連結した。 ストラタジーン、ラ・ジョラ、カリホルニアから入手可能なギガパックIIゴールドパッキング抽出物を使用し、製造業者の指針に従って連結混合物をパッケージした。 パッケージした連結混合物をXL1ブルー細胞(ストラタジーン)上にプレート処理した。 個々のラムダプラークを抜取り、製造業者(ストラタジーン)により提供されたラムダZap TM IIについての生体内切出し手順に従って挿入物を切出した。 この生体内切出し手順により、クローン化した挿入物はラムダHc2ベクターからファージミドベクターに移動し、操作および配列決定が容易となった。 サンガーら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,74:5463〜5467(1977)に記載されたサンガーのジデオキシ法を使用し、AMV逆転写酵素35 S−ATP配列決定キット(ストラタジーン)における製造業者の指針を使用して挿入物を配列決定することにより、前記クローン化工程の正確性を確認した。 V H発現ベクター(ラムダHc2)における得られた二本鎖合成DNA挿入物の配列を図3に示す。 ラムダHc2のそれぞれの鎖の配列(頂部および底部)を、それぞれ配列番号:1および配列番号:2として配列中に列記する。 得られたラムダHc2発現ベクターを図4に示す。

    (iii) ラムダLc2の調製
    イー・コリ宿主細胞中で複数のV LコードDNA相同体を発現するため、シャインら、Nature,254:34(1975)に記載されたようにリボソーム結合部位を備え、レイら、J. Bac. 169:4379(1987)およびベターら、Science,240:1041(1988)によりイー・コリにおいてFab断片を成功裡に分泌させるのに先に使用されたpelB遺伝子リーダー配列を備え、クローン化のための制限エンドヌクレアーゼ部位を含むポリヌクレオチドを更に備える、適切なリーディングフレームにV LコードDNA相同体を位置させる能力を有するラムダLc2と命名したベクターを構成した。 ラムダLc2は、ヒューセら、Science,246:1275−1281(1989)により先に記載されいてる。
    互いにハイブリダイズし得て図5に示す二本鎖合成DNA配列を形成する20〜60塩基の一本鎖ポリヌクレオチド断片を設計することにより、前記特徴の全てを含む合成DNA配列を構成した。 二本鎖合成DNA配列内のそれぞれ個々の一本鎖ポリヌクレオチド断片(01〜08)の配列を表4に示す。

    70mMトリス−HCl、pH7.6、10mMMgCl、5mMDTT、10mMβ−メルカプトエタノール、500mg/mlのBSAを含む溶液に1μl(0.1μg/μl)のそれぞれのポリヌクレオチドおよび20単位のT 4ポリヌクレオチドキナーゼを添加することにより、ポリヌクレオチド02、03、04、05、06および07(表4)をキナーゼ処理した。 37℃で30分間溶液を維持し、65℃で10分間溶液を維持することにより反応を停止させた。 20.0mMトリス−HCl、pH7.4、2.0mMMgClおよび15.0mM塩化ナトリウム(NaCl)を含む1/10容量の溶液と共に、20ngのそれぞれの2つの末端ポリヌクレオチド01および08を前記キナーゼ反応溶液に添加した。 この溶液を70℃に5分間加熱し、水の500mlビーカー中で1.5時間かけて室温、約25℃に冷却した。 この時間期間の間に、8つのポリヌクレオチドがアニールして図5に示す二本鎖合成DNA挿入物を形成した。 50mlトリス−HCl、pH7.5、7mlMgCl、1mmDTT、1mmATPおよび10単位のT4DNAリガーゼを含む溶液に40μlの前記反応物を添加することにより、個々のポリヌクレオチドを互いに共有結合させて合成DNA挿入物を安定化した。 この溶液を37℃で30分間維持し、その後65℃で10分間溶液を維持することによりT4DNAリガーゼを不活性化した。 52μlの前記溶液、10mMATPおよび5単位のポリヌクレオチドキナーゼを含む4μlの溶液を混合することにより末端ポリヌクレオチドをキナーゼ処理した。 この溶液を37℃で30分間維持し、その後溶液を65℃で10分間維持することによりT4ポリヌクレオチドキナーゼを不活性化した。

    制限酵素SacIおよびXhoIにより予め消化した実施例1(a)(i)に記載したラムダZap TM IIベクターに完成した合成DNA挿入物を直接連結した。 ギガパックIIゴールドパッキング抽出物(ストラタジーン)を使用し、製造業者の指針にしたがって連結混合物をパッケージした。 パッケージした連結混合物をXL1ブルー細胞(ストラタジーン)上にプレート処理した。 個々のラムダプラークを抜取り、製造業者(ストラタジーン)により提供されたラムダZap TM IIについての生体内切出し手順にしたがって挿入物を切出した。 この生体内切出し手順により、クローン化した挿入物はラムダLc2ベクターからプラスミドファージミドベクターに移動し、操作および配列決定が容易となった。
    AMV逆転写酵素35 S−ATP配列決定キット(ストラタジーン)における製造業者の指針を使用して挿入物を配列決定することにより前記クローン化工程の正確性を確認した。 得られたLc2発現ベクター(ラムダLc2)の配列を図7に示す。 配列列記中に配列番号:3および配列番号:4としてそれぞれの鎖を別に列記する。 得られたLc2ベクターを図6に図示的に示す。

    ラムダLc3と命名したこの発明で使用するのに好適なベクターは前記調製したラムダLc2の誘導体である。 図5および配列番号:3に示すように、ラムダLc2は、EcoRI制限部位に対して3′およびシャイン・ダルガーノリボソーム結合部位に対して5′に位置するSpeI制限部位(ACTAGT)を含む。 図3および4並びに配列番号:1に示すように、SpeI制限部位はラムダHc2にも存在する。 以下の実施例1a(iv)に記載するようにラムダHc2およびLc2の部分を共に組合せることにより、pCombと命名した結合ベクターを構成した。 得られる結合pCombベクターは、1つがラムダHc2により与えられ1つがラムダLc2により与えられEcoRI部位が間にある2つのSpeI制限部位を含んでいた。 2つのSpeI制限部位の存在にも拘らず、以下の実施例1bに記載するように、SpeIおよびEcorI付着末端を有するDNA相同体は、SpeIおよびEcoRIにより予め消化したpComb発現ベクターに成功裡に方向性をもって連結された。 Lc2ベクターにより与えられる3′SpeI部位に対するEcoRI制限部位の近接性により、3′SpeI部位の完全消化が阻害された。 よって、SpeIおよびEcoRIを用いてpCombを消化しても、2つのSpeI部位の間のEcoRI部位の除去には帰着しない。

    第2のSpeI制限部位の存在は、2つの部位の間の領域が除去され得るため、SpeIのみで消化したpCombベクターへの連結には望ましくない可能性がある。 したがって、最初にSpeIによりラムダLc2を消化して線状化したベクターを形成することにより、ラムダLc3と命名した第2のまたは3′SpeI部位を欠失するラムダLc2の誘導体を製造する。 末端を埋めて平滑末端を形成し、これらを互いに連結し、結果としてSpeI部位を欠失したラムダLc3を得る。 ラムダLc3は、以下に記載するように結合ベクターを構成する使用に好適である。
    (iv) pCombの調製
    前記した生体内切出し手順を使用して発現ベクターラムダHc2またはラムダLc2からファージミドを切出した。 ホルメスら、Anal. Biochem. 114:193(1981)により記載された方法により、ファージミド含有細胞から二本鎖DNAを調製した。 生体内切出しの結果得られるファージミドは、親ベクターと同様に抗体断片クローン化および発現のための同じヌクレオチド配列を含んでおり、それぞれラムダHc2およびLc2に対応してファージミドHc2およびLc2と命名した。

    ファージミドHc2およびファージミドLc2の部分を組合せることにより製造される結合ファージミドベクターpCombの構成のため、ファージミドHc2を最初にSacIにより消化し、LacZプロモーターに対して5′に位置する制限部位を除去した。 線状化したファージミドをその後T4ポリメラーゼにより平滑末端として連結した結果、SacI部位を欠失するHc2ファージミドを得た。 修飾したHc2ファージミドおよびLc2ファージミドをその後別々にScaIおよびEcoRIにより制限消化し、結果として5′から3′にScaI、NotI、XhoI、SpeIおよびEcoRI制限部位を有するHc2断片および5′から3′にEcoRI、SacI、XbaIおよびSacI制限部位を有するLc2断片を得た。 線状化したファージミドをその後そのそれぞれの付着末端で互いに連結し、NotI、XhoI、SpeI、EcoRI、SacI、XbaI、NotI、ApaIおよびScaIの制限部位の線状配列を有する環状化したファージミドであるpCombを形成した。 連結したファージミドベクターをその後適切な細菌宿主に挿入し、抗生物質アンピシリン上で形質転換体を選択した。

    2つのNotI部位の存在について、選択したアンピシリン耐性形質転換体を検索した。 得られたアンピシリン耐性結合ファージミドベクターをpCombと命名し、その図示的構成を図7に示す。 得られた結合ベクターpCombは、2つの融合蛋白質を発現する2つのカセットを有し、5′から3′方向に列記する機能的に結合した次の要素:LacZ遺伝子の上流の誘導性LacZプロモーターよりなる第1のカセット、NotI制限部位、リボソーム結合部位、pelBリーダー、スペーサー、5′Xhoおよび3′SpeI制限部位を境界とするクローン化領域、発現調節停止配列が後続するデカペプチドtag、発現調製リボソーム結合部位よりなる第2のカセットに対して5′に位置するEcoRI制限部位、pelBリーダー、スペーサー領域、発現調節停止配列および第2のNotI制限部位が後続する5′SacIおよび3′XbaI制限部位を境界とするクローン化領域についてのヌクレオチド残基配列を有するDNA分子よりなるものであった。

    pComb2と命名したこの発明での使用に好適な結合ベクターは、pCombの調製について前記したようにファージミドHc2およびファージミドLc3の部分を組合せることにより構成する。 得られる結合ベクターpComb2は、第2のカセット中の第2のSpeI制限部位を除去した以外は、pCombと同様に2つの融合蛋白質を発現するpCombと同一の2つのカセットを有するDNA分子よりなる。
    実施例1b. バクテリオファージコート蛋白質膜アンカーを有する融合蛋白質を発現させるベクターpCombVIIIおよびpCombIIIの構築
    多重エンドヌクレアーゼ制限クローン化部位により、前記調製したpCombファージミド発現ベクターは、この発明の発現ベクターの調製のための修飾に有用なクローン化運搬体である。 その目的のため、pCombをEcoRIおよびSpeIにより消化し、その後ホスファターゼ処理を行って線状化したpCombを製造する。

    (i) pCombVIIIの調製
    繊維状バクテリオファージコート蛋白質VIII(cpVIII)膜アンカードメインおよび付着SpeIおよびEcoRI末端を特定するヌクレオチド配列を有する実施例2gで製造したPCR生成物を線状化したpCombと混合して連結混合物を形成した。 cpVIII膜アンカーコードPCR断片を対応する付着末端でpCombファージミド発現ベクターに方向性をもって連結し、この結果としてpCombVIII(pComb8とも命名)を形成した。 pCombVIIIは、配列番号:116のヌクレオチド塩基1〜塩基208に示すヌクレオチド配列により特定されるカセットを含み、cpVIII膜アンカーに機能的に結合したpelB分泌シグナルを含む。

    SpeIおよびEcoRI付着末端を介してcpVIII膜アンカーコードPCR断片をpComb2ファージミド発現ベクターに方向性をもって連結することにより、pComb2−VIIIまたはpComb2−8と命名したこの発明で使用するのに好適なファージミド発現ベクターを前記したように調製した。 pComb2−8は、唯一のSpeI制限部位を有していた。
    (ii) pCombIIIの調製
    配列コードバクテリオファージcpIII膜アンカードメインを使用し、別のファージミド発現ベクターを構成した。 軽鎖の発現のための膜アンカーに対して3′のLacZプロモーター領域配列を含むcpIII膜アンカーおよびSpeIおよびEcoRI付着末端を特定するPCR生成物をcpVIIIについて記載したように調製した(その詳細は実施例2gに記載する)。 唯一のSpeI部位を有する線状化したpComb2ベクターにその後cpIII誘導PCR生成物を連結してベクターpComb2−3を形成した(同様にpComb2−IIIと命名した)。

    ショートら、Nuc. Acids Res. 16:7583−7600(1988)により記載されストラタジーンから市販されているpブルースクリプト(pBluescript)からの51塩基対断片の添加により、pComb−III′またはpComb2−3′と命名した付加的な制限酵素クローン化部位を有するこの発明での使用に更に好適なファージミド発現ベクターを、pComb2−3について前記したように調製した。 pComb2−3′を調製するため、XhoIおよびSpeI制限酵素によりpComb2−3を最初に消化して線状化したpComb2−3を形成した。 同じ酵素によりベクターpブルースクリプトを消化し、制限酵素部位SalI、AccI、HincII、ClaI、HindIII、EcoRV、PstI、SmaIおよびBamHIを含む51塩基対断片を放出させた。 付着XhoIおよびSpeI末端を介して51塩基対断片を線状化したpComb2−3ベクターに連結してpComb2−3′を形成した。

    実施例1c. クロラムフェニコール耐性マーカーを有するpCBAKベクターの構築
    この発明のベクターにより形質転換された細菌の選択のためにクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーセ(CAT)のような異なる選択可能マーカー遺伝子を利用するため、CATをコードする遺伝子を有するpCombに基く発現ベクターを開発したが、これをpCBAKベクターと命名する。 pCBAKベクターはpCBおよびpCombの部分の組合せることにより調製する。
    (i) pCBの調製
    以下に記載するようにpブルースクリプトファージミドベクター、pBCSK(−)およびpBSSK(−)(ストラタジーン)を修飾して組合せ、pCBと命名した第3のベクターを生成した。
    クロラムフェニコール耐性選択可能マーカー遺伝子を含むpBCSK(−)をBstBIにより消化し、T4ポリメラーゼにより平滑末端とした。 PvuIによる第2の消化により1キロベース(kb)断片の除去を可能とし、CAT選択可能耐性マーカー遺伝子、LacZ遺伝子の上流の誘導性LacZプロモーターおよびColE1開始点領域を保持した2.4kbの線状化したベクターを残した。 2.4kb断片を回収した。 pBSSK(−)ベクターをAatIIにより消化し、T4ポリメラーゼにより平滑末端とした。 PvuIによる第2の消化により、f1複製開始点を含む800塩基対(bp)断片の単離を可能とした。 pBS誘導800bpf1断片と2.4kbpBC断片との連結により、SacI部位、f1複製開始点、CAT選択可能耐性マーカー遺伝子、ColE1開始点、T 3およびT 7プロモーターが隣接する多重クローン化部位(MCS)、およびLacZ遺伝子の上流の誘導性LacZプロモーターを含むpCB前駆体ベクターを生成した。

    その後SacIによりpCB前駆体ベクターを消化し、T4ポリメラーゼにより平滑末端とした。 その後T4ポリメラーゼ処理pCBベクターを連結してpCBベクターを形成したが、SacI部位を欠失するものである。
    (ii) pCBAK0の調製
    CAT選択可能耐性マーカー遺伝子を含むpCBベクターをSacIIおよびApaIにより消化し、ホスファターゼにより処理して連結を防止して線状化したpCBベクターを形成した。 実施例1(a)(iv)で調製したpCombベクターをSacIIおよびApaIで制限消化し、LacZプロモーターに対して5′で開始し第2のNotI部位の3′末端を過ぎて延在するヌクレオチド残基配列を含む断片を放出させた。 SacIIおよびApaIpCombDNA断片をその後同様に消化したpCBベクターに方向性をもって連結してファージミド発現ベクターpCBAK0を形成した。 好適なpCBAK発現ベクターはpComb2により構成される。 得られたpCBAK発現ベクターは唯一のSpeI制限部位を含んでいた。

    (iii) pCBAK8の調製
    発現した融合蛋白質中にバクテリオファージコート蛋白質膜アンカードメインをコードするpCBAKに基くファージミド発現ベクターを調製するため、実施例1c(ii)で調製したpCBファージミドクローン化ベクターをSacIIおよびApaIによる消化により線状化した。 実施例1b(i)で調製したpCombVIIIファージミド発現ベクターをSacIIおよびApaIにより制限消化し、LacZプロモーターに対して5′で開始し第2のNot1部位の3′末端を過ぎて延在するヌクレオチド残基配列を含む断片を形成した。 この断片を線状化したpCBクローン化ベクターに方向性をもって連結してファージミド発現ベクターpCBAK8を形成した。
    (iv) pCBAK3の調製
    pCombIIIからのSacIIおよびApaI制限消化断片をSacIIおよびApaI線状化pCBクローン化ベクターと方向性をもって連結することにより、cpIII膜アンカードメインを有する融合蛋白質を発現するためのファージミド発現ベクターpCBAK3を同様に構成した。

    実施例2
    ファージ表面上で抗NPNヘテロ二量体を発現するためのジシストロン性発現ベクターの構成
    この発明を実施するに際し、抗体の重(V HおよびC H 1よりなるFd)および軽(カッパ)鎖(V L 、C L )は、ヘテロ二量体Fab分子の集成のためにイー・コリのペリプラズムを最初に標的とする。 ファージ表面上での抗体Fabライブラリーの発現を得るためには、繊維状バクテリオファージコート蛋白質膜アンカーをコードするヌクレオチド残基配列にFdまたは軽鎖をコードするヌクレオチド残基配列を機能的に結合させなければならない。 膜アンカーを提供するに際してこの発明で使用するのに好適な2つのコート蛋白質はVIIIおよびIIIである(それぞれcpVIIIおよびcpIII)。 ここに記載する実施例では、この発明の融合蛋白質中のcpVIIIまたはcpIII膜アンカーにFd鎖をコードするヌクレオチド残基配列を機能的に結合させる方法を記載する。 ファージミドベクター中で、翻訳可能なDNA配列よりなる第1および第2のシストロンを機能的に結合してジシストロン性DNA分子を形成する。 融合蛋白質、Fd−cpVIIIまたはFd−cpIII、およびカッパ軽鎖の共働発現のために、ジシストロン性DNA分子中のそれぞれのシストロンをDNA発現調節配列に結合する。

    第1のシストロンは、融合蛋白質、Fd−cpVIIIまたはFd−cpIIIに機能的に結合したペリプラズム分泌シグナル(pelBリーダー)をコードする。 第2のシストロンは、カッパ軽鎖に機能的に結合した第2のpelBリーダーをコードする。 pelBリーダーの存在により、細菌細胞質からペリプラズムへの融合蛋白質および軽鎖の共働してはいるが別の分泌が促進される。
    前記したプロセスを図8に図示的に示す。 簡略には、ファージミド発現ベクターは、Fd−cpVIII融合体およびカッパ鎖に加えてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)選択可能耐性マーカー遺伝子を担持する。 f1ファージ複製開始点は一本鎖ファージミドの生成を促進する。 Fd−cpVIII融合体(V H 、C H1 、cpVIII)および軽鎖(V L 、C L )をコードするジシストロン性メッセージのイソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)誘導発現により重鎖および軽鎖の形成が導かれる。 それぞれの鎖はpelBリーダー配列によりペリプラズム空間に分配され、これはその後開裂される。 重鎖はcpVIII膜アンカードメインによって膜中に定置されるのに対し、軽鎖はペリプラズム中に分泌される。 軽鎖の存在下に重鎖が集成してFab分子を形成する。 その他膜アンカーを有する軽鎖融合蛋白質により軽鎖が定置され、pelBリーダーにより重鎖がペリプラズムに分泌される場合、同じ結果を達成することができる。

    ヘルパーファージと共にその後イー・コリに感染させると、繊維状バクテリオファージの集成が進行するため、図8および9に示すように繊維状ファージ粒子の全長さに沿ってコート蛋白質VIIIが組込まれる。 cpIIIを使用する場合はバクテリオファージの尾部で蓄積が起こる。 cpIIIに対してcpVIII由来の膜アンカーの利用の利点は2倍である。 第1に、管状列に集成した約2700cpVIII単量体よりなる結合部位の多重性が粒子表面に沿って存在する。 第2に、構成体はファージの感染性を妨害しない。
    実施例2a. ポリヌクレオチド選択
    免疫グロブリン蛋白質CDRをコードするヌクレオチド配列は高度に可変性である。 しかしながら、例えば軽鎖または重鎖のV領域ドメインに隣接し、実質的に保存されたヌクレオチド配列、すなわち同じプライマー配列にハイブリダイズし得る配列を含む保存された配列の幾つかの領域がある。 したがって、保存された配列にハイブリダイズし、合成したDNA断片をベクターに機能的に結合するのに適切な制限部位を製造するDNA相同体に組込むポリヌクレオチド合成(増幅)プライマーを構成した。 更に詳しくは、方向性をもった連結手段を含むベクターの領域で上流の翻訳可能なDNA配列とリーディングフレームを合せてこの発明の発現ベクターに製造する得られるDNA相同体を挿入することができるようにプライマーを設計する。

    (i) H プライマー
    Hドメインの増幅のため、ファージミドHc2発現ベクターの独特のXhoIおよびSpeI部位への方向性をもった連結に適合した付着末端を導入するようにプライマーを設計する。 たとえば、J H領域のmRNAに相補的であるように3′プライマー(表5〜6のプライマー12A)を設計した。 全ての場合において、保存されたN末端領域(アンチセンス鎖)の第1の鎖cDNAに相補的であるように5′プライマー(プライマー1〜10、表5〜6)を選択した。 5つの位置で縮退した32のプライマーの混合物(プライマー1、表5〜6)を用いて最初に増幅を行った。 混合プライマーを用いてハイブリドーマmRNAを増幅することができるが、脾臓由来のmRNAを増幅する最初の試みは変動する結果を与えた。 したがって、混合した5′プライマーを使用する増幅の幾つかの代替を比較した。

    第1の代替は、混合したプライマープールの個々の構成員に対応する多数の独特のプライマー(その8つを表5に示す)を構成するものとした。 5つの縮退位置の3つで2つの可能なヌクレオチドのいずれかを組込むことにより、表5の個々のプライマー2〜9を構築した。
    第2の代替は、タカハシら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA),82:1931−1935(1985)およびオーツカら、J. Biol. Chem. 260:2605−2608(1985)の公開された研究に基き、可変位置の4つでイノシンを含むプライマー(プライマー10、表5)を構成するものとした。 このプライマーは、縮退しておらず、また同時にマーチンら、Nuc. Acids Res. 13:8927(1985)に論じられたように保存されていない位置における不整合の陰性の効果を最小にする利点を有する。
    しかしながら、イノシンヌクレオチドが存在する結果クローン化V H領域での望まない配列の組込みに至り得るか否かは知られていなかった。 したがって、制限部位の開裂の後に増幅された断片中に残る1つの位置にはイノシンは含まれていなかった。 結果として、イノシンはクローン化挿入物中にはなかった。

    ガンマ1重鎖mRNAの第1の不変領域ドメインの部分に相補的となるように独特の3′プライマーを含む更なるV H増幅プライマーを設計した(プライマー16および17、表5)。 これらのプライマーは、V H由来のアミノ酸および重鎖の第1の不変領域ドメインをコードするポリヌクレオチドを含むDNA相同体を生成し得る。 したがって、これらのDNA相同体を使用してF vより寧ろFab断片を製造することができる。
    IgM、IgEおよびIgAのような免疫グロブリン重鎖の他のクラスの類似する領域にハイブリダイズするように更なる独特の3′プライマーを設計する。
    特定のクラスのCH 1不変領域の特定の領域にハイブリダイズし、異なるクラスの重鎖または軽鎖不変領域によりこのようなV Hドメインを発現し得る発現ベクターにこのプライマーを使用して増幅したV Hドメインを移すのに適合した他の3′プライマーも企図する。

    脾臓またはハイブリドーマmRNAからの増幅の対照として、不変領域IgG、重鎖内の高度に保存された領域にハイブリダイズする一組のプライマーを構成した。 5′プライマー(プライマー11、表5)はC H 2領域のcDNAに相補的であるのに対し、3′プライマー(プライマー13、表5)はC H 3領域のmRNAに対して相補的である。 これらのプライマーとその鋳型との間には不整合はないと考えられる。
    Fabの構成のための重鎖Fd断片の増幅に使用するプライマーを少なくとも表5に示す。 8つの別の反応で増幅を行ったが、それぞれ5′プライマー(プライマー2〜9)の1つおよび3′プライマー(プライマー16)の1つを含むものとした。 単一反応で増幅に使用した残余の5′プライマーは、縮退プライマー(プライマー1)または4つの縮退位置でイノシンを取込むプライマー(プライマー10、表5およびプライマー17および18、表6)である。 残余の3′プライマー(プライマー14、表6)を使用してF v断片を構成した。 多くの5′プライマーはXhoI部位を組込み、ファージミドHc2発現ベクターへのV H DNA相同体の挿入のために3′プライマーはSpeI制限部位を取込む(図4)。
    ヒト重鎖可変領域を増幅するように設計したVH増幅プライマーを表6に示す。 5′重鎖プライマーの1つは縮退ヌクレオチド位置にイノシン残基を含み、単一のプライマーが多数の可変領域配列にハイブリダイズするのを可能とする。 種々のIgGmRNAの不変領域配列にハイブリダイズするように設計したプライマーも表6に示す。

    (ii) L プライマー
    L CDRをコードするヌクレオチド配列は高度に可変である。 しかしながら、J L 、V Lフレーム構造領域およびV Lリーダー/プロモーターを含むV L CDRドメインに隣接する保存された配列の幾つかの領域がある。 したがって、保存された配列にハイブリダイズし、SacIおよびXbaIにより切断したファージミドLc2ベクターに増幅した断片をクローン化することを可能とする制限部位を組込む増幅プライマーを構成した。
    L CDRドメインの増幅のため、保存されたN末端領域において第1の鎖cDNAに相補的となるように5′プライマー(表6のプライマー1〜8)を設計した。 これらのプライマーによってもSacI制限エンドヌクレアーゼ部位が導入され、V L DNA相同体がファージミドLc2発現ベクターにクローン化されるのが可能となった。 J L領域のmRNAに相補的であり、ファージミドLc2発現ベクターにV L DNA相同体を挿入するのに必要なXbaI制限エンドヌクレアーゼ部位を導入するように3′V L増幅プライマー(表6のプライマー9)を設計した(図6)。

    カッパまたはラムダmRNAの不変領域にハイブリダイズするように更なる3′V L増幅プライマーを設計した(表6のプライマー10および11)。 これらのプライマーにより、カッパまたはラムダ鎖の不変領域アミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を含むものとしてDNA相同体を製造するのが可能となる。
    これらのプライマーにより、F vより寧ろFab断片を製造するのが可能となる。
    Fabの構成のためにカッパ軽鎖配列の増幅に使用するプライマーを少なくとも表6に示す。 これらのプライマーによる増幅を5つの別の反応で行ったが、それぞれ5′プライマー(プライマー3〜6および12)の1つおよび3′プライマー(プライマー13)をの1つ含むものとした。 残余の3′プライマー(プライマー9)を使用してF v断片を構成した。 5′プライマーはSacI制限部位を含み、3′プライマーはXbaI制限部位を含む。
    ラムダおよびカッパイソタイプの両者のヒト軽鎖可変領域を増幅するように設計したV L増幅プライマーも表6に示す。
    表3〜7に示すものを含むここに記載する全てのプライマーおよび合成ポリヌクレオチドは、フンツビレ、アラバマのリサーチ・ジェネティクスから購入したものか、製造業者の指針を使用してアプライド・バイオシステムスDNA合成装置、モデル381Aにより合成したものとした。





































    表5に列記した19のプライマーは配列表に列記したが、次の配列番号により命名した:
    (1)=配列番号:40
    (2)=配列番号:41
    (3)=配列番号:42
    (4)=配列番号:43
    (5)=配列番号:44
    (6)=配列番号:45
    (7)=配列番号:46
    (8)=配列番号:47
    (9)=配列番号:48
    (10)=配列番号:49
    (11)=配列番号:50
    (12)=配列番号:51
    (12A)=配列番号:52
    (13)=配列番号:53
    (14)=配列番号:54
    (15)=配列番号:55
    (16)=配列番号:56
    (17)=配列番号:57
    (18)=配列番号:58
    表6に「(1)」〜「(40」として列記した40のプライマーも、それぞれ配列番号:59で始まり配列番号:98までとして配列表に個々に順に列記した。
    実施例2b. 免疫グロブリン可変ドメインをコードする遺伝子のレパートリーの調製
    この発明の方法によりヘテロ二量体受容体を調製する際の受容体結合のためのリガンドとしてニトロフェニルホスホンアミデート(NPN)を選択した。
    スカシ貝ヘモシアニン(KLH)をNPNに接合させ、マウスを免疫化して抗NPN免疫応答を生成するのに使用するNPN−KLHを形成し、これによりリガンド特異的ヘテロ二量体受容体遺伝子の供給源を作成した。

    ジメチルホルムアミド中に2.5mgのNPNを含む250μlの溶液と0.01モル(M)リン酸緩衝液(pH7.2)中に2mgのKLHを含む750μlの溶液とを混合することにより、NPN−KLH接合物を調製した。 回転攪拌棒によりKLH溶液を攪拌しつつNPN溶液をKLH溶液にゆっくり添加することにより、2つの溶液を混合した。 その後4℃で1時間同じ攪拌で混合物を維持して接合を進行させた。 セファデックスG−25によるゲルろ過により非接合NPNおよびKLHから、接合したNPN−KLHを単離した。 単離したNPN−KLHは以下に記載するようにマウスに注射した。
    100μgの接合物を250μlのリン酸緩衝塩類溶液(PBS)に添加することにより、マウスへの注射のためにNPN−KLH接合物を調製した。 等容量の完全フロインドアジュバントを添加し、全溶液を5分間乳化した。 129G Ix+マウスに300μlの乳化物を注射した。 21ゲージ針を使用して幾つかの部位で皮下に注射した。 NPN−KLHによる2回目の免疫を2週間後に行った。 この注射物は次のように調製した:50マイクログラム(μg)のNPN−KLHを250μlのPBSで希釈し、等容量のミョウバンをNPN−KLH溶液と混合した。 23ゲージ針を使用して500μlの溶液をマウスに腹膜内注射した。 1か月後、PBS中で200μlに希釈した50μgのNPN−KLH接合物の最終注射をマウスに行った。 この注射は、30ゲージ針を使用して側部尾部静脈で静脈内に行った。 この最後の注射の5日後にマウスを屠殺し、その脾臓から全細胞RNAを単離した。

    チョムクジンスキーら、Anal Biochem. 162:156−159(1987)により記載されたRNA調製方法を使用し、製造業者の指針に従いRNA単離キット(ストラタジーン)を使用して、前記したようにKLH−NPNにより免疫化した単一のマウスの脾臓から全細胞RNAを調製した。 簡略には、免疫化したマウスから脾臓を除去した直後に、4.0Mグアニンイソチオシアネート、pH7.0の0.25Mクエン酸ナトリウムおよび0.1Mのβ−メルカプトエタノールを含む10mlの変性溶液中でガラスホモジナイザーを使用して組織をホモジナイズした。 pH4.0で2Mの濃度の1mlの酢酸ナトリウムをホモジナイズした脾臓と混合した。 ホモジナイズした脾臓を含む変性溶液には予めH 2 Oで飽和させた1mlのフェノールも混合した。 2mlのクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1v/v)混合物をこのホモジネートに添加した。 ホモジネートを10秒間激しく混合し、氷上で15分間維持した。 その後ホモジネートを厚い壁の50mlポリプロピレン遠心分離チューブ(フィッシャー・サイエンティフィック社、ピッツバーグ、PA)に移した。 この溶液を10,000×gで20分間4℃で遠心分離した。 上部RNA含有水層を新しい50mlのポリプロピレン遠心分離チューブに移し、等容量のイソプロピルアルコールと混合した。 この溶液を−20℃で少なくとも1時間維持してRNAを沈殿させた。 沈殿したRNAを含む溶液を10,000×gで20分間4℃で遠心分離した。 ペレット化した全細胞RNAを集め、前記した3mlの変性溶液に溶解させた。 3mlのイソプロピルアルコールを再懸濁した全細胞RNAに添加して激しく攪拌した。 この溶液を−20℃で少なくとも1時間維持してRNAを沈殿させた。 沈殿したRNAを含む溶液を10,000×gで10分間4℃で遠心分離した。 75%エタノールを含む溶液でペレット化したRNAを1回洗浄した。 ペレット化したRNAを真空下に15分間乾燥させ、その後ジメチルピロカーボネート(DEPC)処理(DEPC−H 2 O)H 2 Oに再懸濁した。

    「分子クローン化:実験室マニュアル」、マニアティスら編、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982)に記載された方法を使用し、長いポリA域を含む配列について集積したメッセンジャーRNA(mRNA)を全細胞RNAから調製した。 簡略には、前記したように調製した単一の免疫化したマウス脾臓から単離した全RNAの半分を1mlのDEPC−H 2 Oに再懸濁し、65℃で5分間維持した。 100mMトリス−HCl(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンヒドロクロリド)、1M塩化ナトリウム(NaCl)、pH7.5の2.0mMエチレンジアミン二ナトリウム四酢酸(EDTA)、および0.2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)よりなる1mlの2×高塩装填緩衝液を再懸濁したRNAに添加し、混合物を室温に冷却した。 0.1M水酸化ナトリウムおよび5mMEDTAを含む溶液でオリゴdTを洗浄した後にDEPC−H 2 Oでカラムを平衡化するとにより予め調製したオリゴdT(コラボラティブ・リサーチタイプ2またはタイプ3)カラムにその後混合物を装填した。 殺菌したポリプロピレンチューブに溶出物を集め、溶出物を65℃で5分間加熱した後に同じカラムに再装填した。 50mMトリス−HCl、pH7.5、500mM塩化ナトリウム、pH7.5の1mMEDTAおよび0.1%SDSを含む2mlの高塩装填緩衝液を用いてその後オリゴdTカラムを洗浄した。 50mMトリスHCl、pH7.5、100mM、1mMEDTAおよび0.1%SDSよりなる2mlの1×中塩緩衝液を用いてその後オリゴdTカラムを洗浄した。 10mMトリス−HCl、pH7.5、pH7.5、のmMEDTAおよび0.05%SDSよりなる1mlの緩衝液を用いてメッセンジャーRNAをオリゴdTカラムから溶出させた。 フェノール/クロロホルムでこの溶液を抽出した後に100%クロロホルムで一回抽出することによりメッセンジャーRNAを精製した。 エタノール沈殿によりメッセンジャーRNAを濃縮し、DEPCH 2 Oに再懸濁した。
    前記プロセスにより単離したメッセンジャーRNA(mRNA)は、複数の異なるV Hコードポリヌクレオチド、すなわち約10 4を越える異なるV Hコード遺伝子を含み、類似する数のV Lコード遺伝子を含む。 よって、mRNA集団は可変領域コード遺伝子のレパートリーを表す。

    実施例2c. DNA相同体の調製
    PCR増幅のための調製に際し、プライマー延長反応によるcDNA合成のための鋳型として前記調製したmRNAを使用する。 典型的な50μl転写反応物中で、水中の5〜10μgの脾臓mRNAを500ng(50.0pmol)の3′V Hプライマー(プライマー12A、表5〜6)と65℃で5分間最初にハイブリダイズ(アニール)させる。 その後、1.5mMdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、40mMトリス−HCl、pH8.0、8mMMgCl 2 、50mMNaClおよび2mMスペルミジンに混合物を調整する。 モロニーネズミロイケミアウィルス逆転写酵素(ストラタジーン)26単位を添加し、溶液を1時間37℃に維持する。
    逆転写反応の生成物(約5μgのcDNA/RNAハイブリッド)、300ngの3′V Hプライマー(表5〜6のプライマー12A)、300ngのそれぞれの5′V Hプライマー(表5〜6のプライマー2〜10)、200mMのdNTPの混合物、50mMKCl、10mMトリス−HCl、pH8.3、15mMMgCl 2 、0.1%ゼラチンおよび2単位のサーマス・アクアティカス(Taq)DNAポリメラーゼ(ペルキン・エルマー・シータス、エメリービレ、カリホルニア)を含む100μl反応物中でPCR増幅を行う。 反応混合物にミネラルオイルを重層し、40サイクルの増幅に供する。 それぞれの増幅サイクルは、92℃で1分間の変性、52℃で2分間のアニール、および72℃で1.5分間のプライマー延長(伸長)によるポリヌクレオチド合成を含む。 増幅したVHコードDNA相同体含有サンプルは、その後フェノール/クロロホルムで2回、クロロホルムで1回抽出し、エタノール沈殿し、10mMトリス−HCl、pH7.5および1mMEDTA中で−70℃で保存する。

    独特の5′プライマー(2〜9、表5)を使用し、脾臓mRNAからの効率的なV HコードDNA相同体合成および増幅をアガロースゲル電気泳動により示されるように行う。 増幅したcDNA(V HコードDNA相同体)は、予期される大きさ(360bp)の主要バンドとして認められた。 それぞれの反応における増幅したV Hコードポリヌクレオチド断片の量は類似しており、これらのプライマーの全ては増幅を開始するに際してほぼ同等に効率的であったことを示す。 これらのプライマーによる増幅の収率および質は再現性がある。
    イノシンを含むプライマーによっても脾臓mRNAから増幅されたVHコードDNA相同体が再現性良く合成され、他の増幅されるcDNAに類似する強度の予期される大きさの断片の製造が導かれる。 イノシンが存在しても効率的なDNA相同体合成および増幅が可能であり、この種のプライマーが複数のVHコードDNA相同体を精製するのに有用であることを明らかに示す。 不変領域プライマー(プライマー11および13、表5)から取得した増幅生成物はより強く、恐らく鋳型とプライマーとの間の相同性の程度が高いために増幅がより効率的であることを示す。 前記手順に従い、それぞれ異なる5′プライマーを用いて行った8つの増幅の生成物からV Hコード遺伝子ライブラリーを構成する。 それぞれのプライマー延長反応からの生成物の等しい部分を混合し、その後混合した生成物を使用してV HコードDNA相同体含有ベクターのライブラリーを生成する。

    LのDNA相同体も前記したように調製した精製したmRNAから調製する。 PCR増幅のための調製に際し、前記例により調製したmRNAをcDNA合成のための鋳型として使用する。 典型的な50μl転写反応では、水中の5〜10μgの脾臓mRNAを300ng(50.0pmol)の3′V Lプライマー(プライマー14、表5)と65℃で5分間最初にアニールさせる。 その後、1.5mMdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、40mMトリス−HCl、pH8.0、8mMMgCl 2 、50mMNaClおよび2mMスペルミジンに混合物を調整する。 モロニーネズミロイケミアウィルス逆転写酵素(ストラタジーン)26単位を添加し、溶液を1時間37℃に維持する。 前記したように製造した約5μgのcDNA/RNAハイブリッド、300ngの3′V Lプライマー(表5のプライマー14)、300ngの5′V Lプライマー(表5のプライマー16)、200mMのdNTPの混合物、50mMKCl、10mMトリス−HCl、pH8.3、15mMMgCl 2 、0.1%ゼラチンおよび2単位のTaqDNAポリメラーゼを含む100μl反応物中でPCR増幅を行う。
    反応混合物にミネラルオイルを重層し、40サイクルの増幅に供する。 それぞれの増幅サイクルは、92℃で1分間の変性、52℃で2分間のアニール、および72℃で1.5分間の伸長によるポリヌクレオチド合成を含む。 増幅したサンプルは、その後フェノール/クロロホルムで2回、クロロホルムで1回抽出し、エタノール沈殿し、10mMトリス−HCl、pH7.5および1mMEDTA中で−70℃で保存する。

    実施例2d. DNA発現ベクターへのDNA相同体の挿入
    H配列において集積した発現ライブラリーを調製するため、同じ一組の5′プライマーを使用するが3′プライマーとしてプライマー12A(表5)を用いて、V H配列において集積したDNA相同体を実施例2cにしたがって調製する。 得られるPCR増幅生成物(2.5μg/30μlの150mMNaCl、8mMトリス−HCl、pH7.5、6mMMgSO 4 、1mMDTT、200μg/mlBSA)を制限酵素XhoI(125単位)およびSpeI(125単位)により37℃で消化する。 増幅反応の生成物の混合物を必要とするクローン化実験では、それぞれの反応混合物の等容量(50μl、1〜10μg濃度)を増幅の後で制限消化の前に組合せた。 「分子クローン化実験室マニュアル」、マニアティスら編、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982)に記載された標準的な電気泳動溶出技術を使用し、1%アガロースゲル上でV H相同体を精製する。 消化したPCR増幅脾臓mRNAのゲル電気泳動の後、約350bpのDNA断片を含むゲルの領域を切出し、透析膜に電気泳動溶出し、エタノール沈殿し、10mMトリス−HCl、pH7.5および1mMEDTAを含むTE溶液に再懸濁して50ng/μlの最終濃度とした。 得られるV H DNA相同体は、ベクターラムダHc2への方向性をもった連結に適合した付着末端を有するポリペプチド遺伝子のレパートリーを表す。 これらの調製したV H DNA相同体は、以下に記載するように調製する線状化したラムダHc2発現ベクターに方向性をもった連結によりその後直接挿入する。

    250単位のそれぞれの制限エンドヌクレアーゼXhoIおよびSpeI(両者ともベーリンガー・マンハイム、インディアナポリス、IN製)および製造業者により推奨された緩衝液を含む溶液に100μgのこのDNAを混合することにより、DNA相同体を挿入するためにラムダHc2発現DNAベクターを調製する。 この溶液を37で1.5時間維持する。 溶液を65℃で15分間加熱して制限エンドヌクレアーゼを不活性化させる。 溶液を30℃に冷却し、製造業者の仕様に従って25単位の熱失活性(HK)ホスファターゼ(エピセンター、マジソン、WI)およびCaCl 2をこれに混合する。 この溶液を30℃で1時間維持する。 フェノールおよびクロロホルムの混合物で溶液を抽出することによりDNAを精製し、その後エタノール沈殿を行う。 ここでラムダHc2発現ベクターは、前記例で調製したV H DNA相同体への連結のための準備が整う。 3モルのV H DNA相同体挿入物と各モルのHc2発現ベクターとを5℃で一夜連結することにより、前記調製したXhoIおよびSpeI制限消化ラムダHc2発現ベクターにこれらの調製したV H DNA相同体をその後直接挿入する。 ギガパックIIボールド(ストラタジーン)を用いてDNAをパッケージした後に約3.0×10 5のプラーク形成単位が得られ、その50%が組換え体である。 製造業者の仕様にしたがってギガパック・ゴールドIIパッケージ抽出物(ストラタジーン)を使用し、V H DNA相同体を含む連結混合物をパッケージする。 得られるラムダHc2発現ライブラリーをその後XL1ブルー細胞に形質転換する。

    L配列において集積したライブラリーを調製するため、実施例2cにしたがってV L配列において集積したPCR増幅生成物を調製する。 これらのV L DNA相同体を制限酵素SacIおよびXbaIにより消化し、V H DNA相同体について前記したように消化したV L DNA相同体を1%アガロースゲル上で精製し、方向性をもった連結に適合したV Lポリペプチド遺伝子のレパートリーを形成する。 ラムダHc2について記載したように制限酵素SacIおよびXbaIにより予め消化したラムダLc2発現ベクターに調製したV L DNA相同体をその後方向性をもって連結する。 V L DNA相同体を含む連結混合物をパッケージし、前記したようにラムダLc2発現ライブラリーを形成し、XL1ブルー細胞上にプレート処理するのに準備が整ったものとする。

    実施例2e. 同一の発現ベクター上におけるV H およびV L DNA相同体のランダムな結合
    重鎖および軽鎖を発現する2つのシストロンを発現するベクターを含むライブラリーの構成は2つの工程で行う。 第1の工程では、記載したようにNPN−KLHで免疫化したマウスから得た遺伝子レパートリーを使用し、別の重鎖および軽鎖ライブラリーをそれぞれ発現ベクターラムダHc2およびラムダLc2で構成する。 第2の工程では、それぞれのベクターに存在する非対称EcoRI部位でこれら2つのライブラリーを組合せる。 この結果クローンのライブラリーが得られ、そのそれぞれは潜在的に重鎖および軽鎖を同時発現する。 実際の組合せは無作為であり、親動物のB細胞集団に存在する組合せを必ずしも反映しない。
    前記免疫化(実施例2b)の結果得られる脾臓mRNAを単離して使用し、ラムダHc2発現ベクターを使用してV H遺伝子配列の一次ライブラリーを生成する。 一次ライブラリーは1.3×10 6のプラーク形成単位(pfu)を含み、デカペプチドtagの発現について検索してV HおよびC H 1(Fd)配列を発現するクローンの百分率を決定することができる。 このペプチドの配列は、ベクターへのFd(またはV H )断片のクローン化に続く発現のためのフレームにあるのみである。 ライブラリーのクローンの少なくとも80%が、デカペプチドtagの免疫検出に基くFd断片を発現する。

    重鎖と同様の様式で構成した軽鎖ライブラリーは2.5×10 6の構成員を含む。 抗カッパ鎖抗体を使用するプラーク検索は、ライブラリーに含まれる60%が軽鎖挿入物を発現することを示す。 挿入物の百分率が小さいのは、SacIおよびXbaIによる開裂の後のベクターの不完全な脱リン酸化に起因する。
    一旦取得したならば、2つのライブラリーを使用してこれらをEcoRI部位で交差させることにより結合ライブラリーを構成する。 交差を行うため、それぞれのライブラリーからDNAを最初に精製する。

    実施例2dで調製したラムダLc2ライブラリーを増幅し、「分子クローン化:実験室マニュアル」、マニアティスら編、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982)に記載された手順を使用して増幅したファージストックから500μgのラムダLc2発現ライブラリーファージDNAを調製する。 エンドヌクレアーゼ製造業者により供給された200μlの緩衝液中に100単位のMLuI制限エンドヌクレアーゼ(ベーリンガー・マンハイム、インディアナポリス、IN)を含む溶液中に37℃で1.5時間、50μgのこの増幅した発現ライブラリーファージDNAを維持する。 その後フェノールおよびクロロホルムの混合物により溶液を抽出する。 その後DNAをエタノール沈殿し、100μlの水に再懸濁する。 製造業者により特定された成分を含む最終容量200μlの緩衝液中で、この溶液を100単位の制限エンドヌクレアーゼEcoRI(ベーリンガー)と混合する。 この溶液を37℃で1.5時間維持し、その後フェノールおよびクロロホルムの混合物によりこの溶液を抽出する。 DNAをエタノール沈殿させ、DNAをTEに再懸濁する。

    実施例2dで調製したラムダHc2発現ライブラリーを増幅し、前記詳述した方法を使用して500μgのラムダHc2発現ライブラリーファージDNAを調製する。 エンドヌクレアーゼ製造業者により供給された200μlの緩衝液中に100単位のHindIII制限エンドヌクレアーゼ(ベーリンガー)を含む溶液中で37℃で1.5時間、50μgのこの増幅したライブラリーファージDNAを維持する。 0.1Mトリス−HCl、pH7.5により飽和したフェノールおよびクロロホルムの混合物を用いてその後溶液を抽出する。 その後DNAをエタノール沈殿させ、100μlの水に再懸濁する。 製造業者により特定された成分を含む最終容量200μlの緩衝液中で、この溶液を100単位の制限エンドヌクレアーゼEcoRI(ベーリンガー)と混合する。 この溶液を37℃で1.5時間維持し、その後フェノールおよびクロロホルムの混合物によりこの溶液を抽出する。 DNAをエタノール沈殿させ、DNAをTEに再懸濁する。

    制限消化したHc2およびLc2発現ライブラリーを互いに連結する。 その目的のため、連結キット(ストラタジーン)で供給された試薬を使用し、1μgのHc2および1μgのLc2ファージライブラリーDNAよりなるDNA混合物を10μl反応物中で調製する。 DNA混合物を45℃に5分間加温し、再アニールし得た全ゆる付着末端を融解する。 その後混合物を0℃に冷却して再連結を防止する。 バクテリオファージT4DNAリガーゼ(エキソヌクレアーゼ耐性検定で決定したものとして0.02単位と等価な0.1ウエイス単位)を、1μlの5mMATPおよび1μlの10×バクテリオファージT4DNAリガーゼ緩衝液(200mMトリス−HCl、pH7.6、50mMMgCl 2 、50mMDTTおよび500μg/mlBSAを混合することにより10×緩衝液を調製する)と共に冷却したDNA溶液に混合して連結混合物を形成する。 4℃で16時間の連結の後、ギカパック・ゴールドIIパッケージ抽出物を用いて1μlの連結したファージDNAをパッケージし、製造業者の指針に従って調製したXL1ブルー細胞上にプレート処理し、NPN免疫化マウスから誘導した重鎖および軽鎖を発現し得るジシストロン性発現ベクターのラムダファージライブラリーを形成する。 取得したクローンの一部を使用して組合せの有効性を決定する。

    実施例2f. 抗NPN反応性ヘテロ二量体生成ジスシトロン性ベクターの選択
    前記実施例2aで調製した結合Fab発現ライブラリーを検素し、NPNに対する親和力を有するクローンを同定した。 軽鎖および重鎖断片を同時発現するファージクローンの頻度を決定するために、軽鎖、重鎖および結合ライブラリーの複製隆起を前記したように軽鎖および重鎖発現について検索した。 約500組換えファージのこの検討において、約60%が軽鎖および重鎖蛋白質を同時発現した。
    3つの全てのライブラリー、軽鎖、重鎖および結合したものを検索し、これらがNPNに結合する抗体断片を発現する組換えファージを含むか否かを決定した。 典型的な手順では、30,000のファージをXL1ブルー細胞上にプレート処理し、 125 I標識BSAに共役したNPNに対する結合についてニトロセルロースによる複製隆起を検索した。 ボルトンら、Biochem. 133:529−534(1973)により記載されたクロラミンT法に従ってBSAをヨウ素化した。 軽鎖ライブラリー由来の80,000の組換えファージおよび重鎖ライブラリー由来のより少数のものの複製検索では、抗原に結合するクローンは何ら同定されなかった。 これに対して、Fab発現ライブラリー由来の同様な数のクローンの検索では、NPNに結合する多くのファージプラークが同定された。
    この観察は、軽鎖と組合せた多くの重鎖が抗原に結合する条件下同じ重鎖または軽鎖単独では起こらないことを示す。 したがって、NPNの場合、それぞれ特定の軽鎖および重鎖と組合せた場合にのみ抗原に結合する多くの重鎖および軽鎖があると考えられる。

    多数のクローンを検索する能力を評価し、結合ライブラリーにおける抗原結合クローンの頻度のより定量的な予測を得るため、百万のファージプラークを検索し、抗原に結合する約100のクローンを同定した。 NPNに結合すると考えられた6つのクローンについて、6つの陽性および約20の周囲のバクテリオファージプラークを含むプレートの領域を選択し、それぞれのプラークを抜取り、再プレート処理し、複製隆起により検索した。 予期されたように、20のファージの内ほぼ1つが抗原に特異的に結合した。 陰性と考えられたプレート処理したファージの領域の核は再プレート処理の際に陽性ではなかった。

    NPNと反応したファージの1つであるクローン2bを生体内切出し手順に従って切出したが、この場合200μlのファージストックおよび200μgのCL1ブルーのF+誘導体(A 600 =1.00)(ストラタジーン)を1μlのM13mp8ヘルパーファージ(1×10 10 pfu/ミリリットル(ml))と混合し、37℃で15分間維持した。 ルリア・ベータニ(LB)培地中で4時間維持し、70℃で20分間加熱してXL1ブルー細胞を熱失活させた後、ファージミドをXL1ブルー細胞に再感染させ、アンピシリンを含むLBプレートにプレート処理した。 この手順によりクローン化挿入物がラムダZapIIベクターからプラスミドベクターに変換され、容易な操作および配列決定(ストラタジーン)が可能となった。 製造業者の指針に従って配列決定キットを使用し(USバイオケミカル社、クリーブランド、オハイオ)、サンガーら、Proc. Natl. Acad. Sci. 74:5463−5467(1977)に記載されたサンガーのジデオキシ法を使用し、V HおよびV Lの一部をコードするファージミドDNAをDNA配列決定によりその後決定した。 クローン2bFd鎖のヌクレオチド残基配列を配列番号:99として配列列記に列記する。 カッパ軽鎖可変および不変領域のヌクレオチド残基配列は、それぞれ配列番号:100および配列番号:101として配列列記に列記する。

    実施例2g. 繊維状ファージコート蛋白質膜アンカーをコードするDNA配列の調製
    cpVIII膜アンカー :cpVIIIをコードする遺伝子を単離する供給源として、市販のバクテリオファージベクターM13mp18(ファルマシア、ピスカタウェイ、ニュー・ジャージー)を使用した。 配列番号:102として配列表に列記したcpVIIIの膜アンカードメインをコードする遺伝子の配列をPCR増幅により修飾し、制限エンドヌクレアーゼ部位SpeIおよびEcoRI、およびEcoRI部位の前の2つの停止コドンを組込んだ。 cpVIIIの膜アンカードメインの対応するアミノ酸残基配列を配列番号:17に列記する。
    修飾したcpVIIIを調製するため、M13mp18からの複製形態DNAを最初に単離した。 簡略には、2mlのLB(ルリア・ベータニ培地)中、50μlのF′エピゾームを担持する細菌株の培養物(JM107、JM109またはTG1)に単一プラークから誘導した10分の1懸濁物のバクテリオファージ粒子を混合した。 一定攪拌しつつ混合物を37℃で4〜5時間インキュベートした。 その後混合物を12,000×gで5分間遠心分離し、感染した細菌をペレット化した。 上澄を除去した後、100μlの氷冷溶液I中で激しくボルテックス処理することによりペレットを再懸濁した。 溶液Iは、50mMグルコース、10mMEDTAおよび25mMトリス−HCl、pH8.0を混合し、15分間オートクレーブすることにより調製した。

    細菌懸濁物に対して200μlの新たに調製した溶液IIを混合し、チューブを迅速に5回反転させた。 溶液IIは0.2NNaOHおよび1%SDSを混合することにより調製した。 細菌懸濁物、150μlの氷冷溶液IIIを混合し、倒立位置で10秒間穏やかにチューブをボルテックス処理し、粘稠な細菌溶解物に溶液IIIを分散させた。 溶液IIIは、60mlの5M酢酸カリウム、11.5mlの氷酢酸および28.5mlの水を混合することにより調製した。 その後得られた細菌溶解物を氷上に5分間保存し、その後ミクロ遠心中で12,000×gで5分間4℃で遠心分離した。 得られた上澄を回収し、新しいチューブに移した。 上澄に対して等容量のフェノールクロロホルムを添加し、混合物をボルテックス処理した。 その後混合物をミクロ遠心中で12,000×gで2分間遠心分離した。 得られた上澄を新しいチューブに移し、2容量のエタノールを用いて室温で二本鎖バクテリオファージDNAを沈殿させた。 混合物を室温に2分間放置した後、混合物を遠心分離してDNAをペレット化させた。 上澄を除去し、ペレット化した複製形態DNAを25μlのトリス−HCl、pH7.6および10mMEDTA(TE)に再懸濁した。

    二本鎖M13mp18複製形態DNAをその後PCRの鋳型として使用した。
    プライマーAK5(配列番号:103)およびAK6(配列番号:104)(その配列は以下の表7に列記する)をPCR反応で使用し、cpVIII膜アンカードメインの成熟遺伝子を増幅し、2つのクローン化部位SpeIおよびEcoRIを組込んだ。 PCR反応のため、1ngのM13mp18複製形態DNAを含む2μlを、0.5mlミクロ遠心チューブ中で市販品を購入した(プロメガ・バイオテク、マジソン、ウイスコンシン)10μlの10×PCR緩衝液と混合した。 DNA混合物に対して8μlのdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)の2.5mM溶液を混合し、結果として200マイクロモル(μM)の最終濃度とした。 3μl(60ピコモル(pM)と等価)の5′前方AK5プライマーおよび3μl(60pM)の3′後方AK6プライマーをDNA溶液に混合した。 この混合物に73μlの滅菌水および1μl/5単位のポリメラーゼ(プロメガ・バイオテク)を添加した。 2滴のミネラルオイルを混合物の頂部に載置し、繰返し40回のPCR増幅をサーモサイクラー中で行った。 この増幅サイクルは52℃で2分間、72℃で1.5分間および91℃で2分間よりなるものとした。 M13mp18含有サンプルから得たPCR修飾cpVIII膜アンカードメインDNA断片をジーン・クリーン(BIO101、ラ・ジョラ、カリホルニア)により精製し、フェノール/クロロホルムで1回、クロロホルムで1回抽出し、その後エタノール沈殿させ、10mMトリス−HCl、pH7.5および1mMEDTA中で−70℃で保存した。

    F:前方プライマー B:後方プライマー 1:5′から3′:C H 13′末端について重複する配列に二本下線を付す。
    SpeI制限部位配列に一本下線を付す。 cpVIIIについて重複する配列に二本下線を付す 2:EcoRI制限部位配列に一本下線を付す 3:XhoI制限部位配列に下線を付す 4:5′から3′:cpVIIIについて重複する配列に二本下線を付す。 SpeI制限部位配列に一本下線を付す。 C H 13′末端について重複する配列に二本下線を付す 5:5′から3′:SpeI制限部位配列に一本下線を付す。 cpIIIの5′末端を有する重複配列に二本下線を付す 6:5′から3′:NheI制限部位配列に一本下線を付す。 cpIIIの3′末端を有する重複配列に二本下線を付す 7:5′から3′:cpIIIの3′末端を有する重複配列に二本下線を付す。 NheI制限配列は位置4のヌクレオチド残基「G」で開始し、更に5残基=GCTAGC延在する 8:EcoRI軽減部位配列に一本下線を付す 9:LacZを増幅するための他の後方プライマー。 EcoRI制限部位配列に一本下線を付す。

    修飾したcpVIII膜アンカードメインの増幅を確認するため、PCR精製DNA生成物を1%アガロースゲル中で電気泳動した。 cpVIIIの予期される大きさは約150塩基対であった。 修飾cpVIIIDNA断片を含むアガロース中の領域を前記したようにアガロースから単離した。 単離した修飾cpVIIIDNA断片の配列を配列番号:111として列記する。 その後単離したcpVIIIDNA断片と実施例2iに後記するように同様に調製した修飾Fdの断片とを混合し、融合蛋白質Fd−cpVIIIをコードするDNA断片の形成を図った。
    cpIII膜アンカー :cpIIIの膜アンカードメインをコードする遺伝子を単離する供給源としてもM13mp18ファージを使用した(その配列を配列番号:112として配列表に列記する)。 膜アンカードメインcpIIIのアミノ酸残基配列を配列番号:16に列記する。 M13mp18複製形態DNAを前記したように調製し、LacZプロモーターをコードする配列に対して5′に位置するcpIII膜アンカードメインの成熟遺伝子、オペレーターおよび軽鎖発現を調節するcap結合部位よりなるDNA断片の構成のための2つのPCR増幅のための鋳型として使用した。 増幅反応において制限部位SpeIおよびEcoRIを生成し、それぞれ断片の5′および3′末端に位置するものとした。 2つの別のPCR増幅の生成物を組合せることによりこの断片を生成する手順を以下に記載する。

    表7に列記するプライマー対G−3(F)(配列番号:107)およびG−3(B)(配列番号:108)を前記行ったように第1のPCR反応で使用し、cpIII膜アンカー遺伝子を増幅させ、SpeIおよびNheI制限部位を断片に組込んだ。 増幅したPCR断片は、重鎖およびcpIIIコードドメインの間に並置した4つのグリセリン残基および1つのセリンから構成される5つのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列も含むものとした。 一旦発現されると、通常の二次構造を欠失する5つのアミノ酸の配列は、FabおよびcpIIIドメインの間の相互作用を最小にするように働いた。 それぞれ断片の5′および3′末端のSpeIおよびNheI部位を有する得られたPCR修飾cpIIIDNA断片は、前記したように確認し精製した。 PCR修飾cpIII膜アンカードメインDNA断片の配列を配列番号:113として配列表に列記する。 表7に列記したプライマー対Lac−F(配列番号:109)およびLac−B(配列番号:110)を使用する第2のPCR増幅は、5′NheI部位および3′EcoRI部位を有するLacZプロモーター、オペレーターおよびCap結合部位を増幅するM13mp18複製形態鋳型DNAの別の画分上で行った。 この増幅のために使用するプライマーは、cpIII遺伝子断片の3′末端および増幅したcpIII断片に対して3′のNheI部位の一部と重複する増幅した断片の5′末端上のNheI部位を組込むように設計した。 PCR生成物の反応および精製は前記したように行った。 5′NheIおよび3′EcoRI制限部位を有する得られたPCR修飾cpIIIDNA断片の配列を配列番号:114として配列表に列記する。

    cpIII膜アンカーおよびLacZプロモーター領域を構成するのに使用する他のLac−Bプライマーは表10に示すようにLac−B′とした。 第2のPCR増幅においてLac−Bに代えてLac−Fと共にLac−B′を使用した以外は、前記したようにして増幅反応を行った。 配列番号:114のヌクレオチド位置1〜ヌクレオチド位置172として増幅反応からの生成物を配列表に列記する。 Lac−B′を使用すると結果的に3′末端の29ヌクレオチドを欠失するLacZ領域が得られたが、Lac−FおよびLac−Bプライマーを用いて製造したより長い断片と機能的に等価であった。

    プライマー対6−3(F)および6−3(B)およびLac−FおよびLac−Bを使用する第1および第2のPCR増幅の生成物をその後cpIII膜アンカー重複およびNheI制限部位に対応するヌクレオチドにて組換え、G3−F(配列番号:107)およびLac−B(配列番号:110)プライマー対を使用する第2回のPCRに供し、次のもの:5′SpeI制限部位、全成熟cpIII蛋白質のアミノ酸残基198に対応するヌクレオチド残基配列で開始するcpIIIDNA膜アンカードメイン、アミノ酸残基番号112で膜アンカーにより与えられる内生停止部位、NheI制限部位、LacZプロモーター、オペレーターおよびCap結合部位配列、および3′EcoRI制限部位よりなる組換えPCRDNA断片生成物を形成した。 その後組換えPCR修飾cpIII膜アンカードメインDNA断片をSpeIおよびEcoRIにより制限消化し、実施例1a(iv)で調製した唯一のSpeI部位を有するpComb2ファージミド発現ベクターに方向性をもって連結するためのDNA断片を製造し、pComb2−III(pComb2−IIIとしても言及する)ファージミド発現ベクターを実施例1b(ii)に記載したように形成した。

    実施例2h. 抗NPNコードV H DNA断片の単離
    Fd−cpVIIIDNA融合生成物を形成するためにPCR修飾cpVIII膜アンカードメインと組換える修飾Fd断片を調製するため、実施例2fで調製したクローン2bを鋳型として使用して前記したようにPCR増幅を行った。
    プライマーHc3(配列番号:105)およびAK7(配列番号:106)(その配列を表7に列記する)をPCRで使用してクローン2bのFd部分を増幅し、cpVIII重複配列に沿ってXhoIおよびSpeIクローン化部位を組込んだ。 増幅したPCR修飾Fd生成物を精製し、電気泳動して前記したように1%アガロースから単離した。 Fd断片の大きさは680塩基対であった。

    実施例2i. 融合蛋白質Fd−cpVIIIの部分をコードするDNA断片の調製
    前記調製したヌクレオチド配列と重複するcpVIIIを含む精製したPCR修飾FdDNA断片を、その後PCR修飾cpVIII膜アンカー断片と混合して混合物を形成した。 混合物中の断片をその相補的領域で組換えた。 末端プライマー対AK6(配列番号:104)およびHc3(配列番号:105)(表7)を使用し、組換えPCR断片を含む混合物をその後前記したように第2回のPCR増幅に供した。 PCR増幅の対応する生成物を前記したようにアガロースゲル上で精製し電気泳動した。 PCR生成物は約830塩基対(Fd=680+150)であることを決定し、FdとcpVIIIとの融合を確認した。 5′から3′方向でフレームの合ったFd配列とcpVIII配列とを結合するPCR生成物の配列を配列番号:115として列記する。 その後pCBAK8−2bジシストロン性ファージミド発現ベクターの構成のため、実施例2jに記載するようにFd−cpVIII融合生成物を方向性をもった連結で使用した。

    実施例2j. pCABK8−2bジシストロン性発現ベクターの構成
    Fd−cpVIII融合蛋白質とカッパ軽鎖との共働発現のためのファージミドベクターを構成するため、実施例2fで調製したNPN結合ライブラリーから単離したクローン2bファージミド発現ベクターに前記実施例2iで調製したPCR増幅Fd−cpVIII融合生成物を最初に連結した。 連結のため、Fd−cpVIIIPCR融合生成物をXhoIおよびEcoRIにより最初に制限消化した。 クローン2bファージミドベクターを同様に消化し、結果としてクローン化およびデカペプチド領域を除去した。 XhoIおよびEcoRI制限消化により生成した付着末端で消化したクローン2bに、消化したFd−cpVIII断片を混合して連結した。 連結の結果、Fd−cpVIIIポリペプチド融合蛋白質をコードするヌクレオチド残基配列と、リボソーム結合部位、pelBリーダー配列およびクローン2bに既に存在するカッパ軽鎖をコードするヌクレオチド残基配列を有する第2のカセットとの機能的結合を得て、元のクローン2bファージミド発現ベクターにおいてジシストロン性DNA分子を形成した。

    その後ジシストロン性DNA分子を含むファージミドによりイー・コリ株TG1を形質転換し、元のクローン2bがアンピシリン選択可能耐性マーカー遺伝子を含むため、形質転換体をアンピシリン上で選択した。 イー・コリの高効率電気形質転換のため、TG1細胞の1:100容量の一夜培養物を1リットルのLブロス(1%バクトトリプトン、0.5%バクト酵母エキス、0.5%NaCl)に接種した。 細胞懸濁物を激しく振盪しながら37℃に維持して600nmの吸光度を0.5〜1.0とした。 その後最初に氷中でフラスコを15〜30分間冷却し、その後冷却したローター中で4000×gで15分間遠心分離して細菌をペレット化することにより、対数増殖期の細胞懸濁物を回収した。 得られる上澄を除去し、合計1リットルの冷却した水に細菌細胞ペレットを再懸濁して細胞懸濁物を形成した。 遠心分離および再懸濁手順を更に2回繰返し、最後の遠心分離の後に細胞ペレットを20mlの冷却した10%グリセリンに再懸濁した。 その後再懸濁した細胞懸濁物を遠心分離して細胞ペレットを形成した。 得られた細胞ペレットを再懸濁して冷却し、10%グリセリン中で2〜3mlの最終容量とし、結果として1〜3×10 10細胞/mlの細胞濃度とした。 電気形質転換手順のため、40μlの調製した細胞懸濁物を1〜2μlのファージミドDNAと混合して細胞−ファージミドDNA混合物を形成した。 得られた混合物を混合し、1分間氷上に載置した。 エレクトロポレーション装置、例えばジーンパルサーを25uFおよび2.5kVに設定した。 パルス調節器を200オームに設定した。 冷却した0.2cmのエレクトロポレーションキュベットに細胞−DNA混合物を移した。 その後キュベットを冷却した安全隔室に置き、前記設定で1回パルス処理した。 パルス処理した混合物にその後1mlのSOC培地を混合し、パスツールピペットを用いて細胞を再懸濁した(2%バクトトリプトン、0.5%バクト酵母エキス、10mMNaCl、2.5mMKCl、10mMMgCl 2 、10mMMgSO 4および20mMグルコースを混合することによりSOC培地を調製した)。 その後細胞懸濁物を17×100mmポリプロピレンチューブに移し、37℃で1時間維持した。 維持期間の後、選択可能マーカー遺伝子を与えるファージミドを含むアンピシリン耐性コロニーの選択のため、形質転換TG1細胞をその後アンピシリンLBプレート上にプレート処理した。

    アンピシリン耐性コロニーを選択し、正確な挿入物の大きさおよびFabの発現について分析した。 簡略には、ファージミドDNAの単離のために選択したコロニーのDNA小調製物を調製した。 それぞれの小調製物から単離したファージミドDNAをXhoIおよびEcoRIにより制限消化し、1%アガローゲル上で消化物を電気泳動した。 830bp断片がゲル上で見られたものとしてクローンAK16を選択し、消化したクローン2bへのFd−cpVIIIPCR融合生成物の挿入を確認した。
    その後クローンAK16ファージミドをXhoIおよびXbaIにより制限消化し、Fd−cpVIII融合蛋白質、軽鎖の発現のためのリボソーム結合部位およびpelBリーダー、スペーサー領域および2bカッパ軽鎖をコードするジシストロン性DNA分子のヌクレオチド残基配列をアガロースゲル電気泳動により単離した。 単離したジシストロン性DNA断片をその後実施例1c(ii)で調製したXhoIおよびXbaI制限消化pCBAK0発現ベクターに連結し、pCBAK8−2bと命名したジシストロン性ファージミド発現ベクターを形成した。

    得られたpCBAK8−2b発現ベクターは、次の要素:f1繊維状ファージ複製開始点、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ選択可能耐性マーカー遺伝子、LacZ遺伝子の上流の誘導性LacZプロモーター、T3およびT7ポリメラーゼプロモーターが隣接する多重クローン化部位、およびジシストロン性DNA分子(第1のカセットは、リボソーム結合部位、pelBリーダーおよびFd−cpVIIIDNA融合生成物よりなり、第2のリボソーム結合部位、第2のpelBリーダーおよびカッパ軽鎖よりなる第2のカセットに機能的に結合する)をコードするヌクレオチド残基配列よりなるものであった。
    実施例2k. pCBAK3−2bジシストロン性発現ベクターの構成
    Fd−cpIII融合蛋白質とカッパ軽鎖との共働発現のためのファージミドベクターを構成するため、5′SpeIおよび3′EcoRI制限部位を有する実施例2gで調製したLacZプロモーター領域断片およびPCR増幅および組換えcpIII膜アンカーを、実施例1a(iv)で調製した予めSpeIおよびEcoRIにより消化したpComb2ファージミド発現ベクターに最初に方向性をもって連結してpComb2−3(pComb2−IIIとも呼ぶ)ファージミドベクターを形成した。 ベクターの構成の詳細については実施例1b(ii)を参照することができる。 アンピシリン耐性ベクターが好適な場合にはこの発明ではこのベクターを使用する。 よって、唯一のSpeI制限部位を有する得られたpComb2−3ベクターは、重鎖(Fd)−cpIII融合生成物および軽鎖蛋白質の別の発現を指向する別のLacZプロモーター/オペレーター配列を含んでいた。 発現した蛋白質は、膜上での機能的集成のためのpelBリーダー配列によりペリプラズム空間を指向する。 ベクターにおけるファージF1遺伝子間領域の包含により、ヘルパーファージの補助によって一本鎖ファージミドのパッケージングが可能となる。 ヘルパーファージ重複感染の使用により2つの形態のcpIIIの発現が導かれる。 よって、正常なファージ形態形成は、Fab−cpIII融合体について図8に図示的に示すように、ウイルス粒子への組込みについてFab−cpIII融合体とヘルパーファージの天然型cpIIIとの間の競合によって攪乱される。

    この発明で使用するクロラムフェニコール耐性ベクターを製造するため、得られたpComb2−3ファージミドベクターをその後SacIIおよびApaIにより制限消化し、単離した断片を形成した。 発現調節配列およびcpIII配列を含む得られた単離断片を、実施例1c(ii)で調製した同様に消化したpCBAK0ファージミドベクターに方向性をもって連結し、pCBAK3ファージミド発現ベクターを形成した。 このベクターはFdおよびカッパ軽鎖配列を欠失していた。
    融合蛋白質およびカッパ軽鎖の発現のためのクロラムフェニコール耐性ファージミド発現ベクターpCBAK3−2bをその後構成した。 簡略には、前記調製したpCBAK3ファージミド発現ベクターをXhoIおよびSpeIにより最初に消化し、線状化したpCBAK3ファージミド発現ベクターを形成した。 XhoIおよびSpeI部位を含む実施例2hで調製したPCR増幅および修飾Fd断片を次にXhoIおよびSpeIにより制限消化した。 XhoIおよびSpeI制限消化pCBAK3ファージミド発現ベクターに、得られたFd断片をその後付着末端を介して方向性をもって連結し、PCR修飾Fd断片がcpIIIをコードするヌクレオチド残基配列にフレームが合って機能的に結合した第2のファージミド発現ベクターを形成した。 イー・コリ株XL1ブルー(ストラタジーン)をその後前記Fd−cpIIIを含むファージミドベクターにより形質転換した。 ファージミドをコードするFd−cpIIIを含む形質転換体をクロラムフェニコール上で選択した。 クロラムフェニコール耐性クローンからファージミドDNAを単離し、SacIおよびXbaIにより制限消化し、以下に調製するSacIおよびXbaI軽鎖断片を方向性をもって連結する線状化したファージミド発現ベクターを形成した。

    実施例2aに記載した元の結合ライブラリーから単離したファージミドクローン2bをSacIおよびXabIにより制限消化し、カッパ軽鎖をコードするヌクレオチド残基配列を単離した。 Fd−cpIIIを含む前記調製したSacIおよびXbaI制限消化ファージミド発現ベクターに単離したカッパ軽鎖配列をその後方向性をもって連結し、ファージミド発現ベクターpCBAK3−2bを形成した。 得られたベクターは、Fd−cpIII融合蛋白質とカッパ軽鎖との共働発現のためのジシストロン性DNA分子のヌクレオチド配列を含んでいた。
    得られたファージミド発現ベクターは、次の要素:f1繊維状ファージ複製開始点、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ選択可能耐性マーカー遺伝子、LacZ遺伝子の上流の誘導性LacZプロモーター、T3およびT7ポリメラーゼプロモーターが隣接する多重クローン化部位、およびジシストロン性分子(第1のカセットは、第2のLacZ、第2のリボソーム結合部位、およびカッパ軽鎖に機能的に結合した第2のpelBリーダーよりなる第2のカセットに機能的に結合するFd−cpIIIに機能的に結合したpelBリーダーおよび第1のリボソーム結合部位よりなる)をコードするヌクレオチド残基配列よりなるものであった。

    その後ファージミド発現ベクターpCBAK3−2bによりXL1ブルー細胞を形質転換した。 クロラムフェニコール耐性ファージミドを含む形質転換したコロニーを前記したように選択し、実施例2jに記載したようにFabの正確な大きさの挿入物および発現について分析した。 pCBAK3−2bファージミドベクターにおける挿入物およびFabの発現の確認の後、XL1ブルー細胞をその後形質転換し、実施例3および4に記載したようにFab抗体の発現のために誘導した。
    Fab−cpIII融合体の発現、分泌および検索の結果より、免疫系同様に親和力並びに特異性に基くクローンの分類が可能となるため、Fab−cpVIII融合体により与えられる多価表示に対するFab−cpIII融合体により与えられる一価表示の利点が明らかとなった。 バーバスら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88:7978−7982(1991)に記載されたようなpComb3を使用する弱い結合クローン7Eに対する強い結合クローン10Cの253倍の集積。 ファージ表面上で4〜5コピーのペプチドを示したファージ上のペプチドライブラリーの研究により、多価性は中程度の親和力のペプチド(10 -6 M)を示すファージを高い親和力のペプチド(10 -9 M)から分離するのを妨害することが示されている。 クウィルラら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87:6378−6382(1990)。 多価性は、高親和力Fabを担持するファーシと低親和力Fabを担持するものとを識別する能力を低減させるキレート効果を導く。

    この糸の使用は、実施例6により、またパーソンら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88:2432−2436(1991)により記載され先に特徴付けられた(5000クローン当り1つの結合体)ヒト結合抗破傷風毒素Fabライブラリーを分類することにより更に示された。 元はラムダファージベクター系中のライブラリーを、重鎖および軽鎖の元の対合を保持するpComb2−3において再構成した。 ライブラリーの大きさ、10 7クローンは、元のラムダファージライブラリーより10倍大きかった。 1回繰返しの選別処理の後、拾った13または57のクローンが破傷風毒素結合体であると決定され、これは10 3倍の集積を示した。 3回目の選別の後、ファージ収率は200倍に増加し、特定のファージの集積が示された。 よって全てのクローンが抗原特異的結合体である。 よって10 8の構成員の大きな結合ライブラリーがこの系を使用して接近可能となる。 実施例6〜8に記載する変異誘発によって更に大きなライブラリーが達成される。

    実施例3
    ファージ表面上での抗NPNヘテロ二量体の発現
    ファージ表面上のNPNに対して向けられた抗体Fabの発現のため、それぞれ実施例2jおよび2kで調製したファージミドベクターpCBAK8−2bおよびpCBAK3−2bによりXL1ブルー細胞を別に形質転換した。 30μg/mlのクロラムフェニコールを含むLBプレート上で形質転換体を選択した。
    それぞれのファージミド形質転換について抗生物質耐性コロニーを選択し、ファージミドおよびF′エピゾームのそれぞれの抗生物質選択のために30μg/mlクロラムフェニコールおよび12.5μg/mlテトラサイクリンを含むスーパーブロス(次のもの:20gの3[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸(MOPS)、60gトリプトン、40g酵母エキス、および2リットルの水(10mNaOHにより7.0にpHを調整)を混合することによりスーパーブロスを調製した)中で37℃で液体培養により生育させた。 抗生物質耐性形質転換XL1ブルー細胞をスーパーブロス中で0.4の光学密度(OD 600 )に希釈した。 インデューサー、イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度1mMとして細菌懸濁物に混合し、混合物を37℃で1時間維持し、LacZプロモーターから融合蛋白質およびカッパ軽鎖の発現を誘導した。 その後1の形質転換細菌細胞に対して10〜20のヘルパーファージの比率で、R408またはVCSM13(ストラタジーン)とするヘルパーファージを誘導した細菌懸濁物に混合し、ファージミドDNAのセンス鎖のコピーの生成を開始させた。 その後ヘルパーファージを含む混合物を37℃で更に2時間維持し、cpVIIIまたはcpIIIのバクテリオファージ膜アンカードメインに融合した発現した抗NPNFab抗体がバクテリオファージ粒子の表面に組込まれた繊維状バクテリオファージの集成を図った。 その後細菌懸濁物を遠心分離し、結果として細菌細胞ペレットおよびファージを含有する上澄を得た。 上澄を除去して集め、cpVIIIまたはcpIIIによりファージ粒子に定置した機能性抗NPNFab分子の存在について以下に記載するように検定した。

    実施例4
    繊維状ファージの表面上の抗NPNヘテロ二量体の存在および機能を確認する検定
    実施例4a. 電子顕微鏡
    機能性Fab分子を局在化させるため、コロイド状金で標識した抗原に対する結合を検討した。 固相上に固定したフォームバー(ポリサイエンス社、ワーリントン、ペンシルバニア)被覆グリッド上に実施例3で調製したファージ含有上澄および細菌細胞をスポットした。 幾つかの実験では、グリッドを細胞で被覆しその場でファージを感染させた。 その後pH7.2のPBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)によりグリッドをブロックし、洗浄し、標識した免疫反応複合体を形成するのに十分な時間期間の間BSA−NPNハプテン接合体で被覆した2〜7ナノメーター(nm)のコロイド状金粒子と共にインキュベートした。 グリッドを洗浄して過剰の金粒子を除去し、ウラニルアセテート中で陰性染色し、電子顕微鏡により視覚化した。
    繊維状ファージおよびファージを生産する透過性とした細胞の検討により、ファージまたは露呈した細菌膜の特異的標識が明らかとなった。 ファージは、粒子当り1〜24コピーの抗原結合部位を含むことが認められた。 ヘルパーファージ単独または無傷のイー・コリの両者とも抗原により標識されなかった。 バックグラウンドの非特異的結合は極めて低かった。 イー・コリ表面から出現する繊維状ファージ粒子は、図9に示すように抗原により標識された。
    クローン2b、pCBAK3−2bとの融合相手としてcpIIIを利用する関連ファージ表面発現ベクターの生成により、柱状部ではなくファージ頭部に対する特異的抗原標識が明らかとなった。 さらに、cpIII融合体として発現したヒト抗破傷風FabはBSA−NPN抗原には結合しなかった。

    実施例4b. ファージELISA
    ミクロ滴定プレートをNPN−BSA接合体(0.1ml、0.1Mトリス−HCl、pH9.2中1μg/ml)により被覆し、PBS中の1%BSAによりブロックした。 実施例3で調製したpCBAK8−2b誘導ファージ(0.1ml)の一連の2倍希釈物を予備被覆したミクロ滴定プレートに添加し、周囲温度で3時間または4℃で16時間インキュベートした。 プレートをPBSで洗浄し、ヤギ抗カッパアルカリ性ホスファターゼ接合体(フィッシャ・バイオテク、ピッツバーグ、ペンシルバニア)を添加し(0.1%BSAを含むPBS中で1/1000に希釈した0.1ml)、室温で2時間インキュベートした。 プレートをPBS中で洗浄し、基質を添加した(0.1ml、50mMMgCl 2を含む0.1Mトリス−HCl、pH9.5中の1mg/mlp−ニトロフェニルホスフェート)。 シグナルの展開のために37℃でインキュベートした後、400nmの光学密度を測定した。 0から5mg/穴までの範囲の増加する量の遊離のNPNハプテンの添加により競合検定を行った。
    ELISA検定により機能性抗体Fabの存在が確認された。 抗マウスカッパ鎖酵素接合体をプローブとしたNPN抗原被覆プレート上での2部位ELISAにおいて、pCBAK8−2b構成体を担持する細胞のヘルパーファージ感染から生成したファージ上澄は、ファージ含有抗体の一連の2倍希釈物により予期された滴定曲線を示した。 2部位ELISAの結果を図10に示す。 この検定で生成するシグナルのためには、ファージ粒子は(i)機能的に会合したFdおよびカッパ鎖を有しかつ(ii)多価でなければならない。 増加する濃度の遊離のハプテンの存在下でプレートに対する結合を阻害することにより、粒子の特異性を評価した。 生成したファージ粒子はELISAの固相に対する結合を示し、図11に示すようにハプテンの添加により阻害することができた。 検定で5ngの遊離のNPNハプテンを使用した場合に完全な阻害が達成された。 ヘルパーファージはELISAにおいてシグナルを与えなかった。 これらの結果は、抗体重鎖および軽鎖ポリペプチドが機能的に集成し、ファージ粒子の表面上に存在してエピトープを含む予備選択したリガンド部分に結合できるエピトープ結合複合体を形成することを示す。

    実施例4c. ファージの抗原特異的沈殿
    実施例3で調製したpCBAK8−2bジシストロン性発現ベクターによりXL1ブルーからのファージ上澄を形質転換し、(1ml)を4℃で18時間BSA−NPN接合体(10μl、2mg/ml)とインキュベートした。 その後ベンチトップ遠心分離機による3000rpmの遠心分離により混合物をペレット化し、沈殿の出現に注目した。 対照としてヘルパーファージを使用した。 冷却したPBS(5×3ml/洗浄)中でペレットを繰返し洗浄した後LB(0.5ml)に再懸濁した。 可溶化した沈殿物を新鮮なXL1ブルー細胞(一夜培養物の0.5ml)に添加し、37℃で1時間インキュベートし、クロラムフェニコール(30μg/ml)を含むLB寒天上に画分をプレート処理した。 コロニーを無作為に選択した。 ニトロセルロース上のコロニー隆起物をリゾチームにより処理して細胞壁を消化し、クロロホルムで手短に処理して外膜を破壊し、PBS中のBSA1%でブロックし、125I標識BSA−NPN抗原と共にインキュベートした。 PBS(0.05%ツイーン20を含む)中で幾度か洗浄した後、洗浄し乾燥したフィルターにフィルムを−70℃で一夜露呈し、その後オートラジオグラフを現像した。
    BSA−NPNの存在下にファージを含む抗体により沈殿が得られたが、ヘルパーファージでは得られなかった。 さらに、粒子は、F′エピゾームを担持する細菌細胞による続くインキュベートに際して感染性を保持し、単一の可溶化した沈殿物から4×10 5のコロニーを生成した。

    更に、DNA制限分析を実施し、重鎖および軽鎖挿入物の存在を決定した。 クローンのDNA制限分析により、Fd−cpVIII融合構成体およびカッパ鎖挿入物について予期されたように、1.4kbのXhoIおよびXbaI断片の存在が明らかとなった。
    これらの結果は、抗原特異性および多価性についての更なる証拠を与える。 免疫学的パラメーターを与えることに加えて、この沈殿は抗原特異的ファージ粒子の容易な集積の可能性を与えるものである。 原則的に、特異的抗体を含むファージは抗原(これは細胞表面マーカー、細菌並びに合成分子とすることができる)による沈殿によって高度に集積することができる。 洗浄した抗原−抗体沈殿物は過剰の抗原の添加により可溶化することができ、生存しているファージが回収される。 希な種類の回収のためには、固定化した抗原を使用することができるが、これは異なる親和力溶出の道を開くものである。

    特定された結合特異性のクローンの集積について固定化した抗原の有用性を示すため、選別処理実験を行った。 cpVIII融合体として抗破傷風Fabを発現するアンピシリン耐性ファージミドを構成した。 ヘルパーファージによるこのクローンのレスキューにより、そのコート上で抗破傷風Fabを示すアンピシリン耐性ファージミドをコードするファージが製造された。 破傷風特異性をコードするこれらのファージをNPNハプテンコードファージと混合し(1:100)、破傷風毒素により被覆したミクロ滴定プレートに結合させた。 1時間の維持期間の後、プレートを十分に洗浄し、その後低いpHの緩衝液を用いてファージを溶出した。 対数増殖期のXL1ブルー細胞への感染およびアンピシリンおよびクロラムフェニコール上への画分のその後のプレート処理により、集積の直接定量を行った。 1,000を越えるコロニーの検討により、溶出したファージから誘導したアンピシリン耐性コロニーが、クロラムフェニコール耐性コロニーを27対1で越えることが示された。 したがって、選別処理によって抗破傷風Fabを示すファージが2700倍に集積された。 この結果は、百万分の1で存在する特定の特異性のクローンが、2回繰返しの選別処理の後には非特異的クローンに対して優勢となり得ることを示唆する。

    実施例5
    ファージ表面に沿って結合抗体Fabライブラリーを集成させる利点
    10 8〜9の構成員のライブラリーを生成し、予備選択した結合活性により結合Fabのライブラリーから選択する強力な技術を示す。 ここに記載するベクターでは、PCR生成抗体断片を挿入するための制限クローン化部位は、ラムダベクターについて先に記載したように保持されている。 抗体Fdおよびカッパ鎖をコードする遺伝子のレスキューは、f1複製開始点の利用により媒介され、ヘルパーファージの同時感染に際してベクターの陽性鎖の合成およびパッケージングが導かれる。 「成熟」ウィルス粒子は、ペリプラズム空間へと内膜を通過すると共に一本鎖DNAの周りに主コート蛋白質を取込むことにより集成するため、ファージミドベクターに担持される遺伝的情報が補足されるのみならず、粒子の長さに沿って機能性Fabの幾つかのコピーも取込まれる。 F′エピゾームを担持する宿主細胞への後続する感染に際して、適切な抗生物質上でのコロニーの選択を可能とする耐性がファージミドにより与えられる。 要は、抗原認識単位がその生産のための指示に結合されていることである。

    検索により容易に接近可能なのは構成員の約0.1〜1%のみであったため、先に結合させた系の全ての力を完全には利用できていなかった。 ファージミド/M13の系では、類似する大きさのライブラリーが生成され、親和力選択を介して全ての構成員に接近する。 更に、一価Fabを生成したラムダベクターとは異なり、この系は多価粒子を生成し、よってより広い範囲の親和力の補足を可能とするものである。
    独特のファージミド制限部位はFdおよびカッパ鎖の組換えを可能とし、鎖置換または混ぜ合せを可能とする。 織維状一本鎖DNAのレスキューにより、意図するクローンの遺伝的作成物の迅速な配列決定および分析が可能となる。 実際、DNA配列決定または変異誘発の前の抗原選択により抗体特異性をコードするファージを集積し得ると考えることができる。 選択が後続する変異の反復プロセスを更に展開する選択枝により、胚系統配列から高い親和力の抗体を迅速に生成することが可能となり得る。 このプロセスは自動化することができる。 自然を模倣する系の潜在力は別として、ファージミド/M13系によりヒトにおける抗体応答のより完全な吟味が可能となり得て、これにより有用な治療および診断試薬を生成することができる。

    重鎖の膜定置およびペリプラズムにおけるカッパ鎖の区画化が、この機能性二量体蛋白質を発現する鍵である。 この系の潜在力は抗体に何ら限定されず、全ゆる蛋白質認識系または多数の構成員を含む系の組合せに拡張することができる。
    例えば、高結合力マトリックスにおけるリガンドとエフェクター系との共役が今や可能である。 同様に、リガンドのライブラリーを受容体のライブラリーに対して分類することができる。
    実施例6
    抗破傷風毒素をコードする重鎖のCDR3領域の無作為化した変異誘発
    実施例6a. 縮退オリゴヌクレオチドによるPCR変異誘発
    破傷風毒素抗原(TT)を最早認識しないが新たな抗原を認識して特異的に結合し得る変化した特異性のこの発明の変異誘発したヘテロ二量体を得るため、公知のヌクレオチド配列によりコードされる重鎖断片のCDR3領域のみを無作為化する方法を開発した。 このアプローチを図示的に図12に示すが、ここで白いブロックで示す変化するフレーム構造領域(1〜4)および斜線ブロックで示す相補性決定領域(CDR)(1〜3)および第1の不変領域(CH1)よるなるファージミドクローン内の代表的な重鎖断片をPCRの2つの別の繰返しに供する。 第1のPCR増幅反応では、フレーム構造1で開始しフレーム構造3の3′末端に延在する重鎖の5′末端を増幅する。 第2のPCR増幅反応では、黒いボックスで示すCDR3領域を無作為に変異誘発させる。 保存されたフレーム構造領域3および4の配列の間に挟まれて連続する縮退領域を用いて合成したオリゴヌクレオチドプライマーのプールを使用することによりこれを行う。 それぞれ無作為化したCDR3領域を有する第2の増幅から得られた増幅生成物はフレーム構造3の3′末端にその5′末端を有し、生成物の3′末端はCH1領域の3′末端に延在する。

    縮退オリゴヌクレオチドプライマーのプールは、第1のPCR反応生成物の生成物の3′末端に相補的で重複し得る5′末端を有する生成物の増幅を結果的に与えるように設計した。 よって、2つの別のPCR反応生成物をプールし、2つの生成物の間の重複領域を延在して無作為化したCDR3領域を有する重鎖を結果的に与える第3のPCR反応に供する。
    この発明での使用のための重鎖DNA鋳型は、ペルソンら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88:2432−2436(1991)に記載されたように、ラムダHc2およびLc2ライブラリーから誘導されたヒト結合抗破傷風毒素(TT)Fabライブラリー由来のクローン(重鎖および軽鎖断片を含む7Eと命名したファージミドベクター)において利用可能であった。 半合成結合ライブラリーを生成するため、バーバスら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88:7978−7982(1991)により実施例2kにおいて抗NPNについて記載したように、重鎖−cpIII膜アンカー融合蛋白質(Fd−cpIII)および可溶性軽鎖の発現のためのpComb2−3′ジシストロン性発現ベクター中でクローン7Eを構成した。

    ファージミドベクターpComb2−3′を実施例1b(ii)に記載したように調製した。 XhoI−XbaI断片のXhoI−XbaI消化pComb2−3′ベクターへの連結により、7Eラムダクローン由来の重鎖および軽鎖の元の対合を維持した。 cpIII膜アンカー配列を置換するため、LacZプロモーター配列およびXhoI−XbaI消化により欠失させたpelBリーダー、pComb3由来のSpeI−SacI断片(実施例1b(ii)のように調製)を、クローン7E由来の重鎖および軽鎖配列を含むpComb2−3′ベクターに連結した。 以後pC3−TT7Eとして言及する得られたファージミドクローンを、実施例3でファージ表面上の抗NPNヘテロ二量体について記載したように最初に発現させ、その後実施例4cで抗NPNについて記載したようにTT被覆プレート上で選別処理することにより検索した。 クローンpC3−TT7Eは10 -7 MのオーダーのTTに対するK dを示し、バーバスら、前記に記載されたように非特異的ファージに対して10 3倍集積された。

    重鎖のCDR3領域の無作為変異誘発のための鋳型DNAとして重鎖および軽鎖配列の両者を有するクローンpC3−TT7Eを使用し、ここに記載するように抗原結合特異性を変化させた。 実施例1a(ii)に記載したように重鎖の配列を決定した。 図12に示すように2つの別のPCR反応を行った。
    第1のPCR反応の結果、フレーム構造領域1の開始であり、長さ約400塩基対のCDR3に対して5′に位置するフレーム構造領域3の末端に延在するpC3−TT7Eクローンにおける重鎖断片の領域の増幅が与えられた。 この領域を増幅するため、以下のプライマー対を使用した。 ヌクレオチト配列5′−G−CAA−TAA−ACC−CTC−ACT−AAA−GGG−3′(配列番号:118)を有し、領域5′に対応する重鎖の非コード鎖にハイブリダイズされ、フレーム構造1の開始を含む5′アンチセンスオリゴヌクレオチドプライマーFT3X。 ヌクレオチド配列5′−TCT−CGC−ACA−ATA−ATA−CAC−GGC−3′(配列番号:119)を有し、フレーム構造3領域の3′末端に対応する重鎖のコード鎖にハイブリダイズされる3′センスオリゴヌクレオチトプライマーB7EFR3。 オリゴヌクレオチドプライマーはリサーチ・ジェネティクス(フンストビレ、AL)で合成されたものである。 1μgのそれぞれのオリゴヌクレオチドプライマーFTX3およびB7EFR3、8μlの2.5mMdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、1μlTaqポリメラーゼ、10ngの鋳型pCE−TT7E、および市販品を購入した(プロメガ・バイオテク)10μlの10×PCR緩衝液を含む100μlの反応物中でPCR反応を行った。 2滴のミネラルオイルを混合物の頂部に載置し、サーモサイクラー中で35回繰返しのPCR増幅を行った。 増幅サイクルは94℃で1分間の変性、50℃で1分間のアニール、その後の72℃で2分間の延長よりなるものとした。 得られたPCR増幅生成物をその後実施例1dに記載したようにゲル精製し、第2のPCR反応の生成物と共に重複延長PCR反応で使用し(両者とも後記する)、図12に示すように変異誘発したCDR3領域を含む再構成した重鎖へと2つの生成物を組換えた。 この増幅からのDNAの全収量は約3μg/100μlであった。

    第2のPCR反応の結果、フレーム構造領域3の3′末端から長さ約390塩基対のCH1領域の末端に延在する重鎖の増幅が得られた。 この領域を増幅するために次のプライマーを使用した。 7ECDR3と命名した5′アンチセンスオリゴヌクレオチドプライマープールは、式5′−GTG−TAT−TAT−TGT−GCG−AGA−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−NNS−TGC−GGC−CAA−GGG−ACC−ACG−3′により表されるヌクレオチド配列を有していた(ここでNはA、C、GまたはTとすることができ、SはCまたはGであり(配列番号:120)、またプライマープールの5′末端はオリゴヌクレオチドプライマーB73FR3の相補的ヌクレオチド配列により表されるフレーム構造3の3′末端に相補的であり、プライマープールの3′末端はフレーム構造4の5′末端に相補的である)。 プライマープールの2つの特定の末端の間の領域は、長さ16アミノ酸残基の変異誘発したCDR3領域の多様な集団を最終的にコードする48マーNNS縮退によって表した。 パーソンら、前記により記載されたようにヌクレオチド配列5′−GCATGTACTAGTTTTGTCACAAGATTTGGG−3′(配列番号:121)を有する3′センスオリゴヌクレオチドプライマーCG1Zは、CH1の3′末端に対応する重鎖のコード鎖にハイブリダイズした。 前記したように1μgのそれぞれのオリゴヌクレオチドプライマー7ECDR3およびCG1Zを含む100μl反応物中で第2のPCR反応をpC3−TT7E上で行った。 得られたPCR増幅生成物をその後前記したようにゲル精製した。 この第2のPCR変異誘発増幅からのDNAの全収量は約3μg/100μlであった。

    その後第1および第2のPCR反応からの100ナノグラムのゲル精製生成物を、最終PCR反応におけるプライマー対としての1μgのそれぞれのFTX3およびCG1Zオリゴヌクレオチドと混合し、図12に示すように重複延長により完全な重鎖断片を形成した。 PCR反応混合物は、前記したように10μlの10×PCR緩衝液、1μlTaqポリメラーゼおよび3μlの2.5mMdNTPも含むものとした。 PCR反応は前記したように行った。 十分な量の増幅生成物を得るため、15の同一のPCR反応を行った。 フレーム構造1で開始しCH1の末端に延長し無作為に変異誘発したCDR3領域を有する得られた重鎖断片は、長さ約790塩基対であった。 15の反応からの重鎖断片増幅生成物を最初にプールし、その後ファージミドライブラリーへのその組込みの前に、前記したようにゲル精製した。 それぞれの増幅からの全収量は約3μg/100μlであり、よって全プールした収量は約45μgの増幅した変異誘発重鎖を含んでいた。

    実施例6b. ファージミドライブラリー構築
    実施例6aで調製した得られたゲル精製重鎖断片を、その後実施例2dに記載したように制限酵素XhoIおよびSpeIにより消化した。 変異誘発していない鎖断片を除去して線状ベクターを形成するために同じ制限酵素で予め消化したpC3−TT7Eファージミドベクタークローンに挿入する前に、得られた消化した重鎖断片をその後ゲル精製した。 変異誘発したCDR3領域を有する環状化したベクターを形成するための変異誘発したCDR3領域を有する640ngの重鎖XhoISpeI断片の2μgの線状化したpC3−TT7Eファージミドベクターへの連結は、150μlの反応容量でBRLリガーゼ緩衝液中で10単位のBRLリガーゼ(ガイサーズブルグ、MD)を使用して室温で一夜行った。
    5つの別の連結反応を行い、変異誘発したCDR3領域を有するファージライブラリーの大きさを増加させた。 よって、5つの連結反応について増幅した変異誘発重鎖の全量は3.2μgであった。 連結反応の後、2μlの20mg/mlグリコーゲン、15μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および300μlのエタノールの混合物により、環状化したDNAを−20℃で2時間沈殿させた。
    その後4℃で15分間のミクロ遠心分離によりDNAをペレット化した。 冷却した70%エタノールによりDNAペレットを洗浄して真空下に乾燥した。 ペレットを10μlの水に再懸濁し、実施例2kに記載したように300μlのイー・コリXH1ブルー細胞にエレクトロポレーションにより形質転換してファージライブラリーを形成した。 ここに記載する変異誘発および形質転換手順からの全収量は約5×10 7形質転換体であった。 単一の停止コドンTAGが抑制されるため、イー・コリからのXL1−ブルー細胞を宿主として選択した。

    形質転換の後、ヘテロ二量体発現が誘導されたファージを単離するため、フルオレセインのような標的抗原上での続く選別処理につき、3mlのSOC培地(SOCは、20gバクトトリプトン、5g酵母エキスおよび0.5gNaClを1リットルの水中で混合し、pHを7.5に調整し、Fd−cpIIIおよび軽鎖ヘテロ二量体の発現を誘導するために使用する直前に20mlのグルコースを混合することにより調製した)を混合し、培養物を220rpmで1時間37℃で振盪し、その時間の後20μg/mlカルベニシリンおよび10μg/mlテトラサイクリンを含む10mlのSB(SBは、リットル当り30gトリプトン、20g酵母エキスおよび10gモップス緩衝液を混合しpHを7に調整して調製した)および混合物を300rpmで更なる時間振盪した。 50μg/mlカルベニシリンおよび10μg/mlテトラサイクリンを含む100mlSBに得られた混合物を混合し、1時間振盪し、その時間の後にヘルパーファージVCSM13(10 12 pfu)を混合し、混合物をさらに2時間振盪した。 この時間の後、70μg/mlカナマイシンを混合し、30℃で一夜維持した。 低い温度ほど、結果的にファージの表面状でより良好なヘテロ二量体組込みが得られた。
    遠心分離(JA10ローター中4℃で4000rpmで15分)により上澄を清浄化した。 4%8w/v)ポリエチレングリコール8000および3%(w/v)NaClの混合によりファージを沈殿させ、氷上に30分間維持し、その後遠心分離(JA10ローター中4℃で9000rpmで20分)を行った。 ファージ粒子を2mlのPBSに再懸濁し、3分間ミクロ遠心分離して残渣をペレット化し、新鮮なチューブに移し、後記するようにその後の検索のために−20℃で保存した。

    滴定し得るコロニー形成単位(cfu)を決定するため、ファージ(パッケージしたファージミド)をS中で希釈し、1μlを使用して10μg/mlテトラサイクリンを含むSB中で生育させた50μlの新鮮な(OD600=1)イー・コリXLIブルー細胞に感染させた。 ファージおよび細胞を室温で15分間維持し、その後LB/カルベニシリンプレートに直接プレート処理した。
    実施例6c. ファージ表面上での抗フルオレセインヘテロ二量体の選択
    1) 変異誘発CDR3領域を有するファージライブラリーの多重選別処理
    変異誘発したCDR3領域を備える重鎖断片を有する実施例6bで製造したファージライブラリーを、50μg/mlフルオレセイン−BSA接合体で被覆したミクロ滴定プレート上でここに記載するように選別処理し、抗フルオレセインヘテロ二量体を検索した。 「抗体:実験室マニュアル」、ハルロウら編、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリイ、1988に記載された方法によりフルオレセインをBSAに接合させた。

    使用した選別処理手順は、元はパルムレイとスミス(パルムレイら、Gene,73:30−5−318)により記載されたものの改変である。 0.1Mビカーボネート、pH8.6中で前記調製した25μlの50μg/mlTT抗原を用い、ミクロ滴定プレート(コスター3690)の2〜4の穴を4℃で一夜被覆した。 穴を水により2回洗浄し、PBS中の3%(w/v)BSAにより穴を完全に満たしてプレートを37℃で1時間維持することによりブロックした。 ブロック溶液を振盪して出した後、前記調製したファージライブラリー(典型的には10 11 cfu)をそれぞれの穴に混合し、プレートを37℃で2時間維持した。
    ファージを除去し、プレートを水で1回洗浄した。 その後1時間の間室温でTBS/ツイーン(50mMトリス−HCl、pH7.5、150mMNaCl、0.5%ツイーン20)により穴を10回洗浄したが、この場合洗浄はピペットで上下させて穴を洗浄することよりなるものとし、それぞれの回ごとに穴が洗浄の間は完全にTBS/ツイーンにより満たされたままとなるようにした。 蒸留水によりプレートを更に1回洗浄し、50μlの溶出緩衝液(0.1MHCl、固体グリシンでpH2.2に調整、1mg/mlBSAを含む)をそれぞれの穴に添加した後室温で10分間維持することにより付着ファージを溶出させた。 溶出緩衝液をピペットで数回上下させ、除去し、使用した50μlの溶出緩衝液当り3μlの2Mトリス塩基を用いて中和した。

    溶出したファージを使用し、2mlの新鮮な(OD 600 =1)イー・コリXL1ブルー細胞に室温で15分間感染させ、その時間の後に20μl/mlカルベニシリンおよび10μg/mlテトラサイクリンを含む10mlのSBを混合した。 プレート処理のために20、10および1/10μlの画分を培養物から除去し、プレートから溶出されたファージ(パッケージされたファージミド)の数を決定した。 培養物を37℃で1時間振盪し、その後これを50μg/mlカルベニシリンおよび10μg/mlテトラサイクリンを含む100mlのSBに添加し、1時間振盪した。 その後ヘルパーファージVCSM13(10 12 pfu)を添加し、培養物を更に2時間振盪した。 この時間の後に、70μg/mlカナマイシンを添加し、培養物を37℃で一夜インキュベートした。 ファージ調製および更なる選別処理を前記したように繰返した。

    それぞれの回の選別処理の後、ファージの百分率収量を決定したが、この場合%収量−(溶出したファージの数/装填したファージの数)×100とした。 実施例6bに記載したように選択プレート上で滴定することにより、初発ファージ投入比率をそれぞれの回の選別処理について約10 11 cfrと決定した。 前記したように2mlの対数増殖期XL1ブルー細胞に感染させ、画分を選択プレート上でプレート処理することにより最終ファージ出力比率を決定した。
    酸による溶出の代替として、PBS中で希釈した50μlの10 -5 Mフルオレセインの溶液を混合し、その後37℃で1時間の維持期間を設けることにより、ミクロ滴定プレートの穴に結合したファージを溶出させた。 その後溶液を上下にピペット処理して穴を洗浄した。 得られた溶出物を前記したように感染のために2mlの新鮮なイー・コリXLIブルー細胞に移し、ファージ調製および更なる選別処理を図った。 後続する回の選別処理において、10 -6 Mフルオレセインを用いてファージを溶出させた。
    酸またはフルオレセイン単独を用いる選別処理および溶出の4回の連続的繰返しでフルオレセイン被覆穴に特異的に結合したファージの量の結果を以下の表8に示す。 いずれの溶出手順によっても、フルオレセインに特異的に結合するヘテロ二量体を発現するファージの比較し得る収量が達成された。 これらのデータにより、この発明で記載したCDR3領域の変異誘発の結果、最初はTTに特異的に結合したヘテロ二量体がフルオレセインに特異的に結合するものに変化することが確認される。

    対照ファージによるこの表面への非特異的結合は、穴当り10 4 〜10 5ファージの間で変動した。 以下の2)に記載するように可溶性Fabの製造およびELISAによるフルオレセインへの結合の確認により、それぞれ酸溶出およびフルオレセイン溶出ライブラリーについて、形質転換したコロニーから無作為に選択した60の内の8つの反応性クローンおよび形質転換したコロニーから無作為に選択した40の内の38つの反応性クローンが明らかとなった。
    2) フルオレセインへの結合特異性を特徴付けるための可溶性ヘテロ二量体の調製
    前記したようにファージの表面上で発現される変異誘発したヘテロ二量体の特異性を更に特徴付けるため、酸溶出およびフルオレセイン溶出ファージの両者からの可溶性Fabヘテロ二量体を調製し、フルオレセイン被覆プレート上でのELISAにおいて、可溶性フルオレセイン−BSAの増加する濃度を用いる競合ELISAにより、また蛍光消光検定により分析した。 後者の検定は、「フルオレセインハプテン、免疫学的プローブ」、イー・ダブリュ・ボス編、CRCプレス社、pp52−54,1984に記載されたように行った。

    可溶性ヘテロ二量体を調製するため、陽性クローンからファージミドDNAを単離し、SpeIおよびNheIで消化した。 これらの酵素による消化によって和合性の付着末端が生成した。 遺伝子III部分を欠失する4.7kbDNA断片をゲル精製(0.6%アガロース)して自己連結した。 イー・コリXL1ブルーの形質転換により、cpIII断片を欠失する形質転換体を単離した。 1.6kb断片を生成する筈であるXhoI−XbaI消化によるcpIII断片の除去についてクローンを検討した。 0.2のOD 600が達成されるまで、50μg/mlカルベニシリンおよび20mMMgCl 2を含む100mlSB中で37℃でクローンを生育させた。 IPTG(1mM)を添加し、培養物を30℃で一夜生育させた(37℃での生育はヘテロ二量体収量の軽い減少を与えるのみである)。 JA10ローター中4℃で15分間4000rpmで遠心分離することにより細胞をペレット化した。 34μg/mlフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む4mlPBS中に細胞を再懸濁し、氷上での超音波処理(50%負荷で2〜4分)により溶解させた。 JA20ローター中4℃で15分間14,000rpmで遠心分離することにより残渣をペレット化した。 後記するようにELISA分析のために上澄を直接使用し、−20℃で保存した。 多数のクローンの検討のために、10mlの培養物で分析のための十分なヘテロ二量体が与えられた。 この場合、2mlの緩衝液中で超音波処理を行った。

    前記調製した可溶性ヘテロ二量体をELISAにより検定した。 この検定のため、1μg/穴のフルオレセイン−BSA溶液をミクロ滴定プレートの個々の穴に混合し、4℃で一夜維持し、蛋白質溶液を穴の壁に付着させた。 維持期間の後、PBSにより穴を1回洗浄し、その後3%BSAの溶液と共に維持し、穴上の非特異的部位をブロックした。 プレートを37℃で1時間維持し、その時間の後にプレートを反転させ、振盪してBSA溶液を除去した。 前記調製した可溶性ヘテロ二量体をそれぞれの穴にその後混合し、37℃で1時間維持して免疫反応生成物を形成した。 維持期間の後、PBSを用いて穴を10回洗浄し、非結合可溶性抗体を除去し、その後1%BSAを含むPBS中で希釈したアルカリ性ホスファターゼと接合した二次ヤギ抗ヒトFABと共に維持した。 穴を37℃で1時間維持し、その後PBSにより穴を10回洗浄し、その後p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)による展開を行った。

    前記ELISAで決定した免疫反応性ヘテロ二量体をその後競合ELISAにより分析し、変異誘発したヘテロ二量体の親和力を決定した。 可溶性ヘテロ二量体の存在下に混合した濃度で10 -9 M〜10 -5 Mの濃度範囲の増加する濃度の可溶性フルオレセイン−BSAを用いて前記したようにELISAを行った。
    結合の最大阻害は10 -6 M遊離抗体で達成され、最大の2分の1阻害は約10 -7 M遊離抗原で得られた。 全てのクローンから発現した抗体は、フルオレセインおよび酸溶出の両者につきフルオレセイン−BSA接合体について10 -7 〜10 -8 Mの範囲のおよその解離定数(Kd)を有していた。 真のKdはフルオレセイン消光検定で決定した。 フルオレセイン溶出後のクローンからのファージ上で発現した抗体はフルオレセインに対してより高い親和力を有していた(酸溶出抗体について10 -7 M対10 -6 M)。 親クローン7Eは検定の検出可能限界内で消光を示さず、10 -5 M未満の遊離のフルオレセインに対する親和力を示唆した。 フルオレセインに対する抗体の最も強い結合体の親和力(10 -7 M)は、クランツら、Mol. Immunol. 20:1313−1322(1983)により示されたように、遊離のフルオレセインに対する免疫化したマウスの二次応答の平均Kd(10 -7 M)に接近した。
    よって、この発明の変異誘発したヘテロ二量体は、フルオレセインを特異的に認識して結合する。 更に実験を行い、変異誘発したヘテロ二量体は、変異誘発していないヘテロ二量体が元は結合したTTを最早認識しないことを確認した。 フルオレセイン消光検定も行い、変異誘発したヘテロ二量体の結合の特異性を確認した。 酸またはフルオレセイン単独により溶出したファージから調製した可溶性ヘテロ二量体は、前記したアプローチのいずれによってもフルオレセインの結合において同等に有効であった。 ここに記載したヘテロ二量体の重鎖のCDR3領域の変異誘発の発明の結果、TTからフルオレセインへの結合特異性の変化が与えられた。

    実施例6d. 選択した抗フルオレセインヘテロ二量体の配列分析
    代表的な番号のフルオレセイン−BSA結合クローンの変異した重鎖の完全なヌクレオチド配列を決定した。 CDR3領域の外側にはPCR誘導変異は認められなかった。 重鎖CDR3領域の予期されるアミノ酸配列を、括弧内に示す対応する配列番号と共に図13に示す。 酸溶出処方から回収した7つのクローンはコンセンサス配列を示さなかった。 酸溶出クローンにおけるコンセンサス挙動の欠如には、フルオレセインおよびBSAよりなる更に複雑なエピトープのその認識が寄与している可能性があるが、これはフルオレセインおよびフルオレセイン−BSAに対する更に異なる親和力に反映される。

    逆に、フルオレセインによって単離したクローンはコンセンサス配列の高い選択を示した。 配列決定した10のクローンの内、異なる配列が認められたのは3のみであった。 全てのクローンが、アミノ酸残基位置95のグリシンおよび位置101のアスパラギン酸を有していた。 アミノ酸残基位置は、カバトら、「免疫学的に興味ある蛋白質の配列」、USデパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービス(1987)に記載されたようにカバト番号系に基く。 全ての32の可能なコドンを製造する合成手順により与えられたグリシン残基をコードする両者の可能なコドンを使用した。 天然の抗体では、位置101のアスパラギン酸残基は、フレーム構造領域3(FR3)の位置94のアルギニン残基と塩橋を形成することにより構造的な役割を果たしている。 よって、人工的な選択過程が、動物に認められるものを反映する構造的意義の相互作用を反復した。

    更に、10のクローンから発現した9の半合成抗体は、直接隣接するループの中央付近にセリン−アルギニン−プロリンのトリプレット配列またはアルギニン残基のアミノ末端側で除去された1残基を含んでいたが、これらの残基の2つについてのコドン使用が異なっていた。 クローンF31はこの中央構造を欠失していた。 全ての配列は、32の可能なコドンの3つによりコードされるアルギニン残基に富んでいた。 10の異なるCDR3配列内のアルギニンの存在と、同様に合成において3つの可能なコドンによりコードされるロイシンおよびセリンとの比較により、アルギニン−ロイシン−セリン比率は29:16:15であることが明らかとなった。 アルギニンの選択に対するこの偏向は、フルオレセインのジシストロン性特徴の結果たり得る。

    異なるコドンが使用されていることを突き止めたことは、クローン的選択は抗原−抗体合体のレベルで起こり、DNAへのヌクレオチド組込みの何らかの予期しない偏向によるものではないという提案を支持する。
    実施例7
    抗破傷風毒素をコードする軽鎖のCDR3領域の無作為化した変異誘発
    実施例7a. 縮退オリゴヌクレオチドによるPCR変異誘発
    実施例6に記載したような重鎖の無作為変異誘発に類似する手順に従い、抗破傷風毒素特異的ファージミドクローンpC3−TT7Eの軽鎖断片のCDR3領域を無作為化し、フルオレセインに対する特異性を有する抗体を製造した。 反応に使用したオリゴヌクレオチドプライマー以外は、実施例6aに記載したようにPCR増幅を行った。

    第1のPCR反応の結果、ベクターの5′EcoRI部位からCDR3領域の5′末端に延在するpC3−TT7Eクローン中の軽鎖断片の領域の増幅を得た。 この領域を増幅するために次のプライマーを使用した:ヌクレオチド配列5′−GAATTCTAAACTAGCTAGTCG−3′(配列番号:126)を有し、ベクターのEcoRV部位に対応する軽鎖の非コード鎖にハイブリダイズする5′アンチセンスオリゴヌクレオチドプライマーKEF、ヌクレオチド配列5′−ATACTGCTGACAGTAATACAC−3′(配列番号:127)を有し、CDR3の5′末端に対応する重鎖のコード鎖にハイブリダイズする3′センスオリゴヌクレオチドプライマーKV12B。 PCR増幅は実施例6aに記載したように行った。 その後得られたPCR生成物を実施例1dに記載したようにゲル精製し、第2のPCR反応の生成物と共に重複延長PCR反応で使用し(両者とも後記する)、図12に示すように変異誘発したCDR3領域を含む再構成した重鎖に2つの生成物を組換えた。

    第2のPCR反応の結果、CDR3領域の5′末端からCH1領域の末端に延在する軽鎖の増幅が得られた。 この領域を増幅するために次のプライマーを使用した。 KV5R3と命名した5′アンチセンスオリゴヌクレオチドプライマープールは、式5′−TATTACTGTCAGCAGTATNNKNNKNNKNNKNNKACTTTCGGCGGAGGGACC−3′(配列番号:128)により表されるヌクレオチド配列を有していた(ここでNはA、C、GまたはTとすることができ、KはGまたはTであり、またプライマープールの5′末端はCDR3の5′末端に相補的であり、プライマープールの3′末端はCDR3の3′末端およびフレーム構造4の5′末端に相補的である)。 プライマープールの2つの特定の末端の間の領域は、CDR3領域の非変異誘発5′および3′末端を境界とする長さ5アミノ酸の内部変異誘発したCDR3領域の多様な集団を最終的にコードする15マー縮退によって表した。 ヌクレオチド配列5′−AATACGACTCACTATAGGGCG−3′(配列番号:129)を有する3′センスオリゴヌクレオチドプライマーT7Bは、ベクターのT7領域に対応する軽鎖のコード鎖にハイブリダイズした。 第2のPCR反応は、KV5RおよびT7Bプライマーを用いて実施例6aに記載したようにpC3−TT7E上で行った。 得られたPCR増幅生成物をその後前記したようにゲル精製した。

    第1および第2のPCR反応からの500ナノグラムのゲル精製生成物を、その後最終PCR反応においてプライマー対としての1μgのKEFおよびT7Bオリゴヌクレオチドプライマーのそれぞれと混合し、図12に示すように重複延長により完全な軽鎖断片を形成した。 PCR増幅は実施例6aに記載したように行った。 十分な量の増幅生成物を得るため、5つの同一のPCR反応を行った。
    5′EcoRV部位で開始しT7領域に延在する得られた軽鎖断片は、5つの内部アミノ酸無作為変異誘発CDR3を有していた。

    実施例7b. ファージミドライブラリー構築
    実施例7aで調製した得られたゲル精製軽鎖断片を、その後実施例2dに記載したように制限酵素SacIおよびXbaIにより消化した。 変異誘発していない軽鎖断片を除去して線状ベクターを形成するために同じ制限酵素で予め消化したpC3−TT7Eファージミドベクタークローンに連結する前に、得られた軽鎖断片をその後ゲル精製した。 変異誘発したCDR3領域を有する環状化したベクターを形成するための450ngの軽鎖増幅生成物の1.4μgの線状化したpC3−TT7Eファージミドベクターへの連結は、実施例6bに記載したように行った。 5つの別の連結反応を行い、内部変異誘発したCDR3領域を有するファージライブラリーの大きさを増加させた。 連結反応の後、環状化したDNAを沈殿させ、実施例6bに記載したようにイー・コリXLIブルーに形質転換し、ファージライブラリーを形成した。 ここに記載する変異誘発および形質転換手順からの全収量は、約2×10 7形質転換体であった。 重鎖変異誘発形質転換体について記載したようにファージを単離した。

    実施例7c. ファージ表面上での抗フルオレセインヘテロ二量体の選択および選択した抗体の配列分析
    CDR3領域に5つの内部変異誘発アミノ酸を有する軽鎖断片を有する実施例7bで製造したファージライブラリーを実施例6cに記載したように選別処理した。 10 11のファージ投入による連続的な選別処理およびハプテン溶出の3回繰返しによりフルオレセイン被覆穴に特異的に結合したファージの数は、0.75×10 6 、1×10 6および2.4×10 7であった。 よって形質転換、ファージ調製、選別処理および溶出の繰返しサイクルの結果、フルオレセインに特異的に結合するヘテロ二量体の顕著な集積が与えられた。 フルオレセインに対する結合特異性を特徴付けるため、実施例6b2)に記載したように可溶性Fabを調製した。 実施例6dに記載したように7つのクローンを配列分析のために選択した。 配列分析の結果を図14に示す。 軽鎖CDR3の変異した領域は、カバトアミノ酸免疫グロブリン軽鎖位置の92〜96に渡る。 出発クローンpC3−TT7E由来のこの領域の配列はGly−Ser−Ser−Leu−Trp(配列番号:148)であった。 変異させてフルオレセインにより選択した7つの抗体の内、クローンP2、P21、P23、P28およびP19からのその5つがアミノ酸残基Thr−Arg−Pro−Gly−Val(配列番号:149)を有していたが、それぞれ独特のヌクレオチド配列からの翻訳の結果であった。 独特のヌクレオチド配列から誘導されたP15およびP11クローンからの2つの残余の抗体も独特のアミノ酸配列を有していた。 よって、大半の変異誘発した軽鎖が合成において可能なコドンによりコードされる同じアミノ酸配列を有していたことから、人工的な選択過程は、動物では自然な選択の過程から得られる構造的意義の相互作用を反復していた。

    重鎖および軽鎖の両者のCDR1およびCDR2の無作為変異誘発に帰着するようにプライマーを設計できるため、CDR領域の変異誘発はCDR3領域に限定されるものではない。 6つの全てのCDR領域の変異の結果、動物で得ることができるものを越える例外的に多様なライブラリーが得られる。 全てのCDRにおける無作為化を得るため、重鎖CDRを出発クローンから最初に無作為化し、その後最良の抗体結合体の選択を行うことができる。 軽鎖のCDR上での第2の変異誘発工程を行うことができ、得られたライブラリーを選択した重鎖結合体と混合することができる。 また、全てのCDRを同時に無作為化することができ、この結果重鎖および軽鎖ライブラリーを得て、これらをその後組合せて予備選択した抗原に対する選択に供するものとする。
    よって、実施例6および7により、免疫グロブリン遺伝子の重および軽相補性決定領域(CDR)を変異誘発する本発明による方法が示され、またこれに有用なオリゴヌクレオチドが示された。

    実施例8
    素朴な結合免疫グロブリンライブラリーからの抗体の試験管内選択および成熟
    結合免疫グロブリンライブラリーの方法を使用して非免疫成体マウスからモノクローナル抗体を取得し、これにより(i)予備選択した特異性について素朴な結合抗体ライブラリーに接近し、(ii)無作為変異誘発により選択した抗体結合部位の親和力を増加させる原理を確立した。 実施例1b(i)で調製した多価表示ベクターpComb8を用いて非免疫化成体Balb/cマウスの骨髄から、繊維状ファージの表面上でIgμおよびk軽鎖断片を発現する結合Fabライブラリーを調製した。 プロゲステロンに特異的な約10 4 〜10 5-1の結合定数を有する低親和力Fabを示すファージを、そのハプテンに結合する能力によってライブラリーから単離した。 一価ファージ表示ベクターpComb3で発現した重鎖および軽鎖可変領域の無作為変異誘発をエラープローンPCRにより行った。 プロゲステロンに対する改良した親和力を有するクローンをその後選択した。 よって、ここに記載するように、非免疫化供給源からの所望の特性を有する抗体を選択し、2つのベクターpComb8およびpComb3を使用することにより親和力成熟を達成し、これにより遺伝子ライブラリーから特定の抗体を取得し免疫化をバイパスする道を開くものとする。

    ここに記載する発明は3つの必須の特徴を有する:(i)多価ファージ発現系の使用によって素朴なライブラリーから低親和力Fabに最初に接近する能力、(ii)エラープローンPCRによるその後の親和力成熟および(iii)軽鎖の喪失による人工的結合の高いバックグラウンドを回避するため成熟過程の際の一本鎖構成体の使用。 具体的に使用した場合、これらの方法により素朴なライブラリーから抗体の選択および親和力成熟を行うことが可能となる。
    実施例8a. RNA単離およびcDNA合成
    3匹の非免疫化成体オス(6月齢)Balb/cByJマウス(スクリップ・ブリーディング・コロニー)を使用し、PBS中の4%ウシ胎児血清中で5×10 7の骨髄細胞を調製した。 表面IgG陽性細胞を枯渇させるため、ラット抗マウスIgG2b(0.1ml)、ヤギ抗マウスIgG(0.1ml)およびウサギ抗マウスIgG2b(0.1ml)と共に調製物を周囲温度で30分間維持した。 細胞をペレット化し、PBSにより洗浄し、9mlPBSに再懸濁した。 ウサギ相補体を添加し(1ml)、37℃で30分間維持した。 細胞をペレット化し、実施例2bに記載したように全RNAを単離した。 スーパースクリプトキット(BRL)を使用し、全RNAをそれぞれ次のプライマーを用いるμおよびk鎖のcDNA合成のための鋳型として使用した:Igμ、5′−ATTGGG ACTAG TTTCTGCGACAGCTGGAAT−3′(配列番号:151)(SpeI制限部位配列に下線を付す)およびk、5′−GCGCCG TCTAGA ATTAACACTCATTCCTGTTGAA−3′(配列番号:152)(XbaI制限部位に下線を付す)。

    簡略には、7μgの全RNAを60pmolのプライマーと混合し、70℃で10分間加熱し、氷上で直ちに冷却した。 2μlのRNase阻害剤、10μlの5×合成緩衝液、8μlのdNTP混合物(200μMのそれぞれのNTPの最終濃度を与えるものとする)、5μlの0.1MDTT、および1μlのBRLスーパースクリプトRT(200U/μl)を混合し、DEPC処理水で反応物を50μlとした。 室温で10分間反応を進行させ、その後42℃で50分間とした。 90℃で5分間維持することにより反応を停止し、その後氷上に10分間載置し、その後1μlのRNaseHを混合し、37℃で20分間維持した。
    表5〜6に示すように重鎖についてV H 1〜9およびμ鎖プライマーおよび軽鎖についてVL3〜7およびk鎖プライマーを使用し、実施例2に記載したように100μlの反応混合物中でPCR増幅を行った。

    実施例8b. 素朴な免疫グロブリンμ/kライブラリー構成
    PCR増幅μ鎖およびk鎖DNAをそれぞれXhoI−SpeIおよびSacI−XbaIにより開裂させた。 得られたμ鎖XhoI−SpeI断片を実施例1b(i)で調製したpComb8ファージミドベクターに挿入し、μ鎖−cpVIII融合ライブラリーを生成した。 イー・コリXL1ブルーへの形質転換およびファージ製造は主として実施例6に記載したように実施した。 その後k軽鎖SacI−XbaI断片を重鎖F d μ−cpVIII融合ライブラリーにクローン化した。
    重鎖F d断片とcpVIIIとの融合を可能とするpComb8ベクターにIgμF dおよびk軽鎖断片をその後クローン化することにより、5×10 6構成員の結合ライブラリーを確立した。 Fab抗体断片はファージ表面上で高いコピー数で表示されるため、非選択および非起動レパートリーに認められると予期される低親和力抗体に接近するためにこのベクターを選択した。

    実施例8c. プロゲステロンに特異的な低親和力抗体の選択
    前記調製した組換えファージミドをM13ファージ粒子にパッケージし、プロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシム−BSA被覆ELISA穴上で5回の選別処理を実施例6に記載したように行った。 簡略には、50μlの100μg/mlプロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシムBSA接合体(シグマ#P4778)(PBS中)を用いて4℃でミクロ滴定プレートの穴を被覆した。 穴を2回水で洗浄し、PBS中の1%w/vBSAで完全に満たしてプレートを37℃で1時間維持することによりブロックした。 ブロック溶液を振落し、PBS−BSA(0.1%w/v)中の50μlのファージライブラリー(典型的には10 11 cfu)をそれぞれの穴に混合し、プレートを37℃で2時間維持した。 ファージの洗浄工程、溶出、および複製は主として実施例6a1)に記載したように行った。

    第1および第3の繰返しの後に溶出したファージを、実施例2fに記載したように細菌コロニー隆起により抗プロゲステロンFabの発現について分析した。
    プロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシムHRP接合体を用い、プロゲステロン結合についてコロニーをプローブ処理した。 4−クロロナフトールを使用してフィルターを展開した。 対応する軽鎖のないIgμF d cpVIII融合体を発現するファージミドにより起こる誤動作を排除するために注意を払った。 恐らく不対合重鎖上で示される疎水性部分のため、これらの重鎖のみのファージはBSA、HRP、ニワトリ卵リゾチームのような未反応抗原と非特異的反応した。

    ウエスタンブロットで最も強いシグナルを生成するこのようなコロニーを更に検討し、後続する分析のために3つのクローンPgA11、PgB6およびPgF1を単離した。 最初の2つは第1回の選別処理で出現したものであり、後者は第3回の選択の後に単離したものである。 実施例6c2)に記載したようにその可溶性形態で生産されるこれらの全てのFabは、プロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシム−BSAおよびプロゲステロン−11α−ヘミスクシニル−BSAに特異的に結合した。 更に、3つのFabの全ては、チトクロームCのエピトープに対して顕著な交差反応性を示した。 プロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシム−BSAについてのその見かけの結合定数は、それぞれPgA11について10 4-1 、PgF1およびPgB6について3×10 4-1および10 5-1と決定された。 これらの結合定数は、2〜5×10 8-1の親和力を有する抗プロゲステロンモノクローナル抗体について報告されたものより遥かに低い。 クローンPgB6およびPgF1は、密接に関連するV HおよびV L遺伝子の同じ組合せを利用していた。 これらV H遺伝子の両者は2つの密接に関連するが別個の胚系統遺伝子と同一であったが、素朴なレパートリーから予期されるように、体性変異の証拠はなかった。 その密接に関連するV L遺伝子についての真の胚系統遺伝子は未だ知られていない。 両者のV H遺伝子は異なるDおよびJ断片に接続していたため、クローンPgB6およびPgF1は同じ起源ではあり得ず、2つの独立するクローン化の事態から選択された筈であり、プロゲステロン結合についてのこの特定の組合せの潜在的重要性を示している。 PgA11により使用されるV LおよびV H遺伝子は、他の2つのクローンとは密接に関連していない。
    よって、これは、多価表示ベクターを使用することにより、ホスホリルコリンおよびニトロフェノールのようなハプテンに対する一次免疫応答について観察されたものと比較し得る親和力で素朴な結合レパートリーからFabを単離することができることを示した。 更に、結合ライブラリーの手法により、生体内では選択され得ないV遺伝子またはV遺伝子の組合せを生成することができる。

    実施例8d. PCR指向性変異誘発による親和力成熟
    より高い親和力を有する抗体の選択を導く体性変異の過程を模倣するため、V LおよびV H領域の両者で無作為変異を生成し、ハプテンプロゲステロンに対する増加した親和力を有する抗体をその後選択した。 エラープローンPCRにより特定的に唯一V領域を変異の標的とするため、次の要素のフレームの合った融合体を含むpComb2−3ファージミドベクター中で一本鎖融合プラスミドFv−cpIIIを構成した:分泌のためのpelBリーダー配列、実施例6aで記載したように可撓性ペプチドをコードする合成オリゴヌクレオチドに結合したV HおよびV Lリーディングフレーム、およびcpIII部分。 一本鎖ベクターの使用により、Ig重鎖のみを発現するファージによる非特異的結合についての望ましくない選択による困難性が更に克服される。

    膜アンカーcpIIIとの一本鎖重鎖および軽鎖(縮退したFV)融合体を調製するため、唯一のSpeI制限部位を有する実施例1b(ii)で調製したプラスミドpComb2−3を制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびNheIで消化して再連結し、これにより軽鎖クローン化カセットを除去した。 2つのオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド配列5′−TCGAGAAAGTC TCTAGA GGTAAATCTTCTGGTTCTGGTTCCGAATCTAAATCTACT GAGCTC AAAGTCA−3′(配列番号:153)を有する5′アンチセンスプライマーおよびヌクレオチド配列5′−CTAGTGACTTT GAGCTC AGTAGATTTACATTCGGAACCAGAACCAGAAGATTTACC TCTAGA GACTTTC−3(配列番号:154)を有する3′センスプライマーよりなる15アミノ酸リンカー配列をコードする合成DNAリンカーを、ファージミドScpComb2−3を形成するXhoI−SpeI消化裁頭pComb2−3ベクターに挿入した。 制限エンドヌクレアーゼXbaI(TCTAGA)およびSacI(GAGCTC)の内部認識配列に下線を付す。 プロゲステロン結合体のV HおよびV L断片を、その後2つの別の反応で実施例2gに記載したようにPCRにより増幅した。

    第1のPCR増幅では、前記列記した配列番号:153に対応するプライマーおよびヌクレオチド配列5′−ATTTGGGAAGGACTG TCTAGA TGMRGAGAC−3′(配列番号:155)(ここでMはAまたはCであり、RはAまたはGである)を有するオリゴヌクレオチドを使用して重鎖断片を増幅した。 軽鎖断片は、前記列記した配列番号:154に対応するプライマーおよびヌクレオチド配列5′−GAGG ACTAGT TACAGTTGGTGCAGCATCAG−3′(配列番号:156)を有するオリゴヌクレオチドを用いて別に増幅した。 XbaI(TCTAGA)およびSpeI(ACTAGT)の内部認識配列に下線を付す。 V HおよびV L PCR断片をそれぞれXhoI−XbaIおよびSacI−SpeIにより消化し、その後ScpComb2−3に挿入した。

    実施例8e. 可溶性Fabおよびプロゲステロンに特異的な一本鎖融合抗体の発現および検出
    Fab製造のため、プロゲステロン結合体PgA11、PgB6およびPgF1をコードするファージミドの遺伝子VIII部分を制限エンドヌクレアーゼSpeIおよびEcoRIにより切出し、その後TAA停止コドン(下線)をコードする合成リンカーにより置換した。 リンカーは、オリゴヌクレオチド5′−CTAGT TAA CTGAGTAAG−3′(配列番号:157)および5′AATTCTTACTCAG TTA A−3′(配列番号:158)により形成した。
    イー・コリ細胞を3回の凍結融解サイクルにより破壊した以外は、抗体Fab断片の製造および検出は主として実施例6c2)に記載したように行った。 可溶性抗体断片を製造するため、V H −リンカー−V L融合体をScpCobm2−3ファージミドからXhoIおよびSpeIにより切出し、pF1260の誘導体である発現ベクターpTAC01(ファルマシア)にサブクローン化した。 pTAC01ベクターは誘導性tacプロモーター、分泌のためのpelBリーダー配列を有し、挿入した一本鎖融合構成体と免疫学的検出のためにtagとして実施例1aに記載したデカペプチド配列とのフレームの合った融合を可能とした。
    一本鎖融合抗体断片の発現および検出は、アルカリ性ホスファターゼに接合した抗デカペプチド抗体をELISAに使用した以外は前記した通りとした。
    3つの一本鎖融合クローンを検索手順により選択し、ScpComb2−3−PgF1、−PgB6および−PgA11と命名した。 これらの得られたプラスミドを以下に記載するようにエラープローンPCR変異誘発に供した。

    実施例8f. エラープローンPCRによる重鎖および軽鎖の標的変異誘発
    前記調製した等量の未消化PgF1、PgB6およびPgAllScpComb2−3を混合し、直列的に希釈した。 100ng、10ng、1ng、0.1ngおよび0.01ngの混合物を次の反応条件下に35サイクルの増幅(94℃で1分、50℃で2分、72℃で1分)に別々に供した:50mMKCl、10mMトリス−HCl(pH9.0)、6.5mMMgCl 2 、0.5mMMnCl 2 、0.01%ゼラチン、0.1%トリトンX−100、1mMのそれぞれdCTP、dGTP、dTTP、0.2mMdATP、0.1mMdITP、M13逆配列プライマー、5′−AACAGCTATGACCATG−3′(配列番号:159)およびcpIII部分に相補的な後方プライマー5′−GACAGGAGGTTGAGGCAGGT−3′(配列番号:160)を100μMで使用する。 エラープローンPCRの基本的方法は、レウングら、J. Methods Cell. Mol. Biol. 1:11−15(1989)により最初に記載されており、これを参考によりここに取入れる。 TaqDNAポリメラーゼによるDNA合成の忠実性を減少させる条件下で、変異誘発すべきDNA領域をPCR増幅した。 レウングら、前記により示されたように、PCR増幅で使用する試薬MuCl 2およびdATPの濃度の結果、それぞれ1.0%および1.4%の変異頻度が与えられた。 よって、dATP濃度が減少するにつれて変異の頻度が増加した。

    全ての鋳型希釈物のPCR反応物をプールし、XhoIおよびSpeIによる消化の前にフェノールで処理した。 ゲル精製し消化したPCR断片をXhoI−SpeI消化ScpComb2−3プラスミドに連結して戻した。 連結生成物をイー・コリXLブルーにエレクトロポレーションし、10 6の形質転換体を生成した。 ファージをBSAの非存在下に選別処理した以外は、ファージ製造および選別の後続する工程は実施例6に記載したように実施した。
    よって、変異した抗プロゲステロン一本鎖ファージミド抗体のライブラリーが確立され、プロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシム−BSAにより選別処理され、溶出したcfuの数を表れた一本鎖抗体のハプテンに対する相対的な親和力の尺度とした。 第3回の選別処理の後、変異していない集団に対して溶出したファージミドの収量の50〜100倍の増加が銘記された。 親クローンと比較して個々の変異体は選別処理の後に収量で10〜300倍の増加を示し、変異体が増加した親和力の抗体結合部位をコードしていたことを示す。 ScPgB6−1、−2、−3および−4と命名した4つの最良の変異体を、ハプテン接合のその親和力の決定および配列分析のために選択した。

    実施例8g. 変異誘発一本鎖融合抗プロゲステロン抗体の親和力の決定
    前記選択した4つの最良の変異体、ScPgB6−1、−2、−3および−4から調製した可溶性抗体断片の結合定数を、実施例6c2)に記載したように競合ELISAにより決定した。 簡略には、PBS中の50μlの100μg/mlプロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシム−BSA接合体により4℃でミクロ滴定プレートの穴を被覆した。 穴を水で2回洗浄し、PBS中の1%w/vBSAにより37℃で1時間ブロックした。 Fabまたは一本鎖融合体上澄をPBS−BSA(0.1%w/v)中のプロゲステロン−3−(O−カルボキシメチル)−オキシム−BSAと混合し、穴の中で37℃で2時間維持した。 PBS−ツイーン(0.05%v/v)によりプレートを洗浄し、ヤギ抗マウスk鎖アルカリ性ホスファターゼ接合体(サザン・バイオテク)またはアルカリ性ホスファターゼに接合させたマウス抗デカペプチドモノクローナル抗体を混合し、37℃で1時間維持した。 前記したようにプレートを洗浄し、基質を混合した(0.1ml、50mMMgCl 2を含む0.1Mトリス、pH9.4中の1mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェート)。 25℃で60〜180分維持した後、405nmの吸光度を読取った。 見かけの親和力は、競合ELISAにおける最大の結合の50%を阻害するのに必要なハプテン濃度の逆数として決定した。 これは親和力の密接な近似であり、結合活性の順位付けを可能とした。

    競合ELISAにより決定したプロゲステロン−3−(O−カルボキメチル)−オキシム−BSAに対する変異したSc抗体の親和力は、ScPgB6−1について親ScPgB6の30倍、またScPgB6−3およびScPgB6−4の両者について約13倍増加した。 興味あることに、最も少ない変異を有するクローンが、最も高い親和力を示した。 変異体Sc抗体についての交差反応性パターンは、ScPgB6−1がチトクロームCに対するその反応性の大半を喪失した以外は、変化しなかった。 ハプテンに対する免疫応答の広範な研究で、1桁の大きさの親和力の増加は特定の単一のアミノ酸置換に帰することができたが、これはSc抗プロゲステロン抗体の結合部位の唯1または2のアミノ酸交換のためにハプテン−接合体に対するその増加した親和力が与えられることを意味する。
    単一のアミノ酸交換のみの変異体は回収されていないので、ハプテン−接合体に対する増強された親和力を与えた臨界的な残基は同定できなかった。 更に、3つの変異体の全てに共通するアミノ酸置換は認められず、異なる残基を変化させることにより3−(O−カルボキシメチル)−プロゲステロンの増加した親和力を与えることができることが示唆された。 V H CDR2におけるSer 64からPro 64への置換は、変異体ScPgB6−3およびScPgB6−4で共通である。 両者の変異体はハプテン−接合体に対する類似する親和力を示すが、多数のアミノ酸交換が2つの変異体のV LおよびV H領域で生起したため、抗原結合についてのその残基の重要性の評価は明らかに行うことはできない。

    実施例8h. 核酸配列決定
    シーカナーゼ2.0(ユナイティド・ステート・バイオケミカル)を使用し、重鎖および軽鎖の可変領域の全ヌクレオチド配列を二本鎖DNAから決定した。
    DNA配列決定により、4つの全ての変異体クローン、ScPgB6−1、−2、−3および−4はScPgB6に由来し、ScPgB6−1およびScPgB6−2は同一であることが明らかとなった。 このPCR手順により得られる変異の優勢な種類はA−G/T−Cヌクレオチド交換(68%)であったが、T−G/A−C、G−A/C−T、T−A/A−T、G−C/C−GまたはC−A/G−T交換がほぼ同じ頻度で起っていた。 平均より高い変異頻度のDNA配列、すなわち変異のホットスポットが観察された。 さらに、3つの変異体クローンは塩基対変化の数が異なっていた。 V HおよびV L領域についての変異頻度はScPgB6−1について1.5%、ScPgB6−3について2.1%およびScPgB6−4について4.1%であり、これは変異体のCDRおよびフレーム構造領域において多重アミノ酸置換を導くものであった。

    要約すると、この発明は、素朴なライブラリーからのハプテンに対する特定の抗体の選択および親和力成熟の原理を企図するものである。 試験管内選択および変異誘発系は、免疫系の複雑性と比較して極めて単純であるが、幾つかの共通の特徴が存在する:(i)素朴な結合ライブラリーから選択される抗体の親和力は、ハプテンに対する一次免疫応答からの抗体と同じオーダーの大きさに達することができる、(ii)生体内または試験管内で変異を生成する機構は異なるが、変異のホットスポットが認められた、(iii)試験管内での1回の変異および選択の後の親和力の増加は、ハプテンに対する一次から二次免疫応答への移行について観察されるのと同じオーダーの大きさである、(iv)場合により生体内で認められるように、変化した交差反応性を有する変異した抗体結合部位が回収された。
    結合抗体の手法を最初に記載したが、これを使用して効率的に生体内の膨大な抗体レパートリーに踏込むことができるか否かは疑問であった。 本発明は、生体内では決して選択され得ない抗体鎖の組合せに接近して展開することができることを示す。 よって、今や生体内抗体応答の多様性を分子クローン化技術により越えることができるとも考えられる。
    前記したものは本発明の説明として意図するものであり、限定するものではない。 この発明の真の精神および範囲から逸脱することなく多数の変更および改変を行うことができる。
    説明の中に挿入しなかった配列を以下に示す。















    〔配列表〕


























































    基本的な構造特徴を示す免疫グロブリン分子の説明図を示す。 重鎖上の丸く囲んだ領域は可変領域(V

    H )を表し、その領域の生物学的に活性な(リガンド結合)部分を含むポリペプチド、およびそのポリペプチドをコードする遺伝子は、本発明の方法によって製造する。

    ヒトIgG(IgG1サブクラス)の重(H)鎖の説明図。 左のN末端から右のC末端へと番号を付ける。 4つのドメインの存在が銘記され、それぞれ約60アミノ酸残基に渡る鎖間ジスルフィド結合(S−S)を含む。 記号CHOは炭水化物を示す。 重(H)鎖(V

    H )のV領域は、3つの超可変CDR(図示せず)を有する点でV

    Lに類似する。

    ヒト軽(カッパ)鎖(パネル1)の説明図。 左のN末端から右のC末端へと番号を付ける。 V

    LおよびC

    Lドメインの同じ番号のアミノ酸残基に鎖間ジスルフィド結合(S−S)が渡っていることが銘記される。 パネル2は、V

    Lドメインにおける相補性決定領域(CDR)の位置を示す。 CDRの外側の断片はフレーム構造断片(FR)である。

    ラムダHc2発現ベクターを製造するラムダZapに挿入した二本鎖合成DNAの配列を示す。 二本鎖合成DNAの調製は実施例1a(ii)に記載した。 このベクターがV

    HコードDNA相同体を発現するのに必要な種々の特徴には、シャイン・ダルガーノリボソーム結合部位、モウバら、J. Biol. Chem. 255:27,1980により記載されたようにペリプラズムに対して発現した蛋白質を向けるリーダー配列、およびV

    H相同体を発現ベクターに機能的に結合させるのに使用する種々の制限酵素部位が含まれる。 またV

    H発現ベクター配列は、可変領域重鎖(V

    H骨格)に典型的に認められるアミノ酸をコードする短い核酸配列も含む。 このV

    H骨格は直ぐ上流にあり、XhoIおよびSpeIクローン化部位に機能的に結合したV

    H DNA相同体として適切な読取り状態にある。 二本鎖合成DNA挿入物の頂部および底部鎖の配列は、それぞれ配列番号:1および配列番号:2として列記する。 合成DNA挿入物は、制限酵素Not1およびXhoIにより消化したラムダZapIIに方向性をもって連結してラムダHc2発現ベクターを形成する。

    細菌発現ベクターラムダHc2(V

    H発現ベクター)の主要な特徴を示す。 図3からの合成DNA配列は、ラムダZapII由来のT

    3ポリメラーゼプロモーターに沿って頂部に示す。 ラムダZapIIにおける挿入物の方向性を示す。 V

    H DNA相同体はXhoIおよびSpeIクローン化部位に挿入する。 リードスルー転写により、クローン化部位の丁度3′に位置するデカペプチドエピトープが生成する。

    ラムダZapに挿入してラムダLc2発現ベクターを生成する二本鎖合成DNAの配列を示す。 V

    Lコード相同体をこのベクターが発現するのに必要な種々の特徴は図3に記載した。 V

    LコードDNA相同体は、SacIおよびXhoI制限部位でLc2配列に機能的に結合させる。 二本鎖合成DNA挿入物の頂部および底部鎖の配列は、それぞれ配列番号:3および配列番号:4として列記する。 合成DNAは、制限酵素SacIおよびNotIにより消化したラムダZapIIに方向性をもって連結してラムダLc2発現ベクターを形成する。

    細菌発現ベクターLc2(V

    L発現ベクター)の主要な特徴を示す。 図5からの合成DNA配列は、ラムダZapIIに由来のT

    3ポリメラーゼプロモーターに沿って頂部に示す。 ラムダZapIIにおける挿入物の方向性を示す。 V

    L DNA相同体はSacIおよびXhoIクローン化部位に挿入する。

    ファージミド発現ベクターの形態でジシストロン性発現ベクター、pCombを示す。 pCombを製造するため、製造業者の指針(ストラタジーン、ラ・ジョラ、カリホルニア)に従って生体内切出し手順を使用し、発現ベクター、ラムダHc2およびラムダLc2からファージミドを最初に切出す。 pComb発現ベクターは、V

    HコードまたはV

    LコードDNA相同体を含まないラムダHc2およびラムダLc2から調製する。 生体内切出し手順により、ラムダHc2およびLc2ベクターからファージミドベクターへとクローン化した挿入物が移動した。 得られたファージミドは、親ベクター同様抗体断片クローン化および発現について同一のヌクレオチド配列を含有していた。 Hc2およびLc2ファージミド発現ベクターをScaIおよびEcoRIにより別々に制限消化した。 ScaIおよびEcoRI付着末端を介して線状化したファージミドを連結し、ジシストロン性(結合)ベクター、pCombを形成した。

    pCBAK8−2bファージミドベクター、Fab集成体のための経路およびファージコートへの組込みの説明図。 Fd−cpVIII融合ポリペプチドおよびカッパ鎖をコードするヌクレオチド残基配列に加えて、ベクターはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)マーカー遺伝子を担持する。 f1ファージ複製開始点により一本鎖ファージミドの生成が促進される。 Fd−cpVIII融合物(V

    H 、C

    H1 、cpVIII)および軽鎖(V

    L 、V

    C )をコードするジシストロン性メッセージのイソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)誘導発現により重鎖および軽鎖の形成を導く。 それぞれの鎖は pelB標的配列によってペリプラズム空間に配送され、その後開裂される。 cpVIII融合物によって重鎖が膜中に定置するが、軽鎖はペリプラズム中に分泌される。 軽鎖の存在下で重鎖が集成してFab分子を形成する。 cpVIIIを介してFabはファージ粒子に組込まれる(黒いドット)。

    繊維状ファージの表面に沿ってNPN−BSA接合体により被覆した5〜7nmのコロイド状金粒子の電子顕微鏡的位置を示し、細菌細胞から出現したファージからのものである。 パネル9AはBSA−NPN抗原により被覆したコロイド状金粒子で特異的に標識した細菌細胞の表面から出現する繊維状ファージを示す。 パネル9Bは、成熟繊維状ファージの一部を示し、その長さ方向に抗原結合部位の標識が示されている。

    実施例4bに記載したようにバクテリオファージ粒子の表面に付着したFab抗体の存在および機能について検定する2部位ELISAの結果を示す。 ファージ表面上でのFab抗体の発現のため、ファージミド発現ベクター、pCBAK8−2bによりXL1ブルー細胞を形質転換した。 誘導因子、イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を1mMの最終濃度で1時間細菌懸濁物と混合した。 その後ヘルパーファージを細菌懸濁物と混合し、ファージミドDNAのセンス鎖のコピーを生成した。 2時間の維持時間の後、バクテリオファージ粒子を含む細菌上澄をELISAでの検定のために集めた。 NPN被覆プレートに対するNPN−Fab発現バクテリオファージ粒子の特異的滴定可能な結合を示した。 ヘルパーファージ単独では結合は検出されなかった。

    増加する量の遊離のハプテンの添加により、NPN抗原被覆プレートに対するNPN−Fab発現バクテリオファージの阻害を示す。 検定は図10に記載したように行った。 5ngの添加した遊離のNPNハプテンにより結合の完全な阻害が認められた。

    結合特異性の変化に帰着する重鎖断片のCDR3領域を変異誘発する過程を図示的に示す。 オリゴヌクレオチドプライマーは黒い棒により示した。 過程は実施例6に記載した。

    開始および選択クローンのCDR3領域の重鎖のアミノ酸配列および対応する配列番号、および遊離のフルオレセインおよびFI−BSAに対するクローンの親和力を示す。 アステリスクは競合ELISAにより決定したおよそのKdを示す。

    開始および選択クローンのCDR3領域の軽鎖のアミノ酸配列および対応する配列番号、および遊離のフルオレセインおよびFI−BSAに対するクローンの親和力を示す。 アステリスクは競合ELISAにより決定したおよそのKdを示す。

    QQ群二维码
    意见反馈