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【0001】 【発明の背景】 発明の分野 本発明は、細胞培養系における「アグレカナーゼ」のタンパク質分解活性を試験するための人工組換え基質(rAGG1)および天然アグレカンに関する。 【0002】 背景技術 結合組織におけるプロテオグリカン分解の機構は複雑であり、複数の化合物および経路が関与している。 アグレカンの異化作用の検討では、用いられる実験系主要な軟骨細胞で確立された軟骨細胞系の単層培養物(Hughes CE, Caterson B, Fosang AJ, Roughley PJ, Mort JS., Biochem. J. 1995: 305: 799-804; Lark MW, Gordy JT, Weidner JR ら, J. Biol. Chem. 1995; 270(6): 2550-2556) 、および各種の解剖学的部位および動物種からの軟骨を用いる外植片培養物(Flannery CR, Lark MW, Sandy JD, J. Biol. Chem. 1992; 267: 1008-1014; Sandy JD, Brown HL, Lowther DA, Biochim Biophys Acta 1978; 543: 536-44; Tyler JA, Biochem. J. 1985; 225: 493-507) を含んでいた。 IL−1およびTNFのようなサイトカインの添加が、細胞外マトリックスの分解を促進する化合物として広汎に用いられてきた(Hughes CEら, 1995; Morales TI, Roberts AB, Arch Biochem Biophys 1992; 293 (1): 79-84; Forsang AJ, Tyler JA, Hardingham TE, Matrix 1991; 11: 17-24) 。 特に、これら二種類のサイトカインは、アグレカンの異化作用を標的とすることが示されている。 数件の研究により、アグレカンのタンパク質コアに沿った特異的開裂部位を定義する多数の重要な発見がなされてきた(Ilic MZ, Handley CJ, Robinson HC, Mok MT, Arch Biochem Biophys 1992; 294(1): 115-22; Loulakis P, Shrikhande A, Davis G, Maniglia CA, 酵素開裂の推定部位(Putative site(s) of enzymic cleavage), Biochem J 1992; 284: 589-593; Sandy JD, Neame PJ, Boynton RE, Flannery CR, J. Biol. Chem. 1991; 266: 8683-8685) 。 全体として、少なくとも7個の開裂部位があると思われ、軟骨プロテオグリカン分解生成物のアミノ酸配列分析により、アミノ酸残基Asn 341 −Phe 342およびGlu 373 −Ala 374の間に球間(interglobular) ドメイン(IGD)内に存在するアグレカンにおけるタンパク質分解開裂の2個の主要な部位が定義されている(ヒト配列表)(Doege KJ, Sasaki M, Kimura T, Yamada Y, J. Biol. Chem. 1991; 266: 894-902) 。 前者の開裂部位は、ヒアルロン酸塩と錯体形成した組織に残っている50〜60kDaのG1ドメインからなるC−末端異化断片(... DIPEN)を生じる(Flannery CRら, 1992) 。 最近の研究において、Fosangら(Fosang AJ, Last K, Brown L, Jackson DC, Gardiner P, Trans. Orthop. Res. Soc. 1995; 20: 4)は、多種多様な関節炎疹と診断された患者からの滑液においてこの開裂部位からN−末端断片(FFG... )も同定した。 同様に、Wittら(Witt M, Fosang AJ, Hughes CE, Hardingham TE, Trans. Orthop. Res. Soc. 1995; 20: 122) は、コントロールおよびIL−1で刺激したブタ外植片培養物からの培地試料中にこれらのグリコースアミノグリカン含有N−末端断片を見いだした。 後者の開裂部位は、関節炎患者の滑液から単離された主要なアグレカン分解生成物と思われ(Lohmander LS, Neame PJ, Sandy JD, Arth. Rheum. 1993; 36: 1214-1222)、かつIL−1またはレチノイン酸で処理した軟骨外植片培養物からの培地にも見られる(Hughes CEら, 1995; Sandy JDら, 1991) グリコースアミノグリカン含有N−末端断片(ARG... )を生成する。 最近の研究(Lark MWら, 1995) では、レチノイン酸で処理したラット軟骨肉腫細胞中のC−末端断片(... EGE)が同定された。 このGlu 373 −Ala 374の開裂に関与するタンパク質分解活性は同定されていないが、Glu−Xaaペプチド結合(但し、XaaはAla、GlyまたはLeuである)に特異性を有するものと思われる。 この今までのところ特定されていない活性は「アグレカナーゼ(Fosang AJ, Neame PJ, Last K, Hardingham TE, Murphy G, Hamilton JA, J. Biol. Chem. 1992; 267: 19470-19474)」と呼ばれている。 分子内の開裂の部位は十分に特定されているが、多数の様々なプロテオグリカン分解生成物の生成に関与する化合物の多くは今だ同定されていない。 培養系は、プロテオグリカンの異化作用を促進する各種の化合物で操作され、その分解に関与する(複数の)化合物を見いだす努力がなされてきた。 しかしながら、これらの研究は、アグレカンの分解に関与する特定の化合物を特定することはできなかった(Flannery CR, Sandy JD, Trans. Orthop. Res. Soc. 1993)。 それにも拘らず、精製したアグレカンおよび改変したアグレカンを精製した酵素製剤の基質として用いる実験データーから、これらの酵素の特異的な開裂部位について幾らかの情報が得られている。 しかし、このイン・ビトロでの研究は軟骨でのアグレカンの分解に関与する機構を確定しまたは化合物を同定するのに直接役立っていない(Fosang AJら, 1992; Fosang AJ, Neame PJ, Hardingham TE, Murphy G, Hamilton JA, J. Biol. Chem. 1991; 266: 15579-15582; Fosang AJ, Last K, Neame PJ ら, Biochem. J. 1994; 304: 347-351) 。 【0003】 過去の研究(Hughes CEら, 1995; Hughes CE, Caterson B, White RJ, Roughley PJ, Mort JS, J. Biol. Chem. 1992; 267: 16011-16014) において、本発明者らは特異的なプロテイナーゼによって開裂された生成物(プロテオグリカン凝集体の異化作用生成物)に特異的な多数のモノクローナル抗体を開発した。 これらの抗体は、軟骨外植片培養系においてプロテオグリカンの分解機構の研究における手段として有用であることが明らかにされた。 この最新の研究の目的は、アグレカンのIGDにおける374 ARGSVI... 部位におけるアグレカンの開裂に関与する化合物の同定を一層促進する培養系を更に開発することであった。 【0004】 【発明の概要】 本明細書において、本発明者らは、固有の内因性プロテオグリカンおよび他の細胞外成分を含まない細胞培養系において人工的組換え基質に対する「アグレカナーゼ」の活性を研究することができるようにするイン・ビトロの培養系の開発を説明する。 アグレカンのIGDにおける重要な開裂部位に対する過去に特定されたネオエピトープ抗体を使用することによって、この系における「アグレカナーゼ」のタンパク質分解作用によって精製した生成物の監視が容易になった。 【0005】 それ故、本発明の一態様は、イン・ビトロ試験系におけるアグレカナーゼの組換え基質であり、好ましくは a) CD5のシグナル配列、 b) M1モノクローナル抗体検出のためのFLAG−エピトープ、 c) ヒトアグレカンの球間ドメイン、 d) ヒトIgG1のヒンジ領域、 e) ヒトIgG1のCH2領域、および f) ヒトIgG1のCH3領域を含んでなる構成要素の群を含む組換え基質である。 【0006】 本発明の好ましい態様は、配列番号3のアミノ酸配列またはその部分を有するか、または配列番号3のアミノ酸配列またはその部分であって、アミノ酸34がAlaに変異した組換え基質である。 【0007】 【発明の具体的説明】 本発明のもう一つの態様は、上記の組換え基質をコードするDNAであり、好ましくは配列番号4のヌクレオチド2350〜4114のヌクレオチド配列またはその部分を有する、配列番号4のヌクレオチド2350〜4114のヌクレオチド配列またはその部分であって、ヌクレオチド2448がCに変異し、ヌクレオチド2450がCに変異し、ヌクレオチド2451がAに変異したものを有する、またはストリンジュント条件下で配列番号4に示したDNAとハイブリダイゼーションを行う、DNAである。 【0008】 本発明によるストリンジュント条件下でのハイブリダイゼーションとは、6×SSC(または6×SSPE)、0.5%SDSおよび100μg/mlの変性したサケ精子DNA断片を含むハイブリダイゼーション溶液中で標識したプローブの融点下の20〜25℃の温度におけるハイブリダイゼーションを意味する(Sambrookら, 「分子クローニング−実験室便覧(Molecular Cloning - A Laboratory Manual) 」, 第2版, 1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2巻, 第9章, 9.52〜9.55頁)。 【0009】 本発明の他の態様は、上記のヌクレオチド配列を有するDNA断片を含むベクター、および前記ベクターを含む宿主細胞である。 【0010】 本発明のもう一つの態様は、アグレカナーゼの活性を試験する目的での細胞培養系での上記の組換え基質の使用であり、好ましくは上記細胞培養系が固有の内因性プロテオグリカンおよび他の細胞外成分を含まない、使用である。 【0011】 本発明のもう一つの態様は、アグレカナーゼの活性の試験を抗体による開裂生成物の検出によって行う、上記の組換え基質の使用である。 【0012】 本発明のもう一つの態様は、組換え基質における新規な酵素開裂部位の検出を行うための上記基質の使用である。 【0013】 本発明のもう一つの態様は、アフィニティークロマトグラフィーによってアグレカナーゼを精製するための、またはアグレカナーゼcDNAを単離するための機能性クローニング系における上記の組換え基質の使用である。 【0014】 本発明のもう一つの態様は、骨関節症の開始または進行を監視する方法であって、骨関節症を有することが疑われるまたは知られているヒトからの生物学的流体の試料を、上記の組換え基質によるアグレカナーゼの存在について分析を行い、上記生物学的流体が、滑液、尿、血清およびリンパ液からなる群から選択されることを特徴とする方法である。 【0015】 本発明のもう一つの態様は、疾病の進行を観察して治療の有効性を決定することに使用する、上記の方法である。 【0016】 本発明のもう一つの態様は、アグレカナーゼ阻害剤をスクリーニングする目的での上記の組換え基質の使用である。 【0017】 本発明のもう一つの態様は、上記の組換え基質および抗体を含み、アグレカナーゼ開裂生成物を検出するための診断助剤である。 【0018】 以下において、本発明を実施例、および図面によって詳細に説明する。 なお、図6および7のアミノ酸配列は配列番号3の配列と、図8〜11の塩基配列は配列番号4の配列と、それぞれ対応する。 【0019】 【実施例】 材料 アルカリホスファターゼと結合した第二の抗体およびウェスターンブロット分析に用いられる基質は、Protoblot Western blot AP 系(カタログ番号W3920)としてPromega から得た。 ニトロセルロース(孔径0.2μm)は、Schleicher and Schnellから入手した。 モノクローナル抗体M1および抗−FLAG M1アフィニティーゲルは、いずれもKodak から入手した。 抗ヒトIgモノクローナル抗体は、Capell、Durhamから入手した。 モノクローナル抗体BC−3、2−B−6および3−B−3は、腹水として調製した(Hughes CEら, 1995) 。 Rx細胞系は、Dr. Jim Kimura, Bone Research Center, Henry Ford Hospital,デトロイト, ミシガン州の好意により提供を受けた。 【0020】 実施例1 rAGG1遺伝子構築物の調製 rAGG1の遺伝子構築物は、リンパ細胞糖タンパク質T1/Leu−1(CD5)のシグナル配列、長さが8個のアミノ酸のFLAG(商標名)エピトープ(Prickett KS, Amberg DC, Hopp TP, Bio Techniques 1989; 7: 580-589)、ヒト軟骨大の凝集性プロテオグリカンアグレカンの長さが127個のアミノ酸の球間ドメイン( 350 T− 476 G)(Doege KJ ら, 1991) 、長さが2個のアミノ酸のグリシンスペーサー、およびヒトIgG1ヒンジ、CH2およびCH3不変領域をコードすることにより、予想分子質量が41.059dの融合タンパク質を生じる。 球間ドメインをコードするアグレカンcDNA配列を、この領域の近接(flanking)配列に相補的な合成オリゴヌクレオチドとヒトヒザ軟骨の総RNAとを用いる逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Beverly SM,分子生物学における最新のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、カナダ:John Wiley and Sons, 1992)によって増幅した。 総RNAは、Adams ら(Adams ME, Huang DQ, Yao LY, Sandell LJ, Anal. Biochemistry 1992; 202: 89-95) により、関節交換手術から得たヒト軟骨組織から抽出した。 オリゴヌクレオチドは、FLAGエピトープおよびg−スペーサーに関する追加配列情報を含み、かつ増幅したcDNAセグメントの5′および3′末端に制限酵素開裂部位を有し、続いて3′Nhel部位を含むように改変したCD5−IgG1発現ベクターに挿入し易くなるように設計した(Aruffo A, Stamenkovic I, Melcick M, Underhill CB, Seed B, Cell 1990; 61: 1303-1313)。 FLAGエピトープおよび球間ドメインのアミノ末端開始をコードし且Nhel部位を含むプライマーを、下記の配列:5´-CGC GGG GCT AGC CGA CTA CAA GGA CGA CGA TGA CAA GAC AGG TGA AGA CTT TGT GGA C(配列番号:1)を用いて合成した。 球間ドメインのカルボキシ末端、G−スペーサー、BamHI部位を含むスプライスドナー部位をコードするリバースプライマーは、配列:5´-CGC GGG GGA TCC CCT CCC CCT GGC AAA TGC GGC TGC CC (配列番号:2)を有する。 PCR生成物をNheIおよびBamHIで消化して、NheIおよびBamHI切断ベクターCD5−IgG(Aruffo A ら, 1990) に連結した。 【0021】 実施例2 COS細胞におけるrAGGの生産および精製 構築物を、DEAE−デキストランを介してCOS細胞にトランスフェクションした(Hollenbaugh D, Aruffo A, 分子生物学における最新のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、カナダ:John Wiley and Sons, 1994)。 トランスフェクションから12時間後に、DMEM、10%FCS中で成育した細胞をトリプシン処理して、新たな皿に播種し、5日間成育させた。 3日目に、新たな培地および10%FCSを加えた。 上清を回収して非付着細胞および破片を除いて、4℃で貯留して保存した。 融合タンパク質を、抗−FLAG(商標名)M1アフィニティーゲル(Kodak、ニューヘブン)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってアフィニティー精製した。 通常は、収率は、培養物上清1ml当たり1〜5μg融合タンパク質であった。 【0022】 実施例3 組換えIGD基質および天然アグレカンの異化作用の試験のためのレチノイン酸の存在下または非存在下でのアガロース中でのラット軟骨肉腫細胞の培養 ラット軟骨肉腫細胞を75cm 2フラスコで培養し、5%FCSおよび50μg/mlゲンタマイシンを含むDMEM培地に保持した。 75cm 2フラスコ中のコンフルエント単層を37℃で15〜20分間攪拌しながらトリプシン処理(EDTAを含むDMEM中0.25%トリプシン)を行った後、DMEM中0.05%コラゲナーゼで1〜2時間消化した。 次いで、細胞を4×10 6個/mlの濃度でDMEMに再懸濁した。 24ウェルの培養プレートにFMC Seaplaque アガロース/DMEMの1%(重量/容量)溶液を「コーティング」し(200μl/ウェル)、アガロースを4℃で30分間インキュベーションして固化した(Aydelotte MB, Juettner KE, Conn. tissue Res. 1988; 18: 205-222)。 次に、プレートを37℃に平衡にした。 ラット軟骨細胞懸濁液(上記)をSeaplaque アガロース/DMEMの2%溶液で希釈して、最終細胞濃度を2×10 6個/mlとなるようにした。 アガロース細胞懸濁液200μl(0.4×10 6個)を前もって調製したアガロースプラグに重層し、この直後に組換えIGD基質(rAGG1)または天然のウシアグレカン(A1D1)50μgを適当なウェルに加え、攪拌混合した。 次に、プレートを4℃で15分間インキュベーションして、アガロースを固化した。 次に、(レチノイン酸を含むまたは含まない)実験培地を、組換えIGD構築物、天然のウシアグレカン(A1D1)および細胞のみを含む三つ組ウェルに下記のようにして加えた。 コントロール培養物、DMEM+ゲンタマイシン(50μg/ml)および処理済み培養物、DMEM+ゲンタマイシン(50μg/ml)+10 -6 Mレチノイン酸(Hughes CE ら, 1995) 。 次に、アガロース細胞培養物を5%CO 2中で37℃で96時間保持した後、培地およびアガロース細胞マトリックス抽出物を更に分析した。 【0023】 実施例4 コントロールおよびレチノイン酸で刺激したアガロース培養物からの実験的培地の分析 組換えIGD基質培養物からの培地および細胞のみを含む培養物を、蒸留水に対して徹底的に透析し、凍結乾燥し、10%(容量/容量)メルカプトエタノールを含むSDS−PAGE試料緩衝液の等容に再構成した。 A1D1培養物および細胞のみを含む培養物からの培地試料を0.1M Tris、50mM酢酸ナトリウム、pH6.5に透析し、以前に報告した方法を用いて脱グリコシル化した(Hughes CEら, 1995) 。 次に、試料を蒸留水に対して徹底的に透析して、凍結乾燥し、SDS−PAGE試料緩衝液の等容に再構成した。 次に、試料(等容/ウェル)をSDS−PAGEに付し、ニトロセルロースに移し、下記の操作を用いてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体で免疫局在化を行った(immunolocated) 。 【0024】 実施例5 コントロールおよびレチノイン酸で刺激した培養物からのアガロース−細胞マトリックスの抽出 組換えIGD基質培養物、ウシA1D1培養物、および細胞のみを含む培養物からのアガロースプラグを、下記の酵素阻害剤を含む4M塩化グアニジニウムで4℃で24時間抽出した。 10mM EDTA、5mMベンズアミジン塩酸塩、0.1M 6−アミノヘキサン酸、および1mMフッ化フェネチルメタンスルホニル。 アガロースゲルの残渣を遠心分離によって除去した後、上清を上記の基質のそれぞれについて処理した。 次に、試料(等容/ウェル)をSDS−PAGEに付し、ニトロセルロースに移し、下記の手続きを用いてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体で免疫局在化を行った。 【0025】 実施例6 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびウェスターンブロット分析 天然の組換えIGD基質およびその異化作用生成物を含む試料を、Laemmli によって記載された操作を用いてSDS中10%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行った(Laemmli UK, Nature 1970; 227: 680-685) 。 電気泳動の後、分画したタンパク質を電気泳動によりニトロセルロースに移し、以前に記載した手続きを用いて(Hughes CEら, 1995) 、抗−FLAGモノクローナルまたは抗ヒト免疫グロブリンまたはモノクローナル抗体BC−3(いずれも1:1000の希釈度)で免疫局在化を行った。 天然のウシA1D1およびその異化作用生成物を含む試料を3〜15%SDS−PAGEゲル上で電気泳動を行い、ニトロセルロース膜に移し、モノクローナル3−B−3、2−B−6およびBC−3の1:1000希釈物で免疫局在化した。 通常は、免疫ブロットを基質と室温で5〜15分間インキュベーションして最適な色を展開した。 【0026】 実施例7 組換えIGD構築物の特徴 組換えIGD構築物のCOS細胞へのトランスフェクションの結果、細胞が発現し、続いて組換えIGD生成物が培地へ分泌された。 抗−FLAG M1アフィニティーゲルの使用により、トランスフェクションした細胞培地からのその精製が促進された。 トランスフェクションしたCOS細胞培地1リットルは、組換えIGD基質1〜5mgを生じた。 非還元条件下では、この組換えIGD基質は、分子の免疫グロブリンドメインにおける不均一な数のシステイン残基の存在により高分子量の凝集体が形成された。 この凝集体の形成により、アガロース培養物中の組換えIGD基質の固定が促進された。 還元条件下では、組換えIGD構築物は、10%SDS−PAGEゲル上で分離した後に見られるように、概算Mrが72kDaおよび39kDaの2種類の分子量成分として存在した。 組換えIGD基質の2種類の形態が存在する理由は、現在のところは不明であるが、(構築物のFLAG領域におけるエピトープを認識する)抗M1モノクローナルおよび(構築物の免疫グロブリン領域におけるエピトープを認識する)抗Igモノクローナル抗体はいずれも組換えIGD構築物の両方の形態を認識した(immunolocated) 。 分離した組換えIGD構築物をクーマシー染色したゲルをデンシトメーターで分析したところ、72kDa対39kDaのバンドの比率は約10:1であることを示していた(結果は図示せず)。 【0027】 実施例8 レチノイン酸で処理したおよび処理しなかったアガロース培養物からのIGD組換え構築物の免疫化学分析 組換えIGD基質を、レチノイン酸を用いてまたは用いずにラット軟骨肉腫の軟骨細胞を含むアガロース細胞培養物中で96時間固定した。 培養液中でのIGD組換え基質およびその代謝物の分析は、SDS−PAGEおよびウェスターンブロット分析によって検討した。 (組換え基質のN−末端においてFLAGドメインにおけるエピトープを認識する)抗M1で免疫したところ、コントロール培養物またはレチノイン酸で処理した培養物からの培地に含まれるrAGG−1代謝物のパターンに差は見られなかった。 しかしながら、組換え基質のC−末端において免疫グロブリンドメインにおけるエピトープを認識する)抗Igで免疫したところ、65kDaで移動する追加バンドが存在することが示されており、72kDaの未消化組換え基質の部分異化が起こったことを示唆していた。 この結果は、(N−末端における)M1エピトープは、IGD組換え基質の72kDa形から開裂して65kDaの異化生成物を生じることを示している。 72kDaのバンドについて抗M1での陽性の免疫染色が見られないことは、この結論を裏付けている。 IGD構築物のこの開裂が組換え基質の「アグレカナーゼ」部位で起こっていることを確かめるため、レチノイン酸で処理したおよび処理しなかった軟骨細胞培養物の培地試料を、モノクローナル抗体BC−3(抗ARG... )を用いる免疫ブロッティングによって検討した。 BC−3で免疫したところ、レチノイン酸なしの培養物には反応性は見られず、レチノイン酸で処理した培養物では65kDaに唯一の免疫陽性のバンドが見られた。 この結果は、IGD組換え基質の72kDa形の「アグレカナーゼ」異化作用が起きたことを示している。 しかしながら、39kDaのアイソフォームが異化作用を受けたという証拠はなかった。 陽性の39kDa形の異化生成物についてBC−3による免疫染色が見られないことは、rAGG−1製剤には72kDa形が10倍も多くあるので、これらの異化生成物は低濃度で存在することによると思われる。 65kDaの異化生成物はrAGG−1の72kDa形から誘導されることを確かめるため、BC−3免疫ブロットを抗M1抗体で再プローブした。 【0028】 実施例9 レチノイン酸で処理したおよび処理しなかったアガロース培養物からの天然のウシA1D1の分析 この培養系における天然基質の使用についても評価を行い、これを人工の組換え基質と比較した。 天然のウシアグレカン(A1D1)を、レチノイン酸で処理したおよび処理しなかったラット軟骨細胞を含むアガロースと混合した。 ウシA1D1を加えなかったアガロース細胞培養物も分析して、培養の96時間中に合成された内因性プロテオグリカン(潜在的基質)の寄与について分析を行った。 培地試料をモノクローナル抗体2−B−6で免疫したところ、細胞のみを含むアガロース培養物から採取した培地には染色は見られなかった。 この結果は、培養期間に新たに合成された内因性基質の著しい寄与はなかったことを示している。 レチノイン酸でおよびなしで保持された外部から添加されたウシアグレカン基質を含む培養物は、過去に幾つかの研究によって記載されたようにタンパク質コアの予想可能な配置「梯子」を示している(Hughes CEら, 1995; Ilic MZ,Handley CJ, Robinson HC, Biochem. Internat. 1990; 21: 977-986)。 同様な結果は、モノクローナル抗体3−B−3を用いても見られた(図2、レーン4、5および6)。 対照的に、N−末端配列ARGSV... を有する「アグレカナーゼ」によって生成したアグレカン異化生成物について抗体BC−3を用いる免疫染色は、レチノイン酸処理を施した培養物のみで観察された。 このBC−3陽性アグレカン異化生成物の総体分子量は約160kDaであり、他の培養系で見られるものと同様である(Hughes CEら, 1995) 。 【0029】 組換え基質および天然のウシアグレカンを有する培養物からの培地および抽出物試料は、MMP1、2、3、7、8または9によるアグレカンIGDのタンパク質加水分解によって生成するN−末端ネオエピトープFFGV... を認識する新たに開発された抗体(BC−14)でも精査した。 BC−14を用いる免疫ブロッティングは、いずれの培養系でも陰性であった(データ省略)。 この結果は、この部位におけるIGDの異化作用は起きず、この知見は他の研究室からの報告と一致することを示している(Lark MWら, 1995) 。 【0030】 実施例10 更に検討を行うため、本発明者らは組換え基質rAGG−1mut、本発明者らの融合タンパク質rAGG−1の一変形であって、IGDのアミド末端における代替スプライスドナーを突然変異して、別のスプライシングを防止するものを用いた。 その親構築物として、rAGG−1mutは、アミノ末端タグとしてFLAGエピトープ、ヒトアグレカンのIGD、およびカルボキシ末端タグとしてヒトIgG分子の不変領域を含む。 一時トランスフェクションの結果、rAGG−1mutは融合タンパク質としてのCOS細胞によって培養物上清に分泌され、還元条件下では72kDのバンドとして、また非還元条件下では140kDのバンドとして移動し、構築物のC−末端におけるヒト免疫グロブリン成分のヒンジ領域における不対システインの存在による二量体化を反映しているものと思われる。 【0031】 レチノイン酸(RA)でシミュレーションすると、ラット軟骨肉腫細胞系RXのアガロースを埋設した細胞はアグレカナーゼを生成する。 rAGG−1mutは、rAGG−1について記載されたようにアグレカナーゼ部位で異化し、これはモノクローナル抗体BC−3を用いる免疫検出によって示される。 この異化生成物の66kDのサイズは、アグレカナーゼ部位での開裂の後の5.8kDの予想された損失と一致している。 【0032】 rAGG−1mutのアミノ酸配列は、rAGG−1のアミノ酸配列と位置34だけが異なり、rAGG−1mutはAla34を含み、rAGG−1はGly34を含む。 【0033】 rAGG−1mutをコードするDNAのヌクレオチド配列は、rAGG−1をコードするDNAと3個の位置で異なり、2448ではAがCに、2450ではGがCに、2451ではTがAに置換されている。 【0034】 一般的検討 これらの結果は、「アグレカナーゼ」活性の検討のための組換え基質の生産および使用の最初の報告である。 また、本発明者らは、基質として作用する複雑な内因性アグレカン無しで「アグレカナーゼ」活性を監視するための新規な細胞培養物を開発した。 この人工基質(rAGG1)の独特な凝集特性により、アガロース細胞培養系におけるその固定が容易になる。 更に、本発明者らは、内因性細胞外マトリックスを確立して、任意の「アグレカナーゼ」活性の基質として作用させる必要なしに新たに単離した軟骨細胞を用いることができた。 組換えIGD構築物で得られた結果は、「アグレカナーゼ」部位における開裂のアグレカンのEGDについてG1および/またはG2ドメインを必要としないことを示している。 更に、天然のアグレカン分子ではこの領域に剛性を与えることができるIGD内では、(rAGG−1構築物は抗硫酸ケラタン抗体5−D−4を用いるウェスターンブロット分析では陽性染色を示さないので)硫酸ケラタン鎖は必要ないと思われる(結果省略)。 この新たに開発された培養系は、「アグレカナーゼ」によるアグレカン分解に関与した分子機構を更に検討するのに有用であることが明らかになるであろう。 組換え基質およびネオエピトープ抗体が利用可能であるとすれば、新しい実験法が他のマトリックス高分子の異化作用の研究用に考えられる。 【0035】 【配列表】
【0036】 【0037】
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】rAGG−1の構造を示した図である。
rAGG−1は、CD5のシグナル配列:SS、M1モノクローナル抗体検出のためのFLAG−エピトープ:FLAG、ヒトアグレカンの球間ドメイン:IGD、ヒトIgG1のヒンジ領域:H、ヒトIgG1のCH2領域:CH2、およびヒトIgG1のCH3領域:CH3からなっている。
【図2】モノクローナル抗体M1(M1−MoAb)を用いたCOS細胞におけるrAGG−1発現の検出の結果を示した写真である。
【図3】FLAGエピトープにより精製したrAGG−1の電気泳動(SDS−PAGE)写真である。 レーンA:クーマシー染色、レーンB:モノクローナル抗体M1を用いるウェスターンブロット検出、レーンC:抗ヒトIgG抗血清。
【図4】ラット軟骨肉腫細胞からの細胞培養液中のrAGG−1のBC−3反応性を示した電気泳動写真である。
レーンA:未刺激ラット軟骨肉腫細胞の培養物からのrAGG−1はウェスターンブロット上ではBC−3モノクローナル抗体では検出されないが、レチノイン酸出刺激した細胞の培養物からのrAGG−1は検出される。 レーンB、レーンC:モノクローナル抗体M1で再プロービングした後の同様なブロット。 BC−3反応性断片は元の72kDバンドより約5.6kD小さく、「アグレカナーゼ」部位におけるrAGG−1の開裂を示している。
【図5】「アグレカナーゼ」活性を検出するための可能な96ウェルのフォーマットスクリーニング分析用の構造(ピン蓋を有する)を示した図である。
【図6】rAGG−1のアミノ酸配列(アミノ酸残基1〜224番)を示した図である。 アミノ酸1〜24はCD5シグナル配列を、アミノ酸25〜32はFlag−配列を、アミノ酸33〜160はヒトアグレカン球間ドメインを、アミノ酸161〜164はスペーサー配列を、アミノ酸165〜179はヒトIgG1のヒンジ配列を、アミノ酸180〜289はヒトIgG1のCH2領域を、アミノ酸290〜396はヒトIgG1のCH3領域を、それぞれ示す。
【図7】rAGG−1のアミノ酸配列(アミノ酸残基225〜396番)を示した図である。 図6の続きである。
【図8】rAGG−1の真核細胞における発現のためのベクターpCDM8−rAGG−1のヌクレオチド配列を示した図である。
【図9】rAGG−1の真核細胞における発現のためのベクターpCDM8−rAGG−1のヌクレオチド配列を示した図である。 図8の続きである。
【図10】rAGG−1の真核細胞における発現のためのベクターpCDM8−rAGG−1のヌクレオチド配列を示した図である。 図9の続きである。
【図11】rAGG−1の真核細胞における発現のためのベクターpCDM8−rAGG−1のヌクレオチド配列を示した図である。 図10の続きである。
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