【0001】 【発明の属する技術分野】 本出願は1988年10月28日の米国特許出願番号第07/264,611号の継続出願である。 本発明はポリペプチド中の活性ドメインおよびアミノ酸残基の同定法に関する。 また本発明はホルモン変異体に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 ポリペプチドすなわちペプチドおよびたん白質には各々特異的アミノ酸配列、構造および機能を有する広範囲の生物学的分子が含まれる。 ほとんどのポリペプチドは特異的基質と相互作用しそのポリペプチドの機能を遂行する。 したがってズブチリシン、アミラーゼ、組織ブラスミノーゲン活性化因子との酵素は特異的基質と相互作用を起こし、その特定の切断部位で加水分解を起こす一方、ヒト成長ホルモン、インシュリンなどのたん白質性ホルモンは特異的レセプターと相互作用を起こし成長や代謝を調節する。 別にポリペプチドと免疫原性レセプターなど該ポリペプチドの主要標的ではない物質との相互作用もある。 多くのポリペプチドは別個の生物学的効果を産む別々のリガンドまたはレセプターと相互作用する別個の領域を含む点で多機能的である。 たとえばヒト成長ホルモン(hGH)は成人において糖代謝および脂質代謝に関係し、子供においては長骨の成長を誘導する。 【0003】 アミノ酸配列を修正による天然のポリペプチドの機能の改善について努力がはらわれてきている。 1つの方法はポリペプチドのアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸を別のアミノ酸に置換することである。 インビトロ突然変異誘発やクローン化遺伝子の発現によるたん白質工学が種々のたん白質の熱的または酸化的安定性の改善に応用された例が報告されている。 ビラフランカ(Villafranca), JE 等、(1983)Science 222 、782−788;ペリー(Perry), LJ 等(1984)Science 226 、555−557;エステル(Estell) 、DA 等(1985)J. Biel.Chem. 260 、6518−6521;ロゼンバーグ(Rosenberg), S.等(1985)Nature(ロンドン) 312 、77−80;コートニー(Ceurtney), M. 等 (1985)Nature(ロンドン)、 313 、149−157。 さらにこのような方法を応用して基質特異性を変化させた酵素を生成させたことも報告されている。 エステル(Estell), DA等(1986) Science 223 、655−663;クレイク(Craik), CS 等(1985年)Science, 228 、291−297;ファースト(Farsht), AR等(1985)Nature(ロンドン) 314 、235−238;ウィンサー(Winther), JR(1985)Carisberg Res. Commun. 50 、273−284;ウェルス(Wells), JA 等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. 84 、1219−1223。 修正すべきアミノ酸の決定は主にポリペプチドの結晶構造、ポリペプチドの機能に関する化学的修正の効果および、またはポリペプチドの作用モードを確認するための種々の基質とポリペプチドとの相互作用に基づいて行なわれる。 ある場合には、たとえば異なる基質特異性を有するズブチリシン類の基質結合領域におけるアミノ酸配列の差異など関連ポリペプチドの特異的アミノ酸残基に基づいてアミノ酸置換を誘導する場合もある。 ウェルス(Wells), JA 等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 、5767。 別の場合、分子の既知活性領域のアミノ酸配列を第2の分子の既知活性領域のアミノ酸配列となるよう修正することも報告されている。 ワートン(Wharton) RP 等(1985)Nature 316、601−605、およびワートン(Wharton) RP 等(1984)Cell 38 、361−369(ファージレセプターの認識ヘリックスの別のレセプター認識ヘリックスによる置換);ジョーンズ(Jones), PT 等(1986) Nature 321 、522−525(ヒトミエローマたん白質の可変領域のマウス抗体の相当領域による置換)。 この方法は置換により変化する性質に関しいくらかの予想を提供し得るが特定の性質を決定する全ての領域および残基の評価を保証する方法ではない。 せいぜい置換残基の分子接触力に関するエネルギーの実験的見積りが行なわれるぐらいである。 特異的な修正残基に対する水素結合(ファースト(Farsht), AR 等(1985)Nature 314 、235;ブランアン(Bryan), P. 等(1986)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 83 、3743;ウェルス(Wells), JA 等(1986)Philos. Trans. R. Soc. London A. 317 、415)、静電相互用(ウェルス(Wells), JA 等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 、1219;クロニン(Cronin), CN, 等(1987)J. Am. Chem. Soc. 109 、2222)および疎水的および立体的効果(エステル(Estell), DA等(1986) Science 233 、659;チェン(Chen), JT等(1987)Biochomistry 26 、4093)の強さが見積られた。 これらの報告および別の報告(ラスコウスキー(Laskowski), M. 等(1987)Cold Spring Harbor Symp. Quant.Biol. 52 、545:ウェルス(Wells), JA 等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 、5167;ジーンズ(Jones), PT 等(1986)Nature 321 、522;ワートン(Wharton) RP 等(1985)Nature 316 、601)は既知の接触残基の突然変異誘発は結合に大きな効果を引き起こすが一方非接触残基の突然変異誘発は比較的小さい効果しかないと結論づけた。 【0004】 アミノ酸配列と機能との関係を理解するための第2の方法には、関連遺伝子間のインビボ相同的組換を利用したハイブリッドポリペプチドをコードするハイブリッドDNA配列の生成によるものである。 このようなハイブリッドポリペプチドは大腸菌およびサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium) 由来のtrpBおよびtrpA(シュナイダー(Schneider), WP 等(1981)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78 、2169−2173);アルファ1およびアルファ2白血球インターフェロン(ウェバー(Weber), H.およびワンズマン(Weissmann), C. (1983)Nuc. Acids Res. 11 、5661);大腸菌K−12の外膜ポアたん白質ompCおよびphoE(トマセン(thommassen), J.等(1985)EMBO 4 、1583−1587);およびパチルスステアロサーモフィラス(Bacillusstearothermophilus) およびバチルスリテニホルミス(Bacilluslichiniformis)由来の好熱性アルファーアミラーゼ(グレー(Gray), GL等(1986)J. Bacteriol. 166 、635−643)の相同的組換えにより得られると報告されている。 このような方法はハイブリッドアルファアミラーゼについて報告されているようにアミノ酸配列や機能の他に有用なハイブリッドポリペプチドに関する有用な情報を提供し得るが所定のポリペプチドを系統的に研究し標的物質の1つに活性を示すポリペプチド中の詳細な領域やアミノ酸残基を測定するのにこれらの方法を利用するのは難かしい。 このことはそのハイブリッドのDNAおよびアミノ酸配列を規定する交叉組換えの部位が基本的に目的遺伝子のDNA配列および宿主細胞の組換えメカニズムに依存することからくる。 これらの方法は遺伝子の5′または3′末端付近で交叉が起こる偶然的環境以外1つのポリペプチドをコードするDNAの比較的小さいセグメントの別の遺伝子由来の相当するセグメントによる所定のかつ方法論的に必然的な置換を提供することはない。 【0005】 たん白質性ホルモンとそれらのレセプターとの相互作用をいくつかの方法で研究した報告がなされている。 1つの方法ではホルモンペプチドフラグメントを用いホルモン上のレセプター結合部位の位置を決定した。 別の方法では中和モノクローナル抗体とペプチドフラグメント間の競争を利用しエピトープマッピングによりレセプター結合部位の位置を決定した。 これらの方法の例にはヒト成長ホルモン(hGH)について報告された研究がある。 ヒト成長ホルモン(hGH)は正常なヒトの成長および発達における多くの調節に関与している。 この22000ダルトンの脳下垂体ホルモンは線型成長(体発達)、泌乳、マクロファージの活性化、他のインシュリン様および糖尿病誘発効果を含む多くの生物学的効果を示す。 チョウラ(Chawla), RK(1983)Ann. Rev. Med. 34 、519;エドワーズ(Edwards), CK 等(1988)Science 239 、769;ソーナー(Thorner), MO 等(1988)J. Clin.Invest. 81 、745参照。 子供の成長ホルモン欠乏症は小人症を引き起こすがこれは十年以上前からhGHの投与によりうまく治療し得るようになっている。 またhGHの遺伝的および翻訳後修正型を区別し臨床的に投与されたときのhGHに対する免疫学的応答を調べたり、またこのホルモンの循環レベルを定量したりするためにhGHの抗原性にも興味が持たれる(ルイス(Lewis), UJ (1984)Ann. Rcv. Physiol. 46 、33)。 【0006】 hGHは胎盤ラクトゲン、プロラクチンおよび他の成長ホルモンの遺伝子および種的変異体を含む相同的ホルモン群の一員である。 ニコル(Nichol), CS等(1986)Endocrine Reviews 7 、169。 hGHは広い種特異性を示し、かつ単量体的に各クローン化ソマトジェニック(ラング(Leung), DW, 等(1987)Nature 330 、537)またはプロラクチンレセプター(ボーチン(Boutin), JW等(1988)Cell 53 、69)に結合する点でこれらの群の中で異常である。 hGHのクローン化遺伝子は大腸菌中分泌型として発現され(チャン(Chang. CN等(1987)Gene 55 、189)、かつそのDNAおよびアミノ酸配列も報告されている(ゴーデル(Goeddel) 等(1979)Nature 281 、544;グレー(Gray) 等(1985)Gene 39 、247)。hGHの三次元的構造はまた分っていない。しかし、ブタの成長ホルモンの三次元折りたたみパターンは中位の分解能と精度で報告されている(アブデル−メグッド(Abdel-Meguid), SS 等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 、6434)。 hGH由来のペプチドフラグメントがhGHのレセプター接合部位の位置決定に使用された。 り(Li), CH(1982)Mol. Cell. Biochem. 46 、31;ミルス(Mills), JB,等(1980)Endocrinology 、 107 、391。 他の報告ではウシ成長ホルモンのたん白質分解後、残基96〜133のフラグメントが単離された。 ヤマサキン(Yamasakin)等(1970)Biochemistry 9 、1107。 しかし残基1−133を含むより大きいフラグメントを組換え法で作ったときは検出可能な結合活性は観測されなかった。 クリビ(Krivi), GG 等 International Symposium on Growth Hormono : Basic and Clinical Aspects 、アブストラクトI−18、最終プログラム、セロノシンポジア(Serono Symposia)提供、USA、1987年6月14−18日。 明らかにこれらの結果は矛盾しており、かつ、たん白質性ホルモン、特にその結合部位が2つ以上の不連続なエピトープおよび、または構造依存エピトープからなるものに関するレセプター結合部位の位置決めにペプチドフラグメントを使用するのは信頼性に欠けることを示している。 エピトープマッピングによるレセプター結合部位の位置決定に中和モノクローナル抗体を使用することは同様の制限がある。 たとえばモノクローナル抗体をレセプター結合検定中hGHの残基98−128からなるペプチドに対しhGHレセプターと競合するのに使用した報告がある。 たとえhGHホルモンのペプチド98−128のみが中和モノクローナル抗体と結合しても、この領域がこれらの競争実験に基づくレセプター結合部位を含むことが提唱された。 レテジン(Retegin), LA,等(1982)Endocrinology 111 、668。 【0007】 hGHホルモンの抗原部位を同定する試みに同様な方法が使用されてきた。 報告による競合結合によるhGHに対する異なる24個のモノクローナル抗体のエピトープマッピングでは該ホルモン上の抗原部位はわずか4種に分類された。 スロウィー(Surowy), TK等(1984)Mol. Immunol. 21、345;アストン(Aston), R.等(1985)Pharmac. Ther. 27 、403。 しかしこの戦術は該ホルモンのアミノ酸配列上のエピトープの位置は決められなかった。 抗体部位を限定する別の方法には目的たん白質上の短かい線状ペプチドに対する抗体の結合テストがある。 ゲイセン(Geysen), HM等(1984)Proc. Natl. Acad. Scl. USA 81 、3998;ゲイセン(Geyson), HM(1985)Immunol. Today 6 、364。 しかしこの方法はレセプター結合部位の位置を決めるには線状ペプチドフラグメントを用いるのと同じ制限を受ける。 有用となるためにはこの線状配列はそれを認識するのにこの抗体の抗原中にみられる構造が保持されていなければならない。 さらにX線結晶学から明らかになった抗体エピトープの部位に基づき(シェリフ(Scheriff), S. 等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 84 、8075;アミット(Amit), AG, 等(1986)Science 233 、747)事実上全ての抗体結合部位は部分的に不連続であり(バーロー(Barlow), DJ等(1986)Nature 322 、747)かつ結果として線状フラグメントはこれらの構造をうまく真似ることができないことが推定されてきた。 またhGHのペプチドフラグメントはこれらのフラグメントの非共有結合的結合により研究されてきた。 数人の研究者はヒト成長ホルモンの天然のアミノ酸配列または化学修飾ペプチドを含む比較的長いフラグメントを結合させた分析を報告している。 バースタイン(Burstein), S. 等(1979)J.of Endo. Met. 48 、964(アミノ末端フラグメントhGH−1−134)とカルボキシル末端フラグメントhGH−(141−191)の組合せ));リ(Li), CH等(1982)Mol, Cell. Biochem. 46 、31,ミリス(Mills), JB,等(1980)Endocrinology 107 、391(hGHのズブチリシン切断二本鎖型)。 同様に、化学修飾フラグメントhGH−(1−134)およびヒト絨毛性ソマトマモトロピン(胎盤ラクトゲンとも呼ばれる)由来の化学修飾カルボキシ末端フラグメント(hCS−(141−191))も化学修飾フラグメントhCS−(1−133)およびhGH−(141−191)同様非共有的に結合させた。 米国特許第4,189,426 。 これらの研究者は肝臓成長ホルモンレセプターへの結合決定基が成長ホルモンの最初の134個のアミノ末端残基であると誤って報告した(バースタイン(Burstein),等(1978)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75 、5391−5394)。 明らかにこれらの方法は間違った結果を導く。 さらに2個の大きいフラグメントを使用することによりこの方法では潜在的に特定の相互作用に実際に関与する特異的残基または領域を同定することなしにこれらの組合せで使用される2個のフラグメントのどちらかにその機能を割振ることが可能である。 hGHに関する上述の方法および実験のレビューが報告されている。 ニコル(Nichol), CS等(1986)Endocrine Rev. 7 、169−203。 【0008】 hGHの“欠失ペプチド”(hGH−32−46)由来の7残基ペプチドフラグメントを他の哺乳類の成長ホルモンの類似セグメント由来のアミノ酸残基を含むよう修正した別の方法が報告されている。 しかしそのような置換の効果はあったとしても報告されてはいない。 米国特許第4,699,897 参考。 それにもかかわらず短かいペプチドフラグメントを使用する短所は、それらのフラグメントの線型配列が本来の成長ホルモンにみられる構造をインビトロでもインビボでも認識されるよう取り込れなければならないことから明白である。 多くの天然のhGH変異体が同定されている。 この中には、hGH−V(シーバーグ(Seeberg), PH (1982)DNA 1 、239;米国特許第4,446,235 号、4,670,393 号および4,665,180 号)およびhGHの残基32−46の欠失を含む20K hGH(コスチオ(Kostyo), JL等(1987)Biochemica et Biophysica Acta 925 、314;ルイス(Lewis), UJ,等(1978)J. Biol. Chem. 253 、2679)が含まれる。 ある研究者は、hGH中部位165のシステインをアラニンに置換した通常Cys−53とCys−165の間で生成するジスルフィド結合の破壊を報告した。 トクナガ(Tokunaga), T.,等(1985)Eur. J. Biochem. 153 、445。 この単一置換は明らかにhGHの三次構造を維持し、かつhGHのレセプターにより認識される変異体を生じた。 他の研究者は固体樹脂サポート上でのhGHのインビトロ合成を報告した。 この研究者の第1の報告はhGHの正しくない188個のアミノ酸配列を公表した。 リ(Li), CH等(1966)J. Am. Chem. Soc. 88 、2050;および米国特許第3,853,832 号。 第2の報告は190個のアミノ酸配列を公表した。 米国特許第3,853,833 号、、この後者の配列も正しくないものである。 特にhGHの配列は部位68の後にグルタミンが入っており、部位73はグルタミンではなくグルタミン酸、部位106はアスパラギンではなくアスパラギン酸、部位108はアスパラギン酸ではなくアスパラギンである。 【0009】 先に示したものに加え特定のモノクローナル抗体への結合が変化したハイブリッドインターフェロンも報告されている。 キャンブル(Camble), R. 等、“ペプチド;構造と機能”合成遺伝子から生成したインターフェロン−α2類似物の性質、Proceedings of the Ninth American Peptide Symposium 、(1985)デバー(Deber)等編、ピアスケミカル社、シカゴ、III., 375−384。 該文献に公表されているようにα−1インターフェロンのアミノ酸残基101−114またはγ−インターフェロンの残基98−114がα−2インターフェロンへと置換されている。 α−2インターフェロンはNK−2モノクローナル抗体を結合するがα−1インターフェロンは結合しない。 α−2インターフェロン中のこの特定の領域はα−1およびα−2インターフェロン間の27個のアミノ酸の相異中の7個がこの領域中に存在することから選択された。 報告されているようにこのようにして得たハイブリッドはNK−2モノクローナル抗体との活性が実質的に減少している。 抗ウイルス活性をテストしてみるとこれらのハイブリッドは野生型のα−2インターフェロンの活性と同程度の抗ウイルス活性を示した。 この領域内のより小さいセクションの置換も報告された。 また3〜7個のアラニン残基クラスターの連続的置換も報告された。 しかし、唯1つの類似体〔Ala −30、32、33〕IFN−α2が公表されている。 ニワトリ卵白リゾチームの小ペプチドフラグメント内のアラニン置換および2Allまたは3A9細胞の刺激に関するこれらの置換の効果も報告されている。 アレン(Allen), PM 等(1987)Nature 327 、713−715。 抗原結合ループを含む二次構造ユニットの全ユニット(ジョーンズ(Jones), PT 等(1986)Nature 321 、522−525)またはDNA認識ヘリックス(ワートン(Wharton), RP 等(1985)Nature 316 、601−605)の置換による結合性の操作に関する別の報告もある。 上述の文献は単に本出願の登録期日前の公表のため提供したものであり先の発明または以前に登録された出願に基づく優先権によりこれらの公開期日が早いことから本発明の権利を失うという告白として解釈されるものはなにもない。 【0010】 上述の参考文献により示される状況があるならば構造と機能との関係を明らかにするためポリペプチドの有効な系統的分析法が必要なことは明白である。 したがってここでの目的はポリペプチドの機能活性に寄与するポリペプチド内の活性ドメインの同定法を提供することである。 さらに本目的は機能活性を決定する活性アミノ酸の測定法を提供することである。 さらに本発明の目的はポリペプチド内の生物学的活性ドメインを系統的に同定する方法を提供することである。 さらに本目的は本来のホルモンとは異なる望ましい生物学的、生化学的および免疫原的性質を有するホルモン変異体を提供することである。 さらに本目的は1つの生物学的機能については減少した活性を有しかつ第2の標的物質については実質的または増加した活性を有するホルモン変異体を提供することである。 さらに本目的はhGHに対するソマトジェニックレセプターに関する変化した結合活性および、または生物学的活性を有し、かつ有効性を増したhGH変異体を提供することである。 さらに本目的は1つ以上の望ましい生物学的性質は保持しているが糖尿病誘発活性は減少しているhGH変異体を提供することである。 さらに本目的はhGHのソマトジェニックレセプターに関する結合活性を増加したhPRLおよびhPLを提供することである。 さらに本目的はhGH変異体を含むポリペプチド変異体のクローニングおよび発現に使用するDNA配列、ベクターおよび該ベクターを含む発現宿主を提供することである。 【0011】 【課題を解決するための手段】 1つの特徴として本発明は第1の標的物質に関するポリペプチドの活性に影響する未知の活性ドメインを同定することによるポリペプチドの構造と機能の系統的分析法を提供する。 これらの未知活性ドメインは該ポリペプチドの一次アミノ酸配列中に少なくとも2個の不連続アミノ酸セグメントを含む。 活性ドメインは該ポリペプチド(親ポリペプチドと呼ぶ)の選択されたアミノ酸セグメントを該ポリペプチドの類似体に由来する類似アミノ酸セグメントと置換することにより決定される。 この類似体は標的物質に関し親ペプチドと異なる活性を有している。 このようにして生成した各セグメント置換ポリペプチドの標的物質に関する活性を検定する。 これらの活性を親ポリペプチドの活性と比較する。 この構造的に類似するアミノ酸セグメントは標的物質に関し異なる相互作用を起こす類似体に由来することからこのような活性の比較は親ポリペプチド中の活性ドメインの位置の指標を提供する。 さらに本方法は親ポリペプチドの活性ドメイン中の活性アミノ酸の同定も含んでいる。 本方法は親ポリペプチドの活性ドメイン内のアミノ酸残基1個の各アミノ酸への置換、および該残基置換ポリペプチドの標的物質に関する検定を含んでいる。 各残基置換ポリペプチドの活性を親ポリペプチドの活性と比較する。 活性アミノ酸残基が同定されるまで活性ドメイン中の種々のアミノ酸についてこれらのステップを繰り返す。 本発明の別の特徴として、種々の標的物質に関し種々の活性ドメインおよび活性アミノ酸残基を同定する方法が提供される。 これらの方法には第2の標的に関し上述の方法の反復が含まれる。 【0012】 上述の方法に従がい1つ以上の標的物質に関し親ポリペプチドと比較して異なる活性を有するポリペプチド変異体を同定する。 これらの変異体は標的物質に関し親ポリペプチドの活性を決定する活性ドメインまたは活性ドメイン中の活性アミノ酸残基の同定に基づき作られる。 さらに本発明は少なくとも3つの部分からなる成長ホルモン、プロラクチンおよび胎盤ラクトゲン変異体を含む。 第1部分は親ホルモンのアミノ酸の少なくとも1部に対応し、第3部分は同親ホルモンの少なくとも1部に対応し、かつ第2部分は親ホルモンの類似体のアミノ酸配列に対応する。 第2部分はポリペプチド変異体の第1および第3部分の間には含まれない親ホルモンのアミノ酸残基の類似体である。 また本発明にはhGHのセグメント置換および残基置換変異体を含む特定のヒト成長ホルモン、ヒトプロラクチンおよびヒト胎盤ラクトゲン変異体を含む。 【0013】 【発明の実施の形態】 1つの態様において本発明の方法は親ポリペプチドと標的物質との相互作用に関するポリペプチド中の1つ以上の活性ドメインを決定するための、ヒト成長ホルモンまたはヒトプロラクチンなどの親ポリペプチドの系統的分析を提供する。 本発明の方法を採用するにあたり目的とする標的物質に異なる活性を示す該ポリペプチドに対する1つ以上の類似体がなければならない。 したがって本明細書で用いられているように“親ポリペプチド:とは親ポリペプチドとは異なる標的物質への活性を示す“類似体”が存在するポリペプチドを意味する。このようなポリペプチド、類似体および標的物質の例を第1表に示す。 【表1】 第 1 表
【0014】 もちろん第1表の親ポリペプチド、類似体および標的物質は単に例である。 また親ポリペプチドにはたとえばスクシニルコエンザイムAシンセターゼ、ミトコンドリアATPase、アミノアシルtRNAシンセターゼ、グルタミンシンセターゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼおよびアスパラテートトランスカルバモラーゼなどの1つ以上のサブユニットを含むたん白質性物質が含まれる(ハング(Huang)等(1982)Ann. Rcv. Biochem.
51 、935−971参照)。 このような多重サブユニット親ポリペプチドの場合、活性ドメインは親ポリペプチドの2つ以上のサブユニットにまがっている。 したがって後により詳細に述べる方法は特定のポリペプチドの各サブユニットを探り、部分的には1つのサブユニット上に含まれかつ部分的には1つ以上の他のサブユニット上に含まれる特定の標的物質に対する活性ドメインおよび活性アミノ酸を確定するのに用い得る。 一般的に親ポリペプチドおよび類似体は機能に関する1つのポリペプチド群に属する。 さらに通常このような親ポリペプチドおよび類似体はあるアミノ酸配列、すなわち保存残基を持つ。 これらの配列ホモロジーは90%以上のこともあるが約15%〜20%と低いこともある。
一次配列ホモロジーに加え、親ポリペプチドの類似体はポリペプチドおよびその類似体の三次元的枠組みでも限定される。 したがって類似体はアミノ酸配列において親ポリペプチドからの多様性を示す場合もその分子の三次構造の全て、または一部の比較に基づき親ポリペプチドと構造的にホロモジーをもつこともある。 チョシア(Chothia), C.等(1986)Embo. J.
5 、823。 【0015】
一般に三次構造類似体は、その類似体の三次元構造が親ポリペプチドの構造と一緒であることが知られている場合同一と見なし得る。 α−炭素軸の二乗平均分析(RMS)を行うことにより(たとえばサクリフ(Sutcliffe), MJ 等(1987)Protein Engineering
1 、377−384)、もしあるとすれば三次元類似性をもつ領域の重なりが同定される。 テスト類似体配列の好ましくは60%以上に関し、もしα−炭素軸が親ポリペプチドのα−炭素軸と重っているかまたは約2Å〜約3.5ÅRMSの内にある場合、そのテスト類似体は親ポリペプチドと三次元的に類似している。 もちろんこのことは2つの配列の間に存在する挿入または欠失を除外する。 上述の親ポリペプチドおよび類似体は天然の分子の公開であるにもかかわらず、親ポリペプチドおよび類似体にはインビトロ組換え法で導入される配列中に天然の変異を含む変異体が含まれると理解すべきである。 このように親ポリペプチドまたは類似体として用いる変異体はその親ポリペプチドまたは類似体において1つ以上のアミノ酸残基の置換、挿入および、または欠失を含む変異体を含む。 このような変異体は本発明の方法を実行し活性ドメインおよび、または活性アミノ酸の同定または本発明のポリペプチド変異体の調製に使用し得る。 したがってhGHの天然の変異体またはCYS−165のAla置換を含む組換え変異体はそれらが標的に対して活性をもつ限り親ポリペプチドまたは類似体として使用し得る。 このような天然および組換え変異体には他の親ポリペプチド中の特異的残基と等価の異なるアミノ酸残基が含まれ得る。 これらの異なるアミノ酸はそれらの残基が一次配列または三次構造により構造的に類似している、またはそれらが機能的に等価であるならば等価であると云える。
さらに、多くの親ポリペプチドおよび類似体はその役割を交換し得ることは明白である。 したがって非ヒト成長ホルモンおよびそれらの関連類似体群はそれぞれ親ポリペプチドとして使用できかつ同等にその活性ドメインを探ることができる。 さらに、HIVウイルスに対するCD−4レセプターなどの標的物質もCD−4レセプター類似体に関する親ポリペプチドとしてHIV結合に寄与する活性ドメインおよび活性アミノ酸の同定やCD−4変異体の調製に使用される。
【0016】
本明細書で使用しているように、“標的”とは親ポリペプチドと相互作用する物質である。 標的物質にはたん白質性ホルモン、酵素基質、たん白質性レセプターに対するホルモン、たん白質性結合たん白質に対する一般的リガンドおよびポリペプチドに接触し得る免疫系などが含まれる。 ホルモンレセプターの例にはhGHに対するソマトジェニックおよびラクトジェニックレセプターおよびhPRLに対するレセプターが含まれる。 他の標的物質には抗体、プロテアーゼのインヒビター、たん白質性レセプターに結合するホルモンおよび組織プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)に結合するフィブリンが含まれる。
一般に標的物質は親ポリペプチド上の“活性ドメイン”と接触することにより親ポリペプチドと相互作用を起こす。 一般にこのような活性ドメインは該ポリペプチドの表面上に存在するか、もしくは三次元構造の変化によりそのポリペプチドの表面に導き出される。 ポリペプチドの表面とは、生理的条件下、すなわちインビボまたはインビトロで発現した時と同様の条件下に存在する本来の構造について規定される。 そのアミノ酸セグメントおよびアミノ酸残基はいくつかの方法で確認される。 もしその三次元結晶構造が十分な分解能で分っているなら、そのポリペプチドの表面にあるアミノ酸残基は“表面接近可能”なアミノ酸残基である。 これら表面接近可能残基にはその三次元構造の表面上に“転がる”理論上の水分子と接触する残基である。
ポリペプチドの表面上の活性ドメインはそのポリペプチドの一次アミノ酸配列の単一のセグメントに含まれる。 しかしながら多くの場合天然型のポリペプチドの活性ドメインは親ポリペプチドの一次アミノ酸配列中の2つ以上のアミノ酸セグメントから構成される。 たとえばヒト成長ホルモンのソマトジェニックレセプターへの活性ドメインを図5に示す。 示されているように活性ドメインのドメインA,CおよびFは各々hGH分子の不連続なアミノ酸セグメント上に存在する。 これらのアミノ酸セグメントは図4中A,C,Fという文字で示されている。 活性ドメインを構成する不連続なアミノ酸セグメントは活性ドメインおよび標的物質の間の相互作用に有意に関係しない多くのアミノ酸残基により分離されている。 一般に不連続アミノ酸セグメント間の間隔は少なくともアミノ酸5残基分である。
【0017】
本発明の方法は親ポリペプチドのアミノ酸配列中の未知活性ドメインの検出を目的としている。 標的物質に関するポリペプチドの三次元結晶構造が入手できる場合、たとえばインヒビターまたは転移状態類似体に関する酵素の結晶構造が入手できる場合は除いて多くのポリペプチドのほとんどの活性ドメインは未知のままである。
本明細書で使用している“類似ポリペプチドセグメント”または“類似セグメント”とは親ポリペプチド中の対応する配列と置換して“セグメント置換ポリペプチド”とするアミノ酸配列を意味する。 一般的に類似セグメントは親ポリペプチドにおいて1つ以上の異なるアミノ酸残基の置換、挿入または欠失を起こすが親ポリペプチド中で置換する選択されたセグメント中の他の残基の相対的アミノ酸配列は維持される配列を有している。 一般に類似セグメントは親ポリペプチドと類似体の全アミノ酸配列を両配列間の配列同一性が最大となるよう整列させることにより同定される。 この配列整列に基づく類似セグメントは親ポリペプチドの対応する配列への置換用に選択される。 同様に三次構造ホモロジーを示す類似体由来の類似セグメントは構造ホモロジーを示すこれらの領域から誘導し得る。 このような類似セグメントは親ポリペプチド中の対応する配列と置換される。 さらにたとえば構造低類似領域の隣接領域などの三次構造相同体の他の領域も類似セグメントとして用いられる。
もし可能ならば類似セグメントを選択してセグメント置換ポリペプチド中への不安定化アミノ酸残基の導入は避けるべきである。 このような置換にはかさ高側鎖や疎水コア領域中へ親水性側鎖を導入するものが含まれる。
【0018】
一般的に親ポリペプチドおよび類似体のアミノ酸配列は知られており、またある場合にはその3次元結晶構造も入手可能である。 1つ以上の類似体と親ポリペプチドのアミノ酸配列の整列化により少なくとも予備分析で変化を受けていない配列中の保存されているアミノ酸残基を容易に見つけることができる。 また配列整列化は1つ以上のアミノ酸残基の置換、挿入または欠失を含む配列変化領域も明らかにする。 このような変化を含む領域により親ポリペプチド中のどのセグメントが類似セグメントと置換したかが決定される。 それゆえ類似体の類似セグメントの置換はアミノ酸残基の置換だけでなく、アミノ酸残基の挿入および、または欠失も起こし得る。
もし3次元構造の情報が入手可能な場合は類似セグメントと置換すべきではない親ポリペプチド中の領域を同定することが可能となる。 たとえば親ポリペプチド中の両親媒性ヘリックスの疎水性表面において過密領域が同定された場合は類似セグメントと置換すべきではない。 そのように同定された残基はポリペプチド変異体中に保持されるべきでかつ表面残基のみが類似残基と置換されるべきである。
一般に類似セグメントは長さがアミノ酸3〜30残基、好ましくは約3〜15残基、もっとも好ましく約10〜15残基である。 ある場合、類似セグメントの好ましい長さは相同または親ポリペプチドと比べて類似セグメントの1つ以上のアミノ酸残基の挿入および、または欠失のため変化もある。 もし親ポリペプチドの3次元構造が入手できないときは一般に全部ではないにしろ親ポリペプチドのほとんどをカバーする類似セグメントに関するセグメント置換ポリペプチドを作る必要がある。 しかし全アミノ酸配列のセグメント置換は必ずしも必要ではない。 たとえば全アミノ酸配列の1部のみをカバーする偶然セグメント置換は特定標的物質に対する活性ドメインを同定するのに十分な情報を提供する。 しかしほとんどの場合アミノ酸配列の約15%以上が活性ドメイン同定のためセグメント置換を受けることが必要である。 一般に約50%、好ましくは約60%、より好ましくは約75%、もっとも好ましくは100%のアミノ酸配列が構造情報がない場合にセグメント置換される。
【0019】
ここで使用している“類似性アミノ酸残基”または“類似残基”とは親ポリペプチドの対応セグメント中の対応アミノ酸残基とは異なる類似セグメント中のアミノ酸残基を意味する。 したがってもし類似セグメントの置換が1つのアミノ酸置換を起こすならそのアミノ酸残基は類似残基である。 1度親ポリペプチドおよび1つ以上の類似体が同定されたならば1つ以上の類似体由来の類似セグメントを親ポリペプチド中の選択されたセグメントと置換し多くのセグメント置換ポリペプチドを作る。 このような置換は組換えDNA技術を用い簡単に行なわれる。 一般に親ポリペプチドをコードするDNA配列は簡便な宿主で発現されるようにクローン化およびその他の処理が行なわれる。 親ポリペプチドコードDNAは親ポリペプチドを発現する細胞のmRNAから誘導されるか、または化学合成的にDNA配列を構築することによるゲノムライブラリーから入手し得る(マニアチス(Meniatis), T. 等(1982)Molecular Cloning 、コールドスプリングハーバーラボラトリー NY )。
それからこの親DNAを適当なプラスミドまたはベクターに挿入し宿主細胞のトランスホームに使用される。 DNA配列のクローニングおよび発現により親ポリペプチド、セグメント置換ポリペプチド、残基置換ポリペプチドおよびポリペプチド変異体を作るのには原核生物が好ましい。 たとえば、大腸菌k12294株(ATCC No.31446)、大腸菌B株、大腸菌X1776株(ATCCNo. 31537)および大腸菌c600株およびc600hfl株、大腸菌W3110(F
- ,γ - , 独立栄養型、ATCC No.27325)、枯草菌などのバチルス類およびサルモネラティムリウム(Salmonella typhimurlum) またはセラチアマルセサンス(Serratia marcesans) などその他の腸内細菌および種々のシュードモナス種が用いられる。 好ましい原核生物は大腸菌W3110(ATCC27325)である。 原核生物中で発現したとき一般にポリペプチドはN−末端メチオニンまたはホルミルメチオニンを含みかつグリコシル化されていない。 もちろんこれらの例は制限することでなく説明を意図したものである。 【0020】
原核生物に加え、イースト培養物や多細胞生物由来の細胞などの眞核生物も使用される。 原則としてこのような細胞の培養物も使用可能である。 しかし脊椎細胞が最も興味深く、培養中(組織培養)の脊椎細胞の増殖は、反復が可能である(“組織培養”アカデミックプレス版、クルーズ(Kruse)およびパターソン(Patterson)編(1973))。 これらの有用な宿主細胞系列の例にはVEROおよびHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系列、W138、BHK、COS−7およびMDCK細胞系列がある。
一般に宿主細胞に適合する種由来の複製およびコントロール配列を含むプラスミドベクターがこれらの宿主と合せて使用される通常このベクターは複製部位およびトランスフホーム細胞に発現型選択を提供し得るたん白質をコードする配列を有している。 たとえば大腸菌は大腸菌由来のプラスミドであるpBR322でトランスホームする(マンデル(Mandel), M. 等(1970)J. Mol. Biol.
53 、154)。 プラスミドpBR322はアンピシリンおよびテトラチイクリン耐性遺伝子を含んでおり、そのため容易な選択手段を提供している。 好ましいベクターはpBO475である実施例1参照。 このベクターは宿主間での移動を可能にし、それにより突然変異誘発および発現を容易にするファージおよび大腸菌の複製オリジンを含んでいる。 “発現ベクター”とは適当な宿主中のDNAの発現を可能にする適当なコントロール配列に機能的に結合する該DNA配列を含むDNA構築物を意味する。 これらのコントロール配列には転写を可能にするブロモーター、そのような転写をコントロールするオペレーター配列、適当なmRNAリボゾーム結合部位をコードする配列および転写および翻訳の停止をコントロールする配列が含まれる。 ベクターはブラスミドでもファージ粒子でも、または単に潜在的ゲノム挿入物でもよい。 1度適当な宿主にトランスホームすればそのベクターは宿主ゲノムとは独立に複製しかつ機能するかまたはある場合にはゲノムそれ自身の中に組込まれる。 本明細書において“プラスミド”および“ベクター”はプラスミドが現在もっとも一般的に用いられているベクターであることからしばしば同義語的に使用される。 しかし、本発明は同様に機能しかつ本分野でよく知られている他の形の発現ベクターも包含する。
【0021】
2つのDNAまたはポリペプチドの関係を述べるときの“機能的に結合した”という言葉はそれらが互いに機能的に関係することを意味する。 たとえばおそらくシグナル配列の切断によりたん白質成熟型を分泌するプロセスにおいてシグナル配列として機能するなら該前配列はペプチドと機能的に結合している。 プロモーターはコード配列の転写をコントロールするならその配列と機能的に結合している。 リボゾーム結合部位は翻訳を可能とする位置にあるならそれはコード配列と機能的に結合している。
1度本ポリペプチドがクローン化されればそのクローン化親DNAについて部位特異的突然変異誘発(カーター(Carter), P. 等(1986)Nucl. Acids Res.
13 、4331;ゾラー(Zoller), MJ等(1982)Nucl. Acids Res. 10 、6487)、カセット突然変異誘発(ウェルス(Wells), JA 等(1985)Gene 34 、315)、制限選択突然変異誘発(ウェルス(Wells), JA 等(1986)Philos, Trans. R. Soc. London Ser A, 317 、415)または他の技術をほどこし置換した類似セグメントにより規定されるアミノ酸配列の変化をコードする“セグメント置換DNA配列が作られる。適当な発現ベクターに機能的に結合しているとき、セグメント置換ポリペプチドが得られる。ある場合、親ポリペプチドまたはセグメント修正ポリペプチドの回収は親ポリペプチドまたはセグメント修正ポリペプチドをコードするDNA配列に機能的に結合する適当なシグナル配列を用いることにより発現宿主からそれらの分子を発現かつ分泌させることで可能となる。これらの技術は当分野でよく知られている。もちろん望ましいポリペプチドのインビトロ化学合成などそれらのポリペプチドおよびセグメント置換ポリペプチドの生成に別の方法も使用し得る(バラニー(Barany), G. 等(1979)“ペプチド”(E. グロス(Gross) および J. メイエンホーファー(Meienhofer) 編)アカデミックプレス版、NY 2巻、3〜254頁)。 【0022】
1度種々のセグメント置換ポリペプチドが生成されればそれらを標的物質に接触させ、もし、標的物質と各セグメント置換ポリペプチドとの相互作用があればそれを測定する。 同じ標的物質に関するこれらの活性を親ポリペプチドの活性と比較する。 もしその類似体が親ポリペプチドと比べその標的物質に関し異なる活性を有しているなら、それらのセグメント置換ポリペプチドは親ポリペプチド中の活性ドメインを規定する類似セグメントを含んでいると推定される。
もし1つの類似体が親ポリペプチドより大きい活性を有しているなら、複数のセグメント置換ポリペプチドがその標的物質に関し活性の増加を示す可能性がある。 このような場合、類似体の活性ドメインおよびその標的物質に関する活性を増加するように修正し得る親ポリペプチドの適当な領域を効果的に同定できる。 その標的との相互作用にかかわる類似体の領域が主に1つの連続するアミノ酸セグメント内に存在するとき、このような事象が起こりやすい。 もし類似体の“活性ドメイン”が類似体アミノ酸配列の不連続領域に含まれるなら、活性の増加はセグメント置換ポリペプチドへ、類似体からの全ての活性ドメインを同時に導入しなければならないからそのセグメント置換ポリペプチドの活性の増加は起こりそうもない。
したがって、類似体は標的物質に対し親ポリペプチドよりも小さい活性をもつことが好ましい。 このような場合、セグメント置換ポリペプチドには活性のロスがみられる。 しかし、1度親ポリペプチド中の活性ドメインが決定されたら、このポリペプチドは連続的にまたは同時にそのような活性ドメインを置換して標的物質に関して第1親ポリペプチドの活性を欠いた第2親ポリペプチドとする類似体として使用できる。
【0023】
ポリペプチド中の活性ドメインは標的物質に関するセグメント置換ポリペプチドの活性を親ポリペプチドのそれと比較することにより同定される。 多くの分析測定が可能であるが標的物質の非触媒的結合についてはセグメント置換ポリペプチドと標的物質間に形成される複合体の解離定数Kdを親ポリペプチドに関するKdと比べる方法が簡便なものの1つである。 セグメント置換により類似置換残基あたり、約1.5、好ましくは約2.0のKd値の増減は、置換セグメントがその標的物質と親ポリペプチドの相互作用の活性ドメインであることを示している。 標的物質との触媒的相互作用の場合親酵素に対する活性を測定する適当なパラメーターはKcat /Km 比を比較することである。 親酵素に対し置換類似残基当り約1.5、好ましくは2.0のKcat /Km 値の増減は活性ドメインの置換を示す。
本明細書で使用している“スキャンニングアミノ酸”とは親ポリペプチド内の活性アミノ酸を同定するのに用いられるアミノ酸のことである。 “残基置換ポリペプチド”はスキャンニングアミノ酸に関する親ポリペプチド中のアミノ酸の少なくとも単一置換を含むポリペプチド変異体である。 “残基置換DNA配列”は残基置換ポリペプチドをコードする。 このようなDNAおよびポリペプチドはセグメント置換DNAおよびポリペプチドの調製で述べた方法で調製される。
アミノ酸スキャンで同定した“活性アミノ酸残基”は一般的に標的物質と直接接触するものである。 しかし、活性アミノ酸は他の残基またはH
2 Oのような小分子またはNa + ,Ca +2 ,Mg +2またはZn +2などのイオン種で形成される塩橋を介して間接的に標的物質に接触することもある。 ある場合には、スキャンニングアミノ酸は親ポリペプチドの活性ドメイン中に同定されるアミノ酸と置換される。 一般的に多くの残基置換ポリペプチドが調製され、その各々は活性ドメイン内の種々のアミノ酸残基の位置でスキャンニングアミノ酸の単一置換を含んでいる。 特定の標的物質に関するそのような残基置換ポリペプチドの活性を親ポリペプチドの活性と比較し、標的物質との相互作用に関係する活性ドメイン中のアミノ酸残基を決定する。 このような分析に用いられるスキャンニングアミノ酸は置換したものとは異なるアミノ酸、すなわちその他の19種の天然のアミノ酸である。
【0024】
【表2】
【0025】
この表は各アミノ酸について以下の記号を使用している。
【0026】
残基置換ポリペプチドの活性の効果がある場合、それを一様のスキャンニングアミノ酸残基への天然のアミノ酸残基の変化に系統的に帰着させることができるのでスキャンニングアミノ酸は各残基置換ポリペプチドと同じであることが最も望ましい。
ある場合、1つ以上の残基におけるスキャンニングアミノ酸置換は標的物質に関する活性の分析を行うのに十分な量の単離を可能にするレベルで発現しない残基置換ポリペプチドを生ずる。 このような場合種々のアミノ酸、好ましくはアイソステリックなアミノ酸が用いられる。
最も好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さい中性のアミノ酸である。 このようなアミノ酸残基にはアラニン、グリシン、セリンおよびシスティンが含まれる。 アラニンはベータ炭素からとび出た側鎖をもたず、かつ残基置換ポリペプチド主鎖構造が変化しにくいことからこのグループの中でも好ましいスキャンニングアミノ酸である。 またアラニンはもっとも一般的なアミノ酸であることからも好ましい。 さらにそれは、埋った形でも露出した形でも存在する(クレイトン(Creighton). TE,“たん白質”(WH フリーマン社版、NY ) ; チォシア(Chothla), C.(1976)J. Mol. Biol.
150 、1)。 もしアラニン置換が適当な量の残基置換ポリペプチドを生じない場合、アイソステリックアミノ酸が使用される。 別に優先性が減る順番に以下のアミノ酸が使用される:Ser, AsnおよびLeu 。 スキャンニングアミノ酸の使用はセグメント置換ポリペプチドの分析により確認される活性ドメイン中の活性アミノ酸の同定に限定されるわけではない。 たとえば親ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸が分っている場合か、または標的物質との相互作用に関っていると考えられる場合、その残基およびその囲りのアミノ酸残基を探るのにスキャンニングアミノ酸を使用することができる。 さらにもし親ポリペプチドが小さいペプチド、すなわち約3〜50アミノ酸残基であるなら、全分子にわたってスキャンニングアミノ酸分析を行ないうる。
【0027】
1度活性アミノ酸残基が同定されたならアイソステリックアミノ酸に置換される。 このアイソステリック置換は全ての場合に行う必要はないしまた活性アミノ酸が同定される前にも行なわれる。 このアイソステリックアミノ酸残基はいくつかの置換が起こし得る構造への潜在的破壊効果が最小となるように行なわれる。 アイソステリックアミノ酸を第II表に示す。
活性アミノ酸残基は標的物質に関する残基置換ポリペプチドの活性を親ポリペプチドと比較することにより同定し得る。 一般に、Kd値の2倍の増減は置換残基が標的物質との相互作用に活性があることを示している。 同様に標的物質との触媒的相互作用の場合、親酵素に対してKcat /Km 値の2倍の増減は活性残基の置換を示している。
推定上の、または既知の活性アミノ酸残基をスキャンニングアミノ酸分析にかけるとき、その残基に隣接するアミノ酸残基をスキャンするべきである。 その結果3残基置換ポリペプチドができる。 1つは推定上または既知活性アミノ酸である部位Nにスキャンニングアミノ酸、好ましくはアラニンを含んでいる。 他の2つは部位N+1およびN−1にスキャンニングアミノ酸を含んでいる。 各置換ポリペプチドが標的物質に対しKdまたはKcat /Km 値に約2倍以上の効果を起こすならばそのスキャンニングアミノ酸は部位N+2およびN−2で置換されている。 このことをKdまたはKcat /Km 値への効果が2倍以下となる少なくとも1個、好ましくは4個の残基が両方向について同定されるまでか、または親ポリペプチドの末端に到達するまでくり返す。 このようにして、特定の標的物質との相互用に関係する連続するアミノ酸配列に沿って1つ以上のアミノ酸が同定され得る。
【0028】
本発明の方法は特定の親ポリペプチドの1つ以上の標的物質に関する活性ドメインの検出に使用される。 さらに種々の活性ドメイン内の活性アミノ酸もこの方法により同定される。 1度2つ以上の活性ドメインおよび活性アミノ酸残基が特定のポリペプチドの種々の標的物質に関して同定されたならその親ポリペプチドに対して種々の修正を行って該ポリペプチドと1つ以上の標的物質間の相互作用を修正できる。 たとえばhGH表面上の2つの活性ドメインはソマトジェニックレセプターおよびプロラクチンレセプターについても同定された。 たの特殊な場合の活性ドメインは重複している。 したがってソマトジェニックおよびプロラクチンレセプターと相互作用する多くの共通する活性アミノ酸残基が存在する。 hGHに対する種々の修正は以後より詳しく説明する情報に基づいて行なわれる。 ある場合に種々の標的物質に関する活性ドメインは重複していない。 このような状況で1つのレセプターに関する親ポリペプチド中の活性アミノ酸の修正は種々のアミノ酸による置換で行なわれ、その結果その標的物質との活性ドメインの相互作用は減少または増加し、それらの変異体の生理作用が変化することになる。
本明細書で使用している“相互作用変化”とは1つ以上の活性ドメインが修正され標的物質とその変異体との相互作用が親ポリペプチドと比べて変化しているポリペプチド変異体について用いられる。 相互作用変化とは親ポリペプチドと特定の標的物質との相互作用に比べポリペプチド変異体の相互作用が少なくとも2倍増減することで定義される。
【0029】
標的物質と親ポリペプチド、ポリペプチド変異体、セグメント置換ポリペプチドおよび、または残基置換ポリペプチドとの相互作用はインビトロまたはインビボの簡便なアッセイで測定し得る。 インビトロアッセイは標的物質とポリペプチド、たとえば酵素と基質、ホルモンとホルモンレセプター、抗体と抗原などの検出可能な相互作用を測定するのに用いられる。 このような検出には色変化、放射性変化、溶解度変化、ゲル電気泳動法および、またはゲル排除法による分子量変化の測定などが含まれる。 インビボアッセイには生理作用、たとえば体重変化、電解質バランスの変化、凝血時間の変化、血餅分解の変化および抗原応答の誘導などを検出するアッセイが含まれるが、以上に示したものに限定されるわけではない。 一般に標的物質と目的ポリペプチド間の相互作用変化を測定する可変パラメーターが存在するかぎインビトロアッセイが使用される。
本発明の例としてはヒト成長ホルモンのソマトジェニックレセプターに関する該ホルモンの活性を決定する該ホルモンの活性ドメインおよび活性アミノ酸を同定する態様がある。 本発明のこの態様を実施する場合、セグメント置換および残基
置換 hGH変異体を含むヒト成長ホルモン変異体で成長ホルモンのソマトジェニックレセプターとの結合相互作用が天然のヒト成長ホルモンとは異なるものが調製または同定される。 これらのヒト成長ホルモン変異体の少なくとも1つはソマトジェニックレセプターに関しより高いアフィニティーを有し、かつラットのソマトジェネシスに対しより高い能力を有している。 他のものはソマトジェニックレセプターについて低い活性を有している。 このようなhGH変異体はhGHアゴニストまたはアンタゴニストとして有用であり、かつそれらの変異体はソマトジェニックレセプターとの 実質的相互作用がないことからヒト成長ホルモンの他のレセプターを刺激するより高い能力を有している。 さらにこれらの変異体はhGH標準またはトレーサーとしてhGHのイムノアッセイにおいても有用である。 たとえば抗hGHポリクローナル抗体を含むヒトおよびマウス血清との反応性が有意に低い変異体が同定されている別のものにはhGHと同じソマトジェニックレセプターに対する結合アフィニティを有するが成長を刺激する能力がより高いものがある。 【0030】
肝臓由来のソマトジェニックレセプターと相互作用するヒト成長ホルモンの活性ドメインを測定する方法を図1に示した。 この方法では、hGHのセグメントを、クローン化hGH肝臓レセプターおよびhGHに対するモノクローナル抗体に対して非常にアフィニティーの小さいことが知られているhGH類似体由来の類似配列と系統的に置換した。 このようなhGH類似体にはヒト胎盤ラクトゲン(pPL)、ブタ成長ホルモン(pGH)およびヒトプロラクチン(hPRL)がある。 これらの類似体はソマトジェニックhGHレセプター(hGHr)と比べクローン化hGHレセプターに対しては約100〜10000倍も小さい結合アフィニティーを有する(ハリントン(Harrington), AC等(1986)J.Clin. Invest.
77 、1817;バウマン(Baumann), G., 等(1986)J.Clin. Endocrinol、 Metab. 62 、137)。 相同たん白質はそれらが大きな配列多様性を有するときでさえ同様な三次元構造を有することが知られていることからこれらの類似体が使用される(チョシア(Chothia , C.等(1986)FMBO J.
5 、823)。そのように行うと、類似配列置換をその分子の本来の構造を大きく破壊することなしに容易に適用できるという見込みが増す。ヒト成長ホルモンおよびその類似体hPL、pGHおよびhPRLのアミノ酸配列を図2に示す。これらのうち最後の3個の類似体は各々85%、68%および23%のレベルでhGHとの配列同一性を共有する。 図1を参照すると、ヒトの成長ホルモンに対するソマトジェニックレセプター(hGHに対する“標準物質”)と相互作用するヒト成長ホルモン中の1つ以上の活性ドメインを同定する全戦術が示されている。 示されているように、hGHは標的レセプター、この場合のソマトジェニックレセプターに対し正の結合活性を有している。 しかしhPRL、hPLおよびpGH類似体はマイナス記号で示されているにその標的物質に関し著しく活性が低い。 文字AからFで示されている6個のセグメント置換成長ホルモンはhGHの選択されたアミノ酸セグメントをhPRL類似体の類似アミノ酸セグメントによる置換で生成する。 これらの選択されたセグメント各々は互いに異なり、これらを選択してhGHの全アミノ酸配列または活性ドメインを含むことが期待される領域を探る。 セグメント置換ヒト成長ホルモンの調製後各hGHソマトジェニックレセプターに関する検定を行ないその活性を測定する。 hGHと比較したこれらの結果は図1のセグメント修正ヒト成長ホルモンの下の+または−の記号で示した。 図1から分るように、この図中のセグメント置換ヒト成長ホルモンCおよびFはソマトジェニックレセプターと結合しない。 これらの結果に基づき、成長ホルモン変異体CおよびF中の類似体由来の類似セグメントに対応する成長ホルモン中の領域はhGHのソマトジェニックレセプター結合に関する活性ドメインであると同定される。
【0031】
示されているように、もし構造の情報または他のデータがある場合は必ずしもヒト成長ホルモンの全アミノ酸配列または他の親ポリペプチドを試験する必要はない。 したがって結晶学からの低分解能または高分解能情報は類似物から選択されるアミノ酸セグメントの不安定化置換を避けるための重要な情報を提供し得る。 たとえばヒト成長ホルモンのX線座標は得られていないがpGHの低分解能X線結晶構造に基づくpGH構造モデルからのヘリックス投影図は4本のヘリックスのうちの3本(ヘリックス1,3および4)は強い疎水性モーメントをもつ両親媒性であることを明らかにした。 図3参照。 アイゼンバーグ(Elsenberg), D.等(1984) J. Mol. Biol.
179 、125。 ポリペプチド中の疎水性コアは非常に密に存在するので(ポンダー(Ponder), JW 等(1987)J. Mol. Biol. 193 、775)、それらの埋没したアミノ酸残基の変化は一般に不安定化を招く(アルバー(Alber), T.等(1987)Biol. Chem. 26 、3754;レイダール−オルソン(Reidhaar - Olson), JF(1988)Science 241 、53)。 さらにポリペプチド群たとえばヒト成長ホルモン群の中のアミノ酸が非常によく保存されている領域は少なくとも最初に調べる必要はない。 これはそのような保存配列の破壊はその分子の構造を破壊すると考えられるからである。 さらに他のデータは親ポリペプチドのある領域は特定の標的物質との相互作用に関係しないことを示している場合がある。 たとえば突然変異誘発によるhGHのN末端13残基アミノ酸の欠失(アシュケナン(Ashkenazi), A.等(1987)Bndocrlnology)
121 、414)および残基32〜46を欠失したhGHの中立変異体(20Kd変異体;ルイス(Lewis), UJ 等(1980)Biochem. Blophys. Res. Commun. 92 、5111)はソマトジェニックレセプターに対する結合性に大きく影響しないことが報告されている。 さらに残基134と149の間の残基の一部または全てを欠失した制限たん白質分解によるhGHの2本鎖誘導体の生成もソマトジェニックレセプターに対する結合に著しい影響を示さなかった。 リ(Li), CH(1982)Mol. Cell. Biochem. 46 、31;ミルス(Mills), JB 等(1980)Endocrinology 107 、391。 【0032】
この情報に基づき、hGHのアミノ酸配列の6個のセグメントとが多くのhGH類似体由来の対応する類似アミノ酸セグメントとの置換に選ばれた。 これらの選択されたセグメントは図2のウからFに対応する。 これらのセグメントをジスルフィド結合、二次構造の境界(図4参照)、成長ホルモン群中に高度に保存される配列の領域、またはそのソマトジェニックレセプターへの結合に関与しないことが以前に同定された領域によって分離した。 hGHの191残基中の85残基を集合的に置換した17個のセグメント置換hGH変異体を調製した。 図2のAからFに割り当てた領域および各領域内のセグメントを置換したhGH変異体を第III 表にまとめた。
【0033】
【表3】
【0034】
1/ 制限選択−ウェルズ(Wells), JA 等(1986)
Philos. Trans. R. Soc. London Ser A
317, 415. 2/ カセット突然変異誘発−ウェルズ(Wells), JA 等(1985)
Gene
34 , 315. 3/ 組換え突然変異誘発−グレー(Gray), GL等(1986)
J. Bacteriol.
166, 635. 【0035】
一般にセグメント置換hGH変異体はヒト成長ホルモン配列へ置換される類似セグメントにより決まる。 しかしある場合には置換類似セグメント中の類似残基のすべてがその構築物中に維持されるわけではない。 このように第III 表のhPL(12−25)はヒト胎盤ラクトゲン(hPL)のアミノ酸12〜25が親hGHのアミノ酸残基12〜25と置換したセグメント置換hGH変異体のことである。 この類似セグメントを置換した効果は、図2のこの領域中のhGHとhPLのアミノ酸配列を比較することにより決定することができる。 hPL(12−25)変異体では4個のアミノ酸置換が生じているがなんの変化も起こらない。 hPL(12−25)の場合のこれらの残基は12、16、20および25である。
hPL(12−25)変異体中の実際のアミノ酸置換および他のセグメント置換変異体を第III 表に示した。 各置換は数字の前後に文字を付けて表わされる。 第1の文字および数字は未修正hGHの残基番号におけるアミノ酸を示している。 最後の文字はその位置で置換したアミノ酸を示している。 したがってN21HはhGHの12番のアスパラギンがhPL(12−25)変異体ではヒスチジンに置換していることを示している。
したがって導入された実際の置換のいくつかは図2における対応するセグメントで示される置換とは対応していない。 このようにhPL(12−25)は全hPL(12−25)セグメントが置換された場合4個の置換N12H、R16Q、L20AおよびF25
Iを含むことになる。 しかし、実際の変異体はR16およびL20は維持しており、導入される置換は第III 表に示されているように4個の置換のうちの2個、すなわちN12HおよびF25 Iだけである。 親hGHの1つ以上の残基を維持する他のセグメント置換変異体には領域AおよびEを含むものおよびセグメント置換変異体hPL(46−52)およびpGH(167−181)が含まれる。 【0036】
各々のセグメント置換ヒト成長ホルモン変異体をクローン化可溶性hGHレセプターの細胞外領域からの
( 125 I) hGHの置換を用いたインビドロシステムで検定しそのソマトジェニックレセプターに対するセグメント置換変異体の相対的アフィニティーを定量した。 レング(Leung), DW 等(1987)Nature 330, 537。 この短縮型のソマトジェニックレセプターは同膜型レセプターと比べ若干結合アフィニティーは小さいが(Kd−0.3 nM)同程度の活性を示す(スペンサー(Spencer), SA 等(1988)J. Biol. Chem. 263 、7862)。 実施例に詳細に述べられているように各々残基11−19,54−74および164−191を含む選択セグメントA,CおよびFはソマトジェニックレセプターと相互作用するhGH分子の活性ドメインである。 このことはこれらの領域内のhGH類似体の類似セグメントを含むほとんどのセグメント置換hGH変異体に関し10倍以上も低いKd値が観測されたことに基づく。 図4参照。 もちろんこのことはこれらの活性ドメイン内の各アミノ酸残基がそのソマトジェニックレセプターの結合残基であることは意味しない。 むしろそれらのドメインはそのような活性残基を見い出し得るアミノ酸配列を規定している。 さらに活性ドメインA,CおよびFの位置が決められた。 たとえば変異体hPRL(12−33)をアミノ酸およびカルボキシ末端変異体hPRL(12−19)およびhPRL(22−33)に分断した。 この実験結果はhGHの活性ドメインを残基12〜19にしぼり込んだ。 同様に領域F(pGH(167−181))のアミノ末端領域は結合アフィニティーの著しい低下を示した。 最も著しい効果にはたった2個の突然変異E56DおよびR56Mが導入されたhPL(56−64)の結合よりも30倍も小さいものがあった。 領域A,CおよびFはhGHの一次配列上では非常に離れているが、そのホルモンの三次構造はそれらを非常に接近させている。 図5参照。 これらの活性ドメインはヘリックス1のアミノ末端(活性ドメインA),Cys−53からヘリックス2の開始までのループ(活性ドメインC)およびヘリックス4の中央領域(活性ドメインF)を含むバッチを形成している。
【0037】
さらにhGHに対する8個のMabをセグメント置換hGH変異体に対して検定しhGHのエピトープの地図を作った。 さらにそのMabはhGHおよびhGH変異体を用いた競争検定に用いhGHに対するhGHレセプター結合を阻害する各Mabの能力を評価した。
これらの実験結果を合せるとhGHへの類似セグメントの置換は分子本来の構造を著しく破壊しないという証拠および観測される活性はソマトジェニックレセプターとレセプター置換hGH変異体との相互作用に関する直接的効果によるものであるという証拠をいくつか提供している。 まずセグメント置換変異体はそのソマトジェニックレセプターまたはMabに対する結合を破壊することに関し非常に選択的である。 第2にソマトジェニックレセプターおよびMabは配列同様構造も認識する。 該レセプターおよび少なくとも4個のMabは該たん白質三次構造感受性の不連続エピトープを認識する。 第3に精製変異体全ての円二色スペクトルは実際に野生型hGHと同じである。 第4にpGH(164−190)を除いて全ての変異体は基本的に野生型と同量発現したインビボのたん白質分解耐性が構造完全性のスクリーニングに用いられている。 ヘクト(Hecht), MH,等(1984)Proc. Natl. Acad. Scl.USA
81 、5685;ショートル(Shortle). D.等(1985)Genetics 110 ,539 セグメント置換hGH変異体の結合活性変化は必ずしもそれら変異体中の置換残基が直接ソマトジェニックレセプターと接していることを示しているとは限ぎらない。 破壊的突然変異は好ましい相互作用がなくなるだけでなく、不都合なものも誘導する。 たとえばhPL(12−19)セグメント置換hGH変異体中のN12R変異体はAsn12の水素結合するアミド基を変化させるばかりでなく、Arg置換は正に荷電したより大きい側鎖を導入する。 さらに多くの結合性接触がその類似体間に保存されるのでその結果全ての接触ではないにしろある領域をセグメント置換hGH変異体で探ることができる。
【0038】
図2の活性ドメインA,CおよびF内の特定の活性アミノ酸を同定するためこれらの活性ドメインの精密構造分析を行った。 この分析ではこれら3個の活性ドメインの残基を順番にアラニンと置換した。 63個の単一アラニン変異体を作り、各々の可溶性hGHレセプター(shGHr)に対する結合定数を測定した。 レング(Leung), DW 等(1988)J. Biol. Chem.
263 、7862。 この分析に基づいて第IV表にリストしたアミノ酸残基はソマトジェニックレセプターとの相互作用に関して活性なhGH分子内の残基を構成している。 これは、それらの残基のアラニン置換により誘導される相対的解離定数が野生型hGHに比べ4倍以上になることに基づいている。 図7参照。
hGH変異体を作るのに好ましいこれらの残基のアミノ酸置換を示す。
【0039】
【表4】
【0040】
ソマトジェニックレセプターに対しあまり活性でないその他のアミノ酸残基を第V表に示す。 一般にこれらの残基はアラニンと置換したとき相対的Kd値が2倍以下の増加を示す。
【0041】
【表5】
【0042】
アラニンと置換したとき相対的にKd値が減少する(つまりソマトジェニックレセプターに対してはより大きいアフィニティーを示す)hGH中のアミノ酸残基を第VI表にリストする。
【0043】
【表6】
第 VI 表P2 E65 S184
T3 Q69 E186
L9 L73 S188 H18 R167 F191
R64 E174
【0044】
1残基置換hGH変異体、E174A、は驚くべきことにソマトジェニックレセプターに対する解離定数が有意に(ほぼ5倍)に減少する。 ソマトジェニックレセプターに対する結合アフィニティを示すことに加え、この変異体はラットの体重検定においてhGHと比べソマトジェニック能の増加を示した。 この置換および1.4倍以上のソマトジェニック結合の増加を示す他の特定の残基置換を第VII 表に示す。
【0045】
【表7】
【0046】
図7には示されていないアラニン置換を含む他の変異体を第VIII表にリストする。
【0047】
【表8】
【0048】
注:NE−振とうフラスコ中容易に単離し得るほど発現されなかったもの(すなわち、野生型発現レベルの約5%以下)
同定後、hGH中のソマトジェニックレセプターに対する活性アミノ酸残基を予備分析で行ったスキャンニングアミノ酸以外の種々のアミノ酸で置換することにより分析を行う。 第IX表にその残基置換変異体を示した。
【0049】
【表9】
【0050】
注:NE−振とうフラスコ中容易に単離し得るレベルまで発現しなかったもの(すなわち、野生型発現レベルの約5%以下)
調製したhGH変異体に加え、第X表にはhGH中の特定のアミノ酸残基と、生物学的機能が変化した変異体を生成することが予想される置換アミノ酸を示した。
【0051】
【表10】
【0052】
別の態様においてはプロラクチンレセプターに対するhGHの結合エピトープを決定した。 hGHは成長ホルモンレセプターにもプロラクチン(PRL)レセプターにも結合し得る。 本明細書に示されているようにこれらのレセプターはhGHへの結合に関し互いに競争し、このことはそれらの結合部位が重複していることを示している。 スキャンニング突然変異誘発データはhPRLレセプターに対するhGHのエピトープはヘリックス1の中央部(残基Phe25およびAsp26を含む)、ループ領域(Ile58およびArg64を含む)およびヘリックス4の中央領域(残基K168,K172,E174およびF176を含む)にある決定基から成る。 これらの残基はhGHの構造モデル地図を作ったときのバッチを形成する。 この結合バッチは本明細書で述べられ、かつB. C. カニンガム(cunningham) およびJ. A. ウェルズ(Wells)(1989)Sccince 244、1081−1085)により公表されたhGHレセプターについて決定されたものと重複するが同一のものではない。 hGHに関するこれらのレセプター結合部位の非重複領域に突然変異を起こすことにより、hGHの選択性が各レセプターへの結合アフィニティーを損失することなく、hGHレセプター側へ2000倍以上またはPRLレセプター側へ20倍以上シフトした。 同様に重複領域に突然変異を起こすことにより、両レセプターに対し同時に500倍以上結合を減少させ得る。 このようなhGHのレセプター選択的変異体は、線型成長または泌乳などのhGHの種々の生物学的活性と特異的レセプター結合現象を結びつける有用な分子プローブとなる。
【0053】
別の態様ではヒト成長ホルモン(hGH)のレセプター結合決定基を通常の非結合類似体、ヒトプロラクチン(hPRL)中に入れた。 本明細書およびカニンガム(Cunningham), BCおよびウェルズ(Wells), JA ((1989)Sceince
244 、1081−1085)で公表されたアラニンスキャンニング突然変異誘発は、ヒト肝臓からクローン化したhGHレセプターに対する結合を調節するhGH中の重要な残基を同定した。 hPRL由来の別の突然変異がhGHに導入され、hGHレセプター結合部位内のhPRL置換は結合能をほとんど破壊することを明らかにした。 その後hPRLのcDNAをクローン化し大腸菌で発現させた。 それからレセプター結合に非常に重要と思われるhGHからの置換を順次導入し突然変異を起こした。 部位指定突然変異誘発を7回くり返した後、その会合定数がhGHレセプターの10000倍以上に強化された8個の突然変異を含むhPRL変異体を同定した。 このhPRL変異体は野生型よりもわずか6倍結合が弱く一方hGHとの配列一致性はわずか26%であった。 これらの結果はhGHおよびhPRLとの構造類似性を示し、hGHレセプターエピトープの同一性を確証している。 さらに一般にこれらの実験はアゴニストまたはアンタゴニストなどの新しい性質をもつハイブリッドホルモンを設計するのに有効であることが分っている近縁でかつ機能的に多様なホルモン類からレセプター結合性を容易に借し得ることを示している。 以下に示すものは例であって本発明の範囲を制限するものではない。
【0054】
【実施例】
実施例1
hGH突然変異誘発および発現ベクター効率的な突然変異誘発を行うためhGHコード配列を変えることなく均等に分布する18個の単独の制限部位をもつ合成hGH遺伝子を作った。 この合成hGH DNA配列を各々およそ60塩基対長で隣接するカセットと10bp重複する7個の合成DNAカセットをライゲーションすることにより組立てNsiIからBgl II でしめされる405bpのDNAフラグメントを作った。 この連続フラグメントをポリアクリルアミドゲルで精製し、これから溶出してアルカリホスファターゼプロモーターおよびStllシグナル配列(チャン(Chang), CN 等(1987)Gene
55 、189)、ファージflの複製オリジンおよび複製オリジンおよびβ−ラクタマーゼ遺伝子を含むbp1205から4361までのpBR322の領域を含む受容ベクターpB0475を同様に切断したものにクローン化した。 この配列はダイデオキシ分析により確認した(サンガー(Sanger), F.等(1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74 、5463)。 図9に示したようにpB0475を構築した。 長さ475bpのDraI,RsaIフラグメント上に含まれる繊維上ファージ由来のfl由来のDNAをpBR322の単独のPvu II 部位にクローン化しプラスミドp652を作った。 テトラサイクリン耐性遺伝子のほとんどはp652をNheIおよびNarIを制限切断し、DNAポリメラーゼとdNTPを用いてその粘着末端を充填し、かつ大きい方の3850bpのフラグメントそれ自体をライゲーションすることにより欠失させてプラスミドp△652を構築した。 p△652をEcoRI,EcoRVで切断し、その3690bpのフラグメントをアルカリホスファターゼプロモーター、ST II シグナル配列および中立hGH遺伝子を含む phGH4R (チャン (Chang), CN 等(1987) Gcnc.
55 、189)由来の1300bpEcoRI,EcoRVフラグメントはライゲーションした。 この構築物をpB0473と命名した。 合成DNAを3種の様式でpB0473にクローン化した。 ベクターpB0473をNsiI,Ggl II で切断し、両方とも合成DNA由来の240bP NsiI、Hind III フラグメントおよび1170bP Hind II, BglIIフラグメントにライゲーションした。 この構築物pB0475はhGHの中立ポリペプチドをコードするDNAを含むがhGH遺伝子の突然変異誘発やその後の操作を可能にする多くの新しい単独制限部位を有している。 hGHアミノ酸配列とともにpB0475の全DNA配列を図10に示す。 pB0475中のhGH配列内の単独制限部位は類似体pGH,hPLおよびhPRL由来の類似セグメントをコードするDNA配列を含む変異原カセットの挿入を可能にする(ウェルス(Wells), JA 等(1985)Gene 34 、315)。 別にhGH配列を一本鎖ベクターpB0475の部位指定突然変異誘発により修正し、つづいて単独制限部位の1つについての制限選択を行った(ウェルス(Wells), JA 等(1986)Philos. Trans. R. Soc. London Ser A 317 、415) 【0055】
第III 表にあげた17種類のセグメント置換hGH変異体を調製した。 各々は野生型hGHと同様のレベルおよび後に述べるhGH−hGHハイブリッドをはるかに越えるレベルで大腸菌の細胞周辺腔に分泌された。 hGHおよびhGH変異体は低いリン酸最小倍地で生育した大腸菌W3110,tonA株(ATCC27325)で発現させた(チャン(Chang), CN 等(1987)Gene
55 、189)。 hGHおよびhGH変異体は以下のように精製した。 細胞ペレット200gに4倍容(800ml) の10 mMトリス(pH 8.0) を加えた。 この混合物をペレットが溶解するまで室温でシェーカーにより振とうした。 この混合物をホモジナイズして低温室で1時間攪拌した後、7000gで15分間遠心した。 その上清をデカンテーションしてから45%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え(277g/リットル)、室温で1時間攪拌した。 11000g30分間の遠心後、そのペレットを40mlの10 mMトリス(pH 8.0) に懸濁した。 この溶液を2リットルの10 mMトリス(pH 8.0) に対し一晩透析し、この試料を遠心または0.45ミクロンメンブレンで濾過した。 その後試料を100mlのDEAEセルロース(ファーストフロー、ファルマシア製)カラムにかけた。 カラム容量の8〜10倍の10 mMトリス(pH 8.0) 中ゼロから300 mM NaCl の勾配を用いてカラムの溶出を行った。 PAGEで同定したhGHフラクションを集めて10 mMトリス−HCl(pH 8.0) に対し一晩透析した。 この試料を Centri - Prep10限外濾過によりおよそ1mg/mlになるまで濃縮した。
【0056】
実施例2
hGHおよびhGHの相同組換え体ブタの成長ホルモンのC末端領域に結合したhGHの種々の長さのN末端領域を含むランダムハイブリッドライブラリを直列に結合した遺伝子のランダム組換え法により構築した。 グレー(Gray), GL等(1986) J. Bacteriol.
166 、635。 pB0475のEcoRI部位を該プラスミドのEcoRI制限処理により除去し、DNAポリメラーゼとdNTPを添加することにより粘着末端を充填した後、このプラスミドをライゲーションした。 つぎにhGH遺伝子の3′末端の直前に新しいEcoRI部位を導入した。 これはEcoRI部位を含むhGH−4Rの345bp Bgl II , EcoRVフラグメントをEcoRI
- pB0475構築由来の同様の制限レクターにサブクローニングすることにより行った。 それからpGH遺伝子(シーバーグ(Seeburg) PH等(1983)DNA 2 、37)をこの構築物のhGH遺伝子の3′末端直後に導入した。 これは先に述べた構築物のEcoRI,EcoRV消化物の大きい方のフラグメントにpGHcDNAを含むEcoRI、Hind III (充填)フラグメントを導入することにより行った。 このプラスミドpB0509は3′末端に単独のEcoRI部位をもつ本来のhGH遺伝子と、それに同じ方向でつづく本来のpGH遺伝子を含む。 hGH遺伝子とpGH遺伝子のホモロジーのためpB0509の一部は大腸菌 rec + MM294(ATCC31446)にトランスホームしたときインビボ組換えを起こしハイブリッドhGH/pGHを生ずる。 これらの組換え体は集めたDNAをEcoRIで制限処理し、EcoRI部位を失うような組換えを行わなかったプラスミドを線状にすることにより濃縮した。 2回の制限選択および大腸菌 rec + MM294へのトランスホーメーションの後、ほとんど全てのクローンがハイブリッドhGH/pGH組換え体となった。 22個のクローンの配列分析は、hGH/pGHハイブリッドがアミノ末端hGH配列とそれにつづくアミノ酸残基+19,+29,+48,+94,+105,+123および+164で始まるpGH配列を含んでいることを示した。 【0057】
hGH遺伝子に均等に分布する交叉点を有する7個のhGH−pGHハイブリッドが得られた。 しかし極端なカルボキシ末端ハイブリッド(hGH(1−103)−pGH(164−191))のみが精製および分析に十分なレベルで大腸菌から分泌された。 このhGH−pGHハイブリッドはヘリックス4の疎水面上に存在する3個の置換(M170L,V173AおよびV180M)を導入する。 したがって図2のヘリックス領域A,D,EおよびFにおける配列変化のほとんどはヘリックスの疎水面上の残基の突然変異を避けるよう設計した。 たとえば上述のハイブリッドhGH−pGH変異体は、M170,V173,F176およびV180を維持するよう修正した。 なぜならこれらの残基はヘリックス4の疎水面上内に存在するからである。
【0058】
実施例3
可溶性ヒト成長ホルモンレセプターの大腸菌からの発現および精製可溶性ヒト成長ホルモンレセプターshGHrをコードするクローン化DNA配列(レング(Leung), DW 等(1987) Nature
330 、537)をpB0475にサブクローンしpJI466を作った(図11および図12参照)。 ベクターpC1S,2SHCHR(レング(Leung), DW 等(1987)Nature
330 、537)をXbaIおよびKpnIで消化し、hGHの分泌シグナルおよび246コドンの細胞外領域をコードする1.0bpフラグメントを精製した(マニアチス(Maniatis), T. 等(1982)モレキュラークローニング、コールドスプリングハーバーラボライリー,N.Y.)。 このフラグメントを同様に切断したM13mp18にライゲーションし組換え体用に一本鎖DNAを精製した(メシング(Messing), J.(1983)Methods in Enzymology.101巻、20頁)。 部位指定突然変異誘発(カーター(Carter), P. 巻(1986)Nucleic Acids Res. 13 、4331)を18mer.ジゴヌクレオチド5′−A−AGT−AGT−GCA−TTT−TCT−GG−3′により行ないコドン+1にNsiIを導入した。 変異配列はダイデオキシ配列分析(サンガー(Sanger), F. 等 Proc.Natl. Acad. Sci. USA 74 、5463)により確認した。 変異体の二本鎖DNAを精製しNsiIおよびSmaIで切断した。 hGHレセプターの246コドン細胞外領域を含む900bpフラグメントを単離した。 pB0475をNsiIおよびEcoRVで切断し4.1kbフラグメント(合成hGH遺伝子を欠く)を精製した。 レセプターの900bpフラグメントおよび4.1 kbベクターフラグメントをライゲーションし、その組換えクローン(pJ1446)を制限地図により確認した。 これを大腸菌KS303(トランスホームし(ストローチ(Strauch), K.等(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA
85 、1576)、ついで、低リン酸培地(チャン(Chang), CN 等(1987)Gene 55、189)中30°Cで成育した。レセプターフラグメントたん白質をhGHアフィニティークロマトグラフィーで精製した(スペンサー(Spencer), SA 等(1988)J.Biol. Chem. 263 、7862;レング(Leun g) DW 等(1987)Nature 330 、537)。pJ1446の配列をクローン化レセプターのアミノ酸配列とともに図12に示す。 【0059】
大腸菌W3110,deg P株(ストローチ(strauch), KL 等(1988)PNAS USA
85 、1576)をpJ1446でトランスホームし、ファーメンター中低リン酸培地(チャン(Chang), CN 等(1987)Gene 55 、189)を用い30°Cで生育させた。 246アミノ酸のhGHrを用い予備データをとった。 アミノ酸1〜238番を含むわずかに短かいhGHrを本明細書の実施例1で用いた。 このレセプターについて得られた結果は246アミノ酸hGHrで得た値と区別できなかった。 カルボキシル末端異質性の問題を避けるためにGln238の後に停止コドンを入れたプラスミドphGHr(1−238)を構築した。 phGHr(1−238)を含むKS330培養物からは結合たん白質がphGHr(1−246)を含む培養物からよりもわずかに高い収率でかつより均一なものが生成した(データ示さず)。 湿重量0.2kgの細胞ペレットから始め70〜80パーセントの収率で20〜40mgの高純度結合たん白質がルーチンに単離された(2リットルの高密度細胞培養物から)。 N末端シーケンシングおよび質量スペクトル分析と組合せたペプチドマッピングでその生成物は残基1から238に及んでいることが確認された。
phGHr(1−246)テンプレートの部位指定突然変異誘発をオリゴヌクレオチド
を用いて行ない(カーター(Carter),等(1986)Nucleic Acids Res.
13 、4431−4443)phGHr(1−240,C241R)を作った(式中アステリスクはphGHr(1−246)とのミスマッチを示し、下線は新しい単独のMluI部位であり、CGT−TAGはC241R突然変異とそれにつづく停止コドンを示す(第X表A)。 【0060】
【表11】
*は野生型テンプレートとのミスマッチを示す。
【0061】
プラスミドphGHr(1−238)をMluI部位(第X表(A))に対する制限選択(ウェルス(Wells), 等(1986)Phil Trans. R. Soc. Lond. A.
317 ,415−423)を用いたphGHr(1−240,C241R)テンプレートの部位指定突然変異誘発により生成した。 簡単に云うとオリゴヌクレオチド はGln238(CAAトリプレット)の後に翻訳停止コドンを誘導しかつMluI制限部位(下線)を修正した。 ヘテロ二本鎖による最初のトランスフェクションから二本鎖DNAを回収した後、再トランスホームしてDNAシーケンシングの前に目的とするphGHr(1−238)プラスミドを増やした。
最終的にphGHr(1−238)中にクローン化したhGH結合たん白質がcDNA変異体またはクローニングアーテファクトを生じさせるT51A突然変異を含むことはDNAシーケンシングで確認された。 それゆえA51Tリバータントは報告されている配列と同じである。 (レング(Leung)等(1987)Nature(London)
330 、537−543。部位51にThrまたはAlaを含むたん白質の精製および結合性は区別できない(データ示さず)。Ala51結合たん白質変異体は特性が明らかになっているのでひきつづく全ての分析用に選択された。ヒト血清から単離した天然の産物と大腸菌由来の組換えhGH結合たん白質の特異性を比較するため野生型と種々のhGH変異体のアフィニティーを測定した。 【0062】
【表12】
a. Kd値およびその標準偏差(SD)は、野生型hGH(wt) および多くのhGH変異体を用いた競争結合分析(図24)により測定した。
b. 各hGH結合たん白質に対するhGH変異体および野生型hGH(wt) の解離定数の比から計算される結合アフィニティーの減少。
c. 所定のhGH型の2つのhGH結合たん白質の解離定数の比。
【0063】
両たん白質はhGHと特定の化学両論比の複合体を形成した(図24)。 これから分るように野生型hGHおよびその変異体のアフィニティーは2つの結合たん白質間でほぼ同じであった(上述、右側欄)。 組換えhGH結合たん白質はヒト血清由来の中立たん白質と比べ非常に高いアフィニティーを有している。 このことは、その組換えたん白質の純度および均一性を反映している。 hGH結合たん白質に対する結合能を破壊するhGHの4つのアラニン変異体に対する結合アフィニティーの変化によって示されるように両たん白質は同じ特異性を有している(上述Kd(変異体)/Kd (wt)。Tyr246にまで及び結合たん白質に対するhGHのアフィニティー(Kd =0.36±0.08 nM)は実質的にGln238の後で終っているものと同じであり(0.40+0.03nM)、このことは、その分子の7個目のシステインを含む最後の8残基はhGHの結合に関し重要ではないことを示している。
【0064】
実施例4
レセプターおよびモノクローナル抗体結合検定精製したhGHまたはhGH変異体(95%以上の純度)について、実施例3の可溶性hGHレセプターへの結合に関する検定を行った。 SDS−PAGE後のコーマージ染色ゲルのレーザーデンシトメータスキャンニングにより精製ホルモンの濃度を定量した。 これらの値は280nmの吸光度による濃度(ε
230 1% =0.93)とよく一致した。 解離定数(Kd)は25°Cにおける可溶性hGHレセプターに結合する〔 125 I〕hGHの競合置換に関するスキャッチャード分析から計算した。 この〔 125 I〕hGHはスペンサー(Spencer), SA 等(1988),J. Biochem. 263 、7862)の方法に従って調製した。 酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用い種々のセグメント置換および残基置換hGH変異体に対する8個のモノクローナル抗体の結合を検定した。 以下のMabを使用した。
【0065】
【0066】
hGHに対するウサギポリクローナル抗体をアフィニティー精製し、0.005M炭酸ナトリウム(pH10)中最終2μg /mlの濃度、24°C、16〜20hマイクロプレート(Nunc プレート、インターメド社、デンマーク)をコーティングした。 このプレートをバッファB中(50mMトリス〔pH 7.5〕、0.15MNa Cl 、2mM EDTA,5mg/ml BSA,0.05%トウィーン20,0.02%アジ化ナトリウム)0.1μg /mlの各hGHと25°C、2時間反応させた。 プレートを洗浄後バッファBで150〜0.002 nMに段階的に希釈した指示Mabとインキュベートした。 2時間後プレートを洗浄し、ホースラディッシュバーオキシダーゼ結合抗マウス抗体で染色して検定した。 得られた値は各hGH変異体への最高結合量の半値を与えるのに必要な各Mabの濃度を表わしている。
抗hGH MabによるhGHからのhGHレセプターの競合置換は以下のように測定した。 この検定は先に述べたように抗GHウサギポリクローナル抗体をコートしたマイクロプレートにおける野生型hGHの固定化により行った。 レセプター(10 nMで固定)および所定の抗hGH Mab(150〜0.002 nMの範囲で希釈)をhGHコートマイクロプレートに入れ25°Cで16〜20時間インキュベートし、その後未結合成分を洗浄した。 結合レセプター量はhGHと該レセプターとの結合を阻害しないホースディッシュパーオキシダーゼに結合させた抗レセプターMabを加えることにより定量した。 標準化置換値はプレート上のhGHを飽和するのに必要なMab濃度の半値に対する該レセプターの50%を置換するのに必要なMab濃度の比から計算した。 この値は各Mabの該レセプター置換能の比較に用いた。
【0067】
実施例5
ソマトジェニックレセプター結合の活性ドメイン実施例3の可溶性ソマトジェニックレセプターおよび実施例4で述べたモノクローナル抗体への結合に関し、実施例1および2で述べた17個のセグメント置換hGH変異体を検定した。 ソマトジェニックレセプターに対する結合検定の結果を第III 表に示す。 これから分るように結合能をほとんど破壊するセグメント置換は図4および図5の領域A,CおよびF内のものである。 さらにこれらの領域をさらに小さいセグメントにしばり込みソマトジェニックレセプターへの結合に関係するhGH分子の活性ドメインの位置を決定した。 第III 表からの最も重要な結果を図4に示す。 この図は、類似体hPRL、hPLおよびbGH由来の類似配列の置換による可溶性hGHレセプターへの結合における相対的減少を示した棒グラフである。 各々アミノ酸残基12−19、54−74および164−190を含む3つの活性ドメイン領域A,CおよびFが同定された。 これらの領域は図5のhGH分子の3次元に示されている。
これから分るように、3つの活性ドメインA,CおよびFはhGHのアミノ酸配列中では不連続であるけれどもhGHに関するソマトジェニック結合部位を規定する分子構造においては連続領域を形成している。
【0068】
実施例6
hGHエピトープマッピング特定のセグメント置換hGH変異体に対する8種のモノクローナル抗体の結合を第XI表に示す。
【0069】
【表13】
【0070】
pGH(167−190)変異体は除いて各モノクローナル抗体に対する結合能の破壊は著しくかつ非常に選択的である。 図13〜20はhGHの3次元構造内の各Mabに対するエピトープの位置を示してる。 図6はソマトジェニックレセプターに対する結合部位に対するエピトープを示している。
たとえばhPRL(88−95),hPRL(97−104),hPL(109−112)およびhPRL(111−129)変異体はMabIに結合しないが、それらの領域以外の他のセグメント置換hGHは野生型hGHと同様の効率で結合した。 Mab2,3,4,5および6への結合は一次配列の不連続であるが、ホルモン3次元構造においては近接している領域の突然変異により阻害された(図6および図14〜19参照)。 これと対照的にMab1,7および8は図13、図19および図20に示したように連続的配列で規定される突然変異により阻害された。 さらに所定のモノクローナル抗体への結合を阻害する領域を、特定のセグメント置換hGH領域のサブドメインへの細分化または特定のMabにすでに結合した共通の置換を有する変異体の分析により解析した。 たとえばpGH(11−33)はMab4への強固な結合を維持しているがhPRL(12−33)は結合能を失っていた。 したがって、hPRL(12−33)変異体における破壊的突然変異はpGH(11−33)では変異していない残渣:N12,L15,R16、D26およびE30に限定し得る。 さらにhPRL(12−19)変異体は結合能を失ったがhPRL(22−23)は失なわなかったことから(図16参照)、これはN12、L15およびR16に限定される。 N12H突然変異がpGH(11−33)とは共通しない変異であることからこれでMab4への結合の阻害を説明し得る。 このことをAsn−12のアラニン置換でテストした。 N12A残基置換hGH変異体へのMab3またはMab4の結合は100倍以上も減少したが他のMabへの結合は影響を受けなかった。
【0071】
このセットのhGH変異体を用いることにより、8個のMabのほとんどの結合が共通セットの突然変異により阻害されたとしてもこれらのMab全てのエピトープを解明し得る。 たとえばhPRL(12−19)はMab2,3および4への結合を示さないが、他の変異体はこれらのMabが種々の構造を認識することを示した。 特にMab2および3はpGH(11−33)により阻害されるがMab4は影響を受けなかった。 Mab3および4の結合はhPL(12−25)により阻害されたがMab2への結合は影響を受けなかった。 このように8個の抗体は重複するが完全に重ならないエピトープを有する。 結合を乱す突然変異はヘリックスおよびループの両方に存在し、かつ常にホルモン構造において近接している。
合せて考えてみると、8個のMabセットのエピトープはこのホルモンのほとんどをカバーする。 しかしなおMabが結合しない領域がある。 たとえば20個の変異体のうちの3個はテストしたMab(hPRL(22−33)、pGH(48−52)およびhPRL(126−136)のいずれに対する結合も有意に乱さなかった。
抗体エピトープとレセプター結合部位には有意な差がある。 第1に阻害的突然変異により規定されるバッチはどのMabに関してよりもレセプターに関するものの方が大きい。 第2の差はレセプターがMabよりもホルモンの阻害的置換に対しより耐性が強い。 これはどの変異体のレセプターへの結合に関してもその最大の減少は約70倍であるがほとんど全ての抗体にはN12Aなどの単一置換の結果の場合のように1000倍の結合の減少をひき起こす少なくとも1つの変異体がある。
【0072】
実施例7
MabおよびshGHrの競合的結合レセプター結合を乱す多くの変異体は1つ以上のMabの結合も乱す。 すれゆえ、hGHに対するhGHレセプターの結合を阻害する8個のMabの各々の能力を評価した。 この検定の結果を第XII 表に示す。
【0073】
【表14】
【0074】
表から分るようにMab5および6はhGHレセプターの結合を阻害する上で最も効率がよい。 このことはそれらのMabがレセプターに対する決定基と密接に重複する残基54−74までのレープおよびヘリックス4内に存在する抗原決定基を有することによる(図5、図6、図17および図18参照)。 Mab2は次に競合的な抗体であり、かつレセプターと共通する阻害的突然変異を共有する(hPRL(12−19))。 これに対しMab3および4はMab2に比べおおよそ1000倍競争力が小さいがそれらはまたヘリックス1中にレセプターと重複する阻害的突然変異を共有している。 図15および図16参照。 Mab3および4を乱すヘリックス1中の突然変異がMab2またはレセプターへの結合を乱す残基と異なるならこの見かけ上の差は容易に解決されよう。 事実、1つの変異体(N12A)はMab2またはそのレセプターへの結合に影響することなくMab3または4の結合を乱す。
Mab7はhGHに対してそのレセプターと比較的強く競合し、またたとえばhPL(46−52)などレセプター結合をわずかに乱すセグメント置換hGH変異体により阻害される。 したがってMab2および7はレセプター結合部位の境界上に存在するように思える。 Mab1および8はレセプターの検出可能な置換を与えられなかったまた予想されるようにこれらはレセプターと重複する抗原決定基を含んでいない。 これらの競合結合データは直接的エピトープマッピングデータおよびレセプター結合データとともに図5に示されるようなレセプター結合部位の一般的位置を強く支持している。
【0075】
実施例8
レセプター活性アミノ酸残基実施例5、6および7におけるhGHの分析はレセプター結合に重要なヘリックス1のアミノ末端領域(残基11−19)を含んでいる。 さらに残基54−74および167−191もレセプター結合に重要であることが分った。 レセプター結合に活性なこれらのドメイン中のアミノ酸の同定は全部で63個の単一アラニン変異体を分析することにより行った。 第XIII表、第XIV 表、および第XV表参照。
【0076】
【表15】
【0077】
【表16】
【0078】
【表17】
【0079】
アミノ末端残基位置の不明確さのためアラニン置換は残基2−19を含むように行った(アブデル−メギド(Abdel-Meguid), SS等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA
84 ,6434)。 実際に結合のもっとも著しい減少はF10A(6倍)でつづいてヘリックス1のN末端の残基4−6のアラニン置換で起こった(図21参照)。 結合に関して実質的により大きい効果(20倍以上)は残基54〜74のループおよびカルボキシ末端配列167−191内の特異的アラニン置換で起った。 いくつかのアラニン変異体の結合は4.5倍に増加した。 最も劇的な例は多くの破壊的アラニン突然変異の中間に位置するE174Aであった。 図4、図7および図21参照。 ほとんどの破壊的アラニン置換はF10からR64およびD171からV185に広がる約25Å角のバッチをホルモン上に形成する(図21参照)。 さらにこれらの側鎖はその分子の同じ方向を向いているようである。 たはえばヘリックス4に関する結合に最も影響する全てのアラニン変異体(D171A,K172A,E174A,F176A,1179A,C182AおよびR183A)はこのヘリックスの3回半に限られまたそれらの側鎖はこのヘリックスの同じ面から突き出ている(図21参照)。 このモデルに基づいて、T175およびR178は、図21で示されているように中央位置を占めていることから結合に関与していることが予想される。
T175A変異体は振とうフラスコ中検定するのに十分な収率で発現されないけれども、より保存的変異体(T175S)であった。 したがってT175S変異体はレセプター結合が16倍減少した。 同様に、R178Aはあまり発現されないにもかかわらずR178Nは分析可能な収量で発現した。 R178Nは結合アフィニティーが4倍以上減少した。
【0080】
カルボキシ末端における次に破壊的変異体はV185Aであった。 V185Aはヘリックス4の外にあるけれども、このモデルによりヘリックス4内の破壊的突然変異を同じ方向を向いていることが予想される。 これに対し結合バッチ外のアラニン突然変異またはその中にあり上述のものと反対を向いているアラニン突然変異(R167A,K168A,V180A、Q181A,S184A,E186A,S188A)は一般にレセプター結合に関して影響しないか、またはほとんど影響しない。
ヘリックス1におけるアラニン変異体は並みの効果しかもたないがこれにも同様の分析を行った。 このヘリックス内でもっとも結合を破壊するアラニン置換はこのヘリックスの同じ面に存在する残基6,10および14のものであった。 もっとも小さい破壊的アラニン突然変異(L9A,N12AおよびL15A)ヘリックス1の反対の面に存在する。 さらにこのことはhGHに対する結合をレセプターと競合しない抗hGH Mab3および4の両方がAsn−12に結合するという事実により確認される。 第XVI 表参照。
【0081】
【表18】
【0082】
54−74ループ内の側鎖の相対的位置はそれらがヘリックス1および4内の側鎖のように固定しえない。 しかし偶数残基の突然変異は奇数残基に比べ結合を大きく阻害するという結合において著しい周期性がある。 特にこのことはこの領域の最初の部分によくてはまり(54−59)かつ偶数残基はレセプターの方に突き出ておりかつ奇数残基は反対を向いているという構造を反映している。
【0083】
実施例9
アラニン置換hGH変異体の構造完全性および結合エネルギーいくつかの証拠はレセプター結合を乱すアラニン置換は分子の構造をゆがめることによりそれを起こすのではないことを示している。 第1に8種のMabはhGHに関して同様レセプターへの結合の破壊を起こすほとんどすべてのアラニン変異体と反応する。 先の第XII 表参照。
例外は各々個hGH Mab6および5への結合を瀬洗濯的に破壊するR64AおよびC182Aである。 これら2つのMabは以前にhGHへの結合に関しソマトジェニックレセプターと競合することが示された。 さらにレセプター結合に影響しない2つのアラニン変異体を作った。 1つは2つのMabの結合に影響し(N12A)、もう1つはMabのいずれにも影響しない(K168A)。 このデータはMabもしくはレセプターへの結合が変異体構造の非常に局所的ゆらぎにより破壊されることを示している。 さらに全てのhGH変異体の遠紫外円二色スペクトルは野生型hGHと実質的に同じであった。
振とうフラスコ中、アラニン変異体の約20%(D11A、T60A,P61A,T67A,N72A,E74A,D169A,M170A,V173A,T175A,L177A,K178A,C189A,G190A)は単離および分離するのに十分なレベルで分泌されなかった。 このような変異体をコードする遺伝子は同じベクターで発現され、かつその発現は特定のアラニンコドンとは独立しているので定常的発現レベルの変化は、おそらく分泌レベルの差および、またはhGH変異体のたん白質分解を反映したものである。 ヘリックス4における非発現性アラニン変異体のいくつかはヘリックスの疎水性側面を白で示した図21に示されている疎水性面上に存在する(M170A,V173AおよびL177A)。 しかしいくつかのアラニン置換がヘリックス1(L6A,L9Aおよびけ10A)およびヘリックス4(F176AおよびV180A)の疎水性面内で容認されていることからこのことは一般的な効果ではない。
【0084】
さらにhGH変異体の発現の減少は荷電または中性アミノ酸がアラニンと置換したときにしばしば観察される(D11A,T60A,T67A,N72A,F74A,D169A,T175A,R178A)。 水素結合基をその部位に保存するT175SおよびR178Nのような突然変異はたとえあったとしても野生型よりも低いレベルで発現される。 非発現性のC189A変異体はカルボキシ末端スルフィドを破壊し、かつその相対物(C182A)も野生型よりもはるかに低いレベルで発現する。 他のいくつかの非発現性アラニン変異体(T60A,T61AおよびT67A)はループ構造内に存在する。 したがって低レベル発現または非発現は多くの構造効果に由来するが単一構造的または単一機能的置換によって回避し得る。
結合に10倍以上の効果を示す置換(158A,R64A,K172A,T175S,F176S,F176A)は直接結合に関与しているようである。 天然に存在する(ファーシュト(Fersht), AR(1972)J. Mol. Biol.
64 ,497;ブラウン(Brown), LR 等(1978)Eur. J. Biochem. 88 、87;マリバー(Malivor), R.等(1973) J. Mol. Biol. 76 、123)または部位指定突然変異誘発で作り上げられた(ファーシュト(Fersht), AR等(1985)Nature 314 、225;ブライアン(Bryan), P.等(1986)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 、3743;ウェルズ(Wells), JA 等(1987)Proc. Nstl. Acad. Sci. USA 84 、1219;クロニン(Cronin), ON等(1987)J. Am. Chem. Soc. 109 、2222;グラフ(Graf), L. 等(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 、4961)水素結合または塩橋の強さは微環境に依存して1〜5Kcal/mol の範囲に広く分布している。 hGHに関する結合自由エネルギーの減少はE56,Q68,D171,K172およびR64の各アラニン置換に対し0.8、1.0、1.2、1.6および1.8Kcal /mol (△△G結合=+R T lnKd (変異体)/Kd (wt)であった。疎水性側鎖のたん白質中への埋没のエネルギーはエダノール中への転移の自由エネルギーに対応する傾向がある(エステル(Estoll), DA等(1986)Science 233 、659;キザキ(Nozaki), Y. 等(1980)“疎水性効果”(ウィリー版、N.Y.4〜21頁)。 したがってF175A,F10A,P54A,158AおよびV185Aの結合自由エネルギーの減少は各々1.6、1.0、0.9、1.7および0.9Kcal /mol であった。 これらの値はPhe , I le またはValからAlaへの置換における疎水性自由エネルギーの予想値、各々2.0、2.4および1.0Kcal /mol よりもわずかに小さい。 この分析により、T175S変異体の効果(△△G結合=1.6Kcal /mol )はガンマメチル基の損失に期待される効果(△△G疎水性=0.7Kcal /mol )よりも大きい。 hGHとそのソマトジェニックレセプターとの分子接触の性質を十分把握するために直接的構造の情報が必要である。 しかし、これらアラニン変異体の結合エネルギーはそれらが全く別のシステムにおける接触残基について行った以前の測定の範囲内にあることを示している。 事実、レセプター結合に最も破壊的であるC182Aを除いたアラニン置換変異体の結合自由エネルギーの総和は(−13.2Kcal /mol )、hGHとそのレセプター間の総結合自由エネルギーと一致している(−13Kcal /mol )。
【0085】
実施例10
hGH変異体の抗hGHポリクローナルとの反応性hGH変異hPRL(22−23)、E174AおよびhPRL(88−95)をラットの体重検定でテストした。 この検定の結果を図22に示す。 これから分るようにhPRL(22−33)以外の変異体は生育的14日後減少能を有している。 成長のレベルダウンは生物学的効果を中和する種々の成長ホルモンに対する抗体の発現に寄因する。 hPRL(22−33)変異体が成長しつづけたという事実はそれが野生型hGHまたは使用した他の変異体と同じ免疫原性をもたないことを示している。
hGHに対する種々のhGH変異体の反応性をポリクローナル抗体を含むヒトおよびマウスの血清と比較した結果を第XVII表に示す。
【0086】
【表19】
【0087】
表から分るように残基22〜33の領域内に置換を含む変異体は野生型hGHに対し各ヒトおよびマウス抗血清との結合活性が実質的に減少しているか、またはある場合には活性をもたない。
変異体pGH57−73を除いて、他の領域の置換を含む変異体は有意な反応性の減少を示さない。 残基11および33の間のセグメント置換変異体はソマトジェニックレセプターへの結合能を維持しているので、このような変異体はソマトジェネシスの推進能は維持しているが他の性質、この場合抗hGHポリクローナル抗体への反応性を変化させた変異体の生成を示している。
【0088】
実施例11
Kd と能力の関係特定のhGH変異体のKd (変異体)/Kd (野生型)の比とラット体重検定におけるこれら変異体の能力のセミログプロットを図23に示す。 これから分るように線型関係の存在はソマトジェニックレセプターへの結合アフィニティーの減少は能力の減少を示している。
図から分るように、hGH変異体E174Aはソマトジェニックレセプターに関し野生型hGHよりも高い結合アフィニティーを有している。 また、この能力は野生型hGHよりも約12%大きい。
さらに変異体PRL(94−104)は基本的に野生型と同じ結合定数を有しているが能力は約2.7倍大きい。
【0089】
実施例12
プロラクチンレセプター結合に関するhGHの活性ドメインヒト成長ホルモン(hGH)は模型成長、泌乳、窒素遅延、糖尿病誘発性およびインシュリン様効果およびマクロファージ活性化など多くの生理効果を示す。 RK チョウラ(Chawla), JSパークス(Parks)および D. ラドマン(Rudman), Annu. Rev. Med.
34 、519−547(1983); OGP イサクソン(Isaksson),等(1985),Annu. Rev. Physiol. 47 、483−499; CKエドワーズ(Edwards)等(1988) Science 239 、769−771。 これらの効果は各々hGHと特異的細胞レセプターとの相互作用で始まる。 JP ハイス(Hughe) 等(1985)Annu. Rev. Physiol. 47 、469−482。 これまでのhGHと結合する生成物を作るクローン化遺伝子の肝臓のhGHレセプター(AW レング(Leung), 等(1987)Nature(ロンドン) 330 、537−543)および乳線のヒトプロラクチン(hPRL)レセプター(JM ブーチン(Boutin) 等、(1988)Cell 53 、69−77)のみであった。 hPRLレセプターへのhGHのレセプター“スピルオーバー”は高レベルのhGHを生産する先端巨大症が、通常レベルのhPRLを有するにもかかわらず過プロラクチン症となる場合の臨床的徴候である( JE フラドキン(Fradkin)等(1989)New Engl. J. Mcd. 320 、640−644)。 しかしhGHと結合する他のレセプターが存在し、これらには胎盤ラクトゲン(PL)レセプター( M. フリーマーク(Freemark) 等(1987)Endocrinology) 120 、1865−1872)。 これらのレセプターに関するhGH上の結合部位が同一のものであるかどうか、またはどのレセプター(レセプター群)が薬学効果を担っているかは分っていなかった。 これらの問題を解くためにhGHおよびhPRLレセプター結合部位の位置決めがなされた。 得られた結果はこれらのレセプター結合部位は重複しているが、同一のものではないことを示している。 このことはhGHのレセプター特異的変異体の合理的設計を可能にする。 【0090】
hGHおよびhPRLレセプターには32%の配列ホモロジーをもつ細胞外ホモロジー結合ドメイン、単一のトランスメンブレンドメインおよび配列の長さも様々である細胞質内ドメインがある。 hGHレセプターの細胞外結合ドメインは大腸菌中で発現され、かつ可溶性血清結合たん白質など天然に見られるものと同一の結合性を有する( SA スペンサー(Spencer)等(1988) J. Biol. Chem.
263 、7862−7867)。 同様にhPRLレセプターの細胞外ドメインは大腸菌内で発現されかつ精製された。 hPRLレセプターフラグメントは残基 Gln1からThr 2 1 1にわたり、単一のトランスメンブレンドメインの直前で終っている。 それは完全な長さのレセプターと実質的に同じ高い結合アフィニティーおよび特異性を有している。 この実験で用いているhPRLレセプターをコードする遺伝子はカナダ モントリオール マクギル大学、ケリー(Kelly), PA博士により提供された。 このDNA配列はヒト乳線cDNAライブラリーから入手し、プロラクチンレセプター群の交叉種メンバーのうち既知の保存領をカバーするプローブで同定された。 たとえばダビエス(Davies) JA 等(1989)Mol. Endrocrinology 3 、674−680;エデリー(Edery)等(1989) Proc. Natl. Acad. Scl. USA 86 、2112−2116;ジオリコアー(Jolicoeur)等(1989)Mol. Endrocrinology 3 、895−900参照。 これらの短縮型で高純度のレセプターはhGH変異体の結合アフィニティーの迅速かつ正確な検定に非常に有用な試薬である。 【0091】
hPRLおよびhGHレセプター結合部位の関係 hGHおよびhPRLレセプターのエピトープが重複しているかどうかを測定するため我々はhPRLレセプターフラグメントがhGH由来のhGHレセプターフラグメントと置換し得るかどうか分析した(データ示さず)、事実、hPRLレセプターフラグメントはhGHレセプター結合部位に関し見かけ上のKd 値1 nMで競合する。 これはhGHに対するhPRLレセプターの直接的結合で測定されたアフィニティーと実質的に同じである(結果示さず)。
第III 表のセグメント置換hGH変異体のうちの7つを用いhPRLレセプターに関するhGH上のエピトープの位置を決定した。 この実験にはhGH△32−46変異体を用いた。 方法はhGHsの代りにhPRLrをレセプターとして用いたこと以外に述べたhGHレセプターに対するhGH上のエピトープの決定に用いた方法、すなわちhGH変異体の結合への影響により行った。 上述の12個のセグメント置換hGH変異体の結果を第XVIII 表に示す。
【0092】
【表20】
第 XVIII 表hPRLレセプター(hPRLr)の細胞外ドメインに対するホモログースキャンニング突然変異誘発により調製したhGH変異体の結合、変異体は種々のhGH類似体:pGH、hRL、またはhRLから置換したセグメントに従って命名した。 導入された突然変異の正確な記述はコンマで区切られた一連の単一変異体で与えられる。 各単一変異体は野生型残基の1文字コードとそれにつづく成熟hGH中のそのコドンの位置および変異体残基で示される。 hGHの変異体を先に述べた方法で生産し、精製下。 hPRLrへの結合は基本的にhGHrについて述べた方法で測定した(スペンサー(Spencer), SA 等(1988)J. Biol. Chem. 263、7862−7867)。 もっともこの方法ではhPRLrに対するアフィニティー精製ウサギポリクローナル抗体を用いキャリヤーたん白質としてギブコ製BSA(粗)を使ってhPRLr複合体を沈殿させた。 一般にK
D値の標準偏差は報告されている値の20以下であった。 hGHrに対する結合アフィニティーの相対的減少(K D (変異体)/K D (hGH))は第III 表から得られたものである。 レセプター選択性の変化はhGHrに対する結合アフィニティーをhPRLrと比較した相対的減少比で計算した。 WT−野生型。 【0093】
表から分るようにpGH(11−33)およびpGH(57−73)はhPRLレセプター結合アフィニティーに大きな影響を及ぼす一方pGH(48−52)は影響をもたない。 hGHレセプターとは異なりhPRLレセプターはhPRLおよびhPLとは結合するがpGHとは結合しない。 予想されるように、結合競合ホルモンhPLまたはhPL由来の実質的に全ての置換は結合に影響しなえった。 唯一の例外はhPLレセプターへの結合アフィニティーが70倍以上減少するhPRL(22−33)である。 このようにhPRLレセプターはhGH中ヘリックス1の中央領域および残基57および73の間のループ付近の突然変異に非常に敏感である。
またホモログースキャンデータによりhPRLおよびhGHレセプターエピトープはいくつかのセグメント置換変異体がレセプター結合選択性に大きな変化を与えることから同一ではないことが示された(第XVIII 表)。 たとえばpGH(11−33)またはhPRL(22−33)により引き起こされる結合への影響はhGHレセプターに対してよりもhPRLレセプターに対しての方が約100倍大きい。 一方、hPL(56−64)およびhPRL(54−74)はhPRLレセプターに関してほとんど影響しない一方それらは各々17倍および69倍hGHレセプターへの結合が弱くなった。 さらにこれらの選択的結合効果(先に議論したモノクローナル抗体の結合とともに)はレセプター結合アフィニティーの減少はhGHの変異体における局所的であり、全体的構造変化によらないことを実証している。
【0094】
hPRLレセプターへの結合を強く調節するhGH中の特定の側鎖をアラニンスキャンニング突然変異誘発および相同的置換により同定した。 第XIX 表に示したhGH変異体を調製した。 hPRL置換、F25SおよびD26Eはヘリックス1における結合アフィニティーの最も大きい減少を引き起こした(各々21および45倍)。 これらの残基はヘリックス1の親水性面から突き出ており、かつ結合に緩やかな効果を与えるヘリックス1中の他の突然変異(主にH18AおよびF10A)と同じ側に存在する。
hGHレセプターの結合に影響することが知られているループ領域(54〜68)中の4個の残基ならびに近接しているがhGHレセプター結合に影響しないこの領域に先行する2つの残基(Q49AおよびT50A)をテストした。 最も破壊的な変異体は158AおよびR64Aであり、これらは各々結合アフィニティーが32倍および6倍減少している。 他の4個の突然変異の影響は無視できる。
ヘリックス1およびループ領域(58−64)がhPRLレセプターに対する強力な結合決定基を含むという事実はヘリックス4と関係する。 というのはこのヘリックスはこれら2つの構造の間に押し込まれているためである(図25B)。 事実、C165〜V185に結合するジスルフィド間のヘリックス4領域のアラニンスキャンニングは強力な結合決定基を明らかにした(第XIX 表)。 最も破壊的突然変異はほとんど4個のヘリックスターン、R167〜R178に分布しており、かつ同じ親水性面に存在する。
【0095】
【表21】
第 XIX 表hPRLまたはhGHレセプターフラグメント(hPRLrまたはhGHr)に対するhGHの単一変異体の結合。 部位指定突然変異誘発で作ったQ22N,F25S,D26E,Q29SおよびE33K以外のhGHの変異体は先に述べたように調製及び精製した(カニンガム(Cunningham), BC およびウェルズ(Wells), JA (1989)Science
244 、1330−1335; ゾラー(Zoller), MJ およびスミス(Smith), M. (1982)Nucleic Acids Res. 10 、6487−6499)。 レセプター結合アッセイおよび変異体の名称を第XVIII に示す。 hGHrに対する結合アフィニティーの減少のデータは第III 表からとった。 NDは測定しなかったことを示す。 【0096】
機能地勢図はhGHおよびhPRLレセプターの位置に基づいて導びいた(図28)。 hPRLレセプターに対する最高のエピトープ部分は、(図25B)。 結合アフィニティーの2倍以上の減少を示す突然変異が割り振られる。 この基準によりhPRLレセプターのエピトープは基本的にF10〜Q29のヘリックス1の前面、F54〜Q68のループおよびR167からR178のヘリックス4の親水性面に限定される。 一方、hGHレセプターエピトープ(図25A)はアミノ末端領域から14〜M14のヘリックスの前面、F54からS71のヘリックス1の前面およびD171からV185のヘリックス4の親水性面の残基を含む。 さらに変異分析がhPRLエピトープに残存するギャップを満たすのに必要であるがこのエピトープがhGHレセプターのエピトープと重複するが同一のものではないことは明らかである。 これらのデータはhGHを認識する結合決定基の全てがhGHおよびhPRLレセプターに関しその細胞外結合ドメインと32%のホモロジーを持つにもかかわらず同一のものではていことを示している。
レセプター結合アフィニティーに大きな変化を起こす残基は間接的な構造効果によってそれを行っている。 しかしこれら破壊的効果のほとんどがテストした全ての単一変異体が8個のhGHモノクローナル抗体群に対し完全な結合アフィニティーを維持しており、かつしばしばレセプター選択性の変化に導くがレセプターアフィニティーに均一な影響を与えないことから局所的な効果によるものと考えられている(第XIX 表および以下参照)。
【0097】
hGHのレセプター特異的変異体の設計多くの単一hGH変異体はレセプター結合選択性に多くの変化を起こす(第XIX 表)。 最も顕著なのはhGHレセプターに対するアフィニティーの4倍増加を導くがhPRLレセプターの結合は20倍以上減少するE174Aである。 このことはレセプター選択性の120倍の変化を示している。 別の突然変異は(主にR178NおよびI179M)はhGHを選択的にhPRLレセプターに結合させる。 一般的にレセプター特異性を最も変化させる変異体は2つのレセプターエピトープの非重複領域に存在する。
レセプター結合の自由エネルギー変化が加算的であるならわずかな突然変異をもつhGHの非常に特異的な変異体を設計することができると考えられる。 事実2つの最もhGHレセプター選択的な単一変異体(K168AおよびE174A)を合せると、その二重変異体はhGHレセプターへの結合に関し2300倍の選択性を示す(第XX表)。 先に指摘したようにhPL(56−64)の結合選択性はわずか20の突然変異E56DおよびR64Mを含むhPL(56−64)によりほぼ20倍増加し得る(第XIII 表)。 これらのhGH変異体(K168A、E174AまたはE56D、R64M)は実質的に好ましいレセプター、各々hGHまたはhPRLに対する選択性を減少していない。 また同時に両レセプターの結合を減らすこともできる。
【0098】
【表22】
第 XX 表hGHおよびhPRLレセプター(hGHrおよびhPRLr)を識別するよう設計されたhGHき二重変異体の結合、hGH変異体の部位指定突然変異誘発により調製し、精製し、かつ第XIII表に述べた方法でhGHrまたはhPRLrへの結合を検定した。 K
D測定値の標準偏差は報告されている値の±100%であった10M以上の値以外報告されている値の20%以下であった。 【0099】
たとえば個々にhGHおよびhPRLレセプターへの結合アフィニティーを大きく減少させるK172AおよびF176Aを合せると各々550および15000倍のアフィニティーの破壊を生む。
全ての場合において結合自由エネルギー変化(△△G結合)は驚くべきほどに加算的である(第XXI 表)。 突然変異の加算的効果は酵素−基質相互作用にもみられ(PJ カーター(Carter) 等(1984)Cell
38 、835−840;JAウェルズ(Wells)等、(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 、5167−5171)、プロテアーゼ−プロテアーゼインヒビター相互作用(M.ラスコウスキー(Laskowaki)等、“プロテアーゼインヒビター:医学および生化学的特徴”(1983)、 N.カツヌマ(Katunuma) 編、ジャパンサイエイスサイアティー版、東京、55〜68)およびたん白質の安定性(D.ショートル(Shortlo)等、(1986)Protein, 1 、81−89(1986): MMメクト(Mecht)、 JMスターテバント(Sturtevant) および RTソーアー(Sawer) Protein 1 、43−46)にもみられ、またこれらの参考文献で公表されているように変異残基が独立に機能しかつ互いに接しているときは一般に身うけられる。 このことは多くのhGH変異体中で対を作っている残基は独立に機能していることを示している。 このような加算性は望ましいレセプター結合アフィニティーおよび特異性をもつhGH変異体を作る上で非常に予想可能な状況を作り出している。 【0100】
【表23】
第 XXI 表hGHまたはhPRLレセプター(hGHrまたはhPRLr)への結合に関するhGH中の変異の加算効果。 野生型hGHに対する変異体の結合自由エネルギー変化(△△G結合)は△△G結合=RT ln〔CK
D ( 変異体)/K D (hGH)〕 に従い結合アフィニティーの減少から計算した。 単一または多重変異ホルモンのK
D (変異体)/K D (hGH)値は第XIII表−第XX表から得た。 【0101】
hGHと同様にアドレナリンレセプター(RJ レフコウィッツ(Lefkowitz)および MGキャロン(Caron)(1988)J. Biol. Chem.
263 、4993−4996)、ICF−1レセプター( MAカサイエリ(Cascieri) 等、(1989)J. Biol. Chem. 264、2199−2202)、IL−2レセプター(RJ ロブ(Robb) 等(1984)J. Exp. Med. 160 、1126−1146; RJ ロブ(Robb) 等(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 、5654−5658)およびANPレセプター( D. ロー(Lowe) およびD.ゴーデル(Goeddel)、非公開)など2つ以上のレセプターまたはレセプターサブタイプが存在する多くの例がある。 これらの場合、特定のレセプター機能を特定の薬学的効果と結びつけるのは難しい。 しかしレセプター特異的ホルモン類似体の使用でこの仕事を非常に簡便化できる。 たとえばカテコールアミン類似体はβ−アドレナリンレセプターサブタイプの特性を明らかにし、かつレセプター機能を生理的応答に結びつけるのに使われる( RJ レフコウィッツ(Lefkowitz)等、(1983)Annu. Rev. Biochem. 52 、159−186)同様に、hGHのレセプター特異的変異体はhGHの他のレセプターの同定やhGHの複合体薬理学におけるhGHおよびhPRLレセプターの働きを探る上での重要な道具を提供する。 この研究はレセプター特異的変異体の合理的設計を可能にするホルモンにおけるレセプター結合部位を同定するための系統的方法を示している。 【0102】
実施例13
ヒト成長ホルモンに結合するヒトプロラクチンの作製プロラクチン(PRL)は成長ホルモン(GH)、胎盤ラクトゲン(PL)およびプロリフェリンを含む相同ホルモン群の1員である。 ニコル(Nicoll), CS等(1986)Endocrlnol. Rev.
7 、169−203。 集合的にこのグループのホルモンは成長、分化、電解質バランスなどに関する巾広い生理効果を調節する。 チョウラ(Chawla), RK等(1983)Ann. Rev. Med. 34 、519−547;イサクソン(Isaksson) OGP等(1985)Ann. Rev. Physiol.47、483−499。 これらの薬理学的効果は特定の細胞レセプターへの結合で始まる。 たとえばhPRLはラクトジェニックレセプターには結合するがソマトジェニックレセプターには結合せず、また泌乳に活性化するが骨成長は活性化しない。 hGHはラクトジェニックレセプターおよびソマトジェニックレセプターの両方と結合し、かつ泌乳および骨成長の両方を活性化する。 レセプター結合特異性の差の分子的基礎はまだ理解てされていない。 hPRLのクローニングと発現hPRLのcDNAをλgt10中のヒトの脳下垂体cDNAライブラリーから(ハイン(Huynh), TV 等(1985)“DNAクローニング技術−方法”1巻、DM グローバー(Glover) 編(オックスフォードIRLプレス)、49−78)公表されたDNA配列の5′および3′末端に対応するオリゴヌクレオチドを用いた(コーク(cooke)、NE 等(1981)J. Biol. Chem.
256 、4007−4016)ハイブリダイゼーションにより(マニアチス(Maniatis),T. 等編(1982)“モレキュラークローニング、ラボラトリーマニュアル(コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールドスプリングハーバー、NY))クローニングした。ほぼ全長のcDNAクローンが同定され、またコドン22から停止コドンの下流55bpまでの720bpBst II −Hind III フラグメントをpJC118にサブクローン化した。この配列をダイデオキシ法(サンガー(Sanger), F. 等(1977)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74 、5463−5467)により決定したところ以前に報告されていたものと全く一致した(コーク(Cookた), KE 等(1981)J. Biol. Chem. 256 、4007−4016)。 【0103】
標準法により細胞内発現ベクターpBO760(図26)を作った(マニアチス(Maniatis), T. 等編(1982)モレキュラークローニングラボラトリーマニュアル(コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールドスプリングハーバー、NY)。hPRL遺伝子の転写にpHGH207−1由来の大腸菌 trpプロモーターを用いた(デボア(deboer), HA等(1982)“プロモーターの構造と機能”ロドリゲス(Rodriguez), RL およびチャンベリ(Chamberlin), MJ編(プラガー版、ニューヨーク)、462−481)。hPRLコード配列は47bp XbaI−BstE II 合成DNAカセットおよびhPRL cDNA由来の720bp BstE II −Hind III フラグメントを含んでいる。合成DNAカセットは
という配列であり、開始コドンはアステリスクで示してある。 ファージflオリジン、pBR複製オリジンおよびpBR322β−ラクタマーゼ遺伝子はpBO475に由来する(カニンガム(Cunningham), BC等(1989)Science
243 、1330−1335)。 pBO760を含む大腸菌(MM294)を15μg/mlカルベニシリン添加M9ハイケース培地100mlを含む0.5L振とうフラスコ中37°Cで4時間増殖させた(初期対数期;A
550 =0.1 〜0.3 )(ミラー(Miller), JH( 1972)“分子遺伝学実験”(コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールドスプリングハーバー、NY)。インドルアクリル酸を添加し(最終50μg/ml)tep プロモーターを誘導した。細胞をさらに6〜8h増殖した後遠心で収穫した。細胞分画実験はhPRLはほとんど排他的に包含粒子中に存在し、SDS−PAGEで分析してみると全細胞たん白質中の2〜5%にあたることを示した(データ示さず)。 【0104】
hPRLの精製および再生。 hPRLを含む包含粒子を基本的に報告されている方法で単離した(ウィンクラー(Winkler), ME 等(1986)Biochemistry
25 、4041−4045)。 簡単に云うと、湿細胞ペレット50gを0.25リットルの10mMトリス(pH 8.0)、1mM EDTA(TEパッファ)に懸濁し、激しい超音波処理で細胞を分解した。 不溶性の物質で遠心(10,000×g 15分間)で集め25mlのTEバッファに懸濁した。 このサスペンションを50%グリセリン0.2リットルのクッション上に重層し、9000×g25分間の遠心によりhPRL包含粒子をペレット化した。 この包含粒子由来のhPRL(純度約20%)を5mlのTEバッファに懸濁した。 TEバッファ中0.3gの還元グルタチオン(シグマ)を含む8NGn HCl 溶液156mlに包含粒子を溶かすことによりpPRLを再生した。 室温で30分間緩やかに攪拌した後この混合物を0°Cに冷やし、0.6gの酸化グルタチオンを含む冷TEバッファ844mlで希釈した。 この溶液を4°Cで一晩ゆっくりと攪拌した後、24時間に3回外液を変える4リットルのTEバッファを用いた透析を行った。 不溶性物質を遠心で除去した(10,000×g 20分間)。
さらに再生し可溶化したhPRLを45%飽和の(NH
4 ) 2 SO 4の添加および室温2.5時間の攪拌による沈殿化で精製した。 この沈殿を遠心(12,000×g 30分間)で集め5mlのTEバッファに溶解した。 室温30分後この溶液を清澄化した後(10,000×g 10分間)、ミリポアフィルターで濾過した(0.45μm)。 この溶液を4°Cで一晩0.5リットルのTEバッファに対して透析した。 最後にこのhPRL(純度85%)を基本的にhGHの精製について述べた方法と同じDEAE高速マトリックスを用いたFPLCにより均一となるまで(>95%)精製した(カニンガム(Cunningham) 、BC 等(1989)Science 、 243 、1330−1335)。 【0105】
hGHおよびhPRL変異体の突然変異誘発および結合性部位指定突然変異誘発(ゾラー(Zoller)、 MJ等(1982)Nucleic Acids Res.,
10 、6487−6500)は大腸菌のメチル化修復欠損株MutLを用いて行った(クレーマー(Kramer)、 B. 等(1984)Cell 38 、879−887)。 変異体クローンの濃縮化は、インビボ生成ヘテロ二本鎖のトランスホーメーション後に得られた最初のプラスミドDNAプールに制限精製または制限選択を応用し得るように各々単独制限部位を導入または除外する変異原オリゴヌクレオチドを設計することにより行った(ウェルス(Wells), JA 等(1986)Phil. Trans. R.Soc. Lond. A 317 、415−423)。 全てのオリゴヌクレオチドはもっとも上流のミスマッチの5′側に正確にマッチする12bpおよびもっとも下流のミスマッチの3′側に正確にマッチする10bpを有するよう設計する。 hGHの突然変異誘発の場合、先に述べたhGH合成遺伝子は多くの制限部位を含んでおり、これをプラスミドpBO475にクローン化した。 hGHの変異体は大腸菌の細胞周辺腔に分泌され(チャン(Chang), CN 等(1987)Gene 55 、189−196)先に述べたように精製した。 各類似体のKd 値は本明細書およびスペンサー(Spencer), SA 等(1988)、J. Biol. Chem.
263 、7862−7867に述べられている精製組換えhGH結合たん白質に結合した( 125 I)hGHの競合的置換により測定した。 先に述べたhGH結合たん白質(クローン化ヒト肝臓レセプターの残基1〜238を含む)をフー(Fuh)、G.等(1989)、提出)により述べられている方法により大腸菌から分泌させ精製した。 置換曲線を3回作成し、またKd 値の標準偏差は一般に報告値の20%以下であり、Kd 値が10μM以上となる場合を除いて報告値の50%を越えることはなかった。 hPRLおよびhPRL変異体の濃度は吸光係数+S(0.1%、280)=0.9(ウェトローファー(Wetlaufer)、 DB (1962)Adv. in Prot. Chem.
17 、303−390)を用いたA 230で測定した。 これは変異体が芳香族残基における突然変異を含む場合はそれに応じて調整した。 吸光度により測定した濃度値はSDS−PAGEとhGHのコマージブルーによる染色を用いたレーザーデンシトメトリーによって測定した値と10%以内の誤差で一致していた。 円二色スペクトルはアビブキャリー60スペクトロポーラリメーターを用いて測定した。 hPRL中の残基がhGHレセプターへの結合にもっとも破壊的であるかを探るため(図27)、まず多くのhPRL残基をhGH中に導入した(第XXII表)。
【0106】
【表24】
【0107】
hGH中部位58、64、176および178の単一アラニン置換はレセプター結合を著しく破壊するが、これらの部位におけるhPRL残基の置換はほとんど影響しなかった。 hPRL置換の最も大きい効果は部位176および178を含むヘリックス4残基中に存在した。 これらのデータはhPRLのヘリックス4領域における残基がhGHレセプターへの結合の欠除を最もよく説明し得ることを示している。
組換えhPRLは天然様の構造および機能性を維持していた。 まず近および遠紫外線CDスペクトル(図28)は天然のhPRLのスペクトルと同じであった(ビューリー(Bewiey) 、TA (1979)“ホルモン研究の最近の進歩”35巻、155〜213頁、アカデミープレス、NY ) 、遠紫外線スペクトルはhGHと同じであり、このことは208nmおよび224nmにおける平均残基だ円率の重要な差がしられているが同様の4−ヘリックス束構造の存在を示している。 これらのホルモンの芳香族残基の数や微環境の差を反映する近紫外CDは著しく異なる。 別の研究で組換えhPRLはhPRL ELISAにおいて十分な免疫学的交叉反応性を維持しており(データ示さず)、またラットのリンパ種Nb2細胞を繁殖させることにおいてhGHと等価であった(タナカ(Tanaka), T. 等(1980)J. Clin. Endo. Metab.
51 、1058−1063)。 還元すると精製hPRLはSDS−PAGEにおける移動度の著しい減少を起こし(hGHでもみられる)、このことはジスルフィド結合の形成を示している(ポリット(Poliitt), S.等(1983)J. Bacteriol。 153 、27−32)。 アミノ末端配列分析は細胞内発現hPRLはアミノ酸末端メチオニンを維持していることを示した。 しかし、メチオニルhGHと同様このことは見かけ上その構造や機能に影響しない。 hGH結合たん白質へのhPRLの結合はhGHと比較して10
5倍以上も減少し(第XXIII 表)、これは結合アッセイの検出限界以下である。 【0108】
【表25】
【0109】
1. 先に述べたようにhPRL変異体を生成、精製および分析した。 多くの変異体はコロンで区切られた一連の単一変異体で示される(第XXII表)。 コドン番号はhGH配列に基づいている(図2)。
2. 平均標準誤差は、それが50%ほどになるKd 値が1μM を越える場合を除いて報告値の20%以下であった。 この誤差はKd 値が10μM を越えるとさらに大きくなる。
hGH由来のヘリックス4中の3つの残基を組合せて(H171D、N175TおよびY176F)、hPRLに導入した。 アラニンスキャンニング突然変異誘発およびhPRL置換(第XXII表)はこれらの残基がhGHのhGHレセプターへの結合に非常に重要であっことを示している。 hPRLのこの三重変異体はhGHよりは14000倍も弱いがhGH結合たん白質に検出可能な結合を起こした。 さらにテトラ変異体を作るため他の重要なヘリックス4残基(K178R)を導入すると、これは野生型よりわずか660倍低いだけのレベルの結合に強められた(第XIII 表の変異体B)。 hPRL変異体BへのhGH残基184〜188の導入はhGH結合たん白質への結合を強化しなかった。 しかしhPRL変異体Cを与えるE174Aの導入(第XXIII 表)はE174AがhGHに組込まれたときと同じようにhGH結合たん白質への結合アフィニティーをさらに3.5倍増加した。
【0110】
ヘリックス4領域への結合力をもつことから残基54〜74を含むループ領域を分析した。 hPRL中のループ領域をhGH由来の配列(第XIII 表のhGH(54−74))で完全に置換することはhGH結合たん白質へのかろうじて検出可能な結合を与える。 この変異体を変異体Bと合せたとき結合アフィニティーが実質的に増加する。 しかし、この新しい変異体(B+hGH(54−74))の結合アフィニティーは変異体B単独のときよりもほとんど10倍減少する。 したがって54−74ループ中のいくつかのhGH残基はヘリックス4中のhGH置換と適合しなかった。 我々はhGHの54−74ループからアラニンスキャンニング突然変異誘発によりもっとも結合に影響することが示された7個の残基を選択した。 hGHのR64A突然変異は結合アフィニティー420倍以上減少させるが、hGHのR64K変異体(hPRL置換)はhGH結合たん白質への結合がわずかに多い(第XXII表)。 それゆえhPRL中のLys64は変化しないままであった。 結果としてhGHにおいてアラニンへの変化が最も破壊的であった7個の置換のうちの6個をhPRLへ組込んだ。 この新しい変異体(B+H65F:S56E:L58I:E56S:D68N:Q66E)はB+hGH(54−74)よりも50倍も強く結合するが野生型hGHの結合アフィニティーよりもわずかに110倍小さいだけである。 しかし、これは変異体B単独よりもわずかな改善を示したのみで(6倍)、先にhGHのループ領域において観察された強い相互作用に期待されるほどではなかった。 それゆえ、ループ内の6個の突然変異をさらに分断し、H54F:S56E:L58I+変異体Bの組合せが変異体よりも3倍も結合が弱いことが明らかになった。 最後に変異体Cへの突然変異E62S:D63N:Q66Eの組込みは(変異体D)はhGHに比べ結合アフィニティーがわずかに6倍低いだけの最も高いアフィニティーをもつ類似体を生ずる。 別の単一突然変異(H54F、S56E、L58I、A59P、N71SおよびL179I)はhGH結合たん白質へのhPRL変異体Dの結合アフィニティーを高めることはなかった。 変異体Dの構造は事実上CDスペクトル分析(図28)またはELISA活性(データ示さず)によって天然のhPRLと区別できなかった。
【0111】
これらの研究は部位指定突然変異誘発実験由来の機能情報のみを用いた遠い関係の類似体の結合性を回復させ得る可能性を示した。 hGHのアラニンスキャンニング突然変異誘発はhGHのレセプターへの結合を調節するのに重要な側鎖の系統的分析を提供した(図27)。 この情報はhGHレセプター結合し得ないことを説明するhPRL中の多くの残基を浮き立たせた(図29)。 しかしさらに分析することでhGH中のアラニン置換がhGH中のhPRL置換よりもより破壊的であることが示された(第XXII表)。 さらにいくつかのhPRL置換は、特にhPRL中により大きい側鎖が存在するとき結合アフィニティーに関し他のものよりかなり破壊的であった。 たとえばhGH中の保存的(しかしより大きい)F176Y置換はhGHレセプターに関する結合アフィニティーに8倍の減少を引き起こすが、一方より小さいR64K置換は結合アフィニティーのわずかな増加を示した。 このようにhGH中の破壊的hPRL置換の分析は最初にhPRLへの結合アフィニティーを遂行するヘリックス4中の残基クラスターの導入を示している。 このことは野生型hPRLによるhGHレセプターへの結合が観察されないことから非常に重要であり、使用した検定の範囲内の結合アフィニティーをもたらすため(Kd ≦50μM )hPRL中に同時にいくつかのhGH置換を導入することが必要である。
ヘリックス4に機能的に重要な残基を導入することによりhPRLに容易に検出可能な結合アフィニティーを導入された。 しかし、54−74間のループ領域を作り出すことはより困難であることが分った。 hGHの全ループをhPRLに組込むことによる結合の増加は期待されたよりも小さく、至適化されたヘリックス4変異体Bと組合せたときは結合に対して破壊的であった。 我々のデータはhPRLの54−74ループ構造はこのたん白質中の他の相互作用により支持されることを示している。 この問題は段階的に解決された。 まず、hGH中のhPRL置換を伴アラニン置換で重要であると同定されたhGH由来の6個のループ残基をhPRLに導入した。 これはその状況を改善したにもかかわらずいくつかのhGH突然変異(H43F、S56EおよびL58Iにしぼった)の組合せはhPRLに対して破壊的であった。 これらのデータはループ中のいくつかの残基がその構造に重要でありそのまま残した方がより安定でしることを示している。
【0112】
突然変異誘発の多くの反復サイクルがhPRLのhGHレセプターへの堅い結合を可能にする残基の組合せを一本化するのに必要であった。 この戦術は変異効果が実際に観察されるように加算的であるという仮定に依存している。 たとえばE174A突然変異がhPRL変異体CまたはhGHに加えられたとき結合を3〜5倍増加した。 さらに変異体Dに対するH54F、S56E、およびL58I単一変異体の破壊的効果は(4.4倍)変異体Bに付加された3つの全ての突然変異の組合せによって引き起こされる破壊とほぼ同じであった(3倍)。
変異体Dの結合アフィニティーはわずか6倍減少するだけであるにもかかわらず変異体Dに組込んでさらに結合を改善する試みを行いうるV14NおよびH185Vなどいくつかの他の残基がある。 すなわちhGH中のアラニン置換がhGHの結合を2〜3倍の減少を起こす部位がある(図29)。 高分解能の構造が設計過程の助けとなるが、それは明らかに基本的なものではない。 突然変異効果の累積性は天然の変化および淘汰サイクルによるたん白質進化と同じ様式で結合性を収れんさせうる。
従来のたん白質工学実験は高分解能構造分析を用いて基質接触残基による天然の変異体酵素の基質特異性の実際的変換が可能であることを示した(ウェルズ(Wells) JA等(1987)Proc. Natl. Acad. Sci. USA
84 、5167−5171;ウィルクス(Wilks), HM 等(1988)Science 242 、1541−1544)。 同様に他のものは結合性は抗原結合ループ(ジョーンズ(Jones), PT 等(1986) Nature 321 、522−525)またはDNAレセプターヘリックス(ワートン(Wharton), RP 等(1985)Nature 316 、601−605)を含む二次構造ユニットの全ユニットの置換により産み出し得ることを示した。 しかし、hPRLにhGHレセプター結合性を与えるにはhPRLの構造枠組内の選択的残基置換を必要とする。 さらにCDスペクトルデータはhPRL変異体Dの全構造はそれぞれがhGHと同様の結合性は維持しているにもかかわらず、hPRLの構造には非常によく似ているがhGHには似ていない。 【0113】
hGHレセプターへの結合特異性がhPRLに組込まれ得るという事実はソマトジェニックレセプター結合に対する特性の残基の機能的重要性を確認している。 またこれらの研究はhGHとhPRLがわずか23%の一致しかもたないにもかかわらず両者の構造的関係に対する動かぬ証拠を提供する。 これは成長ホルモン、プロラクチン、プロリフェリンまたは胎盤ラクトゲン構造を始めとするこのホルモン群内に含まれる新しいレセプター結合機能に近づく合理的方法を提供する。 このようなハイブリッドはレセプターサブタイプの薬理学的重要性とともにレセプター結合および活性化を区別する上で有用である。 これらの類似体はアゴニストまたはアンタゴニストとしてより有用な性質をもつ新しいレセプター特異的ホルモンの設計に導く。
【0114】
実施例14
ヒト胎盤ラクトゲンへのヒト成長ホルモンの結合性の付与ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)のhGHレセプターに対する結合アフィニティーはhGHに比べ30倍小さい(G.バウマン(Baumann)等(1986)J. Clin. Endocrinol. Metab.
62 、134; AGヘリントン(Herington)、等(1986)J. Clin. Invest. 77 、1817)。 以前の変異実験はhGHレセプターに対するhGHの結部位は基本的にアミノ末端(残基4−14)付近のいくつかのマイナーな決定基とともに2つの領域(残基54−74および171−185を含む)内に存在する。 hPLの全配列はhGHと85%が同じである。 hGH上のレセプター結合エピトープを広く構成している3つの領域内でhPLはわずか7箇所で異なり以下の置換を含む:P2Q、14V、N12H、R16Q、E56D、R64M、および1179M。 (この命名法では野生型hGHの残基を1文字コードで示し、つづいて成熟hGHの部位番号およびhPL中の残基を示した)。 これら7個の各部位においてhGHの単一アラニン置換を作った。 これらのうち、4つのアラニン置換、14A、E56A、R64A、およびI179Aは結合アフィニティーの2倍以上の減少を引き起こすことが分った。 一般にアラニン置換は結合に関しヒトプロラクチン由来の相同的置換よりも大きい効果を有している。 それゆえ、hGHに導入されたhPL由来の置換のいくつかの効果を研究した。 I179A置換はアフィニティーの2.7倍の減少を起こした一方、I179Mはわずか1.7 倍の効果しか示さなかった。 しかし、R64AおよびR64M置換は結合アフィニティーの同一およびより大きい減少(約20倍を引き起こした。さらに、hGHの二重変異体(E56D:R64M)のアフィニティーはさらに計30倍の減少を示した(第1表)。このようにE56DおよびR64Mは基本的にhGHとhPLのレセプター結合アフィニティーの差を決定する。それゆえhPLの二重変異体D56E、M64Rは実質的にhGHレセプターへの結合アフィニティーが増加している。M179IおよびV41のような付加的修正もhPLのhGHレセプターへの結合を高める。 【0115】
実施例15
ヒト成長ホルモンへの結合に関する部位174でのアミノ酸置換の効果先に示されているように、Glu174のAlaによる置換(E174A)はヒト成長ホルモンのそのレセプターへのアフィニティーを4倍以上増加させる。 部位174における至適置換残基を決めるため他の12個の残基で置換したhGH変異体を作りhGH結合たん白質とのアフィニティーを測定した(第XXIV表)。 荷電ではなく側鎖の大きさが結合アフィニティーを決定する主要要素である。 アラニンが至適置換を起こし、Ser 、 Gly 、 Gln 、 Asn 、 Glu 、 His 、 Lys 、 Leu 、 そしてTyr の順でつづいている。
【0116】
【表26】
【0117】
a. 突然変異はpBO475にクローン化した部位178にKpnI部位を含むhGH遺伝子の変異体に部位指定突然変異誘発を行うことにより生成させた(カーター(Carter), P. 等(1986)Nucleic Acids Res.
13 、4431−4443)。 突然変異誘発に用いたオリゴヌクレオチドは、 で表わされる配列を有している。 ここでNNNは部位174の新しいコドンを表わし、またアステリスクはコドン178で始まるKpnI部位を除外するミスマッチを示している。 変異コドンは次に示すものである:Gln, CAC;Asn, AAC;Ser, AGC;Lys, AAA;Arg, AGG;Hls, CAC;Gly, GGG;Val, GTG;Leu, CTG。 ヘテロ日本鎖合成につづいて野生型配列のバックグランドを減少させるためおKpnIによる制限処理でプラスミドプールの突然変異を濃縮した。 全ての変異体配列はダイオキシ配列分析で確認した(サンガー(Sanger), F. 等(1977)Proc. Natl. Acad. Sci.USA
74 、5463−5467)。 b. 側鎖バッキング値は C. コチア(Chotia)((1984)Annu. Rev. Biochem.
53 、537)のデータによる。 c. 解離定数は先に述べたようなhGH結合たん白質による(
125 I)hGHの競合適置換により測定した。 NFは変異ホルモンが単離および検定するには低すぎるレベルで発現することを示している。 実施例16
第XXV 表に示したhGH変異体を構築した。 野生型hGHに対するこれらの相対的能力を示す。
【0118】
【表27】
本発明の好ましい態様を述べてきたがこれら公開した態様を種々に変化させうること、およびこのような修正は本発明の範囲内にあることは当業者にとって明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】活性ドメインの同定に使用する戦術を示している。
【図2】hGH、hPL、pGHおよびhPRLのアミノ酸配列中の保存性および可変性アミノ酸残基を示している。
【図3】hGHの推定される低分解能構造および各ヘリックスに対しN末端開始残基から見たラセン投影図を示している。 疎水性、中性および荷電残基は各々〇、■および●で示されている。
【図4】可溶性hGHレセプターに対する種々のセグメント置換hGH変異体の結合に関する相対的減少を示す棒グラフである。
【図5】ソマトジェニックhGHレセプターと相互作用する活性ドメインA、CおよびFにおける類似アミノ酸を示す。
【図6】ソマトジェニックレセプターの相対的結合位置およびhGHに対する8個のモノクローナル抗体を示す。
【図7】種々のアラニン置換hGH変異体の可溶性hGHソマトジェニックレセプターに対する結合の相対的増減を示す棒グラフである。 T175の斜線棒はアラニンではなくセリンが置換していることを示している。 R178の縞棒はアラニンではなくアスパラギンが置換されていることを示している。
【図8】実施例で用いているhGH遺伝子のDNAおよびアミノ酸配列を示している。
【図9】合成hGH遺伝子を含むベクターpBO475の構築を示している。
【図10】hGHのアミノ酸配列を示すpBO475のDNA配列である。
【図11】ベクターpJ1446の構築を示している。
【図12】肝臓由来のソマトジェニックレセプターの可溶性部分のアミノ酸配列を示すpJ1446のDNA配列である。
【図13】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図14】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図15】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図16】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図17】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図18】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図19】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図20】8個の異なるモノクローナル抗体各々に対するhGH上のエピトープ結合部位を示している。
【図21】hGH中のソマトジェニックレセプターに対する結合に関与する活性アミノ酸およびヘリックス1および4に関するラセン投影図を示している。
【図22】hGHおよびhGH変異体を50マイクログラム/kg/日で投与したラットの経時的体重増加を示している。
【図23】野生型hGHと比較したhGH変異体の活性に対するKd 比のセミログプロットである。
【図24】ヒト血清(〇)またはプラスミドphGHr(1−238)を発現する大腸菌KS330培養物から単離したhGH結合たん白質に対する(
125 I)hGHおよび未標識hGHの競合結合曲線である。 棒は平均値からの標準偏差を示す。 挿入図は競合結合曲線から導びいたスキャッチャードプロットを示している。 ヒト血清および大腸菌由来の結合たん白質の濃度は各々0.1 nMおよび0.08 nMであった。 【図25】 2.8Å分解能のX線構造から決定したpGHの構造に基づくhGHの構造モデルである。 パネルAはhGHレセプターエピトープの機能性等高線地図を示しパネルBはhPLレセプターエピトープについて測定された同地図を示している。 黒丸の大きさは各残基のアラニン置換に関する破壊効果の大きさを示している。 小さな丸は2倍以上の破壊を示し、大きい丸は10倍以上の破壊を示す。 hGHレセプターエピトープにおける▲は(バネルA)結合親和性が4倍以上増加させるE174A K位置を示している。
【図26】大腸菌におけるhPRLの細胞内発現に使用したプラスミドpBO760を示している。
【図27】hGH結合たん白質に対する結合に強く影響するhGH中の残基の位置を示している。 結合親和性の10倍以上の減少(〇)、4〜10倍の減少(■)または4倍以上の増加(▲)を引き起こすアラニン置換(T175またはR178の場合は各々セリンまたはアスパラギン)が示されている。 α−ヘリックス領域のラセン投影図はそれらの両親媒性およびヘリックス4において最も重要な決定因子は親水性面(影部分)に存在するという事実を明らかにしている。
【図28】hGH(−)、野生型hPRL(−−)およびhPRL変異体D(−−−−)の遠紫外(パネルA)または近紫外(パネルB)における円二色スペクトルを示している。
【図29】同類およびアラニンスキャンニング突然変異誘発により限定された結合に重要な領域に関するhGHとhPRLの配列比較を示している。 同一残基は影を付け、またその番号はhGH配列に基づいている。 変異したとき結合親和性が4倍以上変化する残基には丸を付けた。 残基の上のアステリスクは変異が結合親和性を2〜4倍減少させる部位を示している。
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