T cell receptor display

申请号 JP2005506662 申请日 2003-10-30 公开(公告)号 JP2006525790A 公开(公告)日 2006-11-16
申请人 アヴィデックス リミテッドAvidex Limited; 发明人 アンデルセン,トルベン,ベント; ブルター,ジョナサン,マイケル; モロイ,ピーター,イーモン; ヤコブセン,ベント,カルステン; リー,イ;
摘要 T細胞レセプター(TCR)を表面にディスプレイしているタンパク質性粒子、例えばバクテリオファージ、リボソーム又は細胞。 ディスプレイされるTCRは、好ましくは、定常ドメイン残基間に非天然型ジスルフィド結合を有するへテロ二量体である。 このようなディスプレイ粒子は、高親和性TCRの同定のための多様性TCRライブラリーの作成に使用し得る。 いくつかの高親和性体が開示される。
权利要求
  • (i)タンパク質性粒子がリボソームであり、T細胞レセプター(TCR)が単鎖TCR(scTCR)ポリペプチド又は二量体TCR(dTCR)ポリペプチド対であるか、又は
    (ii)タンパク質性粒子がファージ粒子であるか又はTCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞であり、TCRがヒトscTCR又はヒトdTCRポリペプチド対であるか、又は
    (iii)タンパク質性粒子がファージ粒子であるか又はTCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞であり、TCRが非ヒトdTCRポリペプチド対であるか、又は
    (iv)タンパク質性粒子がファージ粒子であるか又はTCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞であり、TCRが、天然型TCR鎖に存在する細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するTCRアミノ酸配列とリンカー配列とを含むscTCRポリペプチドであり、リンカー配列が、天然型TCRの1つの鎖の可変ドメイン配列に対応する可変ドメイン配列を別の天然型TCR鎖の定常ドメイン配列に対応する定常ドメイン配列に連結し、天然型T細胞レセプター中に等価物を有しないジスルフィド結合が定常ドメイン配列の残基同士を連結していることを特徴とする、TCRを表面でディスプレイしているタンパク質性粒子。
  • 二量体T細胞レセプター(dTCR)ポリペプチド対が、天然型TCR鎖中に存在する細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するTCRアミノ酸配列によって構成され、単鎖T細胞レセプター(scTCR)が、天然型TCR鎖中に存在する細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するTCRアミノ酸配列とリンカー配列によって構成され、リンカー配列が、天然型TCRの1つの鎖の可変ドメイン配列に対応する可変ドメイン配列を別の天然型TCR鎖の定常ドメイン配列に対応する定常ドメイン配列と連結し、
    dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの可変ドメイン配列が天然型TCR中と実質的に同様に互いに配向し、
    scTCRポリペプチドの場合、天然型T細胞レセプター中に等価物を有しないジスルフィド結合が、該ポリペプチドの残基同士を連結している、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドを表面でディスプレイしているタンパク質性粒子。
  • タンパク質性粒子が線維状ファージ粒子である請求項1又は2に記載のタンパク質性粒子。
  • タンパク質性粒子が、TCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞である請求項1又は2に記載のタンパク質性粒子。
  • タンパク質性粒子がリボソームである請求項1又は2に記載のタンパク質性粒子。
  • dTCRポリペプチド対の一方のメンバーのC末端又はscTCRポリペプチドのC末端がタンパク質性粒子の表面に露出した残基とペプチド結合によって連結されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • dTCRポリペプチド対の一方のメンバーのC末端又はscTCRポリペプチドのC末端がタンパク質性粒子の表面に露出したシステイン残基とジスルフィド結合によって連結されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • タンパク質性粒子がファージであるとき、scTCRはヒトTCRに対応するという条件で、
    TCRα又はδ鎖可変ドメインに対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメント、
    TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合した、TCRβ又はγ鎖可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメント、及び 第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含むscTCRポリペプチドがディスプレイされている請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • タンパク質性粒子が線維状ファージであるとき、scTCRはヒトTCRに対応するという条件で、
    TCRβ又はγ鎖可変ドメインに対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメント、
    TCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合した、TCRα又はδ鎖可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメント、及び 第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含むscTCRポリペプチドがディスプレイされている請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • TCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合した、TCRα又はδ鎖可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第1のセグメント、
    TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合した、TCRβ又はγ鎖可変ドメインに対応するアミノ酸配列によって構成される第2のセグメント、
    第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に又はその逆に連結するリンカー配列、及び 天然型αβ又はγδT細胞レセプター中に等価物を有しない第1の鎖と第2の鎖との間のジスルフィド結合を含み、リンカー配列の長さ及びジスルフィド結合の位置が、第1及び第2のセグメントの可変ドメイン配列が天然型αβ又はγδT細胞レセプター中と実質的に同様に互いに配向するような長さ及び位置であるscTCRポリペプチドがディスプレイされている請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が式−P−AA−P−(式中、Pはプロリンであり、AAは、アミノ酸がグリシン及びセリンであるアミノ酸配列を表す)を有する請求項10に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結する請求項10又は11に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が26〜41アミノ酸からなる請求項12に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が29、30、31又は32アミノ酸からなる請求項13に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が33、34、35又は36アミノ酸からなる請求項13に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が式−PGGG−(SGGGG) 5 −P−(式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである)を有する請求項13に記載のタンパク質性粒子。
  • リンカー配列が式−PGGG−(SGGGG) 6 −P−(式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである)を有する請求項13に記載のタンパク質性粒子。
  • TCRα又はδ鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチド、及び
    TCRβ又はγ鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチドによって構成され、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドが天然型αβ又はγδT細胞レセプター中に等価物を有しないジスルフィド結合によって連結されているdTCRポリペプチド対がディスプレイされている請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • ディスプレイされているdTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドが、αβTCR細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列を有する請求項1〜18のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • ディスプレイされているdTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドが、細胞外αβTCR定常ドメイン配列及びγδTCR可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列を有する請求項1〜19のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • ディスプレイされているdTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドが、非ヒト細胞外αβTCR定常ドメイン配列及びヒトTCR可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列を有する請求項1〜20のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • ディスプレイされているdTCRポリペプチド対の1つのメンバーのアミノ酸配列又はディスプレイされているscTCRのアミノ酸配列が、天然型TCR細胞外定常鎖Igドメイン配列に対応する請求項1〜21のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • ディスプレイされているdTCRポリペプチド対又はディスプレイされているscTCRが、天然型TCR細胞外定常鎖Igドメイン配列に対応する配列を含む請求項1〜22のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が定常鎖Igドメイン配列のアミノ酸残基同士を連結し、ジスルフィド結合は天然型TCR中に等価物を有しない請求項23に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が、天然型TCR中で0.6nm未満の間隔であるβ炭素原子を有するアミノ酸残基に対応するシステイン残基間に存在する請求項24に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が、TRAC * 01のエキソン1のThr 48及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のSer 57又はこれらの非ヒト等価物と置換したシステイン残基間に存在する請求項24に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が、TRAC * 01のエキソン1のThr 45及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のSer 77又はこれらの非ヒト等価物と置換したシステイン残基間に存在する請求項24に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が、TRAC * 01のエキソン1のTyr 10及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のSer 17又はこれらの非ヒト等価物と置換したシステイン残基間に存在する請求項24に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が、TRAC * 01のエキソン1のThr 45及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のAsp 59又はこれらの非ヒト等価物と置換したシステイン残基間に存在する請求項24に記載のタンパク質性粒子。
  • ジスルフィド結合が、TRAC * 01のエキソン1のSer 15及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のGlu 15又はこれらの非ヒト等価物と置換したシステイン残基間に存在する請求項24に記載のタンパク質性粒子。
  • 天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が排除されるように、天然型TCR細胞外定常鎖Igドメイン配列に対応する配列が、該天然型配列に対してC末端で短縮化されている請求項23〜30のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • 天然型TCR細胞外定常鎖Igドメイン配列に対応する配列において、天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基が非システイン残基に置換されている請求項23〜30のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • 天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基がセリン又はアラニンに置換されている請求項32に記載のタンパク質性粒子。
  • ディスプレイされているdTCR又はscTCR中に、天然型TCR中に存在する未対合のシステイン残基に対応する未対合のシステイン残基が存在しない請求項1〜33のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • 天然型TCR細胞外定常鎖Igドメイン配列に対応する配列が、N末端から非天然型鎖間ジスルフィド結合を形成する残基に対応する残基まで短縮化されている請求23〜34のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子。
  • 二量体T細胞レセプター(dTCR)ポリペプチド対が
    TCRα鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチド、及び
    TCRβ鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチドによって構成され、
    第1及び第2のポリペプチドが、TRAC * 01のエキソン1のThr 48及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のSer 57又はこれらの非ヒト等価物と置換したシステイン残基間のジスルフィド結合により連結され、
    dTCRポリペプチド対の一方のメンバーのC末端がファージのコートタンパク質にペプチド結合により連結されている、dTCRポリペプチド対を表面にディスプレイしている線維状ファージ粒子である請求項1に記載のタンパク質性粒子。
  • dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドが請求項8〜36のいずれか1項に規定の構造的特徴を有する、タンパク質性粒子上にディスプレイされたdTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの多様性ライブラリー。
  • 多様性がdTCR又はscTCRポリペプチドの可変ドメインに存在する請求項37に記載の多様性ライブラリー。
  • タンパク質性粒子が線維状ファージ粒子である請求項37〜39のいずれか1項に記載の多様性ライブラリー。
  • 多様性がdTCR又はscTCRポリペプチドの可変ドメインの1若しくはそれ以上の相補性決定領域及び/又はディスプレイされているdTCR若しくはscTCRポリペプチドの相補性決定領域の1若しくはそれ以上のフレームワーク領域に存在する請求項35に記載の多様性ライブラリー。
  • dTCR対又はscTCRが請求項8〜36のいずれか1項に規定の構造的特徴を有する、(a)dTCRポリペプチド対の一方の鎖及び(b)タンパク質性粒子の表面の部分を形成し得るタンパク質をコードする核酸配列に融合されたdTCRポリペプチド対の他方の鎖をコードする核酸;又はタンパク質性粒子の表面の部分を形成し得るタンパク質をコードする核酸配列に融合されたscTCRポリペプチドをコードする核酸。
  • 請求項41に記載の核酸を含む発現ベクター、又は請求項42に規定の核酸(a)を含む第1のベクターと請求項42に規定の核酸(b)とを含む第2のベクターを含む組成物。
  • 請求項41に記載の核酸を発現するファージミド又はファージゲノムベクターを含む発現系。
  • ファージミド又はファージゲノムベクターが線維状ファージから誘導される請求項43に記載の発現系。
  • ファージミド又はファージゲノムベクターがバクテリオファージgIII又はgVIIIコートタンパク質をコードする請求項44に記載の発現系。
  • ベクターが該ベクターにより発現されるTCRポリペプチドの量を所望のレベルに構成的又は誘導的に制限する配列を含む請求項43〜45のいずれか1項に記載の発現系。
  • 配列が弱プロモーター配列である請求項46に記載の発現系。
  • 配列が変異リボソーム結合部位である請求項46に記載の発現系。
  • 配列がミスセンスサプレッサー停止コドンである請求項46に記載の発現系。
  • 配列が変異開始コドンである請求項46に記載の発現系。
  • 配列が、プロモーター強度の代謝物媒介改変に従順なプロモーター配列である請求項46に記載の発現系。
  • 配列が、利用する発現系による嗜好性が低い多くのコドンを含む請求項46に記載の発現系。
  • 請求項41に記載の核酸、請求項42に記載の発現ベクター又は請求項43〜52のいずれか1項に記載の発現系を含む宿主細胞。
  • 請求項43〜52のいずれか1項に記載のファージミド発現系及びヘルパーファージを保有する宿主細胞。
  • 請求項37〜40のいずれか1項に記載のタンパク質性粒子上にディスプレイされたTCRの多様性ライブラリーを、
    特定の特性について選択する選択工程に付し、該特性を有するTCRをディスプレイするタンパク質性粒子を単離し、必要に応じて、単離した粒子を拡大させるために増幅工程に付し、及び/又は 該特性を測定するスクリーニング工程に付し、該所望の特性を有するTCRをディスプレイするタンパク質性粒子を同定し、これらタンパク質性粒子を単離し、必要に応じて、単離した粒子を拡大させるために増幅工程に付すことを含む、特定の特性を有するTCRの同定方法。
  • 特定の特性がTCRリガンドについての増大した親和性である請求項57に記載の方法。
  • (i)請求項1〜41のいずれか1項に記載のTCRディスプレイタンパク質性粒子を提供し、
    (ii)TCRディスプレイタンパク質性粒子を推定リガンド複合体と接触させ、
    (iii)TCRディスプレイタンパク質性粒子と推定リガンド複合体との結合を検出することを含むTCRリガンド複合体を検出する方法。
  • 推定TCRリガンド複合体がペプチド−MHC複合体である請求項57に記載の方法。
  • 試験化合物の存在下及び非存在下で、請求項1〜41のいずれか1項に記載のTCRディスプレイタンパク質性粒子をTCR結合性リガンドと接触させ、試験化合物の存在がTCRディスプレイタンパク質性粒子とTCR結合性リガンドとの結合を減少させるかどうかを決定することを含み、この減少が阻害剤を同定するものとされるTCRディスプレイタンパク質性粒子とTCR結合性リガンドとの間の相互作用の阻害剤を同定する方法。
  • (i)請求項8〜36のいずれか1項に規定される構造的特徴を有し、(ii)可変ドメインにおいて、所定のTCRリガンドに特異的な天然型TCRに対して変異しており、(iii)該TCRリガンドについて該天然型TCRのものより小さいKdを有する所定のTCRリガンドに特異的なTCR。
  • (i)請求項8〜36のいずれか1項に規定される構造的特徴を有し、(ii)可変ドメインにおいて、所定のTCRリガンドに特異的な天然型TCRに対して変異しており、(iii)表面プラズモン共鳴により測定される該TCRリガンドについて該天然型TCRのものより小さいKdを有する所定のTCRリガンドに特異的なTCR。
  • (i)請求項8〜36のいずれか1項に規定される構造的特徴を有し、(ii)可変ドメインにおいて、所定のTCRリガンドに特異的な天然型TCRに対して変異しており、(iii)該TCRリガンドについて該天然型TCRのものより小さいオフレート(K off )を有する所定のTCRリガンドに特異的なTCR。
  • (i)請求項8〜36のいずれか1項に規定される構造的特徴を有し、(ii)可変ドメインにおいて、所定のTCRリガンドに特異的な天然型TCRに対して変異しており、(iii)表面プラズモン共鳴により測定される該TCRリガンドについて該天然型TCRのものより小さいオフレート(K off )を有する所定のTCRリガンドに特異的なTCR。
  • 請求項18〜36のいずれか1項に規定のαβへテロ二量体TCRの構造的特徴を有する請求項60〜63のいずれか1項に記載の二量体TCR。
  • 少なくとも1つの相補性決定領域及び/又はそのフレームワークにおいて天然型TCRに対して変異している請求項60〜64のいずれか1項に記載の二量体TCR。
  • 所定のMHC型に特異的である請求項60〜65のいずれか1項に記載のTCR。
  • 所定のpMHCに特異的である請求項60〜65のいずれか1項に記載のTCR。
  • HLA-A2 Taxペプチド(LLFGYPVYV)(配列番号21)複合体に特異的である請求項60〜65又は67のいずれか1項に記載のTCR。
  • 配列番号172、173、174又は175に示されたβ鎖可変ドメインアミノ酸を含む請求項68に記載のTCR。
  • 配列番号171に示された番号付けを使用してβ鎖可変ドメインアミノ酸99M、99V、100S、100P、101A、102E、102Q、104H、105P、105D及び106Qの1又はそれ以上を含む請求項68に記載のTCR。
  • 配列番号171に示された番号付けを使用してβ鎖可変ドメインアミノ酸99M、100S及び101Aを含む請求項68に記載のTCR。
  • 配列番号171に示された番号付けを使用してβ鎖可変ドメインアミノ酸105Dを含む請求項68に記載のTCR。
  • 配列番号171に示された番号付けを使用してβ鎖可変ドメインアミノ酸99V及び100Pを含む請求項68に記載のTCR。
  • 配列番号171に示された番号付けを使用してβ鎖可変ドメインアミノ酸104H及び105Pを含む請求項68に記載のTCR。
  • HLA-A2 NY-ESOペプチド(SLLMITQC)(配列番号22)複合体に特異的である請求項60〜65又は67のいずれか1項に記載のTCR。
  • 請求項60〜78のいずれか1項に記載のTCRをコードする核酸。
  • 治療化合物に結合した請求項60〜75のいずれか1項に記載のTCR。
  • 造影化合物に結合した請求項60〜75のいずれか1項に記載のTCR。
  • 細胞傷害性化合物に結合した請求項60〜75のいずれか1項に記載のTCR。
  • TCRがHLA-A2 Taxペプチド(LLFGYPVYV)(配列番号21)複合体に特異的である請求項77又は79に記載のTCR。
  • TCRがHLA-A2 NY-ESOペプチド(SLLMITQC)(配列番号22)複合体に特異的である請求項77又は79に記載のTCR。
  • HTLV-1感染を患っている被検体に、請求項68〜74又は79のいずれか1項に記載のTCRの有効量を投与することを含むHTLV-1感染の処置方法。
  • HTLV-1感染処置用組成物の製造における請求項68〜74又は79のいずれか1項に記載のTCRの使用。
  • ガンを患っている被検体に、請求項75又は81に記載のTCRの有効量を投与することを含むガンの処置方法。
  • ガン処置用組成物の製造における請求項75又は81に記載のTCRの使用。
  • 说明书全文

    本発明は、T細胞レセプター(TCR)をディスプレイしているタンパク質性粒子(例えばファージ又はリボソーム粒子)及びその多様性ライブラリーに関する。

    天然型TCR
    例えばWO99/60120に記載のように、TCRは、T細胞による特定の主要組織適合性複合体(MHC)-ペプチド複合体の認識を媒介し、それ自体が免疫系の細胞兵器の機能化に必須である。

    抗体及びTCRは、特異的な様式で抗原を認識する唯2つの分子型であり、したがってTCRは、MHCにおいて提示される特別なペプチド抗原(この外来ペプチドは、細胞内の異常の唯一の徴候であることが多い)の唯一のレセプターである。 T細胞認識は、T細胞及び抗原提示細胞(APC)が直接物理的接触をしているときに起こり、抗原特異的TCRとpMHC複合体との結びつきにより開始される。

    天然型(native)TCRは、シグナル伝達を媒介することに関与するCD3複合体の非変形タンパク質と関係する免疫グロブリンスーパーファミリーのヘテロ二量体細胞表面タンパク質である。 TCRはαβ形態及びγδ形態で存在し、これらの形態は、構造的に類似するが、全く異なる解剖学的所在及びおそらくは機能を有する。 MHCクラスI及びクラスIIリガンドもまた、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質であるが、APC細胞表面で多様な数々の短いペプチドフラグメントを提示することを可能にする高度に多形性のペプチド結合部位を有して抗原提示に特化している。

    2つのさらなるクラスのタンパク質が、TCRリガンドとして機能し得ることが知られている。 (1)CD1抗原は、その遺伝子が古典的なMHCクラスI及びクラスII抗原とは異なる染色体に位置するMHCクラスI関連分子である。 CD1分子は、従来のクラスI及びクラスII-MHC−pep複合体と類似の様式で、ペプチド部分及び非ペプチド(例えば、脂質、糖脂質)部分をT細胞に提示することができる(例えば、Barclayら(1997) The Leucocyte Antigen Factsbook 第2版,Academic Press、及びBauer(1997) Eur J Immunol 27(6) 1366-1373を参照)。 (2)細菌性スーパー抗原は、クラスII MHC分子とTCRのサブセットとの両方に結合できる可溶性毒素である(Fraser(1989) Nature 339 221-233)。 多くのスーパー抗原が1又は2のVβセグメントに対して特異性を示す一方、その他のものはより無差別な結合を示す。 ともかく、スーパー抗原は、多クローン性様式でT細胞のサブセットを刺激する能により、亢進した免疫応答を誘発することができる。

    天然型ヘテロ二量体αβ及びγδTCRの細胞外部分は2つのポリペプチドからなり、その各々が、膜近位定常ドメイン及び膜遠位可変ドメインを有する。 定常ドメイン及び可変ドメインの各々が鎖内ジスルフィド結合を含む。 可変ドメインは、抗体の相補性決定領域(CDR)に類似する高度多形性ループを含む。 αβTCRのCDR3は、MHCにより提示されたペプチドと相互作用し、αβTCRのCDR1及びCDR2は、そのペプチド及びMHCと相互作用する。 TCR配列の多様性は、連結している可変(V)、多様性(D)、連結(J)及び定常遺伝子の体細胞再編成(somatic rearrangement)を介して生じる。

    機能的なα鎖ポリペプチド及びγ鎖ポリペプチドは、再編成V−J−C領域により形成される一方、β鎖及びδ鎖はV−D−J−C領域からなる。 細胞外定常ドメインは、膜近位領域及び免疫グロブリン領域を有する。 それぞれTRAC及びTRDCとして知られる、単一のα鎖及びδ鎖定常ドメインが存在する。 β鎖定常ドメインは、TRBC1及びTRBC2として知られる(IMGT命名法)2つの異なるβ定常ドメインの1つから構成される。 これらβ定常ドメイン間には4つのアミノ酸変化が存在し、そのうちの3つは、本発明のファージ粒子上にディスプレイされる単鎖TCRを作成するために使用するドメイン内にある。 これらの変化は全て、TRBC1及びTRBC2のエキソン1内にあり(N 4 K 5 →K 4 N 5及びF 37 →Y(IMGT番号付け、差異TRBC1→TRBC2))、2つのTCRβ鎖定常領域間の最後のアミノ酸変化は、TRBC1及びTRBC2のエキソン3にある(V 1 →E)。 定常γドメインは、TRGC1、TRGC2(2x)又はTRGC2(3x)のいずれか1つから構成される。 2つのTRGC2定常ドメインは、この遺伝子のエキソン2によりコードされるアミノ酸の、存在するコピー数のみが異なる。

    TCR細胞外ドメインの各々の範囲はいくらか変化し得る。 しかし、当業者は、The T Cell Receptor Facts Book,Lefranc & Lefranc,Academic Press発行,2001のような参考文献を使用して、ドメイン境界の位置を容易に決定できる。

    組換えTCR
    組換えTCRの作成は、それらが以下の目的に適切な可溶性TCRアナログを提供するので有益である:
    ・TCR/リガンド相互作用(例えばαβTCRに関するpMHC)の研究 ・TCR関連相互作用の阻害剤についてのスクリーニング ・治療剤候補の基礎の提供

    今日までに、組換えTCRの作成のために多くの構築物が考案されてきた。 これらの構築物は、2つの広義のクラス、単鎖TCR及び二量体TCRに分けられ、これらの構築物に関連する文献を下記に概説する。 単鎖TCR(scTCR)は、一本のアミノ酸鎖からなる人工の構築物であり、これは天然型二量体TCRと同様にMHC−ペプチド複合体に結合する。 不運にも、α鎖及びβ鎖をその両方が1つのオープンリーディングフレームで発現するように単に連結することによって機能的なα/βアナログscTCRを作成する試みは、成功しなかった。 これは、おそらく、α−β可溶ドメイン対合の当然の不安定性による。

    したがって、α及びβ鎖のいずれか又は両方の種々の短縮化を使用する特別な技法が、scTCRの作成に必要とされてきた。 これらの方式は、非常に限られた範囲のscTCR配列に対してのみ適用可能であるようである。 Hooら(1992)PNAS. 89(10):4759-63は、25アミノ酸リンカーと連結した短縮型β及びα鎖と細菌細胞周辺質発現(bacterial periplasmic expression)とを使用する2C T細胞クローンからの単鎖形式でのマウスTCRの発現を報告する(Schodinら(1996)Mol.Immunol.33(9):819-29もまた参照)。 この設計はまた、Hollerら(2000)PNAS. 97(10):5387-92により報告された、2C scTCRから誘導され同じH2-Ld制限アロエピトープ(alloepitope)に結合するm6単鎖TCRの基礎をなす。 Shustaら(2000)Nature Biotechnology 18:754-759及び米国特許第6,423,538号は、酵母ディスプレイ実験においてマウス単鎖2C TCR構築物を使用することを報告し、これは亢進した熱安定性及び溶解性を有する変異TCRを産生した。 この報告はまた、これらディスプレイされた2C TCRがそのコグネイトpMHCを発現する細胞に選択的に結合することができることを証明した。 Khandekarら(1997)J.Biol.Chem. 272(51):32190-7は、マウスD10 TCRについて、このscTCRをMBPに融合して細菌細胞質で発現させたが、同様な設計を報告している(Hareら(1999)Nat.Struct.Biol.6(6):574-81もまた参照)。 Hilyardら(1994)PNAS. 91(19):9057-61は、Vα−リンカー−Vβ設計を使用し細菌細胞周辺質で発現させた、インフルエンザマトリクスタンパク質−HLA-A2に特異的なヒトscTCRを報告している。

    Chungら(1994)PNAS. 91(26)12654-8は、Vα−リンカー−Vβ−Cβ設計及び哺乳動物細胞株の表面での発現を使用するヒトscTCRの作成を報告している。 この報告は、scTCRのペプチド−HLA特異的結合に対しては何らの言及も含んでいない。 Plaksinら(1997)J.Immunol. 158(5):2218-27は、HIV gp120-H-2D dエピトープに特異的なマウスscTCRを作成するための同様なVα−リンカー−Vβ−Cβ設計を報告している。 このscTCRは、細菌封入体として発現し、インビトロでリフォールディングする。

    多くの論文が、それぞれのサブユニットを接続する天然型ジスルフィドブリッジを含むTCRへテロ二量体の作成を記載している(Garbocziら(1996)Nature 384(6605):134-41;Garbocziら(1996)J Immunol 157(12):5403-10;Changら(1994)PNAS USA 91:11408-11412;Davodeauら(1993)J.Biol.Chem.268(21):15455-15460;Goldenら(1997)J.Imm.Meth.206:163-169;米国特許第6080840号)。 しかし、このようなTCRはTCR特異的抗体により認識され得るが、いずれも、相対的に高い濃度以外ではその天然型リガンドを認識することを示されておらず、そして/又は安定でなかった。

    WO99/60120には、天然型リガンドを認識し得るように正確にフォールディングし、経時的に安定であり、合理的な量で作成することが可能な可溶性TCRが記載されている。 このTCRは、C末端の二量体化ペプチド(例えばロイシンジッパー)により、それぞれTCRβ又はδ鎖細胞外ドメインと二量体化したTCRα又はγ鎖細胞外ドメインを含む。 TCRを作成するためのこのストラテジーは、一般に、全てのTCRに適用可能である。

    Reiterら(Immunity,1995,2:281-287)は、一方がPseudomonasエクソトキシン(PE38)の短縮型形態に連結しているジスルフィド安定化TCRα及びβ可変ドメインを含む可溶性分子の構築を詳述している。 述べられているこの分子を作成するための理由の1つは、単鎖TCRの本来的な不安定性を克服することであった。 TCR可変ドメイン中の新規ジスルフィド結合の位置は、これらが予め導入されている抗体の可変ドメインとの相同性により同定された(例えば、Brinkmannら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7538-7542及びReiterら(1994)Biochemistry 33:5451-5459を参照)。 しかし、抗体とTCRの定常ドメイン間にそのような相同性はないので、この技法は、TCR定常ドメイン間の新たな鎖間ジスルフィド結合の適切な部位を同定するために用いることができなかった。

    上記のように、Shustaら(2000)Nature Biotechnology 18:754-759は、酵母ディスプレイ実験で単鎖2C TCR構築物を使用することを報告している。 ファージ粒子上でscTCRをディスプレイする原理は、以前から議論されてきた。 例えば、WO99/19129は、scTCRの作成を詳述し、Vα−リンカー−VβCβ形式のscTCRをディスプレイしているファージ粒子の作成のための潜在的方法を概説している。 しかし、この出願は、TCRをディスプレイしている当該ファージ粒子の作成を証明する例証を含んでいない。 しかし、この出願は、確かに同時係属中の出願に言及している:「バクテリオファージコートタンパク質(遺伝子II又は遺伝子VIII)に融合させたsc-TCR分子をコードするDNAセグメントを含むDNAベクターの構築は、係属中の米国特許出願第08/813,781号に記載されている。」

    さらに、この出願は、その正確なコンホメーションを検証するために作成された可溶性で、ファージにディスプレイされていないscTCRを、抗TCR抗体又はスーパー抗原MHC複合体が認識することができることに基づいている。 したがって、scTCRのペプチド−MHC結合の真正な特異性は、いかなる形式でも最終的に証明されていない。 最後に、更なる研究(Ondaら(1995)Molecular Immunology 32(17-18)1387-1397)は、それぞれβ鎖が存在しない2つのマウスTCRα鎖のファージディスプレイを開示している。 この研究は、マイクロタイターウェルに固定された、完全なTCRがマウスクラスI MHC IA dにより提示されるときに通常応答する同じペプチドに、(A1.1マウスハイブリドーマから誘導された)TCRα鎖の1つをディスプレイしているファージ粒子が優先的に結合することを証明した。

    スクリーニング用途 多くの重要な細胞相互作用及び細胞応答(TCR媒介免疫系を含む)は、細胞表面レセプターと、他の細胞の表面に提示されるリガンドとの間でなされる接触により制御される。 これらのタイプの特異的分子接触は、ヒト体内での正確な生化学的調節に決定的に重要であり、したがって精力的に研究されている。 多くの場合、このような研究の目標は、疾患を予防し又は疾患と戦うために、細胞応答を調整する手段を考案することである。

    したがって、ある程度の特異性でヒトレセプター又はリガンド分子と結合する化合物を同定するために用いる方法は、新たな疾患治療剤の発見及び開発のための先導として重要である。 特に、あるレセプター−リガンド相互作用に干渉する化合物は、治療用薬剤又はキャリアとしての直接の潜在能力を有する。

    非常に大きな化合物ライブラリーの比較的容易で対費用効率の高い作成を可能にするコンビナトリアル・ケミストリーにおける進歩は、化合物試験の範囲を莫大に増大させた。 今や、スクリーニングプログラムの限界は、ほとんどの場合、用いることができるアッセイの性質、適切なレセプター及びリガンド分子の作成及びこれらアッセイが高スループットスクリーニング法にどのくらい十分に適合させることができるかにある。

    ディスプレイ法 所定のペプチド又はポリペプチドをタンパク質性粒子の表面に提示することがしばしば所望され得る。 このような粒子は、ペプチド又はポリペプチドの精製を援助するものとして働き得る(なぜなら、ペプチド又はポリペプチドを保有する粒子が、沈降又は他の方法によって欲しない混入物質と分離され得るからである)。 これらはまた、粒子ワクチンとして働き得、表面ディスプレイされたペプチド又はポリペプチドに対する免疫応答が、粒子提示により刺激される。 酵母レトロトランスポゾンのタンパク質p24及びB型肝炎表面コートタンパク質は、粒子に自己組織化(self assemble)するタンパク質の例である。 目的のペプチド又はポリペプチドとこれら粒子形成性タンパク質との融合は、得られる粒子の表面にペプチド又はポリペプチドを提示する認識された方法である。

    しかし、粒子ディスプレイ法は、主に、所望され得る性質(例えば、亢進した発現収率、結合及び/又は安定性の特性)を有するタンパク質を同定するために使用されてきた。 これらの方法は、タンパク質性粒子の表面に発現されるタンパク質又はポリペプチドの多様性プール又は「ライブラリー」を作成することを含む。 これらの粒子は2つの鍵となる特徴を有する。 第一に、各粒子は、単一の変形タンパク質又はポリペプチドを提示し、第二に、発現されるタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝物質は、粒子の遺伝物質に結合している。 次いで、このライブラリーは、1回又はそれ以上の選択に付される。 例えば、これは、リガンドを変異レセプターの粒子ディスプレイライブラリーと接触させること、及びどの変異レセプターが最高の親和性でリガンドと結合するかを同定することからなってもよい。 一旦、選択プロセスが完了すると、所望の性質を有するレセプターを単離することができ、レセプターの配列決定を可能とするために、その遺伝物質を増幅することができる。 これらのディスプレイ法は、2つの広義のカテゴリー、インビトロディスプレイ及びインビボディスプレイに分類される。

    全てのインビボディスプレイ法は、複製可能な粒子(例えばプラスミド又はファージレプリコン)の遺伝子核酸中に又はこれと共に通常コードされるライブラリーが、タンパク質又はポリペプチドの発現を可能とするように細胞に形質転換される工程に基づく(Pluckthun(2001)Adv Protein Chem 55 367-403)。 タンパク質又はポリペプチドのインビボディスプレイに適切であることが証明されている多くのレプリコン/宿主系が存在する。 これらには以下のものが含まれる:
    ファージ/細菌細胞 プラスミド/CHO細胞 酵母2μmプラスミドをベースとするベクター/酵母細胞 バキュロウイルス/昆虫細胞 プラスミド/細菌細胞。

    インビボディスプレイ法は、細胞表面タンパク質又はポリペプチドに融合された目的のタンパク質又はポリペプチドからなる融合タンパク質をコードするプラスミドが宿主細胞に導入される細胞表面ディスプレイ法を含む。 この融合タンパク質の発現は、目的のタンパク質又はポリペプチドが細胞の表面でディスプレイされることに至る。 次いで、これらの目的のタンパク質又はポリペプチドをディスプレイしている細胞は、選択プロセス(例えばFACS)に付すことが可能であり、選択した細胞から得たプラスミドを単離及び配列決定することができる。 細胞表面ディスプレイ系は、哺乳動物細胞(Higuschi(1997)J Immunol.Methods 202 193-204)、酵母細胞(Shusta(1999)J Mol Biol 292 949-956)及び細菌細胞(Sameulson(2002)J.Biotechnol 96(2)129-154)について考案されている。

    種々のインビボディスプレイ技法の多くの総説が公表されている(例えば、Hudson(2002)Expert Opin Biol Ther (2001) 1(5) 845-55及びSchmitz(2000)21(Supp A)S106-S112)。

    インビトロディスプレイ法は、mRNAのライブラリーを多様な数々のタンパク質又はポリペプチド変形体に翻訳するためのリボソームの使用に基づく。 生成されたタンパク質又はポリペプチドとこれら分子をコードするmRNAとの間の連結は、2つの方法の一方により維持される。 従来のリボソームディスプレイは、短い(代表的には40〜100アミノ酸)リンカー配列とディスプレイされるべきタンパク質又はポリペプチドとをコードするmRNA配列を利用する。 リンカー配列は、ディスプレイされたタンパク質又はポリペプチドが、リボソームにより立体障害されないで、リフォールディングするに十分な空間を許容する。 mRNA配列は「停止」コドンを欠いており、このことにより確実に、発現されたタンパク質又はポリペプチド及びRNAがリボソーム粒子に付着したままになる。 関連するmRNAディスプレイ法は、目的のタンパク質又はポリペプチドをコードするmRNA配列及びプロマイシン部分を有するDNAリンカーの調製に基づく。 リボソームがmRNA/DNA接合部に達するや否や、翻訳は停止し、プロマイシンはリボソームと共有結合を形成する。 これら2つの関連するインビトロディスプレイ法の最近の総説については、Amstutz(2001)Curr Opin Biotechnol 12 400-405を参照。

    特に好ましいのは、バクテリオファージ粒子がその表面タンパク質に融合した非相同ペプチド又はポリペプチドを発現することができる能力に基づくファージディスプレイ技法である(Smith(1985)Science 217 1315-1317)。 手順は全く一般的であり、ポリペプチド単量体のディスプレイについての当該分野において十分に理解されている。 しかし、天然型形態で二量体として会合するポリペプチドの場合、抗体のファージディスプレイのみが十分に研究されてきたようである。

    単量体ポリペプチドディスプレイについては2つの主な手順が存在する:
    第1(方法A)は、ベクター(ファージミド)中に、バクテリオファージコートタンパク質をコードするDNAに融合させた非相同ペプチド又はポリペプチドをコードするDNAを挿入することによる。 次いで、非相同ペプチド又はポリペプチドをディスプレイしているファージ粒子の発現を、そのファージミドで細菌細胞をトランスフェクトした後に形質転換細胞を「ヘルパーファージ」に感染させることにより行なう。 ヘルパーファージは、機能的なファージ粒子を作成するために必要であるファージミドによりコードされないファージタンパク質の供給源として作用する。
    第2(方法B)は、非相同ペプチド又はポリペプチドをコードするDNAを、バクテリオファージコートタンパク質をコードするDNAに融合させた完全ファージゲノム中に挿入することによる。 次いで、非相同ペプチド又はポリペプチドをディスプレイしているファージ粒子の発現を、そのファージゲノムを細菌細胞に感染させることにより行なう。 この方法は、「単一工程」プロセスであるという、第1の方法に対する利点を有する。 しかし、得られるファージ粒子中へのパッケージングに成功し得る非相同DNA配列のサイズは、減少する。 M13、T7及びλがこの方法に適切なファージの例である。

    方法Bの変形には、ディスプレイされる非相同ペプチドをコードするファージゲノム中のDNAに、ヌクレオチド結合性ドメインをコードするDNA配列を付加し、さらに、ファージゲノムに、対応するヌクレオチド結合性部位を付加することが含まれる。 このことにより、非相同ペプチドがファージゲノムに直接付着するように誘導される。 次いで、このペプチド/ゲノム複合体を、非相同ペプチドをディスプレイするファージ粒子中にパッケージングする。 この方法は、WO99/11785に十分に記載されている。

    次いで、ファージ粒子を回収し、非相同ペプチド又はポリペプチドの結合特性を研究するために使用することができる。 一旦単離されると、ファージミド又はファージDNAは、ペプチド又はポリペプチドをディスプレイしているファージ粒子から回収することができ、このDNAは、PCRにより複製することができる。 PCR産物は、所定のファージ粒子によりディスプレイされた非相同ペプチド又はポリペプチドを配列決定するために使用することができる。

    単鎖抗体及びそのフラグメントのファージディスプレイは、これらポリペプチドの結合特性を研究する慣用手段となっている。 ファージディスプレイ技法及びバクテリオファージの生物学を総説する利用可能な多くの本が存在する(例えばPhage Display - A Laboratory Manual,Barbasら(2001)Cold Spring Harbour Laboratory Pressを参照)。

    第3のファージディスプレイ法(方法C)は、所望の位置にシステイン残基を有する非相同ポリペプチドは、ファージミド又はファージゲノムによって可溶形態で発現させることができ、表面に露出した位置にもシステイン残基を有する改変ファージ表面タンパク質と、2つのシステイン間のジスルフィド連結の形成により、結合させことができるという事実に基づく。 WO01/05950は、単鎖抗体由来ペプチドの発現についてこの代替連結法の使用を詳述している。

    (発明の簡単な説明)
    天然型TCRは、機能的二量体として安定性を維持するに必須である非常に長い膜貫通ドメインを有するへテロ二量体である。 上記のように、TCRは、可溶形態が研究及び治療目的に有用であり、不溶性の天然型形態のディスプレイは有用性がほとんどない。 他方、可溶性安定形態のTCRは、設計が困難であると証明されており、ほとんどのディスプレイ法は単量体ペプチド及びポリペプチドについてのみ記載されてきたようであるので、可溶性二量体TCRに適切なディスプレイ法は研究されてきていない。 さらに、ディスプレイされたTCRの機能性は、TCR二量体の可変ドメインの適正な会合に依存するので、機能的二量体TCRのディスプレイの成功は重要である。

    WO99/18129には次の記述:「sc-TCR融合タンパク質をコードするDNA構築物は、1997年3月7日に出願された係属中の米国特許出願第08/813,781号(この開示は参考として本明細書中に援用する)に記載の方法に従ってバクテリオファージディスプレイライブラリーを作成するために使用することができる。」があるが、そのようなディスプレイの現実の記載はこの出願には含まれていない。 しかし、この出願の発明者らは、ファージ粒子上での2つのマウスscTCRのディスプレイを証明する論文(Weidanz(1998)J Immunol Methods 221 59-76)を発表した。

    WO01/62908は、scTCR及びscTCR/Ig融合タンパク質のファージディスプレイの方法を開示している。 しかし、開示した構築物の機能性(特異的pMHC結合性)は評価しなかった。

    最後に、未成熟T細胞の表面上での多様性TCRライブラリーのディスプレイのためのレトロウイルス媒介方法がマウスTCRについて証明されている。 未成熟T細胞の表面にディスプレイされた変異TCRのライブラリーが、pMHC四量体を用いるフローサイトメトリーによりスクリーニングされた。 これにより、コグネイトpMHC又はその変形体に特異的であるT+CR変形体の同定に至った(Helmutら(2000)PNAS 97(26) 14578-14583)。

    本発明は、一部、単鎖及び二量体のTCRをタンパク質性粒子との表面融合体として発現させることができるという知見に基づき。 本発明により、α/βアナログおよびγ/δアナログのscTCR及びdTCR構築物をディスプレイしているタンパク質性粒子が利用可能になる。 TCRがディスプレイされるタンパク質性粒子には、TCRが共有結合する細胞表面タンパク質又はポリペプチド分子を有する自己組織化粒子形成性タンパク質、ファージ、ウイルス誘導、リボソーム粒子及び細胞が含まれる。 このようなタンパク質性粒子ディスプレイされるTCR(proteinaceous particle-displayed TCR)は、精製及びスクリーニング目的、特に、所望され得る特性(例えば標的MHC−ペプチド複合体についての高親和性)を有するTCRを同定するためのバイオパニング用の粒子ディスプレイされるTCRの多様性ライブラリーとして有用である。 後者に関連して、粒子ディスプレイされるscTCRは、所望のTCRの同定に有用であり得るが、その情報は、より良好には、究極的な治療での使用のためのアナログ二量体TCRの構築に適用し得る。

    (発明の詳細な説明)
    1つの広い観点では、本発明は、
    (i)タンパク質性粒子がリボソームであり、かつ、TCRが単鎖TCR(scTCR)ポリペプチド又は二量体TCR(dTCR)ポリペプチド対である、或いは
    (ii)タンパク質性粒子がファージ粒子、又はTCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞であり、かつ、TCRがヒトscTCR又はヒトdTCRポリペプチド対である、或いは
    (iii)タンパク質性粒子がファージ粒子、又はTCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞であり、かつ、TCRが非ヒトdTCRポリペプチド対である、或いは
    (iv)タンパク質性粒子がファージ粒子、又はTCRが共有結合する細胞表面タンパク質若しくはポリペプチド分子を有する細胞であり、かつ、TCRが、天然型TCR鎖に存在する細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するTCRアミノ酸配列とリンカー配列とを含むscTCRポリペプチドであり、リンカー配列は、天然型TCRのある1つの鎖の可変ドメイン配列に対応する可変ドメイン配列を、別の天然型TCR鎖の定常ドメイン配列に対応する定常ドメイン配列に連結し、天然型T細胞レセプター中に等価物がないジスルフィド結合が定常ドメイン配列の残基同士を連結している ことを特徴とするT細胞レセプター(TCR)を表面にディスプレイしているタンパク質性粒子を提供する。

    1つの好ましい実施形態では、本発明は、二量体T細胞レセプター(dTCR)ポリペプチド対が、天然型TCR鎖に存在する細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するTCRアミノ酸配列によって構成され、単鎖T細胞レセプター(scTCR)は、天然型TCR鎖に存在する細胞外の定常ドメイン配列及び可変ドメイン配列に対応するTCRアミノ酸配列並びにリンカー配列により構成され、リンカー配列は、天然型TCRのある1つの鎖の可変ドメイン配列に対応する可変ドメイン配列を、別の天然型TCR鎖の定常ドメイン配列に対応する定常ドメイン配列に連結し;dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの可変ドメイン配列は、天然型TCR中と実質的に同様に互いに配向しており、scTCRポリペプチドの場合には、天然型T細胞レセプター中に等価物がないジスルフィド結合がポリペプチドの残基同士を連結している、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドを表面にディスプレイしているタンパク質性粒子を提供する。
    αβscTCR又はdTCRが本発明に従ってディスプレイされる場合、α及びβセグメントの可変ドメイン配列が、天然型αβT細胞レセプター中と実質的に同様に互いに配向しているという要件は、単に、TCRが機能的であることの代替的表現であり、これは、その分子が該当するTCRリガンド(pMHC複合体、CD1−抗原複合体、スーパー抗原又はスーパー抗原/pMHC複合体)に結合することの確認によって検証することができ、結合すればこの要件を充足する。 pMHC複合体との相互作用は、Biacore 3000(商標)又はBiacore 2000(商標)装置を使用して測定することができる。 WO99/6120は、MHC−ペプチド複合体へのTCR結合を分析するために必要な方法の詳細な説明を提供する。 これらの方法は、TCR/CD1及びTCR/スーパー抗原相互作用の研究に等しく適用可能である。 これらの方法をTCR/CD1相互作用の研究に適用するために、可溶形態のCD1が必要であり、その作成は、Bauer(1997)Eur J Immunol 27(6) 1366-1373に記載されている。 本発明のγδTCRの場合、これらの分子のコグネイトリガンドは未知であり、したがってそのコンホメーションを検証する二次的手段(例えば抗体による認識)を用いることができる。 δ鎖可変領域に特異的なモノクローナル抗体MCA991T(Serotecから入手可能)は、この課題に適切な抗体の例である。

    本発明のscTCR又はdTCRは、例えば以下の2つの手段により、タンパク質性粒子、例えばファージ粒子、好ましくは線維状ファージ粒子にディスプレイされてもよい:
    (i)dTCRポリペプチド対の一方のメンバーのC末端又はscTCRポリペプチドのC末端又はいずれかのC末端に付着した短いペプチドリンカーのC末端は、タンパク質性粒子の表面露出残基に、ペプチド結合により直接連結することができる。 例えば、表面露出残基は、好ましくは、バクテリオファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIの遺伝子産物のN末端にある;及び
    (ii)dTCRポリペプチド対の一方のメンバーのC末端又はscTCRポリペプチドのC末端又はいずれかのC末端に付着した短いペプチドリンカーのC末端は、導入したシステイン残基を介して、タンパク質性粒子の表面露出システイン残基に、ジスルフィド結合により連結することができる。 例えば、表面露出残基は、再び、好ましくは、バクテリオファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIの遺伝子産物のN末端にある。

    上記方法(i)が好ましい。 scTCRの場合、TCRをコードする核酸は、粒子形成性タンパク質又は複製可能な粒子(例えばファージ又は細胞)の表面タンパク質をコードする核酸に融合していてもよい。 或いは、mRNAであるが、停止コドンを有さないか又はプロマイシンRNAに融合した核酸は、TCRがリボソーム粒子に融合したままであるように、リボソームにより翻訳されてもよい。 dTCRの場合、TCRの一方の鎖をコードする核酸を、粒子形成性タンパク質又は複製可能な粒子(例えばファージ又は細胞)の表面タンパク質をコードする核酸に融合してもよく、TCRポリペプチド対の第2の鎖は、第1の鎖をディスプレイしている得られる発現粒子と会合させてもよい。 2つの鎖の適正な機能的会合は、下記でより十分に説明するように、鎖間ジスルフィド結合を形成し得る、2つの鎖の定常ドメイン中のシステインの存在により補助され得る。

    ディスプレイされるscTCR
    ディスプレイされるscTCRポリペプチドは、例えば、
    TCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRα又はδ鎖可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列により構成される第1のセグメント、
    TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ又はγ鎖可変ドメインに対応するアミノ酸配列により構成される第2のセグメント、
    第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するか又はその逆に連結するリンカー配列、及び 第1及び第2の鎖の間のジスルフィド結合 を有し、ジスルフィド結合が、天然型αβ又はγδT細胞レセプター中に等価物を有さず、リンカー配列の長さ及びジスルフィド結合の位置が、第1及び第2のセグメントの可変ドメイン配列が天然型αβ又はγδT細胞レセプター中と実質的に同様に互いに配向しているような長さ及び位置であるものであってもよい。

    或いは、ディスプレイされるscTCRは、
    TCRα又はδ鎖可変ドメインに対応するアミノ酸配列により構成される第1のセグメント、
    TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ又はγ鎖可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列により構成される第2のセグメント、及び 第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列 を有するもの(ただし、タンパク質性粒子がファージである場合、scTCRはヒトTCRに対応する)であってもよく、又は
    TCRβ又はγ鎖可変ドメインに対応するアミノ酸配列により構成される第1のセグメント、
    TCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRα又はδ鎖可変ドメイン配列に対応するアミノ酸配列により構成される第2のセグメント、及び 第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列 を有するもの(ただし、タンパク質性粒子がファージである場合、scTCRはヒトTCRに対応する)であってもよい。

    ディスプレイされるdTCR
    タンパク質性粒子にディスプレイされるdTCRは、
    TCRα又はδ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチド、及び
    TCRβ又はγ鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチド より構成され、第1及び第2のポリペプチドが、天然型αβ又はγδT細胞レセプター中に等価物を有さないジスルフィド結合により連結されているものであり得る。

    好ましくは、dTCRは線維状ファージ粒子上にディスプレイされ、
    TCRα鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRα鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチド、及び
    TCRβ鎖可変ドメイン配列に対応する配列がTCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチド より構成され、第1及び第2のポリペプチドが、TRAC * 01のエキソン1のThr48及びTRBC1 * 01若しくはTRBC2 * 01のエキソン1のSer57又はこれらの非ヒト等価物に対して置換したシステイン残基間のジスルフィド結合により連結され、dTCRポリペプチド対の1つのメンバーのC末端が、ファージのコートタンパク質にペプチド結合により連結されるものである。

    dTCRポリペプチド対及びscTCRポリペプチド
    scTCR又はdTCRに存在する定常ドメイン細胞外配列は、好ましくは、ヒトTCRのそれらに対応し、可変ドメイン配列も同様である。 しかし、このような配列間の対応は、アミノ酸レベルで1:1である必要はない。 対応するヒトTCR配列に対するN若しくはC末端短縮並びに/又はアミノ酸欠失及び/若しくは置換は許容される。 特に、第1及び第2のセグメントに存在する定常ドメイン細胞外配列は、scTCR又はdTCRが結合するリガンドとの接触に直接関与しないので、天然型TCRの細胞外定常ドメイン配列より短くてもよいし、又はこの配列に対する置換若しくは欠失を含んでいてもよい。

    dTCRポリペプチド対の一方若しくはscTCRポリペプチドの第1のセグメントに存在する定常ドメイン細胞外配列は、TCRα鎖の細胞外定常Igドメインに対応する配列を含んでもよく、及び/又はその対の他方のメンバー若しくは第2のセグメントに存在する定常ドメイン細胞外配列は、TCRβ鎖の細胞外定常Igドメインに対応する配列を含んでもよい。

    本発明の1つの実施形態では、dTCRポリペプチド対の一方のメンバー若しくはscTCRポリペプチドの第1のセグメントは、TCRα鎖の定常ドメインの実質的に全ての細胞外ドメインのN末端に融合したTCRα鎖の実質的に全ての可変ドメインに対応し、及び/又はその対の他方のメンバー若しくは第2のセグメントは、TCRβ鎖の定常ドメインの実質的に全ての細胞外ドメインのN末端に融合したTCRβ鎖の実質的に全ての可変ドメインに対応する。

    別の実施形態では、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在する定常ドメイン細胞外配列は、TCRの天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を排除するように、C末端で短縮化した天然型TCRのα及びβ鎖の定常ドメインに対応する。 或いは、これらシステイン残基は、天然型ジスルフィド結合が欠失するように別のアミノ酸残基(例えばセリン又はアラニン)で置換していてもよい。 加えて、天然型TCRβ鎖は、対合していないシステイン残基を含むが、その残基は、本発明のscTCRのβ配列から欠失されていてもよいし、その配列において非ステイン残基で置換されていてもよい。

    本発明の1つの特別な実施形態において、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するTCRα及びβ鎖可変ドメイン配列は、併せて、第1のTCRの機能的な可変ドメインに対応していてもよく、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するTCRα及びβ鎖定常ドメイン細胞外配列は、第2のTCRのものに対応していてもよいが、ただし、第1及び第2のTCRは同じ種に由来する。 したがって、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するα及びβ鎖可変ドメイン配列は、第1のヒトTCRのそれらに対応していてもよく、α及びβ鎖定常ドメイン細胞外配列は、第2のヒトTCRのそれらに対応していてもよい。 例えば、A6 Tax sTCR定常ドメイン細胞外配列は、非相同のα及びβ可変ドメインが融合することができるフレームワークとして使用することが可能である。

    本発明の別の実施形態では、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントにそれぞれ存在するTCRδ及びγ鎖可変ドメイン配列は、併せて、第1のTCRの機能的な可変ドメインに対応していてもよく、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントにそれぞれ存在するTCRα及びβ鎖定常ドメイン細胞外配列は、第2のTCRのそれらに対応していてもよいが、ただし、第1及び第2のTCRは同じ種に由来する。 したがって、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するδ及びγ鎖可変ドメイン配列は、第1のヒトTCRのそれらに対応していてもよく、α及びβ鎖定常ドメイン細胞外配列は、第2のヒトTCRのそれらに対応していてもよい。 例えば、A6 Tax sTCR定常ドメイン細胞外配列は、非相同のγ及びδ可変ドメインが融合できるフレームワークとして使用することが可能である。

    本発明の1つの特別な実施形態において、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するTCRα及びβ又はδ及びγ鎖可変ドメイン配列は、併せて、第1のヒトTCRの機能的可変ドメインに対応していてもよく、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するTCRα及びβ鎖定常ドメイン細胞外配列は、第2の非ヒトTCRのそれらに対応していてもよい。 したがって、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントに存在するα及びβ又はδ及びγ鎖可変ドメイン配列は、第1のヒトTCRのそれらに対応していてもよく、α及びβ鎖定常ドメイン細胞外配列は、第2の非ヒトTCRのそれらに対応していてもよい。 例えば、マウスTCR定常ドメイン細胞外配列は、非相同ヒトα及びβTCR可変ドメインが融合できるフレームワークとして使用することが可能である。

    scTCRポリペプチド中のリンカー 本発明のscTCRディスプレイタンパク質性粒子(scTCR-displaying proteinaceous particle)では、リンカー配列は、単一のポリペプチド鎖を形成するために、第1及び第2のTCRセグメントを連結する。 リンカー配列は、例えば、式−P−AA−P−(式中、Pはプロリンであり、AAはアミノ酸がグリシン及びセリンであるアミノ酸配列を表す)を有してもよい。

    本発明のタンパク質性粒子によりディスプレイされるscTCRがリガンド(αβTCRの場合にはMHC−ペプチド複合体)に結合するために、第1及び第2のセグメントは、その可変ドメイン配列がそのような結合に関して配向するように、対合している。 したがって、リンカーは、第1のセグメントのC末端と第2のセグメントのN末端との間又は第1のセグメントのN末端と第2のセグメントのC末端との間の距離を橋渡しするに十分な長さを有するべきである。 他方で、万一にもN末端可変ドメイン配列でリンカーの末端部が、scTCRと標的リガンドとの結合を遮断し又は減少させないように、好ましくは、過度なリンカー長は回避すべきである。

    例えば、第1及び第2のセグメント中に存在する定常ドメイン細胞外配列が、TCRの天然型鎖間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を排除するように、C末端で短縮化した天然型TCRのα及びβ鎖の定常ドメインに対応し、リンカー配列が第1のセグメントのC末端と第2のセグメントのN末端を連結する場合。
    リンカーは、例えば26〜41アミノ酸、好ましくは29、30、31若しくは32アミノ酸又は33、34、35若しくは36アミノ酸からなってもよい、特定のリンカーは、式−PGGG−(SGGGG) 5 −P−及び−PGGG−(SGGGG) 6 −P−(式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである)を有する。

    鎖間ジスルフィド結合 本発明のタンパク質性粒子によりディスプレイされる好ましいdTCR及びscTCRの基本的な特徴的性状は、dTCRポリペプチド対の定常ドメイン細胞外配列間又はscTCRポリペプチドの第1と第2のセグメントの定常ドメイン細胞外配列間のジスルフィド結合である。 この結合は、天然型二量体αβTCRに存在する天然型鎖間ジスルフィド結合に対応してもよいし、天然型TCR中に対応物(counterpart)を有さない、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントの定常ドメイン細胞外配列中に特異的に組み込まれたシステイン間のものであってもよい。 いくつかの場合では、天然型及び非天然型の両方のジスルフィド結合が、望ましくあり得る。

    ジスルフィド結合の位置は、dTCRポリペプチド対又はscTCRポリペプチドの第1及び第2のセグメントの可変ドメイン配列が天然型αβ又はγδT細胞レセプター中と実質的に同様に互いに配向しているという要件に従属する。

    ジスルフィド結合は、第1及び第2のセグメント上の非システイン残基をシステインに変異させ、その変異した残基間にジスルフィド結合を形成させることにより形成してもよい。 天然型残基の代わりに導入したシステイン残基間にジスルフィド結合を形成することができるように、天然型TCR中でそれぞれのβ炭素が約6Å(0.6nm)又はそれ以下、好ましくは3.5Å(0.35nm)〜5.9Å(0.59nm)の範囲で離れている残基が好ましい。 ジスルフィド結合が定常免疫グロブリンドメイン中の残基間であれば、その結合は膜近位ドメインの残基間であり得るが、好ましい。 システインを導入してジスルフィド結合を形成することができる好ましい部位は、TCRα鎖についてはTRAC * 01の、TCRβ鎖についてはTRBC1 * 01又はTRBC2 * 01のエキソン1中の以下の残基である:

    それぞれのヒトTCR鎖中の以下のモチーフが、変異させるべき残基を同定するために用いられ得る(下線を付した残基がシステインへの変異のための残基である)。
    α鎖Thr48:DSDVYITDK VLDMRSMDFK(TRAC * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸39〜58)(配列番号1)
    α鎖Thr45:QSKDSDVYI DKTVLDMRSM(TRAC * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸36〜55)(配列番号2)
    α鎖Tyr10:DIQNPDPAV QLRDSKSSDK(TRAC * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸1〜20)(配列番号3)
    α鎖Ser15:DPAVYQLRD KSSDKSVCLF(TRAC * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸6〜25)(配列番号4)
    β鎖Ser57:NGKEVHSGV TDPQPLKEQP(TRBC1 * 01及びTRBC2 * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸48〜67)(配列番号5)
    β鎖Ser77:ALNDSRYAL SRLRVSATFW(TRBC1 * 01及びTRBC2 * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸68〜87)(配列番号6)
    β鎖Ser17:PPEVAVFEP EAEISHTQKA(TRBC1 * 01及びTRBC2 * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸8〜27)(配列番号7)
    β鎖Asp59:KEVHSGVST PQPLKEQPAL(TRBC1 * 01及びTRBC2 * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸50〜69)(配列番号8)
    β鎖Glu15:VFPPEVAVF PSEAEISHTQ(TRBC1 * 01及びTRBC2 * 01遺伝子のエキソン1のアミノ酸6〜25)(配列番号9)

    他の種においては、TCR鎖は、上記モチーフに対して100%同一性を有する領域を有さないかもしれない。 しかし、当業者は、上記モチーフを使用してTCRα又はβ鎖の等価部分、したがってシステインに変異させるべき残基を同定することができる。 整列技法(alignment technique)をこの点に関して使用してもよい。 例えば、変異のためのTCR配列の該当部分を位置決めするために、European Bioinformatics Instituteのウェブサイト(http://www.ebi.ac.uk/index.html)で入手可能なClustalWを使用して上記モチーフと特定のTCR鎖配列を比較することができる。

    本発明は、その範囲に、タンパク質性粒子ディスプレイされるαβ及びγδアナログscTCR並びに他の哺乳動物(マウス、ラット、ブタ、ヤギ及びヒツジを含むがこれらに限定されない)のものを含む。 上記のように、当業者は、システイン残基を導入して鎖間ジスルフィド結合を形成させることが可能である上記のヒト部位と等価な部位を決定することができる。 例えば、以下は、マウスCα及びCβ可溶性ドメインのアミノ酸配列と共に、システインに変異させてTCR鎖間ジスルフィド結合を形成させることができる上記ヒト残基と等価なマウス残基を示すモチーフを示す(ここで、該当残基には下線を付している)。
    マウスCα可溶性ドメイン:
    PYIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVP(配列番号10)
    マウスCβ可溶性ドメイン:
    EDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGREVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRAD(配列番号11)
    ヒトα鎖Thr48のマウス等価物:ESGTFITDK VLDMKAMDSK(配列番号12)
    ヒトα鎖Thr45のマウス等価物:KTMESGTFI DKTVLDMKAM(配列番号13)
    ヒトα鎖Tyr10のマウス等価物:YIQNPEPAV QLKDPRSQDS(配列番号14)
    ヒトα鎖Ser15のマウス等価物:AVYQLKDPR QDSTLCLFTD(配列番号15)
    ヒトβ鎖Ser57のマウス等価物:NGREVHSGV TDPQAYKESN(配列番号16)
    ヒトβ鎖Ser77のマウス等価物:KESNYSYCL SRLRVSATFW(配列番号17)
    ヒトβ鎖Ser17のマウス等価物:PPKVSLFEP KAEIANKQKA(配列番号18)
    ヒトβ鎖Asp59のマウス等価物:REVHSGVST PQAYKESNYS(配列番号19)
    ヒトβ鎖Glu15のマウス等価物:VTPPKVSLF PSKAEIANKQ(配列番号20)

    上記のように、A6 Tax sTCR細胞外定常ドメインは、非相同可変ドメインを融合させることが可能であるフレームワークとして使用することができる。 非相同可変ドメイン配列は、ジスルフィド結合と定常ドメイン配列のN末端との間の任意の点で定常ドメイン配列に連結することが好ましい。 A6 Tax TCRα及びβ定常ドメイン配列の場合、ジスルフィド結合は、アミノ酸残基158及び172でそれぞれ導入されたシステイン残基間で形成され得る。 したがって、非相同α及びβ鎖可変ドメイン配列の付着点が、それぞれ残基159又は173とα又はβ定常ドメイン配列のN末端との間であれば好ましい。

    TCRディスプレイ 所望され得る性質(例えば、標的のペプチド−MHC複合体に対する高親和性)を有するTCRを同定するバイオパニング用の好ましいインビボTCRディスプレイ法は、ファージディスプレイである。

    第一に、多様な数々の変異scTCR又はdTCRをコードするDNAライブラリーを構築する。 このライブラリーは、天然型TCRをコードするDNAを増幅の鋳型として使用することにより構築する。 TCR DNA中に、したがって最終的に発現するTCRタンパク質中に所望の変異を導入するための、当業者に公知の多くの適切な方法が存在する。 例えば、誤りがちの(error-prone)PCR(EP-PCR)、DNAシャフリング技法及び細菌突然変異誘発株(例えばXL-1-Red)の使用は、変異をTCR配列中へ導入する好都合な手段である。 これらの変異がTCRの規定されたドメイン中に導入されれば特に好ましい。 例えば、可変ドメイン(特に相補性決定領域(CDR)及び/又はフレームワーク領域)中の変異は、亢進したリガンド結合特性を有するTCRの作成のためのTCRの多様性ライブラリーの作成に至る変異の導入に最も適切な部位である可能性が高い。 EP-PCRは、そのような「領域特異的」変異をTCR中に導入することができる方法の例である。 TCR DNAの変異させるべき領域に隣接するDNA配列に相補的なEP-PCRプライマーを使用して、制御可能なレベルのランダム変異を含むTCR DNAのこの領域の多コピーを増幅させる。 変異領域をコードするこれらDNA配列は、連結又はオーバーラッピングPCRにより、TCRの非変異誘発セクションをコードするDNA配列に導入される。 次いで、変異領域を有するTCRをコードするDNAは、ディスプレイに適切な融合タンパク質を作成するために、非相同ポリペプチドをコードするDNAに連結することができる。 ファージディスプレイの場合、利用される発現ベクターは、その中でTCR DNAを表面タンパク質(好ましくはgIII又はgVIII表面タンパク質)をコードするDNAに連結することができるファージミド又はファージゲノムベクターのいずれかである。 scTCRの場合、このような連結は、任意の単量体ペプチド又はポリペプチドのファージディスプレイについてと同様に実施される。 dTCRの場合、TCR鎖の一方のみが上記のように連結される。 他方の鎖は、ファージミド及びヘルパーファージ核酸との同時発現のための核酸にコードされ、その結果、発現した第2の鎖は、表面にディスプレイされた第1の鎖を有する発現ファージを見出し、これと会合する。 両方の場合で、上記でより詳細に説明したように、定常ドメイン中に適正に位置するシステインは、これらのシステインによるジスルフィド結合の形成を通じて、TCRの可変ドメインに機能的な位置を取らせることの助けとなる。

    発現には、(a)dTCRポリペプチド対の一方の鎖をコードする核酸及び(b)粒子形成性タンパク質若しくは細胞表面タンパク質をコードする核酸配列に融合したdTCR ポリペプチド対の他方の鎖;又は粒子形成性タンパク質若しくは細胞表面タンパク質をコードする核酸配列に融合したscTCRポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクター、dTCR対、又は核酸(a)を含む第1のベクター及び核酸(b)を含む第2のベクターを含む組成物を、コードされる遺伝子産物の発現を引き起こすことができる宿主細胞と、その細胞の形質転換を可能にするに適切な条件下で接触させる。 このような発現ベクター、dTCR及びscTCRをコードするファージミド又はファージゲノムベクターを含む発現系並びにこれらを保有する宿主細胞は、本発明の更なる観点を構成する。 本発明の好ましい実施形態では、プラスミド又はファージゲノムベクターは、線維状ファージから誘導される。

    次いで、形質転換細胞は、TCRディスプレイタンパク質性粒子の発現を可能にするようにインキュベートされる。 次いで、これらの粒子は、特定の亢進した特性を有するTCR変形体を同定するためのスクリーニングのために又はアッセイで使用することができる。 次いで、調査中の亢進した特性を有する粒子はいずれも単離することができる。 次いで、これらのTCRをコードするDNAは、PCRにより増幅され、配列を決定することができる。

    外因性ポリペプチドの高発現レベルは宿主細胞に対して毒性であり得ることが知られている。 このような場合、外因性ポリペプチドにより寛容である宿主株を見出さなければならないか、又は宿主細胞における発現レベルを寛容されるレベルに限定しなければならないかのいずれかである。 例えば、Beekwilderら, (1999) Gene 228(1-2) 23-31は、欠失又はアンバー停止コドンを含む変異形態のジャガイモプロテアーゼインヒビター(PI2)のみが、ファージディスプレイライブラリーから選択することに成功したと報告している。 本件では、本明細書の実施例に報告する研究の過程における観察により、少なくともE.coliのいくつかの株においては、本発明のタンパク質粒子ディスプレイされるTCRの発現レベルを制限することが望まれ得ることが示唆される。 したがって、実施例4で繰り返し回の培養の後に選択したA6 TCRは、ファージミドがスタート時に導入したものに対して変異している細胞から誘導されることが示された。 この変異は、TCRβ鎖に「オパール」停止コドンを作成した。 このコドンは、利用したE.coli株のリボソームによって低頻度で「読み過ごし」をされ、この部位でのトリプトファン残基の挿入及び完全長β鎖発現の全体レベルの相当な減少を生ずる。

    scTCR又はdTCRの1つ若しくは両方のTCR鎖の発現レベルを制限するに適切であり得る、宿主中の所定の発現系からの外因性ポリペプチドの発現レベルを限定するためのいくつかのストラテジーが存在する。 例えば、
    弱プロモーター配列の使用−所定の遺伝子産物(例えばTCRα又はβ鎖)について得られる発現レベルは、種々の強度のプロモーター配列を使用することによって合わせる(tailor)ことができる。 λファージP RMプロモーターは、弱プロモーターの例である。
    変異したリボソーム結合性部位(RBS)−遺伝子産物(例えばTCRα又はβ鎖)に関連するRBS中の単一の核酸を変異させることは、発現レベルの減少を生じることがある。 例えば、野生型AGGA配列をAGGGに変異させる。

    変異した「開始コドン」−遺伝子産物(例えばTCRα又はβ鎖)に関連する開始コドン中の単一の核酸を変異させることも、発現レベルの減少を生じることがある。 例えば、野生型AUG開始コドンをGUGに変異させる。
    ミスセンスサプレッサー変異−これらはTCRβ鎖コード領域内に挿入される。 例には、「オパール」停止コドン(UGA)が含まれ、この「漏れ易い(leaky)」な停止コドンは、トリプトファンアミノ酸の低頻度の挿入及び残りのコード配列の読み過ごしを生じる。

    プロモーター強度の代謝物媒介改変−あるプロモーターの制御下の遺伝子産物(例えばTCRα又はβ鎖)の発現レベルは、そのプロモーターを含む細胞に、該当する代謝物を添加することによってダウンレギュレートすることができる。 例えば、グルコースの添加は、Lacプロモーターの制御下で遺伝子産物の発現をダウンレギュレートするために使用することができる。

    コドン使用頻度−細菌細胞と例えば哺乳動物細胞は、それらがあるアミノ酸をコードするために使用するコドンに関して異なる「嗜好性」を有する。 例えば、細菌細胞は、最も通常には、アルギニンをコードするためにCGUコドンを使用する一方で、真核細胞は、AGAを最も通常に使用する。 利用する発現系による嗜好性が低いコドンを多く含むDNA配列を利用することによって、遺伝子産物(例えばTCRα又はβ鎖)の発現レベルを減少させることが可能である。

    遺伝子産物発現をダウンレギュレートする上記手段に関する詳細は、Glass (1982) Gene Function - E.coli and its heritable elements, Croom Helm及びRezinoff (1980) The Operon 第2版, Cold Spring Harbor Laboratoryに見出され得る。

    比較的高濃度の糖(例えばスクロース)を細菌培養物に供給することにより、可溶性タンパク質の細胞周辺での発現レベルを増加させることができる(例えば、Sawyerら, (1994) Protein Engineering 7(11) 1401-1406を参照)。

    発現後、scTCRポリペプチド可変ドメイン配列の正確な対合が、好ましくは、scTCRの細胞外定常ドメインにおけるジスルフィド結合の導入によって支援される。 理論による限定は望まないが、新規なジスルフィド結合は、フォールディングプロセスの間にscTCRに対して特別な安定性を提供し、これによって第1及び第2のセグメントの正確な対合を容易にすると考えらる。

    再び、dTCRファージディスプレイについて上で記載したように、dTCRポリペプチド対の一方は、ファージ上に最終的に単量体ポリペプチドとしてディスプレイされるかのように発現させ、dTCRポリペプチド対の他方は、同じ宿主細胞において共発現させる。 ファージ粒子が自己組織化するにつれて、2つのポリペプチドはファージ上で二量体としてディスプレイするために自己会合する。 再び、本発明のこの観点の好ましい実施形態において、ポリペプチド対の会合の間の正確なフォールディングは、上記のように、定常配列間のジスルフィド結合により支援される。 鎖間ジスルフィド結合を有するdTCRのファージディスプレイのための手順の更なる詳細は、本明細書の実施例に見られる。

    或いは、dTCRの第1の鎖をディスプレイしているファージをまず発現させ、第2の鎖のポリペプチドを、後続の工程で、ファージ表面上での機能的dTCRとしての会合のために、発現したファージと接触させてもよい。

    所望され得る特性(例えば、標的のペプチド−MHC複合体に関する高親和性)を有するTCRを同定するバイオパニングのための好ましいインビトロTCRディスプレイ法は、リボソームディスプレイである。 まず、上記技法を使用して、変異した多様な数々のscTCR又はdTCRポリペプチドをコードするDNAライブラリーを構築する。 次いで、相補性mRNAライブラリーを作成するためにDNAライブラリーをRNAポリメラーゼと接触させる。 選択肢として、mRNAディスプレイ技法のために、mRNA配列は、次いで、プロマイシン結合性部位を含むDNA配列に連結することができる。 次いで、これら遺伝子構築物を、インビトロにて、scTCRポリペプチド又はdTCR対の第1のポリペプチドの翻訳を可能にする条件下でリボソームと接触させる。 dTCRの場合には、ポリペプチド対の第2のポリペプチドは、別途発現させ、好ましくは定常ドメイン間でのジスルフィド結合の形成により支援された2つのポリペプチド間の会合のために、リボソームにディスプレイされた第1のポリペプチドと接触させる。 或いは、TCRの両方の鎖をコードするmRNAを、インビトロにて、dTCRをディスプレイしているリボソームが形成されるようにTCR鎖の翻訳を可能にする条件下でリボソームと接触させてもよい。 これらscTCR又はdTCRをディスプレイしているリボソームは、次いで、特定の亢進された特徴を有するTCR変形体を同定するためのスクリーニングのため又はアッセイで使用することができる。 次いで、調査下にある亢進した特徴を保有する任意の粒子を単離することができる。 これらTCRをコードするmRNAは、次いで、逆転写酵素を用いて相補性DNA配列に変換させることができる。 次いで、このDNAはPCRにより増幅させることができ、配列を決定することができる。

    追加の観点 本発明のscTCR又はdTCR(好ましくは、ヒト配列に対応する定常配列及び可変配列によって構成される)をディスプレイしているタンパク質性粒子は、実質的に純粋な形態で又は精製若しくは単離された調製物として提供されてもよい。 例えば、これは、他のタンパク質を実質的に含まない形態で提供されてもよい。

    本発明の複数のscTCR又はdTCRをディスプレイしているファージ粒子は、多価複合体で提供され得る。 したがって、本発明は、1つの観点では、多価T細胞レセプター(TCR)複合体を提供し、これは、本明細書中に記載のような複数のscTCR又はdTCRをディスプレイしているファージ粒子を含む。 複数のscTCR又はdTCRの各々は、好ましくは、同一である。

    更なる観点では、本発明は、TCRリガンド複合体を検出する方法を提供する。 この方法は、
    a. 本発明のTCRディスプレイタンパク質性粒子を提供すること b. TCRディスプレイファージを推定のリガンド複合体と接触させること、及び
    TCRディスプレイタンパク質性粒子と推定リガンド複合体との結合を検出することを含む。 上記方法による同定に適切なTCRリガンドは、ペプチド−MHC複合体を含むが、これに限定されない。

    亢進した特徴を有するTCR変形体の単離 本発明の更なる観点は、特定の特徴を有するTCRの同定方法である。 この方法は、タンパク質性粒子上にディスプレイされたTCRの多様性ライブラリーを、当該特徴について選択する選択プロセスに付し、当該特徴を有するTCRをディスプレイするタンパク質性粒子を単離し、選択肢として単離した粒子を拡大(multiply)させる増幅プロセス、及び/又は、当該特徴を測定するスクリーニングプロセスに付し、所望の特徴を有するTCRをディスプレイするタンパク質性粒子を同定し、これらのタンパク質性粒子を単離し、選択肢として単離した粒子を拡大させる増幅プロセスに付することを含む。

    次いで、変形体TCRをコードするDNA配列を取得し、PCRにより増幅して、配列を決定することができる。 亢進させることができる特徴には、リガンド結合親和性及び構築物の安定性が含まれるが、これらに限定されない。

    スクリーニング用途 本発明のTCRディスプレイタンパク質性粒子は、TCR媒介細胞免疫系の調節物質(modulator)(阻害剤を含む)を同定するために設計されたスクリーニング法で利用可能である。
    当業者に公知であるように、この型のタンパク質−タンパク質相互作用スクリーニングに適切な基礎を提供する多くのアッセイ形式が存在する。

    増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)システム(例えばAlphaScreen(商標))は、レセプター及びリガンドタンパク質が付着することができるヒドロゲルの層で被覆された「ドナー」及び「アクセプター」ビーズの使用に基づく。 これらレセプター及びリガンド分子の間の相互作用は、ビーズを近接状態にする。 これらビーズがレーザ光に曝されると、「ドナー」ビーズ中の光増感物質は、周囲の酸素をより励起された一重項状態に変換する。 一重項状態の酸素分子は、拡散して、「アクセプター」ビーズ中の化学発光物質と反応し、この化学発光物質は、さらに、同じビーズに含まれる蛍光体を活性化する。 続いて、蛍光体は520〜620nmの光を発光し、これは、レセプター−リガンド相互作用が生じたことをシグナル伝達する。 レセプター−リガンド相互作用の阻害剤の存在により、このシグナルは低減される。

    表面プラズモン共鳴(SPR)は、一方の結合パートナー(通常レセプター)が「チップ」(センサ表面)に固定され、可溶でありチップ上を流される他方の結合パートナー(通常リガンド)の結合が検出される界面光学アッセイである。 リガンドの結合は、結果的に、チップ表面近くのタンパク質濃度の増大を生じ、このことはその領域の屈折率の変化を引き起こす。 チップの表面は、屈折率の変化が、表面プラズモン共鳴により検出され得るように構成される。 ここで、表面プラズモン共鳴とは光学現象であり、これにより、ある入射の光は、薄金属フィルムで、振動する表面電荷密度の波(表面プラズモン)の共鳴励起に起因して、減弱強度の反射ビームを生じる。 この共鳴は、金属フィルムの裏側での屈折率の変化に非常に敏感であり、固定タンパク質と可溶タンパク質との間の結合を検出するために使用されるのが、このシグナルである。 分子相互作用のSPR検出及びデータ分析の簡便な使用を可能にするシステムは市販されている。 例は、Iasys(商標)装置(Fisons)及びBiacore(商標)装置である。

    他の界面光学アッセイには、全内部反射蛍光(TIRF)、共振ミラー(RM)及び回折格子カプラセンサ(optical grating coupler sensor)(GCS)が含まれ、これらは、Woodbury及びVenton(J.Chromatog.B.725 113-137(1999))でより詳細に議論されている。 シンチレーション近接アッセイ(scintillation proximity assay)(SPA)は、CD28とB7との間の低親和性相互作用の阻害剤について化合物ライブラリーをスクリーニングするために使用されてきた(おそらく約4μM程度のK d (Van der Merweら、J.Exp.Med.185:393-403 (1997),Jenhら、Anal Biochem 165(2) 287-93 (1998))。SPAは、指示表面上に固定された閃光物質(scintillant)にエネルギーを転移させるある種の放射活性同位体からのβ粒子発射を利用する放射活性アッセイである。溶液中で短期(short range)のβ粒子により、β粒子が閃光物質に近接して発射されたときにのみ閃光を生じることが確実となる。タンパク質−タンパク質相互作用の検出に適用される場合、一方の相互作用パートナーを放射性同位体で標識し、他方は閃光物質を含むビーズに結合するか、又は閃光物質と共に表面に被覆するかのいずれかである。アッセイを最適に設定することが可能な場合、放射性同位体は、閃光物質に対して、2つのタンパク質間の結合が起きたときにのみ光子発射が活性化されるに十分近くに運ばれる。

    本発明の更なる観点は、本発明のTCRディスプレイタンパク質性粒子と、TCR結合性リガンドとの間の相互作用の阻害剤を同定する方法であり、これは、TCRディスプレイタンパク質性粒子をTCR結合性リガンドと、試験化合物の存在下及び非存在下で接触させること、及び試験化合物の存在により、TCRディスプレイタンパク質性粒子とTCR結合性リガンドとの結合が減少するかどうかを測定することを含み、この減少が阻害剤を同定するとされる方法である。

    本発明の更なる観点は、本発明のTCRディスプレイタンパク質性粒子と、TCR結合性リガンド(例えばMHC−ペプチド複合体)との間の相互作用の潜在的な阻害剤を同定する方法であり、これは、TCRディスプレイタンパク質性粒子又はTCR結合性リガンドパートナーを試験化合物と接触させること、及び試験化合物が、TCRディスプレイタンパク質性粒子及び/又はTCR結合性リガンドに結合するかどうかを測定することを含み、この結合が潜在的阻害剤を同定するとされる方法である。 本発明のこの観点は、界面光学アッセイ、例えば、Biacore(商標)システムを使用して実施される界面光学アッセイにおける特別な利用を見出し得る。

    高親和性TCR
    本発明はまた、所定のTCRリガンドに関して野生型TCRより高い親和性を有する、当該所定のTCRリガンドに特異的な変異TCRを利用可能にする。 これら高親和性TCRは、疾患の診断及び処置に特に有用であると予測される。

    本明細書で使用する場合、用語「高親和性TCR」とは、特定のTCRリガンドと相互作用し、かつ、表面プラズモン共鳴により測定されるような、対応する天然型TCRのものより小さい当該TCRリガンドに関するKdを有するか、又は表面プラズモン共鳴により測定されるような対応する天然型TCRのものより小さい当該TCRリガンドに関するオフ−レート(off-rate)(K off )を有するかのいずれかである変異scTCR又はdTCRをいう。

    本発明の高親和性scTCR又はdTCRは、好ましくは、少なくとも1つの相補性決定領域及び/又はフレームワーク領域で、天然型TCRに対して変異している。

    本発明の1つの観点において、所定の高親和性TCRが特異的であるTCRリガンドは、ペプチド−MHC複合体(pMHC)である。

    本発明の別の観点において、所定の高親和性TCRが特異的であるTCRリガンドは、MHC型である。

    本発明の更なる観点において、所定の高親和性TCRが特異的であるTCRリガンドは、HLA-A2 taxペプチド(LLFGYPVYV)(配列番号21)複合体である。

    本発明の更なる観点において、所定の高親和性TCRが特異的であるTCRリガンドは、HLA-A2 NY-ESOペプチド(SLLMITQC)(配列番号22)複合体である。

    高親和性scTCR又は高親和性dTCR鎖の一方若しくは両方を、造影化合物(imaging compound)、例えば、診断目的に適切な標識で標識してもよい。 このような標識された高親和性TCRは、CD1−抗原複合体、細菌スーパー抗原及びMHC−ペプチド/スーパー抗原複合体から選択されるTCRリガンドを検出する方法で有用であり、この方法は、TCRリガンドを、このTCRリガンドに特異的である高親和性TCR(又は多量体高親和性TCR複合体)と接触させること、及びTCRリガンドへの結合を検出することを含む。 (例えばビオチン化へテロ二量体を使用して生成された)四量体高親和性TCR複合体では、蛍光ストレプトアビジン(市販品として入手可能)を、検出可能な標識を提供するために使用することができる。 蛍光標識した四量体は、例えば高親和性TCRが特異的であるペプチドを保持する抗原提示細胞を検出するために、FACS分析における使用に適切である。

    本発明の可溶性高親和性TCRが検出され得る別の様式は、TCR特異的抗体、特にモノクローナル抗体の使用による。 多くの市販の抗TCR抗体、例えばそれぞれα鎖及びβ鎖の定常ドメインを認識するαF1及びβF1が存在する。

    本発明の高親和性TCR(又はその多価複合体)は、択一的に又は追加的に、例えば細胞殺傷に使用するための毒性部分又は免疫刺激物質(immunostimulating agent)(例えばインターロイキン又はサイトカイン)であり得る治療薬剤(therapeutic agent)と会合(例えば、共有結合又は他の結合)をしていてもよい。 本発明の多価高親和性TCR複合体は、非多量体の野生型又は高親和性のT細胞レセプターへテロ二量体と比較して、TCRリガンドに関して亢進した結合能力を有し得る。 したがって、本発明に従う多価高親和性TCR複合体は、特定の抗原を提示する細胞をインビトロ又はインビボで追跡又は標的するために特に有用であり、またそのような用途を有する更なる多価高親和性TCR複合体の作成のための中間体としても有用である。 したがって、高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体は、インビボでの使用のための薬学的に受容可能な製剤で提供され得る。

    本発明はまた、治療薬剤を標的細胞に送達する方法を提供し、この方法は、潜在的な標的細胞を本発明に従う高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体と、高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体と標的細胞との付着を可能にする条件下で接触させることを含み、当該高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体は、TCRリガンドに特異的であり、治療薬剤を結合している。

    特に、可溶性の高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体は、特定の抗原を提示する細胞の場所に治療薬剤を送達するために使用することができる。 このことは、多くの状況で、特に腫瘍に対して有用である。 治療薬剤は、その効果を局所的にではあるが、その治療薬剤が結合する細胞上のみに限らずに発揮するように送達され得る。 したがって、1つの特別な戦略として、腫瘍抗原に特異的な高親和性T細胞レセプター又は多価高親和性TCR複合体に連結させた抗腫瘍分子が認識される。

    多くの治療薬剤、例えば放射活性化合物、酵素(例えばパーフォリン)又は化学療法薬剤(例えばシスプラチン)がこの用途に用いられ得る。 毒性効果が所望の場所で発揮されることを確実にするため、毒素は、その化合物が緩徐に放出されるように、ストレプトアビジンに連結させたリポソームの内部に存在させることもできる。 このことは、体内での輸送の間の損傷効果を予防し、毒素が、TCRと該当の抗原提示細胞との結合の後に最大効果を有することを確実にする。

    他の適切な治療薬剤には、
    ・ 低分子細胞毒性薬剤、すわなち、動物細胞を殺傷する能力を有する、700ダルトン未満の分子量を有する化合物。 このような化合物はまた、細胞毒性効果を有し得る毒性金属を含有することもできる。 さらに、これら低分子細胞毒性薬剤はまた、プロドラッグ、すなわち生理学的条件下で崩壊するか又は変換して細胞毒性薬剤を放出する化合物を含む。 このような薬剤の例には、シスプラチン、メイタンシン(maytansine)誘導体、ラケルマイシン(rachelmycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ソルフィマーソディウムホトフィリンII(sorfimer sodiumphotofrin II)、テモゾロマイド、トポテカン、トリメトレキサート(trimetreate)、グルクロナート、オーリスタチンE(auristatin E)、ビンクリスチン及びドキソルビシンが挙げられる;
    ・ ペプチド細胞毒素、すなわち、哺乳動物細胞を殺傷する能力を有するタンパク質又はそのフラグメント。 例には、リシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNAアーゼ及びRNAアーゼが含まれる;
    ・ 放射性核種、すなわち、1又はそれ以上のα若しくはβ粒子又はγ線の同時放射を伴って崩壊する元素の不安定同位体。 例には、ヨウ素131、レニウム186、インジウム111、イットリウム90、ビスマス210及び213、アクチニウム225及びアスタチン213が含まれる;キレート化剤を、高親和性TCR又はその高親和性へのこれら放射性核種の会合を容易にするために使用してもよい;
    ・ プロドラッグ、例えば抗体を指向する酵素プロドラッグ;
    ・ 免疫増強剤(immuno-stimulant)、すなわち、免疫応答を刺激する部分。 例には、サイトカイン(例えばIL-2)、ケモカイン(例えばIL-8)、血小板第4因子、メラノーマ増殖刺激タンパク質など、抗体又はそのフラグメント、補体活性化剤、非相同タンパク質ドメイン、相同タンパク質ドメイン、ウイルス性/細菌性タンパク質ドメイン及びウイルス性/細菌性ペプチドが含まれる。

    本発明の可溶性の高親和性TCR又は多価高親和性TCR複合体は、プロドラッグを薬物に変換し得る酵素に連結されてもよい。 このことにより、プロドラッグが薬物を必要とする(すなわち、sTCRにより標的にされる)部位でのみ薬物に変換することが可能になる。

    多くの疾患処置は、可溶性高親和性TCRの特異性を通じて薬物を局在化することによって亢進させることができる可能性がある。 例えば、本明細書で開示した高親和性HLA-A2-tax(LLFGYPVYV)(配列番号21)特異的A6 TCRは、HTLV-1の診断及び処置のための方法で使用され得、本明細書で開示した高親和性HLA-A2-NY-ESO(SLLMITQC)(配列番号22)特異的NY-ESO TCRは、ガンの診断及び処置のための方法で使用され得ると予測される。

    そのための薬物が存在するウイルス性疾患、例えばHIV、SIV、EBV、CMVは、その薬物が感染細胞の近位で放出又は活性化されることの恩恵を受ける。 ガンについては、腫瘍又は転移の近位に限局することにより、毒素又は免疫増強剤の効果が亢進する。 自己免疫疾患では、より長い期間にわたってより局所的な効果を有する一方で、被験者の免疫能力全体には最小限にしか影響しない免疫抑制薬物が緩徐に放出され得る。 移植拒絶の予防では、免疫抑制薬物の効果は、同じ方法で最適化され得る。 ワクチン送達のためには、ワクチン抗原は抗原提示細胞の近くに限局され、したがって抗原の効力を亢進され得る。 この方法はまた、造影目的にも適用することができる。

    本発明の可溶性高親和性TCRは、特異的TCRリガンドへの結合によりT細胞活性化を調整し、それによりT細胞活性化を阻害するために使用し得る。 T細胞媒介炎症及び/又は組織損傷を含む自己免疫疾患(例えばI型糖尿病)は、このアプローチに適する。 該当pMHCにより提示される特異的ペプチドエピトープの知識が、この用途に必要である。

    本発明に従う治療用又は造影用高親和性TCRは、通常、一般には薬学的に受容可能なキャリアを含む、滅菌の薬学組成物の部分として供給される。 この薬学組成物は、(これを患者に投与する望ましい方法に依存して)任意の適切な形態であり得る。 これは、単位投薬剤形で提供されてもよく、一般には密封容器で提供され、キットの部分として提供されてもよい。 このようなキットは、(必ずしもではないが)通常、使用のための指示書を含む。 キットは、複数の単位投薬剤形を含んでもよい。

    薬学組成物は、任意の適切な経路による投与、例えば非経口経路、経皮経路又は吸入による投与、好ましくは非経口(皮下、筋肉内又は静脈内(最も好ましい)を含む)経路による投与に適合され得る。 このような組成物は、薬学の分野において任意の公知方法により、例えば滅菌条件下で活性成分をキャリア又は賦形剤と混合することにより製造し得る。

    本発明の物質の投薬量は、処置すべき疾患又は障害、処置すべき個体の年齢及び状態などに依存して、幅広い制限範囲内で変化し得、究極的には、医師が、使用すべき適切な投薬量を決定する。

    本発明はまた、高親和性TCR鎖を取得する方法を提供し、この方法は、宿主を、高親和性TCR鎖の発現を引き起こす条件下でインキュベートし、次いでポリペプチドを精製することを含む。

    本発明の各観点の好ましい性状は、その他の観点の各々についての性状と同様である(ただし必要な変更は加える)。 本明細書中で言及した先行技術文献は、法が許す最大範囲で本明細書に組み込まれる。

    本発明は以下の実施例においてさらに記述するが、実施例は、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定するものではない。

    以下に添付図面について言及する。
    図1a及び1bは、システインコドンを導入するように変異した可溶性A6 TCRα及びβ鎖の核酸配列をそれぞれ示す。 影付きは導入したシステインコドンを示す。
    図2aは、新規なジスルフィド鎖間結合を作成するために使用したT 48 →C変異(下線)を含むA6 TCRα鎖細胞外アミノ酸配列を示す。 図2bは、新規なジスルフィド鎖間結合を作成するために使用したS 57 →C変異(下線)を含むA6 TCRβ鎖細胞外アミノ酸配列を示す。
    図3は、ファージミドベクターへのTCRα及びβ鎖のクローニングを概説する。 この図は、ファージディスプレイベクターを記載する。 RSBはリボソーム結合部位である。 S1又はS2は、タンパク質をE.coliの周辺質に分泌するためのシグナルペプチドである。 「*」は、翻訳停止コドンを示す。 TCRα鎖又はβ鎖のいずれかが、ファージコートタンパク質に融合することができるが、この図では、TCRβ鎖のみがファージコートタンパク質に融合している。

    図4は、ファージミドpEX746:A6のDNA配列の詳細を示す。
    図5は、E.coliにおける細菌コートタンパク質とへテロ二量体A6 TCRのファージ粒子融合体の発現を示す。 へテロ二量体A6 TCR::gIIIの融合タンパク質は、ウェスタンブロットを使用して検出する。 ファージ粒子を、E.coli XL-1 Blueから調製し、PEG/NaClで濃縮する。 サンプルは、還元又は非還元サンプル緩衝液中にロードする。 レーン1は正確な配列を含有するクローン7のサンプルであり、レーン2はα鎖コード遺伝子に欠失を含有するクローン14のサンプルである。 へテロ二量体A6 TCR:gIII融合タンパク質は、125kDaに検出された。
    図6は、ファージ上にディスプレイされた二量体A6 TCRのpMHCペプチド複合体結合活性のELISA検出を示す。 クローン7はHLA A2-Tax複合体に特異的に結合する。 TCRはファージ粒子に付着しないので、クローン14はpMHCに結合できない。

    図7aは単鎖A6 TCR-C-κDNAリボソームディスプレイ構築物の概略図である。
    図7b及び7cは、それぞれ、pUC19中でコードされる単鎖A6 TCR-C-κDNAリボソームディスプレイ構築物の完全なDNAコード鎖及びアミノ酸配列の詳細を示す。
    図8は、pUC19-T7のDNA配列の詳細である。
    図9は、pUC19-T7中にクローニングされた単鎖A6 TCR-C-κリボソームディスプレイ構築物のDNA配列の詳細を示す。

    図10は、Ambionウサギ網状赤血球溶解物を使用してインビトロで翻訳させた単鎖A6 TCR-C-κの検出を示すウェスタンブロットを示す。
    図11は、リボソームディスプレイ反応物からレスキューしたビーズ上の単鎖A6 TCR-C-κ mRNAのRT-PCRを示す。
    図12aは、A6 TCRクローン9変異β鎖のDNA配列の詳細を示す。 変異した核酸を太字で示す。
    図12bは、A6 TCRクローン9変異β鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。 導入したオパール停止コドンに対応する位置を「*」で示す。

    図13は、A6 TCRクローン49変異β鎖のDNA配列の詳細を示す。 変異した核酸を太字で示す。 これは「サイレント」変異であるので、この変異により得られるアミノ酸配列に変化は導入されない。
    図14aは、A6 TCRクローン134変異A6 TCRβ鎖のDNA配列の詳細を示す。 変異した核酸を太字で示す。
    図14bは、BIAcoreアッセイにより試験されたようなA6 TCRクローン134変異A6 TCRβ鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。 変異したアミノ酸を太字で示す。
    図14cは、ファージELISAアッセイにより試験されたようなA6 TCRクローン134変異A6 TCRβ鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。 変異したアミノ酸を太字で示す。
    図15は、A6 TCRクローン134とHLA-A2 Tax及びHLA-A2 NY-ESOとの結合についてのBIAcoreデータを示す。
    図16は、A6 TCRクローン134のHLA-A2 Taxとの結合についてのT OFFを決定するために使用したBIAcoreデータを示す。

    図17a及び17bは、それぞれ、NY-ESO TCRの変異α及びβ鎖のDNA配列を示す。
    図18a及び18bは、それぞれ、NY-ESO TCRの変異α及びβ鎖のアミノ酸配列を示す。
    図19a及び19bは、それぞれ、pEX746:NY-ESOファージミド中に組み込まれたNY-ESO TCRβ鎖のDNA及びアミノ酸配列の詳細を示す。
    図20は、ファージELISAアッセイにおけるNY-ESO TCRをディスプレイしているファージ粒子とHLA-A2-NY-ESOとの特異結合を示す。

    図21は、DRA0101配列の3'末端に付着したFos二量体化ペプチドをコードするコドンを組み込んでいるDR1α鎖のDNA配列を示す。 影付きはFosコドンを示し、ビオチン化タグコドンは太字で示す。
    図22は、Sf9昆虫細胞におけるクラスII HLA−ペプチド複合体の発現に使用したpAcAB3二シストロンベクター(bi-cistronic vector)のDNA配列を示す。 HLAα鎖を挿入するために使用したBgl II制限部位(AGATCT)及びHLAβ鎖を挿入するために使用したBamHI制限部位(GGATCC)を影付きで示す。
    図23は、DRB0401配列の3'末端に付着させたJun二量体化ペプチドをコードするコドン及びDRB0401配列の5'末端に付着させたHLA搭載ペプチド(HLA-loaded peptide)をコードするコドンを組み込んでいるDR1β鎖のDNA配列を示す。 影付きはJunコドンを示し、HLA搭載インフルエンザHAペプチドコドンは下線を付している。

    図24は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:
    フローセル1(FC 1)−ブランク フローセル2(FC 2)−HLA-A2(LLGRNSFEV)(配列番号23)
    フローセル3(FC 3)−HLA-A2(KLVALGINAV)(配列番号24)
    フローセル4(FC 4)−HLA-A2(LLGDLFGV)(配列番号25)

    図25は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:
    フローセル1(FC 1)−ブランク フローセル2(FC 2)−HLA-B8(FLRGRAYGL)(配列番号26)
    フローセル3(FC 3)−HLA-B27(HRCQAIRKK)(配列番号27)
    フローセル4(FC 4)−HLA-Cw6(YRSGIIAVV)(配列番号28)

    図26は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:
    フローセル1(FC 1)−ブランク フローセル2(FC 2)−HLA-A24(VYGFVRACL)(配列番号29)
    フローセル3(FC 3)−HLA-A2(ILAKFLHWL)(配列番号30)
    フローセル4(FC 4)−HLA-A2(LTLGEFLKL)(配列番号31)

    図27は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:
    フローセル1(FC 1)−ブランク フローセル2(FC 2)−HLA-DR1(PKYVKQNTLKLA)(配列番号32)
    フローセル3(FC 3)−HLA-A2(GILGFVFTL)(配列番号33)
    フローセル4(FC 4)−HLA-A2(SLYNTVATL)(配列番号34)

    図28は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:
    フローセル1(FC 1)−ブランク フローセル4(FC 4)−HLA-A2(LLFGYPVYV)(配列番号21)

    図29a及び29bは、可溶性高親和性NY-ESO TCRとHLA-A2 NY-ESOとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図30a及び30bは、可溶性「野生型」NY-ESO TCRとHLA-A2 NY-ESOとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図31a及び31bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン1)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図32a及び32bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン111)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図33a及び33bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン89)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図34は、変異体可溶性A6 TCR(クローン71及びクローン134変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図35は、変異体可溶性A6 TCR(クローン1及びβG102→A変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図36a〜36cは、変異体可溶性A6 TCR(クローン89及びクローン134変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。
    図37a及び37bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン71及びクローン89変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図38は、以下のA6 TCRクローンのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列の詳細を示す:
    38a−野生型、38b−クローン134、38c−クローン89、38d−クローン1、及び38e−クローン111。
    変異した残基を太字で示し、括弧内の残基は特定の部位に存在し得る代替の残基である。
    図39A及び39B I

    実施例1−新規な鎖間ジスルフィド結合の形成に必要なシステイン残基を導入するためのプライマーの設計及びA6 Tax TCRα及びβ鎖の変異誘発
    TRAC * 01中のエキソン1のA6 Taxスレオニン48をシステインに変異させるために、以下のプライマーを設計した(変異を小文字で示す):
    5'-C ACA GAC AAA tgT GTG CTA GAC AT (配列番号35)
    5'-AT GTC TAG CAC Aca TTT GTC TGT G (配列番号36)
    TRBC1 * 01及びTRBC2 * 01の両方でエキソン1のA6 Taxセリン57をシステインに変異させるために、以下のプライマーを設計した(変異を小文字で示す):
    5'-C AGT GGG GTC tGC ACA GAC CC (配列番号37)
    5'-GG GTC TGT Gca GAC CCC ACT G (配列番号38)

    PCR変異誘発:
    A6 Tax TCRα又はβ鎖の遺伝子を含む発現プラスミドを、それぞれα鎖プライマー又はβ鎖プライマーを使用して、以下のように変異させた。 100ngのプラスミドを5μlの10mM dNTP、25μlの10×Pfu緩衝液(Stratagene)、10単位のPfuポリメラーゼ(Stratagene)と混合し、最終容量をH 2 Oで240μlに調整した。 48μlのこの混合物に、50μlの最終反応溶液中で0.2μMの最終濃度が得られるように希釈したプライマーを補充した。 95℃にて30秒間の最初の変性工程の後、反応混合物を、Hybaid PCR express PCR装置において、15回の変性(95℃、30秒)、アニーリング(55℃、60秒)及び伸長(73℃、8分)に付した。 次いで、産物を10単位のDpnI制限酵素(New England Biolabs)で37℃にて5時間消化した。 10μlの消化反応物を、コンピテントXL1-Blue細菌に形質転換し、37℃にて18時間増殖させた。 一つのコロニーを採取し、5mlのTYP+アンピシリン(16g/l細菌トリプトン、16g/l酵母抽出物、5g/l NaCl、2.5g/l K 2 HPO 4 、100mg/lアンピシリン)中で一晩増殖させた。 プラスミドDNAを、製造業者の指示に従ってQiagenミニプレップカラムで精製し、配列を、オックスフォード大学生化学部の配列決定施設で自動配列決定により検証した。 それぞれの変異核酸及びアミノ酸配列を、α鎖については図1a及び2aに、β鎖については図1b及び2bに示す。

    実施例2−ファージディスプレイベクターの構築及びA6 TCRα及びβ鎖のファージミドベクター中へのクローニング 線維状ファージ粒子上に、非天然型ジスルフィド鎖間結合を含有するへテロ二量体A6 TCRをディスプレイするために、非天然型ジスルフィド鎖間結合を含有するへテロ二量体A6 TCRとファージコートタンパク質とを含む融合タンパク質の発現のためのファージミドベクターを構築した。 これらのベクターは、pUC19起点、M13起点、bla(アンピシリン耐性)遺伝子、Lacプロモーター/オペレーター及びCAP結合部位を含有する。 これらベクターの設計を図3に概説する。 図3は、可溶性A6 TCRα鎖とA6 TCRβ鎖−gp3又はA6 TCRβ鎖−gp8融合タンパク質の両方をコードするベクターを記載する。 実施例1で調製された図1a及び1bに示されるような、新規なジスルフィド鎖間結合の形成に必要な追加のシステイン残基が組み込まれている変異したA6 TCRα及びβ鎖のDNA配列を含有する発現ベクターを、このTCRをコードするファージミドの作成のためのA6 TCRα及びβ鎖の供給源として使用した。 利用したファージミド構築物(pEX746)の完全なDNA配列を図4に示す。

    ベクターを構築するための分子クローニング法は、「Molecular cloning: A laboratory manual, by J.Sambrook and DWRussell」に記載されている。 表1に列挙したプライマーをベクターの構築に使用する。 PCRプログラムの例は、1サイクルの94℃にて2分間、続いて25サイクルの94℃にて5秒間、53℃にて5秒間及び72℃にて90秒間、続いて1サイクルの72℃にて10分間、次いで4℃にて保持である。 Expand hifidelity Taq DNAポリメラーゼをRocheから購入する。

    実施例3−E.coliにおける細菌コートタンパク質とへテロ二量体A6 TCRの融合体の発現 実施例2で作成した構築物を確証するために、非天然型ジスルフィド鎖間結合を含有するへテロ二量体A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を、抗体scFvをディスプレイしているファージ粒子の作成について以前に記載された方法(Liら, 2000, Journal of Immunological Methods 236:133-146)を以下の改変を加えて使用して調製した。 pEX746:A6ファージミド(すなわち、実施例2で記載したように作成されたファージgIIIタンパク質に融合した可溶性A6 TCRα鎖及びA6 TCRβ鎖をコードするファージミド)を含有するE.coli XL-1-Blue細胞を使用し、これに5mlのLbatg(100μg/mlのアンピシリン、12.5μg/mlテトラサイクリン及び2%グルコースを含有するLennox Lブロス)を接種し、次いで培養物を、37℃にて一晩(16時間)振盪させながらインキュベートした。 50μlの一晩培養物を使用し、これに5mlのTYPatg(TYPは16g/lのペプトン、16g/lの酵素抽出物、5g/lのNaCl及び2.5g/lのK 2 HP0 4である)を接種し、次いで培養物を、OD 600nm =0.8まで37℃にて振盪させながらインキュベートした。 ヘルパーファージM13 K07を培養物に5×10 9 pfu/mlの最終濃度まで加えた。 次いで、培養物を37℃にて30分間静置してインキュベートし、次いで200rpmにて振盪させながら更に30分間インキュベートした。 次いで、上記培養物の培地をTYPak(100μg/mlのアンピシリン、25μg/mlのカナマイシンを含有するTYP)に変更し、次いで培養物を、25℃にて250rpmで振盪させながら36〜48時間インキュベートした。 次いで、培養物を4℃にて30分間4000rpmで遠心分離した。 上清を0.45μmシリンジフィルターにより濾過し、更なる濃縮又は分析のために4℃にて保存した。

    線維状コートタンパク質と非天然型ジスルフィド鎖間結合を含有するへテロ二量体A6 TCRとの融合タンパク質を、ウェスタンブロットにより上清中で検出した。 約10 11 cfuのファージ粒子を、還元及び非還元のロード緩衝液中のSDS-PAGEゲルの各レーンにロードした。 分離したタンパク質を、抗M13 gIII mAbで一次抗体プローブし、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートした二次抗体によりプローブした。 次いで、HRP活性をBio-RadのOpti-4CN基質キットで検出した(図5)。 これらのデータは、クローン1のジスルフィド結合したA6 TCRが、線維状ファージコートタンパク質(gIIIタンパク質)と融合していることを示した。

    実施例4−線維状ファージ粒子上の非天然型ジスルフィド鎖間結合を含有する機能的なへテロ二量体A6 TCRの検出 ファージ粒子上でのディスプレイされた機能的な(HLA-A2-tax結合性)A6 TCRの存在を、ファージELISA法を用いて検出した。

    TCR−ファージELISA
    ELISAにおけるA6 TCRディスプレイファージ粒子と固定化ペプチド−MHCとの結合を、一次ウサギ抗fd抗血清(Sigma)、続いてアルカリホスファターゼ(AP)コンジュゲート抗ウサギmAb(Sigma)で検出する。 プレート中の非特異的タンパク質結合部位は、2% MPBS又は3% BSA-PBSでブロックすることができる。

    材料及び試薬 1. 被覆緩衝液、PBS
    2. PBS:138mM NaCl、2.7mM KCl、1OmM Na 2 HP0 4 、2mM KH 2 P0 4
    3. MPBS、3% marvel-PBS
    4. PBS-Tween:PBS、0.1% Tween-20
    5. 基質溶液、Sigma FAST pNPP, Cat#; N2770

    方法 1. NeutrAvidin被覆ウェルをPBSで2回濯ぐ。
    2. PBS中10μg/mlの濃度のビオチン−HLA-A2 Tax又はビオチン−HLA-A2 NYESOを25μl加え、室温にて30〜60分間インキュベートする。
    3. ウェルをPBSで2回濯ぐ。
    4.300μlの3% Marvel-PBSを加え、室温にて1時間インキュベートする。 TCR−ファージ懸濁液を1容量の3% Marvel-PBSと混合し、室温にてインキュベートする。
    5. ウェルをPBSで2回濯ぐ。
    6. ファージ−A6 TCR/Marvel-PBSの混合物を25μl加え、氷上で1時間インキュベートする。
    7. ウェルを氷冷PBStweenで3回、氷冷PBSで3回濯ぐ。
    8. Marvel-PBS中で1:1000に希釈した25μlの氷冷ウサギ抗fd抗体を加え、氷上で1時間インキュベートする。
    9. ウェルを氷冷PBStweenで3回、氷冷PBSで3回濯ぐ。
    10. Marvel-PBS中に1:50,000に希釈した25μlの氷冷抗ウサギmAb−Apコンジュゲートを加え、氷上で1時間インキュベートする。
    11. ウェルを氷冷PBStweenで3回、氷冷PBSで3回濯ぐ。
    12.150μlのアルカリホスファターゼイエローを各ウェルに加え、405nmでシグナルを読み取る。

    図6に示した結果は、クローン1がそのコグネイトpMHC(HLA-A6 Tax)に特異的に結合できるA6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を産生したことを示す。

    このディスプレイされたA6 TCRのDNA配列の分析により、実施例2の発現ベクター構築物の対応する配列には存在しないTCRβ鎖中の「オパール」停止コドンの存在が明らかになった。 このコドンは、利用したE.coli株のリボソームにより低頻度で「読み過ごし」をされて、この部位でのトリプトファン残基の挿入及び完全長β鎖発現の全体レベルの相当な低減を生じる。 この観察から、この変異したA6 TCR配列を発現する細胞のみが、実施例3の培養期間を生き残ったこと、したがって元の発現ベクターによって発現されると予測された高レベルのA6 TCRが、宿主細胞に対して毒性であることが推論された。

    実施例5−単鎖TCR(scTCR)リボソームディスプレイリボソームディスプレイPCRテンプレートの作成における使用のためのリボソームディスプレイscTCRベクターの構築 エラーのない安定なDNA PCRテンプレート(このテンプレートから後続のリボソームディスプレイ実験を行う)を作成するために、リボソームディスプレイ構築物を、容易に入手可能なDNAプラスミドpUC19中にクローニングした。 (関連するエラー問題を伴う)大きなオリゴヌクレオチドプライマーの使用を回避するためにベクター構築を二段階で行った。 最終のA6 scTCR-C-κ DNAリボソームディスプレイ構築物を図7aに略図形式で示し、DNA配列及びタンパク質配列の両方を図7bに示す。 この構築物は、pUC19からPst1/EcoR1二重消化物として切り出すことができる。

    ベクターを構築するための分子クローニング法は、「Molecular cloning: A laboratory manual, by J. Sambrook and DW Russell」に記載されている。 表2に列挙したプライマーをベクターの構築に使用する。 利用したPCRプログラムは以下のとおりであった−1サイクルの94℃にて2分間、続いて25サイクルの94℃にて30秒間、55℃にて20秒間及び72℃にて120秒間、続いて1サイクルの72℃にて5分間、次いで4℃にて保持。 Pfu DNAポリメラーゼをStrategeneから購入する。 使用したオリゴヌクレオチドプライマーを表2に記載する。

    pUC19-T7の構築−段階1
    pUC19-T7の構築を以下に記載する。 構築によりT7プロモーター領域に続いて短いスペース領域及び最適な真核生物Kozak配列を含有するpUC19ベクターが生じる。 これは、ウサギ網状赤血球溶解物における任意の付着配列の転写の開始に必要であるので、リボソームディスプレイ構築物の必須部分である。 リボソームディスプレイのための配列(例えばA6scTCR-Cκ)は、pUC19-T7ベクター中にNco1制限部位とEcoR1制限部位との間に連結することができる。

    等モル量のプライマーRev-link及びFor-linkを、94℃にて10分間加熱し、反応物を室温まで緩徐に冷却することによりアニールさせた。 これにより、下記に見られる二重鎖DNA複合体の形成が生じた。
    5'AGCTGCAGCTAATACGACTCACTATAGGAACAGGCCACCATGG
    CGTCGATTATGCTGAGTGATATCCTTGTCCGGTGGTACCCTAG 3'(配列番号51)

    5'領域は、HindIII制限部位に相補的な張り出し粘着末端を含有する一方、3'末端は、BamH1制限部位に相補的な粘着末端を含有する。 アガロースゲル電気泳動により精製し、切り出し、Qiagenゲル抽出キットで更に精製したHindIII/BamHI二重消化pUC19中に、アニールさせたオリゴヌクレオチドを連結した。 連結物を、E.coli XL1-BLUE中に形質転換した。 個々のpUC19-T7クローンを配列決定して、正確な配列の存在を確認した。 配列を図8に示す。

    A6scTCR-C-κベクターの構築−段階2
    単鎖A6scTCR-C-κ DNA配列の構築は、その後に1つのA6scTCR-C-κフラグメントに組み立てなければならない3つのPCRフラグメントの生成を必要とする。 これらフラグメントは、(a.)5'領域でNco1部位に隣接するA6 TCRα鎖可変領域及びBamH1制限部位に隣接する3'領域のグリシンセリンリンカーの区画。 この生成物は、プライマー45及び50(表2を参照)でのベクターpEX202の標準的なPCRにより生じた。 フラグメント(b.) グリシンセリンリンカーの区画に続く5'領域でBamH1制限部位に隣接するA6 TCRβ可変領域及び定常領域。 この生成物は、プライマー72及び73(表2を参照)でのベクターpEX207の標準的なPCRにより生じた。 フラグメント(c.)プライマー61〜60(表2を参照)でのp147ベクターの標準的なPCRにより生じたヒトC-κ領域の部分。 からなる。 全てのPCR産物を1.6% TBEアガロースゲル上で泳動させ、正確なサイズのDNAバンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製した。

    フラグメント(b.)及び(c.)を、プライマー配列73及び61(表2を参照)中の相補性を介する標準的なオーバーラップPCRにより融合させた。 PCRをプライマー72及び60(表2を参照)により実行した。 PCR産物を1.6% TBEアガロースゲル上で泳動させ、正確なサイズのDNAバンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製した。 このフラグメントを(d.)と呼ぶ。
    フラグメント(a.)をNco1及びBamH1で二重消化する一方、フラグメント(d.)をBamH1及びEcoR1で二重消化した。 pUC19-T7をNco1及びEcoR1で二重消化した。 全ての消化DNA産物を1.2% TBEアガロースゲル上で泳動させ、正確なサイズのDNAバンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製した。 これら消化したpUC19-T7、フラグメント(a.)及び(d.)を連結し、E.coli XL1-BLUE中に形質転換した。 形質転換体を配列決定して、正確な配列を確認した。 pUC19中にクローニングされたA6scTCR-C-κリボソームディスプレイ構築物の配列は、図9においてPstl及びEcoR1部位に隣接して示される。

    インビトロ転写翻訳によるsc A6 TCR-C-κの生成の証明インビトロ転写翻訳用のscA6 TCR-C-κ PCR産物の調製 ここで、本発明者らは、ビオチン化リジンの存在下でのインビトロ転写翻訳によるsc A6 TCR-C-κの合成並びに後続のウェスタンブロットによる検出及びアルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジンでの検出を記載する。

    sc A6 TCR-C-κ PCR産物を、ベクターsc A6 TCR-C-κをテンプレートとして用い、PCRプライマー71及び60を用いる標準的なPCR反応で調製した。 プライマー60は、リボソームからのscTCRの遊離を可能にする停止コドンを含有する。 PCR合成の間の忠実性を増大させるためにPfuポリメラーゼ(Strategene)を使用した。 PCR産物を1.6% TBEアガロースゲル上で泳動させ、正確なサイズのDNAバンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製した。

    300ngの上記PCR産物とともにAmbion PROTEINscript II Linked transcription translation kit Cat 1280-1287を使用して転写翻訳反応を実施した。 製造業者のプロトコルに従って3つの転写翻訳反応物を設定した。 1つの改変は、Transcend(商標) Non-Radioactive Translation Detection Systemのビオチン化リジンを加えたことであった。
    反応物1 sc A6 TCR-C-κ 300ng(2μlのビオチン化リジンを含む)
    反応物2 sc A6 TCR-C-κ 300ng(2μlのビオチン化リジンを含まず)
    反応物3 DNAなし対照(2μlのビオチン化リジンを含む)

    2μlの各反応物を4〜20% Novex gradient SDS-PAGEゲル(Invitrogen)上で泳動させた。 加えて、対照のビオチン化TCRの多くの希釈物も泳動させた。 ゲルをブロットし、タンパク質をストレプトアビジンアルカリホスファターゼで検出し、続いてTranscend(商標) Non-Radioactive Translation Detection Systemのプロトコルに記載されているようなアルカリホスファターゼ用のWestern Blue(登録商標)Stabilized Substrateで比色分析的に顕色させた。 ウェスタンブロットを図10に示す。

    DNAなし対照及びビオチン化リジンを含まないA6scTCR-C-κ反応物において、正確なサイズ付近のバンドは、予測されたとおりには見ることができない一方、ビオチン化リジンの存在下のA6scTCR-C-κ反応物では、正確なサイズ付近のバンドが見られる。 このことにより、インビトロ転写翻訳によるsc A6 TCR-C-κ TCRの合成が証明される。

    sc A6 TCR-C-κリボソームディスプレイPCR産物の調製 ベクターA6scTCR-C-κをテンプレートとして用い、PCRプライマー71及び75(表2を参照)を用いる標準的なPCR反応で、sc A6 TCR-C-κ PCR産物を調製した。 プライマー75は停止コドンを含有しない。 PCR合成の間の忠実性を増大させるためにPfuポリメラーゼ(Strategene)を使用した。 PCR産物を1.6% TBEアガロースゲル上で泳動させ、正確なサイズのDNAバンドを切り出し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製した。

    リボソームディスプレイプロセス
    sc A6 TCR-C-κの転写及び翻訳
    Ambion PROTEINscript II Linked transcription translationキット(Cat No. 1280-1287)を使用して転写/翻訳反応を実施した。

    転写反応
    Ambion 0.5mlノンスティックチューブ(Cat No. 12350)に以下の転写反応物をセットした。

    ホットリド(hot lid)を外してPCRブロック上でチューブを30℃にて60分間インキュベートした。

    翻訳反応
    Ambion 0.5mlノンスティックチューブに以下の翻訳反応物をセットした。

    各チューブは3×50μlの選択に十分に含有する。 チューブを混合し、ホットリドを外してPCRブロック上でチューブを30℃にて60分間インキュベートした。 30分後、3単位のRQ1 Rnase free Dnase(Promega)を加えてチューブ1中の元のDNAテンプレートを破壊し、チューブ2に3単位のRQ1 Rnase free Dnase(Promega)を加えた。 60分後、18μlのヘパリン溶液を翻訳反応物2に加え、18μlのヘパリン溶液を翻訳反応物1に加えた。 サンプルをHLA被覆ビーズに対する選択に備えて氷上で保存した。

    磁性ビーズの被覆
    20μlの再懸濁したStreptavidin Magnetic Particle (Roche Cat. No. 1641778)をRnaseフリーの滅菌1.5mlエッペンドルフチューブに移した。 ビーズをMagnetic Particle Separator (Roche Cat. No. 1641794)で固定し、上清を除去した。 次いで、ビーズを100μlのRnaseフリーの1×PBS(10×PBS Ambion Cat No. 9624, Ambion H 2 0 Cat No. 9930)で洗浄した。 ビーズを固定し、上清を除去した。 合計3回のPBS洗浄を行った。
    ビーズを20μlのPBSに再懸濁し、内容物を2つのチューブ間で等しく分割した(各10μl)。 一方のチューブを対照でブロックしたビーズを作成するために使用し、他方のチューブをHLA-A2-Tax被覆ビーズを作成するために使用する。

    対照ビーズチューブに80μlのBSA/ビオチン溶液を加えて混合した。 BSA/ビオチン溶液は、以下のとおりに作成した。 10μlの0.2M Tris塩基0.1Mビオチン溶液を990μlのPBS 0.1% BSA(Ambion Ultrapure Cat No. 2616)に加えた。 20μlのヘパリン溶液(1×PBS中138mg/mlヘパリン(Sigma H-3393))も添加し、溶液を混合した。 ビーズを室温にて1時間断続的に混合しながらインキュベートした。 次いで、ビーズを100μlのPBSで3回洗浄し、10μlのPBS、0.1% BSA中に再懸濁した。

    HLA-TAX被覆ビーズを以下のように調製した。 40μlのHLA-A2-Tax(W099/60120に記載のように調製した1.15mg/ml)を10μlのビーズに添加して混合した。 ビーズを室温にて15分間インキュベートし、20μlのBSA 50mg/ml(Ambion Cat 2616)及び20μlのヘパリン溶液(上記参照)を添加して混合した。 ビーズを更に45分間インキュベートし、次いで、20μlのBSA/ビオチン溶液を加えた。 次いで、ビーズを100μlのPBSで3回洗浄し、10μlのPBS、0.1% BSAに再懸濁した。

    磁性ビーズでのパニング
    sc A6 TCR翻訳反応物を3つの50μlのアリコートに分割し、各アリコートに以下のビーズのいずれかを2μl加えた:
    対照(HLAなし)
    HLA-A2-Tax
    HLA-A2-Tax+10μg可溶性scA6 TCR

    対照の翻訳反応もまた行い、3つの50μlのアリコートに分割し、各アリコートに以下のビーズのいずれかを2μl加えた:
    対照(HLAなし)
    HLA-A2-Tax
    HLA-A2-Tax+10μl可溶性sc A6 TCR

    これにより合計6つのチューブが与えられた。 チューブをPCRブロック上で5℃にて60分間断続的に混合しながらインキュベートした。
    次いで、ビーズを100μlの氷冷緩衝液(PBS、5mM 酢酸Mg、0.2% Tween 20(Sigma Rnaseフリー)で3回洗浄した。次いで、1μl(40U)のSuperasin及び1μl(1U)のRQ1 Dnaseを含有する1×RQ1 Dnase消化緩衝液50μlに各アリコートのビーズを再懸濁した。ビーズをPCRブロック上で30℃にて30分間インキュベートした。

    次いで、ビーズを100μlの氷冷緩衝液(PBS、5mM 酢酸Mg、0.2% Tween 20)で3回洗浄し、氷冷H 2 0で1回洗浄した。 ビーズを10μlのRnaseフリーH 2 Oに再懸濁した。 次いで、ビーズをRT-PCRに備えて凍結した。

    リボソームディスプレイ反応からレスキューしたビーズ上のsc A6 TCR-C-κ mRNAのRT-PCR
    製造業者のプロトコルに記載されたようなTitan one tube RT-PCRキット(cat 1855476)を用いてビーズ上でRT PCR反応を行った。 各RT-PCR反応物にプライマー45及び7並びに0.3μlのSuperasin Rnase阻害剤とともに2μlのビーズを加えた。
    各RT-PCR反応のため、逆転写酵素が存在せず、Roche高忠実性ポリメラーゼだけであることのみが異なる第2のPCRのみの反応を設定した。 この第2の反応がDNA混入についての対照として働いた。 加えて、1ngのベクターsc A6TCR-C-κを使用するRT-PCR陽性対照を設定した。

    反応を以下のとおり循環させた。 PCRブロック上で、50℃にて30分間のサンプルのインキュベーションに続いて、94℃にて3分間のインキュベーションによる逆転写酵素の不活化によってRT-PCR工程を実施した。
    反応は、合計38サイクルの以下のとおりのPCRサイクルであった:
    94℃、30秒間
    55℃、20秒間
    68℃、130秒間。
    72℃にて4分間のインキュベーションによりPCR反応を終了させた。

    全てのリボソームディスプレイ工程の間、Rnase混入を回避するために十分に注意した。 RT-PCR及びPCR反応物を1.6% TBEアガロースゲル上で泳動させた。 これを図11に示す。 ゲルの分析により、DNA混入がないこと及び全てのPCR産物がmRNAから誘導されることが示される。 レーン2の正確なサイズのDNAバンドは、リボソームディスプレイされたsc A6 TCR-C-κがHLA-A2-Tax被覆ビーズにより除かれたことを証明している。 レーン3は、可溶性sc A6 TCRの添加により、リボソームディスプレイされたsc A6 TCR-C-κのこの特異的選択を阻害することが可能であることを示す。 レーン2の非阻害サンプルに比してレーン3のバンド強度の顕著な減少は、このことを証明する。 リボソームディスプレイされたsc A6 TCR-C-κの結合は、対照の非HLA被覆ビーズに対して示されなかった。

    実施例6−ファージ粒子上にディスプレイされたA6 TCRクローンの配列分析及びディスプレイ特性を改善する方法
    PCR及び分子クローニングによるファージ上にA6 TCRをディスプレイするためのベクターの構築の後、A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を産生することができる細菌クローンを、実施例4に記載のようなファージELISAによってスクリーニングした。 ELISA結合アッセイにおいてHLA-A2-taxへの特異的結合を与える3つの異なるクローンを同定した。 これらのクローン全てが、「野生型」A6 TCR DNA中又は関連する調節配列中に変異を含んでいた。 これらを以下の表に記載する:

    これらのクローン全てが、A6 TCRβ鎖の発現レベルに減少を引き起こす可能性が高い変異を含んでいた。 TCRの高発現レベルにより引き起こされる細胞毒性の結果として、低発現クローンが高発現クローンに対して選択されると推論された。

    実施例7−A6 TCR CDR3領域の変異誘発 変異を導入して高親和性変異体を作成する可能性を調べるためにA6 TCRのCDR3領域を標的とした。
    オーバーラップPCRを使用して、α及びβCDR3領域の配列を改変して2つの独特な制限部位、α鎖についてはYOL54、5'CAGCTGGGGGAAGCTTCAGTTTGGAGCAG3'(配列番号64)及びYOL55、5'CTGCTCCAAACTGAAGCTTCCCCCAGCTG3'(配列番号65)のオリゴを用いてHindIII、及びβ鎖についてはYOL56、5'GTACTTCTGTGCCTCGAGGCCGGGACTAG3'(配列番号66)及びYOL57、5'CTAGTCCCGGCCTCGAGGCACAGAAGTAC3'(配列番号67)のオリゴ用いてXhoIを導入した。

    PCRを使用して親和性変異のための変異を導入した。 A6 TCRクローン9(β鎖CDR3配列に導入オパールコドンが組み込まれている)をテンプレートDNAの供給源として使用し、変異プライマー(以下の表で詳述)及びYOL22、5'CATTTTCAGGGATAGCAAGC3'(配列番号68)(β鎖)又はYOL13、5'TCACACAGGAAACAGCTATG3'(配列番号69)(α鎖)を用いてTCR鎖を増幅させた。

    α鎖フラグメントをNcoI及びHindIIIで消化し、Qiagenキットを使用して再精製した。 クローン9をNcoI及びHindIIIで消化し、続いてQiagenキットを使用するゲル精製をすることによってベクターを調製した。 β鎖フラグメントをXhoI及びNotIで消化し、Qiagenキットを使用して再精製した。 クローン9をXhoI及びNotIで消化し、続いてQiagenキットを使用するゲル精製をすることによってベクターを調製した。 3:1のモル比の精製した挿入物及びベクターをT4リガーゼ緩衝液、T4リガーゼ及びヌクレアーゼを含まないと混合した。 連結を16℃の水浴にて一晩実施した。 各変異ライブラリーのため、合計0.5〜1μgの精製連結生成物を、E.coli TG1中に、40μlのエレクトロポレーションコンピテント細胞(Stratagen)当たり0.2μg DNAの比にて、製造業者が提供したプロトコルに従ってエレクトロポレートした。 エレクトロポレーションの後、960μlのSOC培地(37℃)で直ぐに細胞を再懸濁し、100μg/mlアンピシリン及び2%グルコースを補充したYTE(1リットル中15gのBacto-Agar、8gのNaCl、10gのトリプトン、5gの酵母抽出物)を含む244mm×244mm組織培養プレートに播種した。 プレートを30℃にて一晩インキュベートした。 次いで、細胞を、15%のグリセロールを補充した5mlのDYT(1リットル中16gのトリプトン、1Ogの酵母抽出物及び5gのNaCl、125℃にて15分間オートクレーブにかけた)でプレートから剥ぎ取った。

    A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を作成するため、500mlのDYTag(100μg/mlのアンピシリン及び2%グルコースを含むDYT)に500〜1000μlのライブラリーストックを接種した。 OD(600nm)が0.5に達するまで培養物を増殖させた。 100mlの培養物をヘルパーファージ(M13 K07(Invitrogen)又はHYPER PHAGE(Progen Biotechnik, GmbH 69123 Heidelberg)に感染させ、37℃の水浴で30分間インキュベートした。培地を100mlのDYTak(100μg/mlアンピシリン及び25μg/mlのカナマイシンを含むDYT)と交換した。次いで、培養物を、300rpmで振盪させながら25℃にて20〜36時間インキュベートした。

    実施例8−高親和性A6 TCR変異体の単離 高親和性A6 TCR変異体の単離を2つの異なる方法を用いて行った。
    第1の方法には、Maxisorp immuno-tube(Invitrogen)を用いて、HLA-A2 Tax複合体に結合し得る変異体A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を選択することが含まれる。 immuno-tubeを、PBS中10μg/mlのストレプトアビジン1〜2mlで一晩室温にて被覆した。 チューブをPBSで2回洗浄し、次いでPBS中5μg/mlのビオチン化HLA-A2 Tax複合体1mlを加え、室温にて30分間インキュベートした。 高親和性結合体の選択のためのプロトコルの残りは、以下の改変を除いて以前に(Liら,(2000) Journal of Immunological Methods 236:133-146)記載されたとおりである。 選択を3又は4回にわたって行った。 ビオチン化HLA-A2 Tax複合体の濃度は、第1回目の選択については5μg/mlであり、第2回目の選択については0.5μg/mlであり、第3回目の選択については0.05μg/mlであり、第4回目の選択については0.005μg/mlであった。 選択には、第1回目及び第2回目ではM13 K07ヘルパーファージを使用し、その後の回ではハイパーファージ(hyper phage)を使用した。

    利用した第2の方法は、溶液中のHLA-A2 Tax複合体に結合し得る変異体A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子の選択であった。 ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズ(Dynal M280)を製造業者のプロトコルに従って予備洗浄した。 10 12 〜10 13 cfuの濃度の変異A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を、第1回、第2回、第3回及び第4回の選択についてそれぞれ2×10 -8 M、2×10 -9 M、2×10 -10 M及び2×10 -11 Mの濃度のビオチン化HLA-A2 Tax複合体で予備洗浄した。 A6 TCRディスプレイファージ粒子とHLA- A2 Tax複合体との混合物を、穏やかに回転させながら室温にて1時間インキュベートし、ビオチン化HLA-A2 Tax複合体に結合したA6 TCRディスプレイファージ粒子を、200μl(第1回目)又は50μl(第2回目、第3回目及び第4回目)のストレプトアビジン被覆M280磁性ビーズを用いて捕捉した。 ファージ粒子の捕捉後、Dynal磁性粒子濃縮機を用いて、ビーズを合計10回(PBStween20で3回、2%スキムミルク粉を含むPBStween20で2回、PBSで2回、2%スキムミルク粉を含むPBSで1回、及びPBSで2回)洗浄した。 最終の洗浄後、ビーズを、1mlの新たに調製した100mMトリエチルアミン(pH11.5)中に再懸濁し、穏やかに回転させながら室温にて5〜10分間インキュベートした。 ビーズから溶出させたファージ粒子を、直ぐに、300μlの1M tris-HCl(pH7.0)で中和させた。 溶出物の半分を使用して、以前に記載された方法(Liら,(2000) Journal of Immunological Methods 236:133-146)に従って、選択したファージ粒子の増幅のために新たに調製したOD(600nm)=0.5の10mlのE.coli TG1に感染させた。

    第3回目又は第4回目の選択後、95個のコロニーをプレートから採取し、これを使用して96ウェルマイクロタイタープレート中の100μlのDYTagに接種した。 培養物を37℃にて振盪させながら一晩インキュベートした。 次いで、100μlのDYTagに2〜5μlの一晩培養物を接種し(sub-inoculated)、37℃にて振盪させながら2〜3時間か又は培養物が濁るまでインキュベートした。 細胞にヘルパーファージを感染させるため、培養物に5×10 9 pfuのヘルパーファージを含む25μlのDYTagを感染させ、37℃にて30分間インキュベートした。 培地をDYTakと交換した。 プレートを25℃にて20〜36時間300rpmで振盪させながらインキュベートした。 4℃にて10分間の3000gでの遠心分離により細胞を沈降させた。 上清を使用して、以下のように競合ファージELISAにより高親和性A6 TCR変異体をスクリーニングした。

    ストレプトアビジンで被覆したNunc-Immuno MaxisorpウェルをPBSで2回濯いだ。 25μlの5μg/mlビオチン化HLA-A2-Tax複合体を各ウェルに加え、これらを室温にて30〜60分間インキュベートし、続いてPBSで2回濯いだ。 ウェル中の非特異的タンパク質結合部位を、300μlのPBS中3%スキムミルクを添加し、続いて室温にて2時間インキュベートすることによりブロックした。 へテロ二量体A6 TCRをディスプレイしているファージ粒子を調製するために、ファージ粒子を、0、20及び200nMのHLA-A2-Taxを含むPBS中3%のスキムミルクと混合し、続いて室温にて1時間インキュベートした。 ファージを、HLA-A2-Taxを被覆したウェルに加え、室温にて1時間インキュベートし、続いて0.1% tween 20を含むPBSで3回洗浄し、次いでPBSで3回洗浄した。 結合したTCRディスプレイファージ粒子を、実施例4に記載のように抗fd抗体(Sigma)で検出した。

    いくつかの推定の高親和性A6 TCR変異体を同定した。 そのCDR3配列を、対応する野生型配列とともに以下の2つの表に掲載する。 アンバー停止コドン(X)が、全てのβ鎖変異体及び1つのα鎖変異体に見出された。

    実施例9−CDR3変異を含む、定常領域間に非天然型ジスルフィド結合を有する可溶性へテロ二量体A6 TCRの生成 実施例8で同定された高親和性A6 TCR変異体をコードするファージミドDNAを、Mini-Prepキット(Quiagen, UK)を使用して該当するE.coli細胞から単離した。
    標的としてのファージミドDNA及び以下のプライマーを用いるPCR増幅を使用して、可溶性TCRα及びβ鎖DNA配列を増幅させた。

    A6 TCRα鎖順方向プライマー
    ggaattc atcgat g cagaaggaagtggagcag (配列番号129)
    (ClaI制限部位に下線を付している)

    汎用TCRα鎖逆方向プライマー
    gtaca cggccg ggtcagggttctggatatac (配列番号130)
    (EagI制限部位に下線を付している)

    A6β鎖順方向プライマー
    Tctctc attaat gaatgctggtgtcactcagacccc (配列番号131)
    (AseI制限部位に下線を付している)

    汎用β鎖逆方向プライマー
    Tagaa accggt ggccaggcacaccagtgtggc (配列番号132)
    (AgeI制限部位に下線を付している)

    TCRβ鎖の場合、更にPCRステッチング(PCR stitching)を行って、CDR3領域中のアンバー停止コドンをグルタミン酸をコードするコドンと置換した。 アンバー停止コドンがE.coli中で抑制される場合、翻訳が停止される代わりに、通常、グルタミン残基が導入される。 したがって、アンバーコドン含有TCRがファージの表面にディスプレイされる場合、それは、この位置にグルタミン残基を含む。 しかし、TCRβ鎖遺伝子を発現プラスミド中に移入したとき、グルタミン酸残基をグルタミンの代替として使用した。 このPCRステッチングに使用したプライマーは以下のとおりである。
    YOL124 CTGCTCTGGTTCCGCACTC (配列番号133)
    YOL125 GAGTGCGGAACCAGAGCAG (配列番号134)

    変異した可溶性A6 TCRβ鎖のDNA配列を、自動化配列決定により検証した(変異したA6 TCRβ鎖DNA配列については図14a、これによりコードされるアミノ酸配列については図14bを参照)。 図14cは、グルタミンからグルタミン酸への置換のない、変異したA6 TCRβ鎖アミノ酸配列、すなわち、ファージ−ELISAにより単離したようなクローン134中に存在した配列を示す。

    次いで、これらA6 TCRα及びβDNA配列を使用して、WO 03/020763に記載のような可溶性A6 TCRを作成した。 簡潔には、2つの鎖を別個のE.coli培養物中で封入体として発現させる。 次いで、封入体を単離して、変性させ、インビトロで共にリフォールディングさせる。

    実施例10−HLA-A2 Taxへの高親和性A6 TCRの結合のBIAcore表面プラズモン共鳴特徴付け 表面プラズモン共鳴バイオセンサ(BIAcore 3000(商標))を使用して、高親和性クローン134 A6 TCR(変異したTCRβ鎖の完全なDNA及びアミノ酸配列については、それぞれ、図15a及び15bを参照)とHLA-A2 Taxリガンドとの結合を分析した。 これは、半配向様式でストレプトアビジン被覆結合表面に固定したpMHC複合体(下記に説明)を作成し、同時に4つまでの異なるpMHC(別々のフローセルに固定)に対する可溶性T細胞レセプターの結合の効率的な試験を可能にすることによって促進させた。 HLA複合体の手動での注入により、固定したクラスI分子を正確なレベルで容易に操作することが可能になる。

    構成成分のサブユニットタンパク質及び合成ペプチドを含む、細菌で発現した封入体から、インビトロで、ビオチン化クラスI HLA-A2 tax複合体をリフォールディングさせ、続いて精製し、インビトロで酵素的にビオチン化した(O'Callaghanら(1999)Anal.Biochem.266:9-15)。 〜75mg/リットル細菌培養物の封入体発現レベルが得られた。 適切な構築物中でHLA重鎖の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインに置換するC末端ビオチン化タグを有するHLA重鎖を発現させた。 HLA軽鎖又はβ2-ミクログロブリンもまた、〜500mg/リットル細菌培養物のレベルで、適切な構築物からE.coli中で封入体として発現させた。

    E.coli細胞を溶解し、封入体を約80%の純度まで精製した。 封入体からのタンパク質を6Mグアニジン−HCl、50mM Tris(pH8.1)、100mM NaCl、10mM DTT、10mM EDTA中で変性させ、5℃より低いリフォールド緩衝液中に変性タンパク質の単一パルス(single pulse of denatured protein)を添加することにより、30mg/リットルの重鎖、30mg/リットルのβ2mの濃度で、0.4M L-アルギニン−HCl、100mM Tris(pH8.1)、3.7mMシスタミン、mMシステアミン、4mg/mlペプチド(例えばtax 11-19)中にリフォールディングさせた。 リフォールディングは少なくとも1時間4℃で完了に到達させた。

    緩衝液を、10容量の10mM Tris(pH8.1)での透析により交換した。 溶液のイオン強度を十分に減少させるために、2回の緩衝液交換が必要であった。 次いで、タンパク質溶液を、1.5μm酢酸セルロースフィルターを通して濾過し、POROS 50HQアニオン交換カラム(8ml床容量)に充填した。 タンパク質を、直線の0〜500mM NaCl勾配で溶出させた。 HLA-A2−ペプチド複合体は約250mM NaClで溶出した。 ピーク画分を収集し、プロテアーゼインヒビターのカクテル(Calbiochem)を加え、画分を氷上で冷却した。

    ビオチン化タグを付したHLA-A2複合体を、10mM Tris(pH8.1)、5mM NaCl中に、同じ緩衝液中で平衡化したPharmacia迅速脱塩カラムを使用して緩衝液交換をした。 溶出の際、即座に、タンパク質含有画分を氷上で冷却し、プロテアーゼインヒビターカクテル(Calbiochem)を加えた。 次いで、ビオチン化試薬を加えた:1mMビオチン、5mM ATP(pH8に緩衝化)、7.5mM MgCl 2及び5μg/ml BirA酵素(O'Callaghanら(1999)Anal.Biochem.266:9-15に従って精製)。 次いで、混合物を室温にて一晩インキュベートした。

    ゲル濾過クロマトグラフィーを使用してビオチン化HLA-A2複合体を精製した。 Pharmacia Superdex 75 HR 10/30カラムを濾過PBSで予め平衡化し、1mlのビオチン化反応混合物を充填し、カラムをPBSで0.5ml/分にて展開した。 ビオチン化HLA-A2複合体は、約15mlで単一ピークとして溶出した。 タンパク質を含む画分をプールし、氷上で冷却し、プロテアーゼインヒビターカクテルを加えた。 クーマシー結合アッセイ(PerBio)を使用してタンパク質濃度を測定し、ビオチン化HLA-A2複合体のアリコートを−20℃で凍結保存した。 標準的なアミンカップリング法によりストレプトアビジンを固定化した。

    新規な鎖間結合を含む高親和性A6 Tax TCRとMLA-A2 Tax複合体又は無関係のHLA-A2 NY-ESOとの組合せ(これらの製造は上記で説明)間の相互作用を、BIAcore 3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサで分析した。 SPRは、レセプターリガンド相互作用を検出しその親和性及び動力学的パラメータを分析するために使用することができる原理である、小さなフローセル内のセンサ表面近くでの応答単位(RU)で表される屈折率の変化を測定する。 β2mに架橋したビオチンとフローセルの活性化表面に化学的に架橋されていたストレプトアビジンとの間の結合を介して、個々のHLA-A2ペプチド複合体を別々のフローセルに固定化することにより、プローブフローセルを準備した。 次いで、異なるフローセルの表面上にsTCRを一定流速で通過させ、そうしている間のSPR応答を測定することにより、アッセイを実施した。 最初に、4つの異なる表面(〜1000RUのHLA-A2 Tax複合体を被覆したもの、第2は、〜1000RUのHLA-A2 NY-ESO複合体を被覆したもの、及びストレプトアビジンのみを被覆した2つのブランクフローセル)上に5μl/分の一定流速で可溶性A6 TCRを通過させることによって、相互作用の特異性を検証した(図15を参照)。

    変異した可溶性A6 TCRの増加した親和性により、この部分とHLA-A2 Tax複合体との相互作用に関するkdの計算が困難になった。 しかし、相互作用の半減期(t 1/2 )は、51.6分と計算された(図16を参照)。 これを野生型の相互作用についてのt 1/2 (7.2秒)と比較する。

    実施例11−新規なジスルフィド結合を含む可溶性NY-ESO TCRをコードするベクターの作成 実施例1で調製した可溶性A6 TCRのβ鎖は、その天然型配列に、連結部位としての使用に適切なBglII制限部位(AAGCTT)を含む。
    PCR変異誘発を下記に詳述するように行い、可溶性A6 TCRのα鎖中に新規なシステインコドンの5'側でBamH1制限部位(GGATCC)を導入した。 図2aに記載する配列をこの変異誘発のためのテンプレートとして使用した。 以下のプライマーを使用した:

    100ngのプラスミドを5μlの10mM dNTP、25μlの10×Pfu-緩衝液(Stratagene)、10単位のPfuポリメラーゼ(Stratagene)と混合し、最終容量をH 2 0で240μlに調整した。 48μlのこの混合物に、50μlの最終反応容量中0.2μMの最終濃度が得られるように希釈したプライマーを補充した。 30秒間95℃の最初の変性工程の後、反抗混合物を、Hybaid PCR迅速PCR装置で、15回の変性(95℃、30秒間)、アニーリング(55℃、60秒間)及び伸長(73℃、8分間)に付した。 次いで、産物を、10単位のDpnI制限酵素(New England Biolabs)で5時間37℃にて消化した。 10μlの消化反応物をコンピテントXL1-Blue細菌中に形質転換させ、37℃にて18時間増殖させた。 単一コロニーを採取し、5ml TYP+アンピシリン(16g/l細菌トリプトン、16g/l酵母抽出物、5g/l NaCl、2.5g/l K 2 HPO 4 、100mg/lアンピシリン)中で一晩増殖させた。 プラスミドDNAをQiagen mini-prepカラム上で製造業者の指示に従って精製し、配列を、オックスフォード大学生化学部の配列決定施設での自動化配列決定により検証した。

    NY-ESO TCRをコードするcDNAを公知の技法に従ってT細胞から単離した。 NY-ESO TCRをコードするcDNAは、逆転写酵素でmRNAを処理することによって作成した。

    新規なジスルフィド結合が組み込まれている可溶性NY-ESO TCRをコードするベクターを作成するため、α鎖BamHI及びβ鎖BglII制限部位を含むA6 TCRプラスミドをテンプレートとして使用した。 以下のプライマーを使用した:

    NY-ESO TCRα及びβ鎖構築物を、以下のとおりのPCRクローニングにより取得した。 PCR反応を上記のようなプライマー及び天然型NY-ESO TCR鎖を含むテンプレートを使用して行った。 PCR産物を該当する制限酵素で制限消化し、pGMT7中にクローニングして発現プラスミドを取得した。 プラスミド挿入物の配列を、自動化DNA配列決定により確証した。 図17a及び17bは、変異したNY-ESO TCRα及びβ鎖のDNA配列をそれぞれ示し、図18a及び18bは得られるアミノ酸配列を示す。

    実施例12−ファージディスプレイベクターの構築及びNY-ESO TCRα及びβ鎖をコードするDNAのファージミドベクター中へのクローニング 実施例11で記載されたように作成した、非天然型ジスルフィド鎖間結合の形成を容易にするために新規なシステインコドンが組み込まれている可溶性NY-ESO TCRα及びβ鎖をコードするDNAを、以下のようにファージミドベクターpEX746中に組み込んだ。

    pEX746ファージミドベクター(A6 TCRクローン7をコードするDNAを含む)に適合可能なクローニング部位を導入するために、以下のプライマーを使用して、2つのNY-ESO TCR鎖をコードするDNAを個々にPCRに付した。
    NY-ESO TCRα鎖用
    TRAV21
    GCCGG CCATGG CCAAACAGGAGGTGACGCAGATTCCT (配列番号141)
    YOL6
    CTTCTTAAAGAATTCTTAATTAA CCTAGG TTATTAGGAACTTTCTGGGCTGGGGAAG (配列番号142)
    NY-ESO TCRβ鎖用
    TRBV6-1/2/3/5/6/7/8/9
    TCACA GCGCGC AGGCTGGTGTCACTCAGACCCCAAA (配列番号143)
    RT1
    CGAGAGCCCGTAGAACTGGACTTG (配列番号144)

    ベクターを構築するための分子クローニング法は「Molecular cloning: A laboratory manual, by J. Sambrook and DW Russell」に記載されている。 表1に列挙したプライマーをベクターの構築に使用する。 PCRプログラムの例は、1サイクルの94℃にて2分間、続いて25サイクルの94℃にて5秒間、53℃にて5秒間及び72℃にて90秒間、続いて1サイクルの72℃にて10分間、次いで4℃にて保持である。 Expand hifidelity Taq DNAポリメラーゼをRocheから購入する。
    クローン7 A6 TCRβ鎖をコードするDNAを、制限酵素BssHII及びBglIIでの消化によりpEX746から取り出した。 次いで、対応して消化されたNY-ESOβ鎖をコードするPCR DNAを、連結によりファージミドに置換した。 クローニング産物の配列を自動化配列決定により検証した。

    同様に、クローン7 A6 TCRα鎖をコードするDNAを、制限酵素NcoI及びAvrIIでの消化によりpEX746から取り出した。 次いで、対応して消化されたNY-ESOα鎖をコードするPCR DNAを、連結により、NY-ESO TCRβ鎖をコードするDNAを既に含んでいるファージミドに置換した。 クローニング産物の配列を自動化配列決定により検証した。
    図19a及び19bは、ファージミド(pEX746:NY-ESO)に組み込まれた、NY-ESO TCRα及びβ鎖並びに周囲の該当配列のDNA及びアミノ酸配列をそれぞれ詳述する。 NcoI部位に先行する配列は、pEX746と同じである。

    実施例13−E.coliにおける細菌コートタンパク質とへテロ二量体NY-ESO TCRとの融合体の発現 非天然型ジスルフィド鎖間結合を含むへテロ二量体NY-ESO TCRをディスプレイしているファージ粒子を、抗体scFvをディスプレイしているファージ粒子の生成について以前に記載されて方法(Liら,2000, Journal of Immunological Methods 236:133-146)に以下の改変を加えて用いて調製した。 pEX746:NY-ESOファージミド(すなわち、実施例12に記載したように調製された、ファージgIIIタンパク質に融合した可溶性NY-ESO TCRα鎖及びNY-ESO TCRβ鎖をコードするファージミド)を含むE.coli TG 1細胞を使用して、10mlの2×TY(100μg/mlのアンピシリン及び2%グルコースを含む)に接種し、次いで培養物を37℃にて一晩(16時間)振盪させながらインキュベートした。 50μlの一晩培養物を使用して、10mlの2×TY(100μg/mlのアンピシリン及び2%グルコースを含む)に接種し、次いで培養物をOD 600nm =0.8まで37℃にて振盪させながらインキュベートした。 HYPERPHAGEヘルパーファージを培養物に5×10 9 pfu/mlの最終濃度まで加えた。 次いで、培養物を37℃にて静置して30分間、次いで200rpmで振盪させながら更に30分間インキュベートした。 次いで、上記培養物の培地を、2×TY(100μg/mlのアンピシリン及び25μg/mlのカナマイシンを含む)で50mlにし、次いで培養物を25℃にて250rpmで振盪させながら36〜48時間インキュベートした。 次いで、培養物を4℃にて30分間4000rpmで遠心分離した。 上清を0.45μmシリンジフィルターを通過させて濾過し、更なる濃縮のために4℃にて貯蔵した。 次いで、上清を、PEG沈降により濃縮し、元の貯蔵容量の10%のPBSに再懸濁した。

    実施例14−線維状ファージ粒子上の非天然型ジスルフィド鎖間結合を含む機能的なへテロ二量体NY-ESO TCRの検出 実施例13で調製した濃縮懸濁液におけるファージ粒子上にディスプレイされた機能的(HLA-A2-NY-ESO結合性)NY-ESO TCRの存在を、実施例4に記載のファージELISA法を用いて検出した。 図20は、ファージELISAアッセイにおける、NY-ESO TCRをディスプレイしているファージ粒子とHLA-A2-NY-ESOとの特異的結合を示す。

    実施例15−HLA-DRA遺伝子の細胞発現のためのプラスミドの構築
    BglII制限部位を含むように設計した合成DNAプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、HLA-DRA鎖の細胞外部分をコードするDNA配列を健常ヒト被検体の血液から単離したcDNAから増幅する。
    次いで、PCR変異誘発を使用して、増幅した配列の3'末端にFosロイシンジッパーをコードするDNAを付加する。
    上記のDNA操作及びクローニングを、Sambrook, Jら,(1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, USA)に記載のように実施する。

    図21は、二シストロン発現ベクター中への挿入のためのHLA-DRβ鎖のDNA配列を提供する。 この図は、Fosロイシンジッパーペプチド及びビオチン化タグをコードするコドンの位置を示す。
    アミノ酸番号付けは、マウス配列(Kabat, 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, US Dept of Health & Human Services, Public Health Service, NIH, Bethesda, MD 1-1137)に基づく。
    次いで、Sf9昆虫細胞における発現のために、このDNA配列を、対応するクラスII HLAβ鎖をコードするDNA配列とともに、二シストロンバキュロウイルスベクターpAcAB3(このベクターの配列については図22を参照)中へ挿入する。 このベクターは、昆虫細胞において任意のクラスII HLA−ペプチド複合体を発現するために使用することができる。

    実施例16 HLA-DRB野生型及び変異体遺伝子の細胞発現のためのプラスミドの構築
    BamH1制限部位を含むように設計した合成DNAプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、HLA-DRB鎖の細胞外部分をコードするDNA配列を健常ヒト被検体の血液から単離したcDNAから増幅する。
    次いで、PCR変異誘発を使用して、増幅した配列の3'末端にJunロイシンジッパーをコードするDNAを、そして配列の5'末端にHLA-DR1分子により搭載されるインフルエンザHAペプチドをコードするDNAを付加する。
    上記のDNA操作及びクローニングを、Sambrook, Jら,(1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, USA)に記載のように実施する。

    図23は、二シストロン発現ベクター中への挿入のためのHLA-DRβ鎖のDNA配列を提供する。 この図は、Junロイシンジッパーペプチド及びインフルエンザHAペプチドをコードするコドンの位置を示す。
    アミノ酸番号付けは、マウス配列(Kabat, 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, US Dept of Health & Human Services, Public Health Service, NIH, Bethesda, MD 1-1137)に基づく。
    次いで、Sf9昆虫細胞における発現のために、このDNA配列を、対応するクラスIIα鎖をコードするDNA配列とともに、二シストロンバキュロウイルスベクターpAcAB3(このベクターの配列については図22を参照)中へ挿入する。 このベクターは、昆虫細胞において任意のクラスII HLA−ペプチド複合体を発現するために使用することができる。

    実施例17 クラスII HLA-DR1-インフルエンザHA複合体の発現及びリフォールディング クラスII HLA-DR1α及びβ鎖並びにインフルエンザHAペプチドを含む、実施例15及び16に記載のように作成された二シストロン発現ベクターを用いて、クラスII MHC発現を行った。 使用した発現方法及び精製方法は、Gauthier (1998) PNAS USA 95 p11828-11833に記載のとおりである。 簡潔には、DRα及びβ鎖の疎水性膜貫通領域及び細胞質セグメントを転写因子Fos及びJunからのロイシンジッパー二量体化ドメインで置換することによって、可溶性HLA-DR1をバキュロウイルス系において発現させる。 発現構築物において、必要な、クラスMHCに搭載されるインフルエンザHAペプチド配列を、 成熟DRβ鎖のN末端に共有結合させる。 DRα鎖は、ビオチン/ストレプトアビジン多量体化方法を使用する二機能性リガンド形成を容易にするためにビオチン化タグ配列を含む。 組換えタンパク質が、組換えバキュロウイルスに感染したSf9細胞により分泌され、これをアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。 タンパク質を、アニオン交換HPLCにより更に精製する。

    実施例18−クラスI可溶性ペプチド−HLA分子の構築 高親和性A6 TCRクローン134の特異性を更に研究するため、以下の可溶性クラスIペプチド−HLA分子を作成した:
    HLA-A2−ペプチド(LLGRNSFEV) (配列番号23)
    HLA-A2−ペプチド(KLVALGINAV) (配列番号24)
    HLA-A2−ペプチド(LLGDLFGV) (配列番号25)
    HLA-B8−ペプチド(FLRGRAYGL) (配列番号26)
    HLA-B27−ペプチド(HRCQAIRKK) (配列番号27)
    HLA-Cw6−ペプチド(YRSGIIAVV) (配列番号28)
    HLA-A24−ペプチド (VYGFVRACL) (配列番号29)
    HLA-A2−ペプチド(ILAKFLHWL) (配列番号30)
    HLA-A2−ペプチド(LTLGEFLKL) (配列番号31)
    HLA-A2−ペプチド(GILGFVFTL) (配列番号33)
    HLA-A2−ペプチド(SLYNTVATL) (配列番号34)。
    これら可溶性ペプチド−HLAを、実施例10に記載の方法を用いて作成した。

    実施例19−ペプチド−HLAへのクローン134高親和性A6 TCR結合の特異性のBIAcore表面プラズモン共鳴測定 表面プラズモン共鳴バイオセンサ(BIAcore 3000(商標))を使用して、高親和性クローン134 A6 TCR(変異したTCRβ鎖の完全なDNA及びアミノ酸配列については、それぞれ、図15a及び15bを参照)の結合特異性を分析した。 これは、実施例15〜17で記載したように作成したクラスII HLA-DR1−ペプチド及び実施例10で詳述した方法を用いて作成し実施例18に列挙したクラスIペプチド−HLA複合体を使用して行った。 以下の表に、使用したペプチド−HLA複合体を列挙する:、
    1. HLA-A2−ペプチド(LLGRNSFEV)(配列番号23)
    2. HLA-A2−ペプチド(KLVALGINAV)(配列番号24)
    3. HLA-A2−ペプチド(LLGDLFGV)(配列番号25)
    4. HLA-B8−ペプチド(FLRGRAYGL)(配列番号26)
    5. HLA-B27−ペプチド(HRCQAIRKK)(配列番号27)
    6. HLA-Cw6−ペプチド(YRSGIIAVV)(配列番号28)
    7. HLA-A24−ペプチド(VYGFVRACL)(配列番号29)
    8. HLA-A2−ペプチド(ILAKFLHWL)(配列番号30)
    9. HLA-A2−ペプチド(LTLGEFLKL)(配列番号31)
    10. HLA-DR1−ペプチド(PKYVKQNTLKLA)(配列番号32)
    11. HLA-A2−ペプチド(GILGFVFTL)(配列番号33)
    12. HLA-A2−ペプチド(SLYNTVATL)(配列番号34)。
    上記ペプチドHLAを、半配向様式で、BIAcore 3000(商標)のフローセルのストレプトアビジン被覆結合表面に固定した。

    BIAcore 3000(商標)は、同時に4つまでの異なるpMHC(別々のフローセルに固定)に対する可溶性T細胞レセプターの結合の試験を可能にする。 この実験のために、3つの異なるHLA−ペプチドをフローセル2〜4に固定し、フローセル1を対照としてブランクにした。 HLA−ペプチド複合体の手動での注入により、固定した分子を正確なレベルで操作することが可能になった。

    高親和性A6 TCRクローン134が上記リストの最初の3つのHLA−ペプチド複合体に結合する能力を評価した後、次の3つを、これらフローセル上に以前のものの頂上で直接固定した。 高親和性A6 TCRクローン134と12全てのHLA−ペプチド複合体との結合が評価されるまで、このプロセスを続けた。

    5μlの高親和性A6 TCRクローン134の10回の注入を、4.1ng/ml〜2.1mg/mlの範囲の濃度にて5μl/分で各フローセル上に通過させた(図24〜28を参照)。
    最後の対照として、高親和性A6 TCRクローン134を、このTCRのコグネイトリガンドである、固定したHLA-A2 Tax(LLFGYPVYV)(配列番号21)を含むフローセル上に通過させた。
    高親和性A6 TCRクローン134の特異的結合は、そのコグネイトリガンド(HLA-A2 Tax(LLFGYPVYV)(配列番号21))に対してのみ見いだされた。 これらのデータは、高親和性A6 TCRクローン134の特異性を更に証明する(図24〜28を参照)。

    実施例20−NY-ESO TCR CDR3領域の変異誘発
    NY-ESO TCRのCDR3領域を、高親和性変異体を生じる可能性を調べるための変異導入についての標的とした。 これを、実施例7に詳述した方法と実質的に同じ方法と組み合わせてNY-ESO TCR特異的PCRプライマーを用いて達成した。

    実施例21−高親和性A6 TCR変異体の単離 高親和性NY-ESO TCR変異体の単離を、実施例8に記載の2つの方法のうちの第1のものを使用して実施した。
    1つの高親和性NY-ESO TCR変異体が同定された。

    実施例22−可変領域変異を含む、定常領域間に非天然型ジスルフィド結合を有する可溶性高親和性へテロ二量体NY-ESO TCRの作成 実施例21で同定した高親和性NY-ESO TCR変異体をコードするファージミドDNAを、Mini-Prepキット(Quiagen, UK)を使用して該当するE.coli細胞から単離した。
    標的としてのファージミドDNAと以下のプライマーを用いるPCR増幅を使用して、変異した可溶性NY-ESO TCRβ鎖可変領域DNA配列を増幅した。
    NY-ESOβ鎖順方向プライマー
    Tctctc attaat gaatgctggtgtcactcagacccc (配列番号145)
    (AseI制限部位に下線を付す)
    汎用β鎖逆方向プライマー
    Tagaa accggt ggccaggcacaccagtgtgg (配列番号146)
    (AgeI制限部位に下線を付す)

    次いで、PCR産物をAge1/Ase1で消化し、Nde/Age1で切断したpEX821(実施例11で記載したように作成)中にクローニングした。
    次いで、上記のように増幅させた変異したNY-ESO TCRβ鎖DNA配列及び実施例11に記載のように作成したNY-ESO TCRα鎖を使用して、WO 03/020763に記載のように可溶性高親和性NY-ESO TCRを作成した。 簡潔には、2つの鎖を別個のE.coli培養物中で封入体として発現させる。 次いで、封入体を単離し、変性させ、インビトロで共にリフォールディングさせる。

    実施例23−HLA-A2 NY-ESOへの高親和性NY-ESO TCRの結合のBIAcore表面プラズモン共鳴特徴付け 表面プラズモン共鳴バイオセンサ(BIAcore 3000(商標))を使用して、高親和性NY-ESO TCRとHLA-A2 NY-ESOリガンドとの結合を分析した。 これは、半配向様式でストレプトアビジン被覆結合表面に固定したpMHC複合体(実施例10に記載のような)を作成し、同時に4つまでの異なるpMHC(別々のフローセルに固定)に対する可溶性T細胞レセプターの結合の効率的な試験を可能にすることによって促進させた。 HLA複合体の手動での注入により、固定したクラスI分子を正確なレベルで容易に操作することが可能になる。

    新規な鎖間結合を含む高親和性NY-ESO TCRとHLA-A2 NY-ESO複合体又は無関係のHLA-A2 Taxとの組合せ(これらの製造は上記で説明)の間の相互作用を、再び実施例10で記載のように、BIAcore 3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサで分析した。
    可溶性高親和性NY-ESOとHLA-A2 NY-ESOとの相互作用に関するkdは、4.1μmと計算された(図29a及び29bを参照)。 これを野生型の相互作用についてのkd(15.7μm)と比較する(図30a及び30bを参照)。

    実施例24−更なる高親和性A6 TCRの作成及び試験 クローン89、1、111及び71(実施例8を参照)で同定されたものに対応する以下の変異を含む可溶性TCRを、実施例9に詳述した方法を用いて作成した。 次いで、これら可溶性TCRのHLA-A2 Taxへの結合を、実施例10で詳述したBiacoreアッセイを用いて評価した。

    変異した可溶性A6 TCRの作成の基礎として使用した組合せ変異:
    クローン89変異+クローン134変異 クローン71変異+クローン134変異 クローン71変異+クローン89変異 クローン1変異+βG102→A変異

    結果:
    以下の表は、上記の可溶性の変異A6 TCRのHLA-A2 Tax親和性を、変異していない可変領域を含む可溶性A6 TCRを用いて得られたものと比較する。 最高親和性変異体の親和性は、相互作用についての半減期(T 1/2 )として表されていることに留意すべきである。 これら可溶性変異体A6 TCRは、相互作用についてのより低いkd又はより長いT 1/2により証明されるように、HLA-A2 Taxについて、変異していない可溶性A6 TCRより高い親和性を示した。

    図31〜37は、これら可溶性変異TCRのHLA-A2 Taxについての親和性を計算するために使用したBiacoreトレースを示す。 図38a〜38eは、変異A6 TCR鎖のアミノ酸配列を示す。

    実施例25−高親和性A6 TCR四量体及び単量体を用いる細胞染色
    T2抗原提示細胞を、ある範囲の濃度(10 -5 〜10 -9 M)のTaxペプチドでパルスしたβ2m(3μg/ml)とともに37℃にて90分間インキュベートした。 対照(これもまたβ2m(3μg/ml)とともにインキュベートしたT2細胞を用いる)を、10 -5 Mインフルエンザペプチドでパルスするか、又はペプチドなしでインキュベートした(パルスせず)。 パルスの後、細胞を無血清RPMI中で洗浄し、2×10 5細胞を、フィコエリトリン(PE)(Molecular probes, The Netherlands)(10μg/ml)で標識したストレプトアビジン結合高親和性クロー134 A6 TCR四量体又はAlexa 488 (Molecular probes, The Netherlands)で標識した高親和性クローン134 A6 TCR単量体のいずれかと10分間室温にてインキュベートした。 細胞を洗浄後、標識したTCR四量体及び単量体の結合を、FACSVantage SE(Becton Dickinson)を用いるフローサイトメトリーにより試験した。

    結果 図39aに示すように、高親和性A6 TCR四量体によるT2細胞の特異的染色が、下限10 -9 MまでのTaxペプチド濃度で観察できた。
    図39bに示すように、高親和性A6 TCR単量体によるT2細胞の特異的染色が、下限10 -8 MまでのTaxペプチド濃度で観察できた。

    図1a及び1bは、システインコドンを導入するように変異した可溶性A6 TCRα及びβ鎖の核酸配列をそれぞれ示す。 影付きは導入したシステインコドンを示す。

    図2aは、新規なジスルフィド鎖間結合を作成するために使用したT

    48 →C変異(下線)を含むA6 TCRα鎖細胞外アミノ酸配列を示す。 図2bは、新規なジスルフィド鎖間結合を作成するために使用したS

    57 →C変異(下線)を含むA6 TCRβ鎖細胞外アミノ酸配列を示す。

    図3は、ファージミドベクターへのTCRα及びβ鎖のクローニングを概説する。 この図は、ファージディスプレイベクターを記載する。 RSBはリボソーム結合部位である。 S1又はS2は、タンパク質をE.coliの周辺質に分泌するためのシグナルペプチドである。 「*」は、翻訳停止コドンを示す。 TCRα鎖又はβ鎖のいずれかが、ファージコートタンパク質に融合することができるが、この図では、TCRβ鎖のみがファージコートタンパク質に融合している。

    図4は、ファージミドpEX746:A6のDNA配列の詳細を示す。

    図4−1の続きである。

    図5は、E.coliにおける細菌コートタンパク質とへテロ二量体A6 TCRのファージ粒子融合体の発現を示す。 へテロ二量体A6 TCR::gIIIの融合タンパク質は、ウェスタンブロットを使用して検出する。 ファージ粒子を、E.coli XL-1 Blueから調製し、PEG/NaClで濃縮する。 サンプルは、還元又は非還元サンプル緩衝液中にロードする。 レーン1は正確な配列を含有するクローン7のサンプルであり、レーン2はα鎖コード遺伝子に欠失を含有するクローン14のサンプルである。 へテロ二量体A6 TCR:gIII融合タンパク質は、125kDaに検出された。

    図6は、ファージ上にディスプレイされた二量体A6 TCRのpMHCペプチド複合体結合活性のELISA検出を示す。 クローン7はHLA A2-Tax複合体に特異的に結合する。 TCRはファージ粒子に付着しないので、クローン14はpMHCに結合できない。

    図7aは単鎖A6 TCR-C-κDNAリボソームディスプレイ構築物の概略図である。

    図7bは、pUC19中でコードされる単鎖A6 TCR-C-κDNAリボソームディスプレイ構築物の完全なDNAコード鎖配列の詳細を示す。

    図7cは、pUC19中でコードされる単鎖A6 TCR-C-κDNAリボソームディスプレイ構築物の完全なアミノ酸配列の詳細を示す。

    図8は、pUC19-T7のDNA配列の詳細である。

    図9は、pUC19-T7中にクローニングされた単鎖A6 TCR-C-κリボソームディスプレイ構築物のDNA配列の詳細を示す。

    図10は、Ambionウサギ網状赤血球溶解物を使用してインビトロで翻訳させた単鎖A6 TCR-C-κの検出を示すウェスタンブロットを示す。

    図11は、リボソームディスプレイ反応物からレスキューしたビーズ上の単鎖A6 TCR-C-κ mRNAのRT-PCRを示す。

    図12aは、A6 TCRクローン9変異β鎖のDNA配列の詳細を示す。 変異した核酸を太字で示す。 図12bは、A6 TCRクローン9変異β鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。 導入したオパール停止コドンに対応する位置を「*」で示す。

    図13は、A6 TCRクローン49変異β鎖のDNA配列の詳細を示す。 変異した核酸を太字で示す。 これは「サイレント」変異であるので、この変異により得られるアミノ酸配列に変化は導入されない。

    図14aは、A6 TCRクローン134変異A6 TCRβ鎖のDNA配列の詳細を示す。 変異した核酸を太字で示す。 図14bは、BIAcoreアッセイにより試験されたようなA6 TCRクローン134変異A6 TCRβ鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。 変異したアミノ酸を太字で示す。 図14cは、ファージELISAアッセイにより試験されたようなA6 TCRクローン134変異A6 TCRβ鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。 変異したアミノ酸を太字で示す。

    図15は、A6 TCRクローン134とHLA-A2 Tax及びHLA-A2 NY-ESOとの結合についてのBIAcoreデータを示す。

    図16は、A6 TCRクローン134のHLA-A2 Taxとの結合についてのT

    OFFを決定するために使用したBIAcoreデータを示す。

    図17a及び17bは、それぞれ、NY-ESO TCRの変異α及びβ鎖のDNA配列を示す。

    図18a及び18bは、それぞれ、NY-ESO TCRの変異α及びβ鎖のアミノ酸配列を示す。

    図19aは、pEX746:NY-ESOファージミド中に組み込まれたNY-ESO TCRβ鎖のDNA配列の詳細を示す。

    図19bは、pEX746:NY-ESOファージミド中に組み込まれたNY-ESO TCRβ鎖のアミノ酸配列の詳細を示す。

    図20は、ファージELISAアッセイにおけるNY-ESO TCRをディスプレイしているファージ粒子とHLA-A2-NY-ESOとの特異結合を示す。

    図21は、DRA0101配列の3'末端に付着させたFos二量体化ペプチドをコードするコドンを組み込んでいるDR1α鎖のDNA配列を示す。 影付きはFosコドンを示し、ビオチン化タグコドンは太字で示す。

    図22は、Sf9昆虫細胞におけるクラスII HLA−ペプチド複合体の発現に使用したpAcAB3二シストロンベクター(bi-cistronic vector)のDNA配列を示す。 HLAα鎖を挿入するために使用したBgl II制限部位(AGATCT)及びHLAβ鎖を挿入するために使用したBamHI制限部位(GGATCC)を影付きで示す。

    図22−1の続きである。

    図22−2の続きである。

    図23は、DRB0401配列の3'末端に付着させたJun二量体化ペプチドをコードするコドン及びDRB0401配列の5'末端に付着させたHLA搭載ペプチドをコードするコドンを組み込んでいるDR1β鎖のDNA配列を示す。 影付きはJunコドンを示し、HLA搭載インフルエンザHAペプチドコドンは下線を付している。

    図24は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:フローセル1(FC 1)−ブランクフローセル2(FC 2)−HLA-A2(LLGRNSFEV)(配列番号23)フローセル3(FC 3)−HLA-A2(KLVALGINAV)(配列番号24)フローセル4(FC 4)−HLA-A2(LLGDLFGV)(配列番号25)

    図25は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:フローセル1(FC 1)−ブランクフローセル2(FC 2)−HLA-B8(FLRGRAYGL)(配列番号26)フローセル3(FC 3)−HLA-B27(HRCQAIRKK)(配列番号27)フローセル4(FC 4)−HLA-Cw6(YRSGIIAVV)(配列番号28)

    図26は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:フローセル1(FC 1)−ブランクフローセル2(FC 2)−HLA-A24(VYGFVRACL)(配列番号29)フローセル3(FC 3)−HLA-A2(ILAKFLHWL)(配列番号30)フローセル4(FC 4)−HLA-A2(LTLGEFLKL)(配列番号31)

    図27は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:フローセル1(FC 1)−ブランクフローセル2(FC 2)−HLA-DR1(PKYVKQNTLKLA)(配列番号32)フローセル3(FC 3)−HLA-A2(GILGFVFTL)(配列番号33)フローセル4(FC 4)−HLA-A2(SLYNTVATL)(配列番号34)

    図28は、高親和性A6 TCRクローン134と以下のように被覆したフローセルとの結合のBIAcoreトレースを示す:フローセル1(FC 1)−ブランクフローセル4(FC 4)−HLA-A2(LLFGYPVYV)(配列番号21)

    図29a及び29bは、可溶性高親和性NY-ESO TCRとHLA-A2 NY-ESOとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図30a及び30bは、可溶性「野生型」NY-ESO TCRとHLA-A2 NY-ESOとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図31a及び31bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン1)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図32a及び32bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン111)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図33a及び33bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン89)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図34は、変異体可溶性A6 TCR(クローン71及びクローン134変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図35は、変異体可溶性A6 TCR(クローン1及びβG102→A変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図36a〜36cは、変異体可溶性A6 TCR(クローン89及びクローン134変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図37a及び37bは、変異体可溶性A6 TCR(クローン71及びクローン89変異を含有する)とHLA-A2 Taxとの間の相互作用のBiacoreプロットを示す。

    図38は、以下のA6 TCRクローンのβ鎖可変ドメインアミノ酸配列の詳細を示す:38a−野生型、38b−クローン134、38c−クローン89、38d−クローン1、及び38e−クローン111。 変異した残基を太字で示し、括弧内の残基は特定の部位に存在し得る代替の残基である。

    図39a及び39bは、それぞれ、高親和性A6 TCR四量体及び単量体によるT2細胞の特異的染色を示す。

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