Mcam inhibitor

申请号 JP2004520644 申请日 2003-07-15 公开(公告)号 JP2006516085A 公开(公告)日 2006-06-22
申请人 キセリオン ファーマセウティカルズ アーゲー; 发明人 アーレンズ,ビアンカ; ウンガー,クリスチン,マルガレータ; ツェートマイアー,カロリン; トレーラ,クラウディア; ニーヴェーナー,イエンズ; ベステ,ゲラルド;
摘要 本発明は自然発生性腫瘍細胞におけるMCAMの機能を阻害するポリペプチド類およびそれらの使用、および癌治療において、特に特殊の癌細胞の侵襲性、増殖、接着および/または転移能 力 を軽減するためにMCAMの機能を阻害するその他の分子類を使用することに関するものである。 さらに、自然発生性腫瘍細胞がその侵襲性、接着性、増殖および/またはその転移能力に関して機能的MCAMに依存するかどうかを確認できる方法が提供される。 最後に、腫瘍細胞の侵襲性、増殖性または接着性を阻害できる 抗体 または抗体フラグメントを同定できる方法が提供される。
权利要求
  • 配列番号39ないし配列番号57、配列番号1ないし配列番号9、配列番号19ないし配列番号23および配列番号29ないし配列番号33からなる群から選択される抗体の相補性決定領域CDRをコードする配列を含むことを特徴とするポリペプチド。
  • 前記ポリペプチドが抗体および/または抗体フラグメントであることを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
  • 前記抗体および/または抗体フラグメントが配列番号1ないし配列番号9、配列番号19ないし配列番号23および番号配列29ないし配列番号33からなる群から選択される配列を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリペプチド。
  • 前記抗体がヒトIgA、ヒトIgD、ヒトIgE、ヒトIgGおよびヒトIgM、特にヒトIgGまたはヒトIgM、より好ましくはヒトIgG1、ヒトIgG2a、ヒトIgG2b、ヒトIgG3およびヒトIgG4、からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項2または3に記載のポリペプチド。
  • 前記ポリペプチドが検出可能標識で標識化され、特に前記検出可能標識が放射性同位体、酵素、フルオロフォアおよび発色団からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のポリペプチド。
  • 請求項1ないし5のいずれかに記載のポリペプチドを含むバイオコンジュゲート。
  • 請求項1ないし5のいずれかに記載のペプチドまたはポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
  • (a)配列番号10ないし配列番号18、配列番号24ないし配列番号28および配列番号34ないし配列番号38の諸配列からなる群から選択される核酸配列;
    (b)厳密な条件下で(a)の諸配列のいずれかにハイブリッド化した核酸配列を含む請求項7に記載の単離された核酸分子
  • 請求項7または8に記載の核酸を含むベクタ。
  • 請求項7または8に記載の核酸および/または請求項9に記載のベクタを含み、且つ発現できるホスト細胞。
  • 増殖性疾患または疾病を処置するための薬剤としての請求項1ないし5のいずれかに記載のポリペプチドおよび/または請求項6に記載のバイオコンジュゲート、請求項7または8に記載の核酸配列、請求項9に記載のベクタおよび/または請求項10に記載のホスト細胞。
  • 請求項1ないし5のいずれかに記載のポリペプチド、請求項6に記載のバイオコンジュゲート、請求項7または8に記載の核酸配列および/または請求項9に記載のベクタ、および容器を含むことを特徴とする診断キット。
  • 請求項1ないし5のいずれかに記載のポリペプチドおよび/または請求項6に記載のバイオコンジュゲート、請求項7または8に記載の核酸配列および/または請求項9に記載のベクタ、および薬物学的に容認される担体を含むことを特徴とする組成物。
  • 増殖性疾患または疾病を予防および/または処置するための薬剤の製造における請求項1ないし5のいずれかに記載のポリペプチドおよび/または請求項6に記載のバイオコンジュゲート、請求項7または8に記載の核酸配列、請求項9に記載のベクタおよび/または請求項10に記載のホスト細胞の、MCAM(メラノーマ細胞接着分子)インヒビタとしての使用であって、関連腫瘍細胞の増殖、接着、侵襲および/または転移能力がMCAMの機能の阻害に依存することを特徴とする使用。
  • 追加的および/または代替的に、前記MCAMインヒビタが小さい化合物、抗体、抗体フラグメントおよび抗イディオタイプ抗体からなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項14に記載の使用。
  • ヒトMCAMに特異的に結合する分子を同定するための請求項1ないし5に記載のポリペプチドおよび/または請求項6に記載のバイオコンジュゲートの使用。
  • 自然発生性侵襲癌細胞の侵襲性の、MCAM機能への依存性を決定するex vivo法であって、
    (a)癌細胞を、配列番号2、配列番号4、配列番号8、配列番号11、配列番号13または配列番号17を除く請求項1ないし8のいずれかに記載の分子と接触させる工程;
    (b)前記癌細胞を、前記癌細胞の増殖に適した条件下でゲル状基質と接触させる工程;
    (c)前記癌細胞がゲル状基質を通過して移動することを確認する工程を具えることを特徴とする方法。
  • MCAMの細胞外領域に特異的に結合する請求項1ないし5に記載のポリペプチド、請求項6に記載のバイオコンジュゲート、抗体または抗体フラグメントおよび/または請求項7または8に記載の核酸配列を同定する方法であって、前記ポリペプチド、バイオコンジュゲート、抗体または抗体フラグメントおよび/または核酸配列が肉腫細胞の侵襲性を阻害でき、前記方法が(a)抗体または抗体フラグメントのファージライブラリを侵襲性肉腫細胞と接触させる工程;
    (b)前記細胞を単離する工程;
    (c)前記細胞に非特異的に結合するファージおよび/または前記細胞に結合しないファージを除去する工程;
    (d)前記細胞に結合するファージを溶出する工程;および選択的に(e)前記溶出したファージによって提示される抗体または抗体フラグメントの同一性を決定する工程を含む方法。
  • 患者の増殖性疾患または疾病、転移および/または癌を予防または処置する方法であって、
    請求項1ないし5に記載のポリペプチド、請求項6に記載のバイオコンジュゲート、請求項7または8に記載の核酸配列、請求項9に記載のベクタ、請求項10に記載のホスト細胞、請求項13に記載の組成物および/または請求項14または15により製造される薬剤を、MCAM媒介性増殖、接着、侵襲および/または転移能力を十分阻害するのに有効な量で前記患者に投与することを含むことを特徴とする方法。
  • 说明书全文

    悪性腫瘍は細胞を飛散させ、それら細胞は新しい組織に移動して二次腫瘍を作り出す。 二次腫瘍の発生過程は転移と呼ばれ、原発腫瘍から離れた部位に腫瘍細胞がコロニを形成する複雑な過程である。 転移は腫瘍細胞が一次腫瘍から離脱し、細胞基質を侵襲し、血管に侵入し、循環系に入り(脈管内侵入)、離れた場所で留まり、血流から出て(血管外遊出)増殖する多重ステッププロセスである。 (ニコルソン(G.L.Nicolson)ビオヒミカ・エト・ビオフィジカ・アクタ(Biochem.Biophys.Acta.)695巻、p.113−176);ニコルソンおよびポステ(G.Poste)(1983)(インターナショナル・レビュー・オブ・イクスペリメンタル・パソロジ(In.Rev.Exp.Pathol.)25巻、p.77−181;ポステおよびフィドラー(I.J.Fidler)ネイチャー(Nature)283巻、139−145;ルース(E.Roos)(1984)Biochem.Biophys.Acta.738巻、p.263などを参照されたい)。 腫瘍転移の過程には細胞−細胞または細胞−基質の相互作用を媒介する細胞接着分子(CAM's)が関与することが知られている。

    種々の腫瘍においてアップレギュレートされる細胞接着分子がMCAMである。 MCAMはMUC18、Mel−CAMまたはCD146としても知られている。 MCAMは見かけ分子量M 113,000Daを有する一体的膜糖蛋白質である。 それは5個の免疫グロブリン様ドメインを含み、その細胞質ドメインは数個の蛋白質キナーゼ認識モチーフを含む。 このことは細胞シグナリングにMCAMが関与していることを示唆する(サース(C.Sers)ら(1993)プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)90巻、p.8514−8518を参照されたい)。

    キシー(Xie)ら(1997)キャンサー・リサーチ(Canc Res.)57巻、p. 2295−2303、は、非侵襲性SB−2細胞がMCAM cDNAによるトランスフェクションを受けた後に侵襲性に変わることを示した。 彼らは、この人工的に誘導された侵襲性がMCAMに対するモノクローナル抗体で抑制されることも示した。 しかし、過剰発現研究に基づいてある生理的役割をある蛋白質に帰することは危険であり、疑問である。 そして過剰発現研究の結果は非常に注意深く解釈することが科学の一般的スタンダードである。 一例を挙げれば、過剰発現の研究に基づいて、ペルオキシソーマル蛋白質PEX11は脂肪酸酸化にある役割を果たすことが提唱されていた。 リ(Li)およびゴウルド(Gould)(2002)ザ・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジ(J.Cell Biol.)156巻(4号)p. 643−651が注意深く研究した結果、PEX11はそのような役割をもたず、その代わりにペルオキシソームの分割に対して作用することがわかった。

    ある蛋白質の生理的役割を確認することは、この蛋白質の機能の阻害が疾患の処置に通ずる道になり得るか否かを判断するのに必要な条件である。 忘れてはならないのが、生理学的環境において、すなわち患者の自然発生性腫瘍細胞において、MCAMが、MCAM機能を変調し変化させ得るその他の蛋白質と共に過剰発現するという点である。 MCAMsの生理的役割を決めるのは、MCAMと、MCAMに影響する蛋白質類との間の機能的相互作用である。 シー(Shih)、(1999)ザ・ジャーナル・オブ・パソロジ(J.Pathol.)189巻、p. 4−11は、MCAMの生理的役割がその未同定のリガンドとの相互作用に関係することを示すことによって証明した。 重要なのは、MCAMと相互作用する蛋白質の発現が組織によって変動することであり(シーら(1997)Cancer Res.57巻(17号)、p.3835−3840)、このためMCAM過剰発現の効果はこの観点から判断しなければならない。 このことは別の型の腫瘍、すなわち乳癌で得られた結果によっても証明されている。 シーら(1997)ザ・アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジ(Am.J.Pathol.)151巻(3号)、p. 745−751、は、これに関連してMCAMの発現レベルが高いときには侵襲性は抑制されることを明らかにした。 この研究ではMCAMはむしろ腫瘍抑制物質として作用した。 このように、侵襲性および転移におけるMCAMの生理的役割はいまだに不明である。

    転移形成の過程は腫瘍細胞の侵襲性に依存する。 侵襲性を阻害できる分子を同定し、続いて薬剤を開発し、それによって原発腫瘍の転移を防ぐのが有用である。

    発明の概要
    先入観のない評価によって、自然発生性腫瘍細胞ポリペプチドの侵襲性を阻害できる分子類、特にMCAMの細胞外ドメインに結合する抗体類および抗体フラグメント類を上記のようなインヒビタとして同定することに発明者らは成功した。

    本発明は、MCAMの細胞外ドメインに特異的に結合し、MCAM機能を阻害するポリペプチドに関する。 好ましい実施形態において、これらのポリペプチドは抗体フラグメントまたは抗体である。 さらに、本発明のポリペプチドは所望ならば検出可能な基によって標識化することができ、またはバイオコンジュゲートの一部でもよい。

    本発明はさらに、本発明のポリペプチドおよび任意に薬物学的に容認される添加物および希釈剤を含む組成物に関する。

    また別の実施形態において、本発明は本発明のポリペプチドをコードする核酸分子、並びにそのような核酸を含むベクタおよびそのようなベクタを含むホスト細胞に関する。

    また別の実施形態において、本発明は自然発生性癌細胞の侵襲および/または転移の治療または予防のための薬剤を製造するためのMCAM機能阻害分子の使用であり、前記癌細胞の侵襲性および/または転移能はMCAM機能に依存している使用にも関する。 また別の実施形態において、このような分子は既に発現したMCAMに特異的に結合し、侵襲性および/または転移におけるMCAM機能を阻害する。 このような分子は小さい化合物、すなわちMCAMの細胞外領域に結合しているある種のポリペプチド、特に本発明のポリペプチドまたはバイオコンジュゲートである。

    さらに別の実施形態において、本発明は患者の侵襲および/または転移を治療または予防する方法であって、前記癌細胞の侵襲および/または転移能力がMCAM機能に依存するという方法にも関する。

    また別の実施形態において、本発明は自然発生性癌細胞の侵襲性のMCAM機能への依存性を決定する方法に関する。

    また別の実施形態において、本発明は肉腫細胞の侵襲性を阻害するために有用な抗体フラグメント類の同定方法、特にMCAMの細胞外ドメインに結合するその種の抗体フラグメントの同定方法にも関する。

    発明の詳細な説明
    本明細書に記載される本発明をより完全に理解するために、以下に詳細な説明を提供する。 本明細書に使用する用語は、別途記載がない限り下記の定義があてはまる。

    本明細書に使用する“ポリペプチド”は10より多く、より好ましくは20より多く、最も好ましくは30より多く、10000未満の、より好ましくは2500未満、最も好ましくは1000未満のアミノ酸を含む分子である。 アミノ酸配列が実質的に同一であるポリペプチド、および修飾アミノ酸または非天然アミノ酸を低い割合で含むポリペプチドも含まれる。

    本明細書に使用する用語“抗体”および“免疫グロブリン”はポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含むあらゆる免疫学的結合物質を言う。 重鎖中の定常部ドメインの種類によって、抗体は次の主要な五つのクラスの一つに割り当てられる:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。 これらの幾つかはさらにIgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのサブクラスまたはアイソタイプに分けられる。 異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常部ドメインはそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。 異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造はよく知られている。

    抗体類は修飾免疫グロブリン、例えば化学的にまたは組換えで生成した抗体類、CDR移植抗体またはヒト化抗体、部位特異的突然変異抗体などから選択することができる。 なおこれらはCDR領域、特にCDR3領域に本発明の対応抗体フラグメントと実質的に同一のアミノ酸配列を有し、対応抗体フラグメントと実質的に同じMCAM親和性を保有する。

    ある抗体のCDR(相補性決定領域)は、これら分子の特異性を決定する部分であり、特異的リガンドと接触する部分である。 CDRは分子の最も変動する部分であり、これら分子類の多様性に寄与している。 それらは構造的に、ヒトIgGでは軽鎖のアミノ酸24ないし41(CDR−L1)、50ないし57(CDR−L2)および90ないし101(CDR−L3)として、重鎖のアミノ酸26ないし38(CDR−H1)、51ないし70(CDR−L2)および100ないし125(CDR−H3)として定義されている(カバト(Kabat)ら(1987)第4版、USデパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サービス、パブリック・ヘルス・サービス(US Department of Health and Human Services,Public Health Services)、NIH、ベセスダ)を参照されたい)。 抗体フラグメントのCDR領域は、抗体フラグメントと前記ヒトIgGとを整列させるやり方、例えば“ブラスト”検索が可能なNCBIのプログラムを使用し、それによって2つの配列を互いに整列させ、ヒトIgGのCDRに対応する抗体フラグメントのアミノ酸を同定するというやり方によって当業者は容易に決定できる。

    本明細書に使用する“アミノ酸配列の実質的同一性”とは、2つの整列したアミノ酸配列、特に整列したCDRの少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは5つ以外の全て、さらにより好ましくは3つ以外の全て、さらにより好ましくは1つを除く全てのアミノ酸が同一であることを意味する。

    用語“抗体フラグメント”は抗原結合領域を有する抗体様分子のあらゆるフラグメントを指すのに使用され、この用語はscFv、dsFv、Fab'、Fab、F(ab') 、Fv、単一ドメイン抗体(DABs)、二重特異性抗体、などの抗体フラグメントを含む。 種々の抗体ベースの構成物およびフラグメント類の製法および使用法は当業者には公知であり(カバトら(1991)、J.Immunol.147巻、p.1709−19)、参考として特に本明細書に組み込まれる。

    “scFv”抗体フラグメントは抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。 一般にscFvポリペプチドは、VHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカを更に含み、これによってscFvは抗原と結合するための望ましい構造を形成できる。

    “Fv”フラグメントは完全な抗原結合部位を保有する最小の抗体フラグメントである。 “dsFv”はジスルフィド安定化Fvである。 “Fab”フラグメントは重鎖のVHおよびCH1ドメインと対になった完全軽鎖を含む抗原結合フラグメントである。 Fabフラグメントは還元F(ab') フラグメントである。 “F(ab') ”フラグメントはヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2個のFabフラグメントを含む2価フラグメントである。

    “単一ドメイン抗体(DAB)”は抗体構造のドメイン類の1つだけから誘導される唯一本の(2本ではなく)蛋白質鎖を有する抗体である。 DABsは、幾つかの抗体において抗体分子を半分にしても、抗体分子全体と同じように、その標的抗原に結合するという研究結果を活用したものである(デイビス(Davies)ら(1996)Protein Eng.9巻:p.531−537)。

    “二重特異性抗体”はVHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上にあらわれる二価抗体、または二重特異性抗体であるが、同じ鎖上の2つのドメインを対にするには短すぎるリンカを使用しているので、別の鎖の相補的ドメインで無理にこれらのドメインを対にし、2つの抗原結合部位を作り出している(ホリガー(Holliger)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻:p.6444−6448)。

    用語“標識”または“標識化”はそれぞれ検出可能マーカーまたはその挿入を言い、例えばフルオロフォア標識、発色団標識または放射性標識をしたアミノ酸の挿入、あるいはフルオロフォア標識、発色団標識または放射性標識のポリペプチドへの結合、あるいは光学的方法または比色法によって検出できる蛍光マーカーまたは酵素活性を含む標識化第二分子によって検出できる部分の結合などがある。 このような二段階検出系の例は公知のビオチン−アビジン系である。 ポリペプチドおよび糖蛋白質を標識化する種々の方法が当業者には公知であり、使用できる(ロブル(Lobl)ら(1988)アナリティカル・バイオケミストリ(Anal.Biochem.)170巻:p.502−511などを参照されたい)。

    “エピトープ”は免疫グロブリンまたは抗体フラグメントに特異的に結合できるあらゆる蛋白質決定基を含む。 エピトープ決定基は、露出アミノ酸、アミノ糖またはその他の炭化物側鎖などの分子の化学的活性表面グループからなり、特異的三次元構造特性並びに特異的電荷特性を有するのが普通である。

    本明細書に使用する“自然発生性癌細胞”は研究室でトランスフェクション、形質導入またはその他の遺伝子操作をされなかった細胞である。 そのような細胞には、人工的DNA配列(例えばベクタ類の)、または他の種には見いだされるが自然発生性癌細胞が誘導された種には普通は見いだされないDNA配列は含まれない。 しかし自然発生性癌細胞は、次のような場合にはこれら癌細胞が誘導された種に普通は見られない配列を含むことがある:すなわち自然発生性癌細胞が誘導される個体内にあらわれるか、および/または自然発生性癌細胞の連続培養中にあらわれる、ウィルス感染または突然変異の過程および選択によってこれらの配列が出現する場合である。

    本発明の範囲で好適に使用および/または処置される選択された癌細胞型はメラノーマ、乳癌、前立腺癌、星状細胞腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、乏突起細胞腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、初期神経性外胚葉性腫瘍(PNET)、軟骨肉腫、骨原性肉腫、膵管腺癌、小および大細胞性腺癌、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、扁平上皮癌、気管支肺胞癌、上皮腺癌およびその肝転移、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、肝細胞癌、胆細管癌、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、横紋筋肉腫、結腸癌、基底細胞癌、汗腺癌、乳頭癌、脂腺癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管骨芽細胞腫、聴神経鞘腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、および重鎖および軽鎖病、および子宮頸部腺癌、子宮および卵巣上皮癌、膀胱の移行上皮癌、BおよびT細胞リンパ腫(結節性および、び慢性)プラスマサイトーマ、急性および慢性白血病、軟組織肉腫および/または平滑筋肉腫を含む。

    本明細書に使用する“転移性腫瘍を処置する”とは、腫瘍の転移を予防し、遅らせまたは阻害することを意味する。

    本明細書に使用する“転移性腫瘍”とは、転移可能の原発部位の腫瘍および二次的部位に転移した腫瘍の両方を含む。 このような転移性腫瘍は肺、肝臓、腎臓、胃、小腸、骨、脾臓、脳、末梢神経系、甲状腺、膵臓、子宮内膜、卵巣、子宮頸部、皮膚、結腸またはリンパ様組織の組織起源のものでよい。

    本明細書に使用する“侵襲性”とはその他の細胞の層を通過して移動し、または細胞外基質を通過して移動できる細胞の能力である。 侵襲性は実施例5に記載されているマトリゲル・アッセイによって評価できる。 侵襲性はあるインキュベーション期間中にフィルタの下表面に達する細胞として測定される。 実施例5にあるような侵襲アッセイにおいて、6ないし12時間内に細胞の40%以上がそのフィルタの他の側に達し、コロニを形成する場合、その自然発生性癌細胞は侵襲性であるとされる。 対照細胞は同じ時間枠内で5%がコロニを形成するに過ぎず、非侵襲性であるとされる。

    本明細書に使用される“接着性”とは、細胞が、それが増殖した基質から取り出され、単一細胞の溶液として(溶液のその他の細胞と直接接触しない)再懸濁され、接着が可能な基質上に置かれた後、再接着する能力を言う。 実施例7に記載されるアッセイにおいて、40%より多くの細胞が30〜120分以内に接着する場合に、細胞は接着性であるとされる。 これに対して対照細胞は同じ時間内に5%だけが接着する。

    本明細書に使用する“増殖”とは、真核細胞、したがって哺乳動物細胞が増殖し、分裂して娘細胞になる能力を言う。 例えば細胞培養において、増殖は時間と共に全体的細胞数の増加を導く。

    本明細書に使用する“転移能力(転移ポテンシャル)”とは、腫瘍細胞が、それが誘導された原発腫瘍から離れた部位に新しい腫瘍を形成する(転移)能力である。 転移能力は例えば1×10 の細胞を無胸腺ヌードマウスの外側尾静脈に注入し、例えば注入後2カ月目に肺の腫瘍結節数を確認することによって測定される。 この方法はフアング(Huang)らの(1996)オンコジーン(Oncogen)13巻:p. 2339−2347の2346ページの章“腫瘍細胞の注入(Tumor cell injection)”、またはラディンスキ(Radinsky)ら(1994)Oncogen 9巻:p. 1877−1883の1882ページの章“動物および腫瘍形成(Animals and production of tumors)”および“石灰化基質の組織化学的分析(Histochemical analysis for calcified matrix)”に記載されている。 このアッセイにおいて肺に3つ以上、好ましくは8つ以上、より好ましくは20以上の腫瘍結節を生成する細胞系が転移性と考えられる。

    処置有効量とは、患者の腫瘍の苦しみを排除または軽減する量、または転移を防止または軽減する量である。 用量は腫瘍の性質、患者の病歴、患者の状態、細胞傷害性物質の同時使用の可能性、および投与法など多数のパラメータに依存する。 投与法には、無毒性の薬物学的に容認される担体中にMCAM機能阻害分子を提供する注入(例えば非経口、皮下、静脈内、腹腔内など)などがある。 一般に水、食塩液、リンゲル溶液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、固定油、エチルオレエート、またはリポソーム類などの適切な担体および希釈剤は、結合物質の生物学的活性(結合特異性、親和性または安定性)を阻害しないように選択される。 容認される担体としては、生体適合性、不活性または生体内吸収性塩類、緩衝剤、オリゴ糖または多糖、ポリマ類、粘弾性化合物、例えばヒアルロン酸などの粘弾性化合物、粘度改善剤、保存料などを含むことができる。 更に、この医薬組成物または処方はその他の担体、補助剤、または無毒性、非処置性、非免疫原性安定剤なども含んでいてもよい。 典型的用量は約0.01ないし約20mg/kg、またはより好ましくは約1ないし約10mg/kgの範囲である。

    MCAM機能を阻害する分子を用いる処置法は、腫瘍の種類、患者の状態、その他の健康問題および種々の要因によって、化学療法、手術および放射線治療と組み合わせることができる。

    “MCAM機能を阻害する分子”とはMCAMの生物学的活性を阻害する分子である。 このMCAMの生物学的活性の阻害は、例えばMCAM依存性侵襲性またはMCAM依存性接着などのMCAMの生物学的活性の一つ以上の指標を測ることによって、評価できる。 MCAMのうちのひとつ又はいくつか生物学的活性のこれらの指標は数種のインビトロまたは インビボアッセイによって評価することができる(実施例5、7および6.2を参照されたい)。 ある分子の、MCAM活性阻害能力は、侵襲性ヒト肉腫細胞、特に実施例5、7および6.2において使用される細胞類のMCAM誘起性の侵襲性、接着または増殖の阻害によって評価される。

    本発明の“MCAM機能を阻害する分子”は、プロテアーゼのような、尿素またはグアニジニウム塩酸などの変性剤のような、重金属原子のような、または生物分子(脂質、蛋白質、糖)と共有結合によって非特異的に反応する低分子(例えばアルデヒドまたはイソチオシアネート類)のような、蛋白質機能の一般的インヒビタである分子ではない。 MCAM機能を阻止する分子は、それがインスリン受容体(例えば抗ホスホチロシン・ウェスタン・ブロット・アッセイで測定される;キャリオ(B.Cariou)ら(2002)ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリ(J Biol Chem.)277、p.4845−52などを参照)およびアセチルコリン受容体(例えばCa流入の測定によって決定される;モンティール(M.Momtiel)ら(2001)バイオケミカル・ファーマコロジ(Biochem Pharmacol.)63巻、p.337−42参照)およびB−CAM細胞表面糖蛋白質(例えばウダニ(Udani)ら(1998)ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)101巻(10号)p.2550−2558の2551ページの章“フロー・チェンバ・アッセイ”に記載されているようなヘモグロビンA赤血球(AA RBCs)の固定ラミニンへの結合の測定によって;)の機能を阻害しない濃度でMCAM機能を阻害する能力によって特徴づけられる。 上記の3受容体の機能に有意な影響を与えない濃度でMCAM機能を阻害する分子が、この特許に用いられるMCAM機能阻害分子である。 阻害とは、上記の侵襲アッセイにおけるMCAM機能によって定義されるように、同じ実験条件下で本発明の分子を使用しない陰性対照と比較した場合、機能の少なくとも30%、好ましくは40%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは60%の減少と理解される。 本発明の分子によって起こる上記3受容体の機能の減少が20%未満、より好ましくは15%未満、さらにより好ましくは10%未満であるならば、分子は上記のその他の3受容体の機能には有意な影響を与えないと定義する。

    さらに、MCAMの遺伝子発現を阻害する本発明の分子の場合、一方のサンプルにおいて本発明の分子はMCAMの発現が阻害できるというサンプルと、阻害できない点を除けば全く同一のサンプルとの二つの間でMCAMの量を比較する実験で、10nMないし100μMの濃度、好ましくは約1μMの濃度で存在するベータチュブリンの濃度に標準化した定量的ウェスタンブロット法を用いて測定すると、前記本発明の分子はMCAM発現を50%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上減少させる。 同じ実験において本発明の分子による1細胞あたり存在するベータチュブリン量の減少は20%を超えず、前記分子によるインスリン受容体およびB−CAM細胞表面糖蛋白質の相対的濃度の減少は20%を超えない。

    さらに本発明のポリペプチドの場合、特に本発明の抗体または抗体フラグメントの場合、本発明のポリペプチドが実施例5に記載したような実験で本来侵襲性である癌細胞の侵襲性を30%以上、好ましくは60%以上減少させるならば(このとき前記抗体フラグメントは1nMないし50μM濃度、より好ましくは約20μM濃度で存在する)、本発明のポリペプチドはMCAMの生物学的機能を阻害すると考えることができる。

    さらに、本発明の小さい化合物の場合、前記化合物が10nMないし100μMの濃度、より好ましくは約1μM濃度で存在する場合、前記化合物が実施例5または7に記載するような実験において本来侵襲性である癌細胞の侵襲性を30%以上、好ましくは60%以上減少させ、細胞形態、細胞周期進行に影響を与えず(細胞集団のDNA含有量をヨウ化プロピジウム染色およびFACS分析によって分析して確認した)、アポトーシスの兆候を示す培養細胞のパーセンテージを高めない(例えばいわゆるトンネルアッセイによって、DNA断片化を示す細胞のパーセンテージの測定によって確認した)ならば、前記化合物はMCAMの生物学的機能を阻害すると考えることができる。 この発明に使用される小さい化合物は50Daないし10000Da、好ましくは100Daないし4000Da、より好ましくは150Daないし2000Daの分子量を有する分子、またはその生理学的に容認される塩である。

    本明細書に記載される“MCAMに特異的に結合する”または“MCAMに特異的な”分子とは、実施例1および2に与えられる条件下で、MCAMを発現するHT1080細胞には結合するが、Hs細胞またはMCAM陰性のSBcl−2細胞には結合しない分子である(シーら(1997)Cancer Res.57巻(17号)p.3835−3840)。 すなわち、前記細胞を0.1nMないし10μM、より好ましくは1nMないし1μM、さらにより好ましくは10nMないし500nMおよび最も好ましくは約100nMの濃度で試験した場合、HT1080細胞への結合は、Hs−27細胞またはSBcl−2細胞への結合に比べて少なくとも2倍高く、より好ましくは5倍高く、最も好ましくは20倍高い。

    このような分子はこの他、MCAMに対して10μMより小さい、好ましくは1μMより小さい、より好ましくは100nMより小さい、最も好ましくは0.1nMないし20nMの結合定数を有する。 結合定数は例えば製造者のマニュアルのインストラクションによるBIACOREシステムのような標準的方法によって測定できる。

    本明細書に使用する用語“少なくとも1つ”とは“1つ以上”、特に1つ、2つ、3つ、4つおよび5つを意味する。

    本発明は先ず最初に、特定の自然発生的腫瘍細胞について、接着、侵襲および/または転移の過程にMCAMの発現および機能が関係していることを証明する。 本発明は先入観なしにふるい分けを行ってMCAM機能を阻害する分子を同定する。

    よって本発明は、MCAMの細胞外領域に特異的に結合し、侵襲、増殖、接着および/または転移におけるMCAM機能を阻害することができる分子またはポリペプチドに関する。 本発明によるポリペプチドは以下に示す群から選択される少なくとも1つの配列を含む:
    −配列番号39ないし配列番号57、これは例えばMCAMのような腫瘍特異的細胞表面分子の結合に特に関するCDRである;または−配列番号1ないし配列番号9、配列番号19ないし配列番号23および配列番号29ないし配列番号33、これは例えばMCAMのような腫瘍特異的細胞表面分子の結合に特に関係するscFv'sである。

    一実施形態において、本発明のポリペプチドは抗体フラグメント、特にscFv、dsFv、Fab'、Fab、F(ab')2、Fv、単一ドメイン抗体または二重特異性抗体、より好ましくはscFv、dsFv、Fv単一ドメイン抗体または二重特異性抗体、さらにより好ましくはscFv、単一ドメイン抗体又は二重特異性抗体、より好ましくはsvFVである。

    また別の実施形態において、本発明のポリペプチドは抗体であり、好ましい一実施形態ではscFv抗体フラグメントから誘導される抗体、また別の好ましい実施形態ではポリクローナルまたはモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体である。

    また別の実施形態において、抗体または抗体フラグメントのCRD3領域は、表1のscFv'sの配列中の関連ヌクレオチド類に下線を引いて示したCDR3類の1つに一致する。

    抗ヒトMCAM結合抗体は、CDR領域、特にCDR3領域において本発明の対応抗体フラグメントと実質的に同一なアミノ酸配列を示し、MCAM結合に対して対応抗体フラグメントと実質的に同じ親和性を保有する修飾免疫グロブリン類、例えば化学的にまたは組換えによって生成する抗体類またはヒト化抗体、部位特異的突然変異抗体類などから選択される。

    また別の実施形態において、本発明のポリペプチドはIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMからなる群から選択されるヒト抗体、特にIgGおよびIgM、より好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4から選択されるヒト抗体である。

    本発明のまた別の好ましい実施形態において、本発明のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメントまたは抗体を、検出可能標識で標識化する。 詳細に述べれば、検出可能標識の例は放射性同位体、発色団、フルオロフォル、酵素または放射性同位体である。 検出可能標識は例えばこの群から選択することができる。

    また別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、自体と、別の蛋白質、固体基質(ビーズなど)とそれぞれに、互いに共有結合または非共有結合し、マルチマー、標的細胞に対する毒性をさらに高める細胞傷害性物質、細胞増殖抑制物質、プロドラッグ、または、エフェクタ分子を形成することができる。 それはMCAMを発現する細胞を改変し、または免疫細胞を補強することができる。 これら全ての結合物は本発明の“バイオコンジュゲート”である。

    細胞傷害性物質のリストには、非制限的に、ダウノルビシン、タキソール、アドリアマイシン、メトトレキセート、5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、エトポシド、シスプラチン、ドキソルビシン、ゲニステイン、アンドリボソーム・インヒビタ類(トリコサンチンなど)、または種々の細菌毒素(シュードモナス内毒素;黄色ブドウ球菌蛋白質Aなど)が含まれる。

    本発明のポリペプチド、特に、本発明の抗体フラグメントまたは抗体を前記細胞傷害性部分と共に含むバイオコンジュゲートは種々の二官能性蛋白質カップリング剤を使用して作られる。 このような試薬の幾つかの例はN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、ジメチルアジピミデートHClのようなイミドエステルの二官能性誘導体類、ジスクシンイミジル・スベレートのような活性エステル類、グルタールアルデヒドのようなアルデヒド類、ビス(R−アチドベンゾイル)ヘキサンジアミンのようなビスアチド化合物類、ビス(R−アチドニウムベンゾイル)エチレンジアミンのようなビスジアゾニウム誘導体類、トリレン2,6−ジイソシアネートのようなジイソシアネート類、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンのようなビス活性化フッ素化合物類である。 バイオコンジュゲートの有用な製法はマーチの最新有機化学:反応、作用機序および構造(March's Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure)第5版、ウィリー・インターサイエンス;またはバイオコンジュゲート技術(Bioconjugate Techniques)、グレッグ・ハーマンソン(Greg Hermanson)編集、アカデミック・プレス、に詳細に記載されている。

    転移関連性MCAM抗原の発現は本発明のバイオコンジュゲートまたはポリペプチド、特に抗体または抗体フラグメントを使用して検出できる。 サンプルは対象から採取され、例えば転移性腫瘍が存在することが疑われる組織から採取した生検標本などである。 アッセイを行う前に前記サンプルを処理するのが普通である。 使用できるアッセイはELISA、RIA、EIA、ウエスタン・ブロット分析、免疫組織学的染色などである。 使用するアッセイにより、抗原または抗体を酵素、フルオロフォアまたは放射性同位体によって標識化することができる。 (コリガン(Coligan)ら、(1994)免疫学における最新のプロトコル(Current Protocols in Immunology)、ジョン ウィリー&ソンズ社、ニューヨーク、ニューヨーク;およびフリエ(Frye)ら(1987)癌遺伝子(Oncogene)4巻:p.1153−1157などを参照されたい)。

    したがって本発明の一実施形態は本発明の少なくとも1種類のポリペプチドおよび/または本発明の少なくとも1種類の標識ポリペプチドおよび/または本発明の少なくとも1種類のバイオコンジュゲートを使用してMCAMを検出することに関する。 例えば本発明の1種類のポリペプチドまたは本発明の1種類の標識ポリペプチドまたは本発明の1種類のバイオコンジュゲートを使用してMCAMを検出でき、または1種類のポリペプチドと1種類のバイオコンジュゲートと共に、または2または3種類のポリペプチド、または2種類の標識ポリペプチドを使用することができる。 このような検出のためにポリペプチドはMCAMの細胞外領域に結合する。 MCAMの細胞外領域は、細胞膜の外側のMCAM蛋白質部分、特にアミノ酸24ないしアミノ酸553間の細胞外アミノ酸ループと定義される。 MCAMは糖蛋白質であり、上記のアミノ酸だけでなく、それらアミノ酸の糖修飾もMCAMの細胞外領域の部分と考えられると理解されるべきである。

    また別の実施形態において、本発明は診断キットを含む。 このようなキットは少なくとも1種類のバイオコンジュゲートおよび/または本発明の少なくとも1種類の標識ポリペプチドおよび/または本発明の少なくとも1種類のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメントまたは抗体、またはこれらの標識化変異体を含み、追加的に標準的競合またはサンドイッチアッセイの実施のために必要な試薬および材料を含む。 前記診断キットを使用して、生物学的サンプル、特にある種の癌細胞型の生物学的サンプルの侵襲能力を測定することができる。 キットはさらに容器を含むのが普通である。

    本発明のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメントまたは抗体を使用することによってさらに抗イディオタイプ抗体を生成することができる。 この抗体は、抗体類をスクリーニングし、その抗体が本発明のヒトモノクローナル抗体と同じ結合特異性を有するかどうかを確認することができ、活性免疫用に使用することもできる(ハーリン(Herlyn)ら、(1986)サイエンス(Science)、232巻、p.100)。 このような抗イディオタイプ抗体類は公知のハイブリドーマ技術を用いて生成することができる(コーラー(Kohler)ら(1975)Nature、256巻、p.495)。 抗イディオタイプ抗体は、対象とする抗体上に存在する特異的決定基を認識する抗体である。 これらの決定基は抗体の高可変部に位置する。 所定のエピトープに結合するのは、したがって抗体の特異性を生ずるのはこの領域である。 抗イディオタイプ抗体は、動物を上記ポリペプチド、特に対象とする抗体フラグメントまたは抗体で免疫することによって作られる。 免疫された動物は免疫抗体のイディオタイプ決定基を認識し、反応し、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体を産生する。 抗イディオタイプ抗体を使用することにより、同じエピトープ特異性を有するモノクローナル抗体を発現するその他のハイブリドーマを同定することができる。

    抗イディオタイプ技術を用いて、エピトープを模するモノクローナル抗体を産生することもできる。 例えば第一のモノクローナル抗体に対して作られた抗イディオタイプモノクローナル抗体は高可変部に結合ドメインを有する。 それは第一の抗体が結合したエピトープの“イメージ”である。 抗イディオタイプモノクローナル抗体結合ドメインは抗原として効果的に作用するから、抗イディオタイプモノクローナル抗体を免疫のために使用することができる。

    もう一つの実施形態において、本発明のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメントまたは抗体は、侵襲アッセイで試験すると、侵襲性腫瘍の侵襲性を30〜60%、または好ましくは30〜55%、40〜50%または少なくとも60%も軽減する(実施例5)。 好ましいことにMCAMの細胞外ドメインにポリペプチドが特異的に結合することによって侵襲性は軽減するが、その一方でその他の実施形態において、前記侵襲性はインテグリンまたはエフリンなどその他の表面分子に結合するポリペプチドによっても減少する。

    また別の実施形態において、本発明のポリペプチド、特に抗体または抗体フラグメントは、接着性アッセイで試験すると、侵襲性腫瘍細胞の接着性を30〜60%、または好ましくは30〜55%、40〜50%または少なくとも60%も減少させる(実施例7を参照されたい)。

    また別の実施形態において、本発明のポリペプチド、特に抗体または抗体フラグメントは、増殖アッセイで試験すると、侵襲性腫瘍細胞の増殖を30〜60%、または好ましくは30〜55%、40〜50%または少なくとも60%も減少させる(実施例6.2を参照されたい)。

    また別の実施形態において、本発明の抗体フラグメントは1つ以上のMCAMのエピトープまたはMCAMの保存変種のエピトープ、またはMCAMのペプチドフラグメントを特異的に識別する。

    また別の実施形態において、本発明は、特に本発明の小さい化合物、MCAMの遺伝子発現を抑制する分子、本発明のバイオコンジュゲートまたはポリペプチド、より特別には本発明の抗体フラグメントまたは抗体からなる群から選択される本発明の分子を薬剤として使用することに関する。

    また別の実施形態において、本発明は、少なくとも1種類、特に1種類の本発明の分子の有効量、特に本発明の任意のポリペプチドまたはヌクレオチド配列の少なくとも1種類の有効量、またはMCAMの遺伝子発現を阻害する少なくとも1種類の分子の有効量と、薬物学的に容認される担体および/または希釈剤とを含む組成物に関する。 この医薬組成物を使用して、ヒトMCAMの過剰発現または異所性発現に関係する病気、特に上記のような癌細胞型の選択された群から誘導される転移性腫瘍を治療することができる。

    本発明のまた別の実施形態において、薬物学的に容認される担体およびMCAM機能を阻害する少なくとも1種類の分子、特にMCAMの細胞外領域に結合することによってMCAM機能を阻害する分子の治療的有効量を含む医薬組成物であって、より好ましくは前記分子が本発明の小さい化合物、核酸配列、ポリペプチドまたはバイオコンジュゲートであり、さらにより好ましくは前記分子が本発明のscFv、または本発明のこのようなscFvから誘導される抗体である前記医薬組成物が提供される。

    また別の実施形態において、本発明は薬物学的に容認される組成物中のMCAM機能阻害分子を投与することに関し、特に前記分子は受容体媒介性経路を介してMCAMの遺伝子発現を阻害する。

    或いは、MCAM機能阻害分子は特に、MCAMの細胞外領域に結合できる分子であり、より特別にはその際前記分子は本発明の小さい化合物または抗体または抗体フラグメントまたはポリペプチド、または本発明のバイオコンジュゲート、より好ましくは前記分子が本発明の抗体フラグメントであり、さらにより好ましくは前記分子が本発明のscFvまたは本発明のこのようなscFvから誘導される抗体である。

    本発明はさらに、組換え技術によって本発明のポリペプチドを生成する方法に関する。 これらの技術は当業者には公知である(スケラ(Skerra)ら(1993)、カレント・オピニオン・イン・イムノロジ(Curr.Opin.immunol.)5巻:p.256−62;チャド(Chadd)ら(2001)、カレント・オピニオン・バイオテクノロジ(Curr.Opin.Biotechnol.)12巻、p.188−94)。

    例えば、本発明のポリペプチド、特に抗体フラグメントまたは抗体をコードする核酸配列(例えば表1または表2の抗体フラグメントまたはその抗体をコードする遺伝子)を単離し、1つ以上のポリヌクレオチド発現ベクタにクローン化することができ、そのベクタを適切なホスト細胞系に形質転換し、本発明の組換えポリヌクレオチドを発現することができる。 本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現はそのポリペプチド収量増加をもたらし、本発明の抗体の抗体フラグメントの可変部および定常部の両方においてアミノ酸の置換、欠失、付加およびその他の修飾、例えばヒト化修飾(ラプリ(Rapley)(1995)モレキュラー・バイオテクノロジ(Mol.Biotechnol.)3巻;p.139−154)などを、結合特異性またはMCAM阻止機能の重大な損失を起こすことなく導入することによって、ポリペプチドの日常的修飾も可能にする(スケラら(1993)Curr.Opin.Immunol.5巻;p.256−262)。

    そのため本発明は、本発明の任意のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメント、より特別には本発明のscFv、Fv、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体、または本発明のこのようなscFvから誘導される抗体、およびさらにより好ましくは本発明のscFvまたは本発明のこのようなscFvから誘導される抗体をコードする上記の単離核酸分子に関する。

    好ましい実施形態において、本発明は下記からなる群から選択される配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子に関係する:
    −配列番号39ないし配列番号57、これは例えばMCAMのような腫瘍特異的細胞表面分子の結合に特異的に関係するCDRである;または−配列番号1ないし配列番号9、配列番号19ないし配列番号23および配列番号29ないし配列番号33、これは例えばMCAMのような腫瘍特異的細胞表面分子の結合に特異的に関与するscFv'sである。

    さらに、本発明の単離された核酸配列は配列番号10ないし配列番号18、配列番号24ないし配列番号28、および配列番号34ないし配列番号38からなる群から選択されるいずれか1つの核酸配列を含む。

    本発明はさらに、配列番号10ないし配列番号18、配列番号24ないし配列番号28、および配列番号34ないし配列番号38のいずれかの配列に厳密な条件下でハイブリダイズする核酸配列にも関する。 ここで使用する“厳密な条件下”という用語は、高い相同性(好ましくは70%以上)によってのみ核酸配列が凝集できるハイブリダイゼーション条件および温度を言う。 典型的ハイブリダイゼーション条件は当業者には公知である。 つまり、高選択性を必要とする用途では、比較的低い塩条件および/または高い温度条件、例えば50℃ないし70℃で0.02M〜0.15M NaClによってもたらされるような条件を使用するのが一般に好ましい。

    本発明は本発明の核酸を含むベクタにも関する。 特にこのベクタはプラスミド、ファージミドまたはコスミドである。

    例えば本発明の核酸分子は適切な様態で原核生物または真核生物発現ベクタにクローン化することができる(サムブルック(Sambrook)ら、“分子クローニング:実験室的マニュアル(Molecular cloning:a laboratory manual)”第二版、コールドスプリング・ハーバー・ラボラトリ・プレス(1989))。 このような発現ベクタは、少なくとも1つのプロモータ、翻訳開始のための少なくとも1つのシグナル、本発明の少なくとも1つの核酸配列、および(原核生物発現ベクタの場合)翻訳終止のためのシグナル、一方真核生物発現ベクタの場合は、好ましくは転写終止およびポリアデニル化のための追加的シグナルを含む。

    原核生物発現ベクタの例としては、大腸菌(Escherichia coli)における発現の場合、例えば米国特許第4,952,496号に記載されているようなT7RNAポリメラーゼによって認識されるプロモータに基づく発現ベクタがあり、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces serevisiae)に発現させるための真核生物発現ベクタの例としては、例えばベクタp426Met25または526GAL1(ムンバーグ(Mummberg)ら(1994)ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)22巻:p.5767−5768)などがあり、昆虫細胞に発現するためには例えばEP−B1−0127839またはEP−B1−0549721に記載されるようなバキュロウィルス−ベクタ類があり、哺乳動物細胞における発現では例えばベクタRc/CMVおよびRc/RSVまたはSV40−ベクタ類(これらは一般に知られており、市販されている)がある。

    これらの発現ベクタの分子生物学的生産方法、並びにホスト細胞にトランスフェクトし、そのようなトランスフェクトされたホスト細胞を培養する方法、並びに前記形質転換されたホスト細胞から本発明のポリペプチドを生産し、得るための条件は当業者には公知である。

    本発明はさらに本発明の核酸および/または本発明のベクタを含むホスト細胞にも関係する;ここでは特に、ホスト細胞は酵母のような微生物またはその他の菌類、例えば大腸菌、バチラス・サブチリス(枯草菌)またはその他の細菌である。 ホスト細胞は、昆虫細胞のような比較的高級な真核生物起源の細胞でもよく、好ましくはウィルスに感染した昆虫細胞、より好ましくはバキュロウィルスに感染した昆虫細胞、またはCOS、MDCK293−EBNA1、NS0またはハイブリドーマ細胞のような哺乳動物細胞でもよい。

    本発明は、本発明のポリペプチド特に本発明の抗体フラグメントの製法であって、本発明のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメントをコードするDNAを含む組換えベクタで形質転換した微生物を培養し、前記本発明のポリペプチド、特に本発明の抗体フラグメントまたはこれを含む融合蛋白質を培地から回収することを含む製法に関する。

    本発明は、MCAM機能のブロックがこの明細書に既に列挙された癌細胞型の選択された群から誘導されるある種の癌細胞の侵襲性を阻害し、特に例えばヒト肉腫細胞、上皮腫瘍、間葉腫瘍、細網内皮腫、神経系腫瘍、奇形腫から、より好ましくはヒト肉腫細胞から誘導される選択された癌細胞の侵襲性を阻害することを示す。

    本発明の一実施形態は、自然発生性癌細胞の侵襲および/または転移を治療または予防するための薬剤の製造に、MCAM機能を阻害する少なくとも1種類、特に1種類の分子を使用することであり、ここで際前記癌細胞の増殖、接着性、侵襲性および/または転移能力はMCAM機能に依存する。

    また別の好ましい実施形態において、MCAM阻害分子は発現したMCAMの機能を阻害する。 発現したMCAMとは本発明の範囲では、ある種の処置が開始される前に自然発生性癌細胞上にすでに存在するMCAM蛋白質であると理解される。 これらの分子は特に、受容体の細胞外領域に結合し、内部経路を介してMCAM発現を阻止する分子である。

    より詳細に述べれば、このような分子は小さい化合物、MCAMに対する抗体、MCAMに対する抗体フラグメント、本発明のポリペプチド、本発明の抗イディオタイプ抗体および/または本発明のバイオコンジュゲートからなる群から選択され、ここでその分子は特に本発明のポリペプチドおよび/またはバイオコンジュゲートである。

    また別の好ましい実施形態において、増殖、接着、侵襲および/または転移能力をMCAM機能に依存している自然発生性癌細胞は、前に述べた組織または癌細胞型からなる群から選択されるどの癌細胞でもよく、特にそれらは肺、肝臓、腎臓、胃、小腸、骨、脾臓、脳、末梢神経系、甲状腺、膵臓、子宮内膜、子宮、子宮頸、皮膚、結腸またはリンパ様組織からなる群から選択される組織由来のものでよく、より好ましくはその癌細胞は肉腫細胞である。

    本発明は更に薬剤で処置できる標的としてのMCAM抗原に関する。 本発明のその他の局面は高い中和能力をもってヒトMCAMに結合する抗体フラグメントに関する。

    本発明の更なる実施形態において、本発明の少なくとも1つのポリペプチドおよび/または本発明のバイオコンジュゲートを使用して、特にスクリーニングアッセイにおいてヒトMCAMに特異的に結合するその他の分子類を同定する。 これらの方法は、推定的競合物テスト結合剤の存在下で標準抗−MCAM抗体フラグメントとMCAMドメインを含む標的種とを接触させることを含む。 この接触工程は、テスト結合剤を含まずに、標準抗体フラグメントと標的種との間の複合体形成に適した条件下で行われる。 テスト結合剤の存在下における標準抗体フラグメントと標的種との間の複合体形成は、テスト結合剤のMCAMとの特異的結合活性のインディケータとして検出される。 このスクリーニング法は、例えばその他の抗体ライブラリまたは抗体フラグメントライブラリ、アンチセンスオリゴヌクレオチドライブラリまたはペプチドおよび低分子ライブラリなどのハイスループットスクリーニングを行って、追加的“MCAMに特異的に結合する分子”を同定し、特徴づけるために有用である。 競合は、前記抗体フラグメントまたはその他の被験結合物質が、MCAMドメインを含む標的種への基準抗体フラグメントの特異的結合を実質的に阻止するアッセイによって決定される。 これは例えば、推定的コンペティタ、すなわち“MCAMに特異的に結合する分子”の存在下または不在下で、複合体形成に適した条件下で、MCAMドメインを含む標的種への基準抗体フラグメントの結合を測定することによって決めることができる。 米国特許第4,376,110号などに記載されているように、多くの種類の競合的結合アッセイが知られており、本発明の範囲内で日常的に使用できる。 一般的にこのようなアッセイはMCAMドメインを含む標的種(例えば精製MCAM、またはMCAM抗原を発現する細胞系)、未標識の“MCAMに特異的に結合する分子”、および標識基準抗体フラグメントまたはその他の結合物質の使用を含む。 競合的阻止は“MCAMに特異的に結合する分子”の存在下で標的種に結合した標識の量を決定することによって測定される。 “MCAMに特異的に結合する分子”は過剰に存在するのが普通である。 これらの競合的アッセイ(“競合的結合物質”)によって同定される“MCAMに特異的に結合する分子”には、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アンチセンス オリゴヌクレオチド、低分子および、エピトープに結合するあるいは、基準抗体フラグメントが結合しているその他の結合物質、並びに基準抗体フラグメントが結合しているエピトープに十分近いエピトープまたは結合部位に結合する“MCAMに特異的に結合する分子”がある。 本発明の競合的結合物質は、過剰に存在する場合、基準抗体フラグメントの選択された標的種への特異的結合を少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、およびさらにより好ましくは少なくとも75%〜90%以上阻害するのが好ましい。

    本発明のポリペプチドに加えて、特に本発明の抗体フラグメントまたは抗体、天然または人工的リガンド、ペプチド、アンチセンス、またはヒトMCAMを特異的に標的とすることができるその他の低分子を使用できる。 本発明に基づいて、ヒトMCAMに結合またはその他相互作用し、阻害するような薬剤を設計することができる。 これに関連して、X線結晶学、コンピュータによる分子模型化(CAMM)、定量的または定性的構造−活性関係(QSAR)およびこれらに類似の方法を使用して薬剤の開発研究の焦点を合わせることができる。 合理的設計により、蛋白質またはそれらの特異的部分と相互作用できる分子を予測することができる。 そのような分子構造を化学的に合成し、および/または生物学的系において発現させることができる。 低分子は当業者には公知の方法で有機化合物を合成することによって生成することができる。 複数のペプチド類、半ペプチド化合物、または非ペプチド有機化合物を合成し、スクリーニングし、高い中和能力をもってMCAMに結合する化合物、特に、MCAM関連性侵襲を阻害する化合物を見いだすことができる。 スコット(Scott)およびスミス(Smith)、“エピトープライブラリによるペプチドリガンドの検索(Searching for Peptide Ligands with an Epitope Library)”Science(1990)、249巻p. 386−90、およびデブリン(Devlin)ら“ランダム・ペプチド・ライブラリ:特異的蛋白質結合分子のソース(Random Peptide Libraries:A source of Specific Protein Binding Molecules)”Science、(1990)、249巻、p. 40407、を参照されたい。

    本発明はインビトロまたはインビボにおいて、抗体または抗体フラグメントを使用してヒトMCAM活性を阻止し、または肉腫細胞中のヒトMCAMを検出する方法も提供する。 好ましい実施形態において、その抗原を発現する細胞を1種類以上の抗体フラグメントで処理すると、ヒト肉腫細胞の増殖または接着の軽減および/または侵襲能力の阻害が起きる。

    腫瘍細胞の組織への移動は転移の重要な一過程である。 接着および侵襲のプロセスはトランスエンドテリアル・モデルで研究できる(ウッドワルド(Woodward)ら(2002)Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.43巻、p.1708−14およびヴァクラ(Vachula)ら(1992)Invasion Metastasis 12巻、p.66−81)。 トランスエンドテリアル・モデルは侵襲プロセス中の細胞相互作用を研究するための有用なインビトロ系を提供する。 本発明はさらに自然発生性侵襲性癌細胞の侵襲性とMCAM機能との依存関係を調べるためのインビトロ法も提供する。

    この方法は次の諸工程を含む:
    ・前記細胞を、MCAM機能を阻害する分子と接触させる;
    ・癌細胞を、前記癌細胞の増殖に適した条件下でゲル状基質と接触させる ・前記ゲル状基質を通過する前記癌細胞の移動を調べる

    本明細書に使用する用語“ゲル状基質”は、少なくとも90%の水分量を有する半固体物質で、癌細胞をこの基質と接触させて培養することができ、侵襲性癌細胞は0.1mmないし1mm、好ましくは0.3mmの厚さの前記“ゲル状基質”のスラブを移動できるが、非侵襲性細胞は移動できないという半固体物質であると理解される。 このような“ゲル状基質”の例は、蛋白質および炭水化物組成物における細胞外基質類似物質であり、特に市販の“マトリゲル”である。 特に、この“ゲル状基質”はIV型蛋白質コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンからなる群から選択される蛋白質の一つを含む。 このゲル状基質はIV型蛋白質コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンを含むのがより好ましい。 このゲル状基質はIV型蛋白質コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、ニドゲンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカンを含むのがより好ましい。

    好ましい実施形態において、工程a)の妨害分子はMCAMの細胞外エピトープに特異的に結合するポリペプチド、特に本発明のポリペプチド、より好ましくは本発明の抗体または抗体フラグメント、さらにより好ましくは抗体フラグメント、さらにより好ましくはscFv、dsFv、Fv、単一ドメイン抗体または二重特異的抗体、特にscFv、単一ドメイン抗体または二重特異性抗体であり、さらにより好ましくはscFvである。

    本発明はさらに、ナイーブ抗体フラグメント・ファージ・ディスプレイ・ライブラリをスクリーニングすることによって、MCAMの細胞外領域に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを同定する方法も提供する。 ここではこれらの抗体フラグメントまたは抗体(WO91/17271の抗体のファージ・ディスプレイを参照されたい)は肉腫細胞の侵襲性を阻止することができ、実際阻止する。 前記の方法は次の諸工程を含む:
    ・抗体フラグメントのファージ・ディスプレイと侵襲性肉腫細胞とを接触させる;
    ・前記細胞を単離する;
    ・前記細胞に非特異的に結合したファージを、例えば前記細胞が溶解しない条件下で前記細胞を緩衝洗浄溶液で洗うことによって除去する;
    ・前記細胞に結合したファージを溶出する;
    ・前記溶出したファージによってあらわされる抗体または抗体フラグメントの同一性を決定する。

    工程d)で得られた抗体または抗体フラグメントをあらわすファージの同一性は、例えばその抗体または抗体フラグメントをコードするDNAの配列決定によって、またはグリッドを付けたまたは番号をつけたファージを有する市販のライブラリの場合は、そのファージのグリッド位置または番号を確認することによって決定することができる。 グリッド位置または番号はそのファージによってあらわされる抗体または抗体フラグメントの同一性をあらわすことができる。

    工程d)の後、ファージのプールにはMCAMに結合しているファージが豊富になる。 MCAMに結合しているファージは最後には業界で公知の多数の方法によって同定できる。 ファージを単離し、個々のクローンを生成することができ、そのファージのクローンは標識MCAM蛋白質またはMCAM蛋白質の標識部分、例えばMCAMの細胞外領域の最低7個のアミノ酸長さのペプチドで厳密に調べることができる。 このようなプローブに結合するクローンが、MCAM結合物として同定される。 ファージは精製MCAM蛋白質または組換えMCAM上でアフィニティ精製することもできる。

    或いは、抗体または抗体フラグメントをコードするオープン・リーディング・フレームを全富化プールから発現ベクタに再クローン化することができ、抗体または抗体フラグメントを別のホスト細胞のクローンに発現することができ、MCAMに特異的に結合する抗体または抗体フラグメントをコードする核酸を含む発現ベクタを担持するホスト細胞のクローンは、例えば関連ファージクローンを同定するための上記の方法、または実施例2または実施例9の方法、または組換えMCAM上のアフィニティ精製によって同定することができる。

    この方法の特別な利点は、MCAMの細胞外領域の接近しやすい部分に特異的な抗体または抗体フラグメントが得られることである;なぜならばMCAMの細胞外領域の接近しやすい部分(そこにファージが結合する)を表す完全細胞上で最初の選択ステップが行われるからである。

    本発明の好ましい実施形態において、上記の方法は工程e)の代わりに、次の諸工程をさらに含む:
    ・単離したファージを組換えMCAMと接触させる:
    ・前記MCAMを緩衝洗浄剤、および/または高塩溶液で洗い;
    ・MCAMに結合したファージを溶出し;
    ・前記溶出ファージによってあらわされる抗体または抗体フラグメントの同一性を確認する。

    幾つかの実施形態において、ファージ上に発現する抗体フラグメントはscFv、dsFv、Fab'、Fab、F(ab') 、Fv、単一ドメイン抗体(DABs)および二重特異性抗体からなる群から選択される抗体または抗体フラグメント、より好ましくはscFv、dsFv、Fv、単一ドメイン抗体または二重特異性抗体からなる群から選択される抗体または抗体フラグメント、さらにより好ましくはscFv、単一ドメイン抗体または二重特異性抗体から選択される抗体または抗体フラグメントを含み、さらにより好ましくはscFvである。

    工程c)およびf)に使用される用語“洗浄剤”は洗剤溶液、好ましくは緩衝洗剤溶液であり、0.001〜0.5%、特に0.01〜0.1%濃度のツイーン(Tween)でよい。 工程f)の“高塩”は高塩溶液であり、好ましくは緩衝高塩溶液で、イオン強度10mM〜1M、特に20〜500mM、より好ましくは50〜350mM、さらにより好ましくは80〜250mMである。 一般的に有用な陰イオンは塩化物、クエン酸塩、燐酸塩、水素化燐酸または水素化酸などである。 一般的に有用な陽イオンはナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムまたはマグネシウムなどである。

    上節に記載の緩衝溶液は典型的にはpH7〜8を有する。 例えばDMEMまたはPBS、特に1〜20%、好ましくは5〜15%、さらにより好ましくは約10%のFCSを緩衝剤として使用できる。

    細胞を、それらと結合したファージと共に単離するには、200ないし300g値で3ないし20分間、特に5ないし10分間おだやかに遠心分離する。 細胞および固定MCAMの両方に結合したファージの溶出は、2〜100mM、特に4〜50mM、より好ましくは5〜20mM、さらにより好ましくは約10mMのグリシンで、0ないし2.5のpH、特に1ないし2.5、より好ましくは1.5ないし2.5のpHで洗うことによって行われる。

    これらの抗体フラグメント、特にこれらのscFvsのMCAM阻止活性を上記のようにインビボで、または細胞培養実験で分析測定した。 細胞培養アッセイには、本発明の抗体フラグメントの阻害効果を実施例5および7に記載される侵襲または接着アッセイで測定するアッセイがある。 例えば侵襲アッセイの結果が図2に示される。

    下記の実施例(行われた実験および得られた結果を含む)は説明の目的のために提供されるものであり、本発明を制限するためのものではない。

    実施例1
    scFvの選択およびスクリーニング(懸濁液中の細胞上における選択)
    一本鎖Fvをケンブリッジ・アンチボディ・テクノロジ社(ケンブリッジ、英国)から提供される1011の独立クローンを含む、ヒト由来の、大きい非免疫ファージ・ディスプレイド・レパートリから選択した。

    選択のために、HT1080細胞(ヒト線維肉腫細胞系;ATCC、CCL−121)を0.05%EDTAで採取し、DMEM+10%FCSで1×107細胞/mlに希釈した。 2×1012cfuファージライブラリ/107細胞をDMEM+10%FCSで25℃で1時間プレブロックし、その後DMEM+10%FCSでプレブロックしたエッペンドルフ管中の細胞と共に25℃で1.5時間、上下回転でインキュベートした。 選択の第一ラウンドでは3×107細胞を、選択の第二ラウンドでは1×107細胞をそれぞれ用いた。 細胞を220×gで5分間遠心分離することによって洗い、その後上澄液を除去し、緩衝水溶液に再懸濁した。 洗浄緩衝液としてDMEM+10%FCS+0.05%ツイーン20を用いて5回洗浄し、洗浄緩衝液としてDMEM+10%FCSを用いて5回洗浄した。 結合ファージを10mMグリシンpH2.2の添加によって溶出し、1Mトリス/HClpH7.4で中和した。 典型的に、選択の第一ラウンドで103ないし106cfuが溶出した。 この富化レパートリの多様性は最初のレパートリに比較して減少している。 富化レパートリを含む溶出液を、指数的に増殖する大腸菌TG1に感染させることによって増幅した。 大腸菌を含むファージミドを選択し、100μg/mlアンピシリンおよび1%グルコースを補充したLB寒天プレート上で30℃で一晩増殖させた。 この段階後、富化レパートリをポリクローナルプールとして増幅させ、更なる選択ラウンドでこの富化レパートリは所望の特性に収束するまで繰り返し使用することができ、または前記富化レパートリを空間的に単離し、単クローンレベルで所望の機能についてスクリーニングしてもよい。 次の選択ラウンドのためのファージ粒子は、これまでの選択ラウンドの指数的に増殖する培養物にヘルパーファージVCS−M13(ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州)をスーパーインフェクトさせ、その培養物を100μg/mlアンピシリンおよび50μg/mlカナマイシンを補充した2×TY中で20℃で一晩増殖させることによって生成した。 選択の用意のできたファージを澄明な細菌性上澄液から0.5M NaCl/4% PEG−6000で沈殿させ、PBSに再懸濁した。 この実施例では2ラウンドの選択を行い、その後単クローンレベルでスクリーニングした。

    実施例2
    scFvの選択およびスクリーニング(接着細胞上におけるスクリーニング)
    スクリーニングのために、ファージ・ディスプレイ・ベクタに含まれている、選択したscFvをコードする遺伝子を発現ベクタpXP14に再クローン化した。 このベクタはStreptagおよびE−tagと融合したscFvを発現させ、フィラメント状ファージ遺伝子−3を含まない。 単一コロニから得た大腸菌TG1を含む発現ベクタをミクロタイタープレートの個々のウェルで、各ウェルがscFvクローン一つだけを含むようにして増殖させた。 その細菌を96ウェル・ミクロタイタープレート(#9297、TPP)で、100μg/mlアンピシリンおよび0.1%グルコースを補充した2×TY中で30℃で、OD600が0.7になるまで増殖させた。 最終濃度0.5mMのIPTGで発現を誘発し、25℃で一晩、発現を続けた。 めんどり卵のリゾチーム(#L−6876、シグマ社)を最終濃度50μg/mlになるように25℃で1時間加え、3000×gで15分間遠心分離することによって、一本鎖Fvを含む澄明溶解物(lysates)を調製した。 スクリーニングELISAの前に、前記澄明溶解物を、等量のDMEM+10%FCSを1時間添加することによってブロックした。 スクリーニングELISAのために、HT1080細胞を96ウェル・ミクロタイタープレート(#9296、TTP)に、DMEM+10%FCS中3×104細胞/ウェルの密度で37℃で一晩植え付けた。 それらのウェルをDMEM+10%FCSで1時間、37℃でブロックし、scFvを含む、ブロックした澄明溶解物を25℃で1時間加えた。 プレートをPBS+0.1%ツイーン20で2回、PBSで1回洗い、HRP結合α−E−tag(#27−9413−01、ファルマシア・ビオテク(Pharmacia Biotech);0.1%ツイーン20を含むPBSに5%スキムミルクパウダ(#70166、フルカ(Fluka))を溶解した液で1:5000に希釈)と共に1時間インキュベートし、PBS+0.1%ツイーン20で3回、PBSで3回洗い、POD(#1484281、ロッシュ)で展開し、シグナルを370nmで読んだ。 陽性クローンをHT1080細胞および対照ヒト線維芽細胞Hs−27(ATCC CRL−1634)に対して、上記のELISAスクリーニング法を用いて再試験した。

    典型的選別では、1472(16×92)クローンをHT1080細胞への結合に関してスクリーニングし、バックグラウンドを引いたシグナル>0.1を与えるクローンを陽性とし、16%陽性を得た。 238の陽性クローンについてHT1080に対する特異的結合をHs−27対照細胞に比較して再試験し、HT1080におけるバックグラウンドを引いたシグナルがHs−27対照細胞におけるシグナル値の2倍であるクローンを陽性とし、28%陽性を得た。

    実施例3a
    シーケンシングおよび大規模発現 scFv遺伝子のシーケンシングはセクィサーブ社(Sequiserve GmbH)(ファテルステッテン、ドイツ)によって、プライマpXP2 Seq2(5'−CCCCACGCGGTTCCAGC−3';配列番号:41)およびpXP2 Seq1(5'TACCTATTGCCTACGGC−3':配列番号42)を用いて行われた。 アミノ酸配列は表1に示され、ヌクレオチド配列は表2に示される。

    シーケンシングによって同定された特殊なクローンをグリセロール・ストックからLB/Amp(100μg/ml)/1%グルコース寒天プレート上にすじ状に出し、30℃でo/n インキュベートした。 10ml LB/Amp/Glu(1%)培地に単一コロニを接種し、30℃、200rpmで振とうしながら増殖させた。 翌朝、その一晩培養物を、2Lエルレンマイヤ−フラスコ中の100μg/mlアンピシリンおよび0.1%グルコースを補充した1Lの100μg/mlを2×TY培地に接種するまで、氷上に置いた。 培養物をOD 600 0.5〜0.6になるまで25℃で振とうしながら増殖させ、その後最終濃度0.1mMのIPTGで発現を誘発した。 新鮮アンピシリンを50μg/mlになるまで加え、22℃で一晩振とうしながらインキュベーションを行った。 翌朝、培養物を4℃で5000×gで15分間遠心分離し、上澄液を棄て、ペレットを氷上で、プロテアーゼインヒビタ・コンプリート(#1697498、ロッシュ)を含むあらかじめ冷やしたPBS−0.5M Na緩衝液10ml中にピペットで注意深く再懸濁した。 再懸濁が完了した後、細菌懸濁液を20mlオークリッジ遠沈管に移し、めんどり卵リゾチーム(#L−6876、シグマ)を氷上で1時間、最終濃度50μg/mlになるまで加えた。 溶解した細菌を20000×gで4℃で15分間遠沈し、上澄液(溶解物)を15mlプラスチック管に移した。 アフィニテイ精製のために、溶解物を、10カラム量(CV)のPBS−0.5M Na緩衝液で平衡化した1mlストレプタクチン(StrepTactin)(#2−1505−010)カラム上に、平行蛋白質精製装置(自己製作品)を介して1ml/minの速度で担持させた。 PBSで10CV−洗浄後、5CV PBS/5mMデスチオビオチン(#D−1411、シグマ)で溶出し、1mlづつフラクションを集めた。 それらのフラクションをUV280で測定し、蛋白質含有フラクションをプールし、アミコン・ウルトラ・セントリヒューガル・フィルタ装置10.000MWCO(#UFC801024、ミリポア)で4700×gで濃縮した。 濃縮されたscFvについてクーマシーブルーで染色した12%Bis−Tris SDS−PAGEゲル上で純度を調べ、一部分づつ20%グリセロールと共に−80℃で凍結した。

    実施例3b
    scFvのIgGフォーマットへのクローニングおよび発現 scFvはリンカ配列によって結合した種々の可変部軽鎖および重鎖からなる。 可変部軽鎖および可変部重鎖をPCRによってプライマを使用して個々に増幅する。 プライマは制限部位を含む。 これらの制限部位は、重鎖および軽鎖のための適切な定常部ドメインを含むベクタ類にも存在する。 増幅した可変部ドメインを制限酵素で切断し、前記カットベクタにクローン化した。 正しい配列をシーケンシングによって同定した。

    4つのベクタを使用した。 1つはIgG1フォーマットのための重鎖の定常部ドメインを含んでいた。 第二のベクタはIgG4フォーマットのための重鎖の定常部ドメインを含んでおり、2つはそれぞれラムダおよびカッパ軽鎖の定常部ドメインを含んでいた。 異なる制限部位はベクタを切断し、それらベクタの可変部ドメインを結合することができる。

    哺乳動物細胞系におけるIgGsの発現のために、ベクタはエプスタイン・バール・ウィルス複製開始点(oriP配列)を含んでいた。 EBNA蛋白質はエピソーマルベクタの複製に導くので、oriP配列は293−EBNA−HEK細胞の転写レベルを高める。

    重鎖のためのベクタと、軽鎖のためのベクタの同時トランスフェクションを行い、細胞中の両方の鎖の発現および小胞体におけるIgGの組み立てに導いた。 組み立てられたIgGはその後培地に分泌された。 トランスフェクション法として燐酸カルシウム・トランスフェクションを使用した。 この方法では燐酸カルシウムおよびDNAの沈殿が形成され、細胞に組み込まれる。 トランスフェクション後、培地を無血清培地に代えた。 3日目ごとにIgGにつき3回採取した。 上澄液(培地)を滅菌濾過し、4℃で保存した。

    IgGsを精製するために、蛋白質Aセファロースを用い、容量により重力流またはHPLCどちらかのやり方で上澄液を精製した。 200mlまでの場合は重力流法を用いた。 両方の精製法共に、上澄液を蛋白質Aカラムに担持させ、50mMトリスpH緩衝液で洗い、0.1Mクエン酸pH〜2で溶出した。 溶出フラクションに0.25MトリスpH9を加え、pH5.5〜6.0にした。 その後IgGsを使用して、それらをPBS緩衝液に対して透析し、−20℃で保存した。

    実施例4
    腫瘍細胞特異的結合のFACS分析 一本鎖FvまたはIgGが標的細胞に特異的に結合する能力を試験するために、我々はHT1080細胞、KHOS細胞、PC−3細胞、BT 474細胞、MCF細胞、Hela細胞、ジャルカット(Jurkat)細胞、HL60細胞、LS174T細胞およびSW480細胞(10 細胞/ml)および、対照細胞としてHS−27細胞(10 細胞/ml)を使用し、細胞自動解析分離装置(FACS)による分析を行った。 細胞をセルウォッシュ(CellWash)(BD(ベクトン・ディッキンソン・アンド・カンパニー)#349524)中で純粋なscFv10μg/mlと共に4℃で20分間インキュベートし、洗い、結合したscFvを二次FITC標識抗E−tag mab(アマーシャム#27−9412−01)で検出した。 サンプルを洗い、ベクトン・ディッキンソン・FACSscanで分析した。 選択されたscFvの結果を図3、表3aに示す。 IgG'sで得られた結果を表3bで示す。

    実施例5
    侵襲アッセイ ChemoTxシステム(登録商標)(ニューロプローブ社(Neuro Probe Inc.)#106−8、ガイサースバーグ)を96ウェル・フォーマットの使い捨て化学走性/細胞移動チェンバとして使用した。 これは大きさ5.7mm直径/サイトのポアをトラックエッチングしたポリカーボネートの8μmフィルタでおおわれていた。

    13.3μlの0.3mg/mlマトリゲル(マトリゲルは、エンゲルブレス−ホルム−スワーム(EHS)マウス肉腫[細胞外基質蛋白質に富む腫瘍]から抽出した可溶化基底膜標本である。その主要構成成分はラミニンで、それに次ぐ構成成分はコラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチンおよびニドゲンである。それはTGF−α線維芽細胞増殖因子、組織プラスミノーゲン・アクチベータ、およびEHS腫瘍に自然に生ずるその他の増殖因子も含む)(ベクトン・ディッキンソン、BD#356234)をダルベッコPBS(ギプコ#14040−091)に希釈したものを96ウェルプレートのメンブレンフィルタ上の列B−Hに塗布し、列Aには0.05MHCl(シグマ#945−50)で希釈したコラーゲンSタイプI(ロッシュ#10982929)1.2μg/サイトを塗布し、デシケータ中で20℃で一晩インキュベートし、ゲル化させた。 HT1080細胞を、10%FCS(ギプコ#10270106)と共にグルタマックスI(862mg/l(ギプコ#31966−021))を補充したDMEM中で70〜80%融合するまで増殖させた。 それらの細胞を、DMEM/グルタマックスI/0.1%BSA(シグマ#A−7030)で1:100に希釈したビスベンズイミドH33342(シグマ#B−2261)でインサイチュウで37℃、7.5%CO 中で15分間標識化した。 細胞をDMEM/グルタマックスI/0.1%BSAで2回洗い、DMEM/グルタマックスI/0.1%BSAを37℃、7.5%CO 中で15分間担持させ、回収した。 PBS w/o Ca ++ 、Mg ++ (ギプコ、10010−015)で2回洗った後、細胞を0.5mM EDTA(シグマ#E8008)で脱着し、ダルベッコPBS/0.1%BSA/10mM Hepes(ギプコ#15630−056)で集め、ダルベッコPBS/0.1%BSA/10mM Hepesで2回洗い、ダルベッコPBS/0.1%BSA/10mM Hepesに懸濁し、ダルベッコPBS/0.1%BSA/10mM Hepesで6.7×10 細胞/mlに希釈した。 6.7×10 細胞/mlと侵襲性阻害の対照としての40μg/ml HT1080特異的scFv1と共に、およびHT1080特異的scFv(scFv2−scFv10)と共に1:1で氷上で1時間インキュベートした。 DMEM/グルタマックスI/0.1%BSAで6.7×10 細胞/mlに希釈した後、HT1080細胞およびHT1080細胞/scFv希釈物をピペットで三重に化学走性チェンバ(列B−H)上に3.4×10 細胞/ウェルの密度でとり、37℃で7.5%CO 中で6時間インキュベートした。 5%FCSを含むDMEM/グルタマックスIを下部チェンバの化学誘因物質として使用した。 化学走化性チェンバのコラーゲンSタイプIで被覆した列Aで1×10 から4×10 細胞/ウェルまでの標準曲線を作成した。 DMEM/グルタマックスI/0.1%BSAを下部チェンバ(細胞は移動しない)に使用した。 移動しなかった細胞を膜の頂部から剥離した後(列Aの標準曲線を除く)、膜を通過して移動した細胞(標準曲線の場合は移動しない)の蛍光をフルオスタ・ギャラクシ(Fluorostar Galaxy)(bMG)ミクロ・プレートリーダ上で、370/460nmの励起/発光波長を使用して測定した。 我々の実験では45000の数値が100%移動した細胞に相当した。 三重のサンプルの平均阻害結果を図2に示す。 各実験を3回繰り返し、実質的に同様な結果が得られた。 腫瘍細胞類の侵襲表現型を、それらの腫瘍細胞外基質(マトリゲル)を侵襲する相対的能力を上記のトランスウェル培養システムを使用して比較するというやり方で評価した。

    実施例6.1
    MTS生育性アッセイ 生育可能細胞は、テトラゾリウム色素MTS(MTS、セルタイター・アケアス・ワン、プロメガ#G4000)のホルマザンへの変換を測定することによって検出した。 HT1080細胞およびHT1080細胞/scFv希釈物(侵襲性アッセイにおいて調製された希釈液から得た)をピペットで3.4×10 細胞/ウェルの密度で三重にとり、96ウェルプレート(ブラック、超薄透明平底、スペシャル・オプティックス、コスター(Costar)#3615)に培養し、10μlMTSを各ウェルに加え、37℃、7.5%CO 中で1時間インキュベートした。 フルオスタ・ギャラクシ(bMG)ミクロ・プレートリーダで492nmで吸光度を測定した。 試験した全てのscFvで細胞の生育性に対する影響は見られなかった。

    実施例6.2
    増殖アッセイ SW−480およびPC−3細胞をL−グルタミンおよび10%FCSを含むPRMIに培養した(インビトロゲン#21875−034、カールスバド、カリホルニア)

    SW−480およびPC−3細胞を96ウェルプレート(コーニング・コスタ#3904、アクトン、マサチュセッツ)に、100μl/ウェル量の培養培地に植え付けた。 細胞を37℃、5%CO 中で24時間インキュベートした。 培地を吸引し、15μg/ml抗体または50mM NaN を加え、培養培地で希釈した。 対照細胞は培地だけでインキュベートした。 第一の添加の48時間後に、抗体を同じ濃度で再度加えた。 MTS吸光度を最初の処理の前、24時間後、48時間後および72時間後に測定した。 このために、10μlセルタイター96アクエアス・ワン溶液(プロメガ#3581、マジソン、ウィスコンシン)を細胞懸濁液100μlに加え、混合物を37℃、5%CO 中で3時間インキュベートした。 吸光度をフルオスタ・プレート−リーダー(BMGラボ・テクノロジーズ、オフェンベルグ、ドイツ)で492nmで測定した。 結果は図12に示す。

    実施例7
    細胞−基質接着アッセイ 96ウェルプレート(TPP#9296)(処理細胞培養物)に、ダルベッコPBS(ギプコ#14040−091)中コラーゲンSタイプI1μg/ウェル(ロッシュ#10982929)を4℃で一晩塗布した。 ダルベッコPBSで洗浄し、2%BSA(シグマ#A−7030)/ダルベッコPBSで37℃で1時間ブロックし、ダルベッコPBSで洗浄した後、HT1080細胞およびHT1080細胞/scFv希釈物(侵襲アッセイで調製した希釈物から得た)をピペットで3.4×10 細胞/ウェルの密度で三重にとり、37℃、7.5%CO 中で1時間インキュベートした。 ダルベッコPBSによる2回の追加的洗浄工程後(この工程で非接着性細胞は洗い流される)、ダルベッコPBS/0.1%BSA/10mM Hepesで希釈した1×10 ないし4×10 染色細胞/ウェル(侵襲アッセイで調製された希釈物から得た)から標準曲線を列Aで作成した。 洗浄したウェルを50μlダルベッコPBSで満たし、付着した細胞の吸光度および標準曲線の吸光度をフルオスタ・ギャラクシ(bMG)ミクロ・プレートリーダ上で励起/発光波長370/460nmを使用して測定した。 我々の実験では、25000の数値は100%接着細胞に相当した。 接着アッセイも数種の基質蛋白質、例えばCIV(コラーゲンIV)、FN(フィブロネクチン)およびLN(ラミニン)などを用い、種々の細胞型、例えばHT1080(ヒト線維肉腫)、PC−3(ヒト腺癌、前立腺)、HeLa(ヒト子宮頸癌)およびHT−29(ヒト結腸癌)細胞などで行われた。 scFvの他に、実施例3.2により一本鎖からクローン化されたIgGについても、腫瘍細胞の接着を阻害するそれらの能力を試験した。 結果は図8に示される。

    実施例8
    FACS法による競合アッセイ ある種の阻害性scFvの、標的細胞上の一般的抗原エピトープをブロックする能力を試験するために、HT1080の単細胞懸濁液を0.5mM EDTA/PBSで採取した。 約1×10 細胞をセルウォッシュ(BD、#349524)中で10μg/ml scFvと共に4℃で1時間インキュベートした。 セルウォッシュで洗った後、10μg/ml FITC標識化scFvを加え、4℃で20分間インキュベートした。 結合FITC標識scFvのシグナルを、その他の結合物質のプレインキュベーションを伴う場合と伴わない場合とで、ベクトン・ディッキンソンFACSscanで分析した。

    実施例9
    免疫沈降法 HT1080およびHs−27細胞(10 )を、3mlの50mM トリス−HCl、pH8.0、150mM NaCl、プロテアーゼインヒビタカクテル(1pill/50ml緩衝液)(ベーリンガーマンハイム、カタログ番号1697498)を含む1%トリトンX−100、および100μMペファブロック(Pefablock)(ロス(Roth)、カタログ番号A154.1)に溶解した。 溶解物をストレプタクチン・セファロース(IBA、#2−1201−010)と共に4℃で2時間プレ−インキュベートし、上澄液を免疫沈降反応に使用した。 HT1080特異的一本鎖Fv(50μg/1 mg細胞抽出物)を澄明な溶解物に加え、サンプルを4℃で2時間撹拌し、700×gでおだやかに遠心分離し、ストレプタクチンセファロースをペレット化し、そのペレットを1回の洗浄ごとに1ml容量のPBS+0.1%ツイーン緩衝液で4回洗い、その後PBS0.1%ツイーン20中10mM D−デスチオビオチン50μlでストレプタクチン・セファロース・ペレットから溶出することによって複合体を単離した。 この免疫複合体をSDS−PAGEによって分離し、MS分析のために銀染色した。

    scFv2は、銀染色によってSDS−PAGE上で約120kDaの分子量のバンドとして検出される蛋白質を引きつけた。 このバンドはHs−27細胞を使用した対照サンプルには見られなかった。

    一本鎖Fv1、3、5、6、7、9、15および19は銀染色によってSDS−PAGE上で約110kDaの分子量のバンドとして検出される蛋白質を引きつけた。 免疫沈降法はHT1080および対照細胞としてのHs−27細胞からの細胞抽出物を使用して行われた。 この特殊なバンドは対照サンプルにも存在するのが認められたが、どの場合にも、はるかに弱い程度で存在し、この蛋白質がHT1080細胞系に過剰発現するらしいことが示唆される。 scFv3の場合には、このバンドはHT1080細胞抽出物を使用した場合にだけ認められ、Hs−27細胞では認められなかった。

    scFv8および10は約130kDaの分子量で銀染色によってSDS−PAGE上のバンドとして検出される蛋白質を引き付けた。 このバンドはHs−27細胞を使用した対照サンプルにはなかった

    一本鎖Fv4、11および14は2つの蛋白質を沈降し、これらは、SDS−PAGE上に銀染色によってそれぞれ約150kDaおよび約130kDaの分子量に2つのバンドとして検出される。 大きいほうのバンドは対照サンプルにも存在するが、程度ははるかに弱く、小さい方のバンドは対照にはないかまたは極めて薄いものであった。 これは2つの蛋白質がHT1080細胞系に過剰発現されているものと考えられる。

    実施例10
    質量分析による蛋白質の同定 免疫沈降法とその後のSDS−PAGEによって得られたゲルバンドを、37℃で一晩、トリプシンによるゲル内消化にかけた。 ペプチドを5%蟻酸を用いて抽出し、生成したペプチド混合物をZipTip μC18(ミリポア)を使用して脱塩し、最初に2μlの30%ACN/0.1%TFAで溶出し、それから2μlの70%ACN/0.1%TFAで溶出した。 2フラクションを一緒にし、得られたペプチド混合物の1マイクロリットルをα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸溶液(3mg/ml)と1:1の比で混合し、テフロン被覆ステンレス鋼標的上で共晶化し、MALDI−TOF機器で分析すると、質量範囲m/z800〜3000のペプチド・マス・フィンガープリント(PMF)が得られた。 NCBIおよびスイスプロット・データベースにおいてホモサピエンス種について登録されているものすべてを得られたPMFを用いて検索した。 いずれの場合も、質量偏差13ppm未満で所定蛋白質に合うペプチドだけを考慮して同定した。

    scFv2を用いて得られたサイズ約120kDaを有するバンドからは9ないし10のペプチドピークが得られた。 それはエフリンA型(Ephrin typeA)受容体2と一致し、蛋白質のカバー率は最大で14%(134/976残基)であった。

    サイズ約110kDaを有するバンドについて異なるMALDI−TOF−MS実験を実施したところ、6ないし15のペプチドが得られた。 それは細胞表面糖蛋白質MUC18前駆体に一致し、蛋白質カバー率は最大で23%(151/646残基)であった。 アミノ酸配列にわずかな偏差が含まれるものの同じ蛋白質が上記データベースに複数登録され、利用することができる。 MCAMが同定されたMALDIスペクトルを図11aに示す。 ペプチド・カバー率は図11bに示す。

    メラノーマ接着蛋白質の分子量はいずれも約72kDaであるが、その蛋白質はグリコシル化されていると考えられるので、約110kDaのゲル上にバンドが見いだされても驚くにはあたらない。

    scFv10を使用して得られる約130kDaサイズを有するバンドからは、7個のペプチドが得られた。 これはインテグリン−アルファ3と一致し、蛋白質カバー率は6パーセント(71/1019残基)であった。

    この蛋白質の分子量は約119kDであるが、SDS−PAGE上ではこれよりも高い分子量が観察された。 このことは、この蛋白質がグリコシル化されていたと考えれば、説明がつく。

    約150kDaのサイズを有するバンドscFv1−scFv14の使用によって得られる2つのバンドのうち高い方のバンドである約150kDaのサイズを有するバンドからは17ないし21ペプチドが得られた。 これはインテグリン−アルファ2と一致し、蛋白質カバー率は最大で19%(225/1181残基)であった。

    2つのバンドのうち約130kDaサイズを有する低い方のバンドからは9ないし13のペプチドが得られた。 これはインテグリン−ベータ1と一致し、蛋白質カバー率は最大で13%(106/798残基)であった。

    インテグリン−アルファ2の分子量は約129kDaで、インテグリン−ベータ1の分子量は約88kDaである。 SDS−PAGE上ではこれらよりも高い見かけ上の分子量が観察されたが、このことは両蛋白質とも高度にグリコシル化されていると考えれば、説明できる。

    実施例11
    エピトープ・マッピングの方法

    実施例11.1
    “伝統的”エピトープ・マッピング 対象とする抗原用のcDNAの所定のフラグメントを組換え(融合)蛋白質として発現させ、ウェスタン・ブロットまたはELISAのような種々のアッセイで試験される。

    実施例11.2
    ファージ・ディスプレイ技術 ランダム・ペプチド・ファージ・ディスプレイ・ライブラリを用いるエピトープ・マッピング技術は、対象とする抗原用のcDNAの小さいランダムなフラグメント類を線維性ファージのファージ蛋白質pIIIにクローン化し、それらをそのファージの表面に提示させるために開発された(ファック(Fack)ら、(1997)、J Immunol.Methods 7巻、p.43−52)。 エピトープを提示するファージ類は“バイオパニング”と呼ばれる工程において抗体によって捕獲することができる。 対応するファージ類に挿入された物をシーケンシングすると、エピトープに関し何らかの情報が得られる。 この操作法は主に立体エピトープ類を同定することができる。

    実施例11.3
    ペプチドスキャン法 これはFmoc化学を使用して活性化膜上での固定ペプチドを合成することに基づく方法である。 アミノ酸溶液を活性化膜に塗布し、膜上のアミノ基(この膜はPEGで活性化されている)と、塗布したアミノ酸の活性化カルボキシ基との間にペプチド結合を形成させる。 各サイクル後に特殊な洗浄処理、アセチル化、脱保護および遊離アミノ基のモニタを実施する。 インビボ蛋白質合成とは異なり、膜結合オリゴペプチド鎖はC−末端からN−末端に段階的に合成される。 天然アミノ酸並びに修飾アミノ酸を含むオリゴペプチドは20アミノ酸の長さまで合成できる。 合成後、その膜を平衡化し、非特異的結合部位をブロックする。 対象とする抗体と共にインキュベーションし、何回か洗浄した後、HRP−コンジュゲート二次抗体をECL−システムと組み合わせて検出を行う。 膜を剥がして、再生し、コンジュゲート抗体に応じて10回まで再使用することができる。 対象とする抗原の完全なアミノ酸配列を理想的にカバーする小さいオーバーラッピング・オリゴペプチドを固体支持体上で合成する。 この方法により線状エピトープをアミノ酸レベルで同定することができる。 迅速な突然変異の研究も可能となる。

    実施例12
    免疫組織化学による組織プロファイリング 112個の腫瘍試料と2個の対照とを含む組織マイクロアレイを用い、MCAMに対する2種類の抗体(scFv7 およびscFv9 −IgG1型にクローン化されたscFv7およびscFv9)の各標的への結合について試験した。 それらの試料はヌードマウスで増殖させたヒト異種移植片から誘導され、ビオチン−ストレプトアビジン/ペルオキシダーゼ/ジアミノベンジシンで染色したパラフィン切片とした。 種々の腫瘍組織への結合結果を図10に示す。

    実施例13
    皮下で成長するヒト腫瘍異種移植片における化合物類の抗腫瘍効果肺腺癌(気管支腺癌)をキセノグラフとして使用した。
    平均体重35gの、処置開始時に約7週齢であるNMRIバックグラウンドのヌードマウスを使用した。 動物の健康を研究開始前に検査し、確実に健康な動物だけを試験に使用した。 マウスは個々ののタグ番号と、実験番号、ランダム化の日時、マウス系統、性別、個々のマウス番号、試験化合物、用量、スケジュールおよび投与経路を示す記録カードを付けた各ケージとによって識別した。 動物は24±1℃および相対湿度60±10%に空気調節した室内でフィルターフードのついたマクロロン (Macrolon )III型ケージで飼育し、アルトロミン・エクストゥルデート(Altromin Extrudat)1439ラット/マウス食、および1N HClでpH2に調節された0.9g/lソルビン酸カリウムを含む脱塩滅菌水を与えた。 水の消費量を視覚により毎日モニターし、食物および水は適宜与えられた。 アルトロミン社(Altromin GmbH)製の動物の床敷SAWIはジェル・ウェルク(Jelu Werk)が分析、認定し、チャールス・リバーがオートクレーブ処理して流通させたもので、1週間に2回新しく代えた。 抗体類は1回分の量を多くして投与した(50mg/kg、1週間に2回、4週間)。 一群には賦形剤だけを投与し、第二群はscFv7 (IgG1型にクローン化されたscFv7配列)を与えられ、第三群は陽性対照であり、ドセタキセル(20mg/kg)を参照として投与され、第四群にはscFv7 とドセタキセル(50/20mg/kg)の組み合わせを投与した。

    群の規模は6匹マウスであり、32匹のマウスに合計64の腫瘍断片を移植し(両側性移植)、同じ大きさの腫瘍をもつ24匹のマウスを得た。 移植用の腫瘍断片はヌードマウスで連続継代培養した異種移植型から得た。 ドナーマウスから腫瘍を取り出した後、その腫瘍を断片(直径2〜3mm)に切り、マウスに皮下移植するまでRPMI1640培養培地中に置いた(最長30〜45分間)。 マウスに気化イソフルレンを吸入させて麻酔し、背中の皮膚に2つの小さい切り目をつけ(左と右に)、2つの腫瘍断片を各マウスに移植した。 腫瘍が平均直径6ないし8mmに成長させてから処理を開始した。 ランダム化するために、動物を腫瘍の直径によって3カテゴリに分けた:大;>8mm;中:6ないし8mm;小;5mm。 ランダム化の結果、腫瘍カテゴリは各群に等しく割り当てられた。

    腫瘍サイズおよびマウス体重を週に2回測定し、死亡数および臨床的兆候を毎日記録した。 個々の腫瘍の相対的大きさをx日の腫瘍量と0日の腫瘍量との比として計算した(Tx/T0、0日はランダム化の日であり、処置第1日目である)。 これに相応して個々のマウスの相対的体重を計算した。 経過時間に対する相対的腫瘍量および相対的体重のプロットを作成した。 抗腫瘍活性を評価するために、特定の日の抗体処理群および賦形剤処理群の平均相対的腫瘍量の比を計算した(T/C%値)。 抗体が活性であると評価するための最低条件を最低T/C%値<50%とした。 腫瘍担持マウスを1週に2回、4週間処置した。 研究の終わりに腫瘍を集め、その後の分析に使用した。 7日目の種々の処理後の腫瘍サイズの比較を図13に示す。 NMRInu/nuマウスの血中抗体レベルを評価するために、インビボ処置の研究中、異なる時間に6回、抗体処理群のマウスの舌下出血によって血液サンプル300μlを採取した。 曲線の谷は4日目、ちょうど第二回目の投与の直前と、22日目、第7回目の投与の前であった。 血液サンプル(各回3血液サンプルを採取)を26、27、28および29日目に得た。 4、26および28日目のサンプルはマウス1〜3から得た。 22、27および29日目のサンプルはマウス4〜6から得た。 血液サンプルの規模は最低100μlの血漿を調製するのに十分であった。 血漿サンプルはEDTAを使用して調製し、分析まで−80℃で保存した。

    HT1080着色細胞が8μmフィルタを通過して侵襲したことを示す図である。 37℃で6時間インキュベーション後の蛍光を定量した。 示されるデータはn=3ウェルの平均値±SDである。

    HT1080(ヒト線維肉腫)細胞で行われた侵襲アッセイの結果を表として示す。 被験scFvの各番号は図6に示すものと同一である。 記号“

    ”は図6に示す番号と同じ各scFvを侵襲アッセイの実施前にIgG4型にクローン化したことを示すものである。 基質を通過した細胞の侵襲を測定し、侵襲阻害%として示す。

    HT1080(ヒト線維肉腫)、KHOS−NP(ヒト骨肉腫)、MCF−7(ヒト乳腺腫)、BT−474(ヒト乳癌、乳腺)、PC−3(ヒト前立腺癌)、Jurkat(ヒトT細胞白血病)、HL−60(ヒト急性骨髄性白血病)、HeLa(ヒト子宮頸癌)、SW480(ヒト結腸癌)、LS174T(ヒト結腸癌)、HT−29(ヒト結腸癌)など種々の細胞型で行ったFACS分析の結果を対照細胞(Hs27(ヒト皮膚線維芽細胞))の結果と比較して表に示したものである。 これらの結果は平均蛍光強度によって示される;その際平均蛍光強度0〜12は(+)によって示され、平均蛍光強度13〜40は(++)によって示され、40より強い平均蛍光強度は(+++)によって示される。 表3aは図6に示す番号と同じscFvについて示す。 表3bはIgGのFACS分析の結果を示す。 記号“

    ”は図6に示す番号と同じ各scFvをFACS実験の前にIgG4型にクローン化したことを意味する。

    免疫沈降実験の結果を示す図である。 免疫複合体をSDS−PAGEによって分離し、銀染色した。

    pXP14(配列番号39)のベクタマップ並びにscFv発現ベクタの配列を示す図である。

    同定された一本鎖:scFv1からscFv19までのペプチド配列を表1に示す。 CDR3領域は記載されたペプチド配列中で下線を引いて示す。 相当する配列番号は横に記載する。

    ポリペプチドscFv1からscFv19までをコードするヌクレオチド配列を表2に示す。 相当する配列番号を記載する。

    CI(コラーゲンSタイプI)、CIV(コラーゲンIV)、FN(フィブロネクチン)およびLN(ラミニン)などの種々の基質上で、HT1080(ヒト線維肉腫)、PC−3(ヒト腺癌、前立腺)、HeLa(ヒト子宮頸癌)およびHT−29(ヒト結腸癌)などの種々の細胞型で行われた接着アッセイの結果(表として示されている)を示す図である。 被験scFvの各番号は図6に示すものと同一である。 記号“

    ”は図6に示す番号と同じ各scFvを接着アッセイの実施前にIgG4型にクローン化したことを意味する。 接着は接着阻害%として測定され、示される。 阻害値“+”は1〜10%の阻害をあらわし、“++”は>10〜40%の阻害をあらわし、“+++”は>40〜100%の阻害値をあらわす。 “n.d.”は確認されなかったことを示す。

    scFv発現ベクタpXP10(配列番号40)のベクタマップおよびpXP10の配列を示す図である。

    MCAM特異的抗体(scFv7

    およびscFv9

    )(scFv7およびscFv9はIgG1型にクローン化された)を使用した免疫組織化学上の結果を示す図である。

    サイズ約110kDaのバンドから得られるペプチド混合物のMALDI−MSスペクトル(a)を示す図である。 2つのトリプシン自己消化ピーク(Tとして示される)を内部較正のために使用した。 星印のついた合計15のピークは質量偏差13ppm未満で典型的MCAMアミノ酸配列(スイスプロット(SwissProt、P43121))に一致した。 一致したペプチドはアミノ酸配列番号58(b)の23%(151/646残基)をカバーする。

    増殖アッセイの結果を、IgG'sによるSW−480およびPC−3増殖の減少として示す図である。 (増殖アッセイの実施前にscFv7、scFv9およびscFv18をIgG4型にクローン化した)。 SW−480結腸癌細胞(図12b)およびPC−3前立腺癌細胞(図12a)の増殖を最初の抗体添加後の指示された時点でMTS細胞生育性アッセイを実施し測定した。 データは、3回の独立的実験からプールした、%対照培地の平均値として示される。 エラーバー:テューキーHSDによる95%信頼区間。

    無胸腺マウスの皮下で成長させヒト腫瘍異種移植片における化合物類の抗腫瘍効果を表として示したものである。 肺腺癌(LXFA)を異種移植片として用いた。 表は化合物注射後0日目および7日目の腫瘍サイズを示す。 scFv7

    (IgG1型にクローン化したscFv7)をドセタキセルと比較して使用した。 scFv

    とドセタクセルとの組み合わせ処置の結果も示す。 scFv7

    注射後7日目に腫瘍サイズは12%減少している。

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